(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】薬物組成物、その調製方法及び応用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/569 20060101AFI20240725BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20240725BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20240725BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20240725BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20240725BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20240725BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20240725BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20240725BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20240725BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20240725BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240725BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20240725BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20240725BHJP
A61P 27/12 20060101ALI20240725BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
A61K31/569
A61K47/38
A61K47/18
A61K47/02
A61K47/12
A61K47/04
A61K47/26
A61K47/10
A61K47/44
A61K47/40
A61K9/10
A61K9/107
A61K9/06
A61P27/12
A61P27/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024509378
(86)(22)【出願日】2022-08-17
(85)【翻訳文提出日】2024-04-12
(86)【国際出願番号】 CN2022113025
(87)【国際公開番号】W WO2023020536
(87)【国際公開日】2023-02-23
(31)【優先権主張番号】202110951364.8
(32)【優先日】2021-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521556440
【氏名又は名称】コアンチョウ オキュサン オフサルミック バイオテクノロジー カンパニー リミテッド
【住所又は居所原語表記】Room 402, No. 223 West Huanshi Road, Nansha District, Guangzhou, Guangdong 511400 China
(71)【出願人】
【識別番号】523236744
【氏名又は名称】オキュサン・オフサルミック・ファーマスーティカル(コアンチョウ)・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】OCUSUN OPHTHALMIC PHARMACEUTICAL(GUANGZHOU)CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Floor 1-3,Block A,Building 203,Tongfa Road 2,Wanqingsha Town,Nansha District,Guangzhou,Guangdong 511400 China
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】ワン, イェンドン
(72)【発明者】
【氏名】スー, インシュエ
(72)【発明者】
【氏名】ツァオ, チェン
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ, シォンアン
(72)【発明者】
【氏名】シュエ, ヤーピン
(72)【発明者】
【氏名】ウー, メイロン
(72)【発明者】
【氏名】ユー, チュイリャン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA09
4C076AA16
4C076AA22
4C076BB24
4C076CC10
4C076DD09E
4C076DD22Z
4C076DD26Z
4C076DD30Z
4C076DD38E
4C076DD43Z
4C076DD49
4C076EE23E
4C076EE32
4C076EE39E
4C076EE53E
4C076FF16
4C076FF36
4C076FF61
4C076GG45
4C086AA01
4C086DA11
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA23
4C086MA28
4C086MA58
4C086NA03
4C086ZA33
(57)【要約】
薬物組成物、その調製方法及び応用である。前記薬物組成物は、成分として、式Iで表される化合物、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、塩化ベンザルコニウム及びpH調整剤を含む。前記薬物組成物は、白内障を予防又は治療する薬物の調製に用いられる。前記薬物組成物は、良好な光照射及び高温安定性を有し、室温で保存することができ、患者の使用に便利であり、そのpH、浸透圧が眼内環境に近く、粒度分布が均一であり、患者に良好な快適性を与えることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分として、式Iで表される化合物、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、塩化ベンザルコニウム及びpH調整剤を含むことを特徴とする薬物組成物。
【化1】
【請求項2】
前記薬物組成物は、成分として、重量部で、式Iで表される化合物0.01~4部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2~12部、塩化ベンザルコニウム0.05~0.06部及びpH調整剤1~20部を含み、前記薬物組成物のpHは6~8であることを特徴とする請求項1に記載の薬物組成物。
【請求項3】
前記薬物組成物における式Iで表される化合物の濃度は0.01~4mg/mLであり、さらに好ましくは0.1mg/mL、0.2mg/mL、0.3mg/mL、0.4mg/mL、0.5mg/mL、1mg/mL、2mg/mL、3mg/mL又は4mg/mLであることを特徴とする請求項2に記載の薬物組成物。
【請求項4】
前記pH調整剤は、水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸、ホウ酸、ホウ砂、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム及びリン酸水素二カリウムから選ばれる1種又は少なくとも2種の組み合わせであることを特徴とする請求項2に記載の薬物組成物。
【請求項5】
前記薬物組成物は、可溶化剤をさらに含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の薬物組成物。
【請求項6】
前記薬物組成物における可溶化剤は、重量部で、10~50部であることを特徴とする請求項5に記載の薬物組成物。
【請求項7】
前記可溶化剤は、ポリソルベート-80、グリセリン、硬化ヒマシ油-RH40、ポリエチレングリコール400、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン及びポロキサマー188から選ばれる1種又は少なくとも2種の組み合わせであることを特徴とする請求項5に記載の薬物組成物。
【請求項8】
前記薬物組成物は、成分として、重量部で、
式Iで表される化合物2部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース6部、ホウ酸16.5部、ホウ砂2部及び塩化ベンザルコニウム0.05部、
又は、式Iで表される化合物2部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース6部、ポリソルベート-80 40部、ホウ酸16部、ホウ砂1.6部及び塩化ベンザルコニウム0.05部、
又は、式Iで表される化合物2部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース6部、硬化ヒマシ油-RH40 10部、ホウ酸17部、ホウ砂1.7部及び塩化ベンザルコニウム0.05部を含むことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の薬物組成物。
【請求項9】
成分として、重量部で、
式Iで表される化合物2部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース6部、グリセリン25部及び塩化ベンザルコニウム0.05部、
又は、式Iで表される化合物2部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース6部、硬化ヒマシ油-RH40 10部、ポリソルベート-80 40部、グリセリン25部及び塩化ベンザルコニウム0.05部を含むことを特徴とする薬物組成物。
【請求項10】
式Iで表される化合物の粒径は<90μmであることを特徴とする請求項1~9のいずれか1項に記載の薬物組成物。
【請求項11】
式Iで表される化合物の粒径は≦50μmであることを特徴とする請求項10に記載の薬物組成物。
【請求項12】
式Iで表される化合物の粒度分布はD90≦7μm及び/又はD50≦4μmであることを特徴とする請求項11に記載の薬物組成物。
【請求項13】
前記薬物組成物の剤形は、懸濁剤、乳剤又はゲル剤であり、好ましくは乳剤であることを特徴とする請求項1~12のいずれか1項に記載の薬物組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の薬物組成物の調製方法であって、式Iで表される化合物、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、塩化ベンザルコニウム、任意にpH調整剤及び任意に可溶化剤を処方量で均一に混合して、前記薬物組成物を得ることを含むことを特徴とする調製方法。
【請求項15】
前記調製方法は、
ヒドロキシプロピルメチルセルロースを注射用水で溶解して、溶液Iを得るステップ(1)と、
注射用水でヒドロキシプロピルメチルセルロース及び式Iで表される化合物以外の成分を処方量で溶解した後、前記溶液Iに加え、均一に混合して、溶液IIを得るステップ(2)と、
処方量の式Iで表される化合物を前記溶液IIに加え、均一に混合して、溶液IIIを得るステップ(3)と、
前記溶液IIIを注射用水で全量にメスアップして、前記薬物組成物を得るステップ(4)とを含むことを特徴とする請求項14に記載の調製方法。
【請求項16】
請求項1~13のいずれか1項に記載の薬物組成物の、白内障又は飛蚊症を予防又は治療する薬物の調製における応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医薬分野に属し、具体的には、薬物組成物、その調製方法及び応用に関する。
【背景技術】
【0002】
白内障は眼の疾患に属し、眼球内の水晶体に発生し、水晶体の濁りは白内障と総称される。老化、遺伝、代謝異常、外傷、放射、中毒及び局所栄養不良などは、いずれも水晶体のう膜の損傷を引き起こし、その浸透性を増加させ、バリア作用を喪失したり、水晶体の代謝障害を引き起こしたり、水晶体タンパク質を変性させ、濁りを形成する。眼球の水晶体が透明から不透明になり、目の受光に影響を与えると、目の視力に影響を与える。眼球の濁りが軽い場合、視力に対する影響が軽いが、濁りの程度が徐々に深くなるにつれて、視力も低下し、深刻な場合、失明を招く。白内障は、最も一般的な盲目病の一つであり、失明を引き起こす主な要因である。白内障形成のメカニズムはまだ明確ではないため、薬物による治療は今まで画期的な進展を得ていない。従って、現在、確定された唯一の有効な治療方法は手術治療である。
【0003】
白内障手術方式の絶え間ない進歩は、白内障の治療に巨大な支援を提供するが、手術治療の治癒率は依然として発生率より遥かに低く、深刻な合併症が発生する可能性がある。一方、白内障の手術治療コストは非常に高く、患者及び医療保険システムに大きな負担を与える。そのため、薬物による予防・治療は非常に重い役割を果たす。
【0004】
現在、臨床的に白内障に対する治療薬は、(1)例えばカタリン(Catalin)、ファコリジン(Phacolysin)、ベンダザクリシン(Bendazac Lysine)等のアルドース還元酵素阻害剤、(2)例えばグルタチオン、タウリン、アスピリン等の抗酸化損傷薬、(3)例えばビタミン類、カロテノイド等の栄養代謝系薬、(4)石斛夜光丸、杞菊地黄丸、石決明散等の漢方薬の複合薬を含む。しかし、これらの白内障を治療する薬物は、長期にわたる臨床試験により、白内障の病状の悪化を遅延させることしかできず、病状を逆転させて白内障を治療することができないことが検証された。そのため、臨床上、安全で、治療効果がよく、眼内透過力が強く、性質が安定した新規な眼科外用抗白内障薬が非常に必要である。
【0005】
ラノステロールは、水晶体内に濃化された両親媒性分子であり、ラノステロールシンターゼ(LSS)のコレステロール合成経路における1つの重要な環化反応によって合成され、水晶体タンパク質の異常凝集を低減し、規則的に配列し直して結晶の透明さを回復させることができる。研究により、水晶体においてラノステロールシンターゼを検出できることが明らかになった。また、Shumiya白内障ラットの研究において、ラノステロールシンターゼとファルネシル二リン酸ファルネシルトランスフェラーゼ1(FDFT 1)のホモ接合性変異の特定の組み合わせは、水晶体におけるコレステロールのレベルを軽減し、白内障を引き起こす。また、ラノステロールは、インビトロ及び細胞レベルにおいて、予め形成された水晶体タンパク質の凝集体を顕著に低下させることができ、インビボレベルにおいても、ラノステロールが白内障の病状を逆転させることができ、水晶体が清澄、透明になり、白内障を予防及び治療する新規な分子であることが実証された。
【0006】
WO2020177714には、白内障の症状を軽減し、水晶体の透明度及び水晶体のGSH-PX活性を向上させることができるラノステロールプロドラッグ化合物の製剤処方が開示されている。しかし、当該処方は、プロセス操作が複雑で、安定性が悪く、常温で保存することが困難であり、また、患者が使用する際に快適性に欠けることを発見した。そのため、臨床的には、プロセス操作が簡単で、処方安定性が強く、患者にとって快適性に優れた組成物又は製剤処方を開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来技術に存在する欠点に対して、本発明の目的は、薬物組成物、その調製方法及び応用を提供することである。該薬物組成物は、良好な光照射及び高温安定性を有し、白内障又は飛蚊症を予防又は治療する薬物の調製に用いられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明は以下の技術案を採用する。
【0009】
第1の態様では、本発明は、
成分として、式Iで表される化合物、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、塩化ベンザルコニウム及びpH調整剤を含む薬物組成物を提供する。
【化1】
【0010】
本発明は、検討により、式Iで表される化合物をヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、塩化ベンザルコニウム及びpH調整剤と配合することにより、式Iで表される化合物の安定性を顕著に向上させ、品質が安定した薬物組成物を得ることができることを見出した。
【0011】
本発明のいくつかの実施形態において、前記薬物組成物は、成分として、重量部で、
式Iで表される化合物0.01~4部(例えば、0.01部、0.05部、0.1部、0.3部、0.5部、0.8部、1部、1.5部、2部、2.5部、3部、3.5部又は4部などであってもよい)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2~12部(例えば、2部、3部、5部、8部、10部又は12部などであってもよい)、塩化ベンザルコニウム0.05~0.06部(例えば、0.05部、0.052部、0.053部、0.055部、0.056部、0.058部又は0.06部などであってもよい)及びpH調整剤1~20部(例えば、1部、2部、3部、5部、8部、10部、12部、15部、18部又は20部などであってもよい)を含む。
【0012】
前記薬物組成物のpHは6~8であり、例えば、6、6.2、6.5、6.8、7、7.2、7.5、7.8又は8などであってもよい。
【0013】
本発明のいくつかの実施形態において、前記薬物組成物における式Iで表される化合物の濃度は0.01~4mg/mLであり、好ましくは0.1mg/mL、0.2mg/mL、0.3mg/mL、0.4mg/mL、0.5mg/mL、1mg/mL、2mg/mL、3mg/mL又は4mg/mLである。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態において、前記pH調整剤は、水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸、ホウ酸、ホウ砂、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム及びリン酸水素二カリウムから選ばれる1種又は少なくとも2種の組み合わせである。
【0015】
本発明のいくつかの実施形態において、前記薬物組成物は、可溶化剤をさらに含む。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態において、前記薬物組成物における可溶化剤は、重量部で、10~50部であり、例えば、10部、15部、20部、25部、30部、35部、40部、45部又は50部などであってもよい。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態において、前記可溶化剤は、ポリソルベート-80、グリセリン、硬化ヒマシ油-RH40、ポリエチレングリコール400、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン及びポロキサマー188から選ばれる1種又は少なくとも2種の組み合わせである。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態において、前記薬物組成物は、成分として、重量部で、
式Iで表される化合物2部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース6部、ホウ酸16.5部、ホウ砂2部及び塩化ベンザルコニウム0.05部、
又は、式Iで表される化合物2部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース6部、ポリソルベート-80 40部、ホウ酸16部、ホウ砂1.6部及び塩化ベンザルコニウム0.05部、
又は、式Iで表される化合物2部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース6部、硬化ヒマシ油-RH40 10部、ホウ酸17部、ホウ砂1.7部及び塩化ベンザルコニウム0.05部を含む。
【0019】
第2の態様では、本発明は、成分として、重量部で、
式Iで表される化合物2部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース6部、グリセリン25部及び塩化ベンザルコニウム0.05部、
又は、式Iで表される化合物2部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース6部、硬化ヒマシ油-RH40 10部、ポリソルベート-80 40部、グリセリン25部及び塩化ベンザルコニウム0.05部を含む薬物組成物を提供する。
【0020】
本発明のいくつかの実施形態において、式Iで表される化合物の粒径は<90μmであり、好ましくは≦50μmである。
【0021】
本発明のいくつかの実施形態において、式Iで表される化合物の粒度分布はD90≦7μm及び/又はD50≦4μmである。
【0022】
本発明のいくつかの実施形態において、式Iで表される化合物のD90粒径は<8μmである。
【0023】
本発明のいくつかの実施形態において、式Iで表される化合物のD50粒径は≦3.5μmである。
【0024】
本発明のいくつかの実施形態において、前記薬物組成物の剤形は、懸濁剤、乳剤又はゲル剤であり、好ましくは乳剤である。
【0025】
第3の態様では、本発明は、式Iで表される化合物、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、塩化ベンザルコニウム、任意にpH調整剤及び任意に可溶化剤を処方量で均一に混合して、前記薬物組成物を得ることを含む、第1の態様又は第2の態様に記載の薬物組成物の調製方法を提供する。
【0026】
なお、本発明において、前記「任意に」とは、該当する成分がある又はないことを意味する。薬物組成物に該当する成分が含まれている場合には、当該成分を調製方法に用い、薬物組成物に該当する成分が含まれていない場合には、当該成分を調製方法に用いない。
【0027】
本発明のいくつかの実施形態において、前記調製方法は、
ヒドロキシプロピルメチルセルロースを注射用水で溶解して、溶液Iを得るステップ(1)と、
注射用水でヒドロキシプロピルメチルセルロース及び式Iで表される化合物以外の成分を処方量で溶解した後、前記溶液Iに加え、均一に混合して、溶液IIを得るステップ(2)と、
処方量の式Iで表される化合物を前記溶液IIに加え、均一に混合して、溶液IIIを得るステップ(3)と、
前記溶液IIIを注射用水で全量にメスアップして、前記薬物組成物を得るステップ(4)とを含む。
【0028】
好ましくは、前記調製方法は、
ヒドロキシプロピルメチルセルロースを注射用水で溶解し、撹拌して完全に溶解させて、溶液Iを得るステップ(1)と、
注射用水でヒドロキシプロピルメチルセルロース及び式Iで表される化合物以外の成分を処方量で溶解した後、前記溶液Iに加え、注射用水を90%の処方量になるまで添加し、均一に撹拌して、溶液IIを得るステップ(2)と、
処方量の式Iで表される化合物を前記溶液IIに加えて、溶液IIIを得るステップ(3)と、
前記溶液IIIを高圧ホモジナイザーで均質循環させて、溶液IVを得るステップ(4)と、
前記溶液IVを注射用水で全量にメスアップして、前記薬物組成物を得るステップ(5)とを含む。
【0029】
第4の態様では、本発明は、第1の態様又は第2の態様に記載の薬物組成物の、白内障又は飛蚊症を予防又は治療する薬物の調製における応用を提供する。
【0030】
従来技術に比べて、本発明は以下の有益な効果を有する。
本発明で提供される薬物組成物は、白内障、飛蚊症の予防又は治療に用いることができ、4500Lxの光照射条件又は60℃の高温条件下で10日間放置しても、pH、浸透圧が安定し、関連物質及び含有量に顕著な変化がなく、良好な光照射及び高温安定性を有し、室温で保存することができ、患者の使用に便利である。同時に、該薬物組成物のpH、浸透圧が眼内環境に近く、粒度分布が均一であり、且つD50粒径が3.5μmを超えず、患者に良好な快適性を与えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、具体的な実施形態により本発明の技術案をさらに説明する。当業者であれば、前記具体的な実施形態は本発明を理解するためのものに過ぎず、本発明に対する具体的な制限と見なされるべきではないことを理解すべきである。
【0032】
実施例1
本実施例は、以下の表に示される成分を含む薬物組成物を提供する。
【表1】
【0033】
本実施例に記載の薬物組成物の調製方法は以下の通りである。
(1)まず、10%の煮沸した注射用水でヒドロキシプロピルメチルセルロースを溶解し、適量の冷注射用水を加え、撹拌して完全に溶解させて、溶液Iを得た。
(2)適量の注射用水で、処方量のホウ酸、ホウ砂及び塩化ベンザルコニウムを撹拌溶解した後、溶液Iに加え、注射用水を90%の処方量になるまで添加し、均一に撹拌して、溶液IIを得た。
(3)処方量の式Iで表される化合物を秤量し、溶液IIに加え、高せん断乳化機で10000r/minの速度で10分間分散させ、均一に分散させて、溶液IIIを得た。
(4)溶液IIIを高圧ホモジナイザーで250barの圧力で1回均質循環させ、薬液を収集し、適量の無菌注射用水で高圧ホモジナイザーの管路を洗浄し、洗浄液を収集し、薬液と合わせて溶液IVを得た。
(5)無菌注射用水で溶液IVを全量にメスアップした。
【0034】
上記薬物組成物は、さらに、サンプリングしてpH、浸透圧、含有量を測定し、合格後、低密度ポリエチレン薬用点眼剤瓶を用いて無菌環境において5mLの薬液を1瓶ごとに分注するステップを経て点眼液製品に調製することができる。
【0035】
実施例2
本実施例は、以下の表に示される成分を含む薬物組成物を提供する。
【表2】
【0036】
本実施例に記載の薬物組成物の調製方法は以下の通りである。
(1)まず、10%の煮沸した注射用水でヒドロキシプロピルメチルセルロースを溶解し、適量の冷注射用水を加え、撹拌して完全に溶解させて、溶液Iを得た。
(2)適量の注射用水で、処方量のホウ酸、ホウ砂及び塩化ベンザルコニウムを撹拌溶解した後、溶液Iに加え、撹拌しながら処方量のポリソルベート-80を徐々に加え、注射用水を90%の処方量になるまで加え、均一に撹拌して、溶液IIを得た。
(3)処方量の式Iで表される化合物を秤量し、溶液IIに加え、高せん断乳化機で10000r/minの速度で10分間分散させ、均一に分散させて、溶液IIIを得た。
(4)溶液IIIを高圧ホモジナイザーで250barの圧力で1回均質循環させ、薬液を収集し、適量の無菌注射用水で高圧ホモジナイザーの管路を洗浄し、洗浄液を収集し、薬液と合わせて溶液IVを得た。
(5)無菌注射用水で溶液IVを全量にメスアップした。
【0037】
上記薬物組成物は、さらに、サンプリングしてpH、浸透圧、含有量を測定し、合格後、低密度ポリエチレン薬用点眼剤瓶を用いて無菌環境において5mLの薬液を1瓶ごとに分注するステップを経て点眼液製品に調製することができる。
【0038】
実施例3
本実施例は、以下の表に示される成分を含む薬物組成物を提供する。
【表3】
【0039】
本実施例に記載の薬物組成物の調製方法は以下の通りである。
(1)まず、10%の煮沸した注射用水でヒドロキシプロピルメチルセルロースを溶解し、適量の冷注射用水を加え、撹拌して完全に溶解させて、溶液Iを得た。
(2)適量の注射用水で、処方量のホウ酸、ホウ砂及び塩化ベンザルコニウムを撹拌溶解した後、溶液Iに加え、撹拌しながら処方量の硬化ヒマシ油-RH40を徐々に加え、注射用水を90%の処方量になるまで加え、均一に撹拌して、溶液IIを得た。
(3)処方量の式Iで表される化合物を秤量し、溶液IIに加え、高せん断乳化機で10000r/minの速度で10分間分散させ、均一に分散させて、溶液IIIを得た。
(4)溶液IIIを高圧ホモジナイザーで250barの圧力で1回均質循環させ、薬液を収集し、適量の無菌注射用水で高圧ホモジナイザーの管路を洗浄し、洗浄液を収集し、薬液と合わせて溶液IVを得た。
(5)無菌注射用水で溶液IVを全量にメスアップした。
【0040】
上記薬物組成物は、さらに、サンプリングしてpH、浸透圧、含有量を測定し、合格後、低密度ポリエチレン薬用点眼剤瓶を用いて無菌環境において5mLの薬液を1瓶ごとに分注するステップを経て点眼液製品に調製することができる。
【0041】
実施例4
本実施例は、以下の表に示される成分を含む薬物組成物を提供する。
【表4】
【0042】
本実施例に記載の薬物組成物の調製方法は以下の通りである。
(1)まず、10%の煮沸した注射用水でヒドロキシプロピルメチルセルロースを溶解し、適量の冷注射用水を加え、撹拌して完全に溶解させて、溶液Iを得た。
(2)適量の注射用水で、処方量の塩化ベンザルコニウムを撹拌溶解した後、溶液Iに加え、撹拌しながら処方量のグリセリンを徐々に加え、注射用水を90%の処方量になるまで加え、均一に撹拌して、溶液IIを得た。
(3)処方量の式Iで表される化合物を秤量し、溶液IIに加え、高せん断乳化機で10000r/minの速度で10分間分散させ、均一に分散させて、溶液IIIを得た。
(4)溶液IIIを高圧ホモジナイザーで250barの圧力で1回均質循環させ、薬液を収集し、適量の無菌注射用水で高圧ホモジナイザーの管路を洗浄し、洗浄液を収集し、薬液と合わせて溶液IVを得た。
(5)無菌注射用水で溶液IVを全量にメスアップした。
【0043】
上記薬物組成物は、さらに、サンプリングしてpH、浸透圧、含有量を測定し、合格後、低密度ポリエチレン薬用点眼剤瓶を用いて無菌環境において5mLの薬液を1瓶ごとに分注するステップを経て点眼液製品に調製することができる。
【0044】
実施例5
本実施例は、以下の表に示される成分を含む薬物組成物を提供する。
【表5】
【0045】
本実施例に記載の薬物組成物の調製方法は以下の通りである。
(1)まず、10%の煮沸した注射用水でヒドロキシプロピルメチルセルロースを溶解し、適量の冷注射用水を加え、撹拌して完全に溶解させて、溶液Iを得た。
(2)適量の注射用水で、処方量の塩化ベンザルコニウムを撹拌溶解した後、溶液Iに加え、撹拌しながら処方量の硬化ヒマシ油-RH40、ポリソルベート-80及びグリセリンを徐々に加え、注射用水を90%の処方量になるまで加え、均一に撹拌して、溶液IIを得た。
(3)処方量の式Iで表される化合物を秤量し、溶液IIに加え、高せん断乳化機で10000r/minの速度で10分間分散させ、均一に分散させて、溶液IIIを得た。
(4)溶液IIIを高圧ホモジナイザーで250barの圧力で1回均質循環させ、薬液を収集し、適量の無菌注射用水で高圧ホモジナイザーの管路を洗浄し、洗浄液を収集し、薬液と合わせて溶液IVを得た。
(5)無菌注射用水で溶液IVを全量にメスアップした。
【0046】
上記薬物組成物は、さらに、サンプリングしてpH、浸透圧、含有量を測定し、合格後、低密度ポリエチレン薬用点眼剤瓶を用いて無菌環境において5mLの薬液を1瓶ごとに分注するステップを経て点眼液製品に調製することができる。
【0047】
比較例1
以下の表に示される成分を含む薬物組成物を提供する。
【表6】
【0048】
前記薬物組成物の調製方法は、グリセリンの代わりにポロキサマー188及びポロキサマー407を用いる以外、実施例4と同様である。
【0049】
安定性試験
(1)光照射安定性試験:上記実施例及び比較例で提供された組成物の光照射安定性を考察し、光照射要因を考察する全てのサンプルを市販品として包装し、4500Lx条件下の光照射インキュベーターMGC-100に置き、それぞれ0日目、5日目、10日目にサンプリングし、安定性の重点考察項目に従って測定した。安定性の考察項目は、性状、粒度、粒度分布、pH値、浸透圧、式Iで表される化合物含有量の測定、不純物含有量の測定を含み、測定結果は以下の表1に示す。
【0050】
(2)高温安定性試験:上記実施例及び比較例で提供された組成物の高温安定性を考察し、高温要因を考察する全てのサンプルを市販品として包装し、60℃の条件下の101-1Aデジタル電熱乾燥恒温箱に置き、それぞれ0日目、5日目、10日目にサンプリングし、安定性の重点考察項目に従って測定した。安定性の考察項目は、性状、粒度、粒度分布、pH値、浸透圧、式Iで表される化合物含有量の測定、不純物含有量の測定を含み、測定結果は以下の表1に示す。
【0051】
【0052】
表1の実験結果から分かるように、本発明で提供された薬物組成物は、4500Lx光照射条件又は60℃の高温条件下で10日間放置しても、pH、浸透圧が安定し、関連物質及び含有量に明らかな変化がなく、比較例で提供された薬物組成物よりも優れた光照射及び高温安定性を有し、室温で保存することができ、患者の使用に便利である。同時に、該薬物組成物のpH、浸透圧が眼内環境に近く、粒度分布が均一であり、且つD50粒径が3.5μmを超えず、患者により良い快適性を与えることができる。
【0053】
比較例1で得られた薬物組成物は、4500Lx光照射条件又は60℃の高温条件下でpH値が明らかに変化し、安定性が悪い。また、比較例1で得られた薬物組成物はゲル剤であり、その浸透圧は測定できず、眼内環境の要求にも合致せず、D50、D90の粒径が大きく、快適性が悪い。
【0054】
治療効果試験
9名の飛蚊症に罹患している患者を選択し、確定診断日から、実施例1で提供された薬物組成物を1日4回、毎回2滴ずつ投与し、15日目、30日目に再診し、患者の飛蚊症の治療効果を観察し、具体的に以下の表2に示す。
【0055】
【0056】
表2の治療効果から分かるように、本発明で提供される薬物組成物は、約15日投与すると、目の前の黒い点、帯状物を明らかに浅く及び/又は減少させ、コントラスト感度を改善することができ、約30日投与すると、目の前の黒い点、帯状物をほぼ消失させ、さらに完全に消失させ、コントラスト感度などの視覚品質を明らかに改善し、飛蚊症が基本的に治癒し、且つ他の副作用がない。
【0057】
以上、一般的な説明、具体的な実施形態及び試験を用いて本発明を詳細に説明したが、本発明に基づいて、いくつかの修正又は改良を行うことができ、これは当業者にとって明らかである。従って、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で行われたこれらの修正又は改良はいずれも本発明の保護範囲に属する。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分として、式Iで表される化合物、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、塩化ベンザルコニウム及びpH調整剤を含むことを特徴とする薬物組成物。
【化1】
【請求項2】
前記薬物組成物は、成分として、重量部で、式Iで表される化合物0.01~4部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース2~12部、塩化ベンザルコニウム0.05~0.06部及びpH調整剤1~20部を含み、前記薬物組成物のpHは6~8であることを特徴とする請求項1に記載の薬物組成物。
【請求項3】
前記薬物組成物における式Iで表される化合物の濃度は0.01~4mg/mLであり、さらに好ましくは0.1mg/mL、0.2mg/mL、0.3mg/mL、0.4mg/mL、0.5mg/mL、1mg/mL、2mg/mL、3mg/mL又は4mg/mLであることを特徴とする請求項2に記載の薬物組成物。
【請求項4】
前記pH調整剤は、水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸、ホウ酸、ホウ砂、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム及びリン酸水素二カリウムから選ばれる1種又は少なくとも2種の組み合わせであることを特徴とする請求項2に記載の薬物組成物。
【請求項5】
前記薬物組成物は、可溶化剤をさらに含
み、好ましくは
前記薬物組成物における可溶化剤は、重量部で、10~50部であり、及び/又は
前記可溶化剤は、ポリソルベート-80、グリセリン、硬化ヒマシ油-RH40、ポリエチレングリコール400、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン及びポロキサマー188から選ばれる1種又は少なくとも2種の組み合わせであることを特徴とする請求項
1に記載の薬物組成物。
【請求項6】
前記薬物組成物は、成分として、重量部で、
式Iで表される化合物2部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース6部、ホウ酸16.5部、ホウ砂2部及び塩化ベンザルコニウム0.05部、
又は、式Iで表される化合物2部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース6部、ポリソルベート-80 40部、ホウ酸16部、ホウ砂1.6部及び塩化ベンザルコニウム0.05部、
又は、式Iで表される化合物2部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース6部、硬化ヒマシ油-RH40 10部、ホウ酸17部、ホウ砂1.7部及び塩化ベンザルコニウム0.05部を含むことを特徴とする請求項
1に記載の薬物組成物。
【請求項7】
成分として、重量部で、
式Iで表される化合物2部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース6部、グリセリン25部及び塩化ベンザルコニウム0.05部、
又は、式Iで表される化合物2部、ヒドロキシプロピルメチルセルロース6部、硬化ヒマシ油-RH40 10部、ポリソルベート-80 40部、グリセリン25部及び塩化ベンザルコニウム0.05部を含むことを特徴とする薬物組成
物。
【化2】
【請求項8】
式Iで表される化合物の粒径は<90μm
、好ましくは≦50μmであり、及び/又は式Iで表される化合物の粒度分布はD90≦7μm及び/又はD50≦4μmであることを特徴とする請求項1
又は7に記載の薬物組成物。
【請求項9】
前記薬物組成物の剤形は、懸濁剤、乳剤又はゲル剤であり、好ましくは乳剤であることを特徴とする請求項1
又は7に記載の薬物組成物。
【請求項10】
請求項1
又は7に記載の薬物組成物の調製方法であって、式Iで表される化合物、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、塩化ベンザルコニウム、任意にpH調整剤及び任意に可溶化剤を処方量で均一に混合して、前記薬物組成物を得ることを含むことを特徴とする調製方法。
【請求項11】
前記調製方法は、
ヒドロキシプロピルメチルセルロースを注射用水で溶解して、溶液Iを得るステップ(1)と、
注射用水でヒドロキシプロピルメチルセルロース及び式Iで表される化合物以外の成分を処方量で溶解した後、前記溶液Iに加え、均一に混合して、溶液IIを得るステップ(2)と、
処方量の式Iで表される化合物を前記溶液IIに加え、均一に混合して、溶液IIIを得るステップ(3)と、
前記溶液IIIを注射用水で全量にメスアップして、前記薬物組成物を得るステップ(4)とを含むことを特徴とする請求項
10に記載の調製方法。
【請求項12】
請求項1
又は7に記載の薬物組成物の、白内障又は飛蚊症を予防又は治療する薬物の調製における応用。
【国際調査報告】