(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】岩石から水素及び磁鉄鉱を生成する方法
(51)【国際特許分類】
C22B 1/00 20060101AFI20240725BHJP
C01B 3/06 20060101ALI20240725BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
C22B1/00 101
C01B3/06
B01D53/14 100
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505303
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-22
(86)【国際出願番号】 IB2022057088
(87)【国際公開番号】W WO2023007466
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514137997
【氏名又は名称】オハイオ・ステイト・イノベーション・ファウンデーション
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】ダラー、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ラオ、ビクラム
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト、コリン
【テーマコード(参考)】
4D020
4K001
【Fターム(参考)】
4D020AA03
4D020BA30
4D020BB01
4D020CA05
4D020DA03
4D020DB10
4K001AA07
4K001AA08
4K001AA10
4K001AA19
4K001AA34
4K001AA39
4K001BA02
4K001CA01
4K001CA06
4K001CA07
4K001CA09
(57)【要約】
苦鉄質火成岩及び超苦鉄質火成岩中に典型的に見られる、カンラン石、及び/又は、輝石に富む処理済みの鉱石が関与する逐次的な炭酸化反応及び蛇紋岩化/水和反応により、炭素を隔離し、水素ガスを発生させ、磁鉄鉱として酸化鉄を生成し、マグネサイトとして炭酸マグネシウムを生成するシステム及び方法。ニッケル、コバルト、クロム、希土類元素などの貴金属又は希少金属は、残りの鉱石中に濃縮され、任意の脈石物質からの該貴金属又は希少金属の回収が容易となり得る。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素を隔離し、岩石から水素及び磁鉄鉱を生成する方法であって、
カンラン石又は輝石を含む鉱石を取得するステップと、
周囲温度を超える温度において、大気圧を超える圧力で動作可能な反応器へ前記鉱石を導入するステップと、
第1の温度で第1の滞留時間にわたって、前記反応器へ二酸化炭素を導入して前記鉱石と反応させて、炭酸マグネシウムを生成するステップと、
第2の温度で第2の滞留時間にわたって、前記反応器へ水を導入して前記鉱石と反応させて、磁鉄鉱及び水素ガスを生成するステップと、
前記反応器から前記水素ガスを除去するステップと、
前記反応器から残りの鉱石を除去するステップと、
を含む、
方法。
【請求項2】
前記二酸化炭素を前記反応器へ導入する前に、前記鉱石をより小さいサイズの破片に粉砕するステップをさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記鉱石を前記より小さいサイズの破片に粉砕する前に、前記鉱石を水又は酸性溶液で洗浄するステップをさらに含む、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記鉱石を前記反応器へ導入する前に前記鉱石をふるいにかけて、予め選択されたサイズまでの鉱石粒子を前記反応器へ通過させるステップをさらに含み、
前記反応器へ前記鉱石を導入するステップは、前記予め選択されたサイズまでの粒子を有する前記鉱石の一部のみを前記反応器へ導入するステップを含む、
請求項1から3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記予め選択されたサイズは、約25ミクロンから約150ミクロンの間のサイズを含む、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記水を前記反応器へ導入する前に、前記反応器から前記炭酸マグネシウムの少なくとも一部を除去するステップをさらに含む、
請求項1から5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記水は、約8.3から約11.1の間のpHを有する、
請求項1から6の何れか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記水を前記反応器へ導入する前に、前記水を銅くずの加熱床に通過させて、前記水の酸素フガシティを低下させるステップをさらに含む、
請求項1から7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記二酸化炭素を前記反応器へ導入する前に、前記反応器へ導入される前記鉱石に酸性溶液を付着させるステップをさらに含む、
請求項1から8の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記二酸化炭素を前記反応器へ導入する前に、前記反応器から酸素を除去するステップをさらに含む、
請求項1から9の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記反応器へ導入される前記二酸化炭素は、ガス状二酸化炭素又は超臨界二酸化炭素である、
請求項1から10の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の温度と前記第2の温度とのうち少なくとも一方は、400℃以下である、
請求項1から11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の温度と前記第2の温度とのうち少なくとも一方は、300℃以下である、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の温度と前記第2の温度とのうち少なくとも一方は、250℃以下である、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の滞留時間中の前記反応器内部の二酸化炭素の圧力は、約5バール以上である、
請求項1から14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の滞留時間中の前記反応器内部の二酸化炭素の圧力は、約1バール以上である、
請求項1から15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の滞留時間中の前記反応器内部の二酸化炭素の前記圧力は、約5バール以上である、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の滞留時間中の前記反応器内部の二酸化炭素の前記圧力は、約10バール以上である、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の滞留時間中の前記反応器内部の二酸化炭素の前記圧力は、約20バール以上である、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第2の滞留時間中の前記反応器内部の二酸化炭素の前記圧力は、約40バール以上である、
請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記残りの鉱石から前記磁鉄鉱を分離するステップをさらに含む、
請求項1から20の何れか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記残りの鉱石からニッケル、コバルト、リチウム、クロム、又は希土類元素のうち少なくとも1つを分離するステップをさらに含む、
請求項1から21の何れか一項に記載の方法。
【請求項23】
炭素を隔離し、岩石から水素及び磁鉄鉱を生成する方法であって、
カンラン石又は輝石を含む鉱石を取得するステップと、
周囲温度を超える温度において、大気圧を超える圧力で動作可能な第1の反応器へ前記鉱石を導入するステップと、
第1の温度で第1の滞留時間にわたって、前記第1の反応器へ二酸化炭素を導入して前記鉱石と反応させて、炭酸マグネシウムを生成するステップと、
残りの鉱石を第2の反応器へ送るステップと、
第2の温度で、第2の滞留時間にわたって、前記第2の反応器へ水を導入して前記残りの鉱石と反応させて、磁鉄鉱及び水素ガスを生成するステップと、
前記第2の反応器から前記水素ガスを除去するステップと、
前記第2の反応器から残りの鉱石を除去するステップと、
を含む、
方法。
【請求項24】
前記二酸化炭素を前記第1の反応器へ導入する前に、前記鉱石をより小さいサイズの破片に粉砕するステップをさらに含む、
請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記鉱石を前記より小さいサイズの破片に粉砕する前に、前記鉱石を水又は酸性溶液で洗浄するステップをさらに含む、
請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記鉱石を前記第1の反応器へ導入する前に前記鉱石をふるいにかけて、予め選択されたサイズまでの鉱石粒子を前記第1の反応器へ通過させるステップをさらに含み、
前記第1の反応器へ前記鉱石を導入するステップは、前記予め選択されたサイズまでの粒子を有する前記鉱石の一部のみを前記第1の反応器へ導入するステップを含む、
請求項23から25の何れか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記予め選択されたサイズは、約25ミクロンから約150ミクロンの間のサイズを含む、
請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記残りの鉱石を前記第2の反応器へ送る前に、前記残りの鉱石から前記炭酸マグネシウムの少なくとも一部を分離するステップをさらに含む、
請求項23から27の何れか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記水は、約8.3から約11.1の間のpHを有する、
請求項23から28の何れか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記水を前記第2の反応器へ導入する前に、前記水を銅くずの加熱床に通過させて、前記水の酸素フガシティを低下させるステップをさらに含む、
請求項23から29の何れか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記二酸化炭素を前記第1の反応器へ導入する前に、前記第1の反応器へ導入される前記鉱石に酸性溶液を塗布するステップをさらに含む、
請求項23から30の何れか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記二酸化炭素を前記第1の反応器へ導入する前に、前記第1の反応器から酸素を除去するステップをさらに含む、
請求項23から31の何れか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記第1の反応器へ導入される前記二酸化炭素は、ガス状二酸化炭素又は超臨界二酸化炭素である、
請求項23から32の何れか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記第1の温度と前記第2の温度とのうち少なくとも一方は、400℃以下である、
請求項23から33の何れか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記第1の温度と前記第2の温度とのうち少なくとも一方は、300℃以下である、
請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記第1の温度と前記第2の温度とのうち少なくとも一方は、250℃以下である、
請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記第1の滞留時間中の前記第1の反応器内部の二酸化炭素の圧力は、約5バール以上である、
請求項23から36の何れか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記第2の滞留時間中の前記第2の反応器内部の二酸化炭素の圧力は、約1バール以上である、
請求項23から37の何れか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記第2の滞留時間中の前記第2の反応器内部の二酸化炭素の前記圧力は、約5バール以上である、
請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記第2の滞留時間中の前記第2の反応器内部の二酸化炭素の前記圧力は、約10バール以上である、
請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記第2の滞留時間中の前記第2の反応器内部の二酸化炭素の前記圧力は、約20バール以上である、
請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記第2の滞留時間中の前記第2の反応器内部の二酸化炭素の前記圧力は、約40バール以上である、
請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記第2の反応器から除去された前記残りの鉱石から生成された前記磁鉄鉱を分離するステップをさらに含む、
請求項23から42の何れか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記第2の反応器から除去された前記残りの鉱石から、ニッケル、コバルト、クロム、又は希土類元素のうち少なくとも1つを分離するステップをさらに含む、
請求項23から43の何れか一項に記載の方法。
【請求項45】
岩石から水素及び磁鉄鉱を生成する方法であって、
カンラン石又は輝石を含む鉱石を取得するステップと、
前記鉱石をより小さいサイズの破片に粉砕するステップと、
周囲温度を超える温度において、大気圧を超える圧力で動作可能な反応器へ前記鉱石を導入するステップと、
特定の温度で特定の滞留時間にわたって、前記反応器へ水を導入して前記鉱石と反応させて、磁鉄鉱及び水素ガスを生成するステップと、
前記反応器から前記水素ガスを除去するステップと、
前記反応器から残りの鉱石を除去するステップと、
を含む、
方法。
【請求項46】
前記鉱石を前記より小さいサイズの破片に粉砕する前に、前記鉱石を水又は酸性溶液で洗浄するステップをさらに含む、
請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記鉱石を前記反応器へ導入する前に前記鉱石をふるいにかけて、予め選択されたサイズまでの鉱石粒子を前記反応器へ通過させるステップをさらに含み、
前記反応器へ前記鉱石を導入するステップは、前記予め選択されたサイズまでの粒子を有する前記鉱石の一部のみを前記反応器へ導入するステップを含む、
請求項45又は46に記載の方法。
【請求項48】
前記予め選択されたサイズは、約25ミクロンから約150ミクロンの間のサイズを含む、
請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記水は、約8.3から約11.1の間のpHを有する、
請求項45から48の何れか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記水を前記反応器へ導入する前に、前記水を銅くずの加熱床に通過させて、前記水の酸素フガシティを低下させるステップをさらに含む、
請求項45から49の何れか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記特定の温度は、400℃以下である、
請求項45から50の何れか一項に記載の方法。
【請求項52】
前記特定の温度は、300℃以下である、
請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記特定の温度は、250℃以下である、
請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記特定の滞留時間中の前記反応器内部の二酸化炭素の圧力は、約1バール以上である、
請求項45から53の何れか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記特定の滞留時間中の前記反応器内部の二酸化炭素の前記圧力は、約5バール以上である、
請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記特定の滞留時間中の前記反応器内部の二酸化炭素の前記圧力は、約10バール以上である、
請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記特定の滞留時間中の前記反応器内部の二酸化炭素の前記圧力は、約20バール以上である、
請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記特定の滞留時間中の前記反応器内部の二酸化炭素の前記圧力は、約40バール以上である、
請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記残りの鉱石から生成された前記磁鉄鉱を分離するステップをさらに含む、
請求項45から58の何れか一項に記載の方法。
【請求項60】
前記残りの鉱石からニッケル、コバルト、リチウム、クロム、又は希土類元素のうち少なくとも1つを分離するステップをさらに含む、
請求項45から59の何れか一項に記載の方法。
【請求項61】
炭素を隔離し、岩石から水素及び磁鉄鉱を生成するシステムであって、
カンラン石又は輝石を含む鉱石の供給源と、
鉱石粒子を受け入れる入口と、少なくとも1つの出口と、を有する反応器であって、前記反応器は、二酸化炭素又は水のうち1つ以上が導入される少なくとも1つの追加の入口も有し、前記反応器は、第1の温度で、第1の滞留時間にわたって、前記少なくとも1つの追加の入口を通じて前記反応器に入った二酸化炭素を前記鉱石と反応させて炭酸マグネシウムを生成するように動作可能であり、前記反応器は、第2の温度で、第2の滞留時間にわたって、前記少なくとも1つの追加の入口を通じて前記反応器に入った水を前記鉱石と反応させて磁鉄鉱及び水素ガスを生成するようにも動作可能である、反応器と、
前記反応器の前記少なくとも1つの出口に接続され、該少なくとも1つの出口と流体連通しており、前記少なくとも1つの出口を通じて前記反応器から出たガスから水素ガスを分離するように構成されたガス分離器と、
を備える、
システム。
【請求項62】
破砕機であって、前記供給源から該破砕機へ導入された前記鉱石の粒径を物理的に小さくする破砕機をさらに備える、
請求項61に記載のシステム。
【請求項63】
前記破砕機から鉱石を受け入れ、予め選択されたサイズまでの鉱石粒子を前記反応器へ通過させるふるいをさらに備え、
鉱石粒子を受け入れる前記入口は、前記予め選択されたサイズ以下のサイズを有する鉱石粒子のみを前記ふるいから受け入れるように構成可能である、
請求項62に記載のシステム。
【請求項64】
前記反応器の前記少なくとも1つの出口から残りの鉱石を受け入れる磁気分離器であって、前記磁気分離器は、前記磁鉄鉱を引き付け、それによって前記磁鉄鉱を前記残りの鉱石の他の成分から分離する磁石を有する、磁気分離器をさらに備える、
請求項61から63の何れか一項に記載のシステム。
【請求項65】
前記鉱石粒子が二酸化炭素と反応する前に、前記鉱石粒子に酸性溶液を塗布する洗浄器をさらに備える、
請求項61から64の何れか一項に記載のシステム。
【請求項66】
前記反応器から除去された残りの鉱石部分からニッケル、コバルト、クロム、又は希土類元素のうち少なくとも1つを分離する分離器をさらに備える、
請求項61から65の何れか一項に記載のシステム。
【請求項67】
前記反応器は、前記二酸化炭素が導入される第1の反応器と、前記水が導入される第2の反応器と、を含み、前記第1の反応器は、前記第1の温度で前記第1の滞留時間にわたって、前記少なくとも1つの追加の入口を通じて前記第1の反応器に入った二酸化炭素を前記鉱石と反応させるように動作可能であり、前記第2の反応器は、前記第2の温度で前記第2の滞留時間にわたって、前記第2の反応器に入った水を、前記第1の反応器から前記第2の反応器へ導入された残りの鉱石と反応させるように動作可能である、
請求項61から66の何れか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の1つ以上の実施形態は、一般に、水素を生成し、磁鉄鉱を生成し、並びに/又は、予め選択された化学プロセスにより(苦鉄質岩、及び/若しくは、超苦鉄質岩などの)カンラン石又は輝石を含む鉱石から追加の所望の生成物を得るシステム及び方法に関する。1つ以上の実施形態において、システム及び方法は、二酸化炭素を隔離し、水素を遊離し、磁鉄鉱及びマグネサイトを生成し、及び/又は、他の所望の生成物を得るために、カンラン石及び輝石に富む鉱石が関与する炭化反応、及び/又は、蛇紋岩化/水和反応を促進し、該他の所望の生成物には、希少金属が含まれ、希少金属は、多くの場合、様々なグリーンテクノロジー(例えば、電池、エネルギー貯蔵、太陽光発電)にとって不可欠であり、該炭化反応、及び/又は、蛇紋岩化/水和反応でなければ、炭素集約的な方法を用いて採掘される。
【背景技術】
【0002】
温室効果ガス、主に二酸化炭素(CO2)及びメタン(CH4)の環境負荷は、過去数十年にわたって多くの公の議論の対象となってきた。より最近には、環境への温室効果ガスの放出を削減するための自主的な民間部門の取り組み及び政府により定められた規制が実施され始めている。二酸化炭素及び他の温室効果ガスの大気への放出を軽減するための二酸化炭素及び他の温室効果ガスの捕捉、及び/又は、隔離に加えて、生成される二酸化炭素、及び/又は、捕捉し隔離する必要がある二酸化炭素の量を削減するために、エネルギー生成のための化石燃料燃焼に代わる代替手段の利用に多くの研究開発努力が集中してきた。
【0003】
水素(H2)ガスは、(例えば、水素燃料としての、若しくは、グリーンアンモニアの使用による)エネルギー源、並びに、燃焼時に温室効果ガスをほとんど若しくは全く生じない化学原料(例えば、メタノール、アンモニア、炭化水素燃料)として有望である。実際、水素ガスを燃焼させると、反応生成物として水だけが生成される。しかし、水素ガスは、伝統的に化石燃料を使用して(例えば、水蒸気改質装置内での天然ガス/メタン変換によって)生成されており、これにより、反応生成物として温室効果ガスである二酸化炭素が生成される。例えば、上述の水蒸気メタン改質反応では、メタンが水蒸気(すなわち、水)と反応し、水素ガスと一酸化炭素とが生成される。後続の水性ガスシフト反応では、一酸化炭素が水蒸気とさらに反応し、二酸化炭素と追加の水素ガスとが生成される。水素ガスは、続いて、圧力スイング吸着、膜分離、又は他のガス分離プロセスにより二酸化炭素から分離される。従って、例えば精錬所の操業において生成される水素のほとんどは、温室効果ガスを生成し、有意義な利益を得るには、この温室効果ガスを捕捉して隔離する必要がある。
【0004】
或いは、水素ガスは、水の電気分解によって水素ガスと酸素とに生成され得る。水素ガスは、続いて、圧力スイング吸着、膜分離、又は他のガス分離プロセスにより酸素から分離される。電気分解又は部分熱分解反応による水素の生成は、相当量の電力を必要とする。電気分解、及び/又は、部分熱分解反応による水素生成に必要な電力の少なくとも一部は再生可能な供給源(例えば、風力、太陽光、水力発電)から得ることができるものの、実際には、この目的のために使用される電力の大部分は、伝統的に、且つ、引き続いて、化石燃料の燃焼によって生成されており、この化石燃料の燃焼は、温室効果ガスも生成する。
【0005】
特定の地層内で、例えば
図1A~
図1Dに示すように中央海嶺付近の若い海洋地殻で、水素ガスの非生物的生成が起こることが知られている。これらの自然反応は、様々なpH、酸素フガシティ、化学組成、及び圧力を含む様々な環境条件にわたって起こる。このような反応は、多様で複雑な鉱物学的組成及び化学的性質をもたらすものの、反応生成物のいかなる特定の組み合わせも予想どおりにもたらすものではない。実際、
図2の断面写真に概して示されているように、非生物的水素を生成し得る岩石鉱床200は、抽出し難い鉱物相の複雑な混合物若しくは層を含むことが多く、又は、現場の(in situ)地球化学的条件(例えば、様々な酸化還元電位(Eh)、pH、間隙水組成、ガス化学組成、及び温度)に基づいて他の競合反応が優先される場合には所望の生成物を生成しないであろう。例えば、水素の生成は、本質的に可変性が高く、その発生は、pH、Eh、並びに間隙空間内及び鉱物表面における流体地球化学の他の側面に大きく依存する。従って、反応相の複雑な速度論と、自然条件下(例えば、中性付近のpH、様々な酸素フガシティ、及び様々な間隙水化学的性質)での競合反応の発生とが、これらの自然に起こる反応によって生成される生成物を左右する。特定の地層、及び/又は、その岩石は、特定の条件下における、炭酸鉱物相、例えば炭酸塩を形成する二酸化炭素との反応を促進する鉱物を含むことも知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図3は、世界中の選択された好適な、及び/又は、堅牢な苦鉄質岩及び超苦鉄質岩の鉱床の位置例を強調表示する地図を提供する。カンラン石含有鉱石及び輝石含有鉱石は、そのような苦鉄質地層、及び/又は、超苦鉄質地層で見出され得る。
図3から分かるように、苦鉄質火成岩及び超苦鉄質火成岩の源は、多くの場所で発見され得、非常に豊富であり、地球の大陸地殻の少なくとも10%を占めており、これは、本明細書に記載された解決策の世界的な適用可能性を示している。より最近では、このような苦鉄質火成岩及び超苦鉄質火成岩の源は、炭酸塩鉱物相に二酸化炭素を隔離する(鉱化する)ために利用できる可能性により関心を集めている。しかし、炭素隔離に関する膨大な先行研究にもかかわらず、炭素鉱化のための最良の機械的反応及び最適化された速度について、かなりの議論が存在する。そのため、これらのプロセスの経済的実行可能性は、完全には開発されておらず、苦鉄質岩及び超苦鉄質岩の水素生成能力及び炭素隔離能力も実現されていない。さらに、炭化反応から生じる微粒子炭酸化鉱物相の経済的用途は、認識されていない。むしろ、そのような炭酸化鉱物相を盛り土として使用するか、海洋又は湖に投棄することを推奨する提案がなされている。
【0007】
このような地層、及び/又は、その鉱石は、地質学的水素若しくは他の生成物、並びに、潜在的な炭素隔離のために利用される理論上の可能性があるにもかかわらず、これらの反応のプロセス及び速度論は、厳密に評価されておらず、最適化もされていない。さらに、代替的な、場合によっては有害な鉱物相(例えば、アンチゴライト、アスベストなどの蛇紋岩)を発生させることなく、これらの地層から水素を生成するプロセスは、開発されていない。従って、出願人は、特定の地層、及び/又は、その鉱石を利用して、水素を遊離し、磁鉄鉱及びマグネサイトを生成し、及び/又は、カンラン石及び輝石に富む鉱石を含む地層から希少金属/クリティカルメタルなどの他の所望の生成物を得、それに加えて、マグネサイト又は他の鉱物相中に二酸化炭素を隔離するシステム及び方法の必要性を認識した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書の開示は、炭素を隔離し、水素ガスを発生させ、カンラン石及び輝石を含有する鉱石からマグネサイトに加えて磁鉄鉱を生成するシステム及び方法の1つ以上の実施形態を提供する。加えて、ニッケル、コバルト、クロム、希土類元素などの貴金属又は希少金属が残りの鉱石内で濃縮され得、これにより、該貴金属又は希少金属の回収が容易になる。
【0009】
例示的な実施形態では、炭素を隔離し、水素及び磁鉄鉱を生成する方法が提供される。方法は、カンラン石又は輝石を含む鉱石を取得するステップを含む。鉱石は、破砕又は磨砕などにより、より小さいサイズの破片に粉砕され得る。粉砕された鉱石は、周囲温度を超える温度において、大気圧を超える圧力で動作可能な反応器へ導入され得る。方法は、二酸化炭素(又は、二酸化炭素と、窒素(N2)、硫化二水素(H2S)、二酸化硫黄(SO2)などの他のガスと、の混合物)を、周囲温度を超える第1の温度で、第1の滞留時間にわたって反応器へ導入し、二酸化炭素の少なくとも一部を鉱石と反応させるステップも含み得る。方法は、その後、第2の温度で、第2の滞留時間にわたって水を反応器へ導入して、水の少なくとも一部を1つ以上の残りの鉱石と反応させ、少なくとも磁鉄鉱及び水素ガスを生成するステップも含む。水素ガス、炭酸マグネシウム(マグネサイト)、磁鉄鉱、その他の反応生成物を含む反応生成物と、残りの鉱石とは、反応器から除去され得る。
【0010】
別の実施形態では、炭素を隔離し、岩石から水素及び磁鉄鉱を生成する方法が提供される。方法は、カンラン石又は輝石を含む鉱石を取得するステップを含む。上記と同様に、鉱石は、破砕又は磨砕などにより、より小さいサイズの破片に分解され得る。鉱石は、周囲温度を超える第1の温度において、大気圧を超える圧力で動作可能な第1の反応器へ導入される。方法は、二酸化炭素(又は、二酸化炭素と、窒素(N2)、硫化二水素(H2S)、二酸化硫黄(SO2)などの他のガスと、の混合物)を、第1の温度で、第1の滞留時間にわたって第1の反応器へ導入し、二酸化炭素の少なくとも一部を鉱石と反応させて、少なくとも炭酸マグネシウムを生成するステップも含む。残りの鉱石は、第2の反応器へ送られ得る。第1の反応器からの反応生成物は、残りの鉱石から分離されてもよいし、第2の反応器へ送られてもよい。方法は、第2の温度で、第2の滞留時間にわたって水を第2の反応器へ導入して、水の少なくとも一部を第2の反応器内の残りの鉱石と反応させ、少なくとも磁鉄鉱及び水素ガスを生成するステップを含む。水素ガス、炭酸マグネシウム(マグネサイト)、磁鉄鉱、その他の反応生成物を含む反応生成物と、残りの鉱石とは、第2の反応器から除去され得る。
【0011】
さらに別の実施形態では、炭素を隔離し、岩石から水素及び磁鉄鉱を生成するシステムが提供される。システムは、カンラン石又は輝石を含む鉱石の供給源を含む。システムは、破砕機又は摩砕機を含み得、該破砕機又は摩砕機は、供給源から該破砕機又は摩砕機に導入された鉱石の粒径を物理的に小さくするために使用される。システムは、破砕機から鉱石を受け入れるために使用され、予め選択されたサイズまでの鉱石粒子を通過させるように構成されたふるいを含み得る。システムは、ふるいから予め選択されたサイズまでの鉱石粒子を受け入れる入口と、少なくとも1つの出口と、を有する反応器も含む。反応器は、少なくとも1つの追加の入口を有し、該少なくとも1つの追加の入口を通じて二酸化炭素又は水のうち1つ以上が反応器へ導入され得る(且つ、いくつかの実施形態において、反応器は、2つの反応器を備え得る:追加の入口を有する第1の反応器であって、該追加の入口を通じて二酸化炭素が該第1の反応器へ導入され得る第1の反応器、及び、別の追加の入口を有する第2の反応器であって、該別の追加の入口を通じて水が該第2の反応器へ導入され得る第2の反応器)。反応器は、第1の温度で、第1の滞留時間にわたって、受け入れた二酸化炭素の少なくとも一部を第1の反応器内の鉱石と反応させ、少なくとも炭酸マグネシウムを生成するように動作可能である。反応器は、第2の温度で、第2の滞留時間にわたって、少なくとも1つの追加の入口を通じて反応器に入った水の少なくとも一部を反応器内部の鉱石と反応させ、磁鉄鉱及び水素ガスを生成するようにも動作可能である。1つ以上の実施形態において、システムは、反応器の少なくとも1つの出口に接続され、流体連通しているガス分離器も含む。ガス分離器は、反応器の少なくとも1つの出口を通じて反応器から出たガスから水素ガスを分離するように構成されている。
【0012】
これらの様々なステップを実行するための対応する手段を、以下説明する。
【0013】
上述の概要は、本明細書で説明されるいくつかの例示的な実施形態を要約することのみを目的として提供されている。上述の実施形態は、単なる例に過ぎないため、これらは、本開示の範囲をいかなる形でも狭めるものとして解釈されるべきではない。本開示の範囲は、上記で要約した実施形態に加えて多くの潜在的な実施形態を包含し、そのうちのいくつかは、以下でさらに詳細に説明されることが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
特定の例示的な実施形態を上記で概括的に説明したが、ここで添付図面を参照し、これらの図面は必ずしも縮尺に合わせて描かれているわけではない。いくつかの実施形態は、図に示されている構成要素よりも少ない、又は、多い構成要素を含み得る。
【0015】
【
図1A】
図1Aは、非生物的水素生成をもたらし、及び/又は、ホストし得る理論上の中央海嶺付近に位置する若い海洋地殻及び関連構造の断面図を示す。
【
図1B】
図1Bは、非生物的水素生成をもたらし、及び/又は、ホストし得る理論上の中央海嶺付近に位置する若い海洋地殻及び関連構造の断面図を示す。
【
図1C】
図1Cは、非生物的水素生成をもたらし、及び/又は、ホストし得る理論上の中央海嶺付近に位置する若い海洋地殻及び関連構造の断面図を示す。
【
図1D】
図1Dは、非生物的水素生成をもたらし、及び/又は、ホストし得る理論上の中央海嶺付近に位置する若い海洋地殻及び関連構造の断面図を示す。
【
図2】
図2は、蛇紋岩化した超苦鉄質岩の例示的な断面を示す。
【
図3】
図3は、世界中の好適なカンラン石及び輝石を含む産地の位置を示す地図を示している。
【
図4A】
図4Aは、本明細書に記載された、いくつかの例示的な実施形態に係る、システムによって実行される、単一の反応器を使用した二酸化炭素の隔離、水素ガスの発生、並びに磁鉄鉱及びマグネサイトの生成を促進する一連の動作を示す例示的なフロー図を提供する。
【
図4B】
図4Bは、本明細書に記載された、いくつかの例示的な実施形態に係る、システムによって実行される、複数の反応器を使用した二酸化炭素の隔離、水素ガスの発生、及び磁鉄鉱/マグネサイトの生成を促進する一連の動作を示す例示的なフロー図を提供する。
【
図5】
図5は、本明細書に記載された、いくつかの例示的な実施形態に係る、二酸化炭素の隔離、水素ガスの発生、及び磁鉄鉱/マグネサイトの生成を促進するための例示的なフローチャートを示す。
【
図6】
図6は、本明細書に記載された、いくつかの例示的な実施形態に係る、反応のための原岩石の採取及び準備のための例示的なフローチャートを示す。
【
図7】
図7は、本明細書に記載された、いくつかの例示的な実施形態に係る、二酸化炭素、及び/又は、水の反応の後に残った岩石を処理するための例示的なフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここで、以下、いくつかの例示的な実施形態について、添付図面を参照して、より詳細に説明するが、この添付図面には、必ずしも全てではないものの、いくつかの実施形態が示されている。本明細書に記載された発明は、多くの異なる形態で具体化され得るため、本発明は、本明細書に記載された実施形態のみに限定されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、適用される法的要件を本開示が満たすように提供される。
【0017】
[概要]
出願人は、上述したように、苦鉄質火成岩、及び/又は、超苦鉄質火成岩(又は、より広義には、鉄含有量が高いカンラン石及び輝石を含有する鉱石などの、カンラン石及び輝石を含有する鉱石)が、経済的な地質学的水素の地質学的供給源の役割を果たし、水素及び磁鉄鉱生成のための天然供給源及び触媒として利用され、炭素隔離に利用される理論上の可能性が大きいにもかかわらず、これらの反応の最適なプロセス及び速度論は、厳密に評価されておらず、最適化されてもいないことを認識した。具体的に、炭素隔離と、これらの種類の岩石からの、代替的な(場合によっては、蛇紋岩、アスベストなどの有害な)鉱物相の形成を伴わない水素、磁鉄鉱、マグネサイト、及び/又は、他の鉱物の生成と、の両方を向上させるプロセスステップは、開発されていない。
【0018】
さらに、出願人の知る限り、最適化された炭素鉱化の化学プロセスを使用して、水素及び磁鉄鉱の生成の速度を向上するか、又は、得られる反応生成物の化学種を制御する(例えば、蛇紋岩及びアスベストの形成を抑制する)先行の試みは無い。
【0019】
本明細書で開示された様々な実施形態では、カンラン石及び輝石に富む鉱石を使用して、制御された環境における逐次的な炭酸化反応及び蛇紋岩化反応により、二酸化炭素が隔離され、水素、磁鉄鉱、及び他の希少金属が経済的に(且つ、中立から正味マイナスのカーボンフットプリントで)生成され得る。従って、出願人は、逐次反応を用いて、二酸化炭素を主にマグネサイト又は他の炭酸塩鉱物として隔離するとともに、水素、磁鉄鉱、及び/又は、他の所望の鉱物/希少金属を遊離するカンラン石及び輝石に富む鉱石の可能性を利用する工学的プロセスを開発した。出願人は、さらに、カンラン石及び輝石に富む鉱石に適用される追加のプロセスステップにより、再生可能エネルギー、エネルギー貯蔵などの用途に必要な貴金属又は希少金属(例えば、ニッケル、コバルト、クロム、リチウム、及び希土類元素)の濃縮及び回収を促進し得ることを認識した。
【0020】
出願人は、まずカンラン石鉱物相から苦土カンラン石の大部分を除去し、記載された化学反応を誘発することで鉱物粒子の粉砕を増加させることによって、水と、鉄カンラン石、及び/又は、鉄ケイ輝石と、の間の反応の、化学活性と、それに応じた反応の速度とが向上するように蛇紋岩化反応プロセスが有利にされ得ることを発見した。このようにして、火成岩中の鉄カンラン石、及び/又は、鉄ケイ輝石は、濃縮され、及び/又は、より苦土カンラン石などの隣接する鉱物によって覆い隠されていない状態になる。このプロセスは、2つの方法で:第1に、反応にさらされる鉄カンラン石、及び/又は、鉄ケイ輝石の表面積を向上することによって;第2に、選択した反応物(鉄に富んだカンラン石(鉄カンラン石)又は輝石(鉄ケイ輝石))を予め濃縮することによって、反応に利益をもたらす。従って、1つ以上の実施形態において、苦土カンラン石、及び/又は、頑火輝石は、鉄カンラン石、及び/又は、鉄ケイ輝石を水と反応させる前に、少なくとも部分的に除去される。
【0021】
この経路を介して水素、マグネサイト、磁鉄鉱、及びクリティカルメタルを生成する例示的な現場外(ex situ)工学的実施形態の価値を示す、いくつかの主な差別化要因には、以下が含まれる:1)「蛇紋岩化」プロセスが、蛇紋岩、アスベストなどの代替鉱物相ではなく、所望の生成物(水素、磁鉄鉱、希少金属)を生成するために最適化された後の、そのような実施形態の巨大な地質学的拡張性;2)CO2を鉱化された形態で、恒久的且つ検証可能に隔離し、ひいては水素、磁鉄鉱、及び希少金属をカーボンネガティブなプロセスで生成できる可能性;3)採石の概念(すなわち、骨材の販売、又は、マグネサイトのより高価値な利用)を用いて生成される他のバリューストリームを考慮することで大幅に相殺され得る、潜在的に拡張可能な「グリーン」又は「ゴールデン」水素(すなわち、カーボンネガティブな水素)、磁鉄鉱、及び希少金属のプライスポイント。
【0022】
例示的な実施形態の動作の高次の説明が上記に提供されているものの、そのような例示的な実施形態の構成に関する具体的な詳細が、以下に提供される。
【0023】
[蛇紋岩化反応及び炭酸化反応]
本明細書における開示は、苦鉄質火成岩、及び/若しくは、超苦鉄質火成岩中に一般的に見られるカンラン石及び輝石に富む鉱石が関与する蛇紋岩化反応、又は、そのようなカンラン石及び輝石に富んだ鉱石を含む任意の他の岩石集合体の蛇紋岩化反応により、水素、磁鉄鉱、及び/又は、他の所望の鉱物の生成を促進するシステム及び方法の1つ以上の実施形態を提供する。以下に示す表1は、鉄カンラン石(FeSiO4)、及び/又は、鉄ケイ輝石(Fe2Si2O6)が関与する代表的な蛇紋岩化反応を示す。鉄カンラン石は、カンラン石固溶体系列の鉄が豊富な端成分である鉱物相であり、カンラン石に富む鉱石に豊富に含まれている。鉄ケイ輝石は、斜方輝石固溶体系列の鉄に富む端成分であり、輝石に富む鉱石と共生している。鉄カンラン石及び鉄ケイ輝石は、通常、苦鉄質火成岩及び超苦鉄質火成岩中に一緒に見られる。特定の条件下で、水は、鉄カンラン石及び鉄ケイ輝石と反応し、磁鉄鉱(Fe3O4)、シリカ(SiO2)、及び水素ガス(H2)を好適な化学量論比で生成する。それぞれの場合において、3モルの鉄カンラン石又は鉄ケイ輝石鉱物から2モルの水素ガスが生成される。
【0024】
【0025】
1つ以上の実施形態において、開示されたシステム及び方法は、苦鉄質岩、及び/又は、超苦鉄質岩中に典型的に見られるカンラン石及び輝石に富む鉱石のマグネシウムに富む端成分が関与する炭酸化反応による、ガス状二酸化炭素の鉱化炭酸塩としての隔離も促進し得る。以下に示す表2は、苦土カンラン石(Mg2SiO4)及び頑火輝石(MgSiO6)が関与する代表的な炭酸化反応を示すとともに、流体条件がマグネサイトの形成にとって理想的ではない自然系において随伴鉱物相として形成され得るアンチゴライト(Mg3Si2O5(OH)4)との反応中の炭酸化の可能性を示す。苦土カンラン石は、カンラン石に富む鉱石と共生するカンラン石固溶体系列のマグネシウムに富む端成分である鉱物相である。頑火輝石は、輝石に富む鉱石と共生する斜方輝石固溶体系列のマグネシウムに富む端成分である鉱物相である。アンチゴライトは、蛇紋岩と共生する例示的な鉱物相である。特定の条件下で、二酸化炭素は、苦土カンラン石及び頑火輝石、及び/又は、他の随伴鉱物相(例えば、アンチゴライト)と反応し、少なくとも炭酸マグネシウム(MgCO3)及びシリカ(SiO2)を好適な化学量論比で生成する。二酸化炭素とのアンチゴライトの反応は、化学量論量の水をさらに生成し、pH、Eh、温度、圧力、及び流体化学が最適化され得ない自然系で起こる蛇紋岩化反応を示すことが示されている。苦土カンラン石及び頑火輝石が関与する理想的な炭化反応の場合、苦土カンラン石鉱物又は頑火輝石鉱物1モルあたり、2モルの二酸化炭素ガスが炭酸マグネシウム(マグネサイト)に変換される。
【0026】
【0027】
自然界では、且つ、上述したように、上述の蛇紋岩化反応及び炭化反応は起こるものの、地下での、又は、地球の表層条件における様々な環境条件にわたって起こる様々な反応の一部としてのみ起こる。その結果、環境条件は、多くの場合、変わりやすく、反応の速度及び経路は、理想からは程遠い。従って、自然反応は、自然界、特に地下で見られる多様な(且つ、多くの場合、動的な、すなわち時間とともに変化する)pH、酸素フガシティ、温度、間隙水化学組成、ガス化学組成、及び圧力に基づいている。自然界で発生する多数の反応と、それらの反応の潜在的な経路とは、多様で複雑な化学的性質と鉱物の集合体との形成につながるものの、使用可能な反応生成物のいかなる特定の組み合わせを予想どおりに生成するものでもない。その代わりに、時間の経過とともに、且つ、様々な反応条件の下で進化する自然系は、様々な鉱物集合体の複雑な(且つ、多くの場合、不均一な)複合体と、上述した理想的な反応に従わない反応の生成物と、を生成するか、又は、より遅く熱力学的平衡に達する。
【0028】
カンラン石及び輝石の鉱物学的組成及び化学的性質に関して、カンラン石は、ケイ酸マグネシウム(苦土カンラン石)とケイ酸鉄(鉄カンラン石)との間の固溶体系列(X2SiO4、ここで、X=Mg2+又はFe2+)であり、輝石(すなわち、斜方輝石)は、ケイ酸マグネシウム(頑火輝石)とケイ酸鉄(鉄ケイ輝石)との間の固溶体系列(X2Si2O6、ここで、X=Mg2+又はFe2+)である。カンラン石に富む対象の鉱床において、鉄カンラン石及び鉄ケイ輝石は、通常、微量成分であり、一般に濃度は6%から20%の範囲であり、自然界ではより低い範囲の濃度がより一般的である。その結果、鉄カンラン石及び鉄ケイ輝石の熱化学活性は、それぞれ、苦土カンラン石又は頑火輝石の熱化学活性に比べて比較的低い。従って、採石場から取得されたカンラン石又は輝石は、粉砕され、有利な反応条件(すなわち、温度、圧力、Eh、pH、及び流体組成が制御された)で水と反応させられ、続いて、蛇紋岩化反応が、鉄カンラン石又は鉄ケイ輝石との反応の、比較的低い熱化学活性と、それに応じて遅い速度とのため、比較的遅い速度で進行する。にもかかわらず、反応が完了すると、反応は、磁鉄鉱、シリカ、及び(水との鉄カンラン石又は鉄ケイ輝石の反応から)水素を生成し、該磁鉄鉱、シリカ、及び水素は、苦土カンラン石、頑火輝石、又はマグネサイトから(磁気的に、又は、重量測定法で)分離され得る。但し、カンラン石鉱物(苦土カンラン石及び鉄カンラン石)と輝石鉱物(頑火輝石及び鉄ケイ輝石)との混合物は、自然系では非常にまれな、ほぼ「理想的な」混合物を構成する。但し、理想的な混合物中で、化学活性は、モル分率に対して線形的に変化し、モル分率にほぼ等しい。従って、バルク鉱石からの大量のカンラン石及び輝石を、特に大量のカンラン石固溶体系列と輝石固溶体系列との両方の鉄に富む端成分を予め濃縮することによって、化学活性及び反応速度を向上し得る。
【0029】
[二酸化炭素の現場外隔離及び水素の生成]
本明細書で企図される様々な実施形態では、二酸化炭素が、鉱化され得、水素、マグネサイト、磁鉄鉱、及びクリティカルメタルが、
図4A、
図4Bに示すフロー図で示され、
図5、
図6、及び
図7で示されたフローチャートに関連して説明される方法で逐次反応を引き起こす工学的システムによって経済的に(且つ、全体的に中立から正味マイナスのカーボンフットプリントで)生成され得る。
【0030】
図4Aは、カンラン石鉱物(例えば、鉄カンラン石及び苦土カンラン石)と輝石鉱物(例えば、鉄ケイ輝石及び頑火輝石)との混合物を含む岩石からの水素ガス及び磁鉄鉱の生成を促進するシステムの一実施形態400’のフロー図を示す。カンラン石、及び/又は、輝石に富む鉱石402の供給源は、受け入れた鉱石のサイズを小さくして、より小さいサイズの破片にする破砕機又は磨砕機406へ供給又は導入され得る。1つ以上の実施形態では、任意で、洗浄器404を使用して、鉱石を水又は弱酸性溶液で洗浄し、鉱石から不純物を除去し、鉱石を炭酸化反応のために準備してもよい。次に、破砕又は磨砕された岩石が、岩石を予め選択された粒径範囲に分離する、ふるい408又は他の同様の分離器へ導入される。1つ以上の実施形態において、ふるい又はその格子は、150ミクロン、80ミクロン、さらには45ミクロンの粒子を通過させるようなサイズを有しているものの、異なるサイズを利用することもできる。少なくとも1つの実施形態において、粉砕された岩石は、粉末であるか、又は、粉末状の粒径範囲を有する。ふるいを通過しなかった岩石は、リサイクルループ410を介して破砕機又は磨砕機406に戻され、サイズがさらに小さくされ得る。次いで、150ミクロン、80ミクロン、45ミクロン、又はそれらの間などの、ふるい408の予め選択された粒径範囲内の任意のサイズの粒子を有する岩石の一部が、反応器412へ供給又は導入される。
【0031】
反応器412は、ロータリーキルン、トロイダル流動床、流動床、又は、当業者に知られている別の反応器であってよい。反応器412は、鉱石(又は鉱石粒子)を受け入れる入口と、少なくとも1つの出口と、を有し得、該少なくとも1つの出口から、反応器412内部での反応後に残りの鉱石が除去され得る。反応器412は、少なくとも1つの追加の入口をさらに有し得、該少なくとも1つの追加の入口を通じて、二酸化炭素又は水のうち1つ以上が反応器412へ導入され得る。反応器412は、第1の温度で、第1の滞留時間にわたって、少なくとも1つの追加の入口を通じて反応器412へ入った二酸化炭素を、反応器412内部に配置された鉱石と反応させ、炭酸マグネシウムを生成するように動作可能であり得る。反応器412は、さらに、第2の温度で、第2の滞留時間にわたって、少なくとも1つの追加の入口(二酸化炭素が反応器412へ入る入口と同じ入口であってもよいし、異なる入口であってもよい)を通じて反応器へ入った水を、反応器412内部に配置された鉱石と反応させ、磁鉄鉱及び水素ガスを生成するように動作可能であり得る。
【0032】
第1の反応ステップでは、二酸化炭素が、破砕/磨砕された岩石とともに反応器412へ導入される。岩石を反応器412に入れる前又は後の何れかに、水(1キログラムあたり約10リットルの水)が、破砕/磨砕された岩石に、洗浄器404によって付着させられ(噴霧されるか、又は、洗浄される)得る。粉末化した岩石を水で濡らすことにより、鉱物粒子の濡れた表面上でガス状CO2が炭酸(H2CO3)に溶解することを可能にし、これにより、該岩石中に見られる苦土カンラン石鉱物と二酸化炭素の反応性が向上する。少なくとも1つの実施形態において、粉砕された岩石に付着させられる水のpHは、約4.8から約6.5の間であってよい。この予め選択されたpH範囲内の水は、二酸化炭素と苦土カンラン石鉱物との間の反応をさらに促進する。この第1の反応ステップ中、反応器は、予め選択された温度(90℃超)及び圧力(約5バール超)で動作され、岩石中に見られる苦土カンラン石鉱物に関する炭酸化反応を促進する。1つ以上の実施形態において、反応器412は、約100℃から約400℃の間の温度において、約5バールから最大で少なくとも100バールの間の圧力(例えば、約40バール、約50バール、約75バール、又は、さらには100バール)で動作される;なお、反応器412及び関連構成要素がそのような圧力に耐え得る場合、圧力の上限は、大幅に高い圧力まで拡張され得る。このようにして圧力を増加させることにより、プロセスのこの段階で促進されている炭酸化反応が、対応して促進される。他の実施形態において、反応器412の動作圧力は、35バール程度の低さでもよいし、30バール程度の低さでもよいし、25バール程度の低さでもよいし、20バール程度の低さでもよいし、15バール程度の低さでもよいし、10バール程度の低さでもよいし、5バール程度の低さでもよいし、又は、さらに低くてもよく(約1バール)、それでも、相応に低い反応速度ではあるものの、意図した炭酸化反応をなお促進し得る。上記の表2に示すように、苦土カンラン石(Mg2SiO4)との二酸化炭素の反応により、炭酸マグネシウム(MgCO3)及び二酸化ケイ素(SiO2)が反応生成物として生成される。このようにして、苦鉄質岩、及び/又は、超苦鉄質岩の苦土カンラン石鉱物を使用して、CO2が、原料として有用な可能性がある固体であって、埋め立て地、海、湖に置かれるか、又は、他の方法で容易に保管される不溶解性炭酸マグネシウム鉱物格子の形態で恒久的に隔離される。苦土カンラン石を含む破砕/磨砕された岩石を、好ましい温度、圧力、Eh、pHの条件で二酸化炭素と反応させることにより、二酸化炭素との反応後に苦土カンラン石をマグネサイトに変化させることができる。
【0033】
この第1の反応ステップは、原岩石の粉砕を有利に促進し、後述する第2の反応ステップのために残りの岩石をよりよく準備するものの、いくつかの実施形態は、この第1の反応ステップを実行しなくてもよく、代わりに、原岩石を単に粉砕するだけでもよく、それ自体が、下記の実施例のセクションで例として示すように、第2の反応ステップのために原岩石を準備することが理解されるであろう。もちろん、他の実施形態では、原岩石は、最初の粉砕ステップを経る必要が無い可能性があるものの、その代わりに、本明細書に記載された第1の反応ステップを使用して最初に処理されるだけでもよく、それ自体が、原岩石の粉砕を促進し、ひいては、後述する第2の反応ステップにおける、より効果的な反応のために原岩石を準備する。原岩石の粉砕と、第1の反応ステップ中に起こる炭酸化反応と、の両方により、残りの岩石が、下記のセクション反応ステップのために有利に堆積され、従って、様々なシナリオにおいて、所定の実施形態の所望の結果に基づいて、粉砕と第1の反応ステップとの様々な組み合わせが用いられ得る。
【0034】
第2の反応ステップでは、その後、水が、破砕/磨砕された岩石とともに反応器412へ導入され、いくつかの実施形態では、この岩石が、第1の反応ステップからの炭酸マグネシウム及び二酸化ケイ素、元の破砕/磨砕された岩石中の鉄カンラン石鉱物、及び/若しくは、鉄ケイ輝石鉱物、並びに、元の破砕/磨砕された岩石中に見られる他の鉱物/鉱石をなお含んでいる可能性がある。いくつかの実施形態において、第1の反応ステップからの炭酸マグネシウム及び二酸化ケイ素は、それぞれの密度に基づいて残留ケイ酸鉄相から分離され得る。これらのプロセスの1つ以上の実施形態において、反応器412に加えられる水は、低酸素フガシティを有し得る(例えば、この水は、都市下水処理、地下水、地熱水、坑水、別の工業用水源から、又は、都市用水(すなわち、「水道水」)を銅の床の上において125℃を超える温度で反応させることによって、又は、別の機構によって取得され得る)とともに、約8.3から約11.1の間のpHを有し得る(特定のpHは、水に重炭酸ナトリウムを添加することなどによって人工的に達成されるか、又は、そのようなpH範囲の水が特定の水源及び廃水源で見られ得る場合などに自然に得られる)。この第2の反応ステップ中、反応器は、予め選択された温度及び圧力(約1バールから20バール)で動作され、岩石中の鉄カンラン石鉱物、及び/又は、鉄ケイ輝石鉱物の蛇紋岩化を促進する。1つ以上の実施形態において、反応器412は、約80℃から約400℃の間の範囲内の温度で動作される。上記の表1に示すように、鉄カンラン石(Fe2SiO4)、及び/又は、鉄ケイ輝石(Fe2Si2O6)との水の反応により、水素ガスと、窒素(N2)、二酸化炭素(CO2)、二酸化ケイ素、磁鉄鉱(Fe3O4)の様々な混合物と、が反応生成物として生成される。この現場外プロセス中に形成される水素の分子組成及び同位体組成は、反応の温度条件(例えば、約175℃)と最初の水の組成とによって決定され、ここで、H2OとH2との間の分別係数(α)は、標準的な地熱計で観察される分別係数に従う。水素ガスは、未反応の二酸化炭素(CO2)、二酸化硫黄(SO2)、若しくは硫化二水素(H2S)、又は、第1の反応ステップからの不活性ガス(例えば、窒素(N2)、アルゴン(Ar))などの反応器412内の任意の他のガスとともにガス分離器414へ送られる。ガス分離器414は、水素ガスを、例えば大気ガスなどの反応器412内に同じく存在し得る他のガスから分離できる膜ユニット、圧力スイング吸着、又は深冷分離ユニットであり得る。ガス分離器414は、反応器412の少なくとも1つの出口に接続されて流体連通しており、該少なくとも1つの出口を通じて反応器412から出たガスから水素ガスを分離するように構成され得る。
【0035】
少なくとも1つの実施形態において、第2の反応の前に反応器412内に存在し得るガスは、第2の反応の前に、反応器412を真空引きすることなどによって排気され得る。反応器412内にこれらの不純物ガス(例えば、N
2又はCO
2)が存在しない場合、水との蛇紋岩化反応の結果として形成される水素ガスが、第2の反応ステップ後に存在する唯一のガスであり得る。このような場合、水素ガスを生成物として分離するためにガス分離器414が必要とされない可能性がある。第2の反応ステップの後、炭酸マグネシウム、二酸化ケイ素、磁鉄鉱、及び任意の残りの岩石/未反応の鉱石が、反応器412から除去され得る。いくつかの実施形態では、炭酸マグネシウム(すなわち、マグネサイト)及び二酸化ケイ素(すなわち、石英)が、材料が反応器412に入れる前に、ケイ酸鉄及び他の鉱物相から分離され得る。磁鉄鉱は、製鉄業にとって有用な(直接還元鉄製造において特に価値がある)生成物/原料に相当し、炭酸マグネシウム、二酸化ケイ素、及び残りの岩石/鉱石から、例えば磁気分離又は他の密度分離技術によって回収され得る。磁気分離器416を使用して、1つ以上の磁石を使用することにより磁鉄鉱を選択的に引き付け、それによって磁鉄鉱を他の非金属鉱石から物理的に除去し得る。1つ以上の実施形態では、磁鉄鉱、炭酸マグネシウム、二酸化ケイ素などの固体生成物、及び、残りの未反応の鉱石/岩石をさらに破砕又は磨砕して(
図4Aには示さず)、磁気分離器416内の他の固体からの磁鉄鉱粒子の除去を促進するか、又は、他の鉱物若しくは金属に富む相の二次回収を行い得る。ガス分離器414からの分離された水素ガスと、磁気分離器416を介して回収された磁鉄鉱とは、本明細書で開示された逐次的な炭化反応及び蛇紋岩化反応によって苦鉄質岩、及び/又は、超苦鉄質岩からの生成及び回収が促進される有用な生成物である。
【0036】
(鉱物相に炭素が恒久的に隔離された)残りの炭酸マグネシウム、二酸化ケイ素、及び未反応の岩石/鉱石は、骨材材料として使用され、並びに/又は、埋め立て地に置くか、若しくは、他の方法で処分され得る。1つ以上の実施形態において、炭酸マグネシウム及び二酸化ケイ素は、(重液分離若しくは他の重力分離、とい流し法などの密度分離技術に基づいて)分離され、残りの岩石/脈石(脈石:リン酸塩、硫化物、酸化アルミニウムなどの随伴鉱物相の集合体)物質から除去され得る。以下でさらに説明するように、炭酸マグネシウム(又はマグネサイト)は、医薬品、(肥料の使用によって引き起こされる酸性化を中和するための)農業用石灰、肥料、セラミックス、及びセラミックレンガの製造において有用であるとともに、鉄鋼製造で使用される融剤として有用である。マグネサイトは、より低い炭素排出量を可能にする部分的石灰代替物としても使用され得、このより低い炭素排出量は、セメント製造用の酸化カルシウム(CaO)と比較して酸化マグネシウム(MgO)の製造に必要な温度がより低いことによってもたらされる。さらに、マグネサイトは、カーボンネガティブコンクリートフィラー、並びに、コンクリート中のセメント若しくは骨材の代替物として使用され得る。
【0037】
1つ以上の実施形態では、炭酸マグネシウム、二酸化ケイ素、及び未反応の岩石/鉱石の大部分を、埋め立てたり他の方法で使用したりするのではなく、第1の反応段階からの岩石、及び/又は、脈石物質が、さらに処理され、該岩石、及び/又は、脈石物質から特定の有用な成分を分離して除去する。例えば、苦鉄質岩及び超苦鉄質岩中の高濃度の特定の貴金属(例えばニッケル、コバルト、クロム、希土類元素)が、この「スラグ」物質中でさらに濃縮されている。少なくとも1つの実施形態では、リン酸塩、酸化アルミニウム、貴金属、及び他の脈石鉱物を含むがこれらに限定されない、高度金属濃縮物が、例えば分離器418内における重液分離若しくは他の重力分離、又は、とい流し法によって残りの岩石/鉱石から分離され得る。重力分離により、様々な金属及び他の有用な成分が微粒子へ磨砕され、それらの個々の比重に基づいて分離される。
【0038】
図4Aに示すように、第1の反応及び第2の反応は、両方とも、同一の反応器412内で起こり得、この反応器412は、上述したように、ロータリーキルン、流動床、トロイダル床、又は他の反応器であってよく、この場合、反応は、逐次的に実行され得、両方の反応の完了時に、全ての生成物が分離され得る。1つ以上の実施形態(
図4Aには示さず)において、反応生成物(すなわち、炭酸マグネシウム及び二酸化ケイ素)は、第1の反応ステップの後、且つ、第2の反応ステップの前に、重液分離若しくは他の重力分離、又はとい流し法などの確立された密度分離技術を用いて分離され得る。他の実施形態では、
図4Aに示すように、反応生成物は、第2の反応ステップ中に反応器内に残る。たとえ反応生成物が物理的に分離されていなくても、鉄カンラン石、及び/又は、鉄ケイ輝石の熱化学活性及び反応速度は、鉄カンラン石鉱物、及び/又は、鉄ケイ輝石鉱物の新たに露出した表面積に応じて増加する。換言すれば、鉄カンラン石鉱物、及び/又は、鉄ケイ輝石鉱物に関する蛇紋岩化反応の反応性は、固溶体中の鉄カンラン石、及び/又は、鉄ケイ輝石の高くなったモル分率に従って進行する(すなわち、代替的副反応の数、及び/又は、程度は、低減されている)。(例えば、重液分離若しくは他の重力分離、又はとい流し法などの確立された密度分離技術を用いて)完全に分離された、又は、露出された鉄カンラン石、及び/又は、鉄ケイ輝石の上限に関して、粉末材料の熱化学活性は、純粋相鉱物の単一体、又は、鉄カンラン石鉱物相、及び/若しくは、鉄ケイ輝石鉱物相の混合物に近づくであろう。従って、二酸化炭素との苦土カンラン石の反応を含む第1の反応ステップは、水との鉄カンラン石、及び/又は、鉄ケイ輝石の蛇紋岩化/水和反応である第2の反応ステップのための熱化学的駆動力を、苦土カンラン石の利用可能性を低減し、鉄カンラン石鉱物、及び/又は、鉄ケイ輝石鉱物の露出された表面積を増加させることによって増加させる。前者は、熱化学活性を純粋化合物の熱化学活性に近づけることによって速度論的速度を増加させるのに対し、後者は、反応に利用可能な表面積を増加させることによって化学活性を向上する。
【0039】
図4Bは、カンラン石(鉄カンラン石及び苦土カンラン石)鉱物、及び/又は、輝石(鉄ケイ輝石及び頑火輝石)鉱物を含む混合物を含む原岩石からの水素ガス及び磁鉄鉱の生成を促進するシステムの別の実施形態400’’のフロー図を示す。
図4Bのフロー図は、
図4Aのフロー図と同様であるものの、第1の反応ステップが第1の反応器412’内で起こり、第2の反応ステップが第2の反応器412’’内で起こる点が異なる。第1の反応器412’は、苦土カンラン石鉱物と二酸化炭素との間の炭酸化反応を促進する。均一な、又は、予め選択された粒径範囲の破砕/磨砕された鉱石が、ふるい408又は他の粒径分離器から第1の反応器412’へ送られる。二酸化炭素が、上記の化学量論比で第1の反応器412’へ圧送され、表2に列挙された炭化反応を促進する。第1の反応が起こった後、炭酸マグネシウム及び二酸化ケイ素の生成物が、未反応の鉄カンラン石、及び/若しくは、鉄ケイ輝石、並びに他の残りの鉱石とともに、第2の反応器412’’へ送られる。
【0040】
引き続き
図4Bを参照し、第2の反応器412’’は、鉄カンラン石鉱物相、及び/又は、鉄ケイ輝石鉱物相と水(又は蒸気)との間の蛇紋岩化反応を促進する。第1の反応器412’からの反応生成物及び残りの岩石/鉱石は、第2の反応器412’’へ導入される。水が、上記の化学量論比(1kgの岩石あたり約20リットル超)で第2の反応器412’’へ圧送され、表1に列挙された蛇紋岩化反応を促進する。第2の反応が起こった後、第2の反応ステップ中に発生した水素ガスを含む反応器ガスが、
図4Aに関して上述したように、ガス分離器414へ送られるか、又は、転送される。同様に、炭酸マグネシウム、二酸化ケイ素、磁鉄鉱を含む固体反応生成物が、
図4Bに関して上述したように、未反応の鉱石/岩石とともに、磁気分離器416へ送られる。上述したように、1つの反応器412の代わりに2つの反応器412’及び412’’を使用すること以外は、
図4A及び
図4Bによって示された実施形態は、同様である。
図4Bのシステムの構成は、反応器412’及び412’’などの別個の処理容器が、方法の異なる部分専用となっている点で半連続的方法を提供することに留意されたい。
【0041】
図5、
図6、及び
図7は、カンラン石(鉄カンラン石及び苦土カンラン石)鉱物と輝石(鉄ケイ輝石及び頑火輝石)鉱物との混合物を含む苦鉄質火成岩及び超苦鉄質火成岩からの水素ガス、磁鉄鉱、マグネサイト、及び希少金属資源の生成を促進する様々な実施形態のフローチャートを示す。
図3に関連して上述したように、カンラン石、及び/又は、輝石に富む鉱石は、世界中の多くの場所で発見され得る。ブロック502において、そのようなカンラン石、及び/又は、輝石に富む鉱石が、これらの領域のうち1つ以上において、高濃度のそのような岩石を含む地質サイトから採取され得る。
図6は、この岩石取得動作をより詳細に示す。ブロック602に示すように、カンラン石、及び/又は、輝石に富む原岩石は、坑内採掘、露天採掘、採石、露頭採石、廃棄物(すなわち、鉱山尾鉱)の利用などの当業者に知られている任意の方法で採取され得る。原岩石は、例えば、はしけ、列車、トラックなどによって、岩石をさらに処理するための施設へ搬送され得る。1つ以上の実施形態において、原岩石は、岩石が採取される場所の付近で処理されてもよい。原岩石は、ブロック606において、岩石をより小さいサイズの破片に破砕、及び/又は、磨砕することによって処理され得る。このような粉砕は、サイズを均一、又は、ほぼ均一にするとともに、岩石内部に含まれているカンラン石(苦土カンラン石及び鉄カンラン石)、輝石(頑火輝石及び鉄ケイ輝石)などの鉱物を露出させることを助けもする。岩石が由来する地質サイトの付近で岩石が処理される場合、処理された岩石は、その後、本明細書で開示された方法に従って鉱石から水素、磁鉄鉱、及び他の有用な生成物をさらに抽出するシステムを有する施設へ搬送され得る(
図5及び
図6には示さず)。ブロック608で、破砕、及び/又は、磨砕された原岩石が、ふるい分け又は他の方法で岩石をサイズに応じて分離することによってさらに処理され得る。1つ以上の実施形態では、破砕、及び/又は、磨砕された岩石が、水又は弱酸性溶液で洗浄され、その表面から塵、泥、又は他の不純物が除去され得る。ブロック604に示すように、このような洗浄は、岩石が破砕、及び/又は、磨砕される前に実行され得、且つ、撹拌の恩恵を享受し得る。
【0042】
次に、ブロック610において、破砕、及び/又は、磨砕された岩石が、反応器へ導入され、この反応器内で、岩石が、二酸化炭素及び水と反応して、他の生成物とともに炭酸マグネシウム及び水素ガスを、化学量論比で、表2に記載された炭酸化反応により生成する。ブロック610において、破砕/磨砕された岩石は、コンベヤー、機械装置などによって反応器との間で搬送され、反応器へ導入され得る。上述したような弱酸性水溶液が、例えば洗浄、噴霧、又は浸漬によって岩石の外面に付着させられ得る。このような付着は、岩石が反応器内に堆積される前でもよいし、後でもよい。反応器内の酸素を含む反応器内の空気は、反応を開始する前に、内部に岩石が配置された密閉された反応器から(例えば、反応器に真空を適用することによって)排気されるか、又は、反応ガス(例えば、N
2)を用いてパージされ得る。
図5に戻り、ブロック504は、二酸化炭素(CO
2)が反応器へ導入されて第1の反応段階が開始されることを示す。二酸化炭素は、上述したように、ガス状であってもよいし、超臨界状態であってもよい。二酸化炭素が炭酸化反応を制限しないことを確実にし、CO
2、及び/又は、超臨界CO
2の圧力が高いときに起こることが観察されている反応性の向上の恩恵を享受するために、反応器内の岩石の量(及び、特に該岩石中の苦土カンラン石濃度)と比較して化学量論量よりも多い量の二酸化炭素が添加される。ブロック504において、反応器は、二酸化炭素を苦土カンラン石鉱物と十分に反応させて炭酸マグネシウム及び二酸化ケイ素反応生成物を生成するために、上述したように、1つ以上の予め選択された温度及び圧力で、第1の滞留時間にわたって動作される。第1の滞留時間の終わりに、反応器からの気相が、例えば真空を適用することによって、又は、ガスパージ動作によって排気され、過剰な未反応の二酸化炭素と、第1の反応段階の炭酸化反応により発生した任意の他のガスと、が除去され得る。
【0043】
引き続き
図5を参照し、ブロック506において、第1の滞留時間の後に、水が反応器へ導入される。1つ以上の実施形態において、水は、上記でより詳細に説明したように調製又は取得された低酸素フガシティ水である。再び、水が蛇紋岩化反応を制限しないことを確実にするために、反応器内の岩石の量(並びに、特に該岩石中の鉄カンラン石、及び/若しくは、鉄ケイ輝石の濃度)と比較して化学量論量よりも多い量の水(岩石1kgあたり約20リットル超)が添加される。ブロック506において、反応器は、水を(第1の反応段階により、追加の露出表面積と、より最適化された化学活性と、を有するに至った)鉄カンラン石鉱物、及び/又は、鉄ケイ輝石鉱物と十分に反応させて少なくとも水素ガス及び磁鉄鉱反応生成物を生成するために、上述したように、1つ以上の予め選択された温度及び圧力で、第2の滞留時間にわたって動作される。
【0044】
ブロック508では、第2の反応段階中、又は、第2の反応段階の完了時に、気相が反応器から除去される。水素ガスに富む(且つ、少量の微量ガス、例えばN
2、Ar、CO
2を含み得る)この気相は、(
図4A及び
図4Bに示すように)ガス分離器414によりさらに精製され得る。ガス分離器414は、圧力スイング吸着ユニット、膜分離ユニット、深冷分離ユニット、又は、当業者に知られている任意の他のガス分離ユニットであり得る。第1の反応段階と第2の反応段階との間に気相が反応器から排気されなかった場合、二酸化炭素、及び/又は、反応ガスなどの他のガスの一部が、第2の反応段階の蛇紋岩化反応により反応器内で発生する水素ガスを汚染する可能性がある。
【0045】
ブロック510では、反応器内部の残りの岩石がさらに処理され、炭酸マグネシウム/マグネサイト、酸化鉄/磁鉄鉱、二酸化ケイ素、任意の残りの鉱石、及び/又は、スラグ物質が、反応器から除去され得る。これらの動作が、
図7に関連して詳細に説明される。ブロック702は、反応器内の残りの岩石が、さらなる処理のために除去され得ることを示す。このような除去は、物質を、反応器から容器内へ、又は、コンベヤー上に、拾い上げるか、掻き出すか、又は、重力送りする機械装置による除去を含み得る。特に、ブロック702では、固体反応生成物(すなわち、マグネサイト、磁鉄鉱など)、残りの鉱石、及び任意のスラグ物質が、磁場に対する磁気感受性酸化鉄の引力により磁鉄鉱を他の物質から分離するために(ブロック704を参照)、(
図4A及び
図4Bに示すように)磁気分離器416へ送られ得る。ブロック702で反応器から除去された固体材料は、その有用な成分の除去を促進する微粉末を生成するために、追加の破砕、及び/又は、磨砕を経てもよい(
図5及び7には示さず)。ブロック706において、磁鉄鉱の除去後に残りの鉱石、及び/又は、脈石(リン酸塩、硫化物、酸化アルミニウムなどの随伴鉱物相の集合体)物質中でより濃縮されるに至った任意の貴金属又は希少金属が、重液分離若しくは他の重力分離、又はとい流し法などの密度分離技術に基づいて分離され、除去され得る;重力分離器を用いた重力分離の例を480に示す。最後に、ブロック708に示すように、(鉱物相に炭素が恒久的に隔離された)残りの炭酸マグネシウム、二酸化ケイ素、及び任意の未反応の岩石/鉱石を含む残りの岩石が、骨材材料として使用され、並びに/又は、埋め立て地に置くか、若しくは、他の方法で処分され得る。上述したように、いくつかの実施形態では、炭酸マグネシウム及び二酸化ケイ素が、別途廃棄するために、残りの岩石/脈石(脈石:リン酸塩、硫化物、酸化アルミニウムなどの随伴鉱物相の集合体)物質から(重液分離若しくは他の重力分離、又はとい流し法などの密度分離技術に基づいて)分離され、除去され得る。
【0046】
図5、
図6、及び
図7は、様々な例示的な実施形態において実行される動作を示す。各フローチャートブロック、及び、フローチャートブロックの各組み合わせは、様々な手段によって実装され得ることが理解されるであろう。フローチャートブロックは、特定の機能を実行するための手段の組み合わせと、特定の機能を実行するための動作の組み合わせと、をサポートする。いくつかの実施形態では、上記の動作の一部を変更したり、さらに拡張したりしてもよい。さらに、いくつかの実施形態では、追加の任意の動作が含まれ得る。上記の動作に対する変更、拡張、又は追加は、任意の順序及び任意の組み合わせで実行され得る。
【0047】
[実施例]
1つの実施例では、超苦鉄質鉱石を二酸化炭素と反応させて炭素を炭酸マグネシウム鉱物相に隔離し、超苦鉄質岩石を水と反応させて、水素ガスを発生させるとともに磁鉄鉱を生成した。この例は、3段階で実行された:1)岩石の準備;2)水の準備;3)反応プロセス、これらの段階それぞれについて、以下でより詳細に説明する。システム及び方法全体の分析の一環として、鉱石の組成(すなわち、カンラン石(苦土カンラン石及び鉄カンラン石)鉱物及び輝石(頑火輝石及び鉄ケイ輝石)鉱物)、鉱石が対象となる反応条件、及び炭酸化/蛇紋岩化反応生成物の特性が評価された。例えば、鉱石の組成に関して、バルク岩石の質量、鉱物学的組成、及び地球化学的組成が、光学鉱物学、粉末X線回折(XRD)、及び誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)によって評価され、関連成分(例えば、鉄カンラン石、鉄ケイ輝石、FeO、MgO)の存在量が評価された。
【0048】
岩石準備段階では、サイズが約1cmの岩石粒子を主に含む超苦鉄質骨材材料が、4つの稼働中の採石場(すなわち、ペンシルベニア州の2つの採石場、バージニア州の1つの採石場、及びケンタッキー州の1つの採石場)から収集された。超苦鉄質骨材材料は、最初にロックハンマーで、次にSpex Ballミルで解砕(すなわち、軽度に破砕/粉砕)された。次に、粉末材料が、150ミクロン、80ミクロン、そして45ミクロンの粒子を連続的に通過させるように配置され設計された格子を使用してふるいにかけられた。これにより、少なくとも3つの異なる粒子サイズについて実験を行うことが可能となる。別の材料である均質化されたカンラン石鉱物も、カリフォルニアの科学サプライヤから購入された。このカンラン石材料は、サイズ及び組成が均一化されており、約100ミクロンの均一な粒径を有していた。
【0049】
水準備段階では、3つの準備が行われた。まず、水のpHを8.3、9.7、及び11.1の3つのレベルに調整するために水道水に重炭酸ナトリウム、並びに/又は、水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウムを添加することによって、低酸素フガシティ、高pHの水が得られた。当業者には理解されるように、酸素フガシティ(fO2)は、鉄、炭素などの複数の価電子状態を有する元素と反応するために利用可能な酸素の量の尺度である。高い酸素フガシティは、水中の酸素の化学ポテンシャルが高いことを示す。水の酸素フガシティの低減は、様々な方法で(例えば、都市下水、地下水、坑水、又は他の廃水流などの低酸素フガシティの給水を使用することによって)実現され得る。低酸素フガシティ水を簡単且つ確実に生成する方法の1つは、125℃に加熱された銅くずの床を利用し、この床に水を通過させて水の酸素フガシティを低減する(すなわち、水中の活性酸素の量を減少させる)。この実施例では、このような方法が使用された。第2に、水道水に塩(塩化ナトリウム)を添加し、0.1パーミルから4.5パーミルの範囲の塩類溶液を作成することで塩水が得られた。炭素鉱化実験の準備において、蒸留水と酢酸ナトリウム緩衝液との混合物中の希HClを使用して、塩水のpHが、約4.8から約6.5の間となるように調整された。
【0050】
反応プロセスのために、炭酸化反応及び蛇紋岩化反応をバッチ構成と逐次構成との両方で実行するように単一のバッチ反応器(316ステンレス鋼製)が設計され構築された。全ての反応は、定期的に開けられる流体サンプリングポートを除いて、この密閉ステンレス鋼反応容器内で「バッチ」反応(すなわち、閉鎖系)として実行された。各実験のために、サンプル全体(約250グラム)が選択され、2つの均等にスライスされた約125グラムの原料にスライスされ、気密なステンレス鋼反応容器内に入れられた。容器への二酸化炭素の導入のための準備において、蒸留水が、希塩酸及び酢酸ナトリウム緩衝液を用いて弱酸性化され、その後、塩(塩化ナトリウム)と混合されて0.1パーミルから4.5パーミルのNaCl塩溶液が周囲の酸素フガシティで作成された。次いで、この調製された水溶液が、反応容器内へ導入された、粉末化された岩石上に噴霧された。調製された水溶液は、後続の炭酸化反応中の苦土カンラン石との二酸化炭素の反応性を向上する湿った表面を提供した。
【0051】
第1の反応段階では、導入された二酸化炭素と鉱石中の苦土カンラン石(及び頑火輝石)との間の炭酸化反応による二酸化炭素の隔離が目標とされた。上述したように調製された酸性塩水が、湿らせた(すなわち、上述したように水溶液が噴霧された)粉末化された岩石をステンレス鋼反応容器に入れる前に、苦土カンラン石鉱物を含む粉末化された岩石に付着させられた。二酸化炭素の導入の前に、機械式ラフポンプを用いて、真空を適用し、反応容器から周囲の酸素を含む空気を除去することにより反応容器が排気された。他の実施形態は、容器を不活性ガス(例えば、N2)又は反応ガス(例えば、CO2又はその混合物)でフラッシュして(flushing)空気を除去することを含む。
【0052】
次に、二酸化炭素ガス、又は、二酸化炭素ガスの混合物、例えば、4:1の比率で二酸化炭素と窒素とを混合したガス混合物が、室温において、2バール(すなわち、大気圧の2倍)の初期圧力で導入された;本開示の別の実施形態では、CO2対N2の比率として他の比率を利用し得る。使用された二酸化炭素は、例えばガス中の二酸化炭素の純度が99.9%を超える超高純度二酸化炭素であったが、様々な実施形態において、より低純度のCO2との混合物が利用され得る。次に、反応容器内部の温度が、100℃、150℃、200℃、250℃、300℃、及び400℃に昇温され、温度は、外部のバンドヒータによって制御され、標準的なOmega K-wire熱電対により測定される。各温度で、サンプリングポートを介し、標準Omega0~100psi圧力計を用いて気相圧力が測定された。各温度で、スタンフォードリサーチシステム社残留ガス分析装置(「四重極質量分析計」)と、熱電対検出器が装備されたSRIガスクロマトグラフと、を用いてガスのアリコートが測定された。水素の全圧は、残留ガス分析装置、及び/又は、ガスクロマトグラフを用いて測定された水素ガスの比率と、大気圧と比較した圧力と、の積を求め、PV=nRTと仮定することによって計算された。
【0053】
温度が150℃から300℃に昇温すると、炭素鉱化の速度論的速度が約1.6倍増加したように見えたが、300℃から400℃の間では、バッチ実験における約18時間の反応時間にわたるCO2鉱化の速度のさらなる増加は統計的に有意ではなかった。次に、温度を250℃で一定に保持しつつ、二酸化炭素の圧力が、5バール、10バール、25バール、及び50バールに昇圧された。各ステップにおいて、付属の拡張ボリューム上の標準Omega0~100psi圧力計を用い、(サンプル圧力が利用可能な圧力計の範囲内であることを確認するために)サンプリングポートを介して気相圧力が監視された。各圧力について、予め排気されたサンプルチャンバへサンプリングポートを介して拡張することで減圧した後、SRS四重極質量分析計と、熱電対検出器が装備されたSRIガスクロマトグラフと、を用いてガスのアリコートも測定された。炭素鉱化の速度は、250℃において、5バールから50バールの間の圧力で、約2.7倍増加したように見えた。
【0054】
第1の反応段階の予備的結果は、鉱石の粒径が小さくなるにつれて二酸化炭素鉱化の速度が増加することを示している。CO2の圧力及び濃度の測定値と、反応容器内で鉱化された岩石の質量と、に基づいて測定したところ、温度を250℃で一定に保持した場合、150ミクロンから25ミクロンの間で、CO2濃度の減少が23%改善された。空気の除去により炭素鉱化の速度が向上すると考えられるものの、第1の反応段階の開始時に反応容器から空気/酸素を除去せずに行った少なくとも1回の操業は、炭化反応に顕著な影響を与えていないようであった。反応条件の温度と圧力との両方を増加させると、バッチ実験における約18時間の反応時間にわたって、少なくとも300℃及び50バールまでCO2鉱化の速度が増加した。反応圧力のプラトーに基づいて、これらの条件は、バッチ条件で12時間から18時間の間に熱力学的平衡に近づくと想定されるが、様々な実験条件全体にわたってばらつきが観察される(すなわち、一般的に高温高圧では時間が短くなる)。
【0055】
10バールの一定圧力で温度が100℃から300℃に昇温する間に、鉱化量は、(バッチ反応器内で24時間後に)14%の付加質量から27%に増加し、これは、炭素鉱化により生じる岩石の質量が92%増加したことを示す。250℃の一定温度で圧力が1バールから50バールに昇圧する間に、鉱化量は、(バッチ反応器内で24時間後に)4.1%の付加質量から18.9%に増加し、これは、炭素鉱化により生じる岩石の質量が4.6倍増加したことを示す。ロータリーキルン、流動床、及びトロイダル床プロセスは、このプロセスでは評価されていないが、温度及び圧力の影響はバッチプロセスにおける影響と同様であると予想されるにもかかわらず、反応速度と鉱化の総合効率との両方は、バッチプロセスと比較して大幅に増加すると期待できる。
【0056】
別の実験では、第1の反応段階中に反応器内で超臨界二酸化炭素が使用された。予備的結果は、10バール、250℃で反応器に注入された超臨界CO2が、ガス状CO2よりも4.5時間(18.8%)速く圧力プラトーに達したことを示している。従って、この開示された現場外炭酸化反応による炭素隔離は、エネルギー入力、マテリアルハンドリング、及び化学処理コストなどの他のコスト集約的な変数に加えて、温度及び圧力を参酌しつつ最大化又は促進され得る。第1の反応段階の後、反応器の固体内容物の重量が計量された。150℃、5バールでの39.3グラム(15.7%)から300℃、50バールでの101.6グラム(40.6%)の間の質量増加に基づいて、総炭素鉱化量が測定され、これは、光学顕微鏡を用いて検証された。第2の反応段階の前の鉄に富んだ鉄シリカ((鉄カンラン石、及び/又は、鉄ケイ輝石)相の事前濃縮をもたらす炭酸化反応の化学量論に基づいて予想されたとおり、初期の実験材料中では観察されなかったマグネサイト(すなわち、炭酸マグネシウム)が特定された。
【0057】
第2の反応段階では、導入された水と、残った鉱石中の鉄カンラン石、及び/又は、鉄ケイ輝石(4つの天然サンプル中の混合物及び1つの純カンラン石調製サンプル)と、の間の蛇紋岩化/水和反応による水素の遊離が目標とされた。蛇紋化反応に関する水の導入の前に、機械式ラフポンプを用いて真空を適用し、残りの導入された二酸化炭素を含む空気を反応容器から除去することにより反応容器が排気された。次に、上述したように調製された、低酸素フガシティ(すなわち、負のEh値又は負の電位)、高pH(すなわち、重炭酸ナトリウム、又は、水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウムを用いた8.3から11.1の間のpH範囲)、及び塩水(約0.1パーミルから4.5パーミルの塩化ナトリウム(NaCl))が、室温において、周囲大気圧で、残りの鉱石(すなわち、ケイ酸鉄相、炭酸マグネシウム、二酸化ケイ素、残留カンラン石、輝石、及び他の随伴鉱物相からなる未反応鉱石)を含む反応容器へ導入された。
【0058】
初期気相圧力が、標準Omega0~100psi圧力計を用い、サンプリングポートを介して測定/記録された。次に、反応容器内の温度が、温度を外部バンドヒータにより制御し、Omega K-wire熱電対を用いて監視して、50℃、100℃、150℃、200℃、250℃、300℃、及び400℃に昇温された。各温度ステップで、気相圧力が、標準Omega0~100psi圧力計を用い、サンプリングポートを介して測定された。各温度で、Stanford Research Systems残留ガス分析装置(「四重極質量分析計」)と、熱電対検出器が装備されたSRIガスクロマトグラフと、を用いてガスのアリコートが測定された。水素(及び他のガス)の全圧が、残留ガス分析装置、及び/又は、ガスクロマトグラフを用いて測定された水素ガスの割合と、大気圧と比較した圧力と、の積を求め、PV=nRTと仮定することによって計算された。
【0059】
第2の反応段階の予備的結果は、鉱石の粒径が小さくなるにつれて水素発生の速度が増加することを示していた。18時間の期間にわたるH2分圧に基づいて測定したところ、10バールの一定圧力を保持した場合、50℃の温度ステップから100℃のステップの間でH2の収量が5.2倍向上した。18時間の期間にわたるH2分圧に基づいて測定したところ、10バールの一定圧力を保持した場合、100℃の温度ステップから400℃の温度ステップの間でH2濃度の収量が7.3倍向上した。H2の収量は圧力に伴って増加したが、温度に伴う増加ほどには増加しなかった。18時間の期間にわたるH2分圧に基づいて測定したところ、250℃の一定温度において、1バールから5バールの間にH2の収量が31%向上し、250℃の一定温度において、5バールから40バールの間にH2の収量が1.8倍増加した。2段階炭酸化反応が先行して行われなかった場合の蛇紋岩化反応と比較すると、蛇紋岩化反応の反応速度は、20バールの一定圧力で実行された場合、100℃で行われた実験と比較して、150℃で21%増加し、250℃で最大87%増加する。この変化は、岩石/鉱石の初期分解を促進する炭酸化によりもたらされた鉱石の粉砕とともに、ケイ酸鉄鉱物相の事前濃縮によるものと考えられる。H2収量の最大増加は、100℃で観察された収量の1.8倍であり、200℃の温度ステップにおいて、実験室とい流し法によってSiO2及びMgCO3をより高密度のケイ酸鉄から密度分離した後に観察された;このステップにより生じたH2の生成総量は、0.576モルH2/kgであった。温度ステップを上昇させるごとに、発生する水素ガスの純度が向上することが示された;N2、Ar、微量CO2の様々な混合物が、50℃の温度ステップと100℃の温度ステップとの両方で観察されたが、これは、6.7%のCO2をもたらした400℃における1つのサンプルを除いて、150℃を超える温度では非凝縮破片中で5%未満であった。
【0060】
組成(%)とともに、反応によって形成された水素ガスの全圧は、温度が高くなるほど増加し、これは、温度が高くなるほど水素生成の反応速度及び全収率が漸進的に増加することを示している。この結果は理論的に予想されたものであるが、これは、本明細書に記載された例示的な実施形態によって生成される水素を、自然系によって生成される水素と区別し、自然系では、地表下でのCO2、HCO3
-、又は他の形態の炭素の発生が約150℃で水素と反応し始め可能性があり、これにより、サバティエ反応(すなわち、CO2+4H2→CH4+2H2O)を介した非生物起源メタンの形成によるカーボンネガティブ水素の生成が「短絡」され、ここで、CO2は、気相CO2として利用可能であるか、又は、間隙流体中の溶解された無機炭素相から以下の反応により遊離され得る:H++HCO3→CO2+H2O。
【0061】
開示された2段階反応の比較が、2つのベースケース(base case)単一段階反応とのさらなる比較によって行われた。第1のベースケースの比較は、pH6.0での1段階反応であり、温度が、室温から50℃、100℃、150℃、200℃、250℃、300℃、及び400℃に昇温された。このpHでの最大H2収量は、400℃において0.011モルH2/kg未満であり、これは、弱酸性条件に基づいて予想されたことである。第2のベースケースの比較は、pH8.0での1段階反応であり、温度が、室温から50℃、100℃、150℃、200℃、250℃、300℃、及び400℃に昇温された。このpHにおいて圧力を20バールで一定に保持すると、この1段階反応でのH2収量の範囲は、18時間で50℃において検出限界未満であり、100℃において0.051モルH2/kgであり、最大で400℃における0.349モルH2/kgであった。比較のために、1段階のベースケースにおいて400℃で観察された最高値は、上述した2段階反応における最高収量よりも69.6%低かった。従って、この開示された現場外蛇紋岩化反応による水素ガス生成は、エネルギー入力、マテリアルハンドリング、及び化学処理コストなどの他のコスト集約的な変数に加えて、温度及び圧力を参酌しつつ、特にH2と不安定炭素(すなわちCO2)との間の相互作用を防止することによって最大化又は促進され得る。
【0062】
逐次的な第1の反応段階及び第2の反応段階(すなわち、炭酸化反応及び蛇紋岩化反応)が反応容器内で完了した後、残りのバルク岩石の質量(すなわち重量)、鉱物学的組成、及び地球化学的組成が、光学鉱物学及びICP-MSで関連成分(鉄カンラン石、鉄ケイ輝石、FeO、MgOなど)の存在量(又は欠如)を評価することにより測定された。視認可能なカンラン石及び輝石が少量の蛇紋岩とともに依然として観察されたものの、観察された磁鉄鉱の量は、鉄カンラン石鉱物、及び/又は、鉄ケイ輝石鉱物の事前濃縮と、pH、低酸素制御、温度などの反応条件の制御と、を行うことなく反応が行われた場合よりも逐次反応(すなわち、第1の反応段階と、それに続く第2の反応段階)において大幅に多かった(分離可能な磁性成分の質量に基づいて11%~171%)。磁鉄鉱の収量は、50℃の温度ステップから100℃の温度ステップの間で11%増加し、100℃の温度ステップから150℃の温度ステップの間で約13%増加したのに対し、18時間の期間にわたって10バールの一定圧力を保持した場合、300℃のステップと100℃のステップを比較すると1.7倍多くの磁鉄鉱が磁気的に回収された。反応の化学量論及びこれらの観察に基づいて、(化学量論的な蛇紋岩化反応から予想されたとおり)磁鉄鉱の生成の増加が、水素の生成の増加と結びつき、密接に関係していることは明らかである。これらの結果は、(炭酸化による)二酸化炭素の鉱化と(蛇紋岩化/水和反応による)水素生成との両方の化学量論的モデリングを支持する。従って、水素生成/発生の副産物として磁鉄鉱が生成され得る(又は、選択されたビジネス方法に基づいて、その逆も同様である)。
【0063】
残留物質の追加分析により、脈石(「鉱物スラグ」)中の、リン酸塩、酸化アルミニウム、及び他の明確に定義されていない固体を含む高度金属濃縮物が特定された。例えば、ランタン(希土類元素の1つ)は、ペンシルベニア州の採石場からの超苦鉄質岩のバルクサンプル中で8.2ppmの平均濃度を示し、残留脈石(材料全体の約2%~4%に相当する、主に酸化アルミニウム、リン酸塩、硫化物)中では187.1ppmの平均濃度を示した。同様に、ニッケル及びコバルトの濃度は、同じペンシルベニア州の採石場からの超苦鉄質岩のバルクサンプル中で133.9ppm及び78.2ppmであり、残留脈石(主に酸化アルミニウム及び硫化物)中では1426ppm及び976.8ppmであった。これらの金属濃縮物の分離は、重液分離若しくは他の重力分離、又はとい流し法、又は当業者に知られている他の方法などの密度分離技術によって達成され得る。
【0064】
全体的な結果は、カーボンニュートラルな、又は、ひいてはカーボンネガティブな水素生成の追求において、本明細書で開示された逐次的な炭酸化反応段階及び蛇紋岩化反応段階により、炭素隔離及び水素発生に加え、低炭素経済の追求において経済的価値及び社会的価値を有する複数の反応生成物(例えば、磁鉄鉱、希土類元素、及び他の希少金属)が得られることを示している。さらに、各反応が促進され得る様々な条件が存在するものの、これらは、異なる岩石含有量に応じてわずかに異なるに過ぎず、そのため、反応は、超苦鉄質岩及び苦鉄質岩の様々な供給源の間で、上述の条件で概ね安定している。
【0065】
上記で簡潔に説明したように、本明細書で開示された段階的、逐次的な炭酸化反応及び蛇紋岩化反応からの複数の反応生成物が特定された。特に4つの反応生成物は、特に、理想的な「炭酸化」及び蛇紋岩化/水和反応に向けて岩石の粉砕及び熱力学的駆動力を向上する本明細書に記載されたステップ、手順、反応条件によって向上されるか、又は、可能にされた場合に経済的に実行可能となる可能性を有している。これらの反応生成物の経済的実行可能性に加えて、税額控除、カーボンクレジットの販売、税制上の優遇措置などの、これらの反応生成物の生成に関連する収益の権利が存在する可能性がある。4つの生成物は、マグネサイト/骨材、(正味カーボンネガティブな)「グリーン」又は「ゴールデン」水素、磁鉄鉱、及び希少金属を含み、それぞれについて以下でさらに説明する。
【0066】
[マグネサイト]
採掘された、採石された、又は廃棄された(例えば、鉱山尾鉱)苦鉄質又は超苦鉄質の岩石及び生成物が関与する「水-岩石」蛇紋岩化/水和反応を促進することによる制御された現場外でのマグネサイト(炭酸マグネシウム)の生成は、拡張可能なマグネサイト及び岩石骨材の形成のための経済的且つカーボンニュートラルな(又は、ひいてはカーボンネガティブな)経路を提供する。このプロセスは、岩石の体積及び質量を経済的に増加させることもでき(好適な苦鉄質/超苦鉄質鉱石の化学量論的評価により、質量が34%から60%超(又は、岩石1kgあたり0.34kgから0.60kg超、又は、岩石1メートルトンあたり340kgから600kg超)増加し得ることが示唆されているのに対し、実験結果は、(ペンシルバニア州の採石場から取得されたバルク岩石中において300℃、50バールで)0.104kg/kgから(純カンラン石試験サンプル中において300℃、50バールで)0.237kg/kgまで増加することを示唆していた。これらの値は、バッチから岩石の動的反応プロセス(例えば、ロータリーキルン、流動床、トロイダル床、又は他の同様のプロセス)へ移行することによって、バッチ反応器へ導入された元の材料と比較してさらに増加すると予想される。
【0067】
開示されているように、約4.8から約6.5の間のpHを有する水が、制御された条件において(例えば、大気条件又は酸化条件下で)二酸化炭素と混合され、苦鉄質岩及び超苦鉄質岩のマグネシウムに富むケイ酸塩(すなわち苦土カンラン石)部分を化学的に分解し得る。この反応は、約150℃から約300℃~400℃の間の温度(但し、我々の実験では300℃において鉱化の増加におけるプラトーが示された)において、少なくとも最大50バールの圧力で促進され、マグネサイトを生成し得る。この炭酸化プロセスは、マグネサイト鉱物相及び他の炭酸塩鉱物の析出を通じて二酸化炭素を恒久的に隔離し、該マグネサイト鉱物相及び他の炭酸塩鉱物は、直接に、又は、岩石骨材として使用され得る。
【0068】
ケイ酸マグネシウムの炭酸マグネシウム及び他の炭酸塩鉱物への成功裡の変換により、(上述した密度分離技術に従って)岩石塊の大部分を除去することも可能になり、これは、その後、残留ケイ酸鉄から分離されるか、又は、蛇紋岩化/水和反応の前に分離され得る。ケイ酸鉄相を濃縮するステップは、希少金属(例えば、ニッケル、コバルト、希土類元素)を他の鉱物形態(例えば、酸化アルミニウム、リン酸塩、及び硫化物)中にさらに濃縮し得る。この炭酸化プロセスは、まず、逐次的な蛇紋岩化反応により、磁鉄鉱及び水素ガスの反応生成物が、副相/競合相を形成することなく、より容易且つ大量に生成され、粉砕が促進され得るように実行された。
【0069】
拡張可能且つカーボンネガティブな(又はカーボンニュートラルな)炭酸マグネシウム(マグネサイト)の生成の重要性は、医薬品用途、(肥料の使用によって引き起こされる酸性化を中和するための)農業用石灰及び肥料、セラミック及びセラミックレンガの原料、鉄鋼製造で使用される融剤を含むがこれらに限定されない、マグネサイトの多くの現在の用途に直接関係している。マグネサイトは、より低い炭素排出量を可能にする部分的石灰代替物としても使用され得、このより低い炭素排出量は、酸化カルシウム(CaO)と比較して酸化マグネシウム(MgO)の製造に必要な温度がより低いことによってもたらされる。さらに、マグネサイトは、カーボンネガティブコンクリートフィラー、並びに、コンクリート中のセメント若しくは骨材の代替物として使用され得る。
【0070】
[グリーン/ゴールデン水素]
ケイ酸鉄(例えば、鉄カンラン石、鉄ケイ輝石)が関与する水和反応は、採掘された、採石された、又は廃棄物流れの、苦鉄質岩、超苦鉄質岩などのカンラン石、及び/又は、輝石に富む鉱石から「グリーン」(すなわちカーボンニュートラル)又は「ゴールデン」(すなわちカーボンネガティブ)水素を現場外で生成するために使用され得る。本明細書で開示されたシステム及び方法の1つ以上の実施形態において、カーボンネガティブ水素の現場外生成は、2反応ステップ/段階プロセスに関しており、このプロセスでは:(1)二酸化炭素が、まず、ガス状態又は超臨界状態で、約4.8から約6の間のpHを有する水調製物で湿らせた、粉砕された岩石(約150ミクロン未満)へ導入され;(2)水が、(例えば、都市下水、地熱水、若しくは他の工業用水用途から得られるか、又は、水道水を125℃の銅の床の上で反応させることによって作られる)低酸素フガシティを有し、約60℃から約400℃の間の温度範囲にわたって8.3から約11.1の間のpHを有する(この特定のpHは、重炭酸ナトリウム、又は、水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウムを水に添加することによって達成されるが、このような水のpHは、天然の水源及び廃水中に見出され得る)。
【0071】
第1の反応段階において粉末化又は粉砕された岩石からマグネシウム成分の大部分が除去されることにより、第2の反応段階における鉄に富む部分の化学(反応)ポテンシャルが増加する。化学量論的計算では、化学活性が最大8倍増加し得ることが示唆されているが、実験では2倍近い改善が観察された;バッチプロセスから動的プロセスへ移行することで、化学活性及び速度をさらに増加させ得ると予想される。実際、水素生成の速度は、自然反応又は他の1段階工学的反応プロセスに好適なベースケースと比較して、二酸化炭素鉱化の前駆ステップを経ずに鉄に富むケイ酸塩鉱物を反応させる方法における水素生成の速度よりも大幅に大きい(70%近く大きい)。
【0072】
本明細書で開示された様々な実施形態の重要な利点は、そのような実施形態のシステム及び方法が、苦鉄質岩及び超苦鉄質岩の広大で広範囲にわたる埋蔵量と、水並びに水のpH及びEhの変更のための化学物質の入手可能性と、に起因して、世界中のほぼどこでも現場外動作のために設置され得ることである。逆に、天然ガス改質などによる、より一般的な方法における水素生成は、多くの場合に炭素集約的な他の制約、中でも天然ガスの入手可能性によって制限される。たとえ生成された二酸化炭素が隔離されたとしても、この水素は、「グリーン」や「ゴールデン」ではなく、「ブルー」とみなされるであろう。
【0073】
[磁鉄鉱]
採掘された、採石された、又は廃棄物流れの、カンラン石、及び/又は、輝石に富む鉱石及び他の物質における「水-岩石蛇紋岩化」反応を促進することによる、制御された現場外の磁鉄鉱の生成は、経済的且つカーボンニュートラルな(又は、ひいてはカーボンネガティブな)磁鉄鉱の生成のための経路を提供するとともに、炭酸塩鉱化による、それに応じた二酸化炭素の隔離を可能にする。炭酸化反応及び蛇紋岩化反応自体は自然に起こるが、本明細書で開示されたシステム及び方法の実施形態は、制御された現場外環境でこれらの反応を逐次的に順序付けし、蛇紋岩、ブルーサイト、又はアスベストを生成する可能性のある、代替的且つ望ましくない化学反応を制限することによって磁鉄鉱の生成を促進することに関する。
【0074】
本明細書で開示された様々な実施形態において、磁鉄鉱の現場外生成は、2反応ステップ/段階プロセスに関しており、このプロセスでは:(1)二酸化炭素が、まず、ガス状態又は超臨界状態で、約4.8から約6.5の間のpHを有する水調製物で湿らせた、粉砕された岩石(約150ミクロン未満)の存在下で導入され;(2)(例えば、都市下水、地熱水、処理された地下水、若しくは他の工業用水用途から得られるか、又は、水道水を125℃の銅の床の上で反応させることによって作られる)低酸素フガシティを有し、8.3から約11.1の間のpHを有し(この特定のpHは、重炭酸ナトリウム、又は、水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウムを水に添加することによって達成されるが、このような水のpHは、天然の水源及び廃水中に見出され得る)水が、約80℃から約400℃の間の温度範囲にわたって導入される。300℃を超える温度での2段階反応により、磁鉄鉱回収率が、低温且つ好適なベースケースと比較して約1.7倍向上する。さらに、第1の反応ステップ/段階において粉末化又は粉砕された岩石からマグネシウム成分の大部分が除去されることにより、第2の反応ステップ/段階における鉄に富む部分の化学(反応)ポテンシャルが(例えば、おおよそ23%~800%だけ)増加し、それによって磁鉄鉱生成の熱力学的駆動力が数倍増加する。従って、磁鉄鉱、水素などの好ましい鉱物生成物の生成は、自然系で一般的に生成される、ランダムな、又は、望ましくない鉱物種と比較して増加する。実際、磁鉄鉱の生成速度は大幅に増加しており、目標とされたこれらの特定の化学種の生成は、二酸化炭素鉱化の前駆段階を経ずに鉄に富むケイ酸塩鉱物を反応させる方法、又は、(自然系で起こるように)CO2と水との両方を一緒に反応させる方法における該特定の化学種の生成よりも信頼性が高い(例えば、蛇紋岩、ブルーサイト、又はアスベストの形成が減少する)。
【0075】
直接還元鉄(DRI)プロセスは、唯一の商業的な低炭素排出製鉄プロセスであり、製鉄にとっての先駆けである。DRIプロセスは、高品位の鉄鉱石(鉄が約67%超)を必要とするが、これは、世界中の天然鉄鉱石において供給が不足している。磁鉄鉱(又は他の同様に鉄に富む鉱物相)へのアクセスがこのように制限されていることにより、鉄鋼産業における二酸化炭素排出量を削減するための重要な経路であるDRIプロセスを用いて鉄又は鋼を生産する可能性が制限されている。本明細書で開示されたシステム及び方法は、大陸地殻の10%超及び海洋地殻の大部分を占める苦鉄質岩及び超苦鉄質岩の多産により、高品位の鉄鉱石(磁鉄鉱)を大量に生成し得る。さらに、マグネサイト生成に関連する二酸化炭素隔離税額控除、及び/又は、カーボンクレジット販売が、これらのシステム及び方法の磁鉄鉱産出に付加され得る。従って、本明細書で開示された実施形態は、鉄鋼産業にとっての高品位の鉄鉱石の利用可能性とともにカーボンクレジットも増大させ得、これは、世界中の鉄鋼産業の「グリーン化」ももたらし得る。注目すべきことに、(1つの物理的サイトにおける)マグネサイト、磁鉄鉱、及び水素ガスの共同同時生産は、製鉄プロセスの3つの要件(すなわち、鉄に富む鉄鉱石、還元性ガス種/水素、及びマグネサイト融剤)も満たす。
【0076】
[希少金属]
苦鉄質岩及び超苦鉄質岩中の高濃度の特定の比較的希少な金属(例えば、ニッケル、コバルト、クロム、及び希土類元素)が、採掘された、採石された、又は廃棄された苦鉄質又は超苦鉄質の岩石/鉱石が関与する逐次的な炭素隔離/炭酸化及び「水-岩」蛇紋岩化反応によって現場外で遊離され、より容易に回収され得る。これらの希少な、場合によっては戦略上重要な金属は、再生可能エネルギー及びエネルギー貯蔵にとって重要であり、多くの場合、よりエネルギー集約的なステップ(すなわち、アスベストを脱水して苦土カンラン石に戻す)で風化又は処理された鉱物の採掘から得られる。しかし、開示されたシステム及び方法は、これらの希少金属の生成のための経済的且つカーボンニュートラルな(又は、ひいてはカーボンネガティブな)経路を提供するとともに、二酸化炭素の鉱化による炭素隔離も可能にする。苦土カンラン石とのガス状二酸化炭素又は超臨界二酸化炭素の反応は、これらのマグネシウムに富むケイ酸塩鉱物を化学的に分解し、同時に二酸化炭素から炭素を隔離するのに対し、鉄カンラン石、及び/又は、鉄ケイ輝石との水の反応は、鉄に富むケイ酸塩鉱物を化学的に分解し、同時に磁鉄鉱及び水素ガスを生成する。これらの鉱物が分解されると、残りの希少金属が、残りの未反応の鉱石及び脈石(すなわち、アルミノケイ酸塩、リン酸塩、随伴酸化物、粘土など)中に濃縮される。従って、本明細書で開示された1つ以上の実施形態の反応速度及び全金属回収率(すなわち、出発組成物中の高濃度)は、苦鉄質岩及び超苦鉄質岩の自然化学風化よりも大幅に増加する。さらに、脈石中では希少金属の濃度が増加し、これらの貴金属の「採掘」又は回収(並びに、モビリティ及びエネルギー貯蔵における派生的な利用)のカーボンフットプリントが減少する。従って、逐次的な炭酸化反応及び蛇紋岩化反応は、本質的に、希少且つ戦略上重要な金属のカーボンネガティブな採掘を提供し得る。
【0077】
[結論]
本明細書に記載された発明の多くの変更及び他の実施形態が、上述の説明及び関連する図面に示された教示の恩恵を受けて、これらの発明が属する技術分野の当業者には想到されるであろう。従って、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、変更及び他の実施形態が、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されることを理解されたい。さらに、上述の説明及び関連する図面は、要素、及び/又は、機能の特定の例示的な組み合わせに関連して例示的な実施形態を説明しているが、要素、及び/又は、機能の異なる組み合わせが、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく代替実施形態によって提供され得ることを理解されたい。これに関して、例えば、添付の特許請求の範囲の一部に記載されているように、明示的に上述したものとは異なる要素、及び/又は、機能の組み合わせも企図される。本明細書では特定の用語が使用されているが、それらは、一般的且つ説明的な意味でのみ使用されており、限定を目的とするものではない。
【0078】
(付記)
(付記1)
炭素を隔離し、岩石から水素及び磁鉄鉱を生成する方法であって、
カンラン石又は輝石を含む鉱石を取得するステップと、
周囲温度を超える温度において、大気圧を超える圧力で動作可能な反応器へ前記鉱石を導入するステップと、
第1の温度で第1の滞留時間にわたって、前記反応器へ二酸化炭素を導入して前記鉱石と反応させて、炭酸マグネシウムを生成するステップと、
第2の温度で第2の滞留時間にわたって、前記反応器へ水を導入して前記鉱石と反応させて、磁鉄鉱及び水素ガスを生成するステップと、
前記反応器から前記水素ガスを除去するステップと、
前記反応器から残りの鉱石を除去するステップと、
を含む、
方法。
【0079】
(付記2)
前記二酸化炭素を前記反応器へ導入する前に、前記鉱石をより小さいサイズの破片に粉砕するステップをさらに含む、
付記1に記載の方法。
【0080】
(付記3)
前記鉱石を前記より小さいサイズの破片に粉砕する前に、前記鉱石を水又は酸性溶液で洗浄するステップをさらに含む、
付記2に記載の方法。
【0081】
(付記4)
前記鉱石を前記反応器へ導入する前に前記鉱石をふるいにかけて、予め選択されたサイズまでの鉱石粒子を前記反応器へ通過させるステップをさらに含み、
前記反応器へ前記鉱石を導入するステップは、前記予め選択されたサイズまでの粒子を有する前記鉱石の一部のみを前記反応器へ導入するステップを含む、
付記1から3の何れか一つに記載の方法。
【0082】
(付記5)
前記予め選択されたサイズは、約25ミクロンから約150ミクロンの間のサイズを含む、
付記4に記載の方法。
【0083】
(付記6)
前記水を前記反応器へ導入する前に、前記反応器から前記炭酸マグネシウムの少なくとも一部を除去するステップをさらに含む、
付記1から5の何れか一つに記載の方法。
【0084】
(付記7)
前記水は、約8.3から約11.1の間のpHを有する、
付記1から6の何れか一つに記載の方法。
【0085】
(付記8)
前記水を前記反応器へ導入する前に、前記水を銅くずの加熱床に通過させて、前記水の酸素フガシティを低下させるステップをさらに含む、
付記1から7の何れか一つに記載の方法。
【0086】
(付記9)
前記二酸化炭素を前記反応器へ導入する前に、前記反応器へ導入される前記鉱石に酸性溶液を付着させるステップをさらに含む、
付記1から8の何れか一つに記載の方法。
【0087】
(付記10)
前記二酸化炭素を前記反応器へ導入する前に、前記反応器から酸素を除去するステップをさらに含む、
付記1から9の何れか一つに記載の方法。
【0088】
(付記11)
前記反応器へ導入される前記二酸化炭素は、ガス状二酸化炭素又は超臨界二酸化炭素である、
付記1から10の何れか一つに記載の方法。
【0089】
(付記12)
前記第1の温度と前記第2の温度とのうち少なくとも一方は、400℃以下である、
付記1から11の何れか一つに記載の方法。
【0090】
(付記13)
前記第1の温度と前記第2の温度とのうち少なくとも一方は、300℃以下である、
付記12に記載の方法。
【0091】
(付記14)
前記第1の温度と前記第2の温度とのうち少なくとも一方は、250℃以下である、
付記13に記載の方法。
【0092】
(付記15)
前記第1の滞留時間中の前記反応器内部の二酸化炭素の圧力は、約5バール以上である、
付記1から14の何れか一つに記載の方法。
【0093】
(付記16)
前記第2の滞留時間中の前記反応器内部の二酸化炭素の圧力は、約1バール以上である、
付記1から15の何れか一つに記載の方法。
【0094】
(付記17)
前記第2の滞留時間中の前記反応器内部の二酸化炭素の前記圧力は、約5バール以上である、
付記16に記載の方法。
【0095】
(付記18)
前記第2の滞留時間中の前記反応器内部の二酸化炭素の前記圧力は、約10バール以上である、
付記17に記載の方法。
【0096】
(付記19)
前記第2の滞留時間中の前記反応器内部の二酸化炭素の前記圧力は、約20バール以上である、
付記18に記載の方法。
【0097】
(付記20)
前記第2の滞留時間中の前記反応器内部の二酸化炭素の前記圧力は、約40バール以上である、
付記19に記載の方法。
【0098】
(付記21)
前記残りの鉱石から前記磁鉄鉱を分離するステップをさらに含む、
付記1から20の何れか一つに記載の方法。
【0099】
(付記22)
前記残りの鉱石からニッケル、コバルト、リチウム、クロム、又は希土類元素のうち少なくとも1つを分離するステップをさらに含む、
付記1から21の何れか一つに記載の方法。
【0100】
(付記23)
炭素を隔離し、岩石から水素及び磁鉄鉱を生成する方法であって、
カンラン石又は輝石を含む鉱石を取得するステップと、
周囲温度を超える温度において、大気圧を超える圧力で動作可能な第1の反応器へ前記鉱石を導入するステップと、
第1の温度で第1の滞留時間にわたって、前記第1の反応器へ二酸化炭素を導入して前記鉱石と反応させて、炭酸マグネシウムを生成するステップと、
残りの鉱石を第2の反応器へ送るステップと、
第2の温度で、第2の滞留時間にわたって、前記第2の反応器へ水を導入して前記残りの鉱石と反応させて、磁鉄鉱及び水素ガスを生成するステップと、
前記第2の反応器から前記水素ガスを除去するステップと、
前記第2の反応器から残りの鉱石を除去するステップと、
を含む、
方法。
【0101】
(付記24)
前記二酸化炭素を前記第1の反応器へ導入する前に、前記鉱石をより小さいサイズの破片に粉砕するステップをさらに含む、
付記23に記載の方法。
【0102】
(付記25)
前記鉱石を前記より小さいサイズの破片に粉砕する前に、前記鉱石を水又は酸性溶液で洗浄するステップをさらに含む、
付記24に記載の方法。
【0103】
(付記26)
前記鉱石を前記第1の反応器へ導入する前に前記鉱石をふるいにかけて、予め選択されたサイズまでの鉱石粒子を前記第1の反応器へ通過させるステップをさらに含み、
前記第1の反応器へ前記鉱石を導入するステップは、前記予め選択されたサイズまでの粒子を有する前記鉱石の一部のみを前記第1の反応器へ導入するステップを含む、
付記23から25の何れか一つに記載の方法。
【0104】
(付記27)
前記予め選択されたサイズは、約25ミクロンから約150ミクロンの間のサイズを含む、
付記26に記載の方法。
【0105】
(付記28)
前記残りの鉱石を前記第2の反応器へ送る前に、前記残りの鉱石から前記炭酸マグネシウムの少なくとも一部を分離するステップをさらに含む、
付記23から27の何れか一つに記載の方法。
【0106】
(付記29)
前記水は、約8.3から約11.1の間のpHを有する、
付記23から28の何れか一つに記載の方法。
【0107】
(付記30)
前記水を前記第2の反応器へ導入する前に、前記水を銅くずの加熱床に通過させて、前記水の酸素フガシティを低下させるステップをさらに含む、
付記23から29の何れか一つに記載の方法。
【0108】
(付記31)
前記二酸化炭素を前記第1の反応器へ導入する前に、前記第1の反応器へ導入される前記鉱石に酸性溶液を塗布するステップをさらに含む、
付記23から30の何れか一つに記載の方法。
【0109】
(付記32)
前記二酸化炭素を前記第1の反応器へ導入する前に、前記第1の反応器から酸素を除去するステップをさらに含む、
付記23から31の何れか一つに記載の方法。
【0110】
(付記33)
前記第1の反応器へ導入される前記二酸化炭素は、ガス状二酸化炭素又は超臨界二酸化炭素である、
付記23から32の何れか一つに記載の方法。
【0111】
(付記34)
前記第1の温度と前記第2の温度とのうち少なくとも一方は、400℃以下である、
付記23から33の何れか一つに記載の方法。
【0112】
(付記35)
前記第1の温度と前記第2の温度とのうち少なくとも一方は、300℃以下である、
付記34に記載の方法。
【0113】
(付記36)
前記第1の温度と前記第2の温度とのうち少なくとも一方は、250℃以下である、
付記35に記載の方法。
【0114】
(付記37)
前記第1の滞留時間中の前記第1の反応器内部の二酸化炭素の圧力は、約5バール以上である、
付記23から36の何れか一つに記載の方法。
【0115】
(付記38)
前記第2の滞留時間中の前記第2の反応器内部の二酸化炭素の圧力は、約1バール以上である、
付記23から37の何れか一つに記載の方法。
【0116】
(付記39)
前記第2の滞留時間中の前記第2の反応器内部の二酸化炭素の前記圧力は、約5バール以上である、
付記38に記載の方法。
【0117】
(付記40)
前記第2の滞留時間中の前記第2の反応器内部の二酸化炭素の前記圧力は、約10バール以上である、
付記39に記載の方法。
【0118】
(付記41)
前記第2の滞留時間中の前記第2の反応器内部の二酸化炭素の前記圧力は、約20バール以上である、
付記40に記載の方法。
【0119】
(付記42)
前記第2の滞留時間中の前記第2の反応器内部の二酸化炭素の前記圧力は、約40バール以上である、
付記41に記載の方法。
【0120】
(付記43)
前記第2の反応器から除去された前記残りの鉱石から生成された前記磁鉄鉱を分離するステップをさらに含む、
付記23から42の何れか一つに記載の方法。
【0121】
(付記44)
前記第2の反応器から除去された前記残りの鉱石から、ニッケル、コバルト、クロム、又は希土類元素のうち少なくとも1つを分離するステップをさらに含む、
付記23から43の何れか一つに記載の方法。
【0122】
(付記45)
岩石から水素及び磁鉄鉱を生成する方法であって、
カンラン石又は輝石を含む鉱石を取得するステップと、
前記鉱石をより小さいサイズの破片に粉砕するステップと、
周囲温度を超える温度において、大気圧を超える圧力で動作可能な反応器へ前記鉱石を導入するステップと、
特定の温度で特定の滞留時間にわたって、前記反応器へ水を導入して前記鉱石と反応させて、磁鉄鉱及び水素ガスを生成するステップと、
前記反応器から前記水素ガスを除去するステップと、
前記反応器から残りの鉱石を除去するステップと、
を含む、
方法。
【0123】
(付記46)
前記鉱石を前記より小さいサイズの破片に粉砕する前に、前記鉱石を水又は酸性溶液で洗浄するステップをさらに含む、
付記45に記載の方法。
【0124】
(付記47)
前記鉱石を前記反応器へ導入する前に前記鉱石をふるいにかけて、予め選択されたサイズまでの鉱石粒子を前記反応器へ通過させるステップをさらに含み、
前記反応器へ前記鉱石を導入するステップは、前記予め選択されたサイズまでの粒子を有する前記鉱石の一部のみを前記反応器へ導入するステップを含む、
付記45又は46に記載の方法。
【0125】
(付記48)
前記予め選択されたサイズは、約25ミクロンから約150ミクロンの間のサイズを含む、
付記47に記載の方法。
【0126】
(付記49)
前記水は、約8.3から約11.1の間のpHを有する、
付記45から48の何れか一つに記載の方法。
【0127】
(付記50)
前記水を前記反応器へ導入する前に、前記水を銅くずの加熱床に通過させて、前記水の酸素フガシティを低下させるステップをさらに含む、
付記45から49の何れか一つに記載の方法。
【0128】
(付記51)
前記特定の温度は、400℃以下である、
付記45から50の何れか一つに記載の方法。
【0129】
(付記52)
前記特定の温度は、300℃以下である、
付記51に記載の方法。
【0130】
(付記53)
前記特定の温度は、250℃以下である、
付記52に記載の方法。
【0131】
(付記54)
前記特定の滞留時間中の前記反応器内部の二酸化炭素の圧力は、約1バール以上である、
付記45から53の何れか一つに記載の方法。
【0132】
(付記55)
前記特定の滞留時間中の前記反応器内部の二酸化炭素の前記圧力は、約5バール以上である、
付記54に記載の方法。
【0133】
(付記56)
前記特定の滞留時間中の前記反応器内部の二酸化炭素の前記圧力は、約10バール以上である、
付記55に記載の方法。
【0134】
(付記57)
前記特定の滞留時間中の前記反応器内部の二酸化炭素の前記圧力は、約20バール以上である、
付記56に記載の方法。
【0135】
(付記58)
前記特定の滞留時間中の前記反応器内部の二酸化炭素の前記圧力は、約40バール以上である、
付記57に記載の方法。
【0136】
(付記59)
前記残りの鉱石から生成された前記磁鉄鉱を分離するステップをさらに含む、
付記45から58の何れか一つに記載の方法。
【0137】
(付記60)
前記残りの鉱石からニッケル、コバルト、リチウム、クロム、又は希土類元素のうち少なくとも1つを分離するステップをさらに含む、
付記45から59の何れか一つに記載の方法。
【0138】
(付記61)
炭素を隔離し、岩石から水素及び磁鉄鉱を生成するシステムであって、
カンラン石又は輝石を含む鉱石の供給源と、
鉱石粒子を受け入れる入口と、少なくとも1つの出口と、を有する反応器であって、前記反応器は、二酸化炭素又は水のうち1つ以上が導入される少なくとも1つの追加の入口も有し、前記反応器は、第1の温度で、第1の滞留時間にわたって、前記少なくとも1つの追加の入口を通じて前記反応器に入った二酸化炭素を前記鉱石と反応させて炭酸マグネシウムを生成するように動作可能であり、前記反応器は、第2の温度で、第2の滞留時間にわたって、前記少なくとも1つの追加の入口を通じて前記反応器に入った水を前記鉱石と反応させて磁鉄鉱及び水素ガスを生成するようにも動作可能である、反応器と、
前記反応器の前記少なくとも1つの出口に接続され、該少なくとも1つの出口と流体連通しており、前記少なくとも1つの出口を通じて前記反応器から出たガスから水素ガスを分離するように構成されたガス分離器と、
を備える、
システム。
【0139】
(付記62)
破砕機であって、前記供給源から該破砕機へ導入された前記鉱石の粒径を物理的に小さくする破砕機をさらに備える、
付記61に記載のシステム。
【0140】
(付記63)
前記破砕機から鉱石を受け入れ、予め選択されたサイズまでの鉱石粒子を前記反応器へ通過させるふるいをさらに備え、
鉱石粒子を受け入れる前記入口は、前記予め選択されたサイズ以下のサイズを有する鉱石粒子のみを前記ふるいから受け入れるように構成可能である、
付記62に記載のシステム。
【0141】
(付記64)
前記反応器の前記少なくとも1つの出口から残りの鉱石を受け入れる磁気分離器であって、前記磁気分離器は、前記磁鉄鉱を引き付け、それによって前記磁鉄鉱を前記残りの鉱石の他の成分から分離する磁石を有する、磁気分離器をさらに備える、
付記61から63の何れか一つに記載のシステム。
【0142】
(付記65)
前記鉱石粒子が二酸化炭素と反応する前に、前記鉱石粒子に酸性溶液を塗布する洗浄器をさらに備える、
付記61から64の何れか一つに記載のシステム。
【0143】
(付記66)
前記反応器から除去された残りの鉱石部分からニッケル、コバルト、クロム、又は希土類元素のうち少なくとも1つを分離する分離器をさらに備える、
付記61から65の何れか一つに記載のシステム。
【0144】
(付記67)
前記反応器は、前記二酸化炭素が導入される第1の反応器と、前記水が導入される第2の反応器と、を含み、前記第1の反応器は、前記第1の温度で前記第1の滞留時間にわたって、前記少なくとも1つの追加の入口を通じて前記第1の反応器に入った二酸化炭素を前記鉱石と反応させるように動作可能であり、前記第2の反応器は、前記第2の温度で前記第2の滞留時間にわたって、前記第2の反応器に入った水を、前記第1の反応器から前記第2の反応器へ導入された残りの鉱石と反応させるように動作可能である、
付記61から66の何れか一つに記載のシステム。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素を隔離し、岩石から水素及び磁鉄鉱を生成する方法であって、
カンラン石又は輝石を含む鉱石を取得するステップと、
周囲温度を超える温度において、大気圧を超える圧力で動作可能な反応器へ前記鉱石を導入するステップと、
第1の温度で第1の滞留時間にわたって、前記反応器へ二酸化炭素を導入して前記鉱石と反応させて、炭酸マグネシウムを生成するステップと、
第2の温度で第2の滞留時間にわたって、前記反応器へ水を導入して前記鉱石と反応させて、磁鉄鉱及び水素ガスを生成するステップと、
前記反応器から前記水素ガスを除去するステップと、
前記反応器から残りの鉱石を除去するステップと、
を含む、
方法。
【請求項2】
前記二酸化炭素を前記反応器へ導入する前に、前記鉱石をより小さいサイズの破片に粉砕するステップをさらに含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記鉱石を前記より小さいサイズの破片に粉砕する前に、前記鉱石を水又は酸性溶液で洗浄するステップをさらに含む、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記鉱石を前記反応器へ導入する前に前記鉱石をふるいにかけて、予め選択されたサイズまでの鉱石粒子を前記反応器へ通過させるステップをさらに含み、
前記反応器へ前記鉱石を導入するステップは、前記予め選択されたサイズまでの粒子を有する前記鉱石の一部のみを前記反応器へ導入するステップを含む、
請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
前記予め選択されたサイズは、約25ミクロンから約150ミクロンの間のサイズを含む、
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記水を前記反応器へ導入する前に、前記反応器から前記炭酸マグネシウムの少なくとも一部を除去するステップをさらに含む、
請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
前記水は、約8.3から約11.1の間のpHを有する、
請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
前記水を前記反応器へ導入する前に、前記水を銅くずの加熱床に通過させて、前記水の酸素フガシティを低下させるステップをさらに含む、
請求項
1に記載の方法。
【請求項9】
前記二酸化炭素を前記反応器へ導入する前に、前記反応器へ導入される前記鉱石に酸性溶液を付着させるステップをさらに含む、
請求項
1に記載の方法。
【請求項10】
前記二酸化炭素を前記反応器へ導入する前に、前記反応器から酸素を除去するステップをさらに含む、
請求項
1に記載の方法。
【請求項11】
前記反応器へ導入される前記二酸化炭素は、ガス状二酸化炭素又は超臨界二酸化炭素である、
請求項
1に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の温度と前記第2の温度とのうち少なくとも一方は、400℃以下である、
請求項
1に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の温度と前記第2の温度とのうち少なくとも一方は、300℃以下である、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1の温度と前記第2の温度とのうち少なくとも一方は、250℃以下である、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1の滞留時間中の前記反応器内部の二酸化炭素の圧力は、約5バール以上である、
請求項
1に記載の方法。
【請求項16】
前記第2の滞留時間中の前記反応器内部の二酸化炭素の圧力は、約1バール以上である、
請求項
1に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の滞留時間中の前記反応器内部の二酸化炭素の前記圧力は、約5バール以上である、
請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第2の滞留時間中の前記反応器内部の二酸化炭素の前記圧力は、約10バール以上である、
請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記第2の滞留時間中の前記反応器内部の二酸化炭素の前記圧力は、約20バール以上である、
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第2の滞留時間中の前記反応器内部の二酸化炭素の前記圧力は、約40バール以上である、
請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記残りの鉱石から前記磁鉄鉱を分離するステップをさらに含む、
請求項
1に記載の方法。
【請求項22】
前記残りの鉱石からニッケル、コバルト、リチウム、クロム、又は希土類元素のうち少なくとも1つを分離するステップをさらに含む、
請求項
1に記載の方法。
【国際調査報告】