(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】ラニフィブラノールの結晶形及びその製造方法並びに使用
(51)【国際特許分類】
C07D 417/12 20060101AFI20240725BHJP
A61K 31/427 20060101ALI20240725BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240725BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240725BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
C07D417/12 CSP
A61K31/427
A61P1/16
A61P29/00
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507122
(86)(22)【出願日】2022-08-04
(85)【翻訳文提出日】2024-03-12
(86)【国際出願番号】 CN2022110128
(87)【国際公開番号】W WO2023016319
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】202111059866.6
(32)【優先日】2021-09-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202110921824.2
(32)【優先日】2021-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518418979
【氏名又は名称】▲蘇▼州科睿思制▲葯▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CRYSTAL PHARMACEUTICAL (SUZHOU) CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】B4-301 Biobay, 218 Xinghu Street, Suzhou Industrial Park Suzhou, Jiangsu 215123, China
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 敏華
(72)【発明者】
【氏名】朱 宏艶
(72)【発明者】
【氏名】孟 麗苹
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC84
4C086GA07
4C086GA10
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA75
4C086ZB11
4C086ZC41
(57)【要約】
【要約】
ラニフィブラノール(「化合物I」という。)の新規な結晶形及びその製造方法、当該結晶形を含む医薬組成物、及び汎PPARアゴニスト薬物及び非アルコール性脂肪性肝炎の治療薬を製造するための当該結晶形の使用を提供する。本発明による化合物Iの新規な結晶形は、従来の技術と比較して1つ以上の特性が向上し、従来の技術に存在していた問題を解決することができ、化合物I含有薬の最適化や開発を行う上で重要な価値がある。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
10.5°±0.2°、11.4°±0.2°、26.0°±0.2°の2θ値に、Cu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける特徴ピークを有することを特徴とする化合物Iの結晶形CSV。
【化1】
【請求項2】
15.9°±0.2°、18.0°±0.2°、23.0°±0.2°のうちの少なくとも1つの2θ値に、Cu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける特徴ピークを有することを特徴とする請求項1に記載の結晶形CSV。
【請求項3】
25.0°±0.2°、27.1°±0.2°、28.9°±0.2°のうちの少なくとも1つの2θ値に、Cu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける特徴ピークを有することを特徴とする請求項1に記載の結晶形CSV。
【請求項4】
25.0°±0.2°、27.1°±0.2°、28.9°±0.2°のうちの少なくとも1つの2θ値に、Cu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける特徴ピークを有することを特徴とする請求項2に記載の結晶形CSV。
【請求項5】
Cu-Kα線による粉末X線回折パターンが実質的に
図1のとおりであることを特徴とする請求項1に記載の結晶形CSV。
【請求項6】
(1)化合物Iをエーテル系溶媒に溶解、ろ過し、ろ液をガラス瓶に入れた後、全体として水を含む密閉ガラス瓶に入れ、静置し、結晶形CSVを得ること、又は
(2)化合物Iをエステル系溶媒に溶解、ろ過し、揮発させ、結晶形CSVを得ることを含むことを特徴とする請求項1に記載の結晶形CSVの製造方法。
【請求項7】
方法(1)において、前記エーテル系は炭素数C4~C6のエーテルであり、
方法(2)において、前記エステル系は炭素数C2~C7のエステルであり、前記揮発温度は室温~80℃であることを特徴とする請求項6に記載の結晶形CSVの製造方法。
【請求項8】
方法(1)において、前記エーテル系は2-メチルテトラヒドロフランであり、
方法(2)において、前記エステル系は酢酸イソプロピルであることを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
治療有効量の請求項1に記載の結晶形CSVと、薬学的に許容される添加剤とを含む医薬組成物。
【請求項10】
汎PPARアゴニスト薬物を製造するための請求項1に記載の結晶形CSVの使用。
【請求項11】
非アルコール性脂肪性肝炎の治療薬を製造するための請求項1に記載の結晶形CSVの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、結晶化学分野に関する。具体的には、ラニフィブラノールの結晶形及びその製造方法並びに使用に関する。
【背景技術】
【0002】
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、炎症及び肝細胞損傷の脂肪変性を伴う重篤な肝疾患である。
【0003】
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)は、核ホルモン受容体ファミリーに属し、遺伝子発現を調節できるリガンド活性化転写因子である。PPARは、細胞の分化や成長の調節、腫瘍形成において重要な役割を発揮する。
【0004】
ラニフィブラノール(lanifibranor)は、経口小分子薬であり、3つのPPARアイソフォーム(それぞれPPARα、PPARδ及びPPARγと呼ばれる)を活性化して、体内で抗肝線維症効果、抗炎症効果を誘導し、脂肪酸代謝を強化して最終的に脂肪生成を減少させることにより、脂肪変性問題を解決する。
【0005】
ラニフィブラノールの化学名は、5-クロロ-1-[(6-ベンゾチアゾリル)スルホニル]-1H-インドール-2-酪酸(以下、「化合物I」という。)である。その構造式は下記のとおりである。
【化1】
【0006】
結晶は、化合物分子がミクロ構造内に三次元的に規則配列して結晶格子を形成した固体である。結晶多形を有するとは、同一の化合物において複数の結晶形が存在することを意味する。化合物が一つ以上の結晶形で存在する可能性はあるものの、その存在及び特性を具体的に予測することはできない。原薬の結晶形によって、物理的・化学的特性が異なるため、生体内での薬物の溶出や吸収が異なる可能性があり、その結果、薬物の臨床効果に影響を与える可能性がある。特に難溶性経口固体や半固体製剤の場合、結晶形は製品の性能にとって非常に重要である。さらに、結晶形の物理的・化学的特性は、製造プロセスの観点から極めて重要である。したがって、結晶多形は医薬品の研究及び品質管理の重要な部分である。
【0007】
アモルファスは長距離秩序を有しない非晶質材料であり、その粉末X線回折パターンは通常、ブロードな「ハローピーク」を示す。
【0008】
従来の技術であるWO2007026097A1の実施例117には、化合物Iの製造方法について、白色沈殿物を酢酸エチルで抽出し、有機相を分取し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で濃縮して化合物Iを淡黄色粉末として得た(収率83%)という方法が開示されている。従来の技術であるWO2019024776A1の実施例3には、化合物Iの製造方法について、白色沈殿物を酢酸エチルで抽出し、有機相を分取し、硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧下で濃縮して83mgの化合物Iを淡黄色固体として得たという方法が開示されている。本発明者らは、従来の技術に開示された化合物Iの製造方法を繰り返し、アモルファス形態の化合物Iを得た。本発明者らは、従来の技術により得られたアモルファスを詳しく検討した結果、アモルファスは、吸湿による重量の増加が多い、有機溶媒の残留量が高い、試料の粉末状態が悪い、定量化が難しい、搬送ロスが多いなどの問題を抱えており、医薬品用途には適しないことを確認した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】WO2007026097A1
【特許文献2】WO2019024776A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の技術における欠点を解消するために、医薬品用の基準に適合し、化合物I含有薬の開発に用いられる新規な結晶形を見出す必要がある。本発明者らは、化合物Iの1,4-ジオキサン溶媒和物の結晶形、トリクロロメタン溶媒和物の結晶形、テトラヒドロフラン溶媒和物の結晶形、無水結晶形及び水和物結晶形を意外にも見出した。そのうち、1,4-ジオキサン溶媒和物の結晶形、トリクロロメタン溶媒和物の結晶形及びテトラヒドロフラン溶媒和物の結晶形はそれぞれ、約10.1wt%の1,4-ジオキサン、約3.3wt%のトリクロロメタン、約6.0wt%のテトラヒドロフランを含有するため、医薬品用途には適しない。本願による化合物Iの無水結晶形及び水和物結晶形は、溶解性、吸湿性、精製効果、安定性、付着性、圧縮性、流動性、生体外及び生体内での溶出、生物学的有効性などの特性のうちの少なくとも1つに利点があり、特に安定性が良好で、吸湿による重量の増加が少なく、残留溶媒がないことに加えて、均一な粒度分布、良好な流動性、低い付着性、良好な粉末分散性を有することにより、従来の技術に存在していた問題を解決することができ、化合物Iを含む医薬品の開発には非常に重要である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、化合物Iの新規な結晶形及びその製造方法、並びに、当該新規な結晶形を含む医薬組成物を提供する。
【0012】
さらに、本発明は、化合物Iの結晶形である結晶形CSV(以下、「結晶形CSV」という。)を提供する。
【0013】
一側面において、前記結晶形CSVは、10.5°±0.2°、11.4°±0.2°、26.0°±0.2°の回折角2θに、Cu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける特徴ピークを有する。
【0014】
さらに、前記結晶形CSVは、15.9°±0.2°、18.0°±0.2°、23.0°±0.2°のうちの1つ、又は2つ、又は3つの回折角2θに、Cu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける特徴ピークを有する。好ましくは、前記結晶形CSVの粉末X線回折パターンは、15.9°±0.2°、18.0°±0.2°、23.0°±0.2°の3つの回折角2θに、粉末X線回折パターンにおける特徴ピークを有する。
【0015】
さらに、前記結晶形CSVは、25.0°±0.2°、27.1°±0.2°、28.9°±0.2°のうちの1つ、又は2つ、又は3つの回折角2θに、Cu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける特徴ピークを有する。好ましくは、前記結晶形CSVの粉末X線回折パターンは、25.0°±0.2°、27.1°±0.2°、28.9°±0.2°の3つの回折角2θに、粉末X線回折パターンにおける特徴ピークを有する。
【0016】
別の側面において、前記結晶形CSVは、10.5°±0.2°、11.4°±0.2°、26.0°±0.2°、15.9°±0.2°、18.0°±0.2°、23.0°±0.2°、25.0°±0.2°、27.1°±0.2°、28.9°±0.2°、5.7°±0.2°、12.8°±0.2°、21.0°±0.2°、22.0°±0.2°、23.6°±0.2°、24.1°±0.2°、26.6°±0.2°のうちのいずれか3つ、又は4つ、又は5つ、又は6つ、又は7つ、又は8つ、又は9つ、又は10、又は11、又は12、又は13、又は14、又は15、又は16の回折角2θに、Cu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける特徴ピークを有する。
【0017】
特に限定するものではないが、結晶形CSVの粉末X線回折パターンは実質的に
図1のとおりである。
特に限定するものではないが、結晶形CSVの熱重量分析パターンは実質的に
図3に示すように、100℃に加熱した場合に約0.1%の質量損失が生じる。
特に限定するものではないが、結晶形CSVは無水結晶形である。
【0018】
本発明の目的によれば、本発明はさらに、
(1)化合物Iをエーテル系溶媒に溶解、ろ過し、ろ液をガラス瓶に入れた後、全体として水を含む密閉ガラス瓶に入れ、静置し、結晶形CSVを得ること、又は
(2)化合物Iをエステル系溶媒に溶解、ろ過し、揮発させ、結晶形CSVを得ること
を含む前記結晶形CSVの製造方法を提供する。
【0019】
さらに、方法(1)において、前記エーテル系は、好ましくはC4~C6のエーテルであり、より好ましくは2-メチルテトラヒドロフランである。方法(2)において、前記エステル系は、好ましくはC2~C7のエステルであり、より好ましくは酢酸イソプロピルである。前記揮発温度は、好ましくは室温~80℃である。
【0020】
本発明の目的によれば、本発明は化合物Iの結晶形CSIII(以下、「結晶形CSIII」という。)を提供する。
【0021】
一側面において、前記結晶形CSIIIは、9.9°±0.2°、15.7°±0.2°、17.3°±0.2°の回折角2θに、Cu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける特徴ピークを有する。
【0022】
さらに、前記結晶形CSIIIは、11.7°±0.2°、24.0°±0.2°、26.7°±0.2°のうちの1つ、又は2つ、又は3つの回折角2θに、Cu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける特徴ピークを有する。好ましくは、前記結晶形CSIIIの粉末X線回折パターンは、11.7°±0.2°、24.0°±0.2°、26.7°±0.2°の3つの回折角2θに、粉末X線回折パターンにおける特徴ピークを有する。
【0023】
さらに、前記結晶形CSIIIは、26.0°±0.2°、28.3°±0.2°、30.4°±0.2°のうちの1つ、又は2つ、又は3つの回折角2θに、Cu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける特徴ピークを有する。好ましくは、前記結晶形CSIIIの粉末X線回折パターンは、26.0°±0.2°、28.3°±0.2°、30.4°±0.2°の3つの回折角2θに、粉末X線回折パターンにおける特徴ピークを有する。
【0024】
別の側面において、前記結晶形CSIIIは、9.9°±0.2°、15.7°±0.2°、17.3°±0.2°、11.7°±0.2°、24.0°±0.2°、26.7°±0.2°、26.0°±0.2°、28.3°±0.2°、30.4°±0.2°、7.8°±0.2°、18.0°±0.2°、21.5°±0.2°、23.4°±0.2°、25.1°±0.2°、27.0°±0.2°のうちのいずれか3つ、又は4つ、又は5つ、又は6つ、又は7つ、又は8つ、又は9つ、又は10、又は11、又は12、又は13、又は14、又は15の回折角2θに、Cu-Kα線による粉末X線回折パターンにおける特徴ピークを有する。
【0025】
特に限定するものではないが、結晶形CSIIIの粉末X線回折パターンは実質的に
図4のとおりである。
特に限定するものではないが、結晶形CSIIIの熱重量分析パターンは実質的に
図5に示すように、120℃に加熱した場合に、約0.2%の質量損失が生じる。
特に限定するものではないが、結晶形CSIIIは無水結晶形である。
【0026】
本発明の目的によれば、本発明はさらに、固体状の化合物Iのフリー体をニトリル系溶媒に入れ、溶液が透明になった後、ろ過し、揮発させて、結晶形CSIIIを得ることを含む結晶形CSIIIの製造方法を提供する。
【0027】
さらに、前記ニトリル系溶媒は、好ましくは炭素数C2~C4のニトリルである。
さらに、前記ニトリル系溶媒は、好ましくはアセトニトリルである。
【0028】
本発明の目的によれば、本発明は、化合物Iの他の結晶形又は塩を製造するための結晶形CSV、結晶形CSIII又はこれらの任意の混合物の使用を提供する。
【0029】
本発明の目的によれば、本発明は、治療有効量の化合物Iの結晶形と、薬学的に許容される添加剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0030】
さらに、本発明は、治療有効量の結晶形CSV、結晶形CSIII又はこれらの任意の混合物と、薬学的に許容される添加剤とを含む医薬組成物を提供する。
【0031】
本発明の目的によれば、本発明は、汎PPARアゴニスト薬物を製造するための化合物Iの結晶形の使用を提供する。
【0032】
さらに、本発明は、汎PPARアゴニスト薬物を製造するための結晶形CSV、結晶形CSIII又はこれらの任意の混合物の使用を提供する。
【0033】
本発明の目的によれば、本発明は、非アルコール性脂肪性肝炎の治療薬を製造するための化合物Iの結晶形の使用を提供する。
【0034】
さらに、本発明は、非アルコール性脂肪性肝炎の治療薬を製造するための結晶形CSV、結晶形CSIII又はこれらの任意の混合物の使用を提供する。
【0035】
(本発明が解決しようとする課題)
本発明者らは、従来の技術に開示された製造方法により得られたアモルファスを検討した結果、アモルファスは吸湿による重量の増加が多く、化学的安定性が悪く、生産の観点から好ましくないこと、有機溶媒の残留量が薬局方に規定する残留溶媒の限度を遥かに上回り、毒性が高いことが分かった。従来の技術に存在した問題を解決するために、本発明者らは、600回以上の実験を行い、様々な溶媒系でスラリー化、揮発、気液拡散、気固拡散、湿度誘導、貧溶媒の添加及び加熱などの方法を試みた結果、意外にも本発明による化合物Iの結晶形を見出した。
【発明の効果】
【0036】
本発明による結晶形CSVは以下の有利な効果を有する。
(1)従来の技術と比較して、本発明による結晶形CSVは、吸湿による重量増加が低い。測定結果によれば、0-70%RHの条件下における従来のアモルファスの吸湿による重量増加は、本願結晶形CSVの吸湿による重量増加の約3.4倍であった。結晶形CSVは、0-70%RHの条件下における吸湿による重量増加が0.35%であったのに対して、従来のアモルファスは、0-70%RHの条件下における吸湿による重量増加が1.18%であった。
吸湿性が高いと、原薬の化学的分解や結晶転移が発生しやすく、原薬の物理的・化学的安定性に直接影響を与える。また、吸湿性が高い場合、原薬の流動性が低下し、原薬の製造加工が影響される。
別の観点では、高吸湿性の薬剤は、生産及び保存時に低い湿度を維持する必要があるため、生産条件をより厳しく求め、コストが高くなる。さらに、高吸湿性の場合、薬剤中の有効成分の含有量が変化しやすく、薬剤の品質が影響される。
本発明による結晶形CSVは低吸湿性で、厳しい環境条件を求めず、材料の生産、保存及び品質管理のコストを削減することができ、強い経済的価値を有する。
【0037】
(2)本発明による結晶形CSVは、良好な粉末外観を有する。本発明による結晶形CSVは、粉末の分散性に優れ、工業生産時の搬送及び材料損失低減の観点から好適である。
【0038】
(3)本発明による結晶形CSVを用いる原薬は、良好な物理的安定性を有する。結晶形CSVによる原薬は、40℃/75%RHの条件下で密封包装による保存及び開放包装による保存を少なくとも9ヶ月行った結果、結晶形の変化はなかった。60℃/75%RHの条件下で密封包装による保存及び開放包装による保存を少なくとも1ヶ月行った結果、結晶形の変化はなかった。つまり、結晶形CSVによる原薬は、加速条件下及びより苛酷な条件下においても、良好な安定性を有する。季節の違い、各地域の気候の違い、環境要因などによる高温高湿の条件は、原薬の貯蔵、輸送、生産に影響を与える。したがって、加速条件下及びより苛酷な条件下における原薬の安定性は、薬剤にとって極めて重要である。結晶形CSVによる原薬は、苛酷な条件下での安定性に優れることで、薬剤貯蔵時の結晶転移や純度低下による薬剤の品質への影響を防止する上で好適である。
また、結晶形CSVは良好な機械的安定性を有する。結晶形CSVによる原薬は、打錠後に結晶形の変化がないことから、結晶形CSVは良好な物理的安定性を有すると考えられる。製剤加工時に原薬を打錠することが多く、良好な物理的安定性を有することにより、製剤加工時に原薬の結晶性低下や結晶転移が発生するリスクを低くすることができる。各圧力において、結晶形CSVによる原薬は良好な物理的安定性を有するため、製剤の打錠加工における結晶形の安定性維持の観点から好適である。
【0039】
(4)結晶形CSVは、良好な湿度安定性を有する。本発明の結晶形CSVは、相対湿度0-95%-0のサイクルを1回行った結果、結晶形の変化はなかった。
【0040】
(5)本発明による結晶形CSVは良好な流動性を有する。流動性が向上すると、生産設備の詰まりが回避され、生産効率が高くなり、製剤の含有量の均一性が確保され、重量差が減少し、製品の品質が向上する。
【0041】
(6)本発明による結晶形CSVは、付着性の改善もある。付着性の改善により、原薬の凝集を効果的に低減し、乾式造粒や錠剤打錠などにおいてロールやパンチへの付着などを効果的に改善又は回避することができるため、原料の分散や添加剤との混合の観点から好適である。これにより、材料混合時の混合均一性が向上し、その結果、製品の品質が高まる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】
図1は、実施例2で得られた結晶形CSVのXRPDパターンである。
【
図2】
図2は、実施例3で得られた結晶形CSVのXRPDパターンである。
【
図3】
図3は、結晶形CSVのTGAパターンである。
【
図4】
図4は、実施例5で得られた結晶形CSIIIのXRPDパターンである。
【
図5】
図5は、実施例5で得られた結晶形CSIIIのTGAパターンである。
【
図6】
図6は、実施例6で得られたアモルファスのXRPDパターンである。
【
図7】
図7は、実施例6で得られたアモルファスのTGAパターンである。
【
図8】
図8は、結晶形CSVの各保存条件下における保存前後のXRPD比較を示すものである(上から順に保存前、40℃/75%RH、開放包装で9ヶ月、40℃/75%RH、密封包装で9ヶ月、60℃/75%RH、開放包装で1ヶ月、60℃/75%RH、密封包装で1ヶ月保存した結果である)。
【
図9】
図9は、結晶形CSVのDVS前後のXRPD比較を示すものである(上図は測定前、下図は測定後である)。
【
図12】
図12は、結晶形CSV打錠前後のXRPD比較を示すものである(上から順に打錠前、5kN、10kN、20kNの結果である)。
【
図13】
図13は、結晶形CSIIIのDVS測定前後のXRPD比較を示すものである(上図は測定前、下図は測定後である)。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下の実施例により本発明について詳しく説明する。下記の実施例は、本発明の結晶形の製造及び使用方法を詳細に示すものである。本発明の範囲を逸脱しない限り、材料と方法の両方について様々な変更を行えることは当業者には明白である。
【0044】
本発明における略語の意味は以下のとおりである。
XRPD:粉末X線回折
TGA:熱重量分析
DSC:示差走査熱量測定
1H NMR:水素核磁気共鳴スペクトル
DVS:動的水分吸着
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
RH:相対湿度
データの測定に使用された装置及び方法は以下のとおりである。
【0045】
本発明に記載の粉末X線回折パターンは、Bruker製粉末X線回折装置により測定したものである。前記粉末X線回折の測定条件は下記のとおりである。
X線源:Cu,Kα
Kα1(Å):1.54060;Kα2(Å):1.54439
Kα2/Kα1強度比:0.50
【0046】
本発明に記載の熱重量分析(TGA)パターンは、TA Q500により測定したものである。本発明に記載の熱重量分析(TGA)の測定条件は下記のとおりである。
走査速度:10℃/min
パージガス:N2
【0047】
本発明に記載の示差走査熱量測定(DSC)パターンは、TA Q2000により測定したものである。本発明に記載のDSCの測定条件は下記のとおりである。
走査速度:10℃/min
パージガス:N2
【0048】
水素核磁気共鳴スペクトルデータ(1H NMR)は、核磁気共鳴分光計Bruker Avance II DMX 400MHzにより測定したものである。1~5mgの試料を0.5mLの重水素化ジメチルスルホキシドで溶解し、2~10mg/mLの溶液とした。
【0049】
本発明に記載の動的水分吸着(DVS)パターンは、SMS社(Surface Measurement Systems Ltd.)製動的水分吸着装置Intrinsicにより測定したものである。装置制御用のソフトウェアはDVS-Intrinsic control softwareである。前記動的水分吸着装置の測定条件は下記のとおりである。
温度:25℃
キャリアガス、流量:N2、200ml/分
相対湿度の範囲:0%RH-95%RH
【0050】
本発明における物質の分析方法は表1のとおりである。
【0051】
【0052】
本発明において、「撹拌」は、例えば、磁気撹拌や機械的撹拌などの当分野の一般的な方法を用いて、50~1800rpmの撹拌速度で行われる。ここで、磁気撹拌の速度は好ましくは300~900rpmとし、機械的撹拌の速度は好ましくは100~300rpmとする。
【0053】
「分離」は、例えば、遠心やろ過などの当分野の一般的な方法で行われる。「遠心分離」の操作は、分離しようとする試料を遠心管に入れ、固形物がすべて遠心管の底に沈むまで、10000rpmの速度で遠心分離するというものである。
「揮発」は、当分野の一般的な方法で行われる。例えば、緩速揮発とは、容器をフィルムでシールし、穴を開け、静置して揮発させることをいい、急速揮発とは、容器を開放して揮発させることをいう。
【0054】
「減圧濃縮」は、当分野の一般的な方法で行われる。例えば、減圧濃縮の操作は、溶液の入ったフラスコを一定の温度、負圧下で一定の速度で回転させることにより、溶媒を蒸発させるというものである。
【0055】
「室温」とは、特定の温度値ではなく、10~30℃の温度範囲を意味する。
【0056】
「乾燥」は、例えば真空乾燥、送風乾燥、又は自然乾燥などの当分野の一般的な方法で行われる。乾燥温度は室温又はより高い温度とすることができ、好ましくは室温~約60℃、又は~50℃、又は~40℃である。乾燥時間は2~48時間とすることができる。乾燥はドラフトチャンバー、送風オーブン又は真空オーブンの中で行われる。
【0057】
「特徴ピーク」とは、結晶を同定するための代表的な回折ピークをいい、通常、±0.2°の誤差が許容される。
【0058】
本発明において、「結晶」又は「結晶形」粉末X線回折パターンで特徴付けることができる。当業者は、粉末X線回折パターンが機器の条件、試料の準備及び試料の純度に依存することを理解できる。粉末X線回折パターンにおける回折ピークの相対強度も実験条件によって変化し得るため、回折ピークの強度は結晶形を判断するための唯一のまたは決定的な要因として考えるべきではない。実際には、粉末X線回折パターンにおける回折ピークの相対強度は、結晶の優先配向に関係しており、本発明で示される回折ピークの強度は例示的なものであり、絶対的な比較には使用されない。したがって、当業者は、本発明に係る結晶形の粉末X線回折パターンが、本明細書の実施例における粉末X線回折パターンと完全に一致する必要はなく、これらのパターンにおける特徴ピークと同じ又は類似の粉末X線回折パターンを有する結晶形であれば、本発明の範囲に含まれることを理解できる。当業者は、本発明の粉末X線回折パターンと未知の結晶形の粉末X線回折パターンを比較することにより、これらのパターンを示したものが同じ結晶形か、異なる結晶形かを確認することができる。
【0059】
いくつかの実施形態において、本発明の結晶形CSV、結晶形CSIIIは純粋なものであり、いずれの他の結晶形を実質的に含まないものである。本発明において、新規な結晶形に関して、「実質的に含まない」とは、当該結晶形に含まれる他の結晶形が20%(重量)未満であること、特に10%(重量)未満であること、特に5%(重量)未満であること、特に1%(重量)未満であることを意味する。
【0060】
本発明における「約」とは、例えば、質量、時間、温度等の測定可能な数値に使用される場合、具体的な数値について、±10%、±5%、±1%、±0.5%、又は±0.1%の変動範囲を有することを意味する。
【実施例】
【0061】
以下の実施例は、特に記載のない限り、室温下で操作したものである。
本発明において、原料として使用される前記化合物Iは、固体状(結晶又はアモルファス)、油状、液体状及び溶液であってもよく、これらに限定されるものではない。好ましくは、原料としての化合物Iは固体状のものである。
以下の実施例に使用する化合物Iは、先行技術に基づいて製造することができ、例えば、文献WO2007026097A1に記載の方法で製造することができる。
【0062】
(実施例1)化合物Iの溶媒和物の結晶形の特徴付け
本発明者らは、本願で得られた1,4-ジオキサン溶媒和物の結晶形、トリクロロメタン溶媒和物の結晶形及びテトラヒドロフラン溶媒和物の結晶形をTGA、DSC、1H NMRにより特徴付けた。結果を表2に示す。
【0063】
【表2】
急速揮発とは、開放状態で揮発させることをいう。
緩速揮発とは、アルミホイルで容器をシールし、穴を開け、静置して揮発させることをいう。
【0064】
(実施例2)結晶形CSVの製造方法
化合物Iの固体162.6mgを4.4mLの2-メチルテトラヒドロフランに溶解、ろ過し、0.3mLのろ液をガラス瓶に入れた後、4mLの水を含む密閉ガラス瓶に入れ、12日静置して、固体を得た。得られた固体を30℃で一晩真空乾燥し、さらに60℃で4日真空乾燥することで、乾燥固体を得た。
分析した結果、得られた乾燥固体は本発明の結晶形CSVであった。その粉末X線回折パターンを
図1に示し、粉末X線回折データを表3に示す。
【0065】
【0066】
(実施例3)結晶形CSVの製造方法
化合物Iの固体143.7mgを120mLの酢酸イソプロピルに溶解して、ろ過し、20mLのろ液を50℃で一晩揮発させて、結晶固体を得た。
分析した結果、得られた結晶固体は本発明の結晶形CSVであった。その粉末X線回折パターンを
図2に示し、粉末X線回折データを表4に示す。
【0067】
【0068】
(実施例4)結晶形CSVの熱重量分析
一定量の結晶形CSVをTGA測定に供した。その結果、
図3に示すように、100℃に加熱すると、約0.1%の質量損失があった。
【0069】
(実施例5)結晶形CSIIIの製造方法
化合物Iの固体5.2mgを3.5mLのアセトニトリル溶媒に入れ、50℃で溶液が透明になった後、ろ過し、50℃で揮発させて、結晶固体を得た。
分析した結果、得られた結晶試料は本発明の結晶形CSIIIであった。
本発明の結晶形CSIIIの粉末X線回折パターンを
図4に示し、粉末X線回折データを表5に示す。
本発明の結晶形CSIIIを50℃で一晩真空乾燥し、粉末X線回折で測定した結果、乾燥前と乾燥後で結晶形の変化はなかった。乾燥後の結晶形CSIIIのTGAは
図5に示すように、120℃に加熱すると、約0.2%の質量損失があった。
結晶形CSIIIのNMRデータは、
1H NMR(400MHz,DMSO-d
6)δ12.14(s,1H),9.66(s,1H),8.98(d,J=1.8Hz,1H),8.20(d,J=8.7Hz,1H),8.09(d,J=8.9Hz,1H),7.85(dd,J=8.7,2.0Hz,1H),7.57(d,J=2.1Hz,1H),7.32(dd,J=8.9,2.1Hz,1H),6.62(s,1H),3.09(t,J=7.4Hz,2H),2.36(t,J=7.3Hz,2H),1.99-1.90(m,2H)というものであった。NMR結果から、結晶形CSIIIが残留溶媒を含まないことが分かった。結晶形CSIIIは残留溶媒を含まないのに対して、従来のアモルファスは2.70%の酢酸エチル溶媒を含み、これは薬局方に規定する残留溶媒の限度(0.5%)を遥かに上回っている。酢酸エチルは中枢神経系に有毒な副作用を有し、長期間暴露すると結膜刺激や角膜混濁を引き起こし、さらには肝臓や腎臓の充血を引き起こす可能性がある。
【0070】
【0071】
(実施例6)従来の技術に開示された化合物Iの製造方法の再現
表6に示す量のとおりに化合物Iの固体を酢酸エチルに溶解し、溶液が透明になった後、ろ過した。一定量のろ液を一定温度で減圧濃縮することで固体を得、それぞれ試料1、2と記した。
【0072】
【0073】
XRPDで分析した結果、試料1、2はいずれもアモルファスであった。
試料1のXRPDパターンを
図6に示す。
試料1のTGAパターンを
図7に示す。結果によれば、200℃に加熱すると、試料1は約5.3%の質量損失があった。
試料1の
1H NMRデータは、
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ(ppm)12.11(s,1H)、9.65(s,1H)、8.97(d,J=2.0Hz,1H)、8.20(d,J=8.8Hz,1H)、8.09(d,J=8.9Hz,1H)、7.84(dd,J=8.7,2.1Hz,1H)、7.57(d,J=2.1Hz,1H)、7.31(dd,J=8.9,2.3Hz,1H)、6.61(s,1H)、3.08(t,J=14.8Hz,1H)、2.36(t,J=7.3Hz,2H)、1.97-1.90(m,2H)というものであり、ここで、酢酸エチルのNMRシグナルは(δ(ppm)4.03(q,J=7.1Hz),1.17(t,J=7.1Hz,0.58H))であった。NMR結果によれば、従来のアモルファスは、2.70wt%の酢酸エチルを含むものであった。
【0074】
(実施例7)結晶形CSVの物理的・化学的安定性
一定量の本発明で製造された結晶形CSVをそれぞれ40℃/75%RH、60℃/75%RHの条件下で保存し、HPLC及びXRPDにより純度及び結晶形を測定した。結果を表7に示す。XRPDの比較を
図8に示す。
【0075】
【表7】
開放包装とは、試料をガラスバイアルに入れ、開口部をアルミホイルで覆い、アルミホイルに5~10の小穴を開けたことをいう。
密封包装とは、試料をガラスバイアルに入れ、開口部が開放されたまま、乾燥剤とともにアルミホイル袋に入れて密封したことをいう。
【0076】
結果によれば、結晶形CSVは40℃/75%RHの条件下で少なくとも9ヶ月安定して保存できる。つまり、結晶形CSVは加速条件下で良好な安定性を維持できる。60℃/75%RHの条件下で少なくとも1ヶ月安定して保存できる。つまり、より苛酷な条件下においても安定性が良好である。
【0077】
(実施例8)アモルファスの吸湿性
上記実施例6で得られたアモルファス固体適量を採取し、動的水分吸着(DVS)装置による吸湿性測定を行い、0%-95%-0%RHのサイクルを1回実施し、各湿度での質量変化を記録した。実験結果によれば、アモルファスは0-70%RHの条件下で吸湿による重量増加が1.18%であった。
【0078】
(実施例9)結晶形CSVの吸湿性
結晶形CSV適量を採取し、DVS装置による吸湿性測定を行い、0%-95%-0%RHのサイクルを1回実施し、各湿度での質量変化を記録した。
実験結果によれば、結晶形CSVは0-70%RHの条件下で吸湿による重量増加が0.35%であった。0-70%RH条件下における従来のアモルファスの吸湿による重量増加は、結晶形CSVの吸湿による重量増加の約3.4倍であった。結晶形CSVのDVS測定前後のXRPDパターンを
図9に示し、結晶形CSVのDVSパターンを
図10に示す。結果によれば、結晶形CSVはDVS測定後に結晶形の変化はなかった。
【0079】
(実施例10)結晶形CSVの粉末外観
結晶形CSV適量を秤量紙の上に置き、粉末の状態を観察した。結晶形CSVの外観を
図11に示す。観察した結果、結晶形CSVは粉末状で、凝集がなく、均一に分散した形態であった。
【0080】
(実施例11)結晶形CSVの流動性
製剤化プロセスにおいて、通常、圧縮性指数(Compressibility index)により粉末又はペレットの流動性を評価する。測定方法は、一定量の粉末をメスシリンダーに軽く充填して、タッピング前の体積を測定し、タッピング法により粉末を最密状態にして、タッピング後の体積を測定し、かさ密度ρ0及びタップ密度ρfを求め、式c=(ρf-ρ0)/ρfにより圧縮性指数を算出する。
圧縮性指数による粉末流動性の評価基準はICH Q4Bの付録13に準拠し、詳細を表8に示す。
【0081】
【0082】
結晶形CSVの流動性評価結果を表9に示す。結果によれば、結晶形CSVは良好な流動性を有する。
【0083】
【0084】
(実施例12)結晶形CSVの付着性
約30mg結晶形CSVを8mmの円形フラットパンチに置き、ENERPACの手動打錠機を用いて10kNの圧力で打錠処理し、打錠後に約30秒保持し、パンチに付着した粉末の量を量った。この方法を用いて2回連続してプレスした後、プレス時のパンチ上の平均付着量を記録した。実験結果によれば、結晶形CSVの平均付着量は0.45mgであり、結晶形CSVは低い付着性を有する。
【0085】
(実施例13)結晶形CSVの機械的安定性
結晶形CSV適量を適切な打錠用金型を用いて様々な圧力でプレス成形し、打錠前後にXRPD測定を行った。測定結果を表10に示し、打錠前後のXRPDパターンを
図12に示す。結果によれば、結晶形CSVは各圧力において良好な安定性を有する。
【0086】
【0087】
(実施例14)結晶形CSIIIの物理的・化学的安定性
一定量の本発明で製造された結晶形CSIIIを採取し、それぞれ25℃/60%RH、40℃/75%RHの条件下、密封包装及び開放包装で保存し、HPLC及びXRPDにより純度及び結晶形を測定した。
開放包装とは、試料をガラスバイアルに入れ、開口部をアルミホイルで覆い、アルミホイルに5~10の小穴を開けたことをいう。
密封包装とは、試料をガラスバイアルに入れ、開口部が開放されたまま、乾燥剤とともにアルミホイル袋に入れて密封したことをいう。
結果によれば、結晶形CSIIIは25℃/60%RH、密封包装及び開放包装で少なくとも6ヶ月安定して保存でき、保存中に純度の変化がほとんどなく、99.5%以上であった。結晶形CSIIIは40℃/75%RHの条件下で少なくとも2ヶ月安定して保存でき、保存中に純度の変化がほとんどなく、99.5%以上であった。このように、結晶形CSIIIは長期保存及び加速条件下で良好な物理的・化学的安定性を維持することができる。
【0088】
(実施例15)結晶形CSIIIの湿度安定性
結晶形CSIII適量を採取し、動的水分吸着(DVS)装置による吸湿性測定を行い、相対湿度0-95%-0のサイクルを1回実施した。結晶形CSIIIのDVS測定前後のXRPDパターンを
図13に示す。結果によれば、結晶形CSIIIはDVS測定後に結晶形の変化がなかった。
【0089】
(実施例16)結晶形CSIIIの粉末外観
結晶形CSIII適量を秤量紙の上に置き、粉末の状態を観察した。結晶形CSIIIの外観を
図14に示す。観察した結果、結晶形CSIIIは粉末状で、凝集がなく、均一に分散した形態であった。工業生産時の搬送及び材料損失低減の観点から好適である。
【0090】
以上の実施例は、当業者が本発明を理解して実施することができるように、本発明の技術的思想及び特徴を説明するためのものにすぎず、本発明の権利範囲を限定するものではない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で行われる同等の変形や改善はすべて、本発明の権利範囲に含まれる。
【国際調査報告】