IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 北京大学の特許一覧

<>
  • 特表-炭素膜を浸透成長させる方法 図1
  • 特表-炭素膜を浸透成長させる方法 図2
  • 特表-炭素膜を浸透成長させる方法 図3
  • 特表-炭素膜を浸透成長させる方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】炭素膜を浸透成長させる方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/02 20060101AFI20240725BHJP
   C01B 32/188 20170101ALI20240725BHJP
   C30B 33/02 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
C30B29/02
C01B32/188
C30B33/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024508968
(86)(22)【出願日】2022-11-01
(85)【翻訳文提出日】2024-02-14
(86)【国際出願番号】 CN2022128950
(87)【国際公開番号】W WO2023083055
(87)【国際公開日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】202111318030.3
(32)【優先日】2021-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507232478
【氏名又は名称】北京大学
【氏名又は名称原語表記】PEKING UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No.5, Yiheyuan Road, Haidian District, Beijing 100871, China
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ ▲開▼▲輝▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 志斌
(72)【発明者】
【氏名】王 恩哥
【テーマコード(参考)】
4G077
4G146
【Fターム(参考)】
4G077AA03
4G077AB02
4G077AB09
4G077AB10
4G077BA01
4G077BA02
4G077BA08
4G077ED02
4G077ED06
4G077FE03
4G077FE12
4G077FE19
4G077HA12
4G077JA03
4G146AA01
4G146AB07
4G146AC01A
4G146AC01B
4G146AD05
4G146BA01
4G146BC02
4G146BC23
4G146BC25
4G146BC26
4G146BC34A
4G146BC34B
4G146CB17
(57)【要約】
炭素膜を浸透成長させる方法を開示する。ニッケル箔と銅ニッケル合金箔から選択される、第1の表面及び第2の表面を有する箔を提供するステップS1と、前記箔の第1の表面が固体炭素源に近接し第2の表面が前記固体炭素源から離れるように、前記箔を基板として前記固体炭素源に対して配置し、その後、箔及び固体炭素源を加熱することにより、前記箔の第2の表面に炭素膜を浸透成長させるステップS2と、を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素膜を浸透成長させる方法であって、
ニッケル箔と銅ニッケル合金箔から選択される、第1の表面及び第2の表面を有する箔を提供するステップS1と、
前記箔の第1の表面が固体炭素源に近接し第2の表面が前記固体炭素源から離れるように、前記箔を基板として前記固体炭素源に対して配置し、次いで、前記箔及び前記固体炭素源を加熱することにより、前記箔の第2の表面に炭素膜を浸透成長させるステップS2と、を含む方法。
【請求項2】
前記箔は単結晶ニッケル箔である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記箔及び前記固体炭素源の加熱は管状炉で行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
アルゴンガス、窒素ガス及び水素ガスから選択される1種以上の保護ガス下で前記箔及び前記固体炭素源が加熱される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記保護ガスはアルゴンガスと水素ガスとの混合ガスである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記混合ガス中のアルゴンガスと水素ガスの流量は、それぞれ、Ar:100sccm~1000sccm、H:5sccm~200sccmである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記箔及び前記固体炭素源を加熱することは、60分~120分内で900℃~1350℃の温度まで昇温し、次いで、該温度で10分~50時間保持するステップを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記炭素膜の成長が終了した後、雰囲気を維持したまま、室温まで自然冷却する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ステップS1は、
多結晶ニッケル箔を耐高温基板に配置して、管状炉に入れ、150℃~650℃で1時間~5時間予備酸化するステップS11と、
前記管状炉に不活性保護ガスを導入し、さらに60分~120分内で1000℃~1350℃まで昇温するステップS12と、
1000℃~1350℃で1時間~20時間保持し、ニッケル箔に対する焼鈍を行うステップS13と、
焼鈍が終了した後、雰囲気条件を維持しながら室温まで冷却し、単結晶ニッケル箔を取得するステップS14と、を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップS11~S14は、管状炉で行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ステップS12における前記不活性保護ガスは、ArとHとの混合ガスであり、ArとHとの体積比はAr:H=0.5:1~200:1である、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップS12におけるArガスとHガスの流量は、それぞれAr:100sccm~1000sccm、H:5sccm~200sccmである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ステップS11における耐高温基板は石英又はコランダム基板であり、管状炉は石英管状炉又はコランダム管状炉である、請求項9から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ステップS11における耐高温基板、管状炉の選択は焼鈍温度に関係し、焼鈍温度が1000℃~1150℃である場合、石英材料を選択し、焼鈍温度が1150℃~1350℃である場合、コランダム材料を選択する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記固体炭素源は、グラファイト紙、グラファイト粉末、活性炭及びカーボンブラックから選択される1つ以上である、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
製造される炭素膜が単結晶グラファイト又はグラフェンである、請求項2に記載の方法。
【請求項17】
製造される炭素膜が単結晶グラファイトであり、該単結晶グラファイトの半径方向のサイズが1cm~10cmであり、縦方向の厚さが0.1μm~50μmである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
製造された単結晶グラファイトの配向が一致する、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年11月9日に提出された中国特許出願第202111318030.3号の優先権を主張し、上記中国特許出願に開示された内容は、参照により本願に組み込まれるものとする。
【0002】
本発明は、材料の分野に属し、固体炭素源で誘導される非蒸着型の炭素膜浸透成長方法に関する。
【背景技術】
【0003】
炭素膜の多くは、物理気相堆積法又は化学気相堆積法によって得られるが、高分子材料、例えばポリエーテルイミドの炭化によって得られるのもある。炭素膜における炭素原子は、通常、sp混成形態である。
【0004】
グラフェンは、sp混成炭素原子がハニカム構造に配列した二次元原子単一層である。グラファイトは、炭素材料の最も一般的な形態の1つであり、それは、非常に多層のグラフェンが積み重ねられてなるため、力学的、熱的、音響学、電気などの性質が高い異方性を有し、グラファイトの水平面上において、これらの性質がグラフェンの性質に匹敵するため、グラファイトは、熱伝導、導電、耐火、電池、潤滑、製鋼、触媒などにおいて非常に広く応用されている。
【0005】
一般的なグラファイトは、層内に結晶粒界が存在することが多く、その面内の優れた性質を大きく低下させるため、グラフェンの多くの優れた性能がグラファイトでは発揮されていない。例えば、科学研究作業で常用される高配向性熱分解グラファイト(HOPG)は、単結晶性が悪く、シングルドメインのサイズは数百マイクロメートルのレベルである。したがって、大型単結晶グラファイトを製造することは材料分野において急務である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】「Seeded growth of large single-crystal copper foils with high-index facets」、Nature、2020年、第581巻、第406~410頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る炭素膜を浸透成長させる方法は、
ニッケル箔と銅ニッケル合金箔から選択される、第1の表面及び第2の表面を有する箔を提供するステップS1と、
前記箔の第1の表面が固体炭素源に近接し第2の表面が前記固体炭素源から離れるように、前記箔を基板として前記固体炭素源に対して配置し、その後、箔及び固体炭素源を加熱することにより、前記箔の第2の表面に炭素膜を浸透成長させるステップS2と、を含む。
【0008】
一実施形態において、前記箔は単結晶ニッケル箔である。
【0009】
一実施形態において、箔及び固体炭素源の加熱は管状炉で行われる。
【0010】
一実施形態において、アルゴンガス、窒素ガス及び水素ガスから選択される1つ又は複数のガス下で箔及び固体炭素源を加熱する。例えば、前記保護ガスはアルゴンガスと水素ガスの混合ガスであり、好ましくはアルゴンガスと水素ガスの流量がそれぞれ、Ar:100~1000sccm、H:5~200sccmである。
【0011】
一実施形態において、前記箔及び固体炭素源を加熱することは、60分~120分内で900~1350℃の温度まで昇温し、その後、この温度で10分~50時間保持するステップを含む。
【0012】
一実施形態において、成長が終了した後、雰囲気を維持したまま、室温まで自然冷却する。
【0013】
いくつかの実施形態では、ステップS1は、
多結晶ニッケル箔を耐高温基板上に配置し、150℃~650℃で1時間~5時間予備酸化するステップS11と、
不活性保護ガスを導入し、さらに60~120分内で1000~1350℃まで昇温するステップS12と、
1000~1350℃で1~20時間保持し、ニッケル箔に対する焼鈍を行うステップS13と、
焼鈍時間が終了した後、雰囲気条件をそのまま維持しながら室温まで冷却し、単結晶ニッケル箔を取得するステップS14と、を含む。
【0014】
一実施形態において、ステップS11~S14は、管状炉で行う。
【0015】
好ましい実施形態において、ステップS12における前記不活性保護ガスは、ArとHとの混合ガスである。より好ましい実施形態において、ステップS12におけるArとHとの体積比は、Ar:H=0.5:1~200:1である。更に好ましい実施形態において、ステップS12におけるArガスとHガスの流量は、それぞれ100~1000sccm、5~200sccmである。
【0016】
一実施形態において、ステップS11における耐高温基板は石英又はコランダム基板であり、管状炉は石英管状炉又はコランダム管状炉である。例えば、ステップS11における耐高温基板、管状炉の選択は焼鈍温度に関係し、焼鈍温度が1000~1150℃である場合、石英材料を選択し、焼鈍温度が1150~1350℃である場合、コランダム材料を選択する。
【0017】
一実施形態において、前記固体炭素源は、グラファイト紙、グラファイト粉末、活性炭及びカーボンブラックから選択される1つ又は複数である。
【0018】
一実施形態において、製造された炭素膜は、単結晶グラファイト又はグラフェンである。好ましい実施形態において、製造される炭素膜は単結晶グラファイトであり、その径方向のサイズが1~10cmであり、縦方向の厚さが0.1~50μmである。
【0019】
一実施形態において、製造された単結晶グラファイトの配向が一致する。
【0020】
本開示の実施形態の技術手段をより明確に説明するために、以下、実施形態に係る図面を簡単に説明する。明らかに、以下に説明される図面は、本開示のいくつかの実施形態に関するものに過ぎず、本発明を制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本開示による単結晶ニッケル箔を用いて単結晶グラファイトを成長させる過程を示す図である。
図2】本開示の実施例1で製造された単結晶ニッケル箔の光学写真(a)及び電子線後方散乱回折(EBSD)による特徴測定結果(b)である。
図3】本開示の実施例4で製造された単結晶グラファイトの写真である。
図4】高配向性熱分解グラファイト(HOPG)と本開示の実施例4で製造された単結晶グラファイトの電子線後方散乱回折(EBSD)パターンであり、(a)、(b)、及び(c)はそれぞれ高配向性熱分解グラファイトの、x方向、y方向、z方向におけるEBSDパターンであり、(d)、(e)、及び(f)はそれぞれ本開示の実施例4で製造された単結晶グラファイトのx方向、y方向、及びz方向におけるEBSDパターンである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示の実施形態の目的、技術的解決手段及び利点をより明確にするために、以下、本開示の実施形態の図面を参照しながら、本開示の実施形態の技術的解決手段を明らかに、完全に説明する。明らかに、説明された実施形態は、本開示の実施形態の一部であり、全ての実施形態ではない。説明される本開示の実施形態に基づいて、当業者が創造的な労力を要せずに想到する他の実施形態は、いずれも本発明の保護範囲に属するものである。
【0023】
本発明は、本発明の基本的な属性から逸脱することなく、他の具体的な形態で実施することができる。なお、矛盾しない限り、本発明のいずれの及び全ての実施形態は、他のいずれか又は複数の実施形態における技術的特徴と組み合わせて別の実施形態を得ることができることを理解されたい。本発明は、このような組み合わせから得られる別の実施形態を含む。
【0024】
本開示において言及される全ての刊行物及び特許は、これらの全ての内容を引用することにより本開示に組み込まれる。引用によって組み込まれた任意の刊行物及び特許に使用される用途又は用語は、本開示において使用される用途又は用語と矛盾すれば、本開示の用途及び用語を基準とする。
【0025】
本明細書において使用される節の表題は、単に文章を構築する目的で使用され、上記主題を制限するものとして解釈されるものではない。
【0026】
特に断らない限り、本明細書に使用される全ての技術用語及び科学用語は、特許を求める主題の属する分野における一般的な意味を有する。ある用語が複数の定義を有する場合、本明細書における定義を基準とする。
【0027】
本開示において使用される「含む」、「含有」又は「包含」などの類似の単語は、該単語の前に出現する要素が該単語の後に列挙された要素及びその同等物をカバーし、記載されていない要素を排除するものではないことを意図する。本明細書において使用される用語「含有」又は「含む(包含)」は、開放型、半閉鎖型及び閉鎖型であってもよい。換言すれば、上記用語は、「実質的に…からなる」こと又は「からなる」ことも含む。
【0028】
本開示において使用される単数形(例えば、「1種」)は、別途に規定しない限り、複数の形態を含んでもよいことを理解されたい。
【0029】
本開示において使用される試薬及び原料は、市販で入手可能であるか又は一般的な製造方法により製造することができる。
【0030】
別途に説明しない限り、任意のタイプの範囲(例えば厚さ)を開示するか又はその保護を請求する場合、該範囲によってカバーされる任意のサブ範囲を含めて、合理的にカバーする各可能な数値を個別に開示するか又はその保護を求めることを意図する。例えば、本明細書において、例えば1~200マイクロメートルの厚さの数値範囲は、該範囲内の厚さを表し、1~200マイクロメートルとは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、…200マイクロメートルを含むだけでなく、1~5マイクロメートル及び1~10マイクロメートルという範囲も含むことを理解されたい。本明細書及び特許請求の範囲に記載された表現材料の量、反応条件、継続時間、材料の定量的性質などの全ての数値は、実施形態において、又は別途明示された場合以外に、全ての場合において、用語「約」によって修飾されると理解されたい。なお、本願において挙げられる任意の数値範囲は、該範囲内の全てのサブ範囲と該範囲又はサブ範囲の各端点との任意の組み合わせを含むことを意図している。
【0031】
本願において、固体炭素源とは、炭素純度90%以上の炭素単体を提供する固体であり、例えば、炭素繊維、グラファイト紙、グラファイト粉末、活性炭、カーボンブラックなどである。一実施形態では、前記固体炭素源は、グラファイト紙、グラファイト粉末、活性炭及びカーボンブラックから選択される1つ又は複数である。
【0032】
本願において、浸透成長とは、固体炭素源の炭素原子が箔の一方の表面から進入するとともに、箔を貫通して箔の他方の表面に配列して成長して炭素膜を形成することを意味する。
【0033】
本願におけるニッケル箔又は銅ニッケル合金箔原料の純度は、通常99.5%以上である。一実施形態において、ニッケル箔又は銅ニッケル合金箔の原料の純度は99.8%以上である。好ましい実施形態において、ニッケル箔又は銅ニッケル合金箔の原料の純度は99.9%以上である。より好ましい実施形態において、ニッケル箔又は銅ニッケル合金箔の原料の純度は99.99%以上である。
【0034】
本願において、単結晶ニッケル箔とは、その内部の格子配向、配列が完全に一致し、ニッケル箔全体にわたって粒界欠陥がないことを意味する。
【0035】
本願において、単結晶グラファイトとは、その内部の格子配向、配列が完全に一致し、グラファイト全体にわたって粒界欠陥がないことを意味する。
【0036】
本開示は、炭素膜を浸透成長させる方法であって、
ニッケル箔と銅ニッケル合金箔から選択される、第1の表面及び第2の表面を有する箔を提供するステップS1と、
前記箔の第1の表面が固体炭素源に近接し第2の表面が前記固体炭素源から離れるように、前記箔を基板として前記固体炭素源に対して配置し、その後、箔及び固体炭素源を加熱することにより、前記箔の第2の表面に炭素膜を浸透成長させるステップS2と、を含む方法を提供する。
【0037】
本開示に係る成長させる方法において、箔が固体炭素源中の炭素を吸収し、固体での拡散輸送を利用し、最終的に炭素膜の浸透成長を実現する。なお、上記方法は従来の気相堆積方法と異なり、炭素含有ガス(メタン、エチレン、アセチレン)がない条件で、炭素膜の成長を実現する。
【0038】
一実施形態では、前記固体炭素源は、グラファイト紙、グラファイト粉末、活性炭及びカーボンブラックから選択される1つ又は複数である。
【0039】
ステップS1において、前記箔は、ニッケル箔と銅ニッケル合金箔から選択され、ニッケル箔は、多結晶ニッケル箔であってもよく単結晶ニッケル箔であってもよく、銅ニッケル合金箔は、例えば、銅とニッケルとの合金成分が90/10又は70/30の箔であってもよい。好ましい一実施形態において、前記箔は単結晶ニッケル箔から選択される。
【0040】
ステップS2において、箔及び固体炭素源を加熱して昇温させるが、箔の溶融温度より低い、例えば箔の溶融温度より100~400℃低い温度まで加熱すべきである。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、箔及び固体炭素源を加熱することにより炭素原子が箔に吸着され、炭素の箔における「溶解」が発生し、熱による炭素の拡散により、炭素原子が箔の他方の表面に析出し配列すると考えられる。
【0041】
一実施形態において、ステップS2の箔及び固体炭素源の加熱は管状炉で行う。
【0042】
好ましい実施形態において、ステップS2の箔及び固体炭素源の加熱は保護ガス下で行われ、前記保護ガスは、アルゴン、窒素及び水素から選択される1つ又は複数の保護ガスであり、例えば、アルゴン、窒素、水素、アルゴン及び水素、窒素及び水素、アルゴン及び窒素、又はアルゴン及び窒素及び水素である。より好ましい実施形態において、前記保護ガスは、アルゴンガスと水素ガスとの混合ガスである。さらに好ましい実施形態において、前記混合ガス中のアルゴンガスと水素ガスの流量はそれぞれ、Ar:100~1000sccm、H:5~200sccmである。
【0043】
一実施形態において、ステップS2の箔及び固体炭素源を加熱することは、60分~120分内で900~1350℃の温度まで昇温し、その後、この温度で10分~50時間保持するステップを含む。好ましい実施形態において、ステップS2の箔及び固体炭素源を加熱することは、ニッケル箔及び固体炭素源を加熱することであり、60分~120分内で1000~1350℃の温度まで昇温し、その後、この温度で10分~50時間保持するステップを含む。保持時間が長いほど、取得する炭素膜が厚くなる。箔の厚さは、通常1~200マイクロメートルである。いくつかの実施形態において、箔の厚さは10~120マイクロメートルであり、例えば10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100、101、102、103、104、105、106、107、108、109、110、111、112、123、114、115、116、117、118、119、120マイクロメートルである。
【0044】
一実施形態において、ステップS2の浸透成長が終了した後、雰囲気を維持したまま、室温まで自然冷却する。
【0045】
好ましい実施形態において、ステップS1における箔は単結晶ニッケル箔である。図1に示すように、第1の表面及び第2の表面を有する単結晶ニッケル箔を提供し、前記単結晶ニッケル箔の第1の表面が固体炭素源に近接し第2の表面が前記固体炭素源から離れるように、前記単結晶ニッケル箔を基板として前記固体炭素源に対して配置し、最終的に、前記単結晶ニッケル箔の第2の表面に高品質の単結晶グラファイトを成長させる。
【0046】
単結晶ニッケル箔の製造及び特徴測定は、非特許文献1を参考することができる。例えば、ニッケル箔(厚さ100μm、99.994%、Alfa Aesar社製)を、まず、大気中で150~650℃で1~4時間酸化し、次に還元雰囲気中で1200℃焼鈍して3~6時間保持する。熱焼鈍しの後、サイズが約5×5cmの単結晶ニッケル箔を取得する。典型的な焼鈍手順を繰り返すことにより、いくつかの高指数の単結晶ニッケル箔を製造することができる。単結晶ニッケル箔は、X線回折(XRD)及び電子線後方散乱回折(EBSD)により特徴を測定することができる。
【0047】
好ましい実施形態において、ステップS1において単結晶ニッケル箔を提供し、
多結晶ニッケル箔を耐高温基板上に配置し、150~650℃で1~5時間予備酸化するステップS11と、
不活性保護ガスを導入し、さらに60~120分内で1000~1350℃まで昇温するステップS12と、
1000~1350℃で1~20時間保持し、ニッケル箔に対する焼鈍を行うステップS13と、
焼鈍時間が終了した後、雰囲気条件をそのまま維持しながら室温まで冷却し、単結晶ニッケル箔を取得するステップS14と、を含む。
【0048】
一実施形態において、ステップS11~S14は、管状炉で行う。
【0049】
ステップS11の予備酸化は、空気中又は酸素含有雰囲気中で行うことができる。
【0050】
好ましい実施形態において、ステップS12における前記不活性保護ガスは、窒素とHとの混合ガス、ArとHとの混合ガス、又は窒素、Ar及びHの混合ガスである。より好ましい実施形態において、ステップS12における前記不活性保護ガスはArとHとの混合ガスである。さらに好ましい実施形態において、ステップS12における不活性保護ガスは、ArとHとの混合ガスであり、ArとHとの体積比がAr:H=0.5:1~200:1である。またさらに好ましい実施形態において、ステップS12におけるArガスとHガスの流量は、それぞれ100~1000sccm、5~200sccmである。
【0051】
ステップS11における耐高温基板は石英基板又はコランダム基板であり、ステップS11~S14における管状炉は石英管状炉又はコランダム管状炉である。例えば、ステップS11における耐高温基板、管状炉の選択は焼鈍温度に関係し、焼鈍温度が1000~1150℃である場合、石英材料を選択し、焼鈍温度が1150~1350℃である場合、コランダム材料を選択する。
【0052】
いくつかの実施形態において、製造される単結晶グラファイトの径方向のサイズは1~10cmであり、縦方向の厚さは0.01~50μmである。
【0053】
一実施形態において、本開示は、
多結晶ニッケル箔を耐高温基板に配置し、かつ管状炉に入れ、150~600℃で1~5時間予備酸化するステップ(1)と、
管状炉に不活性保護ガスを導入し、さらに60~120分内で1000~1350℃まで昇温するステップ(2)と、
1000~1350℃で1~20時間保持し、ニッケル箔に対する焼鈍を行うステップ(3)と、
焼鈍時間が終了した後、雰囲気条件をそのまま維持しながら室温まで冷却し、単結晶ニッケル箔を取得するステップ(4)と、を含む単結晶ニッケル箔の製造方法を提供する。
【0054】
前記不活性保護ガスは、ArとHとの混合ガスであり、ArとHとの体積比はAr:H=10:1~100:1であり、ArガスとHガスの流量はそれぞれ100~1000sccm、5~200sccmである。
【0055】
本開示に係る方法において、予備酸化処理により、多結晶ニッケル箔は、界面エネルギー及び表面エネルギーにより誘導されて、結晶粒の異常成長を実現し、最終的に大型単結晶ニッケル箔を取得することができる。なお、上記方法で製造された単結晶ニッケル箔のサイズは、高温焼鈍したサイズに関連し、また、当該方法はニッケルだけでなく、普及して他の金属に適用することもできる。
【0056】
一実施形態において、本開示は、固体輸送を利用して単結晶グラファイトを成長させる方法であって、
第1の表面及び第2の表面を有する単結晶ニッケル箔を提供するステップS1と、
前記単結晶ニッケル箔の第1の表面が固体炭素源に近接し第2の表面が前記固体炭素源から離れるように、前記単結晶ニッケル箔を基板として前記固体炭素源に対して配置し、最終的に、前記単結晶ニッケル箔の第2の表面に高品質の単結晶グラファイトを成長させるステップS2と、を含み、
ステップS2が具体的には、
単結晶ニッケル箔を固体炭素源に対して配置し、その後、一緒に管状炉に入れるステップS21と、
管状炉にアルゴンガスと水素ガスの混合ガスを導入し、さらに60~120分内で1000~1350℃まで昇温するステップであって、前記混合ガス中のアルゴンガスと水素ガスの流量は、それぞれ、Ar:100~1000sccm、H:5~200sccmであるステップS22と、
温度が1000~1350℃まで上昇した後、10分~50時間保持し、グラファイトの浸透成長を行うステップS23と、
成長が終了した後、雰囲気を維持したまま、室温まで自然冷却し、単結晶グラファイトを取得するステップS24と、を含む、方法を提供する。
【0057】
本開示は、高温焼鈍により製造された単結晶ニッケル箔を固体炭素源に対して配置し、高温で炭素を吸蔵させ、化学ポテンシャル勾配の駆動で単結晶グラファイトを取得する。本開示に係る方法は、単結晶グラファイトを製造しにくいという問題を解決し、非蒸着法を採用し、炭素の固体での拡散輸送により、長さ及び幅が1~10cm、厚さが0.1~50μmの大型単結晶グラファイトを取得する。
【0058】
一実施形態において、グラファイト紙の径方向のサイズはニッケル箔の径方向のサイズよりも大きく、製造される単結晶グラファイトの径方向のサイズは単結晶ニッケル箔の径方向のサイズとほぼ同じである。前記径方向とは、グラファイト紙、ニッケル箔又はグラファイトの厚さ方向に垂直な平面方向である。グラファイト紙の径方向のサイズとニッケル箔の径方向のサイズとの比は、2:1から50:1であってもよい。
【0059】
本発明の炭素膜の下の箔基板は、常法により除去することができる。例えば、新鮮な塩化鉄(III)溶液を調製し、製造した炭素膜サンプルを溶液に入れ、1時間から5日静置し、塩化鉄(III)とニッケル又は銅ニッケル合金とが反応することにより、箔がエッチングされ、得られたサンプルを脱イオン水に入れて複数回洗浄し、最終的に転移後の炭素膜サンプルを取得する。
【0060】
本開示に係る炭素膜から機械的剥離法によってグラフェン薄膜を取得することができる。具体的には、製造された単結晶グラファイトに粘着テープを貼り付けた後、剥離し、これを任意の基板に貼り付け、適切に加熱した後、粘着テープを剥げると、基板にグラフェンのサンプルが残される。製造された単結晶グラファイトの品質が非常に高いため、剥離して得られるサンプルは品質が非常に純粋であり、真性グラフェンと一致する。
【0061】
本開示は下記の1つ以上の利点を有する。
【0062】
1.本開示に係る方法は、炭素膜の連続成長方法であり、炭素膜は単結晶グラファイトを含むが、これらに限定されない。
【0063】
2.本開示は、商業的に購入可能なニッケル箔、銅ニッケル合金箔及び複数種類の固体炭素源を原料とし、箔、炭素源に対して複雑な表面処理を行うことなく、炭素を含む雰囲気(メタン、エチレン、アセチレン等)を導入することなく、大型炭素膜を製造することができ、製造コストを大幅に低減する。
【0064】
3.本開示は、単結晶グラファイトの製造方法を提供し、製造される単結晶グラファイトはサイズが大きく、欠陥が少なく、性能に優れ、広く応用される将来性を有する。
【0065】
4.本開示に係る方法は、簡単かつ効果的であり、コストが低く、大型単結晶グラファイトの実際の応用及び工業化生産に役立つ。
【0066】
以下、具体的な実施例を参照しながら本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0067】
実施例の出発原料は、市販で入手可能であり、及び/又は材料分野の当業者に周知の様々な方法で製造することができる。
【0068】
実施例1~3:単結晶ニッケル箔の製造
【0069】
実施例1
実施例1は、単結晶ニッケル箔を製造し、
多結晶ニッケル箔(Alfa Aesar社製、厚さ100μm、純度99.99%)をコランダム耐高温基板に配置し、かつ管状炉(天津市剴恒電熱技術有限公司製)に入れ、150℃で2時間予備酸化するステップ(1)と、
管状炉に不活性保護ガス(Arガス:500sccm、H:50sccm)を導入し、さらに100分内で1300℃まで昇温するステップ(2)と、
1300℃で8時間保持し、ニッケル箔に対する焼鈍処理を行うステップ(3)と、
焼鈍時間が終了した後、雰囲気条件をそのまま維持しながら降温し、室温まで冷却するステップ(4)と、を含む。
【0070】
図2は、実施例1で製造された単結晶ニッケル箔の光学写真及び電子線後方散乱回折(EBSD)による特徴測定結果であり、ニッケルのサイズが4×3cmであり、EBSDの結果は結晶面指数が(520)の単結晶であることを示している。本開示における電子線後方散乱回折測定はPHI 710 Scanning Auger Nanoprobeシステムを使用し、試験過程は標準手順に従って行われる。
【0071】
実施例2
実施例2は、単結晶ニッケル箔を製造し、
多結晶ニッケル箔を石英耐高温基板に配置し、かつ管状炉に入れ、600℃で1時間予備酸化するステップ(1)と、
管状炉に不活性保護ガス(Arガス:1000sccm、H:10sccm)を導入し、さらに60分内で1000℃まで昇温するステップ(2)と、
1000℃で20時間保持し、ニッケル箔に対する焼鈍処理を行うステップ(3)と、
焼鈍時間が終了した後、雰囲気条件をそのまま維持しながら降温し、室温まで冷却するステップ(4)と、を含む。
【0072】
実施例3
実施例3では、単結晶ニッケル箔を製造し、
多結晶ニッケル箔をコランダム耐高温基板に配置し、かつ管状炉に入れ、150℃で5時間予備酸化するステップ(1)と、
管状炉に不活性保護ガス(Arガス:700sccm、H:50sccm)を導入し、さらに120分内で1350℃まで昇温するステップ(2)と、
1350℃で1時間保持し、ニッケル箔に対する焼鈍処理を行うステップ(3)と、
焼鈍時間が終了した後、雰囲気条件をそのまま維持しながら降温し、室温まで冷却するステップ(4)と、を含む。
【0073】
実施例1と同様に、実施例2、3で製造された単結晶ニッケル箔も電子線後方散乱回折により確認された。
【0074】
実施例4~10では、実施例1~3で取得された単結晶ニッケル箔を用いて単結晶グラファイトを製造する。
【0075】
実施例4
実施例4では、単結晶ニッケル箔を利用して単結晶グラファイトを成長させ、
実施例1で取得された単結晶ニッケル箔をグラファイト紙(北京晶龍特炭科技有限公司、厚さ100μm、純度99.9%)に対して配置し、その後、一緒に管状炉に入れるステップ(1)と、
管状炉にアルゴンガスと水素ガスの混合ガス(Ar:500sccm、H:10sccm)を導入し、さらに120分内で1300℃まで昇温するステップ(2)と、
温度が1300℃まで上昇した後、10時間保持し、グラファイトの浸透成長を行わせるステップ(3)と、
成長が終了した後、雰囲気を維持したまま、体系を室温まで自然冷却させ、サンプルを取り出して、単結晶グラファイトを取得するステップ(4)と、を含む。
【0076】
図3は、本開示の実施例4で製造された単結晶グラファイトの写真であり、製造されたグラファイトのサイズは4×3cmである。
【0077】
図4は高配向性熱分解グラファイト(HOPG)と本開示の実施例4で製造された単結晶グラファイトの電子線後方散乱回折(EBSD)パターンであり、(a)、(b)、及び(c)はそれぞれ高配向性熱分解グラファイトの、x方向、y方向、z方向におけるEBSDパターンであり、HOPGがz方向において単結晶であるが、面内(x、y方向)において結晶面が回転し、単結晶性が良くないことを示している。(d)、(e)、及び(f)はそれぞれ本開示の実施例4で製造された単結晶グラファイトの、x方向、y方向、及びz方向におけるEBSDパターンであり、本発明で製造されたグラファイトがz方向において単結晶であり、面内(x、y方向)において結晶面の回転がなく、単結晶性がよいことを示している。高配向性熱分解グラファイトはNT-MDT社から由来し、その純度がZYAグレードである。
【0078】
実施例5
実施例5では、単結晶ニッケル箔を利用して単結晶グラファイトを成長させ、
実施例1で取得された単結晶ニッケル箔をグラファイト粉末(Alfa Aesar社製、99%)に対して配置し、その後、一緒に管状炉に入れるステップ(1)と、
管状炉にアルゴンガスと水素ガスの混合ガス(Ar:500sccm、H:10sccm)を導入し、さらに120分内で1300℃まで昇温するステップ(2)と、
温度が1300℃まで上昇した後、10時間保持し、グラファイトの浸透成長を行わせるステップ(3)と、
成長が終了した後、雰囲気を維持したまま、体系を室温まで自然冷却させ、サンプルを取り出して、単結晶グラファイトを取得するステップ(4)と、を含む。
【0079】
実施例6
実施例6では、単結晶ニッケル箔を利用して単結晶グラファイトを成長させ、
実施例2で取得された単結晶ニッケル箔を活性炭(羅恩試剤社)に対して配置し、その後、一緒に管状炉に入れるステップ(1)と、
管状炉にアルゴンガスと水素ガスの混合ガス(Ar:500sccm、H:10sccm)を導入し、さらに120分内で1300℃まで昇温するステップ(2)と、
温度が1300℃まで上昇した後、10時間保持し、グラファイトの浸透成長を行わせるステップ(3)と、
成長が終了した後、雰囲気を維持したまま、体系を室温まで自然冷却させ、サンプルを取り出して、単結晶グラファイトを取得するステップ(4)と、を含む。
【0080】
実施例7
実施例7では、単結晶ニッケル箔を利用して単結晶グラファイトを成長させ、
実施例2で取得された単結晶ニッケル箔をカーボンブラック(羅恩試剤社)に対して配置し、その後、一緒に管状炉に入れるステップ(1)と、
管状炉にアルゴンガスと水素ガスの混合ガス(Ar:500sccm、H:10sccm)を導入し、さらに120分内で1300℃まで昇温するステップ(2)と、
温度が1300℃まで上昇した後、10時間保持し、グラファイトの浸透成長を行わせるステップ(3)と、
成長が終了した後、雰囲気を維持したまま、体系を室温まで自然冷却させ、サンプルを取り出して、単結晶グラファイトを取得するステップ(4)と、を含む。
【0081】
実施例8
実施例8では、単結晶ニッケル箔を利用して単結晶グラファイトを成長させ、
実施例3で取得された単結晶ニッケル箔をグラファイト紙(北京晶龍特炭科技有限公司、厚さ100μm、純度99.9%)に対して配置し、その後、一緒に管状炉に入れるステップ(1)と、
管状炉にアルゴンガスと水素ガスの混合ガス(Ar:500sccm、H:5sccm)を導入し、さらに120分内で1350℃まで昇温するステップ(2)と、
温度が1350℃まで上昇した後、10分保持し、グラファイトの浸透成長を行わせるステップ(3)と、
成長が終了した後、雰囲気を維持したまま、体系を室温まで自然冷却させ、サンプルを取り出して、単結晶グラファイトを取得するステップ(4)と、を含む。
【0082】
実施例9
実施例9では、単結晶ニッケル箔を利用して単結晶グラファイトを成長させ、
実施例3で取得された単結晶ニッケル箔をグラファイト紙(北京晶龍特炭科技有限公司、厚さ100μm、純度99.9%)に対して配置し、その後、一緒に管状炉に入れるステップ(1)と、
管状炉にアルゴンガスと水素ガスの混合ガス(Ar:1000sccm、H:10sccm)を導入し、さらに60分内で1000℃まで昇温するステップ(2)と、
温度が1000℃まで上昇した後、50時間保持し、グラファイトの浸透成長を行わせるステップ(3)と、
成長が終了した後、雰囲気を維持したまま、体系を室温まで自然冷却させ、サンプルを取り出して、単結晶グラファイトを取得するステップ(4)と、を含む。
【0083】
実施例10
実施例10では、単結晶ニッケル箔を利用して単結晶グラファイトを成長させ、
実施例3で取得された単結晶ニッケル箔をグラファイト紙(北京晶龍特炭科技有限公司、厚さ100μm、純度99.9%)に対して配置し、その後、一緒に管状炉に入れるステップ(1)と、
管状炉にアルゴンガスと水素ガスの混合ガス(Ar:500sccm、H:100sccm)を導入し、さらに120分内で1300℃まで昇温するステップ(2)と、
温度が1300℃まで上昇した後、1時間保持し、グラファイトの浸透成長を行わせるステップ(3)と、
成長が終了した後、雰囲気を維持したまま、体系を室温まで自然冷却させ、サンプルを取り出して、単結晶グラファイトを取得するステップ(4)と、を含む。
【0084】
実施例4と同様に、実施例5~10で製造された単結晶グラファイトも電子線後方散乱回折により確認された。
【0085】
本発明を実施するための形態について詳細に説明したが、当業者であれば、既に開示されている全ての教示に基づいて、細部を様々に修正し、変更することができ、それらの変更はいずれも本発明の保護範囲にあることは理解できるものである。本発明の保護範囲は、その特許請求の範囲によって限定されるものである。
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-02-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素膜を浸透成長させる方法であって、
ニッケル箔と銅ニッケル合金箔から選択される、第1の表面及び第2の表面を有する箔を提供するステップS1と、
前記箔の第1の表面が固体炭素源に近接し第2の表面が前記固体炭素源から離れるように、前記箔を基板として前記固体炭素源に対して配置し、次いで、前記箔及び前記固体炭素源を加熱することにより、前記箔の第2の表面に炭素膜を浸透成長させるステップS2と、を含む方法。
【請求項2】
前記箔は単結晶ニッケル箔である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記単結晶ニッケル箔の結晶面指数は(520)である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記箔及び前記固体炭素源の加熱は管状炉で行われる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
アルゴンガス、窒素ガス及び水素ガスから選択される1種以上の保護ガス下で前記箔及び前記固体炭素源が加熱される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記保護ガスはアルゴンガスと水素ガスとの混合ガスである、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記混合ガス中のアルゴンガスと水素ガスの流量は、それぞれ、Ar:100sccm~1000sccm、H:5sccm~200sccmである、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記箔及び前記固体炭素源を加熱することは、60分~120分内で900℃~1350℃の温度まで昇温し、次いで、該温度で10分~50時間保持するステップを含む、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記炭素膜の成長が終了した後、雰囲気を維持したまま、室温まで自然冷却する、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ステップS1は、
多結晶ニッケル箔を耐高温基板に配置して、管状炉に入れ、150℃~650℃で1時間~5時間予備酸化するステップS11と、
前記管状炉に不活性保護ガスを導入し、さらに60分~120分内で1000℃~1350℃まで昇温するステップS12と、
1000℃~1350℃で1時間~20時間保持し、ニッケル箔に対する焼鈍を行うステップS13と、
焼鈍が終了した後、雰囲気条件を維持しながら室温まで冷却し、単結晶ニッケル箔を取得するステップS14と、を含む、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項11】
前記ステップS11~S14は、管状炉で行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップS12における前記不活性保護ガスは、ArとHとの混合ガスであり、ArとHとの体積比はAr:H=0.5:1~200:1である、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記ステップS12におけるArガスとHガスの流量は、それぞれAr:100sccm~1000sccm、H:5sccm~200sccmである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ステップS11における耐高温基板は石英又はコランダム基板であり、管状炉は石英管状炉又はコランダム管状炉である、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記ステップS11における耐高温基板、管状炉の選択は焼鈍温度に関係し、焼鈍温度が1000℃~1150℃である場合、石英材料を選択し、焼鈍温度が1150℃~1350℃である場合、コランダム材料を選択する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記固体炭素源は、グラファイト紙、グラファイト粉末、活性炭及びカーボンブラックから選択される1つ以上である、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
製造される炭素膜が単結晶グラファイト又はグラフェンである、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
製造される炭素膜が単結晶グラファイトであり、該単結晶グラファイトの半径方向のサイズが1cm~10cmであり、縦方向の厚さが0.1μm~50μmである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
製造された単結晶グラファイトの配向が一致する、請求項18に記載の方法。
【国際調査報告】