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特表2024-529230折り畳み性能に優れた光学フィルム及びこれを含む表示装置
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  • 特表-折り畳み性能に優れた光学フィルム及びこれを含む表示装置 図1
  • 特表-折り畳み性能に優れた光学フィルム及びこれを含む表示装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】折り畳み性能に優れた光学フィルム及びこれを含む表示装置
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20240730BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20240730BHJP
   H10K 77/10 20230101ALI20240730BHJP
   H10K 50/842 20230101ALI20240730BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20240730BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
H10K59/10
H10K77/10
H10K50/842 141
C08G73/10
G09F9/00 302
G09F9/00 313
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023575504
(86)(22)【出願日】2021-12-24
(85)【翻訳文提出日】2023-12-07
(86)【国際出願番号】 KR2021019823
(87)【国際公開番号】W WO2023286954
(87)【国際公開日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】10-2021-0092397
(32)【優先日】2021-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0186219
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ハク-ギ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヒョ ジュン
【テーマコード(参考)】
3K107
4F071
4J043
5G435
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC41
3K107CC43
3K107DD16
3K107DD17
3K107EE45
3K107FF02
3K107FF06
3K107FF14
3K107FF18
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5G435KK07
(57)【要約】
本発明は、高分子樹脂を含み、黄色度が3.0以下であり、折り畳み性能パラメータが1.5GPa以下である、光学フィルム、及びこのような光学フィルムを含む表示装置を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子樹脂を含み、
黄色度が3.0以下であり、
下記式1で算出される折り畳み性能パラメータが1.5GPa以下である、
光学フィルム:
<式1>

前記式1において、Rは、折り畳み時における折り畳み中心線での光学フィルムの曲率半径であって0.5mmであり、dは、光学フィルムの厚さであって厚さの単位はμmであり、E'は、下記式2で算出される弾性変形指数である。ただし、前記式1において、曲率半径及び厚さは、単位を除いて、数字のみを代入する。
<式2>
弾性変形指数(E') = E/(1-v2)
前記式2において、Eは、光学フィルムのモジュラス(modulus)であってモジュラスの単位はGpaであり、vは、光学フィルムのポアソン比(Poisson's ratio)である。
【請求項2】
前記式2で算出される弾性変形指数(E')は5.5以上である、
請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
前記高分子樹脂は、イミド繰り返し単位及びアミド繰り返し単位を含む、
請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記アミド繰り返し単位は、前記イミド繰り返し単位及び前記アミド繰り返し単位の個数に対して80%以上の比率で含まれる、
請求項3に記載の光学フィルム。
【請求項5】
前記イミド繰り返し単位は、第1繰り返し単位及び第2繰り返し単位を含む、
請求項3に記載の光学フィルム。
【請求項6】
前記アミド繰り返し単位は、第3繰り返し単位及び第4繰り返し単位を含む、
請求項3に記載の光学フィルム。
【請求項7】
前記第1繰り返し単位は、第1ジアミン系化合物と第1ジアンハイドライド系化合物とが重合反応したイミド繰り返し単位であり、
前記第2繰り返し単位は、第2ジアミン系化合物と第2ジアンハイドライド系化合物とが重合反応したイミド繰り返し単位である、
請求項5に記載の光学フィルム。
【請求項8】
前記第3繰り返し単位は、第1ジアミン系化合物と第1ジカルボニル系化合物とが重合反応したアミド繰り返し単位であり、
前記第4繰り返し単位は、第2ジアミン系化合物と第2ジカルボニル系化合物とが重合反応したアミド繰り返し単位である、
請求項6に記載の光学フィルム。
【請求項9】
前記第1ジアミン系化合物は、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2'-Bis(trifluoromethyl)benzidine, TFDB)である、
請求項7または請求項8に記載の光学フィルム。
【請求項10】
前記第2ジアミン系化合物は、スルホニル基(sulfonyl)、カルボニル基(Carbonyl)、メチレン基(Methylene)、プロピレン基(Propylene)及びハロゲン元素(Halogen)からなる群から選択される1種以上の官能基を含むジアミン系化合物である、
請求項7または請求項8に記載の光学フィルム。
【請求項11】
前記第2ジアミン系化合物は、ビス(3-アミノフェニル)スルホン(Bis(3-aminophenyl)sulfone, 3DDS)、ビス(4-アミノフェニル)スルホン(Bis(4-aminophenyl)sulfone, 4DDS)、2,2-ビス(3-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(2,2-Bis(3-aminophenyl)hexafluoropropane, 3,3'-6F)、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(2,2-Bis(4-aminophenyl)hexafluoropropane, 4,4'-6F)、4、4'-メチレンジアニリン(4,4'-Methylenedianiline, MDA)、3,3'-ジアミノベンゾフェノン(3,3'-Diaminobenzophenone)、4,4'-ジアミノベンゾフェノン(4,4'-Diaminobenzophenone)、及びテトラクロリドベンジジン(Tetrachloridebenzidine, CIBZ)からなる群から選択される少なくともいずれか一つを含む、
請求項7または請求項8に記載の光学フィルム。
【請求項12】
重合反応した第1ジアミン系化合物と第2ジアミン系化合物とのモル比は95:5~50:50である、
請求項7または請求項8に記載の光学フィルム。
【請求項13】
前記高分子樹脂は、200,000~500,000の重量平均分子量(weight-average molecular weight, Mw)を有する、
請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項14】
表示パネル;及び
前記表示パネル上に配置された、請求項1~請求項13のうちのいずれか一項に記載の光学フィルム;
を含む、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り畳み(folding)性能に優れた高分子樹脂を含む光学フィルム及びこれを含む表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、表示装置の薄型化、軽量化、フレキシブル化により、カバーウィンドウとしてガラスの代わりに光学フィルムを使用することが検討されている。光学フィルムが表示装置のカバーウィンドウとして使用されるためには、優れた光学的特性及び機械的特性を有さなければならず、折り畳むために折り畳み特性もやはり優れていなければならない。
【0003】
従って、光学特性に優れ、不溶性、耐化学性、耐熱性、耐放射線性、低温特性及び折り畳み特性等といった機械的特性に優れたフィルムを開発することが必要である。
【0004】
光学フィルムの中で代表的にポリイミド(PI)系樹脂は、不溶性、耐化学性、耐熱性、耐放射線性及び低温特性等が優れ、自動車材料、航空素材、宇宙船素材、絶縁コーティング剤、絶縁膜、保護フィルム等に使用されている。
【0005】
最近では、ポリイミド系樹脂にアミド繰り返し単位を追加したポリアミド-イミド系樹脂が開発されており、ポリアミド-イミド系樹脂を用いて製造されたフィルムは、光学特性及び不溶性、耐化学性、耐熱性、耐放射線性及び低温特性等の機械的特性に優れ、同時に折り畳み特性に優れている。
【0006】
アミド繰り返し単位は、ジアミン系化合物及びジカルボニル系化合物の重合によって製造することができる。しかし、ジアミンとして、例えば、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2'-Bis(trifluoromethyl)benzidine, TFDB)を使用する場合、TFDBの剛直な構造により、ジカルボニル系化合物との重合時に、ジカルボニル系化合物がゲル(Gel)化し、重合反応が十分に起こらないという問題点がある。
【0007】
従って、ジカルボニル系化合物を添加しても、重合度に優れたポリアミド-イミド系樹脂を開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一実施例は、折り畳み特性に優れた高分子樹脂を含む光学フィルムを提供しようとする。
【0009】
また、本発明の一実施例は、光学特性及び機械的特性に優れた光学フィルムを提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施例は、高分子樹脂を含み、黄色度が3.0以下であり、下記式1で算出される折り畳み性能パラメータが1.5GPa以下である光学フィルムを提供する。
【0011】
<式1>
【0012】
前記式1において、Rは折り畳み時の折り畳み中心線での光学フィルムの曲率半径で、0.5mmであり、dは光学フィルムの厚さで、厚さの単位はμmであり、E'は下記式2で算出される弾性変形指数である。ただし、前記式1において、曲率半径及び厚さは、単位を除いて、数字のみを代入する。
【0013】
<式2>
弾性変形指数(E') = E/(1-v2)
【0014】
前記式2において、Eは光学フィルムのモジュラス(modulus)であって、モジュラスの単位はGpaであり、vは光学フィルムのポアソン比(Poisson's ratio)である。
【0015】
前記式2で算出される弾性変形指数(E')は、5.5以上であり得る。
【0016】
前記高分子樹脂は、イミド繰り返し単位及びアミド繰り返し単位を含むことができる。
【0017】
前記アミド繰り返し単位は、前記イミド繰り返し単位及び前記アミド繰り返し単位の個数に対して80%以上の比率で含むことができる。
【0018】
前記イミド繰り返し単位は、第1繰り返し単位及び第2繰り返し単位を含むことができる。
【0019】
前記アミド繰り返し単位は、第3繰り返し単位及び第4繰り返し単位を含むことができる。
【0020】
前記第1繰り返し単位は、第1ジアミン系化合物と第1ジアンハイドライド系化合物とが重合反応したイミド繰り返し単位であり、前記第2繰り返し単位は、第2ジアミン系化合物と第2ジアンハイドライド系化合物とが重合反応したイミド繰り返し単位であり得る。
【0021】
前記第3繰り返し単位は、第1ジアミン系化合物と第1ジカルボニル系化合物とが重合反応したアミド繰り返し単位であり、前記第4繰り返し単位は、第2ジアミン系化合物と第2ジカルボニル系化合物とが重合反応したアミド繰り返し単位であり得る。
【0022】
前記第1ジアミン系化合物は、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2'-Bis(trifluoromethyl)benzidine, TFDB)であり得る。
【0023】
前記第2ジアミン系化合物は、スルホニル基(sulfonyl)、カルボニル基(Carbonyl)、メチレン基(Methylene)、プロピレン基(Propylene)及びハロゲン元素(Halogen)からなる群から選択される1種以上の官能基を含むジアミン系化合物であってもよい。
【0024】
前記第2ジアミン系化合物は、ビス(3-アミノフェニル)スルホン(Bis(3-aminophenyl)sulfone, 3DDS)、ビス(4-アミノフェニル)スルホン(Bis(4-aminophenyl)sulfone, 4DDS)、2,2-ビス(3-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(2,2-Bis(3-aminophenyl)hexafluoropropane, 3,3'-6F)、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(2,2-Bis(4-aminophenyl)hexafluoropropane, 4,4'-6F)、4、4'-メチレンジアニリン(4,4'-Methylenedianiline, MDA)、3、3'-ジアミノベンゾフェノン(3,3'-Diaminobenzophenone)、4,4'-ジアミノベンゾフェノン(4,4'-Diaminobenzophenone)及びテトラクロリドベンジジン(Tetrachloridebenzidine、CIBZ)からなる群から選択される少なくともいずれか一つを含んでもよい。
【0025】
重合反応した、第1ジアミン系化合物と第2ジアミン系化合物とのモル比は、95:5~50:50であり得る。
【0026】
前記高分子樹脂は、200,000~500,000の重量平均分子量(weight-average molecular weight, Mw)を有することができる。
【0027】
本発明のまた他の一実施例は、表示パネル;及び前記表示パネル上に配置された、請求項1~請求項13のうちのいずれか一項に記載の光学フィルム;を含む表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0028】
本発明の一実施例によると、折り畳み特性に優れた光学フィルムを提供しようとする。
【0029】
本発明の他の一実施例による光学フィルムは、優れた光学的特性及び機械的特性を有するため、表示装置のカバーウィンドウとして使用される場合、表示装置の表示面を効果的に保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】光学フィルムを折り畳む際の長さの変化を示す光学フィルムの断面図である。
図2】本発明の他の一実施例による表示装置の一部に対する断面図である。
図3図2の「P」部分に対する拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下では、添付の図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。ただし、以下で説明する実施例は、本発明の明確な理解を助けるための例示的な目的で提示するものであり、本発明の範囲を制限しない。
【0032】
本発明の実施例を説明するための図面に開示された、形状、大きさ、比率、角度、個数等は例示的なものであるため、本発明は図面に図示した事項に限定されない。明細書の全体にわたり、同一の構成要素は、同一の参照符号で指称されうる。本発明を説明するにあたり、関連する公知技術に対する具体的な説明が、本発明の要旨を不必要に損なうことがあると判断される場合、その詳細な説明は省略される。
【0033】
本明細書で言及された「含む」、「有する」、「なる」等が使用される場合、「~のみ」という表現が使用されない限り、他の部分が追加されうる。構成要素が単数で表現された場合、特に明示的な記載事項がない限り、複数を含む。また、構成要素を解釈するにあたり、別途の明示的な記載がなくても、誤差範囲を含むものと解釈する。
【0034】
位置関係に対する説明の場合、例えば、「~上に」、「~上部に」、「~下部に」、「~横に」等で二つの部分の位置関係が説明される場合、「すぐ」または「直接」という表現が使用されない限り、二つの部分の間に一つ以上の他の部分が位置しうる。
【0035】
空間的に相対的な用語である「下(below, beneath)」、「下部(lower)」、「上(above)」、「上部(upper)」等は、図面に図示されているように、一つの素子または構成要素と、他の素子または構成要素との相関関係を容易に記述するために使用することができる。空間的に相対的な用語は、図面に図示されている方向に加えて、使用時または動作時における素子の互いに異なる方向を含む用語として理解されなければならない。例えば、図面に図示されている素子を反転させる場合、他の素子の「下(below)」または「下(beneath)」と記述された素子は、他の素子の「上(above)」に置かれうる。従って、例示的な用語である「下」は、下と上の方向を全て含むことができる。同様に、例示的な用語である「上」は、上と下の方向を全て含むことができる。
【0036】
時間関係に対する説明の場合、例えば、「~後に」、「~に続いて」、「~次に」、「~前に」等で時間的な前後関係が説明される場合、「すぐ」または「直接」という表現が使用されない限り、連続的でない場合も含むことができる。
【0037】
第1、第2等が様々な構成要素を叙述するために使用されるが、これらの構成要素はこれらの用語によって制限されない。これらの用語は、単に一つの構成要素を他の構成要素と区別するために使用するものである。従って、以下で言及される第1構成要素は、本発明の技術的思想の中で第2構成要素であり得る。
【0038】
「少なくとも一つ」の用語は、一つ以上の関連項目から提示可能な全ての組み合わせを含むことと理解されなければならない。例えば、「第1項目、第2項目及び第3項目のうち少なくとも一つ」の意味は、第1項目、第2項目または第3項目それぞれだけでなく、第1項目、第2項目及び第3項目のうちの二つ以上から提示することができる、全ての項目の組み合わせを意味することができる。
【0039】
本発明の様々な実施例のそれぞれの特徴について、部分的または全体的に、互いに結合または組み合わせが可能であり、技術的に様々な連動及び駆動が可能であり、各実施例が、互いに対して独立に実施可能であることもありうるのであって、連関させた関係として共に実施する場合もある。
【0040】
本発明の一実施例は、光学フィルムを提供する。本発明の一実施例による光学フィルムは、高分子樹脂を含む。
【0041】
高分子樹脂は、フィルムに固形分粉末の形態、溶液に溶解している形態、溶液に溶解した後、固体化したマトリックス形態等、様々な形状及び形態で含むことができ、本発明と同じ繰り返し単位を含む樹脂であれば、形状及び形態を問わず、全て本発明の高分子樹脂と同じと見ることができる。ただし、一般的にフィルム内で高分子樹脂は、高分子樹脂溶液を塗布した後、乾燥して固体化したマトリックスの形態で存在することができる。
【0042】
本発明の一実施例によると、光学フィルムは、下記式1で算出される光学フィルムの折り畳み性能パラメータが1.5GPa以下である。
【0043】
<式1>
【0044】
前記式1において、Rは、折り畳み(folding)時における折り畳み(folding)中心線での光学フィルムの曲率半径であって0.5mmであり、dは、光学フィルムの厚さであって厚さの単位はμmであり、E'は、下記式2で算出される弾性変形指数である。光学フィルムの厚さは、電子マイクロメータ(Electronic Micrometer)を用いて、例えば、アンリツ(Anritsu)社の電子マイクロメータ(Electronic Micrometer)を用いて測定することができる。光学フィルムの曲率半径は、屈曲反復評価機を用いて、例えば、YUASA社のDLDM111LHAを用いて、機器内にて折り畳んだ後、内部の折り・畳み合わせ部の間隔をギャップゲージで確認して測定することができる。ただし、前記式1において、曲率半径及び厚さは、単位を除いて、数字のみを代入する。
【0045】
<式2>
弾性変形指数(E') = E/(1-v2)
【0046】
前記式2において、Eは光学フィルムのモジュラス(modulus)であって、モジュラスの単位はGPaであり、vは、光学フィルムのポアソン比(Poisson's ratio)である。
【0047】
光学フィルムのモジュラスは、標準規格ASTM D882に基づき、万能材料試験機(例えば、INSTRON社)を用いて、下記の条件で測定することができる。
【0048】
-25℃/50RH%
-ロードセル(Load Cell) 30KN、グリップ(Grip) 250N。
-試片サイズ 10X50mm、引張速度25mm/min
【0049】
光学フィルムのポアソン比は、軸方向の荷重を受けた試片の軸変形率に対する側面変形率の比であり、標準規格ASTM E-132に基づき、非接触式(Video extensometer)で測定することができる。具体的には、万能材料試験機(例えば、Instron社のInstron 3367)を用いて、下記の条件で測定することができる。
【0050】
-試験速度:10mm/min
-(25±2)℃/(45±5)%RH
【0051】
本発明の折り畳み性能パラメータは、図面を参照して、より詳細に説明する。図1は、光学フィルムの折り畳み時の長さの変化を示す光学フィルムの断面図である。図1は、光学フィルムの折り畳み時の長さの変化を示すための一つの例示に過ぎず、折り畳み時の長さの変化は、光学フィルムごとに異なる形態を有しうる。従って、本発明は、これに限定されない。
【0052】
光学フィルムは、折り畳み性能パラメータが1.5GPa以下である場合、折り畳み時に発生する抵抗力が小さくなるため、優れた折り畳み性能を発揮することができるのであって、折り畳み痕跡が発生しない(折り目がつかない;creaseless)のでありうる。曲率半径(R)が小さければ小さいほど、折り畳み痕跡(折り目; crease)の発生が増加するのであるところ、「折り畳み性能パラメータ」が1.5GPa以下である場合には、折り畳み性能が優れ、折り畳み痕跡が発生しない。特に、「折り畳み性能パラメータ」における曲率半径(R)は0.5mmであって、「折り畳み性能パラメータ」が1.5GPa以下である場合、曲率半径(R)が0.5mmで折り畳む際にも、折り畳み痕跡が発生せず、優れた折り畳み性能を有することができる。
【0053】
具体的には、光学フィルムが折り畳まれた際にフィルムの機械的な変化が発生しうるが、本発明における折り畳み痕跡(折り目; crease)は、例えば、フィルムが折り曲げられるか、または、フィルムの表面に不均一にしわが発生するか、または、透明なフィルムに白く白濁が発生する現象があることをいう。また、しわ発生または白濁現象の他にも、折り畳みの前後での長さの差が発生しうるのであり、または光透過性の差等といった光学フィルムの機械的、光学的物性の変化まで含むことができる。
【0054】
光学フィルムが折り畳まれた際、フィルムにはストレス(stress)が加わる。この時、折り畳みの方向に応じて、光学フィルムの折り畳みの内面(以下「内径」という)には圧縮応力(compressive stress)が加わり、反対の面である折り畳みの外面(以下「外径」という)には、引張応力(tensile stress)が加わる。それに伴い、光学フィルムの折り畳み内径には圧縮変形(compressive strain)が発生し、折り畳み外径には引張変形(tensile strain)が発生する。
【0055】
具体的には、図1に図示されるように、折り畳みの前には、折り畳み内径の二つの地点(a、b)間の距離と、外径の二つの地点(c、d)間の距離とは同じである。しかし、光学フィルムを折り畳んだ際、光学フィルムの折り畳み内径のa及びbの二つの地点は、折り畳み時の圧縮応力によってa'、b'に変形し、折り畳み外径のc及びdの二つの地点は、折り畳み時の引張応力によってc'、d'に変形する。折り畳み内径の圧縮応力によって、a'とびb'との間の距離は、aとbとの間の距離よりも減少し、折り畳み外径のc'とd'との距離は、cとdとの間の距離よりも増加する。この際、折り畳み内径の曲率半径(R1)は、光学フィルムの中心線(M)を基準に「R-d/2」であり、折り畳み外径の曲率半径(R2)は、光学フィルムの中心線(M)を基準に「R+d/2」である。折り畳み内径及び折り畳み外径の曲率半径に基づき、算出した、a'とびb'との間の距離(L1)はπ(R-d/2)であり、c'とd'との間の距離(L2)はπ(R+d/2)である。
【0056】
圧縮応力及び引張応力は、変形した長さの大きさに比例する。外径の変化した長さは+π(d/2)であり、内径の変化した長さは-π(d/2)である。従って、内径に加わる力(stress)はd/2R(=[π(d/2)]/πR)に比例し、外径に加わる力(stress)はd/2Rに比例する。外径及び内径に加わる力が小さいほど、光学フィルムの折り畳み性能は向上しうる。従って、光学フィルムのd/2Rの値が小さくなるほど、折り畳みに有利である。具体的には、d/2Rが0.08以下である場合に、光学フィルムの折り畳み性能が優れ、折り畳み痕跡が発生せず、0.08を超過する場合には、折り畳み時に過度の圧力が加わり、折り畳み後に折り畳み痕跡(折り目)が発生しうる。
【0057】
また、光学フィルムの折り畳み性能パラメータは、弾性変形指数(E')に比例する。弾性変形指数(E')が大きくなるほど、光学フィルムの折り畳み性能は向上するのであり、弾性変形指数(E')が小さくなるほど、光学フィルムの折り畳み性能は減少する。
【0058】
本発明の一実施例によると、光学フィルムは、前記式2で算出される弾性変形指数(E')が5.5GPa以上であり得る。光学フィルムの折り畳み性能は、フィルムの厚さ及び曲率半径だけでなく、光学フィルムのモジュラス及びポアソン比(Poisson's ratio)を調節することによって向上されうる。光学フィルムのモジュラス及びポアソン比が増加するほど、折り畳み時における光学フィルムの変形に対する抵抗力が増加する。たとえ、光学フィルムの厚さが増加しても、光学フィルムのモジュラスが増加する場合、折り畳み性能が向上されうる。一方、光学フィルムの厚さが減少しても、光学フィルムのモジュラスもまた減少する場合、折り畳み性能が低下し、フレキシブル表示装置のカバーウィンドウとして使用するには不適合となる。また、光学フィルムのポアソン比が増加する場合にも、折り畳み性能が向上されうるのであり、反対に、光学フィルムのポアソン比が減少する場合、折り畳み性能が低下する。
【0059】
本発明の一実施例によると、光学フィルムは、3.0以下の黄色度(Y.I., yellow index)を有しうる。黄色度は、標準規格ASTM E313でSpectrophotometer(CM-3700D, KONICA MINOLTA)を用いて測定することができる。
【0060】
本発明の一実施例によると、光学フィルムは、高分子樹脂を含むことができる。
【0061】
光学フィルムは、高分子樹脂の繰り返し単位の成分及び含量を調節することにより、1.5GPa以下の折り畳み性能パラメータを有することができる。また、高分子樹脂の重合度を向上させることにより、折り畳み性能パラメータを減少させ、折り畳み性能を向上させることができる。
【0062】
高分子樹脂は、イミド(imide)繰り返し単位及びアミド(amide)繰り返し単位のうちの少なくとも一つを含むことができる。例えば、高分子樹脂は、イミド繰り返し単位またはアミド繰り返し単位を含むことができ、イミド繰り返し単位及びアミド繰り返し単位の両方を含むこともできる。高分子樹脂は、ポリイミド系樹脂、ポリアミド系樹脂及びポリアミド-イミド系樹脂のうちの少なくとも一つであってもよい。
【0063】
本発明において、高分子樹脂のイミド繰り返し単位は、ジアミン(diamine)系化合物とジアンハイドライド(dianhydride)系化合物とを含むモノマー成分から製造することができる。ジアミン系化合物とジアンハイドライド系化合物を高分子重合反応(polymerization)してアミド酸(amic acid)を形成し、アミド酸を再びイミド化して、イミド繰り返し単位を形成することができる。また、アミド繰り返し単位は、ジアミン系化合物とジカルボニル(dicarbonyl)系化合物とを含むモノマー成分から高分子重合反応して製造することができる。イミド繰り返し単位とアミド繰り返し単位の具体的な構造は、反応するモノマーによって異なりうる。
【0064】
しかし、本発明の一実施例による高分子樹脂はこれに限定されない。本発明の一実施例による高分子樹脂は、ジアミン系化合物、ジアンハイドライド系化合物及びジカルボニル系化合物に加え、他の化合物をさらに含むモノマー成分から製造することができる。従って、本発明の一実施例による高分子樹脂は、イミド繰り返し単位及びアミド繰り返し単位以外に、他の繰り返し単位をさらに有することもできる。
【0065】
本発明の一実施例による光学フィルムは、ポリイミド系樹脂、ポリアミド樹脂系及びポリアミド-イミド系樹脂のうち少なくとも一つを含むことができる。
【0066】
本発明の一実施例によると、光学フィルムは、ポリイミド系フィルム、ポリアミド系フィルム及びポリアミド-イミド系フィルムのうちのいずれか一つであってもよい。しかし、本発明の一実施例がこれに限定されるのではなく、光透過性を有するフィルムであれば、本発明の一実施例による光学フィルムとなりうる。
【0067】
本発明の一実施例によると、高分子樹脂は、イミド繰り返し単位及びアミド繰り返し単位の全体の個数に対して、80%以上の比率でアミド繰り返し単位を含むことができる。好ましくは、アミド繰り返し単位の数は、イミド及びアミドの繰り返し単位の全体の個数に対して、95%以上の比率で含むことができる。さらに好ましくは、98%以上の比率で含むことができる。
【0068】
高分子樹脂が、アミド繰り返し単位を、イミド及びアミドの繰り返し単位の数に対して80%以上の比率で含む場合、高分子樹脂で光学フィルムを製造する際、フィルムの光学特性が維持され、機械的特性を向上させることができる。特に、光学フィルムの折り畳み性能を著しく向上させることができる。すなわち、アミド繰り返し単位をイミド繰り返し単位よりも多量に含むことにより、無色透明であって、不溶性、耐化学性、耐熱性、耐放射線性及び低温特性等に優れ、折り畳み性能に優れたフィルムを製造することができる。
【0069】
ただし、アミド繰り返し単位を多量に含むために、多量のジカルボニル系化合物を添加する場合、ジカルボニル系化合物がゲル化し、十分な重合反応が起こらないという問題点がある。
【0070】
本発明は、2種以上のジアミン系化合物を用いて重合反応をすることにより、ジカルボニル系化合物のゲル化を低下及び防止することができる。
【0071】
本発明の一実施例によると、イミド繰り返し単位は、第1繰り返し単位及び第2繰り返し単位を含むことができる。
【0072】
イミド繰り返し単位は、ジアミン系化合物とジアンハイドライド系化合物とが重合反応して形成されたものであり、第1繰り返し単位は、第1ジアミン系化合物と第1ジアンハイドライド系化合物とが重合反応したイミド繰り返し単位であり、第2繰り返し単位は、第2ジアミン系化合物と第2ジアンハイドライド系化合物とが重合反応したイミド繰り返し単位である。本発明の高分子樹脂は、第1ジアミン系化合物及び第2ジアミン系化合物を含み、少なくとも2種以上のジアミン系化合物から由来した繰り返し単位を含む。
【0073】
具体的には、本発明の一実施例によると、第1ジアミン系化合物は、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2'-Bis(trifluoromethyl)benzidine、TFDB)であり得る。本発明の一実施例によると、第2ジアミン系化合物は、TFDB以外の他の芳香族ジアミン系化合物を含むことができる。本発明のイミド繰り返し単位とアミド繰り返し単位は、TFDB;及びTFDB以外の他の芳香族ジアミン系化合物;から由来しうる。
【0074】
2、2'-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2'-Bis(trifluoromethyl)benzidine, TFDB)は、特有の直線型の剛直な構造を有しているため、TFDBから由来した繰り返し単位を含む場合、フィルムの不溶性、耐化学性、耐熱性、耐放射線性及び低温特性等の機械的物性の向上効果に優れている。
【0075】
ただし、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFDB)の剛直な構造のため、ジカルボニル系化合物と反応する際、素早く重合反応が進行する。素早い重合反応により、一部のジカルボニル系化合物のみがジアミン系化合物と反応し、他のジカルボニル系化合物は、重合反応を行えずに、ゲル化(gelation)が発生しうる。ジカルボニル系化合物のゲル化は、樹脂の重合度を低下させ、フィルムの光学物性を阻害しうる。従って、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFDB)のみを添加して、多量のアミド繰り返し単位を含む高分子樹脂を製造することは困難である。本発明は、第2ジアミン系化合物を用いて、ジカルボニル系化合物のゲル化を防止し、重合体の重合度を向上させうる。
【0076】
本発明の一実施例によると、第2ジアミン系化合物は、芳香族ジアミン系化合物を含む。
【0077】
本発明の一実施例において、「芳香族ジアミン系化合物」は、アミノ基が芳香族環に直接結合しているジアミン系化合物を意味し、その構造の一部に脂肪族基またはその他の置換基を含むこともできる。芳香族環は、単一環または単一環が直接またはヘテロ原子で連結された結合環であってもよく、縮合環であってもよい。芳香族環は、例えば、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、アントラセン環及びフルオレン環を含むことができるが、これらに限定されない。
【0078】
本発明の一実施例によると、第2ジアミン系化合物は、下記化学式1で表すことができる。
【0079】
【化1】
【0080】
化学式1において、A1は2価の芳香族有機基を示す。芳香族有機基とは、単結合(一重結合)と二重結合とが交互に連結して環を形成することにより、パイ電子が非遍在化された有機基をいう。例えば、A1は炭素数4~40の2価の芳香族有機基を含む。化学式1に含まれる芳香族有機基中の水素原子は、ハロゲン元素、炭化水素基、またはハロゲン元素で置換された炭化水素基により置換することができる。水素原子と置換された炭化水素基またはハロゲン元素で置換された炭化水素基の炭素数は1~8であり得る。例えば、A1に含まれる水素は、-F、-CH3、-CF3等で置換することができる。
【0081】
水素原子がフッ素置換された炭化水素基により置換されたジアミン系化合物を使用して製造された光学フィルムは、優れた光透過性を有し、優れた加工特性を有することができる。
【0082】
化学式1のA1は、例えば、下記の構造式のうちのいずれか一つで表される構造を含むことができる。
【0083】
【0084】
前記構造式において、*は結合位置を示す。前記構造式において、Xは独立して単結合、O、S、SO2、CO、CH2、C(CH3)2及びC(CF3)2のうちのいずれか一つであってもよい。Xとの各環に対する結合位置は特に限定されないが、Xの結合位置は、例えば、各環に対するメタまたはパラの位置であり得る。
【0085】
本発明の一実施例によると、第2ジアミン系化合物は、スルホニル基(sulfonyl)、カルボニル基(Carbonyl)、メチレン基(Methylene)、プロピレン基(Propylene)及びハロゲン元素(Halogen)からなる群から選択される1種以上の官能基を含んでもよい。
【0086】
スルホニル基(sulfonyl)、カルボニル基(Carbonyl)、メチレン基(Methylene)、プロピレン基(Propylene)及びハロゲン元素(Halogen)の置換基は、化合物内の電子の移動を調節する役割を果たす。従って、第2ジアミン系化合物は、スルホニル基、カルボニル基(Carbonyl)、メチレン基(Methylene)、プロピレン基(Propylene)及びハロゲン元素(Halogen)のうちの少なくとも一つの置換基を含むことにより、イオン化エネルギーを調節することができる。それにより、ジカルボニル系化合物との重合反応の反応性及び反応速度を適切に調節することができる。
【0087】
本発明の一実施例によると、第2ジアミン系化合物は、ビス(3-アミノフェニル)スルホン(Bis(3-aminophenyl)sulfone, 3DDS)、ビス(4-アミノフェニル)スルホン(Bis(4-aminophenyl)sulfone, 4DDS)、2,2-ビス(3-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(2,2-Bis(3-aminophenyl)hexafluoropropane, 3,3'-6F)、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン(2,2-Bis(4-aminophenyl)hexafluoropropane, 4,4'-6F)、4、4'-メチレンジアニリン(4,4'-Methylenedianiline, MDA)、3,3'-ジアミノベンゾフェノン(3,3'-Diaminobenzophenone)、4,4'-ジアミノベンゾフェノン(4,4'-Diaminobenzophenone)及びテトラクロリドベンジジン(Tetrachloridebenzidine, CIBZ)からなる群から選択されるいずれか一つ以上を含んでもよい。
【0088】
本発明の一実施例によると、第1ジアンハイドライド系化合物及び第2ジアンハイドライド系化合物は、それぞれ独立して下記化学式2で表すことができる。第1ジアンハイドライド系化合物と第2ジアンハイドライド系化合物は、互いに同一であってもよく、互いに異なる化合物であってもよい。本発明はこれに限定されない。
【0089】
【化2】
【0090】
化学式2において、A2は4価の有機基を示す。例えば、A2は炭素数4~40の4価の有機基を含むことができる。化学式2に含まれる有機基中の水素原子は、ハロゲン元素、炭化水素基またはハロゲン置換された炭化水素基により置換することができる。ここで、水素原子と置換された炭化水素基またはハロゲン置換された炭化水素基の炭素数は1~8であり得る。
【0091】
化学式2のA2は、例えば、下記の構造式のうちのいずれか一つで表される構造を含むことができる。
【0092】
【0093】
前記構造式において、*は結合位置を示す。前記構造式において、Zは独立して単結合、O、S、SO2、CO、(CH2)n、(C(CH3)2)n及び(C(CF3)2)nのうちのいずれか一つであってもよく、nは1~5である整数であってもよい。Zと各環に対する結合位置は、特に限定されないが、Zの結合位置は、例えば、各環に対するメタまたはパラの位置であり得る。
【0094】
本発明の一実施例によると、第1ジアンハイドライド系化合物及び第2ジアンハイドライド系化合物は、それぞれ独立して2,2-ビス(3、4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンハイドライド(2,2-bis(3,4-dicarboxyphenyl)hexafluoropropane dianhydride, 6FDA)、ビフェニルテトラカルボン酸ジアンハイドライド(biphenyl tetracarboxylic dianhydride, BPDA)、ナフタレンテトラカルボン酸ジアンハイドライド(naphthalene tetracarboxylic dianhydride, NTDA)、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸ジアンハイドライド(diphenyl sulfone tetracarboxylic dianhydride, DSDA)、4-(2、5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸アンハイドライド(4-(2,5-Oxotetrahydrofuran-3-yl)-1,2,3,4-tetrahydronaphthalene-1,2-dicarboxylic Anhydride, TDA)、ピロメリット酸ジアンハイドライド(Pyromellitic dianhydride, PMDA)、ベンゾフェノンテトラカルボン酸ジアンハイドライド(benzophenone tetracarboxylic dianhydride, BTDA)、オキシジフタル酸ジアンハイドライド(oxydiphthalic anhydride, ODPA)、ビスカルボキシフェニルジメチルシランジアンハイドライド(bis(carboxyphenyl)dimethyl silane dianhydride, SiDA)、ビスジカルボキシフェノキシジフェニルサルファイドジアンハイドライド(bis(dicarboxyphenoxy)diphenyl sulfide dianhydride, BDSDA)、スルホニルジフタル酸アンハイドライド(Sulfonyldiphthalic anhydride, SO2DPA)及びイソプロピリデンジフェノキシビスフタル酸アンハイドライド(isopropylidene diphenoxy bis phthalic anhydride, BPADA)からなる群から選択されるいずれか一つ以上を含むことができる。
【0095】
本発明の一実施例による光学フィルムは、複数のジアンハイドライド系化合物を含むことができる。
【0096】
水素原子がフッ素置換された炭化水素基により置換されたジアンハイドライド系化合物を使用して製造された光学フィルムは、優れた光透過性を有し、優れた加工特性を有することができる。
【0097】
本発明の一実施例によると、アミド繰り返し単位は、第3繰り返し単位及び第4繰り返し単位を含むことができる。
【0098】
アミド繰り返し単位は、ジアミン系化合物とジカルボニル系化合物とが重合反応して形成されたものであり、第3繰り返し単位は第1ジアミン系化合物と第1ジカルボニル系化合物とが重合反応したアミド繰り返し単位であり、第4繰り返し単位は第2ジアミン系化合物と第2ジカルボニル系化合物とが重合反応したアミド繰り返し単位である。
【0099】
本発明の一実施例によると、第1ジカルボニル系化合物及び第2ジカルボニル系化合物は、それぞれ独立して下記化学式3で表すことができる。第1ジカルボニル系化合物と第2ジカルボニル系化合物とは、互いに同一であってもよく、互いに異なる化合物であってもよい。本発明はこれに限定されるのではない。
【0100】
【化3】
【0101】
化学式3において、A3は2価の有機基を示す。例えば、A3は炭素数4~40の2価の有機基を含むことができる。化学式3に含まれる有機基中の水素原子は、ハロゲン元素、炭化水素基またはフッ素置換された炭化水素基により置換することができる。ここで、水素原子が置換された炭化水素基またはフッ素置換された炭化水素基の炭素数は1~8であり得る。例えば、A3に含まれる水素は、-F、-CH3、-CF3等で置換することができる。
【0102】
化学式3のA3は、例えば、下記の構造式のうちのいずれか一つで表される構造を含むことができる。
【0103】
【0104】
前記構造式において、*は結合位置を示す。前記構造式において、Yは独立して単結合、O、S、SO2、CO、CH2、C(CH3)2及びC(CF3)2のうちのいずれか一つであってもよい。Yとの各環に対する結合位置は、特に限定されないが、Yの結合位置は、例えば、各環に対してメタまたはパラ位置であり得る。
【0105】
本発明の一実施例によると、第1ジカルボニル系化合物及び第2ジカルボニル系化合物は、それぞれ独立して、テレフタル酸クロリド(Terephthaloyl Chloride, TPC)、イソフタル酸ジクロリド(isophthaloyl dichloride, IPC)、ビフェニルジカルボニルクロリド(Biphenyl dicarbonyl Chloride, BPDC)、4、4'-オキシビスベンゾイルクロリド(4,4'-oxybis benzoyl chloride, OBBC)及びナフタレンジカルボニルジクロリド(naphthalene dicarbonyl dichloride, NTDC)からなる群から選択されるいずれか一つ以上を含んでもよい。
【0106】
本発明の一実施例によると、第1繰り返し単位及び第3繰り返し単位個数と、第2繰り返し単位及び第4繰り返し単位個数との比率は、95:5~50:50であり得る。第1繰り返し単位及び第3繰り返し単位は、全て第1ジアミン系化合物が重合反応に参加した繰り返し単位であり、第2繰り返し単位及び第4繰り返し単位は、全て、第2ジアミン系化合物が重合反応に参加した繰り返し単位である。従って、重合反応に参加した第1ジアミン系化合物と第2ジアミン系化合物とのモル比(molar ratio)が95:5~50:50である。
【0107】
第1繰り返し単位及び第3繰り返し単位の個数と、第2繰り返し単位及び第4繰り返し単位の個数との比率が、95:5であるよりも、第1繰り返し単位及び第3繰り返し単位の個数が多い場合、TFDBとジカルボニル系化合物とから由来する繰り返し単位比率の増加により、フィルムのヘイズが増加しうる。一方、50:50よりも、第2繰り返し単位及び第4繰り返し単位の個数が多い場合、フィルムの耐熱特性及び強度が低下しうる。
【0108】
本発明の一実施例による高分子樹脂は、下記化学式4で表される第1繰り返し単位、及び、下記化学式5で表される第2繰り返し単位を含みうる。
【0109】
【化4】
【0110】
化学式4に含まれるA2は、既に説明した通りである。
【0111】
【化5】
【0112】
化学式5に含まれるA1とA2は、既に説明した通りである。
【0113】
本発明の一実施例による高分子樹脂は、下記化学式6で表される第3繰り返し単位及び下記化学式7で表される第4繰り返し単位を含みうる。
【0114】
【化6】
【0115】
化学式6に含まれるA3は、既に説明した通りである。
【0116】
【化7】
【0117】
化学式7に含まれるA1とA3は、既に説明した通りである。
【0118】
本発明の一実施例によると、本発明の高分子樹脂の重量平均分子量(weight-average molecular weight, Mw)は、200,000~500,000であり得る。
【0119】
高分子樹脂の重量平均分子量は、GPC(Alliance e2695/2414 RID, waters)を用いて、下記の条件で測定することができる。
【0120】
ディテクター:2414 RID、Waters
移動相:10mM LiBr in DMAc
サンプル濃度:0.25(w/w)% in DMAc
カラム及びディテクター温度:50°C
流量(Flow Rate):1.0ml/min
【0121】
ジカルボニル系化合物は、ジアミン系化合物との、特にTFDBとの、素早い反応速度によるゲル化のため、多量のアミド繰り返し単位を含む高分子樹脂の重合度が減少する。重量平均分子量は、重合度との比例関係にあり、重合度が減少すると高分子樹脂の重量平均分子量もやはり減少する。
【0122】
高分子樹脂の重量平均分子量が200,000未満である場合、重合度が減少し、高分子鎖の末端基数は増加し、高分子樹脂の物性が低下するようになる。一方、重量平均分子量が500,000を超過する高分子樹脂を製造することは工程上困難である。高分子樹脂は、重合時、重合粘度を管理して重量平均分子量を調節するのであるが、樹脂の重量平均分子量が500,000を超過する場合、重合粘度が非常に高く、反応液の流動性が低下するため、制御及び処理が難しく、また、高分子樹脂を再溶解した際、溶媒が大量に必要なため、工程上不利である。
【0123】
本発明の一実施例によると、光学フィルムは光透過性を有する。また、光学フィルムは、フレキシブル特性を有する。例えば、光学フィルムは、曲げ(bending)特性、折り畳み(folding)特性及びローラブル(rollable;巻き取り)特性を有する。光学フィルムは、優れた機械的特性及び光学的特性を有することができる。
【0124】
本発明の一実施例によると、光学フィルムは、光学フィルムが表示パネルを保護するのに十分な程度の厚さを有することができる。例えば、光学フィルムは、10~100μmの厚さを有することができる。
【0125】
本発明の一実施例によると、光学フィルムは、厚さ50μmを基準として、UV分光光度計で測定された可視光線領域にて88%以上の平均光透過度を有することができる。
【0126】
光学フィルムの平均光透過度は、分光光度計(Spectrophotometer; CM-3700D, KONICA MINOLTA)を用いて、波長360~740nmで測定することができる。
【0127】
本発明の一実施例によると、光学フィルムは、50μmの厚さを基準として、0.5%以下のヘイズを有することができる。
【0128】
光学フィルムのヘイズは、製造された光学フィルムを50mmХ50mmに切り取り、MURAKAMI社のヘイズメーター(モデル名:HM-150)装備を用いて、ASTM D1003に従って5回測定し、その平均値を光学フィルムのヘイズとすることができる。
【0129】
図2は、本発明のさらに他の一実施例による表示装置(200)の一部に対する断面図であり、図3は、図2の「P」部分に対する拡大断面図である。
【0130】
図2を参照すると、本発明の他の一実施例による表示装置(200)は、表示パネル(501)及び表示パネル(501)上の光学フィルム(100)を含む。
【0131】
図2及び図3を参照すると、表示パネル(501)は、基板(510)、基板(510)上の薄膜トランジスタ(TFT)、及び、薄膜トランジスタ(TFT)と連結された有機発光素子(570)を含む。有機発光素子(570)は、第1電極(571)、第1電極(571)上の有機発光層(572)、及び、有機発光層(572)上の第2電極(573)を含む。図2及び図3に開示された表示装置(200)は、有機発光表示装置である。
【0132】
基板(510)は、ガラスまたはプラスチックで作製することができる。具体的には、基板(510)は、高分子樹脂または光学フィルムのようなプラスチックで作製することができる。図示されていないが、基板(510)上にバッファ層を配置することができる。
【0133】
薄膜トランジスタ(TFT)は、基板(510)上に配置される。薄膜トランジスタ(TFT)は、半導体層(520)、半導体層(520)と絶縁されて半導体層(520)の少なくとも一部と重畳するゲート電極(530)、半導体層(520)と連結されたソース電極(541)、及び、ソース電極(541)と離隔して半導体層(520)と連結されたドレイン電極(542)を含む。
【0134】
図3を参照すると、ゲート電極(530)と半導体層(520)との間にゲート絶縁膜(535)が配置される。ゲート電極(530)上に層間絶縁膜(551)が配置され、層間絶縁膜(551)上にソース電極(541)及びソース電極(541)を配置することができる。
【0135】
平坦化膜(552)は、薄膜トランジスタ(TFT)上に配置され、薄膜トランジスタ(TFT)の上部を平坦化させる。
【0136】
第1電極(571)は、平坦化膜(552)上に配置される。第1電極(571)は、平坦化膜(552)に備えられたコンタクトホールを通じて薄膜トランジスタ(TFT)と連結される。
【0137】
バンク層(580)は、第1電極(571)の一部及び平坦化膜(552)上に配置され、画素領域または発光領域を定義する。例えば、バンク層(580)が、複数の画素同士の間の境界領域にマトリックス構造で配置されることにより、バンク層(580)によって画素領域を画定(定義)することができる。
【0138】
有機発光層(572)は、第1電極(571)上に配置される。有機発光層(572)は、バンク層(580)上にも配置されうる。有機発光層(572)は、一つの発光層を含むこともでき、上下に積層された二つの発光層を含むこともできる。このような有機発光層(572)では、赤色、緑色及び青色のうちのいずれか一つの色を有する光を放出することができ、白色(White)光を放出することもできる。
【0139】
第2電極(573)は、有機発光層(572)上に配置される。
【0140】
第1電極(571)、有機発光層(572)及び第2電極(573)が積層され、有機発光素子(270)をなすことができる。
【0141】
図示されていないが、有機発光層(572)が白色(White)光を発光する場合、個別画素は、有機発光層(572)から放出される白色(White)光を、波長別にフィルタリングするためのカラーフィルタを含むことができる。カラーフィルタは、光の移動経路上に形成される。
【0142】
第2電極(573)上に薄膜封止層(590)を配置することができる。薄膜封止層(590)は、少なくとも一つの有機膜、及び、少なくとも一つの無機膜を含むことができ、少なくとも一つの有機膜と、少なくとも一つの無機膜とを交互に配置することができる。
【0143】
以上説明した積層構造を有する表示パネル(501)上に光学フィルム(100)が配置される。
【0144】
以下では、本発明の他の一実施例による光学フィルムの製造方法を簡略に説明する。
【0145】
本発明の光学フィルムの製造方法は、高分子樹脂を準備する段階;高分子樹脂を溶媒に溶解して高分子樹脂溶液を製造する段階;及び、前記高分子樹脂溶液を用いて光学フィルムを製造する段階;を含む。
【0146】
高分子樹脂を準備する段階は、高分子樹脂を形成するためのモノマーを高分子重合反応(polymeriazation)して得ることができる。
【0147】
本発明の他の一実施例によると、高分子樹脂は、第1ジアミン系化合物、第2ジアミン系化合物、第1ジアンハイドライド系化合物、第2ジアンハイドライド系化合物、第1ジカルボニル系化合物、及び第2ジカルボニル系化合物を含むモノマー成分から製造することができる。本発明は、モノマーの添加順序及び方法によって限定されないが、例えば、第1及び第2ジアミン系化合物が溶解している溶液に、第1及び第2ジアンハイドライド系化合物及び第1及び第2ジカルボニル系化合物を順に添加して重合反応させることができる。または、ランダム性を除去するために、第1ジアミン系化合物、第1及び第2ジアンハイドライド系化合物、第2ジアミン系化合物、第1及び第2ジカルボニル系化合物の順に添加することもでき、第2ジアミン系化合物、第1及び第2ジアンハイドライド系化合物、第1ジアミン系化合物、第1及び第2ジカルボニル系化合物の順に添加して重合反応させることもできる。
【0148】
より具体的には、高分子樹脂は、第1ジアミン系化合物、第2ジアミン系化合物、第1及び第2ジアンハイドライド系化合物及び第1及び第2ジカルボニル系化合物を含むモノマーの高分子重合反応及びイミド化によって製造することができる。第1及び第2ジアミン系化合物と第1及び第2ジアンハイドライド系化合物を含むモノマーの高分子重合反応及びイミド化により、イミド繰り返し単位を製造することができる。また、第1及び第2ジアミン系化合物と第1及び第2ジカルボニル系化合物を含むモノマーの高分子重合反応により、アミド繰り返し単位を製造することができる。
【0149】
従って、本発明の他の一実施例による高分子樹脂は、イミド繰り返し単位とアミド繰り返し単位を有することができる。
【0150】
イミド繰り返し単位及びアミド繰り返し単位は、それぞれ別々に製造した後、共重合することもでき、イミド繰り返し単位を先に製造した後、アミド繰り返し単位の製造のためにジカルボニル系化合物をさらに添加することもでき、アミド繰り返し単位を先に製造した後、イミド繰り返し単位の製造のためにジアンハイドライド系化合物をさらに添加することもできる。本発明の高分子樹脂は、繰り返し単位の製造順序(モノマーの添加順序)によって限定されない。
【0151】
本発明の他の一実施例によると、第1及び第2ジカルボニル系化合物は、第1及び第2ジアンハイドライド系化合物と、第1及び第2ジカルボニル系化合物とを合わせたモル(mol)量に対して80モル%以上の量で添加することができる。それにより、本願の高分子樹脂は、80%以上の比率でアミド繰り返し単位を含むようになる。好ましくは、第1及び第2ジカルボニル系化合物は、第1及び第2ジアンハイドライド系化合物と、第1及び第2ジカルボニル系化合物とを合わせたモル(mol)量に対して、95モル%以上の量で添加することもでき、さらに好ましくは、98モル%以上の量で添加することもできる。
【0152】
本発明の他の一実施例によると、第1ジアミン系化合物は、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2'-Bis(trifluoromethyl)benzidine、TFDB)である。
【0153】
本発明の他の一実施例によると、第2ジアミン系化合物は、芳香族ジアミン系化合物を含む。以下、重複を避けるために、既に説明した構成要素に対する説明は省略する。
【0154】
第1ジアミン系化合物として2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(2,2'-Bis(trifluoromethyl)benzidine, TFDB)を使用することができ、第2ジアミン系化合物として前記説明した化学式1の芳香族ジアミン系化合物を使用することができ、第1及び第2ジアンハイドライド系化合物として前記説明した化学式2の化合物を使用することができる。第1及び第2ジカルボニル系化合物として前記説明した化学式3の化合物を使用することができる。
【0155】
本発明の他の一実施例によると、第2ジアミン系化合物の芳香族ジアミン系化合物は、スルホニル基(sulfonyl)、カルボニル基(Carbonyl)、メチレン基(Methylene)、プロピレン基(Propylene)及びハロゲン元素(Halogen)からなる群から選択される1種以上の官能基を含むことができる。
【0156】
本発明の他の一実施例によると、第2ジアミン系化合物の芳香族ジアミン系化合物は、ビス(3-アミノフェニル)スルホン(Bis(3-aminophenyl)sulfone, 3DDS)、ビス(4-アミノフェニル)スルホン(Bis(4-aminophenyl)sulfone, 4DDS)、3,3'-6F(2,2-Bis(3-aminophenyl)hexafluoropropane)、4,4'-6F(2,2-Bis(4-aminophenyl)hexafluoropropane)、MDA(4,4'-Methylenedianiline)、3,3'-CO(3-(Dimethylamino)benzophenone)、4,4'-CO(4-(Dimethylamino)benzophenone)及びCIBZ(Tetrachloridebenzidine)からなる群から選択される、いずれか一つ以上を含むことができる。
【0157】
本発明の他の一実施例によると、第1ジアミン系化合物と第2ジアミン系化合物との添加量の比率は、95:5~50:50であり得る。
【0158】
本発明の他の一実施例によると、高分子樹脂溶液を製造する段階での溶媒は、例えば、ジメチルアセトアミド(DMAc, N,N-dimethylacetamide)、ジメチルホルムアミド(DMF, N,N-dimethylformamide)、メチルピロリドン(NMP, 1-methyl-2-pyrrolidinone)、m-クレゾール(m-cresol)、テトラヒドロフラン(THF, tetrahydrofuran)、クロロホルム(Chloroform)、メチルエチルケトン(Methyl Ethyl Ketone, MEK)等の非プロトン性極性有機溶媒(aprotic solvent)及びこれらの混合物を使用することができる。しかし、本発明の一実施例はこれに限定されず、公知の他の溶媒を使用することもできる。
【0159】
以下、例示的な実施例を参照して本発明をより具体的に説明する。しかし、以下説明する製造例や実施例によって本発明は限定されない。
【0160】
<実施例1>
攪拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器を取り付けた500mL反応器に、窒素を通過させながら、DMAc(N,N-Dimethylacetamide) 313.34gを充填した後、反応器の温度を25℃に合わせた後、第1ジアミン系化合物としてTFDB 24.02g(0.075mol)を溶解し、第2ジアミン系化合物として3DDS(Bis(3-aminophenyl)sulfone) 6.21g(0.025mol)を追加溶解し、この溶液を25℃に維持した。ジアミン系化合物を溶解した後、ここに6FDA 0.89g(0.002mol)を添加し、2時間攪拌して6FDAを完全に溶解させた。反応器の温度を10℃に下げた後、TPC(Terephthaloyl Chloride) 19.90g(0.098mol)を添加し、1時間完全に溶解及び反応させた後、25℃に昇温させた。ここにピリジン0.35g、アセチックアンハイドライド(Acetic anhydride; 無水酢酸)0.45gを投入し、80℃で30分攪拌した後、過剰量のメタノールを滴下して、ポリアミド-イミド系パウダーを収得した。パウダーを減圧フィルタリングして乾燥させた後、DMAcに再溶解させて、固形分の濃度が14重量%である高分子樹脂溶液を収得した。
【0161】
得られた高分子樹脂溶液をキャスティングした。キャスティングのためにキャスティング基板が使用される。キャスティング基板の種類に特に制限はない。キャスティング基板として、ガラス基板、ステンレス(SUS)基板、テフロン(登録商標)基板等を使用することができる。本発明の一実施例によると、キャスティング基板として有機基板を使用することができる。
【0162】
具体的には、得られた高分子樹脂溶液をガラス基板に塗布し、キャスティングして80℃の熱風で20分、120℃で20分乾燥してフィルムを製造した後、製造されたフィルムをガラス基板から剥離して、フレームにピンで固定した。
【0163】
フィルムが固定されたフレームをオーブンに入れ、270℃にて等温10分熱風で乾燥させた。その結果、50μmの厚さの光学フィルムが完成した。
【0164】
<実施例2~14>
実施例1と同じ方法で、第1ジアミン系化合物の添加量、第2ジアミン系化合物の種類及び添加量、ジアンハイドライド系化合物の添加量、ジカルボニル系化合物の種類及び添加量についてのみ変えるようにして、実施例2~14の光学フィルムを製造した。
【0165】
実施例1~14の具体的な第1ジアミン系化合物の添加量、第2ジアミン系化合物の種類及び添加量、ジアンハイドライド系化合物の添加量、ジカルボニル系化合物の種類及び添加量は、下記表1の通りである。
【0166】
<比較例1~3>
実施例1と同じ方法で、第1ジアミン系化合物の添加量、第2ジアミン系化合物の添加有無、種類及び添加量、ジアンハイドライド系化合物の添加量、ジカルボニル系化合物の添加量を変えて、比較例1~3の光学フィルムを製造した。
【0167】
比較例1~3の具体的な第1ジアミン系化合物の添加量、第2ジアミン系化合物の添加有無、種類及び添加量、ジアンハイドライド系化合物の添加量、ジカルボニル系化合物の添加量は、下記表1の通りである。
【0168】
<比較例4>
攪拌機、窒素注入装置、滴下漏斗、温度調節器及び冷却器を取り付けた500mL反応器に窒素を通過させながら、DMAc(N,N-Dimethylacetamide) 313.34gを充填した後、反応器の温度を25℃に合わせた後、第1ジアミン系化合物でTFDB 28.8207g(0.090mol)を溶解し、第2ジアミン系化合物で4DDS(Bis(4-aminophenyl)sulfone) 2.483g(0.010mol)を追加溶解し、この溶液を25℃に維持した。ジアミン系化合物を溶解した後、ここに、CBDA(Cyclobutane-1,2,3,4-tetracarboxylic dianhydride) 5.8833g(0.030mol)、6FDA 2.2212g(0.005mol)を添加し、2時間攪拌してCBDA及び6FDAを完全に溶解させた。反応器の温度を10℃に下げた後、TPC(Terephthaloyl Chloride) 13.1989g(0.065mol)を添加し、1時間で完全に溶解及び反応させた後、25℃に昇温させた。ここにピリジン0.35g、アセチックアンハイドライド0.45gを投入し、80℃で30分攪拌した後、過量のメタノールを滴下してポリアミド-イミド系パウダーを収得した。パウダーを減圧フィルタリングして乾燥させた後、DMAcに再溶解させて、固形分の濃度が14重量%である高分子樹脂溶液を収得した。
【0169】
得られた高分子樹脂溶液をキャスティングした。キャスティングのためにキャスティング基板が使用される。キャスティング基板の種類に特に制限はない。キャスティング基板として、ガラス基板、ステンレス(SUS)基板、テフロン(登録商標)基板等を使用することができる。本発明の一実施例によると、キャスティングの基板として、有機基板を使用することができる。
【0170】
具体的には、得られた高分子樹脂溶液をガラス基板に塗布し、キャスティングして80℃の熱風で20分、120℃で20分乾燥してフィルムを製造した後、製造されたフィルムをガラス基板から剥離してフレームにピンで固定した。
【0171】
フィルムが固定されたフレームをオーブンに入れ、270℃にて等温10分熱風で乾燥させた。その結果、50μmの厚さの光学フィルムが完成した。
【0172】
<比較例5及び6>
実施例1と同じ方法で、第1ジアミン系化合物の添加量、第2ジアミン系化合物の添加量、ジアンハイドライド系化合物の添加量、ジカルボニル系化合物の添加量を変えて、比較例5及び6の光学フィルムを製造した。
【0173】
比較例5及び6の具体的な第1ジアミン系化合物の添加量、第2ジアミン系化合物の添加量、ジアンハイドライド系化合物の添加量、ジカルボニル系化合物の添加量は、下記表1の通りである。
【0174】
【表1】
【0175】
TFDB: 2,2'-Bis(trifluoromethyl)benzidine3DDS(2,2'-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン)
Bis(3-aminophenyl)sulfone(ビス(3-アミノフェニル)スルホン)
4DDS: Bis(4-aminophenyl)sulfone(ビス(4-アミノフェニル)スルホン)
3,3'-6F: 2,2-Bis(3-aminophenyl)hexafluoropropane(2,2-ビス(3-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン)
4,4'-6F: 2,2-Bis(4-aminophenyl)hexafluoropropane(2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン)
pPDA: para-Phenylene diamine(パラフェニレンジアミン)
8FODA: Oxy-4,4'-bis(2,3,5,6-tetrafluoroaniline)(オキシ-4,4'-ビス(2,3,5,6-テトラフルオロアニリン))
TPC: Terephthaloyl Chloride(塩化テレフタロイル)
BPDC: 4,4'-Biphenyl dicarbonyl Chloride(4,4'-ビフェニル ジカルボニル クロリド)
CBDA: Cyclobutane-1,2,3,4-tetracarboxylic dianhydride(シクロブタン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物)
【0176】
<測定例>
実施例1~14及び比較例1~6で製造された高分子樹脂及びフィルムに対し、次のような測定を実行した。
【0177】
1) 高分子樹脂の重量平均分子量:GPC(Alliance e2695/2414 RID, Waters)を用いて、下記の条件で高分子樹脂の重量平均分子量を測定した。
【0178】
ディテクター:2414 RID、waters
移動相:10mM LiBr in DMAc
サンプル濃度:0.25(w/w)% in DMAc
カラム及びディテクター温度:50℃
Flow Rate:1.0ml/min
【0179】
2) モジュラス:標準規格ASTM D882に基づき、万能引張試験機(例えば、INSTRON社)を用いて、下記の条件で測定した。
【0180】
-25℃/50RH%
-ロードセル(Load Cell) 30KN、グリップ(Grip) 250N。
-試片サイズ 10X50mm、引張速度 25mm/min
【0181】
3) ポアソン比:光学フィルムのポアソン比は、標準規格ASTM E-132に基づき、非接触式(Video extensometer)で測定した。具体的には、万能材料試験機(例えば、Instron社のInstron 3367)を用いて、下記の条件で測定した。
【0182】
-試験速度:10mm/min
-(25±2)℃/(45±5)%RH
【0183】
4) 弾性変形指数(E'):光学フィルムの弾性変形指数(E')は、下記式2で算出することができる。
【0184】
<式2>
弾性変形指数(E') = E/(1-v2)
【0185】
5) 黄色度(Y.I.):標準規格ASTM E313でSpectrophotometer(CM-3700D, KONICA MINOLTA)を用いて、黄色度を測定した。
【0186】
6) 折り畳み性能パラメータ:光学フィルムの折り畳み性能パラメータは、下記式1で算出することができる。
【0187】
<式1>
【0188】
前記式1において、Rは、折り畳み時の折り畳み中心線での光学フィルムの曲率半径であって曲率半径の単位はmmであり、dは、光学フィルムの厚さであって厚さの単位はμmであり、E'は弾性変形指数である。ただし、前記式1において、曲率半径及び厚さは、単位を除いて、数字のみを代入する。
【0189】
7) 光透過度(%):分光光度計(Spectrophotometer)(CM-3700D, KONICA MINOLTA)を用いて、波長360~740nmでの平均光学透過度を測定した。
【0190】
8) ヘイズ:製造された光学フィルムを50mmХ50mmに切り取り、MURAKAMI社のヘイズメーター(モデル名:HM-150)装備を用いて、ASTM D1003に従って5回測定し、その平均値をヘイズ値とした。
【0191】
9) 折り畳み痕跡:光学フィルムから任意に取得した100mmХ50mmのサンプルを一つの折曲軸を中心に折曲試験を行った。折曲試験は、100mmХ50mmのサンプルを、屈曲反復評価機(YUASA社、DLDM111LHA)を用いて、25℃/50RH%にて曲率半径2.0mm(直径4.0mm)、60rpmの速度で、200,000回繰り返し折曲して折曲試験後、折曲軸を中心に折り畳み痕跡の発生の有無を分析した。
【0192】
この際、折り畳み跡(折り目)の明暗(陰影)等をより鮮明にするための分析方法を必要としうる。一例として、イメージ化方法として、フィルムの異物検査方法を使用して行うことができる。可及的に、CCDカメラまたは肉眼で捉えにくい欠陥や押し跡、Eは素材と同じ色の異物を検出するように、反射式、散乱式、透過式等、様々な検査法を使用することができ、測定機器ではなく検査(すなわち、判定)機器であることが好ましい。
【0193】
具体的な例としては、検査装置+制御ユニット(コントローラボックス:検査装置を通じて入ってきたレーザーデータをイメージデータ化する)+専用PC(画像PC:専用アプリケーションが登録されたPCであって、制御ユニット(コントローラボックス)との連結及び画像処理可能PC)の3種でもって構成可能であり得る。すなわち、測定/評価条件を設定し、イメージファイルに転換した後、イメージ/写真の明度、彩度、反射率等を分析する公知のプログラムを活用して、分析/評価を進行することができるが、これに限定されない。
【0194】
測定結果は、次の表2及び表3の通りである。
【0195】
【表2】
【0196】
【表3】
【0197】
前記表2及び3の測定結果に開示されているように、本発明の実施例1~14は、高い重量平均分子量を有し、黄色度、光透過度及びヘイズが、全て優れているということを確認することができる。また、本発明の実施例1~14は、折り畳み性能パラメータが全て1.5GPa以下であり、弾性変形指数(E')が5.5GPa以上であって、折曲試験後にも折り畳み痕跡が発生しなかった(表3の“X”)。
【0198】
しかし、比較例1は、ジカルボニル系化合物のゲル化により、フィルムとしての製造が不可能であった。比較例2は、樹脂の重量平均分子量が低調であって、黄色度とヘイズが高く、視認性が低調であることを確認することができる。また、比較例2は、折り畳み性能パラメータが1.5GPa以下であるが、弾性変形指数(E')が5.5GPa未満であって、折曲試験後に、若干の折り畳み痕跡が発生した(表3の“△”)。比較例3は、樹脂の重量平均分子量は大きいが、黄色度及びヘイズが著しく高く、光透過度が著しく低下した。また、比較例3は、折り畳み性能パラメータが1.5GPa以下であるが、弾性変形指数(E')が5.5GPa未満であって、折曲試験後に若干の折り畳み痕跡が発生した(表3の“△”)。比較例4は、黄色度及びヘイズが高く、光透過度が低く、折り畳み性能パラメータが1.5GPaを超過し、折曲試験後に折り畳み痕跡がひどく発生した(表3の“O”)。比較例5は、黄色度及びヘイズが高く、光透過度が低いため、視認性が低調であることを確認することができる。また、比較例5は、折り畳み性能パラメータが1.5GPa以下であるが、弾性変形指数(E')が5.5GPa未満で、折曲試験後に若干の折り畳み痕跡が発生した(表3の“△”)。比較例6は、樹脂の重量平均分子量が低調であって、黄色度とヘイズが高く、光透過度が低いため、視認性が低調であることを確認することができる。また、比較例6は、折り畳み性能パラメータが1.5GPa以下であるが、弾性変形指数(E')が5.5GPa未満であって、折曲試験後に若干の折り畳み痕跡が発生した(表3の“△”)。
【符号の説明】
【0199】
100:光学フィルム
200:表示装置
501:表示パネル
図1
図2
図3
【国際調査報告】