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▶ サンセラ ファーマシューティカルズ (シュバイツ) アーゲーの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】Δ9,11ステロイドの合成
(51)【国際特許分類】
   C07J 5/00 20060101AFI20240725BHJP
   C07J 71/00 20060101ALI20240725BHJP
   A61K 31/573 20060101ALI20240725BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
C07J5/00
C07J71/00
A61K31/573
A61P29/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508643
(86)(22)【出願日】2022-07-28
(85)【翻訳文提出日】2024-04-01
(86)【国際出願番号】 EP2022071145
(87)【国際公開番号】W WO2023016817
(87)【国際公開日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】21191143.3
(32)【優先日】2021-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514183259
【氏名又は名称】サンセラ ファーマシューティカルズ (シュバイツ) アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー ガブリエル
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエリ ラウソ
(72)【発明者】
【氏名】マーティン マルコ
【テーマコード(参考)】
4C086
4C091
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA04
4C086DA10
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB11
4C091AA01
4C091BB03
4C091BB05
4C091BB10
4C091CC01
4C091DD01
4C091EE07
4C091FF01
4C091GG01
4C091HH01
4C091JJ03
4C091KK01
4C091LL01
4C091MM03
4C091NN04
4C091PA03
4C091PA05
4C091PA09
4C091PB02
4C091QQ07
4C091RR05
4C091RR10
(57)【要約】
本発明は、HIを用いた9,11-エポキシステロイドの脱酸素化によりΔ9,11ステロイドを調製するための方法に関する。開示される方法は、バモロロンなどのΔ9,11ステロイドを選択的に形成し、薬学的純度のΔ9,11ステロイドのステロイド合成を行うために使用することもできる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
9,11エポキシステロイドからΔ9,11ステロイドを調製するための、ヨウ化水素酸の使用。
【請求項2】
Δ9,11ステロイドが、下記式Iのステロイドであり、
式中、
点線は単結合または二重結合であり;
R1はHまたはOHであり;
R2またはR3のうちの一方はCH3でありかつ他方はHであり、または両方ともHであり;かつ
XはH、ハロ、OR(ここで、RはHもしくはC(O)RIでありかつRIはCF3、C1~C6アルキルもしくはC1~C6アルコキシ、C5~C12シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールである)、またはNRIIである(ここで、NRIIは第3級アミンでありかつ第3級アミンは直鎖状もしくは環状部分構造の一部である)、
請求項1記載の使用。
【請求項3】
Δ9,11ステロイドが、下記式Ifのステロイドであり、
式中、
R3はCH3またはHであり;かつ
XはH、ハロ、OR(ここで、RはHもしくはC(O)RIでありかつRIはCF3、C1~C6アルキル、C5~C12シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールもしくはC1~C6アルコキシである)、またはNRIIである(ここで、NRIIは第3級アミンでありかつ第3級アミンは直鎖状もしくは環状部分構造の一部である)、
請求項1または2記載の使用。
【請求項4】
Δ9,11ステロイドが、バモロロンまたはバモロロンアセテート
である、請求項1~3のいずれか一項記載の使用。
【請求項5】
下記式IのΔ9,11ステロイドを調製するための方法であって、
式中、
点線は単結合または二重結合であり;
R1はHまたはOHであり;
R2またはR3のうちの一方はCH3でありかつ他方はHであり、または両方ともHであり;かつ
XはH、ハロ、OR(ここで、RはHもしくはC(O)RIでありかつRIはCF3、C1~C6アルキル、C5~C12シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールもしくはC1~C6アルコキシである)、またはNRIIである(ここで、NRIIは第3級アミンでありかつ第3級アミンは直鎖状もしくは環状部分構造の一部である)
該方法は、式Iの化合物を形成するために、下記式IIの9,11エポキシステロイドをヨウ化水素酸HIで処理する工程を含み、
式中、
点線は単結合または二重結合であり;
R1はHまたはOHであり;
R2またはR3のうちの一方はCH3でありかつ他方はHであり、または両方ともHであり;かつ
XはH、ハロ、OR(ここで、RはHもしくはC(O)RIでありかつRIはCF3、C1~C6アルキル、C5~C12シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールもしくはC1~C6アルコキシである)、またはNRIIである(ここで、NRIIは第3級アミンである)、
前記方法。
【請求項6】
Δ9,11ステロイドが、下記式Idの化合物であり、
式中、
R2またはR3のうちの一方はCH3でありかつ他方はHであり、または両方ともHであり;かつ
XはH、ハロ、OR(ここで、RはHもしくはC(O)RIでありかつRIはCF3、C1~C6アルキル、C5~C12シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールもしくはC1~C6アルコキシである)、またはNRIIである(ここで、NRIIは第3級アミンでありかつ第3級アミンは直鎖状もしくは環状部分構造の一部である);
かつ、
9,11エポキシステロイドが、下記式IIdの化合物であり、
式中、
R2またはR3のうちの一方はCH3でありかつ他方はHであり、または両方ともHであり;かつ
XはH、ハロ、OR(ここで、RはHもしくはC(O)RIでありかつRIはCF3、C1~C6アルキル、C5~C12シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールもしくはC1~C6アルコキシである)、またはNRIIである(ここで、NRIIは第3級アミンでありかつ第3級アミンは直鎖状もしくは環状部分構造の一部である)、
式Idの化合物を形成するためにヨウ化水素酸HIが使用される、
請求項5記載の方法。
【請求項7】
Δ9,11ステロイドが、バモロロンまたはバモロロンアセテート
より選択される化合物であり、かつ
9,11エポキシステロイドが、それぞれ、8-DMおよび8-DMアセテート
の化合物である、
請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
Δ9,11ステロイドが、有機溶媒中で、有機酸の存在下でまたは有機酸を添加せずに、HI水溶液を用いて調製され、処理が15℃未満の温度で行われる、請求項5~7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
有機溶媒が、MeCN、CH2Cl2、もしくはトルエン;またはそれらの2つもしくは3つ全ての混合物であり、かつ
有機酸が酢酸である、
請求項8記載の方法。
【請求項10】
Δ9,11ステロイドが、トルエン中で、48~68wt%の濃度のHI水溶液を用いて調製される、請求項5~9のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
XがOHである場合、9,11エポキシステロイドをHIで処理する前に、9,11エポキシステロイドがアセチル化される、請求項5~10のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
9,11エポキシステロイドをHIで処理した後に、請求項15で得られたΔ9,11ステロイドが脱アセチル化される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
請求項2~15のいずれか一項で得られた粗製Δ9,11ステロイドをiPrOHまたはiPrOHと水の混合物中で再結晶する工程
を含む、薬学的に純粋なΔ9,11ステロイドを調製するための請求項5~12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
99.5wt%純度またはそれ以上の精製バモロロンを形成するために、イソプロパノール中または水とイソプロパノールの混合物中で粗製バモロロンを再結晶する工程
を含む、バモロロンを精製する方法。
【請求項15】
請求項5~14のいずれか一項記載の方法によって製造された化合物。
【請求項16】
請求項13または14記載の方法によって製造された化合物。
【請求項17】
請求項15または16記載の化合物を含む、薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
HIを用いた9,11-エポキシステロイドの脱酸素化によりΔ9,11ステロイドを調製するための方法を記載する。開示される方法は、バモロロンなどのΔ9,11ステロイドを選択的に形成し、薬学的純度のΔ9,11ステロイドのステロイド合成を行うために使用することもできる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
グルココルチコイドは多くの炎症状態の標準治療であるが、長期使用は幅広い副作用と関連している。最近、Δ9,11ステロイド類似体は、慢性炎症性疾患を処置するためのより安全な薬剤の供給源として有望であることがわかった。
【0003】
コルチゾール、プレドニゾンおよびプレドニゾロンなどの典型的なグルココルチコイドは、チリラザド、VBP1およびアネコルタブなどのΔ9,11ステロイド対応物を有する。そのようなΔ9,11ステロイドについて新規の合成が必要である。
【0004】
さらに、モメタゾン、メタメタゾンおよびベクロメタゾンなどの治療的有用性を有するコルチコステロイドの合成は、ステロイド分子のC-9およびC-11位の官能基化を必要とする。官能性は、一般に、Δ9,11ステロイド中間体を介して導入される。従って、治療的有用性を有するΔ9,11ステロイドの合成、およびΔ9,11ステロイド中間体の合成は、ますます重要性を増している。
【0005】
Δ9,11ステロイド、すなわち9,11-二重結合を有するステロイドを調製するための方法は、当技術分野において公知である。例えば、11-ヒドロキシステロイドを(ステロイドをメシルクロリドで処理することによって)対応するメシレートに変換することができ、これは脱離反応によってΔ9,11ステロイドに変換される。しかし、それぞれの先行技術の方法は、11-ヒドロキシステロイドから開始する場合には位置特異的ではなく、典型的には、多量かつ望ましくない量のΔ11,12ステロイドを含有するΔ9,11ステロイドの混合物をもたらす。これらの位置異性体生成物の分離は困難であり、面倒な物理的分離手順を一般に要し、その結果、コストが増加し、収率が低下する。
【0006】
他の合成戦略が同様に公知である:US 5,399,727(特許文献1)は、有機溶媒中のクロロスルホン酸による9-ヒドロキシステロイドからの特異的Δ9,11ステロイドの合成を開示している。EP 0 969 012(特許文献2)は、PCl5、PCl3、POCl3、またはSO2Cl2とイミダゾール、もしくはPPh3とCCl4のいずれかを使用した11-ヒドロキシステロイドの位置選択的脱水のためのプロセスを開示している。これらのプロセスは非常に過酷であり、有毒な化学物質を必要とし、意図しない副生成物や不純物をもたらす。
【0007】
バモロロン(17α,21-ジヒドロキシ-16α-メチルプレグナ-1,4,9(11)-トリエン-3,20-ジオン)は、例えばDMDの処置のための、臨床候補である医薬品有効成分(API)である。従って、バモロロンは、治療上の関心が高い新しいΔ9,11ステロイドである。
【0008】
バモロロンは、現在、市販の3TR(テトラエンアセテート)から製造されている-スキーム2を参照のこと。工程aにおいて、TMSイミダゾール、MeMgClおよびTHFを3TRへ添加し、続いて、工程bにおいて、CuAc2、H2O、DMPU、MeMgClおよびTHFを添加する。工程cにおいて、化合物2から、トルエン中の過酢酸による処理下で中間体3が形成される。NaHSO3およびTFA(工程d)、EtOAcおよびヘプタン(工程e)ならびにアセトニトリル粉砕(工程f)での処理後、CH2Cl2中のHBrを添加し(工程g)、MeOH(工程h)を結晶化に用いて、アセチル-バモロロン4を形成する。アセチル-バモロロンをMeOH中のK2CO3、続いてHClで脱アセチル化して、バモロロンを得る(工程i)。合成は、Bioorganic & Medicinal Chemistry, Volume 21, Issue 8, 15 April 2013, Pages 2241-2249(非特許文献1)に開示されている。
【0009】
スキーム2:先行技術におけるバモロロン調製
【0010】
このプロセスは制御が困難であり、いくつかの有毒で危険な化学物質の使用を必要とし、従ってバモロロンの魅力のない合成を表す。
【0011】
全体的に見て、バモロロンおよび他のΔ9,11ステロイドを、高収率で、かつ、最終生成物中の多数の不純物および副生成物(例えばステロイド副生成物)の存在を排除する制御された薬学的純度で製造する、より直接的かつ安全な方法についての必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】US 5,399,727
【特許文献2】EP 0 969 012
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Bioorganic & Medicinal Chemistry, Volume 21, Issue 8, 15 April 2013, Pages 2241-2249
【発明の概要】
【0014】
本発明は、バモロロンおよび他のΔ9,11ステロイドの簡便で無毒かつ定量的な合成を提供することによって、この必要性を満たす。新しい合成は驚くほど簡単であり、ステロイド副生成物を著しく減らす。バモロロンおよび他のΔ9,11ステロイドの合成について、保護された、例えばアセチル化された、市販の8-DM、または保護されていない市販の8-DM((1S,2S,13R,14R,15S,17S)-14-ヒドロキシ-14-(2-ヒドロキシアセチル)-2,13,15-トリメチル-18-オキサペンタ-シクロ[8.8.0.01,17.02,7.011,15]オクタデカ-3,6-ジエン-5-オン)のような、9,11エポキシドステロイド前駆体を脱酸素化するために、HIを使用する。8-DMなどのΔ9,11ステロイドは市販されており、保護基(21-OH部分へ結合される)を、当技術分野において利用可能な従来の合成手段を用いて結合させることができる。
【0015】
従って、本発明は、下記式IのΔ9,11ステロイドを調製するための方法を提供し、
式中、
点線は単結合または二重結合であり;
R1はHまたはOHであり;
R2またはR3のうちの一方はCH3でありかつ他方はHであり、または両方ともHであり;かつ
XはH、ハロ、OR(ここで、RはHもしくはC(O)RIでありかつRIはCF3、C1~C6アルキル、C5~C12シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールもしくはC1~C6アルコキシである)、またはNRIIである(ここで、NRIIは第3級アミンであり、第3級アミンは本明細書の全体にわたって、直鎖状もしくは環状部分構造の一部であり得る)。
【0016】
好ましいのは、下記式IaのΔ9,11ステロイドを調製するための方法であり、
式中、
点線は単結合または二重結合であり;
R1はHまたはOHであり;
R2またはR3のうちの一方はCH3でありかつ他方はHであり、または両方ともHであり;かつ
XはH、ハロ、OR(ここで、RはHもしくはC(O)RIでありかつRIはCF3、C1~C6アルキル、C5~C12シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリールもしくはC1~C6アルコキシである)、またはNRIIである(ここで、NRIIは第3級アミンでありかつ第3級アミンは直鎖状もしくは環状部分構造の一部である)。
【0017】
より好ましいのは、下記式IbのΔ9,11ステロイドを調製するための方法であり、
式中、
R1はHまたはOHであり;
R2またはR3のうちの一方はCH3でありかつ他方はHであり、または両方ともHであり;かつ
XはH、ハロ、OR(ここで、RはHもしくはC(O)RIであり、かつRIは、CF3、C1~C6アルキル、C5~C12シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリールもしくはC1~C6アルコキシである)、またはNRIIであり、ここで、NRIIは第3級アミンでありかつ第3級アミンは直鎖状もしくは環状部分構造の一部である)。
【0018】
さらにより好ましいのは、下記式IcのΔ9,11ステロイドを調製するための方法であり、
式中、
点線は単結合または二重結合であり;
R2またはR3のうちの一方はCH3でありかつ他方はHであり、または両方ともHであり;かつ
XはH、ハロ、OR(ここで、RはHもしくはC(O)RIであり、かつRIは、CF3、C1~C6アルキル、C5~C12シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリールもしくはC1~C6アルコキシである)、またはNRIIである(ここで、NRIIは第3級アミンでありかつ第3級アミンは直鎖状もしくは環状部分構造の一部である)。
【0019】
さらにより好ましいのは、下記式IdのΔ9,11ステロイドを調製するための方法であり、
式中、
R2またはR3のうちの一方はCH3でありかつ他方はHであり、または両方ともHであり;かつ
XはH、ハロ、OR(ここで、RはHもしくはC(O)RIであり、かつRIは、CF3、C1~C6アルキル、C5~C12シクロアルキル、アリール、置換アリール(subst. aryl)、ヘテロアリールもしくはC1~C6アルコキシである)、またはNRIIである(ここで、NRIIは第3級アミンでありかつ第3級アミンは直鎖状もしくは環状部分構造の一部である)。
【0020】
さらにより好ましいのは、下記式IeのΔ9,11ステロイドを調製するための方法であり、
式中、
点線は単結合または二重結合であり;
R3はCH3またはHであり;かつ
XはH、ハロ、OR(ここで、RはHもしくはC(O)RIであり、かつRIは、CF3、C1~C6アルキル、C5~C12シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールもしくはC1~C6アルコキシである)、またはNRIIである(ここで、NRIIは第3級アミンでありかつ第3級アミンは直鎖状もしくは環状部分構造の一部である)。
【0021】
さらにより好ましいのは、下記式IfのΔ9,11ステロイドを調製するための方法であり、
式中、
R3はCH3またはHであり;かつ
XはH、ハロ、OR(ここで、RはHもしくはC(O)RIであり、かつRIは、CF3、C1~C6アルキル、C5~C12シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールもしくはC1~C6アルコキシである)、またはNRIIである(ここで、NRIIは第3級アミンでありかつ第3級アミンは直鎖状もしくは環状部分構造の一部である)。
【0022】
特に好ましいのは、XがH、OHまたはOAcである、上記で定義されるような式Ia~IfのいずれかのΔ9,11ステロイドを調製するための方法である。
【0023】
最も好ましいのは、以下のΔ9,11ステロイドのうちの1つを調製するための方法である:
【0024】
本発明の方法は、式Iの化合物を形成するために、下記式IIの9,11-エポキシ-ステロイドをヨウ化水素酸HIで処理する工程を含み、
式中、
点線は単結合または二重結合であり;
R1はHまたはOHであり;
R2またはR3のうちの一方はCH3でありかつ他方はHであり、または両方ともHであり;かつ
XはH、ハロ、OR(ここで、RはHもしくはC(O)RIであり、かつRIは、CF3、C1~C6アルキル、C5~C12シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールもしくはC1~C6アルコキシである)、またはNRIIである(ここで、NRIIは第3級アミンでありかつ第3級アミンは直鎖状もしくは環状部分構造の一部である)。
【0025】
好ましくは、本発明の方法は、式Iaの化合物を形成するために、下記式IIaの9,11-エポキシ-ステロイドをヨウ化水素酸HIで処理する工程を含み、
式中、
点線は単結合または二重結合であり;
R1はHまたはOHであり;R2またはR3のうちの一方はCH3でありかつ他方はHであり、または両方ともHであり;かつ
XはH、ハロ、OR(ここで、RはHもしくはC(O)RIであり、かつRIは、CF3、C1~C6アルキル、C5~C12シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールもしくはC1~C6アルコキシである)、またはNRIIである(ここで、NRIIは第3級アミンでありかつ第3級アミンは直鎖状もしくは環状部分構造の一部である)。
【0026】
より好ましくは、本発明の方法は、式Ibの化合物を形成するために、下記式IIbの9,11-エポキシ-ステロイドをヨウ化水素酸HIで処理する工程を含み、
式中、
R1はHまたはOHであり;
R2またはR3のうちの一方はCH3でありかつ他方はHであり、または両方ともHであり;かつ
XはH、ハロ、OR(ここで、RはHもしくはC(O)RIであり、かつRIは、CF3、C1~C6アルキル、C5~C12シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールもしくはC1~C6アルコキシである)、またはNRIIである(ここで、NRIIは第3級アミンでありかつ第3級アミンは直鎖状もしくは環状部分構造の一部である)。
【0027】
さらにより好ましくは、本発明の方法は、式Icの化合物を形成するために、下記式IIcの9,11-エポキシ-ステロイドをヨウ化水素酸HIで処理する工程を含み、
式中、
点線は単結合または二重結合であり;
R2またはR3のうちの一方はCH3でありかつ他方はHであり、または両方ともHであり;かつ
XはH、ハロ、OR(ここで、RはHもしくはC(O)RIであり、かつRIは、CF3、C1~C6アルキル、C5~C5~C12シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールもしくはC1~C6アルコキシである)、またはNRIIである(ここで、NRIIは第3級アミンでありかつ第3級アミンは直鎖状もしくは環状部分構造の一部である)。
【0028】
さらにより好ましくは、本発明の方法は、式Idの化合物を形成するために、下記式IIdの9,11-エポキシ-ステロイドをヨウ化水素酸HIで処理する工程を含み、
式中、
R2またはR3のうちの一方はCH3でありかつ他方はHであり、または両方ともHであり;かつ
XはH、ハロ、OR(ここで、RはHもしくはC(O)RIであり、かつRIは、CF3、C1~C6アルキル、C5~C12シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールもしくはC1~C6アルコキシである)、またはNRIIである(ここで、NRIIは第3級アミンでありかつ第3級アミンは直鎖状もしくは環状部分構造の一部である)。
【0029】
さらにより好ましくは、本発明の方法は、式Ieの化合物を形成するために、下記式IIeの9,11-エポキシ-ステロイドをヨウ化水素酸HIで処理する工程を含み、
式中、
点線は単結合または二重結合であり;
R3はCH3またはHであり;かつ
XはH、ハロ、OR(ここで、RはHもしくはC(O)RIであり、かつRIは、CF3、C1~C6アルキル、C5~C12シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールもしくはC1~C6アルコキシである)、またはNRIIである(ここで、NRIIは第3級アミンでありかつ第3級アミンは直鎖状もしくは環状部分構造の一部である)。
【0030】
さらにより好ましくは、本発明の方法は、式Ifの化合物を形成するために、下記式IIfの9,11-エポキシ-ステロイドをヨウ化水素酸HIで処理する工程を含み、
式中、
R3はCH3またはHであり;かつ
XはH、ハロ、OR(ここで、RはHもしくはC(O)RIであり、かつRIは、CF3、C1~C6アルキル、C5~C12シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールもしくはC1~C6アルコキシである)、またはNRIIである(ここで、NRIIは第3級アミンでありかつ第3級アミンは直鎖状もしくは環状部分構造の一部である)。
【0031】
より好ましくは、本発明の方法は、VBP1、アネコルタブおよびチリラザドそれぞれを形成するために、VBP1、アネコルタブおよびチリラザドそれぞれの9,11-エポキシ-ステロイドをヨウ化水素酸HIで処理する工程を含む。
【0032】
最も好ましくは、本発明の方法は、バモロロンおよびバモロロン-アセテートそれぞれを形成するために、8-DMまたは8-DM-アセテート
である9,11-エポキシ-ステロイドをヨウ化水素酸HIで処理する工程を含む。
【発明を実施するための形態】
【0033】
発明の詳細
本明細書において使用される場合、用語「アルキル」は、直鎖または分岐鎖不飽和炭化水素鎖を意味し;好ましいのは、1~6個の炭素原子を有するC1~C6アルキルである。アルキルおよびC1~C6-アルキルの定義は、例えば、メチル、エチル、n-、イソプロピル、n-、イソ-、sec-およびt-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、1,3-ジメチルブチル、ならびに3,3-ジメチルブチルの意味を含む。
【0034】
用語「アルコキシ」は、酸素へ単結合されたアルキル(炭素および水素鎖)基、R-Oを指し;好ましいのは、1~6個の炭素原子を有するC1~C6アルコキシ基である。
【0035】
用語「ハロ」は、好ましくは、ブロモ、クロロまたはヨードを意味する。
【0036】
本発明に関連する「シクロアルキル」基は、別段の定義がない限り、環状飽和炭化水素基である。好ましいのは、5~12個の環C原子を有するC5~C12シクロアルキルである。
【0037】
本発明に関連する「アリール」は、別段の定義がない限り、芳香族炭化水素である。好ましいのは、フェニルまたは置換フェニルである。用語「ヘテロアリール」は、O、N、PおよびSより選択される1つ、2つまたはそれ以上のヘテロ原子を有し得、任意で、さらなる基によって置換され得る、アリールを定義する。アリールは置換または非置換であり得る。「置換アリール」とは、上記で定義されるような、しかし1つまたは複数の置換基を含有する、アリールを意味する。好ましいのは、1つまたは複数のアルコキシ置換基、例えばメトキシ基、および/または、1つまたは複数のハロゲン、例えばClを含有する、置換アリールである。ヘテロアリールは置換または非置換であり得る。「置換ヘテロアリール」は、上記で定義されるような、しかし1つまたは複数の置換基を含有する、ヘテロアリールを意味する。好ましいのは、1つまたは複数のアルコキシ置換基、例えばメトキシ基、および/または、1つまたは複数のハロゲン、例えばClを含有する、置換ヘテロアリールである。
【0038】
用語「第3級アミン」は、窒素原子が3つの有機ラジカルへ結合されているアミノ基を意味し、これらのラジカルのうちの2つはまた一緒に環の一部であってもよい。本発明において、NRIIは第3級アミンであり、ここで、第3級アミンは直鎖状もしくは環状部分構造の一部である。好ましい第3級アミンは、置換または非置換ピペラジン部分、例えば、
である。
【0039】
句「有機相」は、本明細書において「OP」と略され、「水相」は「AP」と略される。
【0040】
用語「薬学的純度」は、HPLCまたは他の従来の方法によって決定されるように、本発明の、少なくとも99wt%純粋な化合物、例えばΔ9,11ステロイドを定義する。より好ましくは、本発明の化合物、例えばΔ9,11ステロイドは、HPLCまたは他の従来の方法によって決定されるように、少なくとも99.5wt%純粋である。最も好ましくは、本発明の化合物、例えばΔ9,11ステロイドは、HPLCまたは他の従来の方法によって決定されるように、少なくとも99.9wt%純粋である。
【0041】
本発明の方法において用いられる以下の溶媒および試薬は、示される略語によって識別される;酢酸エチル(EtOAc);酢酸(HOAc);テトラヒドロフラン(THF);ジメチルスルホキシド(DMSO);トリエチルアミン(Et3N);ジイソプロピルエチルアミン(ヒューニッヒ塩基);メタノール(MeOH);1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン(DBU);トリフェニルホスフィン(PPh3);ジイソプロピルエーテル(iPr2O);ジメトキシエタン(DME);t-ブチルメチルエーテル(t-BuOMe);N,N-ジメチルアミノピリジン(DMAP);ジメチルホルムアミド(DMF);p-トルエンスルホニルクロリド(TsCl);Bu3Sn2O(TBTO) ポリメチルヒドロシロキサン(PMHS)。
【0042】
本発明は、反応スキームAに示されるように、式IのΔ9,11ステロイドを形成するために式IIのステロイドを脱酸素化する、プロセスAと呼ばれる、プロセスを含む。
【0043】
反応スキームA
【0044】
反応スキームAにおいて、式Iの化合物を形成するために、式IIの化合物をHIで処理する。本発明は、式IIの化合物の代わりに式IIa、II、IIc、IIdまたはIIeの化合物を使用する、上記に示されるような反応スキームAのプロセスをさらに含む。
【0045】
一例として、反応スキームA’を示す。反応スキームA‘において、式Idの化合物を形成するために、式IIdの化合物をHIで処理する。
【0046】
反応スキームA’
【0047】
最も好ましいのは、バモロロンおよびバモロロンアセテートそれぞれの合成である(反応スキームBおよびB’を参照のこと)。
【0048】
反応スキームB:バモロロンアセテートの合成
【0049】
反応スキームBにおいて、バモロロンアセテートを形成するために、8-DMアセテートをHIで処理する。
【0050】
反応スキームB’:バモロロンの合成
【0051】
反応スキームB’において、バモロロンを形成するために、8-DMをHIで処理する。驚いたことに、第1級アルコール(8-DM中の21-ヒドロキシ)は、対応するヨウ化アルキル(21-I)への変換を受けない。
【0052】
本発明によれば、HIによる本発明の脱酸素化反応は、任意の有機溶媒中で行うことができる。しかし、溶媒が強酸(HI)および潜在的に形成されるI2に対して安定である必要があり、また、反応中間体(例えば、ヨードヒドリン)のいずれにも干渉してはならない限り、溶媒選択肢は限定される。これにより、溶媒選択肢の数が減る。
【0053】
任意の芳香族溶媒、任意の塩素化溶媒(CH2Cl2、クロロホルム、1,2-DCEなど)および任意のニトリル溶媒、またはこれらの溶媒のいずれかの混合物を使用することができる。好ましい芳香族溶媒は、トルエン、キシレン、ベンゼン、PhCF3である。好ましい塩素化溶媒は、CH2Cl2、クロロホルム、1,2-DCEである。好ましいニトリル溶媒は、MeCN、プロピオニトリル、ブチロニトリルである。
【0054】
本発明によれば、3つの溶媒、すなわちトルエン、MeCNおよびCH2Cl2が最も好ましい。これらの溶媒は、単独で、または3つのうちの何れかの混合物もしくは3つの溶媒全ての混合物で使用することができる。
【0055】
HIの存在下で安定しているアルコール溶媒も同様に使用できる。例えば、CF3CH2OHおよびHFIP(ヘキサフルオロイソプロパノール)を用いてもよい。
【0056】
HIの存在下で安定しているエーテル溶媒も同様に使用できる。例えば、DIPE(ジイソプロピルエーテル)を用いてもよい。
【0057】
反応は、他の溶媒を一切使用せずに有機酸中で直接行うこともでき、例えば、ギ酸、酢酸(すなわち、AcOH)、TFAなど中で直接行うこともできる。本発明に係る有機酸の例は、酢酸、TFA、ギ酸、およびプロピオン酸である。
【0058】
より好ましくは、有機酸はAcOHである。有機酸、好ましくはAcOHは、C11のヒドロキシ基の脱離を促進するため、反応に良好な溶媒である。しかし、この態様において、好ましくは、不溶性残渣の副生成物形成を回避するために、形成されたヨウ素をNa2SO3水溶液でクエンチする前に有機溶媒(例えば、トルエン、MeCNおよびCH2Cl2)を添加する必要がある。
【0059】
本発明に係る別の溶媒はH2Oであり、ここで、反応は同様に機能する。好ましくは、H2Oは、上述した有機酸のいずれかと混合して使用される。しかし、有機酸を含まないH2O中では、I2が形成され、H2Oから沈殿するであろう。これにより、沈殿したI2を定量的に除去する必要性が生じる。
【0060】
試薬ヨウ化水素酸、HIは、好ましくは高濃度水溶液形態で、より好ましくは1%~70%、好ましくは5%~70%、より好ましくは10%~70%、さらにより好ましくは質量で30%~70%HI水溶液、最も好ましくは質量で48~57%HI水溶液または64%~68%HI水溶液の濃度で用いられる。
【0061】
ヨウ化水素酸による脱酸素化反応は、室温RT(すなわち25℃)未満、好ましくは15℃未満、より好ましくは10℃未満、最も好ましくは5°未満、例えば1~5℃の温度で行う。
【0062】
式IIの化合物を精製するために、最終化合物を再結晶させる。再結晶は、水またはアルコールおよびそれらの混合物などの極性溶媒から、また、その代わりにアセトニトリル、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソプロピルケトン(MIK)およびそれらの混合物を使用して、行うことができる。好ましくは、再結晶は、イソプロパノール(iPr-OH)またはiPr-OHと水の混合物から行われる。より好ましくは、再結晶は、60:40wt%~100:0wt%、好ましくは80:20wt%~100:0wt%のiPr-OH:水の混合物中で行われる。
【0063】
典型的には、イソプロパノールまたはイソプロパノール水混合物からの粗製バモロロンの最後の結晶化は、90%以上の良好な収率を依然として提供しながら、1wt%を超える、例えば98.5wt%から99.6wt%~99.9wt%への、純度向上を提供することができる。結晶化によるこの最終研磨工程は、最終APIの不純物プロファイルの優れた制御を可能にする。
【0064】
本発明のさらなる局面において、C-21上の第1級ヒドロキシ基のための保護基を、式II、式IIa、式IIb、式IIc、式IId、式IIeまたは式IIfそれぞれの脱酸素化の前に、部分Xの代わりに付加することができる。
【0065】
Xの代わりの保護基はORであり、ここで、RはC(O)RIであり、RIはCF3、C1~C6アルキル、C5~C12シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたはC1~C6アルコキシである。
【0066】
保護基の付加後、本発明に係る脱酸素化を行い、続いて脱保護工程、すなわち保護基を除去する工程を行う。
【0067】
この工程において、ORである部分Xは、OHであるXへ変換され、ここで、RはC(O)RIであり、RIはCF3、C1~C6アルキル、C5~C12シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールまたはC1~C6アルコキシである。OHは、さらに、メトキシメチルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、t-ブチルエーテル、ベンジルエーテル、ジメトキシベンジルエーテル、t-ブチルジメチルシリルエーテル、t-ブチルジフェニルシリルエーテル、酢酸エステル、ピバル酸エステル、安息香酸エステル、アセトニドもしくはベンジリデンアセタール、または任意の他の従来の保護基を用いて保護することができる。
【0068】
好ましい態様において、8-DMは、HIによる脱酸素化の前にアセチル化される。得られた8-DMアセテートは、バモロロンアセテートへHIで脱酸素化され、続いて脱アセチル化されてバモロロンを形成する。バモロロンアセテートがHI反応中に部分的に脱アセチル化される場合、部分的に脱アセチル化されたバモロロンを再び再アセチル化することは任意である。バモロロンアセテートを定量的に単離するために、また、合成が8-DMアセテートへHIを添加することによるバモロロンアセテートの形成を伴う場合、バモロロンの定量的全合成を得るために、定量的アセチル化が意図され得る。
【0069】
アセチル化手順は、本特許の実験セクションにおいて規定された公知の反応条件または当業者に公知の条件を用いて行うことができる。しかし、特に好ましいのは、有機溶媒中の、好ましくはアセトニトリル中の、Ac2Oを用いた反応である。最も好ましくは、アセトニトリル中のAc2Oは触媒量のDMAPと共に使用される。8-DM-アセテートは、水性クエンチング後に結晶生成物として得られ得る。アセチル化は室温で行ってもよい。好ましい温度範囲は、20~30℃、より好ましくは22~25℃である。
【0070】
脱アセチル化加水分解手順は、当技術分野において公知の反応を用いて実施することができる。しかし、特に好ましいのは、アルコールまたはアルコール/水混合物中のK2CO3による脱アセチル化である。最も好ましいのはMeOH/H2O中のK2CO3である。さらなる態様において、バモロロンアセテートは、アルコールまたはアルコール/水混合物中のKOHで脱アセチル化される。最も好ましいのはMeOH中のKOHである。
【0071】
脱アセチル化反応の温度は、RTより低く、好ましくは15℃より低く、より好ましくは10℃より低く、最も好ましくは0°~5℃である。
【0072】
本発明の好ましい態様において、Δ9,11ステロイドは、HIを用いてそれぞれの9,11-エポキシステロイドの脱酸素化によって調製され、ここで、Δ9,11ステロイドは、有機酸の存在または非存在下にて、MeCN、CH2Cl2、もしくはトルエン;またはそれらの2つもしくは3つ全ての混合物中で、48~68wt%の濃度のHI水溶液を用いて調製され、ここで、HIによる処理は15℃未満の温度で行われる。
【0073】
本発明のより好ましい態様において、Δ9,11ステロイドは、HIを用いてそれぞれの9,11-エポキシステロイドの脱酸素化によって調製され、ここで、Δ9,11ステロイドは、酢酸である有機酸の存在または非存在下にて、MeCN、CH2Cl2、もしくはトルエン;またはそれらの2つもしくは3つ全ての混合物中で、48~68wt%の濃度のHI水溶液を用いて調製され、ここで、HIによる処理は15℃未満の温度で行われる。
【0074】
本発明のさらにより好ましい態様において、Δ9,11ステロイドは、HIを用いてそれぞれの9,11-エポキシステロイドの脱酸素化によって調製され、ここで、Δ9,11ステロイドは、酢酸である有機酸の存在または非存在下にて、トルエン中で、48~68wt%の濃度のHI水溶液を用いて調製され、ここで、HIによる処理は15℃未満の温度で行われる。
【0075】
本発明のさらにより好ましい態様において、Δ9,11ステロイドは、HIを用いてそれぞれの9,11-エポキシステロイドの脱酸素化によって調製され、ここで、Δ9,11ステロイドは、酢酸である有機酸の存在または非存在下にて、トルエン中で、48~68wt%の濃度のHI水溶液を用いて調製され、ここで、HIによる処理は15℃未満の温度で行われ、ここで、XがOHである場合、9,11エポキシステロイドをHIで処理する前に、9,11エポキシステロイドはアセチル化される。この態様において、9,11エポキシステロイドをHIで処理した後に得られるΔ9,11ステロイドは、好ましくは、脱アセチル化される。
【0076】
最も好ましくは、本発明の方法は、より好ましくは市販の8-DMから、バモロロンまたはバモロロンアセテートを製造する。
【0077】
本発明の方法によって得られるΔ9,11ステロイドは、理想的には薬学的に純粋なΔ9,11ステロイドである。精製は、典型的には粗製Δ9,11ステロイドとして得られる、本発明のいずれかの方法によって得られたΔ9,11ステロイドのいずれかを、iPrOHまたはiPrOHと水の混合物中で再結晶することによって行うことができる。
【実施例
【0078】
実施例1:不成功な試み
1.1 不成功な条件
脱酸素化を試みたが、以下の反応では不成功であることがわかった:
a)還流下、トルエン中の、レニウム触媒: CH3ReO3、Re2O7または過レニウム酸)とトリフェニルホスファイト P(OPh)3の組み合わせ。
b)Zn電極を伴うNH4Br/THF水溶液による電気化学的還元。定電流、30mA、および
c)MeCN中のPPh3およびI2
【0079】
文献から公知のこれらの反応はいずれも成功しないことが判明した。
【0080】
1.2 HBrによる有用であるが複雑で有毒な反応
HBr、続いてのスズ媒介PMHS還元およびその後の水脱離を用いる代替脱酸素化条件は、大量のスズ試薬および脱離工程のための溶媒としての液体二酸化硫黄を伴う。スズや有毒ガスを溶媒や試薬として使用することは、それを回避することができるならば、APIの下流製造に望ましくない。
【0081】
従って、バモロロンへの化学シーケンスの終わり頃での危険で有毒な化学物質の使用を回避するための新しいプロセスについての必要性がある。
【0082】
さらに、バモロロンへのHBr経路は、患者リスクを表す可能性のあるバモロロンのアリリックブロミドなどのPMI(潜在的変異原性不純物)を形成する可能性を有する。これらの不純物は追跡が困難であり、非常に低い汚染レベルに厳密に制御されなければならない。
【0083】
スキームII:
【0084】
スキーム2の工程は可能であることが判明したが、いくつかの理由で意図されたものでなかった:Bu2Sn2Oによる脱臭素化は、有毒であるBu3SnHのインサイチュ生成を含む。Bu3Sn2O(TBTO)は、生物付着を減らすために船舶塗装において殺生物剤として使用されている。TBT自体が非標的生物に対して非常に有毒である。毒性作用は水1リットル当たり1ナノグラムで既に発生する。SO2は有毒であり、製造工場では安全上の問題があり、特定の安全設備、制御、および廃棄物処理施設を必要とする。
【0085】
1.3 「TMSI」による有用であるが不完全な反応
MeCN中でNaI(3.0当量)およびTMSCl(1.5当量)を使用して脱酸素化を試みたが、不都合であることがわかった。TMS-ヨードヒドリンのインサイチュ形成およびその後の脱離後、脱酸素化が起こった。
【0086】
しかし、8-DM-アセテートの変換が不完全であり、不純物プロファイルが満足のいくものではなかったため、新しい解決策が必要であった。従って、本発明者らは、新しく、さらにより単純かつより直接的で、スケーラブルな合成を提供しようとした。
【0087】
実施例2:本発明の合成
スキームC:8-DMからのバモロロンの合成経路
【0088】
バモロロンを市販の8-DMから3つの合成工程で合成した。
【0089】
合成経路は、THF中の無水酢酸および触媒DMAPを用いた8-DMのアセチル化から始まり、続いて水性クエンチ後の8-DMアセテートの結晶化が続いた。次いで、脱酸素化反応により、8-DMアセテートをバモロロンアセテートへ直接変換した。この脱酸素化は、過剰なHI水溶液を用いてのヨードヒドリンの初期形成、続いての同時I2およびH2O脱離を介して進行し、バモロロンアセテートが得られた。反応中、部分的脱アセチル化(20~25%)が生じ、従って無水酢酸による再アセチル化が必要であった。再アセチル化が完了した後、バモロロンアセテートをH2Oの添加によって直接結晶化させた。最後に、アセテート基を塩基性条件下で切断して粗製バモロロンを得、これをiPrOHから再結晶させて純粋な生成物を得た。
【0090】
2.1 アセチル化
【0091】
10Lガラスdj(ダブルジャケット型リアクター)リアクターに8-DM(490g, 1.32mol, 1.0当量)およびDMAP(16.1g, 0.132mmol, 0.10当量)を充填した。THF(1.25L, 2.5体積)をIT = 20~25℃で添加した。次いで、Ac2O(201g, 187mL, 1.97mol, 1.5当量)を20~40分間にわたって滴下し、添加中のITを30℃未満に維持した。添加完了後、反応混合物をIT = 20~25℃で30分間撹拌した。LC/MSによるIPCコントロールは8-DMから8-DMアセテートへの>99%変換を示した。
【0092】
反応混合物を、ITを25℃未満に維持しながら、30~45分間にわたってH2O(4.9L, 10体積)を滴下することによってクエンチした。得られた水性懸濁液をIT = 20~25℃で1時間エージングした。生成物を濾過し、H2O(3 x 0.5L)で洗浄し、ロータリーエバポレーター(900~10mbar, 65℃浴温)で乾燥させて、8-DMアセテート(539g, 1.30mol, 99%収率, >99% a/a, 98% w/w)が白色固体(結晶1#1)として得られた。
【0093】
分析データ:
LC/MSカラム: Zorbax RRHD SB-Aq, 2.1x50mm, 1.8μm
プログラム: G_005%B_TFA_0,800ml_2,00min
溶出剤A: 水/TFA 100:0.04, 溶出剤B: アセトニトリル
LC/MSのためのIPC調製
1mL H2O:MeCN 1:1中の10マイクロリットル
変換を8-DMアセテートの形成に対する8-DMの消費に関して決定した。
検出質量: [M+1]= 373.19 8-DMについて、および[M+1] = 415,19 8-DMアセテート。
【0094】
2.2 HIによる脱酸素化
【0095】
10Lガラスdjリアクターに8-DMアセテート(500g, 1.21mol, 1.0当量)を充填した。トルエン(2.5L, 5体積)を添加した。懸濁液をIT = 0~5℃へ冷却し、次いで、AcOH(1.25L, 2.5体積)中の57%HI水溶液(1.08kg, 637mL, 4.83mol, 4.0当量)の溶液を蠕動ポンプによって45~60分間にわたって添加し、添加中のITを5℃未満に維持した。得られた暗紫色から褐色の溶液をIT = 3~5℃で24時間撹拌した。LC/MSによるIPCコントロールは、8-DMアセテート/中間体ヨードヒドリンからバモロロンアセテート/バモロロンへの>98%変換を示した。
【0096】
反応混合物を、ITを15℃未満に維持しながら、10~20分間にわたって25%Na2SO3水溶液(2.0L, 4体積)を滴下することによってクエンチした。添加完了後、EtOAc(1.0L, 2体積)を添加し、二相性混合物をIT = 15~20℃へ加温した。撹拌を停止し、相を分離した(有機相1および水相1;水相1の目標pH: 2;水相1を処分した)。25%Na2SO3水溶液(1.25L, 2.5体積)を有機相1へ添加し、二相性混合物をIT = 15~20℃で5分間撹拌し、撹拌を停止し、相を分離した(有機相1および水相2;目標pH 水相2:4~5;水相2を処分した)。25%Na2SO3水溶液(1.25L, 2.5体積)を有機相1へ添加し、二相性混合物をIT = 15~20℃で5分間撹拌し、撹拌を停止し、相を分離した(有機相1および水相3;目標pH 水相3:5~6;水相3を処分した)。H2O(0.5L, 1.0体積)を有機相1へ添加し、二相性混合物をIT = 15~20℃で5分間撹拌し、撹拌を停止し、相を分離した(有機相1および水相4;目標pH 水相4:5~6;水相4を処分した)。
【0097】
有機相1を含有するダブルジャケット型リアクター(100~150mbar)へわずかな真空を適用し、MeCNを連続的に添加しながらトルエンを反応混合物から70℃ジャケット温度(ET)で留去し、目標残留トルエン値が達成されるまで蒸留を継続した(目標:反応混合の1H-NMRによる5%未満のトルエン。蒸留後のリアクター中の最終体積:約3.5L(7.5体積)。
【0098】
トルエンが除去されると、真空をN2で破り、得られた微細懸濁液をIT = 20~25℃へ冷却した。この時点で、バモロロンの量をIPCによって評価した(典型的な比率: バモロロンアセテート対バモロロン: 75:25; x = 25% a/a)。DMAP(3.7g, 0.0302mol, 0.025当量)を添加し、続いてAc2O(61.6g, 57mL, 0.603mol, 0.5当量)をIT = 20~25℃で5~10分間にわたって徐々に添加した。Ac2Oの添加完了後、反応混合物をIT = 20~25℃で30分間撹拌した。LC/MSによるIPCコントロールは≦2% a/aのバモロロン(比率: バモロロンアセテート対バモロロン: 98.5:1.5)を示した。
【0099】
反応混合物を、ITを25℃未満に維持しながら、H2O(4.9L, 10体積)を15~30分間にわたって徐々に添加することによってクエンチした。得られた水性懸濁液をIT = 0~5℃へ冷却し、この温度で2時間エージングした。生成物を濾過し、H2O/MeCN 4:1(2 x 0.5L)で洗浄し、ロータリーエバポレーター(900~10mbar, 65℃浴温)で乾燥させて、バモロロンアセテート(301g, 0.76mol, 63%収率, 98% a/a, 98% w/w)がオフホワイト色固体(結晶1#1)として得られた。
【0100】
反応の過程で、バモロロンへのバモロロンアセテートの部分的脱アセチル化が観察された(20~25% a/a)。従って、水性ワークアップおよびMeCNへの溶媒切り替えの後、バモロロンアセテート対バモロロンの比率をLC/MSによって(% a/aで)評価し、以下の量のDMAPおよびAc2Oを添加した:
x = % a/aでのバモロロンの量(例えば、x = 20% a/a)
DMAP当量 = (0.1・x)/100 (例えば、0.02当量)
Ac2O当量 = (2.0・x)/100 (例えば、0.40当量)
【0101】
分析データ
LC/MSカラム: Zorbax RRHD SB-Aq, 2.1x50mm, 1.8μm
プログラム: G_005%B_TFA_0,800ml_2,00min
溶出剤A: 水/TFA 100:0.04, 溶出剤B: アセトニトリル
LC/MSのためのIPC調製
1mL H2O:MeCN 1:1中の10マイクロリットル
変換を(バモロロンアセテート + バモロロン)の合計に対する(8-DMアセテート + 中間体ヨードヒドリン)の合計の消費に関して決定した。
検出質量: [M+1] = 415,19 8-DMアセテートについて、[M+1]= 357,28 バモロロンについて、399,20 バモロロンアセテートについて、および543,12 中間体ヨードヒドリンについて。
【0102】
2.3 脱アセチル化
【0103】
10Lガラスdjリアクターにバモロロンアセテート(280g, 0.703mol, 1.0当量)を充填した。MeOH(1.54L, 5.5体積)を添加した。懸濁液をIT = 0~5℃へ冷却し、次いで、H2O(0.7L, 2.5体積)中のK2CO3(107g, 0.773mol, 1.1当量)の溶液を蠕動ポンプによって20~40分間にわたって滴下し、添加中のITを10℃未満に維持した。添加完了後、反応混合物をIT = 20~25℃に加温し、5時間撹拌した。LC/MSによるIPCコントロールは、バモロロンアセテートからバモロロンへの99.3%変換を示した。
【0104】
反応混合物をIT = 15~17℃へ冷却し、添加中のITを20℃未満に維持しながら、1 M HCl水溶液(950mL, 0.95mol, 1.35当量)を20~40分間にわたって滴下することによってクエンチした(目標pH: 5~6)。得られた水性懸濁液をIT = 15~20℃で12時間エージングした。生成物を濾過し、H2O/MeOH 2:1(3 x 0.3L)で洗浄し、ロータリーエバポレーター(900~10mbar, 65℃浴温)で乾燥させて、バモロロン(241.5g, 0.68mol, 96%収率, >99% a/a, 98% w/w)が淡黄色固体(粗製1#1)として得られた。
【0105】
分析データ
LC/MSカラム: Zorbax RRHD SB-Aq, 2.1x50mm, 1.8μm
プログラム: G_005%B_TFA_0,800ml_2,00min
溶出剤A: 水/TFA 100:0.04, 溶出剤B: アセトニトリル
LC/MSのためのIPC調製
1mL H2O:MeCN 1:1中の10マイクロリットル
変換をバモロロンの形成に対するバモロロンアセテートの消費に関して決定した。
【0106】
2.4 再結晶
【0107】
10Lガラスdjリアクターにバモロロン(230g, 0.645mol, 1.0当量)を充填した。iPrOH(5L, 22体積)を添加した。懸濁液を加熱還流し(ジャケット温度ET = 97℃)、バモロロンの完全溶解が生じるまで撹拌した(このスケールで10~15分間)。
【0108】
完全溶解した後、透明黄色溶液を12時間かけてIT = 0~5℃へ徐々に冷却し、次いでIT = 0~5℃で1時間エージングした。再結晶生成物を濾過し、冷iPrOH(2 x 250mL)で洗浄し、ロータリーエバポレーター(900~10mbar, 65℃浴温)で乾燥させて、バモロロン(201g, 87%回収率, >99% a/a, 99% w/w)がオフホワイト色の光沢のある固体(結晶1#1)として得られた。
【0109】
還流温度で粗製バモロロンを完全に溶解するには高い希釈が必要であるが、イソプロパノール(iPrOH)は、(不純物の除去による)優れた純度向上特性を有する、再結晶に最適な溶媒であることがわかった。再結晶で満足のいく結果を得るためのより高い濃度は、イソプロパノールと水の混合物を使用して得ることができる。バモロロンの最大溶解度は、80:20(イソプロパノール:水)混合物の還流においてであると決定された。
【0110】
2.5 木炭処理による純度改善
バモロロンアセテート純度を改善するために、木炭処理が想定された。2つの選択肢が有用であることがわかった。
【0111】
選択肢1:単離されたバモロロンアセテートに対する木炭処理
HI工程(ELN293-1469.1)からのバモロロンアセテート(10g)をMeCN(100mL, 10体積)およびH2O(10mL, 1体積)中に懸濁した。懸濁液をIT = 60~65℃へ加熱し、バモロロンアセテートが完全に溶解するまで撹拌した。次いで、木炭(1.0g, 10% w/w)を添加し、IT = 60~65℃で1時間撹拌した。混合物をWhatmanガラスマイクロファイバーフィルターによって500mL丸底フラスコ中へ熱時濾過した。追加のH2O(90mL, 9体積)を徐々に添加して、バモロロンアセテートの結晶化を誘導した。懸濁液を0℃へ徐々に冷却し、1時間エージングした。白色固体を濾過し、追加のMeCN:H2O 1:4(2 x 10mL)で洗浄し、減圧下にてロタバップ(65℃)で長時間乾燥させた(9.0g, 90%回収率)。
【0112】
選択肢2:HI工程中の木炭処理
1Lガラスdjリアクターに8-DMアセテート(30.0g, 72.4mmol, 1.0当量)を充填した。トルエン(150mL, 5体積)を添加した。懸濁液をIT = 0~5℃へ冷却し、次いで、AcOH(75mL, 2.5体積)中の57%HI水溶液(65.0g, 38.2mL, 290mmol, 4.0当量)の溶液を蠕動ポンプによって45~60分間にわたって添加し、添加中のITを5℃未満に維持した。得られた暗紫色から褐色の溶液をIT = 3~5℃で24時間撹拌した。LC/MSによるIPCコントロールは、8-DMアセテート/中間体ヨードヒドリンからバモロロンアセテート/バモロロンへの>98%変換を示した。
【0113】
反応混合物を、ITを15℃未満に維持しながら、10~20分間にわたって25%Na2SO3水溶液(120mL, 4体積)を滴下することによってクエンチした。添加完了後、EtOAc(60mL, 2体積)を添加し、二相性混合物をIT = 15~20℃へ加温した。撹拌を停止し、相を分離した(有機相1、即ちOP1、および水相1、即ちAP1;目標pH AP1: 2;AP1を処分した)。25%Na2SO3水溶液(75mL, 2.5体積)をOP1へ添加し、二相性混合物をIT = 15~20℃で5分間撹拌し、撹拌を停止し、相を分離した(OP1およびAP2;目標pH AP2: 4~5;AP2を処分した)。25%Na2SO3水溶液(75mL, 2.5体積)をOP1へ添加し、二相性混合物をIT = 15~20℃で5分間撹拌し、撹拌を停止し、相を分離した(OP1およびAP3;目標pH AP3: 5~6;AP3を処分した)。H2O(30mL, 1.0体積)をOP1へ添加し、二相性混合物をIT = 15~20℃で5分間撹拌し、撹拌を停止し、相を分離した(OP1およびAP4;目標pH AP4: 5~6;AP4を処分した)。
【0114】
OP1を含有するダブルジャケット型リアクター(100~150mbar)へわずかな真空を適用し、MeCNを連続的に添加しながらトルエンを反応混合物から70℃ジャケット温度(ET)で留去し、目標残留トルエン値が達成されるまで蒸留を継続した(目標:反応混合の1H-NMRによる5%未満のトルエン。蒸留後のリアクター中の最終体積:約225mL(7.5体積))。
【0115】
トルエンが除去されると、真空をN2で破り、得られた微細懸濁液をIT = 20~25℃へ冷却した。この時点で、バモロロンの量をIPCによって評価した(比率: バモロロンアセテート対バモロロン: 75:25; x = 25% a/a)。DMAP(221mg, 1.81mmol, 0.025当量)を添加し、続いてAc2O(3.7g, 3.4mL, 36.2mmol, 0.5当量)をIT = 20~25℃で2~3分間にわたって徐々に添加した。Ac2Oの添加完了後、反応混合物をIT = 20~25℃で30分間撹拌した。LC/MSによるIPCコントロールは1% a/a未満のバモロロンを示した。
【0116】
反応混合物を、H2O(30mL, 1体積)を5~10分間にわたって徐々に添加することによってクエンチした。懸濁液をIT = 60~65℃へ加熱し、完全溶解が生じるまで撹拌した。次いで、木炭(3.0g, 10% w/w)を添加し、IT = 60~65℃で1時間撹拌した。混合物をWhatmanガラスマイクロファイバーフィルターによって1L丸底フラスコ中へ熱時濾過した。追加のH2O(195mL, 6.5体積)を徐々に添加して、バモロロンアセテートの結晶化を誘導した。懸濁液を0℃へ徐々に冷却し、1時間エージングした。白色固体を濾過し、追加のMeCN:H2O 1:4(2 x 40mL)で洗浄し、減圧下にてロタバップ(65℃)で長時間乾燥させた(18.7g, 46.9mmol, 65%収率, >99% a/a)。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
9,11エポキシステロイドからΔ9,11ステロイドを調製するための、ヨウ化水素酸の使用。
【請求項2】
Δ9,11ステロイドが、下記式Iのステロイドであり、
式中、
点線は単結合または二重結合であり;
R1はHまたはOHであり;
R2またはR3のうちの一方はCH3でありかつ他方はHであり、または両方ともHであり;かつ
XはH、ハロ、OR(ここで、RはHもしくはC(O)RIでありかつRIはCF3、C1~C6アルキルC1~C6アルコキシ、C5~C12シクロアルキル、アリール、もしくはヘテロアリールである)、またはNRIIである(ここで、NRIIは第3級アミンでありかつ第3級アミンは直鎖状もしくは環状部分構造の一部である)、
請求項1記載の使用。
【請求項3】
Δ9,11ステロイドが、下記式Ifのステロイドであり、
式中、
R3はCH3またはHであり;かつ
XはH、ハロ、OR(ここで、RはHもしくはC(O)RIでありかつRIはCF3、C1~C6アルキル、C5~C12シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールもしくはC1~C6アルコキシである)、またはNRIIである(ここで、NRIIは第3級アミンでありかつ第3級アミンは直鎖状もしくは環状部分構造の一部である)、
請求項1載の使用。
【請求項4】
Δ9,11ステロイドが、バモロロンまたはバモロロンアセテート
である、請求項1載の使用。
【請求項5】
下記式IのΔ9,11ステロイドを調製するための方法であって、
式中、
点線は単結合または二重結合であり;
R1はHまたはOHであり;
R2またはR3のうちの一方はCH3でありかつ他方はHであり、または両方ともHであり;かつ
XはH、ハロ、OR(ここで、RはHもしくはC(O)RIでありかつRIはCF3、C1~C6アルキル、C5~C12シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールもしくはC1~C6アルコキシである)、またはNRIIである(ここで、NRIIは第3級アミンでありかつ第3級アミンは直鎖状もしくは環状部分構造の一部である)
該方法は、記式IIの9,11エポキシステロイドをヨウ化水素酸HIで処理して、式Iの化合物を形成する工程を含み、
式中、
点線は単結合または二重結合であり;
R1はHまたはOHであり;
R2またはR3のうちの一方はCH3でありかつ他方はHであり、または両方ともHであり;かつ
XはH、ハロ、OR(ここで、RはHもしくはC(O)RIでありかつRIはCF3、C1~C6アルキル、C5~C12シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールもしくはC1~C6アルコキシである)、またはNRIIである(ここで、NRIIは第3級アミンである)、
前記方法。
【請求項6】
Δ9,11ステロイドが、下記式Idの化合物であり、
式中、
R2またはR3のうちの一方はCH3でありかつ他方はHであり、または両方ともHであり;かつ
XはH、ハロ、OR(ここで、RはHもしくはC(O)RIでありかつRIはCF3、C1~C6アルキル、C5~C12シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールもしくはC1~C6アルコキシである)、またはNRIIである(ここで、NRIIは第3級アミンでありかつ第3級アミンは直鎖状もしくは環状部分構造の一部である);
かつ、
9,11エポキシステロイドが、下記式IIdの化合物であり、
式中、
R2またはR3のうちの一方はCH3でありかつ他方はHであり、または両方ともHであり;かつ
XはH、ハロ、OR(ここで、RはHもしくはC(O)RIでありかつRIはCF3、C1~C6アルキル、C5~C12シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールもしくはC1~C6アルコキシである)、またはNRIIである(ここで、NRIIは第3級アミンでありかつ第3級アミンは直鎖状もしくは環状部分構造の一部である)、
求項5記載の方法。
【請求項7】
Δ9,11ステロイドが、バモロロンまたはバモロロンアセテート
より選択される化合物であり、かつ
9,11エポキシステロイドが、それぞれ、8-DMおよび8-DMアセテート
の化合物である、
請求項5載の方法。
【請求項8】
Δ9,11ステロイドが、有機溶媒中で、有機酸の存在下でまたは有機酸を添加せずに、HI水溶液を用いて調製され、処理が15℃未満の温度で行われる、請求項5載の方法。
【請求項9】
有機溶媒が、MeCN、CH2Cl2、もしくはトルエン;またはそれらの2つもしくは3つ全ての混合物であり、かつ
有機酸が酢酸である、
請求項8記載の方法。
【請求項10】
Δ9,11ステロイドが、トルエン中で、48~68wt%の濃度のHI水溶液を用いて調製される、請求項5載の方法。
【請求項11】
XがOHである場合、9,11エポキシステロイドをHIで処理する前に、9,11エポキシステロイドがアセチル化される、請求項5載の方法。
【請求項12】
9,11エポキシステロイドがアセチル基を有する場合、9,11エポキシステロイドをHIで処理した後に、Δ9,11ステロイドが脱アセチル化される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
Δ9,11ステロイドをiPrOHまたはiPrOHと水の混合物中で再結晶して、薬学的に純粋なΔ9,11ステロイドを得る工程をさらに含む、請求項5載の方法。
【請求項14】
99.5wt%純度またはそれ以上の精製バモロロンを形成するために、イソプロパノール中または水とイソプロパノールの混合物中で粗製バモロロンを再結晶する工程
を含む、バモロロンを精製する方法。
【請求項15】
請求項5~14のいずれか一項記載の方法によって製造された化合物。
【請求項16】
請求項13または14記載の方法によって製造された化合物。
【請求項17】
請求項15載の化合物を含む、薬学的組成物。
【請求項18】
請求項16記載の化合物を含む、薬学的組成物
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0032
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0032】
最も好ましくは、本発明の方法は、バモロロンおよびバモロロン-アセテートそれぞれを形成するために、8-DMまたは8-DM-アセテート
である9,11-エポキシ-ステロイドをヨウ化水素酸HIで処理する工程を含む。
[本発明1001]
9,11エポキシステロイドからΔ9,11ステロイドを調製するための、ヨウ化水素酸の使用。
[本発明1002]
Δ9,11ステロイドが、下記式Iのステロイドであり、
式中、
点線は単結合または二重結合であり;
R 1 はHまたはOHであり;
R 2 またはR 3 のうちの一方はCH 3 でありかつ他方はHであり、または両方ともHであり;かつ
XはH、ハロ、OR(ここで、RはHもしくはC(O)R I でありかつR I はCF 3 、C 1 ~C 6 アルキルもしくはC 1 ~C 6 アルコキシ、C 5 ~C 12 シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールである)、またはNR II である(ここで、NR II は第3級アミンでありかつ第3級アミンは直鎖状もしくは環状部分構造の一部である)、
本発明1001の使用。
[本発明1003]
Δ9,11ステロイドが、下記式Ifのステロイドであり、
式中、
R 3 はCH 3 またはHであり;かつ
XはH、ハロ、OR(ここで、RはHもしくはC(O)R I でありかつR I はCF 3 、C 1 ~C 6 アルキル、C 5 ~C 12 シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールもしくはC 1 ~C 6 アルコキシである)、またはNR II である(ここで、NR II は第3級アミンでありかつ第3級アミンは直鎖状もしくは環状部分構造の一部である)、
本発明1001または1002の使用。
[本発明1004]
Δ9,11ステロイドが、バモロロンまたはバモロロンアセテート
である、本発明1001~1003のいずれかの使用。
[本発明1005]
下記式IのΔ9,11ステロイドを調製するための方法であって、
式中、
点線は単結合または二重結合であり;
R 1 はHまたはOHであり;
R 2 またはR 3 のうちの一方はCH 3 でありかつ他方はHであり、または両方ともHであり;かつ
XはH、ハロ、OR(ここで、RはHもしくはC(O)R I でありかつR I はCF 3 、C 1 ~C 6 アルキル、C 5 ~C 12 シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールもしくはC 1 ~C 6 アルコキシである)、またはNR II である(ここで、NR II は第3級アミンでありかつ第3級アミンは直鎖状もしくは環状部分構造の一部である)
該方法は、式Iの化合物を形成するために、下記式IIの9,11エポキシステロイドをヨウ化水素酸HIで処理する工程を含み、
式中、
点線は単結合または二重結合であり;
R 1 はHまたはOHであり;
R 2 またはR 3 のうちの一方はCH 3 でありかつ他方はHであり、または両方ともHであり;かつ
XはH、ハロ、OR(ここで、RはHもしくはC(O)R I でありかつR I はCF 3 、C 1 ~C 6 アルキル、C 5 ~C 12 シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールもしくはC 1 ~C 6 アルコキシである)、またはNR II である(ここで、NR II は第3級アミンである)、
前記方法。
[本発明1006]
Δ9,11ステロイドが、下記式Idの化合物であり、
式中、
R 2 またはR 3 のうちの一方はCH 3 でありかつ他方はHであり、または両方ともHであり;かつ
XはH、ハロ、OR(ここで、RはHもしくはC(O)R I でありかつR I はCF 3 、C 1 ~C 6 アルキル、C 5 ~C 12 シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールもしくはC 1 ~C 6 アルコキシである)、またはNR II である(ここで、NR II は第3級アミンでありかつ第3級アミンは直鎖状もしくは環状部分構造の一部である);
かつ、
9,11エポキシステロイドが、下記式IIdの化合物であり、
式中、
R 2 またはR 3 のうちの一方はCH 3 でありかつ他方はHであり、または両方ともHであり;かつ
XはH、ハロ、OR(ここで、RはHもしくはC(O)R I でありかつR I はCF 3 、C 1 ~C 6 アルキル、C 5 ~C 12 シクロアルキル、アリール、ヘテロアリールもしくはC 1 ~C 6 アルコキシである)、またはNR II である(ここで、NR II は第3級アミンでありかつ第3級アミンは直鎖状もしくは環状部分構造の一部である)、
式Idの化合物を形成するためにヨウ化水素酸HIが使用される、
本発明1005の方法。
[本発明1007]
Δ9,11ステロイドが、バモロロンまたはバモロロンアセテート
より選択される化合物であり、かつ
9,11エポキシステロイドが、それぞれ、8-DMおよび8-DMアセテート
の化合物である、
本発明1005または1006の方法。
[本発明1008]
Δ9,11ステロイドが、有機溶媒中で、有機酸の存在下でまたは有機酸を添加せずに、HI水溶液を用いて調製され、処理が15℃未満の温度で行われる、本発明1005~1007のいずれかの方法。
[本発明1009]
有機溶媒が、MeCN、CH 2 Cl 2 、もしくはトルエン;またはそれらの2つもしくは3つ全ての混合物であり、かつ
有機酸が酢酸である、
本発明1008の方法。
[本発明1010]
Δ9,11ステロイドが、トルエン中で、48~68wt%の濃度のHI水溶液を用いて調製される、本発明1005~1009のいずれかの方法。
[本発明1011]
XがOHである場合、9,11エポキシステロイドをHIで処理する前に、9,11エポキシステロイドがアセチル化される、本発明1005~1010のいずれかの方法。
[本発明1012]
9,11エポキシステロイドをHIで処理した後に、本発明1015で得られたΔ9,11ステロイドが脱アセチル化される、本発明1011の方法。
[本発明1013]
本発明1002~1015のいずれかで得られた粗製Δ9,11ステロイドをiPrOHまたはiPrOHと水の混合物中で再結晶する工程
を含む、薬学的に純粋なΔ9,11ステロイドを調製するための本発明1005~1012のいずれかの方法。
[本発明1014]
99.5wt%純度またはそれ以上の精製バモロロンを形成するために、イソプロパノール中または水とイソプロパノールの混合物中で粗製バモロロンを再結晶する工程
を含む、バモロロンを精製する方法。
[本発明1015]
本発明1005~1014のいずれかの方法によって製造された化合物。
[本発明1016]
本発明1013または1014の方法によって製造された化合物。
[本発明1017]
本発明1015または1016の化合物を含む、薬学的組成物。
【国際調査報告】