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特表2024-529070ATR阻害剤としてのナフチリジン誘導体およびその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】ATR阻害剤としてのナフチリジン誘導体およびその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/04 20060101AFI20240725BHJP
   C07D 519/00 20060101ALI20240725BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20240725BHJP
   A61K 31/662 20060101ALI20240725BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240725BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
C07D471/04 112
C07D471/04 CSP
C07D519/00 301
A61K31/5377
A61K31/662
A61P35/00
A61P35/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507174
(86)(22)【出願日】2022-08-11
(85)【翻訳文提出日】2024-02-06
(86)【国際出願番号】 CN2022111893
(87)【国際公開番号】W WO2023016529
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】202110919812.6
(32)【優先日】2021-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202111188963.5
(32)【優先日】2021-10-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210918443.3
(32)【優先日】2022-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519416819
【氏名又は名称】ウィゲン・バイオメディシン・テクノロジー・(シャンハイ)・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】WIGEN BIOMEDICINE TECHNOLOGY (SHANGHAI) CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】BUILDING 11, LIBING ROAD 67, ZHANGJIANG HI‐TECH PARK, SHANGHAI 201203, CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】シエ,ユリ
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ウェンジョン
(72)【発明者】
【氏名】チエン,リフゥイ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB09
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
(57)【要約】
ATR阻害剤としてのナフチリジン誘導体、その調製方法およびその使用が、開示される。具体的には、本発明は、一般式(1)のナフチリジン化合物、その調製方法、ならびにATR阻害剤としての一般式(1)の化合物およびその異性体、結晶体、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物の使用に関する。本発明の化合物およびその異性体、結晶体、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物は、ATRプロテインキナーゼにより介在される関連疾患を処置または予防するための医薬の調製のために、使用され得る。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)の化合物、またはその異性体、結晶体、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物。
【化1】
(一般式(1)中、
Xは、CHまたはNであり、
は、
【化2】
であり、
およびRは、それぞれ独立して、-H、-D、ハロゲン、(C1~C6)アルキル、(C2~C6)アルケニル、(C2~C6)アルキニル、(C1~C6)アルコキシ、(C3~C10)シクロアルキル、(C3~C10)シクロアルケニル、(3~10員)ヘテロシクロアルキル、(3~10員)ヘテロシクロアルケニル、(C6~C10)アリールまたは(5~10員)ヘテロアリールであり、ここで、前記(C1~C6)アルキル、前記(C2~C6)アルケニル、前記(C2~C6)アルキニル、前記(C1~C6)アルコキシ、前記(C3~C10)シクロアルキル、前記(C3~C10)シクロアルケニル、前記(3~10員)ヘテロシクロアルキル、前記(3~10員)ヘテロシクロアルケニル、前記(C6~C10)アリールまたは前記(5~10員)ヘテロアリールは、それぞれ独立して、以下の基:-H、-D、ハロゲン、-OH、-R、-NR、-C(O)OR、-C(O)NR、-S(O)、-S(O)NR、-P(O)(OR、-P(O)(R、(C1~C6)アルキル、(C2~C6)アルケニル、(C2~C6)アルキニル、(C1~C6)アルコキシ、(C3~C10)シクロアルキル、(C3~C10)シクロアルケニル、(3~10員)ヘテロシクロアルキル、(3~10員)ヘテロシクロアルケニル、(C6~C10)アリールまたは(5~10員)ヘテロアリールのうちの1つまたは複数で任意に置換され得るか、
あるいは、RおよびRは、それらに結合している炭素原子と共に、(C3~C15)シクロアルキルまたは(3~15員)ヘテロシクロアルキルを形成し、ここで、前記(C3~C15)シクロアルキルまたは前記(3~15員)ヘテロシクロアルキルは、それぞれ独立して、1つ以上のRで任意に置換され得、
およびRは、それぞれ独立して、-H、-D、(C1~C3)アルキル、(C2~C4)アルケニル、(C2~C4)アルキニル、(C1~C3)アルコキシ、(C1~C3)ハロアルキル、(C3~C10)シクロアルキル、(C3~C10)シクロアルケニル、(3~10員)ヘテロシクロアルキル、(3~10員)ヘテロシクロアルケニル、(C6~C10)アリールまたは(5~10員)ヘテロアリールであるか、
あるいは、RおよびRは、結合しているN原子と共に、(3~10員)ヘテロシクロアルキルを形成し、ここで、前記(3~10員)ヘテロシクロアルキルは、以下の基:-H、-D、ハロゲン、-OH、-NR、-C(O)OR、-C(O)NR、-S(O)、-S(O)NR、-P(O)(OR、-P(O)(R、(C1~C6)アルキル、(C2~C6)アルケニル、(C2~C6)アルキニル、(C1~C6)アルコキシ、(C3~C10)シクロアルキル、(C3~C10)シクロアルケニル、(3~10員)ヘテロシクロアルキル、(3~10員)ヘテロシクロアルケニル、(C6~C10)アリール、または(5~10員)ヘテロアリールのうちの1つまたは複数で任意に置換され得、
各Rは、独立して、-H、-D、ハロゲン、-OH、-NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、-(CH-S(O)、-(CH-S(O)NR、-P(O)(OR、-P(O)(R、(C1~C6)アルキル、(C2~C6)アルケニル、(C2~C6)アルキニル、(C1~C6)ハロアルキル、(C1~C6)アルコキシ、(C3~C10)シクロアルキル、(C3~C10)シクロアルケニル、(3~10員)ヘテロシクロアルキル、(3~10員)ヘテロシクロアルケニル、(C6~C10)アリールまたは(5~10員)ヘテロアリールであり、ここで、前記(C1~C6)アルキル、前記(C2~C6)アルケニル、前記(C2~C6)アルキニル、前記(C1~C6)ハロアルキル、前記(C1~C6)アルコキシ、前記(C3~C10)シクロアルキル、前記(C3~C10)シクロアルケニル、前記(3~10員)ヘテロシクロアルキル、前記(3~10員)ヘテロシクロアルケニル、前記(C6~C10)アリール、または前記(5~10員)ヘテロアリールは、それぞれ独立して、以下の基:-H、-D、ハロゲン、-OH、-NR、-C(O)OR、-C(O)NR、-(CH-S(O)、-(CH2)-S(O)NR、-P(O)(OR、-P(O)(R、(C1~C6)アルキル、(C2~C6)アルケニル、(C2~C6)アルキニル、(C1~C6)ハロアルキル、(C1~C6)アルコキシ、(C3~C10)シクロアルキル、(C3~C10)シクロアルケニル、(3~10員)ヘテロシクロアルキル、(3~10員)ヘテロシクロアルケニル、(C6~C10)アリールまたは(5~10員)ヘテロアリールのうちの1つまたは複数で任意に置換されていてもよく、
およびRは、それぞれ独立して、-H、-D、(C1~C3)アルキル、(C2~C4)アルケニル、(C2~C4)アルキニル、(C1~C3)アルコキシ、(C1~C3)ハロアルキル、(C3~C10)シクロアルキル、(C3~C10)シクロアルケニル、(3~10員)ヘテロシクロアルキル、(3~10員)ヘテロシクロアルケニル、(C6~C10)アリールまたは(5~10員)ヘテロアリールであり、
pは、0、1、または2であり、
nは、0、1、2、または3である。)
【請求項2】
一般式(1)中、Xが、CHである、請求項1に記載の化合物、またはその異性体、結晶体、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物。
【請求項3】
一般式(1)中、Rが、
【化3】
である、請求項1または2に記載の化合物、またはその異性体、結晶体、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物。
【請求項4】
一般式(1)中、RおよびRが、それぞれ独立して、-H、-D、-F、-Cl、-Br、-I、(C1~C3)アルキル、(C2~C4)アルケニル、(C2~C4)アルキニル、(C1~C3)アルコキシ、(C3~C6)シクロアルキル、(C3~C6)シクロアルケニル、(3~8員)ヘテロシクロアルキル、(3~8員)ヘテロシクロアルケニル、(C6~C10)アリールまたは(5~10員)ヘテロアリールであり、ここで、前記(C1~C3)アルキル、前記(C2~C4)アルケニル、前記(C2~C4)アルキニル、前記(C1~C3)アルコキシ、前記(C3~C6)シクロアルキル、前記(C3~C6)シクロアルケニル、前記(3~8員)ヘテロシクロアルキル、前記(3~8員)ヘテロシクロアルケニル、前記(C6~C10)アリールまたは前記(5~10員)ヘテロアリールは、それぞれ独立して、以下の基:-H、-D、-F、-Cl、-Br、-I、-OH、-R、-NR、-C(O)OR、-C(O)NR、-S(O)、-S(O)NR、-P(O)(OR、-P(O)(R、(C1~C3)アルキル、(C2~C4)アルケニル、(C2~C4)アルキニル、(C1~C3)アルコキシ、(C3~C6)シクロアルキル、(C3~C6)シクロアルケニル、(3~8員)ヘテロシクロアルキル、(3~8員)ヘテロシクロアルケニル、(C6~C10)アリールまたは(5~10員)ヘテロアリールのうちの1つまたは複数で任意に置換されていてもよく、
あるいは、RおよびRが、それらに結合している炭素原子と共に、(C3~C15)シクロアルキルまたは(3~15員)ヘテロシクロアルキルを形成し、ここで、前記(C3~C15)シクロアルキルまたは前記(3~15員)ヘテロシクロアルキルは、それぞれ独立して、1つまたは複数のRで任意に置換され得る、請求項1から3のいずれか一項に記載の化合物、またはその異性体、結晶体、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物。
【請求項5】
一般式(1)中、RおよびRが、それぞれ独立して、-H、-F、-Cl、-CH
【化4】
である、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物、またはその異性体、結晶体、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物。
【請求項6】
一般式(1)中、RおよびRがそれらに結合している炭素原子と一緒になって形成する前記(C3~C15)シクロアルキルまたは前記(3~15員)ヘテロシクロアルキルが、
【化5】
であり、前記(C3~C15)シクロアルキルまたは前記(3~15員)ヘテロシクロアルキルが、以下の基:-H、-F、-CH、-CHCH、-OH、
【化6】
、-NH、-NH(CH)、-N(CH、-N(CHCH、-OCH、-OCHCH
【化7】
のうちの1つまたは複数で任意に置換され得る、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物、またはその異性体、結晶体、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物。
【請求項7】
一般式(1)中、RおよびRが、それぞれ独立して、-H、-D、-CH
【化8】
である、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物、またはその異性体、結晶体、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物。
【請求項8】
一般式(1)中、RおよびRが、それぞれ独立して、-Hまたは-CHである、請求項7に記載の化合物、またはその異性体、結晶体、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物。
【請求項9】
一般式(1)中、Rが、-H、-F、-CH、-CHCH、-OH、
【化9】
-NH、-NH(CH)、-N(CH、-N(CHCH、-OCH、-OCHCH
【化10】
である、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物、またはその異性体、結晶体、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物。
【請求項10】
一般式(1)中、RおよびRが、それぞれ独立して、-Hまたは-CHである、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物、またはその異性体、結晶体、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物。
【請求項11】
前記化合物が、以下の構造:
【化11】
のうちの1つを有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の化合物、またはその異性体、結晶体、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物。
【請求項12】
薬学的に許容される賦形剤または担体と、有効成分としての請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物またはその異性体、結晶体、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物と、を含有する医薬組成物。
【請求項13】
ATPプロテインキナーゼに関連する疾患を処置するための医薬の調製における、請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物、またはその異性体、結晶体、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物、または請求項12に記載の医薬組成物、の使用。
【請求項14】
前記疾患が癌であり、前記癌が、血液癌または固形腫瘍である、請求項13に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、その全体が参照により本明細書中で援用される、中国特許出願第202110919812.6号(2021年8月11日に出願)、中国特許出願第202111188963.5号(2021年10月12日に出願)、および中国特許出願第202210918443.3号(2022年8月1日に出願)の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、製剤化学の分野に関し、特にあるクラスの新規ナフチリジン誘導体、その調製方法、およびその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
PIKKファミリーのメンバーである毛細血管拡張性運動失調症およびRad3関連(ATR)タンパク質は、ゲノムの安定性とDNA損傷修復に関与するプロテインキナーゼのクラスである。ATRは、停止した複製フォークやDNA一本鎖切断(SSB)によって活性化される。活性化されたATRは、修復タンパク質または修復因子をリクルートして損傷部分を修復し、有糸分裂プロセス(特に有糸分裂のG2/M期)を遅らせる。これにより、複製フォークが安定化するだけでなく、ゲノムの安定性も確保される。
【0004】
さらに、ほとんどの腫瘍細胞におけるDNA損傷修復システムは異常であり、特定の修復経路(例えばP53やATM変異)は通常欠損しているため、腫瘍細胞は生存のためにATRにさらに依存するようになる。しかし正常細胞では、修復経路がロバストで完全であるため、ATRキナーゼを阻害するだけでは大きな効果は得られない。したがって、ATRの阻害は、正常細胞に対する大きな毒性や副作用を伴うことなく、癌の治療により大きな効果をもたらす可能性がある。
【0005】
細胞周期のS期に起こるDNA損傷修復は、主にATR経路によって達成されることから、ATRが細胞増殖の確保に非常に重要であることが示唆される。臨床腫瘍サンプルの分析により、胃癌、肝臓癌、結腸直腸癌、卵巣癌、膵臓癌など、様々な腫瘍組織でATR発現レベルの上昇が観察されることが示されている。さらに、卵巣癌および膵臓癌の患者では、ATRレベルが高いと、通常、生存率が比較的低くなる。
【0006】
さらに、ATRの阻害は、放射線療法や化学療法薬と組み合わせることで、相乗的に効果を高めることができる。多種多様な化学療法薬としては、代謝拮抗剤(例えば、ゲムシタビン)、DNA架橋剤(例えば、シスプラチンおよびカルボプラチン)、アルキル化剤(例えば、テモゾロミド)、トポイソメラーゼ阻害剤(例えば、イリノテカン)などが挙げられる。腫瘍細胞は、化学療法または放射線療法の影響を受けると、損傷したDNAを修復するためにATRシグナル伝達経路をより活性化する。したがって、放射線療法や化学療法薬を用いてがんを治療する場合、ATRを同時に阻害することで、癌に対する治療効果を大幅に高めることができる。以上の研究から、ATRは効果的な腫瘍治療のための重要なターゲットであることがわかる。
【0007】
現在、アストラゼネカ社のAZD6738、メルク社のVE822、バイエル社のBAY1895344などの化合物が、第I/II相臨床試験中である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上の研究から、ATRは効果的な腫瘍治療のための重要なターゲットである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(概要)
本発明は、一般式(1)の化合物、またはその異性体、結晶体、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物を提供する。
【化1】
(一般式(1)中、
Xは、CHまたはNであり、
は、
【化2】
であり、
およびRは、それぞれ独立して、-H、-D、ハロゲン、(C1~C6)アルキル、(C2~C6)アルケニル、(C2~C6)アルキニル、(C1~C6)アルコキシ、(C3~C10)シクロアルキル、(C3~C10)シクロアルケニル、(3~10員)ヘテロシクロアルキル、(3~10員)ヘテロシクロアルケニル、(C6~C10)アリールまたは(5~10員)ヘテロアリールであり、ここで前記(C1~C6)アルキル、前記(C2~C6)アルケニル、前記(C2~C6)アルキニル、前記(C1~C6)アルコキシ、前記(C3~C10)シクロアルキル、前記(C3~C10)シクロアルケニル、前記(3~10員)ヘテロシクロアルキル、前記(3~10員)ヘテロシクロアルケニル、前記(C6~C10)アリールまたは前記(5~10員)ヘテロアリールは、それぞれ独立して、以下の基:-H、-D、ハロゲン、-OH、-R、-NR、-C(O)OR、-C(O)NR、-S(O)、-S(O)NR、-P(O)(OR、-P(O)(R、(C1~C6)アルキル、(C2~C6)アルケニル、(C2~C6)アルキニル、(C1~C6)アルコキシ、(C3~C10)シクロアルキル、(C3~C10)シクロアルケニル、(3~10員)ヘテロシクロアルキル、(3~10員)ヘテロシクロアルケニル、(C6~C10)アリールまたは(5~10員)ヘテロアリールのうちの1つまたは複数で任意に置換され得るか、
あるいは、RおよびRは、それらに結合している炭素原子と共に、(C3~C15)シクロアルキルまたは(3~15員)ヘテロシクロアルキルを形成し、ここで、前記(C3~C15)シクロアルキルまたは前記(3~15員)ヘテロシクロアルキルは、それぞれ独立して、1つ以上のRで任意に置換され得、
およびRは、それぞれ独立して、-H、-D、(C1~C3)アルキル、(C2~C4)アルケニル、(C2~C4)アルキニル、(C1~C3)アルコキシ、(C1~C3)ハロアルキル、(C3~C10)シクロアルキル、(C3~C10)シクロアルケニル、(3~10員)ヘテロシクロアルキル、(3~10員)ヘテロシクロアルケニル、(C6~C10)アリールまたは(5~10員)ヘテロアリールであるか、
あるいは、RおよびRは、結合しているN原子と共に、(3~10員)ヘテロシクロアルキルを形成し、ここで、前記(3~10員)ヘテロシクロアルキルは、以下の基:-H、-D、ハロゲン、-OH、-NR、-C(O)OR、-C(O)NR、-S(O)、-S(O)NR、-P(O)(OR、-P(O)(R、(C1~C6)アルキル、(C2~C6)アルケニル、(C2~C6)アルキニル、(C1~C6)アルコキシ、(C3~C10)シクロアルキル、(C3~C10)シクロアルケニル、(3~10員)ヘテロシクロアルキル、(3~10員)ヘテロシクロアルケニル、(C6~C10)アリール、または(5~10員)ヘテロアリールのうちの1つまたは複数で任意に置換され得、
各Rは、独立して、-H、-D、ハロゲン、-OH、-NR、-C(O)R、-C(O)OR、-C(O)NR、-(CH-S(O)、-(CH-S(O)NR、-P(O)(OR、-P(O)(R、(C1~C6)アルキル、(C2~C6)アルケニル、(C2~C6)アルキニル、(C1~C6)ハロアルキル、(C1~C6)アルコキシ、(C3~C10)シクロアルキル、(C3~C10)シクロアルケニル、(3~10員)ヘテロシクロアルキル、(3~10員)ヘテロシクロアルケニル、(C6~C10)アリールまたは(5~10員)ヘテロアリールであり、ここで、前記(C1~C6)アルキル、前記(C2~C6)アルケニル、前記(C2~C6)アルキニル、前記(C1~C6)ハロアルキル、前記(C1~C6)アルコキシ、前記(C3~C10)シクロアルキル、前記(C3~C10)シクロアルケニル、前記(3~10員)ヘテロシクロアルキル、前記(3~10員)ヘテロシクロアルケニル、前記(C6~C10)アリール、または前記(5~10員)ヘテロアリールは、それぞれ独立して、以下の基:-H、-D、ハロゲン、-OH、-NR、-C(O)OR、-C(O)NR、-(CH-S(O)、-(CH2)-S(O)NR、-P(O)(OR、-P(O)(R、(C1~C6)アルキル、(C2~C6)アルケニル、(C2~C6)アルキニル、(C1~C6)ハロアルキル、(C1~C6)アルコキシ、(C3~C10)シクロアルキル、(C3~C10)シクロアルケニル、(3~10員)ヘテロシクロアルキル、(3~10員)ヘテロシクロアルケニル、(C6~C10)アリールまたは(5~10員)ヘテロアリールのうちの1つまたは複数で任意に置換されていてもよく、
およびRは、それぞれ独立して、-H、-D、(C1~C3)アルキル、(C2~C4)アルケニル、(C2~C4)アルキニル、(C1~C3)アルコキシ、(C1~C3)ハロアルキル、(C3~C10)シクロアルキル、(C3~C10)シクロアルケニル、(3~10員)ヘテロシクロアルキル、(3~10員)ヘテロシクロアルケニル、(C6~C10)アリールまたは(5~10員)ヘテロアリールであり、
pは、0、1、または2であり、
nは、0、1、2、または3である。)
【0010】
本発明の別の実施形態では、一般式(1)中、Xは、CHである。
【0011】
本発明の別の実施形態では、一般式(1)中、Rは、
【化3】
である。
【0012】
本発明の別の実施形態では、一般式(1)中、RおよびRが、それぞれ独立して、-H、-D、-F、-Cl、-Br、-I、(C1~C3)アルキル、(C2~C4)アルケニル、(C2~C4)アルキニル、(C1~C3)アルコキシ、(C3~C6)シクロアルキル、(C3~C6)シクロアルケニル、(3~8員)ヘテロシクロアルキル、(3~8員)ヘテロシクロアルケニル、(C6~C10)アリールまたは(5~10員)ヘテロアリールであり、ここで、前記(C1~C3)アルキル、前記(C2~C4)アルケニル、前記(C2~C4)アルキニル、前記(C1~C3)アルコキシ、前記(C3~C6)シクロアルキル、前記(C3~C6)シクロアルケニル、前記(3~8員)ヘテロシクロアルキル、前記(3~8員)ヘテロシクロアルケニル、前記(C6~C10)アリールまたは前記(5~10員)ヘテロアリールは、それぞれ独立して、以下の基:-H、-D、-F、-Cl、-Br、-I、-OH、-R、-NR、-C(O)OR、-C(O)NR、-S(O)、-S(O)NR、-P(O)(OR、-P(O)(R、(C1~C3)アルキル、(C2~C4)アルケニル、(C2~C4)アルキニル、(C1~C3)アルコキシ、(C3~C6)シクロアルキル、(C3~C6)シクロアルケニル、(3~8員)ヘテロシクロアルキル、(3~8員)ヘテロシクロアルケニル、(C6~C10)アリールまたは(5~10員)ヘテロアリールのうちの1つまたは複数で任意に置換されていてもよく、あるいは、RおよびRは、それらに結合している炭素原子と共に、(C3~C15)シクロアルキルまたは(3~15員)ヘテロシクロアルキルを形成し、ここで、前記(C3~C15)シクロアルキルまたは前記(3~15員)ヘテロシクロアルキルは、それぞれ独立して、1つまたは複数のRで任意に置換され得る。
【0013】
本発明の別の実施形態では、一般式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、-H、-D、-F、-Cl、-Br、-I、-CH
【化4】
であり、好ましくは、Rは-Hまたは-CHであり、Rは、-H、-F、-Cl、-CH
【化5】
であり、より好ましくは、Rは、-Hまたは-CHであり、Rは、-H、-CH
【化6】
である。
【0014】
本発明の別の実施形態では、一般式(1)中、RおよびRがそれらに結合している炭素原子と一緒になって形成する前記(C3~C15)シクロアルキルまたは前記(3~15員)ヘテロシクロアルキルは、
【化7】
であり、
好ましくは、
【化8】
であり、前記(C3~C15)シクロアルキルまたは前記(3~15員)ヘテロシクロアルキルは、以下の基:-H、-F、-CH、-CHCH、-OH、
【化9】
-NH、-NH(CH)、-N(CH、-N(CHCH、-OCH、-OCHCH
【化10】
好ましくは、-H、-F、-CH、-CHCH、-OH、
【化11】
-NH、-NH(CH)、-N(CH、-N(CHCH、-OCH、-OCHCH
【化12】
のうちの1つまたは複数で任意に置換され得る。
【0015】
本発明の別の実施形態では、一般式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、-H、-D、-CH
【化13】
である。
【0016】
本発明の別の実施形態では、一般式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立して、-Hまたは-CHである。
【0017】
本発明の別の実施形態では、一般式(1)中、Rは、-H、-F、-CH、-CHCH、-OH、
【化14】
-NH、-NH(CH)、-N(CH、-N(CHCH、-OCH、-OCHCH
【化15】
であり、
好ましくは、-H、-F、-CH、-CHCH、-OH、
【化16】
-NH、-NH(CH)、-N(CH、-N(CHCH、-OCH、-OCHCH
【化17】
である。
【0018】
本発明の別の実施形態では、一般式(1)において、RおよびRは、それぞれ独立して、-Hまたは-CHである。
【0019】
本発明の別の特定の実施形態では、一般式(1)の化合物は、以下の構造:
【化18】
のうちの1つを有する。
【0020】
本発明の別の目的は、薬学的に許容される担体、希釈剤および/または賦形剤と、有効成分としての本発明の一般式(1)の化合物またはその異性体、結晶体、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物と、を含有する医薬組成物を提供することである。
【0021】
本発明はさらに、ATPプロテインキナーゼに関連する疾患を処置、調節または予防するための医薬の調製における、本発明の一般式(1)の化合物、またはその異性体、結晶体、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物、または上記医薬組成物の使用を提供することを意図している。
【0022】
本発明はさらに、ATRプロテインキナーゼにより介在される関連疾患を処置、調節または予防するための方法であって、治療有効量の、本発明の一般式(1)の化合物、またはその異性体、結晶体、薬学的に許容される塩、水和物もしくは溶媒和物、または上記医薬組成物を対象に投与すること、を含む方法、を提供することを意図している。
【0023】
本発明の前述の一般的説明および以下の詳細な説明は、どちらも例示的かつ説明的なものであり、特許請求される本発明のさらなる説明を提供することを意図するものと理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(化合物の合成)
本発明の一般式(1)の化合物の調製方法を以下に具体的に記載するが、これらの具体的な方法は本発明を何ら限定しない。
【0025】
上記の一般式(1)の化合物は、本明細書に記載の方法と組み合わせた標準的な合成技術、または周知の技術を使用して、合成され得る。さらに、本明細書に記載される溶媒、温度および他の反応条件は異なっていてもよい。化合物の合成のための出発物質は、合成的にまたは商業的に入手することができる。本明細書に記載の化合物および異なる置換基を有する他の関連化合物は、March,ADVANCED ORGANIC CHEMISTRY,4th Ed.,(Wiley 1992);CareyおよびSundberg,ADVANCED ORGANICCHEMISTRY,4th Ed.,Vols.AおよびB(Plenum 2000、2001)、ならびにGreenおよびWuts、PROTECTIVE GROUPS IN ORGANICSYNTHESIS,3rd Ed.,(Wiley 1999)に見出される方法を含む、周知の技術および出発物質を用いて合成され得る。化合物を調製するための一般的な方法は、本明細書で提供される分子式に様々な基を導入するための適切な試薬および条件を使用することによって、変更され得る。
【0026】
1つの態様において、本明細書に記載された化合物は、当該技術分野で周知の方法に従って調製される。ただし、反応物、溶媒、塩基、使用する化合物の量、反応温度、反応に要する時間などの方法の条件は、以下の記載に限定されない。また、本発明の化合物は、本明細書に記載のまたは当技術分野で公知の種々の合成方法を任意に組み合わせて簡便に調製され得、このような組み合わせは、本発明が関連する当業者によって容易に実施され得る。1つの態様において、本発明は、一般式(1)の化合物を調製する方法をさらに提供し、ここで、一般式(1)の化合物は、以下の方法A、方法B、または方法Cを用いて調製され得る。
【0027】
方法A
【化19】
【0028】
一般式(1)の化合物は、方法Aに従って調製され得、式中、R、RおよびRは上記で定義した通りである。
【0029】
方法Aは以下のステップを含む:まず、化合物A1をアルカリ性条件下で反応させて化合物A2を生成し、さらに化合物A2を金属触媒カップリング反応に付して化合物A3を生成し、化合物A3を酸性条件下で脱保護してA4を生成し、A4をシアノ化試薬と反応させてA5を生成し、A5を強アルカリおよびハロゲン化試薬と反応させてA6を生成し、A6をカップリング反応に付して目的化合物A7を生成する。
【0030】
方法B
【化20】
【0031】
一般式(1)の化合物は、方法Bに従って調製され得、式中、nおよびmは0、1、2または3を表し、PGはN-保護基を表し、RおよびRは上記で定義した通りである。
【0032】
方法Bは以下のステップを含む:まず、化合物A5を強アルカリの作用下でフラグメントB1と反応させてB2を生成し、B2をカップリング反応に付してB3を生成し、B3を適切な条件下で脱保護に付してB4を生成し、さらにB4を反応させて目的化合物B6を得る。
【0033】
方法C
【化21】
【0034】
一般式(1)の化合物は方法Cに従って調製され得、式中、nおよびmは0、1、2または3を表し;RおよびRは上記で定義した通りである。
【0035】
方法Cは以下のステップを含む:まず、化合物A5とフラグメントC1とを強アルカリの作用下で反応させてC2を生成し、C2を酸による脱保護に供してC3を生成し、C3をカップリング反応に供してC4を生成し、C4を適切な条件下で反応させて目的化合物C5を得る。
【0036】
化合物のさらなる形態
本明細書において「薬学的に許容される」は、担体や希釈剤など、化合物の生物学的活性または特性の消失を引き起こさない、比較的無毒の物質を指す。例えば、個体に、ある物質を投与する場合、その物質は、望ましくない生物学的作用、またはその含有成分のいずれかとの有害な相互作用を、引き起こさない。
【0037】
用語「薬学的に許容される塩」は、投与を受ける生物体に著しい刺激を与えず、あるいは化合物の生物学的活性および特性を排除しない化合物の既存の形態を指す。ある特定の態様において、前記薬学的に許容される塩は、当該一般式(1)の化合物を、酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、フッ化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、炭酸などの無機酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、トリフルオロ酢酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、ピクリン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、およびp-トルエンスルホン酸などの有機酸、アスパラギン酸、およびグルタミン酸などの酸性アミノ酸、と反応させることによって得られる。
【0038】
薬学的に許容可能な塩は、溶媒付加形態または結晶形態、特に溶媒和物または多形体を含むことを理解されたい。溶媒和物は、化学量論的または非化学量論的量の溶媒を含み、水およびエタノールなどの薬学的に許容可能な溶媒における結晶化の際に選択的に形成される。溶媒が水の場合は水和物が、溶媒がエタノールの場合はアルコラートが形成される。当該一般式(1)の化合物の溶媒和物は、本明細書に記載の方法に従って好都合に調製または形成される。例えば、当該一般式(1)の化合物の水和物は、水/有機溶媒の混合溶媒における再結晶によって好都合に調製され、使用される有機溶媒は、テトラヒドロフラン、アセトン、エタノールまたはメタノールを含むが、これらに限定されない。さらに、本明細書に記載の化合物は、非溶媒和形態または溶媒和形態のいずれかで存在し得る。一般に、溶媒和形態は、本明細書で提供される化合物および方法の目的のために、非溶媒和形態と同等であると考えられる。
【0039】
他の特定の例では、一般式(1)の化合物は、非晶質、粉砕、およびナノ粒子形態を含むが、これらに限定されない異なる形態で調製される。さらに、当該一般式(1)の化合物は、結晶形態を含むが、多形体であってもよい。多形体は、化合物の同じ元素の異なる格子配置を含む。前記多形体は、一般に、異なるX線回折スペクトル、赤外スペクトル、融点、密度、硬度、結晶形態、光学的特性、電気的特性、安定性、および溶解性を有する。再結晶溶媒、結晶化速度、および保存温度などの様々な要因により、単一の優勢な結晶体になる場合がある。
【0040】
別の態様では、一般式(1)の化合物は、キラル中心および/または軸不斉を有し得、よって、ラセミ体、ラセミ混合物、単一エナンチオマー、ジアステレオマー化合物、単一ジアステレオマーおよびシス-トランス異性体の形態で存在し得る。各キラル中心または軸不斉は、独立して2つの光学異性体を生成し、すべての可能な光学異性体、ジアステレオマー混合物および純粋または部分的に純粋な化合物が、本発明の範囲に含まれる。本発明は、これらの化合物のすべてのそのような異性体を含むことを意味する。
【0041】
本発明の化合物は、このような化合物を構成する原子の1つ以上において、不自然な割合の原子同位体を含んでいてもよい。例えば、前記化合物は、トリチウム(H)、ヨウ素-125(125I)およびC-14(14C)などの放射性同位体で標識され得る。他の例として、重水素を用いて水素原子を置換して重水素化化合物を形成することができる。重水素と炭素とによって形成される結合は、一般的な水素と炭素とによって形成される結合よりも強い。重水素化されていない医薬と比較して、一般に、重水素化医薬は、毒性作用および副作用の低減、薬学的安定性の向上、有効性の増強、薬学的in vivo半減期の延長などの利点を有している。本発明の化合物のすべての同位体バリエーションは、放射性であるか否かにかかわらず、本発明の範囲に包含される。
【0042】
用語の説明
特に明記しない限り、本明細書および特許請求の範囲において使用される用語を含む、本願において使用される用語は、以下のように定義される。本明細書および添付の特許請求の範囲において、単数形の「1つの(a)」および「1つの(an)」は文脈において特に明記しない限り、複数の意味を含むことに留意されたい。特に明記しない限り、質量分析法、核磁気共鳴分光法、HPLC、タンパク質化学、生化学、組換えDNA技術および薬理学のような従来の方法が用いられる。本明細書において使用される「または」または「および」は、特に明記しない限り、「および/または」を意味する。
【0043】
特に明記しない限り、「アルキル」は、1~6個の炭素原子を有する直鎖状および分岐状の基を含む飽和脂肪族炭化水素基を意味する。メチル、エチル、プロピル、2-プロピル、n-ブチル、イソブチルまたはtert-ブチルなどの、1~4個の炭素原子を有する低級アルキル基が好ましい。本明細書で使用される場合、「アルキル」は、非置換および置換アルキル、特に1つ以上のハロゲン置換アルキルを含む。好ましいアルキルは、CH、CHCH、CF、CHF、CFCH、CF(CH)CH、Pr、Pr、Bu、BuまたはBuから選択される。
【0044】
特に明記しない限り、「アルキレン」は、2価の上記定義のアルキルを指す。アルキレンの例としては、メチレンおよびエチレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
特に明記しない限り、「アルケニル」は、炭素-炭素二重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を指し、1~14個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状の基を含む。ビニル、1-プロペニル、1-ブテニル、または2-メチルプロペニルなどの1~4個の炭素原子を含む低級アルケニル基が好ましい。
【0046】
特に明記しない限り、「アルキニル」は、炭素-炭素三重結合を含む不飽和脂肪族炭化水素基を指し、1~14個の炭素原子を含む直鎖状および分岐状の基を含む。エチニル、1-プロピニルまたは1-ブチニルなどの1~4個の炭素原子を含む低級アルキニル基が好ましい。
【0047】
特に明記しない限り、「シクロアルキル」は、非芳香族炭化水素環系(単環式、二環式、または多環式)を指し、部分的に不飽和のシクロアルキルは、炭素環が少なくとも1つの二重結合を含む場合、「シクロアルケニル」、または炭素環が少なくとも1つの三重結合を含む場合、「シクロアルキニル」と呼ばれることがある。シクロアルキルは、単環式基または多環式基、およびスピロ環(例えば、2、3、または4個の縮合環を有する)を含み得る。いくつかの実施形態において、シクロアルキルは単環式である。いくつかの実施形態において、シクロアルキルは、単環式または二環式である。シクロアルキルの環炭素原子は、任意に、酸化されてオキソ基またはスルフィド基を形成し得る。シクロアルキルは、シクロアルキレンをさらに含む。いくつかの実施形態において、シクロアルキルは、0、1または2個の二重結合を含む。いくつかの実施形態において、シクロアルキルは、1または2個の二重結合を含む(部分不飽和シクロアルキル)。いくつかの実施形態において、シクロアルキルは、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、およびヘテロシクロアルキルと縮合していてもよい。いくつかの実施形態において、シクロアルキルは、アリール、シクロアルキル、およびヘテロシクロアルキルと縮合していてもよい。いくつかの実施形態において、シクロアルキルは、アリールおよびヘテロシクロアルキルと縮合していてもよい。いくつかの実施形態において、シクロアルキルは、アリールおよびシクロアルキルと縮合していてもよい。シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサジエニル、シクロヘプタトリエニル、ノルカンファニル、ノルピナニル、ノルカルニル、ビシクロ[1.1.1]ペンチル、ビシクロ[2.1.1]ヘキシルなどが挙げられる。
【0048】
特に明記しない限り、「アルコキシ」は、エーテル酸素原子を介して分子の残りの部分に結合するアルキル基を指す。代表的なアルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシおよびtert-ブトキシなどの1~6個の炭素原子を有するものである。本明細書で使用される場合、「アルコキシ」は、非置換および置換アルコキシ、特に1つ以上のハロゲンで置換されたアルコキシを含む。好ましいアルコキシは、OCH、OCF、CHFO、CFCHO、i-PrO、n-PrO、i-BuO、n-BuOまたはt-BuOから選択される。
【0049】
特に明記しない限り、「アリール」は、単環式または多環式の芳香族炭化水素基を指し、例えば、単環式アリール環は、1つ以上の炭素環式芳香族基と縮合していてもよい。アリールの例としては、フェニル、ナフチル、およびフェナントリルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
特に明記しない限り、「アリールオキシ」は、エーテル酸素原子を介して分子の残りの部分に結合するアリール基を指す。アリールオキシの例としては、フェノキシおよびナフトキシが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
特に明記しない限り、「アリーレン」は、2価の上記定義のアリールを指す。アリーレンの例としては、フェニレン、ナフチレン、フェナントリレンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
特に明記しない限り、「ヘテロアリール」は、1つ以上のヘテロ原子(O、S、またはN)を含む芳香族基を指し、「ヘテロアリール」は単環式または多環式である。例えば、単環式ヘテロアリール環は、1つ以上の炭素環式芳香族基または他の単環式ヘテロシクロアルキル基と縮合する。ヘテロアリールの例としては、ピリジニル、ピリダジニル、イミダゾリル、ピリミジニル、ピラゾリル、トリアゾリル、ピラジニル、キノリニル、イソキノリニル、フラニル、チエニル、イソオキサゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソチアゾリル、ピロリル、インドリル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾピリジニル、ピロロピリミジニル、1H-ピロロ[3,2-b]ピリジニル、1H-ピロロ[2,3-c]ピリジニル、1H-ピロロ[3,2-c]ピリジニル、1H-ピロロ[2,3-b]ピリジニル、
【化22】
が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
特に明記しない限り、「ヘテロシクロアルキル」は、ホウ素、リン、窒素、硫黄、酸素、およびリンから独立して選択される少なくとも1つのヘテロ原子環員を有する、環構造の一部として任意に1つ以上のアルケニレンを含み得る非芳香族環または環系を指す。部分不飽和ヘテロシクロアルキルは、ヘテロシクロアルキルが少なくとも1つの二重結合を含む場合には「ヘテロシクロアルケニル」を指すことがあり、ヘテロシクロアルキルが少なくとも1つの三重結合を含む場合には「ヘテロシクロアルキニル」を指すことがある。ヘテロシクロアルキルには、単環式、二環式、スピロ環式、または多環式系(例えば、2つの縮合環または架橋環を有する)が含まれ得る。いくつかの実施形態において、ヘテロシクロアルキルは、窒素、硫黄、および酸素から独立して選択される1、2、または3個のヘテロ原子を有する単環式基である。ヘテロシクロアルキルの環炭素原子およびヘテロ原子は、任意に酸化されて、オキソ基もしくはスルフィド基または他の酸化結合(例えば、C(O)、S(O)、C(S)もしくはS(O)、N-オキシドなど)を形成してもよく、または窒素原子は四級化されていてもよい。ヘテロシクロアルキルは、環炭素原子または環ヘテロ原子を介して結合していてもよい。いくつかの実施形態において、ヘテロシクロアルキルは、0~3個の二重結合を含む。いくつかの実施形態において、ヘテロシクロアルキルは、0~2個の二重結合を含む。ヘテロシクロアルキルの定義には、ヘテロシクロアルキル環に縮合した(すなわち、結合を共有する)1つ以上の芳香族環を有する部分、例えば、ピペリジン、モルホリン、アゼピン、チエニルなどのベンゾ誘導体がさらに含まれる。縮合芳香環を含むヘテロシクロアルキルは、縮合芳香環の環原子を含む任意の環原子を介して結合していてもよい。ヘテロシクロアルキルの例としては、アゼチジニル、アゼピニル、ジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロフラニル、ジヒドロピラニル、N-モルホリニル、3-オキサ-9-アザスピロ[5.5]ウンデシル、1-オキサ-8-アザスピロ[4.5]デシル、ピペリジニル、ピペラジニル、オキソピペラジニル、ピラニル、ピロリジニル、キニニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロピラニル、1,2,3,4-テトラヒドロキノリニル、トロパニル、4,5,6,7-テトラヒドロチアゾロ[5,4-c]ピリジニル、4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン、N-メチルピペリジニル、テトラヒドロイミダゾリル、ピラゾリジニル、ブチロラクタム、バレロラクタム、イミダゾリジノニル、ヒダントイニル、ジオキソラニル、フタルイミジル、ピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン、1,4-ジオキサニル、モルホリニル、チオモルホリニル、チオモルホリニル-S-オキシド、チオモルホリニル-S,S-オキシド、ピペラジニル、ピラニル、ピリドニル、3-ピロリニル、チオピラニル、ピロニル、テトラヒドロチエニル、2-アザスピロ[3.3]ヘプタニル、インドリニル、
【化23】
が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
特に明記しない限り、「ハロゲン」(またはハロ)は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を指す。基名の前の用語「ハロ」(または「ハロゲン化」)は、その基が部分的または完全にハロゲン化されていること、すなわち、F、Cl、BrまたはI、好ましくはFまたはClによって任意の組み合わせで置換されていることを示す。
【0055】
「任意の」または「任意に」は、その後に記載される事象または状況が生じる可能性があるが、必ずしも生じないことを意味し、その記載には、その事象または状況が生じる例およびその事象または状況が生じない例が含まれる。
【0056】
置換基「-O-CH-O-」は、置換基中の2個の酸素原子が、ヘテロシクロアルキル、アリールまたはヘテロアリール中の2個の隣接する炭素原子に結合していることを意味し、例えば、以下のとおりである。
【化24】
【0057】
リンカー基の番号が-(CH-のように0である場合、そのリンカー基が単結合であることを意味する。
【0058】
変数の1つが化学結合から選択される場合、この変数によって連結される2つの基が直接連結されることを意味する。例えば、X-L-YのLが化学結合を表す場合、実際にはX-Yの構造であることを意味する。
【0059】
用語「員環」は、任意の環状構造を含む。用語「員」は、環を形成する主鎖原子の数を指すことが意図される。例えば、シクロヘキシル、ピリジニル、ピラニルおよびチオピラニルは、6員環であり、シクロペンチル、ピロリル、フラニルおよびチエニルは、5員環である。
【0060】
用語「部分」は、分子の特定の部分または官能基を指す。化学部分は、一般に、分子に含まれる、または分子に結合する化学物質を指すとみなされる。
【0061】
特に記載のない限り、立体中心の絶対配置は、くさび形実線結合
【化25】
およびくさび形破線結合
【化26】
により表され、立体中心の相対配置は、直線実線結合
【化27】
および直線破線結合
【化28】
により表される。
【0062】
波線
【化29】
は、くさび形実線結合
【化30】
またはくさび形破線結合
【化31】
を表し、あるいは波線
【化32】
は直線実線結合
【化33】
または直線破線結合
【化34】
を表す。
【0063】
特に記載のない限り、単結合または二重結合は、
【化35】
により表される。
【0064】
具体的な医薬品・医療用語
本明細書で使用される「許容可能な」という用語は、製剤成分または活性成分が、一般的な治療対象の健康に過度にかつ有害な作用を及ぼさないことを意味する。
【0065】
本明細書で使用される用語「処置」、「処置経過」、および「治療」は、疾患の症状または状態を緩和、阻害、または改善すること、合併症の発生を阻害すること、根底にあるメタボリック症候群を改善または予防すること、疾患または状態の発生を阻害すること(例えば、疾患または状態の進行を制御すること)、疾患または症状を緩和すること、疾患または症状を退行させること、および疾患または症状によって引き起こされる合併症を緩和すること、または疾患もしくは症状によって引き起こされる兆候を予防もしくは処置することを含む。本明細書で使用される場合、化合物または医薬組成物は、投与されると、疾患、症状、または状態を緩和することができ、特に、疾患の重症度を改善させる、発症を遅らせる、進行を遅らせる、または持続期間を短縮することができる。固定投与もしくは一時投与、または継続投与もしくは間欠投与は、投与に起因するか、または投与に関連し得る。
【0066】
「有効成分」とは、一般式(1)の化合物、および一般式(1)の化合物の薬学的に許容可能な無機塩または有機塩を指す。本発明の化合物は、1つ以上の不斉中心(キラル中心または軸不斉)を含んでいてもよく、したがって、ラセミ体、ラセミ混合物、単一エナンチオマー、ジアステレオマー化合物、および単一ジアステレオマーの形態で存在し得る。存在し得る不斉中心は、分子上の様々な置換基の特性に依存する。このような不斉中心はそれぞれ独立して2つの光学異性体を生成し、すべての可能な光学異性体、ジアステレオマー混合物および純粋または部分的に純粋な化合物が、本発明の範囲に含まれる。本発明は、これらの化合物のすべてのそのような異性体形態を含むことを意味する。
【0067】
本明細書では、「化合物」、「組成物」、「薬剤」または「医薬または医薬品」などの用語は、互換的に用いられ、いずれも、個体(ヒトまたは動物)に投与されると、局所および/または全身作用により所望の薬理的および/または生理学的反応を誘発することができる化合物または組成物を指す。
【0068】
「投与される、投与する、または投与」という用語は、本明細書では化合物もしくは組成物の直接投与、または活性化合物のプロドラッグ、誘導体、アナログ等の投与を指す。
【0069】
本発明の広い範囲を定義する数値範囲およびパラメータは近似値であるが、特定の実施形態に示される関連する値は、可能な限り正確に本明細書に示されている。しかし、どのような数値も本質的に、ある種の試験方法から必然的に生じる標準偏差を含んでいる。ここで、「約」とは、一般に、実際の値が特定の値または範囲±10%、5%、1%、または0.5%以内であることを意味する。あるいは、「約」という用語は、当業者が考えるように、実際の数値が平均値の許容できる標準誤差の範囲内にあることを示す。実験例を除きまたは特に明記されない限り、本明細書で使用されるすべての範囲、量、値および百分率(例えば、材料の量、時間の長さ、温度、運転条件、量の割合などを記載するために)は、用語「約」によって修正されることが理解される。したがって、特に明記されない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲に記載された数値パラメータは、すべて所望により変化し得る近似値である。少なくとも、これらの数値パラメータは、示された有効数字または従来の丸め規則を使用して得られた数値と解釈されるべきである。
【0070】
本明細書で使用される科学技術用語は、本明細書で別途定義されない限り、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。さらに、本明細書で使用される単数形の名詞は、文脈と矛盾しない限り、それらの複数形を包含し、使用される複数形の名詞は、それらの単数形も包含する。
【0071】
治療用途
本発明は、一般式(1)の化合物または本発明の医薬組成物を用いて、ATRプロテインキナーゼが関与する状態(例えば、癌)を含む(これに限定されない)疾患を処置するための方法を提供する。
【0072】
いくつかの実施形態において、癌を処置する方法が提供され、該方法は、有効量の、構造一般式(1)の化合物を含む任意の前述の医薬組成物を、必要とする個体に投与するステップを含む。いくつかの実施形態において、一般式(1)の化合物は、追加の抗癌剤と組み合わせて使用され得る。いくつかの実施形態において、一般式(1)の化合物は、ゲムシタビンと組み合わせて使用され得る。いくつかの実施形態において、前記癌は、ATRプロテインキナーゼにより介在される。他の実施形態において、前記癌としては、白血病、乳癌、肺癌、膵臓癌、結腸癌、膀胱癌、脳腫瘍、尿路上皮癌、前立腺癌、肝臓癌、卵巣癌、頭頸部癌、胃癌、中皮腫またはすべての癌転移を含む、血液癌および固形腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
投与経路
本発明の化合物およびその薬学的に許容可能な塩は、安全かつ有効な量の、本発明の化合物またはその薬学的に許容可能な塩と、薬学的に許容可能な賦形剤または担体とを含む種々の製剤に調製することができ、ここで「安全かつ有効な量」とは、重篤な有害作用を引き起こすことなく状態を有意に改善するのに充分な化合物の量を意味している。化合物の安全かつ有効な量は、処置される対象の年齢、状態、処置の経過、および他の特定の状態に従って決定される。
【0074】
「薬学的に許容可能な賦形剤または担体」とは、ヒトでの使用に適し、かつ、充分な純度を有し、毒性が充分に低くくなければならない、1つ以上の適合性のある固体または液体の充填剤またはゲル物質を指す。本明細書において「適合性」とは、組成物の成分が、化合物の医薬的有効性を著しく低下させることなく、本発明の化合物と相互混合することが可能であることを意味する。薬学的に許容可能な賦形剤または担体の例としては、セルロースおよびその誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースナトリウムまたは酢酸セルロース)、ゼラチン、タルク、固体滑沢剤(例えば、ステアリン酸またはステアリン酸マグネシウム)、硫酸カルシウム、植物油(例えば、大豆油、ゴマ油、落花生油、オリーブ油など)、ポリオール(例えば、プロピレングリコール、グリセロール、マンニトール、ソルビトールなど)、乳化剤(Tween(登録商標)など)、湿潤剤(ラウリル硫酸ナトリウムなど)、着色剤、香料、安定剤、酸化防止剤、防腐剤、パイロジェンフリー水、などが挙げられる。
【0075】
本発明の化合物を投与する場合、経口、直腸、非経口(静脈内、筋肉内、もしくは皮下)または局所的に投与することができる。
【0076】
経口投与のための固形剤形には、カプセル、錠剤、丸剤、散剤(pulvises)および顆粒が含まれる。これらの固形剤形において、前記活性化合物は、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムなどの少なくとも1つの従来の不活性賦形剤(または担体)、または以下の成分:(a)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよびケイ酸などの充填剤または増量剤;(b)ヒドロキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロースおよびアカシアなどの結合剤;(c)グリセロールなどの保湿剤;(d)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモデンプンもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、ある種の複合シリケート、および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤;(e)パラフィンなどの溶液遅延剤;(f)第四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤;(g)セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤;(h)カオリンなどの吸着剤;および(i)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコールおよびラウリル硫酸ナトリウムなどの滑沢剤、またはこれらの混合物と混合される。カプセル、錠剤および丸剤の場合、前記剤形は、緩衝剤を更に含んでもよい。
【0077】
錠剤、糖衣錠、カプセル、丸剤および顆粒などの固体剤形は、腸溶性コーティングおよび当技術分野で周知の他の材料などのコーティングおよびシェルを用いて、調製され得る。これらは不透明化剤を含んでもよく、そのような組成物中の活性化合物または化合物は、消化管の特定の部分で遅延して放出され得る。使用され得る埋め込み成分の例としては、高分子物質およびワックス系物質が挙げられる。必要に応じて、前記活性化合物は、1つ以上の上記賦形剤と共にマイクロカプセルを形成し得る。
【0078】
経口投与のための液体剤形には、薬学的に許容可能なエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ、およびエリキシルなどが含まれる。活性化合物に加えて、前記液体剤形は、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エタノール、イソプロパノール、炭酸エチル、酢酸エチル、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、ジメチルホルムアミド、および油、特に綿実油、落花生油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油およびゴマ油、またはこれらの物質の混合物などの、当該技術分野で一般的に使用される不活性希釈剤を含み得る。
【0079】
このような不活性希釈剤に加えて、前記組成物は更に、湿潤剤、乳化剤、懸濁剤、甘味剤、香味剤、および香料などのアジュバントを含み得る。
【0080】
活性化合物に加えて、懸濁液は、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールおよびソルビタンエステル、微結晶セルロース、アルミニウムメチラート、ならびに寒天、またはこれらの物質の混合物などの、懸濁剤を含み得る。
【0081】
非経口注射用組成物は、生理学的に許容可能な滅菌水溶液または非水性溶液、分散液、懸濁液またはエマルジョン、および滅菌注射用溶液または分散液に再構成するための滅菌粉末を含み得る。適切な水性および非水性担体、希釈剤、溶媒または賦形剤には、水、エタノール、ポリオール、およびそれらの適切な混合物が含まれる。
【0082】
本発明の化合物を局所投与するための剤形としては、軟膏、散剤、パッチ、スプレー、および吸入剤などが挙げられる。前記有効成分は、生理学的に許容可能な担体、および必要に応じて要求され得る任意の保存剤、緩衝剤または噴霧剤と無菌条件下で混合される。
【0083】
本発明の化合物は、単独で、または他の薬学的に許容可能な化合物と組み合わせて投与され得る。本発明の医薬組成物が使用される場合、処置対象となる哺乳動物(ヒトなど)に対して、安全かつ有効な量の本発明の化合物が投与され、ここで、投与量は、薬学的に有効な用量である。60kgのヒトの場合、1日の投与量は、通常1~2000mg、好ましくは50~1000mgである。具体的な投与量の決定において、投与経路、患者の健康状態等の要因も考慮されるが、これらは当業者には周知である。
【0084】
本発明で述べた特徴、または実施形態において上述した特徴は、任意に組み合わせることができる。本明細書に開示される全ての特徴は、任意の組成物の形態で使用することができ、本明細書に開示される様々な特徴は、同一、同等または類似の目的を提供する任意の代替の特徴で置き換えることができる。従って、特に指定しない限り、本明細書で開示された特徴は、同等または類似の特徴の一般的な例に過ぎない。
【0085】
(詳細な説明)
上記の化合物、方法および医薬組成物の様々な特定の態様、特徴および利点は、以下のように詳細に記載され、これにより本発明の内容が非常に明確になるであろう。以下の詳細な説明および実施例は、参考のために特定の実施例を記述していることを理解されたい。本発明の説明を読んだ後、当業者は、本発明に対して様々な変更または修正を加えることができ、そのような均等物も、本明細書で定義される本出願の範囲内に入る。
【0086】
すべての実施例において、H-NMRスペクトルをVarian Mercury400核磁気共鳴装置で記録し、化学シフトをδ(ppm)で表す。分離用シリカゲルは特に指定がなければ200~300メッシュのシリカゲルを使用し、溶離液の比率は体積比である。
【0087】
本発明では、以下の略号を使用する:Arはアルゴン;AcClは塩化アセチル;AcOHは氷酢酸;アセトンはアセトン;CDClは重水素化クロロホルム;conc HClは濃塩酸;DIPEAはジイソプロピルエチルアミン;DCEは1,2-ジクロロエタン;DCMはジクロロメタン;ジオキサンは1,4-ジオキサン;DMFはN,N-ジメチルホルムアミド;DMSOはジメチルスルホキシド;EAまたはEtOAcは酢酸エチル;hは時間;KPOは無水リン酸カリウム;KOHは水酸化カリウム;KCOは無水炭酸カリウム;LC-MSは液体クロマトグラフィー質量分析;MeIはヨードメタン;MeOHは無水メタノール;mLはミリリットル;minは分;MSは質量分析;NaHは水素化ナトリウム;NaSOは硫酸ナトリウム;NaBHは水素化ホウ素ナトリウム;NaBH(OAc)はトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム;NH(CHはジメチルアミン;NMRは核磁気共鳴;Pd(dba)はトリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0);Pd(dtbpf)Clはジクロロ[1,1’-ビス(ジ-tert-ブチルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II);PEは石油エーテル;THFはテトラヒドロフラン;TFAはトリフルオロ酢酸;TfOHはトリフルオロメタンスルホン酸;TfOはトリフルオロメタンスルホン酸無水物;Tolはメチルベンゼン;prep-HPLCは分取高速液体クロマトグラフィー;キサントホス(Xantphos)は4,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)-9,9-ジメチルキサンテン、を表す。
【実施例
【0088】
実施例1:(R)-2-(2-(3-メチルモルホリノ)-8-(1H-ピラゾール-5-イル)-1,7-ナフチリジン-4-イル)アセトニトリル(化合物1)の合成
【化36】
【化37】
【0089】
ステップ1:1-2の合成
250mLの一口フラスコに、1-1(2.4g、8.58mmol)、DCM(60mL)およびDIPEA(2.77g、21.47mmol)を加えた。系内をArでパージした後、N-フェニルビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(4.6g、12.87mmol)を加え、混合溶液を室温で5時間撹拌した。LC-MSにより反応の完了が確認された後、水(50mL)を加えて混合溶液をクエンチし、得られた混合物を撹拌し、液体分離を行った。水相をDCM(50mL)で抽出した。有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液(50mL)で洗浄し、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(EA:PE=10:0→10:1→5:1)で精製し、黄色がかった油状生成物(2.7g、収率:77.1%)を得た。ESI-MS m/z: 412.1 [M+H]+
【0090】
ステップ2:1-3の合成
250mLの一口フラスコに、1-2(2.7g、6.55mmol)、KPO(2.78g、13.1mmol)、(E)-2-(2-エトキシビニル)-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(1.29g、6.55mmol)、Diox(60mL)、および水(12mL)を加えた。系内をArでパージした後、Pd(dtbpf)Cl(427mg、0.655mmol)を加えた。混合溶液をアルゴンでパージし、80℃に加熱し、2.5時間撹拌した。LC-MSにより反応の完了が確認された後、混合溶液を濾過した。EA(100mL)および水(50mL)を濾液に加え、得られた混合物を撹拌し、液体分離を行った。有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液(50mL)で洗浄し、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(EA:PE=10:0→10:1→5:1)で精製し、黄色がかった油状の生成物(700mg、収率:32.0%)を得た。ESI-MS m/z:334.2 [M+H]+
【0091】
ステップ3:1-4の合成
100mLの一口フラスコに、1-3(700mg、2.1mmol)、THF(30mL)および濃塩酸(3mL)を加えた。混合溶液をアルゴンでパージし、室温で2時間撹拌した。LC-MSにより反応の完了が確認された後、混合溶液にDCM(30mL)を加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液でpHを7~8に調整し、得られた混合物を撹拌し、液体分離を行った。次いで、水相をDCM(20mL)で抽出した。有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液(20mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、濃縮して、褐黄色の油状生成物(730mg、収率:>100%)を得た。ESI-MS m/z:306.1/324.1 [M+H]+
【0092】
ステップ4:1-5の合成
100mLの一口フラスコに、1-4(730mg、粗生成物、2.1mmol)、エチル(E)-N-((メチルスルホニル)オキシ)アセトイミダート(1.42g、6.0mmol)、およびDCM(30mL)を加えた。系内をアルゴンでパージした後、トリフルオロメタンスルホン酸(340mg、2.26mmol)を加え、混合溶液を室温で20時間撹拌した。LC-MSにより反応の完了が確認された後、混合溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えてpHを7~8に調整し、得られた混合溶液を撹拌し、液体分離を行った。次いで、水相をDCM(20mL)で抽出した。有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液(20mL)で洗浄し、濃縮した。残渣をフラッシュ(Flash)によって精製し、褐黄色の固体生成物を得た(400mg、収率:62.9%)。ESI-MS m/z:303.1 [M+H]+
【0093】
ステップ5:化合物1の合成:
100mLの一口フラスコに、1-5(50mg、0.153mmol)、KPO(80mg、0.377mmol)、ピラゾール-3-ボロン酸(30mg、0.25mmol)、Diox(5mL)および水(1mL)を加えた。系内をArでパージした後、Pd(dtbpf)Cl(13mg、0.02mmol)を加えた。混合溶液をアルゴンでパージし、80℃に加熱し、1.5時間撹拌した。LC-MSで反応の完了が確認された後、混合溶液を濾過し、濃縮した。残渣をフラッシュによって精製し、黄色がかった固体生成物を得た(10mg、収率:19.5%)。ESI-MS m/z:335.1 [M+H]+
【0094】
1H NMR (400 MHz, cdcl3) δ 8.78 (d, J = 2.6 Hz, 1H), 8.39 (d, J = 5.5 Hz, 1H), 7.86 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 7.38 (d, J= 5.5 Hz, 1H), 7.34 (s, 1H), 6.52 (dd, J = 2.6, 1.7 Hz, 1H), 4.44 (s, 1H), 4.14 - 4.05 (m, 4H), 3.86 (d, J = 11.5 Hz, 1H), 3.76 (d, J = 3.1 Hz, 1H), 3.63 (td, J = 12.0, 3.2 Hz, 1H), 3.40 (td, J = 12.7, 3.8 Hz, 1H), 1.37 (d, J = 6.8 Hz, 3H)。
【0095】
実施例2および実施例3:2-(2-((R)-3-メチルモルホリノ)-8-(1H-ピラゾール-5-イル)-1,7-ナフチリジン-4-イル)プロピオニトリル(化合物2)の合成および(R)-2-メチル-2-(2-(3-メチルモルホリノ)-8-(1H-ピラゾール-5-イル)-1,7-ナフチリジン-4-イル)プロピオニトリル(化合物3)の合成
【化38】
【化39】
【0096】
ステップ1:2-1の合成
100mLの一口フラスコに、1-5(100mg、0.331mmol)およびDMF(10mL)を加えた。系内をアルゴンでパージした後、混合溶液を氷浴中で0~5℃に冷却し、NaH(26mg、60%、0.662mmol)を加えた。混合溶液を室温で15分間撹拌した後、MeI(70mg、0.497mmol)を加えた。混合溶液をアルゴンでパージし、室温で、2時間撹拌した。LC-MSで反応の完了が確認された後、混合溶液を、氷と水との混合溶液10mLに注いだ。EA(20mL)を加え、得られた混合物を撹拌し、液体分離を行った。次いで、水相をEA(10mL)で抽出した。有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液(10mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、濃縮して、褐色の油状生成物(127mg、収率:>100%)を得た。ESI-MS m/z:316.2 [M+H]+および330.2 [M+H]+
【0097】
ステップ2:化合物2および化合物3の合成
100mLの一口フラスコに、2-1(127mg、粗生成物、0.331mmol)、KPO(160mg、0.754mmol)、ピラゾール-3-ボロン酸(56mg、0.497mmol)、Diox(10mL)および水(2mL)を加えた。系をArでパージした後、Pd(dtbpf)Cl(25mg、0.038mmol)を加えた。混合溶液をアルゴンでパージし、80℃に加熱し、1.5時間撹拌した。LC-MSにより反応の完了が確認された後、混合溶液を濾過し、濃縮した。残渣をフラッシュで精製し、黄色がかった固体混合物を得た。混合溶液を分取HPLCで精製し、化合物2(10mg、収率:8.7%),ESI-MS m/z: 349.2 [M+H]+;および化合物3(17mg、収率:14.2%),ESI-MS m/z: 363.2 [M+H]+を得た。
【0098】
実施例4~24:化合物4~24の合成
異なる出発原料を用い、実施例2と同様の合成法に従って、表1の化合物4~化合物24を得た。
【0099】
【表1】
【0100】
実施例25:(R)-1-(2-(3-メチルモルホリノ)-8-(1H-ピラゾール-5-イル)-1,7-ナフチリジン-4-イルメチル)シクロヘキサン-1-カルボニトリル(化合物25)の合成
【化40】
【化41】
【0101】
ステップ1:25-1の合成
100mLの一口フラスコに、1-5(100mg、0.331mmol)およびDMF(10mL)を加えた。系内をアルゴンでパージした後、混合溶液を氷浴中で0~5℃に冷却し、NaH(26mg、60%、0.662mmol)を加えた。混合溶液を室温で15分間撹拌した後、1,5-ジブロモヘキサン(76mg、0.331mmol)を加えた。混合溶液を、室温で2時間撹拌した。LC-MSにより反応の完了が確認された後、混合溶液を、氷と水との混合溶液10mLに注いだ。EA(20mL)を加え、得られた混合物を撹拌し、液体分離を行った。次いで、水相をEA(10mL)で抽出した。有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液(10mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、濃縮して、褐色の油状生成物(140mg、収率:>100%)を得た。ESI-MS m/z:371.2 [M+H]+
【0102】
ステップ2:化合物25の合成
100mLの一口フラスコに、25-1(140mg、粗生成物、0.331mmol)、KPO(160mg、0.754mmol)、ピラゾール-3-ボロン酸(56mg、0.497mmol)、ジオキサン(10mL)および水(2mL)を加えた。系内をArでパージした後、Pd(dtbpf)Cl(25mg、0.038mmol)を加えた。混合溶液をアルゴンでパージし、80℃に加熱して1.5時間撹拌した。LC-MSにより反応の完了が確認された後、混合溶液を濾過し、濃縮した。残渣をフラッシュで精製し、黄色がかった固体生成物を得た(46mg、収率:34.5%)。ESI-MS m/z:403.3 [M+H]+
【0103】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ 8.48 (d, J = 5.7 Hz, 1H), 8.04 (d, J = 5.7 Hz, 1H), 7.70 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 7.31 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 7.21 (s, 1H), 4.42 (d, J = 5.0 Hz, 1H), 4.17 (dd, J = 11.5, 3.8 Hz, 1H), 4.00 - 3.94 (m, 1H), 3.91 (s, 1H), 3.85 (dd, J = 11.6, 3.1 Hz, 1H), 3.71 (td, J = 11.8, 3.0 Hz, 1H), 3.55 (td, J = 12.4, 3.9 Hz, 1H), 2.55 (d, J = 12.7 Hz, 2H), 2.02 (d, J = 11.4 Hz, 6H), 1.85 (dd, J = 12.7, 4.1 Hz, 2H), 1.44 (d, J = 6.8 Hz, 3H)。
【0104】
実施例26~32:化合物26~32の合成
異なる出発原料を用い、実施例25と同様の合成法に従って、表2の化合物26~32を得た。
【0105】
【表2】
【0106】
実施例33:(R)-4-ヒドロキシ-1-(2-(3-メチルモルホリン)-8-(1H-ピラゾール-5-イル)-1,7-ナフチリジン-4-イル)シクロヘキサン-1-カルボニトリル(化合物33)の合成
【化42】
【化43】
【0107】
ステップ1:33-1の合成
500mLの一口フラスコに、1-5(2.0g、6.6mmol)およびDMF(200mL)を加えた。系内をアルゴンでパージした後、混合溶液を氷浴中で0~5℃に冷却し、NaH(528mg、60%、13.2mmol)を加えた。混合溶液を室温で30分間撹拌した後、2,2-ビス(2-ブロモエチル)-1,3-ジオキソラン(2.85g、9.9mmol)を加えた。混合溶液を室温で3時間撹拌した。LC-MSにより反応の完了が確認された後、混合溶液を、氷と水との混合物200mLに注いだ。EA(200mL)を加え、得られた混合物を撹拌し、液体分離を行った。その後、水相をEA(100mL)で抽出した。有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液(200mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、濃縮して、褐色の油状生成物(2.12g、収率:75%)を得た。ESI-MS m/z:429.1 [M+H]+
【0108】
ステップ2:33-2の合成:
500mLの一口フラスコに、33-1(2.12g、4.94mmol)、アセトン(50mL)および0.5N HCl(20mL)を加えた。混合溶液をArでパージし、50℃に加熱し、5時間撹拌した。LC-MSにより反応の完了が確認された後、混合溶液を半量まで濃縮し、EA(100mL)を加え、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液でpHを7~8に調整し、得られた混合物を撹拌し、液体分離を行った。次いで、水相をEA(50mL)で抽出した。有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、濃縮乾固して、褐色の油状生成物を得た(1.81g、収率:95%)。ESI-MS m/z:385.0 [M+H]+
【0109】
ステップ3:33-3の合成
500mLの一口フラスコに、33-2(1.81g、4.7mmol)、KPO(2.99g、14.1mmol)、(1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-ピラゾール-5-イル)ボロン酸(1.38g、7.05mmol)、ジオキサン(160mL)および水(32mL)を加えた。系内をアルゴンでパージした後、Pd(dtbpf)Cl(309mg、0.47mmol)を加えた。混合溶液をArでパージし、80℃に加熱し、2時間撹拌した。LC-MSにより反応の完了が確認された後、混合溶液を濾過し、濃縮した。残渣をフラッシュによって精製し、黄色がかった固体生成物を得た(1.67g、収率:71%)。ESI-MS m/z:501.3 [M+H]+
【0110】
ステップ4:33-4の合成
100mLの一口フラスコに、33-3(100mg、0.2mmol)、THF(10mL)、MeOH(5mL)およびNaBH(6mg、0.16mmol)を加えた。混合溶液を室温で2時間撹拌した。LC-MSにより反応の完了が確認された後、水(2mL)を加えて混合溶液をクエンチし、得られた混合物を減圧下で濃縮して粗生成物を得た。ESI-MS m/z: 503.3 [M+H]+
【0111】
ステップ5:33の合成
100mLの一口フラスコに、上記の粗生成物33-4、THF(10mL)および2N HCl(3mL)を加えた。混合溶液をArでパージし、室温で2時間撹拌した。LC-MSにより反応の完了が確認された後、混合溶液を減圧下で濃縮した。残留液体をフラッシュによって精製し、生成物(8mg、収率:9.5%)を得た。ESI-MS m/z:419.3 [M+H]+
【0112】
1H NMR (400 MHz, cdcl3) δ 8.50 (d, J = 5.8 Hz, 1H), 8.00 (d, J = 5.8 Hz, 1H), 7.71 (d, J = 1.9 Hz, 1H), 7.32 (d, J= 1.9 Hz, 1H), 7.20 (s, 1H), 4.42 (d, J = 7.0 Hz, 1H), 4.18 (dd, J= 11.4, 3.8 Hz, 1H), 4.01 - 3.95 (m, 1H), 3.93 (d, J= 11.4 Hz, 1H), 3.85 (dd, J = 11.5, 3.1 Hz, 1H), 3.80 - 3.65 (m, 2H), 3.55 (td, J = 12.4, 3.8 Hz, 1H), 2.62 (d, J= 12.2 Hz, 2H), 2.27 (d, J = 12.9 Hz, 2H), 2.12 - 1.92 (m, 4H), 1.44 (s, 3H)。
【0113】
実施例34:(R)-4-(ジメチルアミノ)-1-(2-(3-メチルモルホリン)-8-(1H-ピラゾール-5-イル)-1,7-ナフチリジン-4-イル)シクロヘキサン-1-カルボニトリル(化合物34)の合成
【化44】
【化45】
【0114】
ステップ1:34-1の合成
100mLの一口フラスコに、33-3(100mg、0.205mmol)、DCE(10mL)、AcOH(38mg、0.63mmol)、およびジメチルアミン(0.5mL、THF中2M、1.0mmol)を加えた。混合溶液を室温で30分間撹拌した後、NaBH(OAc)(87mg、0.41mmol)を加えた。混合溶液を50℃に加熱し、3時間撹拌した。LC-MSにより反応の実質的完了が確認された後、混合溶液を濃縮した。残渣をフラッシュによって精製し、生成物(32mg、収率:29.5%)を得た。ESI-MS m/z:530.3 [M+H]+
【0115】
ステップ2:34の合成
100mLの一口フラスコに、34-1(32mg、0.06mmol)、DCM(10mL)およびTFA(0.2mL)を加えた。混合溶液をArでパージし、室温で2時間撹拌した。LC-MSにより反応の完了が確認された後、混合溶液を減圧下で濃縮した。残留液体をフラッシュによって精製し、生成物(12mg、収率:44.9%)を得た。ESI-MS m/z:446.3 [M+H]+
【0116】
1H NMR (400 MHz, クロロホルム-d) δ 8.49 (d, J= 5.7 Hz, 1H), 8.01 (d, J = 5.7 Hz, 1H), 7.70 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 7.31 (d, J = 1.9 Hz, 1H), 7.20 (s, 1H), 4.46 - 4.38 (m, 1H), 4.17 (dd, J = 11.4, 3.8 Hz, 1H), 3.97 (dd, J= 12.5, 2.9 Hz, 1H), 3.92 (d, J = 11.4 Hz, 1H), 3.84 (dd, J = 11.5, 2.9 Hz, 1H), 3.70 (td, J = 11.8, 3.0 Hz, 1H), 3.55 (td, J = 12.4, 3.9 Hz, 1H), 2.65 (d, J = 12.7 Hz, 2H), 2.44 (d, J = 11.2 Hz, 1H), 2.39 (s, 6H), 2.15 (d, J = 13.0 Hz, 2H), 2.09 - 1.99 (m, 2H), 1.93 (t, J = 12.0 Hz, 2H), 1.44 (d, J = 6.8 Hz, 3H)。
【0117】
実施例35および実施例36:化合物35および化合物36の合成
異なる出発原料を用い、実施例34と同様の合成法に従って、表3の化合物35および化合物36を得た。
【0118】
【表3】
【0119】
実施例37:(R)-4-(2-(3-メチルモルホリノ)-8-(1H-ピラゾール-5-イル)-1,7-ナフチリジン-4-イル)ピペリジン-4-カルボニトリル(化合物37)の合成
【化46】
【化47】
【0120】
ステップ1:37-2の合成
500mLの一口フラスコに、1-5(2.0g、6.6mmol)およびDMF(200mL)を加えた。系内をアルゴンでパージした後、混合溶液を氷浴中で0~5℃に冷却し、NaH(528mg、60%、13.2mmol)を加えた。混合溶液を室温で30分間撹拌した後、N,N-ビス(2-ブロモエチル)-2,2,2-トリフルオロアセトアミド(3.24g、9.9mmol)を加えた。混合溶液を、室温で2時間撹拌した。LC-MSにより反応の完了が確認された後、混合溶液を、氷と水との混合物200mLに注いだ。EA(200mL)を加え、得られた混合物を撹拌し、液体分離を行った。その後、水相をEA(100mL)で抽出した。有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液(200mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、濃縮して、褐色の油状生成物(1.61g、収率:52%)を得た。ESI-MS m/z:467.3 [M+H]+
【0121】
ステップ2:37-3の合成:
500mLの一口フラスコに37-2(1.61g、粗生成物、3.44mmol)、KPO(1.66g、7.84mmol)、(1-(テトラヒドロ-2H-ピラン-2-イル)-1H-ピラゾール-5-イル)ボロン酸(1.01g、5.164mmol)、ジオキサン(160mL)および水(32mL)を加えた。系内をArでパージした後、Pd(dtbpf)Cl(250mg、0.38mmol)を加えた。混合溶液をアルゴンでパージし、80℃に加熱して2時間撹拌した。LC-MSにより反応の完了が確認された後、混合溶液を濾過し、濃縮した。残渣をフラッシュによって精製し、黄色がかった固体生成物(1.63g、収率:81%)を得た。ESI-MS m/z:584.3 [M+H]+
【0122】
ステップ3:37-4の合成
500mLの一口フラスコに、37-3(1.60g、2.742mmol)、MeOH(50mL)および1N KOH(4mL、4mmol)を加えた。混合溶液をArでパージし、室温で20時間撹拌した。LC-MSにより反応の完了が確認された後、混合溶液に1N HCl(2mL)を加え、得られた混合物を減圧下で少量まで濃縮した。残留液体をフラッシュによって精製し、黄色がかった固体生成物(1.0g、収率:75%)を得た。ESI-MS m/z:488.3 [M+H]+
【0123】
ステップ4:37の合成
100mLの一口フラスコに、37-4(50mg、0.103mmol)、DCM(5mL)およびTFA(0.2mL)を加えた。混合溶液をArでパージし、室温で2時間撹拌した。LC-MSにより反応の完了が確認された後、混合溶液を減圧下で濃縮した。残留液体をフラッシュによって精製し、生成物(11mg、収率:26.6%)を得た。ESI-MS m/z: 404.2 [M+H]+
【0124】
実施例38:(R)-1-アセチル-4-(2-(3-メチルモルホリノ)-8-(1H-ピラゾール-5-イル)-1,7-ナフチリジン-4-イル)ピペリジン-4-カルボニトリル(化合物38)の合成
【化48】
【化49】
【0125】
ステップ1:38-1の合成
100mLの一口フラスコに、37-4(100mg、0.205mmol)、DCM(10mL)およびDIPEA(79mg、0.615mmol)を加えた。系内をArでパージした後、塩化アセチル(24mg、0.306mmol)を滴下添加した。添加後、混合溶液を室温で2時間撹拌した。LC-MSにより反応の実質的完了が確認された後、混合溶液に水(10mL)を加え、液体分離を行った。次いで、水相をDCM(10mL)で抽出した。有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液(10mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、濃縮して生成物(120mg、収率:>100%)を得た。ESI-MS m/z:530.3 [M+H]+
【0126】
ステップ2:38の合成
100mLの一口フラスコに、38-1(120mg、粗生成物、0.205mmol)、DCM(10mL)およびTFA(0.5mL)を加えた。混合溶液をArでパージし、室温で2時間撹拌した。LC-MSにより反応の完了が確認された後、混合溶液を減圧下で濃縮した。残留液をフラッシュによって精製し、生成物(45mg、収率:49.3%)を得た。ESI-MS m/z: 446.2 [M+H]+
【0127】
実施例39および実施例40:化合物39および化合物40の合成
異なる出発原料を用い、実施例37および実施例38と同様の合成法に従って、表4の化合物39および化合物40を得た。
【0128】
【表4】
【0129】
実施例41:(R)-4-(2-(3-メチルモルホリノ)-8-(1H-ピラゾール-5-イル)-1,7-ナフチリジン-4-イル)-1-(2,2,2-トリフルオロエチル)ピペリジン-4-カルボニトリル(化合物41)の合成
【化50】
【化51】
【0130】
ステップ1:41-1の合成
100mLの一口フラスコに、37-4(100mg、0.205mmol)、DMF(5mL)およびKCO(85mg、0.615mmol)を加えた。系内をArでパージした後、トリフルオロヨードエタン(65mg、0.31mmol)を加え、混合溶液を室温で20時間撹拌した。LC-MSにより反応の完了が確認された後、混合溶液に、EA(20mL)および水(10mL)を加え、得られた混合物を撹拌し、液体分離を行った。次に、水相をEA(10mL)で抽出した。有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウム水溶液(10mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮して、褐色の油状生成物(201mg、収率:>100%、DMFを含む)を得た。ESI-MS m/z:570.3 [M+H]+
【0131】
ステップ2:41の合成
100mLの一口フラスコに、41-1(201mg、0.205mmol、粗生成物)、DCM(10mL)およびTFA(0.5mL)を加えた。混合溶液をArでパージし、室温で2時間撹拌した。LC-MSにより反応の完了が確認された後、混合溶液を減圧下で濃縮した。残留液体をフラッシュによって精製し、生成物(16mg、収率:16.1%)を得た。ESI-MS m/z:486.2 [M+H]+
【0132】
実施例42~44:化合物42~44の合成
異なる出発原料を用い、実施例41と同様の合成法に従って、表5の化合物42~44を得た。
【0133】
【表5】
【0134】
実施例45:(R)-1-(4-クロロフェニル)-4-(2-(3-メチルモルホリノ)-8-(1H-ピラゾール-5-イル)-1,7-ナフチリジン-4-イル)ピペリジン-4-カルボニトリル(化合物45)の合成
【化52】
【化53】
【0135】
ステップ1:45-1の合成
100mLの一口フラスコに、37-4(100mg、0.205mmol)、DMF(5mL)、CsCO(200mg、0.615mmol)、キサントホス(24mg、0.041mmol)、4-クロロヨードベンゼン(98mg、0.41mmol)、およびPd(dba)(19mg、0.021mmol)を加えた。混合溶液をArでパージし、120℃に加熱し、5時間撹拌した。LC-MSにより反応の実質的完了が確認された後、混合溶液を濾過した。濾液をフラッシュによって精製し、生成物(35mg、収率:28.5%)を得た。ESI-MS m/z: 598.1 [M+H]+
【0136】
ステップ2:45の合成
100mLの一口フラスコに、45-1(35mg、0.059mmol)、DCM(10mL)およびTFA(0.2mL)を加えた。混合溶液をArでパージし、室温で2時間撹拌した。LC-MSにより反応の完了が確認された後、混合溶液を減圧下で濃縮した。残留液体をフラッシュによって精製し、生成物(19mg、収率:63.2%)を得た。ESI-MS m/z:514.1 [M+H]+
【0137】
実施例46~50:化合物46~50の合成
異なる出発原料を用い、実施例45と同様の合成法に従って、表6の化合物46~50を得た。
【0138】
【表6】
【0139】
実施例51および実施例52:化合物51および化合物52の合成
異なる出発原料を用い、実施例25と同様の合成法に従って、表7の化合物51および化合物52を得た。
【0140】
【表7】
【0141】
実施例53:(R)-4-メトキシ-1-(2-(3-メチルモルホリン)-8-(1H-ピラゾール-5-イル)-1,7-ナフチリジン-4-イル)シクロヘキサン-1-カルボニトリル(化合物53)の合成
【化54】
【化55】
【0142】
ステップ1:53-1の合成
50mLの一口フラスコに、33-4(52mg、0.103mmol)およびDMF(5mL)を加えた。系内をArでパージした後、NaH(6.2mg、鉱油中60%、0.155mmol)を加えた。混合溶液を室温で10分間撹拌した後、MeI(22mg、0.155mmol)を加えた。混合溶液を室温で2時間撹拌した。LC-MSにより反応の実質的完了が確認された後、混合溶液を次のステップで直接使用した。
【0143】
ステップ2:53の合成
THF(2mL)および1N HCl溶液(2mL、2mmol)を上記の反応混合物に添加し、混合溶液を室温で2時間撹拌した。LC-MSにより反応の完了が確認された後、混合溶液をフラッシュによって精製して生成物(16mg、収率:35.9%)を得た。ESI-MS m/z:433.2 [M+H]+
【0144】
実施例54~59:化合物54~59の合成
異なる出発原料を用い、実施例53と同様の合成法に従って、表8の化合物54~59を得た。
【0145】
【表8】
【0146】
実施例60~65:化合物60~65の合成
異なる出発原料を用い、実施例34と同様の合成法に従って、表9の化合物60~65を得た。
【0147】
【表9】
【0148】
実施例66~84:化合物66~84の合成
異なる出発原料を用い、実施例41と同様の合成法に従って、表10の化合物66~84を得た。
【0149】
【表10】
【0150】
実施例85:3-(2-((R)-3-メチルモルホリノ)-8-(1H-ピラゾール-5-イル)-1,7-ナフチリジン-4-イル)-8-オキサビシクロ[3.2.1]オクタン-3-カルボニトリル(化合物85)の合成
【化56】
【化57】
【0151】
ステップ1:85-1の合成
100mLの一口フラスコに、(テトラヒドロフラン-2,5-ジイル)ジメタノール(500mg、3.783mmol)、トリフェニルホスフィン(3.97g、15.133mmol)、イミダゾール(1.29g、18.915mmol)、およびDCM(25mL)を加えた。混合溶液を、アルゴン雰囲気下、氷浴中で0~5℃に冷却し、ヨウ素(3.84g、15.132mmol)をバッチで添加した。添加後、混合溶液を室温で一晩撹拌した。LC-MSにより反応の完了が確認された後、混合溶液に飽和チオ硫酸ナトリウム溶液(25mL)を加え、得られた混合溶液を室温で30分間撹拌し、液体分離を行った。次いで、水相をDCM(25mL)で抽出した。有機相を合わせ、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥し、濾過した。濾液を濃縮し、残渣をフラッシュで精製して、生成物(536mg、収率:40.3%)を得た。
【0152】
ステップ2:85-2の合成
100mLの一口フラスコに、1-5(100mg、0.331mmol)およびDMF(10mL)を加えた。系内をアルゴンでパージした後、CsCO(216mg、0.662mmol)および85-1(116mg、0.331mmol)を加えた。混合溶液を室温で20時間撹拌した。生成物をLC-MSにより検出し、混合物をフラッシュで精製して褐色油状生成物(22mg、収率:16.7%)を得た。
ESI-MS m/z: 399.2 [M+H]+
【0153】
ステップ3:化合物85の合成
50mLの一口フラスコに、85-2(22mg、0.055mmol)、KPO(35mg、0.165mmol)、ピラゾール-3-ボロン酸(10mg、0.089mmol)、ジオキサン(5mL)および水(1mL)を加えた。系内をArでパージした後、Pd(dtbpf)Cl(10mg、0.015mmol)を加えた。混合溶液をアルゴンでバージした、80℃に加熱し、1.5時間撹拌した。LC-MSにより反応の完了が確認された後、混合溶液を濾過し、濃縮した。残渣をフラッシュで精製し、黄色がかった固体生成物を得た(6mg、収率:25.3%)。ESI-MS m/z:431.2 [M+H]+
【0154】
本発明の化合物のうちのいくつかの核磁気共鳴(NMR)を、以下の表11に示す。
【0155】
【表11】
【0156】
実施例86:MIA PaCa-2細胞に対する本発明の化合物のin vitro抗増殖活性
MIA PaCa-2細胞を、3000細胞数/ウェルで384ウェルプレートに播種した。一晩接着培養した後、DMSO、または5μMから1:5に連続希釈した化合物を、添加した。細胞内ATP含量を測定することにより、投与72時間後の生存率を評価した。化合物による生存細胞の阻害率をDMSO群と比較して算出し、IC50値を算出した。結果を以下の表12に示す。
【0157】
【表12】
【0158】
実施例87:MIA PaCa-2細胞に対するゲムシタビンと併用した本発明の化合物のin vitro抗増殖活性
MIA PaCa-2細胞を、3000細胞数/ウェルで384ウェルプレートに播種し、20nMのゲムシタビンを添加した。一晩接着培養した後、DMSO、または100nMから1:5に連続希釈した化合物を、添加した。細胞内ATP含量を測定することにより、投与72時間後の生存率を評価した。化合物による生存細胞の阻害率をDMSO群と比較して算出し、IC50値を算出した。結果を以下の表13に示す。
【0159】
【表13】
【0160】
表13のデータからわかるように、ゲムシタビンと組み合わせた本発明の化合物は、ゲムシタビンと組み合わせた対照化合物BAY1895344と比較して、MIA PaCa-2細胞に対するin vitro抗増殖活性を大幅に改善した。
【0161】
実施例88:本発明の化合物のうちのいくつかの肝ミクロソーム安定性
1μMの化合物を、500g/mLのヒト肝ミクロソームまたはマウス肝ミクロソームとNADPH再生系とで、37℃にてそれぞれ異なる時間インキュベートした後、LC-MS-MSを用いて化合物の残存量を分析し、T1/2を算出した。結果を以下の表14に示す。
【0162】
【表14】
【0163】
実施例89:本発明の化合物のうちのいくつかのin vivo薬物動態実験
7~10週齢のCD-1雌性マウスに、それぞれ2mg/kgおよび10mg/kgの用量で静脈内投与および経口投与を行った。マウスは投与前に少なくとも12時間絶食させ、投与4時間後に餌を与え、実験中は水を自由に摂取させた。
【0164】
実験当日、静脈内投与群の動物には、対応する化合物を10mL/kgの投与量で尾静脈より単回注射し、経口投与群の動物には、対応する化合物を10mL/kgの投与量で単回胃内注射した。投与前に動物の体重を測定し、体重に応じて投与量を算出した。サンプル採取時間は、0.083時間、0.167時間、0.5時間、1時間、2時間、4時間、8時間、24時間とした。各時点で眼窩静脈叢から全血約200μLを採取し、高速液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析法(LC-MS/MS)による濃度測定用の血漿の調製に用いた。血漿中濃度は、WinNonlin薬物動態ソフトウェアのノンコンパートメントモデルを使用して処理され、薬物動態パラメータは線形対数台形法を用いて算出した。結果を以下の表15に示す。
【0165】
【表15】
【0166】
実施例90:ラットにおける本発明の化合物のうちのいくつかの薬物動態評価
7~10週齢のSPFグレードSD雌ラットに、それぞれ1mg/kgおよび10mg/kgの用量で静脈内投与および経口投与を行った。ラットは投与前に少なくとも12時間絶食させ、投与4時間後に餌を与え、実験中は水を自由に摂取させた。
【0167】
実験当日、静脈内投与群の動物には、対応する化合物を2mL/kgの投与量で尾静脈より単回注射し、経口投与群の動物には、対応する化合物を10mL/kgの投与量で単回胃内注射した。投与前に動物の体重を測定し、体重に応じて投与量を算出した。サンプル採取時間は、0.083時間(静脈内投与群のみ)、0.125時間(経口投与群のみ)、0.25時間、0.5時間、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、24時間とし、各時点で約200μLの全血(EDTA-K2抗凝固)を頸静脈または他の適切な静脈から採取し、高速液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析法(LC-MS/MS)による濃度測定用の血漿の調製に用いた。最後の時点でPKサンプルを採取した後、すべての動物を、COにより窒息死させた。血漿中濃度を、WinNonlin(商標) version 8.2(Pharsight,mountain View,CA)の薬物動態ソフトウェアのノンコンパートメントモデルを使用して処理し、薬物動態パラメータを、線形-対数台形法を用いて算出した。
【0168】
結果を以下の表16に示す。
【0169】
【表16】
【0170】
実施例91:本発明の化合物のうちのいくつかのin vivo有効性試験
ヒト結腸癌LOVO細胞を、10%ウシ胎児血清を含む1640培地で、37℃、5%COのインキュベーター内で定常培養した。継代培養後、所望の量に達した時点で細胞を回収した。1×10個のLOVO細胞を各ヌードマウスの左背側に注射し、腫瘍が100~200mmに成長した後、投与のために動物を無作為に群に分けた。群は、溶媒対照群8匹、化合物投与群8匹とした。化合物は、週に3日経口投与し4日間休薬して、21日間連続投与した。ビヒクルは1% tween-80を含む0.5% MC懸濁液とした。毎週火曜日と木曜日に、マウスの腫瘍体積と体重を測定し、投与後21日目にヌードマウスを屠殺した。試験結果を以下の表に示す。化合物の腫瘍増殖抑制能は、腫瘍増殖抑制率(TGI)=1-(投与群21日目の腫瘍体積-投与群1日目の腫瘍体積)/(対照群21日目の投与体積-対照群1日目の腫瘍体積)で評価した。化合物の毒性はマウスの体重に基づいて評価した。
【0171】
各群は以下の通りである:
1)溶媒対照群、2)化合物25群、3)化合物27群、4)化合物29群、5)化合物33群、6)化合物34群、7)化合物43群、8)対照化合物(BAY1895344)群。
【0172】
結果を以下の表17に示す。
【0173】
【表17】
【0174】
実施例92:本発明の化合物のうちのいくつかのin vivo有効性試験
ヒト結腸癌HT29細胞を、10%ウシ胎児血清を含む1640培地で、37℃、5%COのインキュベーター内で定常培養した。継代培養後、所望の量に達した時点で細胞を回収した。1×10個のHT29細胞を各ヌードマウスの左背側に注射し、腫瘍が100~200mmに成長した後、投与のために動物を無作為に群に分けた。投与群は、マウス6匹の溶媒対照群、ゲムシタビン(GMC)15mg/kgの単剤投与群、ゲムシタビン15mg/kgと化合物との併用投与群、とした。ゲムシタビンは、PBSをビヒクルとして週1回腹腔内投与した。化合物は週3日投与し4日間休薬して(3投/4休)、21日間連続投与し、ビヒクルは1% tween-80を含む0.5% MC懸濁液とした。毎週火曜日と木曜日に、マウスの腫瘍体積と体重を測定し、投与後21日目にヌードマウスを屠殺した。試験結果を以下の表に示す。化合物の腫瘍増殖抑制能は、腫瘍増殖抑制率(TGI)=1-(投与群21日目の腫瘍体積-投与群1日目の腫瘍体積)/(対照群21日目の投与体積-対照群1日目の腫瘍体積)で評価した。化合物の毒性を、マウスの体重に基づいて評価した。
【0175】
各群は以下の通りである:
1)溶媒対照群、2)溶媒+GMC群、3)化合物25群、4)化合物25+GMC群、5)化合物29群、6)化合物29+GMC群、7)化合物33群、8)化合物33+GMC群、9)化合物34群、10)化合物34+GMC群、11)化合物43群、12)化合物43+GMC群、13)対照化合物(BAY1895344)群、14)対照化合物(BAY1895344)+GMC群。
【0176】
結果を以下の表18に示す。
【0177】
【表18】
【0178】
以上、本発明の具体的な実施形態について説明したが、これらの実施形態は単なる例示であり、本発明の原理および趣旨から逸脱することなく、これらの実施形態に多くの変更または修正を加えることができることが当業者には理解されよう。したがって、本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲によって定められる。
【国際調査報告】