(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】培養脂肪組織
(51)【国際特許分類】
C12N 5/077 20100101AFI20240725BHJP
C12N 5/0775 20100101ALI20240725BHJP
C12N 5/074 20100101ALI20240725BHJP
A23J 3/00 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
C12N5/077
C12N5/0775
C12N5/074
A23J3/00 502
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506625
(86)(22)【出願日】2022-08-05
(85)【翻訳文提出日】2024-02-28
(86)【国際出願番号】 US2022074641
(87)【国際公開番号】W WO2023015317
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319009901
【氏名又は名称】トラスティーズ オブ タフツ カレッジ
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】カプラン デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ユアン ジョン セ キット
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AC14
4B065AC17
4B065BD25
4B065CA41
(57)【要約】
本開示は、細胞培養された脂肪組織に関する。一態様では、培養脂肪組織は、インビトロで培養培地中で脂肪細胞を培養する工程、所望の量の脂肪細胞が生産された後に脂肪細胞を採取する工程、および、培養脂肪組織を提供するために、採取した脂肪細胞を凝集させる工程により生産される。いくつかの態様では、採取した脂肪細胞を凝集させる工程は、採取した脂肪細胞をヒドロゲルまたは結合剤と三次元(3D)鋳型内で混合する段階を含む。他の態様では、採取した脂肪細胞を凝集させる工程は、採取した脂肪細胞を3D鋳型内で架橋させる段階を含む。培養脂肪組織は、規定の3D形状およびマクロスケールのサイズを有する。いくつかの態様では、培養脂肪組織は食品であり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、培養脂肪組織を生産するための方法:
第1の培養培地中で脂肪生成前駆細胞を増大させる工程;
第2の培養培地中で該脂肪生成前駆細胞を脂肪細胞に分化させる工程;
該脂肪細胞を採取する工程;および
培養脂肪組織を提供するために、採取した脂肪細胞を凝集させる工程。
【請求項2】
第1の培養培地中で脂肪生成前駆細胞を増大させる工程が、
該第1の培養培地を含有するバイオリアクタに該脂肪生成前駆細胞を播種する段階、および
該バイオリアクタ内で該脂肪生成前駆細胞を増殖させる段階
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
脂肪生成前駆細胞を脂肪細胞に分化させる工程が、バイオリアクタ内で第1の培養培地を第2の培養培地に変更する段階を含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
以下の工程を含む、培養脂肪組織を生産するための方法:
培養培地中で脂肪生成前駆細胞を増大させる工程;
該培養培地中で該脂肪生成前駆細胞を脂肪細胞に分化させる工程;
該脂肪細胞を採取する工程;および
培養脂肪組織を提供するために、採取した脂肪細胞を凝集させる工程。
【請求項5】
バイオリアクタ内で行われる、請求項1または4記載の方法。
【請求項6】
バイオリアクタが、撹拌懸濁タンクバイオリアクタである、請求項2、3または5記載の方法。
【請求項7】
バイオリアクタが、回転壁容器バイオリアクタである、請求項2、3または5記載の方法。
【請求項8】
バイオリアクタが、中空糸バイオリアクタである、請求項2、3または5記載の方法。
【請求項9】
以下の工程を含む、培養脂肪組織を生産するための方法:
二次元(2D)基材上で脂肪生成前駆細胞を増大させる工程;
該2D基材上で該脂肪生成前駆細胞を脂肪細胞に分化させる工程;
該脂肪細胞を採取する工程;および
培養脂肪組織を提供するために、採取した脂肪細胞を凝集させる工程。
【請求項10】
2D基材上で脂肪生成前駆細胞を増大させる工程が、
該2D基材上に該脂肪生成前駆細胞を播種する段階、および
該2D基材上で該脂肪生成前駆細胞を増殖させる段階
を含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
2D基材が、コンベアベルトの少なくとも一部分を形成する、請求項9または10記載の方法。
【請求項12】
組立てラインプロセスで連続的に実施される、請求項9~11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
以下の工程を含む、培養脂肪組織を生産するための方法:
培養培地中で脂肪生成前駆細胞から脂肪細胞を培養する工程;
所望の量の脂肪細胞が生産された後に該脂肪細胞を採取する工程;および
培養脂肪組織を提供するために、採取した脂肪細胞を凝集させる工程。
【請求項14】
脂肪生成前駆細胞が、多能性幹細胞である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
脂肪生成前駆細胞が、間葉系幹細胞である、請求項1~13のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
採取した脂肪細胞を凝集させる工程が、該採取した脂肪細胞をヒドロゲルまたは結合剤と3D鋳型内で混合する段階を含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
ヒドロゲルまたは結合剤が、アルジネート、セルロース、ゼラチン、デンプン、ヒアルロン酸、フィブリン、カラギーナン、グアーガム、イヌリン、コンニャク、オートブラン、ペクチン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、大豆タンパク質、小麦グルテン、ゼインタンパク質、絹タンパク質、セルロース誘導体、プルラン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
採取した脂肪細胞を凝集させる工程が、該採取した脂肪細胞をアルジネートと混合する段階を含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
採取した脂肪細胞をアルジネートと混合する段階が、
炭酸カルシウムおよびグルコノデルタ-ラクトンをアルジネートの溶液に添加するステップ;ならびに
該採取した脂肪細胞と該アルジネートの溶液を3D鋳型内で合わせるステップ
を含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
採取した脂肪細胞を凝集させる工程が、該採取した脂肪細胞を3D鋳型内で架橋させる段階を含む、請求項1~15のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
採取した脂肪細胞を架橋させる段階が、トランスグルタミナーゼ、チロシナーゼ、ペルオキシダーゼ、およびラッカーゼからなる群より選択される酵素を使用して該採取した脂肪細胞を架橋させるステップを含む、請求項20記載の方法。
【請求項22】
採取した脂肪細胞を3D鋳型内で架橋させる段階が、該採取した脂肪細胞をトランスグルタミナーゼを使用して酵素的に架橋させるステップを含む、請求項20記載の方法。
【請求項23】
採取した脂肪細胞をトランスグルタミナーゼで架橋させるステップが、トランスグルタミナーゼの溶液を、該採取した脂肪細胞と3D鋳型内で所定の体積比にて混合することを含む、請求項22記載の方法。
【請求項24】
採取した脂肪細胞を架橋させる段階が、アルデヒド基で官能化されたポリマー、ゲニピン、およびフェノール系化合物からなる群より選択されるクロスリンカーを使用して該採取した脂肪細胞を架橋させるステップを含む、請求項20記載の方法。
【請求項25】
アルデヒド基で官能化されたポリマーが、過ヨウ素酸酸化ペクチン、デキストラン、キトサン、アラビアガム、スクロース、ラフィノース、スタキオース、シクロデキストリン、およびデンプンからなる群より選択される、請求項24記載の方法。
【請求項26】
フェノール系化合物が、コーヒー酸、クロロゲン酸、カフタル酸、ケルセチン、およびルチンからなる群より選択される、請求項24記載の方法。
【請求項27】
採取した脂肪細胞を凝集させる工程が、凝集中にタンパク質を添加する段階を含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
タンパク質が、カゼインおよびゼラチンより選択される、請求項27記載の方法。
【請求項29】
脂肪細胞を採取する工程の後かつ採取した脂肪細胞を凝集させる工程の前に、非細胞液体を除去するために、該脂肪細胞を排液させる工程をさらに含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項30】
培養脂肪組織が、マクロスケールのサイズを有する、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項31】
培養脂肪組織が、規定の3D形状を有する、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項32】
脂肪細胞にメチル化分岐脂肪酸を補充する工程をさらに含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項33】
脂肪細胞が、オメガ3デサチュラーゼを発現する、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
ヒドロゲルまたは結合剤中に包埋された脂肪細胞を含む培養脂肪組織であって、三次元(3D)形状およびマクロスケールのサイズを有する、培養脂肪組織。
【請求項35】
ヒドロゲルまたは結合剤が、アルジネート、セルロース、ゼラチン、デンプン、ヒアルロン酸、フィブリン、カラギーナン、セルロース、グアーガム、イヌリン、コンニャク、オートブラン、ペクチン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、大豆タンパク質、小麦グルテン、ゼインタンパク質、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項34記載の培養脂肪組織。
【請求項36】
脂肪細胞の塊が、アルジネートで架橋されている、請求項34または35記載の培養脂肪組織。
【請求項37】
互いに架橋された脂肪細胞を含む培養脂肪組織であって、三次元(3D)形状およびマクロスケールのサイズを有する、培養脂肪組織。
【請求項38】
脂肪細胞が、トランスグルタミナーゼ、チロシナーゼ、ペルオキシダーゼ、およびラッカーゼからなる群より選択される酵素を使用して架橋されている、請求項37記載の培養脂肪組織。
【請求項39】
脂肪細胞が、トランスグルタミナーゼで架橋されている、請求項37記載の培養脂肪組織。
【請求項40】
脂肪細胞が、アルデヒド基で官能化されたポリマー、ゲニピン、およびフェノール系化合物からなる群より選択されるクロスリンカーで架橋されている、請求項37記載の培養脂肪組織。
【請求項41】
アルデヒド基で官能化されたポリマーが、過ヨウ素酸酸化ペクチン、デキストラン、キトサン、アラビアガム、スクロース、ラフィノース、スタキオース、シクロデキストリン、およびデンプンからなる群より選択される、請求項40記載の培養脂肪組織。
【請求項42】
フェノール系化合物が、コーヒー酸、クロロゲン酸、カフタル酸、ケルセチン、およびルチンからなる群より選択される、請求項40記載の培養脂肪組織。
【請求項43】
培養脂肪組織が、食品である、前記請求項のいずれか一項記載の方法または培養脂肪組織。
【請求項44】
培養脂肪組織が、食品の成分である、前記請求項のいずれか一項記載の方法または培養脂肪組織。
【請求項45】
脂肪組織の1つまたは複数の構成成分が、食品中の成分である、前記請求項のいずれか一項記載の方法または培養脂肪組織。
【請求項46】
培養脂肪組織が、血管新生または灌流なしで生産される、前記請求項のいずれか一項記載の方法または培養脂肪組織。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年8月5日に出願された米国仮特許出願第63/203,980号に関し、その優先権を主張するものであり、本仮特許出願はあらゆる目的で参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
食肉(筋組織および脂肪質組織)を生産するための従来の畜産は、環境の悪化、人獣共通感染症(zoonic disease)の発生、抗微生物薬耐性、および動物福祉上の懸念などの非常に多くの欠点と関連している。動物および環境に対する悪影響が低減した、畜産物の代替品を世界に提供するために、培養(インビトロ)脂肪質組織の生産への関心が増加しつつある。
【背景技術】
【0003】
背景
食肉(筋組織および脂肪質組織)を生産するための従来の畜産は、環境の悪化、人獣共通感染症の発生、抗微生物薬耐性、および動物福祉上の懸念などの非常に多くの欠点と関連している。動物および環境に対する悪影響が低減した、畜産物の代替品を世界に提供するために、培養(インビトロ)脂肪質組織の生産への関心が増加しつつある。
【0004】
代替タンパク質の分野では、食肉の脂肪質含量を再現するための既存の解決策は主に、植物油脂(例えばヤシ油)を直接添加することまたは利用することを中心に展開されている。この領域における近年の進展には、固形脂肪質(すなわち動物性脂肪質)のテクスチャをより良く作り出すために植物油のナノスケールの小球が生成されているオレオゲルの使用が含まれる。しかしながら、植物性脂肪質には、食肉のしばしば複雑である芳香および風味、ならびに、ウシ、ブタ、ニワトリ、魚などに由来する食肉を区別する、種特有の風味が組み入れられていない。
【0005】
天然の(インビボ)脂肪組織は主に、低密度の細胞外マトリックス(ECM)によって一緒に保持された、脂質で満たされたアディポサイトの高密度の充填体(凝集物)である。これは、多階層構造中の整列した線維から構成される筋組織とは対照的である。これまで、三次元(3D)培養は、バルク/マクロスケールの組織を生成するための主たるアプローチであった。これらの組織工学戦略は、3Dスキャフォールド上での細胞のインビトロでの増大を伴う。しかしながら、酸素、栄養素、および廃棄物に関する物質輸送に制限があるため、3D培養のスケールアップは困難である。細胞は、血液源または培養培地源の約200マイクロメートル以内に存在しない限り3D組織内で生存し続けることができないと、当分野においてしばしば言われている。3D組織内での細胞生存能を維持するためにこれらの課題を克服するには、細胞に栄養素を分配するための血管新生または精巧な組織灌流システムの組み入れが必要となる場合がある。灌流もしくは関連する方法を使用せずに、またはインビボで見られる脂肪質の構造的特徴を用いて、現代の組織工学技法を使用してマクロスケール(ミリメートルスケール以上)で大型組織を直接増大させることは、現時点では実行不可能である。インビボで見られる脂肪組織を模倣した脂肪組織のラージスケール生産は、おそらくこれらの課題に起因して現在まで実行されていないように思われる。
【0006】
したがって、培養脂肪組織のラージスケール生産のための戦略が依然として必要とされている。本開示は、この必要性に対する技術的解決策を提供する。
【発明の概要】
【0007】
概要
培養脂肪組織を生産するための方法が、本明細書において開示される。本方法は、第1の培養培地中で脂肪生成前駆細胞を増大させる工程、第2の培養培地中で脂肪生成前駆細胞を脂肪細胞に分化させる工程、および脂肪細胞を採取する工程を含み得る。本方法は、培養脂肪組織を提供するために、採取した脂肪細胞を凝集させる工程をさらに含み得る。いくつかの態様では、脂肪生成前駆細胞を増大させる工程および脂肪生成前駆細胞を脂肪細胞に分化させる工程は、バイオリアクタ内で行われる。
【0008】
培養脂肪組織を生産するための方法が、本明細書においてさらに開示される。本方法は、培養培地中で脂肪生成前駆細胞を増大させる工程、および該培養培地中で脂肪生成前駆細胞を脂肪細胞に分化させる工程を含み得る。本方法は、アディポースド細胞(adiposed cells)を採取する工程、および培養脂肪組織を提供するために、採取した脂肪細胞を凝集させる工程をさらに含み得る。
【0009】
培養脂肪組織を生産するための方法が、本明細書においてさらに開示される。本方法は、二次元(2D)基材上で脂肪生成前駆細胞を増大させる工程、該2D基材上で脂肪生成前駆細胞を脂肪細胞に分化させる工程、および脂肪細胞を採取する工程を含み得る。本方法は、培養脂肪組織を提供するために、採取した脂肪細胞を凝集させる工程をさらに含み得る。いくつかの態様では、2D基材はコンベアベルトであり、方法は連続組立てライン様プロセスで行われる。
【0010】
培養脂肪組織を生産するための方法がまた、本明細書において開示される。本方法は、培養培地中で脂肪生成前駆細胞から脂肪細胞を培養する工程、所望の量の脂肪細胞が生産された後に脂肪細胞を採取する工程、および培養脂肪組織を提供するために、採取した脂肪細胞を凝集させる工程を含み得る。
【0011】
培養脂肪組織が本明細書においてさらに開示される。培養脂肪組織は、ヒドロゲルまたは結合剤中に包埋された脂肪細胞を含み得る。培養脂肪組織は、3D形状およびマクロスケールのサイズを有し得る。いくつかの態様では、培養脂肪組織は食品である。
【0012】
培養脂肪組織が本明細書においてさらに開示される。培養脂肪組織は、互いに架橋された脂肪細胞を含み得る。培養脂肪組織は、3D形状およびマクロスケールのサイズを有し得る。いくつかの態様では、培養脂肪組織は食品である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本開示による、培養脂肪組織の概略図である。
【
図2】本開示による、培養脂肪組織の生産に伴われ得る工程のフローチャートである。
【
図3】本開示による、バイオリアクタを使用して培養脂肪組織を生産する方法の概略図である。
【
図4】本開示による、コンベアベルト上で培養脂肪組織を生産する連続プロセスの概略図である。
【
図5】本開示の態様による、3T3-L1の脂肪生成分化のタイムラインである。
【
図6】本開示による、回転壁容器バイオリアクタを使用して培養脂肪組織を生産する方法の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
詳細な説明
本発明をさらに詳細に説明する前に、説明される特定の態様に本発明が限定されないことを理解されたい。本明細書において使用される専門用語が、特定の態様を説明することのみを目的としたものであり、限定することを意図したものではないことも理解される。本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定される。本明細書において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈上明確に別段の指示がない限り、複数の態様を含む。
【0015】
本発明の概念から逸脱することなく、既に説明したものに加えて多くの追加の修正が可能であることが当業者には明らかであるはずである。本開示を解釈する際、全ての用語は、文脈と一致する可能な限り最も広範な様式で解釈されるべきである。「含む(comprising)」という用語の変形は、非排他的な様式で要素、構成成分、または工程を指すものとして解釈されるべきであり、そのため言及された要素、構成成分、または工程は、明示的に言及されていない他の要素、構成成分、または工程と組み合わされる場合がある。ある特定の要素を「含む」と言及された態様は、それらの要素「から本質的になる」および「からなる」ことも企図される。特定の値について2つ以上の範囲が記載されている場合、本開示は、明示的に記載されていないそれらの範囲の上限および下限の全ての組み合わせを企図する。例えば、1と10の間または2と9の間の値の記載は、1と9の間または2と10の間の値も企図する。
【0016】
本明細書において使用される場合、「脂肪生成前駆細胞」または「プレアディポサイト」は、成熟脂肪細胞への分化が可能な前駆細胞を指す。「脂肪生成前駆細胞」または「プレアディポサイト」は、本開示全体を通して互換的に使用され得る。脂肪生成前駆細胞の非限定的な例には、多能性幹細胞(PSC)、間葉系幹細胞(MSC)、筋由来幹細胞(MDSC)、および脂肪由来幹細胞(ADSC)などの、幹細胞(例えば、ブタ、ウシ科動物、ヒト、鳥類(ニワトリ)、魚類など)が含まれる。加えて、分化転換細胞も利用され得る。他の脂肪生成前駆細胞には、脱分化脂肪(DFAT)細胞(例えば、ブタ、ウシ科動物、魚類など)、プレアディポサイト(例えば、ヒト、ウシ科動物、鳥類(ニワトリ)、ネズミ科動物、魚類など)、および線維芽細胞(例えば、鳥類(ニワトリ)、ウシ科動物、ブタ、ネズミ科動物、魚類など)が含まれ得るが、それらに限定されない。
【0017】
本明細書において使用される場合、「脂肪細胞」は、脂肪質細胞またはアディポサイトである。「脂肪細胞」、「脂肪質細胞」、および「アディポサイト」は、本開示全体を通して互換的に使用され得る。
【0018】
ここで図面を参照すると、特に
図1を参照すると、培養脂肪組織10の概略図が示されている。培養脂肪組織10は、細胞外マトリックス中に脂肪細胞12(またはアディポサイト12)を含み得る。培養脂肪組織10は、規定の三次元(3D)形状に配置され得、マクロスケール(すなわち、ミリメートルスケール以上)のサイズを有し得る。
図1には単純化のために立方体様構造が示されているが、培養脂肪組織10は、実際には任意の好適な3D形状を有してもよいことが理解されるであろう。いくつかの態様では、培養脂肪組織10は、摂取に好適な食品であり得る。他の態様では、培養脂肪組織10は、摂取に好適な食品の成分として組み入れられ得る。以下でさらに説明されるように、培養脂肪組織10は、バルクまたはラージスケールの3D組織の直接培養に付随する物質輸送の制限を回避する方法を使用して生産される。
【0019】
図2に進むと、培養脂肪組織10を生産するための一般的な例示的な方法が示されている。第1のブロック14では、脂肪細胞12の塊(個々の脂肪細胞12、または脂肪細胞12の小クラスター)が、培養培地中で脂肪生成前駆細胞から培養される。例えば、ブロック14は、第1の培養培地中で脂肪生成前駆細胞をコンフルエントまで(または表面上もしくは懸濁液中の所望の被覆率/細胞数まで)増大させること、次いで第2の培養培地中で脂肪生成前駆細胞を脂肪細胞12へと分化させることを含み得る。第1の培養培地は、脂肪生成前駆細胞の増殖を支援する脂肪生成誘導培地であり得、第2の培養培地は、脂質で満たされた多数の脂肪細胞12を提供するための脂質蓄積培地であり得る。代替的態様では、脂肪生成前駆細胞の増殖/増大の両方のため、および脂肪生成前駆細胞の脂肪細胞への分化のために、単一の培養培地が使用され得る。培養時間は、脂質の収量および液滴サイズを制御するために調節され得る。例えば、出願人は、より長い培養時間(約1ヶ月)によってインビボ脂肪質(例えばニワトリ)と同程度の液滴が得られることを見出した。いくつかの態様では、脂肪細胞12は、より効率的なスケールアップのため、その増大および脂質蓄積を改善するために遺伝子組換えされ得る。
【0020】
脂肪細胞12が十分な脂質を蓄積し、所望の量の脂肪細胞12が生成された後、培養を終了し、脂質が豊富な脂肪細胞12をブロック16に従って採取する。いくつかの態様では、ブロック16は、脂肪細胞12を基材から剥離すること、および非細胞液体を脂肪細胞から排液させることを含み得る。
【0021】
次のブロック18では、採取した脂肪細胞12を、所望の3D形状を有する3D鋳型(例えば3Dプリント鋳型)内で凝集させて、3D脂肪組織10を生成することができる。いくつかの態様では、ブロック18は、採取した脂肪細胞12を3D鋳型内でヒドロゲルまたは結合剤中に包埋することを伴い得る。好適なヒドロゲルまたは結合剤には、アルジネート、セルロース、ゼラチン、デンプン、ヒアルロン酸、フィブリン、カラギーナン、グアーガム、イヌリン、コンニャク、オートブラン、ペクチン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、大豆タンパク質、小麦グルテン、ゼインタンパク質、絹フィブロイン、プルラン、セルロース誘導体、およびそれらの組み合わせなどの、食品に安全な化合物が含まれるが、それらに限定されない。いくつかの態様では、ヒドロゲルまたは結合剤は、食品産業において脂肪質代用品として使用される材料であるアルジネートである。例えば、ブロック18は、採取し排液させた脂肪細胞12を、アルジネート溶液と3D鋳型内で指定の体積比にて混合することを含み得る。具体的な一態様では、炭酸カルシウムおよびグルコノデルタ-ラクトン(GDL)粉末をアルジネート溶液に添加することにより、緩徐にゲル化するアルジネート溶液を調製することができ、この緩徐にゲル化するアルジネート溶液を、採取し排液させた脂肪組織と3Dプリント鋳型内で体積比1:1にて合わせることができる(実施例3を参照されたい)。
【0022】
いくつかの局面では、ブロック18は、採取した脂肪細胞12を3D鋳型内で架橋させることを伴い得る。架橋させることは、トランスグルタミナーゼ、チロシナーゼ、ペルオキシダーゼ、およびラッカーゼなどであるがそれらに限定されない、好適なタンパク質-タンパク質架橋酵素を使用して行われ得る。いくつかの局面では、採取した脂肪細胞を架橋させることは、採取した脂肪細胞をトランスグルタミナーゼを使用して酵素的に架橋させることを含む。例えば、採取した脂肪細胞を架橋させることは、トランスグルタミナーゼの溶液を、採取した脂肪細胞と3D鋳型内で指定の体積比にて混合することを伴い得る(実施例3を参照されたい)。ブロック18は、架橋中にヘルパータンパク質を添加することをさらに含み得る。いくつかの態様では、ヘルパータンパク質は、カゼインおよびゼラチンより選択され得る。化学的架橋もまた、酸基とアミン基の間のEDC-NHS反応のように、反応物または触媒が食品に安全である場合に使用され得る。光化学的架橋もまた、光増感剤が食品に安全である場合に利用され得る。
【0023】
あるいは、アルデヒド基で官能化されたポリマー、ゲニピン、フェノール系化合物、およびそれらの組み合わせなどであるがそれらに限定されない、他のタイプの固定化剤、捕捉剤、または架橋剤が、脂肪細胞の凝集に使用され得る。アルデヒド基で官能化された好適なポリマーには、過ヨウ素酸酸化ペクチン、デキストラン、キトサン、アラビアガム、スクロース、ラフィノース、スタキオース、シクロデキストリン、およびデンプンが含まれるが、それらに限定されない。好適なフェノール系化合物には、コーヒー酸、クロロゲン酸、カフタル酸、ケルセチン、ならびにブドウおよびコーヒーなどの植物由来のルチンが含まれるが、それらに限定されない。
【0024】
脂肪細胞12または脂肪組織10には、培養脂肪組織10の感覚特性(例えば、テクスチャ、色、および風味)ならびに/または栄養特質を調節するために様々なステージで補充され得る。例えば、香味料、着色料、テクスチャライザー、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、タンパク質/ペプチド、および脂肪酸などであるがそれらに限定されない添加剤による補充も、本開示によって包含される。いくつかの態様では、脂肪質の栄養状態および健全性の、調節可能な制御が実行され得る。培養脂肪組織の脂肪酸組成は、インビトロ培養中に培養培地へと脂肪酸を補充することなどによる細胞供給戦略を介して調整され得る。遺伝的介入もまた、培養脂肪組織10の栄養状態を増進させるのに役立ち得る。例えば一態様では、脂肪細胞12において、オメガ3デサチュラーゼが発現され得るかまたは親油性栄養素(例えば、ベータカロテン、ビタミンA)を生産する経路が活性化され得る。このことは、ある特定の栄養素は微量栄養素サプリメントよりも食品で摂取した場合に生体利用性が高いことから、消費者にとって有益であり得る。さらに、培養脂肪質のテクスチャは、ヒドロゲル/結合剤(例えばアルジネート)の濃度、クロスリンカーのレベル、および架橋中のヘルパータンパク質(例えば、カゼイン、ゼラチンなど)の包含などの可変要素に基づいて調節可能であり得る。一態様では、培養脂肪細胞12に「マトン」風味を付与するために、培養脂肪細胞12にメチル化分岐脂肪酸が補充され得る。さらに、相対的な細胞外マトリックス生産レベルおよび脂肪質生産レベルは、所望のテクスチャ、味、および/または栄養の効果に応じて最適化され得る。
【0025】
図3は、培養脂肪組織10の大量生産のためのスケーラブルなプロセスを示す。プロセスは、撹拌懸濁タンクバイオリアクタ22(上部)または中空糸膜26を有する中空糸バイオリアクタ24(下部)などのバイオリアクタ20内で行われ得る。回転壁容器バイオリアクタ(RWVB)、固定床バイオリアクタ、および充填床バイオリアクタなどであるがそれらに限定されない、当業者には明らかである他のタイプのバイオリアクタも使用することができ、本開示の範囲内である。
図6を参照すると、RWVBを使用する1つの例示的な配置構成が図示されている。バイオリアクタ20内での脂肪組織10の生産は、バイオリアクタ20内の第1の培養培地30(脂肪生成誘導培地)に脂肪生成前駆細胞32を播種28することを伴い得る。次いで、脂肪生成前駆細胞32は、バイオリアクタ20内でコンフルエントまで(または表面上もしくは懸濁液中の所望の被覆率/細胞数まで)増殖34し得る。いくつかの態様では、脂肪生成前駆細胞32は、増殖するにつれて小凝集体またはスフェロイド36を形成し得る(
図3、上部を参照されたい)。スフェロイド36は、単一の脂肪生成前駆細胞32へと解離38して、さらに増殖34することが可能となり得る(
図3、上部を参照されたい)。中空糸リアクタ24では、脂肪生成前駆細胞32は、中空糸膜26の表面上で増殖し得る(
図4、下部を参照されたい)。この場合、脂肪生成前駆細胞32を中空糸膜26から剥離40することができ、剥離された脂肪生成前駆細胞32は、さらなる増殖34のために培地30に再播種するために使用され得る。
【0026】
第1の培養培地30が第2の培養培地42(脂質蓄積培地)に変更されるとともに、細胞は脂質を蓄積して脂肪細胞12へと分化44し得る。脂肪細胞12は、別々に増大し得るかまたは小クラスター46で増大し得る(
図3、上部を参照されたい)。中空糸バイオリアクタ24では、脂肪細胞12は中空糸膜26の表面上で発達し得る。いくつかの態様では、増殖34と分化44の両方に単一の培養培地が使用され得る。脂肪細胞12が増大し、十分な脂質を蓄積した後、脂肪細胞12は採取48され得る。中空糸バイオリアクタ24では、採取することは、中空糸膜26から脂肪細胞12を剥離することを伴い得る。中空糸膜26は、場合によっては食用であってもよく、それにより剥離する必要がなくなる。次いで、採取した脂肪細胞12を3D鋳型内で凝集50させ、培養脂肪組織10を提供することができる。上で説明されたように、脂肪細胞12を結合および凝集50させるための好適な方法には、架橋させる(例えば、トランスグルタミナーゼで酵素的に架橋させる)こと、およびアルジネートなどのヒドロゲル中に脂肪細胞12を包埋することが含まれる。
【0027】
本開示の培養プロセスは、二次元(2D)培養戦略と適合し得る。いくつかの態様では、脂肪細胞12は、培養プレートなどの2D基材上にて薄層で培養され得、次いで上記の手順に従って3D脂肪組織10へと凝集され得る。例えば、脂肪生成前駆細胞32は、2D基材上でコンフルエントまで(または表面上もしくは懸濁液中の所望の被覆率/細胞数まで)増大されて脂肪細胞12へと分化され得る。2D基材から脂肪細胞12を採取または収集し、続いて採取した脂肪細胞12を凝集させることにより、培養脂肪組織10を提供することができる。いくつかの態様では、2D基材から脂肪細胞12を剥離する必要がないような2D基材は、食用であり得かつ最終食品に組み入れられ得る。
【0028】
培養脂肪組織10を大量生産するための連続組立てライン様プロセスでは、2D基材はコンベアベルト52であり得る(
図4を参照されたい)。連続生産プロセスは、その上に培養培地を有するコンベアベルト52上へと、脂肪生成前駆細胞32を播種54することを伴い得る。次いで、脂肪生成前駆細胞32は、コンベアベルト52上でコンフルエントまで(または表面上もしくは懸濁液中の所望の被覆率/細胞数まで)増殖56し得る。培養培地を脂質蓄積培地に変更することにより、脂肪生成前駆細胞32が脂質を蓄積して脂肪細胞12へと分化58することが可能になり得る。あるいは、増殖56と分化58の両方に単一の培養培地が使用され得る。脂肪細胞12は、コンベアベルト52から剥離されることにより採取60され、次いで上記の手順に従って凝集62され、培養脂肪組織10が提供され得る。
【0029】
本明細書において開示される技術は、培養脂肪質の生成に対する新規かつスケーラブルなアプローチを提供する。本開示は、ラージスケールの細胞増殖およびスケールアップ技術を活用して、必要量のインビトロ脂肪細胞を生成し、その後マクロスケールで細胞を固形3D構造物へと凝集させるかまたは充填する。脂肪細胞は、培養培地へのアクセスが容易な状態にて薄層で培養(2D培養)されるかまたはバイオリアクタ内で培養され、続いてアディポサイトが十分に成熟した後にマクロスケールの3D組織へと凝集される。インビボでの脂肪組織が主に、低密度の細胞外マトリックスを伴う、脂質で満たされたアディポサイトの高密度の凝集物であることから、アディポサイトまたはアディポサイトクラスターの凝集により、天然脂肪質組織が感覚的観点から再現される。さらに、脂肪組織生産方法と2D培養戦略との適合性により、コンベアベルト組立てラインアプローチによる連続生産プロセスが可能になる。
【0030】
さらに、本開示の方法は、大型3D組織の直接培養または操作に付随する物質輸送の制限を回避するような形で、バルクの培養脂肪組織を生産する。細胞培養終了時の凝集により、血管新生または精巧な組織穿孔システム(tissue perforation system)を介して脂肪細胞に栄養素を送達する必要性が排除される。これは、食品用途の場合、培養脂肪細胞は最終的な食用組織へと形成されると生存し続ける必要がないためである。このことは、屠殺後に筋細胞および脂肪質細胞が徐々に生存可能ではなくなる、従来の畜産における食肉生産と同様である。対照的に、医療用途の場合、3D組織内の細胞は、体内への移植またはインビトロ組織モデルにおける試験に使用するために生存し続けることが期待され得る。したがって、本開示の脂肪組織生産方法は、細胞増大中に栄養素を分配するために複雑な灌流および混合システムに依存する他の方法よりも低コストである。
【0031】
本開示の方法によれば、アディポサイトおよびプレアディポサイトの単培養は、支持細胞タイプを必要とせずに大型の脂肪質液滴を生産するのに十分であり得る。本開示において概説されるタイプのアディポサイトの培養には標準的な細胞培養条件で十分であり、所望のアディポサイトの増大および発達を達成するために組織培養プラスチック上に特別にコーティングする必要はなかった。さらに、様々な家畜種のプレアディポサイトおよびアディポサイトを本開示に従って無血清培養培地中で増大させることができ、それによりインビトロ脂肪質培養における主要な障害を除去することができる。これらの利点はさらに、生産コストを低減させる助けとなる。共培養もまた、脂肪質製品の品質の向上またはテクスチャおよび組成の改変などのために培養中に線維芽細胞または筋細胞を使用するなど、脂肪質の効果を高めるために検討することができる。
【0032】
出願人はまた、培養アディポサイトの大型亜集団が組織培養プレートに強く接着し浮遊せず、そのためアディポサイトが脂肪性になるにつれ浮力が増加することに起因したインビトロでの接着アディポサイトの剥がれの問題が避けられることも観察した。本明細書において開示される2D培養システムは、接着細胞集団を自動的に選別する。
【実施例】
【0033】
実施例1:3T3-L1の脂肪生成分化のタイムライン
図5は、3T3-L1脂肪生成細胞の分化のタイムラインを示す。0日目(d0)、2日目(d2)、15日目(d15)、および30日目(d30)がタイムラインに表示されている。コンフルエントなプレアディポサイトを最初の2日間脂肪生成誘導培地で増大させ、次いで培養脂肪質組織形成のために15日目に採取するまで脂質蓄積培地に切り替えた(実施例2を参照されたい)。追加の試料を脂質蓄積培地で30日間増大させ、長期間の培養にわたる脂質蓄積を分析した。
【0034】
実施例2:脂質が豊富なアディポサイトの採取および3D培養脂肪質構造物の形成
脂質蓄積後、セルスクレーパーを使用して脂質で満たされたアディオポサイト(adiopocytes)を剥離した。次いで、0.22マイクロメートルの真空フィルタを使用してアディポサイトから非細胞液体を排液した。剥離および排液後(剥離前に細胞から液体を排液することが可能であり、その結果剥離すると未加工のアディポサイトスラリーが得られることに、留意すべきである)に、次いで、インビトロアディポサイトをトランスグルタミナーゼまたはアルジネートと合わせ、3Dプリント鋳型内で個別のマクロスケール組織へと形成させた。最後に、3D培養脂肪質構造物を、圧縮強度について機械的に試験し、脂質について蛍光染色し、揮発性化合物について分析した。
【0035】
実施例3:アルジネートまたはトランスグルタミナーゼを使用して3D培養脂肪質を生成するための方法
アルジネートでの凝集。緩徐にゲル化するアルジネート溶液を、炭酸カルシウムおよびグルコノデルタ-ラクトン(GDL)粉末を1.6%または3.2%アルジネート溶液に添加することにより調製してから、採取し排液させたインビトロ脂肪組織と3Dプリント鋳型内で体積比1:1にて合わせた。
【0036】
トランスグルタミナーゼでの凝集。トランスグルタミナーゼの15%溶液を、排液させた脂肪組織と3Dプリント鋳型内で体積比2:8にて混合することにより培養脂肪質を生産した。
【国際調査報告】