IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イー・エイチ・エル・バイオ カンパニー リミテッドの特許一覧

特表2024-529034尿由来幹細胞の培養のための培地組成物、これを用いた尿由来幹細胞の分離及び培養方法、腎臓疾患治療機能が向上した尿由来幹細胞及びこれを含む細胞治療剤組成物
<>
  • 特表-尿由来幹細胞の培養のための培地組成物、これを用いた尿由来幹細胞の分離及び培養方法、腎臓疾患治療機能が向上した尿由来幹細胞及びこれを含む細胞治療剤組成物 図1
  • 特表-尿由来幹細胞の培養のための培地組成物、これを用いた尿由来幹細胞の分離及び培養方法、腎臓疾患治療機能が向上した尿由来幹細胞及びこれを含む細胞治療剤組成物 図2
  • 特表-尿由来幹細胞の培養のための培地組成物、これを用いた尿由来幹細胞の分離及び培養方法、腎臓疾患治療機能が向上した尿由来幹細胞及びこれを含む細胞治療剤組成物 図3
  • 特表-尿由来幹細胞の培養のための培地組成物、これを用いた尿由来幹細胞の分離及び培養方法、腎臓疾患治療機能が向上した尿由来幹細胞及びこれを含む細胞治療剤組成物 図4
  • 特表-尿由来幹細胞の培養のための培地組成物、これを用いた尿由来幹細胞の分離及び培養方法、腎臓疾患治療機能が向上した尿由来幹細胞及びこれを含む細胞治療剤組成物 図5
  • 特表-尿由来幹細胞の培養のための培地組成物、これを用いた尿由来幹細胞の分離及び培養方法、腎臓疾患治療機能が向上した尿由来幹細胞及びこれを含む細胞治療剤組成物 図6
  • 特表-尿由来幹細胞の培養のための培地組成物、これを用いた尿由来幹細胞の分離及び培養方法、腎臓疾患治療機能が向上した尿由来幹細胞及びこれを含む細胞治療剤組成物 図7
  • 特表-尿由来幹細胞の培養のための培地組成物、これを用いた尿由来幹細胞の分離及び培養方法、腎臓疾患治療機能が向上した尿由来幹細胞及びこれを含む細胞治療剤組成物 図8
  • 特表-尿由来幹細胞の培養のための培地組成物、これを用いた尿由来幹細胞の分離及び培養方法、腎臓疾患治療機能が向上した尿由来幹細胞及びこれを含む細胞治療剤組成物 図9
  • 特表-尿由来幹細胞の培養のための培地組成物、これを用いた尿由来幹細胞の分離及び培養方法、腎臓疾患治療機能が向上した尿由来幹細胞及びこれを含む細胞治療剤組成物 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】尿由来幹細胞の培養のための培地組成物、これを用いた尿由来幹細胞の分離及び培養方法、腎臓疾患治療機能が向上した尿由来幹細胞及びこれを含む細胞治療剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/074 20100101AFI20240725BHJP
   C12N 1/00 20060101ALI20240725BHJP
   A61K 35/28 20150101ALI20240725BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240725BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20240725BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240725BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
C12N5/074
C12N1/00 F
A61K35/28
A61P3/10
A61P13/12
A61P29/00
A61P37/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506991
(86)(22)【出願日】2022-04-19
(85)【翻訳文提出日】2024-02-01
(86)【国際出願番号】 KR2022005579
(87)【国際公開番号】W WO2023054825
(87)【国際公開日】2023-04-06
(31)【優先権主張番号】10-2021-0129299
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523446538
【氏名又は名称】イー・エイチ・エル・バイオ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】EHLBIO Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】40, Imi-ro, Uiwang-si, Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【弁理士】
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【弁理士】
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【弁理士】
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100152308
【弁理士】
【氏名又は名称】中 正道
(74)【代理人】
【識別番号】100201558
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 恵二郎
(72)【発明者】
【氏名】イ、ホン-キ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ソン-フン
(72)【発明者】
【氏名】キム、サン-ホン
(72)【発明者】
【氏名】ジン、チョン-ア
(72)【発明者】
【氏名】カン、テ-ウク
(72)【発明者】
【氏名】ソ、ヒョン-ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ソ、ス-ビン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、キュ-ソン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジェ-ウン
(72)【発明者】
【氏名】ユン、ジン-サン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヨン-ジュン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065BB19
4B065BB23
4B065BB40
4B065BC03
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB64
4C087DA32
4C087MA52
4C087MA55
4C087MA58
4C087MA60
4C087MA65
4C087NA05
4C087ZA81
4C087ZB08
4C087ZB11
4C087ZC35
(57)【要約】
本発明は、尿由来幹細胞の分離及び培養のための培養液、上記培養液を用いた尿由来幹細胞の分離及び培養方法、上記培養液で培養された尿由来幹細胞及びこれを含む細胞治療剤組成物に関するものである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿由来幹細胞の分離及び培養のための培養液であって、
上記培養液は、
ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)とハムのF-12(Ham’s F12)とを含む基礎培地;ウシ胎児血清;及び、副甲状腺ホルモン(PTH);を含み、
FGF23(Fibroblast Growth Factor 23)、T3(triiodothyronine)、カルシフェジオール(Calcifediol)、ウシ血清アルブミン、及び脂質混合物(chemically defined lipids)からなる群から選択される1種以上の添加剤をさらに含む、尿由来幹細胞の分離及び培養のための培養液。
【請求項2】
上記基礎培地は、上記ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)とハムのF-12(Ham’s F12)とを1:1~5:1の体積比で含み、
上記ウシ胎児血清は、全培養液に対して0.1体積%~10体積%で含まれ、
上記副甲状腺ホルモン(PTH)は、全培養液に対して1nM~2000nMで含まれる、請求項1に記載の尿由来幹細胞の分離及び培養のための培養液。
【請求項3】
上記基礎培地は、上記ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)とハムのF-12(Ham’s F12)とを2:1~3:1の体積比で含む、請求項1又は2に記載の尿由来幹細胞の分離及び培養のための培養液。
【請求項4】
上記ウシ胎児血清は、全培養液に対して2.5体積%~5体積%で含まれる、請求項1に記載の尿由来幹細胞の分離及び培養のための培養液。
【請求項5】
上記副甲状腺ホルモン(PTH)は、全培養液に対して100nM~1000nMで含まれる、請求項1に記載の尿由来幹細胞の分離及び培養のための培養液。
【請求項6】
上記FGF23(Fibroblast Growth Factor 23)は、全培養液に対して0.1ng/mL~200ng/mLで含まれる、請求項1に記載の尿由来幹細胞の分離及び培養のための培養液。
【請求項7】
上記T3(triiodothyronine)は、全培養液に対して0.1nM~40nMで含まれる、請求項1に記載の尿由来幹細胞の分離及び培養のための培養液。
【請求項8】
上記カルシフェジオール(Calcifediol)は、全培養液に対して1nM~1000nMで含まれる、請求項1に記載の尿由来幹細胞の分離及び培養のための培養液。
【請求項9】
上記ウシ血清アルブミンは、全培養液に対して0.1mg/mL~10mg/mLで含まれる、請求項1に記載の尿由来幹細胞の分離及び培養のための培養液。
【請求項10】
上記脂質混合物(chemically defined lipids)は、全培養液に対して0.1体積%~10体積%で含まれる、請求項1に記載の尿由来幹細胞の分離及び培養のための培養液。
【請求項11】
a)個体から尿を採取するステップ;
b)上記尿を遠心分離して細胞を収集するステップ;
c)上記細胞を洗浄した後、遠心分離するステップ;及び
d)上記遠心分離された細胞に、請求項1に記載の培養液を接種するステップ;
を含む、尿由来幹細胞の分離方法。
【請求項12】
尿由来幹細胞を、請求項1に記載の培養液に接種して培養するステップを含む、尿由来幹細胞の培養方法。
【請求項13】
上記培養方法で培養された尿由来幹細胞は、
(1)細胞増殖率が、KSFM及びDMEM/F12(1:1の体積比)培地で培養された尿由来幹細胞に比べて増加し、(2)幹細胞関連遺伝子であるOCT4、SOX2、Nanog、抗老化関連遺伝子であるFOXO1、FOXO3、腎臓特異的な治療因子であるクロトーの発現量が、KSFM及びDMEM/F12(1:1の体積比)培地で培養された尿由来幹細胞に比べて増加する、請求項12に記載の尿由来幹細胞の培養方法。
【請求項14】
請求項1に記載の培養液で培養される、尿由来幹細胞。
【請求項15】
上記尿由来幹細胞は、腎臓疾患治療機能が向上したものである、請求項14に記載の尿由来幹細胞。
【請求項16】
上記尿由来幹細胞は、CD73、CD90、CD105、CD146又はSSEA-4が陽性である、請求項14に記載の尿由来幹細胞。
【請求項17】
上記尿由来幹細胞は、自家、他家、又は異種由来のものである、請求項14に記載の尿由来幹細胞。
【請求項18】
上記尿由来幹細胞は、NGAL(Neutrophil gelatinase-associated lipocalin)レベルを減少させるものである、請求項14に記載の尿由来幹細胞。
【請求項19】
上記腎臓疾患は、糖尿病性腎症(Diabetic nephropathy)、慢性腎不全(Chronic Renal Failure)、急性腎不全(Acute Reanl Failure)、亜急性腎不全(Subacute Renal Failure)、糸球体腎炎、悪性腎硬化症、血管性微小血管症、移植拒絶、糸球体症、腎肥大、腎過形成症、蛋白尿、造影剤誘発性腎症、毒素により誘発される腎損傷、酸素フリーラジカル媒介腎症、及び腎炎からなる群から選択される1種以上である、請求項15に記載の尿由来幹細胞。
【請求項20】
請求項14~19のうちのいずれか1項に記載の尿由来幹細胞を有効成分として含む、腎臓疾患治療機能が向上した細胞治療剤。
【請求項21】
上記細胞治療剤は、経口、直腸、静脈内(intravenous therapy, i.v)、動脈内、腹腔内、筋肉内、胸骨内、経皮、局所、眼内、皮下又は皮内投与経路用の製剤である、請求項20に記載の腎臓疾患治療機能が向上した細胞治療剤。
【請求項22】
上記細胞治療剤は、薬剤学的担体をさらに含むものである、請求項20に記載の腎臓疾患治療機能が向上した細胞治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿由来幹細胞を培養するための培養液、特に、尿由来幹細胞のクロトー発現を強化させるための培養液に関する。また、本発明は、腎臓治療機能が強化された尿由来幹細胞の分離及び培養方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在使用されている慢性腎疾患治療剤は、腎臓組織の損傷を回復させることができないため、慢性腎疾患は、最後には末期腎不全に至り、治療法の発展にもかかわらず、死亡率は依然として高い(MJ Lee, 2020)。
【0003】
腎損傷を回復させるための新しい治療法を見出すために多くの努力がなされており、幹細胞を用いた治療法が台頭してきている。このうち、間葉幹細胞は、炎症と免疫反応の調節及び新生血管形成などの治療効能を有しており、慢性腎疾患を治療するための新しい治療剤としてその潜在性が認められている。現在、成体から得られて分化させ得る代表的な間葉系幹細胞の供給源として骨髄と脂肪が有用であるが、採取過程が侵襲的であるため、周囲の組織に損傷をもたらすことがあり、低い細胞収率と純度は、これらの細胞を治療法に適用するにあたって補完すべき問題点として残されている。従って、細胞採取過程において患者にひどい痛みと損傷を起こすことなく、体外培養が容易であり、長期培養後にも幹細胞の特性を良好に維持できる新しい細胞源の開発が求められている。
【0004】
本発明の幹細胞は、ヒト尿から簡単な分離過程によって分離し得る尿由来幹細胞(Urine-derived stem cell、UDSC)であり、腎臓の尿細管、腎乳頭細胞、糸球体壁の上皮細胞などに由来する上皮間葉転換(Epithelial-mesenchymal transition、EMT)の過程を経て生成される。現在、上皮細胞が細胞極性(Cell polarity)を失って脱落して間葉幹細胞のような治療的効能を有する細胞に変化する過程に対する詳細な究明がされていないが、このような過程を通じて形質転換された多能性細胞は、腎臓の復旧及び再生において重要な役割を果たすものと知られている。このような尿由来幹細胞は、他の幹細胞に比べて患者に痛みと後遺症を伴うことなく複数回獲得することが可能であり、増殖率が高くて短時間で多くの細胞数が得られ、一般的な間葉幹細胞においてよく発現されないテロメラーゼ活性を有しているため、細胞老化に対する抵抗性が高いと知られている(Qin et al. 2014)。
【0005】
尿由来幹細胞は、自己再生(Self-renewal)特性と、腎臓を構成する様々な細胞を生成し得る治療的可能性を有している。実際に、多くの研究において、尿由来幹細胞は、実験的に様々な細胞に分化することができ、血管新生を促進する様々な傍分泌因子(Paracrine factors)を分泌することが知られている。また、末梢血単核細胞(PBMC)及びT細胞、B細胞の増殖を抑制し、IL-6とIL-8などを分泌することにより、免疫調節機能を発揮することが示されている(Qin et al. 2014)。
【0006】
また、再生医学の観点から、一般的に臓器特異的幹細胞は、これらが分離又は起源された臓器の治療に理想的であることが知られている。このような理由から、尿由来幹細胞は、泌尿生殖系及び腎臓の治療及び再生に最適な選択肢となり得る。尿由来幹細胞は、大部分の腎臓組織を形成する平滑筋、上皮及び内皮細胞、足細胞などに分化することができ、これらの細胞は、腎臓機能を発揮し得る腎臓様組織の発達につながることが知られている(Qin et al. 2014)。
なお、クロトー(Klotho)は、代表的な抗老化の因子として知られている。クロトーは、初めてマウスの寿命を延長させる研究によって発見されたタンパク質であり、主に腎臓又は脳下垂体で発現されることが知られている(Kuro-o M et al., 1997)。クロトーは、主に腎臓の近位及び遠位尿細管から分泌され、人体内でホルモンのように働き、インスリン及びIGF-1細胞伝達経路に関与し、又は、カルシウム、リン、カリウムなどの内分泌系恒常性を維持するだけでなく、血管新生、抗酸化などの機能を果たすことが知られている。
【0007】
正常な生理学的条件で腎臓はクロトーの発現を維持する重要な役割を行うが、多くの論文において、腎臓が損傷を受けると、クロトーの発現も減少することが示されており、腎臓損傷に対する初期バイオマーカーとして研究されている(Qi Wang et al., 2018)。また、クロトー遺伝子を除去した腎疾患動物モデルに、組換えされたクロトータンパク質を投与してタンパク尿、血糖、糸球体濾過率などの回復を観察する研究が多数進められるなど、近年、クロトーが慢性腎臓損傷に対する潜在的な治療因子であることを示す研究が多数報告されている(Neyra et al., 2017)。
【0008】
従来の研究では、クロトーは、損傷した腎臓でミトコンドリアの機能を回復したり、イオンチャネルの恒常性維持及び抗酸化物質の生産能力を向上させるなど、細胞全体の代謝機能を上げて回復のためのメカニズムを活性化させることが知られている。関連メカニズムは、mTOR、NF-kB、AMPK、Wnt/β-カテニン、Nrf-2などの種々の信号伝達経路に関与することが知られている(Marlena T et al., 2021)。
【0009】
このように、近年、腎臓損傷を含む様々な慢性疾患治療剤の開発のためにクロトータンパク質が研究されている。患者にクロトータンパク質を伝達する方法としては、大別して、低分子薬物やペプチドを用いる方法と、核酸のような遺伝物質を用いる方法とが挙げられるが、効果の持続期間と安全性を克服する必要があるという限界がある。それで、本発明者らは、尿由来幹細胞の従来の培養技術に比べて、クロトーの発現を増加させて培養する技術を開発し、尿由来幹細胞のホーミング効果(静脈投与時に損傷した部位に集まる仕組み)と、クロトーの発現及び分泌による腎臓疾患動物モデルにおける効能を確認した。
【0010】
これと関連して、韓国公開特許第10-2021-0053725号には、尿由来幹細胞の培養のための培地組成物及びこれを用いた尿由来幹細胞の培養方法が開示されている。しかし、当該文献には、添加剤として副甲状腺ホルモン(PTH)を含む培養液について全く開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】韓国特許出願第10-2019-0139702号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明者らは、上記先行研究によって尿由来幹細胞の特性を研究した結果、尿由来幹細胞は、一般的な間葉系幹細胞の治療的特徴を有する細胞であると同時に、腎臓疾患治療的因子であるクロトーを発現する細胞であることを見出した。これは、一般的にクロトーを発現しない他の幹細胞と比較して、腎臓関連疾患において尿由来幹細胞がより高い治療効能を発揮し得る治療剤として使用できることを示唆する。近年、慢性腎疾患をはじめとする様々な腎臓疾患においてクロトーを治療剤として利用しようとする多くの研究が行われており、このような観点から、クロトーを自然に分泌し得る幹細胞である尿由来幹細胞は、特別な伝達技術を必要としない比較的安全なクロトーの人体への適用方法の代案となり得る。さらに、幹細胞の様々な治療的因子を分泌して腎臓疾患に優れた細胞治療剤として開発できるという点に着目した。
それで、本発明者らは、長期体外培養された尿由来幹細胞の増殖率及び幹細胞特性を優秀に維持しながらクロトーの発現を顕著に向上させ得る方法を講じて、本発明を完成するに至った。
本発明の目的は、尿由来幹細胞の体外での長期培養時においても尿由来幹細胞の増殖率及び幹細胞特性を優秀に維持すると共に、クロトーの発現を向上させ得る培養液、及び上記培養液を用いた尿由来幹細胞の分離及び培養方法を提供することにある。
また、本発明は、クロトーの発現増加による腎臓疾患治療機能が強化された尿由来幹細胞の製造方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、クロトーの発現増加による腎臓疾患治療機能が強化された尿由来幹細胞を有効成分として含む細胞治療剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の具現例において、尿由来幹細胞の分離及び培養のための培養液であって、上記培養液は、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)とハムのF-12(Ham’s F12)とを含む基礎培地、5%以下のウシ胎児血清、副甲状腺ホルモン(PTH)を含み、ウシ血清アルブミン、トリヨードチロニン(triiodothyronine、T3)及びウシ血清アルブミンからなる群から選択される1種以上の添加剤をさらに含む尿由来幹細胞の分離及び培養のための培養液を提供する。
【0014】
上記基礎培地は、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)とハムのF-12(Ham’s F12)とが1:1~5:1の体積比で混合されることが好ましく、2:1~3:1の体積比で混合されることがより好ましい。
上記ウシ胎児血清は、全培養液に対して0.1体積%~10体積%で添加されることが好ましく、2.5体積%~5体積%で添加されることがより好ましい。
上記ウシ血清アルブミンは、全培養液に対して0.1mg/mL~10mg/mLの濃度で含まれることが好ましく、2.5mg/mL~5mg/mLの濃度で含まれることがより好ましい。
【0015】
上記脂質混合物(Chemically defined lipids)は、全培養液に対して0.1体積%~10体積%の濃度で含まれることが好ましく、1体積%~5体積%の濃度で含まれることがより好ましい。
上記FGF23は、全培養液に対して0.1ng/mL~200ng/mLの濃度で含まれることが好ましく、10ng/mL~100ng/mLの濃度で含まれることがより好ましい。
上記T3は、全培養液に対して0.1nM~40nMの濃度で含まれることが好ましく、10nM~20nMの濃度で含まれることがより好ましい。
上記カルシフェジオールは、全培養液に対して1nM~1000nMの濃度で含まれることが好ましく、100nM~500nMの濃度で含まれることがより好ましい。
上記副甲状腺ホルモン(PTH)は、全培養液に対して1nM~2000nMの濃度で含まれることが好ましく、100nM~1000nMの濃度で含まれることがより好ましい。
【0016】
本発明の第2の具現例において、
a)個体から尿を採取するステップ;
b)上記尿を遠心分離して細胞を収集するステップ;
c)上記細胞を洗浄した後、遠心分離するステップ;及び
d)上記遠心分離された細胞に上記培養液を接種するステップ;
を含む尿由来幹細胞の分離方法を提供する。
本発明の第3の具現例において、上記尿由来幹細胞を上記培養液に接種して培養するステップを含む、尿由来幹細胞の培養方法を提供する。
【0017】
上記培養された尿由来幹細胞は、
(1)細胞増殖率が、KSFM及びDMEM/F12(1:1の体積比)培地で培養された尿由来幹細胞に比べて増加し、
(2)幹細胞関連遺伝子であるOCT4、SOX2、Nanog、抗老化関連遺伝子であるFOXO1、FOXO3、腎臓特異的治療因子であるクロトーの発現量が、KSFM及びDMEM/F12(1:1の体積比)培地で培養された尿由来幹細胞に比べて増加し得る。
本発明の第4の具現例において、上記培養液で培養される、尿由来幹細胞を提供する。
上記尿由来幹細胞は、腎臓疾患治療機能が向上したものであり得る。
【0018】
上記尿由来幹細胞は、CD73、CD90、CD105、CD146、又はSSEA-4が陽性であるものであり得る。
上記尿由来幹細胞は、自家、他家、又は異種由来のものであり得る。
上記尿由来幹細胞は、NGAL(Neutrophil gelatinase-associated lipocalin)レベルを減少させるものであり得る。
【0019】
上記腎臓疾患は、糖尿病性腎症(Diabetic nephropathy)、慢性腎不全(Chronic Renal Failure)、急性腎不全(Acute Reanl Failure)、亜急性腎不全(Subacute Renal Failure)、糸球体腎炎、悪性腎硬化症、血管性微小血管症、移植拒絶、糸球体症、腎肥大、腎過形成症、蛋白尿、造影剤誘発性腎症、毒素により誘発される腎損傷、酸素フリーラジカル媒介腎症、及び腎炎からなる群から選択される1種以上であり得る。
本発明の第5の具現例において、尿由来幹細胞を有効成分として含む、腎疾患治療機能が向上した細胞治療剤を提供する。
上記細胞治療剤は、経口、直腸、静脈内(intravenous therapy、i.v)、動脈内、腹腔内、筋肉内、胸骨内、経皮、局所、眼内、皮下、又は皮内投与経路用の製剤であり得る。
上記細胞治療剤は、薬剤学的担体をさらに含むことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る尿由来幹細胞によれば、腎疾患動物モデルにおいて、腎機能の向上、組織再生の効果が得られる。さらには、尿由来幹細胞を大量に培養して泌尿生殖器系疾患をターゲットとした幹細胞治療剤を開発することにより、様々な難治性疾患に対して安全かつ効率的な治療剤として使用可能であると期待される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】尿由来幹細胞の分離及び培養過程を図式化して示す図である。
図2】表3中の各培養液で培養した尿由来幹細胞の細胞増殖率(CPDL、DT)を比較及び分析してグラフで示した結果である。
図3】表3中の各培養液で培養した尿由来幹細胞の細胞特性をフローサイトメトリーで比較及び分析して表で示した結果である。
図4】尿由来幹細胞の主要な遺伝子発現をリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)分析法で比較及び分析して示した結果である。
図5】表1中の培養液の各添加物を濃度別に変化させた後、細胞増殖率又はクロトー遺伝子の発現を確認して最適な濃度を探索した結果である。
図6】表1中の培養液の各添加物を濃度別に変化させた後、細胞増殖率又はクロトー遺伝子の発現を確認して最適な濃度を探索した結果である。
図7】表3中の各培養液で培養した尿由来幹細胞のクロトー遺伝子及びタンパク質の発現を比較して分析した結果である。
図8】表1中の培養液で培養した尿由来幹細胞の腎臓線維化抑制及び糸球体足細胞死滅抑制の効能をイン・ビトロで確認した結果である。
図9】虚血再灌流腎損傷のマウスモデルに表1中の培養液で培養した尿由来幹細胞を投与した時、腎臓内に細胞が集まる(ホーミング効果)かを確認した結果である。
図10】虚血再灌流腎損傷のマウスモデルに表1中の培養液で培養した尿由来幹細胞を投与した時、治療的有効性を有するかを確認した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書で使用される用語、「幹細胞」とは、個体の全ての組織細胞に分化できる多能性(pluripotent)又は全能性(totipotent)がある自己再生能(self-renewal)を有する細胞を意味し、胚性幹細胞、誘導万能幹細胞、及び成体幹細胞を含む。
本明細書で使用される用語、幹細胞の「増殖」とは、幹細胞が、様々な細胞に分化せず、幹細胞の特性をそのまま維持しながら細胞が分裂して細胞の総数が増加することを意味する。
本明細書で使用される用語、「培養液」とは、生体外のイン・ビトロで細胞の成長及び生存を維持するのに必要な栄養物質を含む組成物を意味する。
【0023】
本明細書で使用される用語、「継代培養」とは、細胞を健康な状態で持続的に長期間培養するため、周期的に細胞の一部を新しい培養容器に移し替えて培養培地を交換しながら継続して 培養を維持する方法を意味する。限られた空間を有する培養容器内で細胞の数が増えながら一定時間が経過すると、増殖栄養分が消費されるか汚染物質が蓄積して細胞が自然に死ぬことになるので、健康な細胞の数を増やすための方法として使用され、通常、1回培地(培養容器)を交換すること、又は細胞を群分けして培養することを1継代(1 passage)という。
本明細書で使用される用語、「個体」とは、腎臓疾患の治療を必要とする対象を意味し、具体的には、ヒト又は非ヒトである霊長類、マウス、イヌ、ネコ、ウマ及びウシなどの哺乳類を意味する。
【0024】
本明細書に使用される用語、「細胞治療剤」とは、個体から分離、培養及び特殊な操作により製造された細胞及び組織で、治療、診断及び予防のために使用される医薬品であって、細胞又は組織の機能を復元させるために、生きている自己細胞、同種細胞又は異種細胞を体外で増殖選別したり、他の方法で細胞の生物学的特性を変化させるなどの一連の行為を通じて疾患の治療、診断及び予防のために使用される医薬品を意味する。
本発明の第1の具現例では、尿由来幹細胞の分離及び培養のための培養液であって、上記培養液は、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)とハムのF-12(Ham’s F12)とを含む基礎培地;ウシ胎児血清;及び、副甲状腺ホルモン(PTH)を含み、FGF23(Fibroblast Growth Factor 23)、T3(triiodothyronine)、カルシフェジオール(Calcifediol)、ウシ血清アルブミン及び脂質混合物(chemically defined lipids)からなる群から選択される1種以上の添加剤をさらに含む、尿由来幹細胞の分離及び培養のための培養液を提供する。
本発明の第2具現例では、a)個体から尿を採取するステップ;b)上記尿を遠心分離して細胞を収集するステップ;c)上記細胞を洗浄した後、遠心分離するステップ;及び、d)上記遠心分離された細胞に、第1の具現例に記載の培養液を接種するステップを含む、尿由来幹細胞の分離方法を提供する。
【0025】
上記方法は、e)上記細胞をトリプシン処理して尿由来幹細胞を回収するステップをさらに含んでもよい。
上記方法において、上記遠心分離は、特に限定されないが、300g~700gで5分間~15分間行われてもよい。
本方法において、洗浄は、特に限定されないが、PBS(phosphate buffered saline)により行われてもよい。
本発明の第3具現例では、尿由来幹細胞を上記培養液に接種して培養するステップを含む、尿由来幹細胞の培養方法を提供する。
上記方法は、h)培養された尿由来幹細胞を70%~90%の培養密度(コンフルエンス)でトリプシン処理して細胞を剥がした後、面積当り1×10~1×10(cells/cm2)の密度で、より広い培養容器に接種して5~8継代培養を行うステップをさらに含んでもよい。
上記方法において、洗浄は、特に限定されないが、PBS(phosphate buffered saline)により行われてもよい。
【0026】
本発明の第4の具現例では、上記培養液で培養された尿由来幹細胞を提供する。
本発明の第5の具現例では、上記尿由来幹細胞を有効成分として含む、腎臓疾患治療機能が向上した細胞治療剤を提供する。
上記細胞治療剤において、上記尿由来幹細胞は、自家由来、他家由来、又は異種由来のものであってもよい。
【0027】
上記細胞治療剤において、上記腎臓疾患は、糖尿病性腎症(Diabetic nephropathy)、慢性腎不全(Chronic Renal Failure)、急性腎不全(Acute Reanl Failure)、亜急性腎不全(Subacute Renal Failure)、糸球体腎炎、悪性腎硬化症、血管性微小血管症、移植拒絶、糸球体症、腎肥大、腎過形成症、蛋白尿、造影剤誘発性腎症、毒素により誘発される腎損傷、酸素フリーラジカル媒介腎症、及び腎炎からなる群から選択される1種以上であってもよい。
上記細胞治療剤は、細胞治療に一般に使用される薬剤学的担体をさらに含んでもよい。ここで、「薬学的に許容される」とは、生理学的に許容され、ヒトへの投与時に通常的に胃腸障害、めまい症などのようなアレルギー反応又はこれと類似の反応を起こさない組成物のことをいう。
薬学的に許容される担体としては、例えば、水、適切な油、生理食塩水、水性グルコース及びグリコールなどのような非経口投与用担体が挙げられ、安定化剤及び保存剤をさらに含んでもよい。適切な安定化剤としては、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム又はアスコルビン酸などの抗酸化剤が挙げられる。適切な保存剤としては、塩化ベンザルコニウム、メチルパラベン又はプロピルパラベン、及びクロロブタノールが挙げられる。他の薬学的に許容される担体としては、参照として以下の文献に記載のものが挙げられる(Remington’s Pharmaceutical Sciences,19th ed., Mack Publishing Company, Easton, PA, 1995)。
上記細胞治療剤は、細胞治療剤が標的細胞に移入し得る任意のデバイスによって投与されてもよい。
【実施例
【0028】
以下、発明の理解を助けるために種々の実施例を提示する。後述の実施例は、発明の理解を容易にするために提供されるものに過ぎず、発明の保護範囲は、これらの実施例によって限定されない。
実施例1:尿由来幹細胞の分離及び培養
採取された100mlの尿を、粘液砂などのような異物を除去するため、100μmのフィルターでろ過した。ろ過された尿を50mlのチューブに分けて入れ、500xgで15分間遠心分離した。遠心分離後、上澄み液を除去し、細胞ペレットを集めて1XPBS(ギブコ)で洗浄した後、500xgで10分間遠心分離した。上記のような洗浄過程を2回繰り返した。次に、上澄み液を除去し、細胞ペレットを下記表1中の組成を有する培養液で懸濁した後、24ウェルプレートに500μlずつ分注した。尿由来幹細胞コロニーが生成されるように、5日間、37℃、5%COの加湿の培養条件で培養した。
【0029】
【表1】
【0030】
【表2】
【0031】
分注日から5日間培養後、尿由来幹細胞の24ウェル中の特定のウェルで粟型細胞からなる円形の細胞コロニーが形成されることを確認した(図1)。コロニーが形成された後、培地を全て除去した後、1×PBSを用いて洗浄し、培地を入れ替えて表1中の組成を有する培養液でさらに5日間培養した。培地は、2~3日毎に入れ替えられた。分注日から10日間培養後、尿由来幹細胞コロニーの直径が約5~10mmに増殖されると、酵素処理によって1次継代培養を行った。培地を除去し、1×PBSで洗浄した後、TrypLE Express(ギブコ)をウェル当り200μlずつ添加し、5分間、37℃のCOインキュベーターで反応させた。FBS(ギブコ)が含有された培地を用いて酵素を中和し、浮遊した細胞を15mlチューブに集めて1500rpmで5分間遠心分離した。上澄み液を除去した後、細胞ペレットを第2の培養液で懸濁して細胞数を測定した。その後、細胞数によって、より広い培養容器に面積(cm)当り5×10個の濃度で細胞を接種し、37℃、5%COの加湿の培養条件で培養した。培地は、2~3日毎に1回交換し、細胞飽和度が80~90%に増えると、面積(cm)当り5×10の濃度で継代培養を行った。
【0032】
分離直後の尿に含まれた細胞には、腎尿細管細胞(Renal tubular cell)、尿路上皮細胞(Uroepithelial cell)、扁平上皮細胞(Squamous epithelial cell)、白血球(Leukocyte)、赤血球(Erythrocyte)などが含まれている。尿由来細胞のうちの99%は、細胞培養容器に付着していない細胞であり、これらの細胞は、培地の交換時に除去される。残りの細胞のうち0.1%の細胞は、尿路上皮細胞、筋肉細胞、内皮細胞などに由来する細胞であり、その他の多分化能を有する幹細胞の性質を呈する0.2%の細胞が尿由来幹細胞であることが知られている。本分離方法において、尿由来幹細胞でない細胞は、培地組成と、尿由来幹細胞との増殖速度の差によって淘汰された。上記尿由来幹細胞の分離及び培養過程が図1に示されている。
【0033】
実施例2:細胞増殖率の分析
尿由来幹細胞の細胞増殖率の比較及び評価のために、表3のように既存の発明などにおいて使用されている培養液2種(以下、Media1、Media2)、本発明者等による韓国公開特許10-2021-0053725号に記載の培養液(以下、TM5-EXP)及び本発明の培養液(以下、TM8)で、それぞれ尿由来幹細胞の分離及び培養を行った。
【0034】
【表3】
【0035】
細胞は、4日毎に継代培養され、5回目の継代培養まで各継代別に細胞数の測定を行った。細胞数の測定は、ADAMセルカウンター(NanoEnTek、韓国)を用いて行った。細胞増殖率の評価は、以下のようにCPDL(Cumulative Population Doubling Level)とDT(Doubling Time)を求める公式を用いて行った。
PDL = ln(Nf/Ni)/ln2 (*CPDL = PDL累積値)
DT (hr) = X*Log2/(Log(Nf)-Log(Ni))*24
(Ni=初期接種時の細胞数、Nf =最終の細胞数, X=培養日数)
その結果、図2に示すように、TM5-EXP及びTM8で増殖させた尿由来幹細胞は、Media1、Media2で増殖させた尿由来幹細胞に比べて、高い細胞増殖率を示した。
細胞の1回分裂にかかる時間、すなわち、DT(Doubling Time)の分析の結果、5回目の継代培養において、Media1とMedia2の群は、それぞれ39.26、36.38時間であったが、これに対し、TM5-EXPとTM8の群は、それぞれ24.44、23.99時間であった。
【0036】
5回目の継代培養まで細胞が分裂した回数、すなわち、CPDL(Cumulative Population Doubling Level)の分析の結果、5回目の継代培養において、Media1とMedia2の群では、それぞれ15.96、15.85回であったが、これに対し、TM5-EXPとTM8の群では、それぞれ20.13、20.39回であった。
上記細胞増殖率の分析によって、Media1とMedia2に比べて、TM5-EXPとTM8で培養された尿由来幹細胞は、比較的に優れた細胞増殖率を有し、5回目の継代培養まで高い細胞増殖速度が維持されることが確認された。なお、TM5-EXPとTM8との有意な増殖率の差はないと分析された。
【0037】
実施例3:細胞特性の分析
本実施例では、尿由来幹細胞の細胞特性を比較及び評価するために、表3中の培養液でそれぞれ培養した尿由来幹細胞を、3、5回目の継代培養において尿由来幹細胞の特異的な表面マーカーの発現をフローサイトメトリーで確認した。一実施例において、尿由来幹細胞は、CD73、CD90、CD105、CD146、SSEA-4のうちの一つ以上を有し、CD31、CD34及びCD45のうちの一つ以上を有しないと知られているため、該当マーカーの分析を行った。
【0038】
具体的には、表3中の培養液でそれぞれ培養した尿由来幹細胞を、3、5回目の継代培養から回収し、1×10個の細胞をPBS(ギブコ)500μlに浮遊させた。次に、細胞をFACSチューブ(5ml、ポリスチレン、丸底、ファルコン)に100μlずつ分注した。分注した細胞に、FACS抗体(表6)をそれぞれ添加し、室温で光を遮断して20分間反応を行った。反応後、各チューブにPBSを500μlずつ添加し、フローサイトメトリーで分析した。フローサイトメトリーには、BD社製のFACSverseTM機器を使用し、機器マニュアルに従って測定し、分析ソフトウェアにより分析した。
【0039】
【表4】
【0040】
その結果、図3に示すように、表3中の培養液でそれぞれ培養した尿由来幹細胞は、全ての培養液において、共通して3、5回目の継代培養においてCD73、CD90、CD146、SSEA-4に対して90%以上、陽性に標識され、CD31、CD34、CD45は、10%未満で陰性に標識された。しかし、幹細胞の分化特性と密接な関連がある細胞表面抗原であるCD105は、各培養液の間に差があった。Media1とMedia2で培養した尿由来幹細胞の場合、それぞれ平均して50.22、65、42%の発現率を示す反面、TM5-EXPとTM8で培養した尿由来幹細胞は、それぞれ平均して94.56、99.67%の優れた発現率を示すものと分析された。このような発現率を継代回数別に比較した結果、Media1、Media2の群では、継代回数が3回から5回に増加するにつれて次第に発現が低下する傾向にあった。これに対し、TM5-EXPとTM8の群では、発現の変化がなく、比較的一定に維持されることが確認された。なお、TM5-EXPとTM8とにおいて有意差はないことが確認された。
本発明者らは、Media1、Media2に添加された、脳下垂体抽出物、成長因子、ホルモンなどの様々な種類と濃度の添加物によって、長期培養中に細胞特性が変化しているが、本発明の培養液は、FGF23、カルシフェジオール、PTHのような実際のヒト腎臓細胞と密接に相互作用する主要な成長因子とホルモンを組成に含ませながら不要な成長因子とホルモンなどの添加を最小限に抑制しているため、このような差が発生したと推察した。
それで、上記FGF23、カルシフェジオール、PTHなどの添加による尿由来幹細胞の主要な遺伝子発現程度を、PCR分析によって後述の実施例4で確認した。
【0041】
実施例4:遺伝子発現の分析
本実施例では、尿由来幹細胞の遺伝子発現特性を比較及び評価するために、表3中の培養液でそれぞれ5回目の継代培養まで培養された尿由来幹細胞に対して、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応分析を行った。
5回目の継代培養の尿由来幹細胞1×10個を計数し、細胞を1500rpmで5分間遠心分離した後、上澄み液を除去し、1×PBSを用いて洗浄した。上澄み液が除去された細胞ペレットに、TAKARA MiniBEST Universal RNA Extraction Kit(Cat. #9767)を用いてトータルRNAを抽出し、PrimeScriptTM 1st strand cDNA Synthesis Kit(Cat. 6110A)を用いてcDNAを合成した。SYBR Green Premix Ex Taq II(Cat. #RR820S/A/B)を用いてリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応によって遺伝子発現レベルを分析した。ハウスキーピング遺伝子としてGAPDHを使用し、幹細胞の遺伝子発現を確認するため幹細胞関連遺伝子であるOct4、Sox2、Nanogの発現を確認した。また、細胞老化抑制のための遺伝子として知られているFoxo1、Foxo3Aの発現を共に確認した(表5)。
【0042】
【表5】
【0043】
その結果、図4に示すように、TM5-EXP、TM8で培養した尿由来幹細胞は、Media1、Media2で培養した尿由来幹細胞に比べて、幹細胞関連遺伝子であるOct4、Sox2、Nanogの発現が大幅に向上していることが確認された。特に、Nanog遺伝子の場合、約8倍以上、遺伝子発現が著しく向上していることが確認された。Nanogヒト胚性幹細胞の自己増殖と多能性に核心的な遺伝子で、TM8によってNanogの発現が増加することにより、尿由来幹細胞の増殖力と分化潜在性が大幅に向上していることが確認された。また、抗老化関連遺伝子として知られているFoxo1、Foxo3aの発現は、TM5-EXP、TM8の群においてMedia1、Media2に比べて向上していることが確認された。Foxoは、細胞の老化に関与する核心転写因子として知られており、様々な外部ストレスから細胞を保護する役割を果たす。このようなFoxoの発現増大によって、長期培養に伴う細胞老化に対して抵抗性を有するようになると推察される。これは、上述した細胞増殖率の結果と関連があると予想される。
【0044】
これにより、TM5-EXPとTM8で尿由来幹細胞を培養する場合は、幹細胞特性と細胞老化の抑制を一層向上させ得ることが確認され、特に、TM8で培養した場合は、尿由来幹細胞の自己増殖と多分化能関連遺伝子が大幅に向上することが確認された。
【0045】
実施例5:培養液添加物の最適な濃度の探索
本実施例では、TM8培養液に添加される脂質混合物(CDLC)、T3、FGF23、カルシフェジオール、PTHの最適な濃度を調べるため、TM8培養液中の各物質の濃度を変化させて細胞増殖率又はクロトー遺伝子の分析を行った(図5)。
【0046】
具体的には、本発明の培養液に添加されるCDLCは、低血清培地の使用による細胞増殖率の減少を補完するために用いられ、T3は、上皮細胞の特性を有する尿由来幹細胞の円滑な増殖のために用いられる。本実施例では、脂質混合物とT3の最適な濃度を調べるため、様々な濃度範囲で尿由来幹細胞の細胞増殖率の向上を評価した。
【0047】
また、本発明の培養液に添加されるFGF23、カルシフェジオール、PTHは、ヒト腎臓で内分泌系を介して相互作用する成長因子及びホルモンであり、人体内のクロトータンパク質がこのような相互作用を媒介している。本発明者らは、ヒトの内分泌系システムを模倣して培養液組成を構成することにより、尿由来幹細胞のクロトータンパク質の発現を向上させている。本実施例では、FGF23、カルシフェジオール、PTHの最適な濃度を調べるため、様々な濃度範囲で尿由来幹細胞のクロトー遺伝子発現の向上を評価した。
【0048】
その結果、図5に示すように、CDLC又はT3の添加群で陰性対照群に比べて細胞増殖率が向上しており、このような結果から、濃度依存的であることが確認された。特に、CDLCを1%~5%、T3を10nM~20nMの濃度としたとき、細胞増殖率の向上効果が最も良好であったが、各濃度間の有意差はなかった。従って、添加量対比の増殖率向上効果を考慮して、CDLCの最適な濃度は、1%であり、T3の最適な濃度は、10nMであることが確認された。
【0049】
なお、FGF23、カルシフェジオール、PTHを、濃度を変えて添加して尿由来幹細胞のクロトー遺伝子の発現を比較した。その結果、図5に示すように、FGF23又はカルシフェジオール又はPTHの添加群で陰性対照群に比べてクロトー遺伝子の発現が向上しており、このような結果から、濃度依存的であることが確認された。特に、FGF23が10ng/mL~100ng/mL、カルシフェジオールが100nM~500nM、PTHが100nM~1000nMの濃度である時にクロトー遺伝子発現の向上効果が最も良好であったが、各濃度間の有意差はなかった。従って、添加量対比のクロトー遺伝子発現の向上効果を考慮して、FGF23の最適な濃度は、10ng/mL、カルシフェジオールの最適な濃度は、100nM、PTHの最適な濃度は、100nMであることが確認された。
【0050】
また、本実施例では、各物質間の相互作用を排除した状態で最適な濃度を検索するため、TM8基礎培地の組成(以下、TM8-Basal)に各物質を1つずつ添加した後、細胞増殖率又はクロトー遺伝子の分析を行って比較した。このとき、各培地組成が最適な濃度で全て含有されているTM8を対照群としておく(図6)。
【0051】
その結果、図6に示すように、各培地組成物を1つずつTM8-Basalに添加することにより、濃度依存的に細胞生存率又はクロトー遺伝子の発現が向上することが確認され、各培地組成が最適な濃度で全て含有されているTM8群において最も効果的であることが確認された。
本実施例によって、本発明者らは、上記添加物の最適な濃度の組み合わせがTM8の最適な組成であると推定し、上述した各実施例において、表3中の既存の培養液との性能の比較及び評価を行った。
【0052】
実施例6:クロトー発現の比較及び分析
本実施例では、尿由来幹細胞のクロトー発現特性を比較及び評価するために、表3中の培養液でそれぞれ5回目の継代培養まで培養された尿由来幹細胞に対して、クロトー遺伝子及びクロトータンパク質発現の分析を行った。クロトー遺伝子は、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応分析を行い、クロトータンパク質は、クロトー1次抗体(Clone No. KM2076、トランスジェニック)を用いてウェスタンブロッティングを行った。
その結果、図7に示すように、表3中の培養液でそれぞれ培養した尿由来幹細胞のうち、TM8のクロトー発現量が最も高いことが確認された。これは、Media1、Media2に比べて約10倍以上向上しており、TM5-EXPに比べて約2倍以上向上していることが確認された。また、ウェスタンブロッティングを用いたタンパク質分析でもTM8のクロトータンパク質発現が最も高い発現量であることが確認された。
【0053】
これにより、TM8を用いて尿由来幹細胞を培養する場合、Media1、Media2に比べて顕著にクロトー発現を向上させ得ることが立証された。特に、既存のTM5-EXPに比べても顕著にクロトータンパク質の発現を向上させることができた。
【0054】
実施例7:腎臓線維化抑制及び糸球体足細胞死滅抑制効能の確認、並びにクロトーの治療効能の実証(イン・ビトロ)
本実施例では、腎臓線維化の過程を、本発明のTM8で培養した尿由来幹細胞が効果的に抑制できるかどうか、効能を評価している。初期の腎損傷は、尿細管線維化につながり、これは、慢性腎疾患への進行を促す代表的な原因の一つであるといわれている。
まず、本発明者らは、細尿管線維化のイン・ビトロモデルを作製するため、ヒト細尿管上皮細胞株であるHK-2に、代表的な線維化の誘発因子であるTGF-β1を10ng/mLの濃度で3日間処理して線維化を誘導した。
【0055】
線維化誘導と同時に、トランズウェルプレート(ファルコン、6-ウェルプレート)を用いて、5回目の継代培養のTM8で培養した尿由来幹細胞(UDSC)を、HK-2細胞と3日間共培養した。対照群は、クロトーを発現しない代表的な間葉系幹細胞である脂肪由来幹細胞(ADSC)とし、分析は、TGF-β1の下位のシグナル伝達経路のタンパク質をウェスタンブロッティングによって行った。
その結果、図8に示すように、本発明のTM8培養液で培養した尿由来幹細胞は、対照群である脂肪由来幹細胞に比べて、効果的にTGF-β1タンパク質の発現を抑制し、その下位のシグナル伝達経路の一つであるERKの発現を減少させて線維化の進行を抑制していると分析された。
本発明者らは、このようなTGF-β1抑制効能が、尿由来幹細胞から分泌されるクロトータンパク質の傍分泌効果(パラクリン効果)によると推察した。それで、本発明のTM8培養液で培養した尿由来幹細胞群と、クロトータンパク質の発現をsiRNAによって抑制した群との効果の比較及び評価を行った。
【0056】
その結果、図8に示すように、クロトータンパク質が抑制された尿由来幹細胞(KL siRNA UDSC)では、TGF-β1抑制効能が顕著に減少していることが確認された。これにより、尿由来幹細胞から分泌されるクロトータンパク質は、腎臓線維化の抑制に治療上重要な因子であることが確認され、このようなクロトータンパク質の発現を強化した本発明のTM8培養液で尿由来幹細胞を培養する場合、腎臓治療機能が向上することが立証された。
さらに、本実施例では、糸球体の濾過機能を担う足細胞(ポドサイト)のアポトーシスを、本発明のTM8で培養した尿由来幹細胞が効果的に抑制できるかどうか、効能を評価した。足細胞は、糸球体基底膜(Glomerular basement membrane、GBM)を構成する中枢的な役割を果たし、糸球体の濾過機能に関与することが知られている。慢性腎疾患のような腎損傷が発生すると、このような足細胞の死滅によって糸球体の消失が顕著に観察される。
本発明者らは、糸球体足細胞のアポトーシスのイン・ビトロモデルを作製するため、ヒト糸球体足細胞株であるCIHP-1に、足細胞特異的毒性薬物であるアドリアマイシン(ドキソルビシン)を0.5μMの濃度で24時間処理して線維化を誘導した。その後、トランズウェルプレート(ファルコン、6-ウェルプレート)を用いて5回目の継代培養のTM8で培養した尿由来幹細胞(UDSC)をCIHP-1細胞と3日間共培養した。分析は、細胞周期(セルサイクル)と関わっているp53の下位のシグナル伝達経路であるp21、カスパーゼ-3、p16などのタンパク質をウェスタンブロッティングによって行った。
その結果、図8に示すように、本発明のTM8培養液で培養した尿由来幹細胞は、p53の転写活性には直接的に大きな影響を及ぼさなかったが、その下位のシグナルのうち、p21、カスパーゼ-3、p16の活性を抑制することが確認された。まず、p21は、活性化されて細胞分裂を停止させる因子であるが、本発明のTM8で培養した尿由来幹細胞によって、このようなp21の活性が抑制された。また、カスパーゼ-3は、Cleaved-Caspase-3で活性化されて細胞死滅(アポトーシス)を起こす因子であるが、本発明のTM8で培養した尿由来幹細胞によって、このようなカスパーゼ-3の活性が抑制されることが確認された。p16は、主に細胞が老化(セネセンス)した時に発現する因子であり、本実施例においてアドリアマイシン処理によって有意に向上していないが、本発明のTM8で培養した尿由来幹細胞は、CIHP-1細胞が老化状態に突入することを効果的に抑制させたことが確認された。本発明者らは、このようなp16の抑制効能は、上記実施例4での遺伝子の分析時に、他の比較培養液に比べて、TM5-EXP、TM8の培養液で高く発現された抗老化の因子であるFoxoの発現と関連があると推察した。
【0057】
これにより、本発明のTM8で培養した尿由来幹細胞は、クロトーが既存の尿由来幹細胞より強化されており、腎臓線維化及び糸球体足細胞のアポトーシスを抑制し、慢性腎疾患などの腎疾患において非常に高い効能を発揮し得ることが証明された。
【0058】
実施例8:虚血再灌流急性腎臓損傷のマウスモデルで尿由来幹細胞の腎臓内への移動の確認
本実施例では、本発明のTM8で培養した尿由来幹細胞が、虚血性腎損傷を誘発したマウスに投与される場合、腎臓内に移入して再生に関与するか否かを確認した。
本発明者らは、虚血再灌流急性腎臓損傷を誘発するために8週齢雄性のBALB/cマウスを麻酔した後、腎動脈及び腎静脈を30分間観察した。腎損傷誘発直後、PKH26(シグマ、米国)で蛍光標識された4回目の継代培養の尿由来幹細胞(UDSC)を1×10/頭の濃度でマウス尾静脈にそれぞれ投与した。投与24時間後、腎臓を摘出し、損傷した腎臓内に蛍光標識された幹細胞が移入したか否かを蛍光顕微鏡で観察した。
【0059】
その結果、図9に示すように、本発明のTM8で培養した尿由来幹細胞(PKH26、レッド)は、虚血性腎損傷を誘発したマウスの腎臓内に非常に優秀に移入していることが確認された。これにより、虚血性腎損傷を誘発したマウスに尿由来幹細胞を投与すると、腎臓内に移入し、損傷した組織の再生に関与し得ることが実証された。
実施例9:虚血再灌流急性腎損傷のマウスモデルにおける尿由来幹細胞の有効性の確認
本実施例では、本発明のTM8で培養した尿由来幹細胞が、虚血性腎損傷を誘発したマウスに投与される場合、腎臓組織の回復、及び線維化を抑制するか否かの有効性を検証した。
本発明者らは、虚血再灌流急性腎損傷をマウスに誘発し、7日後に本発明のTM8で培養した尿由来幹細胞を、低、中、高用量(低用量LS=4×10/頭、中用量MS=2×10/頭、高用量HS=1×10/頭)でそれぞれ単回投与した。細胞投与7日後、全ての実験群のマウスを犠牲にして腎損傷に対する有効性を評価した。
その結果、図10に示すように、本発明のTM8で培養した尿由来幹細胞を中用量、高用量投与した群において、急性腎損傷指標であるNGAL(Neutrophil gelatinase-associated lipocalin)レベルが虚血再灌流損傷群(IRI)に比べて減少していることが確認された。このような効果は、濃度依存的であり、高用量(HS)群において最も高い効能が得られた。
また、本実施例では、マウスの腎臓組織を採取し、HE染色によって、腎損傷程度の分析を行った。
その結果、図10に示すように、本発明のTM8で培養した尿由来幹細胞を投与した群において、虚血再灌流損傷群(IRI)において組織の回復及び線維化抑制の傾向が観察され、濃度依存的であることが確認された。特に、高用量(HS)群において最も効果的に組織の損傷が抑制されていることが確認された。
【0060】
これにより、本発明のTM8で培養した尿由来幹細胞の投与によって、腎臓損傷が抑制され、組織再生効能が得られ、このような効果は、高用量(1×10/頭)で最も顕著であり、高用量で最適な効果が得られると評価された。
以上、本発明の特定の部分について詳細に説明してきたが、このような具体的な記述は、単に具体的な例示に過ぎず、これによって本発明の範囲が制限されることはない。従って、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とその等価物によって定義される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】