(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】圧縮空気システムのモデル予測制御
(51)【国際特許分類】
F04B 49/02 20060101AFI20240725BHJP
F04B 49/06 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
F04B49/02 331A
F04B49/06 331Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024510433
(86)(22)【出願日】2021-08-26
(85)【翻訳文提出日】2024-02-20
(86)【国際出願番号】 EP2021073675
(87)【国際公開番号】W WO2023025393
(87)【国際公開日】2023-03-02
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】593074329
【氏名又は名称】アトラス コプコ エアーパワー,ナームローゼ フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】ATLAS COPCO AIRPOWER,naamloze vennootschap
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100196221
【氏名又は名称】上潟口 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】ファン ロイ ヴィム
【テーマコード(参考)】
3H145
【Fターム(参考)】
3H145BA28
3H145CA01
3H145CA06
3H145CA30
3H145DA48
3H145EA13
3H145EA14
3H145EA35
3H145EA37
(57)【要約】
本発明は、共通の圧縮空気分配システムに流体接続されている有限の構成要素セットを制御するためのコンピュータ実装方法に関し、本方法は、-圧縮空気分配システムの予測データを受け取るステップと;-構成要素セットの各構成要素の特性データを受け取るステップと;-連続微分可能関数の1又は2以上のセット決定するステップであって、関数のセットの各々は、構成要素セットの構成要素の一意的な動作シーケンスを表す、ステップと;-連続微分可能関数の1又は2以上のセットから関数の最適セットを選択するステップであって、最適セットによって表される一意的な動作シーケンスは、予測データを満たす、ステップと;-関数の最適セットから構成要素セットの構成データを導き出すステップと;-構成データに基づいて、構成要素セットの各構成要素を構成するステップと;を反復的に繰り返す。
【選択図】
図4b
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通の圧縮空気分配システムに流体接続されている有限の構成要素セットを制御するためのコンピュータ実装方法であって、
予測期間をカバーする、前記圧縮空気分配システムに対する予測される将来の圧力及び/又は空気流量需要を表す予測データを受け取るステップと、
前記構成要素セットの各構成要素の特性データを受け取るステップであって、前記特性データは、少なくとも空気流量データ、空気圧データ、及びエネルギー消費データを含む、ステップと、
連続微分可能関数の1又は2以上のセットを決定するステップであって、前記関数のセットの各々は、前記圧縮空気分配システムの圧力及び/又は空気流量を記述し、前記関数のセットの各々は、前記予測期間の少なくとも初期部分について、前記予測される将来の圧力及び/又は空気流量データを満たす、前記構成要素セットの前記構成要素の一意的な動作シーケンスを表す、ステップと、
前記連続微分可能関数の1又は2以上のセットから関数の最適セットを選択するステップであって、前記最適セットによって表される前記一意的な動作シーケンスが、前記予測期間の少なくとも第2の部分について、前記予測される将来の圧力及び/又は空気流量データを満たす、ステップと、
前記関数の最適セットから、前記構成要素セットの構成データを導き出すステップと、
前記構成データに基づいて、前記構成要素セットの各構成要素を構成するステップと、
を反復的に繰り返す、方法。
【請求項2】
前記構成要素セットの各構成要素は、状態機械によって表される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
連続微分可能関数の1又は2以上のセットを決定するステップは、前記構成要素セットの可能な動作シーケンスを表す状態空間データを生成することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記状態空間データは、前記構成要素セットの1又は2以上の構成要素の前の状態から、前記構成要素セットの1又は2以上の構成要素の後の状態への許容可能な状態遷移に基づいて生成される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの境界条件又は目的関数の値に基づいて前記状態空間データを刈込むステップをさらに含む、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記関数の1又は2以上のセットの各々は、前記圧縮空気分配システムのエネルギー使用量を記述する目的関数を含み、前記関数の最適セットを選択するステップは、前記目的関数の少なくとも局所最小値を探索することを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記局所最小値は、分枝限定アルゴリズムを用いて探索される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記目的関数の前記局所最小値は、前記構成要素セットの前記構成要素が前記関数の最適セットによって表される前記動作シーケンスの前記状態遷移を受ける前記時間インスタントを決定することによって探索される、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記特性データは、前記構成要素セットの少なくとも1つの構成要素についての最小起動エネルギーデータ及び/又は起動後の最小活動期間データ及び/又は平均メンテナンス時間をさらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
反復的に繰り返すステップは、離散的な一定の時間間隔で繰り返すことを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記予測期間は時間依存性である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記方法を実行するデータ処理手段の少なくとも前記最大処理能力に基づいて、前記予測期間の前記初期部分を決定することをさらに含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の方法を実行するための手段を備えるデータ処理システム。
【請求項14】
プログラムがコンピュータによって実行されると、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法をコンピュータに実行させる命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項15】
請求項1から12のいずれか一項に記載の方法に従って制御されるように構成された圧縮空気又はガスシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機の分野に関し、より詳細には、圧縮機室のモデル予測制御に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮機が1又は2以上の圧縮段で空気又はガスを圧縮するために使用されることは知られている。圧縮された空気又はガスは、その後、1又は2以上の消費者に供給される。その分配は、圧縮空気又はガスシステムを通じて行われる。
【0003】
消費者の数は膨大であり、例えば工業プラント又は病院内など、かなりの面積にわたって空間的に分散する場合があるため、通常、そこから圧縮空気又はガスを供給するための中央ハブが設置される。
【0004】
通常、中央ハブは1又は2以上の圧縮機室を備え、各圧縮機室には1又は2以上の圧縮機が設置されている。さらに、バルブ、フィルタ、乾燥器、容器、センサ、制御構成要素、及び/又は圧縮機室を管理及び/又は制御するための他の装置などの補助装置も同様に設置されている。次に、1又は2以上の圧縮機室から、消費者に供給するためのパイプ又はダクトが出る。チェーンの最後の部分として、圧縮空気又はガスは、消費者によって様々な用途に利用される。
【0005】
さらに、圧縮機と消費者との間には、安全バルブ、分配バルブ、制御センサ、又は圧縮空気又はガスの分配を制御して保護するための他の装置など、別の装置セットが存在する場合もある。
【0006】
上述の機構は、圧縮空気又はガスシステムとも呼ばれる場合がある。従って、圧縮空気又はガスシステムは、1つの消費者に供給する1つの圧縮機を備える場合もあるが、一般的には、より広範なものと見なされる可能性があり、結果として、多数の構成要素を備え、それによって互いに相互作用する複数の要素の複雑なシステムを構成する。
【0007】
圧縮空気又はガスシステムを利用するためには、そのさまざまな要素を制御する必要がある。独立したローカル制御装置によって圧縮機を個別に制御することはすでに知られており、それによって異なる制御装置は、予め設定された圧力値に設定され、その結果、圧縮空気の消費量に応じて、圧縮機のオン/オフを順次切り替える。
【0008】
さらに、圧縮空気又はガスシステムを制御する方法として、圧縮空気又はガスシステムの一部を構成する構成要素を制御するための多数の通信可能な制御装置によって圧縮空気又はガスシステムを制御する方法が知られており、これにより、構成要素は、何らかの制御装置が他の制御装置によって制御される構成要素の動作状態を決定しないように制御される。国際公開第2008/009073号には、このような方法が開示されている。
【0009】
国際公開第2008/009072号には、少なくとも1つの共通制御可能な構成要素を有する複数の圧縮空気又はガスネットワークから構成される圧縮空気ユニットを制御するための別の方法が開示されており、これにより、圧縮空気又はガスネットワークの少なくとも1つの測定データに基づいて、少なくとも共通制御可能な構成要素が少なくとも1つの制御装置によって制御される。
【0010】
しかしながら、これらの制御方法の欠点は、圧縮空気又はガスシステムの現在の状態にのみ基づいて作動することである、つまり、いかなる種類の予測も考慮することができないことである。これは、準最適制御及び高いエネルギーコストにつながる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2008/009073号
【特許文献2】国際公開第2008/009072号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上述の欠点及び他の欠点を改善することを目的とする。本発明の第1の態様は、共通の圧縮空気分配システムに流体接続されている有限の構成要素セットを制御するためのコンピュータ実装方法に関し、本方法は、
予測期間をカバーする、圧縮空気分配システムに対する予測される将来の圧力及び/又は空気流量需要を表す予測データを受け取るステップと、
構成要素セットの各構成要素の特性データを受け取るステップであって、特性データは、少なくとも空気流量データ、空気圧データ、及びエネルギー消費データを含む、ステップと、
連続微分可能関数の1又は2以上のセットを決定するステップであって、関数のセットの各々は、圧縮空気分配システムの圧力及び/又は空気流量を記述し、関数のセットの各々は、予測期間の少なくとも初期部分について、予測される将来の圧力及び/又は空気流量データを満たす、構成要素セットの構成要素の一意的な動作シーケンスを表す、ステップと、
連続微分可能関数の1又は2以上のセットから関数の最適セットを選択するステップであって、最適セットによって表される一意的な動作シーケンスが、予測期間の少なくとも第2の部分について、予測される将来の圧力データ及び/又は空気流量データを満たす、ステップと、
-関数の最適セットから、構成要素セットの構成データを導き出すステップと、
-構成データに基づいて、構成要素セットの各構成要素を構成するステップと、
を反復的に繰り返す。
【0013】
本方法の第1のステップでは、予測データを受け取る。本開示に関連して、「予測データ」は、1又は2以上のプロセス変数の将来の値の推定値として解釈される。圧縮空気分配システムの場合、予測データは、推定された将来の圧力需要及び/又は推定された将来の空気流量需要のうちの少なくとも1つを含む。予測データは、少なくとも予測期間をカバーし、この予測期間は、数秒、数分、数時間、数日、又はさらに長い期間を有することができる。予測期間の期間は、本方法の反復ごとに変更することができる。好ましくは、予測データは時系列データを含み、将来の変数の推定値は、予測期間中の1又は2以上の別個の時間インスタンスについて提供される。予測データは、1又は2以上のプロセス変数に関する推定値及び/又は推定信頼区間及び/又は推定境界値を含むことができる。
予測データは、圧縮空気分配システムのモデル、過去及び/又は現在のプロセス変数データ、あるいは生産計画、メンテナンス計画、カレンダーデータ、休日データ、又は天気予報データのような他の入力データに基づいて生成することができる。
【0014】
本方法の第2ステップでは、特性データを受け取る。本開示に関連して、「特性データ」は、圧縮空気システムの1又は2以上の要素の技術的又は機能的特性を特徴付けるデータと解釈される。特性データは、数学的モデル、ルックアップテーブル、測定データ、仕様書、もしくは当業者によって又は適切なアルゴリズムによって解釈することができ何らかの他の形式のデータとすることができる。特性データは、少なくとも構成要素セットの各構成要素に関するデータを含む。構成要素の各々の特性データは、少なくとも空気流量データ、空気圧データ、エネルギー消費データを含む。特定の圧縮機に関して、圧縮機の動作領域を特性データに含めることが有用である。この動作領域は、空気圧-空気流量平面における圧縮機の許容動作領域を表し、この領域内の各動作点についエネルギー効率を圧縮機に帰するものとする。
【0015】
本方法の第3ステップでは、連続微分可能な関数の1又は2以上のセットを決定する。このような連続微分可能関数のセットは、1又は2以上の連続微分可能関数を含み、セットの各々は、構成要素セットのうちの構成要素の一意的な動作シーケンスを表す。セットの各々は、圧縮空気システムの圧力及び/又は空気流量並びに構成要素のエネルギー消費を表す、少なくとも1又は2以上の連続微分可能関数を含む。各セット内の構成要素の一意的な動作シーケンスが選択され、圧縮空気システムの圧力及び/又は空気流量は、予測期間の少なくとも初期部分の圧力及び/又は空気流量需要の予測データを満たすようになっている。好ましくは、初期部分は、本方法の1回の反復を完了するのに必要な期間と、構成要素のセットの少なくとも1つの圧縮機を停止状態から定常負荷状態にするのに必要な期間との合計よりも長い期間である。連続微分可能関数及び構成要素の動作シーケンスについて可能な選択肢は、本開示の残りの部分において、本発明の実施形態に関連して開示される。
【0016】
本方法の第4のステップでは、連続微分可能関数の1又は2以上のセットから最適セットを選択する。選択プロセスは、選択されたサブセットに関連する構成要素の一意的な動作シーケンスが、予測期間の少なくとも第2の部分の圧力及び/又は空気流量需要の予測データを満たす、圧縮空気システムの圧力及び/又は空気流量をもたらすように行われ、第2の部分は、予測期間の初期部分よりも長い。好ましくは、選択された最適セットに関連する構成要素の一意的な動作シーケンスは、予測期間全体にわたって圧力及び/又は空気流量需要に関する予測データを満たす、圧縮空気システムの圧力及び/又は空気流量をもたらす。好ましくは、選択された最適セットに関連する構成要素の一意的な動作シーケンスは、圧力及び/又は空気流量の予測された需要を満たす、他の動作シーケンスに関連するエネルギー消費よりも低い圧縮空気システムのエネルギー消費をもたらす。当業者は、他の最適化基準を使用できることを理解することができる。最適セットを選択するための可能な方法は、本開示の残りの部分において、本発明の実施形態に関連して開示される。
【0017】
本方法の第5のステップでは、選択された最適セットから構成データを導き出す。本開示に関連して、「構成データ」は、選択された一意的な動作シーケンスを構成要素セットに課すために圧縮空気システムの1又は2以上の要素に適用されるコマンド入力を決定するデータとして解釈される。構成データは、少なくとも構成要素セットの各構成要素のデータを含む。構成データの例としては、特定の圧縮機を始動状態、停止状態、負荷状態、又は無負荷状態にすべき時間インスタンス、特定の圧縮機を動作させるべき速度、バルブ位置、又はバルブ位置を変更すべき時間インスタンス、又は冷却回路の流量が挙げられる。
【0018】
本方法の第6のステップでは、構成データに従って、セットの各構成要素が構成される。
【0019】
本方法の利点は、構成要素及び圧縮空気分配システムの現在の状態だけでなく、圧縮空気分配システムの予測される将来の需要も考慮して、構成要素セットをリアルタイムで同時に制御できることである。
【0020】
本方法は、圧縮空気分配システムの全ての構成要素に適用可能であるが、本開示の残りの部分では、構成要素の例示的な実施形態として圧縮機を一意的に使用することになる。圧縮機は、一般に、圧縮空気分配システムの最も重要で、複雑で、制御が困難な構成要素であるため、当業者は、これらが、一般性を損なうことなく本方法の可能性を説明するために最も有用な実施形態であることを理解することになる。
【0021】
当業者は、通常の動作中、圧縮機が3つの動作形態又は状態のうちの1つに位置することができることを認識するであろう。これらの状態は以下の通りである。
-停止状態:その間に、インペラ、スクロール、ピストンなどの圧縮媒体にエネルギーを伝達する圧縮機の可動部分は動作しない。通常、停止状態では、圧縮機の可動要素を駆動するモータは停止するか又はモータと圧縮機の可動部分との間の動力伝達がクラッチによって遮断される。
-無負荷状態:その間に、圧縮機はモータによって駆動され、圧縮機の可動部分が動作して、流体を動かすが、この流体は吸入圧力と同じ圧力で排出される。圧縮空気システムでは、これは、例えば、圧縮機の排出口の後に、圧縮機が周囲空気に排出するのを可能にするバイパスバルブを含むことで実現できる。あるいは、圧縮機の吸入口を絞ることができ、その場合、圧縮機によってもたらされるごくわずかな空気流を圧縮空気分配システムに直接排出することができる。通常、無負荷状態は、圧縮機の停止状態と負荷状態との間の中間段階である。一部の用途、特に大型圧縮機を使用する用途では、圧縮機が停止状態から通常の動作速度になるまでの時間が、圧縮空気システムの需要変動の動特性と比較すると長すぎる場合がある。このような状況では、圧縮機が必要でないときは常に無負荷状態に保持することができる。
-負荷状態:その間に、圧縮機はモータによって駆動され、圧縮機の可動部分が動作して流体が動かされ、この流体がシステムの背圧に逆らって圧縮空気システムに排出される。本開示の目的上、圧縮機は、通常の動作範囲内で動作し、サージ、チョーク、出力又は速度の制限の1又は2以上を超えない場合、負荷状態にあると見なされる。
【0022】
通常動作以外では、圧縮機は、停止状態、サージ状態、チョーク状態、過速度状態、又は他の状態にある可能性があるが、これらの追加の状態が詳しく説明しない。る。しかしながら、当業者は、本開示の残りの部分から、本発明による方法がこれらの状態にも対処できることを理解するであろう。好ましくは、本方法は、これらの状態を積極的に防止しようとするものである。さらに、当業者は、圧縮空気分配システムの他の構成要素は、例えばバルブなどの状態によって表すことができることも理解するであろう。
【0023】
本発明による方法の一実施形態では、構成要素セットの各構成要素は、有限状態機械又は有限状態オートマトンとも呼ばれる状態機械(離散状態システムを記述する数学的モデリング技術)によって表される。本方法の目的のために、構成要素の状態機械モデルは、好ましくは、少なくとも異なる状態、状態がどのように相互接続されているかに関する情報、及び状態に関連する時間依存制約を含む。
【0024】
有限の構成要素セットの一意的な動作シーケンスは、連続微分可能関数の各セットに関連付けられる。従って、最適セットの選択は、セットの構成要素の最適な動作シーケンスを選択することに帰着する。
【0025】
本発明による方法の一実施形態では、連続微分可能関数の1又は2以上のセットを決定するステップは、構成要素セットの可能な動作シーケンスを表す状態空間データを生成することを含む。状態空間は、セット内の構成要素の数及び構成要素ごとの可能な状態の数によって次元が制限されるので、可能な動作シーケンスを表す状態空間は、構成要素ごとの遷移の許容数が所与の時間期間にわたって制限される限り、次元が制限される。従って、状態機械で構成要素を表現することで、可能な動作シーケンスの無限空間を、網羅的に探索できる有限空間に変換することができる。
【0026】
状態機械による構成要素の表現を前提とすると、構成要素の動作シーケンスは、少なくとも、(i)構成要素の初期状態、(ii)構成要素が受けることになる状態遷移、及び(iii)構成要素がこれらの状態遷移を受けることになる順序、に関する情報を含む。構成要素の動作シーケンスは、構成要素が特定の状態遷移を受けることになる特定の時間インスタントを必ずしも含んでいるわけではない。ひいては、本発明の方法によって制御される有限の構成要素の動作シーケンスのセットは、そのセットの個々の構成要素の動作シーケンスのセットを含み、そのセットの全ての構成要素に関して厳密に1つの動作シーケンスを含む。対照的に、本方法によって導き出される構成データは、構成要素セットの動作シーケンスと、それに加えて、予測期間中に状態遷移が起こるはずである少なくとも時間インスタントとを含む。
【0027】
本発明による方法の一実施形態では、構成要素セットの可能な動作シーケンスを表す状態空間データは、構成要素セットの1又は2以上の構成要素の前の状態から、そのセットの1又は2以上の構成要素の後の状態への許容可能な状態遷移に基づいて生成される。許容可能な遷移は構成要素の現在の状態に依存するため、許容可能な遷移は常に数に制限がある。このように、動作シーケンスを状態遷移シーケンスで表現することで、関数セットが決定される状態空間の次元をさらに小さくすることができ、その結果、本方法の計算コストを低減することができる。
【0028】
本発明による方法の一実施形態では、状態空間データは、少なくとも1つの境界条件又は目的関数の値に基づいて刈込まれる。この刈込み(pruning)により、関数セットが決定される状態空間の次元をさらに小さくすることができ、それにより、本方法の計算コストを低減することができる。
【0029】
本発明による方法の一実施形態では、方法による連続微分可能関数セットは、(f(x,y),g(x,y))と記述することができ、ここで、
【数1】
である。これらの方程式において、
【数2】
は、それぞれ
【数3】
の多面体部分集合及び有界多面体部分集合であり、目的関数
【数4】
及び制約関数
【数5】
は、凸で2回連続微分可能であると仮定される。ベクトルxは、例えば、圧力、空気流量、温度、相対湿度、圧縮機セットの1又は2以上の圧縮機の回転速度、又は圧縮機セットの1又は2以上の圧縮機が異なる状態に切り替わる時間インスタントのような、圧縮空気システムの連続変数を含むことができる。ベクトルyは、構成要素セットの各構成要素の状態変数を含む。
【0030】
当業者は、圧縮空気システムのエネルギー消費を最小化することに関連して、目的関数fが、例えばシステムの瞬間エネルギー消費又は予測期間にわたる総エネルギー消費のような、システムのエネルギー消費の尺度(measure)を含むことを理解するであろう。目的関数fは、システムのエネルギー消費又はエネルギー効率の直接的又は間接的な尺度を表す付加的な項を含むことができる。目的関数fは、他の項を含むことができる。同様に、当業者は、制約関数gが、システムの構成要素をモデル化する方程式、又は例えば圧力、空気流量、空気温度、相対湿度などのプロセス変数を記述する方程式を含むことができることを理解するであろう。
【0031】
連続微分可能関数の最適なセットを選択するステップは、境界条件lb≦g(x,y)≦ubを条件として、f(x,y)を最小化する問題を含んでおり、ここで、下方境界lb及び上方境界ubは、予測された将来の圧力及び/又は空気流量需要、並びにシステム又はシステムに接続された消費者によって課される追加の境界条件を含むことができる。例えば、境界条件は、圧縮空気の最大温度及び/又は最大相対湿度、又は1又は2以上の圧縮機の最大回転速度を含むことができる。この問題は、混合整数非線形問題である。
【0032】
この実施形態では、連続微分可能関数の最適セットを選択するステップは、ひいては目的関数f(x,y)の少なくとも局所最小値を探索することを含む。
【0033】
本発明による方法の一実施形態では、目的関数の局所最小値は、分枝限定アルゴリズムを用いて探索される。分枝限定アルゴリズムを使用する利点は、このアルゴリズムによって状態空間の系統的な探索及び刈込みが可能になることである。
【0034】
本発明による方法の一実施形態では、目的関数f(x,y)の局所最小値を得るように、構成要素セットの構成要素が動作シーケンスの特定の状態遷移を行う時間インスタントが決定される。本方法は、最適制御を達成するための2つの自由度を有する。第1の自由度は、構成要素セットの構成要素の動作シーケンスの選択に関連する。第1の自由度では、例えば分枝限定アルゴリズム又は他の適切な手法を用いて、利用可能な状態空間が探索される。第2の自由度は、動作シーケンスの状態遷移が起こる時間インスタントの選択に関連する。これらの時間インスタントを決定するために、制約lb≦g(x,y)≦ubに従った、f(x,y)の最小化の混合整数非線形問題を解く必要がある。
【0035】
本発明による方法の一実施形態では、特性データは、構成要素セットの少なくとも1つの構成要素についての最小起動エネルギーデータ及び/又は起動後の最小活動期間データ及び/又は平均メンテナンス時間をさらに含む。
【0036】
本発明による方法の一実施形態では、反復的に繰り返すステップは、離散的な一定の時間間隔で方法ステップを繰り返すことを含む。
【0037】
本発明による方法の一実施形態では、予測期間は時間依存性である。予測期間は、例えば、圧縮空気分配システムの動的需要が変化した場合に変化する場合がある。動的需要変動が小さい場合、予測データはより長い時間期間に及ぶ可能性があり、その逆も同様である。
【0038】
本発明による方法の一実施形態では、予測期間の初期部分は、本方法を実行するデータ処理手段の少なくとも最大処理能力に基づいて決定される。
【0039】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様による方法を実行するための手段を備えるデータ処理システムに関する。
【0040】
本発明の第3の態様は、プログラムがコンピュータによって実行されると、コンピュータに本発明の第1の態様による方法を実行させる命令を含むコンピュータプログラムに関する。
【0041】
本発明の第4の態様は、本発明の第1の態様の方法に従って制御されるように構成された圧縮空気又はガスシステムに関する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】本発明に従って制御される圧縮空気システムを概略的に示す。
【
図3a】状態遷移を表すために本方法の実施形態で採用されるタイムスイッチを概略的に示す。
【
図3b】状態遷移を表すために本方法の実施形態で採用されるタイムスイッチを概略的に示す。
【
図4a】本発明による方法の実施形態のフロー図を示す。
【
図4b】本発明による方法の実施形態のフロー図を示す。
【
図5a】本発明による方法の実施形態の実行結果を示す。
【
図5b】本発明による方法の実施形態の実行結果を示す。
【
図5c】本発明による方法の実施形態の実行結果を示す。
【
図5d】本発明による方法の実施形態の実行結果を示す。
【
図5e】本発明による方法の実施形態の実行結果を示す。
【
図5f】本発明による方法の実施形態の実行結果を示す。
【
図5g】本発明による方法の実施形態の実行結果を示す。
【
図5h】本発明による方法の実施形態の実行結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本開示は、特定の実施形態の観点から説明されるが、これらは本開示を例示するものであり、限定的に解釈されるものではない。本開示は、具体的に示されたもの及び/又は説明されたものによって限定されるものではなく、本開示の全体的な教示に照らして、代替の又は修正された実施形態を考え出すことができることを理解されたい。説明される図面は単に概略的であり、非限定的である。
【0044】
本明細書全体を通して「1つの実施形態」又は「一実施形態」への言及は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造又は特性が、本開示の1又は2以上の実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書を通じて様々な場所で「1つの実施形態において」又は「一実施形態において」という表現が現れることは、必ずしも全てが同じ実施形態を指すわけではないが、その可能性もある。さらに、本開示から当業者に明らかなように、特定の特徴、構造又は特性は、1又は2以上の実施形態において、何らかの適切な方法で組み合わせることができる。
【0045】
図1は、クライアントネットワーク105に圧縮空気又はガスを供給するように構成された3つの圧縮機101、101’及び101’’を備える圧縮空気又はガスシステム100を示す。圧縮空気又はガスシステム100は、圧縮空気又はガスを貯蔵するための容器又はタンク103と、クライアントネットワーク105に接続されたバルブ104とをさらに備える。クライアントネットワーク105には、1又は2以上の消費者が存在する。圧縮空気又はガスシステム100は、乾燥器、フィルタ、調整器、及び/又はルブリケータなどの他の装置をさらに備えることができるが、以下、本発明は、圧縮空気又はガスシステム100の機構として
図1を参照して説明されることをさらに理解されたい。
図1において、実線は流体接続を示し、点線はデータ接続を示す。
【0046】
圧縮機101、101’、101’’の各々は、それぞれの制御装置102、102’、102’’によって局所的に制御可能である。さらに、圧縮空気又はガスシステム100を効率的に制御するために、制御装置102、102’、102’’は、協調様式で制御されることになる。換言すれば、制御装置102、102’、102’’の各々は、個別にそれぞれの圧縮機101、101’、101’’を制御することが回避される。しかし、制御装置102、102’、102’’は、圧縮空気又はガスシステム100の全体的な性能及び効率が向上するように、主制御装置106によって指示される
【0047】
主制御装置106は、制御装置102、102’、102’’の近くに配置することができるが、圧縮空気又はガスシステム100と比較して離れた場所に配置することもできる。あるいは、制御装置102、102’、102’’のうちの1つを、全ての圧縮機100、100’、100’’を制御する主制御装置として機能するように構成することもできる。
【0048】
主制御装置106により、圧縮空気又はガスシステム100の動作、切り替え、及びアイドリングコストが対処され、それによって異なる装置の構成要素の摩耗を低減し、同時にエネルギー消費を最適化する。この目的のために、主制御装置106は、本発明による方法の実施形態を利用する。主制御装置106は、圧縮空気システムの1又は2以上の要素の技術的又は機能的特性を記述する特性データ110を受け取る。この特性データは、データベース、モデル、圧縮空気システム105の1又は2以上の要素に対して行われた測定、又は何らかの他の適切な手段から得ることができる。さらに、主制御装置106は、少なくともクライアントネットワークの将来予測される空気流量及び/又は圧力需要を記述する予測データ120も受け取る。この場合も、この予測データは、データベース、モデル、圧縮空気システム100又はクライアントネットワーク105の1又は2以上の要素に対して行われた測定、又は何らかの他の適切な手段から得ることができる。特性データ110、予測データ120、及び本発明の方法に基づいて、主制御装置106は、圧縮機101、101’、101’’の制御を連係させるために、構成データ130を制御装置102、102’、102’’に送る。
【0049】
図2a及び
図2bは、圧縮機の状態機械表現200、200’’を概略的に示す。
図2aの状態機械200は、負荷状態201、無負荷状態202、及び停止状態203の3つの可能な状態を含む。各状態は、少なくとも2つのパラメータを含む。すなわち、負荷状態、無負荷状態、停止状態のそれぞれについて
【数6】
で示される、圧縮機が特定の状態で費やす必要のある最小時間と、負荷状態、無負荷状態、停止状態のそれぞれについて
【数7】
で示される、圧縮機が特定の状態に戻る前に異なる状態に留まる必要のある最小時間とである。停止状態は、圧縮機が停止状態で費やすことができる最大時間を示す追加パラメータ
【数8】
を含む。当業者は、具体的な実施形態において、負荷状態及び無負荷状態が最大時間に制限される場合があること、又は状態が追加のパラメータを含むことができることも理解する。加えて、当業者は、具体的なパラメータ値が、圧縮機ごとに変わる場合があること、及び圧縮機のタイプ又は運転条件に依存する場合があることを理解する。
【0050】
また、
図2aは、隣接する状態への状態遷移を示す。すなわち、無負荷状態202から負荷状態201への遷移204、負荷状態201から無負荷状態202への遷移205、無負荷状態202から停止状態203への遷移206、停止状態203から無負荷状態202への遷移207である。各遷移は、遷移を完了するのに必要な時間を示すパラメータを少なくとも含み、それぞれ遷移204、205、206、及び207に対応する
【数9】
で示される。遷移を完了するのに必要な時間は、異なる状態遷移間で異なる場合がある。加えて、当業者は、具体的なパラメータ値は、圧縮機ごとに変わる場合があること、及び圧縮機のタイプ又は運転条件に依存する場合があることを理解する。
【0051】
図2bの状態機械200’’は、負荷状態201と停止状態203の2つの可能な状態のみを備える。結果として、
図2bの状態機械200’’は、2つの可能な状態遷移、すなわち、負荷状態から停止状態への遷移208及び停止状態から負荷状態への遷移209のみを有する。また、状態機械200は、遷移208及び209が可能であるが、図を乱雑にしないように、
図2aには示されていない。
【0052】
図2aの状態機械表現200と比較すると、
図2bの状態機械200’’は、状態及び遷移の数が減少しているため、低い計算複雑性を提供する。状態機械200’’による圧縮機の表現は、利用可能な計算能力が、状態機械表現200を使用して圧縮機の最適な動作シーケンスをリアルタイムで決定するのに十分でないときに有利な場合がある。このような状況は、例えば、多数の圧縮機を同時に制御する必要がある場合に又は圧縮空気システムの空気流量需要が強力かつ予測不能に変化する場合に起こる場合がある。状態機械200’’の少ない自由度数のトレードオフは、圧縮機の微細な制御ができないことができる。加えて、一部の圧縮機は、停止状態から負荷状態に即座に遷移できない場合がある。
【0053】
本発明の方法の実施形態は、圧縮機セットのうちの圧縮機を表現するために、両方の状態機械のいずれかを用いることができる。加えて、本方法は、両方の表現を同時に用いて、3つの状態を有する状態機械によってセットのうちに一部の圧縮機を表現すると同時に、2つの状態のみを有する状態機械によってセットのうちの他の圧縮機を表現することもできる。また、本方法の実行中、本方法は、1又は2以上の圧縮機を表現するために、両方の状態機械表現の間を動的に切り替えることができ、それにより、本方法の実行速度と制御精度とのバランスを動的に変更することができる。
【0054】
最後に、当業者は、本発明の方法は、2又は3の状態を含む状態機械によってのみ圧縮機を表現することに限定されず、より多くの状態(各状態は、圧縮機の別個の動作レジームを表現する)を状態機械に追加することができることを理解する。ひいては、上記の説明は、4以上の状態を含む状態機械表現にも同様に当てはまる。
【0055】
図3a及び
図3bは、1又は2以上の圧縮機の状態遷移を時間の関数として表現するために、本方法の実施形態で用いることができ2つのタイプのタイムスイッチを概略的に示す。これらのタイプの両方のタイムスイッチは、シグモイド関数:
【数10】
で表すことができる時間的なランプに依存し、ここで、tは時間を表す。ランプRは、切り替え時間t
sの周りで0から1に値を変え、この切り替えを実行するのに時間t
rampを要する。従って、ランプRは、切り替え時間t
sの周りで発生し、時間t
rampを要する非瞬時状態遷移を表すために使用することができる。パラメータcは、使用するシグモイド関数に応じた補正係数cである。例えば、ロジスティック関数の場合、この補正係数は5に等しい。本方法の実施形態は、例えば区分的ランプなど、状態遷移を表すために様々な種類のステップ関数を使用することができる。状態遷移を表す関数の唯一の要件は、(i)tに関する一次微分関数が存在し、(ii)境界があり、(iii)t
sの値とは無関係に、期間(horizon)の少なくとも1つの離散時点において常に非ゼロであることである。
【0056】
図3aは、それぞれ符号201、202、203で表される、負荷状態、無負荷状態、及び停止状態の3つの状態を有する圧縮機の状態機械表現200を概略的に示す。時間期間の初めには、圧縮機は負荷状態201にあり、状態201の値が1に等しいことが数学的に示されている。定義上、状態機械の異なる状態は相互に排他的であるため、圧縮機は無負荷状態にも停止状態にもなり得ない。これは、機械の全ての状態の値の合計が1に等しくなければならないことを必要とすることによって、数学的に課される。
【0057】
図3aでは、負荷状態201から無負荷状態202への状態遷移を含む一連の動作が圧縮機に課せられている。従って、負荷状態を値1から値0に、無負荷状態を値0から値1にするタイムスイッチ224が、第1の切り替え時間220の周りに導入される。また、切り替え期間中、全ての状態の値の合計は1に等しいままである。タイムスイッチ224の開始前に、状態機械200の状態は既知である。従って、初期時間からタイムスイッチ224の開始までの期間は、機械200の状態確定期間222である。この状態機械は、タイムスイッチ224に隣接して既知の状態にあるため、この同じ特性を有するタイムスイッチは、本開示の残りの部分では「隣接スイッチ」と呼ばれることになる。隣接スイッチは、状態確定期間に隣接して、すなわち機械の状態が既知である期間の後にのみ、状態機械に課すことができる。隣接スイッチの概念は、時間をさかのぼって使用することもでき、隣接スイッチは、状態確定期間の前に課すことができることに留意されたい。これは、機械の初期状態ではなく、期間終了時の機械の最終状態が既知である場合に有用である。
【0058】
タイムスイッチ224の完了後、機械200は、最小時間210の間、無負荷状態202に留まる必要がある。従って、機械は、タイムスイッチ224の開始後、少なくとも最小時間210の間、状態確定期間222にある。この期間が経過すると、機械200は、状態不確定期間223(この期間中、機械の状態変数は、それらの値の合計が1に等しい限り、何らかの値を有することができる)にあり、随意的に、必須ではないが、別の状態遷移、例えば第2の切り替え時間221の周りの遷移を受ける可能性がある。
【0059】
数学的には、状態機械に隣接タイムスイッチを課すことは、制約関数g(x,y)に以下の方程式セット
【数11】
を追加することにつながり、ここで、s
k∈S
mは機械mの全状態の集合、m∈Mは全機械の集合、t
i∈Tは全時間インスタンスの集合、n
sはS
mのサイズ、
【数12】
は時間インスタンスt
iにおける機械mの状態s
kの値、
【数13】
は機械mが状態s
jに切り替わることになる時間である。上式の未知数は切り替え時間であり、これは変数ベクトルxに追加され、解法アルゴリズムによって決定されることになる。全ての機械に課される隣接スイッチに対して、上記の式がg(x,y)に追加されることになる。
【0060】
図3bは、それぞれ符号201及び203で表される、負荷状態及び停止状態の2つの状態を有する圧縮機の状態機械表現200’’を概略的に示す。時間期間の初めには、圧縮機の状態は未知である。切り替え時間220に、機械を負荷状態201に遷移させるタイムスイッチ225が導入される。圧縮機は、最小時間210の間、負荷状態に留まる必要があるので、圧縮機の状態は、この期間、既知である。従って、タイムスイッチ225の導入は、機械200’’の状態が既知であり、その状態変数の値が固定される状態確定期間222をもたらす。この期間222の長さは、機械が特定の状態に留まるために必要な最小期間に等しい。しかし、最小期間の終了後又はタイムスイッチ225の開始前に、機械200’’は状態不確定期間223にある。タイムスイッチ225の導入は、機械200’’の状態の知識に無関係であり、従って時間期間のどこででも起こり得るので、この同じ特性を有するタイムスイッチは、本開示の残りの部分では「浮動性スイッチ(free-floating switch)」と呼ばれることになる。
【0061】
数学的には、状態機械に浮動性タイムスイッチを課すことは、制約関数g(x,y)に以下の方程式セット
【数14】
を追加することにつながる。隣接スイッチの場合と同様に、上式の未知数は切り替え時間であり、これは変数ベクトルxに追加され、解法アルゴリズムによって決定されることになる。隣接スイッチの場合と同様に、全ての機械に課される全ての浮動性スイッチに対して、上記の式がg(x,y)に追加されることになる。
【0062】
本方法の実施形態は、隣接スイッチ又は浮動性スイッチを実装することができ、両方を組み合わせることもできる。両タイプのスイッチは、状態変数がスイッチの終了後に整数値を得ることができるように、ランプの周りの許容誤差を含めるようにさらに拡張することができる。これは、他の制約が状態変数の整数値の間の遷移が妨げる場合に有効である。
【0063】
図4aは、本発明による方法の一実施形態のフロー図を示す。本方法の反復実行の前に、初期化ステップ300が行われる。この初期化ステップの間に、キュー及びコンテナが作成される。この時点では、キュー及びコンテナは空である。
【0064】
反復法の最初のステップは、データ収集ステップ301である。このデータ収集ステップの間に、1又は2以上の圧縮機の特性データ及び圧縮空気システムの予測データの両方が収集される。
【0065】
ステップ302では、キューが更新される。本方法の最初の反復に際して、この更新は、境界条件lb≦g(x,y)≦ubに従う、連続微分可能方程式(f(x,y),g(x,y))の最初のセット及びf(x,y)の最小化の関連する問題の作成に関係する。この方程式セット及び関連する問題は、アイテム(item)としてキューに追加される。本方法の2回目以降の反復では、更新ステップ302は、本実施形態の開示中にさらに説明されるように、異なる目的を果たすことができる。
【0066】
本発明の方法は、1又は2以上の圧縮機セットのリアルタイム制御を目的としているので、本方法が実行される時間量は有限である。この時間量は、システムの既知の特性に基づいて一定とすること又は可変とすることができる。例えば、本方法は、反復毎に、受け取った予測データに基づいて最大の実行時間量を計算することができる。タイマー303は、本方法の計算部の実行中に経過した時間を追跡し、計算時間が所定の最大時間を超えた場合、タイマー303は、計算を中断し、本方法を次の反復ステップに進ませる。
【0067】
本方法の実行中、連続微分可能方程式セットに対応するアイテム(各々が圧縮機の一意的な動作シーケンス、及びそれらに関連する最小化問題を表す)が、キューに追加される又はそこから削除される場合がある。ステップ304において、本方法は、キューが依然としてアイテムを含んでいるか否かをチェックする。キューが空になった場合、ステップ304は、反復のための最大時間量が経過する前に、本方法を次の反復ステップに進ませる。
【0068】
ステップ305において、本方法は、分枝限定アルゴリズムを用いて、キュー内の1又は2以上のアイテムを解決しようと試みる。このアルゴリズムは、
図4bに詳細に示されている。分枝限定アルゴリズムは、完全に解かれたアイテムをコンテナに追加し、さらに、このアルゴリズムは、部分的に解かれたアイテムをキューに追加すること及び/又はアイテムをキューから削除することができる。
【0069】
一回の反復の最大期間が終了したために又はキューが空になったために、本方法が計算ループを抜けると、方法は、ステップ306においてコンテナが完全に解かれた解を含むか否かをチェックする。もしそうであれば、ステップ308において、目的関数f(x,y)のコストが最も低い解を意味する最適解がコンテナから選択される。
【0070】
あるいは、コンテナが空の場合、ステップ307では、キューから(部分的に解かれた)最適解を選択し、この最適解から構成データを導き出す。この場合、最適解は、予測データが利用可能な予測期間の全範囲をカバーしないので、選択された動作シーケンスが予測された圧力及び/又は空気流量需要を満たすことができるか否かに関して不確実性が残る。この問題は、ステップ307の後処理ステップで対処することができる。このような後処理ステップでは、複数の基準を適用して、不完全な動作シーケンスが予測された圧力及び/又は空気流量需要を満たすことができないリスクを特定することができる。例えば、セット内の全ての圧縮機が、アイテムが完全に解かれていない予測期間の残りの期間中に負荷をかけることができるか否かをチェックすることができる。選択された最適解が後処理基準を満たす場合、それは維持することができる。さもなければ、それは拒否することができ、別の解が最適解としてキューから選択される場合がある。
【0071】
その後、この最適解から構成データが導き出され、ステップ309において、システムの圧縮機は、構成データに基づいて構成される。これで、本方法の1回の反復が完了する。
【0072】
本方法の2回目の反復が始まると、最初のステップは再びデータ収集ステップ301となる。しかしながら、この時点では、キュー及びコンテナは必ずしも空ではない。コンテナがアイテムを含む場合、これらのアイテムはキューに追加され、コンテナは空にされる。その後、キュー内のアイテムは時間的にシフトされる。キュー内のアイテムが圧縮機の更新状態に適合しない場合、アイテムはキューから削除される。最後に、キュー内のアイテムは新しい予測データで更新される。
【0073】
図4Bは、分枝限定アルゴリズム305の一実施形態のフロー図を示す。分枝限定アルゴリズムへの入力は、未解決又は部分的に解かれた問題(アイテムとも呼ばれる)を保持するキューであり、各問題は、圧縮機の一意的な動作シーケンスに対応する。分枝限定アルゴリズムの出力は、更新されたキュー及びコンテナである。分枝限定アルゴリズムは、キューからアイテムを選択する選択アルゴリズム、アイテムを分岐する分岐アルゴリズム、アイテムを解く解決アルゴリズムの3つの別々のアルゴリズムに依存する。
【0074】
ステップ400では、選択アルゴリズムがキューからアイテムを選択する。アルゴリズムは、どのアイテムを選択するかを決定するために、複数の基準のうちの1つを利用することができる。そのような基準の例は以下の通りである。
・最良優先:アルゴリズムは、常に、目的関数f(x,y)の値が最も小さいアイテムを選定する。このアプローチは実装が簡単で、ヒューリスティックを用いることなく最小の計算時間で最適解を得ることができる。しかしながら、全予測期間にわたって実行可能で完全に解かれた最初の解を得るには、他の基準よりも長い時間がかかる場合がある。
・交互最良優先:最良優先アルゴリズムに基づいて構築されたアルゴリズムである。木全体の最良優先アルゴリズムを探索する代わりに、木を分割し、木の分割ごとに最良優先アルゴリズムを交互に適用することになる。非常に長い枝を持つ木の場合、これは「最良優先」アプローチよりも短時間で良好な解を得るための良好な選択肢をもたらす。
・幅優先(Breath first):アルゴリズムは、キューの最初にあるアイテムを選定する。
・深さ優先:アルゴリズムは、最も長い時間期間で既に解かれている部分的に解かれたアイテムを選定する。実行可能で完全に解かれた解に到達した後、この方法はさらに別のアプローチを用いてキューの残りを探索することができる。
・加重深さ及びコスト:アルゴリズムは、「深さ優先」アプローチによる計算速度の最適化と、「最良優先」アプローチによるコスト関数の最小化との間でバランスをとる。通常、このアプローチは、「深さ優先」アプローチよりも速いが少ない最適解をもたらし、「深さ優先」アプローチよりも遅いが多くの最適解をもたらす。
・ヒューリスティック:アルゴリズムが向かうべき方向を推定しようと試みるヒューリスティックが定義される。このヒューリスティックはアプリケーションに基づくことができる。
【0075】
アルゴリズムは、本方法の異なる反復の間で、上記の基準の1又は2以上を切り替えることができる。アルゴリズムは、本方法の1回の反復の間に、上記の基準の1又は2以上を切り替えること又は組み合わせることができる。
【0076】
ステップ401において、分岐アルゴリズムは、ステップ402でキューから選択したアイテムから分岐を作成する。従って、作成されたブランチは、「親」である最初に選択されたアイテムの「子」である。これに関連して、分岐を生成することは、親の動作シーケンスに1つの状態遷移を追加することを意味し、それによって、新しい一意的な動作シーケンス及び新しい関連する数学的問題が生じる。数学的には、分岐の生成は、親の制約関数g(x,y)にタイムスイッチを表す方程式セットを追加することを含む。これらの方程式は、
図3a及び
図3bに関連して説明されている。
【0077】
既存の動作シーケンスに追加できる状態遷移は、基本的な状態機械表現によって制限される。単一の親から複数の分岐を生成することは可能な場合がある。しかしならが、分岐アルゴリズムは、必ずしも全ての可能性のある分岐を生成するわけではない。例えば、分岐アルゴリズムは、時間的に最も解かれていない圧縮機、つまり、予測期間にわたって依然として最も大きな状態不確定性を有する機械からのみ分岐する可能性がある。あるいは、分岐アルゴリズムは、最大エネルギー消費量の原因となる圧縮機からのみ分岐する。分岐アルゴリズムは、1回の反復の中で異なる分岐生成戦略を組み合わせること、又は本方法の複数の反復の間で分岐生成戦略を切り替えることができる。採用する分岐生成戦略は、基本的なアプリケーションに特に適合させることができる。
【0078】
図3a及び
図3bとの関連において、隣接スイッチ及び浮動性スイッチの2つのタイプのタイムスイッチが導入されている。分岐生成アルゴリズムは、状態遷移を課すために導入するスイッチの種類を決定する。モデル予測制御に関連して、隣接スイッチが望ましい。初期状態が既知であるため、隣接スイッチを使用することで、タイムフォワード法による解法が可能となり、計算段階の早い段階で時間期間の初期部分の実現可能な解に到達することができる。その結果、未解決の時間範囲で部分的に解かれた問題の実行可能性が保証されるという条件で、完全な解に到達する前に分岐プロセスを中断することができる。圧縮機制御では、これは、未解決の時間期間で全ての圧縮機が負荷をかけられるようにする必要がある後処理によって行うことができる。
【0079】
対照的に、浮動性スイッチは、より多くの分岐を作るため、計算コストが高くなる。しかしながら、いくつかの特殊なケースでは、浮動性スイッチを使用することで、より速い解をもたらすことができる。そのひとつは、非制約状態変数が、特定の時点ですでに整数値に近い場合である。さらに、浮動性スイッチを使用するさらなる欠点は、その実装の複雑さであり、実現不可能な部分解が生成されないようにするいのを保証するために、2つの異なる状態間の可能な切り替え経路を計算する専用のアルゴリズムが必要である。
【0080】
分岐の生成後、解決アルゴリズムは、全ての分岐の解決を試みることになる。ステップ402は、全ての枝が解かれたか否かをチェックする。解かれた場合、分枝限定アルゴリズムは終了し、本方法は
図4aの時間チェックステップ303に戻る。生成された全ての分岐が解かれていない場合、本方法はステップ403の解決アルゴリズムに進む。
【0081】
ステップ403において、解決アルゴリズムは、一意的な動作シーケンスに関連する特定の問題を解こうと試みる。数学的には、この問題は、制約lb≦g(x,y)≦ubに従う、目的関数f(x,y)の最小化であり、ここで、
【数15】
である。これらの方程式において、
【数16】
は、それぞれ
【数17】
の多面体部分集合及び有界多面体部分集合であり、目的関数
【数18】
及び制約関数
【数19】
は、凸で2回連続微分可能であると仮定される。特定の問題に関連する一意的な動作シーケンスは、全ての機械に課される全ての遷移のためのタイムスイッチング方程式のセットを追加することにより、制約関数に反映される。解かれる問題はいわゆる混合整数非線形問題(MINLP)であり、例えばBARON、BONMIN、KNITRO、又はNAGのような既存のソルバーを使って解くことができる。
【0082】
通常、解法アルゴリズムの最初のサブステップにおいて、MINLPの線形関係は、目的関数及び制約関数を緩和変数
【数20】
の周りで線形化することによって実行され、ここで
【数21】
である。このように、緩和状態変数
【数22】
は、もはや整数には制限されない。緩和問題が実行可能な場合、つまり制約を満たすことができる場合、緩和状態変数
【数23】
は、切り上げ又は切り下げによって整数状態変数yに制約される。この制約は、問題が解かれ、機械の状態が固定されると想定される期間である制約ゾーンでのみ行われる。非制約ゾーンでは、機械は何らかの状態
【数24】
をとることができる。その後、元の問題は、
【数25】
を開始値として用いて解かれ、xが得られ、その結果、課された動作シーケンスにおける状態遷移の切り替え時間が得られる。
【0083】
ステップ404において、アルゴリズムは、問題が整数実行可能か(つまり、状態変数が整数値に制限されたときに制約を満たすことができるか)否かをチェックする。加えて、ステップ404は、分岐の目的関数のコストが、他の完全に解かれた分岐で達成された最も低い目的コストよりも低いか否かもチェックする。両方の条件が満たされない場合、ステップ405で特定の分岐が破棄される。満たされている場合、本方法は、ステップ406において、この分岐が完全に解かれているか否か、すなわち、予測データが利用可能であった予測期間の全時間期間に対して機械の状態が制約されているか否かをチェックする。分岐が完全に解かれている場合、ステップ407において、関連する動作シーケンス及び目的コストがコンテナに格納される。分岐が完全に解かれていない場合、分岐はステップ408でキューに追加される。分枝限定アルゴリズムの次の反復では、この分岐は、分岐する親として選定される。
【0084】
図5a-5iは、本発明による方法の実施形態の実行結果を示す。
図5a-5hの実施形態では、圧縮機セットは、U1、U2、U3で指定され、それぞれ状態機械200、200’、200’’で表される3つの機械を備える。機械200及び200’は、3つのアクセス可能な状態、すなわち、負荷状態201、非負荷状態202、及び停止状態203を有すると仮定される。機械200’’は、負荷状態201及び停止状態203の2つのアクセス可能な状態のみを有する仮定される。3つの圧縮機に接続された圧縮空気ネットワークの予測データは、予測期間126にわたって利用可能である。予測データは、将来の空気流量需要121の予測と、将来の最小圧力需要123及び最大圧力需要124の予測とを含む。図を見やすくするために、全ての参照番号が図の全てのサブプロットに付加されているわけではないことに留意されたい。
【0085】
図5aは、最初には、機械200及び200’’が負荷状態201にあり、機械200’が停止状態203にあることを示す。機械200’は、少なくとも1回の時間反復の間に強制的に停止状態に留まる必要がある。これは、例えば、機械が以前に停止状態にあり、その停止状態での最小時間量がまだ終了していないために起こる場合がある。しかしながら、機械200及び200’’は、時間期間の最初から状態を変更することができる。十字記号は、計算された空気流量122、計算された圧力125、及び状態変数について、分枝限定アルゴリズムによって計算された値を示す。状態確定期間222では、機械の状態は既知であり、計算された状態変数は制約状態変数131である。対照的に、状態不確定期間223では、機械の状態は既知ではなく、計算された状態変数は非制約状態変数132である。
【0086】
図5aの解は、不確定期間223を含んでおり、従って部分的にしか解かれていない。分岐アルゴリズムは、機械200’’上の状態遷移を追加することによって最も大きな利得を達成できると仮定し、
図5aの既存の部分解から
図5b及び5cに表される2つの分岐を作成し、これらの分岐をキューに追加する。
図5b及び5cの分枝の作成後、
図5aに表される親は破棄される。
【0087】
図5bの分岐では、負荷状態から停止状態への遷移208が、機械200’’に課される。機械200’’は停止しているため、最小時間量210の間、停止状態を維持する必要がある。解法アルゴリズムは、停止状態がないことに起因して、機械200は、時間期間の全体にわたって負荷状態で制約される必要があると決定する。さらに、解法アルゴリズムは、機械200’が停止状態から負荷状態に移行したとしても、圧縮機セットは、期間127の間、最小圧力需要123を満たすことができないと決定する。従って、
図7bの分岐は実行不可能であり、キューから削除される。
【0088】
対照的に、
図5cの分岐では、機械200’’は負荷状態201に維持される。解法アルゴリズムは、これらの条件下では、機械200’にとっては、およそ300秒の時間まで停止状態に制約されたままであることが最適であり、一方、機械200’’にとっては、およそ600秒の時間まで負荷状態に制約されたままであることが最適であると決定する。この動作シーケンスでは、圧縮機は予測される将来の空気流量及び圧力需要を満たすことができる。従って、分岐は実行可能である。分岐の時間期間が状態不確定領域223を含むので、分岐は完全には解かれず、キュー内に維持される。機械200の状態は、時間期間のどの部分でも制約されていないため、機械200は最も解かれていない。従って、分岐アルゴリズムは、機械200に状態遷移を追加することによって最も大きな利得を達成できると仮定し、
図5cの既存の部分解から
図5d及び5eに表される2つの分岐を作成し、これらの分岐をキューに追加する。
図5d及び5eの分岐の作成後、
図5cに表される親は破棄される。
【0089】
図5dの分岐では、機械200は、最初に負荷状態で制約されるが、
図5eの分岐では、無負荷状態への状態遷移205が機械200に課される。解決後、両方の分岐は部分的に解かれて実行可能であることが示され、キュー内に維持される。
図5dの動作シーケンスよりも
図5eの動作シーケンスの方が目的関数のコストが低いため(図示せず)、
図5dの分岐は破棄され、分岐アルゴリズムは
図5eのシーケンスからの分岐を決定する。機械200は、依然として3つの機械の中で最も解かれていないので、分岐アルゴリズムは、機械200に追加の状態遷移を課すことによって分岐することを決定し、キューに追加され、
図5f及び5gに表される2つの新しい分岐を作成する。
図5f及び5gの分岐の生成後、
図5eに表される親は破棄される。
【0090】
図5fの分岐では、この追加の状態遷移は、無負荷状態から負荷状態への遷移204であり、
図5gの分岐では、この追加の状態遷移は、無負荷状態から停止状態への遷移206である。どちらの分岐も実行可能である。目的関数のコストは、
図5fの動作シーケンスよりも
図5gの動作シーケンスの方が低い(図示せず)。従って、
図5fの分岐は破棄され、
図5gの分岐はキューに追加される。
【0091】
この時点で、本方法の1回の反復の最大計算時間が経過している可能性がある。どの分岐も完全に解かれていない。従って、本方法は、キューから目的コストが最も低いアイテムを選択することになり、これが
図5gの動作シーケンスである。このシーケンスが圧縮機に適用されることになる。
【0092】
その後、次の反復の開始時に、キュー内の全てのアイテムは、その時間期間の開始が予測データの新しい時間期間の開始と一致するように、時間的にシフトさせる必要がある。
図5hは、時間的にシフトされた
図5gのシーケンスを示す。ここで、機械200及び200’は、最初は停止状態であり、機械200’’は、最初は負荷状態である。この時点で何らかの他のシーケンスがキュー内にあれば、これらも時間的にシフトする。しかしながら、これらの他のシーケンスが、それらの新しい初期状態が圧縮機の新しい初期状態と一致しないために実行不可能になった場合、それらも同様に破棄される。現在のところ圧縮機に適用されている
図5hのシーケンスは、キューに残っている唯一のアイテムである。分枝限定アルゴリズムは、このアイテムから分岐を作成し、それを解こうと試みることになる。
【符号の説明】
【0093】
100 圧縮空気システム
101 圧縮機
102 制御装置
103 容器
104 バルブ
105 クライアントネットワーク
106 主制御装置
110 特性データ
120 予測データ
121 予測空気流量需要
122 計算空気流量
123 予測最小圧力需要
124 予測最大圧力需要
125 計算圧力
126 予測期間
127 期間
130 構成データ
131 制約状態
132 非制約状態
200 状態機械
201 負荷状態
202 無負荷状態
203 停止状態
204 無負荷状態から負荷状態への遷移
205 負荷状態から負荷状態への遷移
206 無負荷状態から停止状態への遷移
207 無負荷状態から負荷状態への遷移
208 負荷状態から停止状態への遷移
209 停止状態から負荷状態への遷移
210 状態に留まる最小時間
220 切り替え時間
221 次の切り替え時間
222 制約ゾーン
223 非制約ゾーン
224 隣接スイッチ
225 浮動性スイッチ
300 方法初期化ステップ
301 データ収集ステップ
302 キュー更新ステップ
303 時間チェックステップ
304 キューチェックステップ
305 分枝限定アルゴリズム
306 コンテナチェックステップ
307 キューからの解選択ステップ
308 コンテナからの解選択ステップ
309 圧縮機の構成ステップ
400 アイテム選択アルゴリズム
401 分岐アルゴリズム
402 分岐チェックステップ
403 MINLPソルバーステップ
404 実行可能性チェックステップ
405 分岐破棄ステップ
406 解チェックステップ
407 コンテナへの追加ステップ
408 キューへの追加ステップ
【手続補正書】
【提出日】2024-02-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通の圧縮空気又はガス分配システムに流体接続されている有限の構成要素セットを制御するためのコンピュータ実装方法であって、
予測期間をカバーする、前記圧縮空気又はガス分配システムに対する予測される将来の圧力及び/又は空気流量需要を表す予測データを受け取るステップと、
前記構成要素セットの各構成要素の特性データを受け取るステップであって、前記特性データは、少なくとも空気流量データ、空気圧データ、及びエネルギー消費データを含む、ステップと、
複数の連続微分可能関数のセットを決定するステップであって、前記関数のセットの各々は、前記圧縮空気又はガス分配システムの圧力及び/又は空気流量を記述する関数、及び前記圧縮空気又はガス分配システムのエネルギー消費又はエネルギー効率を記述する関数を含み、前記関数のセットの各々は、前記予測期間の少なくとも初期部分について、前記予測される将来の圧力及び/又は空気流量需要を満たす、前記構成要素セットの前記構成要素の一意的な動作シーケンスを表す、ステップと、
前記複数の連続微分可能関数のセットから関数の最適セットを選択するステップであって、前記最適セットによって表される前記一意的な動作シーケンスが、前記予測期間の少なくとも第2の部分について、前記予測される将来の圧力及び/又は空気流量需要を満たす、ステップと、
前記関数の最適セットから、前記構成要素セットの構成データを導き出すステップと、
前記構成データに基づいて、前記構成要素セットの各構成要素を構成するステップと、
を反復的に繰り返す、方法。
【請求項2】
前記構成要素セットの各構成要素は、状態機械によって表される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の連続微分可能関数のセットを決定するステップは、前記構成要素セットの可能な動作シーケンスを表す状態空間データを生成することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記状態空間データは、前記構成要素セットの1又は2以上の構成要素の前の状態から、前記構成要素セットの1又は2以上の構成要素の後の状態への許容可能な状態遷移に基づいて生成される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの境界条件又は目的関数の値に基づいて前記状態空間データを刈込むステップをさらに含む、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記関数のセットの各々は、前記圧縮空気又はガス分配システムのエネルギー使用量又はエネルギー効率を記述する目的関数を含み、前記関数の最適セットを選択するステップは、前記目的関数の少なくとも局所最小値を探索することを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記局所最小値は、分枝限定アルゴリズムを用いて探索される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記目的関数の前記局所最小値は、前記構成要素セットの前記構成要素が前記関数の最適セットによって表される前記動作シーケンスの前記状態遷移を受ける前記時間インスタントを決定することによって探索される、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
前記特性データは、前記構成要素セットの少なくとも1つの構成要素についての最小起動エネルギーデータ及び/又は起動後の最小活動期間データ及び/又は平均メンテナンス時間をさらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
反復的に繰り返すステップは、離散的な一定の時間間隔で繰り返すことを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記予測期間は時間依存性である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記方法を実行するデータ処理手段の少なくとも前記最大処理能力に基づいて、前記予測期間の前記初期部分を決定することをさらに含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の方法を実行するための手段を備えるデータ処理システム。
【請求項14】
プログラムがコンピュータによって実行されると、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法をコンピュータに実行させる命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項15】
請求項1から12のいずれか一項に記載の方法に従って制御されるように構成された圧縮空気又はガスシステム。
【国際調査報告】