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特表2024-529054冷却装置、冷却要素の冷却方法及び層蒸着装置
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  • 特表-冷却装置、冷却要素の冷却方法及び層蒸着装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】冷却装置、冷却要素の冷却方法及び層蒸着装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/44 20060101AFI20240725BHJP
   C23C 14/50 20060101ALI20240725BHJP
   C23C 14/24 20060101ALI20240725BHJP
   C23C 14/34 20060101ALI20240725BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20240725BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
C23C16/44 B
C23C14/50 E
C23C14/24 L
C23C14/34 L
H01L21/205
H01L21/31 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507087
(86)(22)【出願日】2022-08-05
(85)【翻訳文提出日】2024-03-18
(86)【国際出願番号】 EP2022072126
(87)【国際公開番号】W WO2023012345
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】2111350.1
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507102296
【氏名又は名称】ライボルト ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Leybold GmbH
【住所又は居所原語表記】Bonner Str. 498, D-50968 Koeln, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100196221
【弁理士】
【氏名又は名称】上潟口 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】ブルクハルト マイク
(72)【発明者】
【氏名】コッポルド イェルゲン
(72)【発明者】
【氏名】ウィレムス イェンス
【テーマコード(参考)】
4K029
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4K029DA08
4K029JA01
4K030GA02
4K030JA09
4K030JA10
4K030KA26
5F045AA03
5F045BB08
5F045EC09
5F045EJ01
5F045EJ03
5F045EK07
(57)【要約】
冷却装置、層蒸着装置及び冷却要素の冷却方法である。冷却装置は、入口及び出口を備える冷却ダクトを有する冷却要素を備える。入口には、供給ラインを介して圧縮ガス供給装置が接続されている。さらに、噴霧供給ラインが供給ラインに接続されており、噴霧ノズルが噴霧供給ラインに接続され、液体冷却剤を霧状にして霧状冷却剤を供給ラインに送り込むようになっている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空装置のための冷却装置であって、
入口及び出口を備える冷却ダクトを有する冷却要素であって、前記入口は、供給ラインを介して圧縮ガス供給装置に接続されている、冷却要素と、
前記供給ラインに接続された噴霧供給ラインであって、噴霧ノズルが前記噴霧供給ラインに接続され、液体冷却剤を霧状にして、霧状液体冷却剤を前記供給ラインに送り込むようになっている、噴霧供給ラインと、
を備える冷却装置。
【請求項2】
前記冷却要素は、サンプルホルダを備えるか又はバッフルとして構築されている、請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記噴霧ノズルは、ニードルバルブである、請求項1又は2に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記噴霧供給ラインは、入口バルブを有し、前記入口バルブは、前記冷却要素の温度の低下に伴って前記霧状液体冷却剤を増加させるように構成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記噴霧供給ラインの圧力は、前記冷却要素の温度の低下に伴って増加するように制御可能である、請求項1から4のいずれか一項に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記噴霧供給ラインは、入口バルブを有し、前記入口バルブは、前記冷却要素の温度の低下に伴って、前記入口バルブの少なくとも部分的な開放位置と前記入口バルブの閉鎖位置との間のデューティサイクルを増加させて、前記霧状液体冷却剤を増加させるように構成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の冷却装置。
【請求項7】
前記噴霧ノズルは前記入口バルブである、請求項4から6のいずれか一項に記載の冷却装置。
【請求項8】
冷却剤供給ラインが、前記冷却要素に液体冷却剤を供給するために前記供給ラインに接続されており、前記冷却剤供給ラインは、前記冷却要素の温度が閾値温度未満で開放し、前記冷却要素の温度が閾値温度以上で閉鎖するように構成された冷却剤入口バルブを備え、好ましくは、前記閾値温度は、前記液体冷却剤の沸点未満である、請求項1から7のいずれか一項に記載の冷却装置。
【請求項9】
真空装置の冷却要素を冷却する方法であって、
前記冷却要素に圧縮ガスを供給するステップと、
前記圧縮ガスにより、霧状液体冷却剤を前記冷却要素に供給するステップと、
を含む方法。
【請求項10】
前記霧状液体冷却剤の量は、前記冷却要素の温度の低下に伴って増加する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
霧状にされる液体冷却剤の圧力は、前記冷却要素の温度の低下に伴って増加する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
噴霧供給ラインの入口バルブは、前記冷却要素の温度の低下に伴ってさらに開放される、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
噴霧供給ラインの入口バルブは、前記冷却要素の温度の低下に伴って、デューティサイクルに関してより長く開放される、請求項10から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記冷却要素の閾値温度未満では、液体冷却剤が前記冷却要素に供給され、好ましくは、前記閾値温度は液体冷却剤の沸点未満である、請求項9から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
真空チャンバと、前記真空チャンバ内に配置されたサンプルホルダと、蒸着モジュールとを備え、前記サンプルホルダが、請求項1から8のいずれか一項に記載の冷却装置を備える、層蒸着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空装置の冷却装置に関する。さらに、本発明は、真空装置の冷却要素の冷却方法に関する。さらに、本発明は、このような冷却装置を備える層蒸着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
原子層蒸着(ALD)装置及び物理蒸着(PVD)装置等の一般的な層蒸着装置は、真空を維持するための真空チャンバを備えている。真空チャンバ内には、蒸着プロセス中に基板又はサンプルを保持するサンプルホルダが配置されている。その際、一般的に、バイアス電圧を印加する、サンプルを傾ける、サンプルを最大400℃の高温に加熱するなど、蒸着プロセス中にサンプルを処理するための一般的なことが行われている。
【0003】
特に、サンプルが加熱された場合、多くの場合、手作業でサンプルを取り出すために又は次の工程ステップでの蒸着層の劣化を避けるために、次の工程ステップを目的として又はサンプルを装置から取り出すことを目的としてサンプルを少なくとも100℃の温度未満に実質的にクールダウンすることが必要である。
【0004】
その際、真空チャンバを直ちに開放することは、サンプルに熱応力をもたらし、特に空気中の酸素が温かいサンプルと反応して蒸着層を劣化させ、高温及び火傷リスクに起因して人体に害を及ぼす可能性があるため、適用できない。従って、上述の欠点を避けるためには、サンプルの温度を十分に下げることが極めて重要になる。
【0005】
しかながら、真空チャンバ内は真空であるため、対流は存在しないか又はごくわずかであり、サンプルの冷却に寄与しない。このことは、開始温度及び/又は所望の終了温度によっては、数時間に及ぶ非常に長いクールダウン時間につながる。加えて、水のような液体冷却剤は、高温のサンプルホルダに接触すると直ちに蒸発し、これはサンプルホルダ、サンプル又はホルダ装置の損傷につながる可能性があるため、このような高温に液体冷却剤を使用することは不可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、改良された冷却を提供し、それによりそれぞれの冷却装置のクールダウン時間を短縮することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1に記載の冷却装置、請求項9に記載の冷却要素の冷却方法、及び請求項15に記載の層蒸着装置によって解決される。
【0008】
本発明の一態様では、真空装置のための冷却装置が提供される。冷却装置は、入口及び出口を備える冷却ダクトを有する冷却要素を備える。冷却要素の入口には、供給ラインが接続されている。供給ラインにより、圧縮ガス供給装置が冷却要素の冷却ダクトに接続される。さらに、噴霧供給ラインが供給ラインに接続され、噴霧ノズルが、噴霧供給ラインに接続されるか又は噴霧供給ラインに挿入/一体化されて、液体冷却剤を霧状にして/霧化して、霧状冷却剤を供給ラインに送り込むようになっている。
【0009】
従って、本発明では、圧縮ガスが霧状/霧化液体冷却剤の輸送に使用される。霧状冷却剤を使用することで、圧縮空気と霧状冷却剤の混合物の熱容量が大きくなり、冷却要素に十分な冷却効果をもたらすようになっている。同時に、液体冷却剤の量は、冷却要素内で霧状液体冷却剤が直接蒸発しても、冷却要素又は真空装置の他の要素に損傷を与えない程度に少量である。従って、高温であっても効率的な冷却をもたらすことができ、それによって対流クールダウンに比べてクールダウン時間を10倍以上短縮することができる。
【0010】
好ましくは、冷却前の冷却要素の温度は300℃以上、より好ましくは400℃以上、最も好ましくは500℃以上である。
【0011】
好ましくは、冷却要素は、冷却要素の高温を達成するために抵抗加熱器を備える。
【0012】
好ましくは、冷却要素は、サンプルホルダを備えるか又は真空装置のサンプルホルダに取り付けられる。代替的に又は追加的に、冷却要素は、真空装置内の蒸着プロセスをガイドするために又は別の方法で影響を与えるために、冷却装置内にバッフルとして構築される。
【0013】
好ましくは、噴霧ノズルによって霧状にされる液体冷却剤は、水、グリコール、又は水とグリコールの混合物を含む。
【0014】
好ましくは、圧縮ガスは空気又は窒素である。好ましくは、圧縮ガスは3と8バールの間、より好ましくは4と6バールの間の圧力を有する。その際、圧縮ガスの圧力は噴霧供給ラインの圧力を下回る。
【0015】
好ましくは、噴霧ノズルは、噴霧供給ライン内の液体冷却剤を霧状にするためのニードルバルブである。
【0016】
好ましくは、噴霧供給ラインは入口バルブを有し、入口バルブは、冷却要素の温度の低下に伴って、霧状液体冷却剤を増加させるように構成されている。冷却要素の温度の低下に伴って、冷却要素と接触する際の蒸発によって引き起こされる悪影響なしでより多くの量の霧状液体冷却剤を冷却要素の冷却ダクトを通して供給することができるので、冷却要素の冷却効果を高めるために、噴霧ノズルによって霧状にされる液体冷却剤の量が増加される。
【0017】
好ましくは、噴霧供給ラインの圧力は、冷却要素の温度の低下に伴って増加するように制御可能である。換言すれば、噴霧供給ラインと圧縮ガスとの間の圧力差は、圧縮ガスと霧状冷却剤との混合物中の霧状冷却剤の量を増加させるために増加され、それによって冷却効果は、冷却要素の高温によって引き起こされる悪影響が存在しない場合にさらに改善される。
【0018】
好ましくは、噴霧供給ラインは入口バルブを有し、入口バルブは、入口バルブの少なくとも部分的な開放位置と入口バルブの閉鎖位置との間のデューティサイクルを増加させて、冷却要素の温度の低下に伴って霧状液体冷却剤を増加させるように構成されている。従って、入口バルブは短い間隔で開閉される。その際、入口バルブの全開閉間隔は、好ましくは0.5秒と10秒の間、より好ましくは1秒と5秒の間、最も好ましくは2秒と3秒の間である。その際、例えば、冷却要素の温度が高い場合、入口バルブは少なくとも部分的に第1の時間量だけ開放し、冷却要素の温度が低い場合、第2の時間量だけ開放する。その際、第1の時間量は、好ましくは0.1秒と3秒の間、より好ましくは0.2秒と2秒の間、最も好ましくは0.3秒と1秒の間である。
【0019】
好ましくは、噴霧ノズルは入口バルブである。従って、霧状液体冷却剤の量は、噴霧ノズル自体によって、追加のバルブを必要とすることなく制御される。
【0020】
好ましくは、冷却剤供給ラインが、冷却要素に液体冷却剤を供給するために供給ラインに接続されている。その際、冷却剤供給ラインは、閾値温度未満で開放し、閾値温度以上で閉鎖するように構成された冷却剤入口バルブを備える。その際、冷却剤供給ラインによって、冷却要素の温度が閾値温度未満であれば、冷却要素に液体冷却剤を供給することができ、冷却要素の温度が閾値温度以上であれば、冷却要素への液体冷却剤の供給を阻止することができる。詳細には、閾値温度は液体冷却剤の沸点を下回る。その際、詳細には、液体冷却剤は、噴霧ノズルによって霧状にされるのと同じ液体冷却剤とすること又は異なる液体冷却剤とすることができる。
【0021】
従って、本発明による冷却装置により、液体冷却剤は霧状に又は霧化され、圧縮ガス供給装置からの圧縮ガスと共に冷却要素に供給され、圧縮ガスによって運ばれる。従って、霧状冷却剤と圧縮ガスの混合物により、冷却要素の効率的な冷却がもたらされ、冷却要素のクールダウン時間が短縮される。
【0022】
本発明の一態様では、真空装置の冷却要素を冷却する方法が提供される。本方法は、
冷却要素に圧縮ガスを供給するステップと、
圧縮ガスにより、霧状液体冷却剤を冷却要素に供給するステップと、
を含む。
【0023】
従って、圧縮ガスの流れによって、霧状液体冷却剤が冷却要素に輸送され、好ましくは300℃以上、より好ましくは400℃以上、最も好ましくは500℃以上の高温からでも冷却要素をクールダウンする。
【0024】
好ましくは、霧状冷却剤の量は、冷却要素の温度の低下に伴って増加する。従って、冷却要素の温度の低下に伴って、圧縮ガスと霧状冷却剤の流れ中の霧状冷却剤の量が増加し、冷却要素の冷却効率が増加する。
【0025】
好ましくは、霧状にされる液体冷却剤の圧力は、冷却要素の温度の低下に伴って増加する。従って、より多くの液体冷却剤が霧状にされ、冷却要素に供給される。
【0026】
好ましくは、霧状冷却剤を供給する噴霧供給ラインの入口バルブは、冷却要素の温度の低下に伴って霧状冷却剤の量を増加させるために、冷却要素の温度の低下に伴ってさらに開放される。
【0027】
好ましくは、噴霧供給ラインの入口バルブは、冷却要素の温度の低下に伴って、デューティサイクルに関してより長く開放される。従って、少なくとも部分的に開放された入口バルブと閉鎖された入口バルブのデューティサイクルに関して、少なくとも部分的に開放された入口バルブの時間は、霧状にされて冷却要素に供給される液体冷却剤の量を増加させるために増加される。
【0028】
好ましくは、冷却要素の閾値温度未満では、液体冷却剤が冷却要素に供給され、詳細には閾値温度は液体冷却剤の沸点未満である。従って、冷却要素が液体冷却剤を蒸発させない温度になるとすぐに、液体冷却剤は、冷却要素又は真空装置に損傷を与えることなく冷却要素に供給することができる。
【0029】
好ましくは、本方法は、上述した冷却装置の特徴に沿ってさらに構築される。
【0030】
好ましくは、本方法は、上述の冷却装置において実施される。
【0031】
本発明の一態様では、真空チャンバと、真空チャンバ内に配置されたサンプル及びサンプルホルダとを備える層蒸着装置が提供される。さらに、層蒸着装置は、サンプルホルダによって保持されたサンプル上に材料を蒸着させるための蒸着モジュールを備える。その際、サンプルホルダは、上述した冷却装置による冷却装置を備える。詳細には、サンプルホルダは、冷却装置と一体に構築されるか又は冷却装置に直接取り付けられる。
【0032】
好ましくは、層蒸着装置は、原子層蒸着装置又は物理蒸着装置等である。
【0033】
好ましくは、層蒸着装置は、上記の冷却装置に関連して説明したような特徴に沿って構築される。
【0034】
好ましくは、上述の方法は、このような層蒸着装置において実施される。
【0035】
以下において、本発明は、添付の図を参照してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明による冷却装置である。
図2】本発明による冷却装置の制御の詳細である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図1を参照すると、本発明による冷却装置が示されている。冷却装置は、サンプルホルダ又はバッフルとして構築され、真空装置の真空チャンバ内に配置することができる冷却要素10を備える。あるいは、冷却要素10は、真空装置のサンプルホルダ又はバッフルに直接取り付けることもできる。冷却要素10は、入口14及び出口16を有する冷却ダクト12を備える。冷却要素10から冷却ダクト12に供給された冷却剤への十分な熱伝達を可能にするために、冷却ダクト12は冷却要素10を通り抜ける。
【0038】
冷却ダクト12の入口14には、供給ライン18が接続されている。供給ライン18は、圧縮ガス入口バルブ22を介して圧縮ガス供給装置20に接続されている。従って、圧縮ガス供給装置からの圧縮ガスは、供給ライン18を介して冷却ダクト12に供給され、圧縮ガスの量は圧縮ガス入口バルブ22によって制御される。
【0039】
供給ライン18には噴霧供給ライン24が接続されており、噴霧ノズル26は、噴霧供給ラインに接続されるか又は噴霧供給ラインに組み込まれている。噴霧ノズル26によって、液体冷却剤供給装置30から供給される液体冷却剤は、霧状にされるか又は霧化され、ミスト又はフォグとして噴霧供給ラインを通って供給ライン18に送り込まれ、圧縮ガスの流れによって運ばれて冷却ダクト12に送り込まれる。その際、入口バルブ28は、噴霧供給ライン24に配置されている。図1の例では、入口バルブ28と噴霧ノズル26は、2つの別個の要素として示されている。しかしながら、噴霧ノズル26は、同時に、両方の機能を統合する入口バルブ28としての機能を果たすことができる。詳細には、噴霧ノズル26は、ニードルバルブとして作られている。噴霧ノズル26に供給される液体冷却剤の量、又は噴霧供給ライン24及び供給ライン18を介して冷却要素10に供給される霧状冷却剤の量は、入口バルブ28によって制御及び調整することができる。
【0040】
図1に例示される一実施形態では、冷却装置は、冷却要素10に液体冷却剤を供給するために、液体冷却剤供給装置32に接続された冷却剤供給ライン36をさらに有することができる。その際、冷却剤供給ライン36は、液体冷却剤供給装置32から冷却要素10に液体冷却剤が供給されるか否かを制御するために、冷却剤入口バルブ34を備える。しかしながら、冷却剤供給ライン36は、随意的な特徴部である。従って、冷却要素10の温度が特定の温度閾値よりも低くなると、入口バルブ28が閉鎖され、圧縮ガス入口バルブ22及び冷却剤入口バルブ34が開放されて、冷却要素10に液体冷却剤が供給される。その際は、温度閾値は、100℃未満であり、好ましくは80℃である。従って、冷却要素10のより低い温度に対して液体冷却剤を使用することにより、冷却効率をさらに高めることができ、クールダウン時間をさらに短縮することができる。
【0041】
さらに、冷却要素は、サンプルホルダ又はバッフルを加熱するために、加熱器を備えること又は加熱器に直接結合することができる。好ましくは、加熱器は抵抗加熱器として構築され、サンプルホルダ又はバッフルを300℃以上、より好ましくは400℃以上、最も好ましくは500℃以上の温度に加熱するように構成されている。
【0042】
サンプルがそのような高温に加熱され、次のステップで、層蒸着の過程で低温が要求される場合又はサンプルを蒸着装置から取り出す必要がある場合、サンプルはクールダウンする必要がある。その際、真空チャンバの即座の通気は、蒸着層の劣化につながる場合がある。一方、対流冷却は真空中では効率が悪く、膨大な時間を要する。
【0043】
従って、本発明により、詳細には冷却要素を冷却するための方法により、冷却要素10が高温にある場合、圧縮ガス入口バルブ22を開放することにより、圧縮ガスが、圧縮ガス供給装置20から冷却要素10に供給される。同時に、噴霧供給ライン24の入口バルブ28が少なくとも部分的に開放され、液体冷却剤供給装置30からの液体冷却剤は、噴霧ノズル26によって霧状にされ/霧化され、圧縮ガスによって冷却要素の冷却ダクト12を通って運ばれる。霧状冷却剤により、圧縮ガスと霧状冷却剤の混合物の熱容量が増大し、冷却効果が向上し、それによって冷却要素10のクールダウン時間が最大10分の1に短縮される。
【0044】
その際、冷却要素10の温度を検出することができ、入口バルブ28の制御及び/又は圧縮ガス入口バルブ22の制御により、冷却要素10の温度の低下に伴って霧状冷却剤の量が増加する。より低い温度では、霧状冷却剤の即時蒸発が減少し、それにより冷却要素10の損傷の可能性が減少し、同時に冷却要素10の冷却効率が増加する。
【0045】
好ましくは、霧状冷却剤の量を増加させるために、噴霧供給ライン24に接続された液体冷却剤供給装置30から供給される液体冷却剤の圧力を増加させ、圧縮ガスと霧状冷却剤の流れ中の霧状冷却剤の量を増加させることができる。同時に又は代替的に、供給される圧縮空気の圧力は、噴霧供給ラインと圧縮ガス供給装置との圧力差を大きくするために、好ましくは圧縮ガス入口バルブ22によって低下させることができ、それによって供給ライン24に供給される霧状冷却剤の量を増加させることができる。
【0046】
好ましくは、噴霧冷却剤の量は、噴霧供給ライン24の少なくとも部分的に開放された入口バルブ28をさらに開放することによって増加し、冷却要素10に供給される噴霧冷却剤の量が増加する。
【0047】
好ましくは、入口バルブ28は周期的に開閉され、開閉の1周期は0.5秒と10秒の間、より好ましくは1秒と5秒の間、最も好ましくは2秒と3秒の間である。図2には、この状況が図示されており、高温セクションの温度40と低温セクションの温度42が示されている。信号44は、高温セクションの入口バルブ28の制御信号を示しており、明白に、入口バルブ28は、全体の期間のうち、短い時間だけ開放される。従って、デューティサイクルは小さい。その際、好ましくは、入口バルブ28の開放時間は0.1秒と3秒の間、より好ましくは0.2秒と2秒の間、最も好ましくは0.3秒と1秒の間である。温度が経時的に低下する場合、より多くの霧状冷却剤を冷却要素10に供給することができる。従って、デューティサイクルは、図2に図示される低い温度42のための制御信号46によって示されるように増加され、冷却要素に供給される霧状冷却剤の量が増加し、冷却装置の冷却効率がさらに向上する。その際、デューティサイクルの調整は、冷却要素10の温度に基づいて、段階的又は連続的に行うことができる。その際、入口バルブの開放時間は、
open[s]=tstart[s]+(tperiod[s]-2*tstart[s])*(Tinit[°C]-Tact[°C])/(Tinit[°C]-Tdest[°C])
及び、
close[s]=tperiod[s]-topen[s]
で計算することができ、ここで、tperiodはバルブデューティサイクルの全周期時間、topenはバルブ開放時間、tcloseはバルブ閉鎖時間、tstartは冷却開始時のバルブ開放開始時間、Tinitは初期加熱温度、Tdestは目標クールダウン温度、Tactは冷却要素の実際の温度である。
【0048】
その際、開始時間は、上記に示したように、0.1秒と3秒の間、より好ましくは0.2秒と2秒の間、最も好ましくは0.3秒と1秒の間とすることができる。初期温度は、冷却前の又は冷却開始時の冷却要素10の温度を表し、実際の温度は、冷却要素10の現在の温度を表す。周期時間は、入口バルブ28の全開閉サイクルの長さを示し、0.5秒と10秒の間、より好ましくは1秒と5秒の間、最も好ましくは2秒と3秒の間とすることができる。
【0049】
従って、具体的な例として、tperiodを2.8秒、tstartを0.3秒、Tinitを300℃、Tdestを80℃とすると、バルブ開放時間及びバルブ閉鎖時間は、
open[s]=0.3s+(300°C-Tact[°C])*s/100°C
及び、
close[s]=2.8s-topen[s]
で計算され、従って、Tact=Tinit=300°Cでの冷却開始時のバルブ開放時間及びバルブ閉鎖時間は、topen=0.3s、tclose=2.5sとなる。Tact=Tdest=80℃の目標クールダウン温度に到達すると、バルブ開放時間及びバルブ閉鎖時間は、topen=2.5s、tclose=0.3sとなる。
【0050】
従って、本発明では、圧縮空気の蒸気によって冷却要素10に運ばれる霧状液体冷却剤の大きな熱容量を利用することによって、冷却要素の効率的な冷却がもたらされる。温度が低下したときの冷却効率をさらに高めるために、冷却要素に供給される霧状冷却剤の量が増加される。冷却要素10の温度が閾値を下回るとすぐに、冷却剤を霧状状態で供給する必要がなくなるため、結果として、冷却要素の冷却効率をさらに高め、一般的な冷却装置よりも最大10倍短いクールダウンを実現するために、冷却要素10に液体冷却剤が供給される。
【符号の説明】
【0051】
10 冷却要素
12 冷却ダクト
14 入口
16 出口
18 供給ライン
20 圧縮ガス供給装置
22 圧縮ガス入口バルブ
24 噴霧供給ライン
26 噴霧ノズル
28 入口バルブ
30 液体冷却剤供給装置
32 液体冷却剤供給装置
34 冷却剤入口バルブ
36 冷却剤供給ライン
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-03-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空装置のための冷却装置であって、
入口及び出口を備える冷却ダクトを有する冷却要素であって、前記入口は、供給ラインを介して圧縮ガス供給装置に接続されている、冷却要素と、
前記供給ラインに接続された噴霧供給ラインであって、噴霧ノズルが前記噴霧供給ラインに接続され、液体冷却剤を霧状にして、霧状液体冷却剤を前記供給ラインに送り込むようになっている、噴霧供給ラインと、
を備える冷却装置。
【請求項2】
前記冷却要素は、サンプルホルダを備えるか又はバッフルとして構築されている、請求項1に記載の冷却装置。
【請求項3】
前記噴霧ノズルは、ニードルバルブである、請求項1に記載の冷却装置。
【請求項4】
前記噴霧供給ラインは、入口バルブを有し、前記入口バルブは、前記冷却要素の温度の低下に伴って前記霧状液体冷却剤を増加させるように構成されている、請求項1に記載の冷却装置。
【請求項5】
前記噴霧供給ラインの圧力は、前記冷却要素の温度の低下に伴って増加するように制御可能である、請求項1に記載の冷却装置。
【請求項6】
前記噴霧供給ラインは、入口バルブを有し、前記入口バルブは、前記冷却要素の温度の低下に伴って、前記入口バルブの少なくとも部分的な開放位置と前記入口バルブの閉鎖位置との間のデューティサイクルを増加させて、前記霧状液体冷却剤を増加させるように構成されている、請求項1に記載の冷却装置。
【請求項7】
前記噴霧ノズルは前記入口バルブである、請求項4に記載の冷却装置。
【請求項8】
冷却剤供給ラインが、前記冷却要素に液体冷却剤を供給するために前記供給ラインに接続されており、前記冷却剤供給ラインは、前記冷却要素の温度が閾値温度未満で開放し、前記冷却要素の温度が閾値温度以上で閉鎖するように構成された冷却剤入口バルブを備え、好ましくは、前記閾値温度は、前記液体冷却剤の沸点未満である、請求項1に記載の冷却装置。
【請求項9】
真空装置の冷却要素を冷却する方法であって、
前記冷却要素に圧縮ガスを供給するステップと、
前記圧縮ガスにより、霧状液体冷却剤を前記冷却要素に供給するステップと、
を含む方法。
【請求項10】
前記霧状液体冷却剤の量は、前記冷却要素の温度の低下に伴って増加する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
霧状にされる液体冷却剤の圧力は、前記冷却要素の温度の低下に伴って増加する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
噴霧供給ラインの入口バルブは、前記冷却要素の温度の低下に伴ってさらに開放される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
噴霧供給ラインの入口バルブは、前記冷却要素の温度の低下に伴って、デューティサイクルに関してより長く開放される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記冷却要素の閾値温度未満では、液体冷却剤が前記冷却要素に供給され、好ましくは、前記閾値温度は液体冷却剤の沸点未満である、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
真空チャンバと、前記真空チャンバ内に配置されたサンプルホルダと、蒸着モジュールとを備え、前記サンプルホルダが、請求項1に記載の冷却装置を備える、層蒸着装置。
【国際調査報告】