(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】癌を治療するための抗体-薬物コンジュゲートとのIL-2/IL-15Rβγアゴニストの組み合わせ
(51)【国際特許分類】
A61K 38/20 20060101AFI20240725BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240725BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240725BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240725BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240725BHJP
C07K 14/54 20060101ALN20240725BHJP
C07K 14/715 20060101ALN20240725BHJP
C07K 19/00 20060101ALN20240725BHJP
【FI】
A61K38/20
A61K47/68
A61P35/00
A61P37/04
A61P43/00 121
C07K14/54 ZNA
C07K14/715
C07K19/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505420
(86)(22)【出願日】2022-08-16
(85)【翻訳文提出日】2024-02-28
(86)【国際出願番号】 EP2022072845
(87)【国際公開番号】W WO2023017191
(87)【国際公開日】2023-02-16
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513322899
【氏名又は名称】サイチューン ファーマ
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】キリヒ サディルコヴァ レンカ
(72)【発明者】
【氏名】メビウス ウルリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ベシャール ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】アドキンス イレーナ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076EE59
4C084AA02
4C084BA44
4C084DA12
4C084MA02
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB021
4C084ZB022
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC751
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA02
4H045DA50
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、患者における癌を治療することにおいて使用するためのインターロイキン-2/インターロイキン受容体βγ(IL-2/IL-15Rβγ)アゴニストであって、免疫原性細胞死(ICD)を誘導することができる細胞傷害性化合物と組み合わせて、又はICDを誘導することができるモダリティの適用と組み合わせて投与される、IL-2/IL-15Rβγアゴニストに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における癌を治療することにおいて使用するためのインターロイキン-2/インターロイキン-15受容体βγ(IL-2/IL-15Rβγ)アゴニストであって、前記IL-2/IL-15Rβγアゴニストは、
a. 免疫原性細胞死(ICD)を誘導することができる細胞傷害性化合物と同時に若しくは細胞傷害性化合物に対して逐次的に投与されるか、
b. ICDを誘導することができるモダリティの適用と同時に若しくは適用に対して逐次的に投与されるか、
c. ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物と同時に、かつICDを誘導することができるモダリティと同時に投与されるか、
d. ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物と同時に、かつICDを誘導することができるモダリティに対して逐次的に投与されるか、
e. ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物に対して逐次的に、かつICDを誘導することができるモダリティと同時に投与されるか、又は
f. ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物に対して逐次的に、かつICDを誘導することができるモダリティに対して逐次的に投与される
使用するためのIL-2/IL-15Rβγアゴニスト。
【請求項2】
逐次投与の場合、前記IL-2/IL-15Rβγアゴニストは、前記ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物の前及び/若しくは後に、又は前記ICDを誘導することができるモダリティの前及び/若しくは後に投与される請求項1に記載の使用するためのIL-2/IL-15Rβγアゴニスト。
【請求項3】
逐次投与の場合、前記IL-2/IL-15Rβγアゴニストは、前記ICD可能な細胞傷害性化合物の後に、又は前記ICDを誘導することができるモダリティの後に投与される請求項1又は請求項2に記載の使用するためのIL-2/IL-15Rβγアゴニスト。
【請求項4】
同時投与の場合、前記IL-2/IL-15Rβγアゴニスト及び前記ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物は、同じ医薬組成物の成分として、又は別々の医薬組成物の成分として提供される請求項1に記載の使用するためのIL-2/IL-15Rβγアゴニスト。
【請求項5】
前記ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物は、アントラサイクリン;ビンカアルカロイド、タキサン、エポチロン、エリブリン、アウリスタチン、及びマイタンシン又はマイタンシノイド、及びチューブリシンを含む微小管不安定化剤;ブレオマイシン;ボルテゾミブを含むプロテアソーム阻害剤;シクロホスファミド、オキサリプラチンを含む白金錯体、及びピロロ-ベンゾジアゼピンを含むアルキル化剤、カリケアマイシン誘導体及びトポイソメラーゼI阻害剤、並びにヌクレオシド類似体からなる群から選択される請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の使用するためのIL-2/IL-15Rβγアゴニスト。
【請求項6】
前記ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物は抗体に共有結合で連結され、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を形成する請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の使用するためのIL-2/IL-15Rβγアゴニスト。
【請求項7】
前記細胞傷害性化合物は、アントラサイクリン、マイタンシン若しくはマイタンシノイド、トポイソメラーゼI阻害剤、又はカリケアマイシン誘導体であり、
好ましくは前記トポイソメラーゼI阻害剤はSN38ではない
請求項5又は請求項6に記載の使用するためのIL-2/IL-15Rβγアゴニスト。
【請求項8】
前記アントラサイクリンは、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン及びPNU-159682からなる群から選択されるか、
前記マイタンシン若しくはマイタンシノイドは、マイタンシン、メルタンシン/エムタンシン(DM1)、アンサマイトシン及びラブタンシン/ソラブタンシン(DM4)からなる群から選択されるか、
前記トポイソメラーゼI阻害剤は、トポテカン、エキサテカン若しくはエキサテカン誘導体、とりわけDS-8201a若しくはDX-8951であるか、又は
前記カリケアマイシンはカリケアマイシンγ
1
Iである
請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の使用するためのIL-2/IL-15Rβγアゴニスト。
【請求項9】
前記抗体は、HER2に特異的に結合する抗体、好ましくはトラスツズマブ;HER3に結合する抗体、好ましくはパトリツマブ;ネクチン-4に結合する抗体、好ましくはエンホルツマブ;CD33に結合する抗体、好ましくはゲムツズマブ若しくはIMGN779、より好ましくはゲムツズマブ;CD30に結合する抗体、好ましくはブレンツキシマブ;CD22に結合する抗体、好ましくはイノツズマブ、若しくはCD79B、好ましくはポラツズマブ;ROR-1に結合する抗体、好ましくはNBE-002;又はCLDN18.2に結合する抗体、好ましくはゾルベツキシマブ若しくはそのヒト化多様体である請求項6から請求項8のいずれか1項に記載の使用するためのIL-2/IL-15Rβγアゴニスト。
【請求項10】
前記ADCは、トラスツズマブエムタンシン、トラスツズマブデルクステカン、ゲムツズマブオゾガマイシン、イノツズマブオゾガマイシン、ブレンツキシマブベドチン、エンホルツマブベドチン及びポラツズマブベドチン、とりわけトラスツズマブエムタンシン又はエンホルツマブベドチンである請求項6から請求項9のいずれか1項に記載の使用するためのIL-2/IL-15Rβγアゴニスト。
【請求項11】
前記患者は、HER2を発現する腫瘍に罹患しており、好ましくは、前記患者は、低~中程度のHER2発現を有する腫瘍を有すると診断されている請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の使用するためのIL-2/IL-15Rβγアゴニスト。
【請求項12】
前記ICDを誘導することができるモダリティは、高静水圧(HHP)、光線力学療法、UV照射、放射線治療、腫瘍溶解性ウイルス療法及び温熱療法から選択される請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の使用するためのIL-2/IL-15Rβγアゴニスト。
【請求項13】
前記IL-2/IL-15Rβγアゴニストは、インターロイキン15(IL-15)/インターロイキン-15受容体α(IL-15Rα)複合体である請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の使用するためのIL-2/IL-15Rβγアゴニスト。
【請求項14】
前記IL-2/IL-15Rβγアゴニストはインターロイキン15(IL-15)/インターロイキン-15受容体α(IL-15Rα)複合体であり、前記複合体は、ヒトIL-15Rαのsushiドメイン又はその誘導体と、柔軟なリンカーと、ヒトIL-15又はその誘導体とを含む融合タンパク質であり、
好ましくは、前記ヒトIL-15Rαsushiドメインは配列番号6のアミノ酸配列を含み、前記ヒトIL-15は配列番号4のアミノ酸配列を含む
請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の使用するためのIL-2/IL-15Rβγアゴニスト。
【請求項15】
前記IL-2/IL-15Rβγアゴニストは、インターロイキン15(IL-15)/インターロイキン-15受容体α(IL-15Rα)複合体であり、前記複合体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む融合タンパク質である請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の使用するためのIL-2/IL-15Rβγアゴニスト。
【請求項16】
前記IL-2/IL-15Rβγアゴニストは前記IL-15/IL-15Rα複合体であり、前記複合体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む融合タンパク質であり、前記ADCは、HER2に特異的に結合する抗体を含み、好ましくは、前記抗体はトラスツズマブである請求項6から請求項11のいずれか1項に記載の使用するためのIL-2/IL-15Rβγアゴニスト。
【請求項17】
前記IL-2/IL-15Rβγアゴニストは、皮下(s.c.)投与又は腹腔内(i.p.)投与、好ましくはs.c.投与される請求項1から請求項16のいずれか1項に記載の使用するためのIL-2/IL-15Rβγアゴニスト。
【請求項18】
前記IL-2/IL-15Rβγアゴニストはさらに免疫チェックポイント阻害剤と組み合わされ、好ましくは、前記チェックポイント阻害剤は、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗PD-L2抗体、抗LAG-3抗体、抗TIM-3抗体又は抗CTLA4抗体、より好ましくは抗PD-L1抗体又は抗PD-1抗体である請求項1から請求項17のいずれか1項に記載の使用するためのIL-2/IL-15Rβγアゴニスト。
【請求項19】
前記癌は血液癌又は固形癌であり、好ましくは、腎細胞癌、肺癌(とりわけ、非小細胞肺癌、小細胞肺癌)、膀胱癌(とりわけ、尿路上皮癌)、黒色腫、メルケル細胞癌、皮膚扁平上皮癌、高頻度マイクロサテライト不安定性固形腫瘍、乳癌(とりわけ、トリプルネガティブ乳癌)、中皮腫、前立腺癌、甲状腺癌、胸腺癌、子宮頸癌、胆道癌、肝細胞癌、卵巣癌、胃癌、膵臓癌、食道癌、頭頸部扁平上皮癌、及び肛門癌、並びにALL、AML、CLL、CML、AMoL、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、並びに骨髄腫からなる群から選択される請求項1から請求項18のいずれか1項に記載の使用するためのIL-2/IL-15Rβγアゴニスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、癌を治療するための抗体-薬物コンジュゲートとのIL-2/IL-15Rβγアゴニストの組み合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
過去10年は、疾患の原因となる特異的な遺伝的異常を標的とする高度に選択的な小分子の開発を通して、新しい癌治療における著しい進歩を見てきた(Weinstein 2005、McDermott及びSettleman 2009)。このアプローチは、単一の明確に定義された腫瘍溶解性駆動因子(ドライバー)による悪性腫瘍への適用において大きい成功を見てきたが、より複雑な癌設定においては抵抗性が一般に観察される(Rosenzweig 2012、Giroux 2013)。伝統的な細胞毒性物質(細胞毒)は、癌を治療するための別のアプローチである。しかしながら、それらは、標的特異的アプローチとは異なり、健常細胞及び癌細胞の両方の非特異的死滅から生じる有害作用という問題を抱える。強力な細胞毒性物質の強力な細胞死滅能力を標的特異性と組み合わせる戦略は、癌治療における潜在的に新しいパラダイムを表すであろう。抗体成分が腫瘍標的抗原に対する特異性を提供し薬物が細胞傷害性を付与する、抗体-薬物-コンジュゲート(ADC)は、そのようなアプローチである。ADC技術の最近の進歩と合わせた、免疫毒素、免疫リポソーム及び放射性核種コンジュゲート等の抗体媒介性標的化のためのモダリティ(modality)のさらなる開発は、癌治療薬の次の波を表す。
【0003】
それに対して、治療可能性又は安全性の考慮の欠如の結果、現在は4つのADCのみが癌の治療に使用されることへのUS Food and Drug Administration(FDA、米国食品医薬品局)の承認を受けており、固形腫瘍の治療に承認されているものはただ1つであるということになった。ヒト化抗体トラスツズマブを強力な抗微小管細胞毒性物質エムタンシン(マイタンシンの誘導体)(DM1)と組み合わせたHER2標的化ADCであるトラスツズマブエムタンシン(ado-trastuzumab emtansine)(T-DM1、Kadcyla(カドサイラ)(登録商標))が、HER2陽性乳癌を有する患者の治療のために承認された(LoRusso、Weissら 2011、Verma、Milesら 2012)。しかしながら、T-DM1の治療効果はHER2発現に完全に依存し、Dako Herceptest(商標)による3+免疫組織化学(IHC)のレベルで陽性の腫瘍を有する患者のみ、又はDako HER2 FISH PharmDx(商標)試験キットによるFISH増幅比≧2.0を有する患者のみが治療に適していることが示された。臨床開発の進行した段階にはほぼ30のADCが存在し、それらのいくつかは既にT-DM1よりも高い治療可能性を示している。一方で、安全性の考慮により、開発中のこれらのADCの多くは、比較的低い効力を有する毒素に基づいており、これは、とりわけ低い~中間の標的発現を有する腫瘍において、有意に減少した抗腫瘍有効性をもたらす可能性につながる。他方で、高度に有効であると予想されるがターゲティングにもかかわらず高いオフターゲット(標的外への)毒性を有し、治療ウインドウが限定されることになる、高度に強力な毒素を負荷された(組み込まれた)いくつかのADCが開発中である。このジレンマを克服し、この有望なクラスの薬物の治療可能性を広げるために、その治療ウインドウを増大させ、かつ/又は重篤な有害事象の数及び重症度を減少させるための新規概念が必要とされる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Weinstein,J.N.(2005). Oncogenomics:Molecular Approaches to Cancer - Linking Drugs and Genes:Pharmacogenomics, Pharmacoproteomics, Bioinformatics, and the NCI-60、John Wiley & Sons,Inc.
【非特許文献2】McDermott,U.及びJ.Settleman(2009) J Clin Oncol 27(33):5650-5659
【非特許文献3】Rosenzweig,S.A.(2012) Biochemical pharmacology 83(8):1041-1048
【非特許文献4】Giroux,S.(2013) Bioorg Med Chem Lett 23(2):394-401
【非特許文献5】LoRusso,P.M.ら(2011) Clin Cancer Res 17(20):6437-6447
【非特許文献6】Verma,S.ら(2012) N Engl J Med 367(19):1783-1791
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、驚くべきことに、新興のクラスのインターロイキン-2/インターロイキン-15受容体βγ(IL-2/IL-15Rβγ)アゴニストと組み合わせた、免疫原性細胞死を誘導することができる特定のクラスのADCの組み合わせが、抗腫瘍有効性の改善をもたらすことを見出した。従って、本発明は、患者における癌を治療することにおいて使用するためのIL-2/IL-15Rβγアゴニストであって、このIL-2/IL-15Rβγアゴニストは、(a)免疫原性細胞死(ICD)を誘導することができる細胞傷害性化合物と同時に若しくは細胞傷害性化合物に対して逐次的に投与されるか、(b)ICDを誘導することができるモダリティの適用と同時に若しくは適用に対して逐次的に投与されるか、(c)ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物と同時に、かつICDを誘導することができるモダリティと同時に投与されるか、(d)ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物と同時に、かつICDを誘導することができるモダリティに対して逐次的に投与されるか、(e)ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物に対して逐次的に、かつICDを誘導することができるモダリティと同時に投与されるか、又は(f)ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物に対して逐次的に、かつICDを誘導することができるモダリティに対して逐次的に投与される、IL-2/IL-15Rβγアゴニストを提供する。
【0006】
免疫原性細胞死(ICD)の概念、その誘導及び関連する治療上の利益は、様々な治療剤及び治療モダリティの開発のための論理的根拠を提供する。ICDは、カルレティキュリン(CRT)及び熱ショックタンパク質(HSP、例えばHSP70及びHSP90)を含むシャペロンの初期表面露出を特徴とする死細胞抗原に対する免疫応答を刺激する(Kroemer、Galluzziら、2013)、定義された時間的順序で生じる特定の細胞死モダリティである。これは、樹状細胞の成熟、腫瘍抗原の取り込み及び提示、並びにTLR4を介して死につつある腫瘍細胞から樹状細胞への抗原の提示を増強するHMGB1のような可溶性メディエータの後期放出に影響を及ぼす(Fucikova、Kralikovaら、2011)。このようなシグナルは、樹状細胞によって発現される一連の受容体に作用する。ICDは、癌に対する免疫系の活性化のための顕著な経路であると考えられており、その根底にあるメカニズムの理解は、高度に効率的な抗癌治療の設計を促進し得るが、準最適レジメン(ICDを誘導することに失敗する)、癌細胞における選択的変化(ICD中の免疫原性シグナルの放出を防止する)、又は免疫エフェクターにおける欠陥(免疫系によるICDの知覚を消失させる)はすべて、治療の失敗に寄与する可能性がある(Kroemer、Galluzziら、2013)。
【0007】
他方で、免疫療法、すなわち、身体自体の免疫系を利用して疾患との戦いを助ける治療は、健康な組織を無傷のままにしながら、悪性腫瘍細胞又は感染細胞を死滅させる免疫系の能力を利用することを目的とする。免疫系は悪性腫瘍を発見及び排除する固有の能力を有するが、腫瘍及び持続感染は、免疫監視を逃れるメカニズムを発達させている(Robinson及びSchluns、2017)。免疫寛容の潜在的な理由としては、自然免疫活性化の失敗、物理的障壁としての密な間質の関与、及び免疫抑制性癌遺伝子経路の寄与の可能性が挙げられる(Gajewski、Wooら、2013)。いくつかの臨床的に成功した免疫療法の1つの群は、サイトカイン治療、より具体的には、アルデスロイキン/PROLEUKIN(登録商標)(Prometheus Laboratories Inc.(プロメテウス・ラボラトリーズ))として市販されているインターロイキン2(IL-2)、及びNK細胞を介した自然免疫応答とCD8+T細胞を介した適応免疫応答の両方を活性化することが公知であるインターロイキン15(IL-15)療法(Steel、Waldmannら、2012、Conlon、Miljkovicら、2019)である。印象的な腫瘍退縮がIL-2療法で観察されたが、応答は患者のわずかな割合に限定され、高レベルの生命を脅かす毒性さえも有する。さらに、IL-2は、T細胞の活性化誘導性細胞死の誘導及び免疫抑制制御性T細胞(Treg)の増殖を介して免疫増強活性だけでなく免疫抑制活性も示した(Robinson及びSchluns、2017)。
【0008】
IL-2及びIL-15の両方が、α、β及びγサブユニットを有するヘテロ三量体受容体を介して作用するが、それらは共通のγ鎖受容体(γc又はγ、CD132)及びIL-2/IL-15Rβ(IL-2Rβ、CD122としても知られる)を共有し、γ鎖受容体はIL-4、IL-7、IL-9及びIL-21とも共有する。第3のサブユニットとして、ヘテロ三量体受容体は、IL-2又はIL-15に対する特定のサブユニット、すなわち、IL-2Rα(CD25)又はIL-15Rα(CD215)を含有する。下流のIL-2及びIL-15ヘテロ三量体受容体は、同様の機能をもたらす細胞内シグナル伝達のためにJAK1(Janus(ヤヌス)キナーゼ1)、JAK3、及びSTAT3/5(シグナル伝達性転写因子3及び5)分子を共有するが、両方のサイトカインは、Waldmann(2015、例えば表1参照)及びConlon(2019)において概説されるように、異なる役割も有する。従って、IL-2、IL-15又はその誘導体の結合による異なるヘテロ三量体受容体の活性化は、免疫系の特異的調節及び潜在的な副作用を潜在的にもたらす。最近、新規化合物が、NK細胞及びCD8+T細胞の活性化を特異的に標的とすることを目的として設計された。
【0009】
これらは、中親和性IL-2/IL-15Rβγ、すなわち、NK細胞、CD8+T細胞、NKT細胞、並びにγδT細胞上で発現されるIL-2/IL-15Rβ及びγcサブユニットからなる受容体、を標的とする化合物である。これは、IL-15トランスプレゼンテーションによって媒介される安全かつ強力な免疫刺激にとって重要であるが、設計された化合物RLI-15、ALT-803及びhetIL-15は、既にIL-15Rαサブユニット(の一部)を含有しており、それゆえ、抗原提示細胞によるαサブユニットのトランスプレゼンテーションを模倣する。RLI-15は、IL-15Rαの共有結合したsushi(スシ)+ドメインを含むので、中親和性IL-15Rβγのみに結合する。一方で、RLI-15は、IL-15RαにもIL-2Rαにも結合しない。同様に、ALT-803及びhetIL-15(NIZ985)は、それぞれIL-15Rαsushiドメイン又は可溶性IL-15Rαを保有し、それゆえ中親和性IL-15Rβγ受容体に結合する。しかしながら、それらの非共有結合に起因して、複合体がインビボで解離し、これにより適用された複合体の解離画分が他の結合をさらに発揮する機会がある(以下を参照)。ALT-803は、IL-15への部分的な結合のみを媒介することが公知であるIL-15Rαのsushiドメインのみを含むが、完全な結合にはsushi+ドメインが必要とされるので(Wei、Orchardsonら、2001)、解離の確率はhetIL-15に対してALT-803の方が高いようである。様々な形式(フォーマット)のIL-15及びIL-15Rαの複合体の他の例は、XmAb24306(国際公開第2014/145806A2号パンフレット)、P-22339(米国特許第10,206,980号明細書)、CUG105(国際公開第2019/246379A1号パンフレット)である。
【0010】
中親和性IL-2/IL-15Rβγ受容体を標的とする別の例はPEG化(ペグ化)IL-2であり、その例であるNKTR-214のその最も活性な1-PEG-IL-2状態への加水分解は、IL-2/IL-2Rα界面におけるPEG鎖の位置が高親和性IL-2Rα受容体への結合を妨害するが、中親和性IL-2/IL-15Rβへの結合は妨害されないままである種を生成する(Charych、Hochら、2016)。さらに、THOR-707は、中親和性IL-2Rβγシグナル伝達複合体への結合を保持しながら、IL2Rα鎖係合(engagement)を低下/欠失させたIL-2の部位特異的単独PEG化形態である(Joseph、Maら、2019)(国際公開第2019/028419A1号パンフレット)。また、IL-2Rαの細胞外ドメインと(リンカーとβ及びγ受容体鎖との相互作用を回避するために)環状に並べ替えられたIL-2を含むIL-2/IL-2Rα融合タンパク質ALKS4230は、α結合側が既にIL-2Rα融合成分によって占められているので、βγ受容体を選択的に標的化する(Lopes、Fisherら、2020)。IL-2/IL-25Rβγに特異的なさらなるPEG化IL-2に基づく治療薬は、TransCon IL-2である(Rosen、Kvarnhammarら、2022)(国際公開第2019/7185705号パンフレット及び国際公開第2021/7245130号パンフレット)及びARX102(国際公開第2020/056066号パンフレット、国際公開第2021183832号パンフレット)。
【0011】
さらに、IL-2Rαサブユニットへの結合が消失したIL-2変異体IL2vはこのクラスの化合物の一例であり(Klein、Injaら 2013、Bacac、Fautiら 2016)、加えて、NL-201は、IL-2受容体βγcヘテロ二量体(IL-2Rβγc)へ結合するためにIL-2を模倣するが、IL-2Rα又はIL-15Rαに対する結合部位を有さない(Silva、Yuら2019)。他のIL-2/IL-25Rβγ選択的IL-2変異タンパク質は、STK-012(Sockolosky、Trottaら 2018、Mendoza、Escalanteら 2019)(国際公開第2019/113221号パンフレット)及びMDNA11(Merchant、Galliganら、2022)(国際公開第2018/234862号パンフレット)である。
【0012】
加えて、条件的に活性化されたIL-2誘導体、例えば、WTX-124(Silva 2022)(国際公開第2020/232305号パンフレット)及びXTX202(O’Neil、Guzmanら、2021、要約及びポスター)(国際公開第2020/069398号パンフレット)が開発されている。
【0013】
IL-2/IL-15Rβ受容体を標的とする別の戦略は、IL-15Rαへの結合が減少しているか又は結合を有さないIL-15変異タンパク質の使用であり(国際公開第2019/166946A1号パンフレット)、これにより高親和性IL-15Rαβγ受容体の活性化を低下させるか又は完全に回避する。同様に、IL-2/IL-15βγ受容体への結合を保持しながらIL-15Rαへの結合を低減するために、IL-15はPEG化され、その例は、NKRT-255(国際公開第2018/213341A1号パンフレット)及びTHOR-924、-908、-918(国際公開第2019/165453A1号パンフレット)である。国際公開第2016/060996A2号パンフレットでは、半減期延長のためのPEG化が変異IL-15と組み合わされる。
【0014】
このクラスの化合物は、中親和性IL-2/IL-15Rβγ受容体の標的化によって、IL-2によって誘導されるTreg活性化等の高親和性IL-2及びIL-15受容体の標的化に関連する不安定性(liability)又は高濃度の可溶性IL-2又はIL-15によって誘導されることが可能な血管漏出症候群を回避する。これは、IL-2Rαβγ高親和性受容体がCD4+Treg及び血管内皮上で追加的に発現され、IL-2シスプレゼンテーション(提示)によって活性化されるという事実による。それゆえ、(同じく)高親和性IL-2Rαβγを標的とする化合物は、天然のIL-2又は可溶性IL-15について観察されるように(Conlon、Miljkovicら 2019)、Treg増殖及び血管漏出症候群(VLS)につながる潜在性を有する。潜在的に、VLSは、脱PEG化NKTR-214によっても引き起こされる可能性がある。しかしながら、脱PEG化NKT2-214は短い半減期を有し、臨床開発において、この副作用がそもそも役割を果たすのか又はどの程度役割を果たすのか調べられる必要がある。
【0015】
IL-15シスプレゼンテーションによって活性化された高親和性IL-15Rαβγ受容体は、T細胞白血病において構成的に発現され、炎症性NK細胞、炎症性CD8+T細胞及び線維芽細胞様滑膜細胞において上方制御され(Kurowska、Rudnickaら、2002、Perdreau、Mortierら、2010)、すなわち、これらの細胞もIL-15Rαサブユニットを発現する。そのような活性化は回避されるべきである。というのは、これらの細胞上のIL-15シスプレゼンテーションがT細胞白血病の発症、及び潜在的に自己免疫疾患を誘発する免疫応答の増悪に関与するためである。同様に、高親和性IL-15Rαβγ受容体は血管内皮上で発現され、可溶性IL-15もVLSを誘導することができる。IL-15/IL-15Rα複合体、及び同様に上記のIL-2/IL-15Rβγ受容体を標的とする他の化合物は、少なくともIL-15Rαのsushiドメインを既に保有し、これがヘテロ三量体IL-15Rαβγ受容体への結合を立体的に妨げるので、上記の高親和性受容体に結合しないか、又はIL-15Rαへの結合は、変異によって低下/消失するか、若しくはPEG、アルブミン等の他の部分への融合によって立体的に妨害される。高親和性IL-15Rαβγ受容体の係合(結合)を介して誘発されるこれらの副作用は、天然IL-15によって誘発されるが、複合体の崩壊がインビボで起これば、ALT-803及びhetIL-15等の非共有結合IL-15/IL-15Rα複合体によっても誘発される。
【0016】
最後に、高親和性IL-15Rαは、骨髄系細胞、マクロファージ、B細胞及び好中球上で構成的に発現され(Chenoweth、Mianら、2012)、天然のIL-15によって活性化されてもよく、同様に、複合体の崩壊がインビボで起これば、ALT-803及びhetIL-15等の非共有結合IL-15/IL-15Rα複合体によって活性化されてもよい。
【0017】
同様に、上記のIL-2に基づく化合物も、IL-2の生命を脅かす副作用を回避するために、変異により結合を減少/消失させることを介して(STK-012、MDNA11)、可溶性IL-2Rαへの融合(ALKS4230)又はPEG等の他の部分への融合(NKTR-214、SAR245)によってIL-2Rαへの結合を立体的に妨げることを介して、連結されたIL-2/IL-15Rβγ機能を標的化する。
【0018】
要約すると、IL-15は野生型IL-2と同様の免疫増強特性を有するが、Treg細胞の活性化のような免疫抑制活性を共有しないと考えられており、臨床においてVLSを引き起こさないが(Robinson及びSchluns、2017)、IL-15治療の欠点は、その短いインビボ半減期及び他の細胞型によるトランスプレゼンテーションへのその依存を含む(Robinson及びSchluns、2017)。IL-15療法及び改善されたIL-2療法は両方とも、同じ中親和性IL-2/IL-15Rβγを標的とし、同時にそれぞれのα鎖から脱標的化し、これにより類似の作用化合物の群であるIL-2/IL-15Rβγアゴニストを形成する。
【0019】
近年、これらの知見により、操作されたIL-2/IL-15Rβγアゴニストの数が増えており(そのうちいくつかは上記されている)、そのうちのいくつかは、最近、臨床開発に入った。このIL-2/IL-15Rβγアゴニストのリストには、RLI-15(SOT101、SO-C101)、ALT-803(N803、Anktiva)、hetIL-15(NIZ985)、XmAb24306、P-22339、CUG105、NKTR-214、SAR245(THOR-707)、ネムバロイキンアルファ(Nemvaleukin alpha)(ALKS4230)、NL-201、NKRT-255、THOR-924、TransCon IL-2、ARX102、STK-012、MDNA11、WTX-124、XTX202、NKRT-255及びTHOR-924、-908、-918が含まれる。
【0020】
以下の実施例によって示されるように、ADC T-DM1と組み合わせたIL-2/IL-15RβγアゴニストRLI-15による免疫系の刺激は、インビボで相乗的腫瘍細胞死滅をもたらし、SOT102(毒素としてPNUを含む)と組み合わせたものはインビトロで相乗的腫瘍細胞死滅をもたらす。以下のメカニズムに束縛されるものではないが、T-DM1及びPNUはICDを誘導し、これにより、死につつある腫瘍細胞に対して樹状細胞をプライミングし、及び/又は腫瘍細胞上のNK細胞受容体を上方制御するとされている。しかしながら、これは、優れた/相乗的な腫瘍細胞死滅をもたらすために、RLI-15(又は別のIL-2/IL-15Rβγアゴニスト)によるNK細胞及びCD8+細胞のような免疫細胞の追加の刺激を必要とした。
【0021】
定義、略語及び頭字語
「免疫グロブリン」(Ig)とも呼ばれる「抗体」は、一般に4つのポリペプチド鎖、2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含み、それゆえ多量体タンパク質であるか、又はその等価なIg相同体(例えば、重鎖のみを含むラクダ科動物由来抗体、単一ドメイン抗体(sdAb)、若しくは重鎖若しくは軽鎖のいずれかに由来することができるナノボディ)を含む。用語「抗体」は、抗体ベースの結合タンパク質、それらの標的結合能力を保持する修飾された抗体形式(フォーマット)を含む。用語「抗体」は、Ig分子の必須エピトープ結合特徴を保持する完全長機能性変異体、多様体(バリアント)、又はその誘導体(マウス抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体及び完全ヒト抗体を含むが、これらに限定されない)も含み、2種類の抗原を認識するIg、二重特異性Ig、多重特異性Ig、及び二重可変ドメインIgを含む。Ig分子は、任意のクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)又はサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)並びにアロタイプのものであってもよい。Ig分子は、例えば、Fcγ受容体若しくは新生児Fc受容体(FcRn)に対する親和性を増強若しくは低減するために、又は他の公知の理由で変異していてもよい。
【0022】
本明細書で使用される「抗体断片」又は「抗体結合断片」は、完全長ではなく標的結合を示す抗体に由来する少なくとも1つのポリペプチド鎖を含む分子に関し、例としては、(i)可変軽鎖(VL)ドメイン、可変重鎖(VH)ドメイン、定常軽鎖(CL)ドメイン及び定常重鎖1(CH1)ドメインからなる一価断片であるFab断片;(ii)ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab’)2断片(F(ab’)2断片の還元は、遊離スルフヒドリル基を有する2つのFab’断片をもたらす);(iii)VH及びCH1ドメインからなるFab(Fa)断片の重鎖部分;(iv)抗体の単一アームのVLドメイン及びVHドメインからなる可変断片(Fv)フラグメント;(v)単一の可変ドメインを含む、ドメイン抗体(dAb)断片;(vi)単離された相補性決定領域(CDR);(vii)単鎖Fv断片(scFv);(viii)VH及びVLドメインが単一のポリペプチド鎖上で発現されるが、同じ鎖上の2つのドメイン間の対合を可能にするには短すぎるリンカーを使用し、これによりドメインを別の鎖の相補性ドメインと強制的に対合させ、2つの抗原結合部位を作り出す二価の二重特異性抗体であるダイアボディ(二重特異性抗体);(ix)相補性軽鎖ポリペプチドとともに一対の抗原結合領域を形成する一対のタンデムFvセグメント(VH-CH1-VH-CH1)を含む線状抗体;(x)二重可変ドメイン免疫グロブリン;(xi)単独又はいずれかの組み合わせの、免疫グロブリン重鎖及び/若しくは軽鎖の他の非全長部分、又はその変異体、多様体、若しくは誘導体、が挙げられるが、これらに限定されない。操作された抗体多様体は、Holliger及びHudson、並びにFriedman(Holliger及びHudson 2005、Friedman及びStahl 2009)に概説されている。抗体断片は、親抗体の結合特異性の少なくともいくらか、典型的には、活性がモル基準で表現される場合、親の結合活性の少なくとも10%を保持する。抗体の高い親和性/結合活性(アヴィディティ)を考慮すると、親の結合活性の10%でさえ、典型的には、その作用を発揮するのに十分であり、かつ/又は結合活性のこのような低下は、より高い投与量によって容易に補償できよう。好ましくは、抗体断片は、標的に対する親抗体の結合親和性の少なくとも20%、50%、70%、80%、90%、95%又は100%以上、とりわけ少なくとも90%を保持する。
【0023】
本明細書で使用される用語「修飾抗体形式」は、ポリアルキレンオキシド修飾scFv、モノボディ、ダイアボディ、ラクダ科動物由来抗体、ドメイン抗体、二重特異性抗体若しくは三重特異性抗体、IgA、又はJ鎖及び分泌成分によって連結された2つのIgG構造、サメ抗体、新世界霊長類フレームワーク及び非新世界霊長類CDR、ヒンジ領域が除去されたIgG4抗体、2つのさらなる結合部位がCH3ドメインに操作されたIgG、Fcγ受容体に対する親和性を増強又は低減するための改変されたFc領域を有する抗体、CH3、VL、及びVHを含む二量体化構築物等を包含する。二重特異性抗体形式は、例えば、Godarら(2018)に概説されている。
【0024】
KabatナンバリングスキームMartin及びAllemn(2014年)が、開示された抗体に適用されている。
【0025】
本明細書で使用される「抗体-薬物コンジュゲート」又は「ADC」は、薬学的活性成分(API)又はペイロードが共有結合で連結されている抗体(又は抗体断片)であって、APIが抗体によって抗体の標的に対して標的化され、主に抗体の標的を発現する細胞においてその薬学的機能を呈するようになっている、抗体(又は抗体断片)を指す。典型的には、APIは、標的を発現する細胞を効果的に死滅させることができる細胞傷害性の薬物又は毒素である。APIの共有結合による結合は、APIを抗体のリジン又はシステイン残基に結合させる標準的な化学リンカーを用いて非部位特異的に、又は好ましくは、例えばPanowski、Bhaktaら(2014)に概説されている機構により部位特異的に行うことができるが、(国際公開第2014/140317A2号パンフレットに記載されているように)ソルターゼ媒介ペプチド転移を用いることが好ましい。使用されるリンカーは、Jain、Smithら(2015)によって概説されるように、血漿中で安定であるが、(標的)細胞による内部移行時にAPIを遊離する等、個別の特性を有することが要求され、同時に、ADCに使用される典型的に疎水性のAPIの凝集を回避するために溶解度を増加させて、免疫原性がないか又は低いことが要求される。リンカーは、バイスタンダー効果を増加させるために、標的への結合時に又は微小腫瘍環境において切断可能であってもよいし、又は(標的)細胞の内部へのAPIの遊離を可能な限り確実にするために非切断性(切断不可能)リンカーであってもよい。ADCの1つの重要な特徴は、共有結合で連結されたAPI(薬物)対抗体の平均比、いわゆる薬物-抗体比(DAR)であり、典型的には、医薬品について低い変動性が好ましく、DAR2~4(すなわち、1つの抗体に2~4つのAPIが結合している)が目標とされる。
【0026】
本明細書で使用される「免疫原性細胞死」又は「ICD」は、主にカルレティキュリン(CRT)、熱ショックタンパク質70及び90、の細胞表面露出によって表されるいわゆるDAMP(Danger-Associated Molecular Patterns、危険関連分子パターン)の露出、ATPの分泌、並びに非ヒストンクロマチンタンパク質高移動度群ボックス1(high-mobility group box 1、HMGB1)の放出を含む、異なる生化学的特性を示す死細胞抗原(例えば癌細胞)(「ICDマーカー」)に対する免疫応答を刺激する細胞死モダリティ(Kroemer、Galluzziら、2013)を指す。これらのICDのマーカーは、実施例に記載されているように、とりわけ実施例1に記載されているように容易に決定することができる。
【0027】
「免疫原性細胞死(ICD)を誘導することができる細胞傷害性化合物」又は「ICD誘導化合物」は、一般に、インキュベーション時に、アポトーシス性の、アネキシンV陽性/DAPI陰性細胞による細胞株、とりわけ腫瘍細胞株上でのICDマーカーの発現の誘導によって、好ましくは、Fucikovaら(2011、2014)によって記載されているドキソルビシン又はイダルビシンと同程度まで、インビトロで測定可能なICDを誘導する化合物又は薬剤であり、細胞傷害性化合物は、好ましくは、細胞に容易に侵入することができる約1000ダルトン未満のサイズの小分子であり、その低分子量に起因して細胞傷害性である、すなわち細胞に対して毒性である。
【0028】
「ICDを誘導することができるモダリティ」は、一般に、腫瘍細胞株をそのようなモダリティに供すると、アポトーシス性のアネキシンV陽性/DAPI陰性細胞による細胞株、とりわけ腫瘍細胞株におけるICDマーカーの発現の誘導によって、好ましくは、Fucikovaら、(Fucikova、Kralikovaら、2011、2014)によって記載されているドキソルビシン又はイダルビシンと同程度まで、インビトロで測定可能なICDを誘導する治療モダリティである。
【0029】
「SOT102」は、ADCC不活性化重鎖置換LALA(L234A/L235A)を有する抗CLDN18.2抗体hCl1a(配列番号20(重鎖)、配列番号21(軽鎖))に基づく抗体-薬物-コンジュゲートであって、アントラサイクリンPNU-159682(PNU)が非切断性リンカーGGGGSLPQTGG(配列番号24)-エチレンジアミンによって軽鎖のC末端に連結された(hCl1a-LC-G2-PNU)抗体-薬物-コンジュゲートである。SOT102の調製は、国際公開第2022/136642号パンフレットの実施例7に記載されている。配列番号22及び配列番号23は、上記LALA変異及び上記非切断性リンカーを含む。
【0030】
疾患に関連して「治療する(こと)」は、治癒的、緩和的又は予防的処置を含む医療を患者に提供することを意味する。
【0031】
「低~中間のHER2発現」は、外科的標本又は生検標本において0~2+、好ましくは0~1+のHER2タンパク質発現スコア、すなわち、HercepTest(商標)のMDA-231~MDA-175対照スライドに匹敵する発現レベルに匹敵する発現レベル、を有する、HercepTest(商標)によって測定されるHER2発現を意味する。HercepTest(商標)は、異なるレベルのHER2タンパク質発現を表す含まれる対照スライドと比較して、組織学的評価のために常法により処理された乳癌組織におけるHER2タンパク質過剰発現を決定するための半定量的免疫組織化学的アッセイである:MDA-231(0)、MDA-175(1+)及びSK-BR-3(3+)。HER2 3+は、高いHER2発現を指す。
【0032】
「インターロイキン-2」、「IL-2」又は「IL2」は、NCBI参照配列AAB46883.1又はUniProt ID P60568(配列番号1)によって記載されるヒトサイトカインを指す。その前駆体タンパク質は153個のアミノ酸を有し、20-aaペプチドリーダーを有し、133-aa成熟タンパク質をもたらす。そのmRNAは、NCBI GenBank参照番号S82692.1に記載されている。
【0033】
「IL-2誘導体」は、成熟ヒトIL-2のアミノ酸配列(配列番号2)と少なくとも92%、好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%の同一率を有するタンパク質を指す。好ましくは、IL-2誘導体は、リンパ球増殖バイオアッセイによって測定される場合に、ヒトIL-2の活性の少なくとも約0.1%、好ましくは少なくとも1%、より好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも25%、さらにより好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも80%を有する。インターロイキンは極めて強力な分子であるため、ヒトIL-2の0.1%等の低い活性でさえも、とりわけより高く投与される場合、又は半減期の延長が活性の喪失を補償する場合、依然として十分に強力であってもよい。その活性は、World Health Organization 1st International Standard for Interleukin-2(human)(世界保健機関第1回インターロイキン-2(ヒト)に関する国際規格)によって確立され、2nd International Standard(第2の国際規格)に置き換えられた(Gearing及びThorpe 1988,Wadhwa、Birdら、2013)国際単位で表される。効力とタンパク質質量との関係は以下の通りである:1800万IU PROLEUKIN=1.1mgタンパク質。上述のように、変異(置換)は、THOR-707に関して行われたように(Joseph、Maら、2019)(国際公開第2019/028419A1号パンフレット)半減期を延長するため、又は分子の結合特性を改変するため、例えば、IL2vに関して行われたように(Klein、Injaら、2013、Bacac、Fautiら、2016)(国際公開第2012/107417A1号パンフレット)、L72、F42及び/若しくはY45の変異、とりわけF42A、F42G、F42S、F42T、F42Q、F42E、F42N、F42D、F42R、F42K、Y45A、Y45G、Y45S、Y45T、Y45Q、Y45E、Y45N、Y45D、Y45R、Y45K、L72G、L72A、L72S、L72T、L72Q、L72E、L72N、L72D、L72R、及びL72K、好ましくは変異F42A、Y45A及びL72GによってIL-2α受容体への結合を減少させるために、PEGをIL-2に特異的に連結するために導入されてもよい。IL-2の様々な他の変異が記載されている:血管透過性活性の低下による毒性(Hu、Mizokamiら、2003)を低減するためのR38W(米国特許出願公開第2003/0124678号明細書);NK細胞よりもT細胞に対する選択性を高めるためのN88R(Shanafelt、Linら、2000);NK細胞からの炎症誘発性サイトカインの分泌を減少させるためのR38A及びF42K(Heaton、Juら、1993)(米国特許第5,229,109号明細書);VLSを低減するためのD20T、N88R及びQ126D(米国特許出願公開第2007/0036752号明細書);有効性を増強するためにCD25との相互作用及びTreg細胞の活性化を低減するためのR38W及びF42K(国際公開第2008/003473号パンフレット)。また、凝集を回避するためのT3A及びO-グリコシル化を消失させるためのC125A等のさらなる変異が導入されてもよい(Klein、Waldhauerら、2017)。他の変異又は上記のものの組み合わせは、遺伝子工学的方法によって生成されてもよく、当該技術分野において周知である。アミノ酸番号は、133アミノ酸の成熟IL-2配列(配列番号2)を参照している。
【0034】
「インターロイキン-15」、「IL-15」又は「IL15」は、NCBI参照配列NP_000576.1又はUniProt ID P40933(配列番号3)によって記載されるヒトサイトカインを指す。その前駆体タンパク質は、162個のアミノ酸を有し、長い48-aaペプチドリーダーを有し、114-aa成熟タンパク質(配列番号4)をもたらす。そのmRNAの完全なコード配列は、NCBI GenBank参照番号U14407.1に記載されている。
【0035】
「IL-15誘導体」又は「IL-15の誘導体」は、成熟ヒトIL-15(114aa)のアミノ酸配列(配列番号4)と少なくとも92%、好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%の同一率を有するタンパク質を指す。好ましくは、IL-15誘導体は、ヒトIL-15の活性の少なくとも0.1%、好ましくは1%、より好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも25%、さらにより好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも80%を有する。上記のIL-2についてのように、インターロイキンは極めて強力な分子であり、ヒトIL-15の0.1%等の低い活性でさえも、とりわけより高く投与される場合、又は半減期の延長が活性の喪失を補償する場合、依然として十分に強力であってもよい。IL-15についても、分子に対する様々な明確な変化を達成するための多数の変異が記載されている:IL-15Rβγβγ
c受容体への結合を低減するためのD8N、D8A、D61A、N65D、N65A、Q108R(国際公開第2008/143794A1号パンフレット);(ALT-803中の)活性化変異としてのN72D;増殖活性を低下させるためのN1D、N4D、D8N、D30N、D61N、E64Q、N65D、及びQ108E(米国特許出願公開第2018/0118805号明細書);IL-15Rαへの結合を減少させるためのL44D、E46K、L47D、V49D、I50D、L66D、L66E、I67D、及びI67E(国際公開第2016/142314A1号パンフレット);IL-15Rbの結合を抑止するためのN65K及びL69R(国際公開第2014/207173A1号パンフレット);IL-15の機能を阻害するためのQ101D及びQ108D(国際公開第2006/020849A2号パンフレット);IL-15Rβ結合を減少させるためのS7Y、S7A、K10A、K11A(Ring、Linら、2012);IL-15Rαへの結合を増加させるための、L45、S51、L52のD、E、K又はRによる置換、並びにE64、I68、L69及びN65のD、E、R又はKによる置換(国際公開第2005/085282A1号パンフレット);脱アミド化を低減するための、N71のS、A又はNによる置換、N72のS、A又はNによる置換、N77のQ、S、K、A又はEによる置換、及びN78のS、A又はGによる置換(国際公開第2009/135031A1号パンフレット);国際公開第2016/060996A2号パンフレットは、IL-15の特定の領域を置換に適していると定義し(段落0020、0035、00120及び00130を参照)、具体的には、PEG又は他の修飾のためのアンカーを提供するための潜在的置換を特定する方法の指針を提供し(段落0021を参照);CD122に対する親和性が増加し、IL-2及びIL-15エフェクター機能を阻害するためのCD132の動員が損なわれるQ108D、及びCD122親和性を抑止するためのN65K(国際公開第2017/046200A1号パンフレット);NK細胞及びCD8T細胞の活性化に関するそれぞれのIL-15/IL-15Rα複合体の活性を徐々に低下させるためのN1D、N4D、D8N、D30N、D61N、E64Q、N65D、及びQ108E(
図51、国際公開第2018/071918A1号パンフレット、国際公開第2018/071919A1号パンフレットを参照)。加えて、又は代わりに、当業者は、保存的アミノ酸置換を容易に行うことができる。IL-15誘導体はさらに、当該技術分野で公知の化学修飾によって、例えばPEG化又は他の翻訳後修飾によって生成されてもよい(国際公開第2016/060996A2号パンフレット、国際公開第2017/112528A2号パンフレット、国際公開第2009/135031A1号パンフレットを参照)。
【0036】
IL-2及びIL-15の両方の活性は、Horiら(1987)によって記載されるように、kit225細胞の増殖の誘導によって測定することができる。好ましくは、例えば、CTLL-2細胞を使用するSomanらによって記載されるように(Soman、Yangら、2009)、IL-2又はIL-15刺激による増殖活性化を測定するために比色分析又は蛍光等の方法が使用される。kit225細胞等の細胞株の代替として、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)又はバフィーコートを使用することができる。IL-2又はIL-15の活性を測定するための好ましいバイオアッセイは、STAT5-RE CTLL-2細胞を使用するIL-2/IL-15 Bioassay Kit(Promega(プロメガ)カタログ番号CS2018B03/B07/B05)である。
【0037】
「IL-2Rα」は、ヒトIL-2受容体α又はCD25を指す。
【0038】
「IL-15Rα」は、NCBI参照配列AAI21142.1又はUniProt ID Q13261(配列番号5)によって記載されるヒトIL-15受容体α又はCD215を指す。その前駆体タンパク質は、267個のアミノ酸を有し、30-aaペプチドリーダーを有し、231-aa成熟タンパク質をもたらす。そのmRNAは、NCBI GenBank参照番号HQ401283.1に記載されている。IL-15Rαsushiドメイン(又はIL-15Rαsushi、配列番号6)は、IL-15への結合に必須であるIL-15Rαのドメインである(Wei、Orchardsonら、2001)。sushi+断片(配列番号7)はsushiドメイン、及びこのIL-15Rαのsushiドメインの後に位置する14個のアミノ酸として定義される、このsushiドメインに対してC末端位置のヒンジ領域の一部を含み、すなわち、このIL-15Rαヒンジ領域は、上記(C4)システイン残基の後の最初のアミノ酸で始まり、(標準的な「N末端からC末端へ」の向きに数えて)14番目のアミノ酸で終わる。sushi+断片は、IL-15に対する完全な結合活性を再構成する(国際公開第2007/046006号パンフレット)。
【0039】
「IL-15Rα誘導体」は、ヒトIL-15Rαのsushiドメインのアミノ酸配列(配列番号6)、好ましくはヒトIL-15Rαのsushi+ドメインのアミノ酸配列(配列番号7)と少なくとも92%、好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%、さらにより好ましくは少なくとも99%の同一率を有する、そして最も好ましくは100%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを指す。好ましくは、IL-15Rα誘導体は、N末端及びC末端が切断されたポリペプチドであるが、シグナルペプチド(配列番号5のアミノ酸1~30)は欠失し、IL-15Rαの膜貫通ドメイン及び細胞質内部分は欠失している(配列番号5のアミノ酸210~267)。従って、好ましいIL-15Rα誘導体は、少なくともsushiドメイン(aa33~93)を含むが、配列番号5のアミノ酸31~209である成熟IL-15Rαの細胞外部分を超えて伸長しない。特定の好ましいIL-15Rα誘導体は、IL-15Rαのsushiドメイン(配列番号6)、IL-15Rαのsushi+ドメイン(配列番号7)及びIL-15Rαの可溶性形態(配列番号5のアミノ酸31からアミノ酸172、197、198、199、200、201、202、203、204若しくは205のいずれかまで。国際公開第2014/066527号パンフレットを参照(Giron-Michel、Giulianiら、2005))である。この定義によって提供される制限内で、IL-15Rα誘導体は、天然に存在する変異又は導入された変異を含んでもよい。天然の多様体及び代替配列は、例えば、UniProtKBエントリーQ13261(www.uniprot.org/uniprot/Q13261)に記載されている。さらに、当業者は、依然として機能的である誘導体を生成するために、哺乳動物IL-15Rαホモログ又はさらには霊長類IL-15Rαホモログの間であまり保存されていないアミノ酸を容易に特定することができる。哺乳動物IL-15Rαホモログのそれぞれの配列は、国際公開第2007/046006号パンフレット、18頁及び19頁に記載されている。追加的に又は代替的に、当業者は保存的アミノ酸置換を容易に行うことができる。
【0040】
好ましくは、IL-15Rα誘導体は、例えば、(Wei、Orchardsonら、2001)において測定されたようにヒトIL-15に対するヒトsushiドメインの結合活性の少なくとも10%、より好ましくは少なくとも25%、さらにより好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも80%を有する。
【0041】
「IL-2Rβ」は、ヒトIL-Rβ又はCD122を指す。
【0042】
「IL-2Rγ」は、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15及びIL-21によって共有される共通のヒトサイトカイン受容体γ又はγc又はCD132を指す。
【0043】
IL-15/IL-15Rα複合体は、ヒトIL-15若しくはIL-15誘導体及びヒトIL-15Rα若しくはIL-15Rα誘導体を含む共有結合又は非共有結合の複合体を指す。好ましくは、この複合体は、ヒトIL-15及びIL-15Rαのsushiドメイン(配列番号6)、IL-15Rαのsushi+ドメイン(配列番号7)又はIL-15Rαの可溶性形態(配列番号5のアミノ酸31からアミノ酸172、197、198、199、200、201、202、203、204又は205のいずれかまで。国際公開第2014/066527号パンフレット(Giron-Michel、Giulianiら、2005)を参照)を含む。
【0044】
「RLI-15」は、ヒトIL-15Rαsushi+断片とヒトIL-15との受容体-リンカー-インターロイキン(N末端からC末端;「RLI」)融合タンパク質であるIL-15/IL-15Rα複合体を指す。好適なリンカーは、低い免疫原性で柔軟である。例は国際公開第2007/046006号パンフレット及び国際公開第2012/175222号パンフレットに記載されている。ヒトIL-15Rαのsushiドメイン又は断片は、配列番号6によって第1から第4の保存システインまで記載されるような配列を有し、任意選択で、T又はITによってN末端に、IによってC末端に伸長される。ヒトIL-15Rαのsushi+断片は、配列番号7によって記載される配列を有し、さらにヒンジ領域の一部を含み、発揮する。
【0045】
「RLI2」又は「SO-C101」又は「SOT101」は、ヒトIL-15Rαsushi+断片とヒトIL-15との受容体-リンカー-インターロイキン融合タンパク質であるIL-15/IL-15Rα複合体を指す。「RLI2」又は「SO-C101」又は「SOT101」は、配列番号9によって表される。「RLI2」又は「SO-C101」又は「SOT101」で使用されるリンカーは、配列番号8の配列を有する。
【0046】
「ALT-803」は、Altor BioScience Corp.(アルター・バイオサイエンス・コーポレーション)のIL-15/IL-15Rα複合体を指し、これは、最適化されたアミノ酸置換(N72D)ヒトIL-15「スーパーゴニスト」の2分子、ヒトIL-15α受容体「sushi」ドメインの2分子を含み、これらが、二量体ヒトIgG1 Fcに融合した複合体であり、これは、安定性を付与しIL-15N72D:IL-15Rαsushi-Fc複合体の半減期を延長する(例えば米国特許出願公開第2017/0088597号明細書を参照)。
【0047】
「ヘテロ二量体IL-15:IL-Rα」、「hetIL-15」又は「NIZ985」は、IL-15に類似するNovartis(ノバルティス)のIL-15/IL-15Rα複合体を指し、これは、ヒトIL-15及び可溶性ヒトIL-15Rα(sIL-15Rα)、すなわちシグナルペプチド並びに膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを伴わないIL-15Rαの170アミノ酸の、組換えにより同時発現される非共有結合複合体である、可溶性IL-15Rαとの安定な分子複合体として循環する(Thaysen-Andersen、Chertovaら、2016、例えば表1参照)。
【0048】
「IL-2/IL-15Rβγアゴニスト」は、IL-2Rα及び/又はIL-15Rα受容体に結合することなく/IL-2Rα及び/又はIL-15Rα受容体への結合が大幅に低下しており、これによりTregの刺激を欠く/回避する、中親和性IL-2/IL-15Rβγ受容体を主に標的とする分子又は複合体を指す。この文脈における「結合が大幅に低下した」とは、結合が少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%、とりわけ少なくとも90%低下したことを意味する。例は、IL-15Rαの少なくともsushiドメインに結合したIL-15であり、これはトランスプレゼンテーション又は細胞間相互作用に依存しないという利点、及び分子のサイズの増加に起因するより長いインビボ半減期を有するという利点を有し、この分子は、インビトロ及びインビボで天然のIL-15よりも有意に強力であることが示されている(Robinson及びSchluns、2017)。これは、上に概説したように、IL-15/IL-15Rαベースの複合体以外に、IL-2/15Rβ及びγc受容体又はIL-15変異タンパク質への結合に影響を及ぼすことなく、IL-2α受容体への結合を著しく低減又は適時まで遅延させる、変異IL-2又は化学的に修飾されたIL-2によって達成することができる。
【0049】
「NKTR-214」は、6つの放出可能なポリエチレングリコール(PEG)鎖が結合したIL-2からなる生物学的プロドラッグである(国際公開第2012/065086A1号パンフレット)、IL-2に基づくIL-2/IL-15Rβγアゴニストを指す。複数のPEG鎖の存在は、不活性なプロドラッグを生成し、これは、投与の際の急速な全身性免疫活性化を妨げる。放出可能なリンカーの使用により、PEG鎖がゆっくりと加水分解して、2つのPEG又は1つのPEGによって結合された活性コンジュゲートIL-2を連続的に形成することが可能になる。IL-2/IL-2Rα界面におけるPEG鎖の位置は、高親和性IL-2Rαへの結合を妨害するが、低親和性IL-2Rβへの結合は妨害されずに残し、腫瘍における抑制よりも免疫活性化に有利に働く(Charych、Hochら、2016、Charych、Khaliliら、2017)。
【0050】
THOR-707は、中間親和性IL-2Rβγシグナル伝達複合体への結合を保持しながら、IL2Rα鎖係合を減少/欠失させたIL-2の部位特異的な単独PEG化型に基づくIL-2/IL-15Rβγアゴニスト(Joseph、Maら、2019)(国際公開第2019/028419A1号パンフレット)を指す。
【0051】
ALKS4230は、(リンカーとβ及びγ受容体鎖との相互作用を回避するために)環状に並べ替えられたIL-2であって、α結合側が既にIL-2Rα融合成分によって占められているので、IL-2Rαの細胞外ドメインがβγ受容体を選択的に標的とするものを指す(Lopes、Fisherら、2020)。
【0052】
NL-201は、IL-2受容体βγcヘテロ二量体(IL-2Rβγc)に結合するためにIL-2を模倣するがIL-2Rα又はIL-15Rαに対する結合部位を有さない、コンピュータにより設計されたタンパク質であるIL-2/IL-15Rβγアゴニストを指す(Silva、Yuら、2019)。
【0053】
NKRT-255は、PEGコンジュゲートヒトIL-15に基づくIL-2/IL-15Rβγアゴニストであって、IL-15Rαに対する結合親和性を保持し、クリアランスの減少を示し、持続的な薬力学的応答を提供するものを指す(国際公開第2018/213341A1号パンフレット)。
【0054】
THOR-924、-908、-918は、部位特異的PEG化に使用される非天然アミノ酸を有しIL-15Rαへの結合が低下したPEGコンジュゲートIL-15に基づくIL-2/IL-15Rβγアゴニスト(国際公開第2019/165453A1号パンフレット)を指す。
【0055】
「IL2v」は、配列番号10を有するIL-2Rαサブユニットへの結合が消失したIL-2多様体である、IL-2に基づくIL-2/IL-15Rβγアゴニストを指す。IL2vは、例えば、抗体のC末端に融合された融合タンパク質において使用される。IL2vは、アミノ酸置換F42A、Y45A及びL72G(ヒト、マウス及び非ヒト霊長類間で保存されている)を介してIL-2Rαに対する結合能力を破壊することによって、並びにアミノ酸置換T3Aを介してO-グリコシル化を消失させることによって、並びにアルデスロイキンにおけるようにC125A変異によって凝集を回避することによって設計された(シグナルペプチドを除くUniProt ID P60568に基づく番号付け)(Klein、Waldhauerら、2017)。IL2vは、その半減期を増加させるために、抗体との融合パートナーとして、例えば、非標的化IgGとの融合パートナーとして(IgG-IL2v)使用される(Bacac、Colombettiら、2017)。RG7813(又はセルグツズマブアムナロイキン(cergutuzumab amunaleukin)、RO-6895882、CEA-IL2v)において、IL2vは、FcγR及びC1q結合を欠くヘテロ二量体Fcを有する癌胎児性抗原(CEA)を標的とする抗体に融合される(Klein 2014、Bacac、Fautiら、2016、Klein、Waldhauerら、2017)。そして、RG7461(又はRO6874281若しくはFAP-IL2v)において、IL2vは、線維芽細胞活性化タンパク質α(FAP)を標的とする腫瘍特異的抗体に融合される(Klein 2014)。
【0056】
「免疫チェックポイント阻害剤」又は略して「チェックポイント阻害剤」は、T細胞等のいくつかの種類の免疫系細胞及びいくつかの癌細胞によって作製される特定のタンパク質を遮断する種類の薬物を指す。これらのタンパク質は、免疫応答のチェックを助け、T細胞が癌細胞を死滅させないようにすることができる。これらのタンパク質が遮断されると、免疫系上の「ブレーキ」が解放され、T細胞は癌細胞をより良好に死滅させることができる。T細胞又は癌細胞上に見出されるチェックポイントタンパク質の例としては、例えば、Darvinら(2018)によって概説されるように、PD-1/PD-L1及びCTLA-4/B7-1/B7-2(National Institute of Health(米国国立衛生研究所)のNational Cancer Institute(米国国立癌研究所)の定義、www.cancer.gov/publications/dictionaries/cancer-terms/def/immune-checkpoint-inhibitorを参照)が挙げられる。このようなチェックポイント阻害剤の例は、抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体、抗CTLA-4抗体であるが、LAG-3若しくはTIM-3に対する抗体、又は臨床で現在試験されているBTLAの遮断薬(De Sousa Linhares、Leitnerら、2018)も挙げられる。さらなる有望なチェックポイント阻害剤は、抗TIGIT抗体(Solomon及びGarrido-Laguna、2018)である。
【0057】
「抗PD-L1抗体」は、PD-L1に結合する抗体又はその抗体断片を指す。例は、アベルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、KN035、MGD013(PD-1及びLAG-3に二重特異的)である。
【0058】
「抗PD-1抗体」は、PD-1に結合する抗体又はその抗体断片を指す。例は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ(REGN2810)、BMS-936558、SHR1210、IBI308、PDR001、BGB-A317、BCD-100、JS001である。
【0059】
「抗PD-L2抗体」は、抗PD-L2に結合する抗体又はその抗体断片を指す。例はsHIgM12である。
【0060】
「抗CTLA4抗体」は、CTLA-4に結合する抗体又はその抗体断片を指す。例は、イピリムマブ及びトレメリムマブ(チシリムマブ)である。
【0061】
「抗LAG-3」抗体は、LAG-3に結合する抗体又はその抗体断片を指す。抗LAG-3抗体の例は、レラトリマブ(BMS986016)、Sym022、REGN3767、TSR-033、GSK2831781、MGD013(PD-1及びLAG-3に二重特異的)、LAG525(IMP701)である。
【0062】
「抗TIM-3抗体」は、TIM-3に結合する抗体又はその抗体断片を指す。例はTSR-022及びSym023である。
【0063】
「抗TIGIT抗体」は、TIGITに結合する抗体又はその抗体断片を指す。例は、チラゴルマブ(tiragolumab)(MTIG7192A、RG6058)及びエチギリマブ(etigilimab)(国際公開第2018/102536号パンフレット)である。
【0064】
2つのアミノ酸配列間の「同一率」、「同一性のパーセンテージ」又は「%同一性」は、それらの配列の最良のアラインメントを用いて得られる、比較される2つの配列間の同一アミノ酸のパーセンテージを意味し、このパーセンテージは純粋に統計的であり、これらの2つの配列間の差はアミノ酸配列にわたってランダムに広がる。本明細書中で使用される場合、「最良のアラインメント」又は「最適なアラインメント」は、決定された同一率(以下を参照)が最も高いアラインメントを意味する。2つのアミノ酸配列間の配列比較は、通常、最良のアラインメントに従って予めアラインメントされたこれらの配列を比較することによって実現される。この比較は、類似性の局所領域を識別及び比較するために、比較セグメント上で実現される。比較を行うための最良の配列アラインメントは、手動の方法の他に、Smith及びWaterman(1981)によって開発されたグローバル相同性アルゴリズムを使用することによって、Needleman及びWunsch(1970)によって開発されたローカル相同性アルゴリズムを使用することによって、Pearson及びLipman(1988)によって開発された類似性の方法を使用することによって、そのようなアルゴリズムを使用するコンピュータソフトウェア(米国ウィスコンシン州マディソン(Madison)、575 Science Dr.(サイエンス・ドライブ 575)、Genetics Computer Group(ジェネティクス・コンピュータ・グループ)のWisconsin Genetics software Packageの中のGAP、BESTFIT、BLAST P、BLAST N、FASTA、TFASTA)を使用することによって、MUSCLE多重アラインメントアルゴリズム(Edgar 2004)を使用することによって、又はCLUSTAL(Goujon、McWilliamら、2010)を使用することによって実現することができる。最良のローカル(局所)アラインメントを得るために、好ましくはBLOSUM62マトリクスとともにBLASTソフトウェアを使用することができる。2つのアミノ酸配列間の同一率は、最適にアラインメントされたこれらの2つの配列を比較することによって決定され、それらのアミノ酸配列は、これらの2つの配列間の最適なアラインメントを得るために、参照配列に対する付加又は欠失を包含することができる。同一率は、これら2つの配列間の同一位置の数を決定し、この数を比較された位置の総数で除算し、得られた結果に100を乗算してこれら2つの配列間の同一性の百分率を得ることによって計算される。
【0065】
保存的アミノ酸置換は、脂肪族アミノ酸(すなわち、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン)が別の脂肪族アミノ酸によって置換されるか、ヒドロキシル若しくは硫黄/セレン含有アミノ酸(すなわち、セリン、システイン、セレノシステイン、トレオニン、メチオニン)が別のヒドロキシル若しくは硫黄/セレン含有アミノ酸によって置換されるか、芳香族アミノ酸(すなわち、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン)が別の芳香族アミノ酸によって置換されるか、塩基性アミノ酸(すなわち、ヒスチジン、リジン、アルギニン)が別の塩基性アミノ酸によって置換されるか、又は酸性アミノ酸若しくはそのアミド(アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン)が別の酸性アミノ酸若しくはそのアミドによって置換されるアミノ酸の置換を指す。
【0066】
「組み合わせて投与される」と記載される場合、これは、典型的には、2つの薬剤が共製剤化され、同時投与されることを意味するのではなく、むしろ、1つの薬剤が、他の薬剤と組み合わせたその使用を特定するラベルを有することを意味する。そのため、例えば、IL-2/IL-15Rβγアゴニストは、癌又は感染性疾患の治療又は管理に使用するためのものであり、この使用は、IL-2/IL-15Rβγアゴニスト及びさらなる治療剤を同時に、別々に、又は逐次的に投与すること、又はその逆を含む。しかし、本出願におけるいかなるものも、2つの組み合わされた薬剤がひとまとまり若しくはキットとして提供されること、又はさらには投薬スケジュールが合致する場合に共製剤化され、一緒に投与されることを排除すべきではない。そのため、「組み合わせて投与される」は、(i)薬物が、関節注入、関節注射等で一緒に投与されること、(ii)薬物が、各薬物の所与の投与方法に従って別々であるが並行して投与されること、及び(iii)薬物が、別々にかつ逐次的に投与されることを含む。
この文脈における並行投与は、好ましくは、両方の治療が一緒に開始されること、例えば、治療レジメン内の各薬物の最初の投与が同じ日に投与されることを意味する。潜在的な異なる処置スケジュールを考慮すると、以降の日/週/月の間に、投与が常に同じ日に起こらなくてもよいことは明らかである。概して、並行投与は、両方の薬物が各治療サイクルの開始時に同時に体内に存在することを目的とする。
この文脈における逐次投与は、好ましくは、両方の治療が逐次的に開始される、例えば、第2の薬物が活性になる前に第1の薬物に対する身体の薬力学的応答を可能にするために、第1の薬物の最初の投与が、第2の薬物の最初の投与より少なくとも1日、好ましくは数日又は1週間早く行われることを意味する。その後、処置スケジュールは、互いに重複若しくは断続的であってもよく、又は直接続いてもよい。
【0067】
「約」は、値と共に使用される場合、その値±10%、好ましくはその値の±5%、とりわけ±1%を意味する。
【0068】
用語「を含む(comprising)」が本明細書及び請求項において使用される場合、その用語は他の要素を除外しない。本発明の目的のために、用語「からなる(consisting of)」は、用語「を含む(comprising of)」の好ましい実施形態であると考えられる。以下において、群が少なくともある数の実施形態を含むと定義される場合、これは、好ましくはこれらの実施形態のみからなる群も開示すると理解されるべきである。
【0069】
単数の名詞に言及するときに不定冠詞又は定冠詞、例えば「a」、「an」又は「the」が使用される場合、他に何かが具体的に述べられていない限り、これはその名詞の複数形を含む。
【0070】
従って、「少なくとも1種の化学療法剤」等における用語「少なくとも1つの」、「少なくとも1種の」は、1種以上の化学療法剤を意味するということを意味してもよい。用語「そ(れら)の組み合わせ」は、同じ文脈において、複数の化学療法剤を含む組み合わせを指す。
【0071】
「wt」は野生型に使用される。
ラテン語quaque/each、every(各、毎)に由来する「qxw」は、x週毎を表し、例えばq2wは2週毎を表す。
「s.c.」は皮下を表す。
「i.v.」は静脈内を表す。
「i.p.」は腹腔内を表す。
「SoC」は標準治療を表す。
【0072】
技術用語は、それらの共通の意味で使用される。特定の意味が特定の用語に伝えられる場合、用語の定義は、用語が使用される文脈において以下で与えられる。
【0073】
第1の態様では、本発明は、患者における癌を治療することにおいて使用するためのインターロイキン-2/インターロイキン-15受容体βγ(IL-2/IL-15Rβγ)アゴニストであって、このIL-2/IL-15Rβγアゴニストは、
a.免疫原性細胞死(ICD)を誘導することができる細胞傷害性化合物と同時に若しくは細胞傷害性化合物に対して逐次的に投与されるか、
b. ICDを誘導することができるモダリティの適用と同時に若しくは適用に対して逐次的に投与されるか、
c. ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物と同時に、かつICDを誘導することができるモダリティと同時に投与されるか、
d. ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物と同時に、かつICDを誘導することができるモダリティに対して逐次的に投与されるか、
e. ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物に対して逐次的に、かつICDを誘導することができるモダリティと同時に投与されるか、又は
f. ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物に対して逐次的に、かつICDを誘導することができるモダリティに対して逐次的に投与される
IL-2/IL-15Rβγアゴニストに関する。
【0074】
本明細書では、主に中親和性IL-2/IL-15Rβγ受容体を標的とするIL-2/IL-15Rβγアゴニストの抗腫瘍効果、並びにICDを誘導することができる細胞傷害性化合物及び/又はICDを誘導することができるモダリティの抗腫瘍効果を増強する併用療法が開示される。抗腫瘍効果のそのような増強は、例えば、増加した奏効率、全生存期間又は無増悪(無進行)生存期間において測定可能であるように、各単剤治療と比較して併用治療の改善された有効性をもたらしてもよく、かつ/又は単剤療法と比較して抗腫瘍効果を妨害することなく、ICDを誘導する細胞傷害性化合物/モダリティの低い用量の適用/ICDを誘導する細胞傷害性化合物/モダリティによるよりより弱い治療の適用をもたらし、これによりそれらの毒性/副作用を減少させてもよい。特許請求されるIL-2/IL-15Rβγアゴニストと組み合わせて高毒性化合物/モダリティの用量を低下させることは、そのような毒性化合物/モダリティに適格な患者集団の増加につながる可能性がある。というのは、所与の治療の初期段階の患者は、より許容できる副作用プロファイルに基づいてそのような併用治療を受け入れる可能性があり、又は医師が副作用のために毒性化合物/モダリティを使用することを以前は躊躇していた腫瘍適応症が今や、IL-2/IL-15Rβγアゴニストと組み合わせると、このような組み合わせについて治療可能になる可能性があるからである。より具体的には、IL-2/IL-15RβγアゴニストとICDを誘導することができる細胞傷害性化合物又はICDを誘導することができるモダリティとの組み合わせは、個々の治療と比較して、併用治療の相乗的増強又は抗腫瘍活性をもたらす。
【0075】
本発明者らは、死につつある腫瘍細胞がICDマーカーHsp70、Hsp90及びCRTを発現している場合、並びにこの研究ではトラスツズマブエムタンシン/Kadcyla(登録商標)とのインキュベーションによって誘導されるNK細胞リガンドCD112、CD155、ULBP3及びULBP2/5/6の発現が増大している場合、強い先天性抗腫瘍応答を備えていることの尺度としてのIL-2/IL-15Rβγアゴニスト(この研究ではSOT101/SO-C101/RLI-15)によるヒトPBMCからのNK細胞の活性化が著しく強力であることをインビトロで観察した。トラスツズマブエムタンシンは、細胞傷害性化合物メルタンシン/DM1に共有結合で連結された、腫瘍標的HER2に対するヒト化モノクローナル抗体トラスツズマブ/ハーセプチン(登録商標)からなる抗体-薬物コンジュゲートである。Kadcylaが活性化PBMCとのインキュベーション前に洗い流されたという事実のため、免疫細胞とのKadcylaの直接的な相互作用を排除することができ、本発明者らは、細胞集団の初期アポトーシス状態/ICDがこの効果に大きく寄与し、それゆえ、ICDを誘導することができる他の細胞傷害性化合物又はICDを誘導することができるモダリティが非常に類似した相乗効果を有するであろうと結論付ける。
【0076】
同様に、SOT102、CLDN18.2標的化ADCと毒素としてのアントラサイクリンPNU-159682との組み合わせは、インビトロでのNK細胞ベースの細胞傷害性アッセイにおいてSOT101と相乗作用し、このような効果はICDの誘導によって引き起こされるか又は寄与される。毒素としてPNUを有するADCは、ICDを誘導することが以前に記載されている(D’Amico、Menzelら、2019)。毒素/化学療法だけでなく放射線療法による危険シグナルの活性化は、例えば、インビトロ及びインビボで腫瘍細胞上のHsp70細胞表面発現の増大をもたらし、NK細胞媒介性細胞傷害性を促進することが報告された(Zingoni、Fiondaら、2017)。最近、ICDの特徴である外在化CRTがNK細胞のNKp46受容体の活性化リガンドとして特定され、その結合はNKp46シグナル伝達を誘発するが、この相互作用の阻害はNKp46媒介死滅を阻害する(Santara、Crespoら、2021)。
【0077】
従って、本発明者らは、本明細書に記載されるようなICDを誘導する細胞傷害性化合物及び/又はモダリティによる腫瘍細胞のICDの誘導の間に直接的な機構的関連があり、それら細胞をNK細胞の細胞傷害活性に対してより感受性にし、加えてこれは、NK細胞の強力な活性化因子である記載されるIL-2/IL-15Rβγアゴニスト、例えばSOT101によって増強されることが可能であると結論付ける。
NK細胞活性化は、インビボ抗腫瘍有効性の予測値を有すると考えられ、実際に、同様の相乗効果が、マウス同所性乳癌モデルにおいてインビボで観察された。
【0078】
概して、ICDを誘導する細胞傷害性化合物又はモダリティとIL-2/IL-15Rβγアゴニストとの組み合わせの観察された相乗効果は、(i)細胞傷害性化合物の用量若しくはモダリティの強度を低下させて(例えば、非切除/低線量放射線療法)、組み合わせ作用に起因して少なくとも患者に対する同じ治療利益を生じつつ、細胞傷害性化合物若しくはモダリティによって誘導される副作用を減少させるために、(ii)併用治療における強いICD誘導性免疫監視による腫瘍疾患の再発を回避するため、及び/又は(iii)抗体-薬物-コンジュゲートの場合には、(それぞれのADCのラベルの標的レベルと比較して)より低い標的発現を有する患者も当該併用治療から利益を得るので、患者集団を広げるために、使用されてもよい。
【0079】
1つの実施形態では、当該IL-2/IL-15Rβγアゴニストは、上記ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物の前及び/若しくは後に、又は上記ICDを誘導することができるモダリティの前及び/若しくは後に逐次的に投与される。そのような細胞傷害性化合物及びIL-2/IL-15Rβγアゴニスト又はそのような治療モダリティ及びIL-2/IL-15Rβγアゴニストの異なる投与/処置スケジュールを考慮すると、IL-2/IL-15Rβγアゴニストはそのような細胞傷害性化合物又はモダリティとまさに同時に投与されないことが非常に典型的である。
【0080】
逐次投与の場合の好ましい実施形態では、当該IL-2/IL-15Rβγアゴニストは、上記ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物の後に、又は上記ICDを誘導することができるモダリティの後に投与される。そのような細胞傷害性化合物又はそのようなモダリティによるICDの誘導にはいくらかの時間がかかるので、細胞表面への変化及びICDの可溶性メディエータの放出が起こった後に、ICDを受けるそのような腫瘍細胞に対する免疫系をブーストするためにNK及びCD8細胞が活性化される十分な時間が提供されるように、IL-2/IL-15Rβγアゴニストが後に投与されることが有益であると考えられる。好ましくは、ICDを誘導する細胞傷害性化合物又はモダリティの最後の投与/処置とIL-2/IL-15Rβγアゴニストの投与との間の時間差は、約6時間~約2週間、より好ましくは約1日~約7日、とりわけ約1日~約4日である。このタイミングは、細胞傷害性化合物の性質に応じて異なってもよい。遊離薬物は、比較的長いインビボ半減期、表面結合、内部移行、エンドソーム/リソソーム経路を通じた輸送、構築物分解、リソソームからの細胞傷害性ペイロードの放出、及び細胞死経路の活性化を含む必要なプロセシングに起因して、例えばADCよりも迅速にICDを誘導してもよく、タイミングは、細胞型ごとに、及び標的抗原によってさらに異なってもよい(Bauzon、Drakeら、2019)。
【0081】
別の実施形態では、当該IL-2/IL-15Rβγアゴニスト及び上記ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物は、同じ医薬組成物の成分として、又は別々の医薬組成物の成分として提供され、同時に投与される。患者が薬物の投与のために病院又は医師に行く努力を最小限に抑えるために、同時処置が好ましい。さらに、特定の組み合わせにおいて、IL-2/IL-15Rβγアゴニスト及びこのような細胞傷害性化合物を、投与を単純にするために単一の医薬組成物として共製剤化することができることが実現可能であってもよい。
【0082】
1つの実施形態では、ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物は、アントラサイクリン;ビンカアルカロイド、タキサン、エポチロン、エリブリン、アウリスタチン(例えば、MMAE又はMMAF)、マイタンシン又はマイタンシノイド及びチューブリシン(tubulysin)を含む微小管不安定化剤;ブレオマイシン;ボルテゾミブを含むプロテアソーム阻害剤;トポテカン、エキサテカン及びDS-8201a、DX-8951/DXd等のエキサテカン誘導体(Kitai、Kawasakiら 2017、Iwata、Ishiiら 2018、Haratani、Yonesakaら 2020)を含むトポイソメラーゼI阻害剤;シクロホスファミド、オキサリプラチンを含む白金錯体、及びピロロ-ベンゾジアゼピン(PBD)(Rios-Doria、Harperら、2017)を含むアルキル化剤;並びにゲムシタビン(好ましくは阻害性ダメージ関連分子パターン(DAMP)遮断と組み合わせたもの)を含むヌクレオシド類似体(Hayashi、Nikolosら、2021)からなる群から選択される。ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物は、繰り返し概説されている(Pol、Vacchelliら 2015、Diederich 2019、Zhou、Wangら 2019)。DS-8201a等の他のトポイソメラーゼI阻害剤はより高い効力を有し、免疫原性細胞死をより多く誘導するので(Iwata、Ishiiら、2018)、SN38は好ましくは除外される。
【0083】
アントラサイクリン(及び誘導体)は、白血病、リンパ腫、乳癌、胃癌、卵巣癌、膀胱癌及び肺癌を含む多くの腫瘍適応症に適用される細菌起源のクラスの細胞傷害性化合物であり、主にDNAにインターカレート(介入、挿入)し、これによりDNA複製及び転写を妨害することによって、例えばトポイソメラーゼIIを妨害することによって作用する。このクラスのメンバーは、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、バルルビシン、ネモルビシン(nemorubicin)及びPNU-159682((3’-デアミノ-3”,4’-アンヒドロ-[2”(S)-メトキシ-3”(R)-オキシ-4”-モルホリニル]])(簡潔に「PNU」) - ネモルビシンの代謝産物(Quintieri、Geroniら、2005)- であり、ICDを誘導することが証明されている(Fucikova、Kralikovaら、2011)。
【0084】
微小管不安定化剤(「MDA」)は、ICDを誘導する別のクラスの化合物であり(Diederich 2019)、これは、細胞の増殖、輸送、シグナル伝達及び遊走に影響を及ぼす、標的としての微小管とのそれらの作用機序により共に分類される多様なクラスの化合物である(Dumontet及びJordan 2010)。このクラスには、Diederich(2019)、Dudekら(2013)、Dumontet及びJordan(2010)並びにGerberら(2016)によって概説されている、ビンカアルカロイド(ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンフルニン、セビパブリン)、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセル等、(Dumontet及びJordan 2010)の表2を参照)であるが、ドセタキセルは、カルレティキュリンの誘導にもかかわらずICDに対して陰性であるとも報告されている)、エリブリン、エポチロンA~F、7A7及びパツピロンを含むエポチロン、モノメチルアウリスタチンE(MMAE)及びモノメチルアウリスタチンF(MMAF)を含むアウリスタチン、マイタンシン及びマイタンシノイド、例えば、メルタンシン/エムタンシン(DM1)、アンサマイトシン及びラブタンシン/ソラブタンシン(DM4)、チューブリシン、コルヒチン等(例えば、Dumontet及びJordan(2010)の
図1を参照)が含まれる。
【0085】
ICDを誘導するさらなる細胞傷害性化合物は、ブレオマイシン;プロテアソーム阻害剤、例えばボルテゾミブ及びシコニン;アルキル化剤、例えばシクロホスファミド、ミトキサントロン、オキサリプラチンを含む白金錯体、強心配糖体(Dudek、Gargら 2013、Pol、Vacchelliら 2015、Gerber、Sapraら 2016)、及びピロロ-ベンゾジアゼピン(PBD)(Zhou、Wangら、2019)、好ましくはそのプロドラッグプロ-PBD(Vlahov、Qiら、2017)である。プロテアソームの20Sサブユニットを阻害する(ボルテゾミブのようなプロテアソーム阻害剤である)生物活性植物性化学物質であるシコニンは、癌細胞においてICDを誘導することが示されており、HSP70、カルレティキュリン及びGRP78の発現の誘導、並びにDCの機能的成熟の誘導を特徴とする。さらに、ミクロモノスポラ・エキノスポラ(Micromonospora echinospora)に由来するエンジイン抗腫瘍抗生物質のクラスであるカリケアマイシンは、免疫原性細胞死を誘導することが報告されている(Tan、Lamら、2018)。カリケアマイシンγ1
I(LL-E33288)が最も知られたメンバーであり、さらなるカリケアマイシン誘導体が国際公開第2019/110725号パンフレットに記載されている。
【0086】
トポテカン及びDX-8951/DXdも、免疫原性細胞死を誘導することが記載されている(Kitai、Kawasakiら 2017、Iwata、Ishiiら 2018、Haratani、Yonesakaら 2020)。というのは、それらは、DC成熟及び活性化マーカーの発現をインビトロ及びインビボの両方で上方制御し、腫瘍内DC集団をインビボで増加させ(Iwata、Ishiiら、2018)、DXd処置癌細胞からのHMGB-1の放出を観察した(Haratani、Yonesakaら、2020)からである。
【0087】
アントラサイクリン(Minotti、Mennaら、2004)、(国際公開第2016/102679A1号パンフレット)、MMAE、DM1(Diederich 2019)、PBD(Rios-Doria、Harperら 2017、Zhou、Wangら 2019)及びチューブリシン(Rios-Doria、Harperら、2017)を含むICD誘導細胞傷害性化合物のいくつかは、ADCのペイロードとして非常に興味深い。従って、ICDを誘導することができるこのような細胞傷害性化合物が抗体に共有結合で連結され、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)を形成することは本発明の好ましい実施形態である。ADCは、抗癌抗体への化学結合によって、典型的には標的細胞の表面上に発現される分子標的に細胞傷害性化合物を標的化し、これにより全身曝露及び全身毒性を低減する、急速に成長するクラスの抗癌剤である。現在、標的選択、抗体部分の設計、抗体と細胞傷害性化合物との間の共有結合リンカー、及び細胞傷害性化合物、又はこの文脈ではしばしば言われるペイロード、の選択を含む様々な設計戦略が用いられている。目下、4つのADC製品が市販されており(ゲムツズマブオゾガマイシン/Mylotarg(マイロターグ)(登録商標)、ブレンツキシマブベドチン/Adcetris(アドセトリス)(登録商標)、トラスツズマブエムタンシン/Kadcyla(登録商標)及びイノツズマブオゾガマイシン/Besponsa(ベスポンサ)(登録商標))、現在、60を超えるADCが臨床的に開発されており(Khongorzul、Lingら、2020)、2019年に3つの追加の承認がなされている(トラスツズマブデルクステカン/Enhertu(エンハーツ)(登録商標)、エンホルツマブベドチン/Padcev(パドセブ)(登録商標)及びポラツズマブベドチン(Polivy(ポライビー)(登録商標))。2020年にサシツズマブゴビテカン(Trodelvy(トロデルヴィ)(登録商標))及びベランタマブマホドチン-blmf(Blenrep(ブレンレップ)(登録商標))がFDAによって承認され、続いて2021年にロンカスツキシマブテシリン-lpyl(Zynlonta(ジンロンタ)(登録商標))及びチソツマブベドチン-tftv(Tivdak(チブダク)(登録商標))が承認された。
【0088】
好ましい実施形態では、ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物は、アントラサイクリン、マイタンシン又はマイタンシノイド、トポイソメラーゼI阻害剤又はカリケアマイシン誘導体である。具体的には、ペイロードとしてアントラサイクリンを有するADC及びマイタンシン又はマイタンシノイドを有するADCは、ICDを誘導することが記載されている。D’Amicoら(2019)は、PNU(アントラサイクリン)に連結されたトラスツズマブ(T-PNU)から構成されるADCが、CD8+T細胞依存的にトラスツズマブ及びトラスツズマブエムタンシンに対して耐性であるヒトHER2発現同系乳癌モデルにおいてICDをもたらすことを記載しており、従って、ADCとの関連においてもPNU媒介性抗腫瘍免疫応答を確認する。さらに、T-PNUは、免疫記憶の生成を促進し、処置された動物を腫瘍再チャレンジ(再移植)から保護した。Bauzonら(2019)は、マイタンシン及びマイタンシンに基づくADCがインビトロでICDの3つの主要な特徴を誘導することを示し、マイタンシン、MMAE、チューブリシン及びPBDがインビボで同様の免疫刺激活性を有するようであると結論付けている。従って、MMAEコンジュゲート抗CD30抗体であるブレンツキシマブベドチンは、腫瘍浸潤性CD8+T細胞の数を増加させ、標的抗原をほとんど又は全く発現しない患者において有効性が証明され、これは、間接的な潜在的な免疫媒介機構を示唆した(Bauzon、Drakeら、2019に要約されている)。
【0089】
好ましくは、上記アントラサイクリンは、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ミトキサントロン及びPNU-159682(PNU)からなる群から選択され、上記マイタンシン又はマイタンシノイドは、マイタンシン、メルタンシン/エムタンシン(DM1)、アンサマイトシン及びラブタンシン/ソラブタンシン(DM4)から選択される。
【0090】
別の好ましい実施形態では、ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物は、トポイソメラーゼI阻害剤、好ましくはトポテカン、エキサテカン及びエキサテカン誘導体、例えばDX-8951/DXdである。抗HER2抗体トラスツズマブがエキサテカン誘導体DX-8951/DXdに結合したトラスツズマブデルクステカン(DS-8201a)と、抗HER3抗体パトリツマブがDX-8951/DXdに結合したパトリツマブデルクステカン(U3-1402)の両方が、トポイソメラーゼIペイロードが免疫原性細胞死を誘導することが示された承認済み/臨床段階ADCである。
【0091】
別の好ましい実施形態では、ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物は、カリケアマイシン誘導体、好ましくはカリケアマイシンγ1
I(LL-E33288)又は国際公開第2019/110725号パンフレットに記載されているカリケアマイシン誘導体である。
【0092】
さらなる実施形態では、上記抗体は、HER2に特異的に結合する抗体、好ましくはトラスツズマブ、SYD985又はMEDI4276、より好ましくはトラスツズマブ;ネクチン(Nectin)-4に結合する抗体、好ましくはエンホルツマブ;CD33に結合する抗体、好ましくはゲムツズマブ又はIMGN779、より好ましくはゲムツズマブ;CD30に結合する抗体、好ましくはブレンツキシマブ;CD22に結合する抗体、好ましくはイノツズマブ、又はCD79B、好ましくはポラツズマブである。さらなる好ましい標的/抗体は、TROP2/サシツズマブ、FOLR1/ミルベツキシマブ、BCMA/GSK2857916、GPNMB/グレンバツムマブ、メソテリン/アネツマブ、CEACAM5/ラベツズマブ又はSAR408701、NCT01695044及びNCT02020135のPSMA/抗体又はMEDI3726、CD19/コルツキシマブ(coltuximab)、EGFR/デパツキシズマブ、ENPP3/AGS-16C3F、EFNA4/PF-06647263、HER3/パトリツマブ、CD352A/SGN-CD352A、CD37/AGS67E、FLT3/AGS-62P1、ROR-1/NBE-002及びクローディン(Claudin)18.2/ゾルベツキシマブ又はそのヒト化多様体(例えば、国際公開第2021/111003A1号パンフレットに開示されている)又はヒト化抗体、とりわけ国際公開第2021/130291A1号パンフレットの表3に開示されているhCl1aである。
【0093】
別の好ましい実施形態では、上記ADCは、トラスツズマブエムタンシン/Kadcyla(登録商標)、トラスツズマブデルクステカン/Enhertu(登録商標)、ゲムツズマブオゾガマイシン/Mylotarg(登録商標)、イノツズマブオゾガマイシン/Besponsa(登録商標)、ブレンツキシマブベドチン/Adcetris(登録商標)、エンホルツマブベドチン/Padcev(登録商標)及びポラツズマブベドチン/Polivy(登録商標)である。とりわけ好ましいのは、トラスツズマブエムタンシン(ado(アド)-トラスツズマブエムタンシンとも呼ばれる)である。さらなるとりわけ好ましいのは、エンホルツマブベドチンである。さらなる好ましいADCは、サシツズマブゴビテカンである。さらなる好ましいADCは、ベランタマブマホドチン-blmfである。さらなる好ましいADCは、ロンカスツキシマブテシリン-lpylである。さらに好ましいADCは、チソツマブベドチン-tftvである。
【0094】
別の好ましい実施形態では、当該IL-2/IL-15Rβγアゴニストは、HER2を発現する腫瘍に罹患している患者において使用するためのものであり、好ましくは、その患者は、低~中程度のHER2発現を有する腫瘍を有すると診断されている。本発明者らは、トラスツズマブエムタンシン(Kadcyla(登録商標))との相乗作用を示し、このトラスツズマブエムタンシンは、HER2陽性腫瘍、特に、トラスツズマブ及びタキサンを別々に又は組み合わせて以前に投与されたHER2陽性転移性乳癌を有する患者の治療のために承認されている。Kadcyla(登録商標)ラベルによるHER2陽性は、Dako HercepTest(商標)によって3+IHCと定義されるか、又はDako HER2 FISH PharmDx(商標)試験キットによってFISH増幅比≧2.0と定義されるHER2過剰発現、従ってHER2の高い発現を有する乳癌を有する患者を意味する。1つの実施形態では、HER2患者の選択は、トラスツズマブエムタンシンのラベルに従って行われ、すなわち、患者は、例えば、HercepTest(商標)3+である高HER2発現を有するように選択される。高いHER2発現を有する患者におけるIL-2/IL-15Rβγアゴニストとの併用治療について、本発明者らは、Kadcyla治療について典型的に観察された高い再発率は、同所性huHER2/EMT-6乳癌モデルにおいて観察されたように(実施例を参照)顕著に低下することを予想する。代替的又は追加的に、そのような併用治療のために、IL-2/IL-15Rβγアゴニストとの併用において少なくとも同じ有効性に達するが副作用が低減されるように、Kadcyla(登録商標)(又はADC全般)の用量を低減してもよい。
【0095】
別の実施形態では、低~中間のHER2発現患者も、Kadcyla(登録商標)とIL-2/IL-15Rβγアゴニスト、好ましくはSOT101との併用療法のために選択される。単剤治療と比較した治療の相乗的増強を考慮すると、本発明者らは、患者にとっての治療利益を得るのにより低い発現で十分であると推測する。
【0096】
他のHER2過剰発現腫瘍は、好ましくはHER2過剰発現の確認された状態を有する、卵巣癌、胃癌、肺の腺癌、子宮体癌(例えば、子宮漿液性子宮内膜癌)、唾液腺導管癌、腎臓癌、子宮内膜癌、結腸直腸癌、頭頸部癌、尿路上皮癌、乳癌及び子宮頸癌であり、これは、それらを乳癌とともに、トラスツズマブエムタンシンと組み合わせたIL-2/IL-15Rβγアゴニストによる治療に好ましい腫瘍適応症にする。
【0097】
別の好ましい実施形態では、当該IL-2/IL-15Rβγアゴニストは、ネクチン-4を発現する腫瘍に罹患している患者において使用するためのものであり、好ましくは、その患者は、programmed death receptor-1(プログラム死受容体-1、PD-1)又はprogrammed death-ligand 1(プログラム死リガンド1、PD-L1)阻害剤、及びネオアジュバント/アジュバント、局所進行設定又は転移設定における白金含有化学療法を以前に受けた局所進行又は転移性の尿路上皮癌を有すると診断されている。エンホルツマブベドチン(エンホルツマブベドチン-ejfvとも呼ばれる)は、この適応症について承認されており、そのMMAEペイロードによるICDの公知の誘導を考慮すると、IL-2/IL-15βγ受容体との相乗作用が、本発明の知見に基づいて本発明者らによって予想される。ネクチン-4は、細胞の表面に位置する接着タンパク質であり、承認につながる臨床試験で試験されたすべての患者において検出された。従って、患者層別化のための試験は必要とされない。エンホルツマブベドチンの投与は、好ましくは、そのラベルに従って追求される。他のネクチン-4陽性腫瘍は、膀胱癌全般、卵巣癌、肺癌、前立腺癌、食道癌、乳癌、膵臓癌、頭頸部癌、子宮頸癌であり、これは、尿路上皮癌とともに、エンホルツマブベドチンと組み合わせたIL-2/IL-15Rβγアゴニストによる処置に好ましい適応症となる。同様に、最近承認されたチソツマブベドチン-tftvは、MMAEをペイロードとして使用しており、ここでは適応症子宮頸癌のための組織因子を標的としている。従って、チソツマブベドチン-tftvとIL-2/IL-15Rβγアゴニスト、好ましくはSOT101との組み合わせは、本発明のさらなる実施形態である。
【0098】
別の好ましい実施形態では、当該IL-2/IL-15Rβγアゴニストは、CLDN18.2(又はクローディン18.2)を発現する腫瘍に罹患している患者において使用するためのものであり、好ましくは、その患者は、胃癌又は膵臓癌を有すると診断されており、例えば、国際公開第2007/059997号パンフレット及び国際公開第2016/165762号パンフレットに開示される抗体ゾルベツキシマブ(IMAB362)を使用することによる。国際公開第2016/166122号パンフレットは、CLDN18.2結合時に効率的に内部移行することができ、それゆえ、ADC開発に適している抗CLDN18.2モノクローナル抗体を開示している。ADC開発に適した他の抗体は、例えば国際公開第2021/111003A1号パンフレットに開示されているゾルベツキシマブのヒト多様体、又は国際公開第2021/130291A1号パンフレットの表3に開示されているヒト化抗体、とりわけhCl1aである。CLDN18.2を標的とする適切なADCは、国際公開第2022/136642A1号パンフレットに記載されており、国際公開第2022/136642A1号パンフレットの中の実施例7に記載されるSOT102を含み、とりわけ、SOT102とIL-2/IL-15Rβγアゴニスト、好ましくはSOT101との組み合わせを本発明の別の実施形態にする。
【0099】
別の実施形態では、ICDを誘導することができるモダリティは、高静水圧(HHP)、光線力学療法、UV照射、放射線療法、ガンマ線照射及び温熱療法から選択される。HHPは、例えば、国際公開第2013/004708号パンフレット、国際公開第2015/097037号パンフレット、国際公開第2019/145469号パンフレット、国際公開第2019/145471号パンフレット、Fucikovaら(2014年)、Obeidら(2007年)及びAdkinsら(2018年)によって記載されるように、高い静水圧での腫瘍細胞の処置を指す。1つの実施形態では、このようなHHPモダリティは樹状細胞ワクチンであり、国際公開第2013/004708号パンフレット及び国際公開第2015/097037号パンフレット(例えば、国際公開第2013/004708号パンフレットの実施例1~4並びに国際公開第2015/097037号パンフレットの実施例2及び3を参照)に記載のように、全腫瘍細胞が高い静水圧(HHP)によってICDに駆動され(導かれ)た。手短に言えば、細胞株又は患者由来の全腫瘍細胞が、200~300MPaのHHPによって10分~2時間処置される。このような処置は、処置された腫瘍細胞においてICDを誘導し、これは、細胞表面上でのHSP70、HSP90及びカルレティキュリン等の免疫原性分子の発現並びに後期アポトーシスマーカーHMGB1及びATPの放出によって特徴付けられてもよく、従って、樹状細胞(DC)によるこれらの細胞の取り込みを増加させ、複数の腫瘍抗原を提示する負荷DCをもたらす。DCに負荷する前に、アポトーシス腫瘍細胞が凍結保存されてもよい。DCワクチンを負荷された全腫瘍細胞は、好ましくは、患者に対して同種異系であり、例えば、治療される腫瘍疾患の典型的な腫瘍抗原との発現された腫瘍抗原の重複を有する腫瘍細胞株である。自己腫瘍細胞は、患者の腫瘍抗原とより良好に適合すると思われるが、実際には、自己腫瘍生検からDCワクチンを製造することは非常に複雑である。従って、DCは、治療される患者にとって自己の単球に由来してもよい。本明細書で使用する場合、用語「単球」は、豆形核及び顆粒の不存在を特徴とする血液中を循環する白血球を指す。単球は樹状細胞を生じることができる。単球は、当業者に公知の任意の技術によって患者の血液から単離することができ、好ましい方法は白血球除去である。白血球除去は、DCワクチンの調製に使用される、治療される患者にとって自己の単球を収集することを可能にする。白血球除去は、当業者に公知の任意の技術によって実施されてもよい。
【0100】
ICDを誘導する他の治療モダリティは、当該技術分野において記載されており、好ましくはヒペリシンを用いた光線力学療法;UV放射、好ましくはUVC放射;密封小線源治療(ブラキセラピー、近接照射療法)を含む放射線療法;腫瘍溶解性ウイルス療法;及び温熱療法を含み、これらもすべてICDを誘導すると記載されており(Dudek、Gargら 2013、Adkins、Sadilkovaら 2017、Zhou、Wangら 2019)、それゆえICDを誘導するのに好ましいモダリティである。簡潔に要約すると、短波長紫外線(UVC)は、皮膚において炎症応答を誘導すると記載されており、カルレティキュリン、HMGB1及びHSP70等のICD決定因子を誘導することができる。
【0101】
同様に、放射線療法は、直接的な細胞死滅に加えて、いわゆる「遠達効果(アブスコパル効果)」、すなわち照射領域から遠くに位置する腫瘍のT細胞媒介性増殖遅延を誘導することができ、この効果は、カルレティキュリン、HSP70の露出及びHMGB1の放出によって再び特徴付けられるICDを再現可能に誘導する放射線療法の能力によって説明される。照射された細胞からのDAMPの露出/放出は、インビボでDCを刺激すると考えられる(エキソビボでICDを受ける腫瘍細胞による上記のDCワクチン接種と同様に)。好ましくは、局所高線量放射線療法は腫瘍浸潤活性DCの数を増加させることが示されているため、局所高線量放射線療法がICDを誘導するために適用される。また、より低線量の非切除又は亜切除放射線療法はマクロファージを有益なM1表現型に向けて再プログラミングすることも記載されているので、より低線量の非切除又は亜切除放射線療法は、特許請求される組み合わせのために利点を有してもよい。放射線療法の適切な線量及び分割(fractionation)は、Golden及びApetoh(2015)に要約されている。
【0102】
光増感剤ヒペリシンに基づく光線力学療法も、癌細胞においてICDを誘導することが示され、癌細胞におけるICDの免疫学的シグネチャー(痕跡、signature)、例えば、カルレティキュリン、HSP70等を誘導することによって、食作用及び成熟のレベルで再びDCとの高度に生産的な接点を樹立した。ナノ秒範囲の超短電気パルスによるナノパルス刺激も、腫瘍溶解性ウイルスによる処置と同様に、ICDを誘導すると記載されており、この腫瘍溶解性ウイルスは、癌細胞の腫瘍溶解性ウイルス媒介腫瘍溶解の間に、同じくICDの顕著な特徴であるカルレティキュリン表面露出、ATP放出及びERストレスを誘発する。ICDを誘導することができると記載されているさらなる具体的な処置は、近赤外光免疫療法、酸素増強光線力学療法、ナノサイズ薬物担体又は温熱療法である(Dudek、Gargら 2013、Adkins、Sadilkovaら 2017、Zhou、Wangら 2019)。従って、腫瘍細胞においてICDを誘導し、これによりDCによって媒介される可能性が高い特異的抗免疫応答を誘発するという特異的特徴によって統一された治療モダリティの分野が増えつつある。従って、IL-2/IL-15Rβγアゴニストによる治療と組み合わせるには、これらの治療モダリティのすべてが好ましい。
【0103】
1つの実施形態では、当該IL-2/IL-15RβγアゴニストはIL-15/IL-15Rα複合体である。IL-2及びIL-15は、β及びγ受容体を共有し、従って、重複する下流の細胞内シグナル伝達を有するが、wtIL-2複合体は、それらがTreg及び肺内皮上で発現されるIL-2Rαβγを活性化するという欠点を有し、この活性化は回避されるべきである。IL-2変異タンパク質及び/又は化学修飾を使用してIL-2α受容体への結合を回避するために、IL-2を修飾するために異なる戦略が用いられ、これらはすべて、特定の欠点、例えば、活性を低下させること(例えば、IL2v、NKTR-255)、複雑な発現系(THOR-707)又は高価な化学修飾(例えば、PEG化複合体)を有する。一方、IL-15それ自体は、同じくTreg上のIL-15Rαβγに依然として結合する。それゆえ、IL-15Rαのトランスプレゼンテーションを模倣するがゆえにIL-2/IL-15βγ受容体への結合を制限する、IL-15又はIL-15Rα誘導体を含む複合体が好ましい。
【0104】
好ましくは、上記IL-15は、配列番号4の配列を有する成熟wtIL-15である。さらに、上記分子に対する様々な定義された変化を達成するために、多くの活性化変異又は不活性化変異が当該技術分野で記載されている:IL-15Rβγβγ
c受容体への結合を減少させるためのD8N、D8A、D61A、N65D、N65A、Q108R(国際公開第2008/143794A1号パンフレット);活性化変異としてのN72D(ALT-803におけるもの);増殖活性を低下させるためのN1D、N4D、D8N、D30N、D61N、E64Q、N65D及びQ108E(米国特許出願公開第2018/0118805号明細書);IL-15Rαへの結合を減少させるためのL44D、E46K、L47D、V49D、I50D、L66D、L66E、I67D、及びI67E(国際公開第2016/142314A1号パンフレット);IL-15Rβの結合を抑止するためのN65K及びL69R(国際公開第2014/207173A1号パンフレット);IL-15の機能を阻害するためのQ101D及びQ108D(国際公開第2006/020849A2号パンフレット);IL-15Rβ結合を減少させるためのS7Y、S7A、K10A、K11A(Ring、Linら、2012);IL-15Rαへの結合を増加させるための、L45、S51、L52のD、E、K又はRによる置換、並びにE64、I68、L69及びN65のD、E、R又はKによる置換(国際公開第2005/085282A1号パンフレット);脱アミド化を低減するための、N71のS、A又はNによる置換、N72のS、A又はNによる置換、N77のQ、S、K、A又はEによる置換、N78のS、A又はGによる置換(国際公開第2009/135031A1号パンフレット);国際公開第2016/060996A2号パンフレットは、IL-15の特定の領域を置換に適していると定義し(段落0020、0035、00120及び00130を参照)、具体的には、PEG又は他の修飾のためのアンカーを提供するための潜在的置換を特定する方法の指針を提供し(段落0021を参照);CD122に対する親和性が増加し、IL-2及びIL-15エフェクター機能を阻害するためのCD132の動員が損なわれるQ108D、及びCD122親和性を抑止するためのN65K(国際公開第2017/046200A1号パンフレット);NK細胞及びCD8 T細胞の活性化に関するそれぞれのIL-15/IL-15Rα複合体の活性を徐々に低下させるためのN1D、N4D、D8N、D30N、D61N、E64Q、N65D、及びQ108E(
図51、国際公開第2018/071918A1号パンフレット、国際公開第2018/071919A1号パンフレットを参照)。K86はユビキチン依存性分解の推定部位であり、N112(例えば、N112)はIL-15活性を増強すると記載されているため、K86の変異(例えば、K86R)は安定性を増加させると記載されている(国際公開第2018/151868号パンフレットを参照)。L52Cの置換は、変異IL-15Rαsushiドメインとのジスルフィド結合のための追加のシステインを導入するために行われている(Hu、Yeら、2018)。追加的又は代替的に、当業者は、保存的アミノ酸置換を容易に行うことができる。IL-15分子の高い効力を考慮すると、さらに数千倍のファクタの活性の低下は、より高い投与量によって、又は顕著に増加した分子量に起因するより長い半減期を有する分子の薬力学的効果によってなお補償されてもよい。増加した分子量は、例えば、抗体のFc部分への、抗体への、血清アルブミンへのIL-15/IL-15Rα複合体の融合若しくは共有結合によって、又はPEG化によって達成することができる。
【0105】
それゆえ、タンパク質の生物学的/商業的価値を損なうことなく、複数の変異がタンパク質において容易に組み合わされてもよい。それゆえ、好ましくは、当該IL-15誘導体は、ヒトIL-15の活性の少なくとも0.1%、好ましくは1%、より好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも25%、さらにより好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも80%を有する。1つの実施形態では、活性は、kit225細胞株の増殖誘導に対するIL-15の効果として測定される(HORIら、Blood、第70巻(4)、1069-72頁、1987)。
【0106】
さらに、各さらなる変異が少なくとも理論的には免疫原性を誘導するリスクを増加させ、これにより患者において抗薬物抗体を生成する可能性を増加させ、これは投与回数の増加に伴って複合体の活性を制限する可能性があるので、変異/置換の数を制限することが好ましい。それゆえ、好ましくは、当該IL-15誘導体は、成熟ヒトIL-15(114aa)のアミノ酸配列(配列番号4)と少なくとも92%、好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%、最も好ましくは少なくとも99%の同一率を有する。
【0107】
さらに、IL-15の場合と同様に、当該技術分野で公知の化学修飾、例えばPEG化又は他の翻訳後修飾による化学修飾(国際公開第2016/060996A2号パンフレット、国際公開第2017/112528A2号パンフレット、国際公開第2009/135031A1号パンフレットを参照)が本発明のIL-15/IL-15Rα複合体に好ましく用いられてもよい。
【0108】
当該IL-15/IL-15Rα複合体中のIL-15Rαは、好ましくはwt IL-15Rαの少なくともsushiドメインを含むがwt IL-15Rαの膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインを含まないIL-15Rα誘導体を指す。さらに、IL-15Rαは、典型的には発現中に切断される30aaのペプチドリーダー配列を含まないことが好ましい。IL-15Rαsushiドメイン(又はIL-15Rαsushi、配列番号6)は、IL-15への結合に必須であるIL-15Rαのドメインであり(Wei、Orchardsonら、2001)、それゆえ、IL-15/IL-15Rα複合体中のIL-15Rαの最小断片である。sushi+断片(配列番号7)はsushiドメイン、及びこのIL-15Rαのsushiドメインの後に位置する14個のアミノ酸として定義される、このsushiドメインに対してC末端位置のヒンジ領域の一部を含み、すなわち、このIL-15Rαヒンジ領域は、上記(C4)システイン残基の後の最初のアミノ酸で始まり、(標準的な「N末端からC末端へ」の向きに数えて)14番目のアミノ酸で終わる。sushi+断片は、IL-15に対する完全な結合活性を再構成し(国際公開第2007/046006号パンフレット)、従って好ましい。従って、好ましいIL-15Rα誘導体は、少なくともsushiドメイン(aa33~93)を含むが、配列番号5のアミノ酸31~209である成熟IL-15Rαの細胞外部分を越えては伸長しない。具体的には、好ましいIL-15Rα誘導体は、IL-15Rαのsushiドメイン(配列番号6)及びIL-15Rαのsushi+ドメイン(配列番号7)である。hetIL-15について行われたように、分子を拡大し、これによりその血清半減期を増加させるために、IL-15Rαsushi+をさらにC末端に伸長させることができる。従って、他の好ましいIL-15Rα誘導体は、IL-15Rαの可溶性形態(配列番号5のアミノ酸31からアミノ酸172、197、198、199、200、201、202、203、204又は205のいずれかまで。国際公開第2014/066527号パンフレット(Giron-Michel、Giulianiら、2005)を参照)である。
【0109】
別の実施形態では、IL-15Rα誘導体は、天然に存在する又は導入された変異を含んでもよい。天然の多様体及び代替配列は、例えば、UniProtKBエントリーQ13261(https://www.uniprot.org/uniprot/Q13261)に記載されている。さらに、当業者は、依然として機能的である誘導体を生成するために、哺乳動物IL-15Rαホモログ又はさらには霊長類IL-15Rαホモログの間であまり保存されていないアミノ酸を容易に特定することができる。IL-15Rα誘導体は、IL-15へ結合し、それにより、免疫エフェクター細胞(例えば、NK細胞又はCD8+T細胞)への抗原提示(例えば樹状)細胞による免疫学的シナプスにおけるIL-15のトランスプレゼンテーションを模倣する複合体を形成することにより機能する。さらに、IL-15Rα誘導体は、その存在により、IL-15αβγ受容体への結合を遮断する。とりわけ、IL-15(又はその誘導体)及びIL-15Rα誘導体の両方を含む共有結合融合タンパク質において、共有結合が結合の減少を補償し、分子が依然として安定な複合体を形成するので、IL-15(又はその誘導体)へのIL-15Rα誘導体の結合を、その活性を失うことなく、顕著に減少させることができることは当業者には明らかである。さらに、IL-15Rαの置換S40Cは、変異したIL-15とジスルフィド結合を形成するための追加のシステインを導入するためになされている(Hu、Yeら、2018)。
【0110】
哺乳動物IL-15Rαホモログのそれぞれの配列は、国際公開第2007/046006号パンフレット、18頁及び19頁に記載されている。この場合もやはり、wt配列と比較した変異の数は、免疫原性の増加を回避するために制限されるべきであり、従って、IL-15Rα誘導体は、好ましくは、同じ長さのそれぞれのwt配列、より好ましくは重複配列内のヒトIL-15Rαのsushiドメインのアミノ酸配列(配列番号6)、とりわけ重複配列内のヒトIL-15Rαのsushi+ドメインのアミノ酸配列(配列番号7)と少なくとも92%、好ましくは少なくとも96%、より好ましくは少なくとも98%、さらにより好ましくは少なくとも99%の同一率を有するアミノ酸配列を含み、そして最も好ましくは同じ長さのそれぞれのwt配列、より好ましくは重複配列内のヒトIL-15Rαのsushiドメインのアミノ酸配列(配列番号6)、とりわけ重複配列内のヒトIL-15Rαのsushi+ドメインのアミノ酸配列(配列番号7)と100%同一である。
【0111】
好ましくは、IL-15Rα誘導体は、例えば(Wei、Orchardsonら、2001)において決定されるように、ヒトIL-15に対するヒトsushiドメインの結合活性の少なくとも10%、より好ましくは少なくとも25%、さらにより好ましくは少なくとも50%、最も好ましくは少なくとも80%を有する。
【0112】
1つの実施形態では、当該IL-2/IL-15Rβγアゴニストは、インターロイキン15(IL-15)/インターロイキン-15受容体α(IL-15Rα)複合体であり、この複合体は、上記ヒトIL-15Rαのsushiドメイン又はその誘導体と、柔軟なリンカーと、ヒトIL-15又はその誘導体とを含む融合タンパク質であり、好ましくは、ヒトIL-15Rαsushiドメインは、配列番号6のアミノ酸配列を含み、ヒトIL-15は、配列番号4のアミノ酸配列を含む。このような融合タンパク質は、好ましくは、(N末端からC末端への)IL-15Rα-リンカー-IL-15(RLI-15)の順序になっている。融合タンパク質の他の例は国際公開第2018/071919A1号パンフレットに記載されており、それらの例では、IL-15Rαのsushiドメインは、ジスルフィド結合を介してIL-15に(例えばXENP22004)、共有結合を介してヘテロ二量体Fcに(例えばXENP22013、XENP22357、XENP22639、又は2つのIL-15Rα(sushi)/IL-15融合物と融合している(例えば、XENP22634))。国際公開第2015/103928号パンフレットも、例えば、一方がIL-15(又はその誘導体)に連結され、他方がIL-15Rα誘導体に連結される、第1及び第2のFc多様体の相互作用を通して安定な複合体を形成することによって、IL-15/IL-15Rα複合体を構築するための代替フォーマットを開示する。Huら(Hu、Yeら、2018)は、IL-15のL52CとIL-15RαのS40Cとの間に新規ジスルフィド結合を導入することによって、IL-15がIL-15Rαのsushiドメインに共有結合で連結されているIL-15/IL-15Rα複合体P22339を記載している。
【0113】
とりわけ好ましいIL-2/IL-15Rβγアゴニストは、配列番号9の配列を有するRLI2と命名された融合タンパク質である。RLI2(SO-C101又はCYT101としても知られる)は、臨床試験NCT04234113の対象であり、それゆえ、ICDを誘導する細胞傷害性化合物及び/又はICDを誘導するモダリティと組み合わせた開発にとりわけ適している。
【0114】
好ましい実施形態では、当該IL-15/IL-15Rα複合体は、配列番号9のアミノ酸配列を含む、とりわけ配列番号9のアミノ酸配列からなる融合タンパク質であり、ADCは、HER2に特異的に結合する抗体を含み、好ましくは、抗体はトラスツズマブである。本発明者らが示したように、SOT101/RLI2は、トラスツズマブエムタンシンとともに、インビトロ及びインビボの両方で相乗的に作用し、それゆえ、この組み合わせをとりわけ好ましいものにすることが示されている。別の好ましい組み合わせは、本明細書に記載されるSOT102を伴うSOT101/RLI2である。1つの実施形態では、SOT101は、他のIL-2/IL-15Rβγアゴニストを上回るいくつかの利点を提供するので、とりわけ好ましい。SOT101は、β鎖及びγ鎖から構成される中親和性受容体に高い親和性で結合するのに対し、α鎖結合の立体的又は変異的妨害を有するIL-2及びIL-15に基づく分子は、より低い親和性で中親和性受容体に結合する。しかしながら、膜結合型IL-15Rα又は可溶性IL-15/IL-15Rα複合体によるIL-15のトランスプレゼンテーションは、より強力かつより持続的なシグナル伝達を介して、可溶性IL-15それ自体によって刺激される細胞と比較して、代謝的により活性な、より大きいサイズ及びより増殖性のT細胞をもたらす、つまり、中親和性受容体への中親和性の結合はより強力な表現型応答をもたらすと考えられている(Arneja、Johnsonら、2014)。さらに、SOT101は融合タンパク質であり、IL-15に非共有結合的に結合するhetIL-15、ALT803又は他のIL-15Rα/Fc融合体等の非共有結合性のIL-15/IL-15Rα複合体(これらは、血液中のそれぞれの希釈において解離する可能性があり、従って、それらの特異性及び高親和性の両方を失う可能性がある)の解離を回避する。そして、比較的短いインビボ半減期を有するSOT101は、低用量でもNK細胞の非常に強力な刺激因子であり(Antosova、Podzimkovaら、2020)、本発明者らは、NK細胞に完全に依存したモデル(T細胞の不存在下、実施例)においてSOT101がICD誘導と相乗作用することを示した。従って、1つの実施形態では、本発明は、ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物又はICDを誘導することができるモダリティと組み合わせたSOT101を提供する。
【0115】
好ましくは、IL-2/IL-15Rβγアゴニストは皮下(s.c.)又は腹腔内(i.p.)投与されるが、s.c.がさらにより好ましい。ICDを誘導する細胞傷害性化合物は、好ましくは、例えばFDAによって承認されたようなそれらの承認されたラベルに従って、典型的には静脈内(i.v.)に投与される。
【0116】
好ましい実施形態では、当該IL-2/IL-15Rβγアゴニストはさらに、免疫チェックポイント阻害剤(又は短く、チェックポイント阻害剤)と組み合わされる。チェックポイント阻害剤又はより正確には免疫チェックポイント阻害剤は、T細胞等のいくつかのタイプの免疫系細胞及びいくつかの癌細胞によって作られる特定のタンパク質を遮断するタイプの薬物を指す。これらのタンパク質は、免疫応答のチェックを助け、T細胞が癌細胞を死滅させないようにすることができる。これらのタンパク質が遮断されると、免疫系上の「ブレーキ」が解放され、T細胞は癌細胞をより良好に死滅させることができる。従って、チェックポイント阻害剤は、免疫阻害性チェックポイント分子のアンタゴニスト又は阻害性チェックポイント分子のアゴニストリガンドのアンタゴニストである。T細胞又は癌細胞上に見出されるチェックポイントタンパク質の例としては、例えばDarvinら(2018)によって概説されるように、PD-1/PD-L1及びCTLA-4/B7-1/B7-2(National Institute of HealthのNational Cancer Instituteの定義、https://www.cancer.gov/publications/dictionaries/cancer-terms/def/immune-checkpoint-inhibitor参照)が挙げられる。そのようなチェックポイント阻害剤の例は、抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体、抗CTLA-4抗体であるが、LAG-3若しくはTIM-3に対する抗体、又はBTLAの遮断薬も臨床で現在試験されている(De Sousa Linhares、Leitnerら、2018)。さらなる有望なチェックポイント阻害剤は、抗TIGIT抗体である(Solomon及びGarrido-Laguna 2018)。抗PD-L1抗体の例は、アベルマブ、アテゾリズマブ、デュルバルマブ、KN035、MGD013(PD-1及びLAG-3に二重特異的)であり、抗PD-1抗体の例は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブ(REGN2810)、BMS-936558、SHR1210、IBI308、PDR001、BGB-A317、BCD-100、JS001であり、抗PD-L2抗体の例はsHIgM12である。抗CTLA-4抗体の例はイピリムマブ及びトレメリムマブ(チシリムマブ)であり、「抗LAG-3」抗体の例はレラトリマブ(BMS986016)、Sym022、REGN3767、TSR-033、GSK2831781、MGD013(PD-1及びLAG-3に二重特異的)、LAG525(IMP701)であり、抗TIM-3抗体の例はTSR-022及びSym023であり、抗TIGIT抗体の例は、チラゴルマブ(MTIG7192A、RG6058)及びエチギリマブ(国際公開第2018/102536号パンフレット)である。好ましくは、チェックポイント阻害剤は、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗PD-L2抗体、抗LAG-3抗体、抗TIM-3抗体又は抗CTLA4抗体、より好ましくは抗PD-L1抗体又は抗PD-1抗体である。
【0117】
当該IL-2/IL-15Rβγアゴニストは、癌が血液癌又は固形癌である、癌を治療することにおいて使用するためのものである。これらのアゴニストの作用機序は、NK細胞の活性化による自然免疫応答の活性化及びCD8+T細胞の活性化による適応免疫応答の活性化であるので、これらのアゴニストは、多数のマウス癌モデル及び様々な腫瘍適応症におけるいくつかの臨床試験においてすでに試験されているように、(進行した)固形腫瘍及び血液悪性腫瘍の両方を治療する大きい可能性を有することが概して想定されている(Robinson及びSchluns 2017)。従って、IL-2/IL-15Rβγアゴニストは、結腸直腸癌、黒色腫、腎細胞癌、腺癌、カルチノイド腫瘍、平滑筋肉腫、乳癌、眼黒色腫、骨肉腫、甲状腺癌、胆管癌(胆管細胞癌)、唾液腺癌、腺様嚢胞癌、胃癌、頭頸部扁平上皮癌、卵巣癌、尿路上皮癌において試験された(Conlon、Leidnerら、2019)。ALT-803は、血液悪性腫瘍の例としてAML及びMDSにおいて試験された(Rome、Cooleyら、2018)。とりわけ進行性腫瘍疾患、例えば転移性腫瘍の患者は、好ましくはそのような治療から利益を得る可能性がある。この点において、相応に、ALT-803は、転移性非小細胞肺癌において試験されている(Wrangle、Velchetiら、2018)。SO-C101を用いた第1/1b相臨床試験では、腎細胞癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、黒色腫、メルケル細胞癌、皮膚扁平上皮癌、高頻度マイクロサテライト不安定性固形腫瘍、トリプルネガティブ乳癌、中皮腫、甲状腺癌、胸腺癌、子宮頸癌、胆道癌、肝細胞癌、卵巣癌、胃癌、頭頸部扁平上皮癌、及び肛門癌を有する患者が動員されている。血液癌の例は、白血病、例えば急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)及び急性単球性白血病(AMoL)、リンパ腫、例えばホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、並びに骨髄腫である。エンホルツマブベドチンとの組み合わせに関しては、膀胱癌、尿路上皮癌、腎臓癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、卵巣癌、膵臓癌、肺癌、前立腺癌、頭頸部癌、食道癌及び乳癌、とりわけ尿路上皮癌、肺癌、頭頸部癌、膵臓癌、腎臓癌、乳癌、子宮頸癌及び子宮内膜癌が好ましい。
【0118】
従って、腎細胞癌、肺癌(とりわけ、非小細胞肺癌、小細胞肺癌)、膀胱癌(とりわけ、尿路上皮癌)、黒色腫、メルケル細胞癌、皮膚扁平上皮癌、高頻度マイクロサテライト不安定性固形腫瘍、乳癌(とりわけ、トリプルネガティブ乳癌)、中皮腫、前立腺癌、甲状腺癌、胸腺癌、子宮頸癌、胆道癌、肝細胞癌、卵巣癌、胃癌、食道癌、頭頸部扁平上皮癌、及び肛門癌、並びにALL、AML、CLL、CML、AMoL、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、並びに骨髄腫が好ましい癌適応症である。
【0119】
1つの実施形態では、IL-2/IL-15Rβγ受容体アゴニストは、
(a)ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物が投与される3週間までの第1の期間、
(b)任意選択で、細胞傷害性化合物を投与せず、IL-2/IL-15Rβγアゴニストを投与しない第2の期間、
(c)IL-2/IL-15Rβγアゴニストが投与される2週間までの第3の期間
を含む周期的投与レジメンで投与され、第1~第3の期間は、少なくとも2回、より好ましくは少なくとも3回、より好ましくは疾患進行まで繰り返される。
【0120】
1つの実施形態では、第1の期間は2週間である。ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物の投与は、そのラベルに従って行われてもよい。
【0121】
1つの実施形態では、第2の期間は、ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物の少なくともインビボ半減期又は少なくともインビボ半減期の2倍の期間である。
【0122】
1つの実施形態では、第3の期間は1週間である。
【0123】
1つの実施形態では、当該IL-2/IL-15Rβγ受容体アゴニストは、
(a)3週間まで、好ましくは2週間、より好ましくは1週間の第1の期間であって、ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物が、そのような第1の期間中にそのラベルに従って投与される、第1の期間、
(b)任意選択で、細胞傷害性化合物のインビボ半減期の少なくとも1倍又は2倍、好ましくはインビボ半減期の1倍である第2の期間であって、細胞傷害性化合物を投与しない、第2の期間、
(c)2週間まで、好ましくは1週間までの第3の期間であって、IL-2/IL-15Rβγアゴニストが投与される、第3の期間
を含み、第1~第3の期間を少なくとも2回、より好ましくは少なくとも3回、より好ましくは疾患進行まで繰り返す周期的投与レジメンで投与される。
【0124】
任意選択で、上記周期的投与レジメンは、ICDを誘導する細胞傷害性化合物を投与せず、IL-2/IL-15Rβγアゴニストを投与しない第4の期間(d)であって、少なくとも1週間からIL-2/IL-15Rβγアゴニストのインビボ半減期の1倍までの第4の期間(d)をさらに含み、この第4の期間は、各第3の期間の後にサイクルを再開する前に追加される。
【0125】
当該IL-2/IL-15RβγアゴニストとICDを誘導する細胞傷害性化合物との併用投与スケジュールについては、両方の化合物の処置スケジュールは、容易な、好ましくは毎週の間隔で最良の処置結果を得るために並んでいるべきであり、承認された薬物のラベルによる指示に従って最良に調整されるべきである。
【0126】
多くの化学療法、例えば、アントラサイクリン、ビンカアルカロイド、タキサン、エポチロン、エリブリン、アウリスタチン、マイタンシン又はマイタンシノイド、チューブリシンを含む微小管不安定化剤、ブレオマイシン、ボルテゾミブを含むプロテアソーム阻害剤、シクロホスファミドを含むアルキル化剤、オキサリプラチンを含む白金錯体、ピロロ-ベンゾジアゼピン、カリケアマイシン誘導体、トポイソメラーゼI阻害剤、及びヌクレオシド類似体は、典型的には、より長い期間にわたって毎日投与される。ICDを誘導することとIL-2/IL-15Rβγアゴニストの免疫活性化効果との複合効果を得るために、本発明者らは、そのような化学療法による治療が、そのラベルに従って適用されるが、IL-2/IL-15Rβγアゴニストによる断続的処置を可能にするために、最長2週間のみ、好ましくは1週間のみ適用されることを予見する。
【0127】
実際、本発明者らは、インビボでのMC38マウス結腸癌モデルにおいて、IL-2/IL-15Rβγアゴニストと組み合わせた白金錯体、この場合はSOT101と組み合わせたオキサリプラチンの併用投与について抗腫瘍活性の増大を示した。
【0128】
ADCに関して、それらの多くは、約2~約12日の間のそれらの典型的な半減期を考慮して、3週間ごとに投与される。ADCのインビボ半減期はMahmoodら(2021)の表2に示されている。Kadcyla、Adcetris、Enhertu及びTrodelvyは3週間/21日サイクルで投与され、Padcevは4週間サイクルで投与される(表1参照)。
【0129】
【0130】
従って、第1の期間の1日目(例えば、Kadcyla、3週間スキームのAdcetris、Enhertu)又は1日目及び8日目(Trodelvy)に、3週間サイクルのADCがそれらのラベルに従って投与される。4週サイクルのPadcevは、好ましくは1日目、8日目及び15日目に、そのラベルに従って投与される。
【0131】
IL-2/IL-15Rβγアゴニストの投与による免疫活性化の前に、ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物は、免疫細胞の誘導された増殖を妨げないために、患者の血漿中に存在しないか、又は残留量でのみ存在するべきである。それゆえ、化合物を循環から除去するために、インビボ半減期の1倍又は2倍の治療中断が導入される。短命の化学療法の場合、このような治療中断は、1日という短時間であってもよいが、患者にとって便宜のために1週間であってもよい。連続的な処置レジメンでは、細胞傷害性化合物を投与せず、かつIL-2/IL-15Rβγアゴニストを投与せず、細胞傷害性化合物のインビボ半減期の少なくとも1倍又は2倍、好ましくはインビボ半減期の1倍の任意選択の処置期間(b)が好ましい。
【0132】
例えばKadcylaは、4日のインビボ半減期で3週間ごとに与えられるので、ラベルによるADCは、いずれにしても、再投与前に血漿から典型的に除去される。従って、除去のための追加の期間(b)は必要とされない。それゆえ、1日目に投与する3週間スケジュールを有するADCに関して、IL-2/IL-15Rβγアゴニストは、好ましくは、8日目又は15日目から開始する1週間又は2週間の治療中断の後に投与され、その後、ADCは、22日目(新しい1日目)に再び投与される。3週間サイクルの1日目及び8日目に投与されるADCについては、IL-2/IL-15Rβγアゴニストは、好ましくは、15日目から投与されるが、これは、そのようなより頻繁に投与されるADCは、典型的には、かなり短い半減期を有し(例えば、わずか16時間のTodelvy)、それゆえ、数日以内に血漿から除去されるからである。1日目、8日目及び15日目に投与する4週スケジュールのADCについては、IL-2/IL-15Rβγアゴニスト処置は、好ましくは22日目に開始される。
【0133】
当該IL-2/IL-15Rβγアゴニストは、そのラベル/最も進んだ臨床試験における先行使用に従って2週間まで、好ましくは1週間投与される。投与頻度も、その半減期に依存する。数時間~1日という短い半減期を有するIL-2/IL-15Rβγアゴニストは、好ましくは治療週内に1日目、2日目、3日目及び4日目に、好ましくは1日目及び2日目に投与され、2週間の処置期間の場合、そのような処置期間の1日目、2日目、3日目、4日目、8日目、9日目、10日目、11日目、好ましくは1日目、2日目、8日目及び9日目に投与される。例えば、SO-C101の投与スケジュールは国際公開第2020/234387号パンフレットに開示されている。任意選択で、SO-C101は、1日目、2日目、8日目、及び9日目に分割投与によって強力に投与されてもよい。より長い半減期を有するIL-2/IL-15Rβγアゴニストは、好ましくは、処置週ごとに1回のみ、1日目に、又は2週間の処置期間の場合、1日目及び8日目に投与される。
【0134】
任意選択で、少なくとも1週間、好ましくは1週間の追加の治療中断が各サイクル(a)~(c)後に導入されて、活性化された免疫細胞が腫瘍細胞を死滅させるのに十分な時間が与えられる。
【0135】
必要な場合、ラベルによるADCの新しい処置期間(a)の開始は、期間(b)、(c)及び任意選択で(d)の時間要件に適合するように1週間の増分で遅延される。
【0136】
KadcylaとSO-C101との投与スケジュールの例
(a)1日目に、3.6mg/kgの用量で、i.v.で与えられるKadcylaの投与
(b)なし
(c)8日目、9日目、15日目、16日目(SO-C101の処置期間の1日目、2日目、8日目、9日目)に、12μg/kgの日量で、s.c.で与えられる(単回用量として、若しくは4~14時間の時間差で2回用量に分割される)SO-C101の投与
(d)なし
又は
(a)1日目に、3.6mg/kgの用量で、i.v.として与えられるKadcylaの投与
(b)なし
(c)15日目、16日目(SO-C101の処置期間の1日目、2日目)に、12μg/kgの日量で、s.c.で与えられる(単回用量として、若しくは4~14時間の時間差で2回用量に分割される)SO-C101の投与
又は
(a)1日目に、3.6mg/kgの用量で、i.v.として与えられるKadcylaの投与
(b)なし
(c)15日目、16日目、22日目、23日目(SO-C101の処置期間の1日目、2日目、8日目、9日目)に、12μg/kgの日量で、s.c.で与えられる(単回用量として、若しくは4~14時間の時間差で2回用量に分割される)SO-C101の投与
(d)1週間、
これにより、Kadcylaスケジュールを4週間まで延長し、29日目に再び開始する。
【0137】
別の実施形態は、癌の治療のための部品のキットの製造におけるIL-2/IL-15Rβγアゴニストの使用であり、この部品のキットは、本発明のIL-2/IL-15Rβγアゴニストのいくつかの用量と、ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物及び/又はICDを誘導することができるモダリティと組み合わせたそのようなIL-2/IL-15Rβγアゴニストの投与のための説明書と、任意選択でIL-2/IL-15Rβγアゴニストのための投与デバイスとを含む。好ましい実施形態では、当該キットは、チェックポイント阻害剤と、このチェックポイント阻害剤の使用説明書とをさらに含む。
【0138】
本発明は、上記の併用治療を伴う癌の治療方法、並びに上記の併用治療を伴うNK細胞及び/又はCD8+T細胞の刺激方法にも関する。
【0139】
1つの実施形態では、本発明は、患者における癌を治療することにおいて使用するためのIL-2/IL-15Rβγアゴニストであって、ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物と組み合わせて投与される、IL-2/IL-15Rβγアゴニストに関する。
【0140】
1つの実施形態では、本発明は、患者における癌を治療することにおいて使用するためのIL-2/IL-15Rβγアゴニストであって、ICDを誘導することができるモダリティの適用と組み合わせて投与される、IL-2/IL-15Rβγアゴニストに関する。
【0141】
本発明は、IL-2/IL-15RβγアゴニストとICDを誘導することができる細胞傷害性化合物とを含む薬学的組み合わせ(組合せ医薬)も提供する。
【0142】
本発明はさらに、IL-2/IL-15RβγアゴニストとICDを誘導することができるモダリティとを含む薬学的組み合わせを提供する。
【0143】
IL-2/IL-15Rβγアゴニストの投与は、ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物の投与及び/若しくはICDを誘導することができるモダリティの適用と同時に、又はICDを誘導することができる細胞傷害性化合物の投与及び/若しくはICDを誘導することができるモダリティの適用に対して逐次的に行われてもよい。
【0144】
1つの実施形態では、IL-2/IL-15RβγアゴニストはSOT101であり、ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物はKadcylaである。
1つの実施形態では、IL-2/IL-15RβγアゴニストはSOT101であり、ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物は、抗CLDN18.2抗体及びアントラサイクリンを含むADCである。
1つの実施形態では、IL-2/IL-15RβγアゴニストはSOT101であり、ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物はSOT102である。
1つの実施形態では、IL-2/IL-15RβγアゴニストはSOT101であり、ICDを誘導することができるモダリティは放射線療法である。特に好ましい実施形態では、IL-2/IL-15RβγアゴニストはSOT101であり、ICDを誘導することができるモダリティは非切除又は亜切除の放射線療法である。
1つの実施形態では、IL-2/IL-15RβγアゴニストはSOT101であり、ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物はゲムツズマブオゾガマイシンである。
1つの実施形態では、IL-2/IL-15RβγアゴニストはSOT101であり、ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物はブレンツキシマブベドチンである。
1つの実施形態では、IL-2/IL-15RβγアゴニストはSOT101であり、ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物はトラスツズマブエムタンシンである。
1つの実施形態では、IL-2/IL-15RβγアゴニストはSOT101であり、ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物はイノツズマブオゾガマイシンである。
1つの実施形態では、IL-2/IL-15RβγアゴニストはSOT101であり、ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物はトラスツズマブデルクステカンである。
1つの実施形態では、IL-2/IL-15RβγアゴニストはSOT101であり、ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物はエンホルツマブベドチンである。
1つの実施形態では、IL-2/IL-15RβγアゴニストはSOT101であり、ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物はポラツズマブベドチンである。
1つの実施形態では、IL-2/IL-15RβγアゴニストはSOT101であり、ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物はサシツズマブゴビテカンである。
1つの実施形態では、IL-2/IL-15RβγアゴニストはSOT101であり、ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物はベランタマブマホドチン-blmfである。
1つの実施形態では、IL-2/IL-15RβγアゴニストはSOT101であり、ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物はロンカスツキシマブテシリン-lpylである。
1つの実施形態では、IL-2/IL-15RβγアゴニストはSOT101であり、ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物はチソツマブベドチン-tftvである。
1つの実施形態では、IL-2/IL-15RβγアゴニストはSOT101であり、ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物はアントラサイクリン、好ましくはドキソルビシンである。
1つの実施形態では、IL-2/IL-15RβγアゴニストはSOT101であり、ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物はタキサン、好ましくはパクリタキセルである。
1つの実施形態では、IL-2/IL-15RβγアゴニストはSOT101であり、ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物はボルテゾミブである。
1つの実施形態では、IL-2/IL-15RβγアゴニストはSOT101であり、ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物は白金錯体、好ましくはオキサリプラチン又はシスプラチン、より好ましくはオキサリプラチンである。
1つの実施形態では、IL-2/IL-15RβγアゴニストはSOT101であり、ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物はトポテカン又はエキサテカンである。
1つの実施形態では、IL-2/IL-15RβγアゴニストはSOT101であり、ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物はゲムシタビンである。
1つの実施形態では、IL-2/IL-15RβγアゴニストはSOT101であり、ICDを誘導することができる細胞傷害性化合物はシクロホスファミドである。
【0145】
好ましい実施形態では、上記細胞傷害性化合物は、癌治療において使用するためのラベルと比較して、より低い投与量及び/又はより少ない頻度で投与される。
【図面の簡単な説明】
【0146】
【
図1】化学療法の抗腫瘍有効性。化学療法剤は、NK細胞による腫瘍細胞認識及び排除を促進するストレス分子(危険関連分子パターン、DAMP;NK細胞リガンド)の上方制御及び/又は放出を誘発する分子経路を活性化する。さらに、化学療法は、阻害性受容体のPD-L1及び(MHC)-I等のリガンドの発現を下方制御することもできる。
【
図2A】AGS腫瘍細胞株におけるKadcylaの用量依存的細胞傷害効果。胃腺癌細胞株(AGS)は、示された(5、7、8、10μg/ml)濃度のKadcylaで72時間処理された。データは、2つの独立した実験の平均を表している。(A)未処理のAGSヒト胃腺癌細胞株(Her-2 IHC1+)での、FACSによって分析されたHer-2の細胞表面発現。
【
図2B(i)】AGS腫瘍細胞株におけるKadcylaの用量依存的細胞傷害効果。胃腺癌細胞株(AGS)は、示された(5、7、8、10μg/ml)濃度のKadcylaで72時間処理された。データは、2つの独立した実験の平均を表している。(B)エンドポイントでの腫瘍細胞の生存率が、アネキシンV(x軸)/DAPI(y軸)染色を用いたFACS分析によって分析された。代表的なドットプロットは、未処理を表すNTとともに、5μg/ml、7μg/ml、8μg/ml及び10μg/mlのKadcyla濃度で示されている。
【
図2C】AGS腫瘍細胞株におけるKadcylaの用量依存的細胞傷害効果。胃腺癌細胞株(AGS)は、示された(5、7、8、10μg/ml)濃度のKadcylaで72時間処理された。データは、2つの独立した実験の平均を表している。(C)所与の濃度の初期アポトーシス(Annex
+/DAPI
-、斜線)、後期アポトーシス(Annex
+/DAPI
+、灰色)及び壊死(Annex
-/DAPI
+、黒色)細胞の個々の集団。ICDマーカー及びNKリガンドの分析のために、初期アポトーシス細胞(Annex
+/DAPI
-集団)のみが選択された。
【
図3A】AGS腫瘍細胞株におけるKadcylaによるCRT、HSP70、HSP90の細胞表面露出の用量依存的誘導。
図2からの初期アポトーシス(Annex
+/DAPI
-)の集団が、細胞表面上のCRT、HSP70及びHSP90の発現について分析された。データは、2つの独立した実験の平均を表している。(A)抗原提示細胞(APC)の個々のマーカーCRT、HSP70及びHSP90の平均蛍光強度(MFI)。
【
図3B】AGS腫瘍細胞株におけるKadcylaによるCRT、HSP70、HSP90の細胞表面露出の用量依存的誘導。
図2からの初期アポトーシス(Annex
+/DAPI
-)の集団が、細胞表面上のCRT、HSP70及びHSP90の発現について分析された。データは、2つの独立した実験の平均を表している。(B)個々のマーカーCRT、HSP70及びHSP90に対する個々の一次抗体の結合の相関パーセンテージ。
【
図4(i)】KadcylaによるAGS腫瘍細胞株の表面上のNK細胞リガンドの発現の用量依存的誘導。
図2からの初期アポトーシス(Annex
+/DAPI
-)の集団が、NK活性化リガンドCD112、CD155及びULBP1、2/5/6及び3の発現について分析され、平均蛍光強度(MFU)として表された。データは、2つの独立した実験の平均を表している。
【
図5A(i)】CD56陽性細胞の刺激に対するKadcylaに対するRLI-15の用量駆動のインビトロ相乗作用。3人の異なるドナーから単離されたヒトPBMCが2.5ng/mlのRLI-15の存在下で72時間インキュベートされた。並行して、AGS腫瘍細胞が、示された(5、7、8、10μg/ml)濃度のKadcylaで72時間処理され、洗浄された後、2つの細胞培養物が10(PBMC):1(腫瘍細胞)の比で混合され、次の4時間インキュベートされた。その後、全集団が、マーカーCD3、CD56、CD107a及びIFNγについてフローサイトメトリによって分析された。(A)代表的なゲート設定戦略が示されている。
【
図5B】CD56陽性細胞の刺激に対するKadcylaに対するRLI-15の用量駆動のインビトロ相乗作用。3人の異なるドナーから単離されたヒトPBMCが2.5ng/mlのRLI-15の存在下で72時間インキュベートされた。並行して、AGS腫瘍細胞が、示された(5、7、8、10μg/ml)濃度のKadcylaで72時間処理され、洗浄された後、2つの細胞培養物が10(PBMC):1(腫瘍細胞)の比で混合され、次の4時間インキュベートされた。その後、全集団が、マーカーCD3、CD56、CD107a及びIFNγについてフローサイトメトリによって分析された。(B)RLI-15(RLI+ADC)と組み合わせた又はKadcyla(ADC)のみの、0(KadNT)から10μg/mlのKadcylaまでのKadcylaの漸増濃度と、RLI-15のみの対照及び未処理のPBMC(PBMC CTR)とに対するNK細胞を表すCD3
-CD56
+細胞の%。RLI-15処理はCD3-CD56
+細胞の総数の増加をもたらす。ゲート設定戦略はパネルAに示されている。データは、3回の独立した実験の平均を表している。
【
図5C】CD56陽性細胞の刺激に対するKadcylaに対するRLI-15の用量駆動のインビトロ相乗作用。3人の異なるドナーから単離されたヒトPBMCが2.5ng/mlのRLI-15の存在下で72時間インキュベートされた。並行して、AGS腫瘍細胞が、示された(5、7、8、10μg/ml)濃度のKadcylaで72時間処理され、洗浄された後、2つの細胞培養物が10(PBMC):1(腫瘍細胞)の比で混合され、次の4時間インキュベートされた。その後、全集団が、マーカーCD3、CD56、CD107a及びIFNγについてフローサイトメトリによって分析された。(C)CD107a(LAMP1)の放出によって測定されたそれらの活性化(C)。ゲート設定戦略はパネルAに示されている。データは、3回の独立した実験の平均を表している。
【
図5D】CD56陽性細胞の刺激に対するKadcylaに対するRLI-15の用量駆動のインビトロ相乗作用。3人の異なるドナーから単離されたヒトPBMCが2.5ng/mlのRLI-15の存在下で72時間インキュベートされた。並行して、AGS腫瘍細胞が、示された(5、7、8、10μg/ml)濃度のKadcylaで72時間処理され、洗浄された後、2つの細胞培養物が10(PBMC):1(腫瘍細胞)の比で混合され、次の4時間インキュベートされた。その後、全集団が、マーカーCD3、CD56、CD107a及びIFNγについてフローサイトメトリによって分析された。(D)IFNγの放出によって測定されたそれらの活性化。ゲート設定戦略はパネルAに示されている。データは、3回の独立した実験の平均を表している。
【表2】
【
図6A】AGS腫瘍細胞株における選択されたICD誘導性SoC(ドキソルビシン、シスプラチン)及びKadcylaによって引き起こされた細胞傷害効果の直接比較。胃腫瘍細胞株(AGS)が、インビトロで、それぞれ定義された濃度(滴定データは示さず)のドキソルビシン又はシスプラチン(表3)で48時間、又はRLI-15と相乗作用する可能性が最も高い以前に定義された濃度のKadcylaで72時間処理された(
図6B~D)(表3)。データは2回の独立した実験の平均を表している。
【表3】
(A)所与の濃度のSoC及びKadcyla(表3)における初期アポトーシス(Annex
+/DAPI
-、斜線)、後期アポトーシス(Annex
+/DAPI
+、灰色)及び壊死(Annex
-/DAPI
+、黒色)細胞の個々の集団。
【
図6B(i)】AGS腫瘍細胞株における選択されたICD誘導性SoC(ドキソルビシン、シスプラチン)及びKadcylaによって引き起こされた細胞傷害効果の直接比較。胃腫瘍細胞株(AGS)が、インビトロで、それぞれ定義された濃度(滴定データは示さず)のドキソルビシン又はシスプラチン(表3)で48時間、又はRLI-15と相乗作用する可能性が最も高い以前に定義された濃度のKadcylaで72時間処理された(表3)。データは2回の独立した実験の平均を表している。(B)AGS腫瘍細胞株におけるSoC及びKadcylaによるCRT、HSP70、HSP90の細胞表面露出の誘導。
図6Aからの初期アポトーシス(Annex
+/DAPI
-)の集団が、細胞表面上のCRT、HSP70及びHSP90の発現について分析された。抗原提示細胞(APC)の個々のマーカーCRT、HSP70及びHSP90の平均蛍光強度(MFI)並びに個々のマーカーCRT、HSP70及びHSP90への個々の一次抗体の結合の相関パーセンテージ。データは、2つの独立した実験の平均を表している。
【
図7A】CD56陽性細胞の刺激に対するRLI-15のSoC(ドキソルビシン、シスプラチン)又はKadcylaに対するインビトロでの相乗作用の比較。3人の異なるドナーから単離されたヒトPBMCが2.5ng/mlのRLI-15の存在下で72時間インキュベートされた。並行して、AGS腫瘍細胞が、規定濃度のSoC(それぞれドキソルビシン又はシスプラチン)で48時間、又は5、7、8又は10μg/mlのKadcylaで72時間(上述のとおり、表2参照)処理され、洗浄された後、2つの細胞培養物が10(PBMC):1(腫瘍細胞)の比で混合され、次の4時間インキュベートされた。その後、全細胞集団が、マーカーCD3、CD56、CD107a及びIFNγについてフローサイトメトリによって分析された。パネルA:対照としてマークされた、SoC(化学:Doxoはドキソルビシンを表し、CisPtはシスプラチンを表す)若しくはKadcyla(Kad、ADC)のみで、又はRLI-15と組み合わせて(RLI-15+化学;RLI-15+ADC)処理された試料中の総NK細胞画分を表すCD3
-CD56
+細胞の%。ゲート設定戦略は
図5Aに示されるものと同様である。データは、3つの独立した実験の平均を表している。
【
図7B】CD56陽性細胞の刺激に対するRLI-15のSoC(ドキソルビシン、シスプラチン)又はKadcylaに対するインビトロでの相乗作用の比較。3人の異なるドナーから単離されたヒトPBMCが2.5ng/mlのRLI-15の存在下で72時間インキュベートされた。並行して、AGS腫瘍細胞が、規定濃度のSoC(それぞれドキソルビシン又はシスプラチン)で48時間、又は5、7、8又は10μg/mlのKadcylaで72時間処理され(上述のとおり、表2参照)、洗浄された後、2つの細胞培養物が10(PBMC):1(腫瘍細胞)の比で混合され、次の4時間インキュベートされた。その後、全細胞集団が、マーカーCD3、CD56、CD107a及びIFNγについてフローサイトメトリによって分析された。パネルB:CD107a(LAMP1)の放出によって測定される活性化NK細胞の%。ゲート設定戦略は
図5Aに示されるものと同様である。データは、3つの独立した実験の平均を表している。
【
図7C】CD56陽性細胞の刺激に対するRLI-15のSoC(ドキソルビシン、シスプラチン)又はKadcylaに対するインビトロでの相乗作用の比較。3人の異なるドナーから単離されたヒトPBMCが2.5ng/mlのRLI-15の存在下で72時間インキュベートされた。並行して、AGS腫瘍細胞が、規定濃度のSoC(それぞれドキソルビシン又はシスプラチン)で48時間、又は5、7、8又は10μg/mlのKadcylaで72時間処理され(上述のとおり、表2参照)、洗浄された後、2つの細胞培養物が10(PBMC):1(腫瘍細胞)の比で混合され、次の4時間インキュベートされた。その後、全細胞集団が、マーカーCD3、CD56、CD107a及びIFNγについてフローサイトメトリによって分析された。パネルC:IFNγの放出によって測定される細胞傷害性NK細胞の%。ゲート設定戦略は
図5Aに示されるものと同様である。データは、3つの独立した実験の平均を表している。
【
図8A(i)】マウス同所性huHER2 EMT-6乳癌モデルにおけるKadcylaと組み合わせたRLI-15の抗腫瘍有効性。n=8の動物の群(Balb/c AnN、完全免疫適格マウス)が、操作されたヒトHER2受容体を有するEMT-6乳癌細胞株を移植された。個々の群において腫瘍が140mm
3の平均腫瘍体積に達すると、Kadcyla(15mg/kg;0日目、7日目)による処置が開始された。2週間後、動物はRLI-15(1mg/kg;15~18日目)を与えられ、結果が研究23日目に評価された。(A)研究マウスのうち1匹の腫瘍におけるエクスビボのHer-2発現FC分析の代表例(全n=3マウスが無作為化段階で安楽死させられ、Her-2腫瘍発現のエキソビボ分析に供された)。
【
図8B】マウス同所性huHER2 EMT-6乳癌モデルにおけるKadcylaと組み合わせたRLI-15の抗腫瘍有効性。n=8の動物の群(Balb/c AnN、完全免疫適格マウス)が、操作されたヒトHER2受容体を有するEMT-6乳癌細胞株を移植された。個々の群において腫瘍が140mm
3の平均腫瘍体積に達すると、Kadcyla(15mg/kg;0日目、7日目)による処置が開始された。2週間後、動物はRLI-15(1mg/kg;15~18日目)を与えられ、結果が試験23日目に評価された。(B)処置群の研究日として示される時間に依存するSEMを伴う平均絶対腫瘍体積(mm
3)。G1:ビヒクル、1~4日目のs.c.投与;G2:RLI-15、15~18日目に1mg/kgのs.c.投与;G4:0日目及び7日目のKadcylaのi.v.投与;並びにG7:0日目及び7日目のKadcylaのi.v.投与、及び15~18日目の1mg/kgのRLI-15、s.c.投与。上下方向矢印は、Kadcylaの単回i.v.投与を示す。水平方向矢印は、RLI-15の4日のs.c.投与日を示す。
【
図8C(i)】マウス同所性huHER2 EMT-6乳癌モデルにおけるKadcylaと組み合わせたRLI-15の抗腫瘍有効性。n=8の動物の群(Balb/c AnN、完全免疫適格マウス)が、操作されたヒトHER2受容体を有するEMT-6乳癌細胞株を移植された。個々の群において腫瘍が140mm
3の平均腫瘍体積に達すると、Kadcyla(15mg/kg;0日目、7日目)による処置が開始された。2週間後、動物はRLI-15(1mg/kg;15~18日目)を与えられ、結果が試験23日目に評価された。(C)個々の動物データが、パネルBの4つの処置群G1、G2、G4及びG7について示されている。
【
図8D】マウス同所性huHER2 EMT-6乳癌モデルにおけるKadcylaと組み合わせたRLI-15の抗腫瘍有効性。n=8の動物の群(Balb/c AnN、完全免疫適格マウス)が、操作されたヒトHER2受容体を有するEMT-6乳癌細胞株を移植された。個々の群において腫瘍が140mm
3の平均腫瘍体積に達すると、Kadcyla(15mg/kg;0日目、7日目)による処置が開始された。2週間後、動物はRLI-15(1mg/kg;15~18日目)を与えられ、結果が試験23日目に評価された。(D)Balb/cマウスにおけるhuHER2/EMT-6モデルにおけるHER2発現は中間レベルである。すべての研究マウスの残存腫瘍からパラフィン包埋切片が調製され、HercepTest(商標)を用いて染色された。個々の写真は、個々の処置群G1、G2、G4及びG7における平均Hスコアに最も近い染色パターンの代表である。
【
図9】SOT101と組み合わせた抗CLDN18.2 ADCのインビトロでの細胞死滅アッセイ。クローディン18.2を発現する、A549-CLDN18.2細胞が、示された濃度の抗CLDN18.2抗体hCl1a WT(非修飾IgG1 Fcを有する)又はSOT102(毒素としてのPNU及びLALA Fc IgG1 Fc置換を有するhCl1a由来ADC)とともに、新たに単離されたヒトNK細胞とともに、10:1のE:T比でインキュベートされた。SOT101は、示される場合、0.1nMの濃度に達するように添加された。24時間後、乳酸デヒドロゲナーゼアッセイ(LDH)を用いて細胞傷害性が測定された。データは、溶解緩衝液で透過処理された細胞と比較した細胞傷害性%で、平均±SEMとしてプロットされている。n=2。
【発明を実施するための形態】
【0147】
実施例1 - 一般的方法
細胞表面上のHSP70、HSP90及びCRTのフローサイトメトリ分析(Fucikova、Moserovaら、2014)
合計1×106個の細胞を12ウェルプレートにプレーティングし、次いでICDを誘導する化合物又はモダリティで6、12又は24時間処理する。細胞を回収し、PBSで2回洗浄する。次いで、この細胞を、冷ブロッキング緩衝液(PBS中の2%ウシ胎仔血清)中に希釈した一次抗体とともに30分間インキュベートし、続いて洗浄し、ブロッキング溶液中のAlexa 648コンジュゲートモノクローナル二次抗体とともにインキュベートする。次いで、各試料を、FACScan Aria(BD Bioscience(ビーディー・バイオサイエンス))を使用して分析した。HSP70、HSP90及びCRTの細胞表面発現を、非透過処理のアネキシンV陽性/DAPI陰性細胞で分析する。
【0148】
HMGB1放出の検出(Fucikova、Moserovaら、2014)
ICDを誘導する化合物又はモダリティによる細胞の処理後、上清を異なる時間点(6、12、24及び48時間)で収集する。死につつある腫瘍細胞を遠心分離によって除去し、上清を単離し、直ちに凍結した。上清中のHMGB1の定量は、製造業者の説明書(IBL、ハンブルグ(Hamburg)、ドイツ)に従って酵素結合免疫吸着アッセイを用いて評価することができる。
【0149】
ATP検出(Adkins、Sadilkovaら、2017)
細胞外ATP放出の測定のために、細胞培養上清を使用し、細胞内ATP検出のために、細胞を2200rpmで2分間遠心分離し、ペレットを細胞溶解緩衝液(eBioscience(イーバイオサイエンス))に再懸濁する。ATP含有量は、製造業者の説明書(ATPアッセイキット、Sigma-Aldrich(シグマ・アルドリッチ))に従って決定することができる。
【0150】
実施例2 - KadcylaによるAGS腫瘍細胞のインビトロ死滅
胃AGS腫瘍細胞株(HER2 FC:1~2+)の5×106個の細胞(75cm2培養フラスコに播種)を、漸増濃度のKadcyla(5、7、8、10μg/ml)の存在下で72時間インキュベートした。
【0151】
生存(アネキシンV
-/DAPI
-)、初期アポトーシス(アネキシンV
+/DAPI
-)、後期アポトーシス(アネキシンV
+/DAPI
+)及び壊死細胞集団(アネキシンV
-/DAPI
+)の量の分析のために、アネキシンV(Exbio(エクスバイオ)、チェコ共和国)及びDAPIジラクテート(Thermo-Fisher Scientific(サーモフィッシャー・サイエンティフィック)、米国)染色を用いてフローサイトメトリによって、Kadcylaによる処理時の腫瘍細胞の生存率を分析した(
図2A及びBを参照)。Kadcylaの濃度の増加は、初期アポトーシス細胞集団を表すアネキシンV
+/DAPI
-細胞の集団の増加をもたらした。
【0152】
ICDマーカーHSP70、HSP90及びCRT並びにNK細胞リガンドの発現を、抗カルレティキュリン抗体(Abcam(アブカム)、米国)、抗HSP70(R&D Systems(アールアンドディ・システムズ)、米国)、抗HSP90(Enzo Life Sciences(エンゾ・ライフサイエンス)、米国)を使用して、これらの初期アポトーシス(アネキシンV
+/DAPI
-)細胞集団においてフローサイトメトリによって測定した。APC AffiniPure F(ab’)
2 Fragment Goat Anti-Mouse(Jackson ImmunoResearch(ジャクソン・イムノリサーチ))を二次抗体として使用した。すべての試験したICDマーカーについて、Kadcyla処理は、非処理細胞と比較してICDマーカーの強力な増加をもたらした。Kadcylaの濃度の増加に伴って平均蛍光強度が増加する傾向はないか、又は弱い傾向のみであったが、マーカー陽性細胞の%を見ると、この傾向はより強かった(
図3A及びB参照)。
同様に、NK細胞リガンドCD112、CD155並びにULBP3及びULBP2/5/6、並びにULBP1の発現を、ULBP-2/5/6(Biocompare(バイオコンペア)、米国)、CD155(Biolegend(バイオレジェンド)、米国)、ネクチン-2/CD112(R&D Systems、米国)、ULBP-1(Biocompare、米国)及びULBP-3抗体(Biocompare、米国)を使用して、これらの初期アポトーシス(アネキシンV
+/DAPI
-)細胞集団においてフローサイトメトリによって決定した。初期アポトーシス細胞集団は、NK細胞リガンドCD112、CD155、ULBP3及びULBP2/5/6の発現の増加を示したが、CD155については7μg/kgで、ULBP3及びULBP2/5/6については8μg/kgで既に最大値に達していた。NK細胞非依存性リガンドULBP1は、Kadcyla処理時に有意な変化を示さなかった(
図4参照)。
【0153】
要約すると、データは、Kadcyla媒介性細胞死滅が、低~中間のHer-2発現を有する腫瘍細胞株においてさえ、大部分の腫瘍細胞がICDを受けるということをもたらすことを示す。
【0154】
実施例3 - PBMC単離及びRLI-15処理
逐次スケジュールでのKadcyla及びRLI-15の併用投与を模倣するために、3人のドナー由来のヒト(PBMC)を、Ficoll-Paque勾配を使用して新鮮なヒト血液から単離し、続いて2.5ng/mlのRLI-15の存在下で72時間インキュベートした。
【0155】
実施例4 - Kadcylaで処理した腫瘍細胞によるNK細胞のインビトロ活性化
インキュベーション期間の後、漸増濃度のKadcylaを用いて実施例で調製した死につつある腫瘍細胞を洗浄し、新鮮な培養培地に移し、実施例及び実施例で調製したRLI-15処理PBMCに1:10比(30,000の腫瘍細胞:300,000のPBMC)で添加した。これらの混合細胞集団をさらに4時間インキュベートし、CD3
-CD56
+細胞(NK細胞)の%を、マーカーCD3、CD56、CD107a及びIFNγを用いてフローサイトメトリによって分析した(
図5A)。対照として、未処理の腫瘍細胞を未処理のPBMCとインキュベートし(ADC群のKadNT)、未処理の腫瘍細胞をRLI-15処理PBMCとインキュベートした(RLI+ADC群のKadNT)。
【0156】
腫瘍細胞のKadcylaによる処理は、未処理PBMCとの共培養時に(CD3
-CD56
+)NK細胞のその後の増殖をもたらさなかった。他方で、RLI-15単独はNK細胞の予想される強力な増殖をもたらし、これは、RLI-15でインキュベートしたPBMCをKadcyla処理腫瘍細胞と共培養した場合にある程度弱かった(
図5B)。
【0157】
CD107aはNK細胞の活性化マーカーであるが、すべてのNK細胞(CD107a
+及びCD107a
-細胞の両方の集団を含む)のCD107a
+NK細胞の%をプロットすることによって活性化されたNK細胞を調べると、RLI-15単独(RLI-15)又はKadcyla処理腫瘍細胞(ADC群)とのPBMCのインキュベーションの両方は、(PBMC CTRと比較して)最大20%というNK細胞の中程度の活性化のみをもたらした一方で、RLI-15処理PBMCとKadcyla処理腫瘍細胞との組み合わせは、NK細胞の強力な活性化をもたらし、7~8μg/mlのKadcylaについて約70%のプラトーに達した(
図5C)。
【0158】
RLI-15によるPBMCの処理は、NK活性化に十分であったが(KadNT群を参照)、その効果は、Kadcyla処理腫瘍細胞と組み合わせるとかなり高く(RLI+ADC Kad 5~10μg/ml群)、CD107a
+細胞の<40%(KadNT)から約70%(Kad 7μg/ml及びKad 8μg/ml)への増加が観察された。また、CD107a
+細胞の数の増加は、アネキシンV
+/DAPI
-細胞の増加によって測定された腫瘍細胞の生存率にも対応した(
図2B、C参照)。
【0159】
NK細胞活性化の別の尺度としてIFNγ
+NK細胞の%を見たときに非常に類似した様子が見られ(
図5D)、やはりKadcylaのみの群(約10%まで)及びRLI-15のみの群について中程度のIFNγ産生NK細胞のみを示したが、RLI-15でインキュベートしたPBMCとKadcylaで処理した腫瘍細胞との組み合わせは、最大約40%のIFNγ産生NK細胞をもたらし、7~8μg/mlのKadcylaでピークに達する。
【0160】
要約すると、本発明者らは、単剤としてのRLI-15がNK細胞の増殖を有意に刺激できる(対照PBMCと比較して約40%まで)ことを示したが、Kadcyla前処理腫瘍細胞との共インキュベーション後、本発明者らは、NK細胞の活性化において、RLI-15のみで処理したものと比較して劇的な増加(RLI-15のみで処理したPBMCと比較してCD3-CD56+CD107+細胞の最大70%及びCD3-CD56+IFNγ+細胞の最大40%)を観察し、これは、Kadcylaによって媒介されるICDの誘導と、インビボ有効性の予測値を有すると考えられるRLI-15の免疫刺激効果との間で、インビトロで強い相乗作用を示す。
【0161】
興味深いことに、本発明者らは、このインビトロ設定において、NK細胞の活性化が、約7~8μg/ml Kadcylaで既にピークに達することを観察した。このような7.7μg/mlは、マウスにおけるKadcylaの約0.5mg/kg用量と同等であり、これは、典型的に適用される15mg/kgの用量よりもはるかに低い。この知見は、インビボ又はさらにはヒトの状況に移すのが困難であるが、IL-2/IL-15Rαアゴニストとの共処理のそのような追加の治療効果が、より低い用量でのICD誘導剤の有効性の増加をもたらし、これにより治療ウインドウを増加させることが依然として期待される。
【0162】
実施例5 - 他のICD誘導剤又はICD誘導モダリティの試験
実施例2及び実施例4に記載のインビトロ実験の同様の設定を使用して、他のICD誘導剤/ICD誘導モダリティ(選択した標準治療化学療法「SoC」:ドキソルビシン又はシスプラチン)に対する相乗作用についてスクリーニングした。
【0163】
他のADCを調べるとき、抗体が向けられるそれぞれの標的を発現する腫瘍細胞株が必要となる。細胞傷害性小分子、例えばアントラサイクリン、微小管不安定化剤(Diederich 2019)(ビンカアルカロイド、タキサン、例えばパクリタキセル、エポチロン、エリブリン、アウリスタチンE、マイタンシン誘導体)、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、シクロホスファミド、白金錯体(オキサリプラチン、シスプラチン)及びヌクレオシド類似体については、このような薬物に対する感受性を示す通例の細胞株を使用すべきである。ボルテゾミブについての適切な条件は、Spisekら(2007)に記載されている。
【0164】
この設定は、ICD誘導性治療モダリティ、例えば高静水圧(HHP)、X線、γ線又はUV線、光線力学療法又は加温療法/温熱療法にも使用されてもよく、感受性腫瘍細胞は、前処理したPBMCと共培養する前に、ICDを誘導する条件下でこのような物理的ストレスを受ける。ICD物理的ストレスを誘導するための適切な条件は、例えば、国際公開第2013/004708号パンフレット、Adkinsら(2014)、及びAdkinsら(2017)に記載されている。
【0165】
明らかに、RLI-15は、PBMCを前処理するために、当該技術分野で公知の他のIL-2/IL-15βγアゴニストによって置き換えることができる。
【0166】
選択されたSoCについて、本発明者らは、ICDマーカーの細胞死及び細胞表面露出を分析するKadcylaについて以前に行われたのと同様の様式でのICDの効率的な誘導のための最適な濃度及び処理期間(表2)を定義した(
図6、パネルA、B)。ドキソルビシン及びシスプラチンは、AGS腫瘍細胞株において初期アポトーシスを誘導するのに同等に(シスプラチン)又はより良好にさえ適していた(
図6A参照)。カルレティキュリン、HSP70及びHSP90の陽性細胞の%を見ると、Kadcylaはシスプラチン及びドキソルビシンと比較してより効率的であったが、平均蛍光強度(MFI)の指標に関して、シスプラチンはより強い誘導を有し、ドキソルビシンはほぼ等しい(カルレティキュリン及びHSP70に対しては潜在的に強いが、HSP90に対しては弱い)と思われた。これは、化学療法がICDに入る細胞を誘導するのが比較的少ないが、誘導された細胞はより強いICDマーカー発現を示すと解釈されてもよい。
【0167】
続いて、本発明者らは、NK細胞増殖(CD3
-CD56
+細胞数)、活性化(CD107a放出)及び細胞傷害性(IFNγ)によって測定される、RLI-15に対するドキソルビシン及びシスプラチンの相乗的可能性を評価した。
図7、パネルA~Cは、このデータと、Kadcylaについて以前に収集されたデータ(
図5B~D)との比較である。RLI-15処理は、CD3
-CD56
+細胞の総数の増加をもたらした(パネルA)。SoC又はKadcylaとの組み合わせは、RLI-15のみで処理したPBMCと比較して、これらの細胞の大幅な活性化ももたらし、これはCD107aの放出(パネルB)によって示されるとおりであり、高い細胞傷害能はIFNγ分泌の分析(パネルC)によって示されるとおりである。さらに、Kadcylaは、主にKadcylaでの処理後のNK細胞のより高い細胞傷害能によって表されるように(パネルC)、ドキソルビシン又はシスプラチンのいずれかよりも高い相乗的能力をインビトロでRLI-15に対して示した。具体的には、Kadcylaによる処理後のNK細胞の活性化状態及び細胞傷害能は、SoCによる処理後のNK細胞の活性化状態及び細胞傷害能よりも有意に高かった(
図7、パネルC)。これは、Kadcyla中のペイロード(DM1)の近傍に存在してRLI-15と組み合わさって相乗効果に寄与しうるトラスツズマブの抗体依存的細胞傷害性(ADCC)活性に起因する可能性がある。というのは、ADCCは、それ自体がIL-2/IL-15βγアゴニストの活性と相乗的であると記載されているからである。
【0168】
実施例6 - インビボでの同所性huHER2/EMT-6乳癌モデル
Kadcyla及びRLI-15の組み合わせを、Balb/c AnN免疫適格マウスにおける同所性huHER2/EMT-6乳癌モデルにおいてインビボで試験した。個々の群の初期平均腫瘍体積が140mm3に達したときに研究を開始した。RLI-15処理の前にICDを潜在的に誘導するために、Kadcylaをヒト等価用量(15mg/kg)で研究0日目及び7日目に2回投与した。RLI-15は、研究15~18日目に4回の連続用量で投与して、免疫細胞の数を増幅し、免疫細胞を活性化した。抗腫瘍有効性を絶対腫瘍体積変化のレベルで評価した。安全性は、個々の動物における体重減少によってモニターしている。個々の腫瘍におけるHER2発現を、HercepTest(商標)(Dako(ダコ))を用いてエンドポイントで分析して、モデルの潜在的な不均質性(染色は、製造業者によって与えられた説明書に従って行った)についてマッピングした。
【0169】
フローサイトメトリによるHER2発現のエキソビボ分析のために、試験開始前に3匹の予備試験動物を犠牲にして腫瘍を収集した。この分析は、huHER2/EMT-6腫瘍細胞の約90%がエキソビボでHER2について陽性であることを明らかにした(
図8A)。
【0170】
研究の最後に収集し、HER2発現についてIHCによって分析したすべての残存腫瘍について、腫瘍発現レベルは、インビボで、91.66~121.10の平均Hスコアを有するむしろ中間であると見なすことができるということが示された(表4を参照)。
【0171】
【0172】
研究の過程において、本発明者らは、個々の群の間で非常に均質な腫瘍増殖を観察し、RLI-15及びKadcylaの組み合わせの相乗効果が、両方の化合物の単剤活性と比較して見られた(
図8B)。15~18日目に1mg/kgのs.c.でのRLI-15単剤処理と、0日目及び7日目に15mg/kgのi.v.でのKadcyla単剤処理の両方が、中間の腫瘍体積の増加をもたらすのに対して、これらの処理の併用処理は、研究の終了時に腫瘍体積の有意な減少をもたらす。
【0173】
単動物データ(
図8C)は、RLI-15の単剤活性が、8匹のマウスのうちの2匹において完全な腫瘍根絶をもたらすが、Kadcyla療法単独では、3匹の完全かつ持続的な応答をもたらし、別の3匹の動物において腫瘍再発を伴う部分的な応答をもたらすことを示した。そのような腫瘍再発は患者においても頻繁に観察され、Kadcyla抗腫瘍療法の主要な傾向の1つを表す。しかしながら、本発明者らは、KadcylaをRLI-15と組み合わせると、このような再発を防止することができることを示した。この組み合わせは、8匹の動物のうち6匹において持続的かつ完全な腫瘍根絶をもたらし、共通の実務において使用されてもよいこの組み合わせの可能な治療的見通しを示した。
【0174】
要約すると、RLI-15及びKadcylaの組み合わせは、免疫耐性huHER2/EMT-6腫瘍における抗腫瘍有効性においてインビボで相乗作用を示した。
【0175】
実施例7 - インビトロでの細胞死滅アッセイ
SOT101(RLI-15)と組み合わせた抗CLDN18.2指向性ADC SOT102の組み合わせを、インビトロでの細胞死滅アッセイにおいて評価した。SOT102は、ADCC不活性化重鎖置換LALA(L234A/L235A)を有する抗CLDN18.2抗体hCl1a(配列番号20、配列番号21)に基づく抗体-薬物-コンジュゲートであり、アントラサイクリンPNU-159682(PNU)が、非切断性リンカーGGGGSLPQTGG(配列番号24)-エチレンジアミンによって軽鎖のC末端に連結されており(hCl1a-LC-G2-PNU)(配列番号22、配列番号23)、国際公開第2022/136642号パンフレットの実施例7にさらに記載されている。
【0176】
細胞株。CLDN18.2を過剰発現するヒトA549細胞(A549-CLDN18.2)を、10%ウシ胎仔血清、2mMグルタミン(GlutaMAX、Gibco(ギブコ))、100U/mlペニシリン、0.1mg/mlストレプトマイシン(Invitrogen(インビトロジェン))、及び2μg/mlピューロマイシン(Gibco)を補充したDMEM培地(Gibco)中で増殖させた。細胞は、5%CO2を含む加湿雰囲気中で37℃に維持した。
【0177】
ヒトNK細胞の単離:まず、ドナーの血液(バフィーコート、約70mlの血液)を、フィコール(ficoll)密度勾配遠心分離によって処理した。末梢血単核細胞(PBMC)を回収し、ヒトNK細胞(hNK)を、EasySep Human NK Cell Isolation Kit(STEMCELL(ステムセル))を製造業者のプロトコルに従って使用して単離した。NK細胞を洗浄し、アッセイに直接使用した。NK細胞画分の純度をフローサイトメトリによって評価したところ、70%超に達していた。
【0178】
細胞死滅アッセイ:A549_CLDN18.2細胞を96ウェルプレートに播種し(20,000細胞/ウェル)、一晩インキュベートした。新たに単離したヒトNK(hNK)細胞を、2mMグルタミン及び10%熱不活性化(56℃で20分間)プール補体ヒト血清(Innovative Research(イノベイティブ・リサーチ))を補充したアッセイ培地-RPMI1640(フェノールレッドなし)に再懸濁した。接着細胞を含む96ウェルプレートからの培地を吸引し、標的細胞をhNK細胞と混合して、E:T比10に到達させた。試験したタンパク質を0~100μg/mlの濃度範囲で添加し、SOT101を適切なウェルに添加して0.1nMの濃度にした。混合物を37℃で24時間インキュベートし、次いで、細胞傷害性を、LDH Cytotoxicity Assay(Abcam、ab65393)を製造業者のプロトコルに従って使用して死細胞から放出された乳酸デヒドロゲナーゼ酵素の活性として測定した。10μlの上清を新しい96ウェルプレートに移し、LDH基質と混合し、発色した色の変化を分光光度計を使用して測定した。細胞傷害性をウェルから得たシグナルのパーセンテージとして計算し、すべての播種細胞を溶解緩衝液で透過処理した(100%細胞傷害性)。
【0179】
フローサイトメトリ:CLDN18.2発現レベルをフローサイトメトリ(BD LSRFortessa)によって測定した。細胞をトリプシン処理によって回収し、洗浄し、ヒト一次抗CLDN18.2抗体(2μg/ml)を用いて4℃で30分間標識し、続いてフィコエリトリン(PE;eBiosciences、12-4998-82)及びDAPIとコンジュゲートしたヤギ抗ヒト二次抗体で標識して死細胞を検出した。陰性対照については、細胞を二次抗体及びDAPIのみで標識した。
単離したhNK細胞の純度は、免疫細胞集団を識別するために蛍光標識した抗体のセットでNK画分を染色することによって測定した:抗CD3(APC-ef780、Thermo-Fisher Scientific)、抗CD16(PE-Cy7、Biolegend)、抗CD56(A700、Biolegend)、抗CD11c(APC、Exbio)、Zombie Aqua Viability Dye(BV510、Biolegend)。NK細胞を生きたCD3-CD11c-CD16+CD56+細胞としてゲート設定した(gated)。得られたすべてのフローサイトメトリデータをFlowJoソフトウェアで分析した。
【0180】
ADCCが可能な抗CLDN18.2抗体それ自体(hCl1a WT)は、新たに単離したNK細胞を用いた試験条件下で標的細胞に対してわずかな細胞傷害活性を示していたが、これはSOT101の添加によってわずかに改善されたに過ぎなかった。hCl1a WTと同じCDRを含むが、抗体のADCC活性を最小限にするLALA置換を有するADC SOT102単独は、いくらかの細胞死滅を示し、従って連結されたPNU毒素によって媒介された。次いで、SOT102とSOT101との組み合わせは、有意に高い細胞殺傷活性を発揮した(
図9を参照)。hCl1a WTとSOT101との組み合わせは有意差を示さなかったので、そのような増加はADCCによって媒介されない(ADCCはSOT102においてさらに低減される)、すなわち、上記効果は、SOT101によるNK細胞活性化と非常に不活性な抗体に連結されたICD誘導毒素との組み合わせに起因するに違いない。また、このアッセイにおいてT細胞及び樹状細胞が存在しないことを考えると、この観察された相乗作用は、SOT101刺激NK細胞と相互作用した、腫瘍細胞に対する送達されたアントラサイクリンの直接効果に基づく。言い換えれば、抗CLDN18.2 ADC SOT102及びSOT101は、新たに単離されたヒトNK細胞の存在下でCLDN18.2発現標的腫瘍細胞の死滅において相乗作用し、そのような相乗作用は、ADCC、又は例えば樹状細胞による細胞傷害性T細胞への腫瘍抗原提示に基づかず、それゆえ、アントラサイクリンPNUによって誘導されるICDに起因する可能性がある。
【0181】
実施例8 - MC38結腸癌モデルにおけるインビボでのSOT101及びオキサリプラチンの抗腫瘍有効性
C57BL/6マウスに、5×105個のMC38結腸癌細胞をs.c.注射した。腫瘍細胞接種後3日目から開始して、組み合わせスケジュール1(オキサリプラチン7.5mg/kg i.p. D3及びD17 + SOT101 s.c. 2×2mg/kg D4、5及びD18、19)、2(オキサリプラチン7.5mg/kg i.p. D3及びD17 + SOT101 s.c. 2×2mg/kg D4、5及びD11、12)及びスケジュール3(オキサリプラチン7.5mg/kg i.p. D3 + SOT101 s.c. 2×2mg/kg D4、5及びD11、12)に従って、マウスを7.5mg/kgのオキサリプラチンQ2Wでi.p.処置するか、又はW1及びW2で2×2mg/kgのSOT101でs.c.処置するか、又は両方の組み合わせで処置した。個々のマウスの体重及び腫瘍増殖をモニターした。21日目に、マウスを安楽死させた。SOT101及びオキサリプラチンの併用処置は、相対マウス体重に有意差がないことを踏まえると、耐容性が良好であった(データは示さず)。結果は、併用投与の有効性の増加を示す(データは示さず)。
【0182】
【0183】
参考文献
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米国特許出願公開第2006/0057680号明細書
米国特許出願公開第2007/0036752号明細書
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米国特許第5,229,109号明細書
米国特許第10,206,980号明細書
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国際公開第2012/107417A1号パンフレット
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国際公開第2014/145806A2号パンフレット
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国際公開第2015/097037号パンフレット
国際公開第2016/060996A2号パンフレット
国際公開第2016/102679A1号パンフレット
国際公開第2016/142314A1号パンフレット
国際公開第2016/165762号パンフレット
国際公開第2016/166122号パンフレット
国際公開第2017/046200A1号パンフレット
国際公開第2017/112528A2号パンフレット
国際公開第2018/071918A1号パンフレット
国際公開第2018/071919A1号パンフレット
国際公開第2018/102536号パンフレット
国際公開第2018/151868号パンフレット
国際公開第2018/213341A1号パンフレット
国際公開第2018/234862号パンフレット
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国際公開第2019/110725A1号パンフレット
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国際公開第2019/145469号パンフレット
国際公開第2019/145471号パンフレット
国際公開第2019/165453A1号パンフレット
国際公開第2019/166946A1号パンフレット
国際公開第2019/246379A1号パンフレット
国際公開第2019/7185705号パンフレット
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【国際調査報告】