(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】テルペン基質のアリル酸化のための人工アルカン酸化系
(51)【国際特許分類】
C12N 9/04 20060101AFI20240725BHJP
C12N 15/53 20060101ALI20240725BHJP
C12P 7/02 20060101ALI20240725BHJP
C12P 7/24 20060101ALI20240725BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240725BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240725BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240725BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240725BHJP
C12N 15/31 20060101ALI20240725BHJP
C12P 1/04 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
C12N9/04 Z ZNA
C12N15/53
C12P7/02
C12P7/24
C12N5/10
C12N1/21
C12N1/19
C12N1/15
C12N15/31
C12P1/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506921
(86)(22)【出願日】2022-08-06
(85)【翻訳文提出日】2024-02-05
(86)【国際出願番号】 EP2022072171
(87)【国際公開番号】W WO2023012370
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520064986
【氏名又は名称】アイソバイオニクス ベー.フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビークワイルダー,マルティヌス ユリウス
(72)【発明者】
【氏名】スタイルズ,マシュー クイン
(72)【発明者】
【氏名】バオミースター,スーザン エリン
(72)【発明者】
【氏名】ボッシュ,ヘンドリック ヤン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
【Fターム(参考)】
4B064AC01
4B064AC23
4B064CA19
4B064CB11
4B064CB12
4B064CB13
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4B065AA26X
4B065AB01
4B065AC16
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4B065BC01
4B065BD16
4B065BD21
4B065BD25
4B065BD41
4B065CA04
4B065CA05
4B065CA08
4B065CA41
4B065CA44
4B065CA50
(57)【要約】
1つ以上のアルカンを提供するための、構成要素a.オキシダーゼ酵素、及びb.1つ以上の酵素を含む人工アルカン酸化系。人工アルカン酸化系は、任意選択により、c.少なくとも1つの電子をオキシダーゼ酵素に伝達するのに好適な電子伝達化合物と、更に任意選択により、d.c.の電子伝達化合物が酸化状態にあるときに、それを還元するのに好適な電子伝達化合物再生酵素とを有する。オキシダーゼ酵素は、配列番号1、10、11、23~43又はそのフラグメント又はその変異体のいずれか1つと少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工アルカン酸化系であって、構成要素:
a.オキシダーゼ酵素、及び
b.1つ以上のアルカンを提供するための1つ以上の酵素、
並びに
c.任意選択により、少なくとも1つの電子を前記オキシダーゼ酵素に伝達するのに好適な電子伝達化合物、及び
d.任意選択により、前記電子伝達化合物を酸化状態から還元するのに好適な電子伝達化合物再生酵素を含み、
前記オキシダーゼ酵素は、配列番号1、10、11、23~43のいずれか1つと少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列又はそのフラグメントである、人工アルカン酸化系。
【請求項2】
前記アルカンが、少なくとも5個の炭素原子を有するか、若しくは少なくとも1つの5個の炭素構成単位を有するか、又は
前記構成要素bが少なくとも1つのテルペンシンターゼタンパク質であり、前記少なくとも1つのアルカンがテルペンである、請求項1に記載の人工アルカン酸化系。
【請求項3】
前記電子伝達化合物が電子伝達タンパク質であるか、又は/及び、前記電子伝達化合物再生酵素が電子伝達タンパク質レダクターゼである、請求項1又は2に記載の人工アルカン酸化系。
【請求項4】
配列番号4、12、17、18、19、又は44のいずれか1つと少なくとも70%の配列同一性を有する合成核酸配列であって、請求項1に記載のオキシダーゼ酵素、並びに任意選択により請求項3に記載の電子伝達タンパク質及び/又は前記電子伝達タンパク質レダクターゼをコードする核酸配列を含む、合成核酸配列。
【請求項5】
前記人工アルカン酸化系のキットであって、
請求項1に記載のオキシダーゼ酵素をコードする第1の単離核酸配列と、
好ましくは前記第1の核酸と物理的に結合されていない、電子伝達タンパク質をコードする第2の単離核酸配列と、
任意選択により、電子伝達タンパク質レダクターゼをコードする第3の核酸配列であって、前記第1及び/又は第2の核酸配列と融合され得る第3の核酸配列と
を含むキット。
【請求項6】
発現カセットであって、
請求項4に記載の合成核酸配列、又は
請求項1、2若しくは3に記載のアルカン酸化系をコードする核酸配列、又は
前記アルカン酸化系の前記核酸配列であって、
a.配列番号20と少なくとも70%の配列同一性を有するか、若しくは
配列番号1、10、11、23~43のいずれか1つと少なくとも70%の配列同一性を有するオキシダーゼ酵素をコードする、オキシダーゼ酵素の核酸配列と、
b.配列番号21と少なくとも70%の配列同一性を有するか、若しくは
配列番号2若しくは配列番号45のルブレドキシンをコードする、ルブレドキシンペプチドの核酸配列と、任意選択により、
c.配列番号22と少なくとも70%の配列同一性を有するか、若しくは
配列番号3のルブレドキシンレダクターゼペプチドをコードする、ルブレドキシンレダクターゼペプチドの核酸配列とを含む前記アルカン酸化系の前記核酸配列
を含む、発現カセット。
【請求項7】
少なくとも1つのアルカン基質の酸化方法であって、
a.前記少なくとも1つのアルカン基質の酸化のために、
i.請求項1~3のいずれか一項に記載の人工アルカンオキシダーゼ系、及び/又は
ii.請求項4に記載の合成核酸配列、若しくは請求項6に記載の発現カセットの発現、及び/又は
iii.配列番号1、10、11、23~43のいずれか1つと少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列若しくはそのフラグメント若しくはその変異体を含む前記オキシダーゼ酵素をコードする核酸配列の発現、及び/又は
iv.前記コードされたポリペプチドの生成のための、請求項6に記載の発現カセット、及び
v.任意選択により、1つ以上のアルカン基質を提供することと、
b.少なくとも1つの酸化アルカン生成物を生成するために、前記アルカン基質をアリル酸化することと、
c.任意選択により、前記少なくとも1つの酸化アルカン生成物を抽出することと
を含む方法。
【請求項8】
少なくとも1つのアルカン基質が、α-ファルネセン、β-ファルネセン、α-ビサボレン、β-ビサボレン、α-ベルガモテン、β-ベルガモテン、α-サンタレン、β-サンタレン、バレンセン、α-グアイエン、モノテルペンゲラニオール、ネロールモノテルペン、ゲラニルラクトン、酢酸リナリル、リモネン、β-ピネン、又はその組み合わせを含む、ジテルペン、モノテルペン又はセスキテルペンから選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項7に記載の工程a~cを含む、アルカン基質の酸化によって少なくとも1つの酸化アルカン生成物を生成する方法であって、好ましくは前記アルカン基質が、請求項8に記載のテルペンである方法。
【請求項10】
請求項1~3のいずれか一項に記載の人工アルカン酸化系、若しくは
請求項4に記載の合成核酸、請求項6に記載の発現カセット、又は
請求項7若しくは8に記載の方法による、前記アルカン基質の酸化、若しくは
請求項9に記載の方法による、前記アルカン酸化生成物の生成
を含む、非ヒト宿主細胞。
【請求項11】
請求項7~9のいずれか一項に記載の方法によって、又は請求項10に記載の非ヒト宿主細胞によって生成される組成物であって、
請求項1~10のいずれか一項に記載のオキシダーゼ酵素と、
ミルセンアルデヒド、α-シネンサール、β-シネンサール、trans-α-サンタロール、trans-β-サンタロール、ランセオール-アルデヒド、ヌートカトン、ベチボン、ロタンドン、レバウジオシド、8-ヒドロキシゲラニオール、8-ヒドロキシネロール、9,10-エポキシゲラニルアセトン、ヘキサデセナール、ファルネソール、デンデララシン(denderalasin)、ビシクロ-オクタンジオール、酸化α-グアイエン若しくは酸化β-グアイエン、又はその組み合わせから選択される、少なくとも1つの酸化テルペン生成物と、
任意選択により、1つ以上のテルペン基質と
を含む、組成物。
【請求項12】
培養培地中で培養された、請求項10に記載の非ヒト宿主細胞と、
前記非ヒト宿主細胞から主要化合物として生成された、前記少なくとも1つの酸化アルカン生成物とを含む発酵組成物であって、
前記発酵組成物は前記アルカン基質を含み、任意選択により1つ以上の副生成物が微量化合物である、
発酵組成物。
【請求項13】
少なくとも1つの酸化アルカン生成物の発酵生成方法であって、
非ヒト宿主細胞に請求項1~12のいずれか一項に記載されるオキシダーゼ酵素系又は発現カセットを提供することと、
任意選択により、アルカン基質の生成のために少なくとも1つのアルカンシンターゼを前記宿主細胞に提供することと、
前記宿主細胞が活性形態で前記コードされたポリペプチドを生成するのに好適な条件下で、前記非ヒト宿主細胞を培養培地中で培養することと、
任意選択により、1つ以上のアルカン基質を生成すること、及び/又は1つ以上のアルカン基質を前記宿主細胞に提供することと、
少なくとも1つの酸化アルカン生成物を生成することと、
任意選択により、前記少なくとも1つの酸化アルカン生成物を精製することと
を含む方法。
【請求項14】
前記酸化アルカン生成物が、ミルセンアルデヒド、α-シネンサール、β-シネンサール、trans-α-サンタロール、trans-β-サンタロール、ランセオール-アルデヒド、ヌートカトン、ベチボン、ロタンドン、レバウジオシド、8-ヒドロキシゲラニオール、8-ヒドロキシネロール、9,10-エポキシゲラニルアセトン、ヘキサデセナール、ファルネソール、デンデララシン(denderalasin)、ビシクロ-オクタンジオール、酸化α-グアイエン、酸化β-グアイエン、又はその組み合わせを含む、アルコール若しくはアルデヒド、又はその両方から選択される、請求項7~9若しくは13のいずれか一項に記載の方法、又は請求項11若しくは12に記載の組成物。
【請求項15】
オキシダーゼ酵素活性を有する変異ポリペプチドを調製するための方法であって、
a)請求項4に記載の合成核酸、又は配列番号1、10、11、23~43のいずれか1つと少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列若しくはそのフラグメントをコードする核酸を選択する工程と、
b)前記選択された核酸を改変して、少なくとも1つの変異核酸を得る工程と、
c)前記変異核酸配列で前記非ヒト宿主細胞を形質転換し、前記変異核酸配列によってコードされる前記オキシダーゼ酵素を発現させる工程と、
d)前記オキシダーゼ酵素を、a)の前記選択された核酸によってコードされる前記オキシダーゼ酵素の機能に加えて、少なくとも1つの改変された特性についてスクリーニングする工程と、
e)任意選択により、前記プロセス工程(a)~(d)を繰り返し、所望の変異機能を有するオキシダーゼ酵素を得る工程と、
f)任意選択により、工程(c)で得られた前記形質転換非ヒト宿主細胞から前記変異核酸配列を単離する工程と
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工アルカン酸化系、その合成核酸配列、発現カセット、少なくとも1つのアルカン、好ましくはアルケン、より好ましくはテルペンの酸化方法、それから生成される酸化テルペン生成物、及び人工アルカン酸化系の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
テルペンは、食品加工、パーソナルケア、及びケア用化学製品に広く使用されている。テルペンは、柑橘類、樹皮由来の油などのような天然原から抽出される。また、テルペンは、化学的経路だけでなく、生合成経路により生成されている。
【0003】
オレンジ油及びマンダリン油を含む多くの柑橘油には、一般に、テルペン、より具体的にはα-シネンサール及びβ-シネンサールと称するセスキテルペンアルデヒドが含まれている。シネンサールは、オレンジ油のアルデヒド画分の一部であり、特に感覚刺激特性に関する品質パラメーターであると見なされる。β-シネンサールの匂いは、オレンジ、スイート、フレッシュ、ワクシー、ジューシーと表される一方、α-シネンサールの匂いは、シトラス、オレンジ、マンダリンと表される。シネンサールは、柑橘類製品の香料として使用されている。
【0004】
この油のアルデヒド画分の化学合成経路は、当技術分野で公知である。α-シネンサールの合成は、(E)-3-メチル-2,4-ペンタジエン-1-オールを出発物質とし、ピリジン及び三臭化リンを使用する、Buchi(1974;JACS 96,7573-4)によって記載されている。β-シネンサールの合成については、とりわけ、β-ファルネセンを出発物質とし、オゾン分解を使用するBertele&Schudel(米国特許第3699169号明細書;米国特許第3974226号明細書)、及びトリエンアルデヒドを出発物質としたHiyama(1978,Tetrahedron letters 19,3051-4)によって記載されている。
【0005】
しかしながら、化学的に合成された化合物又は合成経路により調製された化合物は、天然に生成されるアルデヒド画分とは別に分類されている。生合成によって得られた化合物は、一般に天然と表示され、価格的な有利性がある。しかしながら、これまでのところ、全てのテルペン化合物が生合成での生成に適用可能であると開示されているわけではない。
【0006】
例えば、シネンサールの生合成は、当技術分野では知られていない。構造上、α-シネンサール及びβ-シネンサールは、セスキテルペン炭化水素のα-ファルネセン及びβ-ファルネセンと関連付けられている。どちらのシネンサールも、ファルネセンと比較してアリルアルデヒド基を保持している。α-ファルネセン及びβ-ファルネセンは、どちらもよく知られている柑橘油の成分である。しかしながら、モノオキシゲナーゼなどの酸化酵素によってファルネセンがアリル酸化してアリルアルコールとなり、更にアルコールデヒドロゲナーゼによってシネンサールに酸化されることでシネンサールが生成される生合成経路は、当技術分野では知られていない。また、ファルネセンに適切なアリル酸化を行うモノオキシゲナーゼ又は任意の他の酸化酵素は、当技術分野では記載されていない。
【0007】
Arfmann(Biocatalys,1988,Vol.2,pp.59-67)では、シネンサールをネロリドールから生成することができることが提示された。trans-ネロリドールとインキュベートした微生物から12-ヒドロキシ-trans-ネロリドールを得、更に酸化させるとtrans-ネロリドールの12-カルボン酸が得られる。ネロリドールの異なる立体異性体をアリル酸化(又は「オメガ酸化」)して12-ヒドロキシネロリドールとするために、微生物を使用することが開示されている(Hrdlicka,Biotechnol.Prog.2004,20,368-376)。しかしながら、12-ヒドロキシネロリドールの更なる変換については、当技術分野で開示されていない。
【0008】
Abraham(Z.Naturforsch.47c,851-858,1992)には、ノカルジア種(Nocardia sp.)DSM 43130及びシュードモナス・ラプサ(Pseudomonas lapsa)DSM 50274によりジアリル基が酸化された、ファルネセンのスルホン化誘導体が開示されている。しかしながら、ファルネセンの非スルホン化形態に使用される株の活性については、当該技術分野では開示されていない。
【0009】
Iurescia Sandra et al.(Applied and Environmental Microbiology,American Society For Microbiology,US,vol.65,no.7,1 July 1999(1999-07-01),pages 2871-2876)には、単離され、生物学的に形質転換されたシュードモナス属(Pseudomonas)M1、並びにmyrA(アルデヒドデヒドロゲナーゼ)、myrB(アルコールデヒドロゲナーゼ)、myrC(アシル-コエンザイムA(CoA)シンセターゼ)、及びmyrD(エノイル-CoAヒドラターゼ)という名称の4つのオープンリーディングフレーム(ORF)が開示されている。Iurescia et alでは、これら4つのタンパク質が関与するシュードモナス属種(Pseudomonas sp.)株M1における13-ミルセン異化経路が提示された。Iurescia及び共同実験者によると、これら4つの酵素は、ミルセンアルコールによって異化作用を開始する。しかしながら、ミルセンをミルセンアルコールに変換する最初の工程を触媒する酵素は、当時のIurescia及び共同実験者によって開示されてはいない。
【0010】
別の研究プロジェクトでは、その著者によってシュードモナス属(Pseudomonas)株M1のショットガンシーケンシングプロジェクトの結果が報告された(Iurescia et al 1999,Soares-Castro&Santos 2013)。著者により、シュードモナス属種(Pseudomonas sp.)M1の6000個を超える暫定的な遺伝子が開示された。6000個の暫定的な遺伝子の中には、脂肪酸デサチュラーゼとして示される、UniProtデータベース識別名がW5IZV3であるタンパク質をコードするものがある。この遺伝子は、本発明の配列番号1のタンパク質と同一である。このデータベースエントリーには、配列が予備データであることを警告するフラグが付けられていることに留意すべきである。更に、ミルセンの異化に関する前記最初の研究で同定された4つの遺伝子であるmyrA~myrDは、それぞれUniProtデータベースエントリーがQ9XD59、Q9XD58、Q9XD57及びQ9XD60であるため、この脂肪酸デサチュラーゼは、Applied And Environmental Microbiology,1 July 1999 pages 2871-2876に報告されている著者の他の研究と関連するものではない。その上、これら4つのミルセンの異化に関連する配列は、本発明の配列番号1と35%未満の配列同一性を共有するものである。
【0011】
アモルファジエン(Ro et al 2006,Nature 440:940-943)、ゲルマクレンA(https://doi.org/10.1104/pp.19.00629)、及びサンタレン(Diaz-Chavez PLoS One.2013 Sep 18;8(9):e75053.)などの他のテルペンのアリル酸化は、植物のシトクロムP450酵素によって媒介されることが開示されている。しかしながら、酵素がファルネセンをアリル酸化してシネンサールにすることを媒介することは開示されていない。
【0012】
DEGENHARDT J ET AL,PHYTOCHEMISTRY,ELSEVIER,AMSTERDAM,NL,vol.70,no.15-16,1 October 2009(2009-10-01),pages 1621-1637には、モノテルペン及びセスキテルペンシンターゼについての総説が記載されている。
【0013】
欧州特許出願公開第2706111A1号明細書では、光合成独立栄養生物内で、これらの生物が二酸化炭素と光を効率的に目的の炭素系生成物に変換するように、エタノール、エチレン、化学物質、ポリマー、n-アルカン、イソプレノイド、医薬品又はその中間体などの目的の炭素系生成物の生成を付与するための経路及び機構、並びに、特にエタノール、エチレン、化学物質、ポリマー、n-アルカン、イソプレノイド、医薬品又はその中間体を商業的に生成するのためのそのような生物の使用が開示されている。
【0014】
Williams Shoshana C Et Al,Journal Of Inorganic Biochemistry,Elsevier Inc,US,vol.219,16 March 2021(2021-03-16),ISSN:0162-0134では、その著者により、細胞溶解物中でヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、トリデカンなどの長鎖完全飽和アルカンを酸化することができる、ディエジア・シンナメア(Dietzia cinnamea)由来のルブレドキシン融合アルカンモノオキシゲナーゼ遺伝子が報告されている。著者は、ルブレドキシン融合アルカンモノオキシゲナーゼのクラス、及び細胞壁生合成におけるこのクラスのアルカンモノオキシゲナーゼの役割について関係分析を行っている。更に、ディエジア・シンナメア(Dietzia cinnamea)の完全長タンパク質に点変異を導入すると、基質としての完全飽和アルカンであるヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、トリデカンによって生成されるエポキシド生成物が野生型よりも少なくなるという結果となった。この変異体は、ほぼ同量のアルデヒド生成物とエポキシド生成物を生成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、テルペンベースのアルデヒド生成物及び/又はアルコール生成物の完全な生合成プロセスを提供することであった。本発明の更なる目的は、テルペンベースのアルデヒド生成物及び/又はアルコール生成物の発酵生成系、例えば、シネンサールの第1の発酵ベースの生成物を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0016】
驚くべきことに、上記の目的は、人工アルカン酸化系、その合成核酸配列、発現カセット、少なくとも1つのアルカン、好ましくはアルケン、より好ましくはテルペンの酸化方法、それから生成される酸化テルペン生成物、及び人工アルカン酸化系の使用を提供することによって達成されることが判明した。
【0017】
従って、一態様では、本発明は、
a.配列番号1、10、11、23~43又はそのフラグメントのいずれか1つと少なくとも62%、66%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、94%、95%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むオキシダーゼ酵素と、
b.少なくとも1つのアルカンを提供する1つ以上の酵素、好ましくはテルペンシンターゼタンパク質と、
任意選択により、
c.少なくとも1つの電子をオキシダーゼ酵素に伝達するのに好適な電子伝達化合物と、更に任意選択により、
d.c.の電子伝達化合物が酸化状態にあるときに、それを還元するのに好適な電子伝達化合物再生酵素とを含み、
少なくとも1つのアルカンを提供するオキシダーゼ酵素及び1つ以上の酵素は、自然界の組み合わせでは見られない、人工アルカン酸化系に関する。
【0018】
人工アルカン酸化系は、少なくとも1つのアルカンの生成に好適な条件下で保持されるか、及び/又は前記少なくとも1つのアルカンを酸化するのに好適な条件下で少なくとも1つのアルカンと接触させる。後者の場合、一実施形態では、アルカン酸化系は、構成要素a.にc.、任意選択によりd.を追加してもよいが、b.を含まない。
【0019】
別の態様では、本明細書により特許請求される発明は、配列番号4、配列番号12、配列番号17、配列番号18、配列番号19、又は配列番号44のいずれか1つと少なくとも62%、66%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、94%、95%、98%又は99%の配列同一性を有する合成核酸配列に関し、合成核酸配列は、上述のオキシダーゼ酵素をコードする核酸配列を含み、任意選択により、ルブレドキシンペプチド及び/又はルブレドキシンレダクターゼペプチドを含む。
【0020】
別の態様では、本明細書により特許請求される発明は、
配列番号1、10、11、23~43のいずれか1つと少なくとも62%、66%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、94%、95%、98%又は99%の配列同一性を有するタンパク質をコードする第1の単離核酸配列と、
電子伝達タンパク質をコードする第1の核酸と物理的に結合されていない、第2の単離核酸配列と、
任意選択により、電子伝達タンパク質レダクターゼをコードする第3の核酸配列であって、第1及び/又は第2の核酸配列と融合され得る第3の核酸配列とを含むキットに関する。
【0021】
別の態様では、本明細書により特許請求される発明は、
合成核酸配列、又は
アルカン酸化系をコードする核酸配列、又は
アルカン酸化系の核酸配列であって、
a.配列番号20と少なくとも70%の配列同一性を有するか、若しくは
配列番号1、10、11、23~43のいずれか1つと少なくとも70%の配列同一性を有するオキシダーゼ酵素をコードする、オキシダーゼ酵素の核酸配列と、
b.配列番号21と少なくとも70%の配列同一性を有するか、若しくは
配列番号2若しくは配列番号45のルブレドキシンをコードする、ルブレドキシンペプチドの核酸配列と、任意選択により、
c.配列番号22と少なくとも70%の配列同一性を有するか、若しくは
配列番号3のルブレドキシンレダクターゼペプチドをコードする、ルブレドキシンレダクターゼペプチドの核酸配列とを含むアルカン酸化系の核酸配列を含む、発現カセットに関する。
【0022】
別の態様では、本明細書により特許請求される発明は、アルカン酸化系の核酸配列を含む単離された発現カセットに関し、核酸配列は、
a.配列番号20と少なくとも62%、66%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、94%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有するオキシダーゼ酵素の核酸配列、若しくは配列番号1、10、11、23~43のいずれか1つと少なくとも62%、66%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、94%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有するオキシダーゼ酵素をコードする核酸配列と、
b.配列番号21と少なくとも62%、66%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、94%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有するルブレドキシンペプチドの核酸配列、若しくは配列番号2と少なくとも62%、66%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、94%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有するルブレドキシンをコードする核酸配列と、任意選択により、
c.配列番号22と少なくとも62%、66%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、94%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有するルブレドキシンレダクターゼペプチドの核酸配列とを含むか、又はaとb及びcの組み合わせを含む。
【0023】
別の態様では、本明細書により特許請求される発明は、少なくとも1つのアルカン基質、好ましくはアルケン基質、より好ましくはテルペン基質の酸化方法に関し、本方法は、
a.少なくとも1つのアルカン、好ましくはアルケン、より好ましくはテルペン基質の酸化のために、テルペン基質の酸化に好適な条件下で、
i.上記に開示される人工アルカンオキシダーゼ系、及び/又は
ii.上記に開示される合成核酸配列、若しくは上記に開示される発現カセットの発現、及び/又は
iii.配列番号1、配列番号10、配列番号11、配列番号23~43若しくはそのフラグメント若しくはその変異体のいずれか1つと少なくとも62%、66%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、94%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むオキシダーゼ酵素をコードする核酸配列の発現、及び
iv.任意選択により、アルカン酸化系によって生成されない場合は、少なくとも1つのアルカン、好ましくはアルケン、より好ましくはテルペン基質を提供することと、
b.少なくとも1つの酸化アルカン、好ましくはアルケン、より好ましくはテルペン生成物を生成するための、アルカン、好ましくはアルケン、より好ましくはテルペン基質のアリル酸化と、
c.任意選択により、少なくとも1つの酸化アルカン、好ましくはアルケン、より好ましくはテルペン生成物を抽出することとを含む。
【0024】
別の態様では、本明細書により特許請求される発明は、本明細書に定義されるような、少なくとも1つの酸化アルカン生成物、好ましくはアルケン生成物、より好ましくはテルペン生成物の生成方法に関し、本方法は、
a.少なくとも1つのアルカン、好ましくはアルケン、より好ましくはテルペン基質の酸化のために、アルカン、好ましくはアルケン、より好ましくはテルペン基質の酸化に好適な条件下で、
i.上記に開示される人工アルカンオキシダーゼ系、及び/又は
ii.上記に開示される合成核酸配列、若しくは上記に開示される発現カセットの発現、及び/又は
iii.配列番号1、10、11、23~43若しくはそのフラグメント若しくはその変異体のいずれか1つと少なくとも62%、66%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、94%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むオキシダーゼ酵素をコードする核酸配列の発現、及び
iv.任意選択により、アルカン酸化系によって生成されない場合は、少なくとも1つのアルカン、好ましくはアルケン、より好ましくはテルペン基質を提供することと、
b.少なくとも1つの酸化テルペン生成物を生成するための、アルカン、好ましくはアルケン、より好ましくはテルペン基質のアリル酸化と、
c.任意選択により、少なくとも1つの酸化アルカン、好ましくはアルケン、より好ましくはテルペン生成物を抽出することとを含む。
【0025】
本発明のアルカンオキシダーゼ系が、1つ以上のアルカン、好ましくはアルケン、より好ましくはテルペン基質を生成するか、又は1つ以上の基質を生成する系と共に存在するか、又は少なくとも1つの基質を産生する宿主細胞内に含まれている場合は、基質を添加する必要はない。いずれにせよ、例えば、より多くの基質を利用できるようにするために、又はアルカン酸化系となる前や、本発明の方法に存在しない所望の基質を提供するために、このような状況下であってもなお1つ以上の基質を添加してもよい。
【0026】
別の態様では、本明細書により特許請求される発明は、テルペン基質の酸化、従って1つ以上の酸化テルペン生成物を生成するために、上記に開示されるアルカン酸化系、又は本発明の非ヒト宿主細胞、本明細書で開示されるような発酵組成物、又は上記に開示される核酸配列の発現、又は上記に開示される発現カセットの使用に関する。
【0027】
別の態様では、本明細書により特許請求される発明は、人工アルカン酸化系、合成核酸、発現カセットを含む非ヒト宿主細胞、又は記載されるような方法によるアルカン酸化生成物の生成に関する。
【0028】
別の態様では、本明細書により特許請求される発明は、上記に記載されるような方法によって、又は非ヒト宿主細胞によって生成される組成物に関し、組成物は、ミルセンアルデヒド、α-シネンサール、β-シネンサール、trans-α-サンタロール及びtrans-β-サンタロール、ランセオール-アルデヒド、ヌートカトン、ベチボン、ロタンドン、レバウジオシド、8-ヒドロキシゲラニオール、8-ヒドロキシネロール、9,10-エポキシゲラニルアセトン、ヘキサデセナール、ファルネソール、デンデララシン(denderalasin)及びビシクロ-オクタンジオール、酸化α-グアイエン、酸化β-グアイエン、又はその組み合わせ、並びに任意選択により1つ以上のテルペン基質、並びに任意選択により記載されるようなオキシダーゼ酵素を含む。
【0029】
別の態様では、本明細書により特許請求される発明は、
培養培地中で培養された非ヒト宿主細胞と、
非ヒト宿主細胞から生成された、主要化合物としての少なくとも1つの酸化テルペン生成物とを含む発酵組成物に関し、
発酵組成物はテルペン基質を含み、任意選択により1つ以上の副生成物が微量化合物である。
【0030】
一実施形態では、発酵組成物は、抽出、濃縮、精製、乾燥、熱処理、加圧処理、真空処理、又はその組み合わせを含むが限定されない更なる処理を施される中間生成物である。
【0031】
別の実施形態では、発酵組成物は、更なる処理が施されることのない、又は更なる処理が施される最終生成物である。
【0032】
別の態様では、本明細書により特許請求される発明は、少なくとも1つの酸化テルペン生成物の発酵生成方法に関し、本方法は、
非ヒト宿主細胞にオキシダーゼ酵素系を提供することと、
少なくとも1つの酸化テルペン生成物を生成するために、培養培地中で非ヒト宿主細胞を培養することとを含む。
【0033】
別の態様では、本発明は、オキシダーゼ酵素活性を有する変異ポリペプチドを調製するための方法に関し、本方法は、
a)本明細書に記載されるような合成核酸(配列番号4、12、17、18、19、若しくは44のいずれか1つと少なくとも70%の配列同一性を有し、合成核酸配列は、本明細書に定義されるようなオキシダーゼ酵素、並びに任意選択により電子伝達タンパク質及び/若しくは電子伝達タンパク質レダクターゼをコードする核酸配列を含む)、又は配列番号1、10、11、23~43若しくはそのフラグメントのいずれか1つと少なくとも62%、66%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、94%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸を選択する工程と、
b)選択された核酸を改変して、少なくとも1つの変異核酸を得る工程と、
c)変異核酸配列で非ヒト宿主細胞を形質転換し、変異核酸配列によってコードされるオキシダーゼ酵素を発現させる工程と、
d)オキシダーゼ酵素を、a)の選択された核酸によってコードされるオキシダーゼ酵素の機能に加えて、少なくとも1つの改変された特性についてスクリーニングする工程と、
e)任意選択により、プロセス工程(a)~(d)を繰り返し、所望の変異機能を有するオキシダーゼ酵素を得る工程と、
f)任意選択により、工程(c)で得られた形質転換非ヒト宿主細胞から変異核酸配列を単離する工程とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1a】対照としてのpET-DUET、及びアルカン酸化系を保持するpET-M1-alkB-rr-rrrを含む大腸菌(E.coli)BL21によるミルセンの変換による実施形態を示す。
【
図1b】Soares-Castro P,Montenegro-Silva P,Heipieper HJ,Santos PM.2017.Functional characterization of a 28-kilobase catabolic island from Pseudomonas sp.strain M1 involved in biotransformation of β-myrcene and related plant-derived volatiles.Appl Environ Microbiol 83:e03112-16.Figure S2に見出されるような質量スペクトルを実証する目的のためのコピーである。
【
図1c】
図1bの文献参照と比較した後に、
図1aに示されるミルセンの変換からミルセンアルデヒドと同定された質量スペクトルを示す。
【
図2】対照としてのpET-DUET、及びアルカン酸化系を保有するpET-M1-alkB-rr-rrrを含む大腸菌(E.coli)BL21によるβ-ファルネセンの変換による実施形態を示す。
【
図3a】アルカン酸化系を保有するロドバクター属(Rhodobacter)株Rs265-9c-pBBR-MVA-AaBFS-M1-alkB-rr-rrrにより生成されたシネンサールによる実施形態を示す。
【
図3b】シネンサール標準物質と比較することにより確認された、ロドバクター属(Rhodobacter)株Rs265-9c-pBBR-MVA-AaBFS-M1-alkB-rr-rrrにより生成されたシネンサールによる実施形態を示す。
【
図3c】Rs265-9c-pBBR-MVA-AaBFS-M1-alkB-rr-rrrにより生成されたシネンサールの質量スペクトルを示す。
【
図3d】シネンサール標準物質の質量スペクトルを示す。
【
図4】アルカン酸化系を使用してα-シネンサールが生成されたことを実証する質量スペクトルを示す。詳細については実施例のセクションを参照されたい。
【
図5】アルカン酸化系を使用してビサボレンとランセオールアルデヒドとが生成されたことを実証する質量スペクトルを示す。詳細については実施例のセクションを参照されたい。
【
図6】アルカン酸化系を使用した場合にサンタレン及びサンタロールが見出されたことを実証する質量スペクトルを示す。詳細については実施例のセクションを参照されたい。
【
図7a】示された位置に保存アミノ酸を有する本発明のポリペプチドのアライメントを示す。図中では、保存アミノ酸の位置は、黒い背景に白いフォントの文字で示されている。
【
図7b】示された位置に保存アミノ酸を有する本発明のポリペプチドのアライメントを示す。図中では、保存アミノ酸の位置は、黒い背景に白いフォントの文字で示されている。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の組成物及び製剤を説明する前に、このような組成物及び製剤は、当然のことながら変化する可能性があるため、本発明は記載された特定の組成物及び製剤に限定されるものではないことを理解すべきである。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることから、本明細書で使用される用語は、限定することを意図しないことも理解すべきである。
【0036】
「含む(comprising)」、「含む(comprises)」及び「から構成される(comprised of)」という用語は、本明細書で使用する場合、「含む(including)」、「含む(includes)」又は「含有する(containing)」、「含有する(contains)」と同義であり、包括的又は無制限であり、追加の列挙されていない部材、要素又は方法の工程を除外するものではない。「含む(comprising)」、「含む(comprises)」及び「から構成される(comprised of)」という用語は、本明細書で使用する場合、「からなる(consisting of)」、「からなる(consists)」及び「からなる(consists of)」という用語を含むことを理解されたい。より具体的には、「含む(comprise)」という用語は、本明細書で使用する場合、特許請求の範囲が、列挙される要素又は方法の工程全てを包含するが、追加の不特定の要素又は方法の工程も含み得ることを意味する。例えば、工程a)、b)及びc)を含む方法は、最も狭義には、工程a)、b)及びc)からなる方法を包含する。「からなる(consisting of)」という語句は、組成物(又は装置又は方法)が列挙される要素(又は工程)を有し、それ以外のものが存在しないことを意味する。対照的に、「含む(comprises)」という用語は、更なる工程、例えば工程a)、b)及びc)に加えて工程d)及びe)を含む方法も包含し得る。
【0037】
更に、本明細書及び特許請求の範囲における「第1」、「第2」、「第3」又は「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」などの用語は、類似の要素を区別するために使用され、必ずしも連続した順番又は時系列順を説明するものではない。そのように使用される用語は、適切な状況下で互換可能であり、本明細書に記載される本発明の実施形態は、本明細書に記載又は図示する順序以外の順序で実施することが可能であることを理解すべきである。「第1の」、「第2の」、「第3の」又は「(A)」、「(B)」及び「(C)」又は「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」、「i」、「ii」などの用語が方法又は使用又はアッセイの工程に関連する場合、本出願で別段の指示がない限り、本明細書において前述又は後述するように、この工程間に時間を置かないか、又は時間間隔の一貫性がなく、すなわち、この工程は、同時に実施され得るか、又はこのような工程間に数秒間、数分間、数時間、数日間、数週間、数ヶ月間若しくは更に数年間の時間間隔が存在し得る。
【0038】
以下の文では、本発明の異なる態様をより詳細に定義する。そのように定義されるそれぞれの態様は、そうでないと明確に指示されない限り、任意の他の態様又は複数の態様と組み合わせることができる。特に、好ましい又は有利であると示された任意の特徴は、好ましい又は有利であると示された任意の他の特徴又は複数の特徴と組み合わせることができる。
【0039】
「一実施形態」又は「ある実施形態」の本明細書全体を通しての言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造、又は特性が本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書全体を通して様々な箇所にある「一実施形態では」又は「ある実施形態では」という語句の出現は、全てが必ずしも同一の実施形態を指すものではないが、同一の実施形態を指す場合もある。更に、特定の特徴、構造、又は特性は、1つ以上の実施形態では、本開示から当業者に明らかであるように、任意の好適な方法で組み合わせることができる。更に、本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、いくつかの特徴を含むが、他の実施形態に含まれる他の特徴を含まないものの、当業者に理解されるように、異なる実施形態の特徴の組み合わせは本発明の範囲内であり、異なる実施形態を形成することを意味する。例えば、添付の特許請求の範囲において、請求された実施形態のいずれかを任意の組み合わせで使用することができる。
【0040】
更に、本明細書全体を通して定義される範囲は終値も含み、すなわち1~10の範囲では、1~10は1と10の両方がその範囲に含まれることを意味する。疑義を回避するために言及しておくと、出願人は、適用される法律に従ってあらゆる均等物の権利を有するものとする。
【0041】
本明細書で使用する場合、明記された項目、数、パーセンテージ又は用語の値を限定するときの「約」という用語は、明記された項目、数、パーセンテージ又は用語の値のプラス又はマイナス10パーセント、9パーセント、8パーセント、7パーセント、6パーセント、5パーセント、4パーセント、3パーセント、2パーセント又は1パーセントの範囲を指す。プラス又はマイナス10パーセントの範囲が好ましい。
【0042】
数値範囲が「1~5マイクロモルの濃度で」などのように本明細書で使用する場合、その範囲は、1マイクロモルと5マイクロモルだけでなく、1~5マイクロモルの間のあらゆる数値、例えば2、3及び4マイクロモルも含む。
【0043】
「インビトロ」という用語は、本明細書で使用する場合、動物又はヒトの体の外側又は外部を指す。「インビトロ」という用語は、本明細書で使用する場合、「エクスビボ」を含むことを理解すべきである。「エクスビボ」という用語は、一般的には、動物又はヒトの体から取り出され、体外で、例えば培養容器中で維持又は増殖させた組織又は細胞を指す。「インビボ」という用語は、本明細書で使用する場合、動物又はヒトの体の内側又は内部を指す。
【0044】
「タンパク質」又は「ポリペプチド」又は「(ポリ)ペプチド」又は「ペプチド」という用語(全ての用語は、別段指示されない場合、互換的に使用される)は、本明細書で使用する場合、他の宿主細胞のポリペプチドを本質的に含まない単離及び/又は精製及び/又は組換え(ポリ)ペプチドを包含する。「ペプチド」という用語は、本明細書で言及される場合、1つのα-カルボキシル基が別のα-アミノ基に結合された、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300又は更にそれ以上のアミノ酸残基を含む。本明細書で使用され、想定されるようなタンパク質又はペプチドの翻訳後修飾は、新たに形成されたタンパク質又はペプチドの修飾のことであり、アミノ酸の欠失、置換又は付加、特定のアミノ酸の化学修飾、例えばアミド化、アセチル化、リン酸化、グリコシル化、ピログルタミン酸の形成、メチオニンにおけるスルファ基の酸化/還元、又は特定のアミノ酸への同様な低分子の付加を含み得る。
【0045】
「相同体」は、本発明において有用なオキシダーゼ酵素又はルブレドキシン又はルブレドキシンレダクターゼの細菌、真菌、植物又は動物相同体、好ましくは植物相同体を意味するが、コード及び非コードDNA配列の切断配列、単鎖DNA又はRNAも含まれる。
【0046】
配列同一性、相同性又は類似性は、2つ以上のアミノ酸配列又は2つ以上の核酸配列を比較することによって判定されるような、これらの配列間の関係性として本明細書で定義される。配列同一性又は類似性は、通常、配列の全長にわたって比較されるが、互いにアライメントした配列の一部に対して比較するだけの場合もある。好ましくは、配列同一性又は類似性は、本明細書では、配列の全長にわたって比較される。当技術分野において、「同一性」又は「類似性」は、場合によってはポリペプチド配列又は核酸配列間の一致によって判定され得るため、このような配列間の配列の関連性の程度も意味する。
【0047】
配列アライメントは、以下のような多くのソフトウェアツールを用いて生成することができる:
-Needleman及びWunschアルゴリズム-Needleman,Saul B.&Wunsch,Christian D.(1970).“A general method applicable to the search for similarities in the amino acid sequence of two proteins”.Journal of Molecular Biology 48(3):443-453。
【0048】
このアルゴリズムは、例えば、2つの配列のグローバルアライメントを実行する「NEEDLE」プログラムに実装されている。NEEDLEプログラムは、例えば、European Molecular Biology Open Software Suite(EMBOSS)内に含まれている。
-EMBOSS-様々なプログラムの集合体:The European Molecular Biology Open Software Suite(EMBOSS),Trends in Genetics 16(6),276(2000)。
-BLOSUM(BLOcks SUbstitution Matrix)-一般的に、例えば、タンパク質ドメインの保存領域のアライメントに基づいて生成される(Henikoff S,Henikoff JG:Amino acid substitution matrices from protein blocks.Proceedings of the National Academy of Sciences of the USA.1992 Nov 15;89(22):10915-9)。多くのBLOSUMの中の1つに「BLOSUM62」があるが、これは、タンパク質配列をアライメントするときに多くのプログラムで多くの場合「デフォルト」設定になっている。
-BLAST(Basic Local Alignment Search Tool)-大規模な配列データベースで類似配列を検索するために主に使用されているいくつかの個々のプログラム(BlastP、BlastN)からなる。BLASTプログラムでは、ローカルアライメントも生成される。通常は、改良バージョン(「BLAST2」)である、NCBI(National Centre for Biotechnology Information)により提供される「BLAST」インターフェースが使用される。「元の」BLAST:Altschul,S.F.,Gish,W.,Miller,W.,Myers,E.W.&Lipman,D.J.(1990)“Basic local alignment search tool.”J.Mol.Biol.215:403-410;BLAST2:Altschul,Stephen F.,Thomas L.Madden,Alejandro A.Schaffer,Jinghui Zhang,Zheng Zhang,Webb Miller,and David J.Lipman(1997),“Gapped BLAST and PSI-BLAST:a new generation of protein database search programs”,Nucleic Acids Res.25:3389-3402。
【0049】
配列同一性は、本明細書で使用する場合、好ましくは、EMBOSSペアワイズアライメントアルゴリズムである「Needle」により判定されるような値である。特に、「最長同一性」を計算するNOBRIEFオプション(‘Brief identity and similarity’to NO)を使用して、EMBOSSパッケージからNEEDLEプログラムを使用することができる(バージョン2.8.0以降、EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite-Rice,P.,et al.Trends in Genetics(2000)16:276-277;http://emboss.bioinformatics.nl)。アライメントされた2つの配列間の同一性、相同性又は類似性は次のように計算される:両配列において同一のアミノ酸を示すアライメント内の対応する位置の数を、アライメント内のギャップの総数を差し引いた後のアライメントの全長で除算する。アミノ酸配列のアライメントの場合、デフォルトパラメーターは、マトリクス=Blosum62;オープンギャップペナルティ=10.0;ギャップ伸長ペナルティ=0.5である。核酸配列のアライメントの場合、デフォルトパラメーターは、マトリクス=DNAfull;オープンギャップペナルティ=10.0;ギャップ伸長ペナルティ=0.5である。
【0050】
配列同一性は、通常、「%配列同一性」又は「%同一性」として示される。最初の工程で2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性を判定するために、これらの2つの配列間でペアワイズ配列アライメントを生成し、この2つの配列をそれらの完全長、全体長又は全長にわたってアライメントする(すなわち、ペアワイズグローバルアライメント)。アライメントは、本明細書に記載されるプログラム又はソフトウェアを用いて生成される。本発明の目的に好ましいアライメントは、最大配列同一性を判定することができるアライメントである。
【0051】
一態様では、本発明は、人工アルカン酸化系に関し、少なくとも1つのアルカン、例えば限定されるものではないがアルケン、例えば限定されるものではないがテルペン、及び更なる構成要素として、
a.配列番号1、10、11、23~43又はそのフラグメント又はその変異体のいずれか1つと少なくとも62%、66%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、94%、95%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むオキシダーゼ酵素と、
b.少なくとも1つのアルカンを提供する1つ以上の酵素、好ましくはテルペンシンターゼタンパク質と、
任意選択により、
c.少なくとも1つの電子をオキシダーゼ酵素に伝達するのに好適な電子伝達化合物と、更に任意選択により、
d.c.の電子伝達化合物が酸化状態にあるときに、それを還元するのに好適な電子伝達化合物再生酵素とを含む。
【0052】
構成要素a.として、2種類以上のオキシダーゼ酵素を有することができる。
【0053】
人工アルカン酸化系は、少なくとも1つのアルカンの生成に好適な条件下で保持されるか、及び/又は前記少なくとも1つのアルカンを酸化するのに好適な条件下で少なくとも1つのアルカンと接触させる。
【0054】
後者の場合、一実施形態では、アルカン酸化系は、構成要素a.にc.、任意選択によりd.を追加してもよいが、b.を含まない。
【0055】
少なくとも1つの電子をオキシダーゼ酵素に伝達するのに好適な電子伝達化合物(上記c.を参照されたい)は、人工アルカン酸化系には意図的に含まれていないが、アルカン酸化系と機能的に相互作用することができるように、アルカン酸化系の近傍に存在してもよい。例えば、アルカン酸化系が宿主細胞内に含まれる場合、宿主細胞は、アルカン酸化系に追加で含まれる電子伝達化合物を有する必要なく、適切な電子伝達化合物を提供することができる。別の例としては、好適な電子伝達化合物を有する細胞を破壊し、次いで、好適な電子伝達化合物を含む細胞膜の一部を、それ自体では好適な電子伝達化合物を含まない本発明のアルカン酸化系と組み合わせることが可能である。
【0056】
通常、実証もされているように、アルカン酸化系の一部として好適な電子伝達化合物を含めることが有利である。
【0057】
人工アルカン酸化系:
アルカンは、アルケンを含むものと理解すべきである。一実施形態では、アルカン酸化系は、アルケン酸化系と同様に互換的に言及される。
【0058】
「アルケン」は、炭素-炭素二重結合を含む炭化水素、好ましくはテルペン化合物として理解すべきである。本発明の一態様では、アルケンは、1つ以上のアリル基を有するモノテルペン、セスキテルペン又はジテルペンである。本発明の更なる態様では、アルケンは、ジアリルアルケン、例えば、ジアリルセスキテルペンである。
【0059】
従って、本発明の一態様は、人工アルカン酸化系、本発明の方法、並びに本発明の方法に有用な発現カセット及び宿主細胞を指し、少なくとも1つのアルカンは、少なくとも5つの炭素原子からできているか、又は1~6の整数で存在する少なくとも1つのC5である5個の炭素構成単位、すなわちアルカン分子につきそれぞれ5、10、15、20、25若しくは30個の炭素原子数を有する。少なくとも1つのアルカンは、直鎖アルケン及び非直鎖アルケンを含む。一実施形態では、少なくとも1つのアルカンは、非直鎖アルケンである。好ましい実施形態では、非直鎖アルケンは、テルペンである。アルカンへの言及は、好ましくはアルケン、より好ましくはテルペンを指すことを理解すべきである。従って、アルカン基質へのあらゆる言及は、好ましくはアルケン基質、より好ましくはテルペン基質を指し、アルカン生成物へのあらゆる言及は、好ましくはアルケン生成物、より好ましくはテルペン生成物を指す。
【0060】
一実施形態では、従って、本発明のアルカン酸化系は、テルペン酸化系であると理解すべきである。
【0061】
構成要素a:オキシダーゼ酵素
開示されるアルカン酸化系は、少なくとも1つのアルカンを酸化するのに好適な1つ以上のオキシダーゼ酵素、少なくとも1つの異種セスキテルペンシンターゼタンパク質、任意選択によりルブレドキシンペプチド、又は/及びルブレドキシンレダクターゼペプチドを含む。
【0062】
本発明の別の態様では、オキシダーゼ酵素は、少なくとも1つのアルカンを酸化するのに好適な酵素であり、好ましくはその中心部分にPFAMドメインA_desaturase(PF00487)を有する(PFAMのバージョン34.0を用いて分析、PFAMの詳細については、“Pfam:The protein families database in 2021:J.Mistry,S.Chuguransky,L.Williams,M.Qureshi,G.A.Salazar,E.L.L.Sonnhammer,S.C.E.Tosatto,L.Paladin,S.Raj,L.J.Richardson,R.D.Finn,A.Bateman Nucleic Acids Research(2020)doi:10.1093/nar/gkaa913及びhttp://pfam.xfam.org/を参照されたい)。
【0063】
本発明の一態様では、オキシダーゼ酵素は、少なくとも1つのアルカンを酸化するのに好適であり、酵素クラス1.14.19.xのオキシドレダクターゼである。本発明の更なる態様では、オキシダーゼ酵素は、酵素クラス1.14.19.1の酵素である。
【0064】
一実施形態では、オキシダーゼ酵素又はモノオキシゲナーゼ酵素又はアルカン酸化酵素は、内在性膜二鉄タンパク質として定義される。更なる実施形態では、オキシダーゼ酵素は、例えば、Smits 2002,J Bacteriol 184,1733-1742に更に記載されているものに限定されない、細菌由来の酵素に基づくものである。アルカンを酸化するalkB酵素は、広範囲の細菌から記載されている(Smits 2002,J Bacteriol 184,1733-1742)。しかしながら、ファルネセン又は任意の他のセスキテルペンでは、alkB酵素の活性が実証されていなかった。
【0065】
一実施形態では、オキシダーゼ酵素は、ルブレドキシンと天然に融合しないサブクラス由来のアルケンモノオキシゲナーゼである。非限定的な例は、配列番号1及び43として示されるものである。当業者であれば、例えば、タンパク質の長さによって、それが本来ルブレドキシンと融合しているクラスのアルケンモノオキシゲナーゼであるか、又はそうでないクラスのアルケンモノオキシゲナーゼであるかを容易に判断することができる。
【0066】
好ましくは、オキシダーゼ酵素は、公知のシュードモナス属(Pseudomonas)M1のalkBヒドロキシラーゼ(Soares-Castro 2017 Appl Environ Microbiol 83:e03112-16.;配列番号1)、例えば、配列番号23~43のいずれか1つ又は配列番号10、11に示される人工タンパク質のいずれか若しくはそのフラグメント若しくは変異体と少なくとも50%の同一性を有するアルカン酸化酵素である。一実施形態では、オキシダーゼ酵素は、例えば、シュードモナス属(Pseudomonas)M1細菌であるが限定されないシュードモナス属(Pseudomonas)種から供給されるか、又はこれらの生物を形成するこれらの酵素に基づくものである。このM1は、ファルネセンに構造的に類似しているがイソプレン単位の1つを欠くモノテルペンであるミルセンで増殖することができる。
【0067】
より好ましくは、酸化酵素は、配列番号1、10、11又は23~42(PM1_0216370)、例えば、UniprotエントリーA0A077KZY1の名称で開示されるアシネトバクター・ギロイエ(Acinetobacter guillouiae)タンパク質、又はA0A2S9EQI7として開示されるアシネトバクター属種(Acinetobacter sp.)酵素(それぞれ配列番号23及び24)によって例示されるようなアシネトバクター属(Acinetobacter)由来の配列のいずれか1つと少なくとも62%、66%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、94%、95%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むアルカン酸化alk B酵素である。別のより好ましい実施形態では、アルカン酸化系のオキシダーゼ酵素は、CMR5cオキシダーゼタンパク質/AlkBオキシダーゼ酵素(シュードモナス属種(Pseudomonas sp.)CMR5c)をコードする配列番号43と少なくとも62%、66%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、94%、95%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むアルカン酸化alk B酵素である。配列番号44は、配列番号43及び配列番号45のルブレドキシンをコードする。
【0068】
より好ましくは、オキシダーゼ酵素は、アミノ酸レベルで配列番号1、10、11、23~43又はそのフラグメントのいずれか1つと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は更に100%の配列同一性のアミノ酸配列を有するタンパク質である。
【0069】
一実施形態では、オキシダーゼ酵素の変異体は、配列番号10、11、23~43のいずれかのポリペプチドであるか、又は配列番号1、10、11、23~43のいずれか1つと少なくとも70%、75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%若しくは少なくとも99%の配列同一性のアミノ酸配列であり、オキシダーゼ活性を有する。好ましくは、変異体は保存的に改変された変異体である。より好ましくは、変異体は、配列番号1、33、36、37、39、40、41及び42に関して
図7a、7bのような保存アミノ酸を有する。
【0070】
オキシダーゼ酵素のフラグメントは、本明細書で言及される場合、本明細書に規定されるアルカンオキシダーゼ酵素活性を示すのに十分な長さを有する、上述の配列及び配列変異体の任意のアミノ酸配列からなるポリペプチドであってよい。
【0071】
通常、フラグメントは、本明細書で言及される配列又は配列変異体由来の、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも150又は少なくとも200の連続したアミノ酸長からなる。好ましい実施形態では、フラグメントは、完全長配列の活性の少なくとも20%、又は少なくとも30%、又は少なくとも40%又は少なくとも50%又は少なくとも60%又は少なくとも70%又は少なくとも80%又は少なくとも90%又は100%を有する。
【0072】
本発明の一実施形態では、オキシダーゼ酵素のフラグメントは、本明細書で定義されるように、少なくとも1つのテルペン基質を酸化テルペン生成物に変換することができるアルカンオキシダーゼ酵素活性を示すポリペプチドである。従って、好ましくは、ポリペプチドの上述の生物活性を有するフラグメントが、PFAMドメインA_desaturase(PF00487)を好ましくはその中心部分に含むことが想定される。
【0073】
テルペン:
定義によれば、「テルペン」という用語は、炭素と水素から構成される炭化水素のみを含む。「テルペノイド」という用語は、アルコール、アルデヒド、ケトン、及び酸などの誘導体を生じさせる、更なる官能基を含有するテルペンを指す:例えば、Flavours and Fragrances:Chemistry,Bioprocessing and Sustainability RG Berger;Black et al.,Terpenoids and their role in wine flavour:recent advances.Australian Journal of Grape and Wine Research 21,582-600,2015;Zhou&Pichersky,More is better:the diversity of terpene metabolism in plants.Current Opinion in Plant Biology 2020,55:1-10;Degenhardt J,Kollner TG,Gershenzon J(2009)Monoterpene and sesquiterpene synthases and the origin of terpene skeletal diversity in plants.Phytochemistry 70(15):1621-1637)を参照されたい。頭尾付加により結合されているそれらの構造内のイソプレン単位の数により、テルペンは、炭素原子の数又はセスキテルペノイド部分の数に従って以下のようにそれぞれ分類される:モノテルペン(C10)、セスキテルペン(C15)、ジテルペン(C20)、トリテルペン(C30)、又は最大30,000個の結合されたイソプレン単位を有するポリテルペン。テルペンと同様、テルペノイドもイソプレン単位の数に従って分類され、モノテルペノイド(C10)又はセスキテルペノイド(C15)のように構成され、更に接尾辞「-oids」を付けて命名される。科学文献では、テルペンという用語は、テルペノイドという用語としばしば互換的に用いられるが、それらは異なる意味を有する。本明細書で使用する場合、「テルペン」という用語は、炭化水素及びそれらの官能性誘導体、好ましくは炭化水素の両方を含む。通常、本発明のアルカン酸化系の基質として使用される場合のテルペンは酸化形態でなく、従って本明細書の他の箇所で定義されている酸化テルペン生成物を含まない可能性があるが、本明細書で定義されているようにDETAのような一部の例外もあり得る。
【0074】
本明細書で使用する場合、「モノテルペン」はC10テルペンである。モノテルペンは通常、中間体としてのC10ゲラニル二リン酸(GPP)から調製され、環状であっても又は直鎖状であってもよい。
【0075】
「セスキテルペン」は、3つのイソプレン単位から構築されるC15テルペンである。モノテルペンと同様に、セスキテルペンは非環式であっても、又は環を含有してもよく、多くの独自の組み合わせを含む。これらは、特に高等植物、並びに海洋生物及び菌類などの他の多くの生物系に見られるものである。天然では、炭化水素として、又はラクトン、アルコール、酸、アルデヒド、及びケトンを含む酸化形態で生じる。セスキテルペンには、いくつかの薬理活性を有する精油及び芳香成分も含まれる。
【0076】
「ジテルペン」は、C20テルペンであり、植物及び微生物で天然に生じるものである。ジテルペン分子は、フレグランス産業で応用されるアンバーノートに変換することができるため、商品価値がある。通常、本発明のアルカン酸化系の基質として使用される場合のセスキテルペンは酸化形態でなく、従って本明細書の他の箇所で定義されている酸化テルペン生成物を含まない可能性があるが、本明細書で定義されているようにDETAのような一部の例外もあり得る。
【0077】
構成要素b:テルペンシンターゼタンパク質:
テルペンシンターゼタンパク質は、単一の基質又は多数の基質から1つ又はいくつかのテルペンを形成する能力を有するテルペンシンターゼタンパク質を含む。
【0078】
以下に言及するテルペンシンターゼタンパク質には、モノテルペンシンターゼ、ジテルペンシンターゼ及び/又はセスキテルペンシンターゼが含まれる。モノテルペンシンターゼは、基質の二価金属イオンに依存したイオン化によよって開始される一般的なカルボカチオン反応機構に関係する。得られたカチオン性中間体は、プロトンの消失又は求核剤の添加によって反応が終了するまでに、一連の環化、ヒドリドシフト、又は他の転位を起こす。モノテルペンシンターゼは、Jorg Degenhardt(Phytochemistry 70(2009)1621-1637)に更に記載されている。一般に、モノテルペンシンターゼタンパク質は、ミルセン、ピネン、カンフェン、フェランドレン、テルピノレン、リモネン、オシメン、リナロール、シネオール、ゲラニオール、テルピネン、テルピネオール、フェンコール、カレン、サビネン、ボルニル二リン酸などのようなモノテルペン、及びその構造変異体、異性体、誘導体などの形成を促進する。
【0079】
ジテルペンシンターゼをコードする遺伝子は、広範に記載されており(Zerbe,Trends Biotechnol 2015 Jul;33(7):419-28.)、これらの化合物の微生物生成が実証されている(例えば、Schalk J.Am.Chem.Soc.2012,134,18900-18903)。
【0080】
セスキテルペンシンターゼタンパク質は、非環式プレニル二リン酸及びスクアレンを複数の環式及び非環式形態に変換することを促進するタンパク質を指す。
【0081】
セスキテルペンシンターゼタンパク質は、モノテルペンシンターゼと同様のカルボカチオンをベースした反応機構を用いて、ファルネシル二リン酸からのセスキテルペンの形成を触媒する。一般に、セスキテルペンシンターゼタンパク質は、セスキテルペン(以下、セスキテルペン基質と互換的に言及される)の形成を促進するものであり、これらは、ロンギホレン、ファルネセン、ビサボレン、クルクメン、ゲルマクレンA/D/D-4-オール、パチョロール、バレンセン、セスキツジェン、マクロカルペン、カリオフィレン、フムレン、オイデスモール、ネロリドール、バルバテン、アモルファ-4,11-ジエン、8-epi-セドロール、5-epi-アリストロチェン、カジネン、カジネンベチスピラジエン、ベルガモテン、エレメン、クベベン、クベボール、ムウロラ-3,5-ジエン、セリネン、ジンギベレン、ファルネソール、シネンサール、サンタレン、バレンセン、グアイエン、ジテルペンなど、及びその構造変異体、異性体、誘導体などのような15個の炭素原子(3つのイソプレン単位)を有するテルペンである。
【0082】
テルペン基質:
テルペン基質は、モノテルペン、セスキテルペン、及び/ジテルペン、例えば限定されるものではないが、酸化反応の基質としてのテルペン炭化水素分子を包含するものと理解すべきである。本発明の一態様では、1つ以上のテルペン基質は、1つ以上のセスキテルペン基質である。例えば、1つ以上のセスキテルペン基質としては、α-ファルネセン、β-ファルネセン、シネンサール、α-ビサボレン、β-ビサボレン、α-ベルガモテン、β-ベルガモテン、α-サンタレン、β-サンタレン、バレンセン、α-グアイエン、ジテルペン、モノテルペン、ゲラニオール、ネロールモノテルペン、酢酸リナリル、リモネン、β-ピネン、若しくはゲラニルラクトン、又はその混合物が挙げられる。通常、テルペン基質は、本明細書の他の箇所で定義されている酸化テルペン生成物ではないが、本明細書で定義されているようにDETAのような一部の例外もあり得る。
【0083】
構成要素c:電子伝達化合物:
電子伝達化合物は、少なくとも1つの電子をオキシダーゼ酵素に伝達する。
【0084】
好ましくは、電子伝達化合物には、a)可溶性の電子伝達剤を有するタンパク質、b)電子伝達鎖の膜結合成分、c)金属酵素などが含まれる。
【0085】
一実施形態では、電子伝達化合物は電子伝達タンパク質であり、好ましくはF1-S0型タンパク質である。
【0086】
より好ましくは、電子伝達化合物は、配列番号2又はUniProtデータベースエントリーA0A3G7A099から公知の配列(配列番号45)又はそのフラグメントと少なくとも62%、66%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、94%、95%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むルブレドキシンペプチドである。
【0087】
ルブレドキシンペプチドは、電子を伝達するのに必要とされる、可溶性の低分子量の鉄を含有するペプチドである。ルブレドキシンは、フェレドキシン、ヘムエリトリン、アコニターゼなどのような他の非ヘム鉄タンパク質のように、硫黄に結合されて強力に結合された機能性鉄原子を含むが、ポルフィリンは含まない。単一の鉄原子は、四面体状に配置された4つの硫黄原子を介してタンパク質の残りの部分と結合される。電子伝達は、4つのシステイニルチオエートに配位された単一のFe酸化還元中心によって処理される。2つの酸化還元状態は、形式的にはFe(II)とFe(III)である。
【0088】
好ましくは、ルブレドキシンペプチドは、配列番号2、又はUniProtデータベースからA0A3G7A099として公知のポリペプチド又はそのフラグメントと少なくとも62%、66%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、94%、95%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列である。
【0089】
より好ましくは、ルブレドキシンペプチドは、アミノ酸レベルで配列番号2若しくは45、又はそのフラグメントと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は更に100%の配列同一性を有するアミノ酸配列である。
【0090】
ルブレドキシンペプチドのフラグメントは、本明細書で言及される場合、酸化アルカンオキシダーゼ酵素を還元し、これを再生することが可能な電子伝達活性を示すのに十分な長さを有する、上述の配列及び配列変異体の任意のアミノ酸配列からなるポリペプチドであってよい。
【0091】
通常、ルブレドキシンペプチドのフラグメントは、上述の配列又は配列変異体由来の、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも45又は少なくとも50の連続したアミノ酸長からなる。
【0092】
構成要素d:電子伝達化合物再生酵素:
電子伝達化合物再生酵素は、電子伝達化合物が酸化状態にあり、通常はこれを再生する場合に、本明細書に記載される電子伝達化合物を還元するのに好適なものである。
【0093】
電子伝達化合物再生酵素は、電子伝達タンパク質レダクターゼ、好ましくはルブレドキシンレダクターゼタンパク質である。
【0094】
ルブレドキシンレダクターゼは、通常ではNADH依存性であり、電子伝達後にルブレドキシンを再利用するために必要とされる。ルブレドキシンは、ルブレドキシンレダクターゼによる触媒反応中に、NADHにより第一鉄の状態に還元され、触媒回路の間にω-ヒドロキシラーゼにより第二鉄形態に再び酸化される。
【0095】
好ましくは、ルブレドキシンレダクターゼペプチドは、配列番号3、又はそのフラグメントと少なくとも62%、66%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、94%、95%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列である。
【0096】
より好ましくは、ルブレドキシンペプチドは、アミノ酸レベルで配列番号3又はそのフラグメントと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は更に100%の配列同一性を有するアミノ酸配列である。
【0097】
ルブレドキシンレダクターゼペプチドのフラグメントは、本明細書で言及される場合、酸化ルブレドキシンを還元し、これを再生することが可能な電子伝達活性を示すのに十分な長さを有する、上述の配列及び配列変異体の任意のアミノ酸配列からなるポリペプチドであってよい。
【0098】
通常、ルブレドキシンレダクターゼペプチドのフラグメントは、上述の配列又は配列変異体に由来する、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも150又は少なくとも200の連続したアミノ酸長からなる。
【0099】
好ましい実施形態では、人工アルカン酸化系は、配列番号2若しくは配列番号45若しくはそのフラグメント若しくは変異体と少なくとも62%、66%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、94%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはF1-S0型の電子伝達化合物としての1つ以上の電子伝達タンパク質、より好ましくは1つ以上のルブレドキシンペプチドを含み、又は/及び、少なくとも1つの電子伝達化合物再生酵素は、配列番号3若しくはそのフラグメントと少なくとも62%、66%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、94%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有する電子伝達タンパク質レダクターゼ、好ましくはルブレドキシンレダクターゼ、より好ましくはルブレドキシンレダクターゼペプチドである。
【0100】
より好ましい実施形態では、アルカン酸化系は、配列番号20と少なくとも70%の配列同一性の核酸配列によってコードされるオキシダーゼ酵素、配列番号21と少なくとも70%の配列同一性の核酸配列によってコードされるルブレドキシンペプチド、及び/又は配列番号22と少なくとも70%の配列同一性の核酸配列によってコードされるルブレドキシンレダクターゼペプチドを含む。
【0101】
好ましくは、オキシダーゼ酵素は、配列番号20と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は更に100%の配列同一性を有する核酸配列によってコードされる。
【0102】
好ましくは、ルブレドキシンペプチドは、配列番号21と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は更に100%の配列同一性を有する核酸配列によってコードされる。
【0103】
好ましくは、ルブレドキシンレダクターゼペプチドは、配列番号22、又はそのフラグメントと少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は更に100%の配列同一性を有する核酸配列によってコードされる。
【0104】
本発明のアルカン酸化系は、宿主細胞に適用され得るが、無細胞での適用も可能である。例えば、破壊した細胞由来の細胞膜部分、人工膜系、再構成細胞膜などを、本発明のアルカン酸化系と組み合わせて使用してもよい。
【0105】
本発明の別の態様は、配列番号4、配列番号12、配列番号17、配列番号18、又は配列番号19、又は配列番号44と少なくとも62%、66%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、94%、95%、98%又は99%の配列同一性を有する合成核酸に関し、合成核酸配列は、オキシダーゼ酵素をコードする核酸配列、並びに任意選択によりルブレドキシンペプチド及び/又はルブレドキシンレダクターゼペプチドを含む。
【0106】
好ましくは、合成核酸配列は、人工アルカン酸化系をコードし、配列番号4(構成要素a、c及びd)、配列番号12(a、c及びd)、配列番号17(a、c及びd)、配列番号18(a、c及びd)又は配列番号19(a及びcのみ)の核酸配列により、括弧内に列挙された構成要素がコードされる。
【0107】
好ましくは、人工アルカン酸化系は、配列番号4、配列番号12、又は配列番号17、配列番号18と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は更に100%の配列同一性を有する核酸配列によってコードされる構成要素a、c及びdを有する。
【0108】
好ましくは、人工アルカン酸化系は、配列番号19と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は更に100%の配列同一性を有する核酸配列を含む核酸配列によってコードされる構成要素a及びcのみを有する。
【0109】
一実施形態では、a~dの構成要素の少なくとも1つのポリペプチドは、タグペプチドに融合されている。一実施形態で構成要素a~dに使用されるポリペプチドの1つ以上は、タグペプチドを含む第1のセグメントと、本発明によるそれぞれの構成要素のそれぞれのポリペプチドを含む第2のセグメントとから構成される。前記第1のセグメントと前記第2のセグメントから構成されるポリペプチドを、本明細書では「タグ化ポリペプチド」と称し得る。
【0110】
タグペプチドは、好ましくは、窒素利用タンパク質(NusA)、チオレドキシン(Trx)、マルトース結合タンパク質(MBP)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、ユビキチン類似因子(SUMO)又はカルシウム結合タンパク質(Fh8)、及びその機能的相同体の群から選択される。本明細書で使用する場合、タグペプチドの機能的相同体は、非タグ化酵素と比較して、タグ化酵素の溶解性に少なくともほぼ同じ効果を有するタグペプチドである。通常、相同体は、その相同体のペプチドに1つ以上のアミノ酸が挿入、置換、欠失されているか、又はそこに伸長されているという点で異なるものである。相同体は、特に、親水性アミノ酸の別の親水性アミノ酸への1つ以上の置換、又は疎水性アミノ酸の別の疎水性アミノ酸への1つ以上の置換を含み得る。相同体は、特に、NusA、Trx、MBP、GST、SUMO又はFh8の配列と少なくとも40%、より詳細には少なくとも50%、好ましくは少なくとも55%、より好ましくは少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%又は少なくとも99%の配列同一性を有し得る。
【0111】
好ましい実施形態では、タグペプチドは、大腸菌(Escherichia coli)由来のマルトース結合タンパク質、又はその機能的相同体である。
【0112】
本発明によるタグ化ポリペプチドを使用することは、少なくとも1つの酸化テルペン生成物の生成の増加、具体的にはその細胞生成の増加に寄与し得るという点で特に有利である。
【0113】
タグ化ポリペプチドの溶解性を(タグのないポリペプチドと比較して)改善するために、ポリペプチドの第1のセグメントが、そのC末端で第2のセグメントのN末端と結合されていることが好ましい。或いは、タグ化ポリペプチドの第1のセグメントは、そのN末端で第2のセグメントのC末端と結合されている。
【0114】
更に、本開示は、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含む核酸に関し、ポリペプチドは、タグペプチド、好ましくはMBP、NusA、Trx、GST、SUMO若しくはFh8-タグ、又はこれらのいずれかの機能的相同体を含む第1のセグメントと、任意の構成要素a~dのポリペプチドを含む第2のセグメントとから構成される。第2のセグメントは、例えば、配列番号1、10、11、若しくは23~43に示すようなアミノ酸配列、又はその機能的類似体を含み得る。
【0115】
更に、本開示は、前記タグ化ポリペプチドをコードする前記核酸を含む宿主細胞に関する。タグ化ポリペプチドをコードする本発明による特定の核酸を、配列番号4、12、17、18、19、又は44に示す。宿主細胞は、特に、これらの配列のいずれかを含む遺伝子又はその機能的類似体を含み得る。
【0116】
更に、本開示は、タグペプチドを含む第1のセグメントと、構成要素a~dのいずれかのポリペプチドを含む第2のセグメントとから構成されるポリペプチドに関し、タグペプチドは、MBP、NusA、Trx又はSET)の群から選択されることが好ましい。
【0117】
本発明の核酸(又はポリヌクレオチド)は、本発明のアルカン酸化系をコードする核酸配列を含む。本発明のアルカン酸化系をコードする核酸配列は、好ましくは、組換え及び/又は単離及び/又は精製核酸配列である。本発明のアルカン酸化系をコードする核酸配列は、公知の分子生物学的な標準的技術、本明細書に提供される配列情報及び生物を使用して、生成及び単離され得る。「核酸」という用語は、本明細書で使用する場合、1本鎖又は2本鎖形態のいずれかのデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドポリマー、すなわちポリヌクレオチドへの言及を含み、別段限定されない限り、それらが天然のヌクレオチド(例えばペプチド核酸)と同様に1本鎖核酸とハイブリッド形成するという点において天然ヌクレオチドの基本的性質を有する公知の類似体を包含する。ポリヌクレオチドは、天然又は異種構造遺伝子又は調節遺伝子の完全長配列又はサブ配列であり得る。別段指示されない限り、この用語は、明記される配列と同様にその相補的配列への言及を含む。従って、安定性のため又は他の理由のために修飾された骨格を有するDNA又はRNAは、その用語が本明細書で意図するような「ポリヌクレオチド」である。更に、単に2つ例を挙げると、イノシンなどの通常のものではない塩基又はトリチル化塩基などの修飾塩基を含むDNA又はRNAは、この用語が本明細書で使用されているような「ポリヌクレオチド」である。当業者に公知の多くの有用な目的を果たすDNA及びRNAに対して、多岐にわたる修飾がなされてきたことを理解されよう。「ポリヌクレオチド」という用語は、本明細書で使用される場合、ポリヌクレオチドのこのような化学的、酵素的又は代謝的な修飾形態、同様に、とりわけ単純細胞及び複雑細胞を含む、ウイルス及び細胞のDNA及びRNAの特性の化学的形態を包含する。オキシダーゼ酵素又はルブレドキシン又はルブレドキシンレダクターゼなどのポリペプチドをコードする本明細書中の全ての核酸配列はまた、遺伝コードを参照することにより、核酸の全ての起こり得るサイレント変異を示す。「保存的に修飾された変異体」という用語は、アミノ酸及び核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、「保存的に修飾された変異体」という用語は、これが使用される場合、遺伝コードの縮重によって同一又は保存的に修飾されたアミノ酸配列の変異体をコードする核酸を指し得る。「遺伝コードの縮重」という用語は、多数の機能的に同一な核酸が、任意の所与のタンパク質をコードするという事実を指す。例えば、コドンGCA、GCC、GCG及びGCUは全て、アミノ酸のアラニンをコードする。従って、コドンによってアラニンが指定される全ての位置で、コードされるポリペプチドを変更することなく、記載される対応するコドンのいずれかにコドンを変更することができる。このような核酸変異は、「サイレント変異」であり、保存的に修飾された変異の1種を意味する。「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、本明細書において互換的に用いられ、アミノ酸残基のポリマーを指す。
【0118】
「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語はまた、1つ以上のアミノ酸残基が対応する天然アミノ酸の人工的な化学的類似体であるアミノ酸ポリマーだけでなく、天然アミノ酸ポリマーにも適用される。天然アミノ酸のこのような類似体に必須の性質は、タンパク質に組み込まれたときに、そのタンパク質が、同一のタンパク質であるが完全に天然アミノ酸からなるタンパク質に誘発される抗体に対して特異的に反応性があるということである。「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語は、グリコシル化、脂質付着、硫酸化、グルタミン酸残基のγカルボキシル化、ヒドロキシル化及びADPリボシル化を含むが限定されない修飾も含む。本出願の文脈内では、オリゴマー(オリゴヌクレオチド、オリゴペプチドなど)は、ポリマーの基の一種と見なされる。オリゴマーは、例えば、実施例において本発明で有用なオキシダーゼ酵素又はルブレドキシン又はルブレドキシンレダクターゼをクローニングするために使用されるようなプライマー配列を含む、比較的少ない数、一般的に2~100個、特に6~100個のモノマー単位を有する。
【0119】
「異種」という用語は、本発明の核酸(DNA若しくはRNA)又はタンパク質に関して使用される場合、それが存在する生物、細胞、ゲノム若しくはDNA若しくはRNA配列の一部として天然には生じない、又は、天然に見られるものとは異なる細胞若しくはゲノム若しくはDNA若しくはRNA配列中の1つ若しくは複数の位置に見られる、核酸又はタンパク質を指す。本発明の異種核酸又はタンパク質は、それらが導入される細胞に対して内在性ではないが、別の細胞から得られるか、又は合成若しくは組換えにより生成されている。一般に、必ずしもそうではないが、このような核酸は、DNAが発現される細胞から通常では生成されないタンパク質をコードする。特定の宿主細胞に対して内在性の遺伝子ではあるものの、例えばDNAシャッフリングを用いることでその天然形態から修飾されている遺伝子も異種と呼ばれる。「異種」という用語には、天然に存在しない複数コピーの天然DNA配列も含まれる。従って、「異種」という用語は、細胞にとって外来若しくは異種であるか、又は細胞と相同ではあるが、そのセグメントが通常では見られない宿主細胞核酸内の位置及び/又は数で存在するDNAセグメントを指し得る。外来DNAセグメントは、外来ポリペプチドを得るために発現される。
【0120】
本発明の「相同」DNA配列は、導入される宿主細胞と天然に関連するDNA配列である。発現される細胞に対して異種又は外来として当業者が認識するであろういずれの核酸又はタンパク質も、本明細書では異種核酸又は異種タンパク質という用語によって包含される。
【0121】
別のタンパク質又はポリペプチドと比較されるタンパク質又はポリペプチドに関して本明細書で使用する場合、「修飾された」、「修飾」、「変異された」又は「変異」という用語は、ヌクレオチド又は核酸配列に変更すべき点を変更して適用される。言及された用語は、タンパク質又はポリペプチドをコードする修飾されたヌクレオチド又は核酸配列が、比較されるタンパク質又はポリペプチドのヌクレオチド又は核酸配列と比較して、ヌクレオチド又は核酸配列に少なくとも1つの差異があることを示すために使用される。この用語は、修飾された又は変異されたタンパク質が、実際に、これらのアミノ酸をコードする核酸の突然変異誘発によって、又はポリペプチド若しくはタンパク質の修飾によって、又は別の方法、例えば人工遺伝子合成方法を使用して得られたかどうかに関係なく使用される。突然変異誘発は、当技術分野でよく知られた方法であり、例えば、Sambrook,J.,and Russell,D.W.Molecular Cloning:A Laboratory Manual.3d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,(2001)に記載されるような、PCRによるものか、又はオリゴヌクレオチドによって媒介される変異誘発を介した部位特異的突然変異誘発を含む。「修飾された」、「修飾」、「変異された」又は「変異」という用語は、遺伝子に関して本明細書で使用する場合、その遺伝子又はその調節配列のヌクレオチド配列中の少なくとも1つのヌクレオチドが、比較されるヌクレオチド配列とは異なることを示すために使用される。修飾又は変異は、特に、異なるヌクレオチドによるヌクレオチドの置換、ヌクレオチドの欠失又はヌクレオチドの挿入であり得る。
【0122】
キット:
本発明の別の態様は、人工アルカン酸化系のキットに関し、キットは、
オキシダーゼ酵素をコードする核酸配列を含む、配列番号1、10、11、23~43と少なくとも62%、66%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、94%、95%、98%又は99%の配列同一性を有する第1の単離核酸配列と、
好ましくは第1の核酸と物理的に結合されていない、電子伝達タンパク質をコードする第2の単離核酸配列と、
任意選択により、電子伝達タンパク質レダクターゼをコードする第3の核酸配列であって、第1及び/又は第2の核酸配列と融合され得る第3の核酸配列とを含む。
【0123】
一実施形態では、キットが適用される生物は、本明細書に記載されるようなアルカンシンターゼ、好ましくはテルペンシンターゼ、より好ましくはセスキテルペンシンターゼをコードする核酸配列を含む。
【0124】
別の実施形態では、キットは、本明細書に記載されるようなアルカンシンターゼ、好ましくはテルペンシンターゼ、より好ましくはセスキテルペンシンターゼをコードする4つの核酸配列を含む。キットは、生物が対応するアルカンシンターゼを生成しない場合に、第4の核酸配列を含む。
【0125】
一実施形態では、キットは、人工アルカン酸化系の存在を同定又は検出するために使用される。
【0126】
代替的な実施形態では、キットは、人工アルカン酸化系を調製するために使用される。
【0127】
別の態様では、本発明は、
合成核酸配列、又は
アルカン酸化系をコードする核酸配列、又は
アルカン酸化系の核酸配列であって、
a.配列番号20と少なくとも70%の配列同一性を有するか、若しくは
配列番号1、10、11、23~43のいずれか1つと少なくとも70%の配列同一性を有するオキシダーゼ酵素をコードする、オキシダーゼ酵素の核酸配列と、
b.配列番号21と少なくとも70%の配列同一性を有するか、若しくは
配列番号2若しくは配列番号45のルブレドキシンをコードする、ルブレドキシンペプチドの核酸配列と、任意選択により、
c.配列番号22と少なくとも70%の配列同一性を有するか、若しくは
配列番号3のルブレドキシンレダクターゼペプチドをコードする、ルブレドキシンレダクターゼペプチドの核酸配列とを含むアルカン酸化系の核酸配列を含む、発現カセットに関する。
【0128】
本発明の別の態様は、配列番号4、12、17、18又は19のいずれか1つと少なくとも70%の配列同一性の合成核酸配列を含む発現カセットに関し、合成核酸配列は、オキシダーゼ酵素、意図される宿主細胞で所望のテルペンシンターゼ機能が利用できない場合に、必要であればテルペンシンターゼタンパク質、並びに任意選択によりルブレドキシンペプチド及び/又はルブレドキシンレダクターゼペプチドをコードする核酸配列を含む。
【0129】
別の実施形態では、本発明は、上記で開示されるようなアルカン酸化系をコードする核酸配列に関する。
【0130】
別の実施形態では、本発明は、アルカン酸化系の核酸配列を含む発現カセットに関し、核酸配列は、
a.配列番号20のいずれか1つと少なくとも62%、66%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、94%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有するオキシダーゼ酵素の核酸配列、若しくは配列番号1、10、11、23~43のいずれか1つと少なくとも62%、66%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、94%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有するオキシダーゼ酵素をコードする核酸配列、
b.配列番号21のいずれか1つと少なくとも62%、66%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、94%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有するルブレドキシンペプチドの核酸配列、又は
c.配列番号22と少なくとも62%、66%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、94%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有するルブレドキシンレダクターゼペプチドの核酸配列を含むか、或いはaとb及びcの組み合わせを含む。
【0131】
好ましくは、オキシダーゼ酵素の核酸配列は、配列番号20と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は更に100%の配列同一性を有する核酸配列である。
【0132】
好ましくは、ルブレドキシンペプチドの核酸配列は、配列番号21と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は更に100%の配列同一性を有する核酸配列である。
【0133】
好ましくは、ルブレドキシンレダクターゼペプチドの核酸配列は、配列番号22と少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は更に100%の配列同一性を有する核酸配列である。
【0134】
一実施形態では、人工アルカン酸化系は、配列番号1、10、11、23~43のいずれか1つと少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%の配列同一性を有する1つ以上のオキシダーゼ酵素、1つ以上のセスキテルペンシンターゼ、及び任意選択により配列番号2と少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むルブレドキシンペプチド、更に任意選択により配列番号3と少なくとも70、75、80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98又は99%の配列同一性を有するルブレドキシンレダクターゼペプチドを含むセスキテルペン酸化系である。
【0135】
本発明の別の態様は、1つ以上のアルカン基質、好ましくはテルペン基質、より好ましくはセスキテルペン基質の酸化方法に関し、本方法は、
a.アルカン基質、好ましくはテルペン基質、より好ましくはセスキテルペン基質の酸化のために、
i.上記で開示されるような人工アルカン酸化系構成要素a及びc、並びに任意選択によりb及び/若しくはd、又は
ii.オキシダーゼ酵素並びに任意選択によりルブレドキシンペプチド及び/若しくはルブレドキシンレダクターゼペプチドをコードする上記で開示されるような合成核酸配列、若しくは上記で開示されるようなその発現カセット、若しくは上記で開示されるような人工酸化系を含む発現カセットの発現、
iii.配列番号1、10、11、23~43若しくはそのフラグメント若しくはその変異体のいずれか1つと少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むオキシダーゼ酵素をコードする核酸配列の発現、並びに
iv.任意選択により、アルカン酸化系によって生成されない場合は、少なくとも1つのアルカン基質、好ましくはテルペン基質、テルペンシンターゼの場合、好ましくはセスキテルペンシンターゼが存在しないか若しくは機能的でない場合は、テルペン基質、好ましくはセスキテルペン基質を提供することと、
b.1つ以上のアルデヒド生成物及び/又はアルコール生成物を含む、少なくとも1つの酸化アルカン生成物、好ましくはテルペン生成物を生成するために、アルカン基質、好ましくはテルペン基質、より好ましくはセスキテルペン基質を、アルカン酸化系によってアリル酸化することと、
c.任意選択により、1つ以上のアルデヒド生成物及び/又はアルコール生成物を含む、少なくとも1つの酸化アルカン基質、好ましくはテルペン生成物を抽出することとを含む。
【0136】
本発明の本方法の別の好ましい実施形態では、少なくとも1つの酸化アルカン、好ましくはアルケン、より好ましくはテルペン生成物は、宿主細胞又は非ヒトトランスジェニック生物内で調製され、本発明のアルカン酸化系構成要素a及びc、並びに任意選択によりb(内在性のテルペンシンターゼが存在しない場合)並びに/又はdを異種発現させる。
【0137】
別の実施形態では、本発明による宿主細胞は、上述の1つ以上の酸化テルペン生成物の発酵生成において工業的に使用することができる。
【0138】
例えば、本発明の宿主細胞又は非ヒトトランスジェニック生物は、1つ以上の酸化テルペン生成物の発酵生成において使用することができる。
【0139】
好ましくは、少なくとも1つの酸化テルペン生成物は、発酵プロセスにおいて、すなわち、本発明のアルカン酸化系が発現される条件下で、例えば、ロドバクター属(Rhodobacter)宿主細胞などの微生物宿主細胞を培養培地中で培養することを含む方法において生成される。1つ以上の酸化テルペン生成物を生成するために、1つ以上のテルペン基質をアルカン酸化系によってアリル酸化する実際の反応は、通常は細胞内で生じる。「発酵」という用語は、本明細書では、好適な供給原料(例えば、炭水化物、アミノ酸供給源、脂肪酸供給源)から化合物を合成するために生物の培養を用いるプロセスにおいて広義の意味で使用されることに留意すべきである。従って、本明細書で意味するような発酵プロセスは、嫌気性条件に限定されるものではなく、好気性条件下におけるプロセスに拡大適用される。好適な供給原料は一般に、ロドバクター属(Rhodobacter)宿主細胞に公知のものである。好適な条件は、例えば国際公開第2011/074954号パンフレット又は国際公開第2014/014339号パンフレットに記載されるようなロドバクター属(Rhodobacter)宿主細胞に公知の方法に基づき得る。
【0140】
1つ以上のテルペン基質を酸化することによって生成される、少なくとも1つの酸化テルペン生成物は、当技術分野で公知の方法によって、宿主細胞又は非ヒトトランスジェニック生物から単離又は抽出することができる(植物については、例えばJiang et al.,Curr Protoc Plant Biol.2016;1:345-358.Doi:10.1002/cppb.20024を参照されたい;ロドバクター属(Rhodobacter)については、例えば国際公開第2014/014339号パンフレットを参照されたい)。
【0141】
一般に、本方法は、以下の工程を含む:1)細胞を破壊して酸化テルペン生成物を含むそれらの化学成分を放出させること;2)好適な溶媒を使用して(又は化合物を蒸留若しくは捕捉することによって)酸化テルペン生成物を含む試料を抽出すること;3)分析及び定量を混乱させる他の望ましくない抽出物の内容物から所望の酸化テルペン生成物を分離すること;並びに4)適切な分析方法(例えば、薄層クロマトグラフィー(TLC)、ガスクロマトグラフィー(GC)若しくは液体クロマトグラフィー(LC)又は本明細書に記載されるような別の方法)を使用すること。
【0142】
一実施形態では、細胞外で酸化テルペン生成物が生成され、その抽出は、好適な溶媒を使用した試料の抽出により促進される。
【0143】
テルペン基質:
テルペン基質は、上記で定義されている。
【0144】
好ましくは、1つ以上のテルペン基質としては、α-ファルネセン、β-ファルネセン、α-ビサボレン、β-ビサボレン、α-ベルガモテン、β-ベルガモテン、α-サンタレン、β-サンタレン、バレンセン、α-グアイエン、ジテルペン、モノテルペン、ゲラニオール、ネロールモノテルペン、若しくはゲラニルラクトン、酢酸リナリル、リモネン、β-ピネン、又はその混合物が挙げられる。
【0145】
一実施形態では、少なくとも1つのテルペン基質は、α-ファルネセン、β-ファルネセン、α-ビサボレン、β-ビサボレン、α-ベルガモテン、β-ベルガモテン、α-サンタレン、β-サンタレン、バレンセン、又はα-グアイエンから選択されるセスキテルペン基質である。
【0146】
一実施形態では、テルペン基質は、1つ以上の遠位末端テルペンアルコールを含む。遠位末端テルペンアルコール(distant end terpene alcohol:DETA)は、アルコールに酸化される前のテルペンの遠位末端と見なされる炭素鎖の末端にアルコール基を有する。これらの非限定的な例には、テルペンであるミルセンでは式Iの化合物、テルペンであるβ-ファルネセンでは下記の式II及びIIIに示される化合物がある。
【化1】
【化2】
【化3】
【0147】
酸化テルペン生成物:
少なくとも1つの酸化テルペン生成物は、テルペン基質の酸化、好ましくはアリル酸化によって生成される。
【0148】
好ましくは、少なくとも1つの酸化テルペン生成物は、テルペンをベースとしたものであり、1つ以上のテルペン基質を酸化することによって生成される。これらは、アルカン酸化系構成要素a及びc、並びに任意選択によりdの作用によって導入されるアルデヒド基、アルコール基、及び/又はアリルアルコール基を含み得る。一実施形態では、酸化テルペン生成物には、以下のうちの少なくとも1つ:ミルセンアルデヒド、α-シネンサール、β-シネンサール、trans-α-サンタロール及びtrans-β-サンタロール、ランセオール-アルデヒド、ヌートカトン、ベチボン、ロタンドン、レバウジオシド、8-ヒドロキシゲラニオール、8-ヒドロキシネロール、9,10-エポキシゲラニルアセトン、ヘキサデセナール、ファルネソール、デンデララシン(denderalasin)及びビシクロ-オクタンジオール、酸化α-グアイエン、酸化β-グアイエンが含まれる。
【0149】
一実施形態では、酸化テルペン生成物は、上記に定義されるような遠位末端テルペンアルコールDETAを含む。DETAは、対応するテルペンを、ミルセンアルデヒド、α-シネンサール、β-シネンサール、trans-α-サンタロール及びtrans-β-サンタロール、ランセオール-アルデヒド、ヌートカトン、ベチボン、ロタンドン、レバウジオシド、8-ヒドロキシゲラニオール、8-ヒドロキシネロール、又は9,10-エポキシゲラニルアセトンなどであるが、これらに限定されない酸化テルペン生成物に酸化する際の中間体であり得る。DETAは、より酸化レベルの高い酸化テルペン生成物、例えばアルデヒドとなるまで酸化が継続しない場合に、それ自体が酸化テルペン生成物となり得る。上記に記載されるように、本発明のアルカン酸化系は、一実施形態において、より酸化レベルの高い酸化テルペン基質を生成するためのテルペン基質としてDETAを使用することができるか、又はDETAを本発明のアルカン酸化系の生成物とすることができるため、DETAは二重の機能を有し得る。
【0150】
一実施形態では、モノテルペン基質であるミルセンを使用して、ミルセンアルデヒドを生成する。
【0151】
別の実施形態では、セスキテルペン基質であるα-ファルネセン及びβ-ファルネセンを使用して、それぞれα-シネンサール及びβ-シネンサールを生成する。
【0152】
別の実施形態では、セスキテルペン基質であるサンタレンを使用して、サンタロールを生成する。
【0153】
別の実施形態では、セスキテルペン基質であるバレンセンを使用して、ヌートカトン又はベチボンを生成する。
【0154】
別の実施形態では、セスキテルペン基質であるα-グアイエンを使用して、ロタンドンを生成する。
【0155】
別の実施形態では、セスキテルペン基質であるジテルペンを使用して、レバウジオシドを生成する。
【0156】
別の実施形態では、セスキテルペン基質であるゲラニオール又はネロールモノテルペンを使用して、8-ヒドロキシゲラニオール又は8-ヒドロキシネロールを生成する。
【0157】
別の実施形態では、ゲラニルアセトンは、9,10-エポキシゲラニルアセトンを生成するのに使用される。
【0158】
好ましい実施形態では、少なくとも1つのアルカン基質は、α-ファルネセン、β-ファルネセン、α-ビサボレン、β-ビサボレン、α-ベルガモテン、β-ベルガモテン、α-サンタレン、β-サンタレン、バレンセン、α-グアイエン、モノテルペンゲラニオール、ネロールモノテルペン、ゲラニルラクトン、酢酸リナリル、リモネン、β-ピネン、又はその組み合わせを含む、ジテルペン、モノテルペン又はセスキテルペンから選択される。
【0159】
別の態様では、本発明は、アルカン基質を酸化することによる、少なくとも1つの酸化アルカン生成物の生成方法に関する。
【0160】
本発明の別の態様は、非ヒト宿主細胞に関する。非ヒト宿主細胞は、
人工アルカン酸化系、若しくは
合成核酸、発現カセット、又は
アルカン基質の酸化、若しくは
アルカン酸化生成物の生成を含む。
【0161】
非ヒト宿主細胞は、上記で開示されるようなテルペン基質を酸化するのに好適である。
【0162】
非ヒト宿主細胞は、非哺乳動物細胞、好ましくは非脊椎動物細胞、より好ましくは単離宿主細胞である。
【0163】
好ましくは、本発明のトランスジェニック非ヒト生物は、細菌、酵母、真菌、原生生物、藻類若しくはシアノバクテリア、非ヒト動物若しくは非ヒト哺乳動物、又は植物である。
【0164】
非宿主細胞としては、細菌、真菌などの宿主細胞が挙げられる。
【0165】
本発明はまた、本発明の核酸を含むベクター又は遺伝子コンストラクトに関する。
【0166】
本発明の核酸は、ベクター又は遺伝子コンストラクト内で、原核生物若しくは真核生物宿主細胞、又はその単離分画における発現を可能にする発現制御配列に作動的に連結されている。従って、一態様では、ベクターは発現ベクターである。本発明の核酸の発現には、ポリヌクレオチドを翻訳可能なmRNAに転写することが含まれる。原核生物又は真核生物宿主細胞における発現を確実にする調節エレメントは、当技術分野でよく知られている。一態様では、調節エレメントは、転写の開始を確実にする調節配列及び/又は転写の終結及び転写物の安定化を確実にするポリAシグナルを含む。更なる調節エレメントは、転写エンハンサー及び翻訳エンハンサーを含み得る。原核生物宿主細胞における発現を可能にする実行可能な調節エレメントには、例えば、大腸菌(E.coli)におけるlacプロモーター、trpプロモーター若しくはtacプロモーター、又はロドバクター属(Rhodobacter)プロモーター(https://doi.org/10.1073/pnas.2010087117)が含まれ、真核生物宿主細胞における発現を可能にする調節エレメントの例には、酵母におけるAOX1プロモーター若しくはGAL1プロモーター、又は哺乳動物及び他の動物細胞におけるCMVプロモーター、SV40プロモーター、RSVプロモーター(ラウス肉腫ウイルス)、CMVエンハンサー、SV40エンハンサー若しくはグロビンイントロンがある。植物プロモーターについては、例えば、Plant Biotechnology:Principles and Applications,pp117-172,2017に記載されている。更に、誘導性発現制御配列を発現ベクターで使用してもよい。このような誘導性ベクターは、tet若しくはlacオペレーター配列、又は熱ショック若しくは他の環境因子により誘導可能な配列を含み得る。好適な発現制御配列は、当技術分野でよく知られている。転写開始に関与するエレメントの他に、このような制御エレメントはまた、ポリヌクレオチドの下流にSV40-ポリ-A部位又はtk-ポリ-A部位などの転写終結シグナルを含み得る。この文脈において、好適な発現ベクターは当技術分野で公知であり、例えば、Okayama-Berg cDNA発現ベクターであるpcDV1(Pharmacia)、pBluescript(Stratagene)、pCDM8、pRc/CMV、pcDNA1、pcDNA3(Invitrogen)又はpSPORT1(Invitrogen)がある。ポリヌクレオチド又はベクターを標的細胞集団に送達するために、レトロウイルス、ワクシニアウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス又はウシパピローマウイルスなどのウイルス由来の発現ベクターが使用され得る。
【0167】
本発明の核酸を含むベクター又は遺伝子コンストラクトを構築するために、当業者によく知られた方法を使用してもよく、例えば、Sambrook,Molecular Cloning A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory(2001)N.Y.及びAusubel,Current Protocols in Molecular Biology,Green Publishing Associates and Wiley Interscience,N.Y.(1994)に記載される手法を参照されたい。
【0168】
「遺伝子」という用語は、本明細書で使用する場合、生物学的機能と関連する核酸、例えば本発明の核酸のあらゆるセグメントを指すために広範に使用される。従って、遺伝子は、それらの発現に必要とされるコード配列及び/又は調節配列を含む。例えば、遺伝子は、mRNA若しくは機能性RNAを発現するか、又は特定のタンパク質をコードする核酸フラグメントを指し、調節配列を含む。遺伝子には、例えば、他のタンパク質の認識配列を形成する非発現DNAセグメントも含まれる。遺伝子は、目的の起源からクローニングするか、又は公知の若しくは予側される配列情報から合成することを含む、様々な起源から得ることができ、所望のパラメーターを有するように設計された配列を含み得る。
【0169】
「キメラ遺伝子」という用語は、本明細書で使用する場合、1)天然では共に見られない調節配列及びコード配列を含むDNA配列、又は2)天然では隣接することのないタンパク質の一部をコードする配列、又は3)天然では隣接することのないプロモーターの一部を含有するあらゆる遺伝子を指す。従って、キメラ遺伝子は、異なる起源に由来する調節配列及びコード配列を含み得るか、又は同一の起源由来であるが天然に見られるものとは異なるように編成された調節配列及びコード配列を含み得る。
【0170】
「遺伝子コンストラクト」は、本明細書で使用する場合、目的とされる挿入によって複雑さが変動し得る。コンストラクトは、生物のゲノムにランダムに挿入されるように設計され得るか(付加による遺伝子組換えと呼ばれる)、又は決定された染色体の特定の標的部位のゲノムに、適正な位置で挿入されるように設計され得る(相同組換えによる遺伝子組換えと呼ばれる)。いずれの場合も、コンストラクトは、プロモーター、転写開始部位、ポリアデニル化部位及び転写終結部位などの遺伝子発現を制御するための構造を有する、完璧なものでなければならない。すなわち、受容体ゲノムに挿入される情報は、開始、中間、及び終了を有し、従って宿主細胞又は生物内で制御不能に発現するという問題が回避される。
【0171】
「オープンリーディングフレーム」及び「ORF」という用語は、本明細書で使用する場合、コード配列の翻訳開始コドンと終結コドンの間でコードされるアミノ酸配列を指す。「開始コドン」及び「終結コドン」という用語は、タンパク質合成(mRNA翻訳)の開始及び鎖終結をそれぞれ特定する、コード配列内の隣接する3つのヌクレオチドの単位(「コドン」)を指す。
【0172】
「コード配列」は、本明細書で使用する場合、特異的なアミノ酸配列をコードし、非コード配列を含まないDNA又はRNA配列を指す。コード配列は、「中断されていないコード配列」を構成し得、すなわち、cDNAなどのようにイントロンがないか、又は適切なスプライスジャンクションによって結合された1つ以上のイントロンを含み得る。「イントロン」は、一次転写物に含有されているが、タンパク質に翻訳され得る成熟mRNAを生成するために細胞内でRNAを切断して再連結することによって除去されるRNAの配列である。
【0173】
「調節配列」は、本明細書で使用する場合、コード配列の上流(5’非コード配列)、コード配列内、又は下流(3’非コード配列)に配置されるヌクレオチド配列を指し、転写、RNAプロセシング若しくは安定性、又は関連するコード配列の翻訳に影響を与えるものである。調節配列には、エンハンサー、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン及びポリアデニル化シグナル配列が含まれる。これらには、天然配列及び合成配列、並びに合成配列と天然配列との組み合わせであり得る配列が含まれる。上記で述べたように、「好適な調節配列」という用語は、プロモーターに限定されるものではない。調節配列の例としては、プロモーター(転写プロモーター、構成的プロモーター、誘導性プロモーターなど)、オペレーター、エンハンサー、mRNAリボソーム結合部位、並びに転写及び翻訳開始及び終結を制御する適切な配列が挙げられる。核酸配列は、制御配列が本発明のDNA又はcDNA配列と機能的に関連する場合に、「作動可能に連結される」。本明細書で使用する場合、「作動可能に連結された」又は「作動的に連結された」という用語は、そのように記載される構成要素が、意図される方法でそれらが機能することができる関係にある並列位置を指す。別の制御配列及び/又はコード配列に「作動可能に連結された」制御配列は、制御配列と適合する条件下で、コード配列の転写及び/又は発現が達成されるような方法で連結されている。一般に、作動可能に連結されたとは、連結されている核酸配列が隣接していることを意味し、2つのタンパク質のコード領域を連結することが必要とされる場合は、隣接し、且つ同じリーディングフレーム内にあることを意味する。調節配列のそれぞれは、異種調節配列及び相同調節配列から独立して選択され得る。
【0174】
「プロモーター」は、本明細書で使用する場合、通常、そのコード配列に対して上流(5’)にあるヌクレオチド配列を指し、RNAポリメラーゼの認識及び適正な転写に必要とされる他の因子を提供することにより、前記コード配列の発現を制御する。「プロモーター」は、TATAボックス及び転写開始部位を特定する役割を果たす他の配列から構成される、短いDNA配列の最小プロモーターを含み、これに発現を制御するための制御エレメントが付加される。「プロモーター」はまた、最小プロモーターに加えて、コード配列又は機能性RNAの発現を制御することができる制御エレメントを含むヌクレオチド配列を指す。このタイプのプロモーター配列は、近位及びより遠位の上流エレメントからなり、後者のエレメントはエンハンサーと呼ばれることが多い。従って、「エンハンサー」は、プロモーター活性を刺激することができ、プロモーターの固有のエレメント又はプロモーターのレベル若しくは組織特異性を向上させるために挿入される異種エレメントであり得るDNA配列である。これは、両方向(通常方向又は反転方向)で動作させることが可能であり、プロモーターから上流又は下流のいずれかに移動させた場合でも機能することが可能である。エンハンサー及び他の上流プロモーターエレメントの両方は、それらの効果を媒介する配列特異的なDNA結合タンパク質に結合する。プロモーターは、その全体が在来遺伝子に由来し得るか、又は天然で見られる異なるプロモーター由来の異なるエレメントから構成され得るか、又は更に合成DNAセグメントからも構成され得る。プロモーターはまた、生理学的条件又は発生的条件に反応して転写開始の有効性を制御するタンパク質因子の結合に関与するDNA配列を含有し得る。
【0175】
「発現カセット」は、本明細書で使用する場合、終結シグナルに作動可能に連結された目的のヌクレオチド配列に作動可能に連結されたプロモーターを含む、特定のヌクレオチド配列、例えば、本発明で有用なオキシダーゼ酵素、及び任意選択によりルブレドキシン、及び任意選択によりルブレドキシンレダクターゼをコードするヌクレオチド配列の発現を、本明細書に定義されるような適切な宿主細胞に誘導することが可能なDNA配列を意味する。通常は、ヌクレオチド配列の適切な翻訳に必要とされる配列を含む。コード領域は通常、目的のタンパク質をコードするが、センス又はアンチセンス方向で目的の機能性RNA、例えばアンチセンスRNA又は非翻訳RNAもコードし得る。目的のヌクレオチド配列を含む発現カセットはキメラであってよく、このことは、その構成要素の少なくとも1つがその他の構成要素のうちの少なくとも1つに対して異種であることを意味する。発現カセットはまた、天然のものであってよいが、異種発現に有用な組換え形態で得られたものでもあってよい。発現カセットのヌクレオチド配列の発現は、構成的プロモーター又はいくつかの特定の外部刺激に宿主細胞が曝露されたときのみ転写を開始させる誘導性プロモーターの制御下で行われ得る。多細胞生物の場合、プロモーターはまた、特定の組織若しくは器官、又は、例えば植物の発生における発生段階に特有のものであり得る。
【0176】
「ベクター」という用語は、本明細書で使用する場合、標的細胞の形質転換を誘導するように設計された遺伝物質から構成される構造を指す。ベクターは、核酸カセット内の核酸を転写することができ、必要な場合は形質転換細胞内で翻訳することができるように、位置的に及び連続的に配向された、すなわち他の必要とされるエレメントと作動的に連結された複数の遺伝エレメントを含有する。特に、ベクターは、ウイルスベクター、(バクテリオ)ファージ、コスミド又はプラスミドの群から選択され得る。ベクターはまた、酵母人工染色体(YAC)、細菌人工染色体(BAC)又はアグロバクテリウム属(Agrobacterium)バイナリーベクターであり得る。ベクターは、自己伝達性若又は可動性であっても又はなくてもよく、細胞ゲノムに組み込まれるか又は追加の染色体上に存在する(例えば複製起点を有する自己複製プラスミド)かのいずれかによって、例えばロドバクター属(Rhodobacter)などの宿主生物を形質転換することができる、2本鎖又は1本鎖の直鎖状又は環状形態であり得る。具体的には、シャトルベクターが含まれるが、これは、本明細書に定義されるような異なる2つの宿主生物内で天然に又は設計することで複製可能なDNAビヒクルを意味する。好ましくは、ベクター中の核酸は、本明細書に明記されるような宿主細胞における転写に適切なプロモーター又は他の調節エレメントの制御下にあり、それに作動可能に連結されている。ベクターは、複数の宿主で機能する二機能性発現ベクターであり得る。二機能性発現ベクターは、ゲノムDNAの場合、それ自身のプロモーター又は他の調節エレメントを含有してもよく、cDNAの場合、宿主細胞における発現に適切なプロモーター又は他の調節エレメントの制御下にあってよい。核酸を含有するベクターは、当技術分野で公知の方法に基づいて調製することができる。例えば、転写又は翻訳調節核酸配列などの好適な調節エレメントに作動可能に連結された、本発明で有用なオキシダーゼ酵素又はルブレドキシン又はルブレドキシンレダクターゼをコードするcDNA配列を使用することができる。
【0177】
「ベクター」という用語には、本明細書で使用する場合、標準的なクローニング作業用のベクター(「クローニングベクター」)だけでなく、宿主細胞の染色体を組み込むために使用される(常染色体)発現ベクター及びクローニングベクター(「組み込みベクター」)のような、より特別なタイプのベクターに対する言及が含まれる。
【0178】
「クローニングベクター」は通常、ベクターの必要不可欠な生物学的機能を欠失させずに特定可能な方式で外来DNA配列を挿入することができる1つ又は少数の制限エンドヌクレアーゼ認識部位、並びに、クローニングベクターで形質転換された細胞の同定及び選択に使用するのに好適なマーカー遺伝子を含有する。
【0179】
「発現ベクター」という用語は、本明細書で使用する場合、その転写をもたらす更なる核酸セグメントの制御下で(すなわち、作動可能に連結されて)目的のポリペプチドをコードするセグメントを含む、直鎖状又は環状のDNA分子を指す。このような更なるセグメントは、プロモーター及び終結配列を含み得、任意選択により、1つ以上の複製起点、1つ以上の選択マーカー、エンハンサー、ポリアデニル化シグナルなどを含み得る。発現ベクターは一般に、プラスミド若しくはウイルスDNAに由来するか、又は両方のエレメントを含有し得る。特に、発現ベクターは、5’から3’方向に、(a)宿主生物により認識される転写及び翻訳開始領域、(b)目的のポリペプチドのコード配列、並びに(c)宿主生物により認識される転写及び翻訳終結領域を含み、これらに作動可能に連結されるヌクレオチド配列を含む。「プラスミド」は、微生物のゲノムに組み込まれず、通常は天然では環状である、自己複製する染色体外DNAを指す。
【0180】
「組み込みベクター」は、例えば微生物のゲノム、例えば細菌のゲノムに組み込むことができ、本発明に有用なアルカン酸化系、例えば、オキシダーゼ酵素、及び必要であればテルペンシンターゼ、及び任意選択によりルブレドキシン、及び任意選択によりルブレドキシンレダクターゼなどの目的のポリペプチドをコードする遺伝子の安定的な遺伝をもたらす、直鎖状又は環状のDNA分子を指す。組み込みベクターは一般に、その転写をもたらす更なる核酸セグメントの制御下で(すなわち、作動可能に連結された)目的のポリペプチドをコードする遺伝子配列から構成される、1つ以上のセグメントを含む。
【0181】
このような更なるセグメントは、プロモーター及び終結配列、並びに、通常は相同組換えのプロセスによって標的細胞のゲノムへの目的遺伝子の組み込みを誘発する1つ以上のセグメントを含み得る。通常、組み込みベクターは、標的細胞に導入することができるものであるが、その生物に非機能的なレプリコンを有する。目的遺伝子を含むセグメントの組み込みは、そのセグメント内に適切なマーカーが含まれている場合に選択され得る。本発明の宿主細胞で発現させるポリペプチドに天然に付随することのない、適切なシグナルペプチドをコードする1つ以上の核酸配列を(発現)ベクターに組み込むことができる。例えば、本発明に有用なオキシダーゼ酵素又はルブレドキシン又はルブレドキシンレダクターゼが、シグナルペプチドを含む融合タンパク質として最初に翻訳されるように、シグナルペプチドリーダーのDNA配列を本発明の核酸にインフレームで融合してもよい。シグナルペプチドの性質に応じて、発現されるポリペプチドは、別々に標的化される。意図される宿主細胞において機能的な分泌シグナルペプチドは、例えば、発現されたポリペプチドの細胞外分泌を促進する。他のシグナルペプチドは、発現されたポリペプチドを、葉緑体、ミトコンドリア及びペルオキシソームのような特定のオルガネラに誘導する。シグナルペプチドは、意図されるオルガネラへの輸送時、又は細胞からの輸送時にポリペプチドから切断され得る。ポリペプチドのアミノ末端又はカルボキシル末端で、更なるペプチド配列の融合をもたらすことが可能である。
【0182】
加えて、本発明は、本発明のベクター又は遺伝子コンストラクトを含む宿主細胞に関する。
【0183】
宿主細胞は、本発明のベクター又は遺伝子コンストラクトによって形質転換される。当業者は、本発明のベクター又は遺伝子コンストラクトを含有する宿主細胞を正常に形質転換し、選択し、増殖させるために、遺伝的コンストラクト上に存在しなければならない遺伝的エレメントについて十分に認識している。本発明の宿主細胞は、本発明のベクター又は遺伝子コンストラクトに含まれた、アルカン酸化系のポリペプチドを発現することができる。
【0184】
「形質転換」及び「形質転換すること」は、本明細書で使用する場合、挿入のために使用される方法、例えば、直接取り込み、形質導入、コンジュゲーション、F因子による接合又はエレクトロポレーションに関係なく、本発明で有用なアルカン酸化系、例えば、オキシダーゼ酵素、及び任意選択によりルブレドキシン、及び任意選択によりルブレドキシンレダクターゼをコードするヌクレオチド配列などの異種ヌクレオチド配列を宿主細胞に導入することを指す。外来ポリヌクレオチドは、非組み込み型ベクター、例えばプラスミドとして維持されてもよく、又は代替的に、宿主細胞ゲノムに組み込まれてもよい。
【0185】
本発明による宿主細胞は、例えば、Sambrook,J.,and Russell,D.W.“Molecular Cloning:A Laboratory Manual”3d ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,(2001);及びF.M.Ausubel et al,eds.,“Current protocols in molecular biology”,John Wiley and Sons,Inc.,New York(1987)、並びにその後の補記に記載されるように、一般に当技術分野で公知の標準的な遺伝子及び分子生物学手法に基づいて生成され得る。
【0186】
宿主細胞は、微生物細胞、例えば、細菌細胞、古細菌細胞、真菌細胞、例えば酵母細胞、及び原生生物細胞から選択されるいずれかの細胞であり得る。宿主細胞はまた、藻細胞若しくはシアノバクテリア細胞、非ヒト動物細胞若しくは哺乳動物細胞、又は植物細胞でもあり得る。
【0187】
具体的に、宿主細胞は、以下の生物のいずれか1つから選択することができる。
【0188】
細菌:
細菌宿主細胞は、例えば、エシェリキア属(Escherichia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、バチルス属(Bacillus)、ラクトバチルス属(Lactobacillus)、ストレプトコッカス属(Streptococcus)、アミコラトプシス属(Amycolatopsis)、ロドバクター属(Rhodobacter)、シュードモナス属(Pseudomonas)、パラコッカス属(Paracoccus)、パントエア属(Pantoea)、又はラクトコッカス属(Lactococcus)からなる群から選択され得る。
【0189】
グラム陽性:バチルス属(Bacillus)、ストレプトミセス属(Streptomyces):
有用なグラム陽性細菌宿主細胞としては、バチルス属(Bacillus)細胞、例えば、バチルス・アルカロフィウス(Bacillus alkalophius)、バチルス・アミロリクエファシエンス(Bacillus amyloliquefaciens)、バチルス・ブレビス(Bacillus brevis)、バチルス・シルキュランス(Bacillus circulans)、バチルス・クラウシイ(Bacillus clausii)、バチルス・コアギュランス(Bacillus coagulans)、バチルス・フィルムス(Bacillus firmus)、バチルス・ジャウツス(Bacillus Jautus)、バチルス・レンタス(Bacillus lentus)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、バチルス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)及びバチルス・ツリンギエンシス(Bacillus thuringiensis)が挙げられるが限定されない。最も好ましい原核生物は、バチルス属(Bacillus)細胞、好ましくは、バチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)、バチルス・プミルス(Bacillus pumilus)、バチルス・リケニフォルミス(Bacillus licheniformis)又はバチルス・レンタス(Bacillus lentus)のバチルス属(Bacillus)細胞である。
【0190】
いくつかの他の好ましい細菌としては、放線菌目(Actinomycetales)、好ましくはストレプトミセス属(Streptomyces)、好ましくはストレプトミセス・スフェロイデス(Streptomyces spheroides)(ATTC23965)、ストレプトミセス・サーモビオラセウス(Streptomyces thermoviolaceus)(IFO12382)、ストレプトミセス・リビダンス(Streptomyces lividans)又はストレプトミセス・ムリヌス(Streptomyces murinus)又はストレプトバーティシラム・バーティシリウム亜種バーティシリウム属(Streptoverticillum verticillium ssp.Verticillium)の株が挙げられる。他の好ましい細菌としては、ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)、ロドモナス・パルストリ(Rhodomonas palustri)、ストレプトコッカス・ラクティス(Streptococcus lactis)が挙げられる。更なる好ましい細菌としては、ミクソコッカス属(Myxococcus)、例えばM.ビレスセンス(M.virescens)に属する株が挙げられる。
【0191】
グラム陰性:大腸菌(E.coli)、シュードモナス属(Pseudomonas)、ロドバクター属(Rhodobacter)、パラコッカス属(Paracoccus)又はパントエア属種(Pantoea sp.)
好ましいグラム陰性細菌は、大腸菌(Escherichia coli)、シュードモナス属種(Pseudomonas sp.)、好ましくはシュードモナス・プロシニア(Pseudomonas purrocinia)(ATCC15958)若しくはシュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)(NRRL B-11)、ロドバクター・カプスラツス(Rhodobacter capsulatus)若しくはロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)、パラコッカス・カロチニファシエンス(Paracoccus carotinifaciens)若しくはパラコッカス・ゼアキサンチニファシエンス(Paracoccus zeaxanthinifaciens)、又はパントエア・アナナチス(Pantoea ananatis)である。
【0192】
真菌:
アスペルギルス属(Aspergillus)、フザリウム属(Fusarium)、トリコデルマ属(Trichoderma)
宿主細胞は、真菌細胞であり得る。「真菌」は、本明細書で使用する場合、子嚢菌門(Ascomycota)、担子菌門(Basidiomycota)、ツボカビ門(Chytridiomycota)及び接合菌門(Zygomycota)並びに卵菌門(Oomycota)及び不完全菌亜門(Deuteromycotina)並びに全ての栄養胞子形成真菌を含む。子嚢菌門(Ascomycota)の代表的な群としては、例えば、ニューロスポラ属(Neurospora)、ユーペニシリウム属(Eupenicillium)(=ペニシリウム属(Penicillium))、エメリセラ属(Emericella)(=アスペルギルス属(Aspergillus))、ユーロチウム属(Eurotium)(=アスペルギルス属(Aspergillus))及び下記に列挙される真正酵母が挙げられる。担子菌門(Basidiomycota)の例としては、キノコ、さび病及び黒穂病が挙げられる。ツボカビ門(Chytridiomycota)の代表的な群としては、例えば、カワリミズカビ属(Allomyces)、ブラストクラジエラ属(Blastocladiella)、ボウフラキン属(Coelomomyces)及び水生真菌が挙げられる。卵菌門(Oomycota)の代表的な群としては、例えばアクリャ属(Achlya)などのサプロレグニオミセトス(Saprolegniomycetous)水生真菌(ミズカビ)が挙げられる。栄養胞子形成真菌の例としては、アスペルギルス属(Aspergillus)、ペニシリウム属(Penicillium)、カンジダ属(Candida)及びアルテルナリア属(Alternaria)が挙げられる。接合菌門(Zygomycota)の代表的な群としては、例えばリゾプス属(Rhizopus)及びムコール属(Mucor)が挙げられる。
【0193】
いくつかの好ましい真菌としては、不完全菌亜門(Deuteromycotina)、不完全糸状菌綱(Hyphomycetes)、例えば、フザリウム属(Fusarium)、フミコラ属(Humicola)、トリコデルマ属(Tricoderma)、ミロテシウム属(Myrothecium)、バーティシラム属(Verticillum)、アルスロミセス属(Arthromyces)、カルダリオミセス属(Caldariomyces)、ウロクラジウム属(Ulocladium)、エムべリシア属(Embellisia)、クラドスポリウム属(Cladosporium)又はドレスクレラ属(Dreschlera)、特にフザリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)(DSM2672)、フミコラ・インソレンス(Humicola insolens)、トリコデルマ・レシイ(Trichoderma resii)、ミロテシウム・ベルカナ(Myrothecium verrucana)(IFO6113)、バーティシラム・アルボアツルム(Verticillum alboatrum)、バーティシラム・ダーリイ(Verticillum dahlie)、アルスロミセス・ラモサス(Arthromyces ramosus)(FERM P-7754)、カルダリオミセス・フマゴ(Caldariomyces fumago)、ウロクラジウム・チャルタルム(Ulocladium chartarum)、エムべリシア・アリ(Embellisia alli)又はドレスクレラ・ハロデス(Dreschlera halodes)に属する株が挙げられる。
【0194】
他の好ましい真菌としては、担子菌類亜門(Basidiomycotina)、担子菌類綱(Basidiomycetes)、例えばコプリナス属(Coprinus)、ファネロカエテ属(Phanerochaete)、コリオルス属(Coriolus)又はトラメテス属(Trametes)、特にコプリヌス・シネレウス f.ミクロスポルス(Coprinus cinereus f.microsporus)(IFO8371)、コプリヌス・マクロリズス(Coprinus macrorhizus)、ファネロカエテ・クリソスポリウム(Phanerochaete chrysosporium)(例えばNA-12)又はトラメテス属(Trametes)(以前はポリポルス属(Polyporus)と呼ばれていた)、例えばT.ベルシカラー(T.versicolor)(例えばPR4 28-A)に属する株が挙げられる。
【0195】
更なる好ましい真菌としては、接合菌亜門(Zygomycotina)、ミコラセアエ網(Mycoraceae)、例えばリゾプス属(Rhizopus)及びムコール属(Mucor)、特にムコール・ヒエマリス(Mucor hiemalis)に属する株が挙げられる。
【0196】
酵母:
ピキア属(Pichia)
サッカロミセス属(Saccharomyces)
真菌宿主細胞は、酵母細胞であり得る。酵母は、本明細書で使用する場合、有子嚢胞子酵母(ascosporogenous yeast)(エンドミセス目(Endomycetales))、担子胞子酵母(basidiosporogenous yeast)、及び不完全真菌(Fungi imperfecti)(ブラストミセテス(Blastomycetes))に属する酵母を含む。有子嚢胞子酵母(ascosporogenous yeast)は、スペルモフソラセア科(Spermophthoraceae)及びサッカロミセタセア科(Saccharomycetaceae)に分けられる。後者は、4つの亜科、シゾサッカロミコイデア(Schizosaccharomycoideae)(例えばシゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces))、ナドソニオイデア(Nadsonioideae)、リポミコイデア(Lipomycoideae)及びサッカロミコイデア(Saccharomycoideae)(例えばクリベロミセス属(Kluyveromyces)、ピキア属(Pichia)及びサッカロミセス属(Saccharomyces))から構成される。担子胞子酵母(basidiosporogenous yeast)としては、ロイコスポリジム属(Leucosporidim)、ロドスポリジウム属(Rhodosporidium)、スポリジオボルス属(Sporidiobolus)、フィロバシジウム属(Filobasidium)及びフィロバシジエラ属(Filobasidiella)が挙げられる。不完全真菌(Fungi imperfecti)に属する酵母は、2つの科、スポロボロミセス科(Sporobolomycetaceae)(例えばスポロボロミセス属(Sporobolomyces)及びブレラ属(Bullera))とクリプトコックス科(Cryptococcaceae)(例えばカンジダ属(Candida))とに分けられる。
【0197】
真核生物:
真核生物宿主細胞としては、更に、非ヒト動物細胞、非ヒト哺乳動物細胞、鳥類細胞、爬虫類細胞、昆虫細胞又は植物細胞が挙げられるが限定されない。
【0198】
好ましい実施形態では、宿主細胞は、次のものから選択される宿主細胞である:
a)グラム陰性細菌の群の細菌細胞、例えばロドバクター属(Rhodobacter)(例えばロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)若しくはロドバクター・カプスラツス(Rhodobacter capsulatus))、パラコッカス属(Paracoccus)(例えばP.カロチニファシエンス(P.carotinifaciens)、P.ゼアキサンチニファシエンス(P.zeaxanthinifaciens))、エシェリキア属(Escherichia)若しくはシュードモナス属(Pseudomonas);
b)グラム陽性細菌の群から選択される細菌細胞、例えばバチルス属(Bacillus)、コリネバクテリウム属(Corynebacterium)、ブレビバクテリウム属(Brevibacterium)、アミコラトピス属(Amycolatopis);
c)アスペルギルス属(Aspergillus)、ブラケスレア属(Blakeslea)、ペニシリウム属(Peniciliium)、ファフィア属(Phaffia)(キサントフィロミセス属(Xanthophyllomyces))、ピキア属(Pichia)、サッカラモイセス属(Saccharamoyces)、クリベロミセス属(Kluyveromyces)、ヤロウィア属(Yarrowia)及びハンゼヌラ属(Hansenula)の群から選択される真菌細胞;
d)トランスジェニック植物細胞若しくはトランスジェニック植物細胞を含む培養物であって、細胞がアラビドプシス属種(Arabidopsis spp.)、ニコチアナ属種(Nicotiana spp.)、シコルム・インチブス(Cichorum intybus)、ラクカ・サチバ(lacuca sativa)、メンタ属種(Mentha spp.)、クソニンジン(Artemisia annua)、塊茎形成植物、油料穀物、例えばアブラナ属種(Brassica spp.)若しくはセイヨウアブラナ(Brassica napus)、果実を産生する顕花植物(被子植物)及び樹木から選択されるトランスジェニック植物の細胞である、トランスジェニック植物細胞若しくはトランスジェニック植物細胞を含む培養物;
又はe)トランスジェニックキノコ若しくはトランスジェニックキノコ細胞を含む培養物であって、微生物がシゾフィラム属(Schizophyllum)、アガリクス属(Agaricus)及びプレウロティシ属(Pleurotisi)から選択される、トランスジェニックキノコ若しくはトランスジェニックキノコ細胞を含む培養物。
【0199】
生物に由来するより好ましい宿主細胞は、エシェリキア属(Escherichia)、サッカロミセス属(Saccharomyces)、ピキア属(Pichia)、ロドバクター属(Rhodobacter)、シュードモナス属(Pseudomonas)、パントエア属(Pantoea)又はパラコッカス属(Paracoccus)、(例えばパラコッカス・カロチニファシエンス(Paracoccus carotinifaciens)、パラコッカス・ゼアキサンチニファシエンス(Paracoccus zeaxanthinifaciens))に属する微生物の宿主細胞であり、更により好ましくは大腸菌(E.coli)種、S.セレビサエ(S.cerevisae)、ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)、ロドバクター・カプスラツス(Rhodobacter capsulatus)、パントエア・アナナチス(Pantoea ananatis)又はアミコラトピス属種(Amycolatopis sp.)のものである。
【0200】
好ましくは、ベクター又は遺伝子コンストラクトは、本明細書に定義されるような微生物細胞において、本発明のアルカン酸化系構成要素a及びc、並びに任意選択によりb及び/又はdをコードし、これを生成するのに好適なものである。
【0201】
一実施形態では、宿主細胞は、ロドバクター・カプスラツス(Rhodobacter capsulatus)及びロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)の群から選択されるロドバクター属(Rhodobacter)の宿主細胞である。
【0202】
本発明のトランスジェニック非ヒト生物は、本発明の核酸、本発明のベクター若しくは遺伝子コンストラクト、又は本発明の宿主細胞を含む。好ましい実施形態では、本発明のトランスジェニック非ヒト生物は、本明細書の他の箇所でより詳細に記載されるように、α-シネンサール、β-シネンサール、trans-α-サンタロール及びtrans-β-サンタロール、ランセオール-アルデヒド、ヌートカトン、ベチボン、ロタンドン、レバウジオシド、8-ヒドロキシゲラニオール、8-ヒドロキシネロール、又は9,10-エポキシゲラニルアセトンなどであるがこれらに限定されない、本明細書に定義されるような1つ以上の酸化テルペン生成物を調製するために使用される。1つ以上の酸化テルペン生成物は、テルペン基質を本発明のアルカン酸化系によってアリル酸化することによって調製される。
【0203】
好ましくは、本発明のトランスジェニック非ヒト生物は、細菌、酵母、真菌、原生生物、藻類若しくはシアノバクテリア、非ヒト動物若しくは非ヒト哺乳動物、又は植物である。具体的に、本発明の宿主細胞に関連して言及される生物はまた、本発明のトランスジェニック非ヒト生物を生成するのに使用することもできる。
【0204】
細菌は、グラム陰性細菌、好ましくはロドバクター属(Rhodobacter)、エシェリキア属(Escherichia)、シュードモナス属(Pseudomonas)、パントエア属(Pantoea)又はパラコッカス属(Paracoccus)であることが好ましい。
【0205】
トランスジェニック生物又はトランスジェニック細胞に関する「トランスジェニック」という用語は、本明細書で使用する場合、その生物又は細胞に天然に存在しない核酸を含有し、核酸が当技術分野で公知の組換えDNA手法を使用してこの生物又は細胞に導入されている(すなわち、生物若しくは細胞自体に導入されているか、又はその生物の祖先に導入されているか、細胞が単離された生物の先祖の生物に導入されている)生物又は細胞(この細胞は生物それ自体であっても又は単離された多細胞生物の細胞であってもよい)を指す。別の言い方をするならば、核酸は、そのトランスジェニック生物又はトランスジェニック細胞に対して異種である。
【0206】
「導入遺伝子」は、形質転換によりゲノムに導入され、好ましくは安定的に維持される、オキシダーゼ酵素遺伝子又はルブレドキシン遺伝子又はルブレドキシンレダクターゼ遺伝子などの遺伝子を指す。好ましくは、導入遺伝子は、形質転換しようとする特定の細胞又は生物の遺伝子に対して異種である遺伝子を含む。更に、導入遺伝子は、非天然生物又はキメラ遺伝子に挿入される在来遺伝子を含み得る。「内在性遺伝子」という用語は、生物のゲノム内のその天然の位置にある在来遺伝子を指す。「外来性」遺伝子は、通常では宿主生物内で見られないが、遺伝子導入によって導入される遺伝子を指す。
【0207】
トランスジェニック非ヒト生物を生成するための方法は、当技術分野でよく知られており、例えば、Lee-Yoon Low et al.,Transgenic Plants:Gene constructs,vector and transformation method.2018.DOI.10.5772/intechopen.79369;Pinkert,C.A.(ed.)1994.Transgenic animal technology:A laboratory handbook.Academic Press,Inc.,San Diedo,Calif.;Monastersky G.M.and Robl,J.M.(ed.)(1995)Strategies in Transgenic Animal Science.ASM Press.Washington D.C);Sambrook,loc.cit,Ausubel,loc.cit)を参照されたい。
【0208】
本発明の別の態様は、非ヒト宿主細胞の方法によって、又は非ヒト宿主細胞によって生成される組成物に関し、組成物は、
本明細書に定義されるようなオキシダーゼ酵素と、
ミルセンアルデヒド、α-シネンサール、β-シネンサール、trans-α-サンタロール、trans-β-サンタロール、ランセオール-アルデヒド、ヌートカトン、ベチボン、ロタンドン、レバウジオシド、8-ヒドロキシゲラニオール、8-ヒドロキシネロール、9,10-エポキシゲラニルアセトン、ヘキサデセナール、ファルネソール、デンデララシン(denderalasin)、ビシクロ-オクタンジオール、酸化α-グアイエン若しくは酸化β-グアイエン、又はその組み合わせから選択される少なくとも1つの酸化テルペン生成物と、
任意選択により、1つ以上のテルペン基質とを含む。
【0209】
本発明の別の態様は、上記で開示されるような方法によって生成される組成物に関する。
【0210】
好ましくは、組成物は、少なくとも1つの酸化テルペン生成物を含む。少なくとも1つの酸化テルペン生成物としては、α-シネンサール、β-シネンサール、trans-α-サンタロール及びtrans-β-サンタロール、ランセオール-アルデヒド、ヌートカトン、ベチボン、ロタンドン、レバウジオシド、8-ヒドロキシゲラニオール、8-ヒドロキシネロール、又は9,10-エポキシゲラニルアセトンが挙げられる。
【0211】
好ましくは、酸化テルペン生成物は、α-シネンサール、β-シネンサール、trans-α-サンタロール、trans-β-サンタロール、ヌートカトン及びファルネソールから選択される。
【0212】
本発明の別の態様は、
培養培地中で培養された、上記で定義されるような非ヒト宿主細胞と、
非ヒト宿主細胞から主要化合物として生成される少なくとも1つの酸化テルペン生成物とを含む発酵組成物を含み、発酵組成物はテルペン基質を含み、任意選択により1つ以上の副生成物が微量化合物である。
【0213】
「発酵」という用語は、所望の生成物を生成するために、糖などの炭素源をエネルギー源として利用する微生物を培養することを指すために使用される。
【0214】
「培養培地」という用語は、バイオマスの増殖と微生物の代謝産物の生成とが可能な培地を指す。培養培地には炭素源が含まれ、更に窒素源、リン源、ビタミン源、ミネラル源などが含まれ得る。
【0215】
本明細書で使用する場合、「発酵培地」という用語は、「培養培地」と同意語として使用され得る。一般に、「発酵培地」という用語は、微生物から所望の化合物を生成するために、微生物を長期間培養するのに好適な培地を指すために使用され得る。
【0216】
「培地」という用語は、培養培地及び/又は発酵培地を指す。「培地」は、液体であっても又は半固体であってもよい。所与の培地は、培養培地及び発酵培地の両方であり得る。
【0217】
「全細胞ブロス」という用語は、細胞、水相、炭化水素相及び/又はエマルジョン中で生成された化合物を含む、容器(例えば、フラスコ、プレート、発酵槽など)の全内容物を指す。従って、全細胞ブロスには、水、炭素源(例えば、糖)、ミネラル、ビタミン、他の溶解若しくは懸濁物質、微生物、代謝物、及び微生物によって生成された化合物、並びに1つ以上のテルペン基質、及び/又は、例えば微生物によって酸化セスキテルペン生成物を含む酸化テルペン生成物が生成されている容器中に保持された材料の他の全ての成分を含む培養培地の混合物が含まれる。
【0218】
「発酵組成物」という用語は、「全細胞ブロス」と互換的に使用される。発酵組成物はまた、発酵中に容器に添加される場合、オーバーレイを含み得る。
【0219】
発酵プロセスは、構築段階と生成段階の2段階で実施され得る。構築段階は、生成段階中にテルペン基質、及びその結果生じる酸化テルペン生成物の生成をサポートできる量の細胞バイオマスを生成するのに十分な期間実施される。構築段階は、播種時点で存在する集団が、所望の細胞密度に到達するまでの数倍の倍増が生じるのに十分な期間実施される。
【0220】
テルペン基質、及びその結果生じる酸化テルペン生成物を生成する方法は、遺伝子改変宿主細胞を増殖し維持することが可能となる十分な好気性条件下で、遺伝子改変宿主細胞の発酵を実施すること、次いで、テルペン基質(ミルセン又は他のテルペン、副生成物など)の生成を誘導するのに十分な微好気性発酵条件を提供すること、並びに発酵運転全体を通して、微好気性条件を維持することを含み得る。微好気性条件は、発酵運転全体を通して用いられ得る。プロモーターを活性化するか又は転写制御因子の抑制を軽減して、テルペン基質及び/又は酸化テルペン生成物の生成を促進するために、生成段階の間に誘導剤を添加してもよい。
【0221】
テルペン基質及びアルカン酸化系、並びにその結果生じる酸化テルペン生成物を生成する方法は、少なくとも1つの微生物宿主細胞を別々の構築培養培地と生成培養培地で培養することを含み得る。例えば、本方法は、少なくとも1つの遺伝子改変微生物宿主細胞を構築段階で培養することを含むことができ、細胞を非生成条件下(例えば、非誘導条件下)で培養して接種物を生成し、次いで、この接種物をテルペン基質生成物を誘導するのに好適な条件下(例えば、誘導条件下)で第2の発酵培地に移し、第2の発酵段階で定常状態を維持して、テルペン基質及びアルカン酸化系並びにその結果生じる酸化テルペン生成物を含む細胞培養物を生成する。
【0222】
別の実施形態では、一方の宿主細胞でテルペン基質を生成しながら、別の宿主細胞で人工アルカンオキシダーゼ系を提供する。
【0223】
一実施形態では、一方の宿主細胞によって生成されたテルペン基質と、別の宿主細胞によって提供された人工アルカンオキシダーゼ系は同種に属しており、例えば、2つの宿主細胞は、ロドバクター属(Rhodobacter)種由来のものである。
【0224】
別の実施形態では、2つの宿主細胞は混合発酵プロセスで提供される。
【0225】
発酵プロセス中、宿主細胞内の人工アルカンオキシダーゼ系により、オキシダーゼ酵素、必要であればテルペンシンターゼ、任意選択により電子伝達化合物、更に任意選択により電子伝達化合物再生酵素が提供される。少なくとも1つのテルペン基質をアリル酸化することで、酸化テルペン生成物が生成される。
【0226】
微生物培養物を維持し、増殖させるための培養培地及び培養条件は、微生物学又は発酵科学に関する当業者によく知られている(例えば、Bailey et al.,Biochemical Engineering Fundamentals,second edition,McGraw Hill,New York,1986を参照されたい)。適切な培養培地、pH、温度、及び好気性条件、微好気性条件又は嫌気性条件の要件は、微生物宿主細胞、発酵、及びプロセスの特定の要件に応じて選択され得る。
【0227】
本明細書で提供されるような酸化テルペン生成物の生成方法に使用される培養培地は、テルペンを生成可能な遺伝子改変微生物が生存することができる、すなわち、増殖及び生存を支持し維持することができるあらゆる培養培地を含み得る。培養培地はまた、所望のテルペン基質、及びその結果生じる酸化テルペン生成物を生成するのに必要な生合成経路を促進することができる。
【0228】
培養培地は、吸収可能な炭素源、窒素源及びリン酸源を含む水溶液であってよい。このような培地は、適切な塩、ミネラル、金属及び他の栄養素を含むこともできる。発酵培地に炭素源及び必須細胞栄養素の各々を逐次的又は連続的に添加してもよく、それぞれ必要とされる栄養素は、例えば、炭素源をバイオマスに変換する細胞の代謝機能又は呼吸機能に基づく所定の細胞増殖曲線に従い、増殖細胞による効率的な吸収に本質的に必要とされる最小レベルに維持される。
【0229】
炭素源は、単糖(monosaccharide)(単糖(simple sugar))、二糖、多糖、非発酵性炭素源、又はその1つ以上の組み合わせであり得る。好適な単糖の非限定的な例としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、リボース、及びその組み合わせが挙げられる。好適な二糖の非限定的な例としては、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、セロビオース、及びその組み合わせが挙げられる。好適な多糖の非限定的な例としては、デンプン、グリコーゲン、セルロース、キチン、及びその組み合わせが挙げられる。好適な非発酵性炭素源の非限定的な例としては、酢酸及びグリセロールが挙げられる。炭素源は、多種多様な作物及び供給源から得ることができる。好適な作物又は供給源のいくつかの非限定的な例としては、サトウキビ、バガス、ススキ、テンサイ、モロコシ、穀実用モロコシ、スイッチグラス、大麦、麻、ケナフ、ジャガイモ、サツマイモ、キャッサバ、ヒマワリ、果物、糖蜜、ホエー又はスキムミルク、トウモロコシ、まぐさ、穀物、小麦、木材、紙、わら、綿、多くの種類のセルロース廃棄物、及び他のバイオマスが挙げられる。好適な作物又は供給源としては、サトウキビ、テンサイ及びトウモロコシを挙げることができる。糖源は、サトウキビ汁又は糖蜜であり得る。上記の炭素源の任意の組み合わせを用いることができる。
【0230】
好適な培地には、例えば、インデューサー(例えば、遺伝子産物をコードする1つ以上のヌクレオチド配列が誘導性プロモーターの制御下にある場合)、リプレッサー(例えば、遺伝子産物をコードする1つ以上のヌクレオチド配列が抑制プロモーターの制御下にある場合)、又は選択剤(例えば、遺伝子改変を含む微生物を選択するための抗生物質)などの、1つ以上の追加の薬剤が補充されてもよい。
【0231】
発酵の生成段階中に、液体有機オーバーレイを培地に添加してもよい。液体有機オーバーレイは、水性培養培地と接触する非混和性の有機液体であってよく、テルペン基質及び他の副生成物、並びに微生物から分泌される酸化テルペン生成物を、この液体有機オーバーレイ中で捕捉することができる。液体有機オーバーレイは、発酵容器から揮発性のモノテルペンが蒸発するのを低減するだけでなく、潜在的な微生物に対するテルペン基質及び/又は酸化テルペン生成物の毒性を低減することができる。オーバーレイの例としては、ミリスチン酸イソプロピル(IPM)又は他の炭化水素液、例えば白色鉱油又はポリアルファオレフィンが挙げられるが限定されるものではない。
【0232】
発酵方法は、細胞培養プレート、フラスコ、又は発酵槽を含むが限定されない、好適な入れ物又は容器内で実施され得る。発酵は、気相中にテルペンを捕捉するために閉鎖系で行われ得る。例えば、閉鎖系としては、気相中にモノテルペンを含む排出気体を捕捉するために互いに連結された一連の容器が挙げられ得る。例えば、第1の容器に、水性培地と遺伝子改変微生物とを含む培養培地を含有してもよい。有機オーバーレイを含む第2の容器を第1の容器と直列して連結し、揮発性のテルペンを捕捉してもよい。テルペン基質及び他のテルペン副生成物、並びに酸化テルペン生成物を含む気体組成物を捕捉するために、1つ以上の追加の容器を第1の容器に直列及び/又は並列に連結してもよい。
【0233】
更に、本方法は、微生物生成物の工業生産を支援するために、当技術分野で公知の発酵を任意のスケールで実施することができる。撹拌タンク発酵槽、エアリフト発酵槽、気泡発酵槽、又はその任意の組み合わせを含む、任意の好適な発酵槽が使用され得る。
【0234】
更に、本方法は、任意の発酵容積で、例えばラボスケール(例えば、10ml~20L)からパイロットスケール(例えば、20L~500L)、工業スケール(例えば、500L~500,000L以上)までの発酵を実施することができる。
【0235】
本明細書に記載される遺伝子改変微生物宿主細胞、培養培地、及びテルペン基質を含む発酵組成物、並びに遺伝子改変微生物宿主細胞から生成される酸化テルペン生成物が本明細書に開示される。本明細書で提供される発酵組成物では、酸化テルペン生成物は、通常は主要化合物であり、微量化合物として予備のテルペン基質及び1つ以上の副生成物(テルペンと同時に生成される)が含まれる。
【0236】
一実施形態では、発酵組成物は、テルペンに関して、モノテルペンのGCクロマトグラムに示されるテルペンのピークの相対面積%に基づいて、テルペン基質の総量と比較して少なくとも約50%の主要化合物と約50%未満の微量化合物とを含む。
【0237】
別の実施形態では、発酵組成物は、テルペンに関して、培養培地中のテルペン基質の総量と比較して、少なくとも55%又は60%又は65%又は70%又は75%又は80%又は85%又は90%又は95%の主要化合物を含む。
【0238】
別の実施形態では、発酵組成物は、テルペンに関して、培養培地中のテルペン基質の総量と比較して、少なくとも45%又は40%又は35%又は30%又は25%又は20%又は15%又は10%又は5%の微量化合物を含む。
【0239】
別の実施形態では、主要化合物は、少なくとも2つの酸化テルペン生成物を含む。更なる実施形態では、少なくとも2つの酸化テルペン生成物は、trans-α-サンタロール及びtrans-β-サンタロールを含む。
【0240】
別の実施形態では、2つ以上のテルペン、例えばα-グアイエンとβ-グアイエンとの混合物を生成するテルペンシンターゼを使用することにより、少なくとも2つの酸化テルペン生成物も同様に、酸化テルペン生成物の混合物、例えば酸化α-グアイエンと酸化β-グアイエンとの混合物が主要化合物として形成される。
【0241】
本発明の別の態様は、少なくとも1つの酸化テルペン生成物の発酵生成方法に関し、本方法は、
非ヒト宿主細胞に、本明細書に記載されるようなオキシダーゼ酵素系又は発現カセットを提供することと、
任意選択により、アルカン基質の生成のために少なくとも1つのアルカンシンターゼを宿主細胞に提供することと、
宿主細胞が活性形態でコードされたポリペプチドを生成するための条件下で、非ヒト宿主細胞を培養培地中で培養することと、
任意選択により、1つ以上のアルカン基質を生成すること、及び/又は1つ以上のアルカン基質を宿主細胞に提供することと、
少なくとも1つの酸化アルカン生成物を生成することと、
任意選択により、少なくとも1つの酸化アルカン生成物を精製することとを含む。
【0242】
一実施形態では、少なくとも1つの酸化テルペン生成物の発酵生成方法は、細菌宿主細胞、好ましくはロドバクター属(Rhodobacter)株を提供することを含む。
【0243】
別の実施形態では、少なくとも1つの酸化テルペン生成物の発酵生成方法は、シネンサールの生成を含む。
【0244】
別の実施形態では、少なくとも1つの酸化テルペン生成物の発酵生成方法は、
a.オキシダーゼ酵素と、
b.1つ以上のアルカンを提供するための1つ以上の酵素と、
任意選択により、
c.少なくとも1つの電子をオキシダーゼ酵素に伝達するのに好適な電子伝達化合物と、更に任意選択により、
d.c.の電子伝達化合物が酸化状態にあるときに、それを還元するのに好適な電子伝達化合物再生酵素とを含み、
オキシダーゼ酵素は、配列番号1、10、11、23~43又はそのフラグメント又はその変異体のいずれか1つと少なくとも62%、66%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、94%、95%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列である、オキシダーゼ酵素系を含む。
【0245】
本発明の別の態様は、開示されるようなアルカン酸化系の使用、又は核酸配列の発現に関し、合成核酸配列は、オキシダーゼ酵素、並びに任意選択によりルブレドキシンペプチド及び/若しくはルブレドキシンレダクターゼペプチド若しくはその発現カセットをコードする核酸配列、又はテルペン基質を酸化して1つ以上の酸化テルペン生成物を生成するためのアルカン酸化系の発現カセットを含む。
【0246】
本発明の別の態様は、アルカン酸化生成物又は組成物の生成方法に関し、酸化アルカン生成物は、ミルセンアルデヒド、α-シネンサール、β-シネンサール、trans-α-サンタロール及びtrans-β-サンタロール、ランセオール-アルデヒド、ヌートカトン、ベチボン、ロタンドン、レバウジオシド、8-ヒドロキシゲラニオール、8-ヒドロキシネロール、9,10-エポキシゲラニルアセトン、ヘキサデセナール、ファルネソール、デンデララシン(denderalasin)及びビシクロ-オクタンジオール、酸化α-グアイエン、酸化β-グアイエン、又はその組み合わせを含むアルコール若しくはアルデヒド、又はその両方から選択される。好ましくは、酸化生成物は、α-シネンサール、β-シネンサール、trans-α-サンタロール、trans-β-サンタロール、ヌートカトン及びファルネソールから選択される。
【0247】
本発明の別の態様は、本発明のアルカン酸化系、本発明の方法、又は本発明の非ヒト宿主細胞によって生成される組成物に関し、組成物は、例えば、α-シネンサール、β-シネンサール、trans-α-サンタロール及びtrans-β-サンタロール、ランセオール-アルデヒド、ヌートカトン、ベチボン、ロタンドン、レバウジオシド、8-ヒドロキシゲラニオール、8-ヒドロキシネロール、若しくは9,10-エポキシゲラニルアセトン、又はその組み合わせであるが限定されない、1つ以上の酸化テルペン生成物と、任意選択により、好ましくはそれらの対応する酸化テルペン生成物に対して3:1~1:10000の重量比の1つ以上のテルペン基質と、任意選択により上記に定義されるようなオキシダーゼ酵素とを含む。本発明の一態様では、本発明の組成物には、好ましくはルブレドキシンを含む1つ以上の電子伝達化合物、及び任意選択により、電子伝達化合物が酸化状態にあるときに、それを還元するのに好適な少なくとも1つの電子伝達化合物再生酵素、好ましくはルブレドキシンレダクターゼも含まれる。
【0248】
一実施形態では、テルペン基質と酸化テルペン生成物の重量比は、250対1、又は220対1、又は200対1、又は180対1、170対1、160対1である。好ましい実施形態では、重量比は、150対1、130対1、又は120対1、110対1、100対1である。より好ましい実施形態では、重量比は99対1以下であるが、0.1:1よりも大きく、例えば、ファルネセンと酸化テルペン生成物の重量比は、99:1~10:1、好ましくは31以下対1、例えば20、18、17又は14対1である。
【0249】
一実施形態では、少なくとも0.3%(w/w)の酸化テルペン生成物が形成される。好ましい実施形態では、酸化テルペン生成物として0.6%(w/w)のシネンサールが形成される。
【0250】
例えば、α-ファルネセンとβ-ファルネセンの両方を供給することによって2つ以上の酸化テルペン生成物が生成される場合、第1の酸化テルペン生成物と第2の酸化テルペン生成物との比は、一実施形態では、0.8:1~1:0.8、好ましくは0.9:1~1:0.9、より好ましくは1:1である。
【0251】
本発明の別の態様は、オキシダーゼ酵素活性を有する変異ポリペプチドを調製するための方法に関し、本方法は、
a)本明細書で開示されるような合成核酸配列、又は配列番号1、10、11、23~43又はそのフラグメント、好ましくは配列番号1、23、24、43のいずれか1つと少なくとも62%、66%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、94%、95%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸を選択する工程と、
b)選択された核酸を改変して、少なくとも1つの変異核酸を得る工程と、
c)変異核酸配列で非ヒト宿主細胞を形質転換し、変異核酸配列によってコードされるオキシダーゼ酵素を発現させる工程と、
d)オキシダーゼ酵素を、a)の選択された核酸によってコードされるオキシダーゼ酵素の機能に加えて、少なくとも1つの改変された特性についてスクリーニングする工程と、
e)任意選択により、プロセス工程(a)~(d)を繰り返し、所望の変異機能を有するオキシダーゼ酵素を得る工程と、
f)任意選択により、工程(c)で得られた形質転換非ヒト宿主細胞から変異核酸配列を単離する工程とを含む。
【0252】
この機能は、配列番号1、10、11、23、24、又は配列番号25~43、好ましくは配列番号1、10、11若しくは25~43のいずれかのオキシダーゼ酵素であり得る。
【0253】
本明細書で言及される場合、「ポリペプチド変異体」/「変異ポリペプチド」は、オキシダーゼ酵素活性を有し、オキシダーゼ酵素に関する上記の実施形態のいずれかによるポリペプチドと実質的に相同であるが、1つ以上の欠失、挿入又は置換があるために、本発明の核酸配列のいずれかによってコードされるものとは異なるアミノ酸配列を有するポリペプチドを意味する。
【0254】
変異体は、所与のアミノ酸残基が類似した生理化学的特性を有する残基で置換されているということを意味する、保存的に置換された配列を含み得る。保存的置換の例としては、ある脂肪族残基を別の脂肪族残基、例えばHe、VaI、Leu、若しくはAlaに互いに置換すること、又はある極性残基を別の極性残基、例えばLysとArg、GIuとAsp、又はGInとAsnとの間で置換することが含まれる。Zubay,Biochemistry,1983,Addison-Wesley Pub.Co.を参照されたい。このような置換の影響は、Altschul,J.MoI.Biol.,1991,219,555-565で論じられているように、PAM-120、PAM-200、及びPAM-250などの置換スコア行列を用いて計算することができる。このような他の保存的置換、例えば、類似した疎水性特性を有する領域全体の置換はよく知られている。天然のペプチド変異体も本発明に包含される。このような変異体の例には、本明細書に記載されるポリペプチドの選択的mRNAスプライシング事象又はタンパク質分解的切断から生じるタンパク質がある。タンパク質分解に起因する変化としては、例えば、本発明の配列によってコードされるポリペプチドから1つ以上の末端アミノ酸をタンパク質分解により除去することによる、異なる種類の宿主細胞で発現させた場合のN末端又はC末端における差異が含まれる。
【0255】
表:下記の変異体は、配列番号1を参照して、許容された交換を含む保存アミノ酸の位置を示す。
【0256】
【0257】
【0258】
本発明のポリペプチドの変異体は、例えば、酵素活性の所望の増強若しくは低減、位置化学若しくは立体化学の修飾、又は基質利用若しくは生成物分布の変更、基質に対する親和性の増大、1つ以上の所望の化合物の生成に対する特異性の向上、酵素反応の速度の増大、特定の環境(pH、温度、溶媒など)におけるより高い活性若しくは安定性、又は所望の発現系における発現レベルの向上を達成するために使用され得る。当技術分野で公知のいずれかの方法によって、変異体又は部位特異的突然変異体を作製することができる。天然のポリペプチドの変異体及び誘導体は、天然に存在する変異体、又は他の若しくは同一の植物系統若しくは種の変異体のヌクレオチド配列を単離することによって、又は本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の変異を人為的にプログラムすることによって得ることができる。天然のアミノ酸配列の改変は、多くの従来法のいずれかによって達成することができる。
【0259】
本発明のポリペプチドのアミノ末端及びカルボキシル末端における付加的なペプチド配列の融合から生じるポリペプチド変異体は、ポリペプチドの発現を増強するために使用することができ、タンパク質の精製に有用であり得るか、又は所望の環境若しくは発現系におけるポリペプチドの酵素活性を向上させることができる。このような付加的なペプチド配列は、例えばシグナルペプチドであってよい。従って、本発明には、他のオリゴペプチド若しくはポリペプチドとの融合によって得られたもの、及び/又はシグナルペプチドに連結されたものなどの、本発明のポリペプチドの変異体が包含される。本発明に包含される融合ポリペプチドはまた、他の機能性タンパク質の融合から生じる融合ポリペプチド、例えば、テルペン生合成経路由来の他のタンパク質を含む。
【0260】
従って、ある実施形態では、本発明は、上記の実施形態のいずれかに記載されるように、オキシダーゼ酵素活性を有する変異ポリペプチドを調製するための方法であって、
(a)本明細書で開示されるような合成核酸配列、又は配列番号1、10、11、23~43若しくはそのフラグメントのいずれか1つと少なくとも62%、66%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、94%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列をコードする核酸を選択する工程と、
(b)選択された核酸を改変して、少なくとも1つの変異核酸を得る工程と、
(c)宿主細胞又は単細胞生物を変異核酸配列で形質転換し、変異核酸配列によってコードされるポリペプチドを発現する工程と、
(d)少なくとも1つの改変された特性についてポリペプチドをスクリーニングする工程と、
(e)任意選択により、ポリペプチドに所望の変異型オキシダーゼ酵素活性がない場合、所望の変異型オキシダーゼ酵素活性を有するポリペプチドが得られるまでプロセス工程(a)~(d)を繰り返す工程と、
(f)任意選択により、工程(d)で所望の変異型オキシダーゼ酵素活性を有するポリペプチドが同定された場合、工程(c)で得られた対応する変異核酸を単離する工程とを含む方法を提供する。
【0261】
好ましい実施形態によれば、調製された変異ポリペプチドは、酸化テルペン生成物を主要化合物として生成することができる。
【0262】
更により好ましい実施形態によれば、主要化合物と微量化合物の混合物を生成することができる。酸化テルペン生成物は主要化合物であり、1つ以上の副生成物は微量化合物であり、酸化テルペン生成物は、この混合物の少なくとも60%、好ましくは少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%である。
【0263】
工程(b)では、例えば、ランダム突然変異誘発、部位特異的突然変異誘発、又はDNAシャッフリングにより、多数の変異核酸配列が生成され得る。遺伝子シャッフリングの詳細な手順は、Stemmer,DNA shuffling by random fragmentation and reassembly:in vitro recombination for molecular evolution.Proc Natl Acad Sci USA.,1994,91(22):10747-1075に見出される。手短に言えば、DNAシャッフリングは、組換え用に選択された少なくとも2つの核酸が関与する、インビトロにおける既知の配列のランダムな組換えプロセスを指す。例えば、変異配列を含むオリゴヌクレオチドを合成し、天然配列のフラグメントにライゲーションすることが可能な制限部位で挟むことによって、特定の遺伝子座に変異を導入することができる。ライゲーション後、結果として得られた再構築された配列は、所望のアミノ酸の挿入、置換、又は欠失を有する類似体をコードする。或いは、オリゴヌクレオチド指定部位特異的突然変異誘発手順を用いて変異遺伝子を提供することができ、置換、欠失、又は挿入によって所定のコドンを変異させることができる。
【0264】
従って、配列番号1を含むポリペプチドは、例えば、シュードモナス属種(Pseudomonas sp.)以外の生物から単離された核酸をコードする任意の他のオキシダーゼ酵素と組み合わせてもよい。従って、変異核酸を入手して単離してもよく、この変異核酸を使用して、例えば、本実施例に開示されているような標準的な手順に従って宿主細胞を形質転換してもよい。
【0265】
工程(d)では、工程(c)で得られたポリペプチドを、少なくとも1つの改変された特性、例えば、所望の改変された酵素活性についてスクリーニングする。発現されたポリペプチドをスクリーニングすることができる望ましい酵素活性の例としては、KM値又はVmaχ値により測定した場合の酵素活性の増強又は低減、位置化学又は立体化学の修飾、及び基質利用又は生成物分布の変更が含まれる。
【0266】
酵素活性のスクリーニングは、当業者によく知られた手順、及び本実施例に開示された手順に従って実施することができる。工程(e)は、プロセス工程(a)~(d)の繰り返しを提供するものであり、好ましくは並行して実施され得る。従って、かなりの数の変異核酸を生成することによって、異なる変異核酸で多くの宿主細胞を同時に形質転換することができ、その後、多くの数のポリペプチドをスクリーニングすることが可能となる。このようにして、当業者の裁量で所望の変異ポリペプチドを得る機会を増大させることができる。
【0267】
利点:
グルコース由来の微生物培養物から、シネンサールのような酸化テルペン生成物を生成することは難しい課題であり、テルペン、好ましくはセスキテルペンのジアリル位の酸化を媒介する酵素はこれまでに知られていない。開示された方法は、サンタレン、バレンセンなどのようなジアリル基を有する様々なテルペン基質に適用可能である。
【0268】
方法A
ガスクロマトグラフィー及び質量スペクトル(GC及びMS)
培養物を1mlのジクロロメタン(DCM)で抽出する。DCM相を回収し、無水Na2SO4上で乾燥させ、質量選択検出器(型式5975C、Agilent)を装着した7890Aガスクロマトグラフ(Agilent)に注入し、45~450m/zの範囲で走査する。1μlの試料のスプリットレス注入を、1ml/分のヘリウム流速にて、Zebron ZB-5MSカラム(30m×0.25mm、厚さ0.25μm;Phenomenex)上で250℃で実施した。温度プログラムは、45℃で2.25分、次いで40℃/分で300℃まで、次いで300℃で3分であった。サチュレーションを回避するために、ミルセン変換実験の場合は8分間、ファルネセン実験の場合は14分間、室温でMS検出器の電源をオフにした。化合物を、それらの保持指数と質量スペクトルをNIST 8データベース又は文献データと比較することによって同定した。
【0269】
本発明を、以下の実施形態、並びに対応する従属関係の言及及び関連付けによって得られる実施形態の組み合わせにより、より詳細に説明する。
【0270】
I.人工アルカン酸化系であって、
a.オキシダーゼ酵素と、
b.少なくとも1つのアルカンを提供する1つ以上の酵素、好ましくはテルペンシンターゼタンパク質と、
任意選択により、
c.少なくとも1つの電子をオキシダーゼ酵素に伝達するのに好適な電子伝達化合物と、更に任意選択により、
d.c.の電子伝達化合物が酸化状態にあるときに、それを還元するのに好適な電子伝達化合物再生酵素とを含み、
オキシダーゼ酵素は、配列番号1、10、11、23~43又はそのフラグメント又はその変異体のいずれか1つと少なくとも62%、66%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、94%、95%、98%又は99%の配列同一性を有するアミノ酸配列である、人工アルカン酸化系。
【0271】
II.アルカンが、5個の炭素構成単位からできており、1~5個のそのような構成単位を含み、好ましくはテルペンであり、少なくとも1つのアルカンはテルペンであり、構成要素bとしての少なくとも1つのテルペンシンターゼタンパク質である、実施形態Iの人工アルカン酸化系。
【0272】
III.電子伝達化合物が、配列番号2若しくは45若しくはそのフラグメント若しくはその変異体のいずれか1つと少なくとも62%、66%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、94%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、好ましくはF1-S0型の電子伝達タンパク質、より好ましくはルブレドキシンペプチドであり、又は/及び、電子伝達化合物再生酵素が、配列番号3若しくはそのフラグメントと少なくとも62%、66%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、94%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有する電子伝達タンパク質レダクターゼ、好ましくはルブレドキシンレダクターゼ、より好ましくはルブレドキシンレダクターゼペプチドである、実施形態I又はIIの人工アルカン酸化系。
【0273】
IV.配列番号4、配列番号12、配列番号17、配列番号18、配列番号19、又は配列番号44のいずれか1つと少なくとも62%、66%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、94%、95%、98%又は99%の配列同一性を有する合成核酸配列であって、実施形態Iに定義されるようなオキシダーゼ酵素をコードする核酸配列を含み、任意選択により、実施形態IIのルブレドキシンペプチド及び/又はルブレドキシンレダクターゼペプチドを含む、合成核酸配列。
【0274】
V.実施形態IVの合成核酸配列を含む発現カセット。
【0275】
VI.実施形態I、II又はIIIのアルカン酸化系をコードする核酸配列を含む発現カセット。
【0276】
VII.アルカン酸化系の核酸配列を含む発現カセットであって、核酸配列が、
a.配列番号20のいずれか1つと少なくとも62%、66%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、94%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有するオキシダーゼ酵素の核酸配列、若しくは配列番号1、10、11、23~43のいずれか1つと少なくとも62%、66%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、94%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有するオキシダーゼ酵素をコードする核酸配列と、
b.配列番号21のいずれか1つと少なくとも62%、66%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、94%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有するルブレドキシンペプチドの核酸配列と、任意選択により、
c.配列番号22と少なくとも62%、66%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、94%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有するルブレドキシンレダクターゼペプチドの核酸配列とを含むか、又はaとb及びcの組み合わせを含む、発現カセット。
【0277】
VIII.少なくとも1つのテルペン基質の酸化方法であって、
a.少なくとも1つのテルペン基質の酸化のために、
i.実施形態I~IIIのいずれかの人工アルカンオキシダーゼ系、又は
ii.実施形態IVの合成核酸配列、若しくは実施形態V~VIIの発現カセットの発現、又は
iii.配列番号1、10、11、23~43若しくはそのフラグメント若しくはその変異体のいずれか1つと少なくとも62%、66%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、94%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むオキシダーゼ酵素をコードする核酸配列の発現、及び
iv.任意選択により、アルカン酸化系によって生成されない場合は、少なくとも1つのテルペン基質を提供することと、
b.少なくとも1つの酸化テルペン生成物を生成するために、テルペン基質をアリル酸化することと、
c.少なくとも1つの酸化テルペン生成物を抽出することとを含む方法。
【0278】
IX.テルペン基質が、ジテルペン、モノテルペン又はセスキテルペン、例えば、限定されるものではないが、α-ファルネセン、β-ファルネセン、α-ビサボレン、β-ビサボレン、α-ベルガモテン、β-ベルガモテン、α-サンタレン、β-サンタレン、バレンセン、α-グアイエン、モノテルペンゲラニオール、ネロールモノテルペン、ゲラニルラクトン、又はその組み合わせを含む、実施形態VIIIの方法。
【0279】
X.酸化テルペン生成物が、アルコール若しくはアルデヒド、又はその両方である、実施形態VIII又はIXの方法。
【0280】
XI.少なくとも1つの酸化テルペン生成物が、ミルセンアルデヒド、α-シネンサール、β-シネンサール、trans-α-サンタロール及びtrans-β-サンタロール、ランセオール-アルデヒド、ヌートカトン、ベチボン、ロタンドン、レバウジオシド、8-ヒドロキシゲラニオール、8-ヒドロキシネロール、9,10-エポキシゲラニルアセトン、ヘキサデセナール、ファルネソール、デンデララシン(denderalasin)、並びにビシクロ-オクタンジオール、酸化α-グアイエン、酸化β-グアイエン、又はその組み合わせから選択される、実施形態VIII~Xのいずれか1つの方法。
【0281】
XII.実施形態I~IIIのいずれかの人工アルカン酸化系、実施形態IVの合成核酸、実施形態V~VIIの発現カセットを含むか、又は実施形態VIII~XIに記載の方法によるテルペン基質の酸化に好適な非ヒト宿主細胞。
【0282】
XIII.実施形態XIIの非ヒト宿主細胞であって、宿主細胞がロドバクター属(Rhodobacter)種である、非ヒト宿主細胞。
【0283】
XIV.実施形態VIII~XIの方法、又は実施形態XII若しくはXIIIの非ヒト宿主細胞によって生成される組成物であって、α-シネンサール、β-シネンサール、trans-α-サンタロール及びtrans-β-サンタロール、ランセオール-アルデヒド、ヌートカトン、ベチボン、ロタンドン、レバウジオシド、8-ヒドロキシゲラニオール、8-ヒドロキシネロール、若しくは9,10-エポキシゲラニルアセトン、又はその組み合わせ、並びに任意選択により1つ以上のテルペン基質、並びに任意選択により実施形態I~XIIIの実施形態のいずれかに定義されるようなオキシダーゼ酵素を含む、組成物。
【0284】
XV.培養培地中で培養された実施形態XII又はXIIIの非ヒト宿主細胞と、非ヒト宿主細胞から生成された、主要化合物としての少なくとも1つの酸化テルペン生成物とを含む、発酵組成物であって、発酵組成物はテルペン基質を含み、任意選択により1つ以上の副生成物が微量化合物である、発酵組成物。
【0285】
XVI.テルペン基質の酸化のための、実施形態I~IIIのアルカン酸化系、又は実施形態IVの核酸配列の発現、又は実施形態V~VIIの発現カセット、実施形態XIIの非ヒト宿主細胞又は実施形態XVの発酵組成物の使用。
【0286】
XVII.オキシダーゼ酵素が配列番号20によってコードされ、ルブレドキシンペプチドが配列番号21によってコードされ、及び/又はルブレドキシンレダクターゼペプチドが配列番号22によってコードされる、実施形態I~IIIのアルカン酸化系。
【0287】
XVIII.アルカン酸化系であって、
a.配列番号1、10、11、23~43若しくはそのフラグメント若しくはその変異体のいずれか1つと少なくとも62%、66%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、94%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むオキシダーゼ酵素と、
b.異種セスキテルペンシンターゼタンパク質と、任意選択により、
c.配列番号2若しくはそのフラグメントのいずれか1つと少なくとも62%、66%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、94%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むルブレドキシンペプチドと、
d.配列番号3若しくはそのフラグメントと少なくとも62%、66%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、94%、95%、98%若しくは99%の配列同一性を有するルブレドキシンレダクターゼペプチドとを含むか、又はaとb及びcの組み合わせを含む、アルカン酸科系。
【0288】
XIX.実施形態XVII及びXVIIIのアルカン酸化系をコードする核酸配列を含む発現カセット。
【0289】
XX.少なくとも1つのテルペン基質、好ましくはセスキテルペン基質の酸化方法であって、
a.テルペン、好ましくはセスキテルペン基質のヒドロキシル化のために、
i.実施形態I若しくはII若しくはXVII若しくはXVIIIのアルカン酸化系、又は
ii.実施形態IVの核酸配列、若しくは実施形態V若しくはVIIの発現カセットの発現、又は
iii.配列番号1、10、11、23~43(alkB)若しくはそのフラグメント若しくはその変異体のいずれか1つと少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むオキシダーゼ酵素をコードする核酸配列の発現、及び
iv.任意選択によりテルペン、好ましくはセスキテルペン基質を提供することと、
b.1つ以上の酸化テルペン生成物を生成するために、アルカン酸化系によって、テルペン、好ましくはセスキテルペン基質をアリル酸化することと、
c.少なくとも1つの酸化テルペン生成物を抽出することとを含む方法。
【0290】
XXI.実施形態VIII~XIIのいずれか1つに記載の方法により、少なくとも1つの酸化テルペン生成物を生成する方法。
【0291】
XXII.酸化テルペン生成物のための、実施形態XIIの非ヒト宿主細胞、又は実施形態XVの発酵組成物の使用。
【0292】
XXIII.少なくとも1つの酸化テルペン生成物の発酵生成方法であって、
非ヒト宿主細胞に実施形態I~XXIIのいずれか1つに記載されるオキシダーゼ酵素系を提供することと、
少なくとも1つの酸化テルペン生成物を生成するために、培養培地中で非ヒト宿主細胞を培養することとを含む方法。
【0293】
XXIV.人工アルカン酸化系のためのキットであって、
実施形態Iに定義されるようなオキシダーゼ酵素をコードする核酸配列を含む、配列番号1、10、11、23~43のいずれか1つと少なくとも62%、66%、69%、70%、75%、80%、85%、90%、94%、95%、98%又は99%の配列同一性を有する第1の単離核酸配列と、
電子伝達タンパク質をコードする第1の核酸と物理的に結合されていない、第2の単離核酸配列と、
任意選択により、電子伝達タンパク質レダクターゼをコードする第3の核酸配列であって、第1及び/又は第2の核酸配列と融合され得る第3の核酸配列とを含むキット。
【0294】
XXV.任意の構成要素a~dとしてのそれらの使用に必要とされる機能を有する変異ポリペプチドの調製方法であって、
a)本発明の核酸又は本発明のポリペプチドをコードする核酸を選択する工程と、
b)選択された核酸を改変して、少なくとも1つの変異核酸を得る工程と、
c)宿主細胞又は単細胞生物を変異核酸配列で形質転換し、変異核酸配列によってコードされるポリペプチドを発現する工程と、
d)a)の選択された核酸によってコードされるポリペプチドの機能に加えて、少なくとも1つの改変された特性についてポリペプチドをスクリーニングする工程と、
e)任意選択により、ポリペプチドに所望のポリペプチドの機能がない場合、任意の構成要素a~dとして所望の変異機能を有するポリペプチドが得られるまでプロセス工程(a)~(d)を繰り返す工程と、
f)任意選択により、工程(d)で所望の変異機能を有するポリペプチドが同定された場合、工程(c)で得られた対応する変異核酸を単離する工程とを含む方法。
【実施例】
【0295】
以下の実施例と組み合わせて、本発明を更に説明する。これらの実施例は、本発明を例証するために提供されるものであり、いかなる形であっても本明細書により特許請求される発明の範囲を限定することを意図しない。実施例における用語及び略語は、一般的な意味を有する。例えば、「%」、「Eq.wt.」、「Eq.」、「℃」、「wt.%」、「%w/w」、「%w/v」、及び「gm」は、それぞれ「パーセンテージ」、「当量(Equivalent Weight)」、「当量(Equivalents)」、「摂氏」、「重量パーセント」、「重量/重量パーセント」、「重量/体積パーセント」及び「グラム」を表す。
【0296】
本発明は、第三者によって公開された生体物質のデジタル配列情報を含む。例えば、配列番号1~3及び20~21の配列に関して、公開されたデジタル配列情報のソースとしての生体物質は、オランダから供給されたものであることが開示されている(Soares-Castro 2017 Appl Environ Microbiol 83:e03112-16.)。
【0297】
【0298】
【0299】
【0300】
【0301】
【0302】
【0303】
【0304】
実施例1:大腸菌(E.coli)でM1-alkBを発現するコンストラクト
M1-alkB(PM1_0216370)、M1-ルブレドキシン(PM1_0216365)、及びM1-ルブレドキシンレダクターゼ(それぞれ配列番号20~22)を大腸菌(E.coli)で発現させるためのコンストラクトを設計した。M1 alkBはシュードモナス属(Pseudomonas)M1ゲノムのコンティグ2上の3472570~3471680位に局在しており、M1-alkBのすぐ下流にM1-ルブレドキシンがコードされている。M1-ルブレドキシンレダクターゼはM1-alkBと共局在しないが、シュードモナス属(Pseudomonas)M1ゲノムのコンティグ2上の438956~437814位に位置しており(Soares-Castro&Santos,2014,Genome Biol.Evol.7(1):1-17)、ベイトとしてシュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescence)由来のルブレドキシンレダクターゼ(アクセッションSUD34760.1)を使用して、blastにより同定した。
【0305】
M1-alkB、M1-ルブレドキシン及びM1-ルブレドキシンレダクターゼのタンパク質配列は、それぞれ配列番号1、配列番号2、及び配列番号3である。
【0306】
大腸菌(E.coli)でM1タンパク質を発現させるために、オープンリーディングフレームを、標準的なツールを使用してロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)でインシリコで発現させるためにコドン最適化し、M1-alkB、M1-ルブレドキシン、及びM1-ルブレドキシンレダクターゼがコードされた人工DNAの断片を標準的なサービス提供者を使用して合成した。
【0307】
配列番号4の合成核酸配列は、M1-alkB-ルブレドキシン-ルブレドキシンレダクターゼコンストラクトを示す。
【0308】
XbaI制限部位とNotI制限部位を使用して、配列番号4をベクターpET-DUET1にクローニングし、発現用のpET-M1-alkB-rr-rrrを得た。
【0309】
代替的な実施例1aでは、配列番号43に示されるCMR5cタンパク質は、CMR5オキシダーゼ/AlkBオキシダーゼ酵素を示す。配列番号44の合成DNA配列は、配列番号43のタンパク質(構成要素a)、及び配列番号45に示すルブレドキシンペプチド(構成要素c)をコードするものであった。配列番号44は、「ATGA」の領域が重複しており、TGで重複してATG及びTGAの両方をカバーする。重複内のATGは、888bpの位置でルブレドキシンペプチド(構成要素c)の開始コドンとして作用する。
【0310】
実施例2:M1-alkBのミルセン及びβ-ファルネセンに変換する能力の検証
コンストラクトpET-DUET-1及びpET-M1-alkB-rr-rrrを大腸菌(E.coli)BL21-DE3に形質転換し、1%のグルコース及び100μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天上で選択した。pET-M1-alkB-rr-rrr及びpET-DUET1を保有する形質転換体を、100μg/mlのアンピシリンを含むLBに播種し、225rpmにて37℃で一晩増殖させた。続いて、培養物を10mlの2xYT+Amp液体培地中で1:20に希釈し、225rpmにて37℃で2時間、A600が0.6となるまでインキュベートした。次いで、1mMのIPTGを添加し、培養物を225rpmにて30℃で2時間インキュベートした。続いて、培養物3mlを10μlのミルセン若しくは10μlのβ-ファルネセンと混合するか、又は生成物を含まずにスクリューキャップ付き4mlガラスバイアルに密閉し、225rpmにて30℃で3時間インキュベートした。続いて、抽出後、方法Aによって培養物から化合物を同定した。
【0311】
pET-DUETの比較株(CS1)及びpET-M1-alkB-rr-rrr、すなわち人工アルカン酸化系を有する株又は発明株(IS1)を含む大腸菌(E.coli)BL21によるミルセン変換を
図1aにわたって示す。
【0312】
pET-DUET1(CS1)及びpET-M1-alkB-rr-rrr(IS1)を発現する細菌培養物を比較すると、ミルセンの酸化生成物が観察された。注目すべきことに、10.7分後に溶出した化合物(化合物2、
図1cを参照されたい)が観察されたが、これは、文献の化合物1(
図1bを参照されたい)と比較したところ、その質量スペクトルによってミルセンアルデヒドと同定された。加えて、リモネンの酸化生成物がいくつか同定されたが、これはミルセンのバッチに5%のリモネンが混入していたことに由来すると思われる。リモネン生成物のピーク強度は、ミルセンアルデヒドの強度と同じ範囲内にあり、リモネンがミルセンよりも基質として好ましいことが示唆された。ミルセンアルデヒドの形成が観察されたことから、M1-ルブレドキシン及びM1-ルブレドキシンレダクターゼと同時発現させた場合、M1-alkBがジアリル位でミルセンの酸化を媒介することができることが示される。
【0313】
図2を参照すると、pET-DUET1(CS1)及びpET-M1-alkB-rr-rrr(IS1)を発現する細菌培養物にβ-ファルネセンを基質として使用した場合にも、特定の変換生成物が観察されたが、それほどはるかに顕著には見られなかった(
図2を参照されたい)。生成物は、ヘキサデセナール(14.1分)、ファルネソール(14.8分)、デンデララシン(denderalasin)(15.3分)及びビシクロ-オクタンジオール(16.0分)に相当するものであった。特に、ファルネソール及びデンデララシン(denderalasin)の観察から、ファルネセンは基質としてM1-alkBに利用されるが、ジアリル位ではない他の位置で修飾されることが示唆され、このことは、その幅広いテルペン酸化能力を示している。
【0314】
実施例3:ロドバクター属(Rhodobacter)でalkBを発現させるための構成
カスタムDNAを合成するために、標準的なサービス提供者によって以下の合成DNAの断片を合成し、ベクターpUC57にクローニングされたものを得た。
【0315】
配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9のタンパク質配列をコードするDNAは、アルカン酸化系構成要素b:(AaBFS)β-ファルネセンシンターゼ、(MdAFS)α-ファルネセンシンターゼ、(ZoBBS)ショウガ(Zingiber officinale)-(S)-β-ビサボレンシンターゼ、(CiCaSSy)クスノキ(Cinnamomum camphora)由来の植物テルペンシンターゼの例である。
【0316】
配列番号10及び配列番号11は、それぞれ、更なる構成要素aの例として、変異したアルカン酸化系構成要素aである、本発明者らにより導入されたF93Sの点変異を有するalkB(M1-alkB-F93S)、及び本発明者らにより導入されたW189Sの点変異を有する(M1-alkB-W189S)アルカン酸化系の配列である。
【0317】
(AaBFS)クソニンジン(Artemisia annua)のβ-ファルネセンシンターゼ、(M1-alkB-rr-rrr)アルカン酸化系構成要素a、c及びd、並びに(D000)ブランク配列にそれぞれ対応する、配列番号5、配列番号12、配列番号13の核酸配列を、標準的なサービス提供者によって合成した。
【0318】
これらの配列は、pUC57の一部として納入された。
【0319】
続いて、制限酵素EcoRI及びHindIIIを使用して、プラスミドpUC57-AaBFSを消化した。プラスミドpUC57-M1-alkB-rr-rrrとpUC57-D000を、それぞれBamHI及びHindIIIで消化し、標準的な手順に従って、ライゲーション反応でBamHI-EcoRI消化p-m-LPppa-CiCaSSy-mpmii alt(米国特許出願公開第2020/0010822号明細書に記載されている)と組み合わせた。このライゲーションを大腸菌(E.coli)S17-1に形質転換し、100μg/mlのネオマイシンを含むLB上で選択した。
【0320】
得られた大腸菌(E.coli)S17-1コロニーは、プラスミドpBBR-AaBFS-M1-alkB-rr、又はpBBR-MVA-AaBFS-D000を保有していた。これらのプラスミドを、国際公開第2011074954号パンフレット(64~67ページを参照されたい)に開示されている方法を用いてロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)株Rs265-9cにコンジュゲートし、Ra培地及び100μg/mlのネオマイシンを含むプレートを用いてトランス型のコンジュゲートを選択した。プラスミドpBBR-MVA-AaBFS-M1-alkB-rr、又はpBBR-MVA-AaBFS-D000を保有するロドバクター属(Rhodobacter)コロニーを選択した。得られた株を、プラスミドに因んで命名した。
【0321】
β-ファルネーゼシンターゼ、オキシダーゼ酵素alkB、並びにルブレドキシン及びルブレドキシンレダクターゼを有する株Rs265-9c-pBBR-MVA-AaBFS-M1-alkB-rr-rrr(IS2)、並びに対照としてのRs265-9c-pBBR-MVA-AaBFS-D000(CS2)を、基本的には国際公開第2018160066A1号パンフレットに記載されているように、2mlのn-ドデカンをオーバーレイとして使用して、20mlのRS102培地で培養した。培養して72時間後にn-ドデカン層を採取し、基本的には国際公開第2018160066A1号パンフレットに記載されているようにGC-MSで分析した(
図3aを参照されたい)。
【0322】
培養物Rs265-9c-pBBR-MVA-AaBFS-D000(CS2)のn-ドデカンには、16.81分に溶出した優勢なピークとしてβ-ファルネセンが含まれていた。Rs265-9c-pBBR-MVA-AaBFS-M1-alkB-rr-rrr(IS2)のドデカンは、22.23分に更なるピークを示したが、これは(CS2)Rs265-9c-pBBR-MVA-AaBFS-D000には存在しなかった(
図3bを参照されたい)。22.23分に溶出したピークの質量スペクトル及び保持時間と、標準物質のシネンサール(Aroma Uden)の質量スペクトル及び保持時間とを比較すると、このピークはβ-シネンサールを示すものであることが明らかとなった((IS2)Rs265-9c-pBBR-MVA-AaBFS-M1-alkB-rr-rrrをベースとしたものに関しては
図3cを参照し、シネンサール標準物質に関しては
図3dを参照されたい)。
【0323】
定量分析から、ドデカン1kgにつき15.2gのファルネセンが生成された一方で、ドデカン1kgにつき0.38gのシネンサールが生成されたことが明らかとなった。
【0324】
実施例4:
M1-alkBモジュールが、α-ファルネセンをα-シネンサールに酸化することができるかどうかを検証した。最初に、マルス・ドメスティクス(Malus domesticus)由来のα-ファルネセンシンターゼを発現する合成コンストラクトを標準的なサービス提供者から注文し、プラスミドpUC57として納品された。
【0325】
配列番号14の核酸配列は、(MdAFS)α-ファルネセンシンターゼの核酸に相当する。
【0326】
続いて、制限酵素EcoRI及びHindIIIを使用して、プラスミドpUC57-MdAFSを消化した。プラスミドpUC57-M1-alkB-rr-rrrとpUC57-D000を、それぞれBamHI及びHindIIIで消化し、標準的な手順に従って、ライゲーション反応でBamHI-EcoRI消化p-m-LPppa-CiCaSSy-mpmii alt pDEST4と組み合わせた。このライゲーションを大腸菌(E.coli)S17-1に形質転換し、100μg/mlのネオマイシンを含むLB上で選択した。
【0327】
得られた大腸菌(E.coli)S17-1コロニーは、プラスミドpBBR-MVA-MdAFS-M1-alkB-rr-rrr、又はpBBR-MVA-MdAFS-D000を保有していた。これらのプラスミドを、例えば、国際公開第2011074954号パンフレットのような標準的な手段を使用して、ロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)株Rs265-9cにコンジュゲートし、Ra培地及び100μg/mlのネオマイシンを含むプレートを使用してトランス型のコンジュゲートを選択した。プラスミドpBBR-MVA-MdAFS-M1-alkB-rr-rrr、又はpBBR-MVA-MdAFS-D000を保有するロドバクター属(Rhodobacter)コロニーを選択した。得られた株を、プラスミドに因んで命名した。
【0328】
株(IS3)Rs265-9c-pBBR-MVA-MdAFS-M1-alkB-rr-rrr及び酵素を含まない(CS3)Rs265-9c-pBBR-MVA-MdAFS-D000を、基本的には国際公開第2018160066A1号パンフレットに記載されているように、2mlのn-ドデカンをオーバーレイとして使用して、20mlのRS102培地で培養した。培養して72時間後にn-ドデカン層を採取し、基本的には国際公開第2018160066A1号パンフレットに記載されているようにGC-MSで分析した。
【0329】
対照培養物(CS3)Rs265-9c-pBBR-MVA-MdAFS-D000のn-ドデカンには、19.28分に溶出した優勢なピークとしてα-ファルネセンが含まれていた。(IS3)Rs265-9c-pBBR-MVA-AaBFS-M1-alkB-rr-rrrのドデカンは、24.88分に更なるピークを示したが、これは(CS3)Rs265-9c-pBBR-MVA-MdAFS-M1-D000には存在しなかった(
図4を参照されたい)。24.883分に溶出したピークの質量スペクトル及び保持時間と、標準物質のシネンサール(Aroma Uden)の質量スペクトル及び保持時間とを比較すると、このピークはα-シネンサールを示すものであることが明らかとなった。
【0330】
実施例5:
M1-alkBモジュールが、他のセスキテルペンをアルデヒドに酸化することができるかどうかを検証した。最初に、ショウガ(Zingiber officinale)由来のβ-ビサボレンシンターゼ(ZoBBS)(BAI67934.1)を発現する合成コンストラクトと、クスノキ(Cinnamomum camphora)由来のサンタレンシンターゼ(CiCaSSy)(QNV69588.1)を発現する合成コンストラクトを、標準的なサービス提供者によって合成し、プラスミドpUC57で納品された。
【0331】
配列番号15及び配列番号16の核酸配列は、ショウガ(Zingiber officinale)-(S)-β-ビサボレンシンターゼ(ZoBBS)及びクスノキ(Cinnamomum camphora)由来の植物テルペンシンターゼ(CiCaSSy)に相当する。
【0332】
続いて、制限酵素EcoRI及びHindIIIを使用して、プラスミドpUC57-ZoBBS及びpUC57-CiCaSSyを消化した。プラスミドpUC57-M1-alkB-rr-rrrとpUC57-D000を、それぞれBamHI及びHindIIIで消化し、標準的な手順に従って、ライゲーション反応でBamHI-EcoRI消化p-m-LPppa-CiCaSSy-mpmii altと組み合わせた。このライゲーションを大腸菌(E.coli)S17-1に形質転換し、100μg/mlのネオマイシンを含むLB上で選択した。
【0333】
得られた大腸菌(E.coli)S17-1コロニーは、プラスミドpBBR-MVA-ZoBBS-M1-alkB-rr-rrr、又はpBBR-MVA-ZoBBS-D000、及びBBR-MVA-CiCaSSy-M1-alkB-rr-rrr、又はpBBR-MVA-CiCaSSy-D000を保有していた。これらのプラスミドを、標準的な方法を用いてロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)株Rs265-9cにコンジュゲートし、Ra培地及び100μg/mlのネオマイシンを含むプレートを用いてトランス型のコンジュゲートを選択した。プラスミドpBBR-MVA-ZoBBS-M1-alkB-rr-rrr、又はpBBR-MVA-ZoBBS-D000、及びBBR-MVA-CiCaSSy-M1-alkB-rr-rrr、又はpBBR-MVA-CiCaSSy-D000を保有するロドバクター属(Rhodobacter)コロニーを選択した。得られた株を、プラスミドに因んで命名した。
【0334】
株(IS4)Rs265-9c-pBBR-MVA-ZoBBS-M1-alkB-rr-rrr及び対照としての(CS4)Rs265-9c-pBBR-MVA-ZoBBS-D000、(IS5)Rs265-9c-pBBR-MVA-CiCaSSy-M1-alkB-rr-rrr及び対照としての(CS5)Rs265-9c-pBBR-MVA-CiCaSSy-D000を、基本的には国際公開第2018160066A1号パンフレットに記載されているように、2mlのn-ドデカンをオーバーレイとして使用して、20mlのRS102培地で培養した。培養して72時間後にn-ドデカン層を採取し、基本的には国際公開第2018160066A1号パンフレットに記載されているようにGC-MSで分析した。
【0335】
図6を参照すると、培養物Rs265-9c-pBBR-MVA-CiCaSSy-D000のn-ドデカンには、それぞれ保持時間17.23分及び18.23分に優勢なピークとしてβ-α-サンタレン、ベルガモテン及びβ-サンタレンが含まれていた。Rs265-9c-pBBR-MVA-CiCaSSy-M1-alkB-rr-rrrのドデカンは、23.75分及び24.66分に更なるピークを示したが、これは(CS5)Rs265-9c-pBBR-MVA-CiCaSSy-M1-D000には存在しなかった。23.75分及び24.66分に溶出したピークの質量スペクトル及び保持時間と、NISTライブラリー及び標準物質のビャクダンとを比較すると、それらがtrans-α-サンタロール及びtrans-β-サンタロールに相当するものであることが明らかとなった。
【0336】
図5を参照すると、培養物(CS4)Rs265-9c-pBBR-MVA-ZoBBS-D000のn-ドデカンには、19.37分に溶出した優勢なピークとしてβ-ビサボレンが含まれていた。(IS4)Rs265-9c-pBBR-MVA-ZoBBS-M1-alkB-rr-rrrのドデカンは、25.16分に更なるピークを示したが、これは(CS4)Rs265-9c-pBBR-MVA-ZoBBS-M1-D000には存在しなかった。GC MS分析から、このピークは、β-ビサボレン由来のアリル酸化生成物であるランセオール-アルデヒドを示すものであることが明らかとなった。
【0337】
実施例6:
M1-alkBの変異の影響
M1-alkBタンパク質の2つの変異体を設計し、M1-alkB-F93S変異体及びM1-alkB-W189S変異体を生成した。これら2つの変異体の発現コンストラクトを、標準的なサービス提供者によって合成した。
【0338】
続いて、制限酵素EcoRI及びHindIIIを使用して、プラスミドpUC57-AaBFSを消化した。プラスミドpUC57-M1-alkB-F93S-rr-rrr(配列番号17の配列を有する)とpUC57-M1-alkB-W189S-rr-rrr(配列番号18の配列を有する)を、それぞれBamHI及びHindIIIで消化し、標準的な手順に従って、ライゲーション反応でBamHI-EcoRI消化p-m-LPppa-CiCaSSy-mpmii alt(米国特許出願公開第2020/0010822号明細書に記載されている)と組み合わせた。このライゲーションを大腸菌(E.coli)S17-1に形質転換し、100μg/mlのネオマイシンを含むLB上で選択した。
【0339】
得られた大腸菌(E.coli)S17-1コロニーは、プラスミドpBBR-AaBFS-M1-alkB-F93S-rr-rrr、又はpBBR-MVA-AaBFS-M1-alkB-W189S-rr-rrrを保有していた。これらのプラスミドを、標準的な方法を用いてロドバクター・スフェロイデス(Rhodobacter sphaeroides)株Rs265-9cにコンジュゲートし、Ra培地及び100μg/mlのネオマイシンを含むプレートを用いてトランス型のコンジュゲートを選択した。プラスミドpBBR-MVA-AaBFS-M1-alkB-F93S-rr-rrr、又はpBBR-MVA-AaBFS-M1-alkB-W189S-rr-rrrを保有するロドバクター属(Rhodobacter)コロニーを選択した。得られた株を、プラスミドに因んで命名した。
【0340】
株(IS6a)Rs265-9c-pBBR-MVA-AaBFS-M1-alkB-F93S-rr-rrr及び(IS6b)Rs265-9c-pBBR-MVA-AaBFS-M1-alkB-W189S-rr-rrrを、実施例3に記載されているように、2mlのn-ドデカンをオーバーレイとして使用して、20mlのRS102培地で培養した。培養して72時間後にn-ドデカン層を採取し、GC-MSで分析した。
【0341】
定量分析から、株(IS6a)Rs265-9c-pBBR-MVA-AaBFS-M1-alkB-F93S-rr-rrr及び(IS6b)Rs265-9c-pBBR-MVA-AaBFS-M1-alkB-W189S-rr-rrrの両方で、ドデカン1kgにつき16.0gのファルネセンが生成されたことが明らかとなった。株(IS6a)Rs265-9c-pBBR-MVA-AaBFS-M1-alkB-F93S-rr-rrrでは、ドデカン1kgにつき0.81gのシネンサールが生成された一方で、(IS6b)Rs265-9c-pBBR-MVA-AaBFS-M1-alkB-W189S-rr-rrrでは、ドデカン1kgにつき0.51gのシネンサールが生成された。従って、M1-alkBにおける変異の両方が、より高いシネンサール生成に寄与していると思われる。
【0342】
配列番号17及び配列番号18の核酸配列は、F93Sの点変異を有するアルカン酸化系構成要素a及びc、すなわちM1-alkB-F93S-rr-rrr、並びにW189Sの点変異を有するアルカン酸化系構成要素a及びc、すなわちM1-alkB-W189S-rr-rrrに相当する。
【0343】
【0344】
【0345】
【0346】
実施例7:点変異
alkBタンパク質の93位は、フェニルアラニンをコードしている。F93位をセリンに変更し、このM1-alkBをβ-ファルネセンシンターゼ、ルブレドキシン、及び任意選択によりルブレドキシンレダクターゼと組み合わせて導入した。この点変異は、β-シネンサールの生産性の向上と関連するものであった。この点変異はまた、副生成物としてのファルネソールと同様に、酸化テルペン最終生成物にも関連するものであった。
【0347】
93位で観察される点変異には、F93V、F93I、F93A、F93R、F93W、F93T、F93Gが含まれる。これらのうち、F93Aは、β-ファルネセンシンターゼと組み合わせた場合に、最も多い量のβ-シネンサールを生成した。F93A変異体では、ファルネソールの形成は観察されなかった。
【0348】
【0349】
上記の表2は、alkBタンパク質の93番目の残基を点変異することによって得られたβ-ファルネセン及びβ-シネンサールの72時間にわたる量を示す。93番目の残基は、本来は「F」である。株(IS7a)、すなわちRs265-9c-pBBR-MVA-AaBFS-M1-alkB-F93S-rr-rrr-2、(IS7b)、すなわちRs265-9c-pBBR-MVA-AaBFS-M1-alkB-F93V-rr-rrr、(IS7c)、すなわちRs265-9c-pBBR-MVA-AaBFS-M1-alkB-F93G-rr-rrr及び(IS7d)、すなわちRs265-9c-pBBR-MVA-AaBFS-M1-alkB-F93A-rr-rrrに関連するF93S、F93V、F93G、F93Aの点変異は、本来の93番目の位置にFを有するalkBと比較して、β-ファルネセン及びβ-シネンサールの生成の向上と関連するものであった。
【0350】
しかしながら、F93R、F93I、F93W、F93Tの点変異は、酸化テルペン生成物の生成の向上とは関連せず、この向上は本来の93番目の残基、すなわち「F」に関するものであった。
【0351】
実施例8:MVAを含まない、構成要素dの非存在下におけるシネンサールの生成
上記の実施例3と同様に、コンストラクトRs265-9c-pBBR-AaBFS-M1-alkB-rr-rrrを保有する株IS8について検証した。実施例3との違いは、株IS8がルブレドキシンレダクターゼ又は別の外来構成要素dを含まず、また異種MVA経路を含まないことであった。結果として得られた、生成されたシネンサールの量は、IS2のシネンサールの生成に匹敵するものであり、構成要素a、b及びcだけで酸化テルペン生成物であるシネンサールを生成するのに十分なものであったことが実証された。
【0352】
実施例9
上記の実施例3におけるalkBコンストラクトの検証と同様に、配列番号44のコンストラクトを検証した。この結果から、CMR5cタンパク質もまた、アルカン酸化系におけるオキシダーゼ酵素として適していることが示された。
【0353】
実施例10
上記に記載する変異ポリペプチドの調製方法に基づいて、配列番号25~42の変異ポリペプチドを得た。
図7a及び7bは、示された位置に保存アミノ酸を有する本発明のポリペプチドのアライメントを示す。本発明のポリペプチド変異体は、
図7a及び7bに示される位置に保存アミノ酸を含んでいる。図中では、保存アミノ酸の位置は、黒い背景に白いフォントの文字で示されている。
【0354】
実施例11
上記で開示される方法に基づいて、上述のロドバクター属種(Rhodobacter sp.)の株を用いて更なる実験的分析を行った。一方の株を、アルカン酸化系の構成要素a、b、c、及びdの全てを保有するように発生させた。もう一方の株は、構成要素a(オキシダーゼ酵素)及び構成要素b(テルペンシンターゼ)のみを保有し、構成要素c(ルブレドキシン)及び構成要素d(ルブレドキシンレダクターゼ)を保有しないように発生させた。どちらの株においても、β-ファルネセンからβ-シネンサールに酸化することが示された。
【0355】
下記の表3は、株に対するβ-ファルネセン及びβ-シネンサールの72時間後の量を示す。
【0356】
【配列表】
【国際調査報告】