(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】膜濾過システムにおいて凝集剤及び吸着剤を投入する方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20230101AFI20240725BHJP
B01D 61/16 20060101ALI20240725BHJP
C02F 1/28 20230101ALI20240725BHJP
B01D 21/01 20060101ALI20240725BHJP
C02F 1/52 20230101ALI20240725BHJP
【FI】
C02F1/44 F
B01D61/16
C02F1/28 D
B01D21/01 102
C02F1/52 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507160
(86)(22)【出願日】2022-07-25
(85)【翻訳文提出日】2024-04-05
(86)【国際出願番号】 US2022074101
(87)【国際公開番号】W WO2023015112
(87)【国際公開日】2023-02-09
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520028531
【氏名又は名称】デュポン セイフティー アンド コンストラクション インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100202603
【氏名又は名称】宮崎 智史
(72)【発明者】
【氏名】スタークス クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン ミヒャエル
【テーマコード(参考)】
4D006
4D015
4D624
【Fターム(参考)】
4D006GA06
4D006HA18
4D006KA03
4D006KB12
4D006KB13
4D006KD08
4D006KD09
4D006KD19
4D006KE30R
4D006MA01
4D006MA33
4D006MC63
4D006PA01
4D006PB08
4D006PB24
4D015BA26
4D015CA02
4D015DA04
4D015DA05
4D015DA13
4D015DB23
4D015DC03
4D015EA04
4D015EA37
4D015FA01
4D015FA22
4D624AA04
4D624AB04
4D624AB07
4D624BA02
4D624BA16
4D624BB01
4D624BC04
4D624DA01
4D624DA03
4D624DB05
4D624DB21
(57)【要約】
水の膜濾過の方法であって、膜の上流で水に凝集剤及び吸着剤を交互にインラインで添加することを含み、各添加時間は、10秒~1時間の範囲である、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水の膜濾過の方法であって、膜の上流で前記水に凝集剤及び吸着剤を交互にインラインで添加することを含み、各添加時間は、10秒~1時間の範囲である、方法。
【請求項2】
凝集剤添加の添加時間の中央値と、吸着剤添加の添加時間の中央値との比は、3:1~1:3である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各添加時間は、30分以下である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記吸着剤は、活性炭である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
各添加時間は、少なくとも1分である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記凝集剤は、無機凝集剤である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記活性炭は、5~50μmの平均粒径及び800~2000m
2/gの表面積を有する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
各添加時間は、1分~10分の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記吸着剤は、活性炭である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
凝集剤添加の添加時間の中央値と、吸着剤添加の添加時間の中央値との比は、2:1~1:2である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記凝集剤は、無機凝集剤である、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、膜濾過システムにおいて水に凝集剤及び活性炭を投入する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水の膜濾過前の凝集剤の投入は、低圧膜の全量濾過方式において膜性能を安定化及び改善するために使用されるよく知られたプロセスであり、典型的には有機物が豊富な水源に適用される。凝集剤を添加すると、除去可能である可逆的な汚染層を生成することによって安定した動作が可能になり、且つ溶解した有機物による全有機炭素(TOC)を削減することもできる。凝集剤は、典型的には、鉄又はアルミニウムに基づく無機金属であり、限外濾過プラントの運転費用の主要な部分であり得る。凝集剤は、典型的には、処理された水が様々な濾過ユニット又はラックに分配される前に中央のパイプに連続的に投入される。低圧膜を使用した膜濾過の全量濾過方式における濾過サイクルは、濾過時間及び水圧洗浄時間からなる。日本特許第5349378B2号公報は、膜フィルターの前に化学凝集剤及び活性炭を混合タンクに投入する方法を開示しているが、このタイプのシステムにおいて、凝集剤及び吸着剤の両方を直接インラインで効果的に投入するための効率的な方法を開示していない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
水の膜濾過の方法であって、膜の上流で水に凝集剤及び吸着剤を交互にインラインで添加することを含み、各添加時間は、10秒~1時間の範囲である、方法。
【発明を実施するための形態】
【0004】
好ましくは、本発明で濾過される水は、例えば、膜のカットオフを超える分子量を有する有機物、粒子状物質、微生物など、限外濾過(UF)を使用して除去可能な不純物を含む水である。好ましくは、水は、水処理プロセスからの下水、好ましくは自治体の下水処理プラントからの水性廃水である。好ましくは、本明細書に記載される全ての動作は、特に指定されない限り、周囲温度で実行される。
【0005】
好ましくは、吸着剤又は凝集剤を添加する前のインラインの水は、5~8.5、好ましくは6~7.8の範囲のpHを有する。好ましくは、吸着剤又は凝集剤を添加する前のインラインの水の温度は、5~40℃、好ましくは少なくとも8℃、好ましくは35℃以下、好ましくは30℃以下、好ましくは25℃以下である。好ましくは、吸着剤又は凝集剤を添加する前のインラインの水は、1~300NTU、好ましくは少なくとも1.5、好ましくは少なくとも2、好ましくは100NTU以下、好ましくは50NTU以下の濁度を有する。
【0006】
インラインで水に凝集剤及び吸着剤を交互に添加する時間は、10秒~1時間であり、即ち、凝集剤は、10秒~10分間添加され、続いて同じ範囲の時間にわたって吸着剤を添加し(凝集剤なし)、次いで続いて再度凝集剤を添加する。凝集剤の添加時間及び吸着剤の添加時間は、それぞれが記載の範囲内であれば必ずしも同じである必要はない。いずれかの成分の添加時間も範囲内で変動し得、例えば、個々の凝集剤の添加は、範囲内の異なる時間にわたって行われ得、及び/又は個々の吸着剤の添加は、範囲内の異なる時間にわたって行われ得る。好ましくは、時間は、少なくとも30秒、好ましくは少なくとも1分、好ましくは少なくとも1.5分、好ましくは少なくとも2分、好ましくは30分以下、好ましくは15分以下、好ましくは10分以下、好ましくは8分以下、好ましくは6分以下、好ましくは5分以下、好ましくは4.5分以下、好ましくは4分以下である。好ましくは、凝集剤の添加時間の中央値と、吸着剤の添加時間の中央値との比は、3:1~1:3、好ましくは2:1~1:2、好ましくは1.5:1~1:1.5、好ましくは1.3:1~1:1.3である。好ましくは、凝集剤の添加と、その前又はその後の吸着剤の添加との間の間隔は、1分以下、好ましくは30秒以下、好ましくは15秒以下である。
【0007】
凝集剤及び吸着剤は、インラインで、即ち凝集剤又は吸着剤を水と混合するための介在タンクを使用することなく、膜フィルターと流体連通するラインに直接添加される。好ましい実施形態では、凝集剤又は吸着剤の分散液を水にインラインで添加する前に、小さいタンクを使用して凝集剤又は吸着剤を水中に分散させる。
【0008】
好ましくは、凝集剤は、インラインで水の体積に基づいて0.1~20mg/L、好ましくは少なくとも1mg/L、好ましくは少なくとも1.5mg/L、好ましくは15mg/L以下、好ましくは10mg/L以下の量で添加される。無機凝集剤の場合、質量(mg)は、金属イオンの質量である。好ましくは、吸着剤は、インラインで水の体積に基づいて5~100mg/L、好ましくは少なくとも8mg/L、好ましくは少なくとも10mg/L、好ましくは50mg/L以下、好ましくは30mg/L以下の量で添加される。好ましい実施形態では、凝集剤は、分散液の重量に基づいて5~15重量%の量においてインラインで水に添加される前に水に分散され得る。好ましい実施形態では、吸着剤は、水1L当たり1~100g、好ましくは5~20gの量においてインラインで水に添加される前に水中に分散される。
【0009】
好ましい凝集剤には、無機凝集剤、有機ポリマー凝集剤及び無機ポリマー複合体が含まれる。好ましい有機ポリマー凝集剤は、ポリアミン及びポリDADMAC(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)である。好ましい無機凝集剤は、塩化第二鉄、ポリ(塩化アルミニウム)、硫酸アルミニウム及び塩化アルミニウムである。
【0010】
好ましい吸着剤は、活性炭及びイオン交換樹脂、好ましくは活性炭である。活性炭の好ましい形態は、粉末状活性炭(PAC)である。好ましくは、活性炭の平均粒径は、1~200μm、好ましくは5~50μm、好ましくは5~20μmである。好ましくは、活性炭の平均表面積は、800~2000m2/g、好ましくは900~1500m2/gである。
【0011】
好ましくは、膜は、UF膜である。好ましくは、膜は、「裏返し」の構成で使用するのに適したもの、即ち水が膜の内側の通路を通して移動し、処理された水がそれを通して外側に流れるものであり、好ましくは単繊維においていくつかのキャピラリを含むマルチボア繊維膜である。好ましくは、キャピラリの内径は、0.2mm~2mm、好ましくは0.5mm~1.5mmである。好ましくは、膜は、ポリエーテルスルホン(PES)を含む。UF膜は、一般に、下水処理の分野でよく知られている。
【実施例】
【0012】
凝集剤及び吸着剤を交互に添加する組み合わせを、自治体の下水処理プラントの廃水の処理について試験した。自治体の下水処理プラントの処理プロセスは、濾過器、浄化装置、硝化及び脱窒による生物処理並びに最終浄化装置からなった。二次廃水には、以下の水質パラメータがあった。
【0013】
【0014】
吸着剤は、平均直径10μm(90%が45μm未満)及びヨウ素価1020mg/gの粒子を有する粉末状活性炭(PAC)であった。15mg/L(下水流中の濃度)のPACを投与中に添加した。凝集剤として塩基性度65%のポリ塩化アルミニウム(PACl)を使用し、投与中に4mg/lのAl3+の濃度で添加した。
【0015】
検討に使用されたUFモジュールには、表面積80m2の7つのキャピラリを備えた、内側から外側までのMultibore(登録商標)ファイバーが含まれた。各キャピラリの内層(内径0.9mm)は、非常に薄いアクティブフィルターの表面を示す。濾過層の孔径は、約20ナノメートルである。Multibore(登録商標)繊維の材料は、変性ポリエーテルスルホン(PES)である。UFは、80リットル/(m2・時)のフラックス及び45分の濾過時間で動作され、91%の回収率をもたらした。
【0016】
使用した投与パターンは、交互投与であり、この場合、PAC又はPAClのいずれかを、インラインでの添加と、膜との接触との間に20秒の遅延を設けてここで交互にUFに事前に添加した。ここで選択された時間間隔は、PAC及びPACに対して3分であった。
【0017】
3日間にわたり、20℃での標準化透過率は、120~250L/(m2・時・バール)の範囲で安定して留まり、相関膜間圧力(TMP)は、400~750ミリバールであった。
【0018】
比較すると、凝集剤を使用せずにPACのみを添加すると、わずか12時間以内に1500ミリバールのTMPに達する不安定な動作となったが、有機汚染が非常に優勢であったため、物理的な洗浄では透過性を回復できなかった。
【0019】
UF膜の前に選択された微量汚染物質を短時間吸着することによる除去効率は、以下の概要で見ることができる。
【0020】
【0021】
低吸着性有機微量汚染物質及び良好な吸着性有機微量汚染物質について、交互プロセスは、より良好な結果を示す一方、非常に良好な吸着性有機微量汚染物質は、PAC単独及び交互プロセスのその除去効率に関してむしろ同等であるが、PAC/ポリ(塩化アルミニウム)連続添加によってより効率的に除去される。事前の生物処理工程による更なる除去率は、ここでは示されていない。
【0022】
要約すると、PES限外濾過膜の上流に吸着剤(PAC)及び凝集剤を交互に投与すると、制御可能な汚染層という点で安定したUF性能が得られ、有機微量汚染物質の最も高い除去率が達成される。一方、微量汚染物質の十分な除去率は、PACのみの添加でも達成できるが、結果としてTMPの急激な増加及び不可逆的な汚染層が観察された。
【国際調査報告】