(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】異種T細胞受容体(TCR)コード配列による細胞の改変
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20240725BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240725BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240725BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240725BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240725BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240725BHJP
A61K 47/68 20170101ALN20240725BHJP
A61K 39/395 20060101ALN20240725BHJP
A61K 35/545 20150101ALN20240725BHJP
【FI】
C12N5/10
A61P35/00
A61K35/17
A61K48/00
A61K35/76
C12N15/12
A61K47/68
A61K39/395 T
A61K35/545
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506476
(86)(22)【出願日】2022-08-03
(85)【翻訳文提出日】2024-02-01
(86)【国際出願番号】 GB2022052048
(87)【国際公開番号】W WO2023012478
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517122578
【氏名又は名称】アダプティミューン・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハミルトン ガース
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
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4C087AA01
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4C087CA04
4C087CA12
4C087NA05
4C087NA13
4C087ZB02
4C087ZB26
(57)【要約】
本発明は、細胞ゲノム内、例えば真核生物翻訳伸長因子1アルファ1(EEF1A1)遺伝子内に組み込まれた異種T細胞受容体(TCR)をコードする少なくとも1つの異種核酸配列を含む、改変iPSCまたは造血系統細胞、例えばT細胞及びその使用を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
T細胞の集団を生成する方法であって、
(i)T細胞受容体をコードする異種核酸をiPSCの集団の細胞ゲノム内の遺伝子座にまたはその中に導入すること、及び
(iii)前記iPSCの集団をT細胞に分化させること、
を含み、
前記遺伝子座が、真核生物翻訳伸長因子1アルファ1(EEF1A1)遺伝子である、前記方法。
【請求項2】
前記TCRをコードする前記異種核酸が、発現ベクター中に含まれている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記発現ベクターが、レンチウイルスベクターまたはアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記レンチウイルスベクターが、VSVg-シュードタイプ化ウイルスベクターである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記T細胞が、前記異種核酸によりコードされる前記TCRを発現または提示し、好ましくは前記TCRが前記細胞表面に発現または提示される、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記異種核酸が、前記導入の後に、前記細胞ゲノム内の前記遺伝子座の一方または両方のアレルにまたはその中に組み込まれている、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記異種核酸が、前記導入の後に、前記EEF1A1遺伝子のイントロンまたはエクソン、任意選択的に3’エクソン内に組み込まれている、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
異種TCRをコードする前記異種核酸配列が、前記EEF1A1遺伝子のTAG終止配列前の3’エクソン内に組み込まれている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
異種TCRをコードする前記異種核酸配列の組み込みが、前記導入の後に内因性EEF1A1の生成を妨害するものではない、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記異種核酸の前記導入が、前記異種TCRをコードする核酸とEEF1A1をコードする核酸との間に融合配列を生じさせる、好ましくは、前記異種TCRをコードする核酸と前記内因性EEF1A1をコードする核酸との間に融合遺伝子もしくは配列またはマルチシストロン性融合遺伝子もしくは配列を生じさせる、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記異種TCRをコードする前記核酸が、酵素切断部位を含むペプチドをコードする核酸配列及び/またはリボソームスキッピングを媒介する核酸配列によってEEF1A1をコードする前記核酸に接続される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記TCRが、親和性増強TCRである、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記TCRが、αβ TCRまたはγδ TCRである、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記異種TCRをコードする前記核酸が、TCRα鎖及びTCRβ鎖のコード配列を、任意選択的に、酵素切断部位を含むペプチドをコードする介在核酸配列及び/またはリボソームスキッピングを媒介する核酸配列とともに含む、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記リボソームスキッピングを媒介する核酸配列が、T2AまたはP2Aスキップ配列である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記酵素切断部位を含むペプチドをコードする核酸配列が、フューリン切断部位、好ましくはRAKRをコードする、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記TCRが、細胞によって発現される標的抗原のペプチド断片を提示するMHCに特異的に結合する、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記TCRが、がん細胞によって発現される腫瘍抗原のペプチド断片を提示するMHCに特異的に結合する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記腫瘍抗原が、アルファ-フェトプロテイン(AFP)、NY-ESO1、MAGE-A10、またはMAGE-A4である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記人工多能性幹細胞(iPSC)の集団を、
前記iPSCの集団を造血系統細胞に分化させること、及び
前記造血系統細胞をT細胞に分化させること
を含む方法によってT細胞に分化させる、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記人工多能性幹細胞(iPSC)の集団を、
(i)人工多能性幹細胞(iPSC)の集団を中胚葉細胞に分化させること、
(ii)前記中胚葉細胞(MC)を分化させて造血内皮細胞(HEC)の集団を生成すること、
(iii)前記HECを造血前駆細胞(HPC)の集団に分化させること、
(iv)前記HPCの集団を前駆T細胞に分化させること、及び
(v)前記前駆T細胞を成熟させて二重陽性CD4+CD8+T細胞の集団を生成すること、
を含む方法によってT細胞に分化させる、先行請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
(vi)前記T細胞を活性化及び増大させて、単一陽性CD8+T細胞の集団または単一陽性CD4+T細胞の集団を生成することを更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
中胚葉分化を促進する好適な条件下で前記iPSCの集団を培養することにより、前記iPSCを中胚葉細胞に分化させる、請求項21~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記iPSCが、中胚葉細胞への分化を誘導するために第1、第2、及び第3の中胚葉誘導培地で連続的に培養される、請求項21~23に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の中胚葉誘導培地が、SMAD2及びSMAD3媒介シグナル伝達経路を刺激する、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記第1の中胚葉誘導培地が、アクチビンを含む、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
前記第1の中胚葉誘導培地が、1つ以上の分化因子を補充した既知組成栄養培地からなり、前記1つ以上の分化因子が、アクチビンからなる、請求項24~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記第2の中胚葉誘導培地が、(i)SMAD1、SMAD2、SMAD3、SMAD5、及びSMAD9媒介シグナル伝達経路を刺激し、かつ(ii)線維芽細胞成長因子(FGF)活性を有する、請求項24~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記第2の中胚葉誘導培地が、アクチビン、BMP、及びFGFを含む、請求項24~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記第2の中胚葉誘導培地が、1つ以上の分化因子を補充した既知組成栄養培地からなり、前記1つ以上の分化因子が、アクチビン、BMP、及びFGFからなる、請求項24~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
前記第3の中胚葉誘導培地が、(i)SMAD1、SMAD2、SMAD3、SMAD5、及びSMAD9媒介シグナル伝達経路を刺激し、(ii)線維芽細胞成長因子(FGF)活性を有し、かつ(iii)グリコーゲンシンターゼキナーゼ3βを阻害する、請求項24~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記第3の中胚葉誘導培地が、アクチビン、BMP、FGF、及びGSK3阻害剤を含む、請求項24~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
前記第3の中胚葉誘導培地が、1つ以上の分化因子を補充した既知組成栄養培地からなり、前記1つ以上の分化因子が、アクチビン、BMP、FGF、及びGSK3阻害剤からなる、請求項24~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記中胚葉細胞が、Brachury+、Goosecoid+、Mixl1+、KDR+、FoxA2+、GATA6+、及びPDGFαR+のうちの1つ以上を示す、請求項21~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
造血内皮(HE)分化を促進する好適な条件下で前記中胚葉細胞の集団を培養することにより、前記中胚葉細胞をHECに分化させる、請求項21~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記中胚葉細胞が、HECへの分化を誘導するためにHE誘導培地で培養される、請求項21~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記HE誘導培地が、(i)KIT(KITがん原遺伝子、受容体チロシンキナーゼ)媒介シグナル伝達経路を刺激し、かつ(ii)VEGFR媒介シグナル伝達経路を刺激する、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記HE誘導培地が、SCF及びVEGFを含む、請求項36または37に記載の方法。
【請求項39】
前記HE誘導培地が、1つ以上の分化因子を補充した既知組成栄養培地からなり、前記1つ以上の分化因子が、SCF及びVEGFからなる、請求項36~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
前記HPCが、リンパ系分化を促進する好適な条件下で前駆T細胞に分化する、請求項21~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記HPCの集団をリンパ系増大培地で培養して前記前駆T細胞を生成することを含む方法により、前記HPCを分化させる、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記前駆T細胞が、CD5+、CD7+表現型を有する、請求項40または請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記前駆T細胞を、T細胞の成熟を促進する好適な条件下でT細胞に成熟させる、請求項40~42のいずれか1項に記載の方法。
【請求項44】
前記前駆T細胞の集団をT細胞成熟培地で培養して前記二重陽性CD4
+CD8
+T細胞を生成することを含む方法により、前記前駆T細胞を成熟させる、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記二重陽性CD4
+CD8
+T細胞及び/または前記単一陽性CD4
+T細胞もしくは前記単一陽性CD8
+T細胞を単離または精製することを更に含む、請求項21~44のいずれか1項に記載の方法。
【請求項46】
T細胞の集団であって、T細胞受容体をコードする少なくとも1つの異種核酸を前記集団内の前記T細胞のゲノム内の遺伝子座にまたはその中に含み、前記遺伝子座が、真核生物翻訳伸長因子1アルファ1(EEF1A1)遺伝子である、前記集団。
【請求項47】
請求項1~45のいずれか1項に記載の方法により生成された、T細胞の集団。
【請求項48】
前記T細胞が、異種T細胞受容体を発現する、請求項47に記載の集団。
【請求項49】
前記T細胞が、RAG不活化されており、かつ内因性TCRを発現しない、請求項46~48のいずれか1項に記載の集団。
【請求項50】
iPSCの集団であって、T細胞受容体をコードする少なくとも1つの異種核酸を細胞ゲノム内の遺伝子座にまたはその中に含み、前記遺伝子座が、真核生物翻訳伸長因子1アルファ1(EEF1A1)遺伝子である、前記集団。
【請求項51】
請求項46~50のいずれか1項に記載のT細胞の集団と、薬学的に許容される賦形剤と、を含む、医薬組成物。
【請求項52】
治療方法に使用するための、請求項46~50のいずれか1項に記載のT細胞の集団。
【請求項53】
がんの治療方法に使用するための、請求項46~50のいずれか1項に記載のT細胞の集団。
【請求項54】
請求項46~50のいずれか1項に記載のT細胞の集団を、それを必要とする個体に投与することを含む、がんの治療方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細胞ゲノム内に組み込まれた異種T細胞受容体(TCR)をコードする少なくとも1つの異種核酸配列を含む、改変人工多能性幹細胞(iPSC)または造血系統細胞及びその使用を提供する。
【背景技術】
【0002】
養子T細胞療法は、がん治療のための重要な治療的介入として広く認識されている。現在のアプローチの大部分は、自家由来または患者由来のT細胞を使用している。これらには、CAR(キメラ抗原受容体)または親和性増強TCR(T細胞受容体)を発現するようにウイルスにより形質導入されたTIL(腫瘍浸潤リンパ球)またはT細胞が含まれる。
【0003】
自己療法の欠点の1つは、その製造に伴う複雑さである。代替となる「既製」のアプローチは、健常ドナー由来のT細胞またはヒト人工多能性幹細胞(hiPSC)から分化したT細胞などの同種供給源から、操作されたT細胞を生成することである。更に、患者は、自身のリンパ球を収集するためのアフェレーシスのスロットと、T細胞生成物が作られるまでの製造時間とを待つ必要があり、更に、患者はまたT細胞機能障害に罹患するおそれがあるか、または複数ラインの従来の化学療法を受け、自身のリンパ球の数及び機能が損なわれているおそれがあり、その結果、製造に利用可能な細胞の数または機能性が最初は低くなる。
【0004】
同種アプローチは、応答の改善を伴う、より機能的かつ強力な抗がん能と関連付けられたT細胞の表現型についてスクリーニングすることができる、均一な細胞生成物のより容易に利用可能な供給源を提供し得ることから、特に有利である。手短に述べると、患者ごとに変動しない、より規定されたT細胞表現型を用いることで、患者はより迅速に治療を受けることになる。遺伝子編集は、最も侵襲性及び抵抗性の高い疾患を有するはるかに幅広い患者群に対し、標準化された高品質のT細胞生成物に関するT細胞療法への迅速なアクセスを低コストで提供し得ることが予想される。
【0005】
αβTCRを使用するあらゆる同種T細胞生成物には、クローンT細胞集団の生成が必須となる。このことは、移植片対宿主病(GvHD)のリスクを軽減するために必要である。iPSC由来のT細胞は一般にiT細胞と称される。規定のαβTCRの発現が制限されたiT細胞は、特定のTCRをコードするレンチウイルスベクターで形質導入されたhiPSCのクローンから成功裏に生成された[Minagawa,A.,et al.,Enhancing T Cell Receptor Stability in Rejuvenated iPSC-Derived T Cells Improves Their Use in Cancer Immunotherapy.Cell Stem Cell,2018.23(6):p.850-858 e4]。関連研究により、分化iT細胞におけるαβTCR発現の制限がTCRのアレル排除によって駆動され、これが内因性TCR遺伝子の誤った再編成を防止することが示唆されている。しかしながら、プロモーターサイレンシング現象に起因して、レンチウイルス形質導入は、hiPSC及び分化細胞における安定した導入遺伝子発現を促進するには非効率的な方法である[Zou,J.,et al.,Oxidase-deficient neutrophils from X-linked chronic granulomatous disease iPS cells:functional correction by zinc finger nuclease-mediated safe harbor targeting.Blood,2011.117(21):p.5561-72]。加えて、T細胞を発現する組換え異種T細胞受容体に由来するTiPSCの開発には、当初のT細胞材料中に存在する天然TCRの発現を防止するための追加の介入が必要となる。
【0006】
代替的アプローチは、分化iT細胞における内因性TCRの発現を防止するようにhiPSCを遺伝子操作することである。これは、異種T細胞受容体ノックインと併せて、両方のアレルの複数の遺伝子、例えば、TCR定常ドメイン(TRBC1/2及びTRAC)または場合によってはTCR遺伝子再編成に関与する遺伝子(例えばRAG1/2)の不活化を必要とするため、困難なアプローチである。しかしながら、分化iT細胞においてTCR発現を可能にするであろう標的とすべき遺伝子座を突き止めることは困難であり、予測不能である。
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、組換え異種T細胞受容体配列の標的挿入により、分化iT細胞における発現が、最小限の編集戦略を使用して可能になることを実証した。本発明の態様は、番号を付した以下の記載に提供される。
【0008】
1.細胞ゲノム内の遺伝子座にまたはその中に組み込まれた異種T細胞受容体(TCR)をコードする少なくとも1つの異種核酸配列を含む、改変iPSCまたは造血系統細胞。
【0009】
記載1の態様の好ましい実施形態では、ゲノム内の遺伝子座は、伸長因子複合体のメンバー、好ましくは翻訳伸長因子、好ましくは真核生物翻訳伸長因子1アルファ1(EEF1A1)をコードする遺伝子である。
【0010】
2.異種TCRをコードする前記少なくとも1つの異種核酸配列が、発現可能な異種核酸配列である、記載1に記載の改変iPSCまたは造血系統細胞。
【0011】
3.前記改変iPSCまたは造血系統細胞が、異種TCRをコードする核酸配列によってコードされた少なくとも1つの異種TCRを発現または提示し、好ましくは前記異種TCRが前記細胞表面に発現または提示される、記載1または記載2のいずれかに記載の改変iPSCまたは造血系統細胞。
【0012】
4.前記改変造血系統細胞が、前記改変iPSCに由来する、先行する記載のいずれかに記載の改変iPSCまたは造血系統細胞。
【0013】
5.前記造血系統細胞が、
(a)任意選択的に中胚葉マーカーBrachyury、Goosecoid、Mixl1、KDR(別称FLK1もしくはVEGFR2)、FoxA2、GATA6、またはPDGFアルファRのうちのいずれか1つ以上を発現し得る、中胚葉細胞、
(b)任意選択的に(a)CD34+、または(b)CD34+CD73-、または(c)CD34+CD73-CXCR4-(CD184-)であり得る、造血内皮細胞、
(c)任意選択的に(a)CD34+、あるいは(b)CD34+CD45+、あるいは(c)CD117+、CD133+、CD45+、FLK+、CD38-のうちのいずれか1つ以上と組み合わせたCD34+及び/またはCD45+、(d)CD34+、CD133+、CD45+、FLK1+、CD38-であり得る、造血前駆細胞、
(d)任意選択的に(a)CD5+及び/またはCD7+、あるいは(b)CD44+、CD25+、CD2+、CD45+、CD3-、CD4-、CD8-のうちのいずれか1つ以上と組み合わせたCD5+及び/またはCD7+であり得る、前駆T細胞、
(e)任意選択的に(a)CD4+CD8+、(b)CD3+、CD28+、CD45+のうちのいずれか1つ以上と組み合わせたCD4+CD8+であり得る、二重陽性T細胞(DP T細胞)、
(f)任意選択的に(a)CD4+、(b)CD8+、(c)CD3+、CD28+、CD45+のうちのいずれか1つ以上と組み合わせたCD4+またはCD8+であり得る、単一陽性T細胞(SP T細胞)、あるいは
(g)任意選択的にアルファベータT細胞、ガンマデルタT細胞、NKT細胞、CD4+であるヘルパーT細胞(TH)、CD8+である細胞傷害性T細胞(TC)である、成熟T細胞のいずれか1つから選択される、先行する記載のいずれかに記載の改変iPSCまたは造血系統細胞。
【0014】
6.異種TCRをコードする前記異種核酸配列が、前記細胞ゲノム内の前記遺伝子座の一方または両方のアレルにまたはその中に組み込まれている、先行する記載のいずれかに記載の改変iPSCまたは造血系統細胞。
【0015】
7.前記遺伝子座が、前記細胞の内因性タンパク質をコードする遺伝子である、記載6に記載の改変iPSCまたは造血系統細胞。
【0016】
8.異種TCRをコードする前記異種核酸配列が、前記内因性タンパク質をコードする前記遺伝子に隣接してまたはその中に組み込まれている、記載7に記載の改変iPSCまたは造血系統細胞。
【0017】
9.異種TCRをコードする前記異種核酸配列が、前記内因性タンパク質をコードする前記遺伝子のイントロンまたはエクソン、任意選択的に3’エクソン内に組み込まれている、記載7または8のいずれかに記載の改変iPSCまたは造血系統細胞。
【0018】
10.異種TCRをコードする前記異種核酸配列が、前記内因性タンパク質をコードする前記遺伝子または核酸配列のTAG終止配列前の3’エクソン内に組み込まれている、記載9に記載の改変iPSCまたは造血系統細胞。
【0019】
11.異種TCRをコードする前記異種核酸配列の組み込みが、前記内因性タンパク質の生成を妨害するものではない、記載7~10のいずれか1つに記載の改変iPSCまたは造血系統細胞。
【0020】
12.前記異種TCRをコードする核酸と前記内因性遺伝子をコードする核酸との間に融合配列を含む、好ましくは、前記異種TCRをコードする核酸と前記内因性タンパク質をコードする核酸との間に融合遺伝子もしくは配列またはマルチシストロン性融合遺伝子もしくは配列を含む、記載7~11のいずれか1つに記載の改変iPSCまたは造血系統細胞。
【0021】
13.前記異種TCRをコードする前記核酸が、酵素切断部位を含むペプチドをコードする核酸配列及び/またはリボソームスキッピングを媒介する核酸配列によって前記内因性タンパク質をコードする前記核酸に接続される、記載12に記載の改変iPSCまたは造血系統細胞。
【0022】
14.前記異種TCRをコードする前記核酸が、TCRα鎖及びTCRβ鎖のコード配列を、任意選択的に、酵素切断部位を含むペプチドをコードする介在核酸配列及び/またはリボソームスキッピングを媒介する核酸配列とともに含む、記載12または13のいずれかに記載の改変iPSCまたは造血系統細胞。
【0023】
15.前記リボソームスキッピングを媒介する前記核酸配列が、T2AまたはP2Aスキップ配列である、記載13または14のいずれかに記載の改変iPSCまたは造血系統細胞。
【0024】
16.前記酵素切断部位を含むペプチドをコードする核酸配列が、フューリン切断部位、好ましくはRAKRをコードする、記載13~15のいずれか1つに記載の改変iPSCまたは造血系統細胞。
【0025】
17.前記異種TCR及び前記内因性タンパク質の転写及び発現が、同じプロモーターに由来する、記載7~16のいずれか1つに記載の改変iPSCまたは造血系統細胞。
【0026】
18.前記異種TCRが、任意選択的に酵素切断部位、好ましくはフューリン切断部位、好ましくはRAKR、及び/またはリボソームスキップ配列、好ましくはT2AもしくはP2Aスキップ配列を含むペプチドによって接続された、前記内因性タンパク質との融合タンパク質として発現される、記載7~17のいずれか1つに記載の改変iPSCまたは造血系統細胞。
【0027】
19.前記異種TCRが、TCRアルファ鎖及びTCRベータ鎖を含む新生異種TCRとして前記細胞内で発現及び/または提示され、好ましくは前記細胞表面で発現及び/または提示される、記載1~18のいずれか1つに記載の改変iPSCまたは造血系統細胞。
【0028】
20.前記内因性タンパク質が、伸長因子複合体のメンバー、好ましくは翻訳伸長因子、好ましくは真核生物翻訳伸長因子1アルファ1である、記載7~19のいずれか1つに記載の改変iPSCまたは造血系統細胞。
【0029】
21.前記内因性タンパク質が、伸長因子複合体のメンバー、好ましくは翻訳伸長因子、好ましくは真核生物翻訳伸長因子1アルファ1である、記載3~20のいずれか1つに記載の改変iPSCまたは造血系統細胞。
【0030】
22.前記遺伝子座が、伸長因子複合体のメンバー、好ましくは翻訳伸長因子、好ましくは真核生物翻訳伸長因子1アルファ1をコードする遺伝子であるかまたはその中にあり、任意選択的に、前記遺伝子座が、前記真核生物翻訳伸長因子1アルファ1(EEF1A1)遺伝子のエクソン8にあり、任意選択的に、TAG終止コドンの前に、あるいは前記TAG終止コドンに直接隣接して及び/または前記TAG終止コドンの前にある、先行する記載のいずれかに記載の改変iPSCまたは造血系統細胞。
【0031】
23.前記遺伝子座が、第6染色体上のEEF1A遺伝子であるかまたはその中にある、先行する記載のいずれかに記載の改変iPSCまたは造血系統細胞。
【0032】
24.前記組み込みが、前記EEF1A1遺伝子のエクソン8におけるもの、任意選択的に、前記TAG終止コドンの前におけるもの、あるいは前記TAG終止コドンに直接隣接したもの及び/または前記TAG終止コドンの前におけるものである、記載23に記載の改変iPSCまたは造血系統細胞。
【0033】
25.前記融合遺伝子もしくは配列またはマルチシストロン性融合遺伝子もしくは配列が、前記異種TCRをコードする前記核酸及びEEF1A1をコードする核酸を、酵素切断部位、好ましくはフューリン切断部位を含むペプチドをコードする介在核酸配列及び好ましくはT2AまたはP2Aスキップ配列から選択されるリボソームスキッピングを媒介する核酸配列とともに含み、前記異種TCRをコードする前記核酸配列が、前記TCRα鎖及びTCRβ鎖のコード配列を、酵素切断部位、好ましくはフューリン切断部位を含むペプチドをコードする介在核酸配列及び好ましくはT2AまたはP2Aスキップ配列から選択されるリボソームスキッピングを媒介する核酸配列とともに含む、記載12~24のいずれか1つに記載の改変iPSCまたは造血系統細胞。
【0034】
26.前記異種TCRが、
(a)がん抗原及び/または腫瘍抗原あるいはそのペプチド抗原、あるいは
(b)がん性状態に関連する及び/または腫瘍もしくはがん細胞もしくは組織によって提示される、がん抗原及び/または腫瘍抗原あるいはそのペプチド抗原
から選択される抗原またはそのペプチド抗原に結合するかまたは特異的に結合する、先行する記載のいずれかに記載の改変iPSCまたは造血系統細胞。
【0035】
27.前記がん抗原及び/または腫瘍抗原あるいはそのペプチド抗原が、
(a)がん精巣抗原、
(b)MAGE抗原、
(c)MAGE A4もしくはそのペプチド抗原、任意選択的に配列GVYDGREHTV(配列番号2)を含むペプチド抗原、または
(d)AFPもしくはそのペプチド抗原、任意選択的に配列FMNKFIYEI(配列番号21)を含むペプチド抗原
から選択される、記載26に記載の改変iPSCまたは造血系統細胞。
【0036】
28.前記がん抗原及び/または腫瘍抗原あるいはそのペプチド抗原が、ペプチド提示分子、任意選択的に主要組織適合複合体(MHC)またはヒト白血球抗原(HLA)、任意選択的にクラスIまたはクラスII、任意選択的にHLA-A2、またはHLA-A*02、またはHLA-A*0201と複合体を形成している、記載26または27のいずれか1つに記載の改変iPSCまたは造血系統細胞。
【0037】
29.前記異種TCRが、
(a)配列番号9もしくは配列番号6のアミノ酸残基1~136の配列に対する少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むアルファ鎖可変ドメイン、及び/または配列番号10もしくは配列番号7のアミノ酸残基1~133の配列に対する少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むベータ鎖可変ドメイン、あるいは
(b)配列番号22のアミノ酸残基1~112の配列に対する少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むアルファ鎖可変ドメイン、及び/または配列番号23のアミノ酸残基1~112の配列に対する少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むベータ鎖可変ドメイン
を有するTCRを含む、先行する記載のいずれかに記載の改変iPSCまたは造血系統細胞。
【0038】
30.前記iPSCまたは造血系統細胞が、更に、異種補助受容体をコードする核酸を含み、及び/または前記異種補助受容体を発現もしくは提示し、任意選択的に、前記補助受容体がCD8補助受容体である、先行する記載のいずれかに記載の改変iPSCまたは造血系統細胞。
【0039】
31.前記異種CD8補助受容体が、ヘテロ二量体またはホモ二量体、CD8αbヘテロ二量体またはCD8ααホモ二量体である、記載30に記載の改変iPSCまたは造血系統細胞。
【0040】
32.前記異種CD8補助受容体が、
(a)アミノ酸配列VLLSNPTSG(配列番号17)に対して少なくとも80%の配列同一性であるCDR1、アミノ酸配列YLSQNKPK(配列番号18)に対して少なくとも80%の配列同一性であるCDR2、及びアミノ酸配列LSNSIM(配列番号19)に対して少なくとも80%の配列同一性であるCDR3、または
(b)配列番号19のアミノ酸番号22~235に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列
を含む、記載30または31のいずれか1つに記載の改変iPSCまたは造血系統細胞。
【0041】
33.前記iPSCまたは造血系統細胞が、更に、異種共刺激リガンド(任意選択的に4-1BBLもしくはCD80)をコードする核酸を含み、及び/または異種共刺激リガンド(任意選択的に4-1BBLもしくはCD80)を発現もしくは提示する、先行する記載のいずれかに記載の改変iPSCまたは造血系統細胞。
【0042】
34.前記iPSCまたは造血系統細胞及び/または前記異種TCRの、前記がん抗原及び/または腫瘍抗原あるいはそのペプチド抗原、あるいは記載26~28のいずれかに記載のがん抗原及び/または腫瘍抗原あるいはそのペプチド抗原を発現または提示するがん及び/または腫瘍細胞または組織への結合が、任意選択的に、
(a)T細胞活性化マーカー、例えばCD3+細胞上のCD69及び/またはCD25のいずれかのアップレギュレーション、
(b)サイトカイン産生、例えば、IFNガンマ、IL-2、またはグランザイムBのうちのいずれか1つ以上のアップレギュレーション、
(c)前記抗原または抗原ペプチドの存在下における細胞傷害活性の誘導、あるいは
(d)前記抗原または抗原ペプチドを提示する腫瘍細胞を殺傷する能力、
のうちのいずれか1つ以上によって決定される前記iPSCまたは造血系統細胞の活性化を誘導する、記載1~33のいずれか1つに記載の改変iPSCまたは造血系統細胞。
【0043】
35.先行する記載のいずれかに記載の異種TCRをコードする核酸領域と、前記異種TCRをコードする前記核酸領域を組み込むための前記細胞ゲノム内の前記遺伝子座にある核酸領域に相同な核酸領域を含む少なくとも1つの相同領域と、を含む、核酸コンストラクトまたはベクター。
【0044】
36.前記遺伝子座が、伸長因子複合体のメンバー、好ましくは翻訳伸長因子、好ましくは真核生物翻訳伸長因子1アルファ1をコードする遺伝子であるかまたはその中にあり、任意選択的に、前記遺伝子座が、前記真核生物翻訳伸長因子1アルファ1(EEF1A1)遺伝子のエクソン8にあり、任意選択的に、TAG終止コドンの前に、あるいは前記TAG終止コドンに直接隣接して及び/または前記TAG終止コドンの前にある、記載35に記載の核酸コンストラクトまたはベクター。
【0045】
37.前記遺伝子座が、第6染色体上の前記EEF1A1遺伝子であるかまたはその中にある、記載35または36のいずれかに記載の核酸コンストラクトまたはベクター。
【0046】
38.前記遺伝子座が、前記EEF1A1遺伝子のエクソン8にあり、任意選択的に、前記TAG終止コドンの前に、あるいは前記TAG終止コドンに直接隣接して及び/または前記TAG終止コドンの前にある、記載35~37のいずれか1つに記載の核酸コンストラクトまたはベクター。
【0047】
39.前記異種TCRをコードする核酸が、TCRα鎖及びTCRβ鎖のコード配列を、任意選択的に、酵素切断部位を含むペプチドをコードする介在核酸配列、及び/またはリボソームスキッピングを媒介する核酸配列、好ましくはフューリン切断部位、好ましくはRAKR、及び/またはリボソームスキップ配列、好ましくはT2AもしくはP2Aスキップ配列とともに含む、記載35~38のいずれか1つに記載の核酸コンストラクトまたはベクター。
【0048】
40.前記コンストラクトまたはベクターが、前記異種TCRをコードする核酸領域を組み込むための前記細胞ゲノム内の前記遺伝子座にある前記核酸領域にそれぞれ相同でありかつ組み込み部位の反対側に隣接する、左側及び右側相同領域を含む、記載35~39のいずれか1つに記載の核酸コンストラクトまたはベクター。
【0049】
41.前記コンストラクトまたはベクターが、
(a)組換え標的配列、好ましくはloxP(X-over P1の遺伝子座)配列、例えば配列番号48の配列、
(b)発現可能な選択マーカー配列、好ましくは抗生物質耐性遺伝子、任意選択的にネオマイシン耐性遺伝子、好ましくは、プロモーター、例えばEF1Aプロモーターから構成的に発現されるもの、例えば配列番号47の配列、のいずれか1つ以上を更に含む、記載35~40のいずれか1つに記載の核酸コンストラクトまたはベクター。
【0050】
42.前記コンストラクトまたはベクターが、配列番号45の配列を含む前記異種TCR、配列番号43及び配列番号44の配列を含む相同領域、配列番号48を含む組換え標的配列、ならびに配列番号47及び配列番号49を含む発現可能な選択マーカー配列、をコードするヌクレオチド配列を含む、記載35~41のいずれか1つに記載の核酸コンストラクトまたはベクター。
【0051】
43.記載35~42のいずれか1つに記載の核酸コンストラクトまたはベクターを、未改変iPSCまたは造血系統細胞(任意選択的に記載5で定義されたとおりのもの)に、前記細胞ゲノム内の遺伝子座にまたはその中に前記異種T細胞受容体(TCR)をコードする核酸配列の組み込みを可能にする条件下で導入すること、及び任意選択的に、前記改変iPSCまたは造血系統細胞を単離すること、を含む、記載1~34のいずれか1つに記載の改変iPSCまたは造血系統細胞を生成するプロセス。
【0052】
44.記載1~34のいずれか1つに記載の改変iPSCまたは造血系統細胞と、薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【0053】
45.療法及び/または医療に使用するための、記載1~34のいずれか1つに記載の改変iPSCもしくは造血系統細胞、または記載44に記載の医薬組成物。
【0054】
46.個体または対象におけるがん及び/または腫瘍の治療、予防、または進行の遅延に使用するための、記載1~34のいずれか1つに記載の改変iPSCもしくは造血系統細胞または記載44に記載の医薬組成物であって、任意選択的に、前記治療ががん免疫療法療法及び/または養子T細胞療法、任意選択的に同種養子T細胞療法である、前記改変iPSCもしくは造血系統細胞または前記医薬組成物。
【0055】
45.個体または対象におけるがん及び/または腫瘍を治療するための医薬を製造する際の、記載1~34のいずれか1つに記載の改変iPSCもしくは造血系統細胞または記載44に記載の医薬組成物の使用であって、任意選択的に、前記治療ががん免疫療法療法及び/または養子T細胞療法、任意選択的に同種養子T細胞療法である、前記使用。
【0056】
46.個体または対象におけるがん及び/または腫瘍を治療する、予防する、またはその進行を遅延させる方法であって、記載1~34のいずれか1つに記載の改変iPSCもしくは造血系統細胞または記載44に記載の医薬組成物を前記個体に投与することを含み、任意選択的に、前記治療ががん免疫療法療法及び/または養子T細胞療法、任意選択的に同種養子T細胞療法である、前記方法。
【0057】
47.前記がん及び/または腫瘍が固形腫瘍である、記載45に記載の使用または記載46の方法における使用のための、記載1~34のいずれか1つに記載の改変iPSCもしくは造血系統細胞または記載44に記載の医薬組成物。
【0058】
48.前記改変iPSCもしくは造血系統細胞または医薬組成物が、任意選択的に別々に、連続的に、または同時に投与されるかまたは投与するための、1つ以上の更なる治療剤と組み合わせて使用するためのものであるか、または組み合わせて使用される、記載45に記載の使用または記載46の方法における使用のための、記載1~34のいずれか1つに記載の改変iPSCもしくは造血系統細胞または記載44に記載の医薬組成物。
【0059】
49.(a)個体または対象におけるがん及び/または腫瘍を治療する、予防する、またはその進行を遅延させるための、記載1~34のいずれか1つに記載の改変iPSCもしくは造血系統細胞または記載44に記載の医薬組成物、及びその使用説明書を含む添付文書、あるいは
(b)任意選択的に別々に、連続的に、または同時に投与されるかまたは投与するための、1つ以上の更なる治療剤と組み合わせた、個体または対象におけるがん及び/または腫瘍を治療する、予防する、またはその進行を遅延させるための、記載1~34のいずれか1つに記載の改変iPSCもしくは造血系統細胞または記載44に記載の医薬組成物、及びその使用説明書を含む添付文書、を含む、キット。
【0060】
記載1~49のいずれか1つの態様のいくつかの好ましい実施形態では、改変iPSCまたは造血系統細胞は、T細胞、例えばDP T細胞、SP T細胞または成熟T細胞である。
【0061】
50.T細胞の集団を生成する方法であって、
(i)T細胞受容体をコードする異種核酸をiPSCの集団の細胞ゲノム内の遺伝子座にまたはその中に導入すること、及び
(iii)前記iPSCの集団をT細胞に分化させること、を含む、前記方法。
【0062】
記載50の態様の好ましい実施形態では、ゲノム内の遺伝子座は、伸長因子複合体のメンバー、好ましくは翻訳伸長因子、好ましくは真核生物翻訳伸長因子1アルファ1(EEF1A1)をコードする遺伝子である。
【0063】
本発明の他の態様及び実施形態については、以下でより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【
図1】EEF1aの染色体上の位置。ヒトEEF1aは第6染色体上に位置し、8つのエクソンで構成される。
【
図2】ADP A2M4ノックイン戦略及びPCRスクリーニング戦略。標的化戦略は、ADP A2M4 SPEARをEEF1a1にノックインするように設計した。編集はAAVで実施した。rAAV修復鋳型内の相同アームは、終止コドンの上流及び下流の500bpのゲノム配列に対応する。編集により、EEF1aとADP A2M4との間にマルチシストロン性融合物が作り出され、各ポリペプチドコード配列はフューリン切断部位(RAKR)及び2Aスキップペプチドで分離されている(EEF1A1_FuT2A_TCRα_FuP2A_TCRβ)。この設計により、単一の編集アレルから3つのポリペプチド全ての発現が可能になる。この耐性カセットは、EF1AプロモーターPCRスクリーニング戦略から構成的に発現されるLOXP隣接ピューロマイシン耐性遺伝子を含有する。編集クローンを、96ウェルプレートでの限界希釈により単離した。QuickExtract(商標)を使用してgDNAの試料を各クローンから単離した。相同アーム領域外及び導入遺伝子カセット内のプライマーを用いて、PCRによってクローンをスクリーニングした。LHA境界PCRを、プライマー1824及び1825を使用して実施した。RHA境界PCRをプライマー2294及び2295を用いて実施し、PCR産物を配列決定した。4つのクローン、すなわち5F4、5H4、3D10,及び4B11を分化へと進めた。
【
図3】iPSCクローンT1E8におけるRAG1ノックアウトの遺伝子型(B2M HSV-TK/HLA-E EEF1A1+/A2M4 RAG1-/-)。一方のアレルが単一ヌクレオチド欠失を含有するのに対し、2番目のアレルは13ヌクレオチドの欠失を含有する。両方の編集により、RAG1のコード配列にフレームシフトが生じる。編集の標的となる配列の領域を強調表示している。
【
図4】編集iPSCクローンから分化したiT細胞の表現型(第5段階):分化は編集の影響を受けない。編集クローンはADP A2M4 SPEARを発現する。細胞の表現型をFACSにより決定し、抗Vα24抗体及びADP A2M4 MAGE-4デキストラマーで染色することによりA2M4発現を測定した。ADP A2M4の発現を促進するには、単一アレルにおけるノックインで十分である。
【
図5】編集iPSCクローンから分化したiT細胞は特異的かつ強力な細胞溶解エフェクター機能を示す:iT細胞の細胞溶解機能をKILRアッセイで評価した。T2細胞を、MAGE-A4由来ペプチドGVYDGREHTVで濃度を漸減させながら(10-5M~10-11M)パルス処理し、編集クローンから分化させたiT細胞とともにインキュベートした。
【
図6】編集iPSCクローンから分化したEEF1α+/A2M4 iT細胞(クローン3E10)の表現型(第6段階):分化は編集の影響を受けない。編集クローンはADP A2M4 SPEARを発現する。細胞の表現型をFACSにより決定した。細胞は、編集クローンがCD8 T細胞に分化する能力を示す。ADP A2M4の発現を促進するには、単一アレルにおけるノックインで十分である。
【
図7】編集iPSCクローンから分化したRAG1-/-EEF1α+/A2M4 iT細胞(クローンT1E8)の表現型(第6段階):分化はRAG1の除去の影響を受けず、細胞はADP A2M4 SPEARを発現することができた。細胞の表現型をFACSにより決定した。細胞は、編集クローンがCD8 T細胞に分化する能力を示す。ADP A2M4の発現を促進するには、単一アレルにおけるノックインで十分である。
【
図8】時間分解した細胞傷害性アッセイにおけるEEF1α+/A2M4 iT細胞による標的細胞殺傷動態。左パネルは、EEF1α+/A2M4 iT細胞(c3E10)が、MAGE-A4由来ペプチドGVYDGREHTVの存在下または非存在下で、対照と比較してA375黒色腫(抗原陽性)標的細胞中でアポトーシスを誘導する能力が増加していることを示す。右パネルは、EEF1α+/A2M4 iT細胞(c3E10)が、MAGE-A4由来ペプチドGVYDGREHTVの存在下で、対照と比較してCOLO205(抗原陰性)標的細胞中でアポトーシスを誘導する能力が増加しているが、このペプチドの非存在下ではそうではないことを示す。
【
図9】時間分解した細胞傷害性アッセイにおけるRAG
-/-EEF1α
+/A2M4iT細胞による標的細胞殺傷動態。左パネルは、RAG
-/-EEF1α
+/A2M4iT細胞(T1E8)が、MAGE-A4由来ペプチドGVYDGREHTVの存在下または非存在下で、対照と比較してA375黒色腫(抗原陽性)標的細胞中でアポトーシスを誘導する能力が増加していることを示す。右パネルは、RAG
-/-EEF1α
+/A2M4iT細胞(T1E8)が、MAGE-A4由来ペプチドGVYDGREHTVの存在下で、対照と比較してCOLO205(抗原陰性)標的細胞中でアポトーシスを誘導する能力が増加しているが、このペプチドの非存在下ではそうではないことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0065】
本発明の態様及び実施形態を、添付図面を参照してここで考察する。
【0066】
本発明によれば、細胞ゲノム内の遺伝子座にまたはその中に組み込まれた異種T細胞受容体(TCR)をコードする少なくとも1つの異種核酸配列を含む、改変人工多能性幹細胞(iPSC)または造血系統細胞が提供される。
【0067】
異種TCRをコードする核酸配列を遺伝子座に組み込むことにより、異種TCRを発現する細胞を一貫して作製することができ、ランダム挿入によって作製される細胞と比較して、スクリーニングの必要性が低減する。
【0068】
細胞ゲノム内の遺伝子座は、伸長因子複合体のメンバーをコードする遺伝子であるかまたはその中にある。好ましくは、伸長因子複合体は、翻訳伸長因子、最も好ましくは真核生物翻訳伸長因子1アルファ1(EEF1A1)である。いくつかの特に好ましい実施形態では、遺伝子座は、真核生物翻訳伸長因子1アルファ1(EEF1A1)遺伝子のエクソン8にあり、任意選択的に、TAG終止コドンの前に、あるいはTAG終止コドンに直接隣接して及び/またはTAG終止コドンの前にある。エクソン8は、ヒトEEF1A1遺伝子の最後のエクソンであり、TGA終止コドンの前に40個の完全コドンを含む。いくつかの実施形態では、組み込み(挿入)遺伝子座は、EEF1A1遺伝子の最後の非終止コドンと終止コドンとの間にあり得る。他の実施形態では、組み込み遺伝子座は、エクソン8内の非終止コドンのうちの1つの内部に、またはエクソン8内の2つの隣接する非終止コドンの間にあり得る。そのような組み込みは、転写されたmRNAから下流の内因性コドンの欠失をもたらし得る。但し、欠失した配列が短い場合(例えば1~10個の非終止コドン)、C末端断片のそのような短い欠失は、EEF1A1タンパク質の活性に影響を及ぼさない場合がある。いくつかの実施形態では、欠失した非終止コドン(完全または部分的のいずれであるかを問わない)は、挿入された異種核酸のN末端に含まれ得るため、非終止コドンは転写物にインフレームで含まれる。
【0069】
他の実施形態では、トランケート型EEF1A1転写物が、欠失部分を含むように設計された挿入された異種核酸とともに機能的なEEF1A1タンパク質を合わせて発現する限り、組み込み遺伝子座は、EEF1A1遺伝子の上流エクソン、例えば、エクソン7、エクソン6、エクソン5、エクソン4、エクソン3、エクソン2、またはエクソン1のうちの1つにあり得る。
【0070】
EEF1A1遺伝子座での組み込みが、異種核酸配列によってコードされる異種TCRの一貫した高レベルの発現をもたらすことが本明細書で示される。
【0071】
伸長因子複合体のメンバーの他の例としては、例えば、EEF1A2(伸長因子1-アルファ2;ヒト遺伝子のEntrez遺伝子ID:1917)、EEF1A1P43(真核生物翻訳伸長因子1アルファ1偽遺伝子43;ヒト遺伝子のEntrez遺伝子ID:1918)、EEF1B2(伸長因子1-ベータ;ヒト遺伝子のEntrez遺伝子ID:1933)、EEF1B2P1(真核生物翻訳伸長因子1ベータ2偽遺伝子1;ヒト遺伝子のEntrez遺伝子ID:1932)、eEF1B1(真核生物翻訳伸長因子1ベータ2偽遺伝子1;ヒト遺伝子のEntrez遺伝子ID:1932)、EEF1B2P2(真核生物翻訳伸長因子1ベータ2偽遺伝子2;ヒト遺伝子のEntrez遺伝子ID:1934)、EEF1B2P3(真核生物翻訳伸長因子1ベータ2偽遺伝子3;ヒト遺伝子のEntrez遺伝子ID:644820)、EEF1G(伸長因子1-ガンマ;ヒト遺伝子のEntrez遺伝子ID:1937)、EEF1D(伸長因子1-デルタ;ヒト遺伝子のEntrez遺伝子ID:1936)、EEF1E1(真核生物翻訳伸長因子1イプシロン-1;ヒト遺伝子のEntrez遺伝子ID:9521)、VARS(バリル-tRNA合成酵素;ヒト遺伝子のEntrez遺伝子ID:7407)、EEF2(真核生物伸長因子2;ヒト遺伝子のEntrez遺伝子ID:1938)、及びEIF5A(真核生物翻訳開始因子5A-1;ヒト遺伝子のEntrez遺伝子ID:1984)が挙げられる。
【0072】
いくつかの実施形態では、組み込み遺伝子座は、最後のエクソン、例えば、最後の非終止コドンと終止コドンとの間にあり、あるいは上で説明したように、組み込み遺伝子座は、好ましくはその遺伝子座での遺伝子の発現及び活性を妨げずに、最後のエクソン内のより上流にあり得るか、または上流エクソンにあり得る。
【0073】
異種TCRをコードする核酸配列を遺伝子座に組み込むことにより、伸長因子複合体のメンバーをコードする核酸配列と異種TCRをコードする核酸配列とを含むマルチシストロン性融合物を作製することができる。マルチシストロン性融合物は、伸長因子複合体のメンバー及び異種TCRのマルチシストロン性融合物からの発現を可能にする1つ以上の更なる核酸配列を含み得る。例えば、マルチシストロン性融合物は、酵素切断部位をコードする核酸配列及び/またはリボソームスキッピングを媒介する核酸配列を1つ以上含み得る。
【0074】
異種TCRをコードする少なくとも1つの異種核酸配列は、発現可能な異種核酸配列であり得る。例えば、異種核酸配列は、1つ以上のコーディング遺伝子または1つ以上のコーディングオープンリーディングフレーム及び/または細胞内での1つ以上のコーディング遺伝子または1つ以上のコーディングオープンリーディングフレームの発現を可能にすること及び/または調節することができる1つ以上の調節核酸配列を含み得る。好適な調節核酸配列には、コーディング遺伝子(複数可)またはオープンリーディングフレームの転写及び/または転写後修飾及び/または翻訳を可能にする配列が含まれる。好適な調節配列は、転写または翻訳開始、停止、または終結配列、オペレーター配列、プロモーター配列、エンハンサー配列、末端反復、リボソーム結合部位、キャップ配列、及びポリAテール配列のいずれかを含み得る。
【0075】
本明細書に記載される技術は、異種/外因性TCRを発現する細胞の生成に限定されず、キメラ抗原受容体(CAR)などの他の治療用タンパク質を発現する細胞の生成に適合され得る。CARを発現するT細胞は、一般にCAR-T細胞と称される。CARを発現するナチュラルキラー(NK)細胞は、一般にCAR-NK細胞と称される。CARを発現するマクロファージは、一般にCAR-マクロファージと称される。記載されているように、1つ以上のプロテアーゼ切断部位(複数可)とCAR分子とを含む融合タンパク質をコードする異種核酸を、iPSCなどの標的細胞に組み込むことができ、次いで標的免疫細胞に分化させることができる。あるいは、組み込みは、免疫細胞で直接行うことができる。
【0076】
「改変iPSCまたは造血系統細胞」という用語は、本明細書では、EEF1A1遺伝子座に異種核酸を導入するように改変された、分化の任意の段階にある細胞を説明するために使用され得る。例えば、改変iPSCまたは造血系統細胞は、iPSC、中胚葉細胞、造血内皮細胞、造血前駆細胞、前駆T細胞、二重陽性T細胞(DP T細胞)、単一陽性T細胞(SP T細胞)、及び成熟T細胞からなる群から選択される細胞であり得る。好ましくは、本発明による改変iPSCまたは造血系統細胞、例えばT細胞は、異種TCRをコードする配列によってコードされた少なくとも1つの異種TCRを発現または提示し、好ましくは異種TCRは細胞表面に発現または提示される。好ましくは、少なくとも1つの異種TCRは、膜結合型機能的TCR、好ましくは膜固定型ヘテロ二量体TCRタンパク質、好ましくはアルファ:ベータTCR(任意選択的にガンマ:デルタ)として細胞表面に提示され、好ましくは可変アルファ(α)鎖及びベータ(β)鎖を含み、好ましくはインバリアントCD3鎖分子との複合体として発現される。好ましくは、少なくとも1つの異種TCRは、がん抗原及び/または腫瘍抗原またはそのペプチドに、及び/または腫瘍細胞及び/またはがん細胞(例えば、がん抗原及び/または腫瘍抗原またはそのペプチドを発現するもの)に、及び/またはそれらに由来するペプチドもしくは抗原性ペプチドに、結合するまたは特異的に結合することができる。好ましくは、TCRの結合は、本明細書に記載される改変iPSCまたは造血系統細胞、好ましくはT細胞の活性化、及び/または本明細書に記載されるT細胞活性の活性化を促進する。
【0077】
本発明によれば、改変造血系統細胞、好ましくはT細胞は、改変iPSCに由来し得る。例えば、細胞ゲノム内の遺伝子座にまたはその中に組み込まれた異種T細胞受容体(TCR)をコードする少なくとも1つの異種核酸配列を含むように未改変iPSCを改変または操作して(例えば、組換え操作して)、例えば、後に改変造血系統細胞に分化し得る改変人工多能性幹細胞を生成することができる。あるいは、未改変造血系統細胞は、例えば分化プロセスによって未改変iPSCから得てもよく、次いで、細胞ゲノム内の遺伝子座にまたはその中に組み込まれた異種T細胞受容体(TCR)をコードする少なくとも1つの異種核酸配列を含むように改変または操作してもよい。
【0078】
「iPSCもしくは造血系統細胞」または「改変iPSCもしくは造血系統細胞」は、以下のいずれか1つから選択され得る:
(a)任意選択的に中胚葉マーカーBrachyury、Goosecoid、Mixl1、KDR(別称FLK1もしくはVEGFR2)、FoxA2、GATA6、またはPDGFアルファRのうちのいずれか1つ以上を発現し得る、中胚葉細胞、
(b)任意選択的に(a)CD34+、または(b)CD34+CD73-、または(c)CD34+CD73-CXCR4-(CD184-)であり得る、造血内皮細胞、
(c)任意選択的に(a)CD34+、あるいは(b)CD34+CD45+、あるいは(c)CD117+、CD133+、CD45+、FLK+、CD38-のうちのいずれか1つ以上と組み合わせたCD34+及び/またはCD45+、(d)CD34+、CD133+、CD45+、FLK1+、CD38-であり得る、造血前駆細胞、
(d)任意選択的に(a)CD5+及び/またはCD7+、あるいは(b)CD44+、CD25+、CD2+、CD45+、CD3-、CD4-、CD8-のうちのいずれか1つ以上と組み合わせたCD5+及び/またはCD7+であり得る、前駆T細胞、
(e)任意選択的に(a)CD4+CD8+、(b)CD3+、CD28+、CD45+のうちのいずれか1つ以上と組み合わせたCD4+CD8+であり得る、二重陽性T細胞(DP T細胞)、
(f)任意選択的に(a)CD4+、(b)CD8+、(b)CD3+、CD28+、CD45+のうちのいずれか1つ以上と組み合わせたCD4+またはCD8+であり得る、単一陽性T細胞(SP T細胞)、
(g)任意選択的にアルファベータT細胞、ガンマデルタT細胞、NKT細胞、CD4+であるヘルパーT細胞(TH)、CD8+である細胞傷害性T細胞(TC)である、成熟T細胞、あるいは
(h)任意選択的にヒトiPSCに由来するかまたはCD34+前駆細胞から作り出され、任意選択的に臍帯血から単離され、更に任意選択的にpEB-C5及びpEB-TGエピソームプラスミドを使用する、iPSC。
【0079】
したがって、iPSCは、好ましくはCD34+前駆細胞に由来するかまたはそれから作り出され、任意選択的に好ましくは臍帯血から単離され、更に任意選択的にpEB-C5及び/またはpEB-TGエピソームプラスミドを使用して単離される、ヒトiPSCである。
【0080】
本発明のいくつかの実施形態では、iPSCは、例えばRAG1及び/またはRAG2遺伝子の不活化またはノックアウトによって、RAG1及び/またはRAG2の発現を低減または消失させるように改変され得る。RAG1及びRAG2のノックアウトは、フレームシフトまたは終止コドンなどの好適な不活化変異を導入するCRISPR-Cas9を含む任意の好適な遺伝子編集技法によって達成され得る。
【0081】
改変多能性幹細胞iPSCまたは造血系統細胞は、T細胞、ナチュラルキラーT(NKT)細胞、及びそれらの前駆体(胚性幹細胞を含む)などのリンパ系統の細胞、ならびに多能性幹細胞(例えば、リンパ系細胞に分化し得る細胞)であり得る。T細胞は、胸腺で成熟し、細胞性免疫を主に担い、また適応免疫系にも関与するリンパ球であり得る。本発明によれば、T細胞には、ヘルパーT細胞、細胞傷害性T細胞、メモリーT細胞(セントラルメモリーT細胞、幹細胞様メモリーT細胞(または幹様メモリーT細胞)を含む)、ならびに2種類のエフェクターメモリーT細胞、例えば、TEM細胞及びTEMRA細胞、制御性T細胞(別称サプレッサーT細胞)、ナチュラルキラーT細胞、粘膜関連インバリアントT細胞、ならびにガンマ-デルタT細胞が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0082】
細胞傷害性T細胞(CTLまたはキラーT細胞)は、感染した体細胞または腫瘍細胞の死を誘導することができるTリンパ球のサブセットである。好ましくは、T細胞は、任意選択的にCD4+T細胞もしくはCD8+T細胞、またはそのようなT細胞、任意選択的にCD4+T細胞もしくはCD8+T細胞の集団、またはCD4+T細胞とCD8+T細胞との混合集団である。
【0083】
異種TCRをコードする異種核酸配列は、細胞ゲノム(すなわちiPSCまたは造血系統細胞のゲノム)内の遺伝子座にまたはその中に組み込まれ得る。遺伝子座は、例えば特定の遺伝子または遺伝子マーカーが位置している、染色体上の特定位置及び/または固定位置であり得、遺伝子座は、遺伝子または遺伝子マーカーまたは遺伝子エレメントの特定位置及び/または固定位置、及び/または遺伝子もしくは遺伝子の遺伝子エレメント内の特定の固定位置、例えば、遺伝子のイントロンもしくはエクソンまたは遺伝子の調節エレメントなど(例えば、転写もしくは翻訳開始、停止、もしくは終結配列、オペレーター配列、プロモーター配列、エンハンサー配列、末端反復、リボソーム結合部位、キャップ配列、ポリAテール配列)であり得る。
【0084】
異種TCRをコードする異種核酸配列は、細胞ゲノム内の遺伝子座の一方または両方のアレルにまたはその中に組み込まれ得る。例えば、遺伝子座が、遺伝子または内因性遺伝子、または染色体上の特定位置及び/または固定位置、及び/またはiPSCまたは造血系統細胞の特定の遺伝子または内因性遺伝子が位置する位置である場合、異種TCRをコードする異種核酸配列は、遺伝子座のいずれか一方または両方のアレルに組み込まれ得る。
【0085】
したがって、遺伝子座は、細胞またはiPSCまたは造血系統細胞の内因性タンパク質をコードする遺伝子であり得るか、またはその遺伝子内にあり得る。
【0086】
異種TCRをコードする異種核酸配列は、細胞またはiPSCまたは造血系統細胞の内因性タンパク質をコードする遺伝子に隣接して組み込まれ得るかまたはその中に組み込まれ得る。任意選択的に、異種TCRをコードする異種核酸配列は、細胞またはiPSCまたは造血系統細胞の内因性タンパク質をコードする遺伝子または核酸配列のイントロンまたはエクソン、任意選択的に5’エクソンまたは3’エクソン、好ましくは3’エクソン内に組み込まれ得る。
【0087】
異種TCRをコードする異種核酸配列は、内因性タンパク質をコードする遺伝子のTAG終止配列前の3’エクソン内に組み込まれ得る。好ましくは、異種TCRをコードする異種核酸配列の組み込みは、内因性タンパク質の生成を妨害するものではない。例えば、改変細胞による内因性タンパク質の生成は、天然タンパク質と同等に翻訳及び/または生成及び/またはプロセシングされ得る内因性タンパク質配列の全てまたは実質的に全てを提供すべきである。例えば、内因性タンパク質をコードする遺伝子は尚も、転写及び/または転写後プロセシング及び/または翻訳を行って、任意選択的に細胞内で翻訳後にプロセシング及び/または輸送され得る、内因性タンパク質配列または実質的に全ての内因性タンパク質配列を生成することができる。好ましくは、異種TCRをコードする異種核酸配列の組み込みは、内因性タンパク質をコードする遺伝子の欠失または置換、及び/または生成された内因性タンパク質の欠失及び/または不活化を生じさせず、組み込みは、任意選択的に融合遺伝子が生じる及び/または遺伝子産物が融合タンパク質として生成されるように、異種TCRをコードする異種核酸配列と内因性タンパク質をコードする核酸配列または遺伝子との連結を生じさせ得る。
【0088】
改変iPSCまたは造血系統細胞は、異種TCRをコードする核酸と内因性タンパク質をコードする核酸との間の融合配列、例えば、異種TCRをコードする核酸の組み込みによって作製されたもの、例えば、異種TCRをコードする核酸と内因性タンパク質をコードする核酸との間の融合遺伝子もしくは配列またはマルチシストロン性融合遺伝子もしくは配列を含み得、例えば、異種TCRの発現は、内因性タンパク質の発現に関連付けられており、及び/または異種TCRは、遺伝子座にある遺伝子の遺伝子産物、例えば内因性遺伝子をコードする核酸と、共転写及び/または共翻訳及び/または共発現され得る。
【0089】
したがって、本発明は、異種TCRをコードする核酸が、酵素切断部位を含むペプチドをコードする核酸配列及び/またはリボソームスキッピングを媒介する核酸配列によって内因性タンパク質をコードする核酸に接続され得る、改変iPSCまたは造血系統細胞を提供する。
【0090】
したがって、本発明は、異種TCRをコードする核酸が、酵素切断部位を含むペプチドをコードする少なくとも1つの、任意選択的に2つの核酸配列、及び/またはリボソームスキッピングを媒介する少なくとも1つの、任意選択的に2つの核酸配列によって内因性タンパク質をコードする核酸に接続され得る、改変iPSCまたは造血系統細胞を提供する。リボソームスキッピングを媒介する核酸配列は、T2A及び/またはP2Aスキップ配列のいずれかであり得る。酵素切断部位を含むペプチドをコードする核酸配列は、フューリン切断部位をコードすることができ、コードされるフューリン部位の配列は、好ましくはRAKRであり得る。
【0091】
異種TCRをコードする核酸は、TCRα鎖及び/またはTCRβ鎖のコード配列を、任意選択的に、酵素切断部位を含むペプチドをコードする少なくとも1つの、任意選択的に2つの介在核酸配列、及び/またはリボソームスキッピングを媒介する少なくとも1つの、任意選択的に2つの核酸配列とともに含み得る。リボソームスキッピングを媒介する核酸配列は、T2A及び/またはP2Aスキップ配列のいずれかであり得る。酵素切断部位を含むペプチドをコードする核酸配列は、フューリン切断部位をコードし得る。コードされるフューリン部位の配列は、好ましくはRAKRであり得る。
【0092】
したがって、本発明による異種TCR及び改変iPSCまたは造血系統細胞の内因性タンパク質の転写及び/または発現は、同じプロモーターに由来し得る。したがって、異種TCRをコードする異種核酸配列及び内因性タンパク質をコードする核酸配列または遺伝子は、転写及び/または転写後修飾もしくは共転写修飾及び/または翻訳について同じ調節配列、本明細書で言及される調節配列を共有し得る。転写後修飾または共転写は、転写後のRNA一次転写物をプロセシングして成熟した機能的RNA分子を生成することを含み得、及び/またはmRNAプロセシング及び/または5’プロセシング及び/またはキャッピング及び/または3’プロセシング及び/または切断及びポリアデニル化及び/またはイントロンスプライシング及び/またはヒストンmRNAプロセシングのいずれかを含み得る。
【0093】
本発明による改変iPSCまたは造血系統細胞は、任意選択的に酵素切断部位、好ましくはフューリン切断部位、好ましくはRAKR、及び/またはリボソームスキップ配列、好ましくはT2A及び/またはP2Aスキップ配列を含むペプチドによって接続された、内因性タンパク質との融合タンパク質として発現される異種TCRを含み得る。
【0094】
したがって、融合タンパク質は、任意選択的に、細胞の小胞体内で任意選択的に実施される、酵素切断部位もしくはフューリン切断部位の切断により及び/またはスキップ配列ペプチドの除去により、新生の、遊離の、または天然の異種TCRを放出するように細胞内でプロセシングされ得る。
【0095】
本発明は、本発明による改変iPSCまたは造血系統細胞、例えばT細胞を提供し、異種TCRは、TCRアルファ鎖及びTCRベータ鎖を含む新生異種TCRとして細胞内で発現及び/または提示され、好ましくは細胞表面で発現及び/または提示される。新生タンパク質は、例えば、細胞小胞体またはゴルジなどの細胞内における翻訳後プロセシングの際に融合タンパク質から(それにより内因性タンパク質から)分離され得、次いで任意選択的に、膜結合型機能的TCR、好ましくは膜固定型ヘテロ二量体TCRタンパク質、好ましくはアルファ;ベータTCRとして細胞表面に輸送及び/または提示され、これらTCRは任意選択的に、がん抗原及び/または腫瘍抗原またはそのペプチドに、及び/または腫瘍細胞及び/またはがん細胞及び/または腫瘍組織及び/またはがん組織に、及び/またはそれらに由来するペプチドもしくは抗原性ペプチドに、結合するまたは特異的に結合することができ、及び/または本明細書に記載される改変iPSCまたは造血系統細胞、例えばT細胞の活性化を促進すること、及び/または本明細書に記載されるT細胞活性を活性化することができる。
【0096】
本発明によれば、内因性タンパク質は、伸長因子複合体のメンバー、好ましくは翻訳伸長因子、好ましくは真核生物翻訳伸長因子1アルファ1であり得、任意選択的に、遺伝子座は、真核生物翻訳伸長因子1アルファ1(EEF1A1)遺伝子のエクソン8にあり、任意選択的に、TAG終止コドンの前に、あるいはTAG終止コドンに直接隣接して及び/またはTAG終止コドンの前にある。
【0097】
異種T細胞受容体(TCR)をコードする少なくとも1つの異種核酸配列は、細胞ゲノム内の遺伝子座にまたはその中に組み込むことができ、遺伝子座は、伸長因子複合体のメンバー、好ましくは翻訳伸長因子、好ましくは真核生物翻訳伸長因子1アルファ1をコードする遺伝子であるかまたはその中にあり、任意選択的に、遺伝子座は、真核生物翻訳伸長因子1アルファ1(EEF1A1)遺伝子のエクソン8にあり、任意選択的に、TAG終止コドンの前に、あるいはTAG終止コドンに直接隣接して及び/またはTAG終止コドンの前にある。
【0098】
異種T細胞受容体(TCR)をコードする少なくとも1つの異種核酸配列は、細胞ゲノム内の遺伝子座にまたはその中に組み込むことができ、組み込みの遺伝子座または部位は、EEFA1A遺伝子のエクソン8(好ましくは第6染色体上のEEFA1A遺伝子内)にあり、任意選択的に、TAG終止コドンの前に、あるいはTAG終止コドンに直接隣接して及び/またはTAG終止コドンの前にある。
【0099】
本発明は、本発明による改変iPSCまたは造血系統細胞を提供し、融合遺伝子もしくは配列またはマルチシストロン性融合遺伝子もしくは配列は、異種TCRをコードする核酸及びEEFA1Aをコードする核酸を、酵素切断部位、好ましくはフューリン切断部位を含むペプチドをコードする介在核酸配列、及び/または好ましくはT2A及び/またはP2Aスキップ配列から選択されるリボソームスキッピングを媒介する核酸配列とともに含み、異種TCRをコードする核酸配列は、TCRα鎖及びTCRβ鎖のコード配列を、好ましくは、酵素切断部位、好ましくはフューリン切断部位を含むペプチドをコードする介在核酸配列、及び/または好ましくはT2A及び/またはP2Aスキップ配列から選択されるリボソームスキッピングを媒介する核酸配列とともに含む。
【0100】
TCR結合
異種TCRは、
(a)がん抗原及び/または腫瘍抗原あるいはそのペプチド抗原、あるいは
(b)がん性状態に関連する及び/または腫瘍もしくはがん細胞もしくは組織によって提示される、がん抗原及び/または腫瘍抗原あるいはそのペプチド抗原、のいずれかである抗原またはペプチド抗原に結合し得るかまたは特異的に結合し得る。
【0101】
本発明によれば、異種TCRは、抗原またはそのペプチド抗原、例えば、がん抗原及び/または腫瘍抗原あるいはそのペプチド抗原に結合し得るか、あるいは特異的及び/または選択的に結合することができ、これら抗原は、任意選択的に、がん及び/または腫瘍によって、及び/またはペプチド提示分子、例えば主要組織適合複合体(MHC)またはHLAとの複合体中で提示されるか、あるいはペプチド提示分子なしで(例えば、内因的に発現されるがん及び/または腫瘍細胞表面抗原またはペプチド抗原として)提示される。がん抗原及び/または腫瘍抗原あるいはそのペプチド抗原は、がん及び/または腫瘍細胞または組織によって、正常細胞または組織よりも高いレベル、好ましくは著しく高いレベルで、例えば、10、100、1000、10,000、100,000、1000,000倍以上高く発現される抗原またはそのペプチド抗原であり得、好ましくは、抗原またはそのペプチド抗原は正常細胞または組織によって発現されない。がん抗原及び/または腫瘍抗原あるいはそのペプチド抗原は、がん精巣抗原、NY-ESO-1、MART-1(T細胞により認識される黒色腫抗原)、WT1(ウイルムス腫瘍1)、gp100(糖タンパク質100)、チロシナーゼ、PRAME(黒色腫において優先的に発現される抗原)、p53、HPV-E6/HPV-E7(ヒトパピローマウイルス)、HBV、TRAIL、DR4、チログロビン(Thyroglobin)、TGFBIIフレームシフト抗原、LAGE-1A、KRAS、CMV(サイトメガロウイルス)、CEA(がん胎児性抗原)、AFP(α-フェトプロテイン)、MAGE、黒色腫関連抗原もしくはMAGEA遺伝子ファミリーのメンバー、MAGE-A1、MAGE-A2、MAGE-A3、MAGE-A4、MAGE-A6、MAGE-A8、及びMAGE-A9、MAGE-A10、もしくはMAGE-A12、またはそれらのペプチド抗原のいずれかであり得る。
【0102】
TCRは、MAGE A4またはその抗原性ペプチド、例えばヒトMAGE A4もしくは配列番号1のMAGE A4またはその抗原性ペプチドに結合し得る。TCRは、配列番号2、GVYDGREHTVを含むMAGE A4の抗原性ペプチドに結合し得る。あるいは、TCRは、アルファフェトプロテイン(AFP)またはその抗原性ペプチド、例えば、配列番号20のアルファフェトプロテイン(AFP)、またはAFPのペプチド抗原、またはFMNKFIYEI(配列番号21)もしくはアルファフェトプロテイン(AFP)配列番号20に由来する残基158~166を含むAFPのペプチド抗原に結合し得る。
【0103】
TCRは、
(a)配列番号20の残基158~166(AFP158)、
(b)配列番号20の残基137~145(AFP137)、
(c)配列番号20の残基325~334(AFP325)、
(d)配列番号20の残基542~550(AFP542)、または
(e)残基FMNKFIYEI(配列番号21)、を含むかまたはそれからなるAFP抗原性ペプチドに結合し得る。
【0104】
TCRの特異的結合
異種TCRは、抗原またはそのペプチド抗原、例えば、任意選択的にがん性状態に関連する及び/または腫瘍もしくはがん細胞もしくは組織によって提示される、本明細書に記載されるがん抗原及び/または腫瘍抗原あるいはそのペプチド抗原に結合し得るかまたは特異的に結合し得る。
【0105】
特異性は、異種TCRと特定の標的がん抗原及び/または腫瘍抗原あるいはそのペプチド抗原との間の結合強度を表し、受容体-リガンド系に対する結合状態と未結合状態との比率である解離定数Kdによって表すことができる。更に、異種TCRが結合することのできる異なるがん抗原及び/または腫瘍抗原あるいはそのペプチド抗原が少ないほど、その結合特異性は大きくなる。
【0106】
異種TCRは、10種未満、9種未満、8種未満、7種未満、6種未満、5種未満、4種未満、3種未満、または2種未満の異なるがん抗原及び/または腫瘍抗原あるいはそのペプチド抗原に結合し得る。
【0107】
異種TCRは、抗原またはそのペプチド抗原、例えば、がん抗原及び/または腫瘍抗原またはペプチド抗原、例えば、配列番号1のMAGE A4、配列番号2を含むMAGE A4の抗原性ペプチド、配列番号20のアルファフェトプロテイン(AFP)、またはAFPのペプチド抗原、またはFMNKFIYEI(配列番号21)を含むAFPのペプチド抗原に、任意選択的に表面プラズモン共鳴を用いて、任意選択的に25℃、任意選択的に6.5~6.9または7.0~7.5のpHで測定して、0.01μΜ~100μΜ、0.01μΜ~50μΜ、0.01μΜ~20μΜ、0.05μΜ~20μΜ、もしくは0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1μΜ、0.15μΜ、0.2μΜ、0.25μΜ、0.3μΜ、0.35μΜ、0.4μΜ、0.45μΜ、0.5μΜ、0.55μΜ、0.6μΜ、0.65μΜ、0.7μΜ、0.75μΜ、0.8μΜ、0.85μΜ、0.9μΜ、0.95μΜ、1.0μΜ、1.5μΜ、2.0μΜ、2.5μΜ、3.0μΜ、3.5μΜ、4.0μΜ、4.5μΜ、5.0μΜ、5.5μΜ、6.0μΜ、6.5μΜ、7.0μΜ、7.5μΜ、8.0μΜ、8.5μΜ、9.0μΜ、9.5μΜ、10.0μΜ;または10μΜ~1000μΜ、10μΜ~500μΜ、50μΜ~500μΜ、もしくは10、20、30、40、50、60、70、80、90、100μΜ、150μΜ、200μΜ、250μΜ、300μΜ、350μΜ、400μΜ、450μΜ、500μΜの解離定数で結合し得る。解離定数、KDまたはkoff/konは、解離速度定数koff及び会合速度定数konを実験的に測定することにより決定され得る。TCR解離定数は、可溶性形態のTCRを使用して測定することができ、このTCRは、TCRアルファ鎖可変ドメイン及びTCRベータ鎖可変ドメインを含む。
【0108】
異種T細胞受容体(TCR)及び/または異種T細胞受容体(TCR)を含む改変細胞は、ペプチド提示分子、例えば主要組織適合複合体(MHC)またはHLA(任意選択的にクラスIまたはII、例えばHLA-A2を有するか、またはHLA-A*02:01、HLA-A*02:02、HLA-A*02:03、HLA-A*02:04、HLA-A*02:05、HLA-A*02:06、HLA-A*02:642、もしくはHLA-A*02:07、好ましくはHLA-A*02:01もしくはHLA-A*02:642から選択される)との複合体中のまたはそれらによって提示される、抗原またはそのペプチド抗原、例えば、本明細書に記載されるがん抗原及び/または腫瘍抗原またはペプチド抗原に、例えば、本明細書にて上述した解離定数で、好ましくは0.01μM~100μM、例えば、50μM、100μM、200μM、500μM、好ましくは0.05μM~20.0μMの解離定数で、特異的に及び/または高い親和性で、及び/または選択的に結合し得る。
【0109】
異種T細胞受容体(TCR)及び/または異種T細胞受容体(TCR)を含む改変細胞は、任意選択的に、HLA-A*02(HLA*02、HLA-A*02:01、HLA-A*02:02、HLA-A*02:03、HLA-A*02:04、HLA-A*02:06、HLA-A*02:642、またはHLA-A*02:07から任意選択的に選択され、好ましくはHLA-A*02:01またはHLA-A*02)との複合体中の、MAGE A4(配列番号1)、そのペプチド抗原、または配列番号2(GVYDGREHTV)を含むその抗原性ペプチドに、例えば、本明細書にて上述した解離定数で、好ましくは0.01μM~100μM、例えば、50μM、100μM、200μM、500μM、好ましくは0.05μM~20.0μMの解離定数で、特異的に及び/または高い親和性で、及び/または選択的に結合し得る。
【0110】
異種T細胞受容体(TCR)及び/または異種T細胞受容体(TCR)を含む改変細胞は、任意選択的に、HLA-A*02との、またはHLA-A*02:01、HLA-A*02:02、HLA-A*02:03、HLA-A*02:04、HLA-A*02:05、HLA-A*02:06、HLA-A*02:642、もしくはHLA-A*02:07から選択され、好ましくはHLA-A*02:01もしくはHLA-A*02:642である任意のHLAとの複合体中の、AFP(配列番号20)、そのペプチド抗原、または配列FMNKFIYEI(配列番号21)を含むペプチド抗原に、例えば、本明細書にて上述した解離定数で、好ましくは0.01μM~100μM、例えば、50μM、100μM、200μM、500μM、好ましくは0.05μM~20.0μMの解離定数で、特異的に及び/または高い親和性で、及び/または選択的に結合し得る。
【0111】
あるいは、異種T細胞受容体(TCR)及び異種T細胞受容体(TCR)を含む改変細胞は、抗原またはそのペプチド抗原に、例えば、内因的に発現されるがん及び/または腫瘍細胞表面抗原またはペプチド抗原として本明細書に記載されるがん抗原及び/または腫瘍抗原またはペプチド抗原(例えば、AFPもしくはMAGE A4またはその抗原性ペプチド)に、例えば、本明細書にて上述した解離定数で、好ましくは0.01μM~100μM、例えば、50μM、100μM、200μM、500μM、好ましくは0.05μM~20.0μMの解離定数で結合する、または特異的及び/または選択的に結合する、及び/または高い親和性で結合することができ、任意選択的に、この結合は、ペプチド提示分子または抗原提示分子、例えば、主要組織適合複合体(MHC)、またはヒト白血球抗原(HLA)、または主要組織適合複合体クラス関連タンパク質(MR)1との複合体としての細胞表面抗原の提示とは非依存的である。
【0112】
TCR結合は、ある抗原またはそのペプチド抗原、例えば、任意選択的にがん及び/または腫瘍細胞表面に発現する、本明細書に記載されるがん抗原及び/または腫瘍抗原あるいはそのペプチド抗原(例えば、AFPもしくはMAGE A4またはその抗原性ペプチド)に対して、近縁のがん抗原及び/または腫瘍抗原またはペプチド抗原配列と比較して特異的であり得る。近縁のがん抗原及び/または腫瘍抗原またはペプチド抗原配列は、類似または同一の長さであり得、及び/または類似した数または同一の数のアミノ酸残基を有し得る。近縁のペプチド抗原配列は、50%もしくは60%もしくは70%もしくは80~90%の同一性、好ましくは80~90%の同一性を共有することができ、及び/または1、2、3、もしくは4個のアミノ酸残基が異なっていてもよい。例えば、近縁のペプチド配列は、配列GVYDGREHTV(配列番号2)またはFMNKFIYEI(配列番号21)を含むかまたは有するポリペプチド配列に由来し得る。
【0113】
結合親和性は、平衡法(例えば、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)もしくは放射免疫測定法(RIA))、または動力学(例えば、BIACORE(商標)分析)により決定され得る。結合力は、例えば相互作用の価数を考慮した、複数部位における2つの分子の相互の結合強度の総和である。改変多能性幹細胞iPSCまたは造血系統細胞は、がん抗原及び/または腫瘍抗原あるいはそのペプチド抗原、あるいはがん細胞または組織の腫瘍により提示されかつ異種TCRにより認識されるがん抗原及び/または腫瘍抗原あるいはそのペプチド抗原に対して、異種TCRを欠くまたは別の異種TCRもしくはCARを有する細胞と比較して改善された親和性及び/または結合力を示し得る。
【0114】
選択的結合とは、異種TCRが、あるがん抗原及び/または腫瘍抗原あるいはそのペプチド抗原に対して、別の抗原と比較してより大きい親和性で結合することを示す。選択的結合は、異種TCRとの複合体中での、あるリガンド抗原による別のリガンド抗原の置換に対する平衡定数によって示される。
【0115】
異種TCR
細胞ゲノム内の遺伝子座中に組み込まれた異種TCRをコードする少なくとも1つの異種核酸配列を含む、改変iPSCまたは造血系統細胞、例えばT細胞は、異種T細胞受容体(TCR)を発現し得る。抗原に結合すると、改変iPSCまたは造血系統細胞、例えばT細胞は、抗原を有する及び/または増殖及び/または細胞分裂を行っている細胞に対してT細胞エフェクター機能及び/または細胞溶解作用を示し得る。特定の実施形態では、TCRを含む改変iPSCまたは造血系統細胞、例えばT細胞は、同じがん抗原及び/または腫瘍抗原及び/またはペプチド(抗原性ペプチド)を標的とする形質導入TCRまたはキメラ抗原受容体(CAR)のいずれかを含むT細胞と比較して、同程度のまたはより良好な治療効力を示す。活性化した改変iPSCまたは造血系統細胞、例えばT細胞は、TNFアルファ、IFNy、及びIL2を含み得るがこれらに限定されない抗腫瘍サイトカインを分泌し得る。
【0116】
「異種」または「外因性」という用語は、細胞または宿主細胞などの特定の生体系にとって外来であり、その系に天然には存在せず、かつ人為的または組換え手段によって系に導入され得るポリペプチドまたは核酸を指す。したがって、異種であるTCRの発現により、iPSCまたは造血系統細胞、例えばT細胞の免疫原性特異性を変化させて、それらが、がんを有する個体のがん細胞の表面上に存在する本明細書に記載される1つ以上の腫瘍抗原またはがん抗原及び/またはペプチドを認識するか、またはその認識の改善を示すようにすることができる。免疫原性細胞またはT細胞の改変及びそれに続く増大は、in vitro及び/またはex vivoで実施することができる。
【0117】
TCRの構造
好ましくは、異種TCRは、iPSCまたは造血系統細胞によって天然にまたは内因性に発現されない。すなわち、改変前に発現されない(すなわち、TCRは外因性もしくは異種である)。異種TCRは、αβTCRヘテロ二量体を含み得る。
【0118】
異種TCRは、組換えまたは合成または人工のTCR、すなわち天然には存在しないTCRであり得る。例えば、異種TCRは、特定のがん抗原及び/または腫瘍抗原あるいはそのペプチド抗原に対するその親和性または結合力を増加させるように操作され得る(すなわち、親和性増強TCRまたは特異的ペプチド増強親和性受容体(specific peptide enhanced affinity receptor)(SPEAR)TCR)。親和性増強TCRまたは(SPEAR)TCRは、天然に存在するTCRに対する1つ以上の変異、例えば、TCRα鎖及びβ鎖の可変領域の超可変相補性決定領域(CDR)における1つ以上の変異を含み得る。これらの変異は、任意選択的に腫瘍細胞及び/またはがん細胞により発現される場合、本明細書に記載されるがん抗原及び/または腫瘍抗原あるいはそのペプチド抗原、あるいは本明細書に記載されるがん抗原及び/または腫瘍抗原あるいはそのペプチド抗原を提示するMHCに対するTCRの親和性を増加させ得る。親和性増強または親和性成熟TCRを作製する好適な方法は、ファージまたは酵母ディスプレイを使用するTCR変異体のライブラリのスクリーニングを含み、当該技術分野において周知である(例えば、Robbins et al J Immunol(2008)180(9):6116、San Miguel et al(2015)Cancer Cell 28(3)281-283、Schmitt et al(2013)Blood 122 348-256、Jiang et al(2015)Cancer Discovery 5 901を参照されたい)。好ましい親和性増強TCRは、MAGEファミリーの腫瘍抗原を発現する腫瘍細胞もしくはがん細胞、または本明細書に記載されるAFPもしくはそのペプチド抗原に結合し得る。
【0119】
MAGEA4/AFP TCR
異種TCRは、配列番号5のα鎖参照アミノ酸配列またはそのバリアントと配列番号7のβ鎖参照アミノ酸配列またはそのバリアントとを含み得るMAGE A4 TCRであり得る。あるいは、異種TCRは、配列番号22のα鎖参照アミノ酸配列またはそのバリアントと配列番号23のβ鎖参照アミノ酸配列またはそのバリアントとを含み得るAFP TCRであり得る。
【0120】
バリアントは、参照アミノ酸配列に対して(例えば、α鎖参照配列及び/またはβ鎖参照配列のいずれかに対して)少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し得る。TCRは、配列番号6のα鎖参照ヌクレオチド配列もしくはそのバリアント及び配列番号8のβ鎖参照ヌクレオチド配列もしくはそのバリアント(MAGE A4)によって、または配列番号24のα鎖参照ヌクレオチド配列もしくはそのバリアント及び配列番号25のβ鎖参照ヌクレオチド配列(AFP)もしくはそのバリアントによってコードされ得る。バリアントは、参照ヌクレオチド配列に対して(例えば、AFPまたはMAGE A4 TCRのα鎖参照配列及び/またはβ鎖参照配列のいずれかに対して)少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を有し得る。
【0121】
TCRのCDR
本発明によれば、異種TCR(例えばMAGE A4に対するもの)は、TCRアルファ鎖可変ドメイン及びTCRベータ鎖可変ドメインであって、
アルファ鎖可変ドメインが、配列
VSPFSN(αCDR1)(配列番号11)もしくは配列番号5のアミノ酸48~53、
LTFSEN(αCDR2)(配列番号12)もしくは配列番号5のアミノ酸71~76、及び
CVVSGGTDSWGKLQF(αCDR3)(配列番号13)もしくは配列番号5のアミノ酸111~125を有するCDRを含み、
及び/または
ベータ鎖可変ドメインが、配列
KGHDR(βCDR1)(配列番号14)もしくは配列番号7のアミノ酸46~50、
SFDVKD(βCDR2)(配列番号15)もしくは配列番号7のアミノ酸68~73、及び
CATSGQGAYEEQFF(βCDR3)(配列番号16)もしくは配列番号7のアミノ酸110~123を有するCDRを含む、TCRアルファ鎖可変ドメイン及びTCRベータ鎖可変ドメイン、
あるいは、それぞれ、それらに対して少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性、任意選択的にそれらに対して100%の配列同一性を有する配列を含み得る。
【0122】
本発明によれば、異種TCR(例えばAFPに対するもの)は、TCRアルファ鎖可変ドメイン及びTCRベータ鎖可変ドメインを含むことができ、
(i)アルファ鎖可変ドメインは、配列
DRGSQS(αCDR1)(配列番号26)もしくは配列番号22のアミノ酸27~32、もしくはそれに対して少なくとも50%の配列同一性を有する配列、IYSNGD(αCDR2)(配列番号27)もしくは配列番号22のアミノ酸50~55、もしくはそれに対して少なくとも50%の配列同一性を有する配列、及びAVNSDSGYALNF(αCDR3)(配列番号28)もしくは配列番号22のアミノ酸90~101、もしくはそれに対して少なくとも50%の配列同一性を有する配列、を有するCDRを含み、及び/または
(ii)ベータ鎖可変ドメインは、配列SGDLS(βCDR1)(配列番号29)もしくは配列番号23のアミノ酸27~31、もしくはそれに対して少なくとも50%の配列同一性を有する配列、YYNGEE(βCDR2)(配列番号30)もしくは配列番号23のアミノ酸49~54、もしくはそれに対して少なくとも50%の配列同一性を有する配列、及びASSLGGESEQY(βCDR3)(配列番号31)もしくは配列番号23のアミノ酸92~102、もしくはそれに対して少なくとも50%の配列同一性を有する配列、を有するCDRを含み、任意選択的に、配列同一性はそれぞれ、それらに対して最小50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%のいずれかの配列同一性、任意選択的に100%の配列同一性であり得る。
【0123】
TCR可変ドメイン
異種TCRは、TCR、例えばMAGE A4 TCRであって、そのアルファ鎖可変ドメインが、配列番号9に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%、もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列もしくは配列番号5のアミノ酸残基1~136の配列を含み、及び/またはベータ鎖可変ドメインが、配列番号10に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%、もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列もしくは配列番号7のアミノ酸残基1~133の配列を含む、TCRを含み得る。
【0124】
異種TCR、例えばAFP TCRは、TCRであって、そのアルファ鎖可変ドメインが、配列番号22のアミノ酸残基1~112の配列に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%、もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含み、及び/またはベータ鎖可変ドメインが、配列番号23のアミノ酸残基1~112の配列に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%、もしくは100%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、TCRを含み得る。
【0125】
MAGE A4及びAFP TCRのCDR及びフレームワーク
いくつかの実施形態では、「前駆TCR」または「親TCR」という用語は、本明細書では、それぞれ配列番号5及び7のMAGE A4 TCR α鎖及びMAGE A4 TCR β鎖を含むTCR、またはそれぞれ配列番号22及び23のAFP TCR α鎖及びAFP TCR β鎖を含むTCRを指すために使用され得る。
【0126】
前駆TCRに対して変異または改変され、かつペプチド-HLA複合体に対して、前駆TCRと等しい、同等の、もしくはそれより高い親和性、及び/または等しい、同等の、もしくはそれより遅いoff速度を有する異種TCRを提供することが望ましい場合がある。異種TCRは、前駆TCRに対する、アルファ鎖可変ドメイン及び/またはベータ鎖可変ドメインに存在する複数の変異を有し得、「操作TCR」または「変異型TCR」と示され得る。これらの変異(複数可)は、標的AFPもしくはMAGE A4またはそのペプチド抗原に対する結合親和性及び/または特異性及び/または選択性及び/または結合力を改善し得る。特定の実施形態では、アルファ鎖可変ドメインには1、2、3、4、5、6、7、もしくは8つの変異、例えば4つもしくは8つの変異、及び/またはベータ鎖可変ドメインには1、2、3、4、もしくは5つの変異、例えば5つの変異がある。いくつかの実施形態では、本発明のTCRのα鎖可変ドメインは、配列番号9のアミノ酸残基(MAGE A4)または配列番号22のアミノ酸1~112(AFP)の配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。いくつかの実施形態では、本発明のTCRのβ鎖可変ドメインは、配列番号10のアミノ酸残基(MAGE A4)または配列番号23のアミノ酸1~112(AFP)の配列に対して少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の同一性を有するアミノ酸配列を含み得る。
【0127】
異種TCR(例えば、MAGE A4 TCR)は、TCRであって、そのアルファ鎖可変ドメインが、配列番号9、または配列番号5のアミノ酸残基1~136のアミノ酸配列、またはアミノ酸残基1~47、54~70、77~110、及び126~136が配列番号9のアミノ酸残基1~47、54~70、77~110、及び126~136のそれぞれの配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列、及び/またはアミノ酸残基48~53、71~76、及び111~125(CDR1、CDR2、CDR3)がそれぞれ、配列番号9のアミノ酸残基48~53、71~76、及び111~125(CDR1、CDR2、CDR3)のそれぞれの配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、TCRを含み得る。
【0128】
異種TCRは、TCRであって、そのアルファ鎖可変ドメインにおいて、
(i)そのアミノ酸残基1~47の配列が、(a)配列番号9のアミノ酸残基1~47の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し得るか、もしくは(b)配列番号9の残基1~47に対して挿入もしくは欠失された1、2、もしくは3つのアミノ酸残基を有し得る、
(ii)アミノ酸残基48~53の配列が、VSPFSN、CDR1(配列番号11)もしくは配列番号9のアミノ酸48~53である、
(iii)そのアミノ酸残基54~70の配列が、(a)配列番号9のアミノ酸残基54~70の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し得るか、もしくは(b)配列番号9のアミノ酸残基54~70の配列に対して挿入もしくは欠失された1、2、もしくは3つのアミノ酸残基を有し得る、
(iv)アミノ酸残基71~76の配列が、LTFSEN、CDR2(配列番号12)もしくは配列番号9のアミノ酸71~76であり得る、
(v)そのアミノ酸残基77~110の配列が、配列番号9のアミノ酸残基77~110の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し得るか、もしくは配列番号9のアミノ酸残基77~110の配列に対して1、2、もしくは3つの挿入、欠失、もしくは置換を有し得る、
(vi)アミノ酸111~125の配列が、CVVSGGTDSWGKLQF、CDR3(配列番号13)もしくは配列番号9のアミノ酸111~125であり得る、及び/または
(vii)そのアミノ酸残基126~136の配列が、配列番号9のアミノ酸残基126~136の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し得るか、もしくは配列番号9のアミノ酸残基126~136の配列に対して1、2、もしくは3つの挿入、欠失、もしくは置換を有し得る、TCRを含み得る。
【0129】
異種TCR(例えば、MAGE A4 TCR)は、TCRであって、そのベータ鎖可変ドメインに、配列番号10のアミノ酸配列、またはアミノ酸残基1~45、51~67、74~109、及び124~133が配列番号10のアミノ酸残基1~45、51~67、74~109、及び124~133のそれぞれの配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有するアミノ酸配列、ならびにアミノ酸残基46~50、68~73、及び110~123が、配列番号10のアミノ酸残基46~50、68~73、及び110~123(CDR1、CDR2、CDR3)のそれぞれの配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、TCRを含み得る。
【0130】
異種TCRは、TCRであって、そのベータ鎖可変ドメインにおいて、
(i)そのアミノ酸残基1~45の配列が、(a)配列番号10のアミノ酸残基1~45の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し得るか、もしくは(b)配列番号10の残基1~45に対して挿入もしくは欠失された1、2、もしくは3つのアミノ酸残基を有し得る、
(ii)アミノ酸残基46~50の配列が、KGHDR、CDR1(配列番号14)もしくは配列番号10のアミノ酸46~50である、
(iii)そのアミノ酸残基51~67の配列が、(a)配列番号10のアミノ酸残基51~67の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し得るか、もしくは(b)配列番号10のアミノ酸残基51~67の配列に対して挿入もしくは欠失された1、2、もしくは3つのアミノ酸残基を有し得る、
(iv)アミノ酸残基68~73の配列が、SFDVKD、CDR2(配列番号15)もしくは配列番号10のアミノ酸68~73であり得る、
(v)そのアミノ酸残基74~109の配列が、配列番号10のアミノ酸残基74~109の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し得るか、もしくは配列番号10のアミノ酸残基74~109の配列に対して1、2、もしくは3つの挿入、欠失、もしくは置換を有し得る、
(vi)アミノ酸110~123の配列が、CATSGQGAYEEQFF、CDR3(配列番号16)もしくは配列番号10のアミノ酸110~123であり得る、及び/または
(vii)そのアミノ酸残基124~133の配列が、配列番号10のアミノ酸残基124~133の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し得るか、もしくは配列番号10のアミノ酸残基124~133の配列に対して1、2、もしくは3つの挿入、欠失、もしくは置換を有し得る、TCRを含み得る。
【0131】
異種TCRは、配列番号9のアルファ鎖可変ドメイン及び/または配列番号10のベータ鎖可変ドメインを含むTCRを含み得る。TCRは、配列番号5のアルファ鎖及び/または配列番号7のベータ鎖を含むTCRを含み得る。
【0132】
AFP TCRのCDR及びフレームワーク
異種TCR(例えば、AFP TCR)は、TCRであって、そのアルファ鎖可変ドメインが、配列番号22のアミノ酸残基1~112のアミノ酸配列、またはアミノ酸残基1~26、33~49、56~89、及び102~112が配列番号22のアミノ酸残基1~26、33~49、56~89、及び102~112のそれぞれの配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列、及び/またはアミノ酸残基27~32、50~55、90~101(CDR1、CDR2、CDR3)がそれぞれ、配列番号22のアミノ酸残基27~32、50~55、90~101(CDR1、CDR2、CDR3)のそれぞれの配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、TCRを含み得る。
【0133】
異種TCR(例えば、AFP TCR)は、TCRであって、そのアルファ鎖可変ドメインにおいて、
(i)そのアミノ酸残基1~26の配列が、(a)配列番号22のアミノ酸残基1~26の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し得るか、または(b)配列番号22の残基1~26に対して挿入もしくは欠失された1、2、もしくは3つのアミノ酸残基を有し得る、
(ii)アミノ酸残基27~32の配列が、DRGSQS、αCDR1(配列番号26)または配列番号22のアミノ酸27~32、またはDRGSQA(配列番号32)である、
(iii)そのアミノ酸残基33~49の配列が、(a)配列番号22のアミノ酸残基33~49の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し得るか、または(b)配列番号22のアミノ酸残基33~49の配列に対して挿入もしくは欠失された1、2、もしくは3つのアミノ酸残基を有し得る、
(iv)アミノ酸残基50~55の配列が、IYSNGD、αCDR2(配列番号27)または配列番号22のアミノ酸50~55であり得る、
(v)そのアミノ酸残基56~89の配列が、配列番号22のアミノ酸残基56~89の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し得るか、または配列番号22のアミノ酸残基56~89の配列に対して1、2、もしくは3つの挿入、欠失、もしくは置換を有し得る、
(vi)アミノ酸90~100の配列が、AVNSDSGYALNまたは配列番号22のアミノ酸90~100であり得る、
(vii)アミノ酸90~101の配列が、AVNSDSGYALNF、αCDR3(配列番号28)または配列番号22のアミノ酸90~101であり得る、
(viii)そのアミノ酸残基102~112の配列が、配列番号22のアミノ酸残基102~112の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し得るか、または配列番号22のアミノ酸残基102~112の配列に対して1、2、もしくは3つの挿入、欠失、もしくは置換を有し得る、TCRを含み得る。
【0134】
TCR(例えば、AFP TCR)は、TCRであって、そのベータ鎖可変ドメインに、配列番号23のアミノ酸残基1~112のアミノ酸配列、またはアミノ酸残基1~26、32~48、55~91、103~112が配列番号23のアミノ酸残基1~26、32~48、55~91、103~112のそれぞれの配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有するアミノ酸配列、ならびにアミノ酸残基27~31、49~54、及び92~102が、配列番号23のアミノ酸残基27~31、49~54、及び92~102(βCDR1、βCDR2、βCDR3)のそれぞれの配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有するアミノ酸配列を含む、TCRを含み得る。
【0135】
TCRは、TCRであって、そのベータ鎖可変ドメインにおいて、
(i)そのアミノ酸残基1~26の配列が、(a)配列番号23のアミノ酸残基1~26の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し得るか、または(b)配列番号23の残基1~26に対して挿入もしくは欠失された1、2、もしくは3つのアミノ酸残基を有し得る、
(ii)アミノ酸残基27~31の配列が、SGDLS、βCDR1(配列番号29)または配列番号23のアミノ酸27~31である、
(iii)そのアミノ酸残基32~48の配列が、(a)配列番号23のアミノ酸残基32~48の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し得るか、または(b)配列番号23のアミノ酸残基32~48の配列に対して挿入もしくは欠失された1、2、もしくは3つのアミノ酸残基を有し得る、
(iv)アミノ酸残基49~54の配列が、YYNGEE、βCDR2(配列番号30)または配列番号23のアミノ酸49~54であり得る、
(v)そのアミノ酸残基55~91の配列が、配列番号23のアミノ酸残基55~91の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し得るか、または配列番号23のアミノ酸残基55~91の配列に対して1、2、もしくは3つの挿入、欠失、もしくは置換を有し得る、
(vi)アミノ酸92~102の配列が、ASSLGGESEQY、βCDR 3(配列番号31)または配列番号23のアミノ酸92~102であり得る、
(vii)そのアミノ酸残基103~112の配列が、配列番号23のアミノ酸残基103~112の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し得るか、または配列番号23のアミノ酸残基103~112の配列に対して1、2、もしくは3つの挿入、欠失、もしくは置換を有し得る、TCRを含み得る。
【0136】
異種TCRは、アルファ鎖が配列番号41のアミノ酸残基を含み、かつベータ鎖可変ドメインが配列番号23または配列番号42のアミノ酸残基を含むTCRを含み得る。
【0137】
変異型AFP TCR
いくつかの実施形態では、異種TCRは、親AFP TCR(アルファ鎖が配列番号22のアミノ酸残基を含み、ベータ鎖可変ドメインが配列番号23のアミノ酸残基を含む)、またはアルファ鎖が配列番号41のアミノ酸残基を含み、ベータ鎖可変ドメインが配列番号23もしくは配列番号42のアミノ酸残基を含むAFP TCRに対して変異され得る。
【0138】
したがって、そのような変異異種TCRは、
a.配列DRGSQA(配列番号32)を有するαCDR1、
b.配列AVNSDSSYALNF(配列番号33)を有するαCDR3、
c.配列AVNSDSGVALNF(配列番号34)を有するαCDR3、
d.配列DRGSQAを有するαCDR1(配列番号32)及び配列AVNSDSGVALNF(配列番号34)を有するαCDR3、
e.配列AVNSQSGYALNF(配列番号35)を有するαCDR3、
f.配列AVNSQSGYSLNF(配列番号36)を有するαCDR3、
g.配列AVNSQSSYALNF(配列番号40)を有するαCDR3、
h.配列DRGSQAを有するαCDR1(配列番号32)及び配列AVNSQSGYALNF(配列番号35)を有するαCDR3、
i.配列AVNSQSGVALNF(配列番号36)を有するαCDR3、
j.配列AVNSQNGYALNF(配列番号37)を有するαCDR3、
k.配列DRGSFS(配列番号38)を有するαCDR1、
l.配列DRGSYS(配列番号39)を有するαCDR1、
m.配列DRGSYSを有するαCDR1(配列番号39)及び配列AVNSDSSYALNF(配列番号33)を有するαCDR3、
n.配列DRGSYSを有するαCDR1(配列番号39)及び配列AVNSDSGVALNF(配列番号34)を有するαCDR3、または
o.配列DRGSYSを有するαCDR1(配列番号39)及び配列AVNSQSGYALNF(配列番号35)を有するαCDR3を含み得る。
【0139】
異種TCRまたは異種変異TCRは、配列番号22に示される番号付けを参照して、31Q、32S、94D、95S、96G、97Y、及び98Aに対応するアミノ酸のうちの1つ以上に変異を含むアルファ鎖可変ドメインを含み得る。例えば、アルファ鎖可変ドメインは、配列番号22に示される番号付けに従って、以下の変異、すなわちQ31F/Y、S32A、D94Q、S95N、G96S、Y97V、A98Sのうちの1つ以上を有し得る。
【0140】
異種TCRは、配列番号22のTCRアルファ鎖可変ドメイン(但し、配列番号22に示される番号付けに従って、31Q、32S、94D、95S、96G、97Y、及び98Aに対応するアミノ酸のうちの1つ以上に変異、例えば、Q31F/Y、S32A、D94Q、S95N、G96S、Y97V、A98Sのうちの1つ以上を含む)、及び/または配列番号23もしくは配列番号42のD1~T112を含むベータ鎖可変ドメインを含み得る。
【0141】
異種TCRは、TCRアルファ鎖可変ドメイン及びTCRベータ鎖可変ドメインを含むことができ、
(i)アルファ鎖可変ドメインは、配列
DRGSQA(αCDR1)(配列番号32)または配列番号41のアミノ酸27~32、
IYSNGD(αCDR2)(配列番号27)または配列番号22のアミノ酸50~55、及び
AVNSQSGYALNF(αCDR3)(配列番号35)または配列番号41のアミノ酸90~101を有するCDRを含み、
(ii)ベータ鎖可変ドメインは、配列
SGDLS(βCDR1)(配列番号29)または配列番号23のアミノ酸27~31、
YYNGEE(βCDR2)(配列番号30)または配列番号23のアミノ酸49~54、及び
ASSLGGESEQY(βCDR3)(配列番号31)または配列番号23のアミノ酸92~102を有するCDRを含む。
【0142】
異種TCRは、アルファ鎖可変ドメインが配列番号41のアミノ酸残基1~112を含み、かつベータ鎖可変ドメインが配列番号33または配列番号42のアミノ酸残基1~112を含むTCRを含み得る。
【0143】
異種TCRは、アルファ鎖が配列番号41のアミノ酸残基を含み、かつベータ鎖可変ドメインが配列番号33または配列番号42のアミノ酸残基1~112を含むTCRを含み得る。
【0144】
TCRバリアント
アミノ酸及びヌクレオチド配列の同一性は、一般に、アルゴリズムGAP(GCG Wisconsin Package(商標),Accelrys,San Diego CA)を参照して定義される。GAPは、Needleman & Wunschアルゴリズム(J.Mol.Biol.(48):444-453(1970))を使用して、2つの完全な配列を、マッチの数を最大にし、ギャップの数を最小にするようにアラインメントする。一般に、デフォルトパラメータが使用され、ギャップ作成ペナルティ=12及びギャップ延長ペナルティ=4が用いられる。GAPの使用が好ましい場合があるが、他のアルゴリズム、例えばBLAST、psiBLAST、またはTBLASTN(Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:405-410の方法を使用する)、FASTA(Pearson and Lipman(1988)PNAS USA 85:2444-2448の方法を使用する)、またはSmith-Watermanアルゴリズム(Smith and Waterman(1981)J.Mol Biol.147:195-197)を使用してもよく、一般にデフォルトパラメータを用いる。
【0145】
特定のアミノ酸配列バリアントは、1アミノ酸、2、3、4、5~10、10~20または20~30アミノ酸の挿入、付加、置換、または欠失により参照配列と異なり得る。いくつかの実施形態では、バリアント配列は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上の残基が挿入、欠失、または置換された参照配列を含み得る。例えば、最大15個、最大20個、最大30個、または最大40個の残基が、挿入、欠失、または置換され得る。
【0146】
いくつかの好ましい実施形態では、バリアントは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上の保存的置換によって参照配列とは異なり得る。保存的置換は、アミノ酸を、類似の特性を有する異なるアミノ酸と置き換えることを含む。例えば、脂肪族残基を別の脂肪族残基と置き換えることができ、非極性残基を別の非極性残基と置き換えることができ、酸性残基を別の酸性残基と置き換えることができ、塩基性残基を別の塩基性残基と置き換えることができ、極性残基を別の極性残基と置き換えることができ、または芳香族残基を別の芳香族残基と置き換えることができる。保存的置換は、例えば、以下の群内のアミノ酸の間であり得る:
アラニン及びグリシン;
グルタミン酸、アスパラギン酸、グルタミン、及びアスパラギン、アルギニン、及びリジン;
アスパラギン、グルタミン、グルタミン酸、及びアスパラギン酸;
イソロイシン、ロイシン、及びバリン;
フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファン;ならびに
セリン、トレオニン、及びシステイン。
【0147】
CD8α補助受容体
細胞ゲノム内の遺伝子座中に組み込まれた異種TCRをコードする少なくとも1つの異種核酸配列を含み、及び/または本明細書に記載される異種TCRを発現もしくは提示する改変iPSCまたは造血系統細胞、例えばT細胞は、異種補助受容体を更に発現または提示し得る(例えば、細胞は、例えば遺伝子ノックインによって、補助受容体、例えばCD8補助受容体をコードする核酸を形質導入されるか、またはそれを含むように操作される)。
【0148】
異種補助受容体は、CD8補助受容体であり得る。CD8補助受容体は、CD8-α鎖とCD8-β鎖、またはCD8-α鎖とCD8-α鎖を含む、CD8鎖の二量体または対を含み得る。好ましくは、CD8補助受容体は、CD8-α鎖とCD8-α鎖とを含むCD8αα補助受容体である。CD8α補助受容体は、配列番号3、配列番号3、またはそのバリアントに対して少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み得る。CD8α補助受容体は、ホモ二量体であり得る。
【0149】
好ましくは、CD8補助受容体は、クラス1 MHCに結合し、TCRシグナル伝達を強化する。CD8補助受容体は、配列番号3の参照アミノ酸配列を含み得るか、またはそのバリアントであり得る。バリアントは、参照アミノ酸配列である配列番号3に対して少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を有し得る。CD8補助受容体は、配列番号4の参照ヌクレオチド配列によってコードされ得るか、またはそのバリアントであり得る。バリアントは、参照ヌクレオチド配列である配列番号4に対して少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するヌクレオチド配列を有し得る。
【0150】
異種CD8補助受容体は、CD8補助受容体であって、そのIg様V型ドメインに、配列
(i)VLLSNPTSG、CDR1(配列番号17)もしくは配列番号3のアミノ酸45~53、
(ii)YLSQNKPK、CDR2(配列番号18)もしくは配列番号3のアミノ酸72~79、
(iii)LSNSIM、CDR3(配列番号19)もしくは配列番号3のアミノ酸80~117、
または、それぞれ、それらに対して少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する配列、を有するCDRを含む、CD8補助受容体を含み得る。
【0151】
異種CD8補助受容体は、CD8補助受容体であって、配列番号3のアミノ酸配列の残基22~135、またはアミノ酸残基22~44、54~71、80~117、124~135が配列番号3のアミノ酸残基22~44、54~71、80~117、124~135(CDR1、CDR2、CDR3)のそれぞれの配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有するアミノ酸配列、ならびにアミノ酸残基45~53、72~79、及び118~123が、配列番号3のアミノ酸残基45~53、72~79、及び118~123のそれぞれの配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、またはそれらをそのIg様V型ドメインに含む、CD8補助受容体を含み得る。
【0152】
CD8補助受容体は、CD8補助受容体であって、
(i)そのアミノ酸残基22~44が、(a)配列番号3のアミノ酸残基22~44の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し得るか、または(b)配列番号3の残基22~44に対して挿入もしくは欠失された1、2、もしくは3つのアミノ酸残基を有し得る、
(ii)アミノ酸残基45~53が、VLLSNPTSG(配列番号17)CDR1または配列番号3のアミノ酸45~53である、
(iii)そのアミノ酸残基54~71が、(a)配列番号3のアミノ酸残基54~71の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し得るか、または(b)配列番号3のアミノ酸残基54~71の配列に対して挿入もしくは欠失された1、2、もしくは3つのアミノ酸残基を有し得る、
(iv)アミノ酸残基72~79が、YLSQNKPK、CDR2(配列番号18)または配列番号3のアミノ酸72~79であり得る、
(v)そのアミノ酸残基80~117が、配列番号3のアミノ酸残基80~117の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し得るか、または配列番号3のアミノ酸残基80~117の配列に対して1、2、もしくは3つの挿入、欠失、もしくは置換を有し得る、
(vi)アミノ酸残基118~123が、LSNSIM、CDR3(配列番号19)または配列番号3のアミノ酸80~117であり得る、
(vii)そのアミノ酸残基124~135が、配列番号3のアミノ酸残基124~135の配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、もしくは95%の同一性を有し得るか、または配列番号3のアミノ酸残基124~135の配列に対して1、2、もしくは3つの挿入、欠失、もしくは置換を有し得る、CD8補助受容体を含み得る。
【0153】
異種CD8補助受容体をコードする核酸を含み、及び/または異種CD8補助受容体を発現する改変人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系統細胞、好ましくはT細胞は、任意選択的にHLA上に提示される際に、抗原性ペプチド、腫瘍抗原、またはがん抗原による刺激に対してまたは刺激に応じて本明細書に開示されるアッセイによって決定することができる、異種CD8補助受容体を発現しない改変細胞(例えば、人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系統細胞、好ましくはT細胞)と比較して改善された親和性及び/または結合力及び/または改善されたT細胞活性化を示し得る。
【0154】
改変細胞の異種CD8は、MHCと相互作用し得るかまたはMHCに特異的に結合し得る。MHCは、クラスIまたはクラスII、好ましくはクラスI主要組織適合複合体(MHC)、HLA-I分子またはMHCクラスI HLA-A/B2M二量体であり得る。好ましくは、CD8-αは、好ましくはCD8のIgV様ドメインを介して、クラスI MHCのα3部分(残基223と229との間)と相互作用する。異種CD8は、任意選択的に抗原提示細胞、樹状細胞、及び/または腫瘍細胞もしくはがん細胞、腫瘍組織もしくはがん組織の表面上で、HLAに対する及び/またはHLA pMHCIもしくはpHLAにより結合もしくは提示される抗原性ペプチドに対する細胞のTCR結合を、異種CD8を欠く細胞と比較して改善させ得る。
【0155】
異種CD8は、任意選択的に抗原提示細胞、樹状細胞、及び/または腫瘍細胞もしくはがん細胞、または腫瘍組織もしくはがん組織の表面上での、改変iPSCまたは造血系統細胞、好ましくはT細胞の細胞(TCR)/ペプチド主要組織適合複合体クラスI(pMHCI)相互作用のoff速度(koff)、故にその半減期を、異種CD8を欠く細胞(iPSCまたは造血系統細胞、好ましくはT細胞)と比較して改善または増加させることができ、それにより改善された連結親和性及び/または結合力も提供することができる。異種CD8は、幹細胞iPSCまたは造血系統細胞表面上のTCRの組織化を改善し、pHLA結合における協同作用を可能にすることができ、かつ改善された治療的結合力を提供することができる。したがって、異種CD8補助受容体で改変された人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系統細胞、好ましくはT細胞は、LCK(リンパ球特異的タンパク質チロシンキナーゼ)に亜鉛依存的に結合または相互作用して、NFAT、NF-κΒ、及びAP-1などの転写因子を活性化することができる。
【0156】
改変人工多能性幹細胞iPSCまたは造血系統細胞、好ましくはT細胞は、異種CD8補助受容体を欠くiPSCまたは造血系統細胞、好ましくはT細胞と比較して、任意選択的にがん抗原及び/または腫瘍抗原あるいはそのペプチド抗原(任意選択的にがん細胞または組織の腫瘍によって提示される)に応答して、改善されたまたは増加したCD40Lの発現、サイトカイン産生、細胞傷害性活性、樹状細胞成熟の誘導、または樹状細胞サイトカイン産生の誘導を有し得る。
【0157】
共刺激リガンド
改変多能性幹細胞iPSCまたは造血系統細胞、例えばT細胞は、外因性または異種または組換え共刺激リガンド、少なくとも1つ、任意選択的に1つ、2つ、3つ、または4つの共刺激リガンドを更に含み得る(例えば、発現または提示し得る)(例えば、細胞は、例えば遺伝子ノックインによって、共刺激リガンドをコードする核酸を形質導入されるか、またはそれを含むように操作される)。改変細胞(複数可)は、異種TCR及び少なくとも1つの外因性共刺激リガンドを共発現し得る。異種TCRと少なくとも1つの外因性共刺激リガンドとの間の相互作用は、非抗原特異的シグナル及び細胞の活性化を提供し得る。
【0158】
共刺激リガンドとしては、腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーのメンバー、及び免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーリガンドが挙げられるが、これらに限定されない。TNFは、全身性炎症に関与するサイトカインであり、急性期反応を刺激する。TNFスーパーファミリーメンバーとしては、神経成長因子(NGF)、CD40L(CD40L)/CDl54、CD137L/4-1BBL、TNF-アルファ、CD134L/OX40L/CD252、CD27L/CD70、Fasリガンド(FasL)、CD30L/CD153、腫瘍壊死因子ベータ(TNFP)/リンホトキシン-アルファ(LTa)、リンホトキシン-ベータ(TTb)、CD257/B細胞活性化因子(BAFF)/Blys/THANK/Tall-l、グルココルチコイド誘導性TNF受容体リガンド(GITRL)、及びTNF関連アポトーシス誘導性リガンド(TRAIL)、LIGHT(TNFSF14)が挙げられるが、これらに限定されない。免疫グロブリン(Ig)スーパーファミリーは、細胞の認識、結合、または接着プロセスに関与する細胞表面タンパク質及び可溶性タンパク質の大きな群である。これらのタンパク質は免疫グロブリンと構造的特徴を共有しており、すなわちこれらは免疫グロブリンドメイン(折り畳み)を有する。免疫グロブリンスーパーファミリーリガンドとしては、いずれもCD28のリガンドであるCD80及びCD86が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、少なくとも1つの共刺激リガンドは、4-1BBL、CD275、CD80、CD86、CD70、OX40L、CD48、TNFRSF14、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。少なくとも1つの外因性または組換え共刺激リガンドは、4-1BBLまたはCD80であり得、好ましくは、少なくとも1つの外因性または組換え共刺激リガンドは、4-1BBLである。
【0159】
改変多能性幹細胞iPSCまたは造血系統細胞、例えばT細胞は、2つの外因性または組換え共刺激リガンドを含み得、好ましくは、2つの外因性または組換え共刺激リガンドは、4-1BBL及びCD80である。
【0160】
改変細胞は、免疫抑制性腫瘍微小環境を克服する外因性または組換えの少なくとも1つのコンストラクトを含み得る(例えば、細胞は、例えば遺伝子ノックインによって、当該少なくとも1つのコンストラクトをコードする核酸を形質導入されるか、またはそれを含むように操作される)。そのようなコンストラクトは、サイクリックAMPホスホジエステラーゼ及びドミナントネガティブ形質転換成長因子ベータ(TGFベータ)受容体IIであり得るが、これらに限定されない。改変幹細胞iPSCまたは造血系統細胞、例えば改変T細胞または改変T細胞の集団は、当該細胞の細胞溶解活性に正の影響を及ぼすサイトカインを放出するように操作され得る。そのようなサイトカインとしては、インターロイキン-7、インターロイキン-15、及びインターロイキン-21が挙げられるが、これらに限定されない。
【0161】
細胞機能及び活性化
本発明は、本発明による改変iPSCまたは造血系統細胞、好ましくはT細胞を提供し、ここで、iPSCまたは造血系統細胞及び/または異種TCRを、抗原またはペプチド抗原、例えば、がん抗原及び/または腫瘍抗原あるいはそのペプチド抗原、あるいは本明細書に記載されるがん抗原及び/または腫瘍抗原あるいはそのペプチド抗原を発現または提示するがん及び/または腫瘍細胞または組織に結合させることにより、任意選択的に以下のいずれか1つ以上によって決定される、iPSCまたは造血系統細胞の活性化及び/または機能を誘導することができる。
(a)T細胞活性化マーカー、例えばCD3+細胞上のCD69及び/またはCD25のいずれかのアップレギュレーション、
(b)サイトカイン産生、例えば、IFNガンマ、IL-2、またはグランザイムBのうちのいずれか1つ以上のアップレギュレーション、
(c)抗原または抗原ペプチドの存在下における細胞傷害活性の誘導、
(d)抗原または抗原ペプチドを提示する腫瘍細胞を殺傷する能力、
(e)サイトカイン及び/またはインターフェロンのiPSCまたは造血系統細胞の分泌の増加、
(f)例えば細胞マーカーにより判断される(例えばKi67発現レベルにより判断される)iPSCまたは造血系統細胞の増殖の増加、
(g)iPSCまたは造血系統細胞の抗原応答性の増加、
(h)iPSCまたは造血系統細胞の標的細胞殺傷の増加、
(i)iPSCまたは造血系統細胞のCD28シグナル伝達の増加、
(j)iPSCまたは造血系統細胞の腫瘍浸潤能の増加、
(k)樹状細胞提示抗原を認識しかつそれに結合する、iPSCまたは造血系統細胞の能力の増加、
(l)例えば、T-reg、骨髄系由来サプレッサー細胞(MDSC)、PD-L1タンパク質発現、またはCCL3、IL8、IL1β、CXCL10、もしくはsIL2Rαから選択される血清サイトカインレベル、またはPD-1、CTLA-4、TIM-3、LAG-3、BTLA、もしくはTIGITから選択される抑制性受容体のレベルに対する抑制性応答の低減により決定される、T細胞抑制因子に抵抗するiPSCまたは造血系統細胞の能力の増加、あるいは
(m)iPSCまたは造血系統細胞による、インターフェロン-γ、インターロイキン-6、インターロイキン-10、サイトカイン産生、例えば、IL-2、TNF-α、IFN-γ、及びグランザイムBのレベルの増加。
【0162】
好ましくは、(a)~(m)のiPSCまたは造血系統細胞は、T細胞である。
【0163】
TCR+細胞の持続性
本発明はまた、本明細書に記載される異種T細胞受容体(TCR)を発現または提示する改変多能性幹細胞iPSCまたは造血系統細胞の持続性の測定により決定される、TCR+細胞の持続性の改善を例えば培養物中または対象試料中で示す、本発明による改変iPSCまたは造血系統細胞、好ましくはT細胞を提供する。注入された、操作されかつ改変された多能性幹細胞iPSCまたは造血系統細胞の持続性は、治療効果と相関し、また長期安全性の尺度でもある。細胞持続性は、qPCRまたはフローサイトメトリー(FCM)によって決定され得る。例えば、DNA由来のコード遺伝子のPCRによるTCR+(例えば、AFP TCRまたはMAGE-A4 TCR)細胞の定量化。あるいは、異種TCRに関連するT細胞の表現型及び活性の定量化は、様々なアッセイ、例えば、
・細胞生成物/培養物中または注入前及び注入後の対象血液中のT細胞系統を決定するための表現型分析
・細胞生成物/培養物中のまたは対象試料由来のT細胞の老化及び活性化状態の定量化
・TCR+T細胞のin vivo機能を反映する可溶性因子の定量化、により決定され得る。
【0164】
核酸コンストラクトまたはベクター
本発明はまた、本発明による異種TCRをコードする核酸領域と、異種TCRをコードする核酸領域を組み込むための細胞ゲノム内の遺伝子座にある核酸領域に相同な核酸領域を含む少なくとも1つの相同領域と、を含む核酸コンストラクトまたはベクターを提供する。好ましくは、遺伝子座は本明細書で前述したとおりである。
【0165】
好ましくは、遺伝子座は、伸長因子複合体のメンバー、好ましくは翻訳伸長因子、好ましくは真核生物翻訳伸長因子1アルファ1をコードする遺伝子であるかまたはその中にあり、任意選択的に、遺伝子座は、真核生物翻訳伸長因子1アルファ1(EEF1A1)遺伝子のエクソン8にあり、任意選択的に、TAG終止コドンの前に、あるいはTAG終止コドンに直接隣接して及び/またはTAG終止コドンの前にある。
【0166】
異種TCRをコードする核酸は、TCRα鎖及び/またはTCRβ鎖のコード配列、例えば本明細書に記載されるものを、任意選択的に、酵素切断部位を含むペプチドをコードする介在核酸配列及び/またはリボソームスキッピングを媒介する核酸配列とともに含むことができ、好ましくは、酵素切断部位を含むペプチドをコードする核酸配列は、フューリン切断部位、好ましくはRAKRをコードし、好ましくは、リボソームスキッピングを媒介する核酸配列は、リボソームスキップ配列、好ましくはT2A及び/またはP2Aスキップ配列である。
【0167】
コンストラクトまたはベクターは、異種TCRをコードする核酸領域を組み込むための細胞ゲノム内の遺伝子座にある核酸領域にそれぞれ相同である左側及び/または右側相同領域を含むことができ、これは任意選択的に、組み込み部位の反対側に隣接する。
【0168】
したがって、コンストラクトまたはベクターは、
(a)組換え標的配列、好ましくはloxP(X-over P1の遺伝子座)配列、例えば配列番号48のloxP配列、
(b)発現可能な選択マーカー配列、好ましくは抗生物質耐性遺伝子、任意選択的にネオマイシン耐性遺伝子、好ましくは、プロモーター、例えばEF1Aプロモーターから構成的に発現されるもの、例えば配列番号47のEF1Aプロモーター配列、のいずれか1つ以上を更に含み得る。
【0169】
コンストラクトまたはベクターは、配列番号45の配列を含む異種TCR、配列番号43及び配列番号44の配列を含む相同領域、ならびに任意選択的に、配列番号48を含む組換え標的配列、及び/または配列番号47、配列番号49、もしくは配列番号56を含む発現可能な選択マーカー配列、をコードするヌクレオチド配列を含み得る。いくつかの実施形態では、コンストラクトまたはベクターは、配列番号57のヌクレオチド配列を含み得る。
【0170】
細胞集団の生成
本発明は更に、本発明による核酸コンストラクトまたはベクターを、未改変iPSCまたは造血系統細胞(任意選択的に本明細書に記載のもの)に、細胞ゲノム内の遺伝子座にまたはその中に異種T細胞受容体(TCR)をコードする核酸配列の組み込みを可能にする条件下で導入すること、及び任意選択的に、改変iPSCまたは造血系統細胞を単離すること、を含む、本発明による改変iPSCまたは造血系統細胞、例えばT細胞を生成するプロセスを提供する。このプロセスは、AAV、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、CRISPR、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、または操作されたメガヌクレアーゼを用いるものなどの既知のゲノム編集手法を使用して達成することができる。
【0171】
好ましい実施形態は、本発明による核酸コンストラクトまたはベクターを未改変iPSCに導入して、改変iPSC(任意選択的に本明細書に記載のもの)を生成すること、及び改変iPSCをT細胞に分化させることに関するプロセスを提供する。例えば、T細胞の集団を生成する方法は、
(i)T細胞受容体をコードする異種核酸をiPSCの集団の細胞ゲノム内の遺伝子座にまたはその中に導入すること、及び
(ii)iPSCの集団をT細胞に分化させること、を含み得る。
【0172】
他の実施形態は、改変免疫細胞、例えばT細胞の生成に関するプロセスを提供する。例えば、T細胞の集団を生成する方法は、
(i)任意選択的に、iPSCの集団をT細胞(もしくは他の免疫細胞)に分化させること、またはT細胞(もしくは他の免疫細胞)の集団を異なる供給源から得ること;及び
(i)T細胞受容体をコードする異種核酸をT細胞(または他の免疫細胞)の細胞ゲノム内の遺伝子座にまたはその中に導入すること、を含み得る。
【0173】
好ましくは、細胞ゲノム内の遺伝子座は、真核生物翻訳伸長因子1アルファ1(EEF1A1)遺伝子である。
【0174】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法で使用するためのiPSCは、RAG不活化iPSC(RAG-/-iPSC)、例えばRAG1及び/またはRAG2不活化iPSCであり得る。
【0175】
人工多能性幹細胞(iPSC)の集団は、iPSCの集団を造血系統細胞に分化させ、造血系統細胞をT細胞に分化及び/または成熟させることにより、T細胞に分化させることができる。例えば、人工多能性幹細胞(iPSC)の集団を、
(i)人工多能性幹細胞(iPSC)の集団を中胚葉細胞に分化させること;
(ii)中胚葉細胞(MC)を分化させて造血内皮細胞(HEC)の集団を生成すること;
(iii)HECを造血前駆細胞(HPC)の集団に分化させること;
(iv)HPCの集団を前駆T細胞に分化させること;及び
(v)前駆T細胞を成熟させて二重陽性CD4+CD8+T細胞の集団を生成すること、を含む方法により、T細胞に分化させることができる。
【0176】
本方法は、
(vi)T細胞を活性化及び増大させて、単一陽性CD8+T細胞の集団または単一陽性CD4+T細胞の集団を生成することを更に含み得る。
【0177】
本明細書に記載される方法の工程における細胞集団の分化及び成熟は、分化因子のセットを補充した培養培地で細胞を培養することにより誘導される。各培養培地について挙げられる分化因子のセットは、好ましくは網羅的であり、培地は他の分化因子を欠いていてもよい。好ましい実施形態では、培養培地は既知組成培地である。例えば、培養培地は、後述するように、有効量の1つ以上の分化因子を補充した既知組成栄養培地からなり得る。既知組成栄養培地は、1つ以上の無血清培養培地サプリメントを補充した基本培地を含み得る。
【0178】
分化因子は、哺乳動物細胞の分化を媒介するシグナル伝達経路を調整する、例えば促進または阻害する因子である。分化因子は、アクチビン/Nodal、FGF、Wnt、またはBMPシグナル伝達経路のうちの1つ以上を調整する成長因子、サイトカイン、及び小分子を含み得る。分化因子の例としては、アクチビン/Nodal、FGF、BMP、レチノイン酸、血管内皮成長因子(VEGF)、幹細胞因子(SCF)、TGFβリガンド、GDF、LIF、インターロイキン、GSK-3阻害剤、及びホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)阻害剤が挙げられる。
【0179】
本明細書に記載される培地のうちの1つ以上で使用される分化因子には、TGFβリガンド、例えばアクチビン、線維芽細胞成長因子(FGF)、骨形態形成タンパク質(BMP)、幹細胞因子(SCF)、血管内皮成長因子(VEGF)、GSK-3阻害剤(例えばCHIR-99021)、インターロイキン、ならびにIGF-1及びアンギオテンシンIIなどのホルモンが含まれる。分化因子は、培地で培養される細胞におけるシグナル伝達経路を調整するのに有効な量で、本明細書に記載される培地に存在し得る。
【0180】
いくつかの実施形態では、培養培地中の、上記または下記に挙げる分化因子を、同じシグナル伝達経路に対して同じ効果(すなわち刺激または阻害)を及ぼす因子によって置き換えてもよい。好適な因子は、当該技術分野で公知であり、タンパク質、核酸、抗体、及び小分子を含む。
【0181】
各工程中の細胞集団の分化の程度は、分化中の細胞集団における1つ以上の細胞マーカーの発現をモニタリングする及び/または検出することによって決定され得る。例えば、分化度の高い細胞型に特徴的なマーカーの発現の増加、または分化度の低い細胞型に特徴的なマーカーの発現の減少が決定され得る。細胞マーカーの発現は、免疫細胞化学、免疫蛍光、RT-PCR、イムノブロッティング、蛍光活性化細胞選別(FACS)、及び酵素分析を含む任意の好適な技法によって決定され得る。好ましい実施形態では、マーカーが細胞表面上で検出可能であれば、細胞はマーカーを発現すると言える。例えば、本明細書においてマーカーを発現しないと記載される細胞は、マーカー遺伝子の活発な転写及び細胞内発現を示す可能性があるが、細胞の表面に検出可能なレベルのマーカーは存在しない可能性がある。
【0182】
本明細書に記載される方法の一工程によって生成される、部分的に分化した細胞の集団は、次の分化工程の前に培養する、維持する、または増大させることができる。部分的に分化した細胞は、任意の簡便な技法によって増大させることができる。
【0183】
各工程の後、その工程によって生成される部分的に分化した細胞の集団は、培地中での培養後に、1%以上、5%以上、10%以上、または15%以上の部分的に分化した細胞を含有し得る。必要に応じて、部分的に分化した細胞の集団は、MACまたはFACSなどの任意の簡便な技法によって精製することができる。
【0184】
細胞は、フィブロネクチン、ラミニン、またはコラーゲンなどの細胞外マトリックスタンパク質でコーティングされた表面または基質上で、フィーダー細胞の非存在下で単層において培養することができる。細胞培養に好適な技法は当該技術分野で周知である(例えば、Basic Cell Culture Protocols,C.Helgason,Humana Press Inc.U.S.(15 Oct 2004)ISBN:1588295451、Human Cell Culture Protocols(Methods in Molecular Medicine S.)Humana Press Inc.,U.S.(9 Dec 2004)ISBN:1588292223、Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique,R.Freshney,John Wiley&Sons Inc(2 Aug 2005)ISBN:0471453293、Ho WY et al J Immunol Methods.(2006)310:40-52、Handbook of Stem Cells(ed.R.Lanza)ISBN:0124366430)Basic Cell Culture Protocols’by J.Pollard and J.M.Walker(1997)、‘Mammalian Cell Culture:Essential Techniques’by A.Doyle and J.B.Griffiths(1997)、‘Human Embryonic Stem Cells’by A.Chiu and M.Rao(2003)、Stem Cells:From Bench to Bedside’by A.Bongso(2005)、Peterson&Loring(2012)Human Stem Cell Manual:A Laboratory Guide Academic Press、及び‘Human Embryonic Stem Cell Protocols’by K.Turksen(2006)を参照されたい)。培地及びその成分は、商業的供給源(例えばGibco、Roche、Sigma、Europa bioproducts、R&D Systems)から取得され得る。上記の培養工程では、標準的な哺乳動物細胞培養条件、例えば37℃、5%または21%の酸素、5%の二酸化炭素を用いることができる。培地は2日ごとに交換し、細胞を重力によって沈降させることが好ましい。
【0185】
細胞は培養容器内で培養され得る。好適な細胞培養容器は、当該技術分野で周知であり、培養プレート、ディッシュ、フラスコ、バイオリアクター、及びマルチウェルプレート、例えば6ウェル、12ウェル、または96ウェルプレートを含む。
【0186】
培養容器は、例えば、フィブロネクチン、ラミニン、またはコラーゲンなどの細胞外マトリックスタンパク質で容器の1つ以上の表面をコーティングすることによって、組織培養用に処理されることが好ましい。培養容器は、標準的技法を使用して、例えば本明細書に記載されるコーティング溶液とともにインキュベートすることによって組織培養用に処理してもよく、または商業的供給者から前処理されたものを取得してもよい。
【0187】
第1段階では、中胚葉分化を促進する好適な条件下でiPSCの集団を培養することにより、iPSCが中胚葉細胞に分化し得る。例えば、iPSC細胞は、中胚葉細胞への分化を誘導するために第1、第2、及び第3の中胚葉誘導培地で連続的に培養され得る。
【0188】
好適な第1の中胚葉誘導培地は、SMAD2及びSMAD3媒介シグナル伝達経路を刺激し得る。例えば、第1の中胚葉誘導培地は、アクチビンを含み得る。
【0189】
好適な第2の中胚葉誘導培地は、(i)SMAD1、SMAD2、SMAD3、SMAD5、及びSMAD9、及び/またはSMAD1、SMAD2、SMAD3、SMAD5、及びSMAD9媒介シグナル伝達経路を刺激し、かつ(ii)線維芽細胞成長因子(FGF)活性を有し得る。例えば、第2の中胚葉誘導培地は、アクチビン、好ましくはアクチビンA、BMP、好ましくはBMP4、及びFGF、好ましくはbFGFを含み得る。
【0190】
好適な第3の中胚葉誘導培地は、(i)SMAD1、SMAD2、SMAD3、SMAD5、及びSMAD9、及び/またはSMAD1、SMAD2、SMAD3、SMAD5、及びSMAD9媒介シグナル伝達経路を刺激し、(ii)線維芽細胞成長因子(FGF)活性を有し、かつ(iii)グリコーゲンシンターゼキナーゼ3βを阻害し得る。例えば、第3の中胚葉誘導培地は、アクチビン、好ましくはアクチビンA、BMP、好ましくはBMP4、FGF、好ましくはbFGF、及びGSK3阻害剤、好ましくはCHIR99021を含み得る。
【0191】
第1、第2、及び第3の中胚葉誘導培地は、上記の分化因子以外の分化因子を欠いていてもよい。
【0192】
SMAD2及びSMAD3媒介細胞内シグナル伝達経路は、第1、第2、及び第3の中胚葉誘導培地によって、培地中の第1のTGFβリガンドの存在を通じて刺激され得る。第1のTGFβリガンドは、アクチビンであり得る。アクチビン(アクチビンA:NCBI遺伝子ID:3624 核酸参照配列NM_002192.2 GI:62953137、アミノ酸参照配列NP_002183.1 GI:4504699)は、アクチビン/Nodal経路の刺激を介して様々な細胞効果を及ぼす二量体ポリペプチドである(Vallier et al.,Cell Science 118:4495-4509(2005))。アクチビンは、商業的供給源(例えば、Stemgent Inc.MA USA、Miltenyi Biotec Gmbh,DE)から容易に入手可能である。好都合なことに、本明細書に記載される培地中のアクチビンの濃度は、1~100ng/ml、例えば、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、17、20、25、30、35、40、45、または50、55、60、65、70、75、80、85、90、または95ng/mlのいずれか、好ましくは約5~50ng/mlであり得る。
【0193】
第2及び第3の中胚葉誘導培地の線維芽細胞成長因子(FGF)活性は、培地中の線維芽細胞成長因子(FGF)の存在によって提供され得る。線維芽細胞成長因子(FGF)は、線維芽細胞成長因子受容体(FGFR)に結合することによって細胞の成長、増殖、及び細胞分化を刺激するタンパク質因子である。好適な線維芽細胞成長因子は、FGFファミリーのいずれかのメンバー、例えばFGF1~FGF14及びFGF15~FGF23のいずれか1つを含む。好ましくは、FGFは、FGF2(別称bFGF、NCBI遺伝子ID:2247、核酸配列NM_002006.3 GI:41352694、アミノ酸配列NP_001997.4 GI:41352695)、FGF7(別称ケラチノサイト成長因子(またはKGF)、NCBI遺伝子ID:2247、核酸配列NM_002006.3 GI:41352694、アミノ酸配列NP_001997.4 GI:41352695)、またはFGF10(NCBI遺伝子ID:2247、核酸配列NM_002006.3 GI:41352694、アミノ酸配列NP_001997.4 GI:41352695)である。最も好ましくは、線維芽細胞成長因子はFGF2である。
【0194】
好都合なことに、本明細書に記載される培地中のFGF、例えばFGF2の濃度は、0.5~50ng/ml、例えば、約0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、50ng/mlのいずれか、好ましくは約5ng/mlであり得る。FGF2、FGF7及びFGF10などの線維芽細胞成長因子は、慣例的な組換え技法を使用して生成するか、または商業的供給者(例えばR&D Systems,Minneapolis,MN、Stemgent Inc,USA、Miltenyi Biotec Gmbh,DE)から取得することができる。
【0195】
SMAD1、SMAD5、及びSMAD9媒介細胞内シグナル伝達経路は、第2及び第3の中胚葉誘導培地によって、培地中の第2のTGFβリガンドの存在を通じて刺激され得る。
【0196】
第2のTGFβリガンドは、骨形態形成タンパク質(BMP)であり得る。骨形態形成タンパク質(BMP)は、骨形態形成タンパク質受容体(BMPR)に結合し、SMAD1、SMAD5、及びSMAD9によって媒介される経路を通じて細胞内シグナル伝達を刺激する。好適な骨形態形成タンパク質は、BMPファミリーのいずれかのメンバー、例えばBMP2、BMP3、BMP4、BMP5、BMP6、またはBMP7を含む。好ましくは、第2のTGFβリガンドは、BMP2(NCBI遺伝子ID:650、核酸配列NM_001200.2 GI:80861484;アミノ酸配列NP_001191.1 GI:4557369)またはBMP4(NCBI遺伝子ID:652、核酸配列NM_001202.3 GI:157276592;アミノ酸配列NP_001193.2 GI:157276593)である。好適なBMPはBMP4を含む。好都合なことに、本明細書に記載される培地中の骨形態形成タンパク質、例えばBMP2またはBMP4の濃度は、1~500ng/ml、例えば、約0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、50、100、150、200、250、300、350、400、450、500ng/mlのいずれか、好ましくは約10ng/mlであり得る。BMPは、慣例的な組換え技法を使用して生成するか、または商業的供給者(例えばR&D,Minneapolis,USA、Stemgent Inc,USA、Miltenyi Biotec Gmbh,DE)から取得することができる。
【0197】
第3の中胚葉誘導培地中のGSK3β阻害活性は、培地中のGSK3β阻害剤の存在によって提供され得る。GSK3β阻害剤は、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3β(遺伝子ID 2932:EC2.7.11.26)の活性を阻害する。好ましい阻害剤は、グリコーゲンシンターゼキナーゼ3βの活性を特異的に阻害する。好適な阻害剤としては、CHIR99021(6-((2-((4-(2,4-ジクロロフェニル)-5-(4-メチル-1H-イミダゾール-2-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)エチル)アミノ)ニコチノニトリル;Ring D.B.et al.,Diabetes,52:588-595(2003))、アルステルパウロン、ケンパウロン、BIO(6-ブロモインジルビン-3’-オキシム(Sato et al Nat Med.2004 Jan;10(1):55-63)、SB216763(3-(2,4-ジクロロフェニル)-4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)-1H-ピロール-2,5-ジオン)、リチウム及びSB415286(3-[(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)アミノ]-4-(2-ニトロフェニル)-1H-ピロール-2,5-ジオン;Coghlan et al Chem Biol.2000 Oct;7(10):793-803)が挙げられる。いくつかの好ましい実施形態では、GSK3β阻害剤はCHIR99021である。好適なグリコーゲンシンターゼキナーゼ3β阻害剤は、商業的供給者(例えば、Stemgent Inc.MA USA、Cayman Chemical Co.MI USA、Selleckchem,MA USA)から取得することができる。例えば、第3の中胚葉誘導培地は、0.1~100μM、例えば約0.1、0.25、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、または95μMのいずれか、好ましくは約10μMのGSK3β阻害剤、例えばCHIR99021を含有し得る。
【0198】
好ましい実施形態では、第1、第2、及び第3の中胚葉誘導培地は、既知組成培地である。例えば、第1の中胚葉誘導培地は、有効量のアクチビン、好ましくはアクチビンA、例えば50ng/mlのアクチビンAを補充した既知組成栄養培地からなることができ、第2の中胚葉誘導培地は、有効量のアクチビン、好ましくはアクチビンA、例えば5ng/mlのアクチビンAと、BMP、好ましくはBMP4、例えば10ng/mlのBMP4と、FGF、好ましくはbFGF(FGF2)、例えば5ng/mlのbFGFとを補充した既知組成栄養培地からなることができ、第3の中胚葉誘導培地は、有効量のアクチビン、好ましくはアクチビンA、例えば5ng/mlのアクチビンAと、BMP、好ましくはBMP4、例えば10ng/mlのBMP4と、FGF、好ましくはbFGF(FGF2)、例えば5ng/mlのbFGFと、GSK3阻害剤、好ましくはCHIR-99021、例えば10μMのCHIR-99021とを補充した既知組成栄養培地からなることができる。
【0199】
既知組成培地(CDM)は、特定の成分、好ましくは既知の化学構造の成分のみを含有する、細胞を培養するための栄養溶液である。CDMは、フィーダー細胞、間質細胞、血清、及びmatrigel(商標)のような複雑な細胞外マトリックスなどの不定成分を含めた不定の成分または構成成分を欠いている。例えば、CDMは、DLL1またはDLL4などのNotchリガンドを発現するOP9細胞などの間質細胞を含有しない。
【0200】
既知組成栄養培地は、既知組成基本培地を含み得る。好適な既知組成基本培地としては、イスコフ改変ダルベッコ培地(IMDM)、ハムF12、改良されたダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)(Price et al Focus(2003),25 3-6)、Williams E(Williams,G.M.et al Exp. Cell Research,89,139-142(1974))、RPMI-1640(Moore,G.E.and Woods L.K.,(1976)Tissue Culture Association Manual.3,503-508)、及びStemPro(商標)-34 PLUS(ThermoFisher Scientific)が挙げられる。
【0201】
基本培地には、培地中に無血清培養培地サプリメント及び/または追加の成分を補充してもよい。好適なサプリメント及び追加の成分は上述されており、L-グルタミンまたはGlutaMAX-1(商標)などの代替物、アスコルビン酸、モノチオールグリセロール(MTG)、ペニシリン及びストレプトマイシンなどの抗生物質、ヒト血清アルブミン、例えばCellastim(商標)(Merck/Sigma)及びRecombumin(商標)(albumedix.com)などの組換えヒト血清アルブミン、インスリン、トランスフェリン、ならびに2-メルカプトエタノールを含み得る。基本培地には、Knockout Serum Replacement(KOSR;Invitrogen)などの血清代替物を補充してもよい。
【0202】
iPSCは、中胚葉細胞の集団を生成するために、第1の中胚葉誘導培地で1~12時間、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または12時間のいずれか、好ましくは約4時間培養され、次いで第2の中胚葉誘導培地で30~54時間、例えば35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または50時間のいずれか、好ましくは約44時間培養され、次いで第3の中胚葉誘導培地で36~60時間、例えば37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、または53時間のいずれか、好ましくは約48時間培養され得る。
【0203】
中胚葉細胞は、中胚葉系統にコミットした部分的に分化した前駆細胞であり、適切な条件下で間葉(線維芽細胞)、筋肉、骨、脂肪、血管、及び造血系の全ての細胞型に分化することができる。中胚葉細胞は、1つ以上の中胚葉マーカーを発現し得る。例えば、中胚葉細胞は、Brachyury、Goosecoid、Mixl1、KDR、FoxA2、GATA6、及びPDGFαRのうちのいずれか1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、または7つ全てを発現し得る。
【0204】
第2段階では、造血内皮(HE)分化を促進する好適な条件下で中胚葉細胞の集団を培養することにより、中胚葉細胞が造血内皮細胞(HEC)に分化し得る。例えば、iPSC細胞は、HE誘導培地で培養され得る。
【0205】
好適なHE誘導培地は、(i)cKIT受容体(CD117)及び/またはcKIT受容体(CD117)媒介シグナル伝達経路を刺激し、かつ(ii)VEGFR及び/またはVEGFR媒介シグナル伝達経路を刺激し得る。例えば、HE誘導培地は、SCF及びVEGFを含み得る。
【0206】
血管内皮成長因子(VEGF)は、VEGFRチロシンキナーゼ受容体に結合し、脈管形成及び血管新生を刺激するPDGFファミリーのタンパク質因子である。好適なVEGFは、VEGFファミリーのいずれかのメンバー、例えばVEGF-A~VEGF-D及びPIGFのうちのいずれか1つを含む。好ましくは、VEGFは、VEGF-A(別称VEGF、NCBI遺伝子ID:7422、核酸配列NM_001025366.2、アミノ酸配列NP_001020537.2)である。VEGFは、商業的供給源(例えばR&D Systems,USA)から容易に入手可能である。好都合なことに、本明細書に記載されるHE誘導培地中のVEGFの濃度は、1~100ng/ml、例えば、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、または50、55、60、65、70、75、80、85、90、または95ng/mlのいずれか、好ましくは約15ng/mlであり得る。
【0207】
HE誘導培地のいくつかの例では、VEGFは、VEGFR媒介シグナル伝達経路を刺激するVEGFアクチベーターまたはアゴニストによって置き換えられ得る。好適なVEGFアクチベーターは、当該技術分野で公知であり、グレムリンなどのタンパク質(Mitola et al(2010)Blood 116(18)3677-3680)、shRNAなどの核酸(例えば、Turunen et al Circ Res.2009 Sep 11;105(6):604-9)、CRISPRベースのプラスミド(例えば、VEGF CRISPR活性化プラスミド;Santa Cruz Biotech,USA)、抗体及び小分子を含む。
【0208】
幹細胞因子(SCF)は、KIT受容体(KITがん原遺伝子、受容体チロシンキナーゼ)(CD117;SCFR)に結合するサイトカインであり、造血に関与する。SCF(別名KITLG、NCBI遺伝子ID:4254)は、参照核酸配列NM_000899.5またはNM_03994.5及び参照アミノ酸配列NP_000890.1またはNP_003985.5を有し得る。SCFは、商業的供給源(例えばR&D Systems,USA)から容易に入手可能である。好都合なことに、本明細書に記載されるHE誘導培地中のSCFの濃度は、1~1000ng/ml、例えば、約10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900ng/mlのいずれか、好ましくは約100ng/mlであり得る。
【0209】
好ましい実施形態では、HE誘導培地は既知組成培地である。例えば、HE誘導培地は、有効量のVEGF、例えば15ng/mlのVEGFと、SCF、例えば100ng/mlのSCFとを補充した既知組成栄養培地からなり得る。
【0210】
好適な既知組成栄養培地は上述されており、StemPro(商標)-34(ThermoFisher Scientific)を含む。
【0211】
中胚葉細胞は、HE細胞の集団を生成するために、HE誘導培地で2~6日間、または3~5日間、好ましくは約4日間培養され得る。
【0212】
造血内皮細胞(HEC)は、造血能を有し、適切な条件下で造血系統に分化することができる、部分的に分化した内皮前駆細胞である。HE細胞はCD34を発現し得る。いくつかの実施形態では、HECは、CD73またはCXCR4(CD184)を発現しない場合がある。例えば、HE細胞は、表現型CD34+CD73-またはCD34+CD73-CXCR4-を有し得る。
【0213】
第3段階では、造血分化を促進する好適な条件下でHE細胞の集団を培養することにより、造血内皮(HE)細胞が造血前駆細胞(HPC)に分化し得る。例えば、HE細胞は、造血誘導培地で培養され得る。
【0214】
好適な造血誘導培地は、(i)cKIT受容体(CD117)及び/またはcKIT受容体(CD117)媒介シグナル伝達経路、(ii)VEGFR及び/またはVEGFR媒介シグナル伝達経路、(iii)MPL(CD110)及び/またはMPL(CD110)媒介シグナル伝達経路、(iv)FLT3及び/またはFLT3媒介シグナル伝達経路、(v)IGF1R及び/またはIGF1R媒介シグナル伝達経路、(vi)SMAD1、5及び9及び/またはSMAD1、5及び9媒介シグナル伝達経路、(vii)ヘッジホッグ及び/またはヘッジホッグシグナル伝達経路、(viii)EpoR及び/またはEpoR媒介シグナル伝達経路、ならびに(ix)AGTR2及び/またはAGTR2媒介シグナル伝達経路を刺激し得る。好適な造血誘導培地はまた、AGTR1(アンギオテンシンII 1型受容体(AT1))及び/またはAGTR1(アンギオテンシンII 1型受容体(AT1))媒介シグナル伝達経路を阻害し得る。好適な造血誘導培地は、インターロイキン(IL)活性及びFGF活性も有し得る。
【0215】
例えば、造血誘導培地は、分化因子:VEGF、SCF、トロンボポエチン(TPO)、Flt3リガンド(Flt3L)、IL-3、IL-6、IL-7、IL-11、IGF-1、BMP、FGF、ソニックヘッジホッグ(SHH)、エリスロポエチン(EPO)、アンギオテンシンII、及びアンギオテンシンII 1型受容体(AT1)アンタゴニストを含み得る。好適な造血誘導培地の一例は、以下の表1に示す第3段階培地である。
【0216】
トロンボポエチン(TPO)は、血小板の生成を調節する糖タンパク質ホルモンである。TPO(別名THPO、NCBI遺伝子ID:7066)は、参照核酸配列NM_000460.4及び参照アミノ酸配列NP_000451.1を有し得る。TPOは、商業的供給源(例えばR&D Systems,USA、Miltenyi Biotec Gmbh,DE)から容易に入手可能である。好都合なことに、本明細書に記載される造血誘導培地中のTPOの濃度は、3~300ng/ml、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、27、30、32、35、40、45、50、60、70、80、90、または100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、225、250、275、または300ng/mlのいずれか、好ましくは約30ng/mlであり得る。
【0217】
Flt3リガンド(Fms関連チロシンキナーゼ3リガンドまたはFLT3L)は、FLT3受容体に結合する造血活性を有するサイトカインであり、前駆細胞の増殖及び分化を刺激する。Flt3リガンド(別名FLT3LG、NCBI遺伝子ID:2323)は、参照核酸配列NM_001204502.2及び参照アミノ酸配列NP_001191431.1を有し得る。Flt3は、商業的供給源(例えばR&D Systems,USA、Miltenyi Biotec Gmbh,DE)から容易に入手可能である。好都合なことに、本明細書に記載される造血誘導培地中のFlt3リガンドの濃度は、0.25~250ng/ml、例えば約0.25、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、125、150、175、200、225、または250ng/mlのいずれか、好ましくは約25ng/mlであり得る。
【0218】
インターロイキン(IL)は、免疫の発達及び機能において重要な役割を果たすサイトカインである。造血誘導培地中のILには、IL-3、IL-6、IL-7、及びIL-11が含まれ得る。
【0219】
IL-3(別名IL3またはMCGF、NCBI遺伝子ID:3562)は、参照核酸配列NM_000588.4及び参照アミノ酸配列NP_000579.2を有し得る。IL-3は、商業的供給源(例えばR&D Systems,USA、Miltenyi Biotec Gmbh,DE)から容易に入手可能である。好都合なことに、本明細書に記載される造血誘導培地中のIL-3の濃度は、0.25~250ng/ml、例えば約0.25、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、125、150、175、200、225、または250ng/mlのいずれか、好ましくは約25ng/mlであり得る。
【0220】
IL-6(別名IL6またはHGF、NCBI遺伝子ID:3569)は、参照核酸配列NM_000600.5及び参照アミノ酸配列NP_000591.5を有し得る。IL-6は、商業的供給源(例えばR&D Systems,USA、Miltenyi Biotec Gmbh,DE)から容易に入手可能である。好都合なことに、本明細書に記載される造血誘導培地中のIL-6の濃度は、0.1~100ng/ml、例えば約0.1、0.25、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、または95ng/mlのいずれか、好ましくは約10ng/mlであり得る。
【0221】
IL-7(別名IL7、NCBI遺伝子ID:3574)は、参照核酸配列NM_000880.4及び参照アミノ酸配列NP_000871.1を有し得る。IL-7は、商業的供給源(例えばR&D Systems,USA、Miltenyi Biotec Gmbh,DE)から容易に入手可能である。好都合なことに、本明細書に記載される造血誘導培地中のIL-7の濃度は、0.1~100ng/ml、例えば約0.1、0.25、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、または95ng/mlのいずれか、好ましくは約10ng/mlであり得る。
【0222】
IL-11(別名AGIF、NCBI遺伝子ID:3589)は、参照核酸配列NM_000641.4及び参照アミノ酸配列NP_000632.1を有し得る。IL-11は、商業的供給源(例えばR&D Systems,USA、Miltenyi Biotec Gmbh,DE)から容易に入手可能である。好都合なことに、本明細書に記載される造血誘導培地中のIL-11リガンドの濃度は、0.5~100ng/ml、例えば約0.5、0.75、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、または95ng/mlのいずれか、好ましくは約5ng/mlであり得る。
【0223】
インスリン様成長因子1(IGF-1)は、チロシンキナーゼIGF-1受容体(IGF1R)及びインスリン受容体に結合するホルモンであり、複数のシグナル伝達経路を活性化する。IGF-1(別名IGFまたはMGF、NCBI遺伝子ID:3479)は、参照核酸配列NM_000618.5及び参照アミノ酸配列NP_000609.1を有し得る。IGF-1は、商業的供給源(例えばR&D Systems,USA)から容易に入手可能である。好都合なことに、本明細書に記載される造血誘導培地中のIGF-1の濃度は、0.25~250ng/ml、例えば約0.25、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、17、20、22、25、27、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、125、150、175、200、225、または250ng/mlのいずれか、好ましくは約25ng/mlであり得る。
【0224】
ソニックヘッジホッグ(SHH)は、脊椎動物の器官形成を調節するヘッジホッグシグナル伝達経路のリガンドである。SHH(別名TPTまたはHHG1、NCBI遺伝子ID:6469)は、参照核酸配列NM_000193.4及び参照アミノ酸配列NP_000184.1を有し得る。SHHは、商業的供給源(例えばR&D Systems,USA、Miltenyi Biotec Gmbh,DE)から容易に入手可能である。好都合なことに、本明細書に記載される造血誘導培地中のSHHの濃度は、0.25~250ng/ml、例えば約0.25、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、17、20、22、25、27、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、125、150、175、200、225、または250ng/mlのいずれか、好ましくは約25ng/mlであり得る。
【0225】
エリスロポエチン(EPO)は、エリスロポエチン受容体(EpoR)に結合する糖タンパク質サイトカインであり、赤血球形成を刺激する。EPO(別名DBAL、NCBI遺伝子ID:2056)は、参照核酸配列NM_000799.4及び参照アミノ酸配列NP_000790.2を有し得る。EPOは、商業的供給源(例えばR&D Systems,USA、PreproTech,USA)から容易に入手可能である。好都合なことに、本明細書に記載される造血誘導培地中のEPOの濃度は、0.02~20U/ml、例えば約0.025、0.05、0.075、0.1、0.5、0.75、1.0、1.5、2.0、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、13、15、17、または19U/mlのいずれか、好ましくは約2U/mlであり得る。
【0226】
アンギオテンシンIIは、アンギオテンシンIに対するアンギオテンシン変換酵素(ACE)の作用によって形成されるヘプタペプチドホルモンである。アンギオテンシンIIは、血管収縮を刺激する。アンギオテンシンI及びIIは、参照核酸配列NM_000029.4及び参照アミノ酸配列NP_000020.1を有し得るアンギオテンシノーゲン(別名AGT、NCBI遺伝子ID:183)の切断によって形成される。アンギオテンシンIIは、商業的供給源(例えばR&D Systems,USA、Tocris,USA)から容易に入手可能である。好都合なことに、本明細書に記載される造血誘導培地中のアンギオテンシンIIの濃度は、0.05~50ng/ml、例えば約0.05、0.075、0.1、0.5、0.75、1.0、1.5、2.0、2.5、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、または50ng/mlのいずれか、好ましくは約5ng/mlであり得る。
【0227】
アンギオテンシンII 1型受容体(AT1)アンタゴニスト(ARB)は、AT1受容体(AGTR1;遺伝子ID 185)の活性化を選択的に遮断する化合物である。好適なAT1アンタゴニストとしては、ロサルタン(2-ブチル-4-クロロ-1-{[2’-(1H-テトラゾール-5-イル)-4-ビフェニリル]メチル}-1H-イミダゾール-5-イル)メタノール)、バルサルタン((2S)-3-メチル-2-(ペンタノイル{[2’-(1H-テトラゾール-5-イル)ビフェニル-4-イル]メチル}アミノ)ブタン酸)、及びテルミサルタン(4’[(1,4’-ジメチル-2’-プロピル[2,6’-ビ-1H-ベンズイミダゾール]-1’-イル)メチル][1,1’-ビフェニル]-2-カルボン酸が挙げられる。いくつかの好ましい実施形態では、AT1アンタゴニストはロサルタンである。好適なAT1アンタゴニストは、商業的供給者(例えばTocris,USA、Cayman Chemical Co.MI USA)から取得することができる。好都合なことに、本明細書に記載される造血誘導培地中のアンギオテンシンII 1型受容体(AT1)アンタゴニストの濃度は、1~1000μM、例えば約2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800、900ng/mlのいずれか、好ましくは約100μMであり得る。
【0228】
好ましい実施形態では、造血誘導培地は既知組成培地である。例えば、造血誘導培地は、有効量の、例えば15ng/mlのVEGFと、例えば100ng/mlのSCFと、例えば30ng/mlのトロンボポエチン(TPO)と、例えば25ng/mlのFlt3リガンド(FLT3L)と、例えば25ng/mlのIL-3と、例えば10ng/mlのIL-6と、例えば10ng/mlのIL-7と、例えば5ng/mlのIL-11と、例えば25ng/mlのIGF-1と、BMP、例えば10ng/mlのBMP4と、FGF、例えば5ng/mlのbFGFと、例えば25ng/mlのソニックヘッジホッグ(SHH)と、例えば2U/mlのエリスロポエチン(EPO)と、例えば10μg/mlのアンギオテンシンIIと、アンギオテンシンII 1型受容体(AT1)アンタゴニスト、例えば100μMのロサルタンとを補充した既知組成栄養培地からなり得る。好適な造血誘導培地は、他の分化因子を欠いていてもよい。例えば、造血誘導培地は、1つ以上の分化因子を補充した既知組成栄養培地からなることができ、ここで、1つ以上の分化因子は、VEGF、SCF、トロンボポエチン(TPO)、Flt3リガンド(Flt3L)、IL-3、IL-6、IL-7、IL-11、IGF-1、BMP、FGF、ソニックヘッジホッグ(SHH)、エリスロポエチン(EPO)、アンギオテンシンII、及びアンギオテンシンII 1型受容体(AT1)アンタゴニストからなる(すなわち、培地は、VEGF、SCF、トロンボポエチン(TPO)、Flt3リガンド(Flt3L)、IL-3、IL-6、IL-7、IL-11、IGF-1、BMP、FGF、ソニックヘッジホッグ(SHH)、エリスロポエチン(EPO)、アンギオテンシンII、及びアンギオテンシンII 1型受容体(AT1)アンタゴニスト以外の分化因子を含有しない)。
【0229】
好適な既知栄養培地は上述されており、StemPro(商標)-34 PLUS(ThermoFisher Scientific)、または後述するようなアルブミン、インスリン、セレニウムトランスフェリン、及び脂質を補充したIMDMなどの基本培地を含む。
【0230】
HE細胞は、HPCの集団を生成するために、造血誘導培地で8~21日間、例えば約9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20日間のいずれか、好ましくは約16日間培養され得る。
【0231】
HPC(別名造血幹細胞)は、造血系統にコミットした多分化能性幹細胞であり、単球、B細胞、及びT細胞を含む、骨髄系統及びリンパ系統を含めた全ての血液細胞型への更なる造血分化が可能である。HPCはCD34を発現し得る。HPCは、CD133、CD45、及びFLK1(別称KDRまたはVEGFR2)を共発現する場合があり、CD38及び他の系統特異的マーカーの発現について陰性であり得る。例えば、HPCは、表現型CD34+CD133+CD45+FLK1+CD38-を示し得る。
【0232】
HE細胞からHPCを作製した後、1つ以上のCD34などの細胞表面マーカーを発現するHPCの集団は、更なる分化に供される前に、例えば磁気活性化細胞選別(MACS)により精製され得る。例えば、CD34+HPCの集団が精製され得る。CD34+HPCは、HE誘導培地で8日間、例えば8、9、または10日間の培養後に精製され得る。CD34+HPCは、16日間の分化後、例えば分化方法の16、17、または18日目に精製され得る。
【0233】
第4段階において、造血前駆細胞(HPC)は、リンパ系分化を促進する好適な条件下でHPCの集団を培養することにより、前駆T細胞に分化し得る。例えば、造血前駆細胞は、リンパ系増大培地で培養され得る。
【0234】
リンパ系増大培地は、前駆T細胞へのHPCのリンパ系分化を促進する細胞培養培地である。
【0235】
好適なリンパ系増大培地は、(i)cKIT受容体(CD117;KIT受容体チロシンキナーゼ)及び/またはcKIT受容体(CD117;KIT受容体チロシンキナーゼ)媒介シグナル伝達経路を刺激し、(ii)MPL(CD110)及び/またはMPL(CD110)媒介シグナル伝達経路を刺激し、(iii)FLT3及び/またはFLT3媒介シグナル伝達経路を刺激し、かつ(iv)インターロイキン(IL)活性を有し得る。例えば、リンパ系増大培地は、分化因子SCF、FLT3L、TPO、及びIL7を含み得る。
【0236】
好ましい実施形態では、リンパ系増大培地は、既知組成培地である。例えば、リンパ系増大培地は、有効量の上記の分化因子を補充した既知組成栄養培地からなり得る。好適なリンパ系増大培地は、当該技術分野で周知であり、Stemspan(商標)リンパ系増大サプリメント(カタログ番号9915;StemCell Technologies Inc,CA)を補ったStemspan(商標)SFEM II(カタログ番号9605;StemCell Technologies Inc,CA)を含む。
【0237】
HPCは、前駆T細胞への分化中に表面上で培養され得る。例えば、HPCは、培養容器、ビーズ、または他の生体材料もしくはポリマーの表面上で培養され得る。
【0238】
好ましくは、表面は、Notchシグナル伝達を刺激する因子、例えば、デルタ様1(DLL1)またはデルタ様4(DLL4)などのNotchリガンドでコーティングされ得る。好適なNotchリガンドは、当該技術分野で周知であり、商業的供給者から入手可能である。
【0239】
表面は、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、もしくはコラーゲンなどの細胞外マトリックスタンパク質、及び/またはVCAM1などの1つ以上の細胞表面接着タンパク質でコーティングされてもよい。いくつかの実施形態では、HPC培養用の表面は、Notchシグナル伝達を刺激する因子、例えばDLL4などのNotchリガンドを含み、細胞外マトリックスタンパク質または細胞表面接着タンパク質を含まないコーティングを有し得る。
【0240】
いくつかの実施形態では、HPC培養用の表面は、Notchシグナル伝達を刺激する因子、例えばDLL4などのNotchリガンド、ビトロネクチンなどの細胞外マトリックスタンパク質、及びVCAM1などの細胞表面接着タンパク質を含むコーティングを有し得る。表面は、表面をコーティング溶液と接触させることにより、細胞外マトリックスタンパク質、Notchシグナル伝達を刺激する因子、及び細胞表面接着タンパク質でコーティングされ得る。例えば、コーティング溶液は、表面をコーティングするのに好適な条件下で、表面上でインキュベートされ得る。条件は、例えば、室温で約2時間を含み得る。細胞外マトリックスタンパク質とNotchシグナル伝達を刺激する因子とを含むコーティング溶液は、商業的供給者から入手可能である(StemSpan(商標)Lymphoid Differentiation Coating Material;カタログ番号9925;Stem Cell Technologies Inc,CA)。
【0241】
HPCは、基質または表面上のリンパ系増大培地で、HPCを前駆T細胞に分化させるのに十分な時間にわたって培養され得る。例えば、HPCは、2~6週間、2~5週間、または2~4週間、好ましくは3週間培養され得る。
【0242】
前駆T細胞は、αβT細胞、γδT細胞、組織常在性T細胞、及びNKT細胞を生じさせることができる多分化能性リンパ球生成前駆細胞である。前駆T細胞は、胸腺におけるpre-TCR選択の後にαβT細胞系統にコミットし得る。前駆T細胞は、in vivoで胸腺に定着することができる可能性があり、胸腺におけるpre-TCR選択の後にT細胞系統にコミットすることができる可能性がある。前駆T細胞は、サイトカイン産生CD3+T細胞に成熟することができる可能性もある。
【0243】
前駆T細胞は、CD5及びCD7を発現する場合があり、すなわち、前駆T細胞は、CD5+CD7+表現型を有する場合がある。前駆T細胞は、CD44、CD25、及びCD2を共発現する場合もある。例えば、前駆T細胞は、CD5+、CD7+CD44+、CD25+CD2+表現型を有し得る。いくつかの実施形態では、前駆T細胞は、CD45を共発現する場合もある。前駆T細胞は、CD3、CD4、及びCD8の発現、例えば細胞表面での発現を欠く場合がある。
【0244】
第5段階では、T細胞成熟を促進する好適な条件下で前駆T細胞の集団を培養することにより、前駆T細胞がT細胞へと成熟し得る。例えば、前駆T細胞は、T細胞成熟培地で培養され得る。
【0245】
T細胞成熟培地は、成熟T細胞への前駆T細胞の成熟を促進する細胞培養培地である。好適なT細胞成熟培地は、(i)cKIT受容体(CD117;KIT受容体チロシンキナーゼ)を刺激し、及び/またはcKIT受容体(CD117;KIT受容体チロシンキナーゼ)媒介シグナル伝達経路を刺激し、(ii)FLT3及び/またはFLT3媒介シグナル伝達経路を刺激し、かつ(iii)インターロイキン(IL)活性を有し得る。例えば、T細胞成熟培地は、分化因子SCF、FLT3L、及びIL7を含み得る。
【0246】
好ましい実施形態では、T細胞成熟培地は既知組成培地である。例えば、T細胞成熟培地は、有効量の上記の分化因子を補充した既知組成栄養培地からなり得る。好適なT細胞成熟培地は、当該技術分野で周知であり、Stemspan(商標)T細胞成熟サプリメント(カタログ番号9930;StemCell Technologies Inc,CA)を補ったStemspan(商標)SFEM II(カタログ番号9605;StemCell Technologies Inc,CA)、ならびにExCellerateヒトT細胞増大培地(R&D Systems,USA)などのPBMC及びCD3+細胞の増大に好適な他の培地を含む。他の好適なT細胞成熟培地には、本明細書の他の箇所に記載されるような、ITS、アルブミン、及び脂質を補充し、有効量の上記の分化因子を更に補充した、IMDMなどの基本培地が含まれ得る。
【0247】
前駆T細胞は、表面上で培養され得る。例えば、前駆T細胞は、培養容器、ビーズ、または他の生体材料もしくはポリマーの表面上で培養され得る。
【0248】
好ましくは、表面は、Notchシグナル伝達を刺激する因子、例えば、デルタ様1(DLL1)またはデルタ様4(DLL4)などのNotchリガンドでコーティングされ得る。好適なNotchリガンドは、当該技術分野で周知であり、商業的供給者から入手可能である。表面は、フィブロネクチン、ビトロネクチン、ラミニン、もしくはコラーゲンなどの細胞外マトリックスタンパク質、及び/またはVCAM1などの1つ以上の細胞表面接着タンパク質でコーティングされてもよい。好適なコーティングは、当該技術分野で周知であり、本明細書の他の箇所に記載されている。
【0249】
前駆T細胞は、基質または表面上のT細胞成熟培地で、前駆T細胞をT細胞に成熟させるのに十分な時間にわたって培養され得る。例えば、前駆T細胞は、1~4週間、好ましくは2または3週間培養され得る。
【0250】
いくつかの実施形態では、前駆T細胞の成熟により生成されるT細胞は、二重陽性CD4+CD8+T細胞であり得る。
【0251】
上述の方法により、前駆T細胞がT細胞へと成熟し得る。T細胞(別名Tリンパ球)は、細胞性免疫において中心的な役割を果たす白血球である。T細胞は、細胞表面上のT細胞受容体(TCR)の存在により、他のリンパ球から区別され得る。T細胞には数種類あり、各種類が異なる機能を有する。
【0252】
ヘルパーT細胞(TH細胞)は、CD4表面糖タンパク質を発現するため、CD4+T細胞として知られている。CD4+T細胞は、適応免疫系において重要な役割を果たし、T細胞サイトカインを放出して免疫応答の抑制または調節を助けることによって他の免疫細胞の活動を助ける。これらは、CD4+CD8+T細胞の活性化及び成長に不可欠である。
【0253】
細胞傷害性T細胞(TC細胞、CTL、キラーT細胞、CD4+CD8+T細胞)は、CD8表面糖タンパク質を発現するため、CD8+T細胞として知られている。CD8+T細胞は、ウイルス感染細胞及び腫瘍細胞を破壊するように作用する。大部分のCD8+T細胞は、クラスI MHC分子により感染細胞または損傷細胞の表面に提示された特異的抗原を認識することができるTCRを発現する。抗原及びMHC分子へのTCR及びCD8糖タンパク質の特異的結合は、T細胞を介した感染細胞または損傷細胞の破壊をもたらす。
【0254】
本明細書に記載のとおりに生成されるT細胞は、二重陽性CD4+CD8+T細胞、または単一陽性CD4+またはCD8+T細胞であり得る。
【0255】
本明細書に記載のとおりに生成されるT細胞は、成熟CD3+T細胞であり得る。例えば、細胞は、TCR+CD3+CD8+CD4+表現型を有し得る。いくつかの実施形態では、T細胞は、CD45及びCD28も発現し得る。
【0256】
本明細書に記載のとおりに生成されるT細胞は、γδT細胞、αβT細胞、またはNKT細胞であり得る。
【0257】
いくつかの好ましい実施形態では、本明細書に記載のとおりに生成されるT細胞は、αβT細胞である。
【0258】
前駆T細胞の成熟(第5段階)の後、T細胞の集団は、主に二重陽性CD4+CD8+T細胞であり得る。
【0259】
第6段階では、単一陽性CD4+T細胞、またはより好ましくは単一陽性CD8+T細胞を生成するように、またはその割合を増加させるように、TCR T細胞の集団を活性化及び/または増大させることができる。T細胞を活性化及び増大させるための好適な方法は、当該技術分野で周知である。例えば、T細胞は、適切な培養条件下でT細胞受容体(TCR)アゴニストに曝露され得る。好適なTCRアゴニストとしては、ビーズまたは樹状細胞などの抗原提示細胞の表面上のクラスIまたはIIのMHC分子(MHC-ペプチド複合体)上に提示されるペプチドなどのリガンド、及び抗TCR抗体などの可溶性因子、例えば抗体CD28抗体、及びMHC-ペプチド四量体、五量体、またはデキストラマーなどの多量体MHC-ペプチド複合体が挙げられる。
【0260】
活性化とは、検出可能な細胞増殖を誘導するように十分に刺激されたT細胞の状態を指す。活性化は、誘導されたサイトカイン産生、及び検出可能なエフェクター機能にも関連し得る。「活性化T細胞」という用語は、とりわけ、細胞分裂を行っているT細胞を指す。
【0261】
抗TCR抗体は、εCD3、αCD3、またはαCD28などのTCRの成分に特異的に結合し得る。TCR刺激に好適な抗TCR抗体は、当該技術分野で周知であり(例えばOKT3)、商業的供給者(例えばeBioscience CO USA)から入手可能である。いくつかの実施形態では、T細胞は、抗αCD3抗体及びIL2、IL7、またはIL15への曝露によって活性化され得る。より好ましくは、T細胞は、抗αCD3抗体及び抗αCD28抗体への曝露によって活性化される。活性化は、CD14+単球の存在下でも非存在下でも起こり得る。T細胞は、抗CD3及び抗CD28抗体でコーティングされたビーズによって活性化され得る。例えば、PBMCあるいはCD4+及び/またはCD8+細胞を含むT細胞サブセットは、フィーダー細胞(抗原提示細胞)または抗原を用いずに、抗体でコーティングされたビーズ、例えば、Dynabeads(登録商標)Human T-Activator CD3/CD28(ThermoFisher Scientific)などの抗CD3及び抗CD28抗体でコーティングされた磁気ビーズを使用して活性化され得る。他の実施形態では、CD3、CD28、及びCD2細胞表面リガンドと結合する可溶性四量体抗体複合体、例えば、ImmunoCult(商標)Human CD3/CD28/CD2 T Cell ActivatorまたはHuman CD3/CD28 T Cell Activatorを使用して、T細胞を活性化することができる。他の実施形態では、T細胞は、任意選択的に抗CD28抗体と組み合わせた、MHC-ペプチド複合体、好ましくは多量体MHC-ペプチド複合体で活性化され得る。
【0262】
いくつかの実施形態では、二重陽性CD4+CD8+T細胞は、IL-15を補充した、本明細書に記載されるT細胞成熟培地で培養され得る。培地には、単一陽性T細胞を活性化させ、その集団を増大させ、かつそれを生成するために、上述のように、T細胞受容体(TCR)アゴニスト、例えば1つ以上の抗TCR抗体、例えば抗αCD3抗体、及び抗αCD28抗体を更に補充してもよい。
【0263】
T細胞は、増大した集団を生成するための任意の簡便な技法を使用して培養され得る。好適な培養系には、撹拌タンクファーメンター、エアリフトファーメンター、ローラーボトル、培養バッグまたはディッシュ、及び他のバイオリアクター、特に中空糸バイオリアクターが含まれる。そのような系の使用は、当該技術分野で周知である。
【0264】
本明細書に記載のとおりに生成されるT細胞は、標的抗原と結合する異種T細胞受容体(TCR)を発現し得る。例えば、異種TCRは、腫瘍抗原またはそのペプチド断片を発現するがん細胞に特異的に結合し得る。いくつかの実施形態では、T細胞は、内因性TCRを発現しないように、RAG不活化され得る(すなわち、細胞内のRAG1及び/またはRAG2遺伝子は、欠失または他の変異によってノックアウトされている)。T細胞は、後述するように、例えば免疫療法において有用であり得る。
【0265】
T細胞、例えば(二重陽性)DP CD4+CD8+細胞、(単一陽性)SP CD4+細胞またはSP CD8+細胞の集団は、生成後、単離及び/または精製され得る。蛍光活性化細胞選別(FACS)、または抗体でコーティングされた磁気粒子を使用した磁気活性化細胞選別(MACS)を含む、任意の簡便な技法を使用することができる。
【0266】
T細胞、例えばDP CD4+CD8+細胞、SP CD4+細胞またはSP CD8+細胞の集団は、増大及び/または濃縮され得る。任意選択的に、本明細書に記載のとおりに生成されるT細胞の集団は、使用前に、例えば凍結保存によって保管され得る。
【0267】
治療
本発明は更に、本発明による改変iPSCまたは造血系統細胞、好ましくはT細胞と、薬学的に許容される担体と、を含む医薬組成物を提供する。
【0268】
本発明は更に、療法及び/または医療に使用するための、本発明による改変iPSCもしくは造血系統細胞、好ましくはT細胞、または医薬組成物を提供する。
【0269】
本発明はまた、以下のうちのいずれか1つ以上を含む、医療用途または治療方法を提供する。
(a)個体または対象におけるがん及び/または腫瘍の治療、予防、または進行の遅延に使用するための、本発明による改変iPSCもしくは造血系統細胞、好ましくはT細胞、または医薬組成物であって、任意選択的に、治療ががん免疫療法療法及び/または養子T細胞療法、任意選択的に同種養子T細胞療法であるもの、
(b)個体または対象におけるがん及び/または腫瘍を治療するための医薬を製造する際の、本発明による改変iPSCもしくは造血系統細胞、好ましくはT細胞、または医薬組成物の使用であって、任意選択的に、治療ががん免疫療法療法及び/または養子T細胞療法、任意選択的に同種養子T細胞療法である使用、
(c)個体または対象におけるがん及び/または腫瘍を治療する、予防する、またはその進行を遅延させる方法であって、本発明による改変iPSCもしくは造血系統細胞、好ましくはT細胞、または医薬組成物を個体に投与することを含み、任意選択的に、治療ががん免疫療法療法及び/または養子T細胞療法、任意選択的に同種養子T細胞療法である方法。
【0270】
本発明によれば、固形腫瘍であり得るがん及び/または腫瘍は、肺癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、転移性または進行性NSCLC、扁平上皮NSCLC、腺癌NSCLC、腺扁平上皮NSCLC、大細胞NSCLC、卵巣癌、胃癌、尿路上皮癌、食道癌、食道胃接合部癌(EGJ)、黒色腫、膀胱癌、頭頸部癌、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)、口腔癌、中咽頭癌、下咽頭癌、咽喉癌、喉頭癌(cancer of the larynx)、扁桃腺癌、舌癌、軟口蓋癌、咽頭癌(cancer of the pharynx)、滑膜肉腫、粘液円形細胞型脂肪肉腫(MRCLS)から選択することができ、任意選択的に、がんまたは腫瘍は、本明細書に記載されるMAGEまたはAFPタンパク質、ペプチド、抗原、またはそのペプチド抗原、任意選択的に、本明細書に記載されるMAGE-A4タンパク質、ペプチド、抗原、またはそのペプチド抗原を発現する。
【0271】
本発明によれば、がんは、乳癌、転移性乳癌、肝癌、腎細胞癌、滑膜肉腫、尿路上皮癌または腫瘍、膵癌、結腸直腸癌、転移性胃癌(metastatic stomach cancer)、転移性胃癌(metastatic gastric cancer)、転移性肝癌、転移性卵巣癌、転移性膵癌、転移性結腸直腸癌、転移性肺癌、結腸直腸癌または結腸直腸腺癌、肺癌または肺腺癌、膵癌または膵腺癌、粘液性腺腫、膵管癌、及び血液悪性腫瘍のいずれか1つ以上から選択することができ、任意選択的に、がんまたは腫瘍は、本明細書に記載されるMAGEまたはAFPタンパク質、ペプチド、抗原、またはそのペプチド抗原、任意選択的に、本明細書に記載されるMAGE-A4タンパク質、ペプチド、抗原、またはそのペプチド抗原を発現する。
【0272】
がん及び/または腫瘍は、肝癌、例えば、胆管癌、肝血管肉腫、肝芽腫、肝細胞癌(HCC)のいずれかから選択される肝癌であり得、任意選択的に、がんは移植または切除に不適であり、好ましくは、がんは肝細胞癌(HCC)である。更に、肝癌は、糖尿病、肥満、B型肝炎、C型肝炎、肝硬変のいずれか1つ以上と同時に生じる場合があり、任意選択的に、がんまたは腫瘍は、本明細書に記載されるMAGEまたはAFPタンパク質、ペプチド、抗原、またはそのペプチド抗原、任意選択的に、本明細書に記載されるMAGE-A4タンパク質、ペプチド、抗原、またはそのペプチド抗原を発現する。
【0273】
本発明によれば、がんは、再発性がんもしくは難治性がんもしくは再発がんもしくは局所再発がんもしくは転移性がん、切除不能がんもしくは限局性がん、外科的もしくは放射線療法の選択肢のないがんもしくは手術不能がん、またはそれらの任意の組み合わせであり得る。がん及び/または腫瘍は、固形腫瘍であり得る。
【0274】
本発明はまた、
(a)T細胞活性化をアップレギュレーションする方法、
(b)サイトカイン産生、例えば、IFNガンマ、IL-2、もしくはグランザイムBのうちのいずれか1つ以上をアップレギュレーションする方法、
(c)抗原もしくは抗原ペプチドの存在下における細胞傷害活性を誘導する方法、または
(d)抗原もしくは抗原ペプチドを提示する腫瘍細胞の殺傷を誘導する方法、
に使用するための、本発明による改変iPSCもしくは造血系統細胞、好ましくはT細胞、または医薬組成物を提供し、これらは、任意選択的に、がん及び/または腫瘍を有する対象におけるものであり、任意選択的に、がん及び/または腫瘍は、本明細書に記載されるがん抗原及び/または腫瘍抗原あるいはそのペプチド抗原、好ましくは、本明細書に記載されるMAGEまたはAFPタンパク質、ペプチド、抗原、またはそのペプチド抗原を発現する。
【0275】
組み合わせ
本発明は更に、前述の医療用途または治療方法に従って使用するための、本発明による改変iPSCもしくは造血系統細胞、好ましくはT細胞、または医薬組成物を提供し、改変iPSCもしくは造血系統細胞、好ましくはT細胞、または医薬組成物は、任意選択的に別々に、連続的に、または同時に投与されるかまたは投与するための、1つ以上の更なる治療剤と組み合わせて使用するためのものであるか、または組み合わせて使用される。
【0276】
したがって、1つ以上の更なる治療剤は、化学療法剤、ホルモン療法剤、標的化薬、または免疫療法を含み得る。したがって、化学療法は、ゲムシタビン、ドセタキセル、ペメトレキセド、トポテカン、イリノテカン、エトポシド、ビノレルビンリポプラチン、シスプラチン、カルボプラチン、オキサリプラチン、ネダプラチン、四硝酸トリプラチン、フェナントリプラチン(Phenanthriplatin)、サトラプラチン、ピコプラチン、メトトレキサート、カペシタビン、タキサン、アントラサイクリン、パクリタキセル、ドセタキセル、パクリタキセルタンパク質結合粒子、ドキソルビシン、エピルビシン、5-フルオロウラシル、シクロホスファミド、ビンクリスチン、エトポシドのうちのいずれか1つ以上を含み得る。付加的または代替的に、化学療法は、FEC:5-フルオロウラシル、エピルビシン、シクロホスファミド、FAC:5-フルオロウラシル、ドキソルビシン、シクロホスファミド、AC:ドキソルビシン、シクロホスファミド、EC:エピルビシン、シクロホスファミドから選択される1つ以上の化学療法剤を含み得る。付加的または代替的に、1つ以上の更なる治療剤は、ソラフェニブ、PD1もしくはPD-L1のアンタゴニストもしくは阻害剤、レゴラフェニブ、カボザンチニブ、スニチニブブリバニブ、エベロリムス、チバンチニブ、リニファニブフロムソラフェニブ(Linifanibfrom Sorafenib)、PD1もしくはPD-L1のアンタゴニストもしくは阻害剤、レゴラフェニブ、カボザンチニブ、スニチニブ、ブリバニブ、エベロリムス、チバンチニブ、リニファニブ、またはチロシンキナーゼ阻害剤もしくは上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤、例えば、クリゾチニブ、エルロチニブ、ゲフィチニブ、及びアファチニブ、免疫チェックポイント阻害剤、例えばペンブロリズマブもしくはニボルマブ、または核内因子カッパ-Bリガンドに対するモノクローナル抗体、例えばデノスマブ、または上皮成長因子受容体アンタゴニスト抗体、任意選択的にセツキシマブのうちのいずれか1つ以上を含み得る。
【0277】
本明細書で使用される場合、「改変iPSCまたは造血系統細胞」という用語には、改変人工多能性幹細胞iPSCもしくは造血系統細胞または改変された人工多能性幹細胞iPSCの集団もしくは造血系統細胞の集団も含まれ得る(改変という用語はまた、IPSC(複数可)及び造血系統細胞(複数可)の両方に適用される)。
【0278】
キット
本発明は更に、
(a)個体または対象におけるがん及び/または腫瘍を治療する、予防する、またはその進行を遅延させるための、本発明による改変iPSCもしくは造血系統細胞、好ましくはT細胞、または医薬組成物、及びその使用説明書を含む添付文書、あるいは
(b)任意選択的に別々に、連続的に、または同時に投与されるかまたは投与するための、1つ以上の更なる治療剤(任意選択的に本明細書に記載のもの)と組み合わせた、個体または対象におけるがん及び/または腫瘍を治療する、予防する、またはその進行を遅延させるための、本発明による改変iPSCもしくは造血系統細胞、好ましくはT細胞、または医薬組成物、及びその使用説明書を含む添付文書、を含むキットを提供する。
【0279】
本発明の他の態様及び実施形態は、上述の態様及び実施形態の「含む(comprising)」という用語を「からなる(consisting of)」という用語に置き換えたもの、ならびに上述の態様及び実施形態の「含む(comprising)」という用語を「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語に置き換えたものを提供する。
【0280】
文脈上別段の解釈を必要としない限り、本出願は、上記の態様及び上述の実施形態のいずれかの相互のあらゆる組み合わせを開示するものであることを理解されたい。同様に、本出願は、文脈上別段の解釈を必要としない限り、単独で、または他の態様のいずれかと合わせて、好ましい及び/または任意選択の特徴のあらゆる組み合わせを開示する。
【0281】
上記の実施形態の改変形態、更なる実施形態、及びそれらの改変形態は、本開示を読めば当業者には明らかとなり、したがって、これらは本発明の範囲内にある。
【0282】
本明細書で使用される任意のセクションの見出しは構成の目的のみのためであり、記載される主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0283】
本明細書で言及される全ての文書及び配列データベースエントリーは、あらゆる目的のために、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0284】
本明細書で使用される「及び/または」は、他方の有無にかかわらず、指定された2つの特徴または構成要素の各々の具体的開示として解釈されるべきである。例えば、「A及び/またはB」は、あたかも各々が本明細書で個別に明記されているかのように、(i)A、(ii)B、ならびに(iii)A及びBの各々の具体的開示として解釈されるべきである。
【実施例】
【0285】
概論:
本明細書では、規定の異種組換えαβTCRを発現するiT細胞の作製について記載する。本発明者らは、GMPに準拠したhiPSC源から出発して、HLA-A*02により提示されるMAGE-A4ペプチド(GVYDGREHTV)を認識する組換え異種T細胞受容体ADP A2M4をノックインした。本発明者らは、操作iPSC由来のADP A2M4 iT細胞が、抗TCRVα24及びデキストラマー染色によって測定した場合にADP A2M4 TCRを特異的に発現することを示す。編集ADP A2M4 iT細胞は、同族抗原を発現するHLA-A*02発現腫瘍株とともにインキュベートした場合に、CD25及びCD69を含む活性化マーカーをアップレギュレートし、かつそれらの株の強力な抗原依存的殺傷を示す。以下の実施例は、治療的価値及び治療活性を有するADP A2M4 TCR iT細胞の生成を可能にする、限られたゲノム編集による、同種hiPSC由来のプラットフォームの開発を表す。
【0286】
EEF1A1遺伝子座でのノックインにより、ADP A2M4 TCRをiT細胞へと安定的に導入する。EEF1A1エクソン8へのADP A2M4 TCRのノックインが可能となるように、rAAVターゲティングプラスミドを作製した。このコンストラクトは、EEF1A1とADP A2M4 SPEARとの間にマルチシストロン性融合遺伝子を生じさせるように設計した。これにより、内因性EEF1A1プロモーターからのEEF1A1及びADP A2M4の転写及び発現を調節することができる。T2AまたはP2Aスキップ配列ペプチドと組み合わせたフューリン切断部位は、EEF1A1とADP A2M4 TCRα及びA2M4 TCRβコード配列とを分離する(
図2)。これにより、単一のmRNAから複数のポリペプチドを生成することができる。小胞体におけるフューリンプロテアーゼによる切断により、スキップ配列ペプチドが除去されて、新生タンパク質配列の発現が可能になる。
【0287】
iPSC細胞株の生成
iPSC株(HCP1324_c1A12)は、臍帯血から単離したCD34+前駆細胞の再プログラミングにより作り出されたGR1.1の派生株である[Baghbaderani BA,Syama A,Sivapatham R,Pei Y,Mukherjee O,Fellner T,Zeng,Rao MS,Detailed Characterization of Human Induced Pluripotent Stem Cells Manufactured for Therapeutic Applications.Stem Cell Rev.2016 Jun 10]。ゲノム安定性を、TCR編集の前にcyto-SNP分析、核型分析により評価した。多能性を、IHC(免疫組織化学)、フローサイトメトリー、及びPluritest[Muller,F.J.,et al.,A bioinformatic assay for pluripotency in human cells. Nat Methods,2011.8(4):p.315-7]で決定した。HCP1324_c1A12 iPSCクローンからのiT細胞の分化も確認した。
【0288】
iPSC細胞の培養
iPSC株HCP1324_c1A12を編集実験に使用した。iPSC株を、mTeSR(商標)Plus培養培地(STEMCELL Technologies)を用いてビトロネクチン上で培養し、TrypLE(商標)Select(ThermoFisher)での酵素による解離に適合させ、4~5日ごとに継代した。iPSC培養物を、37℃、5%O2、5%CO2の加湿したインキュベータ内で維持した。多能性マーカー(POU5F1、NANOG、TRA-160、及びSOX2)の発現ならびに分化マーカーSSEA-1の不在を、FACS分析により慣例的にモニタリングした。
【0289】
AAVターゲティングベクターの作製
pAAV-MCS(Agilent)プラスミドをNotI(NEB)で消化して、左右の末端逆位反復(ITR)領域間の配列を除去した。ベクター骨格をアガロースゲル抽出により精製した。左右の相同アーム(LHA、配列番号43及びRHA、配列番号44)、FuTA_A2M4導入遺伝子カセット(配列番号45)、及びP2A_PUROカセット(配列番号48)を、PCRにより増幅した。各プライマーは、ギブソンアセンブリによるターゲティングベクターの作製を可能にする重複配列を含んでいた。左右の相同アーム配列(500bp)を、iPSC株HCP1324_c1A12から単離したゲノムDNA(gDNA)から増幅した。ADP A2M4 TCR導入遺伝子は、TCRα鎖及びTCRβ鎖のコード配列を含有し、2つのTCR鎖の間にフューリン切断部位(RAKR)及びP2Aスキップ配列を有する。
【0290】
AAVの生成
rAAV生成に使用されるパッケージングプラスミドpHelper(Agilent 240071)及びAAV-3 Rep-Capプラスミド(Cell Biolabs VPK-423)を、NEB(登録商標)5-アルファCompetent E.coliで増殖させた。相同アーム、P2A-Puro_T2A_A2M4導入遺伝子カセットを含有するAAVターゲティングプラスミドを、NEB(登録商標)Stable Competent E.coliで増殖させた。全てのプラスミドDNAを、Plasmid Plus Gigaキット(QIAGEN)またはEndoFree Plasmid Gigaキット(QIAGEN)を使用して精製した。AAV導入遺伝子プラスミドのITR完全性を、AhdI及びBglIの単一制限酵素消化を用いて確認した。
【0291】
rAAVの生成に使用した293AAV細胞株(Cell Biolabs)を、10%(v/v)の熱不活化FBS(Life Technologies)、DMEM、高グルコース、GlutaMAX(商標)サプリメント、ピルビン酸(Life Technologies)、Pen/Strep(Life Technologies)、及び非必須アミノ酸(Life Technologies)で培養した。トランスフェクションの24時間前に、293AAVを216×106/5CSの密度で5層細胞スタック(Corning)に播種した。Turbofectトランスフェクション試薬(Thermofisher)を使用して、rAAV導入遺伝子プラスミド、pHelper、及びAAV-3 Rep-Capを2:1:1のモル比で293AAVにトランスフェクトした。各トランスフェクションに、合計2.6mgのプラスミドDNAを使用した。採取及びウイルス精製の前に細胞を72時間培養した。細胞を採取するために、6.25mMの最終濃度にEDTA(Thermofisher)を添加し、組織培養プラスチックからの細胞剥離を促進した。製造業者の説明書に従って、rAAVウイルスをイオジキサノール勾配超遠心分離またはAAVpro(登録商標)Purification Kit(Takara)により精製した。
【0292】
イオジキサノール勾配精製のために、細胞ペレットを遠心分離(300g、5分)により収集し、細胞溶解緩衝液5ml(150mM NaCl、5mM Tris-HCl、pH8.5)に再懸濁させ、ドライアイス/エタノール浴及び37℃の水浴を使用して3回の凍結融解に供した。最後の融解に続いて、溶解物をBenzonase(200U/ml)(Sigma)を用いて37℃で1時間処理した。イオジキサノール勾配にロードする前に、遠心分離(1000g、29分、4℃)により残存細片を除去した。60%イオジキサノール(Optiprep)(STEMCELL Technologies)を希釈することにより、イオジキサノール勾配(15%イオジキサノール9ml、25%イオジキサノール6ml、40%イオジキサノール5ml、及び60%イオジキサノール5ml)を調製した。PBS-MK緩衝液(1×PBS、2.76mM MgCl2、2mM KCl)で60%イオジキサノールを希釈することにより、25%及び40%のイオジキサノール相を調製した。PBS-MK緩衝液(1×PBS 1M NaCl、2.76mM MgCl2、2mM KCl)で60%イオジキサノールを希釈することにより、15%のイオジキサノール相を調製した。これらの層を区別するために、25%及び60%の相にフェノールレッドを添加した。勾配相を、段階的にOptiSeal Polypropylene Centrifuge tube(Beckman Coulter)に添加する。細胞溶解物を15%相の上にロードし、チューブを70Ti超遠心ローターにて67,000rpm、18℃で90分間遠心分離する。遠心分離後、40%相からrAAVを抽出する。rAAVウイルス調製物を、遠心フィルターユニット(MWCO 100kDa)(Millipore)を使用して更に濃縮し、緩衝液をPBS 0.001%(v/v)プルロニック酸(Sigma)に交換した。ウイルス調製物を-80℃で保管した。QuantiTect Probe PCRキット(Qiagen)を使用したqPCRにより、ウイルス力価を確認した。プライマー配列及びプローブ配列は、ITRに対して設計されている(Aurnhamer et al.,2012.Human Gene Ther Methods)。プライマー配列ITR_F GGAACCCCTAGTGATGGAGTT(配列番号54)、ITR_R CGGCCTCAGTGAGCGA(配列番号55)、プローブ56-FAM/CACTCCCTC/ZEN/TCTGCGCGCTCG/3IABkFQ。既知の濃度及びコピー数のpAAVS由来のプラスミドDNAから調製した標準曲線に対して、ウイルス定量を求めた。PCRプログラムは、1サイクルの95℃で15分間の変性、それに続く40サイクルの95℃で15秒間の変性、及び60℃で60秒間のプライマーアニーリング/伸長からなるものであった。qPCR反応をQuantStudio 7で実施し、QuantStudio(商標)Real Time PCRソフトウェアで分析した。
【0293】
遺伝子編集-EEF1a遺伝子座のエクソン8へのA2M4 SPEARのノックイン
TrypLE Select(ThermoFisher)を使用して、iPSC株HCP1324_c1A12を単一細胞懸濁液として酵素的に継代した。解離後、iPSCを計数し、完全mTeSR(商標)plusを含有するコーティングされた(ビトロネクチン)6ウェルプレートのウェル内に播種した。翌日、培地を完全mTeSR(商標)plusに交換した。AAVの形質導入前にiPSCを48時間培養した。
【0294】
AAV3血清型ウイルス(500~10000Vg/細胞)をiPSCに形質導入した。抗生物質による選択(ピューロマイシン、30~100μg/ml)を形質導入の48時間後に開始し、残りの培養全体を通じて継続した。ウイルス形質導入の3~6日後に、スクリーニング及びクローン単離のために、コーティングされた96ウェルプレートにiPSCを播種した。PCRスクリーニングの前に、クローンを96ウェルプレート内で10~16日間増大させた。場合によっては、陽性クローンを、限界希釈による更なるクローン単離に供した。全てのクローンをPCRによりスクリーニングし、組み込みを確認した。全てのPCR産物の配列を検証した。
【0295】
クローンの単離及びスクリーニング
編集iPSCの細胞プールをピューロマイシンで選択した後に、iPSCクローンを単離した。HCP1324_c1A12株由来の編集クローンを、ビトロネクチンでコーティングされた96ウェルプレートでの限界希釈により単離した。細胞を平均100細胞/ウェルで播種した。9600個のiPSCをウェルA1に播種し、その後1列目(A1~H1)で2倍連続希釈を行った。次いで、プレートの全ての行にわたり細胞を2倍希釈した。編集したHCP1324_c1A12をmTeSR(商標)Plusに播種した。培地を2日ごとに完全mTeSR(商標)plusに交換した。単一コロニーの存在についてウェルをスクリーニングする前に、細胞を12~14日間培養した。標的とした導入遺伝子の挿入を確認するため、クローンを増大させ、PCRによるスクリーニングのためにQuickExtract(商標)(Lucigen)を使用してゲノムDNAを単離した。
【0296】
相同アームの境界全体にわたってPCR反応を実施した。5’LHA境界を、5’相同アームの上流にあるプライマー1824(配列番号50)TAAGTTGGCTGTAAACAAAGTTGAA及びピューロマイシン耐性遺伝子内にあるプライマー1825(配列番号51)GCACGTCGTCTCGGTAGCで増幅した。3’RHA境界を、ピューロマイシン耐性遺伝子内にあるプライマー2294(配列番号52)TCTACGAGAGGCCTGGGCTTC及びEEF1A1エクソン8の右側相同領域内にあるプライマー2295(配列番号53)GTGGGGTGGCAGGTATTAGGで増幅した。
【0297】
PCR反応を、Q5(登録商標)Hot Start High-Fidelity 2X Master Mix(NEB)を用いて実施した。PCRプログラム 98℃、30秒間、1サイクルの変性、98℃、5秒間、40サイクルの変性、66℃、10秒間のアニーリング、72℃、25秒間の伸長、72℃、5分間、1サイクルの伸長。PCR産物をゲル精製し、サンガーシーケンシングを行って組み込みを確認した。陽性クローンを増大させ、小さな細胞バンクを生成した。フローサイトメトリーにより多能性マーカー発現の維持を確認した。4B11、5F4、5H4、及び3D10と命名した4つのクローンを分化へと進めた。
【0298】
RAG1エクソン2をガイドRNA配列AACATCTTCTGTCGCTGACTの標的とした。この配列は、ビルドGRCh38/hg38で、第11染色体:36,574,494~36,574,513に対応する。
【0299】
ヌクレオフェクション
細胞剥離の開始前に、CRISPR-Cas9リボ核タンパク質(RNP)複合体を形成させた。各ヌクレオフェクションは、SpyFi-Cas9(Aldevron)52pmol及びRAG1(IDT)を標的とする一本鎖ガイドRNA 60pmolを、DPBS中に最終容量5μlで含有していた。Accutaseを使用して37℃で6分間細胞を剥離し、2×10E5(3E10)個の細胞をAmaxa Nucleofector 4Dでの各ヌクレオフェクションに使用した。細胞を遠心分離し、DPBSで洗浄し、20μlの補充した一次緩衝液(primary buffer)P3に再懸濁させた。5μのRNPを添加し、16ストリップのヌクレオキュベット内のスロットに移し、プログラムCA-137を使用してヌクレオフェクトした。細胞を3分間インキュベートし、80μlの予熱したmTeSR-Plus/1×CloneRを添加し、更に1分間インキュベートし、次いで、mTeSR-Plus/1×CloneRをウェルあたり1ml含有する12ウェルプレートのウェルに移した。
【0300】
単一細胞の播種及びクローンの増大
ヌクレオフェクションから5日後、Solentim VIPS(商標)を使用して10枚の96ウェルプレートに細胞を播種し、播種の2時間後と、最初の4日間は毎日、次いで隔日に、Solentim Cell Metric(登録商標)でイメージングした。CloneRは、単一細胞増殖の最初の3日間に、濃度1倍で24時間、次いで0.25倍で更に48時間存在していた。プレートに隔日で供給した。播種後13日目及び14日目に、単一細胞に由来するコロニーをVerseneで剥離し、12ウェルプレート(40%、増大用)と96ウェルプレート(60%、遺伝子型決定用)に分けた。2日後、Ion Torrentを使用して細胞の遺伝子型を決定し、両アレルの編集で複数の早期終止コドンが生じた細胞のみを、6ウェルプレートに増大させた。クローンを、プライマーATCCTGTGACATCTGCAACACT及びACAGCCCATCAATAATGCCAACを使用してコロニーPCRに供し、陽性確認後に凍結保存した。
【0301】
T細胞分化
HiPSC維持培地を除去し、細胞をDMEM/F12(Invitrogen)で2回洗浄した。2mLのStemPro34 PLUS(InvitrogenのStemPro34;サプリメントを添加したStemPro34基本培地、ならびにペニシリンストレプトマイシン(1%v/v:Invitrogen)及びグルタミン(2mM:Invitrogen)、アスコルビン酸(50μg/ml:Sigma Aldrich)及びモノチオグリセロール(100μM:Sigma Aldrich)に、50ng/mLのアクチビンA(Miltenyi Biotec)を更に補充したもの)を添加し、4時間インキュベートした。容量は培養フラスコのサイズに依存し、典型的には少なくとも2ml/9cm2、及び20ml/150cm2である。
【0302】
4時間後、培地を除去し、細胞をDMEM/F12で2回洗浄して、残留していた高濃度のアクチビンAを除去した。5ng/mLのアクチビンA、10ng/mlのBMP4(Miltenyi Biotec)、及び5ng/mlのbFGF(Miltenyi Biotec)を補充した2mLのStemPro34 PLUSと培地を交換し、44時間インキュベートした(第1段階培地)。
【0303】
次いで、新鮮な第1段階培地と培地を交換し、10μMのCHIR-99021(Selleckchem)を補充し、更に48時間培養した。
【0304】
4日目に、培地を除去し、細胞をDMEM/F12で2回洗浄して、残留していた第1段階のサイトカインを除去した。次いで、100ng/mLのSCF(Miltenyi Biotec)及び15ng/mlのVEGF(Miltenyi Biotec)を補充したStemPro34 PLUSと培地を交換し、48時間インキュベートした(第2段階培地)。次いで、培地に新鮮な第2段階培地を補給し、細胞を更に48時間培養した。
【0305】
次いで、この培地を、最小限のSCF及びVEGFを必要とする第3段階培地と交換し、細胞を16~18日間、48時間ごとに半分を除去供給しながら培養した。典型的には、これには、培地を採取し、遠心分離(300g、10分)により懸濁液中の細胞を収集し、懸濁細胞を新鮮培地での培養(すなわち、T150フラスコに対し20ml)に戻すことが含まれた。
【0306】
およそ16日目に、以後の培養用に、得られた単層からCD34+細胞を単離した。CD34+細胞を、Accutase(STEMCELL Technologies)と37℃で30分間、次いでコラゲナーゼII(Invitrogen:2mg/ml)と37℃で30分間、連続的にインキュベートすることにより採取した。細胞懸濁液を収集し、洗浄し(DMEM/F12中、300gで12分間の遠心分離を2回)、その後、磁気活性化ビーズ(MACS)単離(Miltenyi:製造業者の説明書に従った)によるCD34+細胞の単離を行った。
【0307】
持続的なリンパ系の増殖及び分化のために、STEMCELL Technologies独自の2段階(リンパ系増殖/T細胞成熟)培地を用いた。
【0308】
STEMCELL Technologiesのリンパ系増殖培地における培養中、未編集対照株のT細胞前駆細胞に、ポロキサマーF108(Sigma)の存在下でADP A2M4 TCRをレンチウイルスにより形質導入した。
【0309】
T細胞の表現型決定
フローサイトメトリーを使用して、iPSC由来T細胞の表現型を決定した。iPSC由来T細胞におけるADP A2M4 TCRの発現を示すために、細胞をCD3(クローンSK7);A2M4デキストラマー及び生/死染色EF506で染色した。
【0310】
iT細胞におけるADP A2M4の発現は、上述したようにCD7+CD5+前駆細胞のレンチウイルス形質導入によって誘導することができる。iPSC株HCP1324_c1A12を分化させ、第4段階のADP A2M4 T細胞(CD7+CD5+前駆細胞)を含むレンチウイルス発現により形質導入し、形質導入細胞を、分化プロトコルを通じて進行させた。細胞の表現型をFACSにより決定し、抗TCR抗体である抗Vα24及びMAGE-A4 GVYDGREHTV/HLA-A*0201デキストラマーで染色することによりADP A2M4発現を測定した。分化は編集の影響を受けないことが判明した。加えて、ADP A2M4の発現を促進するには、単一アレルにおけるADP A2M4のノックインで十分である(
図4)。
【0311】
フローサイトメトリー染色
フローサイトメトリーには以下の抗体を使用した:CD8αβ-BV650(クローン2ST8.5H7)、TCRγδ-APC(クローンB1)、TCR Vα24-PE(クローンIP26)、CD3-APC-R700(クローンUCHT1)、CD4-BV605(クローンRPA-T4)、CD8α-PE-CY7(クローンRPA-T8)、CD69-BUV395(クローンFN50)、CD25-BV421(クローンBC96)、HLA-DR-AF488(クローンL243)、及びEF506-BV510。試料をBD Fortessaで得た。
【0312】
KILR細胞傷害性アッセイ
384ウェル白色LUMITRAC 600マイクロプレート(Greiner)に、1ウェルあたり10,000個のKILR T2(KILRレトロウイルス粒子(DiscoverX)による形質導入により作製)を添加した。第6段階の終了時のiPSC株に由来するT細胞を、1ウェルあたり20,000細胞で添加した。MAGE-A4ペプチド(GVYDGREHTV)を、10-5M~10-11Mで滴定して細胞に添加した。細胞及びペプチドを酸素正常状態下にて37℃で24時間共培養してから、KILR検出溶液(KILR Detection Kit(DiscoverX))を室温で1時間添加した。FLUOstar Omega Microplate Readerを使用して試料からの発光を検出した。編集iPSCクローンから分化したiT細胞は、特異的かつ強力な細胞溶解エフェクター機能を示すことが判明した(
図5)。
【0313】
Incucyte(登録商標)細胞傷害性アッセイ
GFP+iveA375(MAGE-A4+ive、HLA-A2*02+ive)標的細胞を、384ウェルプレート(Greiner Bio-one)に1500/ウェルの密度で20μlの完全RPMI 1640(RPMI 1640、10%(v/v)FCS、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、及び2mM L-グルタミン)中に播種した。プレートをIncucyte Zoomに加え、加湿インキュベータ内にて37℃、5%CO2でインキュベートした。24時間後、標的を最終濃度10μΜのMAGE-A4ペプチド(GVYDGREHTV)でパルス処理するか、またはペプチドなしで放置した。6000個のiT細胞を10μlの培地中に三連で添加した。画像を6日間、2時間ごとにIncucyteで取得した。次いで、トップハット処理定義を使用し、ZOOM2018Aソフトウェアを使用してデータを分析した。
【0314】
EEF1α
+/A2M4iT細胞(c3E10)及びRAG
-/-EEF1α
+/A2M4iT細胞(T1E8)は、MAGEA4
+細胞において、MAGE-A4由来ペプチドGVYDGREHTVの存在下または非存在下の両方でアポトーシスを誘導するが、MAGEA4
-細胞においては、MAGE-A4由来ペプチドの存在下でのみアポトーシスを誘導することが判明した(
図8及び9)。
【0315】
結論
本発明者らは、ADP A2M4 TCR発現iT細胞の分化を可能にした新規編集戦略を提示した。編集ADP A2M4 TCR iT細胞の活性化及び細胞溶解エフェクター機能は、抗原依存的であることが示された。CD8αα発現を含む編集ADP A2M4 iT細胞の表現型、強力なサイトカイン及び細胞傷害活性により、編集ADP A2M4 iT細胞が自然様かつ適応様の表現型を有することが示唆される。
【0316】
デキストラマー染色は、編集ADP A2M4 iT細胞がADP-A2M4 TCRのみを発現することを示唆しているが、この技術は完全なTCRレパートリーに適用可能である。編集A2M4 TCR iT細胞は、強力な細胞溶解機能及びエフェクター機能を示し、これは健常ドナー由来のA2M4 TCR形質導入PBLと比較して同程度であるか、または増加している。このことは、自家A2M4 TCR T細胞と同様に、ADP-A2M4 iT細胞が細胞療法に効果的であり、患者に臨床的利益をもたらすことを示唆している。
【0317】
ADP-A2M4 iT細胞の作製は、iPSC由来の同種プラットフォームの生成における重要なマイルストーンである。単一の規定の遺伝子座での遺伝子ノックインを介したiT細胞におけるTCR発現の促進が可能であることは、様々な腫瘍抗原に対する特定のTCRをコードする複数のクローンiPSCバンクを生成する機会をもたらす。この「既製」プラットフォームは、患者に、自身の腫瘍抗原発現プロファイルに特化した、規定され一貫した様々なT細胞療法を適時に送達することができる。
【0318】
配列
配列番号1、MAGE A4
MSSEQKSQHC KPEEGVEAQE EALGLVGAQA PTTEEQEAAV SSSSPLVPGT
LEEVPAAESA GPPQSPQGAS ALPTTISFTC WRQPNEGSSS QEEEGPSTSP
DAESLFREAL SNKVDELAHF LLRKYRAKEL VTKAEMLERV IKNYKRCFPV
IFGKASESLK MIFGIDVKEV DPASNTYTLV TCLGLSYDGL LGNNQIFPKT
GLLIIVLGTI AMEGDSASEE EIWEELGVMG VYDGREHTVY GEPRKLLTQD
WVQENYLEYR QVPGSNPARY EFLWGPRALA ETSYVKVLEH VVRVNARVRI
AYPSLREAAL LEEEEGV
配列番号2、MAGE A4ペプチド
GVYDGREHTV
配列番号4;(CD8α)
ATGGCCTTACCAGTGACCGCCTTGCTCCTGCCGCTGGCCTTGCTGCTCCACGCCGCCAGGCCGAGCCAGTTCCGGGTGTCGCCGCTGGATCGGACCTGGAACCTGGGCGAGACAGTGGAGCTGAAGTGCCAGGTGCTGCTGTCCAACCCGACGTCGGGCTGCTCGTGGCTCTTCCAGCCGCGCGGCGCCGCCGCCAGTCCCACCTTCCTCCTATACCTCTCCCAAAACAAGCCCAAGGCGGCCGAGGGGCTGGACACCCAGCGGTTCTCGGGCAAGAGGTTGGGGGACACCTTCGTCCTCACCCTGAGCGACTTCCGCCGAGAGAACGAGGGCTACTATTTCTGCTCGGCCCTGAGCAACTCCATCATGTACTTCAGCCACTTCGTGCCGGTCTTCCTGCCAGCGAAGCCCACCACGACGCCAGCGCCGCGACCACCAACACCGGCGCCCACCATCGCGTCGCAGCCCCTGTCCCTGCGCCCAGAGGCGTGCCGGCCAGCGGCGGGGGGCGCAGTGCACACGAGGGGGCTGGACTTCGCCTGTGATATCTACATCTGGGCGCCCTTGGCCGGGACTTGTGGGGTCCTTCTCCTGTCACTGGTTATCACCCTTTACTGCAACCACAGGAACCGAAGACGTGTTTGCAAATGTCCCCGGCCTGTGGTCAAATCGGGAGACAAGCCCAGCCTTTCGGCGAGATACGTCGGTTCAAGAGCTAAAAGAAGTGGTAGTGGTGCCCCTGTGA
配列番号6;(MAGE A4 TCRα鎖コード配列)
ATGAAGAAGCACCTGACCACCTTTCTCGTGATCCTGTGGCTGTACTTCTACCGGGGCAACGGCAAGAACCAGGTGGAACAGAGCCCCCAGAGCCTGATCATCCTGGAAGGCAAGAACTGCACCCTGCAGTGCAACTACACCGTGTCCCCCTTCAGCAACCTGCGGTGGTACAAGCAGGACACCGGCAGAGGCCCTGTGTCCCTGACCATCCTGACCTTCAGCGAGAACACCAAGAGCAACGGCCGGTACACCGCCACCCTGGACGCCGATACAAAGCAGAGCAGCCTGCACATCACCGCCAGCCAGCTGAGCGATAGCGCCAGCTACATCTGCGTGGTGTCCGGCGGCACAGACAGCTGGGGCAAGCTGCAGTTTGGCGCCGGAACACAGGTGGTCGTGACCCCCGACATCCAGAACCCTGACCCTGCCGTGTACCAGCTGCGGGACAGCAAGAGCAGCGACAAGAGCGTGTGCCTGTTCACCGACTTCGACAGCCAGACCAACGTGTCCCAGAGCAAGGACAGCGACGTGTACATCACCGACAAGACCGTGCTGGACATGCGGAGCATGGACTTCAAGAGCAATAGCGCCGTGGCCTGGTCCAACAAGAGCGACTTCGCCTGCGCCAACGCCTTCAACAACAGCATTATCCCCGAGGACACATTCTTCCCAAGCCCCGAGAGCAGCTGCGACGTCAAGCTGGTGGAAAAGAGCTTCGAGACAGACACCAACCTGAACTTCCAGAACCTGAGCGTGATCGGCTTCAGAATCCTGCTGCTGAAGGTGGCCGGCTTCAACCTGCTGATGACCCTGAGACTGTGGTCCAGCGGCAGCCGGGCCAAGAGA
配列番号8;(MAGE A4 TCRβ鎖コード配列)
ATGGCCAGCCTGCTGTTCTTCTGCGGCGCCTTCTACCTGCTGGGCACCGGCTCTATGGATGCCGACGTGACCCAGACCCCCCGGAACAGAATCACCAAGACCGGCAAGCGGATCATGCTGGAATGCTCCCAGACCAAGGGCCACGACCGGATGTACTGGTACAGACAGGACCCTGGCCTGGGCCTGCGGCTGATCTACTACAGCTTCGACGTGAAGGACATCAACAAGGGCGAGATCAGCGACGGCTACAGCGTGTCCAGACAGGCTCAGGCCAAGTTCAGCCTGTCCCTGGAAAGCGCCATCCCCAACCAGACCGCCCTGTACTTTTGTGCCACAAGCGGCCAGGGCGCCTACGAGGAGCAGTTCTTTGGCCCTGGCACCCGGCTGACAGTGCTGGAAGATCTGAAGAACGTGTTCCCCCCAGAGGTGGCCGTGTTCGAGCCTTCTGAGGCCGAAATCAGCCACACCCAGAAAGCCACACTCGTGTGTCTGGCCACCGGCTTCTACCCCGACCACGTGGAACTGTCTTGGTGGGTCAACGGCAAAGAGGTGCACAGCGGCGTGTCCACCGATCCCCAGCCTCTGAAAGAACAGCCCGCCCTGAACGACAGCCGGTACTGCCTGAGCAGCAGACTGAGAGTGTCCGCCACCTTCTGGCAGAACCCCAGAAACCACTTCAGATGCCAGGTGCAGTTTTACGGCCTGAGCGAGAACGACGAGTGGACCCAGGACAGAGCCAAGCCCGTGACACAGATCGTGTCTGCCGAAGCTTGGGGGCGCGCCGATTGTGGCTTTACCAGCGAGAGCTACCAGCAGGGCGTGCTGAGCGCCACCATCCTGTACGAGATCCTGCTGGGAAAGGCCACACTGTACGCCGTGCTGGTGTCTGCCCTGGTGCTGATGGCCATGGTCAAGCGGAAGGACAGCCGGGGC
配列番号11;CDR1 MAGE A4 TCRα鎖(残基48~53)
VSPFSN
配列番号12;CDR2 MAGE A4 TCRα鎖(残基71~76)
LTFSEN
配列番号13;CDR3 MAGE A4 TCRα鎖(残基111~125)
CVVSGGTDSWGKLQF
配列番号14;CDR1 MAGE A4 TCRβ鎖(残基46~50)
KGHDR
配列番号15;CDR2 MAGE A4 TCRβ鎖(残基68~73)
SFDVKD
配列番号16;CDR3 MAGE A4 TCR β鎖(残基110~123)
CATSGQGAYEEQFF
配列番号17 CDR1 CD8α(残基45~53)
VLLSNPTSG
配列番号18 CDR2 CD8α(残基72~79)
YLSQNKPK
配列番号19 CDR3 CD8α(残基118~123)
LSNSIM
配列番号21 ヒトアルファ-フェトプロテインペプチド
FMNKFIYEI
配列番号22 親AFP TCR TRAV12-2*02/TRAJ41*01/TRACアルファ鎖アミノ酸細胞外配列
Q K E V E Q N S G P L S V P E G A I A S L N C T Y S D
R G S Q S F F W Y R Q Y S G K S P E L I M S I Y S N G
D K E D G R F T A Q L N K A S Q Y V S L L I R D S Q P
S D S A T Y L C A V N S D S G Y A L N F G K G T S L L
V T P H I Q N P D P A V Y Q L R D S K S S D K S V C L
F T D F D S Q T N V S Q S K D S D V Y I T D K T V L D
M R S M D F K S N S A V A W S N K S D F A C A N A F N
N S I I P E D T F F P S P E S S
配列番号23 親AFP TCR TRBV9*01/TRBD2/TRBJ2-7*01/TRBC2ベータ鎖アミノ酸細胞外配列
D S G V T Q T P K H L I T A T G Q R V T L R C S P R S
G D L S V Y W Y Q Q S L D Q G L Q F L I Q Y Y N G E E
R A K G N I L E R F S A Q Q F P D L H S E L N L S S L
E L G D S A L Y F C A S S L G G E S E Q Y F G P G T R
L T V T E D L K N V F P P E V A V F E P S E A E I S H
T Q K A T L V C L A T G F Y P D H V E L S W W V N G K
E V H S G V S T D P Q P L K E Q P A L N D S R Y C L S
S R L R V S A T F W Q N P R N H F R C Q V Q F Y G L S
E N D E W T Q D R A K P V T Q I V S A E A W G R A D
配列番号24 参照TCRアルファ鎖DNA配列
caaaaagaagttgagcagaattctggacccctcagtgttccagagggagccattgcctctctcaactgcacttacagtgaccgaggttcccagtccttcttctggtacagacaatattctgggaaaagccctgagttgataatgtccatatactccaatggtgacaaagaagatggaaggtttacagcacagctcaataaagccagccagtatgtttctctgctcatcagagactcccagcccagtgattcagccacctacctctgtgccgtgaatagtgattccgggtatgcactcaacttcggcaaaggcacctcgctgttggtcacaccccatatccagaaccctgaccctgccgtgtaccagctgagagactctaagtcgagtgacaagtctgtctgcctattcaccgattttgattctcaaacaaatgtgtcacaaagtaaggattctgatgtgtatatcacagacaaatgtgtgctagacatgaggtctatggacttcaagagcaacagtgctgtggcctggagcaacaaatctgactttgcatgtgcaaacgccttcaacaacagcattattccagaagacaccttcttccccagcccagaaagttcc
配列番号25 参照TCRベータ鎖DNA配列
gattctggagtcacacaaaccccaaagcacctgatcacagcaactggacagcgagtgacgctgagatgctcccctaggtctggagacctctctgtgtactggtaccaacagagcctggaccagggcctccagttcctcattcagtattataatggagaagagagagcaaaaggaaacattcttgaacgattctccgcacaacagttccctgacttgcactctgaactaaacctgagctctctggagctgggggactcagctttgtatttctgtgccagcagcctcgggggggaatctgagcagtacttcgggccgggcaccaggctcacggtcacagaggacctgaaaaacgtgttcccacccgaggtcgctgtgtttgagccatcagaagcagagatctcccacacccaaaaggccacactggtgtgcctggccaccggtttctaccccgaccacgtggagctgagctggtgggtgaatgggaaggaggtgcacagtggggtctgcacagacccgcagcccctcaaggagcagcccgccctcaatgactccagatacgctctgagcagccgcctgagggtctcggccaccttctggcaggacccccgcaaccacttccgctgtcaagtccagttctacgggctctcggagaatgacgagtggacccaggatagggccaaacccgtcacccagatcgtcagcgccgaggcctggggtagagcagac
DRGSQS(αCDR1)、配列番号26
IYSNGD(αCDR2)、配列番号27
AVNSDSGYALNF(αCDR3)、配列番号28
SGDLS(βCDR1)、配列番号29
YYNGEE(βCDR2)、配列番号30
ASSLGGESEQY(βCDR3)、配列番号31
DRGSQA(αCDR1)、配列番号32
AVNSDSSYALNF(αCDR3)、配列番号33
AVNSDSGVALNF(αCDR3)、配列番号34
AVNSQSGYALNF(αCDR3)、配列番号35
AVNSQSGYSLNF(αCDR3)、配列番号36
AVNSQNGYALNF(αCDR3)、配列番号37
DRGSFS(αCDR1)、配列番号38
DRGSYS(αCDR1)、配列番号39
AVNSQSSYALNF(αCDR3)、配列番号40
配列番号43 左相同アーム(LHA)
AGTTGATAGAGTACTGTCTGCCTTCATAGGTATTTAGTATGCTGTAAATATTTTTAGGTATTGGTACTGTTCCTGTTGGCCGAGTGGAGACTGGTGTTCTCAAACCCGGTATGGTGGTCACCTTTGCTCCAGTCAACGTTACAACGGAAGTAAAATCTGTCGAAATGCACCATGAAGCTTTGAGTGAAGCTCTTCCTGGGGACAATGTGGGCTTCAATGTCAAGAATGTGTCTGTCAAGGATGTTCGTCGTGGCAACGTTGCTGGTGACAGCAAAAATGACCCACCAATGGAAGCAGCTGGCTTCACTGCTCAGGTAACAATTTAAAGTAACATTAACTTATTGCAGAGGCTAAAGTCATTTGAGACTTTGGATTTGCACTGAATGCAAATCTTTTTTCCAAGGTGATTATCCTGAACCATCCAGGCCAAATAAGCGCCGGCTATGCCCCTGTATTGGATTGCCACACGGCTCACATTGCATGCAAGTTTGCTGAGCTGAAGGAAAAGATTGATCGCCGTTCTGGTAAAAAGCTGGAAGATGGCCCTAAATTCTTGAAGTCTGGTGATGCTGCCATTGTTGATATGGTTCCTGGCAAGCCCATGTGTGTTGAGAGCTTCTCAGACTATCCACCTTTGGGTAAGGATGACTACTTAAATGTAAAAAAGTTGTGTTAAAGATGAAAAATACAACTGAACAGTACTTTGGGTAATAATTAACTTTTTTTTTAATAGGTCGCTTTGCTGTTCGTGATATGAGACAGACAGTTGCGGTGGGTGTCATCAAAGCAGTGGACAAGAAGGCTGCTGGAGCTGGCAAGGTCACCAAGTCTGCCCAGAAAGCTCAGAAGGCTAAA
配列番号44 右相同アーム(RHA)
TGAATATTATCCCTAATACCTGCCACCCCACTCTTAATCAGTGGTGGAAGAACGGTCTCAGAACTGTTTGTTTCAATTGGCCATTTAAGTTTAGTAGTAAAAGACTGGTTAATGATAACAATGCATCGTAAAACCTTCAGAAGGAAAGGAGAATGTTTTGTGGACCACTTTGGTTTTCTTTTTTGCGTGTGGCAGTTTTAAGTTATTAGTTTTTAAAATCAGTACTTTTTAATGGAAACAACTTGACCAAAAATTTGTCACAGAATTTTGAGACCCATTAAAAAAGTTAAATGAGAAACCTGTGTGTTCCTTTGGTCAACACCGAGACATTTAGGTGAAAGACATCTAATTCTGGTTTTACGAATCTGGAAACTTCTTGAAAATGTAATTCTTGAGTTAACACTTCTGGGTGGAGAATAGGGTTGTTTTCCCCCCACATAATTGGAAGGGGAAGGAATATCATTTAAAGCTATGGGAGGGTTGCTTTGATTACAACACTGGAGAGAAATGCAGCATGTTGCTGATTGCCTGTCACTAAAACAGGCCAAAAACTGAGTCCTTGTGTTGCATAGAAAGCTTCATGTTGCTAAACCAATGTTAAGTGAATCTTTGGAAACAAAATGTTTCCAAATTACTGGGATGTGCATGTTGAAACGTGGGTTAAAATGACTGGGCAGTGAAAGTTGACTATTTGCCATGACATAAGAAATAAGTGTAGTGGCTAGTGTACACCCTATGAGTGGAAGGGTCCATTTTGAAGTCAGTGGAGTAAGCTTTATGCCAGTTTGATGGTTTCACAAGTTCTATTGAGTGCTATTCAGAATAGGAACAAGGTTCTAATAGAAAAAGATGGCAATTTGAAGTAGCTATAAAATTAGACTAATCTACATTGCTTTTCTCCTGCAGAGTCTAATACCTTTTATGCTTTGATAATTAGCAGTTTGTCTAC
配列番号45 FuT2A_A2M4
TCCAGCGGCAGCCGGGCCAAGAGATCTGGATCAGGTGAGGGCAGAGGCAGCCTGCTGACATGTGGCGACGTGGAAGAAAACCCTGGCCCTATGAAGAAGCACCTGACCACCTTTCTCGTGATCCTGTGGCTGTACTTCTACCGGGGCAACGGCAAGAACCAGGTGGAACAGAGCCCCCAGAGCCTGATCATCCTGGAAGGCAAGAACTGCACCCTGCAGTGCAACTACACCGTGTCCCCCTTCAGCAACCTGCGGTGGTACAAGCAGGACACCGGCAGAGGCCCTGTGTCCCTGACCATCCTGACCTTCAGCGAGAACACCAAGAGCAACGGCCGGTACACCGCCACCCTGGACGCCGATACAAAGCAGAGCAGCCTGCACATCACCGCCAGCCAGCTGAGCGATAGCGCCAGCTACATCTGCGTGGTGTCCGGCGGCACAGACAGCTGGGGCAAGCTGCAGTTTGGCGCCGGAACACAGGTGGTCGTGACCCCCGACATCCAGAACCCTGACCCTGCCGTGTACCAGCTGCGGGACAGCAAGAGCAGCGACAAGAGCGTGTGCCTGTTCACCGACTTCGACAGCCAGACCAACGTGTCCCAGAGCAAGGACAGCGACGTGTACATCACCGACAAGACCGTGCTGGACATGCGGAGCATGGACTTCAAGAGCAATAGCGCCGTGGCCTGGTCCAACAAGAGCGACTTCGCCTGCGCCAACGCCTTCAACAACAGCATTATCCCCGAGGACACATTCTTCCCAAGCCCCGAGAGCAGCTGCGACGTCAAGCTGGTGGAAAAGAGCTTCGAGACAGACACCAACCTGAACTTCCAGAACCTGAGCGTGATCGGCTTCAGAATCCTGCTGCTGAAGGTGGCCGGCTTCAACCTGCTGATGACCCTGAGACTGTGGTCCAGCGGCAGCCGGGCCAAGAGATCTGGATCCGGCGCTACCAACTTTAGCCTGCTGAAGCAGGCCGGGGACGTGGAAGAAAACCCTGGCCCTAGGATGGCCAGCCTGCTGTTCTTCTGCGGCGCCTTCTACCTGCTGGGCACCGGCTCTATGGATGCCGACGTGACCCAGACCCCCCGGAACAGAATCACCAAGACCGGCAAGCGGATCATGCTGGAATGCTCCCAGACCAAGGGCCACGACCGGATGTACTGGTACAGACAGGACCCTGGCCTGGGCCTGCGGCTGATCTACTACAGCTTCGACGTGAAGGACATCAACAAGGGCGAGATCAGCGACGGCTACAGCGTGTCCAGACAGGCTCAGGCCAAGTTCAGCCTGTCCCTGGAAAGCGCCATCCCCAACCAGACCGCCCTGTACTTTTGTGCCACAAGCGGCCAGGGCGCCTACGAGGAGCAGTTCTTTGGCCCTGGCACCCGGCTGACAGTGCTGGAAGATCTGAAGAACGTGTTCCCCCCAGAGGTGGCCGTGTTCGAGCCTTCTGAGGCCGAAATCAGCCACACCCAGAAAGCCACACTCGTGTGTCTGGCCACCGGCTTCTACCCCGACCACGTGGAACTGTCTTGGTGGGTCAACGGCAAAGAGGTGCACAGCGGCGTGTCCACCGATCCCCAGCCTCTGAAAGAACAGCCCGCCCTGAACGACAGCCGGTACTGCCTGAGCAGCAGACTGAGAGTGTCCGCCACCTTCTGGCAGAACCCCAGAAACCACTTCAGATGCCAGGTGCAGTTTTACGGCCTGAGCGAGAACGACGAGTGGACCCAGGACAGAGCCAAGCCCGTGACACAGATCGTGTCTGCCGAAGCTTGGGGGCGCGCCGATTGTGGCTTTACCAGCGAGAGCTACCAGCAGGGCGTGCTGAGCGCCACCATCCTGTACGAGATCCTGCTGGGAAAGGCCACACTGTACGCCGTGCTGGTGTCTGCCCTGGTGCTGATGGCCATGGTCAAGCGGAAGGACAGCCGGGGCTAA
配列番号46 合成ポリA配列
AATAAAATATCTTTATTTTCATTACATCTGTGTGTTGGTTTTTTGTGTG
配列番号47 EF1Aプロモーター
GCTCCGGTGCCCGTCAGTGGGCAGAGCGCACATCGCCCACAGTCCCCGAGAAGTTGGGGGGAGGGGTCGGCAATTGAACCGGTGCCTAGAGAAGGTGGCGCGGGGTAAACTGGGAAAGTGATGTCGTGTACTGGCTCCGCCTTTTTCCCGAGGGTGGGGGAGAACCGTATATAAGTGCAGTAGTCGCCGTGAACGTTCTTTTTC GCAACGGGTTTGCCGCCAGAACACAG
配列番号48 LOXP
ATAACTTCGTATAATGTATGCTATACGAAGTTAT
配列番号49 ピューロマイシン耐性遺伝子
ATGACC GAGTACAAGC CCACCGTGAG GCTGGCTACC AGAGACGACG TGCCCAGAGC CGTGAGAACC CTGGCTGCCG CCTTCGCTGA CTACCCTGCC ACCAGGCACA CCGTGGATCC CGACAGGCAC ATCGAGAGGG TGACCGAGCT GCAGGAGCTG TTCCTGACCA GGGTGGGCCT GGACATCGGC AAGGTGTGGG TGGCTGACGA TGGAGCCGCT GTGGCCGTGT GGACAACCCC CGAGAGCGTG GAAGCTGGAG CCGTGTTCGC CGAGATCGGC CCTAGAATGG CCGAGCTGTC CGGCAGCAGG CTGGCTGCTC AGCAGCAGAT GGAGGGCCTG CTGGCCCCTC ACAGACCTAA GGAGCCCGCC TGGTTCCTGG CCACCGTGGG AGTGAGCCCT GACCACCAGG GCAAGGGACT GGGCTCCGCT GTGGTGCTGC CTGGAGTGGA AGCCGCTGAG AGAGCCGGAG TGCCCGCCTT TCTGGAAACC TCCGCCCCCA GGAACCTGCC CTTCTACGAG AGGCTGGGCT TCACCGTGAC CGCCGATGTG GAAGTGCCTG AGGGCCCCAG GACCTGGTGC ATGACCAGGA AGCCCGGCGC C
プライマー1824(配列番号50)
TAAGTTGGCTGTAAACAAAGTTGAA
プライマー1825(配列番号51)
GCACGTCGTCTCGGTAGC
プライマー2294(配列番号52)
TCTACGAGAGGCCTGGGCTTC
プライマー2295(配列番号53)
GTGGGGTGGCAGGTATTAGG
プライマーITR_F(配列番号54)
GGAACCCCTAGTGATGGAGTT
プライマーITR_R(配列番号55)
CGGCCTCAGTGAGCGA
【配列表】
【国際調査報告】