(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】肛門直腸移行帯における組織再生能力を有する細胞集団、ならびにその単離方法および使用方法
(51)【国際特許分類】
A61K 35/12 20150101AFI20240725BHJP
C12N 5/074 20100101ALI20240725BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240725BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240725BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
A61K35/12
C12N5/074
A61P1/00
A61P1/04
A61P29/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508787
(86)(22)【出願日】2022-08-12
(85)【翻訳文提出日】2024-03-18
(86)【国際出願番号】 IB2022000456
(87)【国際公開番号】W WO2023017316
(87)【国際公開日】2023-02-16
(32)【優先日】2021-08-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524055458
【氏名又は名称】クーリレアム ディスカバリー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】カルラ, プリティ
(72)【発明者】
【氏名】ムーア, ジェフリー ジー.
【テーマコード(参考)】
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA93X
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB49
4C087NA14
4C087ZA66
4C087ZB11
(57)【要約】
痔瘻(例えば、クローン病に関連する難治性複雑肛門周囲瘻孔または未知の病因の難治性複雑肛門周囲瘻孔)を処置するための、肛門直腸移行帯(ATZ)幹細胞(多分化能性細胞および前駆細胞を含む)の組成物が、本明細書において提供される。薬学的に受容可能なキャリア中にある肛門直腸移行帯幹細胞(多分化能性細胞および前駆細胞を含む)の医薬組成物もまた、提供される。その細胞は、同種他家由来細胞または自己由来細胞であり得、インビトロで増殖したATZ(eATZ)幹細胞であり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された肛門直腸移行帯(ATZ)幹細胞と薬学的に受容可能なキャリアとを含む、痔瘻を処置するための組成物。
【請求項2】
前記ATZ幹細胞が前駆細胞を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ATZ幹細胞が多分化能性幹細胞を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ATZ幹細胞が内胚葉細胞、中胚葉細胞、外胚葉細胞、またはそれらの組合せへ分化し得る、請求項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記ATZ幹細胞が、インビトロで増殖したATZ(eATZ)細胞である、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記ATZ幹細胞が、CD34、CD117、およびCD184からなる群より選択される少なくとも1種のマーカーを発現する、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記ATZ幹細胞が、検出可能なレベルのCD45を発現しない、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記ATZ幹細胞がNANOGおよびOCT4Aのうちの少なくとも1種を発現する、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記細胞が外来性生体適合性足場と組み合わせられている、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記足場が合成足場を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記足場が生物学的足場を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
前記足場がコラーゲンを含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記ATZ幹細胞がブタ細胞である、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記ATZ幹細胞がヒト細胞である、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
凍結保存培地をさらに含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
凍結保存された、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物を中に配置された状態で含む、医薬品剤形。
【請求項18】
請求項1~15のいずれか一項に記載の医薬組成物を調製する方法であって、
(a)ATZ組織を対象から取得する工程;
(b)該ATZ組織を酵素で酵素消化して細胞懸濁物を調製する工程;
(c)必要に応じて、該細胞懸濁物の少なくとも一部と凍結保存培地とを組み合わせ、該細胞懸濁物を凍結保存する工程;および
(d)工程(b)または必要に応じた工程(c)の細胞懸濁物と薬学的に受容可能なキャリアとを組み合わせる工程
を含む、方法。
【請求項19】
前記細胞懸濁物がATZ幹細胞を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記ATZ幹細胞が多分化能性幹細胞を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ATZ幹細胞が前駆細胞を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記ATZ幹細胞が内胚葉細胞、中胚葉細胞、外胚葉細胞、またはそれらの組合せへ分化し得る、請求項20~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記ATZ幹細胞が、CD34、CD117およびCD184からなる群より選択される少なくとも1種のマーカーを発現する、請求項21~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記ATZ幹細胞が、検出可能なレベルのCD45を発現しない、請求項20~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記ATZ幹細胞がNANOGおよび/またはOCT4Aを発現する、請求項20~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記懸濁物中のATZ幹細胞がインビトロで増殖される、請求項18~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
工程(d)の間に、前記細胞懸濁物中の細胞が外来性生体適合性足場と組み合わせられる、請求項18~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記足場が合成足場である、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記足場が生物学的足場である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記足場がコラーゲンベースの足場を含む、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記対象が痔瘻患者であり、前記ATZ幹細胞が自己由来細胞である、請求項18~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記対象がドナーであり、前記ATZ幹細胞が痔瘻患者と同種他家由来である、請求項18~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記対象がヒトである、請求項18~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
請求項18~33のいずれか一項に記載の方法によって作製された、医薬組成物。
【請求項35】
痔瘻を処置する必要のある患者において痔瘻を処置する方法であって、
該痔瘻に、有効量の請求項1~16または請求項34のいずれか一項に記載の医薬組成物あるいは請求項17に記載の剤形を投与し、それにより該痔瘻を処置する工程
を含む、方法。
【請求項36】
前記投与工程が前記痔瘻を閉鎖または治癒させる、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記痔瘻が線維化組織の増殖によって閉鎖または治癒される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記痔瘻が肛門周囲瘻孔である、請求項35~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記痔瘻が難治性瘻孔である、請求項35~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記患者がクローン病を有する、請求項35~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記対象が未知の病因の痔瘻を有する、請求項35~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
痔瘻の処置における使用のための請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(背景)
胃腸組織の移行帯は、2つの別々の上皮組織型の間に存在する。肛門直腸移行組織は、内胚葉発生起源の直腸円柱上皮と、外胚葉発生起源の肛門重層扁平非角化上皮との接合部にある(McNairnおよびGuasch(2011)、「Epithelial transition zones:merging microenvironments,niches,and cellular transformation」、Eur J Dermatol、21(補遺2):21~8)。マウスおよびヒトの肛門直腸移行帯組織の組織病理学的標識研究が、基底細胞マーカーであるp63を発現する細胞;単層円柱細胞マーカーであるサイトケラチン7(CK7)を発現する細胞(Yangら(2015)「Microanatomy of the cervical and anorectal squamocolumnar junctions:a proposed model for anatomical differences in HPV related cancer risk」、Mod Pathol、28(7):994~1000);ならびに幹細胞および前駆細胞のマーカーであるCD34を発現する細胞を同定した(McNairn、上記)。マウスにおけるさらなる研究が、標識保持細胞アッセイおよび免疫組織化学を使用して、p63、CK7、CD34の発現を確認し、多能性幹細胞マーカーであるSOX2の発現を同定して、肛門直腸移行帯における幹細胞および前駆細胞の存在を指示した(Runckら(2010)「Identification of epithelial label-retaining cells at the transition between the anal canal and the rectum in mice」、Cell Cycle、9(15):3039~45)。
【0002】
クローン病患者における瘻孔のほぼ85%が、肛門直腸移行帯(歯状線とも呼ばれる)から生じる(Sheikh(2012)「Controversies in fistula in ano」、Indian J.Surg.、74(3):217~220)。肛門周囲瘻孔形成疾患は、クローン病において40%までの患者が罹患する不治の衰弱性状態である。未知の病因の肛門周囲瘻孔およびクローン病患者の肛門周囲瘻孔は、一般集団において1:10,000の頻度を有する(Eglintonら(2012)「The spectrum of perianal Crohn’s in a population-based cohort」、Dis.Colon Rectum、55(7):773~777)。トンネルが、直腸と肛門管との接合部から始まって、瘻孔を形成する(Eglinton、上記)。その瘻孔のトンネルは、筋肉、脂肪を通り、臀部の皮膚で身体の外側に開口する。その瘻孔が腸内容物に曝されると、組織片(肉芽組織と呼ばれる)の定期的除去を必要とする慢性炎症状態を惹起する。
【0003】
清浄にした瘻孔を永続的に治癒する処置は存在しない。その管を埋めるための体積を保持する足場製品、例えば、フィブリンのりは膿瘍形成(Buchananら(2003)「Efficacy of fibrin sealant in the management of complex anal fistula:a prospective trial」、Dis Colon Rectum、46(9):1167~1174)を、例えば、ブタプラグは自然排出(Amraniら(2008)「The Surgisis AFP anal fistula plug:a new and reasonable alternative for the treatment of anal fistula」、Gastroenterol Clin Biol、32(11):946~948)を、それぞれ惹起する傾向がある。
【0004】
現在の処置は、瘻孔清浄化の間の期間を延長する症状を減少させる。抗生物質、免疫抑制剤、およびTNF-αインヒビターは、限定的な緩和を提供すると同時に、副作用および不満足な治療結果を有する(KumarおよびThompson(2013)「Endoscopic therapy for postoperative leaks and fistulae」、Gastrointest.Endosc.Clin.N.Am.、23(1):123~136;Swaminathら(2014)「Use of methotrexate in inflammatory bowel disease in 2014:A User’s Guide」、World J.Gastrointest.Pharmacol.Ther、5(3):113~121)。同種他家由来脂肪由来間葉幹細胞(AdMSCまたはASC、Alofisel(商標)、ダルバドストロセル)を瘻管に沿って組織に直接注入することは、単一の比較臨床試験においてプラセボ対照を14%上回る追加的利益を示し、1年の追跡調査後に統計的に有意な効果はなかった(NICE Technology評価ガイダンス[TA556])。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】McNairnおよびGuasch(2011)、「Epithelial transition zones:merging microenvironments,niches,and cellular transformation」、Eur J Dermatol、21(補遺2):21~8
【非特許文献2】)Yangら(2015)「Microanatomy of the cervical and anorectal squamocolumnar junctions:a proposed model for anatomical differences in HPV related cancer risk」、Mod Pathol、28(7):994~1000
【非特許文献3】Runckら(2010)「Identification of epithelial label-retaining cells at the transition between the anal canal and the rectum in mice」、Cell Cycle、9(15):3039~45
【非特許文献4】Sheikh(2012)「Controversies in fistula in ano」、Indian J.Surg.、74(3):217~220)
【非特許文献5】Eglintonら(2012)「The spectrum of perianal Cronhn’s in a population-based cohort」、Dis.Colon Rectum、55(7):773~777)
【非特許文献6】Buchananら(2003)「Efficacy of fibrin sealant in the management of complex anal fistula:a prospective trial」、Dis Colon Rectum、46(9):1167~1174
【非特許文献7】Amraniら(2008)「The Surgisis AFP anal fistula plug:a new and reasonable alternative for the treatment of anal fistula」、Gastroenterol Clin Biol、32(11):946~948
【非特許文献8】KumarおよびThompson(2013)「Endoscopic therapy for postoperative leaks and fistulae」、Gastrointest.Endosc.Clin.N.Am.、23(1):123~136
【非特許文献9】Swaminathら(2014)「Use of methotrexate in inflammatory bowel disease in 2014:A User’s Guide」、World J.Gastrointest.Pharmacol.Ther、5(3):113~121
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(要旨)
本発明は、瘻孔を処置する必要のある対象において瘻孔を処置することにおける使用のための組成物、瘻孔の処置において有用な組成物を作製する方法、およびそのような組成物で瘻孔を処置する方法の発見に、部分的には基づく。
【0007】
一局面において、瘻孔(例えば、痔瘻)を処置するための組成物が本明細書において提供され、その組成物は、単離された肛門直腸移行帯(ATZ)細胞と薬学的に受容可能なキャリアとを含む。そのATZ細胞は、多分化能性幹細胞および/または前駆細胞を含む。その細胞は、同種他家由来細胞または自己由来細胞であり得る。特定の実施形態において、そのATZ細胞は、内胚葉細胞(例えば、SOX17を発現する)、中胚葉細胞(例えば、BRACHURYを発現する)、外胚葉細胞(例えば、PAX6および/もしくはNESTINを発現する)、またはそれらの組合せに分化し得る、ATZ幹細胞を含む。そのATZ幹細胞は、インビトロで増殖したATZ(eATZ)幹細胞であり得る。
【0008】
特定の実施形態において、そのATZ幹細胞は、例えば、(例えば、細胞表面マーカーに結合する、抗体もしくは他のリガンドを用いて)フローサイトメトリーによって検出された場合に、CD34、CD117、および/またはCD184のうちの1つもしくは複数を発現する。あるいは、またはさらに、そのATZ幹細胞は、例えば、フローサイトメトリーによって検出された場合に、検出可能なレベルのCD45を発現しない。さらに、特定の実施形態において、そのATZ幹細胞はNANOGおよび/または0CT4Aを発現する。
【0009】
そのATZ細胞は、外来性生体適合性足場(例えば、合成足場または生物学的足場)と組み合わせられ得る。状況に依存して、その足場は、コラーゲンベースの足場を含み得る。
【0010】
そのATZ細胞は、ブタ細胞またはヒト細胞であり得る。
【0011】
特定の実施形態において、その組成物は凍結保存されている。その凍結保存を容易にするために、その組成物は、適切な凍結保存培地を含み得る。
【0012】
別の局面において、本発明は、本明細書において開示される組成物を含む医薬品剤形を提供し、必要に応じて、その剤形は容器またはカプセル中に配置されている。
【0013】
別の局面において、本発明は、医薬組成物(例えば、本明細書において開示される組成物のいずれか)を調製する方法を提供する。その方法は、(a)ATZ組織をドナー(例えば、ブタドナーまたはヒトドナー)から収集する工程;(b)その組織を酵素消化して細胞懸濁物を調製する工程;(c)必要に応じて、その細胞懸濁物の少なくとも一部と凍結保存培地とを組み合わせ、その細胞懸濁物を凍結保存する工程;および(d)工程b)または必要に応じた工程(c)の細胞懸濁物と薬学的に受容可能なキャリアとを組み合わせる工程を含む。
【0014】
その細胞懸濁物はATZ細胞を含み、このATZ細胞は多分化能性幹細胞および/または前駆細胞を含み得る。特定の実施形態において、そのATZ幹細胞は、内胚葉細胞(例えば、SOX17を発現する)、中胚葉細胞(例えば、BRACHURYを発現する)、外胚葉細胞(例えば、PAX6および/もしくはNESTINを発現する)、またはそれらの組合せへ分化し得る。
【0015】
状況に依存して、そのATZ幹細胞は、例えば、フローサイトメトリーによって検出された場合に、CD34、CD117、およびCD184のうちの1つまたは複数を発現する。あるいは、またはさらに、そのATZ細胞は、例えば、フローサイトメトリーによって検出された場合に、検出可能なレベルのCD45を発現しない。さらに、そのATZ幹細胞はNANOGおよび/または0CT4Aを発現し得る。そのATZ細胞は同種他家由来細胞または自己由来細胞であり得る。
【0016】
特定の実施形態において、その懸濁物中の細胞(例えば、ATZ幹細胞)は、インビトロで増殖される。
【0017】
状況に依存して、上記の方法の工程(d)において、その細胞懸濁物中の細胞は、外来性生体適合性足場(例えば、合成足場または生物学的足場)と組み合わせられる。特定の実施形態において、その足場は、コラーゲンベースの足場を含む。
【0018】
別の局面において、本発明は、本明細書において開示される方法によって作製された医薬組成物を提供する。
【0019】
別の局面において、本発明は、瘻孔(例えば、痔瘻および/または難治性瘻孔)を処置する必要のある対象において瘻孔を処置する方法を提供し、その方法は、その瘻孔に、有効量の本明細書において開示される医薬組成物または剤形を投与し、それによりその瘻孔を処置する工程を含む。
【0020】
一部の実施形態において、その方法は、その瘻孔を、例えば、新たな線維化組織で閉鎖する。一部の実施形態において、その対象は、クローン病を有するか、または未知の病因の瘻孔を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、ブタ組織からの肛門直腸移行帯陰窩の単離を示し:(a)切除した結腸直腸組織を示し;(b)露出した粘膜上皮を示し、(c)切除した歯状線を示し、(d)新たに単離したATZ陰窩を示し、(e)新たに単離したATZ陰窩を示し、(f)新たに単離したATZ陰窩を示し、(g)新たに単離した二分枝状ATZ陰窩を示し、(h)新たに単離したATZ粘膜下腺を示し、(i)新たに単離したATZ粘膜下腺を示す。
【
図2】
図2は、クローン病患者組織からの肛門直腸移行帯陰窩の単離を示し:(a)切除した肛門直腸組織を示し、(b)切除した粘膜上皮を示し、(c)新たに単離したATZ陰窩の明視野像を示し、(d)新たに単離したATZ陰窩の明視野像を示す。
【
図3A】
図3は、(a)ブタ胃腸(GI)組織における陰窩オルガノイド発達、ならびに(b)クローン病患者の直腸およびATZ組織における陰窩オルガノイド発達を示す。
【
図4A】
図4は、直腸陰窩と比較して増加した、ブタATZ陰窩単一細胞調製物の前駆能力を示す。
図4(a)は、4週間にわたるブタATZ陰窩およびブタ直腸陰窩の増殖を示す。
図4(b)は、直腸細胞と比較して増加した、ATZ細胞に由来する陰窩オルガノイドの2か月にわたるプレーティング効率を示す。細胞を単離し、1か月後に再プレーティングした。
【
図5A-B】
図5は、ブタおよびクローン病患者に由来する新たに単離した陰窩および陰窩オルガノイドにおける、幹細胞および前駆細胞のマーカーのタンパク質発現を示す。
図5(a)は、ブタ胃腸(GI)組織に由来する新鮮なブタ陰窩由来単一細胞におけるCD117発現を示す。
図5(b)は、ブタ胃腸(GI)組織に由来する新鮮なブタ陰窩由来単一細胞におけるCD34発現を示す。
図5(c)は、新鮮なブタATZ陰窩細胞におけるCD34およびCD117の発現のフローサイトメトリーによる二重標識を示す。
図5(d)は、ブタ陰窩オルガノイドにおける幹細胞および前駆細胞のマーカーの発現を示す。小腸(SI)が左の棒で示され、直腸が中央の棒で示され、ATZが右の棒で示されている。
図5(e)は、新鮮なブタATZ陰窩由来細胞における、示されている発生系譜マーカーの発現を示す。
図5(f)は、クローン病患者の直腸陰窩由来オルガノイドにおける幹細胞および前駆細胞のマーカーの発現を示す。
【
図6A】
図6は、ブタ肛門直腸移行帯の新たに単離した陰窩および陰窩オルガノイドからのmRNAプロファイリングを示す。
図6(a):新たに単離したブタATZ陰窩細胞のmRNAプロファイリング。
図6(b)は、ブタATZ陰窩細胞に由来するオルガノイドのmRNAプロファイリングを示す。
【
図7A-B】
図7は、ブタATZ陰窩幹細胞増殖を促進するための14日目の増殖培地を評価するための幹細胞および前駆細胞のマーカーのフローサイトメトリー解析を示し、
図7(a)はCD117発現を示し、
図7(b)はBrachyury発現を示し、
図7(c)はSOX17発現を示す。
【
図8】
図8は、ブタATZ陰窩細胞が内胚葉系列の成熟細胞を生成することを示す。
図8(a)~
図8(d)は、それぞれ、1日目から、4日目、7日目、および12日目のオルガノイド発達の明視野像を示す。
図8(e)~
図8(h)は、オルガノイドの核のDAPI染色および免疫細胞化学の画像を示す。
図8(e)はリソソーム発現を示し、
図8(f)はKi67発現を示し、
図8(g)はMuc-2発現を示し、
図8(h)はCK18発現を示す。
【
図9】
図9は、0日目、7日目、および14日目のATZオルガノイドにおける内胚葉マーカーのフローサイトメトリー解析を示す。
【
図10】
図10は、ブタATZ陰窩細胞が中胚葉系譜の成熟細胞を生成することを示す。
図10(a)~
図10(d)は血管様発達の明視野像を示し、
図10(a)は0日目の未分化ATZ単一細胞を示し、
図10(b)は3日目のクラスターを形成し始めたATZ単一細胞を示し、
図10(c)は8日目の形成し始めた血管様構造を示し、
図10(d)は10日目の形成中の血管様構造のネットワークを示し、
図10(e)は、CD31を発現する内皮様細胞のDAPI染色した核および免疫細胞化学を示し、
図10(f)は、CD31を発現する血管様細胞のDAPI染色した核および免疫細胞化学を示す。
【
図11】
図11は、ブタATZ陰窩細胞が中胚葉系譜の成熟細胞を生成することを示す。
図11は、0日目、7日目、および14日目のATZオルガノイドにおける、中胚葉マーカーであるBrachyuryおよびCD31のフローサイトメトリー解析を示す。
【
図12A】
図12は、ブタATZ陰窩細胞が外胚葉系譜の成熟細胞を生成することを示す。
図12(a)は、KFSMにおいて増殖した肛門皮膚およびATZ陰窩からのケラチノサイト発達の明視野像を示す。
図12(b)は、肛門皮膚培養物におけるK14マーカーおよびK15マーカーの免疫細胞化学を示す。
図12(c)は、ATZ陰窩培養物におけるK14マーカーおよびK15マーカーの免疫細胞化学を示す。
図12(d)は、0日目、7日目、および14日目のATZ培養細胞における、外胚葉マーカーであるPAX6、NESTIN、およびCK14のフローサイトメトリー解析を示す。
【
図13A】
図13は、0日目、7日目、および14日目の3種の発生系譜における分化を促進するための培地における、ブタ小腸(SI)陰窩単一細胞の明視野像を示し、
図13(a)は内胚葉培地(OGM)における培養を示し、
図13(b)は中胚葉培地(MethoCult)における培養を示し、
図13(c)は外胚葉培地(KFSM)における培養を示す。
【
図14A】
図14は、ブタATZ陰窩単一細胞の多能性を試験するためのインビトロ胚様体アッセイの結果を示す。
図14(a)はATZ胚様体発達の明視野像を示す。
図14(b)はATZ胚様体のアルカリホスファターゼ染色を示す。
図14(c)は、多能性幹細胞マーカーであるSSEA4およびOCT4の発現についてのATZ胚様体の免疫染色を示す。
図14(d)は、多能性幹細胞マーカーであるSOX2およびTRA-1-60の発現によるATZ胚様体の免疫染色を示す。DAPIを核染色のために使用した。
【
図15A】
図15は、合成足場対照(PeptiGelまたは「PG」)とのATZ陰窩オルガノイドのインビトロでの生体適合性を示す。
図15(a)は、2%、5%、および10%のPGまたはMatrigel(登録商標)マトリックス足場対照中で増殖させて19日目まで培養した、ATZオルガノイドの明視野像を示し、
図15(b)は、PeptiGelまたはMatrigel(登録商標)マトリックス中で培養して24日目まで培養中のATZオルガノイドの数を示す。
【
図16】
図16は、PeptiGelとのATZオルガノイドの相互作用の顕微鏡写真を示し、
図16(a)はAlpha 4 RGDを示し、
図16(b)はAlpha 4 IKVAVを示し、
図16(c)はAlpha 4 YIGSRを示し、
図16(d)はAlpha 4 GFOGERを示し、
図16(e)はAlpha 4 IKVAV+YIGSRを示し、
図16(f)はMatrigelを示す。
【
図17】
図17は、ブタ肛門周囲瘻孔の作製および処置の模式図を示す。
【
図18】
図18(a)~
図18(d)は、ブタモデルにおける研究のための肛門周囲瘻孔の作製を示す。
【
図19】
図19は、瘻管の処置後90日目のブタ瘻管の横断面のH&E染色による組織学的評価を示し、
図19(a)は処置なし対照を示し、
図19(b)はヒドロゲル足場対照(PeptiGel)を示し、
図19(c)はATZ細胞+PeptiGel足場を示す。
【
図20】
図20は、処置後90日目のブタ瘻孔の組織学的評価の例を示す。
図20(a)は、ATZ細胞+PeptiGel処置を示し:α-平滑筋アクチン免疫組織化学が血管を検出している。
図20(b)は、ATZ細胞+PeptiGel処置を示す。ピクロシリウスレッド染色をコラーゲンのために使用した(偏光下で可視化した)。
【
図21A-B】
図21は、実施例13~実施例14のブタ痔瘻モデルにおける「処置なし対照」瘻管の3つの画像(a)~(c)を示す。
【
図22A-B】
図22は、実施例13~実施例14のブタ痔瘻モデルにおける「処置なし対照」瘻管の3つの画像(a)~(c)を示す。
【
図23A-B】
図23は、実施例13~実施例14のブタ痔瘻モデルにおける「Permacol足場」のみの処置の3つの画像(a)~(c)を示す。
【
図24A-B】
図24は、実施例13~実施例14のブタ痔瘻モデルにおける「ATZ細胞+Permacol足場」処置の3つの画像(a)~(c)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(詳細な説明)
(定義)
本明細書において使用される場合、以下の用語および句は、以下に示される意味を有する。別に説明されない限りは、本明細書において使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。
【0023】
本明細書において使用される場合、用語「肛門直腸移行帯」または「ATZ」とは、下にある肛門上皮の中断のない扁平上皮および歯状(または櫛状)線と、上にある中断のない直腸円柱上皮との間に挟まれた組織を指す。歯状線とは、肛門管上部と肛門管下部との間の接合部である。これらの2つの領域の間には多くの差異が存在し、その差異としては、その発生起源、神経支配、静脈供給および動脈供給、ならびにリンパ供給が挙げられる。歯状線より上では、肛門管は、内胚葉起源を有し、単層円柱上皮により覆われている。歯状線より下では、肛門管は、外胚葉起源を有し、主に重層扁平上皮により覆われている。ATZは、典型的には1mm~4mmであり、当業者によって容易に同定および生検され得る(例えば、
図1を参照のこと)。
【0024】
本明細書において使用される場合、用語「肛門直腸移行帯細胞」または「ATZ細胞」とは、肛門直腸移行帯組織から生じる多分化能性幹細胞(すなわち、分裂によって自己再生し、特定の組織または器官中に存在する複数の特殊化した細胞型へと発達する能力を有する細胞)、前駆細胞、ならびに他の細胞型を含む、陰窩、粘膜下腺、および他の上皮細胞を含む、肛門直腸移行帯組織由来の細胞の混合集団を指す。多分化能性ATZ細胞は、内胚葉細胞(例えば、腸粘膜)、中胚葉細胞(例えば、血管)、および/または外胚葉細胞(例えば、皮膚)を含む複数の体細胞系列へ分化する能力を有する、幹細胞である。
【0025】
用語「陰窩(crypt)」とは、リーベルキューン小窩を指し、これは、腸粘膜内層表面の下にある構造であり、生涯を通して腸粘膜を連続的に再生することを担う幹細胞を含む。
【0026】
本明細書において使用される場合、用語「幹細胞」とは、種々の型の細胞へ分化し無限に増殖して同じ幹細胞をさらに生成(すなわち、自己再生)し得る、未分化細胞または部分的に分化した細胞を指す。
【0027】
本明細書において使用される場合、用語「前駆細胞」とは、単一の細胞型または系譜へ分化する能力を有する幹細胞を指し、前駆ATZ細胞という用語は、ATZに由来する前駆細胞を意味する。
【0028】
本明細書において使用される場合、用語「多分化能性(multipotent)細胞」とは、少なくとも2種の細胞型または系譜へ分化する能力を有する幹細胞を指し、多分化能性ATZ細胞という用語は、ATZに由来する多分化能性細胞を意味する。
【0029】
本明細書において使用される場合、用語「多能性(pluripotent)細胞」とは、3種の主要細胞群(すなわち、外胚葉、中胚葉および内胚葉)の各々へ分化する能力を有する幹細胞を指し、多能性ATZ細胞という用語は、ATZに由来する多分化能性細胞を意味する。
【0030】
本明細書において使用される場合、用語「増殖」および「増殖する」とは、有糸分裂による細胞数の増加を指す。
【0031】
用語「分化」とは、さらなる分裂も分化も不可能な最終分化細胞になることにより特殊化していてその最終分化細胞により近い細胞に関連することが既知であるマーカーを発現する細胞の形成を指す。例えば、血液学的状況において、分化は、多細胞系譜の機能的な細胞(例えば、赤血球、血小板、顆粒球、マクロファージ)の集団において観察され得る。用語「さらなる」分化または「より高」分化とは、さらなる分裂も分化も不可能な最終分化細胞になることに、それらが培養された元の細胞よりも特殊化していてその細胞よりも近い、細胞を指す。用語「最終分化」とは、さらなる分裂も分化も不可能な最終分化細胞になった細胞を指す。
【0032】
用語「eATZ細胞」とは、例えば、無菌の緩衝化生理食塩水溶液中にあり、幹細胞移植のために増殖された肛門直腸移行帯の幹細胞および前駆細胞を含む、細胞懸濁物を指す。細胞に言及する場合に本明細書において使用される用語「増殖された」とは、当該分野におけるその通常に意味を有すると、すなわち、インビトロで増殖された細胞と、考えられるべきである。eATZ細胞は、増殖されていないATZ細胞の少なくとも1つの生物学的機能(代表的には、標準的な培養条件下で陰窩オルガノイドを形成する能力)を保持する細胞集団を提供するように増殖され得る。その増殖した細胞集団は、1つまたは複数の細胞型へ分化する能力を保持し得る。一部の実施形態において、そのeATZ細胞は、CD34、CD117、CD184、OCT4、NANOG、SOX17、BRACHURY、PAX6およびNESTINからなる群より選択される、ATZ幹細胞の少なくとも1種のマーカーを保持する。
【0033】
用語「細胞組成物」とは、細胞の調製物を指し、その調製物は、その細胞に加えて、細胞培養培地などの非細胞成分(例えば、タンパク質、アミノ酸、核酸、ヌクレオチド、補酵素、抗酸化物、金属など)を含み得る。さらに、その細胞組成物は、その細胞成分の増殖にも生存能力にも影響を与えないが特定の形式で(例えば、封入のためのポリマーマトリックスまたは医薬調製物として)その細胞を提供するために使用される、成分を有し得る。
【0034】
「マーカー」とは、細胞表現型を同定するためにその存在、濃度、活性、またはリン酸化状態が検出および使用され得る、生物学的分子を指す。
【0035】
「外来性生体適合性足場」とは、体液および気体の輸送を可能にすることが意図される三次元型の、多孔性または繊維状または透過性の、体積を保持する生体材料であり、最小限の炎症および毒性で細胞相互作用を可能にする。必要に応じて、そのような足場は、生分解性である。足場の例としては、生物学的足場(例えば、ラミニンベースの足場またはコラーゲンベースの足場)および合成足場(例えば、非生物学的ポリマー)が挙げられ得る。足場は、糸状形態(thread)、シート、ペースト、粉末または液体という物理的形態であり得る。足場は、インビトロおよびインビボで使用され得る。
【0036】
用語「瘻孔」とは、通常は2つの内部器官の間にあるかまたは内部器官から体表面へ通じる、異常な通路または連通または接続を指す。瘻孔の例としては、肛門周囲瘻孔、肛門直腸瘻または痔瘻、頸瘻、腸腟瘻、および直腸腟瘻が挙げられるが、それらに限定はされない。本明細書において使用される場合、用語「痔瘻」とは、肛門周囲瘻孔、肛門直腸瘻、および痔瘻を含む。
【0037】
単「管」(single ”tract”)瘻孔または単純瘻孔とは、1つの内部開口部および1つの外部開口部を有する。「複数の管(multiple tract)」を有する瘻孔は、1つよりも多い外部開口部および/または1つよりも多い内部開口部を有する。多管(multiple tract)瘻孔は、しばしば、別々の分枝を有する。各外部開口部は、典型的には管(tract)を示す。
【0038】
「複雑肛門周囲瘻孔」とは、(i)高位筋間起点、括約筋貫通起点、括約筋外起点もしくは括約筋上起点;(ii)外部開口部;または(iii)(associated collections)のうちの1つもしくは複数を有する、肛門周囲瘻管である。一部の実施形態において、その複雑肛門周囲瘻孔は、2つ以上の内部開口部および3つ以上の外部開口部を有し得る。一部の実施形態において、その複雑肛門周囲瘻孔は、本開示にしたがう処置の前に少なくとも3週間、少なくとも4週間、少なくとも5週間、少なくとも6週間またはそれよりも長く、排出中であり得る。
【0039】
本明細書において使用される句「薬学的に受容可能」とは、健全な医学的判断の範囲内において、過度もしくは受容不能な毒性も刺激もアレルギー反応も他の問題も合併症も伴わずにヒトおよび動物の組織と接触して使用するために適切であり、妥当なベネフィット/リスク比に釣り合っている、化合物、材料、組成物、および/または剤形を指す。
【0040】
本明細書において使用される句「薬学的に受容可能なキャリア」とは、対象化合物を身体のある器官もしくは部分から身体の別の器官もしくは部分へと運搬または輸送することに関与する、薬学的に受容可能な材料、組成物または媒体(vehicle)(例えば、液体もしくは固体の、充填剤、希釈剤、賦形剤、または溶媒を封入する材料)を意味する。各キャリアは、その製剤の他の成分と適合性であり患者に対して有害ではないという意味で、「受容可能」でなければならない。
【0041】
本明細書において使用される用語「表現型」とは、細胞の観察可能な特徴(例えば、サイズ、形態、RNA発現、タンパク質発現、または他の特性)を指す。
【0042】
本明細書において使用される場合、用語「難治性」とは、標準的な処置に対する抵抗性を意味する。本明細書において記載される瘻孔の場合、難治性瘻孔は、先行技術の処置(抗生物質の投与、免疫抑制剤の投与、TNF-αインヒビターの投与、メトトレキサートの投与、または体積を保持する足場製品(例えば、フィブリンシーラント)の瘻管への直接的導入、瘻孔プラグの瘻管への直接的導入、脂肪由来間葉幹細胞(例えば、Alofisel(商標)、ダルバドストロセル)の瘻管への直接的導入が挙げられるが、これらに限定はされない)によって治癒も閉鎖もされない、瘻孔を含み得る。一部の実施形態において、難治性瘻孔は、その瘻孔の治癒または閉鎖を促進するために本発明によって首尾よく処置され得る。
【0043】
(多分化能性ATZ細胞および前駆ATZ細胞ならびにオルガノイド組成物)
本明細書において記載される多分化能性ATZ細胞および/または前駆ATZ細胞は、初代ATZ組織に由来する単一細胞(または多細胞)調製物として、単離され得る。本明細書において記載されるATZ細胞(多分化能性ATZ細胞および前駆ATZ細胞を含む)は、生検により取得された腸陰窩に由来し得るか、またはATZ細胞からエクスビボで分化したオルガノイド構造に由来し得る。一部の実施形態において、その多分化能性ATZ細胞および前駆ATZ細胞は、単一の初代ATZ細胞または解離ATZ陰窩細胞に由来する、オルガノイドから取得される。
【0044】
本明細書において記載される処置の方法における使用のために、その多分化能性ATZ細胞または前駆ATZ細胞は、好ましくは、ヒト患者に由来する自己由来細胞またはヒトドナーに由来する同種他家由来細胞(好ましくは、移植片対宿主免疫反応もしくは宿主対移植片免疫反応を減少または回避するために組織適合性である)である。あるいは、その多分化能性ATZ細胞または前駆ATZ細胞は、他の哺乳動物種に由来し得、アロ反応性を減少または排除するために当該分野で公知の方法(例えば、MHCクラスI遺伝子および/もしくはMHCクラスII遺伝子ならびに/またはβ2-ミクログロブリン遺伝子をノックアウトするための遺伝子編集)によって改変され得る。
【0045】
一部の実施形態において、その多分化能性ATZ細胞または前駆ATZ細胞は、インビトロで増殖したATZ(eATZ)細胞であり得る。
【0046】
一部の実施形態において、その多分化能性ATZ細胞および前駆ATZ細胞、初代ATZ細胞、陰窩ならびに/またはオルガノイドは、外来性生体適合性足場(例えば、合成足場または生物学的足場)とインビボまたはインビトロで組み合わせられる。一部の実施形態において、その足場は、ラミニンおよび/またはコラーゲンを含む(例えば、Permacol(商標)ペースト、Medtronic PLC、Minneapolis、MN)。一部の実施形態において、その足場は、Matrigel(登録商標)マトリックス(Coming、New York)または機能的同等物である。
【0047】
一部の実施形態において、その外来性生体適合性足場は、機能化されているか、または非機能化状態である。その足場は、ペプチド(例えば、ラミニン(IKVAVおよびYIGSR)ペプチド、フィブロネクチン(RGD)ペプチド、またはコラーゲン(GFOGER)ペプチド)で機能化され得る。
【0048】
一部の実施形態において、その外来性生体適合性足場は、機能化足場成分と非機能化足場成分との混合物を含む。一部の実施形態において、その機能化足場成分は、0.1%~10%の間のペプチドを含む。一部の実施形態において、その機能化足場成分は、0.1%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、または10%のペプチドを含む。一部の実施形態において、その外来性生体適合性足場は、99.9%~90%の間の非機能化足場を含む。一部の実施形態において、その外来性生体適合性足場は、それぞれ、99.9%、99.5%、99%、98%、97%、96%、95%、94%、93%、92%、91%、または90%の非機能化足場を含む。一部の実施形態において、その足場成分は、少なくとも0.1%、0.5%、1%、5%、または10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の機能化足場である。一部の実施形態において、その足場は、少なくとも0.1%、0.5%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、または100%の非機能化足場である。
【0049】
一部の実施形態において、その非機能化足場成分は、それぞれ、98%、95%、または90%の機能化足場を含む。一部の実施形態において、その足場成分は、少なくとも0.1%、0.5%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の機能化足場である。一部の実施形態において、その足場は、少なくとも0.1%、0.5%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%の非機能化足場である。
【0050】
機能化足場の混合物はまた、少なくとも2種の機能化足場を含み得る。最終足場調製物の機能化成分は、1%~99%の少なくとも1種の機能化足場および99%~1%の少なくとも別の機能化足場を任意の比率で含み得る。例えば、機能化足場成分は、50%のIKVAV機能化足場および50%のYIGSR機能化足場を含む。あるいは、機能化足場成分の混合物は、1%のIKVAVおよび99%のYIGSR、または中間の任意の比率を含み得る。例えば、機能化足場の混合物は、25%のIKVAVおよび75%のYIGSRであり得る。または別の場合には、機能化足場の混合物は、75%のIKVAVおよび25%のYIGSRであり得る。一部の実施形態において、機能化足場の混合物は、コラーゲン(例えば、GFOGERペプチド)足場および別の機能化足場成分を含む。一部の実施形態において、機能化足場の混合物は、少なくとも0.1%、0.5%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%のIKVAV機能化足場である。一部の実施形態において、機能化足場の混合物は、少なくとも0.1%、0.5%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%のYIGSR機能化足場である。一部の実施形態において、機能化足場の混合物は、少なくとも0.1%、0.5%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%のコラーゲン機能化足場である。
【0051】
一部の実施形態において、その足場は、機能化コラーゲン足場または機能的同等物を含む。
【0052】
一部の実施形態において、その足場は、機能化PeptiGel(登録商標)Alpha 4(Manchester BioGel)または機能的同等物を含む。
【0053】
その外来性生体適合性足場はまた、細胞培養培地成分を含み得る。一部の実施形態において、その足場は、オルガノイド増殖培地(OGM)を含み、このオルガノイド増殖培地(OGM)は、商業的供給業者から購入され得る(例えば、IntestiCult(商標)、STEMCELL Technologies,Inc.、Vancouver、Canada)。一部の実施形態において、そのATZ細胞またはATZ陰窩は、OGM中で培養され得る。一部の実施形態において、そのATZ細胞またはATZ陰窩は、ヒト胚性幹細胞(ESC)および/または人工多能性幹細胞(iPSC)を未分化状態で維持する無フィーダー培地(例えば、mTesR(商標)、STEMCELL Technologies,Inc.、Vancouver、Canada)中で培養され得る。一部の実施形態において、その足場は、そのようなESC無フィーダー培地またはiPSC無フィーダー培地を含む。一部の実施形態において、OGM中で培養されたATZ細胞またはATZ陰窩は、そのようなESC無フィーダー培地もしくはiPSC無フィーダー培地中で培養されたATZ細胞またはATZ陰窩と比較して高い、中胚葉系譜マーカーおよび内胚葉系譜マーカーの発現を有する。そのマトリックスはまた、分化のためのケラチノサイト無血清培地(KSFM)を含み得る。そのようなKSFM培地は、供給業者(例えば、Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)から市販されている。
【0054】
別の局面において、本開示は、新たに単離された単一ATZ細胞における、幹細胞マーカーおよび前駆細胞マーカーの細胞外タンパク質および細胞内タンパク質ならびにmRNAの発現レベルの表現型特徴付けを提供する。ATZ細胞は、フローサイトメトリーによって検出された場合に、CD34細胞表面マーカー、CD117細胞表面マーカー、およびCD184細胞表面マーカーのうちの少なくとも1種を発現し得るが、検出可能なレベルのCD45を発現しない。一部の実施形態において、単離されたブタATZ細胞は、OCT4およびNANOGを発現する。
【0055】
ATZ幹細胞はまた、以下の3種の発生系譜の幹細胞についてのマーカーを発現し得る:内胚葉(SOX17)、中胚葉(BRACHURY)、ならびに外胚葉(PAX6およびNESTIN)。さらに、新たに単離されたATZ細胞は、多能性幹細胞についてのマーカー(NANOGおよびOCT4)を発現し得る。
【0056】
一部の実施形態において、そのATZ細胞および/またはATZ陰窩は、内胚葉系譜、外胚葉系譜、および中胚葉系譜に関連する遺伝子を発現する。一部の実施形態において、そのATZ細胞および/またはATZ陰窩は、ALP、BRACHURY、BMP4、CD34、CD117(KIT)、CXCR4、CHGA、CK18、EPCAM、LGR5、LYS、MUC2、NANOG、PAX6、SOX17、およびOCT4からなる群より選択される、少なくとも1種の遺伝子マーカーを発現する。一部の実施形態において、そのATZ細胞および/またはATZ陰窩はCD34を発現する。一部の実施形態において、そのATZ細胞および/またはATZ陰窩は、小腸陰窩細胞、結腸陰窩細胞、および直腸陰窩細胞と比較して高いレベルでCD117(KIT)を発現する。一部の実施形態において、そのATZ細胞および/またはATZ陰窩は、小腸陰窩細胞、結腸陰窩細胞、および直腸陰窩細胞と比較して少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、5.5倍、6倍、6.5倍、7倍またはそれよりも高い高さで、CD117(KIT)を発現する。一部の実施形態において、そのATZ細胞および/またはATZ陰窩はCD34を発現する。一部の実施形態において、そのATZ細胞および/またはATZ陰窩は、検出可能なレベルのCD45を発現しない。一部の実施形態において、そのATZ細胞および/またはATZ陰窩は、CD34を発現し、検出可能なレベルのCD45を発現しない。
一部の実施形態において、そのATZ陰窩は、ALP、BRACHURY、BMP4、CD34、CD117(KIT)、CXCR4、CHGA、CK18、EPCAM、LGR5、LYS、MUC2、PAX6、およびSOX17からなる群より選択される、少なくとも1種の遺伝子を発現する。一部の実施形態において、そのATZ陰窩はOCT4遺伝子またはNANOG遺伝子を発現する。
【0057】
本開示のある局面は、培養中のATZオルガノイドにおける、幹細胞マーカーおよび前駆細胞マーカーの細胞外タンパク質および細胞内タンパク質ならびにmRNAの発現レベルの表現型特徴付けを提供する。一部の実施形態において、そのATZオルガノイドは、内胚葉系譜、外胚葉系譜、および中胚葉系譜に関連する遺伝子を発現する。一部の実施形態において、そのATZオルガノイドは、ALP、BRACHURY、CD34、CD117(KIT)、CHGA、CK18、CXCR4、EPCAM、GD2、LGR5、LYS、MUC2、NESTIN、およびPAX6からなる群より選択される、少なくとも1種のタンパク質マーカーを発現する。一部の実施形態において、そのATZオルガノイドはCD34を発現する。一部の実施形態において、そのATZオルガノイドは、検出可能なレベルのCD45を発現しない。一部の実施形態において、そのATZオルガノイドは、ALP、BRACHURY、BMP4、CD34、CD117(KIT)、CXCR4、CHGA、CK18、EPCAM、LGR5、LYS、MUC2、NANOG、PAX6、およびSOX17からなる群より選択される、少なくとも1種の遺伝子を発現する。
【0058】
一部の実施形態において、そのATZオルガノイドは、CD31、CD34、CD117(KIT)、CXCR4(CD184)、CK14、CK15、CK18 GD2、SOX2、SSEA4、およびTRA-1-60からなる群より選択される、少なくとも1種の細胞表面マーカーを発現する。一部の実施形態において、そのATZオルガノイドはCD34を発現する。一部の実施形態において、そのATZオルガノイドは、検出可能なレベルのCD45を発現しない。一部の実施形態において、そのATZオルガノイドは、CD34を発現するが、検出可能なレベルのCD45を発現しない。
【0059】
一部の実施形態において、そのATZオルガノイドは、小腸オルガノイドおよび直腸オルガノイドと比較して高いレベルで、CD117(KIT)、CXCR4(CD184)、および/またはGD2を発現する。一部の実施形態において、そのATZオルガノイドは、小腸オルガノイドおよび直腸オルガノイドと比較して少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、5.5倍、6倍、6.5倍、または7倍の高さで、CD117(KIT)を発現する。一部の実施形態において、そのATZオルガノイドは、小腸オルガノイドおよび直腸オルガノイドと比較して少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、5.5倍、6倍、6.5倍、または7倍の高さで、CXCR4(CD184)を発現する。一部の実施形態において、そのATZオルガノイドは、小腸オルガノイドおよび直腸オルガノイドと比較して少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、5.5倍、6倍、6.5倍、または7倍の高さで、GD2を発現する。一部の実施形態において、そのATZオルガノイドは、ATZ陰窩細胞と比較して減少したSOX17発現を有する。一部の実施形態において、そのATZオルガノイドは、ATZ陰窩細胞と比較して減少したBRACHURY発現を有する。一部の実施形態において、そのATZオルガノイドは、ATZ陰窩細胞と比較して減少したCD31発現を有する。一部の実施形態において、そのATZオルガノイドは、ATZ陰窩細胞と比較して減少したPAX6発現を有する。一部の実施形態において、そのATZオルガノイドは、ATZ陰窩細胞と比較して増加したLGR5を有する。一部の実施形態において、そのATZオルガノイドは、ATZ陰窩細胞と比較して増加したCD117またはCXCR4を有する。一部の実施形態において、そのATZオルガノイドは、ATZ陰窩細胞と比較して増加したK14を有する。一部の実施形態において、そのATZオルガノイドは、ATZ陰窩細胞と比較して少なくとも1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、5.5倍、6倍、6.5倍、もしくは7倍の高さに増加した、CD117、CXCR4、LGR5、またはK14の発現を有する。一部の実施形態において、そのATZオルガノイドは、ATZ陰窩細胞と比較して少なくとも1.5分の1、2分の1、2.5分の1、3分の1、3.5分の1、4分の1、4.5分の1、5分の1、5.5分の1、6分の1、6.5分の1、もしくは7分の1に減少した、SOX17、BRACHURY、CD31、またはPAX6の発現を有する。
【0060】
タンパク質および核酸の発現は、当業者に公知の方法によって決定され得る。そのような方法としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、RTPCR、q-RT-PCR、(結合剤(例えば、細胞表面マーカーに対する標識抗体もしくは標識リガンド)と組み合わせた)フローサイトメトリー、SDS-PAGE、質量分析法、免疫ブロット法(ウエスタンブロット法)、免疫蛍光顕微鏡法、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション法、または当該分野で公知の他の任意の技術が挙げられるが、これらに限定はされない。
【0061】
一部の実施形態において、そのATZオルガノイドは、増殖細胞、分泌細胞、およびサイトケラチンを含む。一部の実施形態において、そのATZオルガノイドはリゾチーム(LYSOZYME)を分泌し得る。
【0062】
(多分化能性ATZ細胞および前駆ATZ細胞の集団を単離する方法ならびに生成する方法)
別の局面において、多分化能性ATZ細胞および/または前駆ATZ細胞を単離する方法ならびに生成する方法が、本明細書において提供される。そのATZ細胞は、哺乳動物対象(例えば、ヒト、ブタ)から、生検された組織または切除された組織のいずれかから肛門直腸移行帯組織を取得すること;組織を無血清組織培養培地(必要に応じて、抗生物質および/または抗真菌剤を含む)で洗浄すること;その組織を刻むこと;ならびにその組織をコラゲナーゼで酵素処理または酵素消化することによって、生成され得る。消化は、例えば、タンパク質(例えば、アルブミン)を添加することによって、停止され得る。陰窩は、その組織消化物を激しく撹拌または振盪してその陰窩を遊離させることによって、単離され得る。陰窩を含む培地は、組織濾過器に通されて大きな破片を除去され得、遠心分離されて陰窩を沈降またはペレット化され得;その陰窩は、新鮮な培地中に再懸濁されて、多分化能性ATZ細胞および/または前駆ATZ細胞の集団が取得され得る。
【0063】
再懸濁された陰窩は、顕微鏡下で計数され得る。陰窩に由来する単一細胞調製物は、多分化能性ATZ細胞および/または前駆ATZ細胞の集団を取得するために、針/シリンジを用いる物理的破壊および/または温和な酵素的細胞解離試薬での処理によって、作製される。その後、これらの細胞は、(例えば、上記の)インビトロマトリックス足場中に包埋され得、オルガノイドを生成するために分化培地とともに培養され得る。
【0064】
一部の実施形態において、刻んだ肛門直腸移行帯組織の酵素処理は、腸陰窩および粘膜下腺を遊離させる。一部の実施形態において、その肛門直腸移行帯組織は健常ヒトドナーに由来する。一部の実施形態において、その肛門直腸移行帯組織は、疾患を有するヒトドナーに由来する。
【0065】
その後、遊離した腸陰窩あるいは多分化能性ATZ細胞および/または前駆ATZ細胞は、増殖培地または足場(例えば、ラミニン、コラーゲン、Permacol(商標)、Matrigel(登録商標)マトリックス)に配置された後に、オルガノイドへ分化され得る。当該分野で公知の適切な任意のマトリックスおよび増殖培地が、使用され得る。一部の実施形態において、その陰窩は、合成足場に配置される。一部の実施形態において、その足場は非機能化状態である。一部の実施形態において、その足場は機能化されている。あるいは、その陰窩は、単一ATZ細胞になるようにさらに解離され得る。
【0066】
一部の実施形態において、その単離されたATZ由来陰窩細胞は、直腸陰窩に由来する細胞と比較して増加した多分化能および/または前駆能力を有する。
【0067】
別の局面において、本発明は、足場(例えば、Permacol(商標)、Matrigel(登録商標)マトリックス)に包埋した陰窩または単一細胞を、永続的な増殖および分化を促進する特化した腸オルガノイド増殖培地(例えば、IntestiCult(商標))とともに培養することによって、ATZ幹細胞(多分化能性細胞および/または前駆細胞)のインビトロでの増殖ならびに維持を提供する。オルガノイド増殖培地(OGM)、例えば、IntestiCult(商標)、MethoCult(商標)(STEMCELL Technologies,Inc.、Vancouver、Canada)、またはケラチノサイト無血清培地(例えば、Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)が、市販されている。ATZオルガノイド培養物は、オルガノイドを破壊してオルガノイド増殖培地(OGM)中に再プレーティングすることによって、定期的に新しくされる。
【0068】
別の局面において、本発明は、瘻孔を処置するための調製におけるATZ幹細胞(多分化能性細胞および/または前駆細胞を含む)のインビトロ増殖の方法を提供する。その方法は、ATZオルガノイドの反復継代を含み得る。その方法は、例えば、細胞表面および細胞内の幹細胞マーカーのタンパク質発現レベルおよびmRNA発現レベルならびに再プレーティング効率によって決定される表現型特性を、収集した細胞が維持することの確認をさらに含み得る。いったんATZ細胞の特性が細胞供給源について確認された後は、バイオマーカー(例えば、細胞表面マーカー(例えば、CD34、CD117、および/またはCD184))が、幹細胞治療のために適切な細胞数を決定するために使用され得る。
【0069】
本開示のある局面は、ATZ陰窩、単一細胞を収集した後、および/またはオルガノイド培養後に、遠心分離した細胞を無血清DMSO含有凍結培地中に再懸濁すること、およびその温度を-80℃以下へと徐々に低下させることによって、ATZ細胞の凍結保存および融解を提供する。オルガノイド培養物を再樹立するために、凍結保存されたATZオルガノイドまたは単一細胞が37℃の水浴中で素早く融解され、予め加温した組織培養培地中に再懸濁され、遠心分離され、新鮮な培地中に再懸濁されて、凍結培地が除去される。一部の実施形態において、その組成物は、凍結保存培地をさらに含む。一部の実施形態において、そのATZ組成物またはeATZ組成物は、凍結保存される。
【0070】
(処置方法)
別の局面において、本発明は、瘻孔を処置する必要のある対象において瘻孔を処置する方法を提供し、その方法は、その瘻孔に、有効量の本明細書において記載されるATZ細胞の医薬組成物または剤形を投与し、それによりその瘻孔を処置する工程を含む。例として、適切な数の確認された細胞が、瘻孔への注入のために足場(例えば、足場ペースト)と組み合わせられ得る。例示的な足場ペーストは、コラーゲン足場ペースト(Permacol(商標)ペースト、Medtronic PLC、Minneapolis、MN)である。この処置の有効性は、以下の実施例において示されている。
【0071】
一部の実施形態において、そのATZ陰窩は、瘻孔を措置する方法における使用のための増殖されたATX細胞を生成するために、エクスビボで培養される。一部の実施形態において、そのeATZ細胞は、増殖後に凍結保存され得、その後、処置の前に融解され得る。
【0072】
一部の実施形態において、その処置は、瘻孔を、例えば、新たな線維化組織で治癒または閉鎖させる。一部の実施形態において、その瘻孔は肛門周囲瘻孔である。一部の実施形態において、その瘻孔は難治性瘻孔である。その瘻孔は、クローン病に関連し得るか、または未知の病因の瘻孔を有する個体にあり得る。
【0073】
一部の実施形態において、その薬学的に受容可能なキャリアは、生体適合性足場(例えば、本明細書において上記された足場)を含む。
【0074】
(医薬組成物)
別の局面において、治療組成物または医薬組成物(例えば、本明細書において記載されている組成物)を調製する方法が、本明細書において提供される。その方法は、(a)肛門直腸移行組織を患者またはドナーから収集する工程;(b)その移行組織を酵素で酵素消化して細胞懸濁物を調製する工程;(c)必要に応じて、その細胞懸濁物の少なくともと凍結保存培地とを組み合わせ、その細胞懸濁物を凍結乾燥する工程;および(d)工程(b)または必要に応じた工程(c)の細胞懸濁物と薬学的に受容可能なキャリアとを組み合わせる工程を含む。
【0075】
一実施形態において、本開示は、成体の同種他家由来または自己由来の肛門直腸移行帯細胞(もしくは「ATZ細胞」)を薬学的に受容可能なキャリア中に含む、医薬組成物を提供する。そのATZ細胞は、(a)肛門直腸移行組織を成体ヒト対象または成体ブタ対象から収集する工程;(b)肛門直腸移行組織の酵素消化によって細胞懸濁物をインビトロで調製する工程;(c)その細胞を沈降/ペレット化した後に凍結培地中に再懸濁し、ATZ細胞を例えば液体窒素中で凍結保存する工程を含む方法によって、調製され得る。使用前に、その凍結保存されたATZ細胞は薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせられ、その後、その細胞/キャリア調製物は瘻孔に注入される。そのキャリアは、瘻孔の内部形状に充填するために使用され得、組織リモデリングおよびその管のより有効な閉鎖を可能にし得る。
【0076】
本明細書全体にわたって、組成物が特定の成分を有する、含有する、もしくは含むと記載される場合、またはプロセスおよび方法が特定の工程を有する、含有する、もしくは含むと記載される場合、追加的に、記載された成分から本質的になる本開示の組成物、または記載された成分からなる本開示の組成物が存在すること、ならびに記載された処理工程から本質的になる本開示にしたがうプロセスおよび方法、または記載された処理工程からなる本開示にしたがうプロセスおよび方法が存在することが、企図される。
【0077】
本出願において、構成要素もしくは成分が、記載された構成要素もしくは成分のリストに含まれ、かつ/または記載された構成要素もしくは成分のリストから選択されると言われている場合、その構成要素もしくは成分が、記載された構成要素もしくは成分のうちのいずれか1つであり得るか、またはその構成要素もしくは成分が、記載された構成要素もしくは成分のうちの2つ以上からなる群より選択され得ることが、理解されるべきである。
【0078】
さらに、本明細書において記載されている組成物または方法の構成要素および/もしくは特徴は、本明細書において明示されているか暗示されているかに関係なく、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく種々の方法で組み合わせられ得ることが、理解されるべきである。例えば、特定の化合物に言及がされる場合、その化合物は、そうではないことが文脈から理解されない限りは、本開示の組成物および/または本開示の方法の種々の実施形態において、使用され得る。換言すると、本出願において、明確で正確な適用が記載され描写されることを可能にする様式で実施形態が記載され示されているが、実施形態は、本教示および本開示から逸脱することなく、種々に組み合わせられてもよく、または別々であってもよいことが、意図され、理解される。例えば、本明細書において記載され示されているすべての特徴は、本明細書において記載され示されている開示のすべての局面に適用可能であり得ることが、理解される。
【0079】
表現「のうちの少なくとも1つ」は、そうではないことがその文脈および使用から理解されない限りは、その表現の前に記載された目的語の各々を個別に含み、それらの記載された目的語のうちの2つ以上の種々の組合せを含むことが、理解されるべきである。3つ以上の記載された目的語と組み合わせられた表現「および/または(および/もしくは)(および/あるいは)(ならびに/もしくは)(ならびに/または)(ならびに/あるいは)」は、そうではないことが文脈から理解されない限りは、同じ意味を有すると理解されるべきである。
【0080】
用語「含む(含有する)(include)」、「含む(含有する)(includes)」、「含む(含有する)(including)」、「有する(have)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含む(含有する)(contain)」、「含む(含有する)(contains)」または「含む(含有する)(containing)」(これらの文法上の同等物を含む)の使用は、そうではないことが具体的に記載されることも文脈から理解されることもない限りは、制限がなく非限定的である(例えば、記載されていない追加的な構成要素も工程も排除しない)として一般的には理解されるべきである。
【0081】
用語「約」の使用が量的値の前である場合、本開示は、そうではないことが具体的に記載されない限りは、その特定の量的値自体も含む。本明細書において使用される場合、用語「約」とは、そうではないことが示されることも推認されることもない限りは、その公称値から±10%の変動を指す。
【0082】
工程の順序またはある特定の動作を実施する順序は、本開示が作動可能なままである限りは重要ではないことが、理解されるべきである。さらに、2つ以上の工程または動作が、同時に実行され得る。
【0083】
本明細書におけるあらゆるすべての例または例示的な言葉(例えば、「例えば(など)(such as)」もしくは「含む(挙げられる)(including)」)の使用は、単に本開示をより良く示すことが意図されるに過ぎず、これらの使用は、特許請求されない限りは、本開示の範囲に対して制限を課さない。本明細書中のどの語も、特許請求されていないなんらかの構成要素が本開示の実施にとって必須であると示すとは、解釈されるべきではない。
【実施例】
【0084】
(実施例)
以下の実施例は、本開示の範囲または内容を単に例示するに過ぎず、いかなる方法でも本開示の範囲も内容も限定するとは意図されない。
【0085】
(実施例1.肛門直腸組織からの腸陰窩の単離)
本実施例は、ブタおよびクローン病を有するヒト対象に由来する肛門直腸組織から腸陰窩を単離するためのプロトコルを記載する。
【0086】
(I.ブタ)
健常な成体のホワイトランドレースブタ組織の結腸から肛門までの例(
図1(a))を、抗生物質/抗真菌剤を含むAIMV V培地(Thermo Fisher Scientific)中に死後2時間以内に収集し、すぐに、または一部の場合には40℃で一晩保管した後に、処理した。その組織を長手方向に開き、清浄にした。
【0087】
歯状線を直腸粘膜と肛門皮膚との間に特定した(
図1(b))。その組織の幅は8cm~10cmであり、高さは1cm~2cmであり、蒼白色に呈色した。歯状組織(肛門直腸移行帯)の上皮層を直腸粘膜および肛門皮膚から切除した(
図1(c))。刻んだ肛門直腸移行帯組織の酵素処理によって、腸陰窩(図l(d~g))および粘膜下腺と一致する構造(
図1(h~i))を遊離させた。
【0088】
(II.クローン病患者)
直腸切除組織(
図2(a))から、肛門直腸移行帯を切除し(
図2(b))、刻み、酵素処理して陰窩(
図2(c~d))を遊離させた。
【0089】
(実施例2.陰窩肛門直腸移行帯オルガノイド発達)
実施例1のブタおよびヒトの組織に由来する陰窩肛門直腸移行帯オルガノイド発達物を発達させた。
【0090】
実施例1で調製した腸陰窩をMatrigel(登録商標)マトリックス(Coming、New York)中にヒトオルガノイド増殖培地(OGM、IntestiCult(商標)、STEMCELL Technologies,Inc.、Vancouver、CA)とともに包埋し、1週間~2週間以内に完全に分枝したオルガノイドになるまでは発達させた。肛門直腸移行帯に由来するブタ陰窩オルガノイドの形態は、ブタの腸、結腸、および直腸の組織に由来するオルガノイドとは区別不能であった(
図3(a))。同様に、肛門直腸移行帯に由来するオルガノイドと直腸に由来するオルガノイドとは、クローン病患者において区別不能であった(
図3(b))。
【0091】
(実施例3.直腸陰窩と比較して増加したブタATZ陰窩単一細胞調製物の前駆能力)
本実施例は、直腸陰窩と比較したブタATZ陰窩の単一細胞調製物が、直腸陰窩よりも増加した前駆能力を有することを示す。
【0092】
ブタATZ陰窩およびブタ直腸陰窩の単一細胞調製物のプレーティング効率(プレーティングした細胞1個当たりの形成されたオルガノイド)を、24ウェルフラットウェル懸濁培養プレート(Sarstedt)において1ウェル当たり500個、1,000個および2,000個の生存陰窩細胞の入力について決定し、1週間に1回、4週間モニターした。オルガノイド増殖培地(IntestiCult(商標))を2週目の最後に1回新しくし、Matrigel(登録商標)マトリックスは変化させなかった。
【0093】
いずれの群においても、500個の入力細胞からは少しのオルガノイドしか形成されなかった。
【0094】
1週目に、形成するオルガノイドの外観(
図4(a))および頻度(
図4(b))は、1,000個または2,000個の細胞で開始した培養について、ATZオルガノイドと直腸オルガノイドとについて同様であった。2週目に、直腸オルガノイド培養物が、より完全に分化したオルガノイド(暗色の細胞クラスター)を含み、一方、ATZオルガノイド培養物は、より未分化の生存オルガノイド(嚢状構造)を含んだ(
図4(a))。
【0095】
1,000個および2,000個の細胞で開始した培養物において、3週目および4週目に、少しの生存オルガノイドしか検出されなかった:ATZについて3%~4%、直腸について0%~1%(
図4(b))。
【0096】
4週間後の前駆能力を決定するために、培養物を収集し、500個、1,000個。または2,000個の生存細胞で再開始した。オルガノイド増殖培地(OGM)を6週目にMatrigel(登録商標)マトリックスは変化させずに新しくし、オルガノイドプレーティング効率を5週目、6週目、および7週目に評価した(
図4(b))。最も高いプレーティング効率は、5週目~7週目にわたって500個の再プレーティングしたATZ細胞で観察された(18%~21%)。1,000個および2,000個の再プレーティングしたATZ細胞のプレーティング効率は、6週目にピークに達し(それぞれ、19%および15%)、7週目に減少した(それぞれ、9%および5%)。すべての再プレーティングした直腸細胞のプレーティング効率は、5週目~7週目にわたって<2%であった。
【0097】
まとめると、これらの研究は、ブタATZ陰窩細胞において直腸陰窩細胞と比較して増加した前駆能力を示し、これは、長期間再増殖するATZ細胞集団の存在と一致する。
【0098】
(実施例4.新たに単離した陰窩および陰窩オルガノイドにおける胚発生系譜の幹細胞マーカーのタンパク質発現)
本開示の特定の実施例および実施形態を記載し示すことを目的とする、ブタおよびクローン病患者に由来する新たに単離した陰窩および陰窩オルガノイドにおける胚発生系譜の幹細胞マーカーのタンパク質発現。
【0099】
(新たに単離したブタ陰窩)
細胞表面幹細胞マーカーを、小腸組織、結腸組織、直腸組織、および肛門直腸組織に由来する新たに単離した陰窩に由来する単一細胞調製物に対するフローサイトメトリーによって、調べた。幹細胞および前駆細胞の増殖因子レセプターであるKIT(CD117)の発現が、ATZ陰窩細胞において、小腸陰窩細胞、結腸陰窩細胞、および直腸陰窩細胞と比較して3倍~5倍の高さのレベルで発現された(
図5(a))。これらの組織に由来する陰窩細胞はすべて、幹細胞および前駆細胞のマーカーであるCD34を種々の程度に発現し、ATZ陰窩細胞が最も高いレベルを発現した(
図5(b))。
【0100】
二重標識実験において、85%のATZ細胞がCD34を発現し、53%の細胞がCD117を発現した;47%の細胞がCD34およびCD117を共発現した;そのCD117発現細胞のうち、88%がCD34を共発現した(
図5(c))
【0101】
(ブタ陰窩オルガノイド)
細胞表面幹細胞マーカーを、10日間の培養後の小腸(SI)組織、直腸組織、および肛門直腸組織に由来する完全に分化したブタオルガノイドの単一細胞調製物に対するフローサイトメトリーによって、調べた。KIT(CD117)、CXCR4(CD184)、およびGD2の発現は、ATZオルガノイドにおいて、SIオルガノイドおよび直腸オルガノイドと比較して3倍よりも大きく増加した。造血系マーカーであるCD45は、すべての陰窩オルガノイドにおいて検出されなかった(
図5(d))。
【0102】
KITおよびCXCR4は胚体内胚葉のマーカーであり、GD2は原始中胚葉のマーカーであるので、新たに単離したATZ陰窩細胞の発生系譜起源のさらなる調査は、行わなかった。細胞内タンパク質マーカーにより、内胚葉系譜に関連する転写因子(SOX17)、中胚葉系譜に関連する転写因子(BRACHURY)、ならびに外胚葉系譜に関連する転写因子(PAX6およびNESTIN)の発現が確認された。しかし、多分化能に関連する転写因子(OCT4およびNANOG)の発現は、フローサイトメトリーによって検出されなかった(
図5(e))。
【0103】
まとめると、これらの結果は、ブタATZ陰窩細胞集団が3種すべての発生系譜について幹細胞および前駆細胞のタンパク質マーカーを発現すること、ならびに内胚葉マーカーおよび中胚葉マーカーがATZ陰窩オルガノイドにおいて維持されたことを示す。
【0104】
(クローン病患者の直腸陰窩オルガノイド)
CD117の細胞表面発現が、クローン病患者の直腸陰窩オルガノイドの単一細胞調製物において80%で検出された(
図5(f))。
【0105】
(実施例5.ブタATZ陰窩細胞のmRNA発現プロファイリング)
本実施例は、ブタATZ陰窩細胞のmRNA発現プロファイリングを示す。
【0106】
(新鮮なブタATZ陰窩)
新鮮なブタATZ陰窩細胞の転写プロファイリングによって、成熟上皮細胞のマーカー(EPCAM、LYZ、MUC2、CHGA、CK18);幹細胞および前駆細胞のマーカー(CD34、LGR5);ならびに内胚葉系譜の発生中の幹細胞のマーカー、中胚葉系譜の発生中の幹細胞のマーカー(BRACHURY)、および外胚葉の発生中の幹細胞のマーカー(PAX6)系譜;ならびに多能性幹細胞のマーカー(NANOG、OCT4A)の発現の基底発現が、確認された(
図6(a))。アルカリホスファターゼ(ALP)のmRNA発現は検出されなかったが、この酵素は実施例9における免疫細胞化学によって検出された。
【0107】
(ブタATZ陰窩オルガノイド)
オルガノイド増殖培地(IntestiCult(商標))中で培養したATZ陰窩細胞の転写プロファイリングは、3種すべての発生系譜の幹細胞のマーカーについてmRNA発現を保持した(
図6(b))。成熟上皮細胞のマーカーについて、新鮮なATZ細胞と比較した場合に低いレベルのmRNA発現が検出された。mRNA発現レベルをグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)に対して正規化した。
【0108】
まとめると、新鮮なATZ陰窩およびオルガノイドの転写プロファイリングによって、3種すべての発生系譜の幹細胞についてマーカーの存在が確認された。
【0109】
(実施例6.多分化能性ブタ肛門直腸移行幹細胞を維持および増殖するための培養培地)
本実施例は、多分化能性ATZ細胞を維持および増殖するためのインビトロ培養条件を示す。
【0110】
新たに単離したブタATZ陰窩単一細胞を、(1)ヒト胚性幹細胞(ESC)および人工多能性幹細胞(iPSC)を未分化状態で維持する無フィーダー培地(mTeSR(商標)、STEMCELL Technologies,Inc.、Vancouver、CA));または(2)標準的な陰窩オルガノイド増殖培地(IntestiCult(商標))のいずれかにおいて、14日間培養した。
【0111】
実施例4において記載した多分化能性幹細胞マーカーの頻度を、培養前(0日目)および培養14日後にフローサイトメトリーによって評価した。幹細胞および前駆細胞のマーカーであるCD117が、培養前(0日目)にATZ陰窩細胞において14%で発現され、14日目にmTeSRにおいて35%へ、オルガノイド増殖培地(OGM)において28%へ増加した(
図7(a))。中胚葉についての細胞内マーカーであるBRACHYURYが、培養前(0日目)に97%のATZ陰窩細胞で発現され、その発現レベルは、14日目にmTeSRにおいて99%、OGMにおいて81%で維持された(
図7(b))。内胚葉についての細胞内マーカーであるSOX17が、培養前(0日目)に34%のATZ陰窩細胞において発現され、14日目にmTeSR培地において<1%発現され、OGMにおいて49%発現された(
図7(c))。
【0112】
これらの結果は、OGMが、内胚葉発生系譜および中胚葉発生系譜の両方のマーカーを発現するATZ陰窩細胞を維持するためにより良好であり得ることを示す。
【0113】
(実施例7.3種すべての発生系譜へのブタ肛門直腸移行細胞由来陰窩のインビトロでの分化)
本実施例は、ブタ肛門直腸移行細胞由来陰窩が3種すべての発生系譜(内胚葉、中胚葉、および外胚葉)へインビトロで分化することを示す。
【0114】
実施例4および実施例5における新鮮なブタATZ陰窩幹細胞の3種すべての発生系譜における、それぞれタンパク質マーカーおよびmRNAマーカーの発現は、新たに単離したATZ陰窩細胞が内胚葉系譜の成熟細胞(腸粘膜)、中胚葉の成熟細胞(血管)、および外胚葉の成熟細胞(ケラチノサイト)を生成する能力を有するか否かを決定するための研究をもたらした。
【0115】
(実施例7.1.新鮮なブタATZ陰窩の内胚葉分化能)
腸粘膜の成熟内胚葉細胞マーカーのタンパク質発現レベルを、OGMとともにMatrigel(登録商標)マトリックス中に包埋した新鮮なATZ陰窩の単一細胞調製物を2週間培養してオルガノイドを生成した後に、評価した。完全なオルガノイドの免疫染色を、リゾチーム(LYSOZYME)、増殖細胞(KI67)、分泌細胞(MUC2)、および胃上皮単層において発現されるサイトケラチン18(CK18)の発現について可視化した(
図8(a~h))。
【0116】
新鮮なATZ陰窩細胞のフローサイトメトリー解析は、SOX17が0日目の52%から14日目の34%へ減少したこと、ならびにKIT(CD117)およびCXCR4(CD184)が培養中に2倍増加したことを示した(
図9)。腸幹細胞マーカーであるLGR5が、0日目に3%で発現され、14日目に22%へ増加した。
【0117】
まとめると、これらの結果は、新鮮なATZ陰窩が内胚葉系譜に由来する成熟細胞型を生成する能力を有することを支持する。
【0118】
(実施例7.2.ブタATZ陰窩の中胚葉分化能)
成熟中胚葉細胞マーカーのタンパク質発現レベルを、MethoCult(商標)において新鮮なATZ陰窩の単一細胞調製物を2週間培養した後に評価して、それらが造血系譜において子孫を生成する能力を試験した。いかなる造血系コロニーも、非接着性メチルセルロース層において形成されなかった。
【0119】
しかし、単一ATZ陰窩由来細胞(
図10(a))が、3日目にその接着層においてクラスターを形成し(
図10(b))、10日目に血管様管状構造のネットワークを開始して形成した(
図10(c~d))。内皮細胞内マーカーであるCD31(PECAM)での免疫染色が、血管様管状構造のネットワークの開始および形成において検出された(
図10(e~f))。新鮮なATZ細胞のフローサイトメトリー解析は、BRACHURY発現が0日目の67%から7日目の23%へ減少し、14日目の7%へさらに減少したこと;CD31発現が0日目の5%から7日目の19%へ増加し、14日目の37%へさらに増加したことを示した(
図11)。
【0120】
まとめると、これらの結果は、新鮮なATZ陰窩が中胚葉系譜に由来する成熟細胞型を生成する能力を有することを支持する。
【0121】
(実施例7.3.ブタATZ陰窩の外胚葉分化能)
成熟外胚葉細胞マーカーのタンパク質発現レベルを、ケラチノサイト分化培地(KSFM、Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)において新鮮なATZ陰窩および肛門皮膚の単一細胞調製物を2週間培養した後に評価した。細胞クラスターが3日目に発達し、10日目までに、ケラチノサイト形態を有する玉石様接着層が肛門皮膚細胞培養物およびATZ細胞培養物において形成された(
図12(a))。ケラチノサイトマーカーであるCK14とCK15との共発現が、肛門皮膚接着培養細胞の免疫染色(
図12(b))およびATZ接着培養細胞の免疫染色(
図12(c))によって検出された。
【0122】
ATZ接着培養細胞のフローサイトメトリー解析は、外胚葉系譜マーカーであるPax6の発現が、0日目の18%から7日目の6%および14日目の5%へと培養中に減少したことを示した(
図12(d))。ATZ接着培養細胞におけるCK14発現は、0日目の3%から7日目の18%および14日目の42%へと培養中に経時的に増加した(
図12(d))。
【0123】
まとめると、これらの結果は、新鮮なATZ陰窩が外胚葉系譜に由来する成熟細胞型を生成する能力を有することを支持する。
【0124】
(実施例8.ブタ小腸陰窩における3種すべての発生系譜の多分化能性幹細胞の不在)
本実施例は、ブタATZ陰窩について実施例7において記載したのと同じ方法を使用して、ブタ小腸(SI)陰窩が内胚葉系譜、中胚葉系譜、および外胚葉系譜の成熟細胞をインビトロで生成する能力を有することを示す。
【0125】
小腸(SI)単一陰窩細胞を、内胚葉への分化を促進するオルガノイド増殖培地(IntestiCult(商標))、中胚葉への分化を促進するオルガノイド増殖培地(MethoCult(商標))および外胚葉への分化を促進するオルガノイド増殖培地(KSFM、Sigma-Aldrich、St.Louis、MO)において2週間培養した。小腸(SI)陰窩細胞は、予期したとおりにオルガノイドをオルガノイド増殖培地(OGM)において生成した(
図13(a)。しかし、MethoCult(
図13(b))またはKFSM(
図13(c))において培養した場合、7日目にも14日目にも、小腸(SI)陰窩細胞について何の増殖も検出されなかった。
【0126】
まとめると、これらの結果は、ATZ陰窩細胞について示したアッセイを使用して、3種すべての発生系譜の細胞型を生成可能な多分化能性幹細胞がブタ小腸(SI)陰窩に存在しないことと一致する。
【0127】
(実施例9.ブタATZ陰窩細胞の多分化能を評価するためのインビトロ胚様体アッセイ)
本実施例は、無フィーダーmTeSR(商標)培地において培養した新鮮なATZ陰窩の単一細胞調製物が胚様体形成を促進し得ることを示す。
【0128】
高密度でプレーティングした新鮮なATZ陰窩単一細胞が、3日目までに玉石様接着層を生成し;未分化接着細胞のコロニーが7日目までに発達し;分化接着細胞がその未分化細胞コロニーから生成され遊走した(
図14(a))。
【0129】
アルカリホスファターゼ染色の可視化により、胚様体と一致する幹細胞様特性が確認された(
図14(b))。さらに、多能性幹細胞マーカーであるOCT4およびSSEA4(
図14(c))ならびにSOX2およびTRA-1-60(
図14(d))が、5日目に免疫細胞化学によって検出された。
【0130】
まとめると、インビトロ胚様体アッセイの結果は、多能性幹細胞様特性を示すATZ陰窩細胞と一致する。
【0131】
(実施例10.ブタATZ陰窩細胞増殖の合成足場との適合性)
本実施例は、オルガノイド増殖培地(OGM)におけるブタATZ陰窩細胞増殖の合成足場との生体適合性を示す。
【0132】
新鮮なブタATZ陰窩細胞の単一細胞調製物を、2%、5%、または10%の合成非機能化足場(「PG」またはPeptiGel(登録商標)Alpha 2、Manchester BioGel、Chesire、UK)とともにオルガノイド増殖培地(OGM)において培養して、標準的なMatrigel(登録商標)マトリックス培養物と比較した。
【0133】
類似する外観の陰窩オルガノイドが、すべての濃度のPGおよびMatrigel(登録商標)マトリックスにおいて19日目までに生成された(
図15(a))。しかし、PGにおける生存オルガノイドの数は、24日目にオルガノイド増殖培地(OGM)と比較して減少し(
図15(b))、このことは、Matrigel(登録商標)マトリックスが幹細胞および前駆細胞の増殖のために追加的な増殖因子を提供したことを示した。
【0134】
一定範囲の機能化Alpha 4 PGを、以下の結合ドメインに起因する活性について評価した:非機能化(
図16(a))、フィブロネクチン(RGD)(
図16(b))、コラーゲン(GFOGER)(
図16(c))、およびラミニン(IKVAV、YIGSR)(
図16(d~e))。ATZ陰窩オルガノイドの数の増加が、液体培養中のラミニン機能化PGと関連し(
図16(d-e))、これはMatrigel(登録商標)マトリックスのATZ陰窩オルガノイドの数の増加(
図16(f))と類似した。
【0135】
これらの研究に基づき、ATZ陰窩細胞を用いた足場生体適合性結果。等しい体積のIKVAV機能化PGとYIGSR機能化PGとを、実施例11に記載するインビボ研究のための薬学的キャリアとして使用した。
【0136】
(実施例11.瘻孔を治癒するために同種他家由来成体ブタATZ細胞を支持するヒドロゲル足場を評価するための前臨床ブタ瘻孔モデル)
本実施例は、ヒドロゲル足場中にある同種他家由来成体ブタATZ細胞を使用して痔瘻を処置し得ることを示す。
【0137】
肛門周囲瘻孔の外科的処置およびシーラント処置を評価するために以前に開発された確認済みの前臨床ブタ瘻孔モデル(Himpsonら(2009)「An experimentally successful new sphincter-conserving treatment for anal fistula」、Dis.Colon Rectum、52(4):602~608)を使用して、同種他家由来成体ブタATZ細胞で瘻孔を処置することの安全性および有効性を試験した。
【0138】
3つの瘻孔を、雌の白色Landcrossブタの各々において、肛門直腸領域の管腔から筋肉および脂肪を通って外部の皮膚まで、機械的に作製した(
図17および
図18)。糸(thread)または「シートン(seton)」をそれらの瘻孔に挿入して、慢性炎症を促進した。1か月後、それらのシートンを除去し、それらの瘻管を清浄にして、処置前に肉芽組織を除去した。
【0139】
3匹のブタに由来する同種他家由来ブタATZ陰窩の細胞調製物を、この研究の前に、実施例1に記載したとおりに収集し、凍結保存培地(CryoStor(登録商標)、STEMCELL Technologies,Inc.、Vancouver、Canada)中で凍結保存した。凍結保存したATZ細胞の生存能力を、実施例10に記載したアッセイを使用して研究前に確認した。
【0140】
各ブタの処置群は、以下を含んだ:(1)処置なし対照;(2)薬学的キャリア単独(PG-IKVAVおよびPG-YIGSR(「PG」=PeptiGel(登録商標)または「PG足場」));および(3)ATZ細胞+「PG足場」(表1)。この研究は、90日目に終了させた。肛門直腸組織を10%中性緩衝ホルマリン(NBF)中に収集した。パラフィン包埋組織を組織学的検査のために切片化し、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)ならびにピクロシリウスレッド(PSR)で染色した。
【表1】
【0141】
(実施例12.同種他家由来成体ブタATZ細胞が、抗炎症特性を有し、瘻管のより有効な閉鎖のために組織リモデリングを可能にするという、組織学的証拠)
本実施例は、実施例11におけるブタ瘻管由来の組織の組織学的分析によって、組織リモデリングが瘻管の閉鎖(治癒)をもたらすことを示す。
【0142】
処置を保留した場合に、脂肪組織内の瘻管の管腔側が線維芽細胞様細胞によって覆われ、これは、この管腔の空隙が経時的に閉鎖されない可能性があることを示した(
図19(a))。
【0143】
PG足場単独での瘻管の処置について、脂肪組織内の瘻管が90日目に炎症細胞で満たされ、これは、このPG足場自体が、処置期間全体にわたり持続した慢性炎症応答を惹起したことを示し、組織リモデリングの証拠はなかった(
図19(b))。
【0144】
PG足場とともに投与したATZ細胞による瘻管の処置は、未成熟血管、線維芽細胞、平滑筋細胞および未成熟脂肪組織の徴候を含む、リモデリングされた線維化組織で、脂肪組織内のその管を効果的に満たした(
図19(c)および
図20)。
【0145】
まとめると、このインビボ研究は、成体同種他家由来ATZ幹細胞および成体同種他家由来ATZ前駆細胞が、(1)PeptiGel(登録商標)足場媒介性慢性炎症を減少し、(2)血管形成したリモデリングされた組織で瘻管開口部を実質的に減少させたという、組織学的証拠を提供した。
【0146】
薬学的キャリア中のブタATZ細胞は、クローン病瘻孔を処置するために使用されるヒト脂肪由来間葉幹細胞(AdMSC、Alofisel(商標))の抗炎症特性と類似する抗炎症特性を、このブタ前臨床モデルにおいて示す。
【0147】
しかし、この確認済みの前臨床モデルにおける薬学的キャリア中のATZ細胞は90日目に瘻管を閉鎖したが、クローン病患者のAlofisel(商標)処置は、瘻孔清浄化の間の期間を単に遅らせるだけである。
【0148】
(実施例13.瘻孔を治癒するために性別が不一致である同種他家由来成体ブタATZ細胞を支持するためのコラーゲン足場を評価するための前臨床ブタ瘻孔モデル)
本実施例は、コラーゲン足場中の同種他家由来成体ブタATZ細胞を使用して痔瘻を処置し得ることを示す。
【0149】
1匹の雄ブタに由来する同種他家由来ブタATZ陰窩の細胞調製物を、研究前に、実施例1に記載したとおり収集し、凍結保存培地(CryoStor(登録商標)、STEMCELL Technologies,Inc.、Vancouver、Canada)中で凍結保存した。凍結保存したATZ細胞の生存能力を、研究前に、実施例10に記載したアッセイを使用して確認した。
【0150】
3つの瘻孔を、1匹の雌の白色Landcrossブタにおいて、実施例11におけるとおり、肛門直腸領域の管腔から筋肉および脂肪を通って外部の皮膚まで、機械的に作製した(
図17)。シートン(seton)をそれらの瘻孔に挿入して、慢性炎症を促進した。1か月後、それらのシートンを除去し、それらの瘻管を清浄にして、処置前に肉芽組織を除去した。
【0151】
ブタの処置群は、以下を含んだ:(1)処置なし対照;(2)薬学的キャリア単独(Permacol(商標));および(3)ATZ細胞+Permacol(表2)。この研究は、63日目に終了させた。パラフィン包埋組織を組織学的検査のために切片化し、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)ならびにピクロシリウスレッド(PSR)で染色した。
【表2】
【0152】
(実施例14.コラーゲン足場が、瘻管のより有効な閉鎖のために性別が不一致である同種他家由来成体ブタATZ細胞組織リモデリングを支持するという、組織学的証拠)
本実施例は、実施例13におけるブタ痔瘻管由来の組織の組織学的分析によって、組織リモデリングが瘻管の閉鎖(治癒)をもたらすことを示す。
【0153】
処置を保留した場合に、瘻管の管腔側が線維芽細胞様細胞によって覆われ、これは、この管腔の空隙が経時的に閉鎖されない可能性があることを示した(
図21(a))。より高い倍率では、炎症細胞、脂肪細胞、および未成熟血管が観察された(
図21(b))。
図21(c)の画像は、
図21(a)の画像と位置が同じであるが、新たに生成されたコラーゲン線維を強調するように染色した。すべてのコラーゲン特徴が赤色で示されている。未処置の瘻管が閉鎖された場所において、高度に炎症細胞が検出され、ごく少数の血管が検出された(
図22(b)および
図22(c))。
【0154】
Permacol足場単独による瘻管の処置について、瘻管が筋肉において観察された(
図23(a))。より高い倍率では、瘻管の(外部の皮膚に最も近い)一端は、2つの十分に抑制された炎症性小結節を示す(
図23(b))。
図23(c)の画像は、
図23(a)の画像と位置が同じであるが、新たに生成されたラーゲン線維を強調するように染色した。
【0155】
Permacolとともに投与したATZ細胞による瘻管の処置について、脂肪内の瘻管は、主に線維化組織を少数の炎症細胞とともに示す(
図24(a))。
図24(b)の画像は、
図24(a)の画像と位置が同じであるが、充填された瘻管全体にわたり新たに生成されたラーゲン線維を強調するように染色した。
【0156】
(注記:
図24中の(実線の矢印により示される)黒い線は、組織内のひだであり、スライド上に取り付ける前に十分に伸ばしていない切片から生じた人工産物である)。
【0157】
図24(a)のより高い倍率では、ATZおよびPermacolの管の内部形態は、63日目に、赤血球を含む多数の成熟血管を伴う、かなりの再生を示す(
図24(c))。さらに、別々の線維型(すなわち、おそらく、I型およびII型)を含む明白な初期筋束が、淡いピンクまたはより濃いピンクのいずれかの色合いに染まっている。
【0158】
まとめると、このインビボ研究は、コラーゲン足場が、成熟血管および初期筋束による瘻管のより有効な閉鎖(治癒)のために性別が不一致である同種他家由来成体ブタATZ細胞組織リモデリングを支持するという組織学的証拠を提供し、ATZ細胞の多分化能を支持した。
【0159】
(参照による援用)
本明細書において参照された特許文献および科学文献の各々の開示全体が、すべての目的のために参照により援用される。
【0160】
(均等物)
本発明は、本発明の趣旨からも必須の特徴からも逸脱することなく、他の特定の形態で実施され得る。したがって、上記の実施形態は、あらゆる点で、本明細書において記載されている発明を限定するのではなく例示すると考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は、上記の説明によってではなく添付の特許請求の範囲によって示されており、特許請求の範囲と均等な意味および範囲内にあるすべての変更は、特許請求の範囲内に含まれると意図される。
【国際調査報告】