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特表2024-528965量子情報およびシミュレーションのための動的に再形成可能なアーキテクチャー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】量子情報およびシミュレーションのための動的に再形成可能なアーキテクチャー
(51)【国際特許分類】
   G06N 10/40 20220101AFI20240725BHJP
【FI】
G06N10/40
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506508
(86)(22)【出願日】2022-08-02
(85)【翻訳文提出日】2024-03-13
(86)【国際出願番号】 US2022039189
(87)【国際公開番号】W WO2023132865
(87)【国際公開日】2023-07-13
(31)【優先権主張番号】63/228,940
(32)【優先日】2021-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507044516
【氏名又は名称】プレジデント アンド フェローズ オブ ハーバード カレッジ
(71)【出願人】
【識別番号】596060697
【氏名又は名称】マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(74)【代理人】
【識別番号】100187850
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】ブルブスタイン,ドレフ
(72)【発明者】
【氏名】レビン,ハリー,ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】セメギニ,ジュリア
(72)【発明者】
【氏名】ワン,タウト
(72)【発明者】
【氏名】エバディ,セパー
(72)【発明者】
【氏名】キースリング コントレラス,アレキサンダー
(72)【発明者】
【氏名】ルーキン,ミハイル,ディー.
(72)【発明者】
【氏名】グライナー,マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ヴュレティック,ヴラダン
(57)【要約】
量子情報およびシミュレーションのための動的に再形成可能なアーキテクチャーが提供される。複数の中性原子が提供される。それぞれの中性原子は対応する光学トラップに配置される。複数の中性原子のそれぞれは、mF=0クロック状態で調製される。複数の中性原子の中性原子のペアは、それに対してレーザーパルスを方向づけることによりもつれる。レーザーパルスは、リュードベリ状態を通って中性原子のペアを遷移させるように構成される。該ペアの少なくとも1つの中性原子に対応する光学トラップは断熱的に動かされ、それにより該ペアのもつれを破壊することなく、該ペアの他の原子に対して該ペアの1つの原子を動かす。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の中性原子を提供する工程、ここで複数の中性原子のそれぞれは対応する光学トラップに配置される;
複数の中性原子のそれぞれをmF=0クロック状態で調製する工程;
レーザーパルスを複数の中性原子の中性原子のペアに方向づけることにより複数の中性原子の中性原子のペアをもつれさせる工程、ここでレーザーパルスは、リュードベリ状態を通って中性原子のペアを遷移させるように構成される;
該ペアの少なくとも1つの中性原子に対応する光学トラップを断熱的に動かし、該運動の際に少なくとも1つの中性原子にラマンパルスを適用し、それにより該ペアのもつれを破壊することなく、該ペアの中性原子を互いに対して動かす工程
を含む、量子コンピューター計算を実行する方法。
【請求項2】
ラマンパルスが該運動の中間点で適用される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
断熱的運動が一定のジャークを有する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
断熱的運動が0.55μm/μs未満の平均速度を有する、請求項1~3いずれか記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの中性原子に対応する光学トラップを、複数の中性原子の標的中性原子のブロッケード半径内に動かす工程
をさらに含む、請求項1~4いずれか記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの中性原子と標的中性原子をもつれさせる工程
をさらに含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つの中性原子および標的中性原子にゲートを適用する工程
をさらに含む、請求項5記載の方法。
【請求項8】
複数の中性原子が二次元アレイを形成する、請求項1~7いずれか記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの中性原子および標的中性原子が、該運動の前に、二次元アレイ内で隣接しない、請求項8記載の方法。
【請求項10】
少なくとも1つの中性原子に対応する光学トラップが、少なくとも1つの音響-光学デフレクター(AOD)に光のビームを方向づけることにより生成され、少なくとも1つの中性原子に対応する光学トラップを断熱的に動かす工程が、少なくとも1つのAODの駆動周波数を変化させることを含む、請求項1~9いずれか記載の方法。
【請求項11】
複数の中性原子に対応する光学トラップの少なくとも第1のサブセットが、光のビームを空間光変調器(SLM)に方向づけることにより生成される、請求項1~10いずれか記載の方法。
【請求項12】
複数の中性原子を提供する工程、ここで複数の中性原子のそれぞれは対応する光学トラップに配置される;
複数の中性原子のそれぞれをmF=0クロック状態で調製する工程;
レーザーパルスを複数の中性原子の中性原子のペアに方向づけることにより複数の中性原子の中性原子のペアをもつれさせる工程、ここでレーザーパルスは、リュードベリ状態を通って中性原子のペアを遷移させるように構成される;
該ペアの少なくとも1つの中性原子に対応する光学トラップを断熱的に動かし、それにより該ペアのもつれを破壊することなく、該ペアの中性原子を互いに対して動かす工程;
第1の領域を照射する工程、ここで第1の領域は、その中に該ペアの第1の原子を含み、それにより該ペアの第1の原子に回転を適用する工程;
該ペアの第1の原子に対応する光学トラップを第1の領域の外側に断熱的に動かす工程;
該ペアの第2の原子に対応する光学トラップを第1の領域に断熱的に動かす工程;および
第1の領域を照射し、それにより該ペアの第2の原子に回転を適用する工程
を含む、量子コンピューター計算を実行する方法。
【請求項13】
該運動の際に少なくとも1つの中性原子にラマンパルスを適用する工程
をさらに含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
ラマンパルスが該運動の中間点で適用される、請求項13記載の方法。
【請求項15】
断熱的運動が一定のジャークを有する、請求項12~14いずれか記載の方法。
【請求項16】
断熱的運動が0.55μm/μs未満の平均速度を有する、請求項12~15いずれか記載の方法。
【請求項17】
複数の中性原子が二次元アレイを形成する、請求項12~16いずれか記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つの中性原子に対応する光学トラップが、少なくとも1つの音響-光学デフレクター(AOD)に光のビームを方向づけることにより生成され、少なくとも1つの中性原子に対応する光学トラップを断熱的に動かす工程が、少なくとも1つのAODの駆動周波数を変化させることを含む、請求項12~17いずれか記載の方法。
【請求項19】
複数の中性原子に対応する光学トラップの少なくとも第1のサブセットが、空間光変調器(SLM)に光のビームを方向づけることにより生成される、請求項12~18いずれか記載の方法。
【請求項20】
複数の中性原子を提供する工程、ここで複数の中性原子のそれぞれは対応する光学トラップに配置され、該複数の中性原子は、第1のサブセットおよび第2のサブセットを含み、第1のサブセットのそれぞれの中性原子は、第2のサブセットの第1の対応する中性原子のブロッケード半径内に配置され、それにより第1の複数のペアが形成される;
複数の中性原子のそれぞれをmF=0クロック状態で調製する工程;
第1の複数のペアのそれぞれに第1のゲートを適用する工程;
第1のサブセットのそれぞれの中性原子が第2のサブセットの第2の対応する中性原子のブロッケード半径内にあるように、第1のサブセットに対応する光学トラップを断熱的に動かし、それにより第2の複数のペアを形成し、該運動の際に第1のサブセットにラマンパルスを適用する工程;
第2の複数のペアのそれぞれに第2のゲートを適用する工程
を含む、量子コンピューター計算を実行する方法。
【請求項21】
第1および/または第2のゲートがCZゲートである、請求項20記載の方法。
【請求項22】
第1のサブセットに対応する光学トラップを、第2のサブセットを含まない画像化領域に断熱的に動かす工程;
画像化領域を照射して、第1のサブセットの状態を測定する工程
をさらに含む、請求項20または21記載の方法。
【請求項23】
第1のサブセットに対応する光学トラップが同時に動かされる、請求項20~22いずれか記載の方法。
【請求項24】
ラマンパルスが該運動の中間点で適用される、請求項20~23いずれか記載の方法。
【請求項25】
断熱的運動が一定のジャークを有する、請求項20~24いずれか記載の方法。
【請求項26】
断熱的運動が0.55μm/μs未満の平均速度を有する、請求項20~25いずれか記載の方法。
【請求項27】
複数の中性原子が二次元アレイを形成する、請求項20~26いずれか記載の方法。
【請求項28】
少なくとも1つの中性原子に対応する光学トラップが、少なくとも1つの音響-光学デフレクター(AOD)に光のビームを方向づけることにより生成され、少なくとも1つの中性原子に対応する光学トラップを断熱的に動かす工程が、少なくとも1つのAODの駆動周波数を変化させることを含む、請求項20~27いずれか記載の方法。
【請求項29】
複数の中性原子に対応する光学トラップの少なくとも第1のサブセットが、空間光変調器(SLM)に光のビームを方向づけることにより生成される、請求項20~28いずれか記載の方法。
【請求項30】
複数の中性原子を提供する工程、ここで複数の中性原子のそれぞれは対応する光学トラップに配置される;
複数の中性原子のそれぞれをmF=0クロック状態で調製する工程;
第1の配置と、第1の配置とは異なる第2の配置の間で複数の中性原子を断熱的に動かす工程、ここで第1のアレイ配置は、互いのブロッケード半径内に中性原子の少なくとも1つのペアを含む;
第1の配置にある場合に中性原子の少なくとも1つのペアにゲートを適用する工程;
第2の配置にある場合に第1のハミルトニアンに従って複数の中性原子を進展させる工程
を含む、量子コンピューター計算を実行する方法。
【請求項31】
該運動の際に少なくとも1つの中性原子にラマンパルスを適用する工程
をさらに含む、請求項30記載の方法。
【請求項32】
ラマンパルスが該運動の中間点で適用される、請求項31記載の方法。
【請求項33】
断熱的運動が一定のジャークを有する、請求項30~32いずれか記載の方法。
【請求項34】
断熱的運動が0.55μm/μs未満の平均速度を有する、請求項30~33いずれか記載の方法。
【請求項35】
複数の中性原子が二次元アレイを形成する、請求項30~34いずれか記載の方法。
【請求項36】
少なくとも1つの中性原子に対応する光学トラップが、少なくとも1つの音響-光学デフレクター(AOD)に光のビームを方向づけることにより生成され、少なくとも1つの中性原子に対応する光学トラップを断熱的に動かす工程が、少なくとも1つのAODの駆動周波数を変化させることを含む、請求項30~35いずれか記載の方法。
【請求項37】
複数の中性原子に対応する光学トラップの少なくとも第1のサブセットが、空間光変調器(SLM)に光のビームを方向づけることにより生成される、請求項30~36いずれか記載の方法。
【請求項38】
複数の光学トラップ;
複数の中性原子、ここで複数の中性原子のそれぞれは複数の光学トラップの対応する1つに配置される;
少なくとも1つのレーザー、ここで少なくとも1つのレーザーは、
複数の中性原子のそれぞれをmF=0クロック状態で調製し、
リュードベリ状態を通って中性原子のペアを遷移させることにより複数の中性原子の中性原子のペアをもつれさせるように構成される、
を含む、量子コンピューターであって;
該ペアの少なくとも1つの中性原子に対応する光学トラップを断熱的に動かし、該運動の際に少なくとも1つの中性原子にラマンパルスを適用し、それにより該ペアのもつれを破壊することなく、該ペアの中性原子を互いに対して動かす
ように構成される、量子コンピューター。
【請求項39】
複数の光学トラップ;
第1のサブセットおよび第2のサブセットを含む複数の中性原子、ここで複数の中性原子のそれぞれは複数の光学トラップの対応する1つに配置され、第1のサブセットのそれぞれの中性原子は、第2のサブセットの第1の対応する中性原子のブロッケード半径内に配置され、それにより第1の複数のペアを形成する;
少なくとも1つのレーザー、ここで少なくとも1つのレーザーは、複数の中性原子のそれぞれをmF=0クロック状態で調製するように構成される、
を含む、量子コンピューターであって、
第1の複数のペアのぞれぞれにゲートを適用し;
第1のサブセットのそれぞれの中性原子が第2のサブセットの第2の対応する中性原子のブロッケード半径内にあるように、第1のサブセットに対応する光学トラップを断熱的に動かし、それにより第2の複数のペアを形成し;
該運動の際に第1のサブセットにラマンパルスを適用し;
第2の複数のペアのそれぞれにゲートを適用する
ように構成される、量子コンピューター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願についての他所参照
本願は、その全体において参照により本明細書に援用される2021年8月3日に出願された米国仮出願第63/228,940号の利益を主張する。
【0002】
連邦政府に支援された研究または開発に関する陳述
本発明は、国立科学基金により授与された1745303、1734011、2012023ならびに米国陸軍研究局により授与されたW911NF2010021およびW911NF2010082ならびに米国海軍研究所により授与されたN00014-15-1-2846およびN00014-15-1-2761ならびに米国エネルギー省により授与されたDE-SC0021013の下、政府支援によりなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
背景
本開示の態様は、量子コンピューター計算、およびより具体的に量子情報およびシミュレーションのための動的に再形成可能なアーキテクチャーに関する。
【発明の概要】
【0004】
簡単な概要
本開示の態様によると、量子コンピューター計算の方法が提供される。複数の中性原子が提供される。複数の中性原子のそれぞれは、対応する光学トラップに配置される。複数の中性原子のそれぞれは、mF=0クロック状態で調製される。複数の中性原子の中性原子のペアは、レーザーパルスをそれに対して方向づけることによりもつれる。レーザーパルスは、リュードベリ状態を通って中性原子のペアを遷移させるように構成される。該ペアの少なくとも1つの中性原子に対応する光学トラップは断熱的に動かされ、ラマンパルスは該運動の間に少なくとも1つの中性原子に適用され、それにより該ペアの中性原子を、ペアのもつれを破壊することなく互いに対して動かす。
【0005】
種々の態様において、ラマンパルスは、該運動の中間点で適用される。種々の態様において、断熱的運動は、一定のジャーク(jerk)を有する。種々の態様において、断熱的運動は、0.55μm/μs未満の平均速度を有する。
【0006】
種々の態様において、少なくとも1つの中性原子に対応する光学トラップは、複数の中性原子の標的中性原子のブロッケード半径内で動かされる。種々の態様において、少なくとも1つの中性原子は、標的中性原子ともつれる。種々の態様において、少なくとも1つの中性原子および標的中性原子にゲートが適用される。
【0007】
種々の態様において、複数の中性原子は二次元アレイを形成する。種々の態様において、少なくとも1つの中性原子および標的中性原子は、該運動の前に二次元アレイ内で隣接していない。
【0008】
種々の態様において、少なくとも1つの中性原子に対応する光学トラップは、光のビームを少なくとも1つの音響-光学デフレクター(AOD)に方向づけることにより生成され、ここで少なくとも1つの中性原子に対応する光学トラップを断熱的に動かすことは、少なくとも1つのAODの駆動周波数を変化させることを含む。種々の態様において、複数の中性原子に対応する光学トラップの少なくとも第1のサブセットは、光のビームを空間光変調器(SLM)に方向づけることにより生成される。
【0009】
本開示の態様によると、量子コンピューター計算の方法が提供される。複数の中性原子が提供される。複数の中性原子のそれぞれは、対応する光学トラップに配置される。複数の中性原子のそれぞれは、mF=0クロック状態で調製される。複数の中性原子の中性原子のペアは、レーザーパルスをそれに対して方向づけることによりもつれ、レーザーパルスは、中性原子のペアを、リュードベリ状態を通って遷移させるように構成される。該ペアの少なくとも1つの中性原子に対応する光学トラップは、断熱的に動かされ、それによりペアの中性原子を、ペアのもつれを破壊することなく互いに対して動かす。第1の領域は照射され、第1の領域はその中にペアの第1の原子を含み、それによりペアの第1の原子に回転を適用する。ペアの第1の原子に対応する光学トラップは、第1の領域の外側に断熱的に動かされる。ペアの第2の原子に対応する光学トラップは、第1の領域に断熱的に動かされる。第1の領域は照射され、それによりペアの第2の原子に回転を適用する。
【0010】
種々の態様において、ラマンパルスは、該運動の際に少なくとも1つの中性原子に適用される。種々の態様において、ラマンパルスは、該運動の中間点で適用される。
【0011】
種々の態様において、断熱的運動は、一定のジャークを有する。種々の態様において、断熱的運動は、0.55μm/μs未満の平均速度を有する。
【0012】
種々の態様において、複数の中性原子は二次元アレイを形成する。
【0013】
種々の態様において、少なくとも1つの中性原子に対応する光学トラップは、光のビームを少なくとも1つの音響-光学デフレクター(AOD)に方向づけることにより生成され、ここで少なくとも1つの中性原子に対応する光学トラップを断熱的に動かすことは、少なくとも1つのAODの駆動周波数を変化させることを含む。種々の態様において、複数の中性原子に対応する光学トラップの少なくとも第1のサブセットは、光のビームを空間光変調器(SLM)に方向づけることにより生成される。
【0014】
本開示の態様によると、量子コンピューター計算の方法が提供される。複数の中性原子が提供される。複数の中性原子のそれぞれは、対応する光学トラップに配置される。複数の中性原子は、第1のサブセットおよび第2のサブセットを含む。第1のサブセットのそれぞれの中性原子は、第2のサブセットの第1の対応する中性原子のブロッケード半径内に配置され、それにより第1の複数のペアを形成する。複数の中性原子のそれぞれは、mF=0クロック状態で調製される。第1のゲートは、第1の複数のペアのそれぞれに適用される。第1のサブセットに対応する光学トラップは、第1のサブセットのそれぞれの中性原子が第2のサブセットの第2の対応する中性原子のブロッケード半径内にあるように断熱的に動かされ、それにより第2の複数のペアが形成される。ラマンパルスは、該運動の際に第1のサブセットに適用される。第2のゲートは、第2の複数のペアのそれぞれに適用される。
【0015】
種々の態様において、第1および/または第2のゲートはCZゲートである。
【0016】
種々の態様において、第1のサブセットに対応する光学トラップは、第2のサブセットを含まない画像化領域に断熱的に動かされる。画像化領域は、第1のサブセットの状態を測定するように照射される。
【0017】
種々の態様において、第1のサブセットに対応する光学トラップは、同時に動かされる。
【0018】
種々の態様において、ラマンパルスは、該運動の中間点で適用される。
【0019】
種々の態様において、断熱的運動は一定のジャークを有する。種々の態様において、断熱的運動は、0.55μm/μs未満の平均速度を有する。
【0020】
種々の態様において、複数の中性原子は二次元アレイを形成する。
【0021】
種々の態様において、少なくとも1つの中性原子に対応する光学トラップは、光のビームを少なくとも1つの音響-光学デフレクター(AOD)に方向づけることにより生成され、ここで少なくとも1つの中性原子に対応する光学トラップを断熱的に動かすことは、少なくとも1つのAODの駆動周波数を変化させることを含む。種々の態様において、複数の中性原子に対応する光学トラップの少なくとも第1のサブセットは、光のビームを空間光変調器(SLM)に方向づけることにより生成される。
【0022】
本開示の態様によると、量子コンピューター計算の方法が提供される。複数の中性原子が提供される。複数の中性原子のそれぞれは、対応する光学トラップに配置される。複数の中性原子のそれぞれは、mF=0クロック状態で調製される。複数の中性原子は、第1の配置と、第1の配置とは異なる第2の配置の間で断熱的に動かされる。第1のアレイ配置は、互いのブロッケード半径内に中性原子の少なくとも1つのペアを含む。ゲートは、第1の配置内にある場合に中性原子の少なくとも1つのペアに適用される。複数の中性原子は、第2の配置にある場合に第1のハミルトニアンに従って進展される。
【0023】
種々の態様において、ラマンパルスは、該運動の際に少なくとも1つの中性原子に適用される。種々の態様において、ラマンパルスは該運動の中間点で適用される。
【0024】
種々の態様において、断熱的運動は一定のジャークを有する。種々の態様において、断熱的運動は、0.55μm/μs未満の平均速度を有する。
【0025】
種々の態様において、複数の中性原子は二次元アレイを形成する。
【0026】
種々の態様において、少なくとも1つの中性原子に対応する光学トラップは、光のビームを少なくとも1つの音響-光学デフレクター(AOD)に方向づけることにより生成され、ここで少なくとも1つの中性原子に対応する光学トラップを断熱的に動かすことは、少なくとも1つのAODの駆動周波数を変化させることを含む。種々の態様において、複数の中性原子に対応する光学トラップの少なくとも第1のサブセットは、光のビームを空間光変調器(SLM)に方向づけることにより生成される。
【0027】
種々の態様によると、複数の光学トラップ、複数の中性原子の源、ここで複数の中性原子のそれぞれは、複数の光学トラップの対応する1つにおいて使い捨てである、および少なくとも1つのレーザーを含む量子コンピューターが提供され、該量子コンピューターは、前述の方法のいずれかを実行するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図面のいくつかの図の簡単な説明
図1A図1Aは、本開示の態様による量子情報アーキテクチャーの概略図である。
図1B図1Bは、本開示の態様による、運動の前および後の中性原子の画像のペアである。
図1C図1Cは、本開示の態様による、静止したおよび輸送された原子のパリティ振動のグラフである。
図1D図1Dは、本開示の態様による、分離速度の関数としての測定されたベル状態忠実度のグラフである。
図2A図2Aは、本開示の態様による、12原子1Dクラスター状態グラフの生成を示す中性原子の一連の画像である。
図2B図2Bは、本開示の態様による、1Dクラスター状態調製および測定の量子回路表示である。
図2C図2Cは、本開示の態様による、得られた1Dクラスター状態の生の測定されたスタビライザーのグラフである。
図2D図2Dは、本開示の態様による、7-キュービットSteaneコードのグラフ状態表示である。
図2E図2Eは、本開示の態様による、Steaneコード論理状態を調製するための回路である。
図2F図2Fは、本開示の態様による、測定されたスタビライザーおよび論理演算子のグラフのペアである。
図3A図3Aは、本開示の態様による、表面コードを実現するグラフ状態を示す。
図3B図3Bは、本開示の態様による、得られた表面コードの測定されたX-plaquetteおよびZ-starスタビライザーのグラフである。
図3C図3Cは、本開示の態様による、トリックコードの実行の概略図である。
図3D図3Dは、本開示の態様による、誤り検出を有するおよび有さない2つの論理キュービットについての論理演算子と共に、測定されたX-plaquetteおよびZ-starスタビライザーを示す。
図4A図4Aは、本開示の態様による、コヒーレント原子輸送と、アナログハミルトニアン進展およびデジタル量子ゲートとを合わせるハイブリッド量子回路を示す。
図4B図4Bは、本開示の態様による、2コピー干渉法を介した多体リュードベリシステムにおけるもつれエントロピーの測定を図示する2つの原子画像を含む。
図4C図4Cは、本開示の態様による、多体力学後の測定された半鎖(half-chain)Renyiもつれエントロピーのグラフである。
図4D図4Dは、本開示の態様による、種々のシステムサイズについての相互情報のグラフである。
図4E図4Eは、本開示の態様による、単一部位Renyiエントロピーのグラフである。
図5A図5Aは、本開示の態様による、CZゲートの図である。
図5B図5Bは、本開示の態様による、重要な87Rb原子レベルを示すレベル図である。
図5C図5Cは、本開示の態様による、量子回路を走らせるための例示的なパルスシーケンスの概略図である。
図6A図6A~6Dは、本開示の態様による、原子損失および原子保持のグラフである。
図6B図6A~6Dは、本開示の態様による、原子損失および原子保持のグラフである。
図6C図6A~6Dは、本開示の態様による、原子損失および原子保持のグラフである。
図6D図6A~6Dは、本開示の態様による、原子損失および原子保持のグラフである。
図7A図7A~7Cは、本開示の態様による、パルス忠実度、コヒーレンスおよび集団の差のグラフである。
図7B図7A~7Cは、本開示の態様による、パルス忠実度、コヒーレンスおよび集団の差のグラフである。
図7C図7A~7Cは、本開示の態様による、パルス忠実度、コヒーレンスおよび集団の差のグラフである。
図8A図8Aは、本開示の態様による、例示的なパルスシーケンスの概略図である。
図8B図8Bは、本開示の態様による、超微細コヒーレンスシーケンスのグラフである。
図8C図8Cは、本開示の態様による、振動周波数のグラフである。
図9A図9A~9Dは、本開示の態様による、1Dクラスター状態、Steaneコード、表面コードおよびトリックコードの生成の概略図である。
図9B図9A~9Dは、本開示の態様による、1Dクラスター状態、Steaneコード、表面コードおよびトリックコードの生成の概略図である。
図9C図9A~9Dは、本開示の態様による、1Dクラスター状態、Steaneコード、表面コードおよびトリックコードの生成の概略図である。
図9D図9A~9Dは、本開示の態様による、1Dクラスター状態、Steaneコード、表面コードおよびトリックコードの生成の概略図である。
図10A図10A~10Bは、本開示の態様による、誤り推定のグラフである。
図10B図10A~10Bは、本開示の態様による、誤り推定のグラフである。
図10C図10Cは、本開示の態様による、単一キュービット(SQ)および2キュービット(TQ)ゲート誤りの表である。
図11A図11A~11Cは、本開示の態様による、誤り確率および期待値のグラフである。
図11B図11A~11Cは、本開示の態様による、誤り確率および期待値のグラフである。
図11C図11A~11Cは、本開示の態様による、誤り確率および期待値のグラフである。
図12A図12A~12Bは、本開示の態様による、干渉法測定をベンチマーク問題でテストするグラフである。
図12B図12A~12Bは、本開示の態様による、干渉法測定をベンチマーク問題でテストするグラフである。
図13A図13A~13Cは、本開示の態様による、生の多体データおよび誤りの数的モデリングのグラフである。
図13B図13A~13Cは、本開示の態様による、生の多体データおよび誤りの数的モデリングのグラフである。
図13C図13A~13Cは、本開示の態様による、生の多体データおよび誤りの数的モデリングのグラフである。
図14A図14A~14Cは、本開示の態様による、量子多体傷跡(scar)についての局所オブザーバブルおよびもつれエントロピーのグラフである。
図14B図14A~14Cは、本開示の態様による、量子多体傷跡についての局所オブザーバブルおよびもつれエントロピーのグラフである。
図14C図14A~14Cは、本開示の態様による、量子多体傷跡についての局所オブザーバブルおよびもつれエントロピーのグラフである。
図14D図14Dは、本開示の態様による、束縛されたヒルベルト空間の図である。
図15図15は、本開示の態様による、量子コンピューター計算のための装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
詳細な説明
量子プロセッサ内の所望のキュービット間で、並行のプログラム可能な操作を工学的に作り変える能力は、大規模化可能な量子情報システムを構築するための中心である。最新式のアプローチにおいて、キュービットは、局所的に相互作用して、それらの固定された空間的レイアウトに関連する結合性により拘束される。本開示は、もつれたキュービットが、単一-および2キュービット操作の層の間で、2つの空間的次元にわたる高度に並行な様式でコヒーレントに輸送される、動的で非局所的な結合性を有する量子プロセッサを提供する。このアプローチは、光ピンセットによりトラップおよび輸送される中性原子アレイを利用し;頑強な量子情報記憶のために超微細状態が使用され、もつれ生成のためにリュードベリ状態への励起が使用される。
【0030】
種々の例において、このアーキテクチャーは、クラスター状態および7キュービットSteaneコード状態などのもつれたグラフ状態のプログラム可能な生成を実現するために使用される。さらに、もつれたアンシラアレイは、13データおよび6アンシラリーキュービットを有する表面コード状態ならびに16データおよび8アンシラリーキュービットを有するトーラス上のトリックコード状態を実現するために往復される。このアーキテクチャーは、ハイブリッドアナログ-デジタル伸展を実現するためおよび量子シミュレーションにおいてもつれエントロピーを測定するためにそれを使用するためにも使用され、量子多体傷跡に関連する非単調もつれ力学を実験的に観察する。長年にわたる目標を達成することにより、これらの結果は、大規模化可能な量子プロセッシングに向かう道を開き、シミュレーションから計測学の範囲の新規の適用を可能にする。
【0031】
量子ビット(キュービット)は、量子コンピューターについての基本的な構築単位である。伝統的なコンピューターにおいて情報を記憶するために使用される古典的ビット(それぞれのビットは0または1である)との類比により、キュービットは、|0>および|1>で標識される2つの別個の状態または2つの状態の任意の量子重ね合わせを占有し得る。種々の適用において、複数のキュービットは、多キュービット量子ゲートを構築するためにもつれる。
【0032】
ビットおよびキュービットは、現実の物理系の状態にそれぞれエンコードされる。例えば、古典的ビット(0または1)は、コンデンサが充電されるかもしくは放電されるかまたはスイッチが「オン」であるかもしくは「オフ」であるかにおいてエンコードされ得る。
【0033】
用語キューディット(量子ディジット(quantum digit))は、適切なd準位量子システムにおいて実現され得る量子情報の単位を示す。N状態に対して測定され得るキュービットの集合は、N準位キューディットを実行し得る。
【0034】
量子ビットは、2つ(またはそれ以上)の別個の量子状態を有する量子系においてエンコードされる。使用され得る多くの物理的な実現がある。1つの例は、真空中で単離される原子、イオンまたは分子などの個々の粒子に基づく。これらの単離された原子、イオンおよび分子は、電子スピン、核スピン、電子軌道および分子回転/振動の異なる方向に対応する多くの別個の量子状態を有する。
【0035】
原則として、キュービットは、原子/イオン/分子の量子状態の任意のペアにエンコードされ得る。実際には、キュービットの重要なパラメーターは、それらの量子コヒーレンス特性により記載される。コヒーレンスは、その情報が消失する前のキュービットの寿命を測定する。これは、古典的ビットと近い類似を有し:0状態で古典的ビットを調製する場合、環境雑音のために、いくらかの時間の後に無作為的に1にはじかれ得る。量子力学的に、同じ誤りが起こり得:|0>はいくらかの特徴的な時間尺度の後に無作為的に|1>にはじかれ得る。しかしながら、キュービットは、さらなる誤りを被ることがあり:例えば、重ね合わせ状態
【数1】
は、無作為的に
【数2】
にはじかれ得る。実際の量子コンピューターにおいて、キュービットは、長いコヒーレンス特性を有する量子状態にエンコードされなければならない。
【0036】
量子コンピューターは一般的に、それぞれがそれ自体の原子/分子/イオン/等にエンコードされる多くのキュービットを含み得る。キュービットを単純に含むことの他に、量子コンピューターは、(1)キュービットを初期化し得、(2)制御された方法でキュービットの状態を操作し得、(3)キュービットの最終状態を読み出し得るべきである。キュービットの操作のことになると、これは通常2つの型に分解され:キュービット操作の1つの型は、いわゆる単一キュービットゲートであり、これは個々にキュービットに適用される操作を意味する。例えばこれは、キュービットの状態を、|0>から|1>にはじき得るかまたは|0>を、重ね合わせ状態
【数3】
にし得る。第2の必要な型のキュービット操作は、多-キュービットゲートであり、これはまとめて、もつれるものなどの2つ以上のキュービットに作用する。多-キュービットゲートは、キュービット間の相互作用のいくつかの形態を介して実現される。種々の量子コンピューター計算プラットフォーム(キュービットの種々の物理的エンコーディングを有する)は、キュービットを記憶している物理システムに応じて単一キュービットゲートおよび多キュービットゲートの両方について異なる物理的機構に頼る。
【0037】
量子コンピューターの種々の態様において、キュービットは、原子、イオンまたは分子の2つの基底状態に近いエネルギー準位にエンコードされる。これの例は、超微細キュービットである。かかるキュービットは、外側の電子スピンに関して核スピンの相対的な方向により異なる2つの電気的基底状態にエンコードされる。かかる状態のペアは、それらが環境的摂動に対して特に頑強/非感受性であるように選択され得、長いコヒーレンス時間をもたらす。これらの状態は、核スピンと電子スピンの間の相互作用エネルギーである、原子/イオン/分子の超微細相互作用エネルギーによりエネルギーにおいて分割される。キュービットの頑強さは、特に安定である2つの状態の間のエネルギー分割として理解され得る。この理由のために、安定なエネルギー分割は優れた周波数参照を形成し得、したがって原子クロックについての基準を形成するので、かかる状態は、クロック状態と称される。これらのキュービット状態間の典型的な超微細分割は、1~13GHz周波数範囲にある。
【0038】
かかる超微細キュービット上で単一キュービットゲートを実行するために、状態の間にエネルギー分割の正確な周波数でコヒーレントマイクロ波放射を適用することが可能である。しかしながら、このアプローチには2つの欠点がある。第1に、マイクロ波は、隣接するキュービットに影響することなくちょうど1つのキュービットに適用することができない。これは、キュービットが、典型的にちょうど数ミクロン互いから離れる粒子中にエンコードされ、それらの大きな波長のために、かかる小さな規模に対してマイクロ波を集中させる(focus)ことができないためである。第2に、マイクロ波強度は、かなり制限され、したがって、単一キュービットゲートの最大速度が相応じて制限される。
【0039】
代替的なアプローチは、誘導ラマン遷移に基づく。この場合、レーザー場は、原子/イオン/分子に適用される。レーザー場は、基底状態の1つから光学的に励起した状態への光学遷移とほぼ(正確ではないが)共鳴する。レーザーは、キュービットの超微細分割に正確に等しい量だけ周波数において分離される複数の周波数成分を含む。原子/イオン/分子は、1つの周波数成分から光子を吸収し得、異なる周波数成分にコヒーレント的に放射し得、そうすることにおいて、それはその状態を変化する。このアプローチは、量子コンピューターにおいてレーザー場を個々の粒子または粒子のサブセットに集中させる能力の利益を受ける。レーザー場は高い強度でも適用され得、かなり速いゲート操作を可能にする。
【0040】
中性原子量子コンピューターは、個々の中性原子においてキュービットをエンコードする。中性原子は、真空チャンバー内にトラップされ、トラップレーザーにより浮揚される。最も一般的に、トラップレーザーは、個々の光ピンセットであり、これは焦点で個々の原子をトラップする個々の密に集中されたレーザービームである。代替的に、個々の原子は、ノード/アンチノードの周期的な構造を生じるレーザー光の定常波で形成される光格子中にトラップされ得る。
【0041】
中性原子中にキュービットをエンコードするための典型的なアプローチは、2つの基底状態がキュービットから数GHzだけ分割される超微細キュービットアプローチである。中性原子量子コンピューター中の多キュービットゲートは、高度に励起されたリュードベリ状態である第3の原子状態を使用して実現される。1つの原子がリュードベリ状態に励起される場合、隣接する原子は、リュードベリ状態に励起することが妨げられる。この条件的挙動は、制御-NOTゲートなどの多キュービットゲートについての基準を形成する。リュードベリ状態は、多キュービットゲートを媒介するために一時的に使用され、次いで原子は、リュードベリ状態から基底状態準位へと逆に戻されて、それらのコヒーレンスを保存する。
【0042】
トラップされたイオン量子コンピューターは、イオン化される原子種を使用し、それらが正味の電荷を有することを意味する。ほとんどの場合、多くのイオンは、真空チャンバー内の電極により形成される1つの大きなトラップ電位にトラップされる。イオンは、最小のトラップ電位に引っ張られるが、イオン間のクーロン反発は、それらに、トラップ電位の中央で中心に置かれる結晶構造を形成させる。最も一般的に、イオンは線形の鎖に整列する。光ピンセットを使用することまたはより複雑なオンチップの電極構造を有する局所的な電場によりイオンを個々にトラップすることなどの、イオンをトラップするための他の方法も可能である。
【0043】
キュービットは、複数の方法でトラップされたイオン中にエンコードされる。1つの一般的なアプローチは、中性原子について記載されるように、基底状態超微細レベルを使用することである。中性原子と同様に、超微細キュービットエンコーディングを有するトラップされたイオンにおいて、単一キュービットゲートは、マイクロ波照射または誘導ラマン遷移を使用し得る。
【0044】
中性原子におけるものとは異なり、トラップされたイオン超微細キュービットは、多キュービットゲートを実行するために、誘導ラマン遷移に激しく頼る。誘導ラマン遷移は、イオンの超微細状態を制御する以外にもイオンの運動状態を変化させる(すなわち運動量の追加)ための両方に使用され得る。これは、光子の運動量の差がイオンにより吸収されるように、一方向に動く光子を吸収し、異なる方向で光子を放出することとして理解され得る。しばしば多くのイオンが1つの集合的トラップ電位にトラップされ、それぞれが相互に反発しているので、1つのイオンの運動状態を変化させることは、システム内の他のイオンに影響を及ぼし、この機構は多キュービットゲートのための基準を形成する。
【0045】
量子コンピューターの種々の態様によると、個々の粒子(原子/イオン/分子)は、最初にアレイ内にトラップされて、特定の配置に整列され得る。次に、1つ以上の粒子は、所望の量子状態で調製される。次いで量子回路は、個々のキュービット(単一キュービットゲート)または2つ以上のキュービットの群(多キュービットゲート)に対して作用するキュービット操作のシーケンスにより実行され得る。最終的に、粒子の状態は、量子回路の結果を観察するために読み出され得る。読出しは、典型的に粒子の負荷された位置を検出するための電子増倍CCD(EMCCD)カメラ画像および例えばそれらの最終状態において粒子により放出される蛍光を検出することにより粒子の最終的な状態を読み出すための第2のカメラ画像を含む観察システムを使用して達成され得る。
【0046】
量子情報プラットフォームは、量子ゲートを実行するためまたはアナログ多体シミュレーションを実行するためのいずれかでキュービットの間の相互作用に頼る。しかしながらキュービットはしばしば局所的な方法で相互作用し、これは回路またはアナログシミュレーションの結合性を制限し、可能なコンピューター計算を妨げる。いくつかのプラットフォームは、共有されたバス(例えばトラップされたイオン)の使用を介して非局所的な方法で連絡し得るが、これらの共有されたバスアプローチは、小さなシステムに制限され、そのために、プラットフォームを真に大規模化するために、キュービットを周囲に動的に動かす方法を依然として必要とする。
【0047】
本開示は、超微細状態において量子情報を記憶して原子を光ピンセット内で往復させることにより量子コヒーレンスおよびキュービットの間のもつれを保存しながら、中性原子アレイが動的に再形成され得ることを示す。このアプローチは、多くのキュービットおよび任意のプログラム可能性により量子情報システムを実現するための大規模化可能な方法を提供し-ここで任意のキュービットは、アレイにおける任意の他のキュービットによりもつれゲートを実行し得る。高忠実度2キュービットリュードベリゲートを使用して、これらのアプローチにより達成可能なプログラム可能性および非局所的結合性を強化する種々の量子情報回路が本明細書に記載される。高忠実度リュードベリゲートの例は、参照により本明細書に援用されるLevine, et al., Parallel Implementation of High-Fidelity Multiqubit Gates with Neutral Atoms, Phys. Rev. Lett., vol. 123, issue 17, https://link.aps.org/doi/10.1103/PhysRevLett.123.170503に記載される。
【0048】
本明細書に記載されるアプローチは、スタビライザー状態またはグラフにより定義される量子情報状態の重要な部類であるグラフ状態を作製するために自然に適合され、これらのグラフのいくつかは、非局所的な結合性を有する。特に、本開示は、高い忠実度を有する1Dクラスター状態、7キュービットSteaneコード量子誤り訂正コードおよび表面コード量子誤り訂正コードの調製を示す。
【0049】
これらのアプローチの真の非局所的な能力をさらに示すために、本開示は、アレイの反対の末端上のキュービットのもつれを示して、24キュービットを有する周期的な境界条件を実行し、トーラス上でトリックコードを実現する。トリックコードは、必要とされる非局所的結合性のために物理的実現が他のシステムにおいて実際的でない規範的なトポロジカル誤り訂正コードであり、このアプローチの特有の能力を強調する。
【0050】
本明細書に提供されるアプローチは、リュードベリ原子を用いたアナログ量子シミュレーションのための種々の新規のツールも提供する。この例として、本開示は、2つの同一の多体コピー上の量子多体クエンチを示し、次いでゲート系プロトコルにより2つのシステムを干渉し、システムのもつれエントロピー-リュードベリ原子システムにおいて以前には実験的に測定されていない重要な量を生じる。
【0051】
本明細書に記載されるアプローチは、運動の間にキュービットのコヒーレンスを保持する能力および運動の間のもつれの破壊を回避する能力などの種々の利点を有することが理解される。
【0052】
以下により詳細に記載されるように、本明細書に提供される方法は、種々のコンピューター計算シナリオを可能にする。いくつかのシナリオにおいて、複数の中性原子は、空間中の複数の領域の間で並行に動かされる。例えば、照射の源は、第1の領域に方向づけられ得、原子は、照射の源によるパルスの適用の間で、該領域の内部または外部に動かされる。同様に、カメラは画像化領域に方向づけられ得、原子は画像化のために該画像化領域の内部および外部に動かされる。同様に、原子は他の原子のブロッケード半径の内部および外部に動かされ得、それによりアルゴリズムの異なる段階または量子回路の層で、原子の異なる群へのゲートの適用を可能にする。
【0053】
種々のスタビライザーコードは、アンシラキュービットの読出しを必然的に伴うことが理解され、本開示は、データキュービットとは別のアンシラキュービットの、画像化領域への物理的再配置を可能にする。この方法において、アンシラキュービットの読出しは、データキュービットの破壊なしに提供され得る。
【0054】
より一般的に、原子のアレイは、原子の異なる選択と全体としてのアレイのアナログ進展との間で両方のデジタルゲートを容易にするために、複数の配置の間で動かされ得る。本明細書で使用する場合、原子のアレイまたは複数の原子の配置は、互いに対するこれらの原子の位置決定をいう。特定の配置は、特定のハミルトニアンに従う特定のゲートまたはアナログ進展を可能にするキュービットの間で結合性を提供することが理解される。本明細書に提供される方法の1つの利点は、原子が、アレイ内で隣接しなかった原子の近位に動かされ得るということである。非隣接原子は、規則的な格子中の単位胞内にないかまたは不規則的なアレイにおける最近傍隣接体でないものである。例えば、長方形格子において、それぞれの原子は、その単位胞内にある8個の原子を有し、そのために(エッジに関係なく)8個の隣接する原子を有する。
【0055】
以下にさらに定義されるように、もつれを保存するために、原子は断熱的に動かされる。本明細書で使用する場合、用語断熱的運動は、そのトラップ内の主題の原子の遷移を回避する運動をいう。例えば、主題の原子の加速の一次導関数が所定の値よりも大きくない場合、運動は断熱的とみなされる。典型的に、ジャーク<(原子のサイズ)×(トラップ周波数(frequency))3である場合に断熱的運動は起こる。物理学において、ジャークまたはジョルト(jolt)は、物体の加速が時間に関して変化する速度について与えられる用語である。
【0056】
断熱的運動に加えて、いくつかの態様において、運動の間に動的デカップリングが適用される。以下にさらに記載されるように、運動の際のπ-パルスは、トラップ示差的光シフトにより誘導されるディフェージング(dephasing)を相殺する。原子はトラップにおいて運動し、光強度の異なる部分をサンプリングし、そのために異なる示差的光シフトを有するので、原子が(その加速に応じて)運動している際にトラップ示差的光シフトは変化する。
【0057】
一般的に、より多くのパルスが適用されると、揺らぎからのデカップリングはより大きくなる。例えば、揺らぎは、原子の異なる転移位置または空間内の異なる磁場でのレーザー強度揺らぎにより生じ得る。
【0058】
加速および減速が対称である態様において、両方は同じ方法で示差的光シフトを変化させる。したがって、かかる態様において、運動の中間点でπパルスを適用することが有利である。この方法で、加速および減速により誘導される示差的光シフトの変化は、互いを相殺する。
【0059】
当該技術分野で公知であるように、ハミルトニアン下の中性原子のシステムのアナログ進展は、量子シミュレーションおよび関連のある問題を実行するために使用され得る。以下に記載されるように、本明細書に提供される方法は、所定のハミルトニアンに従ってアナログハミルトニアン進展に適切な配置に原子を動かすために使用され得る。原子はさらに、かかる配置とデジタル量子ゲートの適用に適した配置の間で後方におよび前方に動かされ得る。
【0060】
以下の例において、かかるアプローチは、多体システムにおいてもつれエントロピーを測定するために記載される。しかしながら、種々のさらなる問題のために該アプローチが使用され得ることが理解される。例えば、複数の配置の間で原子を動かすことおよび複数ラウンドのアナログ進展を実行することにより、非局所的な結合性を有するグラフ上での最大の独立セット問題の形成が可能になる。デジタルゲートおよび複数のコピーを使用することにより、アナログ量子シミュレーター上で誤り軽減が実行され得る。より一般的に、この方法でゲートを適用することにより、より正確なアナログ進展(スピン液体など)の制御が可能になる。この制御はさらに、多体物理学を調査するための方法として、複雑なシステムにおいてシャドウトモグラフィーを行うために使用され得る。
【0061】
図1を参照すると、中性原子のコヒーレント輸送により可能になる量子情報アーキテクチャーが図示される。キュービットは、離れたキュービットによりゲートをもつれさせることを実行するために輸送され、プログラム可能で非局所的な結合性を可能にする。原子の往復は、光ピンセットを使用して実行され、二次元で複数の領域の間の高い並行により、選択的な操作が可能になる。挿入図は使用される原子レベルを示し:|0>、|1>キュービット状態は、87RbのmF=0クロック状態をいい、|r>は、キュービットの間でもつれを生成するために使用されるリュードベリ状態である(図5B)。図1Bは、もつれたキュービットのコヒーレント輸送を図示する原子画像を示す。単一キュービットおよび2キュービットゲートのシーケンスを使用して、原子ペアはそれぞれ、|Φ+>ベル状態で調製され、次いで300μsの間隔にわたり110μmだけ分離される。図1Cは、運動がもつれまたはコヒーレンスに観察可能に影響しないことを示すパリティ振動を示すグラフである。運動および静止的な測定の両方について、キュービットコヒーレンスは、XY8動的デカップリングシーケンスを300μsの間使用することにより保存される。図1Dは、110μmにわたる分離速度の関数としての測定されたベル状態忠実度のグラフであり、忠実度が200μsよりも遅い運動(0.55μm/μsの平均分離速度)について影響を受けないことを示す。挿入図:運動の間の原子損失による標準化は一定の忠実度を生じ、原子損失が支配的な誤り機構であることを示す。
【0062】
量子情報システムは、量子もつれを生じる制御可能な相互作用からのそれらの動力を駆動する。しかしながら、相互作用の天然の局所的な特徴は、量子回路およびシミュレーションの結合性を制限する。非局所的な結合性は、全体的な共有される量子データバスを介して工学的に作り変えられ得るが、これらのアプローチは、制御またはサイズのいずれかにおいて制限される。
【0063】
本開示の種々の態様によると、この長年にわたる難問は、2つの空間的寸法において光ピンセットにより往復されるもつれた中性原子の動的に再形成可能なアレイにより対処される(図1A)。量子操作の間で量子情報を記憶および輸送するために超微細状態が使用され、もつれを生成するためにリュードベリ状態への励起が使用される。高度に並行な操作は、キュービットが動的に往復される別個の領域における選択的キュービット操作により可能になる。一緒になって、これらの構成要素は、もつれた状態の生成、トポロジカルな表面およびトリックコード状態の作成ならびにハイブリッドアナログ-デジタル量子シミュレーションなどの適用を実現するために使用される強力な量子情報アーキテクチャーを可能にする。
【0064】
原子アレイにおけるもつれ輸送
種々の態様において、以下に記載される二次元原子アレイシステムは、コヒーレント輸送ならびに単一キュービットおよび2キュービットゲートの複数の層を実行するために使用される。量子情報は、87Rb原子の基底状態超微細マニホールド内の磁気的に非感受性のクロック状態に記憶される。頑強な単一キュービットラマン回転(πパルス当たりの散乱誤り、約7×10-5)は、パルス誤りに対して頑強である複合パルスにより実現される(図7A~B)。超微細基準{|0>、|1>}における高忠実度制御-Z(CZ)もつれゲート(図1A)は、
【数4】
遷移上の全体的なリュードベリ励起パルスを使用して並行に実行される。動的な再形成について、原子は2つの組のトラップ:空間光変調器(SLM)により生成される静止トラップおよび交差2D音響-光学デフレクター(AOD)により生成される可動トラップにおいて展開される。特定の回路を実行するために、キュービットは、所望のペアに配置され、リュードベリ媒介CZゲートは、それぞれのペア上で同時に実行される。次いで、全ての可動トラップは、結合性を次の所望なキュービット配置に動的に変えるために並行に動かされる。
【0065】
図1A~Dは、もつれおよびコヒーレンスを保存しながら大きな間隔にわたりキュービットを輸送する能力を示す。ペアは、3μmの原子-原子間隔で初期化され(図1B)、次いでベル状態
【数5】
は、超微細基準で作成される。得られるもつれ状態忠実度を測定するために、可変の単一キュービット位相ゲートは、最終
【数6】
パルスの前に適用され、2原子パリティ
【数7】
の振動を生じる(図1C)。この実験は、最終
【数8】
パルスを適用する前に110μmだけ離れて動かされた原子を用いて反復された。輸送プロトコルは、三次内挿(cubic-interpolated)原子軌道を実行することにより加熱および損失を抑制するように最適化され、さらに、ディフェージングを抑制するために8パルスXY8頑強動的デカップリングシーケンスを伴う。得られるパリティ振動は、2原子もつれが輸送プロセスにより影響を受けないことを示す。運動速度の関数としてこの実験を行うことは、総分離速度が原子損失の開始に対応する>0.55μm/μsになるまで、忠実度が変化しないままであることを示す(図1D)。図1Bにおけるもつれ輸送は、原則として<10-3T2に対応する時間尺度で(3μmの原子分離で)約2000のキュービットを受け入れ(host)得る空間の領域にわたり量子情報を動かすことに対応し(図7)、大規模な量子情報システムにおける適用を直接可能にする。
【0066】
プログラム可能な回路およびグラフ状態
キュービットアレイの間の非局所的な結合性を並行に生成する能力を例示するために、もつれたグラフ状態を以下のように調製する:GHZ状態およびクラスター状態から、量子誤り訂正コードまでの範囲の例を有する大きな部類の有用な量子情報状態。グラフ状態は、
【数9】
において幾何学的グラフの頂点に位置する全てのキュービットを初期化し、次いでキュービットの間の連結(グラフの縁に対応する)上でCZゲートを実行することにより画定される。N-キュービットグラフ状態|G>は、
【数10】
により画定されるNスタビライザーの組に関係し、式中uiは、縁によりキュービットiに連結されるキュービット(頂点)の組である。スタビライザーはそれぞれ、グラフ状態|G>について+1の固有値を有する。これらの演算子およびそれらの期待値を測定することは、標的状態の調製を特徴づけるために使用され得る。
【0067】
図2を参照すると、動的もつれ輸送を使用する1Dおよび2Dグラフ状態が図示される。図2Aにおいて、|+>において全てのキュービット(頂点)を初期化して、キュービットの間の連結(縁)上で制御-Zゲートを適用することにより生成される12原子1Dクラスター状態グラフの生成が図示される。原子画像は、第1および第2のゲート層についての構成を示す。図2Bは1Dクラスター状態調製および測定の量子回路表示を示す。動的デカップリングは全ての量子回路中に適用される(方法参照)。図2Cは、Si=Zi-1XiZi+1 (縁キュービットについてX1Z2およびZ11X12)により与えられる得られた1Dクラスター状態の生の測定されたスタビライザーを示す。図2Dは、7キュービットSteaneコードのグラフ状態表示を示す(影(shading)はスタビライザーplaquetteを示す)。図2Eは、4つの並行ゲート層において実行されるSteaneコード論理|+>L状態を調製するための回路を示す。図2Fは、|+>Lを調製した後の測定されたスタビライザーおよび論理演算子を示す。誤り検出は、全てのスタビライザーが+1である測定をポストセレクト(postselecting)することによりなされる。1Dクラスター状態およびSteaneコードの両方について、スタビライザーおよび論理演算子は、2つの測定設定により測定される。エラーバーは68%信頼区間を表す。
【0068】
図2Aは、キュービットの線形の鎖により画定される1Dクラスター状態、グラフ状態の調製を示す。この状態を実現するために、CZゲートの1つの包括的で並行な層を隣接する原子ペアに対して実行し、半分の原子は、新規のペアを形成するように動かされ、次いでCZゲートの別の並行な層を実行する(図2A、B)。得られる12キュービットクラスター状態を調べるために、投影測定の前に奇数または偶数のサブ格子のいずれか上で局所π/2回転により与えられる2つの測定設定における読出しにより、スタビライザーセット{Si}={Zi-1XiZi+1}を測定する。局所回転は、キュービットの1つのサブ格子を別の領域に動かし、次いで実験領域を照射する均一なビームにより動かなかったキュービット上で回転を実行することにより達成される(図1A、方法)。<S1>は、得られたビット-ストリング出力を分析することおよび得られた生のスタビライザー測定をプロットすることにより測定される(図2C)。全ての12スタビライザーにわたり、平均<Si>=0.87(1)が見られ(図2C)(状態調製および測定SPAM誤りは<S1>=0.91(1)を生じることが説明される)、クラスター状態において2つの分離可能な(biseparable)もつれが証明される(全ての<S1>>0.5)。測定される忠実度は、測定系量子コンピューター計算について数%の操作当たりの誤りに対応する。
【0069】
重要な部類のグラフ状態は量子誤り訂正(QEC)コードであり、ここで該グラフ状態スタビライザーは、QECコードのスタビライザーとして示され、エンコードされた論理キュービット上で誤りを訂正するために測定され得る。実際に、全てのスタビライザーQEC状態は、単一キュービットClifford回転までのいくつかのグラフ状態と同等であり、そのため任意のグラフ状態を生成する能力により、広範囲のQEC状態を容易に調製することが可能になる。例として、7キュービットSteaneコード、図2Dのグラフにより示されるトポロジカルカラーコードは、論理状態|+>Lで調製される。この状態を調製するために、全てのキュービットは|+>で初期化され、CZは、キュービットの間の連結上に適用される(4つの並行な層において、図9B参照)。次いで、2つのサブ格子のいずれかは、スタビライザーを測定するために回転される(図2E)。サブ格子回転の後、グラフ状態スタビライザーの6個は、XiまたはZiの4体の積により与えられる6個のSteaneコードスタビライザーに変換される。図2Fは、これら6個のスタビライザーの生の測定された期待値を示す。7番目のグラフ状態スタビライザーは、論理ZLと反交換可能(anticommute)でありながら、論理キュービット演算子XLに変換され、グラフ状態|G>についての固有値+1を有する。したがって、図2Fにおいて、<XL>=0.71(2)および<ZL>=-0.02(3)であり、論理キュービット状態|+>Lの調製を示す。さらに、測定結果をポストセレクトすることにより誤り検出が実行され、ここで全ての測定されたスタビライザーは、+1を生じる(検出される誤りがない66(1)%の確率を有する)。この手順を使用して、訂正された値
【数11】
が得られ、Steaneコードグラフの誤り検出特性が示される(誤り訂正および論理操作について図11参照)。
【0070】
アンシラアレイを有するトポロジカル状態
遠隔のキュービットの間の量子操作を媒介するために、輸送可能なアンシラリーキュービットアレイも使用される。システム全体にわたり原子のアレイを迅速に動かす能力のために、アンシラリーキュービットの使用は、本明細書に提供される運動能力を自然に補完する。具体的に、アンシラは、直接相互作用しない物理キュービットの間のもつれを媒介することによる状態調製のために使用され、アンシラアレイの投影測定(データキュービットの測定と同時に実行される)、測定系量子コンピューター計算の形態が続く。特に、トポロジカル表面コードおよびトリックコード状態が調製され、その状態は、物理キュービットの間の直接CZゲートにより構築することがより困難である(大規模な数の層を必要とする)。これらのコードについて、アンシラキュービットの測定される値は、スタビライザーを単純に再度画定し、実際のQEC操作のためにインソフトウェア(in-software)で取り扱われる。再画定はインソフトウェアで適用されるので、物理的な介入なく、アンシラに対する投影測定は、データキュービット上の全ての操作と交換可能であり、任意の時間で行われ得、そのため全てのキュービットは同時に測定される。
【0071】
図3を参照すると、可動アンシラキュービットアレイを使用する、トポロジカル表面コードおよびトリックコード状態が図示される。図3Aは、表面コードを実現するグラフ状態を示す。回路は、可動アンシラキュービットを用いたグラフ状態の形成を示し;それぞれの運動は、隣接するデータキュービットを用いたCZゲートの実行に対応する(ボックス内に図示される)。論理|+>L状態は、X基準におけるアンシラキュービットの投影測定の際に生成される。右の概略図は、スタビライザーおよびコードの論理演算子を示す。図3Bは、エラー検出ありおよびなしでの論理演算子と共に、得られた表面コードの測定されたX-plaquetteおよびZ-starスタビライザーを示す(ポストセレクションにおいて実行される)。図3Cは、トリックコードの実行を図示する。(上)X基準におけるアンシラキュービットの投影測定の際のトリックコードの2つの論理キュービット種状態
【数12】
を実現するグラフ状態。(下)トリックコード状態の生成および測定において実行される運動工程を示す画像(補助的な動画を参照)。最終の画像における影は、データキュービット領域上の局所回転を示す。図3Dは、誤り検出ありおよびなしでの2つの論理キュービットについての論理演算子と共に、測定されたX-plaquetteおよびZ-starスタビライザーを示す(ポストセレクションにおいて実行される)。
【0072】
図3Aは、表面コードの|+>L論理状態を生成する19キュービットグラフ状態の調製を示す。表面コードは、X-plaquetteおよびZ-starスタビライザーにより画定され、論理演算子XL(ZL)は、グラフの高さ(幅)にわたるX(Z)の積のストリングとして画定される。この状態を調製するために、アンシラは、それらの4つの隣接体のそれぞれによりCZゲートを実行するように動かされ、次いで測定され、データキュービットを表面コード状態に投影する。ここでグラフ状態スタビライザーはX-plaquette、Z-star(中心アンシラの±1の測定結果について値±1を有する)、および論理XL演算子に変換される。顕著に、この手順により、一定の深さの回路においてトポロジカルに順序づけられた状態が生成され、ここで測定されたアンシラ値は、スタビライザーを再画定するために使用され得、これは実際のQEC操作のためのソフトウェアで取り扱われ得る。
【0073】
図3Bは、12の得られたスタビライザーの測定された期待値および誤り検出あり/なしの論理演算子期待値を示す。<XL>=0.64(3)の生の値が見られ、誤り検出について測定されたスタビライザーを使用して
【数13】
の訂正された値を有し(検出された誤りのない35(1)%の確率を有する)、このトポロジカルQEC状態の調製を示す(全ての調製された誤り保護論理状態についての予測される特性を示す図11も参照)。
【0074】
表面コードは他の方法により調製され得るが、本明細書に提供される輸送能力により、周期的境界条件が可能になり、トーラス上でトリックコード状態が実現される。この目的で、図3Cに示される24キュービットグラフ状態は、5つの層の並行ゲートを実行することおよび別の基準での読出しのためにアンシラを、それらの別の領域に動かすことにより生成される。調製された状態は(周期的境界条件のために)7個の独立したX-plaquetteおよび7個の独立したZ-starを有する。さらにこのグラフのトポロジカル特性のために、2つの独立した論理キュービットは、2つのトポロジカル的に別個の方向に沿って全トーラスの周囲を包む論理演算子
【数14】
によりエンコードされ得る。X基準におけるアンシラキュービットの投影測定の際に、トリックコード状態
【数15】
が生成される。
【0075】
状態調製は、トリックコードスタビライザーを測定することにより図3Dにおいて検証される。2つのエンコードされた論理キュービットについて、
【数16】
の生の論理キュービット期待値が見られ、誤りが検出された値
【数17】
を有し(20(1)%の確率で検出された誤りがない)、トリックコードの調製を示す。訂正される論理キュービットの異なる期待値は、トーラスのアスペクト比から生じ、ここで
【数18】
は、距離d=4およびd=2のそれぞれについて保護される(図11も参照)。測定される忠実度は、回路の数的シミュレーションと良好に一致し(図10)、ここでそれぞれのキュービットは、キュービットの数とは独立した1つの層当たりの誤り速度または往復プロセスを経験し、CZゲートにおける誤り(忠実度≒97.5%、方法)が支配的な誤り源を構成することを示す。
【0076】
ハイブリッドアナログ-デジタル回路
図4を参照すると、ハイブリッドアナログ-デジタル量子シミュレーションのための動的な再形成可能性が図示される。図4Aは、コヒーレント原子輸送とアナログハミルトニアン進展およびデジタル量子ゲートを組み合わせたハイブリッド量子回路を示す。図4Bは、2コピー干渉法を介する多体リュードベリシステムにおけるもつれエントロピーの測定を図示する。図4Cは、多体力学後の測定された半鎖Renyiもつれエントロピー、その後の2つの8原子システムに対するクエンチを示す。|gggg...>からのクエンチ(
【数19】
)は、迅速なエントロピー成長および飽和を生じ、量子熱中性子化を示す。|rgrg...>からのクエンチにより、もつれエントロピーの有意に遅い成長が明らかになる。図4Dは、0.5μsのクエンチ時間での相互情報の測定により、熱中性子化|gggg...>状態についての体積則スケーリングおよび傷跡|rgrg...>状態についての面積則スケーリングが明らかになることを示す。図4Eは、鎖の中間の部位についての単一部位Renyiエントロピーが迅速に増加して|gggg...>クエンチを飽和するが、|rgrg...>クエンチについての大きな振動を示すことを図示する。実線の曲線は、自由パラメーターを有さないHRyd下の単離された量子システムについての正確な数的シミュレーションの結果である(データプロセッシングの詳細について方法を参照)。エラーバーは1の標準偏差を示す。}
【0077】
原子運動は、量子シミュレーションにさらに適用可能である。特に、本開示は、アナログハミルトニアン進展、再形成およびデジタルゲートで構成されるハイブリッドのモジュール方式量子回路を提供する(図4A)。一緒になって、これらのツールは、量子シミュレーションおよび多体物理学における種々の新規の可能性を開く。具体例として、Renyiもつれエントロピーは、多体システムの2つのコピーを効率的に干渉することにより量子クエンチ後に測定される。
【0078】
図4Bは、実験手順を図示する。|1>において全てのキュービットにより両方のコピーを初期化した後、進展するそれぞれのコピーは、時間tの間にリュードベリハミルトニアンHRyd下で独立して進展し、{|1>,|r>}基準においてもつれた多体状態を生じる(方法)。次いでラマンおよびリュードベリπパルスは、|1>→|0>および|r>→|1>をマッピングし、もつれた多体状態を長持ちする相互作用しない{|0>,|1>}基準に遷移させる。最終的に、もつれエントロピーは、ベル測定回路を使用して、システムを再配置することおよび第2のコピーにおいてその同一の対の一方を有する第1のコピー中でそれぞれのキュービットを干渉することにより測定される。ベル基準で対を測定することにより、反対称の一重項状態
【数20】
の出現が検出され、その存在は、2つのコピーのサブシステムが多体システムの残りとのもつれのために異なる状態にあったことを示す。定量的に、サブシステムA内の観察される一重項の数パリティを分析することは、低減された密度マトリックスρAの純度
【数21】
を生じ、従って第2の次数のRenyiもつれエントロピー
【数22】
を生じる(方法)。この測定回路は、全閉じた量子システムの任意の構成的サブシステムのRenyiエントロピーを提供し、ここで任意の所望のサブシステムAに対する計算は、データ処理において実行される。
【0079】
この方法は、多体力学により生じるもつれエントロピーの成長を調査するために使用される(技術のさらなるベンチマーク問題での試験について、方法を参照)。具体的に、リュードベリハミルトニアン下の2つの8原子コピーの進展が試験され、最近傍隣接体ブロッケード拘束に供される。全ての原子が基底状態
【数23】
にある初期状態からの迅速なクエンチの際に、半鎖Renyiもつれエントロピーが迅速に成長して飽和することが観察され(図4C)、これは量子熱中性子化に対応するプロセスである。鎖中の最も左のn原子(A)と最も右の8-n原子の補完サブシステム(B)の間のRenyi相互情報
【数24】
を分析することにより、得られた状態の体積則スケーリングが見られる(図4D)。
【0080】
かかる熱中性子化力学は一般的に強力に相互作用する多体システムにおいて予測されるが、顕著に、特定の初期状態について、このシステムが熱中性子化を回避し得ることが以前に示された。量子多体傷跡と称される特殊な非熱固有状態により補強されると、これらの状態は理論的に、遅い、非単調もつれ成長に関連する力学を特徴づけるように予測された。図4は、1つのサブ格子内の局所的なシフトを適用することおよび全体的なリュードベリπパルスを実行することにより初期化される初期状態
【数25】
からの迅速なクエンチ後の多体傷跡のもつれ特性の測定を報告する(方法)。この初期状態についてのエントロピー成長の速度は有意に抑制され、相互情報は面積則スケーリングを明らかにする(図4D)。さらに、図4Eは、鎖の中間の単一部位エントロピーを示し、|Z2>状態についての大きな振動ではあるが熱中性子化|gggg...>状態についての迅速な成長および飽和を示す。顕著に、データは、1つのサブ格子の部位が低いエントロピーに戻る場合に、他のサブ格子は高いエントロピーに進行することを示し;これは、最近傍隣接体相互作用のみを用いてさえ、最近傍隣接体のもつれをほどきながら、傷跡力学が(同じサブ格子の)離れた原子をもつれさせることを明らかにする(方法参照)。これらの測定により、量子多体傷跡の些細でない局面が明らかにされ、多体システムにおけるエキゾチックもつれ現象の直接の観察が構成される。
【0081】
これらの観察は、単離されたシステムにおける正確な数的シミュレーションと非常によく一致する(図4C、Eおよび図14にプロットされる線)。さらに、単一部位純度は十分に混合された状態のものに近づくが、全体的な純度(3準位システムで構成される16体オブザーバブル)は、十分に混合された状態のものの>100×のままであり(図13参照)、全体的にこの回路に基づく技術の高い精度および忠実度を示す。これらの結果は、原子運動、多体ハミルトニアン進展およびデジタル量子回路を組み合わせることにより、複雑なシステムの量子物理学をシミュレーションおよび調査するための強力な新規のツールが生じることを示す。
【0082】
考察および展望
本明細書に記載される実験は、強力な量子情報アーキテクチャーを可能にする高度に並行なコヒーレントキュービット輸送およびもつれを説明する。本技術は、いくつかの方向に沿って拡大され得る。キュービットペアのサブセット上の局所的リュードベリ励起は、意図されない原子からの残存相互作用を排除し、有意に高いキュービット密度を有するアレイ上の並行な独立した操作を可能にする。2キュービットゲート忠実度は、より高いリュードベリレーザー動力またはより効率的な送達方法ならびにより進化した原子冷却を使用して向上され得る。これらの技術的向上は、数千の中性原子キュービット上で作動する深い量子回路に対するスケーリングを可能にするはずである。これらの改良は、例えばAOMアレイを介する並行なラマン励起を使用するより洗練された局所単一キュービット制御によりさらに補われ得る。ミッドサーキット(mid-circuit)読出しは、アンシラを別の領域に動かすことおよび例えば数百マイクロ秒以内にアバランシェフォトダイオードアレイを使用して画像化することにより実行され得る。
【0083】
これらの方法は、大規模化可能量子誤り訂正を実現するための明確な可能性を有する。例えば、図3Cに示される手順は、実際のQECシーケンスにおけるシンドローム抽出のために使用され得、ここでアンシラは、それらのデータキュービット隣接体ともつれ、次いでミッドサーキット読出しのための別の領域に動かされる。全QECラウンドは、測定されるT2>1sよりもかなり速くミリ秒以内に実行され得、投影される忠実度向上は、理論的に表面コード閾値を超える(方法)。かかるミッドサーキット読出しは、大規模化可能フォールトトレラント量子コンピューター計算を実現するために必須である。さらに、アレイを再形成および組み合わせる能力は、多くの論理キュービットの間の横断もつれゲートの効率的で並行な実行を可能にする。また、これらの技術は、より好ましい特性を有するより高次または非局所的な誤り訂正コードの実行も可能にする。一緒になって、これらの構成要素は、数千の物理キュービットを用いたユニバーサルなフォールトトレラント量子コンピューター計算についての新規のアプローチを可能にし得る。
【0084】
本明細書に提供される動的に再形成可能なアーキテクチャーは、デジタルおよびアナログ量子シミュレーションのための多くの新規の機会も開く。例えば、該ハイブリッドアプローチは、全もつれスペクトルを調査すること、ワームホール生成をシミュレーションすること、多体精製を実行することおよび新規の非平衡状態を作り変えることに拡大され得る。もつれ輸送は、計測学的適用、例えば重力勾配を調査するための分散状態の生成にも能力を与え得る。最終的に、これらのアプローチは、分離されたアレイ間の量子ネットワーク接続を容易にし得、大規模量子情報システムおよび分配量子計測学に向かう道を開く。
【0085】
方法
2Dピンセットアレイにおける動的再形成
これらの実験は、以下に記載される同じ装置を使用する。真空胞の内部で、87Rb原子は、磁気-光学トラップから、空間光変調器(SLM)により作成されるプログラム可能な光ピンセットのバックボーンアレイ内に充填される。原子は、交差2D音響-光学デフレクター(AOD)から作成されるさらなる光ピンセットにより、このSLMバックボーンにおける欠陥非含有標的位置中に並行に再配置される。再配置手順の後、選択された原子は、静止SLMトラップから戻って可動AODトラップに移され、次いでこれらの可動原子は、量子回路中のそれらの開始位置に動かされる。この全プロセスの間に、原子は偏向勾配冷却により冷却される。量子回路を走らせる前に、それらの初期の開始位置における原子のカメラ画像を撮る。回路の後に最終カメラ画像を撮り、キュービット状態|0>(原子の存在)および|1>(共鳴押出し後の原子損失)を検出する。回路を走らせる前に、AODおよびSLM原子の完全な再配置を発見することに対して全てのデータをポストセレクトする。ここでの全ての実験において、それぞれの原子は、量子回路の持続時間を通して単一の静止または単一の可動トラップ内にあるままである。
【0086】
交差AODシステムは、ビーム位置のxおよびy制御について2つの独立して制御されるAOD(AA Opto Electronic DTSX-400)で構成される。両方のAODは、二重チャンネル任意波形ジェネレータ(AWG) (Spectrum InstrumentationによるM4i.6631-x8)により生成される独立した任意波形により駆動され、次いで独立MW増幅器(Minicircuits ZHL-5W-1)により増幅される。時間領域任意波形は、列および行のxおよびy位置に対応する複数の周波数階調で構成され、これは、動的にAODにトラップされた原子の周囲に向かわせるために、時間の関数として独立して変化され;十分なxおよびyの波形は、全ての周波数構成要素の時間領域プロフィールにそれぞれの構成要素のための所定の振幅および位相を一緒に追加することにより計算される。量子回路を走らせるために、それぞれのゲート位置でのAOD原子の位置をプログラミングして、次いでゲート位置の間の時間の関数としてAOD周波数を(三次プロフィールと共に)滑らかに内挿する。三次プロフィールは、原子に対して一定のジャークを定め、これは、一定の速度(線形プロフィール)で運動する場合よりもおよそ5-10×速い(加熱および損失なしで)運動を可能にする。運動プロトコルにおいて、AODトラップアレイの引っ張り、圧縮および変形が適用され:すなわち、AODの行および列は、2つの周波数構成成分が互いに交差することに関連する原子の損失および加熱を回避するために、互いに交差しない。
【0087】
示差的光シフトの時間変化する大きさにより誘導されるディフェージングを最小化するために、AODピンセット強度は、全原子軌道を通して均質化される。この目的で、それぞれのAODピンセットの強度をそれぞれのゲート位置で測定するためおよびそれぞれの周波数構成成分の振幅を変化させることにより均質化するために、画像面で参照カメラが使用され;2つの位置の間の移動の際に、それぞれの個々の周波数構成成分の振幅が内挿される。
【0088】
SLMピンセット光(830nm)およびAODピンセット光(828nm)は、2つの別々のフリーランニングTi:サファイアレーザー(Mスクエア(Squared)、18-Wポンプ)により生成される。0.5NA対物レンズを通って投影されると、SLMピンセットは大体、約900nm(AODについて約1000nm)のくびれ部分を有する。原子を負荷する場合、トラップ深さは約2π×16MHzであり、半径方向トラップ周波数は約2π×80kHzであり、量子回路を走らせる場合、トラップ深さは約2π×4MHzであり、半径方向トラップ周波数は約2π×40kHzである。
【0089】
ラマンレーザーシステム
速く、高い忠実度の単一キュービット操作は、この作業において示される量子回路の決定的な構成要素である。この目的で、mF=0クロック状態の間で全体的な単一キュービット回転を駆動するために高出力795nmラマンレーザーシステムを使用する。このラマンレーザーシステムは、分散性光学機器に基づく。795nmの光(Toptica TA pro, 1.8W)は、電気-光学変調器(Qubig)により位相変調され、これは6.8GHzまで2倍にされて増幅される3.4GHzのマイクロ波(Stanford Research Systems SRS SG384)により駆動される。レーザー位相変調は、チャープブラッググレーティング(Chirped Bragg Grating) (Optigrate)を使用してラマン遷移を駆動するために、増幅変調に変換される。SG384のIQ制御は、マイクロ波の周波数および位相の制御のために使用され、これはレーザー振幅変調に刻印され、そのため本発明者らに超微細キュービット駆動に対する直接の周波数および位相の制御を与える。
【0090】
ラマンレーザーは、薄い軸および高い軸のそれぞれ上に40μmおよび560μmのくびれを有する環状に偏光される長円ビーム中で側方から原子面を照射し、総平均光学動力は原子上で150mWである。大きな垂直の広がりは、原子にわたり<1%の不均等性を確実にし、レーザー強度におけるショットごとの揺らぎも<1%である。図1~3について、ラマンレーザーは、180GHzの青色離調中間状態離調で作動し、1MHzの2光子ラビ周波数および7×10-5πパルス当たりの推定散乱誤り(すなわち15000πパルス当たり1つの散乱事象)を生じる。図4について、コヒーレントマッピングパルスシーケンスの持続時間を短くするために、ラマンレーザー動力は増加され、63GHzのより小さい青色離調中間状態離調が使用され、対応する2光子ラビ周波数は3.2MHzであり、πパルス当たりの推定散乱誤りは2×10-4である。
【0091】
頑強な単一キュービット回転
この作業(XY8 / XY16自己訂正シーケンス以外)の実行におけるほぼ全ての単一キュービット回転について、頑強な単一キュービット回転は、複合パルスシーケンスの形態で実行される。これらの複合パルスシーケンスは、振幅または離調誤較正などのパルス誤りに対して高度に非感受性であり得る。コヒーレント単一キュービット誤りの支配的な源は、≦1%の振幅ドリフトおよびアレイにわたる不均等性により生じ;したがって「BB1」(広帯域1)パルスシーケンスが主に使用され、これは、6次まで振幅誤りに対して非感受性でありながらブロッホ球上で任意の回転を実行する4つのパルスのシーケンスである。これらの頑強なパルスの性能を、図7Aにおいてベンチマーク問題で試験する。さらに、一連のBB1パルスを適用することにより、推定散乱限度に一致する蓄積された誤りが見られ(ここではプロットされない)、散乱限度が単一キュービット回転非忠実度(複合パルスシーケンスの増加した長さのためにBB1パルス当たり約3×10-4の誤り)を大体表すことが示唆される。無作為化されたベンチマーク問題での試験は、単一キュービット回転忠実度をさらに試験する将来の試験において適用され得る。
【0092】
キュービットコヒーレンスおよび動的デカップリング
830nmトラップにおいて、超微細キュービットコヒーレンスは、
【数26】
(ここではプロットされない)、T2=1.5s (128の総πパルスを有するXY16)およびT1=4s(原子損失を含む)を特徴とする(図7B、C)。本明細書に記載される実験は、8.5ガウスのDC磁場で実行される。コヒーレンスは、さらに離調した光ピンセット(一定に保持されるトラップ深さを有する、ピンセット示差的光シフトは1/Δとして低下し、1/T1は1/Δ3として低下する)を使用することおよび磁場揺らぎに対して保護することによりさらに向上され得る。実際のQEC操作のために、原子損失は、ハードウェア効率的な様式で検出され得、次いで原子はレザバーから置き換えられ得、これは原則的に、任意の深い回路を達成するためにMOTにより連続的に再充填され得る。
【0093】
輸送シーケンスは、動的デカップリングシーケンスを伴う。使用されるパルスの数は、パルス誤りを最小化しながらキュービットコヒーレンスを保存することの間の折り合いである。種々の態様において、2つの型の動的デカップリングシーケンスの間に相互交換があり:XY8 / XY16シーケンスは、振幅および離調誤りについて自己訂正している位相が変化された個々のπパルスで構成され、CPMG-型動的デカップリングシーケンスは、頑強なBB1パルスで構成される。CPMG-BB1シーケンスは、振幅誤りに対してより頑強であるが、より多くの散乱誤りを被る。シーケンスは、これらの異なるシーケンスと可変の数のデカップリングπパルスの間で選択することにより任意の所定の実験について経験的に最適化され得、単一キュービットコヒーレンス(運動を含む)または最終的な信号のいずれかが最適化される。典型的に、デカップリングシーケンスは、合計12~18のπパルスで構成される。
【0094】
原子の加熱および損失に対する運動効果
以下は、ピンセットトラップにより与えられる調和振動子電位における原子の損失および加熱に対する運動の効果を議論する。トラップ電位の動きは、調和振動子電位が静止しているが、原子がF(t)=-ma(t)により与えられる架空の力を経験する参照の非慣性フレームと同等であり、式中mは粒子の質量であり、a(t)は時間の関数としてのトラップの加速である。平均振動量子数増加ΔNは、
【数27】
により与えられ、ここで
【数28】
は、トラップ周波数ω0で評価されるa(t)のフーリエ変換であり、粒子の0点サイズは
【数29】
である。ΔNは、振動子の全ての初期レベルについて同じである。実験的に、加速プロフィールa(t)=jtは、時間-T/2から+T/2まで原子に適用されて、一定のジャークjで距離Dを動かす。
【数30】
を計算して、単純にω0T>>1を使用して、トラップ周波数の小さな範囲を推定し、振動項を平均することにより、
【数31】
を生じる。
【0095】
いくつかの関連のある洞察は、この式から突き止められ得る。第1に、この表現は、時間Tにおける同等に小さい増加で大きな距離Dを動かす能力を示す。さらに、一定のΔNを維持するために、運動時間は、
【数32】
である。さらに、深い回路について多くの動きkを実行するために、
【数33】
が推定され得、動きの数は、それぞれの動きを200μsから400μsまで遅くすることにより、例えば5から80まで増加され得ることが示唆される。動きの速度は異なるa(t)プロフィールによりさらに向上され得るが、必然的にトラップ深さなどの有限のリソースを伴い、量子速度限度は最終的に、アレイにわたるキュービットの任意に速い動きを防ぐ。
【0096】
ここで式2を実験的観察と比較する。図1Dにおいて、原子損失は、一定の負のジャーク下で200μs中55μmの動きにより観察される。この速度限度は上述の推定と一致する:ω0=2π×40kHzおよびxzpf=38nmを使用して、この運動についてΔN≒6であることが予測され、これはこの運動速度での具体的な加熱の開始に対応する。より定量的に、平均Nおよび変数Nによりポワソン分布を仮定し、いくつかの決定的なNmaxよりも高い集団を一体化し、その際に原子はトラップから去る。この分析から、原子保持は、
【数34】
により与えられる。
【0097】
図6A、Bは、運動時間Tおよびトラップ周波数
【数35】
の関数としての原子保持を測定する。上述の機能的形態を使用して、両方の組の測定について、≒30のNmaxが抽出され、これは原子をトラップの外側に励起する前に、≒30の励起を追加することに対応する。かかる限度は、4MHzの絶対トラップ深さが≒100のレベルのみを暗示するので物理的に妥当であり、原子は有限の温度で開始し、さらに、一旦トラップの非調和性が役割を果たし始めると効率的なトラップ周波数が低減する。これらの仮定は、近似のみである(運動の間に使用されるトラップ深さについて推定値ω0を使用して)が、しかしながら運動限度は選択されたa(t)についての物理的限度と一致することが示唆される。ここで分析はまた、AOD周波数を傾斜させることと関連する音響レンズ効果(acoustic lensing effect)を無視し、これは1つの軸を異なった面に集中することにより非点収差を引き起こし、そのためトラップを変形し、Strehl比により与えられるようにピークトラップ強度(およびω0)を低減する。
【0098】
回路の間のさらなる加熱および損失は、2キュービットゲートを実行するために、反復された短い低下によっても引き起こされ得、ここでピンセットは短く、オフにされて、リュードベリ状態の反トラッピングおよび基底-リュードベリ遷移の光シフトを回避する。しかしながら、図6Cにおける低下-再捕捉測定は、実験的に使用される500nsの低下が、1原子当たり数百の低下(数百のCZゲートに対応する)まで無視できる効果を有することを示唆する。低下の数の関数としての原子損失および加熱は、拡散モデルにより十分に記載され、次いでこれは、2×倍だけ原子温度を低減すること(熱速度を
【数36】
だけ低減すること)および低下時間tdropを2×だけ低減させることは、一緒になって1原子当たりの可能なCZゲートの数を数千まで増加することを予測する。
【0099】
2キュービットCZゲート実行
2キュービットゲートおよび較正は、本明細書に提供される技術を使用して実行され得る。具体的に、2キュービットCZゲートは2つの全体的リュードベリパルスにより実行され、それぞれのパルスは離調Δおよび長さτにあり、位相ジャンプξは2つのパルスの間にある。パルスパラメーターは、リュードベリブロッケード拘束に隣接するおよびその下にあるキュービットペアが、リュードベリ状態から超微細キュービットマニホールドへと逆に戻り、位相が他のキュービットの状態に依存するように選択される。これらのパルスパラメーターについての数値は:
Δ=-0.377371Ω
ξ=-0.621089×(2π)
τ=0.683201/[Ω/(2π)]
である。
【0100】
図1~3における実験は、Ω/2π=3.6MHzの2光子リュードベリラビ周波数により操作され、理論的τ=190nsおよび理論的Δ/(2π)=-1.36MHzを与える。負の離調符号は、8.5Gの場の下で約24MHzだけ離調されるmj=+1/2リュードベリ状態への励起を最小化することを補助するように選択される(および低減されたClebsch-Gordan係数のために所望のmj=-1/2状態よりも3×低いリュードベリレーザーへのカップリングを経験する)。この作業において、隣接するキュービットの間で強力なブロッケードが提供され、リュードベリ-リュードベリ相互作用V0/2πは、200MHzから1GHzの範囲である。図4において、2キュービットゲートについてΩ/2π=4.45MHzである。
【0101】
CZゲートの間のスプリアス位相の管理
2キュービットゲートは、固有の単一キュービット位相および420nmレーザーからの示差的光シフトにより主に誘導されるスプリアス位相の両方を誘導する。特定の配置の下、超微細キュービット上の420nmで誘導される示差的光シフトは、極めて大きくあり得(>8MHz)、≒6πの超微細キュービット上で位相蓄積を生じる。したがって、420nm強度の小さなパーセントレベルの変動は、有意なキュービット離調をもたらし得る。
【0102】
この420の誘導された位相問題は、エコーシーケンスを実行することにより対処され得:CZゲートの後、1013nmリュードベリレーザーがオフにされ、ラマンπパルスが適用され、次いで420nmレーザーが、CZゲートの間に420の光により誘導される位相を相殺するように再度パルス適用される。この方法は、420で誘導される位相を反響するが、420で誘導される散乱誤りにおいて2倍の増加等いう犠牲を伴い、これは2キュービットCZゲートにおける誤りの支配的な源である。
【0103】
CZゲートの間のエコー. これらの種々の問題に対処するために、ラマンπパルスが、それぞれのCZゲートの間で実行され、超微細キュービット上でスプリアスゲート誘導位相外で反響する(図5)。このアプローチはいくつかの利点を有する。ここで、420で誘導される位相は、それぞれの個々のCZゲートを反響するようにさらなる420nmパルスを明示的に適用することなくCZゲートのペアにより相殺され、それによりこの作業におけるCZゲートの散乱誤りが約2倍低減される。それぞれのゲートの間に被る散乱誤りを低減したこのエコー技術は、2Dにおいてより多くの空間にわたり光学動力を広げることにより被る増加した散乱速度を大まかに補償し、それにより2キュービットCZゲート忠実度に≧97.4(2)%の同等のゲート忠実度を与える。さらに、CZゲートの間のエコーはまた、CZゲートの固有の単一キュービット位相を相殺し、このパラメーターの較正における誤りを除去し、2キュービットゲートについて500nsの間トラップオフにパルスを適用することにより誘導される≒0.01ラド位相などの任意の他のゲート誘導スプリアス単一キュービット位相を相殺する(図5)。CZゲートの数が奇数である例において、最終CZゲートについてのエコーが実行される。
【0104】
中間状態離調の符号. スプリアスな420で誘導される位相の効果をさらに抑制するために、420nmレーザーを、6P3/2遷移から(2GHzだけ)赤色離調されるように操作する。赤色離調について、|0>状態および|1>状態上の光シフトは同じ符号であり、示差的光シフトを最小化し、一方で青色離調<6.8GHzについて、|0>状態および|1>状態上の光シフトは反対の符号を有し、示差的光シフトを増幅する。
【0105】
軸トラップ振動に対する感度
光ピンセットによる典型的なリュードベリ励起時間尺度において、数kHzの軸トラップ振動周波数は取るに足らないものである。ここで、全体にリュードベリパルスを有する1.2msほど長く走る回路により、軸トラップ振動は、重要な効果を有し得る。特に、軸振動は、原子に、リュードベリビームの内/外の振動を作製させ:約25μKの推定される軸温度および6kHzの軸振動周波数で、軸拡散
【数37】
が推定(esimated)される。20ミクロンくびれビームについて、この位置的拡散の効果は、CZゲートのパルスパラメーターに対して比較的小さいが、感受性の420で誘導される位相に対して有意であり得、これは約200μsだけ分離されたCZゲートにより誘導される位相の外で反響することにより相殺されるはずである。20ミクロンくびれビームおよび420nmレーザーの2.5GHz青色離調を使用する場合、軸トラップ振動のためのディフェージングは有意である(図8)。この有害な効果を改善するために、420nmレーザーのビームくびれは(一定の強度を保持しながら)35ミクロンまで増加され、レーザー周波数は2GHz赤色離調まで変化され、それらは一緒になって420nmパルスの不適切な反響に関連するディフェージングにおいて有意な低減を生じる。
【0106】
ベル状態調製および忠実度
図1において、|Φ+>ベル状態が調製され:|00>におけるキュービットのペアを初期化した後、X/(π/2)パルス-CZゲート-X/(π/4)パルスが適用される。|00>および|11>における集団の合計としてこの|Φ+>ベル状態の生の得られる忠実度は、パリティ振動(図1Cにおける例)の適合された振幅により平均され、これは非対角コヒーレンスを測定する。図1Dにおいて、運動からの有意な損失の際に、この忠実度推定は、(状態|1>は損失として検出されるので)|11>における人工的に大きな集団の測定のために斜めにされ;したがって一旦|11>と|00>の間の集団の差が0.1(損失の効果が有意になり始める任意のカットオフ)より大きくなると、|Φ+>集団は|00>の2×の集団として推定される。図1Dにおいて、300μsより遅い動きについて、運動の後に94.8(2)%の平均の生のベル状態忠実度が達成される。500μsの間コヒーレンスを保存する運動または試みがない(すなわちベル状態の調製の直後に測定する)場合、次いで95.2(1)%の生のベル状態忠実度が測定される(ここではプロットされない)。
【0107】
誤り源の分析
以下は、全シーケンスについての測定および推定される誤りの源のいくつかを詳述する(特にトリックコード調製、最も深い例示的な回路)。全シーケンスを実行した後の総単一キュービット忠実度は、トリックコード回路についておよそ96.5%であり、これはラムゼイシーケンスにおいて全実験を埋め込むことにより測定され:すなわちラマンπ/2パルスが実行され、全ての動きおよびデカップリングが実行され、次いで変動性の位相が全てのコントラストを測定する最終π/2パルスが実行される。単一キュービット忠実度は、図10Cにおいて公知の単一キュービット誤りで構成されるように定量的に説明される。
【0108】
2キュービットゲート誤りについての推定される寄与は、図10Cに要約される。これらの推定は、実験的パラメーターを有するQuTiPにおける数的シミュレーションから生じる。中間状態散乱およびリュードベリ減衰の効果は、崩壊演算子を介して、リンドブラッドマスター方程式ソルバーに含まれる。他の誤りの寄与としては、有限温度ランダムドップラーシフトおよび位置揺らぎ、ならびにレーザーパルスごとの揺らぎが挙げられ、それらの全ては実験パラメーターの古典的Monte Carloサンプリングを使用してシミュレーションされる。該シミュレーションに使用される実験的パラメーターは以下のとおりである:青色および赤色ラビ周波数(Ωb, Ωr)=2π×(160,90)MHz、6P3/2中間状態離調=2GHz、中間状態寿命=110ns、70S1/2リュードベリ状態寿命=150μs、リュードベリブロッケードエネルギー=500~MHz、第2のリュードベリ状態への分割=24MHz、半径方向および軸方向のトラップ周波数(ωrz)=2π×(40,6)kHz、ならびに温度T=20μKである。このモデリングはまた、将来の性能を投影するために使用され得;利用可能な1013nm強度における10xの増加を推定することおよび原子が2uK温度に冷却されることを推定することにより、表面コード閾値を超える99.7%のCZゲート忠実度が投影される。アルカリ土類原子も、量子誤り訂正についての高忠実度操作への他の経路を提供し得る。
【0109】
種々の単一キュービットおよび2キュービット誤りがグラフ状態忠実度にどのように貢献するかを理解するために、グラフ状態調製に使用される量子回路の推計学的なシミュレーションが実行される(図10A、B)、回路のClifford特性が利用され、効率的な数的評価および多くの可能な誤り実現のランダムサンプリングが可能になる。周囲の脱分極雑音および原子損失の割合が実験において測定される現実的な誤りモデル下で、シミュレーションが実行される(図10C参照)。得られるスタビライザーおよび論理キュービット期待値は、実験的に測定されるものと十分に一致する。
【0110】
リュードベリビーム形状形成および均質性
リュードベリビームは、空間光変調器(SLM)上の位相プロフィールを使用して、波面制御により変動性のサイズのトップハット(tophat)へと形作られる。この能力は、ビームプロフィールの高さの、任意の所定の実験の実験領域サイズへの適合を可能にし、それにより、1013nm光強度およびCZゲート忠実度を最大化する。リュードベリビーム均質性は、ピークごとの不均質性が<1%未満になるまで最適化される。この目的で、全ての収差は真空チャンバーのウインドウまで訂正され、これは最終ウインドウの不完全さの原因となる数%の原子上の不均質性を生じる。均質性をさらに最適化するために、収差訂正は、Zernike多項式訂正を介して、SLM面(フーリエ面)における位相プロフィールまで、トップハットに対して調整される。この手順により、ピークごとの不均質性は、原子面において40~50μmの範囲にわたり<1%まで低減される。
【0111】
グラフレイアウトの生成および最適化
以下は、クラスター状態、Steaneコード、表面コードおよびトリックコード調製についてグラフレイアウトがどのように最適化されるかの記載の概略を述べる。この例における最適化は帰納的であり、他の最適な回路は原子空間配置およびAOD軌道により設計され得る。図9は、例示的なグラフおよびそれらを作成するためのプロセスを示す。これらは、いくつかのパラメーターに対する最適化の結果である:
(1)並行な2キュービットゲート層の数を最小化する。
(2)動く原子についての総移動距離を最小化する。
(3)1つのサブ格子(ここで実現される全てのグラフは2部に分かれる)中の全ての動いている原子に、1つのサブ格子の最終的な局所的回転を容易にさせる。
(4)アレイの垂直の広がりおよび別個の行の数を最小化する(1013の強度を最大化し、行の間のビーム不均質性に対する感度を最小化するため)。
(5)ゲートを順序づける場合、回路においてできるだけ早く2キュービットゲートを適用する。ゲート層がビットフリップ(X誤り)を誘導する場合、その後のゲートの間に誤りが伝播し得(他のキュービット上でZ誤りになる)、そのためゲートは可能な最も早い層にあるはずである。
【0112】
局所的(サブ格子)超微細回転
局所的回転は、水平に伝播する420nmのビームを使用して超微細基準で実行され、これは、超微細キュービットに数MHzの示差的な光を負わせ、そのために速いZ回転を実現するために使用され得る。この作業を通じて使用される局所的なY(π/2)回転を実現するために、原子の1つのサブ格子は、420nmのビームの外側に動かされ、次いで以下のパルスが適用される[全体的Y(π/4)]-[局所的Z(π)]-[全体的Y(π/4)]。これは、1つのサブ格子上でY(π/2)回転および他のサブ格子上でZ(π)回転を実現する(これは、次いでそれがZ基準における直後の測定と交換可能である場合取るに足らない)。原子の他のサブ格子にY(π/2)を適用するために、2つのY(π/4)パルスの間にさらなる全体的なZ(π)を付加する(ラマンレーザー位相をジャンピングすることにより実行される)。さらなる局所的に焦点を当てられたビームは、超微細キュービット状態の局所的なラマン制御を実行するために提供され得る。しかしながら、原子を動かすことは(420nmのビームの外側に動かすために>50μm動かすためであっても)非常に効率的に働き、このアプローチは、キュービットのおよそ半分に高い忠実度、均質な回転を生じるために十分に適合される
【0113】
局所的リュードベリ初期化
局所的なリュードベリ制御は、多体傷跡の力学を試験するために
【数38】
状態を初期化するために実行される。この局所的な初期化は、部位の所望のサブセットに対してSLMにより生成される810nmのピンセットを使用して、約50MHzの光シフトを|1>と|r>の間に適用し、次いで光シフトしない原子を励起させる全体的なリュードベリπパルスを適用することにより達成される。したがって、それぞれの鎖における全ての他の原子は|r>に調製されるが、SLMピンセットの位置は十分にプログラム可能であるので、この技術は、任意の初期のブロッケードが満足する|1>および|r>の原子の配置を調製するために使用され得る。
【0114】
50MHz偏った光シフトは、リュードベリラビ周波数Ω/2π=4.45MHzよりも有意に大きく、<1%の望ましくない部位上にリュードベリ集団をもたらす。図14Bのt=0時点は、このアプローチを使用した
【数39】
状態の高忠実度調製を示す。810nmの光を用いて、達成される偏った光シフトは有意であったとしても、(超微細キュービットの)ラマン散乱誘導T1は依然として約50msであるので、光シフトピンセットの200nsパルスの間に散乱誤り≦4×10-6がもたらされる。150kHzの推定される半径方向のトラップ周波数を有する偏向したピンセットからの運動性の効果もあり得、これは200nsパルスの間に無視できる。
【0115】
リュードベリハミルトニアン
図4において、式3における多体リュードベリハミルトニアン下の力学が考慮される。
【数40】
【0116】
式3において、
【数41】
は、換算プランク定数であり、Ωはラビ周波数であり、Δはレーザー周波数離調であり、ni=|ri><ri|は部位iでのリュードベリ状態に対する射影作用素であり、
【数42】
は原子状態をはじく。この作業におけるもつれエントロピー測定について、最近傍隣接体(NN)相互作用V0>Ωがリュードベリブロッケードを生じる格子間隔が選択され、隣接する原子が同時に|r>を占有することが防がれる。特に、8原子鎖上で多体実験が実行され、V0/2π=20MHz、Ω/2π=3.1MHz、Δ/2π=0.3MHzを有する時間独立HRydにクエンチされる。小さな正のΔ=0.0173~V0をクエンチすることは、常に正の長距離の相互作用を部分的に抑制し、それにより実験的に誘導され、示されるように傷跡寿命について最適である。
【0117】
コヒーレントマッピングプロトコル
コヒーレントマッピングプロトコルは、{|1>、|r>}基準の一般的な多体状態を長持ちして相互作用しない{|0>、|1>}基準に遷移させるために提供される。このマッピングを達成するために、リュードベリ力学の直後に、ラマンπパルスをマップ|1>→|0>に、次いでその後のリュードベリπパルスをマップ|r>→|1>に適用する。
【0118】
(単離された原子上の)完全なラマンおよびリュードベリπパルスについても、このマッピングプロセスに関連する非忠実度の3つの重要な源がある:
(1)ブロッケードバイオレート状態(blockade-violating state)(すなわち2つの隣接する原子が両方|r>にある)における任意の集団は、最終リュードベリπパルスについて強くシフトされた非共鳴である。このように、この原子集団は、リュードベリ状態のまま残り、損失する。
(2)例えば隣の最近傍隣接体からの長距離の相互作用は、最終リュードベリπパルスを共鳴から離調し、そのためにパルス忠実度を低減する。長距離の相互作用は全ての多体マイクロ状態について同じではないので、この効果は、離調の単純なシフトにより軽減され得ない。
(3)状態のディフェージングはラマンπパルスの持続時間を通じて、優先的に基底状態|0>、|1>およびリュードベリ状態|r>の間のドップラーシフトから生じる。これらのランダムなオンサイト離調は多体力学の間にも存在するが、リュードベリ駆動Ωをオフにすることにより、システムが位相を自由に蓄積して、本発明者らはディフェージング誤りに対して特に感受性になる。
【0119】
上述の誤り機構は以下のように軽減される。(1)からの誤りを最小化するために、多体力学は、
【数43】
により実行される。これは、原子が約1%であるブロッケードに違反する確率を最小化する。(2)からの誤りを最小化することを補助するために、420nmのレーザーの振幅は、最終πパルスについて2×倍だけ増加され、
【数44】
であり(式中、VNNNは隣り合う最近傍隣接体との相互作用である)、長距離の相互作用からのパルス誤りを約(order)1%まで低減する。最終的に、(3)からの誤りを低減するために、速いラマンπパルスを実行し、多体リュードベリ力学の終了とリュードベリπパルスの開始の間にはわずか150nsが残る。150nsのギャップは{|g>、|r>}基準の
【数45】
に対してかなり短く、1粒子当たり約0.02×2πラドのランダム位相蓄積をもたらすが、第2のコピーにおけるN粒子のもつれた状態に対してランダム位相を蓄積する1コピーにおけるN粒子のもつれた状態を有することによりさらに複合化される。これらの種々の効果は図13Cで数的に議論される。
【0120】
全体的なラマンビームは、ラマンπパルスの間に|r>に対して|0>、|1>上で≒πの光シフト誘導位相シフトを誘導する。同様に、全体的な420nmのレーザーはまた、リュードベリπパルスの間に|0>と|1>の間に≒πの光シフト誘導位相シフトを誘導する。ここで実行される測定は干渉法のものであるので(すなわち測定される一重項状態は全体的な回転下で不変である)これらの全体的な位相シフトにより影響を受けず、これらの位相シフトは関連のある場合に測定および説明され得る。
【0121】
もつれエントロピーの測定
第2の次数のRenyiもつれエントロピーは、
【数46】
により与えられ、ここで
【数47】
は、サブシステムA上の単純化された密度マトリックスρAの状態の純度である。純度は、
【数48】
が多体SWAP演算子
【数49】
の期待値であることに注意することにより2つのコピーにより測定され得る。多体SWAP演算子は、それぞれの対の一方のペア上の個々のSWAP演算子
【数50】
で構成され、すなわち
【数51】
である。全ての他の
【数52】
固有状態が固有値+1を有するように、この期待値を測定することは、一重項状態
【数53】
(
【数54】
下で固有値-1を有する)の出現を調査することに等しい。それぞれの対の一方のペアにおける一重項状態、すなわちベル状態|Ψ->の出現は、ベル測定回路(さらなる局所的なZ(π)を有する、次のパラグラフ参照)により抽出され、これは|Ψ->→|00>をマッピングし、その後コンピューター計算基準において測定され得る。このように、ベル測定回路を実行した後、得られるビットストリング出力を分析して、任意のサブシステムAの純度を、
【数55】
を計算することにより決定し:すなわち純度はA内の平均純度=<(-1)観察される|00>ペア>として測定される。実験的不完全さの非存在下で、純度は、全てのシステムについて1に等しく、システムの残りともつれるサブシステムについて1未満である。
【0122】
ベル測定回路は、対の一方のペアの1つの原子にX/(π/2)回転を適用し、次いでCZゲートを適用し、次いで全体的なX/(π/2)回転を適用するように分解され得る。他の測定において局所的なX/(π/2)は、全体的なX/(π/4)回転、次いで局所的なZ(π)回転および次いで全体的なX/(π/4)を行うことにより実現される。しかしながら、この一重項測定回路について、第1のX/(π/4)は、一重項状態が全体的な回転の下で不変である場合に重複するので、局所的なX/(π/2)について、局所的なZ(π)および次いで第2の全体的なX/(π/4)のみが適用される。これは1つのキュービット上でX/(π/2)を、他のキュービットでZ(π)まで効率的に実現する(図4の回路図には示されない)。この単純化の下、|Ψ->→|00>をマッピングするためのベル測定回路は、ベル状態調製回路の逆として大まかに理解され得、これは正確にはベル測定のパラメーターがどのように較正されるかということである。
【0123】
干渉法の較正およびベンチマーク問題での試験. 干渉法測定を検証する(および適切な較正について調べる)ために、これを、多体力学およびコヒーレントマッピングプロトコルとは別々にベンチマーク問題で試験する。このベンチマーク問題での試験は、同一、可変の単一キュービット重ね合わせにおいて(変動性の時間の全体的なラマンパルスにより)独立のキュービットを調製し、全ての変動性の初期の積状態について干渉法がまれに|00>を生じることを確実にすることにより実行される(図12A)。ベル測定の小さな誤較正は異なる初期積状態についてより低い忠実度(すなわちより高いエントロピー)をもたらし得、それによりもつれエントロピー測定においてさらなるスプリアス信号を生じ得るので、これは重要なベンチマーク問題での試験工程である。この測定は、(CZゲートにより誘導され、全体的なZ(θ)パルスにより相殺される)最終X/(π/2)パルスの直前の単一キュービット位相に対して特に感受性である。
【0124】
さらなる多体データおよび詳細
多体システムにおいてもつれエントロピーを測定する方法をベンチマーク問題で試験するために、図12Bにおいて、|1>において2つの近位の原子を初期化して、変動性の時間tの間にリュードベリ状態まで共鳴的に励起する後にもつれ力学を試験する。リュードベリブロッケードの条件下、この励起は、|11>ともつれた状態
【数56】
の間で2粒子ラビ振動を生じる(図12Bの上パネル)。この2粒子システムの状態純度は、2つの同一のコピーからの原子のペアに対してベル測定を実行することにより測定される。局所的に、1粒子サブシステムの測定される純度は、システムが最大にもつれた|W>状態に進入する場合に≒0.5の値まで低減し、その点で、それぞれの個々の原子の単純化された密度マトリックスは、最大に混合される。対照的に、全体的な2粒子状態の純度は高いままである。全体的な状態純度が局所的なサブシステム純度よりも高いという観察は、量子もつれの別個のサインである。
【0125】
図4Cおよび4Eに示されるデータについて、データは広範囲の古典的なエントロピーを差し引かれる。この固定された時間独立オフセットは、粒子当たりのエントロピーにより与えられ、すなわち(クエンチ時間t=0での全体的なエントロピー)×(サブシステムサイズ)/(全体的なシステムサイズ)である。図13Aにおいて、生のもつれエントロピー測定は数値と一緒に示され、広範囲の古典的エントロピー貢献のサイズを示す。プロットにおいて、ラマンπパルスがリュードベリ進展の最終の10nsを中断するという事実を説明するために、理論曲線は10nsだけ遅延され、これはコヒーレントマッピングギャップをできるだけ短く保持し、ドップラーディフェージングを最小化するためになされる。さらに図13Bにおいて、測定された全体的な純度がプロットされ、実験的な誤りを一体化する数的シミュレーションと比較される(図13C)。
【0126】
図14において、主要なテキストにおいて使用されるものと同じパラメーターを有する8原子鎖システムに対するさらなる多体データを示す。それぞれの部位の測定された単一部位エントロピーを、図14Aにおいて
【数57】
クエンチについての8原子鎖に示す。さらに図14Bにおいて、全体的なリュードベリ集団をプロットして、{|1>、|r>}および{|0>、|1>}基準の両方において測定する。
【0127】
図5を参照すると、CZゲートエコー、原子レベル構造および典型的なパルスシーケンスが図示される。図5Aに示されるように、2キュービットゲートは、2つのキュービットの間に制御Z操作を適用することに加えて、単一キュービット位相Z(ζ)を、CZゲートの固有の位相および420nmリュードベリレーザーからのさらなるスプリアス位相で構成され、トラップオフにパルスを適用する両方のキュービットにも誘導する。全てのゲートはリュードベリレーザーの全体的なパルスにより並行に適用されるので、キュービットが別のキュービットに隣接しない場合、それはCZゲートを実行しないが、依然として同じZ(ζ)を獲得する(リュードベリレーザーに対して暗い状態|0>において別のキュービットに隣接しているものと同一)。図で示されるように、さらなる望ましくないZ(ζ)は、CZゲートのペアの間にπパルスを適用することにより相殺される。このエコー手順は、CZゲートからの固有の位相を較正するための任意の必要性を除去し、本発明者らを、約200μsよりも遅いZ(ζ)における任意のスプリアス変化に対して非感受性にする。さらなるY(π)は、公知の方法でCZゲートを通って伝播し、特定のスタビライザーに-1符号をかけ、これは単純に、スタビライザーおよび論理キュービットの符号を再度画定する。図5Bは、使用される重要な87Rb原子レベルを示すレベル図である。|1>から|r>へのリュードベリ励起スキームは、420nmのレーザーおよび1013nmのレーザーにより駆動される2光子遷移で構成される。この作業を通じてB=8.5GのDC磁場が適用される。図5Cは、量子回路を走らせるための例示的なパルスシーケンスの概略図である。
【0128】
図6を参照すると、運動特徴付けおよび複数の低下再捕捉が図示される。図6Aにおいて、原子保持は、(ベルペアを分離するために図1Dにプロットされるように)0.7%のバックグラウンド損失が差し引かれる平均分離速度2D/Tの関数として与えられる。図1Dの挿入図は、(バックグラウンド損失を差し引くことなく)(原子保持)2により標準化される。暗い曲線は、実験パラメーターおよび式2を使用して計算され、Nmax=26を設定し、平均
【数58】
の周囲の±15%の
【数59】
の範囲にわたり平均することにより実験データに適合される。図6Bにおいて、原子保持は、表面コード回路の4つの動きの後の逆トラップ周波数
【数60】
の関数として与えられる。ここで原子損失を計算するために、Nmax=33であり、±15%の範囲にわたりトラップ周波数を平均する。これらの定量的な推定は、大まかに推定されるω0に感受性である。図6Cにおいて、低下時間および低下ループの数の関数としての原子損失は、それぞれの低下の間に100μs待機する。量子回路を走らせる場合、それぞれのCZゲートについて(リュードベリ状態の反トラップおよび遷移の光シフトを回避するために)500nsの低下が使用され、それについて、原子損失が有意になる前に、数百の低下が作成され得る(1原子当たり数百の可能なCZゲートに対応する)。図6Dにおいて、データのx軸を
【数61】
に対して再度一定の割合にする(rescaling)ことにより、種々のtdropのデータがユニバーサル曲線に対して急落することが示され、特定の数の低下の後の原子損失を説明するための拡散モデルが示唆される。かかる拡散プロセスを分析的にモデル化することにより、10μKの温度および1μmのトラップ半径を有する黒色の曲線が得られる。
【0129】
図7を参照すると、頑強な単一キュービット制御およびキュービットコヒーレンスが図示される。図7Aにおいて、頑強なBB1単一キュービット回転は、パルス面積誤りの関数として、通常の単一キュービット回転に対して比較される。軸φの周囲の角度θのブロッホ球上の任意のBB1(θ,φ)回転は、4つのパルス:
【数62】
のシーケンスにより実現され、ここで
【数63】
である。ここでパルス忠実度は、忠実度がSPAM訂正などの|0>→|1>の成功裡の遷移の確率であるように画定されるπパルスについて測定される。図7Bは、動的デカップリング(128の総πパルスを有するXY16)を使用して超微細キュービットコヒーレンスを保存することを図示する。キュービットコヒーレンスは秒の時間尺度で観察され、適合されるコヒーレンス時間はT2=1.49(8)sである。データは、シーケンスの終了時に
【数64】
パルスのいずれかを用いて測定され、これらの曲線は次いで、コヒーレンスy軸を生じるように差し引かれる。図7Cにおいて、超微細キュービットT1は、|F=2,mF=0>および|F=1,mF=0>で始まる測定の間の最終F=2集団の差により測定される。冷却なしの原子損失は、別々に測定され(主に真空損失から生じる)、標準化されて、原子損失の非存在下で固有のスピン緩和時間T'1も測定する。ここで全てのデータは830nmトラップで測定される。
【0130】
図8を参照すると、420nmリュードベリパルスのエコー忠実度に対する軸方向トラップ振動の効果が図示される。図8Aは、420nmリュードベリレーザーパルス強度の雑音相関測定を図示する。この図のみに使用される青色離調配置において、420nmのレーザーは、超微細キュービット上で8MHz示差的光シフトおよび結果的に2μsパルスの間の32πの位相蓄積を誘導する(CZゲートは合計で400nsである)。420nmレーザー強度の小さな揺らぎは、超微細キュービットの位相蓄積において大きな揺らぎをもたらすので、有意なディフェージングを生じる。ここで図に示されるエコーシーケンスは、変動性の時間τにより分離される2つの420nmパルスの間の蓄積した位相の相関を調査し、そのため420nm強度において揺らぎの外をさらに適切に反響しながら420nmパルスが時間においてどのくらい遠くに分離され得るかの情報を与える。図8Bは、2つの420nmパルスの間のギャップ時間τに対する超微細コヒーレンス(エコー忠実度の代用)のグラフである。エコー忠実度は、420nm強度の脱相関のために最初に減少するが、次いで再度増加し、420nm強度の相関が非単調であることを示す。振動を減衰することは、
【数65】
の機能的形態に適合する。図8Cは、トラップ動力との平方根の関係に従う雑音の相関/脱相関の適合された振動周波数fのグラフであり、予測される軸方向トラップ振動周波数と一致する。これらの観察は、420nmの雑音の相関/脱相関の有意な部分がトラップにおける原子の数μmの軸方向振動により生じることを示す。この測定のために、420nmのビームは、ビームの傾斜上に原子を配置するために数μmだけ意図的にずらされ、この現象に対する感度を増加する。他の実験について、これらの効果に対する感度を最小化することは、より大きな(35ミクロンのくびれ)420nmビームの中心で操作することおよび中間状態遷移の赤色離調を操作することにより最小化される。
【0131】
図9を参照すると、例示的な運動の概略図が提供される。概略図は、並行した比較における(図9A)1Dクラスター状態、(図9B)Steaneコード、(図9C)表面コードおよび(図9D)トリックコードのゲートごとの生成を示す。これらの種々のグラフ状態は全て同じ方法で生成され、所望の回路をエンコードすることは、異なる開始位置に原子を配置することおよび適切なAOD波形を適用することの問題である。所望の回路を実現するために、方法の文章に記載される方法で原子レイアウトおよび軌道を帰納的に最適化する。図9Cは、表面コードスタビライザーの定義も示す。
【0132】
図10を参照すると、誤りシミュレーションならびに表に示される単一キュービットおよび2キュービット誤り推定が提供される。測定されるグラフ状態忠実度を、(図10A)表面コードおよび(図10B)トリックコードについての推計学的Monte Carloシミュレーションからのものと比較する。シミュレーションされたスタビライザーは、この経験的脱分極雑音モデルについての実験データと十分に一致する。さらに、実験における表面コード(トリックコード)について、35%(20%)の測定は、シミュレーションにおける40%(26%)と比較して、スタビライザー誤りを検出しない。2キュービット誤りは、0.2%のY誤り、0.2%のX誤り、0.5%のZ誤りおよび並行の層当たりのキュービット当たりの0.5%の損失の割合で記載され(表面コードについて4層、トリックコードについて5層)、97.2% CZゲート忠実度に対応する。周囲の単一キュービット誤りは、0.1%のY誤り、0.1%のX誤り、0.4%のZ誤りおよび並行の層当たりのキュービット当たりの0.2%の損失ならびに回路が開始する前の初期1%損失(経験的に要因としてSPAM誤りを含む)の割合である。図10Cは、測定され、推定され、外挿される単一キュービット(SQ)および2キュービット(TQ)ゲート誤りの表の記入を提供する。シミュレーションされるTQ忠実度は、420nmのエコーパルスからの0.6%散乱誤りを含む。推定されるTQ忠実度は、表面コードおよびトリックコードの実験について与えられるが、クラスター状態およびSteaneコード測定についてのTQ忠実度の過小評価であり、ここで1013nmの強度は2×だけ増加され、420nm強度は2×だけ低減され、ゲート忠実度を増加する。CZゲート忠実度のベル状態推定は、2×高い1013強度と同様に実行されるが、420nmのエコーパルスを含み、結果的に表面およびトリックコード推定と同様のゲート忠実度を生じる。
【0133】
図11を参照すると、エンコードされる論理状態の特性が図示される。図11Aは、生の測定のためならびにポストプロセスにおいて誤り訂正および誤り検出を実行するためのこの作業(全ては論理状態|+>Lにある)において作成される種々の誤り訂正グラフについての論理誤り確率の要約を提供する。Steaneコードについての誤り訂正は、Steaneコードデコーダーにより実行され、表面およびトリックコードについては最小加重完全適合アルゴリズムを用いて実行される。等間隔トリックコードについて、訂正が不明瞭である場合、論理キュービットははじかれず、したがって、間隔d=2論理キュービットは、訂正手順下で変化しない。観察される忠実度は、他のプラットフォームを用いた最新の実験における同様の表示と同等である。図11Bは、図11Aと同様のポスト処理において実行される訂正および検出を有する表面コードに対する論理|+>L状態の寿命を示す。状態調製の後、|+>L状態は、投影測定の前に変動性の時間保持され、2つのπパルスが、動的デカップリングのために適用される(寿命は、図7Bにおいてなされるように例えば128のπパルスを適用することによりさらに有意に延長され得る)。ここでいくつかの実験パラメーターは、図11Aにおけるもの、そのためここで時点0でのより高い誤り割合と比較してわずかに異なる。図11Cは、論理キュービット状態|0>Lを調製するためのSteaneコード上の論理π/2回転を示す。Steaneコード、表面コードおよびトリックコードは全て、論理キュービット(格子のインソフトウェア回転を含む)上の横断単一キュービットClifford操作を有し、横断回転は全体的ラマンレーザーと並行して実行され、物理的単一キュービット忠実度は高いため、これはシステムにおける高忠実度操作である。ここで例としてSteaneコードについての論理π/2回転が示されるが、論理ブロッホ球の基本軸に沿った種々の基準状態は、これらのコードの全てについて実現され得る。
【0134】
図12を参照すると、干渉法測定のベンチマーク問題での試験が図示される。ゲート系干渉法技術をベンチマーク問題により試験するために、(変動性の長さの共鳴ラマンパルスを適用することにより)変動性の単一粒子純粋状態が調製され、次いで該システムが再形成され、対の一方のペアに干渉法回路が適用される。干渉法回路は、対称三重項状態を他のコンピューター計算状態に変換しながら、反対称一重項状態|Ψ->をコンピューター計算基準状態|00>に変換する。得られる対の一方のペアの出力状態は左のパネルにプロットされる。|00>状態はまれに観察され(1.95(2)%の測定)、測定忠実度は初期状態とは独立する。|00>を観察することのこの低い確率P00は、2P00-1=0.961(3)の高い抽出された単一粒子純度に対応する(図12A、右パネル)。干渉法誤較正は、多体もつれエントロピー測定の妥当性を損なう観察された純度の有意な状態依存性を生じ得るので、この測定は、有用なベンチマークである。ベル状態アレイによるもつれエントロピー測定のベンチマーク問題による試験。(図12B、一番上)変動性の持続時間のリュードベリパルス下の|11>と
【数66】
の間の2粒子振動の間のマイクロ状態集団。かすかな線は{|1>、|r>}基準における測定結果を示し、暗い線はコヒーレントマッピングプロセスの後の{|0>、|1>}基準における結果を示す。(図12B、下)それぞれの測定における観察される|00>の対の一方のペアの数パリティを分析することによる測定される局所的および全体的な純度。この2粒子データについて、230nsのギャップは、多体データに使用される150nsギャップとは反対に、コヒーレントマッピングシーケンスに使用される。
【0135】
図13を参照すると、生の多体データおよび誤りの数的モデリングが提供される。図13Aは、|rgrgrgrg>および|gggggggg>からのクエンチのためのサブシステムサイズの関数としての、広範囲の古典的エントロピーを差し引かない生の測定されたRenyiエントロピーを示す。4原子サブシステムのRenyiエントロピーは、図4Dにプロットされる半鎖もつれエントロピーと同じ基礎データである。以前の例において、データは、古典的な粒子当たりのエントロピーにより与えられる固定されたオフセットを差し引かれ、それぞれのサブシステムサイズについての時間=0オフセットに対応した。広範囲の古典的エントロピーオフセットは、|r>を調製することおよび|r>→|1>をマッピングすることの両方の非単一忠実度のために|rgrgrgrg>クエンチについてわずかに大きい。図13Bは、|gggggggg>クエンチの後の生の全体的な純度を示す。全体的な純度は、全プロセスの忠実度の感受性の代用である。3準位システムで構成されるこの16体オブザーバブルは、8つのキュービットの十分に混合された状態(1/28)について予測される純度を>100×のままにする(挿入図参照)。スケールの比較のために、単一粒子純度も8乗にプロットして、それぞれの対の一方に対する測定結果が訂正されなかった場合に全体的な純度が何であるかを示す。図13Cは、種々のシミュレーションされた誤り源を有する3準位システム
【数67】
の数的モデリングにより計算される8原子クエンチのための全体的な純度を示す。(対の一方の状態|00>がもはや検出され得ないので)|r>における残存集団が、原子損失およびSWAP演算子の+1固有値に関連する測定を生じることを考慮して、実験的に測定された純度は、2つの独立した鎖の間の{|0>、|1>}基準におけるSWAP演算子の期待値を計算することによりモデル化される。一番上の曲線は、コヒーレントマッピング工程の後に|r>に残った集団からの誤りのみを含む(方法の文章参照)。上から2番目の曲線は、単一部位のディフェージング(リュードベリ力学およびコヒーレントマッピングギャップの間の
【数68】
を含み、これは0平均および100kHzの標準偏差によりガウス分布されるランダムなオンサイト離調によりモデル化される。3番目および4番目の曲線は、クエンチ時間t=0での実験的に観察された生の全体的な純度による乗法を含み、次いで散乱のための単純なモデルおよび2つの鎖の間の16原子のそれぞれについておよそ70μsの実験的に推定される速度を有する減衰誤りとしての指数関数的な減衰exp[-16×t/(70μs)]を経験的にさらにかける。
【0136】
図14を参照すると、量子多体傷跡のための局所的なオブザーバブルおよびもつれエントロピーが図示される。図14Aは、古典的エントロピー差し引きなどの、傷跡のついた
【数69】
状態からクエンチする場合に、8原子鎖中のそれぞれの部位についての実験的に測定された単一部位エントロピーを示す。実線の曲線は、HRyd(式3)の正確な理想的な(不完全さなし)数値をプロットし;鎖において全ての原子についてデータと数値の間の優れた一致が見られる。図14B、一番上は、図4Fと同じデータを示し、2つの異なる初期状態についての鎖中の真ん中の2つの原子の単一部位エントロピーを示す。図14B、一番下は、オフにされた干渉法回路によるZ基準における多体状態の測定を示す。
【数70】
状態からの傷跡の特徴であるサブ格子上のリュードベリ励起確率は、周期的な振動を示す。一番下の行において、暗いデータ点は{|1>、|r>}基準において測定され、かすかなデータ点は、コヒーレントマッピングシーケンスの後の{|0>、|1>}基準において測定される。両方の基準における測定は、正確な数値(実線)と十分に一致し、これは、自由適合パラメーターを有さず、検出非忠実度などの任意の実験的な不完全さを説明しない。さらに、データは、局所的リュードベリπパルスを使用して、
【数71】
状態への調製の高い忠実度を示す。プロッティングにおいて、理論曲線および{|1>、|r>}基準測定は、{|0>、|1>}基準で測定する場合、適用されるラマンπパルスは、リュードベリ伸展の最後の10nsを中断するという事実を説明するために、10nsだけ遅延される。図14Cは、完全最近傍隣接体ブロッケードの理想化された‘PXP’モデルにおける2つの隣接する部位上の単一部位Renyiエントロピーの数的シミュレーションを示す。システムサイズは周期的境界条件を有する24原子であり、2つのサブ格子のもつれエントロピーにおける同じ位相の外側の振動を示す。図14Dは、該システムの拘束されたヒルベルト空間の図である。傷跡の早期の位相の外側のエントロピー振動は、この拘束されたヒルベルト空間の図において理解され得、ここで傷跡の力学は、左端(|rgrgrgrg>)から右端(|grgrgrgr>)まで該状態を採ることが公知である(暗い円は|r>を示し、白色の円は|G>を示す)。この拘束されたヒルベルト空間のこれらの結晶性末端の近くで、リュードベリ原子は変動し得る(高いエントロピー)が、基底状態原子は押さえつけられる(低いエントロピー)。該分析は、同じサブ格子上の原子の間のもつれは、
【数72】
状態の復調忠実度の実際の分解に寄与することを示す。
【0137】
光ピンセットを使用した粒子のアレイの形成
中性原子の光学トラップは、真空中の原子を単離するための強力な技術である。原子は偏光性であり、光ビームの振動する電場は、原子中の振動する電気双極子モーメントを誘導する。光振動期間にわたり平均される誘導される双極子からの原子内の関連のあるエネルギーシフトは、ACスタークシフトと称される。原子共鳴遷移から離調される(すなわち波長においてずれる(offset))光により誘導されるACスタークシフトに基づいて、原子は、共鳴周波数未満の光に引きつけられるので、(離調される赤色、すなわちより長い波長トラップ光について)局所的な強度極大でトラップされる。ACスタークシフトは、光の強度に比例する。したがって、強度の場の形状は、関連する原子トラップの形状である。光ピンセットは、レーザーをミクロン規模のくびれ部分に焦点を当てることによりこの原理を利用し、ここで個々の原子は該焦点でトラップされる。光ピンセットの二次元(2D)アレイは、例えばコンピューター生成ホログラムをレーザー場の波面に与える空間光変調器(SLM)に照射することにより生成される。光ピンセットの2Dアレイは、磁気-光学トラップ(MOT)内のレーザー冷却原子のクラウドと重複する。ぴったりと焦点を当てられた光ピンセットは、単一の原子がMOTから負荷される「衝突ブロッケード」領域において作動し、原子のペアは、光補助衝突のために排出されて、ピンセットに最大で1個の原子が負荷されることが確実にされるが、負荷は見込みであるので、トラップには約50~60%の確率で単一の原子が負荷される。
【0138】
決定論的原子アレイを調製するために、リアルタイムフィードバック手順により、ランダムに負荷された原子を同定し、それらを予めプログラムされた幾何学構造に再配置する。原子再配置は、ピンセット中で原子を動かすことを必要とし、これは、例えば音響-光学デフレクター(AOD)を使用して、AOD結晶に適用される音響波形の周波数により制御される調整可能な角度だけレーザービームを偏向させることにより、加熱を最小化するように円滑に進められ得る。音響周波数の動的調整(dynamic tunning)は、光ピンセットの円滑な動きに変換される。多周波数音響波は、レーザー偏向のアレイを生成し、これは、顕微鏡対物レンズを通して焦点を合わせた後、音響波形により両方が制御される調整可能な位置および振幅を有する光ピンセットのアレイを形成する。SLMピンセットアレイの頂部にかぶせられる動的に動くピンセットのさらなるセットを使用することにより、原子は再配置される。
【0139】
例示的ハードウェア
光ピンセットアレイは、個々の粒子で構成される大規模なシステムを構築するための強力かつ柔軟な方法を構成する。それぞれの光ピンセットは、限定されないが量子テクノロジーにおける適用のための個々の中性原子および分子を含む単一の粒子をトラップする。個々の粒子をかかるピンセットアレイに負荷することは推計学的なプロセスであり、ここで該システム中のそれぞれのピンセットは、多くの中性原子ピンセット実行の場合に、有限の確率p<1、例えばp~0.5で、単一の粒子を充填される。この無作為な負荷を補うために、どのピンセットが負荷されるかを測定し、次いで負荷された粒子をプログラム可能な幾何学構造に分類することにより、リアルタイムフィードバックが得られ得る。これは、1つの粒子を一度にまたは並行して動かすことにより実行され得る。
【0140】
並行する分類は、2つの音響-光学デフレクター(AOD)を使用して、既存の粒子トラップ構造から粒子を拾い上げ得る複数のピンセットを生成し、それらを同時に動かし、それらをどこか他の場所に解放することにより達成され得る。これは、単一トラップ構造(例えばピンセットアレイ)内で周囲に粒子を動かすことまたは1つのトラップシステムから別のシステムへと(例えば1つのピンセットアレイと別の型の光学/磁気トラップの間で)粒子を輸送および分類することを含み得る。この分類は、柔軟であり、それぞれの粒子のプログラムされた配置を可能にする。それぞれの運動可能なトラップはAODにより形成され、その位置は、AODについての無線周波数(RF)駆動場の周波数成分により動的に制御される。AODのRF駆動は、リアルタイムで制御され得、周波数成分の任意の組み合わせを含み得るので、AODのRF駆動場内の周波数成分の数、大きさおよび分布を変化させることにより、トラップの任意のグリッド(任意に配置されるトラップの線など)を生成し、グリッドの行または列を動かし、グリッドの行および列を追加または除去することが可能である。
【0141】
例示的な態様において、光ピンセットアレイは、ピンセットの柔軟な配置をプログラム的に生成し得るシリコン空間光変調器(SLM)上の液晶を使用して生成される。これらのピンセットは、所定の実験的シーケンスについて空間内に固定され、個々の原子を推計学的に負荷されるので、それぞれのピンセットは、p~0.5の確率で負荷される。負荷された原子の蛍光画像を撮影して、どのピンセットが負荷され、どれが空なのかをリアルタイムに同定する。
【0142】
どのピンセットが負荷されるかを検出した後、光ピンセットアレイと重複する運動可能なピンセットは、原子を、それらの開始位置から動的に再配置して、ほぼ均一な充填でトラップの標的配置を充填し得る。運動可能なピンセットは、交差したAODのペアを用いて生成される。これらのAODを使用して、1つの原子を一度に動かして標的配置を充填するかまたは多くの原子を並行に動かす単一の運動可能なトラップを生成し得る。
【0143】
図15を参照すると、本開示の態様による量子コンピューター計算のための装置1500の概略図が提供される。図15に示されるように、光源1502(例えばコヒーレント光源、いくつかの例示的態様において-単色光源)により生成されたビームを使用して、SLM 1504は、トラップビームのアレイ(すなわちピンセットアレイ)を形成し、これは、図15に示される例示的な態様において、要素1506a、1506c、1506dおよび高い開口数(NA)の対物レンズ1506eを含む光学的な一連の部品(train)により、真空チャンバー1510内で、トラップ面1508上に画像化される。他の適切な光学的な一連の部品は、当業者に容易に理解されるように使用され得る。光源1512(例えばコヒーレント光源;いくつかの例示的な態様において-単色光源)により生成されるビームを使用して、音波伝達の平行でない方向(例えば直交する方向)を有する一対のAOD 1514および1516は、動的に運動可能な分類ビームを生成する。図15に示されるもの(要素1517、1506b、1506c、1506dおよび1506e)などの光学的な一連の部品を使用して、分類ビームは、トラップビームと重複される。他の光学的な一連の部品を使用して同じ結果を達成し得ることが理解される。例えば源1502および1512は単一の源であり得、トラップビームおよび分類ビームはビームスプリッターにより生成される。
【0144】
ステアリングビームの動的な運動は、直列に配置された2つの平行でないAOD 1514、1516を使用して達成される。図15に示される例示的な態様において、1つのAODは、「行」(「水平」-‘X'AOD)の方向を画定し、他のAODは「列」(「垂直」-‘Y'AOD)の方向を画定する。それぞれのAODは、原子が負荷される位置の画像を解析した後にフィードバックルーティンを処理するコンピューター1522によりリアルタイムで生成される、任意の波形ジェネレータ1520由来の任意のRF波形により駆動される。それぞれのAODが単一の周波数成分で駆動される場合、単一のステアリングビーム(「AODトラップ」)は、SLMトラップアレイと同じ面1508で生成される。X AOD駆動の周波数はAODトラップの水平位置を決定し、Y AOD駆動の周波数は垂直な位置を決定し;この方法において、単一のAODトラップは、任意のSLMトラップと重複するように進められ得る。
【0145】
図15において、レーザー1502は、光のビームをSLM 1504に照射する。SLM 1504は、ビームのパターン(「トラップビーム」または「ピンセットアレイ」)を生成するように、コンピューター1522により制御され得る。ビームのパターンは、レンズ1506aにより焦点を合わされ、ミラー1506bを通過し、ミラー1506d上のレンズ1506cにより平行にされる。反射光は対物レンズ1506eを通過して、トラップ面1508上の真空チャンバー1510中の光ピンセットアレイの焦点を合わせる。光ピンセットアレイのレーザー光は対物レンズ1524aを通過し続け、二色性ミラー1524bを通過し、電荷結合素子(CCD)カメラ1524cにより検出される。
【0146】
真空チャンバー1510は、さらなる光源(示されない)により照射され得る。トラップ面上にトラップされた原子からの蛍光も対物レンズ1524aを通過するが、二色性ミラー1524bにより、電子増幅CCD(EMCCD)カメラ1524dへと反射される。この例において、レーザー1512は、光のビームをAOD 1514、1516に方向づける。AOD 1514、1516は、任意波ジェネレータ(AWG)1520により駆動され、次いでこれはコンピューター1522により制御される。交差AOD 1514、1516は、上述のように1つ以上のビームを放出し、これは焦点レンズ1517に方向づけられる。次いでビームは、光ピンセットアレイに関して上述されるように同じ光学的な一連の部品1506b・・・1506eに進入し、トラップ面1508上に焦点を当てる。
【0147】
代替的な光学的な一連の部品を使用して、本明細書に記載される使用に適した光ピンセットアレイを作製し得ることが理解される。
【0148】
本開示の種々の態様の記載は、例示の目的で示されているが、開示される態様に対して網羅的であるようにまたはそれに限定されるようには意図されない。多くの改変および変形は、記載される態様の範囲および精神から逸脱することなく、当業者に明らかである。本明細書で使用される用語は、態様の原理、実際の適用もしくは市場で見られる技術に対する技術的向上を最良に説明するか、または他の当業者が本明細書に開示される態様を理解することを可能にするように選択された。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図3A
図3B
図3C
図3D
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図9D
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図13A
図13B
図13C
図14A
図14B
図14C
図14D
図15
【国際調査報告】