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特表2024-528923アンモニアおよび硝酸の合成のための統合プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】アンモニアおよび硝酸の合成のための統合プロセス
(51)【国際特許分類】
   C01C 1/04 20060101AFI20240725BHJP
   C01B 21/40 20060101ALI20240725BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20240725BHJP
【FI】
C01C1/04 D
C01B21/40 E
C25B1/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024505457
(86)(22)【出願日】2022-06-09
(85)【翻訳文提出日】2024-03-29
(86)【国際出願番号】 EP2022065763
(87)【国際公開番号】W WO2023006291
(87)【国際公開日】2023-02-02
(31)【優先権主張番号】21188921.7
(32)【優先日】2021-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515106066
【氏名又は名称】カサーレ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マサンティ、マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】コルベッタ、ミケーレ
(72)【発明者】
【氏名】オストゥーニ、ラファエーレ
(72)【発明者】
【氏名】ビャウコフスキー、ミカル タデウシュ
(72)【発明者】
【氏名】オルダニ、ファビオ
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021DC03
4K021DC11
(57)【要約】
水の電気分解からの水素の生成を含む、アンモニアおよび硝酸の合成のための統合プロセスは、運転の第1のモードおよび運転の第2のモード間の選択的な切り替えにより制御され、運転の第1のモードでは、アンモニアが過剰に生成され、かつ好適なアンモニア貯蔵内に貯蔵され;運転の第2のモードでは、上記アンモニア貯蔵からのアンモニアが、硝酸の生成に対して、アンモニアの追加的入力を供給するために使用され;第1のモードおよび第2のモード間の切り替えは、水の電気分解へ伝達される動力の量に基づく。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアおよび硝酸の合成のための統合プロセスを制御する方法であって:
前記プロセスでは、水素が水の電気分解から生成され、かつアンモニアの補給ガスを生成するために使用され;前記補給ガスが、アンモニアを形成するように反応させられ;前記アンモニアの少なくとも一部が硝酸を生成するために使用され;
前記方法は、運転の第1のモードおよび運転の第2のモード間の前記プロセスの選択的な切り替えを含み;
前記運転の第1のモードでは、アンモニアの生成および硝酸の生成は:前記プロセスが硝酸の第1の出力を有しており;アンモニアが、硝酸の前記第1の出力の生成に必要とされるアンモニアと比較して過剰に生成され;過剰分のアンモニアが、好適なアンモニア貯蔵内に貯蔵されるように調整され;
前記運転の第2のモードでは、アンモニアの生成および硝酸の生成は:前記プロセスが硝酸の第2の出力を有しており;生成されたアンモニアが、硝酸の前記第2の出力の生成に必要とされるアンモニアよりも少なく、よって硝酸の生成が、アンモニアのさらなる入力を必要とし、および、前記アンモニア貯蔵からのアンモニアが、前記さらなる入力を供給するために使用されるように調整され;
前記水の電気分解は少なくとも1つの動力源を動力源としており、そして前記方法は、前記少なくとも1つの動力源から前記水の電気分解へ伝達される動力の量に基づいた、前記第1のモードおよび前記第2のモード間の切り替えを含む、
方法。
【請求項2】
熱および/または電気エネルギーの形態でのエネルギーが硝酸生成プロセスからアンモニア合成プロセスへ移出され、よって、前記アンモニア合成プロセスは、前記硝酸生成プロセスから移入される動力により表される熱および/または電気動力入力を有しており;
前記アンモニア合成プロセスでは、合計動力入力に対する、前記硝酸生成プロセスから移入される前記動力の比は、前記運転の第1のモードよりも、前記運転の第2のモードにおいて大きい、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記硝酸生成プロセスから移入される前記動力は、アンモニア合成圧力への、前記アンモニアの補給ガスの圧縮のために、前記運転の第2のモードで使用される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記運転の第1のモードでは、水素が、前記補給ガスの生成に必要とされる水素と比較して過剰に生成され、過剰分の水素が、好適な水素貯蔵ユニット内に貯蔵され、かつ、前記運転の第1のモード中に蓄積された過剰分の水素が、前記運転の第2のモード中にアンモニアの補給ガスの生成のために使用される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記水の電気分解の前記少なくとも1つの動力源は、少なくとも1つの再生可能エネルギー源を含んでおり、かつ前記方法は、前記再生可能エネルギー源により利用可能とされる動力の量に基づいた、前記第1のモードおよび前記第2のモード間の切り替えを含んでいる、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記運転の第1のモードは、前記少なくとも1つの再生可能エネルギー源により利用可能にされる動力が第1の閾値を上回る場合に選択され、および、前記運転の第2のモードは、少なくとも1つの再生可能エネルギーの動力源により利用可能にされる動力が第2の閾値を下回る場合に選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記再生可能エネルギーが太陽エネルギーである、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
アンモニアの生成がアンモニアプラント内で行われ、かつ硝酸の生成が前記アンモニアプラントに接続された硝酸プラント内で行われ;
前記アンモニアプラントは公称アンモニア出力を有しており、かつ前記硝酸プラントは公称硝酸出力を有しており、前記公称アンモニア出力に対応する前記公称硝酸出力は、硝酸の生成のために前記アンモニアプラントから前記硝酸プラントへ部分的にまたは全部移され;
前記運転の第1のモードでは、前記硝酸プラントは、その公称出力よりも少ない硝酸出力を有する部分負荷で運転され、かつ、前記運転の第2のモードでは、前記アンモニアプラントは、その公称出力よりも少ないアンモニア出力を有する部分負荷で運転される、
請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記運転の第1のモードでは、前記アンモニアプラントは前記公称アンモニア出力の80%以上で稼働され、かつ前記硝酸プラントは前記公称硝酸出力の50%~80%で稼働される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記運転の第2のモードでは、前記アンモニアプラントは前記公称アンモニア出力の1%~30%、好ましくは10%~30%で稼働され、かつ前記硝酸プラントは前記公称硝酸出力の、好ましくは80%以上で稼働される、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記運転の第2のモードでは、前記アンモニア貯蔵から取り出された前記アンモニアの一部は、熱および/または電気エネルギーの形態で追加のエネルギー源を提供するように燃焼される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記統合プロセスは、生成されたアンモニアおよび硝酸の少なくとも一部からの硝酸アンモニウムの生成をさらに含んでおり、前記方法は、前記運転の第1のモードでは、硝酸アンモニウム生成プロセスが、低減された出力で稼働される、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記運転の第1のモードでは、前記硝酸アンモニウム生成プロセスはその公称出力の50%~80%で稼働され、かつ前記運転の第2のモードでは、前記硝酸アンモニウム生成プロセスは、その公称出力の80%以上で稼働される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
エネルギーが、熱および/または電気エネルギーの形態で前記硝酸アンモニウム生成プロセスからアンモニア合成プロセスへ移出され、よって、前記アンモニア合成プロセスは、前記硝酸アンモニウム生成プロセスからの熱および/または電気動力入力を有している、請求項12または13に記載の方法。
【請求項15】
第1の量の蒸気(12)がアンモニア生成プロセスから除去された熱から生成され、かつ第2の量の蒸気(11)が硝酸生成プロセスから除去された熱から生成され;
前記運転の第1のモードと前記運転の第2のモードとの間の切り替えは、第1の蒸気量および第2の蒸気量の和である合計蒸気量を所望の範囲内に維持するように、好ましくは、前記運転の第1のモードと前記運転の第2のモードとの間の前記合計蒸気量が30%以下だけ、および、より好ましくは、20%以下だけ異なるように制御される、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
アンモニアおよび硝酸の生成のためのプロセスであって、水素が水の電気分解から生成され、かつアンモニアの補給ガスを生成するために使用され;前記補給ガスがアンモニアを形成するように反応させられ;前記アンモニアの少なくとも一部が硝酸を生成するために使用され、前記プロセスが請求項1~15のいずれか1項に記載の方法により制御される、プロセス。
【請求項17】
生成されたアンモニアの少なくとも一部、および硝酸からの、硝酸アンモニウムの生成をさらに含む、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
前記水電解(6)から酸素(22)を発生させる工程と、アンモニアの触媒変換(31)へ、および/または硝酸溶液のストリッピング工程へ、前記酸素の少なくとも一部分(23)を供給する工程とを含む、請求項16または17に記載のプロセス。
【請求項19】
アンモニア合成セクション(41)および硝酸合成セクション(32)を備える、アンモニアおよび硝酸の合成のための統合プラントであって、前記アンモニア合成セクション内で生成されたアンモニアは、前記硝酸合成セクション内で硝酸を生成するために使用され:
前記アンモニア合成セクションは、水素を含有するアンモニアの補給ガスを生成するように構成されたフロントエンドセクションを含んでおり、前記フロントエンドセクションは、前記アンモニアの補給ガス中に含まれる水素(5)の少なくとも一部を、水電解により、生成するように構成された水電解装置を含んでおり;
前記プラントは、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法により、前記プラント内の、アンモニアおよび硝酸の生成を制御するように構成された制御システムをさらに含む、プラント。
【請求項20】
前記アンモニア合成セクションおよび前記硝酸合成セクション間で共通の蒸気ネットワークを含む、請求項19に記載のプラントであって、アンモニアおよび硝酸の生成が、蒸気の安定した、またはほぼ安定した生成を維持するように制御される、プラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアおよび硝酸の生成の分野に関する。特に、本発明は、アンモニアおよび硝酸の生成のための統合プロセスを制御する方法に、および上記方法を実現するプロセスまたはプラントに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のアンモニアの生成には、水素含有合成ガスを生成するための炭化水素原料の改質、水性ガスシフト転換、二酸化炭素の除去および任意にはメタン化を伴う合成ガス精製、ならびに、最後には、好適な触媒コンバータ内でのアンモニアへの変換が関係する。アンモニアの合成のための補給ガスは、燃焼空気とともに、たとえば二次改質器内に導入され得るか、または好適な空気分離ユニット内で生成され得る窒素も含んでいる。したがって、アンモニアの合成には、窒素の生成が関係する場合もある。
【0003】
アンモニアの合成は高圧で行われる。アンモニアの合成圧力への、アンモニアの補給ガスの圧縮は、プロセスの主要なエネルギー入力となる。熱は通常、プロセスから、たとえば高温改質廃水から、およびアンモニアコンバータから、蒸気状で回収される。十分な圧力での蒸気は、蒸気タービン内で膨張させられてエネルギーを生成し得る。したがって、蒸気は、プロセスの熱および/またはエネルギー入力を少なくとも部分的に満たすために、プロセスにおいて内部的に使用され得る。
【0004】
アンモニアの生成と結び付けられる環境上の問題は、炭化水素原料の改質のための熱が従来、化石燃料(たとえば、天然ガス)の燃焼により供給され、これにより大気中への、かなりの量の二酸化炭素排出がもたらされるということである。
【0005】
新しい傾向によれば、許容可能なコストで、低減されたカーボンフットプリントでアンモニアプロセスを提供することが望ましい。低減されたカーボンフットプリントで、特に、低減された二酸化炭素排出量で生成されたアンモニアは低炭素アンモニアと呼ばれる。低減された排出量でアンモニアを生成するように構成されたプラントは低炭素アンモニアプラントと呼ばれる。
【0006】
低炭素アンモニアの生成のための知られている手法は、再生可能エネルギー源(たとえば、太陽エネルギーまたは風力エネルギー)を動力源とする、水の電気分解からの、水素の生成を含んでいる。この手法を使用すれば、アンモニア合成に必要とされる水素の一部または全部は、再生可能エネルギーに由来し得る。水素の全量が再生可能エネルギーに由来する場合、そうして得られた低炭素アンモニアは通常、グリーンアンモニアと呼ばれる。
【0007】
再生可能エネルギーを使用することの欠点は、エネルギー源の利用可能性に代表される。太陽エネルギーなどの再生可能エネルギー源は通常、全プロセスに必然的に伝わる変動の影響を受ける。
【0008】
アンモニアおよび硝酸の生成のためのプロセスには、本来柔軟でない、タービンおよびコンプレッサなどのいくつかのターボ機械が関係する:その結果、プロセス全体が柔軟ではなくなり、かつ設計条件付近で稼働しなければならないものとなる。
【0009】
特に、内部で生成され得る、蒸気の量および動力の量は、水素の生成の変動により影響される。蒸気タービンは通常、公称蒸気流量近くで稼働するように設計される。蒸気流量が低下すると、タービンは効率の劇的な低減を被る場合があり、または稼働することができない場合がある。エネルギーの内部生成が低下した場合、プロセスには外部エネルギー入力が必要となる場合があり、これは追加のコストを意味する。
【0010】
上記欠点に対する現在の解決策は、緩衝剤としてふるまい、かつ合成ループへ安定したH2流量を供給するための水素貯蔵、および/または、プラント内の水電解および他の電気を消費するものに、安定したエネルギーの流れを供給するためのバッテリ、もしくは他のエネルギー貯蔵手段の設置である。しかし、これらの解決策は、水素およびエネルギー貯蔵手段の資本コストが理由で、十分に満足なものではない。
【0011】
上記欠点は、アンモニアの生成が、硝酸の、および場合によっては硝酸アンモニウムの生成と統合されている場合に特に感じられる。そうした統合プラントでは、水素の生成のためのエネルギー源の変動は、アンモニアの生成、ならびにその後の、硝酸および硝酸アンモニウムの生成に影響を与える。
【0012】
したがって、上記考察に照らせば、水素生成が、変動するまたは間欠性の動力源を動力源とする場合でさえ、効率および収益性を維持するためにアンモニアおよび硝酸の統合された生成に対して、より多くの柔軟性を与えることが非常に望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、統合されたアンモニア・硝酸プロセスであって、アンモニアの合成のための水素の少なくとも一部が水電解により生成され、そしてその結果として、上記プロセスが電気分解プロセスに使用される動力源の利用可能性に左右される、統合アンモニア・硝酸プロセスの柔軟な、適応的な制御をどのようにして提供するかという課題に対処する。特に、本発明は、上記動力源の変動であって、一般に、太陽エネルギーなどの再生可能エネルギー源の場合にあてはまる上記動力源の変動にどのようにして追従するかという課題に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題は、請求項1に記載の、アンモニアおよび硝酸の合成のための統合プロセスを制御する方法により、解決される。
【0015】
上記方法は、水素が水の電気分解から生成され、かつアンモニアの補給ガスを生成するために使用され;上記補給ガスが、アンモニアを形成するように反応させられ;上記アンモニアの少なくとも一部が、硝酸を生成するために使用されるプロセスに適用される。いくつかの実施形態では、上記方法は、硝酸アンモニウムも生成されるプロセスに適用される。
【0016】
アンモニアの補給ガスという語は、アンモニアの合成のために好適な量で水素および窒素を含有するガスを表す。通常、上記ガスは、3、またはちょうど3付近の、水素と窒素のモル比を有する。
【0017】
上記方法は、運転の第1のモードおよび運転の第2のモード間の上記プロセスの選択的な切り替えを含み;
上記運転の第1のモードでは、アンモニアの生成および硝酸の生成は:上記プロセスが硝酸の第1の出力を有しており;アンモニアが、硝酸の上記第1の出力の生成に必要とされるアンモニアと比較して過剰に生成され;過剰分のアンモニアが、好適なアンモニア貯蔵内に貯蔵されるように調整され;
上記運転の第2のモードでは、アンモニアの生成および硝酸の生成は:上記プロセスが硝酸の第2の出力を有しており;生成されたアンモニアが、硝酸の上記第2の出力の生成に必要とされるンモニアよりも少なく、よって硝酸の生成が、アンモニアのさらなる入力を必要とし、および、上記アンモニア貯蔵からのアンモニアが、上記さらなる入力を供給するために使用されるように調整される。
【0018】
上記方法は、上記水の電気分解へ伝達される動力の量に基づいた、第1のモードおよび第2のモード間の切り替えを含む。
【0019】
したがって、上記方法は、水電解プロセスに利用可能な動力の量への、プロセスの適合を可能にする。水の電気分解へ伝達される動力の量は、上記動力源の、コストおよび/または実際の利用可能性により変動し得る。一般に、運転の第1のモードは、より多くの動力が利用可能な場合に選択され、そして運転の第2のモードは、より少ない動力が利用可能であるか、または利用可能な動力がない場合に選択される。
【0020】
上述されたように、運転のモードの選択は、上記動力源のコストおよび/または利用可能性に追従し得る。たとえば、電気動力がグリッドから得られる場合、エネルギーの価格が低い場合には第1のモードが選択される場合がある一方、上記価格が高い場合には第2のモードが選択される場合がある。
【0021】
本発明の特に興味深い実施形態は、再生可能エネルギーを動力源とする水電解の場合に関係する。その場合には、再生可能エネルギー源が利用可能であり、かつかなりの動力を生成することができる場合に第1のモードが選択され得る;再生可能エネルギー源が利用可能でないか、または、利用可能な再生可能エネルギー源が限定された程度までに過ぎず、よって、水電解プロセスへ伝達される動力がないか、または少しである場合に第2のモードが選択され得る。
【0022】
たとえば、再生可能エネルギーが太陽エネルギーの場合、第1のモードが昼間に選択される場合があり、そして第2のモードは夜間、またはより一般的には、太陽エネルギーがたとえば雲に覆われていることが理由で実質的に利用可能でない場合に選択される場合がある。
【0023】
本発明は、アンモニアの生成が、水素の生成のための電気エネルギーに、および特に再生可能エネルギーに依存している場合に、上記動力源のコストおよび/または利用可能性による入力動力の不足を被る場合があるという発見から出発している。本発明は、上記動力源が不足しているか、または利用可能でない場合に使用されるべきアンモニアを、上記動力源が十分に利用可能な際に貯蔵することにより、この、入力動力の不足を補うものである。よって、本発明は、上記動力源の、変動的または間欠的利用可能性にもかかわらず、硝酸の一定のまたはほぼ一定の生成を可能にする。
【0024】
本発明の特定の実施形態によれば、上記入力動力の不足は、硝酸生成プロセスからアンモニア合成プロセスへ、比例してより大きな量の熱動力および/または電気動力を移すことにより、補われる場合もある。備えられている場合には、結びついた硝酸アンモニウム生成プロセスも、アンモニア合成プロセスへ熱動力および/または電気動力を移出する場合がある。
【0025】
本発明は、硝酸の、および任意的には硝酸アンモニウムの生成と組み合わせた、低炭素アンモニアまたはグリーンアンモニアの生成に新たな可能性を開くものである。特に、本発明は、水素の再生可能エネルギーに基づく生成の変動に追従するように構成された、より柔軟なプロセスを提供する。
【0026】
本発明の他の利点は、グリーンアンモニアの合成コストの低減、水電解および圧縮ユニットの動力源とするのに必要なバックアップ動力の低減、ならびに水素貯蔵ユニットの大きさの低減を含む。
【0027】
本発明のさらなる態様は、特許請求の範囲に記載のプロセスおよびプラントを含む。
【0028】
本発明は、水素の生成がすべて水の電気分解によるプロセスに、または、水素が、部分的には化石燃料の改質から、そして部分的には水の電気分解から生成されるハイブリッドプロセスに適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】アンモニア、硝酸、および硝酸アンモニウムの生成のための統合プラントの単純化された概略ブロック図を示す。
図2図1の概略図の変形を示す。
図3図1の概略図の変形を示す。
図4図1の概略図の変形を示す。
図5】太陽エネルギー源の一般的な利用可能性を示すプロットである。
図6図5の利用可能性を有する太陽エネルギー源を動力源としており、および本発明の方法を使用した、アンモニア合成プロセスおよび硝酸生成プロセスの負荷を示す。
図7】変動するエネルギー源の存在下での、変動し得る負荷の別の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
アンモニアの生成はアンモニアプラント内で行われ、および硝酸の生成は、アンモニアプラントに接続された硝酸プラント内で行われる。当該アンモニアプラントおよび硝酸プラントは、統合プラントの複数のセクションとみなされる場合もある。
【0031】
アンモニアの生成は、水素の発生を含み、それは、本発明によれば、少なくとも部分的には水電解装置内で行われる。その生成は、アンモニアの補給ガス中の正しい水素/窒素比に達するのに必要な場合、好適な窒素発生ユニット、たとえば空気分離ユニットにおける窒素の発生をさらに含み得る。
【0032】
硝酸の生成には、アンモニアを触媒酸化し、酸化窒素を含有するプロセスガスを得て、それが、好適な吸収カラム内で水と接触させられて硝酸を生成することが関係する。
【0033】
本発明は、上記アンモニアプラントおよび硝酸プラントの負荷が、水電解プロセスに利用可能な動力に応じて調整されることを規定している。特に、運転の第1のモードでは、硝酸プラントの負荷が低減されてアンモニア貯蔵を可能にする;運転の第2のモードでは、アンモニアプラントの負荷が、水電解に利用可能な動力の低減された量に応じて低減される。したがって、本発明は、硝酸プラントの負荷が、アンモニアプラントの負荷に対して相補的である一方で、アンモニアプラントの負荷が再生可能エネルギー源の利用可能性に実質的に追従する変動制御を採用する。
【0034】
運転の第1のモードは、電気分解に利用可能な動力が第1の閾値を上回る場合に選択される場合があり、そして運転の第2のモードは、上記動力が第2の閾値を下回る場合に選択される場合がある。第1の閾値および第2の閾値は、同じであるか、または異なり得る。好ましくは、複数の閾値は、水電解を含むアンモニアプラントの合計動力消費量の50%に等しく、または約50%である。
【0035】
アンモニアプラントは公称アンモニア出力を有しており、かつ硝酸プラントは公称硝酸出力を有しており、上記アンモニア出力に対応する上記公称硝酸出力は、硝酸の生成のためにアンモニアプラントから硝酸プラントへ部分的にまたは全部移される。
【0036】
好ましくは、運転の第1のモードでは、アンモニアプラントは公称アンモニア出力の80%以上で稼働され、および硝酸プラントは公称硝酸出力の50%~80%で稼働される。80%以上という条件は、プラントが公称容量を上回って、たとえば80%~110%で運転することができる場合には、最大100%、または100%超を含み得る。
【0037】
運転の第2のモードでは、アンモニアプラントは上記公称アンモニア出力の1%~30%、好ましくは10%~30%、または20%~30%で稼働される場合があり、および硝酸プラントは公称容量の80%以上で稼働される場合がある。
【0038】
硝酸生成プロセスは概して、熱および/または電気エネルギーの形態で、エネルギーを正味、移出するものである。電気エネルギーは、吸収カラムのテールガスを膨張させることにより、および/またはアンモニアの酸化において放出された熱から生成された蒸気を膨張させることにより、硝酸プラント内で生成され得る。熱は、たとえばアンモニアの触媒酸化からの熱の除去、および種々のプロセス流の冷却により、生成される、圧力下の蒸気の形態で移出させられ得る。
【0039】
よって、熱動力および/または電気動力は、硝酸生成プロセスからアンモニア合成プロセスへ移され得る。ここでは、第1プロセスから第2プロセスへの移動は、第1プロセスを行うプラントの1つまたは複数の品目が、第2プロセスを行うプラントの1つまたは複数の品目へと移される動力を生成することを意味する。
【0040】
結びつけられたアンモニアプラントへ移出される電気動力の好ましい用途には:水の電気分解、窒素の発生、アンモニアの補給ガスの圧縮が含まれる。好ましくは、当該動力は主に、アンモニアの補給ガスの圧縮のために使用される。
【0041】
本発明の実施形態では、硝酸生成プロセスからアンモニア合成プロセスへ、熱動力および/または電気動力が移されることも、運転のモードに応じて制御される。特に、アンモニア合成プロセスへ移される動力は、運転の第2のモードに比例してより大きい場合がある。具体的には、本発明の実施形態では、合計入力動力に対する、硝酸生成プロセスから移入される動力の比は、運転の第1のモードよりも、運転の第2のモードにおいて大きい。
【0042】
熱は通常、高温蒸気により移出される。硝酸プラントにより移出される熱(高温蒸気)は、たとえばアンモニア合成反応器を、たとえば好適な熱交換器を当該反応器内部に設けて加熱して、部分負荷で運転しても適切な温度に当該反応器を維持するために使用され得る。
【0043】
硝酸プラントからアンモニアプラントへエネルギーが移されることの利点には、水素貯蔵を設けることの、および/またはグリッドから電気を移入することの必要性を回避し、または低減させることが含まれる。顕著な利点は、アンモニアプラントが、「アイランド」状態で、すなわち、電気エネルギーのその入力がすべて、統合プラント内で、すなわち硝酸プラント内で、内部で生成されて運転し得るということである。
【0044】
水の電気分解は好ましくは、再生可能エネルギーを使用する。種々の実施形態によれば、アンモニアの補給ガス中の水素の全部または一部は再生可能エネルギーから生成され得る。その場合、当該方法は、電解プロセスにおいて使用される再生可能エネルギーの(複数の)源により、利用可能にされる動力の量に基づいた、上記第1のモードおよび第2のモード間での切り替えを含む。特に関心のある実施形態は、太陽エネルギーを動力源とする電気分解からの、水素の生成である。
【0045】
運転の第2のモード中には、アンモニア貯蔵から取り出されたアンモニアの一部は、熱および/または電気エネルギーの形態での追加的なエネルギー源を提供するように燃焼させられ得る。この、貯蔵されたアンモニアの使用は、アンモニア合成プロセスのエネルギー不足を補うためのさらなる手段を提供し得る。
【0046】
本発明の方法は、生成されたアンモニアおよび硝酸の少なくとも一部からの、硝酸アンモニウムの生成をさらに含むプロセスに適用され得る。方法は好ましくは、運転の第1のモードでは、硝酸アンモニウム生成プロセスは低減させられた出力で稼働されることを含む。一般に、硝酸アンモニウム生成プロセスは、硝酸生成プロセスのものと同様に制御される。より好ましくは、運転の第1のモードでは、硝酸アンモニウム生成プロセスはその公称出力の50%~80%で稼働され得、そして運転の第2のモードでは、硝酸アンモニウム生成プロセスは、その公称出力の80%以上で稼働される。
【0047】
さらに、硝酸アンモニウム生成プロセスは通常、熱および/または電気の形態でのエネルギーの最終的なエクスポーターである。したがって、硝酸アンモニウム生成プロセスから移出された熱または電気動力は、アンモニア合成プロセス内で、特に運転の第2のモードにおいて使用され得る。硝酸アンモニウムプロセスは好ましくは、硝酸と同様の負荷で、スイッチングモードで稼働される。関連する利点は、硝酸アンモニウムからの蒸気/エネルギーが、低負荷での運転のモード中にアンモニアへ移され得るということである。
【0048】
本発明のなお別の好ましい特徴は、蒸気の一定の、またはほぼ一定の生成を維持するために統合プロセスの運転のモードを管理することである。アンモニア生成プロセスおよび硝酸生成プロセスは、熱がプロセス流から除去され、および通常、蒸気を生成するために使用される種々の工程を含む。上記蒸気は、予熱またはプロセス流などの熱入力を必要とするプロセス工程のために内部で使用され、または、コンプレッサおよび他の機械などの機器のためのエネルギーを生成するために膨張させられる。蒸気の一定の、またはほぼ一定の生成は、安定したプロセスの維持に寄与し、およびエネルギーを移入する必要性を低減させる。
【0049】
よって、本発明の実施形態は:
第1の量の蒸気がアンモニア生成プロセスから除去された熱から生成され、および第2の量の蒸気が硝酸生成プロセスから除去された熱から生成され;
運転の第1のモードと運転の第2のモードとの間の切り替えは、第1の蒸気量および第2の蒸気量の和である合計蒸気量を所望の範囲内に維持するように制御される
ことを規定している。
【0050】
好ましくは、プロセスは、運転の第1のモードと運転の第2のモードとの間の合計蒸気量が30%以下だけ、および、より好ましくは、20%以下だけ異なるように制御される。
【0051】
蒸気の膨張から得られる機械および/または電気エネルギーは、以下の工程、すなわち、水電解からの、水素の生成、空気からの、窒素の生成、アンモニア合成圧力への、アンモニアの補給ガスの圧縮、アンモニア冷凍セクション内のアンモニアの圧縮、硝酸プロセスにおける、プロセス空気の圧縮、硝酸プロセスにおける、NOx含有ガスの圧縮の少なくとも1つの動力源とするためにプロセス内で、内部で使用され得る。
【0052】
機械および/または電気エネルギーを回収するために蒸気タービン内で膨張させられる蒸気流は中圧蒸気であり、好ましくは、上記蒸気の作動圧力は、20~100バール、より好ましくは25~60バールに含まれる。
【0053】
一実施形態では、アンモニアおよび硝酸の合成のための統合プラントは、硝酸プラントとアンモニアプラントとの間に、共通の蒸気ネットワークを備え得る。
【0054】
第1の運転モードと第2の運転モードとの間の相補的な切り替え運転は、統合プラントからの、蒸気のほぼ安定した生成をもたらす。というのは、アンモニアプラントから生成された蒸気が低い範囲内にある場合、硝酸プラントから生成される蒸気は高い範囲内にあり、および逆も同様であるからである。よって、統合プラントの効率は、再生可能エネルギー源の供給における変動中にも維持される。
【0055】
本発明はしたがって、蒸気統合の概念を、代替的なモード間の切り替え運転という洞察力と組み合わせて、再生可能動力の利用可能性における変動により、もたらされる欠点を解消し得る。
【0056】
アンモニアおよび硝酸プラントの運転負荷間の切り替えポリシーは、再生可能エネルギー源がたとえば、太陽エネルギーにより、供給されるシナリオを考慮すれば容易に理解され得る。通常、日中は太陽エネルギーの利用可能性が大きい一方、夜間では、利用可能性が低いか、全くなく、よって、再生可能動力の昼夜循環する利用可能性をもたらす。したがって、再生可能動力の利用可能性を最もうまく利用するために、アンモニア合成ループは、日中は、最大の、またはそれに近い容量で稼働させられる一方、夜間では、それは、低減させられた容量で稼働させられる。
【0057】
本発明のさらに好ましい特徴、および好ましい実施形態は以下の通りである。
【0058】
水素に加えて、酸素が、水電解工程から生成され、および硝酸生成プロセスにおいて行われる、アンモニアの触媒酸化のための酸化剤流として使用され得る。好ましくは、アンモニアおよび硝酸の合成のための統合プロセスは、硝酸溶液をストリッピング工程にかける工程と、水電解工程から得られた、酸素の一部分を上記ストリッピング工程に供給する工程とを包含する。好ましくは、ストリッピング工程は、漂白カラム内で行われる。
【0059】
本発明の実施形態によれば、酸素流が、窒素生成工程において空気から抽出され、および上記酸素の少なくとも一部分が、ストリッピング工程に、および/またはアンモニアの触媒酸化に供給される。アンモニアの触媒酸化は好ましくは、バーナ内で行われる。
【0060】
水電解から得られた酸素および/または窒素発生ユニットから得られた酸素が上記アンモニアバーナに供給されると、アンモニアの酸化に必要であり、およびバーナへ供給される空気の量は低減させられ得る。有利には、硝酸プラントの空気コンプレッサにより、必要な動力の量は低減させられ、および節約された圧縮動力は有利には、硝酸プラントからアンモニアプラントへ移出される場合があり、よって、アンモニアの生成は、より高い負荷に、安定化させられ得る。
【0061】
水電解から、および/または窒素発生ユニットから抽出された酸素が、硝酸プラントのストリッピングユニット(漂白剤カラム)に供給されると、漂白剤に加えられる二次空気の量は低減させられる場合があり、および節約された圧縮動力は有利には、硝酸プラントからアンモニアプラントへ移出されて、電気移入要件を最小にし得る。
【0062】
好ましくは、水電解工程から生成された酸素、および/または窒素生成工程から抽出された酸素は、アンモニア燃焼ガスの冷却工程に、および/または吸収工程に供給される。
【0063】
酸素が冷却工程に、または吸収工程に供給されると、冷却トレイン内の、または吸収剤内のNOx含有ガスの酸化が増進され、その結果、吸収カラムの運転条件が同等であれば、硝酸の生産性が増加させられる。あるいは、生成された硝酸が同等であれば、吸収工程は、より少ない圧縮動力が必要であるように、より低い圧力で行われ得る。
【0064】
以上の記述は、硝酸への、電気分解からの酸素の添加が有益であることを示している。統合プラントが、複数の最終生成物の1つとして硝酸アンモニウムを生成する場合、硝酸のために消費されるアンモニアの量よりも多くの、すなわち約2倍のアンモニアが生成されるというさらなる利点がある。その結果、水電解により、同時に生成される酸素の量はより多くなり、かつ硝酸生成に供給されると、NOへのアンモニアの酸化と、硝酸の生成のためのNO2へのNOのさらなる酸化に必要とされる酸化剤すべてをカバーするのにほぼ十分である。関連する一利点は、硝酸生成に添加されるのに必要な空気がより少ないことである。関連する別の利点は、上記複数の工程のいずれか1つまたはそれより多い数の工程において硝酸生成に添加されるのに利用可能な酸素が、より多いことである。
【0065】
統合プロセスは、テールガスからの窒素の回収、および補給ガスのアンモニアへの触媒変換への、上記窒素の供給の工程をさらに備え得る。有利には、特定の負荷でのアンモニアプラントの正味の動力消費量が低減させられる。
【0066】
本発明の一実施形態によれば、補給ガスの触媒変換から得られたアンモニアの一部分が、燃焼工程、およびそれに続く膨張工程にかけられ、統合アンモニア・硝酸プロセスにおいて使用されるべき機械および/または電気エネルギーを回収する。アンモニアのそうした燃焼から回収されたエネルギーは、再生可能エネルギー源の利用可能性が低い場合にアンモニアプラントへ機械および/または電気動力を供給するために使用され得る。有利には、電気グリッドからの、またはバックアップバッテリからの、電気の正味の移入は低減させられる。
【0067】
本発明は、水素の一部が、水電解を介して再生可能エネルギー源から生成される一方で、水素の一部が、化石燃料から、たとえば改質から生成されるハイブリッドプロセスにも適用可能である。
【0068】
本発明は、併設されたアンモニアおよび硝酸プラントを改修してアンモニアおよび硝酸の生成容量を増加させるためにも適用され得る。改修方法は、水素を合成するために、アンモニアプラント内の水電解装置の導入を包含し得る。追加された水電解装置は、水素の生成のための既存の改質セクションを置き換え、またはそれに並行して運転し得る。
【0069】
図1は、アンモニア2、硝酸3、および硝酸アンモニウム19の合成のための統合プラント1の単純化された概略ブロック図を示す。
【0070】
上記プラント1は、アンモニア合成セクション41、硝酸合成セクション32、および硝酸アンモニウム合成セクション18を備える。
【0071】
アンモニア合成セクション31は、水21からの、水素5の発生のための水電解装置6と、空気30からの、窒素7の抽出のための窒素発生ユニット8と、水素および窒素の作動圧力を合成条件に導くための複数の圧縮ユニット36、37および9と、アンモニア2を合成するためのアンモニア触媒コンバータ31とを含む。
【0072】
水電解装置6は、再生可能エネルギー源から得られる電気エネルギー110、および統合プラント1から回収される電気エネルギー15を動力源とする。後者の電気エネルギーは、発電機(ターボ膨張機)に接続された蒸気タービン14内で蒸気流16を膨張させることにより、統合プラントから回収される。追加的な電気エネルギー入力が、外部電源から水電解装置へ供給されてもよい。
【0073】
アンモニア合成セクション41は、運転の第1のモード中に水素5およびアンモニア2を蓄積するように構成された水素貯蔵ユニット34およびアンモニア貯蔵ユニット50をさらに含む。圧縮ユニット20は、アンモニア触媒コンバータ31と、またアンモニア貯蔵ユニット50と連通している。
【0074】
硝酸合成セクション32は、NH3を触媒酸化して、NO2含有ガスを得るためのバーナー(図示せず)と、NO2ガスの温度を吸収条件に導くための冷却トレイン(熱交換器セクション)と、水をNO2と反応させて、硝酸3と、N2O、残留NOx、酸素、およびN2を含むテールガスとを生成するための洗浄カラム(図示せず)とを含んでいる。
【0075】
統合プラント1は、アンモニア触媒コンバータ31からの第1の蒸気12、および硝酸合成セクション32からの第2の蒸気11を回収するように設計された蒸気ネットワーク100をさらに備える。蒸気ネットワーク100は、機械エネルギーを電気エネルギーに変換するための発電機に接続された蒸気タービン14と流体連通しており、蒸気タービン14は、窒素発生ユニット8へ、圧縮ユニット36、37、9および20へ、ならびに水電解装置6へ電気エネルギー15を供給するとみなされる配電グリッド35と連通している。
【0076】
ある実施形態では、1つまたは複数のコンプレッサは、蒸気タービンに直接、結合され得る。
【0077】
水21は、水電解装置6内で水素5および酸素(図示せず)に変換され、水電解装置6から抽出された、水素の第1の部分60が、コンプレッサ36を通過させられ、そして水素貯蔵ユニット34へ供給される。
【0078】
水電解装置から抽出された、水素の第2の部分101は、水素貯蔵ユニット34を出る、水素の第1の部分102と、および窒素流103と混合されて、補給ガス4が得られる。
【0079】
窒素7、および任意には酸素25が、N2発生装置8において空気30から抽出される。窒素7はコンプレッサ37へ供給され、その後、水素流101および102と混合されて、補給ガス4が得られる。
【0080】
補給ガス4は合成ガスコンプレッサ9へ供給されて、変換の準備ができている補給ガス10が得られ、それはその後、アンモニアコンバータ31へ供給されて、アンモニア2が得られる。第1の蒸気12が、アンモニアコンバータ32から回収される。
【0081】
アンモニア2はNH3供給ポンプ20へ供給され、その後、アンモニア貯蔵ユニット50内に貯蔵される。アンモニア104の第1の部分が硝酸合成セクション32へ供給されて硝酸3が得られる一方、アンモニアの第2の部分17は、硝酸3とともに硝酸アンモニウム合成セクション18へ供給される。硝酸アンモニウム合成セクション18の出力は硝酸アンモニウム流19である。
【0082】
第2の蒸気11は、アンモニアバーナからの、および冷却トレイン(熱交換器セクション)からの蒸気を回収するように構成された蒸気回収セクション(図示せず)内の硝酸合成セクション32から回収される。第1の蒸気11が第2の蒸気12と混合されて蒸気流16が得られ、それはその後、蒸気タービン14へ供給されて、電気エネルギーおよび/または機械エネルギー15を発生する。
【0083】
電気エネルギー15は、配電グリッド35を介して水電解装置6へ、窒素発生ユニット8へ、ならびに、圧縮ユニット36、37、9および20へ伝達される。
【0084】
図2~4は、図1の概略図の変形を示す。該変形は、本発明のさらなる実施形態と組み合わせられる場合もある。
【0085】
図2は、水電解装置6から抽出された酸素22が部分的に、ライン23を介してアンモニアコンバータへ、およびライン24を介して硝酸合成セクションへ供給される実施形態を示す。
【0086】
図3は、窒素発生装置8から抽出された酸素25が硝酸合成セクション32へ供給される実施形態を示す。
【0087】
図4は、硝酸合成セクション32から抽出された窒素27がアンモニアコンバータ31へリサイクルされる実施形態を示す。窒素は、吸収カラムを出るテールガスから回収される。
【0088】
プラント1の出力が主に、入力動力110に依存することが理解され得る。図5および図6は、上記動力110の利用可能性に基づいて、本発明の実施形態により、プラント1を制御する例を記載している。
【0089】
図5は、太陽エネルギー源、たとえば光起電力(PV)電場、により供給される場合の上記動力入力110の利用可能性を示す。図5は、上記エネルギー源が利用可能な第1の期間D(昼間)、および上記エネルギー源が利用可能でない第2の期間N(夜間)を含む、一般的な日次サイクルを示す。
【0090】
図6は、プラント1の対応する運転を示す。変動負荷ポリシーによれば、アンモニアセクションの負荷は再生可能エネルギー発電量に比例し、昼間の期間Dはフル容量(>70%)に、および夜間の期間Nは最小負荷(<50%)に達する。硝酸セクションは、昼間は約70%の負荷で、および夜間は約100%で稼働させられる。
【0091】
明らかに、図6に示される上記ポリシーは、図5のものと同様の出力プロファイルを有する他のエネルギー源にも適用され得る。
【0092】
図7は、動力110の源が、たとえば動力110が風力タービン由来の場合にみられ得る、急激な変動を伴うより複雑なプロファイルを有する場合の別の例を示す。本発明のポリシーによれば、アンモニアプラントの負荷が高いのは、利用可能な動力も高い場合であり、および、利用可能な動力が低いか、または最小の場合にはアンモニアプラントの負荷は低減される。硝酸プラントの負荷は、アンモニアプラントの負荷に対して相補的である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】