(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】アナンダミドシクロデキストリン包接錯体ビヒクル
(51)【国際特許分類】
A61K 31/16 20060101AFI20240725BHJP
A61K 31/198 20060101ALI20240725BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240725BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240725BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240725BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20240725BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240725BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240725BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240725BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240725BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240725BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240725BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240725BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240725BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240725BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240725BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240725BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20240725BHJP
A61P 15/10 20060101ALI20240725BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240725BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20240725BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20240725BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240725BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240725BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
A61K31/16
A61K31/198
A61P43/00 111
A61P9/00
A61P43/00 123
A61P9/10 101
A61P9/12
A61P15/00
A61P21/00
A61P1/04
A61P3/10
A61P11/06
A61P11/00
A61P29/00
A61P17/00
A61P37/06
A61P25/28
A61P25/00
A61P9/10
A61P25/22
A61P15/10
A61K9/48
A61K47/40
A61K47/42
A61P37/08
A61K47/38
A61K47/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506685
(86)(22)【出願日】2022-07-15
(85)【翻訳文提出日】2024-03-27
(86)【国際出願番号】 IB2022056550
(87)【国際公開番号】W WO2023012552
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518277066
【氏名又は名称】クザップ リサーチ アンド デベロップメント エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】CZAP RESEARCH AND DEVELOPMENT, LLC
【住所又は居所原語表記】1370 Trancas Street #350, Napa, California 94558, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】クザップ、アル
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC01
4C076CC04
4C076CC07
4C076CC09
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4C076CC15
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4C076CC18
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4C206MA05
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4C206ZA02
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4C206ZA42
4C206ZA45
4C206ZA59
4C206ZA66
4C206ZA81
4C206ZA89
4C206ZA94
4C206ZB08
4C206ZB11
4C206ZB13
4C206ZC35
4C206ZC41
(57)【要約】
本発明の経口用シクロデキストリン包接錯体製剤は、アナンダミドシクロデキストリン包接錯体と、シクロデキストリンを消化できるシクロデキストリン分解活性を有する酵素とを含み、製剤の標的組織への送達時に酵素が活性化され、アナンダミドがシクロデキストリンの空洞から放出される。代替態様では、シクロデキストリン包接錯体製剤は時限放出製剤であり、一酸化窒素欠乏症、又は、哺乳動物において内因性一酸化窒素レベルを増加させることによって治療若しくは予防できる疾患を治療又は予防する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一酸化窒素欠乏症若しくは哺乳動物において内因性一酸化窒素レベルを増加させることによって治療若しくは予防できる疾患を治療若しくは予防する、又は、哺乳動物において内因性一酸化窒素レベルを増加させる、又は、哺乳動物の心血管機能を向上させる方法であって、
前記方法は、前記哺乳動物に有効量のシクロデキストリン(CD)包接錯体製剤を経口投与することを含み、
前記シクロデキストリン包接錯体製剤は、前記CD内のゲスト分子としてアナンダミド又はアナンダミド類似体と、共配合されたシクロデキストリン分解酵素とを含む、方法。
【請求項2】
有効量の一酸化窒素合成酵素基質を投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記一酸化窒素合成酵素基質はL-アルギニンである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
有効量のシトルリン又はシトルリン類似体を投与することをさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記シトルリン類似体は、D,L-シトルリン、L-シトルリン、L-シトルリンモノアセテート、L-シトルリン塩酸塩、L-シトルリンメチルエステル、L-シトルリンエチルエステル、L-シトルリン-n-ヘキシルエステル、L-シトルリン(ベンゾイルメチル)エステル、α-N-ベンゾイル-L-シトルリンメチルエステル、N-Boc-L-シトルリン、又は、N1-2,4-ジニトロフェニル-D,L-シトルリンである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記シトルリン類似体は、式(II)の構造を有し、
【化1】
式中、
R
1は、水素、炭素数1~10のアルキル、炭素数1~10のアルケニル、アリール、-CH
2)
1-3(C=O)アリール、ω-ヒドロキシアルキル、又は、ω-メトキシアルキルであり、
R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル、アリール、アセチル、ベンゾイル、及び、tert-ブトキシカルボニルからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記アナンダミド類似体は、式(I)の構造を有し、
【化2】
式中、
xは1~6の整数であり、
yは1~6の整数であり、
zは1~6の整数であり、
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、H、炭素数1~6のアルキル、及び、(CH
2)
w-R
3からなる群から選択され、wは0~6の整数であり、
R
3は、CH
3、OH、SH、F、Cl、Br、I、C≡CH、C≡N、炭素数3~7の炭素環、並びに3~7個の炭素とN、O及びSから選択される少なくとも1個のヘテロ原子とを有する複素環からなる群から選択され、
R
1及び/又はR
2は、N’又はO’と結合して原子数3~7の複素環を形成してもよい、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記アナンダミド類似体は、CB
1受容体の部分作動薬、CB
2受容体の弱部分作動薬、バニロイド受容体VR1の部分作動薬、及び/又は、GPR
55受容体の作動薬リガンドである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記アナンダミド類似体は、CB
2結合よりもCB
1結合に対して優先的な親和性を有する、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記アナンダミド類似体のCB
1に対するK
iは100nM未満であり、CB
2に対するK
iは1000nMを超える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記哺乳動物は、ヒトであり、
前記疾患は、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、高血圧、子癇前症、女性の不妊症、頸部ジストニア、幽門狭窄、糖尿病、喘息、新生児呼吸窮迫症候群、成人呼吸窮迫症候群、急性炎症、SLE-ループス、アナフィラキシー反応、同種移植片拒絶反応、アルツハイマー病、脳卒中、不安、又は、勃起不全である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記一酸化窒素欠乏症は、唾液亜硝酸塩の測定されたレベルが100μmol/L亜硝酸塩未満、200μmol/L亜硝酸塩未満、250μmol/L亜硝酸塩未満、300μmol/L亜硝酸塩未満若しくは350μmol/L亜硝酸塩未満である、又は、唾液亜硝酸塩レベルが0~25μmol/L亜硝酸塩若しくは25~100μmol/L亜硝酸塩であることを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記CD包接錯体製剤は、時限放出剤(time release agent)をさらに含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記時限放出剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記シクロデキストリン分解酵素は、アミラーゼ、シクロデキストリナーゼ、微生物シクロデキストリナーゼ、マルトース生成アミラーゼ、又は、ネオプルラナーゼである、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記アミラーゼは、哺乳動物の唾液アミラーゼ、哺乳動物の膵臓アミラーゼ、又は、微生物のアミラーゼである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項1~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記薬学的に許容される担体は、ラウリン酸カルシウムである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記酵素は、前記製剤の標的組織への送達時にシクロデキストリン分解活性が活性化されて前記シクロデキストリンからゲスト分子を放出するように配合され、
任意選択的で、前記CD包接錯体製剤は経口投与され、前記標的組織は、哺乳動物の胃腸(GI)管、任意選択的でヒトのGI管である、請求項1~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記シクロデキストリンは、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン又はγ-シクロデキストリンを含む、請求項1~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
前記シクロデキストリンは、γ-シクロデキストリンである、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
前記シクロデキストリンは、混合メチル化/エチル化シクロデキストリン、又は、疎水性アルキル化シクロデキストリンである、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記製剤は、1又は複数のさらなるCDゲスト分子をさらに含む、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
前記シクロデキストリンの前記アナンダミド又はアナンダミド類似体に対する比率は、5:1~1:5である、請求項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記製剤は、前記アナンダミド又はアナンダミド類似体が持続的に放出されるように製剤化される、請求項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記疾患は、勃起不全である、請求項1~25のいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
シクロデキストリン(CD)包接錯体製剤であって、
前記CD内のゲスト分子としてアナンダミド又はアナンダミド類似体と、共配合されたシクロデキストリン分解酵素とを含む、製剤。
【請求項28】
有効量の一酸化窒素合成酵素基質をさらに含む、請求項27に記載のCD包接錯体製剤。
【請求項29】
前記一酸化窒素合成酵素基質はL-アルギニンである、請求項28に記載のCD包接錯体製剤。
【請求項30】
有効量のシトルリン又はシトルリン類似体をさらに含む、請求項27~29のいずれか1項に記載のCD包接錯体製剤。
【請求項31】
前記シトルリン類似体は、D,L-シトルリン、L-シトルリン、L-シトルリンモノアセテート、L-シトルリン塩酸塩、L-シトルリンメチルエステル、L-シトルリンエチルエステル、L-シトルリン-n-ヘキシルエステル、L-シトルリン(ベンゾイルメチル)エステル、α-N-ベンゾイル-L-シトルリンメチルエステル、N-Boc-L-シトルリン、又は、N1-2,4-ジニトロフェニル-D,L-シトルリンである、請求項30に記載のCD包接錯体製剤。
【請求項32】
前記シトルリン類似体は、式(II)の構造を有し、
【化3】
式中、
R
1は、水素、炭素数1~10のアルキル、炭素数1~10のアルケニル、アリール、-CH
2)
1-3(C=O)アリール、ω-ヒドロキシアルキル、又は、ω-メトキシアルキルであり、
R
2及びR
3は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル、アリール、アセチル、ベンゾイル、及び、tert-ブトキシカルボニルからなる群から選択される、請求項30に記載のCD包接錯体製剤。
【請求項33】
前記アナンダミド類似体は、式(I)の構造を有し、
【化4】
式中、
xは1~6の整数であり、
yは1~6の整数であり、
zは1~6の整数であり、
R
1及びR
2は、それぞれ独立して、H、炭素数1~6のアルキル、及び、(CH
2)
w-R
3からなる群から選択され、wは0~6の整数であり、
R
3は、CH
3、OH、SH、F、Cl、Br、I、C≡CH、C≡N、炭素数3~7の炭素環、並びに3~7個の炭素とN、O及びSから選択される少なくとも1個のヘテロ原子とを有する複素環からなる群から選択され、
R
1及び/又はR
2は、N’又はO’と結合して原子数3~7の複素環を形成してもよい、請求項27~32のいずれか1項に記載のCD包接錯体製剤。
【請求項34】
前記アナンダミド類似体は、CB
1受容体の部分作動薬、CB
2受容体の弱部分作動薬、バニロイド受容体VR1の部分作動薬、及び/又は、GPR
55受容体の作動薬リガンドである、請求項33に記載のCD包接錯体製剤。
【請求項35】
前記アナンダミド類似体は、CB
2結合よりもCB
1結合に対して優先的な親和性を有する、請求項32又は33に記載のCD包接錯体製剤。
【請求項36】
前記アナンダミド類似体のCB
1に対するK
iは100nM未満であり、CB
2に対するK
iは1000nMを超える、請求項35に記載のCD包接錯体製剤。
【請求項37】
哺乳動物における内因性一酸化窒素レベルの増加における使用、前記哺乳動物における心血管機能の向上における使用、又は、一酸化窒素欠乏症若しくは哺乳動物において内因性一酸化窒素レベルを増加させることによって治療若しくは予防できる疾患の治療若しくは予防のための、若しくは、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、高血圧、子癇前症、女性の不妊症、頸部ジストニア、幽門狭窄、糖尿病、喘息、新生児呼吸窮迫症候群、成人呼吸窮迫症候群、急性炎症、SLE-ループス、アナフィラキシー反応、同種移植片拒絶反応、アルツハイマー病、脳卒中、不安、若しくは、勃起不全であるヒトの疾患を治療するための使用のための請求項27~36のいずれか1項に記載のCD包接錯体製剤。
【請求項38】
唾液亜硝酸塩の測定されたレベルが100μmol/L亜硝酸塩未満、200μmol/L亜硝酸塩未満、250μmol/L亜硝酸塩未満、300μmol/L亜硝酸塩未満若しくは350μmol/L亜硝酸塩未満である、又は、唾液亜硝酸塩レベルが0~25μmol/L亜硝酸塩未満若しくは25~100μmol/L亜硝酸塩であることを特徴とする一酸化窒素欠乏症の治療における使用のための請求項27~37のいずれか1項記載のCD包接錯体製剤。
【請求項39】
時限放出剤をさらに含む、請求項27~38のいずれか1項に記載のCD包接錯体製剤。
【請求項40】
前記時限放出剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項39に記載のCD包接錯体製剤。
【請求項41】
前記シクロデキストリン分解酵素は、アミラーゼ、シクロデキストリナーゼ、微生物シクロデキストリナーゼ、マルトース生成アミラーゼ、又は、ネオプルラナーゼである、請求項27~40のいずれか1項に記載のCD包接錯体製剤。
【請求項42】
前記アミラーゼは、哺乳動物の唾液アミラーゼ、哺乳動物の膵臓アミラーゼ、又は、微生物のアミラーゼである、請求項41に記載のCD包接錯体製剤。
【請求項43】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項27~42のいずれか1項に記載のCD包接錯体製剤。
【請求項44】
前記薬学的に許容される担体は、ラウリン酸カルシウムである、請求項43に記載のCD包接錯体製剤。
【請求項45】
前記酵素は、前記製剤の標的組織への送達時にシクロデキストリン分解活性が活性化されて前記シクロデキストリンからゲスト分子を放出するように配合され、
任意選択的で、前記CD包接錯体製剤は経口使用を目的として製剤化され、前記標的組織は、哺乳動物の胃腸(GI)管、任意選択的でヒトGI管である、請求項27~44のいずれか1項に記載のCD包接錯体製剤。
【請求項46】
前記シクロデキストリンは、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン又はγ-シクロデキストリンを含む、請求項27~45のいずれか1項に記載のCD包接錯体製剤。
【請求項47】
前記シクロデキストリンは、γ-シクロデキストリンである、請求項27~46のいずれか1項に記載のCD包接錯体製剤。
【請求項48】
前記シクロデキストリンは、混合メチル化/エチル化シクロデキストリン、又は、疎水性アルキル化シクロデキストリンである、請求項27~47のいずれか1項に記載のCD包接錯体製剤。
【請求項49】
前記製剤は、1又は複数のさらなるCDゲスト分子をさらに含む、請求項27~48のいずれか1項に記載のCD包接錯体製剤。
【請求項50】
前記シクロデキストリンの前記アナンダミド又はアナンダミド類似体に対する比率は、5:1~1:5である、請求項27~49のいずれか1項に記載のCD包接錯体製剤。
【請求項51】
前記製剤は、前記アナンダミド又はアナンダミド類似体が持続的に放出されるように製剤化される、請求項27~50のいずれか1項に記載のCD包接錯体製剤。
【請求項52】
前記哺乳動物はヒトである、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法、又は、請求項27~51のいずれか1項に記載のCD包接錯体製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロデキストリン分解活性を有する酵素を含む製剤における、脂質性カンナビノイド受容体作用薬をシクロデキストリン内の内包物として送達するための生化学的構造物の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
シクロデキストリンは非還元性環状グルコースオリゴ糖であり、多くの場合、シクロマルトデキストリングルカノトランスフェラーゼ(E.C.2.4.1.19;CGTase)が触媒するデンプン分解の産物である。シクロデキストリンは様々な構造を有することができ(Saenger et al., Chem. Rev. 98 (1998) 1787-1802参照)、それには、α-1,4グリコシド結合により環内に結合された6、7又は8個のD-グルコピラノシル残基を持つ3つの一般的なシクロデキストリン(それぞれ、α-、β-及びγ-シクロデキストリン)が含まれる。シクロデキストリンの円錐台形によって空洞又は内腔が形成され、空洞の直径はグルコース単位の数により異なる。選択されたシクロデキストリン(CD)構造の大きさを表1に示す。シクロマルトノナオース(δ-CD)及びシクロマルトデカオース(ε-CD)等のより大きなシクロデキストリンも可能であり、また、シクロデキストリンをベースとした種々の超分子構造も可能である(Zhang and Ma, Adv Drug Deliv Rev. 2013 Aug;65(9):1215-33参照)。
【0003】
【0004】
シクロデキストリンは一般に両親媒性であり、内腔の広い方の縁は2-OH基及び3-OH基を示し、狭い方の縁は6-OH基を示す。したがって、これらの親水性ヒドロキシル基は内腔の外側にあり、内面は一般に疎水性であり、アノマー酸素原子とC3-H及びC5-H水素原子で覆われている。水溶液中では、この疎水性の内腔は水分子、例えば約3つの(α-CD)、7つの(β-CD)又は9つの(γ-CD)の、保持力は低いがエントロピーが低いため比較的容易に置換可能な水分子を含み得る。したがって、さもなければ親水性となるシクロデキストリンは、1つ又は複数の適切なサイズの分子をCDの内腔内に又は部分的に内腔内に結合保持し、シクロデキストリン包接体又は錯体を形成し得る。例えば、親油性薬剤等の薬剤を含む非極性脂肪族及び芳香族化合物は結合して、通常は疎水性の化合物の水溶性を高め、又は、特定の食品添加物の臭気若しくは味等の望ましくない特性を最小限に抑え得る。この理由により、シクロデキストリン内包物は、製薬、食品及び化粧品の分野で広く使用されている(Hedges, Chem. Rev. 98 (1998) 2035-2044参照)。シクロデキストリンは、例えば、医療用化合物と疎水性シクロデキストリン誘導体との包接錯体等のための様々な持続放出性薬物調製物に使用されている(米国特許第4869904号)。
【0005】
シクロデキストリンは、様々な方法で化学修飾することができる。例えば、シクロデキストリンの包接特異性、物理的及び化学的特性を変えることができる。CDのヒドロキシル基は、例えば、誘導体化されてもよい。例えば、2つの修飾CD、すなわち、β-CDのポリアニオン性可変置換スルホブチルエーテルであるSBE-β-CD又はCaptisol(登録商標)、及び、ヤンセン社により商業的に開発された修飾CDであるHP-β-CDが多くの医薬品で使用されている。さらなるCD誘導体としては、γ-CDの6-ヒドロキシ基がカルボキシチオ酢酸エーテル結合で置換されたスガマデクス又はOrg-25969、及び、ヒドロキシブテニル-β-CDが挙げられる。シクロデキストリンの代替形態としては、2,6-ジ-O-メチル-β-CD(DIMEB)、2-ヒドロキシルプロピル-β-シクロデキストリン(HP-β-CD)、ランダムメチル化-β-シクロデキストリン(RAMEB)、スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン(SBE-β-CD)、及び、スルホブチルエーテル-γ-シクロデキストリン(SBEγCD)、スルホブチル化β-シクロデキストリンナトリウム塩、スルホブチル化β-シクロデキストリンナトリウム塩、(2-ヒドロキシプロピル)-α-シクロデキストリン、(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン、(2-ヒドロキシプロピル)-γ-シクロデキストリン、DIMEB-50ヘプタキス(2,6-ジ-O-メチル)-β-シクロデキストリン、TRIMEBヘプタキス(2,3,6-トリ-O-メチル)-β-シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、オクタキス(6-デオキシ-6-ヨード)-γ-シクロデキストリン、及び,オクタキス(6-デオキシ-6-ブロモ)-γ-シクロデキストリンが挙げられる。このようなCDは、好ましい薬理学的及び毒物学的プロファイルを有するように開発されているが、投与に続き、特に非経口投与後に、併用薬剤を含む薬剤の薬物動態特性が残留CDにより乱される可能性がある(Stella and He, Toxicol Pathol January 2008 vol. 36 no. 1 30-42参照)。
【0006】
シクロデキストリンは、様々な形で酵素消化の影響を受けやすい。例えば、γ-CDはα-アミラーゼによって比較的容易に加水分解される一方、α-シクロデキストリンは加水分解されにくい。CDベースの治療薬は一般に、CDを消化する内因性アミラーゼの活性に依存する。しかし、アミラーゼ活性は患者ごとに大きなばらつきがある。例えば、膵臓機能不全、嚢胞性線維症、セリアック病又はクローン病の患者は、正常な量のアミラーゼが不足している可能性がある。同様に、患者、特に高齢患者は、胃酸の生成が不足し、そのために、膵アミラーゼの放出を適切に引き起こすのに必要となる低pHの状態を十二指腸内に作り出すことができない場合がある。同様の影響は、制酸薬、ヒスタミン2ブロッカー、プロトンポンプ阻害薬又は代替の酸ブロッカーの一般的な使用の増加からも生じる可能性がある。
【0007】
様々な微生物シクロデキストリン消化酵素が同定されている。CD分解酵素としては、シクロマルトデキストリナーゼ(又はシクロデキストリナーゼ、又はCDase、EC 3.2.1.54)、マルトース生成アミラーゼ(EC 3.2.1.133)、ネオプルラナーゼ(EC 3.2.1.135)が挙げられる。これらは、CDに対する、場合によってはプルラン及びデンプン等のさらなる基質に対する加水分解能を有することが報告されている。シクロデキストリナーゼ(CDase)は、CDの加水分解を触媒してα-1,4-結合の直鎖状オリゴ糖を形成し、それにより、CD包接錯体から物質を放出することができる。Bacillus macerans由来のCDaseが1968年に報告され、それ以来、バチルス属由来の酵素、サーモアナエロバクター・エタノリカス株39E、フラボバクテリウム属、及び、クレブシエラ・オキシトカ株M5a1等、多くの細菌由来のCDaseの特性が明らかになった。アーケオグロブス・フルギドゥス、サーモコッカス属B1001、サーモコッカス属CL1、テルモフィルム・ペンデンス、及び、ピロコッカス・フリオサス由来の古細菌CDaseの特性が明らかになった。フラボバクテリウム属由来のCDaseの構造の特性が明らかになった(Sun et al., Archaea, Volume 2015 (2015), Article ID 397924参照。同記事は、サーモコッカス・コダカラエンシスKOD1由来のシクロデキストリナーゼをコードする遺伝子の同定を報告している)。
【0008】
アナンダミドは、脂質性カンナビノイド受容体リガンドであり、エンドカンナビノイド((5Z,8Z,11Z,14Z)-N-(2-ヒドロキシエチル)イコサ-5,8,11,14-テトラエンアミド、N-アラキドノイルエタノールアミン、又は、アラキドノイルエタノールアミドとしても知られる)として同定された最初の化合物である。シクロデキストリン包接錯体中のアナンダミド類似体は、眼内圧亢進症の治療に有用であるとの記載がある(国際出願公開第1996/001558A1号)。アナンダミドは、CB1受容体の部分作用薬であり、CB2受容体の弱部分作用薬であり、バニロイド受容体VR1(一過性受容体電位カチオンチャネルサブファミリーVメンバー1、又は、TrpV1としても知られる)の部分作用薬であり、及び、GPR55受容体の作用薬リガンドである(Reggio PH. Endocannabinoid binding to the cannabinoid receptors: what is known and what remains unknown. Curr Med Chem. 2010;17(14):1468-1486; Roberts LA, Christie MJ, Connor M. Anandamide is a partial agonist at native vanilloid receptors in acutely isolated mouse trigeminal sensory neurons. Br J Pharmacol. 2002 Oct;137(4):421-8)。CB1及びCB2受容体に対するアナンダミド及びその類似体の結合親和性が報告され、アナンダミドがCB1結合に対して優先的な親和性を有することが証明されており、例えば、CB1に対するKiは100nM未満であり、CB2に対するKiは1000nMKを超える(Lin, S., Khanolkar, A. D., Fan, P., Goutopoulos, A., Qin, C., Papahadjis, D., & Makriyannis, A. (1998). Novel Analogues of Arachidonylethanolamide (Anandamide): Affinities for the CB1 and CB2 Cannabinoid Receptors and Metabolic Stability. Journal of Medicinal Chemistry, 41(27), 5353-5361)。
【0009】
一酸化窒素フリーラジカルは、非常に広範囲の生理学的シグナル伝達機能に関与しており、エンドカンナビノイド系と一酸化窒素作動性シグナル伝達との間に複雑な関係があることがわかっている(Christopher Lipina, Harinder S. Hundal, The endocannabinoid system: ‘NO’ longer anonymous in the control of nitrergic signalling?, Journal of Molecular Cell Biology, Volume 9, Issue 2, April 2017, Pages 91-103)。一酸化窒素は、L-アルギニンをL-シトルリン及び一酸化窒素に変換する一酸化窒素合成酵素ファミリーによって生理学的に合成され、次にL-シトルリンは再循環されてL-アルギニンを供給する。呼気中のNO濃度分率(FENO)測定は、気道の炎症を測定する定量的で非侵襲的な方法として使用されている。例えば亜硝酸塩を含む唾液一酸化窒素検査対象物を一酸化窒素の前駆体及びバイオマーカーとして測定することにより体液中のNOを測定し、唾液一酸化窒素検査対象物の濃度範囲を亜硝酸塩25~>400umol/Lで検出可能(例えば、視覚的に識別可能な比色サブ範囲を使用:亜硝酸塩0~25,25~100、100~200、200~350、及び、400umol/L超)である方法及び装置が記載されている(米国特許第9759716号)。体液中のNO濃度は、生理学的アナンダミドレベルの指標として有用であることが示唆されている(米国特許出願公開第20190265258号)。比較的広い範囲の血管周囲NO濃度が対照条件下で報告されており、その値は例えば、およそ200~1,000nMの範囲である(Chen K, Pittman RN, Popel AS. Nitric oxide in the vasculature: where does it come from and where does it go? A quantitative perspective. Antioxid Redox Signal. 2008;10(7):1185-1198. doi:10.1089/ars.2007.1959)。
【0010】
シトルリンは、NO欠乏症に関連する様々な症状の治療に有用であるとの記載がある(米国特許出願公開第20010056068号)。同様に、L-アルギニン及び他の一酸化窒素供与体は、NOシグナル伝達が関与する症状の治療に有用であるとの記載がある(欧州特許第0441119A2号、米国特許第5595970号及び米国特許第5508045号)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第4869904号
【特許文献2】国際出願公開第1996/001558A1号
【特許文献3】米国特許第9759716号
【特許文献4】米国特許出願公開第20190265258号
【特許文献5】米国特許出願公開第20010056068号
【特許文献6】欧州特許第0441119A2号
【特許文献7】米国特許第5595970号
【特許文献8】米国特許第5508045号
【特許文献9】米国特許第4538920号
【特許文献10】米国特許第8100295号
【特許文献11】米国特許第8308340号
【特許文献12】米国特許第8875947号
【特許文献13】米国特許第8499976号
【特許文献14】国際出願公開第2007041266号
【特許文献15】国際出願公開第2000021842号
【特許文献16】米国特許出願公開第20090029020号
【特許文献17】米国特許出願公開第20090214446号
【特許文献18】米国特許第5070081号
【特許文献19】米国特許第5552378号
【特許文献20】米国特許第5674854号
【特許文献21】米国特許第8658692号
【特許文献22】米国特許出願公開第20140094433号
【特許文献23】米国特許出願公開第20130022652号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Chaudhary & Patel, IJPSR, 2013, Vol. 4(1): 68-76
【非特許文献2】Carneiro et al., 2019, Int. J. Mol. Sci. 2019, 20, 642
【非特許文献3】Sharma et al., Pharm Dev Technol. 2013 May-Jun;18(3):560-9
【非特許文献4】”Remington’s Pharmaceutical Sciences” (20th edition), ed. A. Gennaro, 2000, Mack Publishing Company, Easton, PA
【発明の開示】
【0013】
アナンダミド又はアナンダミド類似体をゲスト分子とするシクロデキストリン包接錯体送達ビヒクルが提供される。これらの製剤は、内因性一酸化窒素レベルを増加させることにおける使用のために、したがって、内因性NOレベルを増加させることが治療的又は予防的ベネフィットを有する症状、例えば、NO欠乏に関連する症状、不安を特徴とする症状又は勃起不全の治療のために提供される。製剤は、例えば、被験体の測定可能なNOレベルを増加させるために、又は、雄性被験体に勃起効果を提供するために使用し得る。いくつかの製剤では、例えば、持続的なNOレベルを達成するために、これらの効果が持続されてもよい。アナンダミド及びアナンダミド類似体に加えて、製剤は、シトルリン及び/又はアルギニンを含むNO発生剤等のさらなる活性剤を、任意選択で包接錯体ゲスト分子の形態で含んでもよい。
【0014】
シクロデキストリン包接錯体は、生物学的に許容される担体を備えてもよく、それにより、ゲスト分子は当該担体内に包接され、シクロデキストリンにより安定的に保持される。ビヒクルはまた、ゲスト分子を保持するシクロデキストリンを消化できるシクロデキストリン分解活性を有する酵素を含有してもよい。酵素は、ビヒクルの標的への送達時にシクロデキストリン分解活性が活性化され、ゲスト分子がシクロデキストリンの空洞から放出されるように配合されてもよい。
【0015】
送達ビヒクルの代替態様では、酵素をシクロデキストリン包接錯体と共配合してもよく、又は、酵素をシクロデキストリン包接錯体と共に送達ビヒクル中に含めてもよい。酵素をシクロデキストリン包接錯体と共に送達ビヒクル中に含める場合、送達ビヒクルはさらに、当該酵素の生化学的に許容される担体を含んでもよい。
【0016】
酵素は、例えば、アミラーゼ、シクロデキストリナーゼ、マルトース生成アミラーゼ又はネオプルラナーゼであってもよい。アミラーゼは、例えば、哺乳動物の唾液アミラーゼ、膵臓アミラーゼ、又は、真菌若しくは細菌起源のアミラーゼであってもよい。シクロデキストリナーゼは、例えば、微生物シクロデキストリナーゼであってもよい。
【0017】
シクロデキストリンは、例えば、疎水性アルキル化シクロデキストリン、又は、混合メチル化/エチル化シクロデキストリン等のCD誘導体であってもよい。
【0018】
シクロデキストリンのゲスト分子に対する比率は、整数以外の比率を含む幅広い代替値も可能であるが、例えば、5:1、4:1、3:1、2:1、1:1、1:2、1:3、1:4、又は、1:5であってもよい。
【0019】
シクロデキストリンは、例えば、α、β又はγ-シクロデキストリンであってもよいが、ここでも同様に、非常に幅広い代替CD構造が使用可能である。生物学的に許容される担体は、薬学的に許容される担体であってもよい。送達ビヒクルは、ゲスト分子及び/又は他の活性剤が持続的に放出されるように配合されてもよい。このように、本発明は、CD送達ビヒクルを製剤化し、薬剤として使用することができる代替実施形態を提供する。
【0020】
一酸化窒素欠乏症、又は、哺乳動物被験体における内因性一酸化窒素レベルを増加させることによって治療又は予防できる疾患を有する患者を治療するための方法が提供される。また、男性被験者、例えば50、60若しくは70歳を超える男性、又は、勃起不全の症状を有する雄性被験体において勃起効果を提供するための方法も提供される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
アナンダミドは以下の構造を有する。
【0022】
【0023】
式(I)の構造を有する種々の類似体を含め、様々なアナンダミド類似体が知られている。
【0024】
【0025】
式中、
xは1~6の整数であり、
yは1~6の整数であり、
zは1~6の整数であり、
R1及びR2は、それぞれ独立して、H、炭素数1~6のアルキル、及び、(CH2)w-R3からなる群から選択され、
wは0~6の整数であり、
R3は、CH3、OH、SH、F、Cl、Br、I、C≡CH、C≡N、炭素数3~7の炭素環、並びに3~7個の炭素とN、O及びSから選択される少なくとも1個のヘテロ原子とを有する複素環からなる群から選択され、
R1及び/又はR2は、N’又はO’と結合して原子数3~7の複素環を形成してもよい。
【0026】
本発明の製剤において使用するためのアナンダミド類似体は、受容体結合活性を特徴としてもよく、例えば、CB1受容体の部分作動薬、CB2受容体の弱部分作動薬、バニロイド受容体VR1の部分作動薬、及び/又は、GPR55受容体の作動薬リガンドである。代替として、CB1及びCB2受容体に対するアナンダミド類似体の結合親和性は、CB1結合に対する優先的な親和性を特徴としてもよく、例えば、CB1に対するKiは100nM未満であり、CB2に対するKiは1000nMを超える。
【0027】
本発明の製剤は、例えば一酸化窒素欠乏症又は哺乳動物における内因性一酸化窒素レベルを増加させることによって治療若しくは予防できる疾患を治療又は予防するために、生理的NOレベルを上昇させるように使用してもよい。一酸化窒素の欠乏は、高血圧及び心血管疾患(例えば、アテローム性動脈硬化症、再狭窄)を含む心血管疾患の発病に寄与すると考えられている。ヒトの女性患者では、NOの欠乏は例えば、子癇前症、早産、子宮頸管無力症、反復流産、月経困難症、不妊症、ほてり、心血管疾患、尿失禁及び認知障害等の病状に関与する可能性があると考えられている。同様に、特に高齢の男性において、NOの欠乏は、心血管疾患、高血圧、インポテンス及び骨粗しょう症に関与する。したがって、本明細書では、例えば、高血圧、心血管疾患(例えば、アテローム性動脈硬化症、再狭窄)、骨粗しょう症、子癇前症、早期陣痛、月経困難症、頸部ジストニア、尿失禁、雄性のインポテンス、雌性の不妊症等の一酸化窒素に関連する障害及び疾患のための治療が提供される。
【0028】
本発明の製剤の選択実施形態は、例えば、D,L-シトルリン、L-シトルリン、L-シトルリンモノアセテート、L-シトルリン塩酸塩、L-シトルリンメチルエステル、L-シトルリンエチルエステル、L-シトルリン-n-ヘキシルエステル、L-シトルリン(ベンゾイルメチル)エステル、α-N-ベンゾイル-L-シトルリンメチルエステル、N-Boc-L-シトルリン、又は、N1-2,4-ジニトロフェニル-D,L-シトルリン等のシトルリン又はシトルリン類似体を含む。代替実施形態では、シトルリン類似体は、式(II)の構造を有してもよい。
【0029】
【0030】
式中、
R1は、水素、炭素数1~10のアルキル、炭素数1~10のアルケニル、アリール、-CH2)1-3(C=O)アリール、ω-ヒドロキシアルキル、又は、ω-メトキシアルキルであり、
R2及びR3は、それぞれ独立して、水素、炭素数1~10のアルキル、アリール、アセチル、ベンゾイル、及び、tert-ブトキシカルボニルから選択される。
【0031】
具体的な製剤としては、例えば、アナンダミド又はその類似体をシクロデキストリン内包物として、CD分解酵素と組み合わせて共配合することによって作製されるシクロデキストリン包接錯体製剤が挙げられる。
【0032】
選択実施形態では、ビヒクルに含まれる酵素は、ビヒクルの標的への送達時にシクロデキストリン分解活性が活性化され、ゲスト分子をシクロデキストリンの空洞から放出するように配合してもよい。酵素の活性化は、薬剤、例えば、経口用の、酵素が混合されたカプセル又は錠剤等の乾燥剤形の薬剤中で達成されてもよく、宿主の胃腸管内の水分によって活性化されるまで活性化されないようにしてもよい。同様に、幅広い時限放出用の母材及び製剤が知られており、これらをCD送達ビヒクルでの使用に適合させて、標的への送達時におけるCD分解酵素の適切な活性化を調整してもよい。
【0033】
様々な態様において、CD送達ビヒクルは、例えば上述したように、酵素をシクロデキストリン包接錯体に共配合してもよく、又は、酵素を送達ビヒクル中にシクロデキストリン包接錯体と共に含めてもよい。共に含める場合は、送達ビヒクルは、例えば、CD包接錯体の担体とは別個の、酵素のための生化学的に許容される担体を含んでもよい。例えば、送達ビヒクルにCD包接錯体とCD分解酵素を収容するための分離されたコンパートメントを設けて、送達ビヒクルがCD包接錯体用のコンパートメントとこれに連結されるCD分解酵素用のコンパートメントとから構成されてもよい。CD包接錯体とCD分解酵素を送達ビヒクル中のそれぞれのコンパートメントから複合放出させるための機構を設けてもよい。例えば、この種の別々のコンパートメントを備え、一般的な排出機構により排出される注射器としてもよく、例えば各コンパートメント内のピストンを協働して移動させCD包接錯体及びCD分解酵素のアリコートを排出させる機構とし、それにより酵素と包接錯体が混合されて酵素によるCDからのゲスト分子の放出が活性化されてもよい。この種のビヒクルは、例えば、局所クリーム又は他の界面活性製剤を分配するために使用され得る。この種の多種多様な送達ビヒクルは、例えば、米国特許第4538920号、米国特許第8100295号、米国特許第8308340号、米国特許第8875947号、米国特許第8499976号、並びに、国際出願公開第2007041266号及び国際出願公開第2000021842号に記載されているように、エポキシ樹脂、二液型薬剤又は歯科用製剤等の二液型組成物の分配で知られているデバイスから適合させることができる。
【0034】
CD包接錯体を調製するために利用可能な技術は多種多様にあり、例えば、Chaudhary & Patel, IJPSR, 2013, Vol. 4(1): 68-76; Carneiro et al., 2019, Int. J. Mol. Sci. 2019, 20, 642、米国特許出願公開第20090029020号、米国特許出願公開第20090214446号、米国特許第5070081号、米国特許第5552378号、米国特許第5674854号及び米国特許第8658692号に記載のものがある。一般的な手法は混練法として知られており、混練法では、CDと水又は水性アルコールとを混合してペースト状とする。次いで、このペーストに生理活性分子を添加し、ある特定の時間混練してもよい。その後、混練した混合物を乾燥させ、必要に応じてふるいに通してもよい。代替として、スラリー法は、生物活性分子とシクロデキストリンとを混合するステップと、この混合物に対し、ペースト又はスラリーが形成されるまで、典型的には激しく混合しながら、適量の水を添加するステップと、ペースト又はスラリーの稠度を維持するために必要であればさらに水を加えながら、例えば15分間等の適切な時間、混合を継続して包接錯体を形成するステップと、この最終段階の生成物を乾燥させるステップとを含む。乳化剤等の他の成分により、包接錯体の形成、例えば、シクロデキストリンと乳化剤(例えば、ペクチン)とを乾式混合するステップ、このシクロデキストリンと乳化剤の乾式混合物を水等の溶媒と反応器中で混合し撹拌するステップ、ゲスト分子を添加し撹拌するステップ(例えば、約5~8時間)、任意選択で、反応混合物を撹拌しながら冷却するステップ、及び、当該混合物を乳化させた後、シクロデキストリン包接錯体を乾燥させて粉体を形成するステップを伴うプロセスが容易になり得る。CD内包物を調製するための他の公知の手法としては、凍結乾燥、マイクロ波照射及び超臨界流体反溶媒技術が挙げられる。
【0035】
本発明のCD送達ビヒクルは、単独で又は他の化合物(例えば、核酸分子、低分子、ペプチド若しくはペプチド類似体)との組合せで、担体、例えば、リポソーム、補助剤又は任意の薬学的若しくは生物学的に許容される担体の存在下で提供することができる。選択実施形態は、哺乳動物等の動物宿主、例えば、ヒトへの投与に適した形態の薬剤を含む。本明細書で使用されるとき、「薬学的に許容される担体」又は「賦形剤」には、生理学的に適合する、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤、抗真菌剤及び吸収遅延剤等が含まれる。担体は、局所、皮下、皮内、静脈内、非経口、腹腔内、筋肉内、舌下、吸入、腫瘍内又は経口投与を含む、任意の適切な投与形態において適合し得る。薬学的に許容される担体には、滅菌水溶液又は分散液、及び、滅菌注射用水溶液又は分散液を即時調製するための滅菌粉末が含まれる。薬学的に活性な物質のためにそのような媒体及び薬剤を使用することは、当技術分野において周知である。従来の媒体又は薬剤が生物学的に活性な化合物と適合しない場合を除き、本発明の医薬組成物におけるそれらの使用が企図される。また、補助的な活性化合物も組成物に組み込むことができる。
【0036】
送達ビヒクルの被験体への投与に適した製剤又は組成物を提供するために、従来の製薬慣行を採用してもよい。適切な投与経路、例えば、非経口、静脈内、皮内、皮下、筋肉内、頭蓋内、眼窩内、眼球、脳室内、被膜内、脊髄内、くも膜下腔内、嚢内、腹腔内、鼻腔内、吸入、エアロゾル、局所、腫瘍内、舌下又は経口投与を採用してもよい。治療用製剤は液体の溶液又は懸濁液の形態であってもよく、経口投与には製剤は錠剤又はカプセル剤の形態であってもよく、鼻腔内製剤では粉末、点鼻薬又はエアロゾル剤の形態、及び、舌下製剤では点滴剤、エアゾール剤又は錠剤の形態であってもよい。
【0037】
シクロデキストリン分解酵素又は消化酵素は、例えば、経口送達のために配合されてもよい。腸溶性酵素製剤、例えば、エマルジョン溶媒蒸発により調製されたサブミクロン粒子製剤(Sharma et al., Pharm Dev Technol. 2013 May-Jun;18(3):560-9)等としてもよい。同様に、送達ビヒクルは、ヒドロゲル(米国特許出願公開第20140094433号参照)、又は、薬用ガム(米国特許出願公開第20130022652号参照)として配合されてもよい。
【0038】
製剤を作製するための当技術分野で周知の方法は、例えば、”Remington’s Pharmaceutical Sciences” (20th edition), ed. A. Gennaro, 2000, Mack Publishing Company, Easton, PAに記載がある。非経口投与用の製剤は、例えば、賦形剤、滅菌水若しくは食塩水、ポリエチレングリコール等のポリアルキレングリコール、植物由来の油、又は、水素化ナフタレンを含んでもよい。生体適合性の生分解性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマー、又は、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーを使用して化合物の放出を制御してもよい。他の潜在的に有用な非経口送達システムとしては、エチレン-酢酸ビニルコポリマー粒子、浸透圧ポンプ、植込み型輸液システム、及び、リポソームが挙げられる。吸入用の製剤は、賦形剤、例えばラクトースを含んでもよく、又は、例えばポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル、グリココール酸若しくはデオキシコール酸を含む水溶液であってもよく、又は、点鼻薬の形態で若しくはゲルとして投与するための油性溶液であってもよい。
【0039】
本発明の医薬組成物は、組成物を患者に投与可能であればどの形態であってもよい。例えば、組成物は、固体、液体又は気体(エアロゾル)の形態であってもよい。典型的な投与経路としては、経口、局所、非経口、舌下、直腸内、膣内及び鼻腔内が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される非経口という用語には、皮下注射、静脈内、筋肉内、硬膜外、胸骨内注射又は注入技術が含まれる。本発明の医薬組成物は、組成物の患者への投与時に、その中に含まれる活性成分が生物学的に利用可能となるように製剤化される。患者に投与される組成物は、1つ又は複数の投与単位の形態をとり、例えば1錠の錠剤、カプセル又はカシェ剤が単一の投与単位であってもよく、及び、エアロゾルの形態の化合物の容器は複数の投与単位を保持してもよい。
【0040】
医薬組成物の調製に使用される材料は、薬学的に純粋で、使用量において非毒性であるべきである。本発明の組成物は、特に望ましい効果が知られている1つ又は複数の化合物(活性成分)を含んでもよい。医薬組成物中の活性成分の最適用量が様々な因子に依存することは、当業者には明らかであろう。関連する因子として、被験体の種類(例えば、ヒト)、活性成分の特定の形態、投与方法及び使用される組成物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
一般に、医薬組成物は、本明細書に記載される本発明の送達ビヒクルを、1つ又は複数の担体と混合した状態で含む。担体は微粒子であってもよく、その場合、組成物は例えば錠剤又は粉末の形態となる。担体は液体であってもよく、その場合、組成物は例えば経口シロップ又は注射用液体である。さらに、担体は気体であってもよく、例えば吸入投与に有用なエアロゾル組成物を提供できる。
【0042】
経口投与を目的とする場合、組成物は固体又は液体の形態であることが好ましく、本明細書において固体又は液体とみなされる形態には、半固体、半液体、懸濁液及びゲルの形態が含まれる。
【0043】
経口投与用の固体組成物として、組成物は、粉末、顆粒、圧縮錠剤、丸剤、カプセル、カシェ剤、チューインガム、オブラート、ロゼンジ等の形態に製剤化してもよい。このような固体組成物は、典型的には、1つ又は複数の不活性希釈剤又は食用担体を含むことになる。さらに、次の補助剤の1つ又は複数が含まれていてもよい:シロップ、アカシア、ソルビトール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、微結晶セルロース、トラガカントゴム又はゼラチン、及び、これらの混合物等の結合剤;デンプン、ラクトース又はデキストリン等の賦形剤;アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、プリモゲル(Primogel)(登録商標)、コーンスターチ等の崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム又はステロテックス(Sterotex)(登録商標)等の潤滑剤;ラクトース、マンニトール、デンプン、リン酸カルシウム、ソルビトール、メチルセルロース及びこれらの混合物等の充填材;ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール等の高分子量重合体、ステアリン酸等の高分子量脂肪酸、シリカ等の潤滑剤;ラウリル硫酸ナトリウム等の湿潤剤;コロイド状二酸化ケイ素等の流動促進剤;スクロース又はサッカリン等の甘味料;ペパーミント、サリチル酸メチル又はオレンジ香料等の着香材;及び、着色剤。
【0044】
組成物がカプセル、例えばゼラチンカプセルの形態である場合、組成物は、上記の種類の材料に加えて、ポリエチレングリコール又は脂肪油等の液体担体を含んでもよい。
【0045】
組成物は、液体の形態、例えばエリキシル剤、シロップ、溶液、水性若しくは油性のエマルジョン若しくは懸濁液、又は、使用の前に水及び/若しくは他の液体媒体で再構成し得る乾燥粉末であってもよい。液体は、2つ例を挙げるとすれば、経口投与用又は注射による送達用であってもよい。経口投与を目的とする場合、好ましい組成物は、本発明の化合物に加えて、甘味料、増粘剤、保存剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸アルキル)、染料/着色料、及び、風味増強剤(香料)の1つ又は複数を含む。注射による投与を目的とする組成物には、界面活性剤、保存剤(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸アルキル)、湿潤剤、分散剤、懸濁化剤(例えば、ソルビトール、グルコース又はその他の糖シロップ)、緩衝剤、安定剤及び等張剤の1つ又は複数が含まれてもよい。乳化剤は、レシチン又はソルビトールモノオレエートから選択してもよい。
【0046】
本発明の液体医薬組成物は、溶液、懸濁液又はその他の同様の形態であるかどうかに関わらず、次の補助剤の1つ又は複数を含んでもよい:注射用水、食塩水、好ましくは生理食塩水、リンガー液、等張塩化ナトリウム、溶媒若しくは懸濁媒体として機能し得る合成モノ若しくはジグリセリド等の固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール又はその他の溶媒等の滅菌希釈剤;ベンジルアルコール又はメチルパラベン等の抗菌剤;アスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウム等の抗酸化剤;エチレンジアミン四酢酸等のキレート剤;酢酸塩、クエン酸塩又はリン酸塩等の緩衝剤;及び、塩化ナトリウム又はデキストロース等の等張性調節のための薬剤。非経口調製物は、アンプル、使い捨て注射器、又は、ガラス若しくはプラスティック製の多回投与バイアルに封入することができる。生理食塩水が好ましい補助剤である。注射用医薬組成物は、好ましくは、滅菌される。
【0047】
医薬組成物は局所投与を目的としてもよく、その場合、担体は、溶液、乳濁液、軟膏、クリーム又はゲル基剤から適切に構成され得る。基剤は、例えば、次の1つ又は複数を含んでもよい:ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、蜜蝋、鉱油、水及びアルコール等の希釈剤、並びに、乳化剤及び安定剤。増粘剤が、局所投与用の医薬組成物中に存在してもよい。経皮投与を目的とする場合、組成物には経皮パッチ又はイオン導入装置が含まれてもよい。局所製剤は、約0.1~約25%w/v(単位体積当たりの重量)の濃度の生物学的に活性な化合物を含んでもよい。
【0048】
組成物は、直腸投与を目的としてもよく、例えば直腸内で溶けて薬物を放出する坐剤の形態としてもよい。直腸投与用の組成物は、適切な非刺激性賦形剤として油性基剤を含んでもよい。このような基剤としては、ラノリン、ココアバター及びポリエチレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。低融点ワックスは、坐剤の調製に好ましく、脂肪酸グリセリド及び/又はココアバターの混合物が好適なワックスである。ワックスは溶融されてもよく、撹拌されることによりアミノシクロヘキシルエーテル化合物がその中で均一に分散される。次いで、溶融した均一な混合物を適当な大きさの型に注ぎ、冷却させ、それにより固化させる。
【0049】
組成物には、固体又は液体の投与単位の物理的形態を改変する様々な材料が含まれ得る。例えば、組成物は、活性成分の周囲にコーティングシェルを形成する材料を含んでもよい。コーティングシェルを形成する材料は、典型的には不活性であり、例えば糖、シェラック及びその他の腸溶性コーティング剤から選択してもよい。代替として、活性成分をゼラチンカプセル又はカシェに封入してもよい。
【0050】
本発明の医薬組成物は気体の投与単位からなってもよく、例えば、エアロゾルの形態であってもよい。エアロゾルという用語は、コロイド状のものから加圧パッケージからなるシステムまで、様々なシステムを指すのに使用される。送達は、液化ガス若しくは圧縮ガス、又は、活性成分を分配する適切なポンプシステムにより行われてもよい。本発明の化合物のエアロゾルは、活性成分を送達するため、単相系、二相系又は三相系で送達されてもよい。エアロゾルの送達には、必要な容器、活性化剤、バルブ、サブ容器等が含まれ、これらを合わせてキットを形成されてもよい。
【0051】
生物学的に活性な化合物は、遊離塩基の形態であってもよく、又は、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、乳酸塩、マンデル酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、及び、その他の当技術分野において公知の塩等の薬学的に許容される塩の形態であってもよい。適正な使用様式(例えば、経口又は非経口投与経路)における化合物の生物学的利用能又は安定性を高めるため、適正な塩が選択されることになる。
【0052】
注射による投与を目的とする組成物は、本発明の送達ビヒクルを、水及び好ましくは緩衝剤と組み合わせて溶液を形成することによって調製することができる。水は、好ましくは、発熱物質を含まない滅菌水である。均一な溶液又は懸濁液の形成を容易にするため、界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤は、水性送達システムにおけるアミノシクロヘキシルエーテル化合物の溶解又は均一な懸濁を促進するために、アミノシクロヘキシルエーテル化合物と非共有結合的に相互作用する化合物である。本発明によるアミノシクロヘキシルエーテル化合物は疎水性であってもよいため、界面活性剤は本発明の水性組成物中に存在することが望ましい。注射のための他の担体としては、滅菌過酸化物を含まないオレイン酸エチル、脱水アルコール、プロピレングリコール、及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
注射溶液に適切な薬学的補助剤としては、安定化剤、可溶化剤、緩衝剤及び粘度調整剤が挙げられる。これらの補助剤の例として、例えば、エタノール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、酒石酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、及び、高分子量ポリエチレンオキシド粘度調整剤が挙げられる。これらの医薬製剤は、筋肉内、硬膜外、腹腔内又は静脈内に注射してもよい。
【0054】
本発明はまた、1つ又は複数の送達ビヒクルを含む医薬組成物を備えたキットを提供する。キットはまた、医薬品の使用のための説明書を含む。好ましくは、商品包装には、医薬組成物の1つ又は複数の単位用量が含まれる。例えば、このような単位用量は、静脈内注射の調製に十分な量であってもよい。光感受性及び/又は空気感受性の化合物には、特別な包装及び/又は配合が必要となる場合があることは当業者には明らかであろう。例えば、光に対して不透明である包装、及び/又は、外気との接触から密封される包装、及び/又は、適切なコーティング若しくは賦形剤と共に配合した包装としてもよい。
【0055】
本発明によるCD包接錯体送達ビヒクルの「有効量」は、治療有効量又は予防的有効量を含む。「治療有効量」とは、所望の治療結果を達成するために必要な用量及び期間で有効な量を指す。送達ビヒクルの治療有効量は、個体の病状、年齢、性別及び体重、並びに、個体において所望の反応を引き出す化合物の能力等の因子により異なる。投与レジメンは、最適な治療反応が得られるように調節し得る。治療有効量はまた、送達ビヒクル又は活性化合物の毒性又は有害作用を治療上有益な効果が上回るものであってもよい。「予防的有効量」とは、所望の予防結果を達成するために必要な用量及び期間で有効な量を指す。典型的には、予防的投与量は、発病の前又は初期段階で被験体に使用されるため、予防的有効量は治療有効量よりも少量となる。特定の被験体について、治療のタイミング及び投与量は、その個体にとっての必要性、及び、組成物の投与を実施又は監督する者の専門的判断により経時的に(例えば、タイミングは、毎日、隔日、毎週、毎月であり得る)調整されてもよい。
【0056】
選択実施形態では、本発明は、生理活性化合物、又は、溶媒和物、薬学的に許容される塩、エステル、アミド、錯体、キレート、立体異性体、立体異性体混合物、幾何異性体、結晶若しくはアモルファスの形態、これらの代謝体、代謝前駆体若しくはプロドラッグ(これらの単離された鏡像異性体、ジアステレオマー異性体及び幾何異性体を含む)、及び、これらの混合物から選択される1つ又は複数の生物学的活性分子を、薬学的に許容される担体、希釈剤又は賦形剤と組み合わせて含む組成物又は薬剤を提供し、並びに、このような組成物又は薬剤の製造方法をさらに提供する。
【0057】
本発明の様々な実施形態が本明細書に開示されているが、当業者の技術常識に従って、本発明の範囲内で多くの適応及び修正を行うことができる。このような修正には、実質的に同じ方法で同じ結果を達成するために、本発明の態様のいずれかにおいて既知の等価物を置き換えることを含む。数値範囲は、範囲を定義する数値を含む。「含む(comprising)」という語は、本明細書では「含むがこれに限定されない」という語句と実質的に同等のオープンエンドの用語として使用され、「含む(comprises)」という語はそれに対応する意味を有する。本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「1つのもの」への言及は、2つ以上のそのようなものを含む。
【0058】
本明細書における参考文献の引用は、そのような参考文献が本発明の先行技術であることを認めるものではない。本明細書で引用される、特許及び特許出願を含むがこれらに限定されない優先権書類及びすべての刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で引用される文書において引用又は参照されるすべての文書、並びに、本明細書で若しくは参照により本明細書に組み込まれる文書で言及される製品の製造業者による説明書、説明、製品仕様書及び製品シートはいずれも、ここに参照により本明細書に組み込まれ、本発明の実施において使用され得る。より具体的には、参照された文書はすべて、個々の刊行物について参照により本明細書に組み込まれることが具体的かつ個別に示されたのと同じ程度に、及び、本明細書に完全に記載されたのと同じ程度に、参照により組み込まれる。本発明は、実質的に上述され、及び、実施例及び図面を参照するすべての実施形態及び変形を含む。
【0059】
いくつかの実施形態において、本発明は、内科的又は外科的治療を伴うステップを除外する。
【実施例】
【0060】
被験体において試験された例示的な製剤を以下に示す。
【0061】
分子量347のアナンダミドを調製し、製剤、80%アナンダミドオイルにおいてアナンダミドが11.5wt%となるように、γ-シクロデキストリン内に1:2の比率で包接させ、製剤化した。アナンダミドの最終濃度は、およそ約9.2wt%であった。同様にして、代替のアナンダミドCD包接体製剤を、7.7wt%アナンダミド及び8.8wt%アナンダミドとなるように調製した。
【0062】
アナンダミド包接体製剤から、以下のようにカプセルを調製した。
42mgカプセル
アナンダミド9.2%CD包接体465mg、正味アナンダミド42mg
E4Mセルロース30mg(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、1~2時間の放出を送達)
アミラーゼ4mg
ラウリン酸カルシウム(流動剤)5mg
10mgカプセル
アナンダミド7.7%CD包接体130mg
E4Mセルロース40mg
セリン335mg
アミラーゼ5mg
フマル酸ステアリルナトリウム(SSF-流動剤)2mg
5mgカプセル
アナンダミド7.7%CD包接体65mg
セリン400mg
アミラーゼ5mg
SSF2mg
25mgカプセル
アミラーゼ含有アナンダミド7.7%CD包接体325mg
E4Mセルロース30mg
セリン230mg
SSF2mg
【0063】
実施例1
男性被験者は、朝に42mgカプセル1錠、夕方に10mgカプセル1錠の治療を受けた。被験者は、この治療によりストレスが完全に中和され、睡眠が改善されたと報告した。しばらくして、被験者は、朝に10mgカプセル2錠の投与量、夕方の治療をなしとして継続し、継続的なストレス軽減という結果を得た。
【0064】
その後、被験体は、朝に25mgカプセル2錠を摂取し始め、勃起時の血流が驚くほど増加するという結果を得た。被験者は長年にわたり、10~25mgずつ様々な用量でシルデナフィルを服用していた。アナンダミドCD製剤25mgの投与と併せて、被験者は、10mgのシルデナフィルが、アナンダミドCDの補給前に服用する25mg用量よりも顕著な結果をもたらすことを認識した。被験者は、アナンダミドCD製剤は、時間の経過とともに顕著な累積効果があり、長期治療で血流が改善したことを認識した。
【0065】
その後、被験者は投与量を、朝に25mgカプセル1錠、及び、午後に10mgカプセル1錠に変更した。市販の亜硝酸塩テストストリップを使用した過去の唾液NO検査(米国特許第9759716号に記載)では、被験者はNOカラーインジケーターストリップで「枯渇」又は「低」を超える表示となったことはなかった。しかしながら、アナンダミドCD治療のこの段階では、NO試験ストリップはカラースケールで「低」をはるかに上回る表示となり、カラー強度で「最適」以上に達した。
【0066】
実施例2
本実施例は、一酸化窒素合成酵素基質であるアルギニン、及び、アルギニンの持続的生成を助けるシトルリンを強化した2つの代替製剤の使用に関する。
10mg持続放出性アナンダミド(SR)
基質にアミラーゼを含有するアナンダミド8.5%CD包接体120mg
K250セルロース72mg(持続放出10~12時間)
シトルリン120mg(アミノ酸なし)
アルギニン100mg(アミノ酸なし)
ラウリン酸カルシウム5mg
10mg速放性アナンダミド(QR)
基質にアミラーゼを含有するアナンダミド8.5%CD包接体120mg
E4Mセルロース15mg(持続放出10~12時間)
シトルリン160mg(アミノ酸なし)
アルギニン120mg(アミノ酸なし)
ラウリン酸カルシウム5mg
【0067】
実施例1の被験者は、これらの製剤の併用により、ボーラス及び/延長放出レジメンによる制御された投与が可能になったと判断した。この併用療法により、NOの生成と濃度、及び、勃起能力に関してさらに説得力のある治療結果が得られた。被験者が、朝にSRカプセル2錠とQRカプセル1錠、午後にQRカプセル1錠、午後6時頃にSRカプセル2錠を摂取すると、その夜の午後9時30分頃、刺激後に痛いほどの勃起状態となった。
【0068】
実施例3
被験者ELは、以下の配合の1日当たり500mgの投与量を約4か月間自己投与した。
500mgカプセル
アナンダミド7.8%CD包接体160mg、正味アナンダミド12.5mg
シトルリン300mg
E4Mセルロース20mg(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、1~2時間の放出を送達)
アミラーゼ5mg
ラウリン酸カルシウム(流動剤)15mg
【0069】
被験者ELは、不安とストレスが顕著に減少するとともに、睡眠がはるかに改善され、ランニング時のVO2 Maxが2ポイント増加し(ガーミンデバイスで測定)、肺活量が顕著に増加し、高強度での心拍数が低下し、走行パフォーマンスが向上した(概算10~15%の向上)と報告した。本実施例は、シクロデキストリン(CD)包接錯体製剤の使用により、ヒト被験体の心血管機能が向上することを示している。
【国際調査報告】