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特表2024-529194カンカニクジュヨウ抽出物のドライアイ症候群を緩和する薬物の調製における応用
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  • 特表-カンカニクジュヨウ抽出物のドライアイ症候群を緩和する薬物の調製における応用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-02
(54)【発明の名称】カンカニクジュヨウ抽出物のドライアイ症候群を緩和する薬物の調製における応用
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/64 20060101AFI20240726BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240726BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240726BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240726BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240726BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20240726BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240726BHJP
   A61K 9/10 20060101ALI20240726BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20240726BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240726BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240726BHJP
   A61K 31/7034 20060101ALI20240726BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20240726BHJP
   C07H 15/18 20060101ALN20240726BHJP
【FI】
A61K36/64
A61P27/02
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/14
A61K9/16
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/19
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K31/7034
A23L33/105
C07H15/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024506582
(86)(22)【出願日】2022-05-06
(85)【翻訳文提出日】2024-02-01
(86)【国際出願番号】 CN2022091159
(87)【国際公開番号】W WO2022233318
(87)【国際公開日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】63/185,320
(32)【優先日】2021-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/244,129
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517004551
【氏名又は名称】シンファー ティアン-リー ファーマシューティカル カンパニー リミテッド(ハンツォウ)
【氏名又は名称原語表記】SINPHAR TIAN-LI PHARMACEUTICAL CO., LTD. (HANGZHOU)
【住所又は居所原語表記】599 Hongfeng Rd., Yuhang Economic Development Zone, Hangzhou, Zhejiang 311100 China
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】クオ,ハン-ペン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ヤオ-イ
【テーマコード(参考)】
4B018
4C057
4C076
4C084
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4B018MD48
4B018ME14
4C057BB03
4C057BB04
4C057DD03
4C057JJ19
4C076AA11
4C076AA16
4C076AA22
4C076AA30
4C076AA31
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC10
4C076FF01
4C076FF11
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA17
4C084MA22
4C084MA23
4C084MA35
4C084MA37
4C084MA41
4C084MA43
4C084MA44
4C084MA52
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA33
4C084ZC75
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA07
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA22
4C086MA23
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086MA43
4C086MA44
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA33
4C086ZC75
4C088AB12
4C088AC01
4C088BA08
4C088BA13
4C088CA03
4C088MA02
4C088MA17
4C088MA22
4C088MA23
4C088MA35
4C088MA37
4C088MA41
4C088MA43
4C088MA44
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA33
(57)【要約】
カンカニクジュヨウ抽出物を用いてドライアイ症候群を緩和する薬物を調製する。その症状には、目の焼灼感、かゆみ、刺すような痛み、涙液過剰、異物感、痛み、赤目、羞明及びかすみ目が含まれる。
【選択図】図3(a)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要な被験者に有効量のカンカニクジュヨウ抽出物を投与することを含む、ドライアイ症候群を緩和する方法。
【請求項2】
ドライアイ症候群は煙、微粒子、乾燥空気、エアコン、長時間の電子機器の使用、コンタクトレンズの装用、老化、ホルモン変化、炎症、自己免疫性疾患、屈折矯正手術又は薬物に関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抽出物はエキナコシド(echinacocide)、アクテオシド(aceteoside)、イソアクテオシド(isoacteoside)及びツブロシドA(tubulosideA)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
カンカニクジュヨウ抽出物は薬学的に許容される製剤形態で経口投与され、前記製剤形態は、丸薬、錠剤、カプセル、粉末、粒子、非水性液体、水性液体、懸濁液、溶液、乳剤及び凍結乾燥製剤形態からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
カンカニクジュヨウ抽出物は、50から250mgの使用量で1日1回投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
カンカニクジュヨウ抽出物は1つ又は複数の他のサプリメントと併用投与され、前記サプリメントは、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、ラクトフェリン、リノレン酸、ルテイン、マキベリー抽出物、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、植物ステロール、スフィンゴミエリン、ウコン抽出物、ビタミンB6、ビタミンC及びビタミンEからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ドライアイ症候群は、涙液の分泌を増加させることによって緩和される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ドライアイ症候群は、マイボーム腺機能障害を改善することによって緩和される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ドライアイ症候群は、涙膜破裂時間又は涙膜脂質層の厚さを増加させることによって緩和される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
必要な被験者にサプリメントを投与することを含み、前記サプリメントは有効量のカンカニクジュヨウ抽出物を含む、ドライアイを緩和する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有効量のカンカニクジュヨウ(Cistanchetubulosa)抽出物を投与することによってドライアイ症候群を緩和する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
ドライアイ症候群は乾性角結膜炎(keratoconjunctivesicca)とも呼ばれ、現在よく見られる眼科疾患の1つであり、その特徴は涙液の量が減少したり、品質が低下したりすることである。適切な制御がなければ、ドライアイ症候群は角膜潰瘍や永久的視力障害を引き起こす可能性がある。ドライアイ症候群は通常、アレルゲン、煙、微粒子、乾燥空気、エアコンなどの環境要因と関係がある。その他の要因としては、老化、ホルモン変化、眼瞼炎、乾燥症候群(Sjogren’ssyndrome)、狼瘡、薬物、長時間の電子機器の使用及びコンタクトレンズの装用が含まれる。レーシック(LASIK)などの角膜形状を永久的に変える屈折矯正手術もドライアイ症候群を引き起こすことがある。バランスのとれた涙液の分泌と排出は涙膜の完全性、安定性及び正常な浸透圧の維持にとって極めて重要である。バランスが崩れると、涙膜の構造と成分の変化が発生し、最終的に涙膜が不安定になり、且つ涙膜浸透圧の上昇も測定される。涙膜浸透圧の上昇はドライアイの核心機序と考えられ、ドライアイ症状の基礎であり、且つ眼表面の損傷を引き起こす(臨床と実験検眼(ClinExpOptom)2012;95:1:3-11)。また、炎症もドライアイ症候群の根本的な原因の1つであり、サイトカインの放出が関与している。
【0003】
涙液代替品はドライアイ症候群の緩和に使われてきた。しかし、涙液代替品の効果が一時的であるため、1日に何度も滴下する必要がある。コルチコステロイド又はシクロスポリン目薬製剤もドライアイの緩和に使用されている。しかし、目薬製剤中の活性成分、賦形剤又は防腐剤は、眼表面に悪影響を与える可能性があり、長時間の使用を避けるべきである。そのため、ドライアイをよりよく管理できる方法を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、必要な被験者に有効量のカンカニクジュヨウ抽出物を投与することを含む、ドライアイ症候群を緩和する方法を提供する。
【0005】
いくつかの実施例では、本開示は、必要な被験者に有効量のカンカニクジュヨウ抽出物を投与することを含む、涙液の分泌を増加させ、マイボーム腺機能障害を改善し、涙膜破裂時間又は涙膜脂質層の厚さを増加させる方法を提供する。
【0006】
いくつかの実施例では、本開示は、煙、微粒子、低湿度、エアコン、長時間の電子機器の使用又はコンタクトレンズの装用に関連するドライアイ症候群を緩和する方法を提供する。
【0007】
いくつかの実施例では、本開示は、年齢、炎症、自己免疫性疾患、屈折矯正手術又は薬物に関連するドライアイ症候群を緩和する方法を提供する。
【0008】
いくつかの実施例では、本開示は、カンカニクジュヨウ抽出物と他のサプリメントとの併用投与を含む、ドライアイ症候群を緩和する方法を提供する。
【0009】
別の態様では、本開示は、カンカニクジュヨウ抽出物を含む、目の不快感又はドライアイを緩和するサプリメントを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】MTT実験(n=2)において、(a)0.03%DMSOと(b)ST01の角膜細胞株2.040pRSV-Tに対する24時間以内の細胞毒性である。有意性は、対照群と比較して、*P<0.05で、**P<0.01であると定義される。
図2】MTT実験(n=4)において、ST01が角膜細胞株2.040pRSV-Tの24時間以内の高浸透圧による細胞死に与える影響である。有意性は、対照群と比較して、*P<0.05で、**P<0.01であると定義される。
図3】ST01が角膜細胞株2.040pRSV-Tの高浸透性ストレス刺激下での24時間以内の(a)TNF-αと(b)IFN-γの分泌に与える影響である(n=4)。有意性は、対照群と比較して、*P<0.05で、**P<0.01であると定義される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で使用される用語「被験者」は、哺乳動物、例えばヒト又は動物を指す。実施例では、被験者はドライアイ症候群を患っている。具体的な実施例では、ドライアイ症候群の症状は、目の乾き、刺激感、砂利感、異物感、痛みやだるい痛み、刺すような痛みや灼熱感、かゆみ、まばたき回数の増加、目の疲れ、羞明、かすみ目及び赤目を含むが、これらに限定されない。ドライアイ症候群を患っている全ての被験者は全ての症状を同時に示すわけではない。
【0012】
本明細書で使用される用語「緩和」は、疾患の徴候や症状の重症度が低下する過程を指す。徴候や症状は軽減される可能性があるが、解消されていない。好ましい実施例において、カンカニクジュヨウ抽出物の投与により、徴候や症状が解消されたが、必ずしも解消しない。有効量で徴候や症状の重症度を低下させることが期待されている。
【0013】
「有効量」という用語は、有益又は予期される効果を達成するのに十分な量を指す。特に、それは1つの疾患又は病症の1つ又は複数の症状の進行、深刻化又は悪化を緩め又は阻止するのに十分な量を指すか、又は1つの疾患又は病症の1つ又は複数の症状を緩和する量を指す。通常、インビトロ及び/又はインビボ試験によって得られた供与量効果関係は、人体の適切な使用量に初期の有用な指導を提供することができる。
【0014】
「サプリメント」という用語は、ビタミン、ミネラル、薬草又は他の植物薬、アミノ酸、脂肪酸、抽出物、又はこれらの成分の組合せを含む製品を指す。
【0015】
本開示は、カンカニクジュヨウ抽出物を用いてドライアイを緩和する方法を提供する。ドライアイ症候群は多因子且つ複雑な疾患であり、涙液の高浸透圧、涙膜の不安定性、涙膜脂質層の異常、マイボーム腺機能障害などの様々な要因に関連する。高浸透性涙液は、炎症カスケード反応を活性化させ、炎症媒体を涙液中に放出させ、多種の病態生理学的影響を引き起こし、最終的に涙膜の蒸発を加速させ、涙膜の不安定性を激化する可能性がある。
【0016】
高浸透性涙液は涙膜の過剰蒸発が原因である可能性がある。したがって、いくつかの実施例では、本発明で提供される方法は、有効量のカンカニクジュヨウ抽出物によって涙液の分泌、涙膜破裂時間又は涙膜脂質層の厚さを増加させる。
【0017】
いくつかの実施例では、本発明で提供される方法は、有効量のカンカニクジュヨウ抽出物によってマイボーム腺機能障害を改善する。
【0018】
いくつかの実施例では、ドライアイ症候群は、アレルゲン、煙、微粒子、乾燥空気及びエアコンを含むがこれらに限定されない環境要因に関連する。
【0019】
いくつかの実施例では、ドライアイ症候群は、長時間の電子機器の使用及びコンタクトレンズの装用を含むがこれらに限定されないライフスタイルに関連する。
【0020】
加齢、妊娠、避妊薬や更年期によるホルモン変化、及び白内障手術、角膜屈折矯正手術(PRK)とLASIKにより、涙液の機能は損なわれる可能性がある。本開示のいくつかの実施例では、ドライアイ症候群は年齢、ホルモン及び眼表面の変化に関連する。
【0021】
いくつかの実施例では、ドライアイ症候群は、眼瞼炎症(眼瞼炎)と、眼球表面の炎症と、眼瞼内反や外反と、乾燥症、リウマチ性関節炎、エリテマトーデスなどの自己免疫性疾患とを含むがこれらに限定されないいくつかの医療病症に関連する。
【0022】
いくつかの実施例では、ドライアイ症候群は、抗ヒスタミン薬、充血除去剤、降圧薬及び抗うつ薬を含むがこれらに限定されない薬物に関連する。
【0023】
いくつかの実施例では、本開示は、カンカニクジュヨウ抽出物を含む、目の不快感又はドライアイを緩和するサプリメントを提供する。
【0024】
ドライアイ症候群の症状はそれぞれ違う。シルメル氏試験(Schirmer’stest)、角膜染色、ドライアイアンケート、涙膜破裂時間(TFBUT)及び眼表面分析器(O.S.A)は、ドライアイの重症度又は改善状況を検出するための既知の試験である。ドライアイアンケートは、眼の標準患者評価(SPEED)及び眼表面疾患指数(OSDI)のような既知のアンケートであってもよいし、実際の必要に応じて独自に開発したアンケートであってもよい。
【0025】
眼表面疾患指数(OSDI)は、ドライアイ症候群の症状及びその視覚関連機能への影響を迅速に評価するための12個の項目を含むアンケートである。被験者はリッカート(Likert)尺度を用いて様々な症状の頻度、関連する視覚機能及びドライアイの環境誘因を評価する必要があり、尺度は0点から4点まで異なる((0点=全くない、1点=時々、2点=半々、3点=ほとんど、4点=いつも)。これは目ごとではなく全体に対する評価である(眼科アーカイブ(ArchivesofOphthalmology).2000;118(5):615-621.;眼部免疫学と炎症(OcularImmunologyandInflammation),15:389-393,2007)。
【0026】
OSDIには次の3種類の質問がある。
「この1週間で下記の症状を感じましたか?」
1.まぶしさ
2.目の砂利感
3.目の痛みやだるい痛み
4.目のかすみ
5.見づらさ
「この1週間で目の症状が原因で、下記の行動は制限されましたか?」
6.読書
7.夜間の運転
8.パソコンや銀行の現金自動預け払い機(ATM)の使用
9.テレビ鑑賞
「この1週間で次の環境において目の不快感を感じましたか?」
10.風が強いとき
11.湿度が低い場所
12.エアコンの効いている場所
【0027】
眼表面分析器(O.S.A)は非侵襲的なドライアイ分析器である。具体的には、前記機器は干渉測定法によって脂質の量と涙膜脂質層の厚さを評価し、赤外線マイボーム腺観察器によって上下眼瞼の画像を分析し、最後の完全なまばたきから涙膜に初めて不連続が現れるまでの時間(非侵入破裂時間)(秒を単位とする)を測定し、涙液メニスカスの高さを測定することによって涙液の量を推定する。
【0028】
ニクジュウヨウは最初に、約西暦200年から250年の間に編纂された有名な薬用植物書籍『神農本草経』(ShennongBencaoJing)に記載された。伝統的な漢方薬の中で、ニクジュウヨウは、慢性腎症、インポテンツ、女性不妊、病態おりもの、月経過剰及び老年性便秘の治療によく用いられる。カンカニクジュヨウは全寄生砂漠属(holoparasiticdesertgenus)の22種類のニクジュウヨウのうちの1つである。研究により、カンカニクジュヨウ抽出物は角膜上皮細胞を高浸透圧による損傷から保護できることが意外に発見され、高浸透圧はまさにドライアイの核心機序である。したがって、カンカニクジュヨウ抽出物は、目の灼熱、かゆみ、刺すような痛み、涙液過剰、異物感、痛み、赤目、羞明及びかすみ目を含むがこれらに限定されないドライアイ症候群の症状を緩和することができる。
【0029】
いくつかの実施例では、カンカニクジュヨウ抽出物はUS7,087,252に記載されているように調製することができ、ここではその全ての内容を参考として組み込む。好ましくは、カンカニクジュヨウ抽出物はエキナコシド(echinacocide)、アクテオシド(aceteoside)、イソアクテオシド(isoacteoside)及びツブロシドA(tubulosideA)を含む。
【0030】
カンカニクジュヨウ抽出物は、様々な投与経路に適した薬学的に許容される担体、アジュバント、賦形剤及び媒体を含む適切な用量の単位製剤として、単独で又は組み合わせて調製することができる。いくつかの実施例では、カンカニクジュヨウ抽出物は薬学的に許容される製剤形態で経口投与され、前記製剤形態は、丸薬、錠剤、カプセル、粉末、粒子、非水性液体、水性液体、懸濁液、溶液、乳剤及び凍結乾燥製剤形態からなる群から選択される。
【0031】
本明細書に記載の方法において、カンカニクジュヨウ抽出物の投与量は50、75、100、125、150、175、200、225又は250mgであり、1日1回である。
【0032】
いくつかの実施例では、本開示は、カンカニクジュヨウ抽出物を他のサプリメントと併用投与することを含む、ドライアイ症候群を緩和する方法を提供する。サプリメントは、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、ラクトフェリン、リノレン酸、ルテイン、マキベリー抽出物、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、植物ステロール、スフィンゴミエリン、ウコン抽出物、ビタミンB6、ビタミンC及びビタミンEを含むが、これらに限定されない。カンカニクジュヨウ抽出物とその他のサプリメントの相乗作用は、ドライアイの緩和に役立つ。
【0033】
いくつかの実施例では、カンカニクジュヨウ抽出物はルテインと併用投与することができる。カンカニクジュヨウ抽出物とルテインは同時、順次、又は交互に投与することができる。いくつかの実施例では、ルテインの投与量は6mgから30mgの間であり得る。
【実施例
【0034】
実例1:カンカニクジュヨウ抽出物の調製
【0035】
10kgのカンカニクジュヨウの肉質茎をスライスし、そして茎スライスの体積の8倍の水中に浸した。スライスを1時間浸し、2時間煮出し、濾過して最初の濾液を得た。その後、残留物をその体積の6倍の水中に入れて1時間煮出し、さらに濾過し、第2濾液を得た。第2濾液を得るのと同じ手順により、第3濾液と第4濾液を得ることができる。4種類の濾液を合わせ、50℃で比重の10分の1まで減圧濃縮した。濃縮濾液をエタノールと混合し、60%エタノール混合物を形成し、その後12時間冷蔵した。次に、冷却された混合物から上澄み液を収集し、同時に残留物を濾過して濾液を得て、濾液と上澄み液を混合して粗抽出物を形成した。粗抽出物を50℃で比重の10分の1まで真空濃縮し、その中のエタノールをリサイクルした。生成した粗抽出物の重さは6kgであった。
【0036】
粗抽出物を1倍体積の水中に添加し、次いで混合物を加熱して粗抽出物を溶解させた。得られた溶液は、マクロ多孔質吸着樹脂カラムによって抽出された。次に、まずカラム体積の4倍の水でカラムを洗浄し、さらにカラム体積の5倍の濃度40%エタノールでカラムを洗浄した。水溶離液は再びマクロ多孔質吸着樹脂カラムによって抽出された。次に、カラム体積の3倍の水とカラム体積の4倍の濃度40%エタノールでカラムを洗浄した。得られた水溶離液を捨て、2部の40%エタノール溶離液を合わせ、乾燥まで濃縮し、約1.1kgのカンカニクジュヨウ抽出物を得た。
【0037】
実例2:高浸透圧によるヒト角膜上皮細胞損傷
【0038】
方法
ヒト角膜上皮細胞増殖
【0039】
材料
培地については、角質細胞-無血清培地(サーモフィッシャー(ThermoFisher)17005-042)を、5ng/mLのヒト組換えEGF、0.05mg/mLのウシ下垂体抽出物、0.005mg/mLのインスリン、及び500ng/mLのコルチゾールと十分に混合した。
培養プレートコーティング溶液については、0.01mg/mLのフィブロネクチン、0.03mg/mLのウシI型コラーゲン、及び0.01mg/mLのウシ血清アルブミン(BSA)を十分に混合した。
MTT溶液(5mg/mL)については、2mLのDPBSに10mgのMTTを溶解させた。
【0040】
手順
増殖面積が75cmのフラスコに4.5mLのフィブロネクチン/BSA/コラーゲン溶液を加え、そして二酸化炭素濃度が5%、温度が37℃の条件下で24時間培養した。ワーキングストック細胞バンクから細胞を抽出し、氷結晶が細胞に損傷を与えないように急速に37℃に昇温した。次に、フラスコからコーティング溶液を注ぎ出した。細胞播種後、DMSOが0.5%未満になるまで細胞培地を徐々に添加した。細胞を二酸化炭素濃度が5%、温度が37℃の条件下で24時間培養した後、培地を交換した。細胞密度が80%から90%に達すると、細胞をトリプシン-EDTAにおいて連続培養した。その後、培地を2日又は3日ごとに交換した。
【0041】
MTT実験
【0042】
培地の調製については、細胞培地を用いてMTT溶液(5mg/mL)を0.5mg/mLに希釈した。
【0043】
96ウェルプレートに4.5mL/75cmのフィブロネクチン/BSA/コラーゲン溶液を加え、二酸化炭素濃度が5%で且つ温度が37℃の条件下で24時間培養した。1ウェル当たり6,000個の細胞の密度で細胞を播種し、一晩培養した。次いで、細胞培地を活性剤含有培地に置換した。細胞と活性剤含有培地を37℃で24時間インキュベートした後、培地を、0.5mg/mLのMTT(100マイクログラム/ウェル(μg/well))を含有する培地に交換した。細胞とMTT含有培地を37℃で24時間インキュベートした後、培地を除去し、DMSO(100マイクログラム/ウェル)を添加して紫色結晶を溶解させた。溶液を450rpmの回転数で20から30分間遠心分離した。OD570を用いて細胞活性を計算した。
【0044】
カンカニクジュヨウ抽出物(コードネーム:ST01)を溶解させ、CTE-0(ST01:0μg/mL、DMSO:0.03%)、CTE-10(ST01:10μg/mL、DMSO:0.03%)、CTE-22.5(ST01:22.5μg/mL、DMSO:0.03%)、CTE-45(ST01:45μg/mL、DMSO:0.03%)及びCTE-90(ST01:90μg/mL、DMSO:0.03%)の各群を形成して細胞活性をテストした。対照群(0.03%DMSO)は、ブランク対照群(DPBS)と比較して明らかな細胞毒性を生じなかった(図1(a)を参照)。対照群(0.03%DMSO)と比較して、濃度が10、22.5、45と90μg/mLのST01は細胞毒性を生じなかった(図1(b)を参照)。
【0045】
また、さらに細胞を高浸透培地(500mOsM)で処理し、細胞生存率を検出した。図2の結果によると、高浸透圧状態(500mOsM)下で、対照群(0.03%DMSO)(CTE-0群)の角膜上皮細胞生存率は59%に低下し、CTE-5群は67%に低下し、CTE-10群は74%に低下し、CTE-22.5群は71%に低下し、CTE-45群は71%に低下し、CTE-90群は81%に低下した。これらの結果から、カンカニクジュヨウ抽出物は角膜上皮細胞を高浸透圧による損傷から保護することができ、高浸透圧はドライアイ症候群の重要な機序である。
【0046】
実例3:TNF-αとIFN-γレベルの測定
6ウェルプレートに4.5mL/75cmのフィブロネクチン/BSA/コラーゲン溶液を加え、5%の二酸化炭素濃度及び37℃の温度の下で24時間培養した。7×10個の細胞/ウェルの密度で細胞を播種し、一晩培養した。次いで、細胞培地を、カンカニクジュヨウ抽出物を含有する高浸透培地(500mOsM)であるST01-5(ST01:5μg/mL、DMSO:0.03%)、ST01-10(ST01:10μg/mL、DMSO:0.03%)、ST01-22.5(ST01:22.5μg/mL、DMSO:0.03%)、ST01-45(ST01:45μg/mL、DMSO:0.03%)及びST01-90(ST01:90μg/mL、DMSO:0.03%)に置換した。培地を37℃で24時間培養した。トリプシンで処理した細胞と培地を3,000rpmの回転数で10分間遠心分離して、RNAを抽出するための細胞を得た。リアルタイムPCRによってヒト腫瘍壊死因子-α(hTNF-α)及びヒトインターフェロン-γ(hIFN-γ)を測定した。図3(a)及び(b)に示すように、ST01(5から90μg/mL)は高浸透圧によりTNF-α及びIFN-γの発現を示した。
【0047】
実例4:涙膜分析
ドライアイを患っている被験者がカンカニクジュヨウ抽出物及び/又は1つ又は複数のサプリメントを服用する前後の涙膜を分析し、関与するサプリメントは、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、ラクトフェリン、リノレン酸、ルテイン、マキベリー抽出物、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、植物ステロール、スフィンゴミエリン、ウコン抽出物、ビタミンB6、ビタミンC及びビタミンEを含む。被験者がカンカニクジュヨウ抽出物及び/又は1つ又は複数のサプリメントを服用する前(0週目)に、被験者は1週間以上ドライアイ薬物治療又はサプリメントの投与を停止し(投与中であれば)、その後、ベースラインとしてSBMSistemi眼表面分析器(O.S.A)で涙膜を評価した。1週目から4週目まで、被験者は225mgのカンカニクジュヨウ抽出物を1日1回服用し、最大30日間持続した。1週目の2日目、3日目、4日目と5日目に、O.S.Aによる涙膜評価を行った。2週目から5週目まで、O.S.A測定を週1回行った。
【0048】
実例5:ドライアイアンケート
被験者がカンカニクジュヨウ抽出物及び/又は1つ又は複数のサプリメントを服用する前(ベースライン)及び服用した後に、ドライアイを患っている被験者のドライアイアンケートスコアを記録し、ドライアイ症候群と一致する眼刺激症状及び視覚関連機能への影響を評価し、関与するサプリメントは、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、ラクトフェリン、リノレン酸、ルテイン、マキベリー抽出物、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、植物ステロール、スフィンゴミエリン、ウコン抽出物、ビタミンB6、ビタミンC及びビタミンEを含む。対応のあるt検定によって、投与前後のアンケートスコアを比較した。P<0.05であると、有意差がある。被験者は全てカンカニクジュヨウ抽出物及び/又は1つ又は複数のサプリメントを服用した後に症状が改善したことを示した。有効なドライアイアンケートから見ると、ドライアイ症状は改善されている。
【0049】
実例6:カンカニクジュヨウ抽出物及びサプリメント
例示的な組成物は以下のとおりである。
【0050】
成分1については、乳糖、カンカニクジュヨウ抽出物、ゼラチン、チタニア、ドデシル硫酸ナトリウム、グリセリン、マキベリー抽出物、ステアリン酸マグネシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、及びビタミンB6である。
【0051】
成分2については、ルテイン、サフラワー油、ビタミンE、ゼラチン、ドコサヘキサエン酸、グリセリン、レシチン、及びチタニアである。
【0052】
本明細書に引用された全ての出版物、特許及び特許出願の全ての内容は、いずれも参照によって本明細書に組み込まれる。上記の内容は異なる実施例に基づいて説明されているが、当業者であれば、その精神から逸脱することなく、様々な修正、置換、省略及び変更を行うことができることを理解すべきである。
図1
図2
図3
【国際調査報告】