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特表2024-529014細胞による薬物代謝を調節するためのシステム、方法及びその組成物
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  • 特表-細胞による薬物代謝を調節するためのシステム、方法及びその組成物 図1
  • 特表-細胞による薬物代謝を調節するためのシステム、方法及びその組成物 図2
  • 特表-細胞による薬物代謝を調節するためのシステム、方法及びその組成物 図3A
  • 特表-細胞による薬物代謝を調節するためのシステム、方法及びその組成物 図3B
  • 特表-細胞による薬物代謝を調節するためのシステム、方法及びその組成物 図3C
  • 特表-細胞による薬物代謝を調節するためのシステム、方法及びその組成物 図4
  • 特表-細胞による薬物代謝を調節するためのシステム、方法及びその組成物 図5
  • 特表-細胞による薬物代謝を調節するためのシステム、方法及びその組成物 図6
  • 特表-細胞による薬物代謝を調節するためのシステム、方法及びその組成物 図7
  • 特表-細胞による薬物代謝を調節するためのシステム、方法及びその組成物 図8A
  • 特表-細胞による薬物代謝を調節するためのシステム、方法及びその組成物 図8B
  • 特表-細胞による薬物代謝を調節するためのシステム、方法及びその組成物 図8C
  • 特表-細胞による薬物代謝を調節するためのシステム、方法及びその組成物 図9
  • 特表-細胞による薬物代謝を調節するためのシステム、方法及びその組成物 図10
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】細胞による薬物代謝を調節するためのシステム、方法及びその組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20240725BHJP
   C12N 15/34 20060101ALI20240725BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240725BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20240725BHJP
   A61K 45/06 20060101ALI20240725BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240725BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240725BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240725BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240725BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20240725BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20240725BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240725BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20240725BHJP
   C12N 9/10 20060101ALN20240725BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C12N15/34 ZNA
C12N15/09 Z
C12N1/21
C12Q1/02
A61K45/06
A61P43/00 121
A61P35/00
A61P31/12
A61P29/00
A61P37/02
A61P3/00
A61P37/06
A61K31/4745
C12N9/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506854
(86)(22)【出願日】2022-08-01
(85)【翻訳文提出日】2024-03-27
(86)【国際出願番号】 IL2022050826
(87)【国際公開番号】W WO2023012785
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】63/203,853
(32)【優先日】2021-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524044876
【氏名又は名称】トロビックス バイオ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TROBIX BIO LTD
【住所又は居所原語表記】45 Ha’Melacha St., Netanya, Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エルケレス アディ
(72)【発明者】
【氏名】リフシッツ ジヴ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥホヴニ リリット
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4B063QA05
4B063QQ42
4B063QR80
4B065AA01X
4C084AA20
4C084NA05
4C084NA06
4C084ZB071
4C084ZB072
4C084ZB081
4C084ZB082
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB331
4C084ZB332
4C084ZC211
4C084ZC212
4C084ZC751
4C084ZC752
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA06
4C086ZB07
4C086ZB08
4C086ZB11
4C086ZB26
4C086ZB33
4C086ZC21
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、標的細胞及び/又は標的細胞を含む細胞集団を改変することによって、特に腸内マイクロバイオームにおける薬物代謝を調節するためのシステムを提供する。開示されるシステムは、以下の成分を含む:(a)少なくとも1種の薬物の代謝に関与する少なくとも1種のエレメントをコード及び/又は調節する少なくとも1種の核酸配列、少なくとも1種のcas遺伝子、及び少なくとも1種のクリスパー(Clustered, Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat、CRISPR)アレイを含む少なくとも1種の薬物代謝調節成分、並びに(b)少なくとも1種のプロトスペーサーを含む少なくとも1種の選択成分。少なくとも1種のプロトスペーサーは、(a)のCRISPRアレイの少なくとも1種のスペーサーによって標的化され、それによって当該選択成分を不活性化する。本開示は更に、薬物代謝の調節及び治療用途において、開示されたシステム及びその任意の成分を使用する組成物及び方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的細胞及び/又は前記標的細胞を含む細胞集団を改変することによって薬物代謝を調節するためのシステムであって
(a)少なくとも1種の薬物の代謝に関与する少なくとも1種のエレメントをコード及び/又は調節する少なくとも1種の核酸配列、少なくとも1種のcas遺伝子及び少なくとも1種のクリスパー(Clustered, Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat、CRISPR)アレイを含む少なくとも1種の薬物代謝調節成分と、
(b)少なくとも1種のプロトスペーサーを含む少なくとも1種の選択成分であって、前記少なくとも1種のプロトスペーサーが、前記(a)のCRISPRアレイの少なくとも1種のスペーサーによって標的化され、それによって前記選択成分を不活性化する、少なくとも1種の選択成分と
を含むシステム。
【請求項2】
前記調節成分が、前記細胞及び/又は細胞集団中の前記細胞を特異的に標的化する少なくとも1種の送達ビヒクル内に含まれる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記選択成分が、前記細胞及び/又は細胞集団中の前記細胞を特異的に標的化する少なくとも1種の送達ビヒクル内に含まれ、且つ前記選択成分が、細胞の生存率及び/又は活性に影響を及ぼす少なくとも1種の薬剤を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記少なくとも1種の送達ビヒクルが、少なくとも1種の遺伝子エレメントであるか、又はそれを含み、且つ前記遺伝子エレメントが、少なくとも1種の形質導入粒子、少なくとも1種のバクテリオファージ又はその任意の断片若しくは部分、少なくとも1種のバクテリオファージベース若しくはバクテリオファージ様の形質導入粒子及び/又は少なくとも1種の改変バクテリオファージ、前記調節成分及び/又は選択成分のうちの少なくとも1種を含む及び/又はコードする少なくとも1種のベクター、プラスミド及び/又は構築物、並びにそれらの任意の組合せ又はカクテルの少なくとも1種である、請求項2又は3に記載のシステム。
【請求項5】
前記送達ビヒクルが、細菌細胞を死滅させるか、あるいは細菌の増殖及び/又は機能を破壊、減弱、及び/又は阻害する少なくとも1種の毒性エレメントを含む及び/又はコードする、少なくとも1種のバクテリオファージ又は任意のバクテリオファージ様若しくはバクテリオファージベースの形質導入粒子である、請求項3又は4に記載のシステム。
【請求項6】
前記標的細胞が細菌細胞であり、前記細菌細胞及び/又は細胞集団が腸内マイクロバイオーム細胞集団であるか、又はその中に含まれるものであり、前記細胞集団が、Proteobacteria門、Firmicutes門、Bacteroidetes門、Actinobacteria門、又はその分離株の任意の変異体若しくはバリアント、又はそれらの任意の組合せの内の少なくとも1種である、少なくとも1種の細菌を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記薬物代謝調節成分が、前記薬物の活性、生物学的利用能、クリアランス、安定性、毒性、及び吸収性のうちの少なくとも1種に影響を及ぼす、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記少なくとも1種の薬物の代謝に関与する前記エレメントが、少なくとも1種のグルクロニド酵素である、請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記少なくとも1種のグルクロニド酵素が少なくとも1種のβ-グルクロニダーゼ(GUS)酵素である、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記調節成分が、少なくとも1種のβGUS酵素の発現及び/又は活性及び/又は安定性を阻害及び/又は低減する少なくとも1種のエレメントをコードする核酸配列を含む、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記調節成分の前記核酸配列によってコードされる前記エレメントが、前記βGUS酵素の転写を抑制し、任意選択的に、前記エレメントがGusリプレッサー(GusR)である、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記GusRが、少なくとも1種のGUSリガンド及び/又は基質に対して低下したか又は消失した親和性を示す、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記GusRが、リジン(K)125からアラニン(A)、チロシン(Y)164からフェニルアラニン(F)、及びアルギニン(R)73からアラニン(A)、並びにそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1種に少なくとも1種の変異を有する、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記少なくとも1種の薬物が、抗新生物剤、抗ウイルス剤、鎮痛剤、解熱薬、抗炎症剤、鎮痛剤、抗高血圧剤、抗マラリア剤、神経遮断剤、抗コレステロール剤、抗糖尿病剤、抗てんかん剤、胆汁酸、抗凝固剤、鉄キレート剤、抗菌剤、造血増殖因子、抗パーキンソン症薬剤、ホルモン、cns抑制薬、抗コリン作用剤、副交感神経遮断剤、免疫抑制剤、オピオイド解毒薬、抗喘息剤、抗良性前立腺肥大又は抗痛風剤のうちのいずれか1種である、請求項1~13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記薬物が、少なくとも1種の抗新生物剤であり、任意選択的に、少なくとも1種のトポイソメラーゼI阻害剤である、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記薬物が、少なくとも1種のトポイソメラーゼI阻害剤であり、前記トポイソメラーゼI阻害剤が、カンプトテシン-11(CPT-11、イリノテカン)、又はその任意の誘導体、代謝産物若しくはバイオシミラーである、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記薬物代謝調節成分が、CPT-11の非活性代謝産物であるSN38グルクロニド(SN38G)の、細菌GUSによる前記CPT-11の活性代謝産物であるSN38への再活性化及び/又は変換を阻害又は低減する、請求項1~16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
標的細胞及び/又は前記標的細胞を含む細胞集団の薬物代謝を調節するための方法であって、
(a)前記細胞又は前記細胞を含む任意の細胞集団を、少なくとも1種の薬物の代謝に関与する少なくとも1種のエレメントをコード又は調節する少なくとも1種の核酸配列、少なくとも1種のcas遺伝子及び少なくとも1種のCRISPRアレイを含む少なくとも1種の薬物代謝調節成分と接触させる工程、及び
(b)前記細胞又は前記細胞を含む任意の細胞集団を、少なくとも1種のプロトスペーサーを含む少なくとも1種の選択成分と接触させる工程であって、前記少なくとも1種のプロトスペーサーが、前記(a)のCRISPRアレイの少なくとも1種のスペーサーによって標的化され、前記選択成分を不活性化する工程
のうちの少なくとも1種を含み、
前記細菌細胞の薬物代謝を調節すること、及び/又は少なくとも1種の薬物に対する改変された代謝を示す細菌細胞の集団を得る、方法。
【請求項19】
前記調節成分が、前記細胞及び/又は細胞集団中の前記細胞を特異的に標的化する少なくとも1種の送達ビヒクル内に含まれる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記選択成分が、前記細胞及び/又は細菌細胞集団中の前記細胞を特異的に標的化する少なくとも1種の送達ビヒクル内に含まれ、前記選択成分が、細胞の生存率及び/又は活性に影響を及ぼす少なくとも1種の薬剤を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1種の送達ビヒクルが、少なくとも1種の遺伝子エレメントであるか、又はそれを含み、前記遺伝子エレメントが、少なくとも1種の形質導入粒子、少なくとも1種のバクテリオファージ又はその任意の断片若しくは部分、少なくとも1種のバクテリオファージベース又はバクテリオファージ様形質導入粒子及び/又は少なくとも1種の改変バクテリオファージ、前記調節成分及び/又は選択成分の少なくとも1種を含む及び/又はコードする少なくとも1種のベクター、プラスミド及び/又は構築物、並びにそれらの任意の組合せ又はカクテルの少なくとも1種である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記送達ビヒクルが、細菌細胞を死滅させるか、又は細菌の増殖及び/若しくは機能を破壊する、減弱させる、及び/若しくは阻害する少なくとも1種の毒性エレメントを含む及び/又はコードする、少なくとも1種のバクテリオファージ又は任意のバクテリオファージ様若しくはバクテリオファージベースの形質導入粒子である、請求項20~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記標的細胞が細菌細胞であり、前記細菌細胞及び/又は細胞集団が腸内マイクロバイオーム細胞集団であるか、又はその中に含まれ、前記細胞集団が、Firmicutes門、Bacteroidetes門、Actinobacteria門、及びProteobacteria門の少なくとも1種の細菌、又は分離株の任意の変異体、バリアント、若しくはそれらの任意の組合せを含む、請求項18~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記薬物代謝調節成分が、前記薬物の活性、生物学的利用能、クリアランス、安定性、毒性、及び吸収のうちの少なくとも1種に影響を及ぼす、請求項15~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1種の薬物の代謝に関与する前記エレメントが、少なくとも1種のグルクロニド酵素である、請求項18~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1種のグルクロニド酵素が、少なくとも1種のβ-グルクロニダーゼ(GUS)酵素である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記調節成分が、少なくとも1種のβ-グルクロニダーゼ(βGUS)酵素の発現及び/又は活性及び/又は安定性を阻害及び/又は減少させる少なくとも1種のエレメントをコードする核酸配列を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記調節成分の核酸配列によってコードされるエレメントが、前記βGUS酵素の転写を抑制し、任意選択的に、前記エレメントがGusリプレッサー(GusR)である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記GusRが、少なくとも1種のGUSリガンド及び/又は基質に対して低下したか又は消失した親和性を示す、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記GusRが、リジン(K)125からアラニン(A)、チロシン(Y)164からフェニルアラニン(F)、及びアルギニン(R)73からアラニン(A)、並びにそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1種に少なくとも1種の変異を有する、請求項29に記載の方法。.
【請求項31】
前記少なくとも1種の薬物が、抗新生物剤、抗ウイルス剤、鎮痛剤、解熱薬、抗炎症剤、鎮痛剤、抗高血圧剤、抗マラリア剤、神経遮断剤、抗コレステロール剤、抗糖尿病剤、抗てんかん剤、胆汁酸、抗凝固剤、鉄キレート剤、抗菌剤、造血増殖因子、抗パーキンソン症薬剤、ホルモン、cns抑制薬、抗コリン作用剤、副交感神経遮断剤、免疫抑制剤、オピオイド解毒薬、抗喘息剤、抗良性前立腺肥大又は抗痛風剤のうちのいずれか1種である、請求項18~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記薬物が、少なくとも1種の抗新生物剤、任意選択的に、少なくとも1種のトポイソメラーゼI阻害剤である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記薬物が、少なくとも1種のトポイソメラーゼI阻害剤であり、前記トポイソメラーゼI阻害剤が、カンプトテシン-11(CPT-11、イリノテカン)、又はその任意の誘導体、代謝産物若しくはバイオシミラーである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記薬物代謝調節成分が、細菌GUSによるCPT-11の非活性代謝産物の再活性化及び/又は変換を阻害又は低減する、請求項18~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
工程(b)を少なくとも2回繰り返して、少なくとも1種の薬物の調節された代謝を示す改変細胞の集団を濃縮する、請求項18~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
少なくとも1種の薬物に対して改変された代謝を示す、少なくとも1種の細胞及び/はは前記細胞の集団、あるいは前記細胞の任意の組成物若しくは生成物であって、
(a)前記細胞又は前記細胞を含む任意の細胞集団を、少なくとも1種の薬物の代謝に関与する少なくとも1種のエレメントをコード又は調節する少なくとも1種の核酸配列、少なくとも1種のcas遺伝子及び少なくとも1種のCRISPRアレイを含む少なくとも1種の薬物代謝調節成分と接触させる工程、及び
(b)前記細胞又は前記細胞を含む任意の細胞集団を、少なくとも1種のプロトスペーサーを含む少なくとも1種の選択成分と接触させる工程であって、前記少なくとも1種のプロトスペーサーが、前記(a)のCRISPRアレイの少なくとも1種のスペーサーによって標的化されて、前記選択成分を不活性化する工程
のうちの少なくとも1種を含む方法によって前記細胞及び/又は細胞集団が調製される、細胞及び/又は前記細胞を含む集団。
【請求項37】
請求項18~35のいずれか一項に定義される方法によって調製される、請求項36に記載の細胞及び/又は前記細胞を含む集団。
【請求項38】
前記調節成分が、少なくとも1種のβ-グルクロニダーゼ(βGUS)酵素の発現及び/又は活性及び/又は安定性を阻害及び/又は低減する少なくとも1種のエレメントをコードする核酸配列を含む、請求項36又は37に記載の細胞及び/又は前記細胞を含む集団。
【請求項39】
前記調節成分の前記核酸配列によってコードされるエレメントが、前記βGUS酵素の転写を抑制し、任意選択的に、前記エレメントがGusRである、請求項38に記載の細胞及び/又は前記細胞を含む集団。
【請求項40】
前記GusRは、少なくとも1種のGUSリガンド及び/又は基質に対して低下したか又は消失した親和性を示し、任意選択的に、前記GusRは、リジン(K)125からアラニン(A)、チロシン(Y)164からフェニルアラニン(F)、及びアルギニン(R)73からアラニン(A)、並びにそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1種に少なくとも1種の変異を有する、請求項39に記載の細胞及び/又は前記細胞を含む集団。.
【請求項41】
前記薬物が、少なくとも1種の抗新生物剤、任意選択的に、少なくとも1種トポイソメラーゼI阻害剤である、請求項36~40のいずれか一項に記載の細胞及び/又は前記細胞を含む集団。
【請求項42】
前記薬物が、少なくとも1種のトポイソメラーゼI阻害剤であり、前記トポイソメラーゼI阻害剤が、カンプトテシン-11(CPT-11、イリノテカン)、又はその任意の誘導体、代謝産物及びバイオシミラーである、請求項41に記載の細胞及び/又は前記細胞を含む集団。
【請求項43】
前記細胞が、前記CPT-11の非活性代謝産物であるSN38GのGUSによる前記CPT-11の活性代謝産物であるSN38への再活性化及び/又は変換の阻害又は低減を示す、請求項42に記載の細胞及び/又は前記細胞を含む集団。
【請求項44】
医薬組成物又はキットであって
(I)少なくとも1種の薬物と、
下記(II)及び(III)の少なくとも1種:
(II)下記(a)及び(b):
(a)少なくとも1種の薬物の代謝に関与する少なくとも1種のエレメントをコード又は調節する少なくとも1種の核酸配列、少なくとも1種のcas遺伝子及び少なくとも1種のクリスパー(Clustered, Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat、CRISPR)アレイを含む、少なくとも1種の薬物代謝調節成分、及び
(b)少なくとも1種のプロトスペーサーを含む少なくとも1種の選択成分であって、前記少なくとも1種のプロトスペーサーが、前記選択成分を不活性化するために、(a)のCRISPRアレイの少なくとも1種のスペーサーによって標的化される、少なくとも1種の選択成分
のうちの少なくとも1種を含む、少なくとも1種の薬物代謝調節システムと、
(III)前記少なくとも1種の薬物に対して改変された代謝を示す、少なくとも1種の細菌細胞及び/又は前記細菌細胞の集団、又はそれらの任意の組成物若しくは生成物と
を含み、
前記組成物が、薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤及び添加剤のうちの少なくとも1種を任意選択的に更に含む、医薬組成物又はキット。
【請求項45】
前記システムが請求項1~17のいずれか一項によって定義され、前記細胞又は細胞集団が請求項36~43のいずれか一項によって定義される、請求項34に記載の医薬組成物又はキット。
【請求項46】
前記少なくとも1種の薬物が、抗新生物剤、抗ウイルス剤、鎮痛剤、解熱薬、抗炎症剤、鎮痛剤、抗高血圧剤、抗マラリア剤、神経遮断剤、抗コレステロール剤、抗糖尿病剤、抗てんかん剤、胆汁酸、抗凝固剤、鉄キレート剤、抗菌剤、造血増殖因子、抗パーキンソン症薬剤、ホルモン、CNS抑制薬、抗コリン作用剤、副交感神経遮断剤、免疫抑制剤、オピオイド解毒薬、抗喘息剤、抗良性前立腺肥大又は抗通風剤のうちのいずれか1種である、請求項44~45のいずれか一項に記載の医薬組成物又はキット。
【請求項47】
前記薬物が、少なくとも1種の抗新生物剤、任意選択的に、少なくとも1種トポイソメラーゼI阻害剤である、請求項46に記載の医薬組成物又はキット。
【請求項48】
前記薬物が、カンプトテシン-11(CPT-11、イリノテカン)、又はその任意の誘導体、代謝産物及びバイオシミラーである、請求項47に記載の医薬組成物。
【請求項49】
対象において少なくとも1種の薬物の代謝を調節するための方法であって、前記対象に有効量の下記(I)~(IV)の少なくとも1種を投与する工程を含む、方法。
(I)下記(a)及び(b):
(a)少なくとも1種の薬物の代謝に関与する少なくとも1種のエレメントをコード又は調節する少なくとも1種の核酸配列、少なくとも1種のcas遺伝子及び少なくとも1種のクリスパー(Clustered, Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat、CRISPR)アレイを含む少なくとも1種の薬物代謝調節成分、並びに
(b)少なくとも1種のプロトスペーサーを含む少なくとも1種の選択成分であって、前記少なくとも1種のプロトスペーサーが、前記選択成分を不活性化するために、前記(a)のCRISPRアレイの少なくとも1種のスペーサーによって標的化される、少なくとも1種の選択成分
のうちの少なくとも1種を含む、少なくとも1種の薬物代謝調節システム、
(II)前記少なくとも1種の薬物の改変された代謝を示す、少なくとも1種の細胞及び/若しくは前記細胞の集団、又はその任意の組成物若しくは生成物、
(III)前記(I)及び(II)の少なくとも1種を含む少なくとも1種の組成物、キット又はシステム、及び
(IV)前記(I)、(II)及び(III)のうちの少なくとも1種と前記少なくとも1種の薬物との任意の組合せ。
【請求項50】
前記システムが請求項2~17のいずれか一項によって定義されるものであり、前記細胞又は細胞集団が請求項36~43のいずれか一項によって定義されるものであり、前記組成物が請求項44~48のいずれか一項によって定義されるものであり、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
対象において少なくとも1種の病的障害を処置するか、防止するか、改善するか、低減するか、又はその発症を遅延させるための方法であって、前記対象に、有効量の少なくとも1種の薬物と、下記(I)~(IV)の少なくとも1種とを投与する工程を含む、方法。
(I)下記(a)及び(b):
(a)少なくとも1種の薬物の代謝に関与する少なくとも1種のエレメントをコード又は調節する少なくとも1種の核酸配列、少なくとも1種のcas遺伝子及び少なくとも1種のクリスパー(Clustered, Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat、CRISPR)アレイを含む少なくとも1種の薬物代謝調節成分、並びに
(b)少なくとも1種のプロトスペーサーを含む少なくとも1種の選択成分であって、前記少なくとも1種のプロトスペーサーが、前記選択成分を不活性化するために、前記(a)のCRISPRアレイの少なくとも1種のスペーサーによって標的化される、少なくとも1種の選択成分
のうちの少なくとも1種を含む、少なくとも1種の薬物代謝調節システム、
(II)前記少なくとも1種の薬物の改変された代謝を示す、少なくとも1種の細菌細胞及び/若しくは前記細菌細胞の集団、又はそれらの任意の組成物若しくは生成物、
(III)前記(I)及び(II)の少なくとも1種を含む少なくとも1種の組成物、キット又はシステム、及び
(IV)前記(I)、(II)及び(III)のうちの前記少なくとも1種と前記少なくとも1種の薬物との任意の組合せ。
【請求項52】
前記システムが請求項2~17のいずれか一項に定義されるものであり、前記細胞又は細胞集団が請求項36~43のいずれか一項に定義されるものであり、前記組成物又はキットが請求項44~48のいずれか一項に定義されるものである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記病的障害が、新生物障害、ウイルス感染、炎症性障害、免疫細胞媒介性障害、代謝障害及び自己免疫障害のうちの少なくとも1種である、請求項51及び52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記少なくとも1種の薬物が、抗新生物剤、抗ウイルス剤、鎮痛剤、解熱薬、抗炎症剤、鎮痛剤、抗高血圧剤、抗マラリア剤、神経遮断剤、抗コレステロール剤、抗糖尿病剤、抗てんかん剤、胆汁酸、抗凝固剤、鉄キレート剤、抗菌剤、造血増殖因子、抗パーキンソン症薬剤、ホルモン、cns抑制薬、抗コリン作用剤、副交感神経遮断剤、免疫抑制剤、オピオイド解毒薬、抗喘息剤、抗良性前立腺肥大又は抗痛風剤のうちのいずれか1種である、請求項51~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記対象が、少なくとも1種の新生物障害に罹患している、請求項51~54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記薬物が、少なくとも1種の抗新生物剤、任意選択的に、少なくとも1種トポイソメラーゼI阻害剤である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記薬物が、少なくとも1種のトポイソメラーゼI阻害剤であり、前記トポイソメラーゼI阻害剤が、カンプトテシン-11(CPT-11、イリノテカン)、又はそれらの任意の誘導体である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記調節成分の前記核酸配列によってコードされる前記エレメントが、βGUS酵素の転写を抑制し、任意選択的に、前記エレメントがGusリプレッサー(GusR)である、請求項51~57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記GusRが、少なくとも1種のGUSリガンド及び/又は基質に対して低下したか又は消失した親和性を示す、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記GusRが、リジン(K)125からアラニン(A)、チロシン(Y)164からフェニルアラニン(F)、及びアルギニン(R)73からアラニン(A)、並びにそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1種に少なくとも1種の変異を有する、請求項59に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マイクロバイオームの操作の分野に関する。より具体的には、本開示は、マイクロバイオーム細胞、具体的には腸内マイクロバイオームの細胞、例えば細菌細胞における薬物代謝に関与するエレメントの特異的かつ標的化された調節による薬物代謝の調節に関する。
【背景技術】
【0002】
非常に複雑で動的な生態システムである腸内マイクロバイオームは、成人において最大1Kgの細菌を含む。個体内の腸内マイクロバイオームは、人生の初期に確立され、生涯にわたって比較的安定したままであるが、その組成及び/又は機能は、食事、プロバイオティクス、及び薬物、特に抗生物質などの様々な因子によって影響され得る。
【0003】
この数兆個の微生物の集合体は、現在、ヒトの健康及び疾患に対する素因において重要な役割を果たすことが知られている。これは、種々の必須の生物学的機能、例えば、ビタミンの合成、免疫系の発達及び調節、細菌防御、上皮細胞損傷に対する腸応答及び栄養代謝も行う。更に、腸内微生物叢は、セロトニン、ドーパミン及びノルアドレナリンを含むいくつかの神経伝達物質を産生することができる。研究者らは現在、腸内微生物叢を、その深刻な生理学的役割に起因して「第2の脳」又は「第2のゲノム」と称している。
【0004】
宿主との共生関係の副産物として、腸内マイクロバイオームは、40年以上前から最初に認識された能力である、多数の薬物の薬理学的及び/又は毒物学的特性に直接的及び間接的に影響を及ぼす。現在までに、30種を超える薬物が腸内細菌の基質として特定されており、これらの数は継続的かつ急速に増加している。薬物応答における腸内マイクロバイオームの役割を理解することにより、薬物の有効性を増強するマイクロバイオーム標的化アプローチの開発が可能になり得る。したがって、薬物の吸収、分布、代謝及び排出(ADME)に対する腸内マイクロバイオームの影響を調査するために、薬理微生物学(pharmacomicrobiomics)と呼ばれる研究分野が出現した。
【0005】
薬物及び化合物を修飾する腸内マイクロバイオームの能力は、広範囲の代謝反応を行うその能力によるものである。最も重要な反応は、還元的代謝及び加水分解反応(特に結合体上で)に関与する。脱メチル化、脱アミノ化、脱ヒドロキシル化、脱アシル化、脱炭酸及び酸化についても記載されており、還元代謝と同様に重要である。
【0006】
薬物応答に対する直接的な微生物効果は、薬物の生物学的利用能又は生物活性及びその毒性に影響を及ぼす腸内マイクロバイオームによる薬物化合物の化学変換である(Koppel,Rekdal, & Balskus,2017)。毒性は、薬物の細菌形質転換が、宿主に対して有害な影響を有する代謝産物の生成をもたらす場合に生じる。人体は、ビリルビン、胆汁酸及びチロキシンを含む数百の薬物及び内因性化合物を解毒するために、生体異物及びエンドバイオティクスの第II相代謝における最も重要な経路の1種であるグルクロン酸抱合を使用する。これは、それらの水への溶解性を増加させることによって行われ、このようにして、有意に増加した速度で尿又はGI管を通して(肝臓からの胆汁を介して)身体からのそれらのその後の排出を可能にする。グルクロン酸抱合において、グルクロン酸(GlcA)は、グリコシド結合を介して基質にコンジュゲートされる。このプロセスは、全ての主要な身体器官に見られる酵素群である、ウリジン5’-ジホスフェートグルクロニルトランスフェラーゼ(UGT)酵素によって媒介されるが、グルクロン酸抱合は主に肝臓で起こる。このプロセスの得られる最終生成物は、β-D-グルクロニド(又はグルクロニド)と命名される。
【0007】
腸内マイクロバイオームのメンバーの多くは、腸内に豊富に存在するグルクロニドを代謝して、エネルギー源として使用されるコンジュゲート化合物からGlcAを遊離させることができる。GlcAは、糖酸を異化し、得られたピルベートをTCA回路に分流する解糖の細菌代替物であるEntner-Doudoroff経路に入る(Peekhaus & Conway,1998)。
【0008】
腸内のグルクロニドからのGlcAの細菌媒介性除去は、これらの化合物のUGT媒介性哺乳動物不活性化の作用を再活性化し、効果的に逆転させる。グルクロニドグリコシド結合の加水分解は、b-グルクロニダーゼ又はGUSと呼ばれる細菌酵素の群によって触媒される。おそらく、腸内マイクロバイオーム媒介性薬物毒性の最も広範に研究された例は、CPT-11(イリノテカン)の場合である。イリノテカンは、結腸がんに対して最も一般的に使用される化学療法剤の1種である。CPT-11は、肝臓においてその毒性形態であるSN38、即ち、抗腫瘍性トポイソメラーゼI毒に活性化されるプロドラッグである。肝臓SN-38は、UGT媒介性グルクロン酸抱合によってSN38Gに不活性化される。腸に入ると、SN38Gは、in situでSN38を再活性化するGUS酵素に対する基質として働く(Tobin,Dodds,Clarke,Schnitzler, & Rivory,2003)。イリノテカンの用量制限毒性を表す遊離腸SN38は、イリノテカン誘導性下痢の原因であり、40%~80%の全発生率が報告された(Coyle,et al.,2013)。
【0009】
イリノテカン誘発性下痢を克服するためのいくつかの試みとして、経口アルカリ化、フェノバルビタール及びシクロスポリンの添加、活性炭素等がなされている。CPT-11の前に抗生物質を使用することの実現可能性が調査され、有望な臨床データが得られ、コレスチラミン/レボフロキサシンの組合せは、イリノテカン関連の遅発性下痢の重症度を低下させた。更に、(Kodawara,et al.,2014)β-グルクロニダーゼの活性に対するシプロフロキサシンの阻害効果を実証した。それにもかかわらず、このアプローチはいくつかの欠点を有する:腸内微生物叢のディスバイオシスは免疫無防備状態の患者には推奨されず、マイクロバイオームの共生腸メンバーの排除は病原体による感染の機会を増加させる。
【0010】
腸内マイクロバイオームGUS活性は、腸毒性代謝産物、具体的にはSN38の濃度上昇の原因であり、したがってイリノテカン誘導性下痢の原因であることが示された。したがって、イリノテカンの処置有効性を妨げず、天然微生物叢も破壊しない強力かつ特異的なGUS阻害剤は、大きな臨床的価値があり、この微生物活性を制限又は消滅させるためのいくつかのアプローチが調査された。
【0011】
Fittkauら(Fittkau,Voigt,Holzhausen,& Schmoll,2004)及びWallaceら(Wallace,et al.,2016)は、化合物のライブラリーをスクリーニングし、GUS活性に対するそれらの効果を調査した。彼らは、ラットにおいてイリノテカンに関連するGI毒性を低減するいくつかの強力な阻害剤を特定した。彼らはまた、これらの阻害剤が、ヒト酵素オルソログよりも1,000倍超、細菌GUSに対して選択的であることを示した。E.coliのGUSは、グリコサミノグリカンの分解のための重要なリソソーム酵素であるヒトGUSに対して、高度に保存された活性部位を有する50%のアミノ酸配列同一性を共有するので、これは重要である。
【0012】
Pellockら(Pellock,et al.,2018)は、微生物GUS酵素に対して選択的であり、GUS活性部位において共有結合阻害剤GlcA複合体を形成することによってGUSを阻害するピペラジン含有GUS阻害剤の群を発見した。
【0013】
Ahmadら.(Ahmad,et al.,2011)は、これらの既知の薬物のいずれかがGUS阻害活性を有するかどうかを調査するために、FDA承認薬物のライブラリーをスクリーニングした。このスクリーニングは、ニアラミド、イソカルボキサジド、及びアモキサピンが、イリノテカン化学療法に関連する下痢を低減するための治療薬として再利用される可能性を有することを特定した。
【0014】
イリノテカンは、化合物のGUS媒介性再活性化が毒性をもたらす唯一のケースではなかった。イリノテカンと同じ機構を介して、細菌GUSはまた、非ステロイド抗炎症薬(NSAID)の毒性を誘発する可能性があり、これは、使用者の最大50%において胃十二指腸粘膜病変を引き起こす可能性がある(Higuchi,et al.,2009)。グルクロン酸化NSAIDが肝胆道経路を介して分泌され、遠位小腸管腔に到達すると、細菌GUSはこれらの化合物を代謝し、管腔中の非グルクロン酸化NSAIDの濃度を増加させる。これらの分子は、腸シトクロムP450によって、細胞死をもたらす重度の小胞体ストレス又はミトコンドリアストレスを誘導する潜在的に反応性の中間体に更に代謝される(Boelsterli,Redinbo, & Saitta,2013)。
【0015】
加えて、Weisburgerら(Weisburger,et al.,1986)は、肉加工中に生成されるヘテロ芳香族化合物の発がん性が、腸内細菌GUSに関連することが見出されたことを示した。Sakamotoら(Sakamoto,Yokota,Kibe,Sayama, & Yuasa,2002)は、盲腸における細菌GUS活性が内分泌撹乱剤、ビスフェノールAの排除を遅延させることを実証した。したがって、多くの化合物に対して広範囲の活性を実証した細菌GUS酵素は、腸内でグルクロニドを代謝することによって健康及び疾患において重要な役割を果たすようである。これは、多くの外因性及び内因性化合物の局所及び全身レベルを直接調節することによって、これらの化合物の薬物動態に有意に影響を及ぼし得る。
【0016】
国際公開第2016/084088号は、細菌間の病原性遺伝子の水平移動を妨げるための、及び細菌感染によって引き起こされる哺乳動物対象における病的状態を防止するためのキット、システム及び方法に関する。
【0017】
国際公開第2018/002940号は、改善された核酸送達ビヒクル、具体的には、拡張された宿主認識能力を有するビヒクルの調製のためのプラットフォーム、その組成物及び使用に関する。
【0018】
したがって、薬物の用量毒性を制限し、それによって薬物の代謝及び有効性を改善するために、微生物叢の効率的な操作が必要とされている。この必要性は、本開示によって対処される。
【0019】
現在開示されている主題の背景として関連すると考えられる参考文献を以下に挙げる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】国際公開第2016/084088号
【特許文献2】国際公開第2018/002940号
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】Ahmad, S., Hughes, M.A., Lane, K.T., Redinbo, M.R., Yeh, L.-A., & Scott, a.J. (2011). A High Throughput Assay for Discovery of Bacterial β-Glucuronidase Inhibitors.Curr Chem Genomics.
【非特許文献2】Boelsterli, U.A., Redinbo, M.R., & Saitta, K.S. (2013). Multiple NSAID-induced hits injure the small intestine: underlying mechanisms and novel strategies. Toxicol Sci.
【非特許文献3】Coyle, V.M., Lungulescu, D., Toganel, C., Niculescu, A., Pop, S., Ciuleanu, T., Wilson, R.H. (2013). A randomised double-blind placebo-controlled phase II study of AGI004 for control of chemotherapy-induced diarrhoea. British Journal of Cancer volume.
【非特許文献4】Fittkau, M., Voigt, W., Holzhausen, H.-J., & Schmoll, H.J. (2004). Saccharic acid 1.4-lactone protects against CPT-11-induced mucosa damage in rats. J Cancer Res Clin Oncol.
【非特許文献5】Higuchi, K., Yoda, Y., Amagase, K., Kato, S., Tokioka, S., Murano, M., Umegaki, E. (2009). Prevention of NSAID-Induced Small Intestinal Mucosal Injury:Prophylactic Potential of Lansoprazole.J Clin Biochem Nutr.
【非特許文献6】Kodawara, T., Masuda, S., Yano, Y., Matsubara, K., Nakamura, T., & Masada, M. (2014). Inhibitory effect of ciprofloxacin on β-glucuronidase-mediated deconjugation of mycophenolic acid glucuronide. Biopharm Drug Dispos.
【非特許文献7】Koppel, N., Rekdal, V.M., & Balskus, E.P. (2017). Chemical transformation of xenobiotics by the human gut microbiota. Science.
【非特許文献8】Peekhaus, N., & Conway, T. (1998). What’s for dinner?: Entner-Doudoroff metabolism in Escherichia coli. J Bacteriol.
【非特許文献9】Pellock, S.J., Creekmore, B.C., Walton, W.G., Mehta, N., Biernat, K.A., Cesmat, A.P.Redinbo, M.R. (2018). Gut Microbial β-Glucuronidase Inhibition via Catalytic Cycle Interception. ACS Cent Sci.
【非特許文献10】Sakamoto, H., Yokota, H., Kibe, R., Sayama, Y., & Yuasa, A. (2002). Excretion of bisphenol A-glucuronide into the small intestine and deconjugation in the cecum of the rat. Biochim.Biophys.Acta.
【非特許文献11】Tobin, P.J., Dodds, H.M., Clarke, S., Schnitzler, M., & Rivory, L.P. (2003). The relative contributions of carboxylesterase and beta-glucuronidase in the formation of SN-38 in human colorectal tumours. Oncol Rep.
【非特許文献12】Wallace, B.D., Roberts, A.B., Pollet, R.M., Ingle, J.D., Biernat, K.A., Pellock, S.J., Redinbo, M.R. (2016). Structure and Inhibition of Microbiome β-Glucuronidases Essential to the Alleviation of Cancer Drug Toxicity. Chem Biol.
【非特許文献13】Weisburger, J.H., Barnes, W.S., Lovelette, C.A., Tong, C., Tanaka, T., & Williams, G.M. (1986). Genotoxicity, carcinogenicity, and mode of action of the fried food mutagen 2-amino-3-methylimidazo[4, 5-f]quinoline(IQ). Environmental Health Perspectives.
【0022】
本明細書における上記の参考文献の認識は、これらが現在開示されている主題の特許性に何らかの形で関連していることを意味するものとして推論されるべきではない。
【発明の概要】
【0023】
本開示の第1の態様は、標的細胞及び/又は標的細胞集団を改変することによって薬物代謝を調節するためのシステムに関する。本開示のシステムによって改変された細胞又は細胞集団は、少なくとも1種の薬物の改変された代謝を示す。より具体的には、本開示のシステムは、少なくとも2つのエレメントを含む。
【0024】
第1の成分又は部分(a)は、少なくとも1種の薬物代謝調節成分を含む。この成分は、少なくとも1種の薬物の代謝に関与する少なくとも1種のエレメントをコード及び/又は調節する少なくとも1種の核酸配列、少なくとも1種のcas遺伝子、並びに少なくとも1種のクリスパー(Clustered, Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat、CRISPR)アレイを含む。本明細書で開示されるシステムの第2の成分又は部分(b)は、少なくとも1種のプロトスペーサーを含む少なくとも1種の選択成分を含み、少なくとも1種のプロトスペーサーは、上記(a)のCRISPRアレイの少なくとも1種のスペーサーによって標的化され、それによって当該選択成分を不活性化する。一部の実施形態では、標的細胞は細菌細胞である。
【0025】
本開示の更なる態様は、標的細胞及び/又は細胞集団(例えば、細菌細胞)の薬物代謝を調節するための方法に関する。一部の実施形態では、方法は、以下の工程のうちの少なくとも1種を含む。
1つの工程(a)は、一部の実施形態では第1の工程であり得、細胞又は細胞を含む任意の細胞集団を、少なくとも1種の薬物の代謝に関与する少なくとも1種のエレメントをコード又は調節する少なくとも1種の核酸配列、少なくとも1種のcas遺伝子及び少なくとも1種のCRISPRアレイを含む少なくとも1種の薬物代謝調節成分と接触させることを含む。別の工程(b)は、一部の実施形態では、細胞又は細胞を含む任意の細胞集団を、少なくとも1種のプロトスペーサーを含む少なくとも1種の選択成分と接触させることを含む第2の工程であり得る。少なくとも1種のプロトスペーサーは、選択成分を不活性化するために、上記(a)のCRISPRアレイの少なくとも1種のスペーサーによって標的化されることを理解すべきである。
【0026】
標的細胞及び/又は細胞集団を薬物代謝調節成分及び/若しくは選択成分、並びに/又は(a)及び(b)成分の少なくとも1種を含む任意のシステム若しくは組成物に曝露及び/又は接触させることは、標的細菌細胞の薬物代謝の調節、更に、少なくとも1種の薬物の改変された代謝を示す細胞集団の選択及び/又は濃縮をもたらす。
【0027】
本開示の更なる態様は、少なくとも1種の薬物の改変された代謝を示す、少なくとも1種の細胞及び/若しくは細胞集団、又はその任意の組成物若しくは生成物に関する。一部の具体的な実施形態では、細胞は細菌細胞であり、したがって、本開示は、少なくとも1種の薬物の改変された代謝を示す細菌細胞及びその集団を提供する。一部の実施形態では、細胞及び/又は細胞集団は、以下の工程のうちの少なくとも1種を含む方法によって調製される。一部の実施形態では第1の工程であり得る1種の工程(a)において、本方法は、細胞又は標的細胞を含む任意の細胞集団を、少なくとも1種の薬物の代謝に関与する少なくとも1種のエレメントをコード又は調節する少なくとも1種の核酸配列、少なくとも1種のcas遺伝子及び少なくとも1種のCRISPRアレイを含む少なくとも1種の薬物代謝調節成分と接触させることを含む。別の工程(b)では、それは、一部の実施形態では、細胞又は細胞を含む任意の細胞集団を、少なくとも1種のプロトスペーサーを含む少なくとも1種の選択成分と接触させることを含む次の工程又は第2の工程(b)であり得る。少なくとも1種のプロトスペーサーは、当該選択成分を不活性化するために、(a)のCRISPRアレイの少なくとも1種のスペーサーによって標的化されることが理解されるべきである。
【0028】
本開示の更なる態様は、組合せ組成物、具体的には、少なくとも1種の薬物と、開示された組成物の薬物の代謝の調節をもたらす本発明のシステムのうちの少なくとも1種とを含む医薬組成物、又は薬物の代謝の調節を示す任意の細胞若しくは細胞集団に関する。より具体的な実施形態では、本明細書で開示される組成物は以下を含み得る:
(I)少なくとも1種の薬物代謝調節システムであって、(a)少なくとも1種の薬物の代謝に関与する少なくとも1種のエレメントをコード又は調節する少なくとも1種の核酸配列、少なくとも1種のcas遺伝子、及び少なくとも1種のクリスパー(Clustered, Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat、CRISPR)アレイを含む少なくとも1種の薬物代謝調節成分、並びに(b)少なくとも1種のプロトスペーサーを含む少なくとも1種の選択成分のうちの少なくとも1種を含む、少なくとも1種の薬物代謝調節システム。少なくとも1種のプロトスペーサーは、当該選択成分を不活性化するために、上記(a)のCRISPRアレイの少なくとも1種のスペーサーによって標的化されることに留意すべきである。一部の代替的又は追加的な実施形態では、組成物は、薬物に加えて、(II)少なくとも1種の細菌細胞及び/若しくは細菌細胞の集団、又は少なくとも1種の薬物の改変された代謝を示すその任意の組成物若しくは生成物を更に含み得るか、又は代替的に含み得る。なお更に、一部の実施形態では、組成物は、薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤及び添加剤のうちの少なくとも1種を任意選択的に更に含む。
【0029】
本開示の更なる態様は、それを必要とする対象において少なくとも1種の薬物の代謝を調節するための方法に関する。より具体的には、本方法は、本明細書で開示されるシステム、改変された細菌細胞若しくは細胞集団、それらの任意の組成物若しくはキット、又はそれらと少なくとも1種の薬物との任意の組合せのうちの少なくとも1種の有効量を対象に投与する工程を含む。より具体的には、一部の実施形態では、処置される対象は、以下のうちの少なくとも1種を投与される:(I)、少なくとも1種の薬物代謝調節システムであって、(a)少なくとも1種の薬物の代謝に関与する少なくとも1種のエレメントをコード又は調節する少なくとも1種の核酸配列、少なくとも1種のcas遺伝子及び少なくとも1種のクリスパー(Clustered, Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat、CRISPR)アレイを含む少なくとも1種の薬物代謝調節成分、並びに(b)少なくとも1種のプロトスペーサーを含む少なくとも1種の選択成分であって、少なくとも1種のプロトスペーサーが、当該選択成分を不活性化するために、上記(a)のCRISPRアレイの少なくとも1種のスペーサーによって標的化される、少なくとも1種の選択成分のうちの少なくとも1種を含む、少なくとも1種の薬物代謝調節システム。代替として、または加えて、処置される対象は、(II)として、少なくとも1種の薬物の改変された代謝を示す、少なくとも1種の細菌細胞及び/若しくは細菌細胞の集団、又はその任意の組成物若しくは生成物を投与される。代替として、または加えて、処置される対象は、(III)として、(I)及び(II)の少なくとも1種を含む少なくとも1種の組成物、キット又はシステム、並びに(IV)として、当該と少なくとも1種の薬物と、(I)、(II)及び(III)のうちの少なくとも1種の任意の組合せを投与される。
【0030】
なお更に、別の態様では、本発明は、対象の少なくとも1種の病的障害を処置するか、防止するか、改善するか、低減するか、又はその発症を遅延させるための方法を提供する。より具体的には、本方法は、本明細書で開示されるシステム、改変された細菌細胞若しくは細胞集団、それらの任意の組成物若しくはキット、又はそれらと少なくとも1種の薬物との任意の組合せのうちの少なくとも1種の有効量を対象に投与する工程を含む。より具体的には、一部の実施形態では、処置される対象は、以下のうちの少なくとも1種を投与される:(I)下記(a)及び(b)の少なくとも1種を含む、少なくとも1種の薬物代謝調節システム:(a)少なくとも1種の薬物の代謝に関与する少なくとも1種のエレメントをコード又は調節する少なくとも1種の核酸配列、少なくとも1種のcas遺伝子及び少なくとも1種のクリスパー(Clustered, Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat、CRISPR)アレイを含む少なくとも1種の薬物代謝調節成分、並びに(b)少なくとも1種のプロトスペーサーを含む少なくとも1種の選択成分であって、少なくとも1種のプロトスペーサーが、当該選択成分を不活性化するために、上記(a)のCRISPRアレイの少なくとも1種のスペーサーによって標的化される、少なくとも1種の選択成分。代替として、または加えて、処置される対象は、(II)として、少なくとも1種の薬物の改変された代謝を示す、少なくとも1種の細菌細胞及び/若しくは細菌細胞の集団、又はその任意の組成物若しくは生成物を投与される。代替として、または加えて、処置される対象は、(III)として、(I)及び(II)の少なくとも1種を含む少なくとも1種の組成物、キット又はシステム、並びに(IV)として、当該と少なくとも1種の薬物と、(I)、(II)及び(III)のうちの少なくとも1種との任意の組合せを投与される。
【0031】
本発明のこれら及び他の態様は、以下の開示を読めば明らかになるであろう。
【0032】
本明細書に開示されている主題をより良く理解し、実際にそれがどのように実行され得るかを例示するために、添付の図面を参照して、非限定的な例としてのみ、実施形態をここで説明する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】Drug metabOlism modulatINg(DOIN)成分。図は、薬物代謝調節のための実施形態を示し、GusR K125Aベクターは、K125A突然変異GusRリプレッサーを標的細菌細胞に導入する。Ori:複製起点、gusR K125A:GusR突然変異酵素をコードする遺伝子、Cas:Cas遺伝子、CRISPRアレイ:保存された反復配列及びスペーサーを交互に含む、赤色は選択ベクターを標的化するスペーサー。
図2】選択ベクターは、標的細菌細胞に細菌毒素を導入する。図は、選択成分の実施形態を示す。Ori:複製起点、Toxin:細菌を死滅させる毒素をコードする遺伝子、プロトスペーサー:DOINベクター中のコグネイトスペーサー残基によって標的化される選択ベクター上の領域。
図3A】GusR変異体K125AによるGUSオペロンの調節。E.coliGUSオペロンの概略図。GUSオペロンは3つの遺伝子:gusA、gusb及びgusCから構成される。gusR遺伝子は、オペロンリプレッサーGusRをコードする。リガンドの非存在下では、GusRはその上流調節領域(オペレーター)に結合し、オペロン遺伝子の発現を阻害する。
図3B】GusR変異体K125AによるGUSオペロンの調節。E.coliGUSオペロンの概略図。GUSオペロンは3つの遺伝子:gusA、gusb及びgusCから構成される。gusR遺伝子は、オペロンリプレッサーGusRをコードする。その存在下では、リガンド(丸)は、GusRリプレッサーに結合し、これは、立体構造変化及びオペレーターからのリプレッサーの放出をもたらす。これはGUSオペロンの発現をもたらす。
図3C】GusR変異体K125AによるGUSオペロンの調節。E.coliGUSオペロンの概略図。GUSオペロンは3つの遺伝子:gusA、gusb及びgusCから構成される。gusR遺伝子は、オペロンリプレッサーGusRをコードする。GusR_K125A変異体(配列番号9のアミノ酸配列によっても示され、星印を有する黒い矢印、本明細書ではTBX201とも呼ばれる)の存在下では、GusRは、リガンドの存在下であっても調節領域に結合したままであり、GUS酵素は産生されない。丸:GUS誘導リガンド、星:GusRタンパク質における変異体K125A。
図4】細菌株におけるGusR K125A変異体を使用するGUS活性の阻害。ヒストグラムは、2つの細菌宿主、BW25113及びMG1655、における変異体リプレッサーK125Aについて測定されたGUS比活性(任意単位)を示す。GUSオペロンの活性は、GUSオペロン誘導物質PNPGの非存在下(-)又は存在下(+)で決定した。データは、少なくとも2つの独立した実験を表す。
図5】GusR K125A変異体は、追加のE.coli株においてGUS酵素活性を阻害する。GUS酵素の比活性(任意単位)を、GUSアッセイに従って決定した。各株、特にMG1655(灰色のバー)及びNissle1917(黒色のバー)について、2つの培養物:1種は空ベクター(ベクター)を保有するもの、2つ目はGusR変異体K125A(K125A)を発現するDOINベクター(本開示の調節性成分)を保有するもの、を使用した。培養物を、GUS酵素の基質(GUS基質)として使用されるPNPGの存在下又は非存在下でインキュベートした。データは、少なくとも2つの独立した実験を表す。
図6】異なるマイクロバイオーム単離物への調節性成分の形質導入。マイクロバイオーム単離物へのDOINベクターの形質導入(TFU/ml)を、以前に記載されたように、TFUアッセイを使用して決定した。試験細菌培養物(MG1655(灰色のバー)、BW25113(白色のバー))を指数増殖期中期に達するまで増殖させ、調節成分として使用されるGusR K125A_CRISPRを発現するDOINベクターを含有する形質導入粒子(改変バクテリオファージ)の溶解物とともに1時間インキュベートした。10倍連続希釈物を、形質導入された細菌のみが増殖することができる選択プレート上へのプレーティングを二組実施した。灰色の横破線は、アッセイ検出限界を示す。データは、少なくとも2つの独立した実験を表す。
図7】GusR R73及びGusR Y164F変異体は、GUS酵素活性に影響を及ぼす。GusR R73及びGusR Y164F変異体をコードするDOINベクターで形質導入されたE.coli株BW25113(白色のバー)及びMG1655(灰色のバー)において、GUSアッセイに従ってGUS酵素の特異的活性(任意単位)を決定した。各株について、3つの培養物を使用し、1つ目は空ベクター(ベクター)を保有し、2つ目及び3つ目はDOINベクターを保有し、それぞれ、GusR R73A変異体又はY164F変異体のいずれかを発現する。培養物を、GUS酵素の基質(GUS基質)として使用されるPNPGの存在下又は非存在下でインキュベートした。データは、少なくとも2つの独立した実験を表す。
図8A】in-vitro培養における細菌細胞集団の変換。それぞれ改変バクテリオファージである送達ビヒクル中に2種の異なる成分、調節性成分、及び選択成分を含む、本開示のプラットフォームの実施形態の概略図。両方のファージは同一の構造を有し、同じ細菌を標的化するが、それらのペイロードが異なる。左は、GusR変異体K125A及びCRISPR-Cas3システム(DOINベクター)をコードする核酸配列を含む調節成分(「CRISPR」とマークされる)。右は、(「選択的」とマークされる)は、非複製T7溶菌性ファージの改変ゲノムを有するファージである。これらのファージは連続的に作用する。調節成分のCRISPRアレイは、「選択的」ファージを特異的に標的とし、この二重GusR変異体-CRISPR調節成分を含有する任意の細菌を選択成分から救済する。
図8B】in-vitro培養における細菌細胞集団の変換。E.coli BW25113分離株の細菌培養物を、指数増殖期中期(10CFU/ml)に達するまで増殖させた。0時間の時点で、DOINベクターを含有する「CRISPR」ファージを使用して、約0.1のMOIで培養物に感染させた。1時間後、1時間の時点、及び再び24時間の時点で、「選択的」成分ファージを使用して、約10のMOIで培養物を感染させた。全細菌集団からのGUS発現細菌(薄い灰色)及びGUS阻害細菌(濃い灰色)の割合(細菌の%)を決定した。矢印で示したファージは、感染の時点を示す。データは、2つの独立した実験の代表である。
図8C】in-vitro培養における細菌細胞集団の変換。細菌培養物からの試料を0時間の時点(「CRISPR」ファージの添加前)及び48時間の時点で採取し、GUS活性を測定した。
図9】GusR変異体K125Aは、SN38の細胞傷害性を低下させる。この図は、GusR変異体K125Aが、基質濃度依存的に、細菌GUSによる非活性化SN38GのSN38への代謝変換を阻害することによって、SN38の細胞傷害性を低下させることを示す。2つのBW25113細菌培養物を使用した。空ベクターを発現するベクター細菌、及びGusR変異体リプレッサーK125Aを発現するDOINベクターを含有するK125A細菌。培養物をPNPGとともにインキュベートしてGUSオペロンを誘導し、次いで示された濃度のSN-38G(SantaCruz、212931A)とともにインキュベートし、続いて細菌を溶解させた。HL29(ATCC(登録商標)HTB-38(商標))細胞を製造業者の使用説明書に従って維持し、異なる細菌抽出物とともに48時間インキュベートした。細菌溶解物とともにインキュベートした細胞の生存率を、XTT生存率アッセイを使用して、4つの複製物を使用する3つの独立した生物学的反復において決定した。
図10】SN38の細胞傷害性は、GUSによるSN38G代謝の減少により低下する。ヒストグラムは、様々な処置群における細胞生存率を示す。GusR変異体K125Aは、酵素濃度依存的に細菌GUSによるSN38Gの代謝を阻害することによって、SN38の細胞傷害性を低下させる。以下の修正を加えて、図面に記載したように研究を行った。培養物をPNPGとともにインキュベートしてGUSオペロンを誘導し、示されるように希釈した後、1μMのSN-38Gとともに1時間インキュベートし、続いて細菌を溶解させた。細胞の生存率を上記のように決定した。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本開示は、薬物及び他の物質の代謝を調節するためのマイクロバイオームの操作に関する。そのような調節は、種々の効果、例えば、薬物の毒性低下、薬物吸着の改善、安定性の調節、並びに薬物利用性及びプロドラッグの取り込み及び活性化の増加を生じる。例えば、本明細書で開示されるようなファージベースの形質導入粒子は、合成的に操作され得、そして宿主範囲は、予め設計され、規定され得る。この特徴により、標的細菌集団、例えば、腸内細菌集団を正確かつ別個の形態で決定することが可能になる。本明細書で開示されるシステムは、非限定的な実施形態として本明細書で例示されるように、少なくとも2つの成分を提供し、これらの2つの成分は、2つのタイプのファージベースの形質導入粒子であってもよく、1種のタイプは、CRISPR-Casシステム又はモジュールを更に含む薬物代謝調節成分(本明細書ではDrug metabOlism modulatINg(DOIN)とも呼ばれる)ベクター又は本開示の調節成分を含み送達する形質導入粒子と、選択ベクターを標的細胞にパッケージング及び/又は送達する形質導入粒子とを含む。選択ベクターは、細菌の増殖及び/又は機能を死滅させるか、減弱させるか、破壊するか又は阻害する毒性産物をコードする核酸配列、及びその配列が少なくとも1種のスペーサーとマッチし、したがって調節性成分(DOINベクター)に含まれるCRISPRアレイ中の少なくとも1種のスペーサーによって標的化される少なくとも1種のプロトスペーサーを含む。このシステムは、薬物代謝の調節並びに調節性成分(DOINベクター又は送達ビヒクル)及びその中にCRISPRを保持する細菌集団の持続的な濃縮を可能にする。DOINベクターは、薬物代謝を調節する少なくとも1種の成分をコードする核酸配列を含む。この成分は、個体によって消費される特定の薬物の活性を改善するために、又はこの薬物の使用に伴う毒性副作用を低下させるために送達される。DOINベクターのCRISPR-Casモジュールは、選択成分ベクター(送達ビヒクル)中のマッチするプロトスペーサーを標的化する少なくとも1種のスペーサーを含む。DOINベクターは、標的細菌集団に、例えば、腸内に送達される。一旦送達されると、送達ビヒクルの形質導入された核酸配列が発現され、薬物代謝に関与する活性成分を生じ、したがって調節手段を提供する。この成分の導入は、腸内の既存の細菌集団の能力を改変し、それによって、そのようなマイクロバイオーム細胞集団(例えば、細菌集団)の活性を操作する。標的化されたマイクロバイオーム-微生物、具体的には標的化された細菌において発現されると、上述のエレメントは活性及び機能的である。一部の実施形態では、マイクロバイオーム宿主(細菌宿主細胞)へのDOINベクターの導入後、次いで、選択成分が導入される。選択成分の導入は、標的細菌宿主の選択的死滅をもたらす。しかしながら、DOINベクターを保持する細胞は、DOINベクター上のCRISPRが選択ベクターを標的とし排除するため、選択ベクターの死滅から保護される。上記のDOINベクター保有細菌の能動的選択の最終結果は、DOINベクターを保持及び生成する細菌宿主細胞に有利に働く選択的圧力の創出である。
【0035】
したがって、本開示の第1の態様は、マイクロバイオームの微生物、例えば、細菌細胞及び/又は細菌細胞集団を改変することによって薬物代謝を調節するためのシステムに関する。本開示のシステムによって改変された標的細胞、例えば、細菌細胞又は細胞集団は、少なくとも1種の薬物の改変された代謝を示す。より具体的には、本開示のシステムは、少なくとも2つのエレメント又は成分を含む。
【0036】
開示されたシステムの1種の成分、エレメント又は部分(a)は、少なくとも1種の薬物代謝調節成分を含む。この成分は、少なくとも1種の薬物の代謝に関与する少なくとも1種のエレメントをコード及び/又は調節する少なくとも1種の核酸配列、少なくとも1種のcas遺伝子並びに少なくとも1種のクリスパー(Clustered, Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat、CRISPR)アレイを含む。本明細書で開示されるシステムの第2の成分、エレメント又は部分(b)は、少なくとも1種のプロトスペーサーを含む少なくとも1種の選択成分を含む。選択成分の少なくとも1種のプロトスペーサーが、調節性成分(a)のCRISPRアレイの少なくとも1種のスペーサーによって標的化され、それによって選択成分を不活性化することに留意されたい。
【0037】
開示されるシステムはまた、本明細書において、開示される少なくとも2つの成分を含むキットと称され得ることが理解されるべきである。
【0038】
本明細書で開示されるシステムは、薬物の代謝を調節するのに有効である。より具体的には、薬物の代謝は、開示されたシステムの薬物代謝調節性成分によって調節される。薬物代謝は、本明細書で使用される場合、通常は特殊な酵素システムを介した、生体による薬物の代謝分解を指す。より一般的には、異物代謝は、生体異物の化学構造を改変する一連の代謝経路であり、生体異物は、任意の薬物又は毒物など、生物の正常な生化学にとって外来の化合物である。これらの反応は、毒性化合物を解毒するように作用することが多いが、場合によっては、異物代謝中の中間体自体が毒性作用を引き起こす可能性がある。薬物代謝の研究は薬物動態と呼ばれる。医薬品の代謝は、薬理学及び医学の重要な態様である。例えば、代謝速度は、薬物の薬理作用の持続時間及び強度を決定する。代謝は典型的には薬物を不活性化するが、いくつかの薬物代謝産物は薬理学的に活性であり、時には親化合物よりも更に活性である。活性代謝産物を有する不活性又は弱活性物質は、特に活性部分をより効果的に送達するように設計されている場合、プロドラッグと呼ばれる。
【0039】
薬物は、酸化、還元、加水分解、水和、コンジュゲーション、縮合、又は異性化によって代謝され得る。プロセスがどのようなものであっても、目標は薬物を排出しやすくすることである。代謝に関与する酵素は多くの組織に存在するが、一般的には肝臓においてより濃縮されている。多くの薬物について、代謝は2相で起こる。第1相の反応は、新たな若しくは改変された官能基の形成又は切断(酸化、還元、加水分解)に関与する。これらの反応は非合成的である。第2相の反応は、内因性物質(例えば、グルクロン酸、硫酸、グリシン)とのコンジュゲーションに関与する。これらの反応は合成的である。合成反応において形成される代謝産物は、より極性であり、よって、非合成反応において形成される代謝産物よりも腎臓(尿中)及び肝臓(胆汁中)によってより容易に排出される。いくつかの薬物は、第1相の反応又は第2相の反応のみを受ける。したがって、相の番号は、順次分類ではなく機能的分類を反映する。第1相の代謝の最も重要な酵素系は、多くの薬物の酸化を触媒するイソ酵素のミクロソームスーパーファミリーであるシトクロムP-450(CYP450)である。電子は、NADPH(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸の還元形態)からCYP450に電子を移動させるフラボタンパク質であるNADPH CYP450レダクターゼによって供給される。CYP450酵素は、多くの薬物及び物質によって誘導又は阻害される可能性があり、1種の薬物が別の薬物の毒性を増強するか又は治療効果を減少させる薬物相互作用を生じる。特定の酵素と相互作用する薬物の例として。最も一般的な第2相の反応であるグルクロン酸抱合は、肝ミクロソーム酵素系で起こる唯一の反応である。グルクロニドは胆汁中に分泌され、尿中に排出される。したがって、コンジュゲーションは、ほとんどの薬物をより可溶性にし、腎臓によって容易に排出させる。グルタミン又はグリシンとのアミノ酸コンジュゲーションによって、尿中に容易に排泄されるが、胆汁中に広範に分泌されないコンジュゲートが生じる。
【0040】
なお更に、薬物代謝の一部の調節は、本明細書で使用される場合、薬物の活性、親和性、安定性、生物学的利用能、有効性、溶解性を増加させることによって薬物を活性化し得るか、又は薬物の活性、親和性、安定性、生物学的利用能、有効性、溶解性を低下させることによって薬物を非活性化し得る種々の代謝酵素の作用の増加又は低下のいずれかを指す。
【0041】
なお更に、開示されるシステム又はキットによる薬物の代謝の調節は、本明細書で使用される場合、薬物の活性、親和性、安定性、生物学的利用能、有効性、溶解性のうちの少なくとも1種の任意の変化、誘導、増加及び上昇、あるいは減少、低下及び減弱を包含するか、あるいは薬物の活性、親和性、安定性、生物学的利用能、有効性、溶解性を減少させることによって薬物を非活性化する。より具体的には、「調節」は、本明細書で使用される場合、薬物の機能及び/又は活性、安定性及び/又は構造、親和性、安定性、生物学的利用能、有効性、溶解性の摂動を意味する。ある特定の実施形態では、調節は、薬物代謝の増加又は減少に関与し、それによって、薬物の機能及び/又は活性、安定性及び/又は構造、親和性、安定性、生物学的利用能、有効性、溶解性の所望の調節をもたらし得る。より具体的には、本明細書で使用される場合、「増加させること」、「増加した」、「増加する」、「増強する」又は「活性化する」は全て、本明細書では、統計的に有意な量の増加を一般的に意味するために使用される。疑義を避けるために、「増加した」、「増加させる」、「増強する」又は「活性化する」という用語は、薬物の機能及び/又は活性、安定性及び/又は構造、親和性、安定性、生物学的利用能、有効性、溶解性の基準レベルと比較して少なくとも10%の増加を意味する。例えば、薬物の機能及び/又は活性、安定性及び/又は構造、親和性、安定性、生物学的利用能、有効性、溶解性の、参照レベルと比較した、少なくとも約20%、若しくは少なくとも約30%、若しくは少なくとも約40%、若しくは少なくとも約50%、若しくは少なくとも約60%、若しくは少なくとも約70%、若しくは少なくとも約80%、若しくは少なくとも約90%の増加、又は100%以下の増加又は10~100%の間の任意の増加、あるいは参照レベルと比較した、少なくとも約2倍、又は少なくとも約3倍、又は少なくとも約4倍、又は少なくとも約5倍、又は少なくとも約10倍の増加、又は2倍~10倍以上の間の任意の増加。あるいは、本明細書で使用される場合、「阻害」、「軽減」、「低減」、「減少」又は「減弱」、「防止」、「サプレス(suppression)」、「リプレス(repression)」、「排除」は全て、本明細書において、統計的に有意な量の減少を一般的に意味するために使用される。疑義を避けるために、「阻害」、「軽減」、「低減」、「減少」又は「減弱」、「防止」、「サプレス(suppression)」、「リプレス(repression)」、「排除」という用語は、薬物の機能及び/又は活性、安定性及び/又は構造、親和性、安定性、生物学的利用能、有効性、溶解性の基準レベルと比較して少なくとも10%の減少を意味する。例えば、薬物の機能及び/又は活性、安定性及び/又は構造、親和性、安定性、生物学的利用能、有効性、溶解性の、参照レベルと比較した、少なくとも約20%、若しくは少なくとも約30%、若しくは少なくとも約40%、若しくは少なくとも約50%、若しくは少なくとも約60%、若しくは少なくとも約70%、若しくは少なくとも約80%、若しくは少なくとも約90%の減少、又は100%以下の増加又は10~100%の間の任意の減少、あるいは参照レベルと比較した、少なくとも約2分の1、又は少なくとも約3分の1、又は少なくとも約4分の1、又は少なくとも約5分の1、又は少なくとも約10分の1の減少、又は2分の1~10分の1以下の間の任意の減少である。
【0042】
したがって、一部の実施形態では、本開示の薬物代謝成分は、薬物の機能及び/又は活性、安定性及び/又は構造、親和性、安定性、生物学的利用能、有効性、溶解性のうちの少なくとも1種を増加及び/又は減少させるように、薬物の代謝を調節する任意のエレメントから構成される。
【0043】
本明細書全体を通して、「薬物代謝調節成分」、「Drug metabOlism modulatINg(DOIN)」、「調節成分」、「調節成分」という用語は、本開示によって互換的に使用され、全てが、一部の実施形態では、少なくとも1種の薬物の代謝に関与する少なくとも1種のエレメント、少なくとも1種のcas遺伝子及び少なくとも1種のCRISPRアレイをコード及び/又は調節する核酸分子を含む成分を指すことが理解されるべきである。
【0044】
特に、本明細書で開示されるシステムの薬物代謝調節成分の核酸配列が、標的薬物の代謝に関与する少なくとも1種の標的エレメントを調節する場合、そのような核酸配列は、任意の調節性核酸配列であり得ることが理解されるべきである。核酸配列を調節するための例としては、siRNA、miRNA、dsRNA、アンチセンスオリゴ、ヌクレアーゼを動員するgRNA(例えば、Cas/CRISPRシステム)などが挙げられ得るが、これらに限定されず、これらは、標的薬物の代謝に関与する標的エレメントを直接的又は間接的に増強、低減又は改変し得る。あるいは、調節性成分とともに提供される少なくとも1種の核酸配列は、標的薬物の代謝に関与する標的エレメントを増強、抑制、活性化及び/又は不活性化する任意のエレメントをコードし得る。一部の実施形態では、調節成分のCRISPRシステムは、選択成分と調節成分との間の絶対的な連結を提供するためだけでなく、標的薬物の代謝に関与する標的エレメントを直接調節するため、例えば、標的エレメントを排除するため(ノックダウン、例えば、標的核酸配列を切断及び/若しくは破壊することによるか、又は転写リプレッサーなどの阻害エレメントを動員することによる)、又はこの成分を増強及び上昇させるため(例えば、CRISPRシステムが活性化因子、例えば転写活性化因子を動員する場合)にも更に使用される。したがって、そのような特定の非限定的な実施形態では、標的薬物の代謝に関与する少なくとも1種のエレメントをコード又は調節する少なくとも1種の核酸配列は、CRISPRアレイ(例えば、標的薬物の代謝に関与する標的エレメントを特異的に標的化するスペーサー)内に含まれる。
【0045】
なお更に、本明細書中に開示されるシステムの一部の実施形態では、調節成分は、細胞及び/又は標的細胞集団(例えば、細菌細胞集団)中の細胞、例えば、細菌細胞集団を特異的に標的化する少なくとも1種の送達ビヒクル内に含まれる。したがって、そのような送達ビヒクルは、所望の標的細胞に適合性である。送達ビヒクル又はベクター、具体的には、本開示の成分、具体的には本明細書で開示される調節性成分及び/又は選択成分を含むバクテリオファージベースの形質導入粒子は、標的細胞、例えば細菌細胞に適合性であることが理解されるべきである。したがって、本開示の文脈における「適合性」という用語は、特定の送達ビヒクルが、特定の標的細胞による認識を可能にする特定の適切な宿主認識エレメントを含み得ることを意味する。本明細書で使用される場合、「認識」はまた、標的細胞への送達ビヒクルの結合、付着、吸収、浸透を包含する。
【0046】
更に一部の更なる実施形態では、本開示のシステムの選択成分は、標的細胞及び/又は細胞集団中の標的細胞を特異的に標的化する少なくとも1種の送達ビヒクル内に含まれる。なお更に、一部の実施形態では、選択成分は、細胞の生存率及び/又は活性に影響を及ぼす少なくとも1種の薬剤を含んでもよい。
【0047】
「選択成分」は、本明細書で使用される場合、標的宿主細胞の特定の集団、例えば、標的細菌細胞、具体的には、本開示のcas-CRISPRシステムを保有する細胞の集団を可能にする、促進する、導く、及びそれに作用する、選択する、選別する、選出する、又は濃縮する、本発明のシステムのエレメント又は成分を指す。より具体的には、本発明の薬物代謝調節成分を保有する細菌細胞の集団は、選択成分中のプロトスペーサーに対して指向されるCRISPRアレイ中のスペーサーも含有する。したがって、選択成分は、例えば、選択された所望の集団(具体的な実施形態では、本発明の薬物代謝調節成分を保有する任意の集団又は細胞)の生存を可能にし、生存のみを可能にする条件を課すことによって、所望の集団に選択的利点を提供する。本明細書で示されるように、本開示の選択成分は、標的細胞(例えば、細菌細胞)の増殖、生存率及び/又は機能を死滅させる、阻害する、又は低減する毒性エレメントを含む。本明細書で言及される「阻害」、「軽減」、「低減」、「減少」又は「減弱」、「防止」、「サプレス(suppression)」、「リプレス(repression)」、「排除」という用語は、約1%~99.9%、具体的には、約1%~約5%、約5%~10%、約10%~15%、約15%~20%、約20%~25%、約25%~30%、約30%~35%、約35%~40%、約40%~45%、約45%~50%、約50%~55%、約55%~60%、約60%~65%、約65%~70%、約75%~80%、約80%~85%、約85%~90%、約90%~95%、約95%~99%、又は約99%~99.9%、100%以上のいずれか1種によるプロセス(例えば、増殖、生存率及び/又は機能)の遅延、リプレス又は低減に関することを理解されたい。上記に関して、提供される場合、例えば、10%、50%、120%、500%などのパーセンテージ値は、「倍数変化」値、すなわち、それぞれ0.1、0.5、1.2、5などと交換可能であることが理解されるべきである。
【0048】
更に、本発明のCRISPRアレイの少なくとも1種のスペーサーは、例えば、Casヌクレアーゼを使用してプロトスペーサーを含む標的核酸配列を切断することによって、選択成分を標的化し、不活性化するように、本発明の選択成分又はその任意のシステム内に目的の核酸配列として含まれる核酸配列(又はプロトスペーサー)に十分に相補的な配列をコードし得る。一部の実施形態では、「不活性化する」は、選択成分の活性を遅延させるか、減少させるか、阻害するか、排除するか、減弱させるか又は停止させることを意味する。そのような不活性化は、薬物代謝調節成分を含む細菌を、本発明の選択成分又はそのシステムに対して非感受性及び耐性にすることに留意すべきである。十分な相補性は、本明細書で使用される場合、約10%~100%の間の任意の相補性、より具体的には、約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%及び100%の相補性を反映することが理解されるべきである。ある特定の実施形態では、「相補性」は、それぞれが鍵と鍵穴の原理に従う2つの構造間の関係を指す。本質的に、相補性は、2つのDNA又はRNA配列間で共有される特性であるので、DNA複製及び転写の基本原理であり、それらが互いに逆平行に整列される場合、配列中の各位置のヌクレオチド塩基は相補的である(例えば、A及びT又はU、C及びG)。
【0049】
一部の実施形態では、調節成分及び選択成分のために使用される少なくとも1種の送達ビヒクルは、少なくとも1種の遺伝子エレメントであるか、又は少なくとも1種の遺伝子エレメントを含む。これらの少なくとも2つの成分に使用される送達ビヒクルは、同一であっても異なっていてもよいことが理解されるべきである。更に一部の更なる実施形態では、両方の送達ビヒクルは、調節性成分又は選択成分を同じ標的細胞に標的化し、形質導入しなければならない。一部の非限定的な実施形態では、そのような遺伝子エレメントは、少なくとも1種の形質導入粒子、少なくとも1種のバクテリオファージ、バクテリオファージベース、バクテリオファージ様形質導入粒子及び/若しくは少なくとも1種の改変バクテリオファージ、又はそれらの任意の断片若しくは部分、あるいは調節成分及び/若しくは選択成分のいずれかを含む及び/若しくはコードする少なくとも1種のベクター、プラスミド及び/若しくは構築物、並びにそれらの任意の組合せ又はカクテルのうちの少なくとも1種であり得る。
【0050】
更に一部の更なる実施形態では、システムの調節性成分及び/又は選択成分に使用される送達ビヒクルは、少なくとも1種のバクテリオファージ又は任意のバクテリオファージ様形質導入粒子である。
【0051】
「ビヒクル」又は「送達ビヒクル」は、本明細書で使用される場合、ベクター又は任意の形質導入粒子、例えば、バクテリオファージ、バクテリオファージ様粒子、プラスミド、ファージミド、ウイルス、組み込み可能なDNA断片、及び他のビヒクルを包含し、これらは、核酸分子の所望の標的細胞への移入を可能にし、一部の更なる実施形態では、標的細胞における形質導入された核酸分子の発現をもたらす。本明細書で使用される形質導入粒子又はエレメントは、核酸分子又は任意のカーゴを標的細胞又は人工細胞システムに形質導入及び挿入することが可能な任意のベクター又はビヒクルを指す。
【0052】
ベクターは、典型的には、所望の核酸配列、及び適切な細胞において認識され、所望の遺伝子の翻訳をもたらす作動可能に連結された遺伝子制御エレメントを含有する、自己複製DNA構築物又は自己複製RNA構築物である。一般に、遺伝子制御エレメントは原核生物プロモーターシステムを含み得る。そのようなシステムは、典型的には、転写プロモーター、RNA発現のレベルを上昇させるための転写エンハンサーを含む。ベクターは通常、ベクターが細胞とは独立して複製することを可能にする複製起点を含有する。
【0053】
したがって、制御エレメント及び調節エレメントという用語は、プロモーター、ターミネーター及び他の発現制御エレメントを含む。そのような調節エレメントは、Goeddel[Goeddel.,et al.,Gene Expression Technology:Methods in Enzymology 185,Academic Press,San Diego,Calif.(1990)]に記載されている。例えば、本発明の方法を使用して任意の所望のタンパク質をコードするDNA配列を発現させるために、DNA配列に作動可能に連結された場合にDNA配列の発現を制御する任意の広範な種々の発現制御配列が、これらのベクターにおいて使用され得る。
【0054】
ベクター又は送達ビヒクルは、適切な制限部位、抗生物質耐性、又はベクター含有細胞の選択のための他のマーカーを更に含み得る。プラスミドは、ベクターの最も一般的に使用される形態であるが、等価な機能を果たし、当技術分野で公知であるか又は公知になる他の形態のベクターが、本明細書での使用に適切である。例えば、Pouwels et al.,Cloning Vectors:Laboratory Manual(1985 and supplements),Elsevier,N.Y.、及びRodriquez,et al.(eds.)Vectors:a Survey of Molecular Cloning Vectors and their Uses,Buttersworth,Boston,Mass(1988)を参照されたい。送達ビヒクルのこの定義は、本開示に記載される任意のシステム、方法又は組成物に関連することが理解されるべきである。
【0055】
なお更に、一部の実施形態では、プラスミド又は他の構築物カセット又は他の遺伝子エレメントが送達ビヒクルとして使用される場合、それらは、調節成分、あるいは細胞の生存率及び/又は機能を阻害及び/又は低減する毒性成分をコードする核酸配列を含む。
【0056】
更に一部の更なる実施形態では、本開示の送達ビヒクルは、開示されるシステムの調節性成分及び/又は選択成分が主に標的細胞(例えば、マイクロバイオーム中の特定の細菌細胞型)に導入又は形質導入されるように、特定の標的細胞、例えば、特定の細菌細胞に特に適していてもよい。
【0057】
また更に、開示されるシステムの選択成分の一部の実施形態では、送達ビヒクルは、細菌細胞を死滅させるか、又は細菌増殖及び/若しくは機能を破壊する、減弱させる、及び/若しくは阻害する少なくとも1種の毒性エレメントを含む及び/又はコードする、少なくとも1種のバクテリオファージ又は任意のバクテリオファージ様若しくはバクテリオファージベースの形質導入粒子であってもよい。この毒性エレメントは、任意の遺伝子エレメント、例えば、プラスミド、構築物、トランスポゾン、バクテリオファージ、改変バクテリオファージ、ファージベースのものによって提供され、その中に含まれ、及び/又はそれによって形質導入され得る。一部の実施形態では、選択エレメントは、溶菌性ファージとして提供され得る。
【0058】
用語「バクテリオファージ」では、細菌などの原核生物内で感染し、複製し、集合するウイルスを意味する。用語「バクテリオファージ」が用語「ファージ」と同義であることに留意すべきである。ファージは、DNA又はRNAゲノムをカプセル化するタンパク質から構成され、これは、数個又は数百個の遺伝子のみをコードし、それによって、比較的単純又は精巧な構造を有するビリオンを産生し得る。ファージは、形態及び核酸のタイプ(DNA又はRNA、一本鎖又は二本鎖、線状又は環状)を考慮して、ウイルス分類に関する国際委員会(ICTV)に従って分類される。これまでに、細菌及び/又は古細菌(以前はアルケオバクテリアとして分類されていた原核生物ドメイン)に感染する約19のファージの科が認識されている。多くのバクテリオファージは、細胞の特定の属又は種又は株に特異的である。任意の適切なファージが、本開示の方法、システム及び組成物によって送達ビヒクルとして使用され得ることが理解されるべきである。
【0059】
一部の非限定的な実施形態では、本開示の主題のバクテリオファージは、Caudovirales目(例えば、Podoviridae科、Myoviridae科又はSiphoviridae科)又はLigamenvirales目(例えば、Lipothrixviridae科又はRudivirus科)に属する。他の科由来のファージ、例えば、ほんの数例を挙げると、Ampullaviridae、Bicaudaviridae、及びClavaviridaeも本開示によって包含される。
【0060】
他の実施形態では、本開示によるバクテリオファージは、バクテリオファージの科であるPodoviridae、Myoviridae又はSiphoviridae、Lipothrixviridae又はRudivirusのうちの1種である(しかしこれらに限定されない)。
【0061】
ある特定の具体的な実施形態では、本開示によるバクテリオファージは、T7様ウイルス又はT4様ウイルスのうちの少なくとも1種である。
【0062】
更なる具体的な実施形態では、本発明の方法、本明細書において後に記載される本開示のシステム及び組成物によって送達ビヒクルとして使用されるファージは、T7様ウイルス、具体的にはEnterobacteriaファージT7であり得る。バクテリオファージT7は、溶菌生活環を有するDNAウイルスである。
【0063】
より具体的には、本開示によるファージは、Escherichia coliファージT7(上記で詳述したように、Caudovirales(テイルドファージ)目のPodoviridae科のメンバー)であり得る。T7は、頂点の1つに20nmの短い尾部を有する二十面体カプシドから構成される。カプシドは、シェルタンパク質遺伝子産物(gp)10によって形成され、40kbのDNAを封入する。gp14、gp15、及びgp16から構成される円筒形構造がカプシドの内側に存在し、gp8(8、10)の環状十二量体であるコネクターによって形成される特別な頂点に付着している。タンパク質gp11及びgp12は尾部を形成し;gp13、gp6.7、及びgp7.3もまた、ビリオンの一部であり、感染に必要であることが示されているが、それらの位置は確立されていない。尾部の主要部分は、6コピーが存在する大きなタンパク質であるgp12から構成され、小gp11タンパク質も尾部に位置する。各々がgp17タンパク質の3つのコピーを含有する6本のファイバーが尾部に付着している。
【0064】
本開示の方法、システム及び組成物によって送達ビヒクルとして使用されるファージは、Podoviridae科の他の群のメンバー、例えば、限定されないが、T3ファージ、φ29、P22、P-SPP7、N4、ε15、K1E、K1-5及びP37を含んでもよい。
【0065】
一部の具体的な実施形態では、本開示の方法、システム及び組成物によって送達ビヒクルとして使用されるファージは、EnterobacteriaのファージT7、Enterobacteriaのファージ13a、YersiniaのファージYpsP-G、EnterobacteriaのファージT3、YersiniaのファージYpP-R、SalmonellaのファージphiSG-JL2、SalmonellaのファージVi06、Pseudomonasのファージgh-1、KlebsiellaのファージK11、EnterobacterのファージphiEap-1、EnterobacterのファージE-2、KlebsiellaのファージKP32、KlebsiellaのファージKP34、KlebsiellaのファージvB_KpnP_KpV289及びPseudomonasのファージphiKMVを含み得るが、これらに限定されない。
【0066】
別の例として、バクテリオファージは、proteobacteria門、Firmicutes門及びBacterioidetes門のいずれか1種を含むが、これらに限定されないバクテリアに感染することができるバクテリオファージを含むが、これらに限定されない。
【0067】
更なる例として、開示される成分のための送達ビヒクルとして、あるいは標的細胞(例えば、細菌細胞)に適した送達ビヒクルのための異種宿主認識エレメントの供給源として有用であり得るバクテリオファージとしては、以下の属に属する細菌に感染することが可能なバクテリオファージが挙げられるが、これらに限定されない:Escherichia coli、Pseudomonas、Streptococcus、Staphylococcus、Salmonella、Shigella Crostium、Enterococcus、Klebsiella、Acinetobacter及びEnterobacter。
【0068】
ほんの数例を挙げると、これらのバクテリオファージは、Staphylococcus aureusに特異的なバクテリオファージ、具体的には、vB_Sau.My D1、vB_Sau My 1140、vB_SauM 142、Sb-1、vB_SauM 232、vB_SauS 175、vB_SauM 50、vB_Sau 51/18、vB_Sau.M.1、vB_Sau.M.2、vB_Sau.S.3、vB_Sau.M.4、vB_Sau.S.5、vB_Sau.S.6、vB_Sau.M.7、vB_Sau.S.8、vB_Sau.S.9、vB_Sau.M.10、vB_Sau.M.11のうちの少なくとも1種を含み得るが、これらに限定されない。更に一部の更なる実施形態では、Klebsiella pneumoniaeに特異的なバクテリオファージもまた、本発明に適用可能であり得る。より具体的な実施形態では、これらのファージは、vB_Klp 1、vB_Klp 2、vB_Klp.M.1、vB_Klp.M.2、vB_Klp.P.3、vB_Klp.M.4、vB_Klp.M.5、vB_Klp.M.6、vB_Klp.7、vB_Klp.M.8、vB_Klp.M.9、vB_Klp.M.10、vB_Klp.P.11、vB_Klp.P.12、vB_Klp.13、vB_Klp.P.14、vB_Klp.15、vB_Klp.M.16を含み得る。なお更に、ある特定の実施形態では、Pseudomonas aeruginosaに特異的なバクテリオファージは、本発明の送達ビヒクルとして、あるいは適切な送達ビヒクルのための異種宿主認識エレメントの供給源として適用可能であり得る。そのようなバクテリオファージの非限定的な例としては、vB_Psa.Shis 1、vB_PsaM PAT5、vB_PsaP PAT14、vB_PsaM PAT13、vB_PsaM ST-1、vB_Psa ст 27、vB_Psa ст 44 K、vB_Psa ст 44 M、vB_Psa 16、vB_Psa Ps-1、vB_Psa 8-40、vB_Psa 35 K、vB_Psa 44、vB_Psa 1、vB_Psa 9、vB_Psa 6-131 M、vB_Psa ст 37、vB_Psa ст 45 S、vB_Psa ст 45 M、vB_Psa ст 16 MU、vB_Psa ст 41、vB_Psa ст 44 MU、vB_Psa ст 43、vB_Psa ст 11 K、vB_Psa 1638、vB_Psa Ps-2、vB_Psa 35 CT、vB_Psa 35 M、vB_Psa S.Ch.L、vB_Psa R1、vB_Psa SAN、vB_Psa L24、vB_Psa F8、vB_Psa BT-4、vB_Psa BT-2(8)、vB_Psa BT-1(10)、vB_Psa BT-4-16、vB_Psa BT-5、vB_Psa F-2、vB_Psa B-CF、vB_Psa Ph7/32、vB_Psa Ph7/63、vB_Psa Ph5/32、vB_Psa Ph8/16、vB_Psa Ph11/1、vB_Psa、vB_Psa 3、vB_Psa 4、vB_Psa 5、vB_Psa 6、vB_Psa 7、vB_Psa.P.15、vB_Psa.17、vB_Psa.M.18、vB_Psa.28、vB_Psa.M.2、vB_Psa.M 3、vB_Psa.23、vB_Psa.P.8、vB_Psa.M.PST7、vB_Psa.M.C5、vB_Psa.M D1038が挙げられるが、これらに限定されない。更なる実施形態では、Acinetobacter baumaniiに特異的なバクテリオファージが本発明に適用可能であり得る。そのような溶解性(lytuic)又は溶原性ファージは、vB_Aba B37、vB_Aba G865、vB_Aba G866、vB_Aba U7、vB_Aba U8、vB_Acb 1, vB_Acb 2のいずれか1種を含み得る。更に一部の更なる実施形態では、Enterobacterに特異的なバクテリオファージは、本発明の送達ビヒクルとして、あるいは、適切な送達ビヒクル、具体的には、vB_Eb 1、vB_Eb 2、vB_Eb 3、vB_Eb 4バクテリオファージのうちのいずれか1種のための異種宿主認識エレメントの供給源として適用可能であり得る。更に一部の更なる実施形態では、Enterococcus faecalisに特異的なバクテリオファージが使用され得る。いくつかの非限定的な例としては、vB_Ec 1、vB_Ec 2、vB_Enf.S.4、vB_Enf.S.5バクテリオファージのいずれか1種が挙げられる。
【0069】
更に一部の更なる実施形態では、Bacillus anthracisに特異的に感染するバクテリオファージ、例えば、vB_BaK1、vB_BaK2、vB_BaK6、vB_BaK7、vB_BaK9、vB_BaK10、vB_BaK11、vB_BaK12、vB_BaGa4、vB_BaGa5、vB_BaGa6もまた、本発明に適用可能であり得る。なお更に、Brucella abortusに特異的なバクテリオファージ、例えば、Tb、vB_BraP IV、vB_BraP V、vB_BraP VI、vB_BraP VII、vB_BraP VIII、vB_BraP IX、vB_BraP X、vB_BraP XII、vB_BraP 12(b)、vB_BraP BA、vB_BraP 544、vB_BraP 141я、vB_BraP 141m、vB_BraP 19я、vB_BraP 19m、vB_BraP 9、Brucella canisに特異的なバクテリオファージ、具体的には、vB_BrcP 1066、Clostridium perfigenes A.B.C.D.Eに特異的なバクテリオファージ、例えば、vB_CpPI、vB_CpII、vB_CpIII、vB_CpIV、Desulfovibrio vulgarisに特異的なバクテリオファージ、具体的には、vB_DvRCH1/M1、vB_DvH/P15、vB_DvH/M15、Enterococcus faecalisに特異的なもの、具体的には、vB_Ec 1、vB_Ec 2、vB_Enf.S.4、vB_Enf.S.5、Escherichia coliに特異的なバクテリオファージ、具体的には、vB_Eschc.pod 9、vB_Eschc.Pod 4、vB_Eschc.Shis 7、vB_Eschc.Shis 14、vB_Eschc.Shis 5、vB_Eschc.My 2、PhI-1、PhI-2、PhI3、PhI4、PhI5、T2、T4、T5、DDII、DDVI、DDVII、vB_Eschc.Shis 7/20、vB_Eschc.Shis 1161、vB_Eschc.Shis 8963、vB_Eschc 4、vB_Eschc 11/24、vB_Eschc.Shis 18、vB_Shis 3/14、vB_Sau A、vB_Shis G、vB_Eschc.Shis W、vB_Shis GE25、vB_Eschc.Shis 8962、vB_Eschc 90/25、vB_Eschc 5/25、vB_Eschc 12/25、vB_Eschc H、T3、T6、T7、vB_Eschc 4、vB_Eschc 121、vB_Eschc BaK2、vB_Eschc L7-2、vB_Eschc L7-3、vB_Eschc L7-7、vB_Eschc L7-8、vB_Eschc L7-9、vB_Eschc L7-10、vB_Eschc Ф8、vB_Eschc.Shis 20、vB_Eschc.Shis 25、vB_Eschc.Shis 27、vB_Eschc.Shis MY、vB_Eschc 11、vB_Eschc 12、vB_Eschc 13、vB_Eschc 17、vB_Eschc 18、vB_Eschc 19、vB_Eschc 20、vB_Eschc 21、vB_Eschc 22、vB_Eschc 23、vB_Eschc 24、vB_Eschc 25、vB_Eschc 26、vB_Eschc 27、vB_Eschc 28、vB_Eschc 29、vB_Eschc 30、vB_Eschc 31、vB_Eschc 32、vB_Eschc 34、vB_Eschc 35、vB_Eschc 37、vB_Eschc 38、vB_Eschc 39、vB_Eschc 44、vB_Eschc 45、vB_Eschc 46、vB_E.coli.M.1、vB_E.coli.M.2、vB_E.coli.P.3、vB_E.coli.P.4、vB_E.coli.P.5、vB_E.coli.P.6、vB_E.coli.P.7、vB_E.coli.P.8、Salmonella paratyphiに特異的なファージ、具体的には、vB_ SPB Diag 1、vB_ SPB Diag 2、vB_ SPB Diag 3、vB_ SPB Diag 3b、vB_ SPB Diag Jersey、vB_ SPB Diag Beecles、vB_ SPB Diag Taunton、vB_ SPB DiagB.A.O.R、vB_ SPB Diag Dundee、vB_ SPBDiagWorksop、vB_ SPB Diag E、vB_ SPB Diag D、vB_ SPB Diag F、vB_ SPB Diag H、Salmonella typhi abdominalisに特異的なvB_ Sta Diag A、vB_ Sta Diag B1、vB_ Sta Diag B2、vB_ Sta Diag C1、vB_ Sta Diag C2、vB_ Sta Diag C3、vB_ Sta Diag C4、vB_ Sta Diag C5、vB_ Sta Diag C6、vB_ Sta Diag C7、vB_ Sta Diag D1、vB_ Sta Diag D2、vB_ Sta Diag D4、vB_ Sta Diag D5、vB_ Sta Diag D6、vB_ Sta Diag D7、vB_ Sta Diag D8、vB_ Sta Diag E1、vB_ Sta Diag E2、vB_ Sta Diag E5、vB_ Sta Diag E10、vB_ Sta Diag F1、vB_ Sta Diag F2、vB_ Sta Diag F5、vB_ Sta Diag G、vB_ Sta Diag H、vB_ Sta Diag J1、vB_ Sta Diag J2、vB_ Sta Diag K、vB_ Sta Diag L1、vB_ Sta Diag L2、vB_ Sta Diag M1、vB_ Sta Diag M2、vB_ Sta Diag N、vB_ Sta Diag O、vB_ Sta Diag T、vB_ Sta Diag Vi1、vB_ Sta Diag27、vB_ Sta Diag 28、vB_ Sta Diag 38、vB_ Sta Diag 39、vB_ Sta Diag 40、vB_ Sta Diag 42、vB_ Sta Diag 46、Salmonella typhimurium、具体的には、vB_Stm.My 11、vB_Stm.My 28、vB_Stm.Shis 13、vB_Stm.My 760、vB_Stm.Shis 1、IRA、vB_Stm 16、vB_Stm 17、vB_Stm 18、vB_Stm 19、vB_Stm 20、vB_Stm 21、vB_Stm 29、vB_Stm 512、vB_Stm Diag I、vB_Stm Diag II、vB_Stm Diag III、vB_Stm Diag IV、vB_Stm Diag V、vB_Stm Diag VI、vB_Stm Diag VII、vB_Stm Diag VIII、vB_Stm Diag IX、vB_Stm Diag X、vB_Stm Diag XI、vB_Stm Diag XII、vB_Stm Diag XIII、vB_Stm Diag XIV、vB_Stm Diag XV、vB_Stm Diag XVI、vB_Stm Diag XVII、vB_Stm Diag XVIII、vB_Stm Diag XIX、vB_Stm Diag XX、vB_Stm Diag XXI、vB_Stm Diag 1、vB_Stm Diag 2、vB_Stm Diag 3、vB_Stm Diag 4、vB_Stm Diag 5、vB_Stm Diag 6、vB_Stm Diag 7、vB_Stm Diag 8、vB_Stm Diag 9、vB_Stm Diag 10、vB_Stm Diag 11、vB_Stm Diag 12、vB_Stm Diag 13、vB_Stm Diag 14、vB_Stm Diag 15、vB_Stm Diag 16、vB_Stm Diag 17、vB_Stm Diag 18、vB_Stm Diag 19、vB_Stm Diag 20、vB_Stm Diag 21、vB_Stm Diag 22、vB_Stm Diag 23、vB_Stm Diag 24、vB_Stm Diag 25、vB_Stm Diag 26、vB_Stm Diag 27、vB_Stm Diag 28、vB_Stm Diag 29、vB_Stm Diag 30、vB_Stm Diag 31、vB_Stm Diag 32、vB_Stm Diag 33、vB_Stm Diag 34、vB_Stm Diag 35、vB_Stm Diag 36、vB_Stm Diag 37、vB_Stm Diag 38、vB_Stm Diag 39、vB_Stm Diag 40、vB_Stm Diag 41、vB_Stm Diag 42、vB_Stm Diag 43、vB_Stm Diag 44、vB_Stm Diag 45、vB_Stm Diag 46、vB_Stm Diag 47、vB_Stm Diag 48、vB_Stm Diag 49、vB_Stm Diag 50、vB_Stm Diag 51、vB_Stm Diag 52、vB_Stm Diag 53、vB_Stm Diag 54、vB_Stm Diag 55、vB_Stm Diag 56、vB_Stm Diag 57、vB_Stm Diag 58、vB_Stm Diag 59、vB_Stm Diag 60、vB_Stm Diag 61、vB_Stm Diag 62、vB_Stm Diag 63、vB_Stm Diag 64、vB_Stm Diag 65、vB_Stm.P.1、vB_Stm.P.2、vB_Stm.P.3、vB_Stm.P.4、Shigella sonnei、具体的には、vB_Shs.Pod 3、vB_Eschc.Shis 7/20、vB_Eschc.Shis 1161、vB_Eschc.Shis 8963、vB_Eschc.Shis 8962、vB_Shis GE25、vB_Eschc.Shis W、vB_Shis G、vB_Shis 3/14、vB_Eschc.Shis 18、vB_Shis 1188、vB_Shis 1188 Г、vB_Shis 1188 Y、vB_Shis 1188 X、vB_Shis 5514、vB_Shis L7-2、vB_Shis L7-4、vB_Shis L7-5、vB_Shis L7-11、vB_Shis K3、vB_Shis TuI A、vB_Shis Ox2、vB_Shis SCL、vB_Shis Bak C2、vB_Shis 4/1188、vB_Shis 8962、vB_Shis 8963、vB_Shis XIV、vB_Shis 116、vB_Shis 106/8、vB_Shis 20、vB_Shis 90/25、vB_Shis 87/25、vB_Shis 16/25、vB_Shs 7、vB_Shs 38、vB_Shs 92、vB_Shs 1391、vB_Shs.P.1、vB_Shs.P.2、vB_Shs.P.3.
【0070】
一部の実施形態では、本発明は、本開示の成分、具体的には調節成分及び/又は選択成分への送達ビヒクルとしての、本明細書で列挙され、本明細書で開示されるバクテリオファージのいずれか、並びにその任意のバリアント又はハイブリッドの使用を包含することが理解されるべきである。
【0071】
一部の実施形態では、バクテリオファージ又はバクテリオファージ様形質導入粒子は、T7様ウイルスのもの、T7様ウイルス、又は任意のファージ様粒子若しくはその形質導入粒子である。一部の実施形態では、バクテリオファージ又はバクテリオファージ様形質導入粒子は、T4様ウイルスのもの、T4様ウイルス、又は任意のファージ様粒子若しくはその形質導入粒子である。更に一部の更なる実施形態では、送達ビヒクルとして使用されるバクテリオファージは、Escherichiaウイルスラムダであり得る。しかしながら、一部の実施形態では、少なくとも1種のバクテリオファージの、及び任意選択的に、2つ以上の異なるバクテリオファージの、天然配列又は改変配列又は変異配列のいずれかの配列の少なくとも一部から構成される、任意のバクテリオファージ、バクテリオファージ粒子、又は任意のハイブリッドバクテリオファージ若しくはバクテリオファージベースの物品が、本発明のシステムの少なくとも1種の薬物代謝調節成分及び/又は本発明のシステムの少なくとも1種の選択成分のための適切な送達ビヒクルとして本明細書で使用され得ることに留意されたい。
【0072】
なお更に、任意の送達ビヒクル、具体的には、ファージベースの送達ビヒクル及びその任意のバリアントが使用され得ることが理解されるべきである。より具体的には、本明細書における「送達ビヒクルバリアント」は、それらの核酸配列の内容によって、及び/又はそれらのタンパク質のアミノ酸配列によって互いに異なり得る。送達ビヒクルバリアントは、少なくとも1種の宿主認識エレメントを含み得、この宿主認識エレメントは、同種若しくは異種、ハイブリッド、天然、変異型又はこれらの任意の組合せであり得る。具体的には、これらのバリアントは、目的の標的細胞と適合性である所望の宿主認識エレメントを保有し得る。
【0073】
本明細書で示されるように、本開示のシステムの本明細書で開示される調節性成分及び/又は選択成分を形質導入するために適用可能な送達ビヒクルは、標的細胞、例えば、特定のマイクロバイオーム微生物、より具体的には、腸内マイクロバイオーム細菌細胞と適合性である。したがって、ファージベースの送達ビヒクルが使用される場合、任意の天然、バリアント、ハイブリッド、変異型又は改変バクテリオファージが使用され得ることが理解されるべきである。そのようなバクテリオファージは、宿主細胞と適合性である改変された、ハイブリッドの、又は天然の宿主認識エレメントを保有し得る。一部の実施形態では、宿主認識エレメントは、宿主受容体と相互作用する少なくとも1種のタンパク質、少なくとも2つのタンパク質、少なくとも3つのタンパク質又はそれより多く、具体的には構造バクテリオファージタンパク質(天然又は改変のいずれか)を含んでもよい。一部の具体的な実施形態では、そのような構造バクテリオファージタンパク質は、バクテリオファージのテール領域に存在するタンパク質であり得る。当技術分野で知られているように、バクテリオファージにおいて、尾部は、ファージの大部分に存在するタンパク質複合体であり、宿主認識及びゲノム送達に関与する。2つの主要な特徴がテール構造によって共有される:テールは、DNA排出のためのチャネルを形成する中心管状構造を有し、これは、宿主認識の最初の工程において必須であるファイバー又はスパイクによって取り囲まれる。例えば、T7ファージの尾部は、gp11(アダプター)のドデカマー(すなわち、12コピー)及びgp12(ノズル)のヘキサマー(すなわち、6コピー)から組み立てられ、その上にgp17の6つのトリマーが結合する。T7の6つの尾部ファイバーは、アダプターとノズルとの間の界面に付着し、したがって、両方のタンパク質と接触する。アダプターリングは、gp8の12個のサブユニットから構成されるポータルとの相互作用を介して、予め形成されたテールのプロヘッドへの付着を担う。バクテリオファージのテールエンドに局在するバクテリオファージ成分は、「テールタンパク質」又は「テールチューブタンパク質」(例えば、gp11及びgp12を指す)及びテールファイバー(例えば、gp17を指す)として分類され得る。上記のように、バクテリオファージベースの送達ビヒクルの宿主認識エレメントは、本開示によって開示されるバクテリオファージのいずれかに由来するこれらのタンパク質のうちの少なくとも1種を含み得る。
【0074】
したがって、バクテリオファージのテールエンドに局在するバクテリオファージ成分は、テールタンパク質(例えば、gp11及びgp12を指す)及びテールファイバー(例えば、gp17を指す)として分類され得る。具体的な実施形態では、本開示で使用されるファージベースの送達ビヒクルの宿主認識エレメントは、少なくとも1種のテールファイバー又は少なくとも1種のテールタンパク質を含み得る。
【0075】
一部の実施形態では、そのようなバクテリオファージのテール領域に存在する少なくとも1種のタンパク質は、テールタンパク及びファイバータンパクの少なくとも1種であってもよい。
【0076】
具体的な実施形態では、本明細書に記載の宿主認識エレメントは、gp11、gp12及びgp17の少なくとも1種、又はそれらの任意の組合せを含み得る。一部の具体的な非限定的な実施形態では、これらのタンパク質は、T7 gp17、gp11若しくはgp12、本明細書に記載されるそれらの任意の変異体、又は以下に説明される任意の天然の若しくは変異型異種バリアント、又はそれらの任意の組合せであり得るが、これらに限定されない。
【0077】
本明細書で定義される標的細胞に感染する任意の天然に存在するバクテリオファージのテール領域に存在する任意のタンパク質、具体的には、所望の標的細胞と適合性の任意の宿主認識エレメント、及びそれらの任意の組合せが、本開示によって包含される。
【0078】
本開示の調節成分又は選択成分を含むか、又はそれらとして使用される送達ビヒクルは、改変バクテリオファージであってもよく、本明細書において「改変粒子」、「形質導入粒子」、「プログラムされた形質導入粒子」、「形質導入ビヒクル」、「本発明のビヒクル」、「バクテリオファージ又はファージ粒子」、「送達ビヒクル」などとも称され得ることが理解されるべきである。
【0079】
バクテリオファージベースの形質導入粒子(例えば、バクテリオファージ、又はハイブリッドファージ若しくは改変ファージ)である一部の実施形態では、そのような成分は、少なくとも1種のパッケージングシグナル及び送達ビヒクル中でのパッケージングを容易にする任意の他の適切なエレメントを更に含み得ることが理解されるべきである。上記のように、本発明によって提供される核酸配列はパッケージングシグナルを含む。本明細書で定義される「パッケージングシグナル」という用語は、感染サイクル中に予め形成されたカプシド(エンベロープ)へのウイルス又はバクテリオファージゲノムのパッケージングを指示する、例えばウイルス又はバクテリオファージゲノム中のヌクレオチド配列を指す。
【0080】
一部の実施形態では、本開示のシステムは、マイクロバイオーム細胞集団内のマイクロバイオーム生物を標的化する。例えば、マイクロバイオーム内に存在する細菌細胞である。
【0081】
一部の実施形態では、開示されたシステムによって標的化される細胞は、細菌細胞及び/又は細胞集団であり得る。標的細菌細胞は、一部の実施形態によれば、本開示のシステムによって改変及び標的化され、腸内マイクロバイオーム細胞集団であるか、又は腸内マイクロバイオーム細胞集団内に含まれる。細胞集団は、Proteobacteria門、Firmicutes門、Bacteroidetes門、Actinobacteria門、その分離株の任意の変異体若しくはバリアント、又はそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1種である、少なくとも1種の細菌を含むことに更に留意されたい。
【0082】
一部の具体的かつ非限定的な実施形態では、本明細書で開示されるシステムによって改変される標的細菌又は細菌集団は、Gammaproteobacteria綱の任意の細菌である。更に一部の更なる実施形態では、本明細書で開示されるシステムによって改変される標的細菌又は細菌集団は、Enterobacterales目の任意の細菌である。更に一部の更なる実施形態では、本明細書で開示されるシステムによって改変される標的細菌又は細菌集団は、Enterobacteriaceae科の任意の細菌である。
【0083】
Enterobacteriaceaeは、30を超える属及び100を超える種を含むグラム陰性細菌の大きな科であることに留意すべきである。Enterobacteriaceaeは、多くの無害な共生生物とともに、Salmonella、Escherichia coli、Klebsiella、及びShigellaなどの多くのよりよく知られた病原体を含む。
【0084】
本開示による原核細胞は、細菌細胞を包含する。この文脈における「細菌(bacteria)」(単数形では「細菌(bacterium)」)という用語は、任意のタイプの単細胞微生物を指す。本明細書において、「細菌」及び「微生物」という用語は交換可能である。この用語は、本明細書において、それらの基本的な形状に従って一般的なクラスに属する細菌、すなわち、球状(球菌)、棒状(桿菌)、らせん状(スピリラ)、コンマ状(ビブリオ)又はらせん状(スピロヘータ)、並びに単一細胞として、対、鎖又はクラスターで存在する細菌を包含する。
【0085】
「細菌」という用語は、本明細書で使用される場合、単一細胞として、又は単一細胞のクラスター若しくは凝集体として存在する原核微生物のいずれかを指すことに留意されたい。より具体的な実施形態では、「細菌」という用語は、具体的には、グラム陽性、グラム陰性又は抗酸性生物を指す。グラム陽性細菌は、細菌分化のグラム染色法で使用されるクリスタルバイオレット染色を保持していると認識することができ、したがって、顕微鏡下で紫色に見える。グラム陰性細菌はクリスタルバイオレットを保持せず、陽性特定を可能にする。言い換えれば、「細菌」という用語は、本明細書において、細胞膜の外側の細胞壁中により厚いペプチドグリカン層を有する細菌(グラム陽性)、及び内部細胞質細胞膜と細菌外膜との間に挟まれた細胞壁の薄いペプチドグリカン層を有する細菌(グラム陰性)に適用される。この用語は、厚いペプチドグリカン層の存在に起因してグラム陽性を染色するが、外側細胞膜も有し、したがって、モノダーム(グラム陽性)細菌とダイダーム(グラム陰性)細菌との間の遷移における中間体として示唆される、Deinococcusなどのいくつかの細菌に更に適用される。Mycobacteriumのような抗酸性生物は、その細胞壁内に、グラム染色などの従来の方法による染色に抵抗するミコール酸と呼ばれる多量の脂質物質を含有する。本開示は、「細胞」任意の微生物、具体的には、マイクロバイオーム又は対象に存在する単細胞微生物を更に包含することを更に理解されたい。したがって、この用語は、大部分が嫌気性グラム陽性及びグラム陰性株、並びに真菌、原生動物、及び古細菌の任意の株を指す。本開示の調節成分及び/又は選択成分は、マイクロバイオーム中の生物のいずれか、具体的には腸内マイクロバイオームの薬物代謝を調節するのに適用可能であることを理解されたい。
【0086】
しかし、「細胞」に言及する場合、本発明は、本発明によって例示及び開示される任意の原核細胞に加えて、一部の具体的な実施形態では、細胞、人工細胞、小胞などを模造又は模倣する他のシステムを更に包含することが理解されるべきである。
【0087】
一部の具体的な実施形態では、本発明の方法は、必要とする対象のマイクロバイオームを操作、編集及び変更するために使用され得る。より具体的には、本明細書で特定されるように、薬物の代謝が調節されるようなマイクロバイオームの調節。
【0088】
「マイクロバイオーム」という用語は、本明細書で使用される場合、試料中の片利共生、共生、又は病原性微生物の生態学的群集を指す。本開示とともに使用することができるマイクロバイオームの例としては、以下に限定されないが、腸内マイクロバイオーム及び口腔マイクロバイオーム、胃腸管マイクロバイオーム、皮膚マイクロバイオーム、臍帯マイクロバイオーム、膣マイクロバイオーム、結膜マイクロバイオーム、腸マイクロバイオーム、胃マイクロバイオーム、鼻マイクロバイオーム及び尿生殖路マイクロバイオームが挙げられる。
【0089】
一部の実施形態では、本開示のシステム、組成物、キット及び方法は、対象、例えば、哺乳動物対象、具体的には、ヒト対象における腸内マイクロバイオームの操作に適用可能であり得る。「腸内マイクロバイオーム」(口語では「腸内フローラ」)という用語は、動物(この場合は哺乳動物)の消化管に生息する微生物種の複雑な群集を包含する。これに関連して、胃腸(gut)は腸(intestinal)と同義であり、フローラは微生物叢及びミクロフローラと同義である。腸内マイクロバイオームは、腸内微生物叢のゲノムを指す。哺乳動物宿主は、腸内フローラなしで生存する可能性が最も高いが、この2つの間の関係は、単に片利共生(無害な共存)ではなく、むしろ相利共生である。哺乳動物の腸内ミクロフローラは、利用されていないエネルギー基質の消化、細胞増殖の刺激、有害微生物増殖の抑制、病原体のみに応答するように免疫システムを訓練すること、及びいくつかの疾患に対する防御を含む、様々な有用な機能を果たす。しかし、ある特定の状態において、いくつかの種は、感染を生じるか又はがんの危険性を増加させることによって疾患を引き起こし得る。したがって、腸内マイクロバイオームの特定の亜集団を標的化することによって、本発明は、腸内マイクロバイオームの一部である特定の微生物によって引き起こされる状態を調節するための治療用のテーラーメイドツールを提供する。一部の実施形態では、そのような状態は、具体的には、腸内マイクロバイオームの微生物による薬物の代謝に関連する状態である。
【0090】
哺乳動物の腸内マイクロバイオームの組成は、主として細菌、大部分が嫌気性のグラム陽性菌株及びグラム陰性菌株からなり、さらに真菌、原虫(単細胞顕微鏡動物を含む門又は門の群であり、アメーバ、鞭毛虫、線毛虫、胞子虫、及び多くの他の形態を含み、Protista界に属する)、及び古細菌(細胞核を欠く単細胞生物のドメインを構成し、したがって、原核生物である)のいずれか1種を含み得る。古細菌は、最初は細菌として分類され、(Archaebacteria界)の古細菌(archaebacteria)と命名された。古細菌細胞は、他の2つのドメインである真正細菌および真核生物から分離される独特の特性を有する。古細菌は、複数の認識された門に更に分けられる。本開示の調節成分及び/又は選択成分は、マイクロバイオーム中の生物のいずれか、具体的には腸内マイクロバイオームの薬物代謝を調節するのに適用可能であることを理解されたい。したがって、一部の実施形態では、本開示のシステム、組成物、キット、及び方法は、所与の薬物の代謝に影響を及ぼし、調節するように、マイクロバイオームの任意の微生物、例えば、腸内マイクロバイオームの任意の微生物を標的化する。具体的には、本開示によって開示される薬物のいずれかである。本明細書において適用可能な非限定的な薬物は、表1によって開示される薬物のいずれかである。細菌種の集団は、異なる個体間で広く変動するが、経時的に個体内で比較的一定であり、しかしながら、いくつかの変化は、生活様式、食事及び年齢の変化とともに起こり得る。腸内マイクロバイオームの組成における共通の進化パターンが、ヒト個体の生涯の間に観察されている。腸内マイクロバイオームの組成及び内容は、長期の食事の後に変化する可能性があり、地理的起源にも依存する。
【0091】
より具体的には、ヒトマイクロバイオーム又は微生物叢の組成又は内容に言及する場合、細菌の主たる4つの門、すなわちFirmicutes、Bacteroidetes、Actinobacteria及びProteobacteriaに関する組成、あるいは主たる細菌属、すなわちBacteroides、Clostridium、Fusobacterium、Eubacterium、Ruminococcus、Peptococcus、Peptostreptococcus及びBifidobacteriumに関する組成を意味する。特に、最も多いBacteroidesは、宿主の機能にとって重要であり得る。Escherichia及びLactobacillusなどの他の属は、より少ない程度で存在するが、宿主の機能に寄与することが示された。
【0092】
更に、ヒト腸内マイクロバイオームに特に関連するのは、年齢、性別、体重、又は国別に依存しない細菌学的生態システムに基づく腸型分類である。3つのヒト腸型が存在する:1型は、高レベルのBacteroides(グラム陰性)を特徴とし、2型はBacteroidesをほとんど有さないが、Prevotella(グラム陰性)が一般的であり、3型は高レベルのRuminococcus(グラム陽性)を有する。しかしながら、腸型は、長期の食事によって影響を受ける可能性があり、例えば、高タンパク質及び高脂肪食を有する人々は、主に腸型1型であり、それらの食事パターンを高炭水化物食に変更すると、長期的には腸型2型になる。
【0093】
したがって、本開示の方法、並びにシステム、組成物、及びキットは、哺乳動物腸内マイクロバイオームを構成する細菌種の全範囲(その定性的態様及び定量的態様を含む)に関する。それらは更に、真菌などのあまり遍在しないマイクロバイオーム成分に関し、既知の属にはCandida、Saccharomyces、Aspergillus及びPenicillium、並びに古細菌のドメインに属する微生物(古細菌も)、更には培養できない未分類の種が含まれる。
【0094】
しかしながら、一部の実施形態ではヒト対象に特に適用可能であるが、本発明は、獣医学によって網羅される動物の健康、特に哺乳動物の健康状態にも関し、したがって、任意のマイクロバイオーム集団、具体的には腸内マイクロバイオーム生物を調節して、本開示によって開示される任意の関連対象に投与される薬物の代謝を調節する手段を提供することが理解されるべきである。
【0095】
また更に、一部の実施形態では、本発明のシステムは、少なくとも1種の薬物代謝調節成分を調節する細菌細胞及び/又は細菌細胞集団の標的化改変によって薬物代謝を調節するために設計される。薬物の活性、生物学的利用能、クリアランス、安定性、毒性、及び吸収のうちの少なくとも1種に影響を及ぼす成分。
【0096】
一部の実施形態では、本明細書で開示されるシステムは、薬物代謝に直接的又は間接的に影響を及ぼす成分を調節するように特に設計される。本明細書で上に示したように、少なくとも1種の成分の修飾は、薬物の活性、生物学的利用能、クリアランス、安定性、毒性、及び吸収のうちの少なくとも1種に影響を及ぼし得る。
【0097】
一部の特定の非限定的な実施形態では、調節は、代謝を抑制するか、あるいは代謝を増強し、それによって標的酵素による薬物の活性化又は不活性化を行い得るモジュレーター(例えば、リプレッサー又はエンハンサー)の提供であり得る。
【0098】
一部の実施形態では、そのような酵素は、細菌エネルギー代謝に関与する少なくとも1種の酵素である。更に一部の更なる実施形態では、酵素は、具体的には、炭水化物代謝に関与する酵素であり得る。
【0099】
更に一部の更なる実施形態では、少なくとも1種の薬物の代謝に関与するエレメントは、少なくとも1種のグルクロニド酵素である。したがって、これらの実施形態によれば、本明細書で提供されるシステムの薬物代謝調節成分は、少なくとも1種の薬物の代謝に関与する少なくとも1種のエレメントを標的とし、調節する。本発明の調節成分によって調節されるそのようなエレメントは、少なくとも1種のグルクロニド酵素であり得る。
【0100】
グルクロニド酵素は、グルクロン酸抱合と呼ばれるプロセスにおいて、アグリコンのヒドロキシル、カルボキシレート、及び他の求核性官能基にグルクロン酸を付加する哺乳動物ウリジン二リン酸-グルクロノシルトランスフェラーゼ(UGT)酵素によって産生される。グリコシルヒドロラーゼは、炭水化物又はその誘導体中のグリコシド結合を加水分解する酵素の広範な群である。β-グルクロニダーゼは、種々の化合物からβ-グルクロン酸残基を加水分解するグリコシルヒドロラーゼである。
【0101】
より具体的な実施形態では、本明細書で開示されるシステムの薬物代謝調節成分は、少なくとも1種のβ-グルクロニダーゼ(GUS)酵素であり得る少なくとも1種のグルクロニド酵素を標的とし、したがって調節し得る。
【0102】
GI微生物叢によって発現されるβ-グルクロニダーゼ(GUS)酵素は、グルクロン酸とグルクロニドとの間のグリコシド結合の加水分解を触媒する。次いで、グルクロン酸は、糖分解に代わる細菌経路であるEntner-Doudoroff経路に入り、糖酸を異化し、得られたピルビン酸塩をTCA回路に分流する。グルクロニド加水分解の副産物として、細菌は、宿主によって排除された元の分子を再生し、腸上皮による再取り込み及び血流中の再循環を容易にする。
【0103】
現在、植物及び他の生物においてレポーター遺伝子として広く使用されているβ-グルクロニダーゼをコードする遺伝子gusA(以前は、uidA)は、最初はEscherichia coliから単離された。E.coliでは、gusAはGUSオペロンの一部を形成する。gusAの下流に2つの遺伝子が存在し、そのうちの1種であるgusbは、グルクロニド特異的パーミアーゼをコードし、第3の遺伝子gusCは、非特異的外膜チャネルとして機能する。gusAの上流にあり、別々に転写されるのは、gusオペロンの特異的リプレッサーをコードする遺伝子gusRである。E.coliのGUSは603アミノ酸残基長であり、同じ基質特異性を有するヒトGUSと約50%の配列同一性を共有する。
【0104】
なお更に、一部の実施形態では、本明細書で使用されるGusAは、配列番号14によって示される核酸配列によってコードされる。更に一部の更なる実施形態では、GusAタンパク質は、配列番号15によって示されるアミノ酸配列を含む。なお更に、一部の実施形態では、本明細書で使用されるGusBは、配列番号16によって示される核酸配列によってコードされる。更に一部の更なる実施形態では、GusAタンパク質は、配列番号17によって示されるアミノ酸配列を含む。なお更に、一部の実施形態では、本明細書で使用されるGusBは、配列番号18によって示される核酸配列によってコードされる。更に一部の更なる実施形態では、GusCタンパク質は、配列番号19によって示されるアミノ酸配列を含む。Gusオペロンの非コード調節領域(GusRオペレーター)を配列番号20で示す。
【0105】
E.coliのβ-グルクロニダーゼ構造の非対称単位は、597個の規則正しい残基の2つの単量体を含有し、結晶学的対称性は、機能的に関連する酵素四量体を生成する。N末端の180残基はファミリー2グリコシルヒドロラーゼの糖結合ドメインに類似しているが、C末端ドメイン(残基274~603)はαβバレルを形成し、活性部位残基Glu413及びGlu504を含有する。N末端ドメインとC末端ドメインの間の領域は、他のファミリーのグリコシルヒドロラーゼと一致する免疫グロブリン様βサンドイッチドメインを示す。
【0106】
なお更に、そのような実施形態では、本明細書で提供されるシステムの適切な調節成分は、少なくとも1種のβGUS酵素の発現及び/又は活性及び/又は安定性を阻害及び/又は低減する少なくとも1種のエレメントをコードする核酸配列を含み得る。
【0107】
開示されたシステムの一部の実施形態では、調節成分の核酸配列によってコードされるエレメントは、少なくとも1種のβGUS酵素の転写を抑制する。更に一部の更なる実施形態では、エレメントは、Gusリプレッサー(GusR)、並びにその任意のバリアント及び変異体である。
【0108】
更に一部の具体的な実施形態では、本明細書で使用されるGusRは細菌GusRである。
【0109】
E.coli及びS.enterica(Enterobacteriaceae科科のメンバー)の最近決定されたGusRタンパク質の結晶構造は、TetR様リガンド調節転写リプレッサーを定義する。これはα-ヘリックスホモ二量体であり、各単量体は、DNA(α1~α3-)及びリガンド結合ドメイン(α4~α10-54~193)から構成されている(E.coliにおけるそれぞれ残基11~193及び54~193、配列番号3によって示されるGusR配列における残基を参照されたい)。
【0110】
E.coliのGusR DNA結合ドメイン(DBD)は、2つのオペレーターエレメントである部位1及び部位2に結合するヘリックス-ターン-ヘリックス(HTH)DNA結合モチーフを示す。部位1は30塩基対(bp)の長さであり、GUSオペロンのリボソーム結合部位(rbs)から200bp上流に位置するが、部位2(40bp)は同じrbsからわずか50bpである。DBDへのGusR結合は、DBDのHTHモチーフに保存されたTetRファミリー残基(Y49)及び特定のアミノ酸配列(SCAI)に依存する。
【0111】
E.coliのタンパク質とS.entericaのタンパク質の両方の構造におけるGusRリガンド結合ドメインは、αヘリックス(4~10)から構成される。リガンドポケットドメインは、結合したリガンドのGlcA部分を認識する際に保存残基との水素結合を使用する。GusRは、特定のリガンドに対して種間優先性を示すようである。特定のリガンドに対する親和性は、GusRエフェクター結合ポケット内の単一残基の変化によって調整され得る。
【0112】
GusRの活性部位に隣接するループ1(L1)及びループ2(L2)は、長さ及びアミノ酸組成において顕著な変動性を示し、これらの領域は、GusRタンパク質を分類するために用いられ、各カテゴリーは、機能的及び細胞に特化したGusRを含有する。重要なことに、Enterobacteriaceaeは、L1 GUS酵素のみをコードする。
【0113】
更に一部の更なる実施形態では、本明細書で開示されるGusRは、EnterobacteriaceaeのGusRである。より具体的な実施形態では、本明細書で言及されるGusRは、株BW25113(DSMZ#27469)のE.coliのGusRである。
【0114】
一部の実施形態では、本明細書において使用されるGusRは、配列番号2によって示される核酸配列、又はその任意のバリアント若しくはホモログを含む核酸配列によってコードされる。なお更に、一部の実施形態では、GusRは、配列番号3によって示されるアミノ酸配列、又はその任意のバリアント若しくは誘導体を含み得る。
【0115】
開示されたシステムのなお一部の更なる実施形態では、開示されたシステムの調節成分において使用されるGusRは、少なくとも1種のGUSリガンド及び/又は基質に対して低下したか又は消失した親和性を示す。より具体的には、Gusの任意の基質に対する親和性の低下又は消失を示し、それによってGusの抑制の増強を示し、それによってGusによる薬物代謝を調節するGusR変異体又はバリアントは、野生型GusRと比較して、約1%、2%、3%、4%、5%~約100%、具体的には約5%~約10%、約10%~約15%、約15%~約20%、約20%~約25%、約25%~約30%、約35%~約40%、約40%~約45%、約45%~約50%、約50%~約55%、約55%~約60%、約65%~約70%、約75%~約80%、約80%~約85%、約85%~約90%、約90%~約95%、約95%~約99.9%の親和性の低下、より具体的には約98%~約100%の親和性の低下を示すGusRバリアントに関連し得る。より具体的には、野生型GusRと比較して、約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、99.99%、99.999%、99.9999%又は約100%低下した親和性を示す酵素。
【0116】
なお更に、一部の実施形態では、開示されるシステムの調節成分において使用されるGusRは、GusRのリガンド結合ポケットを形成する残基において少なくとも1種の置換及び/又は他の改変を含む。そのようなバリアントは、少なくとも1種のGUSリガンド及び/又は基質に対して低下したか又は消失した親和性を示すとして特徴付けられる。更に一部の更なる実施形態では、リガンド結合に直接的又は間接的のいずれかで形成及び/又は関与する任意の残基、例えば、GusRのリガンド結合ポケットは、少なくとも1種のGUSリガンド及び/又は基質(これは、本開示のシステムの調節性成分によって使用され得る)に対する低下したか又は消失した親和性を示すGusRを得るために操作され得る。なお更に、特にE.coliでは、結合したグルクロニドの糖部分は、合計5つのGusR残基(H126、K125、R69、E97及びR73)と6回接触する。E.coliのGusRにおける更なる保存残基としては、Y164、L160、T163及びM87が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、一部の特定の実施形態では、少なくとも1種のGUSリガンド及び/又は基質に対する低下したか又は消失した親和性を示すGusRバリアント及び/又は変異体は、配列番号3によって示されるGusRアミノ酸配列の残基H126、K125、R69、E97及びR73、Y164、L160、T163及びM87のうちの少なくとも1種の少なくとも1種の置換及び/又は置き換えを有する任意のGusRバリアント、又はその任意の誘導体及びバリアント、又はその任意の組合せであり得る。
【0117】
開示されるシステムの一部の特定の実施形態では、調節性成分内に含まれ、調節性成分によって提供されるGusRは、以下の残基のうちの少なくとも1種において、少なくとも1種の変異及び/又は置換を有する。一部の実施形態では、配列番号3によって示される野生型GusR、又はその任意の誘導体及びバリアントの125位のリジン(K)残基における変異。更に一部の更なる実施形態では、残基125における変異は、リジン(K)残基125をアラニン(A)に置換する。そのような変異GusRを、本明細書でK125A GusRと命名する。なお更に、一部の実施形態では、K125A GusRは、配列番号8によって示される核酸配列、又はその任意の誘導体及びバリアントを含む核酸配列によってコードされ得る。更に一部の更なる実施形態では、K125A GusRは、配列番号9によって示されるアミノ酸配列、又はその任意の誘導体及びバリアントを含み得る。
【0118】
一部の実施形態では、変異は、配列番号3によって示される野生型GusR、又はその任意の誘導体及びバリアントの164位のチロシン(Y)残基における変異である。更に一部の更なる実施形態では、残基164における変異は、チロシン(Y)残基164をフェニルアラニン(F)に置換する。そのような変異GusRを本明細書ではY164F GusRと命名する。なお更に、一部の実施形態では、Y164F GusRは、配列番号10によって示される核酸配列を含む核酸配列、又はその任意の誘導体及びバリアントによってコードされ得る。更に一部の更なる実施形態では、Y164F GusRは、配列番号11によって示されるアミノ酸配列、又はその任意の誘導体及びバリアントを含み得る。
【0119】
一部の実施形態では、変異は、配列番号3によって示される野生型GusRの73位のアルギニン(R)残基における変異である。更に一部の更なる実施形態では、残基73における変異は、アルギニン(R)残基73をアラニン(A)に置換する。そのような変異GusRを本明細書ではR73A GusRと命名する。なお更に、一部の実施形態では、R73A GusRは、配列番号12によって示される核酸配列を含む核酸配列によってコードされ得る。更に一部の更なる実施形態では、R73A GusRは、配列番号13によって示されるアミノ酸配列を含み得る。
【0120】
開示されるシステムの調節性成分は、一部の実施形態では、開示されるGusR変異体の任意の組合せ、例えば、K125A GusR及びR73A、K125A GusR及びY164F GusR、R73A GusR及びY164F GusR、並びにK125A GusR、Y164F GusR、及びR73A GusRを含み得ることが理解されるべきである。
【0121】
更に一部の更なる実施形態では、本明細書で開示されるシステムによって調節される少なくとも1種の薬物は、抗新生物剤、抗ウイルス剤、鎮痛剤、解熱薬、抗炎症剤、鎮痛剤、抗高血圧剤、抗マラリア剤、神経遮断剤、抗コレステロール剤、抗糖尿病剤、抗てんかん剤、胆汁酸、抗凝固剤、鉄キレート剤、抗菌剤、造血増殖因子、抗パーキンソン症薬剤、ホルモン、cns抑制薬、抗コリン作用剤、副交感神経遮断剤、免疫抑制剤、オピオイド解毒薬、抗喘息剤、抗良性前立腺肥大又は抗痛風剤のうちのいずれか1種である。
【0122】
更に一部の更なる実施形態では、薬物は、少なくとも1種の抗新生物剤であってもよい。
【0123】
「抗増殖療法」又は「抗新生物薬」という用語は、本明細書で使用される場合、がん細胞又は任意の他の増殖性障害の細胞を排除又は破壊する(死滅させる)ことを意図した任意の処置を指す。これは、一部の実施形態では、「化学療法薬又は薬剤」(化学療法)を含む。
【0124】
より具体的には、「化学療法薬又は化学療法剤」はがん及びいくつかの増殖性疾患を処置するために使用される薬物である。これらの薬物を使用する処置は、がん細胞又は他の増殖細胞(悪性腫瘍及び増殖性疾患)の増殖を、細胞を死滅させるか、又はそれらの分裂を停止させることによって停止させることを意図する。化学療法は、処置されるがんのタイプ及びステージに応じて、経口、注射、若しくは注入によって、又は皮膚上に与えられ得る。それは、単独で、又は手術、放射線療法、若しくは生物学的療法などの他の処置とともに与えることができる。いくつかの化学療法薬の活性の根底にある機構は、多くのがん細胞が正常細胞よりも急速に増殖する及び増えるので、急速に分裂する細胞を破壊することに基づく。それらの活性様式の結果として、化学療法剤はまた、正常な状況下で急速に分裂する細胞、例えば、骨髄細胞、消化管細胞、及び毛包を害する。正常細胞の傷害又は損傷は、化学療法の一般的な副作用:骨髄抑制(血液細胞の産生減少、したがって免疫抑制も)、粘膜炎(消化管の内層の炎症)、及び脱毛症(脱毛)をもたらす。
【0125】
ある特定の化学療法剤はまた、がん以外の状態(強直性脊椎炎、多発性硬化症、血管腫、クローン病、乾癬、乾癬性関節炎、関節リウマチ、狼瘡及び強皮症を含む)の処置において使用されており、したがって、「抗増殖性」と考えられている。
【0126】
化学療法薬は、細胞分裂又はDNA合成及び機能に影響を及ぼし、一般に、それらの構造又は生物学的機能に基づいて群に分類することができる。いくつかの化学療法剤は、アルキル化剤、代謝拮抗剤、アントラサイクリン、植物アルカロイド、トポイソメラーゼ阻害剤、及び他の抗腫瘍剤、例えば、DNAアルキル化剤、抗腫瘍抗生物質剤、チューブリン安定化剤、チューブリン不安定化剤、ホルモンアンタゴニスト剤、プロテインキナーゼ阻害剤、HMG-CoA阻害剤、CDK阻害剤、サイクリン阻害剤、カスパーゼ阻害剤、メタロプロテイナーゼ阻害剤、アンチセンス核酸、三重らせんDNA、核酸アプタマー、及び分子修飾ウイルス、細菌又は外毒素剤として分類される。
【0127】
一部の任意選択的な実施形態では、標的薬物は、少なくとも1種のトポイソメラーゼ阻害剤であり得る。更に一部の更なる実施形態では、標的薬物は、少なくとも1種のトポイソメラーゼI阻害剤(TopI)であり得る。
【0128】
トポイソメラーゼ阻害剤は、本明細書で使用される場合トポイソメラーゼの作用を遮断する化合物を指す。DNAトポイソメラーゼ(又はトポイソメラーゼ)は、DNAのトポロジー状態の変化を触媒する酵素であり、弛緩型及びスーパーコイル型、連結型(連鎖型)及び非連結型種、並びにノット型及び非ノット型DNAを相互変換する。トポイソメラーゼ阻害剤は、2つの広いサブタイプ:I型トポイソメラーゼ(TopI)及びII型トポイソメラーゼ(TopII)に分類することができる。トポイソメラーゼは、一本鎖及び二本鎖のDNAの切断を媒介してスーパーコイルを弛緩させ、カテナンのもつれを解き、真核細胞中の染色体を凝縮させるので、細胞再生及びDNA組織化において重要な役割を果たす。トポイソメラーゼ阻害剤は、これらの必須細胞プロセスに影響を及ぼす。いくつかのトポイソメラーゼ阻害剤は、トポイソメラーゼがDNA鎖切断を行うことを防止するが、トポイソメラーゼ毒とみなされる他のものは、トポイソメラーゼ-DNA複合体と会合し、トポイソメラーゼ機構の再度ライゲーション工程を防止する。これらのトポイソメラーゼ-DNA阻害剤複合体は、それらが引き起こす未修復の一本鎖及び二本鎖DNA切断がアポトーシス及び細胞死をもたらし得るので、細胞傷害剤である。したがって、トポイソメラーゼ阻害剤は、感染性及びがん性障害を処置するために使用される。
【0129】
本明細書で示されるように、標的薬物は、一部の実施形態では、TopIの阻害剤であり得る。TopIは、本明細書で使用される場合、複製及び転写中にDNA超らせん化を緩和するタンパク質である。通常の環境下では、TopIは、DNAの骨格を攻撃して、一時的なTopI-DNA中間体を形成し、これが、切断された鎖の、らせん軸の周りの回転を可能にする。次いで、TopIは、切断された鎖を再度ライゲーションして、二重鎖DNAを再確立する。TopI阻害剤による処置は、中間切断可能複合体を安定化し、DNAの再度のライゲーションを防止し、致死的なDNA鎖切断を誘導する。カンプトテシン由来TopI阻害剤は、Camptotheca acuminataの樹木に由来し、TopI-DNAと三元複合体を形成することによって機能し、それらの平面構造のために切断部位に隣接する塩基対の間に積み重なることができる。したがって、一部の実施形態では、開示されたシステムによって標的化される薬物は、任意のカンプトテシン由来TopI阻害剤、例えば、カンプトテシン-11(CPT-11、イリノテカン)であってもよい。
【0130】
概念の証明として本明細書で開示される非限定的な実施形態として考慮されるべきである本実施例によって示されるように、本発明のシステムは、薬物カンプトテシン-11(CPT-11、イリノテカン)又はその任意の誘導体の代謝を調節するように設計される。
【0131】
なお更に、一部の実施形態では、インデノイソキノリン及びインドロカルバゾールなどの非カンプトテシンもまた、開示されるシステムによって標的化され得る。これらの薬物はTopI自体と会合して、典型的にはカンプトテシンに対する耐性を付与する残基と水素結合を形成する。本開示において適用可能な非CPT阻害剤は、インデノイソキノリン、フェナントリジン、及びインドロカルバゾールのいずれか1種であってもよい。
【0132】
しかし、本発明の特定のシステムは、任意のβGUS酵素の基質である任意の薬物の代謝を調節するために適切であり得ることに留意すべきである。肝臓酵素によって、例えば、グルクロン酸抱合を行う酵素、例えば、UGT酵素によって不活性化される薬物の特定の非限定的な実施形態。マイクロバイオーム微生物、例えば細菌によるこれらの薬物の再活性化は、望ましくない効果をもたらし得る。したがって、一部の実施形態では、マイクロバイオームGus酵素によって潜在的に代謝される薬物は、例えば表1によって開示され、具体的には、アバカビル、アセメタシン、アセトアミノフェン、アンブリセンタン、アルテニモール、アセナピン、アトルバスタチン、アキシチニブ、ビクテグラビル、ブプレノルフィン、カナグリフロジン、カンデサルタン、カンデサルタンシレキセチル、カルバマゼピン、ケノデオキシコール酸、クロザピン、コデイン、シプロヘプタジン、ダビガトランエテキシレート、ダパグリフロジン、デフェリプロン、デラフロキサシン、ジクロフェナック、ジフルニサル、ドルテグラビル、エルトロンボパグ、エナジデニブ、エンタカポン、エピルビシン、エルロチニブ、エルツリジン、エストラジオール、酢酸エストラジオール、エストラジオールベンゾエート、エストラジオールシピオネート、エストラジオールジエナンテート、吉草酸エストラジオール、エトドラク、エトポシド、エゼチミブ、エゾガビン、フルニトラゼパム、フルルビプロフェン、フルバスタチン、グレカプレビル(Glecaprevir)、ハロペリドール、ヒドロモルホン、イブプロフェン、イミダフェナシン、インダカテロール、インドメタシン、イルベサルタン、イリノテカン、イサブコナゾール、ケトベミドン、ラモトリジン、レテルモビル、リコフェロン、ロラゼパム、ロサルタン、ロバスタチン、ルミラコキシブ、ミダゾラム、ミチグリニド、モルヒネのうちのいずれか1種;硫酸モルヒネ、ムラグリタザル、ミコフェノール酸モフェチル、ミコフェノール酸、ナルデメジン(Naldemedine)、ナルメフェン、ナルトレキソン、ナプロキセン、ナテグリニド、オキサゼパム、パリカルシトール、ピブレンタスビル、ピタバスタチン、プロポフォール、ラルテグラビル、レゴラフェニブ、リファンピシン、ルカパリブ、セラトロダスト、シロドシン、シムバスタチン、ソラフェニブ、スルファメトキサゾール、スプロフェン、タモキシフェン、タペンタドール、プロピオン酸テストステロン、トピロキソスタット、トリフルオペラジン、トログリタゾン、バジメザン、バルデコキシブ、バルプロ酸、ザルトプロフェン、ジドブジン又はジレウトンである。一部の実施形態では、開示される薬物のいずれかが、本開示のシステムの調節成分によって標的化され得る。
【0133】
一部の実施形態では、本開示のシステムは、少なくとも1種のトポイソメラーゼI阻害剤の代謝の調節に適用可能である。更に一部の更なる実施形態では、本開示は、任意のトポイソメラーゼI阻害剤、例えば、CPT-11(本明細書では、(4S)-4,11-ジエチル-3,4,12,14-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-3,14-ジオキソ-1H-ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-9-イル[1,4’-ビピペリジン]-1’-カルボン酸エステル塩酸塩としても示される)を調節する際に適用可能な調節性成分を包含する。とりわけCamptosarの商品名で販売されているCPT-11又はイリノテカンは、結腸がん及び小細胞肺がんを処置するために使用される医薬品である。結腸がんに対しては、それは単独で又はフルオロウラシルとともに使用される。小細胞肺がんについては、それはシスプラチンとともに使用される。それは、静脈へのゆっくりとした注射によって投与される。そのIUPAC名は、(S)-4,11-ジエチル-3,4,12,14-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-3,14-ジオキソ1H-ピラノ[3’,4’:6,7]-インドリジノ[1,2-b]キノリン-9-イル-[1,4’ビピペリジン]-1’-カルボキシレートであり、その固有成分識別子(UNII)は7673326042(CAS番号97682-44-5)である。イリノテカンは、式Iによって更に開示される。
【0134】
【化1】
【0135】
なお更に、一部の実施形態では、本明細書で開示されるシステムの薬物代謝調節成分は、細菌GUSによる当該CPT-11、SN38グルクロニド(SN38G)の非活性代謝産物のCPT-11、SN38の活性代謝産物への再活性化及び/又は変換を阻害又は低減する。
【0136】
更に一部の更なる実施形態では、本明細書で提供されるシステムは、薬物代謝調節成分として、標的薬物を修飾する酵素をコードする任意の核酸配列を含み得る。例えば、標的薬物を活性化するか、あるいは不活性化するか、又はそうでなければ少なくとも1種の薬物の活性、生物学的利用能、クリアランス、安定性、毒性、及び吸収を調節する任意の酵素。
【0137】
一部の非限定的な実施形態では、システムは、プロドラッグのアプローチをとることによって薬物の薬物動態を改善し得る。このアプローチは、腸内でプロドラッグを活性な親薬物に変換し、したがって、ADME(吸収、分布、代謝及び排出)の課題、例えば、低い経口吸収、乏しい安定性、不適切な部位特異性などを克服するために利用され得る。このシステムにおいて、システムの薬物代謝調節成分は、プロドラッグの活性化を促進して、適時かつ部位特異的に遊離の親薬物を遊離させ、薬物の有用性を増加させる。調節は、標的化標的細胞、例えば、一部の実施形態ではマイクロバイオームに存在し、マイクロバイオーム集団の一部である標的細菌に、そのようなプロドラッグの薬物への変換、又は活性若しくは改善された若しくは強力な代謝産物への変換を触媒する少なくとも1種の酵素をコードする核酸配列を導入することによって達成される。この酵素は、細菌によって産生され、腸管内腔に分泌され得る。そこで、腸において、導入された酵素は、プロドラッグ上に存在する特異的リンカーを認識し、それを消化し、活性薬物を遊離させることができる。
【0138】
本開示のシステム及び方法の成分は、調節成分又は選択成分をコードするか、あるいは調節成分又は選択成分である核酸配列を含む。「ポリヌクレオチド」又は「核酸配列」又は「核酸分子」という用語は、本明細書において、デオキシリボ核酸(DNA)又はリボ核酸(RNA)などの核酸のポリマーを指す。本明細書で使用される場合、「核酸」(又は核酸分子若しくはヌクレオチド)は、任意のDNA又はRNAポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって生成される断片、並びにライゲーション、切断、エンドヌクレアーゼ作用、及びエキソヌクレアーゼ作用のいずれかによって生成される断片(一本鎖又は二本鎖のいずれか)を指す。核酸分子は、天然に存在するヌクレオチド(DNA及びRNAなど)、又は天然に存在するヌクレオチドの類似体、例えば、天然に存在するヌクレオチドのアルファ-エナンチオマー形態、又は修飾ヌクレオチド、又はそれらの任意の組合せであるモノマーから構成され得る。本明細書において、この用語はまた、cDNA、すなわち逆転写酵素(RNA依存性DNAポリメラーゼ)の作用によってRNA鋳型から産生される相補的又はコピーDNAを包含する。
【0139】
本明細書で上に示したように、ある特定の実施形態では、本発明の薬物代謝調節成分は、選択成分(一部の実施形態では、プロトスペーサーを含む毒素をコードするバクテリオファージ、又は溶菌性バクテリオファージの必須遺伝子であり得る)内に含まれる少なくとも1種の核酸配列を標的化する少なくとも1種のCRISPRスペーサーを含み得る。更に一部の更なる実施形態では、CRISPRアレイは、調節成分としても作用し得る。例えば、CRISPRアレイは、選択成分中のプロトスペーサーを標的化するスペーサーに加えて、薬物の代謝に関与するタンパク質(例えば、GusAタンパク質)をコードする少なくとも1種の遺伝子内に含まれる核酸配列を標的化する少なくとも1種のCRISPRスペーサーも更に含み得る。このようにして、本発明の薬物代謝調節成分は、選択成分(例えば、溶菌性ファージ、又は細胞生存率及び/若しくは機能を阻害若しくは低減する毒性エレメントを含む他の送達ビヒクル若しくは遺伝子エレメント)、並びに目的の薬物の代謝に関与するエレメントの両方を標的化及び/又は不活化し得る。更に一部の代替的な実施形態では、調節成分は、選択成分内に含まれる少なくとも1種のプロトスペーサーを標的化する1種のタイプのCasヌクレアーゼに適した少なくとも1種のスペーサーと、別のタイプのCasタンパク質に適した少なくとも1種の他のスペーサーであって、ヌクレアーゼ活性の低下又は消失を示し、薬物の代謝に関与するエレメントの転写の増加をもたらす転写活性化因子を一部の実施形態では動員し得る更なる活性ドメイン、又は標的核酸配列を修飾し、それによって薬物代謝に関与するエレメントを調節する任意の他の核酸修飾部分に融合された少なくとも1種の他のスペーサーとを含み得る。そのような修飾部分はメチルトランスフェラーゼメチル化DNA結合因子、転写因子、転写リプレッサー、クロマチンリモデリング因子、ポリメラーゼ、デメチラーゼ、アセチラーゼ、デアセチラーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、インテグラーゼ、リコンビナーゼ、リガーゼ、トポイソメラーゼ、ジャイレース、ヘリカーゼ、及びそれらの任意の組合せのいずれか1種であり得る。
【0140】
開示されるシステム、組成物、キット及び方法の調節性成分は、CRISPR-Casシステムを利用する。本明細書で使用される場合、SPIDR(Spacer Interspersed Direct Repeats)としても知られるCRISPRアレイは、通常、特定の細菌種に特異的なDNA遺伝子座のファミリーを構成する。CRISPRアレイは、E.coliにおいて最初に認識された散在した短い配列反復(SSR)の別個のクラスである。その後、同様のCRISPRアレイが、Mycobacterium tuberculosis、Haloferax mediterranei、Methanocaldococcus jannaschii、Thermotoga maritima並びに他の細菌及び古細菌において見出された。本発明は、公知のCRISPRシステム、特に本明細書で開示されるCRISPRシステムのいずれかの使用を企図することが理解されるべきである。
【0141】
本明細書で使用される場合、「CRISPRアレイポリヌクレオチド」という語句は、相補的遺伝子を下方制御する(例えば、排除する、標的化する)ことが可能な十分なCRISPR反復を含むDNA又はRNAセグメントを指す。
【0142】
一実施形態によれば、本開示のシステムの調節成分内に含まれるCRISPRアレイポリヌクレオチドは、それらの間に1種のスペーサーを有する少なくとも2つのリピートを含む。更に一部の更なる実施形態では、本発明の薬物代謝調節成分のCRISPRアレイは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100個以上、具体的には、110、120、130、140、150、160、170、180、190、200個以上のスペーサーを含み得る。更に、本発明の薬物代謝調節成分のスペーサーは同一の又は異なるスペーサーのいずれであってもよいことが更に理解されるべきである。より多くの実施形態では、これらのスペーサーは、同一又は異なる標的プロトスペーサー及び/又は特定の薬物の代謝に関与するタンパク質をコードする遺伝子のいずれかを標的とし得る。更に一部の他の実施形態では、そのようなスペーサーは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100個以上の望ましくない遺伝子を標的とし得る。
【0143】
例示的な実施形態では、CRISPRアレイポリヌクレオチドは、最初のCRISPRリピートの最初のヌクレオチドから始まり、最後の(末端)リピートの最後のヌクレオチドで終わるCRISPRリピートの全てを含む。
【0144】
本明細書で使用される場合、「スペーサー」という用語は、CRISPRアレイの複数の短い直列反復(すなわち、CRISPR反復)間に見出される非反復性スペーサー配列を指す。一部の実施形態では、CRISPRスペーサーは、2つの同一のCRISPRリピートの間に位置する。
【0145】
一部の実施形態では、CRISPRスペーサーは、パリンドロームである2つの同一の短いダイレクトリピートの間に天然に存在する。本発明のスペーサーは、2つの同一又は非同一の反復間に位置又は存在してもよく、更に、これらのスペーサーは、病原性若しくは望ましくない細菌遺伝子内のプロトスペーサー及び/又は選択成分内のプロトスペーサーを標的化するcrRNAをコードすることに留意されるべきである。
【0146】
本明細書で使用される場合、「cas遺伝子」という用語は、Casタンパク質をコードするフランキングCRISPRアレイに一般的にカップリングされるか、関連するか若しくは近接するか、又はその近傍にある遺伝子を指す。
【0147】
CRISPRアレイは、典型的には、cas1からcas4と名付けられた4つの遺伝子の近傍に見出される。これらの遺伝子の最も一般的な配置はcas3-cas4-cas1-cas2である。Cas3タンパク質はヘリカーゼであると思われるが、Cas4はエキソヌクレアーゼのRecBファミリーに類似しており、DNA結合を示唆するシステインリッチモチーフを含有する。cas1遺伝子(NCBI CoGデータベースコード:COG1518)は、CRISPRシステム(Pyrococcus abyssiiのCRISPRシステムを除く全てのCRISPRシステムに関連する)の普遍的マーカーとして機能するので、特に注目すべきである。cas2はまだ特徴付けられていない。casl-4は、典型的には、CRISPR遺伝子座へのそれらの近接性並びに細菌種及び古細菌種にわたるそれらの広範な分布によって特徴付けられる。全てのcasl-4遺伝子が全てのCRISPR遺伝子座と関連するわけではないが、それらは全て複数のサブタイプで見出される。
【0148】
なお更に、CRISPR-Casシステムの3つの主要なタイプが示される:I型、II型及びIII型。本発明の改変バクテリオファージ内にパッケージングされた目的の核酸は、任意のタイプのCRISPR-Casシステムに由来するCRISPRシステム(例えば、casタンパク質及びスペーサーをコードする遺伝子)を含み得ることが理解されるべきである。
【0149】
より具体的には、I型のCRISPR-Casシステムは、おそらく異なる組成物とCascade様複合体を形成するタンパク質をコードする遺伝子に加えて、別個のヘリカーゼ及びDNase活性を有する大きなタンパク質をコードするcas3遺伝子を含有する。これらの複合体は、Casタンパク質の大きなスーパーファミリーを形成し、少なくとも1種のRNA認識モチーフ(RRM;フェレドキシンフォールドドメインとしても知られる)及び特徴的なグリシンリッチループを含有するリピート関連ミステリアスタンパク質(RAMP)に含まれている多数のタンパク質を含有する。RAMPスーパーファミリーは、広範な配列及び構造比較に基づいて、大きなCas5及びCas6ファミリーを包含する。更に、Cas7(COG1857)タンパク質は、RAMPスーパーファミリー内の別の別個の大きなファミリーを表す。
【0150】
I型CRISPR-Casシステムは、標的切断がCas3のHDヌクレアーゼドメインによって触媒されるDNAを標的化するようである。Cas4のRecBヌクレアーゼドメインは、いくつかのI型CRISPR-CasシステムにおいてCas1に融合されるので、Cas4は、代わりにスペーサー獲得において役割を果たす可能性があり得る。任意のI型CRISPR-Casシステム、具体的には、I-A型、B型、C型、D型、E型、及びF型のいずれか1種を本発明において適用可能であり得ることに留意すべきである。
【0151】
II型CRISPR-Casシステムは、「HNH」型システムを含み(連鎖球菌様;また、Nmeniサブタイプとしても知られる、Neisseria meningitidis血清型A str.Z2491、又はCASS4)、単一の非常に大きなタンパク質であるCas9が、遍在するCas1及びCas2に加えて、crRNAを生成し、標的DNAを切断するのに十分であるようである。Cas9は、少なくとも2つのヌクレアーゼドメイン、アミノ末端付近のRuvC様ヌクレアーゼドメイン及びタンパク質の中央のHNH(又はMcrA様)ヌクレアーゼドメインを含有するが、これらのドメインの機能は解明されていないままである。しかし、HNHヌクレアーゼドメインは制限酵素が豊富であり、エンドヌクレアーゼ活性を有するので、標的切断に関与している可能性が高い。
【0152】
II型システムは、tracrRNAとpre-crRNA中のリピートの一部との間の二本鎖形成に関与する異常な機構を介してpre-crRNAを切断し;その後、pre-crRNAプロセシング経路における第1の切断が、このリピート領域において起こる。この切断は、Cas9の存在下でハウスキーピング二本鎖RNA特異的RNase IIIによって触媒される。なお更に、II型システムは、cas9、cas1、cas2 csn2、及びcas4遺伝子の少なくとも1種を含む。任意のII型CRISPR-Casシステム、具体的には、II-A型又はB型のいずれか1種が本発明において適用可能であり得ることが理解されるべきである。
【0153】
III型 CRISPR-Casシステムは、ポリメラーゼ及びRAMPモジュールを含有し、ここで、RAMPの少なくともいくつかは、Cascade複合体に類似して、スペーサー-リピート転写物のプロセシングに関与するようである。III型システムは、サブタイプIII-A(Mtube又はCASS6としても知られる)及びIII-B(ポリメラーゼRAMPモジュールとしても知られる)に更に分割することができる。サブタイプIII-Aシステムは、プラスミドを標的化することができ、in vivoでS.epidermidisについて実証されているように、このサブタイプ(COG1353)にコードされるポリメラーゼ様タンパク質のHDドメインが標的DNAの切断に関与している可能性があると思われる。furiosus由来のサブタイプIII-Bシステムについて示されるように、少なくともin vitroで、III-B型CRISPR-CasシステムがRNAを標的化することができるという強力な証拠がある。III型CRISPRシステムに属する任意のcas遺伝子、例えば、cas6、cas10、csm2、csm3、csm4、csm5、csm6、cmr1、cmr3、cmr4、cmr5、cmr6、cas1及びcas2のうちのいずれか1種が、本発明の目的のために使用され得ることが理解されるべきである。なお更に、タイプIII-A又はタイプIII-Bシステムのいずれか1種を、本発明のシステム、成分、及び方法に使用することができる。特に興味深いのは、特に内因性病原性遺伝子又は望ましくない遺伝子が本発明のシステム及び方法によって標的化される場合、III-B型システムが使用され得る。一部の特定の実施形態では、本発明のビヒクル中の目的の核酸配列として使用されるCRISPR-Casシステム中の少なくとも1種のcas遺伝子は、I-E型CRISPRシステムの少なくとも1種のcas遺伝子であり得る。「IE型CRISPR」システムは、K型Escherichia coliに対して天然のものを指す。これは、ファージ感染を阻害し、プラスミドを治癒し、接合エレメントの移動を防止し、細胞を死滅させることが示されている。このCRISPR機構を使用して、誘導性かつ標的化された様式で特定の細胞内DNAを分解し、残りのDNAをインタクトなままにすることができる。
【0154】
なお更に、V型システムのCasタンパク質もまた、本明細書で開示される調節成分に適用可能であり得る。V型CRISPR-Casシステムは、単一のRNAガイドRuvCドメイン含有ヌクレアーゼによって区別される。II型CRISPR-Casシステムと同様に、本明細書で使用されるCRISPR V型システムは、2つの必須成分:αgRNA及びCRISPR関連エンドヌクレアーゼ(CasX/Cas14/CasF)の包含を必要とする。
【0155】
任意のCRISPR/Casタンパクが本開示によって使用されてもよいことに留意すべきであり、そのようなCasタンパクは、Cas9、CasX、Cas12、Cas13、Cas14、Cas6、Cpf1、CMS1 タンパク質、又はMethanococcus maripaludis C7、Corynebacterium diphtheria、Corynebacterium efficiens YS-314、Corynebacterium glutamicum(ATCC 13032)、Corynebacterium glutamicum(ATCC 13032)、Corynebacterium glutamicum R、Corynebacterium kroppenstedtii(DSM 44385)、Mycobacterium abscessus(ATCC 19977)、Nocardia farcinica IFM10152、Rhodococcus erythropolis PR4、Rhodococcus jostii RFIA1、Rhodococcus opacus B4(uid36573)、Acidothermus cellulolyticus 11 B、Arthrobacter chlorophenolicus A6、Kribbella flavida(DSM 17836)、Thermomonospora curvata(DSM43183)、Bifidobacterium dentium Bd1、Bifidobacterium longum DJO10A、Slackia heliotrinireducens(DSM 20476)、Persephonella marina EX H 1、Bacteroides fragilis NCTC 9434、Capnocytophaga ochracea(DSM 7271)、Flavobacterium psychrophilum JIP02 86、Akkermansia muciniphila(ATCC BAA 835)、Roseiflexus castenholzii(DSM 13941)、Roseiflexus RS1、Synechocystis PCC6803、Elusimicrobium minutum Pei191、uncultured Termite group 1 bacterium phylotype Rs D17、Fibrobacter succinogenes S85、Bacillus cereus(ATCC 10987)、Listeria innocua、Lactobacillus casei、Lactobacillus rhamnosus GG、Lactobacillus salivarius UCC118、Streptococcus agalactiae-5-A909、Streptococcus agalactiae NEM316、Streptococcus agalactiae 2603、Streptococcus dysgalactiae equisimilis GGS 124、Streptococcus equi zooepidemicus MGCS10565、Streptococcus gallolyticus UCN34(uid46061)、Streptococcus gordonii Challis subst CH1、Streptococcus mutans NN2025(uid46353)、Streptococcus mutans、Streptococcus pyogenes M1 GAS、Streptococcus pyogenes MGAS5005、Streptococcus pyogenes MGAS2096、Streptococcus pyogenes MGAS9429、Streptococcus pyogenes MGAS 10270、Streptococcus pyogenes MGAS6180、Streptococcus pyogenes MGAS315、Streptococcus pyogenes SSI-1、Streptococcus pyogenes MGAS10750、Streptococcus pyogenes NZ131、Streptococcus thermophiles CNRZ1066、Streptococcus thermophiles LMD-9、Streptococcus thermophiles LMG 18311、Clostridium botulinum A3 Loch Maree、Clostridium botulinum B Eklund 17B、Clostridium botulinum Ba4 657、Clostridium botulinum F Langeland、Clostridium cellulolyticum H10、Finegoldia magna(ATCC 29328)、Eubacterium rectale(ATCC 33656)、Mycoplasma gallisepticum、Mycoplasma mobile 163K、Mycoplasma penetrans、Mycoplasma synoviae 53、Streptobacillus、moniliformis(DSM 12112)、Bradyrhizobium BTAil、Nitrobacter hamburgensis X14、Rhodopseudomonas palustris BisB18、Rhodopseudomonas palustris BisB5、Parvibaculum lavamentivorans DS-1、Dinoroseobacter shibae.DFL 12、Gluconacetobacter diazotrophicus Pal 5 FAPERJ、Gluconacetobacter diazotrophicus Pal 5 JGI、Azospirillum B510(uid46085)、Rhodospirillum rubrum(ATCC 11170)、Diaphorobacter TPSY(uid29975)、Verminephrobacter eiseniae EF01-2、Neisseria meningitides 053442、Neisseria meningitides alpha14、Neisseria meningitides Z2491、Desulfovibrio salexigens DSM 2638、Campylobacter jejuni doylei 269 97、Campylobacter jejuni 81116、Campylobacter jejuni、Campylobacter lari RM2100、Helicobacter hepaticus、Wolinella succinogenes、Tolumonas auensis DSM 9187、Pseudoalteromonas atlantica T6c、Shewanella pealeana(ATCC 700345)、Legionella pneumophila Paris、Actinobacillus succinogenes 130Z、Pasteurella multocida、Francisella tularensis novicida U 112、Francisella tularensis holarctica、Francisella tularensis FSC 198、Francisella tularensis、Francisella tularensis WY96-3418、若しくはTreponema denticola(ATCC 35405)に由来するか、又はそれから発現されるその任意のバリアントであり得る。
【0156】
本開示は、その更なる態様では、本明細書で開示される成分のいずれか、並びに開示される成分及びその任意の構築物、カセット又はベクターをコードする任意の核酸配列を更に包含することを理解すべきである。より具体的には、一部の実施形態は、本開示は、本明細書で開示される薬物代謝調節成分のいずれか、具体的には、一部の実施形態では、少なくとも1種の薬物の代謝に関与する少なくとも1種のエレメントをコード又は調節する少なくとも1種の核酸配列、少なくとも1種のcas遺伝子及び少なくとも1種のCRISPRアレイを含む核酸分子であり得る少なくとも1種の成分を包含する。更に一部の更なる実施形態では、本開示は、開示された調節性成分を含む任意の構築物、プラスミド又は送達ビヒクルを更に含む。更に一部の更なる実施形態では、本開示は、本明細書で開示される調節成分を含む任意のファージベースの形質導入粒子、又はバクテリオファージベースのベクター(例えば、調節成分を標的細胞に形質導入することが可能なバクテリオファージ)を更に包含する。更に一部の更なる実施形態では、本開示は、本開示に開示される選択成分のいずれかを更に包含する。具体的には、一部の実施形態では、選択成分は、調節性成分のCRISPRアレイによって認識される少なくとも1種のプロトスペーサーを含む。選択成分は、細菌細胞を死滅させるか、又は細菌の増殖及び/若しくは機能を破壊する、減弱させる、及び/若しくは阻害する少なくとも1種の毒性エレメントを更に含み、かつ/又はコードする。一部の実施形態では、本開示は、考察される選択成分をコードする核酸分子、並びにそのような選択成分を含む任意の構築物、プラスミド、カセット、ベクター又はビヒクルを更に提供する。更に一部の更なる実施形態では、本開示は、開示される選択成分を含む任意のファージベースの形質導入粒子、又はバクテリオファージベースのベクター(例えば、調節成分を標的細胞に形質導入することができるバクテリオファージ)を更に包含する。
【0157】
本開示の更なる態様は、細菌細胞及び/又は細菌細胞集団の薬物代謝を調節するための方法に関する。一部の実施形態では、方法は、以下の工程のうちの少なくとも1種を含む:
一部の実施形態では第1の工程であり得る1種の工程(a)は、細胞又は細胞を含む任意の細胞集団を、少なくとも1種の薬物の代謝に関与する少なくとも1種のエレメントをコード又は調節する少なくとも1種の核酸配列、少なくとも1種のcas遺伝子及び少なくとも1種のCRISPRアレイを含む少なくとも1種の薬物代謝調節成分と接触させることを含む。部の実施形態では第2の工程であり得る別の工程(b)は、一であってもよく、細胞又は細胞を含む任意の細胞集団を、少なくとも1種のプロトスペーサーを含む少なくとも1種の選択成分と接触させることを含む。少なくとも1種のプロトスペーサーは、選択成分を不活性化するために、上記(a)のCRISPRアレイの少なくとも1種のスペーサーによって標的化されることが理解されるべきである。
【0158】
標的細胞及び/又は細胞集団を薬物代謝調節成分及び/又は選択成分、及び/又は(a)及び(b)成分の少なくとも1種を含む任意のシステム若しくは組成物に曝露及び/又は接触させることは、標的細菌細胞の薬物代謝の調節をもたらし、更に、少なくとも1種の薬物の改変された代謝を示す細菌細胞の集団を取得、選択及び/又は濃縮する。
【0159】
一部の実施形態では、標的細胞をシステム及び/又はその任意の成分、具体的には、本明細書で開示される調節性成分及び/又は選択成分、又はこれらの成分を含む任意の送達ビヒクルと「接触させること」は、細胞又は細胞が位置する環境をシステム及び/又はその任意の成分の1種又は複数に曝露することを指す。なお更に、「接触させること」とは、標的細胞(例えば、細菌細胞)と直接又は間接的に接触するように、システム及び/又はその任意の成分、具体的には、本明細書で開示される調節性成分及び/又は選択成分、又はこれらの成分(例えば、バクテリオファージ)を含む任意の送達ビヒクルを配置することを指す。一部の実施形態では、「接触させること」という用語は、本明細書で開示される成分又は組成物への細胞のin vivo及びin vitroでは曝露を含むことが理解されるべきである。したがって、一部の実施形態では、「接触させること」は、少なくとも1種のシステム及び/若しくはその任意の成分、具体的には、本明細書で開示される調節性成分及び/若しくは選択成分、又はこれらの成分を含む任意の送達ビヒクル、又は任意の細胞若しくは細胞(例えば、細菌細胞)の集団、又はその任意の組成物を個体に投与することを含む。
【0160】
一部の実施形態では、薬物の代謝に関与する少なくとも1種のエレメントをコード又は調節する少なくとも1種の核酸配列は、CRISPRアレイ内に含まれる。
【0161】
一部の実施形態では、標的細胞を本開示のシステム又はその任意の成分と接触させる工程は、本開示によって提供されるように、一部の実施形態では、本開示のシステムの成分の核酸配列の、標的細胞、例えば、標的細菌細胞への形質転換及び/又は形質導入に関与し得る。「形質転換」及び「トランスフェクション」は、核酸、例えば、ネイキッドDNA又は本明細書で定義される送達ビヒクルの、核酸媒介性遺伝子移入によるレシピエント細胞への導入を意味する。
【0162】
「形質導入」とは、外来DNAがウイルス又はウイルスベクターによって細胞内に導入されるプロセスを指す。一例は、1種の細菌から別の細菌へのDNAのウイルス移入であり、したがって、水平遺伝子移入の一例である。
【0163】
更に一部の更なる実施形態では、本明細書中に開示される方法によって使用される調節成分は、細胞及び/又は細菌細胞集団中の細胞を特異的に標的化する少なくとも1種の送達ビヒクル内に含まれる。
【0164】
更に一部の更なる実施形態では、本明細書中に開示される方法によって使用される選択成分は、細胞及び/又は細菌細胞集団中の細胞を特異的に標的化する少なくとも1種の送達ビヒクル内に含まれる。一部の実施形態では、選択成分は、細胞の生存率及び/又は活性に影響を及ぼす少なくとも1種の薬剤を含む。
【0165】
更に一部の更なる実施形態では、本明細書中に開示される方法によって使用される選択成分を含む少なくとも1種の送達ビヒクルは、少なくとも1種の遺伝子エレメントであるか、又は少なくとも1種の遺伝因子を含む。より具体的には、一部の実施形態では、そのような遺伝子エレメントは、少なくとも1種の形質導入粒子、少なくとも1種のバクテリオファージ又はその任意の断片若しくは部分、少なくとも1種のバクテリオファージベース又はバクテリオファージ様形質導入粒子及び/又は少なくとも1種の改変バクテリオファージ、調節成分及び/又は選択成分の少なくとも1種を含む及び/又はコードする少なくとも1種のベクター、プラスミド及び/又は構築物、並びにそれらの任意の組合せ又はカクテルの少なくとも1種である。
【0166】
一部の実施形態では、開示されるシステムの選択成分の送達ビヒクルは、細菌細胞を死滅させるか、又は細菌増殖を破壊する、減弱させる、及び/若しくは阻害する内因性又は外因性の毒性エレメントを含むバクテリオファージベースの粒子であり得る。
【0167】
一部の実施形態では、選択成分の送達ビヒクルは、細菌細胞を死滅させるか、又は細菌増殖を破壊する、減弱させる、及び/若しくは阻害する毒性エレメントを内因的に含む、バクテリオファージ又はバクテリオファージベースの形質導入粒子であり得る。一部の実施形態では、そのようなバクテリオファージ又はバクテリオファージベースの形質導入粒子は、開示されるシステムの選択成分として使用され得る。一部の実施形態では、選択成分として使用されるか、又は選択成分を送達するために使用されるバクテリオファージ又はバクテリオファージベースの形質導入粒子は、溶菌性バクテリオファージであり得る。一部の実施形態では、そのような溶菌性バクテリオファージは、改変バクテリオファージ、組換えバクテリオファージ、若しくは非改変バクテリオファージのいずれか、あるいは溶菌性ファージベースの粒子であってもよい。
【0168】
更に一部の更なる実施形態では、選択成分の送達ビヒクルは、プラスミド、構築物、又は細菌細胞を死滅させるか、又は細菌の増殖及び/若しくは機能を破壊する、減弱させる、及び/若しくは阻害する毒性エレメントをコードする核酸配列を含む任意の他の遺伝子エレメントであり得る。
【0169】
更に一部の更なる実施形態では、本明細書で開示される方法によって使用されるシステムの成分のうちの少なくとも1種を含む送達ビヒクルは、細菌細胞を死滅させるか、又は細菌増殖及び/若しくは機能を破壊する、減弱させる、及び/若しくは阻害する少なくとも1種の毒性エレメントを含む及び/又はコードする、少なくとも1種のバクテリオファージ又は任意のバクテリオファージ様形質導入粒子又はバクテリオファージベースの形質導入粒子である。
【0170】
一部の実施形態では、バクテリオファージ又はバクテリオファージ様形質導入粒子は、T7様ウイルス、T4様ウイルス又はEscherichiaウイルスラムダのものである。
【0171】
一部の実施形態では、開示されたシステムによって標的化される標的細胞は、細菌細胞である。更に一部の更なる実施形態では、本明細書で開示される方法によって標的化される細菌細胞及び/又は細胞集団は、腸内マイクロバイオーム細胞集団であるか、又はその中に含まれる。なお更に、一部の実施形態では、細胞集団は、Proteobacteria門、Firmicutes門、Bacteroidetes門、Actinobacteria門の少なくとも1種の細菌、又は分離株の任意の変異体、バリアント、又はそれらの任意の組合せを含む。
【0172】
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法によって使用される薬物代謝調節成分は、薬物の活性、生物学的利用能、クリアランス、安定性、毒性、及び吸収のうちの少なくとも1種に影響を及ぼす。
【0173】
更に一部の更なる実施形態では、本明細書で開示される方法によって使用される調節成分によって標的化される少なくとも1種の薬物の代謝に関与するエレメントは、少なくとも1種のグルクロニド酵素である。
【0174】
より具体的な実施形態では、グルクロニド酵素は、少なくとも1種のβ-グルクロニダーゼ(GUS)酵素である。
【0175】
なお更に、一部の実施形態では、調節成分は、少なくとも1種のβ-グルクロニダーゼ(GUS)酵素の転写を抑制する少なくとも1種のエレメントをコードする核酸配列を含む。
【0176】
一部の実施形態では、調節成分の核酸配列によってコードされるエレメントは、当該βGUS酵素の転写を抑制する。更に一部の更なる実施形態では、エレメントはGusリプレッサー(GusR)である。
【0177】
一部の実施形態では、GusRは、少なくとも1種のGUSリガンド及び/又は基質に対して低下したか又は消失した親和性を示す。一部の実施形態では、開示される方法のシステムの調節成分において使用されるGusRは、GusRのリガンド結合ポケットを形成する残基において少なくとも1種の置換及び/又は他の修飾を含む。したがって、更に一部の更なる実施形態では、GusRのリガンド結合ポケットを形成する及び/又はそれに関与する任意の残基を操作して、少なくとも1種のGUSリガンド及び/又は基質に対して低下したか又は消失した親和性を示すGusRを得ることができる。具体的には、H126、K125、R69、E97、R73、Y164、L160、T163及びM87のうちの少なくとも1種にサブステーションを含む任意のGusRが、本開示の調節成分に適用可能である。
【0178】
なお更に、一部の実施形態では、GusRは、リジン(K)125からアラニン(A)、チロシン(Y)164からフェニルアラニン(F)、及びアルギニン(R)73からアラニン(A)、並びにそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1種に、少なくとも1種の変異を有する。本開示において有用な開示されたGusR変異体及びそれらの任意の組合せはまた、本明細書において開示される方法のいずれかにおいて適用可能であることが理解されるべきである。
【0179】
更に一部の更なる実施形態では、本明細書中に開示される方法によって使用されるシステムによって調節される少なくとも1種の薬物は、抗新生物剤、抗ウイルス剤、鎮痛剤、解熱薬、抗炎症剤、鎮痛剤、抗高血圧剤、抗マラリア剤、神経遮断剤、抗コレステロール剤、抗糖尿病剤、抗てんかん剤、胆汁酸、抗凝固剤、鉄キレート剤、抗菌剤、造血増殖因子、抗パーキンソン症薬剤、ホルモン、cns抑制薬、抗コリン作用剤、副交感神経遮断剤、免疫抑制剤、オピオイド解毒薬、抗喘息剤、抗良性前立腺肥大又は抗痛風剤のうちのいずれか1種である。
【0180】
更に一部の更なる実施形態では、薬物は、少なくとも1種の抗新生物剤、任意選択的に少なくとも1種のトポイソメラーゼI阻害剤である。
【0181】
本開示の他の態様に関連して本明細書で開示されるGus酵素によって代謝される薬物のいずれも、この態様でも同様に適用可能であることを理解すべきである。
【0182】
より具体的な実施形態では、本明細書で開示される方法によって調節される薬物は、少なくとも1種トポイソメラーゼI阻害剤である。更に一部の更なる実施形態では、トポイソメラーゼI阻害剤はカンプトテシン-11(CPT-11、イリノテカン)、又はその任意の誘導体、代謝産物若しくはバイオシミラーである。一部の実施形態では、この薬物はまた、(4S-4,11-ジエチル3,4,12,14-テトラヒドロ-4-ヒドロキシ-3,14-ジオキソ-1H-ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-9-イル[1,4’-ビピペリジン]-1’-カルボン酸エステル塩酸塩と命名される。
【0183】
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法によって使用される薬物代謝調節成分は、GUS、具体的には細菌GUSによる、CPT-11の非活性代謝産物の活性代謝産物への再活性化及び/又は変換を阻害又は低減する。より具体的には、一部の実施形態では、本開示の調節性成分は、GUSによる酵素反応、具体的には、イリノテカンの不活性代謝産物SN38Gの活性代謝産物SN38への加水分解を低減又は阻害する。
【0184】
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法の工程(b)、具体的には、細胞及び/又は細胞集団を本明細書で開示されるシステムの選択成分と接触させる工程は、1回又は更に数回繰り返されてもよい。例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20回又はそれより多い回数。一部の実施形態では、この選択工程を少なくとも2回繰り返して、少なくとも1種の薬物の調節された代謝を示す改変細胞の当該集団を濃縮する。
【0185】
一部の実施形態では、本明細書中に開示される調節方法は、必要とする対象において行われ得る。したがって、本明細書で使用される接触させる工程は、一部の実施形態では、開示されるシステムの成分又はその任意の組成物及びキットの、処置される対象への投与に関与し得る。
【0186】
一部の実施形態では、そのような投与は、少なくとも1種の薬物の投与の前に、それと一緒に、又はその後に行われる。
【0187】
本開示の更なる態様は、少なくとも1種の細胞及び/若しくは当該細胞の集団、又はその任意の組成物若しくは生成物に関する。一部の実施形態では、細胞は、細菌細胞又は当該細菌細胞を含む細胞集団である。開示される細胞又は細胞を含む細胞の集団は、少なくとも1種の薬物の改変された代謝を特徴とし、及び/又はそれを示す。これらの細胞を、本明細書中に開示されるシステムの少なくとも1種の成分(調節性成分、選択成分又は両方)と接触させ、したがって、少なくとも1種の薬物の改変された代謝を示す。薬物の代謝の改変は、例えば、その安定性、活性、及び/又は生物学的利用能に影響を及ぼす薬物の任意の酵素的又は化学的改変を引き起こすか、あるいは防止する、薬物による薬物の代謝の任意の変化を意味する。一部の実施形態は、細胞及び/又は細胞集団は、以下の工程のうちの少なくとも1種を含む方法によって調製される。一部の実施形態では第1の工程であり得る1種の工程(a)において、本方法は、細胞又は標的細胞を含む任意の細胞集団を、少なくとも1種の薬物の代謝に関与する少なくとも1種のエレメントをコード又は調節する少なくとも1種の核酸配列、少なくとも1種のcas遺伝子及び少なくとも1種のCRISPRアレイを含む少なくとも1種の薬物代謝調節成分と接触させることを含む。一部の実施形態では次の工程又は第2の工程(b)であり得る別の工程(b)では、細胞又は細胞を含む任意の細胞集団を、少なくとも1種のプロトスペーサーを含む少なくとも1種の選択成分と接触させる。少なくとも1種のプロトスペーサーは、当該選択成分を不活性化するために、(a)のCRISPRアレイの少なくとも1種のスペーサーによって標的化されることが理解されるべきである。
【0188】
一部の実施形態では、本明細書で開示される細胞及び/又は細胞集団は、細菌細胞及び/又は細胞集団である。なお更に、一部の実施形態では、本発明によって提供される細菌細胞及び/又は細胞を含む集団は、本開示によって開示される方法によって調製される。
【0189】
更に一部の更なる実施形態では、本明細書で開示される細胞及び/又は集団(例えば、細菌細胞)の調製のための方法において使用される調節成分は、少なくとも1種のβ-グルクロニダーゼ(GUS)酵素の発現及び/又は活性及び/又は安定性を抑制、阻害及び/又は低減する少なくとも1種のエレメントをコードする核酸配列を含む。
【0190】
なお一部の更なる実施形態では、本明細書中に開示される細胞及び/又は細胞集団(例えば、細菌細胞)の調製のための方法において使用される調節成分の核酸配列によってコードされるエレメントは、当該βGUS酵素の転写を抑制するエレメントであり得る。更に一部の更なる任意選択的な実施形態では、エレメントは、Gusリプレッサー(GusR)であり得る。
【0191】
なお更に、開示される細胞及び/又はそのような細胞を含む集団の一部の実施形態では、GusRは、少なくとも1種のGUSリガンド及び/又は基質に対して低下したか又は消失した親和性を示す。更に一部の更なる任意選択的な実施形態では、そのようなGusRは、リジン(K)125、チロシン(Y)164及び/又はアルギニン(R)73のうちの少なくとも1種に少なくとも1種の変異を有する。より具体的には、調節成分の核酸配列によってコードされるGusR変異体は、リジン(K)125のアラニン(A)への置換、チロシン(Y)164のフェニルアラニン(F)への置換、及びアルギニン(R)73のアラニン(A)への置換、並びにそれらの任意の組合せを少なくとも1種有する、少なくとも1種のGusRであり得る。.一部の特定の非限定的な実施形態では、開示される細胞又は細胞集団の調製において使用される調節成分の核酸配列によってコードされるGusR変異体は、それぞれ、配列番号9、11、13のいずれか1種のアミノ酸配列を含み得る。
【0192】
一部の実施形態では、本明細書で開示される細胞及び/又は細胞集団(例えば、細菌細胞)は、少なくとも1種の抗新生物剤であり得る少なくとも1種の薬物の改変された代謝を示す。一部の任意選択的な実施形態では、薬物は少なくとも1種トポイソメラーゼI阻害剤である。
【0193】
なお更に、一部の実施形態では、本明細書で開示される細胞及び/又は細胞集団(例えば、細菌細胞)は、カンプトテシン-11(CPT-11、イリノテカン)、又はその任意の誘導体の調節された代謝を示す。
【0194】
更に一部の更なる実施形態では、細胞及び/又は細胞集団は、GUSによるCPT-11の非活性代謝産物であるSN38Gの、当該CPT-11の活性代謝産物であるSN38への再活性化及び/又は変換の阻害又は低減を示す。例えば、細菌GUSによる。
【0195】
本開示の更なる態様は、組成物及び/又はキット、具体的には、少なくとも1種の薬物と、開示された組成物の薬物の調節された代謝をもたらす本発明の軽の少なくとも1種とを含む医薬組成物、組合せ組成物及び/又はキット、又は薬物の調節された代謝を示す任意の細胞又は細胞集団に関する。より具体的な実施形態では、本明細書で開示される組成物又はキットは、以下を含み得る:
(I)少なくとも1種の薬物;及び
(II)少なくとも1種の薬物代謝調節システムであって(a)少なくとも1種の薬物の代謝に関与する少なくとも1種のエレメントをコード又は調節する少なくとも1種の核酸配列、少なくとも1種のcas遺伝子、及び少なくとも1種のクリスパー(Clustered, Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat、CRISPR)アレイを含む少なくとも1種の薬物代謝調節成分;並びに(b)少なくとも1種のプロトスペーサーを含む少なくとも1種の選択成分のうちの少なくとも1種を含む、少なくとも1種の薬物代謝調節システム。少なくとも1種のプロトスペーサーは、当該選択成分を不活性化するために、(a)のCRISPRアレイの少なくとも1種のスペーサーによって標的化されることに留意すべきである。一部の代替的又は追加的な実施形態では、組成物は、薬物に加えて、(III)、少なくとも1種の細菌細胞及び/若しくは細菌細胞の集団、又は少なくとも1種の薬物の改変された代謝を示すその任意の組成物若しくは生成物を更に含み得るか、又は代替的に含み得る。なお更に、一部の実施形態では、組成物は、薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤及び添加剤のうちの少なくとも1種を任意選択的に更に含む。
【0196】
なお更に、本明細書で開示されるキットの場合には、一部の実施形態によれば、キットの各エレメント、具体的にはエレメント(I)、(II)、(III)は、第1、第2及び/又は第3の剤形で提供されてもよい。更に一部の更なる実施形態では、キットは、キットの様々なエレメント、例えば、様々な剤形を含む容器を更に含んでもよい。
【0197】
一部の実施形態では、本明細書で開示される組成物のシステムは、本開示によって定義されるシステムのいずれかであり得る。なお更に、本明細書で開示される組成物の細胞又は細胞集団は、本開示によって定義される通りであり得る。
【0198】
更に一部の更なる実施形態では、本明細書で開示される組成物又はキット内に含まれるか又はそれによって標的化される少なくとも1種の薬物は、抗新生物剤、抗ウイルス剤、鎮痛剤、解熱薬、抗炎症剤、鎮痛剤、抗高血圧剤、抗マラリア剤、神経遮断剤、抗コレステロール剤、抗糖尿病剤、抗てんかん剤、胆汁酸、抗凝固剤、鉄キレート剤、抗菌剤、造血増殖因子、抗パーキンソン症薬剤、ホルモン、CNS抑制薬、抗コリン作用剤、副交感神経遮断剤、免疫抑制剤、オピオイド解毒薬、抗喘息剤、抗良性前立腺肥大又は抗痛風剤のうちのいずれか1種である。
【0199】
更に一部の更なる実施形態では、薬物は、少なくとも1種の抗新生物剤である。一部の任意選択的な実施形態では、薬物は、少なくとも1種トポイソメラーゼI阻害剤であってもよい。
【0200】
更に一部の特定の非限定的な実施形態では、薬物は、カンプトテシン-11(CPT-11、イリノテカン)又はその任意の誘導体である。
【0201】
なお更に、本発明の他の態様に関連して本開示において開示される任意の薬物はまた、本発明の態様において同様に適用可能であることが理解されるべきである。
【0202】
更に一部の代替的な実施形態では、本開示の組成物、並びに開示されるシステム及びその任意の成分、具体的には、本明細書で開示される調節性成分及び/若しくは選択成分、又はそれを含む任意の細胞若しくは細胞(例えば、細菌細胞)の集団は、注射可能な剤形として製剤化され得る。更に一部の更なる実施形態では、本明細書で開示される組成物は、注射可能な投薬単位形態で製剤化され得る。
【0203】
一部の実施形態では、経口剤形は、例えば、溶液剤(例えば、シロップ剤)として、又は散剤、錠剤、カプセル剤などとして経口投与され得る。ある特定の実施形態では、本発明の組成物は、固体、半固体又は液体の食品、飲料、食品添加物、栄養補助食品、医療用食品、植物性薬物、薬物及び/又は任意のタイプの医薬化合物への付加に適合された製剤に製剤化され得る。
【0204】
一部の実施形態では、開示されるシステム及び/若しくはその任意の成分、具体的には、本明細書で開示される調節性成分及び/若しくは選択成分、又はこれらの成分を含む任意の送達ビヒクル、又はこれらを含む任意の細胞若しくは細胞(例えば、細菌細胞)の集団を含む本開示によるアドオン組成物は、食品添加物、栄養補助食品、又は医療用食品として製剤化され得る。他の実施形態では、本発明のそのようなアドオン組成物は、薬物又は任意のタイプの医薬品に更に添加されても又はそれと組み合わされてもよい。「アドオン」という用語は、本明細書で使用される場合、少なくとも1種のシステム及び/若しくはその任意の成分、具体的には、本明細書で開示される調節性成分及び若しくは選択成分、又はこれらの成分を含む任意の送達ビヒクル、又は既存の化合物、組成物若しくは材料(例えば、食品又は飲料)に添加され得る本開示のものを含む任意の細胞若しくは細胞(例えば、細菌細胞)の集団の組成物又は投薬単位形態を意味し、その所望の特性を増強又は調節するか、あるいは既存の化合物、組成物、食品又は飲料に特定の所望の特性を付加する。
【0205】
より具体的には、ある特定の実施形態では、少なくとも1種のシステム及び/若しくはその任意の成分、具体的には、本明細書で開示される調節性成分及び/若しくは選択成分、又はこれらの成分を含む任意の送達ビヒクル、又は本開示の任意の細胞若しくは細胞(例えば、細菌細胞)の集団、又はその任意の剤形若しくは組成物は、栄養補助食品へのアドオンであってもよく、あるいは栄養補助食品として使用されてもよい。食品及び飼料の安全性に関する欧州委員会(European Commission for Food and Feed Safety)によって作られた用語である栄養補助食品(food supplement)、又はFDAによって採用された類似の用語である栄養補助食品(dietary supplement)は、その目的が通常食又は制限食を補うことである栄養的又は生理学的効果を有する、天然又は合成の任意の種類の物質に関する。この意味で、この用語は、食品添加物及び食事成分も包含する。更に、米国連邦法の法令であるDietary Supplement Health and Education Act of 1994(DSHEA)の下で、栄養補助食品という用語は、以下の食事成分のうちの1種又は複数を有するか又は含有する食事を補うことを意図する製品として定義される:ビタミン、ミネラル、ハーブ若しくは他の植物、総食事摂取量を増加させることによって食事を補うために対象によって使用される食事物質、又は前述の成分のいずれかの濃縮液、代謝産物、成分、抽出物、若しくは組合せ。食物又は栄養補助食品は、丸剤、カプセル剤、散剤、飲料、及びエナジーバーの形態、並びに他の投与形態で市販されている。しかしながら、薬物とは異なり、それらは主に規制されておらず、すなわち有効性又は安全性の証明なしに市販されている。したがって、欧州及び米国の法律は、「従来の」食品及び薬物製品を網羅する規則とは異なる規則の下で栄養補助食品を規制している。それによれば、栄養補助食品は、そのように表示されなければならず、摂取を意図したものでなければならず、従来の食品として、又は食事(meal)若しくは食事(diet)の唯一の品目として使用されるものであってはならない。しかしながら、システム及び/若しくはその任意の成分、具体的には、本明細書で開示される調節性成分及び/若しくは選択成分、又はこれらの成分を含む任意の送達ビヒクル、又は本明細書で提供される任意の細胞若しくは細胞(例えば、細菌細胞)の集団を含むアドオン剤形又は組成物は、対象によって消費される食事又は飲料に添加され得る。
【0206】
更に一部の更なる実施形態では、本開示によるシステム及び/若しくはその任意の成分、具体的には、本明細書で開示される調節性成分及び/若しくは選択成分、又はこれらの成分を含む任意の送達ビヒクル、又は任意の細胞若しくは細胞(例えば、細菌細胞)の集団又はその任意の組成物は、医療用食品へのアドオンであってもよく、又は医療用食品として消費されてもよい。更に、これに関連して、通常の食事だけでは満たすことができない特有の栄養必要量を有する疾患の食事管理のために特別に配合され、意図された食品である医療食品が言及されるべきである。特に興味深いのは、薬物、具体的には、本開示によって(例えば、表1において)開示される薬物のいずれかへのアドオン製剤として製剤化され得る、開示される成分、開示される成分(調節成分及び/又は選択成分)、システム及び/又は細胞を含む送達ビヒクルのアドオン製剤である。より具体的には、イリノテカン、又はその任意の誘導体及びバイオシミラーへのアドオン製剤として。
【0207】
より具体的には、単位剤形で都合よく提供され得る本発明による医薬組成物は、製薬業界で周知の従来技術に従って調製され得る。そのような技術は、有効成分を薬学的に許容される担体又は賦形剤と会合させる工程を含む。一般に、製剤は、有効成分、具体的には、本開示の核酸送達ビヒクル(例えば、開示されたシステムの調節性成分及び/又は選択成分)を、液体担体若しくは微粉化固体担体又はその両方と均一かつ密接に会合させ、次いで、必要に応じて、生成物を成形することによって調製される。組成物は、以下に限定されないが、錠剤、丸剤、カプセル剤、液体シロップ剤、ソフトゲル剤、スプレー剤、マトリックス剤、坐剤及び浣腸剤などの多くの可能な剤形のいずれかに製剤化することができる。本発明の組成物はまた、水性、非水性又は混合媒体中の懸濁液として製剤化されてもよい。水性懸濁液は、懸濁液の粘度を増加させる物質、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール及び/又はデキストランなどを更に含有していてもよい。懸濁液は安定剤を含有していてもよい。本発明の医薬組成物はまた、エマルジョン及びリポソーム含有処方物を含むが、これらに限定されない。
【0208】
更に、補助剤、安定化剤、増粘剤、滑沢剤及び着色剤を使用してもよい。医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、軟膏剤、溶液剤、坐剤、注射剤、吸入剤、ゲル剤、マイクロスフェア剤及びエアロゾル剤などの固体、半固体、液体又は気体形態の調製物に製剤化することができる。活性薬剤は、投与後に全身的であってもよく、又は局所投与、壁内投与の使用、若しくは埋め込み部位で活性用量を保持するように作用するインプラントの使用によって局在化されてもよい。活性薬剤(例えば、調節性及び/又は選択成分及びそのシステム)は、即時活性のために製剤化されてもよく、又は持続放出のために製剤化されてもよい。
【0209】
開示されるシステムの組成物及び/若しくはその任意の成分、具体的には、本明細書で開示される調節性成分及び/若しくは選択成分、又はこれらの成分を含む任意の送達ビヒクル、又は任意の細胞若しくは細胞(例えば、細菌細胞)の集団は、任意の適切な製剤に製剤化され得ることが理解されるべきである。
【0210】
本明細書で互換的に使用される場合、「投薬単位」、「剤形」、「経口又は注射可能な投薬単位」、「投薬単位形態」、「経口又は注射可能な投薬単位形態」などは、当該分野で公知の固体剤形又は液体剤形の両方を指す。剤形は、それを必要とする対象によって、又は医師による投与のために、経口使用、すなわち嚥下(摂取)、又は任意の他の手段で注射若しくは適用されることが意図される。本明細書で互換的に使用される「活性物質」又は「有効成分」という用語は、治療的又は生理学的に活性な物質、具体的には、本明細書で開示されるシステム及び/若しくはその任意の成分、具体的には、調節性成分及び/若しくは選択成分、又はこれらの成分を含む任意の送達ビヒクル、又は患者に治療的/生理学的効果を提供する本明細書で開示される任意の細胞若しくは細胞(例えば、細菌細胞)の集団を指し、それらの少なくとも2つの混合物も指すことができる。
【0211】
本明細書で示されるように、本明細書で開示される組成物又は任意の剤形若しく投薬単位形態は、注射製剤で提供されてもよい。「注射」又は「注射可能」という用語は、本明細書で使用される場合、ボーラス注射(体液中のその濃度を上昇させるための、本明細書で開示される少なくとも1種のシステム及び/若しくはその任意の成分、具体的には調節性成分及び/若しくは選択成分、又はこれらの成分を含む任意の送達ビヒクル、又は本明細書で開示される任意の細胞若しくは細胞(例えば、細菌細胞)の集団の離散量の投与)、数分間にわたる緩徐ボーラス注射、又は長期注入、又は間隔を空けて与えられる数回の連続注射/注入を指す。単回投与当たりのそのような間隔を空けた注射は、本明細書では「投与注射当たり」とも呼ばれ、言い換えれば、単回投与は、数回の注射又は長期注入を含むことができる。本明細書で定義される、それを必要とする対象への非全身投与のための注射用水性製剤は、薬物-デバイスの組合せ、例えば、機械的又は電気機械的デバイス、より好ましくは電気機械的注入ポンプを使用して投与され得る。電気機械ポンプは、例えば、医薬品を収容するためのリザーバ、ポンプに連結された近位部分を有し、所望の部位に医薬品を投与するように適合された遠位部分を有するカテーテルとからなる。
【0212】
本開示の更なる態様は、それを必要とする対象において少なくとも1種の薬物の代謝を調節するための方法に関する。より具体的には、本方法は、本明細書で開示されるシステム、改変された細菌細胞若しくは細胞集団、それらの任意の組成物若しくはキット、又はそれらと少なくとも1種の薬物との任意の組合せのうちの少なくとも1種の有効量を対象に投与する工程を含む。より具体的には、一部の実施形態では、処置される対象は、(I)、(a)少なくとも1種の薬物の代謝に関与する少なくとも1種のエレメントをコード又は調節する少なくとも1種の核酸配列を含む少なくとも1種の薬物代謝調節成分、少なくとも1種のcas遺伝子及び少なくとも1種のクリスパー(Clustered, Regularly Interspaced Short Palindromic Repeat、CRISPR)アレイ;並びに(b)少なくとも1種のプロトスペーサーを含む少なくとも1種の選択成分のうちの少なくとも1種を含む少なくとも1種の薬物代謝調節システムのうちの少なくとも1種を投与される。少なくとも1種のプロトスペーサーは、当該選択成分を不活性化するために、上記(a)のCRISPRアレイの少なくとも1種のスペーサーによって標的化される。代替として、または加えて、処置される対象は、(II)として、少なくとも1種の薬物の改変された代謝を示す、少なくとも1種の細菌細胞及び/若しくは細菌細胞の集団、又はその任意の組成物若しくは生成物を投与される。代替として、または加えて、処置される対象は、(III)として、(I)及び(II)の少なくとも1種を含む少なくとも1種の組成物、キット又はシステムを投与される。なお更に、一部の実施形態では、対象は、(IV)として、(I)、(II)及び(III)のうちの少なくとも1種と少なくとも1種の薬物との任意の組合せを投与され得る。
【0213】
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法によって使用されるシステムによって標的化される標的細胞は、処置される対象の少なくとも1種のマイクロバイオームの一部である。したがって、開示される方法は、処置される対象のマイクロバイオーム中の細胞を標的とし、それによって、マイクロバイオーム細胞による特定の薬物の代謝の調節をもたらす。
【0214】
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法は、本開示によって定義されるシステムのいずれかを使用してもよく、方法によって使用される細胞又は細胞集団は本明細書で定義される通りであり、組成物は本開示によって定義される通りである。
【0215】
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法、システム及び組成物は、具体的には、処置される対象の少なくとも1種のマイクロバイオームの一部である細菌を標的化する。一部の実施形態では、細菌は腸内マイクロバイオームの細菌である。しかしながら、対象の任意のマイクロバイオームの任意の細菌が、本明細書で開示されるシステム、組成物、及び方法によって標的化され得ることを理解されたい。
【0216】
一部の実施形態では、システムが対象に導入される場合、開示される薬物の代謝の調節がin vivoで行われる。一部の実施形態では、少なくとも1種の薬物の改変された代謝を示す細胞の濃縮されたマイクロバイオーム集団を得るために、選択工程は、少なくとも2回繰り返されてもよい。具体的には、処置される対象への選択成分の投与は、必要に応じて、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、60、70、80、90、00回又はそれより多い回数行われてもよい。更に一部の更なる実施形態では、両方の成分(調節成分(a)及び選択成分(b))の投与は、処置される対象に対して2回以上行われ得る。
【0217】
一部の実施形態では、調節は、対象又はドナー対象から得られた細胞又は細胞集団においてex vivoで行われ、少なくとも1種の薬物の改変された代謝を示す、又はそれによって特徴付けられる細菌細胞の少なくとも1種のマイクロバイオーム集団の有効量が対象に投与される。
【0218】
なお更に、更なる態様では、本発明は、それを必要とする対象において少なくとも1種の病的障害を処置するか、防止するか、改善するか、低減するか、又はその発症を遅延させるための方法を提供する。より具体的には、本方法は、少なくとも1種の薬物、本明細書で開示されるシステム、改変された細菌細胞若しくは細胞集団、それらの任意の組成物若しくはキット、又はそれらと少なくとも1種の薬物との任意の組合せのうちの少なくとも1種の有効量を対象に投与する工程を含む。より具体的には、一部の実施形態では、処置される対象は、(I)として、(a)少なくとも1種の薬物の代謝に関与する少なくとも1種のエレメントをコード又は調節する少なくとも1種の核酸配列を含む少なくとも1種の薬物代謝調節成分、少なくとも1種のcas遺伝子、及び少なくとも1種のCRISPRアレイ、並びに(b)少なくとも1種のプロトスペーサーを含む少なくとも1種の選択成分の少なくとも1種を含む少なくとも1種の薬物代謝調節システムの少なくとも1種を投与される。少なくとも1種のプロトスペーサーは、選択成分を不活性化するために、上記(a)のCRISPRアレイの少なくとも1種のスペーサーによって標的化される。代替として、または加えて、処置される対象は、(II)として、少なくとも1種の薬物の改変された代謝を示す、少なくとも1種の細菌細胞及び/若しくは細菌細胞の集団、又はその任意の組成物若しくは生成物を投与される。代替として、または加えて、処置される対象は、(III)として、(I)及び(II)の少なくとも1種を含む組成物、キット又はシステムの少なくとも1種を投与され、(IV)として、(I)、(II)及び(III)のうちの少なくとも1種の任意の組合せと、少なくとも1種の薬物とを投与される。
【0219】
一部の実施形態では、本明細書で開示される治療方法は、本開示によって定義されるシステムのいずれかを使用してもよく、本方法によって使用される細胞又は細胞集団は本明細書で定義される通りであり、組成物は本開示によって定義される通りである。
【0220】
一部の実施形態では、本明細書で開示される方法は、任意の病的障害を処置するために適用可能であり得る。一部の実施形態では、障害は、薬物によって処置される任意の障害であり得る。更に一部の更なる実施形態では、障害は、新生物障害、ウイルス感染、炎症性障害、免疫細胞媒介性障害、代謝障害及び自己免疫障害のうちの少なくとも1種であり得る。
【0221】
本明細書で開示される治療方法の更に一部の更なる実施形態では、本方法によって使用及び/又は調節される薬物は、抗新生物剤、抗ウイルス剤、鎮痛剤、解熱薬、抗炎症剤、鎮痛剤、抗高血圧剤、抗マラリア剤、神経遮断剤、抗コレステロール剤、抗糖尿病剤、抗てんかん剤、胆汁酸、抗凝固剤、鉄キレート剤、抗菌剤、造血増殖因子、抗パーキンソン症薬剤、ホルモン、cns抑制薬、抗コリン作用剤、副交感神経遮断剤、免疫抑制剤、オピオイド解毒薬、抗喘息剤、抗良性前立腺肥大又は抗痛風剤のうちのいずれか1種である。
【0222】
なお更に、一部の実施形態では、本明細書で開示される方法によって処置される対象は、少なくとも1種の新生物障害に罹患している対象である。
【0223】
更に一部の更なる実施形態では、薬物は、少なくとも1種の抗新生物剤である。更に一部の任意選択的な実施形態では、開示された方法によって使用及び調節される薬物は、少なくとも1種トポイソメラーゼI阻害剤であってもよい。
【0224】
なお更に、一部の実施形態では、本発明の治療方法によって使用及び/又は調節される薬物は、カンプトテシン-11(CPT-11、イリノテカン)、又はその任意の誘導体である。
【0225】
一部の実施形態では、開示される方法によって使用される調節成分の核酸配列によってコードされるエレメントは、βGUS酵素の転写を抑制し得る。一部の任意選択的な実施形態では、エレメントはGusリプレッサー(GusR)である。
【0226】
一部の実施形態では、GusRは、少なくとも1種のGUSリガンド及び/又は基質に対して低下したか又は消失した親和性を示す。
【0227】
更に一部の更なる実施形態では、GusRは、リジン(K)125、チロシン(Y)164及び/又はアルギニン(R)73のうちの少なくとも1種に少なくとも1種の変異を有する。より具体的には、調節成分の核酸配列によってコードされるGusR変異体は、リジン(K)125のアラニン(A)への置換、チロシン(Y)164のフェニルアラニン(F)への置換、及びアルギニン(R)73のアラニン(A)への置換、並びにそれらの任意の組合せのうちの少なくとも1種有する、少なくとも1種のGusRであり得る。.一部の特定の非限定的な実施形態では、開示される細胞又は細胞集団の調製において使用される調節成分の核酸配列によってコードされるGusR変異体は、それぞれ、配列番号9、11及び13のいずれか1種のアミノ酸配列を含み得る。
【0228】
本開示は、新生物障害又はがんを処置するための治療方法を提供する。
【0229】
本開示は、一部の実施形態では任意の新生物疾患であり得る任意の増殖性障害に適用可能であり得る。より具体的には、細胞数の増加をもたらす制御されていない又は異常な細胞増殖に起因して形成された、本明細書において腫瘍とも呼ばれる任意の異常な組織塊。本開示の方法は、一部の実施形態では、良性新生物、in situ新生物、又は悪性新生物のいずれかである任意の新生物に適用可能であり得る。本発明を説明するために本明細書で使用される場合、「増殖性障害」、「がん」、「腫瘍」及び「悪性腫瘍」は全て組織又は器官の過形成と同等に関連する。組織がリンパ系又は免疫系の一部である場合、悪性細胞は、循環細胞の非固形腫瘍を含み得る。他の組織又は器官の悪性腫瘍は、固形腫瘍を生じ得る。一般に、本発明の方法、組成物及びシステムは、非固形腫瘍及び固形腫瘍のいずれか1種に罹患している患者に適用可能であり得る。
【0230】
本発明において意図される悪性腫瘍は、がん腫、黒色腫、リンパ腫、白血病、骨髄腫及び肉腫のいずれか1種であり得る。したがって、一部の実施形態では、本明細書で開示される本発明の方法(具体的には、治療方法)、システム及び組成物のいずれも、本開示によって開示される悪性腫瘍のいずれにも適用可能であり得る。
【0231】
より具体的には、本明細書で使用されるがん腫は、形質転換した上皮細胞からなる浸潤性悪性腫瘍を指す。あるいは、これは、未知の組織形成の形質転換細胞から構成されるが、上皮細胞に関連する特異的な分子的又は組織学的特徴(例えば、サイトケラチン又は細胞間架橋の生成)を有する悪性腫瘍を指す。
【0232】
黒色腫は、本明細書で使用される場合、メラノサイトの悪性腫瘍である。メラノサイトは、皮膚の色の原因である暗色色素であるメラニンを生じる細胞である。それらは主に皮膚に存在するが、腸及び眼を含む身体の他の部分にも見られる。黒色腫は、メラノサイトを含有する身体の任意の部分に生じ得る。
【0233】
白血病は、血液形成器官の進行性悪性疾患を指し、一般に、血液及び骨髄中の白血球及びそれらの前駆体の歪んだ増殖及び発達を特徴とする。白血病は、一般に、(1)疾患の期間及び特徴-急性又は慢性;(2)関与する細胞のタイプ;骨髄性(骨髄性)、リンパ性(リンパ性)、又は単球性;並びに(3)血中の異常細胞数の増加又は非増加-白血病又は非白血病(亜白血病)。
【0234】
肉腫は、形質転換された結合組織細胞から生じるがんである。これらの細胞は、骨、軟骨及び脂肪組織を形成する胚中胚葉又は中間層に由来する。これは、上皮に由来するがん腫とは対照的である。上皮は、身体全体の構造の表面の内側を覆い、乳房、結腸、及び膵臓におけるがんの起源である。
【0235】
本明細書で言及される骨髄腫は、抗体の産生に通常関与する白血球の一種である形質細胞のがんである。異常細胞の集まりは骨に蓄積し、そこでそれらは骨病変を引き起こし、骨髄に蓄積し、そこでそれらは正常血液細胞の産生を妨害する。骨髄腫のほとんどの症例はまた、腎臓の問題を引き起こし、正常な抗体産生を妨害して免疫不全をもたらし得る異常な抗体であるパラプロテインの産生を特徴とする。高カルシウム血症(高カルシウムレベル)に遭遇することが多い。
【0236】
リンパ腫は、免疫系のリンパ細胞におけるがんである。典型的には、リンパ腫はリンパ系細胞の固形腫瘍として存在する。これらの悪性細胞はリンパ節に由来することが多く、リンパ節の拡大(腫瘍)として現れる。それは他の器官にも影響を及ぼす可能性があり、その場合、それは結節外リンパ腫と呼ばれる。リンパ腫の非限定的な例としては、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫及びバーキットリンパ腫が挙げられる。
【0237】
一部の実施形態では、本開示の方法は、任意の固形腫瘍に適用可能であり得る。より具体的な実施形態では、本明細書で開示される方法は、任意の体腔内の任意の器官又は組織、例えば、腹膜腔(例えば、脂肪肉腫)、胸腔(例えば、中皮腫、浸潤性肺腫瘍)、別個の器官内の任意の腫瘍、例えば、膀胱、卵巣がん、及び脳髄膜の腫瘍に影響を及ぼし得る任意の悪性腫瘍に適用することができる。本開示の方法、組成物及びシステムにおいて適用可能な腫瘍の特定の非限定的な実施形態は、結腸直腸がん、小細胞肺がん、卵巣がん、肝臓がん、乳がん、膵臓がん、脳腫瘍及び任意の関連状態、並びに任意の転移性状態、それらの組織又は器官のうちの少なくとも1種を含み得るが、これらに限定されない。
【0238】
本開示の方法、組成物、キット及びシステムは、本明細書で論じられる悪性障害又はその任意の転移のいずれかの任意のタイプ及び/又はステージ及び/又はグレードに適用可能であることを理解されたい。なお更に、本発明の方法、組成物及びシステムは、侵襲性並びに非侵襲性がんに適用可能であり得ることが理解されなければならない。「非侵襲性」がんに言及する場合、原発部位内又は原発部位を越えて正常組織に成長又は浸潤しないがんであることに留意すべきである。「浸潤性がん」に言及する場合、正常で健康な隣接組織に浸潤して増殖するがんであることに留意すべきである。
【0239】
なお更に、一部の実施形態では、本開示の方法、組成物、キット、及びシステムは、任意の転移、転移性がん、又は本明細書で開示されるがん性状態のいずれかの状態の任意のタイプ及び/又はステージ及び/又はグレードに適用可能である。
【0240】
本明細書で使用される場合、「転移性がん」又は「転移状態」という用語は、それが最初に始まった場所(原発性がん)から体内の別の場所に広がったがんを指す。原発性腫瘍又は他の転移性腫瘍に由来する転移性がん細胞によって形成され、血液及び/又はリンパシステムをされる腫瘍は、本明細書において転移性腫瘍又は転移と称される。
【0241】
本発明において有用性が見出され得る更なる悪性腫瘍は、血液悪性腫瘍(リンパ腫、白血病、骨髄増殖性障害、急性リンパ芽球性白血病;急性骨髄白血病を含む)、低形成性及び再生不良性貧血(ウイルス誘発性及び特発性の両方)、骨髄異形成症候群、全てのタイプの腫瘍随伴性症候群(免疫媒介性及び特発性の両方)、並びに固形腫瘍(GI管、結腸、肺、肝臓、乳房、前立腺、膵臓、及びカポジ肉腫を含む)を含み得るがこれらに限定されない。本発明は、口唇及び口腔、咽頭、咽頭、副鼻腔、主要唾液腺、甲状腺、食道、胃、小腸、結腸、結腸直腸、肛門管、肝臓、胆のう、肝外胆管(extraliepatic bile ducts)、ファーター膨大部、外分泌膵臓、肺、胸膜中皮腫、骨、軟部組織肉腫、皮膚、胸部、外陰、膣、子宮頸、子宮体、卵巣、卵管、妊娠性絨毛膜腫瘍、陰茎、前立腺、睾丸、腎臓、腎盂、輸尿管、膀胱、尿道のがん腫及び悪性黒色腫、眼瞼のがん腫、結膜のがん腫、結膜の悪性黒色腫、ぶどう膜の悪性黒色腫、網膜芽腫、涙腺のがん腫、眼窩、脳、脊髄、血管系の肉腫、血管肉腫、副腎皮質がんの腫瘍;AIDS関連がん;AIDS関連リンパ腫;肛門がん;虫垂がん;星状細胞腫、小児小脳又は大脳;基底細胞がん;胆管がん、肝外;膀胱がん;骨がん、骨肉腫/悪性線維性組織球腫;脳幹神経膠腫;脳腫瘍;脳腫瘍、小脳星状細胞腫;脳腫瘍、大脳星状細胞腫/悪性神経膠腫;脳腫瘍、上衣腫;脳腫瘍、髄芽腫;脳腫瘍、テント上原始神経外胚葉性腫瘍;脳腫瘍、視覚経路及び視床下部神経膠腫;乳がん;気管支腺腫/カルチノイド;バーキットリンパ腫;カルチノイド腫瘍、小児;カルチノイド腫瘍、胃腸;原発不明のがん腫;中枢神経系リンパ腫、原発性;小児小脳星状細胞腫;大脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、小児;子宮頸がん;小児がん;慢性リンパ球性白血病;慢性骨髄性白血病;慢性骨髄増殖性障害;結腸がん;皮膚T細胞リンパ腫;線維形成性小円形細胞腫瘍;子宮内膜がん;上衣腫;食道がん;ユーイングファミリーの腫瘍におけるユーイング肉腫;頭蓋外胚細胞性腫瘍、小児;性腺外胚細胞性腫瘍;肝外胆管がん;眼のがん、眼内黒色腫;眼のがん、網膜芽細胞腫;胆のうがん;胃(Gastric)(胃(Stomach))がん;消化管カルチノイド腫瘍;消化管間質腫瘍(GIST);胚細胞性腫瘍:頭蓋外、性腺外、又は卵巣;妊娠性絨毛膜腫瘍;脳幹の神経膠腫;神経膠腫、小児大脳星状細胞腫;神経膠腫、小児の視覚経路及び視床下部;胃カルチノイド;ヘアリーセル白血病;頭頸部がん;心臓がん;肝細胞(肝臓)がん;ホジキンリンパ腫;下咽頭がん;視床下部及び視覚経路神経膠腫、小児;眼内黒色腫;島細胞がん(内分泌膵臓);カポジ肉腫;腎臓がん(腎細胞がん);喉頭がん;白血病;白血病、急性リンパ芽球性(急性リンパ性白血病とも呼ばれる);白血病、急性骨髄性白血病(急性骨髄性白血病とも呼ばれる);白血病、慢性リンパ球性(慢性リンパ性白血病とも呼ばれる);白血病、慢性骨髄性白血病(慢性骨髄性白血病とも呼ばれる);白血病、毛様細胞;口唇及び口腔がん;肝臓がん(原発性);肺がん、非小細胞;肺がん、小細胞;リンパ腫;リンパ腫、AIDS関連;リンパ腫、バーキット;リンパ腫、皮膚T細胞;リンパ腫、ホジキン;リンパ腫、非ホジキンリンパ腫(ホジキン以外の全てのリンパ腫の古い分類);リンパ腫、一次中枢神経系;Marcus Whittle,Deadly疾患;マクログロブリン血症、ワルデンシュトレーム;骨悪性線維性組織球腫/骨肉種;髄芽腫、小児;黒色腫;黒色腫、眼内(眼);メルケル細胞がん;中皮腫、成人悪性;中皮腫、小児;潜在性原発を伴う転移性扁平上皮頚部がん;口腔がん;小児多発性内分泌腺腫症症候群;多発性骨髄腫/形質細胞新生物;菌状息肉症;骨髄異形成症候群;骨髄異形成/骨髄増殖性疾患;骨髄性白血病、慢性;骨髄性白血病、成人急性;骨髄性白血病、小児急性;骨髄腫、多発性(骨髄のがん);骨髄増殖性障害、慢性;鼻腔及び副鼻腔のがん;上咽頭がん;神経芽細胞腫;非ホジキンリンパ腫;非小細胞肺がん;口腔がん;中咽頭がん;骨肉種/骨悪性線維性組織球腫;卵巣がん;卵巣上皮がん(表面上皮間質腫瘍);卵巣胚細胞性腫瘍;卵巣低悪性度腫瘍;膵臓がん;膵臓がん、膵島細胞;副鼻腔及び鼻腔のがん;上皮小体がん;陰茎がん;咽頭がん;褐色細胞腫;松果体星状細胞腫;松果体胚細胞腫;松果体芽腫及びテント上原始神経外胚葉性腫瘍、小児;下垂体腺腫;形質細胞腫瘍/多発性骨髄腫;胸膜肺芽腫;原発性中枢神経系リンパ腫;前立腺がん;直腸がん;腎細胞がん(腎臓がん);腎盂及び輸尿管、移行上皮がん;網膜芽細胞腫;横紋筋肉腫、小児;唾液腺がん;肉腫、ユーイングファミリーの腫瘍;肉腫、カポジ肉腫;肉腫、軟組織肉腫;肉腫、子宮肉腫;セザリー症候群;皮膚がん(非黒色腫);皮膚がん(黒色腫);皮膚がん、メルケル細胞;小細胞肺がん;小腸がん;軟部組織肉腫;扁平上皮がん-皮膚がん(非黒色腫)を参照されたい;潜在性原発性、転移性の扁平上皮頚部がん;胃がん;テント上原始神経外胚葉性腫瘍、小児;T細胞リンパ腫、皮膚(菌状息肉症及びセザリー症候群);精巣がん;咽喉がん;胸腺腫、小児;胸腺腫及び胸腺がん;甲状腺がん;甲状腺がん、小児;腎盂及び輸尿管の移行上皮がん;妊娠性栄養芽細胞腫瘍;未知の原発部位、成人のがん;未知の原発部位、小児のがん;輸尿管及び腎盂、移行上皮がん;尿道がん;子宮がん、子宮内膜がん;子宮肉腫;膣がん;視覚経路及び視床下部グリオーマ、小児;外陰がん;ワルデンシュトレームマクログロブリン血症及びウイルムス腫瘍(腎臓がん)などの固形腫瘍の処置又は阻害に同様に適用可能である。なお更に、一部の実施形態では、本開示の方法、系、組成物及びキットは、結腸がんに適用可能である。一部の具体的な実施形態では、本開示は、開示された病態のいずれか、具体的には標的薬物によって処置される任意の病態を処置するための治療方法を提供する。例えば、トポイソメラーゼI阻害剤、具体的にはイリノテカン。
【0242】
腸がん結腸がん、又は直腸がんとしても知られる結腸直腸がんCRCは、結腸又は直腸からのがんの発生である。徴候及び症状は、糞便中の血液、腸運動の変化、体重減少、及び疲労を含み得る。ほとんどの結腸直腸がんは、老齢及び生活様式因子に起因し、少数の症例のみが、根底にある遺伝的障害に起因する。危険因子には、食事、肥満、喫煙、及び身体活動の欠如が含まれるしたがって、一部の実施形態では、本開示は、具体的には、結腸直腸がんの処置のための治療方法を提供する。
【0243】
一部の実施形態では、本開示の方法、システム、組成物及びキットは、小細胞肺がんに適用可能である。肺の小細胞がんは、がん細胞が顕微鏡下でエンバクのように見える場合があるため、小細胞肺がん(SCLC)又はエンバク細胞がんとしても知られている。小細胞がんは、身体の様々な部分に出現し得るがんの一種であるが、肺において最も頻繁に生じる。それは非常に急速に増殖し、他の器官に広がることができる。肺がんの約10~15パーセントは小細胞がんである。喫煙は最も重大な危険因子である。複数のタイプの小細胞がんが存在する。合併した小細胞がんは、扁平上皮がん又は腺がんなどの他のタイプの肺がんと並んで起こる。一部の実施形態では、本開示は具体的には、小細胞肺がん(SCLC)の処置のための治療方法を提供する。
【0244】
なお更に、一部の実施形態では、本開示の方法、システム、組成物及びキットは、開示された障害のいずれか、並びにその任意の症状、状態及び合併症に適用可能であることが理解されなければならない。そのような症状としては、例えば、下痢(皮膚の糞便染色、水様便の喪失)及び血性下痢(黒い粘着性の便)、体重の減少又は増加などが挙げられ得る。
【0245】
「患者」又は「必要とする対象」とは、少なくとも1種の薬物を必要し得る任意の生物であって、ヒト、家畜及び非家畜哺乳動物、例えばイヌ及びネコ対象、ウシ、サル、ウマ及びマウス対象、齧歯類、家畜鳥類、水産養殖、魚類及び外来の観賞魚を含む、本明細書に記載のシステム及び方法が望まれる任意の生物を意味する。処置される対象はまた、任意の爬虫類又は動物園の動物であり得ることが理解されるべきである。より具体的には、本発明のシステム及び方法は、哺乳動物を意図している。特に非ヒト対象の場合、本開示の方法は、注射、飲料水、飼料、噴霧、強制経口投与を介して、それを必要とする対象の消化管に直接投与することを用いて実施され得ることに留意されたい。
【0246】
「処置する」、「処置すること」、「処置」という用語又はそれらの形態は、本明細書で使用される場合、病的障害を有する対象における疾患活動性の1種又は複数の臨床徴候の発症を防止するか、改善するか又は遅延させることを意味することを理解されたい。処置とは、治療的処置を指す。処置を必要とする者は、病的障害に罹患している対象である。具体的には、「防止処置」(防止するため)又は「予防的処置」を提供することは、何か、特に状態又は疾患を防御又は防止するために保護的に作用する。本明細書で使用される「処置又は防止」という用語は、少なくとも1種の短期細胞ストレス状態/プロセス及び任意の関連状態、疾病、症状、望ましくない副作用又は関連障害に関与する病的障害の阻害、低減、緩和、及びそれらからの解放を含む、対象への投与の治療的に正の効果の完全な範囲を指す。より具体的には、疾患のぶり返し又は再発の処置又は防止には、疾患の発症の防止若しくは延期、症状の発症の防止若しくは延期、及び/又は発症するか若しくは発症すると予測されるそのような症状の重症度の低減が含まれる。これらは、既存の症状を改善すること、更なる症状を防止すること、及び症状の根底にある代謝的原因を改善又は防止すること、を更に含む。本明細書で言及される「阻害」、「軽減」、「低減」、「減少」又は「減弱」という用語は、プロセス、約1%~99.9%、具体的には、約1%~約5%、約5%~10%、約10%~15%、約15%~20%、約20%~25%、約25%~30%、約30%~35%、約35%~40%、約40%~45%、約45%~50%、約50%~55%、約55%~60%、約60%~65%、約65%~70%、約75%~80%、約80%~85%、約85%~90%、約90%~95%、約95%~99%、又は約99%~99.9%、100%以上のいずれか1種によるプロセスの遅延、抑制又は低減に関することを理解されたい。
【0247】
上記に関して、提供される場合、例えば、10%、50%、120%、500%などのパーセンテージ値は、「倍数変化」値、すなわち、それぞれ0.1、0.5、1.2、5などと交換可能であることが理解されるべきである。
【0248】
本明細書で言及される「改善」という用語は、本発明による組成物及び方法によってもたらされる症状の減少及び対象の状態の改善に関し、当該改善は、本明細書に記載の障害と関連する病理学的プロセスの阻害、それらの規模の有意な低減、又は罹患した対象の生理学的状態の改善の形態で現れ得る。
【0249】
「阻害する」という用語及びこの用語の全ての変形は、病理学的症状又は病理学的プロセスの進行の進行及び増悪の制限又は禁止を包含することが意図され、当該病理学的プロセスの症状又はプロセスと関連している。
【0250】
「排除する」という用語は、任意選択的に、本明細書に記載の本発明の方法による、病理学的症状及びおそらく病理学的病因の実質的な根絶又は除去に関する。
【0251】
「遅延(delay)」、「発症を遅延させる」、「遅延(retard)」という用語、及びそれらの全ての変形は、本発明による処置の非存在下よりも遅く現れるように、少なくとも1種の短期細胞ストレス状態/プロセス及びそれらの症状に関連する障害の進行及び/又は増悪の遅延、それらの進行の遅延、更なる増悪又は発症を包含することが意図されている。
【0252】
上記のように、本発明によって提供される方法及び組成物は、「病的障害」、すなわち、少なくとも1種の短期細胞ストレス状態/プロセスに関与する病的障害又は状態の処置のために使用され得、これは、正常な機能の障害、罹患した人又はその人と接触している人に不快感、機能不全又は苦痛を引き起こす身体又は心の任意の異常な状態が存在する状態をいう。「疾患」、「障害」、「状態」及び「疾病」という用語は、本明細書において等しく使用されることに留意すべきである。
【0253】
本発明によって記載される方法、システム及び組成物のいずれも、本明細書で開示される障害又はそれに関連する任意の状態のいずれかを処置及び/又は改善するために適用可能であり得ることが理解されるべきである。交換可能に使用される用語「関連付ける」、「連結した」及び「関連した」は、本明細書において病態に言及する場合、因果関係を共有するか、偶然の頻度よりも高い頻度で共存するか、又は少なくとも1種の疾患、障害状態又は病態が第2の疾患、障害、状態又は病態を引き起こす疾患、障害、状態又は任意の病態、のうちの少なくとも1種を意味することが理解される。より具体的には、本明細書で使用される場合、「疾患」、「障害」、「状態」、「病態」などは、対象の健康に関連するため、交換可能に使用され、そのような用語のそれぞれ及び全てに帰する意味を有する。
【0254】
本明細書で定義され、使用される全ての定義は、辞書の定義、参照により組み込まれる文献中の定義、及び/又は定義された用語の通常の意味を支配すると理解されるべきである。
【0255】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、言及された値よりも最大1%、より具体的には5%、より具体的には10%、より具体的には15%、場合によっては最大20%高く又は低く逸脱し得る値を示し、逸脱範囲は整数値を含み、適用可能な場合、非整数値も同様に連続範囲を構成する。本明細書で使用される場合、「約」という用語は、±10%を指す。
【0256】
本明細書及び特許請求の範囲において使用される不定冠詞「a」及び「an」は、そうでないことが明確に示されない限り、「少なくとも1種」を意味すると理解されるべきである。本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈によってそうでない旨が明示されない限り、複数の指示物を含むことを留意しなければならない。
【0257】
本明細書及び特許請求の範囲において使用される「及び/又は」という句は、そのように結合されたエレメント、すなわち、ある場合には接続的に存在し、他の場合には離接的に存在するエレメントの「いずれか又は両方」を意味すると理解されるべきである。「及び/又は」で列挙された複数のエレメントは、同じように、すなわち、そのように結合されたエレメントの「1種以上」と解釈されるべきである。「及び/又は」節によって具体的に特定されたエレメント以外の他のエレメントが、具体的に特定されたそれらのエレメントに関連するか関連しないかにかかわらず、任意選択的に存在し得る。したがって、非限定的な例として、「A及び/又はB」への言及は、「含む(comprising)」などのオープンエンド言語と併せて使用される場合、一実施形態では、Aのみ(任意選択的にB以外のエレメントを含む)、別の実施形態では、Bのみ(任意選択的にA以外のエレメントを含む)、更に別の実施形態では、A及びBの両方(任意選択的に他のエレメントを含む)などを指すことができる。など。
【0258】
本明細書及び特許請求の範囲において使用される場合、「又は」は、上で定義された「及び/又は」と同じ意味を有すると理解されるべきである。例えば、リスト内の項目を分離する場合、「又は」又は「及び/又は」は、包括的である、すなわち、複数のエレメント又はエレメントのリストのうちの少なくとも1種を含むが、2つ以上も含み、任意選択的に、追加の列挙されていない項目を含むと解釈されるものとする。「~のうちの1種のみ」若しくは「~のうちの正確に1種」、又は特許請求の範囲において使用される場合、「~からなる」などの、それとは反対に明確に示される用語のみが、複数のエレメント又はエレメントのリストのうちの正確に1種のエレメントを含むことを指す。概して、本明細書で使用される「又は」という用語は、「いずれか」、「のうちの1種」、「のうちの1種のみ」、又は「本質的に~からなる」は、排他性の用語が先行する場合、排他的な選択肢(すなわち、「一方又は他方であるが、両方ではない」)を示すものとしてのみ解釈され、特許請求の範囲で使用される場合、特許法の分野で使用される通常の意味を有するものとする。
【0259】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、1種以上のエレメントのリストに関して「少なくとも1種」という句は、エレメントのリスト内のエレメントの任意の1種以上から選択される少なくとも1種のエレメントを意味するが、必ずしもエレメントのリスト内に具体的に列挙されたありとあらゆるエレメントのうちの少なくとも1種を含むとは限らず、エレメントのリスト内のエレメントの任意の組合せを除外するとは限らないことを理解されたい。この定義はまた、「少なくとも1種の」という句が言及するエレメントのリスト内で具体的に特定されたエレメント以外のエレメントが、具体的に特定されたそれらのエレメントに関連するか関連しないかにかかわらず、任意選択的に存在し得ることを可能にする。したがって、非限定的例として、「A及びBのうちの少なくとも1種」(又は同等に、「A又はBのうちの少なくとも1種」、又は同等に、「A及び/又はBのうちの少なくとも1種」)は、一実施形態では、少なくとも1種、任意選択的に、2つ以上のAを含み、Bが存在しない(任意選択的に、B以外のエレメントを含む)場合、別の実施形態では、少なくとも1種の、任意選択的に2つ以上のBを含み、Aは存在しない(任意選択的にA以外のエレメントを含む)場合、更に別の実施形態では、少なくとも1種の、任意選択的に2つ以上を含むA、及び少なくとも1種の、任意選択的に2つ以上を含むB(及び任意選択的に他のエレメントを含む)場合などを指すことができる。など。
【0260】
また、そうではないと明確に示されない限り、2つ以上のステップ又は行為を含む、本明細書で特許請求される任意の方法では、方法のステップ又は行為の順序は、必ずしも、方法のステップ又は行為が列挙される順序に限定されないことを理解されたい。
【0261】
本明細書及び以下の実施例及び特許請求の範囲を通して、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(carrying)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「含む(involving)」、「保持する(holding)」、「構成される(composed of)」などの全ての移行句は、オープンエンドであり、すなわち、含むがこれらに限定されないことを意味すると理解されるべきである。具体的には、それは、述べられた整数若しくは工程又は整数若しくは工程の群の包含を意味するが、任意の他の整数若しくは工程又は整数若しくは工程の群の排除を意味しないことが理解されるべきである。United States Patent Office Manual of Patent Examining Proceduresに記載されているように、「からなる(consisting of)」及び「から本質的になる(consisting essentially of)」という移行句のみが、それぞれクローズド又はセミクローズドの移行句であるものとする。より具体的には、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語、及びそれらの活用形は、「含むが限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。「からなる(consisting of)」という用語は、「含み、限定される(including and limited to)」ことを意味する。「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、組成物、方法又は構造が、追加の成分、ステップ及び/又は部分を含み得るが、追加の成分、ステップ及び/又は部分が、特許請求される組成物、方法又は構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変更しない場合のみであることを意味する。
【0262】
本発明の様々な実施形態は、範囲形式で提示される場合があることに留意されたい。範囲形式での記載は、単に便宜及び簡潔さのためのものであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の記載は、具体的に開示された全ての可能な部分範囲並びにその範囲内の個々の数値を有すると考えられるべきである。例えば、1~6などの範囲の記載は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの部分範囲、並びにその範囲内の個々の数、例えば、1、2、3、4、5、及び6を具体的に開示しているとみなされるべきである。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。数値範囲が本明細書に示されるときはいつでも、示された範囲内の任意の引用された数字(分数又は整数)を含むことが意味される。第1の示された数と第2の示された数「の間の範囲(ranging/ranges between)」及び第1の示された数「から」第2の示された数「までの範囲(ranging/ranges from)」という句は、本明細書では互換的に使用され、第1及び第2の示された数並びにその間の全ての分数及び整数を含むことを意味する。
【0263】
本明細書中で使用される場合、「方法」という用語とは、所定のタスクを達成するための様式、手段、技術及び手順(化学的、薬理学的、生物学的、生化学的及び医学的分野の実施者に既知であるか、又は既知の様式、手段、技術及び手順から容易に開発されるかのいずれかの様式、手段、技術及び手順が挙げられるが、これらに限定されない)を指す。
【0264】
明確にするために別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供されてもよいことが理解される。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で記載されている本発明の様々な特徴はまた、別個に、又は任意の適切な下位組合せで、又は本発明の任意の他の記載された実施形態において適切であるように提供されてもよい。種々の実施形態の文脈において説明される特定の特徴は、実施形態がそれらの要素なしで動作不能でない限り、それらの実施形態の本質的な特徴とみなされるべきではない。
【0265】
上記で本明細書に描写され、以下の特許請求の範囲の項で特許請求される本発明の様々な実施形態及び態様は、以下の実施例において実験的裏付けがある。
【0266】
開示及び記載されているが、本発明は、本明細書に開示されている特定の例、方法工程及び組成物に限定されず、そのような方法工程及び組成物は幾分変化し得ることが理解されるべきである。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲及びその均等物によってのみ限定されるため、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明する目的でのみ使用され、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0267】
以下の実施例は、本発明の態様を実施する際に本発明者らによって使用される技術の代表例である。これらの技術は本発明の実施のための好ましい実施形態の例示であるが、当業者は、本開示を考慮して、本発明の趣旨及び意図される範囲から逸脱することなく、多くの改変がなされ得ることを認識することが理解されるべきである。
【実施例
【0268】
更に詳述することなく、当業者は、前述の説明を用いて、本発明を最大限に利用することができると考えられる。したがって、以下の好ましい具体的なの実施形態は、単なる例示として解釈されるべきであり、特許請求の範囲に記載された本発明を何ら限定するものではない。
【0269】
材料
以下の薬物は、ヒトUGT酵素によって代謝されることが示され、細菌GUS酵素によって潜在的に代謝され、影響を受ける。これらの薬物は、本開示において使用される(実施例6)。
【0270】
【表1-1】
【0271】
【表1-2】
【0272】
【表1-3】
【0273】
実験手順
GusR_K125A発現ベクター(DOINベクター)の構築:
pYF57骨格(配列番号1で示される)を制限酵素XbaI及びPsiIで消化し、市販のゲル抽出キットを用いてゲルから精製する。
【0274】
GusR_K125Aを合成し、その配列を検証する(核酸配列は配列番号2によって示される通りであり、アミノ酸配列は配列番号3によって示される通りである)。シーケンシングした標的は、XbaI及びPsiI制限部位に隣接する。
【0275】
GusR_K125A断片をXbaI及びPsiIで消化し、ゲルから精製する。
【0276】
GusR_K125Aを、標準的な実験室ライゲーション手順を用いてpYF57骨格にライゲーションする。
【0277】
陽性クローンをコロニーPCRによってスクリーニングし、正しいクローンをシーケンシングによって確認する。
【0278】
ファージ溶解物の生成:
ファージは、腸内E.coliGUS産生細菌集団を標的化するように設計される。
【0279】
大腸菌K12 BW25113株(DSM 27469)を、全てのタイプのファージの増殖のための宿主細胞として使用する。
【0280】
宿主細胞は、インタクトな活性ファージの増殖を促進するために、テール遺伝子(配列番号4によって示されるTC1又は配列番号5によって示されるTC20)をコードするプラスミドを有する。
【0281】
2つの異なる型の宿主細胞を使用して、2つの異なる型のファージベースの粒子を産生する。
i)GusR_K125Aを発現するDOINベクターを含有するファージの産生のために、宿主細胞は、パッケージングシグナルを有するプラスミド及び粒子中にパッケージングされたDOINコード配列も含有する(図1)。このプラスミドは標的細菌に形質導入される。
ii)選択ベクター(配列番号6によって示される核酸配列)を含有するファージの産生のために、宿主細胞はまた、粒子に充填されるパッケージングシグナル及び細菌毒素コード配列を有するプラスミドを含有する(図2)。このプラスミドは標的細菌に形質導入される。
【0282】
宿主細胞の一晩培養は、適切な抗生物質を補充したLB中で37℃で220RPMで撹拌しながら増殖させる。
【0283】
翌日、細胞をリフレッシュし、培養物を0.6のOD600に達するまで増殖させる。
【0284】
次いで、培養物を、およそ1の感染多重度(MOI)で、T7ヘルパーファージ(配列番号7によって示される核酸配列)で感染させる。使用したT7ヘルパーファージのゲノムは、ファージ尾部モジュールをコードする3つの必須構造遺伝子を欠いている。
【0285】
感染の3時間後、クロロホルムを培養物に添加し、続いて短時間ボルテックスする。
【0286】
溶解物力価は、他の箇所で既に記載されているように、形質導入形成単位(TFU)アッセイを使用して決定される。
【0287】
GUS活性に対するGusR_K125Aのin-vitro効果の決定:
2つの異なる細菌株を試験する:E.coliのK-12 BW25113及びE.coliのK12 MG1655(ATCC 700926)。これらの株は、ヒト腸にコロニーを形成し、GUSオペロンを有することが示された。
【0288】
産生された溶解物を使用して、上記の細菌宿主の各々を形質導入し、各株についての形質導入効率をTFUアッセイによって決定する。
【0289】
最も高い形質導入効率を示す株を、インビトロGUS活性アッセイのために選択する。
【0290】
GUS活性は、全ての必要なアッセイ対照を含めて、他の場所で以前に記載されたように実施する。簡単に説明すると、細菌培養物は0.6のOD600に達するまで増殖する。標的増殖期に達したら、培養物にGusR_K125A発現ベクターを形質導入する。1時間後、細菌培養物を、基質(PNPG)及びアッセイ緩衝液とともにアッセイ反応に加える。アッセイ反応物を37℃で6時間インキュベートし、GUSオペロンの活性を、410nmでの吸光度を測定することにより、加水分解産物(PNP)の存在によってモニターする。GUSオペロン比活性の任意単位は以下のように計算される:
【0291】
【数1】
【0292】
一連の追跡研究において、選択ベクターを使用して、経時的なGUS阻害細菌集団の濃縮を実証する。
【0293】
CTP-11がGUS阻害細菌の細胞傷害性を軽減したことを示す。
細菌(WT及びGUS阻害剤産生細菌)を増殖させ、上記のようにPNPGを用いて誘導する。誘導後、細菌を溶解し、抽出物をSN-38G又はPNPGとともにインキュベートする。インキュベーション期間の終わりに、PNPGでインキュベートした細菌抽出物を採取して、GUSの活性を測定する。並行して、SN-38Gとインキュベートした細菌抽出物をHT29細胞培養物に添加して、細胞毒性及びCC50を決定する。
【0294】
異なる試験項目のCC50を、MTTアッセイを使用して決定する。簡単に述べると、2×10個の生細胞/mlを含有する細胞懸濁液を96ウェルマイクロタイタープレートに播種する。48時間のインキュベーション後、培地を種々の化合物又は細菌抽出物を含有する培地と交換し、48時間曝露する。2mg/mlのMTT 50μlを各ウェルに添加することによってプレートを発色させ、更に3時間インキュベートする。プレートを450gで10分間遠心分離し、上清を注意深く吸引する。ホルマザン結晶を200μlのDMSOに溶解し、570nmでの吸光度を測定し、バックグラウンドを620nmで補正する。
【0295】
CTP-11毒性の軽減に対するGusR_K125Aのインビボ効果の決定:
適切な腸動物モデルを使用して、インビボ有効性を実証する。この目的のために、動物モデルを確立するために、2つの予備工程が行われる:(a)標的細菌細胞の慢性コロニー形成の確立及び;(b)、処置に使用されるファージシステム粒子の生物学的利用能の特徴付け。動物モデルが確立されたら、有効性試験を実施する。以下の2つのモデルが以下の実験工程で使用される。
Sprague Dawleyラット(250~290gr)及び約6~8週齢の雌Balb/cJマウス
各動物モデルにおいて、動物を4つの実験群に分ける:第1群-ビヒクル対照、第2群-GusR_K125A発現ベクターを含有するファージベースの粒子、及び所定のレジメンで選択ベクターを含有するファージベースの粒子による処置、群3-CPT-11注射CPT-11(50mg/kg/日)並びに群4-CPT-11注射及び上記のファージベースの粒子による処置。
-試験評価項目は、体重、下痢(皮膚の糞便染色、水様便の喪失)及び血性下痢(黒い粘着性の便)の臨床パラメータである。これらのパラメータは、中(11日間)モニターする。
-研究の終わりに、大腸試料を組織病理学的に検査し、各試料についての組織学的スコアを予め定義されたパラメータに従って決定する。
【0296】
実施例1
GusR_K125A変異体を用いたGUS活性の阻害
概念実証として、マイクロバイオームGUS酵素を使用し、細菌集団を操作し、それによって、改変された細菌集団を保有する処置される対象において薬物代謝を調節する本開示の能力を実証した。CPT-11の代謝の調節を最初に試験する。CPT-11(イリノテカン)は、結腸がんに対して一般に使用される3つの化学療法剤のうちの1種である。CPT-11は、肝臓においてカルボキシルエステラーゼ(CE)によって、抗腫瘍性トポイソメラーゼI毒であるSN-38に活性化されるプロドラッグである。肝臓SN-38は、UDP-グルクロノシルトランスフェラーゼ(UGT)酵素によってSN-38Gに不活性化され、腸に送られる。一旦腸に入ると、SN-38Gは、in situでSN-38を再活性化するGUS酵素の基質として働き、そして腸管腔中の活性なSN-38は、CPT-11用量制限副作用を生じる。
【0297】
GUSはgusA遺伝子の産物であり、これはGUSオペロンにおいて、内膜GlcA特異的輸送体gusb及び非特異的外膜チャネルgusC遺伝子が続く。EnterobacteriaceaeのGUSオペロンは、転写リプレッサーGusRの制御下にある。Escherichia、Salmonella、Klebsiella、Yersinia、及びShigella分類群を含むヒト消化管関連ProteobacteriaのEnterobacteriaceae科のみが、GUSオペロンを維持する。
【0298】
より具体的には、GusRをコードするEnterobacteriaceae分類群の全てのシーケンシングした株が、切断型GUSオペロン遺伝子を有する1種のKlebsiella株及び2つのShigella株を除いて、完全なオペロンを維持するので、GUSオペロンは、普遍的ではないが、大部分がヒト腸関連Enterobacteriaceaeにおいて保持される。
【0299】
GusRの結晶構造が決定され、タンパク質構造及び機能に重要なドメインが特徴付けられた。GusRは、リガンドの非存在下でDNA結合転写リプレッサーとして作用し、一旦適切なグルクロニドリガンドが存在するとDNAから放出されることが見出された。in vitro研究は、GusRの放出がGUSオペロンを抑制解除し、gusA発現及びGUS酵素の増加を可能にすることを示す(図3A~3B)。
【0300】
種々のGusR変異体の活性分析は、カルボキシレート接触残基のアラニンによるリジンの置き換え[K125A](配列番号8で示される核酸配列によってコードされる、配列番号9で示されるアミノ酸配列を含む)]が、GUSリガンドに対して有意に低い親和性を有するGusRバリアントを産生することを明らかにする。更に、K125A GusRバリアントの発現プラスミドを含有する細菌細胞は、1mMのPNPG(リガンド結合GUS)で誘導された場合でさえ、GUS活性を示さないことが示された。GUSは、リガンドの存在下で空ベクターを有する細胞において活性であったので(内因性GusRに起因して)、K125AバリアントによるGUS活性の抑制は、それらの内因性GusRタンパク質をなお保持する細胞において優性陰性である(図3C)。
【0301】
CPT-11誘導性腸毒性を低減し、CPT-11の処置有効性を妨げず、天然微生物叢を破壊しない、強力かつ特異的なGUS阻害剤は、大きな臨床的価値がある。更に、E.coliのGUSは、グリコサミノグリカンの分解のための重要なリソソーム酵素であるヒトGUSに対する高度に保存された活性部位と50%のアミノ酸配列同一性を共有する。したがって、ヒトGUSではなく細菌GUSを特異的に阻害することも重要である。
【0302】
本開示のシステムの2つの成分のための送達ビヒクルとして特定のファージベースの粒子を使用して、ドミナントネガティブGUS変異体バリアントサプレッサー(GUS_K125A)を有するGUS発現腸内細菌細胞を実施した。したがって、GUS腸活性を不活性化するドミナントネガティブ変異体の発現は、腸における微生物GUS媒介性SN-38再活性化を減少させる(図3C)。
【0303】
したがって、以下の工程を実施した。
-GusR_K125A発現ベクター、並びに少なくとも1種のCRISPRアレイ(本開示によって調節成分とも呼ばれる)を含有する形質導入粒子は、GI管に送達され、そこでそれらはGUS産生宿主細胞(例えば、E.coli細胞)を特異的に標的化する。
-標的宿主細(例えば、E.coli)は、GusR_K125A発現ベクターで形質導入され、これはGUSオペロンの転写抑制をもたらす。
-GusR_K125A発現ベクターを含有する粒子による処理後、標的細胞によるGUSオペロンの抑制を維持するための選択圧は、選択成分(例えば、毒性エレメントをコードするが、調節成分のCRISPRアレイによって認識される少なくとも1種のプロトスペーサーも含むファージベースの粒子)による処理によって達成される。
-GusR_K125A酵素及びCRISPRアレイを保持する宿主細胞のみが、選択的粒子の致死的攻撃を生き延びる。
-GUS抑制細菌集団に有利に働く選択圧を使用する反復濃縮サイクルは、腸におけるGUS産生の抑制をもたらし、SN-38 GUS媒介毒性を軽減する。
【0304】
GusR_K125A変異体を用いたGUS活性の阻害
次に、本発明者らは、GusR_K125A変異体を用いたGUS活性の阻害を評価した。より具体的には、2つのE.coli細菌宿主:BW25113及びMG1655を使用した。変異体リプレッサーK125Aを発現するプラスミドを、これらの宿主(BW25113 K125A及びMG1655 K125A)のそれぞれに導入した。GUSオペロンの活性は、GUSオペロン誘導物質PNPGの非存在下(-)又は存在下(+)で測定した。比単位を上記のように計算した。図4によって示されるように、GUS活性は、2つの細菌宿主においてドミナントネガティブ変異体リプレッサーK125Aの存在下で阻害される。
【0305】
本発明者らは次に、追加のマイクロバイオーム単離物においてGUS酵素活性を阻害するGusR変異体の能力を評価した。したがって、次に、E.coliのMG1655及びNissle1917株を調べた。開示されたシステムの意図した使用に関連して、両方の株がヒトマイクロバイオーム中に存在することが見出されたので、これらの株を試験のために選択した[Wallace BD,W.H.(2010),Science,Nov 5;330(6005):831-5;Turnbaugh PJ,L.R.-L.(2007)Nature.,Oct 18;449(7164):804-10)。更に、Nissle1917はマイクロバイオームモデル生物と考えられており、生物学的治療薬として臨床的に調査されている[U.,S.(2016)FEMS Microbiol Lett.Oct;363(19):fnw212]。
【0306】
図5は、K125A GusR変異体が、両方の細菌株においてもGUS活性を有意に阻害することを示す(8分の1~18分の1の減少)。
【0307】
これらの結果は、細胞の有効かつ成功したターゲティングを明確に実証し、GUS基質の代謝を改変する実現可能性を確立する。より重要なことに、これらの結果は、K125A GusR変異体が、ヒトマイクロバイオームにおける共生細菌である種々の宿主において適用可能であることを確認し、それによって、開示されたシステムの潜在的な治療用途を確立する。
【0308】
上に示したように、本発明者らはまず、GusR変異体の標的細胞への送達の成功を確立し、GusR_K125A変異体を保有する細菌細胞におけるGUS活性の有効な阻害を実証した。より具体的には、ファージベースの粒子溶解物を上記のように調製した。上記に示した細菌宿主に対する粒子の形質導入効率を、以前に記載したようにTFUアッセイを使用して決定し、表2に示した。形質導入に使用されるテールは、TC1(配列番号4によって示されるTC1)である。
【0309】
【表2】
【0310】
図6は、マイクロバイオーム単離物への調節性GusR変異体-CRISPRペイロードの別の成功した形質導入を実証する。異なるマイクロバイオーム宿主株へのTBX201ペイロードの形質導入効率を、上記のようにTFUアッセイを使用して決定した。
【0311】
実施例2
細菌GUS酵素は、2つの更なるGusR変異バリアントによって阻害される
GusRの異なるバリアントの阻害能力を評価するために、E.coliのGusRリプレッサータンパク質の2つの更なる改変体であるR73A変異体(配列番号12によって示される核酸配列によってコードされる、配列番号13によって示されるアミノ酸配列を含む)及びY164F変異体(配列番号10によって示される核酸配列によってコードされる、配列番号11によって示されるアミノ酸配列を含む)を、次に構築した。これらの2つの変異体は、GUSオペロン調節領域に対して異なる親和性を示す。より具体的には、これらの2つの変異体バリアントは、GUS基質に対してより高い親和性を有すると予想されるので、より低い阻害能力が予想される。両方の更なる変異体は、糖細菌代謝に対してより穏やかな効果を示すので、形質導入された細菌の適応性を改善するための手段として試験した。図7は、R73A変異体は両方の試験細菌においてGUS酵素を有意に阻害するが(8~386倍の減少)、Y164F変異体の阻害能力は株依存性であることを示す。具体的には、BW25113細菌では、GUS活性は34倍減少したが、MG1655細菌では、活性は約1.5倍減少しただけであった。これらの知見は、MG1655細菌におけるY164F変異体の阻害の減少が、K125A変異体と比較して、Y164F変異体のより強い基質親和性に起因し得ることを示す。
【0312】
実施例3
in-vitro PoCでの細菌集団の変換の成功
in-vitroでのGUS阻害細菌集団の99%超の持続的変換を実証するために、本開示のシステムを利用して、標的細菌におけるGUSを阻害し、所望のGUS阻害集団を有する細菌培養物を濃縮した。
【0313】
より具体的には、本開示のプラットフォーム本明細書ではシステムとも称される)は、2つの形質導入粒子(例えば、ファージ)で提供される2つの成分、調節成分(本明細書では「GusR変異体-CRISPR」又は「CRISPR」とも称される)、及び選択成分(本明細書では「選択的」とも称される)から構成され、これらは順次使用される(図8A)。第1の工程において、「CRISPR」ファージは、細菌GUSを阻害し、CRISPRシステムを発現するGusR変異体ペイロードを形質導入する。その後、「選択的」成分ファージを使用して、GusR変異体ペイロードで形質導入されなかった残りの細菌を死滅させる。調節性成分中のGusR CRISPRシステムは、GusR変異体ペイロードとともに、形質導入に成功した細菌を「選択的」ファージから保護する。このシステムは、GUS阻害細菌で濃縮された細菌集団を生じる。
【0314】
このシステムのPoCを図8B、8Cに示す。中間指数関数的BW25113細菌培養物を、GusR変異体をコードする調節成分及びCRISPRアレイ(本明細書では「CRISPR」ファージとも呼ばれる)とともに、0時間の時点でインキュベートした。2時間後、2時間の時点で、培養物中の細菌の約0.1%がGusR変異体-CRISPRペイロードを含有し、GUS阻害された。2時間及び24時間の時点で、「選択的」ファージを使用して、「GusR変異体-CRISPRファージ」によって形質導入されなかった残りのGUS発現細菌を選択的に死滅させた。「選択的」ファージによる選択的死滅は、所望の細菌集団を濃縮し、持続的なGUS阻害細菌培養物をもたらした。図8Bに示されるように、研究の最後に(48時間の時点)、細菌集団の大部分(>99%)は、GUS阻害細菌から構成された。
【0315】
本発明の調節成分、「CRISPR」ファージによって最初に形質導入された細菌集団のわずか0.1%であるという事実にもかかわらず、開示されたプラットフォームは、所望のGUS阻害細菌集団を首尾よく選択及び濃縮したことに留意すべきである。したがって、細菌集団の大部分への「CRISPR」ファージの形質導入、及び「選択的」ファージの反復使用は、有効性を最大化する。
【0316】
細菌集団の変換が細菌GUS酵素活性にどのように影響するかを決定するために、変換の前後に培養物を試験した。図8Cに示すように、変換前の細菌培養物と比較して、変換後の細菌培養物においてGUS活性の有意な減少(16分の1)が観察された。
【0317】
これらの結果は、細菌集団の有効な変換及び形質導入された細菌株の酵素によって示される酵素活性の操作の成功を実証し、それによって、マイクロバイオーム集団の組成及び機能を調節する。
【0318】
実施例4
細菌におけるGUS阻害は、イリノテカン細胞毒性を首尾よく減少させる
標的細菌宿主における細菌GUSの阻害が不活性化SN38Gの活性SN38形態への変換を防止することを実証するために、実験基質PNPGの代わりに反応基質としてSN38Gを使用して、上記のようにGUSアッセイを行った。試料中の細菌GUSによるSN38GからSN38への変換速度は、反応条件(例えば、GUS酵素活性、基質濃度など)に依存し、したがって、得られた試料は、異なる濃度のSN38を含有した。次いで、試料をHL29、ヒト結腸直腸腺がん細胞株とともにインキュベートし、細胞の生存率を決定した。異なる濃度のSN38G及び細菌を試験して、SN38の細胞毒性に対するそれらの効果を評価した。図9は、異なるSN38G濃度を使用した、細胞生存率に対する細菌GUS阻害の効果を示す。最も高いSN38G濃度を使用した場合(1μM)では、ベクター発現細菌とインキュベートした細胞は死滅したが、同じ濃度で、K125A発現細菌とインキュベートした細胞の60%がレスキューされた。SN38Gの濃度が減少するにつれて、細胞の生存率は増加したが、全ての場合において、細胞生存率は、空ベクター発現細菌とインキュベートした細胞と比較して、K125A発現細菌由来の試料とインキュベートした場合に、より高かった。最も低いSN38G濃度(0.1μM)、K125A GusR発現細菌から得られた試料とともにインキュベートしたH29T細胞。これらのサンプルとの細胞のインキュベーションは、それらがSN38の毒性効果から完全に救済されたことを明らかにした。
【0319】
この研究は、調節性成分、具体的にはGusR変異体K125Aによる細菌GUSの阻害が、不活性化イリノテカン代謝産物SN-38Gの、細胞に対して毒性効果を示す活性SN-38代謝産物への変換を妨げ、それによってヒト細胞に対するSN-38の細胞毒性効果を低減することを実証した。更に、これらの結果は、SN-38細胞傷害性から細胞を救出する能力が細菌反応におけるSN-38Gの初期濃度に依存し、細菌GUSの基質としてより多くのSN-38Gが使用されるほど、酵素によってより多くのSN-38に変換され、したがって、試料が細胞に対してより毒性であることを示す。
【0320】
SN-38Gの変換率及び細胞生存率に対する細菌濃度、したがってGUS酵素濃度の影響も調べた。このアッセイでは、SN-38G(1μM)を添加する前に、細菌を希釈して、異なるGUS濃度を試験した。
【0321】
図10に示すように、最も高い細菌濃度を使用した場合(非希釈)、図9に示したのと同じ条件で試験した場合、同じ結果が得られた(SN38G1μM)。細菌濃度がより希釈されると(すなわち、GUSがより希釈されると)、K125A発現細菌試料とともにインキュベートした細胞の生存率は増加したが、ベクター発現細菌試料とともにインキュベートした細胞は生存しなかった。SN38毒性から細胞のほぼ100%を著しくレスキューする最大効果は、細菌が6倍希釈された場合に達成された。
【0322】
マウスにおいて、SN38のピーク濃度は約1μg/gr組織重量であることが見出され、80mg/kgの用量でイリノテカンを投与してから2時間後に到達した(Li K,Wang S.s.l.:AAPS PharmSciTech.,2016,Vols.Dec;17(6):1450-1456)。マウスの大腸の重量が約1grであることを考慮に入れ(Ogiolda L,Wanke R,Rottmann O,Hermanns W,Wolf E.s.l.:Anat Rec.,1998,Vols.Mar;250(3):292-9)、腸SN38の総量は1μgであり、ここで使用されたその基質SN38Gの量のおよそ2倍である。更に、腸内の標的細菌の濃度(腸内容物1gr当たり約10個の細菌)は、上記の実験で使用したものと同様である(1mL当たり10個の細菌)。(Macfarlane GT,Macfarlane S,Gibson GR.s.l.:Microb Ecol.,1998,Vols.Mar35(2):180-7)本明細書においてin-vitroで試験された実験条件は、in-vivoで動物の腸で生じるものにかなり類似していると仮定することが妥当である。
【0323】
K125Aサンプルの軽減された細胞毒性が実際にこれらの細菌におけるGUSの阻害から生じたことを確認するために、GUSアッセイを上記のように実施し、これらのサンプルにおける酵素の活性を試験した。実際、K125A発現細菌におけるGUS比活性は、空ベクター発現細菌におけるよりも約10倍低かった。
【0324】
まとめると、本明細書で実証されるように、本開示の調節成分による細菌GUSの阻害は、SN38Gの、イリノテカンの毒性代謝産物であるSN38(イリノテカン)への変換を防止することによって、ヒト細胞株におけるイリノテカン細胞毒性を低減した。更に、イリノテカン毒性の軽減は、細菌GUS阻害の能力によって用量依存的であることが示された。
【0325】
実施例5
開示されたシステムの有効性-in vivo動物モデル
イリノテカン(CPT-11)毒性に対する本開示のシステムの効果を評価するための周知の動物モデルを使用する[Wang H,et l.,Science,2010,Vols.Nov 5;330(6005):831-5;Bhatt AP,et al.]。簡潔には、Sprague Dawleyラット(250~290gr)を、以下の研究群(n=8)に無作為に割り当てる:群1、CPT-11なし、及び本開示の調節システムなし;群2、CPT-11及び本開示の調節システムなし;群3、CPT-11を含まず、本開示の調節システムを含む;群4、CPT-11及び本開示の調節システムを用いる。全ての群のラットを順応させる。
【0326】
ファージの直接投与を可能にするために、シラスティックチューブ(カニューレ)を腸切開術によりマウスの空腸に挿入する。動物を手術から回復させ、次いで、ビヒクル又はJeBioファージを、連続3日間、1日1回、Trobixカニューレを通してGI管に直接投与する。次いで、CPT-11(50mg/kg/日)又は生理食塩水を10日間連続して腹腔内注射する。
【0327】
ラットを下痢の徴候、体重及び食物消費について毎日モニターする。
【0328】
0~3の範囲の下痢重症度の等級付け指数を使用する:
0-固形便(すなわち、普通便)を示す。
1-わずかに湿った柔らかい便(わずかな下痢)を示す。
2-被膜の中等度の肛門周囲染色(中等度の下痢)を伴う湿った未形成の便を示す。
3-被膜の重度の肛門周囲染色を伴う水様便(重度の下痢)を示す。
【0329】
研究終了時に、屠殺後、空腸、回腸、及び結腸試料を採取し、固定する。調製したスライドを組織病理学的評価のために染色する。
【0330】
実施例6
GUS代謝薬物、in vitro及びin vivo実験
ヒトムUGT酵素によって代謝され、マイクロバイオームGUS酵素によって潜在的に影響を受ける可能性のある医薬品の例は、それらの治療カテゴリーとともに、上記表1に詳述される。
【0331】
実施例4及び5のイリノテカンについて記載されるようなin vitro細胞傷害性アッセイ及びin vivo動物研究を、以下のGUS基質薬物のそれぞれについて行った:アバカビル、アセメタシン、アセトアミノフェン、アンブリセンタン、アルテニモール、アセナピン、アトルバスタチン、アキシチニブ、ビクテグラビル、ブプレノルフィン、カナグリフロジン、カンデサルタン、カンデサルタンシレキセチル、カルバマゼピン、ケノデオキシコール酸、クロザピン、コデイン、シプロヘプタジン、ダビガトランエテキシレート、ダパグリフロジン、デフェリプロン、デラフロキサシン、ジクロフェナック、ジフルニサル、ドルテグラビル、エルトロンボパグ、エナジデニブ、エンタカポン、エピルビシン、エルロチニブ、エルツプラジン、エストラジオール、酢酸エストラジオール、エストラジオールベンゾエート、エストラジオールシピオネート、エストラジオールジエナンテート、吉草酸エストラジオール、エトドラク、エトポシド、エゼチミブ、エゾガビン、フルニトラゼパム、フルルビプロフェン、フルバスタチン、グレカプレビル(Glecaprevir)、ハロペリドール、ヒドロモルホン、イブプロフェン、イミダフェナシン、インダカテロール、インドメタシン、イルベサルタン、イリノテカン、イサブコナゾール、ケトベミドン、ラモトリジン、レテルモビル、リコフェロン、ロラゼパム、ロサルタン、ロバスタチン、ルミラコキシブ、ミダゾラム、ミチグリニド、モルヒネ。硫酸モルヒネ、ムラグリタザル、ミコフェノール酸モフェチル、ミコフェノール酸、ナルデメジン、ナルメフェン、ナルトレキソン、ナプロキセン、ナテグリニド、オキサゼパム、パリカルシトール、ピブレンタスビル、ピタバスタチン、プロポフォール、ラルテグラビル、レゴラフェニブ、リファンピシン、ルカパリブ、セラトロダスト、シロドシン、シムバスタチン、ソラフェニブ、スルファメトキサゾール、スプロフェン、タモキシフェン、タペンタドール、プロピオン酸テストステロン、トピロキソスタット、トリフルオペラジン、トログリタゾン、バジメザン、バルデコキシブ、バルプロ酸、ザルトプロフェン、ジドブジン又はジレウトンもまた表1に開示される。
【0332】
以下の表3は、添付の配列表における本開示によって開示される全ての配列を列挙する。
【0333】
【表3】
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10
【配列表】
2024529014000001.xml
【国際調査報告】