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特表2024-529186変形されたRT-LET7を有効成分として含む肝癌の予防または治療用組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-01
(54)【発明の名称】変形されたRT-LET7を有効成分として含む肝癌の予防または治療用組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/113 20100101AFI20240725BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20240725BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20240725BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20240725BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240725BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20240725BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61K31/7088
A61K47/54
A61P1/16
A61P35/00
A61P37/04
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532653
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2024-03-27
(86)【国際出願番号】 KR2022011190
(87)【国際公開番号】W WO2023013990
(87)【国際公開日】2023-02-09
(31)【優先権主張番号】10-2021-0103567
(32)【優先日】2021-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0140386
(32)【優先日】2021-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0093739
(32)【優先日】2022-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524049169
【氏名又は名称】ネオナ
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100153693
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】ナム,ソク-ウ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ヒ-ドゥ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC41
4C076DD69
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA75
4C086ZB09
4C086ZB26
(57)【要約】
本発明は、変形されたRT-LET7または肝細胞標的化部分(Moiety)が結合された変形されたRT-LET7を有効成分として含む肝癌の予防または治療用薬学組成物に関し、本発明による変形されたRT-LET7は、既存のLet-7i-5pを抑制するアンチセンスmicroRNA(AS-miRNA)であるRT-LET7に対比してLet-7i-5pの発現抑制を増加させ、肝癌細胞の成長抑制を増加させ、TSP1の発現を増加させ、およびマクロファージの食作用活性を増加させる効果がある。また、前記変形されたRT-LET7に肝細胞標的化部分(Moiety)を結合することで肝癌細胞への伝達力を高めて肝癌の治療効果を顕著に向上させたので、肝癌の予防および治療用薬学組成物またはCD47-陽性肝癌の予防または治療用免疫抗がん剤として有用に用いられてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Let-7i-5pを標的化する核酸分子であって、
前記核酸分子は、配列番号1の塩基配列で表示され、
前記核酸分子は、ヌクレオチド配列が2′-O-Methoxyethyl(メトキシエチル)化されて変形された核酸であることを特徴とし、
前記核酸分子は、一部または全体骨格(backbone)がホスホロチオエート(phosphorothioate)で改質されたことを特徴とする、核酸分子。
【請求項2】
前記核酸分子は、配列番号1のヌクレオチドのうち5′末端から1乃至4番目のヌクレオチドの骨格(backbone)がホスホロチオエート(phosphorothioate)で改質されたものである、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
前記核酸分子は、配列番号1のヌクレオチドのうち3′末端から1乃至4番目のヌクレオチドの骨格(backbone)がホスホロチオエート(phosphorothioate)で改質されたものである、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項4】
Let-7i-5pを標的化する核酸分子であって、
前記核酸分子は、配列番号1の塩基配列で表示され、
前記核酸分子は、ヌクレオチド配列が2′-O-Methoxyethyl(メトキシエチル)化されて変形された核酸であることを特徴とし、
前記核酸分子は、一部または全体骨格(backbone)がホスホロチオエート(phosphorothioate)で改質されたことを特徴とし、前記核酸分子は、肝細胞標的化部分(Moiety)が結合されたことを特徴とする、核酸分子。
【請求項5】
前記肝細胞標的化部分(Moiety)は、N-Acetylgalactosamine(GalNAc)またはGal-LNP(Galactosyl lipidoid nanoparticle)であることを特徴とする、請求項4に記載の核酸分子。
【請求項6】
前記N-Acetylgalactosamine(GalNAc)は、化学式1または化学式2で表されることを特徴とする、請求項5に記載の核酸分子:
【化1】
【化2】
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の核酸分子を有効成分として含む、肝癌の予防または治療用薬学組成物。
【請求項8】
前記組成物は、Let-7i-5pの発現を抑制するものである、請求項7に記載の肝癌の予防または治療用薬学組成物。
【請求項9】
前記組成物は、TSP1(thrombospondin-1)の発現を増加させるものである、請求項7に記載の肝癌の予防または治療用薬学組成物。
【請求項10】
前記組成物は、マクロファージの食作用活性を増加させるものである、請求項7に記載の肝癌の予防または治療用薬学組成物。
【請求項11】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の核酸分子を有効成分として含む、CD47-陽性肝癌の治療用免疫抗がん剤。
【請求項12】
請求項7に記載の薬学組成物または請求項11に記載の免疫抗がん剤を個体に投与するステップを含む肝癌を治療する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肝癌の予防または治療用薬学組成物に関し、具体的に、Let-7i-5pの発現抑制剤である変形されたRT-LET7またはデリバリーシステムを搭載した変形されたRT-LET7を有効成分として含む肝癌の予防または治療用薬学組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
肝癌は、全世界的に五番目で頻発する癌であるが、それによる死亡率は3位に該当する攻撃的な癌である(Ahn J、Flamm SL Hepatocellular carcinoma Dis Mon 2004;50:556~573)。治療を目的とする手術は単に15%ないし25%程度の患者にのみ可能であり、多くの肝癌患者は局所的に進行するかまたは転移する疾病によって比較的に短期間内に死亡する(Roberts LR、Gores GJ Hepatocellular carcinoma:molecular pathways and new therapeutic targets Semin Liver Dis 2005;25:212~225)。肝癌の主な原因として、B型肝炎ウイルス(hepatitis B virus)、C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus)、およびアフラトキシンB1(aflatoxin B1)などがよく知られている。しかしながら、去る20年間の肝癌患者の全体的な生存率は大きく増加しておらず、肝癌の発達(development)および進展(progression)機序は依然としてよく知られていない状態である(Bruix J、et al Focus on hepatocellular carcinoma Cancer Cell 2004;5:215~219)。今まで、分子標的治療(molecular targeted therapy)が成熟した肝癌の治療に効果的であることが示されているが(Shen YC、Hsu C、Cheng AL Molecular targeted therapy for advanced hepatocellular carcinoma:current status and future perspectives J Gastroenterol;45:794~807)、いかにこのような遺伝的な変化が肝癌患者のひとりひとりに観察される臨床的特徴を引き起こすかは不明確である。
【0003】
HDACs(Histone deacetylases)は、たびたび補助抑制子(corepressors)や多重-タンパク質転写複合体(multi-protein transcriptional complexes)によって遺伝子プロモーターに付くことができ、そこでDNAに直接結合することなくクロマチン(chromatin)変形によって転写を調節する(Thiagalingam S、Cheng KH、Lee HJ、Mineva N、Thiagalingam A、Ponte JF Histone deacetylases:unique players in shaping the epigenetic histone code Ann N Y Acad Sci 2003;983:84~100)。暗号化されたヒトHDACsは18個があり、これらはクラスI(HDAC1、2、3および8)、クラスII(HDAC4、5、6、7、9および10)、クラスIII(SIRT1~7)、およびクラスIV(HDAC11)酵素に分類される(Yang XJ、Seto E The Rpd3/Hda1 family of lysine deacetylases:from bacteria and yeast to mice and men Nat Rev Mol Cell Biol 2008;9:206~218)。ヒストンアセチル化酵素(acetyltransferases)およびHDACsはすべて細胞増殖、分化および細胞周期調節に関与するという事実が知られている(Witt O、Deubzer HE、Milde T、Oehme I HDAC family:What are the cancer relevant targets Cancer Lett 2009;277:8~21)。また、HDACsの病理学的な活性および調節減少(deregulation)が癌、免疫疾患、および筋ジストロフィー症(muscular dystrophy)のような様々な疾病を引き起こすことがあるという事実が報告されている(Yang XJ、Seto E HATs and HDACs:from structure、function and regulation to novel strategies for therapy and prevention Oncogene 2007;26:5310~5318)。HDAC6はHDACsのクラスIIbファミリーメンバーであり、微細小管(MTs)[0004]と関連している細胞質内の脱アセチル化酵素(cytoplasmic deacetylase)として作用し、アルファ-チューブリン(α-tubulin)を脱アセチル化させる(Hubbert C、Guardiola A、Shao R、Kawaguchi Y、Ito A、Nixon A、et al HDAC6 is a microtubule-associated Mis18α.Nature 2002;417:455~458)。
【0004】
一方、miRNAは細胞内に存在する20~25核酸(nucleotide)長さの小さなRNA(endogenous small RNA)の一種であって、タンパク質を合成しないDNAから由来され、ヘアピン-構造転写体(hairpin-shaped transcript)から生成される。miRNAは標的mRNAの3′-UTRの相補的な配列に結合し、そのmRNAの翻訳抑制または不安定化を誘導し、究極的にその標的mRNAのタンパク質合成を抑制するリプレッサ(repressor)の役割を果たすようになる。一つのmiRNAは数個のmRNAをターゲティングし、mRNAもまた数個のmiRNAによって調節できると知られている。
【0005】
一方、マクロファージは食菌作用によって疾病細胞(癌細胞)を貪食し、それは、抗体のFc切片がマクロファージの膜表面のFc受容体との結合を媒介することで起こる。しかしながら、腫瘍は正常免疫調節機構の転覆によってマクロファージを含む免疫細胞の攻撃から切り抜けることができる。そのような機序の一つが正常細胞で発現される一つのタンパク質であるCD47である。CD47は、SIRPα(signal-regulatory protein α)と呼ぶマクロファージの受容体と相互作用し、これがマクロファージに「私を食わないで(貪食遮断)」という信号伝達を導くことで正常細胞を去らせる。同様に癌細胞によるCD47の発現もそれらによって癌細胞が抗体と結合した場合でさえマクロファージに対する抵抗性を持たせるものである。従って、腫瘍に多数のマクロファージが接近するが、「貪食遮断」信号が消えなければ癌細胞に作用できないものである。これに対する一つの治療戦略がCD47に対する単一クローン抗体を利用した「貪食遮断」信号を遮断するものである。
【0006】
従って、本発明は、Let-7i-5pの発現抑制剤であるRT-LET7を変形させて既存のRT-LET7より効果が上昇されることを通じて、これを肝癌の予防または治療用薬学組成物として用いられてもよいことを確認し、また変形されたRT-LET7は肝癌細胞からLet-7i-5pを抑制してTSP1を増加させ、増加したTSP1はCD47と結合してマクロファージのSIRPαと相互作用を防ぐようになり、従って、肝癌細胞のCD47とマクロファージのSIRPαの結合を防いで癌細胞に対するマクロファージの免疫活性を高めて抗癌効果を示す機序を通じてマクロファージの食作用活性を顕著に増加させてCD47-陽性肝癌の治療用免疫抗がん剤として用いられてもよいことを確認し、本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、Let-7i-5pを標的化する核酸分子を提供することである。
また、本発明の他の目的は、前記核酸分子に肝細胞標的化部分(Moiety)が結合されたことを特徴とする、核酸分子を提供することである。
また、本発明の他の目的は、前記核酸分子を有効成分として含む肝癌の予防または治療用薬学組成物を提供することである。
【0008】
また、本発明の他の目的は、前記核酸分子を有効成分として含むCD47-陽性肝癌の治療用免疫抗がん剤を提供することである。
また、本発明の他の目的は、前記薬学組成物を個体に投与するステップを含む肝癌の予防または治療方法を提供することである。
【0009】
また、本発明の他の目的は、配列番号1で表される核酸分子において、ヌクレオチド配列が2′-O-Methoxyethyl(メトキシエチル)化されて変形され、一部骨格(backbone)がホスホロチオエート(phosphorothioate)で改質された、肝細胞標的化部分(Moiety)が結合されたことを特徴とする、Let-7i-5pを標的化する核酸分子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は、Let-7i-5pを標的化する核酸分子であって、前記核酸分子は、配列番号1の塩基配列で表示され、ヌクレオチド配列が2′-O-Methoxyethyl(メトキシエチル)化されて変形された核酸であることを特徴とし、一部または全体骨格(backbone)がホスホロチオエート(phosphorothioate)で改質されたことを特徴とする核酸分子を提供する。
【0011】
また、本発明は、Let-7i-5pを標的化する核酸分子であって、前記核酸分子は、配列番号1の塩基配列で表示され、ヌクレオチド配列が2′-O-Methoxyethyl(メトキシエチル)化されて変形された核酸であることを特徴とし、一部または全体骨格(backbone)がホスホロチオエート(phosphorothioate)で改質されたことを特徴とし、肝細胞標的化部分(Moiety)が結合されたことを特徴とする核酸分子を提供する。
【0012】
本発明は、変形されたRT-LET7を有効成分として含む肝癌の予防または治療用薬学組成物を提供する。
また、本発明は、肝細胞標的化部分(Moiety)が結合された変形されたRT-LET7を有効成分として含む肝癌の予防または治療用薬学組成物を提供する。
また、本発明は、変形されたRT-LET7を有効成分として含むCD47-陽性肝癌の治療用免疫抗がん剤薬学組成物を提供する。
【0013】
また、本発明は、肝細胞標的化部分(Moiety)が結合された変形されたRT-LET7を有効成分として含むCD47-陽性肝癌の治療用免疫抗がん剤を提供する。
また、本発明は、前記薬学組成物を個体に投与するステップを含む肝癌の予防または治療方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明による変形されたRT-LET7または肝細胞標的化部分(Moiety)が結合された変形されたRT-LET7は既存のLet-7i-5pを抑制するアンチセンスmicroRNA(AS-miRNA)であるRT-LET7に対比してLet-7i-5pの発現抑制を増加させ、肝癌細胞の成長抑制を増加させ、TSP1の発現を増加させ、およびマクロファージの食作用活性を増加させる効果がある。また、前記変形されたRT-LET7に肝細胞標的化部分(Moiety)を結合することで肝癌細胞への伝達力を高めて肝癌の治療効果を顕著に向上させたので、肝癌の予防および治療用薬学組成物またはCD47-陽性肝癌の予防または治療用免疫抗がん剤として有用に用いられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】本発明の一実施例において、Let-7i-5pの発現抑制剤であるRT-LET7の多様な変形構造(図1A)および抑制効率(図1B)を示した図である(基本形:RT-LET7、変形:RT-LET7-2、RT-LET7-4、RT-LET7-6およびRT-LET7-8)。
図1B】(上記の通り。)
図2A】本発明の一実施例において、本発明の変形されたRT-LET7であるRT-LET7-8がHCC細胞株において有意に持続的にLet-7i-5pを抑制する効果を確認した図である(図2A;SNU-387、図2B;SNU-368、図2C;SNU-423)。
図2B】(上記の通り。)
図2C】(上記の通り。)
図3A】本発明の一実施例において、本発明の変形されたRT-LET7であるRT-LET7-8によってHCC細胞株の生長抑制およびマクロファージの活性増加を確認した図である(図3A;MTTおよび細胞生存分析によるLet-7i-5pの腫瘍形成に関する特性、図3B;基本形RT-LET7および変形RT-LET7-8を処理した後のウェスタンブロット分析によるTSP1の発現変化、図3C;基本形RT-LET7および変形RT-LET7-8が処理されたHCC細胞のマクロファージの食作用活性)。
図3B】(上記の通り。)
図3C】(上記の通り。)
図4A】GalNAcが結合されたRT-LET7-8のHCC細胞においてLet-7i-5pの発現抑制効率および持続的にLet-7i-5pを抑制する効果を確認した図である。
図4B】(上記の通り。)
図5A】本発明の一実施例において、Gal-LNPが結合されたRT-LET7-8のHCC細胞においてLet-7i-5pの発現抑制効率および持続的にLet-7i-5pを抑制する効果を確認した図である。
図5B】(上記の通り。)
図6A】本発明の一実施例において、GalNAcが結合されたRT-LET7-8によってHCC細胞株の生長抑制およびマクロファージの活性増加を確認した図である(図6A;MTTおよび細胞生存分析によるLet-7i-5pの腫瘍形成に関する特性、図6B;GalNAcが結合されたRT-LET7-8を処理した後のウェスタンブロット分析によるTSP1の発現変化、図6C;GalNAcが結合されたRT-LET7-8が処理されたHCC細胞のマクロファージの食作用活性)。
図6B】(上記の通り。)
図6C】(上記の通り。)
図7A】本発明の一実施例において、Gal-LNPが結合されたRT-LET7-8によってHCC細胞株の生長抑制およびマクロファージの活性増加を確認した図である(図7A;MTTおよび細胞生存分析によるLet-7i-5pの腫瘍形成に関する特性、図7B;Gal-LNPが結合されたRT-LET7-8を処理した後のウェスタンブロット分析によるTSP1の発現変化、図7C;Gal-LNPが結合されたRT-LET7-8が処理されたHCC細胞のマクロファージの食作用活性)。
図7B】(上記の通り。)
図7C】(上記の通り。)
図8A】本発明の一実施例において、肝細胞標的デリバリーシステム(GalNAcおよびGal-LNP)結合に関する模式図を簡単に示した図である(図8A;Gal-LNP結合、図8B;Old-GalNAc結合、図8C;D-GalNAc結合)。
図8B】(上記の通り。)
図8C】(上記の通り。)
図9A】本発明の一実施例において、構造が異なるGalNAc(D-GalNAc)が結合されたRT-LET7-8のHCC細胞においてLet-7i-5pの発現抑制効率および持続的にLet-7i-5pを抑制する効果を確認した図である。
図9B】(上記の通り。)
図9C】(上記の通り。)
図10A】本発明の一実施例において、構造が異なるGalNAc(D-GalNAc)が結合されたRT-LET7-8によるHCC細胞株の生長抑制を確認した図である。
図10B】(上記の通り。)
図11A】本発明の一実施例において、構造が異なるGalNAc(D-GalNAc)が結合されたRT-LET7-8によるHCC細胞株のTSP1の発現変化およびマクロファージの活性増加を確認した図である。
図11B】(上記の通り。)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照して本発明の具現例で本発明を詳しく説明することとする。ただし、下記具現例は、本発明に対する例示として提示されるものであって、当業者にとって周知著名な技術または構成に関する具体的な説明が本発明の要旨を不要に曇らせる可能性があると判断される場合は、その詳細な説明を省略することができ、これによって本発明が制限されるものではない。本発明は後述する特許請求の範囲の記載およびそれから解析される均等範疇内で多様な変形および応用が可能である。
【0017】
また、本明細書において用いられる用語(terminology)は、本発明の好ましい実施例を適切に表現するために用いられた用語であって、これは、使用者、運用者の意図または本発明が属する分野の慣例などによって変わってもよい。従って、本用語に対する定義は、本明細書の全般にわたった内容に基づいて下されなければならない。明細書の全体において、ある部分がある構成要素を「含む」という場合、これは特に断らない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含んでもよいことを意味する。
【0018】
一側面において、本発明は、配列番号1で表される核酸分子であって、Let-7i-5pを標的化する核酸分子に関する。
【0019】
一具現例において、本発明の「核酸分子」は、ヌクレオチド配列が2′-O-Methoxyethyl(メトキシエチル)化されて変形されたものであってもよい。
【0020】
一具現例において、本発明の「核酸分子」は、一部または全体骨格(backbone)がホスホロチオエート(phosphorothioate)で改質されたものであってもよく、好ましくは、配列番号1のヌクレオチドのうち5′末端から1乃至4番目のヌクレオチドおよび3′末端から1乃至4番目のヌクレオチドの骨格(backbone)がホスホロチオエート(phosphorothioate)で改質されたものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0021】
一具現例において、本発明の「核酸分子」は、肝細胞標的化部分(Moiety)が結合されたものであってもよい。
【0022】
また、前記肝細胞標的化部分(Moiety)は、肝組織ターゲット薬物伝達システムであると知られたものであれば制限なく用いられてもよく、例えば、N-Acetylgalactosamine(GalNAc)、Gal-LNP(Galactosyl lipidoid nanoparticle)、Lipid-siRNA、Antibody-siRNA、Peptide-ASO、Stable nucleic acid lipid particle、Exosome、Spherical nucleic acid、DNA cageなどがある(Nat Rev Drug Discov.2020 Oct;19(10):673~694)。
【0023】
また、前記Gal-LNP(Galactosyl lipidoid nanoparticle)は、コレステロール、DSPC、C16-PET2000-ceramideおよびα-galactosyl ceramideで構成されたものであってもよい。
【0024】
また、前記N-Acetylgalactosamine(GalNAc)は、化学式1または2で表されるものであってもよく、好ましくは、化学式2で表されるものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0025】
【化1】
【0026】
【化2】
【0027】
一側面において、本発明は、前記核酸分子を有効成分として含む肝癌の予防または治療用薬学組成物に関する。
【0028】
一具現例において、本発明の「組成物」は、Let-7i-5pの発現を抑制するものであってもよい。
【0029】
一具現例において、本発明の「組成物」は、肝癌細胞の成長を抑制するものであってもよい。
【0030】
一具現例において、本発明の「組成物」は、TSP1(thrombospondin-1)の発現を増加させるものであってもよい。
【0031】
一具現例において、本発明の「組成物」は、マクロファージの食作用活性を増加させるものであってもよい。
【0032】
一側面において、本発明は、前記核酸分子を有効成分として含むCD47-陽性肝癌の治療用免疫抗がん剤に関する。
【0033】
一具現例において、本発明の「TSP1」は、CD47受容体を占有してCD47-SIRPαの相互作用を妨害してもよい。
【0034】
一具現例において、本発明の「核酸分子」はlet-7i-p-TSP1の信号伝達軸を調節してもよく、マクロファージとHCCとの間のCD47-SIRPαの相互作用をCD47-TSP1の相互作用に転換することでマクロファージのHCC細胞に対する食作用を再-活性化するものであってもよい。
【0035】
一具現例において、本発明の「肝癌」は、Let-7i-5p高発現肝癌であってもよく、肝細胞癌腫(hepatocellular carcinoma)であってもよく、stageI、II、III、IVAまたはIVB病期(pha
se)の肝細胞癌腫であってもよく、初期病期よりも治療が難しいstageIII乃至IV病期の肝細胞癌腫であることがさらに好ましい。
【0036】
一具現例において、本発明の「肝癌」は、TSP1低発現肝癌であってもよく、肝細胞癌腫であってもよく、stageI、II、III、IVAまたはIVB病期
(phase)の肝細胞癌腫であってもよく、初期病期よりも治療が難しいstageIII乃至IV病期の肝細胞癌腫であることがさらに好ましい。
【0037】
本発明において用いられる「発現抑制」なる用語は、標的遺伝子の(mRNAへの)発現または(タンパク質への)翻訳の低下を引き起こすことを意味し、好ましくは、これによって標的遺伝子の発現が探知不可能になるか、または無意味な水準で存在するようになることを意味する。
【0038】
本発明において用いられた「予防」なる用語は、本発明による組成物の投与によって肝癌の発生、発達および再発を抑制または遅延させるすべての行為を意味する。
【0039】
本発明において用いられた「治療」なる用語は、本発明による組成物の投与により肝癌およびそれによる合併症の症状を好転させるか、または有利に変更するすべての行為を意味する。本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、大韓医学協会などにおいて提示されている資料を参照して本願の組成物が効果がある疾患の正確な基準を知り、改善、向上および治療された程度を判断できるはずである。
【0040】
一具現例において、前記薬学組成物は、経口型剤形、外用剤、坐剤、滅菌注射溶液および噴霧剤を含む群から選択される一つ以上の剤形であってもよい。
【0041】
本発明の組成物はまた生物学的製剤に通常用いられる担体、希釈剤、賦形剤または二つ以上のこれらの組み合わせを含んでもよい。薬学的に許容できる担体は、組成物を生体内の伝達に適合したものであれば特に制限されず、例えば、Merck Index、13th ed.、Merck&Co.Inc.に記載されている化合物、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノールおよびこれら成分のうち一つの成分以上を混合して利用してもよく、必要に応じて、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤などの他の通常の添加剤を添加してもよい。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤および潤滑剤を付加的に添加して水溶液、懸濁液、乳濁液などのような主な利用剤形、丸薬、カプセル、顆粒または錠剤で製剤化してもよい。よりさらに、当分野の適正な方法にてまたはRemington's Pharmaceutical Science(Mack
Publishing Company、Easton PA、18th、1990)に開示されている方法を利用して、各疾患に従ってまたは成分に従って好ましく製剤化してもよい。
【0042】
本発明の組成物にさらに同一または類似した機能を示す有効成分を1種以上含んでもよい。本発明の組成物は、組成物の総重量に対して前記タンパク質を0.0001乃至10重量%で、好ましくは0.001乃至1重量%を含む。
【0043】
本発明の薬学組成物は薬学的に許容できる添加剤をさらに含んでもよく、このとき、薬学的に許容できる添加剤としては、デンプン、ゼラチン化デンプン、微結晶性セルロース、乳糖、ポビドン、コロイダルシリコンジオキシド、リン酸水素カルシウム、ラクトース、マンニトール、飴、アラビアゴム、アルファ化デンプン、トウモロコシデンプン、粉末セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、オパドライ、デンプングリコール酸ナトリウム、カルナウバ蝋、合成ケイ酸アルミニウム、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、白糖、デキストロース、ソルビトールおよびタルクなどが用いられてもよい。本発明による薬学的に許容できる添加剤は、前記組成物に対して0.1重量部乃至90重量部含まれることが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0044】
本発明の組成物は、目的とする方法に従って、非経口投与(例えば、静脈内、皮下、腹腔内または局所に適用)するか、または経口投与してもよく、経口投与することが最も好ましい。投与量は、個体の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率および疾患の重症度などによってその範囲が多様である。
本発明の組成物の経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当し、通常用いられる単なる希釈剤である水、液体パラフィン以外に多様な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などがともに含まれてもよい。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤などが含まれる。
【0045】
一側面において、本発明は、前記薬学組成物または免疫抗がん剤を個体に投与するステップを含む肝癌を治療する方法に関する。
【0046】
本発明における「個体」なる用語は、疾病の予防、調節または治療方法を要する対象を意味し、ヒト、犬、サル、猫、齧歯類、例えば、マウス、遺伝子操作されたマウスなどが制限なく用いられてもよい。より具体的には、人間または非-人間である霊長類、ハツカネズミ(mouse)、ネズミ(rat)、犬、猫、馬、牛などの哺乳類を意味する。
【0047】
本発明の薬学組成物は、治療学的に有効な量または薬学的に有効な量で投与されてもよい。
【0048】
本発明における「治療学的に有効な量」なる用語は、対象疾患を予防または治療するのに有効な組成物の薬学的に許容される塩の量を意味し、本発明の組成物の治療的に有効な量は、様々な要素、例えば、投与方法、目的部位、患者の状態などによって変わってもよい。従って、人体に使用する際の投与量は、安全性および効率性をともに考慮して適正量で決定されなければならない。動物実験を通じて決めた有効量から人間に用いられる量を推定することも可能である。有効な量を決定する際に考慮するこのような事項は、例えば、Hardman and Limbird、eds.、Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis of
Therapeutics、10th ed.(2001)、Pergamon Press;およびE.W.Martin ed.、Remington's Pharmaceutical Sciences、18th ed
.(1990)、Mack Publishing Co.に記述されている。
【0049】
本発明の薬学組成物は薬学的に有効な量で投与する。本発明において用いられる「薬学的に有効な量」なる用語は、医学的な治療に適用可能な合理的な利益/危険の割合で疾患を治療するのに十分であり、副作用を起こさない程度の量を意味し、有効容量の水準は、個体の健康状態、感染症の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与方法、投与時間、投与経路および排出割合、治療期間、配合または同時に用いられる薬物を含む要素、および、その他の医学分野によく知られた要素によって決定されてもよい。本発明の組成物は、個別治療剤で投与するか、または他の治療剤と併用して投与されてもよく、従来の治療剤と順次にまたは同時に投与されてもよく、単一または多重投与されてもよい。上記した要素をすべて考慮して、副作用なく最小限の量で最大効果が得られる量を投与することが重要であり、これは、当業者によって容易に決定されてもよい。
【実施例
【0050】
以下、本発明を実施例を通じてさらに詳しく説明することとする。これらの実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0051】
<実施例1>既存のRT-LET7の変形されたRT-LET7の製作
Let-7i-5pの抑制剤であるRT-LET7(配列番号1:AACAGCACAAACUACUACCUCAに4ステップの過程で1cycleずつ進め、RNA oligo 1merずつ3′末端から5′末端までDeblocking->Coupling->Oxidation->Cappingの過程で順次に進める。このとき、変形された塩基を用い、Nat Rev Drug Discov.2020 Oct;19(10):673~694.によれば、2′-Riboseの変形(2′-O-methyl、2′-MOE)は変形させていないRNAより核酸分解酵素から抵抗性を増加させ、細胞質内で安定性を増加させるのに寄与する。また、生体組織内で半減期を増加させる役割も果たし、結果として、薬物の効果を増大させる役割を果たす。さらに、相補的なRNAに強く付着し、RNaseによって標的遺伝子がさらに効果的に分解されるのに役立つ。さらに、RNA塩基の間にphosphorothioateに置換した場合、RNaseの活性には影響を与えず、標的RNAに効率的に結合する。そして、細胞と体内でアルブミンのようなタンパク質と結合し、核酸分解酵素から保護され、これによって、薬物が小便に排出されることを防ぐ役割を果たし、体内で薬物の持続時間を増やし、薬物の効果を増大させる役割を果たす理由のため、Riboseとphosphorothioateの変形を進めた。変形されたRNA塩基2′-OMe rA Phosphoramidite(Glen Research、Sterling、VA、cat.10-3100)、2′-OMe rC Phosphoramidite(Glen Research、cat.10-3115)、2′-OMe rG Phosphoramidite(Glen Research、cat.10-3120)、2′-OMe rU Phosphoramidite(Glen Research、cat.10-3130)、2′-MOE rA Phosphoramidite(Glen Research、cat.10-3200)、2′-MOE rC Phosphoramidite(Glen Research、cat.10-3211)、2′-MOE rG Phosphoramidite(Glen Research、cat.10-3220)、2′-MOE rU Phosphoramidite(Glen Research、cat.10-3231)を合成する。合成過程において、phosphorothioateに置換が必要な部分はSulfurizing Reagent II(Glen Research、cat.40-4037-10)を活用して合成する(バイオニア合成)。このとき、何の変形をしていないRNA oligoをRT-LET7、すべての塩基を2′-O-methylに変形し、phosphorothioateに変形したRNA oligoをRT-LET7-2、5′末端と3′末端の4ヶ所を変形させた塩基をRT-LET7-6と名付けた。そして、すべての塩基を2′-MOEに変形し、phosphorothioateに変形したRNA oligoをRT-LET7-4、5′末端と3′末端の4ヶ所を変形させた塩基をRT-LET7-8と名付けた(図1A)。
【0052】
<実施例2>変形されたRT-LET7の処理によるLet-7i-5pの発現抑制の確認
図1Aのように作製された変形されたRT-LET7をトランスフェクションしたHCC細胞株(SNU-387、SNU-368、およびSNU-423)で総RNAをTRIzol試薬(Invitrogen、Carlsbad、CA)を利用して分離した後、前記二つのmiRNAに特異的なcDNAをmicscipt II RTキット(Qiagen、Manchester、UK)を利用して合成した。qRT-PCRはSensiFASTTM SYBR NoROX Kit(Bioline、London、UK)にて行われた。HCC細胞株(SNU-387、SNU-368、およびSNU-423)でLet-7i-5pのqRT-PCR分析を行った結果、2′-MOEにすべての塩基を置換した場合(RT-LET7-4およびRT-LET7-8)、2′-O-methylに置換した場合(RT-LET7-2およびRT-LET7-6)よりLet-7i-5pの発現を抑制するのに効果が良いことを確認した(図1B)。
【0053】
また、2′-MOEでRT-LET7を変形させたとき、HCC細胞株(SNU-387、SNU-368、およびSNU-423)にトランスフェクションした後、最大7日まで培養した後、RNAを抽出した後Let-7i-5pの発現抑制の程度を比べたとき、2′-MOEで変形させた後、phosphorothioateに置換した場合、何の変形もしていないRT-LET7に比べてLet-7i-5pの発現抑制が有意に効率が増大されることを確認した(図2)。
【0054】
<実施例3>MTTおよび細胞生存分析によるLet-7i-5pの腫瘍形成に関する特性の確認
肝癌でのRT-LET7を処理する時のインビトロ腫瘍形成(in vitro tumorigenesis)抑制能を確認するために、RT-LET7を利用してMTT分析を行った。具体的に、MTT分析のために、SNU-387細胞を12-ウェルプレートに分注してRT-LET7、RT-LET7-4、RT-LET7-8をトランスフェクションした後、MTT[3-(4,5-dimethylthiazol-2-yl)-2,5-diphenyltetrazolium bromide]溶液(Sigma)0.5mg/mlと1時間にかけてインキュベーションした後、SYNERGY H1 Multilabelプレートリーダー(Bio-Tek、Winooski、VT)を利用して吸光度を測定した。その結果、RT-LET7の変形されたRT-LET7-8を処理した実験群で腫瘍細胞の成長を最も優れるように抑制することを確認することができた(図3A)。
【0055】
<実施例4>変形されたRT-LET7によるマクロファージの食作用調節の確認
Let-7i-5pがマクロファージの食作用(macrophage phagocytosis)の調節に関与するTSP1の発現を調節するかを確認するために、RT-LET7と変形されたRT-LET7-8を処理した後、ウェスタンブロット分析を通じて発現変化を確認した。その結果、RT-LET7とRT-LET7-8をそれぞれ処理した場合、TSP1の発現が増加されることを確認することができた(図3B)。
【0056】
このような結果に基づいて、Let-7i-5p-TSP1ネットワークのCD47とSIRPα(signal regulatory protein α)の相互作用においてTSP1がCD47受容体を占有し、CD47-SIRPαの相互作用を妨害してマクロファージがHCCを食作用可能にするかを確認するために、インビトロ食作用分析を行った。具体的に、HCC細胞株であるSNU-387をそれぞれ単一細胞懸濁液にした後、CFSE(abcam、Cambridge、UK)で標識した。その後、C57BL/6マウスから腹膜マクロファージを得て、SNU-387と2時間にかけて共培養した後、RT-LET7および変形されたRT-LET7-8でそれぞれ処理し、陽性対照群でTSP1組換えタンパク質を直接処理したHCC細胞と比べた。食作用指数は腫瘍細胞を捕獲するマクロファージの数をマクロファージの総数で分けて計算した。その結果、RT-LET7および変形されたRT-LET7-8が処理されたHCC細胞はすべてマクロファージの食作用活性が顕著に増加することを確認し、RT-LET7に対比して変形されたRT-LET7-8でマクロファージの食作用活性がさらに増加することを確認した(図3C)。
【0057】
このことを通じて、RT-LET7を変形させたRT-LET7-8がlet-7i-p-TSP1信号伝達軸を調節することができ、マクロファージとHCCとの間のCD47-SIRPαの相互作用をCD47-TSP1の相互作用に転換することで、マクロファージのHCC細胞に対する食作用を再-活性化することが分かる。
【0058】
<実施例5>肝細胞標的化部分(Moiety)が結合されたRT-LET7-8の効率の検証
5-1.デリバリーシステムを利用したRT-LET7-8のLet-7i-5pの発現抑制の確認
デリバリーシステムを利用した変形されたRT-LET7-8のLet-7i-5pの発現抑制効果を確認するために、薬物伝達システム(drug delivery system)と知られたN-Acetylgalactosamine(GalNAc)またはGal-LNP(Galactosyl lipidoid nanoparticle)にRT-LET7-8を結合させた核酸分子をASGPR(asialoglycoprotein receptor)の発現がpositiveなcell(Hep3B)とnegativeなcell(SNU-449)に伝達した。
【0059】
具体的に、Gal-LNP-RT-LET7-8は、アルキルエポキシド(Sigma-Aldrich)とポリアミン(Sigma-Aldrich)を結合して合成したC12-SPM、DSPC(Distearoylphosphatidylcholine)(Sigma-Aldrich)、コレステロール(Sigma-Aldrich)、C16-PEG2000-ceramide(Avanti Polar Lipids)とα-galactosyl ceramide(Avanti Polar Lipids)をそれぞれ50:10:38.5:0.75:0.75の割合で混合してGal-LNPを製造した。その後、RT-LET7-8溶液(10mg/mL)を10mMのcitrate buffer(pH3)に混ぜ、Gal-LNPとRT-LET7-8を7:1で混合した後、37℃で30分間培養してGal-LNPにRT-LET7-8が搭載されるようにした。その後、PBS(Sigma-Aldrich、cat.P5368)に75分間透析し、エタノールとGal-LNPが搭載されていないRT-LET7-8を除去した(図8A参照)。引き続き、GalNAc-RT-LET7-8は、modified RT-LET7-8の5′末端にTrebler phosphoramidite(GLEN Research)を接合してRT-LET7-8を変形した後、N-acetylgalactosamine(GLEN Research)を接合してGalNAc-RT-LET7-8を合成した(図8B参照)。その後、実施例2と同一の方法にて各細胞でLet-7i-5pの発現量を確認した。
【0060】
その結果、GalNAcが結合されたRT-LET7-8の場合、ASGPR positive cellであるHep3B細胞では既存のRT-LET7-8に対比してLet-7i-5pの発現抑制効果が有意に増加したが、ASGPR negative cellであるSNU-449細胞ではLet-7i-5pの発現抑制効果が増加しないことが示された(図4A)。これに対し、Gal-LNPが結合されたRT-LET7-8の場合、ASGPRの有無と関係なく、Let-7i-5pの発現抑制効果が有意に増加することが示された(図5A)。このような結果は、GalNAcは肝細胞の表面のASGPR受容体と結合する性質を有するデリバリーシステムであるので、ASGPR postive cellにのみ効果があるが、Gal-LNPは細胞膜と類似した構造を有するため、ASGPRと関係なく効果を示したものと予想される。
【0061】
また、Gal-LNPが結合されたRT-LET7-8(Gal-LNP-RT-LET7-8)はlipofectamineが結合されたRT-LET7-8(Lipo-RT-LET7-8)に対比してLet-7i-5pの発現が顕著に減少されることが示された。これは、lipofectamineの場合、単純なリン脂質で構成されており、コレステロール、DSPC、C16-PET2000-ceramide、α-galactosyl ceramideで構成されたGal-LNPと比べたとき、肝臓への伝達効率や、生体内における安定性が顕著に低下するということを意味する。
【0062】
引き続き、Hep3B細胞で肝細胞標的化部分(GalNAcまたはGal-LNP)が結合されたRT-LET7-8の7日間の効率維持の検証を行った。その結果、7日までLet-7i-5pの発現抑制効果が維持されており、Lipo-RT-LET7-8と比べても、Let-7i-5pの発現を安定的に抑制することが示された(図4Bおよび図5B)。
【0063】
5-2.デリバリーシステムを利用したRT-LET7-8の肝癌での腫瘍形成抑制の確認
肝癌での肝細胞標的化部分(Moiety)が結合されたRT-LET7-8を処理するとき、インビトロ腫瘍形成(in vitro tumorigenesis)抑制能を確認するために、実施例3の方法にてMTT分析を行った。
【0064】
その結果、肝細胞標的化部分(Moiety)が結合されたGalNAc-RT-LET7-8およびGal-LNP-RT-LET7-8の場合、対照群に対比して肝癌細胞の腫瘍形成を効果的に抑制し、Lipo-RT-LET7-8と比べても72時間が経過した場合、高い腫瘍形成抑制能を示すことが示された(図6Aおよび図7A)。
【0065】
5-3.デリバリーシステムを利用したRT-LET7-8のマクロファージの食作用調節の確認
RT-LET7の標的microRNAであるlet-7i-5pの発現低下によってlet-7i-5pの標的タンパク質であるTSP1の発現変化を確認するために、変形されたRT-LET7-8と肝細胞標的化部分(Moiety)が結合されたRT-LET7-8を処理した後、ウェスタンブロット分析によって発現変化を確認した。
【0066】
その結果、肝細胞標的化部分(Moiety)が結合されたRT-LET7-8の場合、肝細胞標的化部分(Moiety)が結合されていない変形されたRT-LET7-8に対比してTSP1の発現が増加されることを確認した(図6Bおよび図7B)。
【0067】
引き続き、マクロファージがHCCを食作用可能にするかを確認するために、実施例4の方法にてインビトロ食作用分析を行った。
【0068】
その結果、変形されたRT-LET7-8に対比してGalNAc-RT-LET7-8およびGal-LNP-RT-LET7-8でマクロファージの食作用活性がさらに増加することを確認した(図6Cおよび図7C)。
【0069】
<実施例6>D-GalNAcが結合されたRT-LET7-8の効率の検証
実施例5を通じてGalNAcの場合、変形されたRT-LET7-8と結合するとき、Gal-LNPに比べて肝臓への伝達効率および生体内における安定性が高いことを確認した。
【0070】
従って、変形されたRT-LET7-8と結合してRT-LET7-8の効能を顕著に向上させ得る最適のGalNAcを探索するために、構造が互いに異なるGalNAc(D-GalNAc)を5′末端に結合させたRT-LET7-8を製作し、下記実験を通じてGalNAcが結合された変形されたRT-LET7-8の効率を比べた。
【0071】
6-1.D-GalNAc-RT-LET7-8のLet-7i-5pの発現抑制の確認
実施例5において用いられたGalNAc(Old-GalNAc)と新たなGalNAcであるD-GalNAcが結合されたRT-LET7-8を製造しており、前記2種のOld-GalNAc-RT-LET7-8(図8B参照)およびD-GalNAc-RT-LET7-8(図8C参照)をHep3B細胞にそれぞれ伝達し、実施例2と同一の方法にて各細胞でLet-7i-5pの発現量を確認した。
【0072】
その結果、D-GalNacが結合されたRT-LET7-8の場合、ASGPR positive cellであるHep3B細胞では既存のOld-GalNAc-RT-LET7-8に対比してLet-7i-5pの発現抑制効果が有意に増加することを確認した(図9A)。
【0073】
引き続き、Hep3B細胞でOld-GalNAc-RT-LET7-8およびD-GalNAc-RT-LET7-8の14日間の効率維持の検証を行い、効率維持の検証テストは温度条件(4℃/室温)を異にして行った。
【0074】
その結果、Old-GalNAc-RT-LET7-8の場合、7日までLet-7i-5pの発現抑制効果が維持されているが、7日が経過する場合、Let-7i-5pの発現が対照群と似た水準に回復した。しかし、GalNAc-RT-LET7-8の場合、14日までLet-7i-5pの発現を安定的に抑制することが示された(図9B、C)。
【0075】
6-2.GalNAc-RT-LET7-8の肝癌での腫瘍形成抑制の確認
肝癌でのGalNAc(Old-GalNAc)と新たなGalNAcであるD-GalNAcが結合されたRT-LET7-8を処理した時のインビトロ腫瘍形成(in vitro tumorigenesis)抑制能を確認するために、Old-GalNAc-RT-LET7-8およびD-GalNAc-RT-LET7-8をHep3B細胞にそれぞれ伝達した後、MTT assayおよびBrdU assayを行った。
【0076】
MTT assayは実施例3に記載されている方法にて行っており、BrdU assayは製造企業のプロトコルに従ってBrdU cell proliferation assay kit(Millipore)を用いて行った。
【0077】
MTT assayの結果、D-GalNAc-RT-LET7-8の場合、Old-GalNAc-RT-LET7-8に対比して肝癌細胞の腫瘍形成を効果的に抑制することが示された(図10A)。引き続き、BrdU assayの結果もMTT assayの結果と同様に、Old-GalNAc-RT-LET7-8に対比してD-GalNAc-RT-LET7-8が処理されたHep3B細胞のProliferation阻害能が顕著に高くなることを確認した(図10B)。
【0078】
6-3.GalNAc-RT-LET7-8のマクロファージの食作用調節の確認
RT-LET7の標的microRNAであるlet-7i-5pの発現低下によってlet-7i-5pの標的タンパク質であるTSP1の発現変化を確認するために、Hep3B細胞にOld-GalNAc-RT-LET7-8およびD-GalNAc-RT-LET7-8をそれぞれ処理した後、ウェスタンブロット分析によって発現変化を確認した。
【0079】
その結果、D-GalNAc-RT-LET7-8の場合、Old-GalNAc-RT-LET7-8に対比してTSP1の発現が増加することを確認した(図11A)。
【0080】
引き続き、マクロファージがHCCを食作用可能にするかを確認するために、実施例4の方法にてインビトロ食作用分析を行った。
【0081】
その結果、D-GalNAc-RT-LET7-8の場合、Old-GalNAc-RT-LET7-8に対比してマクロファージの食作用活性がさらに増加することを確認した(図11B)。
【0082】
このような結果を通じて、変形されたRT-LET7-8に肝細胞標的デリバリーシステムを搭載する場合、ターゲット器官である肝臓への伝達性を高め、肝細胞でLet-7i-5pの発現抑制効能、肝癌で腫瘍形成抑制効能およびマクロファージの食作用作用活性効能が顕著に増加させることを確認した。特に、肝細胞標的デリバリーシステムのうち化学式2で表されるD-GalNAcが結合された変形されたRT-LET7-8の場合、RT-LET7-8の前記言及された肝癌の予防または治療効果を顕著に向上させることが分かる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図11A
図11B
【配列表】
2024529186000001.xml
【国際調査報告】