(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】FCRNを特異的に認識する抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20240725BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240725BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240725BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240725BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240725BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240725BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240725BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20240725BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240725BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240725BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240725BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20240725BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240725BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240725BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240725BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20240725BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240725BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240725BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240725BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240725BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240725BHJP
A61P 5/14 20060101ALI20240725BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240725BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240725BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20240725BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240725BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240725BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240725BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20240725BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/02 C
A61K39/395 N
A61P37/06
A61P29/00
A61P21/04
A61P17/00
A61P27/02
A61P25/00
A61P7/00
A61P19/02
A61P9/00
A61P13/12
A61P3/10
A61P43/00 105
A61P5/14
A61P1/04
A61P1/16
A61P19/08
A61P21/00
A61P3/00
A61K48/00
A61K35/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024507955
(86)(22)【出願日】2022-08-12
(85)【翻訳文提出日】2024-02-07
(86)【国際出願番号】 CN2022111998
(87)【国際公開番号】W WO2023016538
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2021/112372
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521225823
【氏名又は名称】舒泰神(北京)生物製薬股フン有限公司
【氏名又は名称原語表記】STAIDSON (BEIJING) BIOPHARMACEUTICALS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.36, Jinghai Er Road, Beijing Economic-Technological Development Area Beijing 100176, China
(74)【代理人】
【識別番号】100118256
【氏名又は名称】小野寺 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】チャン レイ
(72)【発明者】
【氏名】チャン シューアイ
(72)【発明者】
【氏名】ファン ジエ
(72)【発明者】
【氏名】リー ピン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG26
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZA011
4C084ZA331
4C084ZA361
4C084ZA511
4C084ZA661
4C084ZA751
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4C084ZA941
4C084ZA961
4C084ZB081
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4C084ZB151
4C084ZB211
4C084ZC061
4C084ZC211
4C084ZC351
4C084ZC541
4C085AA14
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4C085BB36
4C085BB41
4C085BB43
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C087AA01
4C087AA03
4C087BB65
4C087CA04
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZA33
4C087ZA36
4C087ZA51
4C087ZA66
4C087ZA75
4C087ZA81
4C087ZA89
4C087ZA94
4C087ZA96
4C087ZB08
4C087ZB11
4C087ZB15
4C087ZB21
4C087ZC06
4C087ZC21
4C087ZC35
4C087ZC54
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
【要約】本発明は、新生児Fc受容体(FcRn)を特異的に認識する抗原結合性フラグメントを含む抗体を提供する。そして、前記抗体を調製および使用する方法を提供する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
V
HおよびV
Lを含み、
前記V
Hは、SEQ ID NOs:41および50-51のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するV
HにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、
前記V
Lは、SEQ ID NOs:52および60-61のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するV
LにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む、単離された抗FcRn抗体。
【請求項2】
前記抗FcRn抗体は、以下の(i)~(iv)のいずれかを含むものであり、
(i)V
HおよびV
Lを含み、
前記V
Hはアミノ酸配列SEQ ID NO:41を有するV
HにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、
前記V
Lはアミノ酸配列SEQ ID NO:52を有するV
LにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含み、
(ii)V
HおよびV
Lを含み、
前記V
Hはアミノ酸配列SEQ ID NO:50を有するV
HにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、
前記V
Lはアミノ酸配列SEQ ID NO:60を有するV
LにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含み、
(iii)V
HおよびV
Lを含み、
前記V
Hはアミノ酸配列SEQ ID NO:51を有するV
HにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、
前記V
Lはアミノ酸配列SEQ ID NO:61を有するV
LにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含み、
(iv)V
HおよびV
Lを含み、
前記V
Hはアミノ酸配列SEQ ID NO:50を有するV
HにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、
前記V
Lはアミノ酸配列SEQ ID NO:61を有するV
LにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む、
請求項1に記載の単離された抗FcRn抗体。
【請求項3】
単離された抗FcRn抗体であって、前記抗FcRn抗体は、V
Hまたは前記V
Hの変異体、およびV
Lまたは前記V
Lの変異体を含み、
前記V
Hはアミノ酸配列SEQ ID NO:1を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:7を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:15を含むHC-CDR3とを含み、
前記V
Hの変異体はHC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、
前記V
Lはアミノ酸配列SEQ ID NO:23を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:29を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:34を含むLC-CDR3とを含み、
前記V
Lの変異体はLC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものである、単離された抗FcRn抗体。
【請求項4】
V
HおよびV
Lを含み、
前記V
HはSEQ ID NOs:41および50-51のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NOs:41および50-51のいずれか1つに示されるアミノ酸配列と少なくとも約80%の配列同一性を有する変異体を含み、
前記V
LはSEQ ID NOs:52および60-61のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NOs:52および60-61のいずれか1つに示されるアミノ酸配列と少なくとも約80%の配列同一性を有する変異体を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の単離された抗FcRn抗体。
【請求項5】
前記抗FcRn抗体は、以下の(i)~(iv)のいずれかを含むものであり、
(i)V
HおよびV
Lを含み、
前記V
Hはアミノ酸配列SEQ ID NO:41、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:41と少なくとも約80%の配列同一性を有する変異体を含み、
前記V
Lはアミノ酸配列SEQ ID NO:52、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:52と少なくとも約80%の配列同一性を有する変異体を含み、
(ii)V
HおよびV
Lを含み、
前記V
Hはアミノ酸配列SEQ ID NO:50、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:50と少なくとも約80%の配列同一性を有する変異体を含み、
前記V
Lはアミノ酸配列SEQ ID NO:60、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:60と少なくとも約80%の配列同一性を有する変異体を含み、
(iii)V
HおよびV
Lを含み、
前記V
Hはアミノ酸配列SEQ ID NO:51、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:51と少なくとも約80%の配列同一性を有する変異体を含み、
前記V
Lはアミノ酸配列SEQ ID NO:61、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:61と少なくとも約80%の配列同一性を有する変異体を含み、
(iv)V
HおよびV
Lを含み、
前記V
Hはアミノ酸配列SEQ ID NO:50、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:50と少なくとも約80%の配列同一性を有する変異体を含み、
前記V
Lはアミノ酸配列SEQ ID NO:61、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:61と少なくとも約80%の配列同一性を有する変異体を含む、
請求項1~4のいずれか1項に記載の単離された抗FcRn抗体。
【請求項6】
V
HおよびV
Lを含み、
前記V
HはSEQ ID NOs:42-49のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するV
HにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、
前記V
LはSEQ ID NOs:53-59のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するV
LにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む、単離された抗FcRn抗体。
【請求項7】
前記抗FcRn抗体は、以下の(i)~(viii)のいずれかを含むものであり、
(i)V
HおよびV
Lを含み、
前記V
Hはアミノ酸配列SEQ ID NO:42を有するV
HにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、
前記V
Lはアミノ酸配列SEQ ID NO:53を有するV
LにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含み、
(ii)V
HおよびV
Lを含み、
前記V
Hはアミノ酸配列SEQ ID NO:43を有するV
HにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、
前記V
Lはアミノ酸配列SEQ ID NO:54を有するV
LにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含み、
(iii)V
HおよびV
Lを含み、
前記V
Hはアミノ酸配列SEQ ID NO:44を有するV
HにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、
前記V
Lはアミノ酸配列SEQ ID NO:55を有するV
LにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含み、
(iv)V
HおよびV
Lを含み、
前記V
Hはアミノ酸配列SEQ ID NO:45を有するV
HにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、
前記V
Lはアミノ酸配列SEQ ID NO:56を有するV
LにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含み、
(v)V
HおよびV
Lを含み、
前記V
Hはアミノ酸配列SEQ ID NO:46を有するV
HにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、
前記V
Lはアミノ酸配列SEQ ID NO:57を有するV
LにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含み、
(vi)V
HおよびV
Lを含み、
前記V
Hはアミノ酸配列SEQ ID NO:47を有するV
HにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、
前記V
Lはアミノ酸配列SEQ ID NO:58を有するV
LにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含み、
(vii)V
HおよびV
Lを含み、
前記V
Hはアミノ酸配列SEQ ID NO:48を有するV
HにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、
前記V
Lはアミノ酸配列SEQ ID NO:59を有するV
LにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含み、
(viii)V
HおよびV
Lを含み、
前記V
Hはアミノ酸配列SEQ ID NO:49を有するV
HにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、
前記V
Lはアミノ酸配列SEQ ID NO:58を有するV
LにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む、
請求項6に記載の単離された抗FcRn抗体。
【請求項8】
単離された抗FcRn抗体であって、前記抗FcRn抗体は、以下の(i)~(viii)のいずれかを含むものであり、
(i)V
Hまたは前記V
Hの変異体、およびV
Lまたは前記V
Lの変異体を含み、
前記V
Hはアミノ酸配列SEQ ID NO:2を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:8を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:16を含むHC-CDR3とを含み、
前記V
Hの変異体はHC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、
前記V
Lはアミノ酸配列SEQ ID NO:24を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:29を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:35を含むLC-CDR3とを含み、
前記V
Lの変異体はLC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、
(ii)V
Hまたは前記V
Hの変異体、およびV
Lまたは前記V
Lの変異体を含み、
前記V
Hはアミノ酸配列SEQ ID NO:3を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:9を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:17を含むHC-CDR3とを含み、
前記V
Hの変異体はHC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、
前記V
Lはアミノ酸配列SEQ ID NO:25を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:30を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:36を含むLC-CDR3とを含み、
前記V
Lの変異体はLC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、
(iii)V
Hまたは前記V
Hの変異体、およびV
Lまたは前記V
Lの変異体を含み、
前記V
Hはアミノ酸配列SEQ ID NO:4を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:9を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:18を含むHC-CDR3とを含み、
前記V
Hの変異体はHC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、
前記V
Lはアミノ酸配列SEQ ID NO:26を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:31を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:37を含むLC-CDR3とを含み、
前記V
Lの変異体はLC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、
(iv)V
Hまたは前記V
Hの変異体、およびV
Lまたは前記V
Lの変異体を含み、
前記V
Hはアミノ酸配列SEQ ID NO:1を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:10を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:19を含むHC-CDR3とを含み、
前記V
Hの変異体はHC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、
前記V
Lはアミノ酸配列SEQ ID NO:25を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:32を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:38を含むLC-CDR3とを含み、
前記V
Lの変異体はLC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、
(v)V
Hまたは前記V
Hの変異体、およびV
Lまたは前記V
Lの変異体を含み、
前記V
Hはアミノ酸配列SEQ ID NO:1を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:11を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:20を含むHC-CDR3とを含み、
前記V
Hの変異体はHC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、
前記V
Lはアミノ酸配列SEQ ID NO:23を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:29を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:38を含むLC-CDR3とを含み、
前記V
Lの変異体はLC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、
(vi)V
Hまたは前記V
Hの変異体、およびV
Lまたは前記V
Lの変異体を含み、
前記V
Hはアミノ酸配列SEQ ID NO:5を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:12を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:21を含むHC-CDR3とを含み、
前記V
Hの変異体はHC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、
前記V
Lはアミノ酸配列SEQ ID NO:27を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:33を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:39を含むLC-CDR3とを含み、
前記V
Lの変異体はLC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、
(vii)V
Hまたは前記V
Hの変異体、およびV
Lまたは前記V
Lの変異体を含み、
前記V
Hはアミノ酸配列SEQ ID NO:5を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:13を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:21を含むHC-CDR3とを含み、
前記V
Hの変異体はHC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、
前記V
Lはアミノ酸配列SEQ ID NO:28を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:33を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:40を含むLC-CDR3とを含み、
前記V
Lの変異体はLC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、
(viii)V
Hまたは前記V
Hの変異体、およびV
Lまたは前記V
Lの変異体を含み、
前記V
Hはアミノ酸配列SEQ ID NO:6を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:14を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:22を含むHC-CDR3とを含み、
前記V
Hの変異体はHC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、
前記V
Lはアミノ酸配列SEQ ID NO:27を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:33を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:39を含むLC-CDR3とを含み、
前記V
Lの変異体はLC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものである、
単離された抗FcRn抗体。
【請求項9】
V
HおよびV
Lを含み、
前記V
HはSEQ ID NOs:42-49のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NOs:42-49のいずれか1つに示されるアミノ酸配列と少なくとも約80%の配列同一性を有する変異体を含み、
前記V
LはSEQ ID NOs:53-59のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NOs:53-59のいずれか1つに示されるアミノ酸配列と少なくとも約80%の配列同一性を有する変異体を含む、
請求項6~8のいずれか1項に記載の単離された抗FcRn抗体。
【請求項10】
前記抗FcRn抗体は、以下の(i)~(viii)のいずれかを含むものであり、
(i)V
HおよびV
Lを含み、
前記V
Hはアミノ酸配列SEQ ID NO:42、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:42と少なくとも約80%の配列同一性を有する変異体を含み、
前記V
Lはアミノ酸配列SEQ ID NO:53、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:53と少なくとも約80%の配列同一性を有する変異体を含み、
(ii)V
HおよびV
Lを含み、
前記V
Hはアミノ酸配列SEQ ID NO:43、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:43と少なくとも約80%の配列同一性を有する変異体を含み、
前記V
Lはアミノ酸配列SEQ ID NO:54、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:54と少なくとも約80%の配列同一性を有する変異体を含み、
(iii)V
HおよびV
Lを含み、
前記V
Hはアミノ酸配列SEQ ID NO:44、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:44と少なくとも約80%の配列同一性を有する変異体を含み、
前記V
Lはアミノ酸配列SEQ ID NO:55、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:55と少なくとも約80%の配列同一性を有する変異体を含み、
(iv)V
HおよびV
Lを含み、
前記V
Hはアミノ酸配列SEQ ID NO:45、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:45と少なくとも約80%の配列同一性を有する変異体を含み、
前記V
Lはアミノ酸配列SEQ ID NO:56、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:56と少なくとも約80%の配列同一性を有する変異体を含み、
(v)V
HおよびV
Lを含み、
前記V
Hはアミノ酸配列SEQ ID NO:46、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:46と少なくとも約80%の配列同一性を有する変異体を含み、
前記V
Lはアミノ酸配列SEQ ID NO:57、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:57と少なくとも約80%の配列同一性を有する変異体を含み、
(vi)V
HおよびV
Lを含み、
前記V
Hはアミノ酸配列SEQ ID NO:47、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:47と少なくとも約80%の配列同一性を有する変異体を含み、
前記V
Lはアミノ酸配列SEQ ID NO:58、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:58と少なくとも約80%の配列同一性を有する変異体を含み、
(vii)V
HおよびV
Lを含み、
前記V
Hはアミノ酸配列SEQ ID NO:48、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:48と少なくとも約80%の配列同一性を有する変異体を含み、
前記V
Lはアミノ酸配列SEQ ID NO:59、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:59と少なくとも約80%の配列同一性を有する変異体を含み、
(viii)V
HおよびV
Lを含み、
前記V
Hはアミノ酸配列SEQ ID NO:49、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:49と少なくとも約80%の配列同一性を有する変異体を含み、
前記V
Lはアミノ酸配列SEQ ID NO:58、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:58と少なくとも約80%の配列同一性を有する変異体を含む、
請求項6~9のいずれか1項に記載の単離された抗FcRn抗体。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の単離された抗FcRn抗体と競合的にFcRnに特異的に結合するか、または請求項1~10のいずれか1項に記載の単離された抗FcRn抗体と同じエピトープに特異的に結合する、単離された抗FcRn抗体。
【請求項12】
前記抗FcRn抗体は、約0.1pM~約1nMのKd値でヒトFcRnに結合する、請求項1~11のいずれか1項に記載の単離された抗FcRn抗体。
【請求項13】
前記抗FcRn抗体は、Fcフラグメントを含む、請求項1~12のいずれか1項に記載の単離された抗FcRn抗体。
【請求項14】
前記抗FcRn抗体は、全長のIgG抗体である、請求項13に記載の単離された抗FcRn抗体。
【請求項15】
前記抗FcRn抗体は、全長のIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4抗体である、請求項14に記載の単離された抗FcRn抗体。
【請求項16】
前記抗FcRn抗体は、キメラ抗体、ヒト抗体、またはヒト化抗体である、請求項1~15のいずれか1項に記載の単離された抗FcRn抗体。
【請求項17】
前記抗FcRn抗体は、Fab、Fab’、F(ab)’
2、Fab’-SH、一本鎖Fv(scFv)、Fvフラグメント、dAb、Fd、および、ダイアボディからなる群から選択される抗原結合性フラグメントである、請求項1~12のいずれか1項に記載の単離された抗FcRn抗体。
【請求項18】
請求項1-17のいずれか1項に記載の抗FcRn抗体をコードする、単離された核酸分子。
【請求項19】
請求項18に記載の単離された核酸分子を含む、ベクター。
【請求項20】
請求項1-17のいずれか1項に記載の単離された抗FcRn抗体、請求項18に記載の単離された核酸分子、または請求項19に記載のベクターを含む、単離された宿主細胞。
【請求項21】
a)前記抗FcRn抗体を効果的に発現する条件で請求項20に記載の前記宿主細胞を培養すること、および
b)前記宿主細胞から、発現された抗FcRn抗体を得ることを含む、単離された抗FcRn抗体の調製方法。
【請求項22】
請求項1-17のいずれか1項に記載の抗FcRn抗体、請求項18に記載の核酸分子、請求項19に記載のベクター、または請求項20に記載の単離された宿主細胞と薬学的に許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項23】
有効量の請求項22に記載の医薬組成物を個体に投与する、必要とする個体における疾患または病症を治療する方法。
【請求項24】
前記疾患または病症は、自己免疫性疾患または炎症性疾患である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記疾患または病症は、重症筋無力症(MG)、尋常性天疱瘡、視神経脊髄炎、ギラン・バレー症候群、ループス、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓血小板減少性紫斑病、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、グレーブス病、自己免疫性心筋炎、膜性糸球体腎炎、糖尿病、I型糖尿病、多発性硬化症、レイノー症候群、自己免疫性甲状腺炎、胃炎、セリアック病、白斑症、肝炎、原発性胆汁性肝硬変、炎症性腸疾患、脊椎関節症、実験的自己免疫性脳脊髄炎、免疫性好中球減少症、類肉腫症および多発性筋炎、多発性動脈炎、血管皮膚炎、天疱瘡、類天疱瘡、肺出血性腎炎症候群、川崎病、全身性硬化症、抗リン脂質症候群、および、シェーグレン症候群からなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ASCIIテキストファイルでの配列表の提出
電子配列表(ファイル名:FcRn抗体.xml、記録日:2022年08月09日、サイズ:91KB)の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、新生児Fc受容体(FcRn)を特異的に認識する抗体、ならびにその調製方法および自己免疫性疾患および/または炎症性疾患を治療する方法を含む使用に関するものである。
【背景技術】
【0003】
新生児Fc受容体(FcRn)は、主要組織適合性複合体(MHC)クラスI型分子であり、それぞれFCGRTおよびB2Mによってコードされる、α-鎖およびβ2-ミクログロブリンからなるヘテロダイマーである。FcRnは、免疫グロブリンG(IgG)およびアルブミンに結合し、輸送し、回収し、それによってそれらをリソソームによる分解から保護する。FcRnは、新生児ラットの腸において最初に発見され、腸管上皮を介して母親の乳汁中のIgGを新生児の血流に輸送し、それによって新生児に受動体液性免疫を提供する(Brambell FW.The transmission of immunity from mother to young and the catabolism of immunoglobulins.Lancet.1966;2:1087-93;Simister NE,et al.Isolation and characterization of an Fc receptor from neonatal rat small intestine.Eur J Immunol.1985;15:733-8)。その後、FcRnが合胞体栄養芽層を介して母体IgGを胎児に移行させるとの類似の機能パターンがヒト胎盤において見出された(Leach JL,et al.Isolation from human placenta of the IgG transporter,FcRn,and localization to the syncytiotrophoblast:implications for maternal-fetal antibody transport.J Immunol.1996;157:3317-22)。
【0004】
FcRnはIgG抗体の全身の動力学的挙動(分布、輸送および持続性を含む)の調節において重要な役割を果たす。これらの活性の同定により、このFc受容体の役割は、母体から幼若へのIgGの輸送体としての最初の同定をはるかに超え(したがって、「n」は新生児を示すために使用される)、FcRnの分子および細胞特性の広範な分析が促される。
【0005】
マウスまたはヒトIgG1とFcRnとの結合に重要なIgG残基には、IgG1のCH2-CH3ドメインインタフェースの露出ループに位置するIle253、His310、His435、His436(マウス)、またはTyr436(ヒト)(Kim,J.K.et al.(1994)Localization of the site of the murine IgG1 molecule that is involved in binding to the murine intestinal Fc receptor.Eur.J.Immunol.24,2429-2434;Martin,W.L.et al.(2001)Crystal structure at 2.8 Å of an FcRn/heterodimeric Fc complex:mechanism of pH dependent binding.Mol.Cell 7,867-877;Kim,J.K.et al.(1999)Mapping the site on human IgG for binding of the MHC class I-related receptor,FcRn.Eur.J.Immunol.29,2819-2825)。IgGのHis残基は、FcRnの酸性残基と相互作用する(Vaughn,D.E.et al.(1997) Identification of critical IgG binding epitopes on the neonatal Fc receptor.J.Mol.Biol.274,597-607)。pH6.0でHis(pKa6)のプロトン化イミダゾール側鎖とこれらの酸性残基との相互作用により、IgGにおいて主に観察される特徴的なpH依存性結合(酸性pHでは比較的高い親和性、pH7.3~7.4では結合が非常に弱いか無視できる程度)が与えられる(Raghavan,M.et al.(1995)Analysis of the pH dependence of the neonatal Fc receptor/immunoglobulin G interaction using antibody and receptor variants.Biochemistry 34,14649-14657;Zhou,J.et al.(2003) Generation of mutated variants of the human form of the MHC class I-related receptor,FcRn,with increased affinity for mouse immunoglobulin G.J.Mol.Biol.332,901-913)。FcRnは、実質細胞(内皮細胞、上皮細胞)および造血細胞において広く発現される(Zhu,X.et al.(2001)MHC class I-related neonatal Fc receptor for IgG is functionally expressed in monocytes,intestinal macrophages,and dendritic cells.J.Immunol.166,3266-3276;Akilesh,S.et al.(2007)Neonatal FcR expression in bone marrow-derived cells functions to protect serum IgG from catabolism.J.Immunol.179,4580-4588;Perez-Montoyo,H.et al.(2009)Conditional deletion of the MHC Class I-related receptor,FcRn,reveals the sites of IgG homeostasis in mice.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.106,2788-2793)。初期のエンドソーム中の酸性pH(pH6.0)は、FcRn-IgG相互作用を可能にするが、細胞外のほぼ中性のpH(pH7.4)は、ほとんどの種類の細胞について、細胞外区画と原形質膜との融合の間にIgGをFcRnから効果的に解離させる。
【0006】
FcRnは、FcRnとIgGまたはアルブミンとの間のイオン相互作用がFcRn重鎖の反対側の界面で起こるため、IgG Fcドメインの結合部位とは異なる血清アルブミン的結合部位を含む(Chaudhury et al.,2006,Biochemistry 45:4983-4990)。FcRnとIgGとの結合と同様に、FcRnとアルブミンとの結合は強いpH依存性を有し、当該結合は酸性pH(通常、pHが6未満であり、好ましくはpHが5である)で起こるが、中性pHでは起こらない。IgGを分解から保護する効果と同様に、FcRnは、アルブミンに結合すると、アルブミンを分解から保護し、アルブミンの血清半減期を増加させる。
【0007】
IgGの全身性調節因子としてのFcRnの役割は、自己免疫性疾患または炎症性疾患のような疾患において症状を引き起こす抗体のレベルを低下させるためにFcRn阻害剤を使用する機会を提供する。FcRn阻害剤は、6.0~7.4のpH範囲にわたって天然IgGよりも高い親和性でFcRnに結合する(Vaccaro,C.et al.(2005) Engineering the Fc region of immunoglobulin G to modulate in vivo antibody levels.Nat.Biotechnol.23,1283-1288;Liu,L.et al.(2007)Amelioration of experimental autoimmune myasthenia gravis in rats by neonatal FcR blockade.J.Immunol.178,5390-5398;Low,S.C.and Mezo,A.R.(2009) Inhibitors of the FcRn:IgG protein-protein interaction.AAPS J.11,432-434)。したがって、それらは、内因性抗体と競合してFcRnに結合し、これらの抗体が分解リソソームに入ることを可能にする。重要なことに、臨床研究では、いくつかの自己免疫性疾患における病原性抗体レベルの50%以上の低下が有益な治療効果を有し得ることが示されており(Khosroshahi,A.et al.(2010)Rituximab therapy leads to rapid decline of serum IgG4 levels and prompt clinical improvement in IgG4-related systemic disease.Arthritis Rheum.62,1755-1762;Ahmed,A.R.et al.(2006)Treatment of pemphigus vulgaris with rituximab and intravenous immune globulin.N.Engl.J.Med.355,1772-1779)、このことは、FcRn阻害剤による抗体レベルの部分的な減少でさえ有効であり得ることを示唆する。別の適用分野は、(放射性)標識抗体を用いた診断/治療イメージング中にFcRn阻害剤を使用してバックグラウンドを低下させ、コントラストを向上させることである。FcRn阻害はまた、血漿交換、免疫グロブリン静注(IVIG)またはB細胞枯渇などの、病原性抗体のレベルを減少させるための現在のストラテジーに代わる手段も提供するが、これらはいずれも有害な副作用を伴う可能性がある。
【0008】
これまでの非ヒト霊長類における研究およびいくつかのFcRn阻害剤に基づく臨床実験の結果は、それらが健康なボランティアにおいて内因性IgGレベルの顕著で持続的な低下を誘導し、自己免疫性疾患である重症筋無力症に対して有益な効果を有することを示している(Nixon,A.E.et al.(2015)Fully human monoclonal antibody inhibitors of the neonatal Fc receptor reduce circulating IgG in non-human primates.Front.Immunol.6,176;Kiessling,P.et al.(2017)The FcRn inhibitor Rozanolixizumab reduces human serum IgG concentration:a randomized phase 1 study.Sci.Transl.Med.9,eaan1208)。抗FcRn抗体は、WO2014/19727、WO2015/71330に記載されているが、改善された抗FcRn抗体が依然として必要とされている。
【0009】
本明細書で言及される全ての刊行物、特許、特許出願および公開された特許出願に記載された内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【発明の概要】
【0010】
いくつかの実施例において、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:41を有するVHにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:52を有するVLにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む、単離された抗FcRn抗体が提供される。
【0011】
いくつかの実施例において、VHまたは前記VHの変異体、およびVLまたは前記VLの変異体を含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:1を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:7を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:15を含むHC-CDR3とを含み、前記VHの変異体はHC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:23を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:29を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:34を含むLC-CDR3とを含み、前記VLの変異体はLC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものである、単離された抗FcRn抗体が提供される。
【0012】
いくつかの実施例において、本明細書に記載の単離された抗FcRn抗体のいずれか1つによれば、前記単離された抗FcRn抗体は、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:41、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:41と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:52、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:52と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含む。
【0013】
いくつかの実施例において、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:42を有するVHにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:53を有するVLにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む、単離された抗FcRn抗体が提供される。
【0014】
いくつかの実施例において、VHまたは前記VHの変異体、およびVLまたは前記VLの変異体を含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:2を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:8を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:16を含むHC-CDR3とを含み、前記VHの変異体はHC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:24を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:29を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:35を含むLC-CDR3とを含み、前記VLの変異体はLC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものである、単離された抗FcRn抗体が提供される。
【0015】
いくつかの実施例において、本明細書に記載の単離された抗FcRn抗体のいずれか1つによれば、前記単離された抗FcRn抗体は、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:42、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:42と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:53、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:53と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含む。
【0016】
いくつかの実施例において、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:43を有するVHにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:54を有するVLにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む、単離された抗FcRn抗体が提供される。
【0017】
いくつかの実施例において、VHまたは前記VHの変異体、およびVLまたは前記VLの変異体を含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:3を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:9を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:17を含むHC-CDR3とを含み、前記VHの変異体はHC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:25を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:30を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:36を含むLC-CDR3とを含み、前記VLの変異体はLC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものである、単離された抗FcRn抗体が提供される。
【0018】
いくつかの実施例において、本明細書に記載の単離された抗FcRn抗体のいずれか1つによれば、前記単離された抗FcRn抗体は、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:43、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:43と少なくとも80%の配列同一性を有する変異体を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:54、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:54と少なくとも80%の配列同一性を有する変異体を含む。
【0019】
いくつかの実施例において、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:44を有するVHにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:55を有するVLにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む、単離された抗FcRn抗体が提供される。
【0020】
いくつかの実施例において、VHまたは前記VHの変異体、およびVLまたは前記VLの変異体を含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:4を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:9を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:18を含むHC-CDR3とを含み、前記VHの変異体はHC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:26を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:31を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:37を含むLC-CDR3とを含み、前記VLの変異体はLC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものである、単離された抗FcRn抗体が提供される。
【0021】
いくつかの実施例において、本明細書に記載の単離された抗FcRn抗体のいずれか1つによれば、前記単離された抗FcRn抗体は、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:44、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:44と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:55、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:55と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含む。
【0022】
いくつかの実施例において、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:45を有するVHにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:56を有するVLにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む、単離された抗FcRn抗体が提供される。
【0023】
いくつかの実施例において、VHまたは前記VHの変異体、およびVLまたは前記VLの変異体を含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:1を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:10を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:19を含むHC-CDR3とを含み、前記VHの変異体はHC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:25を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:32を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:38を含むLC-CDR3とを含み、前記VLの変異体はLC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものである、単離された抗FcRn抗体が提供される。
【0024】
いくつかの実施例において、本明細書に記載の単離された抗FcRn抗体のいずれか1つによれば、前記単離された抗FcRn抗体は、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:45、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:45と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:56、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:56と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含む。
【0025】
いくつかの実施例において、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:46を有するVHにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:57を有するVLにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む、単離された抗FcRn抗体が提供される。
【0026】
いくつかの実施例において、VHまたは前記VHの変異体、およびVLまたは前記VLの変異体を含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:1を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:11を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:20を含むHC-CDR3とを含み、前記VHの変異体はHC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:23を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:29を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:38を含むLC-CDR3とを含み、前記VLの変異体はLC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものである、単離された抗FcRn抗体が提供される。
【0027】
いくつかの実施例において、本明細書に記載の単離された抗FcRn抗体のいずれか1つによれば、前記単離された抗FcRn抗体は、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:46、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:46と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:57、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:57と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含む。
【0028】
いくつかの実施例において、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:47を有するVHにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:58を有するVLにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む、単離された抗FcRn抗体が提供される。
【0029】
いくつかの実施例において、VHまたは前記VHの変異体、およびVLまたは前記VLの変異体を含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:5を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:12を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:21を含むHC-CDR3とを含み、前記VHの変異体はHC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:27を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:33を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:39を含むLC-CDR3とを含み、前記VLの変異体はLC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものである、単離された抗FcRn抗体が提供される。
【0030】
いくつかの実施例において、本明細書に記載の単離された抗FcRn抗体のいずれか1つによれば、前記単離された抗FcRn抗体は、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:47、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:47と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:58、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:58と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含む。
【0031】
いくつかの実施例において、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:48を有するVHにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:59を有するVLにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む、単離された抗FcRn抗体が提供される。
【0032】
いくつかの実施例において、VHまたは前記VHの変異体、およびVLまたは前記VLの変異体を含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:5を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:13を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:21を含むHC-CDR3とを含み、前記VHの変異体はHC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:28を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:33を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:40を含むLC-CDR3とを含み、前記VLの変異体はLC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものである、単離された抗FcRn抗体が提供される。
【0033】
いくつかの実施例において、本明細書に記載の単離された抗FcRn抗体のいずれか1つによれば、前記単離された抗FcRn抗体は、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:48、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:48と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:59、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:59と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含む。
【0034】
いくつかの実施例において、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:49を有するVHにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:58を有するVLにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む、単離された抗FcRn抗体が提供される。
【0035】
いくつかの実施例において、VHまたは前記VHの変異体、およびVLまたは前記VLの変異体を含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:6を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:14を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:22を含むHC-CDR3とを含み、前記VHの変異体はHC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:27を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:33を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:39を含むLC-CDR3とを含み、前記VLの変異体はLC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものである、単離された抗FcRn抗体が提供される。
【0036】
いくつかの実施例において、本明細書に記載の単離された抗FcRn抗体のいずれか1つによれば、前記単離された抗FcRn抗体は、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:49、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:49と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:58、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:58と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含む。
【0037】
いくつかの実施例において、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:1、またはその変異体を含み、前記変異体が多くとも3個のアミノ酸置換を含むものであるHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:7、またはその変異体を含み、前記変異体が多くとも3個のアミノ酸置換を含むものであるHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:15、またはその変異体を含み、前記変異体が多くとも3個のアミノ酸置換を含むものであるHC-CDR3とを含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:23、またはその変異体を含み、前記変異体が多くとも3個のアミノ酸置換を含むものであるLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:29、またはその変異体を含み、前記変異体が多くとも3個のアミノ酸置換を含むものであるLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:34、またはその変異体を含み、前記変異体が多くとも3個のアミノ酸置換を含むものであるLC-CDR3とを含む、単離された抗FcRn抗体が提供される。
【0038】
いくつかの実施例において、VHおよびVLを含み、前記VHはSEQ ID NOs:50-51のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するVHにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、前記VLはSEQ ID NOs:60-61のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するVLにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む、単離された抗FcRn抗体が提供される。
【0039】
いくつかの実施例において、(i)VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:50を有するVHにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:60を有するVLにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含み、(ii)VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:51を有するVHにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:61を有するVLにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含み、(iii)VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:50を有するVHにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:61を有するVLにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む、単離された抗FcRn抗体が提供される。
【0040】
いくつかの実施例において、本明細書に記載の単離された抗FcRn抗体のいずれか1つによれば、前記単離された抗FcRn抗体は、VHおよびVLを含み、前記VHはSEQ ID NOs:50-51のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NOs:50-51のいずれか1つに示されるアミノ酸配列と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、前記VLはSEQ ID NOs:60-61のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NOs:60-61のいずれか1つに示されるアミノ酸配列と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含む。
【0041】
いくつかの実施例において、前記単離された抗FcRn抗体は、(i)VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:50、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:50と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:60、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:60と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、(ii)VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:51、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:51と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:61、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:61と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、(iii)VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:50、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:50と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:61、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:61と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含む。
【0042】
いくつかの実施例において、約0.1pM~1nMのKd値でヒトFcRnに特異的に結合する、単離された抗FcRn抗体が提供される。
【0043】
いくつかの実施例において、本明細書に記載の単離された抗FcRn抗体のいずれか1つと競合的にFcRnに特異的に結合する単離された抗FcRn抗体が提供される。いくつかの実施例において、本明細書に記載の単離された抗FcRn抗体のいずれか1つと同じエピトープに特異的に結合する、単離された抗FcRn抗体が提供される。
【0044】
いくつかの実施例において、本明細書に記載の単離された抗FcRn抗体のいずれか1つによれば、前記単離された抗FcRn抗体は、Fcフラグメントを含む。いくつかの実施例において、前記単離された抗FcRn抗体は、全長のIgG抗体である。いくつかの実施例において、前記単離された抗FcRn抗体は、全長のIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4抗体である。いくつかの実施例において、前記単離された抗FcRn抗体は、キメラ抗体、ヒト抗体、またはヒト化抗体である。いくつかの実施例において、前記単離された抗FcRn抗体は、Fab、Fab’、F(ab)’2、Fab’-SH、一本鎖Fv(scFv)、Fvフラグメント、dAb、Fd、ナノボディ、ダイアボディ(diabody)および直鎖状抗体からなる群から選択される抗原結合性フラグメントである。
【0045】
いくつかの実施例において、本明細書に記載の前記抗FcRn抗体のいずれか1つをコードする単離された核酸分子が提供される。いくつかの実施例において、本明細書に記載の前記核酸分子のいずれか1つを含むベクターが提供される。いくつかの実施例において、本明細書に記載の前記抗FcRn抗体のいずれか1つ、本明細書に記載の前記核酸分子のいずれか1つ、または本明細書に記載の前記ベクターのいずれか1つを含む宿主細胞が提供される。いくつかの実施例において、a)前記抗FcRn抗体を効果的に発現する条件で、本明細書に記載の宿主細胞のいずれか1つを培養すること、およびb)前記宿主細胞から、発現された抗FcRn抗体を得ることを含む、抗FcRn抗体の調製方法が提供される。
【0046】
いくつかの実施例において、有効量の本明細書に記載の前記抗FcRn抗体のいずれか1つを前記個体に投与することを含む、必要とする個体における疾患または病症を治療する方法が提供される。いくつかの実施例において、必要とする個体における疾患または病症を治療するための医薬組成物の調製における、本明細書に記載の前記抗FcRn抗体のいずれか1つの使用が提供される。いくつかの実施例において、疾患または病症を治療するための医薬品の調製における、本明細書に記載の前記抗FcRn抗体、または本明細書に記載の抗FcRn抗体を含む医薬組成物の使用が提供される。いくつかの実施例において、前記疾患または病症は、FcRnシグナル経路に関連し、自己免疫性疾患および炎症性疾患または病症を含む。いくつかの実施例において、前記疾患または病症は、例えば、重症筋無力症(MG)、尋常性天疱瘡、視神経脊髄炎、ギラン・バレー症候群、ループス、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓血小板減少性紫斑病、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、グレーブス病、自己免疫性心筋炎、膜性糸球体腎炎、糖尿病、I型糖尿病、多発性硬化症、レイノー症候群、自己免疫性甲状腺炎、胃炎、セリアック病、白斑症、肝炎、原発性胆汁性肝硬変、炎症性腸疾患、脊椎関節症、実験的自己免疫性脳脊髄炎、免疫性好中球減少症、類肉腫症および多発性筋炎、多発性動脈炎、血管皮膚炎、天疱瘡、類天疱瘡、肺出血性腎炎症候群、川崎病、全身性硬化症、抗リン脂質症候群、およびシェーグレン症候群からなる群から選択される。
【0047】
また、本明細書に記載の前記抗FcRn抗体のいずれか1つを含む医薬組成物、試薬キットおよび生産製が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【
図1】
図1は、ELISAによって分析されたヒトFcRnに対する例示的なキメラ抗FcRn抗体の結合親和性を示す。
【
図2】
図2A~2Bは、ELISAによって分析されたヒトFCGRTに対する例示的なキメラ抗FcRn抗体の結合親和性を示す。
図2Cは、キメラ抗FcRn抗体がヒトB2Mに結合しないことを示す。
【
図3】
図3A-3Cは、異なる種のFcRnの結合交差反応性を示す。
図3Aは、cynoFcRnに対する例示的なキメラ抗FcRn抗体の結合親和性を示す。
図3Bは、例示的なキメラ抗FcRn抗体がrFcRnに結合しないことを示し、
図3Cは、例示的なキメラ抗FcRn抗体がmFcRnと弱い結合していることを示す。
【
図4】
図4は、ヒトIgGとヒトFcRnとの結合をブロックする強い能力を示す例示的なキメラ抗FcRn抗体を示す。
【
図5】
図5は、ヒトIgGのリサイクリングを効果的に阻害する例示的なキメラ抗FcRn抗体を示す。
【
図6】
図6Aは、ELISAによって分析されたヒト化抗FcRn抗体とヒトFcRnとの結合能力を示す。
図6Bは、ELISAによって分析されたヒト化抗FcRn抗体とcynoFcRnとの結合能力を示す。
【
図7】
図7Aは、ELISAによって分析されたヒト化抗FcRn抗体とヒトFCGRTとの結合親和性を示す。
図7Bは、ヒト化抗FcRn抗体がB2Mに結合しないことを示す。
【
図8】
図8は、ヒト化抗FcRn抗体がヒトIgGと効果的に競合し、ヒトIgGとヒトFcRnとの結合を阻害することを示す。
【
図9】
図9は、ヒト化抗FcRn抗体がヒトIgGのリサイクリングを効果的に阻害することを示す。
【
図10】
図10は、ヒト化抗FcRn抗体がHSAとFcRnとの結合を阻害しないことを示す。
【
図11】
図11は、参照抗体Rozanolixizumabと比較した、抗FcRn抗体ZLP193、ZLP1-3-2MおよびZLP1-3-2Fの薬力学アッセイ結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0049】
本発明の一態様では、本発明は、ヒトおよび/またはカニクイザルFcRnに特異的に結合する単離された抗FcRn抗体を提供する。ヒトおよび/またはカニクイザルFcRnに結合し、ヒトIgGとFcRnとの結合を阻害することができる非常に有効な抗体分子は、動物の免疫、scFvファージライブラリーのスクリーニング、ならびに適切に設計された生化学的および生物学的アッセイを組み合わせによって同定されている。本明細書に示される結果は、本発明における抗体が、ヒトおよび/またはカニクイザルFcRnに高い結合親和性で結合し、驚くべきことに、様々な生物学的アッセイで実証されているように、本発明における抗体がRozanolixizumab(UCB、抗FcRn抗体)よりもさらに強力であることを示している。
【0050】
本発明で提供される抗FcRn抗体は、例えば、全長の抗FcRn抗体、抗FcRn一本鎖Fvs(scFvs)、抗FcRn Fc融合タンパク質、多重特異性(例えば、二重特異性)抗FcRn抗体、抗FcRn免疫複合体などを含む。
【0051】
また、本発明は、抗FcRn抗体をコードする核酸、抗FcRn抗体を含む組成物、ならびに抗FcRn抗体を調製および使用する方法を提供する。
【0052】
定義
本明細書に記載されるように、「治療(treatment)」または「治療している(treating)」は、有利的または所望的な臨床結果を含む結果を得る方法である。本発明の目的に鑑み、前記有利的または所望的な臨床結果は、疾患による一種または複数種の症状を緩和すること、疾患の程度を軽減すること、疾患を安定すること(例えば、疾患の悪化を予防または遅延)、疾患の拡散を予防または遅延すること(例えば、転移)、疾患の再発を予防または遅延すること、疾患の進みを遅延または遅らせること、疾患の状態を改善すること、疾患(一部または全部)を緩和すること、疾患の治療に必要する一種または複数種の他の薬物の量を減少すること、疾患の進みを遅延すること、生存質量を改善または向上すること、体重を増加すること、および/または生存期間を延長すること、からなる群から選択される一種または複数種を含むが、これらに限定されない。また、「治療」は、疾患の病理学的結果(例えば、癌の腫瘍の体積など)の減少を含む。本発明の方法は、これらの治療のいずれか1つ以上を熟考するものである。
【0053】
「抗体」という用語は、全長の抗体およびその抗原結合性フラグメントを含む。全長の抗体は、重鎖二本および軽鎖二本を含む。重鎖可変領域および軽鎖可変領域は、抗原との結合を担当する。二本の鎖における可変領域は、一般的に3つの高度可変ループを含む。そのループは、相補性決定領域(CDRs)と称する(軽鎖(LC)CDRsは、LC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3とを含み、重鎖(HC)CDRsは、HC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含む)。本発明に記載の抗体または抗原結合性フラグメントのCDR境界は、Kabat、ChothiaまたはAl-Lazikaniの慣例により定義または認識される(Al-Lazikani 1997;Chothia 1985;Chothia 1987;Chothia 1989;Kabat 1987;Kabat 1991)。重鎖または軽鎖の3つのCDR領域は、フレームワーク領域(FRs)と称されるフランキング領域の間に挿入され、前記フレームワーク領域(FRs)はCDR領域よりさらに高度な保存性を持ち、高度可変ループを支持する支柱を形成する。重鎖の定常領域および軽鎖の定常領域は、抗原結合に参加しないが、多種の効果機能を示す。抗体は、それらの重鎖の定常領域のアミノ酸配列に基づいて分類される。抗体の5つの主なクラスまたはアイソタイプは、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMであり、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgMは、それぞれα、δ、ε、γおよびμ型重鎖を有することを特徴とする。いくつの主なクラスは、サブクラス、例えば、IgG1(γ1重鎖)、IgG2(γ2重鎖)、IgG3(γ3重鎖)、IgG4(γ4重鎖)、IgA1(α1重鎖n)またはIgA2(α2重鎖)に分類される。
【0054】
本明細書に記載されるように、「抗原結合性フラグメント」という用語は、例えば、ダイアボディ(diabody)、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvフラグメント、ジスルフィド安定化Fvフラグメント(dsFv)、(dsFv)2、二重特異性dsFv(dsFv-dsFv’)、ジスルフィド安定化ダイアボディ(dsダイアボディ)、一本鎖Fv(scFv)、scFvダイマー(二価ダイアボディ)、1つ以上のCDRsを含む抗体の一部からなる多重特異性抗体、単一ドメイン抗体、ナノボディ(nanobody)、ドメイン抗体、二価ドメイン抗体、または、抗原に結合できるが完全な抗体構造を含まない任意の他の抗体フラグメントを含む抗体フラグメントを含む。抗原結合性フラグメントは、前記抗体フラグメントを含む融合タンパク質をさらに含む。抗原結合性フラグメントは、親抗体または親抗体フラグメント(例えば、親scFv)と同じ抗原に結合できる。いくつかの実施例において、抗原結合性フラグメントは、1つ以上の異なるヒト抗体からのフレームワーク領域に移植された特定のヒト抗体からの1つ以上のCDRsを含み得る。
【0055】
本明細書に記載されるように、「エピトープ」という用語は、抗体または抗体部分に結合する抗原上の特定の原子またはアミノ酸のグループを指す。二種類の抗体または抗体部分が抗原に対する競合的結合を示す場合、それらは、抗原内の同じエピトープに結合し得る。
【0056】
本明細書に記載されるように、第1抗体が等モル濃度で第2抗体の標的FcRn結合を少なくとも50%(例えば、少なくとも55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%または99%)を阻害する場合、第一抗体は、FcRn標的への結合について、第2抗体と「競合」し、逆も同様である。PCT刊行物であるWO03/48731には、抗体交差競合に基づくハイスループット抗体の「エピトープ分類」の方法が記載されている。
【0057】
本明細書に記載されるように、「特異的に結合」、「特異的に認識」または「…にとって特異的である」という用語は、測定可能および再現可能な相互作用、例えば、生体分子を含む異種分子集団の存在下で標的の存在を決定する標的と抗体との間の結合を指す。例えば、抗体がある標的(エピトープであっても良い)を特異的に認識できるとは、当該抗体と他の標的との結合と比べて、当該抗体と当該標的との結合には、より高い親和性があり、より高い結合力があり、より容易でより長い持続時間があると指す。いくつかの実施例において、抗原を特異的に認識する抗体は、他の標的に対するその結合親和性の少なくとも10倍の結合親和性で、抗原の1つまたは複数の抗原決定基と反応する。
【0058】
本明細書に記載されるように、「単離された」抗FcRn抗体は、(1)天然に存在するタンパク質とは無関係であり、(2)同じ供給源由来の他のタンパク質を含まなく、(3)異種由来の細胞によって発現され、または(4)自然界に存在しない。
【0059】
本明細書に記載されるように、「単離された核酸」という用語は、ゲノム、cDNAまたは合成由来の核酸、或いはそれらの組合を指す。その起源によれば、前記「単離された核酸」は、(1)天然に見出された「単離された核酸」におけるポリヌクレオチドの全部または一部とは無関係であり、(2)天然状態でそれと連結していないポリヌクレオチドと作動可能に連結しており、または(3)より大きい配列の一部として天然に存在しない。
【0060】
本明細書に記載されるように、「CDR」または「相補性決定領域」という用語は、重鎖ポリペプチドおよび軽鎖ポリペプチドの可変領域に見出される非連続抗原結合部位を指す。Kabat et al.,J.Biol.Chem.252:6609-6616(1977);Kabat et al.,U.S.Dept.of Health and Human Services,“Sequences of proteins of immunological interest”(1991);Chothia et al.,J.Mol.Biol.196:901-917(1987);Al-Lazikani B.et al.,J.Mol.Biol.,273:927-948(1997);MacCallum et al.,J.Mol.Biol.262:732-745(1996);Abhinandan and Martin,Mol.Immunol.,45:3832-3839(2008);Lefranc M.P.et al.,Dev.Comp.Immunol.,27:55-77(2003);およびHonegger and Pluckthun,J.Mol.Biol.,309:657-670(2001)には、既にこれらの特定の領域が説明しており、お互いに比較する場合、これらの定義は、アミノ酸残基の重複またはサブセットを含む。しかしながら、抗体または移植抗体またはその変異体のCDRに対するあらゆる定義方式は、本明細書に定義および使用される用語の範囲にあることが意図される。上記参照文献の各々に定義されるCDRを含むアミノ酸残基は、比較として、表1に挙げられる。CDR予測アルゴリズムおよびインターフェースは、本分野では既知であり、例えば、Abhinandan and Martin,Mol.Immunol.,45:3832-3839(2008);Ehrenmann F.et al.,Nucleic Acids Res.,38:D301-D307(2010);およびAdolf-Bryfogle J.et al.,Nucleic Acids Res.,43:D432-D438(2015)を含む文献には、説明がある。本段落に引用された参考文献の内容は、本出願で使用するように、および本発明の1つまたは複数の特許請求の範囲に含めることができるように、全体として本明細書に組み込まれる。
【0061】
【0062】
「キメラ抗体」という用語は、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来する抗体、または特定の抗体クラス或いはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同であり、こ(れら)の鎖の残りは、他の種に由来する、または他の抗体クラス或いはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一または相同である抗体を指す。そして、このような抗体フラグメントは、本発明の生物学的活性を有すればよく(U.S.Patent No.4,816,567;および Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851-6855(1984)を参照)。
【0063】
「Fv」は、インタクトな抗原認識および結合部位を含む最小の抗体フラグメントである。当該フラグメントは、1つの重鎖可変ドメインおよび1つの軽鎖可変ドメインが緊密な非共有結合で連結されたダイマーである。この2つのドメインの折り畳みから、6つの高度可変ループ(軽鎖および重鎖にはそれぞれ3つのループ)が生じられ、前記高度可変ループは、抗原結合のためのアミノ酸残基を提供し、抗体に抗原結合特異性を付与する。しかしながら、単一の可変ドメイン(または抗原特異的な3つのCDRsのみを含む半分Fvフラグメント)であっても、その親和性がインタクトな結合部位より低いにも関わらず、抗原を認識および結合する能力を有する。
【0064】
「sFv」または「scFv」とも称する「一本鎖Fv」は、単一のポリペプチド鎖に連結されたVH抗体ドメインおよびVL抗体ドメインを含む抗体フラグメントを指す。いくつかの実施例において、scFvポリペプチドは、scFvが抗原結合の理想的な構造を形成させるための、VHとVLとの間の連結ポリペプチドをさらに含む。scFvの概要について、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)を参照する。
【0065】
「ダイアボディ(diabodies)」という用語は、短いリンカー(例えば、5~10残基)を用いてVHとVLとの間にscFvフラグメント(前記段落の内容を参照)を構築することによって調製される小さな抗体フラグメントを指す。これによって、可変ドメインが鎖内対合ではなく、鎖間対合が達成され、2価のフラグメント、即ち、2つの抗原結合部位を有するフラグメントが生成される。二重特異性のダイアボディは、2つの「クロスオーバー」scFvフラグメントのヘテロダイマーであり、中では、2つの抗体のVHドメインおよびVLドメインは、異なるポリペプチド鎖に位置する。EP 404,097;WO93/11161;Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444-6448(1993)において、既にダイアボディに対して全面的に説明している。
非ヒト(例えば、げっ歯類)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト抗体に由来する最少の配列を含むキメラ抗体である。ヒト化抗体の大部分は、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)であり、レシピエント抗体の超可変領域(HVR)に由来する残基は、所望の抗体特異性、親和性および性能を有する、マウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長類動物の非ヒト種(ドナー抗体)に由来する超可変領域で置換される。ある特定の場合において、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)における残基は、対応する非ヒト残基で置換される。なお、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にもドナー抗体にも存在しない残基を含んでも良い。これらの修飾は、抗体の性能をさらに改善させることができる。通常、ヒト化抗体は、実質的に少なくとも1つ、一般的には2つの可変ドメインを含み、中では全てまたは実質的に全ての高度可変ループは、全て非ヒト免疫グロブリンの高度可変ループに対応し、全てまたは実質的に全てのフレームワーク領域はヒト免疫グロブリン配列である。ヒト抗体は、任意選択で、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域も含む。詳細は、Jones et al.,Nature 321:522-525(1986);Riechmann et al.,Nature 332:323-329(1988);およびPresta,Curr.Op.Struct.Biol.2:593-596(1992)を参照することができる。
【0066】
本明細書に同定されるポリペプチドおよび抗体配列の「アミノ酸配列同一性百分率(%)」または「相同性」は、保存的置換を配列同一性の一部として考慮して配列を比較して、候補配列および比較しようとするポリペプチド配列における同じアミノ酸残基の占める百分率として定義される。アミノ酸配列同一性の百分率は、本分野の技術的範囲内の様々な比較方法、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、Megalign(DNASTAR)、またはMUSCLEソフトウェアなどの利用可能なコンピューターソフトウェアによって決定することができる。当業者は、比較された配列の全長にわたって最大の比較を達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、測定や比較のための適切なパラメータを決定することができる。しかしながら、本発明の目的のために、アミノ酸配列同一性百分率の値は、配列比較コンピュータプログラムMUSCLE(Edgar,R.C.,Nucleic Acids Research 32(5):1792-1797,2004; Edgar,R.C.,BMC Bioinformatics 5(1):113,2004)を使用して生成されたものである。
【0067】
「Fc受容体」または「FcR」という用語は、抗体のFc領域に結合する受容体を説明するために用いられる。いくつかの実施例において、本発明に記載のFcRは、IgG抗体に結合するFcR(γ受容体の一種)であり、FcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIサブクラスの受容体を含み、これらの受容体の対立遺伝子変異体および選択的スプライシング形態も含む。FcγRII受容体は、FcγRIIA(活性化受容体)およびFcγRIIB(阻害受容体)を含む。FcγRIIA(活性化受容体)およびFcγRIIB(阻害受容体)は、類似のアミノ酸配列を有し、主には、細胞質ドメインで、異なるとこるがある。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシン活性化モチーフ(ITAM)を含む。阻害受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシン阻害モチーフ(ITIM)(M.in Daeron,Annu.Rev.Immunol.15:203-234(1997)を参照)を含む。前記用語は、同種異型、例えばFcγRIIIA同種異型:FcγRIIIA-Phe158、FcγRIIIA-Val158、FcγRIIA-R131および/またはFcγRIIA-H131をさらに含む。Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol 9:457-92(1991)およびCapel et al.,Immunomethods 4:25-34(1994);およびde Haas et al.,J.Lab.Clin.Med.126:330-41(1995)において、FcRsに対して説明した。本発明におけるFcRとの用語は、将来特定されるFcRsを含む他のタイプのFcRsを含有する。FcRとの用語は、母体IgGsの新生児への移行を担当する新生児受容体FcRnも含む(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)and Kim et al.,J.Immunol.24:249(1994))。
【0068】
「FcRn」という用語は、新生児Fc受容体(FcRn)を指す。FcRnは、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)と構造で類似し、α鎖がβ2ミクログロブリンに非共有結合して構成される。新生児Fc受容体FcRnの複数の機能は、Ghetie and Ward(2000)Annu.Rev.Immunol.18,739-766.において説明されている。FcRnは、母親から新生児への免疫グロブリンIgGsの受動輸送および血清IgGレベルの調節において重要な役割を果たす。FcRnは、レスキュー受容体として、細胞内および細胞間で完全な形でエンドサイトーシスされたIgGを結合および輸送し、デフォルトの分解経路からそれらをレスキューする。
【0069】
ヒトIgG Fc領域の「CH1ドメイン」は、通常、118位のアミノ酸から215位のアミノ酸まで延長する(EU番号付けシステム)。
【0070】
「ヒンジ領域」は、通常、ヒトIgG1の216位であるGluから230位であるPro(Burton,Molec.Immunol.22:161-206(1985))まで延長する範囲と定義される。重鎖間のジスルフィド結合を形成する最初と最後のシステイン残基をIgG1と同じ位置に配置することにより、他のIgGのアイソタイプのヒンジ領域をIgG1配列と比較させることができる。
【0071】
ヒトIgG Fc領域の「CH2ドメイン」は、通常、231位のアミノ酸から340位のアミノ酸まで延長する。CH2ドメインは、別のドメインと密接に対合しなく、その代わりに、2つのN末端で連結された分岐糖鎖は、完全な形態の天然IgG分子の2つのCH2ドメインの間に挿入するという点で独特である。糖は、ドメインとドメインとの対合の置換物とすることができ、CH2ドメインの安定性に寄与すると推測される。Burton,Molec Immunol.22:161-206(1985)。
【0072】
「CH3」ドメインは、Fc領域内でC末端残基からCH2ドメイン(341位のアミノ酸から抗体配列のC末端まで、通常はIgGの446または447位目のアミノ酸残基)まで延長する部分を含む。
【0073】
「機能性Fcフラグメント」は、天然のFc領域の配列が有する「エフェクター機能」を備える。例示的な「エフェクター機能」は、C1q結合、補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞傷害(ADCC)、食作用、細胞表面受容体のダウンレギュレーション(例えば、B細胞受容体;BCR)などを含む。このようなエフェクター機能について、通常、Fc領域と結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)との組み合わせを必要とし、本分野で公知の様々な実験方法を利用して評価することができる。
【0074】
「変化した」FcR結合親和性またはADCC活性を有するIgG Fc変異体の抗体は、親ポリペプチド、または天然のFc配列を含むポリペプチドと比較して、そのFcR結合活性(例えば、FcγRまたはFcRn)および/またはADCC活性が増加または低減されている。FcRへの「結合が増強」を示すFc変異体は、親ポリペプチド、または天然のIgG Fc配列を含むポリペプチドより、少なくとも一種のFcRに対してより高い親和性(例えば、より低い見かけのKdまたはIC50値)を有する。いくつかの実施例において、結合能力は、親ポリペプチドより、約3倍を増加し、例えば、5、10、25、50、60、100、150、200倍、500倍まで高い、または結合能力が25%~1000%のいずれを向上させる。FcRへの「結合が低減」を示すFc変異体は、親ポリペプチドより、少なくとも一種のFcRに対してより低い親和性(例えば、より高い見かけのKdまたはIC50値)を有する。親ポリペプチドより、その結合能力が40%またはその以上を低下させる。
【0075】
「抗体依存性細胞傷害」または「ADCC」は、細胞毒性の一形態であり、分泌されたIgが、ある細胞毒性細胞(例えば、ナチュラルキラー細胞(NK)、好中球およびマクロファージ)に存在するFc受容体(FcRs)に結合し、これらの細胞毒性エフェクター細胞を、抗原を運ぶ標的細胞と特異的に結合させてから、細胞毒素を利用して標的細胞を殺すことを指す。抗体は細胞毒性細胞を「武装」させるのは、その毒性に必要である。ADCCを介在する主な細胞型において、NK細胞はFcγRIIIのみを発現し、単核細胞はFcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIを発現する。Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol 9:457-92(1991)ページ464目のTable 3において、造血細胞でのFcR発現をまとめる。目的の分子のADCC活性を評価するために、イン・ビトロのADCC実験を行うことができ、これは米国特許No.5,500,362または5,821,337において説明されている。このような実験に適したエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー細胞(NK)が含まれる。選択的に、目的の分子のADCC活性は、イン・ビボで評価してもよく、例えば、Clynes et al.PNAS(USA)95:652-656(1998)に開示された動物モデルにおいて説明されている。
【0076】
野生型IgG Fcを含むポリペプチドまたは親ポリペプチドより、Fc領域変異体を含むポリペプチドは、ヒトエフェクター細胞の存在下で、「増強されたADCC活性」を示すか、ADCC効果をより効果的に介在でき、Fc領域変異体を含む前記ポリペプチドは、実験時、野生型IgG Fcを含むポリペプチド(または親ポリペプチド)との量が実質的に同じである場合、イン・ビトロまたはイン・ビボのいずれの状況でもADCCをより効果的に介在できる。通常、このような変異体は、本分野で既知のいずれのイン・ビトロのADCC実験方法で同定し、例えば、ADCCの活性を同定する、例えば動物モデルなどを使用する実験と方法に用いられる。いくつかの実施例において、このような変異体は、野生型Fc(または親ポリペプチド)と比較すると、ADCCを介在する効果は、5~100倍、例えば25~50倍が向上する。
【0077】
「補体依存性細胞傷害」または「CDC」とは、補体の存在下で標的細胞を溶解することを指す。代表的な補体経路の活性化は、補体システムの第1成分(C1q)と、相同抗原に結合する抗体(適切な構造を持つサブクラス)との結合によって開始される。補体の活性化を評価するために、例えば、Gazzano-Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996)に説明されるCDC実験を行ってもよい。米国特許No.6,194,551B1およびWO 99/51642において、変化したFc領域アミノ酸配列、並びに、増加または低減されたC1q結合能を有するポリペプチド変異体が説明されている。これらの特許刊行物の内容は、引用により、明確に本明細書に組み込まれる。また、Idusogie et al.J.Immunol.164:4178-4184(2000)を参照する。
【0078】
別に断らない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、互いに縮重し、且つ同じアミノ酸配列をコードするすべてのヌクレオチド配列を含む。タンパク質またはRNAをコードするヌクレオチド配列は、イントロンをさらに含んでもよく、例えば、タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、いくつかの形態においてイントロンを含む。
【0079】
「作動可能に連結」という用語は、調節配列と異種ヌクレオチド配列との間の機能的連結を指し、これにより、後者を発現させる。例えば、第1ヌクレオチド配列と第2ヌクレオチド配列が機能的な関係である場合、第1ヌクレオチド配列と第2ヌクレオチド配列は作動可能に連結される。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を与える場合、当該プロモーターとコード配列は作動可能に連結される。通常、作動可能に連結されるDNA配列は連続的であり、必要に応じて、2つのタンパク質コード領域を同じオープンリーディングフレームにおいて連結できる。
【0080】
「相同性(Homologous)」とは、2つのポリペプチド間または2つの核酸分子間の配列類似性または配列同一性である。2つの比較される配列の両方の位置が同じ塩基またはアミノ酸モノマーサブユニットである場合、例えば、2つのDNA分子の同じ位置がいずれもアデニンである場合、2つのDNA分子はその位置で相同である。2つの配列間の相同性百分率とは、2つの配列において、位置の総数に対する、共有される一致または相同位置の数の比に100を掛ける関数である。例えば、2つの配列において、10つの位置のうち6つが一致または相同である場合、2つの配列の相同性は60%である。例えば、DNA配列ATTGCCとTATTGCの相同性は50%である。通常、2つの配列を比較する時、最大の相同性を得るために比較を行う。
【0081】
本明細書に開示される抗FcRn抗体または組成物の「有効量」とは、特定の目的を達成するのに十分な量を指す。「有効量」は、経験、および前記目的に関連する既知の方法によって決定することができる。
【0082】
「治療有效量」という用語とは、疾患もしくは障害を治療、軽減もしくは予防するのに、または個体において検出可能な治療効果もしくは予防効果を発現させるのに有効な、本明細書に開示される抗FcRn抗体または組成物の量を指す。自己免疫性疾患の場合、本明細書に開示される治療有効量の抗FcRn抗体または組成物は、IgG FcのFcRnへの結合を減少させ;循環IgGの半減期を減少させ;血清IgG濃度を減少させ;被験体の自己抗体と宿主組織との反応を阻害し(すなわち、ある程度遅くし、好ましくは停止させ);内因性自己ペプチドと反応する免疫エフェクターT細胞を阻害し、組織破壊をもたらすことができる。いくつかの実施例において、全体的な病原性抗体の異化作用および複数の病原性抗体の除去を誘導するFcRn遮断量である。いくつかの実施例において、治療有效量は、患者の生存期間を延長する量である。いくつかの実施例において、治療有效量は、患者の無増悪生存期間を改善する量である。
【0083】
本明細書で使用されるように、「薬学的に許容される」または「薬理学的に適合性のある」とは、生物学的活性がなく、または他の望ましくない特性を有しない材料であり、例えば、当該材料は、不良な生物効果を引き起こさないように、または有害な方式で組成物に含まれる他の任意の成分と相互作用しないように、患者に投与される医薬組成物に添加することができる。薬学的に許容されるベクターまたは賦形剤は、好ましくは、毒物学および製造試験に必要な基準を満たし、および/または米国食品医薬品局によって編集された不活性成分ガイドに含まれている。
【0084】
本明細書に記載の本発明の実施例は、「…からなる」および/または「実質的に…からなる」の実施例を含むと理解されるべきである。
【0085】
本明細書に言及される「約」は、数値またはパラメータであり、当該数値またはパラメータ自体の変体も含む(および説明する)。例えば、「約X」に関する説明は、「X」に対する説明を含む。
【0086】
本明細書に使用されるように、ある数値またはパラメータでは「ない(not)」に関する説明は、通常、当該数値またはパラメータ「以外(other than)」を意味して説明する。例えば、当該方法はX型癌の治療には使用できないとは、当該方法が通常、X型癌以外の種類の治療に使用されると意味する。
【0087】
別段で明確に説明しない限り、本明細書および請求の範囲に使用される単数形「1」、「1つ」および「当該」は、複数の対象を含む。
【0088】
抗FcRn抗体
本発明の一態様では、本発明は、ヒトおよび/またはカニクイザルFcRnに特異的に結合する抗FcRn抗体を提供する。本発明の一態様では、本発明は、マウスFcRnに弱く結合する抗FcRn抗体を提供する。前記抗FcRn抗体は、ヒト化抗体、キメラ抗体、マウス抗体、ヒト抗体、および本明細書に記載の重鎖CDRsおよび/または軽鎖CDRsを含む抗体分子を含むが、これらに限定されない。本発明の一態様では、FcRnに結合する単離された抗体を提供する。意図される抗FcRn抗体は、例えば、全長の抗FcRn抗体(例えば、全長のIgG1またはIgG4)、抗FcRn一本鎖Fvs、抗FcRn Fc融合タンパク質、多重特異性(例えば、二重特異性)抗FcRn抗体、抗FcRn免疫複合体などを含む。いくつかの実施例において、抗FcRn抗体は、FcRnに特異的に結合する全長の抗体(例えば、全長のIgG1またはIgG4)またはその抗原結合性フラグメントである。いくつかの実施例において、抗FcRn抗体は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fab’-SH、一本鎖Fv(scFv)、Fvフラグメント、dAb、Fd、ナノボディ(nanobody)、ダイアボディ(diabody)または直鎖状抗体である。いくつかの実施例において、FcRnに特異的に結合する抗体とは、FcRnへの抗体の結合親和性が、非標的への抗体の結合親和性より少なくとも10倍以上(例えば、10、102、103、104、105、106、または107倍)であることを指す。いくつかの実施例において、非標的とは、非FcRn抗原を指す。結合親和性は、例えば、ELISA、蛍光活性化セルソーティング(FACS)分析、または放射性免疫沈降分析(RIA)などの本分野で既知の方法によって測定することができる。Kd値は、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)技術またはバイオレイヤー干渉技術(BLI)などの本分野で既知の方法によって測定することができる。
【0089】
本明細書では、ヒト配列を含む抗FcRn抗体(例えば、ヒトCDR配列を含むヒト重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメイン)について詳しく説明しているが、同時に非ヒト抗FcRn抗体も考慮されている。いくつかの実施例において、非ヒト抗FcRn抗体は、本明細書に記載の抗FcRn抗体のヒトCDR配列および非ヒトフレームワーク配列を含む。いくつかの実施例において、非ヒトフレームワーク配列は、本明細書に記載の一種以上のヒトCDR配列を利用して重鎖可変ドメインおよび/または軽鎖可変ドメインを形成するために使用され得る任意の配列を含み、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ブタ、牛類(例えば、ウシ、オウシ、スイギュウ)、シカ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、ネコ、イヌ、フェレット、霊長類(例えば、コザル、マカク)などの哺乳類動物である。いくつかの実施例において、非ヒト抗FcRn抗体は、本明細書に記載の一種以上のヒトCDR配列を非ヒトフレームワーク領域(例えば、マウスまたはニワトリのフレームワーク配列)に移植することによって産生される抗FcRn抗体を含む。
【0090】
例示的な天然ヒトFcRn α鎖(FCGRT)のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:66に示されるアミノ酸配列を含むか、またはSEQ ID NO:66に示されるアミノ酸配列からなり、前記ヒトFcRn β2-ミクログロブリン(B2M)は、SEQ ID NO:67に示されるアミノ酸配列を含むか、またはSEQ ID NO:67に示されるアミノ酸配列からなる。
【0091】
いくつかの実施例において、本明細書に記載の前記抗FcRn抗体は、ヒトFcRn中のエピトープを特異的に認識する。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、ホモサピエンス以外の種由来のFcRnと交差反応する。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、カニクイザル由来のFcRnと交差反応する。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、ヒトFcRnに完全に特異的であり、ヒト以外の種または他の型のFcRnとは交差反応性を示さない。
【0092】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、FcRnタンパク質(またはそのフラグメント)の少なくとも1つの対立遺伝子変異体と交差反応する。いくつかの実施例において、対立遺伝子変異体は、天然に存在するFcRnタンパク質(またはそのフラグメント)と比較して、多くとも30個(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25または30個)のアミノ酸置換(例えば、保存的置換)を有する。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、FcRnタンパク質(またはそのフラグメント)のいかなる対立遺伝子変異体と交差反応しない。
【0093】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、FcRnタンパク質の少なくとも1つの種間変異体と交差反応する。いくつかの実施例において、例えば、FcRnタンパク質(またはそのフラグメント)はヒトFcRnであり、且つFcRnタンパク質(またはそのフラグメント)の種間変異体はカニクイザルにおける変異体である。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、FcRnタンパク質のいかなる種間変異体と交差反応しない。
【0094】
いくつかの実施例において、本明細書に記載の抗FcRn抗体のいずれか1つによれば、前記抗FcRn抗体は、抗体重鎖定常領域および抗体軽鎖定常領域を含むものである。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、IgG1型重鎖定常領域を含む。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、IgG2型重鎖定常領域を含む。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、IgG3型重鎖定常領域を含む。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、IgG4型重鎖定常領域を含む。いくつかの実施例において、前記重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含む(からなる、または実質的に…からなる)。いくつかの実施例において、前記重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含む(からなる、または実質的に…からなる)。いくつかの実施形態において、前記抗FcRn抗体は、κ軽鎖定常領域を含む。いくつかの実施例において、前記軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含む(からなる、または実質的に…からなる)。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、λ軽鎖定常領域を含む。いくつかの実施例において、前記軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含む(からなる、または実質的に…からなる)。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、抗体重鎖可変ドメインおよび抗体軽鎖可変ドメインを含む。
【0095】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHまたは前記VHの変異体、およびVLまたは前記VLの変異体を含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:1を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:7を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:15を含むHC-CDR3とを含み、前記VHの変異体はHC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:23を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:29を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:34を含むLC-CDR3とを含み、前記VLの変異体はLC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものである。
【0096】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:1を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:7を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:15を含むHC-CDR3とを含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:23を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:29を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:34を含むLC-CDR3とを含む。
【0097】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHまたは前記VHの変異体、およびVLまたは前記VLの変異体を含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NOs:1、7および15を含み、前記VHの変異体は多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NOs:23、29および34を含み、前記VLの変異体は多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものである。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NOs:1、7および15を含むVHと、アミノ酸配列SEQ ID NOs:23、29および34を含むVLとを含む。
【0098】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:41を有するVHにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:52を有するVLにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む。
【0099】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:41における1つ、2つ、または3つのHC-CDRsを含むVHを含む。
【0100】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:52における1つ、2つ、または3つのLC-CDRsを含むVLを含む。
【0101】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:41のVHにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:52のVLにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む。
【0102】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体はVHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:41、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:41と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:52、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:52と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含む。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:41を含むVHと、アミノ酸配列SEQ ID NO:52を含むVLとを含む。
【0103】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHまたは前記VHの変異体、およびVLまたは前記VLの変異体を含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:2を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:8を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:16を含むHC-CDR3とを含み、前記VHの変異体はHC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:24を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:29を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:35を含むLC-CDR3とを含み、前記VLの変異体はLC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものである。
【0104】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体はVHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:2を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:8を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:16を含むHC-CDR3とを含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:24を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:29を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:35を含むLC-CDR3とを含む。
【0105】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHまたは前記VHの変異体、およびVLまたは前記VLの変異体を含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NOs:2、8および16を含み、前記VHの変異体は多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NOs:24、29および35を含み、前記VLの変異体は多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものである。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NOs:2、8および16を含むVHと、アミノ酸配列SEQ ID NOs:24、29および35を含むVLとを含む。
【0106】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:42を有するVHにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:53を有するVLにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む。
【0107】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:42における1つ、2つ、または3つのHC-CDRsを含むVHを含む。
【0108】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:53における1つ、2つ、または3つのLC-CDRsを含むVLを含む。
【0109】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:42のVHにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:53のVLにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む。
【0110】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体はVHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:42、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:42と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:53、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:53と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含む。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:42を含むVHと、アミノ酸配列SEQ ID NO:53を含むVLとを含む。
【0111】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHまたは前記VHの変異体、およびVLまたは前記VLの変異体を含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:3を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:9を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:17を含むHC-CDR3とを含み、前記VHの変異体はHC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:25を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:30を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:36を含むLC-CDR3とを含み、前記VLの変異体はLC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものである。
【0112】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHおよびVL含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:3を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:9を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:17を含むHC-CDR3とを含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:25を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:30を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:36を含むLC-CDR3とを含む。
【0113】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHまたは前記VHの変異体、およびVLまたは前記VLの変異体を含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NOs:3、9および17を含み、前記VHの変異体は多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NOs:25、30および36を含み、前記VLの変異体は多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものである。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体はアミノ酸配列SEQ ID NOs:3、9および17を含むVHと、アミノ酸配列SEQ ID NOs:25、30および36を含むVLとを含む。
【0114】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:43を有するVHにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:54を有するVLにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む。
【0115】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:43における1つ、2つ、または3つのHC-CDRsを含むVHを含む。
【0116】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:54における1つ、2つ、または3つのLC-CDRsを含むVLを含む。
【0117】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:43のVHにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:54のVLにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む。
【0118】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体はVHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:43、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:43と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:54、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:54と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含む。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:43を含むVHと、アミノ酸配列SEQ ID NO:54を含むVLとを含む。
【0119】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHまたは前記VHの変異体、およびVLまたは前記VLの変異体を含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:4を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:9を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:18を含むHC-CDR3とを含み、前記VHの変異体はHC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:26を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:31を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:37を含むLC-CDR3とを含み、前記VLの変異体はLC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものである。
【0120】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHおよびVL含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:4を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:9を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:18を含むHC-CDR3とを含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:26を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:31を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:37を含むLC-CDR3とを含む。
【0121】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHまたは前記VHの変異体、およびVLまたは前記VLの変異体を含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NOs:4、9および18を含み、前記VHの変異体は多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NOs:26、31および37を含み、前記VLの変異体は多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものである。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NOs:4、9および18を含むVHと、アミノ酸配列SEQ ID NOs:26、31および37を含むVLとを含む。
【0122】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:44を有するVHにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:55を有するVLにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む。
【0123】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:44における1つ、2つ、または3つのHC-CDRsを含むVHを含む。
【0124】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:55における1つ、2つ、または3つのLC-CDRsを含むVLを含む。
【0125】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:44のVHにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:55のVLにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む。
【0126】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体はVHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:44、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:44と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:55、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:55と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含む。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:44を含むVHと、アミノ酸配列SEQ ID NO:55を含むVLとを含む。
【0127】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHまたは前記VHの変異体、およびVLまたは前記VLの変異体を含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:1を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:10を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:19を含むHC-CDR3とを含み、前記VHの変異体はHC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:25を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:32を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:38を含むLC-CDR3とを含み、前記VLの変異体はLC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものである。
【0128】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHおよびVL含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:1を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:10を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:19を含むHC-CDR3とを含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:25を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:32を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:38を含むLC-CDR3とを含む。
【0129】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHまたは前記VHの変異体、およびVLまたは前記VLの変異体を含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NOs:1、10および19を含み、前記VHの変異体は多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NOs:25、32および38を含み、前記VLの変異体は多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものである。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NOs:1、10および19を含むVHと、アミノ酸配列SEQ ID NOs:25、32および38を含むVLとを含む。
【0130】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:45を有するVHにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:56を有するVLにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む。
【0131】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:45における1つ、2つ、または3つのHC-CDRsを含むVHを含む。
【0132】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:56における1つ、2つ、または3つのLC-CDRsを含むVLを含む。
【0133】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:45のVHにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:56のVLにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む。
【0134】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体はVHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:45、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:45と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:56、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:56と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含む。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:45を含むVHと、アミノ酸配列SEQ ID NO:56を含むVLとを含む。
【0135】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHまたは前記VHの変異体、およびVLまたは前記VLの変異体を含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:1を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:11を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:20を含むHC-CDR3とを含み、前記VHの変異体はHC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:23を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:29を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:38を含むLC-CDR3とを含み、前記VLの変異体はLC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものである。
【0136】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHおよびVL含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:1を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:11を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:20を含むHC-CDR3とを含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:23を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:29を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:38を含むLC-CDR3とを含む。
【0137】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHまたは前記VHの変異体、およびVLまたは前記VLの変異体を含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NOs:1、11および20を含み、前記VHの変異体は多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NOs:23、29および38を含み、前記VLの変異体は多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものである。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NOs:1、11および20を含むVHと、アミノ酸配列SEQ ID NOs:23、29および38を含むVLとを含む。
【0138】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:46を有するVHにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:57を有するVLにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む。
【0139】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:46における1つ、2つ、または3つのHC-CDRsを含むVHを含む。
【0140】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:57における1つ、2つ、または3つのLC-CDRsを含むVLを含む。
【0141】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:46のVHにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:57のVLにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む。
【0142】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体はVHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:46、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:46と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:57、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:57と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含む。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:46を含むVHと、アミノ酸配列SEQ ID NO:57を含むVLとを含む。
【0143】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHまたは前記VHの変異体、およびVLまたは前記VLの変異体を含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:5を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:12を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:21を含むHC-CDR3とを含み、前記VHの変異体はHC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:27を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:33を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:39を含むLC-CDR3とを含み、前記VLの変異体はLC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものである。
【0144】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHおよびVL含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:5を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:12を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:21を含むHC-CDR3とを含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:27を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:33を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:39を含むLC-CDR3とを含む。
【0145】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHまたは前記VHの変異体、およびVLまたは前記VLの変異体を含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NOs:5、12および21を含み、前記VHの変異体は多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NOs:27、33および39を含み、前記VLの変異体は多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものである。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NOs:5、12および21を含むVHと、アミノ酸配列SEQ ID NOs:27、33および39を含むVLとを含む。
【0146】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:47を有するVHにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:58を有するVLにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む。
【0147】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:47における1つ、2つ、または3つのHC-CDRsを含むVHを含む。
【0148】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:58における1つ、2つ、または3つのLC-CDRsを含むVLを含む。
【0149】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:47のVHにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:58のVLにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む。
【0150】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体はVHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:47、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:47と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:58、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:58と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含む。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:47を含むVHと、アミノ酸配列SEQ ID NO:58を含むVLとを含む。
【0151】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHまたは前記VHの変異体、およびVLまたは前記VLの変異体を含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:5を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:13を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:21を含むHC-CDR3とを含み、前記VHの変異体はHC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:28を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:33を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:40を含むLC-CDR3とを含み、前記VLの変異体はLC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものである。
【0152】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHおよびVL含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:5を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:13を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:21を含むHC-CDR3とを含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:28を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:33を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:40を含むLC-CDR3とを含む。
【0153】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHまたは前記VHの変異体、およびVLまたは前記VLの変異体を含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NOs:5、13および21を含み、前記VHの変異体は多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NOs:28、33および40を含み、前記VLの変異体は多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものである。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NOs:5、13および21を含むVHと、アミノ酸配列SEQ ID NOs:28、33および40を含むVLとを含む。
【0154】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:48を有するVHにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:59を有するVLにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む。
【0155】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:48における1つ、2つ、または3つのHC-CDRsを含むVHを含む。
【0156】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:59における1つ、2つ、または3つのLC-CDRsを含むVLを含む。
【0157】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:48のVHにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:59のVLにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む。
【0158】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体はVHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:48、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:48と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:59、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:59と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含む。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:48を含むVHと、アミノ酸配列SEQ ID NO:59を含むVLとを含む。
【0159】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHまたは前記VHの変異体、およびVLまたは前記VLの変異体を含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:6を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:14を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:22を含むHC-CDR3とを含み、前記VHの変異体はHC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:27を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:33を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:39を含むLC-CDR3とを含み、前記VLの変異体はLC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものである。
【0160】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHおよびVL含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:6を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:14を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:22を含むHC-CDR3とを含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:27を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:33を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:39を含むLC-CDR3とを含む。
【0161】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHまたは前記VHの変異体、およびVLまたは前記VLの変異体を含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NOs:6、14および22を含み、前記VHの変異体は多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NOs:27、33および39を含み、前記VLの変異体は多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものである。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NOs:6、14および22を含むVHと、アミノ酸配列SEQ ID NOs:27、33および39を含むVLとを含む。
【0162】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:49を有するVHにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:58を有するVLにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む。
【0163】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:49における1つ、2つ、または3つのHC-CDRsを含むVHを含む。
【0164】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:58における1つ、2つ、または3つのLC-CDRsを含むVLを含む。
【0165】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:49のVHにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:58のVLにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む。
【0166】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体はVHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:49、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:49と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:58、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:58と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含む。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:49を含むVHと、アミノ酸配列SEQ ID NO:58を含むVLとを含む。
【0167】
いくつかの実施例において、前記アミノ酸置換は、本発明の表4に示される「例示的な置換」のみに限定される。いくつかの実施例において、アミノ酸置換は、本発明の表4に示される「好ましい置換」のみに限定される。
【0168】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NOs:50-51のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するVHにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NOs:60-61のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を有するVLにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む。
【0169】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:50における1つ、2つ、または3つのHC-CDRsを含むVHを含む。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:51における1つ、2つ、または3つのHC-CDRsを含むVHを含む。
【0170】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:60における1つ、2つ、または3つのLC-CDRsを含むVLを含む。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:61における1つ、2つ、または3つのLC-CDRsを含むVLを含む。
【0171】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:50のVHにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:60のVLにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む。
【0172】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:51のVHにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:61のVLにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む。
【0173】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:50のVHにおけるHC-CDR1、HC-CDR2およびHC-CDR3を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:61のVLにおけるLC-CDR1、LC-CDR2およびLC-CDR3を含む。
【0174】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHおよびVLを含み、前記VHはSEQ ID NOs:50-51のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NOs:50-51のいずれか1つに示されるアミノ酸配列と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、前記VLはSEQ ID NOs:60-61のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NOs:60-61のいずれか1つに示されるアミノ酸配列と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含む。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、SEQ ID NOs:50-51のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むVHと、SEQ ID NOs:60-61のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含むVLとを含む。
【0175】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:50、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:50と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:60、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:60と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含む。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:50を含むVHと、アミノ酸配列SEQ ID NO:60を含むVLとを含む。
【0176】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:51、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:51と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:61、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:61と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含む。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:51を含むVHと、アミノ酸配列SEQ ID NO:61を含むVLとを含む。
【0177】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、VHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:50、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:50と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:61、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:61と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含む。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、アミノ酸配列SEQ ID NO:50を含むVHと、アミノ酸配列SEQ ID NO:61を含むVLとを含む。
【0178】
いくつかの実施例において、機能的エピトープは、アラニンスキャニング法を組み合わせることによって解析され得る。このプロセスにおいて、アラニンスキャニング技術を使用して、抗FcRn抗体との相互作用に必要なFcRnタンパク質中のアミノ酸を同定することができる。いくつかの実施例において、当該エピトープは立体構造的であり、FcRnタンパク質に結合する抗FcRn抗体の結晶構造を用いてエピトープを同定することができる。
【0179】
いくつかの実施例において、本発明は、本明細書に記載の抗FcRn抗体のいずれか1つと競合的にFcRnに結合する抗体が提供される。いくつかの実施例において、本発明は、本明細書に記載の抗FcRn抗体のいずれか1つと競合的にFcRn上のエピトープに結合する抗体が提供される。いくつかの実施例において、VHおよびVLを含む抗FcRn抗体分子と同じエピトープに結合する抗FcRn抗体が提供され、前記VHはSEQ ID NOs:41-51のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含み、前記VLはSEQ ID NOs:52-61のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施例において、VHおよびVLを含む抗FcRn抗体と競合的にFcRnに結合する抗FcRn抗体が提供され、前記VHはSEQ ID NOs:41-51のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含み、前記VLはSEQ ID NOs:52-61のいずれか1つに示されるアミノ酸配列を含む。
【0180】
いくつかの実施例において、競合実験により、本明細書に記載の抗FcRn抗体と競合的にFcRnに結合するモノクローナル抗体を同定することができる。競合実験は、同じエピトープまたは空間上で重なるエピトープを認識すること、または1つの抗体が競合的に別の抗体の抗原への結合を阻害することにより、2つの抗体が同じエピトープに結合するかどうかを判断することができる。特定の実施例において、このような競合的な抗体は、本明細書に記載の抗体と同じエピトープに結合する。いくつかの例示的な競合実験は、例えば、Harlow and Lane(1988)Antibodies:A Laboratory Manual ch.14(Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.)に記載された一般的な実験を含むが、これに限定されない。抗体が結合するエピトープを解析するための詳細な例示的な方法は、例えば、Morris(1996)“Epitope Mapping Protocols,”in Methods in Molecular Biology vol.66 (Humana Press,Totowa,N.J.)に記載された通りである。いくつかの実施例において、2つの抗体は、それぞれが他方の結合を50%以上ブロックする場合、同じエピトープに結合すると言われている。いくつかの実施例において、本明細書に記載の抗FcRn抗体と競合する抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、またはヒト抗体である。
【0181】
例示的な抗FcRn抗体配列は、表2および表3に示し、CDR番号付けは、KabatのEU番号付けシステムに従う。当業者は、CDRの位置を予測し、且つ抗体の軽鎖可変領域および重鎖可変領域を定義するための、多くの既知のアルゴリズム(Kabat定義方式)が存在することが知っている。本明細書に記載の抗体のCDRs、VH配列および/またはVL配列を含むが、予測アルゴリズムに基づいて以下の表に例示されていない抗体も本発明の範囲内にある。
【0182】
【0183】
【0184】
【0185】
【0186】
【0187】
全長の抗FcRn抗体
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、全長の抗FcRn抗体である。いくつかの実施例において、前記全長の抗FcRn抗体は、IgA、IgD、IgE、IgGまたはIgMである。いくつかの実施例において、前記全長の抗FcRn抗体は、IgG定常ドメイン、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4またはそれらの変異体の定常ドメインを含む。いくつかの実施例において、前記全長の抗FcRn抗体は、λ軽鎖定常領域を含む。いくつかの実施例において、前記全長の抗FcRn抗体は、κ軽鎖定常領域を含む。いくつかの実施例において、前記全長の抗FcRn抗体は、全長のヒト抗FcRn抗体である。いくつかの実施例において、前記全長の抗FcRn抗体は、マウス免疫グロブリンFc配列を含む。いくつかの実施例において、前記全長の抗FcRn抗体は、抗体依存性細胞傷害(ADCC)および補体依存性細胞傷害(CDC)のエフェクター機能が増強されるように、改変された、または他の方法で変更されたFc配列を含む。
【0188】
したがって、例えば、いくつかの実施例において、FcRnに特異的に結合する、IgG1定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供される。いくつかの実施例において、前記IgG1は、ヒトIgG1である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0189】
いくつかの実施例において、FcRnに特異的に結合する、IgG2定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供される。いくつかの実施例において、前記IgG2は、ヒトIgG2である。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0190】
いくつかの実施例において、FcRnに特異的に結合する、IgG3定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供される。いくつかの実施例において、前記IgG3は、ヒトIgG3である。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0191】
いくつかの実施例において、FcRnに特異的に結合する、IgG4定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供される。いくつかの実施例において、前記IgG4は、ヒトIgG4である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0192】
いくつかの実施例において、IgG1定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体は、a)重鎖可変ドメインと、b)軽鎖可変ドメインとを含み、前記重鎖可変ドメインは、SEQ ID NOs:1-6のいずれか1つに示されるアミノ酸配列またはその変異体を含み、前記変異体が多くとも3個(例えば、1、2または3個)のアミノ酸置換を含むものであるHC-CDR1と、SEQ ID NOs:7-14のいずれか1つに示されるアミノ酸配列またはその変異体を含み、前記変異体が多くとも3個(例えば、1、2または3個)のアミノ酸置換を含むものであるHC-CDR2と、SEQ ID NOs:15-22のいずれか1つに示されるアミノ酸配列またはその変異体を含み、前記変異体が多くとも3個(例えば、1、2または3個)のアミノ酸置換を含むものであるHC-CDR3とを含み、前記軽鎖可変ドメインは、SEQ ID NOs:23-28のいずれか1つに示されるアミノ酸配列またはその変異体を含み、前記変異体が多くとも3個(例えば、1、2または3個)のアミノ酸置換を含むものであるLC-CDR1と、SEQ ID NOs:29-33のいずれか1つに示されるアミノ酸配列またはその変異体を含み、前記変異体が多くとも3個(例えば、1、2または3個)のアミノ酸置換を含むものであるLC-CDR2と、SEQ ID NOs:34-40のいずれか1つに示されるアミノ酸配列またはその変異体を含み、前記変異体が多くとも3個(例えば、1、2または3個)のアミノ酸置換を含むものであるLC-CDR3とを含む。いくつかの実施例において、前記IgG1は、ヒトIgG1である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0193】
いくつかの実施例において、IgG2定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体は、a)重鎖可変ドメインと、b)軽鎖可変ドメインとを含み、前記重鎖可変ドメインは、SEQ ID NOs:1-6のいずれか1つに示されるアミノ酸配列またはその変異体を含み、前記変異体が多くとも3個(例えば、1、2または3個)のアミノ酸置換を含むものであるHC-CDR1と、SEQ ID NOs:7-14のいずれか1つに示されるアミノ酸配列またはその変異体を含み、前記変異体が多くとも3個(例えば、1、2または3個)のアミノ酸置換を含むものであるHC-CDR2と、SEQ ID NOs:15-22のいずれか1つに示されるアミノ酸配列またはその変異体を含み、前記変異体が多くとも3個(例えば、1、2または3個)のアミノ酸置換を含むものであるHC-CDR3とを含み、前記軽鎖可変ドメインは、SEQ ID NOs:23-28のいずれか1つに示されるアミノ酸配列またはその変異体を含み、前記変異体が多くとも3個(例えば、1、2または3個)のアミノ酸置換を含むものであるLC-CDR1と、SEQ ID NOs:29-33のいずれか1つに示されるアミノ酸配列またはその変異体を含み、前記変異体が多くとも3個(例えば、1、2または3個)のアミノ酸置換を含むものであるLC-CDR2と、SEQ ID NOs:34-40のいずれか1つに示されるアミノ酸配列またはその変異体を含み、前記変異体が多くとも3個(例えば、1、2または3個)のアミノ酸置換を含むものであるLC-CDR3とを含む。いくつかの実施例において、前記IgG2は、ヒトIgG2である。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0194】
いくつかの実施例において、IgG3定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体は、a)重鎖可変ドメインと、b)軽鎖可変ドメインとを含み、前記重鎖可変ドメインは、SEQ ID NOs:1-6のいずれか1つに示されるアミノ酸配列またはその変異体を含み、前記変異体が多くとも3個(例えば、1、2または3個)のアミノ酸置換を含むものであるHC-CDR1と、SEQ ID NOs:7-14のいずれか1つに示されるアミノ酸配列またはその変異体を含み、前記変異体が多くとも3個(例えば、1、2または3個)のアミノ酸置換を含むものであるHC-CDR2と、SEQ ID NOs:15-22のいずれか1つに示されるアミノ酸配列またはその変異体を含み、前記変異体が多くとも3個(例えば、1、2または3個)のアミノ酸置換を含むものであるHC-CDR3とを含み、前記軽鎖可変ドメインは、SEQ ID NOs:23-28のいずれか1つに示されるアミノ酸配列またはその変異体を含み、前記変異体が多くとも3個(例えば、1、2または3個)のアミノ酸置換を含むものであるLC-CDR1と、SEQ ID NOs:29-33のいずれか1つに示されるアミノ酸配列またはその変異体を含み、前記変異体が多くとも3個(例えば、1、2または3個)のアミノ酸置換を含むものであるLC-CDR2と、SEQ ID NOs:34-40のいずれか1つに示されるアミノ酸配列またはその変異体を含み、前記変異体が多くとも3個(例えば、1、2または3個)のアミノ酸置換を含むものであるLC-CDR3とを含む。いくつかの実施例において、前記IgG3は、ヒトIgG3である。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0195】
いくつかの実施例において、IgG4定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体は、a)重鎖可変ドメインと、b)軽鎖可変ドメインとを含み、前記重鎖可変ドメインは、SEQ ID NOs:1-6のいずれか1つに示されるアミノ酸配列またはその変異体を含み、前記変異体が多くとも3個(例えば、1、2または3個)のアミノ酸置換を含むものであるHC-CDR1と、SEQ ID NOs:7-14のいずれか1つに示されるアミノ酸配列またはその変異体を含み、前記変異体が多くとも3個(例えば、1、2または3個)のアミノ酸置換を含むものであるHC-CDR2と、SEQ ID NOs:15-22のいずれか1つに示されるアミノ酸配列またはその変異体を含み、前記変異体が多くとも3個(例えば、1、2または3個)のアミノ酸置換を含むものであるHC-CDR3とを含み、前記軽鎖可変ドメインは、SEQ ID NOs:23-28のいずれか1つに示されるアミノ酸配列またはその変異体を含み、前記変異体が多くとも3個(例えば、1、2または3個)のアミノ酸置換を含むものであるLC-CDR1と、SEQ ID NOs:29-33のいずれか1つに示されるアミノ酸配列またはその変異体を含み、前記変異体が多くとも3個(例えば、1、2または3個)のアミノ酸置換を含むものであるLC-CDR2と、SEQ ID NOs:34-40のいずれか1つに示されるアミノ酸配列またはその変異体を含み、前記変異体が多くとも3個(例えば、1、2または3個)のアミノ酸置換を含むものであるLC-CDR3とを含む。いくつかの実施例において、前記IgG4は、ヒトIgG4である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0196】
いくつかの実施例において、前記アミノ酸置換は、本発明の表4に示される「例示的な置換」のみに限定される。いくつかの実施例において、アミノ酸置換は、本発明の表4に示される「好ましい置換」のみに限定される。
【0197】
いくつかの実施例において、IgG1定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体は、a)重鎖可変ドメインと、b)軽鎖可変ドメインとを含み、前記重鎖可変ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:1を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:7を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:15を含むHC-CDR3とを含み、前記軽鎖可変ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:23を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:29を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:34を含むLC-CDR3とを含む。いくつかの実施例において、前記IgG1は、ヒトIgG1である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0198】
いくつかの実施例において、IgG1定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体は、a)重鎖可変ドメインと、b)軽鎖可変ドメインとを含み、前記重鎖可変ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:2を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:8を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:16を含むHC-CDR3とを含み、前記軽鎖可変ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:24を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:29を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:35を含むLC-CDR3とを含む。いくつかの実施例において、前記IgG1は、ヒトIgG1である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0199】
いくつかの実施例において、IgG1定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体は、a)重鎖可変ドメインと、b)軽鎖可変ドメインとを含み、前記重鎖可変ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:3を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:9を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:17を含むHC-CDR3とを含み、前記軽鎖可変ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:25を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:30を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:36を含むLC-CDR3とを含む。いくつかの実施例において、前記IgG1は、ヒトIgG1である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0200】
いくつかの実施例において、IgG1定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体は、a)重鎖可変ドメインと、b)軽鎖可変ドメインとを含み、前記重鎖可変ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:4を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:9を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:18を含むHC-CDR3とを含み、前記軽鎖可変ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:26を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:31を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:37を含むLC-CDR3とを含む。いくつかの実施例において、前記IgG1は、ヒトIgG1である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0201】
いくつかの実施例において、IgG1定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体は、a)重鎖可変ドメインと、b)軽鎖可変ドメインとを含み、前記重鎖可変ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:1を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:10を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:19を含むHC-CDR3とを含み、前記軽鎖可変ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:25を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:32を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:38を含むLC-CDR3とを含む。いくつかの実施例において、前記IgG1は、ヒトIgG1である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0202】
いくつかの実施例において、IgG1定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体は、a)重鎖可変ドメインと、b)軽鎖可変ドメインとを含み、前記重鎖可変ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:1を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:11を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:20を含むHC-CDR3とを含み、前記軽鎖可変ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:23を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:29を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:38を含むLC-CDR3とを含む。いくつかの実施例において、前記IgG1は、ヒトIgG1である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0203】
いくつかの実施例において、IgG1定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体は、a)重鎖可変ドメインと、b)軽鎖可変ドメインとを含み、前記重鎖可変ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:5を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:12を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:21を含むHC-CDR3とを含み、前記軽鎖可変ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:27を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:33を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:39を含むLC-CDR3とを含む。いくつかの実施例において、前記IgG1は、ヒトIgG1である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0204】
いくつかの実施例において、IgG1定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体は、a)重鎖可変ドメインと、b)軽鎖可変ドメインとを含み、前記重鎖可変ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:5を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:13を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:21を含むHC-CDR3とを含み、前記軽鎖可変ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:28を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:33を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:40を含むLC-CDR3とを含む。いくつかの実施例において、前記IgG1は、ヒトIgG1である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0205】
いくつかの実施例において、IgG1定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体は、a)重鎖可変ドメインと、b)軽鎖可変ドメインとを含み、前記重鎖可変ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:6を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:14を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:22を含むHC-CDR3とを含み、前記軽鎖可変ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:27を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:33を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:39を含むLC-CDR3とを含む。いくつかの実施例において、前記IgG1は、ヒトIgG1である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0206】
いくつかの実施例において、IgG4定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体は、a)重鎖可変ドメインと、b)軽鎖可変ドメインとを含み、前記重鎖可変ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:1を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:7を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:15を含むHC-CDR3とを含み、前記軽鎖可変ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:23を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:29を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:34を含むLC-CDR3とを含む。いくつかの実施例において、前記IgG4は、ヒトIgG4である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0207】
いくつかの実施例において、IgG4定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体は、a)重鎖可変ドメインと、b)軽鎖可変ドメインとを含み、前記重鎖可変ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:2を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:8を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:16を含むHC-CDR3とを含み、前記軽鎖可変ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:24を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:29を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:35を含むLC-CDR3とを含む。いくつかの実施例において、前記IgG4は、ヒトIgG4である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0208】
いくつかの実施例において、IgG4定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体は、a)重鎖可変ドメインと、b)軽鎖可変ドメインとを含み、前記重鎖可変ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:3を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:9を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:17を含むHC-CDR3とを含み、前記軽鎖可変ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:25を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:30を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:36を含むLC-CDR3とを含む。いくつかの実施例において、前記IgG4は、ヒトIgG4である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0209】
いくつかの実施例において、IgG4定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体は、a)重鎖可変ドメインと、b)軽鎖可変ドメインとを含み、前記重鎖可変ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:4を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:9を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:18を含むHC-CDR3とを含み、前記軽鎖可変ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:26を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:31を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:37を含むLC-CDR3とを含む。いくつかの実施例において、前記IgG4は、ヒトIgG4である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0210】
いくつかの実施例において、IgG4定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体は、a)重鎖可変ドメインと、b)軽鎖可変ドメインとを含み、前記重鎖可変ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:1を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:10を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:19を含むHC-CDR3とを含み、前記軽鎖可変ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:25を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:32を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:38を含むLC-CDR3とを含む。いくつかの実施例において、前記IgG4は、ヒトIgG4である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0211】
いくつかの実施例において、IgG4定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体は、a)重鎖可変ドメインと、b)軽鎖可変ドメインとを含み、前記重鎖可変ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:1を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:11を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:20を含むHC-CDR3とを含み、前記軽鎖可変ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:23を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:29を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:38を含むLC-CDR3とを含む。いくつかの実施例において、前記IgG4は、ヒトIgG4である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0212】
いくつかの実施例において、IgG4定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体は、a)重鎖可変ドメインと、b)軽鎖可変ドメインとを含み、前記重鎖可変ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:5を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:12を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:21を含むHC-CDR3とを含み、前記軽鎖可変ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:27を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:33を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:39を含むLC-CDR3とを含む。いくつかの実施例において、前記IgG4は、ヒトIgG4である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0213】
いくつかの実施例において、IgG4定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体は、a)重鎖可変ドメインと、b)軽鎖可変ドメインとを含み、前記重鎖可変ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:5を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:13を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:21を含むHC-CDR3とを含み、前記軽鎖可変ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:28を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:33を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:40を含むLC-CDR3とを含む。いくつかの実施例において、前記IgG4は、ヒトIgG4である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0214】
いくつかの実施例において、IgG4定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体は、a)重鎖可変ドメインと、b)軽鎖可変ドメインとを含み、前記重鎖可変ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:6を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:14を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:22を含むHC-CDR3とを含み、前記軽鎖可変ドメインは、アミノ酸配列SEQ ID NO:27を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:33を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:39を含むLC-CDR3とを含む。いくつかの実施例において、前記IgG4は、ヒトIgG4である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0215】
いくつかの実施例において、IgG1定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体は、重鎖可変ドメインと、軽鎖可変ドメインとを含み、前記重鎖可変ドメインはSEQ ID NOs:41-51のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NOs:41-51のいずれか1つに示されるアミノ酸配列と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、前記軽鎖可変ドメインはSEQ ID NOs:52-61のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NOs:52-61のいずれか1つに示されるアミノ酸配列と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含む。いくつかの実施例において、前記IgG1は、ヒトIgG1である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0216】
いくつかの実施例において、IgG2定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体は、重鎖可変ドメインと、軽鎖可変ドメインとを含み、前記重鎖可変ドメインはSEQ ID NOs:41-51のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NOs:41-51のいずれか1つに示されるアミノ酸配列と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、前記軽鎖可変ドメインはSEQ ID NOs:52-61のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NOs:52-61のいずれか1つに示されるアミノ酸配列と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含む。いくつかの実施例において、前記IgG2は、ヒトIgG2である。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0217】
いくつかの実施例において、IgG3定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体は、重鎖可変ドメインと、軽鎖可変ドメインとを含み、前記重鎖可変ドメインはSEQ ID NOs:41-51のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NOs:41-51のいずれか1つに示されるアミノ酸配列と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、前記軽鎖可変ドメインはSEQ ID NOs:52-61のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NOs:52-61のいずれか1つに示されるアミノ酸配列と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含む。いくつかの実施例において、前記IgG3は、ヒトIgG3である。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0218】
いくつかの実施例において、IgG4定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体は、重鎖可変ドメインと、軽鎖可変ドメインとを含み、前記重鎖可変ドメインはSEQ ID NOs:41-51のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NOs:41-51のいずれか1つに示されるアミノ酸配列と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、前記軽鎖可変ドメインはSEQ ID NOs:52-61のいずれか1つに示されるアミノ酸配列、またはSEQ ID NOs:52-61のいずれか1つに示されるアミノ酸配列と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含む。いくつかの実施例において、前記IgG4は、ヒトIgG4である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0219】
いくつかの実施例において、IgG1定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体はアミノ酸配列SEQ ID NO:41を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列SEQ ID NO:52を含む軽鎖可変ドメインとを含む。いくつかの実施例において、前記IgG1は、ヒトIgG1である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0220】
いくつかの実施例において、IgG1定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体はアミノ酸配列SEQ ID NO:42を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列SEQ ID NO:53を含む軽鎖可変ドメインとを含む。いくつかの実施例において、前記IgG1は、ヒトIgG1である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0221】
いくつかの実施例において、IgG1定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体はアミノ酸配列SEQ ID NO:43を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列SEQ ID NO:54を含む軽鎖可変ドメインとを含む。いくつかの実施例において、前記IgG1は、ヒトIgG1である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0222】
いくつかの実施例において、IgG1定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体はアミノ酸配列SEQ ID NO:44を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列SEQ ID NO:55を含む軽鎖可変ドメインとを含む。いくつかの実施例において、前記IgG1は、ヒトIgG1である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0223】
いくつかの実施例において、IgG1定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体はアミノ酸配列SEQ ID NO:45を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列SEQ ID NO:56を含む軽鎖可変ドメインとを含む。いくつかの実施例において、前記IgG1は、ヒトIgG1である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0224】
いくつかの実施例において、IgG1定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体はアミノ酸配列SEQ ID NO:46を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列SEQ ID NO:57を含む軽鎖可変ドメインとを含む。いくつかの実施例において、前記IgG1は、ヒトIgG1である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0225】
いくつかの実施例において、IgG1定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体はアミノ酸配列SEQ ID NO:47を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列SEQ ID NO:58を含む軽鎖可変ドメインとを含む。いくつかの実施例において、前記IgG1は、ヒトIgG1である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0226】
いくつかの実施例において、IgG1定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体はアミノ酸配列SEQ ID NO:48を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列SEQ ID NO:59を含む軽鎖可変ドメインとを含む。いくつかの実施例において、前記IgG1は、ヒトIgG1である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0227】
いくつかの実施例において、IgG1定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体はアミノ酸配列SEQ ID NO:49を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列SEQ ID NO:58を含む軽鎖可変ドメインとを含む。いくつかの実施例において、前記IgG1は、ヒトIgG1である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0228】
いくつかの実施例において、IgG1定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体はアミノ酸配列SEQ ID NO:50を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列SEQ ID NO:60を含む軽鎖可変ドメインとを含む。いくつかの実施例において、前記IgG1は、ヒトIgG1である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0229】
いくつかの実施例において、IgG1定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体はアミノ酸配列SEQ ID NO:51を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列SEQ ID NO:61を含む軽鎖可変ドメインとを含む。いくつかの実施例において、前記IgG1は、ヒトIgG1である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0230】
いくつかの実施例において、IgG1定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体はアミノ酸配列SEQ ID NO:50を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列SEQ ID NO:61を含む軽鎖可変ドメインとを含む。いくつかの実施例において、前記IgG1は、ヒトIgG1である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0231】
いくつかの実施例において、IgG4定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体はアミノ酸配列SEQ ID NO:41を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列SEQ ID NO:52を含む軽鎖可変ドメインとを含む。いくつかの実施例において、前記IgG4は、ヒトIgG4である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0232】
いくつかの実施例において、IgG4定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体はアミノ酸配列SEQ ID NO:42を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列SEQ ID NO:53を含む軽鎖可変ドメインとを含む。いくつかの実施例において、前記IgG4は、ヒトIgG4である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0233】
いくつかの実施例において、IgG4定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体はアミノ酸配列SEQ ID NO:43を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列SEQ ID NO:54を含む軽鎖可変ドメインとを含む。いくつかの実施例において、前記IgG4は、ヒトIgG4である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0234】
いくつかの実施例において、IgG4定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体はアミノ酸配列SEQ ID NO:44を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列SEQ ID NO:55を含む軽鎖可変ドメインとを含む。いくつかの実施例において、前記IgG4は、ヒトIgG4である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0235】
いくつかの実施例において、IgG4定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体はアミノ酸配列SEQ ID NO:45を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列SEQ ID NO:56を含む軽鎖可変ドメインとを含む。いくつかの実施例において、前記IgG4は、ヒトIgG4である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0236】
いくつかの実施例において、IgG4定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体はアミノ酸配列SEQ ID NO:46を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列SEQ ID NO:57を含む軽鎖可変ドメインとを含む。いくつかの実施例において、前記IgG4は、ヒトIgG4である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0237】
いくつかの実施例において、IgG4定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体はアミノ酸配列SEQ ID NO:47を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列SEQ ID NO:58を含む軽鎖可変ドメインとを含む。いくつかの実施例において、前記IgG4は、ヒトIgG4である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0238】
いくつかの実施例において、IgG4定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体はアミノ酸配列SEQ ID NO:48を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列SEQ ID NO:59を含む軽鎖可変ドメインとを含む。いくつかの実施例において、前記IgG4は、ヒトIgG4である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0239】
いくつかの実施例において、IgG4定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体はアミノ酸配列SEQ ID NO:49を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列SEQ ID NO:58を含む軽鎖可変ドメインとを含む。いくつかの実施例において、前記IgG4は、ヒトIgG4である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0240】
いくつかの実施例において、IgG4定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体はアミノ酸配列SEQ ID NO:50を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列SEQ ID NO:60を含む軽鎖可変ドメインとを含む。いくつかの実施例において、前記IgG4は、ヒトIgG4である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0241】
いくつかの実施例において、IgG4定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体はアミノ酸配列SEQ ID NO:51を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列SEQ ID NO:61を含む軽鎖可変ドメインとを含む。いくつかの実施例において、前記IgG4は、ヒトIgG4である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0242】
いくつかの実施例において、IgG4定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体が提供され、ここで、前記抗FcRn抗体はアミノ酸配列SEQ ID NO:50を含む重鎖可変ドメインと、アミノ酸配列SEQ ID NO:61を含む軽鎖可変ドメインとを含む。いくつかの実施例において、前記IgG4は、ヒトIgG4である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなり、および、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0243】
結合親和性
結合親和性は、Kd、Koff、Kon、またはKaで表すことができる。本明細書で使用される「Koff」との用語は、設定された速度論的選択から決定される、抗体/抗原複合体からの抗体の解離速度定数を指すことが意図される。本明細書で使用される「Kon」との用語は、抗体が抗原に結合して抗体/抗原複合体を形成する場合の結合速度定数である。本明細書で使用される解離定数「Kd」との用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離定数を指し、抗体分子溶液において、抗原がすべての抗体結合部位の半分を占め、かつ平衡状態に達するときに必要な抗原濃度を表し、Koff/Konに等しい。Kdの測定は、全ての結合分子が溶液にあることを前提として行う。抗体が細胞壁と連結する場合、例えば酵母発現系では、対応する解離速度定数は、EC50で表し、Kdの適切な近似値である。親和定数Kaは、解離定数Kdの逆数である。
【0244】
解離定数(Kd)は、抗体部分と抗原との親和性を示す指標として使用される。例えば、各種標識試薬で標識した抗体を使用したScatchard法や、Biacore(Amersham Biosciences社製)を用いた表面プラズモン共鳴による生体分子相互作用分析を、取扱説明書や付属の試薬キットに従って行うことにより、容易に分析することができる。これらの方法で得られたKd値は、Mを単位として表される。標的と特異的に結合する抗体のKd値は、例えば、≦10-7M、≦10-8M、≦10-9M、≦10-10M、≦10-11M、≦10-12Mまたは≦10-13Mでありうる。
【0245】
抗体の結合特異性は、本分野での既知の方法によって測定することができる。これらの方法は、Western blots、ELISA-、RIA-、ECL-、IRMA-、EIA-、BIAcoreテストおよびペプチドスキャンなどを含むが、これらに限定されない。
【0246】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、FcRn標的と特異的に結合し、そのKd値は、10-7M~10-13M(例えば10-7M~10-13M、10-8M~10-13M、10-9M~10-13Mまたは10-10M~10-12M)である。そのため、いくつかの実施例において、抗FcRn抗体とFcRnとの間の結合のKd値は、10-7M~10-13M、1×10-7M~5×10-13M、10-7M~10-12M、10-7M~10-11M、10-7M~10-10M、10-7M~10-9M、10-8M~10-13M、1×10-8M~5×10-13M、10-8M~10-12M、10-8M~10-11M、10-8M~10-10M、10-8M~10-9M、5×10-9M~1×10-13M、5×10-9M~1×10-12M、5×10-9M~1×10-11M、5×10-9M~1×10-10M、10-9M~10-13M、10-9M~10-12M、10-9M~10-11M、10-9M~10-10M、5×10-10M~1×10-13M、5×10-10M~1×10-12M、5×10-10M~1×10-11M、10-10M~10-13M、1×10-10M~5×10-13M、1×10-10M~1×10-12M、1×10-10M~5×10-12M、1×10-10M~1×10-11M、10-11M~10-13M、1×10-11M~5×10-13M、10-11M~10-12M、10-12M~10-13Mである。いくつかの実施例において、抗FcRn抗体とFcRnとの間の結合のKd値は、10-7M~10-13Mである。
【0247】
いくつかの実施例において、抗FcRn抗体と非標的との間の結合のKd値は、抗FcRn抗体と標的との間のKd値より高く、かつ本明細書に引用のいくつかの実施例において、抗FcRn抗体と標的(例えば、FcRn)との間の結合親和性は、抗FcRn抗体と非標的との間の結合親和性より高い。いくつかの実施形態において、非標的とは、非FcRn抗原を指す。いくつかの実施例において、抗FcRn抗体(FcRnに対して)と非FcRn標的との間の結合のKd値は少なくとも10倍、例えば、10-100倍、100-1000倍、103-104倍、104-105倍、105-106倍、106-107倍、107-108倍、108-109倍、109-1010倍、1010-1011倍、1011-1012倍であり得る。
【0248】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体と非標的との間の結合のKd値は、10-1M~10-6M(例えば、10-1M~10-6M、10-1M~10-5M、10-2M~10-4M)である。いくつかの実施例において、前記非標的は、非FcRn抗原を指す。したがって、いくつかの実施例において、抗FcRn抗体と非FcRn標的との間の結合のKd値は、10-1M~10-6M、1×10-1M~5×10-6M、10-1M~10-5M、1×10-1M~5×10-5M、10-1M~10-4M、1×10-1M~5×10-4M、10-1M~10-3M、1×10-1M~5×10-3M、10-1M~10-2M、10-2M~10-6M、1×10-2M~5×10-6M、10-2M~10-5M、1×10-2M~5×10-5M、10-2M~10-4M、1×10-2M~5×10-4M、10-2M~10-3M、10-3M~10-6M、1×10-3M~5×10-6M、10-3M~10-5M、1×10-3M~5×10-5M、10-3M~10-4M、10-4M~10-6M、1×10-4M~5×10-6M、10-4M~10-5M、10-5M~10-6Mである。
【0249】
いくつかの実施例において、抗FcRn抗体が、高い結合親和性でFcRn標的を特異的に認識し、低い結合親和性で非標的に結合すると言及される場合、前記抗FcRn抗体とFcRn標的との結合のKd値は、10-7M~10-13M(例えば、10-7M~10-13M、10-8M~10-13M、10-9M~10-13M、10-10M~10-12M)、かつ、前記抗FcRn抗体と非標的との結合のKd値は10-1M~10-6M(例えば、10-1M~10-6M、10-1M~10-5M、10-2M~10-4M)である。
【0250】
核酸
抗FcRn抗体をコードする核酸分子も含まれる。いくつかの実施例において、本明細書に記載の全長の抗FcRn抗体のいずれか1つを含む、全長の抗FcRn抗体をコードする核酸(または核酸のセット)が提供される。いくつかの実施例において、本明細書に記載の抗FcRn抗体をコードする核酸(または核酸のセット)は、ペプチドタグ(例えばタンパク質精製タグ、Hisタグ、HAタグ)をコードする核酸配列をさらに含み得る。
【0251】
本明細書では、抗FcRn抗体を含む単離された宿主細胞、抗FcRn抗体のポリペプチド成分をコードする単離された核酸、または本明細書に記載の抗FcRn抗体のポリペプチド成分をコードする核酸を含むベクターも含まれる。
【0252】
本発明は、これらの核酸配列の変異体をさらに含む。例えば、変異体は、少なくとも中程度のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、本発明の抗FcRn抗体をコードする核酸配列とハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む。
【0253】
また、本発明は、本発明の核酸が挿入されたベクターが提供される。
【0254】
簡単に言えば、例えば、プロモーター(例えば、リンパ球特異的プロモーター)および3’非翻訳領域(UTR)を含む5’および3’末端調節エレメントに作動可能に連結されるように、抗FcRn抗体をコードする天然または合成核酸を適切な発現ベクターに挿入することによって、抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)の発現が達せされ得る。前記ベクターは、真核宿主細胞における複製と組み込みに好適であり得る。典型的なクローニングおよび発現ベクターは、目的の核酸配列の発現を調節するために有用な転写および翻訳ターミネーター、開始配列、およびプロモーターを含む。
【0255】
本発明に記載の核酸は、標準的な遺伝子送達プロトコルを使用することにより、核酸免疫化および遺伝子治療に使用することもできる。遺伝子送達の方法は、本分野で既知である。例えば、U.S.Pat.Nos.5,399,346、5,580,859、5,589,466を参照し、その全体の内容を引用することにより本明細書に組み込まれる。いくつかの実施例において、本発明は、遺伝子治療ベクターをさらに提供する。
【0256】
核酸は、様々な種類のベクターにクローニングし得る。例えば、核酸は、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルスおよびコスミドを含むベクターにクローニングしうるが、これらに限定されない。特に対象となるベクターは、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクターおよび配列決定ベクターを含む。
【0257】
また、発現ベクターは、ウイルスベクターの形態で細胞に供することができる。ウイルスベクター技術は、本分野で周知であり、例えば、Green and Sambrook (2013,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York)、および他のウイルス学または分子生物学のハンドブックに記載されている。ベクターとして用いられるウイルスは、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルスおよびレンチウイルスを含むが、これらに限定されない。通常、適切なベクターは、少なくとも一種の生物で機能する複製起点、プロモーター配列、便利な制限エンドヌクレアーゼ部位、および1つ以上の選択マーカーを含む(例えば、WO 01/96584;WO 01/29058;およびU.S.Pat.No.6,326,193参照)。
【0258】
哺乳類動物細胞への遺伝子導入のための多くのウイルスに基づくシステムが既に開発されてきた。例えば、レトロウイルスは、遺伝子送達システムに便利なプラットフォームを提供する。選択された遺伝子は、本分野で既知の技術を利用してベクターに挿入され、レトロウイルス粒子に包装される。次いで、組換えウイルスを単離し、イン・ビトロまたはイン・ビボで受験者の細胞へ送達する。多くのレトロウイルスシステムが本分野において既知である。いくつかの実施例において、アデノウイルスベクターを使用する。多くのアデノウイルスベクターが本分野において既知である。いくつかの実施例において、レンチウイルスベクターを使用する。レンチウイルスなどのレトロウイルスから誘導されたベクターは、導入された遺伝子が長期で安定的に整合およびサブセルにおける繁殖を可能にするため、長期的な遺伝子導入を達成するための適切な手段である。レンチウイルスベクターは、非分裂細胞例えば肝細胞を形質導入することができるため、マウス白血病ウイルスなどの腫瘍から誘導されたレトロウイルスよりもさらなる利点を有する。それとともに、レンチウイルスベクターは、低免疫原性とのさらなる利点もある。
【0259】
エンハンサーなどの他のプロモーターエレメントは、転写初期頻度を調節する。通常、プロモーターは、開始部位の30-110bp上流の領域に位置するが、最近、多くのプロモーターは、開始部位が下流に位置する機能要素も含むことが見出されている。プロモーター要素間の間隔は、通常、フレキシブルであるため、要素同士の位置交換または移動する時に、プロモーターの機能が維持される。チミジンキナーゼ(tk)プロモーターでは、プロモーターエレメント要素間の間隔は、活性の低下が始まる前に、50bpまで増加させることができる。
【0260】
適切なプロモーターの一例は、前初期サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター配列である。このプロモーター配列は、それに作動可能に連結された任意のポリヌクレオチド配列の高レベルの発現を駆動することができる、強力な構成的プロモーター配列である。適切なプロモーターの他の例は、伸長成長因子1α(EF-1α)プロモーターである。しかしながら、他の構成的プロモーターも使用しても良く、それは、シミアンウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳腺腫瘍ウイルス(MMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)ロングターミナルリピート(LTR)プロモーター、MoMuLVプロモーター、家禽白血病ウイルスプロモーター、Epstein-Barrウイルス前初期プロモーター、ルース肉腫ウイルスプロモーター、およびヒト遺伝子プロモーターを含むが、これらに限定されなく、当該ヒト遺伝子プロモーターは、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘモグロビンプロモーターおよびクレアチンキナーゼプロモーターを含むが、これらに限定されない。また、本発明を、構成的プロモーターの使用に限定されるべきではない。誘導性プロモーターも本発明の一部として考えられる。誘導性プロモーターを使用することにより、発現が望まれる場合、作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列の発現をオンにし、発現が望まれない場合、発現をオフにすることができる分子スイッチが提供される。誘導性プロモーターは、メタロチオネインプロモーター、糖質コルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーターおよびテトラサイクリンプロモーターを含むが、これらに限定されない。
【0261】
いくつかの実施例において、抗FcRn抗体の発現は、誘導可能である。いくつかの実施例において、抗FcRn抗体をコードする核酸配列は、本明細書に記載の任意の誘導性プロモーターを含む誘導性プロモーターに作動可能に連結される。
【0262】
誘導性プロモーター
誘導性プロモーターを使用することにより、発現が望まれる場合、作動可能に連結されたポリヌクレオチド配列の発現をオンにし、発現が望まれない場合、発現をオフにすることができる分子スイッチが提供される。真核細胞に適用する例示的な誘導性プロモーターは、ホルモン調節エレメント(例えば、Mader,S.and White,J.H.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5603-5607を参照)、合成リガンド調節エレメント((Spencer,D.M.et al(1993)Science 262:1019-1024を参照)および電離放射線調節エレメント(Manome,Y.et al.(1993)Biochemistry 32:10607-10613;Datta,R.et al.(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:1014-10153を参照)を含むが、これらに限定されない。イン・ビボまたはイン・ビトロ哺乳類動物システムに適用する他の例示的な誘導性プロモーターは、Gingrich et al.(1998)Annual Rev.Neurosci 21:377-405を参照する。いくつかの実施例において、抗FcRn抗体を発現するための誘導性プロモーターシステムは、Tetシステムである。いくつかの実施例において、抗FcRn抗体を発現するための誘導性プロモーターシステムは、大腸菌由来のlacリプレッサーシステムである。
【0263】
本発明に使用の例示的な誘導性プロモーターシステムは、Tetシステムである。当該システムは、Gossenなど(1993)によって説明されたものである。例示的な一例において、目的のポリヌクレオチドは、1つ以上のTetオペロン(TetO)部位を含むプロモーターによって制御される。非活性化状態では、Tetリプレッサー(TetR)がTetO部位に結合し、プロモーターの転写を阻害する。活性化状態では、例えば、テトラサイクリン(Tc)、無水テトラサイクリン、ドキシサイクリン(Dox)またはその活性類似体などの誘導剤の存在下で、誘導剤は、TetOからのTetRの放出を引き起こし、それによって、転写を可能にする。ドキシサイクリンはテトラサイクリン抗生物質ファミリーのメンバーの1つであり、その化学名は1-ジメチルアミノ-2,4a,5,7,12-ペンタヒドロキシ-11-メチル-4,6-ジオキシ-1,4a,11,11a,12,12a-ヘキサヒドロテトラエン-3-カルボキサミドである。
【0264】
1つの実施例において、TetRは、例えば、マウスまたはヒト細胞などの哺乳類動物細胞での発現に適用するためにコドン最適化されている。ほとんどのアミノ酸は、遺伝暗号の縮重のために複数のコドンによってコードされており、これによって、所与の核酸の配列が多くの変異体を有するが、核酸によってコードされるアミノ酸配列は何ら変更されていない。しかしながら、多くの生物体では、コドンを使用する点で異なりがあり、これは「コドンバイアス」(即ち、特定のアミノ酸に対する特定のコドンの使用に対するバイアス)とも呼ばれる。コドンバイアスは、通常、特定のコドンのtRNAの優勢な種の存在と相関することが多く、これによりmRNA翻訳の効率が向上する。従って、特定の生物(例えば、原核生物)に由来するコード配列は、コドン最適化を通じて、異なる生物(例えば、真核生物)における改善された発現のために調整され得る。
【0265】
Tetシステムの他の具体的なバリエーションには、以下の「Tet-Off」および「Tet-On」システムが含まれる。Tet-Offシステムにおいて、転写はTcまたはDoxの存在下で、非活性化である。そのシステムでは、単純ヘルペスウイルス由来のVP16の強力なトランス活性化ドメインに融合したTetRで構成されるテトラサイクリン制御トランス活性化タンパク質(tTA)は、テトラサイクリン応答性プロモーターエレメント(TRE)の転写制御下に標的核酸の発現を調節する。TREは、プロモーター(通常、ヒトサイトメガロウイルスの前初期プロモーターに由来する最小のプロモーター配列)に融合したTetO配列コンカテマーで構成される。TcまたはDoxが存在しない場合、tTAはTREに結合し、標的遺伝子の転写を活性化する。TcまたはDoxが存在する場合、tTAはTREに結合できず、標的遺伝子が発現できない。
【0266】
逆に、Tet-Onシステムにおいて、転写は、TcまたはDoxの存在下で活性化される状態になる。Tet-Onシステムは、逆テトラサイクリン調節トランス活性化因子rtTAに基づいている。tTAと同様に、rtTAは、TetRリプレッサーとVP16トランス活性化ドメインで構成された融合タンパク質である。しかしながら、TetRのDNA結合領域における4個のアミノ酸の変化により、rtTAの結合特性を変えて、そのrtTAは、Doxが存在する場合、ターゲット導入遺伝子TRE内のtetO配列のみを認識できる。したがって、Tet-Onシステムでは、TREによって調節される標的遺伝子の転写は、Doxの存在のみでrtTAによって活性化することができる。
【0267】
別の誘導性プロモーターシステムは、大腸菌由来のlacリプレッサーシステムである(Brown et al.,Cell 49:603-612(1987)を参照)。Lacリプレッサーシステムは、lacオペロン(lacO)を含むプロモーターに作動可能に連結された目的のポリヌクレオチドの転写を調節することによって機能する。Lacリプレッサー(lacR)はLacOに結合し、それによって目的のポリヌクレオチドの転写を防ぐ。目的のポリヌクレオチドの発現は、適切な誘導剤、例えば、イソプロピル-β-Dチオガラクトピラノシド(IPTG)によって誘導される。
【0268】
ポリペプチドまたはその一部の発現を評価するために、細胞に導入しようとする発現ベクターは、ウイルスベクターによってトランスフェクトまたは感染した細胞集団からの発現細胞の同定および選択を容易にするために、選択マーカー遺伝子またはレポーター遺伝子、或いはその両方をさらに含み得る。他の一方では、選択マーカーは、単独のDNAフラグメント上に運ばれ、そしてコトランスフェクション実験において使用され得る。選択マーカー遺伝子またはレポーター遺伝子のいずれも、宿主細胞で発現できるように、適切な調節配列に隣接することができる。有用な選択マーカーは、例えば、neoおよび類似の遺伝子のような抗生物質耐性遺伝子を含む。
【0269】
レポーター遺伝子は、潜在的にトランスフェクトされた細胞の同定、および調節配列の機能評価に用いられる。通常、レポーター遺伝子は、受容体の生物体または組織に存在しないか、または受容体の生物体または組織が発現しない遺伝子であり、そして、レポーター遺伝子は、例えば、酵素活性のような検出しやすい特性を発現するポリペプチドをコードする。レポーター遺伝子の発現は、DNAが受容体細胞に導入された後の適切な時期に検出される。適切なレポーター遺伝子は、ルシフェラーゼ、β-ガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌型アルカリホスファターゼ、または緑色蛍光タンパク質をコードする遺伝子を含みうる(例えば、Ui-Tel et al.,2000 FEBS Letters 479:79-82)。適切な発現システムは公知であり、既知の技術によって調製するか、または商業的に入手することができる。通常、レポーター遺伝子の最高の発現レベルを示す最小の5’フランキング領域を持つ構築体は、プロモーターとして同定される。このようなプロモーター領域は、レポーター遺伝子に連結され、プロモーター駆動性転写を調節するいくつの物質の能力を評価するために使用できる。
【0270】
いくつかの実施例において、本明細書に記載の全長の抗FcRn抗体のいずれか1つをコードする核酸を提供する。いくつかの実施例において、前記核酸は、全長の抗FcRn抗体の重鎖および軽鎖をコードする1つ以上の核酸配列を含む。いくつかの実施例において、前記1つ以上の核酸配列の各核酸配列は単独のベクターに含まれる。いくつかの実施例において、少なくともいくつかの核酸配列は同じベクターに含まれる。いくつかの実施例において、全ての核酸配列は同じベクターに含まれる。ベクターは、例えば、哺乳類動物発現ベクターおよびウイルスベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルスおよびレンチウイルスに由来するベクター)から選択されることができる。
【0271】
遺伝子を細胞に導入し、それらを発現させる方法は、本分野では、既知である。発現ベクターの文脈において、ベクターは、本分野の任意の方法によって、哺乳類動物細胞、細菌、酵母、または昆虫細胞などの宿主細胞に容易に導入することができる。例えば、発現ベクターは、物理的、化学的または生物学的方法によって宿主細胞に導入することができる。
【0272】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する物理的方法には、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、遺伝子衝撃、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどが含まれる。ベクターおよび/または外因性核酸を含む細胞を調製する方法は、本分野で周知である。例えば、Green and Sambrook(2013,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York)を参照する。いくつかの実施形態において、宿主細胞へのポリヌクレオチドの導入は、リン酸カルシウムトランスフェクションによって行われる。
【0273】
目的のポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する生物学的方法として、DNAやRNAベクターを用いる方法が挙げられる。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、ヒト細胞などの哺乳類動物細胞に遺伝子を挿入するために最も広く使用されている方法になる。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルス1型、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルスに由来しうる。例えば、U.S.Pat.Nos.5,350,674および5,585,362を参照する。
【0274】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための化学的方法には、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、磁気ビーズなどのコロイド分散システム、および、水中油型エマルジョン、ミセル、混合ゲルクラスターとリポソームを含む脂質をベースとするシステムが含まれる。イン・ビボおよびイン・ビトロで送達ベクターとして使用される例示的なコロイドシステムは、リポソーム(例えば、人工膜小胞)である。
【0275】
非ウイルス送達システムを使用する場合、例示的な送達ベクターはリポソームである。脂質製剤を使用して核酸を宿主細胞に導入すること(イン・ビトロ、エクス・ビボ、またはイン・ビボ)が考えられる。他の一方では、前記核酸は、脂質に結合することができる。脂質に結合された核酸は、リポソームの水性内部に包まれ、リポソームの脂質二重層に分散され、リポソームおよびオリゴヌクレオチドに結合する連結分子を介してリポソームに接続され、リポソームに埋め込まれ、リポソームと複合体を形成し、脂質を含む溶液に分散して、脂質と混合し、脂質に結合し、脂質に懸濁し、ミセルに含まれるかまたはミセルと混合し、或いは他の方法で脂質に結合し得る。脂質、脂質/DNAまたは脂質/発現ベクターに関連する組成物は、溶液中で特定の構造に限定されない。例えば、それらは、二重層構造、ミセル、または「崩壊した」構造で存在し得る。それらは、単純に溶液中に分散させることもでき、不均一なサイズまたは形状の凝集体を形成する可能性がある。脂質は、脂肪物質であり、天然存在または合成された脂質でありうる。例えば、脂質は、細胞質に自然に存在する脂肪滴と、脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、アルデヒドなどの、長鎖脂肪族炭化水素およびその誘導体を含む一種類の化合物とを含有する。
【0276】
外因性核酸を宿主細胞に導入するための方法であれ、または細胞を他の方法で本発明の阻害剤に曝露するための方法であれ、組換えDNA配列が宿主細胞に存在することを確認するために、様々な実験を行うことができる。このような実験は、例えば、当業者に周知の「分子生物学」実験を含む。例えば、SouthernおよびNorthern blotting、RT-PCRおよびPCR;「生化学」実験、例えば、ある特定のポリペプチドの存在または不在による検出、免疫学的方法(ELISAおよびWestern blots)または本明細書に記載の実験による同定は、全て本発明の範囲に含まれる。
【0277】
抗FcRn抗体の調製
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、モノクローナル抗体であるか、またはモノクローナル抗体に由来するものである。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、モノクローナル抗体由来のVHおよびVL、またはその変異体を含む。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、さらに、モノクローナル抗体由来のCH1およびCLドメイン、またはその変異体を含む。モノクローナル抗体は、例えば、ハイブリドーマ法、ファージディスプレイ法、または組換えDNA法を使用する方法などの本分野で既知の方法を使用して調製することができる。また、例示的なファージディスプレイ法は、本明細書および以下の実施例において説明されている。
【0278】
ハイブリドーマ法では、通常、ハムスター、マウス、または他の適切な宿主動物を免疫剤で免疫して、免疫剤と特異的に結合する抗体を産生するか、または産生できるリンパ球を誘発する。また、イン・ビトロでリンパ球を免疫化することができる。免疫剤は、目的のタンパク質のポリペプチドまたは融合タンパク質を含み得る。通常、ヒト由来細胞が必要である場合、末梢血リンパ球(PBL)が適用され、非ヒト哺乳類動物由来細胞が必要である場合、脾臓細胞またはリンパ節細胞が適用される。リンパ球は、適切な融合剤、例えば、ポリエチレングリコールを使用して不死化細胞株と融合され、ハイブリドーマ細胞を形成する。不死化細胞株は通常、形質転換された哺乳類動物細胞であり、特にげっ歯類、ウシ科、およびヒトの骨髄腫細胞である。通常、ラットまたはマウスの骨髄腫細胞株が適用される。ハイブリドーマ細胞は、適切な培地で培養することができ、前記培養基には、未融合の不死化細胞の増殖または生存を阻害する一種以上の物質が含まれることが好ましい。例えば、親細胞には、ヒポキサンチン-グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT「または」HPRT)を欠いている場合、ハイブリドーマ細胞培養培地には通常、ヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジン(HAT培地)が含まれ、当該培養培地は、HGPRT欠損細胞の増殖を防ぐことができる。
【0279】
いくつかの実施形態において、不死化細胞株は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞によって抗体の安定で高レベルの発現をサポートし、そしてこの細胞株は、いくつの培地、例えば、HAT培地に感受性がある。いくつかの実施例において、不死化細胞株は、マウス骨髄腫細胞株であり、例えば、当該マウス骨髄腫細胞株は、カリフォルニア州サンディエゴのソーク細胞コレクションおよびバージニア州マナッサスのアメリカンタイプカルチャーコレクションから得られる。また、ヒト骨髄腫およびマウス-ヒトハイブリッド骨髄腫細胞株の、ヒトモノクローナル抗体の調製のための使用についても説明されている。
【0280】
そして、ハイブリドーマ細胞を培養する培地中にポリペプチドに対するモノクローナル抗体が存在するかどうかを測定することができる。ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、放射性免疫沈降分析法(RIA)または酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)のような免疫沈降法またはイン・ビトロ結合実験によって決定することができる。このような技術または分析方法は本分野で既知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Munson and Pollard,Anal.Biochem.,107:220(1980)に記載されたScatchard 解析によって決定することができる。
【0281】
所望のハイブリドーマ細胞が同定された後、標的クローンを限界希釈法によってサブクローン化し、標準的な方法によって培養することができる。この目的に基づく適切な培地は、例えば、改良されたEagle培地(DMEM)およびRPMI-1640を含む。または、ハイブリドーマ細胞は、哺乳類動物の体内で腹水の形で増殖することができる。
【0282】
サブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体は、例えば、プロテインA-セファロース、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析またはアフィニティークロマトグラフィーのような従来の免疫グロブリン精製法によって、培地または腹水から分離または精製することができる。
【0283】
いくつかの実施例において、本明細書に記載の抗FcRn抗体のいずれか1つによれば、前記抗FcRn抗体は、抗体ライブラリー(例えば、scFvまたはFabフラグメントを提示するファージライブラリー)から選択されるクローン化配列を含む。前記クローンは、コンビナトリアルライブラリー中の所望の活性を有する抗体フラグメントをスクリーニングすることによって同定することができる。例えば、本分野において、ファージディスプレイライブラリーを生成し、これらのライブラリーをスクリーニングして、所望の結合特性を有する抗体を得るための様々な方法が知られている。このような方法は、例えば、Hoogenboom et al.,Methods in Molecular Biology 178:1-37(O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,N.J.,2001)において説明されている。そして、更に例えば、McCafferty et al.,Nature 348:552-554;Clackson et al.,Nature 352:624-628(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.222:581-597(1992);Marks and Bradbury,Methods in Molecular Biology 248:161-175(Lo,ed.,Human Press,Totowa,N.J.,2003);Sidhu et al.,J.Mol.Biol.338(2):299-310(2004);Lee et al.,J.Mol.Biol.340(5):1073-1093(2004);Fellouse,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 101(34):12467-12472(2004);and Lee et al.,J.Immunol.Methods 284(1-2):119-132(2004)において説明されている。
【0284】
特定のファージディスプレイ法では、VHおよびVL遺伝子の全ての構成成分をそれぞれポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によりクローンし、ファージライブラリーでランダムに再結合されてから、抗原に結合できるファージをスクリーニングされる。これは、例えば、Winter et al.,Ann.Rev.Immunol.,12:433-455(1994)に記載されている。ファージは、通常scFvフラグメントまたはFabフラグメントとして抗体フラグメントをディスプレイする。免疫由来のライブラリーファージは、ハイブリドーマ細胞を構築する必要なしに、免疫原に対する高親和性抗体を提供する。或いは、ナイーブレパートリー(例えば、ヒト由来)をクローンして、何の免疫化せずに複数の非自己抗原および自己抗原に対する抗体の単一の供給源を提供することができる。これは、例えば、Griffiths et al.,EMBO J,12:725-734(1993)に記載されている。最後に、ナイーブライブラリーは、さらに、幹細胞からの再配列されていないV-geneフラグメントをクローニングし、ランダム配列を含むPCRプライマーを使用してCDR3高度可変領域をコードし、イン・ビトロで再配列する方法で調製しうる。これは、例えば、Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381-388(1992)に記載されている。ヒト抗体ファージライブラリーを説明した特許刊行物は、例えば、U.S.Pat.No.5,750,373、およびUS Patent Publication Nos.2005/0079574、2005/0119455、2005/0266000、2007/0117126、2007/0160598、2007/0237764、2007/0292936および2009/0002360を含む。
【0285】
前記抗FcRn抗体は、ファージディスプレイを適用して、ライブラリーにおける標的FcRnと特異的に結合できる抗FcRn抗体の部分をスクリーニングして調製することができる。当該ライブラリーは、ヒトscFvファージディスプレイライブラリーであり得、少なくとも1×109(例えば、少なくとも1×109、2.5×109、5×109、7.5×109、1×1010、2.5×1010、5×1010、7.5×1010または1×1011)種の多様性を有する特定のヒト抗体フラグメントである。いくつかの実施例において、前記ライブラリーは、健康な受験者のヒトPMBCsおよび脾臓から抽出されたDNAで構築されたヒト天然ライブラリーであり、全てのヒト重鎖および軽鎖サブファミリーを含む。いくつかの実施例において、前記ライブラリーは、様々な疾患の患者、例えば、自己免疫性疾患の患者、がんの患者、および感染性疾患の患者から単離されたPMBCsから抽出されたDNAで構築されたヒト天然ライブラリーである。いくつかの実施例において、前記ライブラリーは、半合成のヒトライブラリーであり、ここで、重鎖CDR3が完全にランダムであり、全てのアミノ酸(システインを除く)が同じ確率で任意の所定の位置に存在する(例えば、Hoet,R.M.et al.,Nat.Biotechnol.23(3):344-348,2005を参照)。いくつかの実施例において、半合成のヒトライブラリーの重鎖CDR3の長さは、5から24個(例えば、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23または24)のアミノ酸の長さである。いくつかの実施例において、前記ライブラリーは、全合成のファージディスプレイライブラリーである。いくつかの実施例において、前記ライブラリーは、非ヒトファージディスプレイライブラリーである。
【0286】
標的FcRnに対して高い親和性を有するファージクローンは、標的FcRnへのファージの反復結合によってスクリーニングすることができ、前記標的FcRnは、固体支持体(例えば、溶液パニング(Panning)に用いるビーズまたは細胞パニングに用いる哺乳類動物細胞)に結合し、そして結合されていないファージを除去し、特異的に結合されたファージを溶出する。続いて、結合されたファージクローンを溶出し、適切な宿主細胞、例えばE.coli XL1-Blueに対する感染に用いられ、発現および精製をする。特異的にFcRnに結合するファージクローンを濃縮するように、溶液パンニング、細胞パンニング、または両方の組み合わせなどの複数ラウンドのパンニング(例えば、2、3、4、5、6またはそれ以上の任意のラウンド)を行っても良い。濃縮されたファージクローンの、標的FcRnへの特異的結合は、例えば、ELISAおよびFACSを含む、本分野で既知の任意の方法によって検出することができる。
【0287】
抗体ライブラリーをスクリーニングするための別の方法は、酵母細胞の表面にタンパク質をディスプレイすることである。Wittrupなど(US Patent Nos.6,699,658および6,696,251)は、酵母細胞ディスプレイライブラリーのための方法を開発した。前記酵母ディスプレイシステムでは、酵母凝集素タンパク質(Aga1)に関連する成分が酵母細胞壁上に固定化される。凝集素タンパク質Aga2の2番目のサブユニットに関連するもう1つの成分は、ジスルフィド結合を介してAga1タンパク質に結合することによって、酵母細胞の表面上にディスプレイされ得る。Aga1タンパク質は、Aga1遺伝子の組み込み後に、酵母染色体から発現される。一本鎖可変フラグメント(scFv)のライブラリーを酵母ディスプレイプラスミド中のAga2配列と遺伝的に融合させ、形質転換されたAga2配列を栄養マーカーによって酵母中にエピソームとして保持させる。Aga1タンパク質とAga2タンパク質との両方がガラクトース誘導性プロモーターの制御下で発現する。
【0288】
ヒト抗体V遺伝子レパートリー(VHおよびVKフラグメント)は、縮重プライマーのプールを使用したPCR法によって得られる(Sblattero,D.&Bradbury,A.Immunotechnology3,271-278 1998)。PCRテンプレートは、PBMC、脾臓、リンパ節、骨髄、および扁桃腺を含む市販のRNAsまたはcDNAに由来する。独立したVHおよびVK PCRライブラリーを組み合わせ、次いで、オーバーラップエクステンションPCRによってscFv形式で組み立てる(Sheets,M.D.et al.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95,6157-6162 1998)。酵母scFvディスプレイライブラリーを構築するために、得られたscFv PCR産物は、相同組換えによって酵母内の酵母ディスプレイプラスミドにクローニングされる。(Chao,G,et al,Nat Protoc.2006;1(2):755-68.Miller KD,et al.Current Protocols in Cytometry 4.7.1-4.7.30,2008)。
【0289】
抗FcRn抗体は、U.S.Patent No7,732,195B2に記載されているように、抗体部分が細胞表面上にディスプレイされ、標的FcRnに特異的なものが抗原誘導スクリーニング法によって単離される哺乳動物細胞ディスプレイシステムを使用して発見することができる。ヒトIgG抗体遺伝子の大規模なセットをディスプレイする中国ハムスター卵巣(CHO)細胞ライブラリーを構築し、それを、高親和性抗体遺伝子を発現するクローンを発見するために使用される。別のディスプレイシステムが開発されており、当該ディスプレイシステムは、交互スプライシングを介して同じタンパク質の高レベルの細胞表面ディスプレイと分泌を同時に行うことができ、前記表示されたタンパク質の表現型は遺伝子型に関連付けられたままであるため、生物物理学的および細胞ベースの機能アッセイの両方において、分泌された可溶性抗体に対して特性評価を行うことができる。この方法は、以前の哺乳動物細胞ディスプレイの多くの制限を克服し、完全長のグリコシル化IgGsの形で抗体を直接選択と成熟することができる(Peter M.Bowers,et al,Methods 2014,65:44-56)。一過性発現系は、抗体遺伝子回復の前の単一ラウンドの抗原選択に適しているため、より小さなライブラリーからの抗体の選択に最も役立つ。安定したエピソームベクターは、魅力的な代替手段を提供する。エピソームベクターは、高効率でトランスフェクトでき、低コピー数で安定して維持できるため、複数回のパンニングとより複雑な抗体ライブラリーの解析が可能になる。
【0290】
IgGライブラリーは、ヒトドナーの集団から分離された生殖系列配列V遺伝子セグメントと再配列(D)J領域との連結に基づいて構築される。2000個のヒト血液サンプルから収集したRNAをcDNAに逆転写し、VHおよびVK特異的プライマーを使用してVHおよびVKフラグメントを増幅し、ゲル抽出によって精製する。IgGライブラリーは、VHおよびVKフラグメントをそれぞれIgG1またはK定常領域を含むディスプレイベクターにサブクローニングし、次いで293T細胞に電気穿孔または形質導入することによって生成する。scFv抗体ディスプレイライブラリーを生成するために、VHおよびVKをリンクすることによってscFvを生成し、次いでこれをディスプレイベクターにサブクローニングし、その後、293T細胞に電気穿孔または形質導入する。周知のように、IgGライブラリーは、マウス、ラット、ウサギまたはサルであり得るドナーの集団から分離された生殖系列配列V遺伝子セグメントおよび再配列(D)J領域に基づいて構築される。
【0291】
モノクローナル抗体は、例えば、U.S.Patent No.4,816,567に記載された組換えDNA法によって調製できる。本発明に記載のモノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の方法(例えば、マウス抗体の軽鎖および重鎖をコードする遺伝子と特異的に結合するオリゴヌクレオチドプローブ)によって容易に単離および配列決定することができる。前記のようなハイブリドーマ細胞または本発明のFcRn特異的ファージクローンは、このDNAの供給源とすることができる。単離した後、DNAを発現ベクターに入れ、そして、当該ベクターを、例えば、シミアン(Simian)COS細胞、チャイニーズハムスター卵巣がん(CHO)細胞、または免疫グロブリンを産生しない骨髄腫細胞のような宿主細胞にトランスフェクトして、組換え宿主細胞内で合成されたモノクローナル抗体を得る。前記DNAは、修飾されてもよく、例えば、ヒト重鎖および軽鎖定常ドメインをコード配列で置換することによって、および/または相同な非ヒト配列をフレームワーク領域で置換することによって(U.S.Patent No.4,816,567; Morrison et al.,supra)、または免疫グロブリンコード配列の非免疫グロブリンポリペプチドコード配列の全てもしくは一部を共有結合することによって改変され得る。この非免疫グロブリンポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインを置換することができ、または本発明の抗体の可変ドメイン内の抗原結合部位を置換し、キメラ二価抗体を形成することができる。
【0292】
前記抗体は一価抗体であり得る。一価抗体を調製する方法は当分野で既知である。例えば、免疫グロブリン軽鎖および修飾された重鎖の組換に関する発現法である。通常、重鎖が互いに架橋するのを防ぐために、重鎖がFc領域の任意の位置で短く切られる。または、架橋を防ぐために、関連するシステイン残基が他のアミノ酸残基に置換または削除される。
【0293】
インビトロ法は、一価抗体の調製にも適用される。抗体を消化して抗体フラグメント、特にFabフラグメントを生成するのは、本分野で知られている任意の方法で達成することができる。
【0294】
所望の結合特異性(抗体-抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインは、免疫グロブリン定常ドメインと融合できる。好ましくは、ヒンジ、CH2およびCH3領域の少なくとも一部を含む免疫グロブリン重鎖定常ドメインと融合される。いくつかの実施例において、軽鎖結合に必要な部位を含む第1の重鎖定常領域(CH1)は、少なくとも一種の融合物中に存在する。免疫グロブリン重鎖融合物および所望により免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAを、別個の発現ベクターに挿入し、適切な宿主生物に同時トランスフェクトする。
【0295】
完全ヒト抗体およびヒト化抗体
前記抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)は、ヒト化抗体または完全ヒト抗体であり得る。非ヒト(マウスなど)抗体部分のヒト化形態は、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはそれらのフラグメント(例えばFv、Fab、Fab’、F(ab’)2、scFvまたは抗体のその他の抗原結合サブ配列)であり、通常、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小の配列を含む。ヒト化抗体は、ヒト免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖またはそのフラグメント(レシピエント抗体)を含み、ここで、受容体CDRからの残基が、例えば、マウス、ラット、またはウサギのCDRなどの、所望な特異性、親和性および性能を持つ非ヒト(ドナー抗体)のCDR残基によって置換される。いくつかの実施例において、ヒト免疫グロブリンFvフレームワーク領域の残基は、対応する非ヒト残基に置換される。ヒト化抗体は、レシピエント抗体に属しなく、導入されたCDRまたはフレームワーク領域の配列にも存在しないアミノ酸残基をさらに含み得る。通常、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、通常は2つの可変ドメインを含み、可変ドメインにおいて、全てまたは実質的に全てのCDR領域が非ヒト免疫グロブリンのCDR領域に対応し、全てまたは実質的に全てのフレームワーク領域がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列である。
【0296】
通常、ヒト化抗体は、非ヒトから導入された1つ以上のアミノ酸残基を含む。これらの非ヒトアミノ酸残基は、通常、「インポート」残基と呼ばれ、通常、「インポート」可変ドメインに由来する。いくつかの実施例において、ヒト化は、実質的にWinterと彼の同僚の以下の方法(Jones et al.,Nature,321:522-525(1986);Riechmann et al.,Nature,332:323-327(1988);Verhoeyen et al.,Science,239:1534-1536(1988))に従って実行し、げっ歯類動物のCDRsまたはCDR配列でヒト化抗体の対応する配列を置換する。従って、このような「ヒト化」抗体部分(U.S.Patent No.4,816,567)は、実質的に完全のヒト化抗体より不完全であって、その可変ドメインは、既に非ヒト化に由来する対応する配列に置換された。実際には、ヒト化抗体部分は、典型的には、いくつかのCDR残基および可能のいくつかのフレームワーク領域の残基が、げっ歯類抗体の類似部位からの残基によって置換されているヒト抗体部分である。
【0297】
完全ヒト抗体は、ヒト化の代替形の1つである。例えば、現在、免疫化後、内因性免疫グロブリンを産生せずに、完全な完全ヒト抗体ライブラリーを生成することができる通常遺伝子改変動物(例えば、マウス)を作製することができる。例えば、キメラおよび生殖細胞突然変異マウスにおいて、抗体重鎖結合領域(JH)遺伝子のホモ接合体の欠失は、完全に、内因性抗体の産生を阻害することが報告された。ヒト生殖細胞株免疫グロブリン遺伝子アレイをこのような生殖細胞突然変異マウスに移して、抗原刺激下で完全ヒト抗体を産生することができる。例えば、akobovits et al.,PNAS USA,90:2551 (1993);Jakobovits et al.,Nature,362:255-258(1993);Bruggemann et al.,Year in Immunol.,7:33 (1993);U.S.Patent Nos.5,545,806,5,569,825,5,591,669;5,545,807;およびWO97/17852を参照する。または、完全ヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を遺伝子改変動物に導入すること(例えば、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全にサイレンシングされたマウス)によって調製することができる。刺激されると、完全ヒト抗体の産生は、遺伝子の再配列、組み立て、抗体ライブラリーを含むあらゆる面で、ヒトでの産生と非常に類似することが分かる。この方法は、例えば、U.S.Patent Nos.5,545,807;5,545,806;5,569,825;5,625,126;5,633,425;and 5,661,016,and Marks et al.,Bio/Technology,10:779-783(1992);Lonberg et al.,Nature,368:856-859(1994);Morrison,Nature,368:812-813(1994);Fishwild et al.,Nature Biotechnology,14:845-851 (1996);Neuberger,Nature Biotechnology,14:826 (1996);Lonberg and Huszar,Intern.Rev.Immunol.,13:65-93(1995)において説明されている。
【0298】
完全ヒト抗体は、イン・ビトロでB細胞を活性化することによって(U.S.Patents5,567,610および5,229,275を参照)、またはファージディスプレイライブラリーを含む本分野で既知の様々な技術を使用することによっても生成される。Hoogenboom and Winter,J.Mol.Biol.,227:381(1991);Marks et al.,J.Mol.Biol.,222:581(1991).Cole et al.およびBoerner et al.などの技術も、完全ヒトモノクローナル抗体の調製に用いられる。Cole et al.,Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy,Alan R.Liss,p.77 (1985) and Boerner et al.,J.Immunol.,147(1): 86-95 (1991)を参照する。
【0299】
抗FcRn抗体変異体
いくつかの実施例において、本明細書に提供の抗FcRn抗体変異体(例えば、全長の抗FcRn抗体)のアミノ酸配列も含まれる。例えば、抗体の結合親和性および/または他の生物学的活性を改善することが望ましい場合がある。抗体変異体のアミノ酸配列は、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な修飾を導入することによって、またはペプチド合成によって調製することができる。そのような修飾は、例えば、抗体のアミノ酸配列中の残基の欠失および/または挿入および/または置換を含む。最終的な構築は、例えば、抗原結合性などの所望の特性を有させるように、アミノ酸残基の欠失、挿入および置換の任意の組み合わせによって完了することができる。例えば、抗原結合性である。
【0300】
いくつかの実施例において、1つ以上のアミノ酸置換を有する、抗FcRn抗体変異体を提供する。置換された突然変異の目的の部位は、高可変ドメイン(HVRs)およびフレームワーク領域(FRs)を含む。標的抗体にアミノ酸置換を導入し、目的の活性(例えば、改善された生物活性、維持/改善された抗原結合能、低減された免疫原性、または改善されたADCCもしくはCDC)がある製品をスクリーニングし得る。
【0301】
保存的置換は、以下の表4に示す。
【0302】
【0303】
側鎖の性質により、アミノ酸を異なる種類に分類する。
a、疎水性アミノ酸:ノルロイシンノルロイシン(Norleucine)、メチオニン(Met)、アラニン(Ala)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile);
b、中性親水性アミノ酸:システイン(Cys)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)、アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln);
c、酸性アミノ酸:アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu);
d、塩基性アミノ酸:ヒスチジン(His)、リジン(Lys)、アルギニン(Arg);
e、鎖の方向に影響を与えるアミノ酸:グリシン(Gly)、プロリン(Pro);
f、芳香族アミノ酸:トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe)。
【0304】
非保存的アミノ酸の置換には、上記の一種類から別の種類への置換が含まれる。
【0305】
例示的な置換変異体は、例えば、ファージディスプレイに基づく親和性成熟技術によって産生される、親和性成熟抗体である。簡単に言えば、1つ以上のCDR残基を突然変異させ、変異体抗体がファージ上に部分的にディスプレイされ、特定の生物学的活性(例えば、基于IgGのリサイクリングアッセイイまたは結合親和性に基づく生物活性)を有する変異体をスクリーニングする。改変(例えば、置換)は、例えば、IgGのリサイクリングアッセイまたは結合親和性に基づいて生物学的活性を改善するために、HVR領域において行われ得る。このような変更は、HVRの「ホットスポット領域」、つまり体細胞の成熟中に高頻度の突然変異が起こったコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury,Methods Mol.Biol.207:179-196(2008))を参照)、および/または特異性決定残基(SDRs)で行われ、得られた変異体VHおよびVLの結合親和性を測定する。二次ライブラリーの構築および再選択による親和性成熟は、いくつかの文献に記載されている。例えば、Hoogenboom et al.in Methods in Molecular Biology 178:1-37 (O’Brien et al.,ed.,Human Press,Totowa,NJ,(2001))。
【0306】
いくつかの親和性成熟の実施例において、様々な方法(例えば、Error Prone PCR、チェーンシャッフリングまたはオリゴヌクレオチド特異的突然変異誘発)のいずれかによって、多様性を選択される、親和性成熟に用いられる可変遺伝子に導入する。そして、二次ライブラリーを作成する。当該ライブラリーに対してスクリーニングして、所望の親和性を有する抗体変異体を同定する。もう1つの方法は、HVRが介在する多様性の導入の方法を含み、ここでは、いくつかのHVR残基(例えば、一回に4~6つの残基)がランダム化される。抗原結合に関与するHVR残基は、特異的に同定され、例えば、アラニンスキャニングによって変異誘発またはモデリングする。通常、CDR-H3およびCDR-L3領域は特に重要な標的である。
【0307】
いくつかの実施例において、置換、挿入、または欠失は、1つ以上のHVR内で起こる可能性があり、このような変化が抗体の抗原への結合能力を実質的に低下させなければよい。例えば、結合親和性を実質的に低下させない保存的変化(例えば、本明細書で言及される保存的置換)は、HVRsにおいて生成される。これらの変化は、HVRの「ホットスポット領域」またはSDR領域以外で発生する可能性がある。いくつかの実施形態において、上記に提供された変異体VHおよびVL配列の各HVRは変化しないか、または1つ、2つ、もしくは3つ以下のアミノ酸置換を含む。
【0308】
Cunningham and Wells (1989) Science,244:1081-1085に記載されているように、抗体から、標的突然変異されうるアミノ酸残基または領域を同定できる有用な方法は、「アラニンスキャニング突然変異」と呼ばれる。当該方法では、標的残基における1つまたは1つのグループ(例えば、アルギニン、アスパラギン酸、ヒスチジン、リジンおよびグルタミン酸などの荷電残基)は、中性、または負に荷電したアミノ酸(例えば、アラニンまたはグルタミン酸)より置換されて、抗体と抗原の間の相互作用が影響を受けるかどうかを決定する。アミノ酸の位置に置換をさらに導入して、その位置が最初の置換に対して機能的感受性があることを証明することができる。あるいは/さらに、抗原-抗体複合体の結晶構造によって、抗体と抗原との間の接触部位を同定することができる。これらの接触部位に位置する残基および隣接する残基は、置換候補体として標的化または削除することができる。変異体をスクリーニングして、所望の性質を持っているかどうかを判定する。
【0309】
アミノ酸配列の挿入は、アミノ末端および/またはカルボキシル末端に、長さが1個の残基から100個以上の残基を含むポリペプチドを融合することを含み、さらに、配列に1個以上の残基を挿入することも含む。末端挿入の例として、N末端にメチオニル残基を有する抗体を含む。他の抗体分子の挿入変異体は、抗体分子のN末端またはC末端に酵素(例えば、ADEPT)、または抗体の血清半減期を増加させるポリペプチドを融合することを含む。
【0310】
Fc領域変異体
いくつかの実施例において、1つ以上のアミノ酸修飾は、本明細書に記載の抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体または抗FcRn抗体融合タンパク質)のFc領域に導入され、それにより、Fc領域変異体が生成される。いくつかの実施例において、Fc領域変異体は、ADCCエフェクター機能が増強されており、通常、Fcに結合する受容体(FcRs)に関連する。いくつかの実施例において、Fc領域変異体は、低減されたADCCエフェクター機能を有する。Fc配列の変化または突然変異によってそのエフェクター機能に影響を与える例がたくさんあり、例えば、WO00/42072およびShields et al.J Biol.Chem.9(2):6591-6604(2001)において、FcRsとの結合を増強または低減することに関連する抗体変異体を記載された。この刊行物の内容は、引用により本明細書に組み込まれる。
【0311】
抗体依存性細胞傷害(ADCC)は、腫瘍細胞に対する治療用抗体の作用メカニズムである。ADCCは、細胞が介在する免疫防御であり、標的細胞膜の表面の抗原が特定の抗体(例えば、抗FcRn抗体)によって結合されると、免疫システムのエフェクター細胞が自発に標的細胞(例えば、癌細胞)を溶解する。通常、ADCC効果は、抗体によって活性化されたNK細胞に関わる。NK細胞は、Fc受容体CD16を発現する。当該受容体は、標的細胞の表面に結合する抗体分子のFc部分を認識して結合する。NK細胞の表面で最も一般的なFc受容体は、CD16またはFcγRIIIである。Fc受容体と抗体Fc領域との結合は、NK細胞の活性化を引き起こし、細胞溶解粒子が放出させ、続いて標的細胞がアポトーシスする。ADCCによる腫瘍細胞の殺傷は、高親和性FcRをトランスフェクトしたNK-92細胞を用いた特異的アッセイによって決定することができる。結果を、FcRを発現しない野生型NK-92と比較する。
【0312】
また、いくつかの実施例において、本発明は、抗FcR抗体のイン・ビボ半減期が重要であるが、特定の作用又は機能(例えば、CDCおよびADCC)が不要であるか又は有害である用途のための理想的な候補となるような、全てではないが、一部のエフェクター機能を有するFc領域を含む抗FcRn抗体変異体(例えば、全長の抗FcRn抗体変異体)を提供する。イン・ビトロおよび/またはイン・ビボの細胞毒性アッセイを行うことにより、CDCおよび/またはADCC活性の低下/消去を確認する。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを行って、抗体がFcγR結合を欠いている(したがってADCC活性を欠如する可能性がある)が、FcRn結合能力を保持していることを確認することができる。ADCCを介在する主な細胞において、NK細胞はFcγRIIIのみを発現し、単核細胞はFcγRI、FcγRIIおよびFcγRIIIを発現する。Ravetch and Kinet Annu.Rev.Immunol.9:457-492 (1991)ページ464のTable 3において、造血細胞でのFcR発現をまとめる。イン・ビトロで標的分子のADCC活性を評価する非限定的な実例は、U.S.Pat.No.5,500,362において説明されている(例えば、Hellstrom,I.et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 83:7059-7063(1986))およびHellstrom,I et al.,Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 82:1499-1502(1985);U.S.Pat.No.5,821,337(see Bruggemann,M.et al.,J.Exp.Med.166:1351-1361(1987)を参照)。また、非放射性検出法を使用しても良い(例えば、ACTITMフローサイトメトリー非放射性細胞毒性試験(CellTechnology,Inc.Mountain View,Calif.)およびCYTOTOX 96TM非放射性細胞毒性試験(Promega,Madison,Wis.)を参照)。このような実験に使用された効果細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー細胞(NK)を含む。また、Clynes et al.Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 95:652-656(1998)に記載されたように、目的の分子のADCC活性は、体内、例えば動物モデルで試験される。同時に、C1q結合試験を実行することによって、抗体がC1qに結合できず、CDC活性が欠如ことを確認できる。例えば、WO2006/029879およびWO2005/100402におけるC1qおよびC3c結合ELISAを参照する。補体活性化の状況を評価するために、CDC測定を行う(例えば、Gazzano-Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996);Cragg,M.S.et al.,Blood 101:1045-1052(2003);およびCragg,M.S.and M.J.Glennie,Blood 103:2738-2743(2004)を参照)。本分野で既知の方法を使用して、FcRn結合およびイン・ビボでのクリアランス/半減期を測定する(例えば、Petkova,S.B.et al.,Int’l.Immunol.18(12):1759-1769(2006)を参照)。
【0313】
低減されたエフェクター機能を有する抗体は、Fc領域の残基238、265、269、270、297、327および329位で1つ以上の残基が置換されるものを含む(U.S.Pat.No.6,737,056)。これらのFc変異体は、265、269、270、297および327位で2つ以上の残基が置換されたFc変異体を含み、265および297位残基がアラニンに置換された「DANA」と呼ばれるFc変異体を含む(U.S.Pat.No.7,332,581)。
【0314】
このような、FcRsとの結合能力の向上または低減に関連する抗体変異体は、既に記載されている(例えば、U.S.Pat.No.6,737,056;WO2004/056312およびShields et al.,J.Biol.Chem.9(2):6591-6604(2001)を参照)。
【0315】
いくつかの実施例において、抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)は、抗体の定常領域(例えば、Fc領域)におけるアミノ酸の置換、挿入、および/または欠失を含み得、これによって、例えば、補体依存性細胞溶解(CDC)、抗体依存性細胞媒介性細胞溶解(ADCC)、および/または抗体依存性細胞媒介性食作用の低下(ADCP)、および/またはB細胞殺傷の低下などのエフェクター機能の低下をもたらす。定常領域は、抗体のその標的への結合に直接関与しないが、種々のエフェクター機能を示し、例えば、抗体は抗体依存性細胞毒性に関与する。いくつかの実施例において、抗体は、ナチュラルキラー(NK)細胞上のヒト補体因子C1qおよび/またはヒトFc受容体への結合の減少(即ち、結合しない)を特徴とする。他の実施例において、抗体は、ヒトFcγRI、FcγRIIAおよび/またはFcγRIIIAへの結合の減少(すなわち、結合しない)を特徴とする。抗体依存性エフェクター機能、例えば、CDC、ADCC、ADCPおよび/またはB細胞殺傷を改変または低減するために、抗体は、IgGクラスであってもよく、1つ以上のアミノ酸置換E233、L234、G236、D265、D270、N297、E318、K320、K322、A327、A330、P331および/またはP329(欧州Kabat番号付けシステム(Sequences of Proteins of immunological Interest,5th edition Public Health Service,National institute of Health,Bethesda,MD.(1991))に従う)を含んでもよい。
【0316】
いくつかの実施例において、ADCC効果を増強することができる1つ以上のアミノ酸置換を有するFc領域変異体を含む抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)変異体が提供される。いくつかの実施例において、Fc領域変異体は、ADCC効果を増強することができる1つ以上のアミノ酸置換を含み、これらの置換は、Fc領域の298、333および/または334位(EU残基の番号)にある。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)変異体は、その変異体Fc領域に以下のアミノ酸置換を含む:S298A、E333AおよびK334A。
【0317】
いくつかの実施例において、Fc領域の変更は、U.S.Pat.No.6,194,551、WO99/51642、およびIdusogie et al.,J.Immunol.164:4178-4184(2000)に記載されているように、C1q結合および/または補体依存性細胞傷害(CDC)の変更(即ち、増強または減弱)をもたらす。
【0318】
いくつかの実施例において、抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)変異体を提供し、当該抗FcRn抗体変異体は、1個以上のアミノ酸置換を有するFc領域変異体を含み、これによって、半減期を延長すること、および/または、Fc受体(FcRn)との結合を増強することができる。半減期を延長すること、および、Fc受体(FcRn)との結合を増強することができる抗体は、US2005/0014934A1(Hintonなど)において記載されている。これらの抗体Fc領域は、1個以上のアミノ酸が置換され、Fc領域とFcRnとの結合を増強する。これらのFc変異体は、Fc領域において、238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424または434位の残基が1個以上置換されたもの、例えば、Fc領域の434位残基が置換されたもの(U.S.Pat.No.7,371,826)を含む。
【0319】
同時に、Duncan & Winter,Nature 322:738-40(1988);U.S.Pat.No.5,648,260;U.S.Pat.No.5,624,821およびWO94/29351に記載の他の変異Fc領域の例を参照する。
【0320】
本発明は、本明細書に記載のFc変異体のいずれか1つまたはその組み合わせを含む抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)も含まれる。
【0321】
グリコシル化変異体
いくつかの実施例において、本明細書に提供の抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)は、抗FcRn抗体のグリコシル化の程度を増加または減少させるように、変更される。抗FcRn抗体上のグリコシル化部位を添加または削除するために、抗FcRn抗体またはそのポリペプチド部分のアミノ酸配列を変更することによって1つ以上のグリコシル化部位を添加または除去して便利に達成する。
【0322】
ここで、抗FcRn抗体がFc領域を含む場合、それに接続されている炭水化物を変化させることができる。哺乳類動物細胞によって産生される天然抗体は、通常、分岐した二分岐オリゴ糖を含み、当該オリゴ糖は通常、N-結合を通じてFc領域のCH2ドメインにおけるAsn297に結合し、例えば、Wright et al.,TIBTECH 15:26-32 (1997)を参照する。前記オリゴ糖は、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトースおよびシアル酸、並びに二分岐オリゴ糖構造の「ステム」部分のGlcNAcに連結するトレハロースのような様々な糖を含み得る。いくつかの実施例において、本発明の抗FcRn抗体をオリゴ糖修飾して、特定の改善された特性を有する抗FcRn抗体変異体を生成することができる。
【0323】
Fc領域のCH2ドメインに連結されるN-グリカンは、異質的である。CHO細胞で産生される抗体またはFc融合タンパク質は、フコシルトランスフェラーゼ活性によってフコシル化されて、Shoji-Hosaka et al.,J.Biochem.2006,140:777-83を参照する。通常、ヒト血清で、ごく一部の天然に存在するフコシル化されていないIgGsが検出される。Fc領域のN-グリコシル化は、Fc領域のFcγRへの結合にとって重要であるが、フコシル化されていないN-グリカンは、FcとFcγRIIIaとの結合能力を増強される。FcγRIIIaとの結合能力の増強は、ADCC効果を増強し、これは、細胞毒性を必要とする特定の抗体治療適用で有利である。
【0324】
いくつかの実施例において、Fcが介在する細胞毒性が必要ない場合、増強されたエフェクター機能は有害でありうる。いくつかの実施例において、FcフラグメントまたはCH2ドメインは非グリコシル化されているものである。いくつかの実施例において、CH2ドメインにおけるN-グリコシル化部位を突然変異させて、そのグリコシル化を防ぐ。
【0325】
いくつかの実施例において、Fc領域を含む抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)変異体を提供し、ここで、Fc領域に連結される炭水化物構造には、フコースが減少しているか、またはフコースが欠如し、これは、ADCCの機能を増強する可能性がある。具体的には、本明細書は、抗FcRn抗体を提供し、当該抗FcRn抗体は、野生型CHO細胞が産生された同じ抗FcRn抗体と比較して、減少されたフコースがある。つまり、それらは、天然のCHO細胞(例えば、天然のグリコシル化形態を産生するCHO細胞、天然のFUT8遺伝子を含むCHO細胞)によって産生される抗体と比較して、より少ない量のフコースがあることを特徴とする。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体のN-結合型グリカンは、50%、40%、30%、20%、10%または5%より少ない量のフコースを有する。例えば、当該抗FcRn抗体のフコースの含有量は、1%-80%、1%-65%、5%-65%または20%-40%でありうる。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体のN-結合型グリカンは、フコースを含まなく、即ち、抗FcRn抗体は、完全にフコースを含まなく、またはフコースを有しない、または脱フコシル化されたものである。フコースの含有量は、WO2008/077546に記載されたように、MARDI-TOF質量分析によって測定された、Asn297に連結された全ての糖構造(例えば、複合体、ハイブリッド、またはマンノース構造)の合計量に対する、Asn297に連結された糖鎖内のフコースの平均含有量を計算することによって決定される。Asn297とは、Fc領域の297位のアスパラギン残基(EU Fc領域残基番号付けシステム)である。しかしながら、抗体配列のわずかな変化によって、Asn297は、また297位の上流または下流の約±3アミノ酸、即ち、294および300位の間に位置しても良い。これらのフコシル化変異体は、増強されたADCC機能を持つ可能性がある。例えば、US Patent Publication Nos.US2003/0157108(Presta,L.),US2004/0093621(Kyowa Hakko Kogyo Co.,Ltd)を参照する。「脱フコース基化」または「フコース欠損」の抗体変異体に関連する刊行物の実例として、US2003/0157108;WO2000/61739;WO2001/29246;US2003/0115614;US2002/0164328;US2004/0093621;US2004/0132140;US2004/0110704;US2004/0110282;US2004/0109865;WO2003/085119;WO2003/084570;WO2005/035586;WO2005/035778;WO2005/053742;WO2002/031140;Okazaki et al.J.Mol.Biol.336:1239-1249(2004);Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004)を含む。脱フコシル化された抗体を産生できる細胞株は、タンパク質フコシル化機能が欠如するLec13 CHO細胞(Ripka et al.Arch.Biochem.Biophys.249:533-545(1986);US Pat Appl No US2003/0157108A1,Presta,L;およびWO 004/056312A1,Adams et al.,特に実施例11)、および、例えば、α-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8遺伝子がノックアウトされたCHO細胞のようなノックアウト細胞株(Yamane-Ohnuki et al.Biotech.Bioeng.87:614(2004);Kanda,Y.et al.,Biotechnol.Bioeng.,94(4):680-688(2006);およびWO2003/085107)を含む。
【0326】
抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)変異体は、さらに、二分オリゴ糖に関し、例えば、抗FcRn抗体のFc領域に連結された二分岐オリゴ糖は、GlcNAcによって均等に分割される。この抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)変異体は、減少されたフコシル化および/または増強されたADCC機能を持つ可能性がある。このような抗体の実例は、WO2003/011878(Jean-Mairet et al.);U.S.Pat.No.6,602,684(Umana et al.);US2005/0123546(Umana et al.),およびFerrara et al.,Biotechnology and Bioengineering,93(5):851-861(2006)に説明されている。また、本発明は、抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)変異体に関し、当該抗FcRn抗体は、Fc領域に結合したオリゴ糖に少なくとも1つのガラクトース残基を持つ。このような抗FcRn抗体変異体は、増強されたCDC機能を持つ可能性がある。このような変異体は、例えば、WO1997/30087(Patel et al.);WO1998/58964(Raju,S.);およびWO 1999/22764(Raju,S.)に説明されている。
【0327】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)変異体は、FcγRIIIに結合できるFc領域を含むことができる。いくつかの実施例において、Fc領域を含む前記抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)変異体は、ヒトエフェクター細胞(例えば、T細胞)の存在下で、ADCC活性を示し、または、ヒト野生型IgG1 Fc領域を有する他の同じ抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)と比較して、ヒトエフェクター細胞の存在下で、増強されたADCC活性を有する。
【0328】
システイン操作変異体
いくつかの実施例において、システインが操作された抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)の調製が必要とし、当該抗FcRn抗体において、1つ以上のアミノ酸残基がシステイン残基に置換される。いくつかの実施例において、置換された残基は、抗FcRn体のアクセス可能な部位(accessible site)に現れる。これらの残基をシステインで置換することにより、活性があるスルフヒドリル基は、抗FcRn抗体のアクセス可能な部位に位置し、当該抗FcRn抗体と他の部分とのカップリング、例えば、薬物部分またはリンカー-薬物部分のカップリングに用いられて、本明細書に記載の抗FcRn免疫複合体を調製する。システインが操作された抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)は、例えば、U.S.Pat.No.7,521,541に記載されたように調製することができる。
【0329】
誘導体
いくつかの実施例において、本明細書に提供の抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)は、本分野で知られており、容易に入手可能な他の非タンパク質部分を含むように、さらに修飾され得る。抗FcRn抗体の一部を誘導体化するのに適している部分は、水溶性重合体を含むが、これに限定されない。水溶性ポリマーの非限定的な例として、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコール共重合体、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸共重合体、ポリアミノ酸(単独重合体またはランダム共重合体)、デキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコール単独重合体、プロピレンオキシド/エチレンオキシド共重合体、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセリン)、ポリビニルアルコールおよびそれらの混合物を含むが、これらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中で安定しているため、製造において利点がある。重合体は任意の分子量であり得、分岐または非分岐であり得る。抗FcRn抗体に結合する重合体の数は変わってもよく、そして複数の重合体が結合されている場合、それらは同じ分子でも異なる分子でもよい。通常、誘導体化に用いられる重合体の量および/またはタイプは、抗FcRn抗体の改善しようとする特性または機能、抗FcRn抗体誘導体が特定の条件下での治療に用いるかどうかなどを含む因子を考慮して決定するが、これらに限定されない。
【0330】
医薬組成物
本明細書は、抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)のいずれか1つ、抗体をコードする核酸、抗体をコードする核酸を含むベクター、または本明細書に記載の核酸またはベクターを含む宿主細胞を含有する組成物(例えば、医薬組成物、ここでは、製剤ともいう。)をさらに提供する。いくつかの実施例において、本明細書に記載の抗FcRn抗体のいずれか1つ、および薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0331】
必要な純度の抗FcRn抗体を、任意の製薬上許容される担体、賦形剤、または安定剤と混合することによって(Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980))、適切な抗FcRn抗体製剤を得て、凍結乾燥製剤または液体製剤の形に調製する。許容される担体、賦形剤または安定剤は、使用された量および濃度で受験者に対して無毒であり、これらは、リン酸塩、クエン酸および他の有機酸のような緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;ヘキサメチル塩化アンモニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール;ブタノールまたはベンジルアルコール; p-ヒドロキシ安息香酸メチルまたはp-ヒドロキシ安息香酸プロピルのようなp-ヒドロキシ安息香酸アルキルエステル;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノールおよびm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)のポリペプチド;例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンのようなタンパク質;ポリビニルピロリドンのような親水性重合体;例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンまたはリジンのようなアミノ酸;単糖、二糖およびグルコース、マンノースまたはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAのようなキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールのような糖類;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属複合体(例えば亜鉛-タンパク質複合体);および/またはTWEENTM,PLURONICSTMまたはポリエチレングリコール(PEG)のような非イオン性界面活性剤)を含む;例示的な製剤はWO98/56418に記載されており、それらの内容は引用により本明細書に明示的に組み込まれる。皮下投与に適した凍結乾燥製剤は、WO97/04801に記載されている。このような凍結乾燥製剤は、適切な希釈剤を用いて高タンパク質濃度の調製物に再構成することができ、そして再構成された製剤は、皮下投与によって本明細書に記載の治療しようとする個体に投与することができる。カチオン性リポソームまたはリポソームは、本発明における抗FcRn抗体を細胞に送達することに用いられる。
【0332】
本明細書に記載の製剤は、抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)に加えて、特定の病症の治療に必要な一種以上の他の活性物質を含み得、この活性物質は、好ましくは相補的活性があり、かつ副作用のない物質である。例えば、抗FcRn抗体に加えて、例えば、抗腫瘍剤、成長阻害剤、細胞毒性剤または化学療法剤をさらに含めることが必要な場合がある。これらの分子は、予期された目的に有効な量で組み合わせて存在する。他の物質の有効量は、製剤中の抗FcRn抗体の含有量、疾患または病症或いは治療の種類、および前記の他の要因に依存する。これらの薬物は通常、本明細書に記載の投与量と同じ投与量および投与経路で使用され、または現在適用されている投与量の1%から99%で使用される。
【0333】
前記抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)は、凝集技術および界面重合によって調製されたマイクロカプセルに封入されることもでき、例えば、コロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)または粗いエマルジョン中のヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチン-マイクロカプセルおよびポリ(メチルメタクリレート)マイクロカプセルに封入される。これで、徐放性製剤を調製できる。
【0334】
抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)の徐放性製剤を調製できる。徐放性製剤の適切な実例は、抗体(またはそのフラグメント)を含有する固体疎水性重合体の半透性マトリックスを含み、これらのマトリックスは、成形品、例えば、フィルムまたはマイクロカプセルの形態である。徐放性マトリックスの実例として、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)またはポリ(ビニルアルコール))、ポリ乳酸(U.S.Pat.No.3,773,919)、L-グルタミン酸およびL-グルタミン酸エチル共重合体、非分解性エチレン-酢酸ビニル、LUPRON DEPOTTM(乳酸-グリコール酸共重合体と酢酸ロイプロリドからなる注射可能なミクロスフェア)のような分解性乳酸-グリコール酸共重合体およびポリ-D(-)- 3-ヒドロキシ酪酸を含む。エチレン-酢酸ビニルや乳酸-グリコール酸のような重合体分子は100日以上放出できるが、一部のヒドロゲルはより短い時間でタンパク質を放出できる。封入された抗体が体内に長期間留まると、37°Cの高湿環境に曝されるために変性または凝集し、生物活性が失われたり、免疫原性が変化したりする可能性がある。対応するメカニズムによって、抗FcRn抗体を安定化するための合理的な対策を設計することができる。例えば、凝集メカニズムは、チオジスルフィド交換によって分子間S-S結合を形成する場合、スルフヒドリル残基の修飾、酸性溶液中での凍結乾燥、含水量の制御、適切な添加剤の使用、および特定の重合体マトリックス組成物の開発によって安定化を達成できる。
【0335】
いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)は、クエン酸塩、塩化ナトリウム、酢酸塩、コハク酸塩、グリシン、ポリソルベート80(ツイン80)またはそれらの任意の組み合わせの緩衝液において調製される。
【0336】
イン・ビボ投与のための製剤は無菌でなければならない。これは、例えば、滅菌フィルター膜を適用した濾過によって容易に達成することができる。
【0337】
抗FcRn抗体を使用する治療方法
本発明に記載の抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)および/または組成物は、受験者における自己抗体のクリアランスを促進するため、受験者における抗原提示を阻害するため、免疫応答をブロックするため(例えば、受験者における免疫複合体に基づく免疫応答の活性化をブロックするため)、免疫性疾患(例えば、自己免疫性疾患)および炎症性疾患を治療するために、個体(例えば、ヒトなどの哺乳動物)に投与することができる。自己免疫性疾患とは、受験者の自己抗体が宿主組織と反応するか、または免疫エフェクターT細胞が内因性自己ポリペプチドに自己反応し、組織破壊を引き起こす疾患のクラスを指す。したがって、免疫応答は、自己抗原と呼ばれる受験者自身の抗原に対するものである。本明細書で使用される「自身抗原」とは、正常な宿主組織の抗原を指す。正常な宿主組織は腫瘍細胞を含まない。これらの疾患には、重症筋無力症(MG)、尋常性天疱瘡、視神経脊髄炎、ギラン・バレー症候群、ループス、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓血小板減少性紫斑病、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、グレーブス病、自己免疫性心筋炎、膜性糸球体腎炎、糖尿病、I型糖尿病、多発性硬化症、レイノー症候群、自己免疫性甲状腺炎、胃炎、セリアック病、白斑症、肝炎、原発性胆汁性肝硬変、炎症性腸疾患、脊椎関節症、実験的自己免疫性脳脊髄炎、免疫性好中球減少症、類肉腫症および多発性筋炎、多発性動脈炎、血管皮膚炎、天疱瘡、類天疱瘡、肺出血性腎炎症候群、川崎病、全身性硬化症、抗リン脂質症候群、およびシェーグレン症候群が含まれるが、これらに限定されない。
【0338】
いくつかの実施例において、本発明は、細胞内または受験者体内で、FcRnをFcRn抗体もしくは抗原結合性フラグメント、または、本明細書に記載の抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)のいずれか1つを含む有効量の組成物(例えば、医薬組成物)と接触させることを含む、FcRnとIgG Fcとの間の相互作用を調節する方法を提供する。いくつかの実施例において、この調節は、FcRnとIgG Fcとの間の相互作用を阻害する。したがって、細胞または個体における抗体の分解を促進する方法が提供される。いくつかの実施例において、前記抗体は自己抗体である。いくつかの実施例において、前記個体はヒトである。
【0339】
いくつかの実施例において、本発明は、FcRn抗体もしくは抗原結合性フラグメント、または、IgG媒介性疾患を治療もしくは改善するのに有効量の本明細書に記載の抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)のいずれか1つを含む組成物(例えば、医薬組成物)を受験者に投与することを含む、受験者におけるIgG媒介性疾患を治療または改善する方法を提供する。このような、凝固異常症、血管炎、膠原病、皮膚疾患、神経疾患、炎症性腸疾患および臓器特異的疾患を含むIgG媒介性疾患は、単量体形態の病原性IgG抗体またはIgG含有免疫複合体(IC)として関与する疾患であり得る。いくつかの実施例において、前記個体はヒトである。
【0340】
いくつかの実施例において、本発明は、治療有効量の抗FcRn抗体もしくは抗原結合性フラグメント、または、本明細書に記載の抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)のいずれか1つを含む組成物(例えば、医薬組成物)を、必要とする妊娠哺乳動物に投与することを含む、胎盤を横切る病原性抗体の伝播をブロックする方法を提供する。
【0341】
いくつかの実施例において、本発明は、細胞または個体におけるFcRnを、FcRn抗体もしくは抗原結合性フラグメント、または、本明細書に記載の抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)のいずれか1つを含む組成物(例えば、医薬組成物)と接触させることを含む、FcRnと免疫複合体(IC)との結合を阻害する方法を提供する。したがって、抗原提示細胞(APC)を、ある量の抗FcRn抗体もしくは抗原結合性フラグメント、または、本明細書に記載の抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)のいずれか1つを含む組成物(例えば、医薬組成物)と接触させることを含む、抗原提示細胞(APC)による免疫複合体抗原の提示を阻害する方法も提供される。いくつかの実施例において、前記個体はヒトである。
【0342】
いくつかの実施例において、本発明は、必要とする個体に、抗FcRn抗体、抗原結合性フラグメント、または本明細書に記載の抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)のいずれか1つを含む組成物(例えば、医薬組成物)を投与することを含む、個体からのICのクリアランスを増加させる方法を提供する。これらの方法は、IC媒介性血管炎を治療するために使用され得る。いくつかの実施例において、前記個体はヒトである。
【0343】
いくつかの実施例において、本発明は、抗原提示細胞(APC)を、抗FcRn抗体、抗原結合性フラグメント、または本明細書に記載の抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)のいずれか1つを含む組成物(例えば、医薬組成物)と接触させることを含む、抗原提示細胞(APC)による炎症性サイトカインの分泌を阻害する方法を提供する。炎症性サイトカインの非限定的な例としては、例えば、インターロイキン-12(IL-12)、インターロイキン6(IL-6)およびインターフェロンγ(IFNγ)が挙げられる。
【0344】
いくつかの実施例において、本発明は、抗原提示細胞を、抗FcRn抗体、抗原結合性フラグメント、または本明細書に記載の抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)のいずれか1つを含む組成物(例えば、医薬組成物)と接触させることを含む、抗原提示細胞によるT細胞活性化を阻害する方法を提供する。
【0345】
例えば、いくつかの実施例において、前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を有する個体を治療するための方法であって、抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)を含む有效量の医薬組成物を前記個体に投与することを含み、前記抗FcRn抗体は、VHまたは前記VHの変異体、およびVLまたは前記VLの変異体を含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:1を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:7を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:15を含むHC-CDR3とを含み、前記VHの変異体はHC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:23を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:29を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:34を含むLC-CDR3とを含み、前記VLの変異体はLC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものである、前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を有する個体を治療するための方法が提供される。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、全長の抗体である。いくつかの実施例において、前記全長の抗FcRn抗体は、IgG1またはIgG4抗体である。いくつかの実施例において、前記疾患または病症は、例えば、重症筋無力症(MG)、尋常性天疱瘡、視神経脊髄炎、ギラン・バレー症候群、ループス、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓血小板減少性紫斑病、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、グレーブス病、自己免疫性心筋炎、膜性糸球体腎炎、糖尿病、I型糖尿病、多発性硬化症、レイノー症候群、自己免疫性甲状腺炎、胃炎、セリアック病、白斑症、肝炎、原発性胆汁性肝硬変、炎症性腸疾患、脊椎関節症、実験的自己免疫性脳脊髄炎、免疫性好中球減少症、類肉腫症および多発性筋炎、多発性動脈炎、血管皮膚炎、天疱瘡、類天疱瘡、肺出血性腎炎症候群、川崎病、全身性硬化症、抗リン脂質症候群、およびシェーグレン症候群からなる群から選択される。いくつかの実施例において、前記個体はヒトである。
【0346】
いくつかの実施例において、前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を有する個体を治療するための方法であって、抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)を含む有效量の医薬組成物を前記個体に投与することを含み、前記抗FcRn抗体はVHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:41、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:41と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:52、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:52と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含む、前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を有する個体を治療するための方法が提供される。
【0347】
例えば、いくつかの実施例において、前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を有する個体を治療するための方法であって、抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)を含む有效量の医薬組成物を前記個体に投与することを含み、前記抗FcRn抗体はVHまたは前記VHの変異体、およびVLまたは前記VLの変異体を含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:2を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:8を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:16を含むHC-CDR3とを含み、前記VHの変異体はHC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:24を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:29を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:35を含むLC-CDR3とを含み、前記VLの変異体はLC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものである、前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を有する個体を治療するための方法が提供される。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、全長の抗体である。いくつかの実施例において、前記全長の抗FcRn抗体は、IgG1またはIgG4抗体である。いくつかの実施例において、前記疾患または病症は、例えば、重症筋無力症(MG)、尋常性天疱瘡、視神経脊髄炎、ギラン・バレー症候群、ループス、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓血小板減少性紫斑病、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、グレーブス病、自己免疫性心筋炎、膜性糸球体腎炎、糖尿病、I型糖尿病、多発性硬化症、レイノー症候群、自己免疫性甲状腺炎、胃炎、セリアック病、白斑症、肝炎、原発性胆汁性肝硬変、炎症性腸疾患、脊椎関節症、実験的自己免疫性脳脊髄炎、免疫性好中球減少症、類肉腫症および多発性筋炎、多発性動脈炎、血管皮膚炎、天疱瘡、類天疱瘡、肺出血性腎炎症候群、川崎病、全身性硬化症、抗リン脂質症候群、およびシェーグレン症候群からなる群から選択される。いくつかの実施例において、前記個体はヒトである。
【0348】
いくつかの実施例において、前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を有する個体を治療するための方法であって、抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)を含む有效量の医薬組成物を前記個体に投与することを含み、前記抗FcRn抗体はVHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:42、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:42と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:53、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:53と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含む、前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を有する個体を治療するための方法が提供される。
【0349】
例えば、いくつかの実施例において、前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を有する個体を治療するための方法であって、抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)を含む有效量の医薬組成物を前記個体に投与することを含み、前記抗FcRn抗体はVHまたは前記VHの変異体、およびVLまたは前記VLの変異体を含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:3を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:9を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:17を含むHC-CDR3とを含み、前記VHの変異体はHC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:25を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:30を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:36を含むLC-CDR3とを含み、前記VLの変異体はLC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものである、前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を有する個体を治療するための方法が提供される。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、全長の抗体である。いくつかの実施例において、前記全長の抗FcRn抗体は、IgG1またはIgG4抗体である。いくつかの実施例において、前記疾患または病症は、例えば、重症筋無力症(MG)、尋常性天疱瘡、視神経脊髄炎、ギラン・バレー症候群、ループス、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓血小板減少性紫斑病、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、グレーブス病、自己免疫性心筋炎、膜性糸球体腎炎、糖尿病、I型糖尿病、多発性硬化症、レイノー症候群、自己免疫性甲状腺炎、胃炎、セリアック病、白斑症、肝炎、原発性胆汁性肝硬変、炎症性腸疾患、脊椎関節症、実験的自己免疫性脳脊髄炎、免疫性好中球減少症、類肉腫症および多発性筋炎、多発性動脈炎、血管皮膚炎、天疱瘡、類天疱瘡、肺出血性腎炎症候群、川崎病、全身性硬化症、抗リン脂質症候群、およびシェーグレン症候群からなる群から選択される。いくつかの実施例において、前記個体はヒトである。
【0350】
いくつかの実施例において、前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を有する個体を治療するための方法であって、抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)を含む有效量の医薬組成物を前記個体に投与することを含み、前記抗FcRn抗体はVHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:43、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:43と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:54、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:54と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含む、前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を有する個体を治療するための方法が提供される。
【0351】
例えば、いくつかの実施例において、前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を有する個体を治療するための方法であって、抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)を含む有效量の医薬組成物を前記個体に投与することを含み、前記抗FcRn抗体はVHまたは前記VHの変異体、およびVLまたは前記VLの変異体を含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:4を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:9を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:18を含むHC-CDR3とを含み、前記VHの変異体はHC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:26を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:31を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:37を含むLC-CDR3とを含み、前記VLの変異体はLC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものである、前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を有する個体を治療するための方法が提供される。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、全長の抗体である。いくつかの実施例において、前記全長の抗FcRn抗体は、IgG1またはIgG4抗体である。いくつかの実施例において、前記疾患または病症は、例えば、重症筋無力症(MG)、尋常性天疱瘡、視神経脊髄炎、ギラン・バレー症候群、ループス、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓血小板減少性紫斑病、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、グレーブス病、自己免疫性心筋炎、膜性糸球体腎炎、糖尿病、I型糖尿病、多発性硬化症、レイノー症候群、自己免疫性甲状腺炎、胃炎、セリアック病、白斑症、肝炎、原発性胆汁性肝硬変、炎症性腸疾患、脊椎関節症、実験的自己免疫性脳脊髄炎、免疫性好中球減少症、類肉腫症および多発性筋炎、多発性動脈炎、血管皮膚炎、天疱瘡、類天疱瘡、肺出血性腎炎症候群、川崎病、全身性硬化症、抗リン脂質症候群、およびシェーグレン症候群からなる群から選択される。いくつかの実施例において、前記個体はヒトである。
【0352】
いくつかの実施例において、前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を有する個体を治療するための方法であって、抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)を含む有效量の医薬組成物を前記個体に投与することを含み、前記抗FcRn抗体はVHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:44、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:44と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:55、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:55と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含む、前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を有する個体を治療するための方法が提供される。
【0353】
例えば、いくつかの実施例において、前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を有する個体を治療するための方法であって、抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)を含む有效量の医薬組成物を前記個体に投与することを含み、前記抗FcRn抗体はVHまたは前記VHの変異体、およびVLまたは前記VLの変異体を含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:1を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:10を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:19を含むHC-CDR3とを含み、前記VHの変異体はHC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:25を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:32を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:38を含むLC-CDR3とを含み、前記VLの変異体はLC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものである、前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を有する個体を治療するための方法が提供される。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は、全長の抗体である。いくつかの実施例において、前記全長の抗FcRn抗体は、IgG1またはIgG4抗体である。いくつかの実施例において、前記疾患または病症は、例えば、重症筋無力症(MG)、尋常性天疱瘡、視神経脊髄炎、ギラン・バレー症候群、ループス、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓血小板減少性紫斑病、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、グレーブス病、自己免疫性心筋炎、膜性糸球体腎炎、糖尿病、I型糖尿病、多発性硬化症、レイノー症候群、自己免疫性甲状腺炎、胃炎、セリアック病、白斑症、肝炎、原発性胆汁性肝硬変、炎症性腸疾患、脊椎関節症、実験的自己免疫性脳脊髄炎、免疫性好中球減少症、類肉腫症および多発性筋炎、多発性動脈炎、血管皮膚炎、天疱瘡、類天疱瘡、肺出血性腎炎症候群、川崎病、全身性硬化症、抗リン脂質症候群、およびシェーグレン症候群からなる群から選択される。いくつかの実施例において、前記個体はヒトである。
【0354】
いくつかの実施例において、前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を有する個体を治療するための方法であって、抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)を含む有效量の医薬組成物を前記個体に投与することを含み、前記抗FcRn抗体はVHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:45、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:45と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:56、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:56と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含む、前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を有する個体を治療するための方法が提供される。
【0355】
例えば、いくつかの実施例において、前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を有する個体を治療するための方法であって、抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)を含む有效量の医薬組成物を前記個体に投与することを含み、前記抗FcRn抗体はVHまたは前記VHの変異体、およびVLまたは前記VLの変異体を含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:1を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:11を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:20を含むHC-CDR3とを含み、前記VHの変異体はHC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:23を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:29を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:38を含むLC-CDR3とを含み、前記VLの変異体はLC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものである、前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を有する個体を治療するための方法が提供される。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は全長の抗体である。いくつかの実施例において、前記全長の抗FcRn抗体は、IgG1またはIgG4抗体である。いくつかの実施例において、前記疾患または病症は、例えば、重症筋無力症(MG)、尋常性天疱瘡、視神経脊髄炎、ギラン・バレー症候群、ループス、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓血小板減少性紫斑病、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、グレーブス病、自己免疫性心筋炎、膜性糸球体腎炎、糖尿病、I型糖尿病、多発性硬化症、レイノー症候群、自己免疫性甲状腺炎、胃炎、セリアック病、白斑症、肝炎、原発性胆汁性肝硬変、炎症性腸疾患、脊椎関節症、実験的自己免疫性脳脊髄炎、免疫性好中球減少症、類肉腫症および多発性筋炎、多発性動脈炎、血管皮膚炎、天疱瘡、類天疱瘡、肺出血性腎炎症候群、川崎病、全身性硬化症、抗リン脂質症候群、およびシェーグレン症候群からなる群から選択される。いくつかの実施例において、前記個体はヒトである。
【0356】
いくつかの実施例において、前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を有する個体を治療するための方法であって、抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)を含む有效量の医薬組成物を前記個体に投与することを含み、前記抗FcRn抗体はVHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:46、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:46と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:57、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:57と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含む、前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を有する個体を治療するための方法が提供される。
【0357】
例えば、いくつかの実施例において、前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を有する個体を治療するための方法であって、抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)を含む有效量の医薬組成物を前記個体に投与することを含み、前記抗FcRn抗体は、VHまたは前記VHの変異体、およびVLまたは前記VLの変異体を含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:5を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:12を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:21を含むHC-CDR3とを含み、前記VHの変異体はHC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:27を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:33を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:39を含むLC-CDR3とを含み、前記VLの変異体はLC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものである、前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を有する個体を治療するための方法が提供される。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は全長の抗体である。いくつかの実施例において、前記全長の抗FcRn抗体は、IgG1またはIgG4抗体である。いくつかの実施例において、前記疾患または病症は、例えば、重症筋無力症(MG)、尋常性天疱瘡、視神経脊髄炎、ギラン・バレー症候群、ループス、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓血小板減少性紫斑病、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、グレーブス病、自己免疫性心筋炎、膜性糸球体腎炎、糖尿病、I型糖尿病、多発性硬化症、レイノー症候群、自己免疫性甲状腺炎、胃炎、セリアック病、白斑症、肝炎、原発性胆汁性肝硬変、炎症性腸疾患、脊椎関節症、実験的自己免疫性脳脊髄炎、免疫性好中球減少症、類肉腫症および多発性筋炎、多発性動脈炎、血管皮膚炎、天疱瘡、類天疱瘡、肺出血性腎炎症候群、川崎病、全身性硬化症、抗リン脂質症候群、およびシェーグレン症候群からなる群から選択される。いくつかの実施例において、前記個体はヒトである。
【0358】
いくつかの実施例において、前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を有する個体を治療するための方法であって、抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)を含む有效量の医薬組成物を前記個体に投与することを含み、前記抗FcRn抗体はVHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:47、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:47と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:58、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:58と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含む、前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を有する個体を治療するための方法が提供される。
【0359】
例えば、いくつかの実施例において、前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を有する個体を治療するための方法であって、抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)を含む有效量の医薬組成物を前記個体に投与することを含み、前記抗FcRn抗体は、VHまたは前記VHの変異体、およびVLまたは前記VLの変異体を含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:5を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:13を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:21を含むHC-CDR3とを含み、前記VHの変異体はHC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:28を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:33を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:40を含むLC-CDR3とを含み、前記VLの変異体はLC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものである、前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を有する個体を治療するための方法が提供される。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は全長の抗体である。いくつかの実施例において、前記全長の抗FcRn抗体は、IgG1またはIgG4抗体である。いくつかの実施例において、前記疾患または病症は、例えば、重症筋無力症(MG)、尋常性天疱瘡、視神経脊髄炎、ギラン・バレー症候群、ループス、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓血小板減少性紫斑病、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、グレーブス病、自己免疫性心筋炎、膜性糸球体腎炎、糖尿病、I型糖尿病、多発性硬化症、レイノー症候群、自己免疫性甲状腺炎、胃炎、セリアック病、白斑症、肝炎、原発性胆汁性肝硬変、炎症性腸疾患、脊椎関節症、実験的自己免疫性脳脊髄炎、免疫性好中球減少症、類肉腫症および多発性筋炎、多発性動脈炎、血管皮膚炎、天疱瘡、類天疱瘡、肺出血性腎炎症候群、川崎病、全身性硬化症、抗リン脂質症候群、およびシェーグレン症候群からなる群から選択される。いくつかの実施例において、前記個体はヒトである。
【0360】
いくつかの実施例において、前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を有する個体を治療するための方法であって、抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)を含む有效量の医薬組成物を前記個体に投与することを含み、前記抗FcRn抗体はVHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:48、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:48と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:59、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:59と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含む、前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を有する個体を治療するための方法が提供される。
【0361】
例えば、いくつかの実施例において、前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を有する個体を治療するための方法であって、抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)を含む有效量の医薬組成物を前記個体に投与することを含み、前記抗FcRn抗体は、VHまたは前記VHの変異体、およびVLまたは前記VLの変異体を含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:6を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:14を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:22を含むHC-CDR3とを含み、前記VHの変異体はHC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものであり、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:27を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:33を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:39を含むLC-CDR3とを含み、前記VLの変異体はLC-CDRs中に多くとも約5個のアミノ酸置換を含むものである、前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を有する個体を治療するための方法が提供される。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は全長の抗体である。いくつかの実施例において、前記全長の抗FcRn抗体は、IgG1またはIgG4抗体である。いくつかの実施例において、前記疾患または病症は、例えば、重症筋無力症(MG)、尋常性天疱瘡、視神経脊髄炎、ギラン・バレー症候群、ループス、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓血小板減少性紫斑病、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、グレーブス病、自己免疫性心筋炎、膜性糸球体腎炎、糖尿病、I型糖尿病、多発性硬化症、レイノー症候群、自己免疫性甲状腺炎、胃炎、セリアック病、白斑症、肝炎、原発性胆汁性肝硬変、炎症性腸疾患、脊椎関節症、実験的自己免疫性脳脊髄炎、免疫性好中球減少症、類肉腫症および多発性筋炎、多発性動脈炎、血管皮膚炎、天疱瘡、類天疱瘡、肺出血性腎炎症候群、川崎病、全身性硬化症、抗リン脂質症候群、およびシェーグレン症候群からなる群から選択される。いくつかの実施例において、前記個体はヒトである。
【0362】
いくつかの実施例において、前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を有する個体を治療するための方法であって、抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)を含む有效量の医薬組成物を前記個体に投与することを含み、前記抗FcRn抗体はVHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:49、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:49と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:58、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:58と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含む、前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を有する個体を治療するための方法が提供される。
【0363】
例えば、いくつかの実施例において、前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を有する個体を治療するための方法であって、抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)を含む有效量の医薬組成物を前記個体に投与することを含み、前記抗FcRn抗体はVHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:50、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:50と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:60、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:60と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含む、前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を有する個体を治療するための方法が提供される。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は全長の抗体である。いくつかの実施例において、前記全長の抗FcRn抗体は、IgG1またはIgG4抗体である。いくつかの実施例において、前記疾患または病症は、例えば、重症筋無力症(MG)、尋常性天疱瘡、視神経脊髄炎、ギラン・バレー症候群、ループス、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓血小板減少性紫斑病、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、グレーブス病、自己免疫性心筋炎、膜性糸球体腎炎、糖尿病、I型糖尿病、多発性硬化症、レイノー症候群、自己免疫性甲状腺炎、胃炎、セリアック病、白斑症、肝炎、原発性胆汁性肝硬変、炎症性腸疾患、脊椎関節症、実験的自己免疫性脳脊髄炎、免疫性好中球減少症、類肉腫症および多発性筋炎、多発性動脈炎、血管皮膚炎、天疱瘡、類天疱瘡、肺出血性腎炎症候群、川崎病、全身性硬化症、抗リン脂質症候群、およびシェーグレン症候群からなる群から選択される。いくつかの実施例において、前記個体はヒトである。
【0364】
例えば、いくつかの実施例において、前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を有する個体を治療するための方法であって、抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)を含む有效量の医薬組成物を前記個体に投与することを含み、前記抗FcRn抗体はVHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:51、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:51と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:61、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:61と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含む、前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を有する個体を治療するための方法が提供される。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は全長の抗体である。いくつかの実施例において、前記全長の抗FcRn抗体は、IgG1またはIgG4抗体である。いくつかの実施例において、前記疾患または病症は、例えば、重症筋無力症(MG)、尋常性天疱瘡、視神経脊髄炎、ギラン・バレー症候群、ループス、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓血小板減少性紫斑病、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、グレーブス病、自己免疫性心筋炎、膜性糸球体腎炎、糖尿病、I型糖尿病、多発性硬化症、レイノー症候群、自己免疫性甲状腺炎、胃炎、セリアック病、白斑症、肝炎、原発性胆汁性肝硬変、炎症性腸疾患、脊椎関節症、実験的自己免疫性脳脊髄炎、免疫性好中球減少症、類肉腫症および多発性筋炎、多発性動脈炎、血管皮膚炎、天疱瘡、類天疱瘡、肺出血性腎炎症候群、川崎病、全身性硬化症、抗リン脂質症候群、およびシェーグレン症候群からなる群から選択される。いくつかの実施例において、前記個体はヒトである。
【0365】
例えば、いくつかの実施例において、前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を有する個体を治療するための方法であって、抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)を含む有效量の医薬組成物を前記個体に投与することを含み、前記抗FcRn抗体はVHおよびVLを含み、前記VHはアミノ酸配列SEQ ID NO:50、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:50と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含み、前記VLはアミノ酸配列SEQ ID NO:61、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:61と少なくとも80%(例えば、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%)の配列同一性を有する変異体を含む、前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を有する個体を治療するための方法が提供される。いくつかの実施例において、前記抗FcRn抗体は全長の抗体である。いくつかの実施例において、前記全長の抗FcRn抗体は、IgG1またはIgG4抗体である。いくつかの実施例において、前記疾患または病症は、例えば、重症筋無力症(MG)、尋常性天疱瘡、視神経脊髄炎、ギラン・バレー症候群、ループス、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓血小板減少性紫斑病、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、グレーブス病、自己免疫性心筋炎、膜性糸球体腎炎、糖尿病、I型糖尿病、多発性硬化症、レイノー症候群、自己免疫性甲状腺炎、胃炎、セリアック病、白斑症、肝炎、原発性胆汁性肝硬変、炎症性腸疾患、脊椎関節症、実験的自己免疫性脳脊髄炎、免疫性好中球減少症、類肉腫症および多発性筋炎、多発性動脈炎、血管皮膚炎、天疱瘡、類天疱瘡、肺出血性腎炎症候群、川崎病、全身性硬化症、抗リン脂質症候群、およびシェーグレン症候群からなる群から選択される。いくつかの実施例において、前記個体はヒトである。
【0366】
いくつかの実施例において、本明細書に記載の抗FcRn抗体は、IgG1またはIgG4定常ドメインを含む全長の抗FcRn抗体である。いくつかの実施例において、前記IgG1は、ヒトIgG1である。いくつかの実施例において、前記IgG4は、ヒトIgG4である。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:62を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:62からなる。いくつかの実施例において、重鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:63を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:63からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:64を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:64からなる。いくつかの実施例において、軽鎖定常領域は、アミノ酸配列SEQ ID NO:65を含むか、または、アミノ酸配列SEQ ID NO:65からなる。
【0367】
いくつかの実施例において、前記個体は、哺乳類動物(例えば、ヒト、ヒト以外の霊長類、ラット、マウス、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコなど)である。いくつかの実施例において、前記個体はヒトである。いくつかの実施例において、前記個体は、臨床患者、臨床試験ボランティア、実験動物などである。いくつかの実施例において、前記個体は、年齢が60歳未満(例えば、50歳未満、40歳未満、30歳未満、25歳未満、20歳未満、15歳未満、または10歳未満を含む)である。いくつかの実施例において、前記個体の年齢は、60歳超(例えば、70歳超、80歳超、90歳超または100歳超を含む)である。いくつかの実施例において、前記個体は、本明細書に記載の疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)の1つ以上と診断されているか、またはそのような疾患または病症に遺伝的に罹患しやすい。いくつかの実施例において、前記個体には、本明細書に記載の疾患または病症の1つ以上に関連する危険因子の1つ以上がある。
【0368】
いくつかの実施例において、本発明は、個体においてFcRnを産生する細胞に抗FcRn抗体(例えば、本明細書に記載の抗FcRn抗体のいずれか1つ、例如単離された抗FcRn抗体)を送達する方法であって、抗FcRn抗体を含む組成物を前記個体に投与することを含む、個体においてFcRnを産生する細胞に抗FcRn抗体(例えば、本明細書に記載の抗FcRn抗体のいずれか1つ、例如単離された抗FcRn抗体)を送達する方法を提供する。
【0369】
自己免疫性疾患および炎症性疾患または上記の任意の他の疾患の多くの診断方法、ならびにこれらの疾患の臨床的記載は、当該分野で既知である。このような方法は、例えば、免疫組織化学、PCR、および蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)を含むが、これらに限定されない。
【0370】
いくつかの実施例において、本発明に記載の抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)および/または組成物は、本明細書に記載の疾患または病症を治療するために、第2の薬剤、第3の薬剤または第4の薬剤(例えば、免疫媒介性疾患を治療するためのモノクローナル抗体療法、補体系の阻害剤、免疫阻害剤、免疫調節剤、またはそれらの組み合わせを含む)と併用して投与される。
【0371】
いくつかの実施例において、治療效果とは、標的疾患または病症を改善または予防すること、もしくは検出可能な治療効果または予防効果を示すことを指す。いくつかの実施例において、その効果は、循環IgGレベルの低下を指す。いくつかの実施例において、循環IgGレベルの低下は、抗FcRn抗体の投与後約1週間以上の期間に回復することができる。
【0372】
抗FcRn抗体の用量および投与方法
個体(例えば、ヒト)に投与される抗FcRn抗体(例えば、単離された抗FcRn抗体)組成物の剤量は、特定の組成物、投与方式、および治療される疾患のタイプによって異なり得る。いくつかの実施例において、組成物(例えば、単離された抗FcRn抗体を含む組成物)の量は、自己免疫性疾患および炎症性疾患の治療において客観的応答(例えば、部分応答または完全応答)を生じるのに有効である。いくつかの実施例において、抗FcRn抗体組成物の量は、個体において完全応答を産生するのに十分である。いくつかの実施例において、抗FcRn抗体組成物の量は、個体において部分応答を産生するのに十分である。いくつかの実施例において、抗FcRn抗体組成物の投与量(例えば、単独で投与される場合)は、抗FcRn抗体組成物を使用して治療する個体群において、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、64%、65%、70%、75%、80%、85%または90%を上回る全応答率を産生するのに十分である。本明細書に記載の治療方法に対する個体の応答は、例えば、循環IgGレベルの低下に基づいて決定され得る。
【0373】
いくつかの実施例において、組成物(例えば、単離された抗FcRn抗体を含む組成物)の量は、症状を制御し、個体における病状の悪化のリスクを低減するのに十分である。いくつかの実施例において、組成物の量は、症状を制御し、個体における病状の悪化のリスクを低減するのに十分である。いくつかの実施例において、抗FcRn抗体組成物を使用して治療する個体群において、組成物の量(例えば、単独で投与される場合)は、50%、60%、70%または77%より高い臨床利点を産生するのに十分である。
【0374】
いくつかの実施例において、組成物(例えば、単離された抗FcRn抗体を含む組成物)の量は、単独で投与される場合、または、第2の薬剤、第3の薬剤、および/または第4の薬剤と併用して投与する場合、同じ受験者における治療前と比較して、または治療を受けていない他の受験者における対応する活性と比較して、症状を制御し、個体における病状の悪化のリスクを低減するのに十分である。標準的な方法、例えば、精製酵素のイン・ビトロ検出、細胞による検出、動物モデル、またはヒト試験で治療効果を測定することができる。
【0375】
いくつかの実施例において、組成物が個体に投与される場合、組成物中の抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)の量は、毒性効果(即ち、臨床的に許容される毒性レベルよりも高い効果)を引き起こすレベルより低く、または潜在的な副作用が制御または許容されるレベルにある。
【0376】
いくつかの実施例において、組成物の量は、同じ投与計画に従った組成物の最大耐量(MTD)に近い。いくつかの実施例において、組成物の量は、MTDの80%、90%、95%または98%よりも高い。
【0377】
いくつかの実施例において、組成物における抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)の含有量は、0.001μg~1000μgの範囲内にある。
【0378】
上記のいずれかのいくつかの実施例において、組成物における抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)の有効量は、体重によって計算すれば、0.1μg/kg~100mg/kgの範囲内にある。
【0379】
抗FcRn抗体組成物は、例えば、静脈内注射、動脈内投与、腹腔注射、肺内投与、経口投与、吸入投与、血管内投与、筋肉注射、気管内投与、皮下注射、眼内投与、髄腔内投与、粘膜投与、または経皮投与を含む様々な経路を通じて、個体(例えば、ヒト)に投与することができる。いくつかの実施例において、組成物の徐放性製剤を使用する。いくつかの実施例において、組成物は、吸入投与される。いくつかの実施例において、組成物は、静脈内投与される。いくつかの実施例において、組成物は、経口投与される。いくつかの実施例において、組成物は、動脈内投与される。いくつかの実施例において、組成物は、腹腔内投与される。いくつかの実施例において、組成物は、肝内投与される。いくつかの実施例において、組成物は、肝動脈注入によって投与される。いくつかの実施例において、組成物は、第1の病変部位から離れた部位に投与される。
【0380】
製品および試薬キット
本発明のいくつかの実施例において、本明細書に記載の前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を治療するため、または個体のFcRnを産生する細胞に抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)を送達するために有用な物質を含む製品が提供される。前記製品は、容器と、当該容器に付随する容器上のラベルまたはパッケージ説明書を含みうる。適切な容器は、例えば、ボトル、バイアル、注射器などを含む。容器は、例えば、ガラスやプラスチックのような様々な材料で制作できる。通常、当該容器内は、本明細書に記載の、疾患または病症を効果的に治療することができる組成物を含み、そして、無菌ポートを有する(例えば、当該容器は、静脈輸液バッグまたは皮下注射針によって突き刺すことができるキャップ付きのバイアルであり得る。)ものである。組成物には、少なくとも1つの活性物質として、本発明に記載の抗FcRn抗体を含む。ラベルまたは外装説明書には、当該組成物を使用して治療できる特定の病症を示している。ラベルまたは外装説明書には、抗FcRn抗体組成物を患者に投与するための説明書がさらに含まれている。併用療法を含む製品および試薬キットのいずれも、本明細書の範囲内にある。
【0381】
外装説明書とは、通常、治療用製品の市販パッケージ内の説明書であり、これらの治療用製品の使用に関する適応症、使用法、投与量、投与、禁忌症および/または警告情報を含む。いくつかの実施例において、外装説明書は、この組成物がFcRnシグナル伝達に関連する疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を治療するために使用され得ることを示している。いくつかの実施例において、外装説明書は、この組成物が重症筋無力症(MG)、尋常性天疱瘡、視神経脊髄炎、ギラン・バレー症候群、ループス、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓血小板減少性紫斑病、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、グレーブス病、自己免疫性心筋炎、膜性糸球体腎炎、糖尿病、I型糖尿病、多発性硬化症、レイノー症候群、自己免疫性甲状腺炎、胃炎、セリアック病、白斑症、肝炎、原発性胆汁性肝硬変、炎症性腸疾患、脊椎関節症、実験的自己免疫性脳脊髄炎、免疫性好中球減少症、類肉腫症および多発性筋炎、多発性動脈炎、血管皮膚炎、天疱瘡、類天疱瘡、肺出血性腎炎症候群、川崎病、全身性硬化症、抗リン脂質症候群、およびシェーグレン症候群を含む疾患を治療するために使用され得ることを示している。
【0382】
また、前記製品は、第2の容器をさらに含んでもよく、当該第2の容器が、例えば、注射用静菌性水(BWFI)、リン酸緩衝液、グリーン溶液、またはグルコース溶液などの薬学的に許容される緩衝液を含む。また、当該第2の容器が、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、注射針、注射器などの商業的およびユーザーの観点から必要な他の材料も含みうる。
【0383】
また、様々な目的、例えば、本明細書に記載の前記疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を治療するため、または個体のFcRnを産生する細胞に抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)を送達するために、任意に製品と組み合わせて有用な試薬キットが提供される。本発明の試薬キットは、抗FcRn抗体組成物(または単位剤形および/または製品)を含む、1つ以上の容器を含み、いくつかの実施例において、さらに他の薬剤(例えば、本明細書に記載の薬剤など)および/または本明細書に記載の方法のいずれか1つと一致する取扱説明書を含む。当該試薬キットは、さらに、適切な治療個体を選択することに対する説明を含み得る。本発明の試薬キッ付きの取扱説明書は、通常、ラベルまたは外装説明書(試薬キットに含まれている紙)に書かれた説明であり、機械読取可能な説明(例えば、磁気または光学ストレージディスクにおける説明)も許容される。
【0384】
例えば、いくつかの実施例において、試薬キットは、抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)を含む組成物を含む。いくつかの実施例において、試薬キットは、a)本明細書に記載の抗FcRn抗体のいずれか1つを含む組成物、およびb)抗FcRn抗体の効果(例えば治療効果、検出効果)を増強することができる少なくとも一種の有効量の他の薬剤を含む。いくつかの実施例において、試薬キットは、a)本明細書に記載の抗FcRn抗体のいずれか1つを含む組成物、およびb)FcRnシグナル伝達に関連する疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を治療するために、抗FcRn抗体組成物を個体に投与するための取扱説明書とを含む。いくつかの実施例において、試薬キットは、a)本明細書に記載の抗FcRn抗体のいずれか1つを含む組成物、b)抗FcRn抗体の効果(例えば、治療效果、検出効果)を増強することができる少なくとも一種の有効量の追加の薬剤、およびc)FcRnシグナル伝達に関連する疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を治療するために抗FcRn抗体組成物および他の薬剤を個体に投与するための取扱説明書を含む。前記抗FcRn抗体および他の薬剤は、別々の容器または同じ容器に存在することができる。例えば、当該試薬キットは、一種の特定の組成物または二種以上の組成物を含み得、中では、一種の組成物が、抗FcRn抗体を含み、別の組成物が他の薬剤を含む。
【0385】
いくつかの実施例において、試薬キットは、抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)をコードする核酸(または核酸のセット)を含む。いくつかの実施例において、試薬キットは、a)抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)をコードする核酸(または核酸のセット)と、b)核酸(または核酸のセット)を発現する宿主細胞とを含む。いくつかの実施例において、試薬キットは、a)抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)をコードする核酸(または核酸のセット)と、b)i)宿主細胞における抗FcRn抗体の発現、ii)抗FcRn抗体を含む組成物の調製、およびiii)FcRnシグナル伝達に関連する疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を治療するために、抗FcRn抗体を含む組成物を個体に投与することに適した取扱説明書とを含む。いくつかの実施例において、試薬キットは、a)抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)をコードする核酸(または核酸のセット)と、b)核酸(または核酸のセット)を発現する宿主細胞と、c)i)宿主細胞における抗FcRn抗体の発現、ii)抗FcRn抗体を含む組成物の調製、およびiii)FcRnシグナル伝達に関連する疾患または病症(例えば、自己免疫性疾患および炎症性疾患)を治療するために、抗FcRn抗体を含む組成物を個体に投与することに適した取扱説明書とを含む。
【0386】
本発明に記載の試薬キットは、適切なパッケージに入っている。適切なパッケージとして、バイアル、ボトル、ジャー、柔軟な包装(例えば、密封されたポリエステルフィルムまたはビニール袋)などが含まれるが、これらに限定されない。試薬キットは、例えば、緩衝液および説明情報のような他の成分を任意的に提供しうる。従って、本発明は、バイアル(密封バイアルなど)、ボトル、ジャー、柔軟な包装などを含む製品をさらに提供する。
【0387】
抗FcRn抗体組成物の使用に関する取扱説明書には、通常、投与量、投与期間および投与経路のような情報が含まれる。容器は、単位用量、バルク(例えば、複数用量包装)またはサブ単位用量であり得る。例えば、個体に対して長期間(例えば、1週間、8日、9日、10日、11日、12日、13日、2週間、3週間、4週間、6週間、8週間、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、7ヶ月、8ヶ月、9ヶ月またはその以上)で効果的な治療を行うように、十分な用量の本明細書に記載の抗FcRn抗体(例えば、全長の抗FcRn抗体)を含む試薬キットが提供される。また、試薬キットは、複数単位用量の抗FcRn抗体、医薬組成物、および取扱説明書を含み得て、十分な量でパッケージし、病院薬局や調剤薬局などの薬局での保管および使用することに用いる。
【0388】
当業者は、本発明の範囲および趣旨における若干の実施例を認識できる。次に、以下の非限定的な実施例を参照して、本発明をより詳細に説明する。以下の実施例は、本発明をさらに説明するものであり、本発明の範囲に対するいずれか1つの方式で制限するものとして解釈されるべきではない。
【0389】
発明を実施するための形態
本発明の様々な特徴および実施例は、以下の代表的な例において例示されるが、これらは例示を目的とするものであり、限定するためのものではない。当業者であれば、具体的な例は、以下の特許請求の範囲により詳細に記載されるように、本発明を例示するだけであることを容易に理解できる。本発明に記載の各実施例および特徴は、発明に含まれる各実施例と交換可能かつ組み合わせ可能であると理解されるべきである。
【0390】
実施例1:FcRnポリペプチドの調製
本実施例は、本発明の抗FcRn抗体の誘発およびスクリーニングにおいて抗原として使用される新生児Fc受容体(FcRn)ポリペプチド構築物の調製を例示することを意図した。
【0391】
FcRnは、MHCクラスI様タンパク質およびβ2ミクログロブリンのヘテロダイマーであり、それぞれFCGRTおよびB2Mによってコードされる。ヒト組換えFCGRT&B2Mヘテロダイマータンパク質(hFcRn)をSinoBiological(cat# CT009-H08H)から購入した。合成ヒトFCGRT(アクセッション番号NP_001129491.1)、ヒトB2M(アクセッション番号NP_004039.1)、カニクイザルFcRn-alpha(cynoFcRn、アクセッション番号NP_001271480.1)、マウスFcRn-alpha(mFcRn、アクセッション番号NP_001344046.1)、またはラットFcRn-alpha(rFcRn、アクセッション番号NP_203502.1)を合成し、精製のためにHisタグに融合させ、ビオチン化のためにAviタグに融合させた。アミノ酸配列を表5に示す。これらの抗原は、当業者に既知かつ慣用の方法を用いてビオチン標識することができる。
【0392】
【0393】
【0394】
メーカーのプロトコルに従って、コード配列を発現ベクターにサブクローニングし、Expi293細胞で発現させた。簡単に説明すると、293F細胞をそれぞれ発現ベクターでトランスフェクトし、37°C、8%CO2、120rpmの条件下で5日間培養した。His-tagタンパク質を精製するために、回収後、清澄化した上清培地を、0.25M NaClおよび5mMイミダゾール(pH 8.0)を含有する20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.4)で予め平衡化したHistrapカラムに充填した。カラムを、0.25M NaClおよび15mMイミダゾール(pH 8.0)を含有するカラム容積の10倍の20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.4)で洗浄した後、0.25M NaClおよび100mMイミダゾール(pH 8.0)を含有する20mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.4)で溶出した。
【0395】
実施例2:マウス抗FcRn抗体の調製、スクリーニングおよび同定
本実施例は、マウス抗FcRn抗体を調製する方法、ならびにさらなる特性評価のためにスクリーニングおよび選択する方法を記載した。
【0396】
免疫接種および一次スクリーニング:Balb/cマウスを、Freund’sアジュバントと共に組換えヒトFCGRTで免疫した。エンドポイント力価をELISAによって測定し、脾臓およびリンパ節を採取した。ファージディスプレイライブラリーを、標準的なプロトコルに従って構築した。簡単に説明すると、最も高い力価を有するマウス脾臓からRNAを回収し、cDNAに逆転写し、VH-およびVK特異的プライマーを用いてVHおよびVKフラグメントを増幅した。ゲル抽出および精製後、VHおよびVKを連結して一本鎖Fvを生成し、SfiIを用いて当該一本鎖FvをファージディスプレイベクターpDAN5にクローニングした。連結後、TG1ファージディスプレイエレクトロポレーション活性細胞をベクターで形質導入して、ファージscFv抗体ディスプレイライブラリーを得た。一連の反復選択サイクルによって、FcRnに特異的なScFv抗体を、ファージディスプレイライブラリーから単離した。簡単に説明すると、ファージscFvライブラリー(2×1011PFU)をビオチン化ヒトFCGRTに添加し、37℃で2時間インキュベートした。ファージ結合ヒトFCGRTがストレプトアビジン被覆磁気ビーズ上に捕捉された。結合していないファージは洗浄された。TBSTで8-15回(スクリーニングの各ラウンドで洗浄回数を増加させた)洗浄した後、ヒトFCGRTに特異的に結合するファージをグリシン-HCl(pH2.2)で洗浄した。これらのファージを使用して、対数期にTG1細胞を形質導入し、アンピシリンを添加し、1時間培養した。ヘルパーファージを添加した後、細胞をシェーカー上で200rpm、28℃で一晩インキュベートした。翌日、培地を回収し、遠心分離して上清を得て、次のラウンドのスクリーニングに供した。一次スクリーニングプロセスの最後に、陽性scFv抗体のパネルを得た。
【0397】
ヒトIgGブロック試験:一次スクリーニングの陽性抗体を、ヒトIgGとヒトFcRnとの結合をブロックする能力についてさらにテストした。96ウェルELISAプレートをヒトIgG(Jackson ImmunoResearch,cat#009-000-003)で4℃にて一晩被覆した。被覆緩衝液を除去した後、1%BSAを含むブロッキング緩衝液をプレートに添加し、室温で1時間インキュベートして、非特異的結合をブロックした。次いで、プレートを洗浄緩衝液で洗浄した。ビオチン化ヒトFCGRTおよび上記で得られたファージ上清をプレートに添加し、室温で1時間インキュベートした。インキュベーション後、100μLのSA-HRP(1:20,000)を各ウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした。プレートを洗浄した後、50μL/ウェルのTMBを添加し、37℃で5-10分間インキュベートした。反応を2MのH2SO4で停止させた。ELISAの結果(OD450)を分析し、PRISMを用いて結合曲線を作成した。
【0398】
実施例3:全長のキメラ抗FcRn抗体の調製および特性評価
全長のキメラ抗FcRn抗体の調製:最も潜在力があるクローンを、ヒトIgG1またはIgG4重鎖定常ドメインおよびヒトκまたはλ軽鎖定常ドメインを有するIgG1またはIgG4抗体分子に再構成した。簡単に説明すると、VLを増幅した後、真核生物発現ベクターpTT5-K(κ定常ドメインを含む)またはpTT5-L(λ定常ドメインを含む)にそれぞれ導入し、VHをpTT5-H1(IgG1重鎖定常ドメインを含む)またはPTP5-H4(IgG4重鎖定常ドメインを含む)にそれぞれ導入した。軽鎖または重鎖を発現するプラスミドを抽出し、293F細胞に同時トランスフェクトした。細胞を37°C、8%CO2および120rpmで5日間培養した後、プロテインAアフィニティークロマトグラフィーを用いて培地を精製した。簡単に説明すると、回収後、清澄化した上清培地を、PBS緩衝液で平衡化したプロテインA樹脂と混合し、穏やかに回転させながら室温で1.5時間インキュベートした。インキュベーション後、懸濁液をカラムにロードし、樹脂を0.15M NaClを含有するPBS緩衝液で洗浄し、次いで50mMリン酸ナトリウム(pH 3.0)で溶出した。抗ヒトFcRn抗体の可変ドメイン配列を表2Aおよび表3Aにまとめた。
【0399】
精製された全長のキメラ抗体とhFcRnとの結合:精製された全長のキメラ抗体(IgG4に再構成された)を、hFcRn抗原結合ELISAに供した。簡単に説明すると、プレートを、PBSに1μg/mLのhFcRn(cat#CT009-H08H)で4°Cで一晩被覆した。被覆溶液を除去し、プレートをブロッキング緩衝液の添加によってブロックし、室温で1時間インキュベートした。次いで、プレートを洗浄緩衝液で6回洗浄した。PBSで連続希釈した精製抗体を個々のウェルに添加し、室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄緩衝液で6回洗浄した。次いで、1:8000に希釈したヤギ抗IgG Fab-HRP(Jackson ImmunoResearch cat# 109-036-097)を100μL/ウェルで添加し、37°Cで1時間インキュベートし、洗浄緩衝で6回洗浄し、TMB基質を50μL/ウェルで添加し、5-10分間インキュベートし、次いで、2MのH
2SO
4でクエンチした。Rozanolixizumabを参照抗体として使用し、FY38(FcRnに結合しない抗体、Staidson(Beijing) BioPharmaceuticals Co.,Ltd.製)を陰性コントロールとして使用した。ELISAの結果(OD450)を分析し、Graphpad PRISMを用いて結合曲線を作成した。
図1に示すように、キメラFcRn抗体はhFcRnに結合し、hFcRnに結合のEC50値を表6に示す。
【0400】
【0401】
ELISAによる抗FcRn抗体のFCGRTおよびB2Mへの結合の特異性の測定:簡単に説明すると、96ウェルプレートをヒトFCGRTまたはB2Mで4℃にて一晩被覆した。被覆緩衝液を除去した後、1%BSAを含むブロッキング緩衝液をプレートに添加し、室温で1時間インキュベートして、非特異的結合をブロックした。次いで、プレートを洗浄緩衝液で洗浄し、連続希釈した抗FcRn抗体を個々のウェルに添加し、室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄した後、1:8000に希釈したヤギ抗IgG Fab-HRPを100μL/ウェルで添加し、37°Cで1時間インキュベートし、プレートを洗浄した後、TMBを100μL/ウェルで添加し、37°Cで5-10分間インキュベートし、2MのH
2SO
4で反応を停止させた。抗B2M抗体(SinoBiological,cat#11976-MM35)を、B2M結合アッセイにおける陽性コントロールとして使用した。FY38をFCGRT結合アッセイにおける陰性コントロールとして使用した。Rozanolixizumabを参照抗体として使用した。ELISAの結果(OD450)を分析し、Graphpad PRISMを用いて結合曲線を作成した。
図2A-
図2Cに示すように、キメラFcRn抗体は、ヒトFcRnのFCGRTに結合するが(
図2A-2B)、B2Mに結合しない(
図2C)。
【0402】
異なる生物種のFcRnに対する交差反応性の解析:抗FcRn抗体が異なる生物由来のFcRnに結合するかどうかを試験するために、抗原結合ELISAアッセイを上記のように実施したが、アッセイにおいてhFcRnの代わりにcynoFcRn、mFcRnまたはrFcRnを使用した。ヒトIgG(Jackson ImmunoResearch、cat#009-000-003)を陽性コントロールとして使用した。
図3A-
図3Cに示すように、キメラFcRn抗体はcynoFcRnに結合するが(
図3A)、rFcRnに結合せず(
図3B)、mFcRnへの弱い結合を示す(
図3C)。
【0403】
ヒトIgGブロック試験:キメラ抗FcRn抗体を、ヒトIgGとヒトFcRnとの結合をブロックする能力についてテストした。96ウェルプレートをヒトIgG(Jackson ImmunoResearch,cat#009-000-003)で4℃にて一晩被覆した。被覆緩衝液を除去した後、1%BSAを含むブロッキング緩衝液をプレートに添加し、室温で1時間インキュベートした。次いで、プレートを洗浄緩衝液で洗浄した。ビオチン化ヒトFCGRTおよびキメラ抗FcRn抗体をウェルに添加し、室温で1時間インキュベートした。インキュベーション後、100μLのSA-HRP(1:20,000)を各ウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした。プレートを洗浄した後、100μL/ウェルのTMBを添加し、37°Cで5-10分間インキュベートした。反応を2MのH
2SO
4で停止させた。Rozanolixizumabを参照抗体として使用し、FY38を陰性コントロールとして使用した。ELISAの結果(OD450)を分析し、PRISMを用いて結合曲線を作成した。
図4に示すように、キメラ抗FcRn抗体は、EILSAによって検出されるように、ヒトIgGと効果的に競合し、ヒトIgGとヒトFCGRTとの結合を阻害した。IgGブロックのIC50を表7に示す。
【0404】
【0405】
IgGのリサイクリングアッセイ:FcRnは主に細胞内で発現され(Borvak J et al.1998,Int.Immunol.,10 (9) 1289-98 and Cauza K et al.2005,J.Invest.Dermatol.,124(1),132-139)、エンドソーム膜およびリソソーム膜に関連した。IgGのFc部分は、酸性pH(<6.5)ではFcRnに結合するが、中性の生理的pH(7.4)ではFcRnに結合せず(Rhagavan M et al.1995)、このpH値依存性はIgGの再利用を促進した。FcRnに結合したIgGは、飲作用によって取り込まれて酸性エンドソームに入ると、FcRnと共に細胞表面に再循環されるが、生理的に中性のpHではIgGは放出される(Ober R J et al.2004,The Journal of Immunology,172,2021-2029)。FcRnに結合していないIgGは、全てリソソーム分解経路に入る。
【0406】
アッセイ手順は、(Grevys A,et al.A human endothelial cell-based recycling assay for screening of FcRn targeted molecules.Nat Commun.2018 Feb 12;9(1):621;Smith B,et al.Generation and characterization of a high affinity anti-human FcRn antibody,rozanolixizumab,and the effects of different molecular formats on the reduction of plasma IgG concentration.MAbs.2018 Oct;10(7):1111-1130)に記載されているように行った。ヒトFCGRTおよびB2M二重遺伝子ベクターを用いて、メイディン・ダービー・イヌ腎臓(MDCK)細胞(ATCC、CCL-34TM)を安定にトランスフェクトした。ヒトIgGを回収することができる安定なMDCK細胞クローンを選択した。MDCK細胞を、実験条件が満たされるまで96ウェルプレートに接種し、完全な細胞培養培地を除去した。1%BSA(pH7.4)を含むHBSS緩衝液で洗浄した後、各ウェルに1%BSA(pH7.4)を含むHBSS緩衝液100μlを添加し、20分間インキュベートした。連続希釈した抗FcRn抗体を個々のウェルに添加し、次いで37°C、5%CO2の条件下で1時間インキュベートした。1%BSA(pH5.9)を含むHBSS緩衝液で洗浄した後、ビオチン化ヒトIgG(Jackson ImmunoResearch cat#009-060-003)を個々のウェルに添加した後、37°C、5%CO2の条件下で1時間インキュベートした。1%BSA(pH5.9)を含むHBSS緩衝液で洗浄した後、1%BSA(pH7.4)を含むHBS緩衝液100μlを各ウェルに添加した後、37°C、5%CO2の条件下で2時間インキュベートすることにより、表面に露出した結合IgGを上清に放出させた。次いで、MDCK細胞上清を回収した。
【0407】
別の96ウェルプレートをヤギ抗ヒトIgG Fc抗体で4℃にて一晩被覆し、被覆緩衝液を除去した後、1%BSAを含むブロッキング緩衝液をプレートに添加し、室温で1時間インキュベートした。プレートを洗浄した後、MDCK細胞上清を被覆した96ウェルプレートに添加し、37°Cで1.5時間インキュベートした。次いで、SA-HRPを添加し、37℃で1時間インキュベートした。プレートを洗浄した後、50μL/ウェルのTMBを添加し、37°Cで5-10分間インキュベートした。反応を2MのH2SO4で停止させた。Rozanolixizumabを参照抗体として使用し、FY38を陰性コントロールとして使用した。ELISAの結果(OD450)を分析し、PRISMを用いて阻害曲線を作成した。
【0408】
図5に示すように、抗FcRn抗体はヒトIgGのリサイクリングを効果的に阻害した。IgGのリサイクリングのIC50値を表8に示す。
【0409】
【0410】
HSAのFcRnへの結合阻害におけるキメラ抗FcRn抗体の効果:ヒト血清アルブミン(HSA)は、哺乳動物の血漿中で最も豊富なタンパク質であり、その長い循環半減期は、FcRnによって媒介されるエンドソーム分解のpH依存性サルベージに由来した。また、HSAは、脂肪酸(FAs)などの多くの内因性および外因性分子に結合した(Schmidt MM,et al.Crystal structure of an HSA/FcRn complex reveals recycling by competitive mimicry of HSA ligands at a pH-dependent hydrophobic interface.Structure.2013 Nov 5;21(11):1966-78)。96ウェルプレートを市販のHSA(Chengdu Rongsheng Pharmaceutical、S10940024)で4℃にて一晩被覆した。被覆溶液を除去した後、1%BSAを含有するブロッキング緩衝液をプレートに添加し、次いで室温で1時間インキュベートして非特異的結合をブロックした。プレートを洗浄緩衝液で洗浄し、続いてビオチン化ヒトFCGRTおよび連続希釈した抗FcRn抗体をウェルに添加し、室温で1時間インキュベートした。脂肪酸であるパルミチン酸(PA)を陽性コントロールとして使用した。インキュベーション後、100μLのSA-HRP(1:20000)を各ウェルに添加し、37℃で1時間インキュベートした。プレートを洗浄した後、100μL/ウェルのTMBを添加し、37°Cで5-10分間インキュベートした。反応を2MのH2SO4で停止させた。ELISAの結果(OD450)を分析し、Graphpad PRISMを用いて阻害曲線を作成した。キメラ抗FcRn抗体ZLP193、ZLP37、ZLP17、ZLP22、ZLP198、ZLP57、ZLP44、ZLP64およびZLP42は、HSAとFcRnとの結合を阻害しなかった(データは示さず)。
【0411】
実施例4:ZLP193のヒト化変異体の調製
本実施例は、抗FcRn抗体ZLP193のヒト化変異体の調製を説明する。
【0412】
抗FcRn抗体ZLP193のヒト化:ZLP193抗体由来の軽鎖可変領域(VL)および重鎖可変領域(VH)配列を、それぞれヒト生殖細胞株抗体配列と整列させた。ヒト生殖細胞株κ軽鎖(Gene ID-V gene:IGKV3-11*01)および重鎖(Gene ID-V gene:IGHV4-38-2*01)をヒトフレームワークとして使用した。
【0413】
マウスFcRn抗体軽鎖および重鎖の相補性決定領域(CDR)を、同定された最も近いヒトフレームワークにそれぞれ移植して、ヒト化抗体クローンを調製した。このプロセスにおいて、マウス抗体V領域由来のCDRをヒト生殖細胞株抗体V領域フレームワークに移植することによって、抗体ZLP193をヒト化させ、ドナーからアクセプター配列に移植されたCDRがKabat(Kabat et al.,1987)によって定義された。抗体活性を回復させるために、VH-VL相互作用界面のコンポーネントであるか、または「Vernier」領域のフレームワーク残基であるマウスV領域由来の多くのフレームワーク残基もヒト化配列に保持され、これは、CDR構造を調整し、抗原結合に適合するように微調整することができる(Foote et al.,1992)。
【0414】
ヒト化抗体(ZLP1-3-2、ZLP1-3-2FおよびZLP1-3-2Mと命名される)の可変ドメイン配列を表2Bおよび表3Bにまとめた。
【0415】
実施例6:ヒト化抗FcRn抗体のインビトロアッセイ
ヒト化抗FcRn抗体の組換えIgGバージョンの生成
【0416】
全長のIgG形式的ヒト化抗FcRn抗体(IgG4に再構成された)を、実施例3に記載のように調製した。
【0417】
ELISAによるFcRn結合の測定:ヒト化抗FcRn抗体ZLP1-3-2、ZLP1-3-2FおよびZLP1-3-2MのhFcRnまたはcynoFcRnに対する結合能力を、実施例3に記載のようにELISAによって測定した。FY38を陰性コントロールとして使用した。
【0418】
図6A-
図6Bに示すように、ヒト化抗体は、hFcRn(
図6A)またはhFcRn(
図6B)に高い親和性で結合できる。EC50値を表9に示す。
【0419】
【0420】
ELISAによる抗FcRn抗体とFCGRTおよびB2Mとの結合特異性の測定:このアッセイを、FY38を陰性コントロールとして使用し、実施例3に記載のように実施した。
【0421】
図7A-
図7Bに示すように、ヒト化抗FcRn抗体ZLP1-3-2、ZLP1-3-2FおよびZLP1-3-2Mは、ヒトFcRnタンパク質のFCGRTに結合した(
図7A)が、B2Mに結合しなかった(
図7B)。FCGRT結合のEC50値を表10に示す。
【0422】
【0423】
ヒト化抗FcRn抗体の結合動態の測定:Biacore T200(GE)を使用して抗FcRn抗体ZLP1-3-2FおよびZLP1-3-2M(IgG4に再構成された)の結合親和性を特性評価した。抗FcRn抗体をセンサーチップCM5に固定化した。hFcRnに対する親和性を、異なる濃度の抗体について測定した。濃度範囲は、10、5、2.5、1.25、0.625、0.3125、0.15625、0.078、0.039、0.0195および0nMを含む。SPR技術を使用して生成物の結合速度および解離速度を測定し、結合親和性を決定した。表11は、pH値6.0でのZLP1-3-2FおよびZLP1-3-2MのKon、KoffおよびKdを示す。
【0424】
【0425】
ヒトIgGブロック試験:ヒト化抗FcRn抗体ZLP-1-3-2、ZLP1-3-2FおよびZLP1-3-2Mを、実施例3に記載のようにヒトIgGとヒトFCGRTとの結合をブロックする能力について試験した。Rozanolixizumabを参照抗体として使用し、FY38を陰性コントロールとして使用した。
【0426】
図8に示すように、ヒトIgGとヒトFCGRTとの結合は、例示的な抗FcRn抗体のそれぞれによって阻害され、ヒト化抗FcRn抗体がヒトIgGと効果的に競合し、ヒトIgGとヒトFCGRTとの結合を阻害する能力を実証し、抗FcRn抗体が参照抗体であるRozanolixiumabと比較してより優れた有効性を示した。IgGブロックのIC50値を表12に示す。
【0427】
【0428】
IgGのリサイクリングアッセイ:ヒト化抗FcRn抗体ZLP-1-3-2、ZLP1-3-2FおよびZLP1-3-2Mを、実施例3に記載のようにヒトIgGのリサイクリングをブロックする能力について試験した。Rozanolixizumabを参照抗体として使用し、FY38を陰性コントロールとして使用した。
【0429】
図9に示すように、ヒト化抗FcRn抗体は、ヒトIgGのリサイクリングを阻害し、参照抗体であるRozanolixizumabと比較して、IgGのリサイクリングを阻害する効果が優れている、または同等の効果を示した。IgGのリサイクリングを阻害するIC50値を表13に示す。
【0430】
【0431】
HSA-FcRn結合アッセイ:HSAとFcRnとの結合を阻害するヒト化抗FcRn抗体ZLP-1-3-2、ZLP1-3-2FおよびZLP1-3-2Mの効果を、実施例3に記載のように試験した。パルミチン酸(PA)を陽性コントロールとして使用した。
図10に示すように、ヒト化抗FcRn抗体は、HSAとFcRnとの結合を阻害しなかった。
【0432】
実施例7:抗FcRn抗体の薬力学(PD)
マウスにおけるPD研究:ヒトIgGクリアランスに対する抗FcRn抗体の効果を試験するために、ヒトFCGRTを発現するトランスジェニックマウスを用いてインビボ試験を実施した。ヒトFcRnを発現するトランスジェニックマウスを使用して、ヒトIgGクリアランスに対する抗FcRn抗体の薬力学的活性を試験した。この実験では、6匹の健康な成体トランスジェニックマウス(C57BL/6-Fcgrttm1(hFcgrt)/Bcgen、Biocytogen Pharmaceuticals(Beijing)Co.,Ltd)を使用した。0時間の時点で、全てのマウスにヒトIgGを500mg/kgの用量で予め静脈内注射した。24時間の時点で、すなわち、ヒトIgGの注射の24時間後に、マウスに、ZLP193(IgG4に再構成された)、ZLP1-3-2M(IgG4に再構成された)、ZLP3-2F(IgG4に再構成された)をそれぞれ30mg/kgの用量で注射した。Rozanolixizumabを参照抗体として使用し、PBS緩衝液を陰性コントロールとして使用した。0時間の時点(ヒトIgG注射前)、24時間の時点(抗FcRn抗体注射前)、次いでヒトIgG注射後48時間、72時間、96時間、144時間および264時間の時点で各動物から血液サンプルを採取した。遠心分離後、血漿をELISAによるヒトIgG濃度の分析に使用した。ヒトIgGを注射した24時間後の血清IgGレベルを1.0(100%)に設定し、血清IgGの相対倍数を計算した。
【0433】
図11に示される結果は、静脈内注射後に、キメラ抗FcRn抗体ZLP193ならびにヒト化抗FcRn抗体ZLP1-3-2MおよびZLP1-3-2Fが、マウスにおけるヒトIgGを迅速に減少させることができることを示した(
図11においてhIgGと略す)。抗FcRn抗体注射の24時間後、即ち、48時間の時点では、3つの群全て(ZLP193、ZLP1-3-2MおよびZLP1-3-2F)では、血清IgGレベルが100%血清IgGレベルの約0.4-0.5倍に低下したが、PBS対照群では、約0.7倍に低下しただけであった。抗FcRn抗体注射の48時間後、即ち、72時間の時点で、3つの群全てでは、血清IgGレベルが約0.2倍に低下したが、PBS対照群では、100%血清IgGレベルに対して約0.6-0.7倍を維持していた。抗FcRn抗体注射の72時間後、即ち、96時間の時点で、3つの群全てでは、血清IgGレベルが約0.1倍に低下したが、PBS対照群では、血清IgGレベルが100%血清IgGレベルの約0.7倍のままであった。以上より、PD測定の結果、ZLP193、ZLP1-3-2MおよびZLP1.3-2Fは、インビボで血清IgGを分解する良好な有効性を有し、参照抗体であるRozanolixizumabと比較して有意に優れた薬力学的活性(P<0.01)を有することを示した。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-02-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された抗FcRn抗体であって、前記抗FcRn抗体は、V
H
およびV
L
を含み、
前記V
Hはアミノ酸配列SEQ ID NO:1を含むHC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:7を含むHC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:15を含むHC-CDR3とを含み
、
前記V
Lはアミノ酸配列SEQ ID NO:23を含むLC-CDR1と、アミノ酸配列SEQ ID NO:29を含むLC-CDR2と、アミノ酸配列SEQ ID NO:34を含むLC-CDR3とを含
む、単離された抗FcRn抗体。
【請求項2】
前記抗FcRn抗体は、以下の(i)~(iv)のいずれかを含むものであり、
(i)V
HおよびV
Lを含み、
前記V
Hはアミノ酸配列SEQ ID NO:41、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:41と少なくと
も80%の配列同一性を有する変異体を含み、
前記V
Lはアミノ酸配列SEQ ID NO:52、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:52と少なくと
も80%の配列同一性を有する変異体を含み、
(ii)V
HおよびV
Lを含み、
前記V
Hはアミノ酸配列SEQ ID NO:50、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:50と少なくと
も80%の配列同一性を有する変異体を含み、
前記V
Lはアミノ酸配列SEQ ID NO:60、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:60と少なくと
も80%の配列同一性を有する変異体を含み、
(iii)V
HおよびV
Lを含み、
前記V
Hはアミノ酸配列SEQ ID NO:51、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:51と少なくと
も80%の配列同一性を有する変異体を含み、
前記V
Lはアミノ酸配列SEQ ID NO:61、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:61と少なくと
も80%の配列同一性を有する変異体を含み、
(iv)V
HおよびV
Lを含み、
前記V
Hはアミノ酸配列SEQ ID NO:50、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:50と少なくと
も80%の配列同一性を有する変異体を含み、
前記V
Lはアミノ酸配列SEQ ID NO:61、またはアミノ酸配列SEQ ID NO:61と少なくと
も80%の配列同一性を有する変異体を含む、
請求項
1に記載の単離された抗FcRn抗体。
【請求項3】
前記抗FcRn抗体は
、0.1pM
~1nMのKd値でヒトFcRnに結合する、請求項
1に記載の単離された抗FcRn抗体。
【請求項4】
前記抗FcRn抗体は、Fcフラグメントを含む、請求項
1に記載の単離された抗FcRn抗体。
【請求項5】
前記抗FcRn抗体は、全長のIgG抗体である、請求項
4に記載の単離された抗FcRn抗体。
【請求項6】
前記抗FcRn抗体は、全長のIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4抗体である、請求項
5に記載の単離された抗FcRn抗体。
【請求項7】
前記抗FcRn抗体は、キメラ抗体、ヒト抗体、またはヒト化抗体である、請求項
1に記載の単離された抗FcRn抗体。
【請求項8】
前記抗FcRn抗体は、Fab、Fab’、F(ab)’
2、Fab’-SH、一本鎖Fv(scFv)、Fvフラグメント、dAb、Fd、および、ダイアボディからなる群から選択される抗原結合性フラグメントである、請求項
1に記載の単離された抗FcRn抗体。
【請求項9】
請求項
1に記載の抗FcRn抗体をコードする、単離された核酸分子。
【請求項10】
請求項
9に記載の単離された核酸分子を含む、ベクター。
【請求項11】
請求項
9に記載の単離された核酸分
子を含む、単離された宿主細胞。
【請求項12】
請求項10に記載のベクターを含む、単離された宿主細胞。
【請求項13】
a)前記抗FcRn抗体を効果的に発現する条件で請求項
11または12に記載の前記宿主細胞を培養すること、および
b)前記宿主細胞から、発現された抗FcRn抗体を得ることを含む、単離された抗FcRn抗体の調製方法。
【請求項14】
請求項1-
8のいずれか1項に記載の抗FcRn抗体、請求項
9に記載の核酸分子、請求項
10に記載のベクター、
請求項11に記載の単離された宿主細胞、または請求項
12に記載の単離された宿主細胞と薬学的に許容される担体とを含む、
必要とする個体における疾患または病症を治療するための医薬組成物。
【請求項15】
前記疾患または病症は、自己免疫性疾患または炎症性疾患である、請求項
14に記載の
医薬組成物。
【請求項16】
前記疾患または病症は、重症筋無力症(MG)、尋常性天疱瘡、視神経脊髄炎、ギラン・バレー症候群、ループス、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、血栓血小板減少性紫斑病、関節リウマチ(RA)、全身性エリテマトーデス(SLE)、グレーブス病、自己免疫性心筋炎、膜性糸球体腎炎、糖尿病、I型糖尿病、多発性硬化症、レイノー症候群、自己免疫性甲状腺炎、胃炎、セリアック病、白斑症、肝炎、原発性胆汁性肝硬変、炎症性腸疾患、脊椎関節症、実験的自己免疫性脳脊髄炎、免疫性好中球減少症、類肉腫症および多発性筋炎、多発性動脈炎、血管皮膚炎、天疱瘡、類天疱瘡、肺出血性腎炎症候群、川崎病、全身性硬化症、抗リン脂質症候群、および、シェーグレン症候群からなる群から選択される、請求項
15に記載の
医薬組成物。
【国際調査報告】