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特表2024-529115シュラウドのための結合機構を備える溶融金属を鋳造するためのモールド、溶融金属を鋳造するための鋳造装置、及び溶融金属を鋳造するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】シュラウドのための結合機構を備える溶融金属を鋳造するためのモールド、溶融金属を鋳造するための鋳造装置、及び溶融金属を鋳造するための方法
(51)【国際特許分類】
   B22C 9/08 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
B22C9/08 E
B22C9/08 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024508402
(86)(22)【出願日】2022-08-04
(85)【翻訳文提出日】2024-04-03
(86)【国際出願番号】 EP2022072007
(87)【国際公開番号】W WO2023016927
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】21190734.0
(32)【優先日】2021-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21190735.7
(32)【優先日】2021-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508362284
【氏名又は名称】フォセコ・インターナショナル・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100187702
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 律生
(74)【代理人】
【識別番号】100162204
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(72)【発明者】
【氏名】ダビト ハラビナ
【テーマコード(参考)】
4E093
【Fターム(参考)】
4E093PA01
4E093PA06
4E093PA10
(57)【要約】
本発明は、中空シャフト(10)に取り付けられた漏斗(11)を備える、鋳造装置(1)のシュラウド(9)のためのモールド/シュラウド結合機構(14)を備える、溶融金属を鋳造するためのモールド(2)を指し、モールド/シュラウド結合機構は、漏斗(11)を受け入れ、かつシュラウド(9)を保持するためのシート部材(15)と、モールドの上面(8)に固定され、かつ少なくとも1つのコンプライアント要素(17)によってシート部材(15)に結合されたベース部材(16)と、を備え、その結果、シート部材(15)は、ベース部材(16)から分離しており、少なくとも1つのコンプライアント要素を変形させる荷重をシート部材(15)に加える時に、ベース部材(16)に対して移動可能になる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属を鋳造するためのモールド(2)であって、
●キャビティ入口(4)を有する鋳造キャビティ(3)、
●フィルタハウジング及びダイバータハウジングの中から選択されるハウジング(6)であって、前記キャビティ入口(4)と流体連通しているハウジング出口(6o)、及びボア(7)と流体連通しているハウジング入口(6i)を有する、ハウジング(6)、
●前記モールドの上面(8)と前記ハウジング入口(6i)との間に延びるボア(7)、
●鋳造装置(1)のシュラウド(9)をシュラウド鋳造位置に収容するように構成されたモールド/シュラウド結合機構(14)であって、前記シュラウドが、中空であり、かつシュラウド出口(9o)を備える遠位端(10d)を有するシャフト(10)の近位端に取り付けられた漏斗(11)を含み、
前記シュラウド鋳造位置が、前記遠位端(10d)が前記ハウジング入口(6i)に挿入され、前記シュラウド出口(9o)が前記ハウジング(6)に囲まれるように前記ボア(7)に前記シャフト(10)が収容されているときである、モールド/シュラウド結合機構(14)、を備え、
前記モールド/シュラウド結合機構(14)が、
○前記上面(8)に固定されたベース部材(16)と、
○前記漏斗(11)を受け入れ、前記シュラウド(9)を前記シュラウド鋳造位置に保持するように構成されたシート部材(15)と、を備えること、
並びに前記シート部材(15)が、少なくとも1つのコンプライアント要素(17)によって、前記ベース部材(16)に結合されており、その結果、前記シート部材(15)が、前記ベース部材(16)から分離しており、前記少なくとも1つのコンプライアント要素(17)を変形させる荷重を前記シート部材(15)に加える時に、前記ベース部材(16)に対して移動可能になることを特徴とする、モールド(2)。
【請求項2】
前記コンプライアント要素(17)が、
●前記シート部材(15)と前記ベース部材(16)との間に延びる、プロセス温度でのエラストマー材料、若しくはばね、好ましくは渦巻ばね(17s)を含む1つ以上の弾性要素、又は
●前記荷重を前記シート部材(15)に加える時に変形するように構成された、1つ以上のバッグ内に封入された自由流動材料、を含む、請求項1に記載のモールド。
【請求項3】
前記ベース部材(16)及びシート部材(15)が各々、前記シュラウド(9)のための前記ボア(7)に向かうリードインを画定するように互いに位置合わせされた中央穴を備え、前記モールド/シュラウド結合機構(14)が、前記シート部材(15)と前記ベース部材(16)との間に延びる少なくとも3つの弾性要素、好ましくは少なくとも3つの渦巻ばね(17s)を備え、前記少なくとも3つの弾性要素が、好ましくは、前記シート部材(15)及び前記ベース部材(16)の前記中央穴の円周の周りに等間隔に配置されている、請求項2に記載のモールド(2)。
【請求項4】
モールドアセンブリであって、
●請求項1~3のいずれか一項に記載のモールド(2)と、
●請求項1に記載のシュラウド(9)であって、前記シート部材(15)が、前記漏斗(11)を受け入れ、かつ前記シュラウド(9)を前記シュラウド鋳造位置に保持する状態で、前記モールド(2)に収容されている、請求項1に記載のシュラウド(9)と、を備える、モールドアセンブリ。
【請求項5】
前記シュラウド(9)が、前記漏斗(11)と前記シート部材(15)との間の環状ギャップを密封し、かつ前記漏斗(11)のためのシートを画定する、鋳物砂の充填物(22)で前記シート部材(15)に固定されており、前記シート部材(15)が、好ましくは、前記環状ギャップの境界を画定するスリーブ(21)を備える、請求項4に記載のモールドアセンブリ。
【請求項6】
鋳造装置であって、
●請求項1~3のいずれか一項に記載のモールド(2)、及び
●請求項1に記載のシュラウド(9)、
●取鍋(103)であって、溶融金属を前記取鍋から分配するために、前記取鍋(103)の基部に設けられたノズル(12)を備え、前記ノズル(12)が、前記シュラウド(9)の前記漏斗(11)に可逆的かつ密封的に係合するように構成されており、前記取鍋(103)が、前記モールド(2)に対して、例えば、
○前記ノズル(12)を前記モールド/シュラウド結合機構(14)の上に実質的に垂直に位置決めするように、かつ
○前記ノズル(12)が、前記シート部材(15)に前記荷重を加えることによって、前記シュラウド鋳造位置にある前記シュラウド(9)の前記漏斗(11)に密封的に係合されるまで垂直に下げられるように、変位するように構成されている、取鍋(103)、を備える、鋳造装置。
【請求項7】
好ましくは、前記漏斗(11)と前記ノズル(12)との間にシールを形成することなく、前記シュラウド(9)を前記ノズル(12)に可逆的に把持するように構成された取鍋/シュラウド結合機構(140)を備え、前記取鍋/シュラウド結合機構(140)が、
○前記シュラウド(9)の前記漏斗に固定された漏斗アダプタ(140f)であって、保持手段を備える、漏斗アダプタ(140f)と、
○前記取鍋(103)の前記基部又は前記ノズル(12)に固定され、かつ前記漏斗アダプタ(140f)の前記保持手段と係合して、ロック位置で前記ノズル(12)に前記シュラウド(9)を可逆的にロックするように構成された、ノズルアダプタ(140n)と、を備える、請求項6に記載の鋳造装置。
【請求項8】
前記漏斗アダプタ(140f)の前記保持手段が、保持ペグ(109)を含み、前記ノズルアダプタ(140n)が、前記保持ペグ(109)と可逆的に係合するように構成された締結フック(107)を含み、好ましくは、前記保持ペグ(109)と自己係合するように構成されている、請求項7に記載の鋳造装置。
【請求項9】
前記漏斗アダプタ(140f)の前記保持手段が、1つ以上の保持ペグ(109)を含み、前記ノズルアダプタ(140n)が、前記1つ以上の保持ペグと相互作用して、前記ロック位置で前記ノズル(12)に前記シュラウド(9)を可逆的にロックするように構成されたバヨネット結合要素を備える、請求項7に記載の鋳造装置。
【請求項10】
前記漏斗アダプタ(140f)が、接着材料(113)で前記シュラウド(9)に固定されている、請求項7~9のいずれか一項に記載の鋳造装置。
【請求項11】
前記モールド/シュラウド結合機構(14)の前記シート部材(15)が、前記漏斗アダプタ(140f)を受け入れ、かつ前記シュラウド(9)を前記シュラウド鋳造位置に保持するように構成されている、請求項7~10のいずれか一項に記載の鋳造装置。
【請求項12】
前記モールド(2)が、請求項3に記載されたものであり、前記シート部材(15)が、前記シート部材の前記中央穴を中心に配置された円錐形部分を含み、前記円錐形部分が、前記取鍋(103)が、前記シュラウド(9)が前記ノズル(12)に可逆的にロックされた状態で垂直に下げられる時に、前記シュラウドを前記ボア(7)と位置合わせして誘導するように構成されている、請求項11に記載の鋳造装置。
【請求項13】
請求項6~12のいずれか一項に記載の鋳造装置を用いて溶融金属を鋳造するための方法であって、
●前記漏斗(11)に係合された前記ノズル(12)が、前記シート部材(15)に置かれている前記漏斗に荷重を加えるまで、前記取鍋(103)を垂直に下げ、したがって、前記シート部材(15)を前記コンプライアント要素(17)に逆らって前記ベース部材(16)に対して移動させ、前記ノズル(12)と前記シュラウド鋳造位置にある前記シュラウド(9)との間の密封接触を形成すること、
●前記溶融金属が、前記取鍋(103)から前記鋳造キャビティ(3)に、前記ノズル(12)、前記シュラウド(9)、及び前記ハウジング(6)を通って流れることを可能にすること、を含む、方法。
【請求項14】
前記鋳造装置が、請求項4又は5に記載のモールドアセンブリを備え、前記取鍋(103)を垂直に下げることによって前記ノズル(12)を前記漏斗(11)に係合させることと、前記ノズル(12)の前記取鍋(103)を更に下げて、前記漏斗(11)に前記荷重を加えることによって、前記ノズル(12)と前記シュラウド(9)との間に前記密封接触を形成することと、を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記鋳造装置が、請求項7~12のいずれか一項に記載のものであり、
●前記ノズル(12)を前記シュラウド(9)の前記漏斗(11)に係合させ、
○前記シュラウド(9)の前記漏斗に固定された前記漏斗アダプタ(140f)の前記保持手段を、
○前記取鍋(103)の前記基部又は前記ノズル(12)に固定された前記ノズルアダプタ(140n)に係合させて、
例えば、ロック位置で前記ノズル(12)に前記シュラウド(9)をロックすることによって、前記取鍋/シュラウド結合機構(140)を用いて前記シュラウド(9)を前記ノズル(12)に把持すること、
●前記ノズル(12)にロックされた前記シュラウド(9)を、前記モールド/シュラウド結合機構(14)の上に実質的に垂直に位置決めすること、
●前記シュラウド(9)が、前記漏斗(11)が前記シート部材(15)上に静止している状態で、前記シュラウド鋳造位置に到達するまで垂直に下げること、
●前記ノズル(12)の前記取鍋(103)を更に下げて、前記漏斗(11)に前記荷重を加えることによって、前記ノズル(12)と前記シュラウド(9)との間に前記密封接触を形成すること、を含む、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造装置のシュラウドのためのモールド/シュラウド結合機構を備えるモールドを指す。また、モールド/シュラウド結合機構を備える溶融金属を鋳造するためのモールドアセンブリ及び鋳造装置、並びに溶融金属を鋳造する方法に関する。本発明のモールド/シュラウド結合機構は、人間のオペレータ又はロボットの介入を伴わずに、取鍋のノズルとシュラウドとの間の密封接触を自動的かつスムーズに形成することを可能にする。
【背景技術】
【0002】
金属鋳造プロセスの主な課題の1つは、鋳造中の空気の混入を回避することである。これは、気泡及び酸化膜を含む欠陥を引き起こし、鋳造において亀裂を引き起こす可能性がある。空気の混入を避けるために、溶融金属を、取鍋とモールドとの間に注ぐ時の金属の再酸化を低減するシュラウドの助けを借りて鋳造することが当該技術分野で既知である。図6に示されるように、シュラウド(10)は、例えば、その近位端(=入口)に漏斗を有する中空の細長いシャフトであり、モールドのボアに挿入され、その遠位端(=出口)が、例えば、鋳造キャビティの下に位置するモールドのランニングシステムと連通する。取鍋のノズル(12)を、漏斗のレベルにあるシュラウド入口に結合する時の重要な工程は、2つの間に密封接触を形成すること、及び鋳造動作の全期間中に密封接触を維持することである。
【0003】
溶融金属を鋳造するためのシステムは、欧州特許出願第3463715B1号に開示されている。このシステムは、
●入口、及びモールドの上面と入口との間に延びるボアを有する鋳造キャビティを備えるモールド、
●漏斗及び中空シャフトを備えるシュラウドであって、漏斗が、上面に隣接してモールドの外側に位置し、中空シャフトが、ボアに収容されており、その中で移動可能である、シュラウド、を含む。
【0004】
ノズルとシュラウドの漏斗との間に密封接触を形成するために、EP3463715B1は、モールドの上面に位置するリフト機構を提案する。リフト機構は、同心円状に配置された第1のカラー及び第2のカラーを備え、第1のカラーが、モールドの上面に固定されており、第2のカラーが、モールドの上面に回転可能に結合されており、シュラウドの漏斗を支持する。傾斜スロットに係合される従動子を含むバヨネットシステムは、第2のカラーが、回転によってモールドの上面に対して持ち上げられることを可能にし、したがって、シュラウドの直線運動を引き起こす。バヨネットシステムの回転は、オペレータによって行われ、オペレータは、接触している耐火材料を損傷することなく、漏斗を十分に持ち上げて、密封接触を形成するために、バヨネットの回転角度を投与しなければならない。オペレータは、必ず取鍋のノズルの近くにいなければならず、これは、セキュリティの観点からは理想的ではない。更に、1人のオペレータが、取鍋ノズルを漏斗の上に中心配置及び位置合わせするために必要とされ、別のオペレータが、ハンドルを介してリフティング機構を操作するために必要とされる。シュラウドの漏斗がノズルと接触すると、鋳造動作の全期間中、リフト機構はもはや移動しない。これは、シュラウドを通る溶融金属の流れが、ノズルと漏斗との間の接触領域に伝播する振動を引き起こし、耐火材料の摩耗又はひび割れを引き起こす場合があるため、問題になる可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、操作が容易であり、シュラウドの漏斗を取鍋のノズルと係合させて、密封接触を形成するための、人間の介入が少ないモールド/シュラウド結合機構を備えるモールドを提供することである。更に、本発明の目的は、従来技術で知られているシステムよりも操作が容易かつ安全である鋳造装置を提供することである。
【0006】
本発明の更なる目的は、上記の種類のモールド/シュラウド結合機構を用いて溶融金属を鋳造する方法を提供することである。
【発明の概要】
【0007】
これらの及び他の目的は、独立請求項の特徴によって達成される。本発明の好ましい実施形態は、従属請求項によってカバーされる。
【0008】
第1の態様では、本発明は、溶融金属を鋳造するためのモールドであって、
●キャビティ入口を有する鋳造キャビティ、
●フィルタハウジング及びダイバータハウジングの中から選択されるハウジングであって、キャビティ入口と流体連通しているハウジング出口、及びボアと流体連通しているハウジング入口を有する、ハウジング、
●モールドの上面とハウジング入口との間に延びるボア、
●鋳造装置のシュラウドをシュラウド鋳造位置に収容するように構成されたモールド/シュラウド結合機構であって、シュラウドが、中空であり、かつシュラウド出口を備える遠位端を有するシャフトの近位端に取り付けられた漏斗を含み、シュラウド鋳造位置が、その遠位端が、シュラウド出口がハウジングに囲まれるようにボアにシャフトが収容されているときである、モールド/シュラウド結合機構、を備える、モールドに関する。
【0009】
モールドは、モールド/シュラウド結合機構が、
●上面に固定されたベース部材、
●漏斗を受け入れ、シュラウドをシュラウド鋳造位置に保持するように構成されたシート部材、を備えることを特徴とする。
【0010】
シート部材は、少なくとも1つのコンプライアント要素によってベース部材に結合されており、その結果、シート部材は、ベース部材から分離しており、少なくとも1つのコンプライアント要素を変形させる荷重をシート部材に加える時に、ベース部材に対して移動可能になる。
【0011】
コンプライアント要素は、弾性構成を画定する1つ以上の弾性要素を含むことができる。1つ以上の弾性要素は、シート部材とベース部材との間に延びる、プロセス温度でのエラストマー材料、又はばね、好ましくは渦巻ばねを含むことができる。代替的に、コンプライアント要素は、荷重をシート部材に加える時に変形するように構成された、1つ以上のバッグ内に封入された自由流動材料を含むことができる。
【0012】
好ましい実施形態では、ベース部材及びシート部材は各々、シュラウドのためのボアに向かうリードを画定するように互いに位置合わせされた中央穴を備える。上記で画定される弾性構成では、モールド/シュラウド結合機構は、シート部材とベース部材との間に延びる少なくとも3つの弾性要素、好ましくは少なくとも3つの渦巻ばねを備えることができ、少なくとも3つの弾性要素は、好ましくは、シート部材及びベース部材の中央穴の円周の周りに等間隔に配置されている。
【0013】
第2の態様では、本発明は、
●本発明によるモールドと、
●中空であり、かつシュラウド出口を備える遠位端を有するシャフトの近位端に取り付けられた漏斗を含むシュラウドであって、シート部材が、漏斗を受け入れ、かつシュラウドをシュラウド鋳造位置に保持する状態で、モールドに収容されている、シュラウドと、を備え、
シュラウド鋳造位置が、シュラウド出口がハウジング内に囲まれた状態でシャフトの遠位端がハウジング入口を通って挿入されるようにシャフトがボアに収容されているときである、モールドアセンブリに関する。
【0014】
モールドアセンブリの好ましい実施形態では、シュラウドは、漏斗とシート部材との間の環状ギャップを密封し、かつ漏斗のためのシートを画定する、鋳物砂の充填物でシート部材に固定されており、シート部材は、好ましくは、環状ギャップの境界を画定するスリーブを備える。
【0015】
第3の態様では、本発明は、
●本発明によるモールド、及び
●中空であり、かつシュラウド出口を備える遠位端を有するシャフトの近位端に取り付けられた漏斗を備える、シュラウド、
●取鍋であって、溶融金属を取鍋から分配するために、取鍋の基部に設けられたノズルを備え、ノズルが、シュラウドの漏斗に可逆的かつ密封的に係合するように構成されており、取鍋が、モールドに対して、例えば、
○ノズルをモールド/シュラウド結合機構の上に実質的に垂直に位置決めするように、かつ
○ノズルが、シート部材に荷重を加えることによって、シュラウド鋳造位置にあるシュラウドの漏斗に密封的に係合されるまで垂直に下げられるように、変位するように構成されている、取鍋、を備え、
シュラウド鋳造位置が、シュラウド出口がハウジング内に囲まれた状態でシャフトの遠位端がハウジング入口を通って挿入されるようにシャフトがボアに収容されているときである、鋳造装置に関する。
【0016】
本発明による鋳造装置の把持構成では、鋳造装置は、好ましくは漏斗とノズルとの間にシールを形成することなく、シュラウドをノズルに可逆的に把持するように構成された取鍋/シュラウド結合機構を備え、取鍋/シュラウド結合機構は、
●シュラウドの漏斗に固定された漏斗アダプタであって、保持手段を備える、漏斗アダプタと、
●取鍋の基部又はノズルに固定され、かつ漏斗アダプタの保持手段と係合して、ロック位置でノズルにシュラウドを可逆的にロックするように構成された、ノズルアダプタと、を備える。
【0017】
鋳造装置の把持構成の好ましい実施形態では、
●漏斗アダプタの保持手段は、保持ペグを含み、ノズルアダプタは、保持ペグと可逆的に係合するように構成され、好ましくは保持ペグと自己係合するように構成された締結フックを含むか、又は
●漏斗アダプタの保持手段は、1つ以上の保持ペグを含み、ノズルアダプタは、1つ以上の保持ペグと相互作用して、ロック位置でノズルにシュラウドを可逆的にロックするように構成されたバヨネット結合要素を備える。
【0018】
鋳造装置の把持構成の好ましい実施形態では、漏斗アダプタは、接着材料でシュラウドに固定されている。
【0019】
把持構成の好ましい実施形態では、モールド/シュラウド結合機構のシート部材は、漏斗アダプタを受け入れ、かつシュラウドをシュラウド鋳造位置に保持するように構成されている。把持構成の好ましい実施形態では、シート部材は、シート部材の中央穴を中心に配置された円錐形部分を含む。円錐形部分は、取鍋が、シュラウドがノズルに可逆的にロックされた状態で垂直に下げられる時に、シュラウドをボアと位置合わせして誘導するように構成されている。
【0020】
第4の態様では、本発明は、本発明による鋳造装置を用いて溶融金属を鋳造するための方法であって、
●漏斗に係合されたノズルが、シート部材に置かれている漏斗に荷重を加えるまで、取鍋を垂直に下げ、したがって、シート部材をコンプライアント要素に逆らってベース部材に対して移動させ、ノズルとシュラウド鋳造位置にあるシュラウドとの間の密封接触を形成すること、
●溶融金属が、取鍋から鋳造キャビティに、ノズル、シュラウド、及びハウジングを通って流れることを可能にすること、を含む、方法に関する。
【0021】
鋳造装置が本発明によるモールドアセンブリを備える方法の一実施形態において、方法は、取鍋を垂直に下げることによってノズルを漏斗に係合させることと、ノズルの取鍋を更に下げて、漏斗に荷重を加えることによって、ノズルとシュラウドとの間に密封接触を形成することと、を含む。
【0022】
鋳造装置の把持構成に適用される方法の別の実施形態では、方法は、
●ノズルをシュラウドの漏斗に係合させ、
○シュラウドの漏斗に固定された漏斗アダプタの保持手段を、
○取鍋の基部又はノズルに固定されたノズルアダプタに係合させて、
例えば、ロック位置でノズルにシュラウドをロックすることによって、取鍋/シュラウド結合機構を用いてシュラウドをノズルに把持すること、
●ノズルにロックされたシュラウドを、モールド/シュラウド結合機構の上に実質的に垂直に位置決めすること、
●シュラウドが、漏斗がシート部材上に静止している状態で、シュラウド鋳造位置に到達するまで垂直に下げること、
●漏斗に荷重を加えるためにノズルの取鍋を更に下げることによって、ノズルとシュラウドとの間に密封接触を形成すること、を含む。
【0023】
以下、本発明の好ましい実施形態は、添付の図面を参照して詳細に説明される。
以下の図面である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施形態による鋳造装置を用いた金属鋳造方法の工程を示す。
図2】取鍋/シュラウド結合機構(140)を備える、本発明の代替実施形態による鋳造装置を用いた金属鋳造方法の工程を示す。
図3】本発明によるモールド/シュラウド結合機構であって、その中に収容されるシュラウドを支持するモールド/シュラウド結合機構の一実施形態の斜視図を示す。
図4図3のモールド/シュラウド結合機構及びそこに収容されたシュラウドの、図3の線IV-IVに沿った断面を示す。
図5】取鍋のノズルが、シュラウド鋳造位置でシュラウドの漏斗の上に垂直に位置し、漏斗が、モールド/シュラウド結合機構のシート部材に受け入れられる、本発明による鋳造装置の斜視図である。取鍋は、明瞭にするために表されていない。
図6】ノズルが、シュラウドの漏斗に可逆的かつ密封的に係合している、図5の鋳造装置の断面図である。
図7a】取鍋がモールドの上に移動し、ノズルを漏斗と位置合わせする時の、本発明による鋳造装置におけるモールド/シュラウド結合機構及びノズルの詳細な断面図を示す。
図7b】取鍋を下げて、ノズルを漏斗に近づけるか、又は漏斗に接触させる時の、本発明による鋳造装置におけるモールド/シュラウド結合機構及びノズルの詳細な断面図を示す。
図7c】取鍋を更に下げて、コンプライアント要素を押し付けて、密封接触を形成する時の、本発明による鋳造装置におけるモールド/シュラウド結合機構及びノズルの詳細な断面図を示す。
図8】本発明の一実施形態によるモールド/シュラウド結合機構のシート部材の斜視底面図を示す。
図9a】シュラウドをノズルに把持する前の、本発明の一実施形態による鋳造装置における取鍋/シュラウド結合機構の詳細な断面図を示す。
図9b】シュラウドが、ノズルに密封されていないが結合され、シュラウドをモールド/シュラウド結合機構の上で垂直に保持する、図9aの鋳造装置における取鍋/シュラウド結合機構の詳細な断面図を示す。
図9c】漏斗アダプタが、シュラウドを保持するモールド/シュラウド結合機構のシート部材に受け入れられ、コンプライアント要素は、静止状態にある、図9aの鋳造装置における取鍋/シュラウド及びモールド/シュラウド結合機構の詳細な断面図を示す。
図9d】、取鍋が、ノズルが柔軟部材に荷重を加えるまで、シュラウドがノズルに把持された状態で、更に垂直に下げられ、したがって、ノズルとシュラウドとの間に密封接触を形成する、図9aの鋳造装置における取鍋/シュラウド及びモールド/シュラウド結合機構の詳細な断面図を示す。
図10】シュラウド鋳造位置でシュラウドをノズルに把持する前の、図9aの鋳造装置における取鍋/シュラウド結合機構の詳細図を示す。
図11】シュラウドがシュラウド鋳造位置でノズルに把持された、図10の鋳造装置における取鍋/シュラウド結合機構の詳細図を示す。
図12図10の取鍋/シュラウド結合機構の詳細な断面図を示す。
図13図11の取鍋/シュラウド結合機構の詳細な断面図を示す。
図14】シュラウドが、ノズルに結合され、取鍋及びそれに結合されたシュラウドを、モールドの上で垂直に並進する(上に又は下に)、本発明による鋳造装置における取鍋/シュラウド結合機構の詳細な図を示す。
図15】シュラウドがノズルに把持された、本発明による取鍋/シュラウド結合機構を備え、シュラウド鋳造位置にある、鋳造装置の詳細な断面図を示す。
図16】シュラウドが、ノズルに把持され、モールドの上で垂直に(上に又は下に)並進される、図15の鋳造装置の詳細な断面図である。
図17a】本発明におけるコンプライアント要素の様々な実施形態を示す。
図17b】本発明におけるコンプライアント要素の様々な実施形態を示す。
図17c】本発明におけるコンプライアント要素の様々な実施形態を示す。
図17d】本発明におけるコンプライアント要素の様々な実施形態を示す。
図17e】本発明におけるコンプライアント要素の様々な実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
第1の態様では、本発明は、図5に示されるように、溶融金属を鋳造するためのモールド(2)に関する。モールド(2)は、1つ以上の鋳造キャビティ(3)であって、各々が1つ以上のキャビティ入口(4)を有する、1つ以上の鋳造キャビティ(3)と、フィルタハウジング及びダイバータハウジングの中から選択されるハウジング(6)と、を備える。ハウジング(6)は、1つ以上の鋳造キャビティ(3)の1つ以上のキャビティ入口(4)と流体連通している1つ以上のハウジング出口(6o)を備える。ハウジング(6)はまた、ハウジング入口(6i)とモールドの上面(8)との間に垂直に延びるボア(7)と流体連通しているハウジング入口(6i)を含み、開口部で開放する。開口部を取り囲む上面(8)の少なくとも一部分は、好ましくは実質的に平面であり、好ましくは水平である。
【0026】
図5では、モールド(2)は、分割線で水平に接合された上部(2a)及び下部(2b)と、単一の鋳造キャビティ(3)とを備える。鋳造キャビティ(3)は、2つのキャビティ入口(4)を介して底部供給される。キャビティ入口(4)は、モールド(2)の上面(8)に延びるボア(7)に接続されているハウジング(6)への2つの供給チャネル(5)と連通する。ハウジング(6)は、フィルタハウジング又はダイバータハウジングであり得る。フィルタハウジングは、参照により本明細書に組み込まれる限りにおいて、EP3463715B1に開示されるものと同じ方法又は同様の方法で設計され得る。
【0027】
図15及び図16では、モールド(2)は、いくつかの鋳造キャビティを備え、各鋳造キャビティが、溶融金属をハウジングから鋳造キャビティに搬送するためのそれぞれの供給チャネル(5)を介してハウジング(6)と流体連通している。同様に、同じモールドは、1つ以上の対応するハウジング(6)と流体連通している2つ以上のボア(7)を備えることができる。
【0028】
本発明によるモールド(2)のハウジング(6)は、単一のハウジング入口(6i)と、単一又は複数のハウジング出口(6o)と、を備える。ハウジングは、ハウジング入口(6i)から、鋳造キャビティに接続された1つ以上のハウジング出口(6o)にハウジングを横断する溶融金属の流れを分配するように構成されている。ハウジング(6)は、ダイバータハウジングと、溶融金属の流れ中の不純物を濾過及び除去するためのフィルタ要素を備えるフィルタハウジングとの間で選択される。
【0029】
モールド/シュラウド結合機構(14)
鋳造中、取鍋(103)に含有される溶融金属は、取鍋(103)の下部に位置するノズル(12)を介して分配され、そこから、シュラウド(9)、ハウジング(6)、及び供給チャネル(5)を介してキャビティ(3)に流入する。シュラウド(9)は、シャフト(10)の近位端に取り付けられた漏斗(11)を備え、シャフト(10)は、中空であり、シュラウドボアが、漏斗内のシュラウド入口を開放し、中空シャフトの遠位端(10d)で開放しているシュラウド出口(9o)まで延びている。鋳造動作の期間中にシュラウドの位置を維持するために、本発明によるモールドは、モールド/シュラウド結合機構(14)を備え、その実施形態は、図3に示される。図6に示されるように、モールド/シュラウド結合機構(14)は、ボア(7)に収容されているシャフト(10)と定義されたシュラウド鋳造位置に鋳造装置(1)のシュラウド(9)を収容するように構成されており、その遠位端(10d)は、ハウジング入口(6i)を介してハウジング(6)に挿入されており、その結果、シュラウド出口(9o)は、ハウジング(6)に囲まれている。鋳造動作中、溶融金属は、シュラウド鋳造位置にあるシュラウド(9)の漏斗(11)に密封的に係合されたノズル(12)を通って取鍋から流出する。溶融金属は、シャフト(10)を通って流れ、ハウジング(6)に、そこに囲まれたシュラウド出口(9o)を介して入り、ハウジング出口(6o)を介して供給チャネルに出て、鋳造キャビティを充填する。
【0030】
図6に示されるように、本発明によるモールド(2)は、モールド/シュラウド結合機構(14)が、上面(8)に固定されたベース部材(16)と、漏斗(11)を受け入れ、シュラウド(9)をシュラウド鋳造位置に保持するように構成されたシート部材(15)と、を備えることを特徴とする。図3に示されるように、シート部材(15)は、少なくとも1つのコンプライアント要素(17)によってベース部材(16)に結合されており、その結果、シート部材(15)は、モールド/シュラウド結合機構(14)が静止状態にある時に、ベース部材(16)から分離しており、少なくとも1つのコンプライアント要素(17)を変形させる荷重をシート部材(15)に加える時に、ベース部材(16)に対して、好ましくは、ベース部材(16)に向かって移動可能になる。
【0031】
本発明のモールド/シュラウド結合機構(14)では、漏斗(11)を取鍋(103)のノズル(12)と係合させるために、シート部材(15)に受け入れられたシュラウド(9)を手動で持ち上げる必要はない。本発明の一実施形態では、シュラウドは、鋳造位置で、すなわち、漏斗がモールド/シュラウド結合機構(14)のシート部材(15)上に静止し、中空シャフトがボア(7)に収容され、シュラウド出口(9o)がハウジング(6)にある状態で、モールドに結合されている。EP3463715B1に記載のモールド/シュラウド結合機構とは対照的に、静止状態では、漏斗は、ベース部材(16)からの静止距離(h0)に、そのように付勢されたコンプライアント要素(17)の反力によって、維持されるシート部材(15)上に静止している。取鍋(103)のノズル(12)は、図7a及び図7bに例示されるように、単に、最初に取鍋を漏斗に対してモールドの上に移動させ、その後、ノズルが漏斗に係合するまで、取鍋(103)をモールド(2)に向かって下げることによって、モールド/シュラウド結合機構(14)のシート部材(15)上に静止している漏斗(11)に係合される。図7aにおいて、ノズルは、垂直方向に沿って漏斗と位置合わせされており、漏斗から離れて位置している。次いで、図7bに例示されるように、取鍋は、下げられ、漏斗に向かって下向きに移動され、その結果、ノズルがシュラウドの漏斗に係合する。この段階では、ノズル及び漏斗は、密封接触を形成するように結合されていない。ノズルを漏斗に密封的に係合させ、空気及び溶融金属がノズルと漏斗との間の界面を通って漏れるのを防ぐために、次いで、図7cに例示されるように、取鍋を更に下げ、その結果、ノズルが、モールド/シュラウド結合機構(14)のシート部材(15)に静止している漏斗に接触し、荷重を加え、コンプライアント要素(17)を変形させることによって、シート部材(15)をベース部材(16)に向かって移動させ、その結果、ノズルと漏斗との結合を、制御された方法で行うことができる。図7cに示されるように、取鍋の下向きの並進によって駆動され、柔軟部材(17)の変形によって可能になるベース部材(16)に対するシート部材(15)の動きは、シート部材(15)とベース部材(16)との間の距離を、h1<h0で、静止距離(h0)から密封距離(h1)に減少させる。シート部材がベース部材に向かって下向きに動くことは、もちろん、シュラウドをモールドのボアにおいて軸方向に動かすことを引き起こす。これは、ベース部材(16)に向かうシート部材(15)の下向きの動きが、シュラウドの遠位端及びシュラウド出口(9o)をハウジング内により深く駆動するため、ハウジング入口(6i)がそのような動きを可能にしなければならないことを意味する。当該技術分野で既知の手段に加えて、移動シュラウドと静的ハウジング入口(6i)との間の動的シールは、WO2013/088249A2にスライドゲートについて記載されているように、膨張性密封材料、例えば、ハウジング入口に収容されたガスケットを使用して形成されることができる。
【0032】
図7a及び図7bにおいて、ノズルは、漏斗と接触していないか、又はほとんど接触していない。したがって、モールド/シュラウド結合機構(14)は、シート部材(15)がベース部材(16)から一定の静止距離(h0)に維持される静止状態にあり、重力に対して同様に静止状態にあるコンプライアント要素(17)によって支持されているためである図7cでは、モールド/シュラウド結合機構(14)は、ノズルが漏斗に接触しており、その上に荷重、すなわち、取鍋の下向きの動きによって駆動される下向きに配向された力を加える荷重状態にある。漏斗に加えられたこの荷重は、シート部材を介してコンプライアント要素(17)に伝達され、コンプライアント要素(17)は、シート部材(15)がベース部材(16)から密封距離(h1)に移動する変形又は荷重状態に達するように変形する。コンプライアント要素の反力は、漏斗をノズルに押し付け、したがって、ノズルと漏斗との間の界面に密封接触を形成する。本発明におけるコンプライアント要素(17)の存在は、従来技術のように、バヨネットを手動で回転させ、ノズルと係合するために漏斗を持ち上げるためのオペレータの介入に取って代わる。本発明では、ノズルをシュラウドの漏斗に密封的に係合させるために取鍋を下げることは、取鍋の位置を命令するオペレータによって達成することができる。更に、オペレータの動作は再現可能ではなく、ノズルと漏斗との間の界面に加えられる力は、バヨネットを回転させるために加えられる力に依存する。柔軟部材(17)では、柔軟部材の柔軟性によって制御されるため、各鋳造動作において同じ力が加えられる。
【0033】
本発明のモールド内のモールド/シュラウド結合機構(14)によってもたらされる別の利点は、シート部材とベース部材との間、したがってシート部材によって保持されたシュラウドとモールドとの間の変位を可能にし、そのような動きによって生成されたエネルギーを吸収し、移動要素間の摩擦によって引き起こされる摩耗を低減することである。例えば、垂直方向に沿って取鍋を下げることは、ノズルを漏斗と係合及び接触させる時の衝撃を回避するために、すなわち、ノズルと漏斗との間の接触を緩やかに確立するために、取鍋の位置を命令するオペレータによる高レベルの精度を必要とする。コンプライアント要素がない場合、取鍋をあまりにも遠く又はあまりにも速く下げると、特にノズルとの接触点で、ノズル及び漏斗の耐火材料に重大な応力、衝撃、又は破損さえ引き起こす可能性がある。そのような衝撃のエネルギーは、シート部材とベース部材との間の柔軟な相対変位を可能にするモールド/シュラウド結合機構(14)の存在のおかげで、本発明において部分的に吸収される。
【0034】
本発明のモールド内のモールド/シュラウド結合機構(14)は、好ましくは、ノズルと漏斗との間の横方向及び/又は傾斜方向のずれ、すなわち、ノズルと漏斗との間の水平方向のずれも補償することを可能にする。ノズルをシュラウドの漏斗に係合させるために取鍋を下げると、横方向のずれが生じる可能性がある。これまでの例のように、モールド/シュラウド結合機構(14)内にコンプライアント要素(17)がない場合、横方向のずれは、ノズルと漏斗との間の密封接触の形成を妨げ得るか、又は密封接触を確立するためにこのずれを補償するための重要な材料応力を引き起こし得る。本発明では、横方向のずれは、コンプライアント要素の導入のおかげで、モールド/シュラウド結合機構(14)によって補償され、それによって、鋳造装置における材料応力及び潜在的な欠損を低減する。図6に例示するように、傾斜した又は角度のあるずれ(α)の場合にも同じことが適用される。
【0035】
同様に、モールド/シュラウド結合機構(14)を備える本発明によるモールドはまた、モールドに対する取鍋の小さな変位を補償し、鋳造動作中にノズルと漏斗との間の密封接触を維持することを可能にする。例えば、そのような変位は、取鍋が鋳造動作中に溶融金属を徐々に空にするにつれて、シュラウドボアを通って流れる溶融金属、及び取鍋に保持される溶融金属の質量の分布の変化に起因し、これにより、取鍋がわずかに傾斜するか、又は垂直又は横方向に移動し、図6に例示されるように、ノズルが漏斗に係合される。
【0036】
図3図4、及び図5に例示されるように、本発明によるモールド/シュラウド結合機構(14)のベース部材(16)及びシート部材(15)は、各々、互いに位置合わせされて、シュラウド(9)のボア(7)に向かうリードインを画定する中央穴を備えることができる。図3図4、及び図5では、ベース部材(16)は、図5及び図4の詳細な断面図に示されるように、円形であり、かつボア(7)へのリードインを形成する中央穴(20)を有し、中央穴を通って、シュラウド(9)は、鋳造位置に到達するまで、すなわち、シュラウドの漏斗が、シュラウド出口がハウジング(6)にある状態でシート部材上に静止する時まで、ボア(7)内に貫通することができる。以下で説明するように、シュラウドは、図1(1a)に示されるように、人間のオペレータによって、又は図2(1)及び図2(2)に示される、シュラウドが取り付けられた状態で取鍋を下げることによって、ボアに導入されることができる。
【0037】
シュラウドは、取鍋が下げられて、ノズルと漏斗との間の接触を確立する前に、鋳造位置にある一実施形態では(図1(1a)及び(1)及び図7aを参照されたい)、シート部材(15)は、図3及び図4に例示するように、スリーブの円周の周りに分布し、かつそこから径方向外向きに延びるアーム(18)を備えたスリーブ(21)によって形成される。スリーブ(21)は、シュラウド(9)を鋳造位置に導くためのリードスルーを形成する。静止状態では、スリーブは、ベース部材(16)の中央穴(20)と同心円状に位置合わせされている。図4及び図7aに示されるように、漏斗をモールド(2)に固定するために、スリーブのリードスルーと漏斗との間の空間を、好ましくは鋳物砂で作られた充填物(22)で満たすことができ、シュラウド(9)が鋳造位置にある時に、漏斗(11)の肩部(23)が静止するシートを形成する。
【0038】
鋳物砂の充填物(22)は、フラン、アルカリ-フェノール結合剤などの有機結合剤を含み得る。また、他の結合剤、例えば、無機結合剤又は粘土鉱物を使用し得る。充填物は、漏斗の円錐形肩部(23)のためのシートを画定し、同時にシールを提供し、シュラウドをモールド(2)に固定する。
【0039】
シュラウドの鋳造位置では、漏斗は、好ましくは、図4に例示されるように、スリーブの上部リムと同一平面であるか、又は代替的に、上部リムの下のスリーブ(21)内に沈み得る。
【0040】
本発明のモールド/シュラウド結合機構(14)の好ましい実施形態が、図3に表される。それは、漏斗(11)を受け入れ、保持するように構成されたシート部材(15)を備える。シート部材は、渦巻ばね(17s)の形態にある柔軟部材(17)によってベース部材(16)に結合されている。シート部材(15)は、ドライブスルー(drive-through)の対称軸に対して径方向の距離で互いに等間隔に配置された3つの径方向外向きに延びるアーム(18)を有する。当業者は、シート部材が任意の他の形状を有し得、例えば、円盤状であり得、外向きに延びるアームの数が変化し得ることを理解し得る。
【0041】
ベース部材(16)は、好ましくは、モールド(2)の上面(8)に剛性的に固定されている。例えば、ベース部材は、接着剤(有機又は鉱物)、又はネジ、リベットなどの締結手段と結合することができる。これにより、ベース部材の中央穴(20)は、鋳造全体の動作中にボア(7)と同心であり続けることが保証される。ベース部材はまた、中央穴(20)の対称軸に対して径方向の距離で互いに等間隔に配置され、かつシート部材(15)の対応する対向するアームと位置合わせされた3つの径方向外向きに延びるアーム(18)を備える。コンプライアント要素(17)は、シート部材とベース部材との間に挟まれた3つの渦巻ばね(17s)によって形成される。
【0042】
図3を参照すると、3つの渦巻ばね(17s)は、シート部材(15)及びベース部材(16)の対向するアーム(18)の3対の間で垂直に延びる。渦巻ばね(17s)は、シート部材(15)及びベース部材(16)の円周の周りに均等に分布する。アーム(18)は、図4及び図8の詳細な図に例示されるように、渦巻ばねを所定の位置に中心配置し、保持するための中心配置ピン(19)を備え、シート部材(15)の中心配置ピン(19)及びベース部材(16)の中心配置ピン(19)は、反対方向に延在し、ベース部材(16)の1つの中心配置ピン(19)及びシート部材(15)の対応して配置された中心配置ピン(19)は、各々、両側において渦巻ばね(17s)の一端に係合するように、互いに位置合わせされる。この構成では、シート部材(15)は、可動方式で3つの渦巻ばね(17s)によってベース部材上に支持される。
【0043】
シート部材(15)上に静止している漏斗(11)を備えたシュラウド(9)が、鋳造位置にある時、渦巻ばね(17s)は、シート部材(15)とベース部材(16)との間に垂直な静止距離(h0)が存在するように(図4及び図7bを参照されたい)静止状態にある。
【0044】
金属を鋳造キャビティ(3)に鋳造する場合、取鍋はモールド(2)の上で中心に配置され、その結果、取鍋のノズル(12)が漏斗(11)と位置合わせされる。次いで、クレーンに掛かる取鍋(103)が下げられ、ノズル(12)が漏斗(11)と係合し、それによって、シート部材(15)をベース部材(16)に向かって垂直に変位させる下向きに配向された力を及ぼす。この垂直変位は、コンプライアント要素(17)の変形(ここでは渦巻ばねの圧縮によって)によって可能になる。
【0045】
コンプライアント要素(17)
本発明によるモールドでは、シート部材(15)は、少なくとも1つのコンプライアント要素(17)によってベース部材(16)に結合されており、その結果、シート部材(15)は、ベース部材(16)から分離しており、少なくとも1つのコンプライアント要素(17)を変形させる荷重をシート部材(15)に加える時に、ベース部材(16)に対して移動可能になる。特に、取鍋が下げられ、ノズル(12)がシート部材(15)に受け入れられたシュラウドの漏斗(11)に押し付ける時に垂直及び下向きに加えられる荷重又は力を加える時に、コンプライアント要素(17)は、垂直静止距離(h0)がシート部材(15)をベース部材(16)から分離させる、図7bに例示されるような静止状態から、シート部材(15)をベース部材(16)から分離させる垂直距離が、h1<h0である密封距離(h1)に減少する、図7cに例示されるような荷重又は変形状態に移動するように構成されている。これは、シート部材(15)が、ノズルが垂直及び下向きの力をシュラウドの漏斗に加える時に、垂直方向に沿ってベース部材(16)に向かって、又はベース部材(16)に近づいて移動することを意味する。
【0046】
加えて、本発明によるモールド/シュラウド結合機構(14)のコンプライアント要素(17)は、ベース部材(16)に対するシート部材(15)の横方向の変位、すなわち、垂直方向に直交する水平方向に沿ったシート部材とベース部材との間の相対変位を可能にするように構成することができる。
【0047】
本発明のモールド/シュラウド結合機構(14)では、コンプライアント要素(17)は、少なくとも部分的に弾性であり得、その結果、変形又は荷重状態で、モールド/シュラウド結合機構(14)の静止状態を少なくとも部分的に回復する傾向がある反力に対向する。これには、弾性係数(E’)及び損失係数(E”)を有する弾性挙動(鉄鋼で作られた渦巻ばね(17s)など)、又は粘弾性挙動を示すコンプライアント要素(17)が含まれる。例えば、シート要素(15)をベース要素(16)から密封距離(d1)まで下に駆動するために、シート部材に受け入れられた漏斗上に、取鍋のノズルによって垂直及び下向きに配向された荷重を加える時に、荷重を受けたコンプライアント要素(17)の反力は、荷重が解放される時に、シート要素(15)をベース要素からの初期静止距離(d0)に少なくとも部分的に向かって(すなわち、h1<h≦h0であるように距離hに)駆動する傾向があり得る。そのような弾性要素は、鋳造中の振動によりノズルがわずかに上下に動く場合にも、鋳造中に漏斗とノズルとの間の密封接触を維持するのに好適であるため、好ましい。一般的に言えば、弾性であるコンプライアント要素は、したがって、シュラウドの漏斗に密封的に係合されたノズルが、鋳造動作中に移動又は振動する場合の使用に、より好適である。
【0048】
代替的に、コンプライアント要素(17)は、純粋に塑性又は粘性の挙動を示すことができ、その結果、荷重が解放される時に、元の形状を部分的にさえ回復することができない。例えば、これは、荷重を加える時に実質的に塑性的に変形するように構成されたコンプライアント要素の場合である。これはまた、粒子材料(例えば、砂など)などの自由流動材料を含有する可撓性バッグ又は容器の場合もあり、これは、ノズルによってシュラウド及びシート要素に加えられる荷重に対する粘性流に対抗するエネルギーを吸収することができる。
【0049】
モールド/シュラウド結合機構(14)は、シート部材(15)とベース部材(16)との間に延び、シート部材とベース部材を垂直方向に互いに分離する1つ以上のコンプライアント要素(17)を備えることができる。好ましくは、1つ以上のコンプライアント要素(17)は、プロセス温度でのエラストマー材料又はばね、好ましくは、図3に例示するような渦巻ばね(17s)を含む1つ以上の弾性要素を含む。
【0050】
図17aに示される第1の実施形態では、弾性要素は、それぞれ、モールド/シュラウド結合機構の静止状態又は荷重状態に対応する弾性要素の静止状態から変形状態又は荷重状態に移動する時に伸長するように構成されている。これは「引張弾性要素」と称される。引張弾性要素は、好ましくは、図17aに例示されるような拡張可能なばねである。
【0051】
図17bから図17dに示される第2の実施形態では、弾性要素は、それぞれ、モールド/シュラウド結合機構の静止状態又は荷重状態に対応する弾性要素の静止状態から変形状態又は荷重状態に移動する時に圧縮するように構成されている。これは「圧縮弾性要素」と称される。圧縮弾性要素は、好ましくは、圧縮可能なばね、好ましくは、渦巻ばね(図17bを参照)、圧縮可能な油圧若しくは空気圧ピストン(図17cを参照)、又は圧縮可能なエラストマー要素若しくは一般的に粘弾性要素(図17dを参照)である。
【0052】
図17eに示される第3の実施形態において、弾性部材は、弾性要素の静止状態から変形状態に移動する時に屈曲するように構成されている。これは「屈曲弾性要素」と称される。屈曲弾性要素は、好ましくは湾曲したブレード又はロッドを含むことができ、好ましくは、図17eに例示されるように、1つの点又は2つの点で取り付けられた鉄鋼又は繊維強化複合材料で作られている。
【0053】
代替的に、コンプライアント要素(17)は、荷重をシート部材(15)に加える時に粘性変形するように構成された、1つ以上のバッグ又は可撓性容器に封入された自由流動材料を備える。コンプライアント要素はまた、ノズルが荷重を漏斗に加える時に塑性変形によって破壊又は粉砕されるように構成された使い捨て要素を含むことができる。
【0054】
好ましくは、モールド/シュラウド結合機構(14)は、図3図4、及び図5に例示されるように、シート部材(15)とベース部材(16)との間に延びる少なくとも3つの弾性要素、好ましくは少なくとも3つの渦巻ばね(17s)を備え、少なくとも3つの弾性要素は、好ましくは、シート部材(15)及びベース部材(16)の中央穴の円周の周りに等間隔に配置されている。好ましくは、好ましくは等間隔に配置されている少なくとも3つの渦巻ばねは、その円周で、シュラウドの当該中空シャフトのためのリードインまである距離をおいて、当該シート部材と当該ベース部材との間に延びている。この設計は、渦巻ばねが、鋳造プロセス中に漏斗からシュラウドの中空シャフトにシュラウドボアを通って流れる溶融金属によって過度に加熱されないという利点を有する。
【0055】
モールドアセンブリ
別の態様では、本発明は、上記に記載される本発明によるモールド(2)と、鋳造位置にあるシュラウド(9)と、を備え、漏斗がシート部材(15)上に静止している、モールドアセンブリに関する。シュラウドは、中空であり、かつシュラウド出口(9o)を備える遠位端(10d)を有するシャフト(10)の近位端に取り付けられた漏斗(11)を備える。シュラウド鋳造位置は、シャフト(10)がボア(7)に収容されており、シュラウド出口(9o)がハウジング(6)に囲まれた状態でシャフトの遠位端(10d)がハウジング入口(6i)を通って挿入されている位置として定義される。
【0056】
好ましくは、漏斗は、モールドの外側、すなわち、モールドの上面(8)の上方かつ隣接して位置し、シャフト(10)は、当該ボア(7)内に受け入れられており、その中で上下に移動可能である。シャフトは、細長く、垂直方向に沿って延びており、その結果、溶融金属は、重力によって駆動されてそれを通って流れ得る。シュラウド出口(9o)は、ハウジング(6)内に、溶融金属を分配するための1つ以上の開口部を備え得る。
【0057】
図5に示されるようなシュラウド鋳造位置では、中空シャフトは、ボア(7)を通ってハウジング(6)内にまで延びている。溶融金属は、取鍋からノズル、シュラウド、ハウジング、及び供給チャネル(5)を含む鋳造キャビティまで延びるシュラウドラインを通って鋳造キャビティ(3)に供給される。シュラウドラインは、実質的に気密であり、大気から金属を保護することによって金属の再酸化を防止する。中空シャフト(10)は、ハウジング(6)を介して、及び供給チャネル(5)を介して入口(4)を介して鋳造キャビティ(3)に溶融金属を供給する。モールド(2)の上面(8)に実質的に垂直に延びるボア(7)は、シュラウド(9)を受け入れるようなサイズであり、その結果、ボア(7)内のシュラウド(9)の直線的な動きを可能にしながら、それらの間に実質的に隙間がない。鋳造キャビティ(3)と流体連通しているのは、鋳造キャビティ(3)とモールド(2)の上面(8)との間に延びる開放フィーダスリーブ(13)である。
【0058】
シュラウド(9)は、例えば、溶融シリカなどの耐火材料で作られている。代替的に、シュラウドは、アルミナグラファイト材料のような他の材料で作られ得る。好ましくは、漏斗(11)を形成するシュラウド(9)の近位端は、シート部材(15)上に静止している、傾斜した肩部(23)を有する円錐形状を有する。一実施形態では、肩部は、図4の断面図から読み取ることができるように、シート部材(15)のスリーブと漏斗との間の空間を満たす充填物(22)上に静止している。代替的に、シュラウドの肩部は、図9c、図9図12、及び図13に示すように、シート要素上に直接静止している。
【0059】
本発明によるモールドアセンブリの好ましい実施形態では、シュラウド(9)は、好ましくは、漏斗(11)とシート部材(15)との間の環状ギャップを密封し、かつ漏斗(11)のためのシートを画定する、鋳物砂の充填物(22)でシート部材(15)に固定されており、シート部材(15)は、好ましくは、図4に例示されるように、環状ギャップの境界を画定するスリーブ(21)を備える。
【0060】
本発明の好ましい実施形態では、ガスケットは、漏斗(11)の口に配置されており、ノズル(12)と漏斗(11)との間の基本的に密接な係合を可能にする。ガスケットは、例えば、可塑化粘土によって、又は膨張性材料によって形成され得る。
【0061】
鋳造装置
別の態様では、本発明は、本発明によるモールド(2)、シュラウド(9)、及び取鍋(103)から溶融金属を分配するために取鍋(103)の基部に設けられたノズル(12)を備える取鍋(103)を含む鋳造装置に関する。ノズル(12)は、シュラウド(9)の漏斗(11)に可逆的かつ密封的に係合するように構成されている。取鍋(103)は、モールド(2)に対して、例えば、ノズル(12)をモールド/シュラウド結合機構(14)の上に実質的に垂直に位置決めするように、かつシート部材(15)に荷重を加えることによって、ノズル(12)が、シュラウド鋳造位置にあるシュラウド(9)の漏斗(11)に密封的に係合されるまで垂直に下げるように、変位するように構成されている。鋳造装置は、好ましくは漏斗内に位置するガスケットを備え得る。鋳造装置では、シュラウド(9)は、好ましくは充填物(22)でシート部材に固定され得るか、又はシート部材(15)から取り外し可能かつ取り除き可能であり得る。
【0062】
これはまた、図6から見ることができるように、取鍋のノズルは、好ましくは半球形状を有し、漏斗(11)は、対応して成形されている。漏斗及びノズルは、好ましくは、形状が相補的であり、例えば、嵌合する球形のキャップ又はそうでなければ湾曲した表面を形成することで、取鍋の傾斜がある特定の限界内で許容され得る。コンプライアント要素(17)が渦巻ばねなどの弾性要素を含む場合、コンプライアント要素の反力はまた、鋳造中にノズル(12)及び漏斗(11)が互いに密封係合したままであることを保証する。コンプライアント要素が及ぼす反力は、ノズル及び漏斗が互いに密封係合して保持される一方で、密封面又は漏斗内のガスケットに十分な圧力が常に保持されることを保証する。コンプライアント要素はまた、鋳造中、すなわち、取鍋が空になっている間に、取鍋の重心が変化し得るという事実に起因して発生する可能性のある、取鍋の傾斜又は上下振動を補償し得る。
【0063】
漏斗及びノズルは、好ましくは、ノズルが漏斗内で自己中心配置するように構成されている。例えば、ノズルを受け入れるように構成された漏斗の表面は、図3及び図4に表されるような円錐形状を有し得、その結果、ノズルが漏斗と完全に位置合わせされていない状態でノズルを漏斗に係合させるために取鍋(103)を垂直に下げる時、ノズル(12)は、円錐形状の表面上をスライドし、シート部材(15)に力を加えて、水平方向に沿ってシート部材を変位させ、ノズルと漏斗との間の位置合わせを回復させ、最終的には、漏斗内のノズルの密封係合を回復させることができる。
【0064】
取鍋/シュラウド結合機構(140)
本発明による鋳造装置の好ましい実施形態は、好ましくは漏斗(11)とノズル(12)との間にシールを形成することなく、シュラウド(9)をノズル(12)に可逆的に把持するように構成された取鍋/シュラウド結合機構(140)を備える。
【0065】
図2及び図9aに例示されるように、これは、取鍋を、シュラウドがそこに吊り下げられた状態で移動させることを可能にし、これは、シュラウドが連続して複数の鋳造に再利用することができる場合に有利であり、例えば、これは図2に例示されている。同じ取鍋及びシュラウド(9)で一連の後続の鋳造を行う場合、例えば、取鍋を上に持ち上げることによって第1のモールド内の金属の鋳造を完了した後、シュラウドを第1のモールドのボアから係合解除することができる(図2-工程4を参照されたい)。次いで、取鍋は、第2のモールドのボアの上にシュラウドを位置決めするために水平に並進される(図2-工程5を参照されたい)。次いで、シュラウドが鋳造位置に到達するまで(図2-工程2を参照されたい)、取鍋を下方に下げ(図2-工程1を参照されたい)、その後の鋳造を第2のモールドに実施することができる。この操作は、シュラウドが鋳造状態である限り繰り返すことができる。その後、使用済みのシュラウドを取り除き(図2-工程1bを参照されたい)、新しいシュラウドを取鍋に装着することができる(図2-工程1aを参照されたい)。この取鍋/シュラウド結合機構により、同じシュラウドを複数の鋳造に数回繰り返し使用することが可能になる。また、取鍋、シュラウド、及びモールドの間の結合は、取鍋位置決めシステムを指令するオペレータだけで実施することができるため、オペレータの作業荷重を軽減する。同じシュラウドを用いる2つの鋳造の間で、あるモールド内の前の鋳造によって加熱されたシュラウドは、後続のモールド内の鋳造位置に位置決めするためにオペレータによって操作される必要がなく、したがって安全性が向上する。
【0066】
図9aに示されるように、取鍋/シュラウド結合機構(140)は、シュラウド(9)の漏斗に固定されており、かつ保持手段を備える漏斗アダプタ(140f)を備える。漏斗アダプタ(140f)は、一般に金属で作られており、セメントなどの接着充填物(113)でシュラウドの肩部に固定されている。取鍋/シュラウド結合機構(140)はまた、取鍋(103)の基部又はノズル(12)に固定され、かつ漏斗アダプタ(140f)の保持手段と係合して、ロック位置でノズル(12)にシュラウド(9)を可逆的にロックするように構成されている、ノズルアダプタ(140n)を備える。取鍋/シュラウド結合機構(140)のロック解除位置及びロック位置は、それぞれ図10及び図11に表されている。取鍋の基部は、使用されている取鍋の最も低い部分である。ノズルアダプタ(140n)は、好ましくは、底部注ぎ取鍋の基部に取り付けられている。
【0067】
漏斗アダプタ(140f)及びノズルアダプタ(140n)は、互いに相補的であり、ロック位置で互いに解放可能かつ緩やかに係合するように構成されている。本発明による取鍋/シュラウド結合機構(140)の1つの重要な態様は、漏斗アダプタ(140f)及びノズルアダプタ(140n)が、ロック位置で互いに緩く係合するように構成されていることである。これは、漏斗アダプタ及びノズルアダプタが、それらがある特定の限界内で互いに対してある程度関節結合することができるように、互いに対して十分な遊びを有してロック位置で互いに係合することを意味する。この設計は、例えばモールドのボアに挿入されている間のシュラウドの損傷のリスクが大幅に低減されるように、シュラウドが取鍋に取り付けられている時の、シュラウドと取鍋との相対的な動きを可能にする。ロック位置では、ノズルと漏斗との間に密封接触が形成されないことが好ましい。
【0068】
図10及び図11に表される取鍋/シュラウド結合機構の好ましい実施形態では、漏斗アダプタ(140f)の保持手段は、保持ペグ(109)を含み、ノズルアダプタ(140n)は、保持ペグ(109)と可逆的に係合するように構成され、好ましくは保持ペグ(109)と自己係合するように構成された締結フック(107)を備える。自己係合式の締結フックにより、シュラウドを容易に取鍋に把持することが可能になる。例えば、これにより、図11及び図15に例示されるように、漏斗アダプタの保持手段をノズルアダプタと係合させるように、取鍋を下げることによって、図10に例示されるように、取鍋を使用して、本発明による第1のモールド(2)内の鋳造位置に保持されたシュラウドを拾い上げ、次いで、図14及び16に例示されるように、取鍋を持ち上げて、ボアからシュラウドを取り外すことができる。
【0069】
再び、図12を参照すると、漏斗アダプタ(140f)は、漏斗アダプタ(140f)のためのシートを形成するシート部材(15)の中央穴(25)内の傾斜縁部(115)上に静止している先端を切り取られた軸受面(114)を有するスリーブ状の要素であり得る。漏斗アダプタ(140f)は、シート部材(15)に緩く置かれ、重力、すなわち漏斗アダプタ(140f)に吊るされているシュラウド(9)の重量によってのみ保持される。
【0070】
漏斗アダプタ(140f)の外周上に、3つ又は4つの保持ペグ(109)が径方向に外向きに延びている。保持ペグ(109)は、取鍋ベースプレート(105)に取り付けられているノズルアダプタ(140n)に取り付けられた締結フック(107)によって係合され得る。
【0071】
ノズルアダプタ(140n)は、ノズル(12)を取り囲むソケットとして設計されている。取鍋(103)に取り付けられた側(近位側とも称される)では、第1の結合部材(11)は、取鍋ベースプレート(105)と係合するバヨネットリング(106)を備える。ノズルアダプタ(140n)は、取鍋(103)に取り外し可能に接続されている。遠位端とも称されるノズルアダプタ(140n)の他端では、ノズルアダプタ(140n)は、締結フック(107)が回転可能に取り付けられている複数のスタッド(111)を備える。
【0072】
ノズル(12)を漏斗(11)に下げる間、ノズルアダプタ(140n)及び漏斗アダプタ(140f)は、互いに係合している。ノズルアダプタ及び漏斗アダプタの結合及びロックは、異なる方法で達成することができる。締結フック(107)は、自己係合することができる。締結フック(107)の傾斜面(112)は、締結フック(107)が保持ペグ(109)を捕捉するように、保持ペグ(109)の上をスライドする。
【0073】
代替的に、漏斗アダプタ(140f)を、取鍋(103)が下げられる時に、保持ペグ(109)が締結フック(107)の間に配置されるように回転させ得、次いで漏斗アダプタ(140f)を、例えば、反時計回りに回転させる時に、締結フック(107)内の保持ペグ(109)のロックが達成される。
【0074】
図13に示されるように結合されると、取鍋(103)に吊るされているシュラウド(9)とともに取鍋を、同じシュラウドを用いた第2の鋳造のための第2のモールドに挿入するために、持ち上げられることができる。
【0075】
取鍋/シュラウド結合機構(140)の別の実施形態では、漏斗アダプタ(140f)の保持手段は、1つ以上の保持ペグ(109)を含み、ノズルアダプタ(140n)は、1つ以上の保持ペグと相互作用して、ロック位置でノズル(12)にシュラウド(9)を可逆的にロックするように構成されたバヨネット結合要素を備える。
【0076】
ノズルアダプタ(140n)は、一端及び/又は両端でバヨネット結合要素として構成され得るスリーブ状部材の形態であってもよい。ノズルアダプタ(140n)は、図12及び図13に例示されるように、ノズルを囲んでもよく、取鍋ベースプレート(105)に解放可能に取り付けられてもよい。例えば、一端では、ノズルアダプタ(140n)は、取鍋ベースプレートで対応する構造と係合するバヨネットリング(106)として構成することができる。
【0077】
本発明による取鍋/シュラウド結合機構の特に好ましい実施形態では、漏斗アダプタ及び/又はノズルアダプタは、漏斗アダプタ又はノズルアダプタのいずれかを長手方向軸の周りで回転させることによって、漏斗アダプタ及びノズルアダプタの少なくとも係合解除を可能にするために、当該長手方向軸の周りで回転可能である。
【0078】
本発明による鋳造装置では、モールド/シュラウド結合機構(14)のシート部材(15)は、漏斗アダプタ(140f)を受け入れ、かつシュラウド(9)をシュラウド鋳造位置に保持するように構成されている。
【0079】
漏斗アダプタ(140f)は、好ましくは、図12及び図13に表されるように、接着材料(113)でシュラウド(9)に固定されている。好ましくは、漏斗の領域内のシュラウドの近位端は、円すいの形状を有し得、その肩部(23)が、好ましくは、例えば、有機結合剤を含み得る漏斗アダプタの鋳物砂の充填物又は梱包材である接着材料(113)に保持されている。漏斗アダプタは、スリーブ状の要素として設計され得る。漏斗アダプタは、好ましくは、接着材料(113)を取り囲む。
【0080】
漏斗アダプタ(140f)は、中心に配置される様式でモールド(2)上のシート部材(15)に受け入れられるように構成され得る。したがって、漏斗アダプタは、先端が切断された軸受面を備え得る。
【0081】
好ましくは、本発明による鋳造装置は、現位置で、すなわち、シュラウドがモールドに挿入されている間に、取鍋とシュラウドとの結合を可能にする。したがって、取鍋のための別個の取り付けスタンドは必要ない。このシステムでは、別のクレーンを用いてシュラウドをモールドに挿入することが可能である。シュラウドがモールドに挿入されると、取鍋は、ノズルがシュラウドの漏斗上で中心に配置されている状態で、モールドの上に位置し得る。取鍋を下げる時に、ノズルは、シュラウドの漏斗と係合され得る。取鍋のノズルを漏斗と係合させている間、漏斗アダプタ及びシュラウドアダプタは、取鍋及びシュラウドが互いに緩くロックされるように、互いにロックされ得る。
【0082】
当業者は、取鍋のノズルを漏斗に下げる時に下向きに配向された力が、シート部材を、ノズルと漏斗との結合を、制御された方式で実施することができるように、コンプライアント要素の反力に逆らって、好ましくは少なくとも1つのばねのばね張力に逆らって、ベース部材に向かって移動させることを理解するであろう。シート部材がベース部材に向かって下向きに動くことは、もちろん、シュラウドをモールドのボア内で軸方向に動かすことを引き起こす。例えば、シュラウドの遠位端がモールドのハウジング内に延びる場合、ベース部材に向かうシート部材の下向きの動きは、少なくとも1つのシュラウド出口(9o)が、モールドのランナーシステム、すなわち、供給チャネル(5)を介する鋳造キャビティと連通するハウジング内にシュラウドの遠位端をより深く駆動する。
【0083】
既存の技術では、Harrison Steel Castings Companyによって提案されたいわゆるHarrisonプロセスは、底部注ぎ取鍋のノズルの下に溶融シリカシュラウドを取り付けることを伴う。モールドには、シュラウドを受け入れるためのサイドライザーが設けられている。サイドライザーの下には、鋳造キャビティに流入する注入ウェルが設けられている。シュラウドを取り付けると、取鍋は、モールドの上に位置合わせされ、次いで、シュラウドをサイドライザーに挿入するように下げられる。次いで、取鍋で溶融金属がノズル及びシュラウドを通ってモールドに流れるように、ストッパーロッドを開放位置に移動させる。モールドが充填されると、ストッパーは、閉鎖される。取鍋は、シュラウドがモールドを取り除くまで持ち上げられ、次いで、次のモールドに移動して、プロセスを繰り返す。底部注ぎ取鍋のノズルの下にシュラウドを取り付けるために、取鍋は最初に、取り付けスタンドに固定され、次いで、シュラウドは、取鍋ベースプレートに接続されているシュラウドホルダアセンブリに固定して取り付けられる。
【0084】
シュラウドのノズルへの当該強固、かつ固定した取り付けの1つの欠点は、酸素ランシングによるノズルの清掃がほとんど不可能であることである。シュラウドに選択される材料は、溶融シリカであるため、シュラウドを取鍋の底部に取り付けながら、モールドのサイドライザーに挿入することは、シュラウドのわずかな傾斜でさえ、シュラウドの破壊をもたらす可能性があるため、困難かつ重要な操作である。
【0085】
本発明では、以前の欠点は、シュラウドを取鍋に緩く把持し、コンプライアント要素を設けて、モールド/シュラウド結合機構(14)のシート部材とベース部材との間の相対的な変位を可能にすることによって回避される。これは、シュラウドをモールドに挿入する時にシュラウドを破壊するリスクを低減し、したがって、1つのシュラウドを1つの注ぎ熱で複数の鋳物を得るために、シュラウドを取り扱うためのより安全なシステムを提供する。
【0086】
モールドのボア内の取鍋に把持されたシュラウドの係合の安全性を更に向上させるために、シート部材(15)は、好ましくは、シート部材の中央穴を中心に配置された円錐形部分を含み、円錐形部分は、取鍋(103)が、シュラウド(9)がノズル(12)に可逆的にロックされた状態で垂直に下げられる時に、シュラウドをボア(7)と位置合わせして誘導するように構成されている。
【0087】
取鍋/シュラウド結合機構を用いない方法(140)
本発明はまた、本発明による鋳造装置を用いて溶融金属を鋳造するための方法に関する。
【0088】
図1に例示される方法の第1の実施形態では、鋳造装置は、取鍋/シュラウド結合機構(140)を備えず、シュラウドは、取鍋がモールドに近づく前に、鋳造位置でボア(7)に挿入されている。図1の工程1aで表されるように、モールド(2)、及び鋳造位置に到達するためにそこに挿入されたシュラウド(9)を含む鋳造装置が提供される。好ましくは、モールドが使用のために取り付けられる時、モールドのボアの対称軸は垂直であり、シュラウドは、それを垂直方向に沿って並進させることによってボアに取り付けられる。シュラウド(9)は、図1(1a)に例示するように、オペレータによって、又は1つ以上の専用器具又はロボットを使用して、モールド(2)に挿入することができる。図5に例示されるように、シャフト(7)は、ボア(7)に収容されているシャフト(10)と定義された鋳造位置に、シュラウドが取り付けられるまで、モールドのボア(7)に挿入されており、その遠位端(10d)はハウジング入口(6i)を通って挿入されており、シュラウド出口(9o)はハウジング(6)に囲まれている。シュラウド鋳造位置では、中空シャフト(10)の長手方向軸は、好ましくは垂直である。シュラウド(9)は、漏斗(11)が静止しているシート部材(15)によってシュラウド鋳造位置に保持される。
【0089】
本発明の一例では、シュラウドの漏斗は、漏斗をシート部材(15)に着座させるための肩部を備え、漏斗は、シート部材(15)に直接収容されており、シュラウドは、重力の力の下でシュラウド鋳造位置に解放可能に維持される。別の例では、充填物(22)が漏斗とシート部材(15)との間に設けられる。シュラウド(9)は、漏斗(11)とシート部材(15)との間の環状ギャップを密封し、かつ漏斗(11)のためのシートを画定する充填物(22)によってシート部材(15)に固定される。好ましくは、シート部材(15)は、環状ギャップの境界を画定するスリーブ(21)を備え、充填物(22)は、充填物(22)に漏斗を受け入れ、着座させる前に、スリーブ(21)に適用されることができる。次いで、漏斗がシート部材(15)に固定されるまで、充填物は、乾燥するべきである。
【0090】
図1の工程1aの後、モールドアセンブリは、溶融金属を受け入れる準備が整う。図1の工程1及び図7aの詳細図に例示されるように、溶融金属を充填した取鍋(103)は、例えばクレーンを用いて、シュラウドを装着した第1のモールドの上に、取鍋の基部にあるノズルがモールド/シュラウド結合機構(14)及びボア(7)と垂直に位置合わせされるまで移動される。次いで、取鍋(103)は、図7bに例示されるように、ノズル(12)がシュラウド(9)の漏斗に係合するまで下げられる。漏斗をノズルと接触させ、漏斗に荷重を加える前に、モールド/シュラウド結合機構(14)及びコンプライアント要素は、シート部材及びベース部材が、垂直方向に沿って測定された静止距離h0によって分離されている、静止状態にある。
【0091】
次いで、方法は、漏斗(11)に係合されたノズル(12)が、シート部材(15)に置かれている漏斗に荷重を加えるまで、取鍋(103)を垂直に更に下げ、したがって、シート部材(15)をコンプライアント要素(17)に逆らってベース部材(16)に対して移動させ、ノズル(12)とシュラウド鋳造位置にあるシュラウド(9)との間の密封接触を形成する工程を含む。これは、図1の工程2及び図7cの詳細図に例示されており、モールド/シュラウド結合機構(14)及びコンプライアント要素は、シート部材及びベース部材が、垂直方向に沿って測定された密封距離h1<h0によって分離されている荷重状態にある。
【0092】
ノズル(12)と漏斗(11)との間の密封接触を確立した後、溶融金属の鋳造を開始することができる。ノズルが開放され、それによって、溶融金属が、取鍋(103)から鋳造キャビティ(3)に、ノズル(12)、シュラウド(9)、及び第1のモールドのハウジング(6)を通って流れることを可能にする。図1の工程3に例示されるように、鋳造キャビティが満杯になると、ノズルが閉鎖されて、溶融金属の流れを止めることができる。
【0093】
図1の工程4に例示されるように、鋳造が終了した後、取鍋は、ノズルをシュラウドの漏斗から係合解除するために垂直に持ち上げられ、したがって、ノズルからのシート部材(15)への荷重を取り除く。シュラウドは、取鍋に把持されず、漏斗がシート部材によって保持され、かつシャフトがボア(7)に収容された状態で第1のモールドに挿入されたままである。コンプライアント要素が弾性要素を含まない場合、モールド/シュラウド結合機構(14)及びコンプライアント要素は、荷重状態のままであり、シュラウドは、取鍋を持ち上げる時に動かない。コンプライアント要素が弾性要素を含む場合、モールド/シュラウド結合機構(14)及びコンプライアント要素は、取鍋を持ち上げる時に、少なくとも部分的に静止状態に戻り得、シート部材によって保持されたシュラウドは、対応して、ボア内で上方にスライドし得る。
【0094】
次いで、取鍋は、取鍋が取鍋/シュラウド結合機構(140)を備えない、本発明による本方法による次の鋳造を実施するために、取鍋が第2のモールドの上に水平に並進される図1-工程5に例示されるように、第2のモールドへの後続の鋳造、好ましくは、同じ熱を用いた別の注入のために利用可能である。
【0095】
取鍋/シュラウド結合機構(140)を用いた方法
本発明による方法の第2の実施形態において、鋳造装置は、取鍋/シュラウド結合機構(140)を備える。そのような方法が、図2に例示される。鋳造には、第1のモールド及び第2のモールド(2)、漏斗アダプタ(140f)が固定されたシュラウド(9)、及び取鍋であって、ノズルアダプタ(140n)が取鍋のベース又はノズルに固定された、取鍋が提供される。取鍋/シュラウド結合機構(140)を備える鋳造装置を用いて鋳造を初期化する方法は少なくとも2つある。
【0096】
図2-工程1aに例示される鋳造を初期化する第1の方法では、シュラウドを第1のモールドに挿入する前に、シュラウドを取鍋に把持する。例えば、これは、シュラウド(9)の漏斗(11)をノズル(12)の上に係合させ、
●シュラウド(9)の漏斗に固定された漏斗アダプタ(140f)の保持手段を、
●取鍋(103)の基部又はノズル(12)に固定されたノズルアダプタ(140n)に係合させて、
例えば、ロック位置でノズル(12)にシュラウド(9)をロックすることによって、取鍋/シュラウド結合機構(140)を用いてシュラウド(9)をノズル(12)に把持するために、オペレータが、取鍋の基部に向かってシュラウドを持ち上げることによって実行することができる。
【0097】
代替的に、取鍋は、シュラウド(9)の保管場所の上に変位され、ノズルを漏斗に係合させ、かつ取鍋/シュラウド結合機構(140)を用いてシュラウド(9)をノズル(12)に把持するまで、ノズルが漏斗と垂直に位置合わせされた状態で取鍋を下げることによってシュラウドを拾い上げることができる。
【0098】
シュラウドが取鍋に把持されると、取鍋は、
図2の工程1及び図9bに例示すように、ノズル(12)に実質的に垂直にロックされたシュラウド(9)をモールド/シュラウド結合機構(14)の上に位置決めし、次いで、
図9c及び図2-工程2に例示するように、漏斗(11)がシート部材(15)上に静止している状態で、シュラウド(9)がシュラウド鋳造位置に到達するまで、取鍋を垂直に下げるように移動することができる。
【0099】
好ましくは、漏斗は、漏斗アダプタ(140f)を介してシート部材(15)上に静止しており、すなわち、漏斗アダプタ(140f)は、漏斗に固定されており、図9cに例示されるように、モールド/シュラウド結合機構(14)のシート部材(15)に受け入れられ、シート部材(15)の円錐形部分は、漏斗アダプタ(140f)の対応する円錐形部分と嵌合するように構成されている。
【0100】
ノズル(12)と、シュラウド鋳造位置にあるシュラウド(9)との間の密封接触は、漏斗(11)に係合されたノズル(12)が、シート部材(15)に置かれている漏斗に荷重を加えるまで、取鍋(103)を垂直に更に下げ、したがって、シート部材(15)をコンプライアント要素(17)に逆らってベース部材(16)に対して移動させることによって形成される。これは、図2の工程2及び図9dに例示される。
【0101】
鋳造を初期化する第2の方法では、シュラウド(9)は、取鍋によって把持される前に、鋳造位置で第1のモールドに挿入される。シュラウドの把持は、図2(2a)及び(2)、図10及び図12に例示するように、ノズルを漏斗に向かって下げることによって行われ、コンプライアント要素(17)によって提供される抵抗に対してノズルを更に下に駆動する時に、密封接触が形成される。好ましくは、密封接触が形成される前に、取鍋及びシュラウドは、互いに、解放可能であるだけでなく、緩やかにロックされる。
【0102】
図2-工程2aに例示される鋳造を初期化する第2の方法では、ノズル(12)と、シュラウド鋳造位置にあるシュラウド(9)との間の密封接触は、シュラウドを取鍋に把持した後に形成される。これは、漏斗(11)に係合されたノズル(12)がシート部材(15)に置かれている漏斗に荷重を加えるまで、取鍋(103)を垂直に更に下げ、したがって、図2の工程2及び図9dに例示されるように、シート部材(15)をコンプライアント要素(17)に逆らってベース部材(16)に対して移動させることによって達成される。
【0103】
鋳造を初期化する第1又は第2の方法に従ってノズル(12)と漏斗(11)との間の密封接触を確立した後、ノズルが開放され、それによって、溶融金属が、取鍋(103)から鋳造キャビティ(3)に、ノズル(12)、シュラウド(9)、及び第1のモールドのハウジング(6)を通って流れることを可能にする。図2の工程3に例示されるように、鋳造が終了するか、又は鋳造キャビティが満杯になると、ノズルが閉鎖されて、溶融金属の流れを止めることができる。
【0104】
図2の工程4に例示されるように、鋳造が終了する時に、シュラウドが把持された取鍋が垂直に持ち上げられ、シュラウドが第1のモールドから係合解除され、ノズルからシート部材(15)への荷重が取り除かれる。
【0105】
次いで、シュラウドが結合された取鍋は、取鍋が取鍋/シュラウド結合機構(140)を備える、本方法に従って次の鋳造を実施するために第2のモールドの上に水平に並進される図2の工程5に例示されるように、同じ熱を用いた第2のモールドへの後続の鋳造に利用可能である。代替的に、一連の鋳造の最後に、又はシュラウドが劣化している場合、その後の鋳造は実施されず、取鍋は、シュラウドが把持された状態で、シュラウドが取鍋から分離される施設の分解場所に輸送される。シュラウド(9)及びノズル(12)は、漏斗アダプタ(140f)の保持手段をノズルアダプタ(140n)から係合解除することによってロック解除され、漏斗及び漏斗アダプタ(140f)は、好ましくは、取り外され、その結果、漏斗アダプタ(140f)は、後で再利用され、他のシュラウドに固定され得る。新しいシュラウドは、一連の新しいモールドで鋳造を継続するために使用することができる。
【0106】
参照番号のリスト
1 鋳造装置
2 モールド
2a モールドの上部
2b モールドの下部
3 鋳造キャビティ
4 キャビティ入口
5 供給チャネル
6 ハウジング
6i ハウジング入口
6o ハウジング出口
7 ボア
8 モールドの上面
9 シュラウド
9o シュラウド出口
10 シュラウドのシャフト
11 漏斗
12 ノズル
13 フィーダスリーブ
14 モールド/シュラウド結合機構
15 シート部材
16 ベース部材
17 コンプライアント要素
17s 渦巻ばね
18 アーム
19 中心配置ピン
20 ベース部材の中央穴
21 スリーブ
22 充填物
23 肩部
103 取鍋
105 取鍋ベースプレート
106 バヨネットリング
107 締結フック
109 保持ペグ
111 スタッド
112 傾斜面
113 接着材料
114 軸受面
115 傾斜縁部
140f 漏斗アダプタ
140n ノズルアダプタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7a
図7b
図7c
図8
図9a
図9b
図9c
図9d
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17a
図17b
図17c
図17d
図17e
【手続補正書】
【提出日】2023-08-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属を鋳造するためのモールド(2)であって、
●キャビティ入口(4)を有する鋳造キャビティ(3)、
●フィルタハウジング及びダイバータハウジングの中から選択されるハウジング(6)であって、前記キャビティ入口(4)と流体連通しているハウジング出口(6o)、及びボア(7)と流体連通しているハウジング入口(6i)を有する、ハウジング(6)、
●前記モールドの上面(8)と前記ハウジング入口(6i)との間に延びるボア(7)、
●鋳造装置(1)のシュラウド(9)をシュラウド鋳造位置に収容するように構成されたモールド/シュラウド結合機構(14)であって、前記シュラウドが、中空であり、かつシュラウド出口(9o)を備える遠位端(10d)を有するシャフト(10)の近位端に取り付けられた漏斗(11)を含み、前記シュラウド鋳造位置が、前記遠位端(10d)が前記ハウジング入口(6i)に挿入され、前記シュラウド出口(9o)が前記ハウジング(6)に囲まれるように前記ボア(7)に前記シャフト(10)が収容されているときである、モールド/シュラウド結合機構(14)、を備え、
前記モールド/シュラウド結合機構(14)が、
○前記上面(8)に固定されたベース部材(16)と、
○前記漏斗(11)を受け入れ、前記シュラウド(9)を前記シュラウド鋳造位置に保持するように構成されたシート部材(15)と、を備えること、
並びに前記シート部材(15)が、少なくとも1つのコンプライアント要素(17)によって前記ベース部材(16)に結合されており、その結果、前記シート部材(15)が、前記ベース部材(16)から分離しており、前記少なくとも1つのコンプライアント要素(17)を変形させる荷重を前記シート部材(15)に加える時に、前記ベース部材(16)に対して移動可能になり、前記コンプライアント要素(17)が、前記シート部材(15)と前記ベース部材(16)との間に延びるばねを含む1つ以上の弾性要素を含むことを特徴とする、モールド(2)。
【請求項2】
前記ベース部材(16)及びシート部材(15)が各々、前記シュラウド(9)のための前記ボア(7)に向かうリードインを画定するように互いに位置合わせされた中央穴を備え、前記モールド/シュラウド結合機構(14)が、前記シート部材(15)と前記ベース部材(16)との間に延びる少なくとも3つの弾性要素を備え、前記少なくとも3つの弾性要素が、好ましくは、前記シート部材(15)及び前記ベース部材(16)の前記中央穴の円周の周りに等間隔に配置されている、請求項に記載のモールド(2)。
【請求項3】
モールドアセンブリであって、
●請求項1又は2に記載のモールド(2)と、
●請求項1に記載のシュラウド(9)であって、前記シート部材(15)が、前記漏斗(11)を受け入れ、かつ前記シュラウド(9)を前記シュラウド鋳造位置に保持する状態で、前記モールド(2)に収容されている、請求項1に記載のシュラウド(9)と、を備える、モールドアセンブリ。
【請求項4】
前記シュラウド(9)が、前記漏斗(11)と前記シート部材(15)との間の環状ギャップを密封し、かつ前記漏斗(11)のためのシートを画定する、鋳物砂の充填物(22)で前記シート部材(15)に固定されている、請求項に記載のモールドアセンブリ。
【請求項5】
鋳造装置であって、
●請求項1又は2のいずれか一項に記載のモールド(2)、及び
●請求項1に記載のシュラウド(9)、
●取鍋(103)であって、溶融金属を前記取鍋から分配するために、前記取鍋(103)の基部に設けられたノズル(12)を備え、前記ノズル(12)が、前記シュラウド(9)の前記漏斗(11)に可逆的かつ密封的に係合するように構成されており、前記取鍋(103)が、前記モールド(2)に対して、例えば、
○前記ノズル(12)を前記モールド/シュラウド結合機構(14)の上に実質的に垂直に位置決めするように、かつ
○前記ノズル(12)が、前記シート部材(15)に前記荷重を加えることによって、前記シュラウド鋳造位置にある前記シュラウド(9)の前記漏斗(11)に密封的に係合されるまで垂直に下げられるように、変位するように構成されている、取鍋(103)、を備える、鋳造装置。
【請求項6】
好ましくは、前記漏斗(11)と前記ノズル(12)との間にシールを形成することなく、前記シュラウド(9)を前記ノズル(12)に可逆的に把持するように構成された取鍋/シュラウド結合機構(140)を備え、前記取鍋/シュラウド結合機構(140)が、
○前記シュラウド(9)の前記漏斗に固定された漏斗アダプタ(140f)であって、保持手段を備える、漏斗アダプタ(140f)と、
○前記取鍋(103)の前記基部又は前記ノズル(12)に固定され、かつ前記漏斗アダプタ(140f)の前記保持手段と係合して、ロック位置で前記ノズル(12)に前記シュラウド(9)を可逆的にロックするように構成された、ノズルアダプタ(140n)と、を備える、請求項に記載の鋳造装置。
【請求項7】
前記漏斗アダプタ(140f)の前記保持手段が、保持ペグ(109)を含み、前記ノズルアダプタ(140n)が、前記保持ペグ(109)と可逆的に係合するように構成された締結フック(107)を含み、好ましくは、前記保持ペグ(109)と自己係合するように構成されている、請求項に記載の鋳造装置。
【請求項8】
前記漏斗アダプタ(140f)の前記保持手段が、1つ以上の保持ペグ(109)を含み、前記ノズルアダプタ(140n)が、前記1つ以上の保持ペグと相互作用して、前記ロック位置で前記ノズル(12)に前記シュラウド(9)を可逆的にロックするように構成されたバヨネット結合要素を備える、請求項に記載の鋳造装置。
【請求項9】
前記漏斗アダプタ(140f)が、接着材料(113)で前記シュラウド(9)に固定されている、請求項6~8のいずれか一項に記載の鋳造装置。
【請求項10】
前記モールド(2)が、請求項3に記載されたものであり、前記シート部材(15)が、前記シート部材の前記中央穴を中心に配置された円錐形部分を含み、前記円錐形部分が、前記取鍋(103)が、前記シュラウド(9)が前記ノズル(12)に可逆的にロックされた状態で垂直に下げられる時に、前記シュラウドを前記ボア(7)と位置合わせして誘導するように構成されている、請求項6~9のいずれか一項に記載の鋳造装置。
【請求項11】
請求項5~10のいずれか一項に記載の鋳造装置を用いて溶融金属を鋳造するための方法であって、
●前記漏斗(11)に係合された前記ノズル(12)が、前記シート部材(15)に置かれている前記漏斗に荷重を加えるまで、前記取鍋(103)を垂直に下げ、したがって、前記シート部材(15)を前記コンプライアント要素(17)に逆らって前記ベース部材(16)に対して移動させ、前記ノズル(12)と前記シュラウド鋳造位置にある前記シュラウド(9)との間の密封接触を形成すること、
●前記溶融金属が、前記取鍋(103)から前記鋳造キャビティ(3)に、前記ノズル(12)、前記シュラウド(9)、及び前記ハウジング(6)を通って流れることを可能にすること、を含む、方法。
【請求項12】
前記鋳造装置が、請求項4に記載のモールドアセンブリを備え、前記取鍋(103)を垂直に下げることによって前記ノズル(12)を前記漏斗(11)に係合させることと、前記ノズル(12)の前記取鍋(103)を更に下げて、前記漏斗(11)に前記荷重を加えることによって、前記ノズル(12)と前記シュラウド(9)との間に前記密封接触を形成することと、を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記鋳造装置が、請求項6~10のいずれか一項に記載のものであり、
●前記ノズル(12)を前記シュラウド(9)の前記漏斗(11)に係合させ、
○前記シュラウド(9)の前記漏斗に固定された前記漏斗アダプタ(140f)の前記保持手段を、
○前記取鍋(103)の前記基部又は前記ノズル(12)に固定された前記ノズルアダプタ(140n)に係合させて、
例えば、ロック位置で前記ノズル(12)に前記シュラウド(9)をロックすることによって、前記取鍋/シュラウド結合機構(140)を用いて前記シュラウド(9)を前記ノズル(12)に把持すること、
●前記ノズル(12)にロックされた前記シュラウド(9)を、前記モールド/シュラウド結合機構(14)の上に実質的に垂直に位置決めすること、
●前記シュラウド(9)が、前記漏斗(11)が前記シート部材(15)上に静止している状態で、前記シュラウド鋳造位置に到達するまで垂直に下げること、
●前記ノズル(12)の前記取鍋(103)を更に下げて、前記漏斗(11)に前記荷重を加えることによって、前記ノズル(12)と前記シュラウド(9)との間に前記密封接触を形成すること、を含む、請求項11に記載の方法。
【国際調査報告】