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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】パルス刺激装置及び医療デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/362 20060101AFI20240725BHJP
   A61B 5/352 20210101ALI20240725BHJP
   A61B 5/33 20210101ALI20240725BHJP
【FI】
A61N1/362
A61B5/352
A61B5/33 110
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506832
(86)(22)【出願日】2022-08-05
(85)【翻訳文提出日】2024-02-02
(86)【国際出願番号】 CN2022110614
(87)【国際公開番号】W WO2023011641
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】202110897971.0
(32)【優先日】2021-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523163196
【氏名又は名称】合源医療器械(上海)有限公司
【氏名又は名称原語表記】UNITED INNOMED (SHANGHAI) LIMITED
【住所又は居所原語表記】Floor 2, East Area Building #1, No. 299 Kangwei Road, Pudong New Area Shanghai 201315, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】王 励
【テーマコード(参考)】
4C053
4C127
【Fターム(参考)】
4C053KK02
4C053KK07
4C127AA02
4C127BB05
4C127DD03
4C127GG05
(57)【要約】
パルス刺激装置、方法及び医療デバイスであって、当該装置は、R波感知モジュール(1)と、心臓刺激パルス発生器(2)と、少なくとも一つの制御電極(3)とを含み、各制御電極(3)は、患者の心筋の異なるプリセット刺激位置に埋め込むために使用され、R波感知モジュール(1)は、体表心電図及び/又は心筋心電図を取得し、R波が出現するR波感知時間を取得して各プリセット刺激位置のパルス送信時間を決定するために使用され、パルス送信時間は、R波の感知から心臓刺激パルス送信のトリガーまでの持続時間に対応し、心臓刺激パルス発生器(2)は、パルス送信時間に基づいて、制御電極(3)に心臓刺激パルスを送信するために使用される。これにより、左右心室の複数の部位に電気刺激を与えて心臓循環サポートを提供することを実現し、右心室中隔を単純に刺激する従来の方法と比較して、患者の心臓の左右心室の全体的な収縮力をより効果的に向上させ、これにより急性及び/又は短期心室機能低下が著しい患者を良好にサポートすることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
R波感知モジュールと、心臓刺激パルス発生器と、少なくとも一つの制御電極とを含むパルス刺激装置であって、各前記制御電極は、異なるプリセット刺激位置に対応し、
前記制御電極は前記R波感知モジュール及び前記心臓刺激パルス発生器にそれぞれ電気的に接続され、前記R波感知モジュール及び前記心臓刺激パルス発生器は通信可能に接続され、
前記R波感知モジュールは、体表心電図を取得、及び/又は前記制御電極に基づいて心電信号を収集して心筋心電図を取得し、前記体表心電図及び/又は前記心筋心電図に基づいて対応するR波が出現するR波感知時間を取得し、且つ前記R波感知時間に基づいて各前記プリセット刺激位置に対応するパルス送信時間を決定するために使用され、
前記心臓刺激パルス発生器は、各前記パルス送信時間に基づいて、対応する各前記制御電極に心臓刺激パルスを送信するために使用されることを特徴とする、パルス刺激装置。
【請求項2】
前記装置は、少なくとも二つの前記制御電極を含み、異なる前記制御電極は、患者の左右心室の心筋の異なる前記プリセット刺激位置に埋め込むために使用されることを特徴とする、請求項1に記載のパルス刺激装置。
【請求項3】
前記装置は、前記心臓刺激パルス発生器に通信可能に接続されるパルス制御モジュールを更に含み、
前記パルス制御モジュールは、パルス送信モードを生成し、且つ前記心臓刺激パルス発生器に送信するために使用され、
前記心臓刺激パルス発生器は、前記体表心電図及び/又は前記心筋心電図にR波が出現するとき、前記パルス送信モード及び各前記パルス送信時間に基づいて、対応する各前記制御電極に心臓刺激パルスを送信するために使用されることを特徴とする、請求項1又は2に記載のパルス刺激装置。
【請求項4】
前記パルス送信モードは、前記体表心電図及び/又は前記心筋心電図におけるR波に基づいて、同期的に、設定された順序又はランダムな順序で、各前記プリセット刺激位置に対応する前記制御電極に心臓刺激パルスを送信することを含むことを特徴とする、請求項3に記載のパルス刺激装置。
【請求項5】
前記パルス制御モジュールは更に、設定された数の前記プリセット刺激位置に基づいて、設定された構築規則又はランダムな組み合わせを使用して、異なる前記プリセット刺激位置に対応する刺激の組み合わせを生成するために使用され、
ここで、前記刺激の組み合わせは、少なくとも二つの刺激ユニットを含み、且つ少なくとも一つの前記刺激ユニットは、パルス送信を同期的に実行する前記プリセット刺激位置の二つ以上に対応し、
前記パルス送信モードは、前記体表心電図及び/又は前記心筋心電図におけるR波に基づいて、設定された順序又はランダムな順序と前記刺激の組み合わせに従って、対応する前記プリセット刺激位置の前記制御電極に心臓刺激パルスを送信することを含むことを特徴とする、請求項3に記載のパルス刺激装置。
【請求項6】
設定された順序又はランダムな順序で、対応する前記プリセット刺激位置に心臓刺激パルスを連続的に送信することにより、予め設定された心拍数に達することを含むことを特徴とする、請求項4又は5に記載のパルス刺激装置。
【請求項7】
前記プリセット刺激位置は、左右心室中隔の内壁、心室の外壁の心室間溝、左心室の外側壁、左心室の前外側壁、左心室の後外側壁、右心室自由壁の内壁、右心室自由壁の心外壁、右心室の心尖部位、左心室の心尖部位のうちの少なくとも一つの部位を含むことを特徴とする、請求項1~6の少なくとも一項に記載のパルス刺激装置。
【請求項8】
前記R波感知モジュールは、体表心電図を取得し、及び前記制御電極に基づいて心筋心電図を取得し、且つそれぞれ前記心筋心電図に基づいてR波が出現する第一R波感知時間、及び前記体表心電図に基づいてR波が出現する第二R波感知時間を取得するために使用され、
前記R波感知モジュールは更に、前記第一R波感知時間に基づいて、各前記プリセット刺激位置に対応する第一パルス送信時間を計算するために使用され、
前記R波感知モジュールは更に、前記第一R波感知時間及び前記第二R波感知時間に基づいて、各前記プリセット刺激位置に対応する第二パルス送信時間を計算するために使用され、
前記心臓刺激パルス発生器は、前記第一パルス送信時間及び/又は前記第二パルス送信時間に基づいて、対応する各前記制御電極に心臓刺激パルスを送信するために使用されることを特徴とする、請求項1~7の少なくとも一項に記載のパルス刺激装置。
【請求項9】
前記R波感知モジュールは更に、前記第一R波感知時間を基準ゼロ点として、プリセット持続時間に基づいて、各前記プリセット刺激位置に対応する第一パルス送信時間を計算するために使用され、
前記R波感知モジュールは更に、前記第二R波感知時間と各前記プリセット刺激位置の前記第一R波感知時間との間の第一時間差を計算し、且つ前記第二R波感知時間を基準ゼロ点として、前記第一時間差及び前記プリセット持続時間に基づいて、各前記プリセット刺激位置に対応する前記第二パルス送信時間を計算するために使用されることを特徴とする、請求項8に記載のパルス刺激装置。
【請求項10】
前記心臓刺激パルス発生器は、前記第二パルス送信時間を取得した後、前記第一時間差を維持して、前記第二パルス送信時間に基づいて対応する前記制御電極に心臓刺激パルスを送信することを維持するために使用されることを特徴とする、請求項9に記載のパルス刺激装置。
【請求項11】
前記装置は、時間更新モジュールを更に含み、
前記時間更新モジュールは、定期的又は不定期に前記第一時間差を更新して、更新された前記第一時間差に基づいて前記第二パルス送信時間を更新するために使用され、
前記心臓刺激パルス発生器は、更新された前記第二パルス送信時間に基づいて、対応する前記制御電極に心臓刺激パルスを送信するために使用されることを特徴とする、請求項9又は10に記載のパルス刺激装置。
【請求項12】
前記R波感知モジュールは更に、一つのプリセット刺激位置でペーシングが実行されたとき、他のすべての残りのプリセット刺激位置に対応する前記心筋心電図を取得し、且つ前記心筋心電図におけるR波が出現する新たな第一R波感知時間、及び前記体表心電図におけるR波が出現する新たな第二R波感知時間を取得するために使用され、
前記R波感知モジュールは更に、新たな第一R波感知時間とプリセット持続時間に基づいて、各前記プリセット刺激位置に対応する新たな第一パルス送信時間を計算するために使用され、
前記R波感知モジュールは更に、新たな前記第二R波感知時間と各前記プリセット刺激位置の新たな前記第一R波感知時間との間の新たな第一時間差を計算し、且つ新たな前記第二R波感知時間を基準ゼロ点として、新たな前記第一時間差及び前記プリセット持続時間に基づいて、各前記プリセット刺激位置に対応する新たな前記第二パルス送信時間を計算するために使用されることを特徴とする、請求項8~11の少なくとも一項に記載のパルス刺激装置。
【請求項13】
前記R波感知モジュールは、複数の前記プリセット刺激位置で前記心筋心電図におけるR波の出現に対応する複数の第一R波感知時間を取得し、一つの第一R波感知時間を基準ゼロ点として選択し、前記基準ゼロ点の後の各第一R波感知時間と前記基準ゼロ点との間の第二差を計算し、且つ前記第二差とプリセット持続時間に基づいて、各前記プリセット刺激位置に対応する第一パルス送信時間を計算するために使用されることを特徴とする、請求項1に記載のパルス刺激装置。
【請求項14】
前記R波感知モジュールは、複数の第一R波感知時間の発生時間から一つの第一R波感知時間をランダムに選択するか、又は発生時間が最も早い第一R波感知時間を前記基準ゼロ点として選択するために使用されることを特徴とする、請求項13に記載のパルス刺激装置。
【請求項15】
前記心筋心電図により取得されるR波が出現する第一R波感知時間、及び前記体表心電図により取得されるR波が出現する第二R波感知時間は、同じ心拍に対応することを特徴とする、請求項8~13のいずれか一項に記載のパルス刺激装置。
【請求項16】
前記制御電極は、単極リード又は双極リードを使用して、前記R波感知モジュール及び前記心臓刺激パルス発生器に電気的に接続されることを特徴とする、請求項1に記載のパルス刺激装置。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載のパルス刺激装置を使用して実現されるパルス刺激方法であって、
体表心電図を取得及び/又は前記制御電極に基づいて心電信号を収集して心筋心電図を取得するステップと、
前記体表心電図及び/又は前記心筋心電図に基づいて、R波が出現するR波感知時間を取得するステップと、
前記R波感知時間に基づいて、各前記プリセット刺激位置に対応するパルス送信時間を決定するステップと、
各前記パルス送信時間に基づいて、対応する各前記制御電極に心臓刺激パルスを送信するステップと、を含むことを特徴とする、パルス刺激方法。
【請求項18】
請求項1~16のいずれか一項に記載のパルス刺激装置を含むことを特徴とする、医療デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願の相互参照>
本出願は出願日が2021年8月5日である中国特許出願2021108979710の優先権を主張する。本出願は上記の中国特許出願の全文を引用する。
【0002】
本発明は、医療機器の技術分野に関し、特にパルス刺激装置、方法及び医療デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
現在市販されているCCM(心筋収縮調節)装置は、独立した埋め込み型の、構造的に複雑で高価なデバイスであり、基本的には慢性心不全患者に使用される。それは、2本の双極リードが使用され、右心室中隔に埋め込まれ、局所心筋の電位を感知し、感知後の所定期間内(絶対不応期内)に心臓刺激パルスを送信して、心筋収縮力を増加させる。このとき、心筋刺激は、収縮力を増加させるために最も必要な心室である左心室には直接作用しない。右心室中隔に使用されるCCMは心臓収縮力と心臓機能(左心室の収縮力を含む)に全体的な影響を及ぼすが、この全体的な効果は直接的なものではなく、右心室中隔の局所的な刺激から生じる局所心筋への影響を通じてもたらされることが研究で示されている。
【0004】
現在のCCM刺激は、慢性心不全患者の埋め込み型設備にのみ使用され、右心室中隔の単一部位を刺激することで慢性心不全患者の長期治療を実現する。しかし、患者の心機能が急速に悪化し、血圧が低下した場合(例えば、急性心不全のエピソード)、患者は埋め込み型デバイスを必要としないか、又は長期間使用しないか、或いは原因が取り除かれる及び/又は心機能が回復するまでの比較的短期間の心臓機能サポートしか必要としないとき、既存の埋め込み型CCM及びその単一部位刺激は、急性及び/又は短期のサポート(心臓/循環サポートの期間と範囲)を満たしておらず、急性及び短期(数日間)の心臓/循環サポートを提供することは、患者の生存(例えば、心不全の急性エピソード)に不可欠であり、救急治療室や救急車などの緊急事態で蘇生された患者にとって、いかなる追加の(薬物以外に)心臓循環サポートも患者にとって「生死」を意味する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする技術的課題は、既存の埋め込み型CCM刺激方法が慢性心不全患者にのみ適しており、急性及び/又は短期の患者、並びに単一部位の電気刺激が心臓に必要な循環サポートに達しない可能性のある患者の使用ニーズを満たすことができないという従来技術の欠点を克服するための、パルス刺激装置、方法及び医療デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記の技術案により、上記の技術的問題が解決される。
【0007】
本発明は、R波感知モジュールと、心臓刺激パルス発生器と、少なくとも一つの制御電極とを含み、各前記制御電極は、異なるプリセット刺激位置に対応するパルス刺激装置を提供する。
【0008】
前記制御電極は前記R波感知モジュール及び前記心臓刺激パルス発生器にそれぞれ電気的に接続され、前記R波感知モジュールは前記心臓刺激パルス発生器に通信可能に接続される。
【0009】
前記R波感知モジュールは、体表心電図を取得、及び/又は前記制御電極に基づいて心電信号を収集して心筋心電図を取得し、前記体表心電図及び/又は前記心筋心電図に基づいて対応するR波が出現するR波感知時間を取得し、且つ前記R波感知時間に基づいて各前記プリセット刺激位置に対応するパルス送信時間を決定するために使用される。
【0010】
前記心臓刺激パルス発生器は、各前記パルス送信時間に基づいて、対応する各前記制御電極に心臓刺激パルスを送信するために使用される。
【0011】
本実施形態では、体表心電図及び/又は心筋心電図に基づいて、対応するR波が出現するR波感知時間を取得し、プリセット刺激位置に対応するパルス送信時間を決定することにより、急性及び/又は短期の患者、単一部位の電気刺激が心臓に必要な循環サポートに達しない可能性のある患者の使用ニーズを達成し、心臓刺激パルスのトリガーの適時性と信頼性を確保し、これによって患者の安全性を効果的に保護する。
【0012】
任意選択で、前記装置は、少なくとも二つの前記制御電極を含み、異なる前記制御電極は、患者の左右心室の心筋の異なる前記プリセット刺激位置に埋め込むために使用される。
【0013】
本実施形態では、少なくとも二つの制御電極を設けて左右心室の心筋内の複数の異なる位置への刺激を実現することにより、右心室中隔を単純に刺激する従来の方法と比較して、患者の心臓全体に対する収縮力、特に左心室に対する収縮力をより効果的に向上させることができる。急性心不全及び/又は短期心室機能低下が著しい患者の場合、多部位刺激により心臓収縮力をより向上させ、心臓駆出機能を改善することができる。
【0014】
任意選択で、前記装置は、前記心臓刺激パルス発生器に通信可能に接続されるパルス制御モジュールを更に含む。
【0015】
前記パルス制御モジュールは、パルス送信モードを生成し、且つ前記心臓刺激パルス発生器に送信するために使用される。
【0016】
前記心臓刺激パルス発生器は、前記体表心電図及び/又は前記心筋心電図にR波が出現するとき、前記パルス送信モード及び各前記パルス送信時間に基づいて、対応する各前記制御電極に心臓刺激パルスを送信するために使用される。
【0017】
本実施形態では、パルス制御モジュールに異なるパルス送信モードを予め設定することにより、実際のパルス送信シナリオにおいて、オペレータの人為的な選択、所定の固定パルスモードの予め設定、又はランダムな選択などの方法に基づいてパルス送信モードを決定し、異なるプリセット刺激位置へのパルス送信を自動的に実現することができる。もちろん、実際のニーズに応じてパルス送信モードを動的に調整することもできる。
【0018】
任意選択で、前記パルス送信モードは、前記体表心電図及び/又は前記心筋心電図におけるR波に基づいて、同期的に、設定された順序又はランダムな順序で、各前記プリセット刺激位置に対応する前記制御電極に心臓刺激パルスを送信することを含む。
【0019】
本実施形態では、同期的に、設定された順序又はランダムな順序などの方法でパルスを送信し、様々なパルス送信ニーズをできるだけ満たし、より多くのパルス刺激シナリオを満たし、患者に対するパルス刺激の有効性を確保すると同時に、患者の使用経験を向上させる。
【0020】
任意選択で、前記パルス制御モジュールは更に、設定された数の前記プリセット刺激位置に基づいて、設定された構築規則又はランダムな組み合わせの方法を使用して、異なる前記プリセット刺激位置に対応する刺激の組み合わせを生成するために使用される。
【0021】
ここで、前記刺激の組み合わせは、少なくとも二つの刺激ユニットを含み、且つ前記刺激ユニットの少なくとも一つは、パルス送信を同期的に実行する前記プリセット刺激位置の二つ以上に対応する。
【0022】
前記パルス送信モードは、前記体表心電図及び/又は前記心筋心電図におけるR波に基づいて、設定された順序又はランダムな順序及び前記刺激の組み合わせに従って、対応する前記プリセット刺激位置の前記制御電極に心臓刺激パルスを送信することを含む。
【0023】
本実施形態では、各プリセット刺激位置を個別に考慮せずに、複数のプリセット刺激位置に基づいて異なる刺激の組み合わせを形成し、同じ刺激の組み合わせに対応する異なるプリセット刺激位置に対して同期的にパルスを送信し、異なる刺激の組み合わせは、設定された順序又はランダムな順序のパルス送信方法を使用してパルス刺激を実行して、より多くのパルス刺激シナリオのニーズを満たし、患者の安全性を更に確保する。
【0024】
任意選択で、設定された順序又はランダムな順序で、対応する前記プリセット刺激位置に心臓刺激パルスを連続的に送信することにより、予め設定された心拍数に達する。
【0025】
本実施形態では、左右心室の複数の部位に制御電極を配置し、複数の部位に同期的に又は逐次的に心臓電気刺激(CCM)を提供して、電気循環サポート(Electrical Circulatory Support、ECS)を実現する。右心室中隔を単純に刺激する従来技術における方法と比較して、患者の心臓全体に対する収縮力、特に左心室に対する収縮力をより効果的に向上させることができる。急性心不全及び/又は短期心室機能低下が著しい患者の場合、多部位刺激により心臓の収縮力をより向上させ、心臓駆出機能を改善することができる。
【0026】
任意選択で、前記プリセット刺激位置は、左右心室中隔の内壁、心室の外壁の心室間溝、左心室の外側壁、左心室の前外側壁、左心室の後外側壁、右心室自由壁の内壁、右心室自由壁の心外壁、右心室の心尖部位、左心室の心尖部位のうちの少なくとも一つの部位を含む。
【0027】
本実施形態では、心臓パルス刺激の信頼性をできるだけ確保するために、左右心室の上記の列挙された位置に制御電極をそれぞれ設けるか、又は実際の刺激ニーズに応じていくつかの位置に制御電極を設ける。
【0028】
任意選択で、前記R波感知モジュールは、体表心電図を取得し、及び前記制御電極に基づいて心筋心電図を取得し、且つそれぞれ前記心筋心電図に基づいてR波が出現する第一R波感知時間、及び前記体表心電図に基づいてR波が出現する第二R波感知時間を取得するために使用される。
【0029】
前記R波感知モジュールは更に、前記第一R波感知時間に基づいて、各前記プリセット刺激位置に対応する第一パルス送信時間を計算するために使用される。
【0030】
前記R波感知モジュールは更に、前記第一R波感知時間及び前記第二R波感知時間に基づいて、各前記プリセット刺激位置に対応する第二パルス送信時間を計算するために使用される。
【0031】
前記心臓刺激パルス発生器は、前記第一パルス送信時間及び/又は前記第二パルス送信時間に基づいて、対応する各前記制御電極に心臓刺激パルスを送信するために使用される。
【0032】
本実施形態では、心筋心電図にR波が出現する第一R波感知時間を取得し、プリセット刺激位置に対応する第一パルス送信時間を計算し、体表心電図にR波が出現する第二R波感知時間を取得し、前記第一R波感知時間及び前記第二R波感知時間に基づいて、プリセット刺激位置に対応する第二パルス送信時間を計算することにより、第一パルス送信時間及び/又は第二パルス送信時間に基づいてパルス送信を実行する。即ち、心筋心電図のR波、体表心電図のR波に基づいてパルス送信時間を決定するスキームを提案することにより、パルス刺激の適時性と信頼性を効果的に確保する。
【0033】
任意選択で、前記R波感知モジュールは更に、前記第一R波感知時間を基準ゼロ点として、プリセット持続時間に基づいて、各前記プリセット刺激位置に対応する第一パルス送信時間を計算するために使用される。
【0034】
前記R波感知モジュールは更に、前記第二R波感知時間と各前記プリセット刺激位置の前記第一R波感知時間との間の第一時間差を計算し、且つ前記第二R波感知時間を基準ゼロ点として、前記第一時間差及び前記プリセット持続時間に基づいて、各前記プリセット刺激位置に対応する前記第二パルス送信時間を計算するために使用される。
【0035】
任意選択で、前記心臓刺激パルス発生器は、前記第二パルス送信時間を取得した後、前記第一時間差を維持して、前記第二パルス送信時間に基づいて対応する前記制御電極に心臓刺激パルスを送信することを維持するために使用される。
【0036】
任意選択で、前記装置は時間更新モジュールを更に含む。
【0037】
前記時間更新モジュールは、定期的又は不定期に前記第一時間差を更新して、更新された前記第一時間差に基づいて前記第二パルス送信時間を更新するために使用される。
【0038】
前記心臓刺激パルス発生器は、更新された前記第二パルス送信時間に基づいて、対応する前記制御電極に心臓刺激パルスを送信するために使用される。
【0039】
本実施形態では、より柔軟な電気刺激効果を達成し、より多くのパルス電気刺激シナリオのニーズを満たすために、実際のニーズに応じて第二パルス送信時間(この時点で心筋電気刺激を継続又は停止できる)を定期的又は不定期に更新することができ、次に更新されたトリガー時間に基づいて心筋電気刺激を継続する。
【0040】
任意選択で、前記R波感知モジュールは更に、一つのプリセット刺激位置でペーシングが実行されたとき、他のすべての残りのプリセット刺激位置に対応する前記心筋心電図を取得し、且つ前記心筋心電図におけるR波が出現する新たな第一R波感知時間、及び前記体表心電図におけるR波が出現する新たな第二R波感知時間を取得するために使用される。
【0041】
前記R波感知モジュールは更に、新たな第一R波感知時間とプリセット持続時間に基づいて、各前記プリセット刺激位置に対応する新たな第一パルス送信時間を計算するために使用される。
【0042】
前記R波感知モジュールは更に、新たな前記第二R波感知時間と各前記プリセット刺激位置の新たな前記第一R波感知時間との間の新たな第一時間差を計算し、且つ新たな前記第二R波感知時間を基準ゼロ点として、新たな前記第一時間差及び前記プリセット持続時間に基づいて、各前記プリセット刺激位置に対応する新たな前記第二パルス送信時間を計算するために使用される。
【0043】
本実施形態では、一つの制御電極を介してペーシングが実行される場合、当該パルス刺激シナリオでは、新たな心筋心電図のR波と体表心電図のR波におけるR波感知時間を再計算し、次に対応する第一パルス送信時間と第二パルス送信時間をそれぞれ計算する必要があり、これにより当該シナリオでタイムリーなパルス刺激の送信を実現する。
【0044】
任意選択で、前記R波感知モジュールは、複数の前記プリセット刺激位置で前記心筋心電図におけるR波の出現に対応する複数の第一R波感知時間を取得し、一つの第一R波感知時間を基準ゼロ点として選択し、前記基準ゼロ点の後の各第一R波感知時間と前記基準ゼロ点との間の第二差を計算し、且つ前記第二差とプリセット持続時間に基づいて、各前記プリセット刺激位置に対応する第一パルス送信時間を計算するために使用される。
【0045】
本実施形態では、任意に一つの第一R波感知時間(LS)を基準ゼロ点として選択し、それ以降の他の時間における刺激位置の送信時間をこれに基づいて、それとの差を計算してプリセット持続時間を加算すると、各パルス刺激位置のパルス送信時間を取得することができ、これにより体表心電図に依存せずに心筋心電図のみに基づいてタイムリーかつ効果的なパルス送信を達成し、パルス刺激の制御プロセスをより柔軟にし、より多くの使用シナリオに適応させることができる。
【0046】
任意選択で、前記R波感知モジュールは、複数の第一R波感知時間の発生時間から一つの第一R波感知時間をランダムに選択するか、又は発生時間が最も早い第一R波感知時間を前記基準ゼロ点として選択するために使用される。
【0047】
任意選択で、前記心筋心電図により取得されるR波が出現する第一R波感知時間、及び前記体表心電図により取得されるR波が出現する第二R波感知時間は、同じ心拍に対応する。
【0048】
本実施形態では、パルス刺激の有効性を確保するために、すべてのR波(即ち、心筋心電図のR波と体表心電図のR波)は同じ心拍で感知される。即ち、心筋心電図はR波が出現する第一R波感知時間を取得し、体表心電図はR波が出現する第二R波感知時間を取得し、二つのR波感知時間の時間差が所定値以内でなければならず、そうするとパルス刺激の実質的な意味があり、そうでなければパルス刺激の信頼性が確保できない。
【0049】
任意選択で、前記制御電極は、単極リード又は双極リードを使用して、前記R波感知モジュール及び前記心臓刺激パルス発生器に電気的に接続される。
【0050】
本発明は、上記のパルス刺激装置を使用して実現されるパルス刺激方法を更に提供し、前記方法は、
体表心電図を取得、及び/又は前記制御電極に基づいて心電信号を収集して心筋心電図を取得するステップと、
前記体表心電図及び/又は前記心筋心電図に基づいて、R波が出現するR波感知時間を取得するステップと、
前記R波感知時間に基づいて、各前記プリセット刺激位置に対応するパルス送信時間を決定するステップと、
各前記パルス送信時間に基づいて、対応する各前記制御電極に心臓刺激パルスを送信するステップと、を含む。
【0051】
本発明は、上記のパルス刺激装置を含む医療デバイスを更に提供する。
【0052】
当技術分野における常識に基づいて、前記各好ましい条件を任意に組み合わせて、本発明の各好ましい実施例を得ることができる。
【0053】
本発明の積極的な進歩及び効果は、下記の通りである。
【0054】
(1)左右心室の複数の部位に制御電極(例えば、対応する刺激及び/又はペーシング機能)を配置し、複数の部位に同期的に又は逐次的に心臓電気刺激(CCM)を提供して、心臓循環サポートを提供し、右心室中隔を単純に刺激する従来の方法と比較して、患者の心臓全体に対する収縮力、特に左心室に対する収縮力をより効果的に向上させることができる。急性心不全及び/又は短期心室機能低下が著しい患者の場合、多部位刺激により心臓の収縮力をより向上させ、心臓駆出機能を改善することができる。例えば、心臓手術を受けたばかりの患者には、左右の心室の心筋の異なる位置(例えば、心外膜表面の左心室の前/後側位置、心室間溝、右心室自由壁など)にリードを埋め込む。他の患者では、右心室(例えば、心室中隔、心尖若しくは自由壁)内に静脈を介してリードを配置する、及び/又は左心室の心内膜(例えば、心室中隔、心尖若しくは自由壁)に心室間隔もしくは動脈を介して、又は左心室の心外膜表面(冠状静脈若しくは動脈に配置された電極を介して)にリードなどを配置することができる。
【0055】
(2)心臓電気刺激(CCM)方法(メカニズム、時間など):a.刺激メカニズムは、多部位心臓電気刺激のメカニズム(同期的又は逐次的)であり、例えば、一つの心周期ですべての電極部位が刺激(同期的刺激)をトリガーするか、又は複数の心周期で設定された順序又はランダムな順序で各電極部位のトリガー刺激(逐次的刺激)を完了する。b.トリガーメカニズムは、局所的な心室筋電活動を表すR波感知、及び/又は全体的な心室筋電活動を表すR波感知の時間をトリガーポイントとする。後者の場合、全体的な心室筋電R波と局所的な心室筋電R波の時間的関係がトリガー時間の一部になる。刺激方法(メカニズム、時間など)は、患者の絶えず変化する心拍数や全体的な心臓状態に適応するために、実際の状況に応じて動的に調整することができる。即ち、心機能改善の効果を効果的に向上させるために、各患者自身の心臓の動的変化状態に応じて適応及び調整することができる。
【0056】
(3)CCM送信は、一つの心臓位置に2本の単極リード又は双極リードを使用する必要がなく、単純な単極リードで実現できるため、システム構造が簡素化され、コストが削減される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】本発明の実施例1に係るパルス刺激装置の構造模式図である。
図2】本発明の実施例1に係るCCM送信中のECGとEGMsに対応するR波トリガーの模式図である。
図3】本発明の実施例2に係るパルス刺激装置の構造模式図である。
図4】本発明の実施例2に係るCCM逐次送信中のECGとEGMsに対応するR波トリガーの模式図である。
図5】本発明の実施例3に係るパルス刺激方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、実施例を通じて本発明を更に説明するが、本発明は、これによって前記実施例の範囲内に限定されるものではない。
【0059】
<実施例1>
図1に示すように、本実施例のパルス刺激装置は、R波感知モジュール1と、心臓刺激パルス発生器2と、少なくとも一つの制御電極3とを含み、制御電極3は、リード4を介してR波感知モジュール1及び心臓刺激パルス発生器2にそれぞれ電気的に接続され、R波感知モジュール1は心臓刺激パルス発生器2に通信可能に接続される。
【0060】
好ましくは、装置は、少なくとも二つの制御電極を含み、異なる制御電極は、患者の左右心室の心筋の異なるプリセット刺激位置に埋め込むために使用される。
【0061】
少なくとも二つの制御電極を設けて左右心室の心筋内の複数の異なる位置への刺激を実現することにより、右心室中隔を単純に刺激する従来の方法と比較して、患者の心臓全体に対する収縮力、特に左心室に対する収縮力をより効果的に向上させることができる。急性心不全及び/又は短期心室機能低下が著しい患者の場合、多部位刺激により心臓の収縮力をより向上させ、心臓駆出機能を改善することができる。もちろん、制御電極の数は、実際のシナリオのニーズに応じてリセット及び調整することができる。
【0062】
具体的には、異なるプリセット刺激位置は、左右心室中隔の内壁、心室の外壁の心室間溝、左心室の外側壁、左心室の前外側壁、左心室の後外側壁、右心室自由壁の内壁、右心室自由壁の心外壁、右心室の心尖部位、左心室の心尖部位を含むが、これらに限定されない。
【0063】
心臓パルス刺激の信頼性をできるだけ確保するために、左右心室の上記の列挙された位置に制御電極をそれぞれ設けるか、又は実際の刺激ニーズに応じていくつかの位置に制御電極を設ける。
【0064】
R波感知モジュール1は、体表心電図(ECG)を取得、及び/又は制御電極3に基づいて心電信号を収集して心筋心電図(EGM)を取得するために使用され、制御電極は心室内膜又は心室外膜に配置できるため、心筋心電図(EGM)は、心室腔内又は心室外壁からの信号をカバーする。
【0065】
具体的には、R波感知モジュール1は、体表心電図及び/又は心筋心電図に基づいてR波が出現するR波感知時間を取得し、且つR波感知時間に基づいて各プリセット刺激位置に対応する心臓刺激パルス(又はCCM電気刺激)の送信時間を決定するために使用され、パルス送信時間は、R波の感知から心臓刺激パルス送信のトリガーまでの持続期間に対応し、各位置又は部位におけるCCMの送信は、局所心筋心電図EGMのR波感知又は全体体表心電図ECGのR波感知によってトリガーされる。
【0066】
心臓刺激パルス発生器2は、各パルス送信時間に基づいて、対応する各制御電極3に心臓刺激パルスを送信するために使用される。
【0067】
一つの実施可能な実施形態では、R波感知モジュールは、体表心電図を取得、及び/又は制御電極に基づいて心筋心電図を取得し、且つそれぞれ心筋心電図に基づいてR波が出現する第一R波感知時間、及び体表心電図に基づいてR波が出現する第二R波感知時間を取得するために使用される。
【0068】
なお、本実施例の心筋心電図により取得されるR波が出現する第一R波感知時間、及び体表心電図により取得されるR波が出現する第二R波感知時間は、同じ心拍に対応する。
【0069】
パルス刺激の有効性を確保するために、すべてのR波(即ち、心筋心電図のR波と体表心電図のR波)は同じ心拍で感知される。即ち、心筋心電図はR波が出現する第一R波感知時間を取得し、体表心電図はR波が出現する第二R波感知時間を取得し、二つのR波感知時間の時間差が所定値以内でなければならず、そうするとパルス刺激の実質的な意味があり、そうでなければパルス刺激の信頼性が確保できない。R波感知モジュールは更に、第一R波感知時間が各プリセット刺激位置に対応する第一パルス送信時間を取得するために使用され、ここで、第一R波感知時間が決定されると、対応する第一パルス送信時間も決定され(即ち、プリセット時間)、変更されない。
【0070】
R波感知モジュールは更に、第一R波感知時間及び第二R波感知時間に基づいて、各プリセット刺激位置に対応する第二パルス送信時間を計算するために使用される。
【0071】
心臓刺激パルス発生器は、第一パルス送信時間及び/又は第二パルス送信時間に基づいて、制御電極に心臓刺激パルスを送信するために使用される。
【0072】
本実施例におけるパルス刺激プロセスでは、(1)体表心電図のR波を主として心臓刺激パルスの送信を実行することができる。即ち、各電極の刺激送信時間は、体表心電図のR波感知時間をトリガー時間のゼロ点とする。(2)心筋心電図のR波を主として心臓刺激パルスの送信を実行することができる。即ち、各電極の刺激送信時間は、その心筋心電図のR波をトリガー時間のゼロ点とする。(3)同時に体表心電図のR波と心筋心電図のR波に基づいて心臓刺激パルスの送信を実行する。具体的には三つのうちの一つのトリガー機構を使用することは、電気刺激の実際のニーズに応じて選択又はリアルタイムで調整することができる。
【0073】
また、心臓刺激パルストリガーの制御効果を更に向上させるために、体表ECGの知覚が不良な場合には、EGMベースのトリガーに直接に切り替えることができ、或いは、ある位置のEGMの知覚が不良な場合には、ECGベースのトリガーに直接に切り替えることができる。即ち、誤認識や知覚不良などの特殊な状況によりパルス刺激を継続できないことを回避し、治療を継続させることをタイムリーかつ効果的に確保する。
【0074】
一つの実施可能な実施形態では、R波感知モジュール1は、第一R波感知時間とプリセット持続時間に基づいて、各プリセット刺激位置に対応する第一パルス送信時間を計算するために使用される。
【0075】
電極3により収集される心筋心電図(EGM)の場合、第一パルス送信時間は、心筋心電図EGMのR波感知時刻を基準ゼロ点(又はトリガー点と呼ばれる)とするプリセット持続時間(LPD)であり、当該持続時間は通常、デフォルトで40msであり、当該持続時間の値は、実際のニーズに応じて調整することができる。各部位又は位置のLPD(即ち、第一パルス送信時間)は、心筋心電図のR波感知時刻に対する当該部位又は位置でのCCM送信のトリガー時間に使用される。
【0076】
R波感知モジュール1は更に、第二R波感知時間と第一R波感知時間との間の第一時間差を計算し、且つ第一時間差及びプリセット持続時間のパルス送信時間に基づいて、第二R波感知時間を基準ゼロ点(又はトリガー点と呼ばれる)として、各プリセット刺激位置に対応する第二パルス送信時間を計算するために使用される。
【0077】
心筋心電図にR波が出現する第一R波感知時間を取得し、プリセット刺激位置に対応する第一パルス送信時間を計算し、体表心電図にR波が出現する第二R波感知時間を取得し、第一R波感知時間及び第二R波感知時間に基づいて、プリセット刺激位置に対応する第二パルス送信時間を計算することにより、第一パルス送信時間及び/又は第二パルス送信時間に基づいてパルス送信を実行する。即ち、心筋心電図のR波、体表心電図のR波に基づいてパルス送信時間を決定するスキームを提案することにより、パルス刺激の適時性と信頼性を効果的に確保する。
【0078】
即ち、EGMのR波によってトリガーされるCCMの場合、R波から送信まで各刺激位置の持続時間は固定される(例えば、プリセット持続時間は40msである)。ECGのR波によってトリガーされるCCMの場合、各刺激位置の持続時間は固定されず、異なる(即ち、40msの固定プリセット持続時間と位置変化に基づく時間差によって決定される)。
【0079】
図2に示すように、患者が洞調律にあるとき、体表心電図ECGについて、まず体表心電図ECGのR波感知の対応する時刻と局所心筋心電図EGMのR波感知の対応する時刻との間の時間差(GLSD)を計算し、この時間差は、心臓電気活動全体に対する、対応する心筋部分/位置の心筋電気活動の時間感受性値を特徴付け、体表心電図ECGのR波感知時刻によってトリガーされるパルス送信時間(GPD)は、対応する時刻GLSDと心筋心電図のパルス送信時間との和、即ちGPD=GLSD+LPDとなる。更に、各部位に対応するGLSDとGPDは、複数の自己心拍の時に測定し、平均化することができる(デフォルトで3~12の範囲の5つの連続した自己心拍である)。各部位又は位置のGPD(即ち、第二パルス送信時間)は、体表心電図のR波感知時刻に対する当該部位又は位置でのCCM送信のトリガー時間に使用される。本実施例では、このステップをセットアップ期間(set-up period)と呼ぶ。
【0080】
一つの実施可能な実施形態では、心臓刺激パルス発生器は、各位置での第二パルス送信時間を取得した後、第一時間差を維持して、第二パルス送信時間に基づいて対応する制御電極に心臓刺激パルスを送信することを維持するために使用される。
【0081】
即ち、本実施例では、第二パルス送信時間を計算した後、毎回電気刺激出力前に再計算する必要がなく、体表心電図によって電気刺激出力時間を直接にトリガーすることができ、毎回心筋心電図のR波を感知してトリガーする必要がなく、これにより心臓電気刺激の効果を達成しながら、データ処理時間を効果的に短縮し、心臓刺激パルストリガーの制御効率を向上させる。
【0082】
一つの実施可能な実施形態では、本実施例の装置は、時間更新モジュールを更に含む。
【0083】
時間更新モジュールは、定期的又は不定期に第一時間差を更新して、更新された第一時間差に基づいて第二パルス送信時間を更新するために使用される。
【0084】
心臓刺激パルス発生器は、更新された第二パルス送信時間に基づいて、対応する制御電極に心臓刺激パルスを送信するために使用される。
【0085】
即ち、本実施例では、より柔軟な電気刺激効果を達成し、より多くのパルス電気刺激シナリオのニーズを満たすために、実際のニーズに応じて第二パルス送信時間(この時点で心筋電気刺激を継続又は停止できる)を定期的又は不定期に更新することができ、次に更新されたトリガー時間に基づいて心筋電気刺激を継続する。
【0086】
本実施例では、心臓への循環サポートを強化又は最大化する効果は、刺激位置及び刺激機構を設定することによって達成される。
【0087】
もちろん、本実施例におけるCCM刺激の制御スキームは、患者の心臓刺激サポートの安全性を確保するために、患者の心拍数が速すぎること(例えば、120拍/分を超える)、PVC(心室性期外収縮)が検出された場合など、特定の特別な状況下では自動的に一時中断される必要がある。
【0088】
本実施例では、左右心室の複数の部位に制御電極(例えば、対応する刺激及び/又はペーシング機能)を配置し、複数の部位に心臓電気刺激CCMを提供し、右心室中隔を単純に刺激する従来の方法と比較して、患者の心臓全体に対する収縮力、特に左心室に対する収縮力をより効果的に向上させることができる。急性心不全及び/又は短期心室機能低下が著しい患者の場合、多部位刺激により心臓の収縮力をより向上させ、心臓駆出機能を改善することができる。
【0089】
<実施例2>
図3に示すように、本実施例のパルス刺激装置は、実施例1を更に改良したものであり、具体的には、
本実施例のパルス刺激装置は、心臓刺激パルス発生器2に通信可能に接続されるパルス制御モジュール5を更に含む。
【0090】
パルス制御モジュール5は、パルス送信モードを生成し、且つ心臓刺激パルス発生器2に送信するために使用される。
【0091】
心臓刺激パルス発生器2は、体表心電図又は心筋心電図にR波が出現するとき、パルス送信モード及びパルス送信時間に基づいて、対応する各制御電極3に心臓刺激パルスを送信するために使用される。
【0092】
パルス制御モジュールに異なるパルス送信モードを予め設定することにより、実際のパルス送信シナリオにおいて、オペレータの人為的な選択、所定の固定パルスモードの予め設定、又はランダムな選択などの方法に基づいてパルス送信モードを決定し、異なるプリセット刺激位置へのパルス送信を自動的に実現することができる。もちろん、実際のニーズに応じてパルス送信モードを動的に調整することもできる。
【0093】
一つの実施可能な実施形態では、パルス送信モードは、体表心電図及び/又は心筋心電図におけるR波に基づいて、同期的に、設定された順序又はランダムな順序で、各プリセット刺激位置に対応する制御電極に心臓刺激パルスを送信することを含む。
【0094】
設定された順序又はランダムな順序で、対応するプリセット刺激位置に心臓刺激パルスを連続的に送信することにより、予め設定された心拍数に達する。
【0095】
パルス送信モードは、体表心電図の全体的な(global)R波、又は各部位の局所的な(local)R波によってトリガーされる送信メカニズム、即ち同期的に、設定された順序又はランダムな順序で、各プリセット刺激位置に心臓刺激パルスを送信し、又は、セットアップ期間(set-up period)、即ち各電極位置に対応するGLSDに対する測定及び計算などである。
【0096】
同期的に、設定された順序又はランダムな順序などの方法でパルスを送信することにより、様々なパルス送信ニーズをできるだけ満たし、より多くのパルス刺激シナリオを満たし、患者に対するパルス刺激の有効性を確保すると同時に、患者の使用経験を向上させる。
【0097】
位置又は部位へのCCM刺激は、同じR波後に各部位の対応する時間の「同時に」(即ち、同じ心周期で)トリガーされて送信されることもできるし(同期と呼ばれる)、複数のR波での複数の部位に逐次的に送信されることなどもでき、設定された順序で送信される場合、CCM刺激は、R波後に一つの部位でその部位の対応する時間後にトリガーされて送信され、その後、次のR波後に次の部位で送信されるというように、すべての部位が送信によってカバーされるまで続く。同じR波の後、CCM刺激は各部位の対応する時間に従って一つ又は複数の部位で出現する可能性がある(ただし、すべての部位ではなく、そうでなければ同期である)。更に、CCM刺激を受ける特定の部位の順序は、特別に設計されてもよく(医師など関連権限を持つスタッフがプログラムできる)、ランダムにしてもよい。逐次的に送信されるとき、各プリセット部位の刺激の回数は1回又は複数回(例えば、6回、即ち6つの心周期)であってもよく、その後、次のプリセット部位の刺激に移行し、これから類推する。
【0098】
一つの実施可能な実施形態では、パルス制御モジュールは更に、設定された数のプリセット刺激位置に基づいて、設定された構築規則又はランダムな組み合わせを使用して、異なるプリセット刺激位置に対応する刺激の組み合わせを生成するために使用される。
【0099】
ここで、刺激の組み合わせは、少なくとも二つの刺激ユニットを含み、且つ少なくとも一つの刺激ユニットは、パルス送信を同期的に実行するプリセット刺激位置の二つ以上に対応する。
【0100】
パルス送信モードは、体表心電図及び/又は心筋心電図におけるR波に基づいて、設定された順序又はランダムな順序及び刺激の組み合わせに従って、プリセット刺激位置に対応する制御電極に心臓刺激パルスを送信することを含む。
【0101】
設定された順序又はランダムな順序で、対応するプリセット刺激位置に心臓刺激パルスを連続的に送信することにより、予め設定された心拍数に達する。
【0102】
各プリセット刺激位置を個別に考慮せずに、複数のプリセット刺激位置に基づいて異なる刺激の組み合わせを形成し、同じ刺激の組み合わせに対応する異なるプリセット刺激位置に対して同期的にパルスを送信し、異なる刺激の組み合わせは、設定された順序又はランダムな順序のパルス送信方法を使用してパルス刺激を実行して、より多くのパルス刺激シナリオのニーズを満たし、患者の安全性を更に確保する。
【0103】
更に、一つの実施可能な実施形態では、パルス刺激装置は二つのリード4に対応し、一つのリードの電極は右心室中隔(右心室中隔は心内膜位置とする)又は前もしくは後心室間溝付近(心外膜位置とする)に位置し、もう一つのリードは左心室の前外側壁(心外膜又は心内膜位置)に位置する。
【0104】
一つの実施可能な実施形態では、パルス刺激装置は3つのリード4に対応し、一つの電極は右心室中隔(右心室中隔は心内膜位置である)又は前もしくは後心室間溝付近(心外膜位置とする)に位置し、一つは左心室の後外側壁(心外膜又は心内膜位置)に位置し、もう一つのリードは左心室の前外側壁(心外膜又は心内膜位置)に位置する。
【0105】
もちろん、異なる患者の状態、心臓関連手術の状況、循環サポートのニーズ、及びCCM刺激のニーズに応じて、リード4の数及び予め設定された埋め込み位置を再計画することもできる。
【0106】
一つの実施可能な実施形態では、本実施例のリード4は単極リード又は双極リードを含み、心臓刺激パルスはリード4を介して対応する部位に送信される。(1)単一の単極リードを使用する場合、CCMは、心筋に接触している単極電極と患者の体の他の部位の電極との間に送信される。この場合、単極電極は、心腔又は血管内の他の電極リード上の電極、体表ECG電極又は体外除細動用の体表パッチ電極;或いは皮下に埋め込まれた電極(例えば、S-ICD)又は心臓に埋め込まれた電極などであってもよい。或いは、他の特別に設計された電極を使用して取得することもできる。(2)複数の単極リードを使用する場合、CCMは、心筋に接触している二つの単極電極(一方が陰極、もう一方が陽極)の間に送信することができる。(3)双極リードを使用する場合、一つの電極のみが心筋に継続的に接触し(例えば、右心室中隔リード4)、CCMは、二つの電極の間で送信することも、又は単極リード(心筋に接触している電極)として送信することもでき、単極セットアップと同様である。(4)例えば、左心室の心外膜電極の場合、CCMは、二つの電極の間で、又はそれぞれ二つの単極リードとして送信することができる。(5)単極リード及び双極リードを同時に使用することができるため、多くの組み合わせが可能であり、具体的にどのように組み合わせるかは実際のニーズに応じて決定及び調整することができる。
【0107】
以下、本実施例のパルス刺激装置の動作原理を、実例を挙げて具体的に説明する。
【0108】
(1)開胸心臓手術を受けたばかりの患者の心外膜表面、具体的には心外前壁又は心外後壁の心室間溝(心室の心室間溝付近)、左心室の後外側壁、左心室の前外側壁に3本の双極リード4を埋め込む。同時に現在の患者の体表心電図を提供する。これらの3本のリードは体表心電図とともに外部電気循環サポート装置、即ちパルス刺激装置のR波感知モジュール1に接続される。
【0109】
(2)セットアップ期間(set-up period)において、R波感知モジュール1は、体表心電図(ECG)のR波感知時間(GS)と心筋心電図EGMsのR波感知時間LS(LS1、LS2、LS3)をそれぞれ感知するために使用され、具体的には図2に示された通りであり、GS、LS(LS1、LS2、LS3)及びLPDに基づいて、各部位のGLSDとGPD(GLSD1とGPD1、GLSD2とGPD2、GLSD31とGPD3)を計算し、ここで、GLSD=LS-GSであり、GPD=GLSD+LPDである。
【0110】
(3)心臓刺激パルス送信モード(R波のトリガー源、同期又は逐次、並びに順序内の特定の順序又はランダムな順序は、全て医師によりプログラムできる)、心臓刺激パルス送信モード、LPD及びGPDに基づいて、図4に示すように一つ又は複数の部位に対して心臓刺激パルスを生成する。
【0111】
(4)接続されると、デバイスは、R波(GS&LS)を感知し、各部位(3本のリードのそれぞれが位置する場所)のGLSD&GPDを計算するセットアッププロセスを経、このGLSDn&GPDnにおいて、n=1、2及び3である。CCMが送信されない洞調律中に実行するのが最適である。次に、体表ECGのR波トリガーモードの場合、CCMは、表面ECGのR波を感知した後、各位置の対応するGPDに従って、同期モード(同じ心拍(R波)で)又は順序モード(例えば、CCMはR波1の後に部位1に、R波2の後に部位2に、R波3の後に部位3に(一つずつ)送信される)、又はランダムな順序でCCMを送信/トリガーする。
【0112】
同様に、CCMは各部位のローカルR波によってトリガーされ、同期的又は逐次的に実行することができる(局所/ローカルR波モード)。
【0113】
更に、CCMが特定の拍動数又は持続時間(デフォルトで3600拍動又は60分、プログラム可能)で送信された後、心拍数及び/又は患者の状態(例えば、投薬後)の変化によるパラメータ(例えば、GLSDなど)の潜在的な変化に対応するため、セットアッププロセスが再度開始される。更に、更新されたパラメータに基づいてCCMの送信を継続することもできる。
【0114】
上記の心臓刺激パルストリガーの制御方法のサポートにより、急性及び/又は短期の患者、及び単一部位の電気刺激が心臓に必要な循環サポートを達成できる患者の使用ニーズを満たすことができ、特に、心臓手術を受けるのに適していない又は心配しているなど、心機能が弱い(例えば、心拍出量が比較的少ない)患者の場合、手術後の心機能を効果的に強化し、患者の回復を早め、患者にタイムリーかつ効果的な心臓ニーズのサポートを提供することができる。同時に、この技術のサポートにより、患者と医師が関連する手術を行う際の自信を高めるのにも役立つ。更に、薬物に基づいて心臓の収縮性を高める既存の方法は、しばしば副作用(例えば、不整脈、心筋酸素消費量の増加など、死亡率を増加させる可能性がある)があるが、本実施例の心臓刺激パルストリガーの制御方法は、基本的に関連する副作用がなく(心拍数、酸素消費量は基本的に変化しない)、且つ電気刺激をよりタイムリーかつ効果的に達成し、心臓の収縮力を高めるというより良い効果を達成することができる。
【0115】
本実施例では、制御電極を左右心室の複数の部位に(例えば、刺激及び/又はペーシング機能に対して)配置して、複数の部位への同期的又は逐次的心臓電気刺激CCMの提供を実現し、CCM刺激のトリガー機構は、局所的な心電活動のR波感知及び/又は全体的な心電活動のR波感知の時間によって決定され、且つトリガー方法は、実際の状況に応じて動的に調整して、患者の絶えず変化する心拍数と全体的な心臓の状態に適応する。即ち、各患者自身の心臓の動的変化状態に応じて適応及び調整して、CCM刺激制御効果を効果的に向上させ、より良い心臓収縮力を達成し、急性及び/又は短期の患者、及び単一部位の電気刺激が心臓に必要な循環サポートを達成できる患者の使用ニーズをよりよく満たすことができる。
【0116】
<実施例3>
本実施例のパルス刺激装置は、実施例2を更に改良したものであり、本実施例は、制御電極がペーシング動作を実行するCCM刺激シナリオを考慮したものであり、具体的には、
ペーシング時のCCM刺激シナリオについては、下記の二つの状況が存在する:a)ペーシングは独立した電極によって発生され、この場合、心臓刺激パルストリガーの制御原理は上記の内容と一致し、影響を受けない;b)ペーシングがCCM刺激電極によって発生される場合、主にCCM刺激を提供する電極はペーシングも提供する必要がある(ペーシング時にLS1に対応する電極位置と認識される)一方、他の残りの電極位置(CCM刺激のみを提供する)の動作原理は上記の内容と一致する。ペーシングを提供するCCM刺激電極の場合、ペーシング時のLS1はペーシングパルス送信時間であり、プリセット持続時間は40~100ms、好ましくは60~80msに延長する必要がある(プログラムでも調整可能)。どちらの場合も、プリセット期間には2回の測定が必要であり、1回の測定時間は自分の心拍数(洞調律)を検出するときであり、もう1回の測定時間はペーシング時である。
【0117】
具体的には、制御電極がペーシング動作を実行する場合、R波感知モジュールは更に、一つのプリセット刺激位置でペーシングが実行されたとき、他のすべての残りのプリセット刺激位置に対応する心筋心電図を取得し、且つ心筋心電図におけるR波が出現する新たな第一R波感知時間、及び体表心電図におけるR波が出現する新たな第二R波感知時間を取得するために使用される。
【0118】
R波感知モジュールは更に、新たな第一R波感知時間とプリセット持続時間に基づいて、各プリセット刺激位置に対応する新たな第一パルス送信時間を計算するために使用される。
【0119】
R波感知モジュールは更に、新たな第二R波感知時間と各プリセット刺激位置の新たな第一R波感知時間との間の新たな第一時間差を計算し、且つ新たな第二R波感知時間を基準ゼロ点として、新たな第一時間差及びプリセット持続時間に基づいて、各プリセット刺激位置に対応する新たな第二パルス送信時間を計算するために使用される。
【0120】
本実施例では、一つの制御電極を介してペーシングが実行される場合、当該パルス刺激シナリオでは、新たな心筋心電図のR波と体表心電図のR波におけるR波感知時間を再計算し、次に対応する第一パルス送信時間と第二パルス送信時間をそれぞれ計算する必要があり、これにより当該シナリオでタイムリーなパルス刺激の送信を実現する。
【0121】
<実施例4>
本実施例のパルス刺激装置は、実施例2を更に改良したものであり、具体的には、
R波感知モジュールは、複数のプリセット刺激位置で心筋心電図におけるR波の出現に対応する複数の第一R波感知時間を取得し、一つの第一R波感知時間を基準ゼロ点として選択し、基準ゼロ点の後の各第一R波感知時間と基準ゼロ点との間の第二差を計算し、且つ第二差とプリセット持続時間に基づいて、各プリセット刺激位置に対応する第一パルス送信時間を計算するために使用される。
【0122】
ここで、R波感知モジュールは、複数の第一R波感知時間の発生時間から一つの第一R波感知時間をランダムに選択するか、又は発生時間が最も早い第一R波感知時間を基準ゼロ点として選択するために使用される。実際の経験に基づいて、一般に、発生時間が最も早い第一R波感知時間を基準ゼロ点として選択することが好ましい。
【0123】
本実施例では、発生時間が最も早い第一R波感知時間(LS)を基準ゼロ点として選択し、それ以降の他の時間における刺激位置の送信時間をこれに基づいて、それとの差を計算してプリセット持続時間を加算すると、各パルス刺激位置のパルス送信時間を取得することができ、これにより体表心電図に依存せずに心筋心電図のみに基づいてタイムリーかつ効果的なパルス送信を達成し、パルス刺激の制御プロセスをより柔軟にし、より多くの使用シナリオに適応させることができる。
【0124】
<実施例5>
本実施例のパルス刺激方法は、実施例1のパルス刺激装置を使用して実現される。
【0125】
図5に示すように、本実施例のパルス刺激方法は、
S101、体表心電図を取得、及び/又は制御電極に基づいて心電信号を収集して心筋心電図を取得するステップと、
S102、体表心電図及び/又は心筋心電図に基づいて、対応するR波が出現するR波感知時間を取得するステップと、
S103、R波感知時間に基づいて、各プリセット刺激位置に対応するパルス送信時間を決定するステップと、
S104、各パルス送信時間に基づいて、対応する各制御電極に心臓刺激パルスを送信するステップと、を含む。
【0126】
本実施例のパルス刺激方法に対応する実施原理は、実施例1~4のいずれか一つの実施例のパルス刺激装置に対応する動作原理に対応するため、ここではこれ以上説明しない。
【0127】
上記の心臓刺激パルストリガーの制御方法のサポートにより、急性及び/又は短期の患者、及び単一部位の電気刺激が心臓に必要な循環サポートを達成できる患者の使用ニーズを満たすことができ、特に、心臓手術を受けるのに適していない又は心配しているなど、心機能が弱い(例えば、心拍出量が比較的少ない)患者の場合、手術後の心機能を効果的に強化し、患者の回復を早め、患者にタイムリーかつ効果的な心臓ニーズのサポートを提供することができる。同時に、この技術のサポートにより、患者と医師が関連する手術を行う際の自信を高めるのにも役立つ。更に、薬物に基づいて心臓の収縮性を高める既存の方法は、しばしば副作用(例えば、不整脈、心拍数の増加、心筋酸素消費量の増加など、死亡率を増加させる可能性がある)があるが、本実施例の心臓刺激パルストリガーの制御方法は、基本的に関連する副作用がなく(心拍数、酸素消費量は基本的に変化しない)、且つ電気刺激をよりタイムリーかつ効果的に達成し、心臓の収縮力を高めるというより良い効果を達成することができる。
【0128】
<実施例6>
本実施例の医療デバイスは、実施例1~4のいずれか一つの実施例のパルス刺激装置を含む。
【0129】
医療デバイスは、様々なリード配置に使用されるパルス刺激装置のみを含むことができるが、他のシステムに統合したり、他のシステムの付属品として使用することもできる。このような医療デバイスには、下記のものが含まれるが、これらに限定されない。
【0130】
(1)一時ペーシングシステム:ECS機能は、上記の患者グループに徐脈ペーシングを提供するために一般的に使用される一時ペーシングシステムに追加することができる。ECSは、CCM刺激電極の一部としてペーシングに使用される制御電極を使用するか、臨床診療への影響は最小限であるが、追加の臨床的利益を提供できるCCMの刺激電極とは独立して使用するか、又はより良好なCCMによる収縮の改善が必要な位置で追加のリードを使用することもできる。
【0131】
(2)急性/短期又は慢性(長期)の機械的循環サポートを提供する部分的又は完全に埋め込み型装置:適切なリード及び/又は心筋電極(必要な位置に)をそのようなシステムに追加して、ECS及びその他の機能、例えば、徐脈ペーシング、ATP、除細動を提供することができる。
【0132】
(3)体外式除細動器システム:例えば、ウェアラブル除細動器、AED、或いは救急治療室及び/又は救急車で使用される除細動器。CCMは、体表ECGのR波を感知した後、皮膚電極(例えば、除細動電極)を介して提供することができる。既存のデバイス設計にECS回路のみを追加する必要があるか、又はそのような目的のために、別のECSユニットを現在の設備に接続することができる。患者が電気ショック後に重度の徐脈又は心停止にある場合、又は電気機械解離(EMD)にある場合、ECS機能は患者の心臓機能を回復する上でより効果的な支援を提供する可能性がある。
【0133】
(4)S-ICDシステム:R波の感知は、非心筋接触電極(例えば、右心室sub-Q電極対)のECG、又は右心室リードレスペースメーカーを備えたS-ICDの右心室のEGMによって実現することができ、これによりS-ICDのCCM刺激をトリガーし、subQ defib電極及び/又はリードレスペースメーカー電極を介して送信される。患者が電気ショック後に重度の徐脈又は心停止にある場合、又は電気機器の分離にある場合、この機能は患者の心臓機能を回復する上でより効果的な支援を提供する可能性がある。
【0134】
本実施例の医療デバイスは、上記のパルス刺激装置を含み、複数の部位への心臓電気刺激CCMの提供を実現し、右心室中隔を単純に刺激する従来の方法と比較して、患者の心臓全体に対する収縮力、特に左心室に対する収縮力をより効果的に向上させ、これにより急性及び/又は短期心室機能低下が著しい患者に好適に使用することができ、医療デバイス全体の製品性能を大幅に向上させることができる。
【0135】
以上、本発明の具体的な実施形態について説明したが、これらは単なる例示であり、本発明の原理及び実質から逸脱することなく、これらの実施形態に対して様々な変更又は修正を加えることができることを当業者は理解すべきである。従って、本発明の保護範囲は添付の特許請求の範囲によって限定される。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2024-02-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
R波感知モジュールと、心臓刺激パルス発生器と、少なくとも一つの制御電極とを含むパルス刺激装置であって、記制御電極は、リセット刺激位置に対応し、
前記制御電極は前記R波感知モジュール及び前記心臓刺激パルス発生器にそれぞれ電気的に接続され、前記R波感知モジュール及び前記心臓刺激パルス発生器は通信可能に接続され、
前記R波感知モジュールは、体表心電図を取得、及び/又は前記制御電極に基づいて心電信号を収集して心筋心電図を取得し、
それぞれ前記心筋心電図に基づいてR波が出現する第一R波感知時間、及び/又は前記体表心電図に基づいてR波が出現する第二R波感知時間を取得し、且つ
前記第一R波感知時間に基づいて前記プリセット刺激位置に対応する第一パルス送信時間、及び/又は前記第二R波感知時間に基づいて前記プリセット刺激位置に対応する第二パルス送信時間を決定するために使用され、
前記心臓刺激パルス発生器は、第一パルス送信時間及び/又は前記第二パルス送信時間に基づいて、対応する記制御電極に心臓電気刺激(CCM)パルスを送信するために使用されることを特徴とする、パルス刺激装置。
【請求項2】
前記装置は、少なくとも二つの前記制御電極を含み、異なる前記制御電極は、患者の左右心室の心筋の異なる前記プリセット刺激位置に埋め込むために使用されることを特徴とする、請求項1に記載のパルス刺激装置。
【請求項3】
前記装置は、前記心臓刺激パルス発生器に通信可能に接続されるパルス制御モジュールを更に含み、
前記パルス制御モジュールは、パルス送信モードを生成し、且つ前記心臓刺激パルス発生器に送信するために使用され、
前記心臓刺激パルス発生器は、前記体表心電図及び/又は前記心筋心電図にR波が出現するとき、前記パルス送信モード及び各前記第一パルス送信時間及び/又は前記第二パルス送信時間に基づいて、対応する各前記制御電極に心臓刺激パルスを送信するために使用されることを特徴とする、請求項に記載のパルス刺激装置。
【請求項4】
前記パルス送信モードは、前記体表心電図及び/又は前記心筋心電図におけるR波に基づいて、同期的に、設定された順序又はランダムな順序で、各前記プリセット刺激位置に対応する前記制御電極に心臓刺激パルスを送信することを含むことを特徴とする、請求項3に記載のパルス刺激装置。
【請求項5】
前記パルス制御モジュールは更に、設定された数の前記プリセット刺激位置に基づいて、設定された構築規則又はランダムな組み合わせを使用して、異なる前記プリセット刺激位置に対応する刺激の組み合わせを生成するために使用され、
ここで、前記刺激の組み合わせは、少なくとも二つの刺激ユニットを含み、且つ少なくとも一つの前記刺激ユニットは、パルス送信を同期的に実行する前記プリセット刺激位置の二つ以上に対応し、
前記パルス送信モードは、前記体表心電図及び/又は前記心筋心電図におけるR波に基づいて、設定された順序又はランダムな順序と前記刺激の組み合わせに従って、対応する前記プリセット刺激位置の前記制御電極に心臓刺激パルスを送信することを含むことを特徴とする、請求項3に記載のパルス刺激装置。
【請求項6】
設定された順序又はランダムな順序で、対応する前記プリセット刺激位置に心臓刺激パルスを連続的に送信することにより、予め設定された心拍数に達することを含むことを特徴とする、請求項に記載のパルス刺激装置。
【請求項7】
前記プリセット刺激位置は、左右心室中隔の内壁、心室の外壁の心室間溝、左心室の外側壁、左心室の前外側壁、左心室の後外側壁、右心室自由壁の内壁、右心室自由壁の心外壁、右心室の心尖部位、左心室の心尖部位のうちの少なくとも一つの部位を含むことを特徴とする、請求項に記載のパルス刺激装置。
【請求項8】
記R波感知モジュールは更に、前記第一R波感知時間に基づいて、各前記プリセット刺激位置に対応する前記第一パルス送信時間を計算するために使用され、
前記R波感知モジュールは更に、前記第一R波感知時間及び前記第二R波感知時間に基づいて、各前記プリセット刺激位置に対応する前記第二パルス送信時間を計算するために使用され、
前記心臓刺激パルス発生器は、前記第一パルス送信時間及び/又は前記第二パルス送信時間に基づいて、対応する各前記制御電極に前記心臓刺激パルスを送信するために使用されることを特徴とする、請求項1~7の少なくとも一項に記載のパルス刺激装置。
【請求項9】
前記R波感知モジュールは更に、前記第一R波感知時間を基準ゼロ点として、プリセット持続時間に基づいて、各前記プリセット刺激位置に対応する第一パルス送信時間を計算するために使用され、
前記R波感知モジュールは更に、前記第二R波感知時間と各前記プリセット刺激位置の前記第一R波感知時間との間の第一時間差を計算し、且つ前記第二R波感知時間を基準ゼロ点として、前記第一時間差及び前記プリセット持続時間に基づいて、各前記プリセット刺激位置に対応する前記第二パルス送信時間を計算するために使用されることを特徴とする、請求項8に記載のパルス刺激装置。
【請求項10】
前記心臓刺激パルス発生器は、前記第二パルス送信時間を取得した後、前記第一時間差を維持して、前記第二パルス送信時間に基づいて対応する前記制御電極に心臓刺激パルスを送信することを維持するために使用されることを特徴とする、請求項9に記載のパルス刺激装置。
【請求項11】
前記装置は、時間更新モジュールを更に含み、
前記時間更新モジュールは、定期的又は不定期に前記第一時間差を更新して、更新された前記第一時間差に基づいて前記第二パルス送信時間を更新するために使用され、
前記心臓刺激パルス発生器は、更新された前記第二パルス送信時間に基づいて、対応する前記制御電極に心臓刺激パルスを送信するために使用されることを特徴とする、請求項に記載のパルス刺激装置。
【請求項12】
前記R波感知モジュールは更に、一つのプリセット刺激位置でペーシングが実行されたとき、ペーシングを提供する前記制御電極に対応する前記第一R波感知時間としてペーシングパルス送信時間を使用するために使用され、前記プリセット持続時間は、60~80msであることを特徴とする、請求項9に記載のパルス刺激装置。
【請求項13】
前記R波感知モジュールは更に、一つのプリセット刺激位置でペーシングが実行されたとき、他のすべての残りのプリセット刺激位置に対応する前記心筋心電図を取得し、且つ前記心筋心電図におけるR波が出現する新たな第一R波感知時間、及び前記体表心電図におけるR波が出現する新たな第二R波感知時間を取得するために使用され、
前記R波感知モジュールは更に、新たな第一R波感知時間とプリセット持続時間に基づいて、各前記プリセット刺激位置に対応する新たな第一パルス送信時間を計算するために使用され、
前記R波感知モジュールは更に、新たな前記第二R波感知時間と各前記プリセット刺激位置の新たな前記第一R波感知時間との間の新たな第一時間差を計算し、且つ新たな前記第二R波感知時間を基準ゼロ点として、新たな前記第一時間差及び前記プリセット持続時間に基づいて、各前記プリセット刺激位置に対応する新たな前記第二パルス送信時間を計算するために使用されることを特徴とする、請求項に記載のパルス刺激装置。
【請求項14】
前記R波感知モジュールは、複数の前記プリセット刺激位置で前記心筋心電図におけるR波の出現に対応する複数の前記第一R波感知時間を取得し、一つの第一R波感知時間を基準ゼロ点として選択し、前記基準ゼロ点の後の各第一R波感知時間と前記基準ゼロ点との間の第二差を計算し、且つ前記第二差とプリセット持続時間に基づいて、各前記プリセット刺激位置に対応する第一パルス送信時間を計算するために使用されることを特徴とする、請求項1に記載のパルス刺激装置。
【請求項15】
前記R波感知モジュールは、複数の前記第一R波感知時間の発生時間から一つの前記第一R波感知時間をランダムに選択するか、又は発生時間が最も早い前記第一R波感知時間を前記基準ゼロ点として選択するために使用されることを特徴とする、請求項14に記載のパルス刺激装置。
【請求項16】
前記心筋心電図に基づいて取得されるR波が出現する前記第一R波感知時間、及び前記体表心電図に基づいて取得されるR波が出現する前記第二R波感知時間は、同じ心拍に対応することを特徴とする、請求項に記載のパルス刺激装置。
【請求項17】
前記R波感知モジュールは、前記体表心電図及び前記心筋心電図を取得するために使用され、前記体表心電図の知覚が不良な場合には、前記R波感知モジュールは、前記心筋心電図に基づいてR波が出現する第一R波感知時間を取得し、前記第一R波感知時間に基づいて前記プリセット刺激位置に対応する第一パルス送信時間を決定するために使用され、前記心筋心電図の知覚が不良な場合には、前記R波感知モジュールは、前記体表心電図に基づいてR波が出現する第二R波感知時間を取得し、前記第二R波感知時間に基づいて前記プリセット刺激位置に対応する第二パルス送信時間を決定するために使用されることを特徴とする、請求項1に記載のパルス刺激装置。
【請求項18】
請求項に記載のパルス刺激装置を含むことを特徴とする、医療デバイス。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器の技術分野に関し、特にパルス刺激装置び医療デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
現在市販されているCCM(心筋収縮調節)装置は、独立した埋め込み型の、構造的に複雑で高価なデバイスであり、基本的には慢性心不全患者に使用される。それは、2本の双極リードが使用され、右心室中隔に埋め込まれ、局所心筋の電位を感知し、感知後の所定期間内(絶対不応期内)に心臓刺激パルスを送信して、心筋収縮力を増加させる。このとき、心筋刺激は、収縮力を増加させるために最も必要な心室である左心室には直接作用しない。右心室中隔に使用されるCCMは心臓収縮力と心臓機能(左心室の収縮力を含む)に全体的な影響を及ぼすが、この全体的な効果は直接的なものではなく、右心室中隔の局所的な刺激から生じる局所心筋への影響を通じてもたらされることが研究で示されている。
【0003】
現在のCCM刺激は、慢性心不全患者の埋め込み型設備にのみ使用され、右心室中隔の単一部位を刺激することで慢性心不全患者の長期治療を実現する。しかし、患者の心機能が急速に悪化し、血圧が低下した場合(例えば、急性心不全のエピソード)、患者は埋め込み型デバイスを必要としないか、又は長期間使用しないか、或いは原因が取り除かれる及び/又は心機能が回復するまでの比較的短期間の心臓機能サポートしか必要としないとき、既存の埋め込み型CCM及びその単一部位刺激は、急性及び/又は短期のサポート(心臓/循環サポートの期間と範囲)を満たしておらず、急性及び短期(数日間)の心臓/循環サポートを提供することは、患者の生存(例えば、心不全の急性エピソード)に不可欠であり、救急治療室や救急車などの緊急事態で蘇生された患者にとって、いかなる追加の(薬物以外に)心臓循環サポートも患者にとって「生死」を意味する可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする技術的課題は、既存の埋め込み型CCM刺激方法が慢性心不全患者にのみ適しており、急性及び/又は短期の患者、並びに単一部位の電気刺激が心臓に必要な循環サポートに達しない可能性のある患者の使用ニーズを満たすことができないという従来技術の欠点を克服するための、パルス刺激装置び医療デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、下記の技術案により、上記の技術的問題が解決される。
【0006】
本発明は、R波感知モジュールと、心臓刺激パルス発生器と、少なくとも一つの制御電極とを含み、記制御電極は、リセット刺激位置に対応するパルス刺激装置を提供する。
【0007】
前記制御電極は前記R波感知モジュール及び前記心臓刺激パルス発生器にそれぞれ電気的に接続され、前記R波感知モジュールは前記心臓刺激パルス発生器に通信可能に接続される。
【0008】
前記R波感知モジュールは、体表心電図を取得、及び/又は前記制御電極に基づいて心電信号を収集して心筋心電図を取得し、
それぞれ前記心筋心電図に基づいてR波が出現する第一R波感知時間、及び/又は前記体表心電図に基づいてR波が出現する第二R波感知時間を取得し、且つ
前記第一R波感知時間に基づいて前記プリセット刺激位置に対応する第一パルス送信時間、及び/又は前記第二R波感知時間に基づいて前記プリセット刺激位置に対応する第二パルス送信時間を決定するために使用される。
【0009】
前記心臓刺激パルス発生器は、第一パルス送信時間及び/又は前記第二パルス送信時間に基づいて、対応する記制御電極に心臓電気刺激(CCM)パルスを送信するために使用される。
【0010】
本実施形態では、体表心電図及び/又は心筋心電図に基づいて、対応するR波が出現するR波感知時間を取得し、プリセット刺激位置に対応するパルス送信時間を決定することにより、急性及び/又は短期の患者、単一部位の電気刺激が心臓に必要な循環サポートに達しない可能性のある患者の使用ニーズを達成し、心臓刺激パルスのトリガーの適時性と信頼性を確保し、これによって患者の安全性を効果的に保護する。
【0011】
任意選択で、前記装置は、少なくとも二つの前記制御電極を含み、異なる前記制御電極は、患者の左右心室の心筋の異なる前記プリセット刺激位置に埋め込むために使用される。
【0012】
本実施形態では、少なくとも二つの制御電極を設けて左右心室の心筋内の複数の異なる位置への刺激を実現することにより、右心室中隔を単純に刺激する従来の方法と比較して、患者の心臓全体に対する収縮力、特に左心室に対する収縮力をより効果的に向上させることができる。急性心不全及び/又は短期心室機能低下が著しい患者の場合、多部位刺激により心臓収縮力をより向上させ、心臓駆出機能を改善することができる。
【0013】
任意選択で、前記装置は、前記心臓刺激パルス発生器に通信可能に接続されるパルス制御モジュールを更に含む。
【0014】
前記パルス制御モジュールは、パルス送信モードを生成し、且つ前記心臓刺激パルス発生器に送信するために使用される。
【0015】
前記心臓刺激パルス発生器は、前記体表心電図及び/又は前記心筋心電図にR波が出現するとき、前記パルス送信モード及び各前記パルス送信時間に基づいて、対応する各前記制御電極に心臓刺激パルスを送信するために使用される。
【0016】
本実施形態では、パルス制御モジュールに異なるパルス送信モードを予め設定することにより、実際のパルス送信シナリオにおいて、オペレータの人為的な選択、所定の固定パルスモードの予め設定、又はランダムな選択などの方法に基づいてパルス送信モードを決定し、異なるプリセット刺激位置へのパルス送信を自動的に実現することができる。もちろん、実際のニーズに応じてパルス送信モードを動的に調整することもできる。
【0017】
任意選択で、前記パルス送信モードは、前記体表心電図及び/又は前記心筋心電図におけるR波に基づいて、同期的に、設定された順序又はランダムな順序で、各前記プリセット刺激位置に対応する前記制御電極に心臓刺激パルスを送信することを含む。
【0018】
本実施形態では、同期的に、設定された順序又はランダムな順序などの方法でパルスを送信し、様々なパルス送信ニーズをできるだけ満たし、より多くのパルス刺激シナリオを満たし、患者に対するパルス刺激の有効性を確保すると同時に、患者の使用経験を向上させる。
【0019】
任意選択で、前記パルス制御モジュールは更に、設定された数の前記プリセット刺激位置に基づいて、設定された構築規則又はランダムな組み合わせの方法を使用して、異なる前記プリセット刺激位置に対応する刺激の組み合わせを生成するために使用される。
【0020】
ここで、前記刺激の組み合わせは、少なくとも二つの刺激ユニットを含み、且つ前記刺激ユニットの少なくとも一つは、パルス送信を同期的に実行する前記プリセット刺激位置の二つ以上に対応する。
【0021】
前記パルス送信モードは、前記体表心電図及び/又は前記心筋心電図におけるR波に基づいて、設定された順序又はランダムな順序及び前記刺激の組み合わせに従って、対応する前記プリセット刺激位置の前記制御電極に心臓刺激パルスを送信することを含む。
【0022】
本実施形態では、各プリセット刺激位置を個別に考慮せずに、複数のプリセット刺激位置に基づいて異なる刺激の組み合わせを形成し、同じ刺激の組み合わせに対応する異なるプリセット刺激位置に対して同期的にパルスを送信し、異なる刺激の組み合わせは、設定された順序又はランダムな順序のパルス送信方法を使用してパルス刺激を実行して、より多くのパルス刺激シナリオのニーズを満たし、患者の安全性を更に確保する。
【0023】
任意選択で、設定された順序又はランダムな順序で、対応する前記プリセット刺激位置に心臓刺激パルスを連続的に送信することにより、予め設定された心拍数に達する。
【0024】
本実施形態では、左右心室の複数の部位に制御電極を配置し、複数の部位に同期的に又は逐次的に心臓電気刺激(CCM)を提供して、電気循環サポート(Electrical Circulatory Support、ECS)を実現する。右心室中隔を単純に刺激する従来技術における方法と比較して、患者の心臓全体に対する収縮力、特に左心室に対する収縮力をより効果的に向上させることができる。急性心不全及び/又は短期心室機能低下が著しい患者の場合、多部位刺激により心臓の収縮力をより向上させ、心臓駆出機能を改善することができる。
【0025】
任意選択で、前記プリセット刺激位置は、左右心室中隔の内壁、心室の外壁の心室間溝、左心室の外側壁、左心室の前外側壁、左心室の後外側壁、右心室自由壁の内壁、右心室自由壁の心外壁、右心室の心尖部位、左心室の心尖部位のうちの少なくとも一つの部位を含む。
【0026】
本実施形態では、心臓パルス刺激の信頼性をできるだけ確保するために、左右心室の上記の列挙された位置に制御電極をそれぞれ設けるか、又は実際の刺激ニーズに応じていくつかの位置に制御電極を設ける。
【0027】
任意選択で、前記R波感知モジュールは、体表心電図を取得し、及び前記制御電極に基づいて心筋心電図を取得し、且つそれぞれ前記心筋心電図に基づいてR波が出現する前記第一R波感知時間、及び前記体表心電図に基づいてR波が出現する前記第二R波感知時間を取得するために使用される。
【0028】
前記R波感知モジュールは更に、前記第一R波感知時間に基づいて、各前記プリセット刺激位置に対応する第一パルス送信時間を計算するために使用される。
【0029】
前記R波感知モジュールは更に、前記第一R波感知時間及び前記第二R波感知時間に基づいて、各前記プリセット刺激位置に対応する第二パルス送信時間を計算するために使用される。
【0030】
前記心臓刺激パルス発生器は、前記第一パルス送信時間及び/又は前記第二パルス送信時間に基づいて、対応する各前記制御電極に心臓刺激パルスを送信するために使用される。
【0031】
本実施形態では、心筋心電図にR波が出現する第一R波感知時間を取得し、プリセット刺激位置に対応する第一パルス送信時間を計算、体表心電図にR波が出現する第二R波感知時間を取得し、前記第一R波感知時間及び前記第二R波感知時間に基づいて、プリセット刺激位置に対応する第二パルス送信時間を計算することにより、第一パルス送信時間及び/又は第二パルス送信時間に基づいてパルス送信を実行する。即ち、心筋心電図のR波、体表心電図のR波に基づいてパルス送信時間を決定するスキームを提案することにより、パルス刺激の適時性と信頼性を効果的に確保する。
【0032】
任意選択で、前記R波感知モジュールは更に、前記第一R波感知時間を基準ゼロ点として、プリセット持続時間に基づいて、各前記プリセット刺激位置に対応する第一パルス送信時間を計算するために使用される。
【0033】
前記R波感知モジュールは更に、前記第二R波感知時間と各前記プリセット刺激位置の前記第一R波感知時間との間の第一時間差を計算し、且つ前記第二R波感知時間を基準ゼロ点として、前記第一時間差及び前記プリセット持続時間に基づいて、各前記プリセット刺激位置に対応する前記第二パルス送信時間を計算するために使用される。
【0034】
任意選択で、前記心臓刺激パルス発生器は、前記第二パルス送信時間を取得した後、前記第一時間差を維持して、前記第二パルス送信時間に基づいて対応する前記制御電極に心臓刺激パルスを送信することを維持するために使用される。
【0035】
任意選択で、前記装置は時間更新モジュールを更に含む。
【0036】
前記時間更新モジュールは、定期的又は不定期に前記第一時間差を更新して、更新された前記第一時間差に基づいて前記第二パルス送信時間を更新するために使用される。
【0037】
前記心臓刺激パルス発生器は、更新された前記第二パルス送信時間に基づいて、対応する前記制御電極に心臓刺激パルスを送信するために使用される。
【0038】
本実施形態では、より柔軟な電気刺激効果を達成し、より多くのパルス電気刺激シナリオのニーズを満たすために、実際のニーズに応じて第二パルス送信時間(この時点で心筋電気刺激を継続又は停止できる)を定期的又は不定期に更新することができ、次に更新されたトリガー時間に基づいて心筋電気刺激を継続する。
【0039】
任意選択で、前記R波感知モジュールは更に、一つのプリセット刺激位置でペーシングが実行されたとき、ペーシングを提供する前記制御電極に対応する前記第一R波感知時間としてペーシングパルス送信時間を使用するために使用され、前記プリセット持続時間は、60~80msである。
【0040】
任意選択で、前記R波感知モジュールは更に、一つのプリセット刺激位置でペーシングが実行されたとき、他のすべての残りのプリセット刺激位置に対応する前記心筋心電図を取得し、且つ前記心筋心電図におけるR波が出現する新たな第一R波感知時間、及び前記体表心電図におけるR波が出現する新たな第二R波感知時間を取得するために使用される。
【0041】
前記R波感知モジュールは更に、新たな第一R波感知時間とプリセット持続時間に基づいて、各前記プリセット刺激位置に対応する新たな第一パルス送信時間を計算するために使用される。
【0042】
前記R波感知モジュールは更に、新たな前記第二R波感知時間と各前記プリセット刺激位置の新たな前記第一R波感知時間との間の新たな第一時間差を計算し、且つ新たな前記第二R波感知時間を基準ゼロ点として、新たな前記第一時間差及び前記プリセット持続時間に基づいて、各前記プリセット刺激位置に対応する新たな前記第二パルス送信時間を計算するために使用される。
【0043】
本実施形態では、一つの制御電極を介してペーシングが実行される場合、当該パルス刺激シナリオでは、新たな心筋心電図のR波と体表心電図のR波におけるR波感知時間を再計算し、次に対応する第一パルス送信時間と第二パルス送信時間をそれぞれ計算する必要があり、これにより当該シナリオでタイムリーなパルス刺激の送信を実現する。
【0044】
任意選択で、前記R波感知モジュールは、複数の前記プリセット刺激位置で前記心筋心電図におけるR波の出現に対応する複数の前記第一R波感知時間を取得し、一つの第一R波感知時間を基準ゼロ点として選択し、前記基準ゼロ点の後の各第一R波感知時間と前記基準ゼロ点との間の第二差を計算し、且つ前記第二差とプリセット持続時間に基づいて、各前記プリセット刺激位置に対応する第一パルス送信時間を計算するために使用される。
【0045】
本実施形態では、任意に一つの第一R波感知時間(LS)を基準ゼロ点として選択し、それ以降の他の時間における刺激位置の送信時間をこれに基づいて、それとの差を計算してプリセット持続時間を加算すると、各パルス刺激位置のパルス送信時間を取得することができ、これにより体表心電図に依存せずに心筋心電図のみに基づいてタイムリーかつ効果的なパルス送信を達成し、パルス刺激の制御プロセスをより柔軟にし、より多くの使用シナリオに適応させることができる。
【0046】
任意選択で、前記R波感知モジュールは、複数の前記第一R波感知時間の発生時間から一つの前記第一R波感知時間をランダムに選択するか、又は発生時間が最も早い前記第一R波感知時間を前記基準ゼロ点として選択するために使用される。
【0047】
任意選択で、前記心筋心電図に基づいて取得されるR波が出現する前記第一R波感知時間、及び前記体表心電図に基づいて取得されるR波が出現する前記第二R波感知時間は、同じ心拍に対応する。
【0048】
本実施形態では、パルス刺激の有効性を確保するために、すべてのR波(即ち、心筋心電図のR波と体表心電図のR波)は同じ心拍で感知される。即ち、心筋心電図はR波が出現する第一R波感知時間を取得し、体表心電図はR波が出現する第二R波感知時間を取得し、二つのR波感知時間の時間差が所定値以内でなければならず、そうするとパルス刺激の実質的な意味があり、そうでなければパルス刺激の信頼性が確保できない。
【0049】
任意選択で、前記制御電極は、単極リード又は双極リードを使用して、前記R波感知モジュール及び前記心臓刺激パルス発生器に電気的に接続される。
【0050】
任意選択で、前記R波感知モジュールは、前記体表心電図及び前記心筋心電図を取得するために使用され、前記体表心電図の知覚が不良な場合には、前記R波感知モジュールは、前記心筋心電図に基づいてR波が出現する第一R波感知時間を取得し、前記第一R波感知時間に基づいて前記プリセット刺激位置に対応する第一パルス送信時間を決定するために使用され、前記心筋心電図の知覚が不良な場合には、前記R波感知モジュールは、前記体表心電図に基づいてR波が出現する第二R波感知時間を取得し、前記第二R波感知時間に基づいて前記プリセット刺激位置に対応する第二パルス送信時間を決定するために使用される。
【0051】
本発明は、上記のパルス刺激装置を含む医療デバイスを更に提供する。
【0052】
当技術分野における常識に基づいて、前記各好ましい条件を任意に組み合わせて、本発明の各好ましい実施例を得ることができる。
【0053】
本発明の積極的な進歩及び効果は、下記の通りである。
【0054】
(1)左右心室の複数の部位に制御電極(例えば、対応する刺激及び/又はペーシング機能)を配置し、複数の部位に同期的に又は逐次的に心臓電気刺激(CCM)を提供して、心臓循環サポートを提供し、右心室中隔を単純に刺激する従来の方法と比較して、患者の心臓全体に対する収縮力、特に左心室に対する収縮力をより効果的に向上させることができる。急性心不全及び/又は短期心室機能低下が著しい患者の場合、多部位刺激により心臓の収縮力をより向上させ、心臓駆出機能を改善することができる。例えば、心臓手術を受けたばかりの患者には、左右の心室の心筋の異なる位置(例えば、心外膜表面の左心室の前/後側位置、心室間溝、右心室自由壁など)にリードを埋め込む。他の患者では、右心室(例えば、心室中隔、心尖若しくは自由壁)内に静脈を介してリードを配置する、及び/又は左心室の心内膜(例えば、心室中隔、心尖若しくは自由壁)に心室間隔もしくは動脈を介して、又は左心室の心外膜表面(冠状静脈若しくは動脈に配置された電極を介して)にリードなどを配置することができる。
【0055】
(2)心臓電気刺激(CCM)方法(メカニズム、時間など):a.刺激メカニズムは、多部位心臓電気刺激のメカニズム(同期的又は逐次的)であり、例えば、一つの心周期ですべての電極部位が刺激(同期的刺激)をトリガーするか、又は複数の心周期で設定された順序又はランダムな順序で各電極部位のトリガー刺激(逐次的刺激)を完了する。b.トリガーメカニズムは、局所的な心室筋電活動を表すR波感知、及び/又は全体的な心室筋電活動を表すR波感知の時間をトリガーポイントとする。後者の場合、全体的な心室筋電R波と局所的な心室筋電R波の時間的関係がトリガー時間の一部になる。刺激方法(メカニズム、時間など)は、患者の絶えず変化する心拍数や全体的な心臓状態に適応するために、実際の状況に応じて動的に調整することができる。即ち、心機能改善の効果を効果的に向上させるために、各患者自身の心臓の動的変化状態に応じて適応及び調整することができる。
【0056】
(3)CCM送信は、一つの心臓位置に2本の単極リード又は双極リードを使用する必要がなく、単純な単極リードで実現できるため、システム構造が簡素化され、コストが削減される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】本発明の実施例1に係るパルス刺激装置の構造模式図である。
図2】本発明の実施例1に係るCCM送信中のECGとEGMsに対応するR波トリガーの模式図である。
図3】本発明の実施例2に係るパルス刺激装置の構造模式図である。
図4】本発明の実施例2に係るCCM逐次送信中のECGとEGMsに対応するR波トリガーの模式図である。
図5】本発明の実施例3に係るパルス刺激方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、実施例を通じて本発明を更に説明するが、本発明は、これによって前記実施例の範囲内に限定されるものではない。
【0059】
<実施例1>
図1に示すように、本実施例のパルス刺激装置は、R波感知モジュール1と、心臓刺激パルス発生器2と、少なくとも一つの制御電極3とを含み、制御電極3は、リード4を介してR波感知モジュール1及び心臓刺激パルス発生器2にそれぞれ電気的に接続され、R波感知モジュール1は心臓刺激パルス発生器2に通信可能に接続される。
【0060】
好ましくは、装置は、少なくとも二つの制御電極を含み、異なる制御電極は、患者の左右心室の心筋の異なるプリセット刺激位置に埋め込むために使用される。
【0061】
少なくとも二つの制御電極を設けて左右心室の心筋内の複数の異なる位置への刺激を実現することにより、右心室中隔を単純に刺激する従来の方法と比較して、患者の心臓全体に対する収縮力、特に左心室に対する収縮力をより効果的に向上させることができる。急性心不全及び/又は短期心室機能低下が著しい患者の場合、多部位刺激により心臓の収縮力をより向上させ、心臓駆出機能を改善することができる。もちろん、制御電極の数は、実際のシナリオのニーズに応じてリセット及び調整することができる。
【0062】
具体的には、異なるプリセット刺激位置は、左右心室中隔の内壁、心室の外壁の心室間溝、左心室の外側壁、左心室の前外側壁、左心室の後外側壁、右心室自由壁の内壁、右心室自由壁の心外壁、右心室の心尖部位、左心室の心尖部位を含むが、これらに限定されない。
【0063】
心臓パルス刺激の信頼性をできるだけ確保するために、左右心室の上記の列挙された位置に制御電極をそれぞれ設けるか、又は実際の刺激ニーズに応じていくつかの位置に制御電極を設ける。
【0064】
R波感知モジュール1は、体表心電図(ECG)を取得、及び/又は制御電極3に基づいて心電信号を収集して心筋心電図(EGM)を取得するために使用され、制御電極は心室内膜又は心室外膜に配置できるため、心筋心電図(EGM)は、心室腔内又は心室外壁からの信号をカバーする。
【0065】
具体的には、R波感知モジュール1は、体表心電図及び/又は心筋心電図に基づいてR波が出現するR波感知時間を取得し、且つR波感知時間に基づいて各プリセット刺激位置に対応する心臓刺激パルス(又はCCM電気刺激)の送信時間を決定するために使用され、パルス送信時間は、R波の感知から心臓刺激パルス送信のトリガーまでの持続期間に対応し、各位置又は部位におけるCCMの送信は、局所心筋心電図EGMのR波感知又は全体体表心電図ECGのR波感知によってトリガーされる。
【0066】
心臓刺激パルス発生器2は、各パルス送信時間に基づいて、対応する各制御電極3に心臓刺激パルスを送信するために使用される。
【0067】
一つの実施可能な実施形態では、R波感知モジュールは、体表心電図を取得、及び/又は制御電極に基づいて心筋心電図を取得し、且つそれぞれ心筋心電図に基づいてR波が出現する第一R波感知時間、及び体表心電図に基づいてR波が出現する第二R波感知時間を取得するために使用される。
【0068】
なお、本実施例の心筋心電図により取得されるR波が出現する第一R波感知時間、及び体表心電図により取得されるR波が出現する第二R波感知時間は、同じ心拍に対応する。
【0069】
パルス刺激の有効性を確保するために、すべてのR波(即ち、心筋心電図のR波と体表心電図のR波)は同じ心拍で感知される。即ち、心筋心電図はR波が出現する第一R波感知時間を取得し、体表心電図はR波が出現する第二R波感知時間を取得し、二つのR波感知時間の時間差が所定値以内でなければならず、そうするとパルス刺激の実質的な意味があり、そうでなければパルス刺激の信頼性が確保できない。R波感知モジュールは更に、第一R波感知時間に基づいて各プリセット刺激位置に対応する第一パルス送信時間を取得するために使用され、ここで、第一R波感知時間が決定されると、対応する第一パルス送信時間も決定され
【0070】
R波感知モジュールは更に、第一R波感知時間及び第二R波感知時間に基づいて、各プリセット刺激位置に対応する第二パルス送信時間を計算するために使用される。
【0071】
心臓刺激パルス発生器は、第一パルス送信時間及び/又は第二パルス送信時間に基づいて、制御電極に心臓刺激パルスを送信するために使用される。
【0072】
本実施例におけるパルス刺激プロセスでは、(1)体表心電図のR波を主として心臓刺激パルスの送信を実行することができる。即ち、各電極の刺激送信時間は、体表心電図のR波感知時間をトリガー時間の基準ゼロ点とする。(2)心筋心電図のR波を主として心臓刺激パルスの送信を実行することができる。即ち、各電極の刺激送信時間は、その心筋心電図のR波をトリガー時間の基準ゼロ点とする。(3)同時に体表心電図のR波と心筋心電図のR波に基づいて心臓刺激パルスの送信を実行する。具体的には三つのうちの一つのトリガー機構を使用することは、電気刺激の実際のニーズに応じて選択又はリアルタイムで調整することができる。
【0073】
また、心臓刺激パルストリガーの制御効果を更に向上させるために、体表ECGの知覚が不良な場合には、EGMベースのトリガーに直接に切り替えることができ、或いは、ある位置のEGMの知覚が不良な場合には、ECGベースのトリガーに直接に切り替えることができる。即ち、誤認識や知覚不良などの特殊な状況によりパルス刺激を継続できないことを回避し、治療を継続させることをタイムリーかつ効果的に確保する。
【0074】
一つの実施可能な実施形態では、R波感知モジュール1は、第一R波感知時間とプリセット持続時間に基づいて、各プリセット刺激位置に対応する第一パルス送信時間を計算するために使用される。
【0075】
電極3により収集される心筋心電図(EGM)の場合、第一パルス送信時間は、心筋心電図EGMのR波感知時刻を基準ゼロ点(又はトリガー点と呼ばれる)として使用し、プリセット持続時間(LPD)に基づいて計算される時間であり、当該持続時間は通常、デフォルトで40msであり、当該持続時間の値は、実際のニーズに応じて調整することができる。各部位又は位置の第一パルス送信時間は、心筋心電図のR波感知時刻に対する当該部位又は位置でのCCMパルス送信のトリガー時間である
【0076】
R波感知モジュール1は更に、第二R波感知時間と第一R波感知時間との間の第一時間差を計算し、且つ第一時間差及びプリセット持続時間基づいて、第二R波感知時間を基準ゼロ点(又はトリガー点と呼ばれる)として、各プリセット刺激位置に対応する第二パルス送信時間を計算するために使用される。
【0077】
心筋心電図にR波が出現する第一R波感知時間を取得し、プリセット刺激位置に対応する第一パルス送信時間を計算し、体表心電図にR波が出現する第二R波感知時間を取得し、第一R波感知時間及び第二R波感知時間に基づいて、プリセット刺激位置に対応する第二パルス送信時間を計算することにより、第一パルス送信時間及び/又は第二パルス送信時間に基づいてパルス送信を実行する。即ち、心筋心電図のR波、体表心電図のR波に基づいてパルス送信時間を決定するスキームを提案することにより、パルス刺激の適時性と信頼性を効果的に確保する。
【0078】
即ち、EGMのR波によってトリガーされるCCMパルスの場合、R波からCCMパルス送信まで各刺激位置の持続時間は固定される(例えば、プリセット持続時間は40msである)。ECGのR波によってトリガーされるCCMパルスの場合、R波からCCMパルス送信まで各刺激位置の持続時間は固定されず、異なる(即ち、40msの固定プリセット持続時間と位置変化に基づく時間差によって決定される)。
【0079】
図2に示すように、患者が洞調律にあるとき、体表心電図ECGについて、まず体表心電図ECGのR波感知の対応する時刻(第二R波感知時間)と局所心筋心電図EGMのR波感知の対応する時刻(第一R波感知時間)との間の時間差(GLSD)を計算し、この時間差は、心臓電気活動全体に対する、対応する心筋部分/位置の心筋電気活動の時間感受性値を特徴付け、体表心電図ECGのR波感知時刻を基準ゼロ点(又はトリガー点と呼ばれる)としてトリガーされる第二パルス送信時間、対応する時間差(GLSDプリセット持続時間(LPD)を加算することによって取得され、即ち、体表心電図ECGのR波感知時刻から第二パルス送信時間までの持続時間はGPDであり、GPD=GLSD+LPDとなる。更に、各部位に対応するGLSDとGPDは、複数の自己心拍の時に測定し、平均化することができる(デフォルトで3~12の範囲の5つの連続した自己心拍である)。各部位又は位置の第二パルス送信時間は、体表心電図のR波感知時刻に対する当該部位又は位置でのCCM送信のトリガー時間である。本実施例では、このステップをセットアップ期間(set-up period)と呼ぶ。
【0080】
一つの実施可能な実施形態では、心臓刺激パルス発生器は、各位置での第二パルス送信時間を取得した後、第一時間差を維持して、第二パルス送信時間に基づいて対応する制御電極に心臓刺激パルスを送信することを維持するために使用される。
【0081】
即ち、本実施例では、第二パルス送信時間を計算した後、毎回電気刺激出力前に再計算する必要がなく、体表心電図によって電気刺激出力時間を直接にトリガーすることができ、毎回心筋心電図のR波を感知してトリガーする必要がなく、これにより心臓電気刺激の効果を達成しながら、データ処理時間を効果的に短縮し、心臓刺激パルストリガーの制御効率を向上させる。
【0082】
一つの実施可能な実施形態では、本実施例の装置は、時間更新モジュールを更に含む。
【0083】
時間更新モジュールは、定期的又は不定期に第一時間差を更新して、更新された第一時間差に基づいて第二パルス送信時間を更新するために使用される。
【0084】
心臓刺激パルス発生器は、更新された第二パルス送信時間に基づいて、対応する制御電極に心臓刺激パルスを送信するために使用される。
【0085】
即ち、本実施例では、より柔軟な電気刺激効果を達成し、より多くのパルス電気刺激シナリオのニーズを満たすために、実際のニーズに応じて第二パルス送信時間(この時点で心筋電気刺激を継続又は停止できる)を定期的又は不定期に更新することができ、次に更新されたトリガー時間に基づいて心筋電気刺激を継続する。
【0086】
本実施例では、心臓への循環サポートを強化又は最大化する効果は、刺激位置及び刺激機構を設定することによって達成される。
【0087】
もちろん、本実施例におけるCCM刺激の制御スキームは、患者の心臓刺激サポートの安全性を確保するために、患者の心拍数が速すぎること(例えば、120拍/分を超える)、PVC(心室性期外収縮)が検出された場合など、特定の特別な状況下では自動的に一時中断される必要がある。
【0088】
本実施例では、左右心室の複数の部位に制御電極(例えば、対応する刺激及び/又はペーシング機能)を配置し、複数の部位に心臓電気刺激CCMを提供し、右心室中隔を単純に刺激する従来の方法と比較して、患者の心臓全体に対する収縮力、特に左心室に対する収縮力をより効果的に向上させることができる。急性心不全及び/又は短期心室機能低下が著しい患者の場合、多部位刺激により心臓の収縮力をより向上させ、心臓駆出機能を改善することができる。
【0089】
<実施例2>
図3に示すように、本実施例のパルス刺激装置は、実施例1を更に改良したものであり、具体的には、
本実施例のパルス刺激装置は、心臓刺激パルス発生器2に通信可能に接続されるパルス制御モジュール5を更に含む。
【0090】
パルス制御モジュール5は、パルス送信モードを生成し、且つ心臓刺激パルス発生器2に送信するために使用される。
【0091】
心臓刺激パルス発生器2は、体表心電図又は心筋心電図にR波が出現するとき、パルス送信モード及びパルス送信時間に基づいて、対応する各制御電極3に心臓刺激パルスを送信するために使用される。
【0092】
パルス制御モジュールに異なるパルス送信モードを予め設定することにより、実際のパルス送信シナリオにおいて、オペレータの人為的な選択、所定の固定パルスモードの予め設定、又はランダムな選択などの方法に基づいてパルス送信モードを決定し、異なるプリセット刺激位置へのパルス送信を自動的に実現することができる。もちろん、実際のニーズに応じてパルス送信モードを動的に調整することもできる。
【0093】
一つの実施可能な実施形態では、パルス送信モードは、体表心電図及び/又は心筋心電図におけるR波に基づいて、同期的に、設定された順序又はランダムな順序で、各プリセット刺激位置に対応する制御電極に心臓刺激パルスを送信することを含む。
【0094】
設定された順序又はランダムな順序で、対応するプリセット刺激位置に心臓刺激パルスを連続的に送信することにより、予め設定された心拍数に達する。
【0095】
パルス送信モードは、体表心電図の全体的な(global)R波、又は各部位の局所的な(local)R波によってトリガーされる送信メカニズム、即ち同期的に、設定された順序又はランダムな順序で、各プリセット刺激位置に心臓刺激パルスを送信し、又は、セットアップ期間(set-up period)、即ち各電極位置に対応するGLSDに対する測定及び計算などである。
【0096】
同期的に、設定された順序又はランダムな順序などの方法でパルスを送信することにより、様々なパルス送信ニーズをできるだけ満たし、より多くのパルス刺激シナリオを満たし、患者に対するパルス刺激の有効性を確保すると同時に、患者の使用経験を向上させる。
【0097】
位置又は部位へのCCM刺激は、同じR波後に各部位の対応する時間の「同時に」(即ち、同じ心周期で)トリガーされて送信されることもできるし(同期と呼ばれる)、複数のR波での複数の部位に逐次的に送信されることなどもでき、設定された順序で送信される場合、CCM刺激は、R波後に一つの部位でその部位の対応する時間後にトリガーされて送信され、その後、次のR波後に次の部位で送信されるというように、すべての部位が送信によってカバーされるまで続く。同じR波の後、CCM刺激は各部位の対応する時間に従って一つ又は複数の部位で出現する可能性がある(ただし、すべての部位ではなく、そうでなければ同期である)。更に、CCM刺激を受ける特定の部位の順序は、特別に設計されてもよく(医師など関連権限を持つスタッフがプログラムできる)、ランダムにしてもよい。逐次的に送信されるとき、各プリセット部位の刺激の回数は1回又は複数回(例えば、6回、即ち6つの心周期)であってもよく、その後、次のプリセット部位の刺激に移行し、これから類推する。
【0098】
一つの実施可能な実施形態では、パルス制御モジュールは更に、設定された数のプリセット刺激位置に基づいて、設定された構築規則又はランダムな組み合わせを使用して、異なるプリセット刺激位置に対応する刺激の組み合わせを生成するために使用される。
【0099】
ここで、刺激の組み合わせは、少なくとも二つの刺激ユニットを含み、且つ少なくとも一つの刺激ユニットは、パルス送信を同期的に実行するプリセット刺激位置の二つ以上に対応する。
【0100】
パルス送信モードは、体表心電図及び/又は心筋心電図におけるR波に基づいて、設定された順序又はランダムな順序及び刺激の組み合わせに従って、プリセット刺激位置に対応する制御電極に心臓刺激パルスを送信することを含む。
【0101】
設定された順序又はランダムな順序で、対応するプリセット刺激位置に心臓刺激パルスを連続的に送信することにより、予め設定された心拍数に達する。
【0102】
各プリセット刺激位置を個別に考慮せずに、複数のプリセット刺激位置に基づいて異なる刺激の組み合わせを形成し、同じ刺激の組み合わせに対応する異なるプリセット刺激位置に対して同期的にパルスを送信し、異なる刺激の組み合わせは、設定された順序又はランダムな順序のパルス送信方法を使用してパルス刺激を実行して、より多くのパルス刺激シナリオのニーズを満たし、患者の安全性を更に確保する。
【0103】
更に、一つの実施可能な実施形態では、パルス刺激装置は二つのリード4に対応し、一つのリードの電極は右心室中隔(右心室中隔は心内膜位置とする)又は前もしくは後心室間溝付近(心外膜位置とする)に位置し、もう一つのリードの電極は左心室の前外側壁(心外膜又は心内膜位置)に位置する。
【0104】
一つの実施可能な実施形態では、パルス刺激装置は3つのリード4に対応し、一つのリードの電極は右心室中隔(右心室中隔は心内膜位置である)又は前もしくは後心室間溝付近(心外膜位置とする)に位置し、一つのリードの電極は左心室の後外側壁(心外膜又は心内膜位置)に位置し、もう一つのリードの電極は左心室の前外側壁(心外膜又は心内膜位置)に位置する。
【0105】
もちろん、異なる患者の状態、心臓関連手術の状況、循環サポートのニーズ、及びCCM刺激のニーズに応じて、リード4の数及び予め設定された埋め込み位置を再計画することもできる。
【0106】
一つの実施可能な実施形態では、本実施例のリード4は単極リード又は双極リードを含み、心臓刺激パルスはリード4を介して対応する部位に送信される。(1)単一の単極リードを使用する場合、CCMは、心筋に接触している単極電極と患者の体の他の部位の電極との間に送信される。この場合、単極電極は、心腔又は血管内の他の電極リード上の電極、体表ECG電極又は体外除細動用の体表パッチ電極;或いは皮下に埋め込まれた電極(例えば、S-ICD)又は心臓に埋め込まれた電極などであってもよい。或いは、他の特別に設計された電極を使用して取得することもできる。(2)複数の単極リードを使用する場合、CCMは、心筋に接触している二つの単極電極(一方が陰極、もう一方が陽極)の間に送信することができる。(3)双極リードを使用する場合、一つの電極のみが心筋に継続的に接触し(例えば、右心室中隔リード4)、CCMは、二つの電極の間で送信することも、又は単極リード(心筋に接触している電極)として送信することもでき、単極セットアップと同様である。(4)例えば、左心室の心外膜電極の場合、CCMは、二つの電極の間で、又はそれぞれ二つの単極リードとして送信することができる。(5)単極リード及び双極リードを同時に使用することができるため、多くの組み合わせが可能であり、具体的にどのように組み合わせるかは実際のニーズに応じて決定及び調整することができる。
【0107】
以下、本実施例のパルス刺激装置の動作原理を、実例を挙げて具体的に説明する。
【0108】
(1)開胸心臓手術を受けたばかりの患者の心外膜表面、具体的には心外前壁又は心外後壁の心室間溝(心室の心室間溝付近)、左心室の後外側壁、左心室の前外側壁に3本の双極リード4を埋め込む。同時に現在の患者の体表心電図を提供する。これらの3本のリードは体表心電図とともに外部電気循環サポート装置、即ちパルス刺激装置のR波感知モジュール1に接続される。
【0109】
(2)セットアップ期間(set-up period)において、R波感知モジュール1は、体表心電図(ECG)のR波感知時間(GS)と心筋心電図EGMsのR波感知時間LS(LS1、LS2、LS3)をそれぞれ感知するために使用され、具体的には図2に示された通りであり、GS、LS(LS1、LS2、LS3)及びLPDに基づいて、各部位のGLSDとGPD(GLSD1とGPD1、GLSD2とGPD2、GLSD31とGPD3)を計算し、ここで、GLSD=LS-GSであり、GPD=GLSD+LPDである。
【0110】
(3)心臓刺激パルス送信モード(R波のトリガー源、同期又は逐次、並びに順序内の特定の順序又はランダムな順序は、全て医師によりプログラムできる)、心臓刺激パルス送信モード、LPD及びGPDに基づいて、図4に示すように一つ又は複数の部位に対して心臓刺激パルスを生成する。
【0111】
(4)接続されると、デバイスは、R波(GS及びLS)を感知し、各部位(3本のリードのそれぞれが位置する場所)のGLSD及びGPDを計算するセットアッププロセスを経、このGLSDn及びGPDnにおいて、n=1、2及び3である。CCMが送信されない洞調律中に実行するのが最適である。次に、体表ECGのR波トリガーモードの場合、CCMは、表面ECGのR波を感知した後、各位置の対応するGPDに従って、同期モード(同じ心拍(R波)で)又は順序モード(例えば、CCMはR波1の後に部位1に、R波2の後に部位2に、R波3の後に部位3に(一つずつ)送信される)、又はランダムな順序でCCMを送信/トリガーする。
【0112】
同様に、CCMは各部位のローカルR波によってトリガーされ、同期的又は逐次的に実行することができる(局所/ローカルR波モード)。
【0113】
更に、CCMが特定の拍動数又は持続時間(デフォルトで3600拍動又は60分、プログラム可能)で送信された後、心拍数及び/又は患者の状態(例えば、投薬後)の変化によるパラメータ(例えば、GLSDなど)の潜在的な変化に対応するため、セットアッププロセスが再度開始される。更に、更新されたパラメータに基づいてCCMの送信を継続することもできる。
【0114】
上記の心臓刺激パルストリガーの制御方法のサポートにより、急性及び/又は短期の患者、及び単一部位の電気刺激が心臓に必要な循環サポートを達成できる患者の使用ニーズを満たすことができ、特に、心臓手術を受けるのに適していない又は心配しているなど、心機能が弱い(例えば、心拍出量が比較的少ない)患者の場合、手術後の心機能を効果的に強化し、患者の回復を早め、患者にタイムリーかつ効果的な心臓ニーズのサポートを提供することができる。同時に、この技術のサポートにより、患者と医師が関連する手術を行う際の自信を高めるのにも役立つ。更に、薬物に基づいて心臓の収縮性を高める既存の方法は、しばしば副作用(例えば、不整脈、心筋酸素消費量の増加など、死亡率を増加させる可能性がある)があるが、本実施例の心臓刺激パルストリガーの制御方法は、基本的に関連する副作用がなく(心拍数、酸素消費量は基本的に変化しない)、且つ電気刺激をよりタイムリーかつ効果的に達成し、心臓の収縮力を高めるというより良い効果を達成することができる。
【0115】
本実施例では、制御電極を左右心室の複数の部位に(例えば、刺激及び/又はペーシング機能に対して)配置して、複数の部位への同期的又は逐次的心臓電気刺激CCMの提供を実現し、CCM刺激のトリガー機構は、局所的な心電活動のR波感知及び/又は全体的な心電活動のR波感知の時間によって決定され、且つトリガー方法は、実際の状況に応じて動的に調整して、患者の絶えず変化する心拍数と全体的な心臓の状態に適応する。即ち、各患者自身の心臓の動的変化状態に応じて適応及び調整して、CCM刺激制御効果を効果的に向上させ、より良い心臓収縮力を達成し、急性及び/又は短期の患者、及び単一部位の電気刺激が心臓に必要な循環サポートを達成できる患者の使用ニーズをよりよく満たすことができる。
【0116】
<実施例3>
本実施例のパルス刺激装置は、実施例2を更に改良したものであり、本実施例は、制御電極がペーシング動作を実行するCCM刺激シナリオを考慮したものであり、具体的には、
ペーシング時のCCM刺激シナリオについては、下記の二つの状況が存在する:a)ペーシングは独立した電極によって発生され、この場合、心臓刺激パルストリガーの制御原理は上記の内容と一致し、影響を受けない;b)ペーシングがCCM刺激電極によって発生される場合、主にCCM刺激を提供する電極はペーシングも提供する必要がある(ペーシング時に第一R波感知時間(LS1に対応する電極位置と認識される)一方、他の残りの電極位置(CCM刺激のみを提供する)の動作原理は上記の内容と一致する。ペーシングを提供するCCM刺激電極の場合、ペーシング時の第一R波感知時間(LS1はペーシングパルス送信時間であり、プリセット持続時間は40~100ms、好ましくは60~80msに延長する必要がある(プログラムでも調整可能)。どちらの場合も、プリセット期間には2回の測定が必要であり、1回の測定時間は自分の心拍数(洞調律)を検出するときであり、もう1回の測定時間はペーシング時である。
【0117】
具体的には、制御電極がペーシング動作を実行する場合、R波感知モジュールは更に、一つのプリセット刺激位置でペーシングが実行されたとき、他のすべての残りのプリセット刺激位置に対応する心筋心電図を取得し、且つ心筋心電図におけるR波が出現する新たな第一R波感知時間、及び体表心電図におけるR波が出現する新たな第二R波感知時間を取得するために使用される。
【0118】
R波感知モジュールは更に、新たな第一R波感知時間とプリセット持続時間に基づいて、各プリセット刺激位置に対応する新たな第一パルス送信時間を計算するために使用される。
【0119】
R波感知モジュールは更に、新たな第二R波感知時間と各プリセット刺激位置の新たな第一R波感知時間との間の新たな第一時間差を計算し、且つ新たな第二R波感知時間を基準ゼロ点として、新たな第一時間差及びプリセット持続時間に基づいて、各プリセット刺激位置に対応する新たな第二パルス送信時間を計算するために使用される。
【0120】
本実施例では、一つの制御電極を介してペーシングが実行される場合、当該パルス刺激シナリオでは、新たな心筋心電図のR波と体表心電図のR波におけるR波感知時間を再計算し、次に対応する第一パルス送信時間と第二パルス送信時間をそれぞれ計算する必要があり、これにより当該シナリオでタイムリーなパルス刺激の送信を実現する。
【0121】
<実施例4>
本実施例のパルス刺激装置は、実施例2を更に改良したものであり、具体的には、
R波感知モジュールは、複数のプリセット刺激位置で心筋心電図におけるR波の出現に対応する複数の第一R波感知時間を取得し、一つの第一R波感知時間を基準ゼロ点として選択し、基準ゼロ点の後の各第一R波感知時間と基準ゼロ点との間の第二差を計算し、且つ第二差とプリセット持続時間に基づいて、各プリセット刺激位置に対応する第一パルス送信時間を計算するために使用される。
【0122】
ここで、R波感知モジュールは、複数の第一R波感知時間の発生時間から一つの第一R波感知時間をランダムに選択するか、又は発生時間が最も早い第一R波感知時間を基準ゼロ点として選択するために使用される。実際の経験に基づいて、一般に、発生時間が最も早い第一R波感知時間を基準ゼロ点として選択することが好ましい。
【0123】
本実施例では、発生時間が最も早い第一R波感知時間(LS)を基準ゼロ点として選択し、それ以降の他の時間における刺激位置の送信時間をこれに基づいて、それとの差を計算してプリセット持続時間を加算すると、各パルス刺激位置のパルス送信時間を取得することができ、これにより体表心電図に依存せずに心筋心電図のみに基づいてタイムリーかつ効果的なパルス送信を達成し、パルス刺激の制御プロセスをより柔軟にし、より多くの使用シナリオに適応させることができる。
【0124】
<実施例5>
本実施例のパルス刺激方法は、実施例1のパルス刺激装置を使用して実現される。
【0125】
図5に示すように、本実施例のパルス刺激方法は、
S101、体表心電図を取得、及び/又は制御電極に基づいて心電信号を収集して心筋心電図を取得するステップと、
S102、体表心電図及び/又は心筋心電図に基づいて、対応するR波が出現するR波感知時間を取得するステップと、
S103、R波感知時間に基づいて、各プリセット刺激位置に対応するパルス送信時間を決定するステップと、
S104、各パルス送信時間に基づいて、対応する各制御電極に心臓刺激パルスを送信するステップと、を含む。
【0126】
本実施例のパルス刺激方法に対応する実施原理は、実施例1~4のいずれか一つの実施例のパルス刺激装置に対応する動作原理に対応するため、ここではこれ以上説明しない。
【0127】
上記の心臓刺激パルストリガーの制御方法のサポートにより、急性及び/又は短期の患者、及び単一部位の電気刺激が心臓に必要な循環サポートを達成できる患者の使用ニーズを満たすことができ、特に、心臓手術を受けるのに適していない又は心配しているなど、心機能が弱い(例えば、心拍出量が比較的少ない)患者の場合、手術後の心機能を効果的に強化し、患者の回復を早め、患者にタイムリーかつ効果的な心臓ニーズのサポートを提供することができる。同時に、この技術のサポートにより、患者と医師が関連する手術を行う際の自信を高めるのにも役立つ。更に、薬物に基づいて心臓の収縮性を高める既存の方法は、しばしば副作用(例えば、不整脈、心拍数の増加、心筋酸素消費量の増加など、死亡率を増加させる可能性がある)があるが、本実施例の心臓刺激パルストリガーの制御方法は、基本的に関連する副作用がなく(心拍数、酸素消費量は基本的に変化しない)、且つ電気刺激をよりタイムリーかつ効果的に達成し、心臓の収縮力を高めるというより良い効果を達成することができる。
【0128】
<実施例6>
本実施例の医療デバイスは、実施例1~4のいずれか一つの実施例のパルス刺激装置を含む。
【0129】
医療デバイスは、様々なリード配置に使用されるパルス刺激装置のみを含むことができるが、他のシステムに統合したり、他のシステムの付属品として使用することもできる。このような医療デバイスには、下記のものが含まれるが、これらに限定されない。
【0130】
(1)一時ペーシングシステム:ECS機能は、上記の患者グループに徐脈ペーシングを提供するために一般的に使用される一時ペーシングシステムに追加することができる。ECSは、CCM刺激電極の一部としてペーシングに使用される制御電極を使用するか、臨床診療への影響は最小限であるが、追加の臨床的利益を提供できるCCMの刺激電極とは独立して使用するか、又はより良好なCCMによる収縮の改善が必要な位置で追加のリードを使用することもできる。
【0131】
(2)急性/短期又は慢性(長期)の機械的循環サポートを提供する部分的又は完全に埋め込み型装置:適切なリード及び/又は心筋電極(必要な位置に)をそのようなシステムに追加して、ECS及びその他の機能、例えば、徐脈ペーシング、ATP、除細動を提供することができる。
【0132】
(3)体外式除細動器システム:例えば、ウェアラブル除細動器、AED、或いは救急治療室及び/又は救急車で使用される除細動器。CCMは、体表ECGのR波を感知した後、皮膚電極(例えば、除細動電極)を介して提供することができる。既存のデバイス設計にECS回路のみを追加する必要があるか、又はそのような目的のために、別のECSユニットを現在の設備に接続することができる。患者が電気ショック後に重度の徐脈又は心停止にある場合、又は電気機械解離(EMD)にある場合、ECS機能は患者の心臓機能を回復する上でより効果的な支援を提供する可能性がある。
【0133】
(4)S-ICDシステム:R波の感知は、非心筋接触電極(例えば、右心室sub-Q電極対)のECG、又は右心室リードレスペースメーカーを備えたS-ICDの右心室のEGMによって実現することができ、これによりS-ICDのCCM刺激をトリガーし、subQ defib電極及び/又はリードレスペースメーカー電極を介して送信される。患者が電気ショック後に重度の徐脈又は心停止にある場合、又は電気機器の分離にある場合、この機能は患者の心臓機能を回復する上でより効果的な支援を提供する可能性がある。
【0134】
本実施例の医療デバイスは、上記のパルス刺激装置を含み、複数の部位への心臓電気刺激CCMの提供を実現し、右心室中隔を単純に刺激する従来の方法と比較して、患者の心臓全体に対する収縮力、特に左心室に対する収縮力をより効果的に向上させ、これにより急性及び/又は短期心室機能低下が著しい患者に好適に使用することができ、医療デバイス全体の製品性能を大幅に向上させることができる。
【0135】
以上、本発明の具体的な実施形態について説明したが、これらは単なる例示であり、本発明の原理及び実質から逸脱することなく、これらの実施形態に対して様々な変更又は修正を加えることができることを当業者は理解すべきである。従って、本発明の保護範囲は添付の特許請求の範囲によって限定される。
【国際調査報告】