IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフトの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】適応型音響車両警告システム
(51)【国際特許分類】
   B60Q 5/00 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
B60Q5/00 640E
B60Q5/00 660A
B60Q5/00 660Z
B60Q5/00 610Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507873
(86)(22)【出願日】2022-08-08
(85)【翻訳文提出日】2024-02-07
(86)【国際出願番号】 EP2022072235
(87)【国際公開番号】W WO2023016986
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】102021121075.5
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】398037767
【氏名又は名称】バイエリシエ・モトーレンウエルケ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】フォーアク・ヴェルナー
(57)【要約】
本発明は、電気的に駆動可能な自動車用の通行人警告装置であって、警告音発生器と、後退時および/または徐行前進時に、自動車の周辺にいる人々に聞こえる警告音を生成するために警告音発生器を制御するように構成されている警告音コントローラとを備え、警告音コントローラは、警告音を適正化するように構成されている通行人警告装置に関する。さらに、本発明は、通行人警告装置を動作させる方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気的に駆動可能な自動車用の通行人警告装置であって、
警告音発生器と、
後退時および/または徐行前進時に、自動車の周辺にいる人々に聞こえる警告音を生成するために前記警告音発生器を制御するように構成されている警告音コントローラと、
を備える通行人警告装置において、
前記警告音コントローラは、自動車の環境音バックグラウンドを割り出し、当該環境音バックグラウンドに応じて前記警告音を決定し、特に、適正化するように構成されていることを特徴とする通行人警告装置。
【請求項2】
請求項1に記載の通行人警告装置であって、前記環境音バックグラウンドのラウドネスおよび/または周波数分布といったような少なくとも一つの環境音変数の特徴に基づいて前記環境音バックグラウンドを割り出すように構成されている通行人警告装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の通行人警告装置において、
前記警告音コントローラは、前記環境音バックグラウンドに応じて、前記警告音のラウドネスおよび/または周波数若しくは周波数分布といったような少なくとも一つの警告音変数を決定し、特に適正化するように構成されていることを特徴とする通行人警告装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の通行人警告装置において、
適正化された前記警告音は、特に、その周波数スペクトルの全体または少なくともその一部において、適正化されていない(標準)警告音よりも音量が大きくされているか或いは適正化されていない(標準)警告音よりも周波数スペクトルがより広いかの少なくともいずれかであることを特徴とする通行人警告装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の通行人警告装置において、
適正化された前記警告音は、特にそのラウドネスおよび/または周波数成分において時間的に変化可能であり、特に、普通の発し方と、音量および/または周波数分布によりさらに注意を引く発し方との間で自動的に交互に切り替わることを特徴とする通行人警告装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の通行人警告装置において、
前記環境音バックグラウンドを割り出すように構成された環境音センサを備えていることを特徴とする通行人警告装置。
【請求項7】
請求項6に記載の通行人警告装置において、
前記環境音センサは、車両キャビンの外に配置された外部マイクを備えていることを特徴とする通行人警告装置。
【請求項8】
請求項6または7に記載の通行人警告装置において、
前記環境音センサは、前記車両キャビン内に配置された少なくとも一つの内部マイク、特にスピーカーフォン装置および/または音声入力器の内部マイクを備えていることを特徴とする通行人警告装置。
【請求項9】
請求項8に記載の通行人警告装置において、
前記警告音コントローラは、前記環境音バックグラウンドを割り出すために、少なくとも一つの窓および/またはサンルーフおよび/またはトランクルームの開き具合を特に補正因子として考慮するように構成されていることを特徴とする通行人警告装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の通行人警告装置において、
前記警告音コントローラは、前記環境音バックグラウンドを割り出すために、前記自動車自身の音を考慮しないようにし、特に、検出された全バックグラウンドノイズから差し引くように構成されていることを特徴とする通行人警告装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の通行人警告装置において、
前記警告音コントローラは、前記環境音バックグラウンドを割り出すために、外から前記自動車に若しくは前記自動車内に達する環境音の時間平均を推定するように構成されていることを特徴とする通行人警告装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の通行人警告装置において、
車両ドライバによる操作時および/または操作中に、適正化された前記警告音を発するように構成されているトリガユニットを特徴とする通行人警告装置。
【請求項13】
電気的に駆動可能な自動車内の通行人警告装置を動作させる方法であって、特に、通行人警告装置は、請求項1から12のいずれか一項に記載の構成とすることができ、
-自動車の環境音バックグラウンドを割り出し、
-割り出された前記環境音バックグラウンドに応じて警告音を決定し、特には適正化し、
-決定され、特に適正化された前記警告音を発する
ことを備えた方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法において、
適正化された前記警告音は、車両ドライバによる操作時および/または操作中にのみ発せられることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項13に記載の方法において、
適正化された前記警告音は、警告状況が存在している時および/警告状況が存在している間にのみ発せられることを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気的に駆動可能な自動車用の通行人警告装置並びに電気的に駆動可能な自動車用の通行人警告装置を動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
法律で定められて以降、BEV、PHEVおよびFCEVといった純粋に電気で走行可能な乗用車は、スイッチを切ることのできない音響警告装置を有し、この装置が、車両が低速走行しているときに他の道路利用者、特に歩行者と自転車に警告するようにしなければならない。
【0003】
警告に関する条件は、欧州連合では、自動車(…)の騒音レベルに関する2014年4月16日付けの欧州議会並びに理事会の規則(EU)第540/2014号により定められており、その中で特に、附属書VIIIに関連した第2章「音響的車両警告装置(Acoustic Vehicle Alerting System-AVAS(車両接近通報装置))に関する規則」に定められている。そこに記されている警告音に関する規定により、音量に関してだけでなく、使用される周波数成分に関して、警告音のさまざまな発し方が認められている。この警告は、さまざまな車両において、ベースとなる警告音の音響的な表現次第で、多かれ少なかれ上手く機能する。
【0004】
他の道路利用者や例えば近くにある建設現場などからの環境音が或る一定のレベルを超えると、法律に従って音で警告するxEV(BEV,PHEV,FCEV)であっても、理論上聞き逃される可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような背景のもとに、本発明の課題は、電気でゆっくり走る自動車の周辺にいる人々に対する警告を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
各独立請求項は、課題を解決する対象をその特徴により特定する。従属請求項は、本発明の有利な発展形態に関する。
【0007】
一態様により、一時的または専ら純粋に電気的に駆動可能な自動車、つまり、特に、BEV(battery electric vehicle)、PHEV(plugin hybrid electric vehicle)またはFCEV(fuel cell electric vehicle)用の通行人警告装置が開示される。
【0008】
この通行人警告装置は、例えばスピーカとして形成することができる警告音発生器を備えている。さらに、この通行人警告装置は、警告音コントローラを備えており、この警告音コントローラは、例えば、最近の自動車に通常搭載されている駆動制御装置またはその他の制御装置のソフトウェアコンポーネントとして形成することができ、自動車の周辺にいる人々に聞こえる警告音を、特に、少なくとも一つの警告条件を満たしている限り生成するために警告音発生器を制御するように構成されている。
【0009】
特に、必要に応じて適用される警告条件は、法律および/または規準により規定されており、例えば、欧州連合では、自動車(…)の騒音レベルに関する2014年4月16日付けの欧州議会並びに理事会の規則(EU)第540/2014号により定められており、その中で特に、附属書VIIIに関連した第2章「音響的車両警告装置(Acoustic Vehicle Alerting System-AVAS)に関する規則」にある。他の多くの国々には、これについて、独自の同様の法律があるか或いは欧州規則またはアメリカ合衆国、中国または日本のものに内容的に同様なものが採用されている。
【0010】
通行人警告装置は、自動車の環境音バックグラウンドを割り出し、その環境音バックグラウンドに応じて警告音を決定し、特に適正化するように構成されている。ここで、特に、“警告音を適正化する”とは、例えば、標準的な警告音をもとにして、少なくとも一つの警告音変数の少なくとも一つの特徴を適正化すること、と解すべきものであり、そして、特に、“環境音バックグラウンドに応じて”とは、環境音バックグラウンドの環境音変数の少なくとも一つの特徴に応じて警告音を決定/適正化することと解すべきものである。
【0011】
これにより、喧しいおよび/または甲高い環境音バックグラウンドがあるときにも、自動車の周辺にいる人々に警告音が確実に聞こえることを保証できる。
【0012】
さらに他の態様により、電気的に駆動可能な自動車内の通行人警告装置を動作させる少なくとも以下の方法ステップを備えた方法が開示される:
(A)自動車の環境音バックグラウンドを割り出す;
(B)割り出された環境音バックグラウンドに応じて警告音を決定し、特には適正化する;
(C)決定され、特に適正化された警告音を発する。
【0013】
本発明は、とりわけ、他の道路利用者や例えば近くにある建設現場などからの環境音が或る一定のレベルを超えると、法律に従って音で警告するxEV(BEV,PHEV,FCEV)であっても、内燃エンジンに比べて、はるかに聞き逃され易い可能性があるという考えに基づいている。
【0014】
というのも、xEVの警告音は、略一定の音量であるのに対して、どの内燃エンジンも比較的喧しい瞬間と比較的静かな瞬間のリズミカルな繰り返しのある音を放出するからである。内燃エンジンの喧しい瞬間は、通常の(法律に則った)一定レベルのxEV警告音よりも(一部かなり)音が大きく、それにより音が聞かれ易くなっている。
【0015】
さらに、多くの車両では、(法律に則った)警告音は、比較的高い周波数の音が少ないため、内燃エンジンの音に比べると刺激が少なく、そのため、状況によっては聞き逃され易くなる。静かな環境では、こういったことは通常当てはまらないので、問題はない。
【0016】
本発明は、とりわけ、環境音のラウドネスおよび/または周波数分布に応じて、特に、xEV警告音のレベルを上げるか或いは警告音の音質をより刺激的にすることで気付かれ易くするかの少なくともいずれかにするという考えに基づいている。
【0017】
そのためには、環境音を少なくとも大まかに検出するセンサが必要であり、この環境音を警告音の音合成の適正化のための目安量として使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
一実施例によれば、自車両自身が生成する音(大抵はラジオ/メディア再生器)をマイクロフォンの出力信号から差し引いて、外から車両内に達する環境音を時間平均で推定する場合には、スピーカーフォン装置および/または音声入力器用のマイクロフォンを費用を抑えつつそれでも十分な精度で使用することができる。そのようなアプローチの場合、一実施例により、窓やサンルーフの開き具合も合わせて考慮することができ、必要であれば、補正因子として遮音ガラスを考慮することができる。もっとも、好ましい一実施例によれば、ほとんどの応用例/車両プロジェクトにおいて、簡単且つそれ故に安価なマイクロフォンは、それでもやはり外部領域に置かれたままになろう。
【0019】
一実施例によれば、より聞こえ易い環境音(“クラクション-ソフト”)への手動による一時的な切り替えをドライバに提供し、その切り替えにより、ドライバが、個々の事情において、驚かすことなく特定の道路利用者に的を絞って警告を行うことができるように設けられていてもよい。
【0020】
一実施例によれば、通行人警告装置は、例えば環境音バックグラウンドのラウドネスおよび/または周波数分布といったような少なくとも一つの環境音変数の特徴に基づいて、環境音バックグラウンドを割り出すように構成されている。これにより、聞こえるように警告音発生器が音で勝らなければならない音信号がどういった性質のものなのかがはっきりする。
【0021】
一実施例によれば、警告音コントローラは、環境音バックグラウンドに応じて、例えば、警告音のラウドネスおよび/または周波数若しくは周波数分布といったような少なくとも一つの警告音変数を決定し、特に適正化するように構成されている。これにより、警告音は、警告音が本当にさまざまな騒音のバックグラウンドのある中で聞かれないままになることも、不適切に喧しく/甲高いものであるために場合によっては驚かせてしまうこともないように決定/適正化することができる。
【0022】
一実施形態によれば、適正化された警告音は、特に、その周波数スペクトルの全体または少なくともその一部において、適正化されていない(標準)警告音よりも音量が大きくされているか或いは適正化されていない(標準)警告音よりも周波数スペクトルがより広いかの少なくともいずれかとされていることで、特に、適正化された警告音が、より多くの高周波成分を含むか或いは刺激的に作用するかの少なくともいずれかになる。これにより、自動車の周辺にいる人々に対する警告をさらに確実に実施することができる。
【0023】
一実施例によれば、通行人警告装置はまた、特に、警告音コントローラを用いることで、特に、そのラウドネスおよび/または周波数成分において、時間的に変化可能な音を生成することができ、その音が、ランダムまたは略コンスタントな環境音に少なくとも一時的に音で勝り、それにより、警告を発する車両に注意を向けさせることができる。特に、そのとき警告音は、通行人の注意をさらに良好に車両の動きに向けさせるために、特に一秒間に一回または複数回、普通の発し方と、音量および/または周波数分布によりさらに注意を引く発し方との間で自動的に交互に切り替わる。このような実施例は、特に、建設車両のバックブザーとの類比で捉えることができ、あたかも一種の“バックブザーライト”を実現することができる。それは、生成された音は、ピープ音の驚かせ効果がなくても、警告音が繰返し時間的に変化することで注意を喚起するためである。
【0024】
一実施例によれば、通行人警告装置は、環境音バックグラウンドを割り出すように構成された環境音センサを備えている。これにより、モデルに基づくだけでない実際の環境音バックグラウンド割り出す(ここではつまり、センサで検出する)ことができる。
【0025】
一実施例によれば、環境音センサは、車両キャビンの外に配置された外部マイクを備えている。このようにして、安価なハードウェアを用いて、音響的に高い品質の環境音バックグラウンドの検出を行うことができる。
【0026】
一実施例によれば、環境音センサは、車両キャビン内に配置された少なくとも一つの内部マイク、特にスピーカーフォン装置および/または音声入力器の内部マイクを備えている。このようにして、環境音センサは、最近のほとんどの車両においてハードウェアを追加することなく、つまり、いずれにしろ使える内部マイクで間に合わせることができる。
【0027】
一実施例によれば、警告音コントローラは、環境音バックグラウンドを割り出すために、少なくとも一つの窓および/またはサンルーフおよび/またはトランクルームおよび必要に応じて遮音ガラスの開き具合を特に補正因子として考慮するように構成されている。この結果、運転状態に関係なく、車両キャビン内で十分実際に近い環境音バックグラウンドの値を検出するために内部マイクを使用することができる。
【0028】
一実施例によれば、警告音コントローラは、環境音バックグラウンドを割り出すために、自動車自身の音を考慮しないようにし、特に、検出された全バックグラウンドノイズから差し引くように構成されている。この結果、環境音バックグラウンドを適切に割り出すことが保証される。
【0029】
一実施例によれば、警告音コントローラは、環境音バックグラウンドを割り出すために、外から自動車に若しくは自動車内に達する環境音の時間平均を推定するように構成されている。この結果、喧しいおよび/または甲高い個々のノイズの過度の影響を受けることなく、環境音“バックグランド”を割り出すことがより狭い意味で保証される。
【0030】
一実施例によれば、通行人警告装置は、車両ドライバによる操作時および/または操作中に、適正化された警告音を発するように構成されたトリガユニットを備えている。このような“ソフト-クラクション”により、標準的なクラクションであれば驚かしてしまうようなおそれのない、ユーザが有効化できる警告信号を、対象となる受け手が聞けるように発することができる。
【0031】
本方法の一実施例によれば、適正化された警告音は、車両ドライバによる操作時および/または操作中にのみ発せられる。
【0032】
本方法の代替的な一実施例によれば、適正化された警告音は、少なくとも一つの警告条件が存在している時および/または警告条件が存在している間にのみ発せられる。一つの警告条件は、例えば、歩行者、自転車、オートバイ或いはそれらと同等のものが、予定している自動車の移動軌跡の領域内に現時点で存在している或いは将来存在すると予想されることであってもよい。
【0033】
現時点での警告条件を検出するために、いずれにしろ自動車にあって周辺を検出する、特に、動きの識別能力および/または障害物の識別能力および/または人物の識別能力を有するカメラシステムを使用することができる。


【国際調査報告】