(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】パッシベーティングコンタクト構造体、その製造方法及びそれを用いた太陽電池
(51)【国際特許分類】
H01L 31/068 20120101AFI20240725BHJP
H01L 31/0216 20140101ALI20240725BHJP
【FI】
H01L31/06 300
H01L31/04 240
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506981
(86)(22)【出願日】2022-08-05
(85)【翻訳文提出日】2024-04-05
(86)【国際出願番号】 CN2022110671
(87)【国際公開番号】W WO2023011653
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】202110897352.1
(32)【優先日】2021-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】323007401
【氏名又は名称】▲天▼合光能股▲フン▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ペーター・オルターマット・ピエトロ
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ ▲芸▼▲チ▼
(72)【発明者】
【氏名】高 ▲紀▼凡
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ ▲イ▼峰
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251AA02
5F251DA03
5F251FA02
5F251FA03
5F251FA06
5F251GA04
(57)【要約】
本発明は、太陽電池用のパッシベーティングコンタクト構造体、その製造方法及びそれを用いた太陽電池を提供している。パッシベーティングコンタクト構造体は、トンネリング層と、前記トンネリング層上に位置し、且つ、前記トンネリング層と接触している透明導電膜と、前記透明導電膜上に位置しているカバー層と、前記カバー層を通過して前記透明導電膜と接触しており、端面が前記透明導電膜内に位置している金属電極と、を備える。本発明に係る太陽電池用のパッシベーティングコンタクト構造体、その製造方法及びそれを用いた太陽電池は、導電性とパッシベーション作用の両方を果たすことができ、且つ、吸光損失を減少する効果も有している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池用のパッシベーティングコンタクト構造体であって、
トンネリング層と、
前記トンネリング層上に位置し、且つ、前記トンネリング層と接触している透明導電膜と、
前記透明導電膜上に位置しているカバー層と、
前記カバー層を通過して前記透明導電膜と接触しており、端面が前記透明導電膜内に位置している金属電極と、
を備えるパッシベーティングコンタクト構造体。
【請求項2】
前記透明導電膜は、第1のドーピングタイプの透明導電膜であることを特徴とする請求項1に記載のパッシベーティングコンタクト構造体。
【請求項3】
基板と、
前記基板上に位置している第1のドーピングタイプの第1の半導体層と、をさらに備え、
前記トンネリング層が前記第1の半導体層上に位置していることを特徴とする請求項1に記載のパッシベーティングコンタクト構造体。
【請求項4】
前記第1のドーピングタイプは、N型であることを特徴とする請求項2または3に記載のパッシベーティングコンタクト構造体。
【請求項5】
前記トンネリング層の厚さが0.5nm~3nmであることを特徴とする請求項1に記載のパッシベーティングコンタクト構造体。
【請求項6】
前記透明導電膜の厚さが10nm~300nmであることを特徴とする請求項1に記載のパッシベーティングコンタクト構造体。
【請求項7】
前記透明導電膜の材料は、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタンのいずれか一つであることを特徴とする請求項1に記載のパッシベーティングコンタクト構造体。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載のパッシベーティングコンタクト構造体を備える太陽電池。
【請求項9】
太陽電池用のパッシベーティングコンタクト構造体の製造方法であって、
トンネリング層を形成するステップと、
前記トンネリング層上に透明導電膜を形成するステップと、
前記透明導電膜上にカバー層を形成するステップと、
前記カバー層を通過して前記透明導電膜と接触し、端面が前記透明導電膜内に留める金属電極を形成するステップと、
を備える製造方法。
【請求項10】
基板上に第1のドーピングタイプの半導体層を形成するステップをさらに備え、
前記トンネリング層が前記半導体層上に形成されることを特徴とする請求項9に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に太陽電池に関し、特にパッシベーティングコンタクト構造体、その製造方法及びそれを用いた太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシリコン系太陽電池では、キャリアを収集するために金属グリッド線がシリコンと直接接触する。しかし、金属とシリコンが直接接触すると、余分なキャリアの再結合が大量に発生し、損失が生じる。シリコン系太陽電池における金属接触による再結合損失を低減するために、「パッシベーティングコンタクト」という概念が提案され、その原理は、あるタイプのキャリアが金属接触の先端のトンネリング層によってブロックされているため、金属接触界面では関連する再結合が発生しないということである。同時に、トンネリング層はパッシベーションされ、これはトンネリング層が多量のキャリア再結合をもたらさないことを意味し、それによって金属接触時のわずかな再結合損失の効果を実現している。
【0003】
しかし、従来のパッシベーティングコンタクト構造体には、一般的に非晶質シリコンを含み、当該シリコン材料を採用した多結晶層は、ほとんど光吸収が深刻であり、それによって、現有のパッシベーティングコンタクト構造体は金属グリッド線とシリコンとの直接接触による再結合損失を低減した上で、寄生光吸収損失を発生させた。そのため、全体的に、従来の、正面に配置されたパッシベーティングコンタクト構造体は、太陽電池のエネルギー変換性能の向上にあまり良い効果を発揮していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願が解決しようとする技術課題は、導電性とパッシベーション作用の両方を果たすことができ、且つ吸光損失を減少する効果を有しているパッシベーティングコンタクト構造体、その製造方法及びそれを用いた太陽電池を提供している。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の技術課題を解決するために、本発明は、太陽電池用のパッシベーティングコンタクト構造体を提供しており、トンネリング層と、前記トンネリング層上に位置し、且つ、前記トンネリング層と接触している透明導電膜と、前記透明導電膜上に位置しているカバー層と、前記カバー層を通過して前記透明導電膜と接触しており、端面が前記透明導電膜内に位置している金属電極と、を備える。
【0006】
本発明の一実施形態では、前記透明導電膜は、第1のドーピングタイプの透明導電膜である。
【0007】
本発明の一実施形態では、前記パッシベーティングコンタクト構造体は、基板と、前記基板上に位置している第1のドーピングタイプの第1の半導体層と、をさらに備え、前記トンネリング層が前記第1の半導体層上に位置している。
【0008】
本発明の一実施形態では、前記第1のドーピングタイプは、N型である。
【0009】
本発明の一実施形態では、前記トンネリング層は、その厚さが0.5nm~3nmである。
【0010】
本発明の一実施形態では、前記透明導電膜は、その厚さが10nm~300nmである。
【0011】
本発明の一実施形態では、前記透明導電膜の材料は、酸化亜鉛である。
【0012】
本発明の別の態様は、上記のパッシベーティングコンタクト構造体を備える太陽電池をさらに提供している。
【0013】
本発明の別の態様は、太陽電池用のパッシベーティングコンタクト構造体の製造方法をさらに提供しており、トンネリング層を形成するステップと、前記トンネリング層上に透明導電膜を形成するステップと、前記透明導電膜上にカバー層を形成するステップと、前記カバー層を通過して前記透明導電膜と接触し、端面が前記透明導電膜内に留める金属電極を形成するステップと、を備える。
【0014】
本発明の一実施形態では、前記製造方法は、基板上に第1のドーピングタイプの半導体層を形成するステップをさらに備え、前記トンネリング層が前記半導体層上に形成される。
【発明の効果】
【0015】
従来技術と比較して、本発明は以下の利点を有している。
【0016】
本発明に係る太陽電池用のパッシベーティングコンタクト構造体、それを用いた太陽電池及び製造方法は、透明導電膜とトンネリング層とを組み合わせて使用することにより、導電性と金属‐非金属領域のパッシベーティングコンタクトの両方の役割を果たすことができ、シリコン系太陽電池におけるキャリア再結合損失を効果的に低減することができる。同時に、この透明導電膜の高い光透過性により、入射光の吸光損失を低減する効果もあり、太陽電池全体としてのエネルギー変換効率を向上させることができる。
【0017】
以下の実施形態およびその図面を用いて、本発明の特徴、性能についてさらに説明している。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る太陽電池のパッシベーティングコンタクト構造体の構成概略図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る本発明のパッシベーティングコンタクト構造体を採用したP型基板太陽電池の構成概略図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る本発明のパッシベーティングコンタクト構造体を採用したN型基板太陽電池の構成概略図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る太陽電池に用いるパッシベーティングコンタクト構造体の製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本願の実施形態の技術案をより明確に説明するために、実施形態の説明に必要な図面を以下に簡単に説明する。明らかに、以下の説明における図面は、本願のいくつかの例または実施形態にすぎず、本分野の当業者にとっては、進歩性的な労力を要することなく、これらの図面に基づいて本願を他の類似のシナリオに適用することもできる。言語環境から明らかにしたり、別の説明をしたりしない限り、図中の同じ符号は、同じ構成または操作を表している。
【0020】
本願および特許請求の範囲に示されるように、文脈では例外を明示的に示唆しない限り、「一」、「一つ」、「一種」、および/または「その」などの用語は、特に単数を指すものではなく、複数を含むこともある。一般的に、「備える」および「含む」という用語は、明確に識別されたステップおよび要素を含むことを示すだけであり、これらのステップおよび要素は排他的な羅列を構成せず、方法または装置は、他のステップまたは要素を含む場合がある。
【0021】
特に明記されない限り、これらの実施形態で説明された部品およびステップの相対的な配置、数値式および数値は、本願の範囲を制限しない。一方、図面に示された各部分の寸法は、説明を容易にするために実際の比例関係では描かれていないことが理解されるべきである。関連分野の当業者に知られている技術、方法及び装置については、詳細な議論は行われないかもしれないが、適切な場合には、当該技術、方法及び装置は、特許された明細書の一部とみなされるものとする。ここに示され、議論されているすべての例において、任意の具体的な値は、限定としてではなく、単なる例示的なものとして解釈されるべきである。従って、例示的な実施形態の他の例は、異なる値を有することができる。以下の図面では、類似の符号及びアルファベットが類似項を示していることに留意すべきである。したがって、ある項が1つの図面で定義されれば、それ以降の図面ではそれについてさらに議論する必要はない。
【0022】
本願の明細書においては、理解していただきたいのは、「前、後、上、下、左、右」、「横方向、縦方向、垂直、水平」、及び「頂部、底部」などの方位語によって示される方位又は位置関係は、通常、図面に示される方位又は位置関係に基づいたものであり、本出願の説明を容易にし、説明を簡略化するためだけである。これらの方位語は、別段の説明なしに、指定された装置又は要素が特定の方位を有し、又は特定の方位で構成され、動作しなければならないことを示し又は暗示するものではなく、したがって、本願の保護の範囲を限定するものと理解することはできない。「内、外」という方位語は、各部品自体に対する輪郭の内外を意味する。
【0023】
説明を容易にするために、図面に示された1つの部品または特徴と他の部品または特徴との空間位置関係は、「…の上」、「…の上方」、「…の上面」、「上面における」などの空間的な関係語を使用してここで説明することができる。空間的な関係語は、使用中または動作中の部品の、図面に示された方向以外の方向を含むことを意図していることが理解されるであろう。例えば、図面中の部品を反転すると、「他の部品または構造の上方にある」または「他の部品または構造の上にある」と記載されている部品は、「他の部品または構造の下方にある」または「他の部品または構造の下にある」のように位置づけられている。したがって、例示的な用語「…の上方」は、「…の上方」および「…の下方」という2つの方位を含むことができる。当該部品はまた、他の異なる方法で(90度回転または他の向きで)位置決めされてもよく、ここで使用される空間的な相対記述について適切に説明されてもよい。
【0024】
また、「第一」、「第二」等の言葉を用いて部品を限定するのは、単に対応する部品を区別しやすくするためであり、別途の声明がなければ、上記の言葉には特別な意味がないので、本願の保護範囲に対する制限と理解することはできないことを説明しておく必要がある。さらに、本願で使用されている用語は公知の用語から選択されるが、本願の明細書に記載されている用語の中には、出願人が自己の判断で選択したものもあり、その詳細な意味は、本明細書の説明の関連する部分で説明される。また、使用されている実際の用語だけでなく、個々の用語に含まれる意味でも本願を理解することが求められる。
【0025】
ある部品が「別の部品の上に」、「別の部品に接続」、「別の部品に結合」、または「別の部品に接触」と呼ばれる場合、それは直接別の部品の上にあるか、接続されているか、結合されているか、または別の部品に接触していてもよく、または挿入された部品が存在していてもよいことが理解されるべきである。これに対し、ある部品が「他の部品に直接」、「直接接続」、「直接結合」、「直接接触」と呼ばれる場合には、挿入部品は存在しない。同様に、ある部品が他の部品に「電気的に接触している」または「電気的に結合している」と呼ばれる場合、当該第1の部品と第2の部品との間に電流を流すことができる電気経路が存在する。この電気経路は、コンデンサ、結合されたインダクタ、および/または電流を流すことができる他の部品を含むことができ、さらに導電性部材同士が直接接触していなくてもよい。
【0026】
本発明の一実施形態は、太陽電池用のパッシベーティングコンタクト構造体を提案しており、透明導電膜とトンネリング層とを併用することにより、導電性とパッシベーションの両方を奏し、吸光損失を低減する効果もある。
【0027】
図1は、本発明の一実施形態の太陽電池のパッシベーティングコンタクト構造体10の構成概略図であり、当該パッシベーティングコンタクト構造体10は、太陽電池の表面または裏面に使用することができる。
図1によれば、パッシベーティングコンタクト構造体10は、トンネリング層11、透明導電膜12、カバー層13及び金属電極14をこの順に備えている。
【0028】
具体的には、トンネリング層11は、透明導電膜12内への正孔の進入を阻止することができる。トンネリング層は、材質の観点から一般に酸化ケイ素であってもよいが、本発明におけるトンネリング層の材料はこれに限定されず、本発明の他の実施形態では、トンネリング層は他の材料で形成されていてもよい。一方、寸法の観点から、本発明のいくつかの実施形態では、トンネリング層11の厚さは、0.5nm~3nmである。
【0029】
さらに、透明導電膜12は、トンネリング層11上に位置し、かつ、トンネリング層11と直接接触しており、両者の間に他の電池階層構造を有していない。この透明導電膜12の材料は、酸化亜鉛であることが好ましい。ただし、透明導電膜12は、酸化ケイ素や酸化アルミニウム等の他の材料であってもよい。例示的には、本発明のいくつかの実施形態では、当該透明導電膜12の厚さは、10nm~300nmである。
【0030】
さらに、カバー層13は、透明導電膜12上に位置しており、カバー層13は、透明導電膜12を保護する役割を果たすことができ、一般的には、窒化ケイ素、酸化アルミニウム等の材質である。例を挙げると、カバー層13は、水蒸気、PID(Potential Induced Degration)イオン、物理的な摩擦、焼結時の水素源損失、金属剥離等から透明導電膜12を保護することができる。
【0031】
最後に、金属電極14は、カバー層13を通過して透明導電膜12に接触しており、且つ、金属電極14の端面14aは、透明導電膜12内に位置している。ここで、金属電極14の材質は、銀、アルミニウム又は銅などであってもよく、本発明は、金属電極の材料選択に制限を与えない。実際に太陽電池を作製する工程において、特に金属焼結工程において、金属である金属電極14が最上面のカバー層13を通過した後、透明導電膜12に接触するがトンネル層11に到達しなく損傷を与えることがない状態に至るまでの金属腐食性を確保している。
【0032】
本発明のいくつかの実施形態では、
図1に示すような透明導電膜12は、第1のドーピングタイプの透明導電膜である。具体的には、この第1のドーピングタイプはN型であってもよく、透明導電膜12はN型ドープされた透明導電膜である。例示的には、透明導電膜12の材料が酸化亜鉛である場合には、パッシベーティングコンタクト構造体10を作製する際に、ペースト中にアルミニウムを適量添加することができる。これにより、酸化亜鉛と金属との接触領域のN型ドーピングを強化することができ、透明導電膜12から金属電極14への電子の伝達を容易にすることができる。
【0033】
まとめて言えば、透明導電膜12は、高度にドーピングする必要がなく、電子の縦方向の輸送を提供する役割を果たすだけでよい。製造過程において、この透明導電膜12は金属電極14の端面14aを受け入れ、底部のトンネリング層11を破壊から有効に保護することができ、電池製造が完了した後、電池内部での電子の効率的な収集と伝送を保証することができ、電池の実際の使用中に、その高い光透過性を利用して(この透明導電膜は、非常に高いドーピングを必要としないため)、太陽光の入射率を増加させ、従来のパッシベーション構成中のアモルファスシリコン及びポリシリコンの光吸収による影響を有効に解決することができる。
【0034】
上記の構成に加えて、
図1に示す実施形態では、パッシベーティングコンタクト構造体10は、基板15と、上記の第1のドーピングタイプを採用する第1の半導体層16とをさらに含み、第1の半導体層16は基板15上に位置しており、且つ、トンネリング層11はこの第1の半導体層16上に位置している。例示的には、この基板15の材質はシリコンである。本発明のいくつかの実施形態では、この第1の半導体層16はN型ドープされた半導体層である。N型ドーピングは、基板15(即ち、シリコンバルク)内の横方向伝導を増加させ、透明導電膜12との接触をより良好に形成するために選択される。例示的には、N型ドープされた第1の半導体層16は、リンまたはガリウムのような物質をドーピングすることによって実現することができ、本発明はこれに対して限定を加えない。本発明の実施形態では、基板15自体は、P型ドーピングであってもよく、N型ドーピングであってもよい。P型ドーピングは、ホウ素またはガリウムをドーピングすることにより実現でき、N型ドーピングは、リンまたはヒ素により実現できる。
【0035】
なお、この第1の半導体層16の作製は、作製プロセスによって、この基板15上に独立して作製してもよいし、この基板15中にドーピングして作製してもよいので、作製のプロセスを限定するものではなく、作製完了後に、
図1に示すように、基板15上にN型ドープされた第1の半導体層16が形成されている。
【0036】
本発明は、透明導電膜(酸化亜鉛等)をトンネリング層に直接に接触させて併用する構成を採用しており、パッシベーションの効果をともに奏する。この透明導電膜は、実際の太陽電池の製造工程において、特に金属焼結工程において、直接接触するトンネリング層を破壊から効果的に保護することができ、電池の製造終了後には、効率的な電子の収集及び伝送を保証することができる。
【0037】
それ以外に、透明導電膜とトンネリング層を併用する構成は、既存のパッシベーション構成における多結晶シリコン層の光吸収による影響を回避しており、透明導電膜の高い光透過性を利用することにより、本発明のパッシベーティングコンタクト構造体は、パッシベーティングコンタクト効果を提供すると同時に、光吸収損失を効果的に減少させることができる。例を挙げると、エリプソメータを使用して、アルミニウムドープされたZnO(即ち、本発明の一実施形態の太陽電池用のパッシベーティングコンタクト構造体における透明導電膜)を、従来の太陽電池のパッシベーティングコンタクトを提供する材料である多結晶シリコンと対比すると、アルミニウムドープされたZnOの消光係数は波長の632nmで約0.017であり、多結晶シリコンは同じ波長で0.252である。このことから、本発明のパッシベーティングコンタクト構造体を採用することにより、吸光損失を著しく減少させ、太陽電池のエネルギー変換効率を向上させ、太陽電池の性能を最適化することができる。
【0038】
上記の太陽電池のパッシベーティングコンタクト構造体に加えて、本発明の一実施形態は、上記のパッシベーティングコンタクト構造体を含む太陽電池も提案する。このようなパッシベーティングコンタクト構造体を有する太陽電池は、従来のパッシベーティングコンタクト構造体を有する太陽電池と比較して、多結晶シリコン層による光吸収の悪影響を回避し、エネルギーの変換効果を向上させることができる。
【0039】
図2は、本発明の一実施形態にける、本発明のパッシベーティングコンタクト構造体を採用するTOPerc(パッシベーティングエミッタおよび背面電池(PERC)の裏面構成とTOPCon電池の正面構造との組み合わせ)太陽電池20の構成図である。本実施形態の太陽電池20はP型基板の電池であるが、本発明はこのような構成タイプに限定されるものではない。
図2に示すように、太陽電池20の上半分(即ち、正極部分)は、
図1に示すようなパッシベーティングコンタクト構造体を採用しており、具体的には、トンネリング層21、透明導電膜22、カバー層23、正面の金属電極241、P型基板25、N型ドープされた第1の半導体層26から構成されている。例示的には、本発明の一実施形態では、P型基板25はP型シリコン基板であり、第1の半導体層26はN型ドーピング(例えば、リンドーピング)であり、トンネリング層21は酸化シリコンであり、透明導電膜22はアルミニウムドープされた酸化亜鉛であり、カバー層23は窒化ケイ素であるが、本発明の太陽電池はこのような材料選択に限定されない。
【0040】
その上で、太陽電池20の裏面には、P型基板25の下にパッシベーション層27およびパッシベーション反射防止膜28と、裏面の金属電極242が設けられている。パッシベーション層27の材料は例えばアルミナであり、パッシベーション反射防止膜28の材料は例えば窒化ケイ素である。裏面の金属電極242は、P型基板25内に位置する端面にはアルミニウムバックフィールド29をさらに有している。これらの構成は従来のPERC電池構成であり、本発明の重点ではないのでここでは展開しない。
【0041】
同様に、
図3に示すように、本発明のパッシベーティングコンタクト構造体を採用した本発明の一実施形態のN型太陽電池の構造概略図である。太陽電池30の裏面は、上述したパッシベーティングコンタクト構造体を有する。具体的には、太陽電池30は、トンネリング層31と、透明導電膜32と、カバー層33と、裏面の金属電極341と、N型基板35と、N型ドープされた第1の半導体層36とを備えている。さらに、太陽電池30の正面には、正面の金属電極342、パッシベーション反射防止膜39、パッシベーション層38、エミッタ37が設けられている。例示的には、パッシベーション反射防止膜39は例えば窒化ケイ素であり、パッシベーション層は例えばアルミナであり、エミッタ37は例えばボロン拡散エミッタである。例示的には、本発明の一実施形態では、N型基板35はN型シリコン基板であり、第1の半導体層36はN型ドーピング(例えば、リンドーピング)であり、トンネリング層31は酸化シリコンであり、透明導電膜32はアルミニウムドープされた酸化亜鉛であり、カバー層33は窒化ケイ素である。同様に、本発明の太陽電池は、このような材料選択に限定されない。
【0042】
上記の太陽電池は、その正面または裏面に本発明のパッシベーティングコンタクト構造体を適用しており、その透明導電膜が高い光透過性を有し、トンネリング層と組み合わせて用いることにより、パッシベーティングコンタクト効果が得られる上に、従来のパッシベーション層としてポリシリコンを用いた太陽電池に比べて吸光損失を低減する効果も得られる。しかしながら、本発明は、
図2および
図3に示す実施形態に限定されるものではなく、例えば、本発明のいくつかの実施形態では、太陽電池の正面および裏面の両方が上述したパッシベーティングコンタクト構造体を採用して、異なる応用シナリオにおいてパッシベーティングコンタクト効果をより良く提供しながら、光吸収損失を効果的に低減することができる。
【0043】
本発明の別の実施形態は、上記の太陽電池用のパッシベーティングコンタクト構造体の製造方法をさらに提案する。
図4に示すように、製造方法40は、以下のステップを含む。
【0044】
ステップ41は、トンネリング層を形成するステップである。トンネリング層は、例えば、熱酸素反応によって堆積することができる。本発明の一実施形態では、堆積温度は750℃であり、最終的に形成されるトンネリング層の厚さは1.5nmである。
【0045】
ステップ42は、トンネリング層上に透明導電膜を形成するステップである。本発明の一実施形態では、透明導電膜を形成する方式として、ALD法(原子層堆積法)を用いてトンネリング層上に透明導電膜ZnOを片面堆積し、堆積温度は200℃であり、最終的に形成される透明導電膜の厚さは60nmである。
【0046】
ステップ43は、透明導電膜上にカバー層を形成するステップである。具体的には、本発明のいくつかの実施形態では、カバー層を作製するこのステップ43は、チューブ型PECVD(プラズマ強化化学気相成長)法を使用してカバー層としてSiNxを作製することができる。
【0047】
ステップ44では、カバー層を通過して透明導電膜に接し、端面が透明導電膜内に留める金属電極を形成するステップである。
【0048】
上記の各ステップに基づいて、本発明のいくつかの実施形態では、太陽電池用のパッシベーティングコンタクト構造体を製造する方法は、基板上に第1のドーピングタイプの半導体層を形成するステップをさらに含み、且つ、上記のステップ41で形成されたトンネリング層は、この半導体層上に形成され、この第1のドーピングタイプはN型であってもよい。本発明の太陽電池用のパッシベーティングコンタクト構造体の製造方法に関する他の詳細および技術効果は、パッシベーティングコンタクト構造体および本発明のパッシベーティングコンタクト構造体を有する太陽電池に対する前述の説明を参照することができ、ここではこれ以上言及しない。
【0049】
本願において、
図4は、本願の実施形態によるシステムによって実行される動作を示すためにフローチャートを使用する。上記または以下の動作は、必ずしも順序に従って正確に実行されるとは限らないことを理解すべきである。逆に、様々なステップを逆の順序で処理することも、同時に処理することもできる。また、これらのフローに別の動作を追加したり、これらのフローから1つまたは複数のステップの動作を除去したりすることもできる。
【0050】
図2を参照すると、一実施形態では、上記のパッシベーティングコンタクト構造体を有するTOPerc太陽電池(P型基板電池を例として)の製造方法は、以下のとおりである。
【0051】
(1)P型シリコン基板25を選択し、表面にフロック加工を施す。
【0052】
(2)ステップ(1)で処理されたシリコンウェーハを洗浄した後、拡散炉に入れてリン拡散を行い、N型ドーピングされた第1の半導体層26を形成するとともに、PN接合及びリンシリコンガラス(PSG)を形成する。
【0053】
(3)シリコンウェーハの一面をフッ酸洗浄後、片面エッチング洗浄機を用いて裏面PSGを除去する。
【0054】
(4)シリコンウェーハの裏面研磨を行い、このとき正面がPSGにより保護されるため影響を受けず、その後、濃硫酸、フッ化水素酸、アンモニア水、フッ化水素酸、塩酸、フッ化水素酸洗浄を順次行い、シリコンウェーハを洗浄し、表面PSG膜を除去する。
【0055】
(5)シリコンウェーハを管状炉に入れて熱酸素反応を行い、トンネリング層21として酸化シリコンを堆積し、堆積温度は750℃、膜厚は約1.5nmである。
【0056】
(6)(原子層堆積)ALD法を用いてシリコンウェーハのトンネリング層21上にドープなしのZnOまたはZnO:Al層を透明酸化膜22として片面堆積し、堆積温度は200℃、厚さは60nmである。
【0057】
(7)裏面パッシベーション膜堆積を行い、パッシベーション層27とパッシベーション反射防止膜28として、管式PECVD法を用いて、シリコンウェーハ裏面にアルミナ/窒化ケイ素層堆積を順次行った。その後、正面にカバー層23を堆積し、即ち、管式PECVD法を用いて窒化ケイ素層を順次作製する。
【0058】
(8)レーザを用いて裏面のパッシベーション層27とパッシベーション減反射膜28を開放する。
【0059】
(9)正面、裏面の金属電極241、242及び微細なグリッド線を印刷して焼結する。
【0060】
図3を参照すると、一実施形態において、上述のパッシベーティングコンタクト構造体を有する、N型基板電池を例とする製造方法は以下の通りである。
【0061】
(1)N型シリコン基板35を選択し、表面にフロック加工を施す。
【0062】
(2)ステップ(1)で処理されたシリコン基板35を洗浄した後、拡散炉に入れ、シリコンウェーハをホウ素拡散し、P+型ドープされたエミッタ37を形成するとともに、ホウ素シリコンガラス(BSG)を形成する。
【0063】
(3)シリコンウェーハの一面をHF酸洗浄し、この面を裏面とし、片面エッチング洗浄機を用いて裏面BSGを除去し、シリコンウェーハを洗浄する。
【0064】
(4)シリコンウェーハを裏面研磨し、二次フロック加工を行い、その際に正面がBSGにより保護されるため、影響を受けずにシリコンウェーハを洗浄する。
【0065】
(5)洗浄されたシリコンウェーハを管式拡散炉に入れ、裏面をリン拡散し、n++ドーピング層36を形成する。その後、シリコンウェーハをHF酸洗浄し、裏面のPSG及び正面のPSG、BSGを除去する。
【0066】
(6)シリコンウェーハを管式炉に入れて熱酸素反応を行い、トンネリング層31として酸化シリコンを堆積し、堆積温度は750℃、膜厚は約1.5nmである。
【0067】
(7)(原子層堆積)ALD法またはPECVD法を用いてトンネリング層31上にドープなしのZnOまたはドープありのZnO:Al層を透明酸化膜32として堆積し、堆積温度は200℃(ALD)または350℃(PECVD)であり、厚さは100nmである。
【0068】
(8)裏面カバー層33の堆積を行い、即ち、管式PECVD法を用いてシリコンウェーハ裏面に窒化ケイ素層堆積を行う。その後、正面にパッシベーション層38とパッシベーション反射防止層39の堆積を行い、即ち、管式PECVD法を用いてアルミナ/窒化ケイ素層を順次作製し、ALD法を用いてAlOxを堆積してもよい。
【0069】
(9)正面、裏面の金属電極341、342及び微細なグリッド線を印刷して焼結する。
【0070】
上記では、基本的な概念について説明したが、本分野の当業者にとって、上記の開示が一例に過ぎないことは、自明であり、本出願を限定するものではない。ここでは明記されていないが、本分野の当業者は、本出願に対して様々な修正、改良、及び補正を行う可能性がある。このような修正、改善、および補正は、本出願において提案されているので、本出願の例示的な実施形態の精神および範囲に属する。
【0071】
同時に、本出願は、特定の用語を使用して本出願の実施形態を説明している。例えば、「一つの実施形態」、「一実施形態」、および/または「いくつかの実施形態」は、本願の少なくとも1つの実施形態に関連する特徴、構成、または特徴を意味する。従って、本明細書において異なる場所で2回以上言及されている「一実施形態」または「一つの実施形態」または「一つの代替的な実施形態」は、必ずしも同じ実施形態を意味するものではないことが強調され、留意されるべきである。さらに、本願の一つまたは複数の実施形態におけるいくつかの特徴、構成、または特徴を適切に組み合わせることができる。
【0072】
同様に、1つまたは複数の発明の実施形態の理解を容易にするために、本明細書に開示された表現を簡略化するために、本願の実施形態の前述の説明では、複数の特徴が、1つの実施形態、図面、またはそれらの説明に統合されることがあることに留意されたい。しかし、この開示方法は、請求項に記載された特徴よりも、本願の対象に必要な特徴が多いことを意味するものではない。実際には、実施形態の特徴は、上記に開示された単一の実施形態の全ての特徴よりも少ない。
【0073】
いくつかの実施形態では、構成要素、属性の数を記述する数字が使用されるが、そのような実施形態を記述するための数字は、いくつかの例では、修飾語「約」、「概略的に」、または「大体」を使用して修飾されることが理解されるべきである。別段の記載がない限り、「約」、「概略的に」、または「大体」は、数値が±20%の変化を許容することを意味する。したがって、いくつかの実施形態では、明細書および請求項で使用される数値パラメータは近似値であり、この近似値は、個々の実施形態に必要とされる特徴に応じて変更され得る。いくつかの実施形態では、数値パラメータは、所定の有効桁数を考慮し、一般的な桁数保持の方法を採用すべきである。本願のいくつかの実施形態では、その範囲の広さを確認するために使用される数値フィールドおよびパラメータは近似値であるが、特定の実施形態では、そのような数値の設定は、可能な範囲内で可能な限り正確である。
【0074】
本願は現在の具体的な実施形態を参照して説明されているが、上述の実施形態は本願を説明するためのものであり、本願の精神から逸脱することなく種々の等価な変化または置換を行うことができるので、本願の実質的な精神的範囲内で上記実施形態の変化、変形が本願の請求項の範囲内に収まる限りである。
【国際調査報告】