(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】物質特性が改善された免疫調節アミド誘導体
(51)【国際特許分類】
C07H 17/02 20060101AFI20240725BHJP
A61K 31/7052 20060101ALI20240725BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240725BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240725BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240725BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240725BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20240725BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240725BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240725BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240725BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20240725BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240725BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240725BHJP
A61P 27/06 20060101ALI20240725BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240725BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
C07H17/02
A61K31/7052
A61P35/00
A61P35/02
A61P29/00
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P17/06
A61P1/00
A61P25/28
A61P25/16
A61P25/14
A61P9/10
A61P27/02
A61P27/06
A61P3/10
A61P9/00
A61P9/10 101
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507009
(86)(22)【出願日】2022-08-03
(85)【翻訳文提出日】2024-04-03
(86)【国際出願番号】 KR2022011480
(87)【国際公開番号】W WO2023014082
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】10-2021-0102394
(32)【優先日】2021-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523155191
【氏名又は名称】アイヴィス バイオ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】AEVIS BIO,INC.
【住所又は居所原語表記】315 ho,125,Gwahak-ro Yuseong-gu Daejeon 34141,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】キム ドン ソク
(72)【発明者】
【氏名】ファン インホ
(72)【発明者】
【氏名】キム スン
【テーマコード(参考)】
4C057
4C086
【Fターム(参考)】
4C057AA17
4C057BB02
4C057CC01
4C057DD02
4C057KK01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA04
4C086GA07
4C086MA01
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4C086MA58
4C086MA66
4C086NA02
4C086ZA02
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZA33
4C086ZA36
4C086ZA45
4C086ZA66
4C086ZA89
4C086ZA96
4C086ZB11
4C086ZB15
4C086ZB26
4C086ZB27
(57)【要約】
本発明は、サリドマイド系化合物であるレナリドミドまたはポマリドミドに糖(sugar)または糖誘導体が導入され、水溶性が著しく改善された新規なサリドマイド系化合物誘導体に関し、本発明によるレナリドミドまたはポマリドミド誘導体は、従来のレナリドミドまたはポマリドミドに比べて水溶性が著しく増大し、注射用または点眼用製剤として剤形化することができ、したがって、局所に高濃度の治療剤投与が可能であり、他の注射用または点眼用製剤として開発された治療剤と簡易に併用投与が可能であるという長所がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レナリドミドまたはポマリドミドのフタルイミドモイアティ上のアミノ基(NH
2)に糖(sugar)または糖誘導体が結合している、レナリドミドまたはポマリドミド誘導体。
【請求項2】
前記糖または糖誘導体は、三炭糖、四炭糖、五炭糖または六炭糖であるか、またはその誘導体であることを特徴とする、請求項1に記載のレナリドミドまたはポマリドミド誘導体。
【請求項3】
前記糖または糖誘導体は、グルコース(Glucose)、リボース(Ribose)、グルクロン酸(Glucuronic acid)またはグリセリンアルデヒド(Glycerin aldehyde)であることを特徴とする、請求項1に記載のレナリドミドまたはポマリドミド誘導体。
【請求項4】
前記誘導体は、下記化III~化XIVからなる群から選ばれることを特徴とする、請求項3に記載のレナリドミドまたはポマリドミド誘導体。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
、及び
【化12】
【請求項5】
前記誘導体は、レナリドミドまたはポマリドミドに比べて水に対する溶解度(water solubility)が50%以上改善されたことを特徴とする、請求項1に記載のレナリドミドまたはポマリドミド誘導体。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の誘導体を有効成分として含むがん(cancer)の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項7】
前記がんは、血液がんまたは固形がんであることを特徴とする、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記血液がんは、急性白血病、慢性白血病、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか一項に記載の誘導体を有効成分として含む、骨髄異形成症候群の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項10】
請求項1~5のいずれか一項に記載の誘導体を有効成分として含む、炎症性疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項11】
前記炎症性疾患は、乾癬、関節リウマチ及びクローン病からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1~5のいずれか一項に記載の誘導体を有効成分として含む脳疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項13】
前記脳疾患は、外傷性脳損傷、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、ルーゲーリック病、多系統萎縮症、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、前頭側頭型認知症、レビー型認知症、虚血性脳卒中、出血性脳卒中及び多発性硬化症からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
請求項1~5のいずれか一項に記載の誘導体を有効成分として含む血管新生疾患の予防または治療用薬学的組成物。
【請求項15】
前記血管新生疾患は、角膜移植血管新生、血管新生緑内障、糖尿病網膜症、黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫、新生血管による角膜疾患、斑点の変性、翼状片、網膜変性、後水晶体繊維増殖症、顆粒性結膜炎、血管腫、血管線維腫、血管奇形、動脈硬化、血管癒着及び浮腫性硬化症からなる群から選ばれることを特徴とする、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
請求項1~5のいずれか一項に記載の誘導体を含む注射液製剤。
【請求項17】
請求項1~5のいずれか一項に記載の誘導体を含む点眼液製剤。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術分野]
本発明は、物質特性が改善された免疫調節アミド誘導体に関し、具体的には、サリドマイド系化合物であるレナリドミドまたはポマリドミドに糖(sugar)または糖誘導体が導入され、水溶性が著しく改善されたレナリドミドまたはポマリドミド誘導体に関する。
[背景技術]
【0002】
サリドマイド(Thalidomide)は、1950年代後半から1960年代まで妊婦のつわり防止用として販売された薬物であったが、催奇形成の副作用が報告され、妊婦はもちろん、妊娠可能期の人や妊娠の可能性がある人の服用及び取り扱いが禁止された。しかし、サリドマイドの多発性骨髄腫治療効果とともに、最近、その副作用メカニズムが明らかになり、サリドマイド系化合物を用いた多発性骨髄腫治療剤の開発に関する研究が活発に進められている。
【0003】
多発性骨髄腫は、形質細胞が異常に分化及び増殖して現れる血液がんで、このような異常な形質細胞を骨髄腫細胞(myeloma cell)と呼ぶ。骨髄腫細胞は、腫瘍を作り、骨を溶かして痛みを引き起こし、骨が折れやすくなり、骨髄に侵入して白血球、赤血球、血小板数を減少させて貧血、感染、及び出血のリスクを高める。さらに、骨髄腫細胞は、異常な免疫タンパク質であるMタンパク質(M protein)を作り出すが、これによって血液の濃度が濃くなり、血液過粘稠度症候群を招いたり、腎臓に損傷を与えたりする。主に黒人、男性、65歳以上の高齢者に多く発生し、韓国の場合、最近、徐々に発生頻度が増加している傾向にある。このような多発性骨髄腫の主な治療剤としては、ボルテゾミブ、サリドマイド、レナリドミド、ポマリドミドがあり、注射剤であるボルテゾミブは、着実に市場を維持して成長傾向にあり、経口剤は、従来のサリドマイドのポジション(position)をレナリドミドが代替し、市場で高成長を記録している。
【0004】
レナリドミドは、サリドマイドの次世代薬で、より強力ながん細胞死と免疫調節によりサリドマイドよりも優れた治療効果を示す。従来の治療において再発するか、または治療不応の場合にレナリドミドとデキサメタゾンを併用して治療した場合、無病生存期間が13.4ヶ月、全体生存期間が38ヶ月とかなり効果的であることが知られている。副作用は、従来のサリドマイドにおいて現れた末梢神経障害などの問題はほとんどなくなり、単に骨髄抑制の副作用が少しひどくなったが、白血球促進因子などを投与すれば、大きな問題がないことが知られている。
【0005】
ポマリドミドは、2013年に米国FDAによって再発及び耐火性多発性骨髄腫治療剤として承認され、レナリドミドとボルテゾミブを含む少なくとも2つの従前の治療を受けた人々に最後の治療が完了してから60日以内であっても疾病が進行される場合に使用される。ポマリドミドは、血管新生及び骨髄腫細胞の成長を直接抑制するが、このような二重効果は、TNFα抑制などの他の経路よりは骨髄腫における活性が中心となる。IFN-γ、IL-2及びIL-10の発現を強化するだけでなく、IL-6の発現抑制を通じてポマリドミドは、抗血管新生及び抗骨髄腫活性を示す。
【0006】
レナリドミドとポマリドミドは、いずれもCelgene社によって経口用カプセル製剤として開発され、1~25mgの用量で製品化されて使用されている。レナリドミドの韓国内で発売された商品名は、レブリミド(登録商標)カプセルであり、ポマリドミドの韓国内で発売された商品名は、ポマリスト(登録商標)カプセルであり、これらはすべて0号カプセルに充填されており、長軸が約2.17cmに達するので、かなり長さが長く、かさばる。
【0007】
したがって、患者、特に高齢の患者の場合は、服用において多少不便を感じることがあり、また、カプセルの場合、水とともに服用する場合でも飲み込む過程において喉や食道にカプセルが付着して引っかかる場合も発生することがあり、この場合、多量の水を飲んでもよく落ちにくい場合もあり、誤って薬物が噴き出す場合、苦痛が伴い、場合によっては炎症を起こすこともあるという様々な問題点に着目し、経口用製剤の物性を改善しようとする試みがあった(大韓民国公開特許10-2020-0013258号)。
【0008】
しかし、このような先行技術は、経口用製剤としてレナリドミドまたはポマリドミドの物性を改善するためのもので、レナリドミドまたはポマリドミドは、水に溶けず注射剤として開発が困難であり、したがって、これらの治療剤が他の治療剤(特に、静脈内投与される治療剤)と併用投与される場合、静脈内投与される他の治療剤とは異なり、これらの治療剤は経口投与されるため、互いに異なる方法で投与されるという投与方法の煩雑さと、経口投与方法による場合、局所に高濃度で注射剤を投与することが難しいという問題点があった。
【0009】
そこで、本発明者らは、レナリドミドまたはポマリドミドと同等以上の効果を保ちながら、注射剤、点眼液、スプレー、パッチなどの様々な剤形で使用できるように物性が改善された新規化合物の開発に鋭意努力した結果、レナリドミドまたはポマリドミドのフタルイミドモイアティに存在するアミノ基(NH2)に糖または糖誘導体を導入する場合、レナリドミドまたはポマリドミドの薬学的効能を維持しながら、水に対する溶解度が著しく増加し、レナリドミドまたはポマリドミドによる催奇形性の副作用は減少させることができることを確認することにより、本発明を完成した。
[発明の概要]
[発明が解決しようとする課題]
【0010】
本発明の目的は、注射剤や点眼液などでの使用が可能となるように、水に対する溶解度が改善された物質特性が改善された免疫調節アミド誘導体を提供することにある。
[課題を解決するための手段]
【0011】
前記目的を達成するために、本発明は、レナリドミドまたはポマリドミドのフタルイミドモイアティ上のアミノ基(NH2)に糖(sugar)または糖誘導体が結合しているレナリドミドまたはポマリドミド誘導体を提供する。
【0012】
本発明において、前記糖または糖誘導体は、三炭糖、四炭糖、五炭糖または六炭糖であるか、またはその誘導体であることを特徴とする。
【0013】
本発明において、前記糖または糖誘導体は、グルコース(Glucose)、リボース(Ribose)、グルクロン酸(Glucuronic acid)またはグリセリンアルデヒド(Glycerin aldehyde)であることを特徴とする。
【0014】
本発明において、前記誘導体は、下記化III~化XIVからなる群から選ばれることを特徴とする。
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
本発明において、前記誘導体は、レナリドミドまたはポマリドミドに比べて水に対する溶解度(water solubility)が50%以上改善されたことを特徴とする。
【0028】
本発明は、さらに前記誘導体を有効成分として含むがん(cancer)の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0029】
本発明は、さらに前記誘導体をそれを必要とする個体に投与する段階を含む、がん(cancer)の予防または治療方法を提供する。
【0030】
本発明は、さらにがん(cancer)の予防または治療のための前記誘導体の用途を提供する。
【0031】
本発明は、さらにがん(cancer)の予防または治療用薬物の製造のための前記誘導体の用途を提供する。
【0032】
本発明において、前記がんは、血液がんまたは固形がんであることを特徴とする。
【0033】
本発明において、前記血液がんは、急性白血病、慢性白血病、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫からなる群から選ばれることを特徴とする。
【0034】
本発明は、さらに前記誘導体を有効成分として含む骨髄異形成症候群の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0035】
本発明は、さらに前記誘導体をそれを必要とする個体に投与する段階を含む、骨髄異形成症候群の予防または治療方法を提供する。
【0036】
本発明は、さらに骨髄異形成症候群の予防または治療のための前記誘導体の用途を提供する。
【0037】
本発明は、さらに骨髄異形成症候群の予防または治療用薬物の製造のための前記誘導体の用途を提供する。
【0038】
本発明は、さらに前記誘導体を有効成分として含む炎症性疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0039】
本発明は、さらに前記誘導体をそれを必要とする個体に投与する段階を含む、炎症性疾患の予防または治療方法を提供する。
【0040】
本発明は、さらに炎症性疾患の予防または治療のための前記誘導体の用途を提供する。
【0041】
本発明は、さらに炎症性疾患の予防または治療用薬物の製造のための前記誘導体の用途を提供する。
【0042】
本発明において、前記炎症性疾患は、乾癬、関節リウマチ及びクローン病からなる群から選ばれることを特徴とする。
【0043】
本発明は、さらに前記誘導体を有効成分として含む脳疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0044】
本発明は、さらに前記誘導体をそれを必要とする個体に投与する段階を含む、脳疾患の予防または治療方法を提供する。
【0045】
本発明は、さらに脳疾患の予防または治療のための前記誘導体の用途を提供する。
【0046】
本発明は、さらに脳疾患の予防または治療用薬物の製造のための前記誘導体の用途を提供する。
【0047】
本発明において、前記脳疾患は、外傷性脳損傷、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、ルーゲーリック病、多系統萎縮症、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、前頭側頭型認知症、レビー型認知症、虚血性脳卒中、出血性脳卒中及び多発性硬化症からなる群から選ばれることを特徴とする。
【0048】
本発明は、さらに前記誘導体を有効成分として含む血管新生疾患の予防または治療用薬学的組成物を提供する。
【0049】
本発明は、さらに前記誘導体をそれを必要とする個体に投与する段階を含む、血管新生疾患の予防または治療方法を提供する。
【0050】
本発明は、さらに血管新生疾患の予防または治療のための前記誘導体の用途を提供する。
【0051】
本発明は、さらに血管新生疾患の予防または治療用薬物の製造のための前記誘導体の用途を提供する。
【0052】
本発明において、前記血管新生疾患は、角膜移植血管新生、血管新生緑内障、糖尿病網膜症、黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫、新生血管による角膜疾患、斑点の変性、翼状片、網膜変性、後水晶体繊維増殖症、顆粒性結膜炎、血管腫、血管線維腫、血管奇形、動脈硬化、血管癒着及び浮腫性硬化症からなる群から選ばれることを特徴とする。
【0053】
本発明は、さらに前記誘導体を含む注射液製剤を提供する。
【0054】
本発明は、さらに前記誘導体を含む点眼液製剤を提供する。
[発明の効果]
【0055】
本発明によるレナリドミドまたはポマリドミド誘導体は、従来のレナリドミドまたはポマリドミドに比べて水溶性が著しく増大し、注射用または点眼用製剤として剤形化することができ、したがって、局所に高濃度の治療剤投与が可能であり、他の注射用または点眼用製剤として開発された治療剤と簡易に併用投与が可能であるという長所がある。また、従来のレナリドミドまたはポマリドミドに比べて、催奇形性の副作用を減少させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】
図1は、(A)サリドマイド(B)レナリドミド(C)ポマリドミドの構造式を表したものである。
【
図2a】
図2aは、Ribose-Lenalidomideの化学式を示す。
【
図2b】
図2bは、Ribose-LenalidomideのD.W.に対する溶解度を示す。
【
図2c】
図2cは、Ribose-LenalidomideのCRBN結合力を示す。
【
図2d】
図2dは、Ribose-Lenalidomideの腫瘍細胞死滅効果をヒト多発性骨髄腫細胞株であるMM.1S細胞株で確認した結果である。
【
図2e】
図2eは、Ribose-LenalidomideのAiolos,Ikaros,CK1αに対する分解能をヒト多発性骨髄腫細胞株であるMM.1S細胞株で確認した結果である。
【
図2f】
図2fは、Ribose-LenalidomideのSALL4分解能をヒト胚がん腫Tera-1細胞株であるHTB-105細胞株で確認した結果である。
【
図2g】
図2gは、Ribose-Lenalidomideの炎症抑制効果をヒト末梢血単核細胞株であるPBMC細胞株を使用してmRNAレベルで確認した結果である。
【
図2h】
図2hは、Ribose-Lenalidomideの炎症抑制効果をヒト末梢血単核細胞株であるPBMC細胞株を使用してタンパク質レベルで確認した結果である。
【
図2i】
図2iは、Ribose-Lenalidomideの硝子体内への直接投与及び目薬投与による黄斑変性治療効果を黄斑変性マウスモデルを用いて確認した結果である。
【
図3a】
図3aは、Glucose-Lenaldiomideの化学式を示す。
【
図3b】
図3bは、Glucose-LenaldiomideのD.W.に対する溶解度を示す。
【
図3c】
図3cは、Glucose-LenaldiomideのCRBN結合力を示す。
【
図3d】
図3dは、Glucose-Lenaldiomideの腫瘍細胞死滅効果をヒト多発性骨髄腫細胞株であるMM.1S細胞株で確認した結果である。
【
図3e】
図3eは、Glucose-LenaldiomideのSALL4分解能をヒト胚がん腫Tera-1細胞株であるHTB-105細胞株で確認した結果である。
【
図3f】
図3fは、Glucose-Lenaldiomideの硝子体内への直接投与による黄斑変性治療効果を黄斑変性マウスモデルを用いて確認した結果である(*p<0.05 vs CNV(+Vehicle))。
【
図4a】
図4aは、Ribose-Pomalidomideの化学式を示す。
【
図4b】
図4bは、Ribose-PomalidomideのD.W.に対する溶解度を示す。
【
図4c】
図4cは、Ribose-PomalidomideのCRBN結合力を示す。
【
図4d】
図4dは、Ribose-Pomalidomideの腫瘍細胞死滅効果をヒト多発性骨髄腫細胞株であるMM.1S細胞株で確認した結果である。
【
図4e】
図4eは、Ribose-PomalidomideのSALL4分解能をヒト胚がん種Tera-1細胞株であるHTB-105細胞株で確認した結果である。
【
図5a】
図5aは、Glucose-Pomalidomideの化学式を示す。
【
図5b】
図5bは、Glucose-PomalidomideのD.W.に対する溶解度を示す。
【
図5c】
図5cは、Glucose-PomalidomideのCRBN結合力を示す。
【
図5d】
図5dは、Glucose-Pomalidomideの腫瘍細胞死滅効果をヒト多発性骨髄腫細胞株であるMM.1S細胞株で確認した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
特に定義のない限り、本明細書で使用されるすべての技術的及び科学的用語は、本発明が属する技術分野で熟練した専門家によって通常理解されるのと同じ意味を有する。一般に、本明細書で使用された命名法及び後述する実験方法は、本技術分野でよく知られており、通常使用されるものである。
【0058】
本発明では、サリドマイド系化合物であるレナリドミドまたはポマリドミドのフタルイミドモイアティ上に存在するアミノ基に適当な糖または糖誘導体を導入する場合、レナリドミドまたはポマリドミドの水に対する溶解度が著しく改善され、サリドマイド系化合物の薬物効果は、維持されることを確認した。
【0059】
したがって、本発明は、一態様において、レナリドミドまたはポマリドミドのフタルイミドモイアティ上のアミノ基(NH2)に糖(sugar)または糖誘導体が結合しているレナリドミドまたはポマリドミド誘導体に関する。
【0060】
レナリドミドは、(RS)-3-(4-アミノ-1-オキソ1,3-ジヒドロ-2H-イソインドール-2-イル)ピペリジン-2,6-ジオンとして公知であり、下記化(I)を有する。
【0061】
【0062】
ポマリドミドは、
(RS)-4-アミノ-2-(2,6-ジオキソピペリジン-3-イル)イソインドール-1,3-ジオンとして公知であり、下記化(II)を有する。
【0063】
【0064】
ポマリドミドは、サリドマイドのフタルイミドにアミノ基が付加された化合物であり、レナリドミドはフタルイミドモイアティ(phthalimide moiety)にカルボニル基のないポマリドミドの構造を有する(
図1参照)。2つの化合物はどちらも免疫調節薬(IMiD)と呼ばれ、サリドマイドよりも強力な免疫調節活性を有することが報告されている。
【0065】
レナリドミドとポマリドミドは、それぞれフタルイミドモイアティとグルタルイミドモイアティを有し(
図1参照)、本発明では、糖または糖誘導体が前記フタルイミドモイアティ上に存在するアミノ基に結合されることを特徴とする。
【0066】
本発明において、前記糖または糖誘導体は、三炭糖、四炭糖、五炭糖または六炭糖であるか、またはこれらのいずれかの誘導体であることを特徴とするが、これに制限されるものではない。
【0067】
本発明の一態様において、前記糖は、グルコース(Glucose)、リボース(Ribose)、グルクロン酸(Glucuronic acid)またはグリセリンアルデヒド(Glycerin aldehyde)であることを特徴とするが、これに制限されるものではない。
【0068】
本発明において、前記誘導体は、下記化III~化XIVからなる群から選ばれることを特徴とするが、これに制限されるものではない。
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
本発明において、化IIIで表される誘導体または化IVで表される誘導体は、それぞれレナリドミドにグルコースが結合している2つのタイプである。
【0082】
本発明において、化Vで表される誘導体または化VIで表される誘導体は、レナリドミドにリボースが結合しているものである。
【0083】
本発明において、化VIIで表される誘導体または化VIIIで表される誘導体は、ポマリドミドにグルコースが結合している2つのタイプである。
【0084】
本発明において、化IXで表される誘導体または化Xで表される誘導体は、ポマリドミドにリボースが結合している2つのタイプである。
【0085】
一方、本発明において、化XIで表される誘導体は、レナリドミドにグルクロニック酸が結合しているものであり、化XIIで表される誘導体は、レナリドミドにグリセリンアルデヒドが結合しているものであり、化XIIIで表される誘導体は、ポマリドミドにグルクロニック酸が結合しているものであり、化XIVで表される誘導体は、ポマリドミドにグリセリンアルデヒドが結合しているものである。
【0086】
本発明において、前記誘導体は、レナリドミドまたはポマリドミドに比べて水に対する溶解度(water solubility)が改善されたことを特徴とし、好ましくは、前記水に対する溶解度は、約10%以上、好ましくは、約20%以上、より好ましくは、約30%以上、最も好ましくは、約50%以上改善されたことを特徴とする。一態様において、本発明による誘導体は、レナリドミドまたはポマリドミドに比べて水に対する溶解度が約100%以上、約200%以上、約300%以上、約400%以上または約500%以上改善されたものであってもよい。
【0087】
一方、本発明では、前記レナリドミドまたはポマリドミド誘導体がレナリドミドまたはポマリドミドと同様の結合力でセレブロン(CRBN)に結合し、レナリドミドまたはポマリドミドと同様の程度でセレブロンの基質を分解する効果を発揮できることを確認した。また、前記レナリドミドまたはポマリドミド誘導体がレナリドミドまたはポマリドミドと同様のレベルで多発性骨髄腫細胞の死滅を誘導できることを確認した。さらに、本発明では、妊婦がレナリドミドまたはポマリドミドを服用したとき、胎児の発生過程においてSALL4を分解して誘発される副作用である催奇形成に関して、本発明によるレナリドミドまたはポマリドミド誘導体は、SALL4の分解を少なく誘導して、レナリドミドまたはポマリドミドに比べて副作用を減少させることができることを確認した。
【0088】
セレブロンは、サリドマイドの重要で直接的な標的で、DDB1(損傷したDNA結合タンパク質)、CUL4A(Cullin-4A)及びRoc1(cullin 1モジュレーター)とともにE3ユビキチンリガーゼ複合体(E3 ubiquitin ligase complex)を形成し、この複合体は、特定のタンパク質にユビキチンを結合させ、それらがタンパク質分解の標的になるようにする。セレブロンをRNA干渉(RNAi)でノックダウンさせた場合、多様な多発性骨髄腫細胞株においてレナリドミドまたはポマリドミドによる細胞増殖抑制を遮断することが確認され、レナリドミドまたはポマリドミドは、グルタルイミドモイアティ(glutarimide moiety)を通じてセレブロンに結合し、その基質を分解することで抗がん効果が発揮されることが報告された。
【0089】
最近の研究では、サリドマイドとその類似体(レナリドミドとポマリドミド;これらの両方を免疫調節薬;IMiDsと呼ぶ)がB細胞生存因子で、転写因子であるIkarosとAiolosの分解を引き起こし、多発性骨髄腫の生長を停止させるとともに、免疫細胞機能を変化させることを確認した。このとき、ジンクフィンガー転写因子であるIkaros(IKZF1)とAiolos(IKZF3)がIMiDsによってセレブロンに選択的に結合される。また、IMiDsがセレブロンに直接結合した後、E3リガーゼを活性化させ、速やかにユビキチン化とIkarosとAiolosの分解を引き起こすことが明らかになった(Science,343,305,2014;Science,343,301,2014を参照)。IkarosとAiolosは、B細胞とT細胞分化の転写因子で、多発性骨髄腫細胞に対する毒性効果は、この2種類の転写因子の消失により、B細胞におけるIRF4とMycなどの転写因子の発現低下により骨髄腫細胞に死滅を誘導する。
【0090】
レナリドミドは、染色体5qが欠失(5q-)した骨髄異形性症候群(myelodysplastic syndrome,MDS)の治療用として承認された唯一のIMiDである。しかし、その作用機序は、明確ではないが、2015年にはIkaros及びAiolosの他にも、カゼインキナーゼアルファ(CK1α)がレナリドミド依存性CRBN新基質として確認された。5q-MDS細胞は、欠失したCSNK1A1遺伝子を含む染色体領域を伝達し、CK1αの半数体発現により、その発現が不十分である(haploinsufficient expression)。このような5q-MDS細胞におけるレナリドミドによるCK1αの分解は、細胞死滅をもたらす。また、レナリドミドによるCK1αの分解は、サリドマイドまたはポマリドミドによって誘導されるものよりもかなり強いが、この発見は、CRBNによって認識される基質リガンドによって異なることを示唆する。
【0091】
一方、2018年に2つの独立したグループにおいてCRBNのサリドマイド依存性新基質(neosubstrate)としてC2H2ジンクフィンガー転写因子SALL4(Spalt Like Transcription Factor 4)を報告した。まず、Fischerの研究チームは、ヒト胚性幹細胞(hESC)を使用した質量分析法により、サリドマイド、レナリドミドまたはポマリドミド処理時に減少する基質を識別した。SALL4は、Duane Radial Ray症候群、Okihiro症候群、Holt-Oram症候群などの遺伝性疾患の原因遺伝子であることが確認され、これらの症候群は、部分的にサリドマイド胚症とオーバーラップする。また、Chamberlainのグループも知られているジンクフィンガー型基質(zinc finger-type neosubstrates)との構造的類似性に基づいてSALL4を独立的に識別し、両方のグループでSALL4がサリドマイド系化合物の催奇形性(teratogeniceffect)を誘発する基質であるという結論に達した。
【0092】
したがって、本発明は、他の態様において、前記誘導体を有効成分として含むがん(cancer)予防または治療用薬学的組成物に関する。
【0093】
さらに他の態様において、本発明は、前記誘導体をそれを必要とする個体に投与する段階を含む、がん(cancer)の予防または治療方法に関する。
【0094】
さらに他の態様において、本発明は、がん(cancer)の予防または治療のための前記誘導体の用途に関する。
【0095】
さらに他の態様において、本発明は、がん(cancer)の予防または治療用薬物の製造のための前記誘導体の用途に関する。
【0096】
本発明において、前記がんは、血液がんまたは固形がんであることを特徴とするが、これに制限されるものではない。
【0097】
本発明において、前記血液がんは、急性白血病、慢性白血病、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫であることを特徴とするが、これに制限されるものではない。
【0098】
さらに他の態様において、本発明は、前記誘導体を有効成分として含む骨髄異形成症候群の予防または治療用薬学的組成物に関する。
【0099】
他の態様において、本発明は、前記誘導体をそれを必要とする個体に投与する段階を含む、骨髄異形成症候群の予防または治療方法に関する。
【0100】
他の態様において、本発明は、骨髄異形成症候群の予防または治療のための前記誘導体の用途に関する。
【0101】
他の態様において、本発明は、骨髄異形成症候群の予防または治療用薬物の製造のための前記誘導体の用途に関する。
【0102】
本発明はさらに他の態様において、前記誘導体を有効成分として含む腫瘍の予防または治療用薬学的組成物に関し、前記腫瘍は、良性腫瘍と悪性腫瘍を含む。
【0103】
他の態様において、本発明は、前記誘導体をそれを必要とする個体に投与する段階を含む、腫瘍の予防または治療方法に関する。
【0104】
他の態様において、本発明は、腫瘍の予防または治療のための前記誘導体の用途に関する。
【0105】
他の態様において、本発明は、腫瘍の予防または治療用薬物の製造のための前記誘導体の用途に関する。
【0106】
一方、本発明では、前記レナリドミドまたはポマリドミド誘導体がレナリドミドまたはポマリドミドと類似しているか、またはより高いレベルの抗炎効果を発揮できることを確認した。
【0107】
したがって、本発明は、さらに他の態様において、前記誘導体を有効成分として含む炎症性疾患の予防または治療用薬学的組成物に関する。
【0108】
他の態様において、本発明は、前記誘導体をそれを必要とする個体に投与する段階を含む、炎症性疾患の予防または治療方法に関する。
【0109】
他の態様において、本発明は、炎症性疾患の予防または治療のための前記誘導体の用途に関する。
【0110】
他の態様において、本発明は、炎症性疾患の予防または治療用薬物の製造のための前記誘導体の用途に関する。
【0111】
本発明において、前記炎症性疾患は、乾癬、関節リウマチ及びクローン病からなる群から選ばれることを特徴とするが、これに制限されるものではない。
【0112】
さらに他の態様において、本発明は、前記誘導体を有効成分として含む脳疾患の予防または治療用薬学的組成物に関する。
【0113】
他の態様において、本発明は、前記誘導体をそれを必要とする個体に投与する段階を含む、脳疾患の予防または治療方法に関する。
【0114】
他の態様において、本発明は脳疾患の予防または治療のための前記誘導体の用途に関する。
【0115】
他の態様において、本発明は、脳疾患の予防または治療用薬物の製造のための前記誘導体の用途に関する。
【0116】
本発明において、前記脳疾患は、外傷性脳損傷、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、ルーゲーリック病、多系統萎縮症、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、前頭側頭型認知症、レビー型認知症、虚血性脳卒中、出血性脳卒中及び多発性硬化症からなる群から選ばれることを特徴とするが、これに制限されるものではない。
【0117】
さらに、本発明では、動物実験を通じて本発明によるレナリドミドまたはポマリドミド誘導体が血管新生疾患の一つである黄斑変性を効果的に治療する効果を発揮できることを確認した。
【0118】
したがって、本発明は、さらに他の態様において、前記誘導体を有効成分として含む血管新生疾患の予防または治療用薬学的組成物に関する。
【0119】
他の態様において、本発明は、前記誘導体をそれを必要とする個体に投与する段階を含む、血管新生疾患の予防または治療方法に関する。
【0120】
他の態様において、本発明は、血管新生疾患の予防または治療のための前記誘導体の用途に関する。
【0121】
他の態様において、本発明は、血管新生疾患の予防または治療用薬物の製造のための前記誘導体の用途に関する。
【0122】
本発明において、前記血管新生疾患は、角膜移植血管新生、血管新生緑内障、糖尿病網膜症、黄斑変性(例えば、滲出型加齢黄斑変性またはウェット型加齢黄斑変性)、糖尿病黄斑浮腫、新生血管による角膜疾患、斑点の変性、翼状片、網膜変性、後水晶体繊維増殖症、顆粒性結膜炎、血管腫、血管線維腫、血管奇形、動脈硬化、血管癒着及び浮腫性硬化症からなる群から選ばれることを特徴とするが、これに制限されるものではない。
【0123】
好ましい一態様において、前記血管新生疾患は、黄斑変性であってもよく、前記誘導体は、硝子体内注射によって投与されるか、または目薬の形態で眼に注入されてもよい。
【0124】
本発明によるレナリドミド誘導体またはポマリドミド誘導体は、それぞれpH変化により糖(sugar)または糖誘導体が切断され、レナリドミドまたはポマリドミド形態になることにより、薬学的効果を発揮しうる。一態様において、前記レナリドミド誘導体またはポマリドミド誘導体は、約pH7~8の組成物から製造されることが好ましく、その後、体内に注入される前の段階でpH7以下、例えば、pH6.5以下、好ましくは、pH6以下になるようにpHを変化させた後、体内に注入できる。他の態様において、前記レナリドミド誘導体またはポマリドミド誘導体は、約pH7~8の組成物から製造されて体内に注入された後、体内のpH変化に応じて(例えば、胃などの器官でpH減少に応じて)pH7以下、例えば、pH6.5以下、好ましくは、pH6以下に変化することによって糖(sugar)または糖誘導体が切断されることもある。しかし、前記誘導体の薬理機序がこれに限定されるものではない。
【0125】
好ましい態様において、本発明は、有効量の本発明によるレナリドミド誘導体またはポマリドミド誘導体を有効成分として含む薬学的組成物を含む。一態様において、前記薬学的組成物は、血液がん(例えば、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫など)固形がん、骨髄異形成症候群、炎症性疾患(例えば、乾癬、関節リウマチ、クローン病など)、脳疾患(例えば、外傷性脳損傷、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、ルーゲーリック病、多系統萎縮症、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、前頭側頭型認知症、レビー型認知症、虚血性脳卒中、出血性脳卒中及び多発性硬化症など)または血管新生疾患(例えば、角膜移植血管新生、血管新生緑内障、糖尿病網膜症、滲出型加齢黄斑変性、ウェット型加齢黄斑変性、糖尿病黄斑浮腫、新生血管による角膜疾患、斑点の変性、翼状片、網膜変性、後水晶体繊維増殖症、顆粒性結膜炎、血管腫、血管線維腫、血管奇形、動脈硬化、血管癒着、及び浮腫性硬化症)の治療のためのものである。
【0126】
本発明において、用語の「薬学的組成物(pharmaceutical composition)」または「薬学的剤形(pharmaceutical formulation)」とは、本発明の新規化合物に生体内または生体外診断または治療用途に特に適合化させる希釈剤または担体などの製薬上許容される賦形剤を含む混合物を意味する。一実施例によれば、本発明の組成物を含む薬学的組成物は、必要に応じて対象体に投与する方法で提供しうる。一実施例において、本発明の組成物は、ヒトに投与してもよい。
【0127】
本発明において、「併用投与(combination-administer)」または「共同投与(co-administer)」とは、本発明に記載の組成物が1つ以上の追加療法(例えば、抗がん剤、化学療法、炎症性疾患、または脳疾患に対する治療)の投与と同時に、直前又は直後に投与されることを意味する。本発明の化合物は、患者に単独投与または共同投与されてもよい。共同投与(coadministration)とは、個別にまたは(1つ以上の化合物または作用剤)の組み合わせにより化合物の同時または順次投与を含むことを意味する。したがって、製剤(preparation)は、必要に応じて他の活性物質と結合されてもよい。
【0128】
本発明で使用される「有効量(effective amount)」または「治療的有効量(therapeutically-effective amount)」とは、有益なまたは所望の結果を達成するのに十分な化合物または組成物(例えば、本発明の化合物または組成物)の量を意味する。有効量は、1つ以上の投与、適用または投与量で投与されてもよく、特定の製剤または投与ルートに限定されることを意図しない。
【0129】
本願に提供された薬学的組成物の説明は、原則としてヒトに投与するための薬学的組成物に関するが、通常の技術者は、これらの組成物が一般的にあらゆる種類の動物に投与するのに適していることを理解できるだろう。すなわち、本発明による薬学的組成物は、獣医学的治療を必要とする動物、例えば、家畜(例えば、イヌ、ネコなど)、農場動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ブタ、ウマなど)及び実験室動物(例えば、ラット、マウス、モルモットなど)などの他の哺乳動物に投与されてもよい。様々な動物に投与するための薬学的組成物の変形をよく理解し、熟練した獣医薬理学者は、必要に応じて単に通常の実験を通じてこのような変形を設計及び/又は行ってもよい。
【0130】
本願に記載の薬学的組成物は、薬理学の分野で知られているか、または以下の内容で展開される任意の方法によって製造されてもよい。一般に、このような精製用方法は、活性成分を賦形剤及び/又は1つ以上の他の補助成分と関連付ける段階を含み、次に、必要に応じて、または所望であれば、生成物を所望の単一-または多重-容量単位で成形及び/又は包装する段階を含む。
【0131】
本発明の薬学的組成物は、単一の単位用量及び/又は複数の単一の単位用量で製造、包装、及び/又は未包装で販売されてもよい。本願で使用するように、「単位用量」とは、予め設定された量の活性成分を含む薬学的組成物の個別的な量である。活性成分の量は、対象体に投与される活性成分の用量及び/又はそのような投与量の便利な分画、例えば、投与量の1/2または1/3と一般的に同一である。
【0132】
本発明の薬学的組成物内の活性成分、製薬上許容される賦形剤、及び/又は任意の追加成分の相対量は、治療対象体の同一性、サイズ、及び/又は障害に応じて、及び組成物が投与される経路によって変わる。例えば、組成物は0.001%~100%(w/w)の活性成分を含んでもよい。
【0133】
本願で使用されるように、製薬上許容される賦形剤は、特定の投与形態の目的に適した任意のすべての溶媒、分散媒質、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散液または懸濁補助剤、表面活性剤、等張化剤、増粘剤または乳化剤、保存剤、固体結合剤、潤滑剤などを含む。レミントン(Remington)の文献[The Science and Practice of Pharmacy,21st Edition,A.R.Gennaro,(Lippincott,Williams&Wilkins,Baltimore,MD,2006]は、薬学的組成物の調製に使用された様々な賦形剤及びその製造のための公知の技術を開示する。任意の通常の担体培地が、例えば、任意の望まない生物学的効果を提供するか、または薬学的組成物の任意の他の成分と有害な方式で相互作用することにより、物質またはその誘導体と共存できないことを除いて、その用途は、本発明の範囲内にあるものとして考慮する。製薬上許容される賦形剤は、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、または100%純粋である。
【0134】
前記賦形剤は、ヒト及び獣医学的用途として承認されている。一実施例において、賦形剤は、アメリカ食品医薬品局によって承認されている。一実施例において、賦形剤は、製薬等級である。一実施例において、賦形剤は、米国薬局方(USP)、ヨーロッパ薬局方(EP)、英国薬局方、及び/又は国際薬局方(EP)の標準を満たす。
【0135】
一実施例において、賦形剤は、ヒト及び獣医学的用途として承認されている。一実施例において、賦形剤は、アメリカ食品医薬品局によって承認されている。一実施例において、賦形剤は、製薬等級である。一実施例において、賦形剤は、米国薬局方(USP)、ヨーロッパ薬局方(EP)、英国薬局方、及び/又は国際薬局方(EP)の標準を満たす。
【0136】
薬学的組成物の製造に使用される製薬上許容される賦形剤は、不活性希釈剤、分散剤及び/又は顆粒化剤、表面活性剤及び/又は乳化剤、崩壊剤、結合剤、保存剤、緩衝剤、潤滑剤、及び/又はオイルを含むが、これに制限されるものではない。
【0137】
このような賦形剤は、任意に本発明の製剤に含まれてもよい。賦形剤、例えば、ココアバター及び坐剤ワックス、着色剤、コーティング剤、甘味剤、香味剤、及びパフューム剤は、調剤師の判断により組成物に存在してもよい。
【0138】
例示的な希釈剤としては、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、カルシウムヒドロゲンホスフェート、リン酸ナトリウムラクトース、スクロース、セルロース、微結晶セルロース、カオリン、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、トウモロコシデンプン、粉末状糖類、及びこれらの組み合わせを含むが、これに制限されるものではない。
【0139】
例示的な顆粒化剤及び/又は分散剤としては、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、タピオカデンプン、ナトリウムスターチグリコレート、粘土、アルギン酸、グアーガム、シトラスパルプ、寒天、ベントナイト、セルロース及び木材生成物、天然スポンジ、カチオン交換樹脂、炭酸カルシウム、ケイ酸塩、炭酸ナトリウム、架橋結合型ポリ(ビニルピロリドン)(クロスポビドン)、ナトリウムカルボキシメチルデンプン(ナトリウムスターチグリコレート)、カルボキシメチルセルロース、架橋結合型ナトリウムカルボキシメチルセルロース(クロスカルメロース)、メチルセルロース、プレゼラチン化デンプン(デンプン1500)、微結晶デンプン、水不溶性デンプン、カルシウムカルボキシメチルセルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(ビーガム)、ラウリル硫酸ナトリウム、第四級アンモニウム化合物、及びこれらの組み合わせを含むが、これに制限されるものではない。
【0140】
例示的な界面活性剤及び/又は乳化剤としては、天然乳化剤(例えば、アカシア、寒天、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、トラガカント、チョンドラックス(chondrux)、コレステロール、キサンタン、ペクチン、ゼラチン、卵黄、カゼイン、羊毛脂、コレステロール、ワックス、及びレシチン)、コロイド状粘土(例えば、ベントナイト[ケイ酸アルミニウム]及びビーガム[ケイ酸アルミニウムマグネシウム])、長鎖アミノ酸誘導体、高分子量アルコール(例えば、ステアリルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、トリアセチンモノステアレート、エチレングリコールジステアレート、グリセリルモノステアレート、及びプロピレングリコールモノステアレート、ポリビニルアルコール)、カルボマー(例えば、カルボキシポリメチレン、ポリアクリル酸、アクリル酸ポリマー、及びカルボキシビニルポリマー)、カラギーナン、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、粉末化セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース)、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート[ツイン20]、ポリオキシエチレンソルビタン[ツイン60]、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート[ツイン80]、ソルビタンモノパルミテート[スパン40]、ソルビタンモノステアレート[スパン60]、ソルビタントリステアレート[スパン65]、グリセリルモノオレエート、ソルビタンモノオレエート[スパン80])、ポリオキシエチレンエステル(例えば、ポリオキシエチレンモノステアレート[ミルズ45]、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油、ポリエトキシル化ヒマシ油、ポリオキシメチレンステアレート、及びソルトール)、スクロース脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(例えば、クレモホル)、ポリオキシエチレンエーテル、(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル[ブリーズ30])、ポリ(ビニル-ピロリドン)、ジエチレングリコールモノラウレート、トリエタノールアミンオレエート、オレイン酸ナトリウム、カリウムオレエート、エチルオレエート、オレイン酸、エチルラウレイ、ラウリル硫酸ナトリウム、フルロニックF68、ポロキサマー188、臭化セトリモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、ドクサートナトリウム、及び/又はこれらの組み合わせを含むが、これに制限されるものではないない。
【0141】
例示的な結合剤としては、デンプン(例えば、トウモロコシデンプン及びデンプンペースト)、ゼラチン、糖(例えば、スクロース、グルコース、デキストロース、デキストリン、糖蜜、ラクトース、ラクチトール、マンニトール)、天然及び合成ガム(例えば、アカシア、アルギン酸ナトリウム、アイリッシュモスの抽出物、パンワーガム、シャティガム、イサポールフスクスの粘液、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶セルロース、セルロースアセテート、ポリ(ビニル-ピロリドン)、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(ビーガム)、及びラッチアラボガラクタン)、アルギネート、ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール、無機カルシウム塩、ケイ酸、ポリメタクリレート、ワックス、水、アルコール、及びこれらの組み合わせを含むが、これに制限されるものではない。
【0142】
例示的な保存剤としては、抗酸化剤、キレート化剤、抗微生物保存剤、抗真菌保存剤、アルコール保存剤、酸性保存剤、及びその他の保存剤を含んでもよい。例示的な抗酸化剤としては、アルファトコフェロール、アスコルビン酸、アスコルビルパルミテート、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、モノチオグリセロール、メタ重亜硫酸カリウム、プロピオン酸、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、中亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、及び亜硫酸ナトリウムを含むが、これに制限されるものではない。例示的なキレート剤としては、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、クエン酸一水和物、二ナトリウムエデテート、二カリウムエデテート、エデト酸、フマル酸、リンゴ酸、リン酸、ナトリウムエデテート、酒石酸、及びトリナトリウムエデテートを含む。例示的な抗微生物保存剤としては、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、ヘキセチジン、イミド尿素、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニール水銀(phenylmercuric nitrate)、プロピレングリコール、及びチメロサールを含むが、これに制限されるものではない。例示的な抗真菌保存剤としては、ブチルパラベン、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、カリウムベンゾエイト、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、及びソルビン酸を含むが、これに制限されるものではない。例示的なアルコール保存剤としては、エタノール、ポリエチレングリコール、フェノール、フェノール系化合物、ビスフェノール、クロロブタノール、ヒドロキシベンゾエート、及びフェニルエチルアルコールを含むが、これに制限されるものではない。例示的な酸性保存剤としては、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、β-カロチン、クエン酸、酢酸、デヒドロ酢酸、アスコルビン酸、ソルビン酸、及びフィチン酸を含むが、これに制限されるものではない。その他の保存剤としては、トコフェロール、トコフェロールアセテート、デテロキシメスィレイト、セトリミド、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、エチレンジアミン、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、カリウムスルファイト、メタ重亜硫酸カリウム、グリダントプラス、フェノニブ、メチルパラベン、低モル115、ゲルマベンII、ネオロン、カトン、及びエウクシルを含むが、これに制限されるものではない。特定の実施例において、保存剤は、抗酸化剤である。他の実施例において、保存剤は、キレート化剤である。
【0143】
例示的な緩衝剤としては、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、塩化アンモニウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、カルシウムクエン酸、グルビオン酸カルシウム、グルセプト酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、D-グルコン酸、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、プロパン酸、レブリン酸カルシウム、ペンタン酸、二塩基性リン酸カルシウム、リン酸、三塩基性リン酸カルシウム、リン酸水酸化カルシウム、酢酸カリウム、塩化カリウム、グルコン酸カリウム、カリウム混合物、二塩基性リン酸カリウム、一塩基性リン酸カリウム、リン酸カリウム混合物、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、二塩基性リン酸ナトリウム、一塩基性リン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム混合物、トロメタミン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルギン酸、ピロゲン-自由水、等張性塩水、リンガー(Ringer’s)液、エチルアルコール、及びこれらの組み合わせを含むが、これに制限されるものではない。
【0144】
例示的な潤滑剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、シリカ、タルク、麦芽、グリセリルベハネート、水素化植物油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシン、ラウリル硫酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、及びこれらの組み合わせを含むが、これに制限されるものではない。
【0145】
例示的なオイルとしては、アーモンド、アプリコットカーネル、アボカド、ババスヤシ、ベルガモット、黒カレント種子、ボリジ、ケイド、カモミール、カノーラ、カラウェイ、カルナウバ、ヒマシ、シナモン、ココアバター、ココナッツ、タラ肝、コーヒー、トウモロコシ、綿種子、エミュー、ユーカリ、月見草、魚、アマニ、ゲラニオール、ウリ、ブドウ種子、ヘーゼルナッツ、ヒソップ、ミリスチン酸イソプロピル、ホホバ、ククイナッツ、ラバンディン、ラベンダー、レモン、リツエアクベバ、マカデミアナッツ、ゼニアオイ、マンゴー種子、メドウ種子、ミンク、ナツメグ、オリーブ、オレンジラフィー、パーム、パーム核、ピーチカーネル、ピーナッツ、ケシ種子、カボチャ種子、菜種、米ぬか、ローズマリー、ベニバナ、サンダルウッド、サスクアナ、セイボリー、シーバックソーン、ゴマ、シアバター、シリコーン、ダイズ、ヒマワリ、ティーツリー、アザミ、ツバキ、ベチバー、クルミ、及びコムギ胚芽のオイルを含むが、これらに制限されるものではない。例となる油には、ステアリン酸ブチル、トリカプリル酸グリセリル、トリカプリン酸グリセリル、シクロメチコン、セバシン酸ジエチル、ジメチコーン360、ミリスチン酸イソプロピル、鉱物油、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、シリコーン油、及びこれらの組み合わせを含むが、これらに制限されるものではない。
【0146】
経口及び非経口投与用液体投与形態は、製薬上許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシルを含むが、これに制限されるものではない。活性成分の他に、液体投与形態は、本技術分野で共同で使用された不活性希釈剤、例えば、水や他の溶媒、可溶化剤及び乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、オイル(特に、綿種子、ピーナッツ、トウモロコシ、芽、オリーブ、ヒマシ及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ソルビタンのポリエチレングリコール及び脂肪酸エステル、及びこれらの混合物を含んでもよい。不活性希釈剤の他に、経口組成物は、アジュバント、例えば、湿潤剤、乳化剤及び懸濁化剤、甘味剤、香味剤、及びパフューム剤を含んでもよい。非経口投与用特定の実施例において、本発明の新規化合物は、可溶化剤、例えば、クレモホル、アルコール、オイル、変性オイル、グリコール、ポリソルベート、シクロデキストリン、ポリマー、及びそれらの組み合わせと混合される。
【0147】
本発明によるレナリドミド誘導体またはポマリドミド誘導体は、その母体であるレナリドミドまたはポマリドミドに比べて水溶性が著しく改善され、一態様において注射液製剤として使用されてもよい。
【0148】
したがって、本発明は、さらに他の態様において、前記誘導体を含む注射液製剤に関する。
【0149】
本発明において、前記「注射液製剤」という用語は、「注射用剤形」、「注射剤」または「注射可能な製剤」と混用して使用されてもよい。
【0150】
注射可能な製剤、例えば、滅菌注射可能な水性または油性懸濁液は、分散剤または湿潤剤及び懸濁化剤を使用して公知の技術分野に従って調製されてもよい。滅菌注射可能な製剤は、非毒性の非経口許容される希釈剤または溶媒、例えば1,3-ブタンジオール内の溶液における滅菌注射可能な溶液、懸濁液またはエマルジョンであってもよい。許容されるビヒクル及び溶媒の中で採択できるのは、水、リンガー(Ringer’s)液、U.S.P.及び等張性塩化ナトリウム溶液である。また、滅菌、固定オイルは、通常、溶媒または懸濁媒質として採択されている。このために合成モノ-またはジグリセリドを含む任意の無刺激固定オイルが採択されてもよい。また、脂肪酸、例えば、オレイン酸が注射剤の製造に使用されている。
【0151】
注射可能な製剤は、例えば、バクテリア-保有フィルターによる濾過によって、または使用前に滅菌水や他の滅菌注射可能な培地に溶解または分散できる滅菌固体組成物の形態である滅菌剤を含むことにより、滅菌されてもよい。
【0152】
また、本発明によるレナリドミド誘導体またはポマリドミド誘導体は、その母体であるレナリドミドまたはポマリドミドに比べて水溶性が著しく改善され、一態様において点眼液製剤として使用されてもよい。
【0153】
したがって、本発明は、さらに他の態様において、前記誘導体を含む点眼液製剤に関する。
【0154】
本発明において、前記「点眼液製剤」という用語は、「点眼用剤形」、「点眼剤」、「目薬製剤」、「目薬剤形」または「目薬」と混用して使用されてもよい。
【0155】
一方、薬物の効果を延長するために、一般に皮下または筋肉内注射から薬物の吸収を遅くすることが好ましい。これは低い水溶解度を有する結晶質または非晶質物質の液体懸濁液を使用することによって行われる。すると、薬物の吸収率は、最終的に結晶のサイズ及び結晶質形態に左右され得る溶解率に左右される。代案として、非経口投与薬物の遅延された吸収は、オイルビヒクルで薬物を溶解または懸濁することによって行われる。
【0156】
経口投与用固体投与形態は、カプセル、錠剤、丸剤、粉末及び顆粒を含む。このような固体投与形態において、活性成分は、1つ以上の不活性の製薬上許容される賦形剤または担体、例えば、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム、及び/又はa)充填剤または増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、及びケイ酸、b)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース及びアカシア、c)含湿剤、例えば、グリセロール、d)崩壊剤、例えば、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のシリケート及び炭酸ナトリウム、e)溶解遅延剤、例えば、パラフィン、f)吸収促進剤、例えば、第4級アンモニウム化合物、g)湿潤剤、例えば、セチルアルコール及びグリセロールモノステアレート、h)吸収剤、例えば、カオリン及びベントナイトクレイ、及びi)滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム及びこれらの混合物と混合されている。
【0157】
カプセルの場合、錠剤及び丸剤、投与形態は緩衝剤を含んでもよい。同様のタイプの固形組成物は、ラクトースまたは乳糖だけでなく、高分子量ポリエチレングリコールなどをそのような賦形剤として使用する軟質及び硬質-充填されたゼラチンカプセルにおいて充填剤として採択されてもよい。錠剤、糖衣錠、カプセル、丸剤、及び顆粒の固体投与形態は、コーティング及びシェル、例えば、腸溶コーティング及び製薬調製分野で公知の他のコーティングとともに製造されてもよい。それらは任意に不透明化剤を含んでもよく、活性成分のみを、または優先的に、腸管の特定の部分、任意に遅延された方式で放出する組成物であってもよい。使用され得る包埋組成物の例には、ポリマー物質及びワックスを含む。同様のタイプの固体組成物は、ラクトースまたは乳糖だけでなく、高分子量ポリエチレングリコールなどをそのような賦形剤として使用する軟質及び硬質-充填されたゼラチンカプセルにおいて充填剤として採択されてもよい。
【0158】
活性成分は、上述の1つ以上の賦形剤とともにマイクロ-カプセル化された形態であってもよい。錠剤、糖衣錠、カプセル、丸剤、及び顆粒の固体投与形態は、コーティング及びシェル、例えば、腸溶コーティング、放出制御コーティング、及び製薬調製分野において公知の他のコーティングとともに製造されてもよい。このような固体投与形態において活性成分は、1つ以上の不活性希釈剤、例えば、スクロース、ラクトース、またはデンプンと混合されてもよい。このような投与形態は、通常の実施例のように不活性希釈剤ではない追加の物質、例えば、精製潤滑剤及び他の精製補助剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム及び微結晶セルロースを含んでもよい。カプセルの場合、錠剤及び丸剤、投与形態は、緩衝剤を含んでもよい。これらは任意に不透明化剤を含んでもよく、活性成分のみを、または優先的に、腸管の特定の部分、任意に遅延された方式で放出する組成物であってもよい。使用され得る包埋組成物の例としては、ポリマー物質及びワックスを含む。
【0159】
本発明の新規化合物またはそれを含む薬学的組成物の局所及び/又は経皮投与用投与形態は、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、粉末、溶液、スプレー、吸入剤及び/又はパッチを含んでもよい。一般に、活性成分は、滅菌障害下で製薬上許容される担体及び/又は任意の必要な保存剤及び/又は要求されることがある緩衝剤と混合されている。さらに、本発明は、一般に活性成分の本体への制御された伝達を提供するさらなる長所を有する経皮パッチの使用を考慮する。このような投与形態は、例えば、活性成分を適当な培地に融解及び/又は分散させることにより、製造されてもよい。代案として、または追加的に、比率制御膜を提供するか、または活性成分をポリマーマトリックス及び/又はゲルに分散させることによって比率が制御されてもよい。
【0160】
局所投与用製剤としては、液体及び/又は半液体製剤、例えば、塗擦剤、ローション、水中油及び/又は油中水エマルジョン、例えば、クリーム、軟膏/又はペースト、及び/又は溶液及び/又は懸濁液を含むが、これに制限されるものではない。活性成分の濃縮は、溶媒内の活性成分の溶解度限界ほど高くてもよいが、局所-投与可能な製剤は、例えば、約1%~約10%(w/w)の活性成分を含んでもよい。局所投与用製剤は、本願に記載の1つ以上の追加成分をさらに含んでもよい。
【0161】
例えば、局所投与用製剤は、眼(eye)に投与する当技術分野で公知の投与形態の剤形として製造されてもよい。
【0162】
本願に記載の本発明の新規化合物またはそれを含む薬学的組成物は、典型的に容易な投与及び均一な投与のために投与単位形態で製造される。しかし、本発明の組成物の1日の使用方法は、妥当な医学的判断の範囲内で担当医によって決定されることが理解できるだろう。任意の特定の対象体に対する特定の治療有効用量レベルは、疾患、障害、または治療中の障害及び障害の深刻度を含む様々な因子、採択された特定の活性成分の活性、採択された特定の組成物、対象体の年齢、体重、全般的な健康、性別及びダイエット、採択された特定の活性成分の投与時間、投与経路、及び排泄率、治療期間、採択された特定の活性成分と組み合わせるか、または同時に使用した薬物、及び医療分野でよく知られている要因などに左右される。
【0163】
本発明の新規化合物、その塩、またはその薬学的組成物は、任意の経路で投与されてもよい。一実施例において、新規化合物、その塩、またはその薬学的組成物は、経口、静脈内、筋肉内、動脈内、髄質内、脊髄腔内、皮下、脳室内、経皮、皮内、直腸、膣内、腹腔内、局所(粉末、軟膏、クリーム、及び/又は液滴による)、粘膜、鼻、口、経腸、舌下、気管内点滴注入、気管支点滴注入、及び/又は吸入、及び/又は経口スプレー、鼻腔スプレー、及び/又はエアロゾルを含む様々な経路によって投与される。具体的に考慮される経路は、浸透性静脈内注射、血液及び/又はリンパ供給による局所投与、及び/又は患部への直接投与である。一般に、投与の最も適切な経路は、作用剤の特性(例えば、胃腸管の環境における安定性)、及び対象体の障害(例えば、対象体が経口投与に耐えられるかどうか)を含む様々な要因に左右される。
【0164】
特定の実施例において、本発明の新規化合物、その塩、またはその薬学的組成物は、毎日、対象体の体重の約0.001mg/kg~約100mg/kg、約0.01mg/kg~約50mg/kg、約0.1mg/kg~約40mg/kg、約0.5mg/kg~約30mg/kg、約0.01mg/kg~約10mg/kg、約0.1mg/kg~約10mg/kg、または約1mg/kg~約25mg/kgを1日1回以上伝達するのに十分な投与量レベルで投与して所望の治療効果が得られる。目的投与量は、1日3回、1日2回、1日ごと、2日ごと、3日ごと、1週間ごと、2週間ごと、3週間ごと、または4週間ごとに伝達されてもよい。特定の実施形態において、目的投与量は、多重投与(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14回以上の投与)を通じて伝達されてもよい。
【0165】
本願に記載の用量範囲は、成人に提供される薬学的組成物の投与に対するガイダンスを提供することが理解できるだろう。例えば、子供または青少年に投与される量は、専門医または当技術分野の熟練者によって決定されてもよく、成人に投与されるものよりも少ないか同一であってもよい。有効量を達成するために要求される本発明によるペプチドの正確な量は、例えば、対象体の種、年齢、及び全般的な障害、副作用または障害の深刻度、特性化合物の同一性、投与方式などによって対象体ごとに異なる。
【0166】
本発明の新規化合物及び薬学的組成物は、組み合わせ療法として使用できることを理解できるだろう。組み合わせ療法に使用されるための治療の特定の組み合わせ(治療剤または手順)は、達成されるべき目的治療効果及び目的治療剤及び/又は手順の適合性を考慮する。
【0167】
本発明の薬学的組成物は、単独で、または1つ以上の治療活性剤と組み合わせて投与されてもよい。「組み合わせ」の場合、次の送達方法は本発明の範囲に属しはするが、作用剤が必ず同じ時間に投与されるべきであり、投与するか、または同時に伝達されるために剤形化されるべきであることを示唆するように意図するものではない。組成物は、1つ以上の他の目的治療剤または医療手順と同時に、その前に、またはその後に投与されてもよい。一般に、各作用剤は、その作用剤に対して定められた投与量及び/又は時間スケジュールで投与される。さらに、本発明は、体内でのその生体利用率を改善させ、その代謝を減少及び/又は修正し、その分泌を抑制し、及び/又はその分布を修正できる作用剤と組み合わせて、本発明の薬学的組成物を伝達することを含む。この組み合わせにおいて使用される本発明の新規化合物及び治療活性剤は、単一の組成物で同時に投与されるか、または異なる組成物で別々に投与されてもよいことをより理解できるだろう。
【0168】
組み合わせ療法に使用される特定の組み合わせは、達成されるべき目的の治療効果及び/又は本発明のペプチドを含む手順及び/又は治療活性剤の適合性を考慮する。使用される組み合わせは、同じ障害に対する目的効果を達成することができ(例えば、本発明の新規化合物は、同じ障害を治療するために使用されるさらに他の治療活性剤(例えば、第2の治療剤)と併用して投与されてもよい)、及び/又はこれらは異なる効果を達成できる(例えば、任意の副作用の制御)ことが理解できるだろう。
【0169】
本願で使用される「治療活性剤」とは、障害を治療、予防、遅延、還元または改善させるための医薬として使用される任意の物質を指し、予防的及び治癒的治療を含む、治療に使用される物質を指す。
【0170】
一態様において、併用投与のための他の治療活性剤は、多発性骨髄腫を治療するためのものである。一態様において、前記他の治療活性剤は、プロテアソーム阻害剤(proteasome inhibitor)及び/又は免疫-調節薬物(immune modifying drugs)であってもよい。本発明において、前記他の治療活性剤は、デキサメタソン(dexamethasone)、ボルテゾミブ(bortezomib)、カルフィルゾミブ(carfilzomib)、メルファラン(melphalan)、ドキソルビシン(doxorubicin)及びシクロホスファミド(cyclophosphamide)からなる群から選ばれてもよいが、これに制限されるものではない。
【0171】
一実施例において、本発明の薬学的組成物は、1つ以上の症状または特徴を治療、軽減、改善、緩和させ、その開始を遅延させ、その進行を抑制させ、その重症度を減少させ、及び/又はその発生率を減少させるのに有用な任意の治療活性剤又は手順(例えば、手術、放射線療法)と組み合わせて投与されてもよい。
【0172】
様々な態様において、本発明は、多発性骨髄腫に罹患している対象体において多発性骨髄腫を治療するためのキットを提供する。一態様において、前記キットは、i)本発明によるレナリドミド誘導体またはポマリドミド誘導体組成物または薬学的組成物を多発性骨髄腫に罹患している対象体に投与するための説明書(instruction)、及びii)本発明によるレナリドミド誘導体またはポマリドミド誘導体組成物または薬学的組成物を含む。一態様において、前記キットは、対象体において多発性骨髄腫を治療するのに効果的な本願に記載される用量のレナリドミド誘導体またはポマリドミド誘導体組成物または薬学的組成物を含む1つ以上の単位投与形態(unit dosage form)を含んでもよい。一態様において、前記対象体は、ヒト患者である。
【0173】
一態様において、前記キットは、滅菌注射器、滅菌針、滅菌IVバッグ、注入ポンプ、またはこれらの任意の組み合わせを含む群から選ばれる少なくとも1つをさらに含む。
【0174】
本願で使用される用語の「約(about)」とは、およそ、おおよそ、大体、または一定程度の意味で解釈しうる。「約」という用語が数字の範囲とともに使用される場合、指定された数字の上下に境界を拡張して該当範囲を修正して解釈する。一般に、用語の「約」とは、10%の分散によって明示された値の上と下の数値を修正するために本願で使用される。
【0175】
「個体(individual)」、「患者(patient)」及び「対象体(subject)」は相互交換的に使用され、哺乳類、例えばマウス、ラット、その他のげっ歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、またはヒトを含む霊長類を含んで任意の動物を含む。
【0176】
実施例
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。これらの実施例は、単に本発明を例示するためのものであり、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されるものと解釈されないことは、当業界において通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【0177】
実施例1.リボース-レナリドミド(Ribose-Lenalidomide)
1-1.合成
1.00mLのジメチルホルムアミド(DMF)及び1.00mLのエタノール(EtOH)に100mg(0.386mmol)レナリドミドを溶かした溶液と0.500mLの水及び53.0μL(0.926mmol)酢酸(AcOH)に290mg(1.93mmol)リボース(Ribose)を溶かした溶液を混合した。混合物を60℃で一晩撹拌し、減圧下で濃縮した。残留物を二酸化ケイ素(SiO
2)(ジクロロメタン(DCM):メタノール(MeOH)=9:1to8:1)カラムクロマトグラフィーにより精製した後、C
18-SiO
2(水100%toメタノール(MeOH):H
2O=3:1)カラムクロマトグラフィーにより精製し、リボース-レナリドミド(タイプ1、
図2a、化V)を合成した。
【0178】
【0179】
1-2.水に対する溶解度
レナリドミド(Combi-Block,Inc.San Diego,CA,USA)とリボース-レナリドミドを3mgずつ計量し、それぞれ1.5mLエッペンドルフチューブに入れ、水0.03mLを加えた後に1分間Vortexingした後、15,000rpmで1分間遠心分離し、溶けない化合物を沈殿した。沈殿した化合物が観察されると、水0.03mLを追加して前記過程を繰り返した。
【0180】
溶解度は、USP23(United States Pharmacopeia 23)に定義されているように、表1によって決定した。
【0181】
【0182】
その結果、
図2bに示すように、リボース-レナリドミド(タイプ1)は、水に100mg/ml濃度以上の溶解度(USP23基準Freely soluble)を示すが、レナリドミドは、水にまったく溶解しないことが確認された。
【0183】
1-3.CRBN結合力
レナリドミドなどの免疫調節アミド系の化合物は、Cereblon(CRBN)タンパク質と結合して作用することが知られている。そこで、リボース-レナリドミドのCereblon(CRBN)タンパク質との結合力をその母体であるレナリドミド(Combi-Block,Inc.San Diego,CA,USA)のCereblon(CRBN)タンパク質との結合力と比較した。
【0184】
このために、蛍光ベースのAlpha assay kit(PROTAC Optimization kit for BET Bromodomain-Cereblon Binding(BPS Bioscience,#79770))を用いて、メーカーの指針に従ってCRBNとdBET1との結合について、レナリドミドとリボース-レナリドミドの競争的抑制能力を評価した。実験では、AlphaLISA anti-FLAG acceptor beads,5mg/ml(PerkinElmer #AL112C),Alpha Glutathione donor beads,5mg/ml(PerkinElmer #6765300),Optiplate 384(PerkinElmer #6007290),L-Glutathione reduced(G4251,Sigma-Aldrich)を使用した。
【0185】
その結果、
図2cに示すように、リボース-レナリドミド(タイプ1)は、レナリドミドに比べて改善されたCereblon(CRBN)タンパク質との結合力を示した。
【0186】
1-4.腫瘍細胞死滅効果
レナリドミドは、多発性骨髄腫患者の自己幹細胞移植後の維持療法としてFDA承認を受けた治療剤であり、リボース-レナリドミドも多発性骨髄腫細胞死効果を発揮するかどうかを確認した。
【0187】
このために、ヒト多発性骨髄腫細胞株であるMM.1S(CRL-2974)をAmerican Type Culture Collection(ATCC,Manassas,VA,USA)から購入して使用し、10%ウシ胎児血清(Corning,MD,USA)、100U/ml penicillin(Corning,MD,USA)、及び100μg/ml streptomycin(Corning,MD,USA)が補充されたRPMI1640培地(Corning,MD,USA)を使用して37℃の5%CO2インキュベーターで24時間培養した。細胞を1×104cells/wellで96ウェルプレートに分注し、24時間培養した後、DMSOまたはD.W.に溶解したリボース-レナリドミドをそれぞれ0、0.005、0.014、0.041、0.123、0.37、1.111、3.333、10μMで処理し、さらに3日間培養した後、CCK分析キット(Dojindo,Japan)を使用してメーカーの指針に従って分析を行った。
【0188】
その結果、
図2dに示すように、リボース-レナリドミド(タイプ1)をDMSOまたはD.W.に溶解した場合、いずれも効果的にヒト多発性骨髄腫細胞株であるMM.1Sを死滅させる効果を示すことが確認された。
【0189】
1-5.Aiolos,Ikaros,CK1α分解効果
サリドマイド系化合物は、E3リガーゼであるCereblon(CRBN)に結合し、その基質として転写因子であるAiolos及びIkarosを分解することにより、免疫細胞の機能を調節することが知られている。したがって、リボース-レナリドミドに対して依然として免疫調節機能を維持しているかを確認するために、Aiolos及びIkaros分解効果をその母体であるレナリドミドと比較した。
【0190】
また、Cereblon(CRBN)のもう一つの基質として知られているCK1αは、多発性骨髄腫においてPI3K/AKT、JAK/STAT及びNF-κBなどの発がん性カスケードを持続させ、様々な有害作用に対処するのに役立つストレス関連シグナルを促進する。そこで、リボース-レナリドミドがレナリドミドと同様にCK1αを分解することにより、多発性骨髄腫治療効果を発揮できるかどうかを確認した。
【0191】
このために、ヒト多発性骨髄腫細胞株であるMM.1S(CRL-2974)をAmerican Type Culture Collection(ATCC,Manassas,VA,USA)から購入して使用し、10%ウシ胎児血清(Corning,MD,USA)、100U/ml penicillin(Corning,MD,USA)及び100μg/ml streptomycin(Corning,MD,USA)が補充されたDMEM培地(Corning,MD,USA)を使用して37℃の5% CO2インキュベーターで培養した。
【0192】
細胞を分注して24時間培養した後、各化合物を1μM、10μM処理して24時間さらに培養した。細胞にprotease inhibitor cocktail (Thermo Fisher Scientific)を含むRIPA bufferを入れて破砕し、14,000rpmで15分間4℃で遠心分離して細胞抽出液を得た。細胞抽出液を同量loadingし、SDS-PAGEを用いて分離し、PVDF膜にトランスファーした。タンパク質がトランスファーされた膜をskim milkを用いてブロッキングし、1次抗体で4℃でo/nインキュベーションした後、HRP-付着した2次抗体で4℃で1時間インキュベーションした。各段階の間にTBS-Tで3回洗浄した。検出は、chemoluminescence試薬(Thermo Fisher Scientific)を適用して行い、Chemidoc(iBright CL1000,Invitrogen,CA,USA)を使用して確認した。使用された1次抗体としてAiolos(#15103)、Ikaros(#9034)、GAPDH(#2118S)、β-actin(#3700S)抗体は、Cell signaling technology(Danvers,MA,USA),CK1α(PA5-17536)抗体は、Invitrogen(Waltham,Massachusetts USA)から購入した。
【0193】
その結果、
図2eに示すように、リボース-レナリドミド(タイプ1)のAiolos,Ikaros,CK1α分解効果は、レナリドミドとほぼ同様のレベルで確認され、リボース-レナリドミドのAiolos,Ikaros,CK1α分解効果は、溶媒によって差が見られなかった。
【0194】
1-6.SALL4分解効果
Cereblon(CRBN)結合治療剤は、前足の短縮または短指症などの深刻な先天性奇形を引き起こすことがあり、これはSALL4の分解と密接に関連していることが報告されている。そこで、リボース-レナリドミドのSALL4分解効果をレナリドミドと比較した。
【0195】
このために、ヒト胚がん腫Tera-1細胞株(HTB-105)をAmerican Type Culture Collection(ATCC,Manassas,VA,USA)から購入して使用し、10%ウシ胎児血清(Corning,MD,USA)、100 U/ml penicillin(Corning,MD,USA)、及び100μg/ml streptomycin(Corning,MD,USA)が補充されたDMEM培地(Corning,MD,USA)を使用して37℃、5%CO2インキュベーターで培養した。
【0196】
細胞を分注して24時間培養した後、それぞれDMSOに溶かしたレナリドミド、DMSOまたは水に溶けてリボース-レナリドミドをそれぞれ1または10μM処理して24時間さらに培養した。細胞にprotease inhibitor cocktail(Thermo Fisher Scientific)を含むRIPA bufferを入れて破砕し、14,000rpmで15分間4℃で遠心分離して細胞抽出液を得た。細胞抽出液を同量loadingし、SDS-PAGEを用いて分離し、PVDF膜にトランスファーした。タンパク質がトランスファーされた膜をskim milkを用いてブロッキングし、1次抗体で4℃でo/nインキュベーションした後、HRP-付着した2次抗体で4℃で1時間インキュベーションした。各段階の間にTBS-Tで3回洗浄した。検出は、chemoluminescence試薬(Thermo Fisher Scientific)を適用して行い、Chemidoc(iBright CL1000,Invitrogen,CA,USA)を使用して確認した。使用された1次抗体としてSALL4(#5850)とGAPDH(#2118S)抗体は、Cell signaling technology(Danvers,MA,USA)から購入した。
【0197】
その結果、
図2fに示すように、リボース-レナリドミド(タイプ1)は、レナリドミドに比べてSALL4分解効果が抑制されることが示され、リボース-レナリドミドは、レナリドミドに比べて催奇形性の副作用が改善されることが分かった。
【0198】
1-7.炎症抑制効果
リボース-レナリドミドの炎症抑制効果をレナリドミドと比較した。
【0199】
このために、ヒト末梢血液単核細胞株であるPBMCをStemexpress(2.5 million,PBMNC025C,#1909040034)から購入して使用し、10%ウシ胎児血清(Corning,MD,USA),100U/ml penicillin(Corning,MD,USA)、及び100μg/ml streptomycin(Corning,MD,USA)が補充されたRPMI-1640(Corning,MD,USA)を使用し、37℃の5%CO2インキュベーターで24時間安定化した。
【0200】
各細胞は、1×106cells/wellで96ウェルプレートに分注して24時間培養後、リボース-レナリドミドまたはレナリドミドをそれぞれ0.1または1μM処理し、1時間経過後にPHA(25μg/ml)を処理し、6時間後にReal-time PCRを通じてRNA発現量を確認し、24時間後にELISAを通じて炎症関連サイトカインの変化を確認した。
【0201】
RNAは、RNA prep kit (Monarch Total RNA Miniprep Kit, NEB)を使用してメーカーの指示に従って分離し、LunaScript RT SuperMix kit(NEB)を用いてcDNAを合成し、以下のプライマーセットを用いてRT-PCRを行った。
【0202】
【0203】
実験に使用した製品は、RT-PCR cyber-green:Luna(登録商標) Universal qPCR Master Mix(M3003),Real-time PCR plate(48 well):MicroAmp(登録商標) Fast Optical 48-well Reaction Plate(4375816,Applied Biosystems),Real-time PCR sealing film (48 well):MicroAmpTM 48-well Optical Adhesive Film(4375323,Applied Biosystems)と同じであり、実験は、メーカーの指示に従って行った。
【0204】
一方、遠心分離を通じて細胞培養液を分離した後、Human TNF alpha uncoated ELISA kit(88-7346-22,Invitrogen)を使用してメーカーの指示に従ってTNF-αのタンパク質量を分析した。
【0205】
その結果、
図2gと
図2hに示すように、リボース-レナリドミド(タイプ1)は、mRNAとタンパク質レベルでレナリドミドと類似しているか、または多少改善された炎症抑制効果が発揮されることを確認した。
【0206】
1-8.黄斑変性治療効果
ウェット型加齢黄斑変性(wet AMD)モデルであるmouse CNV モデルにおいて、病変の治癒効能を確認した。
【0207】
このために、C57BL/6(Koatech,Korea)、7週齢オス、1群当たり5匹のマウスを使用し、1週間の順化過程の後、8週齢のマウスをKetamine hydrochloride(100mg/kg,I.P.)を用いて麻酔させ、一滴のMydriacyl(tropicamide)目薬を右眼に落として散瞳させた。3分後、マウスをスリットランプに取り付けられた台に寝かせ、右目の上にコンタクトレンズとして機能するカバースリップで覆った。スリットランプで視神経頭を照らした後、視神経頭の周りに4つのレーザースポット(200mW、50μmスポットサイズ、100ms持続)がスリットランプに取り付けられた532nmレーザー装備(Irdiex Oculight Tx,USA)を通じて照射された。
【0208】
このように脈絡膜血管新生病変を生成した後、リボース-レナリドミドをPBSに溶解させた溶液を病変に投与した。硝子体内投与は、0.2μg/ml濃度の1.5μlの溶液を33Gゲージ針の25μlハミルトンシリンジによってレーザー照射直後に1回投与した。一方、2mg/ml濃度となるようにリボース-レナリドミドをPBSに溶解して目薬形態で製造し、1日4回投与して7日、14日後に効能を血管の蛍光染色を通じて確認した。
【0209】
蛍光染色は、Heidelberg Spectralis HRA+OCT device(Heidelberg,Germany)装備を用いて行い、ketamine hydrochloride(100mg/kg,I.P.)とxylazine(10mg/kg,I.P.)を用いて麻酔させた後、右眼に一滴のMydriacyl目薬(tropicamide)の適用を通じて散瞳させた後、fluorescite 10%(Alcon,USA)0.05ml,I.P.投与を通じて血管を染色した。Fluoresciteを注入してから10分後に蛍光イメージを撮影した。
【0210】
その結果、
図2iから確認できるように、対照群投与に対してリボース-レナリドミド(タイプ1)の硝子体内投与群及び目薬投与群の両方において、顕著な病変の減少した傾向が確認された。
【0211】
実施例2.グルコース-レナリドミド(Glucose-Lenalidomide)
2-1.合成
1.00mLのジメチルホルムアミド(DMF)及び1.00mLのエタノール(EtOH)に100mg(0.386mmol)レナリドミドを溶かした後、0.50mLの水(H
2O)と53.0μL(0.926mmol)酢酸(AcOH)に208mg(1.16mmol)グルコース(Glucose)を溶かして添加した。混合物を60℃で一晩撹拌し、減圧下で濃縮した。残留物をC18-SiO
2(水100%toメタノール(MeOH)=3:1)カラムクロマトグラフィーにより精製してグルコース-レナリドミド(タイプ1、化III、
図3a)を合成した。
【0212】
【0213】
一方、2.00mLのジメチルホルムアミド(DMF)及び0.500mLの水(H
2O)に200mg(0.772mmol)レナリドミドと167mg(0.926mmol)グルコース(Glucose)を溶かした溶液に53.0μL(0.926mmol)酢酸(AcOH)と58.2mg(0.926mmol)シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBH
3CN)を添加した。混合物を65℃で一晩撹拌した。混合物のpHがpH1~2になるように1N HClを添加した。混合物を5.00mLの水で希釈し、5.00mLのジメチルホルムアミド(DMF)で5回洗浄した。水層を減圧下で濃縮した。残留物をC
18-SiO
2(水100%toメタノール(MeOH)=1:5)カラムクロマトグラフィーにより精製し、さらに他の形態のグルコース-レナリドミド(タイプ2、化IV、
図3a)を合成した。
【0214】
【0215】
2-2.水に対する溶解度
実施例1-2と同様の方法でグルコース-レナリドミドの水に対する溶解度を確認した。
【0216】
その結果、
図3bに示すように、レナリドミドは、D.W.にほとんど溶解しないが、2つのタイプのグルコース-レナリドミドは、D.W.に100mg/ml以上の溶解度(USP23基準Freely soluble)を示すことが確認された。
【0217】
2-3.CRBN結合力
グルコース-レナリドミドのCRBN結合力を実施例1-3と同様の方法で確認した。
【0218】
その結果、
図3cに示すように、グルコース-レナリドミドは、レナリドミドよりもやや弱い、または同様のレベルのCRBN結合力が確認された。
【0219】
2-4.腫瘍細死滅効果
グルコース-レナリドミドの腫瘍細胞死滅効果を実施例1-4と同様の方法で確認した。
【0220】
その結果、
図3dに示すように、グルコース-レナリドミド(タイプ1)は、レナリドミドと同様の程度でヒト多発性骨髄腫細胞株であるMM.1Sを死滅させる効果を示すことが確認された。
【0221】
2-5.SALL4分解効果
グルコース-レナリドミドのSALL4分解効果を実施例1-6と同様の方法で確認した。
【0222】
その結果、
図3eに示すように、グルコース-レナリドミドは、レナリドミドに比べてSALL4分解効果が著しく減少し、催奇形性の副作用の可能性が減少することを確認した。
【0223】
2-6.黄斑変性治療効果
グルコース-レナリドミドの黄斑変性治療効果をウェット型加齢黄斑変性(wet AMD)モデルであるmouse CNVモデルを用いて実施例1-8と同様の方法で硝子体内に1回投与し、治療効果を確認した。
【0224】
その結果、
図3fに示すように、グルコース-レナリドミド(タイプ1)投与により黄斑変性治療効果が確認できた。
【0225】
実施例3.リボース-ポマリドミド(Ribose-Pomalidomide)
3-1.合成
300mg(1.16mmol)のポマリドミド(Pomalidomide)及び1.74g(11.6mmol)のリボース(Ribose)、9.00mLのジオキサン(Dioxane)を0.75mLの水に溶かした後、53.0μL(0.926mmol)酢酸(AcOH)を添加した。混合物を100℃で一晩撹拌した。残留物を5.0mLの水で希釈し、10.0mLのジメチルホルムアミド(DMF)で4回洗浄した。水層を減圧下で濃縮した。残留物をSiO
2(ジクロロメタン(DCM):メタノール(MeOH)=9:1)カラムクロマトグラフィーにより精製し、247mgのリボース-ポマリドミド(タイプ1、化IX、
図4a)を得た。
【0226】
247mgのリボース-ポマリドミド(タイプ1)を4.0mLの水に溶かし、53.0μL(0.926mmol)酢酸(AcOH)と76.6mg(1.22mmol)のシアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBH
3CN)を添加した。混合物を常温で4.5時間撹拌した。混合物のpHがpH1~2になるように1N HClを添加した。混合物を5.00mLのジメチルホルムアミド(DMF)で3回洗浄した。水層を減圧下で濃縮した。残留物を二酸化ケイ素(SiO
2)(ジクロロメタン(DCM):メタノール(MeOH)=8:2)カラムクロマトグラフィーにより精製した後、C
18-SiO
2(水100%toメタノール(MeOH):H
2O=1:3to1:1)カラムクロマトグラフィーにより精製した。リボース-ポマリドミドを含む分画を集めて濃縮し、ヘキサン(n-hexane)を処理して74.2mgのリボース-ポマリドミド(タイプ2、化X、
図4a)を合成した。
【0227】
【0228】
3-2.水に対する溶解度
実施例1-2と同様の方法で2つのタイプのリボース-ポマリドミドの水に対する溶解度を確認した。
【0229】
その結果、
図4bに示すように、リボース-ポマリドミド(タイプ1)は、0.1mg/ml以下の濃度でも引き続き沈殿が確認されたが(USP 23基準 PracticallyInsoluble or Insolubleレベル)、リボス-ポマリドミド(タイプ2)は、11mg/mlの濃度で目に見える沈殿なしに溶解(USP 23基準 Sparingly solubleレベル)されることが確認された。
【0230】
3-3.CRBN結合力
リボース-ポマリドミドのCRBN結合力を実施例1-3と同様の方法で確認した。
【0231】
その結果、
図4cに示すように、2つのタイプのリボース-ポマリドミドは、ポマリドミドとほぼ類似しているか、または多少改善されたレベルのCRBN結合力を示した。
【0232】
3-4.腫瘍細胞死滅効果
リボース-ポマリドミドの腫瘍細胞死滅効果を実施例1-4と同様の方法で確認した。
【0233】
その結果、
図4dに示すように、リボース-ポマリドミド(タイプ1)によってはヒト多発性骨髄腫細胞株であるMM.1Sの生存力(viability)が減少したが、ライボス-ポマリドミド(タイプ2)によってはヒト多発性骨髄腫細胞株であるMM.1S細胞生存力が大きく減少しないことが確認された。
【0234】
3-5.SALL4分解効果
リボース-ポマリドミドのSALL4分解効果を実施例1-5と同様の方法で確認した。
【0235】
その結果、
図4eに示すように、リボース-ポマリドミド(タイプ2)は、ポマリドミドに比べてSALL4分解効果が著しく減少し、催奇形性の副作用の可能性が減少することを確認した。
【0236】
実施例4.グルコース-ポマリドミド(Glucose-Pomalidomide)
4-1.合成
300mg(1.16mmol)のポマリドミド(Pomalidomide)及び2.09g(11.6mmol)のグルコース(Glucose)、9.00mLのジオキサン(Dioxane)を0.75mLの水に溶かした後、53.0μL(0.926mmol)酢酸(AcOH)を添加した。混合物を100℃で一晩撹拌し、減圧下で濃縮した。残留物を10.0mLの水で希釈し、10.0mLのジメチルホルムアミド(DMF)で4回洗浄した。水層を減圧下で濃縮した。残留物をC18-SiO2(水100%toメタノール(MeOH):H2O=3:1)カラムクロマトグラフィーにより精製し、96.8mgのグルコース-ポマリドミド(タイプ1、化VII、
図5a)を得た。
【0237】
96.8mgのグルコース-ポマリドミド(タイプ1)を1.5mLの水に溶かし、酢酸(AcOH)(3滴)と27.9mg(0.445mmol)のシアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaBH
3CN)を添加した。混合物を常温で4.5時間撹拌した。混合物のpHがpH1~2になるように1N HClを添加した。混合物を3.00mLのジメチルホルムアミド(DMF)で3回洗浄した。水層を減圧下で濃縮した。残留物を二酸化ケイ素(SiO
2)(ジクロロメタン(DCM):メタノール(MeOH)=8:2)カラムクロマトグラフィーにより精製した。グルコース-ポマリドミド(タイプ2)を含む分画を集めて濃縮し、ヘキサン(n-hexane)を処理して68.6mgのグルコース-ポマリドミド(タイプ2、化VIII、
図5a)を合成した。
【0238】
【0239】
4-2.水に対する溶解度
実施例1-2と同様の方法でグルコース-ポマリドミドの水に対する溶解度を確認した。
【0240】
その結果、
図5bに示すように、2つのタイプのグルコース-ポマリドミドの水に対する溶解度がポマリドミドに比べて著しく改善されることを確認した。
【0241】
4-3.CRBN結合力
グルコース-ポマリドミドのCRBN結合力を実施例1-3と同様の方法で確認した。
【0242】
その結果、
図5cに示すように、グルコース-ポマリドミドのCRBNに対する結合力が確認できた。
【0243】
4-4.腫瘍細胞死滅効果
グルコース-ポマリドミドの腫瘍細胞死滅効果を実施例1-4と同様の方法で確認した。
【0244】
その結果、
図5dに示すように、グルコース-ポマリドミド(タイプ1)によってはヒト多発性骨髄腫細胞株であるMM.1Sの生存力(viability)が減少したが、グルコース-ポマリドミド(タイプ2)によってはヒト多発性骨髄腫細胞株であるMM.1S細胞生存力が大きく減少しないことが確認された。
【0245】
以上、本発明の内容の特定の部分を詳細に記述したところ、当業界の通常の知識を有する者にとって、このような具体的な技術は、単に好ましい実施形態に過ぎず、これにより本発明の範囲が限定されるものではないことは明らかである。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付の請求項とそれらの等価物によって定義されると言えるだろう。
【配列表】
【国際調査報告】