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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】車両用電気駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 9/19 20060101AFI20240725BHJP
   H02K 7/116 20060101ALI20240725BHJP
   B60L 15/00 20060101ALI20240725BHJP
   F16H 57/04 20100101ALI20240725BHJP
   B60K 11/02 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
H02K9/19 A
H02K9/19 B
H02K7/116
B60L15/00 H
F16H57/04 G
B60K11/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505389
(86)(22)【出願日】2021-07-30
(85)【翻訳文提出日】2024-01-29
(86)【国際出願番号】 EP2021071442
(87)【国際公開番号】W WO2023006216
(87)【国際公開日】2023-02-02
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517175611
【氏名又は名称】ジーケーエヌ オートモーティブ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】テオドア ガスマン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン フォールシャム
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ビーバイ
【テーマコード(参考)】
3D038
3J063
5H125
5H607
5H609
【Fターム(参考)】
3D038AB01
3D038AC23
3J063AA04
3J063AB01
3J063AC01
3J063BA11
3J063BA15
3J063CD41
3J063XD03
3J063XD23
3J063XD38
3J063XD62
3J063XD72
3J063XH02
3J063XH23
5H125AA01
5H125FF22
5H607AA02
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB14
5H607CC01
5H607CC03
5H607DD03
5H607EE31
5H607EE36
5H607GG01
5H607GG25
5H609BB03
5H609BB16
5H609BB19
5H609PP06
5H609PP07
5H609PP11
5H609PP17
5H609QQ05
5H609QQ11
5H609RR37
5H609RR48
5H609RR50
5H609RR52
5H609SS21
5H609SS23
(57)【要約】
車両用電気駆動装置であって、ハウジング、ハウジングに接続されているステータと、ハウジングに回転可能に支持されたロータシャフトを備えたロータとを有する電気機械、車両のドライブラインを駆動するためにロータシャフトからの回転運動を伝達するための伝動装置、電気機械および伝動装置を冷却および潤滑するための流体を循環させるための液圧回路を含む、車両用電気駆動装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用電気駆動装置であって、
ハウジング(1)と、
前記ハウジング(1)に接続されているステータ(9)と、前記ハウジング(1)に回転可能に支持されたロータシャフト(11)を備えたロータ(10)とを有する電気機械(2)と、
前記車両のドライブラインを駆動するために前記ロータシャフト(11)からの回転運動を伝達するための伝動装置(3)と、
前記電気機械(2)および前記伝動装置(3)を冷却および潤滑するための流体を循環させるための液圧回路(7)と、
を含み、前記液圧回路(7)は、
吸込側が前記ハウジング(1)の油サンプ(4)に液圧式に接続されている双方向ポンプ(24)と、
前記双方向ポンプ(24)に液圧式に接続されているポンプ作動式の切換弁(12)と、
前記切換弁(12)を前記電気機械(2)の冷却ノズル(33)に接続している第1の液圧経路(14)と、
前記切換弁(12)を前記伝動装置(3)の一部に接続している第2の液圧経路(15)と、
前記切換弁(12)を介して前記双方向ポンプ(24)によって汲み上げられた流体を冷却するための熱交換器(35)と、
を含み、
前記双方向ポンプ(24)が第1の回転方向に操作されると、前記切換弁(12)が第1の位置(22)へと移動され、これによって流体が、前記電気機械(2)を冷却するために前記熱交換器(35)を通って前記第1の液圧経路(14)へと汲み上げられ、
前記双方向ポンプ(24)が第2の回転方向に操作されると、前記切換弁(12)が第2の位置(26)へと移動され、これによって流体が、前記伝動装置(3)を冷却および/または潤滑するために前記熱交換器(35)を通って前記第2の液圧経路(15)へと汲み上げられる、
車両用電気駆動装置。
【請求項2】
前記切換弁(12)は、前記双方向ポンプ(24)の第1の圧力側(23)に接続されている第1の入口(38)と、前記双方向ポンプ(24)の第2の圧力側(27)に接続されている第2の入口(39)とを有する、請求項1記載の電気駆動装置。
【請求項3】
前記切換弁(12)は、前記第1の入口(38)の加圧によって前記第1の位置(22)へと駆動され、前記第2の入口(39)の加圧によって前記第2の位置(26)へと駆動される、請求項2記載の電気駆動装置。
【請求項4】
前記切換弁(12)は、前記熱交換器(35)に液圧式に接続されている第1の熱交換器出口(41)と、前記熱交換器(35)に液圧式に接続されている第2の熱交換器出口(42)とを有しており、
前記切換弁(12)が前記第1の位置にある際には、流体が前記第1の入口(38)から前記熱交換器(35)へと流れ、前記切換弁(12)が前記第2の位置にある際には、流体が前記第2の入口(39)から前記熱交換器(35)へと流れる、請求項2または3記載の電気駆動装置。
【請求項5】
前記切換弁(12)は、前記熱交換器(35)に液圧式に接続されている第3の入口(40)と、前記第1の液圧経路(14)への第1の出口(43)と、前記第2の液圧経路(15)への第2の出口(44)とを有しており、
前記切換弁(12)が前記第1の位置にある際には、流体が前記熱交換器(35)から前記第1の出口(43)へと流れ、前記切換弁(12)が前記第2の位置にある際には、流体が前記熱交換器(35)から前記第2の出口(44)へと流れる、請求項1から4までのいずれか1項記載の電気駆動装置。
【請求項6】
前記双方向ポンプ(24)が前記第1の回転方向に操作されると、前記第1の圧力側(23)が第1の圧力レベルまで加圧されて、前記ステータ(9)のステータ端部巻線(31)を冷却するために前記冷却ノズル(33)に流体を供給する、請求項2から5までのいずれか1項記載の電気駆動装置。
【請求項7】
前記双方向ポンプ(24)が前記第2の回転方向に操作されると、前記第2の圧力側(27)が第2の圧力レベルまで加圧されて、前記ロータ(10)の能動的な冷却および前記伝動装置の能動的な潤滑のために流体を供給する、請求項2から6までのいずれか1項記載の電気駆動装置。
【請求項8】
前記第1の圧力レベルは、前記第2の圧力レベルよりも高い、請求項7記載の電気駆動装置。
【請求項9】
前記第2の液圧経路(15)は、前記駆動シャフト(11)の内径(18)への分岐導管(8)を含む、請求項1から8までのいずれか1項記載の電気駆動装置。
【請求項10】
前記駆動シャフト(11)は、高速モードにおいて前記第2の液圧経路(15)からの流体を前記電気機械(2)に供給するために、前記内径(18)を前記ロータ(10)に接続している半径方向孔(21)を含む、請求項1から9までのいずれか1項記載の電気駆動装置。
【請求項11】
前記ハウジング(1)は中間壁(16)を有しており、該中間壁(16)は、前記油サンプ(4)をモータ側リザーバ(5)と伝動装置側リザーバ(6)とに隔てており、
前記双方向ポンプ(24)が第1の回転方向に操作されると、前記吸込側が前記モータ側リザーバ(5)に液圧式に接続され、
前記双方向ポンプ(24)が第2の回転方向に操作されると、前記吸込側が前記伝動装置側リザーバ(6)に液圧式に接続される、
請求項1から10までのいずれか1項記載の電気駆動装置。
【請求項12】
前記モータ側リザーバ(5)と前記伝動装置側リザーバ(6)とは、前記中間壁(16)の貫通開口部(19)を介して液圧式に接続されている、請求項11記載の電気駆動装置。
【請求項13】
前記油サンプ(4)と前記双方向ポンプ(24)との間に、吸込フィルタ(25)が配置されている、請求項1から12までのいずれか1項記載の電気駆動装置。
【請求項14】
前記油サンプ(4)と前記双方向ポンプ(24)との間に、逆止弁(29)が配置されている、請求項1から13までのいずれか1項記載の電気駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用電気駆動装置であって、ハウジング、ハウジングに接続されているステータと、ハウジングに回転可能に支持されたロータシャフトを備えたロータとを有する電気機械、車両のドライブラインを駆動するためにロータシャフトからの回転運動を伝達するための伝動装置、電気機械および伝動装置を冷却および潤滑するための流体を循環させるための液圧回路を含む、車両用電気駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許出願公開第2019/0229582号明細書から、潤滑経路を備えた車両用駆動装置が公知であり、この潤滑経路は、ケース内に貯留されたオイルを汲み上げ、その汲み上げたオイルを動力伝達機構に供給して動力伝達機構を潤滑する第1のオイルポンプと、潤滑経路から分離されておりかつ回転電機に設けられた冷却経路とを含み、冷却経路は、ケース内に貯留されたオイルを汲み上げ、その汲み上げたオイルを専ら回転電機に供給して回転電機を冷却する第2のオイルポンプを含み、第2のオイルポンプは、電動オイルポンプであり、冷却経路には、回転電機に供給されるオイルを冷却するオイルクーラが設けられている。
【0003】
米国特許出願公開第2016/0178548号明細書から、流体サンプに保存されている流体の温度を、温度センサを使用して監視することを含む、熱発生装置における流体の温度を動的に監視するための方法が公知である。第1の流体流量および第2の流体流量が決定される。能動的な冷却剤回路を通る第3の流体流量と流体の温度とに基づいて、能動的な冷却剤回路内の熱交換器にわたる流体の温度低下と第3の流体流量とが決定される。熱交換器にわたる流体の温度低下と第3の流体流量とに基づいて、能動的な冷却剤回路を介して電気機械に供給される流体の温度が決定される。能動的な冷却剤回路を介して電気機械に供給される流体の温度とサンプ内の流体の温度とに基づいて、流体の有効温度が決定される。
【0004】
米国特許出願公開第2018/241288号明細書は、回転電機のステータとロータにポンプによって冷却媒体を供給してステータおよびロータを冷却する回転電機の冷却構造において、ポンプからステータに冷却媒体を供給する第1流路、ポンプからロータに冷却媒体を供給する第2流路、および第1流路の冷却媒体の流量と第2流路の冷却媒体の流量を調整する弁を備え、ステータの冷却状態とロータの冷却状態を弁によって制御するようにした、回転電機の冷却構造を開示している。
【0005】
欧州特許出願公開第3517335号明細書は、パワーコントロールユニットと、駆動用モータと、第1の熱交換器で冷却された第1の冷却液を、パワーコントロールユニット、第2の熱交換器の順に流して、第1の熱交換器に還流させる第1のポンプを備えた第1の冷却路と、第2の熱交換器で第1の冷却液により冷却された第2の冷却液を、駆動用モータに流して、第2の熱交換器に還流させる第2のポンプを備えた第2の冷却路とを備えた、電動車両を開示している。第2のポンプは、パワーコントロールユニットの温度と第1の冷却液の温度の一方または両方に基づいて、第2の冷却液の循環を開始もしくは停止させるか、または第2の冷却液の循環量を増加もしくは減少させる。
【0006】
車両用電気駆動装置の電気機械と伝動装置とは、それぞれ異なる冷却要件および潤滑要件を有しており、これらの要件は動作状況に依存している。電気機械の性能は、動作中、熱的に制限されている。電気モータの銅、鉄、および磁石において固有損失が生じる可能性があり、材料特性によってそれぞれのコンポーネントおよび構造体の温度が制限される。十分なトルク性能を達成するためには、効果的な冷却が必要である。伝動装置の受動的なはねかけ式潤滑は、高速動作下では結果的に撹拌損失を生じさせる。電気機械および伝動装置の両方のために冷却と潤滑とを組み合わせることは、効率に関する妥協である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、電気機械および伝動装置を効率的に冷却および潤滑すべく、流体を循環させるための液圧回路を備えた車両用電気駆動装置を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は、車両用電気駆動装置であって、車両用電気駆動装置は、
・ハウジングと、
・ハウジングに接続されているステータと、ハウジングに回転可能に支持されたロータシャフトを備えたロータとを有する電気機械と、
・車両のドライブラインを駆動するためにロータシャフトからの回転運動を伝達するための伝動装置と、
・電気機械および伝動装置を冷却および潤滑するための流体を循環させるための液圧回路と、
を含み、液圧回路は、吸込側がハウジングの油サンプに液圧式に接続されている双方向ポンプと、双方向ポンプに液圧式に接続されているポンプ作動式の切換弁と、切換弁を電気機械の冷却ノズルに接続している第1の液圧経路と、切換弁を伝動装置の一部に接続している第2の液圧経路と、切換弁を介して双方向ポンプによって汲み上げられた流体を冷却するための熱交換器とを含み、
双方向ポンプが第1の回転方向に操作されると、切換弁が第1の位置へと移動され、これによって流体が、電気機械を冷却するために熱交換器を通って第1の液圧経路へと汲み上げられ、双方向ポンプが第2の回転方向に操作されると、切換弁が第2の位置へと移動され、これによって流体が、伝動装置を冷却および/または潤滑するために熱交換器を通って第2の液圧経路へと汲み上げられる、車両用電気駆動装置によって達成される。
【0009】
本電気駆動装置の利点は、双方向ポンプの2つの回転方向によって、第1の回転方向と第2の回転方向との間での切り換えにより、電気機械および伝動装置の冷却および潤滑を実際の冷却および潤滑の要求に応じて最適化するための、液圧回路の2つのモードが提供されることである。双方向ポンプの第2の回転方向は、有利には車両が高速動作している場合、ひいては冷却および潤滑のための流体が供給されるロータおよび伝動装置の一部の回転速度が高速である場合に適用可能である。高速動作では、電気機械のトルク要求が比較的低いので、冷却ノズルを介した電気機械の噴霧冷却が必要とされない。
【0010】
双方向ポンプの第1の回転方向は、有利には車両が低速動作している場合、ひいてはロータおよび伝動装置の一部の回転速度が比較的低速である場合に適用可能である。しかしながら、低速時にはトルク要求が高いことが一般的であり、高電流が、結果的に銅の損失を生じさせるので、有利には、冷却ノズルに供給される流体によって電気機械のステータ端部巻線を冷却することができ、これによって損失が低減される。双方向ポンプが第2の回転方向に操作されると、巻線ヘッドの高圧噴霧冷却が可能となり、その一方で、伝動装置の潤滑は、能動的な流体供給を必要としない。低速状況下では、伝動装置の受動的なはねかけ式潤滑が効果的である。なぜなら、回転速度が低速であることに起因して撹拌損失が比較的少ないからである。
【0011】
液圧回路内を循環する流体は、例えば油のような冷却流体および潤滑流体である。油サンプは、重力によって電気機械および伝動装置から滴下した流体を収集するように配置されたリザーバと称されてもよい。
【0012】
1つの実施形態によれば、切換弁は、双方向ポンプの第1の圧力側に接続されている第1の入口と、双方向ポンプの第2の圧力側に接続されている第2の入口とを有している。切換弁は、第1の入口の加圧によって第1の位置へと駆動され、第2の入口の加圧によって第2の位置へと駆動される。切換弁は、熱交換器に液圧式に接続されている第1の熱交換器出口と、熱交換器に液圧式に接続されている第2の熱交換器出口とを有することができ、切換弁が第1の位置にある際には、流体が第1の入口から熱交換器へと流れ、切換弁が第2の位置にある際には、流体が第2の入口から熱交換器へと流れる。切換弁は、熱交換器に液圧式に接続されている第3の入口と、第1の液圧経路への第1の出口と、第2の液圧経路への第2の出口とをさらに有することができ、切換弁が第1の位置にある際には、流体が熱交換器から第1の出口へと流れ、切換弁が第2の位置にある際には、流体が熱交換器から第2の出口へと流れる。
【0013】
さらなる実施形態によれば、双方向ポンプが第1の回転方向に操作されると、第1の圧力側が第1の圧力レベルまで加圧されて、ステータのステータ端部巻線を冷却するために冷却ノズルに流体を供給し、双方向ポンプが第2の回転方向に操作されると、第2の圧力側が第2の圧力レベルまで加圧されて、ロータの能動的な冷却および伝動装置の能動的な潤滑のために流体を供給する。第1の圧力レベルは、第2の圧力レベルよりも高くてよい。
【0014】
さらなる実施形態によれば、第2の液圧経路は、駆動シャフトの内径への分岐導管を含む。電気機械には、内径をロータに接続している駆動シャフトの半径方向孔を介して、第2の液圧経路から流体を供給することができる。
【0015】
さらなる実施形態によれば、ハウジングは中間壁を有しており、中間壁は、油サンプをモータ側リザーバと伝動装置側リザーバとに隔てており、双方向ポンプが第1の回転方向に操作されると、吸込側がモータ側リザーバに液圧式に接続され、双方向ポンプが第2の回転方向に操作されると、吸込側が伝動装置側リザーバに液圧式に接続される。モータ側リザーバと伝動装置側リザーバとは、中間壁の貫通開口部を介して液圧式に接続されてよい。油サンプと双方向ポンプとの間に、またはモータ側リザーバおよび伝動装置側リザーバのそれぞれ一方と双方向ポンプとの間に、吸込フィルタが配置されてよい。第1の圧力側および第2の圧力側のそれぞれ一方をそれぞれの吸込側から遮断するために、油サンプと双方向ポンプの第1の圧力側および第2の圧力側のそれぞれ一方との間に、逆止弁が配置されてよい。
【0016】
車両用電気駆動装置の例示的な実施形態およびさらなる利点を、添付の図面を参照しながら以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】電気駆動装置の例示的な実施形態を示す概略図である。
図2】第2の回転方向における双方向ポンプの動作を説明する、図1の実施形態の切換弁を示す詳細な概略図である。
図3】第1の回転方向における双方向ポンプの動作を説明する、図1の実施形態の切換弁を示す詳細な概略図である。
図4】電気駆動装置のさらなる例示的な実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1には、車両用電気駆動装置が示されており、ハウジング1と、電気機械2と、伝動装置3と、油サンプ4とが、電気機械2のロータ10の回転軸線Aに沿った縦断面の概略図として示されている。電気機械2および伝動装置3を冷却および潤滑するための流体を循環させるための液圧回路7が、部分的に概略的に示されている。図2には、図1の液圧回路7の切換弁12が詳細な概略図で示されており、切換弁12は、第2の位置26にセットされている。図3には、図1の液圧回路7の切換弁12が、この切換弁12の第1の位置22で示されている。図1図2、および図3についてまとめて説明する。
【0019】
電気機械2は、ハウジング1に接続されていて、かつステータ端部巻線31を含んでいるステータ9と、ステータ9に対して回転可能なロータ10とを有している。駆動シャフト11はロータ10に接続されており、回転軸線Aを中心にして回転可能となるようにハウジング1に支持されている。伝動装置3は、図示されていない車両のドライブラインを駆動するために駆動シャフト11からの回転運動を伝達するように適合されている。伝動装置3は、例えば図示されていない減速歯車機構、差動駆動装置、およびカップリングを含むことができる。液圧回路7の流体は、ハウジング1の下側の部分に形成された油サンプ4に収集される。双方向ポンプ24の吸込側が、流体供給ライン20を介して油サンプ4に液圧式に接続されている。油サンプ4と双方向ポンプ24の吸込側との間に、流体を濾過するための吸込フィルタ25が配置されている。双方向ポンプ24は、さらにポンプ作動式の切換弁12に液圧式に接続されている。第1の液圧経路14は、切換弁12を電気機械2の冷却ノズル33に接続しており、第2の液圧経路15は、切換弁12を伝動装置3の一部に接続している。切換弁12を介して双方向ポンプ24によって汲み上げられた流体を冷却するための熱交換器35が設けられている。双方向ポンプ24が第1の回転方向に操作されると、切換弁12は、図3に示されているような第1の位置22へと移動され、これによって流体が、電気機械2を冷却するために熱交換器35を通って第1の液圧経路14へと汲み上げられる。双方向ポンプ24が第2の回転方向に操作されると、切換弁12は、図2に示されているような第2の位置26へと移動され、これによって流体が、伝動装置3を冷却および/または潤滑するために熱交換器35を通って第2の液圧経路15へと汲み上げられる。
【0020】
例示的な実施形態によれば、切換弁12は、双方向ポンプ24の第1の圧力側23に接続されている第1の入口38と、双方向ポンプ24の第2の圧力側27に接続されている第2の入口39とを有することができる。それぞれの第1の圧力側23および第2の圧力側27は、双方向ポンプ24の回転方向に依存している。双方向ポンプ24が第1の回転方向に操作されると、第1の圧力側23が加圧され、これはつまり、第2の圧力側27が双方向ポンプ24の吸込側になるということを意味する。双方向ポンプ24が第2の回転方向に操作されると、第2の圧力側27が加圧され、第1の圧力側23が双方向ポンプ24の吸込側になる。第1の圧力側23および第2の圧力側27の各々と、流体供給ライン20との間の逆止弁29は、油サンプ4に向かう逆流を阻止する。切換弁12は、中空室32を包囲している弁ハウジング30を備えており、弁ハウジング30の内側では、弁スプール17が、第1の入口38の加圧によって第1の位置22へと駆動され、第2の入口39の加圧によって第2の位置26へと駆動される。切換弁12は、熱交換器35に液圧式に接続されている第1の熱交換器出口41と、熱交換器35に液圧式に接続されている第2の熱交換器出口42も有している。切換弁12が第1の位置にある際には、流体が第1の入口38から熱交換器35へと流れ、切換弁12が第2の位置にある際には、流体が第2の入口39から熱交換器35へと流れる。切換弁12は、熱交換器35に液圧式に接続されている第3の入口40と、第1の液圧経路14への第1の出口43と、第2の液圧経路15への第2の出口44とを有している。切換弁12の弁スプール17が第1の位置22にある場合には、流体が熱交換器35から第1の出口43へと流れ、切換弁12の弁スプール17が第2の位置26にある場合には、流体が熱交換器35から第2の出口44へと流れる。液圧式に接続されているライン同士は、連結部を表現するドットを用いて示されている。交差しているが連結部のドットが設けられていないライン同士は、液圧式に分離されている。切換弁12を介した流体の流れは、図3の第1の位置22および図2の第2の位置26の両方に関して矢印Fによって示されている。
【0021】
双方向ポンプ24が第1の回転方向に操作されると、第1の圧力側23が第1の圧力レベルまで加圧されて、ステータ9のステータ端部巻線31を噴霧冷却するために冷却ノズル33に流体を供給する。冷却ノズル33は、高圧下の流体をステータ端部巻線31に向かって噴霧し、この流体は、ステータ端部巻線31から油サンプ4に流れ戻り、点線36は、油サンプ4の流体レベルを表現している。矢印Fは、流体の流れを示している。第2の液圧経路15は、加圧されておらず、流体は、伝動装置3に能動的に搬送されず、伝動装置3は、油サンプ4からはねかけ式に潤滑される。双方向ポンプ24は、有利には車両が低速動作している場合、ひいてはロータ10および伝動装置3の回転部分の回転速度が比較的低速である場合に、第1の回転方向に操作される。
【0022】
双方向ポンプ24が第2の回転方向に操作されると、第2の圧力側27が第2の圧力レベルまで加圧されて、ロータ10の能動的な冷却および伝動装置3の能動的な潤滑のために流体を供給する。第2の圧力レベルは、第1の圧力レベルよりも低くてよい。第2の液圧経路15は、駆動シャフト11の内径18への分岐導管8を含む。電気機械2には、内径18をロータ10に接続している駆動シャフト11の半径方向孔21を介して、第2の液圧経路15から流体が供給される。流体は、ロータ10に沿ってステータ9に向かって遠心分離され、矢印Fによって示されているように重力によって油サンプ4へと流れ戻る。流体は、伝動装置3から油サンプ4へと戻る。双方向ポンプ24は、有利には車両が高速動作している場合、ひいてはロータ10および伝動装置3の回転部分の回転速度が高速である場合に、第2の回転方向に操作される。
【0023】
図4には、電気駆動装置の第2の例示的な実施形態が、第1の実施形態と同一の概略図で示されている。同一の部分には、同じ参照符号が付されている。第2の実施形態による電気駆動装置は、ハウジング1と、電気機械2と、伝動装置3と、リザーバ4とに関して引き続き同一であり、これらについて改めて詳細には説明しない。上記の説明を参照されたい。第2の例示的な実施形態の切換弁12は、第1の実施形態の切換弁12と同一であってよいので、上述のように図2および図3が引き続き参照される。
【0024】
ハウジング1は中間壁16を備えており、中間壁16は、リザーバ4をモータ側リザーバ5と伝動装置側リザーバ6とに隔てており、モータ側リザーバ5と伝動装置側リザーバ6とは、中間壁16の貫通開口部19を介して接続されている。モータ側リザーバ5および伝動装置側リザーバ6は、それぞれ2つの別個の流体供給ライン20を介して双方向ポンプ24に液圧式に接続されており、これらの流体供給ライン20は、それぞれ回転方向に応じて双方向ポンプ24の一方の可能な吸込側に接続されている。両方の流体供給ライン20は、流体を濾過するための2つの吸込フィルタ25のうちの1つを有している。
【0025】
双方向ポンプ24が第1の回転方向に操作されると、第1の圧力側23が加圧され、モータ側リザーバ5が双方向ポンプ24の吸込側に液圧式に接続される。切換弁12が第1の位置22へと移動されることにより、ステータ9のステータ端部巻線31を噴霧冷却するために、第1の液圧経路14を介して冷却ノズル33に流体が供給される。伝動装置3は、伝動装置側リザーバ6からはねかけ式に潤滑される。貫通開口部19の上方の中間壁16に設けられた通路37も、伝動装置3から滴下した流体が機械側リザーバ5に流入することを可能にする。しかしながら、貫通開口部19により、機械側リザーバ5内の流体レベル36は、伝動装置側リザーバ6内の流体レベルと平衡するようになっている。
【0026】
双方向ポンプ24が第2の回転方向に操作されると、第2の圧力側27が加圧され、伝動装置側リザーバ6が双方向ポンプ24の吸込側に液圧式に接続される。切換弁12が第2の位置26へと移動されることにより、ロータ10の能動的な冷却および伝動装置3の能動的な潤滑のために第2の液圧経路15に流体が供給される。流体の一部は、伝動装置3から中間壁16に設けられた通路37を通って機械側リザーバ5へと戻る。ロータ10に供給された流体も、機械側リザーバ5に流入する。伝動装置側リザーバ6からの流体が双方向ポンプ24の吸込側に流れるので、有利には、伝動装置側リザーバ6内の流体レベルを低下させることができる。このことを達成するために、矢印Fによって示されている貫通開口部19を通る流れを、貫通開口部19のための適切な直径を選択することによって調節することができる。貫通開口部19の直径によって、機械側リザーバ5の流体レベル36が伝動装置側リザーバ6内の流体レベルよりも高くなり、有利には、車両の高速動作下での撹拌損失が低く抑えられる。
【符号の説明】
【0027】
1 ハウジング
2 電気機械
3 伝動装置
4 油サンプ
5 モータ側リザーバ
6 伝動装置側リザーバ
7 液圧回路
8 分岐導管
9 ステータ
10 ロータ
11 駆動シャフト
12 切換弁
14 第1の液圧経路
15 第2の液圧経路
16 中間壁
17 スプール
18 ロータシャフトの内径
19 貫通開口部
20 流体供給ライン
21 半径方向孔
22 第1の位置
23 第1の吸込側
24 双方向ポンプ
25 フィルタ
26 第2の位置
27 第2の吸込側
28 連結部
29 逆止弁
30 弁ハウジング
31 ステータ端部巻線
32 中空室
33 噴霧ノズル
34 電気モータ
35 熱交換器
36 流体レベル
37 通路
38 第1の入口
39 第2の入口
40 第3の入口
41 第1の熱交換器出口
42 第2の熱交換器出口
43 第1の出口
44 第2の出口
A 回転軸線
F 矢印
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】