(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】ガンマデルタT細胞及びその組成物の操作
(51)【国際特許分類】
C12N 5/10 20060101AFI20240725BHJP
C12N 15/62 20060101ALI20240725BHJP
C12N 15/867 20060101ALI20240725BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20240725BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240725BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240725BHJP
C12N 15/19 20060101ALN20240725BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C12N15/62 Z
C12N15/867 Z
C12N15/09 Z
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/19
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506857
(86)(22)【出願日】2022-08-03
(85)【翻訳文提出日】2024-02-02
(86)【国際出願番号】 GB2022052039
(87)【国際公開番号】W WO2023012475
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519391608
【氏名又は名称】ガンマデルタ セラピューティクス リミティッド
【氏名又は名称原語表記】GAMMADELTA THERAPEUTICS LTD
【住所又は居所原語表記】1 Kingdom Street, W2 6BD London, United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100200849
【氏名又は名称】芦田 文人
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】コヴァックス、イストヴァン
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
(57)【要約】
本発明は、ウイルスベクター(例えば、ベータレトロウイルス偽型及びレトロウイルス科ウイルスベクター骨格を有するウイルスベクター)を用いた形質導入によってγδ T細胞(例えば、vδ1 T細胞及びvδ2 T細胞)を操作する方法を提供する。操作されたγδ T細胞の組成物及び同組成物を使用する方法がさらに提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作されたγδ T細胞の集団を産生する方法であって、ベータレトロウイルス偽型及びレトロウイルス科ウイルスベクター骨格を含むウイルスベクターでγδ T細胞の集団を形質導入することを含む、方法。
【請求項2】
前記ベータレトロウイルス偽型が、ヒヒ内因性ウイルス(BaEV)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ベータレトロウイルス偽型が、RD114である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記レトロウイルス科ウイルスベクター骨格が、レトロウイルスベクター骨格である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記レトロウイルスベクター骨格が、レンチウイルス骨格である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記レトロウイルスベクター骨格が、ガンマレトロウイルス骨格である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記レトロウイルスベクター骨格が、アルファレトロウイルス骨格である、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記操作されたγδ T細胞が、Vδ1 T細胞である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記操作されたγδ T細胞が、Vδ2 T細胞である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記操作されたγδ T細胞が、非Vδ1/Vδ2 T細胞である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記ウイルスベクターが、導入遺伝子を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記導入遺伝子が、細胞表面受容体をコードする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記細胞表面受容体が、キメラ抗原受容体(CAR)である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記CARが、CD19、CD20、ROR1、CD22、がん胎児性抗原、アルファフェトタンパク質、CA-125、5T4、MUC-1、上皮腫瘍抗原、前立腺特異的抗原、黒色腫関連抗原、変異p53、変異ras、HER2/Neu、葉酸結合タンパク質、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gpl20、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp41、GD2、CD123、CD33、CD138、CD23、CD30、CD56、c-Met、メソテリン、GD3、HERV-K、IL-llRアルファ、カッパ鎖、ラムダ鎖、CSPG4、ERBB2、EGFRvIII、VEGFR2、組み合わせでのHER2-HER3、組み合わせでのHER1-HER2、NY-ESO-1、滑膜肉腫X切断点2(SSX2)、黒色腫抗原(MAGE)、T細胞によって認識される黒色腫抗原1(MART-1)、gp100、前立腺特異的抗原(PSA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、g9d2、またはそれらの組み合わせを標的とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記導入遺伝子が、サイトカインをコードする、請求項11~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記サイトカインが、分泌型である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記サイトカインが、膜結合型である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記サイトカインが、IL-15である、請求項15~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
操作されたγδ T細胞の集団を産生する方法であって、
(i)γδ T細胞の出発集団を提供することと、
(ii)ウイルスベクターの非存在下で第1の培養期間にわたって前記γδ T細胞の出発集団を培養して、プライミングされたγδ T細胞の集団を産生することと、
(iii)前記プライミングされたγδ T細胞の少なくとも3%を形質導入するために有効な量でベータレトロウイルス偽型を含むウイルスベクターの存在下で第2の培養期間にわたって前記プライミングされたγδ T細胞の集団を培養し、それによって、前記操作されたγδ T細胞の集団を産生することと、を含む、方法。
【請求項20】
前記第1の培養期間が、1日間以上である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記第1の培養期間が、2日間以上である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記第2の培養期間が、2日間以上である、請求項19~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記第2の培養期間が、3日間以上である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記プライミングされたγδ T細胞の集団が、ASCT-1及び/またはASCT-2を発現する、請求項19~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記プライミングされたγδ T細胞の集団が、VSV-G侵入受容体の機能的発現を欠く、請求項19~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記ウイルスベクターが、前記プライミングされたγδ T細胞の少なくとも20%を形質導入するために有効な量である、請求項19~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
前記ウイルスベクターが、10以下の感染の多重度(MOI)において前記プライミングされたγδ T細胞と培養される、請求項19~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
前記MOIが、5以下である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記MOIが、1~5である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
操作されたγδ T細胞の集団を産生する方法であって、
(i)γδ T細胞の出発集団を提供することと、
(ii)IL-15、及び前記γδ T細胞の出発集団の少なくとも3%を形質導入するために有効な量でベータレトロウイルス偽型を含むウイルスベクターの存在下で、前記γδ T細胞の出発集団を培養し、それによって、前記操作されたγδ T細胞の集団を産生することと、を含む、方法。
【請求項31】
前記γδ T細胞の出発集団が、ASCT-1またはASCT-2の発現を欠く、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記γδ T細胞の出発集団が、ASCT-1及びASCT-2の発現を欠く、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記γδ T細胞の出発集団が、ASCT-1及び/またはASCT-2を発現する、請求項30~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記γδ T細胞の出発集団が、VSV-G侵入受容体の発現を欠く、請求項30~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
前記VSV-G侵入受容体が、LDL受容体である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記ウイルスベクターが、10以下のMOIにおいて前記γδ T細胞の出発集団と培養される、請求項30~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記MOIが、1~10である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記MOIが、5以下である、請求項35~37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
前記MOIが、1~5である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記ベータレトロウイルス偽型が、BaEVである、請求項19~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
前記ベータレトロウイルス偽型が、RD114である、請求項19~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項42】
前記ウイルスベクターが、レトロウイルス科ウイルスベクター骨格を含む、請求項19~41のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
前記レトロウイルス科ウイルスベクター骨格が、レトロウイルスベクター骨格である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記レトロウイルスベクター骨格が、レンチウイルス骨格である、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記レトロウイルスベクター骨格が、ガンマレトロウイルス骨格である、請求項43に記載の方法。
【請求項46】
前記レトロウイルスベクター骨格が、アルファレトロウイルス骨格である、請求項43に記載の方法。
【請求項47】
前記操作されたγδ T細胞が、Vδ1 T細胞である、請求項19~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
前記操作されたγδ T細胞が、Vδ2 T細胞である、請求項19~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
前記操作されたγδ T細胞が、非Vδ1/Vδ2 T細胞である、請求項19~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
前記ウイルスベクターが、導入遺伝子を含む、請求項19~49のいずれか1項に記載の方法。
【請求項51】
前記導入遺伝子が、細胞表面受容体をコードする、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記細胞表面受容体が、CARである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記CARが、CD19、CD20、ROR1、CD22、がん胎児性抗原、アルファフェトタンパク質、CA-125、5T4、MUC-1、上皮腫瘍抗原、前立腺特異的抗原、黒色腫関連抗原、変異p53、変異ras、HER2/Neu、葉酸結合タンパク質、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gpl20、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp41、GD2、CD123、CD33、CD138、CD23、CD30、CD56、c-Met、メソテリン、GD3、HERV-K、IL-llRアルファ、カッパ鎖、ラムダ鎖、CSPG4、ERBB2、EGFRvIII、VEGFR2、組み合わせでのHER2-HER3、組み合わせでのHER1-HER2、NY-ESO-1、SSX2、MAGE、MART-1、gp100、PSA、PSMA、PSCA、g9d2、またはそれらの組み合わせを標的とする、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記導入遺伝子が、サイトカインをコードする、請求項50~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記サイトカインが、分泌型である、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記サイトカインが、膜結合型である、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記サイトカインが、IL-15である、請求項54~56のいずれか1項に記載の方法。
【請求項58】
CARを発現するγδ T細胞の集団を産生する方法であって、
(i)前記CARをコードする導入遺伝子と、
(ii)ベータレトロウイルス偽型と、
(iii)レトロウイルス科ウイルスベクター骨格と、を含む、ウイルスベクターでγδ T細胞の集団を形質導入することを含む、方法。
【請求項59】
CAR及びアーマータンパク質を発現するγδ T細胞の集団を産生する方法であって、
(i)前記CARをコードする第1の導入遺伝子と、
(ii)前記アーマータンパク質をコードする第2の導入遺伝子と、
(iii)ベータレトロウイルス偽型と、
(iv)レトロウイルス科ウイルスベクター骨格と、を含む、ウイルスベクターでγδ T細胞の集団を形質導入することを含む、方法。
【請求項60】
前記アーマータンパク質が、サイトカインである、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記サイトカインが、分泌型である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記サイトカインが、膜結合型である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記サイトカインが、IL-15である、請求項60~62のいずれか1項に記載の方法。
【請求項64】
前記ベータレトロウイルス偽型が、BaEVである、請求項58~63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
前記ベータレトロウイルス偽型が、RD114である、請求項58~63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
前記レトロウイルス科ウイルスベクター骨格が、レトロウイルスベクター骨格である、請求項58~65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
前記レトロウイルスベクター骨格が、レンチウイルス骨格である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記レトロウイルスベクター骨格が、ガンマレトロウイルス骨格である、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
前記レトロウイルスベクター骨格が、アルファレトロウイルス骨格である、請求項66に記載の方法。
【請求項70】
前記γδ T細胞が、Vδ1 T細胞である、請求項58~69のいずれか1項に記載の方法。
【請求項71】
前記γδ T細胞が、Vδ2 T細胞である、請求項58~69のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
前記γδ T細胞が、非Vδ1/Vδ2 T細胞である、請求項58~69のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
CARを発現するγδ T細胞の集団を産生する方法であって、
(i)γδ T細胞の出発集団を提供することと、
(ii)ウイルスベクターの非存在下で第1の培養期間にわたって前記γδ T細胞の出発集団を培養して、プライミングされたγδ T細胞の集団を産生することと、
(iii)ベータレトロウイルス偽型、及び前記CARをコードする導入遺伝子を含むウイルスベクターの存在下で、第2の培養期間にわたって前記プライミングされたγδ T細胞の集団を培養し、前記ウイルスベクターが、前記プライミングされたγδ T細胞の少なくとも3%を形質導入するために有効な量であり、それによって、前記CARを発現するγδ T細胞の集団を産生する、方法。
【請求項74】
CAR及びアーマータンパク質を発現するγδ T細胞の集団を産生する方法であって、
(i)γδ T細胞の出発集団を提供することと、
(ii)ウイルスベクターの非存在下で第1の培養期間にわたって前記γδ T細胞の出発集団を培養して、プライミングされたγδ T細胞の集団を産生することと、
(iii)ベータレトロウイルス偽型、前記CARをコードする第1の導入遺伝子、及び前記アーマータンパク質をコードする第2の導入遺伝子を含むウイルスベクターの存在下で、第2の培養期間にわたって前記プライミングされたγδ T細胞の集団を培養し、前記ウイルスベクターが、前記プライミングされたγδ T細胞の少なくとも3%を形質導入するために有効な量であり、それによって、前記CAR及び前記アーマータンパク質を発現するγδ T細胞の集団を産生する、方法。
【請求項75】
前記アーマータンパク質が、サイトカインである、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記サイトカインが、分泌型である、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記サイトカインが、膜結合型である、請求項75に記載の方法。
【請求項78】
前記サイトカインが、IL-15である、請求項74~77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
前記第1の培養期間が、7日間以上である、請求項73~78のいずれか1項に記載の方法。
【請求項80】
前記第1の培養期間が、10日間以上である、請求項79に記載の方法。
【請求項81】
前記第2の培養期間が、7日間以上である、請求項73~80のいずれか1項に記載の方法。
【請求項82】
前記第2の培養期間が、14日間以上である、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記プライミングされたγδ T細胞の集団が、ASCT-1及び/またはASCT-2を発現する、請求項73~82のいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
前記プライミングされたγδ T細胞の集団が、VSV-G侵入受容体の機能的発現を欠く、請求項78~83のいずれか1項に記載の方法。
【請求項85】
前記ウイルスベクターが、前記プライミングされたγδ T細胞の少なくとも20%を形質導入するために有効な量である、請求項73~84のいずれか1項に記載の方法。
【請求項86】
前記ウイルスベクターが、10以下のMOIにおいて前記プライミングされたγδ T細胞と培養される、請求項73~85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
前記MOIが、5以下である、請求項86に記載の方法。
【請求項88】
前記MOIが、1~5である、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
CARを発現するγδ T細胞の集団を産生する方法であって、
(i)γδ T細胞の出発集団を提供することと、
(ii)IL-15、ならびにベータレトロウイルス偽型及び前記CARをコードする導入遺伝子を含むウイルスベクターの存在下で、前記γδ T細胞の出発集団を培養し、前記ウイルスベクターが、前記γδ T細胞の出発集団の少なくとも3%を形質導入するために有効な量であり、それによって、前記CARを発現する操作されたγδ T細胞の集団を産生することと、を含む、方法。
【請求項90】
CAR及びアーマータンパク質を発現するγδ T細胞の集団を産生する方法であって、
(i)γδ T細胞の出発集団を提供することと、
(ii)IL-15、ならびにベータレトロウイルス偽型、前記CARをコードする第1の導入遺伝子、及び前記アーマータンパク質をコードする第2の導入遺伝子を含むウイルスベクターの存在下で、前記γδ T細胞の出発集団を培養し、前記ウイルスベクターが、前記γδ T細胞の出発集団の少なくとも3%を形質導入するために有効な量であり、それによって、前記CARを発現する操作されたγδ T細胞の集団を産生することと、を含む、方法。
【請求項91】
前記アーマータンパク質が、サイトカインである、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記サイトカインが、分泌型である、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記サイトカインが、膜結合型である、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記サイトカインが、IL-15である、請求項91~93のいずれか1項に記載の方法。
【請求項95】
前記γδ T細胞の出発集団が、ASCT-1またはASCT-2の発現を欠く、請求項89~94のいずれか1項に記載の方法。
【請求項96】
前記γδ T細胞の出発集団が、ASCT-1またはASCT-2の発現を欠く、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記操作されたγδ T細胞集団が、ASCT-1及び/またはASCT-2を発現する、請求項89~96に記載の方法。
【請求項98】
前記γδ T細胞の出発集団が、VSV-G侵入受容体の機能的発現を欠く、請求項89~97のいずれか1項に記載の方法。
【請求項99】
前記VSV-G侵入受容体が、LDL受容体である、請求項98に記載の方法。
【請求項100】
前記ウイルスベクターが、10以下のMOIにおいて前記γδ T細胞の出発集団と培養される、請求項89~99のいずれか1項に記載の方法。
【請求項101】
前記MOIが、5以下である、請求項100に記載の方法。
【請求項102】
前記MOIが、1~5である、請求項101に記載の方法。
【請求項103】
前記ベータレトロウイルス偽型が、BaEVである、請求項73~102のいずれか1項に記載の方法。
【請求項104】
前記ベータレトロウイルス偽型が、RD114である、請求項73~102のいずれか1項に記載の方法。
【請求項105】
前記ウイルスベクターが、レトロウイルス科ウイルスベクター骨格を含む、請求項73~104のいずれか1項に記載の方法。
【請求項106】
前記レトロウイルス科ウイルスベクター骨格が、レトロウイルスベクター骨格である、請求項105に記載の方法。
【請求項107】
前記レトロウイルスベクター骨格が、レンチウイルス骨格である、請求項106に記載の方法。
【請求項108】
前記レトロウイルスベクター骨格が、ガンマレトロウイルス骨格である、請求項106に記載の方法。
【請求項109】
前記レトロウイルスベクター骨格が、アルファレトロウイルス骨格である、請求項106に記載の方法。
【請求項110】
前記操作されたγδ T細胞が、Vδ1 T細胞である、請求項73~109のいずれか1項に記載の方法。
【請求項111】
前記操作されたγδ T細胞が、Vδ2 T細胞である、請求項73~109のいずれか1項に記載の方法。
【請求項112】
前記操作されたγδ T細胞が、非Vδ1/Vδ2 T細胞である、請求項73~109のいずれか1項に記載の方法。
【請求項113】
前記CARが、CD19、CD20、ROR1、CD22、がん胎児性抗原、アルファフェトタンパク質、CA-125、5T4、MUC-1、上皮腫瘍抗原、前立腺特異的抗原、黒色腫関連抗原、変異p53、変異ras、HER2/Neu、葉酸結合タンパク質、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gpl20、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp41、GD2、CD123、CD33、CD138、CD23、CD30、CD56、c-Met、メソテリン、GD3、HERV-K、IL-llRアルファ、カッパ鎖、ラムダ鎖、CSPG4、ERBB2、EGFRvIII、VEGFR2、組み合わせでのHER2-HER3、組み合わせでのHER1-HER2、NY-ESO-1、SSX2、MAGE、MART-1、gp100、PSA、PSMA、PSCA、g9d2、またはそれらの組み合わせを標的とする、請求項58~112のいずれか1項に記載の方法。
【請求項114】
請求項1~57のいずれか1項に記載の方法によって産生される、操作されたγδ T細胞の集団。
【請求項115】
前記集団の少なくとも10%が、CARを発現する、請求項114に記載の操作されたγδ T細胞の集団。
【請求項116】
前記集団の少なくとも10%が、CAR及びアーマータンパク質を発現する、請求項115に記載の操作されたγδ T細胞の集団。
【請求項117】
前記集団の少なくとも50%が、前記CARを発現する、請求項115または116に記載の操作されたγδ T細胞の集団。
【請求項118】
前記集団の少なくとも50%が、前記CAR及び前記アーマータンパク質を発現する、請求項115~117のいずれか1項に記載の操作されたγδ T細胞の集団。
【請求項119】
請求項58~113のいずれか1項に記載の方法によって産生される、CARを発現するγδ T細胞の集団。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
がんに対するT細胞免疫療法への関心の高まりは、治療部分としての操作されたT細胞の明らかな能力に焦点を当てている。ガンマデルタT細胞(γδ T細胞)は、その表面上で明確に異なる決定的なγδ T細胞受容体(TCR)を発現するT細胞のサブセットを表す。このTCRは、1つのガンマ(γ)鎖及び1つのデルタ(δ)鎖から構成される。ヒトγδ T細胞は、1つまたは2つのタイプ、すなわち、末梢血常在γδ T細胞及び非造血組織常在γδ T細胞として広く分類することができる。ほとんどの血液常在γδ T細胞がVδ2 TCRを発現する一方で、これは、より頻繁にVδ1及び/または他のVδ鎖を使用する組織常在γδ T細胞の間ではあまり一般的ではない。
【0002】
αβ T細胞に対して、所望の導入遺伝子を発現するためのγδ T細胞の効率的な形質導入のための方法が欠如している。したがって、γδ T細胞を形質導入し、治療法として、例えば、養子T細胞療法として使用するために十分な質及び量のγδ T細胞の集団を産生するための改善された方法が、当技術分野で必要とされている。
【発明の概要】
【0003】
一態様では、本発明は、ベータレトロウイルス偽型及びレトロウイルス科ウイルスベクター骨格を有するウイルスベクターでγδ T細胞の集団を形質導入することによって、操作されたγδ T細胞の集団を産生する方法を特徴とする。ベータレトロウイルス偽型は、ヒヒ内因性ウイルス(BaEV)であり得る。ベータレトロウイルス偽型は、RD114であり得る。
【0004】
いくつかの実施形態では、レトロウイルス科ウイルスベクター骨格は、レトロウイルスベクター骨格(例えば、レンチウイルス骨格、ガンマレトロウイルス骨格、またはアルファレトロウイルス骨格)である。
【0005】
操作されたγδ T細胞は、Vδ1 T細胞であり得る。操作されたγδ T細胞は、Vδ2 T細胞であり得る。操作されたγδ T細胞は、非Vδ1/Vδ2 T細胞であり得る。
【0006】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、導入遺伝子を含む。導入遺伝子は、細胞表面受容体(例えば、キメラ抗原受容体(CAR))及び/またはサイトカイン(例えば、分泌型サイトカインもしくは膜結合型サイトカイン)をコードし得る。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、IL-15(例えば、分泌型IL-15または膜結合型IL-15)をコードする。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、第1の導入遺伝子及び第2の導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、第1の導入遺伝子は、CARをコードし、第2の導入遺伝子は、アーマータンパク質(例えば、サイトカイン、例えば、IL-15、例えば、分泌型IL-15または膜結合型IL-15)をコードする。
【0007】
いくつかの実施形態では、CARは、CD19、CD20、ROR1、CD22、がん胎児性抗原、アルファフェトタンパク質、CA-125、5T4、MUC-1、上皮腫瘍抗原、前立腺特異的抗原、黒色腫関連抗原、変異p53、変異ras、HER2/Neu、葉酸結合タンパク質、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gpl20、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp41、GD2、CD123、CD33、CD138、CD23、CD30、CD56、c-Met、メソテリン、GD3、HERV-K、IL-llRアルファ、カッパ鎖、ラムダ鎖、CSPG4、ERBB2、EGFRvIII、VEGFR2、組み合わせでのHER2-HER3、組み合わせでのHER1-HER2、NY-ESO-1、滑膜肉腫X切断点2(SSX2)、黒色腫抗原(MAGE)、T細胞によって認識される黒色腫抗原1(MART-1)、gp100、前立腺特異的抗原(PSA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、g9d2、またはそれらの組み合わせを標的とする。
【0008】
別の態様では、本発明は、操作されたγδ T細胞の集団を産生する方法を特徴とする。本方法は、γδ T細胞の出発集団を提供することと、ウイルスベクターの非存在下で第1の培養期間にわたってγδ T細胞の出発集団を培養して、プライミングされたγδ T細胞の集団を産生することと、を含む。本方法は、プライミングされたγδ T細胞の少なくとも3%(例えば、少なくとも4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、または実質的に全て)を形質導入するために有効な量でベータレトロウイルス偽型を有するウイルスベクターの存在下で、第2の培養期間にわたってプライミングされたγδ T細胞の集団を培養し、それによって、操作されたγδ T細胞の集団を産生することをさらに含み得る。
【0009】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、プライミングされたγδ T細胞の少なくとも20%を形質導入するために有効な量である。
【0010】
いくつかの実施形態では、第1の培養期間は、1日間以上(例えば、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間以上、例えば、1~3日間、3~5日間、5~7日間、7~10日間以上)である。いくつかの実施形態では、第1の培養期間は、2日間以上(例えば、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間以上、例えば、1~3日間、3~5日間、5~7日間、7~10日間以上)である。いくつかの実施形態では、第1の培養期間は、5日間以上(例えば、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間以上、例えば、5~7日間、7~10日間以上)である。いくつかの実施形態では、第1の培養期間は、7日間以上(例えば、7日間、8日間、9日間、10日間以上、例えば、7~10日間以上)である。
【0011】
いくつかの実施形態では、第2の培養期間は、2日間以上(例えば、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間以上、例えば、2~4日間、4~7日間、7~10日間、10~14日間以上)である。いくつかの実施形態では、第2の培養期間は、7日間以上(例えば、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間以上、例えば、7~10日間、10~14日間以上)である。
【0012】
いくつかの実施形態では、プライミングされたγδ T細胞の集団は、ASCT-1及び/またはASCT-2を発現する。いくつかの実施形態では、プライミングされたγδ T細胞の集団は、VSV-G侵入受容体(例えば、LDL受容体)の機能的発現を欠く。
【0013】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、10以下(例えば、5以下、例えば、約1~約5)の感染の多重度(MOI)においてプライミングされたγδ T細胞と培養される。
【0014】
別の態様では、本発明は、γδ T細胞の出発集団を提供することと、IL-15、及びγδ T細胞の出発集団の少なくとも3%(例えば、少なくとも4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%m14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、または実質的に全て)を形質導入するために有効な量でベータレトロウイルス偽型を有するウイルスベクターの存在下で、γδ Tの出発集団を培養し、それによって、操作されたγδ T細胞の出発集団を産生することとによって、操作されたγδ T細胞の集団を産生する方法を特徴とする。
【0015】
いくつかの実施形態では、γδ T細胞の出発集団は、ASCT-1及び/またはASCT-2の発現を欠く。いくつかの実施形態では、操作されたγδ T細胞の集団は、ASCT-1及び/またはASCT-2を発現する。γδ T細胞の出発集団は、VSV-G侵入受容体(例えば、LDL受容体)の機能的発現を欠き得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、10以下(例えば、5以下、例えば、約1~約5)のMOIにおいてγδ T細胞の出発集団と培養される。
【0017】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、BaEVまたはRD114のベータレトロウイルス偽型を有する。
【0018】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、レトロウイルス科ウイルスベクター骨格を含む。レトロウイルス科ウイルスベクター骨格は、レトロウイルスベクター骨格(例えば、レンチウイルス骨格、ガンマレトロウイルス骨格、またはアルファレトロウイルス骨格)であり得る。
【0019】
操作されたγδ T細胞は、Vδ1 T細胞であり得る。操作されたγδ T細胞は、Vδ2 T細胞であり得る。操作されたγδ T細胞は、非Vδ1/Vδ2 T細胞であり得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、導入遺伝子を含む。導入遺伝子は、細胞表面受容体、例えば、キメラ抗原受容体(CAR)及び/またはサイトカイン(例えば、分泌型サイトカインもしくは膜結合型サイトカイン)をコードし得る。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、IL-15(例えば、分泌型IL-15または膜結合型IL-15)をコードする。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、第1の導入遺伝子及び第2の導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、第1の導入遺伝子は、CARをコードし、第2の導入遺伝子は、アーマータンパク質(例えば、サイトカイン、例えば、IL-15、例えば、分泌型IL-15または膜結合型IL-15)をコードする。
【0021】
いくつかの実施形態では、CARは、CD19、CD20、ROR1、CD22、がん胎児性抗原、アルファフェトタンパク質、CA-125、5T4、MUC-1、上皮腫瘍抗原、前立腺特異的抗原、黒色腫関連抗原、変異p53、変異ras、HER2/Neu、葉酸結合タンパク質、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gpl20、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp41、GD2、CD123、CD33、CD138、CD23、CD30、CD56、c-Met、メソテリン、GD3、HERV-K、IL-llRアルファ、カッパ鎖、ラムダ鎖、CSPG4、ERBB2、EGFRvIII、VEGFR2、組み合わせでのHER2-HER3、組み合わせでのHER1-HER2、NY-ESO-1、SSX2、MAGE、MART-1、gp100、PSA、PSMA、PSCA、g9d2、またはそれらの組み合わせを標的とする。
【0022】
別の態様では、本発明は、CARをコードする導入遺伝子、ベータレトロウイルス偽型、及びレトロウイルス科ウイルスベクター骨格を含む、ウイルスベクターでγδ T細胞の集団を形質導入することによって、CARを発現するγδ T細胞の集団を産生する方法を特徴とする。
【0023】
別の態様では、本発明は、CARコードする第1の導入遺伝子、アーマータンパク質をコードする第2の導入遺伝子、ベータレトロウイルス偽型、及びレトロウイルス科ウイルスベクター骨格を含む、ウイルスベクターでγδ T細胞の集団を形質導入することによって、CAR及びアーマータンパク質を発現するγδ T細胞の集団を産生する方法を特徴とする。いくつかの実施形態では、アーマータンパク質は、サイトカイン(例えば、膜結合型サイトカインまたは分泌型サイトカイン(例えば、膜結合型IL-15または分泌型IL-15)である。
【0024】
いくつかの実施形態では、ベータレトロウイルス偽型は、BaEVである。他の実施形態では、ベータレトロウイルス偽型は、RD114である。
【0025】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、レトロウイルス科ウイルスベクター骨格を含む。レトロウイルス科ウイルスベクター骨格は、レトロウイルスベクター骨格(例えば、レンチウイルス骨格、ガンマレトロウイルス骨格、またはアルファレトロウイルス骨格)であり得る。
【0026】
γδ T細胞は、Vδ1 T細胞であり得る。γδ T細胞は、Vδ2 T細胞であり得る。γδ T細胞は、非Vδ1/Vδ2 T細胞であり得る。
【0027】
別の態様では、本発明は、γδ T細胞の出発集団を提供し、ウイルスベクターの非存在下で第1の培養期間にわたってγδ T細胞の出発集団を培養して、プライミングされたγδ T細胞の集団を産生することによって、CARを発現するγδ T細胞の集団を産生する方法を特徴とする。本方法は、ベータレトロウイルス偽型、及びCARをコードする導入遺伝子を有するウイルスベクターの存在下で、第2の培養期間にわたってプライミングされたγδ T細胞の集団を培養し、ウイルスベクターが、プライミングされたγδ T細胞の少なくとも3%(例えば、少なくとも4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%m14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、または実質的に全て)を形質導入するために有効な量であり、それによって、CARを発現するγδ T細胞の集団を産生することをさらに含み得る。
【0028】
別の態様では、本発明は、γδ T細胞の出発集団を提供し、ウイルスベクターの非存在下で第1の培養期間にわたってγδ T細胞の出発集団を培養して、プライミングされたγδ T細胞の集団を産生することによって、CAR及びアーマータンパク質を発現するγδ T細胞の集団を産生する方法を特徴とする。本方法は、ベータレトロウイルス偽型、CARをコードする第1の導入遺伝子、及びアーマータンパク質をコードする第2の導入遺伝子を有するウイルスベクターの存在下で、第2の培養期間にわたってプライミングされたγδ T細胞の集団を培養し、ウイルスベクターが、プライミングされたγδ T細胞の少なくとも3%(例えば、少なくとも4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%m14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、または実質的に全て)を形質導入するために有効な量であり、それによって、CAR及びアーマータンパク質を発現するγδ T細胞の集団を産生することをさらに含み得る。いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、IL-15(例えば、分泌型IL-15または膜結合型IL-15)をコードする。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、第1の導入遺伝子及び第2の導入遺伝子を含む。いくつかの実施形態では、第1の導入遺伝子は、CARをコードし、第2の導入遺伝子は、アーマータンパク質(例えば、サイトカイン、例えば、IL-15、例えば、分泌型IL-15または膜結合型IL-15)をコードする。
【0029】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、プライミングされたγδ T細胞の少なくとも20%を形質導入するために有効な量である。
【0030】
いくつかの実施形態では、第1の培養期間は、1日間以上(例えば、1日間、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間以上、例えば、1~3日間、3~5日間、5~7日間、7~10日間以上)である。いくつかの実施形態では、第1の培養期間は、2日間以上(例えば、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間以上、例えば、1~3日間、3~5日間、5~7日間、7~10日間以上)である。いくつかの実施形態では、第1の培養期間は、5日間以上(例えば、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間以上、例えば、5~7日間、7~10日間以上)である。いくつかの実施形態では、第1の培養期間は、7日間以上(例えば、7日間、8日間、9日間、10日間以上、例えば、7~10日間以上)である。
【0031】
いくつかの実施形態では、第2の培養期間は、2日間以上(例えば、2日間、3日間、4日間、5日間、6日間、7日間、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間以上、例えば、2~4日間、4~7日間、7~10日間、10~14日間以上)である。いくつかの実施形態では、第2の培養期間は、7日間以上(例えば、8日間、9日間、10日間、11日間、12日間、13日間、14日間以上、例えば、7~10日間、10~14日間以上)である。
【0032】
いくつかの実施形態では、プライミングされたγδ T細胞の集団は、ASCT-1及び/またはASCT-2を発現する。いくつかの実施形態では、プライミングされたγδ T細胞の集団は、VSV-G侵入受容体(例えば、LDL受容体)の機能的発現を欠く。いくつかの実施形態では、プライミングされたγδ T細胞集団の95%超は、(例えば、BlaM-Vprベースのアッセイによって測定される)検出可能なVSV-G侵入を媒介するために十分なレベルのVSV-G侵入受容体発現(例えば、LDL受容体)を欠く。いくつかの実施形態では、プライミングされたγδ T細胞集団の96%超は、(例えば、BlaM-Vprベースのアッセイによって測定される)検出可能なVSV-G侵入を媒介するために十分なレベルのVSV-G侵入受容体発現(例えば、LDL受容体)を欠く。いくつかの実施形態では、プライミングされたγδ T細胞集団の97%超は、(例えば、BlaM-Vprベースのアッセイによって測定される)検出可能なVSV-G侵入を媒介するために十分なレベルのVSV-G侵入受容体発現(例えば、LDL受容体)を欠く。いくつかの実施形態では、プライミングされたγδ T細胞集団の98%超は、(例えば、BlaM-Vprベースのアッセイによって測定される)検出可能なVSV-G侵入を媒介するために十分なレベルのVSV-G侵入受容体発現(例えば、LDL受容体)を欠く。いくつかの実施形態では、プライミングされたγδ T細胞集団の99%超は、(例えば、BlaM-Vprベースのアッセイによって測定される)検出可能なVSV-G侵入を媒介するために十分なレベルのVSV-G侵入受容体発現(例えば、LDL受容体)を欠く。
【0033】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、10以下(例えば、5以下、例えば、約1~約5)のMOIにおいてプライミングされたγδ T細胞と培養される。
【0034】
別の態様では、本発明は、γδ T細胞の出発集団を提供することと、IL-15、ならびにベータレトロウイルス偽型及びCARをコードする導入遺伝子を有するベクターの存在下で、γδ T細胞の出発集団を培養し、ウイルスベクターが、γδ T細胞の出発集団の少なくとも3%(例えば、少なくとも4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%m14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、または実質的に全て)を形質導入するために有効な量であり、それによって、CARを発現する、操作されたγδ T細胞の出発集団を産生することとによって、CARを発現するγδ T細胞の集団を産生する方法を特徴とする。
【0035】
別の態様では、本発明は、γδ T細胞の出発集団を提供することと、IL-15、ならびにベータレトロウイルス偽型、CARをコードする第1の導入遺伝子、及びアーマータンパク質をコードする第2の導入遺伝子を有するウイルスベクターの存在下で、γδ T細胞の出発集団を培養し、ウイルスベクターが、γδ T細胞の出発集団の少なくとも3%(例えば、少なくとも4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%m14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、または実質的に全て)を形質変換するために有効な量であり、それによって、CAR及びアーマータンパク質を発現する、操作されたγδ T細胞の集団を産生することとによって、CAR及びアーマータンパク質を発現するγδ T細胞の集団を産生する方法を特徴とする。いくつかの実施形態では、アーマータンパク質は、サイトカイン、例えば、IL-15、例えば、分泌型IL-15または膜結合型IL-15である。
【0036】
いくつかの実施形態では、γδ T細胞の出発集団は、ASCT-1及び/またはASCT-2の発現を欠く。操作されたγδ T細胞の集団は、ASCT-1及び/またはASCT-2を発現し得る。γδ T細胞の出発集団は、VSV-G侵入受容体(例えば、LDL受容体)の機能的発現を欠き得る。いくつかの実施形態では、プライミングされたγδ T細胞集団の95%超は、(例えば、BlaM-Vprベースのアッセイによって測定される)検出可能なVSV-G侵入を媒介するために十分なレベルのVSV-G侵入受容体発現(例えば、LDL受容体)を欠く。いくつかの実施形態では、プライミングされたγδ T細胞集団の96%超は、(例えば、BlaM-Vprベースのアッセイによって測定される)検出可能なVSV-G侵入を媒介するために十分なレベルのVSV-G侵入受容体発現(例えば、LDL受容体)を欠く。いくつかの実施形態では、プライミングされたγδ T細胞集団の97%超は、(例えば、BlaM-Vprベースのアッセイによって測定される)検出可能なVSV-G侵入を媒介するために十分なレベルのVSV-G侵入受容体発現(例えば、LDL受容体)を欠く。いくつかの実施形態では、プライミングされたγδ T細胞集団の98%超は、(例えば、BlaM-Vprベースのアッセイによって測定される)検出可能なVSV-G侵入を媒介するために十分なレベルのVSV-G侵入受容体発現(例えば、LDL受容体)を欠く。いくつかの実施形態では、プライミングされたγδ T細胞集団の99%超は、(例えば、BlaM-Vprベースのアッセイによって測定される)検出可能なVSV-G侵入を媒介するために十分なレベルのVSV-G侵入受容体発現(例えば、LDL受容体)を欠く。
【0037】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、10以下(例えば、5以下、例えば、約1~約5)のMOIにおいてγδ T細胞の出発集団と培養される。
【0038】
いくつかの実施形態では、ベータレトロウイルス偽型は、BaEVまたはRD114である。
【0039】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、レトロウイルス科ウイルスベクター骨格を含む。レトロウイルス科ウイルスベクター骨格は、レトロウイルスベクター骨格(例えば、レンチウイルス骨格、ガンマレトロウイルス骨格、またはアルファレトロウイルス骨格)であり得る。
【0040】
操作されたγδ T細胞は、Vδ1 T細胞であり得る。操作されたγδ T細胞は、Vδ2 T細胞であり得る。操作されたγδ T細胞は、非Vδ1/Vδ2 T細胞であり得る。
【0041】
いくつかの実施形態では、CARは、CD19、CD20、ROR1、CD22、がん胎児性抗原、アルファフェトタンパク質、CA-125、5T4、MUC-1、上皮腫瘍抗原、前立腺特異的抗原、黒色腫関連抗原、変異p53、変異ras、HER2/Neu、葉酸結合タンパク質、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gpl20、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp41、GD2、CD123、CD33、CD138、CD23、CD30、CD56、c-Met、メソテリン、GD3、HERV-K、IL-llRアルファ、カッパ鎖、ラムダ鎖、CSPG4、ERBB2、EGFRvIII、VEGFR2、組み合わせでのHER2-HER3、組み合わせでのHER1-HER2、NY-ESO-1、SSX2、MAGE、MART-1、gp100、PSA、PSMA、PSCA、g9d2、またはそれらの組み合わせを標的とする。
【0042】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載される方法によって産生される、操作されたγδ T細胞の集団を特徴とする。
【0043】
いくつかの実施形態では、集団の少なくとも10%(例えば、少なくとも11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、または実質的に全て)は、CARを発現する。いくつかの実施形態では、操作されたγδ T細胞の集団の少なくとも50%(例えば、少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、または実質的に全て)は、CARを発現する。いくつかの実施形態では、操作されたγδ T細胞の集団の少なくとも10%(例えば、少なくとも11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、または実質的に全て)は、アーマータンパク質、例えば、サイトカイン(例えば、分泌型サイトカインまたは膜結合型サイトカイン(例えば、IL-15、例えば、分泌型IL-15または膜結合型IL-15)を発現する。いくつかの実施形態では、操作されたγδ T細胞の集団の少なくとも50%(例えば、少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、または実質的に全て)は、アーマータンパク質、例えば、サイトカイン(例えば、分泌型サイトカインまたは膜結合型サイトカイン(例えば、IL-15、例えば、分泌型IL-15または膜結合型IL-15)を発現する。いくつかの実施形態では、操作されたγδ T細胞の集団の少なくとも10%(例えば、少なくとも11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、または実質的に全て)は、CAR及びアーマータンパク質、例えば、サイトカイン(例えば、分泌型サイトカインまたは膜結合型サイトカイン(例えば、IL-15、例えば、分泌型IL-15または膜結合型IL-15)を発現する。いくつかの実施形態では、操作されたγδ T細胞の集団の少なくとも50%(例えば、少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、または実質的に全て)は、CAR及びアーマータンパク質、例えば、サイトカイン(例えば、分泌型サイトカインまたは膜結合型サイトカイン(例えば、IL-15、例えば、分泌型IL-15または膜結合型IL-15)を発現する。
【0044】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載される方法によって産生される、CARを発現するγδ T細胞の集団を特徴とする。
【0045】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載される方法によって産生される、CAR及びアーマータンパク質を発現するγδ T細胞の集団を特徴とする。いくつかの実施形態では、アーマータンパク質は、サイトカイン(例えば、分泌型サイトカインまたは膜結合型サイトカイン(例えば、IL-15、例えば、分泌型IL-15または膜結合型IL-15)である。
【0046】
本明細書に記載の本発明の態様及び実施形態は、態様及び実施形態「を含む」、「からなる」、及び「から本質的になる」を含むことが理解される。本明細書で使用する場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、別途指示されない限り、複数の対象を含む。
【0047】
本明細書で使用される場合の「約」という用語は、当業者に容易に公知となるそれぞれの値の通常の誤差範囲を指す。本明細書での「約」の値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする実施形態を含む(かつ説明する)。いくつかの場合では、「約」は、そのような変動が開示される方法を実施するために適切であるため、指定値から+20%、いくつかの事例では+10%、いくつかの事例では+5%、いくつかの事例では+1%、またはいくつかの事例では+0.1%の変動を包含する。
【0048】
本明細書で使用される場合、「操作されたγδ T細胞」という用語は、導入遺伝子(すなわち、操作されたγδ T細胞またはその親細胞に形質導入された遺伝子)を発現するγδ T細胞を指す。
【0049】
本明細書で使用される場合、「プライミングされたγδ T細胞」という用語は、培養条件によって影響を受けた出発集団(例えば、γδ T細胞の内因性集団)を指す。いくつかの事例では、プライミングされたγδ T細胞は、培養条件を経験する前のそのプライミングされていない対応物に対して異なる機能的ウイルス侵入受容体プロファイルを有する。いくつかの実施形態では、プライミングされたγδ T細胞の集団は、γδ T細胞の増殖した集団である。
【0050】
本明細書で使用される場合、「γδ細胞の増殖した集団」とは、γδ細胞の増殖、すなわち、γδ細胞数の増加を誘導した条件及び持続時間で培養されたγδ T細胞を含む、造血細胞の集団を指す。同様に、本明細書で使用される場合の「Vδ1 T細胞の増殖した集団」とは、Vδ1 T細胞の増殖、すなわち、Vδ1細胞数の増加を誘導した条件及び持続時間で培養されたVδ1 T細胞を含む、造血細胞の集団を指す。同様に、本明細書で使用される場合の「Vδ2 T細胞の増殖した集団」とは、Vδ2 T細胞の増殖、すなわち、Vδ2細胞数の増加を誘導した条件及び持続時間で培養されたVδ2 T細胞を含む、造血細胞の集団を指す。
【0051】
本明細書で使用される場合、γδ T細胞の「集団」とは、3つ以上のγδ T細胞(例えば、少なくとも10、少なくとも102、少なくとも103、少なくとも104、少なくとも105、少なくとも106、少なくとも107、少なくとも108、少なくとも109、少なくとも1010、少なくとも1011、少なくとも1012、または少なくとも1013個の)γδ T細胞(例えば、操作されたγδ T細胞)の群を指す。特定の細胞型の集団(例えば、内因性γδ T細胞の集団、プライミングされたγδ T細胞の集団、または操作されたγδ T細胞の集団)は、その型の細胞を指し、より広範な集団内の異なる型の細胞を指さない。例えば、108個のT細胞の出発集団の細胞の10%がγδ T細胞である場合、γδ T細胞の出発集団は、107個である。
【0052】
本明細書で使用される場合、「アーマータンパク質」とは、γδ T細胞(例えば、CARを発現するγδ T細胞)によって発現されると、例えば、パラクリンシグナル伝達(例えば、サイトカインシグナル伝達)を通して、標的細胞に向けたγδ T細胞の持続性免疫原性または増加した免疫原性を増加させて、例えば、細胞持続性、細胞生存性、活性化、及び他の所望の特性を改善する、導入遺伝子によってコードされるタンパク質を指す。アーマータンパク質は、膜結合型タンパク質または可溶性タンパク質であり得る。例えば、アーマータンパク質は、膜結合型受容体(例えば、αβ TCR、天然細胞傷害性受容体(例えば、NKp30、NKp44、またはNKp46)、サイトカイン受容体(例えば、IL-12受容体)、及び/またはケモカイン受容体(例えば、CCR2受容体)などの膜結合型タンパク質、及び/または膜結合型リガンドもしくはサイトカイン(例えば、膜結合型IL-15、膜結合型IL-7、膜結合型CD40L、膜結合型4-1BB、膜結合型4-1BBL、膜結合型CCL19)を含む。加えて、または代替的に、アーマータンパク質は、可溶性リガンドまたはサイトカイン(例えば、可溶性IL-15、可溶性IL-7、可溶性IL-12、可溶性CD40L、可溶性4-1BBL、及び/または可溶性CCL19)などの可溶性タンパク質であり得る。いくつかの実施形態では、アーマータンパク質は、抗原特異的ではない。
【0053】
本明細書で使用される場合、「IL-15」とは、1つ以上のIL-15受容体(IL-15R)サブユニット(例えば、その変異体、ムテイン、類似体、サブユニット、受容体複合体、断片、アイソフォーム、及びペプチド模倣体)のアゴニストとして作用する、天然もしくは組換えIL-15またはそのバリアントを指す。IL-15は、IL-2のように、IL-2依存性細胞株、CTLL-2の増殖を支援することができる既知のT細胞増殖因子である。IL-15は、最初にGrabstein et al.(Science 264.5161:965-969,1994)によって114アミノ酸成熟タンパク質として報告された。本明細書で使用される場合の「IL-15」という用語は、天然もしくは組換えIL-15、及びそのムテイン、類似体、サブユニット、またはその複合体(例えば、受容体複合体、例えば、PCT公開第WO2007/046006号に記載されるsushiペプチド)であり、その各々は、CTLL-2細胞の増殖を刺激することができる。CTLL-2増殖アッセイでは、組換えによって発現された前駆体でトランスフェクトされた細胞の上清及びIL-15の成熟型のフレーム内融合が、CTLL-2細胞増殖を誘導することができる。
【0054】
ヒトIL-15は、Grabstein et al.(Science 264.5161:965-969,1994)によって記載される手順に従って、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの従来の手順によって、取得することができる。ヒトIL-15 cDNAの供託が、1993年2月19日にATCC(登録商標)で行われ、アクセッション番号69245を割り当てられた。
【0055】
ヒトIL-15のアミノ酸配列(遺伝子ID 3600)は、Genbankにおいて、アクセッションロケータNP000576.1 GI:10835153(アイソフォーム1)及びNP_751915.1 GI:26787986(アイソフォーム2)の下で見出される。マウス(ハツカネズミ)IL-15アミノ酸配列(遺伝子ID 16168)は、Genbankにおいて、アクセッションロケータNP_001241676.1 GI:363000984の下で見出される。
【0056】
IL-15はまた、例えば、ヒト、サル、ウシ、ブタ、ウマ、及びマウスを含む、様々な哺乳類種に由来するIL-15も指し得る。本明細書で言及される場合のIL-15「ムテイン」または「バリアント」は、天然哺乳類IL-15の配列と実質的に相同であるが、アミノ酸欠失、挿入、または置換により、天然哺乳類IL-15ポリペプチドとは異なるアミノ酸配列を有する、ポリペプチドである。バリアントは、所与のアミノ酸残基が、類似生理化学的特性を有する残基によって置き換えられることを意味する、保存的に置換された配列を含み得る。保存的置換の例としては、互いに対するIle、Val、Leu、もしくはAlaなどの1つの脂肪族残基の別の脂肪族残基に対する置換、またはLysとArgとの間、GluとAspとの間、もしくはGlnとAsnとの間などの1つの極性残基の別の極性残基に対する置換が挙げられる。他のそのような保存的置換、例えば、類似疎水性特性を有する領域全体の置換が、周知である。天然に存在するIL-15バリアントもまた、本発明によって包含される。そのようなバリアントの例は、交互のmRNAスプライシング事象から、またはIL-15結合特性が保持される、IL-15タンパク質のタンパク質分解切断から生じるタンパク質である。mRNAの交互のスプライシングは、切断型であるが生物学的に活性なIL-15タンパク質を生じさせ得る。タンパク質分解に起因するバリエーションとしては、例えば、IL-15タンパク質からの(一般的に、1~10個のアミノ酸からの)1つ以上の末端アミノ酸のタンパク質分解除去に起因する、異なるタイプの宿主細胞における発現時のN末端またはC末端の差異が挙げられる。いくつかの実施形態では、タンパク質の末端は、例えば、ポリエチレングリコールなどの化学基を用いて、その物理的特性を改変するように修飾することができる(Yang et al.Cancer 76:687-694,1995)。いくつかの実施形態では、タンパク質の末端または内部は、追加のアミノ酸で修飾することができる(Clark-Lewis et al.PNAS 90:3574-3577,1993)。
【0057】
本明細書で使用される場合、「非造血細胞」は、間質細胞及び上皮細胞を含む。間質細胞は、任意の臓器の非造血結合組織細胞であり、その臓器の実質細胞の機能を支援する。間質細胞の例としては、線維芽細胞、周皮細胞、間葉細胞、ケラチノサイト、内皮細胞、及び非血液系腫瘍細胞が挙げられる。上皮細胞は、身体の全体を通した血管及び臓器の空洞及び表面を覆う非造血細胞である。それらは通常、形状がうろこ状、柱状、または立方体であり、細胞の単層として、または2つ以上の細胞の層として配置され得る。
【0058】
本明細書で使用される場合、「非造血組織常在γδ T細胞」、「非造血組織由来」、及び「非造血組織天然γδ T細胞」とは、組織が外植されるときに非造血組織に存在したγδ T細胞を指す。非造血組織常在γδ T細胞は、任意の好適なヒトまたは非ヒト動物非造血組織から取得され得る。非造血組織は、血液または骨髄以外の組織である。いくつかの実施形態では、γδ T細胞は、血液または滑液などの特定のタイプの生体液の試料から取得されない。そのような好適なヒトまたは非ヒト動物非造血組織の例としては、皮膚またはその一部(例えば、真皮または表皮)、胃腸管(例えば、胃腸上皮、結腸、小腸、胃、虫垂、盲腸、または直腸)、乳腺組織、肺(好ましくは、組織が気管支肺胞洗浄によって取得されない)、前立腺、肝臓、及び膵臓が挙げられる。いくつかの実施形態では、非造血組織常在γδ T細胞は、胸腺、脾臓、または扁桃腺などのリンパ組織に由来し得る。γδ T細胞はまた、ヒトがん組織、例えば、乳房及び前立腺に常在し得る。いくつかの実施形態では、γδ T細胞は、ヒトがん組織から取得されない。非造血組織試料は、標準的技術、例えば、外植(例えば、生検)によって取得され得る。非造血組織常在γδ T細胞には、例えば、Vδ1 T細胞、二重陰性(DN)T細胞、Vδ2 T細胞、Vδ3 T細胞、及びVδ5 T細胞が含まれる。
【0059】
本明細書で使用される場合、「有効な量で」という語句は、検出可能な結果を誘導する量(例えば、p<0.05で、例えば、出発集団に対して統計的に有意な増加した数を有する細胞の数)を指す。
【0060】
本明細書で使用される場合、「γδ細胞の増殖した集団」とは、γδ細胞の増殖、すなわち、γδ細胞数の増加を誘導した条件及び持続時間で培養されたγδ T細胞を含む、造血細胞の集団を指す。同様に、本明細書で使用される場合の「Vδ1 T細胞の増殖した集団」とは、Vδ1 T細胞の増殖、すなわち、Vδ1細胞数の増加を誘導した条件及び持続時間で培養されたVδ1 T細胞を含む、造血細胞の集団を指す。同様に、本明細書で使用される場合の「Vδ2 T細胞の増殖した集団」とは、Vδ2 T細胞の増殖、すなわち、Vδ2細胞数の増加を誘導した条件及び持続時間で培養されたVδ2 T細胞を含む、造血細胞の集団を指す。
【0061】
本明細書の「マーカー」という用語は、DNA、RNA、タンパク質、炭水化物、糖脂質、または細胞ベースの分子マーカーを指し、患者の試料中のその発現または存在を、標準的方法(または本明細書に開示される方法)によって検出することができる。
【0062】
目的のマーカーを「発現する」細胞または細胞集団は、タンパク質をコードするmRNA、またはその断片を含むタンパク質自体が、細胞または集団に存在すると決定されるものである。マーカーの発現を、様々な手段によって検出することができる。例えば、いくつかの実施形態では、マーカーの発現とは、細胞上のマーカーの表面密度を指す。例えば、フローサイトメトリーの読み出しとして使用される場合の平均蛍光強度(MFI)は、細胞集団上のマーカーの密度を表す。当業者は、MFI値が染色パラメータ(例えば、濃度、持続時間、及び温度)ならびに蛍光色素組成物に依存することを理解するであろう。しかしながら、MFIは、適切な対照との関連で考慮されるときに定量的であり得る。例えば、細胞集団は、そのマーカーに対する抗体のMFIが、同等の条件下で染色された同じ細胞集団上の適切なアイソタイプ対照抗体のMFIよりも有意に高い場合に、マーカーを発現すると言われ得る。加えて、または代替的に、細胞集団は、従来のフローサイトメトリー分析方法に従って(例えば、アイソタイプまたは「蛍光マイナス1」(FMO)対照に従ってゲートを設定することによって)正及び負のゲートを使用して、細胞ごとにマーカーを発現すると言われ得る。このメトリックによって、集団は、マーカーに対して陽性と検出された細胞の数が(例えば、アイソタイプ対照上のゲーティングによって)バックグラウンドよりも有意に高い場合に、マーカーを「発現する」と言われ得る。
【0063】
本明細書で使用される場合、「VSV-G侵入受容体の機能的発現」とは、ベータ-ラクタマーゼ-Vpr(BlaM-VpR)ベースのアッセイによって測定される、標的細胞集団の少なくとも5%で検出可能なVSV-G侵入を媒介するために十分なVSV-G侵入受容体発現のレベルを指す。例えば、Cavrois et al.,Nat Biotechnol.11:1151-1154,2002を参照されたい。逆に、「VSV-G侵入受容体の機能的発現を欠く」細胞集団では、細胞集団の95%超は、BlaM-VpRベースのアッセイによって測定される、検出可能なVSV-G侵入を媒介するために十分なレベルのVSV-G侵入受容体発現を欠く。
【0064】
本明細書で使用される場合、集団の発現が陽性細胞の割合として述べられ、その割合が参照集団の陽性細胞の対応する割合と比較されると、割合差は、各それぞれの集団の親集団の割合である。例えば、マーカーが集団Aの細胞の10%で発現され、同じマーカーが集団Bの細胞の1%で発現される場合、集団Aは、集団Bよりもマーカー陽性細胞の9%高い頻度(すなわち、10%÷1%ではなく、10%-1%)を有すると言われる。頻度が親集団内の細胞の数で乗算されると、細胞の絶対数の差が計算される。上記に挙げられる例では、集団Aに100個の細胞があり、集団Bに10個の細胞がある場合、集団Aは、集団Bに対して100倍の細胞の数を有し、すなわち、(10%×100)÷(1%×10)である。
【0065】
マーカーの発現レベルは、核酸発現レベル(例えば、DNA発現レベルまたはRNA発現レベル、例えば、mRNA発現レベル)であり得る。核酸発現レベルを決定する任意の好適な方法が使用され得る。いくつかの実施形態では、核酸発現レベルは、qPCR、rtPCR、RNA-seq、多重qPCRもしくはRT-qPCR、マイクロアレイ分析、遺伝子発現の連続分析(SAGE)、MASSARRAY(登録商標)技術、インサイチュハイブリダイゼーション(例えば、FISH)、またはそれらの組み合わせを使用して決定される。
【0066】
本明細書で使用される場合、細胞の「参照集団」は、目的の細胞に対応する細胞集団を指し、これに対して目的の細胞の表現型が測定される。例えば、非造血組織由来のγδ細胞の分離された集団上のマーカーの発現レベルは、造血組織由来のγδ T細胞(例えば、血液常在γδ細胞、例えば、同じドナーまたは異なるドナーに由来する血液常在γδ細胞)、または異なる条件下で(例えば、実質的なTCR活性化の存在下で、外因性TCR活性化剤(例えば、抗CD3)の存在下で、もしくは間質細胞(例えば、線維芽細胞)と実質的に接触して)増殖された非造血組織由来のγδ T細胞上の同じマーカーの発現レベルと比較され得る。集団はまた、以前の状態でのそれ自体と比較され得る。例えば、参照集団は、その増殖の前の分離された細胞集団であり得る。この場合、増殖された集団は、増殖ステップの前のそれ自体の組成物と比較され、すなわち、その過去の組成物は、この場合、参照集団である。
【0067】
本明細書で使用される場合、「キメラ抗原受容体」または代替的に「CAR」という用語は、細胞外抗原結合ドメイン、膜貫通ドメイン、及び任意選択的に、細胞を活性化する活性化シグナル及び/または共刺激シグナルを伝播する細胞内ドメインを含む、組換えポリペプチド構築物を指す。いくつかの実施形態では、CARは、CAR融合タンパク質のN末端に任意選択的なリーダー配列を含む。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【
図1】広域トロピズムVSV-G偽型レンチウイルスベクターがVδ1 γδ T細胞を形質導入することができないことを示すグラフである。代表的なドットプロットは、増殖培養の7日目に様々な感染の多重度を使用して、VSV-G(A)またはBaEV(B)偽型のGFPをコードするレンチウイルスベクターで形質導入されたγδ T細胞を示す。形質導入効率は、形質導入の72時間後にFACS分析によって決定された。UTD、非形質導入対照;MOI、感染の多重度;NVP、ネビラピン(RT阻害剤)。
【
図2A】VSV-G偽型のCARをコードするレンチウイルスベクターを用いたVδ1 γδ T細胞の形質導入が偽形質導入をもたらすことを示すグラフである。ネビラピンの存在または非存在下で、MOI=1においてVSV-G偽型のCARをコードするレンチウイルスベクターを用いた形質導入の4日後(上段)または8日後(下段)のCAR陽性Vδ1 γδ T細胞の代表的なドットプロットを示す。UTD、非形質導入対照;MOI、感染の多重度;CAR、キメラ抗原受容体;NVP、ネビラピン。
【
図2B】VSV-G偽型のCARをコードするレンチウイルスベクターを用いたVδ1 γδ T細胞の形質導入が偽形質導入をもたらすことを示すグラフである。ネビラピンの存在または非存在下で、様々なMOI(MOI=5~0.1)においてVSV-G偽型のCARをコードするレンチウイルスベクターを用いた形質導入の4日後(黒い棒)または8日後(ドット付きの棒)のCAR陽性Vδ1 γδ T細胞の割合を示すグラフである。UTD、非形質導入対照;MOI、感染の多重度;CAR、キメラ抗原受容体;NVP、ネビラピン。
【
図3A】サイトカインプライミングがBaEV偽型レンチウイルスベクターによるVδ1 γδ T細胞形質導入の主要な決定因子であることを示すグラフである。形質導入の3日後にGFPをコードするBaEV偽型レンチウイルスベクターでMOI=1において形質導入されたGFP陽性Vδ1細胞の割合を示す棒グラフである。細胞を、培養の開始時(0日目)、または増殖期の7日目、10日目、14日目、及び15日目に形質導入した。UTD、非形質導入対照;MOI、多重感染;GFP、緑色蛍光タンパク質;NVP、ネビラピン。
【
図3B】サイトカインプライミングがBaEV偽型レンチウイルスベクターによるVδ1 γδ T細胞形質導入の主要な決定因子であることを示すグラフである。増殖培養の14日目に形質導入された細胞の代表的なドットプロットを示す。UTD、非形質導入対照;MOI、多重感染;GFP、緑色蛍光タンパク質;NVP、ネビラピン。
【
図4A】Vδ1 γδ T細胞の形質導入効率が感染の多重度(MOI)と相関することを示すグラフである。異なるMOIによるCARをコードするBaEV偽型レンチウイルスベクターを用いた形質導入の3日後のCAR陽性Vδ1細胞の割合を示す。細胞を増殖の10日目に形質導入した。UTD、非形質導入対照;MOI、感染の多重度;CAR、キメラ抗原受容体;NVP、ネビラピン。
【
図4B】Vδ1 γδ T細胞の形質導入効率が感染の多重度(MOI)と相関することを示すグラフである。MOI=5において形質導入されたCAR陽性細胞を示す代表的なドットプロットを示す。UTD、非形質導入対照;MOI、感染の多重度;CAR、キメラ抗原受容体;NVP、ネビラピン。
【
図5A】BaEV偽型レンチウイルスベクターがVδ1及び非Vδ1(Vδ2、Vδ3)γδ T細胞の両方を形質導入することを示すグラフである。ドットプロットは、Vδ1及び非Vδ1(Vδ2、Vδ3)γδ T細胞を発現するCAR(A)及びGFP(B)を示す。細胞をBaEV偽型ベクター(MOI=5)で形質導入し、汎γδ T細胞上のゲーティング、続いて、Vδ1細胞上のゲーティングによって、形質導入効率を形質導入の3日後に決定した。
【
図5B】BaEV偽型レンチウイルスベクターがVδ1及び非Vδ1(Vδ2、Vδ3)γδ T細胞の両方を形質導入することを示すグラフである。ドットプロットは、Vδ1及び非Vδ1(Vδ2、Vδ3)γδ T細胞を発現するCAR(A)及びGFP(B)を示す。細胞をBaEV偽型ベクター(MOI=5)で形質導入し、汎γδ T細胞上のゲーティング、続いて、Vδ1細胞上のゲーティングによって、形質導入効率を形質導入の3日後に決定した。
【
図6】BaEV偽型レンチウイルスベクターを用いたVδ1 γδ T細胞の形質導入が反復形質導入によってさらに増強され得ることを示すグラフのセットである。Vδ1細胞を、10日目(1ヒット)または連続2日(2ヒット:10日目及び11日目)のいずれかに、BaEV偽型のCARをコードするレンチウイルスベクターでMOI=1において形質導入した。CAR陽性細胞の割合を形質導入の72時間後に決定した。
【
図7】ベクトフシンの存在下での形質導入がレトロネクチンの存在下と同様に効率的であることを示すグラフである。Vδ1細胞を、様々なMOI及び様々な頻度(1または2ヒット)で、レトロネクチン(左)またはベクトフシン(右)の存在下で形質導入した。細胞を増殖の10日目に形質導入し、FACS分析を形質導入の3日後に行った。
【
図8】Vδ1細胞がRD114偽型ウイルスベクターで形質導入され得ることを示すグラフのセットである。Vδ1細胞を、BaEV偽型のCARをコードするレンチウイルスベクターまたはRD114偽型ガンマレトロウイルスベクターでMOI=1において形質導入した。ドットプロットは、形質導入の3日後のCARを発現するVδ1細胞を示す。
【発明を実施するための形態】
【0069】
本発明は、ウイルスベクター(例えば、ベータレトロウイルス偽型及びレトロウイルス科ウイルスベクター骨格を有するウイルスベクター)を用いた形質導入によってγδ T細胞(例えば、vδ1 T細胞及びvδ2 T細胞)を操作する方法を提供する。操作されたγδ T細胞の組成物及び同組成物を使用する方法がさらに提供される。
【0070】
本発明は、部分的に、γδ T細胞がベータレトロウイルス偽型ウイルスベクターで高レベルまで形質導入され得るという予想外の発見に基づく。他のリンパ球型に対して、γδ T細胞は、例えば、VSV-G偽型ウイルスベクターを使用する、レトロウイルス形質導入を許容しない。VSV-Gベクターは、γδ T細胞に最も近い細胞型である、αβ T細胞ならびにNK細胞を容易に形質導入する。したがって、ベータレトロウイルス偽型ウイルスベクターがγδ T細胞を形質導入することができることは予期されなかった。さらに、本発明は、γδ T細胞の集団をベクターで形質導入するためのウイルスベクターの存在下でのγδ T細胞の最適な培養条件及び持続時間の発見にも基づく。本明細書に記載される形質導入の方法は、所望の導入遺伝子を発現するγδ T細胞の操作された集団を産生するために、γδ T細胞の効率的な形質導入を可能にする。
【0071】
形質導入の方法
一態様では、本発明は、γδ T細胞(例えば、Vδ1 T細胞、Vδ2 T細胞、及び/または非Vδ1/Vδ2 T細胞)の集団を、ベータレトロウイルス偽型及びレトロウイルス科(例えば、レトロウイルス)ベクター骨格を含むウイルスベクターで形質導入することによって、操作されたγδ T細胞の集団を産生する方法を提供する。レトロウイルスベクター骨格は、例えば、レンチウイルス骨格、ガンマレトロウイルス骨格、またはアルファレトロウイルス骨格であり得る。ベータレトロウイルス偽型は、例えば、BaEVまたはRD114であり得る。いくつかの実施形態では、ベータレトロウイルス偽型は、BaEVである。いくつかの実施形態では、ベータレトロウイルス偽型は、RD114である。
【0072】
別の態様では、本発明は、γδ T細胞の出発集団を提供し、ウイルスベクターの非存在下でγδ T細胞をプライミングし、プライミングされたγδ T細胞の集団をウイルスベクターの存在下で、プライミングされたγδ T細胞の少なくとも3%(例えば、少なくとも4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、または実質的に全て)を形質導入するために有効な量で培養することによって、操作されたγδ T細胞の集団を産生する方法を提供する。いくつかの実施形態では、プライミングされたγδ T細胞の集団は、プライミングされたγδ T細胞の少なくとも5%を形質導入するために有効な量のウイルスベクターの存在下で培養される。いくつかの実施形態では、プライミングされたγδ T細胞の集団は、プライミングされたγδ T細胞の少なくとも20%を形質導入するために有効な量のウイルスベクターの存在下で培養される。
【0073】
プライミングされたγδ T細胞は、ウイルスベクターの非存在下でγδ T細胞の出発集団を培養することによって取得され得る。例えば、γδ T細胞の出発集団は、少なくとも1時間(例えば、少なくとも2時間、3時間、4時間、5時間、6時間、12時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日以上、例えば、約1時間~約14日、約6時間~約14日、約1日~約14日、約2日~約14日、約5日~約14日、約7日~約14日、約5日~約10日、約5日~約7日、または約7日~約10日)の第1の培養期間にわたって培養され得る。例えば、ウイルスベクターの非存在下で細胞を培養した後に、プライミングされたγδ T細胞が取得されると、プライミングされたγδ T細胞は、少なくとも1日(例えば、少なくとも2日、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、12日、13日、14日以上、例えば、約1日~約14日、約2日~約14日、約5日~約14日、約7日~約14日、約5日~約10日、約5日~約7日、または約7日~約10日)の第2の培養期間にわたってさらに培養され得る。第2の培養期間は、約1日~約14日(例えば、約3日~約14日、約3日~約12日、約4日~約1日、約5日~約10日、または約5日~約7日)であり得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、約10以下、例えば、約9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.5、または0.25以下の感染の多重度(MOI)においてプライミングされたγδ T細胞と培養される。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、約5以下の感染の多重度(MOI)においてプライミングされたγδ T細胞と培養される。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、約4以下の感染の多重度(MOI)においてプライミングされたγδ T細胞と培養される。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、約3以下の感染の多重度(MOI)においてプライミングされたγδ T細胞と培養される。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、約2以下の感染の多重度(MOI)においてプライミングされたγδ T細胞と培養される。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、約1以下の感染の多重度(MOI)においてプライミングされたγδ T細胞と培養される。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、約0.5以下の感染の多重度(MOI)においてプライミングされたγδ T細胞と培養される。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、約0.25以下の感染の多重度(MOI)においてプライミングされたγδ T細胞と培養される。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、約0.25~約10(例えば、約0.5~約10、約1~約10、または約1~約5)の感染の多重度(MOI)においてプライミングされたγδ T細胞と培養される。
【0075】
いくつかの実施形態では、γδ T細胞の形質導入は、形質導入効率を増強するための形質導入エンハンサーの使用を含む。好適な形質導入エンハンサーとしては、例えば、ベクトフシン、精子細胞、及び/またはレトロネクチンが挙げられる。本方法は、培養中にγδ T細胞を形質導入エンハンサーと接触させることを含み得る。いくつかの実施形態では、本方法は、細胞をネビラピンと接触させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、γδ T細胞の形質導入は、ベータレトロウイルス偽型ウイルスベクターのウイルス侵入受容体である、ASCT-2のγδ T細胞発現を増加させることができる、IL-15で培地を補充することを含む。
【0076】
スピノキュレーション
本開示のいくつかの実施形態では、γδ T細胞は、(例えば、本明細書に記載される1つ以上の追加の薬剤と組み合わせて)ウイルスベクターと培養されている間に、例えば、遠心分離によってスピンされ得る。この「スピノキュレーション」プロセスは、例えば、約200xg~約2,000xgの求心力で生じ得る。求心力は、例えば、約300xg~約1,200xg(例えば、約300xg、400xg、500xg、600xg、700xg、800xg、900xg、1,000xg、1,100xg、または1,200xg以上)であり得る。いくつかの実施形態では、γδ T細胞は、約10分~約3時間(例えば、約10分、15分、20分、25分、30分、35分、40分、45分、50分、55分、60分、65分、70分、75分、80分、85分、90分、95分、100分、105分、110分、115分、120分、125分、130分、135分、140分、145分、150分、155分、160分、165分、170分、175分、180分以上)スピンされる。いくつかの実施形態では、γδ T細胞は、約25℃の温度などの室温でスピンされる。
【0077】
スピノキュレーションステップを伴う例示的な形質導入プロトコルは、例えば、各々の開示が参照により本明細書に組み込まれる、Millington et al.,PLoS One 4:e6461, 2009、Guo et al.,Journal of Virology 85:9824-9833,2011、O’Doherty et al., Journal of Virology 74:10074-10080,2000、及びFederico et al.,Lentiviral Vectors and Exosomes as Gene and Protein Delivery Tools,Methods in Molecular Biology 1448,Chapter 4,2016に記載されている。
【0078】
ウイルスベクター
本明細書に記載される組成物及び方法は、γδ T細胞の効率的な形質導入のためのベータレトロウイルス偽型ウイルスベクターの使用を含む。ウイルスゲノムは、哺乳類細胞内への外因性遺伝子の効率的な送達に使用することができるベクターの豊富な供給源を提供する。ウイルスゲノムは、そのようなゲノム内に含まれるポリヌクレオチドが、典型的には、一般化または特殊形質導入によって哺乳類細胞の核ゲノムに組み込まれるため、遺伝子送達のための特に有用なベクターである。これらのプロセスは、天然のウイルス複製サイクルの一部として生じ、遺伝子組み込みを誘導するために追加タンパク質または試薬を必要としない。ベータレトロウイルス偽型化され得るウイルスベクターの例としては、レトロウイルス(例えば、レトロウイルス科ウイルスベクター)が挙げられる。レトロウイルスの例は、トリ白血病肉腫、トリC型ウイルス、哺乳類C型、B型ウイルス、D型ウイルス、オンコレトロウイルス、HTLV-BLV群、レンチウイルス、アルファレトロウイルス、ベータレトロウイルス、ガンマレトロウイルス、スプマウイルス(Coffin,J.M.,Retroviridae:The viruses and their replication,Virology,Third Edition(Lippincott-Raven,Philadelphia,(1996)))である。他の例は、マウス白血病ウイルス(MLV)、マウス肉腫ウイルス、マウス乳癌ウイルス、ウシ白血病ウイルス、ネコ白血病ウイルス、ネコ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、ヒヒ内因性ウイルス(BaEV)、テナガザル白血病ウイルス、メイソン・ファイザーサルウイルス、サル免疫不全ウイルス、サル肉腫ウイルス、ラウス肉腫ウイルス、及びレンチウイルスである。本方法のためのベータレトロウイルスで偽型化され得るベクターの他の例は、例えば、その教示が参照により本明細書に組み込まれる、McVey et al.(米国特許第5,801,030号)に記載されている。
【0079】
レトロウイルスベクター
いくつかの事例では、本明細書に記載される方法及び組成物で使用されるウイルスベクターは、レトロウイルスベクターである。本明細書に記載される方法及び組成物で使用され得る1つのタイプのレトロウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。レトロウイルスのサブセットであるレンチウイルスベクター(LV)は、広範囲の分裂及び非分裂細胞型を高効率で形質導入し、導入遺伝子の安定した長期的発現をもたらす。LVをパッケージング及び形質導入するための最適化方略の概要は、Delenda,The Journal of Gene Medicine 6:S125,2004で提供され、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0080】
レンチウイルスベースの遺伝子移入技術の使用は、目的の導入遺伝子が収容される、高度に欠失したウイルスゲノムを持つ組換えレンチウイルス粒子のインビトロ産生に依拠する。特に、組換えレンチウイルスは、(1)パッケージング構築物、すなわち、Gag-Pol前駆体をRev(代替的にトランスで発現される)とともに発現するベクター、(2)一般的に異種性質のエンベロープタンパク質を発現するベクター、及び(3)全てのオープンリーディングフレームを奪われているが、発現される配列が挿入される、複製、カプシド封入、及び発現に必要とされる配列を維持する、ウイルスcDNAからなる移入ベクターの許容細胞株におけるイントランス共発現を通して回収される。
【0081】
本明細書に記載される方法及び組成物で使用されるLVは、5’-長い末端反復(LTR)、HIVシグナル配列、HIV Psiシグナル5’-スプライス部位(SD)、デルタ-GAGエレメント、Rev応答エレメント(RRE)、3’-スプライス部位(SA)、伸長因子(EF)1-アルファプロモーター、及び3’-自己不活性化LTR(SIN-LTR)のうちの1つ以上を含み得る。レンチウイルスベクターは、任意選択的に、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、US6,136,597に記載される、中央ポリプリン管(cPPT)及びウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)を含む。レンチウイルスベクターは、例えば、以下に提供されるものを含み得る、pHR’骨格をさらに含み得る。
【0082】
Lu et al., Journal of Gene Medicine 6:963,2004に記載されるLentigen LVが、DNA分子を発現し、及び/または細胞を形質導入するために使用され得る。本明細書に記載される方法及び組成物で使用されるLVは、5’-長い末端反復(LTR)、HIVシグナル配列、HIV Psiシグナル5’-スプライス部位(SD)、デルタ-GAGエレメント、Rev応答エレメント(RRE)、3’-スプライス部位(SA)、伸長因子(EF)1-アルファプロモーター、及び3’-自己不活性化LTR(SIN-LTR)であり得る。任意選択的に、これらの領域のうちの1つ以上は、類似機能を実施する別の領域で置換されることが、当業者に容易に明らかになるであろう。
【0083】
エンハンサーエレメントが、修飾DNA分子の発現を増加させるか、またはレンチウイルス組み込み効率を増加させるために使用され得る。本明細書に記載される方法及び組成物で使用されるLVは、nef配列を含み得る。本明細書に記載される方法及び組成物で使用されるLVは、ベクターの組み込みを増強するcPPT配列を含み得る。cPPTは、(+)-鎖DNA合成の第2の起点として作用し、その天然HIVゲノムの中央に部分的な鎖の重複を導入する。移入ベクター骨格内のcPPT配列の導入は、核輸送及び標的細胞のDNAに組み込まれるゲノムの総量を強く増加させた。本明細書に記載される方法及び組成物で使用されるLVは、ウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)を含み得る。WPREは、転写産物の核輸出を促進することによって、及び/または新生転写産物のポリアデニル化の効率を増加させ、したがって、細胞内のmRNAの総量を増加させることによって、転写レベルで作用する。LVへのWPREの追加は、インビトロ及びインビボの両方で、いくつかの異なるプロモーターからの導入遺伝子発現レベルの大幅な改善をもたらす。本明細書に記載される方法及び組成物で使用されるLVは、cPPT配列及びWPRE配列の両方を含み得る。ベクターはまた、単一のプロモーターからの複数のポリペプチドの発現を可能にするIRES配列を含み得る。
【0084】
IRES配列に加えて、複数のポリペプチドの発現を可能にする他のエレメントが有用である。本明細書に記載される方法及び組成物で使用されるベクターは、1つより多くのポリペプチドの発現を可能にする複数のプロモーターを含み得る。本明細書に記載される方法及び組成物で使用されるベクターは、1つより多くのポリペプチドの発現を可能にするタンパク質切断部位を含み得る。1つより多くのポリペプチドの発現を可能にするタンパク質切断部位の例は、Klump et al.,Gene Ther.;8:811,2001、Osborn et al.,Molecular Therapy 12:569,2005、Szymczak and Vignali,Expert Opin Biol Ther.5:627,2005、及びSzymczak et al.,Nat Biotechnol.22:589,2004に記載されており、それらの開示は、1つより多くのポリペプチドの発現を可能にするタンパク質切断部位に関するため、参照により本明細書に組み込まれる。将来同定される複数のポリペプチドの発現を可能にする他のエレメントが有用であり、本明細書に記載される組成物及び方法とともに使用するために好適なベクターで利用され得ることが、当業者に容易に明らかであろう。
【0085】
本明細書に記載される組成物及び方法と併せて使用され得る他のレトロウイルスベクター(例えば、レトロウイルス骨格)には、ガンマレトロウイルスベクターが含まれる。例示的なガンマレトロウイルスベクターは、ニワトリ合胞体ウイルス、ネコ白血病ウイルス、フィンケル・ビスキス・ジンキンスマウス肉腫ウイルス、ガードナー・アーンスタインネコ肉腫ウイルス、テナガザル白血病ウイルス、モルモットC型オンコウイルス、ハーディ・ザッカーマンネコ肉腫ウイルス、ハーベイマウス肉腫ウイルス、キルステンマウス肉腫ウイルス、コアラレトロウイルス、モロニーマウス肉腫ウイルス、マウス白血病ウイルス、ブタC型オンコウイルス、細網内皮症ウイルス、スナイダー・ザイレンネコ肉腫ウイルス、トレーガーアヒル脾臓壊死ウイルス、マムシレトロウイルス、及びウーリーモンキー肉腫ウイルスであるか、またはこれらに由来する。
【0086】
ある特定の実施形態では、ウイルスベクター骨格は、レンチウイルス(LV)に由来する。ある特定の実施形態では、ウイルスベクター骨格は、第三世代自己不活性化(SIN)レンチウイルスベクター(LV)(例えば、HIV、SIV、またはEIAV)に由来する。ある特定の実施形態では、ウイルスベクター骨格は、自己不活性化ではないLV(例えば、)に由来する。
【0087】
本明細書に記載される組成物及び方法と併せて使用され得る他のレトロウイルスベクター(例えば、レトロウイルス骨格)には、アルファレトロウイルスベクターが含まれる。例示的なアルファレトロウイルスベクターは、トリがんミルヒルウイルス2、トリ白血病ウイルス、トリ骨髄芽腫症ウイルス、トリ骨髄腫症ウイルス29、トリ肉腫ウイルスct10、藤浪肉腫ウイルス、ラウス肉腫ウイルス、ur2肉腫ウイルス、及びy73肉腫ウイルスであるか、またはこれらに由来する。
【0088】
ベータレトロウイルス偽型
本明細書に記載される組成物及び方法と併せて使用されるウイルスベクターには、ベータレトロウイルス偽型エンベロープ遺伝子が含まれる。ベータレトロウイルスエンベロープ遺伝子は、正準B型またはD型ベータレトロウイルスに由来し得る。ベータレトウイルス偽型は、任意の好適なベータレトロウイルスに由来し得る。ベータレトロウイルスには、例えば、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)、地方病性鼻腫瘍ウイルス1型及び2型(ENT-1及びENT-2)、サルレトロウイルス1型、2型(SRV-1及びSRV-2)、及び3型、ヤーグジークテヒツジレトロウイルス(JSRV)、リスザルレトロウイルス(SMRV)、フクロギツネ内因性D型レトロウイルス(TvERV-D)、ハツカネズミD型レトウイルス(MusD)、サル内因性レトロウイルス(SERV)、メイソン・ファイザーサルウイルスMPMVが含まれる。いくつかの実施形態では、ベータレトロウイルスエンベロープ遺伝子は、非ベータレトロウイルスベクターに由来する。これらのウイルスは、組換え及び異種間伝播を通してベータレトロウイルス偽型を潜在的に獲得している。好適な例としては、BaEV、ネコレトロウイルスRD114、シンノンブルウイルス(SNV)、及び細網内皮症ウイルス(REV)が挙げられる。本明細書に記載される組成物及び方法と併せて使用され得るエンベロープ遺伝子には、その開示が参照によりその全体で本明細書に組み込まれる、Baillie et al.,J.Virol.78:5784-5798,2004に記載されるものが含まれる。
【0089】
γδ T細胞
ガンマデルタT細胞(γδ T細胞)は、その表面上で明確に異なる決定的なγδ T細胞受容体(TCR)を発現するT細胞のサブセットを表す。このTCRは、1つのガンマ(γ)鎖及び1つのデルタ(δ)鎖から構成される。ヒトγδ T細胞は、1つまたは2つのタイプ、すなわち、末梢血常在γδ T細胞及び非造血組織常在γδ T細胞として広く分類することができる。ほとんどの血液常在γδ T細胞がVδ2 TCRを発現する一方で、これは、より頻繁にVδ1及び/または他のVδ鎖を使用する組織常在γδ T細胞の間ではあまり一般的ではない。本発明は、本明細書に記載されるように、所望の導入遺伝子をコードするウイルスベクターで形質導入されるγδ T細胞を提供する。
【0090】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたγδ T細胞の供給源として使用するための好適なγδ T細胞には、Vδ1細胞、Vδ2細胞、Vδ3細胞、Vδ5細胞、及びVδ8細胞が含まれる。いくつかの実施形態では、操作されたγδ T細胞の集団は、Vδ1細胞またはVδ2細胞の集団に由来する。いくつかの事例では、操作されたγδ T細胞の集団は、非Vδ1/Vδ2 T細胞の集団に由来する。いくつかの事例では、操作されたγδ T細胞の集団は、Vδ1細胞及びVδ2細胞の混合集団に由来する。
【0091】
本明細書に記載されるγδ T細胞(例えば、内因性γδ T細胞またはプライミングされたγδ T細胞)は、水疱性口内炎ウイルスG糖タンパク質(VSV-G)侵入受容体(例えば、LDL)を欠き得る。γδ T細胞(例えば、内因性γδ T細胞またはプライミングされたγδ T細胞)は、ASCT-1及び/またはASCT-2を発現し得る。ASCT-1及び/またはASCT-2の発現は、ベータレトロウイルス偽型ベクター(例えば、BaEV及びRD114)を用いた形質導入を可能にし得る。VSV-Gの発現の欠如は、VSV-G偽型ベクターを用いた形質導入を妨げ得る。
【0092】
一態様では、本発明は、膜結合型タンパク質(例えば、キメラ抗原受容体(CAR)などの膜結合型タンパク質)、αβ TCR、天然細胞傷害性受容体(例えば、NKp30、NKp44、またはNKp46)、サイトカイン受容体(例えば、IL-12受容体)、ケモカイン受容体(例えば、CCR2受容体)、及び/または膜結合リガンドもしくはサイトカイン(例えば、膜結合型IL-15、膜結合型IL-7、膜結合型CD40L、膜結合型4-1BB、膜結合型4-1BBL、膜結合型CCL19)、可溶性タンパク質(例えば、可溶性リガンドもしくはサイトカイン、例えば、可溶性IL-15、可溶性IL-7、可溶性IL-12、可溶性CD40L、可溶性4-1BBL、及び/または可溶性CCL19)、選択可能マーカー(例えば、レポーター遺伝子)、または自殺遺伝子をコードし得る、1つ以上の導入遺伝子を発現するように操作されたγδ T細胞の集団を提供する。いくつかの事例では、本発明は、CAR及び1つ以上の追加の導入遺伝子によってコードされたタンパク質(例えば、アーマータンパク質)を発現するように操作されたγδ T細胞の集団を提供する。いくつかの実施形態では、1つ以上の導入遺伝子は、コドン最適化される。
【0093】
いくつかの実施形態では、γδ T細胞は、導入遺伝子をコードするウイルスベクターで形質導入される。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、レトロウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。いくつかのそのような実施形態では、細胞は、導入遺伝子を安定的に発現し得る。いくつかの実施形態では、細胞は、導入遺伝子を一過性に発現し得る。
【0094】
一態様では、本発明は、操作されたγδ T細胞(例えば、少なくとも10、102、103、104、105、106、107、108、109、1010、1011、1012、または1013個の細胞)の細胞集団(例えば、単離された細胞集団)を特徴とし、細胞集団の少なくとも3%(例えば、少なくとも4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、または実質的に全て)は、導入遺伝子(例えば、CAR及び/または1つ以上の追加のタンパク質)を発現する操作されたγδ T細胞の集団である。
【0095】
γδ T細胞を採取し、増殖させる方法
本発明の操作されたγδ T細胞は、任意の好適な自己もしくは同種異系γδ T細胞またはその集団に由来し得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作されたγδ T細胞の供給源として使用するための好適なγδ T細胞には、Vδ1細胞、Vδ2細胞、Vδ3細胞、Vδ5細胞、及びVδ8細胞が含まれる。いくつかの実施形態では、操作されたγδ T細胞の集団は、Vδ1細胞またはVδ2細胞の集団に由来する。
【0096】
例えば、本明細書では、皮膚または腸などの非造血組織からVδ1細胞を分離し、増殖させる方法が提供される。他の実施形態では、好適なγδ T細胞は、血液(例えば、末梢血)に由来し得る。血液からVδ1細胞を単離し、増殖させる方法には、例えば、各々が参照によりその全体で本明細書に組み込まれる、米国特許第9,499,788号及び国際特許公開第WO 2016/198480号に記載されるものが含まれる。いくつかの実施形態では、好適なγδ T細胞は、腫瘍組織(例えば、腫瘍浸潤性γδ T細胞)に由来し得る。代替的に、導入遺伝子を発現するように操作され得る好適なγδ T細胞は、以下に記載される方法に従って、非造血組織に由来し得る。
【0097】
血液からのγδ T細胞の単離及び増殖
いくつかの実施形態では、本発明の操作されたγδ T細胞は、対象の血液(例えば、末梢血)に由来する。例えば、操作されたγδ T細胞は、血液由来のVδ2細胞または血液由来のVδ1細胞に由来し得る。
【0098】
いくつかの実施形態では、末梢血単核細胞(PBMC)は、当技術分野で公知である任意の好適な方法に従って、対象から取得することができる。PBMCは、IL-2の存在下で1~2週間、アミノビスホスホネート(例えば、ゾレドロン酸)、合成ホスホ抗原(例えば、ブロモヒドリンピロリン酸塩;BrHPP)、2M3B1PP、または2-メチル-3-ブテニル-1-ピロリン酸塩の存在下で培養されて、Vδ2細胞の濃縮集団を生成することができる。代替的に、固定化された抗TCRγδ(例えば、汎TCRγδ)は、IL-2の存在下で、例えば、約14日間、PBMCの集団からのVδ2細胞の優先的な増殖を誘導することができる。いくつかの実施形態では、PBMCからのVδ2細胞の優先的な増殖は、IL-2及びIL-4の存在下での固定化された抗CD3抗体(例えば、OKT3)の培養時に達成することができる。いくつかの実施形態では、前述の培養は、可溶性抗CD3、IL-2、及びIL-4中の継代培養の前に約7日間維持される。代替的に、人工抗原提示細胞を使用して、Vδ2細胞などのγδ T細胞の優先的な増殖を促進することができる。例えば、照射されたaAPC、IL-2、及び/またはIL-21の存在下で培養されるPBMC由来のγδ T細胞は、増殖して、高い割合のVδ2細胞、中程度の割合のVδ1細胞、及びいくつかの二重陰性細胞を含む、γδ T細胞の集団を生成することができる。前述の方法のいくつかの実施形態では、PBMCは、(例えば、TCRγδ特異的薬剤を用いた陽性選択またはTCRαβ特異的薬剤の陰性選択を通して)事前濃縮または事後濃縮することができる。Vδ2細胞などのγδ T細胞の増殖のためのそのような方法及び他の好適な方法は、参照によりその全体で本明細書に組み込まれる、Deniger et al.,Frontiers in Immunology 5,636:1-10,2014に記載されている。
【0099】
いくつかの実施形態では、Vδ1 T細胞は、導入遺伝子(例えば、異種標的構築物)を発現するように操作することができる。Vδ1 T細胞の集団を取得する任意の好適な方法を使用することができる。例えば、参照によりその全体で本明細書に組み込まれる、Almeida et al.(Clinical Cancer Research,22,23;5795-5805,2016)は、本明細書に記載される異種標的構築物を発現するように操作され得るVδ1 T細胞の集団を取得する好適な方法を提供する。例えば、いくつかの実施形態では、PBMCは、90%を超えるγδ T細胞を生じさせ得る、磁気ビーズ選別を使用して事前濃縮される。これらの細胞は、ガス透過性バイオリアクターバッグ内で最大21日間、1つ以上の因子(例えば、TCRアゴニスト、共受容体アゴニスト、及び/またはサイトカイン、例えば、IL-4、IL-15、及び/またはIFN-γ)の存在下で培養することができる。本方法の変形例、及びVδ1 T細胞を取得する他の方法は、本発明の一部として好適である。例えば、血液由来Vδ1 T細胞は、代替的に、例えば、各々が参照によりその全体で本明細書に組み込まれる、米国特許第9,499,788号及び国際特許公開第WO2016/198480号に記載される方法を使用して取得することができる。
【0100】
非造血組織からの非造血組織常在γδ T細胞の分離及び増殖
以下に記載されるように取得される非造血組織常在γδ T細胞は、良好な腫瘍浸潤及び保持能力を示すことができるため、本明細書に記載される導入遺伝子のための好適なビヒクルであり得る。非造血組織常在γδ T細胞の単離及び増殖のためのより詳細な方法は、例えば、各々が参照によりその全体で本明細書に組み込まれる、PCT公開第WO2020/095058号、同第WO2020/095059号、同第WO2017/072367号、及び英国特許出願第2006989.4号に記載されている。
【0101】
非造血組織常在γδ T細胞(例えば、皮膚由来のγδ T細胞及び/または非Vδ2 T細胞、例えば、Vδ1 T細胞及び/またはDN T細胞)は、本発明の方法による操作に好適な細胞を取得するために患者から摘出され得る、任意のヒトまたは非ヒト動物非造血組織から単離することができる。いくつかの実施形態では、γδ T細胞が由来し、増殖される非造血組織は、当技術分野で公知の方法によって取得することができる皮膚(例えば、ヒト皮膚)である。いくつかの実施形態では、皮膚は、パンチ生検によって取得される。代替的に、本明細書で提供されるγδ T細胞の単離及び増殖の方法は、胃腸管(例えば、結腸)、乳腺、肺、前立腺、肝臓、脾臓、及び膵臓に適用することができる。γδ T細胞はまた、ヒトがん組織、例えば、乳房または前立腺の腫瘍に常在し得る。いくつかの実施形態では、γδ T細胞は、ヒトがん組織(例えば、固形腫瘍組織)に由来し得る。他の実施形態では、γδ T細胞は、ヒトがん組織以外の非造血組織(例えば、相当数の腫瘍細胞を含まない組織)に由来し得る。例えば、γδ T細胞は、近くのまたは隣接するがん組織から分離している皮膚の領域(例えば、健康な皮膚)に由来し得る。
【0102】
血液中で優勢であるγδ T細胞が、主にVδ2 T細胞である一方で、非造血組織中で優勢であるγδ T細胞は、Vδ1 T細胞が非造血組織常在γδ T細胞集団の約70~80%を含むように、主にVδ1 T細胞である。しかしながら、いくつかのVδ2 T細胞は、非造血組織、例えば、腸でも見出され、それらは、γδ T細胞の約10~20%を含むことができる。非造血組織に常在するいくつかのγδ T細胞は、Vδ1もVδ2 TCRも発現せず、それらは二重陰性(DN)γδ T細胞と名付けられている。これらのDN γδ T細胞は、ほとんどがVδ3発現であり、少数のVδ5発現T細胞を含む可能性が高い。したがって、通常、非造血組織に常在し、本発明の方法によって増殖されるγδ T細胞は、好ましくは、より少量のDN γδ T細胞を含む、非Vδ2 T細胞、例えば、Vδ1 T細胞である。
【0103】
いくつかの実施形態では、重要なステップは、例えば、数日または数週間の培養後に、(例えば、αβ細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、B細胞、並びにγδ2及び非γδ2 T細胞を含み得る、例えば、混合リンパ球集団内の)非造血組織常在T細胞を、T細胞が取得された組織の非造血細胞(例えば、間質細胞、特に、線維芽細胞)から意図的に分離することである。これは、非造血組織由来のVδ1 T細胞及びDN γδ T細胞の以降の数日間及び数週間にわたる優先的かつ急速な増殖を可能にする。
【0104】
一般に、非造血組織常在γδ T細胞は、間質細胞(例えば、皮膚線維芽細胞)との物理的接触の除去時に、自発的に増殖することが可能である。したがって、上記に記載される足場ベースの培養方法を使用して、そのような分離を誘導し、γδ T細胞の抑制解除をもたらして、増殖を誘発することができる。したがって、いくつかの実施形態では、実質的なTCR経路活性化が増殖ステップ中に存在しない(例えば、外因性TCR経路活性化因子が培養物に含まれない)。さらに、本発明は、非造血組織常在γδ T細胞を増殖させる方法を提供し、本方法は、支持細胞、腫瘍細胞、及び/または抗原提示細胞との接触を伴わない。
【0105】
増殖プロトコルは、効率的なγδ T細胞の増殖を支援するために、生物学的因子の有効なカクテルの存在下で、非造血組織常在γδ T細胞を培養することを伴う。一実施形態では、γδ T細胞を増殖させる方法は、非造血組織(例えば、非造血組織由来のγδ T細胞の分離された集団、例えば、本明細書に記載される方法に従って分離される集団)から取得されたγδ T細胞の集団を提供することと、IL-2及びIL-15、ならびに任意選択的に、IL-1β、IL-4、及び/またはIL-21の存在下でγδ T細胞を培養することと、を含む。これらのサイトカインまたはその類似体は、γδ T細胞の増殖された集団を産生するために有効な量で、ある持続時間にわたって(例えば、少なくとも5日間、少なくとも6日間、少なくとも7日間、少なくとも8日間、少なくとも9日間、少なくとも10日間、少なくとも11日間、少なくとも12日間、少なくとも13日間、少なくとも14日間、少なくとも21日間、少なくとも28日間以上、例えば、5日~40日間、7日~35日間、14日~28日間、または約21日間)細胞と培養することができる。
【0106】
完全培地、OPTMIZER(商標)、AIM-V、Iscoves培地、ならびにRPMI-1640(Life Technologies)及びTEXMACS(商標)(Miltenyi Biotec)などのγδ T細胞のプライミング及び/または増殖に使用するために好適な多数の基礎培地が、利用可能である。培地は、血清、血清タンパク質、及び抗生物質などの選択的薬剤などの他の培地因子で補充され得る。例えば、いくつかの実施形態では、培地は、2mMのグルタミン、10%のFBS、pH7.2で10mMのHEPES、1%のペニシリン-ストレプトマイシン、ピルビン酸ナトリウム(1mM、Life Technologies)、非必須アミノ酸(例えば、100μMのGly、Ala、Asn、Asp、Glu、Pro、及びSer、1X MEM非必須アミノ酸 Life Technologies)、及び10μl/Lのβ-メルカプトエタノールを含有する、RPMI-1640を含む。便宜的に、細胞は、好適な培地中で、5%CO2を含有する加湿雰囲気中で37℃において培養される。
【0107】
γδ T細胞は、撹拌タンク発酵槽、エアリフト発酵槽、ローラーボトル、培養バッグまたは皿、及び中空繊維バイオリアクターなどの他のバイオリアクターを含む、任意の好適なシステム内で本明細書に記載されるように培養され得る。そのようなシステムの使用は、当技術分野で周知である。リンパ球の培養のための一般的な方法及び技術は、当技術分野で周知である。
【0108】
本明細書に記載される方法は、1つより多くの選択ステップ、例えば、1つより多くの枯渇ステップを含むことができる。陰性選択によるT細胞集団の濃縮は、例えば、陰性選択された細胞に固有の表面マーカーを対象とした抗体の組み合わせを用いて達成することができる。1つの方法は、陰性選択される細胞上に存在する細胞表面マーカーを対象としたモノクローナル抗体のカクテルを使用する、陰性磁気免疫接着またはフローサイトメトリーを介した細胞選別及び/または選択である。
【0109】
導入遺伝子
本発明の操作されたγδ T細胞は、所望の導入遺伝子を発現するように操作される。導入遺伝子を発現するように操作されたγδ T細胞は、がん治療(例えば、免疫療法)で使用するために好適である。本明細書に記載されるウイルスベクターは、導入遺伝子をコードし、これは次いで、導入されたγδ T細胞において安定的または一過性に発現される。本明細書に記載される組成物及び方法と併せて使用され得る導入遺伝子には、キメラ抗原受容体(CAR)が含まれる。
【0110】
いくつかの実施形態では、CARは、CD19、CD20、ROR1、CD22、がん胎児性抗原、アルファフェトタンパク質、CA-125、5T4、MUC-1、上皮腫瘍抗原、前立腺特異的抗原、黒色腫関連抗原、変異p53、変異ras、HER2/Neu、葉酸結合タンパク質、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gpl20、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp41、GD2、CD123、CD33、CD138、CD23、CD30、CD56、c-Met、メソテリン、GD3、HERV-K、IL-llRアルファ、カッパ鎖、ラムダ鎖、CSPG4、ERBB2、EGFRvIII、VEGFR2、組み合わせでのHER2-HER3、組み合わせでのHER1-HER2、NY-ESO-1、滑膜肉腫X切断点2(SSX2)、黒色腫抗原(MAGE)、T細胞によって認識される黒色腫抗原1(MART-1)、gp100、前立腺特異的抗原(PSA)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、前立腺幹細胞抗原(PSCA)、g9d2、またはそれらの組み合わせを標的とする。
【0111】
いくつかの事例では、本発明の操作されたγδ T細胞によって発現される導入遺伝子は、選択可能マーカー(例えば、レポーター遺伝子)または自殺遺伝子を含む。例えば、細胞内シグナル伝達ドメインを欠く切断型上皮成長因子受容体(EGFR)は、例えば、毒性の場合に、抗EGFRモノクローナル抗体を使用するインビボ枯渇のための導入遺伝子として使用することができる。同様に、CD20は、抗CD20モノクローナル抗体を使用するインビボ枯渇のための導入遺伝子として使用することができる。別の例示的な導入遺伝子は、投与される操作されたγδ T細胞の薬物媒介制御を容易にするための自殺遺伝子である。自殺遺伝子の使用を通して、有害事象の場合に、修飾細胞を患者から枯渇させることができる。一実施例では、薬物結合ドメインが、カスパーゼ9アポトーシス促進分子に融合される。いくつかの事例では、導入遺伝子は、シトシンデアミナーゼである。いくつかの事例では、導入遺伝子は、チミジンキナーゼである。
【0112】
加えて、または代替的に、本開示の操作されたγδ Tによる発現のための導入遺伝子は、膜結合型受容体(例えば、αβ TCR、天然細胞傷害性受容体(例えば、NKp30、NKp44、またはNKp46)、サイトカイン受容体(例えば、IL-12受容体)、及び/またはケモカイン受容体(例えば、CCR2受容体)などの膜結合型タンパク質、及び/または膜結合型リガンドもしくはサイトカイン(例えば、膜結合型IL-15、膜結合型IL-7、膜結合型CD40L、膜結合型4-1BB、膜結合型4-1BBL、膜結合型CCL19)をコードする。膜結合型リガンド及びサイトカインには、天然膜結合型リガンド及びサイトカイン(例えば、トランス提示されたIL-15及び4-1BBL)ならびに合成膜結合型構成(例えば、膜貫通タンパク質に人工的に融合されたリガンド)が含まれる。加えて、または代替的に、本発明の操作されたγδ T細胞によって発現される導入遺伝子は、可溶性リガンドまたはサイトカイン(例えば、可溶性IL-15、可溶性IL-7、可溶性IL-12、可溶性CD40L、可溶性4-1BBL、及び/または可溶性CCL19)などの可溶性タンパク質をコードする。
【0113】
いくつかの事例では、CARをコードする導入遺伝子を有する操作されたγδ T細胞は、免疫原性に寄与する追加の導入遺伝子で防御され得る。このような防御CAR T細胞は、本明細書に記載される膜結合型または可溶性タンパク質のうちのいずれかなどのアーマータンパク質を発現する。例えば、アーマータンパク質は、膜結合型受容体(例えば、αβ TCR、天然細胞傷害性受容体(例えば、NKp30、NKp44、またはNKp46)、サイトカイン受容体(例えば、IL-12受容体)、及び/またはケモカイン受容体(例えば、CCR2受容体)などの膜結合型タンパク質、及び/または膜結合型リガンドもしくはサイトカイン(例えば、膜結合型IL-15、膜結合型IL-7、膜結合型CD40L、膜結合型4-1BB、膜結合型4-1BBL、膜結合型CCL19)を含む。加えて、または代替的に、本発明の操作されたγδ CAR T細胞によって発現されるアーマータンパク質は、可溶性リガンドまたはサイトカイン(例えば、可溶性IL-15、可溶性IL-7、可溶性IL-12、可溶性CD40L、可溶性4-1BBL、及び/または可溶性CCL19)などの可溶性タンパク質を含む。
【0114】
いくつかの実施形態では、本発明の操作されたγδ T細胞は、γδ T細胞を防御するための1つ以上の導入遺伝子(例えば、本明細書に記載される導入遺伝子のうちのいずれかの1つ以上)を発現するように操作される(例えば、参照によりその全体で本明細書に組み込まれる、Yeku and Brentjens Biochem.Soc.Trans.2016,15:44,2,412-418に記載されるように、防御CAR T細胞として)。
【0115】
いくつかの実施形態では、導入遺伝子は、コドン最適化される。
【0116】
いくつかの実施形態では、γδ T細胞(例えば、Vδ1またはVδ2細胞)の操作された集団の少なくとも3%(例えば、少なくとも4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、または実質的に全て)が、導入遺伝子、例えば、CARまたは他の膜結合型もしくは可溶性タンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、γδ T細胞(例えば、Vδ1またはVδ2細胞)の操作された集団の少なくとも10%(例えば、少なくとも10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、または実質的に全て)が、導入遺伝子、例えば、CARまたは他の膜結合型もしくは可溶性タンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、γδ T細胞(例えば、Vδ1またはVδ2細胞)の操作された集団の少なくとも50%(例えば、少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、99%、または実質的に全て)が、導入遺伝子、例えば、CARまたは他の膜結合型もしくは可溶性タンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、γδ T細胞(例えば、Vδ1またはVδ2細胞)の操作された集団の3%~95%(例えば、5%~95%、10%~95%、20%~95%、25%~95%、または50%~95%)が、導入遺伝子、例えば、CARまたは他の膜結合型もしくは可溶性タンパク質を発現する。いくつかの実施形態では、γδ T細胞(例えば、Vδ1またはVδ2細胞)の操作された集団の3%~90%(例えば、5%~90%、10%~90%、20%~90%、25%~90%、または50%~90%)が、導入遺伝子、例えば、CARまたは他の膜結合型もしくは可溶性タンパク質を発現する。
【実施例】
【0117】
材料及び方法
レトロウイルスベクターの産生及び滴定
ゲノム(GFPまたは抗CD19キメラ抗原受容体)、gag/pol、逆転写酵素(rev)、及びエンベロープ(VSV-G、BaEV)をコードするプラスミドからなる第3世代自己不活性化ベクタープラットフォームを用いたHEK293細胞の一過性のトランスフェクションによって、レンチウイルスベクターを産生した。
【0118】
マウス白血病ウイルスゲノムプラスミド(GFPまたは抗CD19キメラ抗原受容体)を用いたFLYRD18細胞の一過性のトランスフェクションによって、ガンマレトロウイルスベクターを産生した。ベクターを、トランスフェクションの48時間後に採取し、0.45um細孔径ポリエーテルスルホン(PES)フィルターを通して濾過し、低速遠心分離(4℃で6,000g)を使用して濃縮した。
【0119】
ベクター力価を、ポリブレン(8ug/mL)の存在下で、濃縮ベクター材料の連続希釈を伴うヒト子宮頸癌細胞株(HeLa)の形質導入によって決定した。形質導入の3日後に、BD FACS Lyricフローサイトメーターを使用して、形質導入効率を決定した。以下の式を使用して、感染力価(TU/mL)を計算した:TU/mL=((形質導入細胞の数)×ベクター希釈×(形質導入効率%/100))/ベクターの体積(mL)。
【0120】
フローサイトメトリー
BD FACS Lyricフローサイトメーターを使用して、免疫表現型検査を実施した。PerCP-Vio700 抗TCR α/β(Miltenyi)、APC 抗TCR γ/δ(Miltenyi)、及びVioBlue 抗TCR Vδ1(Miltenyi)抗体を使用して、細胞を表面マーカーの発現について分析した。eFluor 780固定可能生存性染料を使用して、生存細胞を検出した。FITC標識ヒトCD19タンパク質(AcroBiosystems)を使用して、CAR19発現を検出した。
【0121】
γδ T細胞の単離及び増殖
Vδ1 γδ T細胞濃縮生成物(GDX012)を、Almeida et al.Clin.Cancer Res.22:5795-804,2016に基づく修正されたプロトコルを使用して産生した。簡潔に述べると、2.5%の自己血漿及びGlutamax(ThermoFisher)を補充した無血清培地(CTS OpTmizer、Thermo Fisher)を使用して、αβ枯渇末梢血単核細胞を増殖させた。単離された細胞を、組換えIL-4[rIL4](100ng/mL)、組換えインターフェロンγ[rIFNγ](70ng/mL)、組換えIL-21[rIL21](7ng/mL)、組換えIL-1β[rIL1β](15ng/mL、及び可溶性OKT-3抗CD3モノクローナル抗体(70ng/mL)の存在下で増殖させた。細胞を、加湿インキュベーター内で37℃及び5%CO2においてインキュベートした。増殖する細胞に、組換えIL-15[rIL15](70ng/mL)、IFNγ(30ng/mL)、及びOKT3(1mg/mL)を含有する新鮮な培地を定期的に供給した。
【0122】
レトロウイルス形質導入
増殖するγδ T細胞を、定義された感染の多重度(MOI)においてレトロウイルスベクターで形質導入した。MOIとは、形質導入中に1つの細胞当たり添加された感染性粒子の数(フローサイトメトリーによって測定される)を指す。γδ T細胞(1E+06/mL)を、レトロネクチンでコーティングされた(20μg/mL)非組織培養処理24ウェルプレート内で、またはベクトフシン(1μg/mL)の存在下での24ウェルプレート内で形質導入した。ウイルスベクターを、(上記のように)サイトカイン、OKT-3、及び2.5%の自己血漿を補充したCTS OpTmizer培地中で希釈した。γδ T細胞及びベクターストックを、37℃で2時間、1,000xgにおいてスピノキュレートした。一定の間隔で形質導入後3日後にフローサイトメトリーを使用して、形質導入効率を決定した。ある特定の実験では、逆転写酵素活性を阻害するために、培地を、10μMの最終濃度における非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤であるネビラピン(NVP)で補充した。
【0123】
実施例1.広域トロピズムVSV-G偽型レンチウイルスベクターは、γδ T細胞を形質導入することができない
GFPをコードするレンチウイルスベクターを、それぞれ、水疱性口内炎ウイルスG(VSV-G)またはヒヒ内因性ウイルス(BaEV)エンベロープで偽型化した。増殖したγδ T細胞(Vδ1、Vδ2、及び非Vδ1/Vδ2細胞からなる)を、定義された感染の多重度(MOI)において濃縮ウイルスベクターストックで形質導入した。形質導入の3日後にフローサイトメトリーを使用して、形質導入効率を決定した。
【0124】
フローサイトメトリー分析は、VSV-G偽型レンチウイルスベクターが、高いMOI(MOI 50以上、
図1A)でさえもγδ T細胞を形質導入することができないことを明らかにした。反対に、BaEVエンベロープレンチウイルスベクターを用いた形質導入は、低い感染の多重度でさえも高い形質導入効率をもたらした(
図1B)。逆転写酵素阻害剤NVPを用いたγδ T細胞の前処理は、GFP発現を無効にし、GFP発現がVδ1細胞における形質導入及びGFP発現の成功の結果であることを示した。
【0125】
実施例2.VSV-G偽型のCARをコードするレンチウイルスベクターを用いたVδ1 γδ T細胞の形質導入は、偽形質導入をもたらす
CAR発現がベクター組み込みまたは偽形質導入の結果であったかどうかを決定するために、Vδ1 γδ T細胞を、ネビラピン(NVP)の存在または非存在下で、キメラ抗原受容体をコードするレンチウイルスベクターで形質導入した。ネビラピンは、ウイルスRNAのcDNAへの逆転写を阻害することによってウイルス形質導入を阻止する逆転写酵素阻害剤である。したがって、ネビラピンの存在下でのレンチウイルスベクターに曝露された細胞のインキュベーションは、導入遺伝子発現を減少させるはずである。CAR発現は、BaEV偽型ベクターを用いた形質導入がネビラピンの存在下で実施されたときに完全に無効化され、CAR発現が偽形質導入から生じないことを実証した(
図4B及び
図6)。逆に、ネビラピンを用いたVδ1細胞の処理は、VSV-G偽型レンチウイルスベクターで形質導入された細胞におけるCAR発現を撤回しなかった。この結果は、VSV-G偽型ベクターがVδ1細胞を形質導入することができず、導入遺伝子(CAR)発現が偽形質導入の結果であることを実証する。偽形質導入が、形質導入後(形質導入の4日及び8日後)に長期間にわたってCAR発現を監視することによってさらに確認された。FACS分析によってベクター処理細胞を監視することにより、CAR発現が経時的に徐々に失われることが明らかになった(
図2A)。この現象はまた、NVPの存在または非存在下での様々な感染の多重度にわたって実証された(
図2B)。全体的に、結果は、VSV-G偽型レンチウイルスベクターがγδ T細胞に侵入することができないことを示唆する。
【0126】
実施例3.サイトカインプライミングは、BaEV偽型レンチウイルスベクターによるVδ1 γδ T細胞形質導入の主要な決定因子である
BaEV形質導入効率が、γδ T細胞増殖中のサイトカインプライミングの長さに依存するかどうかを調べるために、Vδ1細胞を細胞増殖プロセス中の異なる時点で形質導入した。細胞を、培養の開始時(0日目)、または増殖期の7日目、10日目、14日目、及び15日目にMOI=1で形質導入した。形質導入細胞を、形質導入の3日後にGFP発現についてフローサイトメトリーによって分析した。形質導入効率は、細胞増殖期中に徐々に増加し、15日目に形質導入の最高レベルに達した(
図3A)。NVPを用いた細胞の処理は、GFP発現がベクター組み込みの成功の結果であることを実証した(
図3B)。全体的に、結果は、初期「サイトカインプライミング」期がBaEV偽型レンチウイルスベクターによるVδ1形質導入の成功に必要であることを示唆する。
【0127】
実施例4.Vδ1 γδ T細胞の形質導入効率は、感染の多重度(MOI)と相関する
BaEV形質導入効率がウイルスベクター用量(MOI)に依存するかどうかを調べるために、Vδ1 γδ T細胞を、増加する量のBaEVエンベロープ偽型の抗CD19キメラ抗原受容体(CAR)をコードするレンチウイルスベクターで形質導入した。形質導入の3日後に、細胞をCAR発現についてフローサイトメトリーによって分析した。MOIを増加させることにより、形質導入Vδ1細胞の割合が有意に増加した(
図4A)。NVPの存在または非存在下のMOI=5におけるCAR形質導入の代表的なドットプロットが、
図4Bに示される。
【0128】
実施例5.BaEV偽型レンチウイルスベクターは、Vδ1及び非Vδ1(Vδ2、Vδ3)γδ T細胞の両方を形質導入する
BaEV偽型ベクターがVδ1細胞を独占的に形質導入するか、または他のγδ T細胞サブタイプも形質導入することができるかどうかを試験するために、形質導入効率を汎γδ及びVδ1細胞集団内で決定した。γδ T細胞を増殖させ、増殖の10日目に、MOI=1においてGFPまたはCARをコードするBaEVエンベロープレンチウイルスベクターで形質導入した。汎γδ及びVδ1特異的抗体を使用したFACS分析は、BaEVエンベロープベクターがVδ1及び非Vδ1(Vδ2、Vδ3、及びその他)γδ T細胞の両方を形質導入することを明らかにした(
図5)。
【0129】
実施例6.BaEV偽型レンチウイルスベクターを用いたVδ1 γδ T細胞の形質導入を、反復形質導入によってさらに増強することができる
連続的な形質導入が、増殖したVδ1 γδ T細胞におけるCAR発現をさらに増強することができるかどうかを決定するために、研究を行った。この目的のために、Vδ1細胞を、MOI=1で、1回(10日目)または2回(10日目及び11日目)のいずれかで形質導入した。3日後、細胞を収集し、FACSによって分析した。フローサイトメトリー分析は、単一のベクターヒットでVδ1細胞を効率的に形質導入することができ、これは、連日の二重形質導入によってさらに増強され得る効果であることを明らかにした(
図6)。
【0130】
実施例7.ベクトフシンの存在下での形質導入は、レトロネクチンの存在下と同様に効率的である
形質導入エンハンサーの選択がVδ1形質導入効率に何らかの影響を及ぼすかどうかを試験するために、2つの広く使用されている形質導入エンハンサー(レトロネクチン及びベクトフシン)を評価した。細胞増殖の10日目に、Vδ1細胞を、レトロネクチンまたはベクトフシンの存在下で、様々なMOIで形質導入し、形質導入効率を形質導入の3日後に決定した。FACS分析は、ベクトフシンがレトロネクチンと同様にレトロウイルス遺伝子移入を増加させるために効率的であることを明らかにした(
図7)。
【0131】
実施例8.Vδ1細胞がRD114偽型ウイルスベクターで形質導入され得る
Vδ1 γδ T細胞が他のベータレトロウイルスウイルスエンベロープ偽型ベクターによって形質導入され得るかどうかを試験するために、Vδ1 γδ T細胞をまた、RD114エンベロープ偽型ガンマレトロウイルスベクターで形質導入した。細胞を以前のように増殖させ、増殖の10日目にMOI=1で形質導入した。FACS分析は、BaEV偽型レンチウイルスベクターと同様に、RD114エンベロープガンマレトロウイルスベクターが、Vδ1 γδ T細胞を高効率で形質導入することができることを明らかにした(
図8)。
【0132】
他の実施形態
本明細書で記述される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、各独立した刊行物または特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示された場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0133】
本発明は、その具体的な実施形態に関連して記載されているが、さらなる修正が可能であり、本出願は、一般に、本発明の原理に従い、本発明が属する技術分野内の既知の実践または慣行内に入る本開示からのそのような逸脱を含む、本発明の任意の変形例、使用、または適応を網羅することを意図しており、本明細書で以前に記載された本質的特徴に適用され得、特許請求の範囲において以下に続くことが理解されるであろう。
【0134】
他の実施形態は、特許請求の範囲内である。
【国際調査報告】