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特表2024-529076高純度酸化マグネシウム及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】高純度酸化マグネシウム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01F 5/08 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
C01F5/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507894
(86)(22)【出願日】2022-07-06
(85)【翻訳文提出日】2024-03-13
(86)【国際出願番号】 RU2022050214
(87)【国際公開番号】W WO2023018358
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】2021123779
(32)【優先日】2021-08-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521060903
【氏名又は名称】ジョイント ストック カンパニー コースティック
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】ゴードン,エレナ ペトロヴナ
(72)【発明者】
【氏名】カラチェンコ,アラ ヴィタリエヴナ
(72)【発明者】
【氏名】シジック,イゴール ニコラエヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ウグノヴェノク,タチアナ セルギーヴナ
【テーマコード(参考)】
4G076
【Fターム(参考)】
4G076AA02
4G076AB04
4G076AB06
4G076BA15
4G076BA42
4G076BA46
4G076BB08
4G076BC02
4G076BD02
4G076BE12
4G076CA02
4G076CA26
4G076CA28
4G076CA36
(57)【要約】
本発明は、製薬、化粧品、及び食品産業において、セラミックス、ガラス、光学材料、電子材料、触媒、ポリマー材料、変圧器鋼などの製造において使用される高純度酸化マグネシウムを製造するための化学技術に関する。
BET法により測定した場合、5~70m/gの範囲の比表面積を有し、レーザー回折で測定した場合、5μm以下の平均粒径(d50)を有する高純度酸化マグネシウムであって、それぞれ0.1ppm以下のPb、Cd、As、Hgの不純物元素の質量分率、それぞれ1ppm以下のBa、Zn、Ti、Mn、Co、Mo、V、Sb、Srの不純物元素の質量分率、それぞれ5ppm以下のAl、Fの不純物元素の質量分率、それぞれ10ppm以下のP、Cr、Ni、K、Liの不純物元素の質量分率、50ppm以下のFeの質量分率、0.01%以下のSiの質量分率、それぞれ0.02%以下のCa、Bの不純物元素の質量分率、0.02%以下の硫酸塩SO 2-の質量分率、0.05%以下のNa不純物の質量分率、0.05%以下の塩化物不純物の質量分率を有し、一次粒子及び一次粒子からなる凝集体を含むことを特徴とする、高純度酸化マグネシウム。
高純度水酸化マグネシウムは、精製した濃塩化マグネシウム水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを連続して反応させることにより得られる水酸化マグネシウムを、40~90℃の温度で、20~300rpmの速度で撹拌しながら、OH:Mg++イオンのモル比が(1.9÷2.1):1の範囲で、焼成することにより得られ、供給された初期試薬の総質量の5~200%の量の水酸化マグネシウムシード結晶の懸濁液を反応生成物に連続的に供給し、水酸化マグネシウムのシード結晶を濃塩化マグネシウム水溶液で前処理し、試薬の相互作用後、水酸化マグネシウムの懸濁液は、熟成するために、40~90℃の温度において、送られ、次に、水酸化マグネシウム粒子の水熱結晶化を、二価アルコール:エチレングリコールまたはプロピレングリコールの存在下において、温度120~220℃、圧力0.1~2.3MPa、持続時間1時間~10時間の範囲で行い、得られた水酸化マグネシウムの懸濁液を濾過、洗浄し、700~1100℃の温度で、水酸化マグネシウムの焼成を行う。
得られた高純度酸化マグネシウムは、高い化学純度、調整可能な比表面積、孔容積、孔径分布、粒子サイズ分布、及び活性を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
BET法により測定した場合、5~70m/gの範囲の比表面積を有し、レーザー回折で測定した場合、5μm以下の平均粒径(d50)を有する高純度酸化マグネシウムであって、それぞれ0.1ppm以下のPb、Cd、As、Hgの不純物元素の質量分率、それぞれ1ppm以下のBa、Zn、Ti、Mn、Co、Mo、V、Sb、Srの不純物元素の質量分率、それぞれ5ppm以下のAl、Fの不純物元素の質量分率、それぞれ10ppm以下のP、Cr、Ni、K、Liの不純物元素の質量分率、50ppm以下のFeの質量分率、0.01%以下のSiの質量分率、それぞれ0.02%以下のCa、Bの不純物元素の質量分率、0.02%以下の硫酸塩SO 2-の質量分率、0.05%以下のNa不純物の質量分率、0.05%以下の塩化物不純物の質量分率を有し、一次粒子及び一次粒子からなる凝集体を含むことを特徴とする、高純度酸化マグネシウム。
【請求項2】
0.025重量%以下である塩化物の質量分率を有することを特徴とする、請求項1に記載の高純度酸化マグネシウム。
【請求項3】
20ppm以下である鉄Feの質量分率を有することを特徴とする、請求項1に記載の高純度酸化マグネシウム。
【請求項4】
BET法により測定した場合に、10~30m/gの範囲の比表面積を有することを特徴とする、請求項1に記載の高純度酸化マグネシウム。
【請求項5】
水銀圧入法により測定した場合に、0.9×10-6~1.5×10-6/gの範囲の孔容積を有することを特徴とする、請求項1に記載の高純度酸化マグネシウム。
【請求項6】
全孔容積に対して、85~93容積%の範囲のマクロ孔容積、6.5~14容積%の範囲のメソ孔容積、0.5~1.5容積%の範囲のマイクロ孔容積を有することを特徴とする、請求項1に記載の高純度酸化マグネシウム。
【請求項7】
水銀圧入法により測定した場合に、150~400nmの範囲の最頻孔直径を有することを特徴とする、請求項1に記載の高純度酸化マグネシウム。
【請求項8】
レーザー回折法によって測定した場合に、3.5μm以下の平均粒子径(d50)を有することを特徴とする、請求項1に記載の高純度酸化マグネシウム。
【請求項9】
レーザー回折により測定した場合に、前記粒子の10%が2μm以下の直径を有し、前記粒子の90%が30μm以下の直径を有することを特徴とする、請求項1に記載の高純度酸化マグネシウム。
【請求項10】
0.1%以下の325メッシュのふるい上の残留物を有することを特徴とする、請求項1に記載の高純度酸化マグネシウム。
【請求項11】
40~200秒の範囲のクエン酸活性を有することを特徴とする、請求項1に記載の高純度酸化マグネシウム。
【請求項12】
400cP以下の水性懸濁液の粘度を有することを特徴とする、請求項1に記載の高純度酸化マグネシウム。
【請求項13】
8~20の炭素原子を含む飽和及び不飽和脂肪酸、及び/またはそれらのアルカリ金属及びアルカリ土類金属の群及び/または有機官能性トリアルコキシシラン、テトラアルコキシシランの群から選択されるシランカップリング剤、及び/または以下を含む群から選択される添加剤から選択される1つまたは複数の表面処理剤によって変性されていることを特徴とする、請求項1に記載の高純度酸化マグネシウム;無機
ケイ素化合物:ケイ酸とアルカリ金属及びアルカリ土類金属の塩、二酸化ケイ素またはそれらの混合物;
ホウ素:ホウ酸、そのアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、またはそれらの混合物;
カルシウム:炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ホウ酸カルシウムまたはそれらの混合物;
アンチモン:酸化アンチモン、硫酸アンチモンまたはそれらの混合物;
有機化合物及び無機化合物
リン:リン酸、ホスホン酸、それらのアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、またはそれらの混合物;
チタン:二酸化チタン及び有機官能性チタン酸塩またはそれらの混合物;
酸化マグネシウムの0.001~5.0重量%のそれらの混合物。
【請求項14】
塩化マグネシウム水溶液と水酸化ナトリウム水溶液とを反応させることによって得られる水酸化マグネシウムを焼成して、高純度酸化マグネシウムを製造するための方法であって、精製された濃塩化マグネシウム水溶液と水酸化ナトリウム水溶液との相互作用は、40~90℃の温度で、20~300rpmの速度で撹拌しながら、OH:Mg++イオンのモル比が(1.9÷2.1):1の範囲で、連続的に行われ、供給された初期試薬の総質量の5~200%の量の水酸化マグネシウムシード結晶の懸濁液を反応生成物に連続的に供給し、水酸化マグネシウムのシード結晶を濃塩化マグネシウム水溶液で前処理し、前記試薬の相互作用後、水酸化マグネシウムの懸濁液は、熟成するために、40~90℃の温度において、送られ、次に、水酸化マグネシウム粒子の水熱結晶化を、二価アルコール:エチレングリコールまたはプロピレングリコールの存在下において、温度120~220℃、圧力0.1~2.3MPa、持続時間1時間~10時間の範囲で行い、前記得られた水酸化マグネシウムの懸濁液を濾過、洗浄し、700~1100℃の温度で、前記水酸化マグネシウムの焼成を行うことを特徴とする、方法。
【請求項15】
請求項14に記載の高純度酸化マグネシウムを製造するための方法であって、重金属及び/または鉄、及び/または硫酸塩、及び/またはホウ素、及び/または臭素、及び/またはそれらの混合物の不純物から予め精製され、精製の最終段階が、イオン交換精製である合成または天然起源の塩化マグネシウムの水溶液が、濃塩化マグネシウム水溶液として使用されることを特徴とする、方法。
【請求項16】
水酸化ナトリウム水溶液として、電気化学的方法により得られた水酸化ナトリウム水溶液を用いることを特徴とする、請求項14に記載の高純度酸化マグネシウムを製造するための方法。
【請求項17】
水酸化マグネシウムの水熱結晶化を、0.01~1.0重量%の量で、二価アルコールの存在下で行うことを特徴とする、請求項14に記載の高純度酸化マグネシウムを製造するための方法。
【請求項18】
0.01~0.1%の範囲の質量分率を有する水酸化ナトリウム水溶液である、脱イオン水及び/またはアルカリ水を用いて、水酸化マグネシウムの結晶を洗浄することを特徴とする、請求項14に記載の高純度酸化マグネシウムを製造するための方法。
【請求項19】
酸化マグネシウムが、8~20の炭素原子を含む飽和及び不飽和脂肪酸、及び/またはそれらのアルカリ金属及びアルカリ土類金属の群及び/または有機官能性トリアルコキシシラン、テトラアルコキシシランの群から選択されるシランカップリング剤、及び/または以下を含む群から選択される添加剤から選択される1つまたは複数の表面処理剤によって変性されていることを特徴とする、請求項14に記載の高純度酸化マグネシウムを製造するための方法;
無機
ケイ素化合物:ケイ酸とアルカリ金属及びアルカリ土類金属の塩、二酸化ケイ素またはそれらの混合物;
ホウ素:ホウ酸、そのアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、またはそれらの混合物;
カルシウム:炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ホウ酸カルシウムまたはそれらの混合物;
アンチモン:酸化アンチモン、硫酸アンチモンまたはそれらの混合物;
有機化合物及び無機化合物
リン:リン酸、ホスホン酸、それらのアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、またはそれらの混合物;
チタン:二酸化チタン及び有機官能性チタン酸塩またはそれらの混合物;
酸化マグネシウムの0.001~5.0重量%のそれらの混合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化学技術、特に高純度酸化マグネシウム及びその製造方法に関する。
【0002】
酸化マグネシウムは、非毒性の耐火性及び防爆性の物質であり、化学、電気技術、電子、紙パルプ、農業、製薬、及び食品産業、ならびにペリクレース、ゴム、変圧器鋼材、建築材、難燃材、耐火材などの製造において一般的に使用されている。
【0003】
酸化マグネシウムの製造は、天然または合成マグネシウム化合物(炭酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、塩化マグネシウムなど)の熱分解に基づく[Mark A.Shand.The Chemistry and technology of magnesium oxide.Wiley-Interscience,2006;Kirk-Othmer.Encyclopedia of chemical technology.Fourth edition.Vol.15,p.353,354]。
【0004】
酸化マグネシウムを天然原料から得た場合、天然原料中に存在する不純物が多量に含まれる。
【0005】
しかし、医薬品、薬局方、化粧品、食品産業のほか、特殊セラミックス、特殊ガラス、光学材料、電子材料、触媒、及び酸化マグネシウムの化学的純度が必須である他の材料の製造など、いくつかの用途がある。
【0006】
酸化マグネシウム中に鉄、マンガン、クロム、ニッケル、銅、コバルト、及びカドミウムなどの不純物がわずかの量であっても存在することにより、それが使用される製品(ガラス、ポリマー製品など)に望ましくない色が付与され得る。
【0007】
酸化マグネシウム中の重金属不純物は、医薬品、薬局方、化粧品、及び食品産業で使用される場合には許容されない。
【0008】
触媒、変圧器鋼、電子産業、原子力産業などの製造において、酸化マグネシウムが使用される場合、塩化物、フッ化物、硫酸塩、ナトリウム、カリウム、リチウム、及びカルシウムなどの特定のイオンの不純物は望ましくない。
【0009】
合成酸化マグネシウムは、天然原料を焼成することにより得られる酸化マグネシウムに比べて、顕著に少ない不純物を含む。
【0010】
酸化マグネシウムの重要な特徴は、酸化マグネシウムの反応性(活性)及び物理化学的特性であり、これらは、比表面積、孔容積及び孔サイズ分布、最頻孔直径、粒子サイズ分布、水性懸濁液の粘度、及びその時間的安定性などの指標によって特徴付けられ得る。酸化マグネシウムの示された特徴は、その技術的特性:流動性、分散性(水及び有機溶媒中など)、ポリマーマトリックス中での分布の均一性、添加剤として使用される場合の他の混合物及び形態でのその分布の均一性を決定する。
【0011】
酸化マグネシウムの活性は、比表面積、ヨウ素活性、クエン酸活性、酢酸活性、典型的な反応性などの特徴によって特徴付けることができる。酸化マグネシウムは、その用途に応じて、必要な活性に応じて使用される。
【0012】
比表面積が5~70m/gの酸化マグネシウムは、上記の(選択された)用途に一般的に使用される。
【0013】
酸化マグネシウムの反応性(活性)及び物理化学的性質は、次のように酸化マグネシウムの一次粒子の形状、サイズ、及び均一性に応じて、ならびに凝集体(酸化マグネシウムの一次粒子により形成された二次粒子)の形状、サイズ、及び均一性、ならびにそれらの間の比率に依存する。一次粒子及び凝集体は、酸化マグネシウム前駆体(水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、マグネシウムトリヒドロカーボネート(magnesium trihydrocarbonate)など)の合成及び水熱結晶化の段階で形成され、酸化マグネシウムは、一定の焼成温度までは前の形状を保持する。
【0014】
酸化マグネシウムの一次粒子は、多角形プレート[JPS6136119、1986年2月20日公開]、薄いスケール、立方体[特開2007-091525号、2007年4月12日公開]の形態の不定形状の粒子の形態で得ることができ、様々な形状の凝集体:不定形状[国際公開第0183848号、2001年11月8日公開]、球状[JPS6136119、1986年2月20日公開;特許第3821633号、2001年4月24日公開]、棒状[国際公開第2014126075号,2014年8月21日公開;中国特許第107188207号、2017年09月22日公開]などを形成することができる。
【0015】
一次粒子の形状及びサイズ、凝集体の形状及びサイズ、ならびにそれらの比率に応じて、酸化マグネシウムは、異なる孔容積、孔サイズ分布、それに応じて最頻孔直径、異なる孔径、総孔容積に占めるマクロ孔、メソ孔、及びマイクロ孔の割合を有する。
【0016】
国際分類IUPACに従って、孔は、そのサイズによって次のグループ:マイクロ孔(<2nm)、メソ孔(2~50nm);マクロ孔(>50nm)に分類される。
【0017】
すなわち、マクロ孔容積は、粒子の凝集体(一次粒子からなる二次粒子)間の空隙(孔)容積を特徴とする。メソ孔容積は、凝集体を形成して互いに接触する一次粒子間の粒子間空隙(孔)の容積の特徴を示す。マクロ孔容積は、一次粒子内の空隙(孔)容積の特徴を示す。
【0018】
一次粒子の凝集は、様々な理由で発生する可能性があり、例えば、液体中に分散した粒子内の表面電荷の存在により;乾燥中に溶解した成分が沈降することにより;乾燥状態での静電荷の存在により;粉砕中の物理的応力により、または焼成中の境界粒子により、引き起こされ得る。したがって、粉末は、多くの場合、製造プロセスの種類及び条件、ならびに原料の品質に応じて、特徴的な規則正しい粒子構造を有する[国際公開第0183848号,2001年11月8日公開]。
【0019】
ほとんどの酸化マグネシウム製造業者は、純度、活性、及び特定の用途に最適な様々な一次粒子及び凝集体の形状及びサイズで、酸化マグネシウムを製造することに関連する問題に対処することに注力している。
【0020】
原料をさらに徹底的に精製し、より高い温度で焼成することにより、得られる酸化マグネシウムの純度が改善される。
【0021】
高純度酸化マグネシウム粉末が記載され[特開201211078号、2012年11月1日公開]、純度が少なくとも99.9重量%、Pb含有量が0.1ppm未満であり、Cu-Kα線を用いた粉末X線回折により測定される(111)面、(200)面及び(220)面のそれぞれのピークの半値幅が、0.20度以下であり、レーザー回折により測定される平均粒径(d50)は、0.1~10μmである。
【0022】
記載によれば、塩化マグネシウム溶液から不純物を精製するために、無水塩化マグネシウムと超純水とを混合することにより得られた水溶液に、マグネシウムイオン20モル%のアルカリ水溶液を添加し、水酸化マグネシウムの懸濁液を得た。次に、水酸化マグネシウムの懸濁液を、15000~30000rpmの速度で激しく撹拌しながら、約80~100℃の温度に10~100時間維持した。不純物を吸着している水酸化マグネシウムの沈殿を除去した後に得られた精製塩化マグネシウム溶液を用いて、精製された水酸化ナトリウム溶液と反応させることによって、水酸化マグネシウムを合成した。得られた水酸化マグネシウムの懸濁液に、100~150℃の温度で0~60分間の水熱処理を施した。著者らによれば、オートクレーブで処理したときに、水酸化マグネシウムの結晶粒が形成され、結晶中に含まれる不純物が溶液中に浸出し、水酸化マグネシウム中の不純物の量が減少する。得られた水酸化マグネシウム粉末を1000~1500℃の温度で焼成した。
【0023】
著者らは、鉄、マンガン、ニッケル、クロムなど、色を付与する不純物の質量分率、塩化物の質量分率、比表面積及び孔容積を提供していない。ビスコファイト溶液中で新たに析出した水酸化マグネシウムの沈殿物は、ゲル状で擬似非晶質であり、そのため、沈降及び濾過などの単離が困難になり、そこで著者らは、80~100℃で10~100時間という高温での長時間曝露を行っているが、これは経済的に有益でない。
【0024】
発明[特許第3980569号,2007年9月26日公開;特許第3939102号,2007年7月4日公開;特許第3563269号,2004年9月8日公開]では、ハロゲン源の存在下で、海水及び鉛または鉛化合物を含有する水酸化カルシウムを反応させることによって得られる乾燥水酸化マグネシウムを焼成することによる、低い含有量の鉛Pbを含む、酸化マグネシウムの調製について記載しており、これは、700~1300℃の温度のハロゲン化物またはハロゲンガスである。得られた酸化マグネシウム1モルあたりの鉛含有量が2x10-7モル未満である酸化マグネシウムは、肥料、食品、医薬品原料、化粧品原料などの添加物として使用することが意図される。同時に、著者らは、他の不純物の質量分率、比表面積もしくは活性、または一次粒子及び二次粒子のパラメータをいずれも提供していない。
【0025】
食品添加物用の酸化マグネシウムが記載され[特許2003033159、2003年2月4日公開]、ここでは、鉛の質量分率が10ppm以下、8ミクロンを超える直径を有する粒子の含有量が5体積%以下(レーザー回折による)、BET法により測定した比表面積は、1~50m/gの範囲であり、クエン酸活性は、80~450秒である。実施例では、発光プラズマ分析法(ICP)によって測定された、得られた酸化マグネシウムの化学純度を示している。不純物の質量分率は、鉛0.3~1.4ppm、クロム2ppm以下、カドミウム0.2~2.4ppm、銅0.1~0.2ppmであった。得られた酸化マグネシウムにおいて、鉄、マンガン、ニッケルの色を付与する不純物の質量分率、塩化物の質量分率は提供されず、また、一次粒子及び二次粒子のパラメータは提供されていない。
【0026】
制御された粒径を有する凝集体が存在することにより、例えば、加工性、流動性、分散性(水及び有機溶媒中におけるものを含む)などの酸化マグネシウム粉末のいくつかの特性を改善することができ、これは、以下に特定する発明によって言及される。
【0027】
多数の一次粒子が凝集した一次粒子及び二次粒子を含む酸化マグネシウム粉末が記載されている[特開2007091525号、2007年4月12日]。これらの粒子の直径は、0.5~10μmであり、BET法によって測定された比表面積は、0.1~3m/gである。酸化マグネシウム中の不純物の含有量は、塩化物、カルシウム、アルミニウム、ケイ素、鉄、ナトリウム、及びカリウムの質量分率が、それぞれ20ppmを超えない。著者らは、酸化マグネシウム粒子の90%以上の形状が六角形(立方体)であることに注目している。上記の酸化マグネシウムは、シュウ酸アンモニウムと塩化マグネシウムとの水溶液の相互作用によって得られる平均粒径50~200μmのシュウ酸マグネシウムを1200~1400℃で焼成することによって調製される。上記酸化マグネシウム粉末は、カラープラズマディスプレイパネルの誘電体層の保護膜を形成するために、原料として使用されることを意図する。酸化マグネシウムの比表面積値(0.1~3m/g)は、反応性が低いことを示しており、したがって食品産業、医療製品、触媒、ポリマー化合物のほか、変圧器鋼製造などにおけるアニーリング分離剤としての用途が限定されていることに留意する必要がある。
【0028】
プロトタイプとして想定される最も近い発明は、発明[国際公開第2009001883号、2008年12月31日公開]において、平均粒径1μm以上の酸化マグネシウム粒子からなる酸化マグネシウム粒子凝集体が記載されている。酸化マグネシウム粒子の凝集体は、10μm以上の粒子径を有する略球状であり、それぞれ10ppmを超えないSi、Al、Ca、Fe、V、Cr、Mn、Ni、Zr、B、及びZnの不純物を含み、不純物の総量は、100ppmを超えない。酸化マグネシウム粒子凝集体は、水銀圧入法により測定される孔分布において、第1モードのサイズと、第1モードのサイズより大きい第2モードのサイズと、を有し、第1モードが、0.1~1μmのサイズを有し、第2モードが、8~20μmのサイズを有する。
【発明の概要】
【0029】
酸化マグネシウム粒子の凝集体を製造するための方法は、次の段階から構成される:塩化マグネシウムの初期溶液と新たに析出した水酸化マグネシウムによるアルカリ水溶液の精製、ならびに濾過、合成、100~150℃の温度での水熱処理、水酸化マグネシウム粉末の濾過、洗浄、乾燥、焼成、酸化マグネシウム粒子の溶媒への分散、噴霧乾燥して酸化マグネシウム粒子の凝集体を産生すること。
【0030】
著者らは、球状形の凝集体により、酸化マグネシウムの分散性及び流動性が増すと記載している。しかし、球状で高純度の凝集体は、非常に大きく(10μm以上)、活性も低い(焼成温度1400℃)ため、この酸化マグネシウム粒子凝集体の触媒、高分子化合物、変圧器鋼などの製造での用途が制限される。さらに、酸化マグネシウムを有機溶媒に分散させ、その後噴霧乾燥する追加の段階により、原料の消費が増加することとなり、ハードウェア設計がより複雑になり、その結果、製造コストが増加する。
【0031】
したがって、不純物濃度が低く、十分な活性(比表面積が5~70m/gの範囲内)で、高純度の酸化マグネシウムを産生する問題、及び選択された応用分野において、優れた技術的特性を提供する一次粒子及び二次粒子パラメータは、現在も依然として未解決である。
【0032】
本発明の目的は、高純度の酸化マグネシウムを得ることであり、この酸化マグネシウムは、BET法により測定した場合、5~70m/gの比表面積、レーザー回折により測定した場合、5μm以下の平均粒径(d50)、それぞれ0.1ppm以下のPb、Cd、As、Hgの不純物元素の質量分率、それぞれ1ppm以下のBa、Zn、Ti、Mn、Co、Mo、V、Sb、Srの不純物元素の質量分率、それぞれ5ppm以下のAl、Fの不純物元素の質量分率、それぞれ10ppm以下のP、Cr、Ni、K、Liの不純物元素の質量分率、50ppm以下のFeの質量分率、0.01%以下のSiの質量分率、それぞれ0.02%以下のCa、Bの不純物元素の質量分率、0.02%以下の硫酸塩SO 2-の質量分率、それぞれ0.05%以下のNa、Clの不純物元素の質量分率を有し、0.9×10-6~1.5×10-6/gの孔容積を有し、一次粒子及び一次粒子からなる凝集体を含む。
【0033】
この技術的成果は、濃塩化マグネシウム水溶液と水酸化ナトリウム水溶液を、(1.9÷2.1):1の範囲のOH:Mg++イオンのモル比で、連続的に反応させることによって得られる前駆体である水酸化マグネシウムを焼成することにより、高純度の酸化マグネシウムが得られるという事実によって達成され、水酸化マグネシウムシード結晶の懸濁液を反応生成物に連続的に供給し、試薬の相互作用後、水酸化マグネシウムシード結晶は、濃塩化マグネシウム水溶液で前処理され、水酸化マグネシウム懸濁液は、熟成するために、温度を少なくとも40℃に維持しながら送られ、その後、水酸化マグネシウム粒子の水熱結晶化が、二価アルコールの存在下において、120~220℃の範囲の温度、0.1~2.3MPaの範囲の圧力、1~10時間の範囲の持続時間で行われる。
【0034】
電気化学的方法(水銀電気分解、隔膜電気分解、膜電気分解)により得られた水酸化ナトリウム水溶液が、濃水酸化ナトリウム水溶液として用いられる。特定の水酸化ナトリウム水溶液を使用することによりアルカリ剤として、石灰乳、アンモニア水、化学的方法により得られる水酸化ナトリウムを使用する方法と比較して、より高純度の水酸化マグネシウムが得られるようになる。
【0035】
合成または天然の塩化マグネシウム水溶液が、濃塩化マグネシウム水溶液として用いられる。前者は、既知の方法により、重金属及び/または鉄、及び/または硫酸塩、及び/またはホウ素、及び/または臭素、及び/または他の望ましくない不純物またはそれらの混合物から予め精製され、ここで、精製の最終段階は、イオン交換精製である。
【0036】
塩化マグネシウム水溶液の機械的処理及び試薬処理では、望ましくない不純物からの高度な精製が行われることはない。塩化マグネシウム水溶液を新たに沈殿させた水酸化マグネシウムで精製することにより(化学量論量の5~10%の水酸化ナトリウムを添加することにより)、顕著な量の不純物を除去できるが、しかしそれは粗く、精製の中間段階とのみなり得る。さらに、場合によっては、試薬処理により、塩化マグネシウム溶液にさらに望ましくない不純物が導入され得る。例えば、塩化マグネシウム水溶液を硫酸塩(SO 2-)から精製する場合、塩化バリウム溶液が使用される。硫酸バリウム沈殿物の分離後、微量のバリウムが塩化マグネシウム水溶液中に残るが、これは可溶形態では有毒であり、食品、医薬品、及び化粧品産業において酸化マグネシウムを使用する場合、その存在は望ましくない。
【0037】
この問題を解決するために、本発明では、最終精製として重金属に対して選択的なイオン交換樹脂を用いて、重金属からの塩化マグネシウム水溶液の精製を利用する。イオン交換樹脂の例は、イミノ二酢酸キレート基を有するイオン交換樹脂、例えば、Lanxess(Germany)製のLEWATIT TP 208、ROHM and HAAS(USA)製のAmberlite IRC 748などである。
【0038】
濃度350g/dm以上の塩化マグネシウム水溶液を使用することが好ましい。
【0039】
低濃度の塩化マグネシウム(低過飽和)は、水酸化マグネシウム結晶核の成長を促進し、それによって比較的大きい水酸化マグネシウム結晶を創出することが知られている。したがって、高濃度(高過飽和)では、水酸化マグネシウムの急速かつ広範な核生成が生じ、小さい粒径となる[Huaxiong Fang,Tao Zhou,Xiangping Chen et al./Controlled preparation and characterization of nano-sized hexagonal Mg(OH) flame retardant.Particulogy,Volume14,2014,pages 51-56.]。
【0040】
したがって、懸濁液の良好な加工性及び濾過性が確実に得られるより大きい粒子を得るには、塩化マグネシウムの希薄溶液を使用する必要がある。しかし、工業プロセスでは、少なくとも350g/dmの塩化マグネシウムを含む濃縮水溶液を使用することが技術的に進んでおり、これにより、反応器及びタンク設備の容積を減少させることでき、それによって本プロセスの技術的及び経済的指標を高めることができるためである。したがって、発明者らは、この矛盾を克服するために広範な研究を行った。
【0041】
水酸化ナトリウムと塩化マグネシウムイオンとのモル比は、OH:Mg++が(1.9÷2.1):1の範囲内であることが好ましい。過剰な塩化物が増加することにより、得られた水酸化マグネシウムの塩化マグネシウムによる汚染、及びその洗浄のために水の容量を増加させる必要性が生じ、かつ得られた酸化マグネシウム中での塩化物の質量分率が増加することとなる。アルカリ剤の過剰量が増加することにより、濾過が困難なゲル状の微細な水酸化マグネシウムの沈殿の形成が生じ、その結果、プロセス生産性の低下となる。
【0042】
供給された初期試薬の総質量の5~200%である量の水酸化マグネシウムシード結晶の懸濁液が、濃塩化マグネシウム水溶液と水酸化ナトリウム水溶液の連続相互作用ゾーンに連続的に供給される。シード結晶懸濁液の量を5%未満まで減少させると、十分な量の水酸化マグネシウム粒子の凝集体を得ることができない。200%を超えてシード結晶懸濁液を増量することにより、プロセスの経済効率が低下し、一次粒子及び凝集体の形状及びサイズに顕著な改善がもたらされることはない。
【0043】
予め得られた水酸化マグネシウム結晶の懸濁液は、シード結晶の懸濁液として使用する。合成ゾーンに供給される前に、水酸化マグネシウムのシード結晶は、濃塩化マグネシウム水溶液で前処理され、シード結晶の表面上に、塩化マグネシウムの層の形成がもたらされる。塩化マグネシウムの層を含むシード結晶が合成ゾーンに入るとき、その後水酸化ナトリウム水溶液を添加することにより、新しい(新たに析出した)水酸化マグネシウム粒子が、水酸化マグネシウムのシード結晶の表面上に均一に形成され、すなわち、凝集体が形成され、そのコアが、シード結晶である。合成ゾーン中にシード結晶が存在することも、新たに形成される特定のタイプの水酸化マグネシウム粒子の形成に寄与する。
【0044】
水酸化マグネシウム懸濁液は、合成ゾーンから熟成ゾーンに導かれる。連続沈殿プロセスの条件下では、沈殿粒子の成長は、独自の特徴を有することが知られている[Wasserman I.M.Khimicheskoye osazhdeniye iz rastvorov.(Chemical precipitation from solutions.)L.:Chemistry,1974,208p]。定常状態の連続沈殿プロセスでは、新しい沈殿粒子の形成、成長、及び特性の定量的特徴など、沈殿物-溶液系のすべての特性が連続的に再現される。反応器内の沈殿物は、かなり安定した特性(構造、粒度など)を有し、新たに形成される粒子のシードとして作用する。したがって、沈殿物のシーディングは、得られる沈殿物の特性に強い影響を有する沈殿プロセスのパラメータである。
【0045】
結晶形態の水酸化マグネシウム沈殿物を得るには、初期試薬の添加ゾーン及び水酸化マグネシウム沈殿物の熟成ゾーンでは、温度を40℃以上、より好ましくは、50~90℃の範囲に維持する必要があることが実験により決定された。これにより、疑似非晶質形態の水酸化マグネシウム沈殿物の形成の局所的な焦点さえ回避でき、その懸濁液は、混合が困難なゲル状の粘稠な塊であり、低粘度の水酸化マグネシウムの流動性懸濁液を得ることができ(これは、特に連続プロセスにとって重要である)、これにより、プロセスの製造性及び経済効率が向上する。
【0046】
十分な相接触面積及び水酸化マグネシウム結晶の特定の構造の形成が確実に得られる、実験により決定された有効撹拌速度は、20~300rpmの範囲である。
【0047】
熟成後、水酸化マグネシウム結晶は、水熱結晶化に導かれ、酸化マグネシウム結晶の前駆体である水酸化マグネシウム結晶が生成される。
【0048】
水熱結晶化は、二価アルコールの存在下において、温度120~220℃、圧力0.1~2.3MPaの範囲、時間1~10時間の範囲で行われる。水酸化マグネシウムの水熱結晶化のこのプロセスでは、特定の構造及びサイズの一次粒子及び一次粒子からなる凝集体の形成、及び母液への不純物の浸出により、不純物から水酸化マグネシウム結晶をより効果的に洗浄することができ、これにより、焼成後、高純度、指定された比表面積、ならびに一次粒子及び凝集体の特性を有する酸化マグネシウムを得ることができる。
【0049】
水熱結晶化の段階で、水酸化マグネシウムの重量に対して0.01~1.0%の量の二価アルコール、例えばエチレングリコールまたはプロピレングリコールを添加することにより、水酸化マグネシウム粒子の未制御の凝集と、凝集体がブロックに固着することによる二次的拡大とを消失させるには十分であることが実験により発見された。二価アルコールは、水酸化マグネシウム粒子の周囲に配向して、溶媒和シェルを形成する、OH基による水酸化マグネシウム粒子の凝集を防止すると考えられる。
【0050】
二価アルコールの存在下での水酸化マグネシウム結晶の水熱結晶化は、最終製品のマクロ孔、メソ孔、及びマイクロ孔の容積及びそれらの比率に影響を与える。温度が上昇し、二価アルコールの存在下での水熱結晶化の時間が延長することにより、マイクロ孔の含有量が減少し、マクロ孔及びメソ孔の含有量が増加する。
【0051】
したがって、本発明者らは、使用する技術的方法、すなわちシード結晶の添加と、不純物から精製した濃縮ビスコファイトによる前処理と、二原子アルコールの存在下での水熱結晶化とを組み合わせることにより、高純度の水酸化マグネシウムを得ることが可能となり、これにより、制御された活性、一次粒子及び二次粒子の構造、孔容積、及び粒度分布を有する一次粒子及び一次粒子からなる凝集体など、高純度の酸化マグネシウムの製造が確実に行われることを見出した。
【0052】
水熱結晶化は、反応母液中で行われ;水酸化マグネシウムの好ましい含有量は、2~15重量%の範囲である。
【0053】
母液からの水酸化マグネシウム結晶の分離は、得られた懸濁液の濾過または沈降、その後の増粘部分の濾過などの任意の既知の方法によって実施される。
【0054】
塩化物からの水酸化マグネシウム結晶の洗浄は、任意の既知の方法、例えば、沈殿物をフィルター上で、脱イオン水により洗浄することによって、かつ/またはその後の濾過によって沈殿物を再パルプ化(repulping)することによって行われる。洗浄効率を高めるため、洗浄液として、質量分率0.01~0.10%の水酸化ナトリウム水溶液が使用される。
【0055】
酸化マグネシウムを得るには、水分含有量20~50重量%の水酸化マグネシウム結晶を洗浄し、濾過し、炉内で700~1100℃の温度で焼成した。水酸化マグネシウム結晶の焼成は、定期的または連続的に行う。酸化マグネシウム結晶の前駆体である水酸化マグネシウム結晶の焼成中に、必要な構造の高純度酸化マグネシウム粒子が最終的に形成される。
【0056】
冷却後、酸化マグネシウムを公知の方法、例えばロータリーミル、ハンマーミルまたはジェットミルで粉砕し、必要に応じて表面処理する。
【0057】
得られた高純度酸化マグネシウムは、BET法により測定した場合、5~70m/gの範囲の比表面積、レーザー回折により測定した場合、5μm以下の平均粒径(d50)、それぞれ0.1ppm以下のPb、Cd、As、Hgの不純物元素の質量分率、それぞれ1ppm以下のBa、Zn、Ti、Mn、Co、Mo、V、Sb、Srの不純物元素の質量分率、それぞれ5ppm以下のAl、Fの不純物元素の質量分率、それぞれ10ppm以下のP、Cr、Ni、K、Liの不純物元素の質量分率、50ppm以下のFeの質量分率、0.01%以下のSiの質量分率、それぞれ0.02%以下のCa、Bの不純物元素の質量分率、0.02%以下の硫酸塩SO 2-の質量分率、それぞれ0.05%以下のNa、Clの不純物元素の質量分率を有し、水銀圧入法により測定した場合、0.9×10-6~1.5×10-6/gの孔容積を有し、一次粒子及び一次粒子からなる凝集体を含む。
【0058】
上記方法により得られる高純度酸化マグネシウムは、一次粒子及び凝集体(酸化マグネシウムの一次粒子により形成された二次粒子)からなる。
【0059】
酸化マグネシウム粉末中に凝集体が存在することにより、流動性、分散性、及び加工性(製造性)が向上し、また、様々な混合物及び形態で、主成分または添加剤として使用したときに、酸化マグネシウムの最も均一な分布にも役立つ。記載された酸化マグネシウムをポリマーマトリックスに使用した場合に、ポリマー材料の高性能を維持しながら、より高度な充填を達成することができる。
【0060】
さらに、酸化マグネシウム粉末中に一次粒子及び凝集体が存在することが、例えば、中和反応及び水和反応などの化学反応に酸化マグネシウムが入るまでの時間が長くなるようになり、これは、凝集していない一次粒子が最初に反応し、次に酸化マグネシウムの凝集体が、反応に入り始めるためである。反応に徐々に入ることは、酸化マグネシウムを医薬品及び化粧品に使用する場合、ならびに変圧器鋼の製造において酸化マグネシウムをアニーリング分離剤として使用する場合に有用な特性である。
【0061】
一次粒子、凝集体、及びそれらの比率の制御されたサイズにより、制御された孔容積分布、総孔容積、及び最頻孔直径を得ることができる。凝集構造は、マクロ孔が存在することを特徴とすることに対して、別個にまたは凝集体の一部として位置する一次粒子によって形成される孔は、メソ孔及びマイクロ孔に属する。このように、マクロ孔、メソ孔、及びマイクロ孔の比率は、凝集体と一次粒子との比率を示すものであり、凝集体を含む粉体材料にとって重要な特徴となる。
【0062】
記載された方法によって得られる高純度酸化マグネシウムは、水銀圧入法によって測定された場合に、0.9×10-6~1.5×10-6/gの範囲の総孔容積を有する。この場合、高純度酸化マグネシウムは、以下の孔容積の比率を有する:マクロ孔容積が85~93容積%の範囲、メソ孔容積が6.5~14容積%の範囲、マイクロ孔容積が0.5~1.5容積%の範囲にある。この場合、水銀圧入法によって測定される最頻孔直径は、150~400nmの範囲にある。
【0063】
記載された方法によって得られる高純度酸化マグネシウムは、水性懸濁液の粘度が400cP以下、好ましくは200cP以下であり、これにより、様々な技術プロセスにおいて、混合、ポンプ輸送、及び添加にとって技術的に簡便な水性懸濁液を得ることが可能になる。
【0064】
記載された方法によって得られる高純度酸化マグネシウムは、経時的に安定であり、沈降安定性を有し、10体積%/時間以下の懸濁液沈降速度を有する懸濁液の製造が確実に行われる。
【0065】
記載された方法によって得られた高純度酸化マグネシウムは、制御された粒子サイズを有し、レーザー回折によって測定した場合に、平均粒子サイズ(d50)は5ミクロン以下であり、粒子の10%の直径は、2ミクロン以下であり、粒子の90%の直径は、30ミクロン以下である。この場合、湿式ふるい分け法により測定した場合に、325メッシュのふるい上の残留物は、0.1%以下、好ましくは0.05%以下である。
【0066】
記載された方法によって得られる高純度酸化マグネシウムは、40~200秒の範囲のクエン酸活性を有する。酸化マグネシウムのこれらの活性値は、選択された用途で使用された場合に、その有効性が確実になる。
【0067】
記載された方法によって得られる高純度酸化マグネシウムは、700~1100℃の比較的低い焼成温度において、高い化学純度、調整可能な比表面積、総孔容積、マクロ孔-メソ孔-マイクロ孔間の比率、最頻孔直径、粒度分布及び活性を有し、これにより、製薬、薬局方、化粧品、及び食品産業において、特殊セラミックス、特殊ガラス、光学材料、電子材料、触媒、ポリマー材料、変圧器鋼、及び酸化マグネシウムの化学純度が重要な他の領域の製造において使用され得る。
【0068】
記載された方法によって得られた高純度酸化マグネシウムは、1つ以上の表面処理剤及び/またはシランカップリング剤及び/または特殊な添加剤及び/またはそれらの混合物で表面処理することができる。
【0069】
表面処理剤としては、8~20の炭素原子を含む飽和及び不飽和脂肪酸の群から選択される化合物またはそれらのアルカリ金属及び/またはアルカリ土類金属の塩、及び/またはそれらの混合物が使用される。そのような化合物の例は、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリル酸、パルミチン酸、ベヘン酸、ミリスチン酸、トール油脂肪酸などである。
【0070】
アルキルトリエトキシシラン、アルキルトリメトキシシラン、アルケニルトリエトキシシラン、アルケニルトリメトキシシラン、アミノシランなどを含む有機官能性トリアルコキシシラン、テトラアルコキシシランの群から選択される化合物及び/またはそれらの混合物が、シランカップリング剤として使用される。そのような化合物の例は、メチルトリエトキシラン、オクチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、トリメトキシシラン、ビニル-トリス-(2-メトキシエトキシ)シラン、3-メタクリルオキシプロピル-2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリメトキシシラン、テトラエトキシシランなどである。
【0071】
ケイ素、ホウ素、カルシウム、リン、アンチモン、チタン、またはそれらの混合物の有機化合物及び無機化合物が、変性用の特別な添加剤として使用される。
【0072】
ケイ素化合物としては、ケイ酸とアルカリ金属及びアルカリ土類金属の無機塩、二酸化ケイ素またはそれらの混合物が挙げられる。
【0073】
ホウ素化合物としては、酸化ホウ素、ホウ酸、そのアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0074】
カルシウム化合物としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ホウ酸カルシウム、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0075】
リン化合物としては、リン酸及びホスホン酸、それらのアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0076】
アンチモン化合物としては、酸化アンチモン、硫酸アンチモンなど、またはそれらの混合物が挙げられる。
【0077】
チタン化合物としては、二酸化チタン及び有機官能性チタン酸塩、例えば、チタン(IV)2,2-ビス(2プロペノラトメチル)ブタノラトトリス(ジオクチル)ホスファト-O、チタン(IV)2,2-ビス(2プロペノラトメチル)ブタノラトトリス(ジオクチル)ピロリン酸-O、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピル(ジオクチルピロリン酸)チタネート、イソプロピルトリ(N-アミノエチルアミノエチル)チタネート及びイソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネート、またはそれらの混合物などが挙げられる。
【0078】
変性剤は、酸化マグネシウムに対して、0.001~5.0重量%の範囲の量で使用することが好ましい。
【0079】
変性は、公知の方法、例えば懸濁法、乾式法などによって行われる。
高純度酸化マグネシウムの分析には、次の分析方法及び機器を使用した:
【0080】
・BET法を用いた比表面積は、Quantachrome Instruments(USA)の高速表面積・孔径分析装置「Quadrasorb」により測定した。
【0081】
-粒子サイズ分布は、Scirocco 2000モジュールを備えた「Malvern MasterSizer-2000E」デバイス(Malvern Limited,UK)を使用したレーザー回折によって測定した。
【0082】
-不純物の質量分率Pb、Cd、As、Hg、Ba、Zn、Ti、Mn、Co、Mo、V、Sb、Sr、Al、P、Si、Cr、Ni、Fe、B、Ca、Li、Na、Kは、PerkinElmer製(USA)のOptima 8000デバイスを用いた誘導結合プラズマ原子発光分光法により測定した。
-Fの質量分率は、電位差滴定によって測定した;
-塩化物Cl及び硫酸塩SO 2-の質量分率は、光比濁法によって測定した。
-孔容積、マクロ孔容積、及び最頻孔直径は、Thermo Scientific(USA)製のPascal 140-440水銀ポロシメーターを使用した水銀圧入法によって測定した。
-マイクロ孔及びメソ孔の容積は、Micrometrics Instrument Corporation(USA)製のASAP 2020分析装置を使用した窒素吸着法によって測定した。
-総孔容積は、孔容積(マクロ孔、メソ孔、及びマイクロ孔)の合計として計算した。
-マクロ孔、メソ孔、及びマイクロ孔の容積の容積分率は、総孔容積に対するマクロ孔の容積、マイクロ孔の容積、またはメソ孔の容積の比率として計算し、容積百分率で表した。
-325メッシュのふるい上の残留物は、湿式ふるい分け法によって測定した。
-クエン酸活性(秒)は、30±2℃の温度で、フェノールフタレイン指示薬を含むクエン酸の0.4N溶液を酸化マグネシウムの水懸濁液に添加後、深紅色が現れる時間として測定した。
-水1dmあたり酸化マグネシウム125gの割合で調製した酸化マグネシウムの懸濁液の動粘度を、23±2℃の温度で1時間撹拌した後、ブルックフィールド粘度計で測定した。
-水1dmあたり酸化マグネシウム125gの割合で調製した懸濁液の沈降速度を、1時間撹拌した後、100cmのシリンダー内で、1時間静置後、懸濁層上の透明層の容積を測定することによって、測定した。
【0083】
高純度酸化マグネシウムを製造するための提唱された方法を、以下の実施例によって説明する。
【0084】
酸化マグネシウムを製造するためのユニット
水酸化マグネシウムの合成は、3つの反応器から構成されるカスケードで行われる。各反応器の作業容積は、120dmである。撹拌速度は、45rpmである。
【0085】
水熱結晶化は、作業容積1.6m及び撹拌速度90rpmのオートクレーブ内で行う。
【0086】
水酸化マグネシウム懸濁液の濾過は、ANDRITZ(Germany)のパイロットプレスフィルターを用いて行う。
【0087】
水酸化マグネシウム湿潤沈殿物の焼成は、Nabertherm N500 E(Germany)による三面加熱を備えたチャンバー炉内で実施する。
【0088】
酸化マグネシウムは、NETZSCH(Germany)のハンマーミルを使用して粉砕される。
【実施例
【0089】
塩化マグネシウム溶液は、塩化マグネシウム六水和物を脱イオン水に溶解することによって調製され、その後、鉄及び硫酸塩から精製され、Lanxess TP 208 MonoPlusイオン交換樹脂が充填されたカラムを通過させた。精製溶液中では、塩化マグネシウムの質量分率は32.1%である。
【0090】
水銀陰極を用いた電気分解によって得られた水酸化ナトリウム溶液を、脱イオン水で水酸化ナトリウムの質量分率が16.6%になるまで希釈する。
【0091】
カスケードの第1の反応器には、塩化マグネシウムの精製溶液が、流量33.5kg/hで供給され、シード結晶の懸濁液が流量44kg/hで同時に供給され、熟成後にカスケードの第3の反応器から送られる。
【0092】
カスケードの第2の反応器には、流量54.4kg/hの水酸化ナトリウム溶液と、第1の反応器からの塩化マグネシウム溶液で処理されたシード結晶の懸濁液と、が同時に供給される。得られた水酸化マグネシウム結晶の懸濁液は、熟成のためにカスケードの第3の反応器に連続して送られる。
【0093】
カスケードのすべての反応器の温度は、50~60℃の範囲に維持される。
【0094】
反応器カスケード内での滞留時間は、2時間である。
【0095】
熟成後、水酸化マグネシウム結晶の懸濁液を、水酸化マグネシウムの重量に対して0.1重量%のプロピレングリコールの存在下において、170℃の温度で3時間、水熱結晶化のために送る。
【0096】
水酸化マグネシウム懸濁液を濾過する。水酸化マグネシウム湿潤結晶をフィルター上で、アルカリ水により洗浄し、水酸化ナトリウムの質量分率0.02%とする。水分含有量48%の水酸化マグネシウムケーキを950℃の温度で2時間焼成し、粉砕する。
【0097】
得られた高純度酸化マグネシウムの特性を表1~2に示す。
【実施例
【0098】
硫酸塩及びホウ素を精製したビスコファイト溶液を、Lanxess製のTP 208 MonoPlusイオン交換樹脂を充填したカラムに通過させる。精製溶液中では、塩化マグネシウムの質量分率は30.5%である。
【0099】
隔膜電気分解により得られた水酸化ナトリウム溶液を、脱イオン水で水酸化ナトリウムの質量分率が10.0%になるまで希釈する。
【0100】
カスケードの第1の反応器には、塩化マグネシウムの精製溶液が、流量35.3kg/hで供給され、シード結晶の懸濁液が流量12.6kg/hで同時に供給され、熟成後にカスケードの第3の反応器から送られる。
【0101】
カスケードの第2の反応器には、流量90.8kg/hの水酸化ナトリウム溶液と、第1の反応器からのビスコファイト溶液で処理されたシード結晶の懸濁液とが同時に供給される。得られた水酸化マグネシウム結晶の懸濁液は、熟成のためにカスケードの第3の反応器に連続して送られる。
【0102】
カスケードのすべての反応器の温度は、50~60℃の範囲に維持される。
【0103】
反応器カスケード内の滞留時間は、約2時間である。
【0104】
熟成後、水酸化マグネシウム結晶の懸濁液を、水酸化マグネシウムの重量に対して0.05重量%のエチレングリコールの存在下において、200℃の温度で1時間、水熱結晶化のために送る。
【0105】
水酸化マグネシウム懸濁液を濾過する。水酸化マグネシウム湿潤結晶をフィルター上で、アルカリ水により洗浄し、水酸化ナトリウムの質量分率0.02%とする。水分含有量38%の水酸化マグネシウムケーキを850℃の温度で2時間焼成し、ハンマーミル内で粉砕させる。
【0106】
得られた高純度酸化マグネシウムの特性を表1~2に示す。
【実施例
【0107】
塩化マグネシウム溶液は、塩化マグネシウム六水和物を脱イオン水に溶解することによって調製され、硫酸塩から精製され、ROHM 15 and HAASによって製造されたAMBERLITE IRC 748イオン交換樹脂が充填されたカラムに通過させた。精製溶液中では、塩化マグネシウムの質量分率は32.1%である。
【0108】
膜電気分解により得られた水酸化ナトリウム溶液を、脱イオン水で水酸化ナトリウムの質量分率が12.5%になるまで希釈する。
【0109】
カスケードの第1の反応器には、塩化マグネシウムの精製溶液が、流量31.8kg/hで供給され、シード結晶の懸濁液が流量33.3kg/hで同時に供給され、カスケードの第2の反応器から送られる。
【0110】
カスケードの第2の反応器には、流量68.1kg/hの水酸化ナトリウム溶液と、第1の反応器からのビスコファイト溶液で処理されたシード結晶の懸濁液とが同時に供給される。得られた水酸化マグネシウム結晶の懸濁液は、熟成のためにカスケードの第3の反応器に連続して送られる。
【0111】
カスケードのすべての反応器の温度は、70~80℃の範囲に維持される。
【0112】
反応器カスケード内での滞留時間は、2時間である。
【0113】
熟成後、水酸化マグネシウム結晶の懸濁液を、水酸化マグネシウムの重量に対して0.02重量%のエチレングリコールの存在下において、130℃の温度で2時間、水熱結晶化のために送る。
【0114】
水酸化マグネシウム懸濁液を濾過する。水酸化マグネシウム湿潤結晶をフィルター上で、アルカリ水により洗浄し、水酸化ナトリウムの質量分率0.02%とする。水分含有量48%の水酸化マグネシウムケーキを750℃の温度で3時間焼成し、ハンマーミル内で粉砕させる。
【0115】
得られた高純度酸化マグネシウムの特性を表1~2に示す。
【実施例
【0116】
ビスコファイト溶液を臭素から精製し、ROHM and HAASによって製造されたAMBERLITE IRC 748イオン交換樹脂を充填したカラムに通過させる。精製溶液中では、塩化マグネシウムの質量分率は28.0%である。
【0117】
隔膜電気分解により得られた水酸化ナトリウム溶液を、脱イオン水で水酸化ナトリウムの質量分率が13.5%になるまで希釈する。
【0118】
カスケードの第1の反応器には、塩化マグネシウムの精製溶液が、流量63.6kg/hで供給され、シード結晶の懸濁液が流量85.5kg/hで同時に供給され、カスケードの第2の反応器から送られる。
【0119】
カスケードの第2の反応器には、流量110.5kg/hの水酸化ナトリウム溶液と、第1の反応器からのビスコファイト溶液で処理されたシード結晶の懸濁液と、が同時に供給される。得られた水酸化マグネシウム結晶の懸濁液は、熟成のためにカスケードの第3の反応器に連続して送られる。
【0120】
カスケードのすべての反応器の温度は、50~60℃の範囲に維持される。
【0121】
反応器カスケード内での滞留時間は、1時間である。
【0122】
熟成後、水酸化マグネシウム結晶の懸濁液を、水酸化マグネシウムの重量に対して0.5重量%のプロピレングリコールの存在下において、150℃の温度で4時間、水熱結晶化のために送る。
【0123】
水酸化マグネシウム懸濁液を濾過する。水酸化マグネシウム湿潤結晶をフィルター上で、脱イオン水により洗浄する。水分含有量39%の水酸化マグネシウムケーキを900℃の温度で2時間焼成し、ハンマーミル内で粉砕させる。
【0124】
得られた高純度酸化マグネシウムの特性を表1~2に示す。
【0125】
比較実施例
質量分率32%を有する塩化マグネシウム溶液45kgを反応器に添加し、水酸化カルシウムの質量分率15%を有する石灰乳82kgを1時間連続撹拌しながら投入する。20~30℃の温度で24時間撹拌を継続する。
【0126】
水酸化マグネシウム懸濁液を濾過し、水酸化マグネシウム湿潤結晶をフィルター上で、脱イオン水により洗浄する。水分含有量65%の水酸化マグネシウムケーキをマッフル炉内で900℃の温度で2時間焼成し、ハンマーミル内で粉砕させる。
【0127】
得られた酸化マグネシウムの特性を表1に示す。
酸化マグネシウムの特徴
【0128】
【表1】
【0129】
実施例1~5に従って得られた高純度酸化マグネシウム中の不純物含有量。
【0130】
【表2】
【0131】
変形例1
実施例1に従って得られた高純度酸化マグネシウム100g及びビニルトリメトキシシラン0.5gをヘンシェル型ミキサーに入れ、70℃以下の温度で10~15分間撹拌する。変性酸化マグネシウムが得られる。
【0132】
変形実施例2
実施例1に従って得られた高純度酸化マグネシウム100gとステアリン酸カルシウム2.0gをヘンシェル型ミキサーに入れ、100℃以下の温度で10~15分間混合する。変性酸化マグネシウムが得られる。
【0133】
変形実施例3
実施例1に従って得られた高純度酸化マグネシウム100g及びホウ酸0.5gをヘンシェル型ミキサーに入れ、80℃以下の温度で10~15分間撹拌する。変性酸化マグネシウムが得られる。
【0134】
与えられた実施例は、提示された発明の本質を説明するものであり、請求される発明の範囲を限定するものではない。
【0135】
以上の例は、提唱された製造方法により、不純物含有量が低く、制御された活性、孔容積、孔径分布、粒子サイズ分布を有する高純度酸化マグネシウムが得られ得ることを示している。
【国際調査報告】