(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】シリコーンを含有する溶解性固体物品
(51)【国際特許分類】
A61K 8/892 20060101AFI20240725BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20240725BHJP
A61K 8/46 20060101ALI20240725BHJP
A61K 8/898 20060101ALI20240725BHJP
A61K 8/44 20060101ALI20240725BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20240725BHJP
A61Q 5/02 20060101ALI20240725BHJP
A61Q 5/12 20060101ALI20240725BHJP
C11D 3/37 20060101ALI20240725BHJP
C11D 17/06 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
A61K8/892
A61K8/02
A61K8/46
A61K8/898
A61K8/44
A61K8/81
A61Q5/02
A61Q5/12
C11D3/37
C11D17/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506872
(86)(22)【出願日】2022-08-18
(85)【翻訳文提出日】2024-02-05
(86)【国際出願番号】 US2022040685
(87)【国際公開番号】W WO2023023210
(87)【国際公開日】2023-02-23
(32)【優先日】2021-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590005058
【氏名又は名称】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】THE PROCTER & GAMBLE COMPANY
【住所又は居所原語表記】One Procter & Gamble Plaza, Cincinnati, OH 45202,United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ムイ シアン ソー
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ウェイン グレン ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】トッド ライアン トンプソン
【テーマコード(参考)】
4C083
4H003
【Fターム(参考)】
4C083AC122
4C083AC302
4C083AC312
4C083AC441
4C083AC442
4C083AC642
4C083AC711
4C083AC712
4C083AC781
4C083AC782
4C083AD111
4C083AD112
4C083AD161
4C083AD162
4C083AD351
4C083AD352
4C083BB01
4C083BB05
4C083BB07
4C083BB36
4C083CC33
4C083CC38
4C083EE07
4H003AB27
4H003AB31
4H003AD04
4H003DA02
4H003EB05
4H003EB08
4H003EB19
4H003EB33
4H003EB37
4H003EB46
4H003ED02
4H003FA26
(57)【要約】
溶解性固体物品であって、当該溶解性固体物品は、当該物品の約10重量%~約50重量%の水溶性ポリマーと、当該物品の約5重量%~約80重量%の界面活性剤と、当該物品の約0.1重量%~約40重量%のシリコーンとを含む均質な混合物によって形成され、当該シリコーンが、約50nm~約25マイクロメートルの粒径を有する、溶解性固体物品が開示される。本発明は、溶解速度の低下、べたつき感、及び/若しくは不均一なコンディショニング効果、布地などの基材上のシリコーン染み、並びに/又は物品の変色を回避しながら、シリコーンからの効果を提供する溶解性固体物品を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解性固体物品であって、前記溶解性固体物品は、
a.前記物品の約10重量%~約50重量%の水溶性ポリマーと、
b.前記物品の約5重量%~約80重量%の界面活性剤と、
c.前記物品の約0.1重量%~約40重量%のシリコーンと
を含む均質な混合物によって形成され、前記シリコーンが、約50nm~約25マイクロメートルの粒径を有する、溶解性固体物品。
【請求項2】
前記シリコーンエマルションが、約80nm~約22マイクロメートルの粒径を有する、請求項1に記載の溶解性固体物品。
【請求項3】
前記シリコーンエマルションが、約100nm~約22マイクロメートルの粒径を有する、請求項2に記載の溶解性固体物品。
【請求項4】
前記界面活性剤が、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の溶解性固体物品。
【請求項5】
前記物品が、非イオン性乳化剤を更に含む、請求項1に記載の溶解性固体物品。
【請求項6】
前記物品が、最大約0.3%の、前記シリコーンに由来する窒素を含有する、請求項1に記載の溶解性固体物品。
【請求項7】
前記物品が、最大約0.2%の、前記シリコーンに由来する窒素を含有する、請求項6に記載の溶解性固体物品。
【請求項8】
前記物品が、最大約0.1%の、前記シリコーンに由来する窒素を含有する、請求項7に記載の溶解性固体物品。
【請求項9】
前記物品が、前記シリコーンに由来する窒素を含まない、請求項8に記載の溶解性固体物品。
【請求項10】
前記溶解性固体物品が、約0.050g/cm
3~約0.4g/cm
3の範囲の密度を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載の溶解性固体物品。
【請求項11】
前記溶解性固体物品が、80%~100%の連続気泡含有率を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の溶解性固体物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶解性固体物品であって、当該溶解性固体物品は、当該物品の約10重量%~約50重量%の水溶性ポリマーと、当該物品の約5重量%~約80重量%の界面活性剤と、当該物品の約0.1重量%~約40重量%のシリコーンとを含む均質な混合物によって形成され、当該シリコーンが、約50nm~約25マイクロメートルの粒径を有する溶解性固体物品に関する。本発明は、溶解速度の低下、べたつき感、及び/若しくは不均一なコンディショニング効果、布地などの基材上のシリコーン染み、並びに/又は物品の変色を回避しながら、シリコーンからの効果を提供する溶解性固体物品を提供する。
【背景技術】
【0002】
水溶性ポリマー担体又はマトリックス中に界面活性剤(複数可)及び/又は他の活性成分を含む可撓性及び溶解性固体物品は周知である。このような物品は、水中での溶解時に界面活性剤及び/又は他の活性成分を送達するのに特に有用である。同じ製品カテゴリ内の従来の顆粒又は液体形態と比較して、このような物品は、より良好な構造的一体性を有し、より濃縮され、保管、輸送/運送、運搬、及び取り扱いがより容易である。同じ製品カテゴリ内の固体錠剤形態と比較して、このような物品は、より速い溶解及び/又は消費者にとってより審美的な魅力を提供することができる。
【0003】
このような溶解性固体物品は、例えば、コンディショニング効果を提供するために、シリコーンを含む場合がある。例えば、P&Gの米国特許出願公開第2010/0291165(A)号には、シリコーンなどの疎水性表面残留コーティングを含む多孔質溶解性固体構造体の形態の発泡パーソナルケア物品が開示されている。しかしながら、シリコーン表面コーティングを含むそのような溶解性固体構造体は、以下のうちの少なくとも1つを引き起こす恐れがあることが本発明者らによって見出された:
-物品中にこのようなシリコーンが不均一に分布することにより、毛髪などの標的基材に対してべたつき感及び/若しくは不均一なコンディショニング効果をもたらす場合がある並びに/又は布地などの標的基材上に染みとして残る場合がある;並びに
-シリコーン表面コーティングに起因してそのような物品が変色する。
【0004】
別の例は、可撓性多孔質溶解性固体構造体を作製するための連続プロセスに関するP&Gの米国特許出願公開第2012/270029(A)号であり得る。この刊行物では、実施例13及び14において、粒径30nmのジメチコノールを有するシリコーンマイクロエマルションを含むプロセスのための組成物が開示されている。しかしながら、本発明者らは、30nmの粒径を有するシリコーンマイクロエマルションを含むそのような可撓性多孔質溶解性固体構造体は、多孔性の低下(溶解性固体が連続気泡発泡体であることを特徴とする場合、連続気泡含有率の低下)を引き起こす場合があり、このことにより固体物品の溶解速度が低下することを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2010/0291165(A)号
【特許文献2】米国特許出願公開第2012/270029(A)号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、溶解速度の低下、べたつき感、及び/若しくは不均一なコンディショニング効果、布地などの基材上のシリコーン染み、並びに/又は物品の変色を回避しながら、シリコーンからの効果を提供する溶解性固体物品が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、溶解性固体物品であって、当該溶解性固体物品は、
a.当該物品の約10重量%~約50重量%の水溶性ポリマーと、
b.当該物品の約5重量%~約80重量%の界面活性剤と、
c.当該物品の約0.1重量%~約40重量%のシリコーンとを含む均質な混合物によって形成され、当該シリコーンが、約50nm~約25マイクロメートルの粒径を有する、溶解性固体物品に関する。
【0008】
本発明は、溶解速度の低下、べたつき感、及び/若しくは不均一なコンディショニング効果、布地などの基材上のシリコーン染み、並びに/又は物品の変色を回避しながら、シリコーンからの効果を提供する溶解性固体物品を提供する。
【0009】
本発明のこれらの及びその他の態様は、以下の「発明を実施するための形態」を読むことにより、更に明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書は、本発明を具体的に指摘し、かつ明確に特許請求する「特許請求の範囲」で締めくくられているが、本発明は、以下の説明からよりよく理解されるものと考えられる。
【0011】
本明細書で、「含む(comprising)」とは、最終結果に影響しない他のステップ及び他の成分も加えられる場合があることを意味する。この用語は、「からなる(consisting of)」及び「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語を包含する。
【0012】
全ての百分率、部及び比率は、別途指定されない限り、本発明の組成物の総重量に基づく。列記された成分に関連するこのような重量は全て、活性レベルに基づいており、したがって市販の材料に含まれ得る担体又は副生成物を含まない。
【0013】
本明細書で、「混合物」は、材料の単純な組み合わせと、このような組み合わせから得られることのある任意の化合物と、を含むことを意味する。
【0014】
用語「分子量」又は「M.Wt.」は、本明細書で使用するとき、特に記載のない限り、重量平均分子量を指す。重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定することができる。
【0015】
「QS」は、100%とするために十分な量を意味する。
【0016】
シリコーン及びシリコーンエマルション
本明細書で有用なシリコーンは、約50nm~約25マイクロメートル、好ましくは約80nm~約22マイクロメートル、より好ましくは約100nm~約22マイクロメートルの粒径を有する。本明細書で使用される粒径とは、体積基準の平均粒径を意味する。溶解性固体物品が平均気泡壁厚さ又は平均フィラメント径によって特徴付けられる場合、シリコーンは、平均気泡壁厚さ又は平均フィラメント径の最大約70%、より好ましくは最大約50%、更により好ましくは最大約40%の粒径を有することが好ましい。
【0017】
シリコーンは、溶解性固体物品中に、物品の約0.1重量%~約40重量%のレベルで含有される。
【0018】
布地ケアの場合、シリコーンは、溶解性固体物品中に、物品の約0.5重量%~約35重量%のレベルで含有されることが好ましい場合がある。
【0019】
ヘアシャンプーなどのパーソナルケア製品の場合、シリコーンは、溶解性固体物品中に、物品の0.1重量%~20重量%、より好ましくは約0.5重量%~約15重量%、更により好ましくは約1重量%~約10重量%のレベルで含有されることが好ましい場合がある。
【0020】
本明細書で有用なシリコーンは、コンディショニング効果を提供するために通常使用される任意のもの、例えば、ジメチコン、ジメチコノール、アモジメチコン、及びこれらの混合物であってよい。これらの中でも、ジメチコン及びジメチコノールなどの非イオン性かつ非アミノシリコーン、すなわち窒素原子を含まないシリコーンが好ましい。したがって、物品は、最大約0.3%の、シリコーンに由来する窒素、好ましくは最大約0.2%の窒素、より好ましくは約0.1%~の窒素を含有することが好ましい。最も好ましくは、物品はシリコーンに由来する窒素を含まない、すなわち、物品はシリコーンに由来する0%の窒素を含有する。
【0021】
上記シリコーンは、溶解性固体物品を作製するための流体組成物中にシリコーンエマルションとして含有されることが好ましい。溶解性固体物品を作製するためのそのような流体組成物は、例えば、
a.水溶性ポリマー、
b.界面活性剤、
c.シリコーンエマルションを含み、当該シリコーンは、約50nm~約25マイクロメートルの粒径を有する。
【0022】
このような流体組成物中の成分のレベルは、成分が溶解性固体物品中で上に定義したレベルを有するように調整される。好ましくは、このようなシリコーンエマルションは、非イオン性乳化剤を含有する。
【0023】
非イオン性乳化剤
溶解性固体物品は、特に、シリコーンが溶解性固体物品を作製するための流体組成物中にシリコーンエマルションとして含有される場合、約の非イオン性乳化剤を含んでいてよい。このような非イオン性乳化剤は、シリコーンの1~10重量%のレベルで物品中に含有され得る。あるいは、このような非イオン性乳化剤は、物品の約0.03重量%~約6重量%、好ましくは約0.03重量%~約4重量%のレベルで物品中に含有されてもよい。
【0024】
このような非イオン性乳化剤の例としては、以下が挙げられる:
・直鎖又は分岐鎖構造のいずれかの、約8~約18個の炭素原子を有する脂肪族アルコールと、約2~約35モルのエチレンオキシドとの縮合生成物であるアルコールエトキシレート、例えば、ココナッツアルコール1モル当たり約2~約30モルのエチレンオキシドを有するココナッツアルコールエチレンオキシド縮合体(ココナッツアルコール画分は、約10~約14個の炭素原子を有する)。
・アルキルフェノールのポリエチレンオキシド縮合体、例えば、直鎖又は分岐鎖構造のいずれかの、約6~約20個の炭素原子を含有するアルキル基を有するアルキルフェノールと、エチレンオキシドとの縮合生成物(当該エチレンオキシドは、アルキルフェノール1モル当たり約3~約60モルのエチレンオキシドと等量で存在する)。
・エチレンオキシドと、プロピレンオキシド及びエチレンジアミン生成物の反応から生じる生成物との縮合に由来するもの。
・約1~約3個の炭素原子の1つの短鎖アルキル又はヒドロキシアルキルラジカル(通常メチル)と、約8~約20個の炭素原子を含有するアルキル、アルケニル、ヒドロキシアルキル、又はケトアルキルラジカル、0~約10個のエチレンオキシド部分、及び0~約1個のグリセリル部分を含む1本の疎水性長鎖とを含有する長鎖ジアルキルスルホキシド。
・長鎖第三級アミンオキシド、例えば、以下の一般式:R1R2R3N-->O[式中、R1は、約8~約18個の炭素原子のアルキル、アルケニル、又はモノヒドロキシアルキルラジカル、0~約10個のエチレンオキシド部分、及び0~約1個のグリセリル部分を含有し、R2及びR3は、例えば、メチル、エチル、プロピル、ヒドロキシエチル、又はヒドロキシプロピルラジカル等の約1~約3個の炭素原子及び0~約1個のヒドロキシ基を含有する(式中の矢印は半極性結合を表す)]に相当するもの。
【0025】
実施形態では、非イオン性乳化剤は、シリコーン乳化剤であってよい。多種多様なシリコーン乳化剤が本明細書で有用であり得る。これらのシリコーン乳化剤は、典型的には、有機的に変性されたシロキサンであり、当業者にはシリコーン界面活性剤としても既知である。有用なシリコーン乳化剤としては、ジメチコンコポリオールが挙げられる。これらの材料は、ポリエチレンオキシド鎖、ポリプロピレンオキシド鎖、これらの鎖の混合などのポリエーテル側鎖、並びにエチレンオキシド及びプロピレンオキシドの両方に由来する部分を含有するポリエーテル鎖を含むように変性されたポリジメチルシロキサンである。他の例としては、アルキル変性ジメチコンコポリオール、すなわち、C2~C30のペンダント側鎖を含有する化合物が挙げられる。更に他の有用なジメチコンコポリオールとしては、様々なカチオン性、アニオン性、両性、及び双性イオン性のペンダント部分を有する材料が挙げられる。
【0026】
一実施形態では、非イオン性乳化剤は、約16~約20個の炭素原子の炭化水素鎖長、及び約20~約25モルのエトキシレートを有し得る。
【0027】
一実施形態では、非イオン性乳化剤は、約19~約11個、代替的には約9~約11個の炭素原子の炭化水素鎖長、及び約2~約4モルのエトキシレートを有し得る。
【0028】
一実施形態では、非イオン性乳化剤は、(a)約11~約15個の炭素原子長及び約5~約9モルのエトキシレートを有する、分岐状である炭化水素鎖を有する非イオン性乳化剤、(b)約11~約13個の炭素原子長及び約9~約12モルのエトキシレートを有する、炭化水素鎖を有する非イオン性乳化剤、の組み合わせを含み得る。
【0029】
水溶性ポリマー(「ポリマー構造剤」)
本発明は、構造剤として機能する水溶性ポリマーを含む。水溶性ポリマーは、物品の約10重量%~約50重量%、好ましくは約15重量%~約40重量%、より好ましくは約18重量%~約30重量%のレベルで物品中に含まれる。本明細書で使用するとき、「水溶性ポリマー」という用語は、水溶性ポリマー及び水分散性ポリマーの両方を包含するだけの十分な広範さがあり、25℃で測定して、少なくとも約0.1グラム/リットル(g/L)の水中での溶解度を有するポリマーとして定義される。いくつかの実施形態では、このポリマーは、25℃で測定して、約0.1グラム/リットル(g/L)~約500グラム/リットル(g/L)の水中での溶解度を有する。(これは、巨視的に等方性の又は透明な、有色又は無色の溶液の生成を示す)。これらの固体を作製するためのポリマーは、合成由来又は天然由来のものであってもよく、かつ化学反応によって改質されてもよい。これらは被膜形成性であってもよく、そうでなくてもよい。これらのポリマーは、生理学的に許容可能であるべきである。つまり、ポリマーは皮膚、粘膜、毛髪、及び頭皮に適合性であるべきである。
【0030】
「水溶性ポリマー」及び「ポリマー構造剤」という用語は、本明細書では互換的に使用される。更に、単数形の「ポリマー」という用語が述べられるときはいつでも、この用語は、1つのポリマー又は1つより多くのポリマーの混合物を含むのに十分に広範であることが理解されるべきである。例えば、ポリマーの混合物が使用される場合、本明細書で言及されるポリマー溶解度は、各ポリマーの個々の溶解度ではなく、ポリマーの混合物の溶解度を指すであろう。
【0031】
本発明の1つ以上の水溶性ポリマーは、それらの重量平均分子量が約40,000~約500,000、一実施形態では約50,000~約400,000、更に別の実施形態では約60,000~約300,000、及びなお別の実施形態では約70,000~約200,000であるように選択される。重量平均分子量は、各ポリマー原材料の平均分子量を加算し、多孔質固体内に存在するポリマーの総重量の重さによるそれぞれの相対的重量パーセントを乗じることによって計算する。
【0032】
以下に示されるように、多様な水溶性ポリマーを本発明において使用することができる。それらの中でも、ポリビニルアルコールが非常に好ましい。
【0033】
本発明の水溶性ポリマー(複数可)としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレンオキシド、ポリアクリレート、カプロラクタム、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリメチルアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド、アクリル酸とメチルメタアクリレートとのコポリマー、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリウレタン、ポリカルボン酸、ポリビニルアセテート、ポリエステル、ポリアミド、ポリアミン、ポリエチレンイミン、マレイン酸/(アクリレート又はメタクリレート)コポリマー、メチルビニルエーテルと無水マレイン酸とのコポリマー、酢酸ビニルとクロトン酸とのコポリマー、ビニルピロリドンと酢酸ビニルとのコポリマー、ビニルピロリドンとカプロラクタムとのコポリマー、ビニルピロリドン/酢酸ビニルのコポリマー、アニオン性モノマーとカチオン性モノマーと両性モノマーとのコポリマー、及びこれらの組み合わせを含む合成ポリマーを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0034】
本発明の水溶性ポリマー(複数可)はまた、カラヤガム、トラガントガム、アラビアゴム、アセマンナン、コンニャクマンナン、アカシアガム、ガティガム、乳清タンパク質単離物、及び大豆タンパク質単離物などの例を含む植物起源のもの;グアーガム、ローカストビーンガム、マルメロ種子、及びオオバコ種子を含む種子抽出物;カラギーナン、アルギン酸、及び寒天などの海藻抽出物;果物抽出物(ペクチン);キサンタンガム、ジェランガム、プルラン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、及びデキストランを含む微生物由来のもの;並びにカゼイン、ゼラチン、ケラチン、ケラチン加水分解物、スルホン酸ケラチン、アルブミン、コラーゲン、グルテリン、グルカゴン、グルテン、ゼイン、及びシェラックを含む動物起源のもの、を含む、天然起源のポリマーから選択されてもよい。
【0035】
改質された天然ポリマー(複数可)はまた、本発明において水溶性ポリマーとして有用であり得る。好適な改質された天然ポリマーとしては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、セルロースアセテートフタレート、ニトロセルロース及び他のセルロースエーテル/エステルのようなセルロース誘導体、並びにヒドロキシプロピルのようなグアー誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
本発明の好適な水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアルキレンオキシド、デンプン及びデンプン誘導体、プルラン、ゼラチン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース(methycelluloses)、及びカルボキシメチセルロース(carboxymethycelluloses)が挙げられる。
【0037】
本発明のより好ましい水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、及びヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。好適なポリビニルアルコールとしては、Celanese Corporation(Dallas,TX)から商品名Celvolで入手可能なものが挙げられ、Celvol 523、Celvol 530、Celvol 540、Celvol 518、Celvol、513、Celvol 508、Celvol 504、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。好適なヒドロキシプロピルメチルセルロースとしては、Dow Chemical Company(Midland,MI)から商品名Methocelで入手可能なものが挙げられ、Methocel E50、Methocel E15、Methocel E6、Methocel E5、Methocel E3、Methocel F50、Methocel K100、Methocel K3、Methocel A400、及び上述のヒドロキシプロピルメチルセルロースとの組み合わせを含むこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
本発明の最も好ましい水溶性ポリマーは、約40%~約100%、好ましくは約50%~約95%、より好ましくは約70%~約92%、最も好ましくは約80%~約90%の範囲の加水分解度を特徴とするポリビニルアルコールである。市販のポリビニルアルコールとしては、Celanese Corporation(Texas,USA)からの商品名CELVOLのもの、限定するものではないが、CELVOL 523、CELVOL 530、CELVOL 540、CELVOL 518、CELVOL 513、CELVOL 508、CELVOL 504、Kuraray Europe GmbH(Frankfurt,Germany)からの商品名Mowiol(登録商標)及びPOVAL(商標)のもの、並びにLubon Vinylon Co.(Nanjing,China)を含む様々な供給業者から市販されているPVA 1788(PVA BP17とも称される)、例えば、Liwei Chemical Co.Ltd.(China)から入手可能な86~90%の加水分解度、およそのMW(重量平均)=70,000~120,000ダルトンを有するBP-17、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。本発明の特に好ましい実施形態では、可撓性多孔質溶解性固体シート物品は、このような物品の総重量の約10重量%~約25重量%、より好ましくは約15重量%~約23重量%の、80,000~約150,000ダルトンの範囲の重量平均分子量、及び約80%~約90%の範囲の加水分解度を有するポリビニルアルコールを含む。
【0039】
界面活性剤
本発明の溶解性固体物品は、界面活性剤を含む。界面活性剤は、物品の約5重量%~約80重量%、好ましくは約10重量%~約75重量%、より好ましくは約20重量%~約70重量%、更により好ましくは約30重量%~約65重量%のレベルで物品中に含まれる。界面活性剤は、好ましくは、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される。
【0040】
好ましくは、界面活性剤は、グループIの界面活性剤とグループIIの界面活性剤とのブレンドを含む。本明細書で有用な界面活性剤のブレンドは、グループIからの1つ以上の界面活性剤と、グループIIからの1つ以上の界面活性剤とを含む。グループIの界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤が挙げられ、グループIIの界面活性剤としては、両性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤、及びこれらの組み合わせが挙げられる。本発明の一実施形態では、グループIの界面活性剤のグループIIの界面活性剤に対する比は、約90:10~約55:45である。本発明の更に別の実施形態では、グループIの界面活性剤のグループIIの界面活性剤に対する比は、約85:15~約65:35である。
【0041】
グループIの界面活性剤
本発明のグループIの界面活性剤としては、1つ以上のアニオン性界面活性剤が挙げられる。本明細書の溶解可能な物品において使用するのに好適なアニオン性界面活性剤構成成分としては、ヘアケア又は他のパーソナルケアクレンジング組成物における使用について知られているものが挙げられる。組成物中のアニオン性界面活性剤構成成分の濃度は、所望の洗浄及び泡立ち性能を提供するのに十分であるべきであり、グループIの界面活性剤の乾燥固体の約6.5重量%~約71重量%の範囲である。
【0042】
組成物に使用するのに好適なアニオン性界面活性剤としては、サルフェートを含まない界面活性剤が挙げられる。このようなサルフェートを含まない界面活性剤は、グルタミン酸塩、グリシン酸塩、タウリン酸塩、アラニン酸塩、又はサルコシン酸塩などの、モノカルボン酸塩及びジカルボン酸塩などのアミノ酸から誘導された材料を含み得る。例としては、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、ココイルグルタミン酸ナトリウム、ラウロイルグルタミン酸カリウム、ココイルアラニン酸ナトリウム、ココイルグリシン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、ココイルサルコシン酸ナトリウム、ココイルメチルタウリン酸ナトリウム、ラウリルメチルイセチオン酸ナトリウム、ココイルイセチオン酸ナトリウム、又はオレオイルサルコシン酸ナトリウムが挙げられる。
【0043】
本組成物での使用に好適なアニオン性界面活性剤としては、アルキルサルフェート及びアルキルエーテルサルフェートが挙げられる。これらの材料は、それぞれ式ROSO3M及びRO(C2H4O)xSO3M(式中、Rは、約8~約18個の炭素原子のアルキル又はアルケニルであり、xは、1~10の値を有する整数であり、Mは、アンモニウムなどのカチオン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン、ナトリウム及びカリウムなどの一価金属、並びにマグネシウム及びカルシウムなどの多価金属カチオンである)を有する。好ましくは、Rは、アルキル及びアルキルエーテルサルフェートの両方において、約8~約18個の炭素原子、より好ましくは約10~約16個の炭素原子、更により好ましくは約11~約14個の炭素原子を有する。アルキルエーテルサルフェートは、典型的には、エチレンオキシド及び約8~約24個の炭素原子を有する一価アルコールの縮合生成物として作製される。アルコールは合成であることができ、又はアルコールは、脂肪、例えば、ココナツ油、パーム核油、タローから誘導することができる。合成アルコールとしては、Shell ChemicalCo.からNEODOLという商標で市販されているグレード、すなわち、NEODOL91(C9~11アルコール)、NEODOL 23(C12~13アルコール)、NEODOL 25(C12~15アルコール)、NEODOL 45(C14~15アルコール)、及びNEODOL 135(C11~C13~C15アルコール)を挙げることができる。ココナツ油又はパーム核油から誘導されるラウリルアルコール及び直鎖アルコールが好ましい。そのようなアルコールは、約0~約10、一実施形態では約2~約5、別の実施形態では約3のモル割合のエチレンオキシドと反応され、例えば、アルコール1モル当たり平均3モルのエチレンオキシドを有する得られた分子種の混合物は、サルフェート化され、中和される。
【0044】
他の好適なアニオン性界面活性剤は、式[R1-SO3-M](式中、R1は、約8~約24個、好ましくは約10~約18個の炭素原子を有する直鎖又は分岐鎖の飽和脂肪族炭化水素ラジカルであり、Mは、前述のカチオンである)に一致する有機硫酸反応生成物の水溶性塩である。
【0045】
更に他の好適なアニオン性界面活性剤は、イセチオン酸でエステル化され、水酸化ナトリウムで中和された脂肪酸の反応生成物であり、例えば、脂肪酸は、ココナツ油又はパーム核油から誘導され、例えば、脂肪酸は、ココナツ油又はパーム核油から誘導されるメチルタウリドの脂肪酸アミドのナトリウム塩又はカリウム塩である。他の同様のアニオン性界面活性剤は、米国特許第2,486,921号、同第2,486,922号、及び同第2,396,278号に記載されている。
【0046】
本組成物において使用するのに好適な他のアニオン性界面活性剤は、スクシネートであり、その例としては、二ナトリウムN-オクタデシルスルホスクシネート、二ナトリウムラウリルスルホスクシネート、ジアンモニウムラウリルスルホスクシネート、四ナトリウムN-(1,2-ジカルボキシエチル)-N-オクタデシルスルホスクシネート、スルホコハク酸ナトリウムのジアミルエステル、スルホコハク酸ナトリウムのジヘキシルエステル、及びスルホコハク酸ナトリウムのジオクチルエステルが挙げられる。
【0047】
他の好適なアニオン性界面活性剤としては、約10~約24個の炭素原子を有するオレフィンスルホネートが挙げられる。真の(true)アルケンスルホネート及び一定のヒドロキシアルカンスルホネートに加えて、オレフィンスルホネートは、反応条件、反応物の割合、オレフィン原料中の出発オレフィン及び不純物の性質、並びにスルホン化プロセス中の副反応に応じて、アルケンジスルホネートなどの少量の他の材料を含有することができる。そのようなアルファ-オレフィンスルホネート混合物の非限定的な例は、米国特許第3,332,880号に記載されている。
【0048】
本組成物における使用に好適なアニオン性界面活性剤の別のクラスは、ベータ-アルキルオキシアルカンスルホネートである。これらの界面活性剤は、次式
【0049】
【化1】
に一致するものであり、式中、R1は、約6~約20個の炭素原子を有する直鎖アルキル基であり、R2は、約1~約3個の炭素原子、好ましくは1個の炭素原子を有する低級アルキル基であり、Mは、前述したとおりの水溶性カチオンである。
【0050】
本組成物における使用に好適な追加のアニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウレス硫酸アンモニウム、ラウレス-1硫酸アンモニウム、ラウレス-2硫酸アンモニウム、ラウレス-3硫酸アンモニウム、トリエタノールアミンラウリルサルフェート、トリエタノールアミンラウレスサルフェート、トリエタノールアミンラウレス-1サルフェート、トリエタノールアミンラウレス-2サルフェート、トリエタノールアミンラウレス-3サルフェート、モノエタノールアミンラウリルサルフェート、モノエタノールアミンラウレスサルフェート、ジエタノールアミンラウリルサルフェート、ジエタノールアミンラウレスサルフェート、ラウリックモノグリセリド硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウレス硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウレス硫酸カリウム、ラウリルサルコシン酸ナトリウム、ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、ラウリルサルコシン、ココイルサルコシン、アンモニウムココイルサルフェート、アンモニウムラウロイルサルフェート、ココイル硫酸ナトリウム、ラウロイル硫酸ナトリウム、ココイル硫酸カリウム、ラウリル硫酸カリウム、モノエタノールアミンココイルサルフェート、モノエタノールアミンラウリルサルフェート、トリデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ココイルイセチオン酸ナトリウム、デシル硫酸アンモニウム、デシル硫酸ナトリウム、ウンデシル硫酸アンモニウム、及びウンデシル硫酸アンモニウム、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0051】
本発明の一実施形態では、界面活性剤のうちの1つ以上は、アルキルサルフェートである。一実施形態では、1つ以上のアルキルサルフェートは約0.0~約1.9のエトキシル化の平均モル数を有し、別の実施形態では、1つ以上のアルキルサルフェートは約0.0~約1.5のエトキシル化の平均モル数を有し、更に別の実施形態では、1つ以上のアルキルサルフェートは約0.0~約1.0のエトキシル化の平均モル数を有する。一実施形態では、1つ以上のアルキルサルフェートは、アンモニウム対イオンを含む。アンモニウム対イオンを有するそのような界面活性剤の好適な例としては、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウレス-1硫酸アンモニウム、ラウレス-2硫酸アンモニウム、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
一実施形態では、1つ以上のグループIの界面活性剤は、以下の構造:
【0053】
【化2】
を有するアルキルサルフェートから選択され、式中、R
1は、平均9.0~11.9個の炭素原子を含む置換又は非置換の直鎖又は分岐鎖アルキル又は不飽和アルキル系からなる群から選択されるC結合一価置換基から選択され、R
2は、2~3個の炭素原子を含むC結合二価の直鎖又は分岐鎖アルキル系からなる群から選択され、M
+は、ナトリウム、アンモニウム、又はプロトン化トリエタノールアミンから選択される一価の対イオンであり、xは0.0~3.0である。一実施形態では、上記構造によるアルキルサルフェート界面活性剤のうちの1つ以上は、約0.0~約1.9のエトキシル化の平均モル数を含み、別の実施形態では、上記構造によるアルキルサルフェート界面活性剤は、約0.0~約1.5のエトキシル化の平均モル数を含み、更に別の実施形態では、上記構造によるアルキルサルフェート界面活性剤は、約0.0~約1.0のエトキシル化の平均モル数を含む。好適な例としては、デシル硫酸アンモニウム、デシル硫酸ナトリウム、ウンデシル硫酸アンモニウム、ウンデシル硫酸ナトリウム、トリエタノールアミンデシルサルフェート、又はトリエタノールアミンウンデシルサルフェートが挙げられる。一実施形態では、本発明のアニオン性界面活性剤は、ウンデシル硫酸アンモニウムを含む。
【0054】
グループIIの界面活性剤
本発明のグループIIの界面活性剤は、1つ以上の両性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤、及び/又はこれらの組み合わせを含む。本明細書における組成物での使用に好適な両性界面活性剤又は双性イオン性界面活性剤としては、ヘアケア又は他のパーソナルケアクレンジングにおける使用で知られているものが挙げられる。そのような両性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤、及び/又はこれらの組み合わせの濃度は、乾燥固形分の約1.0重量%~約52.5重量%の範囲である。好適な双性イオン性界面活性剤又は両性界面活性剤の非限定的な例は、米国特許第5,104,646号(Bolich Jr.ら)、同第5,106,609号(Bolich Jr.ら)に記載されている。
【0055】
本組成物で使用するのに好適な両性界面活性剤は、当該技術分野において周知であり、脂肪族二級及び三級アミンの誘導体として広く説明されている界面活性剤が挙げられ、その脂肪族ラジカルは、直鎖又は分岐鎖であることができ、脂肪族置換基のうちの1つは、約8~約18個の炭素原子を含み、1つは、カルボキシ、スルホネート、サルフェート、ホスフェート、又はホスホネートなどのアニオン性基を含む。そのような両性界面活性剤の好適な例としては、コカミノプロピオン酸ナトリウム、コカミノジプロピオン酸ナトリウム、ココアンホ酢酸ナトリウム、ココアンホヒドロキシプロピルスルホン酸ナトリウム、ココアンホプロピオン酸ナトリウム、コルナンホプロピオン酸ナトリウム(sodium cornamphopropionate)、ラウラミノプロピオン酸ナトリウム、ラウロアンホ酢酸ナトリウム、ラウロアンホヒドロキシプロピルスルホン酸ナトリウム、ラウロアンホプロピオン酸ナトリウム、コルナンホプロピオン酸ナトリウム(sodium cornamphopropionate)、ラウリミノジプロピオン酸ナトリウム、コカミノプロピオン酸アンモニウム、コカミノジプロピオン酸アンモニウム、ココアンホ酢酸アンモニウム、ココアンホヒドロキシプロピルスルホン酸アンモニウム、ココアンホプロピオン酸アンモニウム、コーンアンホプロピオン酸アンモニウム、ラウラミノプロピオン酸アンモニウム、ラウロアンホ酢酸アンモニウム、ラウロアンホヒドロキシプロピルスルホン酸アンモニウム、ラウロアンホプロピオン酸アンモニウム、コーンアンホプロピオン酸アンモニウム、ラウリミノジプロピオン酸アンモニウム、コカミノプロピオン酸トリエタノールアミン、コカミノジプロピオン酸トリエタノールアミン、ココアンホ酢酸トリエタノールアミン、ココアンホヒドロキシプロピルスルホン酸トリエタノールアミン、ココアンホプロピオン酸トリエタノールアミン、コーンアンホプロピオン酸トリエタノールアミン、ラウラミノプロピオン酸トリエタノールアミン、ラウロアンホ酢酸トリエタノールアミン、ラウロアンホヒドロキシプロピルスルホン酸トリエタノールアミン、ラウロアンホプロピオン酸トリエタノールアミン、コーンアンホプロピオン酸トリエタノールアミン、ラウリミノジプロピオン酸トリエタノールアミン、ココアンホジプロピオン酸、カプロアンホ二酢酸二ナトリウム、カプロアンホジプロピオン酸二ナトリウム、カプリロアンホ二酢酸二ナトリウム、カプリロアンホジプロピオン酸二ナトリウム(disodium capryloamphodipriopionate)、ココアンホカルボキシエチルヒドロキシプロピルスルホン酸二ナトリウム、ココアンホ二酢酸二ナトリウム、ココアンホジプロピオン酸二ナトリウム、ジカルボキシエチルココプロピレンジアミン二ナトリウム、ラウレス-5カルボキシアンホ二酢酸二ナトリウム、ラウリミノジプロピオン酸二ナトリウム、ラウロアンホ二酢酸二ナトリウム、ラウロアンホジプロピオン酸二ナトリウム、オレオアンホジプロピオン酸二ナトリウム、PPG-2-イソデセチ(isodecethy)-7カルボキシアンフォジアセテート、ラウラミノプロピオン酸、ラウロアンホジプロピオン酸、ラウリルアミノプロピルグリシン、ラウリルジエチレンジアミノグリシン、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
一実施形態では、両性界面活性剤は、以下の構造:
【0057】
【化3】
による界面活性剤であり、式中、R1は、9~15個の炭素原子を含む置換アルキル系、9~15個の炭素原子を含む非置換アルキル系、9~15個の炭素原子を含む直鎖アルキル系、9~15個の炭素原子を含む分岐鎖アルキル系、及び9~15個の炭素原子を含む不飽和アルキル系からなる群から選択されるC結合一価置換基であり、R2、R3、及びR4は、1~3個の炭素原子を含むC結合二価直鎖アルキル系、及び1~3個の炭素原子を含むC結合二価分岐鎖アルキル系からなる群から各々独立して選択され、M+は、ナトリウム、アンモニウム、及びプロトン化トリエタノールアミンからなる群から選択される一価対イオンである。好適な界面活性剤の具体例としては、ココアンホ酢酸ナトリウム、ココアンホ二酢酸ナトリウム、ラウロアンホ酢酸ナトリウム、ラウロアンホ二酢酸ナトリウム、ラウロアンホ酢酸アンモニウム、ココアンホ酢酸アンモニウム、ラウロアンホ酢酸トリエタノールアミン、及びココアンホ酢酸トリエタノールアミンが挙げられる。
【0058】
本組成物で使用するのに好適な双性イオン性界面活性剤は、当該技術分野において周知であり、脂肪族四級アンモニウム、ホスホニウム、及びスルホニウム化合物の誘導体として広く記載されている界面活性剤が挙げられ、その脂肪族ラジカルは直鎖又は分岐鎖であってもよく、脂肪族置換基のうちの1つは約8~約18個の炭素原子を含有し、1つは、アニオン性基、例えばカルボキシ、スルホネート、サルフェート、ホスフェート、又はホスホネートを含有する。好適な双性イオン性界面活性剤としては、コカミドエチルベタイン、コカミドプロピルアミンオキシド、コカミドプロピルベタイン、コカミドプロピルジメチルアミノヒドロキシプロピル加水分解コラーゲン、コカミドプロピルジモニウムヒドロキシプロピル加水分解コラーゲン、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン、ココベタインアミドアンホプロピオネート、ココ-ベタイン、ココ-ヒドロキシスルタイン、ココ/オレアミドプロピルベタイン、ココ-スルタイン、ラウラミドプロピルベタイン、ラウリルベタイン、ラウリルヒドロキシスルタイン、ラウリルスルタイン、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
他の界面活性剤
本発明の組成物は、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される、好ましい界面活性剤として上述したものと組み合わせて又は別々に使用するための他の界面活性剤を含んでいてもよい。好適な他の界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤が挙げられる。毛髪又はパーソナルケア製品に使用するための当該技術分野において既知の任意のこのような界面活性剤を使用してもよいが、ただし、任意選択的な追加の界面活性剤も組成物の必須構成成分と化学的及び物理的に適合性があるか、又はそうでなくても製品性能、審美性、若しくは安定性を過度に損なわないことを条件とする。組成物中の任意選択的な追加の界面活性剤の濃度は、所望のクレンジング又は起泡性能、選択された任意選択的な界面活性剤、所望の製品濃度、組成物中の他の構成成分の存在、及び当該技術分野においてよく知られている他の要因によって変化し得る。
【0060】
組成物において使用するのに好適なその他のアニオン性、双性イオン性、両性、又は任意選択的な追加の界面活性剤の非限定例は、M.C.Publishing Co.発行によるMcCutcheon’s,Emulsifiers and Detergents,1989 Annual,、並びに米国特許第3,929,678号、同第2,658,072号、同第2,438,091号、同第2,528,378号に記載されている。
【0061】
可塑剤
本発明の溶解性固体物品は、パーソナルケア組成物に使用するのに好適な水溶性可塑剤を更に含んでもよい。水溶性可塑剤は、物品の約0.1重量%~約25重量%のレベルで物品中に含まれ得る。好適な可塑剤の非限定的な例としては、ポリオール、コポリオール、及びポリエステルが挙げられる。有用なポリオールの例としては、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ポリエチレングリコール(200~600)、多価の低分子量アルコール(例えば、C2~C8アルコール)、フルクトース、グルコース、スクロース、マルトース、ラクトースなどの、モノ-、ジ-、及びオリゴ-糖類、並びに高フルクトース固形コーンシロップが挙げられるが、これらに限定されない。
【0062】
任意選択的成分
溶解性固体物品は、組成物での使用が既知であるか、又は有用であるような他の任意選択的成分を更に含み得るが、ただし、このような任意選択的材料が、本明細書に記載の選択された不可欠な材料と適合性があるか、又はそうでなくても過度に製品性能を損なわないことを条件とする。
【0063】
かかる任意選択的成分とは、最も典型的には、化粧品での使用が認可され、CTFA Cosmetic Ingredient Handbook,Second Edition,The Cosmetic,Toiletries,and Fragrance Association,Inc.1988,1992などの参考文献に記載されている物質である。
【0064】
本明細書において任意選択的成分として好適な乳化剤としては、モノ-及びジ-グリセリド、脂肪族アルコール、ポリグリセロールエステル、プロピレングリコールエステル、ソルビタンエステル、並びに他の既知の乳化剤、又はそうでなければ、例えばケーキ及び他の焼き菓子及び菓子製品などの気泡化食品の調製中、又は毛髪用ムースなどの化粧品の安定化中に使用されるもののような、空気界面を安定させるのに一般に使用される乳化剤が挙げられる。
【0065】
このような任意選択成分の更なる非限定例としては、防腐剤、香料又は芳香剤、着色剤又は染料、コンディショニング剤、毛髪脱色剤、増粘剤、保湿剤、皮膚軟化剤、医薬活性物質、ビタミン又は栄養素、日焼け止め剤、脱臭剤、感覚剤、植物エキス、栄養素、収斂剤、化粧品粒子、吸収剤粒子、接着剤粒子、毛髪固定剤、繊維、反応剤、皮膚美白剤、皮膚日焼け剤、ふけ防止剤、香料、剥離剤、酸、塩基、保湿剤、酵素、懸濁化剤、pH調整剤、毛髪着色剤、毛髪パーマ剤、顔料粒子、にきび防止剤、抗微生物剤、抗細菌剤、日焼け止め剤、日焼け剤、剥離粒子、増毛又は育毛剤、防虫剤、シェービングローション剤、共溶媒又は他の追加の溶媒、並びに類似の他の材料が挙げられる。
【0066】
溶解性固体物品
本発明の溶解性固体物品は、シリコーンを含む均質な混合物によって形成される。本発明の溶解性固体物品は、シリコーン表面コーティングを含まないことが好ましい。
【0067】
溶解性固体物品は、水で溶解させたときに、約3~約8、好ましくは約5~約7.5のpHを有する。
【0068】
本明細書で使用するとき、「固体」という用語は、外力が物品に加えられていない場合に、20℃で、かつ大気圧下で、その形状を実質的に保持する(すなわち、その形状においていかなる可視変化もない)、物品の能力を意味する。
【0069】
本明細書で使用するとき、「可撓性」という用語は、物品が、その長手方向に垂直な中心線に沿って90°で曲げられた場合に、破損することなく、又は著しい破壊を伴わずに、応力に耐える物品の能力を意味する。好ましくは、このような物品は、顕著な弾性変形を受けることができ、5GPa以下、好ましくは1GPa以下、より好ましくは0.5GPa以下、最も好ましくは0.2GPa以下のヤング率によって特徴付けられる。
【0070】
本明細書で有用な溶解性固体物品は、液体、特に水性担体、より特に水中に溶解することができる。1部の物品に対して、約1 100部~、好ましくは約5~約50部、より好ましくは約10~約40部の水を添加することができる。
【0071】
本明細書で使用するとき、「溶解性」は、溶解性固体物品が水に完全に溶解するか、又はそれは、手溶解試験に従って水中で混合すると、均一な分散液をもたらすことを意味する。溶解性固体物品は、手溶解法によって測定すると、約0~約30ストローク、代替的には約0~約25ストローク、代替的には約0~約20ストローク、及び代替的には約0~約15ストロークの手溶解値を有する。「0ストローク」とは、水を添加するだけで、せん断又は手によるストロークはなにもなしに物品が溶解することを意味する。
【0072】
溶解性固体物品は、好ましくは多孔質であり、0.050g/cm3~約0.4g/cm3、好ましくは0.06グラム/cm3~0.3グラム/cm3、より好ましくは0.07グラム/cm3~0.2グラム/cm3、最も好ましくは0.08グラム/cm3~0.15グラム/cm3の範囲の密度を特徴とし得る。本発明の溶解性固形構造体は、1つ以上の可撓性の溶解性多孔質シートを含む溶解性固体物品の形態で提供することができ、当該2枚以上のシートの各々は、連続気泡発泡体、及び繊維状構造体などであることによって特徴付けられる。多孔質シートは、任意選択的に、接合手段(例えば、熱、水分、超音波、及び圧力など)を介して一緒に接合され得る。
【0073】
本明細書で使用するとき、「連続気泡発泡体」又は「連続気泡細孔構造」という用語は、ガス、典型的にはガス(空気など)を含有し、物理的強度及び固体の凝集性を維持する、空隙又は気泡のネットワークを画定する固体相互結合ポリマー含有マトリックスを指す。構造体の相互結合性は、以下に開示される試験1によって測定される連続気泡含有率によって説明され得る。本明細書で有用な溶解性固体物品は、80%~100%の連続気泡含有率によって特徴付けることができる。
【0074】
手溶解試験法
必要材料:
試験対象の溶解性固形構造体:3~5個の溶解性固形構造体(最終製品サンプル)を試験し、個別の溶解性固形構造体サンプルの各々のストローク数の平均を計算して、溶解性固形構造体の平均手溶解値として記録する。この方法の場合、消費者用販売可能溶解性固形構造体、又は消費者用溶解性固形構造体の全体を試験する。消費者用販売可能溶解性固形構造体、又は消費者用溶解性固形構造体全体が5cm2を超えるフットプリントを有する場合に、最初に、5cm2のフットプリントを有するように溶解性固形構造体を切断する。
【0075】
ニトリル手袋
5mLシリンジ
プラスチック製秤量ボート(約3インチ×3インチ)
50mLガラスビーカー
水(下の特性を有するSingapore市の水又は等価物:合計硬度=64mg/L(CaCO2として;カルシウム含量=23mg/L;マグネシウム含量=1.58mg/L;リン酸含量=0.017mg/L)
使用される水は、硬度3gpg及び23℃+/-2℃である。
【0076】
プロトコル:
・水10mLをガラスビーカーに添加する。
・水が23℃+/-2℃の温度になるまでビーカー内の水を冷却する。
・ビーカーからシリンジを介して4mLの水を秤量ボートに移す。
・水を秤量ボートに移してから10秒以内に、手袋をはめた手(溶解性固形構造体サンプルを保持するためにカップのように丸めた形の利き手ではない手)の掌に溶解性固形構造体サンプルを置く。
・利き手を使用して、秤量ボートから溶解性固形構造体サンプルに水を素早く添加して、直ちに5~10秒間濡らす。
・反対側の、利き手(同様に手袋をはめている)を用いて、2回の急速な円形ストロークで擦る。
・2回のストローク後に、手の中の溶解性固形構造体サンプルを目視検査する。溶解性固形構造体サンプルが完全に溶解している場合、ストローク数=2溶解ストロークを記録する。完全に溶解していない場合、残りの溶解性固形構造体サンプルを更に2回の円形ストローク(合計4回)で擦り合わせ、溶解の程度を観察する。2回の更なるストローク後に溶解性固形構造体サンプルが固体片を含有しない場合、ストローク数=4溶解ストロークを記録する。合計4回のストローク後、溶解性固形構造体サンプルが依然として、溶解していない溶解性固形構造体サンプルの固体片を含有する場合、溶解性固形構造体サンプルが完全に溶解するか、又は合計ストロークが30に達するかのいずれか早い方まで、引き続き更に2回の円形ストロークで残りの溶解性固形構造体サンプルを擦り合わせ、各更なる2回のストローク後に溶解性固形構造体サンプルの残りの固体片が残っているかを確認する。合計ストローク数を記録する。上限の30ストローク後に固体溶解性固形構造体サンプル片が残った場合であっても、30溶解ストロークを記録する。
・更に4つの溶解性固形構造体サンプルの各々について、この処理を繰り返す。
・5つの個々の溶解性固形構造体サンプルの記録された溶解ストロークの値の算術平均を計算し、溶解性固形構造体の平均手溶解値として記録する。平均手溶解値は、最も近い単一の溶解ストローク単位で報告する。
【0077】
試験1:シート物品の連続気泡含有率
連続気泡含有率を、ガス比重瓶法によって測定する。ガス比重瓶法は、体積を正確に測定するガス置換法を使用する一般的な分析技術である。置換媒体としてヘリウム又は窒素のような不活性ガスが使用される。本発明の固体シート物品のサンプルを既知の体積の計器コンパートメント内に密閉し、適切な不活性ガスを入れ、次に別の精密な内部体積に膨張させる。膨張前及び膨張後の圧力を測定し、これを使用してサンプル物品の体積を計算する。
【0078】
ASTM標準試験法D6226又はASTM標準試験法2856は、古いモデルの気体比較比重瓶(air comparison pycnometer)を使用して連続気泡の割合を求めるための手順を提供する。この装置はもはや製造されていない。しかしながら、MicromeriticsのAccuPyc比重瓶を使用する試験を実施することにより、便利にかつ精密に連続気泡の割合を決定することができる。ASTM手順書D2856は、発泡材料の連続気泡率を決定するための5つの方法(A、B、C、D及びE)について述べている。これらの実験のために、窒素ガスを使用し、Accupyc 1340を使用して、ASTM foampycソフトウェアにより、サンプルを分析することができる。ASTM手順書の方法Cは、連続気泡パーセントを計算するために使用されるべきである。この方法は、以下の等式に従って、キャリパー及び標準体積計算を使用して決定される幾何学的体積を、Accupycによって測定される連続気泡体積と単純に比較する。
連続気泡パーセント=サンプルの連続気泡体積/サンプルの幾何学的体積*100
【0079】
これらの測定は、Micromeretics Analytical Services,Inc.(One Micromeritics Dr,Suite 200,Norcross,GA 30093)により行うことが推奨される。この技術に関するより多くの情報は、Micromeretics Analytical Servicesのウェブサイト(www.particletesting.com若しくはwww.micromeritics.com)上で入手可能であり、又はClyde Orr及びPaul Webb著「Analytical Methods in Fine particle Technology」において公開されている。
【0080】
溶解性固体物品は、以下の試験2に記載されるマイクロ-CT法によって測定される、100μm~2000μmの全平均孔径によって特徴付けることができる。全平均孔径は、溶解性固体物品の多孔度を定義する。
【0081】
溶解性固体物品は、以下の試験2によって測定される、1μm~200μm、好ましくは10μm~100μm、より好ましくは20μm~80μm、更により好ましくは、約25μm~60μmの平均気泡壁厚又は平均フィラメント径によって特徴付けることができる。
【0082】
試験2:連続気泡発泡体(Open Cell Foam、OCF)の全体又は領域の平均孔径及び平均気泡壁厚を決定するためのマイクロコンピュータ断層撮影(Micro-Computed Tomographic、μCT)法
多孔度は、空隙空間のOCFによって占有される全空間に対する比率である。多孔度は、空隙空間を閾値化によって区画化し、全ボクセルに対する空隙ボクセルの比率を決定することによって、μCTスキャンから計算することができる。同様に、固体体積分率(solid volume fraction、SVF)は、固体空間の全空間に対する比率であり、SVFは、占有されたボクセルの全ボクセルに対する比率として計算することができる。多孔度及びSVFの両方とも、OCFの高さ方向における孔径分布、又はOCFストラットの平均気泡壁厚などの構造情報を提供しない平均スカラー値である。
【0083】
OCFの3D構造によって特徴付けるために、高い等方性空間分解能でデータセットを取得することができるμCT X線走査機器を使用してサンプルを撮像する。好適な計測器の一例は、以下の設定で作動するSCANCO Systemモデル50μCTスキャナ(Scanco Medical AG,Bruttisellen,Switzerland)である:133μAで45kVpのエネルギーレベル;3000投影;15mm視野;750ms積分時間;5回の平均化;及び1画素当たり3μmのボクセルサイズ。走査及びその後のデータ再構成が完了した後、スキャナシステムは、ISQファイルと称される16ビットデータセットを作成し、そこでは、グレーレベルは、X線減衰の変化を反映し、ひいては材料密度に関連する。次いで、ISQファイルを、スケーリング係数を使用して8ビットに変換する。
【0084】
走査されたOCFサンプルを、通常、直径およそ14mmのコアを穿孔することによって調製する。OCFパンチを、低減衰発泡体上に平らに置き、次いで、走査用の直径15mmのプラスチック円筒管に取り付ける。取り付けられた切断サンプル全ての体積全体がデータセットに含まれるように、サンプルの走査を取得する。このより大きなデータセットから、サンプルデータセットのより小さいサブボリュームを、走査されたOCFの総断面から抽出して3Dのデータスラブを作成し、ここで、細孔は、縁/境界効果なしに定性的に評価することができる。
【0085】
高さ方向における孔径分布を特徴付けるために、ストラットサイズ、局所厚さマップアルゴリズム、又はLTMを、サブボリュームデータセット上に実装する。LTM法は、ユークリッド距離マッピング(Euclidean Distance Mapping、EDM)で開始し、各空隙ボクセルのその最も近い境界からの距離に等しいグレーレベル値を割り当てる。EDMデータに基づいて、細孔を表す3D空隙空間(又は、ストラットを表す3D固体空間)を、EDM値に一致するようにサイズ決めされた球体でモザイク化する。球体によって囲まれたボクセルに、最大球面の半径値を割り当てる。換言すれば、各空隙ボクセル(又はストラットの固体ボクセル)には、両方が空隙空間境界(又はストラットの固体空間境界)内に適合し、かつ割り当てられたボクセルを含む、最大球面の径方向値が割り当てられる。
【0086】
LTMデータ走査から出力された3D標識された球面分布は、高さ方向(又はZ方向)における二次元画像のスタックとして処理され、スライスからスライスへの球面直径の変化をOCF深度の関数として推定するために使用することができる。ストラットの厚さを、3Dデータセットとして処理し、平均値は、サブボリュームの全体又は一部について評価することができる。計算及び測定は、Thermo Fisher ScientificのAVIZO Lite(9.2.0)及びMathworksのMATLAB(R2017a)を使用して行った。
【0087】
溶解性固体物品は、以下に記載される試験3によって測定される、0.03m2/g~0.25m2/g、好ましくは0.04m2/g~0.22m2/g、より好ましくは0.05m2/g~0.2m2/g、最も好ましくは0.1m2/g~0.18m2/gの比表面積によって特徴付けることができる。本発明の固体シートの比表面積は、その多孔度を示し得、例えば、比表面積が大きいほど、シートがより多孔質であり、その溶解速度が速くなるといった、その溶解速度に影響を与え得る。
【0088】
試験3:シート物品の比表面積
可撓性多孔質溶解性固体シート物品の比表面積を、ガス吸着技術を介して測定する。表面積は、分子規模の固体サンプルの露出した表面の測定値である。BET(Brunauer、Emmet、及びTeller)理論は、表面積を決定するのに使用される最もよく知られているモデルであり、ガス吸着等温線に基づいている。ガス吸着は、物理的な吸着及び毛管凝縮を使用してガス吸着等温線を測定するものである。この技術は、以下のステップによって要約される。サンプルをサンプル管に入れ、真空下又はガス流下で熱してサンプルの表面上の汚染物を除去する。サンプル重量は、脱ガスされたサンプル及びサンプル管の混合重量から空のサンプル管重量を差し引いて得られる。次にサンプル管を分析ポート上に置き、分析を開始する。この分析プロセスの最初のステップは、サンプル管を排気し、次に液体窒素温度でヘリウムガスを使用してサンプル管内の自由空間体積を測定することである。次にサンプルを再度排気し、ヘリウムガスを除去する。計器は次に、要求される圧力測定値が達成されるまで、ユーザが指定する間隔でクリプトンガスを投与することによって吸着等温線を収集し始める。次にサンプルを、クリプトンガス吸着を備えるASAP2420を使用して分析してもよい。これらの測定は、Micromeretics Analytical Services,Inc.(One Micromeritics Dr,Suite 200,Norcross,GA 30093)により行うことが推奨される。この技術に関するより多くの情報は、Micromeretics Analytical Servicesのウェブサイト(www.particletesting.com若しくはwww.micromeritics.com)上で入手可能であり、又はClyde Orr及びPaul Webb著「Analytical Methods in Fine particle Technology」という書籍において公開されている。
【0089】
溶解性固体物品は、以下の試験4によって測定される、当該物品の0.5重量%~25重量%、好ましくは1重量%~20%重量%、より好ましくは3重量%~10%重量%の最終水分含量によって特徴付けることができる。結果として得られる固体シートにおける適切な最終水分含量は、シートの所望の可撓性/変形性を確保し、かつ消費者に柔らかな/滑らかな感触を提供することができる。最終水分含量が低すぎる場合、シートは、脆すぎる、又は剛性が高すぎる場合がある。最終水分含量が高すぎる場合、シートはべたつきすぎる場合があり、その全体的な構造的一体性が損なわれる場合がある。
【0090】
試験4:シート物品の最終水分含量
本発明の固体シート物品の最終水分含量を、Mettler Toledo HX204 Moisture Analyzer(S/N B706673091)を使用することによって得る。乾燥したシート物品の最低1gを測定トレー上に置く。次いで、標準プログラムを、10分の分析時間及び110℃の温度の追加のプログラム設定で実行する。
【0091】
製品
溶解性固体物品は、例えば、パーソナルケア製品、ホームケア製品、布地ケア製品、表面洗浄製品、汎用洗浄製品を含む任意の製品であってよい。好ましくは、製品は、パーソナルケア製品である。このようなパーソナル製品としては、例えば、身体、顔、及び/又は手の洗浄製品などのパーソナルクレンジング製品、ローション、顔用ミスト、ゲル、クリームなどのスキンケア製品、シャンプー及びコンディショナーなどのヘアケア製品が挙げられる。
【0092】
使用方法
溶解性固体物品の使用方法は、a)有効量の溶解性多孔質固体を手に適用するステップと、b)溶解性多孔質固体を水で濡らし、擦って固体を溶解させるステップと、c)溶解した材料を毛髪及び/又は皮膚などの対象に適用するステップと、並びにd)水を使用して、溶解した材料を対象からすすぐステップと、を含み得る。
【0093】
組み合わせ
1.溶解性固体物品であって、当該溶解性固体物品は、
a.当該物品の約10重量%~約50重量%の水溶性ポリマーと、
b.当該物品の約5重量%~約80重量%の界面活性剤と、
c.当該物品の約0.1重量%~約40重量%のシリコーンとを含む均質な混合物によって形成され、当該シリコーンが、約50nm~約25マイクロメートルの粒径を有する、溶解性固体物品。
2.当該シリコーンエマルションが、約80nm~約22マイクロメートル、好ましくは約100nm~約22マイクロメートルの粒径を有する、1.に記載の溶解性固体物品。
3.当該界面活性剤が、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される、1.又は2.のいずれか1つに記載の溶解性固体物品。
4.当該物品が、非イオン性乳化剤を更に含む、1.~3.のいずれか1つに記載の溶解性固体物品。
5.当該物品が、最大約0.3%の、好ましくは最大約0.2%の、より好ましくは最大約0.1%の当該シリコーンに由来する窒素、含有する、1.~4.のいずれか1つに記載の溶解性固体物品。
6.当該物品が、当該シリコーンに由来する窒素を含まない、1.~5.のいずれか1つに記載の溶解性固体物品。
7.当該溶解性固体物品が、約0.050g/cm3~約0.4g/cm3の範囲の密度を有する、1.~6.のいずれか1つに記載の溶解性固体物品。
8.当該溶解性固体物品が、80%~100%の連続気泡含有率を有する、1.~7.のいずれか1つに記載の溶解性固体物品。
【実施例】
【0094】
以下の実施例では、本発明の範囲内にある実施形態を更に説明及び実証する。これらの実施例は、例示目的でのみ提供され、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなくそれらの多くの変更が可能であることから、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。適用可能な場合には、成分を、化学名又はCTFA名で特定し、そうでない場合は、以下で定義する。
【0095】
【0096】
【0097】
例えばヘアコンディショナー用の溶解性固体物品の組成(CD実施例1)
以下の湿潤スラリー組成物を用いることによって、溶解多孔質固体物品を調製する。
【0098】
【0099】
上記湿潤スラリー組成物を使用することによって調製される溶解多孔質固体物品は、
a.物品の約10重量%~約50重量%のポリビニルアルコールと、
b.物品の約5重量%~約80重量%の界面活性剤(カチオン性界面活性剤及びポリソルベート-60)と、
c.物品の約0.1重量%~約40重量%のシリコーンとを含み、当該シリコーンは、約50nm~約25マイクロメートルの粒径を有する。
【0100】
【0101】
製造方法
溶解性固体物品は、例えば、PCT特許出願公開第2020/147000号及び/又は同第2020/147211号に記載されている製造方法で作製することができる。
【0102】
比較例iでは、シリコーンは、表面コーティングとして物品に含まれる。
【0103】
HS実施例1~HS実施例3、FE実施例1、FE実施例2、比較例ii及び比較例iiiにおいて、溶解性固体物品は、表中の上記成分を含む流体組成物から作製される。
【0104】
このような流体組成物中の成分のレベルは、成分が溶解性固体物品中で上記で定義されたレベルを有するように調整される。HS実施例1~HS実施例3、FE実施例1、FE実施例2、及び比較例iiでは、シリコーンは、シリコーンエマルジョンの形態で流体組成物中に含まれる。比較例iiiでは、シリコーンは、そのまま、すなわち非エマルション形態で流体組成物中に含まれる。
【0105】
HS実施例1~HS実施例3、FE実施例1及びFE実施例2、並びにCD実施例1の溶解性個体物品は、本発明の実施例であり、溶解速度の低下、べたつき感、及び/若しくは不均一なコンディショニング効果、布地などの基材上のシリコーン染み、並びに/又は物品の変色を回避しながら、シリコーンからの効果を提供する。
【0106】
比較例i~比較例iiiの溶解性個体物品は、比較例である。比較例iの物品は、物品上の表面コーティングとしてシリコーンを含有する。比較例iの物品では、物品の変色が観察され、べたつき感及び/又は不均一なコンディショニング効果も観察される。比較例iiの物品はより小さなシリコーン粒子を含有し、比較例iiiの物品はより大きなシリコーン粒子を含有する。これらの物品はいずれも、連続気泡含有率が減少している。
【0107】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。その代わりに、特に指示されない限り、そのような寸法は各々、列挙された値とその値を囲む機能的に同等な範囲との両方を意味することが意図される。例えば、「40mm」と開示された寸法は、「約40mm」を意味することが意図される。
【0108】
相互参照される又は関連するあらゆる特許又は特許出願、及び本願が優先権又はその利益を主張する任意の特許出願又は特許を含む、本明細書に引用される全ての文書は、除外又は限定することが明言されない限りにおいて、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いずれの文献の引用も、本明細書中で開示又は特許請求されるいずれの発明に対する先行技術であるとみなされず、あるいはそれを単独で又は他の任意の参考文献(単数又は複数)と組み合わせたときに、そのようないずれの発明も教示、示唆又は開示するとはみなされない。更に、本文書における用語のいずれの意味又は定義も、参照により組み込まれた文書内の同じ用語の任意の意味又は定義と矛盾する場合、本文書においてその用語に与えられた意味又は定義が適用されるものとする。
【0109】
本発明の特定の実施形態を例示及び説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な他の変更及び修正を行うことができる点は当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内にある全てのそのような変更及び修正を添付の特許請求の範囲に網羅することが意図される。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解性固体物品であって、前記溶解性固体物品は、
a.前記物品の約10重量%~約50重量%の水溶性ポリマーと、
b.前記物品の約5重量%~約80重量%の界面活性剤と、
c.前記物品の約0.1重量%~約40重量%のシリコーンと
を含む均質な混合物によって形成され、前記シリコーンが、約50nm~約25マイクロメートルの粒径を有する、溶解性固体物品。
【請求項2】
前記シリコーンエマルションが、約80nm~約22マイクロメートルの粒径を有する、請求項1に記載の溶解性固体物品。
【請求項3】
前記シリコーンエマルションが、約100nm~約22マイクロメートルの粒径を有する、請求項2に記載の溶解性固体物品。
【請求項4】
前記界面活性剤が、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、双性イオン性界面活性剤、及びこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の溶解性固体物品。
【請求項5】
前記物品が、非イオン性乳化剤を更に含む、請求項1に記載の溶解性固体物品。
【請求項6】
前記物品が、最大約0.3%の、前記シリコーンに由来する窒素を含有する、請求項1に記載の溶解性固体物品。
【請求項7】
前記物品が、最大約0.2%の、前記シリコーンに由来する窒素を含有する、請求項6に記載の溶解性固体物品。
【請求項8】
前記物品が、最大約0.1%の、前記シリコーンに由来する窒素を含有する、請求項7に記載の溶解性固体物品。
【請求項9】
前記物品が、前記シリコーンに由来する窒素を含まない、請求項8に記載の溶解性固体物品。
【請求項10】
前記溶解性固体物品が、約0.050g/cm
3~約0.4g/cm
3の範囲の密度を有する、請求項1に記載の溶解性固体物品。
【請求項11】
前記溶解性固体物品が、80%~100%の連続気泡含有率を有する、請求項1に記載の溶解性固体物品。
【国際調査報告】