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特表2024-529003規定のルートに沿った車両の移動に関する車両のエネルギー消費量を予測するための、およびルート設定のための方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】規定のルートに沿った車両の移動に関する車両のエネルギー消費量を予測するための、およびルート設定のための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/36 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
G01C21/36
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506760
(86)(22)【出願日】2022-08-03
(85)【翻訳文提出日】2024-02-16
(86)【国際出願番号】 EP2022071852
(87)【国際公開番号】W WO2023012229
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】102021120212.4
(32)【優先日】2021-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102022118589.3
(32)【優先日】2022-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523064815
【氏名又は名称】ベアウェイズ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ザシャ・クレメント
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン・ハルトマン
【テーマコード(参考)】
2F129
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB20
2F129DD13
2F129DD15
2F129DD19
2F129DD20
2F129DD29
2F129DD45
2F129DD46
2F129DD48
2F129DD49
2F129EE02
2F129EE52
2F129EE62
2F129EE65
2F129EE78
2F129EE79
2F129EE81
2F129FF02
2F129FF15
2F129FF20
2F129FF32
2F129FF36
2F129FF52
2F129FF62
2F129FF63
2F129FF65
2F129FF73
(57)【要約】
本発明は、所与の出発地と所与の目的地との間の規定のルートに沿った車両、特にバッテリ電気自動車(BEV)またはハイブリッド電気自動車(HEV)の移動に関する車両のエネルギー消費エネルギー消費量を予測する方法に関する。この方法は、車両のエネルギー消費量モデルの1つまたは複数のエネルギー消費量影響パラメータのセットのそれぞれの値を取得するステップ、特に入力データに基づいて計算するステップ、または受信するステップを含む。エネルギー消費量影響パラメータのセットは、エネルギー消費量モデルにおいて、ルートに沿った車両のエネルギー消費量に対する以下の影響係数、すなわち、車両のエネルギー消費量に対する路面依存の影響を規定する表面影響係数(21)と、車両のエネルギー消費量に対する道路の曲率に依存する影響を規定する曲率影響係数(23)と、車両のエネルギー消費量に対する風依存の影響を規定する風影響係数(25)、たとえば、空気抵抗係数と、車両のエネルギー消費量に対する運転スタイルに依存する影響を規定する運転スタイル影響係数(34)と、車両のエネルギー消費量に対する選択された運転者のタイヤ空気圧依存の影響を規定するタイヤ空気圧影響係数(31)と、車両の走行用バッテリのエネルギー供給能力に対する、ならびに/あるいは車両の走行用バッテリのアクティブ冷却および/または加熱システムの、特にバッテリの加熱または冷却のための電力消費量に対する周囲温度依存の影響を規定する、温度関連のバッテリ消費量影響係数(32)と、のうちの1つまたは複数を表す。この方法はさらに、ルート(特にその長さ)と、エネルギー消費量モデルと、エネルギー消費量影響パラメータのセットの取得された1つまたは複数の値とに基づいて、そのルートの車両のエネルギー消費量の予測を判定するステップを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所与の出発地と所与の目的地との間の規定のルートに沿った車両の移動に関する前記車両のエネルギー消費量を予測する方法(100)であって、前記方法は、
前記車両のエネルギー消費量モデル(1)の1つまたは複数のエネルギー消費量影響パラメータのセットのそれぞれの値を取得するステップ(S11)であって、前記エネルギー消費量影響パラメータのセットが、前記エネルギー消費量モデルにおいて、前記ルートに沿った前記車両の前記エネルギー消費量に対する以下の影響係数、すなわち、
- 前記車両の前記エネルギー消費量に対する路面依存の影響を規定する表面影響係数(21)と、
- 前記車両の前記エネルギー消費量に対する道路の曲率に依存する影響を規定する曲率影響係数(23)と、
- 前記車両の前記エネルギー消費量に対する風依存の影響を規定する風影響係数(25)と、
- 前記車両の前記エネルギー消費量に対する運転スタイルに依存する影響を規定する運転スタイル影響係数(34)と、
- 前記車両の前記エネルギー消費量に対する選択された運転者のタイヤ空気圧依存の影響を規定するタイヤ空気圧影響係数(31)と、
- 前記車両の走行用バッテリのエネルギー供給能力に対する、ならびに/あるいは前記車両の前記走行用バッテリのアクティブ冷却および/または加熱システムの電力消費量に対する周囲温度依存の影響を規定する、温度関連のバッテリ消費量影響係数(32)と、
のうちの1つまたは複数を表す、取得するステップ(S11)と、
前記ルートと、前記エネルギー消費量モデルと、前記エネルギー消費量影響パラメータのセットの取得された1つまたは複数の値とに基づいて、前記ルートに対する前記車両の前記エネルギー消費量の予測を判定するステップ(S12)と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記エネルギー消費量モデルの前記エネルギー消費量影響パラメータのセットが、以下の追加のエネルギー消費量影響パラメータ、すなわち、
- 前記車両の前記エネルギー消費量に対する車両総質量に依存する影響を規定する質量影響係数(33)と、
- 前記車両の前記エネルギー消費量に対する周囲温度依存の影響を規定する温度影響係数(24)と、
- 前記車両の前記エネルギー消費量に対する標高プロファイルに依存する影響を規定するルートトポロジ影響係数(22)と、
のうちの1つまたは複数をさらに含み、
前記エネルギー消費量影響パラメータのセットの前記それぞれの値を取得する前記ステップ(S11)が、これらの1つまたは複数の追加のエネルギー消費量影響パラメータのそれぞれの値を取得することを含み、
前記ルートの前記車両の前記エネルギー消費量の予測を判定する前記ステップ(S12)が、前記追加のエネルギー消費量影響パラメータの前記取得された1つまたは複数の値にさらに基づく、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記エネルギー消費量影響パラメータのうちの1つまたは複数が、関連する事前定義された基準パラメータへの係数として参照するそれぞれの数値パラメータとしてそれぞれ規定される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ルートがルート区間のセットに分割され、
1つまたは複数のエネルギー消費量影響パラメータのセットのそれぞれの値を取得する前記ステップ(S11)が、前記エネルギー消費量影響パラメータのうちの少なくとも1つについて、ルート区間ごとにそれぞれの区間固有の値を取得することを含み、
前記ルートに対する前記車両の前記エネルギー消費量の予測を判定する前記ステップ(S12)が、前記区間固有の値を含む前記エネルギー消費量影響パラメータの前記取得された1つまたは複数の値に基づいて、前記ルート区間のそれぞれについて前記車両のそれぞれの区間固有のエネルギー消費量を計算することと、前記計算された区間固有のエネルギー消費量を統合して、前記ルート全体の前記車両の前記エネルギー消費量を取得することと、を含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
測定された実際のエネルギー消費量、および/または前記ルート全体またはその前記少なくとも1つの道路区間に沿った1台または複数の基準車両の移動に対する前記エネルギー消費量影響パラメータのセットの1つまたは複数の前記エネルギー消費量影響パラメータの実際のそれぞれの測定値を表す取得された消費量データの関数として、前記エネルギー消費量影響パラメータのセットの前記取得された値のうちの1つまたは複数を更新するステップ(S13)をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ルート全体またはその前記少なくとも1つの道路区間についての前記車両の前記エネルギー消費量の前記予測を判定する前記ステップ(S12)が、機械学習ベースの分類子を前記消費量データおよび/または前記エネルギー消費量影響パラメータのセットの前記更新された1つまたは複数の値に適用することにさらに基づく、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記消費量データがトラフィックによって減損したかどうか、また影響を受けている場合にはどの程度まで減損したかを判断するステップと、
前記エネルギー消費量影響パラメータのセットのうちの1つまたは複数の前記値を更新するための基礎として、および/またはその消費量データまたはその構成要素それぞれについて、そのような減損が判定されていない前記ルートについての前記車両の前記エネルギー消費量の前記予測を判定するための基礎として、そのような消費量データまたはその構成要素のみを選択的に使用するステップと、
をさらに含む、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記車両の前記エネルギー消費量モデルの1つまたは複数のエネルギー消費量影響パラメータのセットの前記それぞれの値を取得する前記ステップ(S11)が、
- 前記ルート全体に対する、または、前記ルートがルート区間のセットに分割されている場合、前記ルート区間ごとに個別に対する前記表面影響係数、前記曲率影響係数、および前記ルートトポロジ係数のうちの1つまたは複数のそれぞれの値を事前に計算および/または保存することと、
- 前記ルート全体に対して、または前記ルート区間ごとに個別に判定されたそれぞれの線形近似風向に基づいて、前記風影響係数のそれぞれの値を判定することと、
- 異なる風向のクラスの離散セットに従って前記風向を分類し、異なる車両の進行方向のクラスの離散セットに従って前記車両の進行方向を分類することに基づいて、および、風向のクラスと車両の進行方向のクラスの組み合わせごとに、前記風影響係数のそれぞれの事前設定値を格納する事前定義されたデータ構造から読み取ることで前記風影響係数の前記値を取得することによって、前記風影響係数のそれぞれの値を判定することと、
- 前記ルートが通過する地理的領域に関する気象データに基づいて、前記ルートに沿った移動中に前記車両の前記エネルギー消費量に対する風または気温に関連した重大な影響が予想されるかどうかを予測し、前記風影響係数、前記温度関連のバッテリ消費量係数、および前記予測の結果の関数としての前記温度影響係数のうちの1つまたは複数を使用または無視することと、
- 前記ルートに対する前記車両の前記エネルギー消費量の前記予測を判定するために使用される少なくとも2つの前記影響係数の前記それぞれの取得された値を、許容値のそれぞれの離散的なセットからの離散値によって表し、前記少なくとも2つの影響係数の前記離散値をエンコードして、すべての前記離散値を表すコードを取得し、前記コードの考えられる変形例ごとに、前記車両の前記エネルギー消費量に対する前記少なくとも2つの影響係数の複合影響を表すそれぞれの事前設定値を格納する、事前定義されたデータ構造からの読み取りを通じて、前記車両の前記エネルギー消費量に対する前記少なくとも2つの影響係数の複合影響の値を取得するステップと、
のうちの1つまたは複数を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
- 前記エネルギー消費量モデルによって予測された前記ルートの前記エネルギー消費量と、前記ルートに沿った同じ車両または1台または複数の同等の他の車両に関して取得された、対応する実際に測定されたエネルギー消費量との比較、および
- これまでに発見されていない地理的領域または未知のルート条件を参照する訓練データ、
のうちの1つまたは複数に基づいて前記エネルギー消費量モデルを調整することによって、前記エネルギー消費量モデルを更新するステップ(S14)をさらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
出発地と目的地との間の車両の最適ルートを判定するためのルート設定方法(200)であって、前記ルート設定方法は、
請求項1から9のいずれか一項に記載の方法(100)に従って、前記出発地と前記目的地との間の異なる可能なルートのセットのそれぞれについて前記車両のそれぞれのエネルギー消費量を予測するステップ(S21)と、
前記ルートセット内の前記異なるルートについて前記車両の前記予測されるそれぞれのエネルギー消費量の関数として規定された最適化基準に従って、前記ルートセットの中から最適ルートを選択または提案するステップ(S23)と、
を含む、ルート設定方法。
【請求項11】
前記最適化基準は、前記ルートセットから最適ルートとして選択されるルートが、予測エネルギー消費量が最も低いという点で最適であるように規定される、請求項10に記載のルート設定方法。
【請求項12】
前記車両および前記ルートセット内の各々の前記ルートについて、それぞれの前記ルートに沿った前記出発地と前記目的地との間のそれぞれの移動時間を予測するステップ(S22)をさらに含み、
前記最適化基準は、前記ルートセットから前記最適ルートとして選択または提案されている前記ルートが、同じルートの前記予測エネルギー消費量を反映する係数で重み付けされた予測移動時間が最も短いという点で最適であるように規定される、
請求項10または11に記載のルート設定方法。
【請求項13】
前記出発地と前記目的地の間の異なる可能なルートのセットのそれぞれについて、前記車両のそれぞれのエネルギー消費量を予測する前記ステップが、前記車両の異なるエネルギー消費量関連設定の関数として、前記可能なルートのそれぞれについて前記車両のそれぞれのエネルギー消費量を予測することを含み、
規定された最適化基準に従ってルートセットの中から最適ルートを選択または提案する前記ステップが、前記ルートセット内の前記異なるルートに対する前記車両の前記予測されたそれぞれのエネルギー消費量と前記車両の前記異なる設定との両方の関数として、前記最適ルートをそれぞれ選択または提案することを含む、
請求項10から12のいずれか一項に記載のルート設定方法。
【請求項14】
道路の表面状態を判定する方法(300)であって、前記方法は、
所与の出発地と所与の目的地との間の規定のルートに沿った車両の移動に関する前記車両のエネルギー消費量の基準値を取得するステップと、
前記ルートに沿った前記車両の移動に関する前記車両に関するエネルギー消費量モデル(1)の1つまたは複数のエネルギー消費量影響パラメータのセットのそれぞれの値を取得するステップ(S31)であって、前記エネルギー消費量影響パラメータのセットが、前記エネルギー消費量モデルにおいて、前記ルートに沿った前記車両の前記エネルギー消費量に対する以下の影響係数、すなわち、
- 前記車両の前記エネルギー消費量に対する道路の曲率に依存する影響を規定する曲率影響係数(23)と、
- 前記車両の前記エネルギー消費量に対する風依存の影響を規定する風影響係数(25)と、
- 前記車両の前記エネルギー消費量に対する運転スタイルに依存する影響を規定する運転スタイル影響係数(34)と、
- 前記車両の前記エネルギー消費量に対する選択された運転者のタイヤ空気圧依存の影響を規定するタイヤ空気圧影響係数(31)と、
- 前記車両の走行用バッテリのエネルギー供給能力に対する、ならびに/あるいは前記車両の前記走行用バッテリのアクティブ冷却および/または加熱システムの電力消費量に対する周囲温度依存の影響を規定する、温度関連のバッテリ消費量影響係数(32)と、
- 前記車両の前記エネルギー消費量に対する車両総質量に依存する影響を規定する質量影響係数(33)と、
- 前記車両の前記エネルギー消費量に対する周囲温度依存の影響を規定する温度影響係数(24)と、
- 前記車両の前記エネルギー消費量に対する標高プロファイルに依存する影響を規定するルートトポロジ影響係数(22)と、
のうちの1つまたは複数を表す、ステップ(S31)と、
前記エネルギー消費量モデル(1)において前記車両の前記エネルギー消費量に対する路面依存の影響を規定する表面影響係数(21)の値を推定するステップ(S33)と、
前記ルート、前記エネルギー消費量モデル、および前記エネルギー消費量影響パラメータのセットの前記取得された1つまたは複数の値に基づいて、道路の表面状態を判定するステップ(S34)と、
を含む、方法(300)。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の方法を実行するための手段を備える、データ処理システム。
【請求項16】
コンピュータまたは分散コンピューティングシステムによってプログラムが実行されると、前記コンピュータまたは前記分散コンピューティングシステムにそれぞれ請求項1から14のいずれか一項に記載の方法を実行させる命令を含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両技術の分野に関し、特に、バッテリ電気自動車(battery electric vehicles: BEV)またはハイブリッド電気自動車(hybrid electric vehicles: HEV)、すなわち、パワートレインが少なくとも部分的にバッテリによって供給される電気エネルギーに依存する車両の分野に関する。具体的には、本発明は、 規定のルートに沿った車両の移動に関する車両のエネルギー消費量を予測するための、および車両の出発地と目的地との間の最適ルートを判定するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリによって提供できる最大エネルギー量、つまり車両の航続距離自体が制限されているため、運転者にとって、車両のエネルギー消費量、特に特定のルートの移動に具体的に関連して、現在のバッテリ充電量が最終目的地までの全ルートを移動するのに十分であるかどうかを知ることが重要である。特に、電気自動車に関しては、航続距離に対する不安が多くの顧客にとって重大な問題となっている。このいわゆる航続距離不安の理由は、一定レベルのバッテリ電力で車両が走行できる残りの航続距離について運転者が不安になることである。これは、電気自動車の航続距離が内燃エンジンを搭載した一般的な自動車と比較してより多くの係数に依存するためだけではなく、充電ステーションのネットワークが(まだ)ガソリンスタンドほど密ではなく、ほとんどの充電ステーションが都市部または高速道路沿いにあるためでもある。それとは別に、特に田舎では、電気自動車の航続可能距離は、路面や道路状況、標高プロファイル、天候などにも大きく依存するため、予測するのが難しい場合がある。
【0003】
したがって、特定のルートを、バッテリを再充電できずにルート沿いのどこかでバッテリ残量を切らさずに走行できるかどうかを運転者がよりよく理解できるようにする必要がある。したがって、規定のルートに沿った車両の移動に関する車両のエネルギー消費量を予測することは、ルート計画において重要な態様となり得る。
【0004】
車両、特にBEVまたはHEVのエネルギー消費量を予測する現在の方法は、ルートに沿った区分の距離と、区間ごとの最大許容速度での車両の平均電力消費率を判定することに大きく依存している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、規定のルートに沿った車両の移動に関する車両のエネルギー消費量の予測を改善する方法およびシステムを提供することである。具体的には、規定のルートに沿った車両の移動に関する車両のエネルギー消費量を予測する効率、有効性、および精度のうちの1つまたは複数を改善することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この問題に対する解決策は、独立請求項の教示によって提供される。本発明のさまざまな好ましい実施形態は、従属請求項の教示によって提供される。
【0007】
本発明の第1の態様は、所与の出発地と所与の目的地との間の規定のルートに沿った車両、特にバッテリ電気自動車(BEV)またはハイブリッド電気自動車(HEV)の移動に関する車両のエネルギー消費量を予測する方法、特にコンピュータで実行される方法を対象とする。本方法は、(i)車両のエネルギー消費量モデルの1つまたは複数のエネルギー消費量影響パラメータのセットのそれぞれの値を取得する(特に入力データに基づいて計算したり、受信したりする)ステップであって、エネルギー消費量影響パラメータのセットが、エネルギー消費量モデルにおいて、ルートに沿った車両のエネルギー消費量に対する以下の影響係数、すなわち、
- 車両のエネルギー消費量に対する路面依存の影響を規定する表面影響係数と、
- 車両のエネルギー消費量に対する道路の曲率に依存する影響を規定する曲率影響係数と、
- 車両のエネルギー消費量に対する風依存の影響を規定する風影響係数(たとえば、空気抵抗係数)と、
- 車両のエネルギー消費量に対する運転スタイルに依存する影響を規定する運転スタイル影響係数と、
- 車両のエネルギー消費量に対する選択された運転者のタイヤ空気圧依存の影響を規定するタイヤ空気圧影響係数と、
- 車両の走行用バッテリのエネルギー供給能力に対する、ならびに/あるいは車両の走行用バッテリのアクティブ冷却および/または加熱システムの電力消費量(特にバッテリの加熱または冷却に使用される)に対する周囲温度依存の影響を規定する、温度関連のバッテリ消費量影響係数と、
のうちの1つまたは複数を表す、取得するステップと、
(ii)ルート(特に長さ)と、エネルギー消費量モデルと、エネルギー消費量影響パラメータのセットの取得された1つまたは複数の値とに基づいて、ルートに対する車両のエネルギー消費量の予測を判定するステップと、
を含む。
【0008】
したがって、車両のエネルギー消費量の判定は、これまでエネルギー消費量の予測に使用されなかったり、エネルギー消費量に基づいて調整されたりしたことのない、1つまたは複数のさらなる影響係数のセットに依存するエネルギー消費量モデルに基づいて行われる。車両のエネルギー消費量は車両の航続距離、つまり現在のバッテリ充電レベルで車両が走行できる距離に関連しているため、エネルギー消費量モデルは航続距離予測モデルを提供するとみなされ得る。したがって、本発明の第1の態様による方法は、実際の車両データ、天気予報、または道路品質情報などのデータを使用してエネルギー消費量を予測し、それによって車両の航続距離を予測するための改善された方法を提供する。これにより、顧客は目的の目的地に到着するための適切なルートを選択できるようになる。
【0009】
本明細書で使用する「車両」という用語は、特にバッテリ電気自動車(BEV)またはハイブリッド電気自動車(HEV)を含む電気自動車を指す。これは、乗用車、トラック、バン、バス、トラクタ、農業機械、電動自転車、電動スクータなどのあらゆる種類の車両を含み得る。電気自動車は特に、自動車を駆動する電気モータを備えている。電気モータはバッテリ、通常は「電気自動車バッテリ(electric vehicle battery)」(「EVB」)または「走行用バッテリ(traction battery)」と呼ばれ得る再充電式バッテリによって電力供給される。走行用バッテリは、プラグまたはその他の電源を介して、たとえば燃料電池を介した水素によって充電できる。
【0010】
本明細書で使用される「ルート」という用語は、特に車両が移動できる出発地と目的地との間の接続を指す。ルートは、舗装された道路(小さな道路から高速道路まで)を含み得るが、野原の小道などの未舗装の小道や、野原、牧草地、砂漠などの規定されていない道も、このような起伏の多い地形を車両で移動できる限り含み得る。ルートは中間点、特に出発地と目的地との間に手動で選択された中間点を含んでもよい。2つの点(始点、終点、および中間点)の間の任意の最小のルート区間は、(手動で選択された)中間点を持たない始点と終点との間の「ルート」とみなされ得ることが理解されるであろう。
【0011】
本明細書で使用される「エネルギー消費量モデル」という用語は、特に車両のエネルギー消費量の概念モデル、特に車両のエネルギー消費量に影響を与える可能性のあるさまざまな係数を表すコンピュータ実装モデルを指す。本明細書で使用される場合、エネルギー消費量は、特に、バッテリ電気自動車(BEV)またはハイブリッド電気自動車(HEV)などの電気自動車のエネルギー消費量を指す。以下でさらに詳しく説明するように、エネルギー消費量モデルは、車両のエネルギー消費量に対する特定の影響係数を表す1つまたは複数のエネルギー消費量パラメータに依存する。エネルギー消費量モデルを実行することにより、特に出発地と目的地との間の規定のルートについて車両のエネルギー消費量を予測することができる。
【0012】
本明細書で使用される「エネルギー消費量影響パラメータ」という用語は、特定の「影響係数」を表すエネルギー消費量モデルのパラメータを特に指す(以下を参照)。「エネルギー消費量影響パラメータ」には、エネルギー消費量モデルでの計算に適した特定の値が特に割り当てられる場合がある。
【0013】
本明細書で使用される「影響係数」という用語は、特に車両のエネルギー消費量に影響を与える係数または態様を指す。より詳細には、エネルギー消費量に何らかの作用を与える係数である。影響(impact)または作用(influence)は、エネルギー消費量の減少または増加のいずれかであってもよい。ただし、一般に「影響係数」という用語は、それぞれの係数がエネルギー消費量に影響を与える可能性があることを意味するが、風がない場合など、特定の係数がエネルギー消費量に影響を与えない状況も発生し得る。
【0014】
データ(たとえば、車両のエネルギー消費量モデルの1つまたは複数のエネルギー消費量影響パラメータのセットの値)を「取得する」という用語は、特に、(i)たとえば1つまたは複数のセンサによって得られた入力データに基づいてデータを計算すること、または(ii)外部データソースからそのデータを受信することを指す。
【0015】
本明細書および特許請求の範囲における「第1」、「第2」、「第3」などの用語は、同様の要素を区別するために使用されており、必ずしも連続的または時系列の順序を説明するために使用されるわけではない。このように使用される用語は、適切な状況下では交換可能であり、本明細書に記載される本発明の実施形態は、本明細書に記載または図示された以外のシーケンスで動作できることを理解されたい。
【0016】
「備える(comprising)」または「含む(including)」という用語が本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、それは他の要素またはステップを排除するものではない。「a」または「an」、「the」などの単数名詞を参照するときに不定冠詞または定冠詞が使用される場合、他に特に記載がない限り、これはその名詞の複数形も含む。
【0017】
さらに、明示的に反対の記載がない限り、「または」は包括的なorを指し、排他的なorを指すものではない。たとえば、条件AまたはBは、以下の、Aが真(または存在)かつBが偽(または存在しない)、Aが偽(または存在しない)かつBが真(または存在)、AとBの両方が真(または存在)、のいずれかによって満たされる。
【0018】
以下に、本方法の好ましい実施形態について説明するが、これらの実施形態は、組み合わせが明示的に除外されるか技術的に不可能でない限り、相互に、または本発明の他の態様と任意に組み合わせることができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、エネルギー消費量モデルのエネルギー消費量影響パラメータのセットが、以下の追加のエネルギー消費量影響パラメータ、すなわち、
- 車両のエネルギー消費量に対する車両総質量に依存する影響を規定する質量影響係数と、
- 車両のエネルギー消費量に対する周囲温度依存の影響を規定する温度影響係数(特に自動運転または高度に自動化された運転の場合)と、
- 車両のエネルギー消費量に対する標高プロファイルに依存する影響を規定するルートトポロジ影響係数(特に自動運転または高度に自動化された運転の場合)と、
のうちの1つまたは複数をさらに含む。
【0020】
そのような実施形態では、エネルギー消費量影響パラメータのセットのそれぞれの値を取得するステップが、これらの1つまたは複数の追加のエネルギー消費量影響パラメータのそれぞれの値を取得する(特に入力データに基づいて計算したり、受信したりする)ことを含み、ルートの車両のエネルギー消費量の予測を判定するステップが、前記追加のエネルギー消費量影響パラメータの取得された1つまたは複数の値にさらに基づく。
【0021】
このような追加のエネルギー消費量影響パラメータを使用すると、特に予測の精度に関して、車両のエネルギー消費量の予測がさらに向上し、それによって車両の残りの航続距離がさらに向上し得る。道路状況、天候、標高プロファイルに関するデータ、およびその他のエネルギー消費量影響パラメータの1つまたは複数に関するデータを含む、上記のデータは、特に実際の車両の静的な式または特性を使用することにより、モデルで使用され得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、エネルギー消費量影響パラメータのうちの1つまたは複数が、関連する事前定義された基準パラメータへの係数として参照するそれぞれの数値パラメータとしてそれぞれ規定される。数値パラメータを使用すると、エネルギー消費量モデルの計算が容易になり得る。参照パラメータを使用すると、手順がさらに容易になり得る。たとえば、基準表面影響パラメータは、基準道路または標準道路の係数1に関連し得る。エネルギー消費量を増加させる路面は、1より大きい係数と関連付けられ得る。エネルギー節約に貢献する他の道路は、係数<1と関連付けられ得る。他のスケールの係数および任意の適切な参照パラメータを実装できることが理解されるであろう。
【0023】
いくつかの実施形態では、ルートがルート区間のセットに分割される。1つまたは複数のエネルギー消費量影響パラメータのセットのそれぞれの値を取得する(特に入力データに基づいて計算したり、受信したりする)ステップは、前記エネルギー消費量影響パラメータのうちの少なくとも1つについて、ルート区間ごとにそれぞれの区間固有の値を取得することを含み得る。さらに、ルートに対する車両のエネルギー消費量の予測を判定するステップは、前記区間固有の値を含むエネルギー消費量影響パラメータの取得された1つまたは複数の値に基づいて、ルート区間のそれぞれについて車両のそれぞれの区間固有のエネルギー消費量を計算することと、計算された区間固有のエネルギー消費量を統合して、ルート全体の車両のエネルギー消費量を取得することと、を含んでいてもよい。
【0024】
ルートをルート区間のセットに分割すると、車両のエネルギー消費量の予測がさらに改善され得る。エネルギー消費量モデルにおいて、上記で説明したルートに沿った車両のエネルギー消費量に対する以下の影響係数の1つまたは複数を表すさまざまなエネルギー消費量影響パラメータは、ルートに沿って変化し得る。したがって、ルートをルート区間に分割すると、特に予測の精度が向上し得る。より詳細には、ルート区間ごとにエネルギー消費量の予測を行うことができ、これは、たとえばルート全体に沿ったエネルギー消費量パラメータの平均値を使用するよりも正確であり得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、方法は、測定された実際のエネルギー消費量、および/またはルート全体またはその前記少なくとも1つの道路区間に沿った1台または複数の基準車両(特に車両自体、同一または同等の車両、または数台の同一または同等の車両の一群)の移動に対するエネルギー消費量影響パラメータのセットの1つまたは複数のエネルギー消費量影響パラメータの実際のそれぞれの測定値を表す取得された消費量データの関数として、エネルギー消費量影響パラメータのセットの取得された値のうちの1つまたは複数を更新する(特に交換または精製する)ステップをさらに含む。実際の測定値(エネルギー消費量自体、またはエネルギー消費量パラメータの1つまたは複数)を考慮すると、エネルギー消費量の予測精度がさらに向上する可能性がある。特に、エネルギー消費量予測は、ルートに沿った移動中に更新できるため、車両がルートに沿って移動するにつれて、ますます正確になる。
【0026】
いくつかの関連する実施形態では、ルート全体またはその前記少なくとも1つの道路区間についての車両のエネルギー消費量の予測を判定するステップが、機械学習ベースの分類子を消費量データおよび/またはエネルギー消費量影響パラメータのセットの更新された1つまたは複数の値に適用することにさらに基づく。消費量データの分類は、消費量データベースに基づいて実行されてもよい。このように、機械学習分類子を訓練することで、予測方法をさらに改善して、より正確な結果を提供できる。これにより、以前の消費量予測を使用して、ルートに沿った将来の移動のエネルギー消費量予測を改善することができる。
【0027】
これらの実施形態のいくつかでは、本方法は、消費量データがトラフィックによって減損したかどうか、また影響を受けている場合にはどの程度まで減損したかを判断するステップと、エネルギー消費量影響パラメータのセットのうちの1つまたは複数の値を更新するための基礎として、および/またはその消費量データまたはその構成要素それぞれについて、そのような減損が判定されていないルートについての車両のエネルギー消費量の予測を判定するための基礎として、そのような消費量データまたはその構成要素のみを選択的に使用するステップと、をさらに含む。前述の影響係数に加えて、交通量も車両のエネルギー消費量の予測に影響を与える可能性がある。たとえば、車両のエネルギー消費量は、車両がブレーキをかける、停止する、加速するなどの頻度によって決まる場合がある。値の更新時にトラフィックから生じる影響を排除すると有利な場合がある。言い換えれば、交通の影響を受けない値、つまり他の道路利用者の世話をする必要なく走行できる車両のエネルギー消費量を表す消費量データのみを更新するために使用され得る。これは特に、トラフィックが予測不可能、または少なくとも予測不可能なパラメータであるためである。機械学習分類子はトラフィック障害のあるデータによって誤解される可能性がある。
【0028】
いくつかの実施形態では、車両のエネルギー消費量モデルの1つまたは複数のエネルギー消費量影響パラメータのセットのそれぞれの値を取得するステップが、
- ルート全体に対する、または、ルートがルート区間のセットに分割されている場合、ルート区間ごとに個別に対する表面影響係数、曲率影響係数、およびルートトポロジ係数のうちの1つまたは複数のそれぞれの値を事前に計算および/または保存することと、
- ルート全体に対して、またはルート区間ごとに個別に判定されたそれぞれの線形近似風向に基づいて、風影響係数のそれぞれの値を判定することと、
- 異なる風向のクラスの離散セットに従って風向を分類し、異なる車両の進行方向のクラスの離散セットに従って車両の進行方向を分類することに基づいて、および、風向のクラスと車両の進行方向のクラスの組み合わせごとに、風影響係数のそれぞれの事前設定値を格納する事前定義されたデータ構造から読み取ることで風影響係数の値を取得することによって、風影響係数のそれぞれの値を判定することと、
- ルートが通過する地理的領域に関する気象データに基づいて、ルートに沿った移動中に車両のエネルギー消費量に対する風または気温に関連した重大な影響が予想されるかどうかを予測し、風影響係数、温度関連のバッテリ消費量係数、および前記予測の結果の関数としての温度影響係数のうちの1つまたは複数を使用または無視することと、
- ルートに対する車両のエネルギー消費量の予測を判定するために使用される少なくとも2つの影響係数のそれぞれの取得された値を、許容値のそれぞれの離散的なセットからの離散値によって表し、前記少なくとも2つの影響係数の離散値をエンコードして、すべての離散値を表すコードを取得し、コードの考えられる変形例ごとに、車両のエネルギー消費量に対する前記少なくとも2つの影響係数の複合影響を表すそれぞれの事前設定値を格納する、事前定義されたデータ構造からの読み取りを通じて、車両のエネルギー消費量に対する前記少なくとも2つの影響係数の複合影響の値を取得するステップと、
のうちの1つまたは複数を含む。
【0029】
このような実施形態は、必要なコンピューティングリソースを削減する効果的な方法を提供し、方法の効率を向上させることができる。特に、正確な値を使用するのではなく、1つまたは複数の影響係数を離散化し、指紋/ビットフィールドのような構造に組み合わせることができる。例示的な実施形態では、たとえば、18ビットで現在の消費状況をエンコードでき、動的影響は2^18=262144個の値のみを有するルックアップテーブルから取得できる。このようなルックアップテーブルは事前に計算することができ、影響計算全体で必要となるのは1回のメモリルックアップだけである。これは、実行時間をさらに短縮するためにハードウェアに実装することもできる。離散化により、モバイルデバイスに送信されるデータの量も削減される可能性がある。つまり、生の気象データではなく、削減されたセットのみが送信され得る(たとえば、温度については3ビット、風向については3ビット)。
【0030】
いくつかの実施形態では、本方法は、エネルギー消費量モデルによってルートの予測されたエネルギー消費量と、ルートに沿った同じ車両または1台または複数の同等の他の車両に関して取得された、対応する実際に測定されたエネルギー消費量との比較、および、これまでに発見されていない地理的領域または未知のルート条件を参照する訓練データ、のうちの1つまたは複数に基づいてエネルギー消費量モデルを調整することによって、エネルギー消費量モデルを更新するステップをさらに含む。予測されたエネルギー消費量と対応するエネルギー消費量を比較すると、予測が改善され得る。たとえば、比較可能な地域、比較可能な車両、比較可能な気象状況のうちの少なくとも1つに関するデータが考慮され得る。
【0031】
本発明の第2の態様は、車両の出発地と目的地との間の最適ルートを判定するためのルート設定方法を対象とし、本ルート設定方法は、(i)先行する請求項のいずれか一項に記載の方法に従って、出発地と目的地との間の異なる可能なルートのセットのそれぞれについて車両(特にバッテリ電気自動車(BEV)またはハイブリッド電気自動車(HEV))のそれぞれのエネルギー消費量を予測するステップと、(ii)ルートセット内の異なるルートについて車両の予測されるそれぞれのエネルギー消費量の関数として規定された最適化基準に従って、ルートセットの中から最適ルートを選択または提案する(特にネットワークベースのルート設定アルゴリズムを使用して)ステップと、を含む。
【0032】
本発明の第2の態様のルート設定方法によれば、上記のエネルギー消費量の予測を利用した、出発地と目的地との間のルート決定方法が提供される。特に電気自動車(BEVまたはHEV)の場合、エネルギー消費量は、最適ルートを選択または提案する場合に興味深い場合があるが、通常、航続距離が広いか、少なくとも設備の整ったガソリンスタンドのネットワーク内で移動できる内燃機関を搭載した一般的な車両のルート計画ではエネルギー消費量はそれほど重要ではない。
【0033】
特に、第2の態様の方法は、以下の実施形態のうちの1つまたは複数に従って実装され得る。
【0034】
第2の態様のルート設定方法のいくつかの実施形態では、最適化基準は、ルートセットから最適ルートとして選択されるルートが、予測エネルギー消費量が最も低いという点で最適であるように規定される。予測されるエネルギー消費量が最も低いルートを選択すると、バッテリ切れを起こさずにそのルートを安全に移動できる可能性がある。それとは別に、エネルギー消費量が最も少ないルートは移動コストを最適化する合理的な選択であり、環境面でも有利である。いくつかの実施形態では、本ルート設定方法は、車両およびルートセット内の各々のルートについて、それぞれのルートに沿った出発地と目的地との間のそれぞれの移動時間を予測するステップをさらに含み、最適化基準は、ルートセットから最適ルートとして選択または提案されているルートが、同じルートの予測エネルギー消費量を反映する係数で重み付けされた予測移動時間が最も短いという点で最適であるように規定される。他のユーザは、目的地により早く到着するために、エネルギー消費量が最も少ないルートよりも、予測移動時間が最も短いルートを好む可能性がある。車両のエネルギー消費量と移動時間は相互に依存する可能性があるため、予測されるエネルギー消費量を反映する係数で移動時間を重み付けすることが有利である。たとえば、移動速度が速いほどエネルギー消費量は多くなり、移動速度が遅いほどエネルギー消費量は低くなる可能性がある。
【0035】
第2の態様のルート設定方法のいくつかの実施形態では、出発地と目的地の間の異なる可能なルートのセットのそれぞれについて、車両のそれぞれのエネルギー消費量を予測するステップが、車両の異なるエネルギー消費量関連設定の関数として、前記可能なルートのそれぞれについて車両のそれぞれのエネルギー消費量を予測することを含み、規定された最適化基準に従ってルートセットの中から最適ルートを選択または提案するステップが、ルートセット内の異なるルートに対する車両の予測されたそれぞれのエネルギー消費量と車両の異なる設定との両方の関数として、最適ルートをそれぞれ選択または提案することを含む。車両のエネルギー消費量は、運転モードを制御する設定または乗員の快適さのための設定など、車両の異なる設定にも依存し得る。したがって、予測されるエネルギー消費量だけでなく、車両の異なる設定も考慮した最適化基準を提供することが有利であり得る。
【0036】
本発明の第3の態様は、道路の表面状態を判定する方法を対象とし、本方法は、
(i)所与の出発地と所与の目的地との間の規定のルートに沿った車両、特にバッテリ電気自動車(BEV)またはハイブリッド電気自動車(HEV)の移動に関する車両のエネルギー消費量の基準値を取得するステップと、
(ii)ルートに沿った車両の移動に関する車両に関するエネルギー消費量モデルの1つまたは複数のエネルギー消費量影響パラメータのセットのそれぞれの値を取得する(特に入力データに基づいて計算したり、受信したりする)ステップであって、
エネルギー消費量影響パラメータのセットが、エネルギー消費量モデルにおいて、ルートに沿った車両のエネルギー消費量に対する以下の影響係数、すなわち、
- 車両のエネルギー消費量に対する道路の曲率に依存する影響を規定する曲率影響係数と、
- 車両のエネルギー消費量に対する風依存の影響を規定する風影響係数と、
- 車両のエネルギー消費量に対する運転スタイルに依存する影響を規定する運転スタイル影響係数と、
- 車両のエネルギー消費量に対する選択された運転者のタイヤ空気圧依存の影響を規定するタイヤ空気圧影響係数と、
- 車両の走行用バッテリのエネルギー供給能力に対する、ならびに/あるいは車両の走行用バッテリのアクティブ冷却および/または加熱システムの電力消費量に対する周囲温度依存の影響を規定する、温度関連のバッテリ消費量影響係数と、
- 車両のエネルギー消費量に対する車両総質量に依存する影響を規定する質量影響係数と、
- 車両のエネルギー消費量に対する周囲温度依存の影響を規定する温度影響係数と、
- 車両のエネルギー消費量に対する標高プロファイルに依存する影響を規定するルートトポロジ影響係数と、
のうちの1つまたは複数を表す、ステップと、
(iii)エネルギー消費量モデルにおいて車両のエネルギー消費量に対する路面依存の影響を規定する表面影響係数の値を推定するステップと、
(iv)ルート、エネルギー消費量モデル、およびエネルギー消費量影響パラメータのセットの取得された1つまたは複数の値に基づいて、道路の表面状態を判定するステップと、
を含む。
【0037】
本発明の第3の態様によれば、エネルギー消費量の予測において表面影響係数として表面状態を利用せず、逆に表面状態がわからないエネルギー消費量モデルを用いて道路の表面状態を判定する方法を提供することができる。この判定されたパラメータは、たとえば他のユーザおよび/または将来のエネルギー消費量予測に使用され得る。
【0038】
本発明の第4の態様は、特に、本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれか1つによって、第1の態様の方法および/または第2の態様および/または第3の態様の方法を実行するための手段を備えるデータ処理システムを対象とする。
【0039】
本発明の第5の態様は、コンピュータまたは分散コンピューティングシステムによってプログラムが実行されると、コンピュータまたは分散コンピューティングシステムにそれぞれ、特に本明細書に記載のそれぞれの実施形態のいずれか1つによる、第1の態様および/または第2の態様および/または第3の態様の方法を実行させる命令を含むコンピュータプログラムまたはコンピュータプログラム製品に関する。
【0040】
コンピュータプログラム(製品)は、特に、方法を実行するための1つまたは複数のプログラムが格納されるデータキャリアの形態で実装され得る。できれば、これはCD、DVD、その他の光学メディア、またはフラッシュメモリモジュールなどのデータキャリアである。これは、コンピュータプログラム製品が、1つまたは複数のプログラムが実行されるプロセッサプラットフォームから独立した個別の製品として取引される場合に有利になり得る。別の実装態様では、コンピュータプログラム製品は、データ処理装置、特にサーバ上のファイルとして提供され、データ接続、たとえばインターネット、または独自のネットワークやローカルエリアネットワークなどの専用データ接続を介してダウンロードできる。
【0041】
したがって、第2の態様のシステムは、コンピュータプログラムが格納されるプログラムメモリを有していてもよい。代替的に、システムは、通信リンクを介して、たとえば1つまたは複数のサーバあるいは他のデータ処理装置など、外部で利用可能なコンピュータプログラムにアクセスするように設定することもでき、それは特に、コンピュータプログラムの実行中に使用されるデータ、またはコンピュータプログラムの出力を表すデータをそれと交換するためである。
【0042】
第1の態様の方法に関連して上述した説明、実施形態、および利点は、本発明の他の態様にも同様に当てはまる。
【0043】
本発明のさらなる利点、特徴、および用途は、以下の詳細な説明および添付の図面で提供される。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】エネルギー消費量モデルの例示的な実施形態を概略的に示す図である。
図2】エネルギー消費量を予測する方法の例示的な実施形態を概略的に示す図である。
図3】ルート設定方法の例示的な実施形態を概略的に示す図である。
図4】本発明による方法の例示的な実施形態を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
図1は、以下に説明するように構築できるエネルギー消費量モデル1の例示的な実施形態を示す。モデル1は、実際の車両データ、天気予報、および道路品質情報などのデータを使用して、車両の航続距離を予測し、出発地と目的地との間の最も効率的なルートを決定するために適用され得る。このような処理全体の概要を以下に説明し、同時に、本発明による方法の例示的な実施形態を図2から図4を参照して説明する。説明したエネルギー消費量モデル1は、適切な場合にはどこにでも適用できることが理解されるであろう。同じことは、例示的な処理の段階1から4の所与の概要にも当てはまり、同様に、適切な場合にはどこにでも、図2から図4に関連して説明される例示的な方法のいずれにも適用することができる。
【0046】
エネルギー消費量モデル1は、それぞれの影響係数を表すさまざまなエネルギー消費量影響パラメータを含み得る。このモデルは、静的車両仕様10、超ローカルな天気および道路状況20、動的使用パラメータ30と呼ばれる、さまざまな種類の影響係数を考慮する。これらのさまざまなパラメータはすべて、何らかの形で車両、特にバッテリ電気自動車(BEV)やハイブリッド電気自動車(HEV)などの電気自動車のエネルギー消費量に影響を与える。それぞれのエネルギー消費量パラメータ10、20、30の値は、以下に説明するように取得できる。パラメータは、車両からのセンサデータの読み取り、外部データソースまたは手動入力からのデータの受信を含む、任意の適切な方法で取得できることが理解されるであろう。
【0047】
バッテリ容量11は車両の仕様から取得され得る。平均消費量12は、車両に提供されるデータセット、たとえばセンサデータから得られるデータセットから取得され得る。同様に、現在の充電量13はそのようなデータセットから取得され得る。それとは別に、バッテリを充電または放電するユーザ規定のレベルに関連し得る充電戦略14を考慮することもできる。ルート設定方法では、たとえば、バッテリが臨界レベルを下回ることを避けるために、充電戦略を考慮して近くの充電ステーションを検索する場合がある。また、充電器プラグタイプ15は、適合する充電ステーションのみを見つけると考えられ得る。このようなデータは、たとえばOpenChargeMapから取得できる。充電戦略には、ユーザの個人的な好み、たとえば自宅の場所にある充電ステーションの好み、考慮すべき最大価格レベル、または急速充電ステーションの好みなど、さらなる制限がさらに含まれ得る。たとえば、自宅または補助金付きの充電ステーションで充電すると、他の場所よりもはるかに安くなり得る。このようなルートオプションを手動で選択することはほぼ不可能である。特に、充電ステーションのネットワークが(まだ)ガソリンスタンドほど密ではなく、ほとんどの充電ステーションが都市部または高速道路沿いにあるため、充電戦略も重要になり得る。また、充電ステーションの密集したネットワークがある場合でも、運転者は続行までの待ち時間に30分も費やしたくないかもしれない。
【0048】
道路状況は車両のエネルギー消費量に大きな影響を与え得る。路面状態21は、たとえばOpenStreetMapの道路種別や路面タグから取得され得る。ルートまたは標高プロファイルのトポロジ22は、デジタルモデル、たとえばSRTMデジタル標高モデルから取得され得る。上り坂の道路区間ではエネルギー消費量が増加するが、下り坂では回生により消費量にプラスの効果が得られる可能性がある。道路の曲率23は、道路区間ごとに計算されてもよいし、地図データまたは車両センサから取得されてもよい。気象条件に関しては、外部(周囲)温度24は気象データまたは車両センサから取得されてもよい。同様に、風データ25は気象データから取得されてもよい。風の強さや風向きにより消費電力が増減し得る。
【0049】
車両のエネルギー消費量はさらに、動的使用パラメータ30、すなわち、旅行ごとに、または旅行中にさえ変化し得るパラメータに依存する可能性がある。タイヤ空気圧31は、それぞれの車両センサから取得することができる。たとえば、タイヤ空気圧が低すぎる状態で走行すると、エネルギー消費量が増加する可能性がある。暖房、換気、空調(Heating, ventilation, and air conditioning: HVAC)32はエネルギー消費量に大きな影響を与える可能性がある。言い換えれば、車両のエネルギー消費量は、ユーザが暖房または空調をオンまたはオフにするときに大きく影響される。車両の質量33は、たとえばそれぞれの座席センサから取得できる乗客の数に依存し得る。追加の荷重または荷物など、車両の質量に影響を与えるその他の要素は、手動で入力されるか、センサデータによって導出されてもよい。運転スタイル34もエネルギー消費量に影響を与える。運転スタイル34は、実際の車両データから取得され得る。
【0050】
図1で説明したエネルギー消費量モデル1を念頭に置き、ここで例としてモデル1をどのように構築し適用できるかを説明する。車両の航続距離はエネルギー消費量に依存するため、エネルギー消費量モデル1は航続距離予測モデルを提供できることが理解されるであろう。以下に説明する処理の概要は、理解を容易にするために4つの段階に分割されている。他のパラメータは道路区間ごとに取得されるのに対し、旅行全体のパラメータの一部を取得すると有利な場合がある。段階1では、エネルギー消費量モデルが構築される。特に、エネルギー消費量パラメータの値は、上でも簡単に説明し、以下でさらに詳しく説明するように取得される。
【0051】
この例では、平均車両消費量12、質量係数33、運転スタイル係数34、およびタイヤ空気圧係数31が旅行全体に対して決定される。平均車両消費量12は、車両の仕様、過去の平均消費量、または同等の地理的領域における同等の車両の平均消費量から決定することができる。質量係数33は、乗客の数と追加の荷重または荷物を考慮して、車両仕様の標準車両よりも車両がどれだけ重いかを規定し得る。これは、手動入力、平均乗客体重(75kgなど)、または重量センサ、ドア開閉イベントなどの車両センサから決定され得る。運転スタイル係数34は、手動入力または測定値から決定でき、たとえば、「運転者が過去に制限速度を超えた頻度」、「決定された消費電力をどのくらいの頻度で超えたか」、「回生を使用した頻度」、「緊急ブレーキがどのくらいの頻度で発生したか」、「ESP、ABSなどのシステムがどのくらいの頻度で作動したか」などである。タイヤ空気圧係数34は、たとえばタイヤ空気圧が最適値よりどれだけ低いかを表し得る。この影響は、物理的な仮定(たとえば、最適な圧力を1バールあたり5%下回る)または車両センサの測定値に基づいて決定されてもよい。
【0052】
前述の影響係数を使用すると、たとえば、平均車両消費量12、質量係数33、運転スタイル係数34、およびタイヤ空気圧係数31を乗算することによって、基本消費量を計算できる。
【0053】
エネルギー消費量影響パラメータの値の取得を続けながら、たとえば、表面影響係数21、曲率影響係数23、風影響係数25、温度関連のエネルギー消費量影響係数24、気象に関連した暖房、換気、空調(HVAC)の消費量プロファイルの影響32、および標高の影響係数22など、特定の影響係数が道路区間ごとに決定され得る。
【0054】
表面影響係数21は、路面の状態に応じて決定されてもよい。たとえば、平坦な道路(値1.0が割り当てられ得る)よりもどのくらい多くの消費量が予想されるかが決定され得る。表面タイプは、OpenStreetMapデータ、衛星画像、または同じ道路または同じ地域内の同等の道路を走行した車両からの車両センサ記録から導出されてもよい。一般的な値は、舗装された滑らかな道路=0.0、舗装された悪路=0.02、圧縮された道路=0.1、未舗装の道路=0.3、砂利道=1.0、ほとんど通行できない道路=10.0、のようになる。
【0055】
曲率影響係数23は、直線道路よりも曲線道路の方がエネルギー消費量が高くなるということを特に表し得る。影響は、地図の道路形状から道路の曲率を導き出すことで判断できる。
【0056】
風影響係数25は、エネルギー消費量に対する風力の影響を表す。向かい風では必要なエネルギーが増加するが、追い風ではエネルギー消費量が減少する。相対的な風の影響は、車両の向き、風向き、風の強さから判断できる。これは、手動入力によって取得された係数、またはたとえばCADデータまたは車両仕様から取得された、車両の形状によって規定された車両固有の空気抵抗/抗力係数によって重み付けされてもよい。風の影響は車両の形状に依存し得るため、車両の形状は関連し得る。車両の空力は空気抵抗に大きな影響を与える。この値は車両によっては一定ではない場合もあり、たとえば、典型的な米国のピックアップトラックの荷台は開いているか閉じているか、または抗力係数を増加させる構造が含まれている場合がある。
【0057】
温度関連のバッテリ消費量影響係数24は、静的な式または特性を使用して決定できる。周囲温度は、約23℃のスイートスポットを下回ったり上回ったりする場合、アクティブなバッテリの加熱または冷却の観点からの消費量、および(化学的)エネルギー損失に影響する。23℃を超える温度では最大35℃までの範囲で消費量の増加が想定され、23℃未満の温度では-7℃までの範囲でさらに高い消費量の増加が想定され得る。たとえば、温度影響係数は、高温の場合は5%、低温の場合は10%に設定されてもよい。車両の特性、または地域/気候帯固有のバッテリ特性が考慮されてもよい。
【0058】
暖房、換気、空調(HVAC)の天候に関連した消費量プロファイルの影響32は、地球規模の気象予測モデルから気象データを取得することによって判定できる。HVACがアクティブな場合、温度に応じて大幅な消費量の増加が想定される。繰り返すが、冬には冷たい空気を加熱するのにコストがかかるため、気温が低いほど消費量が増加する。ここで、HVAC影響係数は、たとえば、高温の場合は20%、低温の場合は70%に設定できる。
【0059】
標高影響係数22は、各道路区間の最大の上り勾配と下り勾配に基づいて決定できる。このデータは、デジタル標高モデル(たとえば、道路区間にマッピングされたグリッド解像度30mのSRTM)から取得され得る。この情報に基づいて、上り坂では消費量が増加し、下り坂ではエネルギーが得られると想定できる。車両にはモータ自体の隣に電力を供給する必要がある他の消費者も存在するため、負の傾きの利点は、回生エネルギーがいつ有効になるかを規定する閾値によって相殺され得る。
【0060】
道路区間内の総消費量は、たとえば、道路区間の長さに基本消費量およびすべての区間関連の影響係数を乗算することで取得できる。したがって、前記ルートに沿った車両の移動に関する車両のエネルギー消費量を予測することができる。
【0061】
段階2では、エネルギー予測を使用して、出発地と目的地との間の最も効率的なルートを見つけることができる。上記のパラメータのすべてまたは一部がわかっている場合、総エネルギー消費量をコスト係数としてルート設定アルゴリズムに統合できるため、最も効率的なルート、または最速と効率の組み合わせ(効率係数とトレードオフ)のルートを選択できる。ルート設定アルゴリズムは、エネルギーを節約する方法の提案を返すこともある(たとえば、回復の使用、HVACまたは個人の運転スタイルが消費量に及ぼす影響を示す)。技術的には、これは、異なる設定(アンサンブル)のセットに対する最適ルートを計算し、現在の設定と比較した消費量の違いを視覚化することで実行できる。
【0062】
このシナリオでは、動的なデータをルート設定アルゴリズムにどのように提供するかが課題となり得る。通常、ルート設定アルゴリズム(双方向A*など)は、ルート設定グラフの多くのエッジを訪問してコストを取得する必要があり、ルート設定グラフのエッジは、1つの道路区間または道路区間の一部を表し得る。したがって、多くの影響係数の複雑な計算は困難であるか、不可能ですらある。以下に説明するように、段階1のように正確な値を計算することなく、道路固有の影響係数を近似するために、段階2でいくつかの単純化ステップを実装することができる。
【0063】
(ほぼ)静的な影響係数(表面、曲率、標高)は、前もって道路区間ごとに事前に計算して保存できる(このステップは表面情報が更新された場合にのみ実行する必要があるが、通常は一定のままである)。風向は、道路区間内のすべてのエッジではなく、一般的な道路区間の方向(出発地から目的地までのベクトル)に対してのみ計算されてもよい。したがって、風向ルックアップの数は大幅に減少する。
【0064】
ルート設定される地域で重大な気象影響が予想される場合、前処理ステップを適用して最初に特定することができる。まず、対象エリアを規定する。たとえば、ルートが存在する可能性が最も高い地域などである。これは、たとえば、出発地と目的地の間の距離よりもある程度大きい、出発地と目的地との間に中心がある長方形、円、または楕円である。次に、関連する温度(温度スイートスポットよりx度以上高い/低い)がこの地域にあるかどうかを評価してもよい。さらに、この地域内の風の強さが特定の閾値を超えているかどうかを評価することもできる。温度も風の強さも閾値を超えていない場合、このルート設定要求の動的な影響係数は固定値1に設定されてもよい。したがって、天気予報の検索は行われず、要求は大幅に高速になる。
【0065】
風向きを取得するには、通常、三角関数の評価が必要であるが、通常は時間がかかる(単純な計算よりも時間がかかる)。したがって、風向きと車両の方向は、方向の離散的なセット(たとえば、8または16の離散方向、たとえば、北=0、北東=1など)に分類されてもよく、三角関数を行列検索に置き換える(たとえば、車両方向が北=0、風向きが南=4の場合、最大の影響を示す値1が返される)。
【0066】
もちろん、これらすべての手順は段階1にも適用できるが、ルート設定アルゴリズムのコスト関数を何千回、何百万回も評価する必要がある場合に最も重要である。
【0067】
さらに別の最適化ステップでは、すべての影響係数は離散化され、指紋/ビットフィールドのような構造で結合され得る。たとえば、3ビットは8つの異なる路面影響クラスをエンコードし、3ビットは8つの車両方向をエンコードし、3ビットは8つの風方向をエンコードし、2ビットは4つの風の強さをエンコードし、3ビットは8つの温度をエンコードし、4ビットは8つの傾斜値をエンコードする(たとえば、上向き/下向きに1ビット、傾斜量をエンコードする3ビット)。したがって、18ビットは現在の消費状況をエンコードし、動的影響は2^18=262144個の値のみを持つルックアップテーブルから取得できる。このルックアップテーブルは事前に計算することができ、影響計算全体で必要となるのは1回のメモリルックアップだけである。
【0068】
上記の最適化手順は、実行時間をさらに短縮するためにハードウェアに実装することもできる。離散化により、モバイルデバイスに送信されるデータの量も削減できる。つまり、生の気象データではなく、削減されたセットのみが送信される(たとえば、温度について3ビット、風向について3ビット)。
【0069】
段階3では、実際の車両データを使用して、道路区間ごとにより正確なエネルギー消費量推定値(消費量プロファイル)を取得できる。この目的のために、電気自動車または車両群で実際の消費量記録が実行されてもよい。消費量値と関連する動的データ(高度、天候、運転スタイル、タイヤ空気圧、車両構成)は、その場所、データ、時刻についてデータベースに保存できる。
【0070】
次に、機械学習分類子を訓練して、消費量データベースに基づいて道路区間固有の消費量を予測できる(上記の単純化ステップも同様に適用できる)。すべてのルート設定要求、範囲予測、または消費量予測について、分類子を評価して、同等の地域、同等の車両、または同等の気象状況から消費量の推定値を取得できる。
【0071】
トラフィックへの影響が不明な場合にのみデータを記録することが望ましい場合がある(これは予測不可能なパラメータであり、分類子に誤解を与える可能性があるため)。非現実的な消費量予測を回避するために、代わりに、または追加で他のフィルタ方法を適用してもよい。機械学習ベースの予測子に基づいて、段階1の静的なおよび動的な式を調整できる。
【0072】
段階4では、実際の消費量値を消費量予測と比較して、(i)予測モデルを継続的に更新するか、(ii)路面影響の推定値を導き出すことができる。エネルギー消費量予測モデルは、たとえば消費量予測があまりにも乖離している場合などに継続的に更新されてもよい。モデルは、これまでに発見されていない領域または未知の条件からのデータを使用して再度訓練することもできる。さらに比較を行って、路面影響を推定することもできる。他のすべての値は利用可能であるが、路面情報がない場合(時間の経過とともに変化する可能性があり、手動による評価ではエラーが発生しやすいため、実際にはこれを取得するのが最も困難である)、路面影響は消費量情報から導き出すことができる。厳密に言えば、表面のタイプから導き出されるのではなく、エネルギー消費量への影響から導き出されてもよい。一般に、これは、デフォルトで路面または道路状態のデータが利用できない道路区間のベースマップ内のギャップを埋めるために使用できる。
【0073】
すべての値が利用可能な場合、消費量が時間の経過とともに一貫して増加する場合、道路、特に路面の劣化を導き出すことも想定され得る。これには、各道路区間の消費傾向を継続的に監視する必要がある。つまり、予測された消費量からの偏差を道路区間の通過ごとに保存し、傾向を分析することができる。
【0074】
ここで図2を参照すると、本発明の第1の態様による方法の例示的な実施形態が説明される。より詳細には、図2は、車両のエネルギー消費量を予測する例示的な方法100を示す。方法100は基本的に、段階1に関して上で説明したステップを含み得る。
【0075】
第1のステップS11では、エネルギー消費量パラメータの値が取得される。これらのパラメータは、図1に示されている前述の影響パラメータの1つまたは複数、またはすべてを反映し得る。これらは、処理全体の段階1に関して上で説明したように取得できる。得られたエネルギー消費量パラメータの値は、前述したエネルギー消費量モデル1の入力データである。さらなるステップS12では、ルート、エネルギー消費量モデル1に基づいて取得したエネルギー消費量パラメータのセットの値に沿って、車両のエネルギー消費量の予測を行うことができる。
【0076】
エネルギー消費量パラメータの値を更新するさらなるステップS13が実行されてもよい。更新された値は、エネルギー消費量モデル1を評価するために使用できる。更新は、処理全体の段階3に関して前述したように、実際の車両データを使用して実行できる。より具体的には、測定された実際のエネルギー消費量およびそれぞれのエネルギー消費量影響パラメータの測定された実際の値のうちの少なくとも1つは、以前の値を置き換えてもよいし、少なくともそれらの値を改良してもよい。このようにして、より正確な消費量の見積もり(予測)を行うことができる。
【0077】
段階4(i)に関して上述したように、エネルギー消費量モデル1を更新するステップS14をさらに実装することができる。これは、予測されたエネルギー消費量を、そのルート上の同じ車両またはそのルートの1台または複数の同等の車両に対して測定された実際に測定されたエネルギー消費量と比較することによって行われ得る。エネルギー消費量モデル1の更新には、これまでにカバーされていない地理的領域またはルート条件からのデータを使用したエネルギー消費量モデルの訓練も含まれ得る。
【0078】
ここで図3を参照すると、本発明の第2の態様による方法の例示的な実施形態が説明される。より詳細には、図3は、出発地と目的地との間の最適ルートを車両に対して決定するための例示的なルート設定方法200を示す。方法200は、基本的に、段階2に関して上で説明したステップを含むことができる。
【0079】
第1のステップS21において、車両のエネルギー消費量は、上述の方法100に従って予測され得る。特に、エネルギー消費量は、出発地と目的地の間の異なる可能なルートのセットのそれぞれについて予測され得る。ステップ23では、ルートセットの中から最適ルートを選択または提案することができる。これは、予測エネルギー消費量が最も低いルートなど、規定された最適化基準を使用して実行され得る。方法200は、ルートセットのそれぞれの移動時間を予測するさらなるステップS22を含んでもよい。移動時間は次に、たとえば予測移動時間が最も短いルートを選択または提案するための最適化基準としても使用され得る。
【0080】
ここで図4を参照すると、本発明の第3の態様による方法の例示的な実施形態が説明されている。より詳細には、図4は、道路の表面状態を判定する例示的な方法300を示す。方法300は、基本的に、段階4(ii)に関して上で説明したステップを含むことができる。
【0081】
処理全体の段階4(ii)で説明したように、表面影響パラメータ21の値が利用できない場合は、路面に関する情報を取得することが考えられる。第1のステップS31では、規定のルートに沿った車両の移動に関する車両のエネルギー消費量の基準値を取得することができる。ステップS32では、表面影響パラメータを除く前述のエネルギー消費量パラメータの値が、段階1に関して上述したように取得され得る。次に、ステップS33で、表面影響パラメータ21の値を推定することができる。この推定された表面影響パラメータ、エネルギー消費量モデル1、および他のエネルギー消費量影響パラメータについて得られた値に基づいて、ステップS34で次に道路の表面状態を判定することができる。以上、本発明のいくつかの例示的な実施形態について説明したが、それには多数の変形例が存在することに留意されたい。さらに、説明される例示的な実施形態は、本発明がどのように実施され得るかについての非限定的な例を示すだけであり、本明細書に説明される装置および方法の範囲、用途、または構成を限定することを意図するものではないことが理解される。むしろ、前述の説明は、当業者に本発明の少なくとも1つの例示的な実施形態を実施するための構造を提供するであろう。ここで、添付の特許請求の範囲およびその法的均等物によって規定される主題から逸脱することなく、例示的な実施形態の要素の機能および配置のさまざまな変更を行うことができることを理解されたい。
【符号の説明】
【0082】
1 エネルギー消費量モデル
10 静的車両仕様
11 バッテリ容量
12 平均消費量
13 現在の充電量
14 充電戦略
15 充電器プラグタイプ
20 超ローカルな天気および道路状況
21 表面影響係数
22 ルートトポロジの影響係数
23 曲率影響係数
24 温度影響係数
25 風影響係数
30 動的使用パラメータ
31 タイヤ空気圧影響係数
32 HVAC影響係数
33 質量影響係数
34 運転スタイル影響係数
100 車両のエネルギー消費量を予測する方法の例示的な実施形態
200 車両の出発地と目的地との間の最適ルートを判定するためのルート設定方法の例示的な実施形態
300 道路の表面状態を判定する方法の例示的な実施形態
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】