(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】皮膚老化を決定する方法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/02 20060101AFI20240725BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240725BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240725BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240725BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20240725BHJP
【FI】
C12Q1/02
A61K45/00
A61P17/00
A61P43/00 105
C12Q1/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506706
(86)(22)【出願日】2022-08-01
(85)【翻訳文提出日】2024-02-19
(86)【国際出願番号】 IB2022057132
(87)【国際公開番号】W WO2023012645
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522236350
【氏名又は名称】ジョンソン アンド ジョンソン コンシューマー インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】カウル・シマルナ
(72)【発明者】
【氏名】ブラン・セシリア
(72)【発明者】
【氏名】オドス・ティエリ
【テーマコード(参考)】
4B063
4C084
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ08
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4C084AA17
4C084MA63
4C084NA14
4C084ZA891
4C084ZC521
(57)【要約】
本発明は、細胞増殖速度、NFKB1遺伝子発現、CDKN1A遺伝子発現、CDKN2A遺伝子発現、CEBPB遺伝子発現、及びそれらの組み合わせから選択される特性を測定及び/又は調整することによって、特に若年対象における、急速老化皮膚を診断及び治療する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
若年対象における急速老化皮膚を診断する方法であって、40歳以下の対象の皮膚サンプルにおいて、細胞増殖速度、並びにNFKB1、CDKN1A、CDKN2A、CEBPB、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される遺伝子の発現を測定することを含む、方法。
【請求項2】
前記細胞増殖速度又は遺伝子の前記発現を対照と比較することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
細胞増殖速度の前記対照が、少なくとも4日の皮膚線維芽細胞集団倍加時間である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
遺伝子の発現の前記対照が、約±5歳以内のドナー由来の線維芽細胞集団における前記遺伝子の平均発現よりも少なくとも約20%高い発現である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記対象が20~35歳である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記皮膚サンプルが、テープ剥離、インビボトリプトファン蛍光測定、顕微鏡法/分光法、マイクロニードルパッチ、及び接着パッチベースの皮膚生検装置からなる群から選択される非侵襲的方法によって得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
急速老化皮膚の治療の有効性を評価する方法であって、(a)40歳以下の対象の皮膚に前記治療を適用することと、(b)前記対象の皮膚サンプルにおいて、細胞増殖速度、並びにNFKB1、CDKN1A、CDKN2A、CEBPB、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される遺伝子の発現を測定することと、を順に含む、方法。
【請求項8】
前記測定を対照と比較することを更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記治療が、化粧品組成物の局所適用である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記対象が20~35歳である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
急速老化皮膚の治療用の活性薬剤をスクリーニングする方法であって、(a)40歳以下の対象由来の皮膚サンプルに前記活性薬剤を適用することと、(b)前記皮膚サンプルにおいて、細胞増殖速度、並びにNFKB1、CDKN1A、CDKN2A、CEBPB、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される遺伝子の発現を測定することと、(c)前記測定を対照と比較することと、(d)前記対照と比較して、皮膚線維芽細胞集団倍加時間の減少、NFKB1遺伝子発現のダウンレギュレーション、CDKN1A遺伝子発現のダウンレギュレーション、CDKN2A遺伝子発現のダウンレギュレーション、及びCEBPB遺伝子発現のダウンレギュレーションのうちの少なくとも1つを提供する前記活性薬剤を選択することと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、急速老化皮膚における、細胞増殖速度、NFKB1遺伝子発現、CDKN1A遺伝子発現、CDKN2A遺伝子発現、又はCEBPB遺伝子発現を測定及び/又は調整することによって、特に若年対象における、急速老化皮膚を診断及び治療する方法を提供する。急速老化皮膚用の活性薬剤及び他の治療をスクリーニングする方法も提供される。
【背景技術】
【0002】
皮膚老化は、多くの場合、細胞外マトリックスの喪失を誘導する皮膚線維芽細胞機能障害、並びに不十分な再生能力を特徴とし、最終的にはしわ及びたるみを引き起こす。いくつかの特徴の中で、増殖能力の喪失は、細胞老化に関連する線維芽細胞老化の重要なマーカーのうちの1つであることが知られている。細胞増殖の有意差がより高齢の集団と比較して若年集団において証明することができるが、多くの場合、より高い変動がより若い群で観察され、若年集団におけるより高いドナー間変動の問題を提起する。
【0003】
細胞老化は、1961年にHayflick及びMoorheadによって最初に説明されており、細胞が限られた分裂能力を有するという細胞老化の理論を紹介した。L.Hayflick,PS.Moorhead,Exp Cell Res 25(1961)585-621。この増殖能力の喪失により、細胞老化に特異的な細胞周期停止がもたらされる。これは、細胞形態の変化、老化関連β-ガラクトシダーゼ活性の増加、並びに老化関連分泌表現型(senescence-associated secretory phenotype、SASP)とも呼ばれる様々なサイトカイン、ケモカイン、成長因子、及びプロテアーゼの放出を伴う。
【0004】
J Am Acad Dermatol 2018;78:29-39は、20~74歳の白人女性の皮膚における遺伝子発現プロファイルの年齢誘導性変化及び光誘導性変化について論じている。遺伝子発現及びオントロジー分析は、酸化ストレス、エネルギー代謝、老化、及び表皮バリアに関連する経路における20代から70代への進行性変化を明らかにした。より若く見える女性のサブセットからの遺伝子発現パターンは、実際により若い女性における遺伝子発現パターンと類似していることが見出された。特に、著者らが、日光に曝された顔面皮膚におけるCDKN2A遺伝子発現の増加及び老化した外観に留意したが、彼らは、CDKN2A発現が年齢群にわたって光保護された臀部皮膚サンプルにおいて比較的変化しないままであったことも提示した。
【0005】
Cell Res.2015 May;25(5):574-87.doi:10.1038/cr.2015.36は、ロバストな老化マーカーとしての三次元ヒト顔面形態の使用を説明している。この論文では、研究者らは、志願者の三次元顔面イメージングを使用して老化の顔面特徴を決定し、アルゴリズムによって予測された年齢を彼らの実年齢と比較することによって老化の遅い者(slow ager)のプロファイル及び老化の速い者(fast ager)のプロファイルを決定した。結果を志願者の血清組成と比較した。細胞レベル又は遺伝レベルでの分析は行われず、この方法は、老化の外見的/視覚的兆候のみに基づいていた。顔面イメージングは、目に見える老化の兆候が現れた場合にのみ、老化の速い者と診断した。
【0006】
本出願人らは、驚くべきことに、若年皮膚が、若々しい臨床的外観にもかかわらず、実際には急速に老化し、急速老化細胞を含み得ることを発見した。本発明者らは、急速老化皮膚細胞にシグナル伝達するいくつかの生物学的経路を特定した。これらの生物学的経路は、次いで、急速老化皮膚の速度を遅くするように処理、改変、又は調節され得る。急速老化皮膚を有する若年対象が老化の兆候について自身の皮膚を治療する必要性を別様に決定することができない場合があるため、これは特に有利である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、若年対象における急速老化皮膚を診断する方法であって、40歳以下の対象の皮膚サンプルにおいて、細胞増殖速度、並びにNFKB1、CDKN1A、CDKN2A、CEBPB、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される遺伝子の発現を測定することを含む、方法を提供する。
【0008】
本発明は、急速老化皮膚の治療の有効性を評価する方法であって、(a)40歳以下の対象の皮膚に治療を適用することと、(b)当該対象の皮膚サンプルにおいて、細胞増殖速度、並びにNFKB1、CDKN1A、CDKN2A、CEBPB、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される遺伝子の発現を測定することと、を順に含む、方法を提供する。
【0009】
本発明は、急速老化皮膚の治療用の活性薬剤をスクリーニングする方法であって、(a)40歳以下の対象由来の皮膚サンプルに当該活性薬剤を適用することと、(b)当該皮膚サンプルにおいて、細胞増殖速度、並びにNFKB1、CDKN1A、CDKN2A、CEBPB、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される遺伝子の発現を測定することと、(c)当該測定を対照と比較することと、(d)当該対照と比較して、皮膚線維芽細胞集団倍加時間の減少、NFKB1遺伝子発現のダウンレギュレーション、CDKN1A遺伝子発現のダウンレギュレーション、CDKN2A遺伝子発現のダウンレギュレーション、及びCEBPB遺伝子発現のダウンレギュレーションのうちの少なくとも1つを提供する当該活性薬剤を選択することと、を含む、方法を更に提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1に記載のドナーについての0日目、4日目、及び10日目の時間(日数)の平均細胞数(×10,000)に対するドットプロットである。
【
図2】実施例2における高増殖性線維芽細胞と低増殖性線維芽細胞との間の遺伝子発現に関する差次的分析の結果を要約するボルケーノプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
特に断らない限り、本明細書において使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味を有する。本明細書において言及される刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は全て、参照により本明細書に組み込まれる。
【0012】
本明細書で使用するとき、「製品」は、任意に、完成したパッケージ化形態である。一実施形態では、パッケージは、組成物を収容しているプラスチック、金属又はガラスの管又はジャーなどの容器である。製品は、このような容器を保管するためのプラスチック又は板紙の箱などの追加の包装を更に含んでもよい。一実施形態では、製品は、本発明の組成物を含み、皮膚又は毛髪に当該組成物を適用することをユーザに指示する指示書を含む。
【0013】
本明細書で使用するとき、「局所適用」とは、例えば、手、又は拭き取り用品、ローラー若しくはスプレーなどのアプリケータを使用することによって、外皮、頭皮又は毛髪に直接塗るか又は広げることを意味する。
【0014】
本明細書で使用するとき、「化粧用として許容可能な」とは、この用語が説明する成分が、過度の毒性、不適合性、不安定性、刺激、アレルギー反応などなく、組織(例えば、皮膚又は毛髪)と接触して使用するのに好適であることを意味する。
【0015】
本発明で使用するとき、「活性薬剤」とは、皮膚又は毛髪への、美容的又は治療的な効果を有する化合物(合成又は天然)である。
【0016】
本発明で使用するとき、「化粧用」は、具体的には組織又は皮膚の外観に関する場合、身体的に美しい外観を保つ、回復させる、与える、装う、若しくは高める、又は美しさ若しくは若々しさが増すように見える美化物質、又は製剤を指す。
【0017】
本発明で使用するとき、「化粧用として有効な量」とは、皮膚老化の1つ以上の兆候を治療又は予防するのに十分であるが、重度の副作用を回避するために十分に低い量を意味する。化合物又は組成物の化粧用としての有効量は、治療する特定の状態、最終使用者の年齢及び健康状態、治療/防止する状態の重症度、治療の期間、他の治療の性質、使用する特定の化合物又は製品/組成物、利用する特定の化粧用として許容可能なキャリア、及び同様の要因によって変化する。
【0018】
本明細書で使用するとき、「兆候若しくは老化」又は「皮膚老化の兆候」は、小じわ及び深いしわを含むしわの存在、弾力喪失、不均一な皮膚、シミ、皮膚の厚みの減少、及びコラーゲン、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、エラスチン、又はフィブロネクチンを含む糖タンパク質の異常な合成又は合成の減少を含む。一実施形態では、老化の兆候は、しわ、小じわ、深いしわの存在、弾力喪失、及びコラーゲン、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、エラスチン、又はフィブロネクチンを含む糖タンパク質の異常な合成又は合成の減少から選択される。
【0019】
本明細書で使用するとき、「しわ」は、細かい小じわ、細かいしわ、又は粗いしわを含む。しわの例としては、目の周囲の細かい小じわ(例えば、「目尻のしわ」)、額及び頬のしわ、眉間の小じわ、並びに口の周囲の笑い小じわが挙げられるが、これらに限定されない。
【0020】
本明細書で使用するとき、「弾性の喪失」には、たるみ、弛緩及び緩んだ組織を含むが、これらに限定されない皮膚又は組織の弾性又は構造的完全性の喪失を含む。弾性、又は組織の構造的完全性の喪失は、疾患、老化、ホルモン変化、機械的外傷、環境損傷、又は化粧料若しくは医薬品などの製品の組織への適用の結果を含むが、これらに限定されない、多数の要因の結果であり得る。
【0021】
本明細書で使用するとき、「不均一な皮膚」とは、炎症後色素沈着過剰などの色素沈着過剰に分類され得る、びまん性又は斑点模様の色素沈着に関連する皮膚の状態を意味する。
【0022】
本明細書で使用するとき、「シミ」とは、赤み又は紅斑に関連する皮膚の状態を意味する。
【0023】
本明細書で使用するとき、「皮膚の張りの改善」とは、皮膚の張り若しくは弾性の強化、皮膚の張り若しくは弾性の喪失の予防、又はたるみ、弛緩及び緩んだ皮膚の予防若しくは治療を意味する。皮膚の張り又は弾性は、キュートメータを使用することによって測定することができる。Handbook Of Non-Invasive Methods And The Skin,eds.J.Serup,G.Jemec & G.Grove,Chapter66.1(2006)を参照。皮膚の弾性又は張りの喪失は、老化、環境損傷、又は化粧料の皮膚への適用の結果が挙げられるが、これらに限定されない、多数の要因の結果であり得る。
【0024】
本明細書で使用するとき、「皮膚の質感の改善」とは、皮膚表面における隆起又は裂け目のいずれかを除去するために皮膚の表面を滑らかにすることを意味する。
【0025】
本明細書で使用するとき、「皮膚におけるしわの外観の改善」とは、皮膚におけるしわ及び細かい小じわの形成プロセスを阻止、遅延、停止又は逆行させることを意味する。
【0026】
本明細書で使用するとき、「予防」又は「予防する」とは、所与の状態、疾患、又は疾病にかかるリスクを低下させることを指す。
【0027】
より広範には、本発明の方法及び組成物は、皮膚、爪、及び毛髪に関連する皮膚又は粘膜皮膚組織の感染、乱れ、又は障害;口腔、膣、及び肛門粘膜;角質化障害;炎症;内因性老化及び外因性老化に関連する変化、並びに皮膚系に関連しても関連しなくてもよい他のものを含むが、これらに限定されない、美容的、皮膚科学的、又は他の状態及び障害を治療又は予防するために使用することもできる。所見としては、脂性肌;ニキビ;酒さ;老人性色素斑;シミのある皮膚;シミ;セルライト;皮膚瘤;皮膚炎;皮膚、爪、及び毛髪の感染;フケ;皮膚、爪、及び毛髪の乾燥又はたるみ;乾燥症;炎症又は湿疹;弾力線維症;ヘルペス;皮脂過多;過度に色素沈着した皮膚;魚鱗癬;角化症;黒子;黒皮症;斑状皮膚;須毛部仮性毛包炎;光老化及び光損傷;そう痒症;乾癬;皮膚のしわ;ストレッチマーク;皮膚、爪甲、及び毛髪の薄化;いぼ;深いしわ;口腔又は歯肉の疾患;刺激を受けた、炎症を起こした、赤い、不健康な、損傷した又は異常な粘膜、皮膚、毛髪、爪、鼻孔、外耳道、肛門、又は膣の状態;皮膚成分の破壊、合成欠損、又は修復;コラーゲン、グリコサミノグリカン、プロテオグリカン、及びエラスチンの異常な合成又は合成の減少、並びに真皮におけるこのような成分のレベルの低下;不均一な皮膚色調;皮膚、爪、及び毛髪の不均一できめの粗い表面;皮膚、爪、及び毛髪の弾力性、弾力、及び回復性の喪失又は低減;弛緩;皮膚、爪、及び毛髪の潤滑性及び艶の欠如;もろく、裂けやすい爪及び毛髪;黄変皮膚;反応性、刺激性、又は毛細血管拡張性の皮膚;並びに光沢がなく、より老けて見える皮膚、爪、及び毛髪が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、本発明の組成物は、皮膚、爪、及び毛髪の一般的なケアのために;皮膚のきめ及び毛穴、はがれやすさ及び赤みを改善するために;皮膚を柔らかく、滑らかで、フレッシュで、バランスのとれた、視覚的に透明感があり、均一な色調であり、かつより明るいものにするために;皮膚のふくよかさ及びふっくらさを増加させるため;並びに皮膚を白く、色を薄くするため、及び創傷治癒のために;脇の下、股、掌、又は身体の他の部分の発汗又は蒸泄を低減又は防止するために使用することができる。
【0028】
本明細書で使用するとき、「対象」という用語は、ヒトを意味する。対象は、40歳以下である「若年」対象であってもよい。対象は、35歳以下であってもよい。対象は、20~35歳であってもよい。
【0029】
本明細書で使用するとき、「急速老化皮膚」とは、より高齢の暦年齢を有する皮膚と同様の1つ以上の老化の無症状兆候を示す皮膚を意味する。
【0030】
本明細書で使用するとき、「緩徐老化皮膚」とは、かかる皮膚の暦年齢と一致する1つ以上の老化の無症状兆候を示す皮膚を意味する。
【0031】
本明細書で使用するとき、「老化の無症状兆候」とは、まだ視覚的に認識されていない細胞的老化兆候又は分子的老化兆候などの表現型特徴を意味する。
【0032】
本明細書で使用するとき、「対照」とは、試験される皮膚サンプルと実質的に同じ、すなわち、約5年前後以内の暦年齢を有する皮膚の参照値を意味する。
【0033】
特に指示がない限り、百分率又は濃度は、重量百分率又は重量濃度(すなわち、%(W/W))を指す。特に明記しない限り、全ての範囲は、両端点を包含し、例えば、「4~9」は、両端点の4と9とを含む。
【0034】
急速老化皮膚を診断する方法
本発明は、対象における急速老化皮膚を診断する方法に関する。
【0035】
好ましくは、対象は、若年対象である。
【0036】
好ましくは、皮膚は、顔面皮膚である。例えば、皮膚は、頬、額、顎、目の周り、又は首由来であってもよい。しかしながら、身体の任意の他の部分、例えば、腕、手、胴、又は脚由来の皮膚を使用してもよい。
【0037】
好ましくは、皮膚サンプルは、角質層由来である。
【0038】
本方法は、対象の皮膚サンプルにおいて、細胞増殖速度、NFKB1遺伝子発現、CDKN1A遺伝子発現、CDKN2A遺伝子発現、CEBPB遺伝子発現、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される特性を測定することを含む。
【0039】
本方法は、皮膚サンプルにおいて、細胞増殖速度、並びにNFKB1、CDKN1A、CDKN2A、CEBPB、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される遺伝子の発現を測定することを含んでもよい。
【0040】
本方法は、40歳以下の対象の皮膚サンプルにおいて、細胞増殖速度、並びにNFKB1、CDKN1A、CDKN2A、CEBPB、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される遺伝子の発現を測定することを含んでもよい。
【0041】
サンプルは、パンチ生検又は非侵襲的方法、例えば、テープ剥離、SkinSkanなどの機器若しくは他の類似の方法を使用することによるインビボトリプトファン蛍光測定、共焦点ラマン顕微鏡法若しくは反射率共焦点顕微鏡法若しくは他の顕微鏡法/分光法、マイクロニードルパッチ、又は他のタイプの接着パッチベースの皮膚生検装置を含む、当該技術分野で既知の様々な方法で収集されてもよい。
【0042】
好ましくは、サンプルは、非侵襲的方法によって収集される。
【0043】
サンプルは、細胞増殖速度について分析され得る。かかる事例では、サンプルの皮膚線維芽細胞集団倍加時間(例えば、日数)が当該技術分野で既知の方法を使用して測定され得る。例えば、以下の実施例1に記載の増殖アッセイを使用して、細胞増殖速度を測定することができる。
【0044】
集団倍加時間が少なくとも4日である皮膚は、急速老化皮膚と診断され得る。
【0045】
サンプルは、以下の遺伝子発現のうちの1つ以上について分析され得る。トランスクリプトーム分析法は当該技術分野で周知である。例えば、以下の実施例2に記載のトランスクリプトーム分析法が使用されてもよい。
【0046】
サンプルは、NFKB1遺伝子発現について分析され得る。
【0047】
NFKB1遺伝子発現が対照と比較してアップレギュレートされている皮膚は、急速老化皮膚と診断され得る。
【0048】
サンプルは、CDKN1A遺伝子発現について分析され得る。
【0049】
CDKN1A遺伝子発現が対照と比較してアップレギュレートされている皮膚は、急速老化皮膚と診断され得る。
【0050】
サンプルは、CDKN2A遺伝子発現について分析され得る。
【0051】
CDKN2A遺伝子発現が対照と比較してアップレギュレートされている皮膚は、急速老化皮膚と診断され得る。
【0052】
サンプルは、CEBPB遺伝子発現について分析され得る。
【0053】
CEPBP遺伝子発現が対照と比較してアップレギュレートされている皮膚は、急速老化皮膚と診断され得る。
【0054】
上記の遺伝子のうちの1つは、その発現が、約±5歳以内のドナー由来の線維芽細胞集団における同じ遺伝子の平均発現よりも少なくとも約20%高い場合、アップレギュレートされているとみなされ得る。
【0055】
上記の遺伝子のうちの1つは、その発現が、約±5歳以内のドナー由来の線維芽細胞集団における同じ遺伝子の平均発現よりも少なくとも約30%高い場合、アップレギュレートされているとみなされ得る。
【0056】
急速老化皮膚の治療の有効性を評価する方法
本発明は、急速老化皮膚の治療の有効性を評価する方法も提供する。
【0057】
対象及び皮膚は、上記のように選択及び収集されてもよい。対象は、40歳以下であってもよい。
【0058】
本方法は、最初に、対象の皮膚に評価される治療を適用することを含む。次に、以下の特性:細胞増殖速度、NFKB1遺伝子発現、CDKN1A遺伝子発現、CDKN2A遺伝子発現、CEBPB遺伝子発現、及びそれらの組み合わせのうちの1つが対象の皮膚サンプルで測定されてもよい。細胞増殖が、NFKB1遺伝子発現、CDKN1A遺伝子発現、CDKN2A遺伝子発現、及びCEBPB遺伝子発現のうちの1つ以上とともに測定されてもよい。
【0059】
任意選択で、対象の皮膚に治療を適用する前に、同じ特性のうちの1つ以上が最初に測定されて、ベンチマークを提供することができる。これらは対照として使用されてもよい。
【0060】
サンプルは、本明細書に記載されるように細胞増殖速度について分析され得る。例えば、以下の実施例1に記載の増殖アッセイを使用して、細胞増殖速度を測定することができる。
【0061】
治療により、皮膚サンプルに4日未満の集団倍加時間が提供される場合、それは、急速老化皮膚の治療に有効であるとみなされ得る。
【0062】
サンプルは、以下の遺伝子発現のうちの1つ以上について分析され得る。トランスクリプトーム分析法は当該技術分野で周知である。例えば、以下の実施例2に記載のトランスクリプトーム分析法が使用されてもよい。
【0063】
サンプルは、NFKB1遺伝子発現について分析され得る。
【0064】
治療により、NFKB1遺伝子発現のダウンレギュレーションが提供される場合、それは、急速老化皮膚の治療に有効であるとみなされ得る。
【0065】
サンプルは、CDKN1A遺伝子発現について分析され得る。
【0066】
治療により、CDKN1A遺伝子発現のダウンレギュレーションが提供される場合、それは、急速老化皮膚の治療に有効であるとみなされ得る。
【0067】
サンプルは、CDKN2A遺伝子発現について分析され得る。
【0068】
治療により、CDKN2A遺伝子発現のダウンレギュレーションが提供される場合、それは、急速老化皮膚の治療に有効であるとみなされ得る。
【0069】
サンプルは、CEBPB遺伝子発現について分析され得る。
【0070】
治療により、CEBPB遺伝子発現のダウンレギュレーションが提供される場合、それは、急速老化皮膚の治療に有効であるとみなされ得る。
【0071】
分析される遺伝子の発現を少なくとも約20%減少させる場合、上記の治療のうちの1つが有効であるとみなされ得る。
【0072】
分析される遺伝子の発現を少なくとも約30%減少させる場合、上記の治療のうちの1つが有効であるとみなされ得る。
【0073】
治療
治療には、皮膚状態、疾患、又は障害のあらゆる改善、予防、又は逆転手段が含まれる。治療は、物理的に(例えば、識別可能な症状の安定化)若しくは生理学的に(例えば、物理的パラメータの安定化)のいずれかで、又はそれらの両方で、かかる皮膚状態、疾患、又は障害を抑制する、その進行を遅らせる、又はその発症を遅延させることができる。
【0074】
治療は、局所適用によって投与されてもよい。
【0075】
治療は、経口投与、すなわち、摂取可能物として投与されてもよい。
【0076】
治療は、化粧品組成物の局所適用であってもよい。
【0077】
この組成物は、1つ以上の活性薬剤を含んでもよい。活性薬剤は、美容的に許容される活性薬剤であってもよい。活性薬剤は、老化防止剤であってもよい。
【0078】
美容的に許容される活性薬剤としては、例えば、老化防止剤、抗ニキビ剤、光沢調整剤、抗菌剤、抗炎症剤、抗真菌剤、抗寄生虫剤、外用鎮痛剤、日焼け止め剤、光防護剤、酸化防止剤、角質溶解剤、界面活性剤、保湿剤、栄養素、ビタミン、エネルギー増強剤、制汗剤、収斂剤、デオドラント、固化剤、皮膚硬化防止剤、並びに毛髪及び/又は皮膚コンディショニング用の薬剤が挙げられる。
【0079】
組成物中の美容的に許容される活性薬剤の量は、総組成物重量に基づいて、組成物の約0.001重量%~約20重量%、例えば、組成物の約0.01重量%~約5重量%などの組成物の約0.005重量%~約10重量%の範囲であってもよい。
【0080】
活性薬剤は、例えば、アルファヒドロキシ酸、ポリヒドロキシ酸、N-アシルジペプチド誘導体を含むジペプチド、トリペプチド、過酸化ベンゾイル、D-パンテノールカロチノイド、パルミチン酸レチノール及びレチニルなどのレチノイド、セラミド、多不飽和脂肪酸、必須脂肪酸、ラッカーゼなどの酵素、酵素阻害剤、ミネラル、エストロゲンなどのホルモン、ヒドロコルチゾンなどのステロイド、2-ジメチルアミノエタノール、塩化銅などの銅塩、アルジレリン及びシンエイクなどのペプチド、銅を含有するもの、コエンザイムQ10、プロリンなどのアミノ酸、ビタミン、ラクトビオン酸、アセチル-コエンザイムA、ナイアシン、リボフラビン、チアミン、リボース、NADH及びFADH2などの電子輸送体、アロエベラ、ナツシロギク、オートミール、ディル、ブラックベリー及びキリなどの天然抽出物、4-ヘキシルレゾルシノールなどのレゾルシノール、クルクミノイド、並びにそれらの誘導体及び混合物から選択されてもよい。
【0081】
ビタミンの例としては、ビタミンA、ビタミンB群(例えば、ビタミンB3、ビタミンB5、及びビタミンB12)、ビタミンC、ビタミンK、及びビタミンEの異なる形態、例えば、α、β、γ、若しくはδトコフェロール、又はこれらの混合物及び誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
他のヒドロキシ酸の例としては、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、サリチル酸、クエン酸、及び酒石酸が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
酸化防止剤の例としては、水溶性酸化防止剤、例えば、スルフヒドリル化合物及びその誘導体(例えば、二亜硫酸ナトリウム及びN-アシル-システイン)、リポ酸及びジヒドロリポ酸、レスベラトロール、ラクトフェリン、並びにアスコルビン酸及びアスコルビン酸誘導体(例えば、パルミチン酸アスコルビル及びアスコルビルポリペプチド)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の組成物に使用するのに好適な油溶性酸化防止剤としては、ブチル化ヒドロキシトルエン、レチノイド(例えば、レチノール及びパルミチン酸レチニル)、トコフェロール(例えば、酢酸トコフェロール)、トコトリエノール、及びユビキノンが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の組成物において使用するのに好適な酸化防止剤を含有する天然抽出物としては、フラボノイド及びイソフラボノイドを含有する抽出物、並びにその誘導体(例えば、ゲニステイン及びダイゼイン)、レスベラトロールを含有する抽出物などが挙げられるが、これらに限定されない。このような天然抽出物の例としては、ブドウ種子、緑茶、松の樹皮、及びプロポリスが挙げられる。
【0084】
化粧品組成物は、美容的に許容される局所キャリアを更に含んでもよい。本キャリアは、組成物の約25重量%~約99.99重量%(例えば、組成物の約80重量%~約99重量%)を構成してもよい。本発明の好ましい実施形態では、化粧用として許容可能な局所用キャリアには水が含まれる。
【0085】
組成物は、ローション、クリーム、ゲル、スティック、スプレー、軟膏、クレンジング液体洗浄剤及び固形バー、シャンプー及びヘアコンディショナー、ヘアフィクサー、ペースト、フォーム、パウダー、ムース、シェービングクリーム、拭き取り用品、パッチ、ヒドロゲル、フィルム形成製品、フェイシャルマスク及びスキンマスク、フィルム、並びにファンデーション及びマスカラなどのメークアップを含むが、これらに限定されない、多種多様な製品の種類へと作製されてもよい。これらの製品の種類としては、溶液、懸濁液、マイクロエマルション及びナノエマルションなどのエマルション、ゲル、固形物、及びリポソームが挙げられるが、これらに限定されない、様々な化粧用として許容可能な局所用キャリアを含有し得る。以下は、このようなキャリアの非限定例である。当業者によって他の担体を製剤化することもできる。
【0086】
本発明に有用な組成物は溶液として配合することができる。溶液は、典型的には、水性又は有機溶媒(例えば、約50%~約99.99%又は約90%~約99%の化粧用として許容可能な水性又は有機溶媒)を含む。好適な有機溶媒の例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセロール、1,2,4-ブタントリオール、ソルビトールエステル、1,2,6-ヘキサントリオール、エタノール、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0087】
本発明に有用な組成物は、皮膚軟化剤を含む溶液として配合することができる。このような組成物は、好ましくは、約2%~約50%の皮膚軟化剤を含有する。本明細書で使用するとき、「皮膚軟化剤」とは、皮膚からの経皮水分喪失を防止することなどにより、乾燥状態の防止又は緩和のために使用する材料を指す。皮膚軟化剤の例としては、International Cosmetic Ingredient Dictionary and Handbook,eds.Pepe、Wenninger、McEwen編、pp.2930-36(The Cosmetic,Toiletry,and Fragrance Assoc,Washington,D.C.,9th Edition,2002)(以後、「ICI Handbook」)に記載されるものなどが挙げられるが、これに限定されない。特に好適な皮膚軟化剤の例としては、植物油、鉱油、脂肪エステルなどが挙げられる。
【0088】
ローションはそのような溶液から作製され得る。ローションは、典型的には、約1%~約20%(例えば、約5%~約10%)の皮膚軟化剤及び約25%~約90%(例えば、約60%~約80%)の水を含有する。
【0089】
溶液から製剤化できる別の種類の製品はクリームである。クリームは、典型的には、約5%~約50%(例えば、約10%~約20%)の皮膚軟化剤及び約25%~約85%(例えば、約50%~約75%)の水を含有する。
【0090】
本発明の組成物は、水を含んでよいか、別の方法としては無水物であってよいか、又は、水を含まないが、有機及び/若しくはシリコーン溶媒、油、脂質、及びワックスを含む軟膏であってよい。軟膏は、動物油又は植物油の単純な塩基又は半固体の炭化水素を含有してもよい。軟膏は、約2%~約10%の皮膚軟化剤と、約0.1%~約2%の増粘剤とを含有し得る。増粘剤の例としては、ICI Handbookのpp.2979-84に記載されるものが挙げられるが、これに限定されない。
【0091】
組成物は、エマルションとして配合されてもよい。局所用キャリアがエマルションである場合、約1%~約10%(例えば、約2%~約5%)の局所用キャリアが乳化剤を含有する。乳化剤は、非イオン性、アニオン性、又はカチオン性であってもよい。乳化剤の例としては、ICI Handbook,pp.2962-71に記載のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0092】
ローション及びクリームを、エマルションとして製剤化することができる。典型的には、このようなローションは、0.5%~約5%の乳化剤を含有する。このようなクリームは、典型的には、約1%~約20%(例えば、約5%~約10%)の皮膚軟化剤と、約20%~約80%(例えば、約30%~約70%)の水と、約1%~約10%(例えば、約2%~約5%)の乳化剤とを含有する。
【0093】
水中油型及び油中水型の、ローション及びクリームなどの単一エマルションのスキンケア製剤は、化粧品技術分野で周知であり、本発明に有用である。水中油中水型又は油中水中油型などの多相エマルション組成物もまた、本発明に有用である。概して、そのような単相又は多相のエマルションは、必須成分として水、皮膚軟化剤、及び乳化剤を含有する。
【0094】
本組成物は、ゲル(例えば、好適なゲル化剤を使用した、水性、アルコール性、アルコール/水性、又は油性ゲル)として製剤化することもできる。水性及び/又はアルコール性ゲル用の好適なゲル化剤には、天然ゴム、アクリル酸及びアクリレートのポリマー及びコポリマー、並びにセルロース誘導体(例えば、ヒドロキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロース)が挙げられるが、これらに限定されない。油(鉱油など)に好適なゲル化剤としては、水素添加ブチレン/エチレン/スチレンコポリマー及び水素添加エチレン/プロピレン/スチレンコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。このようなゲルは、典型的には、約0.1重量%~5重量%のこのようなゲル化剤を含有する。
【0095】
本組成物は、固形製剤(例えば、ワックスベースのスティック、固形石鹸組成物、パウダー、又はパウダーを含むワイプ)に製剤化することもできる。
【0096】
組成物は、上記の成分に加えて、皮膚及び毛髪において使用するための組成物で従来より使用されている多種多様な追加の油溶性材料及び/又は水溶性材料を、当該技術分野で確立された濃度で含有していてよい。
【0097】
様々なその他の材料も、当該技術分野において周知のように、本組成物中に存在してよい。これらは、保湿剤、pH調整剤、キレート剤(例えば、EDTA)、香料、染料、及び防腐剤(例えば、パラベン)を含む。
【0098】
本組成物及びかかる組成物を含む製品は、当該技術分野で周知の方法を使用して調製されてもよい。
【0099】
一実施形態では、本組成物は、低pHを有する。例えば、pHは約4未満又は約3.3未満であってよい。しかしながら、組成物は低pHを有する必要はない。
【0100】
局所用組成物は、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、又はグルコノラクトンなどの緩衝剤を含んでいてよい。好ましくは、緩衝剤は乳酸である。
【0101】
典型的には、本組成物は、約3~約12、又は約4~約8重量パーセントの緩衝剤を含有する。
【0102】
急速老化皮膚の治療用の活性薬剤をスクリーニングする方法
本発明は、以下のように急速老化皮膚の治療用の活性薬剤をスクリーニングする方法を提供する。
【0103】
対象及び皮膚は、上記のように選択及び収集されてもよい。
【0104】
スクリーニングされる活性薬剤としては、上記のものが挙げられる。例えば、スクリーニングされる活性薬剤は、老化防止活性薬剤であってもよい。
【0105】
本方法は、(a)皮膚サンプルに活性薬剤を適用することと、(b)当該皮膚サンプルにおいて、細胞増殖速度、NFKB1遺伝子発現、CDKN1A遺伝子発現、CDKN2A遺伝子発現、CEBPB遺伝子発現、及びそれらの組み合わせから選択される特性を測定することと、(c)当該特性を対照と比較することと、(d)当該対照と比較して、皮膚線維芽細胞集団倍加時間の減少、NFKB1遺伝子発現のダウンレギュレーション、CDKN1A遺伝子発現のダウンレギュレーション、CDKN2A遺伝子発現のダウンレギュレーション、及びCEBPB遺伝子発現のダウンレギュレーションのうちの少なくとも1つを提供する当該活性薬剤を選択することと、を含む。
【0106】
本方法は、(a)40歳以下の対象由来の皮膚サンプルに当該活性薬剤を適用することと、(b)当該皮膚サンプルにおいて、細胞増殖速度、並びにNFKB1、CDKN1A、CDKN2A、CEBPB、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される遺伝子の発現を測定することと、(c)当該測定を対照と比較することと、(d)当該対照と比較して、皮膚線維芽細胞集団倍加時間の減少、NFKB1遺伝子発現のダウンレギュレーション、CDKN1A遺伝子発現のダウンレギュレーション、CDKN2A遺伝子発現のダウンレギュレーション、及びCEBPB遺伝子発現のダウンレギュレーションのうちの少なくとも1つを提供する当該活性薬剤を選択することと、を含んでもよい。
【0107】
サンプルは、本明細書に記載されるように細胞増殖速度について分析され得る。例えば、以下の実施例1に記載の増殖アッセイを使用して、細胞増殖速度を測定することができる。
【0108】
サンプルは、当該技術分野で周知のトランスクリプトーム分析法を使用して遺伝子発現について分析され得る。例えば、以下の実施例2に記載のトランスクリプトーム分析法が使用されてもよい。
【実施例1】
【0109】
若年ドナー及び高齢ドナー由来の皮膚細胞の増殖速度を、以下の研究において試験した。結果を、皮膚科医によるドナーの専門家臨床等級と比較した。
【0110】
志願者を2つの群に分けた。
群1:年齢範囲20~33歳の「若年ドナー」(n=9)、及び
群2:年齢範囲61~68歳の「高齢ドナー」(n=9)。
【0111】
細胞増殖速度を以下のように分析した。皮膚線維芽細胞を、前腕掌側から採取した2つの3mmパンチ生検の成長分から単離し、5%CO2及び37℃の90%加湿インキュベーター中、10%ウシ胎児血清、1%ファンギゾン、0.04%de Gentamycin、及び1%Glutamaxを補充したダルベッコ改変イーグル培地中で培養した。細胞を増幅し、毎週継代した。
【0112】
両群由来の線維芽細胞を、以下の増殖アッセイを使用してそれらの増殖速度について評価した。
【0113】
増殖アッセイ
細胞を4.10^4細胞/ウェルで24ウェルプレートにプレーティングし、5%CO2及び37℃の90%加湿インキュベーター中、10%ウシ胎児血清、1%ファンギゾン、0.04%de Gentamycin、及び1%Glutamaxを補充したダルベッコ改変イーグル培地中で4日間又は10日間インキュベートした。4日目又は10日目に、細胞を剥離し、Coulter Z1ST(Beckman Coulter France)細胞計数器で計数した。
【0114】
図1は、若年ドナー及び高齢ドナーの増殖速度を示す。これは、ドナーについての0日目、4日目、及び10日目の時間(日数)の平均細胞数(×10,000)に対するドットプロットである。データは、驚くべきことに、一部の若年ドナーが自身の年齢と一致する高い増殖能力を呈する一方で、他のドナーは高齢ドナーで観察された増殖能力と同様の低い増殖能力を示すことを示す。
【0115】
具体的には、表1は、4日目の若年ドナー内及び高齢ドナー内の増殖速度の速い者(high proliferator)及び増殖速度の遅い者(low proliferator)の各々についての平均集団倍加時間(日数での「PD(population doubling time)時間」)を示す。細胞増殖は、10日目に定常に達した。(細胞が集団倍加時間を計算するための増殖期/対数期にあるはずであるため、10日目からの増殖データはこの計算に含めなかった)。
【0116】
表1中:
PD=[ln(収集した細胞数)-ln(播種した細胞数)]/ln(2)
PD時間=[播種と収集との間の日数]/PD。
【0117】
若年ドナー、増殖速度の速い者は、2.76日の平均PD時間を有した。高齢ドナーは、4.43日の平均PD時間を有し、若年ドナー、増殖速度の遅い者は、予想外に、5.44日の平均PD時間を有し、高齢ドナーのPD時間と統計的有意差はなかった。表2は、統計分析の結果を示す。統計分析を、両側スチューデントt検定を使用して行った。
【0118】
【0119】
【表2】
***=統計的に有意
NS=統計的に有意でない
【0120】
同じドナーを、皮膚老化の17個の兆候について皮膚科医が専門的に等級付けした。若年ドナーと高齢ドナーとの間では、17個の兆候のうち13個に統計的有意差があった(両側スチューデントt検定も使用)。しかしながら、17個の兆候のうち3個、すなわち、乾燥、前頭部しわの数、及び前頭部しわの深さにのみ、若年ドナー、増殖速度の速い者と若年ドナー、増殖速度の遅い者との間に有意差があった。
【0121】
驚くべきことに、臨床的老化兆候がほとんどない皮膚が若く見えるある特定の若年ドナーは、高齢ドナー由来の皮膚と一致する程度の低増殖性皮膚細胞を有していた。これは、若年皮膚における無症状老化の存在を示し、かかる若年皮膚が暦年齢と比較して急速に老化していることを示唆する。
【実施例2】
【0122】
トランスクリプトーム分析を、以下のトランスクリプトーム分析を使用して実施例1の若年ドナー由来の線維芽細胞に行った。
【0123】
トランスクリプトーム分析
若年ドナー群由来の細胞を80~90%コンフルエンスで採取し、ペレット化し、凍結した。RNeasy Plus Mini Kit(Qiagen,France)をQiacubeとともに製造業者の指示に従って使用して、全RNAを抽出した。全RNAをトランスクリプトームマイクロアレイプロファイリングに供した。
【0124】
トランスクリプトームアレイデータの場合、limma Rパッケージに実装されたRMAフレームワークを使用して、バックグラウンド補正に続いて分位正規化(quantile normalization、QN)を行った。この手順は、アレイ間の発現中央値を正規化することを目的とする。正規化前後に広範なデータ可視化を使用してQN及びフィルタリングの影響を適切に評価するために、品質チェックを行った。limmaを使用して差次的分析を行い、増殖速度の速い者、すなわち、老化の遅い者と、増殖速度の遅い者、すなわち、老化の速い者との間で差次的に発現される遺伝子を特定した。その後、fgsea Rパッケージを使用して遺伝子セットエンリッチメント分析(Gene Set Enrichment Analysis、GSEA)を行い、Molecular Signatures Database(https://www.gsea-msigdb.org/gsea/msigdb)精選遺伝子セットを使用してアップレギュレート又はダウンレギュレートされた遺伝子の中で過剰提示される遺伝子のセットを特定した。
【0125】
結果を
図2に示し、これは、高増殖性線維芽細胞と低増殖性線維芽細胞との間の遺伝子発現に関する差次的分析の結果を要約するボルケーノプロットである。青色の点は、低増殖性線維芽細胞でアップレギュレートされた遺伝子を示し、オレンジ色の点は、高増殖性線維芽細胞でアップレギュレートされた遺伝子を示す(FDR q<0.1及び絶対log2 FC>log2(1.2))。黒色で強調表示されている点は、Reactomeデータベースからの老化経路に属する遺伝子に対応する。
【0126】
NFKB1、CDKN1A、CDKN2A、及びCEBPBに関連する遺伝子は、若年ドナー、増殖速度の遅い者の線維芽細胞でアップレギュレートされた。これらのマーカーは、細胞老化に関連することが知られている。
【0127】
これらの結果は、驚くべきことに高齢ドナーで観察された増殖能力と同様の増殖能力を呈する若年ドナーのサブセットの存在を裏付ける。若年低増殖性線維芽細胞は、早期老化の特徴を提示した。老化は、創傷治癒欠陥、しわ、又はたるみのような皮膚老化兆候の出現のみならず、がんなどの加齢性疾患の発症にも寄与することが知られている炎症誘発性微小環境を作り出す。
【0128】
このデータは、若年集団が予想外に皮膚老化の遅い者及び皮膚老化の速い者の両方を含むことを示している。
【0129】
〔実施の態様〕
(1) 若年対象における急速老化皮膚を診断する方法であって、40歳以下の対象の皮膚サンプルにおいて、細胞増殖速度、並びにNFKB1、CDKN1A、CDKN2A、CEBPB、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される遺伝子の発現を測定することを含む、方法。
(2) 前記細胞増殖速度又は遺伝子の前記発現を対照と比較することを更に含む、実施態様1に記載の方法。
(3) 細胞増殖速度の前記対照が、少なくとも4日の皮膚線維芽細胞集団倍加時間である、実施態様2に記載の方法。
(4) 遺伝子の発現の前記対照が、約±5歳以内のドナー由来の線維芽細胞集団における前記遺伝子の平均発現よりも少なくとも約20%高い発現である、実施態様2に記載の方法。
(5) 前記対象が20~35歳である、実施態様1に記載の方法。
【0130】
(6) 前記皮膚サンプルが、テープ剥離、インビボトリプトファン蛍光測定、顕微鏡法/分光法、マイクロニードルパッチ、及び接着パッチベースの皮膚生検装置からなる群から選択される非侵襲的方法によって得られる、実施態様1に記載の方法。
(7) 急速老化皮膚の治療の有効性を評価する方法であって、(a)40歳以下の対象の皮膚に前記治療を適用することと、(b)前記対象の皮膚サンプルにおいて、細胞増殖速度、並びにNFKB1、CDKN1A、CDKN2A、CEBPB、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される遺伝子の発現を測定することと、を順に含む、方法。
(8) 前記測定を対照と比較することを更に含む、実施態様7に記載の方法。
(9) 前記治療が、化粧品組成物の局所適用である、実施態様7に記載の方法。
(10) 前記対象が20~35歳である、実施態様7に記載の方法。
【0131】
(11) 急速老化皮膚の治療用の活性薬剤をスクリーニングする方法であって、(a)40歳以下の対象由来の皮膚サンプルに前記活性薬剤を適用することと、(b)前記皮膚サンプルにおいて、細胞増殖速度、並びにNFKB1、CDKN1A、CDKN2A、CEBPB、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される遺伝子の発現を測定することと、(c)前記測定を対照と比較することと、(d)前記対照と比較して、皮膚線維芽細胞集団倍加時間の減少、NFKB1遺伝子発現のダウンレギュレーション、CDKN1A遺伝子発現のダウンレギュレーション、CDKN2A遺伝子発現のダウンレギュレーション、及びCEBPB遺伝子発現のダウンレギュレーションのうちの少なくとも1つを提供する前記活性薬剤を選択することと、を含む、方法。
【国際調査報告】