(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】脳がんを治療する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/513 20060101AFI20240725BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240725BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240725BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20240725BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240725BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20240725BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240725BHJP
A61K 31/4188 20060101ALI20240725BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240725BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
A61K31/513
A61P35/00
A61P25/00
A61K47/40
A61P43/00 121
A61K31/519
A61K45/00
A61K31/4188
A61K9/08
A61K39/395 L
A61K39/395 M
A61K39/395 T
A61K39/395 Y
A61K39/395 W
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507851
(86)(22)【出願日】2021-08-04
(85)【翻訳文提出日】2024-02-19
(86)【国際出願番号】 AU2021050848
(87)【国際公開番号】W WO2023010150
(87)【国際公開日】2023-02-09
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524047822
【氏名又は名称】デトサマ インベストメンツ ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ランソン,リチャード デービッド
(72)【発明者】
【氏名】トゥウリ,クリスチャン ダミアン
(72)【発明者】
【氏名】ツィーグラー,デービッド サイモン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA95
4C076BB13
4C076BB16
4C076CC01
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4C085GG02
4C085GG04
4C086AA01
4C086AA02
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4C086NA13
4C086ZA02
4C086ZB26
4C086ZC51
4C086ZC75
(57)【要約】
がんの治療のための薬学的組成物が、本明細書に開示される。特に、脳及び/又は中枢神経系のがんの治療、予防、及び/又は管理のための薬学的組成物の方法及び使用が、本明細書に開示される。本薬学的組成物は、(i)5-FU、その薬学的に許容される塩、又はその薬学的に許容される類似体と、(ii)フォリン酸又はその薬学的に許容される塩と、(iii)シクロデキストリン又はその薬学的に許容される塩とを含み得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳及び/又は中枢神経系のがんの治療及び/又は予防を必要とする対象においてそれを行う方法であって、前記対象に、
(i)5-フルオロウラシル(5-FU)、その薬学的に許容される塩、又はその薬学的に許容される類似体と、
(ii)フォリン酸又はその薬学的に許容される塩と、
(iii)シクロデキストリン又はその薬学的に許容される塩とを含む、組成物を投与することを含む、方法。
【請求項2】
脳及び/又は中枢神経系のがんの治療及び/又は予防に使用するための、組成物であって、
(i)5-フルオロウラシル(5-FU)、その薬学的に許容される塩、又はその薬学的に許容される類似体と、
(ii)フォリン酸又はその薬学的に許容される塩と、
(iii)シクロデキストリン又はその薬学的に許容される塩とを含む、組成物。
【請求項3】
脳及び/又は中枢神経系のがんの治療及び/又は予防のための薬物の製造における、組成物の使用であって、前記組成物が、
(i)5-フルオロウラシル(5-FU)、その薬学的に許容される塩、又はその薬学的に許容される類似体と、
(ii)フォリン酸又はその薬学的に許容される塩と、
(iii)シクロデキストリン又はその薬学的に許容される塩とを含む、使用。
【請求項4】
前記がんが、神経膠腫、神経膠芽腫、乏突起神経膠腫、原始神経外胚葉性腫瘍、低悪性度、中悪性度、若しくは高悪性度の星状細胞腫、上衣腫、乏突起神経膠腫、髄芽腫、膠肉腫、髄膜腫、下垂体がん、神経芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、又は1つ以上の二次転移から選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
【請求項5】
前記がんが、多形神経膠芽腫(GBM)である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
【請求項6】
前記がんが、上衣腫である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
【請求項7】
前記上衣腫が、粘液乳頭状上衣腫、乳頭状上衣腫、上衣下腫、及び未分化上衣腫のうちの1つ以上から選択される、請求項6に記載の方法、使用のための方法、又は使用。
【請求項8】
-前記上衣腫が、小児上衣腫であるか、又は
-前記上衣腫が、成人上衣腫である、請求項6又は7に記載の方法、使用のための方法、又は使用。
【請求項9】
前記がんが、再発性であるか、又は以前の治療後に1つ以上の残存する原発性病変を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
【請求項10】
前記組成物が、約5~約9のpHを有する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
【請求項11】
前記シクロデキストリン又はその塩が、約10mg/ml~約300mg/mlの濃度で存在する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
【請求項12】
前記5-FU、又はその薬学的に許容される塩若しくは類似体が、約5mg/ml~約50mg/mlの濃度で存在する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
【請求項13】
前記フォリン酸又はその塩が、約1mg/ml~約15mg/mlの濃度で存在する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
【請求項14】
前記シクロデキストリン又はその薬学的に許容される塩対前記5-FU、その薬学的に許容される塩又は類似体のモル比が、約1:10~約3:1である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
【請求項15】
前記組成物が、担体、希釈剤、及び/又はアジュバントからなる群から選択される1つ以上の薬学的に許容される賦形剤を追加的に含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
【請求項16】
前記組成物が、水溶液の形態にある、先行請求項のいずれか一項に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
【請求項17】
前記フォリン酸の薬学的に許容される塩が、フォリン酸カルシウム又はフォリン酸ナトリウムである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
【請求項18】
前記シクロデキストリンが、ヒドロキシアルキルシクロデキストリン、硫酸化シクロデキストリン、及びスルホアルキルエーテルシクロデキストリン、又はそれらの塩からなる群から選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
【請求項19】
前記シクロデキストリンが、β-シクロデキストリン又はその塩であり、任意選択で、前記シクロデキストリンが、
-2-ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン若しくはその塩から任意選択で選択される、ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン若しくはその塩、
-β-シクロデキストリン硫酸塩、又は
-ヘプタキス(6-O-スルホ)-β-シクロデキストリン塩から任意選択で選択される、ポリ硫酸化β-シクロデキストリン若しくはその塩である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
【請求項20】
前記シクロデキストリンが、ナトリウム塩である、請求項18又は19に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
【請求項21】
5-FUの前記薬学的に許容される類似体が、5-フルオロ-2-デオキシウリジン(5-FUdr)である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
【請求項22】
前記組成物が、静脈内又は皮下投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
【請求項23】
前記組成物が、静脈内投与され、任意選択で、
-前記組成物が、静脈内注入として投与され、
-前記組成物が、ボーラス静脈内注射若しくは注入として投与され、かつ/又は
-前記組成物が、ボーラス静脈内注射若しくは注入として投与され、その後に静脈内注入が続く、先行請求項のいずれか一項に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
【請求項24】
前記組成物が、約450mg/m
2~約3000mg/m
2又は約450mg/m
2~約3400mg/m
2の用量で投与される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
【請求項25】
前記対象がまた、薬物レジメンの一部として(任意選択で放射線療法と組み合わせて)、有効量の1つ以上の他の化学療法剤、又は有効量の1つ以上の他の化学療法剤とともに投与するために製剤化される場合、前記組成物若しくは薬物も投与され、任意選択で、
-前記1つ以上の他の化学療法剤が、EGFR阻害剤を含み、
-前記1つ以上の他の化学療法剤が、免疫調節剤を含み、かつ/又は
-前記1つ以上の他の化学療法剤が、アテゾリズマブ、アベルマブイピリムマブ、ベバシズマブ、セミプリマブ、デュルバルマブ、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、及び/又はピディリズマブから選択される化合物を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
【請求項26】
前記1つ以上の化学療法剤が、テモゾロミド、ダカルバジン、カルムスチン、ロムスチン、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、エトポシド、テニポシド、トポテカン、イリノテカン、ドキソルビシン、ダウノマイシン、エピルビシン、イダルビシン、メトトレキサート、シタラビン、ゲムシチビン、カペシタビン、シスプラチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、オキサリプラチン、又はそれらの混合物から選択される、請求項25に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
【請求項27】
前記1つ以上の化学療法剤が、テモゾロミドを含む、請求項25又は26に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
【請求項28】
前記対象がまた、放射線療法も受けているか、又は前記組成物若しくは薬物が、放射線療法を受けている対象のために製剤化される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
【請求項29】
前記対象が、ヒトであるか、又は前記組成物若しくは薬剤が、ヒト対象のために製剤化される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
【請求項30】
前記対象が、小児対象であるか、又は前記対象が、少なくとも18歳である、請求項29に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
【請求項31】
前記対象が、非ヒト動物である、請求項1~30のいずれか一項に記載の方法、使用のための組成物、又は使用。
【請求項32】
脳新生物のサイズを低減するか、又は脳新生物の成長を緩徐化する治療を必要とする対象において、脳新生物のサイズを低減するか、又は脳新生物の成長を緩徐化する方法であって、前記対象に、
(i)5-フルオロウラシル(5-FU)、又はその類似体若しくは薬学的に許容される塩と、
(ii)フォリン酸又はその薬学的に許容される塩と、
(iii)シクロデキストリン又はその薬学的に許容される塩とを含む、有効量の組成物を投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、がんの治療のための薬学的組成物に関する。具体的には、本開示は、脳及び/又は中枢神経系のがんを治療、予防、及び/又は管理するために使用され得る薬学的組成物の方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0002】
がんは、世界中で一般的な死因であり、毎年約1,000万件の新規症例が発生し、がんは、世界中の死因の約12%を占め、これは、がんを第3の主要な死因としている。
【0003】
脳及び神経系の腫瘍は、全ての形態のがんのうちで最も致命的なものの1つである。最も侵襲性な種類の脳がんである神経膠芽腫と診断された成人の3分の2超が、診断から2年以内に死亡する。脳がんはまた、全ての小児固形腫瘍のうちで最も一般的かつ最も致命的なものである。更に、生存し、成人期に入る、これらの腫瘍を有する小児は、多くの場合、発達中の脳が手術、放射線療法、及び/又は化学療法を含む医療介入に曝露されることで、長期的な結果の影響を受ける。
【0004】
脳腫瘍は、これらのがんの限定的な生物学的特徴及び浸潤性の成長パターンなどの問題のために、治療が困難であることが証明されている。脳神経外科医の手の届かない位置及び血液脳関門の緊密な制御などの様々な要因により、脳腫瘍の治療は、ほぼ間違いなく他のがんよりもより問題のあるものとなっている。更に、脳の独自の発達、遺伝、及び微小環境の特徴は、多くの場合、これらのがんを治療に対して耐性にしている。
【0005】
ほとんどの新生物性脳病変は、乳がん及び転移性結腸直腸がん(mCRC)などの中枢神経系外のがんから生じる転移であり、原発性脳腫瘍よりも最大10倍一般的である。神経膠腫及び髄膜腫は、最も一般的な種類の原発性脳腫瘍である。
【0006】
最も一般的な種類の原発性脳腫瘍である悪性神経膠腫は、全てのヒトがんのうちで最も致命的である、侵襲性、高度に浸潤性、かつ神経学的に破壊的な腫瘍である。米国で毎年診断される推定17,000件の新規脳腫瘍のうち、約半数が、悪性神経膠腫である。悪性神経膠腫細胞は、白質及び灰白質の両方の浸潤を有する非常に浸潤性の脳腫瘍を生成する。診断時には、悪性神経膠腫による神経軸の大部分を通した顕微鏡的な伸展が、原則である。運動性の浸潤細胞によるそのような伸展は、ほとんどの神経膠腫が小さく、本質的に限定的であるように見える場合でも、それらの手術による治癒不能性の根底にある。
【0007】
最も一般的な成人発症の神経学的新生物である悪性神経膠腫は、神経膠芽腫、星状細胞腫、乏突起神経膠腫、及び上衣腫を含む原発性中枢神経系腫瘍のファミリー、並びに若年性毛様細胞性星状細胞腫(juvenile pilocystic astrocytoma)などの若年発症の新生物を包含する。毛様細胞性星状細胞腫、多形黄色星状膠細胞腫(pleomorphic xanthoastrocytomas)、及び上衣腫を含む神経膠腫は、それほど頻繁には発生しない。小児では、最も一般的な種類の神経膠腫は、毛様細胞性星状細胞腫及びびまん性中心性神経膠腫(様々な悪性度のびまん性内在性橋神経膠腫を含む)である。
【0008】
神経膠芽腫(多形神経膠芽腫(GBM)を含む)は、最も重篤な形態の悪性神経膠腫であり、一般的には上脳(大脳)に生じるが、脊髄、小脳、脳幹、又は視交叉などの中枢神経系(CNS)の他の場所にも生じ得る、非常に侵襲性の脳腫瘍を特徴とする。星状細胞腫、乏突起神経膠腫、及び毛様細胞性星状細胞腫を含む低悪性度の神経膠腫は、全ての原発性脳腫瘍の約25%を占め、時間が経つにつれて、これらの低悪性度の腫瘍のほとんどが、より悪性度の高い神経膠腫に脱分化する。びまん性星状細胞腫は、主に成人の大脳半球に位置し、未分化星状細胞腫及び(二次)神経膠芽腫に進行する固有の傾向を有する。神経膠芽腫の大部分は、特定可能な悪性度の低い前駆病変なく、新規に発症する(原発性神経膠芽腫)。
【0009】
最先端の最適な療法をもってしても、神経膠芽腫を有する患者の生存期間の中央値は、わずか12~15ヶ月である。これらの腫瘍が再発すると、従来の細胞毒性療法がもたらす利益は、最小限であり、患者のうちで生存し、6ヶ月時点で進行がないのは、わずか8~15%である。神経膠芽腫は、最も致命的な脳腫瘍である。治療なしでは、生存期間の中間値は、4ヶ月であり、利用可能な治療を行った場合では、約15ヶ月である。多くの患者は、診断から6ヶ月を超えて生存することはなく、ほとんどが、2年以内に死亡する。ほんの一部のみが、5年ほど生存する。
【0010】
手術、放射線、及び化学療法を含む、がん治療の分野における多くの進歩にもかかわらず、利用可能な治療のいずれも、脳及び神経系がん患者の生存率を有意に改善することができずにいる。
【0011】
したがって、脳及び/又はCNSのがんに対する治療介入のための新規の有効な化学療法剤の発見に対する、当該技術分野における緊急の必要性が依然として存在する。
【0012】
本明細書に含まれている文書、行為、材料、デバイス、物品などのいかなる考察も、これらの事項のいずれか又は全てが、先行技術の基礎の一部を形成するか、又は本出願の各請求項の優先日の前に存在したために、本開示に関連する分野における一般常識であったと認めるものとは、みなされるべきではない。
【発明の概要】
【0013】
本発明者らは、驚くべきことに、例えば、5-フルオロウラシル(5-FU)、フォリン酸、及びシクロデキストリン化合物を含む組成物が、脳内で適切な濃度を達成し、脳及び/又はCNSの疾患及び障害の治療及び/又は予防に有効であり得ることを発見した。例えば、(i)5-FU、その薬学的に許容される塩、又はその薬学的に許容される類似体と、(ii)フォリン酸又はその薬学的に許容される塩と、(iii)シクロデキストリン又はその薬学的に許容される塩とを含む、本組成物は、神経膠腫、神経膠芽腫、及び上衣腫を含むがこれらに限定されない、脳及び神経系がんの疾患を治療することができる。
【0014】
第1の態様では、脳及び/又は中枢神経系のがんの治療及び/又は予防を必要とする対象においてそれを行う方法であって、対象に、
(i)5-FU、その薬学的に許容される塩、又はその薬学的に許容される類似体と、
(ii)フォリン酸又はその薬学的に許容される塩と、
(iii)シクロデキストリン又はその薬学的に許容される塩とを含む、組成物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。
第2の態様では、脳及び/又は中枢神経系のがんの治療及び/又は予防に使用するための、組成物であって、
(i)5-FU、その薬学的に許容される塩、又はその薬学的に許容される類似体と、
(ii)フォリン酸又はその薬学的に許容される塩と、
(iii)シクロデキストリン又はその薬学的に許容される塩とを含む、組成物が、本明細書に開示される。
【0015】
第3の態様では、脳及び/又は中枢神経系のがんの治療及び/又は予防のための薬物の製造における、組成物の使用であって、組成物が、
(i)5-FU、その薬学的に許容される塩、又はその薬学的に許容される類似体と、
(ii)フォリン酸又はその薬学的に許容される塩と、
(iii)シクロデキストリン又はその薬学的に許容される塩とを含む、使用が、本明細書に開示される。
【0016】
第4の態様では、そのような治療を必要とする対象において、脳新生物のサイズを低減するか、又は脳新生物の成長を緩徐化する方法であって、対象に、
(i)5-フルオロウラシル(5-FU)、又はその類似体若しくは薬学的に許容される塩と、
(ii)フォリン酸又はその薬学的に許容される塩と、
(iii)シクロデキストリン又はその薬学的に許容される塩とを含む、有効量の組成物を投与することを含む、方法が、本明細書に開示される。
【0017】
本明細書に記載される組成物の本開示の方法及び使用に関して、少なくともいくつかの実施形態又は実施例によれば、既知の方法に対する以下の利点のうちの1つ以上が提供され得る:
(i)2つの化合物の同時投与を可能にすることによる、5-FU及びフォリン酸の両方の送達の改善、
(ii)5-FUが約9のより高いpH値で投与されるときに頻発する副作用の最小化、
(iii)抗がん剤及びその生体調節剤の組み合わせを単回用量で投与することを可能にすることによる、(診療所における)投与時間及びコストの低減、
(iv)より低いpHが、静脈炎の予防に通常必要とされる中心線が必要とされない可能性があることを意味することによる、有意に簡素化された投与、
(v)項目(iv)に付言して、結果として、患者に対するストレスを軽減することができること、
(vi)例えば、5-FU及びその生体調節物質のフォリン酸の同時送達に関連する有効性の改善、
(vii)製剤のpHの低減及び/又はシクロデキストリンの添加による可能性のある、全身毒性の低減、
(viii)毒性の低減の結果として、より高い用量の5-FUを送達する能力、より虚弱、より若年、又はより不安定である患者に薬物を送達する能力、及び別個に投与される5-FUで可能であるよりも長い期間にわたって患者を治療する能力、並びに
(ix)本組成物のpHが生理学的pHにより近い結果として、5-FUの分解産物によって引き起こされる心毒性のリスクの低減(これは、心血管リスクのために5-FU/フルオロピリミジン治療が禁忌である患者を治療する能力につながる)。
【0018】
本開示の各態様の実施形態は、準用して、互いの態様に等しく適用され得ることが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本明細書に開示される様々な実施形態が利用され得ることが理解されるが、以下には、以下の図面を参照して、いくつかの実施例が本明細書に記載される。
【0020】
【
図1】動物対象における5-フルオロウラシル(5-FU)及びフォリン酸(FA)(「5-FU:FA」)の用量一致連続投与と比較した場合の、本開示の方法で使用される組成物の漸増用量投与の用量耐性関係を示す。
【
図2】本開示の方法で使用される組成物のボーラス又は注入投与後の5-FUの薬物動態パラメータを例示する。
【
図3】本開示の方法で使用される組成物のボーラス又は注入投与後のFUH
2の薬物動態パラメータを例示する。
【
図4】腫瘍モデルにおける本開示の方法において使用される組成物のインビトロ有効性を示す。
【
図5】対象に由来する健康な星状細胞を用いた本開示の方法で使用される組成物のインビトロ有効性を示す。
【
図6】開始時、及び本明細書に開示される組成物による薬物治療後の細胞株を示す。
【
図7】開始時、及び本明細書に開示される組成物による薬物治療後の細胞株を示す。
【
図8】(A)脳内又は血漿中の組成物の注射用量パーセント(%ID)、又は(B)示された時点での脳対血漿比として表される、本開示の方法で使用される組成物のマウス脳内への取り込みを示す。
【
図9】マウスの研究で使用される動物の体重(A)及びデフレキシホル(Deflexifol)用量(B)を示す。
【
図10】屠殺及び灌流後の器官/組織重量を示す。画像(A)は、組織/器官当たりの重量を示し、画像(B)は、時点及び組織/器官にわたる重量の比較を示す。
【
図11】マウス血漿中及び脳内の[6-
3H]5FUとしてのデフレキシホルの注射用量パーセントを示す。
【
図12】腎臓及び肝臓内のデフレキシホルの注射用量パーセントを示す。(A)x-yは、腎臓を表し、(B)カラムは、腎臓を表す。(C、E)x-yは、肝臓を表し、(D、F)カラムは、肝臓を表す。
【
図13】U-87-MG GBM細胞増殖に対する(デフレキシホルに沿った又はその中での)5-FUの効果を示す。
【
図14】デフレキシホル及び5-FUのIC
50データを示す。
【
図15】5-FUの存在下又は不在下での様々な組成物への曝露後の細胞の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
一般的な定義及び用語
本明細書に提供される定義に関して、別段記載されない限り、又は文脈から黙示的でない限り、定義される用語及び語句は、提供される意味を含む。加えて、別段明記されない限り、又は文脈から明らかでない限り、以下の用語及び語句は、その用語又は語句が関連技術分野の当業者によって取得されたという意味を排除しない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定されるため、定義は、特定の実施形態の説明を助けるために提供され、特許請求される発明を限定することを意図するものではない。
【0022】
別段記載されない限り、本明細書で考察及び/又は参照される全ての刊行物は、それらの全体が本明細書に組み込まれる。
【0023】
別段文脈によって必要とされない限り、単数形の用語は、複数形を含み、複数形の用語は、単数形を含むものとする。本開示を通して、別段具体的に記載されない限り、又は別段文脈が必要としない限り、単一のステップ、物質の組成物、ステップの群、又は物質の組成物の群への言及は、1つ及び複数(すなわち、1つ以上)のそれらのステップ、物質の組成物、ステップの群、又は物質の組成物の群を包含するように理解されるものとする。したがって、本明細書で使用される場合、単数形の「a」、「an」、及び「the」は、別段文脈による明白な指示がない限り、複数の態様を含む。例えば、「a」への言及は、単一のものだけでなく、2つ以上のものも含み、「an」への言及は、単一のものだけでなく、2つ以上のものも含み、「the」への言及は、単一のものだけでなく、2つ以上のものも含むなどである。
【0024】
当業者は、本明細書の開示が、具体的に記載されたもの以外の変形及び修正を受けやすいことを理解するであろう。本開示は、全てのそのような変形及び修正を含むことを理解されたい。本開示はまた、本明細書において個々に若しくは集合的に言及されるか、又は示される、実施例、ステップ、特徴、方法、組成物、製剤、及びプロセスの全て、並びに該ステップ若しくは特徴のいずれか及び全ての組み合わせ、又はそれらのいずれかの2つ以上を含む。
【0025】
「及び/又は」という用語、例えば、「X及び/又はY」は、「X及びY」又は「X又はY」のいずれかを意味すると理解され、両方の意味又はいずれかの意味の明示的な支持を提供すると理解されるものとする。
【0026】
別段示されない限り、「第1の」、「第2の」などという用語は、本明細書において単に標識として使用され、これらの用語が言及する項目に順序的、位置的、又は階層的要件を課すことを意図するものではない。更に、「第2の」項目への言及は、より小さい番号の項目(例えば、「第1の」項目)及び/又はより大きい番号の項目(例えば、「第3の」項目)の存在を必要とすることも、排除することもない。
【0027】
本明細書で使用される場合、「のうちの少なくとも1つ」又は「のうちの1つ以上」という語句は、項目の一覧とともに使用される場合、列挙された項目のうちの1つ以上の異なる組み合わせが使用されてもよいこと、及び一覧内の項目のうちの1つのみが必要とされてもよいことを意味する。項目は、特定の対象、物、又はカテゴリであり得る。言い換えれば、「のうちの少なくとも1つ」は、項目の任意の組み合わせ又は任意の数の項目が一覧から使用され得るが、一覧内の項目の全てが必要とされ得るわけではないことを意味する。例えば、「項目A、項目B、及び項目Cのうちの少なくとも1つ」は、項目A;項目A及び項目B;項目B;項目A、項目B、及び項目C;又は項目B及び項目Cを意味し得る。場合によっては、「項目A、項目B、及び項目Cのうちの少なくとも1つ」は、例えば、項目Aのうちの2つ、項目Bのうちの1つ、及び項目Cのうちの10個;項目Bのうちの4つ及び項目Cのうちの7つ;又はいくつかの他の好適な組み合わせを非限定的に意味し得る。
【0028】
明確にするために、別個の実施形態の文脈において本明細書に記載される特定の特徴はまた、単一の実施形態における組み合わせでも提供され得ることを理解されたい。逆に、簡潔にするために、単一の実施形態の文脈において記載される様々な特徴はまた、別個に又は任意の部分的な組み合わせでも提供され得る。
【0029】
本明細書全体を通して、本開示の様々な態様及び構成要素が、範囲形式で提示され得る。範囲形式は、便宜上含まれるものであり、本開示の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではない。したがって、範囲の説明は、別段具体的に示されない限り、その範囲内の全ての可能な部分範囲及び個々の数値を具体的に開示しているものとみなされるべきである。例えば、1~5などの範囲の説明は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~5、3~5などの具体的に開示された部分範囲、並びに列挙された範囲内の個々の及び部分的な数、例えば、1、2、3、4、5、5.5、及び6(整数が必要とされるか、又は文脈から黙示的である場合でない限り)を有するとみなされるべきである。これは、開示される範囲の幅にかかわらず適用される。特定の値が必要とされる場合、これらは、本明細書に示されるであろう。
【0030】
本明細書全体を通して、「含む(comprise)」、又は「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」などの変化形は、記載された要素、整数、若しくはステップ、又は要素、整数、若しくはステップの群の包含を暗示するが、任意の他の要素、整数、若しくはステップ、又は要素、整数、若しくはステップの群の除外を意味するものではないことが理解されるであろう。
【0031】
本明細書全体を通して、「から本質的になる」という用語は、特許請求される組成物、方法、又はプロセスの特性に実質的な影響を与えるであろう要素を除外することが意図される。
【0032】
本明細書における「含む(comprising)」、「含む(comprise)」、及び「含む(comprises)」という用語は、それぞれ「から本質的になる(consisting essentially of)」、「から本質的になる(consist essentially of)」、「から本質的になる(consists essentially of)」、「からなる(consisting of)」、「からなる(consist of)」、及び「からなる(consists of)」という用語と任意選択で置換可能であることが意図される。
【0033】
本明細書において、別段示されない限り、「約」という用語は、その用語に接続する任意の値における10%の許容度を包含する。
【0034】
本明細書において、「重量%」は、「wt%」又は「wt.%」として略され得る。
【0035】
化学的及び薬学的用語
化合物、組成物、又は製剤「の投与」及び/又はそれ「を投与すること」という用語は、本明細書で定義される化合物又は組成物を、それを必要とする個体又は対象に提供することを意味すると理解されるべきである。
【0036】
「薬学的組成物」又は「医薬製剤」は、ヒト及び哺乳動物を含む対象における薬学的使用に好適な組成物を指す。薬学的組成物は、本明細書に記載される方法で使用される、薬理学的に有効な量の組成物を含み、薬学的に許容される担体もまた含む。薬学的組成物は、活性成分、及び担体を構成する不活性成分(例えば、賦形剤)を含む組成物だけでなく、任意の成分のうちの2つ以上の組み合わせ、錯体化、若しくは凝集から、及び/又は成分のうちの1つ以上の解離から、及び/又は成分のうちの1つ以上の他の種類の反応若しくは相互作用から、直接的又は間接的に生じる任意の生成物も包含する。したがって、本発明の薬学的組成物は、本明細書に記載される方法で使用される組成物と、薬学的に許容される担体とを混合することによって作製される、任意の組成物を包含する。
【0037】
「薬学的に許容される担体」又は単に「担体」は、別段代替的に定義されない限り、標準的な薬学的担体、緩衝剤、及び賦形剤のうちのいずれかを指す。薬学的に許容される担体は、生理食塩水、例えば、リン酸緩衝生理食塩水、又はデキストロースの5%水溶液であり得る。薬学的に許容される担体の更なる例には、油/水又は水/油エマルジョンなどのエマルジョン、並びに様々な種類の湿潤剤及び/又はアジュバントが含まれるが、これらに限定されない。好適な薬学的担体及び製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,19th Ed.(Mack Publishing Co.,Easton,1995)に記載されている。好ましい薬学的担体は、活性薬剤の意図される投与様式に依存する。例示的な投与様式には、経腸(例えば、経口)又は非経口(例えば、皮下、筋肉内、静脈内、若しくは腹腔内注射;又は局所、経皮、若しくは経粘膜投与)が含まれる。
【0038】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」は、例えば、金属塩(ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなど)及びアンモニアの塩又は有機アミンを含む、薬学的使用のための化合物に製剤化され得る塩を指す。
【0039】
本明細書で使用される場合、「錯体」という用語は、2つ以上の化学物質の間の非共有結合的な物理的相互作用を意味すると理解される。
【0040】
本明細書で使用される場合、「フルオロデックス(Fluorodex)」(略称FD)又は「デフレキシホル」という用語は、本明細書で開示されるように、シクロデキストリン又はその誘導体とともに、水溶液中に5-FU及びフォリン酸塩を含有する組成物を意味すると理解される。
【0041】
本明細書で使用される場合、「相乗的」という用語は、2つ以上の化合物(例えば、フォリン酸又はその塩、及び5-FU又はその塩)の組み合わせによって生成される相加効果よりも大きい効果を指し、これは、2つ以上の化合物(例えば、フォリン酸又は5-FU)の単独での使用から別様に生じる効果を超えるものである。
【0042】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」又は「有効量」は、その意味において、非毒性であるが十分な量の、
(a)組成物であって、5-フルオロウラシル(5-FU)、その薬学的に許容される塩、若しくはその薬学的に許容される類似体、又はフォリン酸若しくはその薬学的に許容される塩を含む、組成物、
(b)5-フルオロウラシル(5-FU)、その薬学的に許容される塩、又はその薬学的に許容される類似体、及び/あるいは
(c)フォリン酸又はその薬学的に許容される塩を含むことで、
所望の治療又は予防効果をもたらす。語句は、化合物を含む組成物の化合物を投与する研究者、獣医師、医師、又は他の臨床医によって求められている、組織、系、動物、又はヒトの所望の生物学的若しくは医学的反応を誘発する、例えば、5-FU及びフォリン酸の量を意味すると理解される。必要とされる正確な量は、対象の一般的な健康状態、対象の年齢、対象の性別、対象の体表面積、がんの病期及び重症度、並びにあらゆる禁忌などの要因に応じて、対象ごとに変動するであろう。
【0043】
列挙される化合物及び薬学的に許容される組成物のレシピエントは、「患者」、「レシピエント」、「個体」、及び「対象」という互換的な用語で本明細書に言及される。これらの4つの用語は、互換的に使用され、本明細書で定義されるように、(別段示されない限り)任意のヒト又は動物を指す。
【0044】
本明細書に記載される組成物又は薬学的組成物のレシピエントは、男性又は女性のヒトであり得る。レシピエントは、18歳未満の小児であってもよい。例えば、レシピエントは、16、14、12、10、8、又は6歳未満であってもよい。レシピエントは、成人、例えば、18歳以上のレシピエントであってもよい。
【0045】
一実施形態では、本明細書に記載される組成物の対象又はレシピエントは、1つ以上の体がん、例えば、結腸がん、乳がん、頭頸部がん、及び/又は膵臓がんがない。別では、本明細書に記載される組成物の対象又はレシピエントは、乳がん、消化器/胃腸がん、内分泌がん及び/若しくは神経内分泌がん、眼がん、泌尿生殖器がん、生殖細胞がん、婦人科がん、頭頸部がん、血液(hematologic)/血液(blood)がん、筋骨格がん、呼吸器/胸部がん、並びに/又は皮膚がんから選択される1つ以上のがんがない。
【0046】
代替的に、本明細書に記載される組成物又は薬学的組成物のレシピエント、例えば、患者又は対象はまた、非ヒト動物であってもよい。「非ヒト動物」は、ヒトを除く動物界を対象とし、雄又は雌の脊椎動物及び無脊椎動物の両方を含み、哺乳動物(霊長類、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ラット、モルモット、ウマ、又は他のウシ、ヒツジ、ウマ、イヌ、ネコ、げっ歯類、若しくはマウス種を含むがこれらに限定されない)、鳥、昆虫、爬虫類、魚、及び両生類を含む、温血動物を含む。
【0047】
レシピエントが非ヒト動物である場合、可能性のある利点は、ボーラスを介して組成物を投与する能力、生理学的pHによる潜在的な副作用がより少ないこと、及び/又は例えば、別個の投与と比較して、5-FU及びLVの一体化溶液を動物に提供することによるもののうちの1つ以上を含み得る。
【0048】
本明細書で使用される場合、「予防」という用語は、臨床的に明白ながんの発症を完全に予防するか、又はその発症を遅延させるかのいずれかを含む。予防的利益のために、本明細書に記載される方法で使用される組成物は、脳及び/若しくはCNSがんを発症するリスクのある患者に、又はその疾患の診断がなされていない可能性があるにもかかわらず、そのような疾患の生理学的症状のうちの1つ以上を報告している患者に投与され得る。
【0049】
本明細書で使用される場合、「治療」という用語は、局所浸潤及び遠隔転移、並びにがん細胞の部分的又は完全な破壊などの、がんの成長及び伝播の部分的又は完全な阻害を含む。本明細書で使用される場合、治療には、予防的治療及び治療的処置が含まれる。「予防的」治療は、病理を発症するリスクを低下させる目的で、疾患の兆候を呈しないか、又は早期兆候のみを呈する対象に投与される治療である。本明細書に記載される方法で使用される組成物は、病理を発症する可能性を低減するか、又は発症した場合には病理の重症度を最小化するための予防的治療として与えることができる。「治療的」処置は、病理の兆候又は症状を軽減又は排除する目的で、それらの兆候又は症状を呈する対象に投与される治療である。兆候又は症状は、生化学的、細胞学的、組織学的、機能的、主観的、又は客観的であり得る。本明細書に記載される方法で使用される組成物は、治療的処置として与えることができる。
【0050】
組成物
脳又は中枢神経系(CNS)のがんの治療のための、組成物の方法及び使用であって、組成物が、
(i)5-FU、その薬学的に許容される塩、又はその薬学的に許容される類似体と、
(ii)フォリン酸又はその薬学的に許容される塩と、
(iii)シクロデキストリン、又はその薬学的に許容される塩若しくは誘導体とを含む、方法及び使用が、本明細書に開示される。
【0051】
本組成物は、WO2008/106721に最初に開示され、その内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0052】
一実施形態では、該成分の組み合わせは、約5~約9のpHで5-FUが溶液から沈殿するのを予防する。
【0053】
別の実施形態では、本明細書に記載される組成物は、均質である。
【0054】
本明細書では、文脈によって反対であることが示されるか、又は暗示されない限り、5-FUへの言及は、その薬学的に許容される塩又はその類似体への対応する言及を含むと理解され、フォリン酸への言及は、その薬学的に許容される塩又はその誘導体への対応する言及を含むと理解され、シクロデキストリンへの言及は、その薬学的に許容される塩又はその誘導体への対応する言及を含むと理解される。
【0055】
5-フルオロウラシル
5-フルオロウラシル(5-FU)は、ヌクレオシド代謝阻害剤である。5-FUは、例えば、複数の患者のための静脈内投与用の用量を含有する滅菌調製物である、薬学バルクパッケージで入手可能な、無色からかすかに黄色の、水性、滅菌、非発熱性の注射可能溶液として入手可能である。一実施形態では、各mLは、注射用水、USP中に50mgの5-FUを含有する。pHは、水酸化ナトリウムを用いて約9.2に調整され得る。化学的には、5-FUは、5-フルオロ-2,4(1H,3H)-ピリミジンジオンである。
【0056】
5-FUは、フッ素化ピリミジンであり、フルオロピリミジンと呼称される化学療法化合物のクラスに属する。
【0057】
5-FUの類似体は、本明細書に開示される方法における使用に好適である。本文脈では、5-FUの類似体は、特にヒト患者において、5-FUと同等又は類似の薬理活性、及び類似の溶解性/錯体化特性を有する化合物であるため、その類似体を用いて作製した場合、本開示による組成物中では、類似体は、溶液中に留まる。5-FUの類似体は、例えば、5-フルオロ-2’-デオキシウリジン(5-FUdr)であり得る。
【0058】
本開示の組成物中に存在する5-FUは、薬学的に許容される塩として存在し得る。「薬学的に許容される塩」とは、過度の毒性、刺激、及び/若しくはアレルギー反応、並びに/又は同様のものがなく、ヒト及び他の動物の組織と接触した状態での使用に好適であり、かつ合理的な利益/リスク比に見合った、5-FUの塩を意味する。薬学的に許容される塩は、当該技術分野で周知である。
【0059】
例えば、5-FUの好適な薬学的に許容される塩には、水酸化ナトリウムとの反応から得ることができるナトリウム塩が含まれる。
【0060】
フォリン酸
本明細書の組成物は、フォリン酸又はその薬学的に許容される塩を含む。フォリン酸は、塩、例えば、薬学的に許容される塩として投与され得る。本組成物中に存在するフォリン酸は、アルカリ金属の塩(例えば、ナトリウム若しくはカリウム)又はアルカリ土類金属の塩(例えば、マグネシウム若しくはカルシウム)として存在し得る。一実施形態では、フォリン酸は、フォリン酸カルシウム(ロイコボリンカルシウム)又はフォリン酸ナトリウム(ロイコボリンナトリウム)として存在し得る。塩は、水和物、例えば、フォリン酸カルシウム五水和物の形態にあり得る。本明細書では、ロイコボリンは、潜在的に「LV」と称され得る。
【0061】
本明細書では、フォリン酸又はその薬学的に許容される塩は、その鏡像異性体の形態のいずれかで、又はラセミ混合物として存在し得る。それは、6(S)ジアステレオマー若しくは6(R)ジアステレオマー(フォリン酸若しくはフォリナート(folinate)のグルタミン酸残基がL型であるもの)であり得るか、又はそれは、約1:1若しくは何らかの他の比などの任意の所望の比でのこれらの混合物であり得る。それは、6(S)異性体が濃縮されている、これらの混合物であり得る。それは、約51~約100%濃縮、又は約55~99%、55~95%、55~75%、55~65%、75~85%、75~95%、85~95%、若しくは75~99%濃縮、例えば、約51、52、53、54、55、60、65、70、75、80、85、90、95、96、97、98、99、若しくは100%濃縮され得る。L型のグルタミン酸残基を有する6(S)型は、薬学的に活性であることに留意されたい。
【0062】
シクロデキストリン
本開示の組成物において、シクロデキストリン(本明細書において任意選択で「CD」と略される)及び5-FUは、溶液中で錯体を形成し得る。この錯体は、「ホスト-ゲスト」又は「包接錯体」であり得る。この錯体は、さもなければ不溶性の5-FUが、約5~約8のpH値で水溶液中に可溶性であることをもたらし得る。代替的に、シクロデキストリン及び5-FUは、いくつかの他の形態の非共有結合的な相互作用を通して会合し得る。シクロデキストリン及びフォリン酸もまた、溶液中で錯体を形成し得る。この錯体は、「ホスト-ゲスト」又は「包接錯体」であり得る。5-FU及びシクロデキストリンは、非共有結合的な錯体の形態で組成物中に存在することができ、すなわち、5-FUは、シクロデキストリンに錯体化することができるが、それには共有結合しない。
【0063】
本開示に従う使用に好適なシクロデキストリンには、天然及び化学的に修飾されたシクロデキストリンが含まれる。シクロデキストリンは、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、又はそれらの誘導体若しくは薬学的に許容される塩であり得る。上記のシクロデキストリンのうちの任意の2つ以上の混合物もまた、本開示の組成物に企図される。
【0064】
組成物中で使用され得るシクロデキストリンの誘導体には、ヒドロキシ基のうちの1つ、又はいくつか、又は全てが他の官能基に変換される、シクロデキストリンが含まれ得る。結果として、シクロデキストリンの置換の程度は、変動し得る。
【0065】
一実施形態では、ヒドロキシ基のうちの1つ以上は、OR基に変換され得る。Rは、1~20個の炭素原子、又は1~15個、又は1~10個、又は1~9個、又は1~8個、又は1~7個、又は1~6個、又は1~5個、又は1~4個の炭素原子、例えば、メチル、アリル、エチル、プロピル、イソプロピル、プロパルギル、ブチル、ブタ-2-エニル、セクブチル、ペンチル、3-メチル-ペンタ-2-エニル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシルなどを有する、炭化水素基であり得る。一実施形態では、炭化水素基は、分岐鎖又は直鎖アルキル基である。炭化水素基は、Rが、ハロ置換炭化水素又はヒドロキシ置換炭化水素、例えば、ヒドロキシアルキル基であるように、1つ以上のハロ基及び/又は1つ以上のヒドロキシ基で任意選択で置換され得る。ヒドロキシアルキル基の例には、-CH2CH(OH)CH3、-CH2CH2OH、-CH2CH2CH2(OH)CH3、-CH(OH)CH2CH2CH3、及び-CH(OH)CH2CH2CH2CH3が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、シクロデキストリンは、ヒドロキシアルキルβ-シクロデキストリン、例えば、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンなど)である。
【0066】
シクロデキストリンの誘導体にはまた、カルボキシメチルシクロデキストリン、硫酸シクロデキストリン、スルホン酸シクロデキストリン、及びリン酸シクロデキストリン、又はそれらの混合物などの、アニオン性シクロデキストリンも含まれる。一実施形態では、シクロデキストリン誘導体は、硫酸化α:、β-、若しくはγ-シクロデキストリン、又はそれらの塩、例えば、ナトリウム塩であり得る。硫酸化シクロデキストリンは、ポリ硫酸化されてもよく、又は硫酸基及びヒドロキシ基の混合物を含んでもよい。一実施形態では、硫酸化シクロデキストリンは、3~20、又は3~18、又は4~16、又は4~14、又は5~13、又は5~12、又は5~11、又は6~10、又は7~9、又は9~12、又は5~10個の硫酸基を含む、β-シクロデキストリンである。硫酸基は、塩、例えば、ナトリウム塩として存在し得る。一実施形態では、シクロデキストリン誘導体は、ヘプタキス(6-O-スルホ)-β-シクロデキストリン又はその塩である。
【0067】
シクロデキストリンは、硫酸シクロデキストリン又はその塩であり得る。β-硫酸シクロデキストリンは、ナトリウム塩であり得る。別の実施形態では、β-シクロデキストリン硫酸塩は、ヘプタキス(6-O-スルホ)-β-シクロデキストリン、例えば、ナトリウム塩であり得る。
【0068】
使用され得る更なるシクロデキストリン誘導体には、スルホアルキルエーテルシクロデキストリンなどのスルホエーテルシクロデキストリンが含まれ、アルキル基は、1~15個の炭素原子、又は1~12個、又は1~10個、又は1~9個、又は1~8個、又は1~7個、又は1~6個、又は1~5個、又は1~4個の炭素原子を含む(例えば、スルホブチルβ-シクロデキストリン(Captisol(登録商標))。アルキル基は、式-(CH2)n-のものであることができ、式中、nは、1~8、又は1~7、又は1~6、又は1~5、又は1~4の数である。
【0069】
本開示の組成物中での使用に好適であり得る追加のシクロデキストリン誘導体は、“Chemical Reviews:Cyclodextrins”,V.T.D’Souza and K.B.Lipkowitz,Vol.98,No.5(American Chemical Society,1998)に開示されているものであり、これは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0070】
上記のように、シクロデキストリンの置換度は、変動し得る。したがって、好適なシクロデキストリンには、例えば、ヒドロキシ基のうちの1つ、又はいくつか、又は全てが置換されているシクロデキストリンが含まれる。置換度は、約1~20、又は約5~20、10~20、1~10、1~5、5~15、5~10、又は10~15、例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20であり得る。シクロデキストリンは、異なる置換度のシクロデキストリンの混合物であり得る。そのような場合、平均的な置換度は、約1~20、又は約5~20、10~20、1~10、1~5、5~15、5~10、又は10 5~15、例えば、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20であり得る。シクロデキストリンがヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンである一実施形態では、平均的な置換度は、約4~約12、又は約5~約10、又は約5~約9、又は約6~約8、又は約7であり得る。
【0071】
一実施形態では、本開示の組成物中で使用されるシクロデキストリンの量は、組成物中に存在する5-FUが、溶液中に維持されることを確実にするのに十分な量である。CD:5-FUのモル比は、約1:10~約3:1、又は約1:10~1:1、1:10~1:2、1:10~1:5、1:5~3:1、1:5~1:1、1:3~3:1、1:8~3:1、1:8~2:1、1:8~1:1、1:8~1:2、1:8~1:5、1:3~2:1、1:3~1:1、1:3~1.1:1、1:3~1.2:1、1:3~1.3:1、1:3~1.4:1、1:3~1.5:1、1:3~2:1.5、1:3~2.5:1、1:2.5~3:1、1:2~3:1、1:1.5~3:1、1:1.4~3:1、1:1.3~3:1、1:1.2~3:1、1:1.1~3:1、1:1~3:1、1.5:1~3:1、2:1~3:1、2.5:1~3:1、2:1~1:2、1.5:1~1:1.5、1.4:1~1:1.4、1.3:1~1:1.3、1.2:1~1:1.2、又は1.1:1~1:1.1、例えば、約1:10、1:9、1:8、1:7、1:6、1:5、1:4.5、1:4、1:3.5、1:3、1:2.5、1:2、1:1.5、1:1.4、1:1.3、1:1.2、1:1.1、1:1、1.1:1、1.2:1、1.3:1、1.4:1、1.5:1、2:1、2.5:1、又は3:1であり得る。この比は、使用される特定のCDに依存し得る。
【0072】
一実施形態では、シクロデキストリンは、β-シクロデキストリンの硫酸化ナトリウム塩、任意選択でポリ硫酸化ナトリウム塩、又は異なる硫酸化度を有する硫酸化ナトリウム塩の混合物である。別の実施形態では、シクロデキストリンは、ヒドロキシアルキルβ-シクロデキストリン、例えば、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンである。代替的に、シクロデキストリンは、異なる種類のシクロデキストリンの混合物、例えば、ヒドロキシアルキルβ-シクロデキストリン及び硫酸化β-シクロデキストリンの混合物であり得る。
【0073】
pH
本明細書に開示される組成物のpHは、約5.0~約9.0、又は約6.5~約8、又は約7.0~約7.8であり得る。
【0074】
本明細書に開示される組成物は、弱酸性若しくは中程度に酸性、中性、又は弱塩基性若しくは中程度に塩基性であり得る。本組成物のpHは、約5.0~約9.0、又は約5.0~約8.0、又は約5.0~約7.0、又は約5.5~約8.0、又は約6.0~約8.0、又は約6.5~約5 8.0、又は約7.0~約8.0、又は約7.5~約8.0、又は約7.0~約9.0、又は約7.5~7.8、又は約7.5~約7.7、又は約7.6~約7.7、又は約6.7~約7.7、又は約6.8~約7.6、又は約7.0~約7.6、又は約7.2~約7.6、又は約7.3~約7.6、又は約7.3~7.5であり得る。例えば、pHは、約、又は少なくとも約5.0、5.1、5.3、5.5、5.7、5.9、6.1、6.3、6.5、6.7、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、又は9.0であり得る。
【0075】
薬学的組成物
患者における脳又はCNSのがんの治療及び/又は予防に関する方法であって、例えば、
(i)5-FU、その薬学的に許容される塩、又はその薬学的に許容される類似体と、
(ii)フォリン酸又はその薬学的に許容される塩と、
(iii)シクロデキストリン、又はその薬学的に許容される塩若しくは誘導体とを含む、治療有効量の薬学的組成物を患者に投与することによる、方法が、本明細書に開示される。
【0076】
脳及び/又は中枢神経系のがんの治療及び/又は予防のための薬物の製造における、組成物の使用であって、組成物が、
(i)5-FU、その薬学的に許容される塩、又はその薬学的に許容される類似体と、
(ii)フォリン酸又はその薬学的に許容される塩と、
(iii)シクロデキストリン又はその薬学的に許容される塩とを含む、使用もまた、本明細書に開示される。
【0077】
いくつかの実施形態では、組成物は、がん及びその合併症を治癒するか、又は少なくとも部分的に停止させるのに十分な量で、既にがんに罹患している患者に投与され得る。本組成物は、(i)5-FU、その薬学的に許容される塩、又はその薬学的に許容される類似体、及び(ii)がんを効果的に治療するか、又は部分的に治療するのに十分なフォリン酸又はその薬学的に許容される塩の量を提供するべきである。
【0078】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法はまた、本組成物の予防的(prophylactic)又は予防的(preventative)な適用も含む。いくつかの実施形態では、本組成物は、維持療法として使用される。
【0079】
一般に、本開示の方法に従う使用に好適な組成物は、当業者に既知である方法及び手順に従って調製することができ、したがって、薬学的に許容される担体、希釈剤、及び/又はアジュバントを含み得る。希釈剤、アジュバント、及び賦形剤は、組成物の他の構成要素と適合性があるという点で「許容される」必要があり、それらのレシピエントにとって有害ではない。
【0080】
組成物は、標準的な経路又は手段によって投与され得る。一般に、本組成物は、静脈内、腹腔内、動脈内、又は局所投与され得る。それらはまた、筋肉内、皮下、又は経皮(例えば、パッチによって)投与され得る。投与は、例えば、全身であっても、局所であってもよい。任意の所与の状況で使用される特定の投与経路は、治療されているがんの種類;がんの重症度及び程度;例えば、送達される必要がある5-FU及びフォリン酸の必要投薬量;並びに任意の潜在的な副作用を含むがこれらに限定されない、いくつかの要因に依存するであろう。
【0081】
本組成物は、1つ以上の薬学的に許容される担体、希釈剤、及び/又はアジュバントを含み得る。担体は、水性担体、例えば、生理食塩水であり得る。本組成物は、水性組成物であり得る。
【0082】
薬学的に許容される担体又は希釈剤の例は、脱塩水又は蒸留水;BP又はUSP水;生理食塩水;リンガー溶液;グルコース溶液;ピーナッツ油、サフラワー油、オリーブ油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油(ピーナッツ油、サフラワー油、オリーブ油、綿実油、トウモロコシ油、ゴマ油など)、ラッカセイ油、又はココナッツ油などの植物性油;メチルポリシロキサン、フェニルポリシロキサン、及びメチルフェニルポリソルポキサンなどのポリシロキサンを含むシリコーン油;揮発性シリコーン;液体パラフィン、軟パラフィン、又はスクワランなどの鉱油;メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、又はヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース誘導体;低級アルカノール、例えば、エタノール又はイソプロパノール;低級アラルカノール;低級ポリアルキレングリコール又は低級アルキレングリコール、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、又はグリセリン;パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、又はオレイン酸エチルなどの脂肪酸エステル;ポリビニルピロリドン;寒天;カラゲナン;トラガントゴム又はアカシアゴム;並びにワセリンである。担体(複数可)は、組成物の約10重量%~約99.9重量%を形成し得る。
【0083】
本開示の組成物は、注射による投与に好適な形態、局所投与に好適な軟膏、クリーム、若しくはローションの形態、又は静脈内、腹腔内、若しくは動脈内注射による投与に好適な形態にあり得る。
【0084】
注射可能な溶液又は懸濁液としての投与では、非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は担体は、リンガー溶液、等張食塩水、グルコース溶液、蒸留水、リン酸緩衝食塩水、エタノール、及び1,2-プロピレングリコールを含み得る。
【0085】
アジュバントは、軟化剤、乳化剤、増粘剤、保存剤、殺菌剤、及び/又は緩衝剤を含み得る。
【0086】
局所製剤は、1つ以上の許容される担体、及び任意選択で任意の他の治療成分とともに、本開示の組成物を含む。局所投与に好適な製剤には、リニメント剤、ローション、クリーム、軟膏、又はペーストなどの、治療が必要とされる部位まで皮膚を貫通するのに好適な液体又は半液体調製物が含まれる。
【0087】
本開示によるローションには、皮膚への適用に好適なものが含まれる。皮膚への適用のためのローション又はリニメント剤はまた、アルコール若しくはアセトンなどの乾燥を促進し、皮膚を冷却するための薬剤、及び/又はグリセロールなどの保湿剤、又はヒマシ油若しくはラッカセイ油などの油も含み得る。
【0088】
本組成物は、ソルビタンエステル又はそれらのポリオキシエチレン誘導体などのアニオン性、カチオン性、又は非イオン性界面活性剤などの、任意の好適な界面活性剤を組み込み得る。天然ゴム、セルロース誘導体、又は無機材料(ケイ素シリカなど)などの懸濁剤、及び他の成分(ラノリンなど)も含まれ得る。
【0089】
本組成物は、溶液、例えば、水溶液の形態にあり得る。例えば、
(i)5-FU、その薬学的に許容される塩、又はその薬学的に許容される類似体、
(ii)フォリン酸又はその薬学的に許容される塩、及び
(iii)シクロデキストリン又はその薬学的に許容される塩
の構成要素のうちの1つ、2つ、又は各々は、組成物中の溶液中にあり得る。
【0090】
いくつかの実施形態では、本組成物は、均質である。いくつかの実施形態では、本組成物は、固体物質を含有しなくてもよい。したがって、上記の(i)、(ii)、及び(iii)の構成要素の各々は、組成物中の溶液中に完全に存在し得る。
【0091】
本組成物は、相乗的組成物であり得る。
【0092】
可能性のある組成物の例は、本明細書に提供されている。文脈によって又は特定の使用法によって指示されない限り、これらの例示的な組成物は、本明細書に記載される方法及び/若しくは治療に利用することができるか、又は本明細書に記載される方法及び/若しくは治療のための薬物の形成に使用することができる。
【0093】
別の実施形態では、組成物であって、
(i)5-FU、又はその薬学的に許容される塩若しくは類似体と、
(ii)フォリン酸又はその薬学的に許容される塩と、
(iii)シクロデキストリン、又はその薬学的に許容される塩若しくは誘導体と、
(iv)薬学的に許容される担体とを含むか、又はそれらからなり、
(i)、(ii)、及び(iii)が、(iv)中に溶解する、組成物が提供される。加えて、シクロデキストリンは、ヒドロキシアルキルβ-シクロデキストリン及び硫酸化β-シクロデキストリン、又はそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。ヒドロキシアルキルβ-シクロデキストリンは、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、又はより具体的には2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンであり得る。
【0094】
本明細書に開示される組成物の調製では、具体的に又は文脈によって指示されない限り、組成物を調製するときには、構成要素(i)、(ii)、(iii)、及び(iv)は、任意の順序で混合され得ることに留意されたい。加えて、具体的に又は文脈によって指示されない限り、更なる構成要素は、構成要素(i)、(ii)、(iii)、及び(iv)のうちの1つ以上を含む任意のステップの前、最中、又は後に添加又は導入され得る。
【0095】
別の実施形態では、組成物であって、
(i)約1~約50mg/mlの濃度の5-FU、又はその薬学的に許容される塩若しくは類似体と、
(ii)約0.1~約5mg/mlの濃度のフォリン酸又はその薬学的に許容される塩と、
(iii)約10~約300mg/mlの濃度のシクロデキストリン、又はその薬学的に許容される塩若しくは誘導体と、
(iv)薬学的に許容される担体とを含むか、又はそれらからなり、
(i)、(ii)、及び(iii)が、(iv)中に溶解する、組成物が提供される。
【0096】
別の実施形態では、組成物であって、
(i)約10~約20mg/mlの濃度の5-FU、又はその薬学的に許容される塩若しくは類似体と、
(ii)約0.5~約2mg/mlの濃度のフォリン酸又はその薬学的に許容される塩と、
(iii)約20~約200mg/mlの濃度のシクロデキストリン、又はその薬学的に許容される塩若しくは誘導体と、
(iv)薬学的に許容される担体とを含むか、又はそれらからなり、
(i)、(ii)、及び(iii)が、(iv)中に溶解する、組成物が提供される。シクロデキストリンは、ヒドロキシアルキルβ-シクロデキストリン及び硫酸化β-シクロデキストリン、又はそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。ヒドロキシアルキルβ-シクロデキストリンは、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンであり得る。
【0097】
別の実施形態では、組成物であって、
(i)約15mg/mlの濃度の5-FUと、
(ii)約1mg/mlの濃度のフォリン酸カルシウム塩と、
(iii)約45mg/mlの濃度のβ-シクロデキストリン硫酸塩と、
(iv)薬学的に許容される担体とを含むか、又はそれらからなり、
(i)、(ii)、及び(iii)が、(iv)中に溶解する、組成物が提供される。
【0098】
別の実施形態では、組成物であって、
(i)約15mg/mlの濃度の5-FUと、
(ii)約1mg/mlの濃度のフォリン酸カルシウム塩と、
(iii)約175mg/mlの濃度のβ-シクロデキストリン硫酸塩と、
(iv)薬学的に許容される担体とを含むか、又はそれらからなり、
(i)、(ii)、及び(iii)が、(iv)中に溶解する、組成物が提供される。
【0099】
別の実施形態では、組成物であって、
(i)約45mg/mlの濃度の5-FUと、
(ii)約1mg/mlの濃度のフォリン酸カルシウム塩と、
(iii)約45mg/mlの濃度のβ-シクロデキストリン硫酸塩と、
(iv)薬学的に許容される担体とを含むか、又はそれらからなり、
(i)、(ii)、及び(iii)が、(iv)中に溶解する、組成物が提供される。β-シクロデキストリン硫酸塩は、6~14個の硫酸基を含み得る。薬学的に許容される担体は、0.9%の生理食塩水であり得る。
【0100】
別の実施形態では、組成物であって、
(i)約15mg/mlの濃度の5-FUと、
(ii)約1mg/mlの濃度のフォリン酸カルシウム塩と、
(iii)約100mg/mLの濃度の2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンと、
(iv)薬学的に許容される担体とを含むか、又はそれらからなり、
(i)、(ii)、及び(iii)が、(iv)中に溶解する、組成物が提供される。薬学的に許容される担体は、0.9%の生理食塩水であり得る。
【0101】
別の実施形態では、組成物であって、
(i)約15mg/mlの濃度の5-FUと、
(ii)約1mg/mlの濃度のフォリン酸カルシウム塩と、
(iii)約50mg/mlの濃度のヘプタキス(6-O-スルホ)-P-シクロデキストリン塩と、
(iv)薬学的に許容される担体とを含むか、又はそれらからなり、
(i)、(ii)、及び(iii)が、(iv)中に溶解する、組成物が提供される。薬学的に許容される担体は、0.9%の生理食塩水であり得る。ヘプタキス(6-O-スルホ)-β-シクロデキストリン塩は、ナトリウム塩であり得る。
【0102】
投薬量
いくつかの実施形態では、組成物は、がん及びその合併症を治癒するか、又は少なくとも部分的に停止させるのに十分な量で、既にがんに罹患している患者に投与され得る。本組成物は、(i)5-FU、その薬学的に許容される塩、又はその薬学的に許容される類似体、及び(ii)がんを効果的に治療するのに十分なフォリン酸又はその薬学的に許容される塩の量を提供するべきである。
【0103】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法、組成物、及び使用はまた、好適な有効用量の組成物の予防的(prophylactic)又は予防的(preventative)な適用も含むか、又はそれに関連する。いくつかの実施形態では、本組成物は、適切な有効用量で、維持療法として使用される。
【0104】
任意の特定の患者又は対象の治療有効用量レベルは、例えば、治療されているがん及び/又はがんの重症度、患者の年齢、体重、一般的な健康状態、性別、及び食事、投与時間、投与経路、治療期間、治療と組み合わせて又はそれと同時に使用される薬物、並びに医学で周知の他の関連する要因を含む、当業者が精通する様々な要因に依存するであろう。しかしながら、任意の特定の患者の特定の用量レベル及び投薬頻度は、変動する可能性があり、用いられる特定の化合物の活性、その化合物の代謝安定性及び作用の長さ、年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食事、投与の様式及び時間、排出速度、薬物の組み合わせ、特定の病態の重症度、患者の体表面積、患者が療法を受けているかどうか、並びに任意の特定の禁忌を含む、様々な要因に依存することが理解されるであろう。
【0105】
上記の要因を考慮して、当業者であれば、彼らの一般常識に従った通例の実験によって、本開示の疾患及び病態のうちの1つ以上の予防及び/又は治療に必要とされる組成物の有効で無毒な量を決定することができるであろう。例えば、治療用途では、患者には、彼らの体表面積に基づく最大安全用量が(例えば、静脈内)投与され得る。いくつかの実施形態では、最大安全用量は、例えば、ボーラス用量として静脈内投与されてもよく、これは、注入又は注射によって与えることができ、その後にIV注入が続く。
【0106】
いくつかの実施形態では、本組成物は、静脈内(IV)ボーラス及び/又はIV注入のいずれかとして投与される。いくつかの実施形態では、本組成物は、ボーラスIV、ボーラスIVの後にIV注入、又はIV注入レジメンを介して投与され得る。例えば、いくつかの実施形態では、本組成物は、ボーラスIV、又はボーラスIVの後にIV注入として、例えば、約24時間~約48時間の期間にわたって投与され得る。代替的に、いくつかの実施形態では、本組成物は、IV注入のみとして投与され得る。IV注入管理体制は、例えば、約24時間~約48時間以内の任意の期間を含む時間枠で変動し得る。
【0107】
いくつかの実施形態では、本明細書で定義される組成物は、約400mg/m2~約3000mg/m2又は約3500mg/m2、例えば、450、475、500、又は525 00mg/m2~約3000mg/m2又は約3500mg/m2の用量で(例えば、ボーラスIV及び/又はIV注入として)投与され得る。例えば、約、又は少なくとも約400mg/m2、425mg/m2、450mg/m2、475mg/m2、500mg/m2、525mg/m2、550mg/m2、575mg/m2、600mg/m2、700mg/m2、800mg/m2、900mg/m2、1000mg/m2、1100mg/m2、1200mg/m2、1300mg/m2、1400mg/m2、1500mg/m2、1600mg/m2、1700mg/m2、1800mg/m2、1900mg/m2、2000mg/m2、2100mg/m2、2200mg/m2、2300mg/m2、2400mg/m2、2500mg/m2、2600mg/m2、2700mg/m2、2800mg/m2、2900mg/m2、3000mg/m2、3100mg/m2、3200mg/m2、3300mg/m2、3400mg/m2、3500mg/m2、3600mg/m2、3700mg/m2、若しくは3800mg/m2、又はこれらの値のうちの2つを使用する任意の範囲の用量である。
【0108】
別の実施形態では、5-FU、その薬学的に許容される塩、又はその薬学的に許容される類似体の有効投薬量は、24時間当たり体重1kg当たり約0.0001mg~約1000mg、例えば、24時間当たり体重1kg当たり約0.001mg~約750mg、24時間当たり体重1kg当たり約0.01mg~約500mg、24時間当たり体重1kg当たり約0.1mg~約500mg、24時間当たり体重1kg当たり0.1mg~約250mg、24時間当たり体重1kg当たり約1.0mg~約250mgの範囲内にあり得る。代替的に、有効用量範囲は、24時間当たり体重1kg当たり約1.0mg~約200mg、24時間当たり体重1kg当たり約1.0mg~約100mg、24時間当たり体重1kg当たり約1.0mg~約50mg、24時間当たり体重1kg当たり約1.0mg~約25mg、24時間当たり体重1kg当たり約5.0mg~約50mg、24時間当たり体重1kg当たり約5.0mg~約20mg、24時間当たり体重1kg当たり約5.0mg~約15mg、又は24時間当たり体重1kg当たり約5.0mg~約10.0mgの範囲内にあり得る。
【0109】
更に別の実施形態では、フォリン酸又はその薬学的に許容される塩の有効投薬量は、24時間当たり体重1kg当たり約0.0001mg~約1000mg、例えば、24時間当たり体重1kg当たり約0.001mg~約750mg、24時間当たり体重1kg当たり約0.01mg~約500mg、24時間当たり体重1kg当たり約0.1mg~約500mg、24時間当たり体重1kg当たり0.1mg~約250mg、24時間当たり体重1kg当たり約1.0mg~約250mgの範囲内にあり得る。代替的に、有効用量範囲は、24時間当たり体重1kg当たり約1.0mg~約200mg、24時間当たり体重1kg当たり約1.0mg~約100mg、24時間当たり体重1kg当たり約1.0mg~約50mg、24時間当たり体重1kg当たり約1.0mg~約25mg、24時間当たり体重1kg当たり約5.0mg~約50mg、24時間当たり体重1kg当たり約5.0mg~約20mg、24時間当たり体重1kg当たり約5.0mg~約15mgの範囲内にあり得る。それは、低用量又は高用量のフォリン酸組成物であり得る。
【0110】
本開示による組成物中では、5-FU、その薬学的に許容される塩、又はその薬学的に許容される類似体、及びフォリン酸又はその薬学的に許容される塩は、薬学的に有効な濃度で存在し得る。5-FU、その薬学的に許容される塩、又はその薬学的に許容される類似体は、約1~約50mg/ml、又は約1~40、1~30、1~20、1~10、1~5、5~50、10~50、20~50、5~30、5~20、又は10~20mg/ml、例えば、約、又は少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、又は50mg/mlの濃度で存在し得る。フォリン酸又はその薬学的に許容される塩は、約0.1~約25mg/ml、又は約0.1~約15mg/ml、又は約0.1~約12mg/mlの濃度で存在し得る。代替的に、フォリン酸又はその薬学的に許容される塩は、約0.01~約25mg/ml、又は約0.01~25、0.1~20、0.1~15、0.1~10、0.1~5、0.1~2、0.1~1、1~25、5~25、10~25、15~25、1~15、1~10、1~5、0.5~5、0.5~2、5~20、5~10、又は10~20mg/ml、例えば、約、又は少なくとも約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、又は25mg/mlの濃度で存在し得る。一実施形態では、5-FUは、約15mg/mlの濃度で存在し、フォリン酸は、約1mg/mlの量で存在する。
【0111】
別の実施形態では、5-FU、その薬学的に許容される塩、又はその薬学的に許容される類似体と、フォリン酸又はその薬学的に許容される塩との濃度の比は、約、又は少なくとも約20:1、19:1、18:1、17:1、16:1、15:1、14:1、13:1、12:1、11:1、10:1、9:1、8:1、7:1、6:1、5:1、4:1、3:1、2:1、又は1:1である。一実施形態では、5-FU対フォリン酸の濃度の比は、約、又は少なくとも約15:1である。
【0112】
本明細書では、CD又はその薬学的に許容される塩は、約1~約300mg/ml、又は約1~250、1~200、1~150、1~100、1~50、1~20、1~10、5~300、5~250、5~200、5~150、5~100、5~50、5~20、5~10、10~300、20~300、30~300、40~300、50~300、100~300、200~300、50~200、5~100、45~125、25~100、50~100、又は100~200mg/ml、例えば、約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100、150、200、250、又は300mg/mlの濃度で存在し得る。
【0113】
典型的には、治療用途では、治療は、脳がん又はCNSがんの期間にわたって行われ、維持のために継続され得る。
【0114】
更に、個々の投薬量の最適な量及び間隔は、治療されているがんの性質及び程度、投与形態、経路、及び部位、並びに治療されている特定の個体の性質によって決定されることが、当業者には明らかであろう。また、そのような最適条件は、従来の技術によって決定され得る。
【0115】
定義された日数にわたって1日当たりに与えられる組成物の用量の数などの最適な治療経過は、当業者であれば、従来の治療経過決定試験を使用して確認することができることもまた、当業者には明らかであろう。
【0116】
当業者は、本開示の方法及び使用に従って、本組成物が、単独で、又は併用化学療法の一部として1つ以上の追加の薬剤と組み合わせて投与され得ることを理解するであろう。例えば、本組成物は、細胞増殖及び浸潤を低下させ、がんにおけるアポトーシスを増加させることができる、1つ以上の追加の化合物とともに投与され得る。
【0117】
いくつかの実施形態では、本開示による治療及び/又は予防方法は、標準的な化学療法剤と組み合わせて適用され得る。化学療法剤は、例えば、オキサリプラチン、シスプラチン、アントラサイクリン、タキサン、及び/又はカンプトテシンから選択され得る。いくつかの実施形態では、化学療法剤は、EGFR阻害剤であり得る。いくつかの実施形態では、化学療法剤は、免疫チェックポイント阻害剤であり得る。いくつかの実施形態では、化学療法剤は、免疫調節剤(例えば、アテゾリズマブ、アベルマブイピリムマブ、ベバシズマブ、セミプリマブ、デュルバルマブ、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、及び/又はピディリズマブ)のうちの1つ以上である。いくつかの実施形態では、化学療法剤は、テモゾロミド、ダカルバジン、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、エトポシド、テニポシド、トポテカン、イリノテカン、ドキソルビシン、ダウノマイシン、エピルビシン、イダルビシン、メトトレキサート、シタラビン、ゲムシチビン、カペシタビン、シスプラチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、オキサリプラチン、又はそれらの混合物から選択される。
【0118】
そのような併用療法では、併用療法の各構成要素は、所望の効果を提供するように、任意の順序で、同時に又は異なる時間に、連続的に投与され得る。代替的に、化学療法剤は、組成物と同じ製剤中で投与されるように製剤化され得る。
【0119】
本開示の方法及び使用の治療上の利点はまた、放射線療法、化学療法、手術、又は他の形態の医療介入などの従来の療法と組み合わせた併用レジメンを通しても実現され得る。
【0120】
いくつかの実施形態では、従来の療法は、放射線療法であり、これは、テモゾロミド又は上記のものなどの任意の他の化学療法剤とともに、又はそれなしで投与され得る。テモゾロミド又は任意の他の化学療法剤は、所望の効果を提供するように、任意の順序で、組成物と同時に又は異なる時間に、連続的に投与され得る。代替的に、テモゾロミド又は任意の他の化学療法剤は、組成物と同じ製剤中で投与されるように製剤化され得る。
【0121】
合成方法
本明細書に記載される方法に使用するための組成物は、当該技術分野で既知の適切な方法を使用して製剤化され得る。
【0122】
一実施形態では、本開示の組成物は、固体の5-FU(例えば、15mg)、食塩水(例えば、0.9%w/v、0.87ml)、水酸化ナトリウム溶液(例えば、0.9M、30μL)、及びシクロデキストリン(例えば、シクロデキストリン残基当たり9~12個の硫酸の混合物としてのβ-シクロデキストリン硫酸化ナトリウム塩、45mg)を、混合することによって調製され得る。結果として得られた懸濁液は、5-FUのほぼ全てが溶解するまで約30~60℃で超音波処理され得る。その後、0.9%w/vの食塩水中のフォリン酸の溶液(例えば、フォリン酸カルシウム(1mg:10mg/mL)を添加してもよく、混合物を、均質な溶液が形成されるまで30~60℃で超音波処理に供してもよい。超音波処理が使用される場合、超音波処理の温度は、約30~50℃、30~40℃、40~60℃、40~60℃、40~50℃、例えば、約30、35、40、45、50、55、又は60℃であり得るか、又は60℃超若しくは30℃未満であり得る。
【0123】
均質な、又は実質的に均質な溶液を冷却し、室温で、例えば、約1時間静置させてもよい。次いで、溶液を無菌条件下で濾過し、光の不在下、室温で保管してもよい。溶液のpHは、約7.3~約7.5であり得る。
【0124】
代替的に、本開示の組成物は、シクロデキストリン(例えば、β-シクロデキストリン硫酸化ナトリウム塩又は2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)を水中に溶解し、5-FUの溶液(例えば、5-フルオロウラシル注射BP、50mg/mL)及びフォリン酸の溶液(例えば、約200μLの10mg/mL溶液)を添加することによって調製され得る。したがって、製剤1mL当たり300μLの上記の溶液を使用して、15mg/mLの5-FUの最終濃度を得ることができる。結果として得られた溶液を撹拌して、混合を促進する。次いで、必要に応じて酸(例えば、HCl)を添加して、pHを7.4±0.1にしてもよい。次いで、溶液を無菌条件下で濾過し、光の不在下、室温で保管してもよい。
【0125】
一実施形態では、本開示の方法で使用され、使用される組成物を作製するための好適なプロセスは、
(i)5-FU、又はその薬学的に許容される塩若しくは類似体と、
(ii)フォリン酸又はその薬学的に許容される塩と、
(iii)シクロデキストリン、又はその薬学的に許容される塩若しくは誘導体とを組み合わせることを含み、
構成要素の濃度及び同一性は、以下に記載される通りであり得る。
【0126】
プロセスは、例えば、(i)を(iii)と組み合わせ、次いで(ii)を混合することを含み得る。代替的に、プロセスは、例えば、(ii)を(iii)と組み合わせ、次いで結果として得られた混合物を(i)と混合することを含み得る。(ii)を混合するとき、(ii)は、溶液中、任意選択で水溶液中にあり得る。具体的に又は文脈によって指示されない限り、本明細書に開示されるプロセスでは、構成要素(i)、(ii)、及び(iii)は、任意の順序で混合され得る。加えて、具体的に又は文脈によって指示されない限り、更なる構成要素は、構成要素(i)、(ii)、及び(iii)のうちの1つ以上を含む任意のステップの前、最中、又は後に添加又は導入され得る。
【0127】
プロセスはまた、組成物を滅菌することも含み得る。滅菌は、濾過(例えば、精密濾過)、紫外線照射、ガンマ線、いくつかの他の形態の滅菌照射、又はいくつかの他の形態の滅菌を含み得る。滅菌は、上記の(i)~(iii)のいずれの構成要素も損傷又は劣化させないように実行され得る。したがって、滅菌照射(紫外線、ガンマ線、又は他のもの)は、使用される場合、組成物を滅菌するのに十分に高いが、指定の構成要素の損傷又は劣化を回避するのに十分に低い線量でなければならない。
【0128】
一実施形態では、(i)及び(iii)を、担体、任意選択で水性担体の存在下で組み合わせて、混合物を形成し、(ii)を、その混合物と混合する。混合物は、溶液、任意選択で水溶液であり得る。担体は、溶媒、任意選択で水性溶媒、例えば、生理食塩水であってもよく、(i)及び(iii)は独立して、担体中に部分的に可溶性、任意選択で控えめに可溶性であってもよい。(i)及び(iii)を担体の存在下で組み合わせて、混合物を形成した後、その混合物を撹拌して、(i)及び(iii)を担体中に少なくとも部分的に溶解させてもよい。溶解は、(i)と(iii)との間の非共有結合的な錯体の形成を含み得る。撹拌(agitation)は、撹拌(stirring)、回旋、振盪、超音波処理、又はそれらの2つ以上の組み合わせを含み得る。撹拌は、高温、例えば、約30~約60℃で実行され得る。本組成物は、(ii)の添加後に撹拌され得る。撹拌は、上記のようなものであり得る。
【0129】
別の実施形態では、組成物を作製するためのプロセスであって、
・5-FU、又はその薬学的に許容される塩若しくは類似体、及びシクロデキストリン、又はその薬学的に許容される塩若しくは誘導体を、水性溶媒の存在下で組み合わせて、混合物を形成することと、
・混合物を任意選択で撹拌し、任意選択で加熱して、溶液を形成することと、
・フォリン酸又はその薬学的に許容される塩の水溶液を、その溶液に添加して、組成物を形成することとを含む、プロセスが提供される。
【0130】
水溶液を添加するステップは、5-FU、又はその塩若しくは類似体、シクロデキストリン、又はその塩若しくは誘導体、及びフォリン酸又はその塩が全て組成物中の溶液中に存在する組成物を形成するように、任意選択で、組成物に固体物質が存在しないように、実行され得る。本組成物は、水溶液を添加するステップの後、任意選択で撹拌され、任意選択で加熱され得る。本組成物の撹拌は、組成物を均質にするか、又は組成物の構成要素の全てが完全に溶液中にあることを確実にするのに十分であり得る。
【0131】
別の実施形態では、組成物を作製するためのプロセスであって、
・5-FU、又はその薬学的に許容される塩若しくは類似体、及びシクロデキストリン、又はその薬学的に許容される塩若しくは誘導体を、水性溶媒の存在下で組み合わせて、混合物を形成することと、
・混合物を任意選択で撹拌し、任意選択で加熱して、溶液を形成することと、
・フォリン酸又はその薬学的に許容される塩の水溶液を、その溶液に添加して、組成物を形成することと、
・全ての構成要素が溶液中にあることを確実にするのに十分な組成物を撹拌し、任意選択で加熱することと、
・組成物を滅菌することとを含む、プロセスが提供される。
【0132】
別の実施形態では、組成物を作製するためのプロセスであって、
・最終組成物1ml当たり約5~約50mgの量の5-FU、又はその薬学的に許容される塩若しくは類似体、及び最終組成物1ml当たり約20~約200mgの量のシクロデキストリン、又はその薬学的に許容される塩若しくは誘導体を、水性溶媒の存在下で組み合わせて、混合物を形成することと、
・混合物を任意選択で撹拌し、任意選択で加熱して、溶液を形成することと、
・約5~20mg/mlの濃度及び最終組成物1ml当たり約50~約200μLの量のフォリン酸又はその薬学的に許容される塩の水溶液を、溶液に添加して、組成物を形成することと、
・全ての構成要素が溶液中にあることを確実にするのに十分な組成物を撹拌し、任意選択で加熱することと、
・組成物を滅菌することとを含む、プロセスが提供される。
【0133】
治療方法
本開示は、治療有効量の組成物を患者に投与することによる、患者における脳及び/又は中枢神経系(CNS)のがんの治療及び/又は予防であって、組成物が、
(i)5-フルオロウラシル(5-FU)、その薬学的に許容される塩、又はその薬学的に許容される類似体と、
(ii)フォリン酸又はその薬学的に許容される塩と、
(iii)シクロデキストリン又はその薬学的に許容される塩とを含む、治療及び/又は予防に関する。
【0134】
また、そのような治療を必要とする対象において、脳新生物のサイズを低減するか、又は脳新生物の成長を緩徐化する方法であって、対象に、
(i)5-フルオロウラシル(5-FU)、又はその類似体若しくは薬学的に許容される塩と、
(ii)フォリン酸又はその薬学的に許容される塩と、
(iii)シクロデキストリン又はその薬学的に許容される塩とを含む、有効量の組成物を投与することを含む方法も、本明細書に開示される。
【0135】
本明細書で使用される場合、「脳」は、脊椎動物の脳固有及び脊髄の全ての細胞及び組織を含むように、広範に、かつ「中枢神経系」と同義に定義される。したがって、「脳」という用語には、神経細胞、膠細胞、星状細胞、脳脊髄液(CSF)、間質腔、脳被膜、骨、軟骨などが含まれるが、これらに限定されない。「頭蓋腔」は、頭蓋骨(頭蓋)の下の任意の領域を指し、「頭蓋内」は、血管内腔を除いた頭蓋腔の任意の部分に直接送達又は提供されることを指す。例えば、注射、注入を介した脳へのそのような直接投与のための当該技術分野で既知の任意の手段は、本発明を実施するのに好適である。
【0136】
本開示の方法が治療及び/又は予防に有用であるがんには、脳内又は脳周囲で発生する原発性腫瘍及び/又は転移の両方を含む、脳内又は周囲の脳腫瘍及び他の新生物が含まれる。それはまた、体内の他の場所に遊走する脳腫瘍の転移も意味し得る。多くの種類のそのような腫瘍及び新生物が、既知である。原発性脳腫瘍には、神経膠腫、髄膜腫、神経鞘腫、下垂体腺腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、血管腫、類表皮、肉腫などが含まれる。全ての頭蓋内腫瘍のうち50パーセントが、頭蓋内転移である。本明細書で使用される場合、腫瘍及び新生物は、脳及び神経組織に関連し得るか、又はそれらは、髄膜、頭蓋骨、脈管構造、若しくは頭頸部の任意の他の組織に関連し得る。そのような腫瘍は、一般的に固形腫瘍であるか、又はそれらは、集積が頭部に局在するびまん性腫瘍である。本発明による治療のための腫瘍又は新生物は、悪性であっても、良性であってもよく、化学療法、放射線、及び/又は他の治療で以前に治療されていてもよい。
【0137】
特に、本開示の方法は、神経膠腫、神経膠芽腫、多形神経膠芽腫、乏突起神経膠腫、原始神経外胚葉性腫瘍、低悪性度、中悪性度、及び高悪性度の星状細胞腫、上衣腫(例えば、粘液乳頭状上衣腫、乳頭状上衣腫、上衣下腫、未分化上衣腫)、乏突起神経膠腫、髄芽腫、髄膜腫、下垂体腺腫、神経芽細胞腫、神経線維腫、悪性末梢神経鞘腫瘍、シュワン腫、並びに頭蓋咽頭腫を含むがこれらに限定されない、脳及び神経系がんの予防、治療、及び/又は管理に好適である。
【0138】
例示的な脳腫瘍には、神経膠腫(星状細胞腫(例えば、毛様細胞性星状細胞腫、びまん性星状細胞腫、及び未分化星状細胞腫を含む))、神経膠芽腫、乏突起神経膠腫、脳幹神経膠腫、非脳幹神経膠腫、上衣腫、並びに2つ以上の膠細胞型を含む混合腫瘍が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、好適ながんには、神経膠芽腫、星状細胞腫(例えば、多形神経膠芽腫)、及び上衣腫などの原発性CNS腫瘍、並びに二次CNS腫瘍(すなわち、中枢神経系外に起源をもつ腫瘍の中枢神経系への転移)を含む、中枢神経系腫瘍が挙げられる。いくつかの実施形態では、脳腫瘍は、神経膠腫、脳幹神経膠腫、小脳若しくは大脳星状細胞腫(例えば、毛様細胞性星状細胞腫、びまん性星状細胞腫、若しくは未分化(悪性)星状細胞腫)、悪性神経膠腫、上衣腫、乏突起神経膠腫(oligodendrioma)、髄膜腫、頭蓋咽頭腫、血管芽細胞腫、髄芽腫、テント上原始性神経外胚葉性腫瘍、視覚路及び視床下部神経膠腫、又は神経膠芽腫である。いくつかの実施形態では、脳腫瘍は、神経膠芽腫(多形神経膠芽腫又はグレード4星状細胞腫とも呼ばれる)である。いくつかの実施形態では、神経膠芽腫は、放射線耐性である。いくつかの実施形態では、神経膠芽腫は、放射線感受性である。いくつかの実施形態では、神経膠芽腫は、実質的な神経膠芽腫であり得る。いくつかの実施形態では、神経膠芽腫は、テント上神経膠芽腫である。
【0139】
神経膠腫は、脳の膠細胞組織から生じる任意の腫瘍であり得る。いくつかの実施形態では、神経膠腫は、上衣腫、星状細胞腫、乏突起神経膠腫、脳幹神経膠腫、視神経神経膠腫、大脳神経膠腫症、又は混合神経膠腫であり得る。
【0140】
一実施形態では、上衣腫を治療及び/又は予防する方法が、本明細書に提供される。
【0141】
上衣腫は、脳及び脊髄の中心を覆う上衣細胞から生じ得る。上衣腫には、上衣下腫(グレードI)、粘液乳頭状上衣腫(グレードI)、上衣腫(グレードII)、及び未分化上衣腫(グレードIII)が含まれるが、これらに限定されない。上衣腫(グレードII)には、細胞性上衣腫、乳頭状上衣腫、明細胞上衣腫、及び伸長細胞性(tancytic)上衣腫が含まれるが、これらに限定されない。
【0142】
いくつかのそのような実施形態では、上衣腫は、小児上衣腫である。
【0143】
いくつかの実施形態では、治療及び/又は予防される神経系がんは、神経膠芽腫である。いくつかの実施形態では、神経膠芽腫は、多形神経膠芽腫又はグレード4星状細胞腫である。いくつかの実施形態では、神経膠芽腫は、放射線耐性である。いくつかの実施形態では、神経膠芽腫は、放射線感受性である。いくつかの実施形態では、神経膠芽腫は、実質的な神経膠芽腫であり得る。いくつかの実施形態では、神経膠芽腫は、テント上神経膠芽腫である。
【0144】
いくつかの実施形態では、再発性又は難治性の脳又はCNS腫瘍を治療及び/又は予防するための方法が、本明細書に提供される。一実施形態では、CNS外に起源をもつ腫瘍の中枢神経系への転移を治療及び/又は予防するための方法が、本明細書に提供される。
【0145】
投与方法
いくつかの用途では、本明細書で定義される組成物(又は本明細書で定義される組成物から製造された薬物)は、がん及びその合併症を治癒するか、又は少なくとも部分的に停止させるのに十分な量で、既にがんに罹患している患者に投与される。例えば、本組成物は、(i)5-FU、その薬学的に許容される塩、又はその薬学的に許容される類似体、及び(ii)がんを効果的に治療するのに十分なフォリン酸又はその薬学的に許容される塩の量を提供するべきである。
【0146】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される方法はまた、本組成物の予防的(prophylactic)又は予防的(preventative)な適用も含む。いくつかの実施形態では、本組成物は、維持療法として使用される。
【0147】
一実施形態では、治療及び/又は予防される疾患、並びに対象の病態に応じて、本組成物は、経口、非経口(例えば、筋肉内、腹腔内、静脈内、CIV、槽内(intracistemal)注射若しくは注入、皮下注射)、吸入、鼻腔、腟内、直腸内、舌下、又は局所(例えば、経皮)投与経路によって投与され得る。本組成物は、単独で、又は1つ以上の活性薬剤とともに、各投与経路に適切な、薬学的に許容される賦形剤、担体、アジュバント、及びビヒクルを有する好適な投薬単位で製剤化され得る。
【0148】
いくつかの好ましい実施形態では、本組成物は、例えば、静脈内(IV)又は皮下経路によって投与される。一実施形態では、本組成物は、例えば、血管への注入又は注射によって、静脈内投与される。いくつかの実施形態では、本組成物は、ボーラスIV及び/又はIV注入を介して投与される。いくつかの実施形態では、IV注入は、連続IV注入である。
【0149】
一実施形態では、本明細書に提供される方法で投与される組成物の量は、例えば、約5mg/日~約2,000mg/日の範囲であり得る。例示的な範囲には、約10mg/日~約2,000mg/日、約20mg/日~約2,000mg/日、約50mg/日~約1,000mg/日、約100mg/日~約1,000mg/日、約100mg/日~約500mg/日、約150mg/日~約500mg/日、又は約150mg/日~約250mg/日が挙げられる。特定の実施形態では、特定の投薬量は、約、又は最大約10mg/日、20mg/日、50mg/日、75mg/日、100mg/日、120mg/日、150mg/日、200mg/日、250mg/日、300mg/日、350mg/日、400mg/日、450mg/日、500mg/日、600mg/日、700mg/日、800mg/日、900mg/日、1,000mg/日、1,200mg/日、又は1,500mg/日である。
【0150】
一実施形態では、本明細書に提供される薬学的組成物又は剤形中の組成物の量は、例えば、約5mg~約2,000mg、10mg~約2,000mg、約20mg~約2,000mg、約50mg~約1,000mg、約50mg~約500mg、約50mg~約250mg、約100mg~約500mg、約150mg~約500mg、又は約150mg~約250mgの範囲であり得る。特定の実施形態では、特定の投薬量は、約、又は最大約10mg/日、20mg/日、50mg/日、75mg/日、100mg/日、120mg/日、150mg/日、200mg/日、250mg/日、300mg/日、350mg/日、400mg/日、450mg/日、500mg/日、600mg/日、700mg/日、800mg/日、900mg/日、1,000mg/日、1,200mg/日、又は1,500mg/日である。
【0151】
一実施形態では、本組成物は、例えば、単回ボーラス注射、又は経口錠剤若しくは丸薬などの単回用量として、あるいは例えば、経時的な連続注入又は経時的な分割ボーラス用量など経時的に送達され得る。一実施形態では、本組成物は、必要に応じて、例えば、患者が安定した疾患若しくは退行を経験するまで、又は患者が疾患の進行若しくは許容できない毒性を経験するまで、繰り返し投与され得る。安定した疾患又はその欠如は、患者の症状の評価、身体検査、X線、CAT、PET、又はMRIスキャンを使用して撮像されている腫瘍の視覚化、及び他の一般的に許容される評価様式などの当該技術分野で既知の方法によって決定される。
【0152】
特定の実施形態では、本組成物は、サイクル(例えば、1週間の毎日の投与、次いで最大3週間の投与を伴わない休止期間)で患者に投与される。サイクリング療法は、一定期間にわたって活性薬剤を投与し、その後に一定期間にわたる休止が続き、この連続投与を反復することを伴う。サイクリング療法は、耐性の進行を低減し、副作用を回避若しくは低減し、かつ/又は治療の有効性を改善することができる。
【0153】
一実施形態では、本明細書に提供される方法は、組成物を、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、又は40回を超えるサイクルで投与することを含む。一実施形態では、患者群において投与されるサイクル数の中央値は、約、又は少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40回である。
【0154】
特定の実施形態では、治療サイクルは、複数日(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は14日超)にわたる、組成物を必要とする対象に投与される組成物の複数回用量を含み、その後に任意選択で治療投薬休薬日(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、又は28日超)が続く。
【0155】
特定の実施形態では、治療サイクルは、複数日(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は14日超)にわたる、組成物を必要とする対象に投与される組成物の複数回用量を含み、その後に任意選択で治療投薬休薬日(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、又は28日超)が続く。本明細書に提供される方法に好適な投薬量には、例えば、治療有効量及び予防有効量が含まれる。特定の実施形態では、本明細書に提供される方法で投与される組成物の量は、例えば、50mg/m2/日~約2,000mg/m2/日、例えば、約100mg/m2/日~約1,000mg/m2/日、約100mg/m2/日~約500mg/m2/日、約50mg/m2/日~約500mg/m2/日、約50mg/m2/日~約200mg/m2/日、約50mg/m2/日~約100mg/m2/日、約50mg/m2/日~約75mg/m2/日、又は約120mg/m2/日~約250mg/m2/日の範囲であり得る。特定の実施形態では、特定の投薬量は、約、又は最大約50、60、75、80、100、120、140、150、180、200、220、240、250、260、280、300、320、350、380、400、450、又は500mg/m2/日である。
【0156】
本明細書の特定の実施形態は、1つ以上の追加の活性薬剤との組成物の同時投与を提供して、それを必要とする対象における相乗的治療効果を提供する。同時投与される活性薬剤は、細胞増殖及び浸潤を低下させ、がんにおけるアポトーシスを増加させることができる薬剤などのがん治療剤であり得る。特定の実施形態では、同時投与される活性薬剤は、例えば、オキサリプラチン、シスプラチン、アントラサイクリン、タキサン、及び/又はカンプトテシンから選択され得る。いくつかの実施形態では、化学療法剤は、EGFR阻害剤であり得る。いくつかの実施形態では、化学療法剤は、免疫調節剤であり得る。いくつかの実施形態では、化学療法剤は、テモゾロミド、ダカルバジン、カルムスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、パクリタキセル、ドセタキセル、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビノレルビン、エトポシド、テニポシド、トポテカン、イリノテカン、ドキソルビシン、ダウノマイシン、エピルビシン、イダルビシン、メトトレキサート、シタラビン、ゲムシチビン、カペシタビン、シスプラチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、オキサリプラチン、又はそれらの混合物から選択される。
【0157】
一実施形態では、本明細書に開示される組成物は、併用化学療法レジメンの一部として、少なくとも1つの他の化学療法剤、例えば、ビンクリスチン、エトポシド、シクロホスファミド、シスプラチン、カルボプラチン、及びメトトレキサート(任意選択で高用量)から選択される、少なくとも1つの化学療法剤とともに投与され得る。代替的に、本明細書に開示される組成物は、併用化学療法レジメンの一部として、全トランスレチノイン酸(トレチノイン)とともに投与され得る。1つ以上の異なる薬物及び/又は同じ若しくは異なる薬物の用量を含む任意の薬物レジメンに加えて、放射線療法が、任意の治療の一部として使用され得る。
【0158】
そのような同時投与では、本組成物は、所望の効果を提供するために、任意の順序で、追加の化学療法剤と同時に又は異なる時間に、連続的に投与され得る。別個に投与される場合、構成要素が同じ投与経路によって投与されることが好ましくあり得るが、これはそうである必要ではない。
【0159】
本開示の方法及び使用の治療上の利点はまた、放射線療法、手術、又は他の形態の医療介入などの従来の療法と組み合わせた併用レジメンを通しても実現され得る。
【0160】
いくつかの実施形態では、従来の療法は、放射線療法であり、これは、テモゾロミド又は上記のものなどの任意の他の化学療法剤とともに、又はそれなしで投与され得る。テモゾロミド又は任意の他の化学療法剤は、所望の効果を提供するように、任意の順序で、組成物と同時に又は異なる時間に、連続的に投与され得る。代替的に、テモゾロミド又は任意の他の化学療法剤は、組成物と同じ製剤中で投与されるように製剤化され得る。
【実施例】
【0161】
ここで、以下の非限定的な実施例を参照し、添付の図面を参照して、本開示を説明する。
【0162】
実施例1-薬学的組成物
(i)組成物の調製
固体5-FUからの組成物の調製
1mLの組成物を作製するために、5-FU(15mg)、0.9%の食塩水(870μL)、NaOH(0.9Mの30μL)、及びβ-シクロデキストリン硫酸化ナトリウム塩(45mg)を混合し、結果として得られた懸濁液を、5-FUのほぼ全てが溶解するまで、40~50℃で超音波処理した。フォリン酸(FA)溶液(ロイコボリンカルシウム10mg/mL、100μL)を添加し、均質な溶液が形成されるまで、混合物を40~50℃で超音波処理した。混合物を冷却し、室温で1時間静置させた。この溶液のpHは、7.4±0.1であった。溶液を無菌条件下で濾過し、光から保護して、室温で保管した。
【0163】
同じ方法を使用したが、β-シクロデキストリン硫酸化ナトリウム塩の濃度を増加させると、175mgのβ-シクロデキストリン硫酸化ナトリウム塩を含有する組成物が生成された。
【0164】
5-FUの溶液からの組成物の調製
1mLの組成物を作製するために、β-シクロデキストリン硫酸化ナトリウム塩(45mg)を、水(525μL)中に溶解させた。5-FU溶液(5-フルオロウラシル注射BP、50mg/mL、300μL)及び100μLのFA溶液(ロイコボリンカルシウム10mg/mL)をシクロデキストリン溶液に添加し、これを撹拌して、混合した。HCl(75μLの1.000M溶液)を溶液に添加し、pHを7.4±0.1にした。溶液を無菌条件下で濾過し、光から保護して、室温で保管した。
【0165】
5-FUの溶液からの組成物の調製
1mLの組成物を作製するために、(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン(100mg)を、水(527μL)中に溶解させた。5-FU溶液(5-フルオロウラシル注射BP、50mg/mL、300μL)及び100μLのFA溶液(ロイコボリンカルシウム10mg/mL)をシクロデキストリン溶液に添加し、これを撹拌して、混合した。HCl(73μLの1.000M溶液)を溶液に添加し、pHを7.4±0.1にした。溶液を無菌条件下で濾過し、光から保護して、室温で保管した。
【0166】
5-FUの溶液からの組成物の調製
1mLの組成物を作製するために、ヘプタキス(6-O-スルホ)-β-シクロデキストリンナトリウム塩(50mg)を、水(527μL)中に溶解させた。5-FU溶液(5-フルオロウラシル注射BP、50mg/mL、300μL)及び100μLのFA溶液(ロイコボリンカルシウム10mg/mL)をシクロデキストリン溶液に添加し、これを撹拌して、混合した。HCl(73μLの1.000M溶液)を溶液に添加し、pHを7.4±0.1にした。溶液を無菌条件下で濾過し、光から保護して、室温で保管した。
【0167】
(ii)典型的な組成物
本開示の方法で使用するためのいくつかの典型的な組成物は、5-FU(15mg/ml)及びFA(1mg/ml)の最終濃度を有し、ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン(例えば、(2-ヒドロキシプロピル)-β-シクロデキストリン、100mg/ml)又はポリ硫酸化β-シクロデキストリン(例えば、ヘプタキス(6-O-スルホ)-β-シクロデキストリンナトリウム塩、45~175mg/ml)を含んだ。結果として得られた薬学的組成物の濃度を、5-FUの濃度で表した。
【0168】
(iii)投与のための薬学的組成物
注射可能な非経口組成物
注射による投与に好適な薬学的組成物は、1~5重量%の本開示の組成物(上記の組成物など)を、10体積%のプロピレングリコール及び水中に混合することによって調製することができる。溶液を、濾過により滅菌する。組成物の総量は、患者によって変動し得るが、一般的な用量は、約750mgの5-FU、すなわち、5%のグルコース、0.9%の食塩水又は滅菌水で100、500、又は1000mLの体積まで希釈され得る、50mLの製剤であり得る。
【0169】
非経口投与のための組成物
例えば、筋肉内注射のための組成物は、1mLの滅菌緩衝水、及び1mLの本開示の組成物を含有するように調製することができる。
【0170】
同様に、静脈内注入のための組成物は、250mlの滅菌リンゲル溶液、及び5mLの本開示の組成物を含み得る。
【0171】
注射可能な非経口組成物
注射による投与に好適な組成物は、1重量%の本開示の組成物、体積によるプロピレングリコール及び水を混合することによって調製することができる。溶液を、濾過により滅菌する。
【0172】
実施例2-前臨床毒性学的評価
げっ歯類において、本開示の方法で使用される組成物のインビボ毒性及び用量耐性の評価を行った。
【0173】
したがって、15:1の5-FU対FAの比を含有する試験組成物の用量耐性を、用量一致させた5-FU及びFA(「5-FU:FA」)を連続的に投与した対照薬治療の用量耐性と比較した。
【0174】
試験組成物は、15mg/mlの5-FU、1mg/mlのFAの最終濃度を有し、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(100mg/mlの最終濃度、「HP-組成物」)又はヘプタキス(6-O-スルホ)-β-シクロデキストリンナトリウム塩(45~175mg/mlの最終濃度、「S-組成物」)のいずれかを含んだ。
【0175】
SPF繁殖させたBalb/cマウス、Balb/c nu/nuマウス、及びSprague-Dawleyラットは、Animal Resources Centre(Canning Vale,Western Australia,Australia)から、又はUniversity of Adelaide(Urrbrae,South Australia,Australia)から得た。全ての実験は、University of Wollongong(UOW)動物倫理委員会、University of Queensland動物実験委員会、又はUniversity of Adelaide動物倫理委員会によって承認された。
【0176】
動物に投与される用量は、ヒト用量との比較を簡素化するために、mg/m2として記載する。これらは、記載されるような体表面積計算を使用して、mg/kg用量に変換した(Freireich et al.,Cancer Chemother Rep 1966,219-244)。手短に述べると、マウス、ラット、及びウサギの場合、mg/m2をmg/kgに変換するためには、それぞれ、3、5.9、及び12で割る。
【0177】
腹腔内ボーラス評価
手短に述べると、雌Balb/cマウスにおいて、単回又は複数回の(分割)腹腔内ボーラス(i.p.b.)用量の製剤を、連続5-FU:FA治療及びリン酸緩衝食塩水(PBS、150mmol/lのNaCl溶液、pH7.4)対照と比較した。これらの用量スケジュールは、確立された臨床プロトコルに基づいており、より短いマウスの平均余命を考慮したものであった。5-FU:FA治療は、正中線の交互の側に2回の別個の連続i.p.b.注射によって投与し、FAは、5-FUの直前に投与した。用量制限毒性エンドポイントは、(治療の第1日目と比較して、かつ24時間超持続した)15%の体重減少、又は病的状態の臨床兆候(すなわち、食欲、活動性、及び/又は円背姿勢の喪失、立毛、並びに歩行の変化)として定義した。
【0178】
いくつかの実験では、ヘマトキシリン及びエオシン染色、並びに盲検化した組織病理学的評価のための固定及び切片化の前に、切除した肝臓、腎臓、及び脾臓を秤量した。加えて、ある割合の肝臓は、外因性又は内因性のリポイド沈着物を特定するために使用される油性赤色-O染色のために提出した。
【0179】
静脈内ボーラス及び注入評価
試験組成物の単回静脈内ボーラス(i.v.b.)用量を、425、475、又は525mg/m2の用量レベルで末梢尾静脈を通して雌ラットに投与した。陽性対照群に、単回i.v.b.用量のFA(35mg/m2)、その後20分以内に5-FU(525mg/m2)を続けた。次いで、両方の治療群を、7日間の回復期間にわたって監視した。雄及び雌ラットの両方を使用する他の実験では、400mg/m2のi.v.b.用量の組成物の後、直ちに48時間にわたって600、1200、又は2400mg/m2のいずれかの組成物の連続静脈内注入(i.v.i.)を続け、引き続いて7日間の回復期間を経た。陽性対照群を、組成物の最高耐容用量に一致させたが、これは、この群がまた5-FU投与の直前に単回i.v.b.用量のFA(26.7mg/m2、すなわち、単回ボーラス5-FU用量の1/15)も受けたことを除いた。他の対照には、β-シクロデキストリンビヒクル(pH7.3)、並びにpH7.3及びpH9のPBS(5-FUのpH一致対照として)の体積一致投与が含まれた。
【0180】
治療及び回復期間中、臨床兆候、収縮期血圧、タンパク質尿、及び体重を定期的に記録した。次いで、動物を安楽死させ、獣医病理学者によって盲検様式で全ての群において剖検を実行した。主要な器官もまた秤量し、示される場合には血液を採取して、血液学を評価した。用量制限毒性エンドポイントを、上記のように定義した。
【0181】
結果
結果を、
図1に示す。
-画像(a)は、マウスにおける単回腹腔内ボーラス(i.p.b.)用量投与に関する。プールした食塩水対照(×、黒色線、n=16)、ポリ硫酸化β-シクロデキストリン誘導体(「S-組成物」)(黒色円、黒色線、n=3)及び5-FU:FA(白色円、黒色破線、n=3)を含む600mg/m
2の組成物、675mg/m
2のS-組成物(黒色正方形、黒色線、n=6)、並びに5-FU:FA(白色正方形、黒色破線、n=6)。
-画像(b)は、マウスにおける複数回/分割i.p.b用量投与に関する(全てのコホートについてn=6)。食塩水対照(×、黒色線)、120mg/m
2×5のS組成物(黒色円、黒色線)、及び5-FU:FA(白色円、黒色破線)、180mg/m
2×5のS組成物(黒色正方形、黒色線)、及び5-FU:FA(白色正方形、黒色破線)。
-画像(c)は、ラットにおける単回静脈内ボーラス(i.v.b.)用量投与に関する(全てのコホートについてn=6)。ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン誘導体(「HP組成物」)を含む、425mg/m
2(黒色円、黒色線)、475mg/m
2(黒色正方形、黒色線)、及び525mg/m
2(黒色三角形、黒色線)の組成物、並びに525mg/m
2の5-FU:FA(白色三角形、黒色破線)。
-画像(d)は、ラットにおけるi.v.b.プラス静脈内注入(48時間にわたる)用量投与に関する(全てのコホートについてn=8、等しい数の雄及び雌)。食塩水対照(×、黒色線)、400+600mg/m
2のHP組成物(黒色丸、黒色線)、400+1200mg/m
2のHP組成物(黒色四角形、黒線)、400+2400mg/m
2(黒色三角形、黒色線)のHP組成物、及び400+2400mg/m
2の5-FU:FA(白色三角形、黒色破線)。
【0182】
全ての示される値は、平均値±SEMである。*2つの最高用量での食塩水対照対HP組成物について、P<0.05。**食塩水対照対5-FU:FAについて、P<0.01。***全ての用量のHP組成物対5-FU:FAについて、P<0.05。
【0183】
毒性の用量依存的な増加は、食塩水対照と比較して、600mg/m
2超の単回i.p.b.用量として、又は120mg/m
2×5超の分割i.p.b.用量(14日以内)としてのいずれかで組成物又は5-FU:FA治療を投与した動物においてのみ観察された(
図1(a)及び(b)、データはS-組成物についてのみ示す)。600mg/m
2以下の組成物又は5-FU:FAのi.p.b.投与の7、14、及び21日後、肝臓、腎臓、又は脾臓への損傷は、ヘマトキシリン及びエオシン染色、並びに油性赤色-O染色の切片の組織病理学的分析(データは図示せず)によっては認められず、これは、耐容性、及びしたがってこの投与経路によるこれらの用量での組成物の有害作用レベルが観察されなかったことを確認した。6匹の組成物治療マウスのうちの5匹、及び6匹の5-FU:FA治療マウスのうちの6匹が、675mg/m
2用量の単回i.p.b.投与後、観察5日目までに毒性エンドポイントに達した(
図1(a))。180及び240mg/m
2×5のi.p.b.の組成物及び5-FU:FAは、各コホートの6匹の動物のうちの少なくとも3匹が、それぞれ、最終(すなわち、4×180mg/m
2のみ達成)及び最後から2番目(すなわち、3×240mg/m
2のみ達成)の用量の投与前に毒性エンドポイントに達することをもたらした。したがって、5-FU:FAとして、又は試験組成物内のいずれかで投与した5-FUの最大耐容用量は、2週間にわたる単回用量又は分割i.p.b.用量のいずれかとして与えた600~675mg/m
2の5-FUに位置した。
【0184】
上記の知見、及び5-FUのi.v.b.投与のヒト耐容性が約500mg/mg
2であることを考慮して、HP組成物の漸増用量のi.v.b.投与を、この範囲内のラットにおける高用量一致5-FU:FA陽性対照と比較した。体重変化及び他の臨床兆候によって示される毒性の明白な兆候は、単回i.v.b.用量の425、475、及び525mg/mg
2の組成物の投与とも、又は525mg/mg
2の5-FU(35mg/mg
2のFAのi.v.b.投与後)とも関連付けられなかった(
図1(c))。肉眼での組織分析では、5-FU群が、試験した全ての用量で、組成物を投与した動物と比較した場合に、著しくより高い(P<0.05、フィッシャー直接確率法)頻度の肝腫大、心肥大、腸間膜リンパ拡大、及び結腸/盲腸膨満を呈することが見出されたが、異常な組織学的変化は観察されなかった。したがって、525mg/m
2の組成物(及び5-FU)は、この研究では毒性を引き起こさなかったため、組成物のNOAELは、単回i.v.b.用量として投与した場合、525mg/m
2である。
【0185】
次に、組成物を、400mg/m
2の単回i.v.b.用量として雄及び雌ラットに投与し、その後48時間にわたって600~2400mg/m
2の範囲の用量の連続i.v.i.を続けて、5-FU投与の一般的に使用される臨床スケジュールを模倣した。組成物を投与した雄及び雌ラットの両方で、毒性の用量依存的な増加が観察され、これは、対照と比較して、体重の有意な低減として現れた(
図1、画像(d))。これは、中等度~重度の臨床兆候の増加及び注入中の尿パラメータのいくつかの変化を伴い、それらのほとんどは、注入後に正常化したが、これは、最高用量の組成物を与えた雄ラットにおいて持続的なタンパク尿が最も明白であることを除いた。さもなければ、性差は認められなかった。血液学及び器官重量の変化は、最高用量の組成物が、骨髄及び可能性としては脾臓で毒性を誘発したことを示し、これは特に、白血球及び血小板数の低減によって現れた。
【0186】
この研究では、使用した組成物バッチの正確なpH(すなわち、pH7.3)に緩衝した食塩水を用いた対照の他に、pH9に緩衝した食塩水(5-FU溶液のpHと一致)及びヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン(pH7.3)を用いた対照を含む、いくつかの体積一致対照を使用した。全ての対照は、製剤のこれらの構成要素が毒性には寄与しなかったことを確認する、類似の結果をもたらした(データ示さず)。したがって、これらのパラメータの全てに基づいて、このレジメンを用いた組成物のNOAELは、400mg/m2のi.v.b.用量、その後約2日間にわたる1200mg/m2のi.v.i用量であった。
【0187】
対照薬として、i.v.b.用量のFA(26.7mg/m
2)、その後i.v.b.用量の5-FU(400mg/m
2)、及び引き続いてi.v.i.の5-FU(2日間にわたる2400mg/m
2)を評価した。この治療コホートのラットは、全ての他の組成物コホートよりも著しくより体重が減少した(
図1(d))。
【0188】
一般に、測定したパラメータの大部分は、同様の投薬レジメン下で投与した場合、この最大耐容用量で与えた組成物が、5-FUよりも重症度の低い一般的な毒性、血液学的、及び尿変化をもたらすことを示した。
【0189】
実施例3-第I相臨床試験における毒性及び薬物動態の評価
本開示の方法で使用される組成物が、様々な濃度及び投薬レベルでヒト患者において安全に耐容されるかどうか、並びに組成物内の5-FUの薬理が、天然5-FUの薬理と異なるかどうかを、調査している。
【0190】
ファースト・イン・ヒューマンの第I相試験
標準的な連続低用量5-FU:FAボーラスレジメンと同様である、15:1の比の5-FU対FAを含有する試験組成物の臨床的安全性及び耐容性、並びに薬物動態を、ボーラス及び注入スケジュールの両方で評価した。
【0191】
患者の適格性
米国東海岸がん臨床試験グループの活動指標0~2を有する、全ての標準的な治療を使い果たした、進行性又は転移性悪性腫瘍を有する18歳超の患者を、登録した。12週間以上の平均余命、並びに満足のいく腎臓、肝臓、及び血液学的機能が必要であった。除外基準には、ジヒドロピリミジン脱水素酵素の既知の欠損、又は5-FU若しくはフルオロピリミジンに対する重篤な応答の病歴、未治療の脳転移を有する患者、4週間以内に化学療法若しくは放射線療法を完了した患者、又は重篤な併存疾患を有する患者が含まれた。妊娠中又は授乳中の女性もまた、除外した。
【0192】
研究設計及び治療
この非盲検単一施設第I相試験は、標準的な3+3用量漸増スキームを使用して、2つの治療レジメンを探索した。主要な目的は、再発性又は難治性悪性腫瘍を有する対象における組成物の安全性及び耐容性を評価すること、並びに最大耐容用量(MTD)を決定することであった。二次的な目的は、5-FU薬物動態プロファイルであった。この研究は、地域のヒト調査委員会(Bellberry Limited承認番号2014-05-259、TGA CTN 2014/0737)によって承認され、全ての患者から書面によるインフォームドコンセントを得た。
【0193】
患者を、ボーラス(結腸直腸アジュバントRoswell Park(修飾)フルオロウラシル及び毎週のロイコボリンレジメンに基づく、ID:1271 v.4)又は連続注入(結腸直腸アジュバントde Gramont(修飾)レジメン、ID:76 v.4に基づく)のいずれかで、試験組成物(5-FU 15mg/mL、FA 1mg/mL、ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリン100mg/mL、pH7.4±0.1、使用準備済の溶液として製剤化)で治療した。治療レジメンは、既存の中心ラインの存在などの臨床的要因に基づいて割り当てた。ボーラス注射は、末梢カニューレ又は中心ラインを介して、8週間ごとに6週間連続して週に1回、約5分以内に投与した。注入注射は、CADDポンプを使用して、中心ライン、留置ポート、又はPICCラインを介して、2週間ごとに12週間にわたって、約46時間かけて連続投与し、その後患者が反復治療サイクルに適格となる前に2週間の休止を続けた。患者は、疾患の進行まで耐容しながら、組成物を継続した。ボーラス及び注入レジメンにおける用量漸増レベル及び登録患者数を、表1に要約する。
【表1】
【0194】
安全性評価
全ての有害事象(AE)を、米国国立がん研究所の有害事象共通用語規準バージョンV4.03に従ってグレード付けした。AE監視は、最終治療後4週間にわたって継続し、組成物に関連するAEの監視は、安定化又は消散まで継続した。用量制限毒性(DLT)は、7日以内に支持療法を用いてより低いグレードへと消散したグレード3の悪心、嘔吐、脱毛、又は下痢を除いた、あらゆるグレード3又は4の非血液学的毒性;発熱性好中球減少症、7日超持続する発熱を伴わないグレード4の好中球減少症;7日超持続するグレード4の血小板減少症;出血に関連するあらゆるグレードの血小板減少症を含む、研究治療に関連する可能性があるAEとして評価した。
【0195】
両方のスケジュールにおいて、MTDは、(6人中)2人以上の患者がDLTを経験した用量レベルよりも前の用量レベルとして公表した。
【0196】
薬物動態評価
組成物の第1及び第6の用量(ボーラス:用量前、10、20、60、120分、及び24時間、注入:用量前及び2時間)の間に、ボーラス及び注入レジメンの両方の患者から、血液試料を採取した。5-FU及びその代謝物5-フルオロ-5,6-ジヒドロウラシル(5-FUH2)の血漿レベルを、わずかに修正したHPLC法によって測定した。曲線下面積(AUC)、クリアランス(CLR)、及び血漿半減期(t1/2)を各患者について推定して、歴史的データと比較したPK変動性及び投薬の妥当性を評価した。
【0197】
統計分析
全ての患者について、患者の特徴、毒性の分析、及び予後についての記述統計を実行した。カプラン及びマイヤー法を使用して、治療開始日から死亡日又は最後の審査までの無増悪生存及び全生存を計算した。PK値は、プログラム「PK Functions for Microsoft Excel」によって、エクセルデータ分析ファイルに対するPK1及びPK2関数のアドインを使用して計算し、Statistica(V12)を単純な記述統計に使用して、各用量レベル内、及び適切な場合には用量レベルにわたるPKデータを要約した。
【0198】
患者の特徴
40人の患者(19人のボーラス、21人の注入)を、研究に参加させた。患者は、重度の治療経験があり、患者の13/40人(33%)は、以前に5つを超える治療方針を受け、34/40人(85%)は、以前のフルオロピリミジン治療に失敗していた。最も一般的な腫瘍型は、結腸直腸(60%)及び乳がん(18%)であった。
【0199】
結果:安全性
いずれの患者においても、グレード4のAEは観察されなかった(表2)。重症度がグレード3の治療関連AEを報告した患者は、8人(20%)のみであった。ボーラススケジュールにおけるDLTは、575mg/m
2(5-FUの用量)でのグレード3の下痢及び骨髄抑制(汎血球減少症)であった。したがって、ボーラスレジメンのMTDは、525mg/m
2であり、これは、現在の標準的な結腸直腸がんのアジュバント又は毎週の転移スケジュール(例えば、AIO、Roswell Park、375~500mg/m
2)のものを超え、DLTは、様々な毎週のボーラス5-FUレジメンで報告されたものと一致する。最大用量レベル5までの注入スケジュールにおいて、DLTは観察されなかった(3600mg/m
2、表2)。しかしながら、この用量レベルでは、疾患進行のために全治療サイクルを完了した患者はおらず、この時点で試験を中止し、3000mg/
2の用量を強化することが決定されたことに留意されたい。
【表2】
【0200】
全体的に見て、グレード1~2の疲労及び悪心は、ボーラス及び注入レジメンの両方において患者間で観察された最も一般的な毒性であった。グレード2超の毒性は、375~475mg/m2のボーラス(用量レベル1~3)でも、1200~1800mg/m2の注入(用量レベル1~2)でも認められなかった。心毒性は、観察されなかった。グレード1~2の骨髄抑制は、ボーラス療法でのみ観察された。3つのグレード3のAEが観察されたが、これらは、疾患進行に関連しており、研究薬物には関連していなかった。
【0201】
結果:薬物動態
PK変動性及び投薬の妥当性の評価に利用可能な40人の患者のうち、用量1で治療した38/40人の患者、及び用量6で治療した24/32人の患者の血漿レベルを評価した。全ての患者は、5-FU及びFUH
2の測定可能な血漿濃度を有し、正常なジヒドロピリミジン脱水素酵素活性及び5-FU異化反応を有する患者について予想されるように、FUH
2レベルは、一貫して5-FUよりも高かった(
図2及び3)。
【0202】
図2は、(A、B)ボーラス用量1及び6の投与後、又は(C、D)注入用量1及び6中に測定した、5-FU血漿濃度×時間曲線下面積(AUC)対用量レベル(mg/m
2)の関係を示す散乱点プロットを示す。・は、示されるコホートの中央値(-)を有する個々の患者を表す。注入用量6について、3600mg/m
2の用量レベルでは試料を収集しなかった。破線は、ボーラス又は注入レジメンを使用する毒性の歴史的AUC中央値を示す。
【0203】
図3は、(A、B)ボーラス用量1及び6の投与中、又は(C、D)注入用量1及び6中に測定した、FUH
2血漿濃度-×-時間曲線下面積(AUC)対用量レベル(mg/m
2)の関係を示す散乱点プロットを示す。・は、示されるコホートの中央値(-)を有する個々の患者を表す。注入用量6について、1800及び3600mg/m
2の用量レベルでは試料を収集しなかった。
【0204】
PKは、5-FUの既知の薬理と一致する患者間変動の証拠を示した。毎週のボーラススケジュールでは、5-FU CLRは、21~900L/時、t
1/2は、0.11~0.52時間であり、患者内用量6のCLRは、用量1の54~117%に等しく(表3)、用量とともにAUC(mg・時/L)が増加する傾向があった(
図2)。最初の4回の用量レベルは、500~864mg/m
2の毎週のボーラススケジュールを使用する研究において、毒性のAUC中央値をはるかに下回るAUC中央値をもたらした。注入スケジュールでは、5-FU CLR(13~700L/時)及びAUC推定値は、3つの患者異常値(中央値と比較して10倍超のAUC値、
図2の画像C及びD)、並びに徹底的に分析するには不十分なデータを有するいくつかの場合、特に用量6(表4)のために、いくらか変動するものであった。しかしながら、5-FU単独の歴史的PKデータと比較して、AUCは、ボーラススケジュールにおいて525mg/m
2を超えるまで、及び何人かの患者では全ての用量コホートでの注入について、治療量以下であった可能性が高い。
【表3】
【表4】
【0205】
全体的に見て、この第I相試験は、組成物が安全かつ耐容性であり、現在の臨床診療で使用されているものよりも高い5-FU用量で患者に投与され得ることを実証した。ボーラス及び注入スケジュールの両方において、組成物の毒性スペクトルは最小限であり、予想外の有害作用はない。薬物動態試験は、組成物中の5-FUが、天然5-FUと同様に分布及び代謝されることを示唆した。
【0206】
第2の第I相試験
ヒト患者における様々な濃度及び投薬レベルでの第2の進行中の第1相試験は、本開示の方法で使用される組成物が、歴史的5-FU薬物動態プロファイルデータに類似した薬物動態プロファイルを伴って、少なくとも525mg/m2のボーラス、その後3000mg/m2の注入まで安全かつ耐容性(従来の5-FU:FA製剤による標準治療よりも25%大きい用量での耐容性)であることを確認した。更なるデータは、3400mg/m2の用量での注入が実行可能であることを示唆している(42%より高い耐容用量)。
【0207】
まとめると、臨床試験は、本開示の方法で使用される組成物のボーラス及び注入用量における安全性が、別個の5-FU及びFA注入のものよりも高いことを示した。
【0208】
実施例4-脳腫瘍細胞におけるインビトロ有効性
本開示の方法で使用される組成物のインビトロ活性の評価を、患者由来のびまん性中心性神経膠腫(DMG)神経球において行った。
【0209】
特に、ヒトDMG細胞に対する組成物の活性を、5-FU、5-FU及びFAの組み合わせ、又は培地対照の活性と比較した。
【0210】
実験設定
本開示の方法で使用される組成物を、15:1の5-FU対FA(ロイコボリン)比(「デフレキシホル」と呼称される)で試験し、単剤としての5-FU(「5-FU」)、単剤としてのFA(「ロイコボリン」)、又は5-FU及びFA(ロイコボリン)の組み合わせ(「5-FU+ロイコボリン」)と比較した。
【0211】
試験濃度は、表5に詳述される5-FU(530μM)の臨床最大耐容血漿濃度を参照して選択した。
【表5】
【0212】
スクリーニングは、以下を使用して、N=4の曲線を有する96ウェル形式で実行し、
・3つの異なるDMG細胞株:P002306、DIPG-7、及びRA055
・1つの上衣腫培養物、並びに
・1組の健康な星状細胞(対照モデル系)を使用した。
【0213】
結果
結果を
図4及び
図5に示し、デフレキシホルが5-FU+ロイコボリンよりも改善されたIC
50を提供する場合、及びDMG細胞の感受性が細胞株依存性であることを示す:P002306>DIPG-7>RA055>健康な星状細胞>上衣腫。薬物治療の開始時及び終了時の細胞の比較を示す画像を、
図6及び
図7に示す。
【0214】
用量反応値(AUC、IC
50値)の要約を、表6に示す。
【表6】
【0215】
重要なことに、このデータは、本開示で使用される組成物が、DMG細胞に対して強力な抗がん活性を有し、それによって活性は、がん細胞株に応じて変動することを実証する。特定の上衣腫培養物の緩徐な成長速度のため、デフレキシホルへの細胞のより長い曝露期間が必要となる可能性がある。
【0216】
実施例5-雌BALB/cJAusbマウスにおけるデフレキシホルの薬物動態及び脳取り込み研究
目的
この研究の目的は、若齢BALB/cJAusbマウスの脳内への、5μCiの6-[3H]5FUを添加したデフレキシホルの取り込みを評価することであった。現在までの全ての前臨床試験は、腹腔内(i.p.)注射を介してデフレキシホルを投与しているため、二次的な目的は、[3H]5FUを添加したデフレキシホルの静脈内(i.v.)投与後の血漿クリアランス、並びに肝臓及び腎臓内への組織分布を評価することであった。
【0217】
実験方法
倫理
2021年4月9日に施設動物倫理委員会によって承認されたAE18/13。
【0218】
6-[3H]5FUを添加したデフレキシホルの調製
本明細書で使用される組成物を、15:1の5-FU対FA(ロイコボリン)比で試験した。
【0219】
FivepHusionによって提供されるデフレキシホル(100gのシクロデキストリン、10mgのロイコボリンを含有する、100mlの水中の1500mgの5-フルオロウラシル、バッチ番号:DF090421)に、5-フルオロウラシル[6-3H](Moravek、カタログ番号MT-686、1mCi/mL、バッチ番号:592-1 34-0224-A-2021 0428-JPL)を添加した。
【0220】
マウス
4~5週齢の雌BALB/cJAusbマウス9匹を、Australian Bio Resources(Mossvale,NSW)から購入し、それらは、2021年6月21日月曜日にUOW動物施設に到着した。マウスを3匹のケージに割り当て、隔離飼育器ケージに収容した。マウスは、3日間順応させ、識別のために以下の尾部マーキングを受けた:左(L)、右(R)、又はマーキングなし(N)。マウスを、注射日に秤量した。
【0221】
注射/治療
研究は、2021年7月24日に開始した。マウスを、加温キャビネット(35℃)内で30分間、i.v.注射前に加温した。マウスを拘束し、29ゲージのインスリン針(AESOP_IV02)を介して、100μL中の5μCiの6-[3H]5FUを添加した94mg/kgのデフレキシホルを注射する直前に、エタノールで尾を拭いた。
【0222】
マウスを、CO2吸入(AESOP_HK01)を介して以下の時間で屠殺した:注射後10分、60分、又は1440分(24時間)。心臓穿刺によって血液を収集し、EDTAを含有するチューブに入れ、血漿を収集した。血漿及び器官/組織を、FivepHusion SOP BD/PKトリチウム標識した組織試料処理に従って処理した。マウスをPBSで約2分間灌流し(AESOP_PF-01)、主要器官(脳、腎臓、肝臓)を収集し、秤量した。尾を追加的に収集し、用量補正のために秤量した。
【0223】
【0224】
結果
動物体重及びデフレキシホルの用量
図8は、(A)脳内又は血漿中の組成物の注射用量パーセント(%ID)、又は(B)示された時点での脳対血漿比として表される、本開示の方法で使用される組成物のマウス脳内への取り込みを示す。全ての値を、血漿1mL当たりの活性又は注入用量のパーセントに対して補正し、平均+/-SD(1時点当たりn=3)として提示する。Graphpad Prism v9を使用する二元配置ANOVAを使用して、データを分析した。
【0225】
全身血漿コンパートメントからのトリチウム標識した5-FUの急速な喪失と同時に、放射活性が、治療後10分以内に脳内で検出された(注入用量/組織gの1.13~1.33%の範囲)(
図8、画像A)。血漿コンパートメントからの5-FUの急速な排出は、げっ歯類、霊長類、及びヒトにおける血漿排出についての天然5-FUの歴史的データと一致する。
【0226】
脳対血漿比は、1時間にわたって増加し、24時間時点で維持されており、これは、脳からの5-FUの排出が血漿からよりも緩徐であることを示唆した(
図8、画像B)。
【0227】
治療日に動物の体重を記録した(
図9、画像A)。
図9において、データは、平均±SD(n=3)として表す。Graphpad Prism v9を使用する通常の一元配置ANOVAを使用して、データを分析した。
【0228】
マウスの平均体重は、15.97g±0.92であった。最小体重は、14.98gであり、最大体重は、17.53(範囲2.55g)であった。マウスが受けたデフレキシホルの平均用量は、94.2mg/kg±5.3であった。最小送達用量は、85.6mg/kgであり、最大送達用量は、100.1mg/kgであった(
図9、画像B)。以前のUOW前臨床PK/BD研究では、200μL中に2.5μCiの6-[
3H]5FUを添加した150mg/kgのデフレキシホル(FD100HPC)をi.p.投与している(Stutchbury et al.,2011)。
【0229】
器官重量
屠殺及び灌流の後、器官を秤量した(
図10)。
図10において、データは、平均±SD(n=3)として表す。Graphpad Prism v9を使用する二元配置ANOVAを使用して、データを分析した。
【0230】
二元配置ANOVAを使用してデータを分析した場合、60分群と1440分群との間で、肝臓重量に有意差があった(p=0.043)。全コホートにわたる平均組織/器官重量は、腎臓(0.26g±0.008)、肝臓(1.01g±0.11)、脳(0.35g±0.002)、及び尾(0.39g±0.01)であった。
【0231】
薬物動態及び組織分布
この研究は主に、若齢マウスの脳内にデフレキシホルとして送達した場合のトリチウム標識した5-FUの取り込みを評価しようとした。各時点で脳内及び血漿中に残っている注入用量のパーセンテージを測定し、一相減衰モデルを適合させることによって、血漿及び脳からのデフレキシホルのクリアランスを比較した(
図11、画像A及びB)。
図11では、Graphpad Prism v9を使用する二元配置ANOVAを使用して、データを分析した。加えて、
図11では、全ての値を、血漿1mL(A)当たりの活性又は注入用量(B)のパーセントに対して補正し、平均+/-SD(1時点当たりn=3)として提示する。
図11の画像A及びBについて、データを、一相減衰モデルに適合させた。
図11の画像Cは、血漿中及び脳内の%IDを示す。
【0232】
血漿中のデフレキシホルにおける5-FUの半減期は、22.18分であった(
図11、画像A)。以前には、雌Balb/cマウスにおいてi.p.投与経路を使用して送達した場合、2.5μCiの[6-
3H]5FUを添加した150mg/kgのデフレキシホル(FD100HPC)の半減期は、24.01分であると決定されていた(Stutchbury et al.,2011)。この研究では、脳内のデフレキシホルにおけるトリチウム標識した5-FUの半減期は、44.16分であった(
図11、画像B)。C
maxは、1.26%ID/g±0.110であり、T
maxは、10分であった。血漿中のデフレキシホルの曲線下面積(AUC)は、1357であった(標準誤差334.2)。脳内のデフレキシホルのAUCは、単回ボーラス用量後、606.7(標準誤差143.3)であった。血漿及び脳のPKデータの要約は、表8に見出すことができる。
【表8】
【0233】
血液脳関門(BBB)を横断する分子の透過性を予測するために、脳対血漿比を使用することができる。Hitchcock and Pennington(2006)によれば、脳血液量は総脳体積の4%に近いため、非灌流脳組織を使用して脳対血漿比が0.04超である場合、分子は一般的に、脳浸透性とみなされる。この研究では、24時間(1440分)時点でのAUC又は%IDを使用して計算した脳対血漿比は、それぞれ、0.447及び0.437であった。これは、特に放射活性の定量化前に脳を灌流したことを考慮すると、前向きな結果である。この研究では、デフレキシホルの単回ボーラス用量後の脳対血漿比を計算した。したがって、脳対血漿比は、定常状態対非定常状態条件でかなり変動し得る。この研究で計算された高い脳対血漿比は、デフレキシホルとして投与した5-FUが、脳内に効果的に浸透することができることを示唆している。これらの結果は、放射活性の定量化前に脳を灌流したことを考慮すると、特に重要であり得る。脳取り込み/BBB透過性のより正確な表示は、薬物動態測定に加えて、薬力学又は受容体占有率を使用して決定することができる。
【0234】
5μCiの6-[
3H]5FUを添加したデフレキシホルのクリアランスもまた、腎臓(
図12、画像A及びB)並びに肝臓(
図12、画像C~F)内で評価した。
図12では、画像C及びDは、元/未修正のデータの肝臓を示し、画像E及びFでは、異常値は、ROUT Q=1%の適用後に除去している。全ての値を、組織1グラム当たりの活性に対して補正し、注入用量(1時点当たりn=2~3)の平均+/-SDパーセントとして提示する。Graphpad Prism v9を使用して分析したデータ。
【0235】
腎臓内でのC
maxは、6.56%ID/g±1.73であり、T
maxは、60分であり、AUCは、5047であった(標準誤差1199)。肝臓内でのC
maxは、7.45%ID/g±8.03であったが、T
maxは、10分であり、AUCは、(4656(標準誤差3852)であった。10分及び60分時点で肝臓について観察されたデータの大きい変動を考慮して、Q=1%の攻撃性でROUTを適用して、異常値を特定し、サブカラム内の全ての値を1つのデータセットとして処理した。そのような試験は、2つの異常値を特定した(
図12、画像E及びF)。異常値を除去した後、肝臓内での調整したC
maxは、2.93%ID/g±1.35であり、T
maxは、60分であり、AUCは、2274であった(標準誤差934.4)。主要な薬物動態パラメータの要約は、表9に見出すことができる。
【表9】
【0236】
研究の結論
この研究は、デフレキシホル製剤を投与した場合の若齢マウスの脳内への6-[3H]5FUの取り込みを確認した。データは、5-FUが、デフレキシホルとして送達した場合、BBBを迅速に通過し、迅速にクリアされ、静脈内投与の24時間後には、組織1g当たりの注射用量の0.15%未満が、脳内に残存することを示す。
【0237】
実施例6-U-87-MGヒト神経膠芽腫細胞株に対するデフレキシホルの効果
使用した細胞株
U-87-MG細胞は、DMEM(高グルコース)+10%のFCS中に維持する。
【0238】
試験した薬物
・デフレキシホル(5-FU:ロイコボリン比=15:1mg/115mM:1.95mM)、これらの5-FU濃度は:120nM、470nM、1.9μM、7.5μM、30μM、120μM、479μM、1917μM、及び7600μMであり、ロイコボリンカルシウム等濃度は、1.9nM、7.9nM、127nM、507nM、2.03μM、8.125μM、32.5μM、及び130μMである。
・5-FU単剤、これらの濃度は:120nM、470nM、1.9μM、7.5μM、30μM、120μM、479μM、1917μM、及び7600μMである。
実験設定
・96ウェルの2D形式(薬物濃度当たり3連のウェル)。
・10,000個の細胞/ウェルで細胞を播種>24時間のインキュベーション。
・24時間後に薬物を添加し、細胞を更に72時間インキュベートした。
・細胞増殖(集密度測定)及び細胞死の証拠のために、Incucyte ZOOMを使用して、6時間ごとに細胞を画像化した。
【0239】
結果
結果を、
図13に示す。デフレキシホル中又は単独での5-FUは、細胞増殖を阻害する(
図13、画像A~D)。デフレキシホル(IC
5032μM)は、細胞増殖を阻害する上で、5-FU単独(IC
50120μM)よりも効果的である(
図14)。加えて、デフレキシホルは、非常に高い濃度(500μM超)で細胞死を引き起こす(
図15)。
図15は、以下の場合での、デフレキシホルによる細胞死の証拠を示す:
(A)72時間の培養後、薬物なしの細胞。
(B)72時間の培養後、480μMの5-FU(DF中)での細胞。
(C)72時間の培養後、7mMの5-FU(DF中)での細胞。
【0240】
実施例7-小児上衣腫の臨床試験
この研究の目的は、ヒト小児上衣腫対象における本開示の方法で使用される組成物の有効性を決定することである。
【0241】
小児上衣腫に罹患している18歳未満(又は1~21歳)の患者は、本明細書に記載される組成物の投与を伴う承認された臨床試験で治療することができる。本組成物は、「デフレキシホル」と呼称され、15:1の5-FU対FA(ロイコボリン)比で提供することができる。本組成物は、実施例2~3で非毒性であると決定された用量で投与することができる。
【0242】
病態の改善及びあらゆる副作用の不在/存在は、臨床観察によって評価することができる。結果を継続的に分析して、用量を調整する必要があるかどうか、並びに/又はこの療法を、化学療法及び/若しくは放射線療法などの記載される追加の療法のうちのいずれかと組み合わせて投与するべきかどうかを決定することができる。
【0243】
実施例8-成人神経膠芽腫の臨床試験
この研究の目的は、ヒト成人神経膠芽腫対象における本開示の方法で使用される組成物の有効性を決定することである。
【0244】
神経膠芽腫に罹患している18歳超の患者は、本明細書に記載される組成物の投与を伴う承認された臨床試験で治療することができる。本組成物は、「デフレキシホル」と呼称され、15:1の5-FU対FA(ロイコボリン)比で提供することができる。本組成物は、実施例2~3で非毒性であると決定された用量で投与することができる。
【0245】
病態の改善及びあらゆる副作用の不在/存在は、臨床観察によって評価することができる。結果を継続的に分析して、用量を調整する必要があるかどうか、並びに/又はこの療法を、化学療法及び/若しくは放射線療法などの記載される追加の療法のうちのいずれかと組み合わせて投与するべきかどうかを決定することができる。
【0246】
本開示の広範で一般的な範囲から逸脱することなく、上記の実施形態に対して多数の変形及び/又は修正が行われ得ることが当業者によって理解されるであろう。したがって、本実施形態は、あらゆる点において例示的であり、限定的ではないとみなされるべきである。
【国際調査報告】