(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】不透明な淡色の熱可塑性成形用組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20240725BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240725BHJP
C08L 33/06 20060101ALI20240725BHJP
C08L 69/00 20060101ALI20240725BHJP
C08L 25/12 20060101ALI20240725BHJP
C08K 3/30 20060101ALI20240725BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20240725BHJP
C08K 5/34 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/013
C08L33/06
C08L69/00
C08L25/12
C08K3/30
C08K3/22
C08K5/34
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505388
(86)(22)【出願日】2022-07-27
(85)【翻訳文提出日】2024-02-26
(86)【国際出願番号】 EP2022071083
(87)【国際公開番号】W WO2023006818
(87)【国際公開日】2023-02-02
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319013746
【氏名又は名称】レーム・ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Roehm GmbH
【住所又は居所原語表記】Deutsche-Telekom-Allee 9, 64295 Darmstadt, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウアズラ ゴルヒャート
(72)【発明者】
【氏名】エアンスト ベッカー
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ナウ
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA011
4J002BB001
4J002BB101
4J002BB121
4J002BC031
4J002BC041
4J002BC061
4J002BD131
4J002BG041
4J002BG051
4J002BG061
4J002BG101
4J002BG121
4J002BN121
4J002BN151
4J002BN161
4J002BP011
4J002CE001
4J002CF041
4J002CF061
4J002CG001
4J002CG011
4J002CL001
4J002DE096
4J002DE106
4J002DE136
4J002DG026
4J002FD010
4J002FD020
4J002FD040
4J002FD050
4J002FD070
4J002FD090
4J002FD096
4J002FD097
4J002FD100
4J002FD130
4J002FD160
4J002FD170
4J002FD200
4J002GT00
(57)【要約】
本発明は、改善された長期耐候安定性および優れた光学的外観、特に高度の色彩的な鮮やかさを有する不透明な淡色の熱可塑性成形用組成物に関する。本発明による熱可塑性成形用組成物は、無機顔料と有機可溶性染料との組み合わせを含み、無機顔料は、特定の混合金属酸化物および混合金属オキソ硫化物から選択される。本発明はまた、着色された成形用組成物の製造方法、および着色された熱可塑性成形用組成物の製造に使用することができるマスターバッチなどの着色組成物に関する。本発明はさらに、本発明による熱可塑性成形用組成物から製造された不透明な淡色の成形物品、例えば射出成形物品および押出成形物品に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下:
A.少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含むポリマーマトリックスA;
B.少なくとも1つの無機顔料Bであって、金属ニオブ、スズおよび亜鉛を含む混合金属酸化物もしくは混合金属オキソ硫化物B1、ならびに/または金属チタン、スズおよび亜鉛を含む混合金属酸化物もしくは混合金属オキソ硫化物B2から選択される、無機顔料B;
C.少なくとも1つの有機染料C
を含む、熱可塑性成形用組成物。
【請求項2】
前記熱可塑性成形用組成物が、それぞれ前記熱可塑性成形用組成物全体に対して以下:
A.49.99998~99.99998重量%、好ましくは59.9998~99.9998重量%、より好ましくは89.998~99.998重量%の前記ポリマーマトリックスA;
B.0.00001~5.0重量%、好ましくは0.0001~4.0重量%、より好ましくは0.001~3.0重量%の前記少なくとも1つの無機顔料B;
C.0.00001~5.0重量%、好ましくは0.0001~4.0重量%、より好ましくは0.001~3.0重量%の前記少なくとも1つの有機染料C、ここで、前記有機染料Cは、モノアゾ染料、ペリノン染料、キノフタロン染料およびアントラキノン染料から選択される;
D.0~50.0重量%、好ましくは0~40.0重量%、より好ましくは0~10.0重量%の1つ以上の追加成分Dであって、好ましくは有機顔料、Bとは異なる無機顔料、散乱粒子、耐衝撃性改良剤、帯電防止剤、酸化防止剤、離型剤、難燃剤、滑剤、流動性向上剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤および有機リン化合物、耐候性を付与する薬剤および可塑剤から選択されるもの
を含む、請求項1記載の熱可塑性成形用組成物。
【請求項3】
前記ポリマーマトリックスAが、ポリアルキル(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルイミド、ポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマー、ポリスチレン、ポリスチレンコポリマー、アクリロニトリルコポリマー、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデンおよびポリオレフィンから選択される少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含む、請求項1または2記載の熱可塑性成形用組成物。
【請求項4】
前記ポリマーマトリックスAが、ポリアルキル(メタ)アクリレート、ポリカーボネートおよびスチレン-アクリロニトリルコポリマーから選択される少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含む、請求項1から3までのいずれか1項記載の熱可塑性成形用組成物。
【請求項5】
前記無機顔料B1が、パイロクロア型Nb/Sn/Znオキソ硫化物、好ましくはピグメントイエロー227から選択され、前記無機顔料B2が、ルチル型Ti/Sn/Zn酸化物、好ましくはピグメントイエロー216から選択される、請求項1から4までのいずれか1項記載の熱可塑性成形用組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つの有機染料Cが、モノアゾ染料、ペリノン染料、キノフタロン染料、アントラキノン染料およびピラゾロン染料から選択される、請求項1から5までのいずれか1項記載の熱可塑性成形用組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つの有機染料Cが、ソルベントイエロー93(4-(4,5-ジヒドロ-1-フェニル-3-メチル-5-オキソ-1H-ピラゾール-4-イリデンメチル)-1-フェニル-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン);ソルベントオレンジ60(12H-フタロペリン-12-オン);ソルベントオレンジ116(4-メチル-2,6-ビス-p-トリルアミノ-5-(2-トリフルオロメチルフェニルアゾ)ニコチノニトリル);ソルベントレッド195(シアノ-5-[[5-シアノ-2,6-ビス[(3-メトキシプロピル)アミノ]-4-メチルピリジン-3-イル]アゾ]-3-メチル-2-チオフェンカルボン酸メチルエステル);ソルベントレッド52(3-メチル-6-[(4-メチルフェニル)アミノ]-3H-ナフト[1,2,3-de]キノリン-2,7-ジオン);およびソルベントレッド135(8,9,10,11-テトラクロロ-12H-フタロペリン-12-オン)から選択される、請求項1から6までのいずれか1項記載の熱可塑性成形用組成物。
【請求項8】
前記成形用組成物が、有機顔料、Bとは異なる無機顔料、散乱粒子、耐衝撃性改良剤、帯電防止剤、酸化防止剤、離型剤、難燃剤、滑剤、流動性向上剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、有機リン化合物、耐候性を付与する薬剤および可塑剤から選択される少なくとも1つのさらなる成分Dを含む、請求項1から7までのいずれか1項記載の熱可塑性成形用組成物。
【請求項9】
前記成形用組成物において、DIN 5033-7に準拠して標準照明D65/10°を用いて求められ、厚さ3.0mmの試料について測定された透過率Yが、10%未満、好ましくは6.5%未満であり、かつ/または前記熱可塑性成形用組成物において、DIN 5033-3に準拠して標準照明D65/10°を用いて求められ、厚さ3.0mmの試料について反射で測定された色値a
*およびb
*の双方が、ゼロより大きい、請求項1から8までのいずれか1項記載の熱可塑性成形用組成物。
【請求項10】
以下:
金属ニオブ(Nb)、スズ(Sn)および亜鉛(Zn)を含む混合金属酸化物もしくは混合金属オキソ硫化物B1;ならびに/または金属チタン(Ti)、スズ(Sn)および亜鉛(Zn)を含む混合金属酸化物もしくは混合金属オキソ硫化物B2から選択される、少なくとも1つの無機顔料B;
少なくとも1つの有機染料Cであって、好ましくはモノアゾ染料、ペリノン染料、キノフタロン染料およびアントラキノン染料から選択されるもの;ならびに
分散媒体、好ましくは固体分散媒体または液体分散媒体
を含む、着色組成物。
【請求項11】
前記着色組成物がマスターバッチであり、前記マスターバッチは、それぞれ前記マスターバッチ全体に対して以下:
0.01~40.0重量%の前記少なくとも1つの無機顔料B;
0.01~40.0重量%の前記少なくとも1つの有機染料C;
50.0~99.98重量%の、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含む固体分散媒体;および
0.0~10.0重量%の1つ以上の補助添加剤
を含む、請求項10記載の着色組成物。
【請求項12】
前記組成物が液体着色組成物であり、前記液体着色組成物は、それぞれ前記液体着色組成物全体に対して以下:
0.5~50.0重量%の前記少なくとも1つの無機顔料B;
0.5~50.0重量%の前記少なくとも1つの有機染料C;
1.0~30.0重量%の少なくとも1つの分散剤;
48.0~98.0重量%の液体分散媒体;および
0.0~50.0重量%の1つ以上の補助添加剤
を含む、請求項10記載の着色組成物。
【請求項13】
請求項1から9までのいずれか1項記載の熱可塑性成形用組成物の製造方法であって、前記方法が、以下:
i.少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含むポリマーマトリックスAを提供するステップ;および
ii.ステップi)で得られた前記ポリマーマトリックスAに、金属ニオブ、スズおよび亜鉛を含む混合金属酸化物もしくは混合金属オキソ硫化物B1;および/または金属チタン、スズおよび亜鉛を含む混合金属酸化物もしくは混合金属オキソ硫化物B2から選択される少なくとも1つの無機顔料B;ならびに少なくとも1つの有機染料Cを添加するステップ
を含む、方法。
【請求項14】
ステップii)を、押出機中で、150℃~350℃、好ましくは200℃~320℃、より好ましくは230℃~300℃の範囲の温度で実施する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
請求項1から9までのいずれか1項記載の熱可塑性成形用組成物から製造された、成形物品。
【請求項16】
請求項1から9までのいずれか1項記載の熱可塑性成形用組成物から、好ましくは射出成形または押出成形により成形物品を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改善された長期耐候安定性および優れた光学的外観、特に高度の色彩的な鮮やかさを有する不透明な淡色の熱可塑性成形用組成物に関する。本発明による熱可塑性成形用組成物は、無機顔料と有機可溶性染料との組み合わせを含み、無機顔料は、特定の混合金属酸化物および混合金属オキソ硫化物から選択される。本発明はまた、着色された成形用組成物の製造方法、および着色された熱可塑性成形用組成物の製造に使用することができるマスターバッチなどの着色組成物に関する。本発明はさらに、本発明による熱可塑性成形用組成物から製造された不透明な淡色の成形物品、例えば射出成形物品および押出成形物品に関する。
【0002】
先行技術
一般に、熱可塑性成形用組成物は、この目的で設計されたキャビティ内でポリマーメルトを冷却することにより押出中間製品もしくは半製品を製造するため、またはモールド成形部品を製造するために、数回溶融することができることによって特徴付けられる。このような押出成形部品やモールド成形部品は、自動車分野や建築分野などの屋外用途で使用されることが多い。その結果、このような複数回の熱負荷や風化負荷は、本明細書で使用される着色された熱可塑性成形用組成物および着色剤に対して特定の要求を必要とする。
【0003】
ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミドなどの透明な熱可塑性ポリマーは、ペリノン系染料、アゾ系染料、アントラキノン系染料などの可溶性有機染料や、有機顔料、無機顔料を用いて様々な色に着色されることが多い。透明な色の熱可塑性材料は主に、モノマーまたはポリマーに真にまたはコロイド状に可溶な有機染料を用いて達成され、不透明な色の熱可塑性材料は、しばしば無機白色および着色顔料または金属粉末を用いて得られる(Kunststoff-Handbuch, Volume IX, Polymethacrylate, Carl Hanser Verlag, Munich)。
【0004】
金属酸化物、例えば、酸化鉄(III)(Fe2O3)やFe、Ti、Cr、Sb、Mnの群からの金属イオンを含む混合金属酸化物の使用は、明るくカラフルな着色をもたらすが、その外観は鈍く、鮮やかではない。硫化カドミウムや硫化/セレン化カドミウムのようなカドミウム系顔料は、例えばアクリルガラスの着色にかなりの程度使用された。しかし、カドミウムは廃棄物処理時に環境に有害な形で放出されるため、カドミウム含有顔料の使用は、環境保護の観点からもはや好まれなくなった。
【0005】
いくつかの黄色または橙色の有機顔料、例えばジケトピロロピロールの群からの有機顔料(例えばピグメントレッド254)は、塗料産業やコーティング産業で好まれるが、260°を超える温度で黄色への色変化を示すため、原則として熱可塑性成形用組成物には使用できない。
【0006】
先行技術ではさらに、淡色の有機可溶性染料と二酸化チタン(TiO2)とを組み合わせて使用することが記載されている。この組み合わせの欠点は、例えばXenotestなどの一般的な耐候性試験で明らかとなるように、耐候安定性が低いことである。有機可溶性染料は一般的に低い耐候安定性を示すため、劣化し、白色酸化チタン(TiO2)が目立ちやすくなり、その結果、著しく色が抜け、色の印象が明るくなる。
【0007】
欧州特許出願公開第0450478号明細書には、酸の添加により耐候性を向上させることが望まれていた、有機顔料で着色されたアクリルガラスが記載されている。有機顔料は、ピグメントイエロー151、ピグメントイエロー139またはピグメントレッド242のような一般的に知られ入手可能な顔料;あるいは、二酸化チタンのような白色顔料と、Macrolex(登録商標)染料(Lanxess)、Solvaperm(登録商標)染料(Clariant)およびThermoplast(登録商標)染料(BASF SE)のような可溶性染料との組み合わせから選択することができる。
【0008】
独国特許出願公開第102004058083号明細書には、褐色、灰色、濃色および緑色の異なる無機顔料が利用され、前記無機顔料がスピネル構造を有する金属酸化物をベースとする、濃色のIR反射性成形用組成物が記載されている。
【0009】
国際公開第2015/036526号には、ナノスケールカーボンブラックと少なくとも2つの有機染料とを含む、ポリスチレンをベースとする濃黒色の成形用組成物が記載されている。淡色の組成物は記載されておらず、国際公開第2015/036526号に記載の着色組成物を用いて淡色の組成物を得ることはできない。
【0010】
国際公開第2019/228959号には、ポリカーボネートまたはポリメチルメタクリレートをベースとする基材層と、UV吸収剤を含むコーティング層とを含む不透明な多層物体が開示されており、基材層は、被覆された特定の二酸化チタンと、有機または無機の染料または顔料から選択される少なくとも2つの他の有機着色剤とを含む。国際公開第2019/228959号には、被覆された特定の二酸化チタンと、混合金属酸化物をベースとする黄色無機顔料(例えばピグメントイエロー53またはピグメントブラウン24)と、可溶性有機染料、例えばソルベントレッド135、ソルベントイエロー93またはソルベントイエロー114とを含むポリカーボネート基材層材料の例が記載されている。
【0011】
パイロクロア型およびルチル型の金属酸化物は一般的に知られており、無機顔料として様々な用途によく使用されている。通常、パイロクロアは正方晶系で結晶化し、しばしば褐色、赤色、橙色または帯黄色の八面体の結晶を形成する。通常、ルチルは正方晶系で結晶化する。顔料として使用されるパイロクロアやルチルは、しばしば混合金属酸化物であり、典型的には主族金属または遷移金属(例えばZn、Cr、Sn)がその結晶格子に組み込まれている。例えば、遷移金属ベースのパイロクロアは、好ましくはニオブ-スズまたはニオブ-スズ-亜鉛をベースとするものであり、金属ベースのルチルはチタン-スズ-亜鉛をベースとするものである。
【0012】
例えば、鉛アンチモンパイロクロアはピグメントイエロー41として知られている。1つ以上の二価金属イオン、特にスズおよび/または亜鉛を含むニオブ/アンチモンパイロクロア型顔料およびその製造は、国際公開第2014/160218号および国際公開第2011/156362号に記載されている。ニオブスズパイロクロア(Niobium Tin Pyrochlore;NTP)、例えばニオブスズ亜鉛パイロクロア(ピグメントイエロー227)は、Shepard Color Companyから提供されている。
【0013】
例えば、ルチルクラスの公知の顔料は、チタン酸ニッケル、例えばNi/Sb/Ti酸化物(ピグメントイエロー53)、チタン酸クロム、例えばCr/Sb/Ti酸化物(ピグメントブラウン24)、どちらもBASFから入手可能、またSn/Zn/Ti酸化物(ピグメントイエロー216、Shepard Color Companyから入手可能)である。
【0014】
粘着テープにおけるテキスタイル層の着色のためのパイロクロアおよびルチル型金属酸化物顔料の使用は、国際公開第2019/101377号に記載されている。欧州特許出願公開第3868817号明細書には、Ti/Sn/Zn混合金属酸化物、例えばピグメントオレンジ82またはピグメントイエロー216をベースとする顔料系を含む、高電圧部品用のポリアミド系ポリマー組成物が記載されている。
【0015】
さらに、刊行物M. Ryan, European Coatings Journal (2013), (3), 74-78には、黄色顔料としてのニオブスズパイロクロアを含む黄色および橙色顔料、ならびにいくつかのチタネート顔料、例えばチタン酸ニッケル(例えばピグメントイエロー53)、チタン酸クロム(例えばピグメントブラウン24)、バナジン酸ビスマス(例えばピグメントイエロー184)およびルチルスズ亜鉛顔料、例えばピグメントイエロー216が記載されている。これらの着色組成物の熱安定性および耐候安定性、ならびに熱可塑性樹脂におけるそれらの使用については論じられていない。
【0016】
さらに、ルチルスズ亜鉛顔料、例えばピグメントイエロー216(SolaplexTM)を自動車塗料などのコーティング用途に使用することは、刊行物Larry Lane, “A New Class of Weather-Fast Pigments”, PCI Paint & Coatings Industry, April 1, 2005に記載されている。前記顔料は、高い耐酸性および高い耐候性を示す。前記無機顔料を、理想的には単独で、あるいは高性能有機顔料や二酸化チタンと組み合わせて使用することで、フルカラー版を製造できると記載されている。
【0017】
発明の目的
したがって、本発明の目的は、優れた光学特性、特に、典型的にはDIN 5033-3に準拠して彩度(C*)として測定される高い色彩的な鮮やかさと、典型的にはXenotestなどの耐候条件下でDIN 6174に準拠して測定される色距離の差ΔEとして測定される高い耐候安定性とを有する不透明な淡色の熱可塑性成形用組成物を提供することであった。
【0018】
さらに、前記熱可塑性成形用組成物が、優れた熱安定性の光学特性を有し、例えば複雑な幾何学形状を有する部品の射出成形中に高温および/または高い剪断力に曝されても、その高い色彩的な鮮やかさを維持することが望まれていた。
【0019】
本発明のもう1つの目的は、モールド成形部品や押出成形物品のような不透明な淡色の成形物品であって、特にこれらの有利な特性を有しかつ/または複雑な幾何学的形状を有するものを提供することであった。
【0020】
さらに、本発明の目的は、無機顔料と有機染料との本発明による組み合わせを含み、取り扱いが容易であり、かつコスト効率が高く容易で安全なステップにより本発明による熱可塑性成形用組成物を製造するのに非常に適している着色組成物を提供することであった。
【0021】
発明の概要
本発明は、特に選択された無機顔料を少なくとも1つの可溶性有機染料と組み合わせると、優れた色彩的な鮮やかさおよび改善された耐候安定性を有する不透明な淡色の成形用組成物が得られるという驚くべき知見に基づいている。先行技術から知られている二酸化チタンの代わりに、特定の黄色または橙色の無機顔料、特にパイロクロア構造型またはルチル構造型の混合酸化物または混合オキソ硫化物を使用すると、改善された耐候安定性が得られることが見出された。驚くべきことに、特定の無機顔料と可溶性有機染料との本発明による組み合わせは、先行技術から知られている他の黄色または橙色の無機顔料と同じ可溶性有機染料との組み合わせと比較して、改善された色彩的な鮮やかさを示すことが見出された。したがって、特定の黄色または橙色の無機顔料と少なくとも1つの可溶性有機染料との本発明による組み合わせは、不透明な淡色であり、高い熱安定性および耐候安定性が要求される熱可塑性成形用組成物に適用するための優れた特性を提供する。
【0022】
本発明は、以下:
A.少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含むポリマーマトリックスA;
B.少なくとも1つの無機顔料Bであって、金属ニオブ(Nb)、スズ(Sn)および亜鉛(Zn)を含む混合金属酸化物もしくは混合金属オキソ硫化物B1、ならびに/または金属チタン(Ti)、スズ(Sn)および亜鉛(Zn)を含む混合金属酸化物もしくは混合金属オキソ硫化物B2から選択される、無機顔料B;
C.少なくとも1つの有機染料C、典型的には可溶性有機染料Cであって、好ましくはモノアゾ染料、ペリノン染料、キノフタロン染料およびアントラキノン染料から選択される、有機染料C
を含む熱可塑性成形用組成物を対象とする。
【0023】
好ましくは、本発明は、不透明な淡色の熱可塑性成形用組成物を対象とする。特に、不透明な淡色の熱可塑性成形用組成物は、黄色、橙色または赤色の印象を示す。
【0024】
本発明に関して、「不透明な」および「不透明な熱可塑性成形用組成物」または「不透明な成形物品」などの用語は、23℃でDIN 5033-7に準拠して標準照明D65/10°を用いて求められ、厚さ3.0mmの試料、特に射出成形された試料について測定された透過率Y(D65)が10%未満、好ましくは6.5%未満である色または着色材料を指す。
【0025】
本発明に関して、「淡色の」、および「淡色の熱可塑性成形用組成物」または「淡色の成形物品」などの用語は、黄色、橙色または赤色の印象を示す色または着色材料を指し;好ましくは、23℃でDIN 5033-3に準拠して標準照明D65/10°を用いて求められ、厚さ3.0mmの試料、特に射出成形された試料について反射で測定された色値a*およびb*の双方がゼロより大きい(a*>0およびb*>0)色または着色材料を指す。
【0026】
本発明に関して、「可溶性染料」または「可溶性有機染料」とは、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含む熱可塑性マトリックスAに、熱可塑性マトリックスAの着色に通常使用される量で可溶な有機着色剤を指す。特に、「可溶性有機染料」という用語は、ポリマーマトリックスAと可溶性有機染料との混合物に対して少なくとも0.5重量%、好ましくは少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも5重量%の量でポリマーマトリックスAに可溶である有機染料を指す。典型的には、「可溶性有機染料」という用語は、ポリマーマトリックスA中に好ましくは上記の量で単分子分散した有機染料を指す。
【0027】
総じて、可溶性有機染料Cのみを含む熱可塑性マトリックス(ポリマーマトリックスAと1つ以上の有機染料とからなる組成物を意味する)は、非常に低いヘイズ、好ましくは5%以下(<=5%)、好ましくは4%以下(<=4%)のヘイズ(厚さ1mmの試験片を用い、規格ASTM D1003に準拠して23℃で測定)を示す。特に、「可溶性有機染料」という用語は、ポリマーマトリックスAと、ポリマーマトリックスAおよび可溶性有機染料の組成物に対して0.5重量%、好ましくは1重量%の量の可溶性有機染料とからなる組成物が、5%以下(<=5%)、好ましくは4%以下(<=4%)のヘイズ(厚さ1mmの試験片を用い、規格ASTM D1003に準拠して23℃で測定)を示す有機染料を指す。
【0028】
本発明に関して、「顔料」とは、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含む熱可塑性マトリックスAに、熱可塑性マトリックスAの着色に使用される量では実質的に不溶性である無機および有機着色剤を指す。典型的には、「顔料」という用語は、有彩色着色剤、白色着色剤および黒色着色剤を包含する。典型的には、「顔料」という用語は、ポリマーマトリックスA中に固体粒子、特に微細に分散した固体粒子の形態で分散している有機着色剤を指す。
【0029】
本明細書で使用される「着色された熱可塑性成形用組成物」という用語は、1つ以上の着色剤を含む熱可塑性成形用組成物、好ましくは、少なくとも本明細書に記載の着色剤AおよびBを含む熱可塑性成形用組成物であって、着色剤が、熱可塑性成形用組成物のポリマーマトリックスA中に均一に分散しているものを指す。
【0030】
詳細な説明
好ましい一実施形態では、本発明による熱可塑性成形用組成物は、それぞれ熱可塑性成形用組成物全体に対して以下:
A.49.99998~99.99998重量%、好ましくは59.9998~99.9998重量%、より好ましくは89.998~99.998重量%のポリマーマトリックスA、ここで、ポリマーマトリックスAは、好ましくはポリアルキル(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルイミド、ポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマー、ポリスチレン、ポリスチレンコポリマー、アクリロニトリルコポリマー、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデンおよびポリオレフィンから選択される少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含む(またはそれからなる);
B.0.00001~5.0重量%、好ましくは0.0001~4.0重量%、より好ましくは0.001~3.0重量%の少なくとも1つの無機顔料B;
C.0.00001~5.0重量%、好ましくは0.0001~4.0重量%、より好ましくは0.001~3.0重量%の少なくとも1つの有機染料C、ここで、有機染料Cは、好ましくはモノアゾ染料、ペリノン染料、キノフタロン染料、アントラキノン染料およびピラゾロン染料から選択され、より好ましくはモノアゾ染料、ペリノン染料、キノフタロン染料およびアントラキノン染料から選択される;
D.0~50.0重量%、好ましくは0~40.0重量%、より好ましくは0~10.0重量%の1つ以上の追加成分Dであって、好ましくは有機顔料、Bとは異なる無機顔料、散乱粒子、耐衝撃性改良剤、帯電防止剤、酸化防止剤、離型剤、難燃剤、滑剤、流動性向上剤、紫外線吸収剤、光安定剤および有機リン化合物、耐候性を付与する薬剤および可塑剤から選択されるもの
を含む。
【0031】
好ましくは、本明細書で定義される無機顔料Bと有機染料Cの重量比B:Cは、0.1~10、好ましくは0.5~5、より好ましくは0.75~3の範囲である。
【0032】
特に、本発明による熱可塑性成形用組成物において、23℃でDIN 5033-7に準拠して標準照明D65/10°を用いて求められ、厚さ3.0mmの試料、特に射出成形された試料について測定された透過率Y(D65)は、10%未満、好ましくは6.5%未満である。特に、本発明による熱可塑性成形用組成物において、23℃でDIN 5033-3に準拠して標準照明D65/10°を用いて求められ、厚さ3.0mmの試料、特に射出成形された試料について反射で測定された色値a*およびb*の双方が、ゼロより大きい(a*>0およびb*>0)。好ましくは、a*>0.5、より好ましくはa*>1;および/またはb*>0.5、より好ましくはb*>1である。
【0033】
好ましくは、本発明による熱可塑性成形用組成物において、23℃でDIN 5033-3に準拠して標準照明D65/10°を用いて求められ、厚さ3.0mmの試料、特に射出成形された試料について反射で測定された輝度L*は、30以上である。
【0034】
好ましくは、本発明による熱可塑性成形用組成物は、優れた耐候安定性、すなわち、キセノン放射昼光(ISO 4892-2)を含むキセノン試験条件下で3000時間後にDIN 6174に準拠して求められた色差ΔE(D65、10°)が3以下、好ましくは2以下である。
【0035】
例えば、熱可塑性成形用組成物は、実質的に少なくとも1つのポリアルキル(メタ)アクリレート、好ましくはポリメチル(メタ)アクリレート(PMMA)からなるポリマーマトリックスAを含み、ISO 1133(2011)に準拠して荷重3.8kgで230℃にて測定したメルトボリュームフローレートMVRが0.5~10.0cm3/10minを示す。
【0036】
例えば、熱可塑性成形用組成物は、実質的に少なくとも1つのポリカーボネート(PC)からなるポリマーマトリックスAを含み、ISO 1133(2011)に準拠して荷重1.2kgで300℃にて測定したメルトボリュームフローレートMVRが10.0~36.0cm3/10minである。
【0037】
例えば、熱可塑性成形用組成物は、実質的に少なくとも1つのスチレン-アクリロニトリルコポリマー(SAN)からなるポリマーマトリックスAを含み、ISO 1133(2011)に準拠して荷重10kgで220℃にて測定したメルトボリュームフローレートMVRが5.0~30.0cm3/10minである。
【0038】
したがって、本発明による着色された熱可塑性成形用組成物は、押出成形および射出成形に有利に使用することができ、溶融温度、金型温度および射出速度は、ポリマーマトリックスAに基づいて適合させることができる。好ましくは、本発明による熱可塑性成形用組成物は、優れた熱安定性を有しており、色印象または色距離の望ましくない変化を生じることなく、押出成形や射出成形のような従来の溶融加工に、典型的には150~320℃の範囲の温度で使用することができる。典型的には、熱可塑性ポリマーがポリアルキル(メタ)アクリレートである場合、熱安定性は200℃~300℃、より好ましくは230℃~290℃の範囲の温度で与えられる。
【0039】
ポリマーマトリックスA
ポリマーマトリックスAは、好ましくは、ポリアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ポリメチルメタクリレートPMMA)、ポリ(メタ)アクリルイミド(例えば、ポリメチルメタクリルイミドPMMI)、ポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマー、ポリスチレン、ポリスチレンコポリマー、アクリロニトリルコポリマー、ポリカーボネート(好ましくは、ビスフェノールから誘導される芳香族ポリカーボネートまたはイソソルビドから誘導されるポリカーボネート)、ポリエステル(好ましくは、芳香族ポリエステル、より好ましくは、ポリエチレンテレフタレート)、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)およびポリオレフィン(例えば、シクロオレフィンコポリマーCOCまたは透明化ポリプロピレン)から選択される少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含み、好ましくは実質的にそれからなる。
【0040】
好ましくは、ポリマーマトリックスAは、透明な熱可塑性ポリマーまたは少なくとも2つの熱可塑性ポリマーの透明なブレンドを含むか、または実質的にそれからなり、ここで、「透明な」という用語は、規格ASTM D1003に準拠して求められ、厚さ3.0mmの射出成形された試験片について23℃で測定された、70%以下、好ましくは50%以下、より好ましくは30%以下、また好ましくは10%以下のヘイズを有する熱可塑性ポリマーまたはポリマー組成物を指す。
【0041】
より好ましくは、熱可塑性ポリマーは、ポリアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ポリメチルメタクリレートPMMA)、ポリ(メタ)アクリルイミド(例えば、ポリメチルメタクリルイミドPMMI)、ポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマー、ポリスチレン、ポリスチレンコポリマー、アクリロニトリルコポリマー、ポリカーボネート、ポリエステル(好ましくは、ポリエチレンテレフタレート)、ポリフッ化ビニリデンおよびそれらの混合物から選択される。さらにより好ましくは、熱可塑性ポリマーは、ポリアルキル(メタ)アクリレート、ポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマー、ポリ(メタ)アクリルイミド、ポリカーボネートおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0042】
特に好ましい一実施形態によれば、ポリマーマトリックスAは、ポリアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ポリメチルメタクリレートPMMA)、ポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマー、ポリ(メタ)アクリルイミド(例えば、ポリメチルメタクリルイミドPMMI)、ポリカーボネート(例えば、ビスフェノールまたはイソソルビドから誘導されるポリカーボネート)、およびスチレン-アクリロニトリルコポリマー(SAN)から選択される少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含む(好ましくは実質的にそれからなる)。より好ましくは、ポリマーマトリックスAは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)および/またはポリメチルメタクリルイミド(PMMI)から選択される熱可塑性ポリマーを含む(好ましくは実質的にそれからなる)。
【0043】
また、本発明による熱可塑性成形用組成物が、耐衝撃性ポリアルキル(メタ)アクリレート(例えば、耐衝撃性ポリメチルメタクリレートPMMA)および/または耐衝撃性ポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーをベースとし、熱可塑性成形用組成物が、以下:
1つ以上のポリアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ポリメチルメタクリレートPMMA)および/または1つ以上のポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーを含むか、または実質的にそれからなるポリマーマトリックスAと、
ポリマーマトリックスA中に分散されている、追加成分Dとして後述する少なくとも1つの耐衝撃性改良剤と
を含むことも好ましい。
【0044】
好ましくは、ポリマーマトリックスAは、熱可塑性成形用組成物全体に対して49.99998~99.99998重量%、好ましくは59.9998~99.9998重量%、好ましくは69.99998~99.99998重量%、好ましくは89.9998~99.9998重量%、より好ましくは89.998~99.998重量%の量で存在する。典型的には、1つ以上の任意の追加成分Dが本発明による熱可塑性成形用組成物中に存在する場合、ポリマーマトリックスAの下限を適合させることができる。
【0045】
ポリアルキル(メタ)アクリレートおよびポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマー
ポリアルキル(メタ)アクリレートは通常、アルキル(メタ)アクリレート、典型的にはメチルメタクリレート(a)と少なくとも1つのさらなる(メタ)アクリレート(b)とを典型的に含む混合物のフリーラジカル重合によって得られる。これらの混合物は総じて、モノマーの重量に対して少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも60重量%、特に好ましくは少なくとも80重量%、さらにより好ましくは少なくとも90重量%のメチルメタクリレート(a)を含む。総じて使用されるメチルメタクリレート(a)の量は、モノマーの重量に対して50.0重量%~99.9重量%、好ましくは80.0重量%~99.0重量%、特に好ましくは90.0重量%~99.0重量%である。
【0046】
ポリアルキル(メタ)アクリレートまたはポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーを製造するためのこれらの混合物は、メチルメタクリレート(a)と共重合可能な他の(メタ)アクリレート(b)を含むこともできる。本明細書で使用される「(メタ)アクリレート」という用語は、メタクリレート、アクリレートおよびそれらの混合物を包含することを意味する。(メタ)アクリレートは、飽和アルコールから誘導可能であり、例えば、メチルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレートおよび2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートであり;または不飽和アルコールから誘導可能であり、例えばオレイル(メタ)アクリレート、2-プロピニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ビニル(メタ)アクリレート;およびまたアリール(メタ)アクリレート、例えばベンジル(メタ)アクリレートまたはフェニル(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、例えば3-ビニルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ボルニル(メタ)アクリレート;ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、例えば3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3,4-ジヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;グリコールジ(メタ)アクリレート、例えば1,4-ブタンジオール(メタ)アクリレート、エーテルアルコールの(メタ)アクリレート、例えばテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ビニルオキシエトキシエチル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸のアミドおよびニトリルなどである。
【0047】
総じて使用される(メタ)アクリルコモノマー(b)の量は、モノマーの重量に対して0.1重量%~50.0重量%、好ましくは1.0重量%~20.0重量%、特に好ましくは1.0重量%~10.0重量%であり、この場合の化合物は、単独でも混合物の形態でも使用することができる。
【0048】
重合反応は、総じて公知のフリーラジカル開始剤によって開始される。好ましい開始剤としては特に、当業者に周知であるアゾ開始剤、例えば、AIBNおよび1,1-アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、ならびにペルオキシ化合物、例えばメチルエチルケトンペルオキシド、アセチルアセトンペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、tert-ブチル2-エチルペルヘキサノエート、ケトンペルオキシド、メチルイソブチルケトンペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、2,5-ビス(2-エチルヘキサノイルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、tert-ブチル2-エチルペルオキシヘキサノエート、tert-ブチル3,5,5-トリメチルペルオキシヘキサノエート、ジクミルペルオキシド、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、クミルヒドロペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、ビス(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネートまたはそれらの混合物である。
【0049】
ポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーは通常、アルキル(メタ)アクリレート、典型的にはメチルメタクリレート(a)と、上述の少なくとも1つのさらなる(メタ)アクリレート(b)と、単独で、またはメチルメタクリレートおよび上述の(メタ)アクリレートとの共重合を促進する他のモノマーを用いることにより共重合可能な他の不飽和モノマー(c)とを含む混合物のフリーラジカル重合によって得ることができる。これらのうち特に、1-ヘキセン、1-ヘプテンなどの1-アルケン;ビニルシクロヘキサン、3,3-ジメチル-1-プロペン、3-メチル-1-ジイソブチレン、4-メチル-1-ペンテンなどの分岐状アルケン;アクリロニトリル;酢酸ビニルなどのビニルエステル;スチレン、側鎖にアルキル置換基を有する置換スチレン、例えばα-メチルスチレンおよびα-エチルスチレン、無水マレイン酸、無水メチルマレイン酸、マレイミド、メチルマレイミドなどのマレイン酸誘導体;およびジビニルベンゼンなどのジエンが挙げられる。
【0050】
総じて使用されるこれらのコモノマー(c)の量は、モノマーの重量に対して0.0重量%~40.0重量%、好ましくは0.0重量%~30.0重量%、より好ましくは0.0重量%~15.0重量%、特に好ましくは0.0重量%~10.0重量%であり、この場合の化合物は、単独でも混合物の形態でも使用することができる。
【0051】
別の好ましい例では、ポリマーマトリックスAは、少なくとも1つのポリアルキル(メタ)アクリレートおよび/またはポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーを含むか、または実質的にこれらからなり、これは、以下:
50.0~100.0重量%、好ましくは65~99重量%のメチルメタクリレート(MMA);
0.0~20.0重量%、好ましくは0.1~4重量%の、MMA以外の少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートであって、好ましくはC1~C10アルキル(メタ)アクリレートから選択され、より好ましくはC1~C4アルキル(メタ)アクリレートから選択され、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレートおよびブチルメタクリレートから選択されるもの;
0.0~40重量%、好ましくは5.0重量%~30.0重量%の少なくとも1つのビニル芳香族モノマー、好ましくはスチレン;および
0.0~20重量%、好ましくは5.0~20.0重量%の1つ以上の別の共重合可能なモノマー、例えば少なくとも1つの不飽和カルボン酸もしくは不飽和無水カルボン酸、またはアクリロニトリル;
を含むか、または実質的にそれからなり、ここで、すべての量は、ポリアルキル(メタ)アクリレートまたはポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーの総重量に対して与えられる。
【0052】
好ましい一例では、ポリマーマトリックスAは、少なくとも1つのポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーを含むか、またはそれからなることができ、このコポリマーは、以下:
48.0~90.0重量%、好ましくは63.0~81.0重量%の少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレート、好ましくはメチルメタクリレート(MMA);
8.0~35.0重量%、好ましくは12.0~22.0重量%の少なくとも1つのモノビニル芳香族モノマー、好ましくはスチレン;および
2.0~17.0重量%、好ましくは7.0~15.0重量%の少なくとも1つの不飽和無水カルボン酸であって、例えば、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、無水マレイン酸、1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物、シクロヘキシルマレイミドおよび無水イタコン酸、より好ましくは無水マレイン酸から選択されるもの;
を含むか、または実質的にそれからなり、ここで、すべての量は、ポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーの総重量に対して与えられる。
【0053】
より好ましくは、ポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーは、50.0~85.0重量%のMMA、10.0~20.0重量%のスチレン、および5.0~15.0重量%の無水マレイン酸を含むか、または実質的にそれからなる。
【0054】
適切なポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーおよびそのブレンドは、例えば国際公開第2005/108486号、国際公開第2008/148595号および国際公開第2020/126722号に記載されている。
【0055】
さらに好ましいのは、重合性成分として以下のものを有する組成物の重合によって得られるポリアルキル(メタ)アクリレートである:
(a)50.0重量%~99.9重量%のメチルメタクリレート;
(b)0.1重量%~50.0重量%のC1~C4アルコールのアクリル酸エステル;
(c)0.0重量%~30.0重量%のモノマー(a)および(b)と共重合可能なモノマー。
【0056】
特に好ましい一実施形態では、ポリアルキル(メタ)アクリレートは、重合性成分が、重合性組成物の重量に対して以下のものを含む組成物の重合によって得ることができる:
(a)80.0重量%~99.0重量%のメチルメタクリレート、および
(b)1.0重量%~20.0重量%のC1~C4アルコールのアクリル酸エステル。
【0057】
特に好ましいのは、80.0重量%~99.5重量%のメチルメタクリレートと、0.5重量%~20.0重量%のメチルアクリレートおよび/またはエチルアクリレートとから構成されるポリアルキル(メタ)アクリレートであり、ここでの量は、重合性成分100重量%に対するものである。特に有利なコポリマーは、85.0重量%~99.5重量%のメチルメタクリレートと、0.5重量%~15.0重量%のメチルアクリレートおよび/またはエチルアクリレートとの共重合によって得られるものであり、ここでの量は、重合性成分100重量%に対するものである。例えば、ポリアルキル(メタ)アクリレートは、85.0重量%~99.9重量%のメチルメタクリレートおよび0.1重量%~15.0重量%のメチルアクリレート、好ましくは95.0重量%~99.9重量%のメチルメタクリレートおよび0.1重量%~5.0重量%のメチルアクリレート、より好ましくは96.0重量%~99.9重量%のメチルメタクリレートおよび0.1重量%~4.0重量%のメチルアクリレートを含むことができる。前記ポリアルキル(メタ)アクリレートのビカット軟化点VSP(ISO 306:2013、方法B50)は、典型的には少なくとも90℃、好ましくは95℃~130℃である。
【0058】
ポリアルキル(メタ)アクリレートの重量平均分子量Mwは、総じて50000g/mol~300000g/molの範囲である。特に有利な機械的特性は、いずれの場合も、PMMA校正標準物質および溶離液としてのTHFに対するGPCによって求められた50000g/mol~200000g/mol、好ましくは80000g/mol~180000g/molの範囲の重量平均分子量Mwを有するポリアルキル(メタ)アクリレートを用いて得られる。
【0059】
別の好ましい例では、ポリマーマトリックスAは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)と少なくとも1つのポリフッ化ビニリデン(PVDF)、例えばArkemaから入手可能なKynar(登録商標)製品タイプとを含むブレンドを含むか、またはそれからなることができる。
【0060】
別の好ましい例では、ポリマーマトリックスAは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)と少なくとも1つのポリ(ラクチド)(PLA)とを含むブレンド、例えばAltuglas Internationalから入手可能なAltuglas(登録商標)Rnew(登録商標)製品を含むか、またはそれからなることができる。
【0061】
ポリ(メタ)アクリルイミド
ポリマーマトリックスAは、ポリ(メタ)アクリルイミド、好ましくはポリメチル(メタ)アクリルイミド、より好ましくはポリメチルメタクリルイミド(PMMI)から選択される少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含むことができる。本発明で使用することができるポリ(メタ)アクリルイミドは、式(I):
【化1】
[式中、R
1およびR
2は、独立して、水素およびメチル基から選択され、R
1およびR
2は、好ましくはメチル基を表し、R
3は、水素またはC
1~C
4アルキル基、好ましくはメチル基である]の繰返し単位を、ポリ(メタ)アクリルイミドの重量に対して少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも50重量%、最も好ましくは少なくとも60重量%含む。
【0062】
PMMIの製造方法は、例えば、欧州特許出願公開第216505号明細書、欧州特許出願公開第666161号明細書または欧州特許出願公開第776910号明細書に開示されており、これらの開示全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0063】
ポリ(メタ)アクリルイミドの製造に使用される出発材料は、メタクリル酸のアルキルエステルから誘導されるポリマーを含み、総じて、50.0重量%超、好ましくは80.0重量%超、特に好ましくは95.0重量%~100.0重量%の、アルキル基中に1~4個の炭素原子を有するメタクリル酸のアルキルエステルの単位から構成される。メチルメタクリレートが好ましい。好ましいポリマーは、少なくとも80.0重量%、好ましくは90.0重量%超、より好ましくは95.0重量%超、さらに好ましくは99.0重量%超のメチルメタクリレートから構成され、ニートのメチルメタクリレートの使用が最も好ましい。使用できるコモノマーは、メチルメタクリレートと共重合可能なモノマーのいずれか、特にアルキル基中に1~4個の炭素原子を有するアクリル酸のアルキルエステル、アクリロ-もしくはメタクリロニトリル、アクリルもしくはメタクリルアミド、スチレン、または無水マレイン酸を含む。低下した粘度が20ml/g~92ml/g、好ましくは50ml/g~80ml/gの範囲にある(ISO 8257(2006)、Part 2で測定)この種の熱可塑性加工可能なポリマーが好ましい。これらは、粉末またはペレットの形態で使用され、そのメジアン径は、約0.03mm~5mmである。
【0064】
典型的には、本発明で使用されるPMMIは、標準物質としてPMMAを使用するGPCにより求められる、80000g/mol~200000g/mol、好ましくは90000g/mol~150000g/molの重量平均分子量Mwを有する。このような材料は、Roehm GmbHからPLEXIMID(登録商標)の商標で市販されている。適切な製品としては、PLEXIMID(登録商標)TT50、PLEXIMID(登録商標)TT70、PLEXIMID(登録商標)8805、PLEXIMID(登録商標)8813、PLEXIMID(登録商標)8817が挙げられるが、これらに限定されない。
【0065】
ポリカーボネート
ポリカーボネートもまた、本発明において熱可塑性ポリマーとして使用することができる。ポリカーボネートは、形式的には、炭酸と脂肪族または芳香族ジヒドロキシル化合物から形成されるポリエステルと考えることができる。これは、例えばジグリコール、イソソルビドまたはビスフェノールとホスゲンまたは炭酸ジエステルとを重縮合反応またはエステル交換反応により反応させることによって容易に得ることができる。
【0066】
好ましいのは、ビスフェノールおよび/またはイソソルビドから誘導されるポリカーボネートである。これらのビスフェノールとしては、特に2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン(ビスフェノールB)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールC)、2,2’-メチレンジフェノール(ビスフェノールF)、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(テトラブロモビスフェノールA)および2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(テトラメチルビスフェノールA)ならびにこれらの混合物が挙げられる。典型的には、このような芳香族ポリカーボネートは、界面重縮合またはエステル交換によって製造される。ポリカーボネートの特性を、ビスフェノールの選択によって所望の目的に適合させることができる。
【0067】
ポリカーボネートは、例えばCovestro AG(ドイツ)からMakrolon(登録商標)の商標で市販されている。
【0068】
例えば、イソソルビドから誘導される適切なポリカーボネートは、Mitsubishi Chemical Corporation MCCから市販されているDURABIO(商標)の透明な製品タイプである。
【0069】
ポリスチレンおよびポリスチレンコポリマー
ポリマーマトリックスAはまた、少なくとも1つのビニル芳香族モノマーを含むホモまたはコポリマーから選択される少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含むことができる。特に適切なビニル芳香族モノマーは、スチレン、α-メチルスチレン、tert.-ブチルスチレン、モノクロロスチレンおよびビニルトルエンから選択され、スチレンおよびα-メチルスチレンが特に好ましい。芳香族ビニルモノマーは、単独でもそれらの混合物としても使用することができる。
【0070】
好ましくは、ポリマーマトリックスAは、芳香族ビニルモノマーとシアン化ビニルモノマーとを含む少なくとも1つのコポリマーを含むことができる。
【0071】
本発明での使用に適したシアン化ビニルモノマーの例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、フェニルアクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、フマロニトリルなどを挙げることができる。これらは、単独でもそれらの混合物としても使用することができる。例えば、シアン化ビニルモノマーは、アクリロニトリルおよび/またはメタクリロニトリルを含むことができる。特に好ましい一実施形態では、シアン化ビニルモノマーは、アクリロニトリルである。
【0072】
典型的には、コポリマーは、コポリマーの重量に対して50.0重量%~90.0重量%、好ましくは55.0重量%~85.0重量%の芳香族ビニルモノマー;および10.0重量%~50.0重量%、好ましくは15.0重量%~45.0重量%のシアン化ビニルモノマーを含むことができる。
【0073】
好ましい一実施形態では、芳香族ビニルモノマーはスチレンであり、シアン化ビニルモノマーはアクリロニトリルである。このような好ましい熱可塑性コポリマーは、総じてスチレン-アクリロニトリルコポリマー(SAN)樹脂として知られており、INEOS Styrolution Group GmbH(ドイツ、フランクフルト)またはTrinseo S.A.(ルクセンブルグ)などの様々な製造業者から市販されている。このようなコポリマーの製造は、塊状重合、溶液重合、乳化重合またはビーズ重合など、SAN樹脂の製造について記載されている公知の実質的にあらゆる重合方法によって実施することができる。
【0074】
典型的には、実質的に任意の分子量の、例えば、60000g/mol~300000g/mol、好ましくは100000g/mol~250000g/molの重量平均分子量Mwを有するスチレン-アクリロニトリルコポリマー(SAN)を使用することができる。コポリマーBの平均分子量Mwは、上記のように、PMMA標準物質を用いたGPCによって求めることができる。
【0075】
より好ましくは、熱可塑性コポリマーは、スチレン-アクリロニトリルコポリマー(SAN)およびゴム変性スチレン-アクリロニトリルコポリマー、例えばアクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー(ABS)およびアクリロニトリル-スチレン-アクリレートコポリマー(ASA)、ならびにα-メチルスチレン-アクリロニトリル(AMSAN)コポリマーおよびゴム変性AMSANコポリマーから選択することができる。例えば、SANコポリマーはLURAN(登録商標)製品タイプとして、例えばABSコポリマーはTerluran(登録商標)、Lustran(登録商標)またはNovodur(登録商標)として;例えばASAコポリマーはLuran(登録商標)Sとして、例えばAMSAMコポリマーはLuran(登録商標)High Heatとして、いずれもIneos Styrolutionから入手可能である。
【0076】
さらに、ポリマーマトリックスAは、芳香族ビニルモノマー、好ましくはスチレンと、共役ジエンモノマー、好ましくはブタジエンとを含む少なくとも1つのコポリマーを含むことができる。例えば、ポリマーマトリックスAは、少なくとも1つのスチレン-ブタジエンブロックコポリマー(SBC)およびそれらのブレンドを含むか、またはそれからなることができる。SBCコポリマーは広く知られており、Kraton CorporationからKratonT(商標)の商品名で、またはINEOS StyrolutionからStyrolux(登録商標)およびStyroflex(登録商標)の商品名で市販されている。特に、ポリマーマトリックスAは、SBCとスチレンポリマーとのブレンド(例えば、耐衝撃性汎用ポリスチレンGPPS)、SBCとスチレン-アクリルコポリマーとのブレンド、例えばメチルメタクリレート-ブタジエン-スチレンコポリマー(MBS)であって、例えばIneos StyrolutionからZylar(登録商標)またはClearblend(登録商標)製品タイプとして入手可能なものを含むか、またはそれからなることができる。さらに、ポリマーマトリックスAは、メチルメタクリレート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー(MABS)であって、例えばIneos StyrolutionからTERLUX(登録商標)またはCLEARLUX(登録商標)製品タイプとして入手可能なものを含むか、またはそれからなることができる。
【0077】
その他の熱可塑性ポリマー
例えば、ポリマーマトリックスAは、例えば、市販の透明ポリアミド製品、例えば、EMS-Chemie AG製Grilamide TR(登録商標)(例えば、Grilamid TR(登録商標)90)およびEMS-GRIVORY(どちらもEMS-Chemie AG製)、Evonik製TROGAMIDE(登録商標)タイプの製品(例えば、TROGAMIDE(登録商標)CX 7323、TROGAMIDE(登録商標)T5000、TROGAMIDE(登録商標)BX)、およびEvonik製VESTAMID(登録商標)製品タイプから選択される1つ以上のポリアミドを含むか、またはそれからなることができる。
【0078】
例えば、ポリマーマトリックスAは、1つ以上のポリオレフィン、好ましくは1つ以上の透明ポリオレフィンを含むか、またはそれからなることができ、これはより好ましくは、シクロオレフィンコポリマー(COC)、例えば市販の透明シクロオレフィンコポリマー、例えばTOPAS Advanced Polymers GmbH製TOPAS(登録商標)COC製品、ならびにZEON Corporation製ZEONEX(登録商標)およびZEONOR(登録商標)製品から選択される。さらに、ポリオレフィンは、例えばMilliken製Millad(登録商標)NX 8000透明化剤を使用して製造された、有核化または透明化ポリプロピレン(PP)から選択することができる。
【0079】
無機顔料B
本発明による熱可塑性成形用組成物は、少なくとも1つの無機顔料Bを含み;これは好ましくは、黄色、橙色または褐色の色印象を示す無機顔料から選択され;ここで、無機顔料Bは、以下:
金属ニオブ(Nb)、スズ(Sn)および亜鉛(Zn)を含む混合金属酸化物または混合金属オキソ硫化物B1;
および/または、金属チタン(Ti)、スズ(Sn)および亜鉛(Zn)を含む混合金属酸化物または混合金属オキソ硫化物B2
から選択される。
【0080】
好ましくは、混合金属酸化物または混合金属オキソ硫化物B1および混合金属酸化物または混合金属オキソ硫化物B2はそれぞれ、少なくとも1ppm、好ましくは少なくとも10ppmのスズ(Sn)および少なくとも1ppm、好ましくは少なくとも10ppmの亜鉛(Zn)を含む。本発明に関して、ppmは、重量部(wppm)、例えばmg/kgを意味する。より好ましくは、混合金属酸化物または混合金属オキソ硫化物B1および混合金属酸化物または混合金属オキソ硫化物B2はそれぞれ、それぞれ金属として計算した場合に、B1またはB2の総重量に対して0.01~60重量%、好ましくは10~50重量%のスズ(Sn)および0.01~30重量%、好ましくは少なくとも1~20重量%の亜鉛(Zn)を含む。
【0081】
混合金属酸化物または混合金属オキソ硫化物B1および/またはB2はまた、1つ以上の追加の元素、好ましくは金属またはメタロイドを含むこともでき、これは特に、第1族、第2族、第12族、第13族、第14族および第15族の元素ならびに希土類金属(例えばSc、Y、La、Ce、Pr、Nd)から選択され、より好ましくはB、Al、Si、Sb、Ta、P、Zr、Hf、W、Moおよびそれらの混合物から選択されるも。好ましくは、無機顔料B1および/またはB2、より好ましくは、顔料B2は、SiO2として計算した場合に、B1またはB2の総重量に対して0.1~20重量%、好ましくは0.5~15重量%、より好ましくは1~10重量%のケイ素(Si)を含むことができる。
【0082】
好ましくは、無機顔料B1および/またはB2は、Sとして計算した場合に、B1またはB2の総重量に対して0.01~10重量%、好ましくは0.1~7重量%、より好ましくは0.5~5重量%の硫黄(S)を含む混合金属オキソ硫化物であってもよい。
【0083】
好ましい一実施形態では、混合金属酸化物または混合金属オキソ硫化物B1は、それぞれB1の総重量に対して、Nb2O5として計算した場合に、20~60重量%、好ましくは30~50重量%のニオブ(Nb);SnO2として計算した場合に、30~60重量%、好ましくは40~60重量%のスズ(Sn);ZnOとして計算した場合に、0.1~20重量%、好ましくは1~10重量%の亜鉛(Zn)、およびSとして計算した場合に、0~10重量%、好ましくは0.1~5重量%の硫黄(S)を含む。特に、混合金属酸化物または混合金属オキソ硫化物B1は、それぞれB1の総重量に対して、Nb2O5として計算した場合に40~50重量%のニオブ(Nb);SnO2として計算した場合に45~55重量%のスズ(Sn);ZnOとして計算した場合に2~5重量%の亜鉛(Zn);およびSとして計算した場合に0.5~2重量%の硫黄(S)を含む。
【0084】
好ましい一実施形態では、混合金属酸化物または混合金属オキソ硫化物B2は、それぞれB2の総重量に対して、TiO2として計算した場合に10~60重量%、好ましくは20~50重量%のチタン(Ti);SnO2として計算した場合に20~70重量%、好ましくは30~60重量%のスズ(Sn);ZnOとして計算した場合に1~30重量%、好ましくは5~20重量%の亜鉛(Zn)、およびSnO2として計算した場合に0~20重量%、好ましくは0.1~10重量%のケイ素(Si)を含む。特に、混合金属酸化物または混合金属オキソ硫化物B2は、それぞれB2の総重量に対して、TiO2として計算した場合に20~30重量%のチタン(Ti);SnO2として計算した場合に45~55重量%のスズ(Sn);ZnOとして計算した場合に10~20重量%の亜鉛(Zn)、およびSiO2として計算した場合に5~10重量%のケイ素(Si)を含む。
【0085】
好ましくは、少なくとも無機顔料Bは、熱可塑性成形用組成物全体に対して0.00001~5.0重量%、好ましくは0.0001~4.0重量%、より好ましくは0.001~3.0重量%、また好ましくは0.01~2.0重量%の量で存在する。好ましくは、与えられた量は、本発明による熱可塑性成形用組成物中に存在するすべての無機顔料Bの合計に対するものである。無機顔料Bは、純粋な着色剤として、または着色剤組成物として、例えばマスターバッチとして利用することができ、上記で与えられた量は、純粋な無機顔料B化合物に対するものである。
【0086】
好ましくは、少なくとも1つの無機顔料Bは、金属ニオブ(Nb)、スズ(Sn)および亜鉛(Zn)を含む少なくとも1つの混合金属酸化物または混合金属オキソ硫化物B1を含み、混合金属酸化物または混合金属オキソ硫化物B1は、パイロクロア型構造を有する。より好ましくは、無機顔料Bは、無機顔料B1としてパイロクロア型構造を有するNb/Sn/Znオキソ硫化物、例えばピグメントイエロー227(例えば、Shepherd Color CompanyからYL0010P150/Yellow 10P150として市販)を含む。
【0087】
パイロクロア構造を有する混合酸化物およびオキソ硫化物、例えばSn/NbパイロクロアSn2Nb2O7、およびSn2Nb2O7の2価サイトに部分的に置換を有する混合酸化物およびオキソ硫化物、例えばSn/Zn/Nbパイロクロア、ならびにそれらの製造は、例えば国際公開第2011/156362号および国際公開第2014/160218号に記載されている。典型的には、このような混合金属酸化物およびオキソ硫化物は、それぞれの金属の酸化物および/または他の塩、例えば硫化物または炭酸塩を用いた、典型的には800℃~1000℃の範囲の温度での高温か焼により製造することができる。典型的には、金属塩および/または金属酸化物の予備混合物を製造し、その後、好ましくは不活性ガス下でか焼する。
【0088】
好ましくは、少なくとも1つの無機顔料Bは、金属チタン(Ti)、スズ(Sn)および亜鉛(Zn)を含む少なくとも1つの混合金属酸化物または混合金属オキソ硫化物B2を含み、混合金属酸化物または混合金属オキソ硫化物B2は、ルチル型構造を有する。より好ましくは、無機顔料Bは、無機顔料B2として、ルチル型構造を有するTi/Sn/Zn酸化物、例えば、ピグメントイエロー216(例えば、Shepherd Color CompanyからOR0010P340/Orange 10P340として市販)を含む。
【0089】
好ましい一実施形態によれば、少なくとも1つの無機顔料B1は、パイロクロア型Nb/Sn/Znオキソ硫化物、好ましくはピグメントイエロー227から選択され、B2は、ルチル型Ti/Sn/Zn酸化物、好ましくはピグメントイエロー216から選択される。
【0090】
有機染料C
本発明による熱可塑性成形用組成物は、ポリマーマトリックスAに可溶である少なくとも1つの有機染料C、典型的には1つ以上の有機染料Cを含む。好ましくは、少なくとも有機染料Cは、熱可塑性成形用組成物全体に対して0.00001~5.0重量%、好ましくは0.0001~4.0重量%、より好ましくは0.001~3.0重量%、さらに好ましくは0.01~2.0重量%の量で存在する。好ましくは、与えられた量は、本発明による熱可塑性成形用組成物中に存在するすべての有機染料Cの合計に対するものである。有機染料Cは、純粋な着色剤として、または着色剤組成物として、例えばマスターバッチとして利用することができ、上記で与えられた量は、純粋な有機染料化合物に対するものである。
【0091】
好ましくは、少なくとも1つの有機可溶性染料Cは、ポリマーマトリックスA中に溶解して単分子分散している。また好ましくは、ポリマーマトリックスAと、組成物に対して0.5重量%の量、好ましくは1重量%の量の可溶性有機染料Cのみ(無機顔料Bを含まず、他の成分も含まないことを意味する)とを含む組成物は、5%以下(<=5%)、好ましくは4%以下(<=4%)のヘイズ(厚さ1mmの試験片を用い、規格ASTM D1003に準拠して23℃で測定)を示す。
【0092】
典型的には、少なくとも1つの有機染料Cは、熱可塑性ポリマー、例えばポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレンおよびポリスチレンコポリマー、例えばスチレン-アクリロニトリルコポリマーを着色するのに適した広く知られている染料から選択することができる。特に、少なくとも1つの有機染料Cは、黄色、橙色、赤色および褐色の有機染料から選択される。好ましい一実施形態によれば、少なくとも1つの有機染料Cは、モノアゾ染料、ペリノン染料、キノフタロン染料、アントラキノン染料およびピラゾロン染料から選択される。より好ましくは、有機染料Cは、モノアゾ染料、ペリノン染料およびアントラキノン染料から選択される。特に、有機染料Cは、少なくとも1つのモノアゾ染料および/または少なくとも1つのペリノン染料を含む。
【0093】
総じて、適切なモノアゾ染料自体は当業者に周知であり、ジアゼン(ジイミド)HN=NHの誘導体であり、ここで、2つの水素は、芳香族または複素芳香族部分によって置換されている(IUPAC Recommendations 1995, Pure & Appl. Chem., Vol. 67, No. 819, pp. 1307-1375, 1995に掲載)。言い換えれば、すべてのモノアゾ染料の化学構造は、1つの化学部分-N=N-を含む。
【0094】
本出願で使用される「複素芳香族部分」という用語は周知であり、典型的には、その構造中に少なくとも1個のヘテロ原子を含む5員または6員の芳香族部分を指す。通常、ヘテロ原子はN、O、S、SeまたはTe原子であり、より好ましくはN、OまたはS原子であり、さらにより好ましくはN原子である。複素芳香族部分の具体例としては、例えば、フラン、チオフェン、ピラン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、3H-ピラゾール-3-オン、ピラゾリン-5-オン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、チアゾール、オキサゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、セレナゾールおよびテルラゾールが挙げられる。複素芳香族部分のさらなる例としては、例えば、インドリジン、プリン、プテリジン、カルボリン、ピロロイミダゾール、ピロロトリアゾール、ピラゾロイミダゾール、ピラゾロトリアゾール、ピラゾロピリミジン、ピラゾロトリアジン、トリアゾロピリジン、テトラアザインデン、イミダゾイミダゾール、イミダゾピリジン、イミダゾピラジン、イミダゾピリミジン、イミダゾピリダジン、オキサゾロピリジン、オキサゾロピラジン、オキサゾロピリミジン、オキサゾロピリダジン、チアゾロピリジン、チアゾロピラジン、チアゾロピリミジン、チアゾロピリダジン、ピリジノピラジン、ピラジノピラジン、ピラジノピリダジン、ナフチリジン、イミダゾトリアジンおよび1H-ペリミジンが挙げられる。
【0095】
複素芳香族部分は通常、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アミノ、アルコキシル、アリールオキシ、アシル、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アシルオキシ、アシルアミノ、アルコキシカルボニルアミノ、アリールオキシカルボニルアミノ、スルホニルアミノ、スルファモイル、-カルバモイル、アルキルチオ、アリールチオ、スルホニル、シアノおよび複素環式基ならびにハロゲン原子であり得る1個または数個の置換基で置換されている。より好ましいのは、アルキル、アルケニル、アリール、アルコキシル、アリールオキシ、シアノおよび複素環式基ならびにハロゲン原子であり、さらにより好ましいのは、アルキル、アリール、アルコキシル、アリールオキシおよび芳香族複素環式基であり、特に好ましいのは、アルキル、アリール基、アルコキシルおよび芳香族複素環式基である。
【0096】
本発明で使用されるモノアゾ染料の具体例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない:
ソルベントレッド195(シアノ-5-[[5-シアノ-2,6-ビス[(3-メトキシプロピル)アミノ]-4-メチルピリジン-3-イル]アゾ]-3-メチル-2-チオフェンカルボン酸メチルエステル);
ディスパースイエロー241(5-[(3,4-ジクロロフェニル)アゾ]-1,2-ジヒドロ-6-ヒドロキシ-1,4-ジメチル-2-オキソニコチノニトリル);
ソルベントイエロー16(5-メチル-2-フェニル-4-フェニルアゾ-4H-ピラゾール-3-オン);
ソルベントイエロー18(4-[(2,4-ジメチルフェニル)アゾ]-2,4-ジヒドロ-5-メチル-2-フェニル-3H-ピラゾール-3-オン);
ソルベントイエロー21(3-[(1-オキソナフタレン-2-イリデン)メチルヒドラジニリデン]-1-プロパ-2-エニルインドール-2-オン);
ソルベントイエロー72(4-((o-メトキシフェニル)アゾ)-3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン);
ソルベントイエロー82、ソルベントイエロー21(ビス[2-[(4,5-ジヒドロ-3-メチル-5-オキソ-1-フェニル-1H-ピラゾール-4-イル)アゾ]ベンゾアト(2-)]クロメート);
ソルベントイエロー16(5-メチル-2-フェニル-4-フェニルアゾ-4H-ピラゾール-3-オン);
ソルベントブラック3(2,3-ジヒドロ-2,2-ジメチル-6-((4-(フェニルアゾ)-1-ナフチル)アゾ)-1H-ペリミジン)。
【0097】
アントラキノン染料は、その構造中に少なくとも1つのアントラキノン部分を有する染料である。適切なアントラキノン染料の例としては、(カラーインデックスC.I.)ソルベントイエロー117、163、167、189;ソルベントオレンジ77、86;ソルベントレッド111、143、145、146、150、151、155、168、169、172、175、181、207、222、227、230、245、247;ソルベントバイオレット11、13、14、26、31、36、37、38、45、47、48、51、59、60;ソルベントブルー14、18、35、36、45、58、59、59:1、63、68、69、78、79、83、94、98、100、101、102、104、105、111、112、122、128、132、136、139;ソルベントグリーン3、28、29、32、33;アシッドレッド80;アシッドグリーン25、27、28、41;アシッドバイオレット34;アシッドブルー25、27、40、45、78、80、112;ディスパースイエロー51;ディスパースバイオレット26、27;ディスパースブルー1、14、56、60;ダイレクトブルー40;モダンレッド3、11;およびモダンブルー8が挙げられる。
【0098】
本発明での使用に適したペリノン染料の例としては、(カラーインデックスC.I.)ソルベントオレンジ60、78、90;ソルベントレッド135、162、179;ソルベントバイオレット29などが挙げられる。
【0099】
適切なキノフタロン染料としては、(カラーインデックスC.I.)ソルベントイエロー33、114、128、129、ディスパースイエロー14、49、54などが挙げられる。
【0100】
適切なピラゾロン染料としては、例えばソルベントイエロー93(4-(4,5-ジヒドロ-1-フェニル-3-メチル-5-オキソ-1H-ピラゾール-4-イリデンメチル)-1-フェニル-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン)が挙げられる。多くの場合、ピラゾロン染料は上記で定義されたようなモナゾ基を含み、モノアゾ染料の好ましい例として挙げることができる。
【0101】
好ましい一実施形態では、少なくとも1つの有機染料Cは、以下のものから選択される:
ソルベントイエロー16(5-メチル-2-フェニル-4-フェニルアゾ-4H-ピラゾール-3-オン);
ソルベントイエロー18(4-[(2,4-ジメチルフェニル)アゾ]-2,4-ジヒドロ-5-メチル-2-フェニル-3H-ピラゾール-3-オン);
ソルベントイエロー21(3-[(1-オキソナフタレン-2-イリデン)メチルヒドラジニリデン]-1-プロパ-2-エニルインドール-2-オン);
ソルベントイエロー72(4-((o-メトキシフェニル)アゾ)-3-メチル-1-フェニル-2-ピラゾリン-5-オン);
ソルベントイエロー82、ソルベントイエロー16(5-メチル-2-フェニル-4-フェニルアゾ-4H-ピラゾール-3-オン);
ソルベントイエロー93(4-(4,5-ジヒドロ-1-フェニル-3-メチル-5-オキソ-1H-ピラゾール-4-イリデンメチル)-1-フェニル-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン);
ソルベントイエロー114(2-(3-ヒドロキシキノリン-2-イル)インダン-1,3-ジオン);
ソルベントイエロー163(1,8-ビス(フェニルチオ)アントラキノン);
ディスパースイエロー241(5-[(3,4-ジクロロフェニル)アゾ]-1,2-ジヒドロ-6-ヒドロキシ-1,4-ジメチル-2-オキソニコチノニトリル);
ソルベントオレンジ60(12H-フタロペリン-12-オン);
ソルベントオレンジ116(4-メチル-2,6-ビス-p-トリルアミノ-5-(2-トリフルオロメチルフェニルアゾ)ニコチノニトリル);
ソルベントレッド195(シアノ-5-[[5-シアノ-2,6-ビス[(3-メトキシプロピル)アミノ]-4-メチルピリジン-3-イル]アゾ]-3-メチル-2-チオフェンカルボン酸メチルエステル);
ソルベントレッド52(3-メチル-6-[(4-メチルフェニル)アミノ]-3H-ナフト[1,2,3-de]キノリン-2,7-ジオン);および
ソルベントレッド135(8,9,10,11-テトラクロロ-12H-フタロペリン-12-オン);
ソルベントグリーン28(1,4-ビス-(4-ブチルフェニルアミノ)-5,8-ジヒドロキシアントラキノン);
ソルベントグリーン3(1,4-ビス(p-トリルアミノ)アントラキノン);
ソルベントブルー104(1,4-ビス(メシチルアミノ)アントラキノン);
ソルベントバイオレット59(1,4-ジアミノ-2,3-ジフェノキシアントラキノン);
ソルベントバイオレット13(1-ヒドロキシ-4-(4-メチルアニリノ)アントラセン-9,10-ジオン);
ソルベントブラック3(2,3-ジヒドロ-2,2-ジメチル-6-((4-(フェニルアゾ)-1-ナフチル)アゾ)-1H-ペリミジン)。
【0102】
特に、有機染料Cは、黄色、橙色、赤色および褐色の有機染料から選択される、好ましくは上述の少なくとも1つの有機染料と、任意に、遮光成分としての、緑色、青色、紫色および黒色の有機染料から選択される、好ましくは上述の少なくとも1つの有機染料とを含む。典型的には、緑色、青色、紫色および黒色の有機染料から選択される前記遮光成分は、有機染料C全体に対して(すなわち純粋な有機染料の総量に対して)、最大10重量%、好ましくは0.01~10重量%の量で存在することができる。特に、有機染料Cは、有機染料C全体に対して(すなわち、純粋な有機染料の総量に対して)、少なくとも80重量%、より好ましくは少なくとも90重量%、さらにより好ましくは90~100重量%の、黄色、橙色、赤色および褐色の有機染料から選択される、好ましくは黄色、橙色および赤色の有機染料から選択される、典型的には上述の有機染料を含む。
【0103】
より好ましくは、少なくとも1つの有機染料Cは、以下:
ソルベントイエロー93(4-(4,5-ジヒドロ-1-フェニル-3-メチル-5-オキソ-1H-ピラゾール-4-イリデンメチル)-1-フェニル-3-メチル-1H-ピラゾール-5(4H)-オン);
ソルベントオレンジ60(12H-フタロペリン-12-オン);
ソルベントオレンジ116(4-メチル-2,6-ビス-p-トリルアミノ-5-(2-トリフルオロメチルフェニルアゾ)ニコチノニトリル);
ソルベントレッド195(シアノ-5-[[5-シアノ-2,6-ビス[(3-メトキシプロピル)アミノ]-4-メチルピリジン-3-イル]アゾ]-3-メチル-2-チオフェンカルボン酸メチルエステル);
ソルベントレッド52(3-メチル-6-[(4-メチルフェニル)アミノ]-3H-ナフト[1,2,3-de]キノリン-2,7-ジオン);および
ソルベントレッド135(8,9,10,11-テトラクロロ-12H-フタロペリン-12-オン)
から選択される。
【0104】
好ましい一実施形態によれば、少なくとも1つの有機染料Cは、ソルベントレッド195および/またはソルベントレッド135を含み(好ましくはそれから構成され)、好ましくは、熱可塑性成形用組成物は、赤色の印象を示す。
【0105】
別の好ましい実施形態によれば、少なくとも1つの有機染料Cは、ソルベントオレンジ60を含み(好ましくはそれから構成され)、好ましくは、熱可塑性成形用組成物は、橙色の印象を示す。
【0106】
追加成分D
本発明による熱可塑性成形用組成物は、1つ以上の任意の追加成分D、例えば有機顔料、Bとは異なる無機顔料、散乱粒子、耐衝撃性改良剤、ならびに他の広く知られている添加剤および助剤を含むこともできる。例えば、広く知られている添加剤および助剤は、帯電防止剤、酸化防止剤、離型剤、難燃剤、滑剤、流動性向上剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤および有機リン化合物、例えばホスフィットまたはホスホネート、顔料、耐候性を付与する薬剤および可塑剤から選択することができる。添加剤の選択および量は、使用目的に応じて調整することができる。
【0107】
好ましい一実施形態では、本発明による熱可塑性成形用組成物は、顔料、特に有機顔料および/またはBとは異なる無機顔料、散乱粒子、耐衝撃性改良剤、帯電防止剤、酸化防止剤、離型剤、難燃剤、滑剤、流動性向上剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤および有機リン化合物、例えばホスフィットまたはホスホネート、耐候性を付与する薬剤および可塑剤から選択される少なくとも1つの追加の添加剤Dを含む。
【0108】
典型的には、任意の追加成分Dは、熱可塑性成形用組成物全体に対して0.00001~50.0重量%、好ましくは0.00001~40.0重量%、また好ましくは0.00001~30.0重量%、また好ましくは0.0001~20重量%、また好ましくは0.001~10重量%の量で存在する。総じて、添加剤の選択および量は、使用目的に応じて調整することができる。これらの添加剤によって、得られる着色された成形用組成物の比色値および耐候安定性が過度に損なわれるべきではない。
【0109】
例えば、本発明による熱可塑性成形用組成物は、追加成分Dとして、BおよびCとは異なる1つ以上の着色剤を任意に含むことができる。例えば、そのような追加の着色剤は、Bとは異なる有機顔料および/または無機顔料から選択することができる。任意の追加成分Dとして使用される適切な顔料の例としては、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化鉄(例えば、Lanxess製Bayferrox(登録商標)タイプの顔料)、チタン酸マグネシウム、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、カーボンブラック、ウルトラマリンブルー、およびまた有機顔料のクラス全体が挙げられる。典型的には、適切な有機顔料は、フタロシアニン(例えばCuフタロシアニン)、ベンズイミダゾロン顔料、例えばピグメントイエロー151;イソインドリン誘導体、例えばピグメントイエロー139;ジアゾ顔料、例えばピグメントレッド242;ピグメントレッド242;およびアントラキノン顔料、例えばピグメントイエロー147(1-({4-[(9,10-ジオキソ-9,10-ジヒドロアントラセン-1-イル)アミノ]-6-フェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル}アミノ)-9,10-ジヒドロアントラセン-9,10-ジオン)から選択することができる。
【0110】
本発明で使用されるフタロシアニン(またはフタロシアニン顔料と称される)は特に限定されず、無金属フタロシアニン、コバルトフタロシアニン、銅フタロシアニン、ニッケルフタロシアニン、鉄フタロシアニン、マンガンフタロシアニンおよび亜鉛フタロシアニンから選択することができ、より好ましくは銅フタロシアニンから選択することができる。特に、適切な銅フタロシアニン顔料は、ピグメントブルー1、2、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、17:1、56、60および63、ならびにピグメントグリーン7および36から選択することができる。
【0111】
好ましくは、任意の追加成分Dとして使用される顔料は、硫酸バリウム、金属酸化物、好ましくは酸化亜鉛、酸化鉄および/または二酸化チタン;フタロシアニン(例えばCuフタロシアニン)およびピグメントイエロー147から選択することができる。
【0112】
好ましい一実施形態によれば、本発明による熱可塑性成形用組成物は、カーボンブラックおよび/または白色無機顔料、例えば二酸化チタンを含まない。
【0113】
散乱粒子
本発明のいくつかの実施形態では、熱可塑性成形用組成物は、さらなる成分Dとして、有機および/または無機散乱粒子をさらに含んでもよく、前記散乱粒子は、典型的にはポリマーマトリックスA中に分散されている。散乱粒子の選択は特に限定されないが、典型的には、散乱粒子の屈折率がポリマーマトリックスの屈折率と少なくとも0.01異なるように選択される。屈折率は、規格ISO 489(1999)に規定されているように、23℃で589nmのNaD線で測定することができる。典型的には、散乱粒子は、熱可塑性成形用組成物全体に対して0.1~25重量%の量で存在することができる。
【0114】
散乱粒子は通常、0.01μm~100.0μmの重量平均粒径を有する。散乱粒子の、いわゆる体積平均d50値(粒子の50体積パーセントが規定の平均粒度を下回る粒度を有する)として示される重量平均粒径は、当業者に公知の方法により、例えば、Beckman Coulter Inc.製LS 13 320 Laser Diffraction Particle Size Analyzerなどの市販の装置を使用して、規格ISO 13320-1(2009)に準拠して光子相関分光法により求めることができる。典型的には、散乱粒子のサイズは、Beckman Coulter LS 13 320 laser diffraction particle size analyser、トルネード乾燥粉末システムを用いて、レーザー光散乱(室温、23℃)により乾燥粉末の形態でそれぞれ求められる。測定は、マニュアルに記載されている方法で行われる。コンピュータ支援分析には、Mieモデルが使用される。
【0115】
好ましい一実施形態では、散乱粒子は、ポリマーマトリックスA中に分散されており、散乱粒子は、0.01μm~100.0μmの重量平均粒径を有し、散乱粒子の屈折率は、ポリマーマトリックスの屈折率と少なくとも0.01異なる。
【0116】
無機散乱粒子は、従来の無機不透明化剤、例えば硫酸バリウム、炭酸カルシウム、二酸化チタンまたは酸化亜鉛を含むことができる。
【0117】
有機散乱粒子は、典型的には、ポリアルキル(メタ)アクリレート、シリコーン、ポリスチレンなどの架橋ポリマー材料からなる球状散乱ビーズである。本発明において、「球状」という用語は、散乱ビーズが好ましくは球状の形状を有することを意味するが、製造方法の結果として、他の形状を有する散乱ビーズが存在する可能性もあり、また散乱ビーズの形状が理想的な球状の形状から逸脱する可能性もあることは当業者には明らかである。したがって、「球状」という用語は、散乱ビーズの最小寸法に対する最大寸法の比が4以下、好ましくは2以下であることを示し、これらの寸法のそれぞれは、散乱ビーズの重心を通るようにして測定される。散乱ビーズの数に基づいて、好ましくは少なくとも70%、特に少なくとも90%が球状である。
【0118】
架橋ポリスチレンから構成される好ましい散乱ビーズは、Techpolymer(登録商標)SBX-4、Techpolymer(登録商標)SBX-6、Techpolymer(登録商標)SBX-8およびTechpolymer(登録商標)SBX-12の商標でSekisui Plastics Co., Ltd.から市販されている。
【0119】
散乱剤として使用される他の特に好ましい球状プラスチック粒子は、架橋シリコーンを含む。本発明で特に好ましく使用されるシリコーン散乱剤は、Momentive Performance Materials Inc.からTOSPEARL(登録商標)120およびTOSPEARL(登録商標)3120として入手可能である。
【0120】
耐衝撃性改良剤
熱可塑性成形用組成物がさらなる成分Dとして1つ以上の耐衝撃性改良剤を含む場合、本発明による熱可塑性成形用組成物の機械的特性を、所望の目的に追加的に調整することができる。典型的には、耐衝撃性改良剤は、熱可塑性成形用組成物全体に対して5.0~50.0重量%、好ましくは10.0~40.0重量%の量で存在することができる。
【0121】
本発明で使用される耐衝撃性改良剤は周知であり、異なる化学組成および異なるポリマー構造を有することができる。耐衝撃性改良剤は、架橋されていてもよいし熱可塑性であってもよい。さらに、耐衝撃性改良剤は、コア-シェル型またはコア-シェル-シェル型粒子としての粒状であってもよい。典型的には、粒状耐衝撃性改良剤は、20nm~500nm、好ましくは50nm~450nm、より好ましくは100nm~400nm、最も好ましくは150nm~400nmの範囲の平均粒径を有する。この文脈における「粒状耐衝撃性改良剤」とは、総じてコア、コア-シェル型、コア-シェル-シェル型またはコア-シェル-シェル-シェル型構造を有する架橋耐衝撃性改良剤を意味する。粒状耐衝撃性改良剤の平均粒径は、当業者に公知の方法、例えば、規格DIN ISO 13321:1996に準拠した光子相関分光法によって求めることができる。
【0122】
さらに好ましい耐衝撃性改良剤は、コア-シェル型またはコア-シェル-シェル型構造を有することができ、かつ乳化重合によって得られるポリマー粒子である(例えば、欧州特許出願公開第0113924号明細書、欧州特許出願公開第0522351号明細書、欧州特許出願公開第0465049号明細書および欧州特許出願公開第0683028号明細書を参照のこと)。本発明は、典型的には、20nm~500nm、好ましくは50nm~450nm、より好ましくは150nm~400nm、最も好ましくは200nm~400nmの範囲の、これらのコア-シェル型またはコア-シェル-シェル型ポリマー粒子の適切な平均粒径を必要とする。
【0123】
典型的には、適切なコア-シェル型粒子は、例えば架橋ブチルアクリレートをベースとする軟質エラストマーコアと、典型的にはマトリックスと同一または類似のモノマーをベースとする、例えばメチルメタクリレートおよび任意に適切なコモノマー、例えばメチルアクリレートおよび/またはエチルアクリレートをベースとする硬質シェルとを含む。コアと2つのシェルとを有する3層または3相構造は、以下のように製造することができる。最も内側の(硬質)シェルは、例えば、メチルメタクリレートと、少量の割合のコモノマー、例えばエチルアクリレートと、ある割合の架橋剤、例えばアリルメタクリレートとから構成することができる。中間(軟質)エラストマーシェルは、例えば、ブチルアクリレートと、必要に応じてスチレンとを含むコポリマーから構成することができ、一方で、最も外側の(硬質)シェルは、マトリックスポリマーと同じであるため、マトリックスとの相容性および良好な連結性をもたらす。耐衝撃性改良剤のエラストマー相、例えば2層コア-シェル型構造の軟質コアまたは3層コア-シェル型構造の中間エラストマーシェルにおけるポリブチルアクリレートの割合は、耐衝撃性改良作用を決定づけるものであり、エラストマー相の総重量に対して好ましくは20.0重量%~99.0重量%の範囲、特に好ましくは30.0重量%~98.0重量%の範囲、さらにより好ましくは40.0重量%~97.0重量%の範囲である。
【0124】
熱可塑性耐衝撃性改良剤は、粒状耐衝撃性改良剤とは作用機序が異なる。これらは総じて、マトリックス材料と混合される。例えばブロックコポリマーを使用する場合に起こるように、ドメインが形成される場合、これらのドメインの好ましいサイズ(そのサイズは、例えば顕微鏡法によって決定することができる)は、コア-シェル型粒子の好ましいサイズに対応する。
【0125】
熱可塑性耐衝撃性改良剤には様々な種類がある。その一例は、脂肪族熱可塑性ポリウレタン(TPU)、例えばCovestro AGから市販されているDesmopan(登録商標)製品である。例えば、TPUであるDesmopan(登録商標)WDP 85784A、WDP 85092A、WDP 89085AおよびWDP 89051Dが耐衝撃性改良剤として特に適しており、これらはすべて1.490~1.500の屈折率を有する。
【0126】
熱可塑性耐衝撃性改良剤のさらなるクラスは、メタクリレート-アクリレートブロックコポリマー、特にアクリルTPEであり、これはPMMA-ポリ-n-ブチルアクリレート-PMMAトリブロックコポリマーを含み、例えばKurarayからKurarity(登録商標)の製品名で市販されている。ポリ-n-ブチルアクリレートブロックは、10nm~20nmのサイズを有するポリマーマトリックス中にナノドメインを形成する。
【0127】
着色組成物およびその製造方法
別の態様において、本発明は、以下:
金属ニオブ(Nb)、スズ(Sn)および亜鉛(Zn)を含む混合金属酸化物もしくは混合金属オキソ硫化物B1;ならびに/または金属チタン(Ti)、スズ(Sn)および亜鉛(Zn)を含む混合金属酸化物もしくは混合金属オキソ硫化物B2から選択される、上記で定義された少なくとも1つの無機顔料B;
好ましくはモノアゾ染料、ペリノン染料、キノフタロン染料およびアントラキノン染料から選択される、上記で定義された少なくとも1つの有機染料C;ならびに
少なくとも1つの熱可塑性ポリマー、特に上述の熱可塑性ポリマーを含む分散媒体、典型的には固体分散媒体、または液体分散媒体
を含む着色組成物、好ましくはマスターバッチまたは液体着色組成物を対象とする。
【0128】
本発明による熱可塑性成形用組成物に関連して上述した定義および実施形態が、同様に適用される。特に、成分A、B、Cおよび任意成分Dの説明は、本発明による着色組成物にも同様に適用される。
【0129】
マスターバッチとは、着色成分BおよびCと固体分散媒体とを含む固体またはロウ状の配合物を意味すると理解される。典型的には、固体分散媒体は、例えば上述の熱可塑性ポリマー、および広く知られている天然ロウや合成ロウのようなロウから選択することができる。マスターバッチ中の着色成分BおよびCの濃度は、マスターバッチが本発明による着色された熱可塑性成形用組成物の製造に使用される際に所望の色印象が生じるように調整される。例えば、マスターバッチは、ポリマー粒状物またはポリマー粉末であってよい。
【0130】
液体着色組成物とは、液体分散媒体を含む着色組成物を意味すると理解される。例えば、液体着色媒体は、溶液、分散液、ゲルまたはペースト状組成物であることができる。好ましくは、液体着色組成物は、少なくとも1つの分散剤を含む水性分散媒体中の着色成分BおよびCの分散液である。液体着色組成物中の着色成分BおよびCの濃度は、液体着色組成物が本発明による着色された熱可塑性成形用組成物の製造に使用される際に所望の色の印象が生じるように調整される。
【0131】
好ましい一実施形態では、本発明による着色組成物はマスターバッチであり、該マスターバッチは、それぞれ該マスターバッチ全体に対して以下:
0.01~40.0重量%、好ましくは5.0~30.0重量%の、上記で定義された少なくとも1つの無機顔料B;
0.01~40.0重量%、好ましくは5.0~30.0重量%の、上記で定義された少なくとも1つの有機染料C;
30.0~99.98重量%、好ましくは50.0~90.0重量%の、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーおよび/または少なくとも1つのロウを含む(好ましくは実質的にそれからなる)固体分散媒体;ならびに
0.0~10.0重量%、好ましくは0.0~5.0重量%の1つ以上の補助添加剤
を含む。
【0132】
好ましくは、固体分散媒体は、上述の熱可塑性ポリマー、および広く知られている天然または合成ロウから選択される。マスターバッチ中の熱可塑性ポリマーの選択は、熱可塑性ポリマーが着色および熱可塑性加工、特に射出成形および押出成形に適している限り、特に限定されない。好ましくは、マスターバッチ中の熱可塑性ポリマーは、上述の本発明による熱可塑性成形用組成物と実質的に同じである。例えば、熱可塑性ポリマーは、有利には、ポリアルキル(メタ)アクリレート、ポリメチル(メタ)アクリルイミド、ポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマー、ポリスチレン、ポリスチレンコポリマー、アクリロニトリルコポリマー、ポリカーボネート、ポリエステル(好ましくはポリエチレンテレフタレート)、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデンまたはそれらの混合物からなる群から有利に選択することができる。
【0133】
マスターバッチ中のロウの選択は、天然ロウまたは合成ロウが着色および熱可塑性加工、特に射出成形および押出成形に適している限り、特に限定されない。例えば、天然ロウとしては、動物性、植物性および鉱物性由来のロウならびに化学修飾天然ロウが挙げられ、動物性ロウとしては、例えば、ミツロウ、ラノリン、ラノセリンおよびシェラックロウが挙げられ、植物性ロウとしては、例えば、ダイズ、カルナウバ、キャンデリラ、ホホバおよびオウリコウリロウが挙げられ、鉱物性ロウとしては、例えば、ペトロラタムロウおよび地ロウまたは化石ロウ、例えばパラフィン、ペトロラタムおよびモンタンロウが挙げられる。例えば、合成ロウは人工ロウであり、炭化水素、アルコール、グリコール、アミン、アミドまたはエステルのような供給源から誘導可能である。合成ロウとしては、例えば、ポリオレフィンロウ、ポリテトラフルオロエチレン、フィッシャートロプシュワックス、合成トリグリセリド、脂肪酸の塩(例えば、モンタン酸カルシウム)、固体脂肪酸エステル(例えば、エチレングリコール、ブチレングリコールまたはソルビトールとC16~C32脂肪酸、例えばパルミチン酸、ステアリン酸またはモンタン酸とのエステル)、ワックスエステル(例えば、脂肪酸と脂肪アルコールとのエステル、例えばステアリルステアレート)、脂肪酸アミン、脂肪アミド、ポリアミドロウ、ならびに塩素化ロウおよび他の化学修飾ロウが挙げられる。
【0134】
任意の補助添加剤は、上記の追加成分Dとして説明した添加剤および助剤から選択することができる。例えば、補助添加剤は、帯電防止剤、酸化防止剤、離型剤、滑剤、流動性向上剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤および有機リン化合物、例えばホスフィットまたはホスホネートから選択することができる。添加剤の選択および量は、使用目的に応じて調整することができる。また、マスターバッチは、着色成分BおよびCに加えて、1つ以上のさらなる着色剤、例えば上述のBとは異なる有機顔料または無機顔料を含むことができる。
【0135】
別の好ましい実施形態では、本発明による着色組成物は液体着色組成物であり、該液体着色組成物は、それぞれ該液体着色組成物全体に対して以下:
0.5~50.0重量%、好ましくは5.0~40.0重量%の、上記で定義された少なくとも1つの無機顔料B;
0.5~50.0重量%、好ましくは5.0~40.0重量%の、上記で定義された少なくとも1つの有機染料C;
1.0~30.0重量%、好ましくは5.0~25.0重量%の、少なくとも1つの分散剤;
48.0~98.0重量%、好ましくは48.0~85.0重量%の、液体分散媒体、例えば脱塩水および/または有機溶媒;ならびに
0.0~50.0重量%、好ましくは0.0~10.0重量%、より好ましくは0.0~5.0重量%の、1つ以上の補助添加剤
を含む。
【0136】
典型的には、液体分散媒体の量は、液体着色組成物の各成分の重量部の合計が100重量%となるように調整される。
【0137】
典型的には、液体分散媒体は、水、または水と、水との混和性を示す1つ以上の極性有機溶媒、例えばアルコール、エステル、ケトン、アミド、スルホキシドおよびそれらの混合物との混合物から選択することができる。さらに、液体分散媒体は、有機溶媒から選択することができる。有機溶媒の例としては、広く知られている有機溶媒、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル-n-ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルイソブチルケトン、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、2-メトキシ-2-プロパノールおよびテトラグライムまたはそれらの混合物が挙げられる。
【0138】
分散剤の選択は、添加剤が、得られる着色された成形用組成物の特性に悪影響を及ぼさない限り、特に限定されない。pHに依存しない分散剤の使用が好ましい。例えば、分散剤は、広く知られている界面活性剤および/または保護コロイドから選択することができる。適切な界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤およびそれらの相容性混合物が挙げられる。適切な従来のアニオン性界面活性剤の例は、典型的にはC8~C12アルキル基を有するアルキル硫酸スルフェートのアルカリ金属塩およびアンモニウム塩(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)、典型的にはC12~C18アルキル基を有するエトキシル化アルカノールの硫酸ヘミエステルのアルカリ金属塩およびアンモニウム塩(例えば、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム)、および典型的にはC4~C12アルキル基を有するエトキシル化アルキルフェノールのアルカリ金属塩およびアンモニウム塩、および典型的にはC12~C18アルキル基を有するアルキルスルホン酸のアルカリ金属塩およびアンモニウム塩である。従来の非イオン性乳化剤の例は、オキシル化モノ-、ジ-およびトリアルキルフェノール、ならびにまたエトキシル化脂肪アルコールである。カチオン性乳化剤の例は、特にホスホニウム塩、スルホニウム塩、トロピリウム塩、モルホリニウム塩、オキサゾリニウム塩、イミダゾリニウム塩、ピリジニウム塩、および第一級、第二級、第三級または第四級アンモニウム塩であって、典型的にはC8~C18アルキル、アルキルアリールまたは複素環式基を有するものである。
【0139】
例えば、分散剤は、少なくとも無水マレイン酸、スチレンおよびアミノポリエーテルをモノマー単位として含む高分子量コポリマーであってもよい。あるいはまた、分散剤は、メタクリル酸と疎水性メタクリレートとのコポリマーであってもよい。本明細書で使用される「疎水性メタクリレート」という用語は、好ましくは、少なくとも3個以上24個以下の炭素原子を有するアルコールとメタクリル酸とのエステルを指す。さらに、分散剤は、ポリエーテル、好ましくはエチレンオキシド、プロピレンオキシドおよび/またはブチレンオキシドとスチレンオキシドのコポリマーであってよい。
【0140】
適切な分散剤としては、例えば、BASF SEから市販されているポリアクリレートDispex(登録商標)Ultra 4550(旧EFKA(登録商標)4550)が挙げられる。このポリマーは実質的に、モノマーα-メチルスチレン、2-エチルヘキシルアクリレートおよびMPEGメタクリレート(メトキシポリ(エチレングリコール)モノメタクリレート)からなる。適切な分散剤のさらなる例としては、Evonik Industries AGから入手可能なTEGO(登録商標)Dispers 750Wおよび755W、ならびにBYK-Chemie GmbHから入手可能なDisperbyk(登録商標)190が挙げられる。
【0141】
液体着色組成物は、分散剤に加えて、1つ以上の補助添加剤を含むことができる。例えば、補助添加剤は、腐敗または細菌分解を防止するための薬剤、殺菌剤、レベリング剤、増粘剤および消泡剤から選択することができる。また、液体着色組成物は、着色成分BおよびCに加えて、1つ以上のさらなる着色剤、例えば、上述のBとは異なる有機顔料または無機顔料を含むことができる。
【0142】
好ましい一実施形態では、液体着色組成物は、1つ以上の増粘剤を含むことができる。好ましい増粘剤としては、特にセルロース、特にエチルセルロースが挙げられる。さらなる可能性として、水溶性またはアルカリ可溶性の固体製品として、コロイド溶液として、または水性分散液として入手可能なカルボキシレート含有ポリマー、例えば酢酸ビニルおよびクロトン酸をベースとするホモおよびコポリマー、または部分的に加水分解されたポリ(メタ)アクリレートを増粘剤として使用することができる。特に好ましいのは、アクリル酸および/またはメタクリル酸のホモおよびコポリマーのナトリウム塩の形態である。
【0143】
さらに、本発明は、本発明による着色組成物の製造方法であって、少なくとも1つの無機顔料B、少なくとも有機染料C、分散媒体、および任意にさらなる成分を混合するステップを含む方法を対象とする。
【0144】
特に、本発明は、本発明によるマスターバッチの製造方法であって、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含む(好ましくは実質的にそれからなる)溶融分散媒体に、無機顔料Bおよび有機染料Cならびに任意に追加成分を添加する方法に関する。典型的には、前記ステップは、押出成形、混練または粉砕などの従来の合一、混合および均質化ステップによって実施することができる。このようなステップのさらなる詳細については、本発明による熱可塑性成形用組成物の製造方法に関連して後述する。典型的には、本発明マスターバッチは、ポリマー粒状物またはポリマー粉末の形態で得られる。
【0145】
特に、本発明は、本発明による液体着色組成物の製造方法であって、液体分散媒体と分散剤とを含む液相に、無機顔料Bおよび有機染料Cならびに任意に追加の成分を添加する方法に関する。典型的には、この混合物は、集中的な撹拌、または混練や粉砕のような他の従来の均質化プロセスによって均質に混合される。典型的には、本発明による液体着色組成物は、溶液、分散液、ゲル、またはペースト状組成物の形態で得られる。
【0146】
本発明による熱可塑性成形用組成物の製造方法
本発明はまた、上述の熱可塑性成形用組成物の製造方法も対象としており、本方法は、以下:
i.上記で定義されたポリマーマトリックスAを提供するステップであって、前記ポリマーマトリックスAは、好ましくは少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含み、前記熱可塑性ポリマーは、ポリアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ポリメチルメタクリレートPMMA)、ポリ(メタ)アクリルイミド(例えば、ポリメチルメタクリルイミドPMMI)、ポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマー、ポリスチレン、ポリスチレンコポリマー、アクリロニトリルコポリマー、ポリカーボネート(好ましくは、ビスフェノールから誘導される芳香族ポリカーボネートまたはイソソルビドから誘導されるポリカーボネート)、ポリエステル(好ましくは、芳香族ポリエステル、より好ましくは、ポリエチレンテレフタレート)、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)およびポリオレフィン(例えば、シクロオレフィンコポリマーCOCまたは透明化ポリプロピレン)から選択され、より好ましくは、ポリアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート)、ポリカーボネート(例えば、ビスフェノールまたはイソソルビドから誘導されるポリカーボネート)およびスチレン-アクリロニトリルコポリマー(SAN)から選択されるものとするステップ;および
ii.ステップi)で得られたポリマーマトリックスAに、上記で定義された少なくとも1つの無機顔料Bおよび上記で定義された少なくとも1つの有機染料Cを添加するステップ
を含む。
【0147】
上述の定義および実施形態、例えば、成分A、B、Cおよび任意成分Dの説明は、本発明による熱可塑性成形用組成物の製造方法にも同様に適用される。
【0148】
一実施形態では、ステップii)において、単一の着色組成物をポリマーマトリックスに添加し、ここで、前記着色組成物は、無機顔料Bおよび有機染料Cを含む。特に、着色組成物は、上述のマスターバッチまたは液体着色組成物である。さらに別の一実施形態では、ステップii)において、2つ以上の着色組成物を添加することができ、ここで、1つの着色組成物は無機顔料Bを含み、他の着色組成物は有機染料Cを含むことができる。ステップii)において2つ以上の着色組成物を添加する場合、これらをどのような順序で添加してもよく、同時に添加してもよい。
【0149】
熱可塑性成形用組成物は、上記で定義された少なくとも1つの無機顔料Bおよび上記で定義された少なくとも1つの有機染料Cを熱可塑性マトリックスAに直接添加することによっても製造することができる。多くの場合、着色成分BおよびCは、製造業者から入手したまま使用することができる。
【0150】
好ましくは、ステップii)において、溶融ポリマーマトリックスAに無機顔料Bおよび有機染料Cを添加する。好ましくは、ステップii)を、150℃~350℃、好ましくは200℃~320℃、より好ましくは230℃~300℃の範囲の温度で実施する。好ましくは、ステップii)を、押出機中で、好ましくは150℃~350℃、好ましくは200℃~320℃、より好ましくは230℃~300℃の範囲の温度で実施する。熱可塑性ポリマーがポリアルキル(メタ)アクリレート(例えばPMMA)および/またはポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーである場合、ステップii)を、典型的には押出機中で、好ましくは200℃~320℃、より好ましくは230℃~300℃の範囲の温度で実施する。
【0151】
より好ましくは、本発明による熱可塑性成形用組成物の製造方法は、溶融形態のポリマーマトリックスAと、無機顔料B、有機染料Cおよび任意に追加成分Dとの混合を包含する。典型的には、そのような方法を、剪断力の作用下にある溶融物中で実施する。特に、前記ステップは、特に押出成形、混練または粉砕を通じた合一、混合および均質化による従来の組み込みプロセスによって実施することができる。任意に、溶融均質化の前の成分B、Cおよび任意に成分Dの合一および混合は、粉末予備混合物を使用して実施する。
【0152】
より好ましくは、ポリマーマトリックスAおよびマスターバッチ、液体着色組成物またはニートの成分B、Cおよび任意に成分Dを、スクリュ型押出機(例えば二軸押出機、ZSK)、混練機、ブラベンダーまたはバンバリーミルなどの従来の装置で、合一、混合、均質化(例えば押出成形)することができる。押出成形後、押出物を通常は冷却し、ペレット化する。個々の成分を予備混合し、その後、残りの成分を別々におよび/または同様に混合物として添加することも可能である。
【0153】
さらに別の一実施形態では、ポリマーマトリックスを溶融物の形態で提供し、そこに本発明による着色組成物、例えば液体組成物またはマスターバッチを添加し、好ましくはその後、混合および均質化する。また、ポリマーマトリックスA、無機顔料Bおよび有機染料Cの乾燥混合物を製造し、その後、この混合物を溶融することも可能である。さらに、熱可塑性ポリマーの製造プロセスの直後に、可塑性ポリマーに本発明による着色組成物を添加することも可能である。
【0154】
成形物品およびその製造方法
本発明はさらに、上述の本発明による熱可塑性成形用組成物から製造される(またはそれから構成される)成形物品に関し、好ましくは、成形物品は、押出成形物品またはモールド成形物品、特に射出成形物品である。別の態様において、本発明は、本発明による熱可塑性成形用組成物から、例えば射出成形、押出成形、ブロー成形、プレス成形、カレンダー成形、真空成形またはそれらの組み合わせにより前記成形物品を製造する方法に関する。
【0155】
例えば、本発明による熱可塑性成形用組成物および本発明による着色組成物に関連して記載された上述の定義および実施形態が、同様に適用される。特に、成分A、B、Cおよび任意成分Dの説明は、成形物品およびその製造方法にも同様に適用される。
【0156】
好ましくは、成形物品、特に射出成形物品は、複雑な幾何学的形状を有する。特に、成形物品は、異なる肉厚、1つ以上の穿孔、少なくとも1つの非平面またはこれらの特徴の組み合わせを有する。
【0157】
一実施形態では、複雑な成形物品、特に射出成形物品は、モールド成形物品内で変化する異なる肉厚を示し、典型的には1mm~30mmの範囲内で変化する。一例として、肉厚の変化は、成形物品の最小肉厚と最大肉厚との差により表すことができ、この差は、1mm超、好ましくは5mm超、特に好ましくは10mm超である。最大肉厚対最小肉厚の比は、好ましくは1:20超の範囲、より好ましくは1:10超の範囲であり、特に好ましくは1:4超、最も好ましくは1:2超である。
【0158】
別の実施形態では、複雑な成形物品、特に射出成形物品は、少なくとも1つの穿孔を示し、穿孔の部位では肉厚がゼロであり、穿孔の周囲領域は、典型的には上記の範囲内で、均一なまたは変化する肉厚を示し得る。
【0159】
別の実施形態では、複雑な成形物品、特に射出成形物品は、少なくとも1つの非平面を示し、この表面は、好ましくは凸面または凹面の設計である。
【0160】
さらに、本発明は、本発明による熱可塑性成形用組成物から、特に熱成形プロセスまたは溶融プロセスにより、特に押出成形または射出成形により成形物品を製造する方法を提供する。典型的には、前記方法は、150~350℃の範囲の温度を適用する。典型的には、適用される温度は、ポリマーマトリックスAおよび使用される熱可塑性ポリマーの熱的特性に依存する。
【0161】
例えば、本発明は、射出成形物品の製造方法であって、該方法は、上述の本発明による熱可塑性成形用組成物を射出成形し、その際、該熱可塑性成形用組成物を、モールド成形物品の製造が可能な金型内に射出するものとするステップを含む方法を対象とする。典型的には、150℃~350℃、好ましくは200℃~320℃、より好ましくは230℃~300℃の範囲の溶融温度を適用する。典型的には、50℃~100℃、好ましくは60℃~90℃の範囲の金型温度を適用する。
【0162】
典型的には、ポリメチルメタクリレート(コ)ポリマーなどのポリアルキル(メタ)アクリレートを含む溶融熱可塑性成形用組成物の温度を、本発明による射出成形プロセス中に、好ましくは210~270℃、より好ましくは240~250℃に保持する。射出成形ノズルの温度は、さらに好ましくは230~270℃、さらにより好ましくは240~250℃であり、射出成形金型の温度は、好ましくは40~80℃、より好ましくは50~60℃である。射出成形シリンダーの温度は、好ましくは220~260℃、より好ましくは230~250℃である。典型的には、熱可塑性成形用組成物を、50~1000barの範囲の圧力で金型内に射出する。ここで、ある特定の実施形態では、圧力を段階的に適用し、圧力は、第1の段階では50barであり、第2の段階では400barである。射出速度も段階的であってよく、第1の段階では0.01m/s~0.1m/sの範囲であり、第2の段階では0.1m/s~1m/sの範囲であり、可能な第3の段階では0.05m/s~0.5m/sの範囲である。ここでの計量ストロークは、好ましくはスクリュ直径の1倍~4倍である。
【0163】
本発明による方法は、上述の複雑なモールド成形物品の製造に非常に適している。対応する射出成形型の厚さの違い、特に穿孔、すなわちその周囲で溶融物が金型内に射出される領域は、材料が金型キャビティを充填する際の材料のレオロジーに顕著な影響を及ぼす。本発明において、複雑なモールド成形物品は、上述の特徴の1つ以上を有するモールド成形物品である。
【0164】
本発明のさらなる態様は、押出成形物品の製造方法であって、該方法は、本発明による熱可塑性成形用組成物を200℃~320℃、好ましくは230℃~300℃の範囲の温度で押出成形し、その際、該熱可塑性成形用組成物を溶融し、ダイキャストして最終物品を得るものとするステップを含む、方法に関する。
【0165】
熱可塑性ポリマーの押出成形は広く知られており、例えばKunststoffextrusionstechnik II [Plastics extrusion technology II], Hanser Verlag, 1986, p. 125 ff.に記載されている。
【0166】
好ましい一実施形態では、熱可塑性成形用組成物の溶融物を、押出機のノズルから2つのカレンダーロール間の隙間に押し出す。溶融物の最適温度は、例えば混合物の組成に依存し、したがって広い範囲で変化し得る。例えば、熱可塑性ポリマーがポリアルキル(メタ)アクリレートおよび/またはポリアルキル(メタ)アクリレートコポリマーである場合、ノズル入口における好ましい温度は150~300℃の範囲であり、特に好ましくは180~270℃の範囲であり、より特に好ましくは200~220℃の範囲である。カレンダーロールの温度は、好ましくは150℃以下、好ましくは60℃~140℃である。
【0167】
本発明を、以下の非限定的な実施例によってより詳細に説明する。
【0168】
実施例
試験方法
比色測定を、HunterLab製分光光度計UltraScan(登録商標)Proを用いて行った。耐候試験装置Xenotestでの色差を、分光光度計Varian Cary 5000を用いて測定した。
【0169】
標準色値(X、Y、Z)、色座標(L*、a*およびb*)、ならびに以下でCと表記する派生色値C*
ab(彩度)、以下でhと表記するhab(色相)および以下でL*と表記するL*
ab(輝度)を、規格DIN 5033(2017)、Part1-4に準拠して標準照明D65/10°を使用して求めた。
【0170】
すべての比色測定を、厚さ3mmの試験板3枚、標準照明D65/10°、拡散:8°のジオメトリーを用いて実施した。比色値C、h、L*、aおよびbを、DIN 5033-7(2017)に準拠して、拡散:8°(di:8°)ジオメトリーを用いて反射で測定した。透過率Y(D65/10°)を、規格DIN 5033(2017)、Part1-4および7に準拠して拡散照明および直接受光ジオメトリーならびに反射と同じジオメトリーを用いて測定した。
【0171】
耐候試験装置Xenotestを、以下のパラメータで実施した:
・デバイス:Xenotest Beta LM/1
・フィルター:Xenochrome 300フィルターシステム、昼光(ISO 4892-2)
・放射照度:60W/m2(300~400nm)
・温度:チャンバー38±3℃、ブラックスタンダード65±3℃
・湿度:65±10%RH
・乾燥102分、水スプレー18分。
【0172】
各試料の色差ΔE CIELAB 1976(D65、10°)を、規格DIN 6174に準拠して3000時間後の反射率測定により求めた。
【0173】
いずれも3000時間後のΔEが3より高い試験片を耐候安定性の低い試験片、ΔEが2~3の試験片を耐候安定性が中程度の試験片、ΔEが2未満の試験片を耐候安定性の優れた試験片と評価した。
【0174】
材料
以下の例では、ポリマーマトリックスA、顔料Bおよび染料Cとして以下の熱可塑性ポリマーを使用した:
ポリマーマトリックスA
A1 ポリメチルメタクリレート(PMMA)、PLEXIGLAS(登録商標)7H、Roehm GmbHから市販、メルトボリュームフローレートMVR(230℃、荷重3.8kg)1.4cm3/10min
A2 ポリカーボネート(PC)、Makrolon(登録商標)LED 2245、Covestroから市販、メルトボリュームフローレートMVR(300℃、荷重1.2kg)34cm3/10min
A3 スチレン-アクリロニトリルコポリマー(SAN)、Luran(登録商標)2560、nature、Ineos Styrolutionから市販。
【0175】
無機顔料B
B1 Shepherd Color Company製Yellow 10P150、パイロクロア構造をベースとするNb/S/Sn/Zn顔料であるピグメントイエロー227(純粋顔料として使用)
B2 Shepherd Color Company製Orange 10P340、ルチル構造をベースとするSn/Zn/Ti顔料であるピグメントイエロー216(純粋顔料として使用)
B3 KRONOS INTERNATIONAL, Inc.製KRONOS(登録商標) CL 2220、二酸化チタン顔料、アルミニウム、ケイ素およびポリシロキサン化合物で表面処理されたルチル顔料
B4 Heucodur Yellow 6R、ピグメントブラウン24、ルチル型をベースとするCr/Sb/Ti混合酸化物、CAS:68186-90-3(純粋顔料として使用)。
【0176】
有機染料C
C1 Clariant製Solvaperm(登録商標)Orange 3G、ソルベントオレンジ60、CAS 6925-69-5、ペリノン系染料(純粋な染料または1%の染料を含むPMMAベースのマスターバッチとして使用)
C2 Lanxess製Macrolex(登録商標)Red EG、ソルベントレッド135、CAS 20749-68-2、ペリノン系染料(純粋な染料として、または10%もしくは1%の染料を含むPMMAベースのマスターバッチとして使用)
C3 Oracet(登録商標)Red 454、BASF製、ソルベントレッド195、CAS 72968-71-9、モノアゾ系染料(純粋な染料として、または10%もしくは1%の染料を含むPMMAベースのマスターバッチとして使用)。
【0177】
厚さ1mmの試験片を、PMMAと、成形用組成物に対して1重量%の有機染料C1、C2またはC3のそれぞれ1つとの成形用組成物を用いて、以下に記載するように製造し、ここで、マスターバッチから得られたPMMAベースのマスターバッチを使用した。
【0178】
ヘイズ値を、厚さ1mmの前記射出成形試験片について、規格ASTM D1003に準拠して23℃で測定した。有機染料Cを含む試験片のヘイズの結果は、以下のとおりである:C1:1.1%/C2:1.0%/C3:3.9%。これらの低いヘイズ値は、有機染料C1、C2およびC3が、PMMAマトリックス中に単分子分散した可溶性有機染料であることを示しており、これは有機染料としては典型的であり、顔料、例えば上述の無機顔料Bでは達成できない。
【0179】
試験片の製造
以下の表1、表2および表3に記載の例1~例15の着色された成形用組成物を、以下の方法で製造した:
製造元から受け取ったポリマー顆粒および着色調製物をタンブリングミキサーで使用して混合物を製造し、この混合物を、漏斗を用いてHerbert Stork Maschinenbau GmbH(メルフェルデン)製の単軸出機30 ESEの供給ゾーンに計量供給した。押出成形を、開放ベントゾーンを利用して250℃で行った。押出機の下流には造粒機を接続した。
【0180】
第2の加工ステップで、こうして得られた顆粒から試験片を射出成形した。
【0181】
各例について、厚さ3mmの試験片を、ARBURG GmbH & Co KG(ロースブルク)から入手可能なArburg Allrounder 320 Cを用いて、260℃で以下の条件で射出成形した:
射出時間:0.92秒
材料温度:250℃
シリンダー温度:250~220℃
金型温度:70℃
金型内圧600barで射出から保圧に切り替える
合計サイクル時間:40秒
ベントシリンダーを閉鎖した射出成形。
【0182】
例1~例7および例16/橙色の成形用組成物
以下の橙色の成形用組成物を上記のように製造した。
【0183】
【0184】
例8~例15/赤色の成形用組成物
以下の赤色の成形用組成物を上記のように製造した。
【0185】
【0186】
試験結果
比色試験および耐候安定性を、厚さ3mmの射出成形試験片を用いて上記のように測定した。
【0187】
【0188】
【0189】
例2および例4による本発明による成形用組成物は、溶媒染料(すなわちソルベントオレンジ60)の添加により、例1および例3による成形用組成物と比較して高度の色彩的な鮮やかさ(彩度C*)を示す。この効果は、PMMA(例1および例2)およびPC(例3および例4)に対して示される。
【0190】
同じくルチル型混合金属酸化物(Cr/Sb/Ti混合酸化物)をベースとする比較用黄色/褐色顔料であるピグメントブラウン24を用いた比較例5は、可溶性染料の量が3倍の多さであるにもかかわらず、本発明による例2に比べて低い色彩的な鮮やかさ(彩度C*)を示す。
【0191】
二酸化チタンと溶媒染料ソルベントオレンジ60との組み合わせを利用した比較例6および比較例7は、本発明による例2と比較して高い色彩的な鮮やかさ(彩度C*)を示すが、耐候安定性は著しく低い(下記表4参照)。
【0192】
顔料B2(PY216)と二酸化チタン顔料B3との組み合わせを利用した比較例16は、B2(PY216)と可溶性有機染料(すなわち、可溶性有機染料)との本発明による組み合わせを利用した本発明による例2と比較して低い色彩的な鮮やかさ(彩度C*)を示す。
【0193】
PMMAベースの成形用組成物を対象とする本発明による例8~本発明による例10は、ルチル型の一般的な混合金属酸化物ピグメントブラウン24(Cr/Sb/Ti混合酸化物)を利用した例15と比較して、また二酸化チタンを赤色溶媒染料と組み合わせて利用した例13および例14と比較して高い色彩的な鮮やかさを示す。
【0194】
本発明による例11および本発明による例12の彩度値が低いのは、ポリマーマトリックス(SANおよびPC)の違いによるものである。
【国際調査報告】