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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】耐摩耗性複合材料
(51)【国際特許分類】
   B32B 7/022 20190101AFI20240725BHJP
   B32B 25/00 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
B32B7/022
B32B25/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506249
(86)(22)【出願日】2022-08-02
(85)【翻訳文提出日】2024-02-20
(86)【国際出願番号】 US2022039138
(87)【国際公開番号】W WO2023014693
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】63/228,279
(32)【優先日】2021-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519322750
【氏名又は名称】ゲルサイト インク
【氏名又は名称原語表記】GelSight,Inc.
【住所又は居所原語表記】179 Bear Hill Road, Suite #202,Waltham,Massachusetts 02451-1063,USA
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100082946
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 昭広
(74)【代理人】
【識別番号】100195693
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 玲
(72)【発明者】
【氏名】アデルソン,エドワード,エイチ
(72)【発明者】
【氏名】コットレル,エフ,リチャード
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AA20A
4F100AG00A
4F100AK12A
4F100AK15A
4F100AK25A
4F100AK27C
4F100AK42A
4F100AK45A
4F100AK51A
4F100AK51B
4F100AK51C
4F100AK52B
4F100AK53A
4F100AL09B
4F100AL09C
4F100AT00A
4F100AT00B
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100CB00E
4F100GB51
4F100JB13C
4F100JB16B
4F100JB16C
4F100JK02C
4F100JK08C
4F100JK09B
4F100JK09C
4F100JK12B
4F100JK12C
4F100JK16
4F100JK16C
4F100JK17A
4F100JM02C
4F100JN01A
4F100JN01B
4F100JN02C
4F100JN02D
4F100YY00B
4F100YY00C
(57)【要約】
複合材料構造体は、強くて硬質な低摩擦膜を柔軟な下位層と組み合わせて、全体として良好な耐摩耗性を提供する。一態様において、複合材料構造体は、レトログラフィック検出に適した光学特性を備えるエラストマー材料から形成され得る。しかしながら、結果としての複合材料は、また或いはその代わりに、しなやかで耐摩耗性の接触面から恩恵を受けるガスケット、シール、クランプ、ロボットの手先効果器などのような、様々な応用形態に有利に利用され得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲット表面と耐摩耗性接触するためのデバイスであって、
支持構造体と、
前記支持構造体上に配置される基材であって、その基材は、
10以下の第1のショアA硬度、及び
少なくとも1mmの第1の厚さを有する、基材と、
前記ターゲット表面と接触するために前記基材上に配置された薄膜と、を含み、その薄膜は、
少なくとも70の第2のショアA硬度、
200μmを超えない第2の厚さ、
少なくとも30MPaの引張強度、
少なくとも650%の破断点伸び、及び
艶消し鋼に対する1.5を超えない動摩擦係数を有する、デバイス。
【請求項2】
前記薄膜は、熱可塑性ポリウレタン、熱硬化性ポリウレタン、又はニトリルゴムを含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
ターゲット表面と耐摩耗性接触するためのデバイスであって、
支持構造体と、
前記支持構造体上に配置される基材であって、その基材は、
10以下の第1のショアA硬度、及び
少なくとも1mmの第1の厚さを有する、基材と;
前記ターゲット表面と接触するために前記基材上に配置された薄膜と、を含み、その薄膜は、
少なくとも50の第2のショアA硬度、
500μmを超えない第2の厚さ、
少なくとも10MPaの引張強度、
少なくとも300%の破断点伸び、及び
艶消し鋼に対する1.5を超えない動摩擦係数を有する、デバイス。
【請求項4】
前記薄膜は、熱可塑性ポリウレタン、熱硬化性ポリウレタン、又はニトリルゴムを含む、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
第1の硬度を有する第1のエラストマーを含む基材と、
前記第1のエラストマーの前記基材の第1の表面を覆う第2のエラストマーを含む薄膜と、を含み、前記第2のエラストマーは、
(a)前記第1のエラストマーの前記第1の硬度より大きい第2の硬度
(b)高い強度、及び
(c)前記第1のエラストマーの前記基材の第1の表面から見て外方に向く第2の表面上の低摩擦係数、を有する、デバイス。
【請求項6】
前記第2のエラストマーの前記高い強度は、前記第1のエラストマーより大きい引張強度を含む、請求項5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記第2のエラストマーの前記高い強度は、前記第1のエラストマーより大きい引裂強度を含む、請求項5又は6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記第1のエラストマー及び前記第2のエラストマーは、耐摩耗性エラストマーパッドを提供するように構成される、請求項5~7の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記第1のエラストマーは、20を超えないショアA硬度を有する、請求項5~8の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記第1のエラストマーは、5を超えないショアA硬度を有する、請求項5~8の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記第2のエラストマーは、少なくとも30のショアA硬度を有する、請求項5~10の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記第2のエラストマーは、少なくとも50のショアA硬度を有する、請求項5~10の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記薄膜は、5μm~1000μmの厚さを有する、請求項5~12の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項14】
前記薄膜は、20μm~400μmの厚さを有する、請求項5~12の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項15】
前記薄膜は、500μmを超えない厚さを有する、請求項5~12の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項16】
前記薄膜は、200μmを超えない厚さを有する、請求項5~12の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項17】
前記第1のエラストマーの前記基材は、500μmより大きい厚さを有する、請求項5~16の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項18】
前記第1のエラストマーの前記基材は、少なくとも1mmの厚さを有する、請求項5~16の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項19】
前記第2のエラストマーは、少なくとも10MPaの引張強度を有する、請求項5~18の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項20】
前記第2のエラストマーは、少なくとも20kN/mの引裂強度を有する、請求項5~19の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項21】
前記第2のエラストマーは、少なくとも30MPaの引張強度を有する、請求項5~20の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項22】
前記第2のエラストマーは、少なくとも300%の破断点伸びを有する、請求項5~21の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項23】
前記第2のエラストマーは、少なくとも800%の破断点伸びを有する、請求項5~21の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項24】
前記第1のエラストマーは、ポリジメチルシロキサン、ポリウレタン、及び熱可塑性エラストマーの少なくとも1つを含む、請求項5~23の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項25】
前記第2のエラストマーは、ポリウレタンを含む、請求項5~24の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項26】
前記第2のエラストマーは、熱可塑性ポリウレタンを含む、請求項5~25の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項27】
前記第2のエラストマーは、ニトリルゴムを含む、請求項5~26の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項28】
前記第1のエラストマーは、光学的に透明である、請求項5~27の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項29】
前記第1のエラストマー用の剛性で光学的に透明な支持構造体を更に含む、請求項5~28の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項30】
前記剛性で光学的に透明な支持構造体は、石英、アクリル、ガラス、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエチレン・テレフタレート(PET)、グリコール変性ポリエチレン・テレフタレート(PET-G)、及びポリ塩化ビニル(PVC)の少なくとも1つから形成される、請求項29に記載のデバイス。
【請求項31】
前記第1のエラストマーと前記第2のエラストマーとの間に均質な不透明層を更に含む、請求項29又は30に記載のデバイス。
【請求項32】
前記第1のエラストマーを照明するように配置された照明システム、及び前記第1のエラストマーを通じて前記均質な不透明層のイメージをキャプチャするように構成されたイメージングシステムを更に含む、請求項31に記載のデバイス。
【請求項33】
前記第1のエラストマー用のフレキシブルな支持構造体を更に含む、請求項5~32の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項34】
ロボットの指を更に含み、前記第1のエラストマー及び前記第2のエラストマーが前記ロボットの指用の接触パッドを形成する、請求項5~33の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項35】
開口を貫通するロッドを更に含み、前記第1のエラストマー及び前記第2のエラストマーが前記開口内の前記ロッド用の環状流体シールへ形成される、請求項5~33の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項36】
前記薄膜は、低摩擦コーティングを含む、請求項5~35の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項37】
前記薄膜は、不透明層を含む、請求項5~36の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項38】
前記第1のエラストマーの前記基材と前記第2のエラストマーを含む前記薄膜との間に接着層を更に含む、請求項5~37の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項39】
前記第1のエラストマーの前記第1の硬度は、5のショアA硬度を超えず、前記第1のエラストマーの前記基材は、前記薄膜と支持構造体との間で少なくとも1mmの厚さを有する、請求項5~38の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項40】
前記薄膜は、500μmを超えない厚さを有し、前記第2のエラストマーは、少なくとも50のショアA硬度、少なくとも10MPaの引張強度、少なくとも300%の破断点伸び、及び艶消し鋼表面に対する1.5を超えない動摩擦係数を有する、請求項5~39の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項41】
前記第1のエラストマーは、5の第1のショアA硬度を超えず、前記第2のエラストマーは、少なくとも70の第2のショアA硬度、少なくとも850%の破断点伸び、及び少なくとも30MPaの引張強度を有する、請求項5~39の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項42】
前記薄膜は、10~500μmの厚さを有する、請求項41に記載のデバイス。
【請求項43】
前記薄膜は、30~200μmの厚さを有する、請求項41に記載のデバイス。
【請求項44】
前記薄膜は、50~100μmの厚さを有する、請求項41に記載のデバイス。
【請求項45】
前記第2のエラストマーの前記第2の硬度は、前記第1のエラストマーの第1のショアA硬度より少なくとも10倍大きい第2のショアA硬度である、請求項5~44の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項46】
前記薄膜の前記第2の表面は、前記第1のエラストマーだけの又は前記第2のエラストマーだけの摩耗抵抗より大きい合成摩耗抵抗を有する接触面を提供する、請求項5~45の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項47】
前記合成摩耗抵抗は、前記第1のエラストマーだけ又は前記第2のエラストマーだけより少なくとも50%大きい、請求項46に記載のデバイス。
【請求項48】
前記合成摩耗抵抗は、前記第1のエラストマーだけ又は前記第2のエラストマーだけより少なくとも100%大きい、請求項46に記載のデバイス。
【請求項49】
前記合成摩耗抵抗は、前記第1のエラストマーだけ又は前記第2のエラストマーだけより少なくとも200%大きい、請求項46に記載のデバイス。
【請求項50】
前記合成摩耗抵抗、及び前記第1のエラストマー及び前記第2のエラストマーの摩耗抵抗は、1900フィート(579.12m)/分で動作している200グリットの研磨紙を有するベルト式研磨機に対して20グラムの負荷の下で破断するまでの時間として測定される、請求項46~49の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項51】
前記合成摩耗抵抗、及び前記第1のエラストマー及び前記第2のエラストマーの摩耗抵抗は、標準化摩耗試験に従って測定される、請求項46~49の何れか1項に記載のデバイス。
【請求項52】
方法であって、
支持構造体を準備し、
前記支持構造体上に基材を配置し、その基材は、第1の硬度を有する第1のエラストマーを含み、
前記第1のエラストマーの前記基材の第1の表面上に第2のエラストマーの薄膜を配置すること、を含み、
前記第2のエラストマーは、前記第1のエラストマーの前記第1の硬度より大きい第2の硬度を有し、前記第2のエラストマーは、前記第1のエラストマーの前記基材の前記第1の表面から見て外方に向く第2の表面上で低摩擦係数を有し、前記第2のエラストマーは、高い強度および高い弾性を有する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
本出願は、2021年8月21日に出願された米国仮特許出願第63/228279号の優先権を主張しており、その全内容は、参照により本明細書に援用される。
【0002】
技術分野
本開示は概して、耐摩耗性複合材料構造体に関する。
【0003】
背景
物体に接触するために柔軟なエラストマー(弾性)パッドを使用することが望ましいことが多い。例えば、ロボットの指は、物体をつかむためのその指先にソフト(柔軟な)パッドを設ける場合がある。同様に、レトログラフィック・センサは、当該センサと接触する物体から三次元表面データをキャプチャするために反射コーティングと共に透明なエラストマーを使用する。非常に多くの反復使用後、係るデバイスは、凸凹の(粗い)物体または周囲のほこり又は砂粒との接触に起因して擦り切れる場合があり、最終的に使用できなくなる及び交換を必要とする。例えば、レトログラフィック・センサ、又はロボットシステムの接触(コンタクト)パッドとしての反復使用中に摩耗に耐えることができる接触パッドが依然として必要とされている。
【0004】
概要
複合材料構造体は、強くて硬質な低摩擦膜を柔軟な下位層と組み合わせて、全体として良好な耐摩耗性を提供する。一態様において、複合材料構造体は、レトログラフィック検出に適した光学特性を備えるエラストマー材料から形成され得る。しかしながら、結果としての複合材料は、また或いはその代わりに、しなやかで耐摩耗性の接触面から恩恵を受けるガスケット、シール、クランプ、ロボットの手先効果器などのような、様々な応用形態に有利に利用され得る。
【0005】
一態様において、本明細書で開示される、ターゲット表面と耐摩耗性接触するためのデバイスは、支持構造体と;支持構造体上に配置される基材であって、その基材は、10以下の第1のショアA硬度、及び少なくとも1mmの第1の厚さを有する、基材と;ターゲット表面と接触するために基材上に配置された薄膜と、を含む場合がある。その薄膜は、少なくとも70の第2のショアA硬度、200μmを超えない第2の厚さ、少なくとも30MPaの引張強度、少なくとも650%の破断点伸び、及び艶消し鋼に対する1.5を超えない動摩擦係数を含む場合がある。薄膜は、熱可塑性ポリウレタン、熱硬化性ポリウレタン、又はニトリルゴムを含む場合がある。
【0006】
一態様において、本明細書で開示される、ターゲット表面と耐摩耗性接触するためのデバイスは、支持構造体と;支持構造体上に配置される基材であって、その基材は、10以下の第1のショアA硬度、及び少なくとも1mmの第1の厚さを有する、基材と;ターゲット表面と接触するために基材上に配置された薄膜と、を含む場合がある。その薄膜は、少なくとも50の第2のショアA硬度、500μmを超えない第2の厚さ、少なくとも10MPaの引張強度、少なくとも300%の破断点伸び、及び艶消し鋼に対する1.5を超えない動摩擦係数を含む場合がある。薄膜は、熱可塑性ポリウレタン、熱硬化性ポリウレタン、又はニトリルゴムを含む場合がある。
【0007】
一態様において、本明細書に開示されるデバイスは、第1の硬度を有する第1のエラストマーを含む基材と;第1のエラストマーの基材の第1の表面を覆う第2のエラストマーを含む薄膜と、を含む場合がある。その第2のエラストマーは、(a)第1のエラストマーの第1の硬度より大きい第2の硬度、(b)高い強度、及び(c)第1のエラストマーの基材の第1の表面から見て外方に向く第2の表面上の低摩擦係数、を含む場合がある。
【0008】
具現化形態は、以下の特徴の1つ又は複数を含む場合がある。第2のエラストマーの高い強度は、第1のエラストマーより大きい引張強度を含む場合がある。第2のエラストマーの高い強度は、第1のエラストマーより大きい引裂強度を含む場合がある。第1のエラストマー及び第2のエラストマーは、耐摩耗性エラストマーパッドを提供するように構成され得る。第1のエラストマーは、20を超えないショアA硬度を有する場合がある。第1のエラストマーは、5を超えないショアA硬度を有する場合がある。第2のエラストマーは、少なくとも30のショアA硬度を有する場合がある。第2のエラストマーは、少なくとも50のショアA硬度を有する場合がある。薄膜は、5μm以上~1000μm以下の厚さを有する場合がある。薄膜は、20μm以上~400μm以下の厚さを有する場合がある。薄膜は、500μmを超えない厚さを有する場合がある。薄膜は、200μmを超えない厚さを有する場合がある。第1のエラストマーの基材は、500μmより大きい厚さを有する場合がある。第1のエラストマーの基材は、少なくとも1mmの厚さを有する場合がある。第2のエラストマーは、少なくとも10MPaの引張強度を有する場合がある。第2のエラストマーは、少なくとも20kN/mの引裂強度を有する場合がある。第2のエラストマーは、少なくとも30MPaの引張強度を有する場合がある。第2のエラストマーは、少なくとも300%の破断点伸びを有する場合がある。第2のエラストマーは、少なくとも800%の破断点伸びを有する場合がある。第1のエラストマーは、ポリジメチルシロキサン、ポリウレタン、及び熱可塑性エラストマーの少なくとも1つを含む場合がある。第2のエラストマーは、ポリウレタンを含む場合がある。第2のエラストマーは、熱可塑性ポリウレタンを含む場合がある。第2のエラストマーは、ニトリルゴムを含む場合がある。第1のエラストマーは、光学的に透明である場合がある。当該デバイスは、第1のエラストマー用の剛性で光学的に透明な支持構造体を更に含む場合がある。剛性で光学的に透明な支持構造体は、石英、アクリル、ガラス、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリエチレン・テレフタレート(PET)、グリコール変性ポリエチレン・テレフタレート(PET-G)、及びポリ塩化ビニル(PVC)の少なくとも1つから形成され得る。当該デバイスは、第1のエラストマーと第2のエラストマーとの間に均質な不透明層を更に含む場合がある。当該デバイスは、第1のエラストマーを照明するように配置された照明システム、及び第1のエラストマーを通じて均質な不透明層のイメージをキャプチャするように構成されたイメージングシステムを更に含む場合がある。当該デバイスは、第1のエラストマー用のフレキシブルな支持構造体を更に含む場合がある。当該デバイスは、ロボットの指を更に含む場合があり、第1のエラストマー及び第2のエラストマーがロボットの指用の接触パッドを形成する。当該デバイスは、開口を貫通するロッドを更に含む場合があり、第1のエラストマー及び第2のエラストマーが開口内のロッド用の環状流体シールへ形成される。薄膜は、低摩擦コーティングを含む場合がある。薄膜は、不透明層を含む場合がある。当該デバイスは、第1のエラストマーの基材と第2のエラストマーを含む薄膜との間に接着層を更に含む場合がある。第1のエラストマーの第1の硬度は、5のショアA硬度を超えない場合があり、第1のエラストマーの基材は、薄膜と支持構造体との間で少なくとも1mmの厚さを有する。薄膜は、500μmを超えない厚さを有する場合があり、第2のエラストマーは、少なくとも50のショアA硬度、少なくとも10MPaの引張強度、少なくとも300%の破断点伸び、及び艶消し鋼表面に対する1.5を超えない動摩擦係数を有する。第1のエラストマーは、5の第1のショアA硬度を超えない場合があり、第2のエラストマーは、少なくとも70の第2のショアA硬度、少なくとも850%の破断点伸び、及び少なくとも30MPaの引張強度を有する。薄膜は、10μm以上~500μm以下の厚さを有する場合がある。薄膜は、30μm以上~200μm以下の厚さを有する場合がある。薄膜は、50μm以上~100μm以下の厚さを有する場合がある。第2のエラストマーの第2の硬度は、第1のエラストマーの第1のショアA硬度より少なくとも10倍大きい第2のショアA硬度である場合がある。薄膜の第2の表面は、第1のエラストマーだけの又は第2のエラストマーだけの摩耗抵抗より大きい合成摩耗抵抗を有する接触面を提供する場合がある。合成摩耗抵抗は、第1のエラストマーだけ又は第2のエラストマーだけより少なくとも50%大きい場合がある。合成摩耗抵抗は、第1のエラストマーだけ又は第2のエラストマーだけより少なくとも100%大きい場合がある。合成摩耗抵抗は、第1のエラストマーだけ又は第2のエラストマーだけより少なくとも200%大きい場合がある。合成摩耗抵抗、及び第1のエラストマー及び第2のエラストマーの摩耗抵抗は、1900フィート(579.12m)/分で動作している200グリットの研磨紙を有するベルト式研磨機に対して20グラムの負荷の下で破断する(裂ける)までの時間として測定され得る。合成摩耗抵抗、及び第1のエラストマー及び第2のエラストマーの摩耗抵抗は、標準化摩耗試験に従って測定され得る。
【0009】
一態様において、本明細書で開示される方法は、支持構造体を準備し;支持構造体上に基材を配置し、その基材は、第1の硬度を有する第1のエラストマーを含み;第1のエラストマーの基材の第1の表面上に第2のエラストマーの薄膜を配置すること、を含む場合があり、第2のエラストマーは、第1のエラストマーの第1の硬度より大きい第2の硬度を有し、第2のエラストマーは、第1のエラストマーの基材の第1の表面から見て外方に向く第2の表面上で低摩擦係数を有し、第2のエラストマーは、高い強度および高い弾性を有する。
【0010】
本明細書で説明されるデバイス、システム及び方法の実施形態が以下の図面に示される。当該図面は、必ずしも一律の縮尺に従っておらず、代わりに本開示の原理を示すことに重点が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】耐摩耗性複合材料構造体の断面図を示す図である。
【0012】
図2】複合材料構造体の耐摩耗性を示す図である。
【0013】
図3】耐摩耗性複合材料構造体を含むシステムの断面図である。
【0014】
図4】耐摩耗性接触パッドの動作原理を示す図である。
【0015】
図5】耐摩耗性接触パッドの動作原理を示す図である。
【0016】
図6】耐摩耗性接触パッドの動作原理を示す図である。
【0017】
図7】耐摩耗性接触パッドの動作原理を示す図である。
【0018】
図8】耐摩耗性接触パッドの動作原理を示す図である。
【0019】
図9】被覆薄膜に関する実験に基づいた弾性限界の関数として様々な複合材料の摩耗率を示す図である。
【0020】
詳細な説明
本明細書で言及される全ての文献は、参照により全体として援用される。特に明確に明記しない限り又は文脈から明らかにならない限り、単数のアイテムに対する言及は、複数のアイテムを含む、及び逆もまた同じであると理解されるべきである。文法的接続詞は、特に明記しない限り又は文脈から明らかにならない限り、等位接続された節、文、単語などの任意および全ての選言的および接続的組み合わせを表わすことが意図されている。かくして、用語「又は」は一般に、「及び/又は」などを意味すると理解されるべきである。
【0021】
本明細書において、値の範囲に関する記述は、本明細書において別段の指示がない限り、制限することが意図されておらず、それよりむしろ当該範囲に入る任意の及び全ての値に個別に言及することが意図されている。係る範囲内の各別個の値は、まるでそれが本明細書において個別的に列挙されているかのように、本明細書へ組み入れられる。また、理解されるべきは、材料特性に関する様々な数値範囲および値は、耐摩耗性複合材料に適しているとして、本明細書で提供され且つ説明される。これらの値は、報告された材料特性、実験結果、及び/又は上述の及び観測された摩耗抵抗特性の何れかに基づいた推定値の組み合わせから導出され、複合材料構造体がその個々の構成部品と比べて、優れた摩耗抵抗を呈する値または値の範囲を概して記述することが意図されている。
【0022】
用語「約」、「ほぼ」、又は同様のものは、数値を伴う場合、意図された目的のために満足のいくように動作するために当業者により認識されるような許容差を示すように解釈されるべきである。値の範囲および/または数値は、本明細書において単なる例として提供されており、説明された実施形態の範囲の制限を構成しない。本明細書で提供される任意の及び全ての例、又は例示的な言語(「例えば」、「のような」、又は同様のもの)の使用は、実施形態を単により良く説明することが意図されており、実施形態の範囲または特許請求の範囲に制限を課さない。本明細書において言葉が無いことは、実施形態の実施に不可欠であるような、特許請求の範囲に記載されていない何らかの要素を示すものとして解釈されるべきである。
【0023】
以下の説明において、「第1」、「第2」、「上部(頂部)」、「底部」、「上へ」、「下へ」などのような用語は、便宜上の単語であり、特に特段の記載がない限り、制限する用語として解釈されるべきでない。
【0024】
本明細書で説明されるデバイス、システム及び方法は、2014年3月8日に出願された米国特許出願第14/201835号、2015年9月8日に付与された米国特許第9127938号、及び2013年4月2日に付与された米国特許第8411140号に記載されたレトログラフィック・センサの何れかのような、光学センサを含む場合がある又は当該光学センサに使用され得る。上記のそれぞれの全内容は、参照により本明細書に援用される。特定の態様において、本明細書において説明されるデバイス、システム及び方法は、ロボットツール用のレトログラフィック検出接触パッドに、又は摩耗面上での反復使用のために設計されたレトログラフィック・センサに使用され得る。しかしながら、本明細書で説明されるデバイス、システム及び方法は、また或いはその代わりに、しなやかで耐摩耗性の接触面を有利に組み込む場合がある任意のシステムのような、他のシステムに含まれ得る、又はそうでなければ当該他のシステムと共に使用され得る。
【0025】
図1は、耐摩耗性複合材料構造体の断面図を示す。一般に、当該構造体100は、柔軟なエラストマーのような軟質材料から形成された基材110、硬質のエラストマー薄膜(フィルム)のような強い硬質材料から形成された薄膜120を含む場合がある。薄膜120は例えば、少なくとも部分的に基材110を覆う、基材110より硬いエラストマーである場合がある。例えば、薄膜120は、基材110の上面全体を覆う場合があり、かくして耐摩耗性複合材料構造体100を用いるための作用面(作動面)を提供する。薄膜120は好適には、耐摩耗性があるように、接触面130を横切って摺動することを容易にするために、比較的低い摩擦係数(Coefficient of Friction:COF)を有する。この二層の複合材料構造体は有利には、ターゲット表面上の摩耗材料との接触に起因した損傷に耐えながら、ターゲット表面に適合することができるしなやかで耐摩耗性の接触パッドを形成する場合がある。また、理解されるように、エラストマーは、適切な機械的特性を有する様々な材料を基材110及び薄膜120に提供するが、他の材料も使用され得る、又は他の材料がその代わりに使用され得る。例えば、基材110は、硬質のエラストマー薄膜120により、又は適切に強くて弾性のある材料からなる任意の他の薄膜により、全体的に又は部分的に境界を形成された容積(体積)内に収容された流体から形成され得る。
【0026】
一般に、薄膜120及び基材110は、例えば、複合材料構造体100が意図された用途のために配置され得る又はそうでなければ操作され得るように、複合材料構造体100に構造的且つ機械的支持を提供する支持構造体140により支持され得る。例えば、支持構造体140は、光検出の応用形態に使用するための剛性で光学的に透明なプレート、又は例えば、つかみ面として当該複合材料構造体100を用いてターゲット物体のロボット操作に使用するためのロボットの指または他のロボット効果器のようなロボット要素を含む場合がある。より具体的には、支持構造体140は、任意の剛構造、半剛構造、柔構造、又は意図された応用形態に適切なこれらの組み合わせを含む場合がある。例えば、レトログラフィック・センサ又は類似した光検出デバイス又はシステムにおいて、支持構造体140は、一般に剛性であるが、例えば、ターゲット表面に適合するために多少撓むこともできる、10~20mm厚の光学的に透明なポリエチレンテレフタラート又はポリカーボネートを含む場合がある。
【0027】
図2は、図1に示されたような複合材料構造体の膜厚の関数としての摩耗抵抗(耐摩耗性)を示す。
【0028】
一般に、x軸は、上述された薄膜または任意の他の適切な外面材料のような、柔軟な基材上に配置された硬質薄膜の厚さを示す。この材料は、柔軟なエラストマーのような、柔軟な下位基材の表面を覆う。膜厚は、柔軟な基材上の硬質薄膜の深さに関して任意の適切な単位を用いて測定され得る。例えば、膜厚は、マイクロメートル、センチメートル、インチなどで測定され得る。
【0029】
y軸は、摩耗抵抗を示す。これは、摩耗に対する抵抗が増加するにつれて増加する任意の適切な測定基準または性能指数を用いて測定され得る。例えば、摩耗抵抗は、例えば、標準化された連続摩耗条件の下で生じる、柔軟なエラストマーの破断(裂ける)または露出に関して、単位時間で測定され得る。例えば、これは、所定の垂直抗力の下で所定の速度でベルト式研磨機上で移動する所定のグリット(粒度)を有する研磨紙のような、研磨面に対して薄膜をさらすことである場合がある。別の態様において、摩耗抵抗は、例えば、標準化された荷重条件の下で、膜厚の減少、或いは薄膜材料の重量または体積の減少のような、薄膜の測定可能な特性における減少の逆数として測定され得る。より具体的には、当該技術で知られている且つ様々な厚さの薄膜を有する複合材料に関して摩耗率を比較するのに適切な任意の客観的な摩耗試験の方法(単数または複数)が、本明細書で企図されるように、摩耗抵抗を測定するために使用され得る。
【0030】
曲線200により示されるように、摩耗抵抗は、柔軟な基材上に配置された硬質薄膜の厚さの関数として変化する場合がある。認識されるように、曲線200の形状は、正確ではなく、且つ任意の特定の材料または材料の組み合わせの代表例ではなく、曲線の形状および大きさは、特定の材料選択および物理的構成に従って変動するであろう。それよりむしろ、曲線200は、本明細書で説明されるような材料の様々な組み合わせを試験すると同時に、本発明者により発見された、膜厚と摩耗抵抗との間の予期せぬ関係を概して示すことが意図されている。特に、留意されることは、比較的厚い外側膜(図2において右端)に関して、複合材料の摩耗抵抗は、バルク材料と同様の、厚い薄膜の摩耗抵抗特性に近づく。逆に、薄膜の深さがゼロに近づくにつれて、複合材料の摩耗抵抗は、下位の柔軟なエラストマーの摩耗抵抗特性に近づく。これらの両極端の間で、柔軟なエラストマー基材上の硬質のエラストマー薄膜が別個に各々の材料のバルク特性を超える、及び場合によっては、この摩耗抵抗を劇的に超える、摩耗抵抗における驚くべき増加を一括して示す膜厚の範囲が存在するように考えられる。特定の材料選択に関して、破断する時間または材料減少の逆数のような、客観的に測定された摩耗抵抗の改善は、50%、100%、200%を超える、又は構成要素である材料の摩耗抵抗を更に上回る場合がある。本明細書で説明されるような、一般的な市販のエラストマー及び他の材料の幾つかの組み合わせに関して、これは、レトログラフィック検出、触覚検出、ロボット操作などにおいて、良好な光学的性能および改善された摩耗抵抗と共に有利に利用され得る、複合材料構造体の有用な動作範囲210を提供する。また、高い摩耗抵抗は、ガスケット、流体シールなどのような、他の応用形態用にデバイスを製作するために有利に利用され得る。また、理解されるように、有用な動作範囲は、意図された異なる用途によって異なる場合がある。例えば、第2の動作範囲220は、高圧で高サイクルのメカニカルガスケットに適している場合がある。
【0031】
これら複合材料に関する幾つかの追加の予備的注意は、以下で提供される特定の実施形態の詳細な実験データと共に、本明細書で提供される。
【0032】
第1に、上述されたように、曲線200の形状は、材料の任意の特定の組み合わせに関して、実験データではなくて一般的な関係を示すことが意図されている。かくして、例えば、例示的な曲線200は両側からピークまで単調に増加しているが、特定の条件下で及び/又は特定の材料に関して、当該関係の極性において不連続または変化が存在する場合がある。より具体的には、複合材料に使用される材料の特性の間で複雑な相互関係が存在するようであり、有効な変数は、少なくとも薄膜の厚さ、強度、弾性、硬度、及び摩擦係数、並びに基材の硬度を含む。これらパラメータの全ての組み合わせが特徴付けられないが、一般的関係は、試験された材料の組み合わせの間で首尾一貫しているようである。例えば、図2に示されていないが、薄膜の外側のより低い摩擦係数は、摩耗抵抗を増大させるようであり、薄膜のより高い強度および弾性は、摩擦抵抗を増大させるようである。
【0033】
第2に、多数の摩擦抵抗試験が当該技術において知られており、本明細書で説明されるように、様々な材料および複合材料構造体の摩擦抵抗を比較するために使用され得る。例えば、米国材料試験協会(ASTM)の摩耗試験ASTM D-1044(テーバー摩耗(Taber Abrasion)とも呼ばれる)は、プラスチック耐摩耗性を求めるために使用される標準試験である。これは、摩耗率を比較するための有用な客観的基準(ベンチマーク)を提供するが、また又はその代わりに、他の標準化された又は特別仕様の試験プロトコルが異なる材料および/または複合材料の間で摩耗率を比較するための首尾一貫した基準を提供するならば、当該他の標準化された又は特別仕様の試験プロトコルが利用され得る。しかしながら、実験データの定量的結果が、選択された試験技術(単数または複数)に従って変化するように予想され、一般的な関係が、同様の状態を維持するように予想され、複合材料の構成要素である材料の何れかにわたって個別的に摩耗抵抗において著しい増加を有する複合材料を首尾一貫して示すことが予想される。
【0034】
一般に、薄膜は、強くて、硬質で、弾性のある材料から有利に形成され得る。弾性(弾力性)(例えば、弾性限界(%)、伸長時の応力、又は同様のものにおいて、測定された)は、凸凹の接触面に適合するように且つ高い局部応力の箇所を低減または軽減するように湾曲する及び伸びる薄膜の能力を特徴付ける。弾性の様々な客観的尺度は、以下の表2に提供される。同時に、例えば、複合材料構造体が変形する間に、その構造的完全性を維持することができるように、特に薄膜が所望される場合、高い強度(例えば、引裂強度(例えば、ASTM D624 type C毎に測定されたkN/m)、引張強度(例えば、ASTM D412毎に測定されたMPa)、破断点伸び(%)、又は任意の他の客観的尺度)により、当該薄膜が、引き裂かれずに又はそうでなければ破れずに、これらの変形を被ることが可能になる。
【0035】
理解されるように、破断点伸びのような、上記の材料特性の幾つかは、強度(例えば、破壊点(限界点)を指定することにより)又は弾性(例えば、変形能の程度を指定することにより)の尺度とみなされ得る。しかしながら、特定の測定基準が強度または弾性を記述するか否かは概して、測定された特性が複合材料構造体の摩耗抵抗に確実に寄与するか否か(より具体的には、複合材料薄膜が、接触面に容易に且つ確実に適合することを可能にすることにより)に比べて、重要ではない。かくして、様々な尺度が、強度または弾性を測定する際に本明細書で分類されるが、これらは、厳格な定義精度ではなくて、利便性のカテゴリーとして理解されるべきである。上記にもかかわらず、報告されたデータ、実験データ、及び観察値に基づいて、薄膜の有用な最小引裂強度は、約20kN/m、又は約20~30kN/mであるようであり、この場合、薄膜は40kN/m及びそれを上回る引裂強度を有し、一層良い耐摩耗特性を提供する。
【0036】
また、留意されるように、強度および弾性の異なる客観的測定値は一般に(厳密ではないが)、強度の異なる客観的測定値が耐摩耗性複合材料に適した高強度材料を識別するための代理として使用され得る、及び弾性の異なる客観的測定値が高弾性材料を識別するための代理として使用され得るように、互いに相関される。更に、強度、硬度、及び弾性の最適な組み合わせは、下位エラストマーの柔軟性、粗さの特性、研磨接触面、及び他の因子のような、他の材料特性に従って変動する場合があるが、強度と弾性は概して、ほぼ同じ硬度を有する異なるエラストマー薄膜の改善された耐摩耗性能に確実に相関する。
【0037】
これら原理は、特定の応用形態において特定の利点に利用され得る。例えば、レトログラフィック・センサは、柔軟なエラストマー上に配置された強い薄膜を使用する場合がある。当該薄膜は好適には、当該センサの接触面に対する良好な適合性を可能にするように十分に薄く、30~80μmの厚さ、又はより一般的には約20~約200μmの厚さ、又は更により一般的には約5~約500μmの厚さを有し、接触によるイメージング用途に関して良好な物理的起伏および光学的分解能を提供する。本出願人は、この厚さの範囲が本明細書で説明される望ましい摩耗抵抗品質も生じることができることに気が付いた。一般に、これら値の範囲内において、より厚い薄膜(フィルム)は、より高い摩耗抵抗およびより低い光学的分解能を提供する。かくして、一態様において、柔軟なエラストマー上に配置され、5~500μm、20~200μm又は30~80μm、或いはその中に含まれる任意の他の範囲の薄膜層を有する耐摩耗性レトログラフィック・センサが本明細書で開示される。また、留意されることは、後述されるように、センサは、光学的反射層も含む場合があり、当該光学的反射層は例えば、硬質薄膜と組み合わせて、約50~約100μm(硬質薄膜を介して接触面の高分解能イメージングに有用である、上述された範囲内の厚さ)の柔軟なエラストマーの上に層(単数)を提供する場合がある、硬質のエラストマー薄膜の柔軟なエラストマー側面上にある。別の態様において、薄膜層は、レトログラフィック検出に適した光学的反射層から形成される場合があり、かくしてその上に配置される別個の不透明層の必要性が除かれる。また、本明細書で説明される複合材料から形成された光学センサは、追加の層として含められ得る及び/又は薄膜層(及び/又は柔軟なエラストマー)へ組み込まれ得る、接着剤、光学コーティング、低摩擦コーティング、剛性基材なども含む場合がある。さて、これら原理による、耐摩耗性レトログラフィック・センサの一実施形態が、より詳細に説明される。
【0038】
図3は、耐摩耗性複合材料構造体を含むシステムの断面図を示す。構造体300は、耐摩耗性接触面を有するレトログラフィック・センサである場合があり、例えば、米国特許第10965854号で説明されたデバイス及びシステムの何れかへ一体化される場合があり、当該米国特許は、参照により全体として本明細書で援用される。これに関連して、構造体300は、イメージ(画像)をキャプチャし且つターゲット表面の三次元イメージングを実施する際に使用するための照明およびイメージング・システム302も含む場合がある。より具体的には、本明細書で説明される複合材料構造体(単数または複数)は、アイテムをロボット制御で操作するために使用され得るグリッパ、手先効果器または他の機械的ハンドラ、或いは同様のもののような、変形可能な耐摩耗性接触面が有用である場合がある任意の状況において有利に利用され得る。
【0039】
レトログラフィック・センサを有するロボットの指の場合、複合材料構造体は概して、図3に示された層を含む場合がある。例えば、構造体300は、ガラス又は透明なポリメチル・メタクリレート又はポリカーボネートのような、光学的に透明な剛性材料から形成された支持体304を含む場合がある。また又はその代わりに、支持体304は、構造体300の意図された用途に応じて、半剛性材料、可撓性(フレキシブル)材料、又はそれらの組み合わせを含む場合がある。また、構造体300は、支持体304上に配置された柔軟で光学的に透明なエラストマー又は同様のものからなる層のような、基材306も含む場合がある。接着層308は、基材306の柔軟なエラストマーを1つ又は複数の追加の表面層へ付着するために設けられ得る。例えば、散乱顔料および/または反射顔料を含む場合がある、或いはコーティングされ得る又はそうでなければイメージング用の不透明表面を提供するように処理され得る不透明層310が、接着層308により、柔軟で透明なエラストマーの基材306に結合される場合があり、耐摩耗性のために硬質の弾性層を形成する場合がある。摩擦制御層312が、複合材料の耐摩耗特性を更に操作(管理)するために、不透明層310上に配置され得る。別の態様において、摩擦制御層312は、複合材料に所望の光学的特性および機械的特性をもたらす、不透明層310上に配置された硬質で弾性の耐摩耗性層を含む場合がある。一態様において、摩擦制御層312は、単一の材料、一体的材料、又は材料の複数の層から形成され得る低摩擦層および硬質の弾性層を含む場合がある。別の態様において、摩擦制御層312は、不透明層310の光学的特性、摩擦制御層312の低摩擦特性、及び摩擦制御層312の硬質で弾性の特性を組み合わせる単一の材料または複合材料から形成される場合があり、かくして基材306に結合された、又はそうでなければ基材306上に配置された材料の単一の層を提供する。
【0040】
理解されるように、図3は、特定の層を示すが、構造体300はより一般的には、柔軟なエラストマー(又は他の材料)をより硬質のエラストマー(又は他の材料)の薄膜で覆うことにより形成された耐摩耗性の柔軟な接触パッドを含む場合があり、ここで、より硬質のエラストマーは、比較的低い摩擦係数(COF)を有する(図1に関連して示された構造体100のように)。係る複合材料は、適切なエラストマーから形成される場合、構成要素であるエラストマー材料のどちらかで完全に構成されているパッドよりも有利に耐摩耗性であり、任意の適切な摩耗試験または摩耗抵抗標準(単数または複数)を用いて客観的に測定した場合、材料に応じて、少なくとも50%以上の摩耗抵抗、少なくとも100%以上の摩耗抵抗、少なくとも200%以上の摩耗抵抗、又はそれ以上である場合がある。様々な適切なエラストマーを用いて、係る複合材料は、例えば、接触したターゲット表面およびより硬質である内部に配置された不透明層に対して変形するように十分に柔軟であり、且つ透明なエラストマーを介して照明され且つ三次元表面の再構成に使用するためのデータをキャプチャするようにイメージングされ得る光学的に透明または(例えば、イメージングに使用される波長範囲内で)実質的に光学的に透明なエラストマーを有する、例えば、レトログラフィック・センサとして使用するために構成され得る。
【0041】
摩擦制御層312は、摺動を可能にするために及び集中した接触力の箇所(点)を軽減する又は緩和するために、ターゲット表面314に直接隣接した(例えば、ターゲット表面と構造体300の他の層との間に)任意の適切な低摩擦層または複合材料を含む場合がある。一態様において、適切な低摩擦表面または低い静摩擦表面が、吹き付けコーティングにより、摩擦制御層312上に形成され得る。例えば、これは、(未硬化)耐摩耗性コーティング(例えば、アクリレート単量体の約10重量%を有するポリウレタン)及び約10μmの直径を有する約2重量%のメチルシルセスキオキサンのミクロスフェアの稀釈液を耐摩耗性コーティング上へ吹き付けることを含む場合がある。吹き付けコーティングは、乾燥時に平らにならないように塗布される場合があり、大きな均一の高摩擦接触表面を軽減するためにミクロスフェアにより部分的に形成された輪郭(外形)を有する平坦でない艶消し面を残す。当該コーティングは、摩擦制御層312におけるバインダーを不透明層310におけるバインダーに架橋結合するようにUV硬化される場合があり、かくして複合材料構造体の表面上にミクロスフェアを固定させる。また、下位の不透明層310、又は不透明層310と摩擦制御層312との間の別の硬質の弾性層も、複合材料構造体300がすり減る際に複合材料構造体の接触面における摩擦軽減ミクロスフェアの濃度を維持するために、例えば、類似した比率でミクロスフェアを含む場合がある。より一般的には、様々な摩擦低減技術および静摩擦低減技術が当該技術において知られており、低摩擦接触面または低い静摩擦接触面を本明細書で説明される複合材料構造体の何れかに提供するように適合され得る。
【0042】
一般に、接触パッドは、複合材料を形成するバルク材料の何れかに対して優れた耐摩耗性を有利に示す場合がある、本明細書で説明される複合材料構造体の何れかから形成され得る。例えば、硬質薄膜は、本文脈において比較的硬質であるショアA硬度70を有する熱可塑性ポリウレタン(TPU)により形成され得る。この材料の固体スラブが200グリット(米国規格の番手)のベルトを有するベルト式研磨機に対して所定の接触力で押し付けられて、60秒間動作される場合、測定可能な量のTPUが摩耗するであろう。しかしながら、同じTPUの75μm厚の薄膜が、例えばショアA硬度5(本文脈において比較的柔軟)を有する柔軟なエラストマーの塊(体積)の上にコーティングされた場合、複合材料パッドは、同じ接触条件の下で、ほぼ全く摩耗を示さなかった。より一般的に述べれば、TPUの薄膜は、柔軟なエラストマーにより支持されている場合、同じTPU単独の厚いスラブよりも大きな摩耗抵抗を示す。図4図8は、係る耐摩耗性接触パッドの動作原理を示す。
【0043】
図4は、底部に先鋭な突起部(複数)を有する凸凹の(起伏のある)物体RO1を示す。当該物体は、剛性ブロックRB1上に支持された硬質エラストマーパッドHE1に押し付けられている。各突起部は、それが接触するエラストマーの小さい区画に局部的力を加える。各突起部の接触面積が小さいので、局部圧力は高い。ここで、当該物体が接線方向に動く場合、接触点において大きな局部応力が生じ、突起部がパッドの上でこするので、局部的損傷につながる可能性がある。
【0044】
図5は、剛性ブロックRB2により支持されている柔軟なエラストマー・パッドSE2に押し付けられている凸凹の物体RO2を示す。このパッドは柔軟な材料から作成されているので、物体の凸凹の(粗い)風合いに適合するように容易に変形する。接触圧力は、幾つかの点において集中するのではなくて、大きな表面積にわたって分散し、それにより、当該物体が接線方向に動く際の高い局部応力を生じさせる傾向が低減される。しかしながら、柔軟なエラストマーは一般に、接線方向の動きの間に接線方向の力を増大させる高いCOFを有する。更に、柔軟なエラストマーは概して機械的に弱く、ひいては容易に損傷し、これら条件の下で摺動する際に著しい摩耗または損傷という結果になる。
【0045】
かくして、硬質のエラストマー又は柔軟なエラストマーのどちらかから作成されたパッドの双方は、異なる理由を別にして、それらの表面を横切ってすれる凸凹の物体から損傷を受けやすい。硬質のエラストマーは、強くて且つ低いCOFを有する利点を備えるが、僅かな接触点における高い局部応力の欠点を有する。柔軟なエラストマーは、大きな面積(領域)にわたって力を分散させる利点を有し、それにより高い局部応力点が起こらないようにするが、弱くて且つ高い摩擦力を有する欠点を備える。
【0046】
図6は、凸凹の表面に接触している耐摩耗性接触パッドを示す。一般に、硬質のエラストマーからなる薄膜が柔軟なエラストマーを覆う場合がある。凸凹の物体RO3が、複合材料パッドに押し付けられており、当該複合材料パッドは、剛性ブロックRB3により支持されている柔軟なエラストマー基部SE3上にコーティングされた硬質のエラストマー薄膜HEF3から作成されている。薄膜が薄くて弾性である場合、それは、当該凸凹の物体の輪郭に追従するために容易に撓み且つ伸び、それにより力が大きな面積にわたって分散することを可能にする。同時に、当該薄膜は、硬質のエラストマーと関連した強度と低いCOFを有し、ひいては摩耗に耐える。
【0047】
図7は、硬質エラストマーのより厚い薄膜を有する接触パッドを示す。一般に、凸凹の物体RO4は、剛性ブロックRB4上に支持された柔軟なエラストマーの基部SE4上にコーティングされた硬質のエラストマー薄膜HEF4と接触する場合がある。この薄膜HEF4は、先の例の対応する薄膜HEF3よりかなり厚い。過度の厚さの結果として、当該薄膜は、物体の凸凹の(粗い)表面の輪郭に追従するために十分にフレキシブル(可撓性)且つ伸縮性でない。これは、高い局部応力を有する接触点の疎な(スパース)集合(セット)につながる。かくして、過度に厚い硬質のエラストマー薄膜は、先鋭または凸凹の接触特徴要素と強制的に係合する及び接触パッドを損傷する傾向を増大させる。また、これは、図2に示された摩耗抵抗曲線の右側の尾部に対応し、この場合、複合材料構造体の摩耗抵抗は、膜厚が増大するにつれて、当該薄膜の摩耗抵抗に近づく。
【0048】
別の態様において、非常に硬質のエラストマーを使用する薄膜は、最高の性能を提供しない。図8は、剛性ブロックRB5上に取付けられた柔軟なエラストマーSE5上にコーティングされた非常に硬質のエラストマー薄膜VHEF5と接触する凸凹の物体RO5を示す。たとえこの薄膜VHEF5が図6の薄膜HFE3とちょうど同じ薄さであっても、剛性が高すぎて凸凹の物体の輪郭に追従できず、接触パッドを損傷する可能性がある高い局部応力を有する接触点の疎な集合という結果になる。かくして、非常に高い硬度が、低い弾性、又はより一般的には、ターゲット表面に適合できないことを暗示する場合、これは複合材料構造体の摩耗抵抗を損なう場合がある。
【0049】
上記において、「強度」または「高い強度」のような用語は、様々なエラストマーを説明するために使用される。理解されるように、引張強度および引裂強度を含む、材料の強度を指定する複数の方法が存在する。凸凹の物体がエラストマー・パッドを横切って動く場合、機械的強度の複数の態様が重要である場合がある。これら様々な強度測定値は概して相関するが、それらは普遍的にそのようになっておらず、幾つかの異なる強度測定基準が良好な摩耗抵抗に関してひとまとめにして十分であることを確実にするために、場合によっては重要である場合がある。かくして、高い強度、より強いなどのような用語が本明細書で使用される場合、本明細書で説明されるこれらの何れかのような、特定の客観的強度測定基準も意味すると理解されるべきであり、この場合その材料特性は、良好な摩耗抵抗、並びに当該複合材料構造体が耐摩耗性接触パッドとして機能することを可能にする強度測定基準の任意の組み合わせを確実にするのに十分である。
【0050】
更に、一般的用語「摩擦」が使用されるが、理解されるように、摩擦は、静的または動的であることができ、摩擦の相互作用は、摩擦係数(COF)により捕らえられない方法で非線形である。更に、摩擦は、2つの特定の材料が互いに接触する特性であり、ガラスのような、1つの材料に対する摩擦力は、鋼鉄のような別の材料に対する摩擦力と異なる場合がある。同時に、摩擦係数は、例えば、複合材料構造体が意図されているターゲット表面の特定のタイプに対して、より高いCOF又はより低いCOFを有するような異なるエラストマーのことを話すために意味を持つように、相関させるのに役立つ。
【0051】
複合材料構造体の摩耗抵抗に影響を及ぼすように示されたパラメータが、ここで考察される。
【0052】
硬質薄膜を支持する柔軟な基材がそれ自体、物体と直接的に接触しないので、柔軟な基材のCOFは、完全なままの複合材料構造体に全く重大ではない。しかしながら、例えば、適切なショア硬度の尺度で測定された硬度は、良好な摩耗抵抗に関する関連した測定基準である。基材に関して、シリコーンゴム(PDMS)、ポリウレタン、及びスチレンブロックコポリマーのような熱可塑性エラストマーを含む、様々な柔軟なエラストマーのファミリが、試験された。これらの何れかは、それらが適切に柔軟であるならば、接触パッド用の基材として適切に機能すると考えられる。例えば、有用な耐摩耗性複合材料接触パッドは、10未満のショアA硬度を有する柔軟なエラストマーを用いて製作されて試験されたが、より硬質のエラストマーが様々な状況(例えば、摩耗抵抗の控えめな減少が許容可能である場合、又はより硬質および/または低摩擦の薄膜が利用される場合)において、使用され得る。ショア00スケールにおいて、耐摩耗性接触パッドの有用な柔軟なエラストマーは、25~65の範囲にわたるようである。実験データは、この硬度の何らかのより低い限界を示唆せず、そのため、また又はその代わりに、他の追加の軟質ゲル、非粘性流体のような流体、ガス、又は同様のものが、耐摩耗性複合材料の基材として使用され得る。
【0053】
被覆薄膜に関して、関連したパラメータは、厚さ、硬度(例えば、ショア硬度スケールで測定された)、強度(例えば、引裂強度、引張強度、又は類似した客観的尺度(単数または複数)で測定された)、弾性(例えば、降伏点伸び、弾性限界、伸長時の応力などで測定された)、及び摩擦係数(例えば、動摩擦係数または静摩擦係数)を含むと考えられる。硬度に関して、約ショアA50からショアA90の硬度を有するエラストマーを用いた複合材料接触パッドは、(構成要素である材料に対して)改善された耐摩耗性を示した。所与の硬度に関して、様々なエラストマーは、強度、COF、及び弾性の異なる組み合わせを有し、異なる摩擦抵抗特性を生じる。高い摩擦抵抗に関して、硬質のエラストマーは強くなるために、及びそれが低いCOFを有するために概して有用であると思われる。
【0054】
外側硬質薄膜の摩擦係数は、摩耗抵抗に大いに影響を与える場合がある。多数の材料に関して、動摩擦係数は、艶消しステンレス鋼、より具体的には、60RPMで回転する、細かい砂地表面を有する4.5インチ(11.43cm)ステンレス鋼ドラムに対して、測定された。正方形横断面を有する48インチ(121.92cm)長の中空アクリル製ロッドが、試験サンプルを保持した。各サンプルは、ポリウレタン・グリップテープでもって当該ロッドの中央の箇所に装着された。取付けられたサンプルは、当該回転ドラムと接触された。当該ロッドからの重力を垂直抗力F1と規定し、2.1ニュートンを測定した。スプリングダイナモメーターを用いて、結果としての摩擦力F2を測定した。動摩擦係数は、F2/F1として計算された。特筆すべきは、エラストラン(登録商標)TPU薄膜およびエルケム社PDMS薄膜の双方は、同じ硬度(ショアA70)を有するが、当該PDMSの摩擦係数は、当該TPUの摩擦係数より300%を上回って高い。他の全ての条件が同じなら、これは、TPUが優れた摩耗抵抗を有する複合材料構造体、をもたらすことを示唆し、結果は実験的に確認された。
【表1】

【0055】
要約すると、柔軟な基材用のエラストマーの選択は、それが十分に柔軟である限り、重要でないように考えられる。硬質薄膜用のエラストマーの選択は、結果としての複合材料の摩耗抵抗が硬度、強度、弾性および摩擦係数の組み合わせに依存する場合に重要であるように考えられる。好都合な特性を有する少なくとも2つのエラストマーが、複合材料パッド、即ちポリウレタン及びニトリルゴムにおいて良好な摩耗抵抗を提供するように実験的に示された。一般に、理解されるように、用語「柔軟」および「より柔軟」、並びに相補的用語「硬質」および「より硬質」は、基材および被覆薄膜におけるベースのエラストマーの相対硬度(又は柔軟性)を説明するために、及びより具体的には、ベースのエラストマーが被覆薄膜より比較的柔軟であり且つしなやかであることを示唆するために使用される。柔軟性および硬度の幾つかの一般的な範囲は、ショア尺度を使用する客観的測定によって本明細書で提供されるが、材料の他の柔軟性および硬度は、複合材料構造体が概して凸凹の表面との疎らな接触点を生じて軽減するのに十分に柔軟である基材を有する、及び表面接触および結果としての接触力を分散させるように接触表面に適合するために十分に硬質で薄くて低摩擦の弾性表面を有するという条件で、使用され得る。かくして、特定の数値範囲が提供されるが、他の範囲および/または他のエラストマー又は同様のものも、耐摩耗性複合材料構造を提供するために組み合わせて使用される場合もあり、それとは反対に明確に言及される場合を除いて、本開示の範囲に入ることが意図されている。
【0056】
これらの一般的な制約を受けて、数ある中でも、ポリウレタン及びニトリルは、耐摩耗性複合材料に適切な特性を提供すると考えられる。ポリウレタンは概して、高強度、低摩擦係数および高い弾性を有し、被覆薄膜として十分に機能すると考えられる。例えば、ショアA硬度40~90を有するポリウレタン・エラストマーは一般に、400%を上回る破断点伸びを有する。
【0057】
また、ニトリルゴムは、これらの次元で十分に価値がある。他のエラストマー・ファミリの大部分は、これら客観的測定基準に到達できないと考えられ、複合材料構造体において試験される場合、試験条件の下で満足度の低い摩耗抵抗を提供した。例えば、PDMSは一般に、ポリウレタン及びニトリルより弱く、ポリウレタン又はニトリルより高いCOFを有する。かくして、PDMSは、少なくとも2つの次元でこれら2つの好適な材料より悪く、柔軟なエラストマー用の耐摩耗性コーティングとしてより悪く機能する。使い捨てゴム手袋に使用されるようなラテックス膜は、高い強度と高い弾性を有するが、高いCOFも有する。使い捨てビニール手袋に使用されるような、フレキシブルなPVC膜は、低いCOFを有するが、低い強度と低い弾性を有する。SEBS又はSEEPSスチレンブロックコポリマーのような、熱可塑性エラストマーは、高い強度と高い弾性を有するが、高いCOFを有する。
【0058】
さて、多数の実施例が提供される。多数の基材は、様々な硬質のエラストマー薄膜で覆われた柔軟なPDMSエラストマー(Smooth-on 社のEcoflex(登録商標)Gel)から構築された。Eco-flex Gelは、極めて粘着性があり、そのため、当該薄膜は、何らかの追加の結合剤を必要とせずに、この基材に直接的に付着され得る。様々な特性を有する薄膜が、以下で特定されるように、商業的供給源から得られた。PDMS薄膜は、エルケム社のLSR Silbione(登録商標) 4370, 1 part A, 1 part B, 及び4 partsヘキサメチルジシロキサンを使用し、ガラス板上のコーティングとして形成された。乾燥および硬化後、当該薄膜は、約75μmの厚さであった。TPE薄膜を作成するために、SEEPSブロックコポリマ(クラレ社のセプトン(登録商標)4099)が約1:1の比率で鉱油と混合され、約1:4の比率でトルエンで稀釈された。これは、乾燥後に約75μmの厚さであるショアA70の薄膜を形成するためにガラス板上に注がれた。エラストラン(登録商標)TPU薄膜を作成するために、エラストラン(登録商標)1170A10(BASF社から)が、テトラヒドロフランに溶解され、ガラス板上に注がれ、乾燥後に約80μm厚の薄膜を形成した。これら基材-薄膜の複合材料パッドの摩耗抵抗は、200グリットの研磨ベルトを1900フィート(579.12m)/分(fpm)で動作しているベルト式研磨機に対して20グラムの重さでそれらを押し付けることにより試験された。当該薄膜がこれらの条件の下ですり減る場合、それは破局的故障の点に最終的に到達し、研磨紙が下位(下層)の柔軟なエラストマーまで突き破る際に裂ける。故障までの時間は以下の通りである。
【表2】

【0059】
上記の測定値および様々な対応する材料の報告された特性に基づいて、当該薄膜はより良好に機能し、この場合、それらは高い強度、高い弾性、及び低摩擦を有した。一態様において、ポリウレタン、及びより詳細には、高い硬度、高い破断点伸び、及び高い引張強度を有する熱可塑性ポリウレタンは、本明細書で説明されるように、耐摩耗性複合材料の適切な材料を提供する。
【0060】
第2の組の実験は、図3に示されたような複合材料構造体を利用して行われた。ポリウレタン、ポリウレタン及びアクリレート混合物、及びニトリルゴムが、耐摩耗性膜として試験された。この試験に関して、柔軟なエラストマーは、クラレ社により製造された熱可塑性エラストマーのセプトン(登録商標)4033、SEEPSポリスチレン・ブロックコポリマを含み、鉱油およびRegarlrez(登録商標)1094、イーストマン・ケミカル社により製造されているタッキファイヤーのような添加剤により可塑化される。可塑剤レベルは、鉱油から40%及びタッキファイヤーから40%を有する軟質ゲルの80重量%であった。軟質ゲルの硬度は、ショア00=33として測定された。厚さは3mmであった。接着層および反射層の双方は、15μmの組み合わせた厚さに関して、BASF社のエラストラン(登録商標)ポリウレタン1170A10で調製された。反射顔料は、Silberline社により製造されているSparkle Silver Ultra(登録商標) 7908であった。
【0061】
試験されたポリウレタンの特性は、以下のテーブル1及びテーブル2に要約される。一般に、米国材料試験協会(ASTM)の摩耗試験ASTM D-1044(テーバー摩耗(Taber Abrasion)とも呼ばれる)は、プラスチックの耐摩耗性を求めるために使用される標準試験である。当該技術において、様々な標準化摩耗試験が知られているが、これは、本明細書で説明される様々なエラストマー材料の特性に有用なベンチマーク(基準)を提供する。
【表3】


【表4】

【0062】
アクリレートは、ポリウレタンの硬度と弾性を変性するために使用され得る。アクリレートは、ポリウレタンと分子的に相溶性があり、重合時に相互貫入3Dネットワークを形成することができることを示されたので、特に有用である場合がある。係る3Dネットワークは、材料に強度と剛性を追加し、隣接する層にわたる材料を化学的に架橋することにより、係る層の結合を容易にすることができる。3D架橋ネットワークは、UV開始剤の合成物への取り込み、及びコーティング又は流し込み後のUV照射によって容易に達成され得るアクリレート基の重合により、生じる。アクリレートは、化学構造、分子量、及び分子毎のアクリレート官能基の数を含む広範囲の化学成分において入手できる。相互貫入3Dネットワークの強度は、分子毎のアクリレート基の機能性または数、アクリレート基間の分子量、及び形成に使用されるアクリレートの質量濃度により制御され得る、当該ネットワークの架橋密度に依存する。各分子の末端にアクリレート基を備える直鎖ポリウレタンオリゴマーである二官能性ポリウレタンアクリレートが、特に有効である場合がある。これら材料は、ポリウレタンと共に均質なネットワークを形成する。かくして、一態様において、ポリウレタンは、硬度と弾性を改善するために、及びポリウレタン/アクリレートの混合物を用いて複合材料構造体の結果としての耐摩耗特性を改善するために、1つ又は複数のアクリレートの添加で変性され得る。
【0063】
以下のテーブル3は、試験に関して好都合であると見出されたサートマー社のアクリレートウレタンオリゴマーの特性を要約する。ここで留意すべきは、重合均質物質として、それは、混合されているポリウレタンの600%~800%の伸長よりも大幅に少ない140%の伸長を有する。また、引張強度は、ポリウレタンと同様である。そのため、アクリレートのポリウレタンとの混合は、剛性を加えるために使用されることができ、その重合(ポリメリゼーション)は、アクリレートを含有する隣接する層を結合するために使用され得る。
【表5】
【0064】
試験されるべきポリウレタン及びポリウレタンアクリレート混合物のサンプルが、溶剤THF(テトラヒドロフラン)からガラス板上にコーティングされた。当該コーティングは、当該ガラスから剥がされて、成形するように切断されて、試験されるべき複合材料構造体の反射層の上に配置された。当該コーティングは、単純な張り付き又は表面が滑らかな2つのサンプルの接触時に付着する傾向によって、所定位置に保持された。ニトリルゴムのサンプルは、試験のために手作業で所定位置に保持された。
【0065】
本明細書で説明された材料を用いて形成された接触パッドの摩耗抵抗は、40インチ(101.6cm)/秒の速度にあるベルト式研磨機および120グリットの研磨紙でもって複合材料パッドの表面を研磨することによる手動テストで評価された。各センサの表面は、約3インチ(7.62cm)の曲率半径を有するドーム形であった。ドーム形センサ表面は、約3/8インチ(9.525mm)直径の円形部が、動いている研磨紙ベルトに接触するのに十分な圧力を加減するためにライトを用いて、動いているベルトに対して手で保持された。
【0066】
また、各サンプルの弾性は、ここで実験的弾性限界と呼ばれる簡単な試験により評価された。この試験に関して、薄膜のストリップが1cm幅に切断され、当該ストリップが追加の引き伸ばしに対して著しい抵抗を示す長さを記録するために、メジャーと並行に引き伸ばされた。この伸長は、ポリマー鎖が、追加の伸長により分子結合が引っ張られる又は切断されることを引き起こすようなそれらの限界まで伸びる又はほどけるおおよその点であると考えられる。ここで留意すべきは、ここで測定されるような実験的弾性限界は、材料が降伏する点における伸長の割合(百分率)である破断点弾性、又は材料が塑性的に又は永久的に変形し且つその元の状態に弾性的に戻るその能力を失う点である従来の弾性限界と同じ測定値ではない。これら測定値は全て、概して相関されるが、破断点弾性は、実験的弾性限界より大幅に大きい。
【表6】
【0067】
テーブル4に示されるように留意すべきは、最高性能に関連したアクリレート濃度は現時点で、0%アクリレートであると判断され、このレベルでの研磨からの膜の減少速度は、著しく低い(40インチ(101.6cm)/秒で動いている120グリットの研磨紙による研磨に関して1分あたり約0~0.25μm)。ロボットの指に妥当である100μmの厚さの膜は、このタイプの研磨にさらされる数時間にわたって存続するであろう。
【0068】
また、テーブル4から留意すべきは、摩耗抵抗は、ポリウレタンの硬度が増加する際の一連の材料を通じた進行において減少し、それは常識に反する。上記のテーブル1から留意すべきは、固体ポリウレタンの摩耗抵抗は、より柔軟からより硬質のエラストラン(登録商標)のグレードを通じた進行において増加する。増加した硬度に伴うこの改善される摩耗抵抗は、固体エラストマーに共通である。
【0069】
また、留意すべきは、ウレタンアクリレートの添加は、摩耗抵抗を減少させる。アクリレートは、二価性であり、即ち、それは1分子あたり2つのアクリレート基を有し、UV開始剤の存在下でUV放射線にさらされる際に、重合またはUV硬化された混合物の増加した高度と低下した弾性という結果になる三次元構造をそれ自体が形成しながら架橋する。固体サンプルの場合、より高い硬度のエラストランがより高い強度を有するのと全く同じようにアクリレート3D構造体が強度を増加するのでアクリレート3D構造体の存在から摩耗抵抗を改善すると期待されているが、まさにその逆が観測されている(摩耗抵抗の減少)。
【0070】
ニトリルゴムの2つのサンプルが試験され、そのデータが以下のテーブル5に要約される。
【表7】
【0071】
この試験に関して、ニトリルゴムのサンプルは、実験用手袋から切断されたサンプルから調達された。手袋の親指から取られた部分をドーム形状のロボットの指センサの上に伸ばし、このようにして形成された表面を研磨試験にかける間に、サンプルを所定位置に保持することが可能である。当該結果は、際だって良好であり且つたとえ純粋なポリウレタンのサンプルと同じくらい良好でなくても、組み合わされたポリウレタン/アクリレートの多くのサンプルに関して見出されたものと類似する摩耗抵抗を示す。また、留意すべきは、試験された2つのサンプルは、厚さが全く異なるが、摩耗抵抗は、2つのサンプル間で同等である。これら同じサンプルが、凸レンズのようなドーム形の硬質アクリレート形状の上に伸ばされて、研磨ベルトに対して保持された場合、それらは引き裂きにより数秒で役に立たなくなる。
【0072】
図9は、様々な複合材料に関する摩耗率対弾性を示す。より具体的には、図9は、被覆薄膜として使用される様々な材料に関して測定された実験的弾性限界の関数として摩耗率(μm/分)を示す。留意すべきは、摩耗性能(例えば、摩耗率の減少)は一般に、実験的弾性限界に相関し、この場合、最高の摩耗抵抗は、最も高い実験的弾性限界(例えば、最も大きい弾性)を有する薄膜により提供される。
【0073】
本明細書で説明されるような複合材料構造体を用いて製作された接触パッドは、様々な応用形態で使用され得る。例えば、これら接触パッドは、ロボットの指または他のマジックハンドで使用され得る。しかしながら、非剛性の耐摩耗性接触パッドは、多くの他の状況に有用に配置され得る。例えば、係るパッドは、柔軟な又はフレキシブルな物体が第2の物体と摩擦接触する何らかの状況において、特に液体潤滑剤が存在しない場合に使用され得る。例えば、複合材料構造体は、可動円筒シャフトに対するシールとして使用され得る。係る実施形態において、チャンバは、チャンバ内部からのガスがチャンバの外部からのガスと混合するのを防止するようにシールされ得る。当該シャフトは、エラストマー環状シールを介してチャンバの壁を貫通する場合があり、そのシールが本明細書で説明されるような複合材料構造体を用いて作成されている場合には、摩耗を最小限にしながら、当該シャフトがその軸を中心とした回転またはその軸に沿った平行移動を可能にする場合がある。より一般的には、耐摩耗性複合材料は、可動部品用のガスケット又は他の流体シール、又は任意の他のガスケット、シール、ワイパ又は他の構成要素(機械的に負荷をかけられたインターフェースのために耐摩耗性が望まれる場所)へ形成され得る。
【0074】
上記に従って、耐摩耗性複合材料構造体が本明細書で説明される。より具体的な例として、一態様において、本明細書で説明されたような実質的に改善された耐摩耗特性を有する、ターゲット表面との耐摩耗性接触用のデバイスは、支持構造体と;支持構造体上に配置され、10以下の第1のショアA硬度、及び少なくとも1mmの第1の厚さを有する基材と;ターゲット表面と接触するために基材上に配置された薄膜とを含み、その薄膜は、少なくとも70の第2のショアA硬度、200μmを超えない第2の厚さ、少なくとも30MPaの引張強度、少なくとも650%の破断点伸び、及び艶消し鋼に対する1.5を超えない動摩擦係数を有する。
【0075】
また又はその代わりに、役立つように改善された耐摩耗性能は、支持構造体と;支持構造体上に配置され、10以下の第1のショアA硬度、及び少なくとも1mmの第1の厚さを有する基材と;ターゲット表面と接触するために基材上に配置された薄膜とを含み、その薄膜は、少なくとも50の第2のショアA硬度、500μmを超えない第2の厚さ、少なくとも10MPaの引張強度、少なくとも300%の破断点伸び、及び艶消し鋼に対する1.5を超えない動摩擦係数を有する複合材料デバイスにより獲得され得る。
【0076】
上記および他の実施形態において、薄膜は例えば、熱可塑性ポリウレタン、熱硬化性ポリウレタン、又はニトリルゴムを含む場合がある。基材は例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリウレタン、及び熱可塑性エラストマーの少なくとも1つを含む。また、認識されるように、前述の説明において使用されるような、表現「上に配置される」は、2つの列挙された層間の直接的接触を必要としない。即ち、薄膜が基材上に配置されているように説明されているが、これは、2つの層間の直接的接触を必要とせず、又は介在する機能層または類似のものを排除しない。それよりむしろ、1つの層または構造体が、別の上に配置されるように説明される場合、これは、光学膜、接着剤層、パターン形成された表面またはテクスチャード加工の表面などのような、機能層を含む1つ又は複数の介在層を許容する及び必要に応じて含む。
【0077】
また、耐摩耗性複合材料を製作するための方法も本明細書で開示される。これは一般に、意図された用途に適切な任意の剛性またはフレキシブルな支持構造体のような、支持構造体を準備することを含む。これは、例えば、ロボットの指、レンズ又は他の光学素子、レトログラフィック・センサ用の基材、ガスケット、接触パッド、ワイパなどを含む場合がある。方法は、支持構造体上に基材を配置することを含む場合があり、当該基材は、第1の硬度を有する第1のエラストマーを含む。また、方法は、第1のエラストマーの基材の第1の表面上に第2のエラストマーの薄膜を配置することを含む場合があり、第2のエラストマーは、第1のエラストマーの第1の硬度より大きい第2の高度を有し、第2のエラストマーは、第1のエラストマーの基材の第1の表面から見て外方に向く第2の表面上で低摩擦係数を有し、第2のエラストマーは、高い強度および高い弾性を有する。一般に、支持構造体、エラストマー、基材、及び薄膜は、本明細書で説明されたような何れかである場合がある。また、認識されるように、方法は、所望の結果としての複合材料にそれぞれ見合った、一体成形、スピン・コーティング、混合、硬化、結合などのような任意の適切な製造技術を含む場合がある。本明細書で説明されるような複合材料の耐摩耗性構造体を製作するのに適した係る全技術は、本製造方法の範囲内に入ることが意図されている。
【0078】
本明細書で説明される具現化形態の方法のステップは、異なる意味が明確に提供されない限り又は特に文脈から明らかにならない限り、係る方法のステップが実行される任意の適切な方法を含むことが意図されており、以下の特許請求の範囲の特許性と首尾一貫している。そのため、例えば、Xのステップを実行することは、遠隔ユーザ、遠隔処理源(例えば、サーバ又はクラウドコンピュータ)又はマシンのような別のパーティがXのステップを実行するための任意の適切な方法を含む。同様に、ステップX、Y及びZを実行することは、係るステップの利益を得るために、ステップX、Y及びZを実行するために係る他の個物またはリソースの任意の組み合わせに命じる又は当該任意の組み合わせを制御する任意の方法を含む場合がある。かくして、本明細書で説明される具現化形態の方法のステップは、異なる意味が明確に提供されない限り又は特に文脈から明らかにならない限り、1つ又は複数の他のパーティ又はエンティティが当該ステップを実行する任意の適切な方法を含むことが意図されており、以下の特許請求の範囲の特許性と首尾一貫している。係るパーティ又はエンティティは、任意の他のパーティ又はエンティティの指揮または制御の下にある必要はなく、特定の管轄区域内に位置する必要はない。
【0079】
認識されるように、上述されたデバイス、システム及び方法は、一例として記載されており、制限のためではない。それとは反対に、明確な指示がない限り、開示されたステップは、本開示の範囲から逸脱せずに、変更され、追加され、削除され、及び/又は並べ替えられ得る。多数の変形、追加、削除、及び他の変更は、当業者には明らかになるであろう。更に、上記の説明および図面における方法のステップの順序または提示は、特定の順序が明確に要求されない限り又は特に文脈から明らかにならない限り、列挙されたステップを実行するこの順序を必要とすることは意図されていない。かくして、特定の実施形態が図示されて説明されたが、当業者には明らかなように、形態および細部の様々な変更および変形が本開示の思想および範囲から逸脱せずに行われる場合があり、以下の特許請求の範囲により定義されるように本発明の一部を形成することが意図される。以下の特許請求の範囲は、法律によって許されている最も広い意味で解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】