(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】有機ポリシロキサンを含む金属メッキ積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20240725BHJP
C08G 77/50 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
B32B15/08 Z
C08G77/50
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024507012
(86)(22)【出願日】2021-08-12
(85)【翻訳文提出日】2024-02-05
(86)【国際出願番号】 EP2021072479
(87)【国際公開番号】W WO2023016649
(87)【国際公開日】2023-02-16
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100210675
【氏名又は名称】下山 潤
(72)【発明者】
【氏名】フランク、サンドマイアー
【テーマコード(参考)】
4F100
4J246
【Fターム(参考)】
4F100AB01B
4F100AB17B
4F100AG00A
4F100AK01A
4F100AK25A
4F100AK52A
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4J246AA11
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4J246BB02X
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4J246FA071
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4J246GA01
4J246GA02
4J246GC53
4J246HA69
(57)【要約】
式(I):[O3-a/2RaSi-Y(SiRaO3-a/2)b]c(R1SiO3/2)d(R2
2SiO2/2)e(R3
3SiO1/2)f(SiO4/2)g(I)の架橋可能な有機ポリシロキサン化合物を含むメタルクラッド積層体であって、R、R1、R2、R3、a、b、c、d、e、fおよびgは、請求項1に示されている定義を有し、Yは1~24個の炭素原子を有する二価~十二価有機基であり、100モル%を構成する全てのSi-C結合された基Y、R、R1、R2およびR3に対して、少なくとも0.1モル%は、脂肪族不飽和基でなければならず、c+d+e+f+g=1である、架橋可能な有機ポリシロキサン化合物を含むメタルクラッド積層体を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
[O
3-a/2R
aSi-Y(SiR
aO
3-a/2)
b]
c(R
1SiO
3/2)
d(R
2
2SiO
2/2)
e(R
3
3SiO
1/2)
f(SiO
4/2)
g (I)
の架橋可能な有機ポリシロキサン化合物を含んでなるメタルクラッド積層体であって、前記式(I)中、
Rは、同じでも異なっていてもよく、水素基であるか、または1~18個の炭素原子を有し、ヘテロ原子により置換されていてもよい一価Si-C結合された有機炭化水素基であり、
Yは、1~24個の炭素原子を有し、ヘテロ原子により置換されていてもよい二価~十二価有機基であり、前記基Yは、前記基Yにより相互に接続されているケイ素原子とのSi-C結合により常に結合されており、
R
1は、相互に独立して、水素基であるか、またはヘテロ原子により置換されていてもよく、酸素原子によりケイ素原子と結合されていてもよいSiC結合された不飽和C1~C18炭化水素基であり、前記基R
1は、相互に独立してこれらの意味をそれぞれ想定してよく、その結果、前記式(I)に記載の有機ポリシロキサン中の複数の基R
1は前記定義されている基と異なる基であってよく、
基R
2およびR
3は、相互に独立して、水素基であるか、またはヘテロ原子により置換されていてもよく、不飽和であってもよいSiC結合されたC1~C18炭化水素基、もしくはヘテロ原子を含んでもよくかつ酸素原子により結合されていてもよいC1~C12炭化水素基であり、前記基R
2および前記基R
3は、相互に独立してこれらの意味をそれぞれ想定してよく、その結果、同じケイ素原子と結合されている複数の基R
2または複数の基R
3は前記定義されている基と異なる基であってよく、
全てのSiC結合された基Y、R、R
1、R
2、およびR
3 100モル%を基準として、少なくとも0.1モル%は、脂肪族不飽和基でなければならなく、
aは、0、1または2であり、前記基Yのどちらかの側の前記添え字aは、相互に独立してこれらの意味をそれぞれ想定してよく、その結果、異なるaは、相互に独立して、特定された値の範囲内の異なる値であってよく、
bは、1~11の値を有する数であり、
cは、0.1~0.99の値であり、
dは、0~0.8の値であり、
eは、0~0.5の値であり、
fは、0.01~0.6の値であり、
gは、0~0.2の値であり、
c+d+e+f+g=1である、
メタルクラッド積層体。
【請求項2】
前記炭化水素基R、R
1、R
2、およびR
3が、メチル、フェニル、ビニル、アクリロイルオキシおよびメタクリロイルオキシ基、ならびに1~15個の炭素原子を有する非分岐鎖または分岐鎖アルコールのアクリルエステルまたはメタクリル酸エステルから選択される、請求項1に記載のメタルクラッド積層体。
【請求項3】
Yが二価、三価または四価である、請求項1または2に記載のメタルクラッド積層体。
【請求項4】
前記メタルクラッド積層体が、式(I)の有機ポリシロキサン化合物および更なる構成要素を含む処方物を含んでなる、請求項1~3のいずれか一項に記載のメタルクラッド積層体。
【請求項5】
前記更なる構成要素が、ヒドロシリル化触媒、フリー基重合のための開始剤、有機バインダー、溶媒、処方成分、接着促進剤、硬化開始剤、触媒、安定剤、フィラー、抑制剤、難燃剤、架橋助剤、酸化防止剤、風化による劣化に対する安定剤、潤滑剤、可塑剤、着色料、リン光剤、マーキングおよびトレーサビリティを目的とする他の剤、ならびに帯電防止剤から選択される、請求項4に記載のメタルクラッド積層体。
【請求項6】
前記金属が銅である、請求項1~5のいずれか一項に記載のメタルクラッド積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋可能な有機ポリシロキサン化合物を含んでなるメタルクラッド積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
銅クラッド電子積層体は、DIN40802の2頁に従って、少なくとも99.5%の純度を有する電解銅箔と片面または両面上にラミネート加工された層状材料からなる。ここで、積層体は、支持体および絶縁材、コンダクタトラックの製造のための銅層として機能する。電子積層体の中でも、3つの製品が重要になった。これらの製品では、積層体は、硬質紙、エポキシ硬質紙またはエポキシ樹脂-ガラスファブリックからなる。
【0003】
硬質紙より高価であるにもかかわらず、エポキシ樹脂-ガラスファブリックは、特により高周波が使用されるテレコミュニケーションにおいて使用されることが益々一般的になっている。上記電子積層体の利点は、高い機械強度、水分に曝露された場合のより優れた電気値、および高周波における低い誘電損率である。
【0004】
電子積層体の製造における一連のイベントは以下のとおりである。積層体の紙ウェブまたはファブリックウェブ、例えば、ガラス繊維ウェブに、バインダーの役割をする樹脂を含浸する。エポキシポリエステル、フェノールまたはメラニンは、この目的のために一般的に使用される。次いで、含浸されたウェブを乾燥し、これを、所望の程度まで樹脂の前縮合が同時に起こる。
【0005】
ワイヤレス通信のためのGHz範囲への高周波技術の先進的開発に伴い、その実現に適した材料に対する需要が高まっている。これは、銅箔、バインダー、ガラス繊維、その他などの全ての材料分野に関する。バインダーの場合、銅クラッド積層体の製造またはプリント回路基板の製造のために伝統的に使用されるエポキシ樹脂は、その過度に高い誘電損率が理由でGHz応用のために、もはや使用することができない。非常に低い誘電損率を有し、したがって、この観点から高周波用途に容易に使用可能であるポリテトラフルオロエチレンは、他の欠点、詳細には、加工性に劣り、結合特性に劣ることであり、これは、代替品が望ましいことを意味する。ポリフェニレンエーテル、炭化水素樹脂、およびビスマレイミド、更にビスマレイミドトリアジン樹脂などの変形品ならびに言及された有機ポリマーの組合せは、これらが低誘電損率と優れた機械特性および熱特性ならびに撥水性とを組み合わせるので、この応用分野のためのバインダーとして現在、集中的に研究されている。
【0006】
有機ポリシロキサンは、優れた耐熱性、耐候安定性、および疎水性を有し、難燃性であり、低誘電損率を有する。
【0007】
これらの特性プロファイルから、ポリフェニレンエーテル、ビスマレイミド、ビスマレイミドトリアジン、および炭化水素樹脂の両方、更に有機ポリシロキサンは、高周波銅クラッド積層体ならびにプリント回路基板およびアンテナなどの部品のためのバインダーとしての使用に適している。
【0008】
したがって、これらの高周波用途のためのバインダーとしてシリコーン樹脂を使用することと、これらの性能を共に強化するために言及された有機ポリマーの特性およびシリコーンのポジティブな特性を組み合わせることとの両方とも自明である。対応する試みは、既に、従来技術において文書化されている。
【0009】
有機ポリシロキサンでは、隣接するケイ素原子は、酸素原子を経て主に相互に接続する。しかしながら、隣接するケイ素原子が相互に接続することができる他の方法も知られており、例えば、有機基により架橋された単位である。
【0010】
隣接するケイ素原子を架橋する有機基は、例えば、常に、Si-H基がケイ素と結合された不飽和有機基に付加するヒドロシリル化反応の結果として生じる。かかる反応は、得られた適用結果物を永続的に固定するために処方物を用いた後、これらの2種類の官能基を含む処方物の硬化に関して主に知られており、例えば、米国特許出願公開第2018/0370189号明細書を参照されたい。これらを、更に処理することができる化学種を生成する隣接するケイ素原子を架橋する有機基を含む有機ポリシロキサンを製造するために使用することもできる。これらの場合、予め形成されたシリコーン構造物および組成物を維持し、出発構造物がビルディングブロックセグメントとして保持されるブロック共重合体構造物が常に形成する。2つのケイ素原子を架橋する有機置換基のランダム分布は、ここでは可能でない。加えて、架橋単位数は、末端官能基数により制限される。詳細には、既に到達した最終状態を固定するためにこのアプローチを選択する場合、硬化反応の結果として体積の収縮が始まり、硬化されたマトリックス中の応力をもたらし、機械的性能を制限または低下させることに注目すべきである。かかる架橋単位のいずれかの数を有機ポリシロキサン構造物中に導入することを可能とするために、例えば、これらが選択された適用のための特定の機能を有する場合、したがって、この経路は適切でなく、例えば、米国許出願公開第2018/0370189号明細書に記載の発明を制限する。
【0011】
米国特許第10316148号明細書は、式(R1SiO3/2)a(XR2
2SiO1/2)b(O1/2SiR2
2YR2
2SiO1/2))cの有機ポリシロキサンであって、式中、R1およびR2は相互に独立してC1~C20アルキル基、C6~C20アリール基またはC7~C20アラルキル基である、有機ポリシロキサンを教示している。Xが、C2~C12アルカンジイル基または2~7個のSi単位を含み架橋C2~C12アルカンジイル基を有する直鎖Si-H官能性シロキサン基である場合、Yは、2~7個のシロキサン単位を有する直鎖シロキサン基であり、Yは、いずれの場合も、架橋C2~C12アルカンジイル基を経て上記発明の有機ポリシロキサンに組み込まれている。
【0012】
Xが、C2~C12アルカンジイル基または2つのシロキサン単位が架橋シルフェニレン基により接続されている1または2つのシロキサン単位からなるSi-H末端シロキサン基である場合、Yは、2つのシロキサン単位が架橋シルフェニレン基により相互に接続されている2つのシロキサン単位を含んでなるシロキサン基であり、上記基Yは、いずれの場合も、架橋C2~C12アルカンジイル基を経て上記発明の有機ポリシロキサンに組み込まれている。
【0013】
XおよびYは、これらが、ブロック共重合体有機ポリシロキサンが原則的に存在するように直鎖構造物を独占的に形成するように選択され、(R1SiO3/2)単位は、三次元シリコーン樹脂ブロックおよび直鎖ブロックからの(XR2
2SiO1/2)b(O1/2SiR2
2YR2
2SiO1/2))c単位を形成する。フリー基反応により反応をもたらすことができる不飽和有機基はない。これらは、上記発明の有機ポリシロキサンがヒドロシリル化により生成される反応において完全に消費され、Si-H基は過剰に使用され、その結果、Si-H末端有機ポリシロキサンが生成する。
【0014】
aは、0.65~0.9の数であり、bは、0.1~0.35の数であり、cは、0~0.1の数であり、a+b+c=1である。
【0015】
上記発明の独創的な有機ポリシロキサンは、有機ポリシロキサン(R1SiO3/2)d(R5R2
2SiO1/2)eのヒドロシリル化反応により製造され、式中、R5は、オレフィン性不飽和C2~C12アルケニル基であり、dは、0.65~0.9の数であり、eは、0.1~0.35の数であり、式HR3
2SiO(R3
2SiO)nSiR3
2Hの直鎖Si-H末端有機ポリシロキサンまたは式HR3
2Si-C6H4-SiR3
2Hのジシリルベンゼンであり、二重Si-H末端シロキサン成分の二重ヒドロシリル化またはちょうど一重のヒドロシリル化の両方が可能である。
【0016】
アルカンジイル架橋ビルディングブロックおよびフェニレン架橋ビルディングブロックの両方は、ポリシロキサン構造物の直鎖セグメント中に排他的に埋め込まれ、アルカンジイル基またはフェニレン基により架橋されたケイ素原子は、ちょうど1つの更なるケイ素原子と常に結合しており、複数のケイ素原子との結合により分岐するための出発点ではない。
【0017】
米国特許第10316148号明細書による有機ポリシロキサンは、高屈折率、高透明度、および光半導体素子において使用するための優れた加工性を示す。これらは、ヒドロシリル化反応により生成されるので、これらは、不純物として白金を含む。
【0018】
米国特許出願公開第2015/0144987号明細書は、アルケニル官能性三次元有機ポリシロキサン、直鎖アルケニル官能性有機ポリシロキサン、シルフェニレン基を含む直鎖Si-H末端有機ポリシロキサン、必要に応じて更なるシルフェニレン単位を含まない直鎖Si-H末端成分、およびヒドロシリル化触媒のヒドロシリル化可能な処方物を教示している。ヒドロシリル化による硬化後、米国特許第10316148号明細書からの有機ポリシロキサンの様に、上記の独創的な処方物は、アルカンジイル架橋されている隣接ケイ素原子およびフェニレン架橋されている隣接ケイ素原子の両方も有する。フェニレン架橋されているシルフェニレン単位は、常に、フェニレン基により架橋されているケイ素原子がSi-O-Si結合によりちょうど1つの更なるケイ素原子と常に結合しており、複数のケイ素原子との結合により分岐するための出発点でない直鎖有機ポリシロキサンセグメントである。ヒドロシリル化反応が理由で、これらの有機ポリシロキサンも不純物として白金を含む。
【0019】
処方物は、高いアッベ数、光半導体素子における優れた色安定性を有し、このカプセル化のために使用される。
【0020】
米国特許第6072016号明細書は、シルフェニレン基を含み、縮合を受けることができる末端基による架橋され得る直鎖有機ポリシロキサンを教示している。これらは、Si-H官能基も脂肪族不飽和基も含まない。
【0021】
米国特許第6252100号明細書は、2つのR2Si単位が2~18個の炭素原子を有する二官能性α,ω-アルカンジイル基を経て相互に接続している構造単位を含む直鎖有機ポリシロキサンの製造方法を開示している。
【0022】
米国第6034225号明細書は、とりわけ必要に応じて分岐点を含む式O1/2R2SiOxYRSiO2/2の少なくとも1つの単位、および必要に応じて更に他方では純粋に直鎖であろうO1/2R2SiOxYR2SiO1/2単位を含む脂肪族不飽和基を有する直鎖有機ポリシロキサンを記載している。X=0である場合、ジアルキルシロキシ単位は、酸素原子を経て2つの隣接するケイ素原子と接続し、または/および2つのジアルキルシロキシ単位は、スペーサーYを経て相互に接続しているかのいずれかである。Yは、式-(CR3
2)nCHR3-の二官能性基であり、式中、R3は、脂肪族飽和炭化水素基またはHであり、nは、0かまたは1~7の整数である。
【0023】
H-Si化合物および炭化水素の形態の活性水素を有する有機ポリシロキサン化合物および2つのSi原子間の炭化水素架橋は、欧州特許出願公開第786463号明細書、更に特開平06-107949号公報および米国特許第4849491号明細書に記載されている。
【0024】
米国特許出願公開第2010/0137544号明細書は、分子当たり一般式(I):O3-a/2RaSi-Y(SiRaO3-a/2)bの少なくとも1つの構造単位を含む有機ポリシロキサンであって、式中、Rは同じでも異なっていてもよく、1~30個の炭素原子を有する一価SiC結合された有機基であり、1つ以上の窒素原子および/または酸素原子を含んでよく、Yは1~30個の炭素原子を有する二価~十二価有機基であり、1つ以上の酸素原子を含んでよく、aは0または1であり、bは1~11の整数である、有機ポリシロキサンを教示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明は、フリー基重合の条件下で三次元に架橋することができ、高周波用途のバインダーとして使用するために適した誘電特性を有する有機ポリシロキサンを提供する目的を対象とする。関連する要件は、上記有機ポリシロキサンは、純粋なバインダーとして、0.0040以下の10Ghzにおける誘電損率を有すること、上記誘電損率を低下させる存在するいずれのフィラーも充分濡れていること、および上記有機ポリシロキサンは接着剤を使わないプリプレグの製造を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は、式(I):
[O3-a/2RaSi-Y(SiRaO3-a/2)b]c(R1SiO3/2)d(R2
2SiO2/2)e(R3
3SiO1/2)f(SiO4/2)g (I)
の架橋可能な、すなわち、硬化性有機ポリシロキサン化合物を含んでなるメタルクラッド積層体であって、上記式(I)中、
Rは、同じでも異なっていてもよく、水素基であるか、または1~18個の炭素原子を有し、ヘテロ原子により置換されていてもよい一価SiC結合された有機炭化水素基であり、不飽和炭化水素基であってもよく、
Yは、1~24個の炭素原子を有し、ヘテロ原子により置換されていてもよい二価~十二価有機基であり、上記基Yは、上記基Yにより相互に接続されているケイ素原子とのSi-C結合により常に結合されており、
R1は、相互に独立して、水素基であるか、またはヘテロ原子により置換されていてもよく、好ましくは酸素原子により上記ケイ素原子と結合されていてもよいSiC結合された不飽和C1~C18炭化水素基であり、上記基R1は、相互に独立してこれらの意味をそれぞれ想定してよく、その結果、上記式(I)に記載の有機ポリシロキサン中の複数の基R1は上記定義されている基と異なる基であってよく、
基R2およびR3は、相互に独立して、水素基であるか、またはヘテロ原子により置換されていてもよく、不飽和であってもよいSiC結合されたC1~C18炭化水素基、もしくはヘテロ原子を含みかつ酸素原子により結合されていてもよいC1~C12炭化水素基であり、上記基R2および上記基R3は、相互に独立してこれらの意味をそれぞれ想定してよく、その結果、同じケイ素原子と結合されている複数の基R2または複数の基R3は上記定義されている基と異なる基であってよく、
全てのSiC結合された基Y、R1、R2、およびR3 100モル%を基準として、少なくとも0.1モル%、好ましくは少なくとも3モル%、より好ましくは少なくとも5モル%、特に少なくとも7モル%は、脂肪族、すなわち、オレフィン性またはアセチレン性不飽和基でなければならなく、
aは0、1または2であり、上記基Yのどちらかの側の上記添え字aは、相互に独立してこれらの意味をそれぞれ想定してよく、その結果、異なるaは、相互に独立して、特定された値の範囲内の異なる値であってよく、
bは、1~11、好ましくは1の値を有する数であり、
cは、0.1~0.99、好ましくは0.2~0.98、より好ましくは0.25~0.8、特に0.3~0.8の値であり、
dは、0~0.8、好ましくは0.1~0.7、より好ましくは0.1~0.6、特に0.1~0.5の値であり、
eは、0~0.5、好ましくは0~0.2の値であり、
fは、0.01~0.6の値であり、
gは、0~0.2の値であり、
c+d+e+f+g=1である、
メタルクラッド積層体に関する。
【0027】
式(I)の有機ポリシロキサンは、メタルクラッド積層体のためのバインダーおよび/または接着促進剤の役割を果たす。式(I)の有機ポリシロキサンは、上記積層体の使用前に架橋を行う。上記積層体は、好ましくはメタルクラッド積層体である。上記積層体は、好ましくは、電子部品、好ましくは高周波用途、最も好ましくは1GHz以上の周波数において動作されるものにおいて使用される。
【0028】
驚くべきことに、不飽和有機官能基を有する適切な有機ポリシロキサンまたはその処方物は、この目的のために特によく適しており、酸素原子により接続されている規則的シロキサン単位に加えて、隣接するケイ素原子が酸素原子でなく、Si-C結合によりどちらかの側と結合されている架橋アルキレン、アラルキレンまたはアリーレン単位により架橋されて相互に接続されているビルディングブロックを更に含むこと、但し、上記有機ポリシロキサン上の極性ヘテロ原子置換された基は、同時に避けられ、すなわち、特にアルコキシ基およびシラノール基を含む適切な最先端の手段によりできる限り減らすという条件が見出された。
【発明を実施するための形態】
【0029】
アルコキシ基などの極性基、特に短鎖アルキル基およびシラノール基、それ自体は、比較的高誘電損率を有し、水分に対する結合点形成により誘電損率を増加に更に寄与する。
【0030】
オールレッド・ロコウ電気陰性度の大きさに基づいたケイ素と酸素との電気陰性度の差は1.76であり、これは、同表に基づいたケイ素と炭素との電気陰性度の差より1大きく、Si-C結合は、Si-O結合より低い極性を有することを意味する。したがって、Si-C結合によるSi-O結合の置換は、有機ポリシロキサンの全体的極性を低下させる助けとなり、したがって、対応する成分の誘電損率を低下させる助けとなるだろうことが期待される。Si-C結合により置換することができるSi-O結合がより大きいほど、この効果はより著しい。したがって、例えば、Si-Oの代わりにSi-C結合を導入することによる有機ポリシロキサン主鎖における極性の低下は、かかる有機ポリシロキサンの広範なユーザビリティに大いに寄与する。
【0031】
油である有機ポリシロキサンは、バインダー特性を有しないので、これらは、メタルクラッド複合体のためのバインダーとして適さない。米国特許出願公開第2018/0370189号明細書は、それに応じて、これらの粘度を調整するために純粋に使用されるシリコーンオイルと共にバインダーとしてシリコーン樹脂も使用すること、およびブロック共重合体を生成するための硬化を記載している。しかしながら、実際のバインダーは、シリコーン樹脂であり、シリコーンオイルではない。しかしながら、このために存在する可能性は明白に認識されないので、米国特許出願公開第2018/0370189号明細書に記載されている使用のための使用されたシリコーン樹脂の対象を絞った調整および最適化の提案はその中にない。
【0032】
本発明は、米国特許出願公開第2018/0370189号明細書に記載の従来技術に対する改良であり、的を絞った方法でシロキサン主鎖の極性低下の硬化を利用することを可能とするために、隣接するケイ素原子を架橋するSiC結合された有機基が、応用プロセスの最後のヒドロシリル化による存在するいずれものSi-H基およびSi-オレフィン基の硬化により単独で生成することを可能とするのに充分であるので、これを更に展開する。米国特許出願公開第2018/0370189号明細書に記載の付加反応が原因の関連する体積収縮は、この選択肢の特性に基づく使用に対して過度に狭い制限を課す。
【0033】
式(I)の有機ポリシロキサン化合物は、0.0040以下の10GHzにおける誘電損率を有する。
【0034】
式(I)の有機ポリシロキサン化合物は、本発明との関連で、ポリマーの有機ポリシロキサンとオリゴマーの有機シロキサンとの両方を含む。
【0035】
詳細には、式(Ia):
[O3-a/2RaSi-Y(SiRaO3-a/2)b]c(R3
3SiO1/2)f (Ia)
の構造であって、上記式中、d、e、およびgがいずれの場合にも0である構造も含まれる。この限界構造は、本発明の範囲内であり、これを目的とする。SiC結合された架橋有機基のこの中の割合は特に高く、上記構造は、実質的に末端単位(R3
3SiO1/2)fによってのみ完成される。(Ia)の好ましい実施形態では、aは、2の値を有する。R、R3、a、b、およびcに対する上記の全ては、(Ia)に対しても有効である。
【0036】
R、R1、R2、およびR3の例は、芳香族または脂肪族二重結合を含んでよい飽和または不飽和炭化水素基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、およびtert-ペンチル基、n-ヘキシル基などのヘキシル基、n-ヘプチル基などのヘプチル基、n-オクチル基などのオクチル基、ならびに2,2,4-トリメチルペンチルおよび2-エチルヘキシルなどのイソオクチル基、n-ノニル基などのノニル基、n-デシル基などのデシル基、n-ドデシル基などのドデシル基、n-テトラデシル基などのテトラデシル基、n-ヘキサデシル基などのヘキサデシル基、ならびにn-オクタデシル基などのオクタデシル基などのアルキル基、シクロペンチル、シクロヘキシル、および4-エチルシクロヘキシル、シクロヘプチル基、ノルボルニル基、およびメチルシクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル、ビフェニル、ナフチル、アントリル、およびフェナントリル基などのアリール基、o-、m-、p-トリル基、キシリル基、およびエチルフェニル基などのアルカリル基、ベンジル基などのアラルキル基、7-オクテニル、5-ヘキセニル、3-ブテニル、アリル、およびビニル基などのアルケニル基、更にα-およびβ-フェニルエチル基である。
【0037】
基R、R1、R2、およびR3中に存在してよい好ましいヘテロ原子は、酸素原子である。加えて、窒素原子、リン原子、硫黄原子、ならびに塩素原子およびフッ素原子などのハロゲン原子も可能である。
【0038】
好ましいヘテロ原子含有有機基R、R1、R2、およびR3の例は、アクリル酸もしくはメタクリル酸または1~15個の炭素原子を有する非分岐鎖もしくは分岐鎖アルコールのアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステルの、それぞれのアクリロイルオキシまたはメタクリロイルオキシ基を含む基である。かかる基の中でも、好ましいのは、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸t-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、およびアクリル酸ノルボルニルから誘導されるものである。特に好ましいのは、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、およびアクリル酸ノルボルニルである。
【0039】
これらの基は、好ましくはケイ素原子と直接結合されていないが、1~12個の炭素原子を含む、好ましくは1または3個の炭素原子を含むことができる炭化水素スペーサーにより結合されており、アクリロイルオキシまたはメタクリロイルオキシ基中に存在するヘテロ原子以外のいずれかの更なるヘテロ原子を含まない。
【0040】
更なる好ましいヘテロ原子含有基R、R1、R2、およびR3は、式(II):
【0041】
【0042】
好ましくは、炭化水素基R、R1、R2、およびR3は、メチル、フェニル、ビニル、アクリロイルオキシ、およびメタクリロイルオキシ基ならびに1~15個の炭素原子を有する非分岐鎖または分岐鎖アルコールのアクリルエステルまたはメタクリル酸エステルから選択される。
【0043】
式(II)では、R4、R5、R6、R7、R8、およびR9は、相互に独立して、水素基、炭化水素基またはヘテロ原子置換炭化水素基であり、上記基R4、R5、R6、R7またはR8の少なくとも1つは、Si-CまたはSi-O-C結合によりケイ素原子と結合された炭化水素基であり、これにより式(II)の基がケイ素原子と結合している上記炭化水素基は、ヘテロ原子を含まないC3炭化水素基であることが好ましい。あるいは、上記基R4、R5、R6、R7またはR8は、化学結合であってもよく、その結果、式(II)の基は、化学結合である上記基を経てSi-C結合によりケイ素原子と直接結合している。
【0044】
基R4、R5、R6、R7、R8またはR9の例は、水素基、メチル、エチル、n-プロピル、およびイソプロピル基などの飽和炭化水素基、第一級、第二級、および第三級ブチル基、ヒドロキシエチル基、フェニルエチル基、フェニル基、ベンジル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基などの芳香族基、ヒドロキシメチル基、カルボキシエチル基、メトキシカルボニルエチル基およびシアノエチル基などのヘテロ原子含有基、ならびにアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、メタクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸t-ブチル、メタクリル酸t-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、およびアクリル酸ノルボルニルなどのアクリル酸およびメタクリル酸基、ならびにオレフィン性もしくはアセチレン性不飽和炭化水素基である。
【0045】
必要に応じて、隣接する基R4およびR6ならびに隣接する基R5およびR7が、相互に接続して、同じ環式飽和または不飽和基を生成し、したがって、縮合多環式構造物を生じることも可能である。
【0046】
式(II)のフェノール基の例は、フェノール基、オルト-、メタ-またはパラ-クレゾール基、2,6-、2,5-、2,4-または3,5-ジメチルフェノール基、2-メチル-6-フェニルフェノール基、2,6-ジフェニルフェノール基、2,6-ジエチルフェノール基、2-メチル-6-エチルフェノール基、2,3,5-、2,3,6-または2,4,6-トリメチルフェノール基、3-メチル-6-tert-ブチルフェノール基、チモール基、および2-メチル-6-アリルフェノール基であり、これらは酸素原子において置換されていてもよい。
【0047】
フッ素含有基の好ましい例は、トリフルオロプロピル、ノナフルオロヘキシル、およびヘプタデカフルオロオクチル基である。
【0048】
Yは、好ましくは2~12のシロキサニル単位間の1~24個の炭素原子を有する接続有機単位であることが好ましい。Yは、好ましくは二価、三価または四価であり、特に二価である。
【0049】
好ましい架橋芳香族基Yは、式(IIIa)、(IIIb)、および(IIIc):
【0050】
【0051】
式中、基R10、R11、R12、およびR13は、水素基または置換されていてもよい炭化水素基またはR14が炭化水素基である式OR14の基であってよい。式(IIIa)では、隣接する基、例えばR10およびR12またはR11およびR13が相互に結合して環式基を形成してもよく、したがって、縮合環系を生じてよい。
【0052】
かかる架橋芳香族基の典型例は、p-、m-またはo-フェニレン基、2-メチル-1,4-フェニルレン基、および2-メトキシ-1,4-フェニレン基であり、特に好ましいのは、p-フェニレン基である。
【0053】
必要に応じて、複数のかかる基は、例えば、式(IIIa)の2単位以上が相互に結合するように相互に結合することも可能であり、このオリゴマー架橋構造要素は、末端芳香環の対応する炭素原子とケイ素原子との結合により存在する。芳香族単位は、相互に直接結合していてもよく、またはアルカンジイル単位、例えば、メチレン基、1,2-エタンジイル基、1,1-エタンジイル基、2,2-ジメチルプロピル基またはスルホン基などの架橋機により相互に結合していてもよい。
【0054】
芳香族架橋単位の更なる例は、二置換されていてもよいフェノール環がアルカンジイルまたは他の単位により架橋されているものである。典型的代表物は、フェノール性酸素において置換されている2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン基(置換ビスフェノールA基)、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン基(置換ビスフェノールF基)、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン基(ビスフェノールS基)であり、フェノール性酸素原子は、通常、-(C3H6)-タイプの基により置換されており、-(C3H6)-基はケイ素原子とSiC結合しており、これにより架橋を形成している。
【0055】
芳香族単位により架橋されていない好ましい基Yは、アルカンジイル、アルケンジイル、およびアルキンジイル基であり、必要に応じて、ヘテロ原子を含んでよく、置換基として芳香族基を含んでよいが、これらは、これらの基において架橋機能を想定もこれに寄与もしない。
【0056】
典型例は、メチレン基、メチン基、四価炭素、1,1-エタンジイルおよび1,2-エタンジイル基、1,4-ブタンジイルおよび1,3-ブタンジイル基、1,5-ペンタンジイル、1,6-ヘキサンジイル、1,7-ヘプタンジイル1,8-オクタンジイル、1,9-ノナンジイル、1,10-デカンジイル、1,11-ウンデカンジイル、および1,12-ドデカンジイル基、1,2-ジフェニルエタンジイル基、1,2-フェニルエタンジオール基、および1,2-シクロヘキシルエタンジイル基である。直鎖架橋単位が2個以上の炭素原子を有し、置換パターンがこれを許す場合、これらの基の各々は、他の接続性による架橋、すなわち、異なる鎖原子の使用、α、ω接続性から得られるもの以外、すなわち、直鎖単位のそれぞれ最初および最後の原子による架橋として機能してもよい。典型例は、更に、言及された架橋炭化水素の直鎖代表物だけでなく、その異性体も含み、これらは、炭化水素構造物の異なる炭素原子とケイ素原子との結合による架橋として今度は機能することができる。
【0057】
非芳香族ヘテロ原子非含有炭化水素基の基からの特に好ましい基の例は、-CH2CH2-、-CH(CH3)-、-CH=CH-、-C(=CH2)-、および-C≡C-である。
【0058】
典型的フッ素置換架橋基Yの例は、C(CF3)2-基、-C(H)F-C(H)F-基、および-C(F2)-C(F2)-基である。
【0059】
典型的ヘテロ原子含有架橋基の例は、例えば、エチレンオキシプロピレン基およびエチレンオキシブチレン基である。更に典型例は、二面的に、-(CH2)n-または-CH2-CH(R15)-C(=O)O-末端基であり、式中、nは、通常3~8であり、R15は、水素原子またはメチル基およびこの末端基によりケイ素原子と結合されているグリコール基またはフェニレンエーテル基である。
【0060】
全リストは、ほんの一例であり、限定的と理解されるべきでない。
【0061】
式(I)の有機ポリシロキサン化合物は、これらを生成する構造単位の分子当たりの平均数に依存して広範囲にわたって粘度が変わる可能性があり、あるいは式(I)の有機ポリシロキサン化合物は、固体であるかもしれない。
【0062】
架橋していない状態での式(I)の液体有機ポリシロキサン化合物は、好ましくは20~8000000mPa・s、より好ましくは20~5000000mPa・s、特に20~3000000mPa・sの25℃における粘度を有する。
【0063】
非架橋状態の式(I)の固体有機ポリシロキサン化合物は、好ましくは25℃~250℃、より好ましくは30℃~230℃、特に30℃~200℃のガラス転移温度を有する。架橋フェニレン単位および100モル%としてSiC結合された置換基に対して少なくとも20モル%の全体的芳香族の割合を有する有機ポリシロキサンは、特に適していることが分かった。フェニレン単位は、このタイプの架橋置換基の性質を例証する実施例に記載されているように、モノマーだけでなくオリゴマーの置換または非置換フェニレン単位を意味すると理解される。
【0064】
式(I)の有機ポリシロキサン化合物を、いずれかの所望の方法により調製してよい。これらの化合物の好ましい調製方法は、一般式(IV):
X3-aRaSi-Y(SiRaX3-a)b (IV)
の化合物の加水分解および式(V):
R16
hSiX4-h (V)、
の化合物との共縮合であり、
式中、Xは、加水分解可能な基であり、
Hは、0~3の整数であり、
R16は、h=1である場合基R1であり、h=2である場合R2であり、およびh=3である場合R3であり、
ならびにR、Y、a、およびbは、既に上記定義されているとおりである。
【0065】
化合物(IV)は、従来技術の方法により得られ、使用される反応タイプは、それぞれの化合物(IV)の組成物に強く依存する。化合物(IV)は、通常、例えば、オレフィン性不飽和有機前駆体、例えば、アセチレンおよびジアリルまたはジビニル化合物ならびにSi-H官能性シリコーンビルディングブロックからヒドロシリル化により得られる。
【0066】
ハロゲン化有機前駆体からのグリニャール反応およびその後のハロゲン化またはアルコキシル化有機シランとの反応もここで考えられる方法である。必要に応じて、ブチルリチウムなどのアルカリ金属のアルキル化合物とのハロゲン化有機前駆体の金属ハロゲン化物交換反応、その後、公知のシリコーンビルディングブロックとのカップリング反応を使用することも可能である。かかる方法は、当業者に公知であり、入手可能な文献から容易に利用でき理解できる。これらの方法は本発明の主題ではないので、この点において提供される全ては、文書化され検索可能な従来技術への参照である。
【0067】
式(IV)の化合物が式(V)の化合物と共縮合される相対比は、式(I)中の添え字c、d、e、f、およびgの値により決定される。
【0068】
好ましくは、Xは、ハロゲン、酸またはアルコキシ基、より好ましくは塩素、酢酸、ギ酸、メトキシ基またはエトキシ基である。
【0069】
必要に応じて、この方法で得られる有機シロキサンを、更なる反応により修飾してもよく、例えば、公知の従来技術の方法の使用により、実際上いずれかの所望の分岐鎖シロキサンオリゴマーおよびポリマーならびにシリコーン樹脂を製造することが可能であるように平衡を更に変更および修正することができ、これは、用語有機ポリシロキサンに属するように本発明との関連で全て理解される。
【0070】
好ましくは、化合物(IV)および(V)の混合物を、冷却しながら水または希釈酸中に計量しながら導入するように共加水分解を行う。HClなどの気体の酸の場合、濃HCl水溶液への計量添加も気体として放出された酸を回収する場合に有用である。加水分解は、基Xの性質に依存して様々に発熱するので、反応の安全な実施と、必要に応じて合成の対応する工程における副反応の回避との両方のために、冷却は必要である。しかしながら、反応を完了まで進行させるために、高温の使用は有利であり必要であるかも知れない。
【0071】
クロロシランの場合の反応時間は、通常非常に短く、その結果、バッチ式運転で方法を実施するのに必要な時間は、主に冷却能力に依存する。あるいは、(IV)および(V)の共加水分解を連続式で実行することもでき、これのため、ループ反応更にカラム反応器と管型反応器との両方とも適している。
【0072】
残存酸を減らすため、水を用いた徹底した洗浄、きれいな相分離、および低圧下での加水分解生成物の精製は有利である。
【0073】
標準的圧において方法を行うことができる。しかしながら、目的に応じて、より高圧またはより低圧も実用的である。
【0074】
式(R3
3SiO1/2)fの基の使用により、合成中、分子量を制御することとアルコキシおよびシラノール基を低減することとの両方が可能である。これを加水分解過程において行う場合、後者は合成中に生成し、これは好ましい実施形態である。クロロシラン前駆体を使用して式(R3
3SiO1/2)fの基を製造する場合、合成の過程で、対称ジシロキサンもこれから生成するが、酸性加水分解条件下、これらは切断を繰り返すことができ、したがって、クロロシラン出発物質の加水分解後有機ポリシロキサン中に生成するシラノール基との反応のため末端基として利用可能なままである。これは、シラノール基の減少を可能とする。アルコキシ基、特に小さいアルキル基を有するものは、酸性加水分解の条件下でシラノール基を同様に生成し、短鎖アルコールは切断され、アルコキシ基は末端ビルディングブロックの併用により減少する。特にいずれかの残りのジシロキサンを、短鎖アルキル基、特にメチル基により排他的にまたは独占的に置換する場合、これらを、合成の最後に通常留去することができるので、ここでは、これらを過剰に使用することもできる。
【0075】
合成の最終工程において別々にこれらの末端基を生成するクロロシランまたはジシロキサンを添加することおよび酸性加水分解条件によりシラノール基の減少を選択的にもたらすことも可能である。ここで、過剰の末端クロロシランを使用することおよび得られたジシロキサンを蒸留により除去することは常に有利である。得られたジシロキサンは、蒸留により特に容易に分離することができるので、ビニルジメチルクロロシラン、ジメチルクロロシランまたはトリメチルクロロシランを、この目的のため特に有利に使用することができる。あるいは、ジシロキサンを直ちに使用することおよび充分な量の触媒活性の酸、好ましくは塩酸の添加を必要とする場合に加水分解条件を選択することも可能である。この場合に使用される塩酸の量は、通常、反応混合物中のシロキサン量に対して50~1000ppmである。
【0076】
1重量%未満の残存シラノール含有率を達成する。技術的に可能な最小値にまでシラノール含有率を徹底的に排除することは、本発明の主題ではないので、この工程を更に最適化しない。
【0077】
好ましくは、メタルクラッド積層体は、式(I)の有機ポリシロキサン化合物および更なる構成要素を含む処方物を含む。
【0078】
式(I)の有機ポリシロキサン化合物を化学的に硬化する、すなわち、化学反応により硬化して、架橋された不溶性のネットワークを生成する。硬化は、上記本明細書中に記載されているオレフィン性不飽和基により起こる。通常、フリー基重合反応を硬化のために使用する、あるいは-オレフィン性もしくはエチレン性不飽和官能基への添加においてケイ素に結合された水素も基として存在する場合-ヒドロシリル化により硬化する。
【0079】
式(I)の有機ポリシロキサン化合物は全て、化学的に架橋することができる脂肪族不飽和官能基を有する。ここで可能な化学架橋反応は、従来技術の公知の反応、特に、フリー基架橋を含み、フリー基架橋は、UV光などの適切な放射線源、更に基に崩壊する不安定な化学化合物、ならびに付加架橋、例えば、処方物の更なる構成要素である適切なヒドロシリル化触媒の存在下Si-H官能基を有するオレフィン性不飽和基のヒドロシリル化の両方により開始することができる。
【0080】
充分な硬化を達成するために、充分な量の官能基が存在しなければならない。充分な硬化を達成するために、式(I)の有機ポリシロキサン化合物の分子当たり、平均少なくとも1.0の官能基、好ましくは式(I)の有機ポリシロキサン化合物の分子当たり平均少なくとも1.1、特に平均少なくとも1.2の官能基が存在しなければならない。ここで官能基は異なっていてもよく、その結果、例えば、官能基の一部分はSi-H基であり、官能基の別の部分は、フリー基により硬化可能またはヒドロシリル化可能であるオレフィン性不飽和基である。補足的官能基の更なる組合せも考えられ、捕捉は、官能基の選択された組合せは相互に反応しあうことができることを意味する。官能基の1つの型のみ、例えば、フリー基により硬化可能である単独のオレフィン性またはアセチレン性不飽和官能基が存在する場合、これらの官能基の対応する数が存在する必要がある。均一なマトリックスを生成する共重合の目的のため、選択されるオレフィンおよびアセチレン基は、充分な共重合性を有することは、保証されるべきである。相互と共重合することができない組合せオレフィン基も可能であり、但し、2つまたは必要に応じてより多くの個々のポリマーの得られたマトリックスは、互いに相溶性があるままであり、相互に識別できるドメインに分離する分離相を生成しない。
【0081】
したがって、処方物の更なる構成要素として、適切な開始剤は、フリー基重合を開始するために存在してよい。適切な開始剤の例としては、特に、ジ-tert-ブチルペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、クミルペルオキシネオデカノエート、tert-ブチルペルオキシネオデカノエート、tert-アミルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシピバレート、tert-ブチルペルオキシイソブチレート、tert-ブチルペルオキ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、tert-ブチルクミルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシアセテート、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、1,1-ジ-tert-ブチルペルオキシシクロヘキサン、2,2-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ブタン、ビス(4-tert-ブチルシクロヘキシル)ペルオキシジカーボネート、ヘキサデシルペルオキシジカーボネート、テトラデシルペルオキシジカーボネート、ジベンジルペルオキシジカーボネート、ジイソプロピルベンゼンジヒドロペルオキシド、[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン]ビス[tert-ブチル]ペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジアセチルペルオキシジカーボネート、アセチルアセトンペルオキシド、アセチルシクロヘキサンスルホニルペルオキシド、tert-アミルヒドロペルオキシド、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、tert-アミルペルオキシ-2-エチルヘキシルカーボネート、tert-アミルペルオキシイソプロピルカーボネート、tert-アミルペルオキシネオデカノエート、tert-アミルペルオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、tert-ブチルモノペルオキシマレエートなどの有機過酸化物の分野からの例が挙げられ、このリストはほんの例証であり、限定的ではない。必要に応じて、フリー基反応のための異なる開始剤の混合物を使用することも可能である。フリー基反応のための開始剤または開始剤混合物の適合性は、その分解反応速度および満たされなければならない必要条件に依存する。これらの境界条件を充分考慮することにより、当業者が適切な開始剤を選択することを可能とする。
【0082】
オレフィン性およびアセチレン性不飽和基だけでなくケイ素に結合された水素も含む式(I)の有機ポリシロキサン化合物の場合、ヒドロシリル化反応によって硬化する選択肢がある。ヒドロシリル化反応を促進するための適切な触媒は、処方物の更なる構成要素として存在してよい。
【0083】
かかる触媒の例は、白金、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、およびパラジウムを含んでなる貴金属の族の化合物または複合体であり、好ましくは白金金属の族からの金属触媒または白金族金属の族からの化合物および複合体である。かかる触媒の例は、かかる二酸化ケイ素、酸化アルミニウムまたは活性炭などの担体に担持されていてもよい金属および微粒状白金、白金ハロゲン化物、例えば、PtCl4、H2PtCl6・6H2O、Na2PtCl4・4H2O、白金オレフィン錯体、白金アルコール錯体、白金アルコキシド錯体、白金エーテル錯体、白金アルデヒド錯体、H2PtCl4・6H2Oとシクロヘキサノンの反応生成物を含む白金ケトン錯体、検出可能な無機結合されたハロゲンの含有量を有するまたは有しない白金1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン錯体などの白金ビニルシロキサン錯体、ビス(γ-ピコリン)白金クロリド、トリメチレンジピリジン白金クロリド、ジシクロペンタジエン白金ジクロリド、ジメチルスルホキシエテニル白金(II)ジクロリド、シクロオクタジエン白金ジクロリド、ノルボルナジエン白金ジクロリド、γ-ピコリン白金ジクロリド、シクロペンタジエン白金ジクロリド、更に、1-オクテンに溶解された四塩化白金とsec-ブチルアミンまたはアンモニウム白金錯体との反応生成物などの、四塩化白金とオレフィンおよび第一級もしくは第二級アミンまたは第一級および第二級アミンとの反応生成物である。更なる実施形態では、イリジウムとシクロオクタジエンとの錯体、例えば、μ-ジクロロビス(シクロオクタジエン)ジイリジウム(I)を使用する。
【0084】
このリストは、ほんの例証であり、限定的ではない。ヒドロシリル化触媒の開発は、もちろん、本明細書で使用してもよい新規活性化学種を常に得る研究の活動的分野である。
【0085】
ヒドロシリル化触媒は、好ましくは、白金の化合物または錯体、好ましくは白金塩化物および白金錯体、特に白金オレフィン錯体、より好ましくは白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体から選択される。
【0086】
硬化方法では、ヒドロシリル化触媒を、2~250重量ppmの量、好ましくは3~150重量ppmの量、特に3~50重量ppmの量で使用する。
【0087】
式(I)の有機ポリシロキサン化合物は、メタルクラッド電子積層体を製造するためのバインダー、例えば、電子デバイス、特に高周波用途におけるプリント回路基板を製造するために使用されるものとして使用するのに特によく適している。
【0088】
これらのメタルクラッド電子積層体は、補強材を含んでよいが、必ずしも含まなくてよい。これは、メタルクラッド電子積層体が、例えば、繊維ファブリックまたは不織布などの補強ファブリックを含んでもよく、含んでいなくてもよい。補強材が存在する場合、これを、好ましくは層状に配置する。ここで、補強層は、多様な異なる繊維からなり得る。
【0089】
かかる補強層は、収縮を制御する助けとなり、向上した機械的強度を付与する。
【0090】
補強層が含まれる場合、この層を形成する繊維は、様々な選択肢から選択してよい。かかる繊維の例の非限定的リストとしては、Eガラス繊維、Sガラス繊維、およびDガラス繊維、シリカ繊維などのガラス繊維、ポリエーテルイミド繊維、ポリスルホン繊維、ポリエーテルケトン繊維、ポリエステル繊維、ポリカーボネート繊維、芳香族ポリアミド繊維または液晶繊維が挙げられる。繊維は、10nm~10μmの径を有してよい。補強は、200μm以下、好ましくは150μm以下の厚さを有する。
【0091】
使用の好ましい形態は、プリント回路基板の更なる製造のため、バインダーとしてまたは、ガラス繊維複合材からメタルクラッド積層体を製造するための有機バインダーと一緒に共バインダーとして式(I)の有機ポリシロキサン化合物の使用である。好ましい金属は、銅である。
【0092】
式(I)の有機ポリシロキサン化合物を、ソールバインダーとして使用してよい。処方物の更なる構成要素、有機バインダーが存在してもよい。使用される有機バインダーは、例えば、有機モノマー、オリゴマーおよびポリマーである。
【0093】
この目的のために通常使用される有機モノマー、オリゴマーおよびポリマーとしては、ポリフェニレンエーテル、ビスマレイミド、ビスマレイミドトリアジン共重合体、炭化水素樹脂、ポリブタジエンなどの脂肪族とポリスチレンなどの芳香族との両方ならびに脂肪族特性と芳香族特性との両方を有するハイブリッド系、例えば、スチレン-ポリオレフィン共重合体、上記共重合体の形態に原理的に制約はない、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂および必要に応じて他のものが挙げられ、これらの選択は例証であり非限定的であると理解される。
【0094】
好ましい有機モノマー、オリゴマーおよびポリマーは、オリゴマーおよびポリマーのポリフェニレンエーテル、モノマー、オリゴマー、およびポリマーのビスマレイミド、オリゴマーおよびポリマーの炭化水素樹脂、ならびにビスマレイミド-トリアジン共重合体である。必要に応じて、上記有機モノマー、オリゴマーおよびポリマーを、相互に混合してよい。
【0095】
有機成分が付加的に使用される場合、式(I)の有機ポリシロキサン化合物を含んでなる処方物中の有機モノマー、オリゴマー、およびポリマーの割合は、式(I)の有機ポリシロキサン化合物の混合物に対し、有機モノマー、オリゴマー、およびポリマーを100%として、10%~90%であり、好ましくは20%~90%、特に30%~80%である。
【0096】
加えて、式(I)の有機ポリシロキサン化合物と有機モノマー、オリゴマーまたはポリマーとのその混合物との両方を、必要に応じて反応性希釈剤としてオレフィン性またはアセチレン性不飽和基、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、パラメチルスチレンおよびビニルスチレン、クロロスチレン、およびブロモスチレンを有する更なる有機モノマーに溶解してよい。
【0097】
上記処方物は、更なる構成要素として、式(I)の有機ポリシロキサン化合物および必要に応じて有機モノマー、オリゴマーまたはポリマーとのその混合物を溶解するための通常の非反応性溶媒、例えば、定義された沸点範囲を有する脂肪族混合物などの脂肪族または芳香族溶媒、トルエン、キシレン、エチルベンゼンまたは上記芳香族化合物の混合物、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸メチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどのカルボン酸エステルを含んでなり得、特に式(I)の有機ポリシロキサン化合物と有機モノマー、オリゴマー、およびポリマーとの混合物の良好な溶解性は、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、およびその混合物などの芳香族溶媒において達成する可能性が最も高い。
【0098】
式(I)の有機ポリシロキサン化合物が、有機オリゴマーもしくはポリマーまたはその混合物と組み合わせて使用される場合、選択された有機成分と相溶性であり相分離をもたらさない式(I)の有機ポリシロキサン化合物を使用することが必須である。このような場合、フェニル基は有機成分との相溶性を向上させるので、総じて、よりフェニルに富んだ式(I)の有機ポリシロキサン化合物を使用するべきである。詳細には、ポリフェニレンエーテルまたは芳香族炭化水素樹脂などのより大きい芳香族成分を有する有機ポリマーでは、より大きい芳香族成分を有する式(I)の有機ポリシロキサン化合物を使用するべきであり、シリル単位と末端結合された架橋芳香族基と芳香族置換基との両方が相溶性の調整に寄与する。
【0099】
式(I)の有機ポリシロキサン化合物と有機バインダーの特定の選択との相溶性を調整するために必要な芳香族基の正確な量は、有機バインダーの選択に応じて決定しなければならない。
【0100】
必要に応じて異なるポリマー分類から選択される複数の有機ポリマーを混合すること、およびバインダー処方物においてこれを使用することも可能である。バインダー処方物において複数の式(I)の有機ポリシロキサン化合物を相互に組み合わせることも可能である。言い換えれば、本発明によれば、単独の式(I)の有機ポリシロキサン化合物のみを、バインダーとして使用するか、または複数の式(I)の有機ポリシロキサン化合物をバインダー処方物に相互に組み合わせる。同様に、本発明によれば、1つの式(I)の有機ポリシロキサン化合物のみを、バインダー処方物中に1つ以上の有機ポリマーとともに組み合わせる。更に、本発明によれば、複数の式(I)の有機ポリシロキサン化合物を、バインダー処方物中に1つ以上の有機ポリマーとともに組み合わせる。
【0101】
1つ以上の式(I)の有機ポリシロキサン化合物と1つ以上の有機オリゴマーまたはポリマーとの相溶性は、有機バインダーと式(I)の有機ポリシロキサン化合物との混合物を、有利に全ての選択された成分が溶解する溶媒に混合し、次いで、従来技術の方法、例えば、蒸留または噴霧乾燥により溶媒を除去し、得られた残渣を目視または顕微鏡法または必要に応じて電子顕微鏡法を用いて評価することにより容易に確立される。有機構成要素から分離し、異なる相として認識可能であるシリコーンドメインがないことにより相溶性混合物を認識することができる。
【0102】
更なる構成要素として、処方物は、添加剤などの更なる処方物成分を含んでなり得、必要に応じて、シラン、例えば、消泡剤および脱気剤、湿潤剤および分散剤、レベリング剤、相溶化剤、接着促進剤、硬化開始剤、触媒、安定剤、顔料を含むフィラー、染料、抑制剤、難燃剤、ならびに架橋助剤を含んでもよい。適切な混和挙動の意味での相溶性の試験に加えて、早期ゲル化を防止するためと相互に全成分の充分に迅速な重合/共重合が硬化中に達成することを保証することとの両方のために反応性に関する相溶性試験も必要であり得、同様に充分な湿潤性および必要に応じて他の特性の試験も必要であり得る。これは、必要に応じて、処方物の作製において観察および考慮しなければならない。
【0103】
使用可能なフィラーの例は、シリカ(例えば、沈降シリカまたはヒュームドシリカなどのセラミックフィラーであり、上記シリカは親水性または疎水性、好ましくは親水性であってよく、加えて、これらの表面上で有機基と官能的におよび必要に応じて反応的に提供されてよい)、石英(必要に応じてその表面上に反応性官能基を必要に応じて有することができるように表面処理または表面官能基化されてもよい)、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、タルク、雲母、粘度、カオリン、硫酸マグネシウム、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化亜鉛、三酸化アンチモン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、コランダム、珪灰石、タングステン酸ジルコニウム、セラミック中空球、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、酸化ベリリウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、非中空ガラス球、中空ガラス球、ならびに窒化ホウ素である。更なるフィラーとして、様々な材料、例えば、シリカ表面被覆されたシリコーン樹脂球またはポリマー被覆されたエラストマー粒子からなるコア-シェル粒子を使用することが可能であり、上記エラストマー粒子は、シリコーンエラストマーであってもよく、かかるエラストマー粒子の表面被膜の典型例はメタクリル酸ポリメチルシェルである。好ましくは、セラミックフィラーは、0.1μm~10μmのD90値として表される粒度を有する。好ましくは、フィラーは、バインダー、それぞれのモノマー、添加剤、およびフィラーからなる全バインダー処方物を100%として、0.1~60重量%、好ましくは0.5~60重量%、特に1~60重量%の量で存在する。これは、使用されるいずれもの非反応性溶媒は含まれないことを意味する。
【0104】
フィラーの場合、熱伝導性であるものは、特筆すべきである。これらは、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ケイ素、ダイヤモンド、グラファイト、酸化ベリリウム、酸化亜鉛、ケイ酸ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、および酸化アルミニウムである。
【0105】
バインダー処方物は、原則的に、通常5~25重量%の量の難燃剤を含んでよい。しかしながら、これは、式(I)の有機ポリシロキサン化合物それ自体は既に難燃特性を示すので、難燃剤の必要性を低減させる式(I)の有機ポリシロキサン化合物の特殊機能である。ポリシルセスキオキサンおよびシロキサンは、難燃特性を示すことが知られており、難燃剤としてのこれらの使用は従来技術である。したがって、本発明の特定の利点は、ここで、難燃性の機能を有するバインダーの機能を結合することが可能であることである。したがって、使用される式(I)の有機ポリシロキサン化合物の量に応じて、難燃剤の量を減らすことは可能である。使用される量が、使用される全てのバインダーおよび反応性有機モノマーの総混合物に対して少なくとも20重量%である場合、なお存在する難燃剤の量は、好ましくは、ほんの0~10重量%、より好ましくは0~8重量%、特に0~5重量%であり、言い換えれば、式(I)の有機ポリシロキサン化合物の使用は、選択された有機ポリシロキサンおよび使用される量に応じて、難燃剤の使用を省くことを可能とする。
【0106】
難燃剤の典型例は、金属Al、Mg、Ca、Fe、Zn、Ba、CuまたはNiの水和物ならびにBaおよびZnのホウ酸塩である。難燃剤は、表面処理されていてよく、この結果として、これらがその表面に反応性基を有することが可能である。難燃剤は、ヘキサクロロエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、テトラブロモフタル酸またはジブロモネオペンチルグリコールなどのハロゲン化有機難燃剤であってもよい。他の難燃剤の例は、メラニンシアヌレートおよびホスフィネート、ジホスフィネート、ホスファゼン、ビニルホスファゼン、ホスホネート、ホスファフェナントレン酸化物、および細粒ポリリン酸メラミンなどのリン含有成分である。
【0107】
臭素含有難燃剤の更なる例は、ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、エチレンビス(テトラブロモ)フタルイミド、テトラデカブロモジフェノキシベンゼン、デカブロモジフェニルオキシドまたは臭素化ポリシルセスキオキサンである。いくつかの難燃剤は、互いの効果を相乗的に増強する。これは、例えば、ハロゲン化難燃剤と三酸化アンチモンとの組合せの場合である。
【0108】
処方物は、更なる構成要素として、酸化防止剤、風化による劣化に対する安定剤、潤滑剤、可塑剤、着色料、マーキングおよび追跡性を目的とするリン光剤または他の薬剤、ならびに帯電防止剤を含んでもよい。
【0109】
使用される架橋助剤は、特に、次の非限定例で例証されているようにフリー基により硬化性またはヒドロシリル化可能である多価不飽和モノマーおよびオリゴマーである。例としては、二重オレフィン性不飽和成分、例えば、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジビニルジシロキサン、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジプロピルメタクリロイルジシロキサンなどの対称性オレフィン性不飽和二置換ジシロキサン、二重オレフィン性不飽和二置換有機モノマー、例えば、ジアリル-、ジビニル-、ジアクリロイル-もしくはジメタクリロイル-置換されているもの、またはオリゴマー、例えば、1,9-デカジエンおよび1,3-ブタジエンなどの共役および非共役ジエンが挙げられる。これらは、1,2,4-トリビニルシクロヘキサン、トリアリルシアヌレートまたはトリアリルイソシアヌレート、およびトリ(メタ)アクリレート、例えば、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどの3個のオレフィン性不飽和結合を有する不飽和モノマーまたはオリゴマーも含む。
【0110】
これらは、4個の不飽和結合を有する不飽和置換モノマーおよびオリゴマー、例えば、2,4,6,8-テトラメチル-2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサン、2,4,6,8-テトラフェニル-2,4,6,8-テトラビニルシクロテトラシロキサン、2,2-ビス[[(2-メチル-1-オキソアリル)オキシ]メチル]-1,3-プロパンジイルビスメタクリレート(ペンタエリスリトールテトラメタクリレート)、テトラアリルオルトシリケート、テトラアリル-cis,cis,cis,cis-1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボキシレート、テトラアリルシラン、およびグリオキサールビス(ジアリルアセタール)も含む。
【0111】
フリー基硬化に加えて、ヒドロシリル化による硬化も考えられるので、多価Si-H官能性成分が、架橋剤、例えば、1,1,3,3-テトラメチル-1,3-ジシロキサン、2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,4-ビス(ジメチルシリル)ベンゼンまたは鎖中および/または末端における有機オリゴシロキサンおよび有機ポリシロキサン多価Si-H官能基として機能することも可能である。
【0112】
式(I)の有機ポリシロキサン化合物ならびに有機モノマー、オリゴマー、およびポリマーのバインダー処方物のフリー基硬化のための有用な触媒/開始剤は、本明細書において既に述べているものと同じである。加えて、それ自体に対する式(I)の有機ポリシロキサン化合物および記載されているバインダー処方物の両方のフリー基硬化を開始するために適した他のフリー基スターターは、α,α’アゾビス(イソブチロニトリル)などのアゾ成分、酸化還元開始剤、例えば、過酸化水素および鉄塩などの過酸化物の組合せ、またはアセチルアジドなどのアジドである。
【0113】
式(I)の有機ポリシロキサン化合物およびこれらを含んでなる処方物を、本発明により、溶媒フリーおよび溶媒含有処方物の両方として使用するために使用してよい。これらは、総じて、処方物の全成分の均一相互分散および使用されるいずれもの補強層の湿潤および含浸を促進するために、溶媒含有処方物の形態で使用する。補強層を、総じて使用する。好ましくは、これは、ガラス繊維ファブリックである。補強層の浸潤を、処方物の含浸塗布により行うことができ、この目的のために様々な利用可能な技術的解決方法があり、必要に応じて、本発明のメタルクラッド積層体の製造のための連続式方法、およびその選択を含む。塗布技術の非限定例は、必要に応じて連続式方法におけるローラーシステムによる補強材のウェブの浸漬、噴霧、フラッディング、ナイフ塗布、その他である。全ての利用可能な技術を、制限も修正もなく使用してよいことならびに式(I)の有機ポリシロキサン化合物の使用に必要な特に新しい方法はないことは、本発明の利点である。この点において、本発明は、全く、メタルクラッド積層体の製造における現存の従来技術の範囲内である。新規なものは、現在まで知られていない関心を持っているメタルクラッド積層体の製造のための式(I)の有機ポリシロキサン化合物の使用である。
【0114】
含浸の後に、使用されるいずれもの溶媒を除去する乾燥工程が続く。乾燥方法のために従来技術方法も使用される。これらとしては、特に真空を用いたまたは真空を用いない熱誘導蒸発が挙げられる。使用されるバインダー混合物の反応性および粘着性の適切な調整は、この工程後、適切条件下、例えば、冷却下、貯蔵可能である複合体を提供し、その後になって更に処理してよい。
【0115】
方法の最終工程では、バインダー処方物は重合が起こり、再び従来技術方法により、フリー基重合のための必要に応じて含まれる開始剤をその分解温度より高い温度まで加熱し、その結果、バインダー処方物は崩壊してフリー基を生成してバインダー処方物のフリー基重合を開始する。原則的に、放射線硬化方法を使用することもできる。
【0116】
フリー基重合の代わりにヒドロシリル化による硬化を使用する場合、温度は、使用されるヒドロシリル化触媒のために使用される阻害剤を不活性化することができるこの工程において使用し、ヒドロシリル化触媒の触媒活性を引き起こす必要がある。
【0117】
この工程を、通常、好ましくは100~390℃、より好ましくは100~250℃、特に130~200℃の高温で行い、この温度は、好ましくは5~180分、より好ましくは5~150分、特に10~120分の時間運転する。加えて、この工程において増加された圧を印加するのが通常である。通常の圧は、1~10MPa、より好ましくは1~5MPa、特に1~3MPaの範囲である。
【0118】
複合材は、硬化を行う前に、補強層およびバインダー処方物からなる複合材の片面または両面上に少なくとも1つの選択された金属の層の塗布によりこの第二工程において導電性金属層とラミネート加工する。言い換えれば、含浸および乾燥からなる第一工程とバインダー処方物の化学的硬化を含んでなる第二工程との間に、第一工程からの複合体は、少なくとも1つの種類の導電性金属をラミネート加工する。
【0119】
有用な導電性金属としては、次のもの:銅、ステンレス鋼、金、アルミニウム、銀、亜鉛、スズ、鉛、および遷移金属の少なくとも1つが挙げられる。導電性層の厚さおよびその形状、大きさまたは表面質感は、原則的に制限されない。好ましくは、導電性金属層は、3~300μm、より好ましくは3~250μm、特に3~200μmの厚さを有する。2つの層が使用される場合、少なくとも1つの種類の導電性金属の2層の厚さは、変わる可能性があり、同じである必要はない。導電性金蔵は銅であること、および導電性金属の2つの導電性層が使用される場合に両層は銅であることは特に好ましい。好ましくは、導電性金属は、関心を持っている金属の箔の形態で使用される。使用される金属箔の算術平均粗さRaは、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下、特に0.7μm以下である。表面粗さがより低いほど、高周波応用において使用するためのそれぞれの箔の適性はより優れ、これは、本発明の好ましい目的である。導電性金属層とバインダー処方物の複合体と補強層との間の接着を改良するため、様々な従来技術方法、例えば、接着媒介層の使用、バインダー処方物の複合体上の金属層および補強層の電気めっきによる成膜、または気相成膜を使用してよい。導電性金属の層は、バインダー処方物および補強層からなる複合体上に直接配置されていてもよく、接着媒介層によりこれと接続してもよい。
【0120】
補強層が含まれない場合、式(I)の有機ポリシロキサン化合物を含んでなるバインダー処方物の層の作製を、好ましくは、担体、例えば、分離白膜または分離板上にバインダー処方物の層を成膜することにより行い、上記担体のための適切な材料は、原則的に、これから乾燥または硬化されたバインダー処方物がその後になって再び分離可能であり、例えば、適切な材料は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエステル、および同様のものである。それぞれの担体材料に対する分離可能性および薄膜形成特性は、バインダー組成物に応じて個々に決定しなければならない。方法に関して述べられることは、この補強のない変化形に等しく適用可能なままである。
【0121】
第一工程からの補強されたまたは補強されていない複合材および第二工程からのラミネート加工された複合材を使用して、第一工程からの複合材の複数の層を、例えば、第二工程からのクラッド積層体と交互に積み重ね、次いで、メタルクラッド積層体の製造のための手順と基本的に同じ方法における第一工程からのこれまでの未硬化複合材を硬化することにより多層構造物を作製することができる。より厚い層を作製するため、第一工程からの補強されたまたは補強されていない複合体の複数の層を、直接連続して積み重ねることができる。
【0122】
メタルクラッド積層体の製造と同様に、式(I)の有機ポリシロキサン化合物を、特に高温における腐蝕保護の目的のために腐蝕保護処方物中に使用してよい。
【0123】
加えて、式(I)の有機ポリシロキサン化合物およびこれらを含んでなる処方物を、鉄筋コンクリートにおいて鉄筋の腐蝕保護のために使用することもできる。式(I)の有機ポリシロキサン化合物およびこれらを含んでなる処方物が、これらを成型および硬化する前にコンクリート混合物中に導入される場合ならびに式(I)の有機ポリシロキサン化合物またはこれらを含んでなる処方物は、コンクリートが硬化された後にコンクリート表面に塗布される場合の両方において、鉄筋コンクリートにおける腐蝕阻害効果は達成される。
【0124】
金属に対する腐蝕保護の目的に加えて、式(I)の有機ポリシロキサン化合物を、式(I)の有機ポリシロキサン化合物を含んでなる処方物または式(I)の有機ポリシロキサン化合物を含んでなる処方物から得られる固体物品もしくは薄膜の更なる特性を操作するために使用してもよく、例えば:
-電気導電度および電気抵抗の制御、
-処方物の流動特性の制御、
-湿ったもしくは硬化された薄膜または物体の光沢の制御、
-耐候性の向上、
-耐薬品性の向上、
-色の安定性の向上、
-チョーキング傾向の減少、
-式(I)の有機ポリシロキサン化合物を含んでなる処方物から得られる固体物品または薄膜の棒摩擦またはすべり摩擦の増減、
-本発明の処方物を含んでなる処方物における泡の安定化または不安定化、
-式(I)の有機ポリシロキサン化合物を含んでなる処方物の基材への接着の改良、
-フィラー挙動、顔料の濡れ挙動、および分散挙動の制御、
-式(I)の有機ポリシロキサン化合物を含んでなる処方物のレオロジー特性の制御、
-機械的特性の制御、例えば、柔軟性、引っかき抵抗、弾性、拡張性、曲げ性、引裂挙動、リバウンド挙動、硬さ、密度、引裂伝播抵抗、圧縮永久ひずみ、異なる温度における挙動、膨張率、耐摩耗性、ならびに熱伝導率、可燃性、ガス透過率、水蒸気、熱気、化学薬品、風化、および放射線に対する耐性、式(I)の有機ポリシロキサン化合物またはこれらを含んでなる処方物を含んでなる入手可能な固体物品または薄膜の滅菌性などの更なる特性、
-電気特性の制御、例えば、誘電損率、絶縁耐力、誘電率、耐トラッキング性、耐アーク性、表面抵抗、比絶縁耐力、
-機械的特性の制御、例えば、柔軟性、引っかき抵抗、弾性、拡張性、曲げ性、引裂挙動、リバウンド挙動、式(I)の有機ポリシロキサン化合物を含んでなる処方物から入手可能な固体物品または薄膜の異なる温度における挙動。
【0125】
式(I)の有機ポリシロキサン化合物を使用して上記特性を操作し得る応用例は、金属、ガラス、木材、無機基材、織物、カーペット、床被覆または繊維、皮革、薄膜などのプラスチック、および成形品から製造可能な他の物品の製造のための合成繊維および天然繊維などの基材上のこれらから得られるコーティング組成物および含浸物ならびにコーティングおよび被覆金属の製造であり。処方物成分を適切に選択して、式(I)の有機ポリシロキサン化合物を、脱泡、流動促進、疎水化、親水化、フィラーおよび顔料分散、フィラーおよび顔料湿潤、基材湿潤、表面平滑性の促進、添加剤を添加された処方物から得られる硬化されたコンパウンドの表面上の棒摩擦またはすべり摩擦の低減の目的のための添加剤として処方物中に使用してもよい。式(I)の有機ポリシロキサン化合物を、液体または硬化された固体でエラストマーコンパウンドに組み込んでもよい。ここで、これらを、透明性、耐熱性、黄変傾向または耐候性の制御など、他の性能特性を補強または改良する目的のために使用してよい。
【0126】
上式中の上記シンボルの全ては、いずれの場合も、相互に独立して定義される。式の全てにおいてケイ素原子は四価である。
【実施例】
【0127】
以下の実施例は、本発明を更に明らかにするのに役立つ:これらの実施例は、例証であり、限定的ではないと理解されるべきである。
【0128】
全てのパーセンテージは、重量%である。別段に指定されない限り、全ての操作は、23℃の室温および標準圧(1.013バール)で行われる。
【0129】
別段に指定されない限り、製品特性を記載するための全データは、23℃の室温および標準圧(1.013バール)に関連する。
【0130】
装置は、多数の装置製造業者から商業的に入手可能など、市販の実験装置である。
【0131】
Phは、フェニル基=C6H5-である。
【0132】
Meは、メチル基=CH3-である。したがって、Me2は、2つのメチル基である。
【0133】
PPEは、ポリフェニレンエーテルである。
【0134】
HClは、塩酸である。
【0135】
本文書では、物質は、装置分析により得られるデータを報告することにより特性決定される。基礎となる測定は、公的にアクセス可能な標準にしたがって行うか、あるいは特に開発された方法を用いて決定する。開示された教示の明瞭さを確保するため、使用される方法を本明細書中以下に指定する。
【0136】
別段に指定されない限り、全実施例において、報告される部およびパーセンテージは、重量基準を表す。
【0137】
粘度:
別段に指定されない限り、DIN EN ISO3219に従って回転粘度計により粘度を決定する。別段に指定されない限り、全粘度は、25℃および1013ミリバールの標準圧に関連する。
【0138】
屈折率:
別段に指定されない限り、屈折率を、規格DIN51423に従って、25℃および1013ミリバールの標準圧における可視光波長領域、589nmにおいて決定する。
【0139】
透過率:
透過率を、UV-VIS分光法により決定する。適切な装置は、例えば、Analytik Jena Specord200である。
【0140】
使用される測定パラメータは、範囲:190~1100nm、ステップ幅:0.2nm、積分時間:0.04秒、測定モード:ステップモード。
【0141】
参照測定(バックグラウンド)を先ず行う。サンプルホルダーにマウントされた石英プレート(石英プレートの寸法:高さ×幅 約6×7cm、厚さ 約2.3mm)を、サンプルビーム中に置き、空気に対して測定する。
【0142】
この後、サンプル測定する。サンプルホルダーにマウントされ、約1mmの層厚の実際に適用されたサンプルを含む石英プレートを、サンプルビーム中に置き、空気に対して測定する。バックグラウンドスペクトルに対する内部計算は、サンプルの透過率スペクトルを与える。
【0143】
分子組成:
分子組成を、1H核および29Si核の測定を含む核磁気共鳴分光法(用語については、ASTM E386参照:高解像度核磁気共鳴(NMR)分光法:用語およびシンボル)により決定した。
【0144】
1
H-NMR測定の説明
溶媒:CDCl3、99.8%D
サンプル濃度:5mmNMRチューブ中、約50mg/1ml CDCl3
TMSを添加しない測定、7.24ppmにおけるCDCl3中の残存CHCl3に対するスペクトル参照
分光光度計:Bruker Avance I 500またはBruker Avance HD 500
プローブ:5mm BBOプローブまたはSMARTプローブ(Bruker)
測定パラメータ:
パルスプログラム=zg30
TD=64k
NS=64または128(プローブ感度に依存)
SW=20.6ppm
AQ=3.17秒
D1=5秒
SFO1=500.13MHz
O1=6.175ppm
プロセッシングパラメータ:SI=32k
WDW=EM
LB=0.3Hz
【0145】
使用された分光光度計モデルに応じて、測定パラメータに対する個々の調整は必要である可能性がある。
【0146】
29
Si-NMR測定の説明
溶媒:緩和剤として1重量%のCr(acac)3を含むC6D6 99.8%D/CCl4 1:1(体積/体積)
サンプル濃度:10mmNMRチューブ中、約2g/1.5ml溶媒
分光光度計:Bruker Avance300
プローブ:10mm 1H/13C/15N/29SiガラスフリーQNPプローブ(Bruker)
測定パラメータ:
パルスプログラム=zgig60
TD=64k
NS=1024(プローブ感度に依存)
SW=200ppm
AQ=2.75秒
D1=4秒
SFO1=300.13MHz
O1=-50ppm
プロセッシングパラメータ:
SI=64k
WDW=EM
LB=0.3Hz
【0147】
使用された分光光度計モデルに応じて、測定パラメータに対する個々の調整は必要である可能性がある。
【0148】
分子量分布:
分子量分布を、ポリスチレン標準品および屈折率検出器(RI検出器)を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)およびサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)の方法を用いて重量平均Mwおよび数平均Mnとして決定する。別段に指定されない限り、THFを溶離液として使用し、DIN55672-1に従う。多分散性は、比Mw/Mnである。
【0149】
誘電特性の決定:Df、Dk
誘電特性を、10GHzにおいてスプリットシリンダ共振器方法によりKeysight/Agilent E8361Aネットワークアナライザーを用いてIPC TM 650 2.5.5.13に従って決定する。
【0150】
合成例1:式(I)の有機ポリシロキサン化合物の調製:独国特許出願公開第102005040323号明細書、実施例1の手順に従った合成は、本明細書に記載されている結果をもたらす:
再蒸留された1,2-ビス(メチルジクロロシリル)エタン109gおよびビニルジメチルクロロシラン820gの混合物を、10℃まで冷却する。撹拌し、同時に冷却しながら、合計1.7lの5%HCl溶液を、反応混合物の温度が10~20℃に維持可能なように約80分にわたって添加する。次いで、混合物を30分間激しく撹拌し、その後、相を分離する。シロキサン相を、1lの水で4回洗浄し、0.5lの5%NaHCO3溶液で中和し、1lの水で再度洗浄する。揮発性加水分解生成物(主に、ジビニルテトラメチルジシロキサン)を80℃以下、減圧下で除去する。これにより、7.2mm2/秒(25℃)の粘度および149.8g当たり正確に1つのC=C二重結合を示す169.6のヨウ素価を有する残渣として透明の液体149.8gを得る。分岐単位に対する末端基の比は、2.57である。生成物は、使用された1,2-ビス(メチルジクロロシリル)エタンの加水分解された形態を約90%含む。
【0151】
合成例2:式(I)のシルフェニレン架橋有機ポリシロキサン化合物の調製。
【0152】
シルフェニレン前駆体の合成:
Xunjun Chen,Minghao Yi,Shufang Wu,Lewen Tan,Yixin Xu, Zhixing Guan,Jianfang Ge,and Guoqiang Yin:Synthesis of Silphenylene-Containing Siloxane Resins Exhibiting Strong Hydrophobicity and High Water Vapor Barriers,Coatings 2019,9,481;doi:10.3390/coatings9080481 www.mdpi.com/journal/coatingsの文献の手順に従った1,4-ビス(ジメトキシフェニルシリル)ベンゼン。
1,4-ビス(ジメトキシフェニルシリル)ベンゼンを、トリメトキシフェニルシランを、引用文献「2.2.Synthesis of the 1,4-bis(dimethoxyphenylsilyl)benzene(BDMPD)」に従って1,4-ジブロモベンゼンから得られるグリニャール試薬と反応させることにより得る。構造を、1H-NMR分光法および引用文献との比較により確認した。
【0153】
845.2g(=4モル)のフェニルトリクロロシラン、546.7g(1.3モル)の1,4-ビス(ジメトキシフェニルシリル)ベンゼン、198.7g(0.8モル)の3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、および820gのキシレンの混合物を、4時間にわたって計量しながら、初期投入 2400gの脱塩水に導入する。初期投入は、23℃の室温において計量の開始時に行う。反応中の発熱性熱発生の結果として温度が上昇する。反応槽の内部温度が決して50℃を超えて上昇しないように計量導入を制御する。必要に応じて、計量導入速度を低下させる。
【0154】
計量添加の最後に、混合物を15分間撹拌する。次いで、スターラーを停止する。有機相および水相が分離する。本質的に濃塩酸水溶液からなる下層の水性透明および無色の相を流出する。
【0155】
反応槽に残存する有機相に、1lの脱塩水を添加し、槽内容物を撹拌により混合する。30分後、スターラーを停止し、相を再度分離させる。水相は、下相として下に沈み、流出させる。水相が下相として下に沈む場合、混合物を、脱塩水の代わりに10%塩化ナトリウム水溶液、または100gの塩化ナトリウム添加で30分間再度洗浄し、その後、相分離を再度行う。有機相中の残存HCl含有量が20ppm未満になるまで、この方法を反復する。残存HCl含有量を、従来技術に従って酸-塩基滴定により決定する。通例、脱塩水または10%NaCl水溶液を用いて2回の洗浄で充分である。次いで、水が得られなくなるまで、水エントレーナーとしてのキシレンと共に110℃における共沸により除去する。
【0156】
合成のこの段階において得られる生成物は、約3重量%のシラノール基を含み、これは、これらの極性のために標的とする応用を干渉する。シラノール含有量を減少させるため、以下の手順を使用する:
【0157】
200gの水を、上記蒸留後に残存するキシレン反応混合物に計量して導入する。次いで、265.1g(2.2モル)のビニルジメチルクロロシランをゆっくりと添加し、反応温度(反応槽の内部温度)が50℃の制限未満のままであるように、計量導入速度を調整する。計量導入の最後に、これらから生成されるビニルジメチルクロロシランまたはテトラメチルジビニルジシロキサンとのシラノール基の反応が完了するまで進行するように、加熱も冷却もしないで混合物を更に60分間撹拌する。
【0158】
水相を上記のように除去し、次いで、上記のように、混合物を1リットルの水で3回洗浄する。必要に応じて、相分離を、スターラーを停止して、60℃の加熱ジャケット温度まで加熱することにより促進することができる。洗浄後、キシレン溶液中のHCl含有量は、20ppm未満である。
【0159】
キシレンの量を、20%キシレン中の80%樹脂の溶液が得られるまで、110℃において減圧下(20ミリバール)蒸留により減少させる。
【0160】
メトキシ基は、得られた生成物中、もはや1H NMRにより検出できない。これは、メタクリレート官能性トリメトキシシランは、縮合により完全に組み込まれ;得られたメタノールを後処理中に除去した。更なる処理は、シラノール基の割合を約0.9重量%(1H NMRにより決定)まで減少させる。
【0161】
次の分子量を、SEC(溶離液トルエン)により決定した:Mw=7347g/モル、Mn=2903g/モル、多分散性PD=2.53。
【0162】
29Si NMRにより、式のケイ素含有部分のモル組成は:
Me2Si(Vi)O1/2:11.54%
H2C=C(CH3)C(=O)-O-(CH2)3-SiO3/2:11.98%
O2/2(Ph)Si-C6H4-Si(Ph)O2/2:19.23%
PhSiO3/2:57.25%
である。
【0163】
シラノール基は、PhSiO3/2単位と結合している。
【0164】
合成例3:フェニレン架橋を有する式(I)の有機ポリシロキサン化合物の調製:
合成例2に従った合成を反復するが、合成例2のものの代わりに以下の量で出発物質を用いる:
フェニルトリクロロシラン:281.7g(=1.3モル)
1,4-ビス(ジメトキシフェニルシリル)ベンゼン:1202.7g(2.9モル)。
【0165】
手順の残りは、合成例3のものと同じである。以下の結果を得る:
メトキシ基は、NMRにおいて検出されない。残存シラノール含有量は、0.8重量%である。
【0166】
SEC:Mw=8347g/モル、Mn=3953g/モル、多分散性PD=2.11。
【0167】
29Si NMRにより、処方物のケイ素含有部分のモル組成は:
Me2Si(Vi)O1/2:10.93%
H2C=C(CH3)C(=O)-O-(CH2)3-SiO3/2:10.89%
O2/2(Ph)Si-C6H4-Si(Ph)O2/2:49.96%
PhSiO3/2:28.22%
である。
【0168】
合成例4:アルキレン架橋を有する式(I)の有機ポリシロキサン化合物の調製:
合成例2による合成を反復するが、合成例2のものの代わりに以下の量で出発物質を用いる:
フェニルトリクロロシラン:422.6g(=2モル)
1,2-ビス(ジクロロメチルシリル)エタン:341.35g(1.35モル)
ビニルジメチルクロロシラン:403.7g(3.35モル)
1,4-ビス(ジメトキシフェニルシリル)ベンゼンを使用しない。
【0169】
この合成では、271.2g(2.25モル)のビニルジメチルクロロシランを、第一工程において初期投入の水に計量して導入されたクロロシラン混合物に直接添加する。合成例3のようにシラノール基の減少のために、残りの132.6g(1.1モル)を使用する。
【0170】
手順の残りは、合成例3のものと同じである。以下の結果を得る:
メトキシ基は、NMRで検出されない。残存シラノール含有量は、0.9重量%である。
SEC:Mw=6974g/モル、Mn=2812g/モル、多分散性PD=2.48。
【0171】
29Si NMRにより、処方物のケイ素含有部分のモル組成は:
Me2Si(Vi)O1/2:50.39%
O2/2(Me)Si-C2H4-Si(Me)O2/2:19.56%
PhSiO3/2:30.05%
である。
【0172】
合成例5:アルキレンおよびフェニレン架橋を有する式(I)の有機ポリシロキサン化合物の調製:
合成例2に従った合成を反復するが、合成例2のものの代わりに以下の量で出発物質を用いる:
フェニルトリクロロシラン:422.6g(=2モル)
1,2-ビス(ジクロロメチルシリル)エタン:512.0g(2モル)
1,4-ビス(ジメトキシフェニルシリル)ベンゼン:986.2g(2.4モル)
ビニルジメチルクロロシラン:403.7g(3.35モル)。
【0173】
この合成では、271.2g(2.25モル)のビニルジメチルクロロシランを、第一工程において初期投入の水に計量して導入されたクロロシラン混合物に直接添加する。合成例3のようにシラノール基の減少のために、残りの132.6g(1.1モル)を使用する。
【0174】
手順の残りは、合成例3のものと同じである。以下の結果を得る:
メトキシ基は、NMRで検出されない。残存シラノール含有量は、0.9重量%である。
SEC:Mw=4974g/モル、Mn=1966g/モル、多分散性PD=2.53。
【0175】
29Si NMRにより、処方物のケイ素含有部分のモル組成は:
Me2Si(Vi)O1/2:34.49%
O2/2(Me)Si-C2H4-Si(Me)O2/2:20.31%
O2/2(Ph)Si-C6H4-Si(Ph)O2/2:24.64%
PhSiO3/2:20.56%
である。
【0176】
合成例6:アルキレンおよびフェニレン架橋を有する式(I)の有機ポリシロキサン化合物の調製:
合成例6に従った合成を反復するが、合成例6のものの代わりに以下の量で出発物質を用いる:
1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタン:540.0g(2モル)
この例では、1,2-ビス(ジクロロメチルシリル)エタンを使用しない。
【0177】
手順の残りは、合成例6のものと同じである。以下の結果を得る:
メトキシ基は、NMRで検出されない。残存シラノール含有量は、0.8重量%である。
SEC:Mw=5768g/モル、Mn=2074g/モル、多分散性PD=2.78。
【0178】
29Si NMRにより、処方物のケイ素含有部分のモル組成は:
Me2Si(Vi)O1/2:32.78%
O3/2Si-C2H4-SiO3/2:21.01%
O2/2(Ph)Si-C6H4-Si(Ph)O2/2:23.48%
PhSiO3/2:22.73%
である。
【0179】
合成例7:アルキレン架橋を有する式(I)の有機ポリシロキサン化合物の調製:
合成例6による合成を反復するが、合成例6のものの代わりに以下の量で出発物質を用いる:
1,2-ビス(クロロジメチルシリル)エタン:580.6g(2.7モル)
1,2-ビス(ジクロロメチルシリル)エタンを使用しない。
3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートを使用しない。
【0180】
手順の残りは、合成例3のものと同じである。以下の結果を得る:
メトキシ基は、NMRで検出されない。残存シラノール含有量は、0.8重量%である。
SEC:Mw=5637g/モル、Mn=1964g/モル、多分散性PD=2.87。
【0181】
29Si NMRにより、処方物のケイ素含有部分のモル組成は:
Me2Si(Vi)O1/2:11.96%
O1/2(Me2)Si-C2H4-Si(Me2)O1/2:19.56%
PhSiO3/2:68.48%
である。
【0182】
比較例1:本発明でない架橋SiC-結合された単位を有しない有機ポリシロキサン合成
合成例2、3、および4に従った合成を反復するが、合成例2~4から逸脱して、架橋単位を有する原料を使用しない。これは、1,4-ビス(ジメトキシフェニルシリル)ベンゼンも1,2-ビス(ジクロロメチルシリル)エタンも使用しないことを意味する。
これらの原料のために示された量は、以下のように置き換える:
【0183】
合成例2では、1,4-ビス(ジメトキシフェニルシリル)ベンゼンを使用しないか、さもなければ示されているのと変更しないで合成を行う。
結果:生成物指定V1.2
【0184】
残存するメトキシ含有量は、1H-NMRにおいて検出できなかった。シラノール含有量は、1.1重量%である。
【0185】
次の分子量を、SEC(溶離液トルエン)により決定した:Mw=3657g/モル、Mn=1759g/モル、多分散性PD=2.07。
【0186】
29Si NMRにより、処方物のケイ素含有部分のモル組成は:
Me2Si(Vi)O1/2:14.96%
H2C=C(CH3)C(=O)-O-(CH2)3-SiO3/2:15.81%
PhSiO3/2:69.23%
である。
【0187】
合成例3では、1,4-ビス(ジメトキシフェニルシリル)ベンゼンの特定の量を、フェニルトリクロロシランによりモル当量規準で置き換える。全ての他の情報は、変えないままである。
結果:生成物指定V1.3
【0188】
メトキシ基は、NMRで検出されない。残存シラノール含有量は、1.0重量%である。
SEC:Mw=3477g/モル、Mn=1385g/モル、多分散性PD=2.51。
【0189】
29Si NMRにより、処方物のケイ素含有部分のモル組成は:
Me2Si(Vi)O1/2:11.03%
H2C=C(CH3)C(=O)-O-(CH2)3-SiO3/2:11.36%
PhSiO3/2:77.61%
である。
【0190】
合成例4では、1,4-ビス(ジメトキシフェニルシリル)ベンゼンの特定の量を、フェニルトリクロロシランによりモル当量規準で置き換える。全ての他の情報は、変えないままである。
結果:生成物指定V1.4
【0191】
メトキシ基は、NMRで検出されない。残存シラノール含有量は、0.9重量%である。
SEC:Mw=1576g/モル、Mn=885g/モル、多分散性PD=1.78。
【0192】
29Si NMRにより、処方物のケイ素含有部分のモル組成は:
Me2Si(Vi)O1/2:51.35%
PhSiO3/2:48.65%
である。
【0193】
使用例1:メタルクラッド積層体の製造のための合成例1~7による有機ポリシロキサンの使用ならびに比較例V1.2、V1.3、およびV1.4との比較
合成例1~7に従って調製されたおよび比較例に従って調製された有機ポリシロキサンを、ガラス繊維補強複合層を有する銅クラッド積層体を製造するために、バインダーとして使用した。以下のインプット材料を使用した:
【0194】
銅箔:≦8μmの十点平均粗さRzおよび≦0.4μmの算術平均粗さRa、純度≧99.8%を有するJiangtong-Yates Copper Foil Co Ltdからの35μm厚銅箔(285±10g/m2)。
【0195】
ガラス繊維:Changzhou Xingao Insulation Materials Co.Ltd.により製造されたEガラス繊維タイプ1080E。厚さ0.055±0.012mm、47.5±2.5g/m2。
【0196】
この例では、合成例1からの有機ポリシロキサンを溶媒フリーで使用し、他の全てはキシレンの溶液の形態で使用した。合成例4、5、6、および7ならびに比較例V1.4からの有機ポリシロキサンに関して、いずれの場合も、溶液は90%の有機ポリシロキサンおよび10%のキシレンを含んだ。合成例2および3ならびに比較例V1.2およびV1.3からの有機ポリシロキサンに関して、80%の有機ポリシロキサンおよび20%のキシレンの処方物を使用した。
【0197】
硬化を開始するため、いずれの場合も、有機ポリシロキサンを、1重量%のジクミルペルオキシドと混合し、これを、撹拌により樹脂マトリックス中に均一に分散した。
【0198】
積層体を、必要に応じてキシレン溶液の形態で、1層ずつ、30×30cmガラス繊維層のブリーダーローラーを用いて、それぞれの有機ポリシロキサンを気泡フリー含浸することにより製造した。これのために、ガラス繊維層を、寸法安定なステンレス鋼製フラット面上に置き、この上に、銅箔の層を配置した後、ガラス繊維の第一層をその上に置いた。合計3層のガラス繊維ファブリックを毎回連続して含浸した。存在するいずれの溶媒を除去するため、含浸されたファブリックを、60℃および10ミリバールの真空乾燥器内で重量が一定になるまで乾燥した。次いで、銅箔の第二層を含浸されたガラス繊維層の上に重ね、別の寸法安定なステンレス鋼製プレートをその上に置いた。積層体を、2MPa圧の加熱プレスにおいて200℃および30ミリバールの真空で120分間加熱した。260±20μmの総厚を有する銅クラッド積層体を得た。
【0199】
誘電特性を、10GHzにおいてスプリットシリンダ共振器方法によりKeysight/Agilent E8361Aネットワークアナライザーを用いてIPC TM 650 2.5.5.13に従って決定した。表1に報告されている値を得た:
【0200】
【0201】
式(I)の有機ポリシロキサン化合物を用いて得られた銅クラッド積層体のDk値およびDf値は、比較例からの有機ポリシロキサンを用いて得られたDk値およびDf値より著しく低い。高周波用途の目的は、最も低い可能性がある誘電損率および誘電率であるので、本発明の効果は明白である。
【0202】
使用例2:フィラーを用いたメタルクラッド積層体の製造のための合成例1~7による有機ポリシロキサンおよび比較例1による有機ポリシロキサンの使用
使用例1から逸脱して、49.5%のタイプQ 033沈降シリカ(製造者Suzhou Ginet New Materials Technology Co Ltd、球形二酸化ケイ素粒子、D99≦3μm、SiO2≧99%)を、樹脂および市販溶解剤を用いた樹脂溶液に均質に組み込んだ。使用例1でキシレンを使用した樹脂処方物のため、30%および40%キシレンを、それぞれ10%および20%キシレンの代わりに使用した。
【0203】
プリプレグ中間体を用いない積層体を直接積み上げる代わりに、この時、ガラス繊維層に、いずれの場合もポリテトラフルオロエチレン薄膜上に個々の層として樹脂処方物を含浸し、次いで、真空乾燥器内で重量が一定になるまでこれらを乾燥することにより製造した。したがって、いずれの場合も、このように製造された含浸されたガラス繊維ファブリックの3層を、次に、銅箔および銅箔層で完成された積重の上に互いに重ねた。使用例1と同様な方法で、この多層アセンブリを、例1で規定された条件下真空プレスにおいて2つの寸法安定なステンレス鋼プレート間に加圧した。
【0204】
得られた積層体は、290±20μmの厚さを有した。
得られた積層体は、表2に報告されている誘電特性測定値を示した。
【0205】
【0206】
DkおよびDfの増加は、沈降シリカと有機ポリシロキサンとの界面において更なる極性効果に起因する。しかしながら、式(I)の有機ポリシロキサン化合物を用いたメタルクラッド積層体の本発明による製造は、この場合でも上手くいき、本発明でない有機ポリシロキサンに比べて有利であることは、この場合でも明白である。
【0207】
使用例3:プリプレグを経た非常粘性である固体の材料を用いた選択された合成例
使用例2から逸脱して、この時、フィラーを使用しなかった。これらの条件下、充分に不粘着状態まで乾燥する有機ポリシロキサンのみを用いたプリプレグを製造することは可能である。したがって、この例のため、合成例2~7からの有機ポリシロキサンならびに比較例1からの有機ポリシロキサンV1.2およびV1.3のみを使用した。これらを、使用例1に示されているように、10%および20%キシレンで希釈して使用した。適切なフィラーを充填または他の有機ポリシロキサンもしくは適切な有機ポリマーと混合などの適切な手段によりこれを行う場合、ここで不粘着プリプレグの製造の可能性も満足されるので、合成例1からの有機ポリシロキサンは、それにもかかわらず本発明である。これらは、メタルクラッド積層体のためのバインダー処方物の製造のための従来技術による処方物を作製するための手段であるので、更なる配合手段を用いない純粋な式(I)の有機ポリシロキサン化合物から製造されたプリプレグは、本発明の手段と矛盾しない。
【0208】
それ以外の場合の手順は、使用例2に記載されている手順と同じである。
【0209】
得られた積層体は、270±20μmの厚さを有した。
得られた積層体は、表3に報告されている誘電特性測定値を示した。
【0210】
【0211】
本発明の有機ポリシロキサンを用いて得られた銅クラッド積層体のDk値およびDf値は、比較例からの有機ポリシロキサンを用いて得られたDk値およびDf値より著しく低い。高周波用途の目的は、最も低い可能性がある誘電損率および誘電率であるので、本発明の効果は明白である。
【0212】
使用例4:メタルクラッド積層体の製造のための有機ポリマーとの混合物中の合成例1~7および比較例1による有機ポリシロキサンの使用。
手順は、使用例2に記載されている手順と本質的に同じである。使用例2から逸脱して、フィラーを使用しなかった。
【0213】
その代わりとして、有機ポリマーを、有機ポリシロキサンと混合した。最終溶媒フリー混合物は、常に、30重量%の有機ポリシロキサンおよび70重量%の有機ポリマーを含んだ。使用された有機ポリマーは、トリアリルイソシアヌレート(NORYL SA9000)、α,ω-メタクリレート末端ポリフェニレンエーテル(SABIC、Mn=2500g/モル、Tg=160℃)、およびB3000(日本曹達株式会社、ポリマー鎖中に85%より多い1,2-ビニル構造を含む液体ポリブタジエン Mn=3200、45℃における粘度=210ポアズ)であった。
【0214】
ポリマーを、同じ割合で常に使用した。これらを、30重量部のSA9000、25重量部のB3000、および15重量部のトリアリルイソシアヌレートを、100重量部のキシレンで分散して、キシレンに溶解/分散した。
【0215】
このように得られた処方物を、30%の有機ポリシロキサンおよび70%の有機成分の特定の混合比が、得られた溶液中に存在するように、使用例2により調製された有機ポリシロキサンの溶液と混合した。次いで、これらの溶液を使用して、使用例2に記載されているプリプレグを製造した。
【0216】
得られた積層体は、290±20μmの厚さを有した。
得られた積層体は、表4に報告されている誘電特性測定値を示した。
【0217】
【0218】
本発明の有機ポリシロキサンを用いて得られた銅クラッド積層体のDk値およびDf値は、比較例からの有機ポリシロキサンを用いて得られたDk値およびDf値より著しく低い。高周波用途の目的は、最も低い可能性がある誘電損率および誘電率であるので、本発明の効果は明白である。
【国際調査報告】