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特表2024-529150潤滑剤組成物の基油としてのヘミメリット酸エステルの使用
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  • 特表-潤滑剤組成物の基油としてのヘミメリット酸エステルの使用 図1
  • 特表-潤滑剤組成物の基油としてのヘミメリット酸エステルの使用 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】潤滑剤組成物の基油としてのヘミメリット酸エステルの使用
(51)【国際特許分類】
   C10M 105/36 20060101AFI20240725BHJP
   C10M 143/06 20060101ALI20240725BHJP
   C10M 107/08 20060101ALI20240725BHJP
   C10M 105/38 20060101ALI20240725BHJP
   C10M 105/42 20060101ALI20240725BHJP
   C10M 107/02 20060101ALI20240725BHJP
   C10M 101/02 20060101ALI20240725BHJP
   C10M 145/26 20060101ALI20240725BHJP
   C10M 107/34 20060101ALI20240725BHJP
   C10N 50/10 20060101ALN20240725BHJP
   C10N 30/02 20060101ALN20240725BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20240725BHJP
   C10N 30/08 20060101ALN20240725BHJP
   C10N 30/10 20060101ALN20240725BHJP
   C10N 40/02 20060101ALN20240725BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20240725BHJP
   C10N 40/08 20060101ALN20240725BHJP
   C10N 40/32 20060101ALN20240725BHJP
【FI】
C10M105/36 ZAB
C10M143/06
C10M107/08
C10M105/38
C10M105/42
C10M107/02
C10M101/02
C10M145/26
C10M107/34
C10N50:10
C10N30:02
C10N30:06
C10N30:08
C10N30:10
C10N40:02
C10N40:04
C10N40:08
C10N40:32
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024508629
(86)(22)【出願日】2022-08-04
(85)【翻訳文提出日】2024-03-19
(86)【国際出願番号】 EP2022071929
(87)【国際公開番号】W WO2023016908
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】102021121037.2
(32)【優先日】2021-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509350664
【氏名又は名称】クリューバー リュブリケーション ミュンヘン ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Klueber Lubrication Muenchen GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Geisenhausenerstrasse 7, D-81379 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ゼーマイアー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス キルタウ
(72)【発明者】
【氏名】リン マ
(72)【発明者】
【氏名】ナタリア パナジオティドゥ
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA04A
4H104BA07A
4H104BB33A
4H104BB34A
4H104BB36A
4H104BB41A
4H104CA04A
4H104CA04C
4H104CB14A
4H104CD04A
4H104CJ02A
4H104DA02A
4H104DA06A
4H104LA01
4H104LA03
4H104LA04
4H104LA05
4H104PA01
4H104PA03
4H104PA05
4H104PA37
4H104QA18
(57)【要約】
本発明は、下記一般式I[式中、R、RおよびRは、互いに独立して、a)非置換の分岐状もしくは非分岐状のC1~C20アルキル基、またはb)シクロアルキル基および芳香族基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有するC1~C5アルキル基、またはc)C5~C20芳香族基もしくはC5~C20シクロアルキル基である]のヘミメリット酸エステルの、トライボロジーシステムの潤滑用の潤滑剤組成物の基油としての使用であって、ここで、式Iのヘミメリット酸エステルは、式Iの各種化合物の混合物として存在することができるものとする、使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式I
【化1】
[式中、
、RおよびRは、互いに独立して、
a)非置換の分岐状もしくは非分岐状のC1~C20アルキル基、または
b)シクロアルキル基および芳香族基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有するC1~C5アルキル基、または
c)C5~C20芳香族基もしくはC5~C20シクロアルキル基
である]のヘミメリット酸エステルの、トライボロジーシステムの潤滑用の潤滑剤組成物の基油としての使用であって、ここで、前記式Iのヘミメリット酸エステルは、前記式Iの各種化合物の混合物として存在することができるものとする、使用。
【請求項2】
前記式Iのヘミメリット酸エステルが、少なくとも部分的にバイオベースであることを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記潤滑剤組成物が、バイオベースの炭素を、前記潤滑剤組成物中の有機炭素の総重量に対して、少なくとも10重量%、例えば10~100重量%、および/または10~95重量%、有利には少なくとも15重量%、例えば15重量%~95重量%、特に少なくとも20重量%、例えば20重量%~95重量%含むことを特徴とする、請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
前記式Iのヘミメリット酸エステルが、バイオベースの炭素を、前記潤滑剤組成物中の前記式Iのヘミメリット酸エステルの総重量に対して、少なくとも30重量%、例えば30~100重量%、有利には少なくとも40重量%、例えば40重量%~100重量%、特に少なくとも50重量%、例えば50重量%~100重量%含むことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の使用。
【請求項5】
前記式Iのヘミメリット酸エステルの酸成分が、バイオベースの炭素を、前記潤滑剤組成物中の前記式Iのヘミメリット酸エステルの前記酸成分の総重量に対して、少なくとも30重量%、有利には少なくとも40重量%、例えば40重量%~100重量%、特に少なくとも50重量%、例えば50重量%~100重量%含むことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の使用。
【請求項6】
少なくとも1つの基R、Rおよび/またはRが、非置換の分岐状または非分岐状のC5~C20アルキル基、さらにより好ましくはC6~C18アルキル基、特にC8~C18アルキル基である、請求項1から5までのいずれか1項記載の使用。
【請求項7】
少なくとも1つの基R、Rおよび/またはRが、C1~C3アルキル基、特にC1~C2アルキル基であり、前記アルキル基が、C5~C15シクロアルキル基およびC5~C15芳香族基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の使用。
【請求項8】
少なくとも1つの基R、Rおよび/またはRが、少なくとも1つのC5~C15シクロアルキル基で置換された、またはC5~C15芳香族基で置換された、メチル基、エチル基またはプロピル基であることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の使用。
【請求項9】
少なくとも1つの基R、Rおよび/またはRが、オクタニル、エチルヘキサニル、ノナニル、デカニル、ウンデカニル、ドデカニル、イソトリデシル、トリシクロデカンメチル、フルフリルからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の使用。
【請求項10】
前記式Iのヘミメリット酸エステルが、少なくとも部分的に互いに異なる基R、RおよびRを有することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の使用。
【請求項11】
前記式Iのヘミメリット酸エステルが、前記式Iの各種化合物の混合物として存在することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の使用。
【請求項12】
前記基R、RおよびRが、互いに独立して、炭素および水素以外の原子を有しないことを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の使用。
【請求項13】
前記潤滑剤組成物が、前記式Iのヘミメリット酸エステルを、前記潤滑剤組成物の総重量に対してそれぞれ、20重量%~90重量%、さらにより好ましくは25重量%~70重量%、さらにより好ましくは25重量%~60重量%、特に30重量%~50重量%の量で含むことを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の使用。
【請求項14】
前記式Iのヘミメリット酸エステルが、40℃で30mm/s~150mm/sの範囲の動粘度[mm/sec]を有することを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の使用。
【請求項15】
前記潤滑剤組成物が、ポリイソブチレンを、前記潤滑剤組成物の総重量に対してそれぞれ、5~50重量%、さらにより好ましくは15~35重量%、特に15~30重量%含むことを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項記載の使用。
【請求項16】
前記潤滑剤組成物が、油配合物として存在し、少なくとも1つのさらなる基油を、前記潤滑剤組成物の総重量に対してそれぞれ、10重量%~50重量%、さらにより好ましくは10重量%~40重量%の割合で含むか、または
前記潤滑剤組成物が、グリース配合物として存在し、少なくとも1つのさらなる基油を、前記潤滑剤組成物の総重量に対してそれぞれ、10重量%~50重量%、さらにより好ましくは25重量%~50重量%、特に30重量%~50重量%の割合で含む
ことを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項記載の使用。
【請求項17】
前記さらなる基油が、エステル、特に、芳香族および/または脂肪族ジ-、トリ-またはテトラカルボン酸とC7~C22アルコールの1つまたは混合物とのエステル、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールと脂肪族C7~C22カルボン酸とのエステル、C18ダイマー酸とC7~C22アルコールとのエステル、単独成分としてまたは任意の混合物の複合エステル、ならびにトリグリセリドおよび/またはエストリド、ポリ-α-オレフィン、ポリエーテルおよび/または鉱物油から選択されることを特徴とする、請求項16記載の使用。
【請求項18】
以下:
- 20重量%~90重量%、有利には50重量%~85重量%の、基油としての、下記一般式I
【化2】
[式中、
、RおよびRは、互いに独立して、
a)非置換の分岐状もしくは非分岐状のC1~C20アルキル基、または
b)シクロアルキル基および芳香族基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有するC1~C5アルキル基、または
c)C5~C20芳香族基もしくはC5~C20シクロアルキル基
である]のヘミメリット酸エステルであって、前記式Iのヘミメリット酸エステルは、前記式Iの各種化合物の混合物として存在することができるものとする、ヘミメリット酸エステル、
- 5重量%~50重量%、有利には10重量%~50重量%のポリイソブチレン、
- 0.1重量%~8重量%の添加剤
を含む油配合物として形成された、潤滑剤組成物。
【請求項19】
以下:
- 20重量%~90重量%の、基油としての、下記一般式I
【化3】
[式中、
、RおよびRは、互いに独立して、
a)分岐状もしくは非分岐状のC1~C20アルキル基、または
b)シクロアルキル基および芳香族基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有するC1~C5アルキル基、または
c)C5~C20芳香族基もしくはC5~C20シクロアルキル基
である]のヘミメリット酸エステルであって、前記式Iのヘミメリット酸エステルは、前記式Iの各種化合物の混合物として存在することができるものとする、ヘミメリット酸エステル、
- 3~30重量%の増粘剤、
- 0.1~8重量%の添加剤
を含むグリース配合物として形成された、潤滑剤組成物。
【請求項20】
以下:
- 20重量%~70重量%の、基油としての、下記一般式I
[式中、
、RおよびRは、互いに独立して、
d)分岐状もしくは非分岐状のC1~C20アルキル基、または
e)シクロアルキル基および芳香族基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有するC1~C5アルキル基、または
f)C5~C20芳香族基もしくはC5~C20シクロアルキル基
である]のヘミメリット酸エステルであって、前記式Iのヘミメリット酸エステルは、前記式Iの各種化合物の混合物として存在することができるものとする、ヘミメリット酸エステル、
- 3~30重量%の増粘剤、
- 10重量%~50重量%の少なくとも1つのさらなる基油、
- 0.1~8重量%の添加剤
を含むグリース配合物として形成された、潤滑剤組成物。
【請求項21】
前記グリース配合物として形成された潤滑剤組成物が、10重量%~40重量%のポリイソブチレンを含むことを特徴とする、請求項19または20記載の潤滑剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑剤組成物の基油としてのヘミメリット酸エステルの使用、および基油としてのヘミメリット酸エステルをベースとする潤滑剤組成物に関する。
【0002】
潤滑剤は、2つ以上の表面が密接に接触して動く多くの工業プロセスにおいて不可欠な成分である。潤滑油の用途範囲は非常に幅広く、特に、自動車用潤滑剤、2サイクルおよび4サイクルガソリンエンジン用潤滑剤、ディーゼルエンジン用潤滑剤、ガスエンジン油、ガスタービン油、オートマチックトランスミッションフルード、ギア油などが含まれる。
【0003】
潤滑剤は、潤滑油および潤滑グリースとして構成可能である。工業用潤滑油には、特に、工業用ギア油、空圧工具用潤滑剤、高温油、あらゆるタイプのコンプレッサー用エア・ガスコンプレッサー油、工作機械用油、繊維用油、蒸気タービン油、作動油、製紙機械用油、食品機械用油、蒸気シリンダー油、金属切削用金属加工油、金属圧延用金属加工油、金属引抜き用金属加工油、金属鍛造用金属加工油、金属鋳造用金属加工油が包含される。潤滑グリースには、潤滑油に加えてさらに1つ以上の増粘剤が含まれる。
【0004】
潤滑剤の持続可能性を考慮すると、潤滑剤が少なくとも部分的にバイオベースの基油を含むことが望ましい。さらに、(少なくとも部分的に)生物学的供給源と石油化学的供給源との双方から得ることができる基油を潤滑剤が含むと、実際上有利である。これにより、潤滑剤製造における高いフレキシビリティと、環境に優しく持続可能な潤滑剤を提供する可能性とを両立させることができる。しかし、多くのバイオベースの油は、例えば酸化安定性や低温挙動に関して望ましい特性プロファイルを持たないため、潤滑剤用途には適していない。
【0005】
潤滑剤の基油としてのトリメリット酸エステルの使用は知られており、実際に使用されている。しかし、このエステルは現在、生物学的原料から工業規模で得られていない。
【0006】
国際公開第2012159738号から、連続プレス機のチェーン、チェーンローラーおよびベルトの潤滑用の高温油が知られており、この高温油は、一般式(II)
【化1】
[式中、Rは、8~16個の炭素原子の鎖長を有する直鎖状または分岐状のアルキル基である]の化合物40~91.9重量%と、水素化ポリイソブチレン、完全に水素化されたポリイソブチレン、または完全に水素化されたポリイソブチレンと水素化ポリイソブチレンとの混合物5~50重量%とを含む。記載された2成分系は、熱安定性、残留物形成あるいは残留物挙動の点で非常に優れた性能を有する。しかし、このエステルは現在、生物学的原料から工業規模で得られていない。
【0007】
本発明の課題は、生物学的供給源と石油化学的供給源との双方から得ることができる潤滑剤組成物の基油を提供することである。さらに、得られる潤滑剤組成物は、良好な酸化安定性、潤滑効果および良好な低温挙動を有することが望ましい。さらに、潤滑剤組成物が、一定の高温であっても長期にわたって良好な潤滑効果を示すことが望ましい。さらに、所望の用途に応じて、様々な粘度で潤滑剤組成物を提供することが可能であることが望ましい。
【0008】
本発明によれば、この課題は、下記一般式I
【化2】
[式中、
、RおよびRは、互いに独立して、
a)非置換の分岐状もしくは非分岐状のC1~C20アルキル基、または
b)シクロアルキル基および芳香族基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有するC1~C5アルキル基、または
c)C5~C20芳香族基もしくはC5~C20シクロアルキル基
である]のヘミメリット酸エステルの、トライボロジーシステムの潤滑用の潤滑剤組成物の基油としての使用であって、ここで、該ヘミメリット酸エステルは、式Iの各種化合物の混合物として存在することができるものとする、使用によって解決される。
【0009】
驚くべきことに、上記の式Iのヘミメリット酸エステルを基油として使用することにより、良好な酸化安定性、潤滑効果および良好な低温挙動を有する潤滑剤組成物を得ることが可能になることが判明した。さらに、この潤滑剤組成物は、一定の高温であっても長期にわたって良好な潤滑特性を示す。さらに、この潤滑剤組成物は、所望の用途に応じて様々な粘度で提供することができる。これは驚くべきことであり、なぜならば、ヘミメリット酸エステルは、生物学的供給源から得ることができるが、上記で説明したように、バイオベースの潤滑剤は通常、酸化安定性、潤滑効果および低温挙動に関して所望の範囲の特性を有していないためである。
【0010】
バイオマスからのヘミメリット酸エステルの製造は知られており、例えば米国特許第10562875号明細書に記載されている。使用される原料によっては、得られるヘミメリット酸エステルは、バイオベースの炭素の割合が高いか、あるいは完全にバイオベースとなる場合がある。しかし、ヘミメリット酸エステルは、石油供給源や石油化学的供給源からも容易に得ることができ、これにより、潤滑剤製造におけるフレキシビリティが高まる。
【0011】
好ましい実施形態では、ヘミメリット酸エステルは、少なくとも部分的にバイオベースである。これは、ヘミメリット酸エステルが、少なくとも部分的に、石油供給源や石油化学的供給源ではなく、生物学的供給源および/または再生可能な農業材料(植物性材料、動物性材料および海洋性材料を含む)に由来する原料から製造されていることを意味する。例示的な生物学的供給源は、農業、林業、植物栽培または動物性原料である。好ましい生物学的供給源は、わら、動物性排出物、農業廃棄物および林業廃棄物である。
【0012】
潤滑剤組成物において、ヘミメリット酸エステルは、単独の基油として、または他の基油との混合物として存在することができる。
【0013】
トライボロジーシステムとは、機械的に動かされ、ひいては摩擦や摩耗を受ける構造要素によってその機能が実現される技術的構成である。トライボロジーシステムは、運動、エネルギーおよび物質を変換し、輸送し、技術的に利用できるようにするタスクを担う。好ましいトライボロジーシステムは、金属材料および/または非金属材料を有するトライボロジーシステムであり、例えば、転がり軸受および滑り軸受、特に車両技術、コンベヤ技術、機械工学および/またはオフィス技術における転がり軸受および滑り軸受、ギア、チェーン、スライディングガイドおよびジョイント、特に自動車の車輪軸受、風力タービンの軸受、特に風力タービンのロータ軸受、および/または回転滑り軸受、例えばファン軸受、またはリニアガイド滑り軸受および/またはボールジョイント、特に自動車分野で使用されるボールジョイントが挙げられる。考え得るトライボロジーシステムには、さらに、産業プラントや機械の摺動パートナーに加え、家庭用機械、家電製品の分野での、特に、油潤滑システムにおける、チェーン、チェーンローラーおよび連続式木材プレスのスチールベルトの潤滑における摺動パートナーも含まれる。
【0014】
好ましい実施形態では、トライボロジーシステムは、金属材料および/または非金属材料、有利には複合材料、アルミニウム、アルミニウム合金、鋼鉄、ステンレス鋼および鋳造材料、非鉄金属、プラスチック、繊維強化プラスチックおよび/またはポリマーを含む表面を有する。
【0015】
本発明の好ましい実施形態では、潤滑剤組成物は、バイオベースの炭素を、潤滑剤組成物中の有機炭素の総重量に対して、少なくとも10重量%、例えば10~100重量%、および/または10~95重量%、有利には少なくとも15重量%、例えば15重量%~95重量%、特に少なくとも20重量%、例えば20重量%~95重量%含む。ここで、バイオベースの炭素の含有量は、ASTM国際放射性同位体標準法D 6866を用いて測定することができる。この規格の出願日現在の最新版が適用される。この方法では、材料のバイオベース含有量を、材料中のバイオベースの炭素の量に基づいて、被験材料中の全有機炭素の重量に対するパーセンテージとして決定する。この方法は、バイオベース品の炭素同位体比が13C/12Cおよび14C/12Cであり、石油から得られた材料において認められるものとは異なるという事実に基づいている。
【0016】
本発明のさらに好ましい実施形態では、それぞれASTM国際放射性同位体標準法D 6866を用いて測定した場合に、式Iのヘミメリット酸エステルは、バイオベースの炭素を、潤滑剤組成物中の式Iのヘミメリット酸エステルの総重量に対して、少なくとも30重量%、例えば30~100重量%、有利には少なくとも40重量%、例えば40重量%~100重量%、特に少なくとも50重量%、例えば50重量%~100重量%含む。この規格の出願日現在の最新版が適用される。
【0017】
本発明のさらに好ましい実施形態では、それぞれASTM国際放射性同位体標準法D 6866を用いて測定した場合に、式Iのヘミメリット酸エステルの酸成分は、バイオベースの炭素を、潤滑剤組成物中の式Iのヘミメリット酸エステルの酸成分の総重量に対して、少なくとも30重量%、例えば30~100重量%、有利には少なくとも40重量%、例えば40重量%~100重量%、特に少なくとも50重量%、例えば50重量%~100重量%含む。この規格の出願日現在の最新版が適用される。
【0018】
本発明の好ましい実施形態では、少なくとも1つの基R、Rおよび/またはRは、非置換の分岐状または非分岐状のC1~C20アルキル基、さらにより好ましくはC5~C20アルキル基、さらにより好ましくはC6~C18アルキル基、特にC8~C18アルキル基である。
【0019】
本発明のさらなる特に好ましい実施形態では、少なくとも1つの基R、Rおよび/またはRは、オクタニル、エチルヘキサニル、ノナニル、デカニル、ウンデカニル、ドデカニルからなる群から選択される。
【0020】
本発明のさらなる特に好ましい実施形態では、少なくとも1つの基R、Rおよび/またはRは、オクタニル、2-エチルヘキサン-1-イル、1-ノナニル、デカニル、1-ウンデカニル、1-ドデカニルからなる群から選択される。
【0021】
本発明のさらなる好ましい実施形態では、少なくとも1つの基R、Rおよび/またはRは、C1~C5アルキル基、有利にはC1~C3アルキル基、さらにより好ましくはC1~C2アルキル基、特にC1アルキル基であり、前記基はそれぞれ、シクロアルキル基および芳香族基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する。本実施形態では、アルキル基の前述の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含まない。ここで、本発明によれば、シクロアルキル基は、単環式化合物および多環式化合物の双方を含む。
【0022】
有利には、置換基は、互いに独立して、5~19個の炭素原子、さらにより好ましくは5~17個の炭素原子、特に5~15個の炭素原子を有する。さらに好ましくは、置換基は、互いに独立して、C5~C19シクロアルキル基、またはC5~C19芳香族基から選択され、さらにより好ましくはC5~C17シクロアルキル基、またはC5~C17芳香族基から選択され、特にC5~C15シクロアルキル基、またはC5~C15芳香族基から選択される。
【0023】
本発明のさらなる好ましい実施形態では、少なくとも1つの基R、Rおよび/またはRは、5~15個の炭素原子を有する少なくとも1つのシクロアルキル基で置換された、または5~15個の炭素原子、特に5~10個の炭素原子を有する少なくとも1つの芳香族基で置換された、メチル基、エチル基またはプロピル基である。特に好ましくは、R、RおよびRは、互いに独立して、5~15個の炭素原子を有する少なくとも1つのシクロアルキル基で置換された、または5~15個の炭素原子、特に5~10個の炭素原子を有する少なくとも1つの芳香族基で置換された、メチル基である。
【0024】
本発明のさらなる実施形態では、少なくとも1つの基R、Rおよび/またはRは、C5~C20芳香族基またはC5~C20シクロアルキル基である。有利には、少なくとも1つの基R、Rおよび/またはRは、フェニル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ナフチル、イソトリデシル、トリシクロデカンメチル、フルフリルから選択される。
【0025】
本発明の特に好ましい実施形態では、少なくとも1つの基R1、R2および/またはR3、好ましくは少なくとも2つの基R1、R2および/またはR3、特にすべての基R1、R2およびR3は、オクタニル、エチルヘキサニル、ノナニル、デカニル、ウンデカニル、ドデカニル、イソトリデシル、トリシクロデカンメチル、フルフリルからなる群から選択される。
【0026】
本発明のさらなる特に好ましい実施形態では、少なくとも1つの基R、Rおよび/またはR、好ましくは少なくとも2つの基R、Rおよび/またはR、特にすべての基R、RおよびRは、オクタニル、2-エチルヘキサン-1-イル、1-ノナニル、デカニル、1-ウンデカニル、1-ドデカニル、イソトリデシル、トリシクロデカンメチル、フルフリルからなる群から選択される。
【0027】
基R、RおよびRは、同じであっても異なっていてもよい。
【0028】
さらなる好ましい実施形態では、式Iのヘミメリット酸エステルは、少なくとも部分的に互いに異なる基R、RおよびRを有する。また好ましくは、式Iのヘミメリット酸エステルは、式Iの各種化合物の混合物である。
【0029】
また好ましくは、基R、RおよびRは、互いに独立して、炭素および水素以外の原子を有しない。
【0030】
本発明の好ましい実施形態では、潤滑剤組成物は、式Iのヘミメリット酸エステルを、潤滑剤組成物の総重量に対してそれぞれ、20重量%~90重量%、さらにより好ましくは25重量%~70重量%、さらにより好ましくは25重量%~60重量%、特に30重量%~50重量%の量で含む。
【0031】
本発明のさらなる好ましい実施形態では、式Iのヘミメリット酸エステルは、40℃で、30mm/s~150mm/s、有利には30mm/s~100mm/s、さらにより好ましくは50mm/s~150mm/s、特に50mm/s~90mm/sの範囲の動粘度[mm/sec]を有する。
【0032】
本発明のさらなる好ましい実施形態では、潤滑剤組成物は、油配合物として存在し、40℃で、100mm/s~460mm/s、有利には150mm/s~320mm/sの範囲の動粘度[mm/sec]を有する。
【0033】
本発明のさらなる好ましい実施形態では、潤滑剤組成物は、グリース配合物として存在し、式Iのヘミメリット酸エステルおよび/または式Iのヘミメリット酸エステルとさらなる基油との混合物は、40℃で、80mm/s~460mm/s、有利には100mm/s~320mm/sの範囲の動粘度[mm/sec]を有する。
【0034】
本発明のさらなる好ましい実施形態では、潤滑剤組成物は、ポリイソブチレンを、潤滑剤組成物の総重量に対してそれぞれ、5~50重量%、さらにより好ましくは15~35重量%、特に15~30重量%含む。ポリイソブチレンを使用することの利点は、ポリイソブチレンを用いることで、潤滑剤組成物の粘度を特に容易に調整できることである。さらに、式Iのヘミメリット酸エステルと組み合わせることにより、完全蒸発後に特に良好な残留物挙動を達成することができる。好ましい実施形態によれば、ポリイソブチレンは、DIN 55672-1:2016-03(ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)-第1部:溶離液としてのテトラヒドロフラン(THF))に準拠して測定した場合に、115~15,000g/mol、有利には160~5,000g/molの数平均分子量を有する。
【0035】
上記ですでに説明したように、潤滑剤組成物は、グリース配合物としても油配合物としても存在することができる。
【0036】
潤滑剤組成物がグリース配合物として存在する場合、これは、増粘剤を含む。したがって、本発明の好ましい実施形態では、潤滑剤組成物は、増粘剤を3~30重量%含む。
【0037】
増粘剤は、有利には、ジイソシアネート、有利には2,4-ジイソシアナトトルエン、2,6-ジイソシアナトトルエン、4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、2,4’-ジイソシアナトフェニルメタン、4,4’-ジイソシアナトジフェニル、4,4’-ジイソシアナト-3-3’-ジメチルフェニル、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルフェニルメタン(これらは、単独で使用することも、組み合わせて使用することもできる)と、一般式R’-N-Rのアミン、もしくは一般式R’-N-R-NR’のジアミン、またはアミンとジアミンとの混合物との反応生成物であり、ここで、Rは、2~22個の炭素原子を有するアリール、アルキルまたはアルキレン基であり、R’は、同一であるかまたは異なって、水素、アルキル、アルキレンまたはアリール基である。
【0038】
さらなる好ましい実施形態では、増粘剤は、Al錯体石鹸、周期表の第1および第2主族元素の金属単純石鹸、周期表の第1および第2主族元素の金属錯体石鹸、ベントナイト、スルホネート、シリケート、アエロジル、ポリイミドもしくはPTFE、または前述の増粘剤の混合物から選択される。
【0039】
式Iのヘミメリット酸エステルに加えて、潤滑剤組成物はさらに、少なくとも1つのさらなる基油を含むことができる。
【0040】
潤滑剤組成物が油配合物として存在し、少なくとも1つのさらなる基油を含む場合、さらなる基油の割合は、潤滑剤組成物の総重量に対してそれぞれ、有利には10重量%~50重量%、さらにより好ましくは10重量%~40重量%、さらにより好ましくは20重量%~40重量%、特に25重量%~40重量%である。
【0041】
潤滑剤組成物がグリース配合物として存在し、少なくとも1つのさらなる基油を含む場合、さらなる基油の割合は、潤滑剤組成物の総重量に対してそれぞれ、有利には10重量%~50重量%、さらにより好ましくは25重量%~50重量%、特に30重量%~50重量%である。
【0042】
潤滑剤組成物がさらに少なくとも1つのさらなる基油を含む場合、潤滑剤組成物は、式Iのヘミメリット酸エステルを、潤滑剤組成物の総重量に対してそれぞれ、好ましくは20重量%~70重量%、さらにより好ましくは25重量%~70重量%、さらにより好ましくは25重量%~60重量%、特に30重量%~50重量%の量で含む。
【0043】
適切なさらなる基油は、室温(20℃)で液体である従来の潤滑油である。さらなる基油は、40℃で、有利には18mm/s~20000mm/s、特に30mm/s~400mm/sの動粘度を有する。基油は、鉱物油と合成油とに区別される。基油とは、潤滑剤の製造に一般的に使用されるベースオイルであって、特に米国石油協会(API)の分類に従ってグループI,II,II+,III,IVまたはVに分類可能な油である[NLGI Spokesman, N. Samman, Volume 70, Number 11, S. 14ff]。鉱物油は、APIグループによって分類される。APIグループIは、例えばナフテン系油やパラフィン系油からなる鉱物油である。これらの鉱物油がAPIグループIの油と比較して化学的に改良され、芳香族分が少なく、硫黄分が少なく、飽和化合物の割合が低く、したがって粘度/温度挙動が改善されている場合、その油はAPIグループIIおよびIIIに分類される。APIグループIIIには、原油の精製からではなく、天然ガスの化学反応によって製造される、いわゆるガス・ツー・リキッド油も含まれる。さらに、リラフィネートを使用することもできる。
【0044】
合成油としては、ポリエーテル、エステル、ポリエステル、有利にはポリ-α-オレフィン、特にメタロセンポリ-α-オレフィン、パーフルオロポリアルキルエーテル(PFPAE)、アルキル化ナフタレン、シリコーン油、およびアルキル芳香族化合物、ならびにそれらの混合物が挙げられる。ポリエーテル化合物は、遊離ヒドロキシ基を有することができるが、完全にエーテル化されていることも、末端基がエステル化されていることもでき、かつ/または1つ以上のヒドロキシ基および/もしくはカルボキシル基(-COOH)を有する出発化合物から製造することもできる。場合によってはアルキル化されたポリフェニルエーテルも、単独成分として、またはより良好にはさらに混合成分として可能である。
【0045】
適切に使用することができるのは、芳香族および/または脂肪族ジ-、トリ-またはテトラカルボン酸とC7~C22アルコールの1つまたは混合物とのエステル、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールと脂肪族C7~C22カルボン酸とのエステル、C18ダイマー酸とC7~C22アルコールとのエステル、単独成分としてまたは任意の混合物の複合エステルである。トリグリセリドおよび/またはエストリドも同様に好ましいエステルである。
【0046】
シリコーン油、ネイティブ油、およびネイティブ油の誘導体も同様に適している。
【0047】
本発明による特に好ましいさらなる基油は、エステル、特に、芳香族および/または脂肪族ジ-、トリ-またはテトラカルボン酸とC7~C22アルコールの1つまたは混合物とのエステル、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールと脂肪族C7~C22カルボン酸とのエステル、C18ダイマー酸とC7~C22アルコールとのエステル、単独成分としてまたは任意の混合物の複合エステル、ならびにトリグリセリドおよび/またはエストリド、ポリ-α-オレフィン、ポリエーテルおよび/または鉱物油である。
【0048】
さらに、潤滑剤組成物は、無機または有機固体潤滑剤を、潤滑剤組成物の総重量に対して、有利には0.1重量%~5重量%、有利には0.1重量%~3重量%の割合で含むことができる。ここで、PTFE、BN、ピロリン酸塩、Zn酸化物、Mg酸化物、ピロリン酸塩、チオ硫酸塩、Mg炭酸塩、Ca炭酸塩、Caステアリン酸塩、Zn硫化物、Mo硫化物、W硫化物、Sn硫化物、グラファイト、グラフェン、ナノチューブ、SiO2改質体またはそれらの混合物から選択される固体潤滑剤が好ましい。
【0049】
さらに好ましくは、潤滑剤組成物は、腐食防止添加剤、酸化防止剤、摩耗防止添加剤、金属不活性化剤、イオン錯化剤および/またはUV安定剤からなる群から選択される添加剤を0.1~8重量%含む。
【0050】
本発明による特に適切な酸化防止剤は、以下の化合物である:スチレン化ジフェニルアミン、ジ芳香族アミン、フェノール樹脂、チオフェノール樹脂、亜リン酸塩、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、フェニル-α-ナフチルアミン、フェニル-β-ナフチルアミン、オクチル化/ブチル化ジフェニルアミン、ジ-α-トコフェロール、ジ-tert-ブチルフェニル、ベンゼンプロパン酸、硫黄含有フェノール化合物およびこれらの成分の混合物。
【0051】
同様に適切な酸化防止剤は、分子中に硫黄、窒素および/またはリンを含む化合物である。分子中に硫黄、窒素および/またはリンを含む好ましい化合物は、芳香族アミン系酸化防止剤、例えばアルキル化フェニル-α-ナフチルアミン、ジアルキルジフェニルアミン、立体障害フェノール、例えばブチルヒドロキシトルエン(BHT)、チオエーテル基を有するフェノール系酸化防止剤、Zn-またはMo-またはW-ジアルキルジチオリン酸塩および亜リン酸塩からなる群から選択される。
【0052】
好ましい腐食防止添加剤、金属不活性化剤および/またはイオン錯化剤は、トリアゾール、イミダゾリン、N-メチルグリシン(サルコシン)、ベンゾトリアゾール誘導体、N,N-ビス(2-エチルヘキシル)-ar-メチル-1H-ベンゾトリアゾール-1-メタナミン;n-メチル-N(1-オキソ-9-オクタデセニル)グリシン、リン酸とモノ-およびジイソオクチルエステルを(C11-14)アルキルアミンと反応させた混合物、リン酸とモノ-およびジイソオクチルエステルをtertアルキルアミンおよび第一級(C12-14)アミンと反応させた混合物、ドデカン酸、トリフェニルホスホロチオネートおよびアミンホスフェート、ならびにそれらの混合物である。商業的に入手可能な添加剤は、以下のとおりである:IRGAMET(登録商標)39、IRGACOR(登録商標)DSS G、Amin O;SARKOSYL(登録商標)O(Ciba)、COBRATEC(登録商標)122、CUVAN(登録商標)303、VANLUBE(登録商標)9123、Cl-426、Cl-426EP、Cl-429およびCl-498。
【0053】
本発明による好ましい摩耗防止添加剤は、アミン、アミンホスフェート、ホスフェート、チオホスフェート、ホスホロチオネートおよびこれらの成分の混合物である。好ましい摩耗防止添加剤は、ジフェニルクレシルホスフェート、アミン中和ホスフェート、アルキル化および非アルキル化トリアリールホスフェート、アルキル化および非アルキル化トリアリールチオホスフェート、亜鉛またはMoまたはW-ジアルキルジチオホスフェート、カルバメート、チオカルバメート、亜鉛またはMoまたはW-ジチオカルバメート、ジメルカプトチアジアゾール、カルシウムスルホネートおよびベンゾトリアゾール誘導体をベースとする摩耗防止添加剤からなる群から選択される。市販されている摩耗防止添加剤には、IRGALUBE(登録商標)TPPT、IRGALUBE(登録商標)232、IRGALUBE(登録商標)349、IRGALUBE(登録商標)211、およびADDITIN(登録商標)RC3760 Liq 3960、FIRC-SHUN(登録商標)FG 1505、およびFG 1506、NA-LUBE(登録商標)KR-015FG、LUBEBOND(登録商標)、FLUORO(登録商標)FG、SYNALOX(登録商標)40-D、ACHESON(登録商標)FGA 1820、およびACHESON(登録商標)FGA 1810がある。
【0054】
本発明のさらなる主題は、以下:
- 20重量%~90重量%、有利には50重量%~85重量%の、基油としての、下記一般式I
【化3】
[式中、
、RおよびRは、互いに独立して、
a)分岐状もしくは非分岐状のC1~C20アルキル基、または
b)シクロアルキル基および芳香族基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有するC1~C5アルキル基、または
c)C5~C20芳香族基もしくはC5~C20シクロアルキル基
である]のヘミメリット酸エステルであって、式Iのヘミメリット酸エステルは、式Iの各種化合物の混合物として存在することができるものとする、ヘミメリット酸エステル、
- 5重量%~50重量%、有利には10重量%~50重量%のポリイソブチレン、
- 0.1重量%~8重量%の添加剤
を含む油配合物として形成された潤滑剤組成物である。
【0055】
さらなる好ましい実施形態では、油配合物として形成された潤滑剤組成物はさらに、少なくとも1つのさらなる基油を、10重量%~45重量%、有利には30重量%~45重量%含む。
【0056】
本発明のさらなる主題は、以下:
- 20重量%~90重量%、有利には30重量%~90重量%、さらにより好ましくは40重量%~90重量%の、基油としての、下記一般式I
【化4】
[式中、
、RおよびRは、互いに独立して、
a)分岐状もしくは非分岐状のC1~C20アルキル基、または
b)シクロアルキル基および芳香族基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有するC1~C5アルキル基、または
c)C5~C20芳香族基もしくはC5~C20シクロアルキル基
である]のヘミメリット酸エステルであって、式Iのヘミメリット酸エステルは、式Iの各種化合物の混合物として存在することができるものとする、ヘミメリット酸エステル、
- 3~30重量%の増粘剤、
- 0.1~8重量%の添加剤
を含むグリース配合物として形成された潤滑剤組成物である。
【0057】
本発明のさらなる主題は、以下:
- 20重量%~70重量%、有利には30重量%~70重量%、さらにより好ましくは40重量%~70重量%の、基油としての、下記一般式I
【化5】
[式中、
、RおよびRは、互いに独立して、
d)分岐状もしくは非分岐状のC1~C20アルキル基、または
e)シクロアルキル基および芳香族基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有するC1~C5アルキル基、または
f)C5~C20芳香族基もしくはC5~C20シクロアルキル基
である]のヘミメリット酸エステルであって、式Iのヘミメリット酸エステルは、式Iの各種化合物の混合物として存在することができるものとする、ヘミメリット酸エステル、
- 3~30重量%の増粘剤、
- 10重量%~50重量%の少なくとも1つのさらなる基油、
- 0.1~8重量%の添加剤
を含むグリース配合物として形成された潤滑剤組成物である。
【0058】
好ましい実施形態では、グリース配合物として形成された潤滑剤組成物は、10重量%~40重量%のポリイソブチレンを含む。
【0059】
さらなる好ましい実施形態では、グリース配合物として形成された潤滑剤組成物は、0.1重量%~5重量%の無機または有機固体潤滑剤を含む。
【0060】
本発明による潤滑剤組成物の好ましい成分は、本発明による使用に関連して述べたものである。
【0061】
特に、グリース配合物として形成された潤滑剤組成物に特に好ましい増粘剤は、ジイソシアネート、有利には2,4-ジイソシアナトトルエン、2,6-ジイソシアナトトルエン、4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン、2,4’-ジイソシアナトフェニルメタン、4,4’-ジイソシアナトジフェニル、4,4’-ジイソシアナト-3-3’-ジメチルフェニル、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルフェニルメタン(これらは、単独で使用することも、組み合わせて使用することもできる)と、一般式R’-N-Rのアミン、もしくは一般式R’-N-R-NR’のジアミン、またはアミンとジアミンとの混合物との反応生成物であり、ここで、Rは、2~22個の炭素原子を有するアリール、アルキルまたはアルキレン基であり、R’は、同一であるかまたは異なって、水素、アルキル、アルキレンまたはアリール基である。
【0062】
さらなる好ましい実施形態では、増粘剤は、Al錯体石鹸、周期表の第1および第2主族元素の金属単純石鹸、周期表の第1および第2主族元素の金属錯体石鹸、ベントナイト、スルホネート、シリケート、アエロジル、ポリイミドもしくはPTFE、または前述の増粘剤の混合物から選択される。
【0063】
さらに、グリース配合物としてまたは油配合物として形成された本発明による潤滑剤組成物に特に好ましいさらなる基油は、エステル、特に、芳香族および/または脂肪族ジ-、トリ-またはテトラカルボン酸とC7~C22アルコールの1つまたは混合物とのエステル、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールと脂肪族C7~C22カルボン酸とのエステル、C18ダイマー酸とC7~C22アルコールとのエステル、単独成分としてまたは任意の混合物の複合エステル、ならびにトリグリセリドおよび/またはエストリド、ポリ-α-オレフィン、ポリエーテルおよび/または鉱物油である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】式Iのヘミメリット酸エステルの動粘度を、トリメリット酸エステルと比較して、温度に対して示した図である。
図2】本発明による式Iのヘミメリット酸エステルを含むいくつかの潤滑剤組成物の、SRVによって求められた平均摩擦を、トリメリット酸エステルを含む潤滑剤組成物と比較して、温度に対して示した図である。
【0065】
測定方法
粘度:
粘度測定は、Stabinger SVM 3000粘度計(Anton Paar)を用い、DIN 51562(2018)に準拠して実施する。
【0066】
バイオベースの炭素の含有量:
バイオベースの炭素の含有量は、ASTM国際放射性同位体標準法D 6866(出願日現在有効なバージョン)を用いて測定される。
【0067】
以下、実施例をもとに本発明をより詳細に説明するが、これらの実施例は、本発明を限定するものではない。
【0068】
例1:トリメリット酸エステルと比較した式Iのヘミメリット酸エステルの動粘度の測定
ヘミメリット酸エステル1は、以下の反応によって製造される:
【化6】
【0069】
例1-A:
水分離器と組み合わせた1L三ツ口フラスコ中の、バイオベースのヘミメリット酸150gと、Nafol 810D 369.6gと、キシレン60mLとの混合物を、1atmで還流させる。4時間以内に内部温度が126℃から200℃に上昇し、内部温度160℃でオルトチタン酸テトライソプロピル(0.1重量%)0.52gを添加する。その後、透明な反応混合物を200℃で2時間還流させ、合計38.8gの水を連続的に留去する。キシレンおよび過剰のアルコールを、減圧下で留去する(T内部=200℃、10mbar)。触媒を除去した後、生成物(407.7g)が淡黄色油として得られる。
【0070】
例1-B:
水分離器と組み合わせた1L三ツ口フラスコ中の、バイオベースのヘミメリット酸150gと、Nafol 810D 369.6gと、キシレン45mLとの混合物を、1atmで還流させる。2時間以内に内部温度が139℃から210℃に上昇し、内部温度150℃でオルトチタン酸テトライソプロピル(0.005重量%)0.026gを添加する。その後、透明な反応混合物を210℃で7.5時間還流させ、合計39.6gの水を連続的に留去する。キシレンおよび過剰のアルコールを、減圧下で留去する(T内部=200℃、8mbar)。生成物(415g)が淡黄色油として得られる。
【0071】
例1-C:
水分離器と組み合わせた1L三ツ口フラスコ中の、バイオベースのヘミメリット酸140gと、Nafol 810D 375.1gと、キシレン40mLとの混合物を、1atmで還流させる。5時間以内に内部温度が130℃から215℃まで上昇する。その後、透明な反応混合物を215℃で2時間、さらに220℃で6時間還流させる。合計35.4gの水を連続的に留去する。キシレンおよび過剰のアルコールを、減圧下で留去する(T内部=210℃、8mbar)。生成物(388g)が淡黄色油として得られる。
【0072】
ヘミメリット酸エステル1-Bの動粘度を温度に対して測定し、同じアルコール混合物でエステル化した市販のトリメリット酸エステル1’と比較する。せん断速度は1°/sであり、温度プロファイルは20~-40℃、0.2℃/minである。レオロジー試験の結果を図1に示す。ヘミメリット酸エステル1は、トリメリット酸エステル1’と同様に低温での動粘度が比較的良好であることが判明した。
【0073】
例2:トリメリット酸エステル1’と比較したヘミメリット酸エステル1の基本データの測定
ヘミメリット酸エステル1の基本データを測定し、同じアルコール混合物でエステル化した市販のトリメリット酸エステル1’と比較する。結果を下表に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
例3~例5
さらなるヘミメリット酸エステルおよび比較エステル(4’)の製造
例3:
水分離器と組み合わせた1L三ツ口フラスコ中の、バイオベースのヘミメリット酸140gと、1-オクタノール213gと、1-ドデカノール142gと、キシレン40mLとの混合物を、1atmで還流させる。2時間以内に内部温度が125℃から210℃に上昇し、内部温度145℃でオルトチタン酸テトライソプロピル(0.005重量%)0.025gを添加する。その後、透明な反応混合物を210℃で4時間還流させ、さらに215℃で3.5時間還流させる。合計37.7gの水を連続的に留去する。キシレンおよび過剰のアルコールを、減圧下で留去する(T内部=210℃、10mbar)。生成物(397.7g)が淡黄色油として得られる。
【0076】
例4:
水分離器と組み合わせた1L三ツ口フラスコ中の、バイオベースのヘミメリット酸129.9gと、1-ノナノール91.5gと、1-ウンデカノール165.5gと、Exxal 9(ExxonMobil)81gと、Exxal 10(ExxonMobil)14.1gと、キシレン50mLとの混合物を、1atmで還流させる。2時間以内に内部温度が124℃から200℃に上昇し、内部温度160℃でオルトチタン酸テトライソプロピル(0.1重量%)0.5gを添加する。その後、透明な反応混合物を200℃で2.5時間還流させ、合計34.8gの水を連続的に留去する。キシレンおよび過剰のアルコールを、減圧下で留去する(T内部=195℃、13mbar)。触媒を除去した後、生成物(377g)が淡黄色油として得られる。
【0077】
例4’(TMAエステル4’、例4に対する参照試料):
水分離器と組み合わせた1L三ツ口フラスコ中の、石油化学ベースのトリメリット酸90gと、1-ノナノール63.5gと、1-ウンデカノール114.7gと、Exxal 9(ExxonMobil)56.1gと、Exxal 10(ExxonMobil)9.76gと、キシレン35mLとの混合物を、1atmで還流させる。内部温度145℃でオルトチタン酸テトライソプロピル(0.1重量%)0.35gを添加する。2時間以内に内部温度が159℃から195℃に上昇する。その後、透明な反応混合物を195℃で4時間還流させ、合計25.0gの水を連続的に留去する。キシレンおよび過剰のアルコールを、減圧下で留去する(T内部=200℃、19mbar)。触媒を除去した後、生成物(295g)が淡黄色油として得られる。
【0078】
例5:
水分離器と組み合わせた1L三ツ口フラスコ中の、バイオベースのヘミメリット酸150gと、2-エチルヘキサン-1-オール353.2gと、キシレン40mLとの混合物を、1atmで還流させる。8時間以内に内部温度が124℃から210℃に上昇し、内部温度145℃でオルトチタン酸テトライソプロピル(0.005重量%)0.025gを添加する。その後、透明な反応混合物を210℃で5.5時間還流させる。合計39.1gの水を連続的に留去する。キシレンおよび過剰のアルコールを、減圧下で留去する(T内部=205℃、16mbar)。生成物(404.4g)が淡黄色油として得られる。
【0079】
ヘミメリット酸と各種アルコールとのエステル化により、3種類のヘミメリット酸エステルを製造する。使用したアルコール、および得られた基本データを、対応するトリメリット酸エステルと比較して表6に示す。
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【0082】
例6:各種潤滑剤組成物の製造
表1に記載された組成を有する2種類の潤滑剤組成物を製造する:
【表4】
【0083】
潤滑剤組成物の基本データを表2に示す。
【0084】
【表5】
【0085】
ヘミメリット酸エステルをベースとする本発明による潤滑剤組成物2は、トリメリット酸エステルをベースとする比較組成物1と同等の基本データを示すことが判明した。ここで、観察された粘度の違いは、使用した基油の初期粘度の違いによって説明できる。
【0086】
例7:例6の潤滑剤組成物の酸化安定性の測定
例6の潤滑剤組成物の酸化安定性および蒸発損失を、DIN 51007(2019.04)に準拠した動的示差熱量測定およびDIN 51006(2005.07)に準拠した熱重量分析を用いて求める。結果を表3に示す。
【0087】
【表6】
【0088】
ヘミメリット酸エステルをベースとする本発明による潤滑剤組成物2は、トリメリット酸エステルをベースとする比較組成物1と同等の高い酸化安定性を示すことが判明した。
【0089】
例8:熱的耐久性試験
例6の潤滑剤組成物を、蒸発挙動および温度負荷下での見かけの動粘度の増加に関して調べる。
【0090】
このため、比較測定として、蒸発挙動および見かけの動粘度[mPas]の変化を、熱負荷下での酸化進行の基準として測定する。1試験あたりの試料量は、5g(±0.1g)である。試料を、対流式オーブンで230℃にてアルミニウムシャーレ内に72時間貯蔵した後、相互に比較する。
【0091】
さらに、完全蒸発後の残留物挙動を、アイゼンマン(Eisenmann)試験(250℃/72時間)により測定する。このために、被試験試料を、予め適切に曲げられて溶媒で清浄化された鋼薄板の上に5g秤量し、次いで対流式乾燥キャビネット中で250℃にて少なくとも72時間蒸発させる。正方形の薄板の四方を手で曲げてボウル状にする。冷却後、再秤量の結果を記録する。この試験には、新鮮な油に対する残留物の溶解性と、形成された残留物の量とを求めることが重要である。そのためには、新鮮な油を一1滴残留物に垂らし、丸め加工されたガラスロッドを用いて円を描くように優しく擦り込む。
【0092】
結果を表4に示す。
【0093】
【表7】
【0094】
すべての潤滑剤組成物が非常に良好な性能を有することが判明した。ここで、ヘミメリット酸エステルをベースとする本発明による潤滑剤組成物2が示す蒸発挙動は、トリメリット酸エステルをベースとする比較組成物1と同等に良好であるかあるいはより良好であり、さらには230℃で72時間後の動粘度の増加がより少ない。さらに、本発明による潤滑剤組成物により形成される残留物は、より少ない。いずれの残留物も、新鮮な油に非常に良好に溶解することができる。
【0095】
例9:例6の潤滑剤組成物の摩擦摩耗の測定
例6の潤滑剤組成物について、振動摩擦摩耗試験(SRV)を用いて摩擦摩耗を測定する。SRVにより、摩擦係数を調べることができる。SRVは、DIN 51 834で規格化されている。
【0096】
試験対象の潤滑剤組成物を、DIN 51 834に準拠し、荷重250N、50HZ、165分間の温度ステップ運転(50~250℃)で測定する。この場合、鋼球が、前面に固定された鋼板に対して振動運動する。これにより、混合摩擦条件下での振動運動における潤滑剤組成物の作用、耐久性および寿命を調べることができる。
【0097】
試験結果を図2に示す。
【0098】
ヘミメリット酸エステルをベースとする本発明による潤滑剤組成物が、トリメリット酸エステルをベースとする比較組成物1と同等の良好な摩擦値を示すことが判明した。
【0099】
例10:ヘミメリット酸エステルをベースとするグリース配合物3およびトリメリット酸エステルをベースとする比較グリース配合物4の製造および試験
ヘミメリット酸エステルをベースとする本発明によるグリース配合物3およびトリメリット酸エステルをベースとする比較グリース配合物4を、下表に示す組成で配合する。
【0100】
【表8】
【0101】
ヘミメリット酸エステルとしては例4、表6aを使用し、トリメリット酸エステルとしてはTMAエステル4’、表6aを使用する。
【0102】
グリース配合物3および比較グリース配合物4の基本データを下表に示す。
【0103】
【表9-1】
【表9-2】
【0104】
グリース配合物3と比較グリース配合物4はともに、同等に良好な混和安定性およびせん断安定性を示す。耐水性、油分離性、ノイズ比、および水含有量は、どの配合物でも同等のレベルである。
【0105】
例11:グリース配合物3および比較グリース配合物4の高温特性
グリース配合物3および比較グリース配合物4の高温特性を調べる。結果を下表に示す。
【0106】
【表10】
【0107】
高温域で、両配合物とも滴点が約300℃であることが判明した。150℃および160℃の銅腐食試験では、両配合物とも同等の良好な結果が得られる。さらに、FE9試験では、両試料とも非常に良好な熱安定性を示す。
【0108】
例11:ヘミメリット酸エステルをベースとするグリース配合物5およびトリメリット酸エステルをベースとする比較グリース配合物6の製造および試験
ヘミメリット酸エステルをベースとする本発明によるグリース配合物5およびトリメリット酸エステルをベースとする比較グリース配合物6を、下表に示す組成で配合する。
【0109】
【表11】
【0110】
ヘミメリット酸エステル例6の製造には、以下のアルコール混合物をアルコールとして使用する:
25重量% n-オクタノール
40重量% 2EH-オール
35重量% n-デカノール。
【0111】
【表12-1】
【表12-2】
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-05-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式I
【化1】
[式中、
、RおよびRは、互いに独立して、
a)非置換の分岐状もしくは非分岐状のC~C20アルキル基、または
b)シクロアルキル基および芳香族基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有するC~Cアルキル基、または
c)C~C20芳香族基もしくはC~C20シクロアルキル基
である]のヘミメリット酸エステルの、トライボロジーシステムの潤滑用の潤滑剤組成物の基油としての使用であって、ここで、前記式Iのヘミメリット酸エステルは、前記式Iの各種化合物の混合物として存在し、かつ/または前記式Iのヘミメリット酸エステルは、少なくとも部分的に互いに異なる基R 、R およびR を有する、使用。
【請求項2】
前記式Iのヘミメリット酸エステルが、少なくとも部分的にバイオベースであることを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記潤滑剤組成物が、バイオベースの炭素を、前記潤滑剤組成物中の有機炭素の総重量に対して、少なくとも10重量%、例えば10~100重量%、および/または10~95重量%、有利には少なくとも15重量%、例えば15重量%~95重量%、特に少なくとも20重量%、例えば20重量%~95重量%含むことを特徴とする、請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
前記式Iのヘミメリット酸エステルが、バイオベースの炭素を、前記潤滑剤組成物中の前記式Iのヘミメリット酸エステルの総重量に対して、少なくとも30重量%、例えば30~100重量%、有利には少なくとも40重量%、例えば40重量%~100重量%、特に少なくとも50重量%、例えば50重量%~100重量%含むことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の使用。
【請求項5】
前記式Iのヘミメリット酸エステルの酸成分が、バイオベースの炭素を、前記潤滑剤組成物中の前記式Iのヘミメリット酸エステルの前記酸成分の総重量に対して、少なくとも30重量%、有利には少なくとも40重量%、例えば40重量%~100重量%、特に少なくとも50重量%、例えば50重量%~100重量%含むことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の使用。
【請求項6】
少なくとも1つの基R、Rおよび/またはRが、非置換の分岐状または非分岐状のC~C20アルキル基、さらにより好ましくはC~C18アルキル基、特にC~C18アルキル基である、請求項1から5までのいずれか1項記載の使用。
【請求項7】
少なくとも1つの基R、Rおよび/またはRが、C~Cアルキル基、特にC~Cアルキル基であり、前記アルキル基が、C~C15シクロアルキル基およびC~C15芳香族基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有することを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の使用。
【請求項8】
少なくとも1つの基R、Rおよび/またはRが、少なくとも1つのC~C15シクロアルキル基で置換された、またはC~C15芳香族基で置換された、メチル基、エチル基またはプロピル基であることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の使用。
【請求項9】
少なくとも1つの基R、Rおよび/またはRが、オクタニル、エチルヘキサニル、ノナニル、デカニル、ウンデカニル、ドデカニル、イソトリデシル、トリシクロデカンメチル、フルフリルからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の使用。
【請求項10】
前記基R、RおよびRが、互いに独立して、炭素および水素以外の原子を有しないことを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項記載の使用。
【請求項11】
前記潤滑剤組成物が、前記式Iのヘミメリット酸エステルを、前記潤滑剤組成物の総重量に対してそれぞれ、20重量%~90重量%、さらにより好ましくは25重量%~70重量%、さらにより好ましくは25重量%~60重量%、特に30重量%~50重量%の量で含むことを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の使用。
【請求項12】
前記式Iのヘミメリット酸エステルが、40℃で30mm/s~150mm/sの範囲の動粘度を有することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載の使用。
【請求項13】
前記潤滑剤組成物が、ポリイソブチレンを、前記潤滑剤組成物の総重量に対してそれぞれ、5~50重量%、さらにより好ましくは15~35重量%、特に15~30重量%含むことを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載の使用。
【請求項14】
前記潤滑剤組成物が、油配合物として存在し、少なくとも1つのさらなる基油を、前記潤滑剤組成物の総重量に対してそれぞれ、10重量%~50重量%、さらにより好ましくは10重量%~40重量%の割合で含むか、または
前記潤滑剤組成物が、グリース配合物として存在し、少なくとも1つのさらなる基油を、前記潤滑剤組成物の総重量に対してそれぞれ、10重量%~50重量%、さらにより好ましくは25重量%~50重量%、特に30重量%~50重量%の割合で含む
ことを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項記載の使用。
【請求項15】
前記さらなる基油が、エステル、特に、芳香族および/または脂肪族ジ-、トリ-またはテトラカルボン酸とC~C22アルコールの1つまたは混合物とのエステル、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールと脂肪族C~C22カルボン酸とのエステル、C18ダイマー酸とC~C22アルコールとのエステル、単独成分としてまたは任意の混合物の複合エステル、ならびにトリグリセリドおよび/またはエストリド、ポリ-α-オレフィン、ポリエーテルおよび/または鉱物油から選択されることを特徴とする、請求項14記載の使用。
【請求項16】
以下:
- 20重量%~90重量%、有利には50重量%~85重量%の、基油としての、下記一般式I
【化2】
[式中、
、RおよびRは、互いに独立して、
a)非置換の分岐状もしくは非分岐状のC~C20アルキル基、または
b)シクロアルキル基および芳香族基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有するC~Cアルキル基、または
c)C~C20芳香族基もしくはC~C20シクロアルキル基
である]のヘミメリット酸エステルであって、前記式Iのヘミメリット酸エステルは、前記式Iの各種化合物の混合物として存在し、かつ/または前記式Iのヘミメリット酸エステルは、少なくとも部分的に互いに異なる基R 、R およびR を有する、ヘミメリット酸エステル、
- 5重量%~50重量%、有利には10重量%~50重量%のポリイソブチレン、
- 0.1重量%~8重量%の添加剤
を含む油配合物として形成された、潤滑剤組成物。
【請求項17】
以下:
- 20重量%~90重量%の、基油としての、下記一般式I
【化3】
[式中、
、RおよびRは、互いに独立して、
a)非置換の分岐状もしくは非分岐状のC~C20アルキル基、または
b)シクロアルキル基および芳香族基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有するC~Cアルキル基、または
c)C~C20芳香族基もしくはC~C20シクロアルキル基
である]のヘミメリット酸エステルであって、前記式Iのヘミメリット酸エステルは、前記式Iの各種化合物の混合物として存在し、かつ/または前記式Iのヘミメリット酸エステルは、少なくとも部分的に互いに異なる基R 、R およびR を有する、ヘミメリット酸エステル、
- 3~30重量%の増粘剤、
- 0.1~8重量%の添加剤
を含むグリース配合物として形成された、潤滑剤組成物。
【請求項18】
以下:
- 20重量%~70重量%の、基油としての、下記一般式I
【化4】
[式中、
、RおよびRは、互いに独立して、
非置換の分岐状もしくは非分岐状のC~C20アルキル基、または
)シクロアルキル基および芳香族基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有するC~Cアルキル基、または
)C~C20芳香族基もしくはC~C20シクロアルキル基
である]のヘミメリット酸エステルであって、前記式Iのヘミメリット酸エステルは、前記式Iの各種化合物の混合物として存在し、かつ/または前記式Iのヘミメリット酸エステルは、少なくとも部分的に互いに異なる基R 、R およびR を有する、ヘミメリット酸エステル、
- 3~30重量%の増粘剤、
- 10重量%~50重量%の少なくとも1つのさらなる基油、0.1~8重量%の添加剤
を含むグリース配合物として形成された、潤滑剤組成物。
【請求項19】
前記グリース配合物として形成された潤滑剤組成物が、10重量%~40重量%のポリイソブチレンを含むことを特徴とする、請求項17または18記載の潤滑剤組成物。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式I
【化1】
[式中、
、RおよびRは、互いに独立して、
a)非置換の分岐状もしくは非分岐状のC~C20アルキル基、または
b)シクロアルキル基および芳香族基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有するC~Cアルキル基、または
c)C~C20芳香族基もしくはC~C20シクロアルキル基
である]のヘミメリット酸エステルの、トライボロジーシステムの潤滑用の潤滑剤組成物の基油としての使用であって、ここで、前記式Iのヘミメリット酸エステルは、前記式Iの各種化合物の混合物として存在し、かつ/または前記式Iのヘミメリット酸エステルは、少なくとも部分的に互いに異なる基R、RおよびRを有する、使用。
【請求項2】
前記式Iのヘミメリット酸エステルが、少なくとも部分的にバイオベースであることを特徴とする、請求項1記載の使用。
【請求項3】
前記潤滑剤組成物が、バイオベースの炭素を、前記潤滑剤組成物中の有機炭素の総重量に対して、少なくとも10重量%、例えば10~100重量%、および/または10~95重量%、有利には少なくとも15重量%、例えば15重量%~95重量%、特に少なくとも20重量%、例えば20重量%~95重量%含むことを特徴とする、請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
前記式Iのヘミメリット酸エステルが、バイオベースの炭素を、前記潤滑剤組成物中の前記式Iのヘミメリット酸エステルの総重量に対して、少なくとも30重量%、例えば30~100重量%、有利には少なくとも40重量%、例えば40重量%~100重量%、特に少なくとも50重量%、例えば50重量%~100重量%含むことを特徴とする、請求項1または2記載の使用。
【請求項5】
前記式Iのヘミメリット酸エステルの酸成分が、バイオベースの炭素を、前記潤滑剤組成物中の前記式Iのヘミメリット酸エステルの前記酸成分の総重量に対して、少なくとも30重量%、有利には少なくとも40重量%、例えば40重量%~100重量%、特に少なくとも50重量%、例えば50重量%~100重量%含むことを特徴とする、請求項1または2記載の使用。
【請求項6】
少なくとも1つの基R、Rおよび/またはRが、非置換の分岐状または非分岐状のC~C20アルキル基、さらにより好ましくはC~C18アルキル基、特にC~C18アルキル基である、請求項1または2記載の使用。
【請求項7】
少なくとも1つの基R、Rおよび/またはRが、C~Cアルキル基、特にC~Cアルキル基であり、前記アルキル基が、C~C15シクロアルキル基およびC~C15芳香族基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有することを特徴とする、請求項1または2記載の使用。
【請求項8】
少なくとも1つの基R、Rおよび/またはRが、少なくとも1つのC~C15シクロアルキル基で置換された、またはC~C15芳香族基で置換された、メチル基、エチル基またはプロピル基であることを特徴とする、請求項1または2記載の使用。
【請求項9】
少なくとも1つの基R、Rおよび/またはRが、オクタニル、エチルヘキサニル、ノナニル、デカニル、ウンデカニル、ドデカニル、イソトリデシル、トリシクロデカンメチル、フルフリルからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1または2記載の使用。
【請求項10】
前記基R、RおよびRが、互いに独立して、炭素および水素以外の原子を有しないことを特徴とする、請求項1または2記載の使用。
【請求項11】
前記潤滑剤組成物が、前記式Iのヘミメリット酸エステルを、前記潤滑剤組成物の総重量に対してそれぞれ、20重量%~90重量%、さらにより好ましくは25重量%~70重量%、さらにより好ましくは25重量%~60重量%、特に30重量%~50重量%の量で含むことを特徴とする、請求項1または2記載の使用。
【請求項12】
前記式Iのヘミメリット酸エステルが、40℃で30mm/s~150mm/sの範囲の動粘度を有することを特徴とする、請求項1または2記載の使用。
【請求項13】
前記潤滑剤組成物が、ポリイソブチレンを、前記潤滑剤組成物の総重量に対してそれぞれ、5~50重量%、さらにより好ましくは15~35重量%、特に15~30重量%含むことを特徴とする、請求項1または2記載の使用。
【請求項14】
前記潤滑剤組成物が、油配合物として存在し、少なくとも1つのさらなる基油を、前記潤滑剤組成物の総重量に対してそれぞれ、10重量%~50重量%、さらにより好ましくは10重量%~40重量%の割合で含むか、または
前記潤滑剤組成物が、グリース配合物として存在し、少なくとも1つのさらなる基油を、前記潤滑剤組成物の総重量に対してそれぞれ、10重量%~50重量%、さらにより好ましくは25重量%~50重量%、特に30重量%~50重量%の割合で含む
ことを特徴とする、請求項1または2記載の使用。
【請求項15】
前記さらなる基油が、エステル、特に、芳香族および/または脂肪族ジ-、トリ-またはテトラカルボン酸とC~C22アルコールの1つまたは混合物とのエステル、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールまたはジペンタエリスリトールと脂肪族C~C22カルボン酸とのエステル、C18ダイマー酸とC~C22アルコールとのエステル、単独成分としてまたは任意の混合物の複合エステル、ならびにトリグリセリドおよび/またはエストリド、ポリ-α-オレフィン、ポリエーテルおよび/または鉱物油から選択されることを特徴とする、請求項14記載の使用。
【請求項16】
以下:
- 20重量%~90重量%、有利には50重量%~85重量%の、基油としての、下記一般式I
【化2】
[式中、
、RおよびRは、互いに独立して、
a)非置換の分岐状もしくは非分岐状のC~C20アルキル基、または
b)シクロアルキル基および芳香族基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有するC~Cアルキル基、または
c)C~C20芳香族基もしくはC~C20シクロアルキル基
である]のヘミメリット酸エステルであって、前記式Iのヘミメリット酸エステルは、前記式Iの各種化合物の混合物として存在し、かつ/または前記式Iのヘミメリット酸エステルは、少なくとも部分的に互いに異なる基R、RおよびRを有する、ヘミメリット酸エステル、
- 5重量%~50重量%、有利には10重量%~50重量%のポリイソブチレン、
- 0.1重量%~8重量%の添加剤
を含む油配合物として形成された、潤滑剤組成物。
【請求項17】
以下:
- 20重量%~90重量%の、基油としての、下記一般式I
【化3】
[式中、
、RおよびRは、互いに独立して、
a)非置換の分岐状もしくは非分岐状のC~C20アルキル基、または
b)シクロアルキル基および芳香族基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有するC~Cアルキル基、または
c)C~C20芳香族基もしくはC~C20シクロアルキル基
である]のヘミメリット酸エステルであって、前記式Iのヘミメリット酸エステルは、前記式Iの各種化合物の混合物として存在し、かつ/または前記式Iのヘミメリット酸エステルは、少なくとも部分的に互いに異なる基R、RおよびRを有する、ヘミメリット酸エステル、
- 3~30重量%の増粘剤、
- 0.1~8重量%の添加剤
を含むグリース配合物として形成された、潤滑剤組成物。
【請求項18】
以下:
- 20重量%~70重量%の、基油としての、下記一般式I
【化4】
[式中、
、RおよびRは、互いに独立して、
a)非置換の分岐状もしくは非分岐状のC~C20アルキル基、または
b)シクロアルキル基および芳香族基からなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有するC~Cアルキル基、または
c)C~C20芳香族基もしくはC~C20シクロアルキル基
である]のヘミメリット酸エステルであって、前記式Iのヘミメリット酸エステルは、前記式Iの各種化合物の混合物として存在し、かつ/または前記式Iのヘミメリット酸エステルは、少なくとも部分的に互いに異なる基R、RおよびRを有する、ヘミメリット酸エステル、
- 3~30重量%の増粘剤、
- 10重量%~50重量%の少なくとも1つのさらなる基油、0.1~8重量%の添加剤
を含むグリース配合物として形成された、潤滑剤組成物。
【請求項19】
前記グリース配合物として形成された潤滑剤組成物が、10重量%~40重量%のポリイソブチレンを含むことを特徴とする、請求項17または18記載の潤滑剤組成物。
【国際調査報告】