(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】反共振中空コア光ファイバ母材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C03B 37/012 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
C03B37/012 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506485
(86)(22)【出願日】2022-07-27
(85)【翻訳文提出日】2024-03-29
(86)【国際出願番号】 US2022038479
(87)【国際公開番号】W WO2023014550
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】フィアッコ,リチャード マイケル
(72)【発明者】
【氏名】リー,ミン-ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ログノフ,ステファン ルヴォヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ストーン,ジェフリー スコット
(72)【発明者】
【氏名】タグル,マシュー アルトゥス
【テーマコード(参考)】
4G021
【Fターム(参考)】
4G021BA01
(57)【要約】
外側クラッド(110)と、複数の構造管(120)と、中心支持管(130)とを備える反共振中空コア光ファイバ母材(100)。外側クラッド(110)は、長さと、長手方向中心軸と、中空部とを有している。複数の構造管(120)は、外側クラッド(110)の中空部内に配置され、複数の構造管(120)のそれぞれが外側クラッド(110)の長さだけ延びる長さを有している。そして、中心支持管(130)は、中心支持管(130)の半径方向外側に複数の構造管(120)が配置されるように、外側クラッド(110)の中空部内に配置され、外側クラッド(110)の長手方向中心軸に沿って延びる長さを有している。さらに、中心支持管(130)の長さは、外側クラッド(110)の長さより短い。かかる母材(100)の製造方法は、中心支持管(130)を複数の構造管(120)に接合するステップを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さと、長手方向中心軸と、中空部とを有する外側クラッドと、
前記外側クラッドの前記中空部内に配置された複数の構造管であって、それぞれが前記外側クラッドの前記長さだけ延びる長さを有している複数の構造管と、
前記外側クラッドの前記中空部内に配置された中心支持管であって、前記中心支持管は、前記中心支持管の半径方向外側に前記複数の構造管が配置されるように配置され、前記外側クラッドの前記長手方向中心軸に沿って延びる長さを有しており、前記中心支持管の前記長さは、前記外側クラッドの前記長さより短い、中心支持管と、
を備える反共振中空コア光ファイバ母材。
【請求項2】
前記中心支持管の前記長さが約3cm以下である、請求項1に記載の反共振中空コア光ファイバ母材。
【請求項3】
前記中心支持管の前記長さが約2cm以下である、請求項2に記載の反共振中空コア光ファイバ母材。
【請求項4】
前記複数の構造管のそれぞれが前記中心支持管に接合されている、請求項1に記載の反共振中空コア光ファイバ母材。
【請求項5】
前記複数の構造管のそれぞれが前記中心支持管に溶接されている、請求項4に記載の反共振中空コア光ファイバ母材。
【請求項6】
前記複数の構造管が前記中心支持管に、シリカスートの層により接合されている、請求項4に記載の反共振中空コア光ファイバ母材。
【請求項7】
前記中心支持管が、前記外側クラッドの第1の端部に配置され、
前記反共振中空コア光ファイバ母材が、前記外側クラッドの第2の端部に配置された第2の中心支持管をさらに備え、
前記複数の構造管が、前記第2の中心支持管の半径方向外側に配置され、
前記第2の中心支持管が、前記外側クラッドの前記長さよりも短い長さを有している、請求項1に記載の反共振中空コア光ファイバ母材。
【請求項8】
前記中心支持管が前記第2の中心支持管に接していない、請求項7に記載の反共振中空コア光ファイバ母材。
【請求項9】
前記複数の構造管のそれぞれがシリカガラスを含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の反共振中空コア光ファイバ母材。
【請求項10】
前記複数の構造管のそれぞれが中空管である、請求項1~8のいずれか1項に記載の反共振中空コア光ファイバ母材。
【請求項11】
前記構造管のそれぞれが隣接する構造管と接している、請求項1~8のいずれか1項に記載の反共振中空コア光ファイバ母材。
【請求項12】
前記構造管が隣接する構造管と接していない、請求項1~8のいずれか1項に記載の反共振中空コア光ファイバ母材。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2021年8月6日を出願日とする米国仮特許出願第63/230283号の優先権の利益を主張するものであり、この仮出願のすべての開示内容は、本明細書の依拠するところとし、参照により本明細書に援用するものとする。
【技術分野】
【0002】
本開示は、概して、反共振中空コア光ファイバ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
従来の反共振中空コア光ファイバは、中空の外側クラッドの中に複数のガラス管を配列することにより構成されている。このガラス管は、外側クラッドに比べて小さい直径と厚さを有している。各ガラス管は外側クラッドの内表面に接合され、これにより、複数のガラス管を外側クラッドの内周に沿って配列している。さらに、各ガラス管は、外側クラッドの長さと平行に延びる。外側クラッドの中心部は、空気で満たされた空隙として空けられており、その周囲にガラス管が配列されている。このようにして得られる反共振ファイバでは、光は、コアの中心空間部内を通るように導かれる。このような反共振ファイバは、信号の光損失を低減することができる。
【0004】
しかし、かかる反共振ファイバの製造は非常に困難であった。現在の製造プロセスでは、接着剤又はレーザ溶接のいずれかを利用して、ガラス管を外側クラッドに溶接している。しかし、いずれのプロセスも、得られる反共振ファイバに最適とはいえない結果を生じさせる恐れがあった。具体的には、接着剤が一部でも割れて、それがガラス管に付着することがあれば、それが減衰因子として働いてしまうことになる。さらに、レーザ溶接は外側クラッドに損傷を与える可能性があるが、損傷が生じれば、ファイバの機械的強度が低下することになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、上記のような最適とはいえない結果を生じさせることなく、反共振中空コア光ファイバを製造するニーズが存在している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を解決するための例示的なアプローチは、独立請求項に記載している。また、種々の実施形態を、従属請求項で規定している。
【0007】
本開示は、反共振中空コア光ファイバ及びその製造方法に関する。当該ファイバは、複数のガラス管を中空の外側クラッドに対して且つその内部に固定するための中心支持管を備える母材から製造される。複数のガラス管のそれぞれが、外側クラッドの長さだけ延びる長さを有している。一方、中心支持管の長さは、外側クラッドの長さより短い。より具体的には、中心支持管は、外側クラッドの内周にガラス管を固定するのに十分な長さだけ延びている。ガラス管は、中心支持管の半径方向外側に配置され、外側クラッドはガラス管の半径方向外側に配置される。そして、母材から反共振中空コア光ファイバを製造する際に、母材における中心支持管を含む部分が取り除かれるため、最終的なファイバは、その全長にわたり中空の部材となる。
【0008】
第1の態様によれば、外側クラッドと、複数の構造管と、中心支持管とを備える反共振中空コア光ファイバ母材が開示される。外側クラッドは、長さと、長手方向中心軸と、中空部とを有している。複数の構造管は、外側クラッドの中空部内に配置され、複数の構造管のそれぞれが外側クラッドの長さだけ延びる長さを有している。そして、中心支持管は、中心支持管の半径方向外側に複数の構造管が配置されるように、外側クラッドの中空部内に配置され、外側クラッドの長手方向中心軸に沿って延びる長さを有している。さらに、中心支持管の長さは、外側クラッドの長さより短い。
【0009】
他の態様によれば、反共振中空コア光ファイバ母材の製造方法が開示される。本方法は、中心支持管の半径方向外側に複数の構造管が配置されるように、中心支持管を複数の構造管に接合するステップと、中心支持管及び複数の構造管の周囲に中空の外側クラッドを設けるステップと、を含む。複数の構造管のそれぞれが、外側クラッドの長さだけ延びる一方、中心支持管の長さは、外側クラッドの長さより短い。
【0010】
なお、多くの異なる実施形態を列挙しているが、これらの実施形態は、それぞれ別個に存在することができるほか、任意の可能な組み合わせでも存在することもできる。以下、例示的な実施形態についての図示、説明を行う。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施形態に係る、反共振中空コア光ファイバを製造するための母材を示す斜視図
【
図2】本開示の実施形態に係る、
図1のB-B線に沿った母材の断面図
【
図3A】本開示の実施形態に係る、母材の種々の例示的な実施形態を示す断面図
【
図3B】本開示の実施形態に係る、母材の種々の例示的な実施形態を示す断面図
【
図3C】本開示の実施形態に係る、母材の種々の例示的な実施形態を示す断面図
【
図3D】本開示の実施形態に係る、母材の種々の例示的な実施形態を示す断面図
【
図3E】本開示の実施形態に係る、母材の種々の例示的な実施形態を示す断面図
【
図4】本開示の実施形態に係る、ガラス材料を接合して母材を形成する例示的なプロセスを示す図
【
図5】本開示の実施形態に係る、ガラス材料を接合して母材を形成する他の例示的なプロセスを示す図
【
図6A】本開示の実施形態に係る、母材の種々の例示的な実施形態を示す追加の断面図
【
図6B】本開示の実施形態に係る、母材の種々の例示的な実施形態を示す追加の断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の詳細な説明において、本開示のさらなる特徴及び利点を記載する。下記のさらなる特徴及び利点は、当業者であれば、詳細な説明から明らかとなるであろうし、あるいは、特許請求の範囲及び添付の図面とともに以下の詳細な説明に記載される本開示を実施することにより理解するであろう。
【0013】
本明細書において、「及び/又は」という用語を2つ以上の項目の列記において使用する場合、列記された項目のうちいずれか1つを単独で使用してもよく、又は列記された項目のうち2つ以上を任意の組み合わせで使用してもよいことを意味している。例えば、組成物が成分A、B及び/又はCを含有すると記載している場合、この組成物は、A単独、B単独、C単独、AとBとの組み合わせ、AとCとの組み合わせ、BとCとの組み合わせ、又はAとBとCとの組み合わせを含有することができる。
【0014】
本明細書において、第1の(first)と第2の(second)、上(top)と下(bottom)などの関係性用語は、或る実体又は動作を他の実体又は動作と区別するためにのみ用いるものであり、これらの実体又は動作間の何らかの実際の関係又は順序を必ずしも要求又は示唆するものではない。
【0015】
当業者であれば、本開示の構成及び他の構成要素が、何らかの特定の材料に限定されるものではないことを理解するであろう。本明細書に記載の開示について、本明細書において別段の記載がない限り、多種多様な材料で他の例示的な実施形態を作り出すことができる。
【0016】
また、例示的な実施形態に示す本開示の要素の構成及び配置が、例示に過ぎないことに留意することも重要である。本開示においては、ごく限られた数の実施形態のみを詳細に説明しているが、当業者が本開示を検討すれば、本開示に記載の主題の新規性及び非自明性を有する教示及び利点から実質的に逸脱しない範囲で、多くの変形(例えば、種々の要素のサイズ、寸法、構造、形状及び比率の変更や、パラメータの値、取り付け配置、使用する材料、色、向きなどの変更など)が可能であることを直ちに理解するであろう。例えば、一体形成された要素として示している要素を複数の部品で構成することができ、あるいは、複数の部品として示している要素を一体形成することもできる。また、インタフェースの操作についても逆にするなどの変更が可能であるほか、本システムの構造、及び/又は部材又は接続部などの要素の長さや幅を変更することができ、要素間に設けられる調整位置の性質や数も変更することができる。本システムの要素及び/又はアセンブリは、十分な強度又は耐久性が得られる多種多様な材料のいずれかから、多種多様な色、質感、組み合わせで構成することができることに留意されたい。したがって、このような変形のすべてを本開示の範囲に含めることが意図されている。また、本開示の趣旨から逸脱しない範囲で、他の所望の例示的な実施形態の設計、動作条件、及び配置においてその他の置換、変形、変更、及び省略を行うこともできる。
【0017】
次に、本開示の好ましい実施形態について詳細に説明する。添付の図面は、これら好ましい実施形態の例を示すものである。図面全体を通して、同一又は類似の箇所は、可能な限り同一の参照番号を用いて示す。
【0018】
ここで、
図1を参照すると、例示的な反共振中空コア光ファイバ母材100が示されている。母材100は、長さLと、外径Dと、長手方向中心軸Aとを有している。母材100を線引きすることにより、反共振中空コア光ファイバを形成することができる。当技術分野において公知のとおり、反共振ファイバは中空コアファイバの一種である。中空コアファイバには3つの種類がある。1つ目の種類は、ブラッグ(Bragg)中空コアファイバである。このファイバでは、クラッドが、誘電体を同心円状に周期的に積層した多層膜のブラッグ構造とされ、これにより中空(空気)領域に光を閉じ込めている。2つ目の種類は、フォトニックバンドギャップ中空コアファイバである。このファイバでは、中空コア領域に光を閉じ込める空気孔が周期的に配列された2次元フォトニック結晶構造を利用している。3つ目の種類が、反共振中空コアファイバである。このファイバは、1層以上の薄肉ガラス管を備え、これにより、光が空気コアから漏れるのを防いでいる。各ガラス薄層を構成するガラス管の肉厚は、ガラス薄層の内部において特定の波長の光の共振を生じさせないようにすることで、複数のガラス管壁を透過する光がゼロとなるように選択される。
図1に示すように、母材100は、外側クラッド110と、複数の構造管120と、1本以上の中心支持管130とを備えている。構造管120は、中心支持管130の半径方向周囲に配置され、外側クラッド110は構造管120の半径方向周囲に配置される。
【0019】
外側クラッド110は、ガラスで形成された中空の円筒形部材である。したがって、外側クラッド110は中空部を有しており、外側クラッド110の断面は、環状のドーナツ形状を形成している。いくつかの実施形態では、外側クラッド110はドープシリカガラス又は非ドープシリカガラスで形成される。外側クラッド110の長さは、母材100の長さLに等しい。いくつかの実施形態では、外側クラッド110の長さ(したがって、母材100の長さL)は、約10cm~約2m、又は約25cm~約1.5m、又は約50cm~約1mである。
【0020】
外側クラッド110の外径は、母材100の外径Dとすることができる。いくつかの実施形態において、外側クラッド110の外径(したがって、母材100の外径D)は、約10mm以上、又は約20mm以上、又は約40mm以上、又は約60mm以上、又は約80mm以上、又は約100mm以上、又は約120mm以上である。また、これに加えて又は代えて、外側クラッド110の外径は、約150mm以下、又は約140mm以下、又は約125mm以下、又は約110mm以下、又は約100mm以下、又は約80mm以下とすることもできる。いくつかの実施形態では、外側クラッド110の外径は、約10mm~約150mm、又は約20mm~約125mm、又は約10mm~約100mm、又は約10mm~約50mmの範囲である。さらに、外側クラッド110の内径は、約3mm以上、又は約5mm以上、又は約10mm以上、又は約20mm以上、又は約40mm以上、又は約60mm以上、又は約80mm以上、又は約100mm以上、又は約120mm以上とすることができる。また、これに加えて又は代えて、外側クラッド110の内径は、約125mm以下、又は約100mm以下、又は約80mm以下、又は約60mm以下、又は約40mm以下、又は約20mm以下、又は約10mm以下とすることもできる。いくつかの実施形態では、外側クラッド110の内径は、約3mm~約125mm、又は約10mm~約100mm、又は約20mm~約60mmの範囲である。したがって、外側クラッド110の厚さは、約7mm~約25mm、又は約8mm~約20mm、又は約10mm~約18mm、又は約12mm~約16mmとされる。
【0021】
構造管120は、外側クラッド110の中空部に配置されるガラス管である。外側クラッド110と同様に、構造管120もガラスで形成された中空の円筒形部材である。したがって、各構造管120の断面は、環状のドーナツ形状を形成している。いくつかの実施形態では、構造管120はドープシリカガラス又は非ドープシリカガラスで形成される。
図1に示すように、各構造管120は、外側クラッド110の長さ(又は実質的な長さ)に亘って延びる長さを有している。したがって、構造管120と外側クラッド110の長さは、同一とすることができる。ただし、各構造管120の外径は、外側クラッド110の外径よりも小さい。構造管120の外径は、約10mm以上、又は約15mm以上、又は約20mm以上、又は約25mm以上とすることができる。また、これに加えて又は代えて、構造管120の外径は、約30mm以下、又は約25mm以下、又は約20mm以下、又は約15mm以下とすることもできる。いくつかの実施形態では、構造管120の外径は、約10mm~約35mm、又は約15mm~約30mmの範囲である。
【0022】
構造管120の内径は、約6mm以上、又は約8mm以上、又は約12mm以上、又は約16mm以上、又は約22mm以上、又は約24mm以上とすることができる。また、これに加えて又は代えて、構造管120の内径は、約34mm以下、又は約30mm以下、又は約29mm以下、又は約24mm以下、又は約14mm以下、又は約12mm以下、又は約9mm以下、又は約8mm以下とすることもできる。いくつかの実施形態では、構造管120の内径は、約6mm~約34mm、又は約14mm~約29mmの範囲である。したがって、構造管120の厚さは、約0.5mm~約2mm、又は約0.8mm~約1.8mm、又は約1mm~約1.5mm、又は約1.2mm~約1.4mmの範囲である。よって、各構造管120の厚さは、外側クラッド110の厚さよりも薄くすることができる。
【0023】
図1に示すように、構造管120は外側クラッド110の半径方向内側に配置され、外側クラッド110の内径を形成する外側クラッド110の内周115に沿って間隔を置いて配置されている。いくつかの実施形態では、以下に詳述するように、隣接する構造管120は、隙間を空けて配置される。
【0024】
各構造管120の外径は、外側クラッド110の内径よりも小さい。したがって、複数の構造管120で外側クラッド110の中空部全体を占有する状態とはならない。むしろ、構造管120が外側クラッド110の内周115に沿って間隔を置いて配置されることにより、構造管120の半径方向内側に中空コア140(
図2)が形成される。
【0025】
以下に詳述するように、従来の反共振中空コア光ファイバとは異なり、いくつかの実施形態では、構造管120は外側クラッド110の内表面に接合されない。その代わりに、構造管120は、1本以上の中心支持管130により母材100内の所定の位置に固定される。
図1にさらに示すように、中心支持管130は、外側クラッド110の半径方向内側且つ構造管120の半径方向内側に配置されるように、外側クラッド110の中空部内に配置される。したがって、構造管120は中心支持管130の半径方向外側に配置されている。
図1は、母材100が、母材100の第1の端部112に第1の中心支持管132を備えるとともに、母材100の第2の端部114に第2の中心支持管134を備える実施形態を示している。ただし、母材100が1本の中心支持管130のみを備えることができることも企図されている。例えば、母材100は、母材100の第1の端部112に第1の中心支持管132のみを備えることができる。また、いくつかの実施形態では、1本以上の中心支持管130を、母材100の第1の端部112と第2の端部114との間、例えば、母材100の中央部などに配置することができることも企図されている。
【0026】
外側クラッド110及び構造管120と同様に、中心支持管130もガラスで形成された中空の円筒形部材である。したがって、各中心支持管130の断面は、環状のドーナツ形状を形成している。中心支持管130が中空とされるのは、母材100の内部にガスを流すことにより、母材100内の圧力を所定の圧力に保つためであることに留意されたい。いくつかの実施形態では、中心支持管130はドープシリカガラス又は非ドープシリカガラスで形成される。以下に詳述するように、母材100における中心支持管130を含む部分は、光ファイバの線引きに供することなく廃棄することができる。したがって、中心支持管130は、外側クラッド110や構造管120よりも低品質のガラス材料で形成してもよい。例えば、中心支持管130の材料は、外側クラッド110や構造管120の材料よりも粘度、純度、又は粘度及び純度が低い材料とすることができる。
【0027】
図1に示すように、各中心支持管130は、外側クラッド110の長手方向中心軸に沿って延びる長さを有している。したがって、中心支持管130は、外側クラッド110と同軸、且つ外側クラッド110と構造管120のいずれとも平行とされる。ただし、各中心支持管130の長さは、外側クラッド110の長さよりも短い。さらに、各中心支持管130の長さは、構造管120の長さよりも短くすることができる。いくつかの実施形態では、各中心支持管130の長さは、少なくとも1本の構造管120の長さよりも短い。他の実施形態では、各中心支持管130の長さは、各構造管120の長さよりも短い。
【0028】
各中心支持管130の長さは、外側クラッド110の長さの約2分の1、又は約3分の1、又は約4分の1、又は約5分の1、又は約6分の1、又は約10分の1、又は約15分の1、又は約20分の1、又は約30分の1である。例えば、いくつかの実施形態では、各中心支持管130の長さは、約20cm以下、又は約15cm以下、又は約10cm以下、又は約7cm以下、又は約5cm以下、又は約3cm以下、又は約2.5cm以下、又は約2.25cm以下、又は約2.0cm以下、又は約1.75cm以下、又は約1.5cm以下、又は約1.25cm以下、又は約1.0cm以下、又は約0.5cm以下である。また、これに加えて又は代えて、各中心支持管130の長さは、約0.5cm以上、又は約1.0cm以上、又は約1.25cm以上、又は約1.5cm以上、又は約1.75cm以上、又は約2.0cm以上、又は約2.25cm以上、又は約2.5cm以上、又は約3cm以上、又は約5cm以上である。いくつかの実施形態において、各中心支持管130の長さは、約0.5cm~約10cm、又は約1.0cm~約8cm、又は約1.25cm~約5cmの範囲である。また、第1の中心支持管132が第2の中心支持管134とは異なる長さを有し得ることも企図されている。
【0029】
中心支持管130の外径は、約20mm以上、又は約25mm以上、又は約30mm以上、又は約35mm以上、又は約40mm以上、又は約45mm以上、又は約50mm以上とすることができる。また、これに加えて又は代えて、中心支持管130の外径は、約70mm以下、又は約65mm以下、又は約60mm以下、又は約55mm以下、又は約50mm以下、又は約45mm以下、又は約40mm以下とすることもできる。いくつかの実施形態では、中心支持管130の外径は、約20mm~約70mm、又は約25mm~約65mm、又は約30mm~約60mmの範囲である。中心支持管130の内径は、約10mm以上、又は約12mm以上、又は約18mm以上、又は約20mm以上、又は約24mm以上、又は約26mm以上、又は約30mm以上、又は約34mm以上とすることができる。また、これに加えて又は代えて、中心支持管130の内径は、約60mm以下、又は約54mm以下、又は約52mm以下、又は約46mm以下、又は約42mm以下、又は約38mm以下、又は約34mm以下、又は約28mm以下とすることもできる。中心支持管130の内径は、約10mm~約60mm、又は約20mm~約40mmの範囲である。したがって、各中心支持管130の厚さは、約5mm~約20mm、又は約10mm~約15mmの範囲である。
図1に示すように、中心支持管130の外径は、各構造管120の外径よりも大きい。ただし、以下に詳述するように、中心支持管130の外径を、1本以上の構造管120の外径以下とすることも企図されている。いくつかの実施形態では、中心支持管130の外径は、各構造管120の外径よりも小さい。また、第1の中心支持管132が第2の中心支持管134とは異なる外径、内径、又は外径及び内径を有し得ることも企図されている。
【0030】
図2は、
図1のB-B線に沿った母材100の断面図を示している。
図2に示すように、構造管120は、外側クラッド110の内周115に沿って配列され、これにより、構造管120の半径方向内側に中空コア140が形成されている。なお、
図2は、母材100の中央部の断面図であるため、
図1及び
図2に示す実施形態において母材100の端部に配置される中心支持管130は示されていない。
【0031】
図3A~
図3Eは、母材100内の中心支持管130の種々の例示的な実施形態の断面図を示している。より具体的には、
図3Aは、構造管120と中心支持管130とがすべて同じ外径、内径、厚さを有している実施形態を示している。
図3Bは、構造管120と中心支持管130とが同じ外径を有している実施形態を示している。ただし、この実施形態では、中心支持管130は、構造管120よりも内径が小さく、したがって、構造管120よりも厚さが大きい。
図3Cは、中心支持管130が構造管120よりも大きい外径と大きい内径を有している実施形態を示している。さらに、この実施形態では、中心支持管130と構造管120とが、同じ厚さを有している。ただし、これらが異なる厚さを有し得ることも企図されている。
図3Dは、中心支持管130が構造管120よりも小さい外径と小さい内径を有している実施形態を示している。さらに、この実施形態では、中心支持管130は、構造管120よりも厚さが小さい。
【0032】
また、
図3A~
図3Dに示す各実施形態において、複数の構造管120の寸法が全て均一とされることに留意されたい。したがって、例えば、
図3Aに示す複数の構造管120の間で、外径、内径、厚さはすべて同じサイズとされる。ただし、本明細書に開示される複数の実施形態において、1本以上の構造管120が、1本以上の他の構造管120とは異なる寸法を有し得ることも企図されている。例えば、
図3Aの実施形態を再び参照すると、この実施形態において、1本以上の構造管120の厚さを、1本以上の他の構造管120よりも厚くすることもできる。
【0033】
図3A、
図3B、
図3Dに示す例示的な実施形態では、各構造管120が隣接する構造管120と直接接している。したがって、構造管120は、隣接する構造管120と接点150を形成している。これに対し、
図3Cに示す実施形態では、隣接する構造管120は互いに直接接していない。したがって、この実施形態では、母材100は、隣接する構造管120間に接点150を有していない。その代わりに、
図3Cに示す実施形態では、隣接する構造管120は、互いに隙間Gだけ離間している。
図3Eは、隙間Gをよりよく図示するための
図3Cの部分拡大図である。本明細書の開示において、隙間Gは、隣接する構造管120が互いに直接接していない場合における、隣接する構造管120間の最小距離である。隙間Gの長さは、同一母材100内の複数の構造管120の間で一定とすることができ、これにより、すべての構造管120を内周115に沿って等間隔に配置することができる。ただし、すべての構造管120が内周115に沿って等間隔に配置されないことも企図されており、例えば、第1の構造管120と第2の構造管120の間の第1の隙間Gを、少なくとも第3の構造管120と第4の構造管120の間の第2の隙間Gとは異なる長さとすることもできる。
【0034】
隙間Gの長さは、約1mm以上、又は約1.2mm以上、又は約1.4mm以上、又は約1.6mm以上、又は約1.8mm以上、又は約2mm以上、又は約2.2mm以上、又は約2.4mm以上、又は約2.6mm以上、又は約2.8mm以上、又は約3mm以上、又は約3.2mm以上、又は約3.4mm以上、又は約3.6mm以上、又は約3.8mm以上、又は約4mm以上である。また、これに加えて又は代えて、隙間Gの長さは、約5mm以下、又は約4.8mm以下、又は約4.6mm以下、又は約4.4mm以下、又は約4.4mm以下、又は約4.2mm以下、又は約4mm以下、又は約3.8mm以下、又は約3.6mm以下、又は約3.4mm以下、又は約3.2mm以下、又は約3mm以下とすることもできる。いくつかの実施形態では、隙間Gの長さは、約1mm~約5mm、又は約2.5mm~約4.5mm、又は約3mm~約4mmの範囲である。
【0035】
なお、本明細書では、
図3C及び
図3Eを参照しながら隙間Gを開示しているが、1つ以上の他の実施形態でも、構造管120の間に隙間Gを有していてもよいことが企図されている。例えば、
図3Bに示す実施形態のような、中心支持管130の厚さが構造管120の厚さよりも大きい実施形態において、隣接する構造管120の間に隙間Gを設けることができる。
【0036】
なお、
図3A、
図3B、及び
図3Cに示す実施形態は、母材100が6本の構造管120を備える例示的な実施形態を示していることに留意されたい。一方、
図3Dに示す例示的な実施形態は、5本の構造管120を備えている。本明細書に開示の複数の実施形態において、母材100が、これより多い又は少ない本数の構造管120を備えてもよいことがさらに企図されている。例えば、母材100は、1本以上、又は2本以上、又は3本以上、又は4本以上、又は5本以上、又は6本以上、又は7本以上、又は8本以上、又は9本以上、又は10本以上、又は11本以上、又は12本以上の構造管120を備えることができる。また、これに加えて又は代えて、母材100は、20本以下、又は19本以下、又は18本以下、又は17本以下、又は16本以下、又は15本以下、又は14本以下、又は13本以下、又は12本以下、又は11本以下、又は10本以下、又は9本以下、又は8本以下の構造管120を備えることもできる。いくつかの実施形態では、母材100は、4~10本の構造管120、又は5~8本の構造管120を備える。
【0037】
上述したように、構造管120は、隣接する構造管120と接点150を形成することができる。さらに、
図3A~
図3Eに示すように、構造管120は、外側クラッド110とも接点160を形成し、且つ中心支持管130とも接点170を形成することができる。各接点150、160、170は、異なるガラス部品同士又は異なるガラス部品の一部同士が互いに直接接する、個別の一接点とすることができる。なお、接点160で構造管120は外側クラッド110に接してはいるが、いくつかの実施形態では、構造管120は外側クラッド110に接合されない。構造管120を外側クラッド110に接合しないことにより、外側クラッド110への損傷を避けることができる。例えば、構造管120を外側クラッド110にレーザ溶接すれば、外側クラッド110の一部が欠けて、外側クラッド110が損傷してしまう可能性がある。そして、外側クラッド110に損傷があると、ファイバの機械的強度が低下してしまう可能性がある。したがって、本開示の実施形態は、構造管120と外側クラッド110が接点160で互いに直接接してはいるが、構造管120が外側クラッド110に接合されていない構成を含んでいる。
【0038】
ただし、他の実施形態では、接点160で構造管120を外側クラッド110に接合することも企図されている。さらに、接点170で構造管120を中心支持管130に接合することもできる。また、これに加えて又は代えて、接点150で構造管120を隣接する構造管120に接合することもできる。したがって、接点160、150、及び/又は170は、接合箇所を形成することができる。
【0039】
いくつかの実施形態では、これらの接合箇所は、例えば、一酸化炭素(CO)レーザ、二酸化炭素(CO2)レーザ、又はイットリウムアルミニウムガーネット(YAG)レーザなどのイットリウムドープレーザを用いたレーザ溶接により形成される。いくつかの実施形態では、かかるレーザは、パルス出力0.1~2.0kWのレーザビームを照射する、波長1.06マイクロメートルのイットリウムドープレーザ、又は波長0.06マイクロメートルのND:YAGレーザである。他の実施形態では、かかるレーザは、波長1.5~1.8マイクロメートルのEr:YAGレーザである。他の実施形態では、かかるレーザは、10マイクロメートル以下、又は8マイクロメートル以下、又は5マイクロメートル以下、又は4マイクロメートル以下、又は2マイクロメートル以下の波長の一酸化炭素レーザである。なお、一酸化炭素レーザは、二酸化炭素レーザに比べて、レーザ光をシリカガラス内により深く浸透させるため、表面損傷を起こしにくく、異なるガラス部品を強固に溶接することができることから、二酸化炭素レーザよりも好ましい場合がある。
【0040】
当該レーザにより、ガラス材料を所望の深さまで改質することができる。いくつかの実施形態では、当該深さは、約0.1マイクロメートル~約5mm、又は約10マイクロメートル~約4mm、又は約50マイクロメートル~約3mm、又は約100マイクロメートル~約2mm、又は約200マイクロメートル~約1mm、又は約200マイクロメートル~約800マイクロメートルの範囲である。
【0041】
レーザは、1つのレーザパルス、又は複数のパルスからなるバーストを、線状に集光させたパルスレーザビームとして生成し、これをガラス材料と相互作用させるパルスレーザ置とすることもできる。このレーザビームは、ガラス材料内部に改質を起こす誘起吸収をガラス材料内に発生させる焦線によって特徴付けられる。レーザのパルス幅は、材料内に大きな熱輸送(熱拡散)が生じないように選択することができる。いくつかの実施形態では、パルス幅は、約0.1ピコ秒~100ピコ秒であり、好ましくは15ピコ秒未満である。
【0042】
レーザビーム焦線の平均径δ(スポット径)は、約0.3マイクロメートル~約5.0マイクロメートル、又は約1.0マイクロメートル~約3.0マイクロメートル、又は約0.4マイクロメートル~約4.0マイクロメートルである。また、当該レーザは、パルス繰り返し数が約10kHz~約1000kHz(例えば、約100kHz)であり、且つ/又は、シングルパルスレーザ又はバーストパルスレーザ(バーストパルスあたりのエネルギーは40μJ~1000μJ)として動作し、且つ/又は、レーザのビーム出力側で直接測定した平均レーザ出力が、約10ワット~約100ワット(例えば、約30ワット~約50ワット)である。
【0043】
かかるレーザ装置及びかかるレーザを生成するための結像システムのより詳細な説明については、米国特許出願第2014/0199519号明細書を参照されたい。本明細書のすべての内容は、参照により本明細書に援用されるものとする。
【0044】
上記のレーザ溶接プロセスを用いて接点150、160、及び/又は170を接合することにより、例えば、構造管120を中心支持管130に溶接した状態とすることができる。さらに、かかる接合により、1本以上の構造管120を隣接する構造管120にそれぞれ接合した状態とすることもできる。
【0045】
いくつかの実施形態では、(接点160、150及び/又は170に形成される)接合箇所は、上記において開示したレーザだけでなく、吸収膜を利用して形成することもできる。
図4に示すように、吸収膜220を用いて、第1のガラス材料200を第2のガラス材料210に接合する。上述したように、第1のガラス材料200及び第2のガラス材料210はそれぞれ、接点150、160、170における外側クラッド110、構造管120、及び中心支持管130のうちのいずれかとすることができる。1つ目の例では、第1のガラス材料200が構造管120、第2のガラス材料210が中心支持管130である。2つ目の例では、第1のガラス材料200が第1の構造管120、第2のガラス材料210が第2の構造管120である。吸収膜220は、少なくとも第1のガラス材料200と第2のガラス材料210との接点に配置される(
図4のステップA)。レーザのレーザビームの波長は、第1のガラス材料200及び第2のガラス材料210の材料にレーザビームを十分に透過させる波長とすることができる。ただし、レーザビームは、吸収膜220の材料は透過せず、むしろ、かかる波長のレーザビームは、吸収膜220により吸収される。したがって、かかる波長のレーザビームにより、吸収膜220に誘起吸収が発生する。吸収膜220がレーザビームによって加熱されることにより、第1のガラス材料200と第2のガラス材料210の間に接合部225が形成されるが、このとき、第1のガラス材料200と第2のガラス材料210はレーザビームの影響を受けない(
図4のステップB)。いくつかの実施形態では、レーザビームの波長は1060nmである。次に、化学処理などにより、残っている吸収膜220を除去する(
図4のステップC)。いくつかの実施形態では、吸収膜220は化学エッチングステップにより除去される。
【0046】
いくつかの実施形態では、吸収膜220は金属材料である。かかる金属材料としては、融点が約600℃~約1300℃であり、指定されたレーザ波長の吸収率が約30%以上である、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、チタン、クロムなどの金属の薄膜が挙げられる。吸収膜220の厚さは、約20nm以上、又は約40nm以上、又は約60nm以上、又は約80nm以上、又は約100nm以上の範囲とすることができる。また、これに加えて又は代えて、吸収膜220の厚さは、約200nm以下、又は約180nm以下、又は約160nm以下、又は約140nm以下、又は約120nm以下、又は約100nm以下、又は約80nm以下である。いくつかの実施形態では、吸収膜220の厚さは、約60nm~約120nm又は約80nm~約100nmの範囲である。
【0047】
さらに他のいくつかの実施形態では、(接点150、160及び/又は170に形成される)接合箇所は、結合部材と熱源とを用いて形成される。
図5に示すように、結合部材230は、第1のガラス材料200及び第2のガラス材料210のうちの少なくとも一方の上に配置することができる(
図5のステップA)。次に、熱源により結合部材230を局所的に加熱することにより、第1のガラス材料200と第2のガラス材料210の間に接合部235を形成することができる(
図5のステップB)。いくつかの実施形態では、結合部材230は、純シリカスートなどのシリカスートの1層以上の層であり、結合部材230の加熱によりシリカスートを焼結固化させる。したがって、結合部材230の余分な材料を除去するステップをさらに行う必要はない。そうではなく、固化したシリカスートが母材100の一部となる。結合部材230は、構造管120、外側クラッド110、又はその両方と同一の材料を含むことができる。結合部材230を固化炉で固化する実施形態では、結合部材230にドープ剤(例えば、フッ素(F)又は塩素(Cl)など)をドープすることができる。これには、第1のガラス材料200と第2のガラス材料210との接触角が小さくなるという利点がある。ガラス材料間の接触角を小さくすることにより、ガラス材料間の結合点が小さくなり、線引き後の光ファイバ内における光損失が低減する。ドープ剤(F又はClなど)はガラス材料の濡れ挙動に影響を与え、これにより、ガラス材料間の接触角を低減する。熱源は、上記において開示したレーザなどのレーザ、火炎、又は当技術分野において公知の他の熱源とすることができる。
【0048】
図6A及び
図6Bは、母材100のさらなる例示的な実施形態を示している。
図6Aに示すように、母材100は、外側リング122及び内側リング124などの2つのリング状の構造管120を備えることができる。
図6Aの実施形態では、内側リング124の構造管120の内径及び外径は、外側リング122の構造管120より大きい。さらに、
図6Bの実施形態では、構造管120は入れ子状に配置された管で構成される。より具体的には、構造管120は、外管128(第1の構造管)内に入れ子状に配置された内管126(第2の構造管)を備える。ただし、本開示は、本明細書に開示している例示的な構成に限定されるものではない。他の実施形態の母材100も企図されている。
【0049】
また、本開示の複数の実施形態は、母材100の製造方法も含む。かかる方法は、中心支持管130の半径方向外側に複数の構造管120が配置されるように、中心支持管130を複数の構造管120に接合するステップを含む。いくつかの実施形態では、この接合ステップが、第1の中心支持管132と第2の中心支持管134とを構造管120に接合するステップを含んでいる。上述したように、当該接合ステップは、接点170で行うことができる。さらに、接点150で、複数の構造管120を互いに接合することもできる。また、いくつかの実施形態では、接点160で、複数の構造管120を外側クラッド110にも接合する。他の実施形態では、複数の構造管120を外側クラッド110には接合しない。上述したように、接点150、160、及び/又は170での接合ステップは、レーザ溶接などの溶接、吸収膜220、又は結合部材230(シリカスートなど)により行うことができる。また、母材100の製造方法は、中心支持管130及び構造管120の周囲に外側クラッド110を設けるステップをさらに含む。このステップは、上述の接合ステップの前又は後に行うことができる。いくつかの実施形態では、構造管120を外側クラッド110内に配置する前にまず、構造管120を中心支持管130に接合する。
【0050】
また、本開示の複数の実施形態は、母材100から光ファイバを線引きするステップも含んでいる。
図7は、本明細書に開示の複数の実施形態に係る光ファイバを線引きするための線引きシステム700を示している。例示的な線引きシステム700は、母材100をガラス溶融温度まで加熱するための炉705を備えている。炉705は、線引きタワーの中に配置することができる。いくつかの実施形態では、炉705はヒータを備えている。これにより、母材100がヒータに向かって下降する間に、母材100が消費されて光ファイバ720へと線引きされる。母材100における中心支持管130を含む部分は、最終的な光ファイバ720の線引きに供されることがないように、取り除いて廃棄することができる。例えば、母材100における中心支持管130を含む部分を十分な温度まで加熱することにより、当該部分の母材100をガラス塊に変え、このガラス塊が重力の作用により母材100から溶断されるようにすることができる。このガラス塊が、母材100における中心支持管130を含む部分に相当する。また、作業者により、母材100から中心支持管130を含む部分が完全に除去されるまで、母材100からさらにガラスを切り取って取り除くこともできる。例えば、母材100の第1の端部(第1の端部112など)が中心支持管130を含む場合、この第1の端部をガラス塊になるまで加熱して、ガラス塊の部分を母材100から取り除く。母材100から所望の部分を取り除した後も、引き続き母材100は炉705で加熱されて、光ファイバ720へと線引きされる。したがって、本開示の複数の実施形態は、母材100から光ファイバ720を線引きする前に、母材100から中心支持管130を取り除くステップを含む。
【0051】
さらに、
図7に示すように、線引きシステム700は、炉705を出る、線引きされた(裸の)光ファイバ720のサイズを測定(例えば、直径を制御)するための非接触測定センサ710、715を備える。冷却ステーション730は、測定センサ710、715の下流に設けられ、裸光ファイバ720を冷却するように構成されている。被覆ステーション740は、冷却ステーション730の下流に設けられ、保護被覆材745を裸ファイバ720に堆積して被覆ファイバ725を形成するように構成されている。被覆ステーション740の下流には、テンショナ750が設けられる。テンショナ750は、被覆ファイバ725を引っ張る(線引きする)表面755を有している。テンショナ750の下流には、一組のガイドホイール760が設けられる。各ガイドホイール760は、表面765を有している。ガイドホイール760は、被覆ファイバ725を保管するためのファイバ巻き取りスプール(「スプール」)770へと被覆ファイバ725を案内する役割を果たす。本開示の複数の実施形態を使用することにより、反共振中空コア光ファイバを形成することができる。
【0052】
以上、様々な実施形態について説明してきたが、これらの実施形態は、単に例として提示したものであり、限定のために提示したものではない。本明細書において開示している実施形態の等価物の意味及び範囲に、本明細書に提示されている教示及び指針に基づいて行われた応用及び変形も含まれることが意図されていることは明らかであろう。したがって、当業者であれば、本開示の趣旨及び範囲から逸脱しない範囲で、本明細書に開示されている実施形態の形態や細部に対して種々の変形及び変更を加えることができることは明らかであろう。本明細書で提示している実施形態の各要素は、必ずしも互いに排他的なものではなく、当業者であれば理解できるように、様々なニーズを満たすために交換することもできる。
【0053】
本明細書で用いている表現や用語は、説明のためのものであり、限定するためのものではないことを理解されたい。本開示の広さ及び範囲は、上述の例示的な実施形態のいずれによっても限定されるべきものではなく、以下の特許請求の範囲及びその均等物に従ってのみ定義されるべきものである。
【0054】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0055】
実施形態1
長さと、長手方向中心軸と、中空部とを有する外側クラッドと、
前記外側クラッドの前記中空部内に配置された複数の構造管であって、それぞれが前記外側クラッドの前記長さだけ延びる長さを有している複数の構造管と、
前記外側クラッドの前記中空部内に配置された中心支持管であって、前記中心支持管は、前記中心支持管の半径方向外側に前記複数の構造管が配置されるように配置され、前記外側クラッドの前記長手方向中心軸に沿って延びる長さを有しており、前記中心支持管の前記長さは、前記外側クラッドの前記長さより短い、中心支持管と、
を備える反共振中空コア光ファイバ母材。
【0056】
実施形態2
前記中心支持管の前記長さが約3cm以下である、実施形態1に記載の反共振中空コア光ファイバ母材。
【0057】
実施形態3
前記中心支持管の前記長さが約2cm以下である、実施形態2に記載の反共振中空コア光ファイバ母材。
【0058】
実施形態4
前記複数の構造管のそれぞれが前記中心支持管に接合されている、実施形態1~3のいずれか1つに記載の反共振中空コア光ファイバ母材。
【0059】
実施形態5
前記複数の構造管のそれぞれが前記中心支持管に溶接されている、実施形態4に記載の反共振中空コア光ファイバ母材。
【0060】
実施形態6
前記複数の構造管が前記中心支持管に、シリカスートの層により接合されている、実施形態4に記載の反共振中空コア光ファイバ母材。
【0061】
実施形態7
前記中心支持管が、前記外側クラッドの第1の端部に配置され、
前記反共振中空コア光ファイバ母材が、前記外側クラッドの第2の端部に配置された第2の中心支持管をさらに備え、
前記複数の構造管が、前記第2の中心支持管の半径方向外側に配置され、
前記第2の中心支持管が、前記外側クラッドの前記長さよりも短い長さを有している、実施形態1~6のいずれか1つに記載の反共振中空コア光ファイバ母材。
【0062】
実施形態8
前記中心支持管が前記第2の中心支持管に接していない、実施形態7に記載の反共振中空コア光ファイバ母材。
【0063】
実施形態9
前記複数の構造管のそれぞれがシリカガラスを含む、実施形態1~8のいずれか1つに記載の反共振中空コア光ファイバ母材。
【0064】
実施形態10
前記複数の構造管のそれぞれが中空管である、実施形態1~9のいずれか1つに記載の反共振中空コア光ファイバ母材。
【0065】
実施形態11
前記複数の構造管のそれぞれの中に配置された第2の構造管をさらに備える、実施形態10に記載の反共振中空コア光ファイバ母材。
【0066】
実施形態12
前記中心支持管が中空管である、実施形態1~11のいずれか1つに記載の反共振中空コア光ファイバ母材。
【0067】
実施形態13
前記中心支持管の外径が、前記複数の構造管それぞれの外径よりも大きい、実施形態1~12のいずれか1つに記載の反共振中空コア光ファイバ母材。
【0068】
実施形態14
前記中心支持管の外径が、前記複数の構造管それぞれの外径よりも小さい、実施形態1~12のいずれか1つに記載の反共振中空コア光ファイバ母材。
【0069】
実施形態15
前記構造管のそれぞれが隣接する構造管と接している、実施形態1~14のいずれか1つに記載の反共振中空コア光ファイバ母材。
【0070】
実施形態16
前記構造管が隣接する構造管と接していない、実施形態1~14のいずれか1つに記載の反共振中空コア光ファイバ母材。
【0071】
実施形態17
中心支持管の半径方向外側に複数の構造管が配置されるように、前記中心支持管を前記複数の構造管に接合するステップと、
前記中心支持管及び前記複数の構造管の周囲に中空の外側クラッドを設けるステップと、
を含む、反共振中空コア光ファイバ母材の製造方法であって、
前記複数の構造管のそれぞれが、前記外側クラッドの長さだけ延び、前記中心支持管の長さが、前記外側クラッドの前記長さより短い、方法。
【0072】
実施形態18
COレーザを用いて前記中心支持管を前記複数の構造管に接合するステップをさらに含む、実施形態17に記載の方法。
【0073】
実施形態19
前記COレーザが、約8マイクロメートル以下の波長を有する、実施形態18に記載の方法。
【0074】
実施形態20
前記COレーザが、約5マイクロメートル以下の波長を有する、実施形態19に記載の方法。
【0075】
実施形態21
前記中心支持管上の膜を加熱することによって前記中心支持管を前記複数の構造管に接合するステップをさらに含む、実施形態17~20のいずれか1つに記載の方法。
【0076】
実施形態22
前記中心支持管上のシリカフリットを焼結することによって前記中心支持管を前記複数の構造管に接合するステップをさらに含む、実施形態17~20のいずれか1つに記載の方法。
【0077】
実施形態23
前記複数の構造管が前記外側クラッドに接合されない、実施形態17~22のいずれか1つに記載の方法。
【0078】
実施形態24
前記中心支持管を、前記複数の構造管の第1の端部に接合するステップと、
第2の中心支持管の半径方向外側に前記複数の構造管が配置されるように、前記第2の中心支持管を前記複数の構造管の第2の端部に接合するステップと、
前記第2の中心支持管及び前記複数の構造管の周囲に前記中空の外側クラッドを設けるステップと、
をさらに含み、
前記第2の中心支持管の長さが、前記外側クラッドの前記長さより短い、実施形態17~23のいずれか1つに記載の方法。
【0079】
実施形態25
前記中心支持管と、前記複数の構造管と、前記外側クラッドとにより、母材が構成され、
前記方法が、前記母材から光ファイバを線引きする前に前記中心支持管を取り除くステップをさらに含む、実施形態17~24のいずれか1つに記載の方法。
【0080】
実施形態26
前記中心支持管を取り除くステップが、前記母材の第1の端部を加熱するステップを含み、
前記母材の前記第1の端部に、前記中心支持管が配置される、実施形態25に記載の方法。
【符号の説明】
【0081】
100 反共振中空コア光ファイバ母材
110 外側クラッド
112 母材の第1の端部
114 母材の第2の端部
115 外側クラッドの内周
120 構造管
122 構造管の外側リング
124 構造管の内側リング
126 構造管の内管
128 構造管の外管
130 中心支持管
132 第1の中心支持管
134 第2の中心支持管
140 中空コア
150、160、170 接点
200 第1のガラス材料
210 第2のガラス材料
220 吸収膜
225、235 接合部
230 結合部材
700 線引きシステム
705 炉
710、715 測定センサ
720 裸光ファイバ
725 被覆ファイバ
730 冷却ステーション
740 被覆ステーション
745 保護被覆材
750 テンショナ
755 テンショナの表面
760 ガイドホイール
765 ガイドホイールの表面
770 ファイバ巻き取りスプール
【国際調査報告】