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特表2024-528940リグノセルロース系材料の連続抽出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】リグノセルロース系材料の連続抽出方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 11/04 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
B01D11/04 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506219
(86)(22)【出願日】2022-08-01
(85)【翻訳文提出日】2024-01-31
(86)【国際出願番号】 EP2022071526
(87)【国際公開番号】W WO2023012094
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】LU102852
(32)【優先日】2021-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(31)【優先権主張番号】102021120026.1
(32)【優先日】2021-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523232713
【氏名又は名称】ムシュラブス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100211177
【弁理士】
【氏名又は名称】赤木 啓二
(72)【発明者】
【氏名】マルク コンラート
(72)【発明者】
【氏名】イリナ スミルノバ
【テーマコード(参考)】
4D056
【Fターム(参考)】
4D056AB14
4D056AC22
4D056BA03
4D056CA06
4D056CA39
4D056DA04
4D056EA08
(57)【要約】
本発明は、リグノセルロース系材料の連続抽出方法であって、a)リグノセルロース系材料を抽出器に搬送することと、b)抽出器内でリグノセルロース系材料と溶媒の懸濁液を形成することと、c)抽出器内のリグノセルロース系材料を溶媒で抽出することと、d)抽出器から懸濁液の一部を取り出し、流量
でプレス装置に搬送することと、e)プレス装置内でリグノセルロース系材料から溶媒を圧搾し、圧搾された溶媒を圧搾液として流量
で圧搾液タンクに搬送することによって、リグノセルロース系材料から溶媒を分離することと、f)プレスされたリグノセルロース系材料をプレス装置から流量
で取り出すことと、g)圧搾液の第1の部分を流量
で圧搾液タンクから抽出器に戻すことと、h)圧搾液の第2の部分を、抽出物として流量
で圧搾液タンクから取り出すことと、i)工程a、b、c、d、e又はgのいずれか1つ以上において流量
でリグノセルロース系材料に溶媒を添加することと、を含む、少なくとも1つの段階を含む方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグノセルロース系材料の連続抽出方法であって、
a)前記リグノセルロース系材料を抽出器に搬送することと、
b)前記抽出器内で、前記リグノセルロース系材料と溶媒の懸濁液を形成することと、
c)前記抽出器内の前記リグノセルロース系材料を前記溶媒で抽出することと、
d)前記抽出器から前記懸濁液の一部を取り出し、流量
【数1】
でプレス装置に搬送することと、
e)前記プレス装置内で前記リグノセルロース系材料から前記溶媒を圧搾し、圧搾された溶媒を圧搾液として流量
【数2】
で圧搾液タンクに搬送することによって、前記リグノセルロース系材料から前記溶媒を分離することと、
f)プレスされたリグノセルロース系材料を前記プレス装置から流量
【数3】
で取り出すことと、
g)前記圧搾液の第1の部分を流量
【数4】
で前記圧搾液タンクから前記抽出器に戻すことと、
h)前記圧搾液の第2の部分を、抽出物として流量
【数5】
で前記圧搾液タンクから取り出すことと、
i)工程a、b、c、d、e又はgのいずれか1つ以上において流量
【数6】
で前記リグノセルロース系材料に溶媒を添加することと、を含む、少なくとも1つの段階を含む、方法。
【請求項2】
工程dにおいて、前記懸濁液が前記プレス装置に搬送される流量
【数7】
は、圧搾液が前記圧搾液タンクに搬送される流量
【数8】
とプレスされたリグノセルロース系材料が前記プレス装置から取り出される流量
【数9】
との合計よりも大きく、前記抽出器から前記プレス装置に搬送される前記懸濁液の一部が、流量
【数10】
で前記プレス装置から前記抽出器に戻される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記懸濁液の一部が重力によって前記プレス装置から前記抽出器に戻され、及び/又は前記圧搾液の前記第1の部分が重力によって前記圧搾液タンクから前記抽出器に戻される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程aにおいて、前記リグノセルロース系材料が、コンベヤによって前記抽出器内に搬送される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記抽出器に戻される圧搾液の流量
【数11】
は、抽出物として取り出される圧搾液の流量
【数12】
よりも大きい、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒は、前記抽出器に搬送されるときに工程aにおいて前記リグノセルロース系材料に添加され、及び/又は工程b又はcのいずれかにおいて前記抽出器に直接添加される、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記プレス装置は、スクリューセパレータである、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記抽出器が撹拌容器である、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記溶媒は水である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記リグノセルロース系材料は粒子形態である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記リグノセルロース系材料は、熱水前処理済みリグノセルロース系材料、特に好ましくは自己加水分解前処理済みリグノセルロース系材料である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記方法は少なくとも2つの段階を含む多段階プロセスであり、最終段階が上記工程a~iを含み、少なくとも1つの上流段階が上記工程a~h及び工程a、b、c、d、e又はgのいずれか1つ以上において溶媒を流量
【数13】
で前記リグノセルロース系材料に添加する工程iを含み、前記最終段階において前記リグノセルロース系材料に添加される前記溶媒が新鮮な溶媒であり、前記上流段階において前記リグノセルロース系材料に添加される前記溶媒は前記圧搾液タンクからの前記圧搾液の前記第2の部分を含むまたはそれからなる、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
第1段階、最終段階、及び前記第1段階と前記最終段階との間の1つ以上の中間段階を含み、前記中間段階のいずれかにおいて、前記リグノセルロース系材料に添加される前記溶媒は、次の段階の工程hにおいて前記圧搾液タンクから取り出された前記圧搾液の前記第2の部分を含むまたはそれからなり、前記抽出器に搬送される前記リグノセルロース系材料は、前の段階の工程fにおいて前記プレス装置から取り出された前記プレスされたリグノセルロース系材料からなる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記第1段階の工程aにおいて前記抽出器に搬送される前記リグノセルロース系材料は、熱水前処理済み、好ましくは粒子の形態のリグノセルロース系材料からなり、前記最終段階において前記リグノセルロース系材料に添加される前記溶媒は新鮮な溶媒からなる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
添加される溶媒の流量
【数14】
は、前記第1段階又は前記第1段階及び前記最終段階を除く段階のそれぞれにおいて抽出物として取り出される前記圧搾液の流量
【数15】
に等しい、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記プレス装置から取り出された前記プレスされたリグノセルロース系材料は、多段階プロセスの場合、好ましくは前記最終段階の後に、後続の熱水処理、好ましくは自己加水分解処理にかけられる、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の方法による、リグノセルロース系材料の連続抽出装置(200)であって、コンベヤ(1)、抽出器(2)、圧搾液タンク(4)及びプレス装置(3)を含む少なくとも1つのモジュール(100)を含み、前記リグノセルロース系材料の流れの方向において、前記抽出器(2)は前記コンベヤ(1)の下流に配置され、前記プレス装置(3)は前記抽出器(2)の下流に配置され、前記圧搾液タンク(4)は前記プレス装置(3)の下流に配置され、前記圧搾液タンク(4)及び前記抽出器(2)は、圧搾液を前記圧搾液タンク(4)から前記抽出器(2)に搬送することができるように、直接又はポンプを介して間接的に互いに流体連通している、装置(200)。
【請求項18】
前記圧搾液タンク(4)は前記抽出器(2)に対してより高く配置され、及び/又は、前記プレス装置(3)は前記抽出器(2)に対してより高く配置される、請求項17に記載の装置(200)。
【請求項19】
前記装置(200)は、直列に接続された2つ以上の前記モジュール(100)を備える、請求項17又は18のいずれか一項に記載の装置(200)。
【請求項20】
前記抽出器(2)は撹拌容器であり、前記プレス装置(3)はスクリューセパレータである、請求項17~19のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リグノセルロース系材料の連続抽出方法に関する。
【0002】
化石燃料埋蔵量の枯渇及びより持続可能な原料抽出の必要性を考慮して、再生可能資源、特にリグノセルロース系バイオマスなどの生物学的原料の使用がますます重要になっている。例えば、油ベースの生成物をバイオベースの生成物に置き換えるために、バイオ燃料及び広範囲の他の化学物質の生成のための生物学的材料利用のプロセス及びシステムに、「バイオリファイナリー」という用語がよく使用される。
【0003】
リグノセルロース系材料の抽出方法は、先行技術から公知である(例えば、国際公開第2012/110231(A1)号、国際公開第2018/114905(A1)号、米国特許第8822657(A)号、米国特許第8772427(A)号、米国特許第9624449(A)号、欧州特許第2862890(A1)、欧州特許第2520608(A1)号、A.Patel and A.R.Shah,Integrated lignocellulosic biorefinery:Gateway for production of second-generation ethanol and value-added products,Journal of Bioresources and Bioproducts,doi:10.1016/j.jobab.2021.02.001を参照されたい)。しかしながら、リグノセルロース系材料から有用物質又は不純物を抽出するための、効率的で、費用効果が高く、柔軟な方法が依然として必要とされている。よって、本発明の目的はこのような方法を提供することである。
【0004】
一態様において、本発明は、リグノセルロース系材料の連続抽出方法であって、
a)リグノセルロース系材料を抽出器に搬送することと、
b)抽出器内で、リグノセルロース系材料と溶媒の懸濁液を形成することと、
c)抽出器内のリグノセルロース系材料を溶媒で抽出することと、
d)抽出器から懸濁液の一部を取り出し、流量
【0005】
【数1】
でプレス装置に搬送することと、
e)プレス装置内でリグノセルロース系材料から溶媒を圧搾し、圧搾された溶媒を圧搾液として流量
【0006】
【数2】
で圧搾液タンクに搬送することによって、リグノセルロース系材料から溶媒を分離することと、
f)プレスされたリグノセルロース系材料をプレス装置から流量
【0007】
【数3】
で取り出すことと、
g)圧搾液の第1の部分を流量
【0008】
【数4】
で圧搾液タンクから抽出器に戻すことと、
h)圧搾液の第2の部分を、抽出物として流量
【0009】
【数5】
で圧搾液タンクから取り出すことと、
i)工程a、b、c、d、e又はgのいずれか1つ以上において流量
【0010】
【数6】
でリグノセルロース系材料に溶媒を添加することと、を含む、少なくとも1つの段階を含む、方法。
【0011】
本発明は、リグノセルロース系材料を抽出するための、効率的で、費用効果が高く、柔軟な方法を提供する。本発明の方法は、1段階プロセス又は多段階プロセスとして設計することができるが、後者が好ましい。本発明の方法が多段階プロセスである実施形態では、プロセスは、好ましくは連続向流プロセスとして構成される。
【0012】
本発明の方法では、リグノセルロース系材料は、例えばコンベヤ又は重力によって抽出器に搬送される。水などの溶媒は、抽出器への搬送の途中で、例えばコンベヤ上のリグノセルロース系材料上に溶媒を散布することによって、リグノセルロース系材料に添加されてもよい。あるいは、またはさらに、例えば、溶媒を抽出器に直接添加してもよい。連続的に添加される溶媒の量は、正味基準で、プロセスから例えば抽出物として取り出される任意の液相、すなわちプロセス段階又は特に多段階プロセスにおいて、全プロセス又はシステムに出入りする液相の、質量流量の任意の差を相殺するように設定されている。添加される溶媒は、特に1段階プロセスの場合、新鮮な溶媒であってもよい。多段階プロセスにおいて、溶媒はその後の段階で生成された圧搾液、又は新鮮な溶媒であってもよく、後者を最終段階で使用することが好ましい。十分な量の溶媒の存在が好ましい抽出器において、リグノセルロース系材料と溶媒の懸濁液が形成される。抽出器は、例えば、懸濁液の形成及びリグノセルロース系材料からの、特に湿ったリグノセルロース系材料に吸収された水からの物質の抽出を促進するために、撹拌機を備えていてもよい。抽出器において、リグノセルロース系材料は溶媒で抽出される。
【0013】
リグノセルロース系材料と溶媒の懸濁液の一部は、抽出器から連続的に取り出され、例えば、適切なポンプ(例えば、回転ポンプ、ローブポンプ又はプログレッシブキャビティポンプ)によってプレス装置に搬送される。プレス装置は、好ましくはスクリューセパレータである。プレス装置において、リグノセルロース系材料から溶媒を圧搾することによって、溶媒はリグノセルロース系材料から分離される。圧搾された溶媒(圧搾液)は、例えば、適切なポンプ(例えば、ピストンポンプ、遠心ポンプ)によって、圧搾液タンクに搬送される。プレスされたリグノセルロース系材料は、プレス装置から取り出される。圧搾液の第1の部分は抽出器に戻され、圧搾液の第2の部分は圧搾物タンクから抽出物として取り出され、さらなる処理のためにプロセスから除去されるか、または例えば、抽出器に供給されるときにリグノセルロース系材料に添加することによって、またはリグノセルロース系材料と溶媒の懸濁液を収容する抽出器に直接添加することによって、プロセスに戻されるかのいずれかであり得る。抽出器に戻される圧搾液の第1の部分は、重力によって、すなわち圧搾液タンクを抽出器よりも高く配置することによって、及び/又は1つ以上のポンプを使用することによって戻すことができる。
【0014】
「リグノセルロース系材料」という用語は、リグノセルロースを含有する生物学的材料、例えば植物材料を指す。リグノセルロース系材料は、セルロース及びヘミセルロースの炭水化物ポリマー、及び芳香族ポリマーであるリグニンから構成されるリグノセルロースを含有する。この用語は、例えば、わらのような植物材料、例えば、稲及びもみわら、サトウキビバガス、トウモロコシ茎葉などを含む。「リグノセルロース含有材料」、「リグノセルロース系バイオマス」または「リグノセルロース」という用語は、用語「リグノセルロース系材料」に対して同義的に使用され得る。本明細書で使用される「リグノセルロース系材料」という用語は、例えば新鮮なリグノセルロース系材料、すなわち、まだ抽出されていない、少なくとも本発明の方法でまだ抽出されていないリグノセルロース系材料、およびプレスされたリグノセルロース系材料を含む。「プレスされたリグノセルロース系材料」という用語は、例えばスクリュープレスによって液相が圧搾されたリグノセルロース系材料に関する。この用語を、リグノセルロース系材料が圧縮された状態でなければならない、またはプレスプロセス後にリグノセルロース系材料によって結合されたいかなる液相も完全に含まないことを意味すると解釈するべきではない。
【0015】
「熱水前処理済みリグノセルロース系材料」という用語は、熱水処理されたリグノセルロース系材料を指す。熱水前処理は、100℃超、例えば150~300℃の温度の熱水又は水蒸気をリグノセルロース系材料に適用することを意味する(例えば、Ahmed B,Aboudi K,Tyagi VK,Alvarez-Gallego CJ,Fernandez-Guelfo LA,Romero-Garcia LI,Kazmi AA,Improvement of Anaerobic Digestion of Lignocellulosic Biomass by Hydrothermal Pretreatment,Applied Sciences.2019;9(18):3853,doi:10.3390/app9183853を参照のこと)。熱水前処理の好ましい温度範囲は、150~250℃又は150~230℃である。この用語は、例えば、希硫酸、硝酸、リン酸または塩酸による希酸前処理(Dilute Acid Pretreatment、DAP)及びアルカリ前処理、すなわち、NaOH、KOH、Ca(OH)又はアンモニアの溶液などのアルカリ溶液の使用を含む。さらに、この用語は、水のみによる熱水処理に関する「自己加水分解」という用語を含む。「自己加水分解前処理済みリグノセルロース系材料」という用語は、自己加水分解によって処理されたリグノセルロース系材料に関する。「熱水前処理済みリグノセルロース系材料」は、「蒸気前処理済みバイオマス」(Steam Pretreated Biomass、SPB)と呼ばれることもある。「熱水前処理」という用語は、任意の後続の酵素的加水分解を含むと解釈されるべきではない。
【0016】
本明細書で使用される「抽出」という用語は固液抽出に関し、リグノセルロース系材料から抽出される溶質が対象の成分、例えば、有用物質であるという「浸出」という用語と、リグノセルロース系材料から抽出される溶質が外来物質、不純物又は汚染物質、すなわち、リグノセルロース系材料から除去される不要な成分であるという「洗浄」という用語を含む。リグノセルロース系材料から抽出される有用物質の例は、キシランオリゴマー、キシロース、アラビノース、酢酸、フルフラール、及びヒドロキシメチルフルフラール(HydroxyMethylFurfural、HMF)である。リグノセルロース系材料から洗浄される望ましくない成分の例は、鉱物成分(「灰」)、微粒子(鉱物、リグニンに富む粒子、微生物)、塵又は肥料である。本出願では、任意の望ましくない溶質をまとめて「汚染物質」と呼ぶことがある。
【0017】
本明細書で使用される「溶媒」という用語は、リグノセルロース系材料から材料を抽出するために使用される液相に関し、「圧搾液」および「抽出物」という用語を含み、新鮮な溶媒、すなわちリグノセルロース系材料から抽出された物質をまだ含有していない溶媒と、リグノセルロース系材料から抽出された物質を含有する、またはこれで濃縮された溶媒の両方に関する。「圧搾液」という用語は、リグノセルロース系材料及び溶媒から構成された、よってリグノセルロース系材料から抽出された物質を含有する懸濁液から圧搾される溶媒に関する。本発明の文脈において名詞として使用される「抽出物」という用語は、流量
【0018】
【数7】
で圧搾液タンクから取り出される圧搾液の第2の部分を指し、これは、a)プロセスから取り出される圧搾液の一部、すなわち、例えば成分の単離などのさらなる処理のために最終的にプロセスから除去することができる抽出物質が十分に濃縮された溶媒の一部、またはb)圧搾液タンクから取り出され、抽出器に搬送されるときに新鮮なリグノセルロース系材料に添加されるか、もしくは抽出器に直接添加される圧搾液の一部である。「抽出剤」という用語はまた、「溶媒」と互換的に使用され得る。本明細書で使用する際の「新鮮な溶媒」という用語は、リグノセルロース系材料から抽出される物質のいずれも含まないか又は本質的に含まない溶媒、例えば水を指す。
【0019】
「ラフィネート」という用語は、プレスされたリグノセルロース系材料にまだ結合している液相、すなわち、プレス装置から出るプレスされたリグノセルロース系材料の含水量を指す。別段の記載がない限り、または文脈から暗示されない限り、「抽出リグノセルロース系材料」又は「抽出バイオマス」という用語は、本発明による抽出プロセスにかけられたリグノセルロース系材料に関する。「プレスされたリグノセルロース系材料」(上記参照)という用語は、固相及びラフィネートを含むリグノセルロース系材料に関して本明細書で使用される。
【0020】
例えば、リグノセルロース系材料、溶媒、又は圧搾液に関して「運搬される」という用語は、ポンプ、コンベヤベルト、スクリューコンベヤを介して、重力によって又は他の手段によって、ある場所から別の場所への材料の任意の運搬に関する。
【0021】
例えば、懸濁液の一部、プレスされたリグノセルロース系材料、又は圧搾液の一部を「x」として本明細書で使用される「yからxを取り出す」などの用語は、xがyから取り出される又は分離されること、例えば、懸濁液の一部が抽出器から取り出される(セパレータ内で懸濁液から分離される)ことを意味する。
【0022】
本発明の方法に関して「向流」という用語は、抽出されるリグノセルロース系材料又はリグノセルロース系材料と溶媒の懸濁液、及びリグノセルロース系材料の抽出に使用される溶媒の反対の流れを指す。
【0023】
「多段階プロセス」という用語は、少なくとも2つの段階、例えば2、3、4、5、6又はそれ以上の段階を含むプロセスに関する。
【0024】
「スクリューセパレータ」(「スクリュープレスセパレータ」、「スクリューコンパクタ」、「スクリュープレス」とも呼ばれる)という用語は、固体出口の方向に懸濁液を運搬及びプレスする回転オーガと、液相を固相から分離することができるスクリーンと、を含む、固液分離のための装置を指す。固体出口は、圧力を制御するための油圧ピストンを備えてもよい。
【0025】
「抽出器」という用語は、材料から物質を抽出するために、すなわち材料から物質、例えばリグノセルロース系材料から有用物質又は汚染物質を除去し、それらを溶媒に移すために使用される装置を指す。抽出器の例としては、溶媒中に懸濁された材料を撹拌するための手段を備えた容器がある。
【0026】
特に明記しない限り、流量は体積流量ではなく質量流量
【0027】
【数8】
として示される。
【0028】
本発明による方法は、(好ましくは繰り返される)懸濁液抽出とプレスとを組み合わせる。前者は高い質量輸送速度をもたらし、後者はラフィネート流が固体流、すなわち出発リグノセルロース系材料の流れに対して非常に低いという利点を有する。結果として、高い抽出収率、すなわち最終抽出物中の溶質の高い収率にもかかわらず、必要な工程及び必要な溶媒はより少なくなる。本発明の方法の利点は、リグノセルロース系材料内の有用物質又は汚染物質の、溶媒のバルク相への物質輸送が、従来の抽出器の場合のように拡散及び物質移動から排他的に生じないことである。むしろ、溶媒がプレス装置によって懸濁液中のリグノセルロース系材料から圧搾されるときに、非常に速い対流材料輸送が起こる。リグノセルロース系材料は圧縮され、溶媒は有用物質又は汚染物質と共にリグノセルロース系材料から圧搾液として能動的に圧搾される。この材料輸送は、外部から加えられた力によってもたらされるため対流的であり、リグノセルロース系材料の内部からの有用物質の拡散よりも速い。リグノセルロース系材料が溶媒と混合されるとき、使用されるリグノセルロース系材料に応じて、さらなる対流材料輸送が起こり得る。これは、特に、使用されるリグノセルロース系材料の細胞構造が大部分維持される場合である。このような場合、溶媒はリグノセルロース系材料中に拡散し、膨潤を開始する。
【0029】
本発明の方法の好ましい実施形態では、工程dにおいて懸濁液がプレス装置に搬送される流量
【0030】
【数9】
は、圧搾液が圧搾液タンクに搬送される流量
【0031】
【数10】
と、プレスされたリグノセルロース系材料がプレス装置から取り出される流量
【0032】
【数11】
との合計よりも大きい。この実施形態では、抽出器からプレス装置に搬送される過剰な懸濁液、すなわち、プレス装置に供給されるが圧搾液又はプレスされたリグノセルロース系材料のいずれかとして取り出されない懸濁液の一部は、流量
【0033】
【数12】
でプレス装置から抽出器に戻される。これは重力によって、例えばプレス装置を抽出器よりも高く配置することによって行われるのが好ましい。しかしながら、これは、懸濁液の少なくとも1つの適切なポンプポンピング部分を抽出器に戻して使用することによって実施することもできる。プレス装置から抽出器へのこのような懸濁液のリフローによって、プレス装置の安定した動作が容易になる。
【0034】
添加される溶媒の流量
【0035】
【数13】
は、好ましくは、プロセスに供給されるリグノセルロース系材料の液相(含水量)中の溶質を効率的に抽出できるように選択され、好ましくは、溶質を抽出するためにできるだけ少ない溶媒を使用するように、最小限になるように選択される。さらに好ましくは、1段階又は多段階プロセスである連続プロセス中の液相の除去又は損失を補償するように選択され、例えば、システムに供給される又はシステムから取り出されるリグノセルロース系材料中に含有される液相によって補償されない。分離された液相、すなわち、リグノセルロース系材料の固体に結合していない「遊離」液相は、主に抽出物としてプロセスから除去される。添加される溶媒の流量
【0036】
【数14】
は、抽出物としてプロセスから取り出される圧搾液の流量
【0037】
【数15】
と異なっていてもよい。これは、例えば、特に段階に入るリグノセルロース系材料の含水量が、段階を出るリグノセルロース系材料の含水量と異なる場合であり得る。これは、例えば、段階に入るリグノセルロース系材料の含水量が、リグノセルロース系材料の任意の事前の前処理などによって決定され、段階を出るリグノセルロース系材料の含水量がプレスパラメータによって決定される、単一段階プロセスの場合であってもよい。
【0038】
本発明の方法の好ましい実施形態において、添加される溶媒の流量
【0039】
【数16】
は、抽出物として取り出される圧搾液の流量
【0040】
【数17】
と基本的に等しい。本発明の多段階プロセスにおいて、これは、任意に第1段階又は第1及び最終段階を除く段階の少なくとも1つに適用されるのが好ましい。
【0041】
リグノセルロース系材料は、工程aにおいて、任意の適切な手段によって抽出器に搬送されてもよい。例えばリグノセルロース系材料は、重力によって、例えばシュートまたは漏斗を使用して抽出器に搬送されてもよい。この実施形態は、リグノセルロース系材料を抽出器に能動的に供給するための補助エネルギー、すなわち能動的機械支援の使用を不要にするという点で有利であり、より小さいプラントに特に有用であり得る。
【0042】
本発明による方法の別の好ましい実施形態では、リグノセルロース系材料は、工程aにおいてコンベヤによって抽出器に搬送される。これによって、リグノセルロース系材料が抽出器に入る前に、リグノセルロース系材料への溶媒の適用が容易になる。コンベヤは、例えば、コンベヤベルト又はスクリューコンベヤであってもよい。本発明による方法の好ましい実施形態において、溶媒は、抽出器に搬送されるときに工程aにおいてリグノセルロース系材料に添加される。追加的に又は代替的に、溶媒は別の好適なプロセス工程において添加することができる。溶媒は、例えば工程b又はcのいずれかにおいて抽出器に直接添加することができる。抽出器に供給される前のリグノセルロース系材料への溶媒、特に新鮮な溶媒の添加は、リグノセルロース系材料内に結合された液相中の溶質と溶媒のバルク相との間の濃度平衡を迅速に得るために特に有用であり、それによって抽出器内の溶媒のバルク相中の溶質の迅速かつ均一な分布を補助することができる。
【0043】
本発明の方法のさらに好ましい実施形態では、抽出物として除去されるより多くの圧搾液が抽出器に戻される。したがって、抽出器に戻される圧搾液の流量
【0044】
【数18】
は、抽出物として取り出される圧搾液の流量
【0045】
【数19】
よりも大きいことが好ましい。
【0046】
プレス装置は、リグノセルロース系材料を溶媒から分離する、好ましくは連続的に分離することができる任意の装置、例えば、ツインロールプレス、ベルトフィルタープレス又はスクリューセパレータであってよく、後者が好ましい。
【0047】
抽出器は、懸濁液を抽出器内で適切に撹拌する、例えば、かき混ぜることができるような撹拌容器であることが好ましい。これによって、特に比較的低い固体含有量を有する懸濁液で、リグノセルロース系材料から溶媒への溶質の物質輸送が促進される。置換洗浄(パルプ洗浄)又はパーコレーションなどの従来のプロセスでは、流体相が自由対流又は小さな圧力差によってリグノセルロース系材料を通過してゆっくりと流れるため、並びに粒子と流体との相対速度が0であり材料輸送が拡散によって制限される粒子-粒子接触、デッドゾーン及びよどみ点のため、リグノセルロース系材料表面から抽出物のバルク相への物質輸送は比較的遅いだけである。懸濁液の固形分は、懸濁液の総重量に基づいて40重量%未満であることが好ましく、さらに好ましくは35重量%以下、30重量%以下、25重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、又は10重量%以下、例えば、0.5~15重量%、1~12重量%又は2~8重量%の範囲である。
【0048】
好ましい実施形態において、溶媒は水である。水の温度は20~95度であることが好ましい。浸出目的のために、約40~95℃、好ましくは55~80℃、例えば60、65又は70℃の温度の熱水を使用することが特に好ましい。洗浄目的のために、溶媒は約20~95℃の温度の水であることが好ましい。ここで溶媒は、例えばプロセス水、すなわち既に物質が溶解している水であってもよい。
【0049】
本発明の方法のさらに好ましい実施形態において、リグノセルロース系材料は、わら粒子などの粒子形態である。リグノセルロース系材料は、機械的手段によってサイズを縮小させることができ、例えば、適切な手段を使用して粒子を破砕、切断又は粉砕することができる。粒径は様々であってよいが、リグノセルロース系材料の輸送および懸濁を容易にし、溶媒と接触する表面積を拡大する範囲内にあるように構成されるのが好ましい。粒径は使用されるリグノセルロース系材料に依存してよく、好ましくは20cm未満、好ましくは0.5~10cmの範囲、さらに好ましくは0.5~5cm又は0.5~3cm、特に好ましくは0.5~2cmである。
【0050】
リグノセルロース系材料は、任意のリグノセルロース系材料であってもよく、リグノセルロース系材料に適した任意の前処理プロセスで前処理されたリグノセルロース系材料であってもよい。本発明の方法の特に好ましい実施形態では、リグノセルロース系材料は、熱水的に前処理済みリグノセルロース系材料、すなわち熱水又は蒸気で前処理されたリグノセルロース系材料である。リグノセルロース系材料は、自己加水分解前処理されることが特に好ましい。熱水前処理は、リグノセルロース系バイオマスの分解及び成分の可溶化をもたらし、リグノセルロース系材料からの有用物質の抽出を促進する。さらに、その海綿状構造に起因して、例えばプレスによって予め圧縮された熱水前処理済みリグノセルロース系材料は、溶媒と接触すると膨潤し、はるかに小さいサイズに圧縮することもできる。溶媒と混合されると、予めプレスされた前処理済みリグノセルロース系材料は膨潤し、より多くの溶媒が材料中に流れ込み、その結果、物質が溶媒中に対流輸送される。
【0051】
熱水前処理は、文献(Conrad,M.,Haring,H.& Smirnova,I.Design of an industrial autohydrolysis pretreatment plant for annual lignocellulose,Biomass Conv.Bioref.(2019),doi:10.1007/s13399-019-00479-1;Ruiz,H.A.,Conrad,M.,Sun,S.,Sanchez,A.,Rocha,G.,Romani,A.,Castro,E.,Torres,A.,Rodriguez-Jasso,R.M.,Andrade,L.P.,Smirnova,I.,Sun,R.,& Meyer,A.(2019),Engineering aspects of hydrothermal pretreatment:From batch to continuous operation,scale-up and pilot reactor under biorefinery concept,Bioresource technology,122685,doi:10.1016/j.biortech.2019.122685;Conrad,M.and Smirnova,I.(2020),Two-Step Autohydrolysis Pretreatment:Towards High Selective Full Fractionation of Wheat Straw,Chemie Ingenieur Technik,92:1723-1732,doi:10.1002/cite.202000056)に記載の通り、2段階の自己加水分解前処理であってもよい。2段階の自己加水分解前処理は、スクリューコンベヤ反応器(Screw Conveyor Reactor、SCR、上記Ruiz他、2019を参照)の使用を含んでもよい。スクリューコンベヤ反応器(SCR)は、リグノセルロース系材料又は他の湿潤バイオマスのような固体材料を輸送する回転オーガ(スクリュー)を有する少なくとも1つの反応器容器、例えば水平円筒形容器を含む密閉耐圧装置であり、容器内の材料は圧力下で熱水又は蒸気に曝露され得る。スクリューコンベヤ反応器(SCR)は、好ましくはリグノセルロース系材料の強力な排水を提供することができる高圧スクリューフィーダ(High-Pressure screw、HPスクリュー)も含む(上記Ruiz他、2019を参照)。
【0052】
本発明の方法のさらに好ましい実施形態では、リグノセルロース系材料の抽出は、2段階水熱前処理、例えば自己加水分解前処理の2つの工程の間に挿入される。この実施形態では、リグノセルロース系材料は、工程a)の前に、すなわちリグノセルロース系材料が抽出器に搬送される前にかつプレス装置から取り出された後に、熱水的に前処理される。本発明の方法は、さらに第1の熱水処理工程の前及び/又は第2の熱水処理工程の後に行われてもよい。熱水前処理は、とりわけ、リグノセルロース系材料の液相(ラフィネート)を溶質で濃縮する働きをし得る。
【0053】
本発明による方法において、流体、懸濁液(スラリ)又は固体の任意の上流又は下流の流れは、可能かつ合理的であれば、質量流が重力によって生じるように配置されるのが好ましい。しかしながら、ポンプ又は他の手段を使用することも可能である。
【0054】
本発明の方法は、並流法、例えば1段階プロセスとして設計することができる。しかしながら、本発明の方法の特に好ましい実施形態において、本方法は少なくとも2つの段階、最終段階及び最終段階の上流の段階を含む多段階プロセス、特に好ましくは向流多段階プロセスである。最終段階は、上記工程a~iを含む。少なくとも1つの上流段階は、上記の工程a~hと、工程a、b、c、d、e又はgのいずれか1つ以上においてある流量
【0055】
【数20】
でリグノセルロース系材料に溶媒を添加する工程iと、を含む。この実施形態では、最終段階の工程a、b、c、d、eまたはgのいずれか1つ以上において流量
【0056】
【数21】
でリグノセルロース系材料に添加される溶媒は、好ましくは新鮮な溶媒であり、一方、少なくとも1つの上流段階の工程a、b、c、d、e又はgのいずれか1つ以上においてリグノセルロース系材料に添加される溶媒は、圧搾液タンクからの圧搾液の第2の部分を含むまたはそれからなる。この実施形態では、新鮮なリグノセルロース系材料、すなわちまだ抽出されていないリグノセルロース系材料からの2段階プロセスの場合に、圧搾液の一部、すなわちリグノセルロース系材料から抽出された物質を既に含有する溶媒は、上流段階に供給されたリグノセルロース系材料から物質を抽出するためにその上流段階で溶媒として再使用される。
【0057】
2つより多くの段階を含む本発明による多段階プロセスにおいて、上流段階のいずれか、すなわち、第1段階を含む最終段階の上流の段階において、段階の工程a、b、c、d、e又はgのいずれか1つ以上においてリグノセルロース系材料に添加される溶媒は、段階のすぐ下流の段階の圧搾液タンクからの圧搾液の第2の部分からなることが好ましい。
【0058】
本発明の方法のさらに好ましい実施形態では、本方法は、少なくとも3つの段階、すなわち第1段階、最終段階及び第1段階と最終段階との間の1つ以上の中間段階を含み、中間段階のいずれかにおいて、工程a、b、c、d、e又はgのいずれか1つ以上において流量
【0059】
【数22】
でリグノセルロース系材料に添加される溶媒は、次の段階の工程h)において圧搾液タンクから取り出された圧搾液の第2の部分からなり、抽出器に搬送されるリグノセルロース系材料は、プレスされたリグノセルロース系材料からなり、プレスされたリグノセルロース系材料は、固体相と、前段階の工程f)においてプレス装置から取り出されたラフィネート、すなわち固体相に結合した液相と、を含む。この実施形態では、方法を向流プロセスとして構成することが特に好ましい。一例として、本発明の方法のこの実施形態の3段階プロセスは、第1段階、中間(第2)段階および最終段階を含み、「第1」という用語は、新鮮なリグノセルロース系材料が抽出される段階を指し、「最終」という用語は、抽出されたリグノセルロース系材料がプロセスから最終的に取り出される段階を指す。「向流」は、この文脈において、リグノセルロース系材料が第1段階から最終段階への方向に搬送され、段階から段階へと徐々に抽出されるのに対して、溶媒は反対方向、すなわち最終段階から第1段階へと搬送され、それによって段階から段階へと溶質がさらに濃縮されることを意味する。
【0060】
この実施形態では、第1段階において、リグノセルロース系材料、好ましくは新鮮な、すなわちまだ抽出されていないリグノセルロース系材料、さらに好ましくは熱水前処理済みリグノセルロース系材料、特に好ましくはもみわら粒子などの粒子の形態のリグノセルロース系材料が、例えばベルトコンベヤ又はスクリューコンベヤなどのコンベヤによって、撹拌された撹拌容器などの抽出器に搬送される。溶媒は、例えば、溶媒をリグノセルロース系材料上に噴霧することによって、コンベヤ上の抽出器への搬送途中でリグノセルロース系材料に添加されてもよく、及び/又は抽出器に直接添加されてもよい。この実施形態では、添加される溶媒は新鮮な溶媒ではなく、次の、すなわちプロセスの第2段階の圧搾液タンクから取り出される圧搾液である。抽出器において、リグノセルロース系材料と溶媒の懸濁液が形成される。抽出器内の液相は、抽出器内に既に提供されている溶媒及び添加された溶媒を含み得ることに留意すべきである。リグノセルロース系材料は、抽出器において溶媒で抽出される。この工程において、懸濁液は、有用物質、例えば、リグノセルロース系材料内に結合した水に溶解した有用物質の抽出を促進するために、又は汚染物質を洗い流すために、かき混ぜなどの好適な方法で撹拌されることが好ましい。懸濁液の一部を抽出器から連続的に取り出し、例えば適切なポンプによって流量
【0061】
【数23】
でプレス装置、例えばスクリュープレスに搬送する。プレス装置において、溶媒は、リグノセルロース系材料から溶媒を圧搾することによってリグノセルロース系材料から分離される。「溶媒を圧搾する」という用語はまた、出発材料として使用されるリグノセルロース系材料中に元々存在する水分の除去を包含してもよく、溶媒がリグノセルロース系材料から完全に分離されて液相及びいかなる液相も含まない乾燥固相が生じることを意味すると解釈されるべきではない。圧搾された溶媒は、圧搾液として流量
【0062】
【数24】
で圧搾液タンクにポンプ輸送などで搬送され、プレスされたリグノセルロース系材料は流量
【0063】
【数25】
でプレス装置から取り出され、次の(第2)段階に搬送されて出発材料として作用する。圧搾液タンクからの圧搾液の第1の部分は流量
【0064】
【数26】
で抽出器に戻され、圧搾液の第2の部分は流量
【0065】
【数27】
で圧搾液タンクから抽出物として取り出され、流量
【0066】
【数28】
は流量
【0067】
【数29】
より高いことが好ましい。この実施形態では、圧搾液の第2の部分は、リグノセルロース系材料から抽出された有用物質又は汚染物質が濃縮された抽出物としてプロセスから除去される。抽出物は、さらなる処理、例えば濃縮又は単離プロセスに供され得る。上述したように、圧搾液は、本発明のプロセスの次の(第2)段階から取り出され、第1段階の適切なプロセス工程において、例えば流量
【0068】
【数30】
で第1段階において抽出器に搬送されるとき、及び/又は抽出器内に直接搬送されるときに、リグノセルロース系材料に添加される。
【0069】
この実施形態において、本発明の方法の第1段階においてプレス装置から取り出されたプレスされたリグノセルロース系材料は、第1段階の記載と同じ様式で第2段階において処理される。上記の工程は、第1段階のプレス装置から取り出されたリグノセルロース系材料を用いて再び行われる。主な違いは、第2段階で圧搾液タンクから取り出された圧搾液の第2の部分が、プロセスから取り出されず第1段階で再使用される、すなわち、第1段階で出発材料であるリグノセルロース系材料に添加されることである。第2段階でリグノセルロース系材料に添加される溶媒は、次の(最終)段階から取り出された圧搾液からなる。2つ以上の中間段階(例えば、4段階、5段階又は6段階プロセス)の場合、任意の中間段階からの圧搾液は、前の段階で出発材料として処理されたリグノセルロース系材料に添加するために取り出され、プレス装置から取り出されたプレスされたリグノセルロース系材料は、次回の抽出のための出発材料として後続の段階に入る。
【0070】
本発明の多段階プロセスのこの実施形態の最終段階において、圧搾液の第2の部分はまた、前の(上流の)段階の工程a、b、c、d、e又はgのいずれか1つ以上においてリグノセルロース系材料に添加されるように取りだされるが、新鮮な溶媒は、最終段階の工程a、b、c、d、e又はgのいずれか1つ以上において、例えば、最終段階の工程aにおいて、前の段階から入るリグノセルロース系材料に、又は工程b若しくはcにおいて、最終段階において使用される抽出器に直接添加される。最後に抽出されたリグノセルロース系材料は最終段階を離れ、さらに処理されてもされなくてもよい。したがって、リグノセルロース系材料及び溶媒は向流形式で使用され、すなわち新鮮なリグノセルロース系材料は、好ましくは第1段階においてプロセスに入り、最終段階において最終的に抽出されるまで後続の段階のそれぞれにおいてさらに抽出され、新鮮な溶媒は、好ましくは最終段階においてプロセスに入り、第1段階から抽出物として最終的に除去されるまで逆方向に段階から段階へと抽出成分がさらに濃縮される。このように、リグノセルロース系材料は第1段階から最終段階にかけて徐々に抽出可能成分が枯渇するのに対し、溶媒は反対方向に、すなわち最終段階から第1段階にかけて徐々に抽出可能成分が濃縮される。液相のみを考慮すると、ラフィネート、すなわち処理されたリグノセルロース系材料の液相(固相および液相を含む)は下流方向の段階から段階へと溶質が徐々に枯渇し、一方溶媒は上流方向の段階から段階へとラフィネートからの溶質が徐々に濃縮されると言うことができる。
【0071】
本発明による多段階プロセスにおいて、第1段階の工程aにおいて抽出器に搬送されるリグノセルロース系材料は、熱水前処理済み、好ましくは自己加水分解前処理済みリグノセルロース系材料からなり、最終段階において工程a、b、c、d、e又はgのいずれか1つ以上においてリグノセルロース系材料に添加される溶媒は、新鮮な溶媒からなることが好ましい。中間段階および最終段階において、処理されるリグノセルロース系材料は、各前(上流)段階からのプレスされたリグノセルロース系材料であり、中間段階及び第1段階において、工程a、b、c、d、e又はgのいずれか1つ以上においてリグノセルロース系材料に添加される溶媒は、各次(下流)段階からの圧搾液である。
【0072】
本発明の方法の2段階又は多段階実施形態の好ましい実施形態では、各段階において、懸濁液がプレス装置に搬送される流量
【0073】
【数31】
は、圧搾液が圧搾液タンクに搬送される流量
【0074】
【数32】
とプレスされたリグノセルロース系材料がプレス装置から取り出される流量
【0075】
【数33】
との合計よりも大きく、抽出器からプレス装置に搬送される余分な懸濁液は、好ましくは重力によって、流量
【0076】
【数34】
でプレス装置から抽出器に戻される。
【0077】
本発明の多段階プロセスの好ましい実施形態において、各中間段階において添加され、次の(下流の)中間段階又は最終段階から生じる溶媒の流量
【0078】
【数35】
は、この中間段階から抽出物として取り出される圧搾液の流量
【0079】
【数36】
に等しい。第1段階から取り出される溶媒の流量
【0080】
【数37】
は、リグノセルロース系材料の初期水分に応じて、後続の中間(第2)段階から移送される溶媒の流量
【0081】
【数38】
と異なってもよい。添加される溶媒の流量
【0082】
【数39】
は、例えば、本発明のプロセスから除去される「遊離」液相(ラフィネートのように固体に結合していない)の除去を相殺するように適合されており、第1段階に入り最終段階を出るリグノセルロース系材料の含水量の差の有無に応じて、第1段階において抽出物として取り出される圧搾液の流量
【0083】
【数40】
に等しくても等しくなくてもよい。一実施形態では、第1段階に入るリグノセルロース系材料の含水量が、最終段階を出るリグノセルロース系材料の水分含有量と基本的に同じであり、第1段階で抽出物として取り出される圧搾液の流量
【0084】
【数41】
を、最終段階で添加される新鮮な溶媒の流量
【0085】
【数42】
と基本的に等しくすることができる。
【0086】
【数43】
が第1段階に入るリグノセルロース系材料の液相の流量を示し、
【0087】
【数44】
が最終段階を出るリグノセルロース系材料の液相の流量を示す場合、流量
【0088】
【数45】
は、好ましくは
【0089】
【数46】
に等しい。
【0090】
【数47】
である場合、流量
【0091】
【数48】
は流量
【0092】
【数49】
に等しい。
【0093】
本発明の多段階プロセスのさらに好ましい実施形態では、全ての抽出段階、すなわち第1段階から最終段階までが、2段階の熱水前処理、好ましくは2段階の自己加水分解前処理の2つの工程の間に挿入される。この実施形態において、リグノセルロース系材料は、第1の抽出段階の前と最終抽出段階の後に熱水的に前処理される。さらに、本発明による方法を、1段階プロセス、2段階プロセス、又は多段階プロセスの形で、第1の熱水前処理工程の前及び/又は第2の熱水前処理工程の後に、例えば以下のとおり、本発明による方法-第1の熱水前処理工程-本発明による方法-第2の熱水前処理工程-本発明による方法の順序で配置することも可能である。
【0094】
本発明はまた、上述した本発明の方法によるリグノセルロース系材料の連続抽出装置に関する。装置は「プラント」又は「システム」と呼ばれることもある。本発明の装置は、少なくとも1つの装置モジュールを含み、このモジュールは、コンベヤ、抽出器、圧搾液タンク及びプレス装置を含み、コンベヤ、抽出器、圧搾液タンク及びプレス装置はそれぞれ、本発明の方法を実施することができるように構成され、配置され、相互接続されている。「コンベヤ」は、リグノセルロース系材料を抽出器に搬送することができる任意の手段、例えばベルト又はスクリューコンベヤである。
【0095】
本発明の方法によるリグノセルロース系材料の連続抽出装置は、コンベヤ、抽出器、圧搾液タンク及びプレス装置を含む少なくとも1つのモジュールを含み、リグノセルロース系材料の流れの方向において、抽出器はコンベヤの下流に配置され、プレス装置は抽出器の下流に配置され、圧搾液タンクはプレス装置の下流に配置され、圧搾液タンク及び抽出器は、圧搾液を圧搾液タンクから抽出器に搬送できるように、直接又はポンプを介して間接的に互いに流体連通している。
【0096】
本発明の装置の好ましい実施形態において、圧搾液タンクは、圧搾液の第1の部分が重力によって圧搾液タンクから抽出器に戻されることを可能にするために、抽出器に対してより高く配置される。さらなる好ましい実施形態では、プレス装置は、追加的にまたは代替的に、懸濁液の一部が重力によってプレス装置から抽出器に戻されることを可能にするために、抽出器に対してより高く配置される。
【0097】
本発明の装置の好ましい実施形態において、抽出器は撹拌容器であり、プレス装置はスクリューセパレータである。
【0098】
本発明の装置の特に好ましい実施形態において、装置は、本発明による多段階プロセス、好ましくは上記のような向流プロセスを実施するように構成される。この実施形態では、装置は、直列に接続された上述のモジュールのうち2つ以上を備える。各モジュールは、コンベヤ、抽出器、圧搾液タンク及びプレス装置を含み、リグノセルロース系材料の流れの方向において、抽出器はコンベヤの下流に配置され、プレス装置は抽出器の下流に配置され、圧搾液タンクはプレス装置の下流に配置され、圧搾液タンク及び抽出器は、圧搾液を圧搾液タンクから抽出器に搬送できるように、直接又はポンプを介して間接的に互いに流体連通している。好ましくは、モジュールは上述したように、リグノセルロース系材料及び溶媒の向流が実現され得るように相互接続される。
【0099】
モジュールは、例えば、上述したように第1のモジュールが本発明の方法の第1段階を実行し、1つ以上のモジュールがそれぞれ本発明の方法の中間段階を実行し、最終モジュールが本発明の方法の最終段階を実行するように配置され、相互接続される。
【0100】
本発明の「マルチモジュール」装置、すなわち2つ以上のモジュールを含む本発明の装置のさらに好ましい実施形態では、各モジュールのプレス装置は、プレスされたリグノセルロース系材料を重力によってプレス装置から次のモジュールのコンベヤに搬送できるように、次のモジュールのコンベヤよりも高く配置される。
【0101】
以下添付の図面のみを参照して、本発明を例としてさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0102】
図1】本発明の方法の一実施形態の概略フロー図である。
図2】本発明の方法のさらなる実施形態の概略フロー図である。
図3】本発明の方法の好ましい実施形態の概略フロー図である。
図4】本発明の多段階プロセスの実施形態を実施するための装置の実施形態の簡略化されたシステムスキームである。
図5】撹拌タンク内の水中で蒸気前処理(180℃、35分)された麦かん(切断されたわら及び粉砕されたわら)の懸濁液抽出についての実験データである。全ペントースの無次元濃度を示す。
図6】向流浸出プロセスとして構成された連続懸濁液抽出プロセスのためのプロセスウィンドウである。N=ステージ数、L/S=溶媒使用量(液体-固体比)。
図7】向流洗浄プロセスとして構成された連続懸濁液抽出プロセスのためのプロセスウィンドウである。N=ステージ数、L/S=溶媒使用量(液体-固体比)。
【0103】
図1は、1段階プロセスとして構成された、本発明のプロセスの基本的な実施形態のフロー図を示す。関連する質量流は矢印で示され、質量流量は記号
【0104】
【数50】
及び指数iで示される。簡略化のために、異なる流れもまた示された記号
【0105】
【数51】
によって参照される。破線の矢印は液体の流れを表し、縞状の矢印(コンベヤ1と抽出器2との間、及び抽出器2とプレス装置3との間の流れを参照)はスラリーの流れを表し、実線の矢印は固体の流れを表す。ここで、「液体」、「スラリー」及び「固体」という用語は排他的なものではないため、例えば液体流が固体を含まず固体流が液体を含まないことを意味するものと解釈されるべきではないことに留意すべきである。液体流は、固体、例えば微粒子を含有することもできる。「固体流」という用語は溶媒中に懸濁されていないリグノセルロース系材料の流れに関し、「スラリー」という用語は液体及び固体からなる流れに関し、「液体」という用語は主に液体からなる流れに関する。リグノセルロース系材料に関する「固体流」という用語は、リグノセルロース系材料の固体及びそれに結合した水分を含む。全ての流れが溶質を含んでいてもよい。新鮮な、すなわちまだ抽出されていないリグノセルロース系材料21、例えば粒子状の熱水前処理済みバイオマス材料の質量流が、流量
【0106】
【数52】
でコンベヤ1上又はコンベヤ1内に置かれ、コンベヤ1は、リグノセルロース系材料21および添加された溶媒22を、この工程でリグノセルロース系材料21に添加される場合、質量流量
【0107】
【数53】
で抽出器2に搬送する。撹拌容器、例えば攪拌槽として構成され得る抽出器2において、溶媒22中に懸濁されたリグノセルロース系材料21の混合物を形成し、溶質、すなわち有用物質又は汚染物質をリグノセルロース系材料21から抽出するために、リグノセルロース系材料21は溶媒22、例えば60℃の熱水と接触及び混合されるのが好ましい。懸濁液は、リグノセルロース系材料21からの溶質の抽出を容易にするために、適切な方法で十分な時間にわたって抽出器2内で撹拌されるのが好ましい。抽出器2から懸濁液が流量
【0108】
【数54】
で取り出され、プレス装置3、好ましくはスクリューセパレータに搬送される。プレス装置3で生成された圧搾液は、例えば重力によって又はポンプを介して、流量
【0109】
【数55】
で圧搾液タンク4に搬送され、そこから第1の部分は流量
【0110】
【数56】
で抽出器2に戻され、第2の部分は流量
【0111】
【数57】
で抽出物20として取り出される。抽出物20は、最終的にシステムから除去されるか、または多段階プロセスの場合には、システム、すなわち前の(上流の)段階に戻される(例えば、以下の図2を参照)。プレスされた(抽出された)リグノセルロース系材料23はプレス装置から取り出され、例えばさらなる処理のために又は廃棄物として、最終的にシステムから除去される。新鮮な溶媒22は、抽出器2に搬送されるときにリグノセルロース系材料21に流量
【0112】
【数58】
で添加される。
【0113】
好ましい実施形態において、抽出器2からプレス装置3への質量流量
【0114】
【数59】
は、
【0115】
【数60】
となるように圧搾液流
【0116】
【数61】
とラフィネート流
【0117】
【数62】
との合計を超え、抽出器2からの余分な懸濁液は流量
【0118】
【数63】
でプレス装置3から抽出器2に戻され、例えばプレス装置3がオーバーフローし、オーバーフローした懸濁液は重力によって流量
【0119】
【数64】
の質量流として抽出器2に戻される。
【0120】
ここで、多段階プロセスの場合、図1は多段階プロセスの最後の段階にも適用可能であるが、ただし、図の左側部分の参照番号21は、図1に概略的に示された方法によって少なくとも1回抽出されるプレスされたリグノセルロース系材料21を示す参照番号23に置き換えられなければならないことに留意すべきである。
【0121】
あるいは、多段階プロセスの場合には、システムに、すなわち前の(上流の)段階に戻される(例えば、以下の図2を参照)。
【0122】
図2は本発明による多段階プロセスの実施形態の一部を概略的に示しており、段階の1つは最終段階である。ここでは例として、直列に接続された2つの段階50が示されている。ステージ50は、明確にするために破線の長方形で囲まれている。ここで、質量流
【0123】
【数65】
は材料のタイプ(液体、固体、又はスラリー)によって区別されない。両方の段階50において、原則として、上述のプロセス工程が実行され、すなわち、リグノセルロース系材料21、23が抽出器2に供給されて抽出され、次いでプレス装置3に供給され、プレスされた抽出リグノセルロース系材料23がプレス装置3から取り出される。圧搾液は圧搾液タンク4に搬送され、そこから圧搾液の第1の部分が抽出器2に戻され、圧搾液の第2の部分が圧搾液タンク4から取り出される。また、抽出器2からプレス装置3に搬送された懸濁液の一部が抽出器に戻される。多段階プロセスにおいて、圧搾液タンク4から取り出された第2の圧搾液流
【0124】
【数66】
は前の段階に戻され、上流段階の種類(中間段階又は第1段階)に応じて、抽出器2に搬送されるときの新鮮なリグノセルロース系材料21(第1段階)又はプレスされたリグノセルロース系材料23(中間段階)のいずれかに添加されるか、または抽出器2に直接添加されることが、図2からより明確に分かる。図2の右側に示される段階50は最終段階50として構成され、新鮮な溶媒22が、ここでは質量流量
【0125】
【数67】
でコンベヤ1に添加される。前の段階50(左)からのプレスされたリグノセルロース系材料23は、最終段階(右)に供給される。図2の左側に示される段階50は、中間ステージ50である。この段階から、圧搾液タンク4から取り出された圧搾液の第2の部分は、前の(上流の)段階50(破線によってのみ示される)のコンベヤ1又は抽出器2に搬送される。前段階50は、さらなる中間段階50又は第1段階50であってもよい。プレスされたリグノセルロース系材料23は、プレス装置3から次の(下流の)段階50に搬送される。
【0126】
図3は、本発明の方法の好ましい実施形態のフローチャートを示す。ここで概略的に示されるプロセスは、3つの段階50、すなわち第1段階(左)、中間段階50(中央)、及び最終段階50(右)を有する多段階プロセスである。リグノセルロース系材料21、好ましくは粒子状の熱水前処理済みバイオマス、例えば熱水前処理済みわら粒子は、本方法の第1段階50の抽出器2に連続的に供給される。リグノセルロース系材料21、23は、上記のように各段階50で処理される。第1段階50からのプレスされた(抽出された)リグノセルロース系材料23は、第2(中間)段階50に入り、そこで出発材料として機能し、次いで記載されるように中間段階50において処理され、最終段階50のための出発材料として機能するために、プレスされたリグノセルロース系材料23としてさらに抽出された状態で中間段階50を出て、再び上記の工程で処理される。したがって、それは段階50から段階50に(図3の左から右へ)輸送され、最終的に抽出されたリグノセルロース系材料23として最終段階50を離れる。対照的に、リグノセルロース系材料21、23の抽出のための溶媒22は、最終段階50においてプロセスに入り、リグノセルロース系材料21、23と比較して、段階50から段階50へ反対方向に、すなわち最終段階50から第1段階50へ(図3において右から左へ)輸送され、第1段階50において生成された抽出液20としてプロセスから除去される。したがって、溶媒は、段階50から段階50にかけてリグノセルロース系材料21、23から抽出可能な物質で徐々に濃縮される。溶媒中の抽出剤の濃度差が好ましいレベルに維持されるので、この向流プロセスによってリグノセルロース系材料21、23の効率的な抽出が可能になる。既に大部分が枯渇しているリグノセルロース系材料23は、バイオマスのさらなる抽出を可能にするために新鮮な溶媒で抽出され、新鮮なリグノセルロース系材料21は、抽出可能な物質で既に濃縮されているがまだ新鮮な材料から物質を抽出できる溶媒で抽出される。
【0127】
この実施形態では、本発明の方法は2段階の熱水処理と組み合わされる(Ruiz,H.A.,Conrad,M.,Sun,S.,Sanchez,A.,Rocha,G.,Romani,A.,Castro,E.,Torres,A.,Rodriguez-Jasso,R.M.,Andrade,L.P.,Smirnova,I.,Sun,R.,& Meyer,A.(2019),Engineering aspects of hydrothermal pretreatment:From batch to continuous operation,scale-up and pilot reactor under biorefinery concept,Bioresource technology,122685,doi:10.1016/j.biortech.2019.122685;Conrad,M.and Smirnova,I.(2020),Two-Step Autohydrolysis Pretreatment:Towards High Selective Full Fractionation of Wheat Straw,Chemie Ingenieur Technik,92:1723-1732,doi:10.1002/cite.202000056)。上記の3段階抽出プロセスは、2段階熱水処理の第1工程と第2工程との間に挿入される。この目的のために、第1のスクリューコンベヤ反応器(SCR)30を使用してリグノセルロース系材料21、例えばもみわらのような粒状バイオマスを熱水的に前処理する。このように前処理済みリグノセルロース系材料21は、後続の抽出に非常に適した湿潤スポンジ状材料である。抽出後、本発明による単一段階プロセスであろうと多段階プロセスであろうと、最終段階を出る抽出されたリグノセルロース系材料23は、第2の熱水処理工程で処理される。ここに示す実施形態では、第2のスクリューコンベヤ反応器(SCR)32の一部である高圧スクリューフィーダ(HPスクリュー)31を使用して、抽出プロセスの最終段階50を出るリグノセルロース系材料23を排出し、リグノセルロース系材料23を第2のSCR32の反応容器に供給する。高圧スクリューフィーダ(HPスクリュー)は、湿潤バイオマスを圧縮し、機械的に排出して(例えば、約40~55%の含水量に)蒸気気密プラグにする。この工程で圧搾された液体は、図3に示すように、上流の抽出段階50の最終段階50に戻すことができる。より多くの溶質がリグノセルロース系材料の液相(ラフィネート)に移送され、固体が最終的により乾燥した状態になり、水分中の有用物質が失われずに抽出物に移送されるので、抽出プロセスと2つの自己加水分解工程との組合せは抽出の全体的なバランスを改善する。
【0128】
図4は、図3で説明した多段階プロセスを実行するように構成された本発明の装置200の簡略化されたシステムスキームを示す。リグノセルロース系材料21、23の熱水前処理のための構成要素は、ここでは示されていない。図示された装置200は直列に接続された3つのモジュール100を備え、各モジュール100はプロセスの単一の段階50を実行するように構成されている。各モジュールは、コンベヤ1と、抽出器2と、プレス装置3と、圧搾液タンク4とを備える。図示された本発明の装置200の実施形態において、各モジュール100の抽出器2及び圧搾液タンク4は、撹拌槽として構成される。プレス装置3はスクリューセパレータとして構成されている。新鮮なリグノセルロース系材料21又はプレスされたリグノセルロース系材料23と溶媒22の懸濁液は、適切なポンプ5によってプレス装置3に搬送され、圧搾液はポンプ6、7によって搬送され、後者は圧搾液を同じモジュール100の抽出器2に戻すように搬送し、前者は圧搾液を前のモジュール100のコンベヤ1に搬送するか、又は圧搾液を装置200から取り出す。当然適切な制御弁と共に両方の圧搾液流に対して単一のポンプのみを使用することも可能である。圧搾液及び余分な懸濁液が重力によって圧搾液タンク4及び抽出器2にそれぞれ戻ることができるように、プレス装置3は圧搾液タンク4および抽出器2よりも高く配置される。
【実施例
【0129】
本発明の方法に従って、180℃で35分間前処理された、さらに破砕やプレスされていないわらの大粒子及び小粒子(それぞれ長さ1~2cm及び1~2mm)の懸濁液抽出を行った。大粒子及び小粒子は、それぞれ切断、切断及び粉砕されている。わら及び溶媒中の有用物質の濃度に関して大きな勾配が設定され、よって平衡に達するまでより多くの有用物質を輸送する必要がある。ここでの材料輸送は、粒子内への液体の輸送、存在する水分と粒子内の有用物質との混合、有用物質のスポンジ状構造を介した粒子表面への拡散(大きな粒子の場合は長い輸送経路)、及び粒子表面からバルク相への輸送を含む。
【0130】
この目的のために、70℃の3000mLの水を撹拌10L槽に入れ、前処理済みわらを時間t=0で添加した。懸濁液中の固体充填量は2%であった。混合物を様々な試験時間でサンプリングし、シリンジフィルタで固相と液相に分離した。液体サンプルの濃度を、モノマー及びオリゴマー形態の炭水化物の組成について試験した。異なる供給水分及び濃度の軽微な影響を補償するために、前処理済みわらの添加前に、全ペントース糖濃度は、少なくとも3回の測定において安定した100%の最終濃度まで0%の範囲に正規化されていると報告されている。抽出物中の全ペントース糖の正規化された経時的濃度推移を図5に示す。
【0131】
実験データ及び報告データは、以下の表1、2及び3に明記されている。
【0132】
【表1】
【0133】
【表2】
【0134】
【表3】
【0135】
大きく切断された粒子については、10分後全ペントース糖の濃度が一定であり、よって物質の輸送が完了していることが分かる。示されたペントース糖は、90%がオリゴマー形態である。したがって、より小さい分子ではより速い輸送が期待される。小さく切断され粉砕された粒子については、1分後に平衡濃度の80%を超えることが分かる。5分後、平衡濃度に達する。本発明のオリゴマーよりも小さい分子については、より短い平衡時間の可能性が高いことが予想される。
【0136】
結論として、前処理済みわらの小粒子は、連続自己加水分解前処理後に予想されるように、本発明の連続懸濁液抽出方法に十分短い平衡時間を示す。より大きなわら粒子については、平衡時間は洗浄プロセスにおいてより短くなると予想され、汚染物質はオリゴマーペントースよりも小さな分子であるか、あるいは埃又は肥料のように内部ではなく粒子表面上に見出されるかのいずれかである。
【0137】
本発明の洗浄及び浸出プロセスの特性を、一例として特定の基質(わら)について計算した。計算の目的は、任意の供給物、所望の抽出物濃度、及び有用物質の回収についての段階数(N)及び溶媒の使用(L/S)を示すプロセスウィンドウを計算することである。この実施例では、麦わらを用いた蒸気消化(自己加水分解)からの供給物は以下の質量パーセンテージ、つまり浸出プロセスのための25.8%の乾燥バイオマス、66.7%の水、7.5%の溶解有用物質、及び洗浄プロセスのための86.4%の乾燥バイオマス、9.1%の水、4.5%の溶解有用物質で採取される。以下の通り、各段階において有用物質の粒子内濃度と粒子外濃度との間に平衡が確立されると仮定した。プレススクリューは固体を33%の乾物まで脱水する。最後のスクリュー(高圧フィーダ)は固体を50%の乾物まで脱水する。その結果を、2~5段階及び乾燥バイオマス1kg当たり1.0~4.0kgの水の溶媒使用について計算した。図6及び図7は、結果として生じるプロセスウィンドウを示す。これは、調査された適用例両方に極少量の溶媒を使用して、高い抽出収率及び高い抽出物濃度が本発明の方法によって同時に達成され得ることを明確に示す。設計パラメータ(段階数、溶媒消費)の選択によって、プロセスの性能をバイオリファイナリーのニーズに柔軟に合わせることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】