(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】抗CD38抗体、抗CD3抗体、及び二重特異性抗体、並びにその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 16/28 20060101AFI20240725BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240725BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240725BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240725BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240725BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240725BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240725BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20240725BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240725BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240725BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240725BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/13
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
C12P21/08
A61P35/00
A61K47/68
A61K39/395 N
A61K39/395 T
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506163
(86)(22)【出願日】2022-08-02
(85)【翻訳文提出日】2024-03-27
(86)【国際出願番号】 US2022074409
(87)【国際公開番号】W WO2023015170
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524039997
【氏名又は名称】ハンチョウ ウノゲン バイオテック,リミテイド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】マーク チウ
(72)【発明者】
【氏名】マン-チョン フン
(72)【発明者】
【氏名】マーク トルネッタ
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン ウィテカー
(72)【発明者】
【氏名】プー プー
(72)【発明者】
【氏名】チン イン
(72)【発明者】
【氏名】ペン チェン
(72)【発明者】
【氏名】ケネス チェン クォン
(72)【発明者】
【氏名】ユイ アオ
(72)【発明者】
【氏名】グレン マーク アンダーソン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C076
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG26
4B064AG27
4B064BJ12
4B064CA02
4B064CA05
4B064CA08
4B064CA09
4B064CA10
4B064CA11
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA13
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA83X
4B065AA86X
4B065AA87X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA46
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB11
4C085EE01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA40
4H045BA50
4H045BA72
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045EA50
(57)【要約】
本開示は、抗CD3及び抗CD38抗体又はその抗原結合断片に関する。本開示はまた、CD3とCD38の両方を標的化する二重特異性抗体にも関する。治療指数を高めるために、二重特異性抗体は、全身毒性を最小限にするためにマスキングドメインを含有し得る。シールド二重特異性抗体の脱マスキングは、腫瘍内微小環境又は疾患組織においてプロテアーゼや酵素によって主に起こる。本開示はまた、抗体のヒンジ領域に連結させたヒトVHO単一ドメイン分子を用いた独特な設計も提供し、そしてそれは、従来の抗体より良好な組織透過性を可能にし得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の:
HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域、ここで、該HCDR1、HCDR2、及びHCDR3が、それぞれ、以下の:配列番号64、65、及び66;配列番号64、83、及び84;配列番号64、65、及び85;及び配列番号64、65、及び86、から選択される、並びに
LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域、ここで、該LCDR1、LCDR2、及びLCDR3が、それぞれ、以下の:配列番号61、62、及び63;配列番号76、77、及び78;配列番号79、80、及び81;及び配列番号82、62、及び78、から選択される、
を含む、抗CD38抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
配列番号12~16のうちのいずれか1つに対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列又はその抗原結合断片を含む重鎖配列、及び配列番号7~11のうちのいずれか1つに対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列又はその抗原結合断片を含む軽鎖配列、を含む、請求項1に記載の抗CD38抗体又は抗原結合断片。
【請求項3】
それぞれ、以下の:配列番号2と3;配列番号7と12;配列番号7と13;配列番号7と14;配列番号7と15;配列番号7と16;配列番号8と12;配列番号8と13;配列番号8と14;配列番号8と15;配列番号8と16;配列番号9と12;配列番号9と13;配列番号9と14;配列番号9と15;配列番号9と16;配列番号10と12;配列番号10と13;配列番号10と14;配列番号10と15;配列番号10と16;配列番号11と12;配列番号11と13;配列番号11と14;配列番号11と15;又は配列番号11と16、を含む軽鎖配列及び重鎖配列を含む、抗CD38抗体又はその抗原結合断片。
【請求項4】
少なくとも1つの可変重鎖のみの単一ドメイン又はその抗原結合断片を含み、ここで、該少なくとも1つの可変重鎖のみの単一ドメインが、それぞれ、以下の:配列番号67、68、及び69;配列番号67、87、及び69;配列番号67、88、及び69;配列番号67、89、及び69;配列番号67、68、及び90;配列番号70、91、及び72;配列番号70、92、及び72;配列番号70、93、及び72;配列番号94、95、及び96;配列番号70、71、及び97;配列番号73、98、及び75;配列番号73、99、及び75;配列番号73、100、及び75;配列番号73、101、及び102;並びに配列番号73、103、及び104、から選択されるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む、抗CD38抗体又はその抗原結合断片。
【請求項5】
少なくとも1つの可変重鎖のみの単一ドメイン又はその抗原結合断片を含み、ここで、該少なくとも1つの可変重鎖のみの単一ドメインが、配列番号4及び17~30のうちのいずれか1つに対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列又はその抗原結合断片を含む、請求項4に記載の抗CD38抗体又は抗原結合断片。
【請求項6】
以下の:
HCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む重鎖可変領域、ここで、該HCDR1、HCDR2、及びHCDR3が、それぞれ、以下の:配列番号105、108、及び107;配列番号105、109、及び107;配列番号105、110、及び107;並びに配列番号118、119、及び120、から選択される、及び
LCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む軽鎖可変領域、ここで、該LCDR1、LCDR2、及びLCDR3が、それぞれ、以下の:配列番号114、112、及び113;並びに配列番号115、116、及び117、から選択される、
を含む、抗CD3抗体又はその抗原結合断片。
【請求項7】
配列番号32~34及び39のうちのいずれか1つに対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列又はその抗原結合断片を含む重鎖配列、及び配列番号36~38のうちのいずれか1つに対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列又はその抗原結合断片を含む軽鎖配列、を含む、請求項6に記載の抗CD3抗体又は抗原結合断片。
【請求項8】
それぞれ、以下の:配列番号39と38;配列番号41と40;配列番号31と35;配列番号31と36;配列番号31と37;配列番号32と35;配列番号32と36;配列番号32と37;配列番号33と35;配列番号33と36;配列番号33と37;配列番号34と35;配列番号34と36;又は配列番号34と37、を含む軽鎖配列及び重鎖配列を含む、抗CD3抗体又はその抗原結合断片。
【請求項9】
以下の:
(1) 第一の結合アームであって、以下の:
N末端からC末端に向かって、任意選択のシールドA、任意選択のプロテアーゼ配列A、及びIgG重鎖又はその抗原結合断片を含む、第一の重鎖融合タンパク質、及び
N末端からC末端に向かって、任意選択のシールドB、任意選択のプロテアーゼ配列B、及びIgG軽鎖又はその抗原結合断片を含む、第一の軽鎖融合タンパク質、
を含むもの、
ここで、
該第一の結合アームのIgG重鎖又はその抗原結合断片が、それぞれ、以下の:配列番号105、108、及び107;配列番号105、109、及び107;配列番号105、110、及び107;並びに配列番号118、119、及び120から選択されるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、及び
該第一の結合アームのIgG軽鎖又はその抗原結合断片が、それぞれ、以下の:配列番号114、112、及び113;並びに配列番号115、116、及び117から選択されるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む;並びに
(2) 第二の結合アームであって、以下の:
N末端からC末端に向かって、任意選択のシールドC、任意選択のプロテアーゼ配列C、及びIgG重鎖又はその抗原結合断片を含む、第二の重鎖融合タンパク質;及び
N末端からC末端に向かって、任意選択のシールドD、任意選択のプロテアーゼ配列D、及びIgG軽鎖又はその抗原結合断片を含む、第二の軽鎖融合タンパク質、
を含むもの、
ここで、
該第二の結合アームのIgG重鎖又はその抗原結合断片が、それぞれ、以下の:配列番号64、65、及び66;配列番号64、83、及び84;配列番号64、65、及び85;並びに配列番号64、65、及び86から選択されるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、及び
該第二の結合アームのIgG軽鎖又はその抗原結合断片が、それぞれ、以下の:
。配列番号61、62、及び63;配列番号76、77、及び78;配列番号79、80、及び81;並びに配列番号82、62、及び78から選択されるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む、
を含み;そして、ここで、
該シールドA~Dが、互いに同じであるか又は異なり、かつ、プロテアーゼ配列A~Dが、互いに同じであるか又は異なる、抗CD3及び抗CD38二重特異性抗体。
【請求項10】
前記第一の結合アームのIgG重鎖又はその抗原結合断片が、配列番号32~34及び39のうちのいずれか1つに対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列又はその抗原結合断片を含み、かつ、
前記第一の結合アームのIgG軽鎖又はその抗原結合断片が、配列番号36~38のうちのいずれか1つに対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列又はその抗原結合断片を含む軽鎖配列を含み;並びに
前記第二の結合アームのIgG重鎖又はその抗原結合断片が、配列番号12~16のうちのいずれか1つに対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列又はその抗原結合断片を含む重鎖配列を含み、かつ、
前記第二の結合アームのIgG軽鎖又はその抗原結合断片が、配列番号7~11のうちのいずれか1つに対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列又はその抗原結合断片を含む軽鎖配列を含む、請求項9に記載の抗CD3及び抗CD38二重特異性抗体。
【請求項11】
以下の:
(1) 第一の結合アームであって、以下の:
N末端からC末端に向かって、任意選択のシールドA、任意選択のプロテアーゼ配列A、及びIgG重鎖又はその抗原結合断片を含む、第一の重鎖融合タンパク質、及び
N末端からC末端に向かって、任意選択のシールドB、任意選択のプロテアーゼ配列B、及びIgG軽鎖又はその抗原結合断片を含む、第一の軽鎖融合タンパク質、
を含むもの、
ここで、
該第一の結合アームのIgG重鎖又はその抗原結合断片が、それぞれ、以下の:配列番号105、108、及び107;配列番号105、109、及び107;配列番号105、110、及び107;並びに配列番号118、119、及び120から選択されるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含み、及び
該第一の結合アームのIgG軽鎖又はその抗原結合断片が、それぞれ、以下の:配列番号114、112、及び113;並びに配列番号115、116、及び117から選択されるLCDR1、LCDR2、及びLCDR3を含む;並びに
(2) 第二の結合アームであって、以下の:
N末端からC末端に向かって、任意選択のシールドC、任意選択のプロテアーゼ配列C、及び(少なくとも1つの可変重鎖のみの単一ドメイン又はその抗原結合断片を含む)IgG重鎖を含む、第二の重鎖融合タンパク質、
を含むもの、
ここで、該少なくとも1つの可変重鎖のみの単一ドメイン又はその抗原結合断片は、それぞれ、以下の:配列番号67、68、及び69;配列番号67、87、及び69;配列番号67、88、及び69;配列番号67、89、及び69;配列番号67、68、及び90;配列番号70、91、及び72;配列番号70、92、及び72;配列番号70、93、及び72;配列番号94、95、及び96;配列番号70、71、及び97;配列番号73、98、及び75;配列番号73、99、及び75;配列番号73、100、及び75;配列番号73、101、及び102;並びに配列番号73、103、及び104から選択されるHCDR1、HCDR2、又はHCDR3を含み;そして、ここで、
該シールドA~Cが、互いに同じであるか又は異なり、かつ、プロテアーゼ配列A~Cが、互いに同じであるか又は異なる、抗CD3及び抗CD38二重特異性抗体
【請求項12】
前記第一の結合アームのIgG重鎖又はその抗原結合断片が、配列番号32~34及び39のうちのいずれか1つに対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列又はその抗原結合断片を含み、
前記その第一の結合アームのIgG軽鎖又はその抗原結合断片が、配列番号36~38のうちのいずれか1つに対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列又はその抗原結合断片を含む軽鎖配列を含み;そして、ここで、
前記少なくとも1つの可変重鎖のみの単一ドメイン又はその抗原結合断片が、配列番号4及び17~30のうちのいずれか1つに対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列又はその抗原結合断片を含む、請求項11に記載の抗CD3及び抗CD38二重特異性抗体。
【請求項13】
前記第一の結合アームが1価であり、かつ、第二の結合アームが、1価、2価、又は多価性である、請求項11~12のいずれか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項14】
前記第二の結合アームが、タンデムで、2又は3つのIgG可変重鎖のみの単一ドメインを含み、ここで、該2又は3つのIgG可変重鎖のみの単一ドメインが、任意選択で、1若しくは複数のリンカー配列を介して接続される、請求項11~13のいずれか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項15】
前記シールドA、シールドB、シールドC、及びシールドDが、それぞれ独立して、配列番号42~52に規定されるアミノ酸配列から選択される、請求項9~14のいずれか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項16】
前記プロテアーゼ配列A、プロテアーゼ配列B、プロテアーゼ配列C、及びプロテアーゼ配列Dが、それぞれ独立して、配列番号53~60に規定されるアミノ酸配列から選択される、請求項9~15のいずれか一項に記載の二重特異性抗体。
【請求項17】
CD3標的化結合アームを含む二重特異性抗体であって、ここで、該CD3標的化結合アームが、それぞれ、以下の:配列番号39と38;配列番号41と40;配列番号31と35;配列番号31と36;配列番号31と37;配列番号32と35;配列番号32と36;配列番号32と37;配列番号33と35;配列番号33と36;配列番号33と37;配列番号34と35;配列番号34と36;又は配列番号34と37、を含む重鎖配列と軽鎖配列を含む、前記二重特異性抗体。
【請求項18】
CD38標的化結合アームを更に含み、ここで、該CD38標的化結合アームが、それぞれ、以下の:配列番号2と3;配列番号7と12;配列番号7と13;配列番号7と14;配列番号7と15;配列番号7と16;配列番号8と12;配列番号8と13;配列番号8と14;配列番号8と15;配列番号8と16;配列番号9と12;配列番号9と13;配列番号9と14;配列番号9と15;配列番号9と16;配列番号10と12;配列番号10と13;配列番号10と14;配列番号10と15;配列番号10と16;配列番号11と12;配列番号11と13;配列番号11と14;配列番号11と15;又は配列番号11と16、を含む重鎖配列と軽鎖配列を含む、請求項17に記載の二重特異性抗体。
【請求項19】
CD38標的化結合アームを更に含み、ここで、該CD38標的化結合アームが、N末端からC末端に向かって、任意選択でリンカーを介して接続された配列番号4と配列番号5、任意選択でリンカーを介して接続された配列番号4と配列番号6、任意選択でリンカーを介して接続された配列番号5と配列番号6、任意選択でリンカーを介して接続された配列番号5と配列番号4、任意選択でリンカーを介して接続された配列番号6と配列番号5、又は任意選択でリンカーを介して接続された配列番号6と配列番号4を含む、2つの可変重鎖のみの単一ドメインを含む、請求項17に記載の二重特異性抗体。
【請求項20】
細胞毒性剤に結合させた、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗CD38抗体又は抗原結合断片、請求項6~8のいずれか一項に記載の抗CD3抗体又は抗原結合断片、或いは請求項9~19のいずれか一項に記載の二重特異性抗体、を含むコンジュゲート。
【請求項21】
請求項1~5のいずれか一項に記載の抗CD38抗体又は抗原結合断片、請求項6~8のいずれか一項に記載の抗CD3抗体又は抗原結合断片、或いは請求項9~19のいずれか一項に記載の二重特異性抗体、或いは請求項20に記載のコンジュゲート、及び医薬として許容される担体、を含む医薬組成物。
【請求項22】
請求項1~5のいずれか一項に記載の抗CD38抗体又は抗原結合断片、請求項6~8のいずれか一項に記載の抗CD3抗体又は抗原結合断片、或いは請求項9~19のいずれか一項に記載の二重特異性抗体、をコードする核酸。
【請求項23】
請求項22に記載の核酸を含む宿主細胞
【請求項24】
請求項1~5のいずれか一項に記載の抗CD38抗体又は抗原結合断片、請求項6~8のいずれか一項に記載の抗CD3抗体又は抗原結合断片、或いは請求項9~19のいずれか一項に記載の二重特異性抗体を調製する方法であって、以下の:請求項23に記載の宿主細胞を培養し、宿主細胞培養で宿主細胞を増殖させ、請求項22に記載の核酸が発現される宿主細胞培養条件を提供し、そして、宿主細胞又は宿主細胞培養から抗体又は二重特異性抗体を回収することを含む、前記方法。
【請求項25】
治療又は予防を必要としている対象のCD38介在性疾患又は障害を治療又は予防する方法であって、該対象に医薬として有効量の請求項1~5のいずれか一項に記載の抗CD38抗体又は抗原結合断片、請求項6~8のいずれか一項に記載の抗CD3抗体又は抗原結合断片、請求項9~19のいずれか一項に記載の二重特異性抗体、請求項20に記載のコンジュゲート、或いは請求項21に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項26】
前記CD38介在性疾患又は障害が、胃体癌、結腸直腸癌、膵臓癌、前立腺癌、肺癌、肝細胞性癌、トリプルネガティブ乳癌、上咽頭癌、子宮頚癌、及び血液悪性腫瘍から選択される、請求項25に記載のCD38介在性疾患又は障害を治療又は予防する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年8月2日に出願された米国特許仮出願第63/228,195号の優先権を主張するものであり、その内容全体を参照により本明細書に援用する。
配列表
【0002】
本出願は配列表全体を含んでおり、そしてそれは、ST.26フォーマットで電子的に提出したものであって、かつ、その全体を参照により本明細書に援用する。
本開示の分野
【0003】
本開示は、バイオ医薬品、特に、CD3とCD38に対して向けられた抗体及び二重特異性抗体、斯かる抗体をコードする核酸、斯かる抗体を調製する方法、並びに癌の治療のための方法に関する。
【背景技術】
【0004】
本開示の背景
抗体ベースの治療薬は、多くの癌を含めた様々な疾患を治療するのに成功している。しかし、このクラスの薬物に対する改善が、特に、それらの臨床的有効性や安全性を高めることに関して、まだ必要である。検証されている手段の一つは、単一の免疫グロブリン分子が2つの異なる抗原を共結合するような、抗体ベースの薬物への追加の、かつ、新規な抗原結合部位の遺伝子操作である。
【0005】
環状ADPリボース加水分解酵素としても知られている、CD38は、長いC末端細胞外ドメインと短いN末端細胞質領域を有するII型膜貫通糖タンパク質である(Guedes, Dileepan et al. 2020, Kar, Mehrotra et al. 2020)。CD38は、CD4+、CD8+、Bリンパ球、及びナチュラルキラー細胞を含めた多くの免疫細胞の表面で見られる糖タンパク質である(Orciani, Trubiani et al. 2008, van de Donk and Usmani 2018)。単なる細胞型のマーカーではないが、CD38はB細胞やT細胞の活性化因子である。CD38は、
図1に示されている細胞接着やシグナル伝達の細胞外酵素活性や受容体媒介調節を含めた複数の機能を有する(Malavasi, Funaro et al. 1994, Mehta, Shahid et al. 1996, Deaglio, Mehta et al. 2001)。CD38はまた、2つの新規カルシウムメッセンジャー分子の代謝に関与するシグナル伝達酵素でもある:CD38の酵素活性は、カルシウム放出第二メッセンジャーである環状ADPリボース(cADPR)とニコチン酸アデニンジヌクレオチドホスファート(NAADP)の合成を媒介する(Quarona, Zaccarello et al. 2013)。造血細胞の中で、CD38は、リンパ球増殖、サイトカイン放出、B及び骨髄細胞の発生及び生存の調節、並びに樹枝状細胞成熟の誘導を含めたシグナル伝達を媒介できる。
【0006】
受容体として、CD38はT細胞の表面のCD31に付着して、その結果、それらの細胞を活性化して、様々なサイトカインを産生させる(Nooka, Kaufman et al. 2019)。PECAM1(血小板内皮細胞接着分子-1)としても知られている、CD31は、循環血小板、好中球、単球、及び未感作Bリンパ球の表面で発現される免疫グロブリンスーパーファミリーの130kDaメンバーである。機能上、CD31は接着分子として機能すると考えられる。例えば、内皮細胞CD38は、それらの細胞が内皮細胞に付着するためにナチュラルキラー細胞上のCD31に結合する(Glaria and Valledor 2020, Zambello, Barila et al. 2020)。白血球上のCD38は、内皮細胞上のCD31に付着することができて、白血球が血管壁に結合し、そして、血管壁を通り抜ける白血球の移動することを可能にする(Quarona, Zaccarello et al. 2013)。CD31とCD38の斯かる相互作用は、白血病細胞の生存を促進する際に作用し得る。
【0007】
細胞表面抗原として、CD38は、多発性骨髄腫(MM)を含めたいくつかの血液悪性腫瘍で高度に発現され、
図2に示されている特定の疾患の免疫療法のための良好な標的であることが立証された(Quarona, Zaccarello et al. 2013)。CD38は、非ホジキンリンパ腫(NHL)、バーキットリンパ腫(BL)、多発性骨髄腫(MM)、B細胞慢性リンパ球性白血病(B-CLL)、B及びT細胞急性リンパ球性白血病(ALL)、T細胞リンパ腫(TCL)、急性骨髄性白血病(AML)、有毛細胞性白血病(HCL)、ホジキンリンパ腫(HL)、及び慢性骨髄性白血病(CML)を含めた様々な造血器悪性腫瘍由来の多くの細胞株で上方制御される。造血系のほとんどの原始的多分化能性幹細胞もまた、CD38+である。
【0008】
CD38の高い発現は、慢性リンパ球性白血病(CLL)の診断マーカーであり、増強された疾病進行に関連している(Burgler 2015, Burgler, Gimeno et al. 2015)。CD38は、急性骨髄性白血病(Zeijlemaker, Grob et al. 2019)、慢性リンパ球性白血病(Damle, Wasil et al. 1999, Malavasi, Deaglio et al. 2011)、前立腺癌(Liu, Grogan et al. 2016, Stone 2017)、膵臓癌(Zhang, Yang et al. 2019)、急性B細胞リンパ芽球性白血病(Jiang, Wu et al. 2016)、肺癌(Xu, Chen et al. 2015)、肝細胞性癌(Lam, Ng et al. 2019)、及びトリプルネガティブ乳癌(Yeong, Lim et al. 2018)に関する予後因子である。CD38はまた、結腸直腸癌(CRC)において不均一に発現されるが(Perenkov, Novikov et al. 2012)、腫瘍局在性、腫瘍グレード、又は転移の存在に依存しない。CD38はまた、ヒト上咽頭癌細胞株の付随集団細胞の推定上の機能性マーカーでもあり(Zheng, Liao et al. 2016)、エネルギー代謝に影響することによって上咽頭癌細胞における発癌性の役割を担い得る(Ge, Long et al. 2019)。
【0009】
CD38発現は、悪性リンパ腺癌において高度、かつ、一定であり、そして、正常リンパ球様、及び骨髄性細胞、並びに非造血組織において低かったので、いくつかの生物製剤治療法が開発された(Morandi, Airoldi et al. 2019)。慢性リンパ球性白血病では、CD38発現は高く、そして、単独療法又は併用療法におけるダラツムマブの使用に対する前臨床研究は、かなりの有効性を実証した。CD38標的化は、多発性骨髄腫(MM)及び慢性リンパ球性白血病(CLL)を治療するのに使用されている。ダラツムマブなどのCD38を標的化するモノクローナル抗体は、単独で(Usmani, Weiss et al. 2016)及び他の標準的治療の投薬計画と組み合わせて(Dimopoulos, Oriol et al. 2016, Palumbo, Chanan-Khan et al. 2016)、MMにおいて良好な治療効率を示した。斯かる治療的アプローチは、MM患者の5~10年生存率を更に延長した。
【0010】
しかしながら、多くの患者が、腫瘍細胞のCD38の結晶性断片γ受容体(FcγR)依存性の下方制御、並びに
図4に示されている補体依存性細胞毒性、抗体依存性細胞媒介性細胞毒性、及び抗体依存性細胞食作用の阻害、を含めた耐性機構のために、最終的に再発する(van de Donk and Usmani 2018)。よって、新規治療的アプローチが緊急に必要である。
【0011】
同様に、他のリンパ増殖性障害では、発臨床及び臨床データは、説得力のあるものではなかった。これらの場合では、CD38過剰発現は、チェックポイント阻害剤に対する抵抗性に寄与できるので、CD38のブロッキングがチェックポイント阻害剤の有効性を高めるかどうか調査するために、ホジキン及び非ホジキンリンパ腫の多数の臨床試験を促した。低酸素性腫瘍内微小環境では、NAD+は、サルベージ経路によって放出され、そして、CD38によって加水分解されて、ADPリボースを形成する。これはCD38-CD203a-CD73経路を経てAMPに更に分解される。これに続いて、CD73は、AMPをアデノシンに脱リン酸する。次に、蓄積した細胞外アデノシンは、様々な免疫細胞上の受容体に結合し、それらの浸潤及び活性化を妨害する。この経路は、PD-1/PD-L1経路に対する代替の免疫抑制機構を形成し、そして、アデノシン経路の阻害は、腫瘍内微小環境において免疫抑制を軽減することが示された(Ma, Deng et al. 2017, Boison and Yegutkin 2019)。
【0012】
CD38-NAD+シグナル伝達経路は、抑制的な腫瘍内微小環境の形成に関連する役割を有し、そして、MDSC、Treg、Breg、及びNK細胞の特定のサブタイプなどの抑制細胞型の活性を促進すると考えられる。更に、それはPD-1/PD-L1チェックポイント阻害剤に対する抵抗性の重要なドライバーである。そのため、CD38細胞傷害性抗体は、直接的な腫瘍における活性、並びに間接的な免疫調整抗腫瘍性効果を示し得る。それらは、かなりの有効性及び管理可能な毒性プロフィールを伴って、CD38陽性腫瘍、具体的には、MMを治療するのに使用された。実質的な発症前徴候は、単独療法としても、及びBTK阻害剤などの特定の剤との併用療法としても、CLLと同様に、その利用を支持する。これに反して、他のリンパ性悪性疾患は、様々なタイプのNHLにおける単剤ダラツムマブの低い活性の徴候により、抗CD38抗体に対する低い感受性であると思われた。ダラツムマブと、イサツキシマブなどの新たに開発された抗CD38抗体は、細胞傷害反応を増強するために標準的な投薬計画と、又は耐性獲得を克服するためにチェックポイント阻害剤と、組み合わせた適用が見出され得る。更に、抗CD38抗体は、T細胞性悪性リンパ腫においてまだ調査されていない(Calabretta and Carlo-Stella 2020)。よって、より良好な有効性及び安全性プロファイルを有する斯かる適応症に使用できる、より強力、かつ、選択性が高いCD38治療薬を手に入れる必要がある。
【0013】
前立腺癌では、CD38は、細胞NAD+プールを低減することによって、腫瘍代謝及び増殖を阻害する(Chmielewski, Bowlby et al. 2018)。CD38は、頚部癌細胞において高度に発現されており、増殖を促進し、そして、ミトコンドリア機能に影響することによって、頚部癌細胞のアポトーシスを阻害する(Liao, Xiao et al. 2014)。CD38の高発現は、食道扁平上皮癌患者における予後を予測した(Liao, Xiao et al. 2017)。CD38発現又は不存在は、肺癌に関する予後的価値を示した(Karimi-Busheri, Zadorozhny et al. 2011)。CD38ノックアウトは、マウスにおける腫瘍形成及びヒト肺癌細胞の分裂増殖を抑える(Bu, Kato et al. 2018)。よって、抗CD38治療が肺癌において治療的有効性を有し得ると結論づけられた(Bu, Kato et al. 2018)。
【0014】
更に、白血病、骨髄腫、及び固形腫瘍の細胞活性化のマーカーである、CD38は、HIV感染、II型糖尿病、骨代謝、及びいくつかの遺伝的に決定される状態に関係した(Marlein, Piddock et al. 2019)。CD38過剰発現は、動物モデルのHIV感染におけるCD4T細胞減少を容易にすることを示した(Rodriguez-Alba et al 2019)。CD38の増強された触媒能は、CD4T細胞の細胞質ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)を減少させ、そして、慢性「ワールブルク効果」を生じさせ得る。次に、これは、ミトコンドリア機能を減少させるであろう。その間、CD38の主要な触媒作用の産物であるADPRとcADPRは、それらがカルシウムチャンネルを活性化し、細胞質Ca2+濃度を増強する、細胞質に担持され、そして、更にミトコンドリアの完全性を変更し得る。これらの機構は、CD4T細胞の生存率と再生能を低減させるであろう。よって、CD38活性のシャットダウンは、CD4T細胞活性を改善できる。
【0015】
全体的に見て、代替手段として、CD38の異なる非オーバーラップエピトープを認識する2つの抗体(Ab)の組み合わせは、強力な補体依存性細胞傷害(CDC)を媒介でき、弱いCDC能力しか有していないAb単独療法とは対照的である(Schutze, Petry et al. 2018)。同様に、非オーバーラップエピトープを認識するこれらのAbのうちの1つとダラツムマブの組み合わせは、劇的に高められたCDCをもたらした。更に、CH3ドメインにE345R HexaBody突然変異を導入することは、CD38発現細胞に対するこれらのAbのCDC効力を強力に促進した。
【0016】
より強い患者応答を達成するために、T細胞の再指向された殺滅は、多くの治療領域における作用の望ましい様式である。様々な二重特異性抗体形式が、前臨床及び臨床調査の両方において、T細胞の再指向を媒介することが示されている(May, Sapra et al. 2012, Frankel and Baeuerle 2013)。これらとしては、報告されたFcベースの二重特異性抗体形式に関するほんのわずかな例しかない、scFv断片のタンデムと、ダイアボディベースの形式が挙げられる(Moore, Bautista et al. 2011, May, Sapra et al. 2012, Frankel and Baeuerle 2013)。ヒトFc領域を包含する二重特異性形式は、より長い循環半減期を有し、そしてそれは、増強された効果、及び/又は用量レジメンの頻度削減をもたらし得る。可能なFcベースの二重特異性形式の中で、T細胞殺滅を再指向するのに好ましい形式の一つが、いわゆる、重鎖ヘテロ二量体形式である。この形式は、それがT細胞表面における複数のコピーのヒトCD3分子の凝集を認めない場合に、特に興味深いものであり、その結果、あらゆるT細胞不活性を妨げる(Klein, Sustmann et al. 2012)。
【0017】
二重特異性T細胞誘導(BiTE)抗体は、一方では、標的細胞の表面の特異的抗原(すなわち、腫瘍抗原)を認識し、かつ、その一方で、Tリンパ球上のCD3ε鎖を認識する、新しいクラスの免疫治療剤に属する(Fumey, Koenigsdorf et al. 2017)。CD3複合体によるT細胞の活性化と、標的細胞への近接するそれらの動員によって、BiTE抗体は、効率的にT細胞媒介性細胞毒性を誘発する(Brischwein, Schlereth et al. 2006)。MMでは、B細胞成熟化抗原又はFcRH5(CD307)を認識する二重特異性抗体が、前臨床モデルにおいて腫瘍形質細胞を排除することが示された(Hipp, Tai et al. 2017, Li, Stagg et al. 2017, Seckinger, Delgado et al. 2017)。しかしながら、FcRH5発現は腫瘍形質細胞に限られ、そして、B細胞成熟化抗原はMM患者で豊富に分泌される(Sanchez, Li et al. 2012)。CD38×CD3二重特異性BiTE(Bi38-3)は、ヒトCD38及びCD3eを標的化した、マウスハイブリドーマ細胞由来の2種類の一本鎖可変断片から成る臨床実験において試験されている(Fayon, Martinez-Cingolani et al. 2021)。
【0018】
MM及び固形癌に関して2種類の他のCD38×CD3 BsAb、すなわち、AMG424及びGBR1342が存在する(Jiao, Yi et al. 2020)。現在、それらは共に、FcγR受容体及び補体結合を欠くヘテロFcドメインを有するFab Fc(G1)×scFv-Fc(G1)の構造に基づいている(Drent, Groen et al. 2016)。改変Fcドメインは、古典的なFc依存性免疫エフェクター機構の欠損をもたらす。抗原非依存型サイトカイン放出症候群(CRS)は、(T細胞の非特異的な活性化を引き起こし得る)BsAbのFc領域がT細胞上のFcγRに結合した場合に起こるであろう(Chatenoud、Ferranら1990)。これらの2つの特徴が、インビボにおけるこれらの同族二重特異性抗体の特異性又は効率を制限し得る。
【0019】
的外れな毒性を予防するために、T細胞トラフィッキングと抗腫瘍効力を改善するために、Fcドメイン変異が、二重特異性T細胞エンゲージャーに加えられた(Wang, Hoseini et al. 2019)。最近、抗CD38二重特異性抗体、AMG424は、前臨床モデルにおいてMM細胞を排除するが、インビトロにおいてB、T、及びNK細胞に対する「腫瘍以外への」T細胞性細胞毒性のトリガーとなることが示された(Munoz, Mittelbrunn et al. 2008, Zuch de Zafra, Fajardo et al. 2019)。よって、効果的、かつ、安全な二重特異性抗体の開発は、MM及び他の癌の治療を改善することに貢献する可能性がある。適確な毒性を最小限にするには、BsAb Fc媒介性免疫機能は好ましくない。CD3とFcγ受容体との架橋と、それに続く、免疫細胞の非特異的な活性化に起因する抗原非依存型サイトカイン放出症候群(CRS)を回避又は低減するために、突然変異をFcドメインに導入して、FcγR結合を排除した。
【0020】
Amgen製のCD38×CD3 BsAbもまた、CD3アフィニティーとサイトカイン放出症候群(CRS)との間の正の相関が実証された。Amgenの場合には、3種類のBsAb:XmAb4、AMG424、及びXmAb5が、CD38に対して同じ親和性を有するが、それぞれ、CD3に対して4.4、34、及び150~230nMのKdのレベルで異なる解離定数Kd値を有して構築された。CRSの副作用を、リード選択に関してカニクイザルにおいて比較により研究した。XmAb4とXmAb5は、両mAbを用いた投薬が高レベルのCRS効果をもたらしたので、サルでは十分に許容されなかった。よって、CD3に対して中程度の親和性を有するAMG424を、これらのクラスの分子に関する有効性と安全性のバランスの重要さに注目した更なる臨床開発のために選択された。
【0021】
CD3+T細胞再指向抗腫瘍有効性の制限に関する多数の報告は、非生産的なCD3+T細胞サブセットの動員、用量を制限するサイトカインストーム、免疫抑制性腫瘍内微小環境(TME)の存在、免疫のチェックポイント分子の発現に起因するT細胞の機能不全及び枯渇、腫瘍抗原回避、適確な腫瘍以外への毒性、並びに準最適な効力について指摘した。2021年5月には、Pfizer製のエルラナタマブ(BCMA×CD3)のMMに関する重要な臨床試験を、いくつかの症例の重症末梢ニューロパシーが原因となって臨床試験差し止めにした(Biopharmadive.com 2021)。実際には、Catumaxomab(2013年のUS及び2017年のEUにおける自発的な市場撤退)及びBlinatumomab(2014年以降の規制当局の許可にもかかわらず、2020年の世界的な売り上げがたった379MM USD)の比較的限定的な商業上の成功によって反映されるように、有効性よりむしろ安全性が、T細胞再指向の主な心配事であることが多い(Amgen 2021, Wikipedia 2021)。よって、臨床的可能性を最大化するためにT細胞再指向の治療指数を増強することは、まだ未達成の医療用ニーズであって、非常に望ましい。そのため、CD3標的化結合親和力を減弱することによってT細胞活性化を調節し、それと同時に、抗腫瘍性活性を維持することは、T細胞エンゲージャー BsAbの治療濃度域を改善するための有望な方法である。
【0022】
二重特異性T細胞エンゲージャーのように、キメラ抗原受容体T細胞性免疫療法(CAR-T)は、特異的抗原を発現する悪性細胞に細胞毒性T細胞を向け、それに続いて、これらのT細胞は、活性化され、増殖し、そして、腫瘍細胞を溶解させるサイトカインを放出し得る(Wang, Kaur et al. 2019)。CAR-T技術の迅速な開発と、臨床時のダラツムマブ及びイサツキシマブの有効な転帰により、CD38が、MMのキメラ抗原受容体に再指向されたT細胞(CAR-T細胞)の標的となった(Wu, Zhang et al. 2019)。CD38-CAR-T細胞に関する前臨床データは、インビトロ及びインビボにおけるMM細胞、並びにインビトロにおけるMMを患っている患者から単離した原発悪性細胞の排除に対して有意な効果を示した。興味深いことに、本来のCD38発現は、CD38-CAR-T細胞を用いた治療後に消失した(Drent, Groen et al. 2016)。いくつかの調査が、高親和性CD38-CAR-T細胞が、ミエローマ細胞だけではなく、CD38を発現する正常な造血細胞に対しても強い殺滅効果をもたらすことを明らかにした(Chmielewski, Hombach et al. 2004, Drent, Themeli et al. 2017)。腫瘍以外へのCAR応答を低減するために、CD38-CAR-T細胞は、結合親和力が最適化される必要があった(Drent, Themeli et al. 2017, Yu, Yi et al. 2019)。CD38特異的CAR-T細胞の使用に関する制限は、NK細胞、活性化T細胞、及びB細胞などの正常細胞におけるCD38の存在に起因する、このアプローチの見込まれる毒性によって説明され得る。別の制限は、癌細胞における変動するCD38の発現によって説明される。そのうえ、T細胞療法の利用可能性を高めるためにすぐ入手できる薬物を有することは、より望ましく、かつ、便利である。
【0023】
抗体断片から製造されるBsAbは生物物理学的及び薬物動力学的ハードルに悩まされるが、完全長抗体のような形式で構築されたものの欠点は、それらが第一標的抗原の不存在下で多価的に共同標的抗原を引き付け、そして、非特異的活性化と潜在的毒性につながることである。本開示は、既存療法の1若しくは複数の欠点に対処するために、CD3及びCD38に向けられた二重特異性抗体を含めた抗CD38及び抗CD3抗体を提供する。
【発明の概要】
【0024】
本開示の概要
一態様において、本開示は、抗CD38抗体又はその抗原結合部分を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3と示される3つの相補性決定領域(CDR)を含む重鎖可変領域を含み、ここで、該HCDR1、HCDR2、及びHCDR3が、それぞれ、以下の:
配列番号64、65、及び66;
配列番号64、83、及び84;
配列番号64、65、及び85;及び
配列番号64、65、及び86、
から選択される、抗CD38抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0025】
いくつかの実施形態において、本開示は、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3と示される3つのCDRを含む軽鎖可変領域を含み、ここで、該LCDR1、LCDR2、及びLCDR3が、それぞれ、以下の:
配列番号61、62、及び63;
配列番号76、77、及び78;
配列番号79、80、及び81;及び
配列番号82、62、及び78、
から選択される、抗CD38抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0026】
いくつかの実施形態において、本開示は、配列番号12~16のうちのいずれか1つに対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列又はその抗原結合部分を含む重鎖配列、及び配列番号7~11のうちのいずれか1つに対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列又はその抗原結合部分を含む軽鎖配列、を含む、抗CD38抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0027】
いくつかの実施形態において、本開示は、それぞれ、以下の:配列番号2と3;配列番号7と12;配列番号7と13;配列番号7と14;配列番号7と15;配列番号7と16;配列番号8と12;配列番号8と13;配列番号8と14;配列番号8と15;配列番号8と16;配列番号9と12;配列番号9と13;配列番号9と14;配列番号9と15;配列番号9と16;配列番号10と12;配列番号10と13;配列番号10と14;配列番号10と15;配列番号10と16;配列番号11と12;配列番号11と13;配列番号11と14;配列番号11と15;又は配列番号11と16、を含む軽鎖配列及び重鎖配列を含む、抗CD38抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0028】
いくつかの実施形態において、本開示は、少なくとも1つの可変重鎖のみの単一ドメイン又はその抗原結合部分を含み、ここで、該少なくとも1つの可変重鎖のみの単一ドメインが、それぞれ、以下の:
配列番号67、68、及び69;
配列番号67、87、及び69;
配列番号67、88、及び69;
配列番号67、89、及び69;
配列番号67、68、及び90;
配列番号70、91、及び72;
配列番号70、92、及び72;
配列番号70、93、及び72;
配列番号94、95、及び96;
配列番号70、71、及び97;
配列番号73、98、及び75;
配列番号73、99、及び75;
配列番号73、100、及び75;
配列番号73、101、及び102;並びに
配列番号73、103、及び104、
から選択されるHCDR1、HCDR2、及びHCDR3を含む、抗CD38抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0029】
いくつかの実施形態において、本開示は、少なくとも1つの可変重鎖のみの単一ドメイン又はその抗原結合部分を含み、ここで、該少なくとも1つの可変重鎖のみの(VHO)単一ドメインが、配列番号4及び17~30のうちのいずれか1つに対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列又はその抗原結合部分を含む、抗CD38抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0030】
別の態様において、本開示は、抗CD3抗体又はその抗原結合部分を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3と示される3つの相補性決定領域(CDR)を含む重鎖可変領域を含み、ここで、該HCDR1、HCDR2、及びHCDR3が、それぞれ、以下の:
配列番号105、108、及び107;
配列番号105、109、及び107;
配列番号105、110、及び107;並びに
配列番号118、119、及び120、
から選択される、抗CD3抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0031】
いくつかの実施形態において、本開示は、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3と示される3つのCDRを含む軽鎖可変領域を含み、ここで、該LCDR1、LCDR2、及びLCDR3が、それぞれ、以下の:
配列番号114、112、及び113;並びに
配列番号115、116、及び117、
から選択される、抗CD3抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0032】
いくつかの実施形態において、本開示は、配列番号32~34及び39のうちのいずれか1つに対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列又はその抗原結合部分を含む重鎖配列、及び配列番号36~38のうちのいずれか1つに対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列又はその抗原結合部分を含む軽鎖配列、を含む、抗CD3抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0033】
いくつかの実施形態において、本開示は、それぞれ、以下の:配列番号39と38;配列番号41と40;配列番号31と35;配列番号31と36;配列番号31と37;配列番号32と35;配列番号32と36;配列番号32と37;配列番号33と35;配列番号33と36;配列番号33と37;配列番号34と35;配列番号34と36;又は配列番号34と37、を含む軽鎖配列及び重鎖配列を含む、抗CD3抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0034】
本明細書に開示した抗CD38若しくは抗CD3抗体、又はその抗原結合断片は、ヒト、ヒト化、若しくはキメラ抗体、又は抗原結合断片であってもよい。
【0035】
本明細書に開示した抗CD38若しくは抗CD3抗体、又はその抗原結合断片は、完全長IgG1、IgG2、IgG3、若しくはIgG4抗体であっても、又はFab、F(ab')2、若しくはscFv断片などのその抗原結合断片であってもよい。抗体骨格は、機能性に影響するように、例えば、残留エフェクター機能を排除するように、修飾されてもよい。
【0036】
別の態様において、本開示は、以下の:
第一の結合アームであって、以下の:
N末端からC末端に向かって、シールドA、プロテアーゼ配列A、及びIgG重鎖又はその抗原結合部分を含む、第一の重鎖融合タンパク質;及び
N末端からC末端に向かって、シールドB、プロテアーゼ配列B、及びIgG軽鎖又はその抗原結合部分を含む第一の軽鎖融合タンパク質、
を含むもの;
ここで、該第一の結合アームのIgG重鎖又はその抗原結合部分及びIgG軽鎖又はその抗原結合部分が、CD3関連経路を標的化でき、かつ、本明細書に記載した抗CD3抗体又は抗原結合断片を含み;並びに
第二の結合アームであって:
N末端からC末端に向かって、シールドC、プロテアーゼ配列C、及びIgG重鎖又はその抗原結合部分を含む、第二の重鎖融合タンパク質;及び
N末端からC末端に向かって、シールドD、プロテアーゼ配列D、及びIgG軽鎖又はその抗原結合部分を含む、第二の軽鎖融合タンパク質、
を含むもの;
ここで、該第二の結合アームのIgG重鎖又はその抗原結合部分及びIgG軽鎖又はその抗原結合部分が、CD38関連経路を標的化でき、かつ、本明細書に記載した抗CD38抗体又は抗原結合断片を含む、
を含む二重特異性抗体を提供する。
シールドA~Dは、互いに同じであることも又は異なることもでき、かつ、プロテアーゼ配列A~Dは、互いに同じであることも又は異なることもできる。シールドA~D及びプロテアーゼ配列A~Dは、任意選択であって、それらのいくつか又はすべてが存在又は不存在であり得ることを意味する。
【0037】
特定の実施形態において、本開示は、以下の:
第一の結合アームであって、以下の:
N末端からC末端に向かって、シグナル配列A-シールドA-リンカーA-プロテアーゼ配列A-リンカーB-IgG重鎖又はその抗原結合部分を含む、第一の重鎖融合タンパク質;及び
N末端からC末端に向かって、シグナル配列B-シールドB-リンカーC-プロテアーゼ配列B-リンカーD-IgG軽鎖又はその抗原結合部分を含む第一の軽鎖融合タンパク質、
を含むもの;
ここで、該第一の結合アームのIgG重鎖又はその抗原結合部分及びIgG軽鎖又はその抗原結合部分が、CD3関連経路を標的化でき、かつ、本明細書に記載した抗CD3抗体又は抗原結合断片を含み;並びに
第二の結合アームであって:
N末端からC末端に向かって、シグナル配列C-シールドC-リンカーE-プロテアーゼ配列C-リンカーF-IgG重鎖又はその抗原結合部分を含む、第二の重鎖融合タンパク質;及び
N末端からC末端に向かって、シグナル配列D-シールドD-リンカーG-プロテアーゼ配列D-リンカーH-IgG軽鎖又はその抗原結合部分を含む、第二の軽鎖融合タンパク質、
を含むもの;
ここで、該第二の結合アームのIgG重鎖又はその抗原結合部分及びIgG軽鎖又はその抗原結合部分が、CD38関連経路を標的化でき、かつ、本明細書に記載した抗CD38抗体又は抗原結合断片を含む、
を含む二重特異性抗体を提供する。
シグナル配列A~Dは、互いに同じであることも又は異なることもでき、かつ、リンカーA~Hは、互いに同じであることも又は異なることもできる。シグナル配列A~D、シールドA~D、プロテアーゼ配列A~D、及びリンカーA~Hは、任意選択であって、それらのいくつか又はすべてが存在又は不存在であり得ることを意味する。
【0038】
別の態様において、本開示は、以下の:
第一の結合アームであって、以下の:
N末端からC末端に向かって、シールドA、プロテアーゼ配列A、及びIgG重鎖又はその抗原結合部分を含む、第一の重鎖融合タンパク質;及び
N末端からC末端に向かって、シールドB、プロテアーゼ配列B、及びIgG軽鎖又はその抗原結合部分を含む第一の軽鎖融合タンパク質、
を含むもの;
ここで、該第一の結合アームのIgG重鎖又はその抗原結合部分及びIgG軽鎖又はその抗原結合部分が、CD3関連経路を標的化でき、かつ、本明細書に記載した抗CD3抗体又は抗原結合断片を含み;並びに
第二の結合アームであって:
N末端からC末端に向かって、シールドC、プロテアーゼ配列C、及び(少なくとも1つの可変重鎖のみの(VHO)単一ドメイン又はその抗原結合部分を含む)IgG重鎖を含む、第二の重鎖融合タンパク質、
を含むもの;
ここで、該少なくとも1つの可変重鎖のみの単一ドメイン又はその抗原結合部分が、CD38関連経路を標的化でき、かつ、本明細書に記載した抗CD38 VHO又は抗原結合断片を含む、
を含む二重特異性抗体を提供する。
シールドA~Cは、互いに同じであることも又は異なることもでき、かつ、プロテアーゼ配列A~Cは、互いに同じであることも又は異なることもできる。シールドA~C及びプロテアーゼ配列A~Cは、任意選択であって、それらのいくつか又はすべてが存在又は不存在であり得ることを意味する。
【0039】
特定の実施形態において、本開示は、以下の:
第一の結合アームであって、以下の:
N末端からC末端に向かって、シグナル配列A-シールドA-リンカーA-プロテアーゼ配列A-リンカーB-IgG重鎖又はその抗原結合部分を含む、第一の重鎖融合タンパク質;及び
N末端からC末端に向かって、シグナル配列B-シールドB-リンカーC-プロテアーゼ配列B-リンカーD-IgG軽鎖又はその抗原結合部分を含む第一の軽鎖融合タンパク質、
を含むもの;
ここで、該第一の結合アームのIgG重鎖又はその抗原結合部分及びIgG軽鎖又はその抗原結合部分が、CD3関連経路を標的化でき;並びに
第二の結合アームであって:
N末端からC末端に向かって、シグナル配列C-シールドC-リンカーE-プロテアーゼ配列C-リンカーF-(少なくとも1つの可変重鎖のみの単一ドメイン又はその抗原結合部分を含む)IgG重鎖を含む、第二の重鎖融合タンパク質、
を含むもの;
ここで、該少なくとも1つの可変重鎖のみの単一ドメイン又はその抗原結合部分が、CD38関連経路を標的化でき、かつ、本明細書に記載した抗CD38 VHO又は抗原結合断片を含む、
を含む二重特異性抗体を提供する。
シグナル配列A~Cは、互いに同じであることも又は異なることもでき、かつ、リンカーA~Fは、互いに同じであることも又は異なることもできる。シグナル配列A~C、シールドA~C、プロテアーゼ配列A~C、及びリンカーA~Fは、任意選択であって、それらのいくつか又はすべてが存在又は不存在であり得ることを意味する。
【0040】
特定の実施形態において、本明細書に開示した二重特異性抗体では、IgGは、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4である。
【0041】
特定の実施形態において、本明細書に開示した二重特異性抗体では、第一の結合アームは1価であり、かつ、第二の結合アームは、1価、2価、又は多価性である。
【0042】
特定の実施形態において、本明細書に開示した二重特異性抗体では、第二の結合アームは、タンデムで、2又は3つのIgG可変重鎖のみの単一ドメインを含み、ここで、該2又は3つのIgG可変重鎖のみの単一ドメインが、任意選択で、1若しくは複数のリンカー配列を介して接続される。
【0043】
特定の実施形態において、本明細書に開示した二重特異性抗体では、第一の結合アーム(抗CD3アーム)は、以下の:
重鎖可変領域であって、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3と示される3つの相補性決定領域(CDR)を含み、ここで、該HCDR1、HCDR2、及びHCDR3が、それぞれ:配列番号105、108、及び107;配列番号105、109、及び107;配列番号105、110、及び107;並びに配列番号118、119、及び120から選択されるもの;並びに
軽鎖可変領域であって、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3と示される3つのCDRを含み、ここで、該LCDR1、LCDR2、及びLCDR3が、それぞれ:配列番号114、112、及び113;並びに配列番号115、116、及び117から選択されるもの、
を含む。
【0044】
特定の実施形態において、本明細書に開示した二重特異性抗体では、第二の結合アーム(抗CD38アーム)は、以下の:
重鎖可変領域であって、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3と示される3つの相補性決定領域(CDR)を含み、ここで、該HCDR1、HCDR2、及びHCDR3が、それぞれ:配列番号64、65、及び66;配列番号64、83、及び84;配列番号64、65、及び85;並びに配列番号64、65、及び86から選択されるもの;並びに
軽鎖可変領域であって、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3と示される3つのCDRを含み、ここで、該LCDR1、LCDR2、及びLCDR3が、それぞれ:配列番号61、62、及び63;配列番号76、77、及び78;配列番号79、80、及び81;並びに配列番号82、62、及び78から選択されるもの、
を含む。
【0045】
特定の実施形態において、本明細書に開示した二重特異性抗体では、第二の結合アーム(抗CD38アーム)は、少なくとも1つの可変重鎖のみの単一ドメイン又はその抗原結合部分を含み、ここで、該少なくとも1つの可変重鎖のみの単一ドメインが、それぞれ:配列番号67、68、及び69;配列番号67、87、及び69;配列番号67、88、及び69;配列番号67、89、及び69;配列番号67、68、及び90;配列番号70、91、及び72;配列番号70、92、及び72;配列番号70、93、及び72;配列番号94、95、及び96;配列番号70、71、及び97;配列番号73、98、及び75;配列番号73、99、及び75;配列番号73、100、及び75;配列番号73、101、及び102;並びに配列番号73、103、及び104から選択される3つのCDR(HCDR1、HCDR2、及びHCDR3)を含む。
【0046】
特定の実施形態において、本明細書に開示した二重特異性抗体では、第一の結合アーム(抗CD3アーム)のIgG重鎖は、配列番号31~34、39、及び41から選択されるアミノ酸配列、配列番号31~34、39、及び41のうちのいずれか1つに対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列、又はその抗原結合部分を含み、かつ、第一の結合アームのIgG軽鎖は、配列番号35~38及び40から選択されるアミノ酸配列、配列番号35~38及び40のうちのいずれか1つに対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列、又はその抗原結合部分を含む。
【0047】
特定の実施形態において、本明細書に開示した二重特異性抗体では、第二の結合アーム(抗CD38アーム)のIgG重鎖は、配列番号3~6及び12~30から選択されるアミノ酸配列、配列番号3~6及び12~30のうちのいずれか1つに対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列、又はその抗原結合部分を含み、かつ、第二の結合アームのIgG軽鎖は、配列番号2及び7~11から選択されるアミノ酸配列、配列番号2及び7~11のうちのいずれか1つに対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列、又はその抗原結合部分を含む。
【0048】
特定の実施形態において、本明細書に開示した二重特異性抗体では、少なくとも1つの可変重鎖のみの単一ドメインは、配列番号4~6及び17~30から選択されるアミノ酸配列、配列番号4~6及び17~30のうちのいずれか1つに対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列、又はその抗原結合部分を含む。
【0049】
特定の実施形態において、本明細書に開示した二重特異性抗体では、シールドA、シールドB、シールドC、及びシールドDは、それぞれ独立して、配列番号42~52に規定されるアミノ酸配列から選択される。
【0050】
特定の実施形態において、本明細書に開示した二重特異性抗体では、プロテアーゼ配列A、プロテアーゼ配列B、プロテアーゼ配列C、及びプロテアーゼ配列Dは、それぞれ独立して、配列番号53~60に規定されるアミノ酸配列から選択される。
【0051】
特定の実施形態において、本明細書に開示した二重特異性抗体では、第一の結合アーム(抗CD3アーム)のIgG重鎖とIgG軽鎖が、配列番号39と38;配列番号41と40;配列番号31と35;配列番号31と36;配列番号31と37;配列番号32と35;配列番号32と36;配列番号32と37;配列番号33と35;配列番号33と36;配列番号33と37;配列番号34と35;配列番号34と36;又は配列番号34と37に規定されるアミノ酸配列をそれぞれ含む
【0052】
特定の実施形態において、本明細書に開示した二重特異性抗体では、第二の結合アーム(抗CD38アーム)のIgG軽鎖とIgG重鎖が、配列番号2と3;配列番号7と12;配列番号7と13;配列番号7と14;配列番号7と15;配列番号7と16;配列番号8と12;配列番号8と13;配列番号8と14;配列番号8と15;配列番号8と16;配列番号9と12;配列番号9と13;配列番号9と14;配列番号9と15;配列番号9と16;配列番号10と12;配列番号10と13;配列番号10と14;配列番号10と15;配列番号10と16;配列番号11と12;配列番号11と13;配列番号11と14;配列番号11と15;又は配列番号11と16に規定されるアミノ配列をそれぞれ含む。
【0053】
特定の実施形態において、本明細書に開示した二重特異性抗体では、少なくとも1つの可変重鎖のみの単一ドメインは、それぞれ独立して、配列番号4~6及び17~30から選択される2つの可変重鎖のみの単一ドメインを含む。
【0054】
特定の実施形態において本明細書に開示した二重特異性抗体では、少なくとも1つの可変重鎖のみの単一ドメインは、N末端からC末端に向かって、任意選択でリンカーを介して接続された配列番号4と配列番号5、任意選択でリンカーを介して接続された配列番号4と配列番号6、任意選択でリンカーを介して接続された配列番号5と配列番号6、任意選択でリンカーを介して接続された配列番号5と配列番号4、任意選択でリンカーを介して接続された配列番号6と配列番号5、又は任意選択でリンカーを介して接続された配列番号6と配列番号4を含む。
【0055】
特定の実施形態において、本明細書に開示した抗体又は二重特異性抗体は、二重特異性抗体の半減期を延長する、二重特異性抗体のエフェクターの機能性を低減する、タンパク分解に対する二重特異性抗体の抵抗性を高める、Fcヘテロ二量化によって二重特異性抗体の製造を容易にする、二重特異性抗体の多量体化を容易にする、及び/又は二重特異性抗体の製造及び薬物安定性を改善するための改変Fcを含む。
【0056】
別の態様において、本開示は、細胞毒性剤などの部分に結合した本明細書に開示した抗体又は二重特異性抗体を含むコンジュゲートを提供する。
【0057】
別の態様において、本開示は、本明細書に開示した抗体又は二重特異性抗体を含む組成物、或いは本明細書に開示したコンジュゲートを提供する。特定の実施形態において、本開示は、本明細書に開示した抗体又は二重特異性抗体、或いは本明細書に開示したコンジュゲート、及び医薬として許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0058】
別の態様において、本開示は、抗CD38抗体又はその抗原結合部分をコードする核酸を提供する。
【0059】
別の態様において、本開示は、抗CD3抗体又はその抗原結合部分をコードする核酸を提供する。
【0060】
別の態様において、本開示は、本明細書に開示した二重特異性抗体、第一の重鎖融合タンパク質、第一の軽鎖融合タンパク質、第二の重鎖融合タンパク質、又は第二の軽鎖融合タンパク質をコードする核酸を提供する。
【0061】
別の態様において、本開示は、本明細書に開示した核酸を含む、発現ベクターなどの遺伝子組み換えベクターを提供する。
【0062】
別の態様において、本開示は、本明細書に開示した発現ベクターなどの遺伝子組み換えベクター又は核酸を含む宿主細胞を提供する。
【0063】
別の態様において、本開示は、本明細書に開示した宿主細胞を培養し、宿主細胞培養で宿主細胞を増殖させ、本明細書に開示した核酸が発現される宿主細胞培養条件を提供し、そして、宿主細胞又は宿主細胞培養物から抗体又は二重特異性抗体を回収すること、を含む、本明細書に開示した抗体又は二重特異性抗体を調製する方法を提供する。特定の実施形態において、二重特異性抗体は、制御されたFabアーム交換を使用して得られる。
【0064】
別の態様において、本開示は、治療又は予防を必要としている対象のCD38介在性疾患又は障害を治療又は予防する方法であって、該対象に医薬として有効量の本明細書に開示した抗体、二重特異性抗体、コンジュゲート、又は医薬組成物を投与することを含む前記方法を提供する。特定の実施形態において、その疾患又は障害は、胃及び結腸直腸癌、膵臓癌、前立腺癌、肺癌、肝細胞性癌、トリプルネガティブ乳癌、上咽頭癌、子宮頚癌、(MM、リンパ腫、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、急性Bリンパ芽球性白血病や他のものなどの)血液悪性腫瘍を含めたヒト癌、心臓病、HIV感染症を含めたウイルス感染症、喘息や他の呼吸器炎症性疾患、アレルギー性気道疾患、母胎耐性、自閉スペクトラム症、糸球体硬化、炎症性腸疾患、関節リウマチ、糖尿病(diabetes mellitus, diabetes)、慢性自己免疫性甲状腺炎及びグレーブス病、アルツハイマー病などの神経変性及び神経炎症性疾患から選択される。いくつかの実施形態において、CD38介在性疾患又は障害は、胃及び結腸直腸癌、膵臓癌、前立腺癌、肺癌、肝細胞性癌、トリプルネガティブ乳癌、上咽頭癌、子宮頚癌、及び血液悪性腫瘍を含めたヒト癌から選択される。
【0065】
別の態様において、本開示は、それを必要としている対象においてCD38を媒介する方法であって、該対象に有効量の本明細書に開示した抗体、二重特異性抗体又は医薬組成物を投与することを含む前記方法を提供する。
【0066】
本開示のこれ及び他の実施形態は、本明細書においてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1A-B】
図1は、免疫細胞におけるCD38の役割を例示する概略図である。
図1Aは、CD38が免疫細胞において主に発現され、そしてニコチンアミドヌクレオチド(NAD
+及びNMN)をADPR及びcADPRへと代謝することを示す(Hogan, Chini et al. 2019)。
図1Bは、抗腫瘍性免疫を妨害する複数の免疫抑制機構を示す。
【
図2】
図2は、CD38のmRNA発現プロファイルを示す。
【
図3】
図3は、抗CD38抗体の作用の機構を例示する。
【
図4】
図4は、抗CD38抗体に対する耐性の機構を例示する。
【
図5A-B】
図5は、CD38×CD3二重特異性抗体の略図である。
図5Aは、「第一のアーム」及び「第二のアーム」の注釈で示した2つの異なるセットの重鎖(HC)と軽鎖(LC)の組み合わせを含むシールドされた二重特異性抗体を示す。両アームはシールドされ得る。
図5Bは、シールディング又はマスキングドメインを伴わない2つの異なるセットの重鎖(HC)と軽鎖(LC)の組み合わせを含む二重特異性抗体を示す。
【
図5C-D】
図5Cは、シールディングを伴ったCD3アーム(第一のアーム)オープンリーディングフレームとCD38結合アーム(第二のアーム)オープンリーディングフレームから成る特定の成分を例示する。
図5Dは、シールディングを伴わないCD3アーム(第一のアーム)オープンリーディングフレームとCD38結合アーム(第二のアーム)オープンリーディングフレームから成る特定の成分を例示する。
【
図6A-B】
図6は、1若しくは複数の抗CD38可変重鎖のみの(VHO)単一ドメインを含むCD3×CD38二重特異性抗体の概略図である。
図6Aは、斯かるCD3×CD38二重特異性抗体に関する2つの例:「第二のアーム」、CD38を標的化するアーム中に単一のVHOを含む二重特異性抗体(左パネル);一緒に融合した2つのVHOを含むCD38結合アーム(第二のアーム)を含む二重特異性抗体(右パネル)、を示す。両方の例では、VHOはマスキングドメインに接続される。
図6Bは、左パネル中に、「第二のアーム」、CD38を標的化するアーム中に単一のVHOを含む二重特異性抗体を示し;及び右パネル中に、一緒に融合した2つのVHOを含むCD38結合アーム(第二のアーム)を含む二重特異性抗体を示す。両方の例では、VHOはマスキングドメインに接続されない。
【
図6C-D】
図6Cは、シールディングを伴ったCD3アーム(第一のアーム)オープンリーディングフレームとCD38結合アーム(第二のアーム)オープンリーディングフレームから成る特定の成分を例示する。
図6Dは、シールディングを伴わないCD3アーム(第一のアーム)オープンリーディングフレームとCD38結合アーム(第二のアーム)オープンリーディングフレームから成る特定の成分を例示する。
【
図7】
図7は、CD38×CD3二重特異性抗体からのマスキングドメインのプロテアーゼ消化除去の略図である。
【
図8】
図8は、ELISAアッセイにおける組み換えヒト(
図8A)、並びにカニクイザル(
図8B)CD3デルタ及びイプシロンドメインタンパク質への抗CD3抗体の濃度依存ELISA結合を実証した。陽性対照である抗CD3抗体、SP34、を結合アッセイで使用した。SP34は、重鎖可変ドメイン配列:EVQLVESGGGLVQPGGSLKLSCAASGFTFNTYAMNWVRQAPGKGLEWVARIRSKYNNYATYYADSVKDRFTISRDDSKNTAYLQMNNLKTEDTAVYYCVRHGNFGNSYVSWFAYWGQGTLVTVSS (配列番号127)及び軽鎖可変ドメイン配列:QTVVTQEPSLTVSPGGTVTLTCRSSTGAVTTSNYANWVQQKPGQAPRGLIGGTNKRAPGTPARFSGSLLGGKAALTLSGVQPEDEAEYYCALWYSNLWVFGGGTKLTVL (配列番号38)を有する。y軸は、450nmにおける吸光度単位の光学濃度で表される結合応答である。x軸は、試験した分子濃度である。SP34及びSP34 v8(軽鎖としての配列番号38及び重鎖としての配列番号39)は、ヒト及びカニクイザルデルタ及びイプシロンドメインタンパク質に強力な結合があった。
【
図9】
図9は、PBMC調製からのCD3を担持する初代ヒトT細胞への抗CD3抗体の濃度依存フローサイトメトリー結合を実証した。y軸は、全体平均蛍光強度(AlexaFluor647検出からのgMFI)で表される結合応答である。x軸は、評価した子の濃度である。
【
図10A-C】
図10は、(
図10A、D、及びE)遺伝子組み換えヒト、(
図10B)遺伝子組み換えカニクイザル、及び(
図10C)マウス遺伝子組み換えCD38タンパク質への抗CD38抗体の濃度依存ELISA結合を実証した。ヒトCD38への抗CD38単一ドメイン抗体の濃度依存ELISA結合を、
図10D及びEに示す。y軸は、450nmにおける吸光度単位の光学濃度で表される結合応答であった。x軸は、試験した分子の濃度であった。結果は、それぞれ、配列番号2及び3(mAb)、並びに配列番号4、5、6、17、18、20、21、24、及び29(VHO)を有する分子が、遺伝子組み換えヒトCD38タンパク質に結合することを示した。それぞれ、配列番号4及び5を有する分子が、遺伝子組み換えカニクイザルCD38タンパク質に結合する可能性もある。配列番号4を含む分子が、組み換えマウスCD38タンパク質に結合する可能性もある。
【
図10D-E】
図10は、(
図10A、D、及びE)遺伝子組み換えヒト、(
図10B)遺伝子組み換えカニクイザル、及び(
図10C)マウス遺伝子組み換えCD38タンパク質への抗CD38抗体の濃度依存ELISA結合を実証した。ヒトCD38への抗CD38単一ドメイン抗体の濃度依存ELISA結合を、
図10D及びEに示す。y軸は、450nmにおける吸光度単位の光学濃度で表される結合応答であった。x軸は、試験した分子の濃度であった。結果は、それぞれ、配列番号2及び3(mAb)、並びに配列番号4、5、6、17、18、20、21、24、及び29(VHO)を有する分子が、遺伝子組み換えヒトCD38タンパク質に結合することを示した。それぞれ、配列番号4及び5を有する分子が、遺伝子組み換えカニクイザルCD38タンパク質に結合する可能性もある。配列番号4を含む分子が、組み換えマウスCD38タンパク質に結合する可能性もある。
【
図11】
図11は、CD38担持H929多発性骨髄腫細胞の存在下でのCD3担持Jurkat T細胞レポーターアッセイ系列からのCD38×CD3二重特異性抗体T細胞活性化の用量応答を実証した。配列番号4を有するCD38 VHOは異なるCD3アームと組み合わせて、示したCD38×CD3二重特異性抗体(それぞれ、配列番号4×Cris7 v4(配列番号33を有する重鎖可変配列、配列番号36を有する軽鎖可変配列)、配列番号4×Cris7 v3(配列番号32を有する重鎖可変配列、配列番号37を有する軽鎖可変配列)、及び配列番号4×SP34 v8(配列番号39を有する重鎖可変配列、配列番号38を有する軽鎖可変配列)と規定される)を作り出した。y軸は、相対光単位でのレポーターアッセイ応答である。x軸は、試験した分子の濃度である。
【
図12】
図12は、CD38担持L363多発性骨髄腫細胞の存在下でのCD3担持Jurkat T細胞レポーターアッセイ系列からのCD38×CD3二重特異性抗体T細胞活性化の用量応答を実証した。配列番号4を有するCD38 VHOは異なるCD3アームと組み合わせて、示したCD38×CD3二重特異性抗体(それぞれ、配列番号4×Cris7 v3(配列番号32を有する重鎖可変配列、配列番号37を有する軽鎖可変配列)、配列番号4×Cris7 v4(配列番号33を有する重鎖可変配列、配列番号36を有する軽鎖可変配列)、及び配列番号4×SP34と規定される)を作り出した。y軸は、相対光単位でのレポーターアッセイ応答である。x軸は、試験した分子の濃度である。
【
図13】
図13は、CD38担持RPMI 8226多発性骨髄腫細胞の存在下でのCD3担持Jurkat T細胞レポーターアッセイ系列からのCD38×CD3二重特異性抗体T細胞活性化の用量応答を実証した。配列番号4を有するCD38 VHOは異なるCD3アームと組み合わせて、示したCD38×CD3二重特異性抗体を作り出した。強力なT細胞活性化反応が観察された。y軸は、相対光単位でのレポーターアッセイ応答である。x軸は、試験した分子の濃度である。
【
図14A-B】
図14は、H929、CD38担持多発性骨髄腫細胞株の初代ヒトT細胞殺滅を指示するCD38×CD3二重特異性抗体の用量応答を実証した。2つ異なるロット(
図14A及び14B)のPBMCが使用された。配列番号4を有するCD38 VHOは異なるCD3アームと組み合わせて、
図14に示したCD38×CD3二重特異性抗体を作り出した。強力なT細胞殺滅応答が観察された。y軸は、パーセント細胞殺滅である。x軸は、評価した分子の濃度である。
【
図15A-B】
図15は、RPMI 8226、CD38担持多発性骨髄腫細胞株の初代ヒトT細胞殺滅を指示するCD38×CD3二重特異性抗体の用量応答を実証した。4つの異なるロット(
図15A、15B、15C、及び15D)のPBMCが使用された。配列番号4を有するCD38 VHOは異なるCD3アームと組み合わせて、
図15に示したCD38×CD3二重特異性抗体を作り出した。強力なT細胞殺滅応答が観察された。y軸は、パーセント細胞殺滅である。x軸は、評価した分子の濃度である。
【
図15C-D】
図15は、RPMI 8226、CD38担持多発性骨髄腫細胞株の初代ヒトT細胞殺滅を指示するCD38×CD3二重特異性抗体の用量応答を実証した。4つの異なるロット(
図15A、15B、15C、及び15D)のPBMCが使用された。配列番号4を有するCD38 VHOは異なるCD3アームと組み合わせて、
図15に示したCD38×CD3二重特異性抗体を作り出した。強力なT細胞殺滅応答が観察された。y軸は、パーセント細胞殺滅である。x軸は、評価した分子の濃度である。
【
図16A-B】
図16は、L363、CD38担持多発性骨髄腫細胞株の初代ヒトT細胞殺滅を指示するCD38×CD3二重特異性抗体の用量応答を実証した。異なるロット(
図16A、16B、16C、及び16D)のPBMCが使用された。配列番号4を有するCD38 VHOは異なるCD3アームと組み合わせて、
図16に示したCD38×CD3二重特異性抗体を作り出した。強力なT細胞殺滅応答が観察された。y軸は、パーセント細胞殺滅である。x軸は、評価した分子の濃度である。
【
図16C-D】
図16は、L363、CD38担持多発性骨髄腫細胞株の初代ヒトT細胞殺滅を指示するCD38×CD3二重特異性抗体の用量応答を実証した。異なるロット(
図16A、16B、16C、及び16D)のPBMCが使用された。配列番号4を有するCD38 VHOは異なるCD3アームと組み合わせて、
図16に示したCD38×CD3二重特異性抗体を作り出した。強力なT細胞殺滅応答が観察された。y軸は、パーセント細胞殺滅である。x軸は、評価した分子の濃度である。
【
図17A】
図17は、配列番号4×SP34 v8(CD38 配列番号4とCD3 SP34 v8(軽鎖としての配列番号38と重鎖としての配列番号39)を含む);及び配列番号4×40G5(CD38 配列番号4と40G5(軽鎖としての配列番号40と重鎖としての配列番号41)と規定される2つのCD38×CD3二重特異性抗体の有効性のマウスモデルを示す。
図17Aは、新規抗CD38特異性を含む二重特異性抗体、及び既知の抗CD3二重特異性抗体活性を有する陽性対照抗CD3抗体を用いて処理した、移植されたヒトPBMC及びヒトNCI-H929多発性ミエローマ細胞を使用したマウス有効性モデルの2つの研究デザイン、(「ドナー1/2」及び「ドナー3/」)を示す。
【
図17B-C】
図17B~17C(研究デザインドナー1/2に対応)及び
図17D~17E(研究デザインドナー3/4に対応)は、移植されたヒトPBMCを使用した、及び
図17B~17Eに示した抗体で処理したマウス有効性モデルにおいて、ヒトNCI-H929多発性ミエローマ細胞の腫瘍生育阻害を示す。
【
図17D-E】
図17B~17C(研究デザインドナー1/2に対応)及び
図17D~17E(研究デザインドナー3/4に対応)は、移植されたヒトPBMCを使用した、及び
図17B~17Eに示した抗体で処理したマウス有効性モデルにおいて、ヒトNCI-H929多発性ミエローマ細胞の腫瘍生育阻害を示す。
【発明を実施するための形態】
【0068】
本開示の詳細な説明
定義
本明細書に引用されている特許及び特許出願を含むがこれらに限定されないあらゆる刊行物は、あたかも完全に表記されているかのように参照により本明細書に援用される。本明細書に引用された文献の特定の内容が本開示と矛盾するか、又は反する場合、本開示が統制する。
【0069】
本開示の具体的な側面を記載する明細書の1つのセクションのみにおいて記載されたもの、及び実施例又は図面においてのみ記載されたものも含め、本明細書に記載された本開示のあらゆる実施形態は、明示的に否認されたか不適切であるものでない限り、任意の他の1以上の実施形態と組み合わせることができる。
【0070】
本明細書に使用されている用語法は、単に特定の実施形態を記載することを目的としており、限定を意図するものではないことを理解されたい。他に規定がなければ、本明細書に使用されているあらゆる技術及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されているものと同じ意義を有する。
【0071】
本開示の実施又は検査において、本明細書に記載されているものと同様の又は均等ないかなる方法及び材料を使用することもできるが、例示的な材料及び方法が本明細書に記載されている。本開示を説明及び主張する際に、以下の専門用語が使用される。
【0072】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、内容がそれ以外のことを明らかに指示しない限り、複数形の指示対象を含む。よって、例えば、「1つの細胞(a cell)」の参照は、2つ又はそれよりも多い細胞の組み合わせ、その他を含む。
【0073】
「抗体」は、広義で企図され、マウス、ヒト、ヒト化及びキメラモノクローナル抗体を含むモノクローナル抗体、抗体断片、二特異性又は多特異性抗体、二量体、四量体又は多量体抗体、単鎖抗体、ドメイン抗体、並びに要求される特異性の抗原結合部位を含む他のいずれかの改変された構成の免疫グロブリン分子を含む免疫グロブリン分子を含む。
【0074】
「完全長抗体分子」は、ジスルフィド結合によって相互接続された2本の重鎖(HC)及び2本の軽鎖(LC)、並びにその多量体(例えば、IgM)で構成される。各重鎖は、重鎖可変領域(VH)及び重鎖定常領域(ドメインCH1、ヒンジ、CH2及びCH3で構成される)で構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(VL)及び軽鎖定常領域(CL)で構成される。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)を散在させた、相補性決定領域(CDR)と命名された高頻度可変性の領域へと更に細分することができる。各VH及びVLは、3個のCDR及び4個のFRセグメントで構成されており、これらは、アミノ末端からカルボキシル末端へ、次の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4で配置されている。
【0075】
「相補性決定領域(CDR)」は、抗体における「抗原結合部位」である。CDRは、様々な用語を使用して定義することができる:(i) 3個はVHにあり(HCDR1、HCDR2、HCDR3)、3個はVLにある(LCDR1、LCDR2、LCDR3)、相補性決定領域(CDR)は、配列可変性に基づく(Wu and Kabat 1970) (Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md., 1991)。(ii) 3個はVHにあり(H1、H2、H3)、3個はVLにある(L1、L2、L3)、「高頻度可変領域」、「HVR」又は「HV」は、Chothia及びLesk(Chothia and Lesk 1987)によって定義されるとおり、構造が高頻度可変である抗体可変ドメインの領域を指す。国際免疫遺伝学(IMGT)データベース(http://www_imgt_org)は、抗原結合部位の標準化されたナンバリング及び定義を提供する。CDR、HV及びIMGT描写の間の一致は、 記載されている(Lefranc, Pommie et al. 2003)。用語「CDR」、「HCDR1」、「HCDR2」、「HCDR3」、「LCDR1」、「LCDR2」及び「LCDR3」は、本明細書で使用される場合、本明細書にそれ以外のことが明確に記述されていない限り、上記の方法、Kabat、Chothia又はIMGTのいずれかによって定義されるCDRを含む。
【0076】
免疫グロブリンは、重鎖定常領域アミノ酸配列に応じて、5種の主要なクラス、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMに割り当てることができる。IgA及びIgGは、アイソタイプIgA1、IgA2、IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4として更に細分類される。いずれかの脊椎動物種の抗体軽鎖は、その定常領域のアミノ酸配列に基づき、2種の明らかに別個の型、すなわち、カッパー(κ)及びラムダ(λ)のうち1種に割り当てることができる。
【0077】
「抗体断片」、「抗原結合断片」、又は「抗原結合部分」は、重鎖相補性決定領域(HCDR)1、2及び3、軽鎖相補性決定領域(LCDR)1、2及び3、重鎖可変領域(VH)、又は軽鎖可変領域(VL)などの重鎖及び/又は軽鎖抗原結合部位を保持する免疫グロブリン分子の部分を指す。抗体断片は、周知のFab、F(ab’)2、Fd及びFv断片、並びに1個のVHドメインからなるドメイン抗体(dAb)を含む。VH及びVLドメインは、合成リンカーを介して一体に連結して、VH/VLドメインが分子内で又は分子間で対形成し得る様々な型の単鎖抗体設計を形成することができ、分子間の事例については、例えば、国際開示公開番号WO1998/44001、WO1988/01649、WO1994/13804及びWO1992/01047に記載されている、VH及びVLドメインが別々の単鎖抗体構築物によって発現されて、単鎖Fv(scFv)又はダイアボディ(diabody)などの一価抗原結合部位を形成する場合が挙げられる。
【0078】
「抗体模倣体」は、標的に対する特異的結合を示す遺伝子操作された抗体タンパク質を指す。例えば、抗体模倣体は、Affibody、DARPin、Anticalin、Avimer、Versa body、又はDuocalinであり得る。
【0079】
「モノクローナル抗体」は、抗体重鎖からのC末端リシンの除去などの可能な周知の変更を除いて、各重及び各軽鎖に単一のアミノ酸組成を有する抗体集団を指す。モノクローナル抗体は典型的に、例えば、二特異性モノクローナル抗体が2種の別個の抗原エピトープに結合することを除いて、1種の抗原エピトープに結合する。モノクローナル抗体は、抗体集団内に不均一なグリコシル化を有することができる。モノクローナル抗体は、単一特異性若しくは多特異性、又は一価、二価若しくは多価であってもよい。二特異性抗体は、モノクローナル抗体という用語の中に含まれる。
【0080】
「単離された抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない、抗体又は抗体断片を指す。「単離された抗体」は、少なくとも80%、例えば、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%純粋である抗体など、より高い純度まで単離された抗体を包含する。
【0081】
「ヒト化抗体」は、抗原結合部位が非ヒト種に由来し、可変領域フレームワークがヒト免疫グロブリン配列に由来する、抗体を指す。ヒト化抗体はフレームワークにおける置換を含むことができ、フレームワークが発現されたヒト免疫グロブリン又はヒト免疫グロブリン生殖系列遺伝子配列の正確なコピーとならなくてよい。
【0082】
「ヒト抗体」は、フレームワーク及び抗原結合部位の両方がヒト起源の配列に由来する重及び軽鎖可変領域を有する抗体を指し、ヒト被験体に投与されたときに、最小の免疫応答を有するように最適化されている。抗体が、定常領域又は定常領域の部分を含有する場合、定常領域はまた、ヒト起源の配列に由来する。
【0083】
「抗標的」は、CD38などの特定の標的分子に結合できる抗体又は抗体ドメイン(抗原結合部分又は抗体の断片とも呼ばれる)を指す(すなわち、抗CD38は、CD38に結合できる抗体又は抗体ドメインである)。書式「CD38」は、CD38タンパク質又はCD38遺伝子産物を指す。書式「CD38」は、CD38の遺伝子を指す。
【0084】
「CD3×CD38」は、CD3及びCD38に結合できる二重特異性抗体又は抗体断片を指す。二重特異性抗体を作製するプロセスは、親mAbアミノ酸配列のいずれかに対する遺伝子組み換え修飾を必要とする。それぞれの親mAbのCH1、CL、及びFcドメインのアミノ酸配列は同じであってはならないが、CD3×CD38とCD38×CD3二重特異性抗体との間には、結合の有意差が存在しない。本明細書における「第一のアーム」と「第二のアーム」の注釈は任意である。例えば、本明細書に開示した二重特異性抗体では、第一のアームがCD3を標的化する可能性もあり、及び第二のアームがCD38を標的化する可能性もあり、又は第一のアームがCD38を標的化する可能性もあり、及び第二のアームがCD3を標的化する可能性もある。
【0085】
本明細書全体にわたる抗体定常領域におけるアミノ酸残基のナンバリングは、他に明確に記述されていない限り、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)に記載のEUインデックスに従う。
【0086】
表1に示されているように、従来の一文字及び三文字アミノ酸コードが、本明細書に使用されている。
【表1】
【0087】
本明細書に提供されるポリペプチド、核酸、融合タンパク質及び他の組成物は、本明細書に提供されるアミノ酸配列又はDNA配列に対して列挙されているパーセント同一性を有するポリペプチド、核酸、融合タンパク質その他を包含することができる。用語「同一性」は、配列の整列及び比較によって決定される、2種若しくはそれよりも多いポリペプチド分子又は2種若しくはそれよりも多い核酸分子の配列の間の関係性を指す。「パーセント同一性」、「パーセント相同性」、「配列同一性」又は「配列相同性」その他は、比較される分子におけるアミノ酸又はヌクレオチドの間の同一残基のパーセントを意味し、これは、比較されている分子の最小のサイズに基づき計算される。例えば、配列Bに対して「少なくとも85%の同一性」である配列Aは、配列Aが、配列Bの残基に対して少なくとも85%、例えば、少なくとも86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%、同一の残基を含むことを意味する。このような計算のため、整列におけるギャップ(あるとすれば)が、好ましくは、特定の数理モデル又はコンピュータプログラム(すなわち、「アルゴリズム」)によって取り組まれる。整列された核酸又はポリペプチドの同一性の計算に使用することができる方法は、Computational Molecular Biology, (Lesk, A. M., ed.), 1988, New York: Oxford University Press; Biocomputing Informatics and Genome Projects, (Smith, D. W., ed.), 1993, New York: Academic Press; Computer Analysis of Sequence Data, Part I, (Griffin, A. M., and Griffin, H. G., eds.), 1994, New Jersey: Humana Press; von Heinje, G., 1987, Sequence Analysis in Molecular Biology, New York: Academic Press; Sequence Analysis Primer, (Gribskov, M. and Devereux, J., eds.), 1991, New York: M. Stockton Press;及びCarillo et al., 1988, SIAM J. Applied Math. 48:1073に記載されている方法を含む。パーセント同一性の計算において、比較されている配列は、典型的に、配列の間で最大のマッチが得られる仕方で整列される。
【0088】
哺乳動物IgG重鎖の定常領域配列は、配列においてCH1-ヒンジ-CH2-CH3として指定される。IgGの「ヒンジ」、「ヒンジ領域」又は「ヒンジドメイン」は、一般に、EUインデックスに従ったヒトIgG1のGlu216を含み、Pro230で終結するものとして定義されるが、機能的には、鎖の可撓性部分は、Glu216~Gly237等、上部及び下部ヒンジ領域と命名された追加的な残基を含むと考慮することができ、下部ヒンジは、概してFcγR結合の原因となるFc領域の残基233~239と称される。他のIgGアイソタイプのヒンジ領域は、重鎖間S-S結合を形成する最初及び最後のシステイン残基を置くことにより、IgG1配列と整列することができる。EUインデックスに従ってナンバリングされる境界は、僅かに変動し得るが、CH1ドメインは、VHドメインに及び免疫グロブリン重鎖分子のヒンジ領域のアミノ末端に隣接し、免疫グロブリン重鎖の第1(最もアミノ末端側)の定常領域、例えば、約EU位置118~215を含む。Fcドメインは、アミノ酸231からアミノ酸447に延在する;CH2ドメインは、約Ala231からLys340又はGly341に、CH3は、約Gly341又はGln342からLys447に延在する。CH1領域のIgG重鎖定常領域の残基は、Lysで終結する。Fcドメイン含有分子は、抗体定常領域の少なくともCH2ドメイン及びCH3ドメインを含み、したがって、IgG重鎖定常領域の少なくとも約Ala231からLys447の領域を含む。Fcドメイン含有分子は、ヒンジ領域の少なくとも部分を必要に応じて含むことができる。
【0089】
「エピトープ」は、抗体が特異的に結合する抗原(例えば、CD3又はCD38)の部分を指す。エピトープは典型的に、アミノ酸又は多糖側鎖などの部分の化学的に活性な(極性、非極性又は疎水性等)表面グルーピングからなり、特異的な三次元構造特徴と共に、特異的な電荷特徴を有することができる。エピトープは、コンフォメーション空間単位を形成する連続及び/又は不連続アミノ酸で構成され得る。不連続エピトープについて、抗原の直鎖状配列の異なる部分由来のアミノ酸が、タンパク質分子のフォールディングにより、三次元空間においてごく接近するようになる。抗体「エピトープ」は、エピトープの同定に使用される方法論に依存する。
【0090】
「リーダー配列」(「シグナルペプチド」又は「シグナル配列」とも呼ばれる)は、本明細書で使用される場合、ヒトB2Mリーダーを含む、哺乳動物細胞によってプロセシングされ得るいずれかのシグナルペプチドを含む。このような配列は、当技術分野で周知である。
【0091】
「切断可能なリンカー」(「プロテアーゼ配列」とも呼ばれる)は、酵素によって切断可能なペプチド基質である。動作可能であれば、切断可能なリンカーは、酵素によって切断されることで、マスキングドメイン、例えば、IGF2ベースのマスキングドメインを有するシールドされた抗体(プロ抗体とも呼ばれる)の活性化を可能にする。好ましくは、切断可能なリンカーは、活性化が(標的細胞(例えば、癌腫細胞)又は組織の中又は近くである)所望の作用部位で起こるように選択される。例えば、切断可能なリンカーは、標的部位における切断可能なリンカーの切断速度が標的部位以外の部位におけるそれより高いような、作用部位で特異的に又は高度に発現される酵素に特異的なペプチド基質である。
【0092】
用語「ペプチド」、「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、本明細書で互換的に使用され、コードされた及びコードされていないアミノ酸、化学的又は生化学的に改変又は誘導体化されたアミノ酸、並びに改変されたペプチド骨格を有するポリペプチドを含むことができる、いずれかの長さのアミノ酸のポリマー形態を指す。これらの用語は、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、タンパク質分解性切断その他等、ポリペプチドの同時翻訳(例えば、シグナルペプチド切断)及び翻訳後改変を有するポリペプチドも含む。
【0093】
更に、本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」は、タンパク質が所望の活性を維持する限りにおいて、天然の配列に対して欠失、付加及び置換(当業者にとって公知のとおり、一般に保存的な性質の)などの改変を含むタンパク質を指す。これらの改変は、部位特異的変異誘発によるなど、計画的であってもよい、あるいはタンパク質を産生する宿主の変異又はPCR増幅若しくは他の組み換えDNA法が原因のエラーによる等、偶発的であってもよい。
【0094】
用語「マスキングドメイン」(「シールド」、「シールディングドメイン」、又は「マスク」とも呼ばれる)は、この開示では、抗体に融合されることができ、かつ、その抗原に結合する際に抗体をマスクするタンパク質ドメインを指す。シールディングドメインは、その標的エピトープを認識することからその抗体をマスクできるので、その抗体を不活性なシールドされた抗体の形態に保つ。シールディングドメインの除去により、抗体の可変ドメインは晒され、その標的に結合し、そして作用を発揮する。
【0095】
用語「組み換え」は、核酸分子を記載するために本明細書で使用される場合、その起源又は操作に基づいて、それが自然界では関連しているポリヌクレオチド配列の全体又は部分に関連していない、ゲノム、cDNA、ウイルス、半合成及び/又は合成起源のポリヌクレオチドを意味する。用語「組み換え」は、タンパク質又はポリペプチドに関して使用される場合、組み換えポリヌクレオチドからの発現によって産生されるポリペプチドを指す。用語「組み換え」は、宿主細胞又はウイルスに関して使用される場合、組み換えポリヌクレオチドが導入された宿主細胞又はウイルスを指す。組み換えはまた、材料(例えば、細胞、核酸、タンパク質又はベクター)に関して、当該材料が、異種材料(例えば、細胞、核酸、タンパク質又はベクター)の導入によって改変されたことを指すように本明細書で使用される。
【0096】
用語「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」、「核酸」及び「核酸分子」は、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドのいずれかであるヌクレオチドのポリマー形態を含むように本明細書で互換的に使用される。この用語は、分子の一次構造のみを指す。
【0097】
「ベクター」は、生物システム内で重複され得る、又はこのようなシステム間で移動され得るポリヌクレオチドを指す。ベクターポリヌクレオチドは典型的に、ベクターを重複することができる生物学的構成成分を利用して、細胞、ウイルス、動物、植物及び再構成された生物システムなどの生物システムにおけるこのようなポリヌクレオチドの重複又は維持を容易にするように機能する、複製起点、ポリアデニル化シグナル又は選択マーカーなどのエレメントを含有する。ベクターポリヌクレオチドは、一本鎖又は二本鎖の、DNA若しくはRNA分子、cDNA、又はこれらのハイブリッドであってもよい。
【0098】
「発現ベクター」は、発現ベクター中に存在するポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドの翻訳を方向付けるために、生物システム又は再構成された生物システムにおいて利用され得るベクターを指す。
【0099】
本明細書で使用される場合、核酸配列、タンパク質又はポリペプチドを参照して使用される用語「異種」は、これらの分子が、異種核酸配列、タンパク質又はポリペプチドが得られた細胞中に天然に存在しないことを意味する。例えば、ヒト細胞ではない細胞に挿入されるヒトポリペプチドをコードする核酸配列は、この特定の文脈において異種核酸配列である。異種核酸は、異なる生物又は動物種に由来することができる一方で、このような核酸は、異種となるのに、別々の生物種に必ずしも由来しない。例えば、一部の実例では、合成核酸配列又はそれにコードされるポリペプチドは、それが導入される細胞が、当該合成核酸を以前に含有していなかったという点において、それが導入される細胞にとって異種であってもよい。したがって、例えば、合成核酸配列又はそれにコードされるポリペプチドの1種又は複数の構成成分が、本来ヒト細胞から得られた場合であっても、合成核酸配列又はそれにコードされるポリペプチドは、ヒト細胞にとって異種とみなすことができる。
【0100】
「宿主細胞」は、本明細書で使用される場合、それによってコードされたポリペプチドを産生するように、本開示の核酸又はベクターで形質転換されることができるあらゆるタイプの細胞を意味する。例えば、宿主細胞は、インビボ若しくはインビトロにおいて真核細胞、又は単細胞の実体として培養された多細胞生物由来の細胞(例えば、細胞系)を表示し、このような真核細胞は、核酸(例えば、本開示の多量体ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む発現ベクター)のレシピエントとして使用することができる又は使用されており、核酸によって遺伝子改変された元の細胞の子孫を含む。単一細胞の子孫が、天然、偶発的又は計画的変異が原因で、必ずしも、元の親と形態又はゲノム若しくは総DNA含量において完全に同一でなくてよいことが理解される。「組み換え宿主細胞」(「遺伝子改変された宿主細胞」とも称される)は、異種核酸、例えば、発現ベクターが導入された宿主細胞である。例えば、遺伝子改変された真核宿主細胞は、適した真核宿主細胞への、異種核酸、例えば、真核宿主細胞にとって外来である外因性核酸、又は真核宿主細胞に正常であれば見出されない組み換え核酸の導入によって遺伝子改変されている。
【0101】
「特異的結合」又は「特異的に結合する」又は「結合する」は、他の抗原に対するよりも優れた親和性での特異的抗原への抗体結合を指す。典型的には、結合に関する平衡解離定数(KD)が、約1×10-8M又はそれ未満、例えば、約1×10-9M若しくはそれ未満、約1×10-10M若しくはそれ未満、約1×10-11M若しくはそれ未満又は約1×10-12M若しくはそれ未満であり、典型的には、非特異的抗原(例えば、BSA、カゼイン)への結合に関するそのKDの多くとも百分の1のKDによる場合、抗体は、「特異的に結合する」。KDは、標準手順を使用して測定することができる。
【0102】
本明細書で使用される場合、用語「処置」、「処置すること」その他は、所望の薬理学及び/又は生理学的効果を得ることを指す。効果は、疾患若しくはその症状を完全に若しくは部分的に予防するとの観点から予防的であってもよい、並びに/又は疾患及び/若しくは疾患に起因し得る有害効果の部分的若しくは完全治癒の観点から治療的であってもよい。「処置」は、本明細書で使用される場合、哺乳動物、例えば、ヒトにおける疾患のいずれかの処置を網羅し、(a)疾患の素因がある可能性があるが、疾患を有するとは未だ診断されていない被験体において疾患が発生するのを防止すること;(b)疾患を阻害すること、すなわち、その発症を抑止すること;及び(c)疾患を緩和すること、すなわち、疾患の退縮を引き起こすことを含む。
【0103】
本明細書で互換的に使用される用語「個体」、「被験体」、「宿主」及び「患者」は、マウス(例えば、ラット、マウス)、ウサギ類(例えば、ウサギ)、非ヒト霊長類、ヒト、イヌ、ネコ、有蹄動物(例えば、ウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ)等を含むがこれらに限定されない、哺乳動物を指す。
【0104】
「治療的有効量」、「医薬上の有効量」、「有効量」、又は「効果的な量」は、疾患を処置するために哺乳動物又は他の被験体に投与された場合に、疾患のためのこのような処置に影響を与えるのに十分である、薬剤の量又は2種の薬剤の組み合わせた量を指す。「治療有効量」は、薬剤、疾患及びその重症度、並びに処置されるべき被験体の年齢、体重等に応じて変動するであろう。
【0105】
本開示について更に記載する前に、記載されている特定の実施形態は当然ながら変動し得るため、本開示が、記載されている特定の実施形態に限定されないことを理解されたい。本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書に使用されている用語法が、単に特定の実施形態を記載することを目的としており、限定を意図するものではないことも理解されたい。
CD38と抗CD38抗体
【0106】
図1Aに示されているように、CD38は、免疫細胞上で主に発現され、かつ、ニコチンアミドヌクレオチド(NAD
+及びNMN)をADPR及びcADPRに代謝する(Hogan, Chini et al. 2019)。これらの代謝産物は、カルシウムイオンを動員する。細胞内CD38は細胞質及び細胞小器官の膜に存在しているが、CD38活性の大部分は細胞外に存在し、そしてそれは、NAD
+合成に必要なNAD
+前駆体(例えば、NMN)の分解をもたらす。
図1Bに示されているように、CD38の細胞外活性は、感染症、代謝機能不全、加齢、及び腫瘍生物学との関連においてNAD
+恒常性に関して幅広い範囲に及ぶ意味を有している。複数の免疫抑制機構が、抗腫瘍性免疫を妨害する。それらの中でも、細胞外アデノシンの蓄積は、腫瘍によって利用される、プリン作動性受容体の活性化によって免疫監視から逃れるための強力かつ広範囲なストラテジーである。免疫系では、A2aとA2bアデノシン受容体の引き付けが、過度の免疫反応に対して組織を保護する重大な調節機序である。腫瘍では、この経路が乗っ取られて、そして、抗腫瘍性免疫が妨げられて、癌の進行が促進される(Allard, Beavis et al. 2016)。
【0107】
図2に示されているように、CD38発現は、胸腺及び前立腺においてより高い。しかしながら、発現レベルは、活性化されたBDCA4+樹状細胞、CD56+NK細胞、白血病細胞、及びリンパ腫細胞において非常に高い。この図面は、BioGPSソフトウェアを使用して作成される(Su, Wiltshire et al. 2004, Wu, Jin et al. 2016)。
【0108】
図3に示されているように、抗CD38抗体は、MM細胞上でCD38を認識し、そして、Fc依存機構を介した及び免疫調節効果を介して抗MM活性をもたらし得る(Saltarella, Desantis et al. 2020)。Fc依存機構は、(a) 抗体依存性細胞障害(ADCC);(b) それぞれMM細胞の溶解及び/又は食作用を引き起こす、FcγRを発現するエフェクター細胞(例えば、NK細胞、γδT細胞、好中球、及びマクロファージ)への抗体Fcドメインの引き付けを介した抗体依存性細胞食作用(ADCP);(c) 標的細胞を溶解させ得る膜攻撃複合体(MAC)の構築をもたらす補体カスケードを活性化する、C1qの引き付けを介した補体依存性細胞毒性(CDC)、を含み得る。抗CD38抗体は、免疫抑制性細胞外アデノシン(ADO)の低減をもたらす、CD38の細胞外酵素活性の阻害によって免疫調節効果を有し得る。加えて、CD38+免疫抑制細胞(すなわち、MDSC、Treg、及びBreg)の排除があり、その結果、T細胞の増殖とエフェクター機能が促進され得る。
【0109】
図4に示されているように、抗CD38抗体は、以下の:(a) その結果、細胞におけるmAb機構を最小にするCD38dim MM細胞のクローン選択;(b) 顆粒球及び単球によるCD38エンドサイトーシス、トロゴサイトーシスを介した、並びにアデノシン産生と免疫抑制に寄与するCD38発現性微小胞の放出を介した、CD38の削減;(c) 骨髄由来幹/ストロマ細胞(BMSC)の細胞内経路の下方制御、T細胞におけるエフェクター記憶T細胞、M1マクロファージ、及び共刺激CD28発現の減少による免疫調節効果;(d) CDCを予防するMM細胞におけるCD46及び膜結合補体阻害タンパク質(CD55及びCD59)の過剰発現;(e) 腫瘍における免疫チェックポイントシグナル調節タンパク質α(SIRP)を認識するCD47のMM細胞過剰発現、その結果、抗体依存性細胞傷害性食作用(ADCP)の阻害;及び(f) フラトリサイドADCCによるCD38+NK細胞の喪失、を含めたいくつかの耐性機構を誘発し得る。
【0110】
ヒトCD38の一次アミノ酸配列は、表2の配列番号1に規定される
表2
【表2】
【0111】
いくつかの実施形態において、本開示は、抗CD38抗体及びその抗原結合部分を提供する。非限定的な例として、本開示は、表3に配列番号2~30と記載されている抗CD38重鎖及び軽鎖可変領域アミノ酸配列を提供する。
【0112】
いくつかの実施形態において、本開示は、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3と示される3つの相補性決定領域(CDR)を含む重鎖可変領域を含み、ここで、該HCDR1、HCDR2、及びHCDR3が、それぞれ、以下の:配列番号64、65、及び66;配列番号64、83、及び84;配列番号64、65、及び85;及び配列番号64、65、及び86、から選択される、抗CD38抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0113】
いくつかの実施形態において、本開示は、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3と示される3つのCDRを含む軽鎖可変領域を含み、ここで、該LCDR1、LCDR2、及びLCDR3が、それぞれ、以下の:配列番号61、62、及び63;配列番号76、77、及び78;配列番号79、80、及び81;及び配列番号82、62、及び78、から選択される、抗CD38抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0114】
いくつかの実施形態において、本開示は、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3と示される3つの相補性決定領域(CDR)を含む重鎖可変領域、ここで、該HCDR1、HCDR2、及びHCDR3が、それぞれ、以下の:配列番号64、65、及び66;配列番号64、83、及び84;配列番号64、65、及び85;及び配列番号64、65、及び86、から選択され;並びにLCDR1、LCDR2、及びLCDR3と示される3つのCDRを含む軽鎖可変領域、ここで、該LCDR1、LCDR2、及びLCDR3が、それぞれ、以下の:配列番号61、62、及び63;配列番号76、77、及び78;配列番号79、80、及び81;及び配列番号82、62、及び78、から選択される、を含む、抗CD38抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0115】
いくつかの実施形態において、本開示は、配列番号12~16のうちのいずれか1つに対して少なくとも85%(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)の同一性を有するアミノ酸配列又はその抗原結合部分を含む重鎖配列、及び配列番号7~11のうちのいずれか1つに対して少なくとも85%(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)の同一性を有するアミノ酸配列又はその抗原結合部分を含む軽鎖配列、を含む、抗CD38抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0116】
いくつかの実施形態において、本開示は、それぞれ、以下の:配列番号2と3;配列番号7と12;配列番号7と13;配列番号7と14;配列番号7と15;配列番号7と16;配列番号8と12;配列番号8と13;配列番号8と14;配列番号8と15;配列番号8と16;配列番号9と12;配列番号9と13;配列番号9と14;配列番号9と15;配列番号9と16;配列番号10と12;配列番号10と13;配列番号10と14;配列番号10と15;配列番号10と16;配列番号11と12;配列番号11と13;配列番号11と14;配列番号11と15;又は配列番号11と16、を含む軽鎖配列及び重鎖配列を含む、抗CD38抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0117】
いくつかの実施形態において、本開示は、少なくとも1つの可変重鎖のみの単一ドメイン又はその抗原結合部分を含み、ここで、該少なくとも1つの可変重鎖のみの単一ドメインが、それぞれ、以下の:配列番号67、68、及び69;配列番号67、87、及び69;配列番号67、88、及び69;配列番号67、89、及び69;配列番号67、68、及び90;配列番号70、91、及び72;配列番号70、92、及び72;配列番号70、93、及び72;配列番号94、95、及び96;配列番号70、71、及び97;配列番号73、98、及び75;配列番号73、99、及び75;配列番号73、100、及び75;配列番号73、101、及び102;並びに配列番号73、103、及び104、から選択される3つのCDR(HCDR1、HCDR2、及びHCDR3)を含む、抗CD38抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0118】
いくつかの実施形態において、本開示は、少なくとも1つの可変重鎖のみの単一ドメイン又はその抗原結合部分を含み、ここで、該少なくとも1つの可変重鎖のみの(VHO)単一ドメインが、配列番号4及び17~30のうちのいずれか1つに対して少なくとも85%(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)の同一性を有するアミノ酸配列又はその抗原結合部分を含む、抗CD38抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0119】
本開示の抗CD38抗体は、2本の重鎖及び2本の軽鎖を含む全長抗体を包含する。抗体は、ヒト又はヒト化キメラ抗体であってもよい。ヒト化抗体は、本明細書に使用する場合、キメラ抗体及びCDRグラフト抗体を含む。キメラ抗体は、ヒト定常領域に連結された非ヒト抗体可変領域を含む抗体である。CDRグラフト抗体は、ヒト「レシピエント」抗体由来のフレームワーク領域に連結された非ヒト「ドナー」抗体由来のCDRを含む抗体である。例示的なヒト又はヒト化抗体は、IgG、IgM、IgE、IgA及びIgD抗体を含む。本抗体は、いずれかのクラス(IgG、IgM、IgE、IgGA、IgDなど)又はアイソタイプのものであってもよい。例えば、ヒト抗体は、アイソタイプIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4のうち少なくとも1つなど、IgG Fcドメインを含むことができる。
【0120】
いくつかの実施形態において、抗CD38抗体又はその抗原結合部分は、抗体全体、抗体断片、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、コンジュゲート、抗体模倣体、及び脱フコシル化抗体から成る群から選択される。更なる例では、抗CD38抗体断片は、UniBody、可変重鎖のみの単一ドメイン抗体、及びNanobodyから成る群から選択される。例えば、抗CD38抗体断片は、配列番号17~30に記載されるNanobodyである。いくつかの例では、抗CD38抗体断片は、単一ドメインVHH、単一ドメインVHO、Affibody、DARPin、Anticalin、Avimer、Versa body、Duocalinから成る群から選択される。
抗CD3抗体
【0121】
いくつかの実施形態において、本開示は、抗CD3抗体とその抗原結合部分を提供する。非限定的な例として、本開示は、表4に配列番号31~41として記載された抗CD3アミノ酸配列を提供する。
【0122】
いくつかの実施形態において、本開示は、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3と示される3つの相補性決定領域(CDR)を含む重鎖可変領域を含み、ここで、該HCDR1、HCDR2、及びHCDR3が、それぞれ、以下の:配列番号105、108、及び107;配列番号105、109、及び107;配列番号105、110、及び107;並びに配列番号118、119、及び120、から選択される、抗CD3抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0123】
いくつかの実施形態において、本開示は、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3と示される3つのCDRを含む軽鎖可変領域を含み、ここで、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3が、それぞれ、以下の:配列番号114、112、及び113;並びに配列番号115、116、及び117、から選択される、抗CD3抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0124】
いくつかの実施形態において、本開示は、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3と示される3つの相補性決定領域(CDR)を含む重鎖可変領域、ここで、該HCDR1、HCDR2、及びHCDR3が、それぞれ、以下の:配列番号105、108、及び107;配列番号105、109、及び107;配列番号105、110、及び107;並びに配列番号118、119、及び120、から選択され;並びにLCDR1、LCDR2、及びLCDR3と示される3つのCDRを含む軽鎖可変領域、ここで、該LCDR1、LCDR2、及びLCDR3が、それぞれ、以下の:配列番号114、112、及び113;並びに配列番号115、116、及び117、から選択される、を含む、抗CD3抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0125】
いくつかの実施形態において、本開示は、配列番号32~34及び39のうちのいずれか1つに対して少なくとも85%の同一性を有するアミノ酸配列又はその抗原結合部分を含む重鎖配列、及び配列番号36~38のうちのいずれか1つに対して少なくとも85%(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%)の同一性を有するアミノ酸配列又はその抗原結合部分を含む軽鎖配列、を含む、抗CD3抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0126】
いくつかの実施形態において、本開示は、それぞれ、以下の:配列番号39と38;配列番号41と40;配列番号31と35;配列番号31と36;配列番号31と37;配列番号32と35;配列番号32と36;配列番号32と37;配列番号33と35;配列番号33と36;配列番号33と37;配列番号34と35;配列番号34と36;又は配列番号34と37、を含む軽鎖配列及び重鎖配列を含む、抗CD3抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0127】
本開示の抗CD3抗体は、2本の重鎖と2本の軽鎖を含む完全長抗体を包含する。抗体は、ヒトであるか、又はヒト化抗体であり得る。
【0128】
いくつかの実施形態において、抗CD3抗体又はその抗原結合部分は、抗体全体、抗体断片、ヒト抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、コンジュゲート、抗体模倣体、及び脱フコシル化抗体から成る群から選択される。更なる例では、抗CD3抗体断片は、UniBody、可変重鎖のみの単一ドメイン抗体、及びNanobodyから成る群から選択される。いくつかの例では、抗CD3抗体断片は、単一ドメインVHH、単一ドメインVHO、Affibody、DARPin、Anticalin、Avimer、Versa body、Duocalinから成る群から選択される。
二重特異性CD3×CD38抗体
【0129】
いくつかの実施形態において、本開示は、CD38関連経路に連結されたタンパク質、並びにCD3T細胞活性を活性化できるタンパク質を同時に標的化するCD3×CD38二重特異性抗体を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、シールディングドメインを含むCD3×CD38二重特異性抗体を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、シールディングドメインを伴わないCD3×CD38二重特異性抗体を提供する。CD3及びCD38標的は、病理部位と正常組織では示差的な発現レベルを有する。シールドされたCD3×CD38二重特異性抗体は、結合ドメイン上のマスキングドメインの阻害作用により正常組織において負活性のままである。マスキングドメインは、疾患部位でプロテアーゼによって切り落とされ、そして、シールドされていたCD3×CD38二重特異性抗体は活性CD3×CD38二重特異性抗体に変換される。
【0130】
いくつかの実施形態において、本開示は、ヒトCD38とCD3を同時に標的化し、そして結合し、高親和性を有し、及びタンパク質レベルで効果的にCD38タンパク質を遮断することができる、二重特異性抗体を提供する。二重特異性抗体は、CD3及びCD38タンパク質の両方に結合し、かつ、他方のタンパク質の結合に影響せずに、一方のタンパク質に結合する、すなわち、CD3とCD38を同時に結合する能力を有する。本明細書に開示する二重特異性抗体は、CD3とCD38を同時に標的とする抗体が存在しないギャップを埋める。本明細書に開示する二重特異性抗体は、血管内皮細胞、ヒト肺癌細胞、ヒト乳癌細胞、ヒト膵臓癌細胞、及び/又はヒト胃癌細胞の増殖などのCD38介在性疾患又は障害を阻害する。
【0131】
いくつかの実施形態において、本開示は、以下の:
第一の結合アームであって、以下の:
N末端からC末端に向かって、シールドA、プロテアーゼ配列A、及びIgG重鎖又はその抗原結合部分を含む、第一の重鎖融合タンパク質;及び
N末端からC末端に向かって、シールドB、プロテアーゼ配列B、及びIgG軽鎖又はその抗原結合部分を含む第一の軽鎖融合タンパク質、
を含むもの;
ここで、該第一の結合アームのIgG重鎖又はその抗原結合部分及びIgG軽鎖又はその抗原結合部分が、CD3関連経路を標的化でき;並びに
第二の結合アームであって:
N末端からC末端に向かって、シールドC、プロテアーゼ配列C、及びIgG重鎖又はその抗原結合部分を含む、第二の重鎖融合タンパク質;及び
N末端からC末端に向かって、シールドD、プロテアーゼ配列D、及びIgG軽鎖又はその抗原結合部分を含む、第二の軽鎖融合タンパク質、
を含むもの;
ここで、該第二の結合アームのIgG重鎖又はその抗原結合部分及びIgG軽鎖又はその抗原結合部分が、CD38関連経路を標的化できる、
を含む二重特異性抗体を提供する。
シールドA~Dは、互いに同じであることも又は異なることもでき、かつ、プロテアーゼ配列A~Dは、互いに同じであることも又は異なることもできる。
【0132】
いくつかの実施形態において、本開示は、以下の:
第一の結合アームであって、以下の:
N末端からC末端に向かって、シグナル配列A-シールドA-リンカーA-プロテアーゼ配列A-リンカーB-IgG重鎖又はその抗原結合部分を含む、第一の重鎖融合タンパク質;及び
N末端からC末端に向かって、シグナル配列B-シールドB-リンカーC-プロテアーゼ配列B-リンカーD-IgG軽鎖又はその抗原結合部分を含む第一の軽鎖融合タンパク質、
を含むもの;
ここで、該第一の結合アームのIgG重鎖又はその抗原結合部分及びIgG軽鎖又はその抗原結合部分が、CD3関連経路を標的化でき;並びに
第二の結合アームであって:
N末端からC末端に向かって、シグナル配列C-シールドC-リンカーE-プロテアーゼ配列C-リンカーF-IgG重鎖又はその抗原結合部分を含む、第二の重鎖融合タンパク質;及び
N末端からC末端に向かって、シグナル配列D-シールドD-リンカーG-プロテアーゼ配列D-リンカーH-IgG軽鎖又はその抗原結合部分を含む、第二の軽鎖融合タンパク質、
を含むもの;
ここで、該第二の結合アームのIgG重鎖又はその抗原結合部分及びIgG軽鎖又はその抗原結合部分が、CD38関連経路を標的化できる、
を含む二重特異性抗体を提供する。
シグナル配列A~Dは、互いに同じであることも又は異なることもでき、かつ、リンカーA~Hは、互いに同じであることも又は異なることもできる。
【0133】
いくつかの実施形態において、本開示は、以下の:
第一の結合アームであって、以下の:
N末端からC末端に向かって、シールドA、プロテアーゼ配列A、及びIgG重鎖又はその抗原結合部分を含む、第一の重鎖融合タンパク質;及び
N末端からC末端に向かって、シールドB、プロテアーゼ配列B、及びIgG軽鎖又はその抗原結合部分を含む第一の軽鎖融合タンパク質、
を含むもの;
ここで、該第一の結合アームのIgG重鎖又はその抗原結合部分及びIgG軽鎖又はその抗原結合部分が、CD3関連経路を標的化でき;並びに
第二の結合アームであって:
N末端からC末端に向かって、シールドC、プロテアーゼ配列C、及び(少なくとも1つの可変重鎖のみの(VHO)単一ドメイン又はその抗原結合部分を含む)IgG重鎖を含む、第二の重鎖融合タンパク質、
を含むもの;
ここで、該少なくとも1つの可変重鎖のみの単一ドメイン又はその抗原結合部分が、CD38関連経路を標的化できる、
を含む二重特異性抗体を提供する。
シールドA~Cは、互いに同じであることも又は異なることもでき、かつ、プロテアーゼ配列A~Cは、互いに同じであることも又は異なることもできる。
【0134】
いくつかの実施形態において、本開示は、以下の:
第一の結合アームであって、以下の:
N末端からC末端に向かって、シグナル配列A-シールドA-リンカーA-プロテアーゼ配列A-リンカーB-IgG重鎖又はその抗原結合部分を含む、第一の重鎖融合タンパク質;及び
N末端からC末端に向かって、シグナル配列B-シールドB-リンカーC-プロテアーゼ配列B-リンカーD-IgG軽鎖又はその抗原結合部分を含む第一の軽鎖融合タンパク質、
を含むもの;
ここで、該第一の結合アームのIgG重鎖又はその抗原結合部分及びIgG軽鎖又はその抗原結合部分が、CD3関連経路を標的化でき;並びに
第二の結合アームであって:
N末端からC末端に向かって、シグナル配列C-シールドC-リンカーE-プロテアーゼ配列C-リンカーF-(少なくとも1つの可変重鎖のみの単一ドメイン又はその抗原結合部分を含む)IgG重鎖を含む、第二の重鎖融合タンパク質、
を含むもの;
ここで、少なくとも1つの可変重鎖のみの単一ドメインが、CD38関連経路を標的化できる、
を含む二重特異性抗体を提供する。
シグナル配列A~Cは、互いに同じであることも又は異なることもでき、かつ、リンカーA~Fは、互いに同じであることも又は異なることもできる。
【0135】
いくつかの実施形態において、二重特異性抗体は、2セットの軽鎖融合と2セットの重鎖融合体から成る。例えば、それぞれの親抗体からの軽鎖融合体及び重鎖融合体の構造は、
図5に示されている。例えば、二重特異性抗体は、N末端からC末端に向かって:シグナル配列A-シールドA-リンカーA-プロテアーゼ配列A-リンカーB-IgG1重鎖のアミノ酸配列を含むヒトIgG1重鎖融合体鎖;及びN末端からC末端に向かって、シグナル配列B-シールドB-リンカーB-プロテアーゼB-リンカーC-IgG1軽鎖のアミノ酸配列を含むヒトIgG1軽鎖融合体、を含んでもよい。シグナル配列Aは、シグナル配列Bと同じであることも又は異なることもできる。シールドAは、シールドBと同じであることも又は異なることもできる。リンカーAは、リンカーBと同じであることも又は異なることもできる。プロテアーゼ配列Bは、プロテアーゼ配列Aと同じであることも又は異なることもできる。いくつかの実施形態において、二重特異性抗体は、
図6A及び6Bで例示される2セットの重鎖融合体と1セットの軽鎖融合体から成る。
【0136】
本開示は、制御されたFabアーム交換によって又は共発現によってCH1、CH2、及びCH3ドメインにおける十分に確立された点突然変異を使用して作り出され得る二重特異性抗体を提供する。いくつかの実施形態において、すべての構築物は、それぞれの親抗体の点突然変異での選択に関して好みがないように、左右対称である。
【0137】
図5~7は、マスキングドメインを有する又は有していない本明細書に開示した二重特異性抗体のいくつかの形式を例示する。
図5Aは、「第一のアーム」(CD3を標的化)と「第二のアーム」(CD38を標的化)の注釈で示した2つの異なるセットの重鎖(HC)と軽鎖(LC)の組み合わせを有する二重特異性抗体を示す。
図5Bは、二重特異性AbのCD3アーム(第一のアーム)がHCとLCを有するヒトIgG、ここで、該軽鎖融合体は、N末端からC末端に向かって:マスクドメインB、プロテアーゼ切断可能リンカーB、LC可変領域VL、及び定常軽鎖CLが(例えば、Cλ)を含み、かつ、ここで、該重鎖融合体は、N末端からC末端に向かって:マスクドメインA、プロテアーゼ切断可能リンカーA、HCが可変領域VH、CH1ドメイン、及びFc領域を含む、を含み得ることを示す。
図5Cは、二重特異性AbのCD38結合アーム(第二のアーム)がHCとLCを有するヒトIgG、ここで、該軽鎖融合体は、N末端からC末端に向かって:マスクドメインB、プロテアーゼ切断可能リンカーB、LC可変領域VL、及び定常軽鎖CL(例えば、Cκ又はCλ)を含み、かつ、ここで、該重鎖は、N末端からC末端に向かって:マスクドメインA、プロテアーゼ切断可能リンカーA、タンデムのHC可変領域VH又はVHO、CH1ドメイン、及びFc領域を含む、を含み得ることを示す。Fc領域は更に、ホーミングドメイン(HD)に遺伝的に融合されてもよい。異なる又は同じリンカーが、マスクAとプロテアーゼ切断可能リンカーA、プロテアーゼ切断可能リンカーAとVH、及びFcドメインとHDドメインの間に配置され得る。異なる又は同じリンカーが、マスクBとプロテアーゼ切断可能リンカーB、プロテアーゼ切断可能リンカーBとタンデムのVH又はVHO、及びFcドメインとHDドメインの間に置かれる。重鎖と軽鎖は、同じであるか又は異なる相補的なマスクドメイン、及びプロテアーゼ切断可能リンカーを有し得る。
【0138】
図6Aは、二重特異性抗体が「第二のアーム」、CD38を標的化するアーム内に単一のVHOを含むことを示し、及び
図6Bは、CD38結合アーム(第二のアーム)が一つに融合した2つのVHOを含むことを示す。
図6Cは、
図6A及び6Bで例示した二重特異性AbのCD3アーム(第一のアーム)が
図5Bで例示したHC及びLCを有するヒトIgGを含み得ることを示す。
図6Cはまた、CD38結合アームが、末端からC末端に向かって:マスクドメインA、プロテアーゼ切断可能リンカーA、HC VHO可変領域、CH1ドメイン、及びFc領域を含むことを示す。リンカードメインによって切り離された2以上のVHO融合体は、より高い特異性のために存在し得る。CD38結合アームは、CD3結合アームより異なるリンカー及びマスキングドメインを有し得る。
【0139】
図7は、CD38×CD3二重特異性抗体からのマスキングドメインの除去を示す略図である。腫瘍内微小環境において高濃度で存在するプロテアーゼは、プロテアーゼ切断可能リンカーに沿って切断して、シールドされた二重特異性抗体を活性二重特異性抗体に変換することができる。
【0140】
例えば、ヒトIgG1のCH1-ヒンジ-CH2-CH3ドメイン又はヒトIgG1のヒンジ-CH2-CH3ドメインのいずれかに連結されたヒトVHO単一ドメインを含む、本明細書に開示した二重特異性抗体のVHOドメインの遺伝子融合は、
図5及び6に示されているように、従来の抗体のサイズの半分(75対150kDa)で高度に可溶性のキメラ重鎖抗体をもたらす。斯かる構築物は、従来の抗体よりよく組織に浸透し得る。加えて、本明細書に開示した二重特異性分子は、
図7に示されているように、正常組織でCD3及びCD38の結合エピトープをシールドすることによって高い毒性への懸念を更に緩和する、疾患組織におけるその追加的な腫瘍細胞増殖阻害有効性をうまく利用するであろう。そのため、本明細書に開示した二重特異性抗体は、低減された安全に対する懸念を伴っているが、CD38過剰発現に根差した腫瘍学及び他の障害のためのCD38の有効な標的化を担い、多くの癌、並びに他の非腫瘍適応症の治療法との関連において、CD38の役割を拡大する。
【0141】
本明細書に開示した二重特異性抗体のいくつかの実施形態において、CD3を標的化する結合アームは、1の結合価を有する。二重特異性抗体は、1価のCD3結合(すなわち、CD3のエピトープに結合する1つのFabアーム)を有するように設計されるのが好ましい。二価のCD3結合は、T細胞再指向の有効性を制限するであろうエフェクター細胞における過度の活性化誘発細胞死に関連する。加えて、二価のCD3再指向分子は、患者において全身的毒性を増強し得る腫瘍抗原非依存型の免疫エフェクター細胞活性化をもたらす。抗CD3抗体Fabアームの高い親和性の使用はまた、毒性を増強し得る。抗CD3Fab又はscFvの高親和性バリアントは、もたらされる大規模なサイトカイン放出が原因で、通常はカニクイザルにおいて許容されるのは難しい。CD3への高親和性はまた、サイトカイン放出症候群の高いリスクにつながる、腫瘍からCD3豊富組織への二重特異性抗体の生体分布を移行させた。よって、抗CD3アームの結合親和力が抗CD38アームのものより低いことは、非常に望ましい。二価の抗CD3剤は、CD3に結合する際に親和性を増強することができ、腫瘍以外のCD3陽性細胞からのサイトカイン放出症候群の増大につながる可能性もある。
【0142】
本明細書に開示した二重特異性抗体のいくつかの実施形態において、CD38などのCD38関連経路を標的化する第二の結合アームは、タンデムで、2つ又は3つなど、2~4つの、IgG可変重鎖のみの単一ドメイン又はその抗原結合部分を含んでもよく、ここで、該2つ又は3つのIgG可変重鎖のみの単一ドメイン又はその抗原結合部分は、任意選択で、1若しくは複数のリンカーを介して接続される。CD38などのCD38関連経路を標的化する第二の結合アームは、一価、二価、三価、四価などであり得る。例えば、引き付けの特異性を高めるために、二重特異性抗体においてCD38に関して二重、三重又は四重のエピトープ認識であり得る。
【0143】
抗CD3又は抗CD38生物製剤薬物の長期投与は、患者にとって大きなリスク因子をもたらす。いくつかの実施形態において、本開示は、それらのそれぞれのエピトープへのFabアーム引き付けを妨げるための分子間相互作用を形成できるシールドの組み合わせを提供する。シールドは、重鎖及び/又は軽鎖ドメインに融合できる。シールドは、Fab立体障害によってCDR領域が抗原に結合することを妨げることができる。シールドの存在は、本明細書に開示したCD3×CD38二重特異性抗体の全身的毒性を最小にすることができ、かつ、二重特異性抗体のそれぞれのアームの安全性プロフィール及び治療濃度域を増強し得る。シールドは、腫瘍内微小環境内で見られるプロテアーゼ及び/又はその場に特異的な他の酵素によって取り除かれ得る。本明細書に開示した二重特異性抗体のシールディングドメイン(シールド、マスク、又はマスキングドメインとも呼ばれる)、例えば、シールドA、B、C、D、E、及びFは、同じであることも又は異なることもできる。いくつかの実施形態において、シールドA、シールドB、シールドC、シールドD、シールドE、及びシールドFは、配列番号42~52に規定されるアミノ酸配列からそれぞれ独立して選択される。
【0144】
本明細書に開示した二重特異性抗体のプロテアーゼ配列、例えば、プロテアーゼ配列A、B、C、D、E、及びFは、同じであることも又は異なることもできる。いくつかの実施形態において、プロテアーゼ配列A、プロテアーゼ配列B、プロテアーゼ配列C、プロテアーゼ配列D、プロテアーゼ配列E、及びプロテアーゼ配列Fは、配列番号53~60に規定されるアミノ酸配列からそれぞれ独立して選択される。
【0145】
本明細書に開示した二重特異性抗体のペプチドリンカー、例えば、リンカーA、B、C、D、E、及びFは、同じであることも又は異なることもできる。
【0146】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示した二重特異性抗体は、配列番号3及び12~16から選択される重鎖配列と、配列番号2及び7~11から選択される軽鎖配列とを含む。
【0147】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示した二重特異性抗体は、CD38を標的化(tarting)する複数の結合アームを含んでもよい。例えば、本明細書に開示した二重特異性抗体は、配列番号2を含む軽鎖と配列番号3を含む重鎖を含む第一のCD38結合アーム;配列番号7~11から選択される軽鎖配列及び配列番号12~16から選択される重鎖配列を含む第二のCD38結合アームを含む。
【0148】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示した二重特異性抗体は、CD38を標的化し得る結合アームを含み、ここで、該結合アームは、配列番号2~6から選択されるヒトIgG1重鎖及び軽鎖配列を含む。
リーダー配列
【0149】
特定の実施形態において、リーダーペプチドは、細胞培養上清中に分泌されたそれぞれの親抗体タンパク質として、本明細書に記載した抗体、例えば、シールドされたCD3×CD38二重特異性抗体、の分泌を駆動するように組み込まれる。任意の既知の分泌タンパク質/ペプチドのための任意のリーダーペプチドも使用できる。
【0150】
本明細書に使用される場合、「リーダーペプチド」、「リードペプチド」、又は「シグナルペプチド」としては、通例、長さが16~30アミノ酸の短ペプチドが挙げられ、そしてそれは、分泌経路に向かう予定になっている新規合成タンパク質のほとんどでN末端に存在する。リードペプチドは配列が極度に異種であり、かつ、多くの原核及び真核リードペプチドが異種の間でさえ機能上交換可能であるが、タンパク質分泌の効率は、リード/シグナルペプチドの配列によって強く決定され得る。
【0151】
特定の実施形態において、リーダーペプチドは、特定の細胞小器官(小胞体、ゴルジ体、又はエンドソームなど)のいずれかの内側に常駐するか、細胞から分泌されたか、又はほとんどの細胞膜の中に挿入されたタンパク質に由来する。
【0152】
特定の実施形態において、リーダーペプチドは、真核生物タンパク質に由来する。
【0153】
特定の実施形態において、リーダーペプチドは、分泌タンパク質、例えば、細胞の外に分泌されたタンパク質、に由来する。
【0154】
特定の実施形態において、リーダーペプチドは、膜貫通タンパク質に由来する。
【0155】
特定の実施形態において、リーダーペプチドは、シグナルペプチダーゼによって認識され、そして、切断されるアミノ酸の範囲を含んでいる。
【0156】
特定の実施形態において、リーダーペプチドは、シグナルペプチダーゼの切断認識配列を含んでいない。
【0157】
特定の実施形態において、リーダーペプチドは、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、単純ヘルペスウイルス糖タンパク質D(HSV gD)、成長ホルモン、サイトカイン、リポタンパク移行シグナル、CD2、CD3δ、CD3ε、CD3γ、CD3ζ、CD4、CD8α、CD19、CD28、4-1BB又はGM-CSFRのためのシグナルペプチド、或いはS.セレビシエ(S. cerevisiae)接合因子α-1シグナルペプチドである。
【0158】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載したリーダー配列は、これだけに限定されるものではないが、例えば、ヒトCD4又はCD8リーダー配列、非ヒト霊長目動物CD4又はCD8リーダー配列、齧歯動物CD4又はCD8リーダー配列などを含めた、哺乳動物CD4又はCD8リーダー配列であってもよい。いくつかの実施形態において、CD4又はCD8リーダーは、ヒトCD4又はCD8リーダー配列に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。
シールドされたCD3×CD38二重特異性抗体設計に適用できる抗CD3及び抗CD38抗体、並びに断片
【0159】
いくつかの実施形態において、本開示は、CD3×CD38二重特異性抗体設計のために抗CD3及び抗CD38抗体とその抗原結合断片を提供する。CD3及びCD38抗体又はその抗原結合断片のfabは、プロテアーゼ切断リンカー配列を介してシールドに取り付けられて、本明細書に開示したシールドされたCD3×CD38二重特異性抗体を作製できる。
【0160】
本開示のシールドされたCD3×CD38二重特異性抗体設計に適用できる抗CD3及び抗CD38抗体、並びに断片は、2本の重鎖及び2本の軽鎖を含む完全長抗体を包含する。抗体は、ヒト抗体であることも又はヒト化抗体であることもできる。
【0161】
いくつかの実施形態において、抗CD38抗体又は抗CD3抗体は、抗体全体、抗体断片、ヒト若しくはヒト化抗体、一本鎖抗体、コンジュゲート、抗体模倣体、及び脱フコシル化抗体から成る群から選択される。更なる例では、抗CD38又は抗CD3抗体断片は、UniBody、可変重鎖のみの単一ドメイン抗体、及びNanobodyから成る群から選択される。例えば、抗CD38抗体断片は、配列番号17~30に記載されるNanobodyである。いくつかの例では、抗CD38又は抗CD3抗体は、単一ドメインVHH、単一ドメインVHO、Affibody、DARPin、Anticalin、Avimer、Versa body、Duocalinから成る群から選択される。非限定的な例として、本開示は、表3に配列番号2~30と規定される抗CD38重鎖及び軽鎖可変領域アミノ酸配列を提供する。非限定的な例として、本開示は、表4に配列番号31~41と規定されるCD3構築物アミノ酸配列を提供する。本明細書に開示した二重特異性抗体は、表3及び4に規定されるアミノ酸配列の任意の好適な組み合わせを含んで作製できる。
表3
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【表3-6】
【表3-7】
表4
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【0162】
いくつかの実施形態において、本開示は、配列番号3及び12~16から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域、並びに配列番号2及び7~11から選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体によって認識されるヒトCD38上のエピトープに結合する、単離された抗CD38モノクローナル抗体、又はその抗原結合部分、抗体断片、或いは抗体模倣体を提供する。
【0163】
いくつかの実施形態において、本開示は、単一ドメインVHH、配列番号4~6及び17~30から選択されるアミノ酸配列を含むHC(重鎖)可変領域を含む単一ドメインVHO(可変重鎖のみ)ドメイン、Affibody、DARPin、Anticalin、Avimer、Versabody、並びにDuocalinから成る群から選択される抗CD38抗体を提供する。
【0164】
いくつかの実施形態において、本開示は、本明細書に開示した単離された抗CD38抗体、又は抗原結合部分、抗体断片、又は抗体模倣体、及び医薬として許容される担体を含む組成物を提供する。
【0165】
いくつかの実施形態において、本開示は、抗CD38単離抗体の重鎖若しくは軽鎖又は抗原結合部分、或いはヒトCD38上のエピトープを結合する抗体断片をコードする単離された核酸分子を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、斯かる核酸分子を含む発現ベクター、及び斯かる発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0166】
いくつかの実施形態において、本開示は、抗CD38抗体を調製する方法であって、抗CD38抗体をコードする1若しくは複数の核酸分子を含む宿主細胞を得;宿主細胞培養で宿主細胞を培養し;1若しくは複数の核酸分子が発現される、宿主細胞培養条件を提供し;そして、宿主細胞から又は宿主細胞培養物から抗体を回収することから成るステップを含む、前記方法を提供する。
【0167】
配列番号3及び12~16に規定された重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号2及び7~11に規定された軽鎖可変領域アミノ酸配列;並びに配列番号4~6及び17~30に規定された重鎖単一ドメイン可変領域アミノ酸配列から成る群から選択される、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む抗体によって認識されるヒトCD38上のエピトープを結合する、単離された抗CD38モノクローナル抗体又はその抗原結合部分、抗体断片、或いは抗体模倣体もまた説明している。
【0168】
配列番号3から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域と配列番号2に規定されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域を含む抗体によって認識される、配列番号1のアミノ酸配列を有するCD38ポリペプチド上のエピトープを結合する、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部分もまた本明細書に説明している。配列番号4~6及び17~30から選択されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を含む抗体によって認識される、配列番号1のアミノ酸配列を有するCD38ポリペプチド上のエピトープを結合する、単離されたモノクローナル単一ドメイン抗体又はその抗原結合部分もまた本明細書に説明している。
【0169】
以下の:配列番号12に規定される重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号7に規定される軽鎖可変領域アミノ酸配列セット;配列番号12に規定される重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号8に規定される軽鎖可変領域アミノ酸配列セット;配列番号12に規定される重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号9に規定される軽鎖可変領域アミノ酸配列セット;配列番号12に規定される重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号10に規定される軽鎖可変領域アミノ酸配列セット;配列番号12に規定される重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号11に規定される軽鎖可変領域アミノ酸配列セット;配列番号13に規定される重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号7に規定される軽鎖可変領域アミノ酸配列セット;配列番号13に規定される重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号8に規定される軽鎖可変領域アミノ酸配列セット;配列番号13に規定される重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号9に規定される軽鎖可変領域アミノ酸配列セット;配列番号13に規定される重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号10に規定される軽鎖可変領域アミノ酸配列セット;配列番号13に規定される重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号11に規定される軽鎖可変領域アミノ酸配列セット;配列番号14に規定される重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号7に規定される軽鎖可変領域アミノ酸配列セット;配列番号14に規定される重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号8に規定される軽鎖可変領域アミノ酸配列セット;配列番号14に規定される重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号9に規定される軽鎖可変領域アミノ酸配列セット;配列番号14に規定される重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号10に規定される軽鎖可変領域アミノ酸配列セット;配列番号14に規定される重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号11に規定される軽鎖可変領域アミノ酸配列セット;配列番号15に規定される重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号7に規定される軽鎖可変領域アミノ酸配列セット;配列番号15に規定される重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号8に規定される軽鎖可変領域アミノ酸配列セット;配列番号15に規定される重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号9に規定される軽鎖可変領域アミノ酸配列セット;配列番号15に規定される重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号10に規定される軽鎖可変領域アミノ酸配列セット;配列番号15に規定される重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号11に規定される軽鎖可変領域アミノ酸配列セット;配列番号16に規定される重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号7に規定される軽鎖可変領域アミノ酸配列セット;配列番号16に規定される重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号8に規定される軽鎖可変領域アミノ酸配列セット;配列番号16に規定される重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号9に規定される軽鎖可変領域アミノ酸配列セット;配列番号16に規定される重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号10に規定される軽鎖可変領域アミノ酸配列セット;及び配列番号16に規定される重鎖可変領域アミノ酸配列及び配列番号11に規定される軽鎖可変領域アミノ酸配列セット、から成る群から選択される重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む抗体によって認識されるヒトCD38上のエピトープを結合する、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部分、抗体断片、或いは抗体模倣体もまた説明している。
【0170】
以下の:配列番号31及び配列番号35;配列番号31及び配列番号36;配列番号31及び配列番号37;配列番号32及び配列番号35;配列番号32及び配列番号36;配列番号32及び配列番号37;配列番号33及び配列番号35;配列番号33及び配列番号36;配列番号33及び配列番号37;配列番号34及び配列番号35;配列番号34及び配列番号36;配列番号34及び配列番号37;配列番号39及び配列番号38;配列番号41及び配列番号40、に規定される重鎖及び軽鎖可変領域アミノ酸配列から成る群から選択される重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む抗体によって認識されるヒトCD3上のエピトープを結合する、単離されたモノクローナル抗体又はその抗原結合部分、抗体断片、或いは抗体模倣体もまた説明している。
【0171】
いくつかの実施形態において、本開示は、本開示の単離された抗CD38の重鎖若しくは軽鎖又は抗CD3抗体、或いはその抗原結合部分をコードする単離された核酸分子を提供し、そして、更なる態様において、斯かる核酸を含む発現ベクター及び斯かる発現ベクターを含む宿主細胞を包含してもよい。
【0172】
本開示の別の実施形態は、開示の抗CD38又は抗CD3抗体、或いはその本抗原結合部分を発現するハイブリドーマである。
【0173】
本開示の他の態様は、本開示の抗CD38又は抗CD3抗体を作製する方法であって、
CD38ペプチド又はCD3ペプチド;CD38タンパク質又はCD3タンパク質;或いはCD38ドメイン又はCD3ドメインを用いて動物を免疫し、前記の動物のB細胞からmRNAを回収し;そして、前記mRNAをcDNAに変換することから成るステップを含む、前記方法に向けられる。
【0174】
いくつかの実施形態において、本開示は、抗CD38抗体又は抗CD3抗体を調製する方法であって、本開示の抗CD38抗体又は抗CD3抗体をコードする1若しくは複数の核酸分子を含む宿主細胞を得;宿主細胞培養で宿主細胞を培養し;1若しくは複数の核酸分子が発現される、宿主細胞培養条件を提供し;そして、宿主細胞から又は宿主細胞培養物から抗体を回収することから成るステップを含む、前記方法を提供する。
【0175】
いくつかの実施形態において、本開示は、ファージで前記cDNAを(前記cDNAによってコードされた抗CD38抗体又は抗CD3抗体が、前記ファージの表面に提示されるように)発現させ;抗CD38抗体又は抗CD3抗体を提示するファージを選択し;前記抗CD38免疫グロブリンと前記抗CD3免疫グロブリンをコードする前記選択されたファージから核酸分子を回収し;宿主細胞において前記回収した核酸分子を発現させ;そして、前記宿主細胞からそれぞれ、CD38とCD3を結合する抗体を回収する、抗CD38若しくは抗CD3モノクローナル抗体又はその抗原結合部分、抗体断片、或いは抗体模倣体をコードするcDNAを発現する方法を提供する。
【0176】
非限定的な例として、本開示は、CD3結合構築物の調製を提供し、ここで、宿主細胞は、以下の:配列番号31と配列番号35;配列番号31と配列番号36;配列番号31と配列番号37;配列番号32と配列番号35;配列番号32と配列番号36;配列番号32と配列番号37;配列番号33と配列番号35;配列番号33と配列番号36;配列番号33と配列番号37;配列番号34と配列番号35;配列番号34と配列番号36;配列番号34と配列番号37;配列番号38と配列番号39;又は配列番号40と配列番号41、の組み合わせをコードする核酸を用いて同時形質移入され得る。
【0177】
非限定的な例として、本開示は、CD38結合構築物を提供し、ここで、宿主細胞は、以下の:配列番号2と配列番号3、配列番号4単独、配列番号5単独、配列番号6単独、配列番号7と配列番号12;配列番号7と配列番号13;配列番号7と配列番号14;配列番号7と配列番号15;配列番号7と配列番号16;配列番号31と配列番号37;配列番号8と配列番号12;配列番号8と配列番号13;配列番号8と配列番号14;配列番号8と配列番号15;配列番号8と配列番号16;配列番号9と配列番号12;配列番号9と配列番号13;配列番号9と配列番号14;配列番号9と配列番号15;配列番号9と配列番号16;配列番号10と配列番号12;配列番号10と配列番号13;配列番号10と配列番号14;配列番号10と配列番号15;配列番号10と配列番号16;配列番号11と配列番号12;配列番号11と配列番号13;配列番号11と配列番号14;配列番号11と配列番号15;又は配列番号11と配列番号16、をコードする核酸を用いて同時形質移入され得る。CD38 VHOアームは、配列番号17~30のうちのいずれか1つとして単独で発現され得る。CD38結合アームは、配列番号4-リンカー-配列番号5;配列番号4-リンカー-配列番号6、配列番号5-リンカー配列番号4、配列番号5-リンカー-配列番号6、配列番号6リンカー-配列番号4、配列番号6-リンカー配列番号5、並びに配列番号17~30から選択される配列の任意の対から成るタンデム配列を有し得る。
【0178】
いくつかの実施形態は、配列番号31~34に規定されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域;及び配列番号35~40に規定されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域から選択されるCD3を標的化する抗体配列;並びに配列番号2~30に規定されるアミノ酸配列から選択されるCD38を標的化する抗体配列を含む二重特異性抗体を提供する。
抗CD38、抗CD3、及びCD3×CD38二重特異性抗体のFc領域
【0179】
本明細書に開示した抗CD38、抗CD3、及びCD3×CD38二重特異性抗体は、改変Fc領域を含んでもよく、ここで、該改変Fc領域は、天然Fc領域に対して、例えば、二重特異性抗体の半減期を延長するために、タンパク分解に対する二重特異性抗体の耐性を高めるために、二重特異性抗体のエフェクター機能性を低減するために、Fcヘテロ二量化によって二重特異性抗体の作出を容易にするために、二重特異性抗体の多量体化を容易にするために、及び/又は二重特異性抗体の製造及び薬物安定性を改善するために、少なくとも1つのアミノ酸修飾を含む。
【0180】
いくつかの実施形態において、Fcドメインは、免疫細胞減少及びサイトカイン放出症候群を引き起こし得るエフェクター機能活性を最小にするようにFcドメインのサイレンシングを可能にするために変更される。
【0181】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載した抗CD38、抗CD3、及びCD3×CD38二重特異性抗体は、改変されたFc領域を備えており、ここで、天然に存在するFc領域は、生物学的環境において天然の親抗体と比較して抗体の半減期、例えば、血清半減期又はインビトロアッセイによって測定される半減期を延長するように改変されている。単独で又は組み合わせて作製することができる例示的な変異は、T250Q、M252Y、I253A、S254T、T256E、P257I、T307A、D376V、E380A、M428L、H433K、N434S、N434A、N434H、N434F、H435A及びH435R変異である。
【0182】
特定の実施形態において、半減期の延長は、IgG1FcにおけるM252Y/S254T/T256E変異を操作することにより実現することができ、残基ナンバリングはEUインデックスに従う(Dall'Acqua, Kiener et al. 2006)。
【0183】
特定の実施形態において、半減期の延長は、IgG1FcにおけるM428L/N434S変異を操作することにより実現することもできる(Zalevsky, Chamberlain et al. 2010)。
【0184】
特定の実施形態において、半減期の延長は、IgG1FcにおけるT250Q/M428L変異を操作することにより実現することもできる(Hinton, Xiong et al. 2006)。
【0185】
特定の実施形態において、半減期の延長は、IgG1FcにおけるN434A変異を操作することにより実現することもできる(Shields, Namenuk et al. 2001)。
【0186】
特定の実施形態において、半減期の延長は、IgG1FcにおけるT307A/E380A/N434A変異を操作することにより実現することもできる(Petkova, Akilesh et al. 2006)。
【0187】
抗体半減期の延長におけるFc操作の効果は、天然のIgG Fcを有する抗体と比べて、マウスのPK試験において評価することができる。
【0188】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の抗CD38、抗CD3、及びCD3×CD38二重特異性抗体は、改変Fc領域を備えており、ここで、天然に存在するFc領域は、残基222~237(EUナンバリング)の間で又は当該残基において野生型抗体を切断するプロテアーゼによるタンパク質分解に対する抗体抵抗性を増強するように改変されている。
【0189】
特定の実施形態において、タンパク質分解に対する抵抗性は、天然の親抗体と比較して、ヒンジ領域におけるE233P/L234A/L235A変異とG236欠失を操作することにより実現することができ、残基ナンバリングはEUインデックスに従う(Kinder, Greenplate et al. 2013)。
【0190】
エフェクター機能性が所望されない場合、本開示の抗体は、活性化Fcγ受容体(FcγR)への抗体の結合を低下させる、及び/又はC1q結合、補体依存性細胞傷害(CDC)、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)若しくはファゴサイトーシス(ADCP)などのFcエフェクター機能を低下させる、少なくとも1個の変異を抗体Fcに導入するように更に操作することができる。
【0191】
活性化FcγRへの抗体の結合を低下させ、その後、エフェクター機能を低下させるために変異させることができるFc位置は、例えば、(Xu, Alegre et al. 2000) (Vafa, Gilliland et al. 2014) (Bolt, Routledge et al. 1993, Shields, Namenuk et al. 2001, Chu, Vostiar et al. 2008)に記載されている位置である。最小のADCC、ADCP、CDC、Fc媒介性細胞活性化を有するFc変異は、IgG1、IgG2及びIgG4のためのシグマ変異としても記載されてきた(Tam, McCarthy et al. 2017)。単独で又は組み合わせて作製することができる例示的な変異は、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4における、K214T、E233P、L234V、L234A、G236の欠失、V234A、F234A、L235A、G237A、P238A、P238S、D265A、S267E、H268A、H268Q、Q268A、N297A、A327Q、P329A、D270A、Q295A、V309L、A327S、L328F、A330S及びP331S変異である。
【0192】
ADCCを低下させるために作製することができる例示的な組み合わせ変異は、IgG1におけるL234A/L235A、IgG2におけるV234A/G237A/P238S/H268A/V309L/A330S/P331S、IgG4におけるF234A/L235A、IgG4におけるS228P/F234A/L235A、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4におけるN297A、IgG2におけるV234A/G237A、IgG1におけるK214T/E233P/L234V/L235A/G236欠失/A327G/P331A/D365E/L358M、IgG2におけるH268Q/V309L/A330S/P331S、IgG1におけるS267E/L328F、IgG1におけるL234F/L235E/D265A、IgG1におけるL234A/L235A/G237A/P238S/H268A/A330S/P331S、IgG4におけるS228P/F234A/L235A/G237A/P238S、及びIgG4におけるS228P/F234A/L235A/G236欠失/G237A/P238Sである。IgG2由来の残基117~260及びIgG4由来の残基261~447を有するFcなど、ハイブリッドIgG2/4 Fcドメインを使用することもできる。
【0193】
いくつかの実施形態において、CD3×CD38二重特異性抗体は、改変されたFc領域を備え、ここで、天然のFc領域は、Fcヘテロ二量体化による二特異性抗体の生成を促進するために改変されている。
【0194】
特定の実施形態において、Fcヘテロ二量体化は、2つの親抗体でのF405L及びK409R突然変異の操作及びFabアーム交換として知られるプロセスにおける二特異性抗体の生成によって実現することができる(Labrijn, Meesters et al. 2014)。
【0195】
特定の実施形態において、Fcヘテロ二量体化は、ノブ・イン・ホール(Knob-in-Hole)戦略を促進するためのFc突然変異によっても実現することができる(例えば、国際公開公報WO2006/028936を参照のこと)。小さい側鎖を有するアミノ酸(ホール)は、一方のFcドメインに導入され、大きい側鎖を有するアミノ酸(ノブ)は、他方のFcドメインに導入される。この2つの重鎖の共発現後、「ホール」を有する重鎖と「ノブ」を有する重鎖との優先的な相互作用の結果としてヘテロ二量体が形成される(Ridgway, Presta et al. 1996)。ノブ及びホールを形成する例示的なFc突然変異対は以下のとおりである:T366Y/F405A、T366W/F405W、F405W/Y407A、T394W/Y407T、T394S/Y407A、T366W/T394S、F405W/T394S及びT366W/T366S/L368A/Y407V。
【0196】
特定の実施形態において、Fcヘテロ二量体化は、静電的一致相互作用戦略を促進するためのFc突然変異によっても実現することができる(Gunasekaran, Pentony et al. 2010)。突然変異は、米国特許公開公報US2010/0015133;米国特許公開公報US2009/0182127;米国特許公開公報US2010/028637又は米国特許公開公報US2011/0123532に記載されているように、一方のFcドメインで正に荷電した残基及び他方のFcドメインで負に荷電した残基が生成されるように操作されていることができる。重鎖ヘテロ二量体化は、2つの突然変異させたFc間の静電的一致相互作用によって形成されることができる。
【0197】
いくつかの実施形態において、本CD3×CD38二重特異性抗体は、改変Fc領域を備え、ここで、二重特異性抗体は血清中や溶液中で通常モノマーとして存在しているが、
天然に存在するFc領域が、細胞表面受容体との相互作用で抗体の多量体化を容易にするように修飾される。抗体多量体化を容易にするFc突然変異としては、これだけに限定されるものではないが、(Diebolder, Beurskens et al. 2014)に記載のE345R突然変異、E430G突然変異、E345R/E430G突然変異、E345R/E430G/Y440R突然変異が挙げられる。斯かる突然変異としては、これだけに限定されるものではないが、(Zhang, Armstrong et al. 2017)に記載のT437R突然変異、T437R/K248E突然変異、及びT437R/K338A突然変異もまた挙げられる。
抗体修飾
【0198】
保存的改変を更に含む抗体は、本開示の範囲内にある。「保存的改変」は、アミノ酸配列を含有する抗体の結合特徴に有意に影響を与えることも変更することもないアミノ酸改変を指す。保存的改変は、アミノ酸置換、付加及び欠失を含む。保存的置換は、アミノ酸が、同様の側鎖を有するアミノ酸残基に置き換えられる置換である。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、十分に定義されており、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、無電荷極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン、トリプトファン)、芳香族側鎖(例えば、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン、チロシン)、脂肪族側鎖(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、スレオニン)、アミド(例えば、アスパラギン、グルタミン)、ベータ-分枝側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)及び硫黄含有側鎖(システイン、メチオニン)を有するアミノ酸を含む。更に、アラニンスキャニング変異誘発について以前に記載されたとおり、ポリペプチドにおけるいずれかの天然の残基をアラニンに置換することもできる。本開示の抗体に対するアミノ酸置換は、公知方法、例えば、PCR変異誘発によって作製することができる(米国特許第4,683,195号)。その代わりに、例えば、ランダム(NNK)又は非ランダムコドン、例えば、11種のアミノ酸(Ala、Cys、Asp、Glu、Gly、Lys、Asn、Arg、Ser、Tyr、Trp)をコードするDVKコドンを使用して、バリアントのライブラリーを作製することができる。その結果得られる抗体バリアントは、本明細書に記載されているアッセイを使用して、その特徴について評価することができる。
【0199】
この開示の抗体は、グリコシル化、異性化、脱グリコシル又は天然に存在しない共有結合性改変、例えば、ポリエチレングリコール部分の付加(ペグ化)及び脂質付加などのプロセスによって翻訳後改変することができる。このような改変は、インビボ又はインビトロで発生し得る。例えば、本開示の抗体は、ポリエチレングリコールにコンジュゲート(PEG化)して、その薬物動態プロファイルを改善することができる。コンジュゲーションは、当業者にとって公知の技法によって実行することができる。PEGによる治療抗体のコンジュゲーションは、機能に干渉することなく、薬力学を増強することが示された。
【0200】
本開示の抗体は、安定性、選択性、交差反応性、親和性、免疫原性又は他の望ましい生物学的若しくは生物物理学的特性を改善するように改変することができ、これは、本開示の範囲内にある。抗体の安定性は、(1)その固有の安定性に影響を与える個々のドメインのコアパッキング、(2)HC及びLC対形成に影響を与えるタンパク質/タンパク質界面相互作用、(3)極性及び荷電残基の埋没、(4)極性及び荷電残基のためのH結合ネットワーク;並びに(5)分子内及び分子間力の中でもとりわけ表面電荷及び極性残基分布を含む、いくつかの因子によって影響される(Worn and Pluckthun 2001)。潜在的な構造不安定化残基は、抗体の結晶構造に基づき、又はある特定の事例では分子モデリングによって同定することができ、抗体安定性における残基の効果は、同定された残基に変異を有するバリアントを作製し評価することにより算定することができる。抗体安定性を増加させる仕方の1つは、示差走査熱量測定(DSC)によって測定される熱転移中点(Tm)を上昇させることである。一般に、タンパク質Tmは、その安定性と相関し、タンパク質がアンフォールドする傾向に依存する、アンフォールディング及び溶液中の変性及び分解プロセスに対するその感受性と逆相関する。いくつかの試験は、DSCにより熱安定性として測定される製剤の物理的安定性及び他の方法により測定される物理的安定性のランキングの間の相関を見出した。製剤試験は、Fab Tmが、対応するmAbの長期物理的安定性に意味を有することを示唆する。
【0201】
この開示の抗体は、製造及び薬物安定性を改善するアミノ酸置換をFc領域に有することができる。IgG1についての例は、ラジカルにより誘導される切断を遮断する、ヒンジ221-DKTHTC-226(Euナンバリング)におけるH224S(又はH224Q)であり;IgG4については、S228P変異が、半抗体交換を遮断する。
シールディング又はマスキングドメイン
【0202】
非限定的な例として、本開示は、CD38 Fabの結合をシールドできる表5の配列番号42~45に規定されるシールディングドメインアミノ酸配列、及びCD3 Fabの結合をシールドできる表5の配列番号46~52に規定されるシールディングドメインアミノ酸配列から選択されるシールディングドメイン(マスキングドメイン、マスク、又はキヤツプとも呼ばれる)を含む二重特異性抗体を提供する。いくつかの実施形態が、配列番号42~51に記載される、CD38結合をマスクする種々のシールディング又はキャップを提供する。いくつかの実施形態が、配列番号46~52に記載される、CD3結合をマスクする種々シールディング又はキャップを提供する。
表5
【表5-1】
【表5-2】
プロテアーゼ切断可能リンカー
【0203】
プロテアーゼ切断可能リンカーは、シールディングドメインを抗体重鎖又は軽鎖に連結する、プロテアーゼで切断可能なペプチド基質を含む。プロテアーゼ切断可能リンカーは、1若しくは複数のプロテアーゼ基質配列及び任意選択のリンカースペーサー配列を含む(
図5~7を参照のこと)。いくつかの実施形態において、シールディング配列は、重鎖や軽鎖に融合できる配列の組み合わせとして存在する。例えば、二重特異性抗体の2つのFabアームドメインのそれぞれについて、シールディング配列は、1つのプロテアーゼ切断可能リンカーを介して抗体重鎖のN末端に融合され、及び補体配列は、別のプロテアーゼ切断可能リンカーを介して抗体軽鎖のN末端に融合される。
【0204】
腫瘍内微小環境と炎症部位を含めた、多くの疾患組織は、その過剰発現が疾病進行と相関する様々なタイプのプロテアーゼを大量に有している。疾患組織では、シールド抗体のプロテアーゼ切断可能リンカー配列は、適切なタイプのプロテアーゼによって認識され、そして、そのシールドが抗体鎖から切り離され得る。例えば、シールドされた二重特異性抗体の1本の結合アームでは、シールディングドメインが不活性になるように、プロテアーゼが2つのプロテアーゼ切断可能リンカーの両方を切断しても、又は2つのプロテアーゼ切断可能リンカー配列のうちの一方を切断してもよい。いずれかの場合にも、シールディングドメインは、その標的抗原へのFabアームの結合に干渉又は遮断できないであろう。その結果、シールド抗体は、活性抗体に変換されて、その標的に結合し、そして、機能的活性を発揮する(
図7)。
【0205】
いくつかの実施形態において、シールド抗体の2つのFabドメインに2つのシールディングドメインを連結するプロテアーゼ切断可能リンカー配列は、同じタイプのプロテアーゼによって切断されるために同じ配列を含む。
【0206】
いくつかの実施形態において、シールド抗体の2つのマスキングドメインと2つのFabドメインを連結するプロテアーゼ切断可能リンカー配列は、異なるタイプのプロテアーゼによって切断される基質配列を有する異なる配列を含む。
【0207】
マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)のファミリーの中で、MMP2及びMMP9は、乳癌、結腸直腸癌、及び肺癌を含めた多くのタイプの癌において上方制御される。そのうえ、MMP2及びMMP9の発現と活性もまた、関節リウマチ、乾癬、多発性硬化症、慢性閉塞性呼吸器系疾患、炎症性腸疾患、及び骨粗鬆症を含めた多くの自己免疫疾患及び炎症性疾患の進行に関連する(Lin, Lu et al. 2020)。本開示は、MMP2及びMMP9によって切断される基質ペプチド配列を含むプロテアーゼ切断可能リンカー配列を提供する。非限定的な例として、本開示は、配列番号53~57に規定されるMMP2及びMMP9が切断可能な基質ペプチド配列を提供する。非限定的な例として、本開示は、配列番号58と規定されるMMP3が切断可能な基質ペプチド配列を提供する。
【0208】
ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化因子(uPA)は、多くのタイプの癌、特に乳癌において過剰発現されることが報告された(Banys-Paluchowski, Witzel et al. 2019)。uPAは、基底膜又は細胞外マトリックスを分解できるプラスミンへのプラスミノーゲンの変換を触媒できるセリンプロテアーゼである。マトリックス分解は、腫瘍細胞の遊走と周辺組織内への侵襲を容易にする。本開示は、uPAによって切断される基質ペプチド配列を含むプロテアーゼ切断可能リンカー配列を提供する。非限定的な例として、本開示は、表6に配列番号59及び60と規定されるuPAが切断可能な基質ペプチド配列を提供する。
表6
【表6】
【0209】
本開示のプロテアーゼ切断可能リンカーは、例えば、シールディング配列とプロテアーゼ基質ペプチド配列の間、及び/又はプロテアーゼ基質ペプチド配列と抗体Fabの間に挿入された1若しくは複数のリンカーペプチドを含み得る。
【0210】
好適なリンカー(「スペーサー」とも呼ばれる)は、容易に選択され、かつ、1個のアミノ酸~30個のアミノ酸(例えば、1~30の任意の特定の整数)、又は1個のアミノ酸(例えば、Gly)~約20個のアミノ酸、2~15、3~12、4~10、5~9、6~8、又は7~8個のアミノ酸の好適な長さの任意の数のものであり得る。
【0211】
例示的なリンカーとしては、グリシンポリマー(G)n、グリシン-セリンポリマー(例えば、(GS)n、(GSGGS)n、及び(GGGS)n{式中、nは、少なくとも1つの整数、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20である}、グリシン-アラニンポリマー、アラニン-セリンポリマー、アラニン-プロリン、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgMを含めた免疫グロブリンアイソタイプ及びサブタイプヒンジ、並びに当該技術分野で知られている他のフレキシブルリンカー、が挙げられる。Gly及びSerの両方が、構造化されておらず、そのため、成分間の中性テザーとして役立ち得る。
【0212】
特定の実施形態において、リンカーは、グリシンポリマーである。グリシンは、アラニンより有意に多くのphi-psiスペースに接近し、かつ、より長い側鎖を有する残基に比べてほとんど制限されない(Scheraga 2008)。例示的なリンカーは、これだけに限定されるものではないが、GGS;GGSG;GGSGG;GGGGS;GSGSG;GSGGG;GGGSG;GSSSGなどを含有するアミノ酸配列を含み得る。
【0213】
特定の実施形態において、リンカーは、アラニン-プロリンポリマーである。例示的なリンカーは、これだけに限定されるものではないが、(AP)n{式中、nは、少なくとも1つの整数、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20である}を含むアミノ酸配列を含み得る。
【0214】
特定の実施形態において、リンカーは、リジッドリンカーである(Chen, Zaro et al. 2013)。例示的なリジッドリンカーは、任意のアミノ酸、好ましくはAla、Lys、又はGlu、を指定するXを有しする、高プロリン配列、(XP)n{式中、nは、少なくとも1つの整数、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20である}を、これだけに限定されるものではないが含む、アミノ酸配列を含む。例示的なリジッドリンカーは、(EAAAK)n{式中、nは少なくとも1つの整数、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20である}の配列を有するαヘリックス形成リンカーを、これだけに限定されるものではないが含むアミノ酸配列も含み得る。
抗体の発現と精製
【0215】
本開示の抗体は、タンパク質発現のための1若しくは複数の核酸によってコードされ得る。例えば、本開示のシールドされたCD3×CD38二重特異性抗体は、単一の核酸(例えば、シールド抗体の軽及び重鎖ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む単一の核酸)又はそのそれぞれがシールド親抗体の異なる部分をコードする2種若しくはそれよりも多い別々の核酸によってコードされ得る。
【0216】
適切な組み換えDNAは、DNA組み換え技術によって調製され、次に、哺乳動物細胞内に形質移入され、対応する抗CD3及び抗CD38抗体が発現され、精製され、同定され、及び/又はスクリーニングされる。
【0217】
二重特異性抗体は、制御されたFabアーム交換、又はCD38とCD3への同時結合の生物学的効果を示す二重特異性抗体を生じさせる他の二重特異性抗体製造プロセスを使用して抗CD3及び抗CD38抗体から作り出される。二重特異性抗体の親和性と阻害効率は、インビトロ実験によって同定される。
【0218】
本明細書に記載した核酸は、ベクター、例えば、核酸発現ベクター及び/又は標的化ベクターに挿入することができる。このようなベクターは、様々な仕方で、例えば、細胞又はトランスジェニック動物における本明細書に記載のマスキングドメインを有するプロ抗体(シールド抗体)の発現のために使用することができる。ベクターは典型的に、ベクターが使用されることになる宿主細胞において機能的となるように選択される。抗体、例えば、本明細書に記載のマスキングドメインを有するプロ抗体をコードする核酸分子は、原核、酵母、昆虫(バキュロウイルス系)及び/又は真核宿主細胞において増幅/発現させることができる。宿主細胞の選択は、一部には、本明細書に記載のシールドCD3×CD38二重特異性抗体など、本明細書に開示した抗体が、翻訳後改変(例えば、グリコシル化及び/又はリン酸化)されるか否かに依存するであろう。そうされるべきである場合、酵母、昆虫又は哺乳動物宿主細胞が好ましい。発現ベクターは典型的に、次の構成成分:プロモーター、1種又は複数のエンハンサー配列、複製起点、転写終結配列、ドナー及びアクセプタースプライス部位を含有する完全イントロン配列、分泌のためのリーダー配列、リボソーム結合部位、ポリアデニル化配列、発現されるべきポリペプチドをコードする核酸を挿入するためのポリリンカー領域、並びに選択可能マーカーエレメント、のうち1又は複数を含有する。
【0219】
いくつかの実施形態において、リーダー又はシグナル配列は、抗体、例えば、その分泌を誘導するために本明細書に記載した、シールドCD3×CD38二重特異性抗体、のN末端にてで遺伝子操作される。
宿主細胞からのシールドCD3×CD38二重特異性抗体の分泌は、抗体からのシグナルペプチドの除去をもたらすであろう。よって、成熟シールドCD3×CD38二重特異性抗体は、いかなるリーダー又はシグナル配列も欠如するであろう。真核宿主細胞発現系においてグリコシル化が所望される場合など、いくつかの実施形態において、様々なプレ配列を操作して、グリコシル化又は収量を改善することができる。例えば、シグナルペプチドのペプチダーゼ切断部位を変更する又はプロ配列を付加することができ、これにより、グリコシル化が影響され得る。
【0220】
本開示は更に、本開示の核酸又はベクターを含む細胞(例えば、単離又は精製された細胞)を提供する。細胞は、コードされるポリペプチドを産生することができる本開示の核酸又はベクターで形質転換され得るいずれかの型の細胞であり得る。例えば、本明細書に記載したシールドCD3×CD38二重特異性抗体を発現するために、上述のとおりに得られる部分的又は全長軽及び重鎖をコードするDNAは、遺伝子が転写及び翻訳制御配列に操作可能に連結されるように、発現ベクターに挿入される。
【0221】
単離された細胞に核酸及びベクターを導入する方法、並びにインビトロでの形質転換宿主細胞の培養及び選択の方法は、当技術分野で公知であり、塩化カルシウム媒介性形質転換、形質導入、コンジュゲーション、三親交配、DEAE、デキストラン媒介性トランスフェクション、感染、リポソームによる膜融合、DNAコーティングされた微小発射体による高速衝突、単一細胞への直接的マイクロインジェクション、及び電気穿孔の使用を含む。
【0222】
宿主細胞に本開示の核酸又はベクターを導入した後に、細胞は、コードされた配列の発現に適した条件下で培養される。次に、抗体、抗原結合断片又は抗体の部分を、細胞から単離することができる。
【0223】
特定の実施形態において、本明細書に記載したシールドCD3×CD38二重特異性抗体を一緒にコードする2以上のベクターが、宿主細胞に導入されることができる。
【0224】
細胞培地中に分泌された本明細書に記載した抗体、例えば、シールドCD3×CD38二重特異性抗体の精製は、親和性、免疫親和性又はイオン交換クロマトグラフィー、分子ふるいクロマトグラフィー、調製用ゲル電気泳動又は等電点電気泳動、クロマトフォーカシング、及び高圧液体クロマトグラフィーを含む種々の技法を使用して達成することができる。例えば、Fc領域を含む抗体は、Fc領域に選択的に結合するプロテインAによる親和性クロマトグラフィーによって精製することができる。シールドCD3×CD38二重特異性抗体などの抗体の改変形態は、そのカルボキシル又はアミノ末端のいずれかにおけるヘキサヒスチジン又はFLAG (Eastman Kodak Co., New Haven, Conn.)又はMyc (Invitrogen)などの他の小型のペプチドなどの親和性タグにより調製し、1ステップ親和性カラムによって精製することができる。例えば、ポリヒスチジンは、優れた親和性及び特異性で、ニッケルに結合することから、ニッケルの親和性カラム(Qiagen(登録商標)ニッケルカラム等)を、ポリヒスチジンタグ付けされた選択的結合剤の精製のために使用することができる。一部の実例では、2以上の精製ステップを用いることができる。
結合及び機能的な活性に対するシールドCD3×CD38二重特異性抗体の効果
【0225】
本明細書に開示したシールドCD3×CD38二重特異性抗体は、それぞれの抗原、CD3及びCD38に結合するFabアームの能力を阻害又は遮断し得る。マスキングドメインは、それぞれの抗原に結合する際のシールド二重特異性抗体の最大結合容量を低減し得る。マスキングドメインはまた、それぞれの抗原に結合する際のシールド二重特異性抗体の結合親和力も低減し得る。
【0226】
マスキングドメインがプロテアーゼによって切り落とされるとき、シールド抗体は、その抗原に結合する際の抗体の能力の回復を伴って活性二重特異性抗体に変換される。シールド二重特異性抗体からのマスキングドメインの除去は、遺伝子組み換え又は精製プロテアーゼを使用したインビトロプロテアーゼ切断アッセイで実現される。シールド二重特異性抗体からのマスキングドメインの除去はまた、疾患部位で過剰発現されたプロテアーゼによってインビボにおいて実現される。マスキングドメインの除去は、SDS-PAGE、IEX、又はHIC分析によって、マスキングドメインを伴ったシールド抗体の重鎖及び軽鎖の分子量を、マスキングドメインを伴わない活性抗体と比較することによって評価される。
【0227】
インビトロ及び細胞ベースのアッセイは、その抗原への結合において、プロ抗体(シールド二重特異性抗体)、活性抗体、及びプロテアーゼ切断後の変換抗体を測定する際の使用について当該技術分野では十分に説明されている。例えば、抗体の結合は、遺伝子組み換え又は精製抗原を固定し、固定された抗原を用いて抗体を隔離し、そして、結合した抗体の量を測定することによるELISAによって測定してもよい。これはまた、結合相互作用の反応速度分析のためのBiacore(登録商標)装置を使用して実施されることもできる。細胞ベースの結合アッセイに関しては、抗体の結合は、抗体を細胞表面に抗原を発現している細胞とインキュベートし、そして、細胞表面抗原に結合した抗体の量を測定することによるフローサイトメトリーによって測定されてもよい。
医薬組成物
【0228】
本開示に従った使用のためのシールドCD3×CD38二重特異性抗体などの抗体は、本明細書における方法における使用のための組成物、特に、医薬組成物において製剤化することができる。このような組成物は、適した担体、例えば、薬学的に許容される作用物質との混合物中に、治療又は予防有効量のこの開示に記載の抗体、例えば、二重特異性抗体、及び好適な担体を含む。典型的には、この開示に記載の抗体は、医薬組成物における製剤化の前に、動物への投与のために十分に精製される。
【0229】
いくつかの実施形態において、本開示は、抗CD38抗体又はその抗原結合部分を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、抗CD38抗体又はその抗原結合部分と医薬として許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0230】
いくつかの実施形態において、本開示は、抗CD3抗体又はその抗原結合部分を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、抗CD3抗体又はその抗原結合部分と医薬として許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0231】
いくつかの実施形態において、本開示は、シールド又は非シールドCD3×CD38二重特異性抗体を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、シールド又は非シールドCD3×CD38二重特異性抗体と医薬として許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0232】
薬学的に許容される作用物質は、担体、賦形剤、希釈剤、抗酸化剤、保存料、着色剤、着香料及び希釈剤、乳化剤、懸濁化剤、溶媒、フィラー、増量剤、緩衝液、送達ビヒクル、等張化剤、共溶媒、湿潤剤、錯化剤、バッファー剤、抗菌薬並びに界面活性物質を含む。
【0233】
組成物は、液体形態又は凍結乾燥若しくはフリーズドライ形態であってもよく、1種又は複数の凍結保護剤、賦形剤、界面活性物質、高分子量構造的添加物及び/又は増量剤を含むことができる。
【0234】
いくつかの実施形態において、組成物は、シールドCD3×CD38二重特異性抗体、又は抗CD38抗体若しくはその抗原結合部分、又は抗CD3抗体若しくはその抗原結合部分、及び少なくとも1つのバッファー、少なくとも1つの安定化剤、及び/又は少なくとも1つの界面活性剤を含む。
【0235】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示した組成物は、液体である。いくつかの実施形態において、組成物は、皮下注射向けに製剤化される。いくつかの実施形態において、組成物は、滅菌される。いくつかの実施形態において、組成物は、ヒスチジンHCl、トレハロース、メチオニン、及び/又はポリソルベートを更に含む。
【0236】
組成物は、非経口投与に適することができる。例示的な組成物は、関節内、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、脳内(実質内)、脳室内、筋肉内、眼内、動脈内、病巣内、直腸内、経皮、経口及び吸入経路など、当業者に利用できるいずれかの経路による動物への注射又は注入に適する。
【0237】
本明細書に記載されている医薬組成物は、産物の局所的濃縮(例えば、ボーラス、デポー効果、外用)、持続放出及び/又は特定の局所的環境における増加された安定性若しくは半減期をもたらす様式での制御送達又は持続送達のために製剤化することができる。
【0238】
いくつかの実施形態において、CD3×CD38二重特異性抗体、抗CD38抗体若しくはその抗原結合部分、抗CD3抗体若しくはその抗原結合部分は、1mg/mL~250mg/mL、10mg/mL~250mg/mL、1mg/mL~100mg/mL、2mg/mL~50mg/mL、及び2mg/mL~40mg/mLの濃度で医薬組成物中に存在し得る。
治療と使用の方法
【0239】
いくつかの実施形態において、本開示は、治療又は予防を必要としている対象の疾患又は障害を治療又は予防する方法であって、該対象に、有効量の、本明細書に開示したシールドCD3×CD38二重特異性抗体、或いは抗CD38抗体又はその抗原結合部分を投与することを含む、前記方法を提供する。疾患又は障害は、CD38介在性疾患又は障害、例えば、胃及び結腸直腸癌、膵臓癌、前立腺癌、肺癌、肝細胞性癌、トリプルネガティブ乳癌、上咽頭癌、子宮頚癌、(MM、リンパ腫、急性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、急性Bリンパ芽球性白血病や他のものなどの)血液悪性腫瘍を含めたヒト癌、心臓病、HIV感染症を含めたウイルス感染症、喘息や他の呼吸器炎症性疾患、アレルギー性気道疾患、母胎耐性、自閉スペクトラム症、糸球体硬化、炎症性腸疾患、関節リウマチ、糖尿病(diabetes mellitus, diabetes)、慢性自己免疫性甲状腺炎及びグレーブス病、アルツハイマー病などの加齢性神経変性及び神経炎症性疾患から選択される。いくつかの実施形態において、CD38介在性疾患又は障害は、胃及び結腸直腸癌、膵臓癌、前立腺癌、肺癌、肝細胞性癌、トリプルネガティブ乳癌、上咽頭癌、子宮頚癌、及び血液悪性腫瘍を含めたヒト癌から選択される。
【0240】
いくつかの実施形態はまた、癌、好ましくは、肺癌、乳癌、結腸直腸癌、胃体癌、腸癌、及び/又は膵臓癌の治療又は予防のための薬剤の製造における、CD3×CD38二重特異性抗体、或いは抗CD38抗体又はその抗原結合部分の適用を提供する。
【0241】
いくつかの実施形態において、本開示は、CD38介在性疾患又は障害から選択される疾患又は障害を治療するか又は予防する際の使用のための、本明細書のシールドCD3×CD38二重特異性抗体、或いは開示の抗CD38抗体又はその抗原結合部分を提供する。
【0242】
いくつかの実施形態において、本開示は、CD38介在性疾患又は障害から選択される疾患又は障害を治療するか又は予防する際の使用のための薬剤の製造のための、本明細書に開示したシールドCD3×CD38二重特異性抗体、或いは抗CD38抗体又はその抗原結合部分の使用を提供する。
【0243】
いくつかの実施形態において、本開示は、胃体癌、肺癌、膵臓癌、結腸直腸癌、及び他の癌を治療又は予防する際の使用のための、本明細書に記載したシールドCD3×CD38二重特異性抗体、或いは抗CD38抗体又はその抗原結合部分を提供する。対応する治療抗体とは対照的に、シールドCD3×CD38二重特異性抗体は、疾患部位で過剰発現されたプロテアーゼによるシールディングドメインの除去による疾患部位に特異的な活性抗体へのシールド抗体の変換に起因して、これらの疾患を治療する際に同等な有効性を有し得る。しかしながら、シールド抗体は、マスキングドメインの切り落としに必要な十分な量のプロテアーゼを欠いている正常組織におけるシールディングドメインによる抗体活性のマスキングに起因して、全身的な毒性を低減し得る。本明細書に記載したシールド二重特異性抗体は、疾患を治療する際に対応する治療抗体として効果を生じ得るが、多くの改善された安全性プロファイルを有する。改善された安全性プロフィールに起因して、高いレベルの、シールド二重特異性抗体を含む投薬は、改善された治療効能を伴って患者に投与され得る。
【0244】
いくつかの実施形態において、開示はまた、対象の癌を治療する方法であって、治療的有効量のシールドCD3×CD38二重特異性抗体を投与することを含む、前記方法を提供する。本開示はまた、癌を治療する方法における本明細書に提供したシールド二重特異性物の使用、及び癌での使用のための薬剤の製造における本明細書に提供したシールドCD3×CD38二重特異性抗体の使用、を提供する。例示的な癌としては、これだけに限定されるものではないが、MM、非小細胞肺癌、急性骨髄性白血病、女性の乳腺癌、膵臓癌、結腸直腸癌、及び腹膜癌が挙げられる。
【0245】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示した二重特異性抗体、或いは抗CD38抗体又はその抗原結合部分は、インテグリン及び/又は下流シグナル伝達とのCD38受容体の関連を効率的に阻害する。
【0246】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示した二重特異性抗体、或いは抗CD38抗体又はその抗原結合部分は、化学療法との組み合わせが使用され得る。例えば、癌を治療するための併用投薬計画は、より高用量の化学療法とCD3×CD38二重特異性抗体を使用して、最良の相乗的パートナーを決定することができる。
【0247】
いくつかの実施形態において、本開示は、本明細書に開示した二重特異性抗体、或いは抗CD38抗体又はその抗原結合部分と別の治療薬のコンジュゲートを提供する。いくつかの実施形態において、別の治療薬は、細胞毒又は放射性同位体である。
【0248】
別段で本明細書に示さない限り又は別段で文脈と明確に矛盾しない限り、本明細書に記載した様々な要素のすべての組み合わせは、本開示の範囲内にある。
【0249】
この開示は、以下の例示的な詳細からより理解される。しかしながら、当業者は、特定方法及び考察された結果が、その後続く特許請求の範囲においてより完全に説明される本開示の単なる例証であることを容易に理解する。
【実施例】
【0250】
実施例1:抗CD38及び抗CD3抗体の発現と精製
マスク及び無マスク抗CD3及び抗CD38抗体遺伝子を、別々のプラスミドに入れて、モノクローナル抗CD3及び抗CD38抗体の調製、並びに抗CD3及び抗CD38二重特異性抗体の調製について評価した。シールド抗体の場合、抗CD3及び抗CD38シールドmAbを発現する重鎖及び軽鎖構築物を調製した。これらの抗CD3及び抗CD38マスク抗体の重鎖及び軽鎖をコードするプラスミドを、トランスフェクションキット取扱説明書(Thermo Scientific)に従って、Expi293F細胞内に同時形質移入した。細胞を、トランスフェクションの5日後にスピンダウンし、そして、上清を0.2μmのフイルターに通した。発現マスク抗体上清の精製を、プロテインAアガロースカラム(GE Healthcare Life Sciences)でのアフィニティークロマトグラフィーによって実施した。精製したマスク抗体を、透析によってDPBS、pH7.2にバッファー交換し、そして、タンパク質濃度を280nmでのUV吸光度によって測定した。無シールド抗CD3及び抗CD38モノクローナル抗体を、同様に調製し、そして精製した。
【0251】
抗CD3及び抗CD38シールドmAbは、MMP2/MMP9の基質配列と共に抗体重鎖及び軽鎖のN末端に融合されたマスキングドメインを有した。精製マスク抗体を、SDS-PAGE分析によって特徴づけした。
【0252】
実施例2:マスキングドメインを有する抗体のプロテアーゼ消化
【0253】
インビトロプロテアーゼ切断アッセイを、シールディングドメインがプロテアーゼによってマスクAbから取り除かれるかどうか評価するように構成した。MMP2に関しては、
組み換えヒトMMP2を、製造業者の取扱説明書(R&D Systems)に従って、p-アミノ酢酸フェニル水銀(APMA)と共にインキュベートすることによって活性化した。10mgのマスクAbを、50ngの活性化したMMP2と共に37℃にて一晩インキュベートした。マスクmAbの消化を、還元条件下でのSDS-PAGEによって評価した。消化マスクAbの重鎖及び軽鎖の分子量は、対応する未消化親抗体に対してわずかに小さかった。プロテアーゼ処理により、キャップドmAbの分子量は、基準mAbの分子量に近かった。
【0254】
実施例3:抗CD3抗体は、ELISAアッセイにおいて組み換えヒト及びカニクイザルCD3抗原に結合する
【0255】
CD3ε及びCD3δ鎖成る、ビオチン標識ヒト組み換え型CD3タンパク質を、ストレプトアビジンコートELISAプレートに結合させて、固相上に抗原を捕捉した。次に、異なる濃度の試験抗CD3抗体をコートしたプレートに加え、そして、結合した抗体を、検出し、標準的なELISAプロトコールを使用して定量化した。
図8Aに示した結果は、意図したヒトCD3標的に結合するこれらの抗CD3抗体の能力を実証している。抗体は、このアッセイ形式において抗原に対して様々な親和性を示す。異なるCD3親和性が疾患特異的な適用又は二重特異性形式での他の抗体との特異的な組み合わせにおいて理想的であり得るので、親和性のこの範囲は貴重である。
【0256】
CD3ε及びCD3δ鎖成る、ビオチン標識カニクイザル組み換え型CD3タンパク質を、ストレプトアビジンコートELISAプレートに結合させて、固相上に抗原を捕捉した。次に、異なる濃度の試験抗CD3抗体をコートしたプレートに加え、そして、結合した抗体を、検出し、標準的なELISAプロトコールを使用して定量化した。
図8Bに示した結果は、それらの実証したヒトCD3タンパク質への結合に加えて、カニクイザルCD3タンパク質と結合し、かつ、交差反応するためのこの抗CD3種の能力を実証した。毒物学、並びにこれらの抗体及び特にそれらを含む二重特異性抗体に関する他の必要な調査のためのこれらの動物の使用を容易にするので、カニクイザルCD3タンパク質にも結合する能力は、医薬品開発のための重要な機能付与特性である。
【0257】
様々な抗CD3アームと組み合わせられた単一抗CD38アームから成る二重特異性抗体を、一連の二重特異性抗体の濃度増加系列で、CD3陽性T細胞を含有するヒトPBMCと、混合される。二重特異性抗体の結合を、標準的なフローサイトメトリー法を使用して検出し、そして、定量化した。結果を
図9に示す。これらのデータは、試験した抗CD3抗体が、単離した遺伝子組み換えタンパク質に結合するそれらの実証された能力に加えて、それが意図した標的T細胞の表面に自然に提示される場合、ヒトCD3タンパク質に結合できることを実証する。したがって、CD3抗体は、ELISAと細胞結合の両方で実証された。
【0258】
実施例4:抗CD38抗体は、ELISAアッセイにおいて組み換えヒト、組み換えカニクイザル、及び組み換えマウスCD38抗原に結合する
【0259】
ビオチン標識組み換え型CD38タンパク質を、ストレプトアビジンコートELISAプレートに結合させて、固相上に抗原を捕捉した。次に、異なる濃度の試験抗CD38抗体をコートしたプレートに加え、そして、結合した抗体を、検出し、標準的なELISAプロトコールを使用して定量化した。
図10に示した結果は、意図したヒトCD38標的、そして、場合によってはマウス抗原に結合するこれらの抗CD38種の能力を実証した。ダラツムマブは、公知のものであり、かつ、臨床的活性を有する現在市販されているD38特異的抗体(配列番号2、3を有する重鎖可変領域及び軽鎖可変領域)と配列番号5及び6を有する単一ドメイン抗体可変重鎖を、陽性対照として及び比較目的のために包含した。
図10に示した結果は、これらの新規抗CD38種、配列番号4、17、18、20、5、21、24、6、29が、意図したヒトCD38標的に結合する能力を実証した。抗体は、このアッセイ形式において抗原に対して様々な親和性を示した。配列番号4の抗CD38抗体は、ELISA形式においてカニクイザルCD38抗原に結合する可能性もある(
図10B)。配列番号4の抗CD38抗体は、ELISA形式においてマウスCD38抗原に結合する可能性もある(
図10C)。ビオチン標識カニクイザル組み換え型CD38タンパク質を、ストレプトアビジンコートELISAプレートに結合させて、固相上に抗原を捕捉した。次に、異なる濃度の試験抗CD38抗体をコートしたプレートに加え、そして、結合した抗体を、検出し、標準的なELISAプロトコールを使用して定量化した。
図10に示した結果は、それらの実証したヒトCD38タンパク質への結合に加えて、カニクイザルCD38標的と結合し、かつ、交差反応するためのこれらの新規抗CD38種の能力を実証した。毒物学、並びにこれらの抗体及び特にそれらを含む二重特異性抗体に関する他の必要な調査のためのこれらの動物の使用を容易にするので、カニクイザルCD38タンパク質にも結合する能力は、医薬品開発のための重要な機能付与特性である。
【0260】
ELISAベースの結合アッセイを、CD3×CD38二重特異性抗体によるCD3及びCD38への結合を評価するために利用する。このアッセイでは、ヒトCD38をプレート上にコートし、次に、Hisタグを有する組み換え型CD3と共に、CD3×CD38二重特異性抗体又はCD3抗体とCD38抗体の混合物を加える。非特異的結合を洗い落とした後に、CD3の存在を、HRP結合抗his二次抗体(BioLegend)によって検出する。CD3×CD38二重特異性抗体は、CD3を用量依存的に動員したが、2種類の親抗体の混合物によっては動員されなかった。したがって、二重特異性抗体は、同時にCD3とCD38を結合することができる。
【0261】
実施例5:抗CD38×CD3抗体は、H929、CD38陽性標的細胞株、の存在下でヒトCD3陽性T細胞株に結合し、そして活性化する
【0262】
それぞれ、様々な抗CD3アームと組み合わせられた単一抗CD38アームを含む二重特異性抗体を、一連の二重特異性抗体の濃度増加系列で、2種類の細胞株:一方がレポーターT細胞株、そして、もう一方が標的細胞株H929、CD38陽性多発性骨髄腫細胞株、と混合した。レポーターT細胞株は、それらの表面上のT細胞受容体が結合し、そして殺滅のために活性化したときに容易に計測されるシグナルを生じるように遺伝子操作したヒトCD3陽性Jurkat T細胞株であった。標的細胞株は、H929ヒトCD38陽性多発性骨髄腫細胞株であった。癌療法では、CD38×CD3二重特異性抗体が、攻撃キラーT細胞上のCD3と、標的癌細胞上のCD38に結合すると予想した。
図11に示した結果は、CD3及びCD38タンパク質の両方への二重特異性抗体の結合の因果関係としてのT細胞の濃度依存的な活性化を実証した。これらのデータは、試験した抗CD3及び抗CD38アームが、両方のタンパク質に、それらが細胞の細胞表面に提示された場合に、結合することができたことを実証した。最小の活性化は、二重特異性抗体の不活性なアームの存在下で見られた。データは更に、結合はまた標的癌細胞殺滅に必要なT細胞経路の所望の活性化も媒介したという結論を支持した。
【0263】
実施例6:抗CD38×CD3抗体は、L363、CD38陽性標的細胞株、の存在下でヒトCD3陽性T細胞株に結合し、そして活性化する
【0264】
それぞれ、様々な抗CD3アームと組み合わせられた単一抗CD38アームを含む二重特異性抗体を、一連の二重特異性抗体の濃度増加系列で、2種類の細胞株:一方がレポーターT細胞株、そして、もう一方が標的細胞株と混合した。レポーターT細胞株は、それらの表面上のT細胞受容体が結合し、そして殺滅のために活性化したときに容易に計測されるシグナルを生じるように遺伝子操作したヒトCD3陽性Jurkat T細胞株であった。標的細胞株は、L363ヒトCD38陽性多発性骨髄腫細胞株であった。癌療法では、CD38×CD3二重特異性抗体が、攻撃キラーT細胞上のCD3と、標的癌細胞上のCD38に結合すると予想した。
図12に示した結果は、CD3及びCD38タンパク質の両方への二重特異性抗体の結合の因果関係としてのT細胞の濃度依存的な活性化を実証した。これらのデータは、試験した抗CD3及び抗CD38アームが、両方のタンパク質に、それらが細胞の細胞表面に提示された場合に、結合することができたことを実証した。最小の活性化は、二重特異性抗体の不活性なアームの存在下で見られた。データは更に、結合はまた標的癌細胞殺滅に必要なT細胞経路の所望の活性化も媒介したという結論を支持した。
【0265】
実施例7:抗CD38×CD3抗体は、RPMI 8226、CD38陽性標的細胞株、の存在下でヒトCD3陽性T細胞株に結合し、そして活性化する
【0266】
それぞれ、様々な抗CD3アームと組み合わせられた単一抗CD38アームを含む二重特異性抗体を、一連の二重特異性抗体の濃度増加系列で、2種類の細胞株:一方がレポーターT細胞株、そして、もう一方が標的細胞株と混合した。レポーターT細胞株は、それらの表面上のT細胞受容体が結合し、そして殺滅のために活性化したときに容易に計測されるシグナルを生じるように遺伝子操作したヒトCD3陽性Jurkat T細胞株であった。標的細胞株は、RPMI 8226ヒトCD38陽性多発性骨髄腫細胞株であった。癌療法では、CD38×CD3二重特異性抗体が、攻撃キラーT細胞上のCD3と、標的癌細胞上のCD38に結合すると予想した。
図13に示した結果は、CD3及びCD38タンパク質の両方への二重特異性抗体の結合の因果関係としてのT細胞の濃度依存的な活性化を実証した。これらのデータは、試験した抗CD3及び抗CD38アームが、両方のタンパク質に、それらが細胞の細胞表面に提示された場合に、結合することができたことを実証した。最小の活性化は、二重特異性抗体の不活性なアームの存在下で見られた。データは更に、結合はまた標的癌細胞殺滅に必要なT細胞経路の所望の活性化も媒介したという結論を支持した。
【0267】
実施例8:抗CD38×CD3抗体は、H929、CD38陽性標的細胞株、の殺滅をPBMCに指示した
【0268】
それぞれ、様々な抗CD3アームと組み合わせられた単一抗CD38アームを含む二重特異性抗体を、一連の二重特異性抗体の濃度増加系列で、PBMCロット及び標的細胞株と混合した。標的細胞株は、H929ヒトCD38陽性多発性骨髄腫細胞株であった。
図14に示した結果は、CD3及びCD38タンパク質の両方への二重特異性抗体の結合の因果関係としての濃度依存的なT細胞殺滅を実証した。これらのデータは、単離された遺伝子組み換えタンパク質に結合するそれらの実証済み能力に加えて、試験した抗CD3及び抗CD38アームが、両方のタンパク質に、それらが細胞の細胞表面に提示された場合に、結合することができたことを実証した。データは更に、結合もまた標的癌細胞殺滅を指示された所望のT細胞を媒介するという結論を支持した。エフェクター細胞として使用した2種類の異なるPBMCドナーT細胞を用いたこれらの実験は、H929細胞の強力なPBMCドナーT細胞殺滅に至った。データは更に、CD3とCD38タンパク質の両方への結合はまた、ヒト初代T細胞の二重特異性抗体が媒介した活性化と、それらの標的癌細胞の殺滅ももたらしたという結論を支持した。
【0269】
実施例9:抗CD38×CD3抗体は、RPMI 8226、CD38陽性標的細胞株、の殺滅をPBMCに指示した
【0270】
それぞれ、様々な抗CD3アームと組み合わせられた単一抗CD38アームを含む二重特異性抗体を、一連の二重特異性抗体の濃度増加系列で、PBMCロット及び標的細胞株と混合した。標的細胞株は、RPMI 8226ヒトCD38陽性多発性骨髄腫細胞株であった。
図15に示した結果は、CD3及びCD38タンパク質の両方への二重特異性抗体の結合の因果関係としての濃度依存的なT細胞殺滅を実証した。これらのデータは、単離された遺伝子組み換えタンパク質に結合するそれらの実証済み能力に加えて、試験した抗CD3及び抗CD38アームが、両方のタンパク質に、それらが細胞の細胞表面に提示された場合に、結合することができたことを実証した。データは更に、CD3とCD38タンパク質の両方への結合もまた標的癌細胞殺滅を指示された所望のT細胞を媒介するという結論を支持した。エフェクター細胞として使用した4種類の異なるPBMCドナーT細胞を用いたこれらの実験は、RPMI 8226細胞の強力なPBMCドナーT細胞殺滅に至った。データは更に、CD3とCD38タンパク質の両方への結合はまた、ヒト初代T細胞の二重特異性抗体が媒介した活性化と、それらの標的癌細胞の殺滅ももたらしたという結論を支持した。
【0271】
実施例10:抗CD38×CD3抗体は、L363、CD38陽性標的細胞株、の殺滅をPBMCに指示した
【0272】
それぞれ、様々な抗CD3アームと組み合わせられた単一抗CD38アームを含む二重特異性抗体を、一連の二重特異性抗体の濃度増加系列で、PBMCロット及び標的細胞株と混合した。標的細胞株は、L363ヒトCD38陽性多発性骨髄腫細胞株であった。
図16に示した結果は、CD3及びCD38タンパク質の両方への二重特異性抗体の結合の因果関係としての濃度依存的なT細胞殺滅を実証した。これらのデータは、単離された遺伝子組み換えタンパク質に結合するそれらの実証済み能力に加えて、試験した抗CD3及び抗CD38アームが、両方のタンパク質に、それらが細胞の細胞表面に提示された場合に、結合することができたことを実証した。データは更に、結合もまた標的癌細胞殺滅を指示された所望のT細胞を媒介するという結論を支持した。エフェクター細胞として使用した3種類の異なるPBMCドナーT細胞を用いたこれらの実験は、L363細胞の強力なPBMCドナーT細胞殺滅に至った。データは更に、CD3とCD38タンパク質の両方への結合はまた、ヒト初代T細胞の二重特異性抗体が媒介した活性化と、それらの標的癌細胞の殺滅ももたらしたという結論を支持した。
【0273】
実施例11:CD3×CD38二重特異性抗体のインビボにおける抗腫瘍効果
【0274】
腫瘍細胞殺滅におけるCD3×CD38二重特異性抗体の効果を、マウス腫瘍異種移植モデルで評価した。配列番号4で言及した新規抗CD38抗体を、IgG
1 Fc融合体として作製し、そして、T細胞殺滅を指示することができ、並びにCD38発現細胞のT細胞殺滅を指示する配列番号4の能力を評価すること、が知られている40G5 CD3アームと二重特異性抗体に組み合わせられる。この二重特異性抗体を、CD3陽性エフェクターT細胞を含有するヒトPBMCを癌細胞の皮下移植の1日後(
図17B~17C)又は癌細胞の皮下移植5日前(
図17D~17E)に免疫不全マウスに移植したNCI-H929ヒト多発性骨髄腫異種移植モデルで評価した。NCI-H929、CD38発現細胞株を、腫瘍異種移植樹立のためにNCGマウスに移植した。試験分子をマウスに腹腔内投与し、そして、抗体が媒介した腫瘍縮小を評価した(
図17A)。これらのモデルの結果が異なるドナーからの移植T細胞の性質に幅広く依存していることが理解されているので、実験を、異なるドナーからのT細胞をそれぞれ移植した、2つの並行するマウスのコホートを使用して実施した。異なる2セットのCD3アームを使用して、CD38×CD3二重特異性抗体を作製した。対照CD3アームを、重鎖可変領域、配列番号40及び軽鎖可変領域、配列番号41を含む40G5と指定した。
試験抗CD3アームを、重鎖可変領域、配列番号39及び軽鎖可変領域、配列番号38を含むSP34 v8と指定した。
図17に示した実験の結果は、CD38×CD3二重特異性抗体、40G5アームと組み合わせた配列番号4及びSP34 v8アームと組み合わせた配列番号4が、一方のT細胞ドナーによる腫瘍の部分阻害、及び第二のドナーによる完全な腫瘍増殖阻害により、両方のコホートにおいて腫瘍増殖の阻害の際に高い活性があることを実証した。また、各コホートが、多発性骨髄腫において臨床使用が承認されており、かつ、多発性骨髄腫患者で高活性であることが知られている抗CD38抗体であるダラツムマブを用いて治療されもしたので、この阻害は特に注目に値した。結果は、ダラツムマブはこのモデルにおいて不活性であったが、その一方で、CD38×CD3抗体は両方のドナーT細胞コホートで明らかな抗腫瘍活性を示したことを示した。最も重要な結論は、この実験で試験した二重特異性抗体の抗CD38アームが、インビボにおいて多発性骨髄腫に対して高度に効果的であるということである。
参照文献
Akther, S., N. Korshnova, J. Zhong, M. Liang, S. M. Cherepanov, O. Lopatina, Y. K. Komleva, A. B. Salmina, T. Nishimura, A. A. Fakhrul, H. Hirai, I. Kato, Y. Yamamoto, S. Takasawa, H. Okamoto and H. Higashida (2013). "CD38 in the nucleus accumbens and oxytocin are related to paternal behavior in mice." Mol Brain 6: 41.
Allard, B., P. A. Beavis, P. K. Darcy and J. Stagg (2016). "Immunosuppressive activities of adenosine in cancer." Curr Opin Pharmacol 29: 7-16.
Amgen. (2021). "Bincyto."
Antonelli, A., G. Baj, P. Marchetti, P. Fallahi, N. Surico, C. Pupilli, F. Malavasi and E. Ferrannini (2001). "Human anti-CD38 autoantibodies raise intracellular calcium and stimulate insulin release in human pancreatic islets." Diabetes 50(5): 985-991.
Antonelli, A., P. Fallahi, C. Nesti, C. Pupilli, P. Marchetti, S. Takasawa, H. Okamoto and E. Ferrannini (2001). "Anti-CD38 autoimmunity in patients with chronic autoimmune thyroiditis or Graves' disease." Clin Exp Immunol 126(3): 426-431.
Antonelli, A. and E. Ferrannini (2004). "CD38 autoimmunity: recent advances and relevance to human diabetes." J Endocrinol Invest 27(7): 695-707.
Banys-Paluchowski, M., I. Witzel, B. Aktas, P. A. Fasching, A. Hartkopf, W. Janni, S. Kasimir-Bauer, K. Pantel, G. Schon, B. Rack, S. Riethdorf, E. F. Solomayer, T. Fehm and V. Muller (2019). "The prognostic relevance of urokinase-type plasminogen activator (uPA) in the blood of patients with metastatic breast cancer." Sci Rep 9(1): 2318.
Biopharmadive.com. (2021).
Blacher, E., B. Ben Baruch, A. Levy, N. Geva, K. D. Green, S. Garneau-Tsodikova, M. Fridman and R. Stein (2015). "Inhibition of glioma progression by a newly discovered CD38 inhibitor." Int J Cancer 136(6): 1422-1433.
Blacher, E., T. Dadali, A. Bespalko, V. J. Haupenthal, M. O. Grimm, T. Hartmann, F. E. Lund, R. Stein and A. Levy (2015). "Alzheimer's disease pathology is attenuated in a CD38-deficient mouse model." Ann Neurol 78(1): 88-103.
Boini, K. M., M. Xia, J. Xiong, C. Li, L. P. Payne and P. L. Li (2012). "Implication of CD38 gene in podocyte epithelial-to-mesenchymal transition and glomerular sclerosis." J Cell Mol Med 16(8): 1674-1685.
Boison, D. and G. G. Yegutkin (2019). "Adenosine Metabolism: Emerging Concepts for Cancer Therapy." Cancer Cell 36(6): 582-596.
Bolt, S., E. Routledge, I. Lloyd, L. Chatenoud, H. Pope, S. D. Gorman, M. Clark and H. Waldmann (1993). "The generation of a humanized, non-mitogenic CD3 monoclonal antibody which retains in vitro immunosuppressive properties." Eur J Immunol 23(2): 403-411.
Boslett, J., C. Hemann, F. L. Christofi and J. L. Zweier (2018). "Characterization of CD38 in the major cell types of the heart: endothelial cells highly express CD38 with activation by hypoxia-reoxygenation triggering NAD(P)H depletion." Am J Physiol Cell Physiol 314(3): C297-C309.
Brischwein, K., B. Schlereth, B. Guller, C. Steiger, A. Wolf, R. Lutterbuese, S. Offner, M. Locher, T. Urbig, T. Raum, P. Kleindienst, P. Wimberger, R. Kimmig, I. Fichtner, P. Kufer, R. Hofmeister, A. J. da Silva and P. A. Baeuerle (2006). "MT110: a novel bispecific single-chain antibody construct with high efficacy in eradicating established tumors." Mol Immunol 43(8): 1129-1143.
Bu, X., J. Kato, J. A. Hong, M. J. Merino, D. S. Schrump, F. E. Lund and J. Moss (2018). "CD38 knockout suppresses tumorigenesis in mice and clonogenic growth of human lung cancer cells." Carcinogenesis 39(2): 242-251.
Burgler, S. (2015). "Role of CD38 Expression in Diagnosis and Pathogenesis of Chronic Lymphocytic Leukemia and Its Potential as Therapeutic Target." Crit Rev Immunol 35(5): 417-432.
Burgler, S., A. Gimeno, A. Parente-Ribes, D. Wang, A. Os, S. Devereux, P. Jebsen, B. Bogen, G. E. Tjonnfjord and L. A. Munthe (2015). "Chronic lymphocytic leukemia cells express CD38 in response to Th1 cell-derived IFN-gamma by a T-bet-dependent mechanism." J Immunol 194(2): 827-835.
Calabretta, E. and C. Carlo-Stella (2020). "The Many Facets of CD38 in Lymphoma: From Tumor-Microenvironment Cell Interactions to Acquired Resistance to Immunotherapy." Cells 9(4).
Camacho-Pereira, J., M. G. Tarrago, C. C. S. Chini, V. Nin, C. Escande, G. M. Warner, A. S. Puranik, R. A. Schoon, J. M. Reid, A. Galina and E. N. Chini (2016). "CD38 Dictates Age-Related NAD Decline and Mitochondrial Dysfunction through an SIRT3-Dependent Mechanism." Cell Metab 23(6): 1127-1139.
Cambronne, X. A. and W. L. Kraus (2020). "Location, Location, Location: Compartmentalization of NAD(+) Synthesis and Functions in Mammalian Cells." Trends Biochem Sci 45(10): 858-873.
Chatenoud, L., C. Ferran, C. Legendre, I. Thouard, S. Merite, A. Reuter, Y. Gevaert, H. Kreis, P. Franchimont and J. F. Bach (1990). "In vivo cell activation following OKT3 administration. Systemic cytokine release and modulation by corticosteroids." Transplantation 49(4): 697-702.
Chen, X., J. L. Zaro and W. C. Shen (2013). "Fusion protein linkers: property, design and functionality." Adv Drug Deliv Rev 65(10): 1357-1369.
Chini, E. N., C. C. S. Chini, J. M. Espindola Netto, G. C. de Oliveira and W. van Schooten (2018). "The Pharmacology of CD38/NADase: An Emerging Target in Cancer and Diseases of Aging." Trends Pharmacol Sci 39(4): 424-436.
Chmielewski, J. P., S. C. Bowlby, F. B. Wheeler, L. Shi, G. Sui, A. L. Davis, T. D. Howard, R. B. D'Agostino, Jr., L. D. Miller, S. J. Sirintrapun, S. D. Cramer and S. J. Kridel (2018). "CD38 Inhibits Prostate Cancer Metabolism and Proliferation by Reducing Cellular NAD(+) Pools." Mol Cancer Res 16(11): 1687-1700.
Chmielewski, M., A. Hombach, C. Heuser, G. P. Adams and H. Abken (2004). "T cell activation by antibody-like immunoreceptors: increase in affinity of the single-chain fragment domain above threshold does not increase T cell activation against antigen-positive target cells but decreases selectivity." J Immunol 173(12): 7647-7653.
Chothia, C. and A. M. Lesk (1987). "Canonical structures for the hypervariable regions of immunoglobulins." J Mol Biol 196(4): 901-917.
Chu, S. Y., I. Vostiar, S. Karki, G. L. Moore, G. A. Lazar, E. Pong, P. F. Joyce, D. E. Szymkowski and J. R. Desjarlais (2008). "Inhibition of B cell receptor-mediated activation of primary human B cells by coengagement of CD19 and FcgammaRIIb with Fc-engineered antibodies." Mol Immunol 45(15): 3926-3933.
Covarrubias, A. J., A. Kale, R. Perrone, J. A. Lopez-Dominguez, A. O. Pisco, H. G. Kasler, M. S. Schmidt, I. Heckenbach, R. Kwok, C. D. Wiley, H. S. Wong, E. Gibbs, S. S. Iyer, N. Basisty, Q. Wu, I. J. Kim, E. Silva, K. Vitangcol, K. O. Shin, Y. M. Lee, R. Riley, I. Ben-Sahra, M. Ott, B. Schilling, M. Scheibye-Knudsen, K. Ishihara, S. R. Quake, J. Newman, C. Brenner, J. Campisi and E. Verdin (2020). "Senescent cells promote tissue NAD(+) decline during ageing via the activation of CD38(+) macrophages." Nat Metab 2(11): 1265-1283.
Dall'Acqua, W. F., P. A. Kiener and H. Wu (2006). "Properties of human IgG1s engineered for enhanced binding to the neonatal Fc receptor (FcRn)." J Biol Chem 281(33): 23514-23524.
Damle, R. N., T. Wasil, F. Fais, F. Ghiotto, A. Valetto, S. L. Allen, A. Buchbinder, D. Budman, K. Dittmar, J. Kolitz, S. M. Lichtman, P. Schulman, V. P. Vinciguerra, K. R. Rai, M. Ferrarini and N. Chiorazzi (1999). "Ig V gene mutation status and CD38 expression as novel prognostic indicators in chronic lymphocytic leukemia." Blood 94(6): 1840-1847.
Deaglio, S., K. Mehta and F. Malavasi (2001). "Human CD38: a (r)evolutionary story of enzymes and receptors." Leuk Res 25(1): 1-12.
Deshpande, D. A., A. G. P. Guedes, F. E. Lund, S. Subramanian, T. F. Walseth and M. S. Kannan (2017). "CD38 in the pathogenesis of allergic airway disease: Potential therapeutic targets." Pharmacol Ther 172: 116-126.
Diebolder, C. A., F. J. Beurskens, R. N. de Jong, R. I. Koning, K. Strumane, M. A. Lindorfer, M. Voorhorst, D. Ugurlar, S. Rosati, A. J. Heck, J. G. van de Winkel, I. A. Wilson, A. J. Koster, R. P. Taylor, E. O. Saphire, D. R. Burton, J. Schuurman, P. Gros and P. W. Parren (2014). "Complement is activated by IgG hexamers assembled at the cell surface." Science 343(6176): 1260-1263.
Dimopoulos, M. A., A. Oriol, H. Nahi, J. San-Miguel, N. J. Bahlis, S. Z. Usmani, N. Rabin, R. Z. Orlowski, M. Komarnicki, K. Suzuki, T. Plesner, S. S. Yoon, D. Ben Yehuda, P. G. Richardson, H. Goldschmidt, D. Reece, S. Lisby, N. Z. Khokhar, L. O'Rourke, C. Chiu, X. Qin, M. Guckert, T. Ahmadi, P. Moreau and P. Investigators (2016). "Daratumumab, Lenalidomide, and Dexamethasone for Multiple Myeloma." N Engl J Med 375(14): 1319-1331.
Drent, E., R. W. Groen, W. A. Noort, M. Themeli, J. J. Lammerts van Bueren, P. W. Parren, J. Kuball, Z. Sebestyen, H. Yuan, J. de Bruijn, N. W. van de Donk, A. C. Martens, H. M. Lokhorst and T. Mutis (2016). "Pre-clinical evaluation of CD38 chimeric antigen receptor engineered T cells for the treatment of multiple myeloma." Haematologica 101(5): 616-625.
Drent, E., M. Themeli, R. Poels, R. de Jong-Korlaar, H. Yuan, J. de Bruijn, A. C. M. Martens, S. Zweegman, N. van de Donk, R. W. J. Groen, H. M. Lokhorst and T. Mutis (2017). "A Rational Strategy for Reducing On-Target Off-Tumor Effects of CD38-Chimeric Antigen Receptors by Affinity Optimization." Mol Ther 25(8): 1946-1958.
Fayon, M., C. Martinez-Cingolani, A. Abecassis, N. Roders, E. Nelson, C. Choisy, A. Talbot, A. Bensussan, J. P. Fermand, B. Arnulf and J. C. Bories (2021). "Bi38-3 is a novel CD38/CD3 bispecific T-cell engager with low toxicity for the treatment of multiple myeloma." Haematologica 106(4): 1193-1197.
Frankel, S. R. and P. A. Baeuerle (2013). "Targeting T cells to tumor cells using bispecific antibodies." Curr Opin Chem Biol 17(3): 385-392.
Fumey, W., J. Koenigsdorf, V. Kunick, S. Menzel, K. Schutze, M. Unger, L. Schriewer, F. Haag, G. Adam, A. Oberle, M. Binder, R. Fliegert, A. Guse, Y. J. Zhao, H. Cheung Lee, F. Malavasi, F. Goldbaum, R. van Hegelsom, C. Stortelers, P. Bannas and F. Koch-Nolte (2017). "Nanobodies effectively modulate the enzymatic activity of CD38 and allow specific imaging of CD38(+) tumors in mouse models in vivo." Sci Rep 7(1): 14289.
Ge, Y., Y. Long, S. Xiao, L. Liang, Z. He, C. Yue, X. Wei and Y. Zhou (2019). "CD38 affects the biological behavior and energy metabolism of nasopharyngeal carcinoma cells." Int J Oncol 54(2): 585-599.
Glaria, E. and A. F. Valledor (2020). "Roles of CD38 in the Immune Response to Infection." Cells 9(1).
Guan, X. H., X. Hong, N. Zhao, X. H. Liu, Y. F. Xiao, T. T. Chen, L. B. Deng, X. L. Wang, J. B. Wang, G. J. Ji, M. Fu, K. Y. Deng and H. B. Xin (2017). "CD38 promotes angiotensin II-induced cardiac hypertrophy." J Cell Mol Med 21(8): 1492-1502.
Guedes, A. G., M. Dileepan, J. A. Jude, D. A. Deshpande, T. F. Walseth and M. S. Kannan (2020). "Role of CD38/cADPR signaling in obstructive pulmonary diseases." Curr Opin Pharmacol 51: 29-33.
Guerreiro, S., A. L. Privat, L. Bressac and D. Toulorge (2020). "CD38 in Neurodegeneration and Neuroinflammation." Cells 9(2).
Gunasekaran, K., M. Pentony, M. Shen, L. Garrett, C. Forte, A. Woodward, S. B. Ng, T. Born, M. Retter, K. Manchulenko, H. Sweet, I. N. Foltz, M. Wittekind and W. Yan (2010). "Enhancing antibody Fc heterodimer formation through electrostatic steering effects: applications to bispecific molecules and monovalent IgG." J Biol Chem 285(25): 19637-19646.
Henriques, A., I. Silva, L. Ines, M. M. Souto-Carneiro, M. L. Pais, H. Trindade, J. A. da Silva and A. Paiva (2016). "CD38, CD81 and BAFFR combined expression by transitional B cells distinguishes active from inactive systemic lupus erythematosus." Clin Exp Med 16(2): 227-232.
Higashida, H. and T. Munesue (2013). "[CD38 and autism spectrum disorders]." No To Hattatsu 45(6): 431-435.
Hinton, P. R., J. M. Xiong, M. G. Johlfs, M. T. Tang, S. Keller and N. Tsurushita (2006). "An engineered human IgG1 antibody with longer serum half-life." J Immunol 176(1): 346-356.
Hipp, S., Y. T. Tai, D. Blanset, P. Deegen, J. Wahl, O. Thomas, B. Rattel, P. J. Adam, K. C. Anderson and M. Friedrich (2017). "A novel BCMA/CD3 bispecific T-cell engager for the treatment of multiple myeloma induces selective lysis in vitro and in vivo." Leukemia 31(8): 1743-1751.
Hogan, K. A., C. C. S. Chini and E. N. Chini (2019). "The Multi-faceted Ecto-enzyme CD38: Roles in Immunomodulation, Cancer, Aging, and Metabolic Diseases." Front Immunol 10: 1187.
Jiang, Z., D. Wu, S. Lin and P. Li (2016). "CD34 and CD38 are prognostic biomarkers for acute B lymphoblastic leukemia." Biomark Res 4: 23.
Jiao, Y., M. Yi, L. Xu, Q. Chu, Y. Yan, S. Luo and K. Wu (2020). "CD38: targeted therapy in multiple myeloma and therapeutic potential for solid cancers." Expert Opin Investig Drugs 29(11): 1295-1308.
Joosse, M. E., C. L. Menckeberg, L. F. de Ruiter, H. R. C. Raatgeep, L. A. van Berkel, Y. Simons-Oosterhuis, I. Tindemans, A. F. M. Muskens, R. W. Hendriks, R. M. Hoogenboezem, T. Cupedo, L. de Ridder, J. C. Escher, S. Veenbergen and J. N. Samsom (2019). "Frequencies of circulating regulatory TIGIT(+)CD38(+) effector T cells correlate with the course of inflammatory bowel disease." Mucosal Immunol 12(1): 154-163.
Kang, B. E., J. Y. Choi, S. Stein and D. Ryu (2020). "Implications of NAD(+) boosters in translational medicine." Eur J Clin Invest 50(10): e13334.
Kar, A., S. Mehrotra and S. Chatterjee (2020). "CD38: T Cell Immuno-Metabolic Modulator." Cells 9(7).
Karimi-Busheri, F., V. Zadorozhny, T. Li, H. Lin, D. L. Shawler and H. Fakhrai (2011). "Pivotal role of CD38 biomarker in combination with CD24, EpCAM, and ALDH for identification of H460 derived lung cancer stem cells." J Stem Cells 6(1): 9-20.
Kim, B. J., Y. M. Choi, S. Y. Rah, D. R. Park, S. A. Park, Y. J. Chung, S. M. Park, J. K. Park, K. Y. Jang and U. H. Kim (2015). "Seminal CD38 is a pivotal regulator for fetomaternal tolerance." Proc Natl Acad Sci U S A 112(5): 1559-1564.
Kim, B. J., D. R. Park, T. S. Nam, S. H. Lee and U. H. Kim (2015). "Seminal CD38 Enhances Human Sperm Capacitation through Its Interaction with CD31." PLoS One 10(9): e0139110.
Kinder, M., A. R. Greenplate, K. D. Grugan, K. L. Soring, K. A. Heeringa, S. G. McCarthy, G. Bannish, M. Perpetua, F. Lynch, R. E. Jordan, W. R. Strohl and R. J. Brezski (2013). "Engineered protease-resistant antibodies with selectable cell-killing functions." J Biol Chem 288(43): 30843-30854.
Klein, C., C. Sustmann, M. Thomas, K. Stubenrauch, R. Croasdale, J. Schanzer, U. Brinkmann, H. Kettenberger, J. T. Regula and W. Schaefer (2012). "Progress in overcoming the chain association issue in bispecific heterodimeric IgG antibodies." MAbs 4(6): 653-663.
Labrijn, A. F., J. I. Meesters, B. E. de Goeij, E. T. van den Bremer, J. Neijssen, M. D. van Kampen, K. Strumane, S. Verploegen, A. Kundu, M. J. Gramer, P. H. van Berkel, J. G. van de Winkel, J. Schuurman and P. W. Parren (2014). "Efficient generation of stable bispecific IgG1 by controlled Fab-arm exchange." Proc Natl Acad Sci U S A 110(13): 5145-5150.
Lam, J. H., H. H. M. Ng, C. J. Lim, X. N. Sim, F. Malavasi, H. Li, J. J. H. Loh, K. Sabai, J. K. Kim, C. C. H. Ong, T. Loh, W. Q. Leow, S. P. Choo, H. C. Toh, S. Y. Lee, C. Y. Chan, V. Chew, T. S. Lim, J. Yeong and T. K. H. Lim (2019). "Expression of CD38 on Macrophages Predicts Improved Prognosis in Hepatocellular Carcinoma." Front Immunol 10: 2093.
Lefranc, M. P., C. Pommie, M. Ruiz, V. Giudicelli, E. Foulquier, L. Truong, V. Thouvenin-Contet and G. Lefranc (2003). "IMGT unique numbering for immunoglobulin and T cell receptor variable domains and Ig superfamily V-like domains." Dev Comp Immunol 27(1): 55-77.
Li, J., N. J. Stagg, J. Johnston, M. J. Harris, S. A. Menzies, D. DiCara, V. Clark, M. Hristopoulos, R. Cook, D. Slaga, R. Nakamura, L. McCarty, S. Sukumaran, E. Luis, Z. Ye, T. D. Wu, T. Sumiyoshi, D. Danilenko, G. Y. Lee, K. Totpal, D. Ellerman, I. Hotzel, J. R. James and T. T. Junttila (2017). "Membrane-Proximal Epitope Facilitates Efficient T Cell Synapse Formation by Anti-FcRH5/CD3 and Is a Requirement for Myeloma Cell Killing." Cancer Cell 31(3): 383-395.
Liao, S., S. Xiao, H. Chen, M. Zhang, Z. Chen, Y. Long, L. Gao, G. Zhu, J. He, S. Peng, W. Xiong, Z. Zeng, Z. Li, M. Zhou, X. Li, J. Ma, M. Wu, J. Xiang, G. Li and Y. Zhou (2017). "CD38 enhances the proliferation and inhibits the apoptosis of cervical cancer cells by affecting the mitochondria functions." Mol Carcinog 56(10): 2245-2257.
Liao, S., S. Xiao, G. Zhu, D. Zheng, J. He, Z. Pei, G. Li and Y. Zhou (2014). "CD38 is highly expressed and affects the PI3K/Akt signaling pathway in cervical cancer." Oncol Rep 32(6): 2703-2709.
Lin, W. W., Y. C. Lu, C. H. Chuang and T. L. Cheng (2020). "Ab locks for improving the selectivity and safety of antibody drugs." J Biomed Sci 27(1): 76.
Lins, L., E. Farias, C. Brites-Alves, A. Torres, E. M. Netto and C. Brites (2017). "Increased expression of CD38 and HLADR in HIV-infected patients with oral lesion." J Med Virol 89(10): 1782-1787.
Liu, X., T. R. Grogan, H. Hieronymus, T. Hashimoto, J. Mottahedeh, D. Cheng, L. Zhang, K. Huang, T. Stoyanova, J. W. Park, R. O. Shkhyan, B. Nowroozizadeh, M. B. Rettig, C. L. Sawyers, D. Elashoff, S. Horvath, J. Huang, O. N. Witte and A. S. Goldstein (2016). "Low CD38 Identifies Progenitor-like Inflammation-Associated Luminal Cells that Can Initiate Human Prostate Cancer and Predict Poor Outcome." Cell Rep 17(10): 2596-2606.
Lopatina, O., A. Inzhutova, A. B. Salmina and H. Higashida (2012). "The roles of oxytocin and CD38 in social or parental behaviors." Front Neurosci 6: 182.
Ma, S. R., W. W. Deng, J. F. Liu, L. Mao, G. T. Yu, L. L. Bu, A. B. Kulkarni, W. F. Zhang and Z. J. Sun (2017). "Blockade of adenosine A2A receptor enhances CD8(+) T cells response and decreases regulatory T cells in head and neck squamous cell carcinoma." Mol Cancer 16(1): 99.
Malavasi, F., S. Deaglio, R. Damle, G. Cutrona, M. Ferrarini and N. Chiorazzi (2011). "CD38 and chronic lymphocytic leukemia: a decade later." Blood 118(13): 3470-3478.
Malavasi, F., S. Deaglio, A. Funaro, E. Ferrero, A. L. Horenstein, E. Ortolan, T. Vaisitti and S. Aydin (2008). "Evolution and function of the ADP ribosyl cyclase/CD38 gene family in physiology and pathology." Physiol Rev 88(3): 841-886.
Malavasi, F., A. Funaro, S. Roggero, A. Horenstein, L. Calosso and K. Mehta (1994). "Human CD38: a glycoprotein in search of a function." Immunol Today 15(3): 95-97.
Mallone, R., E. Ortolan, S. Pinach, M. Volante, M. M. Zanone, G. Bruno, G. Baj, T. Lohmann, P. Cavallo-Perin and F. Malavasi (2002). "Anti-CD38 autoantibodies: characterisation in new-onset type I diabetes and latent autoimmune diabetes of the adult (LADA) and comparison with other islet autoantibodies." Diabetologia 45(12): 1667-1677.
Mallone, R. and P. C. Perin (2006). "Anti-CD38 autoantibodies in type? diabetes." Diabetes Metab Res Rev 22(4): 284-294.
Marlein, C. R., R. E. Piddock, J. J. Mistry, L. Zaitseva, C. Hellmich, R. H. Horton, Z. Zhou, M. J. Auger, K. M. Bowles and S. A. Rushworth (2019). "CD38-Driven Mitochondrial Trafficking Promotes Bioenergetic Plasticity in Multiple Myeloma." Cancer Res 79(9): 2285-2297.
May, C., P. Sapra and H. P. Gerber (2012). "Advances in bispecific biotherapeutics for the treatment of cancer." Biochem Pharmacol 84(9): 1105-1112.
Mehta, K., U. Shahid and F. Malavasi (1996). "Human CD38, a cell-surface protein with multiple functions." FASEB J 10(12): 1408-1417.
Moore, G. L., C. Bautista, E. Pong, D. H. Nguyen, J. Jacinto, A. Eivazi, U. S. Muchhal, S. Karki, S. Y. Chu and G. A. Lazar (2011). "A novel bispecific antibody format enables simultaneous bivalent and monovalent co-engagement of distinct target antigens." MAbs 3(6): 546-557.
Morandi, F., I. Airoldi, D. Marimpietri, C. Bracci, A. C. Faini and R. Gramignoli (2019). "CD38, a Receptor with Multifunctional Activities: From Modulatory Functions on Regulatory Cell Subsets and Extracellular Vesicles, to a Target for Therapeutic Strategies." Cells 8(12).
Munoz, P., M. Mittelbrunn, H. de la Fuente, M. Perez-Martinez, A. Garcia-Perez, A. Ariza-Veguillas, F. Malavasi, M. Zubiaur, F. Sanchez-Madrid and J. Sancho (2008). "Antigen-induced clustering of surface CD38 and recruitment of intracellular CD38 to the immunologic synapse." Blood 111(7): 3653-3664.
Nooka, A. K., J. L. Kaufman, C. C. Hofmeister, N. S. Joseph, T. L. Heffner, V. A. Gupta, H. C. Sullivan, A. S. Neish, M. V. Dhodapkar and S. Lonial (2019). "Daratumumab in multiple myeloma." Cancer 125(14): 2364-2382.
Orciani, M., O. Trubiani, S. Guarnieri, E. Ferrero and R. Di Primio (2008). "CD38 is constitutively expressed in the nucleus of human hematopoietic cells." J Cell Biochem 105(3): 905-912.
Palumbo, A., A. Chanan-Khan, K. Weisel, A. K. Nooka, T. Masszi, M. Beksac, I. Spicka, V. Hungria, M. Munder, M. V. Mateos, T. M. Mark, M. Qi, J. Schecter, H. Amin, X. Qin, W. Deraedt, T. Ahmadi, A. Spencer, P. Sonneveld and C. Investigators (2016). "Daratumumab, Bortezomib, and Dexamethasone for Multiple Myeloma." N Engl J Med 375(8): 754-766.
Perenkov, A. D., D. V. Novikov, N. A. Sakharnov, A. V. Aliasova, O. V. Utkin, A. Baryshnikov and V. V. Novikov (2012). "[Heterogeneous expression of CD38 gene in tumor tissue in patients with colorectal cancer]." Mol Biol (Mosk) 46(5): 786-791.
Petkova, S. B., S. Akilesh, T. J. Sproule, G. J. Christianson, H. Al Khabbaz, A. C. Brown, L. G. Presta, Y. G. Meng and D. C. Roopenian (2006). "Enhanced half-life of genetically engineered human IgG1 antibodies in a humanized FcRn mouse model: potential application in humorally mediated autoimmune disease." Int Immunol 18(12): 1759-1769.
Quarona, V., G. Zaccarello, A. Chillemi, E. Brunetti, V. K. Singh, E. Ferrero, A. Funaro, A. L. Horenstein and F. Malavasi (2013). "CD38 and CD157: a long journey from activation markers to multifunctional molecules." Cytometry B Clin Cytom 84(4): 207-217.
Ridgway, J. B., L. G. Presta and P. Carter (1996). "'Knobs-into-holes' engineering of antibody CH3 domains for heavy chain heterodimerization." Protein Eng 9(7): 617-621.
Salmina, A. B., O. Lopatina, N. V. Kuvacheva and H. Higashida (2013). "Integrative neurochemistry and neurobiology of social recognition and behavior analyzed with respect to CD38-dependent brain oxytocin secretion." Curr Top Med Chem 13(23): 2965-2977.
Saltarella, I., V. Desantis, A. Melaccio, A. G. Solimando, A. Lamanuzzi, R. Ria, C. T. Storlazzi, M. A. Mariggio, A. Vacca and M. A. Frassanito (2020). "Mechanisms of Resistance to Anti-CD38 Daratumumab in Multiple Myeloma." Cells 9(1).
Sanchez, E., M. Li, A. Kitto, J. Li, C. S. Wang, D. T. Kirk, O. Yellin, C. M. Nichols, M. P. Dreyer, C. P. Ahles, A. Robinson, E. Madden, G. N. Waterman, R. A. Swift, B. Bonavida, R. Boccia, R. A. Vescio, J. Crowley, H. Chen and J. R. Berenson (2012). "Serum B-cell maturation antigen is elevated in multiple myeloma and correlates with disease status and survival." Br J Haematol 158(6): 727-738.
Scheraga, H. A. (2008). "From helix-coil transitions to protein folding." Biopolymers 89(5): 479-485.
Schiavoni, I., C. Scagnolari, A. L. Horenstein, P. Leone, A. Pierangeli, F. Malavasi, C. M. Ausiello and G. Fedele (2018). "CD38 modulates respiratory syncytial virus-driven proinflammatory processes in human monocyte-derived dendritic cells." Immunology 154(1): 122-131.
Schultz, M. B. and D. A. Sinclair (2016). "Why NAD(+) Declines during Aging: It's Destroyed." Cell Metab 23(6): 965-966.
Schutze, K., K. Petry, J. Hambach, N. Schuster, W. Fumey, L. Schriewer, J. Rockendorf, S. Menzel, B. Albrecht, F. Haag, C. Stortelers, P. Bannas and F. Koch-Nolte (2018). "CD38-Specific Biparatopic Heavy Chain Antibodies Display Potent Complement-Dependent Cytotoxicity Against Multiple Myeloma Cells." Front Immunol 9: 2553.
Seckinger, A., J. A. Delgado, S. Moser, L. Moreno, B. Neuber, A. Grab, S. Lipp, J. Merino, F. Prosper, M. Emde, C. Delon, M. Latzko, R. Gianotti, R. Luoend, R. Murr, R. J. Hosse, L. J. Harnisch, M. Bacac, T. Fauti, C. Klein, A. Zabaleta, J. Hillengass, E. A. Cavalcanti-Adam, A. D. Ho, M. Hundemer, J. F. San Miguel, K. Strein, P. Umana, D. Hose, B. Paiva and M. D. Vu (2017). "Target Expression, Generation, Preclinical Activity, and Pharmacokinetics of the BCMA-T Cell Bispecific Antibody EM801 for Multiple Myeloma Treatment." Cancer Cell 31(3): 396-410.
Shields, R. L., A. K. Namenuk, K. Hong, Y. G. Meng, J. Rae, J. Briggs, D. Xie, J. Lai, A. Stadlen, B. Li, J. A. Fox and L. G. Presta (2001). "High resolution mapping of the binding site on human IgG1 for Fc gamma RI, Fc gamma RII, Fc gamma RIII, and FcRn and design of IgG1 variants with improved binding to the Fc gamma R." J Biol Chem 276(9): 6591-6604.
Shields, R. L., A. K. Namenuk, K. Hong, Y. G. Meng, J. Rae, J. Briggs, D. Xie, J. Lai, A. Stadlen, B. Li, J. A. Fox and L. G. Presta (2001). "High resolution mapping of the binding site on human IgG1 for Fc gamma RI, Fc gamma RII, Fc gamma RIII, and FcRn and design of IgG1 variants with improved binding to the Fc gamma R." J Biol Chem 276(9): 6591-6604.
Stone, L. (2017). "Prostate cancer: On the down-low - low luminal cell CD38 expression is prognostic." Nat Rev Urol 14(3): 133.
Su, A. I., T. Wiltshire, S. Batalov, H. Lapp, K. A. Ching, D. Block, J. Zhang, R. Soden, M. Hayakawa, G. Kreiman, M. P. Cooke, J. R. Walker and J. B. Hogenesch (2004). "A gene atlas of the mouse and human protein-encoding transcriptomes." Proc Natl Acad Sci U S A 101(16): 6062-6067.
Tam, S. H., S. G. McCarthy, A. A. Armstrong, S. Somani, S. J. Wu, X. Liu, A. Gervais, R. Ernst, D. Saro, R. Decker, J. Luo, G. L. Gilliland, M. L. Chiu and B. J. Scallon (2017). "Functional, Biophysical, and Structural Characterization of Human IgG1 and IgG4 Fc Variants with Ablated Immune Functionality." Antibodies (Basel) 6(3).
Usmani, S. Z., B. M. Weiss, T. Plesner, N. J. Bahlis, A. Belch, S. Lonial, H. M. Lokhorst, P. M. Voorhees, P. G. Richardson, A. Chari, A. K. Sasser, A. Axel, H. Feng, C. M. Uhlar, J. Wang, I. Khan, T. Ahmadi and H. Nahi (2016). "Clinical efficacy of daratumumab monotherapy in patients with heavily pretreated relapsed or refractory multiple myeloma." Blood 128(1): 37-44.
Vafa, O., G. L. Gilliland, R. J. Brezski, B. Strake, T. Wilkinson, E. R. Lacy, B. Scallon, A. Teplyakov, T. J. Malia and W. R. Strohl (2014). "An engineered Fc variant of an IgG eliminates all immune effector functions via structural perturbations." Methods 65(1): 114-126.
van de Donk, N. and S. Z. Usmani (2018). "CD38 Antibodies in Multiple Myeloma: Mechanisms of Action and Modes of Resistance." Front Immunol 9: 2134.
Wang, H., G. Kaur, A. I. Sankin, F. Chen, F. Guan and X. Zang (2019). "Immune checkpoint blockade and CAR-T cell therapy in hematologic malignancies." J Hematol Oncol 12(1): 59.
Wang, H., S. Li, G. Zhang, H. Wu and X. Chang (2019). "Potential therapeutic effects of cyanidin-3-O-glucoside on rheumatoid arthritis by relieving inhibition of CD38+ NK cells on Treg cell differentiation." Arthritis Res Ther 21(1): 220.
Wang, L., S. S. Hoseini, H. Xu, V. Ponomarev and N. K. Cheung (2019). "Silencing Fc Domains in T cell-Engaging Bispecific Antibodies Improves T-cell Trafficking and Antitumor Potency." Cancer Immunol Res 7(12): 2013-2024.
Wikipedia. (2021). "Catumaxomab."
Worn, A. and A. Pluckthun (2001). "Stability engineering of antibody single-chain Fv fragments." J Mol Biol 305(5): 989-1010.
Wu, C., X. Jin, G. Tsueng, C. Afrasiabi and A. I. Su (2016). "BioGPS: building your own mash-up of gene annotations and expression profiles." Nucleic Acids Res 44(D1): D313-316.
Wu, C., L. Zhang, Q. R. Brockman, F. Zhan and L. Chen (2019). "Chimeric antigen receptor T cell therapies for multiple myeloma." J Hematol Oncol 12(1): 120.
Wu, T. T. and E. A. Kabat (1970). "An analysis of the sequences of the variable regions of Bence Jones proteins and myeloma light chains and their implications for antibody complementarity." J Exp Med 132(2): 211-250.
Wursch, D., C. E. Ormsby, D. P. Romero-Rodriguez, G. Olvera-Garcia, J. Zuniga, W. Jiang, S. Perez-Patrigeon and E. Espinosa (2016). "CD38 Expression in a Subset of Memory T Cells Is Independent of Cell Cycling as a Correlate of HIV Disease Progression." Dis Markers 2016: 9510756.
Xu, D., M. L. Alegre, S. S. Varga, A. L. Rothermel, A. M. Collins, V. L. Pulito, L. S. Hanna, K. P. Dolan, P. W. Parren, J. A. Bluestone, L. K. Jolliffe and R. A. Zivin (2000). "In vitro characterization of five humanized OKT3 effector function variant antibodies." Cell Immunol 200(1): 16-26.
Xu, L., D. Chen, C. Lu, X. Liu, G. Wu and Y. Zhang (2015). "Advanced Lung Cancer Is Associated with Decreased Expression of Perforin, CD95, CD38 by Circulating CD3+CD8+ T Lymphocytes." Ann Clin Lab Sci 45(5): 528-532.
Yarbro, J. R., R. S. Emmons and B. D. Pence (2020). "Macrophage Immunometabolism and Inflammaging: Roles of Mitochondrial Dysfunction, Cellular Senescence, CD38, and NAD." Immunometabolism 2(3): e200026.
Yeong, J., J. C. T. Lim, B. Lee, H. Li, N. Chia, C. C. H. Ong, W. K. Lye, T. C. Putti, R. Dent, E. Lim, A. A. Thike, P. H. Tan and J. Iqbal (2018). "High Densities of Tumor-Associated Plasma Cells Predict Improved Prognosis in Triple Negative Breast Cancer." Front Immunol 9: 1209.
Yu, S., M. Yi, S. Qin and K. Wu (2019). "Next generation chimeric antigen receptor T cells: safety strategies to overcome toxicity." Mol Cancer 18(1): 125.
Zalevsky, J., A. K. Chamberlain, H. M. Horton, S. Karki, I. W. Leung, T. J. Sproule, G. A. Lazar, D. C. Roopenian and J. R. Desjarlais (2010). "Enhanced antibody half-life improves in vivo activity." Nat Biotechnol 28(2): 157-159.
Zambello, R., G. Barila, S. Manni, F. Piazza and G. Semenzato (2020). "NK cells and CD38: Implication for (Immuno)Therapy in Plasma Cell Dyscrasias." Cells 9(3).
Zeijlemaker, W., T. Grob, R. Meijer, D. Hanekamp, A. Kelder, J. C. Carbaat-Ham, Y. J. M. Oussoren-Brockhoff, A. N. Snel, D. Veldhuizen, W. J. Scholten, J. Maertens, D. A. Breems, T. Pabst, M. G. Manz, V. H. J. van der Velden, J. Slomp, F. Preijers, J. Cloos, A. A. van de Loosdrecht, B. Lowenberg, P. J. M. Valk, M. Jongen-Lavrencic, G. J. Ossenkoppele and G. J. Schuurhuis (2019). "CD34(+)CD38(-) leukemic stem cell frequency to predict outcome in acute myeloid leukemia." Leukemia 33(5): 1102-1112.
Zhang, D., A. A. Armstrong, S. H. Tam, S. G. McCarthy, J. Luo, G. L. Gilliland and M. L. Chiu (2017). "Functional optimization of agonistic antibodies to OX40 receptor with novel Fc mutations to promote antibody multimerization." MAbs 9: 1129-1142.
Zhang, M., J. Yang, J. Zhou, W. Gao, Y. Zhang, Y. Lin, H. Wang, Z. Ruan and B. Ni (2019). "Prognostic Values of CD38(+)CD101(+)PD1(+)CD8(+) T Cells in Pancreatic Cancer." Immunol Invest 48(5): 466-479.
Zheng, D., S. Liao, G. Zhu, G. Luo, S. Xiao, J. He, Z. Pei, G. Li and Y. Zhou (2016). "CD38 is a putative functional marker for side population cells in human nasopharyngeal carcinoma cell lines." Mol Carcinog 55(3): 300-311.
Zuch de Zafra, C. L., F. Fajardo, W. Zhong, M. J. Bernett, U. S. Muchhal, G. L. Moore, J. Stevens, R. Case, J. T. Pearson, S. Liu, P. L. McElroy, J. Canon, J. R. Desjarlais, A. Coxon, M. Balazs and O. Nolan-Stevaux (2019). "Targeting Multiple Myeloma with AMG 424, a Novel Anti-CD38/CD3 Bispecific T-cell-recruiting Antibody Optimized for Cytotoxicity and Cytokine Release." Clin Cancer Res 25(13): 3921-3933.
【配列表】
【国際調査報告】