(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群の治療
(51)【国際特許分類】
A61K 31/341 20060101AFI20240725BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20240725BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240725BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240725BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240725BHJP
A61P 13/00 20060101ALI20240725BHJP
A61P 19/00 20060101ALI20240725BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240725BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240725BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
A61K31/341
A61P25/24
A61P1/00
A61P9/00
A61P11/00
A61P13/00
A61P19/00
A61P21/00
A61P25/00
A61P25/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506806
(86)(22)【出願日】2022-07-06
(85)【翻訳文提出日】2024-02-01
(86)【国際出願番号】 IB2022056229
(87)【国際公開番号】W WO2023281406
(87)【国際公開日】2023-01-12
(32)【優先日】2021-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524044614
【氏名又は名称】マーク・ヘースルトン
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ヘースルトン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA03
4C086GA14
4C086GA16
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4C086ZA02
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4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZA94
4C086ZA96
4C086ZC42
(57)【要約】
本発明は、治療有効量のエスシタロプラムゲンチセートの投与を含む、セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群を治療する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群の治療又は予防の方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量のエスシタロプラムゲンチセートを投与することを含む、方法。
【請求項2】
治療有効量のエスシタロプラムゲンチセートを、それを必要とする対象に投与する前に、前記対象が、経口投与されるSSRI又はSNRIの投与を中止している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記経口投与されるSSRIが、シタロプラム、エスシタロプラム、パロキセチン、セルトラリン、フルオキセチン、フルボキサミン、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記経口投与されるSNRIが、デュロキセチン、ベンラファキシン、ミルナシプラン、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
中止前に、前記対象が、少なくとも6週間の期間、前記SSRI又はSNRIを連続して経口投与している、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記期間が、少なくとも6ヶ月である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記期間が、少なくとも12ヶ月である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記期間が、少なくとも24ヶ月である、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記エスシタロプラムゲンチセートが、前記対象に投与される唯一の抗うつ剤である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
投与することを必要とする対象にエスシタロプラムゲンチセートを含む徐放性の注射可能な薬学的剤形を投与することを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記徐放性の注射可能な薬学的剤形が、皮下又は筋肉内に投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
エスシタロプラムゲンチセートの単回用量の投与からなる、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
エスシタロプラムゲンチセートの複数回用量の投与を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記用量が、互いに少なくとも14日間離して投与される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記用量が、互いに少なくとも28日間離して投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記複数回投与が、エスシタロプラムゲンチセートの5回以下の別個の投与を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記複数回投与が、エスシタロプラムゲンチセートの3回以下の別個の投与を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記投与されるエスシタロプラムゲンチセートの用量が、各投与について同じである、請求項13~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記投与されるエスシタロプラムゲンチセートの用量が、各投与ごとに低下する、請求項13~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記投与されるエスシタロプラムゲンチセートの用量が、経時的なエスシタロプラムの血漿レベルの直線的な減少をもたらす、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記投与されるエスシタロプラムゲンチセートの用量が、経時的なエスシタロプラムの血漿レベルの双曲線的な減少をもたらす、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記投与されるエスシタロプラムゲンチセートの用量が、経時的なエスシタロプラムの血漿レベルの直線的な減少、続いて双曲線的な減少をもたらす、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記対象が、600mg以下のエスシタロプラムを投与される、請求項1~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記対象が、500mg以下のエスシタロプラムを投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記対象が、400mg以下のエスシタロプラムを投与される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記対象が、少なくとも3日間、約20ng/mlのエスシタロプラムの定常状態血漿レベルを維持する、請求項1~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記対象が、少なくとも14日間、約20ng/mlのエスシタロプラムの定常状態血漿レベルを維持する、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記対象が、注射後28日間、約20ng/mlを含む定常状態血漿エスシタロプラムレベルを維持する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記対象が、注射後35日間、約20ng/mlを含む定常状態血漿エスシタロプラムレベルを維持する、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群の治療が、前記対象の関連する一般的な愁訴、呼吸器、心血管、胃腸、泌尿生殖器、筋骨格、皮膚、神経、又は精神症状のうちのいずれかを治療することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群の治療が、エスシタロプラムゲンチセートの最初の投与後6ヶ月未満の間、前記対象の症状を呈することを含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
うつ病は、世界中で一般的な病気であり、2億5000万人以上の患者がいる。これは、どの年でも推定15人に1人の成人が罹患し、6人に1人が人生のある時点でうつ病を経験するであろう。特に長期間持続し、中程度又は重度の強度を有する場合、うつ病は、深刻な健康状態になる可能性がある。それによって、罹患者は、大きく苦しみ、職場、学校、家族で機能しなくなる可能性がある。最悪の場合、うつ病は、自殺につながる可能性がある。毎年80万人近くが自殺で死亡しており、自殺は、15~29歳において2番目の主な死因であり続けている。最近の研究では、米国で大うつ病性障害の診断が1996年の6%から2015年には10%以上に増加したことが示された。同じ研究は、患者の70%のみが何らかの抗うつ剤療法を受けたことを示した。
【背景技術】
【0002】
20年以上にわたるうつ病の最も一般的な治療は、セロトニン再取り込み阻害剤などの抗うつ薬の経口投与である。現在の推定では、この薬物クラスは、米国の全ての抗うつ薬処方の70~90%を占める。
【0003】
抗うつ薬はまた、ヨーロッパと米国で最も一般的に処方されている薬物のクラスの1つであり、処方数と使用期間は、年々増加している。2000年から2018年の間に、英国の成人700万人以上(成人人口の16%)が2017年に抗うつ薬を処方されており、これらの患者の半数以上が2年以上薬を服用していたと推定され、170%の使用量の増加を経験している。米国でも同様の数字が見られ、2002年の人口の8%から2014年までに、ほとんど13%(3700万人の成人)にまで増加し、これらの患者の約半数が少なくとも5年間薬物を服用している。英国と米国の両方で、2005年から2015年の10年間で、抗うつ薬の平均使用期間も2倍以上になっている。
【0004】
うつ病の診断、抗うつ薬を処方された患者の数、及びその使用期間の大幅な増加にもかかわらず、2年以上薬物を服用している患者の3分の1は、それらの継続投与を正当化する臨床適応症が残っていないと推定される。したがって、処方医は、処方された集団の少なくとも一部で抗うつ薬療法を中止する可能性をより考慮すべきであるという提案が、研究者と政府任命機関の両方によってなされた。
【0005】
しかしながら、経口セロトニン再取り込み阻害剤療法の中止には、様々な臨床症状が伴ってている。1997年に最初に特定されたセロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群は、吐き気、嘔吐、及び急激な腹痛の胃腸の愁訴、インフルエンザ様症状及び嗜眠、過度の発汗又は紅潮、めまい、震え、更には過敏性、不安、混乱、及び記憶喪失などの認知機能障害を含む、多種多様な体性及び心理的症状を含む。この症候群の有病率は、中止されるセロトニン再取り込み阻害剤によって異なるが、薬物中止の全症例の半分強の平均で生じると推定されている。この症候群は、薬物が処方されなくなった後でも長期間持続する可能性がある。1つの研究では、87%が、この症候群が少なくとも2ヶ月間、59%が少なくとも1年、及び16%が3年以上にわたって持続したと回答した。
【0006】
セロトニン再取り込み阻害剤を中止した後の症状の発生率の変動は、クラス内の個々の薬物の薬物動態プロファイルの違いによって部分的に説明されることが理解される。短い血漿半減期及び活性代謝産物の存在を含むいくつかの要因が関連することが示唆されている。それにもかかわらず、制御放出抗うつ剤形の承認された製品モノグラフでさえ、中止時に症候群を発症する可能性があると警告している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
現在、セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群の治療選択肢は、依然として限られている。抗うつ薬の再投与は、ほとんどの症状をうまく解消することが示されているが、明らかに、薬の服用を中止しようとする患者にとって実用的な選択肢ではない。他の方法は、療法を中止する前に、患者を異なる、可能であれば症状が出にくいセロトニン再取り込み阻害剤に切り替えること、又は非セロトニン再取り込み阻害剤抗うつ剤にブリッジすることを試みることを含む。非常に多くの場合、医師は、抗うつ薬の投与量を漸減しようとするであろう。研究によると、14日間の漸減は成功せず、一般的に受け入れられている現在の慣行は、数ヶ月、典型的には4~6ヶ月の長期間にわたって漸減することであることが示されている。最近の報告はまた、漸減が直線的な用量低減ではなく双曲線的である必要がある可能性を示唆している。患者の、彼らがもはや服用したくない薬物に対するコンプライアンスを維持することは、依然としてこれらの治療アプローチの各々に対する重要な懸念事項であり、利用可能な市販用量と一致しなくなったときの用量低減を管理することは、実用的な問題であるため、一部の研究者は、規制されていない複合液体製剤に切り替えることさえ示唆している。
【0008】
根底にある状態と、一般集団における抗うつ薬の不必要な処方量を低減するための重要な公衆衛生要件に照らして、セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群の有病率、持続時間、及び重症度を低減するための実用的で簡単な解決策の必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群の治療又は予防に関し、これは、それを必要とする対象に、治療有効量のエスシタロプラムゲンチセートを投与することを含む。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示では、単数形「a」、「an」、及び「the」は、複数の参照を含み、特定の数値への参照は、文脈が明示的に別様に示さない限り、少なくともその特定の値を含む。したがって、例えば、「化合物(a compound)」への言及は、1つ以上のそのような化合物、及び当業者に既知のそれらの同等物への言及である。本明細書で使用される「複数の」という用語は、1つより多いことを意味する。値の範囲が表現される場合、別の実施形態は、1つの特定の値から、及び/又は他の特定の値までを含む。同様に、値が近似値として表現される場合、「約」という先行詞を使用することによって、特定の値が別の実施形態を形成することが理解される。全ての範囲は、包括的であり、組み合わせ可能である。
【0011】
値が近似値として表現される場合、「約」という先行詞を使用することによって、特定の値は別の実施形態を形成することが理解されるであろう。本明細書で使用される場合、「約X」(Xは、数値である)は、好ましくは、引用された値の±10%を指す(境界値を含む)。例えば、「約8」という語句は、7.2~8.8(両端を含む)の値を指し、別のx例として、「約8%」という語句は、7.2%~8.8%(両端を含む)の値を指す。存在する場合、全ての範囲は、包括的であり、組み合わせ可能である。例えば、「1~5」の範囲が列挙される場合、列挙される範囲は、「1~4」、「1~3」、「1~2」、「1~2及び4~5」、「1~3及び5」などの範囲を含むと解釈されるべきである。加えて、代替物のリストが肯定的に提供される場合、そのようなリストはまた、代替物のいずれかが除外され得る実施形態を含むことができる。例えば、「1~5」の範囲が記載されている場合、そのような説明は、1、2、3、4、又は5のいずれかが除外される状況を支持することができ、したがって、「1~5」の列挙は、「1及び3~5」を支持し得るが、2は支持せず、又は単に「2は含まれない」。
【0012】
本明細書で使用される場合、「成分」、「組成物」、「化合物の組成物」、「化合物」、「薬物」、「薬理学的に活性な薬剤」、「活性剤」、「治療薬」、「療法」、「治療」、又は「薬剤」という用語は、ヒト対象に投与されると、局所的及び/又は全身的作用によって所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を誘導する化合物、又は物質の組成物を指すために本明細書で同義的に使用される。
【0013】
上記及び本開示を通して使用されるように、「有効量」という用語は、必要な投薬量で必要な期間にわたって、関連する障害、状態、又は副作用の治療に関して所望の結果を達成するのに有効な量を指す。本発明の成分の有効量は、選択された特定の化合物、成分、又は組成物、投与経路、及び個体において所望の結果を誘発する成分の能力に関してのみならず、緩和される病状又は状態の重症度、ホルモンレベル、個体の年齢、性別、体重、個体の代謝率、患者の状態、及び治療される病理学的状態の重症度、特定の患者がその後に続く同時投薬又は特別な食事、並びに当業者が認識するであろう他の要因に関しても、患者ごとに異なり、適切な投薬量は、主治医の裁量により決定されることが理解されるであろう。投薬レジメンは、改善された治療応答を提供するように調整することができる。治療有効量はまた、治療的に有益な効果が成分のあらゆる毒性又は有害作用を上回る量である。
【0014】
本発明は、セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群の治療又は予防に関し、これは、それを必要とする対象に、治療有効量のエスシタロプラムゲンチセートを投与することを含む。
【0015】
本明細書で使用される場合、「セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群」という用語は、少なくとも1ヶ月間連続して服用された経口投与されるセロトニン再取り込み阻害剤の中止後に生じ得る一連の症状を指す。
【0016】
セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群に伴う症状は、Jha(2018)及びWarner(2006)などの公表された臨床文献に記載されており、一般的な愁訴、呼吸器、心血管、胃腸、泌尿生殖器、筋骨格、皮膚、神経、及び精神症状を含み得る。
【0017】
セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群に伴う一般的な愁訴としては、悪寒、倦怠感、インフルエンザ様症状、疲労感、嗜眠、発熱、発汗、かすみ目、眼球運動異常、目の痛み、眼球けいれん、耳鳴り、鼻漏、副鼻腔のつまり、鼻づまり、及び唾液分泌増加が挙げられる。
【0018】
セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群に伴う呼吸器症状の愁訴には、息切れが含まれる。
【0019】
セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群に伴う心血管症状の愁訴には、動悸、頻脈、並びに収縮期及び拡張期血圧の上昇が含まれる。
【0020】
セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群に伴う胃腸症状の愁訴には、吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、胃けいれん、食欲障害、腹部膨満感が含まれる。
【0021】
セロトニン再取り込み阻害剤離脱筋骨格に伴う泌尿生殖器症状の愁訴には、性器過敏症及び早漏が含まれる。
【0022】
セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群に伴う筋骨格系症状の愁訴には、筋肉痛(sore muscle)、筋肉痛(myalgia)、関節痛、及び筋肉けいれんが含まれる。
【0023】
セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群に伴う皮膚症状の愁訴には、掻痒症が含まれる。
【0024】
セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群に伴う神経症状の愁訴には、回転性めまい、めまい、軽い頭痛、歩行不安定性、又は運動失調などの不均衡、音に対する異常な感受性、電気ショック様感覚、感覚異常、しびれ、耳鳴り、味覚異常、又は脳ザップなどの感覚障害、急性ジストニア、ミオクローヌス、震え、動揺、パーキンソン病、又はアカシシアなどの神経筋症状、並びにせん妄、記憶喪失、記憶障害、見当識障害、又は混乱などの認知症状が含まれる。
【0025】
セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群に伴う精神症状の愁訴には、不快感、軽躁症、うつ病、泣きの発作、涙ぐみ、衝動性、過敏性、興奮性、攻撃性、怒り発作、気分変動、集中力障害、筋肉緊張、自殺願望又は殺意などの気分の悪化、緊張、パニック、又は全般的不安などの不安の悪化、不眠症、過眠症、鮮やかな夢、悪夢、又は混乱した概日リズムなどの睡眠障害、並びに脱人格化、非現実化、催眠幻覚、又は幾何学的形状及び色、聴覚又は視覚幻覚などの異常な視覚感覚などの知覚障害が含まれる。
【0026】
本明細書で使用される場合、「セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群の治療」という用語は、セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群に伴う症状又は愁訴の少なくとも1つの有害又は負の影響の緩和又は低減を指す。
【0027】
本発明のある実施形態では、セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群の治療は、セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群に伴う一般的な愁訴、呼吸器、心血管、胃腸、泌尿生殖器、筋骨格、皮膚、神経、又は精神症状のうちのいずれかの少なくとも1つの有害又は負の影響の緩和又は低減を指す。本発明の別の実施形態では、セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群の治療は、セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群に伴う一般的な愁訴、呼吸器、心血管、胃腸、泌尿生殖器、筋骨格、皮膚、神経、又は精神症状のうちのいずれかの有害又は負の影響の大部分の緩和又は低減を指す。本発明の別の実施形態では、セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群の治療は、セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群に伴う一般的な愁訴、呼吸器、心血管、胃腸、泌尿生殖器、筋骨格、皮膚、神経、又は精神症状のうちのいずれかの有害又は負の影響の全ての緩和又は低減を指す。
【0028】
本明細書で使用される場合、「中止された」又は「中止」という用語は、少なくとも1ヶ月間連続して服用された経口投与されるセロトニン再取り込み阻害剤の、前の7日間以内の突然の中止又は用量の著しい低減を指す。
【0029】
本明細書で使用される場合、「エスシタロプラムゲンチセート」という用語は、全体が参照により本明細書に組み込まれる、特許出願第WO2019/073388号に記載されているエスシタロプラムのゲンチタリン酸塩を指す。
【0030】
本発明の一実施形態では、エスシタロプラムゲンチセートは、結晶性である。本発明の別の実施形態では、エスシタロプラムゲンチセートは、非結晶性である。本発明の一実施形態では、エスシタロプラムゲンチセートは、エスシタロプラムゲンチセート形態Iである。本発明の別の実施形態では、エスシタロプラムゲンチセートは、エスシタロプラムゲンチセート形態IIである。
【0031】
本明細書で使用される場合、「セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群の予防」という用語は、セロトニン再取り込み阻害剤の経口投与を中止したが、セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群に伴う愁訴又は症状のうちのいずれをもまだ呈していない対象における、セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群に伴う一般的な愁訴、呼吸器、心血管、胃腸、泌尿生殖器、筋骨格、皮膚、神経、又は精神症状のうちのいずれかの少なくとも1つの有害又は悪影響の低減を指す。この用語は、対象が本発明のエスシタロプラムゲンチセートを投与される期間、又は当該投与から最大28日後にのみ適用される。
【0032】
本発明の一実施形態では、セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群の予防は、セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群に伴う愁訴又は症状のうちの少なくとも1つの有害又は負の影響の低減を指す。別の実施形態では、セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群の予防は、セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群に伴う愁訴又は症状の有害又は負の影響の大部分の予防を指す。別の実施形態では、セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群の予防は、セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群に伴う愁訴又は症状の有害又は負の影響の全ての予防を指す。
【0033】
本発明の一実施形態では、「経口投与されるセロトニン再取り込み阻害剤」という用語は、経口投与される選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)及び選択的セロトニン-ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)を指す。SSRIの例としては、シタロプラム、エスシタロプラム、パロキセチン、セルトラリン、フルオキセチン、フルボキサミン、及びそれらの薬学的に許容される塩が挙げられる。SNRIの例としては、デュロキセチン、ベンラファキシン、ミルナシプラン、及びそれらの薬学的に許容される塩が挙げられる。
【0034】
本発明の一実施形態では、対象は、治療有効量のエスシタロプラムゲンチセートの投与前に、経口投与されるセロトニン再取り込み阻害剤の投与を中止している。好ましい実施形態では、中止された経口投与されるセロトニン再取り込み阻害剤は、SSRI及びSNRIからなる群から選択される。別の好ましい実施形態では、中止された経口投与されるセロトニン再取り込み阻害剤は、シタロプラム、エスシタロプラム、パロキセチン、セルトラリン、フルオキセチン、フルボキサミン、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。別の好ましい実施形態では、中止された経口投与されるセロトニン再取り込み阻害剤は、デュロキセチン、ベンラファキシン、ミルナシプラン、及びそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択される。
【0035】
本発明の一実施形態では、対象は、治療有効量のエスシタロプラムゲンチセートの投与前に、少なくとも1ヶ月間連続して服用された経口投与されるセロトニン再取り込み阻害剤の投与を中止している。本発明の別の実施形態では、対象は、治療有効量のエスシタロプラムゲンチセートの投与前に、少なくとも6週間、又は少なくとも3、6、12、18、24、30、36、42、48、54、又は60ヶ月間連続して服用された経口投与されるセロトニン再取り込み阻害剤の投与を中止している。本発明の好ましい実施形態では、対象は、治療有効量のエスシタロプラムゲンチセートの投与前に、少なくとも6週間連続して服用された経口投与されるセロトニン再取り込み阻害剤の投与を中止している。本発明の別の好ましい実施形態では、対象は、治療有効量のエスシタロプラムゲンチセートの投与前に、少なくとも6ヶ月間連続して服用された経口投与されるセロトニン再取り込み阻害剤の投与を中止している。本発明の別の好ましい実施形態では、対象は、治療有効量のエスシタロプラムゲンチセートの投与前に、少なくとも12ヶ月間連続して服用された経口投与されるセロトニン再取り込み阻害剤の投与を中止している。本発明の別の好ましい実施形態では、対象は、治療有効量のエスシタロプラムゲンチセートの投与前に、少なくとも24ヶ月間連続して服用された経口投与されるセロトニン再取り込み阻害剤の投与を中止している。
【0036】
本発明の一実施形態では、セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群の治療又は予防は、エスシタロプラムゲンチセートを、SSRI又はSNRI以外の抗うつ剤とともに投与することを含む。本発明の別の実施形態では、セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群の治療又は予防は、エスシタロプラムゲンチセートを唯一の抗うつ剤として投与することを含む。SSRI又はSNRI以外の抗うつ剤の例としては、アミトリプチリン、イミプラミン、及びデシプラミンなどの三環系抗うつ剤、マプロチリン、ミアンセリン、及びミルタザピンなどの四環系抗うつ剤、ブプロピオンなどのノルアドレナリンドーパミン再取り込み阻害剤、ビラゾドン及びボルチオキセチンなどのセロトニン部分アゴニスト再取り込み阻害剤、トラゾドン及びネファゾドンなどのセロトニンアンタゴニスト及び再取り込み阻害剤、ケタミン、エスケタミン、デキストロメトルファン、デキストロールファン、及びドメタドンなどのNMDA受容体アンタゴニスト、レボキセチンなどのノルアドレナリン再取り込み阻害剤、並びにプレガバリン及びアゴメラチンなどの他の薬剤が挙げられる。
【0037】
本発明の一実施形態では、エスシタロプラムゲンチセートの投与は、エスシタロプラムゲンチセートを含む徐放性の注射可能な薬学的剤形の投与を含む。本発明の好ましい実施形態では、エスシタロプラムゲンチセートを含む徐放性の注射可能な薬学的剤形は、皮下投与される。本発明の別の好ましい実施形態では、エスシタロプラムゲンチセートを含む徐放性の注射可能な薬学的剤形は、筋肉内投与される。
【0038】
本明細書で使用される場合、「徐放性の注射可能な薬学的剤形」という用語は、好ましくは少なくとも21日間の期間にわたって血流中へのエスシタロプラムの徐放を提供する注射可能な剤形を指す。
【0039】
本発明の薬学的剤形は、過度の毒性副作用を伴わずにヒトに使用するのに好適な剤形を包含する。本発明の範囲内の剤形は、活性薬学的成分であるエスシタロプラムゲンチセート、及び少なくとも1つの薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む。本発明の薬学的剤形の例には、例えば、マイクロカプセル、ナノカプセル、マイクロスフェア、ナノスフェア、マイクロ粒子、ナノ粒子、ポリマー-薬物コンジュゲート、ミセル、リポソーム、ヒドロゲル、及び他のインサイチュ形成デポ又はインプラントが含まれる。当該剤形は、当該技術分野で既知の方法を使用して、生分解性ポリマー又は他の好適な材料を使用して製剤化することができる。
【0040】
本開示の剤形の調製に有用な生分解性ポリマーの例としては、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド-コ-グリコリド)、ポリ-1-乳酸、ポリ-d乳酸(poly-dlactic acid)、ポリ(グリコール酸)、前述のコポリマー、ポリ(脂肪族カルボン酸)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、ポリ(オルトカーボネート)、ポリ(アセタール)、ポリ(乳酸-カプロラクトン)、ポリオルチエステル、ポリ(グリコール酸-カプトラクトン)、ポリ(アミノ酸)、ポリエステルアミド、ポリ無水物、ポリホスファジン、ポリ(アルキレンアルキレート)、生分解性ポリウレタン、ポリビニルピロリドン、ポリアルカノイン酸、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリホルエステルとのコポリマー、アルブミン、キトサン、カゼイン、蝋、又はそれらのブレンド又はコポリマーが挙げられる。
【0041】
本開示の徐放性の薬学的剤形の調製に有用であるプラットフォーム技術の例としては、Novartis(例えば、WO2010/018159を参照されたい)、Alkermes(例えば、WO2001/91720を参照されたい)、Allergan(例えば、WO2013/112434を参照されたい)、Reckitt Benckiser(例えば、WO2009/091737を参照されたい)、Icon Bioscience(例えば、WO2013/036309を参照されたい)、Flamel Technologies(WO2012/080986を参照されたい)、QLT(例えば、WO2008/153611を参照されたい)、Rovi Pharmaceuticals(例えば、WO2011/151356を参照されたい)、Dong-A(例えば、WO2008/130158を参照されたい)、Durect(例えば、WO2004/052336を参照されたい)、NuPathe(例えば、WO2005/070332を参照されたい)、Ascendis Pharma(例えば、WO2011/042453を参照されたい)、Endo(例えば、WO2013/063125を参照されたい))、Delpor(例えば、WO2010/105093を参照されたい)、PolyActiva(例えば、WO2010/040188を参照されたい)、Flexion Therapeutics(例えば、WO2012/019009を参照されたい)、pSivida(例えば、WO2005/002625を参照されたい)、Camurus(例えば、WO2005/117830を参照されたい)、Bind Therapeutics(例えば、WO2010/075072を参照されたい)、Zogenix(例えば、WO2007/041410を参照されたい)、Ingell(WO2011/083086)、Foresee Pharmaceuticals(例えば、WO2008/008363を参照されたい)、Medincell(例えば、WO2012/090070を参照されたい)、Mapi Pharma(例えば、WO2011/080733を参照されたい)、DelSiTech(例えば、WO2008/104635を参照されたい)、OctoPlus(例えば、WO2005/087201を参照されたい)、Nanomi(例えば、WO2005/115599を参照されたい)、ペプトロン(例えば、WO2008/117927を参照されたい)、GP Pharm(例えば、WO2009/068708を参照されたい)、Pharmathen(例えば、WO2014/202214を参照されたい)、Titan Pharmaceuticals(例えば、WO2007/139744を参照されたい)、Tolmar(例えば、WO2009/148580を参照されたい)、Heron Therapeutics(例えば、US2014/323517を参照されたい)、及びIntarcia Therapeutics(例えば、WO2005/048952を参照されたい)に関連するものが挙げられる。これらの公開された国際特許出願の開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。本方法で使用するのに好適な剤形に活性成分又はその薬学的に許容される塩を製剤化するための方法は、例えば、Hu et al.,IJPSR,2012;vol.3(9): 2888-2896;Hoffman,Adv.Drug.Del.Rev.54(2002)3-12;AlTahami et al.Recent Patents on Drug Del.& Formulation 2007,1 65-71、Pattni et al.Chem.Rev.2015 May 26、及びWright and Burgess(ed.) Long Acting Injections and Implants(2012)に記載されており、それらの開示は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0042】
本発明の一実施形態では、エスシタロプラムゲンチセートを含む徐放性の注射可能な薬学的剤形の投与は、治療有効量のエスシタロプラムの血流への放出を提供する。
【0043】
本発明の一実施形態では、血流中の治療有効量のエスシタロプラムは、エスシタロプラムゲンチセートの単回用量の投与によって提供される。本発明の別の実施形態では、血流中の治療有効量のエスシタロプラムは、エスシタロプラムゲンチセートの複数回用量の投与によって提供される。本発明の一実施形態では、血流中の治療有効量のエスシタロプラムは、互いに少なくとも14日間離して投与されるエスシタロプラムゲンチセートの複数回用量によって提供される。本発明の別の実施形態では、血流中の治療有効量のエスシタロプラムは、互いに少なくとも28日間離して投与されるエスシタロプラムゲンチセートの複数回用量によって提供される。
【0044】
本発明の一実施形態では、エスシタロプラムゲンチセートの複数回用量は、エスシタロプラムゲンチセートの5回以下の用量を含む。本発明の別の実施形態では、エスシタロプラムゲンチセートの複数回用量は、エスシタロプラムゲンチセートの4回以下の用量を含む。本発明の別の実施形態では、エスシタロプラムゲンチセートの複数回用量は、エスシタロプラムゲンチセートの3回以下の用量を含む。本発明の別の実施形態では、エスシタロプラムゲンチセートの複数回用量は、エスシタロプラムゲンチセートの2回以下の用量を含む。
【0045】
本明細書で使用される場合、「エスシタロプラムゲンチセートの用量」という用語は全て、6時間以内のエスシタロプラムゲンチセートの単回又は複数回の個々の投与を指すものとする。
【0046】
本発明の一実施形態では、エスシタロプラムゲンチセートの投与は、経口投与されるセロトニン再取り込み阻害剤の中止後に、血流中に治療有効量のエスシタロプラムを提供する。本発明の一実施形態では、治療有効量のエスシタロプラムは、少なくとも14日間の期間にわたってうつ病を治療するのに十分である。本発明の別の実施形態では、治療有効量のエスシタロプラムは、少なくとも28日間の期間にわたってうつ病を治療するのに十分である。
【0047】
本発明の一実施形態では、エスシタロプラムゲンチセートの投与後、エスシタロプラムの血漿レベルは、最大血漿レベルに達するまで上昇し、その後、時間の経過とともに徐々に減少する。本発明の一実施形態では、エスシタロプラムの血漿レベルは、時間の経過とともに徐々に減少する前に、1回以上の更なる用量のエスシタロプラムゲンチセートの投与によって最大値に維持される。
【0048】
本発明の一実施形態では、エスシタロプラムゲンチセートの投与は、血流中の治療有効量のエスシタロプラムを提供し、これは、標準分析方法によって追跡不能になるまで時間の経過とともに徐々に減少する。本発明の一実施形態では、血漿エスシタロプラムレベルは、エスシタロプラムゲンチセートの投与後、14日間の期間にわたって徐々に減少する。本発明の別の実施形態では、血漿エスシタロプラムレベルは、エスシタロプラムゲンチセートの投与後、28日間の期間にわたって徐々に減少する。本発明の別の実施形態では、血漿エスシタロプラムレベルは、エスシタロプラムゲンチセートの投与後、35日間の期間にわたって徐々に減少する。本発明の別の実施形態では、血漿エスシタロプラムレベルは、エスシタロプラムゲンチセートの投与後、42日間の期間にわたって徐々に減少する。本発明の別の実施形態では、血漿エスシタロプラムレベルは、エスシタロプラムゲンチセートの投与後、49日間の期間にわたって徐々に減少する。本発明の別の実施形態では、血漿エスシタロプラムレベルは、エスシタロプラムゲンチセートの投与後、56日間の期間にわたって徐々に減少する。本発明の別の実施形態では、血漿エスシタロプラムレベルは、エスシタロプラムゲンチセートの投与後、63日間の期間にわたって徐々に減少する。本発明の別の実施形態では、血漿エスシタロプラムレベルは、エスシタロプラムゲンチセートの投与後、70日間の期間にわたって徐々に減少する。本発明の別の実施形態では、血漿エスシタロプラムレベルは、エスシタロプラムゲンチセートの投与後、77日間の期間にわたって徐々に減少する。本発明の別の実施形態では、血漿エスシタロプラムレベルは、エスシタロプラムゲンチセートの投与後、84日間の期間にわたって徐々に減少する。本発明の別の実施形態では、血漿エスシタロプラムレベルは、エスシタロプラムゲンチセートの投与後、4ヶ月の期間にわたって徐々に減少する。本発明の別の実施形態では、血漿エスシタロプラムレベルは、エスシタロプラムゲンチセートの投与後、5ヶ月の期間にわたって徐々に減少する。
【0049】
本発明の一実施形態では、標準分析方法によって血漿中エスシタロプラムレベルが追跡不能になるまでの時間は、エスシタロプラムゲンチセートの単一又は最終用量の投与後、少なくとも14日、少なくとも28日、少なくとも35日、少なくとも42日、少なくとも49日、少なくとも56日、少なくとも63日、少なくとも70日、少なくとも77日、少なくとも84日、少なくとも4ヶ月、又は少なくとも5ヶ月である。
【0050】
本発明の一実施形態では、エスシタロプラムゲンチセートの用量は、各投与で同じである。本発明の別の実施形態では、エスシタロプラムゲンチセートの用量は、次の各投与ごとに低くなる。
【0051】
本発明の一実施形態では、投与されるエスシタロプラムゲンチセートの用量は、600mg以下のエスシタロプラムを含む。本発明の別の実施形態では、投与されるエスシタロプラムゲンチセートの用量は、550mg以下のエスシタロプラムを含む。本発明の別の実施形態では、投与されるエスシタロプラムゲンチセートの用量は、500mg以下のエスシタロプラムを含む。本発明の別の実施形態では、投与されるエスシタロプラムゲンチセートの用量は、450mg以下のエスシタロプラムを含む。本発明の別の実施形態では、投与されるエスシタロプラムゲンチセートの用量は、400mg以下のエスシタロプラムを含む。本発明の別の実施形態では、投与されるエスシタロプラムゲンチセートの用量は、350mg以下のエスシタロプラムを含む。本発明の別の実施形態では、投与されるエスシタロプラムゲンチセートの用量は、300mg以下のエスシタロプラムを含む。本発明の別の実施形態では、投与されるエスシタロプラムゲンチセートの用量は、250mg以下のエスシタロプラムを含む。本発明の別の実施形態では、投与されるエスシタロプラムゲンチセートの用量は、200mg以下のエスシタロプラムを含む。本発明の別の実施形態では、投与されるエスシタロプラムゲンチセートの用量は、150mg以下のエスシタロプラムを含む。本発明の別の実施形態では、投与されるエスシタロプラムゲンチセートの用量は、100mg以下のエスシタロプラムを含む。本発明の別の実施形態では、投与されるエスシタロプラムゲンチセートの用量は、75mg以下のエスシタロプラムを含む。本発明の別の実施形態では、投与されるエスシタロプラムゲンチセートの用量は、50mg以下のエスシタロプラムを含む。本明細書で使用される場合、「mgのエスシタロプラム」という用語は、エスシタロプラムゲンチセートの剤形内で測定されるエスシタロプラム遊離塩基相当量のmgの量を指す。例えば、「100mgのエスシタロプラム」は、約147.5mgのエスシタロプラムゲンチセートに基づく100mgのエスシタロプラム遊離塩基相当量を指す。
【0052】
本発明の一実施形態では、対象のエスシタロプラムの血漿レベルは、エスシタロプラムゲンチセートの最初の投与後の期間中、約20ng/mlの定常状態に上昇する。
【0053】
本明細書で使用される場合、「定常状態」又は「定常状態血漿レベル」という用語は、少なくとも3日間の期間にわたる一貫した血漿レベルを指す。
【0054】
本発明の一実施形態では、対象は、エスシタロプラムゲンチセートの投与後、少なくとも3日間、約20ng/mlのエスシタロプラムの定常状態血漿レベルを維持する。本発明の別の実施形態では、対象は、エスシタロプラムゲンチセートの投与後、少なくとも7日間、約20ng/mlのエスシタロプラムの定常状態血漿レベルを維持する。本発明の別の実施形態では、対象は、エスシタロプラムゲンチセートの投与後、少なくとも14日間、約20ng/mlのエスシタロプラムの定常状態血漿レベルを維持する。本発明の別の実施形態では、対象は、エスシタロプラムゲンチセートの投与後、少なくとも21日間、約20ng/mlのエスシタロプラムの定常状態血漿レベルを維持する。
【0055】
本発明の一実施形態では、対象は、エスシタロプラムゲンチセートの注射後、少なくとも3日間、約20ng/mlのエスシタロプラムの定常状態血漿レベルを維持する。本発明の別の実施形態では、対象は、エスシタロプラムゲンチセートの注射後、少なくとも7日間、約20ng/mlのエスシタロプラムの定常状態血漿レベルを維持する。本発明の別の実施形態では、対象は、エスシタロプラムゲンチセートの注射後、少なくとも14日間、約20ng/mlのエスシタロプラムの定常状態血漿レベルを維持する。本発明の別の実施形態では、対象は、エスシタロプラムゲンチセートの注射後、少なくとも21日間、約20ng/mlのエスシタロプラムの定常状態血漿レベルを維持する。
【0056】
本発明の一実施形態では、エスシタロプラムゲンチセートの投与は、経時的なエスシタロプラムの血漿レベルの直線的な減少をもたらす。本発明の別の実施形態では、エスシタロプラムゲンチセートの投与は、経時的なエスシタロプラムの血漿レベルの双曲線的な減少をもたらす。本発明の一実施形態では、エスシタロプラムゲンチセートの投与は、経時的なエスシタロプラムの血漿レベルの直線的な減少、続いて、双曲線的な減少をもたらす。本発明の一実施形態では、エスシタロプラムの血漿レベルの経時的な減少は、エスシタロプラムゲンチセートの単回用量の後に生じる。本発明の別の実施形態では、エスシタロプラムの血漿レベルの減少は、エスシタロプラムゲンチセートを複数回用量の後に生じる。
【0057】
本発明の一実施形態では、エスシタロプラムゲンチセートの投与は、最大5ヶ月にわたるエスシタロプラムの血漿レベルの減少をもたらす。本発明の一実施形態では、エスシタロプラムゲンチセートの投与は、5ヶ月後に、約20ng/mlの最大血漿濃度及び/又は定常状態血漿濃度のいずれかから、標準分析方法によって追跡不可能なレベルまで減少するエスシタロプラムの血漿レベルをもたらす。
【0058】
本発明の一実施形態では、約20ng/mlの最大血漿濃度及び/又は定常状態血漿濃度のいずれかの1ヶ月後、エスシタロプラムの血漿レベルは、約16ng/ml、2ヶ月後は約12ng/ml、3ヶ月後は約8ng/ml、4ヶ月後は約4ng/mlとなるであろう。本発明の別の実施形態では、約20ng/mlの最大血漿濃度及び/又は定常状態血漿濃度のいずれかの19日後、エスシタロプラムの血漿レベルは、約9ng/ml、38日後は約5ng/ml、56日後は約3ng/ml、75日後は約2ng/ml、113日後は約1ng/ml、130日後には、エスシタロプラムの血漿レベルは、1ng/ml未満となるであろう。本発明の別の実施形態では、約20ng/mlの最大血漿濃度及び/又は定常状態血漿濃度のいずれかの19日後、エスシタロプラムの血漿レベルは、約10ng/ml、38日後は約6ng/ml、56日後は約4ng/ml、75日後は約3ng/ml、94日後は約2ng/ml、113日後は約1ng/ml、130日後には、エスシタロプラムの血漿レベルは、1ng/ml未満となるであろう。
【0059】
本発明の一実施形態では、エスシタロプラムゲンチセートの投与は、最大4ヶ月にわたるエスシタロプラムの血漿レベルの減少をもたらす。本発明の一実施形態では、エスシタロプラムゲンチセートの投与は、4ヶ月後に、約20ng/mlの最大血漿濃度及び/又は定常状態血漿濃度のいずれかから、標準分析方法によって追跡不能なレベルまで減少するエスシタロプラムの血漿レベルをもたらす。
【0060】
本発明の一実施形態では、約20ng/mlの最大血漿濃度及び/又は定常状態血漿濃度のいずれかの1ヶ月後、エスシタロプラムの血漿レベルは、約15ng/ml、2ヶ月後は約10ng/ml、3ヶ月後は約5ng/mlとなるであろう。本発明の別の実施形態では、約20ng/mlの最大血漿濃度及び/又は定常状態血漿濃度のいずれかの15日後、エスシタロプラムの血漿レベルは、約9ng/ml、30日後は約5ng/ml、45日後は約3ng/ml、60日後は約2ng/ml、90日後は約1ng/ml、105日後には、エスシタロプラムの血漿レベルは、1ng/ml未満となるであろう。本発明の別の実施形態では、約20ng/mlの最大血漿濃度及び/又は定常状態血漿濃度のいずれかの15日後、エスシタロプラムの血漿レベルは、約10ng/ml、30日後は約6ng/ml、45日後は約4ng/ml、60日後は約3ng/ml、75日後は約2ng/ml、90日後は約1ng/ml、105日後には、エスシタロプラムの血漿レベルは、1ng/ml未満となるであろう。
【0061】
本発明の一実施形態では、エスシタロプラムゲンチセートの投与は、最大3ヶ月にわたるエスシタロプラムの血漿レベルの減少をもたらす。本発明の一実施形態では、エスシタロプラムゲンチセートの投与は、3ヶ月後に、約20ng/mlの最大血漿濃度及び/又は定常状態血漿濃度のいずれかから、標準分析方法によって追跡不可能なレベルまで減少するエスシタロプラムの血漿レベルを提供する。
【0062】
本発明の一実施形態では、約20ng/mlの最大血漿濃度及び/又は定常状態血漿濃度のいずれかの1ヶ月後、エスシタロプラムの血漿レベルは、約13.3ng/ml、2ヶ月後は約6.7ng/mlとなるであろう。本発明の別の実施形態では、約20ng/mlの最大血漿濃度及び/又は定常状態血漿濃度のいずれかの11日後、エスシタロプラムの血漿レベルは、約9ng/ml、23日後は約5ng/ml、34日後は約3ng/ml、45日後は約2ng/ml、68日後は約1ng/ml、79日後には、エスシタロプラムの血漿レベルは、1ng/ml未満となるであろう。本発明の別の実施形態では、約20ng/mlの最大血漿濃度及び/又は定常状態血漿濃度のいずれかの11日後、エスシタロプラムの血漿レベルは、約10ng/ml、23日後は約6ng/ml、34日後は約4ng/ml、45日後は約3ng/ml、56日後は約2ng/ml、68日後は約1ng/ml、79日には、エスシタロプラムの血漿レベルは、1ng/ml未満となるであろう。
【0063】
本発明の一実施形態では、エスシタロプラムゲンチセートの投与は、最大2ヶ月にわたるエスシタロプラムの血漿レベルの減少をもたらす。本発明の一実施形態では、エスシタロプラムゲンチセートの投与は、2ヶ月後に、約20ng/mlの最大血漿濃度及び/又は定常状態血漿濃度のいずれかから、標準分析方法によって追跡不可能なレベルまで減少するエスシタロプラムの血漿レベルをもたらす。
【0064】
本発明の一実施形態では、約20ng/mlの最大血漿濃度及び/又は定常状態血漿濃度のいずれかの2週間後、エスシタロプラムの血漿レベルは、約15ng/ml、1ヶ月後は約10ng/ml、6週間後は約5ng/mlとなるであろう。本発明の別の実施形態では、約20ng/mlの最大血漿濃度及び/又は定常状態血漿濃度のいずれかの8日後、エスシタロプラムの血漿レベルは、約9ng/ml、15日後は約5ng/ml、23日後は約3ng/ml、30日後は約2ng/ml、45日後は約1ng/ml、53日後には、エスシタロプラムの血漿レベルは、1ng/ml未満となるであろう。本発明の別の実施形態では、約20ng/mlの最大血漿濃度及び/又は定常状態血漿濃度のいずれかの8日後、エスシタロプラムの血漿レベルは、約10ng/ml、15日後は約6ng/ml、23日後は約4ng/ml、30日後は約3ng/ml、38日後は約2ng/ml、45日後は約1ng/ml、53日後には、エスシタロプラムの血漿レベルは、1ng/ml未満となるであろう。
【0065】
本発明の一実施形態では、エスシタロプラムゲンチセートの投与は、最大1ヶ月にわたるエスシタロプラムの血漿レベルの減少をもたらす。本発明の一実施形態では、エスシタロプラムゲンチセートの投与は、1ヶ月後に、約20ng/mlの最大血漿濃度及び/又は定常状態血漿濃度のいずれかから、標準分析方法によって追跡不可能なレベルまで減少するエスシタロプラムの血漿レベルをもたらす。
【0066】
本発明の一実施形態では、約20ng/mlの最大血漿濃度及び/又は定常状態血漿濃度のいずれかの1週間後、エスシタロプラムの血漿レベルは、約15ng/ml、2週間後は約10ng/ml、3ヶ月後は約5ng/mlとなるであろう。本発明の別の実施形態では、約20ng/mlの最大血漿濃度及び/又は定常状態血漿濃度のいずれかの4日後、エスシタロプラムの血漿レベルは、約9ng/ml、8日後は約5ng/ml、11日後は約3ng/ml、15日後は約2ng/ml、23日後は約1ng/ml、26日後には、エスシタロプラムの血漿レベルは、1ng/ml未満となるであろう。本発明の別の実施形態では、約20ng/mlの最大血漿濃度及び/又は定常状態血漿濃度いずれかの4日後、エスシタロプラムの血漿レベルは、約10ng/ml、8日後は約6ng/ml、11日後は約4ng/ml、15日後は約3ng/ml、19日後は約2ng/ml、23日後は約1ng/ml、26日後には、エスシタロプラムの血漿レベルは、1ng/ml未満となるであろう。
【0067】
本発明の一実施形態では、セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群の治療は、エスシタロプラムゲンチセートの最初の投与後6ヶ月未満の間、対象の症状を呈すること含む。本発明の別の実施形態では、セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群の治療は、エスシタロプラムゲンチセートの最初の投与後6ヶ月未満の間、対象の症状の50%未満を呈することを含む。本発明の別の実施形態では、セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群の治療は、エスシタロプラムゲンチセートの最初の投与後6ヶ月未満の間、対象の症状のうちのいずれかを呈することを含む。
【0068】
本発明の一実施形態では、セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群の治療は、エスシタロプラムゲンチセートの最初の投与後5ヶ月未満の間、対象の症状を呈することを含む。本発明の別の実施形態では、セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群の治療は、エスシタロプラムゲンチセートの最初の投与後5ヶ月未満の間、対象の症状の50%未満を呈することを含む。本発明の別の実施形態では、セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群の治療は、エスシタロプラムゲンチセートの最初の投与後5ヶ月未満の間、対象の症状のいずれかを呈することを含む。
【0069】
本発明の一実施形態では、セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群の治療は、エスシタロプラムゲンチセートの最初の投与後4ヶ月未満の間、対象の症状を呈することを含む。本発明の別の実施形態では、セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群の治療は、エスシタロプラムゲンチセートの最初の投与後4ヶ月未満の間、対象の症状の50%未満を呈することを含む。本発明の別の実施形態では、セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群の治療は、エスシタロプラムゲンチセートの最初の投与後4ヶ月未満の間、対象の症状のいずれかを呈することを含む。
【0070】
本発明の一実施形態では、セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群の治療は、エスシタロプラムゲンチセートの最初の投与後3ヶ月未満の間、対象の症状を呈することを含む。本発明の別の実施形態では、セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群の治療は、エスシタロプラムゲンチセートの最初の投与後3ヶ月未満の間、対象の症状の50%未満を呈することを含む。本発明の別の実施形態では、セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群の治療は、エスシタロプラムゲンチセートの最初の投与後3ヶ月未満の間、対象の症状のいずれかを呈することを含む。
【0071】
本発明の一実施形態では、セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群の治療は、エスシタロプラムゲンチセートの最初の投与後2ヶ月未満の間、対象の症状を呈することを含む。本発明の別の実施形態では、セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群の治療は、エスシタロプラムゲンチセートの最初の投与後2ヶ月未満の間、対象の症状の50%未満を呈することを含む。本発明の別の実施形態では、セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群の治療は、エスシタロプラムゲンチセートの最初の投与後2ヶ月未満の間、対象の症状のいずれかを呈することを含む。
【0072】
本発明の一実施形態では、セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群の治療は、エスシタロプラムゲンチセートの最初の投与後1ヶ月未満の間、対象の症状を呈することを含む。本発明の別の実施形態では、セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群の治療は、エスシタロプラムゲンチセートの最初の投与後1ヶ月未満の間、対象の症状の50%未満を呈することを含む。本発明の別の実施形態では、セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群の治療は、エスシタロプラムゲンチセートの最初の投与後1ヶ月未満の間、対象の症状のいずれかを呈することを含む。
【0073】
本発明は、以下の実施例を参照することによってよりよく理解されるであろうが、当業者は、詳述される特定の実験が、以下の特許請求の範囲でより完全に説明される本発明の単なる例示であることを容易に理解するであろう。
【実施例】
【0074】
実施例1:エスシタロプラムオキサレート塩からのエスシタロプラム塩基の調製
エスシタロプラムオキサレート(40g)及び脱イオン水(170ml)を、機械式攪拌器、循環油浴、及び温度計を備えた250mlのジャケット付きガラス反応器に導入した。混合物を撹拌しながら、単離手順を通して、ジャケット温度を25℃に維持しながら、45mlのエーテルを添加した。混合物のpHを、25%NH4OHの添加によって9.0~9.5に調整した。混合物の沈降を可能にするために、攪拌器を停止した。2つの液相及び固体沈殿物が形成された。得られた混合物を濾過し、得られた固体ケーキを40mlのエーテルで洗浄した。次いで、濾液及びエーテル洗浄液を反応器に再導入した。有機相及び水相を分離し、異なる容器に回収した。水相を、反応器に再導入し、50mlのエーテルで抽出した。沈降後、水相を廃棄した。2つの有機抽出物を反応器内で混合し、25mlの水で2回洗浄した。有機溶液を、溶媒の完全な蒸発が起こるまで、浴温度を70℃に維持しながら、真空下で、回転式蒸発器中で蒸発させた。得られた残渣、30.1gの無色透明油(熱い)を、琥珀色のガラスバイアルに移した。
【0075】
実施例2:エスシタロプラムゲンチセート形態Iの調製
メタノール中のエスシタロプラム遊離塩基の100mg/mLの透明溶液200マイクロリットル(μl)を、4mLバイアルに添加した。メタノールを、バイアルの覆いを取り外すことによって蒸発させた。残りの材料を60℃で乾燥させ、真空中で3~6時間乾燥させた後、メタノール中の0.125Mのゲンチン酸500μlをバイアルに添加した。メタノールを、バイアルの覆いを取り外すことによって再び蒸発させた。材料を60℃で乾燥させ、更に真空中で3~5時間乾燥させた。250μlのイソプロパノールをバイアル内の乾燥材料に添加した。磁気撹拌器をバイアルに入れ、混合物を撹拌した。バイアルの底部の粘性材料によって攪拌器が止まるたびに、溶液を超音波処理するか、又は攪拌器をへらで移動させた。白っぽい固体がバイアルの側面に固着していると識別されたときに、バイアルを超音波処理した。溶液が濃いスラリーになるまで、24~28時間攪拌を続けた。スラリーを濾過し、得られた固体を60℃で乾燥させ、続いて一晩真空乾燥させた。試料をX線粉末回折(XRPD)に供し、エスシタロプラムゲンチセート形態Iとして識別した。
【0076】
実施例3:エスシタロプラムゲンチセートの徐放性の注射可能な剤形の調製
薬物溶液を、400gのエスシタロプラムゲンチセートをベンジルアルコール1267gに溶解して、24重量%の薬物溶液を形成することによって調製する。ポリマー溶液を、600gのMEDISORBS 7525 DLポリマーを3000gの酢酸エチルに溶解させて、16.7重量%のポリマー溶液を形成することによって形成する。薬物溶液とポリマー溶液を合わせて、第1の不連続相を形成する。第2の連続相は、1%PVAの溶液30lを調製することによって調製し、PVAは、乳化剤として作用する。これに2086gの酢酸エチルを添加して、6.5重量%の酢酸エチル溶液を形成する。
【0077】
Chemineer,Inc.,North Andover,MA.から入手可能な1/2”Kenics静的ミキサーなどの静的ミキサーを使用して、2つの相を合わせる。3l/分の総流量は、概して、約80~90aの範囲の質量中央径(MMD)を有する微粒子サイズ分布を提供する。連続相と不連続相の比は、5:1(v/v)である。静的ミキサーの長さは、約9インチから約88インチまで変化し得る。クエンチ液は、5~10℃の酢酸エチル及び注入用水(WFI)の2.5%溶液である。クエンチ液の体積は、0.25l/gのバッチサイズである。クエンチステップは、クエンチタンク内の微粒子を攪拌しながら約4時間を超えて実施する。
【0078】
クエンチステップの完了後、微粒子を回収、脱水、及び乾燥デバイスに移す。微粒子を、冷却した(約5℃)17lの25%エタノール溶液を使用してすすぐ。微粒子を乾燥させ、次いで、微粒子のTg(ガラス転移温度)よりも低い温度で維持された25%エタノール溶液(抽出媒体)を使用して、再スラリータンク内で再スラリー化させる。次いで、微粒子をクエンチタンクに戻し、微粒子のTgよりも高い温度で維持される別の抽出媒体(25%エタノール溶液)で少なくとも6時間洗浄する。微粒子のTgは、約18℃(約室温)であり、クエンチタンク内の抽出媒体の温度は、約18℃を超え、好ましくは25±1℃である。微粒子は、脱水及び最終乾燥のために回収、脱水、及び乾燥デバイスに戻す。乾燥は、約16時間を超える期間継続する。
【0079】
実施例4:エスシタロプラムゲンチセートによるセロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群の治療及び予防
セロトニン再取り込み阻害剤を少なくとも1ヶ月の連続期間にわたって経口投与されたが、現在療法を中止するように勧告されている300人の成人対象の試料集団を特定し、2つのグループ、グループA(n=100)及びグループB(n=200)に無作為化する。全ての患者は、ベースラインでスクリーニングし、セロトニン再取り込み阻害剤が経口投与されているにもかかわらず、セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群に関連し得る症状又は徴候を呈する対象は、試験から除外する。
【0080】
-1日目に、全ての対象は、経口投与されるセロトニン再取り込み阻害剤の最終用量を服用する。0日目に、群Aの対象に、600mgのエスシタロプラムを含むエスシタロプラムゲンチセートの徐放性の注射可能な剤形を投与する。
【0081】
全ての対象を、1日目、2日目、3日目、4日目、5日目、6日目、7日目、14日目、28日目、35日目、42日目、49日目、56日目、63日目、70日目、77日目、84日目、100日目、120日目、及び150日目に、セロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群に関連し得る症状又は徴候についてスクリーニングする。1日目から7日目までのいずれかの段階でセロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群に関連し得る症状又は徴候を呈するB群内の対象を、2つの群(B1群及びB2群)に無作為化し、B1群は、症候群が発生していると確認された日に、600mgのエスシタロプラムを含むエスシタロプラムゲンチセートの徐放性の注射可能な剤形を投与し、B群は、プラセボ注射を投与する。400mg及び200mgのエスシタロプラムの2回の後続注射を、それぞれ30日目及び60日目にグループA及びB1に投与し、一方で、30日目及び60日目に、グループB2にプラセボ注射を投与する。
【0082】
この試験の主要評価項目は、経口投与されるセロトニン再取り込み阻害剤の中止後の0日目から7日目の間の任意の段階でエスシタロプラムゲンチセートを投与した場合の、プラセボと比較したセロトニン再取り込み阻害剤離脱症候群の徴候及び症状の低減である。
【0083】
当業者は、本開示の好ましい実施形態に多くの変更及び修正を行うことができ、そのような変更及び修正は、本開示の趣旨から逸脱することなく行うことができることを理解するであろう。したがって、添付される特許請求の範囲は、本開示の真の趣旨及び範囲内に含まれる全てのそのよう同等の変形を網羅することが意図される。
【国際調査報告】