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特表2024-529132抗生物質ピラジノチアジン誘導体及びその調製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】抗生物質ピラジノチアジン誘導体及びその調製方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 519/00 20060101AFI20240725BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240725BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20240725BHJP
   A61P 31/10 20060101ALI20240725BHJP
   A61P 33/14 20060101ALI20240725BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240725BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240725BHJP
   A61K 31/542 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
C07D519/00 301
C07D519/00 CSP
A61P31/04
A61P31/12
A61P31/10
A61P33/14
A61P43/00 121
A61K45/00
A61K31/542
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508524
(86)(22)【出願日】2022-08-12
(85)【翻訳文提出日】2024-03-12
(86)【国際出願番号】 IN2022050732
(87)【国際公開番号】W WO2023017549
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】202141036833
(32)【優先日】2021-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520188581
【氏名又は名称】バグワークス・リサーチ・インディア・ピーヴィーティー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シャフル・ハミード・ピア・モハメド
(72)【発明者】
【氏名】ランガ・ラオ・カジパルヤ・ランガナタ・ラオ
(72)【発明者】
【氏名】ナガクマール・バラサム
(72)【発明者】
【氏名】ナイネシュ・カタギハリ・マス
(72)【発明者】
【氏名】スリーヴァリ・シャルマ
(72)【発明者】
【氏名】ラダ・ナンディシャイア
(72)【発明者】
【氏名】ヴァサンティ・ラマチャンドラン
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA19
4C084NA14
4C084ZB33
4C084ZB35
4C084ZB37
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086AA04
4C086CB26
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZB37
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、式Ia又は式Ibから選択される化合物、その立体異性体、薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体を提供する。本開示の化合物は、微生物の殺滅又は成長の阻害において有効な抗生物質化合物である。本開示はまた、化合物を調製するための過程及びその方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Ia又は式Ibから選択される化合物
【化1】
その立体異性体、薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体
[式中、
R1は、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C3~6シクロアルキル、CD3、C1~6アルコキシ、C1~6ハロアルキル、又はC1~6ハロアルコキシから選択され、
R2は、水素、C1~6アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、又はアミノから選択され、
R3は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、C1~6アルコキシ、C1~6ハロアルキル、C1~6ハロアルコキシ、C1~6アルキル、NH-R4、又は-CH2CH2OHから選択され、
R4は、C1~6アルキル、C3~6シクロアルキル、C1~6アルコキシ、C1~6ハロアルキル、C1~6ハロアルコキシ、-CH2CH2OH、又は-CH2CH2NH2から選択され、
X1は、N又はCR3であり、
X3がCH又はCH2である場合、X2はCR5、O、N、又はNR6であり、
R5は、水素、シアノ、C1~6アルキル、C1~6アルキルアミノ、C1~6アルコキシ、又はC1~6ハロアルコキシから選択され、ここで、C1~6アルキル及びC1~6アルキルアミノは、ヒドロキシル、アミノ、又はC1~6アルキルから選択される1つ又は複数の基で任意選択により置換されており、
R6は、水素、C1~6アルキル、C1~6アルキルアミノ、C1~6アルコキシ、又はC1~6ハロアルコキシから選択され、ここで、C1~6アルキル及びC1~6アルキルアミノは、ヒドロキシル、アミノ、又はC1~6アルキルから選択される1つ又は複数の基で任意選択により置換されており、
X2がCH2又はCR5である場合、X3はN又はNR7であり、
R7は、水素又はC1~6アルキルから選択され、
Yは、N又はCR8であり、
R8は、水素、ハロゲン、シアノ、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、又はC1~6ハロアルコキシから選択される]。
【請求項2】
R1が、C1~6アルキル又はCD3から選択され、R2が、水素又はハロゲンであり、R3が、水素又はC1~6アルキルから選択され、X1が、N又はCR3であり、X2が、CR5、N、又はNR6であり、次にX3がCH又はCH2であり、R5が、水素又はC1~6アルキルから選択され、R6が、水素又はC1~6アルキルから選択され、Yが、N又はCR8であり、R8が、水素、ハロゲン、シアノ、又はC1~6アルキルから選択される、請求項1に記載の化合物、その立体異性体、薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体。
【請求項3】
i.(R)-5-(((2-((4-メチル-3-オキソ-3,4-ジヒドロピリド[2,3-b]ピラジン-6-イル)オキシ)エチル)アミノ)メチル)-3-(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ピラジノ[2,3-b][1,4]チアジン-6-イル)オキサゾリジン-2-オン、及び
ii.(R)-5-(((2-((5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロピリド[2,3-b]ピラジン-3-イル)オキシ)エチル)アミノ)メチル)-3-(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ピラジノ[2,3-b][1,4]チアジン-6-イル)オキサゾリジン-2-オン
から選択される、請求項1に記載の化合物、その薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体。
【請求項4】
i. (R)-5-(((2-((4-メチル-3-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリド[2,3-b]ピラジン-6-イル)オキシ)エチル)アミノ)メチル)-3-(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ピラジノ[2,3-b][1,4]チアジン-6-イル)オキサゾリジン-2-オン;
ii. (S)-5-(((2-((4-メチル-3-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリド[2,3-b]ピラジン-6-イル)オキシ)エチル)アミノ)メチル)-3-(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ピラジノ[2,3-b][1,4]チアジン-6-イル)オキサゾリジン-2-オン;
iii. (R)-5-(((2-((7-フルオロ-4-メチル-3-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリド[2,3-b]ピラジン-6-イル)オキシ)エチル)アミノ)メチル)-3-(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ピラジノ[2,3-b][1,4]チアジン-6-イル)オキサゾリジン-2-オン;
iv. (S)-5-(((2-((7-フルオロ-4-メチル-3-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリド[2,3-b]ピラジン-6-イル)オキシ)エチル)アミノ)メチル)-3-(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ピラジノ[2,3-b][1,4]チアジン-6-イル)オキサゾリジン-2-オン;
v. (R)-5-(((2-((4-(メチル-d3)-3-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリド[2,3-b]ピラジン-6-イル)オキシ)エチル)アミノ)メチル)-3-(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ピラジノ[2,3-b][1,4]チアジン-6-イル)オキサゾリジン-2-オン;及び
vi. (S)-5-(((2-((4-(メチル-d3)-3-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリド[2,3-b]ピラジン-6-イル)オキシ)エチル)アミノ)メチル)-3-(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ピラジノ[2,3-b][1,4]チアジン-6-イル)オキサゾリジン-2-オン
から選択される、請求項1に記載の化合物、その薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体。
【請求項5】
請求項1に記載の式Iaの化合物、その薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体を調製する方法であって、少なくとも1つの還元剤の存在下で式(X)を式(VI)と反応させて式Iaの化合物を得る工程を含む、方法。
【化2】
【請求項6】
請求項1に記載の式Ibの化合物、その立体異性体、薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体を調製する方法であって、少なくとも1つの還元剤の存在下で式(XI)を式(VII)と反応させて式Ibの化合物を得る工程を含む、方法。
【化3】
【請求項7】
少なくとも1つの還元剤が、2-ピコリンボラン錯体、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項5及び6に記載の方法。
【請求項8】
医薬として使用するための、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物又はその立体異性体、薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体。
【請求項9】
細菌、ウイルス、真菌及び原生動物から選択される微生物の殺滅又は成長の阻害において使用するための、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物又はその立体異性体、薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体。
【請求項10】
グラム陽性菌又はグラム陰性菌によって引き起こされた細菌感染症の処置において使用するための、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物又はその立体異性体、薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体。
【請求項11】
グラム陽性病原体及びグラム陰性病原体からなる群から選択される微生物によって引き起こされる患者の疾患又は状態の処置において使用するための、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物又はその立体異性体、薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体。
【請求項12】
請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物、その立体異性体、薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体を、薬学的に許容される担体と一緒に、任意選択により少なくとも1つの抗生物質と組み合わせて含む、医薬組成物。
【請求項13】
95%~99.9%の範囲の鏡像体過剰率を有する、請求項1に記載の式Ia又は式Ibから選択される化合物、その立体異性体、薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体を含む医薬組成物。
【請求項14】
細菌、ウイルス、真菌及び原生動物からなる群から選択される微生物の殺滅又は成長の阻害における、請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物又はその立体異性体、薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体の使用。
【請求項15】
対象に、有効量の請求項1から4のいずれか一項に記載の化合物を投与する工程を含む、対象の細菌感染症を処置するための方法。
【請求項16】
細菌感染症が、グラム陽性病原体又はグラム陰性病原体によって引き起こされる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
細菌感染症が、大腸菌(E. coli)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)、エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、大便連鎖球菌(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumonia)、アシネトバクター・ヘモリティカス(Acinetobacter haemolyticus)、アシネトバクター・ジュニイ(Acinetobacter junii)、アシネトバクター・ルオフィイ(Acinetobacter lwoffi)、バークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)、クラミドフィラ・ニューモニエ(Chlamydophila pneumoniae)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficili)、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、ナイセリア・ゴノレア(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitides)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、プロテウス・ハウセリ(Proteus houseri)、シトロバクター・フロインデイ(Citrobacter freundii)、シトロバクター・コセリ(Citrobacter kosari)、シトロバクター・ブラーキー(Citrobacter barakii)、霊菌(Seratia marcescens)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、モルガン菌(Morganella morganii)、ピロリ菌(Helicobacter pyroli)、又は結核菌(Mycobacterium tuberculosis)によって引き起こされる、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医薬化学分野に関し、より具体的には、抗菌性化合物、特に式Ia及びIbの化合物、その立体異性体、薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体、並びに活性成分としてそれらを含有する医薬組成物に関する。本開示は更に、前述の化合物を調製する方法に関する。
【0002】
本開示の化合物は、微生物によって媒介される疾患及び状態の処置、防止又は抑制のための医薬として有用である。
【背景技術】
【0003】
様々な医学的処置における抗生物質の使用の急速な増加に伴い、抗生物質耐性感染症の発生リスクも増大してきた。疾患を引き起こす一般に存在する多くの微生物における新しい耐性機序の出現により、結核、肺炎、食中毒等の一般的な感染症を処置する能力が限定されてきた。不合理な臨床的誤用及び薬物研究の削減は、状況の悪化を更に助長する。現在利用可能な抗菌薬の多くは、アシネトバクター・バウマンニ(Acinetobacter baumannii)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)及び大腸菌(Escherichia coli)等の最も一般的に存在している細菌に対しても無効になることが見出された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019186590号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Remington's Pharmaceutical Sciences (第21版、2005、University of the sciences in Philadelphia, Lippincott William & Wilkins)
【非特許文献2】Comprehensive Medicinal Chemistryの第5巻、第25.3章(Corwin Hansch; Chairman of Editorial Board)、Pergamon Press 1990
【非特許文献3】Jerry March and Michael SmithによるAdvanced Organic Chemistry、第5版、John Wiley & Sons 2001出版
【非特許文献4】T.W. Greene、Protective Groups in Organic Synthesis、John Wiley and Sons、1991出版
【非特許文献5】Diaz, Dら[Mutat Res. 630(1-2):1-13. 2007]
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、抗菌活性が改善され、標的微生物に対して選択性がより高く、抗菌耐性を発生する傾向が低下した新しい化合物の開発が、現況技術において喫緊に必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、式Ia又は式Ibから選択される化合物、その立体異性体、薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体に関する
【0008】
【化1】
【0009】
[式中、
R1は、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C3~6シクロアルキル、CD3、C1~6アルコキシ、C1~6ハロアルキル、又はC1~6ハロアルコキシから選択され、
R2は、水素、C1~6アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、又はアミノから選択され、
R3は、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、C1~6アルコキシ、C1~6ハロアルキル、C1~6ハロアルコキシ、C1~6アルキル、NH-R4、又は-CH2CH2OHから選択され、
R4は、C1~6アルキル、C3~6シクロアルキル、C1~6アルコキシ、C1~6ハロアルキル、C1~6ハロアルコキシ、-CH2CH2OH、又は-CH2CH2NH2から選択され、
X1は、N又はCR3であり、
X3がCH又はCH2である場合、X2はCR5、O、N、又はNR6であり、
R5は、水素、シアノ、C1~6アルキル、C1~6アルキルアミノ、C1~6アルコキシ、又はC1~6ハロアルコキシから選択され、ここで、C1~6アルキル及びC1~6アルキルアミノは、ヒドロキシル、アミノ、又はC1~6アルキルから選択される1つ又は複数の基で任意選択により置換されており、
R6は、水素、C1~6アルキル、C1~6アルキルアミノ、C1~6アルコキシ、又はC1~6ハロアルコキシから選択され、ここで、C1~6アルキル及びC1~6アルキルアミノは、ヒドロキシル、アミノ、又はC1~6アルキルから選択される1つ又は複数の基で任意選択により置換されており、
X2がCH2又はCR5である場合、X3はN又はNR7であり、
R7は、水素又はC1~6アルキルから選択され、
Yは、N又はCR8であり、
R8は、水素、ハロゲン、シアノ、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、又はC1~6ハロアルコキシから選択される]。
【0010】
本開示はまた、本明細書に開示される式Iaの化合物、その薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体を調製する方法であって、少なくとも1つの還元剤の存在下で式(X)を式(VI)と反応させて式Iaの化合物を得る工程を含む方法に関する。
【0011】
【化2】
【0012】
本開示はまた、本明細書に開示される式Ibの化合物、その立体異性体、薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体を調製する方法であって、少なくとも1つの還元剤の存在下で式(XI)を式(VII)と反応させて式Ibの化合物を得る工程を含む方法に関する。
【0013】
【化3】
【0014】
本開示は更に、本明細書に開示される式Ia又は式Ibから選択される化合物、その立体異性体、薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体を、薬学的に許容される担体と一緒に、任意選択により少なくとも1つの抗生物質と組み合わせて含む医薬組成物に関する。
【0015】
本開示は更に、95%~99.9%の範囲の鏡像体過剰率を有する、本明細書に開示される式Ia又は式Ibから選択される化合物、その立体異性体、薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体を含む医薬組成物に関する。
【0016】
本開示は更に、細菌、ウイルス、真菌及び原生動物からなる群から選択される微生物の殺滅又は成長の阻害における、本明細書に開示される式Ia又は式Ibから選択される化合物、その立体異性体、薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体の使用に関する。
【0017】
本開示は更に、患者におけるグラム陽性病原体又はグラム陰性病原体によって引き起こされる細菌感染症を処置するための方法であって、対象に、有効量の本明細書に開示される式Ia又は式Ibから選択される化合物、その立体異性体、薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体を投与する工程を含む方法に関する。
【0018】
本発明の主題のこれら及び他の特色、態様、及び利点は、以下の説明を参照することによって更に理解されよう。この概要は、特許請求される主題の非常に重要な特色又は必須の特色を同定することを企図するものではなく、特許請求される主題の範囲を制限するために使用されることを企図するものでもない。
【発明を実施するための形態】
【0019】
当業者は、本開示に、具体的に記載されるもの以外の変更及び修正が加えられることを認識されよう。本開示は、このようなあらゆる変更及び修正を含むことを理解されたい。本開示はまた、本明細書において言及されるか、又は示される、このようなあらゆる工程、特色、組成物及び化合物を、個々に又はまとめて含み、このような工程又は特色のいずれか又は複数の任意のあらゆる組合せを含む。
【0020】
定義
便宜上、本開示を更に説明する前に、本明細書及び実施例で用いられるある特定の用語を、ここにまとめる。これらの定義は、本開示の残部に照らして、当業者によって理解される通りに解釈されるべきである。本明細書で使用される用語は、当業者に認識され、知られている意味を有するが、便宜上、完全を期すために、特定の用語及びそれらの意味を、以下に記載する。
【0021】
冠詞「a」、「an」及び「the」は、その冠詞の文法的目的語の1つ又は2つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すために使用される。
【0022】
「含む(comprise)」及び「含む(comprising)」という用語は、包括的で広い意味で使用され、追加の要素が含まれうることを意味する。本明細書を通して、文脈によって別段必要とされない限り、「含む(comprise)」という用語、並びに「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」等の変形は、記載される要素若しくは工程、又は要素若しくは工程の群を含むが、任意の他の要素若しくは工程、又は要素若しくは工程の群を排除しないことを含意することを理解されよう。
【0023】
「含む(including)」という用語は、「含むが、それらに限定されない」を意味するために使用される。「含む(including)」及び「含むが、それらに限定されない」は、交換可能に使用される。
【0024】
本明細書において本開示を通して示される構造式では、以下の用語は、別段具体的に記載されない限り、示される意味を有する。
【0025】
「有効量」という用語は、処置される症状及び/又は状態を、著しくプラスに修正する(例えば、プラスの臨床応答をもたらす)のに十分な、化合物又は組成物の量を意味する。医薬組成物において使用するための活性成分の有効量は、処置される特定の状態、状態の重症度、処置期間、併用療法の性質、用いられる特定の活性成分、利用される薬学的に許容される特定の賦形剤/担体、投与経路、並びに担当医の知識及び専門技術に含まれる類似の因子によって変わる。
【0026】
「薬学的に許容される」という用語は、正しい医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、又は他の問題若しくは合併症なしにヒト及び動物の組織と接触させて使用するのに適した、妥当な損益比に見合う、化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指す。
【0027】
「薬学的に許容される塩」は、薬学的に許容される酸又は塩基を含む塩を包含する。薬学的に許容される酸には、無機酸、例えば塩酸、硫酸、リン酸、二リン酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸及び硝酸と、有機酸、例えばクエン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、アスコルビン酸、シュウ酸、コハク酸、酒石酸、安息香酸、酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸又はp-トルエンスルホン酸の両方が含まれる。薬学的に許容される塩基には、アルカリ金属(例えばナトリウム又はカリウム)及びアルカリ土類金属(例えばカルシウム又はマグネシウム)水酸化物及び有機塩基、例えばアルキルアミン、アリールアルキルアミン及び複素環式アミンが含まれる。
【0028】
多くの場合において本明細書で論じられる化合物は、ACD/Labs(登録商標)によるACD/名称及び/又はCambridgeSoft(登録商標)によるChemdrawを用いて命名され、且つ/又はチェックされたものでありうる。
【0029】
「多形」という用語は、同じ分子の結晶系を指し、異なる多形は、結晶格子における分子の配置又は立体構造の結果として、例えば融解温度、融合熱、溶解度、溶解速度及び/又は振動スペクトル等の異なる物理的特性を有することができる。
【0030】
薬学的に許容されない対イオン又は関連する溶媒を有する塩及び溶媒和物は、例えば、式Ia又は式Ibの他の化合物、及びそれらの薬学的に許容される塩の調製における中間体として使用するために、本開示の範囲内にある。したがって、本開示の一実施形態は、式Ia又は式Ibの化合物、及びその塩を包含する。式Ia又は式Ibによる化合物は、塩基性官能基を含有し、したがって、適切な酸を用いる処理によって薬学的に許容される酸付加塩を形成することができる。適切な酸には、薬学的に許容される無機酸及び薬学的に許容される有機酸が含まれる。代表的な薬学的に許容される酸付加塩には、塩酸塩、臭化水素酸塩、硝酸塩、メチル硝酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、スルファミン酸塩、リン酸塩、酢酸塩、ヒドロキシ酢酸塩、フェニル酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、イソ-酪酸塩、吉草酸塩、マレイン酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、アクリル酸塩、フマル酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、サリチル酸塩、グリコール酸塩、乳酸塩、ヘプタン酸塩、フタル酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、o-アセトキシ安息香酸塩、クロロ安息香酸塩、メチル安息香酸塩、ジニトロ安息香酸塩、ヒドロキシ安息香酸塩、メトキシ安息香酸塩、ナフト酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、マンデル酸塩、タンニン酸塩、ギ酸塩、ステアリン酸塩、アスコルビン酸塩、パルミチン酸塩、オレイン酸塩、ピルビン酸塩、パモ酸塩、マロン酸塩、ラウリン酸塩、グルタル酸塩、グルタミン酸塩、エストレート、メタンスルホン酸塩(メシレート)、エタンスルホン酸塩(エシレート)、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシレート)、アミノベンゼンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩(トシレート)、及びナフタレン-2-スルホン酸塩が含まれる。
【0031】
「溶媒和物」という用語は、本明細書で使用される場合、溶媒を含有する物質の結晶形を指す。
【0032】
「錯体」という用語は、本明細書で使用される場合、「配位錯体」又は「金属配位錯体」等と交換可能に使用することができる。錯体は、生理化学的特性及び/又は分光学的特性に基づいて、有機化合物の単純金属塩とは経験的に区別することができる金属との有機化合物の錯体を指し、配位錯体は、典型的に塩と比較して増強された共有結合能を有する。「錯体」はまた、本明細書で使用される場合、配位共有結合及び/又はイオン結合の組合せを含むが、それらに限定されない。本明細書で使用される場合、「錯体」という用語はまた、イオン構成成分が欠如している分子(例えば、配位錯体のpKaが生理的に許容される範囲内に含まれる、脱プロトン化前の中性配位錯体等)を含む。
【0033】
「水和物」という用語は、溶媒が水である溶媒和物を指す。
【0034】
本明細書で提供される化合物は、対応する鏡像異性体及び立体異性体、すなわち前記化合物の幾何異性体、鏡像異性体又はジアステレオマーに関する立体異性体の純粋形態、並びに鏡像異性形態及び立体異性形態の混合物を含む。更に、鏡像異性形態及び立体異性形態の混合物は、当技術分野で公知の方法、例えばキラル相ガスクロマトグラフィー、キラル相高速液体クロマトグラフィー、結晶化によって、キラル誘導体化剤等を使用して、それらの純粋な構成成分に分解されうる。また、純粋な鏡像異性体及び立体異性体は、中間体又は代謝産物、並びに純粋な鏡像異性体及び立体異性体の形態である試薬から、公知の不斉合成法によって得ることができる。
【0035】
「鏡像異性体」という用語は、互いに重ね合わせることができない鏡像である、式Ia又は式Ibから選択される化合物の立体異性体を指す。鏡像体過剰率は、各鏡像異性体の間の絶対差を指す。鏡像体過剰率は、一方の鏡像異性体を他方の鏡像異性体よりも多く有するキラル化合物を指す。式Ia又は式Ibの化合物は、95~99.9%の範囲の鏡像体過剰率を有しており、このことは、立体異性体の一方がより多いことを指し、化合物が鏡像異性的に純粋であることも指す。式Ibの場合、鏡像体過剰率は、(R)-異性体又は(S)-異性体に関して独立でありうる。
【0036】
「菌」、「細菌」、及び「病原体」という用語は、本開示を通して交換可能に使用されている。更に、式Ib及び式IBは、本開示を通して交換可能に使用されている。
【0037】
「少なくとも1つの抗生物質」という用語は、微生物に対して活性な抗菌性化合物である任意の化合物を指す。抗生物質化合物は、抗菌、抗真菌、抗感染、又は抗ウイルス性化合物から選択されうる。本開示では、医薬組成物は、式Iの化合物を、薬学的に許容される担体と共に、少なくとも1つの抗生物質と組み合わせて含みうる。抗生物質の例の一部として、エリスロマイシン、アジスロマイシン、クラリスロマイシン、キノロン(シプロフロキサシン又はレボフロキサシン);βラクタム(例えばペニシリン、アモキシシリン又はピペラシリン);セファロスポリン(例えばセフトリアキソン又はセフタジジム);カルバペネム、(例えばメロペネム又はイミペネム等);アミノグリコシド(例えばゲンタマイシン若しくはトブラマイシン;又はオキサゾリジノン);抗真菌性トリアゾール(例えば又はアンホテリシン);抗体、サイトカイン、殺菌性/透過性を増大するタンパク質(BPI)生成物;リファンピシン、イソニアジド、ピラジナミド、エタンブトール、モキシフロキサシン、ガチフロキサシン、ストレプトマイシン、アジドチミジン、スルファメトキサゾール、又はトリメトプリムが挙げられるが、それらに限定されない。
【0038】
用語が記載されると、その用語には、本開示を通して同じ意味が適用される。
【0039】
背景技術の節に論じられる通り、一般に生じる感染性疾患の多くは、現在利用可能な抗菌治療に対して大幅に耐性を示すようになってきた。これにより処置困難な感染症が発生しており、そのことが現代医学分野にとって大きな困難となっている。更に、慣用的に使用されている抗生物質は、毒性副作用を有しており、多くの場合、短期間の抗菌活性を示すことも報告されている。したがって、前述の欠点を考慮して、進化しつつある抗菌耐性機序に対して有効性が改善されており、毒性が低減された新しい化合物の開発は、非常に望ましい。
【0040】
前述に照らして、本開示は、改善された薬理学的特性を提供することによって、既存の抗菌治療の欠点の克服に成功する化合物に関する。本開示は、Rキラリティーを有するピラジノ-チアジノン化合物異性体に関する。驚くべきことに、本発明の化合物の特定のキラリティーにより、本発明の化合物は、0.03μg/mL未満の高度に低減された最小阻害濃度で、黄色ブドウ球菌、大腸菌、肺炎桿菌及びA.バウマンニを含む広範囲なグラム陽性菌及びグラム陰性菌に対して改善された抗菌有効性を得る。更に、本開示の化合物はまた、120μM超の濃度を形成するインビトロ核で高度に低減された遺伝毒性を示し、それによって、本開示の化合物は更に、様々な微生物によって引き起こされた感染性疾患を処置するための安全な代替になる。
【0041】
一実施形態によれば、本開示は、R1が、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C3~6シクロアルキル、CD3、C1~6アルコキシ、C1~6ハロアルキル、又はC1~6ハロアルコキシから選択され、R2が、水素、C1~6アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、又はアミノから選択され、R3が、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、C1~6アルコキシ、C1~6ハロアルキル、C1~6ハロアルコキシ、C1~6アルキル、NH-R4、又は-CH2CH2OHから選択され、R4が、C1~6アルキル、C3~6シクロアルキル、C1~6アルコキシ、C1~6ハロアルキル、C1~6ハロアルコキシ、-CH2CH2OH、又は-CH2CH2NH2から選択され、X1が、N又はCR3であり、X3がCH又はCH2である場合、X2がCR5、O、N、又はNR6であり、R5が、水素、シアノ、C1~6アルキル、C1~6アルキルアミノ、C1~6アルコキシ、又はC1~6ハロアルコキシから選択され、ここで、C1~6アルキル及びC1~6アルキルアミノが、ヒドロキシル、アミノ、又はC1~6アルキルから選択される1つ又は複数の基で任意選択により置換されており、R6が、水素、C1~6アルキル、C1~6アルキルアミノ、C1~6アルコキシ、又はC1~6ハロアルコキシから選択され、ここで、C1~6アルキル及びC1~6アルキルアミノが、ヒドロキシル、アミノ、又はC1~6アルキルから選択される1つ又は複数の基で任意選択により置換されており、X2がCH2又はCR5である場合、X3がN又はNR7であり、R7が、水素又はC1~6アルキルから選択され、Yが、N又はCR8であり、R8が、水素、ハロゲン、シアノ、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、又はC1~6ハロアルコキシから選択される、式Ia又は式Ibから選択される化合物、その立体異性体、薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体を提供する。
【0042】
【化4】
【0043】
一実施形態によれば、本開示は、R1が、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、CD3、C1~6アルコキシ、又はC1~6ハロアルキルから選択され、R2が、水素、C1~6アルキル、又はハロゲンから選択され、R3が、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、C1~6アルコキシ、C1~6アルキル、NH-R4、又は-CH2CH2OHから選択され、R4が、C1~6アルキル、C3~6シクロアルキル、C1~6アルコキシ、C1~6ハロアルキル、C1~6ハロアルコキシ、-CH2CH2OH、又は-CH2CH2NH2から選択され、X1が、N又はCR3であり、X3がCH又はCH2である場合、X2がCR5、O、N、又はNR6であり、R5が、水素、C1~6アルキル、C1~6アルキルアミノ、C1~6アルコキシ、又はC1~6ハロアルコキシから選択され、ここで、C1~6アルキル及びC1~6アルキルアミノが、ヒドロキシル、アミノ、又はC1~6アルキルから選択される1つ又は複数の基で任意選択により置換されており、R6が、水素又はC1~6アルキルから選択され、ここで、C1~6アルキルが、ヒドロキシル、アミノ、又はC1~6アルキルから選択される1つ又は複数の基で任意選択により置換されており、X2がCH2又はCR5である場合、X3がN又はNR7であり、R7が、水素又はC1~6アルキルから選択され、Yが、N又はCR8であり、R8が、水素、ハロゲン、シアノ、C1~6アルキル、又はC1~6アルコキシから選択される、式Ia又は式Ibから選択される化合物、その立体異性体、薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体を提供する。
【0044】
一実施形態によれば、本開示は、R1が、C1~6アルキル又はCD3から選択され、R2が、水素又はハロゲンであり、R3が、水素又はC1~6アルキルから選択され、X1が、N又はCR3であり、X2が、CR5、O、N、又はNR6であり、次にX3が、CH又はCH2であり、R5が、水素又はC1~6アルキルから選択され、ここで、C1~6アルキルが、ヒドロキシル、アミノ、又はC1~6アルキルから選択される1つ又は複数の基で任意選択により置換されており、R6が、水素又はC1~6アルキルから選択され、ここで、C1~6アルキルが、ヒドロキシル、アミノ、又はC1~6アルキルから選択される1つ又は複数の基で任意選択により置換されており、X2がCH2又はCR5である場合、X3がN又はNR7であり、R7が、水素又はC1~6アルキルから選択され、Yが、N又はCR8であり、R8が、水素、ハロゲン、シアノ、又はC1~6アルキルから選択される、式Ia又は式Ibから選択される化合物、その立体異性体、薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体を提供する。
【0045】
一実施形態によれば、本開示は、R1が、C1~6アルキル又はCD3から選択され、R2が、水素又はハロゲンであり、R3が、水素又はC1~6アルキルから選択され、X1が、N又はCR3であり、X2が、CR5、N、又はNR6であり、次にX3が、CH又はCH2であり、R5が、水素又はC1~6アルキルから選択され、R6が、水素又はC1~6アルキルから選択され、Yが、N又はCR8であり、R8が、水素、ハロゲン、シアノ、又はC1~6アルキルから選択される、式Ia又は式Ibから選択される化合物、その立体異性体、薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体を提供する。
【0046】
一実施形態によれば、本開示は、R1が、C1~6アルキルであり、R2が、水素であり、X1が、N又はCR3であり、R3が、水素であり、X2が、CR5又はNであり、次にX3が、CH又はCH2であり、R5が、水素である、式Iaの化合物、その立体異性体、薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体を提供する。
【0047】
一実施形態によれば、本開示は、R1が、C1~3アルキルであり、R2が、水素であり、X1が、N又はCR3であり、R3が、水素であり、X2が、CR5又はNであり、次にX3が、CHであり、R5が、水素である、式Iaの化合物、その薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体を提供する。
【0048】
一実施形態によれば、本開示は、X2が、NR6であり、次にX3が、CH2であり、R6が、水素である、式Ibの化合物、その立体異性体、薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体を提供する。別の実施形態では、本開示は、X2が、Nであり、次にX3が、CHであり、X3の二重結合が、環の内側にある、式Ibの化合物、その立体異性体、薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体を提供する。
【0049】
一実施形態によれば、本開示は、R1が、C1~6アルキル又はCD3であり、R2が、水素又はハロゲンであり、R3が、水素であり、X3が、NH又はNR7であり、次にX2が、CH2又はCR5であり、R5が、水素であり、Yが、Nである、式Ibの化合物、その立体異性体、薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体を提供する。
【0050】
一実施形態によれば、本開示は、R1が、C1~6アルキル又はCD3であり、R2が、水素又はハロゲンであり、R3が、水素であり、X2が、NHであり、次にX2が、CH2であり、Yが、Nである、式Ibの化合物、その立体異性体、薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体を提供する。
【0051】
一実施形態によれば、本開示は、a)(R)-5-(((2-((4-メチル-3-オキソ-3,4-ジヒドロピリド[2,3-b]ピラジン-6-イル)オキシ)エチル)アミノ)メチル)-3-(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ピラジノ[2,3-b][1,4]チアジン-6-イル)オキサゾリジン-2-オン、及びb)(R)-5-(((2-((5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロピリド[2,3-b]ピラジン-3-イル)オキシ)エチル)アミノ)メチル)-3-(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ピラジノ[2,3-b][1,4]チアジン-6-イル)オキサゾリジン-2-オンである式Iaの化合物、その薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体を提供する。
【0052】
一実施形態によれば、本開示は、
(R)-6-(5-(((2-((4-メチル-3-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリド[2,3-b]ピラジン-6-イル)オキシ)エチル)アミノ)メチル)-2-オキソオキサゾリジン-3-イル)-2H-ピラジノ[2,3-b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン;
(S)-6-(5-(((2-((4-メチル-3-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリド[2,3-b]ピラジン-6-イル)オキシ)エチル)アミノ)メチル)-2-オキソオキサゾリジン-3-イル)-2H-ピラジノ[2,3-b][1,4]オキサジン-3(4H)-オン;
(R)-5-(((2-((7-フルオロ-4-メチル-3-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリド[2,3-b]ピラジン-6-イル)オキシ)エチル)アミノ)メチル)-3-(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ピラジノ[2,3-b][1,4]チアジン-6-イル)オキサゾリジン-2-オン;
(S)-5-(((2-((7-フルオロ-4-メチル-3-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリド[2,3-b]ピラジン-6-イル)オキシ)エチル)アミノ)メチル)-3-(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ピラジノ[2,3-b][1,4]チアジン-6-イル)オキサゾリジン-2-オン;
(R)-5-(((2-((4-(メチル-d3)-3-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリド[2,3-b]ピラジン-6-イル)オキシ)エチル)アミノ)メチル)-3-(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ピラジノ[2,3-b][1,4]チアジン-6-イル)オキサゾリジン-2-オン;及び
(S)-5-(((2-((4-(メチル-d3)-3-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリド[2,3-b]ピラジン-6-イル)オキシ)エチル)アミノ)メチル)-3-(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ピラジノ[2,3-b][1,4]チアジン-6-イル)オキサゾリジン-2-オン
から選択される式Ibの化合物、その薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体を提供する。
【0053】
一実施形態によれば、本開示は、式Iaの化合物、その薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体を調製する方法であって、少なくとも1つの還元剤の存在下で式(X)及び式(VI)を反応させて、式Iaの化合物を得る工程を含み、R1が、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C3~6シクロアルキル、CD3、C1~6アルコキシ、C1~6ハロアルキル、又はC1~6ハロアルコキシから選択され、R2が、水素、C1~6アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、又はアミノから選択され、R3が、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、C1~6アルコキシ、C1~6ハロアルキル、C1~6ハロアルコキシ、C1~6アルキル、NH-R4、又は-CH2CH2OHから選択され、R4が、C1~6アルキル、C3~6シクロアルキル、C1~6アルコキシ、C1~6ハロアルキル、C1~6ハロアルコキシ、-CH2CH2OH、又は-CH2CH2NH2から選択され、X1が、N又はCR3であり、X3がCH又はCH2である場合、X2がCR5、O、N、又はNR6であり、R5が、水素、シアノ、C1~6アルキル、C1~6アルキルアミノ、C1~6アルコキシ、又はC1~6ハロアルコキシから選択され、ここで、C1~6アルキル及びC1~6アルキルアミノが、ヒドロキシル、アミノ、又はC1~6アルキルから選択される1つ又は複数の基で任意選択により置換されており、R6が、水素、C1~6アルキル、C1~6アルキルアミノ、C1~6アルコキシ、又はC1~6ハロアルコキシから選択され、ここで、C1~6アルキル及びC1~6アルキルアミノが、ヒドロキシル、アミノ、又はC1~6アルキルから選択される1つ又は複数の基で任意選択により置換されており、X2がCH2又はCR5である場合、X3がN又はNR7であり、R7が、水素又はC1~6アルキルから選択され、Yが、N又はCR8であり、R8が、水素、ハロゲン、シアノ、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、又はC1~6ハロアルコキシから選択される、方法を提供する。
【0054】
【化5】
【0055】
一実施形態によれば、本開示は、式Ibの化合物、その立体異性体、薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体を調製する方法であって、少なくとも1つの還元剤の存在下で式(VII)及び式(XI)を反応させて、式Ibの化合物を得る工程を含み、R1が、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C3~6シクロアルキル、CD3、C1~6アルコキシ、C1~6ハロアルキル、又はC1~6ハロアルコキシから選択され、R2が、水素、C1~6アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、又はアミノから選択され、R3が、水素、ハロゲン、ヒドロキシル、アミノ、シアノ、C1~6アルコキシ、C1~6ハロアルキル、C1~6ハロアルコキシ、C1~6アルキル、NH-R4、又は-CH2CH2OHから選択され、R4が、C1~6アルキル、C3~6シクロアルキル、C1~6アルコキシ、C1~6ハロアルキル、C1~6ハロアルコキシ、-CH2CH2OH、又は-CH2CH2NH2から選択され、X1が、N又はCR3であり、X3がCH又はCH2である場合、X2がCR5、O、N、又はNR6であり、R5が、水素、シアノ、C1~6アルキル、C1~6アルキルアミノ、C1~6アルコキシ、又はC1~6ハロアルコキシから選択され、ここで、C1~6アルキル及びC1~6アルキルアミノが、ヒドロキシル、アミノ、又はC1~6アルキルから選択される1つ又は複数の基で任意選択により置換されており、R6が、水素、C1~6アルキル、C1~6アルキルアミノ、C1~6アルコキシ、又はC1~6ハロアルコキシから選択され、ここで、C1~6アルキル及びC1~6アルキルアミノが、ヒドロキシル、アミノ、又はC1~6アルキルから選択される1つ又は複数の基で任意選択により置換されており、X2がCH2又はCR5である場合、X3がN又はNR7であり、R7が、水素又はC1~6アルキルから選択され、Yが、N又はCR8であり、R8が、水素、ハロゲン、シアノ、C1~6アルキル、C1~6アルコキシ、又はC1~6ハロアルコキシから選択される、方法を提供する。
【0056】
【化6】
【0057】
一実施形態によれば、本開示は、式Iaの化合物、その立体異性体、薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体を調製する方法であって、2-ピコリンボラン錯体、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの還元剤の存在下で式(X)及び式(VI)を反応させて式Iaの化合物を得る工程を含む方法を提供する。
【0058】
一実施形態によれば、本開示は、式Ibの化合物、その立体異性体、薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体を調製する方法であって、2-ピコリンボラン錯体、水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム、及びそれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1つの還元剤の存在下で式(VII)及び式(XI)を反応させて式Ibの化合物を得る工程を含む方法を提供する。
【0059】
一実施形態によれば、本開示は、医薬として使用するための、式Ia又は式Ibから選択される化合物、その立体異性体、薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体を提供する。
【0060】
一実施形態によれば、本開示は、細菌、ウイルス、真菌及び原生動物からなる群から選択される微生物の殺滅又は成長の阻害において使用するための、式Ia又は式Ibから選択される化合物、その立体異性体、薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体を提供する。
【0061】
一実施形態によれば、本開示は、グラム陽性菌又はグラム陰性菌によって引き起こされた細菌感染症の処置において使用するための、式Ia又は式Ibから選択される化合物、その立体異性体、薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体を提供する。
【0062】
一実施形態によれば、本開示は、グラム陽性病原体及びグラム陰性病原体からなる群から選択される微生物によって引き起こされる患者の疾患又は状態の処置において使用するための、式Ia又は式Ibから選択される化合物、その立体異性体、薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体を提供する。
【0063】
一実施形態によれば、本開示は、式Ia又は式Ibから選択される化合物、その立体異性体、薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体を、薬学的に許容される担体と一緒に含む医薬組成物を提供する。
【0064】
一実施形態によれば、本開示は、式Ia又は式Ibから選択される化合物、その薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体を、薬学的に許容される担体と一緒に、少なくとも1つの抗生物質と組み合わせて含む医薬組成物を提供する。
【0065】
一実施形態によれば、本開示は、95~99.9%の範囲の鏡像体過剰率を有する式Ia又は式Ibから選択される化合物、その薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体を含む医薬組成物を提供する。
【0066】
一実施形態によれば、本開示は、式Ia又は式Ibから選択される化合物、その薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体を含む医薬組成物であって、式Ibの化合物が(R)異性体形態に関して95~99.9%の範囲の鏡像体過剰率を有する、医薬組成物を提供する。
【0067】
一実施形態によれば、本開示は、式Ia又は式Ibから選択される化合物、その薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体を含む医薬組成物であって、式Ibの化合物が(S)異性体形態に関して95~99.9%の範囲の鏡像体過剰率を有する、医薬組成物を提供する。
【0068】
一実施形態によれば、本開示は、細菌、ウイルス、真菌及び原生動物からなる群から選択される微生物の殺滅又は成長の阻害における、式Ia又は式Ibから選択される化合物、その立体異性体、薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体の使用を提供する。
【0069】
一実施形態によれば、本開示は、細菌の殺滅又は成長の阻害における、式Ia又は式Ibから選択される化合物、その立体異性体、薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体の使用を提供する。
【0070】
一実施形態によれば、本開示は、対象の細菌感染症を処置するための方法であって、対象に、有効量の本明細書に開示される式Ia又は式Ibから選択される化合物を投与する工程を含む方法を提供する。
【0071】
一実施形態によれば、本開示は、グラム陽性病原体又はグラム陰性病原体によって引き起こされる対象の細菌感染症を処置するための方法であって、対象に、有効量の本明細書に開示される式Ia又は式Ibから選択される化合物を投与する工程を含む方法を提供する。
【0072】
一実施形態によれば、本開示は、大腸菌、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、肺炎桿菌、アシネトバクター・バウマンニ、エンテロバクター・クロアカ(Enterobacter cloacae)、黄色ブドウ球菌、大便連鎖球菌(Enterococcus faecalis)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)、マイコプラズマ・ニューモニエ(Mycoplasma pneumonia)、アシネトバクター・ヘモリティカス(Acinetobacter haemolyticus)、アシネトバクター・ジュニイ(Acinetobacter junii)、アシネトバクター・ルオフィイ(Acinetobacter lwoffi)、バークホルデリア・セパシア(Burkholderia cepacia)、クラミドフィラ・ニューモニエ(Chlamydophila pneumoniae)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficili)、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、エンテロバクター・クロアカ、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、ナイセリア・ゴノレア(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitides)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、プロテウス・ハウセリ(Proteus houseri)、シトロバクター・フレウンデイ(Citrobacter freundii)、シトロバクター・コセリ(Citrobacter kosari)、シトロバクター・ブラーキー(Citrobacter barakii)、霊菌(Seratia marcescens)、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、モルガン菌(Morganella morganii)、ピロリ菌(Helicobacter pyroli)、又は結核菌(Mycobacterium tuberculosis)によって引き起こされる対象の細菌感染症を処置するための方法であって、対象に有効量の本明細書に開示される式Ia又は式Ibから選択される化合物を投与する工程を含む方法を提供する。
【0073】
「薬学的に許容される」という用語は、正しい医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答、又は他の問題若しくは合併症なしにヒト及び動物の組織と接触させて使用するのに適した、妥当な損益比に見合う、化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を含む。
【0074】
式Ia又は式Ibの化合物は、安定な薬学的に許容される酸又は塩基塩を形成することができ、このような場合、化合物を塩として投与することが適している場合がある。酸付加塩の例として、酢酸塩、アジピン酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、ショウノウ酸塩、カンファースルホン酸塩、コリン、クエン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、ジエチレンジアミン、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルタミン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、2-ヒドロキシエチルスルホン酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、ヒドロキシマレイン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、メグルミン、2-ナフタレンスルホン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、過硫酸塩、フェニル酢酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、キナ酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、スルファミン酸、スルファニル酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩(p-トルエンスルホン酸塩)、トリフルオロ酢酸塩、及びウンデカン酸塩が挙げられる。塩基塩の例として、アンモニウム塩;アルカリ金属塩、例えばナトリウム塩、リチウム塩及びカリウム塩;アルカリ土類金属塩、例えばアルミニウム塩、カルシウム塩及びマグネシウム塩;有機塩基との塩、例えばジシクロヘキシルアミン塩及びN10メチル-D-グルカミン;並びにアミノ酸、例えばアルギニン、リシン、オルニチンとの塩等が挙げられる。また、塩基性窒素含有基は、低級アルキルハロゲン化物、例えばメチル、エチル、プロピル、及びブチルハロゲン化物;ジアルキル硫酸塩、例えば硫酸ジメチル、ジエチル硫酸塩、ジブチル硫酸塩;ジアミル硫酸塩;長鎖ハロゲン化物、例えばデシルハロゲン化物、ラウリルハロゲン化物、ミリスチルハロゲン化物及びステアリルハロゲン化物;アリールアルキルハロゲン化物、例えばベンジル臭化物等の薬剤で四級化されうる。非毒性の生理的に許容される塩が好ましいが、生成物の単離又は精製等においては、他の塩も有用となりうる。
【0075】
塩は、従来の手段によって、例えば生成物の遊離塩基形態を、塩が不溶性の溶媒若しくは媒体において、又は真空中で除去される水等の溶媒において、1つ又は複数の当量の適切な酸と反応させることによって、或いは凍結乾燥させることによって、或いは適切なイオン交換樹脂上で既存の塩のアニオンを別のアニオンと交換することによって形成されうる。
【0076】
本開示の組成物は、経口使用(例えば、錠剤、ロゼンジ剤、硬質若しくは軟質カプセル、水性若しくは油性懸濁液、エマルジョン、分散性散剤若しくは顆粒剤、シロップ又はエリキシルとして)、局所使用(例えば、クリーム、軟膏、ゲル、又は水性若しくは油性溶液若しくは懸濁液として)、吸入投与(例えば、微粉砕散剤又は液体エアロゾルとして)、吹送投与(例えば、微粉砕散剤として)又は非経口投与(例えば、静脈内、皮下、筋肉内若しくは筋肉内投与のための滅菌水性若しくは油性溶液として、又は直腸投与のための坐剤として)に適した形態でありうる。
【0077】
本開示は、式Ia若しくは式Ibの化合物、又はその立体異性体、薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体を、担体と一緒に含む組成物を調製する方法に関する。
【0078】
本開示は、式I若しくは式Ibの化合物、又はその立体異性体、薬学的に許容されるその塩、錯体、水和物、溶媒和物、互変異性体、多形、又は薬学的に活性な誘導体を、薬学的に許容される担体と一緒に、任意選択により他の1つ又は複数の医薬組成物と組み合わせて含む医薬組成物を調製する方法に関する。
【0079】
本開示の組成物は、従来の手順によって、当技術分野で周知の従来の医薬賦形剤を使用して得ることができる。したがって、経口使用を企図された組成物は、例えば、1つ又は複数の着色剤、甘味剤、香味剤及び/又は保存剤を含有しうる。
【0080】
錠剤製剤に適した薬学的に許容される賦形剤には、例えば、不活性希釈剤、例えばラクトース、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム又は炭酸カルシウム;造粒剤及び崩壊剤、例えばトウモロコシデンプン又はアルギン酸;結合剤、例えばデンプン;滑沢剤、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルク;保存剤、例えばp-ヒドロキシ安息香酸エチル又はp-ヒドロキシ安息香酸プロピル;並びに抗酸化剤、例えばアスコルビン酸が含まれる。錠剤製剤は、コーティングされなくてもよく、或いはそれらの崩壊及び胃腸管内での活性成分のその後の吸収を修正するか、又はそれらの安定性及び/若しくは外観を改善するために、いずれかの場合も当技術分野で周知の従来のコーティング剤又は手順を使用して、コーティングされうる。
【0081】
経口使用のための組成物は、活性成分が不活性な固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム若しくはカオリンと混合される硬質ゼラチンカプセル剤の形態であってよく、又は活性成分が水若しくは油、例えばピーナッツ油、流動パラフィン若しくはオリーブ油と混合される軟質ゼラチンカプセル剤として存在することができる。
【0082】
水性懸濁液は、一般に、微粉化形態、又はナノ粒子若しくは微粒子化粒子の形態の活性成分を、1つ又は複数の懸濁化剤、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニル-ピロリドン、トラガカントガム及びアカシアガム;分散化剤又は湿潤剤、例えばレシチン、又はアルキレンオキシドと脂肪酸の縮合生成物(例えばポリオキシエチレンステアレート)、又はエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールの縮合生成物、例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール、又はエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトール由来の部分エステルの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、又はエチレンオキシドと脂肪酸及びヘキシトール無水物由来の部分エステルの縮合生成物、例えばポリエチレンソルビタンモノオレエートと一緒に含有する。水性懸濁液はまた、1つ又は複数の保存剤、例えばp-ヒドロキシ安息香酸エチル若しくはp-ヒドロキシ安息香酸プロピル、抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、着色剤、香味剤、及び/又は甘味剤、例えばスクロース、サッカリン若しくはアスパルテームを含有しうる。
【0083】
油性懸濁液は、植物油、例えばラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油若しくはヤシ油に、又は鉱油、例えば流動パラフィンに活性成分を懸濁させることによって製剤化されうる。油性懸濁液はまた、増粘剤、例えば蜜蝋、硬質パラフィン又はセチルアルコールを含有しうる。前述の甘味剤等の甘味剤及び香味剤は、口当たりの良い経口調製物を提供するために添加されうる。これらの組成物は、抗酸化剤、例えばアスコルビン酸を添加することによって保存されうる。
【0084】
水を添加することによって水性懸濁液を調製するのに適した分散性散剤及び顆粒剤は、一般に、分散化剤又は湿潤剤、懸濁化剤及び1つ又は複数の保存剤と一緒に活性成分を含有する。適切な分散化剤又は湿潤剤及び懸濁化剤は、既に列挙したものによって例示される。追加の賦形剤、例えば甘味剤、香味剤及び着色剤が存在してもよい。
【0085】
本開示の医薬組成物は、水中油エマルジョンの形態であってもよい。油相は、植物油、例えばオリーブ油若しくはラッカセイ油、又は鉱油、例えば例えば流動パラフィン、又はこれらのいずれかの混合物でありうる。例えば、天然に生じるガム、例えばアカシアガム又はトラガカントガム、天然に生じるホスファチド、例えばダイズ、レシチン、脂肪酸及びヘキシトール無水物由来のエステル又は部分エステル(例えばソルビタンモノオレエート)、並びに前記部分エステルとエチレンオキシドの縮合生成物、例えばポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等の適切な乳化剤を添加しうる。エマルジョンはまた、甘味剤、香味剤又は保存剤を含有しうる。
【0086】
シロップ及びエリキシルは、甘味剤、例えばグリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、アスパルテーム又はスクロースを用いて製剤化することができ、粘滑剤、保存剤、香味剤及び/又は着色剤を含有することもできる。
【0087】
医薬組成物は、注入可能な滅菌水性又は油性懸濁液の形態であってよく、それらは、公知の手順に従って、先に列挙した適切な分散化剤又は湿潤剤及び懸濁化剤の1つ又は複数を使用して製剤化されうる。注入可能な滅菌調製物はまた、非毒性の非経口的に許容される希釈剤又は溶媒中の注入可能な滅菌溶液又は懸濁液、例えば1,3-ブタンジオール溶液でありうる。
【0088】
吸入によって投与するための組成物は、微粉砕した固体又は液滴を含有するエアロゾルのいずれかとして活性成分を分散させるように準備された従来の加圧エアロゾルの形態でありうる。従来のエアロゾル噴霧剤、例えば揮発性フッ素化炭化水素又は炭化水素を使用することができ、エアロゾルデバイスは、計量された活性成分を分散させるために好都合に準備される。
【0089】
投与のための組成物は、リポソーム調製物としても製剤化されうる。リポソーム調製物は、対象となる細胞又は角質層に浸透し、細胞膜と融合するリポソームを含み、その結果、リポソームの内容物を細胞に送達することができる。他の適切な製剤は、ニオソームを用いることができる。ニオソームは、リポソームと同様の脂質小胞であり、その膜は主に非イオン性脂質からなり、その一部の形態は、角質層を介して化合物を輸送するのに有効である。
【0090】
投与のための組成物は、移植又は筋肉内注射によって投与することができるデポー調製物として製剤化することもできる。組成物は、適切なポリマー性若しくは疎水性材料(許容される油におけるエマルジョンとして)、イオン交換樹脂、又は難溶性誘導体を用いて製剤化されうる。
【0091】
本開示の化合物はまた、徐放形態で、又は徐放薬物送達系から投与されうる。
【0092】
製剤、薬物送達、並びに処理技術に関する更なる情報については、Remington's Pharmaceutical Sciences(第21版、2005年、University of the sciences in Philadelphia、Lippincott William & Wilkins)を参照されたい。
【0093】
単一の剤形を生成するために1つ又は複数の賦形剤と組み合わされる活性成分の量は、処置される宿主及び特定の投与経路に応じて必然的に変わる。例えば、ヒトへの経口投与を企図された製剤は、一般に、全組成物の約5~約98重量パーセントで変わりうる適切な好都合な量の賦形剤と配合された、例えば0.5mg~4gの活性薬剤を含有する。単位剤形は、一般に、約1mg~約500mgの活性成分を含有する。投与経路及び投与レジメンに関する更なる情報については、Comprehensive Medicinal Chemistryの第5巻、第25.3章(Corwin Hansch; Chairman of Editorial Board)、Pergamon Press 1990年及びRemington's Pharmaceutical Sciences(第21版、2005年、University of the sciences in Philadelphia、Lippincott William & Wilkins)を参照されたい。
【0094】
前述の通り、特定の病状の治療的又は予防的処置に必要な投与量の大きさは、処置される宿主、投与経路及び処置される疾病の重症度に応じて必然的に変わる。好ましくは、1~25mg/kgの範囲の1日用量が用いられる。したがって、最適な投与量は、任意の特定の患者を処置する担当医によって決定されうる。
【0095】
本明細書で言及される医薬組成物、過程、方法、使用、医薬、及び製造の特色のいずれにも、本明細書に記載される本開示の化合物の代替の態様のいずれかが適用される。
【0096】
本明細書に開示される化合物は、単独処置として適用することができ、又は本開示の化合物に加えて、他の1つ又は複数の物質及び/若しくは処置を含むことができる。このような併用処置は、処置の個々の構成成分の同時の、経時的な又は別個の投与によって達成されうる。投与が経時的に又は別個に行われる場合、例えば組合せの有益な効果を喪失しないように、第2の構成成分の投与は遅延すべきではない。適切なクラス及び物質は、以下の1つ又は複数から選択されうる。i)他の抗菌剤、例えばマイクロライド、例えばエリスロマイシン、アジスロマイシン若しくはクラリスロマイシン;キノロン、例えばシプロフロキサシン若しくはレボフロキサシン;βラクタム、例えばペニシリン、例えばアモキシシリン若しくはピペラシリン;セファロスポリン、例えばセフトリアキソン若しくはセフタジジム;カルバペネム、例えばメロペネム若しくはイミペネム等;アミノグリコシド、例えばゲンタマイシン若しくはトブラマイシン;若しくはオキサゾリジノン;及び/又はii)抗感染症剤、例えば抗真菌性トリアゾール、例えばアンホテリシン;及び/又はiii)生物学的タンパク質治療剤、例えば抗体、サイトカイン、殺菌性/透過性を増大するタンパク質(BPI)生成物;及び/又はiv)マイコバクテリウム結核の処置に有用な1つ若しくは複数の抗菌剤、例えばリファンピシン、イソニアジド、ピラジナミド、エタンブトール、キノロン、例えばモキシフロキサシン若しくはガチフロキサシン、ストレプトマイシンの1つ若しくは複数、及び/又はv)排出ポンプ阻害剤。
【0097】
一実施形態によれば、本開示は、式Ia若しくは式Ibの化合物、又は薬学的に許容されるその塩、並びにi)1つ若しくは複数の追加の抗菌剤;及び/又はii)1つ若しくは複数の抗感染症剤;及び/又はiii)生物学的タンパク質治療剤、例えば抗体、サイトカイン、殺菌性/透過性を増大するタンパク質(BPI)生成物;iv)肺結核、肺外結核、トリ感染症、ブルーリ潰瘍の処置に有用な1つ若しくは複数の抗菌剤;及び/又はv)1つ若しくは複数の排出ポンプ阻害剤から選択される化学療法剤に関する。
【0098】
手順に必要な出発材料、例えば本明細書に記載される材料が商業的に利用可能でない場合、標準有機化学技術から選択される手順によって生成することができ、それらの技術は、構造的に同様の公知の化合物の合成に類似しており、又は前述の手順若しくは実施例に記載される手順に類似している。
【0099】
本明細書に記載される合成法のための出発材料の多くは、商業的に利用可能であり、且つ/若しくは科学文献で広く報告されており、又は科学文献で報告されている過程を適合させて、商業的に利用可能な化合物から生成されうることが知られている。反応条件及び試薬に関する一般的な指針については、Jerry March and Michael SmithによるAdvanced Organic Chemistry、第5版、John Wiley & Sons刊行、2001年を更に参照されたい。
【0100】
本明細書で言及した反応のいくつかでは、化合物において感受性の高い任意の基を保護することが必要/望ましい場合があることも理解されよう。保護が必要であるか、又は望ましい場合、及びこのような保護に適した方法は、当業者に公知である。標準的習慣に従って(例えば、T.W. Greene、Protective Groups in Organic Synthesis、John Wiley and Sons刊行、1991年を参照されたい)、本明細書で前述の通り、従来の保護基を使用することができる。
【0101】
略語
実施例及び本明細書の他所において、以下の略語が用いられる。
TLC-薄層クロマトグラフィー、
HPLC-高圧液体クロマトグラフィー、
NMR-核磁気共鳴分光法、
DMSO-ジメチルスルホキシド、
MS-質量分析法;ESP(又はES)-エレクトロスプレー;EI-電子衝撃;APCI-大気圧化学イオン化、
THF-テトラヒドロフラン、
DCM-ジクロロメタン、
MeOH-メタノール、
DMF-ジメチルホルムアミド、
EtOAc-酢酸エチル、
LC/MS-液体クロマトグラフィー/質量分析、
h-時間、
min-分、
d-日、
TFA-トリフルオロ酢酸;v/v-体積/体積比、
atmは、大気圧を示し、
rtは、室温を示し、
mgは、ミリグラムを示し;gは、グラムを示し、
μgは、マイクログラムを示し、
μLは、マイクロリットルを示し、
mLは、ミリリットルを示し、
Lは、リットルを示し、
μMは、マイクロモルを示し、
mMは、ミリモルを示し;Mは、モルを示し、
Nは、正常を示し、
nmは、ナノメートルを示す。
【実施例
【0102】
以下の実施例は、本開示の化合物の合成、活性及び適用に関する詳細を提供する。以下は単に代表的なものであり、本開示はこれらの実施例に記載される詳細によって制限されないことを理解されたい。
【0103】
材料及び方法
蒸発は、真空中で回転蒸発によって行い、後処理手順は、濾過によって残留固体を除去した後に行った。温度は℃で記載される。操作は、典型的に18~26℃の範囲の室温で、別段指定されない限り、又はそうでなければ当業者が不活性雰囲気中で作業できない限り、空気を排除せずに行った。化合物を精製するために、カラムクロマトグラフィー(フラッシュ手順による)を使用し、別段指定されない限りMerck社のKieselgelシリカ(Art.9385)で実施した。一般に、反応過程の後に、TLC、HPLC、又はLC/MSを行ったが、反応時間は、単に例として示される。収量は、単に例として示され、必ずしも達成可能な最大値ではない。本開示の最終生成物の構造は、一般にNMR及び質量スペクトル技術によって確認した。プロトン磁気共鳴スペクトルは、一般に、別段指定されない限りDMSO d6で、Bruker社のDRX 300分光計又はBruker社のDRX-400分光計を、それぞれ300MHz又は400MHzのフィールド強度で操作して使用して決定した。NMRスペクトルが複雑である場合、診断シグナルだけを記録する。化学シフトを、外部標準(δスケール)としてのテトラメチルシラン由来の低磁場ppmで記録し、したがってピーク多重度が示される。s、一重線;d、二重線;dd、二重線の二重線;dt、三重線の二重線;dm、多重線の二重線;t、三重線、m、多重線;br、ブロード。高速原子衝撃(FAB)質量スペクトルデータは、一般に、エレクトロスプレーで実施されるプラットフォーム分光計(Micromass社によって供給)を使用して得、適切な場合、正イオンデータ若しくは負イオンデータのいずれかを収集し、又はSedex 75ELSDを備えたAgilent 1100シリーズLC/MSを使用して得、適切な場合、正イオンデータ若しくは負イオンデータのいずれかを収集した。同位体分裂によって複数の質量スペクトルピーク(例えば塩素が存在する場合)が得られる分子については、最低質量の主要イオンを記録する。逆相HPLCは、Agilent社の装置でYMC Pack ODS AQ(100×20mmID、粒径S5Å、細孔径12nm)を使用して行い、各中間体を、その後の段階に必要な標準に精製し、割り当てられた構造が正確であることを確認するために、十分詳細に特徴付けた。純度は、HPLC、TLC、又はNMRによって評価し、識別は、適宜、赤外分光法(IR)、質量分析法又はNMR分光法によって決定した。
【0104】
(実施例1)
式VI(a)の化合物を調製するための一般過程
式(II)の化合物を、ハロゲン化アルキルを使用してN-アルキル化して、式(III)の化合物を得た。更に、式(III)の化合物を、OHCH2CH(OCH2CH3)2を使用する芳香族求核置換反応を介して式(IV)の化合物に変換した(Yは、Cl又はBrである)。次に、以下の一般的スキームに図示される通り、式(IV)の化合物を酸性条件下で脱保護して式VI(a)の化合物を得た(R1は、アルキル又はエチルから選択され、X2は、先の実施形態で開示される通りの置換基で置換されるか、又は非置換Nであり、X1は、C又はNから選択される)。
【0105】
【化7】
【0106】
式Xの化合物を調製するための一般過程
式(X)の化合物を、以下のスキームに概説される通り、式(V)の化合物及び式(Va)の化合物から得た。最適な反応条件下で、式(V)との式(VII)の化合物のパラジウム触媒Buchwaldカップリングによって、式(VIII)の化合物を提供した。更に、式(VIII)の化合物を、メシル化に続いてアジ化反応を介して式(IX)の化合物に変換した。アジド官能基の還元によって式(X)の化合物を提供した。
【0107】
【化8】
【0108】
(実施例2)
式Iaの化合物の調製のための一般方法
式Iaの化合物は、以下のスキームに示される通り、式(X)の化合物を式(VI)の化合物を反応させることによって調製することができる。式(VI)の化合物を用いる式(X)の化合物の還元的アミノ化によって、式Iaの化合物を提供した。
【0109】
【化9】
【0110】
式Ibの化合物の調製のための一般方法
式Ibの化合物は、以下のスキームに示される通り、式(VII)の化合物を式(XI)の化合物を反応させることによって調製することができる。式(XI)の化合物を用いる式(VII)の化合物の還元的アミノ化によって、式Ibの化合物を提供した。
【0111】
【化10】
【0112】
(実施例3)
中間体の合成
2-((4-メチル-3-オキソ-3,4-ジヒドロピリド[2,3-b]ピラジン-6-イル)オキシ)アセトアルデヒド、中間体VIの合成
【0113】
【化11】
【0114】
工程-1:6-クロロピリジン-2,3-ジアミン(VIa)の合成
撹拌した2-アミノ-3-ニトロ-6-クロロピリジン(100g、0.576mol)のEtOH(1L)/H2O(1L)混合物溶液に、CaCl2(319.7g、2.880mol)及びFe粉末(321.79g、5.761mol)を室温で逐次的に添加した。得られた混合物を100℃で6時間加熱した。反応が完了した後、反応混合物を、セライト床を介して濾過した。濾液をEtOAc(2L)で希釈し、水(2×1L)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で濃縮した。粗製生成物を、カラムクロマトグラフィーによって、シリカゲル(60~120メッシュ)を使用して石油エーテル中30%EtOAcで溶出することによって精製して、純粋な生成物VIaを褐色の固体として得た。収量:(59.8g、72.29%)
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 6.69 (d, 1H, J=8 Hz), 6.65 (d, 1H, J=8 Hz), 5.78 (2H, s), 4.76 (2H, s).
LC_MS C5H6ClN3の計算値143.57; 実測値 144.2 [M++H]
【0115】
工程-2:エチル(2-アミノ-6-クロロピリジン-3-イル)グリシネート(VIb)の合成
撹拌したVIa(100g、0.696mol)の乾燥DMF(1L)溶液に、室温において窒素雰囲気下でK2CO3(134.8g、0.9756mol)及びブロモ酢酸エチル(164g、0.836mol)を逐次的に添加した。反応混合物を100℃で6時間加熱した。反応が完了した後、反応混合物を室温に冷却し、EtOAc(2L)で希釈し、水(2×800mL)で洗浄した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して、粗製生成物VIb(99.2g)を得た。粗製物を、次の工程のために更なる精製をすることなく取っておいた。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 6.5-6.4 (m, 2H), 5.9 (m, 2H), 5.39-5.35 (m, 1H), 4.16-4.08 (m, 2H), 3.94-3.91 (m, 2H), 1.2-1.17 (m, 4H) LC_MS: C9H12ClN3O2の計算値229.66; 実測値230.2 [M++H].
【0116】
工程-3:6-クロロ-1,4-ジヒドロピリド[2,3-b]ピラジン-3(2H)-オン(VIc)の合成
撹拌したVIb(100g、0.434mol)の乾燥1,4ジオキサン(500mL)溶液に、NaH(3.12g、0.13mol)を室温において窒素雰囲気下で添加した。得られた混合物を100℃で1時間加熱した。反応が完了した後、反応混合物を室温に冷却し、EtOAc(800mL)で希釈し、水(2×500mL)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で濃縮した。粗製生成物を、カラムクロマトグラフィーによって、シリカゲル(60~120メッシュ)を使用して石油エーテル中25%EtOAcで溶出することによって精製して、純粋な生成物VIcを褐色の固体として得た。収量:(58.4、72.87%)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 10.91 (brs, 1H), 6.98 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 6.83 (d, J = 8 Hz, 1H), 6.33 (s, 1H), 3.82 (s, 2H). LC_MS: C7H6ClN3Oの計算値: 183.60; 実測値: 184.1 [M++H].
【0117】
工程-4:6-クロロピリド[2,3-b]ピラジン-3(4H)-オン(VId)の合成
撹拌したVIc(50g、0.272mol)の1,4-ジオキサン(500mL)溶液に、MnO2(142g、1.633mol)を添加した。得られた混合物を100℃で6時間加熱した。反応が完了した後、反応混合物を、セライト床を介して濾過し、EtOAc(1000mL)で洗浄した。濾液を濃縮して、粗製生成物VIdを得た。粗製生成物を、次の工程のために更なる精製をすることなく使用した。収量:(42.3g、86%)。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 13.10 (brs, 1H), 8.26-8.23 (m, 2H), 7.45-7.42 (m, 1H).
LC_MS C7H4ClN3Oの計算値181.58; 実測値 182.0 [M++H].
【0118】
工程-5:6-クロロ-4-メチルピリド[2,3-b]ピラジン-3(4H)-オン(VIe)の合成
撹拌した化合物VId(30g、0.165mol)の乾燥DMF(300mL)溶液に、炭酸カリウム(45.74g、0.331mol)を室温において窒素雰囲気下で添加し、10分間撹拌した。次に、ヨウ化メチル(94.13g、0.6629mol)を反応混合物に添加し、室温で1時間撹拌した。反応が完了した後、反応混合物を水(800mL)に注ぎ、酢酸エチル(2×500mL)で抽出した。合わせた有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で濃縮して、化合物VIeを褐色の固体として得た。収量:(23.4g、72.42%)。1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) δ 8.33 (s, 1H), 8.30 (d, 1H, J=8 Hz), 7.52 (d, 1H, J=8 Hz), 3.58 (s, 3H). LC_MS C8H6ClN3Oの計算値195.61; 実測値196.0 [M++H].
【0119】
工程-6:5-(2,2-ジエトキシエチル)-4-メチルピリド[2,3-b]ピラジン-3,6(4H,5H)-ジオン(VIf)の合成
撹拌した化合物VIe(30g、0.153mol)のDMF(300mL)溶液に、Cs2CO3(124.92g、0.383mol)を0℃において窒素雰囲気下で添加し、10分間撹拌した。この溶液に、2,2-ジエトキシエタノール(30.8g、0.230mol)を添加し、100℃で12時間加熱した。反応が完了した後、反応混合物を水(400mL)に注ぎ、酢酸エチル(2×500mL)で抽出した。合わせた有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で濃縮して、粗製化合物を得た。それを、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して(60~120メッシュ、石油エーテル中50%酢酸エチル)、化合物VIfを黄色の固体として得た。収量:(25.3g、56.35%)。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 8.14 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 8.12 (s,1H), 6.87 (d, J = 8.80 Hz, 1H), 4.91 (t, J = 5.20 Hz, 1H), 4.38 (d, J = 5.20 Hz, 2H), 3.72-3.70 (m, 2H), 3.68-3.56 (m, 5H), 1.16-1.13 (m, 6H). LC_MS C14H19N3O4の計算値293.32; 実測値294.2 [M++H].
【0120】
工程-8:2-(4-メチル-3,6-ジオキソ-4,6-ジヒドロピリド[2,3-b]ピラジン-5(3H)-イル)アセトアルデヒド(VI)の合成
撹拌したVIf(5g、0.017mol)のジクロロメタン(25mL)溶液に、トリフルオロ酢酸(40mL)を0℃で滴下添加した。反応混合物を室温に温め、2時間撹拌した。反応が完了した後、反応混合物をジクロロメタン(100mL)で希釈し、飽和炭酸ナトリウム溶液(pH約7)で中和し、ジクロロメタン(3×100mL)で抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空下で濃縮して、粗製生成物VIを得た。粗製物を、次の工程のために更なる精製をすることなく使用した。収量:(2.79g、粗製)。C10H9N3O3のLC_MSの算出値219.20、観測値220.0[M++H]。
【0121】
2-((5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロピリド[2,3-b]ピラジン-3-イル)オキシ)アセトアルデヒド、中間体VIIの合成
【0122】
【化12】
【0123】
工程-1:メチル(E)-3-(3-アミノ-5-クロロピラジン-2-イル)アクリレート(VIIa)の合成
撹拌した3-ブロモ-6-クロロピラジン-2-アミン(40g、191mmol)の乾燥1,4-ジオキサン(400mL)溶液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(53.3mL、305mmol)を添加した。得られた混合物を、窒素ストリームで10分間脱気した。次に、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(3.50g、3.82mmol)、トリ-tert-ブチルホスホニウムテトラフルオロボレート(2.77g、9.54mmol)及びメチルアクリレート(34.23mL、382mmol)を逐次的に添加した。次に、得られた混合物を120℃で9時間加熱した。反応が完了した後、反応混合物を室温に冷却し、炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液(500mL)及び酢酸エチル(2L)を添加した。有機層を分離し、真空中で濃縮して粗製生成物を得、それをイソプロピルエーテル(1L)と研和した。沈殿した固体を濾過し、イソプロピルエーテル(500mL)で洗浄し、真空下で乾燥させて、化合物VIIaを黄色の固体として得た。収量:(34g、82.95%)。この化合物を、次の工程のために更なる精製をすることなく取っておいた。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 7.91 (d, J=15.2, 1H), 7.86 (s, 1H), 7.32 (s, 2H), 6.76 (d, J = 15.0 Hz, 1H), 3.74 (s, 3H). LC_MS C8H8ClN3O2の計算値213.62; 実測値214.1 [M++H]
【0124】
工程-2:3-ブロモピリド[2,3-b]ピラジン-6(5H)-オン(VIIb)の合成
撹拌した化合物VIIa(34g、159.16mmol)の酢酸中HBr(33%、510mL、15体積)溶液を添加した。次に、得られた混合物を45℃で3時間加熱した。反応が完了した後、反応混合物を室温に冷却し、炭酸水素ナトリウムの飽和水溶液(400mL)及び酢酸エチル(2L)を添加した。有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で濃縮して、化合物VIIbを黄色の固体として得た。収量:(24g、66.70%)。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 12.71 (s, 1H), 8.66 (s, 1H), 7.99-7.93 (m, 1H), 6.86 (d, J = 9.6 Hz, 1H). LC_MS C7H4BrN3Oの計算値226.03; 実測値227.8 [M++H].
【0125】
工程-3:3-ブロモ-5-メチルピリド[2,3-b]ピラジン-6(5H)-オン(VIIc)の合成
撹拌した化合物VIIb(18g、79.63mmol)の乾燥DMF(180mL)溶液に、Cs2CO3(51.89g、159.27mmol)を室温において窒素雰囲気下で添加し、10分間撹拌した。次に、ヨウ化メチル(45.21g、318.54mmol)を一度に添加した。反応混合物をRTで1時間撹拌した。反応が完了した後、反応混合物を水(400mL)に注ぎ、酢酸エチル(2×600mL)で抽出した。合わせた有機相を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で濃縮して、化合物VIIcを褐色の固体として得た。収量:(13.8g、72.25%)。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 8.73 (s, 1H), 8.02 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 7.02 (d, J = 10.0 Hz, 1H), 3.06 (s, 3H). LC_MS C8H6BrN3Oの計算値240.06; 実測値240.1 [M++H].
【0126】
工程-4:3-(2,2-ジエトキシエトキシ)-5-メチルピリド[2,3-b]ピラジン-6(5H)-オン(VIId)の合成
撹拌した化合物VIIc(13.8g、57.48mmol)のTHF(130mL)溶液に、2,2-ジエトキシエタノール(9.25g、68.98mmol)を0℃において窒素雰囲気下で添加した。この溶液に、水素化ナトリウム(1.38g、57.48mmol)を10分間にわたって少量ずつ注意深く添加した。次に、反応混合物を室温で30分間撹拌した。反応が完了した後、反応混合物を水(200mL)に注ぎ、酢酸エチル(1L)で抽出した。有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で濃縮して、粗製化合物XIIIを得た。それをシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して(60~120メッシュ、石油エーテル中50%酢酸エチル)、化合物VIIdを黄色の液体として得た。収量:(9.5g、56.35%)。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 8.25 (s, 1H,), 7.94 (d, J = 9.60 Hz, 1H,), 6.73 (d, J = 9.9 Hz, 1H), 4.92 (d, J = 4.8 Hz, 1H), 4.42-4.41 (m, 2H), 3.73-3.70 (m, 1H), 3.61-3.44 (m, 6H). 1.22-1.11 (m, 6H). LC_MS C14H19N3O4の計算値293.32; 実測値294.2 [M++H].
【0127】
工程-5:2-((5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロピリド[2,3-b]ピラジン-3-イル)オキシ)アセトアルデヒド(VII)の合成
撹拌したVIId(7.8g、26.83mmol)のジクロロメタン(78mL、10体積)溶液に、トリフルオロ酢酸(62.4mL、8体積)を0℃で滴下添加した。反応混合物を室温に温め、2時間撹拌した。反応が完了した後、反応混合物を氷水でクエンチし、飽和重炭酸ナトリウム溶液(pH約7)で中和し、ジクロロメタン(2×500mL)で抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮して、粗製生成物VIIを黄色のガム状物質として得た。粗製生成物を、次の工程のために更なる精製をすることなく取っておいた。収量:(4.5g、77.32%)
C10H9N3O3のLC_MS計算値219.20; 実測値220.1 [M++H]。
【0128】
6-クロロ-2H-ピラジノ[2,3-b][1,4]チアジン-3(4H)-オン、中間体Vの合成
【0129】
【化13】
【0130】
撹拌した3-ブロモ-6-クロロピラジン-2-アミン(100g、0.479mol)の1,4-ジオキサン(1.5L)溶液に、ナトリウムtert-ブトキシド(138.3g、1.439mol)を室温において窒素雰囲気下で添加し、30分間撹拌した。次に、2-エチルヘキシルチオグリコレート(156.8g、0.7676mol)を30分間にわたって室温で滴下添加した。得られた混合物を100℃で2時間加熱した。反応の進行を、TLCによってモニタリングした。反応が完了した後、反応混合物を室温に冷却し、減圧下で濃縮して、1,4-ジオキサンを除去した。得られた残留物を水(750mL)で希釈し、HCl(1.5N)によって中和した。沈殿した固体を濾別し、乾燥させて、化合物Vを濁った白色の固体として得た。収量:(78g、80.64%)
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ11.54 (s, 1H), 8.25 (s, 1H), 3.83 (s, 2H). LC_MS: C6H4ClN3OSの計算値: 201.63; 実測値: 199.9 [M-1H].
(R)-5-(アミノメチル)-3-(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ピラジノ[2,3-b][1,4]チアジン-6-イル)オキサゾリジン-2-オン、中間体Xの合成
【0131】
【化14】
【0132】
工程-1:(S)-5-(ヒドロキシメチル)オキサゾリジン-2-オン(Va)の合成
0℃に冷却した撹拌したアミノジオール(100g、1.097mol)、NaHCO3(276.5g、3.292mol)のH2O(1L)溶液に、トリホスゲン(97.7g、0.329mmol)を添加した。反応混合物を室温に温め、16時間撹拌した。次に、反応混合物をHCl水溶液(4N、pH約7)で中和し、真空中で濃縮した。粗製生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して(60~120メッシュ、CH2Cl2中10%MeOH)、Vaを白色の固体として得た。収量:(70g、54.49%)。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ7.38 (s, 1H), 5.08 (brs, 1H), 4.56-4.50 (m, 1H), 3.55-3.52 (m, 1H), 3.47-3.43 (m, 2H), 3.24-3.16 (m, 1H). LC_MS: C4H7NO3の計算値: 117.10; 実測値: 118.2 [M++H].
【0133】
工程-2:(S)-5-(ヒドロキシメチル)-3-(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ピラジノ[2,3-b][1,4]チアジン-6-イル)オキサゾリジン-2-オン(VIII)の合成
撹拌した化合物V(100g、0.4960mol)及び(S)-5-(ヒドロキシメチル)オキサゾリジン-2-オンVa(CAS:97859-51-3、58.03g、0.4960mol)の1,4-ジオキサン(1.5L)溶液に、ナトリウムtert-ブトキシド(71.5g、0.7440mol)を室温で添加した。得られた混合物を、窒素ストリームで10分間脱気した。次に、t-ブチル-X-Phosパラダサイクル(19.69g、0.0248mol)を室温で添加し、再び窒素で5分間脱気した。次に、得られた混合物を100℃で5時間加熱した。反応が完了した後、反応混合物を室温に冷却し、真空中で濃縮した。得られた残留物を、水(500mL)で希釈し、HCl水溶液(1.5N、pH約7)で中和した。沈殿した固体を濾過し、ジエチルエーテルで洗浄し、真空下で乾燥させて、化合物VIIIを褐色の固体として得た。収量:(100g、粗製)。粗製物を、次の工程のために任意の更なる精製なしに取っておいた。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ11.23 (s, 1H), 8.81 (s, 1H), 5.24-5.07(m, 1H), 4.77-4.70 (m, 1H), 4.08 (t, J = 11.2 Hz, 1H), 3.89-3.87 (m, 1H), 3.76-3.72 (m, 3H), 3.59-3.57 (m, 1H). LC_MS: C10H10N4O4Sの計算値: 282.27; 実測値: 283 [M++H].
【0134】
工程-3:(S)-(2-オキソ-3-(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ピラジノ[2,3-b][1,4]チアジン-6-イル)オキサゾリジン-5-イル)メチルメタンスルホネート(IXa)の合成
撹拌したVIII(100g、0.3542mol)の乾燥DMF(700mL)溶液に、トリエチルアミン(148mL、1.0628mol)及びメタンスルホニルクロリド(41.1mL、0.5314mol)を0℃において窒素雰囲気下で逐次的に添加した。次に、反応混合物を室温に温め、2時間撹拌した。反応が完了した後、反応混合物を水でクエンチして、形成された固体を濾過し、石油エーテルで洗浄し、乾燥させて、化合物IXaを褐色の固体として得た(85g、粗製)。粗製生成物を、次の工程のために更なる精製をすることなく取っておいた。
C11H12N4O6S2のLC_MS:計算値: 360.36; 実測値: 361.00 [M++H]。
【0135】
工程-4:(S)-5-(アジドメチル)-3-(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ピラジノ[2,3-b][1,4]チアジン-6-イル)オキサゾリジン-2-オン(IX)の合成
撹拌したIXa(50g、0.1387mol)のDMF(350mL)溶液に、ナトリウムアジド(2.16g、0.4162mol)を0℃において窒素雰囲気下で添加した。次に、反応混合物を65℃で加熱し、3時間撹拌した。反応が完了した後、反応混合物を水でクエンチし、沈殿した固体を濾過し、石油エーテルで洗浄し、乾燥させて、化合物IXa褐色の固体として得た(26g、60.80%)。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ11.25(s, 1H), 8.80 (s, 1H), 4.95 (brs, 1H), 4.15 (t, J = 12.80 Hz, 1H), 3.85-3.70 (m, 5H). LC_MS: C10H9N7O3Sの計算値: 307.29; 実測値: 308 [M++H].
【0136】
工程-5:(R)-5-(アミノメチル)-3-(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ピラジノ[2,3-b][1,4]チアジン-6-イル)オキサゾリジン-2-オン(X)の合成
撹拌した化合物IX(50g、0.1628mol)のTHF:H2O(1:1)混合物(800mL)溶液に、PPh3(128g、0.488mol)を室温において窒素雰囲気下で添加した。反応混合物を70℃で3時間加熱した。TLCによって反応が完了した後、反応混合物を室温に冷却し、酢酸エチル(2×500mL)で抽出した。水層を分離し、真空中で濃縮して、化合物X(28g、61.18%)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ8.80 (s, 1H), 4.69 (s, 2H), 4.08-4.05 (m, 1H), 3.86-3.76 (m, 4H), 2.85-2.73 (m, 3H). LC_MS: C10H11N5O3Sの計算値: 281.29; 実測値: 282.1 [M++H].
【0137】
(R)-5-(((2-((4-(メチル-d3)-3-オキソ-3,4-ジヒドロピリド[2,3-b]ピラジン-6-イル)オキシ)エチル)アミノ)メチル)-3-(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ピラジノ[2,3-b][1,4]チアジン-6-イル)オキサゾリジン-2-オン、中間体XIの合成
【0138】
【化15】
【0139】
工程-1:6-クロロ-4-(メチル-d3)ピリド[2,3-b]ピラジン-3(4H)-オン(XIa)の合成
撹拌した化合物VId(5g、0.02754mol)の乾燥DMF(50mL)溶液に、炭酸カリウム(7.6g、0.0550mol)を室温で添加した。次に、ヨードメタン-d3(15.97g、0.1101mol)を室温で添加した。次に、反応混合物を室温で1時間撹拌した。反応が完了した後、反応混合物を水(50mL)に注ぎ、酢酸エチル(2×200ml)で抽出した。合わせた有機層を分離し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で濃縮して、粗製物を褐色の固体として得た。粗製生成物を、カラムクロマトグラフィーによって、シリカゲル(60~120メッシュ)を使用して石油エーテル中15%EtOAcで溶出することによって精製して、純粋な生成物XIaを褐色の固体として得た。収量:(3.9g、72.25%)。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 8.32 (s, 1H), 8.30 (d, J = 10.8 Hz, 1H), 7.51 (d, J = 11.20 Hz, 1H). LC_MS C8H3D3ClN3Oの計算値: 198.62; 実測値: 199.0 [M++H].
【0140】
工程-2:6-(2,2-ジエトキシエトキシ)-4-(メチル-d3)ピリド[2,3-b]ピラジン-3(4H)-オン(XIb)の合成
DMF(20mL)中XIa(3g、0.015mol)の混合物に、Cs2CO3(12.3g、0.037mol)及び2,2-ジエトキシエタノール(6g、0.045mol)を室温において窒素雰囲気下で逐次的に添加した。得られた混合物を80℃で2時間撹拌した。反応混合物を冷却し、水でクエンチし、酢酸エチル(2×125mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(2×50mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗製生成物を、カラムクロマトグラフィーによって、シリカゲル(230~400メッシュ)を使用して石油エーテル中15%酢酸エチルで溶出することによって精製して、化合物XIb(3.1g、77.5%)を得た。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 8.16 - 8.13 (m, 2H), 6.87 (d, J = 11.20 Hz, 1H), 4.92 (t, J = 6 Hz, 1H), 4.38 (d, J = 6.4 Hz, 2H), 3.72 - 3.58 (m, 4H), 1.16 -1.12 (m, 6H). LC_MS C14H16D3N3O4の計算値: 296.34; 実測値: 297.1 [M++H].
【0141】
工程-3:2-((4-(メチル-d3)-3-オキソ-3,4-ジヒドロピリド[2,3-b]ピラジン-6-イル)オキシ)アセトアルデヒド(XIc)の合成
撹拌したXIb(1g、0.0033mol)のジクロロメタン(3mL)溶液に、トリフルオロ酢酸(8mL)を0℃で滴下添加した。反応混合物を室温に温め、2時間撹拌した。反応が完了した後、反応混合物をジクロロメタン(50mL)で希釈し、飽和炭酸ナトリウム溶液(pH約7)で中和し、ジクロロメタン(3×100ml)で抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で濃縮して、粗製生成物XIcを得た。得られた粗製生成物を、次の工程のために更なる精製をすることなく使用した。収量:(0.6g、粗製)。C10H6D3N3O3のLC_MS計算値: 222.21; 実測値: 223.1 [M++H]。
【0142】
工程-4:(R)-5-(((2-((4-(メチル-d3)-3-オキソ-3,4-ジヒドロピリド[2,3-b]ピラジン-6-イル)オキシ)エチル)アミノ)メチル)-3-(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ピラジノ[2,3-b][1,4]チアジン-6-イル)オキサゾリジン-2-オン(XI)
乾燥MeOH(100mL)/DCE(100mL)中X(0.9g、4mmol)及びXIc(1g、4mmol)の混合物に、AcOH(1mL)、酢酸ナトリウム(2g、0.02mol)及びMPCNBH3樹脂(1g)を室温において窒素雰囲気下で添加した。得られた混合物を室温で3時間撹拌し続けた。反応物の混合が完了した後、反応混合物を水(5mL)でクエンチし、真空中で濃縮した。粗製生成物を、カラムクロマトグラフィーによって、シリカゲル(230~400メッシュ)を使用してジクロロメタン中6%メタノールで溶出することによって精製して、XIを黄色の固体として得た(0.51g、25.5%)。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ 11.21 (brs, 1H), 8.76 (s,1H), 8.14 (s, 1H), 8.10 - 8.07 (m, 1H), 6.80 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 4.85- 4.83 (m, 1H), 4.48-4.42 (m, 2H), 4.12- 4.06 (m, 1H), 3.85-3.80 (m, 1H), 3.76 (s, 2H), 3.23 (s, 1H), 3.03-2.97 (m, 4H). LC_MS: C20H17D3N8O5Sの計算値: 487.50; 実測値: 488.0 [M++H].HPLC純度=97.93%、X-Bridge C8(50×4.6)mm、5μm、移動相A:水中0.1%TFA、移動相B:アセトニトリル。
【0143】
(S)-5-(((2-((4-(メチル-d3)-3-オキソ-3,4-ジヒドロピリド[2,3-b]ピラジン-6-イル)オキシ)エチル)アミノ)メチル)-3-(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ピラジノ[2,3-b][1,4]チアジン-6-イル)オキサゾリジン-2-オン、中間体XIIの合成
【0144】
【化16】
【0145】
乾燥MeOH(100mL)/DCE(100mL)中化合物A(国際公開第2019186590号、0.9g、4mmol)及びXI(1g、4mmol)の混合物に、AcOH(1mL)、酢酸ナトリウム(2g、0.02mol)及びMPCNBH3樹脂(1g)を室温において窒素雰囲気下で添加した。得られた混合物を室温で3時間撹拌し続けた。反応物の混合が完了した後、反応混合物を水(5mL)でクエンチし、真空中で濃縮した。粗製生成物を、カラムクロマトグラフィーによって、シリカゲル(230~400メッシュ)を使用してジクロロメタン中6%メタノールで溶出することによって精製して、XIIを黄色の固体として得た(0.42g、21.27%)。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ 11.21 (brs, 1H), 8.76 (s,1H), 8.14 (s, 1H), 8.10 - 8.07 (m, 1H), 6.80 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 4.85- 4.83 (m, 1H), 4.48-4.42 (m, 2H), 4.12- 4.06 (m, 1H), 3.85-3.80 (m, 1H), 3.76 (s, 2H), 3.23 (s, 1H), 3.03-2.97 (m, 4H). LC_MS: C20H17D3N8O5Sの計算値: 487.50; 実測値: 488.0 [M++H].HPLC純度=97.93%、X-Bridge C8(50×4.6)mm、5μm、移動相A:水中0.1%TFA、移動相B:アセトニトリル。
【0146】
(R)-5-(((2-((7-フルオロ-4-メチル-3-オキソ-3,4-ジヒドロピリド[2,3-b]ピラジン-6-イル)オキシ)エチル)アミノ)メチル)-3-(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ピラジノ[2,3-b][1,4]チアジン-6-イル)オキサゾリジン-2-オン、中間体XIIIの合成
【0147】
【化17】
【0148】
工程-1:6-(2,2-ジエトキシエトキシ)-7-フルオロ-4-メチルピリド[2,3-b]ピラジン-3(4H)-オン(XIIIa)
撹拌したVIf(6g、20.45mmol)のCH3CN/DMF混合物(60mL、2:1)溶液に、selectfluor(21.73g、61.36mmol)を0℃において窒素雰囲気下で添加した。得られた混合物を室温で48時間撹拌した。反応が完了した後、反応混合物を真空中で濃縮した。得られた粗製生成物を、カラムクロマトグラフィーによって、石油エーテル中28%酢酸エチルで溶出することによって精製して、化合物XIIIaを薄黄色の粘性液体として得た。収量:(1.5g、23.58%)。C14H18FN3O4: 311.31のLC_MS計算値; 実測値: 312.2 [M++H]。
【0149】
工程-2:2-((7-フルオロ-4-メチル-3-オキソ-3,4-ジヒドロピリド[2,3-b]ピラジン-6-イル)オキシ)アセトアルデヒド(XIIIb)
撹拌したXIIIa(1.5g、4.81mmol)のジクロロメタン(10mL)溶液に、トリフルオロ酢酸(12mL)を0℃で滴下添加した。反応混合物を室温に温め、2時間撹拌した。反応が完了した後、反応混合物をジクロロメタン(30mL)で希釈し、飽和重炭酸ナトリウム水溶液でpH約7に中和し、ブライン(30mL)で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、真空中で濃縮して、粗製生成物XIIIbを得た。粗製生成物を、次の工程のために更なる精製をすることなく使用した。収量:(0.95g、粗製)。C10H8FN3O3のLC_MS計算値: 237.19; 実測値: 238.2 [M++H]。
【0150】
工程-3:(R)-5-(((2-((7-フルオロ-4-メチル-3-オキソ-3,4-ジヒドロピリド[2,3-b]ピラジン-6-イル)オキシ)エチル)アミノ)メチル)-3-(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ピラジノ[2,3-b][1,4]チアジン-6-イル)オキサゾリジン-2-オン(XIII)
撹拌した乾燥MeOH(40mL)/DCM(40mL)中XIIIb(0.5g、2.1mmol)及びX(0.65g、2.3mmol)の混合物に、AcOH(0.5mL)及び2-ピコリンボラン錯体(0.15g、1.47mmol)を室温において窒素雰囲気下で添加した。得られた混合物を室温で1時間撹拌し続けた。反応物の混合が完了した後、反応混合物を水(10mL)でクエンチし、真空中で濃縮した。得られた粗製生成物を分取HPLCによって精製して、XIIIをギ酸塩(濁った白色の固体)として得た。収量:(0.15g、14.15%)。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ 11.19 (brs, 1H), 8.75 (s, 1H), 8.19-8.15 (m, 3H), 4.82-4.80 (m, 1H), 4.61-4.55 (m, 2H), 4.07-4.04 (m, 1H), 3.84-3.80 (m, 3H), 3.60 (s, 3H), 3.04 (t, J = 10.5 Hz, 2H), 2.99-2.95 (m, 2H). LC_MS: C20H19FN8O5Sの計算値: 502.48; 実測値: 503 [M++H].HPLC純度=98.08%、X-Bridge C8(50×4.6)mm、5μm、移動相A:水中0.1%TFA、移動相B:アセトニトリル。
【0151】
(S)-5-(((2-((7-フルオロ-4-メチル-3-オキソ-3,4-ジヒドロピリド[2,3-b]ピラジン-6-イル)オキシ)エチル)アミノ)メチル)-3-(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ピラジノ[2,3-b][1,4]チアジン-6-イル)オキサゾリジン-2-オン、中間体XIVの合成
【0152】
【化18】
【0153】
撹拌した乾燥MeOH(40mL)/DCM(40mL)中XIIIb(0.45g、1.89mmol)及び化合物A(国際公開第2019186590号、0.65g、2.3mmol)の混合物に、AcOH(0.5mL)及び2-ピコリンボラン錯体(0.142g、1.32mmol)を室温において窒素雰囲気下で添加した。得られた混合物を室温で1時間撹拌し続けた。反応物の混合が完了した後、反応混合物を水(10mL)でクエンチし、真空中で濃縮した。粗製生成物を、カラムクロマトグラフィーによって、ジクロロメタン中5%メタノールで溶出することによって精製して、化合物XIVを薄オレンジ色の固体として得た。収量:(0.13g、13.68%)。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ 11.20 (brs, 1H), 8.75 (s, 1H), 8.19-8.15 (m, 2H), 4.82-4.80 (m, 1H), 4.61 - 4.55 (m, 2H), 4.10 - 4.04 (m, 1H), 3.84 - 3.77 (m, 3H), 3.60 (s, 4H), 3.07 - 3.04 (t, J = 7.20 Hz, 2H), 2.96-2.91 (m, 2H). LC_MS: C20H19FN8O5Sの計算値: 502.48; 実測値: 503.1 [M++H].
【0154】
比較用化合物の合成
化合物1:(S)-5-(((2-((4-メチル-3-オキソ-3,4-ジヒドロピリド[2,3-b]ピラジン-6-イル)オキシ)エチル)アミノ)メチル)-3-(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ピラジノ[2,3-b][1,4]チアジン-6-イル)オキサゾリジン-2-オン(化合物1を、国際公開第2019186590A1号の化合物13について報告されている手順に従って合成した)
【0155】
【化19】
【0156】
乾燥メタノール(20mL)/ジクロロメタン(20mL)の混合物中、化合物VI(0.2g、0.916mmol)及び化合物A(国際公開2019186590号、0.257g、0.916mmol)の混合物に、AcOH(0.40mL)を窒素雰囲気下で室温において添加し、16時間撹拌した。これに2-ピコリンボラン錯体(0.058g、0.549mmol)を添加し、室温で更に15分間撹拌した。反応混合物を水中1%HCOOHでクエンチし、減圧下で濃縮して、粗製生成物を得た。粗製生成物を、カラムクロマトグラフィーによって、シリカゲル(230~400メッシュ)を使用してジクロロメタン6%メタノールで溶出することによって精製して、標題化合物をギ酸塩として得た(化合物1、薄黄色の固体(0.100g、22.43%)。
1H NMR (400 MHz, DMSO-D6): δ 11.68 (brs, 1H), 8.75 (s, 1H), 8.19 (brs, 1H), 8.09-8.07 (m, 2H), 6.79 (d, J = 8.8 Hz, 1H), 4.83 - 4.79 (m, 1H), 4.48-4.44 (m, 2H), 4.10 - 4.05 (m, 1H), 3.84 - 3.80 (m, 1H), 3.75 (s, 3H), 3.59 (s, 3H), 3.01 - 2.94 (m, 4H).LC_MS: C20H20N8O5Sの計算値484.49; 実測値 482.8 [M+-H].HPLC: 98.55%; 2.18分; HPLCカラム: X-Bridge C18(50×4.6)mm 3.5μm、移動相A: 水中0.1%TFA、移動相B: アセトニトリル。
【0157】
化合物2:(S)-5-(((2-((5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロピリド[2,3-b]ピラジン-3-イル)オキシ)エチル)アミノ)メチル)-3-(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ピラジノ[2,3-b][1,4]チアジン-6-イル)オキサゾリジン-2-オン
(化合物2を、国際公開第2019186590A1号の化合物14について報告されている手順に従って合成した)
【0158】
【化20】
【0159】
乾燥MeOH(20mL)/DCM(20mL)中、VII(0.17g、0.77mmol)及びA(0.24g、0.853mmol)の混合物に、AcOH(0.2mL)及び2-ピコリンボラン錯体(0.058g、0.54mmol)を室温において窒素雰囲気下で添加した。得られた混合物を、室温で1時間撹拌し続けた。反応が完了した後、反応混合物を水中1%HCOOHでクエンチし、真空中で濃縮して、粗製物を得た。粗製物を、カラムクロマトグラフィーによって、ジクロロメタン中7%メタノールで溶出することによって精製した。得られた純粋な生成物を、ジエチルエーテルと更に研和して、純粋な生成物をギ酸塩として得た(化合物2、薄黄色の固体、25mg、及び8.68%)。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 11.23 (brs, 1H), 8.77 (s, 1H), 8.18-8.15 (m, 2H), 7.93 (d, J = 12.00 Hz, 1H), 6.72 (d, J = 12.00, Hz, 1H), 4.83 (s, 1H), 4.53-4.52 (m, 2H), 4.11-4.07 (m, 1H), 3.86-3.82 (m, 3H), 3.62 (s, 3H), 3.06-2.98 (m, 4H). LC_MS C20H20N8O5Sの計算値は484.49; 実測値484.9 [M++H];HPLC純度=98.00%、X-Bridge C8(50×4.6)mm、5μm、移動相A: 水中0.1%TFA、移動相B: アセトニトリル。
【0160】
本開示の化合物の合成
化合物3(化合物1のR異性体):(R)-5-(((2-((4-メチル-3-オキソ-3,4-ジヒドロピリド[2,3-b]ピラジン-6-イル)オキシ)エチル)アミノ)メチル)-3-(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ピラジノ[2,3-b][1,4]チアジン-6-イル)オキサゾリジン-2-オン
【0161】
【化21】
【0162】
乾燥MeOH(100mL)/DCM(100mL)中VI(5g、22.83mmol)及びX(7.05g、25.11mmol)の混合物に、AcOH(5mL)及び2-ピコリンボラン錯体(1.71g、15.98mmol)を室温において窒素雰囲気下で添加した。得られた混合物を室温で1時間撹拌し続けた。反応物の混合が完了した後、反応混合物を水(10mL)でクエンチし、真空中で濃縮した。粗製生成物を、カラムクロマトグラフィーによって、ジクロロメタン中5%メタノールで溶出することによって3回精製した。得られた生成物を、ジエチルエーテルと更に研和して、化合物3を薄オレンジ色の固体として得た。収量:(3.8g、37%)
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 11.20 (brs, 1H), 8.76 (s,1H), 8.10 (s, 1H), 8.08 (d, J = 6 Hz, 1H), 6.79 (d, J = 8.7 Hz, 1H), 5.76 (s, 1H), 4.84 - 4.77 (m, 1H), 4.49 - 4.42 (m, 2H), 4.08 (t, J = 9 Hz, 1H), 3.85 - 3.80 (m, 1H), 3.76 (s, 2H), 3.59 (s, 3H), 3.02 - 2.89 (m, 4H). LC_MS: C20H20N8O5Sの計算値: 484.49; 実測値: 485.2 [M++H].HPLC純度=98.11%、X-Bridge C8(50×4.6)mm、5μm、移動相A:水中0.1%TFA、移動相B:アセトニトリル。
【0163】
化合物4(化合物2のR異性体):(R)-5-(((2-((5-メチル-6-オキソ-5,6-ジヒドロピリド[2,3-b]ピラジン-3-イル)オキシ)エチル)アミノ)メチル)-3-(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ピラジノ[2,3-b][1,4]チアジン-6-イル)オキサゾリジン-2-オン
【0164】
【化22】
【0165】
乾燥MeOH(225mL)/CH2Cl2(225mL)中VII(4.5g、20.53mmol)及びX(8.66g、30.79mmol)の混合物に、酢酸(9mL、2体積)を室温において窒素雰囲気下で添加し、1時間撹拌した。次に、2-ピコリンボラン錯体(1.53g、14.37mmol)を添加した。得られた混合物を室温で1時間撹拌し続けた。反応が完了した後、反応混合物を水中1%HCOOHでクエンチし、真空中で濃縮した。得られた粗製生成物を、カラムクロマトグラフィーによって、ジクロロメタン中7%メタノールで溶出することによって精製した。得られた生成物をジエチルエーテルと更に研和して、純粋な生成物をギ酸塩(化合物4、薄黄色の固体)として得た。収量:(4g、40.24%)。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 11.19 (s, 1H,), 8.76 (s, 1H), 8.17 (s, 1H), 7.90 (d, J = 9.60 Hz, 1H), 6.71 (d, J = 9.60 Hz, 1H ), 5.76 (s, 1H), 4.83-4.80 (m, 1H), 4.51 (dd, J = 9.20 Hz, J = 5.2 Hz, 2H), 4.09 (dd, J = 10.00 Hz, J = 8.80 Hz, 1H), 3.84 (dd, J = 10.00 Hz, J = 6.4 Hz, 1H), 3.77 (s, 2H,), 3.60 (s, 3H), 3.04 (t, J = 5.6 Hz, 2H), 2.96 (t, J = 4.8 Hz, 2H). LC_MS C20H20N8O5S の計算値は484.49である; 実測値484.9 [M++H].HPLC純度=95.22%、X-Bridge C8(50X4.6)mm、5μm、移動相A:水中0.1%TFA、移動相B:アセトニトリル。
【0166】
化合物5:(R)-5-(((2-((4-メチル-3-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリド[2,3-b]ピラジン-6-イル)オキシ)エチル)アミノ)メチル)-3-(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ピラジノ[2,3-b][1,4]チアジン-6-イル)オキサゾリジン-2-オン
【0167】
【化23】
【0168】
撹拌した化合物3(10g、0.0206mol)のTHF:MeOH(1:1)混合物(2.0L)溶液に、NaBH4(1.73g、0.0454mol)を0℃において窒素雰囲気下で添加した。次に、反応混合物を室温で2時間撹拌した。TLCによって反応が完了した後、反応混合物を水(50mL)でクエンチし、真空中で濃縮した。粗製生成物を、カラムクロマトグラフィーによって、ジクロロメタン中6%メタノールで溶出することによって精製して、化合物5を薄オレンジ色の固体として得た。収量:(5g、50%)。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 11.24 (brs, 1H), 8.80 (s,1H), 7.06 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 6.31 (d, J = 8.4 Hz, 1H), 5.76 (s, 1H), 4.84 - 4.78 (m, 1H), 4.21 - 4.18 (m, 2H), 4.08 (t, J = 9 Hz, 1H), 3.87 - 3.78 (m, 1H), 3.76 (s, 4H), 3.33 (s, 3H), 2.93 - 2.90 (m, 4H). LC_MS: C20H22N8O5Sの計算値: 486.51; 実測値: 485.1 [M+- H].HPLC純度=96.75%、X-Bridge C8(50×4.6)mm、3.5μm、移動相A:水中0.1%TFA、移動相B:アセトニトリル。
【0169】
化合物6:(S)-5-(((2-((4-メチル-3-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリド[2,3-b]ピラジン-6-イル)オキシ)エチル)アミノ)メチル)-3-(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ピラジノ[2,3-b][1,4]チアジン-6-イル)オキサゾリジン-2-オン
【0170】
【化24】
【0171】
撹拌した化合物1(2g、4.1mmol)のTHF:メタノール(1:1)混合物(100mL)溶液に、NaBH4(0.78g、21mmol)を0℃において窒素雰囲気下で添加した。次に、反応混合物を室温で2時間撹拌した。TLCによって反応が完了した後、反応混合物を水(5mL)でクエンチし、真空中で濃縮した。粗製生成物を、カラムクロマトグラフィーによって、ジクロロメタン中8%メタノールで溶出することによって精製して、化合物6を薄オレンジ色の固体として得た。収量:(1g、48%)
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 11.23 (br s, 1H), 8.81 (s, 1H), 7.07 (d, J = 8.40 Hz, 1H), 6.32 (d, J = 8.00 Hz, 1H), 4.37-4.20 (m, 1H), 4.19 - 4.09 (m, 4H), 3.87 - 3.61 (m, 1H), 3.28 (s, 4H), 2.90 (br s, 3H), 2.53 - 2.33 (m, 5H). LC_MS: C20H22N8O5Sの計算値: 486.51; 実測値: 487.0 [M+- H].HPLC純度=96.06%、X-Bridge C8(50×4.6)mm、3.5μm、移動相A:水中0.1%HCOOH、移動相B:アセトニトリル
【0172】
化合物7:(R)-5-(((2-((7-フルオロ-4-メチル-3-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリド[2,3-b]ピラジン-6-イル)オキシ)エチル)アミノ)メチル)-3-(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ピラジノ[2,3-b][1,4]チアジン-6-イル)オキサゾリジン-2-オン
【0173】
【化25】
【0174】
撹拌した化合物XIII(0.13g、0.2985mol)のTHF:メタノール(1:1)混合物(20mL)溶液に、NaBH4(0.022g、0.5970mol)を0℃において窒素雰囲気下で添加した。次に、反応混合物を室温で2時間撹拌した。TLCによって反応が完了した後、反応混合物を水(10mL)でクエンチし、真空中で濃縮した。粗製生成物を、カラムクロマトグラフィーによって、ジクロロメタン中6%メタノールで溶出することによって精製して、化合物7を薄オレンジ色の固体として得た。収量:(70mg、46.66%)
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ 11.21 (br s, 1H), 8.79 (s, 1H), 7.06 (d, J = 10.80 Hz, 1H), 6.33 (br s, 1H), 4.85 - 4.79 (m, 1H), 4.30 (t, J = 6.00 Hz, 2H), 4.14 - 4.08 (m, 1H), 3.87 - 3.77 (m, 5H), 3.21 (s, 3H), 2.52 - 2.51 (m, 4H), 2.50 (br s, 1H). LC_MS: C20H21FN8O5Sの計算値: 504.50; 実測値: 505.1 [M++H].HPLC純度=97.18%、X-Bridge C8(50×4.6)mm、5μm、移動相A:水中0.1%TFA、移動相B:アセトニトリル。
【0175】
化合物8:(S)-5-(((2-((7-フルオロ-4-メチル-3-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリド[2,3-b]ピラジン-6-イル)オキシ)エチル)アミノ)メチル)-3-(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ピラジノ[2,3-b][1,4]チアジン-6-イル)オキサゾリジン-2-オン
【0176】
【化26】
【0177】
撹拌した化合物XIV(0.13g、0.2985mol)のTHF:メタノール(1:1)混合物(20mL)溶液に、NaBH4(0.022g、0.5970mol)を0℃において窒素雰囲気下で添加した。次に、反応混合物を室温で2時間撹拌した。TLCによって反応が完了した後、反応混合物を水(10mL)でクエンチし、真空中で濃縮した。粗製生成物を、カラムクロマトグラフィーによって、ジクロロメタン中6%メタノールで溶出することによって精製して、化合物8を薄オレンジ色の固体として得た。収量:(75mg、57.69%)。
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 11.24 (brs, 1H), 8.81 (s,1H), 7.05 (d, J = 10.8 Hz, 1H), 5.94 (s, 1H), 4.84 - 4.79 (m, 1H), 4.31 - 4.28 (m, 2H), 4.09 (t, J = 8.8 Hz, 1H), 3.86 - 3.81 (m, 3H), 3.76 (s, 2H), 3.26 (s, 3H), 2.96 - 2.93 (m, 4H). LC_MS: C20H21FN8O5Sの計算値: 504.50; 実測値: 505.1 [M+- H].HPLC純度=97.85%、X-Bridge C8(50×4.6)mm、3.5μm、移動相A:水中0.1%TFA、移動相B:アセトニトリル。
【0178】
化合物9:(R)-5-(((2-((4-(メチル-d3)-3-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリド[2,3-b]ピラジン-6-イル)オキシ)エチル)アミノ)メチル)-3-(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ピラジノ[2,3-b][1,4]チアジン-6-イル)オキサゾリジン-2-オン
【0179】
【化27】
【0180】
0℃に冷却した撹拌したXI(0.62g、1.3mmol)の乾燥MeOH(20mL)/THF(20mL)溶液に、水素化ホウ素ナトリウム(96mg、2.5mmol)を窒素雰囲気下で少しずつ添加した。得られた混合物を室温で2時間撹拌し続けた。反応物の混合が完了した後、反応混合物を1.5NのHClで中和し、濃縮して、粗製物を黄色の固体として得た。粗製生成物を、カラムクロマトグラフィーによって、シリカゲル(230~400メッシュ)を使用してジクロロメタン中7%メタノールで溶出することによって精製して、標題化合物9を黄色の固体として得た。収量:(0.21g、33.8%)。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 11.23 (br s, 1H), 8.80 (s, 1H), 8.10 (d, J = 5.60 Hz, 1H), 7.07 (d, J = 8.40 Hz, 1H), 6.32 (s, 1H), 5.77 (br s, 1H), 4.83-4.81 (m, 1H), 4.39-4.36 (m, 1H), 4.22-4.19 (m, 2H), 4.14-4.09 (m, 2H), 3.87-3.83 (m, 1H), 3.78-3.77 (m, 4H), 2.96-2.91 (m, 2H). LC_MS: C20H19D3N8O5Sの計算値: 489.53; 実測値: 490.1 [M++H].HPLC純度=94.963%、X-Bridge C8(50×4.6)mm、3.5μm、移動相A:水中0.1%HCOOH、移動相B:アセトニトリル。
【0181】
化合物10:(S)-5-(((2-((4-メチル-d3)-3-オキソ-1,2,3,4-テトラヒドロピリド[2,3-b]ピラジン-6-イル)オキシ)エチル)アミノ)メチル)-3-(3-オキソ-3,4-ジヒドロ-2H-ピラジノ[2,3-b][1,4]チアジン-6-イル)オキサゾリジン-2-オンの合成
【0182】
【化28】
【0183】
0℃に冷却した撹拌したXII(0.2g、0.4mmol)の乾燥MeOH(10mL)/THF(10mL)溶液に、水素化ホウ素ナトリウム(30mg、0.8mmol)を窒素雰囲気下で少しずつ添加した。得られた混合物を室温で2時間撹拌し続けた。反応物の混合が完了した後、反応混合物を1.5NのHClで中和し、濃縮して、粗製物を黄色の固体として得た。粗製生成物を、カラムクロマトグラフィーによって、シリカゲル(230~400メッシュ)を使用してジクロロメタン中7%メタノールで溶出することによって精製して、標題生成物である化合物10を黄色の固体として得た。収量:(90mg、45%)。
1H-NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 11.21 (br s, 1H), 8.80 (s, 1H), 7.07 (d, J = 8.40 Hz, 1H), 6.31 (d, J = 8.00 Hz, 1H), 5.75 (s, 1H), 4.84-4.80 (m, 1H), 4.19 (t, J = 19.60 Hz, 2H), 4.11-4.09 (m, 2H), 3.88-3.84 (m, 1H), 3.78-3.77 (m, 4H), 2.93 (br s, 4H), LC_MS: C20H19D3N8O5Sの計算値: 489.53; 実測値: 490.1 [M++H].HPLC純度=96.093%、X-Bridge C8(50×4.6)mm、3.5μm、移動相A:水中0.1%HCOOH、移動相B:アセトニトリル。
【0184】
(実施例4)
生物活性(抗菌活性)
式Ia及び式Ibの化合物は、それらの強力な抗菌効果に起因して興味深い。本明細書に開示される本開示の化合物が抗菌効果をもたらす能力は、以下の最小阻害濃度(MIC)プロトコールに基づくアッセイを使用して、大腸菌ATCC25922、黄色ブドウ球菌ATCC29213、肺炎桿菌ATCC13883、アシネトバクター・バウマンニATCC19606、緑膿菌ATCC27853、及び大便連鎖球菌ATCC29212等の細菌種の成長を阻害するそれらの能力に関して評価することができる。
【0185】
試験細菌を、Luria Bertaniブロス(HIMEDIA M1245)で成長させ、粉末25グラムを蒸留水1000mlに溶解させ、高圧蒸気殺菌法によって15ポンドの圧力(121℃)で20分間滅菌した。培地の無菌性を、48時間にわたって37℃でインキュベートすることによってチェックした。グリセロール原液として-80℃で保存された細菌培養物を、LB寒天プレート上で継代培養して、単離されたコロニーを得た。各株の単一コロニーをLBブロスで培養した。培養物を、光学密度(600nmにおけるOD)0.8~1に達するまで37℃において200rpmでインキュベートした。この対数期培養物を、LBブロスで5~8×105CFU/mLの細胞数に希釈して、MIC実験のための接種材料として使用した。試験化合物を、原液濃度4mg/mlまでジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解させた。このDMSO原液の2倍希釈系列を、96ウェルのV底マイクロタイタープレートのA列からH列で調製した。体積3μLのこれらの希釈物を、96ウェル平底マイクロタイターアッセイプレートに移す。DMSO及び培地無菌性の効果をモニタリングするための対照が含まれていた。各ウェルに、前述の希釈した培養物150μLを接種した。プレートを加湿インキュベーター内で37℃において一晩インキュベートした。翌朝、分光光度計を使用して、プレートを600nMの波長で読み取った。最小阻害濃度(MIC)を、濁度を示さなかった最小薬物濃縮物のウェルと定義する。代表的なグラム陽性病原体(黄色ブドウ球菌、大便連鎖球菌)及びグラム陰性病原体(大腸菌、緑膿菌、肺炎桿菌、及びA.バウマンニ)に対して決定された抗菌活性(MIC)を、表1に記録する。
【0186】
【表1】
【0187】
(実施例5)
酵素阻害アッセイ:大腸菌ジャイレース高次コイル形成及び大腸菌Topo IV脱連環に対するIC50の決定
本開示はまた、大腸菌のDNAジャイレース及び大腸菌のTopo IV酵素を使用する細菌トポイソメラーゼの阻害によるグラム陽性菌及びグラム陰性菌の両方によって引き起こされた感染症の処置に関する証拠を提供した。
【0188】
大腸菌のDNAジャイレース高次コイル形成アッセイの手順
大腸菌のジャイレース高次コイル形成及びその阻害を、Inpiralis社から購入したキット(K0001)を使用してアッセイし、プロトコール(PMID:2172086)を、必要な修正を加えて適合させた。試験すべき化合物を30μlの反応体積及び3.2%DMSO中2.5nMの大腸菌のDNAジャイレースと共に10分間インキュベートした。次に、60ngの弛緩型pBR322プラスミドDNAを添加して反応を開始し、37℃で45分間継続した。反応混合物は、35mMのTris-HCl(pH7.5)、24mMのKCl、1.8mMのスペルミジン、4mMのMgCl2、2mMのDTT、6.5%(w/v)のグリセロール、0.1mg/mLのBSA、及び1mMのATPを含有していた。次に、プロテイナーゼK(20mg/mL)0.75μL及び2%SDS3μLを添加することによって反応を停止させ、37℃で30分間更にインキュベートした。この後、STEB(40%(w/v)のスクロース、100mMのTris-HCl(pH8)、1mMのEDTA、0.5mg/mlのブロモフェノールブルー)4μLを添加し、プラスミドDNAの高次コイル形成した/弛緩した形態をアガロースゲル電気泳動法によって分離した。1%アガロースゲルに、1×TAE(40mMのTris、20mMの酢酸、1mMのEDTA)中4V/cmで3時間泳動させた。DNAを可視化するために、ゲルを0.7μg/mLの臭化エチジウムで10分間染色し、過剰の染料を、水で数回洗浄することによって除去した。濃度測定方法によってQuantity Oneソフトウェア(Bio-rad社)を使用して、反応物のそれぞれにおいて高次コイル形成した弛緩型DNAをゲル画像から定量することによって、IC50値を決定した。
【0189】
大腸菌のトポイソメラーゼIV脱連環アッセイの手順
大腸菌のトポイソメラーゼIV脱連環活性及びその阻害を、Inpiralis社から購入したキット(D4002)を使用してアッセイし、キットプロトコールを、ジャイレース高次コイル形成アッセイと同様の必要な修正を加えて適合させた。化合物1、2、3及び4を30μlの反応体積及び3.2%DMSO中5nMの大腸菌のポイソメラーゼIVと共に個別に10分間インキュベートした。60ngのkDNAを添加して反応を開始し、37℃で40分間継続した。最終的な反応混合物は、40mMのTris.HCl(pH7.6)、100mMのグルタミン酸カリウム、10mMの酢酸マグネシウム、10mMのDTT、1mMのATP、及び50μg/mlのアルブミンを含有した。プロテイナーゼK(20mg/mL)0.75μL及び2%SDS3μLを添加することによって反応を停止させ、37℃で30分間更にインキュベートした。この後、STEB(40%(w/v)のスクロース、100mMのTris-HCl、pH8、1mMのEDTA、0.5mg/mlのブロモフェノールブルー)4μLを添加し、kDNA/小環状形態をアガロースゲル電気泳動法によって分離した。1%アガロースゲルに、1×TAE(40mMのTris、20mMの酢酸、1mMのEDTA)中4V/cmで3時間泳動させた。DNAを可視化するために、ゲルを0.7μg/mLの臭化エチジウムで10分間染色し、過剰の染料を、水で数回洗浄することによって除去した。濃度測定方法によってQuantity Oneソフトウェア(Bio-rad社)を使用して、ゲルのウェル内のキネトプラストDNAバンド及び反応物のそれぞれにおいてゲルに遊走する脱連環した小環状をゲル画像から定量することによって、IC50値を決定した。
【0190】
式Ia及び式Ibに属する代表例を、ジャイレース阻害のためのゲルベースの高次コイル形成アッセイ及びTopo IV阻害のための脱連環アッセイを使用して、大腸菌のDNAジャイレース及びTopo IV酵素に対して評価した。表2に提示された細菌型IIトポイソメラーゼについての結果(ジャイレース及びTopo IV)により、式Ia及び式Ibに属する化合物が、細菌型IIトポイソメラーゼ活性の阻害によってそれらの抗菌活性を発揮することが示され、化合物の観測された抗菌活性に関して二重阻害機序があることが確認された。
【0191】
【表2】
【0192】
(実施例6)
MIC90の決定
式Ia及び式Ibの化合物が細菌の多剤耐性臨床株に対して抗菌活性を保持することができるかどうかを試験するために、抗菌感受性研究(MIC90の決定)を、標準CLSI指針に従って11種のグラム陰性菌種(アシネトバクター・バウマンニ、シトロバクター・フロインデイ種複合体、エンテロバクター・クロアカ種複合体、大腸菌、クレブシエラ・アエロゲネス(Klebsiella aerogenes)、クレブシエラ・オキシトカ、肺炎桿菌、モルガン菌、プロテウス・ミラビリス、プロビデンシア・レットゲリ(Providencia rettgeri)、プロビデンシア・スチュアルティイ(Providencia stuartii)、緑膿菌及び霊菌)の臨床株を使用して、一連からの化合物1~4及び10について行い、得られた結果を表3に提示する。標準薬物であるシプロフロキサシン及びメロペネムを、この研究で正の対照とした。表3から観測されうる通り、化合物3、4、及び10はすべて、すべての細菌の菌株について同等のMIC値を示した。したがって、式Ia及び式Ibの化合物は、細菌の成長を阻害するのに有用であることが明らかになった。
【0193】
【表3】
【0194】
(実施例7)
インビトロ微小核アッセイ
遺伝毒性研究を本開示の化合物で実施して、DNA損傷を引き起こすそれらの能力について評価した。インビトロ微小核アッセイにより、微小核形成が生じる化合物の濃度(μM)を測定した。より低濃度での微小核形成は、遺伝的損傷又は遺伝毒性がより高いことを示す。
【0195】
微小核形成は、遺伝毒性の顕著な特徴であり、微小核アッセイは、遺伝毒性スクリーニングの重要な構成成分である。微小核は、有糸分裂時に娘細胞核に組み込まれなかった断片又は更には染色体全体となるクロマチン含有体である。アッセイの目的は、染色体損傷を誘導し、微小核を静止期細胞に誘導する薬剤を検出することである。インビトロ微小核アッセイは、Diaz, Dら[Mutat Res. 630(1-2):1-13. 2007]に記載されている手順に従って、CHO-K1細胞で実施した。微小核の形成を、二核化細胞から画像ベースのハイコンテント分析によって同定する。
【0196】
インビトロ微小核アッセイから得られた結果を、表4に提示する。作成されたデータから、化合物1及び2が共に、それぞれ32μM及び8μMの濃度で遺伝毒性を示したことを明らかに推測することができる。他方では、化合物4は、130μMのかなり高い濃度でインビトロ微小核形成を誘導し、化合物3、5、6は、試験した最高濃度(>500又は1000μM)でも微小核形成を誘導しなかった。化合物3、4、5、6は、化合物1及び2の生物活性と類似の生物活性を有しているが、驚くべきことに、遺伝毒性が関与する限り異なるパターンを有する。特に、本開示の化合物3、5、6、7、8、9及び10は、いかなる遺伝毒性リスクも全くなかった。したがって、遺伝毒性リスクを軽減することに関して、オキサゾリジノン環のC-4炭素におけるキラリティー(化合物3及び4の場合)又はキナゾリノンLHS環のピラジノン部分の二重結合の飽和(5及び6の場合)が、主な役割を果たすように見える。加えて、遺伝毒性リスクを低減することについては、LHS環における置換基パターン(窒素の位置)の役割も、小さいながら観測される。
【0197】
【表4】
【0198】
(実施例8)
hERG(ヒト遅延整流性カリウムイオンチャネル遺伝子(human ether a go-go related gene))阻害アッセイ
式Ia及びIbの化合物が、心臓のイオンチャネル、特にカリウムチャネル(IKr、hERG)を阻害することによって任意の安全性リスクを有するかどうかを理解するために、化合物を、電気生理学的アッセイを使用して試験して、hERGイオンチャネルに対するその潜在的な活性を評価した。式Ia及びIbの代表的な化合物を、ヒト遅延整流性カリウムイオンチャネル遺伝子(hERG)のK+チャネルの阻害について、QPatch HTX自動化電気生理技術を使用して試験した。6点濃度応答曲線を、最大最終試験濃度300μMから3倍希釈系列を使用して作製し、結果を表5に提示する。
【0199】
化合物を、DMSO中100mMに可溶化した後、HBPSで100μMに希釈した。6点濃度応答曲線を、最大試験濃度から3.16倍希釈系列を使用して作製した。電気生理学的記録を、全長hERGカリウムチャネルを安定に発現するチャイニーズハムスター卵巣細胞系から作成した。単一細胞のイオン電流を、全細胞パッチクランプ配置で室温(21~23℃)においてQPatch HTXプラットフォーム(Sophion)を使用して測定した。細胞内溶液は、120mMのKF、20mMのKCl、10mMのEGTA、10mMのHEPESを含有しており、pH7.3に緩衝化した。細胞外溶液(HEPES緩衝生理食塩水、HBPS)は、pH7.4に緩衝化した145mMのNaCl、4mMのKCl、2mMのCaCl2、1mMのMgCl2、10mMのHEPES、10mMのグルコースを含有していた。細胞を、保持電位-80mVでクランプした。細胞を、段階的に2秒間で+20mVに、次に3秒間で-40mVにした後、保持電位に戻した。この掃引を、10秒間隔で10回反復した。hERG電流を、テール工程から測定し、保持電位と参照した。次に、化合物を2分間インキュベートした後、同一パルストレインを使用してイオンチャネル電流の第2の測定を行った。
【0200】
【表5】
【0201】
本開示の化合物は、hERGチャネル(心臓カリウムイオンチャネル)に対して化合物1よりも高い選択性の度合いを実証し、動物及びヒトにおける心毒性を伴わずに済むことが、表5から明らかに推測されうる。シサプリドは、公知のhERGイオンチャネル阻害剤であり、hERG阻害アッセイの正の対照として使用される。
【0202】
本開示の利点
この主題及びその均等物に記載される通り、前述の実施例は、前述の利点を含む多くの利点を有する。
【0203】
本開示の化合物は、広範囲なグラム陽性菌及びグラム陰性菌に対して優れた抗菌活性を示し、かなり強力なMIC値を有する。したがって、本開示の化合物は、抗菌効果をもたらすのにより少量で投与することができる。本発明の化合物はまた、インビトロ微小核形成が高度に低減されたことにより、DNA損傷及び遺伝毒性に対して安全に使用できる。本開示の化合物は、有効な抗生物質であり、特に化合物の特定の鏡像異性形態は、細菌の成長を高効率で阻害する。特定の異性体形態は、遺伝毒性を殆ど又は全く示さないことが見出され、したがって、その異性体形態の化合物の構造的態様の重要性を証明している。したがって、本開示の化合物は、疾患を引き起こす様々な微生物によって引き起こされた感染性疾患を処置するために使用される医薬の製造のための潜在的な候補である。
【0204】
主題を、それらのある特定の実施形態を言及しながらかなり詳細に記載してきたが、他の実施形態も可能である。したがって、本開示の精神及び範囲は、本明細書に含有される実施形態の説明に制限されるべきではない。
【国際調査報告】