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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】注射針ハブを有する注射器アダプタ
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/20 20060101AFI20240725BHJP
【FI】
A61J1/20 314C
A61J1/20 314Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508452
(86)(22)【出願日】2022-08-12
(85)【翻訳文提出日】2024-04-08
(86)【国際出願番号】 US2022040143
(87)【国際公開番号】W WO2023018926
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】63/232,454
(32)【優先日】2021-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110003177
【氏名又は名称】弁理士法人旺知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ティアンチー
(72)【発明者】
【氏名】ディステファノ,ニコル,ジーン
(72)【発明者】
【氏名】サダシバム,バラジ
(72)【発明者】
【氏名】ゴンサレス マシアス,ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】メドラノ,ノエル,アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】パテル,シヴァーニー,ラジェシュ
【テーマコード(参考)】
4C047
【Fターム(参考)】
4C047AA05
4C047AA27
4C047CC04
4C047HH03
4C047HH04
4C047HH05
4C047HH07
(57)【要約】
注射器アダプタは、内部空間を画定する側壁を有する外側筐体と、外側筐体の内部空間内に配置され、外側筐体内の第1位置から外側筐体内において第1位置から離間した第2位置へと移動可能な膜筐体であって、膜を受容する膜筐体と、外側筐体に接続され、注射器に接続されるように構成される注射針ハブであって、外側筐体に対して回転可能な注射針ハブと、注射針ハブに接続される注射針と備える。注射針は、第1端部および該第1端部の反対側に位置する第2端部を有し、注射針の第2端部は、膜筐体が第1位置にあるときに、膜内に受容される。注射針は、注射針ハブに対して回転可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端部および該第1端部の反対側に位置する第2端部を有する外側筐体であって、前記外側筐体は、前記外側筐体の前記第1端部から前記外側筐体の前記第2端部へと延伸する長手軸を有し、前記外側筐体は内部空間を画定する側壁を含む、外側筐体と、
前記外側筐体の前記内部空間内に配置され、前記外側筐体内の第1位置から前記外側筐体内において前記第1位置から離間した第2位置へと移動可能な膜筐体であって、前記膜筐体は膜を受容する、膜筐体と、
前記外側筐体に接続され、注射器に接続されるように構成される注射針ハブであって、前記注射針ハブは前記外側筐体に対して回転可能である、注射針ハブと、
前記注射針ハブに接続される注射針であって、前記注射針は、第1端部および該第1端部の反対側に位置する第2端部を有し、前記注射針の第2端部は、前記膜筐体が前記第1位置にあるときに前記膜内に受容され、前記注射針は前記注射針ハブに対して回転可能である、注射針と、
を備える注射器アダプタ。
【請求項2】
前記注射針は、前記注射針ハブの対応する円錐台状面に係合される円錐台状面を含む、請求項1の注射器アダプタ。
【請求項3】
前記注射針ハブは、中央開口部を含み、前記注射針の少なくとも一部は、前記中央開口部内に受容され、前記注射針ハブは、前記中央開口部内へと径方向内側に延伸し、前記注射針の第1端部に係合される突出部を含む、請求項2の注射器アダプタ。
【請求項4】
前記注射針は、前記外側筐体に対して固定される、請求項1の注射器アダプタ。
【請求項5】
前記外側筐体は、前記外側筐体の第1端部にて注射針通路を含み、前記注射針通路は、前記注射針の一部を受容する、請求項4の注射器アダプタ。
【請求項6】
前記注射針は、前記注射針ハブの対応する球状面に係合される球状面を含む、請求項1の注射器アダプタ。
【請求項7】
前記注射針と前記注射針ハブとの間に配置される封止部をさらに備える、請求項1から請求項6の何れかの注射器アダプタ。
【請求項8】
前記封止部は、Oリングを含む、請求項5の注射器アダプタ。
【請求項9】
前記外側筐体内に受容され、前記膜筐体を前記第1位置に向けて付勢するばねをさらに備える、請求項1から請求項8の何れかの注射器アダプタ。
【請求項10】
第1端部および該第1端部の反対側に位置する第2端部を有する外側筐体であって、前記外側筐体は前記外側筐体の第1端部から前記外側筐体の第2端部へと延伸する長手軸を有し、前記外側筐体は内部空間を画定する側壁を含む、外側筐体と、
前記外側筐体の内部空間内に配置され、前記外側筐体内の第1位置から前記外側筐体内において前記第1位置から離間した第2位置へと移動可能な膜筐体であって、前記膜筐体は膜を受容する、膜筐体と、
前記外側筐体に接続され、注射器に接続されるように構成される注射針ハブであって、前記注射針ハブは前記外側筐体に対して回転可能であり、前記注射針ハブは前記膜筐体に係合される延伸部を含み、前記注射針ハブの回転は前記延伸部を介して前記膜筐体を回転させるように構成される、注射針ハブと、
前記注射針ハブに接続される注射針であって、前記注射針は第1端部および該第1端部の反対側に位置する第2端部を有し、前記注射針の第2端部は前記膜筐体が第1位置にあるときに前記膜内に受容される、注射針と、
を備える注射器アダプタ。
【請求項11】
前記延伸部は、前記膜筐体に画定された凹部により受容され、前記延伸部は、前記膜筐体が前記第1位置から前記第2位置に移動すると、前記凹部内を摺動するように構成される、請求項10の注射器アダプタ。
【請求項12】
前記延伸部は、前記膜筐体を前記第1位置に向けて付勢するように構成される、請求項11に記載の注射器アダプタ。
【請求項13】
前記延伸部は、弓状である、請求項10から請求項12の何れかの注射器アダプタ。
【請求項14】
前記延伸部は、等間隔に配置された3つの延伸部を含む、請求項10から請求項13の何れかの注射器アダプタ。
【請求項15】
前記膜筐体は、前記膜筐体が前記第1位置から前記第2位置に移動すると前記注射針に係合するように構成される注射針誘導部を含む、請求項10から請求項13の何れかの注射器アダプタ。
【請求項16】
前記注射針誘導部は、円錐台状面を含む、請求項15に記載の注射器アダプタ。
【請求項17】
前記注射針誘導部は、前記膜筐体の長さの少なくとも25パーセントに及ぶ、請求項16に記載の注射器アダプタ。
【請求項18】
前記注射針の孔貫先端部は、前記膜筐体が第1位置にあるときに前記膜内に位置し、前記注射針の孔貫先端部は、前記膜筐体が第2位置にあるときに前記膜外に位置する、請求項10から請求項17の何れかの注射器アダプタ。
【請求項19】
前記膜筐体は、嵌合コネクタの接続インタフェースを受容するように構成されるコレットを含む、請求項10から請求項18の何れかの注射器アダプタ。
【請求項20】
前記延伸部は、前記注射針ハブと一体的に形成される、請求項10から請求項19の何れかの注射器アダプタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射針ハブを有する注射器アダプタに関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年8月12日に出願された「注射針ハブを有する注射器アダプタ(Syringe Adapter with Needle Hub)」と題する米国仮出願第63/232,454号の優先権を主張するものであり、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
化学療法薬物等の有害な薬剤を再構成し、輸送し、投与する医療提供者は、これらの薬物に身をさらされる恐れを医療提供者に課し、医療環境に危険をもたらすことがある。意図せず化学療法にさらされると、神経系に影響を及ぼし、生殖器系を害し、将来的に血液のがんを発症する危険性を高める可能性がある。いくつかの薬剤は、投与の前に溶解または希釈しなければならず、ある容器から粉末または液状の薬剤が入った密閉バイアルへと溶剤を移送する必要がある。バイアルの内部と周囲の大気との間で圧力差があると、バイアルから薬物を取り出す間に、薬剤が知らないうちに気体の状態で大気中に放出されるかエアロゾル化により大気中に放出される可能性がある。医療提供者が毒性の薬剤にさらされる恐れを低減するために、これらの薬剤の移送は、密閉式の移送装置またはシステムを使用して実行される。
【0004】
注射器アダプタは、バイアル等の容器から注射器に薬物を移送するため、あるいは、薬物の再構成のために注射器からバイアルに希釈液を移送するために、注射器とともに使用される。また、注射器アダプタは、注射器から患者用輸液ラインに、あるいは、IVバッグスパイクを介してIVバッグ等の輸液容器に、薬剤を移送するためにも使用される。注射器アダプタは、膜筐体に受容される膜を含み、注射器アダプタの膜は、患者コネクタ、バイアルアダプタ、IVバッグスパイク等の嵌合部材の対応する膜に係合するように構成されて、薬物が周囲環境にさらされないよう注射器アダプタと該部材との間で流体を確実に密閉移送する。
【発明の概要】
【0005】
一態様または実施形態において、注射器アダプタは、第1端部および該第1端部の反対側に位置する第2端部を有する外側筐体であって、外側筐体は外側筐体の第1端部から外側筐体の第2端部へと延伸する長手軸を有し、外側筐体は内部空間を画定する側壁を含む、外側筐体と、外側筐体の内部空間内に配置され、外側筐体内の第1位置から外側筐体内において第1位置から離間した第2位置へと移動可能な膜筐体であって、膜筐体は膜を受容する、膜筐体と、外側筐体に接続され、注射器に接続されるように構成される注射針ハブであって、注射針ハブは外側筐体に対して回転可能である、注射針ハブと、注射針ハブに接続される注射針であって、注射針は第1端部および該第1端部の反対側に位置する第2端部を有する、注射針と、を備える。注射針の第2端部は、膜筐体が第1位置にあるときに、膜内に受容される。注射針は、注射針ハブに対して回転可能である。
【0006】
注射針は、注射針ハブの対応する円錐台状面に係合される円錐台状面を含んでもよい。注射針ハブは、中央開口部を含んでもよく、注射針の少なくとも一部は、中央開口部内に受容されてもよく、注射針ハブは、中央開口部内へと径方向内側に延伸し、注射針の第1端部に係合される突出部を含んでもよい。
【0007】
注射針は、外側筐体に対して固定されてもよい。外側筐体は、外側筐体の第1端部にて注射針通路を含んでもよく、注射針通路は、注射針の一部を受容してもよい。
【0008】
注射針は、注射針ハブの対応する球状面に係合される球状面を含んでもよい。
【0009】
注射器アダプタは、注射針と注射針ハブとの間に配置される封止部を備えてもよい。封止部は、Oリングであってもよい。注射器アダプタは、外側筐体内に受容され、膜筐体を第1位置に向けて付勢するばねを備えてもよい。
【0010】
さらなる態様または実施形態において、注射器アダプタは、第1端部および該第1端部の反対側に位置する第2端部を有する外側筐体であって、外側筐体は外側筐体の第1端部から外側筐体の第2端部へと延伸する長手軸を有し、外側筐体は内部空間を画定する側壁を含む、外側筐体と、外側筐体の内部空間内に配置され、外側筐体内の第1位置から外側筐体内において第1位置から離間した第2位置へと移動可能な膜筐体であって、膜筐体は膜を受容する、膜筐体と、外側筐体に接続され、注射器に接続されるように構成される注射針ハブであって、注射針ハブは外側筐体に対して回転可能であり、注射針ハブは膜筐体に係合される延伸部を含む、注射針ハブと、を備える。注射針ハブの回転は、延伸部を介して膜筐体を回転させるように構成される。注射器アダプタは、注射針ハブに接続される注射針をさらに備え、注射針は、第1端部および該第1端部の反対側に位置する第2端部を有する。注射針の第2端部は、膜筐体が第1位置にあるときに、膜内に受容される。
【0011】
延伸部は、膜筐体に画定された凹部により受容されてもよく、延伸部は、膜筐体が第1位置から第2位置に移動すると、凹部内を摺動するように構成されてもよい。延伸部は、膜筐体を第1位置に向けて付勢するように構成されてもよい。延伸部は、弓状であってもよい。延伸部は、等間隔に配置された3つの延伸部であってもよい。
【0012】
膜筐体は、膜筐体が第1位置から第2位置に移動すると、注射針に係合するように構成される注射針誘導部を含んでもよい。注射針誘導部は、円錐台状面を含んでもよい。注射針誘導部は、膜筐体の長さの少なくとも25パーセントに及んでもよい。
【0013】
注射針の孔貫先端部は、膜筐体が第1位置にあるときに膜内に位置してもよく、注射針の孔貫先端部は、膜筐体が第2位置にあるときに膜外に位置してもよい。膜筐体は、嵌合コネクタの接続インタフェースを受容するように構成されるコレットを含んでもよい。延伸部は、注射針ハブと一体的に形成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1は、従来の注射器アダプタを示す正面図である。
【0015】
図2は、図1の注射器アダプタを示す断面図である。
【0016】
図3は、本出願の一態様または実施形態にかかる注射器アダプタを示す部分断面図である。
【0017】
図4は、図3の注射器アダプタを示す部分断面図である。
【0018】
図5は、本出願のさらなる態様または実施形態にかかる注射器アダプタを示す部分断面図である。
【0019】
図6は、本出願の一態様または実施形態にかかる注射器アダプタ用の注射針ハブを示す断面図である。
【0020】
図7は、図6の注射針ハブを示す拡大図である。
【0021】
図8は、本出願のさらなる態様または実施形態にかかる注射器アダプタ用の注射針ハブを示す斜視図である。
【0022】
図9は、図8の注射針ハブを示す断面図である。
【0023】
図10は、図8の注射針ハブを示す底面図である。
【0024】
図11は、図8の注射針ハブを示す斜視図であり、シールアセンブリに関連して注射針ハブを示す。
【0025】
図12は、本出願の一態様または実施形態にかかる図8の注射針ハブを有する注射器アダプタを示す断面図である。
【0026】
図13は、本出願の一態様または実施形態にかかるシールアセンブリを示す斜視図である。
【0027】
図14は、明確にするために膜の図示を省略した、図13のシールアセンブリを示す部分断面図である。
【0028】
図15は、図13のシールアセンブリを示す部分断面図であり、シールアセンブリ内に配置された注射針を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下の説明の目的のために、「端部」、「上側」、「下側」、「右側」、「左側」、「垂直方向」、「水平方向」、「頂部」、「底部」、「横方向」、「縦方向」、および、それらの派生語等の用語は、図面において方向付けられる通り本発明に関連するものとする。ただし、本発明は、それとは反対に特に明記される場合を除き、種々の代替的な変形例および工程の順序を想定し得ることが理解されるべきである。また、添付の図面に示され、かつ、以下で本明細書に記載される特定の装置および処理は、単に本発明の例示的な実施形態であることが理解されるべきである。したがって、本明細書に開示した実施形態に関連する具体的な寸法、および、他の物理的な特性は、限定的に考えられるべきではない。さらに、本発明は、それとは反対に特に明記される場合を除き、種々の代替的な変形例および工程の順序を想定し得ることが理解されるべきである。
【0030】
図1および図2を参照すると、従来の注射器アダプタ10が示されている。注射器アダプタ10は、流体を密閉移送するためのシステムの一構成要素である。特に、注射器アダプタ10は、注射器(図示せず)および他の医療器具または流体容器に接続するように構成される。医療器具は、たとえば、患者ライン、バイアルアダプタ、流体容器、または、輸液アダプタであり得る。容器は、患者に投与される流体を保持するための、医療用バイアル、注射筒、IVバッグ、または、類似の容器であり得る。注射器アダプタ10は、注射器と医療器具または流体容器との間で流体を密閉移送することを容易にするために使用することができる。注射器アダプタ10は、米国特許出願公開第2018/0200147号明細書に図示および記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0031】
図1および図2を再び参照すると、注射器アダプタ10は、外側筐体12と、注射器に接続する注射針ハブ14と、膜筐体16とを備える。外側筐体12は、第1端部18と、第1端部18の反対側に位置する第2端部20とを有する。外側筐体12は、外側筐体12の第1端部18から外側筐体12の第2端部20へと延伸する長手軸Aを有する。外側筐体12は、内部空間24を画定する側壁22を含む。注射針ハブ14は、注射器に接続されるように構成される。注射針ハブ14は、ルアーコネクタを含んでもよいが、他の好適な接続機構を用いてもよい。膜筐体16は、外側筐体12の内部空間24内に配置され、外側筐体12内の第1位置から外側筐体12内において第1位置から離間した第2位置へと移動可能である。膜筐体16は、膜26を受容する。注射器アダプタ10は、外側筐体12の内部空間24に受容される注射針28をさらに備える。注射針28の孔貫先端部30は、膜筐体16が第1位置にあるときに膜26内に位置する。また、注射針28の孔貫先端部30は、膜筐体16が第2位置にあるときに膜26外に位置する。注射針28は、注射針ハブ14に固定され、注射針ハブ14とともに回転する。特に、注射針ハブ14は、外側筐体12に対して回転可能であり、これにより、医療従事者が注射針ハブ14を把持して注射針ハブ14に注射器を取り付けたり注射針ハブ14から注射器を取り外したりすることを必要とすることで、注射器が注射針ハブ14から不用意に外れることを抑制する。膜筐体16は、図1および図2に示すように、患者用コネクタ等の嵌合コネクタ36の接続インタフェース34を受容するように構成されるコレット32を含む。嵌合コネクタ36は、膜38を含む。嵌合コネクタ36は、密閉式の移送装置またはシステムの他の構成要素、たとえば、バイアルアダプタまたはIVバッグスパイクであってもよい。また、注射器アダプタ10は、外側筐体12の内部空間24内に受容されるばね40を備える。ばね40は、膜筐体16を第1位置に向けて付勢する。
【0032】
嵌合コネクタ36を注射器アダプタ10の外側筐体12内に挿入すると、膜筐体16のコレット32は、嵌合コネクタ36の接続インタフェース34を受容し、外側筐体12内の膜筐体16を外側筐体12の第1端部18に向けて移動させる。膜筐体16が移動すると、コレット32は、膜筐体16を嵌合コネクタ36に固定して、嵌合コネクタ36の膜38と膜筐体16の膜26とを確実に係合させる。膜筐体16が第1位置から第2位置に移動すると、注射針28の孔貫先端部30が膜筐体16の膜26および嵌合コネクタ36の膜38を貫通して、孔貫先端部30が嵌合コネクタ36内に受容されることにより、注射針28が嵌合コネクタ36と流体連通する。注射針ハブ14は注射針28と流体連通しており、注射器アダプタ10が嵌合コネクタ36に接続されると、注射針ハブ14に接続された注射器(図示せず)を、嵌合コネクタ36と流体連通させる。ばね40の補助によって膜筐体16が第2位置から第1位置に移動することにより、嵌合コネクタ36がコレット32から解放されて、嵌合コネクタ36が注射器アダプタ10から分離する。膜筐体16は、嵌合コネクタ36の係止機構42により第2位置にて固定される。係止機構42は、外側筐体12の一部に係合して膜筐体16を第2位置にて保持する。嵌合コネクタ36を注射器アダプタ10から引き抜くことにより、係止機構42が解除されて、膜筐体16が第2位置から第1位置に戻る。
【0033】
図3および図4を参照すると、一態様または実施形態によれば、注射器アダプタ10は、注射針ハブ62に対して回転可能な注射針60を備える。図1および図2に示すように注射針28に対して固定された注射針ハブ14を提供するのではなく、図3および図4の注射針60は注射針ハブ62に対して自由に回転して、注射針ハブ62が外側筐体12に対して回転しても注射針60が回転しないようにすることにより、注射針60が膜26を貫通する箇所のばらつきを最小限化する。注射針60が膜26を貫通する箇所のばらつきを最小限化することにより、注射器アダプタ10の使用中に膜26が分裂することを防止する。注射針60は、注射針ハブ62に接続されて、注射針ハブ62に対する注射針60の軸移動を防止する。注射針60は、注射針ハブ62の対応する円錐台状面66に係合される円錐台状面64を含む。注射針ハブ62は中央開口部68を含み、注射針60の少なくとも一部が中央開口部68に受容される。注射針ハブ62は、中央開口部68内へと径方向内側に延伸する突出部70を含み、突出部70は、注射針60の第1端部72に係合される。注射針60の円錐台状面64と注射針ハブ62の円錐台状面66とが係合することにより、注射針60が注射針ハブ62に対して第1方向に軸移動することを防止し、また、突出部70は、注射針60が注射針ハブ62に対して第1方向とは反対の第2方向に軸移動することを防止する。注射針60の円錐台状面64と、注射針ハブ62の円錐台状面66との合わせ面により、注射針ハブ62に対する注射針60の滑らかな回転移動が可能になる。
【0034】
図5を参照すると、さらなる態様または実施形態によれば、注射器アダプタ10は、図3および図4の注射針60および注射針ハブ62と同様、注射針ハブ82に対して回転可能な注射針80を備える。注射針80は、外側筐体12に対して固定される。より詳細には、一態様または実施形態において、外側筐体12は、外側筐体12の第1端部18にて注射針通路84を含み、注射針通路84は、注射針80の一部を受容する。封止部86が、注射針80と注射針ハブ82との間に配置される。一態様または実施形態において、封止部86はOリングであるが、他の好適なシールを用いてもよい。封止部86は、注射針ハブ82および外側筐体12の少なくとも一方に画定された凹部88内に受容されてもよい。注射針80が外側筐体12に対して固定された状態では、図3および図4の注射針ハブ62と同様、注射針ハブ82が回転しても注射針80は回転しない。封止部86は、注射針ハブ82と注射針80との間を確実に液密封止しながら、注射針ハブ82を注射針80に対して回転させる。
【0035】
図6および図7を参照すると、さらなる態様または実施形態によれば、注射器アダプタ10は、図3から図5の注射針60,80および注射針ハブ62,82の構成同様、注射針ハブ92に対して回転可能な注射針90を備える。図6および図7の注射針90は、注射針ハブ92の対応する球状面96に係合される球状面94を含む。また、図6および図7の注射針ハブ92および注射針90は、注射針ハブ92と注射針90との間に配置される封止部98を含む。一態様または実施形態において、封止部98はOリングであるが、他の好適なシールを用いてもよい。封止部98は、注射針ハブ92および外側筐体12の少なくとも一方に画定された凹部内に受容されてもよい。図3から図5の注射針ハブ62,82と同様、注射針ハブ92が回転しても注射針90は回転しない。封止部98は、注射針ハブ92と注射針90との間を確実に液密封止しながら、注射針ハブ92を注射針90に対して回転させる。注射針90の球状面94および注射針ハブ92の球状面96は、注射針ハブ92を注射針90に対して回転させながら、注射針90と注射針ハブ92との間の相対的な軸移動を防止する。
【0036】
図8から図15を参照すると、さらなる態様または実施形態によれば、注射器アダプタ110が示されており、以下に記載のいくつかの特徴を除き、図1および図2に示す注射器アダプタ10と同様の特徴および機能を有する。図8から図15の注射器アダプタ110は、外側筐体12に接続される注射針ハブ112を備え、かつ、膜筐体116に係合される延伸部114を備え、注射針ハブ112の回転は、延伸部114を介して膜筐体116を回転させるように構成される。後述の通り、注射器アダプタ110の延伸部114は、膜筐体116、膜26、および、注射針ハブ112を一体的に回転させるように構成され、これにより、複数箇所で膜26を穿孔した際に膜26が分裂することを最小限化する。また、延伸部114は、注射針28に対して膜筐体116および膜26を中心に位置決めするように構成され、さらに、上述の通り外側筐体12内の膜筐体116を付勢するためのばねとして作用するように構成される。特に、延伸部114は、膜筐体116を第1位置に向けて付勢するように構成される。
【0037】
図8から図12を参照すると、注射針ハブ112は、等間隔に配置された3つの延伸部114を含むが、延伸部114は1つ以上あればよい。各延伸部114は弓状であるが、他の好適な形状および構成を用いてもよい。各延伸部114の凹面は、外側筐体12に向けて径方向外側を向いている。1つ以上の延伸部114は、注射針ハブ112と一体的に形成されているが、他の好適な構成を用いてもよい。
【0038】
図8から図15を参照すると、注射針ハブ112の1つ以上の延伸部114は、膜筐体116に画定された対応する凹部118に受容され、1つ以上の延伸部114は、膜筐体116が第1位置から第2位置に移動すると、対応する凹部118内を摺動するように構成される。注射器アダプタ110の使用中に膜筐体116を第1位置から第2位置に移動させると、1つ以上の延伸部114が対応する凹部118内を摺動して、膜筐体116が1つ以上の延伸部114に押圧されて1つ以上の延伸部114が平坦化することによって、膜筐体116を第1位置に戻す付勢力が生じる。1つ以上の延伸部114の弾力特性により、1つ以上の延伸部114は、平坦化された後、元の形状に戻ろうとすることで付勢力が生じる。1つ以上の延伸部114による付勢力により、図1および図2に示すばね40の必要性がなくなる。
【0039】
図12図14、および、図15を参照すると、膜筐体116は、膜筐体116が第1位置から第2位置に移動すると注射針28に係合するように構成される注射針誘導部120を含む。注射針誘導部120は円筒状であり、円錐台状面122を含む。注射針誘導部120の円錐台状面122は、注射器アダプタ110を組み立てる際、注射針28の注射針誘導部120への最初の挿入を誘導するように構成される。注射針誘導部120は、膜筐体116の長さの少なくとも25パーセントに及ぶが、他の好適な長さを用いてもよい。注射針誘導部120は、膜26内に受容され、注射針28が膜26を貫通する箇所を最小限化するように構成される。注射針28の孔貫先端部30は、膜筐体116が第1位置にあると、膜26内に位置する。注射針28の孔貫先端部30は、膜筐体116が第2位置にあると、膜26外に位置する。膜筐体116は、嵌合コネクタ36の接続インタフェース34を受容するように構成されるコレット124を含む。
【0040】
図8から図15を再び参照すると、注射器アダプタ110の使用中、注射針ハブ112を回転させると、膜筐体116、膜26、および、注射針28も注射針ハブ112ととも回転する。外側筐体12内において膜筐体116が注射針ハブ112に対して依然として軸移動可能な状態で、注射針ハブ112の回転は、膜筐体116の対応する凹部118内に受容された1つ以上の延伸部114を介して膜筐体116も回転させる。等間隔に配置された延伸部114、たとえば、図示するように等間隔に配置された3つの延伸部114は、膜筐体116に対して均等に力を加えることにより、膜筐体116の軸移動中に外側筐体12内にて膜筐体116を中央に位置決めすることができる。
【0041】
本開示を、例示的な設計を有するものとして説明したが、本開示は、開示の精神および範囲内でさらなる変更が可能である。したがって、本出願は、その一般原則を使用して、本開示のあらゆる変形、使用、または適応を包含することを意図するものである。さらに、本出願は、本開示が属する技術分野における既知または慣例のプラクティスの範囲内にあり、添付の特許請求の範囲内に入るような本開示からの逸脱を包含することを意図している。可能な範囲で、上述の任意の態様または実施形態の1つまたは複数の特徴を、他の任意の態様または実施形態の1つまたは複数の特徴と組み合わせることが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【国際調査報告】