(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】Clostridium chauvoeiワクチン及び作製方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/08 20060101AFI20240725BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240725BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20240725BHJP
C07K 14/33 20060101ALN20240725BHJP
【FI】
A61K39/08
A61P37/04
A61K39/39
C07K14/33 ZNA
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507094
(86)(22)【出願日】2022-08-05
(85)【翻訳文提出日】2024-04-02
(86)【国際出願番号】 US2022074574
(87)【国際公開番号】W WO2023015277
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515230154
【氏名又は名称】ゾエティス・サービシーズ・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100135415
【氏名又は名称】中濱 明子
(72)【発明者】
【氏名】キャメロン,アンソニー・ジェームズ
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA03
4C085AA04
4C085BA12
4C085CC07
4C085DD23
4C085DD41
4C085EE03
4C085FF24
4H045BA10
4H045CA11
4H045EA31
4H045FA71
(57)【要約】
本発明は、C chauvoeiに対するワクチンを提供し、このワクチンは、C chauvoei成分及び追加のcctAタンパク質を含む。当該ワクチンを作製及び使用する方法もまた、提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Clostridium chauvoeiに対するワクチンであって、前記ワクチンが、C chauvoei成分及び追加のcctAタンパク質を含む、ワクチン。
【請求項2】
前記ワクチンの1回の用量が、少なくとも約3.5μgの前記追加のcctAタンパク質を含有する、請求項1に記載のワクチン。
【請求項3】
1回の用量が、0.025~0.148RUの鞭毛を含有する、請求項1又は2に記載のワクチン。
【請求項4】
1回の用量が、約0.074RUの前記鞭毛を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項5】
1回の用量が、約5μgの前記追加のcctAタンパク質を含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項6】
前記cctAタンパク質が、組換え産生されたcctAタンパク質である、請求項1~5のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項7】
前記cctAタンパク質が、培養されたC chauvoeiの上清から産生される、請求項1~5のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項8】
前記C chauvoei成分が、細菌、全細胞抽出物、部分細胞抽出物、又はそれらの組み合わせである、請求項1~7のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項9】
C chauvoei成分が、膜画分を含む前記部分細胞膜である、請求項8に記載のワクチン。
【請求項10】
C chauvoei感染に対するワクチンを調製する方法であって、前記方法が、
a.C chauvoeiを培養することと、
b.培地を収集することと、
c.前記培地からC chauvoeiを濃縮することと、
d.前記培地からcctAを濃縮することと、
e.濃縮された前記cctAをC chauvoeiと組み合わせることと、を含む、方法。
【請求項11】
前記培地を精密濾過して、精密濾過された保持液及び精密濾過された透過物を得るステップを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
C chauvoeiを培養するステップが、植物由来のペプトン、動物由来のペプトン、又はそれらの組み合わせを含む培地中で実施される、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記培地から前記cctAを濃縮するステップが、
a.前記精密濾過された透過物の限外濾過により、限外濾過された保持液を得ることと、続いて
b.透析濾過により、透析濾過された保持液を得ることと、続いて
c.滅菌濾過により、前記追加のcctAタンパク質の滅菌溶液を得ることと、を含む、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記限外濾過が、前記精密濾過された透過物を10kDaのカセットに通すことを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記透析濾過が、前記限外濾過された保持液を10kDaのカセットに通すことを含む、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記透析濾過が、その後に、0.2μmのフィルターを通しての前記透析濾過された保持液の滅菌濾過により、前記追加のcctAタンパク質の滅菌溶液を調製することが続く、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記精密濾過された保持液が、透析濾過されて、前記C chauvoei成分を得る、請求項11~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
請求項17に記載のC chauvoei成分の少なくとも一部分と、前記追加のcctAタンパク質の滅菌溶液の少なくとも一部分とが組み合わされる、請求項10~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
C chauvoei抗原を含むワクチンであって、前記C chauvoei抗原が、請求項7~18のいずれか一項に記載の方法によって産生され、前記ワクチンの1回の用量が、少なくとも3.5μgの前記濃縮されたcctAタンパク質を含有する、ワクチン。
【請求項20】
1回の用量が、約0.074~0.148RUの前記鞭毛を含有する、請求項19に記載のワクチン。
【請求項21】
1回の用量が、約5μgの前記濃縮されたcctAを含有する、請求項19又は20に記載のワクチン。
【請求項22】
1回の用量が、約0.074Ruの前記鞭毛を含有する、請求項21に記載のワクチン。
【請求項23】
Clostridium septicum、Clostridium haemolyticum、Clostridium novyi、Clostridium sordellii、Clostridium tetani、Clostridium perfringens C型及びD型、Erysipelothrix rhusiopathiae、Leptospira borgpetersenii serovar Hardjo、Leptospira interrogans serovar Pomona、並びにMannheimia haemolytica抗原からなる群から選択される少なくとも1つの追加の抗原を更に含む、請求項1~6又は19~22のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項24】
前記少なくとも1つの追加の抗原が、不活性化培養物又はトキソイドである、請求項23に記載のワクチン。
【請求項25】
アジュバントを更に含む、請求項1~9又は19~24のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項26】
対象におけるC chauvoei感染を予防する方法であって、前記対象に、請求項1~9又は19~24のいずれか一項に記載のワクチンを投与することを含む、方法。
【請求項27】
前記対象が、ウシ又はヒツジの対象である、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反すう動物のためのクロストリジウムワクチンの分野におけるものである。
【背景技術】
【0002】
Clostridium chauvoeiによって引き起こされるクロストリジウム筋炎(黒脚病)は、羊及び牛の非常に経済的に重要な病気である。Clostridium chauvoeiは、胞子を形成するグラム陽性嫌気性バチルスである。その胞子は、土壌及び肥料中に遍在しており、摂取後に腸粘膜を通過し、血流に入り、骨格筋に運ばれ得る。胞子は、筋肉への局所的な外傷まで休眠状態にあり、これは、牛では、ほとんどの場合、シュートでの取り扱い中の打撲によって、又は混雑した飼育場での外傷から引き起こされ、筋肉損傷並びに局所的な低酸素症及び無酸素症を引き起こす。
【0003】
C.chauvoeiの病原性に関する現在の知識は、毒素、高活性DNAse、ヒアルロニダーゼ、シアリダーゼ、及び鞭毛が主な病原性因子を表すことを明らかにしている。推定された毒素の中で、C.chauvoei毒素A(CctA)は、C.chauvoeiの主要な細胞毒性及び溶血活性を表すことが示された。
【0004】
毒素CctAに加えて、シアリダーゼNanA及びヒアルロニダーゼNagHは、C.chauvoeiが、一般に口腔又は呼吸器又は時折皮膚病変であると考えられる初期の感染の部位から移動し、細菌が複製し、筋壊死を引き起こすことができる筋肉組織へのアクセスを可能にするようである。
【0005】
一般的に、黒脚病の牛には有効な治療はなく、死は急速に起こる。予防が最良のアプローチである。クロストリジウム毒素に対するワクチン接種、及び安全な環境の維持が重要である。
【0006】
黒脚病に対するワクチンは、免疫原として提案されている外膜タンパク質及び鞭毛タンパク質、並びに主な毒素を含有すると予想される細菌培養上清を提供する化学的に不活性化された細菌からなる。最近、組換え遺伝子技術によって調製された、世界中で単離されたC.chauvoei株の間で保存されているCctA毒素単独が、市販ワクチンのバッチ放出手順における有効性試験のための、生物学的試験として機能するモルモット感染モデルにおいて効果的な防御を提供したことが示されている。
【0007】
黒脚病に関する文献は豊富であるが、牛の病気及び致死性を防ぐためのC chauvoeiに対するワクチン接種の有効性に関する科学的証拠はわずかである。Uzal et alは、牛におけるこの微生物による感染を予防するためのC chauvoeiワクチンの有効性の証拠が、低度から中度であることを認めた。Vet Clin North Am Food Anim Pract.2012 Mar;28(1):71-7,viiiを参照されたい。したがって、当該技術分野において、C chauvoei感染に対して反すう動物を防御することができる追加のワクチンが必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
第1の態様では、本開示は、Clostridium chauvoeiに対するワクチンを提供し、当該ワクチンは、C chauvoei成分及び追加のcctAタンパク質を含む。
【0009】
この第1の態様の、異なる実施形態では、1回の用量の当該ワクチンは、少なくとも約3.5μgの当該追加のcctAタンパク質、及び0.025~0.148RUの鞭毛を含有する。ある特定の好ましい実施形態では、本発明の第1の態様によるワクチンは、約0.074RUの当該鞭毛及び約5μgの当該追加のcctAタンパク質を含有する。第1の態様の任意の実施形態によるワクチンでは、cctAタンパク質は、培養されたC chauvoeiの上清から産生され、かつ/又はC chauvoei成分は、細菌、全細胞抽出物、部分細胞抽出物、若しくはそれらの組み合わせである。
【0010】
第2の態様では、本開示は、C chauvoei感染に対するワクチンを調製する方法を提供し、当該方法は、
a.C chauvoeiを培養することと、
b.培地を収集することと、
c.当該培地からC chauvoeiを濃縮することと、
d.当該培地からcctAを濃縮することと、
e.濃縮された当該cctAをC chauvoeiと組み合わせることと、を含む。
【0011】
ある特定の実施形態では、この方法は、当該培地を精密濾過して、精密濾過された保持液及び精密濾過された透過物を得るステップを含む。
【0012】
本発明のこの第2の態様によるある特定の実施形態では、C chauvoeiを培養するステップは、植物由来のペプトン、動物由来のペプトン、又はそれらの組み合わせを含む培地で実施され得る。
【0013】
ある特定の実施形態では、当該培地から当該cctAを濃縮するステップは、
a.当該精密濾過された透過物の限外濾過により、限外濾過された保持液を得ることと、続いて、
b.透析濾過により、透析濾過された保持液を得ることと、続いて
c.滅菌濾過により、当該追加のcctAタンパク質の滅菌溶液を得ることと、を含む。
【0014】
ある特定の実施形態では、限外濾過は、当該精密濾過された透過物を10kDaのカセットに通すことを含む。ある特定の実施形態では、透析濾過は、当該限外濾過された保持液を10kDaのカセットに通すことを含み、かつ/又は透析濾過は、その後に、0.2μmのフィルターを通しての透析濾過された保持液の滅菌濾過により、追加のcctAタンパク質の滅菌溶液を調製することが続く。
【0015】
好ましくは、本発明のこの第2の態様の実施形態のうちのいずれかによる方法では、精密濾過された保持液を透析濾過して、C chauvoei成分を得る。
【0016】
最も好ましい実施形態では、C chauvoei成分の少なくとも一部分と、追加のcctAタンパク質の滅菌溶液の少なくとも一部分とが組み合わされる。
【0017】
第3の態様では、本開示は、本発明の第2の態様の任意の実施形態に従って調製されるワクチンを提供し、1回の用量の当該ワクチンが、少なくとも3.5μgの濃縮された当該cctAタンパク質を含有する。
【0018】
第3の態様のある特定の実施形態では、ワクチンの1回の用量は、約0.074~0.148RUの当該鞭毛を含有する。好ましくは、1回の用量は、約5μgの当該濃縮されたcctAを含有し、更により好ましくは、1回の用量は、約5μgの当該濃縮されたcctA及び約0.074Ruの当該鞭毛を含有する。
【0019】
ある特定の実施形態では、ワクチンは、Clostridium septicum、Clostridium haemolyticum、Clostridium novyi、Clostridium sordellii、Clostridium tetani、Clostridium perfringens C型及びD型、Erysipelothrix rhusiopathiae、Leptospira borgpetersenii serovar Hardjo、Leptospira interrogans serovar Pomona、並びにMannheimia haemolytica抗原からなる群から選択される少なくとも1つの追加の抗原を含有してもよい。ある特定の実施形態では、当該少なくとも1つの追加の抗原は、不活性化培養物又はトキソイドである。この第3の態様の任意の実施形態では、ワクチンは、非アジュバントであってもよいか、又はアジュバントを含んでもよい。
【0020】
第4の態様では、本開示は、対象におけるC chauvoei感染を予防する方法を提供し、当該方法は、本発明の第1又は第3の態様の実施形態のうちのいずれか1つによるワクチンを当該対象に投与することを含む。この第4の態様のある特定の実施形態では、当該対象が、ウシ又はヒツジの対象である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明のある特定の実施形態によるワクチンの調製のための、C chauvoei成分及び濃縮されたcctAを調製するプロセスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[0022]本発明のより良く理解するために、以下の非限定的な定義が提供される。
[0023]「追加のcctAタンパク質を含むワクチン」という語句は、追加の精製された又は部分的に精製されたcctAタンパク質でスパイクされたC chauvoei成分を含有するワクチンを指す。したがって、追加のcctAタンパク質を含むワクチンにおいて、鞭毛に対するcctAの比(C chauvoeiの量の代用)は、この追加のcctAを欠くワクチンにおける当該比よりも大きくなる。ある特定の実施形態では、鞭毛に対するcctAの比は、少なくとも50%大きいか、又は少なくとも100%大きいか、又は少なくとも300%大きいか、又は少なくとも500%大きいか、又は少なくとも1000%大きいか、又は少なくとも1500%大きいか、又は少なくとも2000%大きい。
【0023】
[0024]参照数字に適用される「約」という用語は、当該値のプラス又はマイナス10パーセントの参照数字であることを指す。
【0024】
[0025]「バクテリン」という用語は、殺菌されたバクテリアの懸濁液を指す。
【0025】
[0026]「C chauvoei成分」という用語は、C chauvoei細菌、C chauvoei全細胞抽出物、C chauvoei部分細胞抽出物、又はそれらの任意の組み合わせを指す。
【0026】
[0027]「培養物」という用語は、本明細書で使用される場合、他の種又はタイプの不在下で成長する細胞又は微生物の集団を意味する。
【0027】
[0028]「用量」は、対象に与えられるワクチン又は免疫原性組成物を指す。「第1の用量」又は「プライミング用量」は、0日目に与えられるかかる組成物の用量を指す。「第2の用量」又は「第3の用量」又は「年間用量」は、第1の用量に続いて与えられるかかる組成物の量を指し、これは、第1の用量と同じワクチン又は免疫原性組成物であり得るが、必須ではない。
【0028】
[0029]「溶解物」は、細胞壁又は膜の破裂による細胞の崩壊である溶解産物を指す。崩壊は、当該技術分野で既知の機械的又は化学的な手段によって達成され得る。
【0029】
[0030]「部分細胞抽出物」という用語は、全細胞抽出物の画分を指し、抽出物は、全細胞抽出物によって誘発される免疫応答とほぼ同じである免疫応答を誘発することができる。好ましくは、部分細胞抽出物は、細胞壁及び/又は細胞膜画分を含む。疑義を避けるために、部分細胞抽出物は、精製及び/又は濃縮されたcctAを含まない。
【0030】
[0031]ワクチン又は他の組成物に関して本明細書で使用する場合、「防御」、「防御すること」、「防御免疫」などは、ワクチン又は組成物が、ワクチン又は組成物に使用される抗原(複数可)が由来する有機体によって引き起こされる疾患の症状を予防又は軽減することを意味する。「防御」、「防御すること」などの用語はまた、ワクチン又は組成物を使用して、対象に既に存在する疾患、又は疾患の1つ以上の症状を「治療」することができることを意味する。
【0031】
[0032]「治療有効量」は、ウイルス又は細菌などの病原体による感染によって生じる、健康への悪影響又は合併症を含む、疾患の徴候又は症状を予防又は軽減するのに十分である、抗原又はワクチンを受けた対象において免疫応答を誘発するであろう抗原又はワクチンの量を指す。液性免疫若しくは細胞媒介免疫、又は液性免疫及び細胞媒介免疫の両方が、誘導され得る。ワクチンに対する動物の免疫原性応答は、例えば、抗体力価の測定、リンパ球増殖アッセイを介して間接的に、又は野生型株によるチャレンジ後の徴候及び症状のモニタリングを介して直接的に評価され得る。ワクチンによって付与される防御免疫は、例えば、死亡率、罹患率、体温、全体的な身体状態、並びに対象の全体的な健康及び能力などの臨床徴候の低減を測定することによって評価され得る。治療上有効であるワクチンの量は、使用される特定のアジュバント、使用される特定の抗原、又は対象の状態に応じて変化し得、当業者によって決定され得る。
【0032】
[0033]「治療すること」は、かかる用語が適用される障害、状態、若しくは疾患を予防すること、又はかかる障害、状態、若しくは疾患の1つ以上の症状を予防又は軽減することを指す。
【0033】
[0034]「ワクチン」又は「ワクチン組成物」は、本明細書で使用される場合、抗原を含有し、抗原に対する特異的免疫応答を誘発することができる免疫原性組成物を指す。対象へのワクチンの投与は、防御免疫応答をもたらし、これは、完全に防御的であり得るか、又は部分的に防御的であり得る。ワクチンは、非経口、経口などを含む任意の既知の投与経路によって対象に直接導入することができる。これらの用語は、感染を予防若しくは軽減するか、又は感染の1つ以上の感染の徴候若しくは症状を予防若しくは軽減する組成物を意味する。病原体に対するワクチン組成物の防御効果は、通常、対象において免疫応答を誘導することによって達成される。一般に、感染の発生率をなくする、若しくは低減、徴候若しくは症状の改善、又は感染した対象からの微生物の加速的な排除は、ワクチン組成物の防御効果を示す。
【0034】
[0035]「獣医学的に許容される」は、本明細書で使用される場合、妥当な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答などを伴わずに獣医学的対象の組織と接触する使用に好適であり、合理的な利益対リスク比に見合い、かつそれらの意図された使用に有効な物質を指す。
【0035】
[0036]本明細書で使用する場合、「獣医学的に許容される担体」は、活性成分の生物学的活性の有効性を妨げず、それが投与される獣医学的対象に毒性ではない担体培地を指す。
【0036】
[0037]「全細胞抽出物」又は「全有機体抽出物」などの用語は、細菌細胞溶解物、例えば、C chauvoei細胞溶解物を含む細胞溶解物を指す。
【0037】
[0038]本開示は、培養されたC chauvoeiの上清からcctAを濃縮することが可能であること、この濃縮されたcctAをC chauvoei成分に添加することは、C chauvoei単独よりも効率的なワクチンを提供すること、及びワクチンが追加のcctAタンパク質を含有する場合、ワクチンの効率を犠牲にすることなく、1回の用量当たりのC chauvoei成分の量を低減させることができることという予期しない発見に基づいている。
【0038】
[0039]したがって、第1の態様では、本発明は、Clostridium chauvoei成分を含み、追加のcctAタンパク質を更に含むワクチンを提供する。
【0039】
[0040]C chauvoei成分
[0041]ある特定の実施形態では、C chauvoei化合物は、細菌である。他の実施形態では、C chauvoeiは、全細胞抽出物である。更に他の実施形態では、C chauvoeiは、部分細胞抽出物である。好ましくは、部分細胞抽出物は、C chauvoei膜画分及び/又はC chauvoei細胞壁画分を含む。これらの実施形態の異なる組み合わせも可能である。
【0040】
[0042]本開示によれば、C chauveoei成分の量は、鞭毛の相対単位(RU)を使用して定量化される。したがって、鞭毛RUの使用は、C chauvoeiの量の代用である。しかしながら、他のタンパク質(複数可)を、C chauveoei成分の量の定量化のための代用として使用することができることを理解されたい。
【0041】
[0043]C chauvoei成分を調製するための複数の方法が知られている。例えば、培養及び採取されたC chauvoeiは、ホルマリン、ベタプロプリオラクトン(BPL)、若しくは二元エチレンイミン(BEI)、又は当業者に既知の他の方法で不活性化され得る。
【0042】
[0044]全細胞抽出物は、細菌の細胞壁及び細胞膜を破裂することによって調製することができる。これは、化学的及び物理的な手段を含む多くの手段によって達成することができる。例えば、細菌は、低張緩衝液及び/又は凍結乾燥及び/又は遠心分離を使用することによって溶解され得る。部分細胞抽出物は、例えば、C chauvoei調製物の超遠心分離によって得ることができる。
【0043】
[0045]C chauvoeiの好適な調製物の非限定的な例としては、市販のワクチンの成分として現在市販されている製品が挙げられ、ZoetisによるONE SHOT ULTRA(登録商標)8又はULTRAVAC(登録商標)7 IN 1が含まれるが、これらに限定されない。
【0044】
[0046]ある特定の実施形態では、C chauvoei成分は、C chauvoeiを培養し、続いてホルマリンで不活性化することによって調製される細菌である。次いで、不活性化C chauvoeiを含有する懸濁液を0.2μmのカセットを通して精密濾過し、次に0.2μmの精密濾過カセットを通して生理食塩水で透析濾過する。
【0045】
[0047]追加のcctAタンパク質
[0048]本発明によるcctAタンパク質は、配列番号1:
【表A】
又は配列番号1と少なくとも90%同一であり、かつ配列番号1と少なくとも91%、若しくは少なくとも91%、若しくは少なくとも92%、若しくは少なくとも93%、若しくは少なくとも94%、若しくは少なくとも95%、若しくは少なくとも96%、若しくは少なくとも97%、若しくは少なくとも98%、若しくは少なくとも99%同一であり得るタンパク質を含む。好ましくは、cctAの配列と配列番号1との間で異なるアミノ酸は、置換であり、より好ましくは、これらの置換の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、又は100%全てが、保存的置換である。
【0046】
[0049]当業者であれば、コードするタンパク質のアミノ酸配列の修飾をもたらす核酸配列の変化が、タンパク質の得られる三次元構造に、あったとしても、ほとんど影響を及ぼさないことを認識するであろう。例えば、アミノ酸アラニンのコドン、疎水性アミノ酸は、グリシンなどの別のより疎水性の低い残基、又はバリン、ロイシン、若しくはイソロイシンなどのより疎水性の高い残基をコードするコドンによって置換され得る。同様に、グルタミン酸のためのアスパラギン酸などの別のもののための1つの負に荷電した残基、又はアルギニンのためのリジンなどの別のもののための1つの正に荷電した残基の置換をもたらす変化はまた、実質的に同じ機能活性を有するタンパク質を産生することが予想され得る。
【0047】
[0050]以下の6つの群は各々、互いに典型的な保存的置換であるアミノ酸を含有する:[1]アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T)、[2]アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、[3]アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、[4]アルギニン(R)、リジン(K)、ヒスチジン(H)、[5]イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)、及び[6]フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)(米国特許公開第20100291549号を参照されたい)。
【0048】
[0051]C chauvoei cctAタンパク質は、培養されたC chauvoeiの上清からのcctAタンパク質の精製、及び/又は遺伝子操作、及び/又は化学合成を含む、多数の方法によって調製することができる。これらの方法は、当該技術分野で周知である。
【0049】
[0052]本開示の目的のために、ワクチンの1回の用量中のC chauvoei成分の量は、相対単位、又はRUで測定される鞭毛の量によって決定される。追加のcctAなしのワクチンの単回投与は、約0.148RUの鞭毛を含有する。しかしながら、C chauvoei化合物の量を決定するための他の方法が存在し、これらの方法の最終結果を鞭毛RUに変換することが可能であることに留意されたい。
【0050】
[0053]本明細書に開示され、追加のcctAタンパク質を含むワクチンにおいて、鞭毛に対するcctAの比は、この追加のcctAを欠くワクチンにおける当該比よりも大きくなる。ある特定の実施形態では、鞭毛に対するcctAの比は、C chauvoei成分を含むが、添加されたcctAタンパク質を欠く組成物と比較して、少なくとも50%大きい、好ましくは、少なくとも75%大きい、少なくとも100%大きい、少なくとも150%大きい、少なくとも200%大きい、少なくとも250%大きい、少なくとも300%大きい、少なくとも350%大きいなどである。
【0051】
[0054]ある特定の実施形態では、本発明によるワクチンは、1回の用量当たり約3.5μg以上の当該追加のcctAタンパク質を含有し、異なる実施形態では、1回の用量当たり最大30μgの当該追加のcctAタンパク質を含有し得、本ワクチンは、1回の用量当たり3.5~約4μgの当該追加のcctAタンパク質、又は1回の用量当たり3.5~約6μgの当該追加のcctAタンパク質、又は1回の用量当たり3.5~約9μgの当該追加のcctAタンパク質、又は1回の用量当たり3.5~約10μgの当該追加のcctAタンパク質、又は1回の用量当たり3.5~約15μgの当該追加のcctAタンパク質、又は1回の用量当たり3.5~約20μgの当該追加のcctAタンパク質、又は1回の用量当たり3.5~約25μgの当該追加のcctAタンパク質、又は1回の用量当たり3.5~約30μgの当該追加のcctAタンパク質、又は1回の用量当たり約4~約30μgの当該追加のcctAタンパク質、又は1回の用量当たり約4~約25μgの当該追加のcctAタンパク質、又は1回の用量当たり約4~約20μgの当該追加のcctAタンパク質、又は1回の用量当たり約4~約15μgの当該追加のcctAタンパク質、又は1回の用量当たり約4~約10μgの当該追加のcctAタンパク質、又は1回の用量当たり約4~約8μgの当該追加のcctAタンパク質、又は1回の用量当たり約4~約6μgの当該追加のcctAタンパク質、又は1回の用量当たり約5μgの当該追加のcctAタンパク質を含有し得る。
【0052】
[0055]cctAをC chauvoei成分に添加することにより、当該成分の用量を、約0.148RUの鞭毛から約0.1RUの鞭毛に低下、又は例えば、約0.074RUの鞭毛、若しくは約0.05RUの鞭毛に更に低下させることができる。
【0053】
[0056]追加のcctAの量が多いほど、C chauvoei成分の量を低下させることが理解されるであろう。実用的には、0.1μgのcctAを添加すると、C chauvoei成分の量を約0.00175RUの鞭毛分、減少させる可能性が生じる。好ましくは、鞭毛の量は、1回の用量当たり約0.025RU以上、より好ましくは1回の用量当たり0.055RU以上、より好ましくは1回の用量当たり0.060RU以上、又は0.65RU以上、又は0.070RU以上、又は0.074RU以上である。
【0054】
[0057]ワクチンを作製する方法
[0058]第2の態様において、本開示は、C chauvoei感染に対するワクチンを調製する方法の方法を提供する。一般に、ワクチンの製造のためにC chauvoeiを培養するとき、cctA含有上清は、廃棄される。しかしながら、本発明者らは、上清からcctAを濃縮することを利用する方法によって、ワクチンが作製され得ることを発見し、当該方法は、
a.C chauvoeiを培養することと、
b.培地を収集することと、
c.当該培地からC chauvoeiを濃縮することと、
d.当該培地からcctAを濃縮することと、
e.濃縮された当該cctAをC chauvoeiと組み合わせることと、を含む。
【0055】
[0059]ある特定の実施形態では、C chauvoeiは、タンパク質加水分解の産物であるペプトンを含有する培地中で成長させる。ある特定の実施形態では、ペプトンは、植物由来(例えば、大豆ペプトン)若しくは動物由来(例えば、肉ペプトン又はカゼインペプトン)、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。好ましい実施形態のセットでは、ペプトンは、大豆ペプトンである。
【0056】
[0060]異なる実施形態では、培地中のペプトンの濃度は、約20g/L~約100g/L、例えば、約30g/L、又は40g/L、又は約50g/L、又は約60g/L、又は約70g/L、又は約80g/L、又は約90g/Lである。ある特定の実施形態では、濃度は、約25~約75g/Lであり、より好ましくは、約45~約55g/Lである。
【0057】
[0061]C chauvoeiは、精密濾過、続いて透析濾過によって濃縮されてもよい。ある特定の実施形態では、精密濾過は、溶液を100,000kDa~0.45μmのカセットに通し、続いて100,000kDa~0.45μmのカセットに透析濾過して、C chauvoei成分を調製することによって達成される。例えば、精密濾過及び透析濾過ステップに使用されるカセットは、独立して、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4、又は0.45μmであってもよい。ある特定の実施形態では、精密濾過及び透析濾過カセットの両方は、0.2μmである。
【0058】
[0062]有利には、C chauvoei成分を調製する方法及び濃縮された(又は強化された)cctA溶液を調製する方法は、精密濾過の一般的なステップ、好ましくは0.2μmカセットを介して開始し得る。精密濾過のステップの後、精密濾過された保持液を透析濾過し、C chauvoei成分が調製される。次いで、精密濾過された透過物を、カセットを通して限外濾過して、限外濾過された保持液を得、次いで、上述のように限外濾過された保持液を透析濾過して、透析濾過された保持液を得、そのようにしてcctA溶液が調製される。
図1を参照されたい。
【0059】
[0063]cctAのサイズは、約32kDaである。したがって、cctAを濃縮するために使用されるカセットは、32kDa未満であるべきである。ある特定の実施形態では、カセットは、30kDa、20kDa、10kDa、又は5kDaである。本発明による方法では、10kDaのカセットがこのステップで使用されることが好ましい。
【0060】
[0064]ある特定の実施形態では、当該培地から当該cctAを濃縮するステップは、限外濾過された保持液を得るための限外濾過、続いて透析濾過された保持液を得るための透析濾過、続いて滅菌溶液を得るための滅菌濾過を含む。そのような手順は、当該技術分野において既知である。
【0061】
[0065]限外濾過は、圧力又は濃度勾配のような力が半透膜を介した分離をもたらす様々な膜濾過である。高分子量の懸濁固形物及び溶質は保持される(保持液)が、水及び低分子量の溶質は、膜を通過する(透過物)。この特定のプロセスは、103~106Daの分子量を有する化合物、特にタンパク質を精製及び濃縮するために使用される。限外濾過は、一般に、プロセスで使用される膜の分子量カットオフによって定義される。
【0062】
[0066]透析濾過は、特殊なタイプの限外濾過プロセスであり、保持液を生理食塩水、PBS、又は水などの緩衝液で希釈し、再度限外濾過して、可溶性透過物成分の濃度を低減させ、保持された成分の濃度を維持する。例えば、10kDaなどの同じサイズのカセットは、限外濾過及び透析濾過の両方に使用され得る。
【0063】
[0067]ある特定の実施形態では、限外濾過及び透析濾過のステップの後、濃縮されたcctAは、滅菌濾過される。滅菌濾過されたcctA溶液をC chauvoei成分に添加して、本明細書に開示されるワクチン又は免疫原性組成物を調製することができる。
【0064】
[0068]ワクチン及び免疫原性組成物
[0069]本発明によるワクチン及び免疫原性組成物は、C chauvoei成分と追加のcctAタンパク質との組み合わせに加えて、他の抗原を含有し得る。特に好ましい抗原は、反すう動物に影響を及ぼす病原体に由来する。ある特定の実施形態では、抗原は、Clostridium septicum、Clostridium haemolyticum、Clostridium novyi、Clostridium sordellii、Clostridium tetani、Clostridium perfringens C型及びD型、Erysipelothrix rhusiopathiae、Leptospira borgpetersenii serovar Hardjo、Leptospira interrogans serovar Pomona、並びにMannheimia haemolytica抗原からなる群から選択されるに由来してもよい。
【0065】
[0070]好ましくは、これらの抗原は、不活性化された有機体、弱毒化された有機体、又は細菌毒素、又は全有機体抽出物、又は部分有機体抽出物である。
【0066】
[0071]ワクチン及び免疫原性組成物はまた、アジュバントを含有し得る。そのような薬剤は、当該技術分野において既知である。好適なアジュバントとしては、油エマルション(水中油 油中水エマルション、及び水中油中水エマルションを含む)、水酸化アルミニウム及びリン酸アルミニウムの両方を含むアルミニウム複塩化合物、トリテルペノイドサポニン、免疫刺激複合体、第四級アミン化合物(例えば、ジメチルジオクタデシルアンモニウム塩、例えば、臭化物)、CpG含有オリゴヌクレオチド、オリゴリボヌクレオチド、BAY(登録商標)1005としても知られるN-(2-デオキシ-2-L-ロイシルアミノ-β-D-グルコピラノシル)-N-オクタデシルドデカンアミドなどの糖脂質及びその塩(例えば、酢酸塩)、DEAEデキストラン、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0067】
[0072]ある特定の実施形態では、アジュバントは、鉱物油、及びPREZENT-A(登録商標)として知られるレシチンによって形成される水中油エマルション中に、Quil A(トリテルペノイドサポニン)及びステロール(例えば、コレステロール)によって形成される複合体を含有する。他の実施形態では、アジュバントは、トリテルペノイドサポニン及びCpGを含む。更に他の実施形態では、アジュバントは、CpGオリゴヌクレオチド、トリテルペノイドサポニン、及びステロールの混合物を含む。
【0068】
[0073]本発明の免疫原性組成物及びワクチンは、溶媒、分散媒、コーティング、安定化剤、希釈剤、防腐剤、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤、吸着遅延剤などの1つ以上の獣医学的に許容される担体を含み得る。希釈剤としては、水、生理食塩水、デキストロース、エタノール、グリセロールなどが挙げられる。等張剤としては、当業者に公知のものの中でも、塩化ナトリウム、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、及びラクトースが挙げられる。安定剤としては、当業者に公知のものの中でも、アルブミンが挙げられる。防腐剤としては、当業者に公知のものの中でも、メルチオレートが挙げられる。抗生物質としては、アミノグリコシド、カルバペネム、セファロスポリン、グリコペプチド、マクロライド、ペニシリン、ポリペプチド、キノロン、スルホンアミド、及びテトラサイクリンのクラスからのものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0069】
[0074]形態、用量、投与経路
[0075]本発明の免疫原性組成物及びワクチンは、C chauvoei感染に対する有効な免疫応答を誘導するために動物に投与され得る。したがって、本発明は、動物に、治療有効量の本明細書に記載の本発明の免疫原性組成物又はワクチンを投与することによって、C chauvoei感染に対する有効な免疫応答を刺激する方法を提供する。
【0070】
[0076]本発明の免疫原性組成物及びワクチンは、投与経路に応じて様々な形態で作製することができる。例えば、免疫原性組成物及びワクチンは、注射用に好適な滅菌水溶液又は分散液の形態で作製することができる。免疫原性組成物及びワクチンはまた、懸濁液又はエマルションの形態で作製され得る。
【0071】
[0077]免疫原性組成物及びワクチンは、一般に、約0.5ml~約5mlの容量の獣医学的に許容される担体を含む。別の実施形態では、担体の体積は、約1ml~約4ml、又は約2ml~約3mlである。別の実施形態では、担体の容量は、約1mlであり、又は約2mlであり、又は約5mlである。免疫原性組成物及びワクチンにおける使用に好適な獣医学的に許容される担体は、上記に記載されるもののいずれかであり得る。
【0072】
[0078]本発明の方法に従って、単回用量を動物に投与することができるか、又は代替的に、2回以上の接種を、約2週間~約26週間、例えば、3週間、4週間、5週間、6週間、10週間、15週間、20週間、25週間の間隔で行うことができる。増強レジメンが必要とされ得、投与レジメンは、最適な免疫を提供するように調整され得る。当業者は、最適な投与レジメンを容易に決定することができる。
【0073】
[0079]免疫原性組成物及びワクチンは、血流、筋肉、又は内臓に直接投与され得る。非経口投与に好適な手段には、静脈内、動脈内、腹腔内、髄腔内、心室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、筋肉内、及び皮下が含まれる。非経口投与のための好適なデバイスとしては、針(極微鏡針を含む)注射器、無針注射器、及び注射技法が挙げられる。
【0074】
[0080]非経口製剤は、典型的には、塩、炭水化物、及び緩衝剤(好ましくは、約3~約9、又は約4~約8、又は約5~約7.5、又は約6~約7.5、又は約7~約7.5のpHまで)などの賦形剤を含有することができる水溶液であるが、一部の用途については、それらは、滅菌非水溶液として、又は滅菌の発熱物質を含まない水などの好適なビヒクルとともに使用される乾燥形態として、より好適に製剤化することができる。
【0075】
[0081]非経口投与のための製剤は、即時放出及び/又は調節放出であるように製剤化され得る。調節放出製剤には、遅延放出、持続放出、パルス放出、制御放出、標的化放出、及びプログラム放出が含まれる。したがって、本発明の免疫原性組成物及び/又はワクチンは、活性化合物の調節放出を提供する移植されたデポとしての投与のための固体、半固体、又はチキソトロピック液体として製剤化することができる。そのような製剤の例としては、薬物コーティングされたステント及びポリ(dl-乳酸-コグリコール)酸(PGLA)微粒子が挙げられる。
【0076】
[0082]以下の実施例は、例示的な実施形態として提示されるが、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本発明の多くの変更、変形、修正、並びに他の使用及び用途は、当業者には明らかであろう。
【実施例】
【0077】
実施例1:鞭毛及びccctA抗原のためのClostridium chauvoeiの産生方法
[0083]種子スケール及び抗原産生のための4倍強度培地を以下のとおり調製した。大豆ペプトン200g/L及び酵母抽出物20g/Lを、50℃±5℃で蒸留水に添加し、溶解するまで混合した。400g/Lの硫酸マグネシウム溶液を調製し、溶解したペプトン及び酵母抽出物溶液に十分な体積を添加して、濃度2.0g/Lの硫酸マグネシウムを得た。4倍強度培地は、蒸留水で単一の強度まで作製した。水酸化ナトリウム溶液を用いてpHを7.4~7.5に調整した。培地を、最低121℃に、最低30分間加熱することによって滅菌した。
【0078】
[0084]最終培地(PYE)を調製するために、滅菌溶液10%システインHCL及び5%アスコルビン酸をベース培地に添加して、最終濃度0.05%システインHCl及び0.025%アスコルビン酸、並びに十分な50%滅菌グルコース溶液を得て、0.2%の最終グルコース濃度を得た。
【0079】
[0085]Clostridium chauvoei(株CH3)の凍結乾燥アンプルを、滅菌したロバートソンの調理済み肉培地中に再懸濁し、0.05%システインHCl、0.025%アスコルビン酸、及び0.2%グルコースを補充したロバートソンの調理済み肉培地を含有する試験管を接種するために使用した。種子ステージ1の培養物を、ひどく濁るまでインキュベートし、2%v/vの接種物をPYE培地に接種した(種子ステージ2)。種子ステージ2を、ひどく濁るまでインキュベートした。次いで、発酵槽に、種子ステージ2の培養物からの培養物の5%v/vを接種した。温度を37℃に保持した。pHをpH6.5に低下させ、コントローラーをpH6.8にリセットした。pHのリセット後、50%グルコース飼料を、次の5時間、7.2mL/Lの培養/時間の速度で添加した。培養は、グルコースレベルがゼロになったとき、又は培養が静止期に達したときに完了した。0.8%v/vホルマリンの添加により、培養物を不活性化した。pHを6.8~6.9に調整し、形成された培養物を37℃で7日間インキュベートした。不活性化した培養物を、更に処理するまで2~8℃で保持した。
【0080】
[0086]ワクチンの別の調製物を上記のように製造したが、200g/Lの大豆ペプトンの代わりに200g/Lの肉ペプトンを使用した。
【0081】
実施例2:C.chauvoei抗原の下流処理:
[0087]示された各群について、不活性化発酵培養物(実施例1に上記のように調製した)を以下のように処置した。これらの処理されたC.chauvoei抗原を以下の実施例3に用いた。
T01:(バルク全体)処理せず。
T02:(15×MF濃縮)0.2μmの分子量カットオフ膜カセットを介したタンジェンシャルフロー濾過を介して30倍濃縮された不活性化培養物。細胞濃縮物を生理食塩水洗浄でシステムから回収し、15倍に等しい最終体積低減をもたらした。
T03:(15×MF濃縮及び透析濾過)0.2μmの分子量カットオフ膜カセットを介したタンジェンシャルフロー濾過を介して30倍濃縮された不活性化培養物。細胞濃縮物を生理食塩水(4倍定量洗浄)で透析濾過し、透析濾過された細胞濃縮物を生理食塩水洗浄でシステムから回収し、15倍に等しい最終体積低減をもたらした。
T04:(15×UF無細胞透過物)細胞濃縮中に収集した透過物を、10kDaの分子量カットオフ膜カセットを使用して、タンジェンシャルフロー濾過を介して30倍濃縮した。濃縮された透過物を0.2μmのフィルターを通して滅菌した。透過物の濃縮物を生理食塩水洗浄でシステムから回収し、15倍に等しい最終体積低減をもたらした。
T05:(15×UF無細胞透過物の透析濾過)細胞濃縮中に収集した透過物を、10kDaの分子量カットオフ膜カセットを使用して、タンジェンシャルフロー濾過を介して30倍濃縮した。濃縮された透過物を生理食塩水(4回の定量洗浄)で透析濾過し、0.2μmのフィルターを通して滅菌した。透過物の濃縮物を生理食塩水洗浄でシステムから回収し、15倍に等しい最終体積低減をもたらした。
【0082】
C.chauvoei下流処理抗原の分析的試験
[0088]下流処理されたClostridium chauvoei抗原(上記のように調製された)を、ccctA抗原及び鞭毛について試験した。結果を表1に提示する。
【表1】
【0083】
実施例3:実験用クロストリジウムワクチン製剤の調製:
[0089]全ての実験用一価Clostridial chauvoeiワクチンを、最終濃度1.6mg/mLの水酸化アルミニウム(アルミニウムとして)で製剤化した。ロット370 C chauvoei抗原についての詳細を表2に示す。
【表2】
【表3】
【0084】
[0090]全ての実験用多価クロストリジウムワクチン(ULTRAVAC(登録商標)7 In 1)を、最終濃度1.6mg/mLの水酸化アルミニウムで製剤化した(アルミニウムとして)。ロット065抗原について詳細を表4に示す。
【表4】
【0085】
実施例4:モルモット防御:
[0091]ワクチンの各セットについて、モルモットを5匹の動物の群に無作為に分けた。ワクチンの1セット当たり5匹のモルモットの1群を対照として残した。ワクチン接種群では、各動物は、試験ワクチン(一価ワクチンを1mLの用量、及びULTRAVAC(登録商標)7 In 1ワクチンを1.25mLの用量)の1回用量を脇腹に皮下投与した。第1の注射の28日後、試験群の各動物は、試験ワクチンの第2の注射を反対側の脇腹に皮下に受けた。第2の注射の14日後、ワクチン接種及び対照動物を、5%CaCl2溶液中の生存可能なClostridium chauvoei胞子株CH4(0.5ml)の懸濁液でチャレンジし、右後肢の大腿筋に筋肉内注射した。
【0086】
[0092]チャレンジされたモルモットを、次の5日間毎日検査し、発生した死亡をワークシートに記録した。死亡が発生した場合、黒脚病の浮腫の明らかな症状が存在しなければならない。5日目のチャレンジの終了時に、生存している全ての動物を安楽死させた。倫理的理由から、瀕死の動物を安楽死させ、C.chauvoei感染により死亡したと考えた。
【0087】
[0093]第1の実験では、異なる割合の鞭毛及びcctAを含有する一価C.chauvoeiワクチンを、モルモットでの毒性チャレンジによって有効性を検査した。細胞の不在下でワクチン中のcctAのレベルを増加させることにより、100%の防御が達成された(表5を参照されたい)。興味深いことに、細胞(鞭毛)の添加により、完全な防御を達成するためのcctAのレベルが著しく低減した。
【0088】
[0094]第2の実験では、5つのクロストリジウム抗原及び2つのLeptospira抗原を含有する多価ULTRAVAC(登録商標)7 In 1ワクチンを、モルモットでの毒性チャレンジを介して有効性を検査した。鞭毛とcctAとのバランスで完全な防御を達成した。完全な防御を提供するために必要なcctA及び鞭毛のレベルは、一価ワクチンに必要なレベルよりも高かった。
【0089】
[0095]第3の実験では、5つのクロストリジウム抗原及び2つのLeptospira抗原を含有する多価ULTRAVAC(登録商標)7 In 1ワクチンを、モルモットにおける毒性チャレンジを介して有効性を検査した。実験2との違いは、この実験で使用したC chauvoei抗原が、大豆ペプトン成長抗原に由来することであった。再び、鞭毛とcctA抗原とのバランスで完全な防御を達成した。
【表5】
【表6】
【表7】
【0090】
[0096]本明細書に述べられる全ての刊行物、特許公報及び非特許公報は、本発明が関連する技術分野の当業者の技術レベルを示す。全ての刊行物は、各個々の刊行物が、参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示された場合と同じ程度に、本明細書において参照により完全に組み込まれる。
【0091】
[0097]本明細書における本発明は、特定の実施形態を参照して説明されてきたが、これらの実施形態は、本発明の原理及び用途の単なる例示であることを理解されたい。したがって、以下の特許請求の範囲によって定義される本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態に多数の修正が加えられ得ること、かつ他の構成が考案され得ることを理解されたい。
【表B-1】
【表B-2】
【表B-3】
【配列表】
【国際調査報告】