(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】土壌有機質を現場で迅速に検出する装置及びその検出方法
(51)【国際特許分類】
G01N 35/00 20060101AFI20240730BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20240730BHJP
G01N 33/24 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
G01N35/00 D
G01N37/00 101
G01N33/24 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023579858
(86)(22)【出願日】2022-10-27
(85)【翻訳文提出日】2023-12-24
(86)【国際出願番号】 CN2022128072
(87)【国際公開番号】W WO2024007489
(87)【国際公開日】2024-01-11
(31)【優先権主張番号】202210787357.3
(32)【優先日】2022-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210783531.7
(32)【優先日】2022-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523485331
【氏名又は名称】中科合肥智慧農業協同創新研究院
(74)【代理人】
【識別番号】100207561
【氏名又は名称】柳元 八大
(72)【発明者】
【氏名】王 儒敬
(72)【発明者】
【氏名】陳 江寧
(72)【発明者】
【氏名】陳 翔宇
(72)【発明者】
【氏名】常 永嘉
(72)【発明者】
【氏名】張 俊卿
(72)【発明者】
【氏名】劉 洋
(72)【発明者】
【氏名】陸 勤▲ウェン▼
(72)【発明者】
【氏名】劉 ▲インイン▼
(72)【発明者】
【氏名】劉 宜
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058AA01
2G058DA07
2G058FA07
(57)【要約】
本発明は、土壌有機質を現場で迅速に検出する方法、それと組み合わせて使用される検出装置及びチップに関する。この迅速検出装置は、前処理モジュールと、遠心システムと、マイクロ流路チップと、光電検出モジュールとを含む。前処理モジュールは、土壌試料を処理して土壌試料溶液を得るものである。遠心システムは、遠心力を発生するものである。前記マイクロ流路チップは、遠心システムによる遠心力の作用下で土壌試料溶液と浸出溶媒をその内部で流動、混合及び浸出させ、浸出液を得るものである。光電検出モジュールは、浸出液を検出して土壌試料溶液中の有機質の含有量を測定するものである。遠心式マイクロ流路チップは、通路層と、通路層の上方に設けられる蓋板層と、通路層の下方に設けられる底板層とを含む。本発明は、土壌有機質の現場での迅速な検出を実現でき、検出周期が短く、検出効率が高く、操作が簡単で便利であるなどの利点を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前処理モジュールと、遠心システムと、マイクロ流路チップと、光電検出モジュールとを含む土壌有機質を現場で迅速に検出する装置であって、
前記前処理モジュールは、土壌試料を処理して土壌試料溶液を得るものであり、
前記遠心システムは、遠心力を発生し、チップ通路内の液体試薬を外周へ移動させるものであり、
前記マイクロ流路チップは、遠心システムによって発生した遠心力の作用下で土壌試料溶液及び浸出溶媒をその内部で流動、混合及び浸出させ、浸出液を得るものであり、
前記光電検出モジュールは、浸出液を検出し、土壌試料溶液中の有機質の含有量を測定するものであることを特徴とする、装置。
【請求項2】
前記装置は、マイクロプロセッサモジュールと、加熱板と、温度制御モジュールと、駆動モジュールと、ディスプレイと、電源モジュールと、通信モジュールと、ディスプレイとを含み、
前記加熱板は、マイクロ流路チップの下方に設けられ、マイクロ流路チップを加熱するものであり、
前記温度制御モジュールは、加熱板の加熱温度を制御するものであり、
前記駆動モジュールは、遠心システムの動作を駆動するものであり、
前記電源モジュールは、マイクロプロセッサモジュールに給電するものであり、
前記通信モジュールは、マイクロプロセッサモジュールと他の設備との通信に使用され、
前記ディスプレイは、光電検出モジュールの検出結果を表示するものであり、
前記マイクロプロセッサモジュールは、光電検出モジュールの測定結果を取得して分析し、分析結果をディスプレイに表示するとともに、駆動モジュール及び温度制御モジュールを制御するものであることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記前処理モジュールは、溶媒溶液を処理して浸出溶媒を得るためにも使用されることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記遠心システムは、遠心検出器を使用することを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項5】
前記マイクロ流路チップは、通路層と、通路層の上方に設けられる蓋板層とを含み、
前記通路層は、通路層本体と、通路層本体に設けられる複数の通路分岐とを含み、
前記通路分岐は、第2溶媒注入口と、試料導入口と、抽出セルと、マイクロ通路と、濾過セルと、検出セルと、廃液セルと、第2通気孔とを含み、
前記抽出セルの入口は、それぞれ第2溶媒注入口、試料導入口に接続され、抽出セルの出口は、マイクロ通路の入口に接続され、マイクロ通路の出口は、濾過セルの入口に接続され、濾過セルの出口は、検出セルの入口に接続され、検出セルの出口は、廃液セルの入口に接続され、廃液セルは、第2通気孔に連通し、前記抽出セルには、複数の加熱カラムが設けられ、前記濾過セルには、マイクロアレイ及び複数のマイクロスフェアが設けられ、前記マイクロスフェアは、マイクロアレイの上方に位置し、前記濾過セルの出口には、濾過パッドが設けられることを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項6】
前記蓋板層には、第1取付孔、複数の試料導入孔、複数の第1溶媒注入口、及び複数の第1通気孔が開設され、
前記通路層本体の中央には、第1取付孔の位置に対応する第2取付孔が開設され、
前記試料導入孔、第1溶媒注入口、第1通気孔及び通路分岐は、数が同じであり、かつ一対一で対応して設けられ、
前記試料導入孔は、試料導入口に対応して設けられ、
前記第1通気孔は、第2通気孔に対応して設けられ、
前記第1溶媒注入口は、第2溶媒注入口に対応して設けられることを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記蓋板層には、可視窓が設けられ、前記可視窓は、蓋板層に開設される貫通孔と、貫通孔に取り付けられる光透過性膜とを含むことを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記通路層の下方には、底板層が設けられ、
前記底板層の中央には、第3取付孔が取り付けられることを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項9】
前記濾過パッドは、少なくとも1層であり、前記濾過パッドは、金属濾網、非金属材質の濾布、濾膜のうちのいずれか1種又は複数種の組み合わせであることを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の装置による検出方法であって、
前処理モジュールにより土壌試料を処理して土壌試料溶液を得るステップ(1)と、
土壌試料溶液及び浸出溶媒をマイクロ流路チップに注入するステップ(2)と、
加熱板によりマイクロ流路チップを加熱するステップ(3)と、
遠心システムが動作し、遠心システムによって発生した遠心力の駆動下で、マイクロ流路チップ中の土壌試料溶液及び浸出溶媒は、通路分岐に沿って流動し、流動しながら両者は混合して浸出し、浸出液を得るステップ(4)と、
光電検出モジュールにより浸出液を検出し、土壌試料溶液中の有機質の含有量を測定するステップ(5)と、
を含むことを特徴とする、検出方法。
【請求項11】
通路層と、通路層の上方に設けられる蓋板層と、通路層の下方に設けられる底板層とを含む遠心式マイクロ流路チップであって、
前記通路層は、通路層本体と、通路層本体に設けられる複数の通路分岐とを含み、
前記通路分岐は、試料導入口と、抽出セルと、マイクロ通路と、濾過セルと、検出セルと、廃液セルとを含み、
前記抽出セルの入口は、試料導入口に接続され、抽出セルの出口は、マイクロ通路の入口に接続され、マイクロ通路の出口は、濾過セルの入口に接続され、濾過セルの出口は、検出セルの入口に接続され、検出セルの出口は、廃液セルの入口に接続されることを特徴とする、遠心式マイクロ流路チップ。
【請求項12】
前記抽出セルには、複数の加熱カラムが設けられることを特徴とする、請求項11に記載の遠心式マイクロ流路チップ。
【請求項13】
前記濾過セルには、マイクロアレイ及び複数のマイクロスフェアが設けられ、
前記マイクロスフェアは、マイクロアレイの上方に位置し、
前記濾過セルの出口には、濾過パッドが設けられることを特徴とする、請求項11に記載の遠心式マイクロ流路チップ。
【請求項14】
前記蓋板層には、第1取付孔、複数の試料導入孔、複数の第1溶媒注入口及び複数の第1通気孔が開設されることを特徴とする、請求項11に記載の遠心式マイクロ流路チップ。
【請求項15】
前記通路分岐は、廃液セルに連通する第2通気孔と、抽出セルの入口に接続される第2溶媒注入口とをさらに含み、
前記通路層本体の中央には、第1取付孔位置に対応する第2取付孔が開設され、
前記試料導入孔、第1溶媒注入口、第1通気孔及び通路分岐は、数が同じであり、かつ一対一で対応して設けられ、
前記試料導入孔は、試料導入口に対応して設けられ、
前記第1通気孔は、第2通気孔に対応して設けられ、
前記第1溶媒注入口は、第2溶媒注入口に対応して設けられることを特徴とする、請求項11に記載の遠心式マイクロ流路チップ。
【請求項16】
前記蓋板層には、可視窓が開設され、前記可視窓は、蓋板層に開設される貫通孔と、貫通孔に取り付けられる光透過性膜とを含むことを特徴とする、請求項11に記載の遠心式マイクロ流路チップ。
【請求項17】
前記底板層の中央には、第3取付孔が開設されることを特徴とする、請求項11に記載の遠心式マイクロ流路チップ。
【請求項18】
前記通路層は、順に設けられる第1通路層及び第2通路層を含み、
前記通路分岐の上半部分は、第1通路層内に位置し、前記通路分岐の下半部分は、第2通路層内に位置し、
前記通路分岐の上半部分は、第1通路層において貫通し、第2通路層における通路分岐に連通することを特徴とする、請求項11に記載の遠心式マイクロ流路チップ。
【請求項19】
前記濾過パッドは、少なくとも1層であり、前記濾過パッドは、金属濾網、非金属材質の濾布、濾膜のうちのいずれか1種又は複数種の組み合わせであることを特徴とする、請求項11に記載の遠心式マイクロ流路チップ。
【請求項20】
請求項11から19のいずれか1項に記載の遠心式マイクロ流路チップの製造方法であって、
コンピュータソフトウェアにより蓋板層、通路層及び底板層上の微細構造画像を作成するステップ(1)と、
微細加工技術により蓋板層、通路層及び底板層上に必要な微細構造が形成されるように加工するステップ(2)と、
接着技術により、蓋板層、通路層及び底板層を位置合わせ、接着、加圧シールし、遠心式マイクロ流路チップとなるように組み立てるステップ(3)と、
を含むことを特徴とする、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌有機質の検出技術分野に関し、具体的には、土壌有機質を現場で迅速に検出する装置及びその検出方法、マイクロ流路チップに関する。
【背景技術】
【0002】
現代の農業生産において、食糧増産のための生産と施肥の科学的管理は、緊急に解決すべき重要な課題である。有機質は土壌の重要な部分であり、地力を測る重要な指標であり、作物が生き残るために必要な栄養素を提供する。土壌有機質の含有量を測定し、土壌の肥沃度の状態を把握し、正確な施肥によって土壌養分を補充し、土壌の肥沃度を向上させ、これによって作物の収量と品質が確保される。
【0003】
土壌有機質含有量の検出では、重クロム酸カリウム定量法、乾式燃焼法、焼成法などの従来の化学方法を使用する場合が多い。これらの従来の実験室方法は、土壌試料を煩雑な人工操作を行う必要があり、効率が低く、コストが高く、周期が長く、必要な検出設備が高価で体積が大きく、定期的なメンテナンスが必要とされており、農業現場での迅速検出に適していない。科学技術の発展に伴い、近赤外線、リモートセンシング、ハイパースペクトル技術を利用した土壌栄養分の迅速な推定研究が近年注目を集めている。これらの方法では、土壌有機質含有量の推定モデルを構築する必要があるが、土壌の種類が多いため複数の土壌有機質モデルを確立する必要があることから、迅速かつ正確なモデル構築に対する現在の要求を満たすことができない。
【0004】
マイクロ流体技術は、新しい分析プラットフォームとして、小型化、自動化、統合化、利便性、高速性などの利点を有し、検出関連分野で広く使用されている。しかし、ウェーハ状のチップを使用し、遠心力により試料のマイクロ流体を駆動し、同時に複数の試料の検出を行う遠心式マイクロ流体分析技術は、土壌有機質の現場での迅速な検出においてはまだ進歩していない。
【0005】
そのため、コストが低く、農業現場で土壌有機質を迅速に検出できる信頼性の高い検出方法及び関連チップが必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の目的は、土壌有機質を現場で迅速に検出する装置及びその検出方法、マイクロ流路チップを提供することにある。この迅速検出装置及びその検出方法、マイクロ流路チップは、従来技術の欠陥を解決することができ、土壌有機質の現場での迅速検出を実現でき、検出周期が短く、検出効率が高く、操作が簡単であるなどの利点を有する。
【0007】
上記の目的を達成するために、以下の技術的手段を採用する。
【0008】
前処理モジュールと、遠心システムと、マイクロ流路チップと、光電検出モジュールとを含む土壌有機質を現場で迅速に検出する装置であって、前記前処理モジュールは、土壌試料を処理して土壌試料溶液を得るものであり、前記遠心システムは、遠心力を発生するものであり、前記マイクロ流路チップは、遠心システムによって発生した遠心力の作用下で土壌試料溶液及び浸出溶媒をその内部で流動、混合及び浸出させ、浸出液を得るものであり、前記光電検出モジュールは、浸出液を検出し、土壌試料溶液中の有機質の含有量を測定するものである装置。
【0009】
さらに、前記装置は、マイクロプロセッサモジュールと、加熱板と、温度制御モジュールと、駆動モジュールと、ディスプレイと、電源モジュールと、通信モジュールと、ディスプレイとを含む。
【0010】
前記加熱板は、マイクロ流路チップの下方に設けられ、マイクロ流路チップを加熱するものであり、前記温度制御モジュールは、加熱板の加熱温度を制御するものであり、前記駆動モジュールは、遠心システムの動作を駆動するものであり、前記電源モジュールは、マイクロプロセッサモジュールに給電するものであり、前記通信モジュールは、マイクロプロセッサモジュールと他の設備との通信に使用され、前記ディスプレイは、光電検出モジュールの検出結果を表示するものであり、前記マイクロプロセッサモジュールは、光電検出モジュールの測定結果を取得して分析し、分析結果をディスプレイに表示するとともに、駆動モジュール及び温度制御モジュールを制御するものである。
【0011】
さらに、前記前処理モジュールは、溶媒溶液を処理して浸出溶媒を得るためにも使用される。前記浸出溶媒は、浸出剤及び浸出を促進する他の溶媒を含む。
【0012】
さらに、前記遠心システムは、遠心検出器を採用する。
【0013】
さらに、前記マイクロ流路チップは、通路層と、通路層の上方に設けられる蓋板層とを含み、前記通路層は、通路層本体と、通路層本体に設けられる複数の通路分岐とを含み、前記通路分岐は、第2溶媒注入口と、試料導入口と、抽出セルと、マイクロ通路と、濾過セルと、検出セルと、廃液セルと、第2通気孔とを含み、前記抽出セルの入口は、それぞれ第2溶媒注入口、試料導入口に接続され、抽出セルの出口は、マイクロ通路の入口に接続され、マイクロ通路の出口は、濾過セルの入口に接続され、濾過セルの出口は、検出セルの入口に接続され、検出セルの出口は、廃液セルの入口に接続され、廃液セルは、第2通気孔に連通し、前記抽出セルには、複数の加熱カラムが設けられ、前記濾過セルには、マイクロアレイ及び複数のマイクロスフェアが設けられ、前記マイクロスフェアは、マイクロアレイの上方に位置し、前記濾過セルの出口には、濾過パッドが設けられる。
【0014】
さらに、前記蓋板層には、第1取付孔、複数の試料導入孔、複数の第1溶媒注入口、及び複数の第1通気孔が開設され、前記通路層本体の中央には、第1取付孔の位置に対応する第2取付孔が開設され、前記試料導入孔、第1溶媒注入口、第1通気孔及び通路分岐は、数が同じであり、かつ一対一で対応して設けられ、前記試料導入孔は、試料導入口に対応して設けられ、前記第1通気孔は、第2通気孔に対応して設けられ、前記第1溶媒注入口は、第2溶媒注入口に対応して設けられる。
【0015】
さらに、前記蓋板層には、可視窓が設けられ、前記可視窓は、蓋板層に開設される貫通孔と、貫通孔に取り付けられる光透過性膜とを含む。
【0016】
さらに、前記通路層の下方には、底板層が設けられ、前記底板層の中央には、第3取付孔が取り付けられる。
【0017】
さらに、前記濾過パッドは、少なくとも1層であり、前記濾過パッドは、金属濾網、非金属材質の濾布、濾膜のうちのいずれか1種又は複数種の組み合わせである。
【0018】
本発明は、上記の迅速検出装置による検出方法にも関する。前記法包は、
前処理モジュールにより土壌試料を処理して土壌試料溶液を得るステップ(1)と、
土壌試料溶液及び浸出溶媒をマイクロ流路チップに注入するステップ(2)と、
加熱板によりマイクロ流路チップを加熱するステップ(3)と、
遠心システムが動作し、遠心システムによって発生した遠心力の駆動下で、マイクロ流路チップ中の土壌試料溶液及び浸出溶媒は、通路分岐に沿って流動し、流動しながら両者は混合して浸出し、浸出液を得るステップ(4)と、
光電検出モジュールにより浸出液を検出し、土壌試料溶液中の有機質の含有量を測定するステップ(5)と、
を含む。
【0019】
本発明によれば、通路層と、通路層の上方に設けられる蓋板層と、通路層の下方に設けられる底板層とを含む遠心式マイクロ流路チップであって、
前記通路層は、通路層本体と、通路層本体に設けられる複数の通路分岐とを含み、
前記通路分岐は、試料導入口と、抽出セルと、マイクロ通路と、濾過セルと、検出セルと、廃液セルとを含み、
前記抽出セルの入口は、試料導入口に接続され、抽出セルの出口は、マイクロ通路の入口に接続され、マイクロ通路の出口は、濾過セルの入口に接続され、濾過セルの出口は、検出セルの入口に接続され、検出セルの出口は、廃液セルの入口に接続されることを特徴とする、遠心式マイクロ流路チップがさらに提供される。
【0020】
さらに、前記抽出セルには、複数の加熱カラムが設けられる。
【0021】
さらに、前記濾過セルには、マイクロアレイ及び複数のマイクロスフェアが設けられ、前記マイクロスフェアは、マイクロアレイの上方に位置し、前記濾過セルの出口には、濾過パッドが設けられる。
【0022】
さらに、前記蓋板層には、第1取付孔、複数の試料導入孔、複数の第1溶媒注入口及び複数の第1通気孔が開設される。
【0023】
さらに、前記通路分岐は、廃液セルに連通する第2通気孔と、抽出セルの入口に接続される第2溶媒注入口とをさらに含み、前記通路層本体の中央には、第1取付孔位置に対応する第2取付孔が開設され、前記試料導入孔、第1溶媒注入口、第1通気孔及び通路分岐は、数が同じであり、かつ一対一で対応して設けられ、前記試料導入孔は、試料導入口に対応して設けられ、前記第1通気孔は、第2通気孔に対応して設けられ、前記第1溶媒注入口は、第2溶媒注入口に対応して設けられる。
【0024】
さらに、前記蓋板層には、可視窓が開設され、前記可視窓は、蓋板層に開設される貫通孔と、貫通孔に取り付けられる光透過性膜とを含む。
【0025】
さらに、前記底板層の中央には、第3取付孔が開設される。
【0026】
さらに、前記通路層は、順に設けられる第1通路層及び第2通路層を含み、
前記通路分岐の上半部分は、第1通路層内に位置し、前記通路分岐の下半部分は、第2通路層内に位置し、
前記通路分岐の上半部分は、第1通路層において貫通し、第2通路層における通路分岐に連通する。
【0027】
さらに、前記濾過パッドは、少なくとも1層であり、前記濾過パッドは、金属濾網、非金属材質の濾布、濾膜のうちのいずれか1種又は複数種の組み合わせである。
【0028】
本発明によれば、
コンピュータソフトウェアにより蓋板層、通路層及び底板層上の微細構造画像を作成するステップ(1)と、
微細加工技術により蓋板層、通路層及び底板層上に必要な微細構造が形成されるように加工するステップ(2)と、
接着技術により、蓋板層、通路層及び底板層を位置合わせ、接着、加圧シールし、遠心式マイクロ流路チップとなるように組み立てるステップ(3)と、
を含む前記遠心式マイクロ流路チップの製造方法がさらに提供される。
【0029】
従来技術と比較して、本発明は以下の利点を有する。
【0030】
(1)本発明では、マイクロ流路チップと、自動化携帯型機器とを組み合わせることにより、土壌有機質の化学反応及び検出の完全集積及び自動化を実現し、操作が簡単で、小型化が容易で、専門家でなくても大量試料の土壌有機質を現場で迅速に検出できる要求を満たすことができる。
【0031】
(2)本発明では、マイクロ流路チップの内部において土壌有機質の浸出、反応、分離、発色過程を行い、必要な試料及び溶媒の量が少なく、コストが低く、検出効率が高い。遠心式マイクロ流路チップにより、複数の試料を同時に分析することができ、特に大量試料の検出に適している。異なる通路分岐は、異なる試料の検出分析に適用できる。
【0032】
(3)アルカリ性溶液での土壌有機質の浸出過程は、加熱を必要とする。本発明では、マイクロ流路チップの下部に加熱板が設けられ、マイクロ流路チップの抽出セル内に金属材質の加熱カラム構造を設けられることにより、溶液を所定温度に迅速に加熱することができ、これによって、浸出効果及び検出の正確性が向上する。
【0033】
(4)マイクロ流路チップ構造の設計について、本発明では、抽出セルと検出セルとの間に濾過セルの構造を追加し、濾過セルにマイクロアレイ及びサイズが異なる複数のマイクロスフェアを設け、濾過セルの出口に濾過パッドを設け、マイクロスフェア、マイクロアレイ、濾過パッドの相互連携により、被検液体中の微粒子が効果的に除去され、その後の検出に対する不純物の干渉が回避され、検出結果の正確性及び信頼性が効果的に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図2】本発明のマイクロ流路チップの分解構造模式図である。
【
図2-1】本発明のマイクロ流路チップの実施例2の分解構造模式図である。
【
図4】本発明の通路層(第1通路層)の構造模式図である。
【
図4-1】本発明の実施例2の第2通路層の構造模式図である。
【0035】
符号の説明
1、マイクロプロセッサモジュール;2、遠心システム;3、前処理モジュール;4、光電検出モジュール;5、温度制御モジュール;6、ディスプレイ;7、電源モジュール;8、通信モジュール;9、マイクロ流路チップ;10、加熱板;11、駆動モジュール;901、蓋板層;902、通路層;903、通路分岐;904、第1通気孔;905、試料導入孔;906、第1溶媒注入口;907、試料導入口;908、第2溶媒注入口;909、加熱カラム;910、抽出セル;911、マイクロ通路;912、マイクロアレイ;913、マイクロスフェア;914、濾過パッド;915、濾過セル;916、検出セル;917、廃液セル;918、第2通気孔。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下の図面を参照しながら本発明をさらに説明する。
図1に示される土壌有機質の現場迅速検出装置は、前処理モジュール3と、遠心システム2と、マイクロ流路チップ9と、光電検出モジュール4と、マイクロプロセッサモジュール1と、加熱板10と、温度制御モジュール5と、駆動モジュール11と、ディスプレイ6と、電源モジュール7と、通信モジュール8と、ディスプレイ6とを含む。本発明の土壌有機質の現場迅速検出装置は、土壌前処理、試料導入、土壌試料溶液と浸出溶媒の反応、及び反応結果の分析検出機能を兼ね備え、マイクロ流路チップの操作、並びに土壌有機質に対する現場迅速及び分析を実現することができる。本発明は、有機質の比色検出原理に基づいて、土壌有機質の自動的、迅速、正確な検出を実現することができる。
【0037】
前記前処理モジュール3は、土壌試料を処理して土壌試料溶液を得るものであり、浸出溶媒を処理して浸出溶媒溶液を得るためにも使用される。前記前処理モジュールは、スルーバルブと、試料ループと、土壌試料処理装置と、溶媒処理装置と、秤と、廃液処理装置とを含む。秤は、秤量に使用される。スルーバルブは、試料導入に使用される。試料ループは、定量に使用される。土壌試料処理装置は、土壌試料を土壌試料溶液にするために使用される。溶媒処理装置は、溶媒の調製に使用される。廃液処理装置は、廃液の処理に使用される。
【0038】
前記遠心システム2は、遠心力の発生に使用される。前記遠心システムは、遠心検出器を採用する。前記駆動モジュールは、駆動遠心システムの動作を駆動するために使用される。遠心システム及び駆動モジュールは、回転トレイ及び遠心式マイクロ流体溶媒トレイを使用し、遠心力駆動によりマイクロ流路チップでの流体に対する正確な制御及び転送を実現する。
【0039】
前記マイクロ流路チップ9は、遠心システムによって発生する遠心力の作用下で土壌試料溶液及び浸出溶媒をその内部で流動、混合、浸出させるために使用される。
【0040】
前記光電検出モジュール4は、土壌試料溶液と浸出溶媒との反応結果を検出し、土壌試料溶液中の有機質の含有量を測定するために使用される。光電検出モジュール4は、光源と光電センサとを含む。マイクロ流路チップ9上の検出領域(発色領域)に対して吸光度を測定し、光電検出モジュール4により検出した信号をマイクロプロセッサモジュール1に入力してデータ処理することにより検出結果を得る。検出結果に基づいて土壌有機質の含有量を測定し、正確な検出結果をディスプレイ6に表示するか、又は通信モジュール8によりデータを記憶して印刷する。
【0041】
前記加熱板10は、マイクロ流路チップ9の下方に設けられ、マイクロ流路チップ9を加熱するために使用される。前記温度制御モジュール5は、加熱板10の加熱温度を制御するために使用される。温度制御モジュール5は、マイクロ流路チップ9の底部に加熱板10及び温度センサを設けることにより、マイクロ流路チップ全体の温度を制御するものである。
【0042】
前記電源モジュール7は、マイクロプロセッサモジュール1に給電するものである。
【0043】
前記通信モジュール8は、マイクロプロセッサモジュール1と他の設備との通信に使用される。
【0044】
前記ディスプレイ6は、光電検出モジュールの検出結果を表示するものである。
【0045】
前記マイクロプロセッサモジュール1は、光電検出モジュール4の測定結果を取得して分析し、分析結果をディスプレイ6に表示するものであり、駆動モジュール11及び温度制御モジュール5の制御にも使用される。前記マイクロプロセッサモジュール1、通信モジュール8及びディスプレイ6は、装置全体に対して制御、データ採取、検出分析、結果表示及び印刷、伝送処理を行う。
【0046】
マイクロフルイディクスにより、試料製造、反応、分離、検出などの基本操作ユニットをミクロン、ナノメートルオーダーの部材にして1つのマイクロチップに集積し、分析検出の完全な過程を実現することができる。マイクロ流路チップに必要な試料及び溶媒の量が少なく、コストが低く、検出効率が高いため、新しい分析プラットフォームとして微型化、自動化、集積化、便利及び迅速などの利点を有し、検出関連分野において幅広く使用されている。本発明では、マイクロ流路チップ技術を土壌有機質検出に使用することにより、完全自動化、迅速かつ便利な検出プラットフォーム及び分析方法を開発し、試料の処理時間を大幅に短縮させるとともに、溶媒、機器のコストを最小限に抑制することができる。プロセス全体の正確な検出を保証したうえ、「試料を導入すると結果がでる」というスマートな迅速検出を達成し、土壌有機質に対して現場、迅速、正確な分析測定を行い、現場での迅速な検出との問題の解決に対して大きな意味を有する。
【0047】
遠心式マイクロ流路チップは、通路層と、通路層の上方に設けられる蓋板層と、通路層の下方に設けられる底板層とを含む。
前記通路層は、通路層本体と、通路層本体上に設けられる複数の通路分岐とを含む。前記通路分岐は、試料導入口と、抽出セルと、マイクロ通路と、濾過セルと、検出セルと、廃液セルとを含む。前記抽出セルの入口は、試料導入口に接続され、抽出セルの出口は、マイクロ通路の入口に接続され、マイクロ通路の出口は、濾過セルの入口に接続され、濾過セルの出口は、検出セルの入口に接続され、検出セルの出口は、廃液セルの入口に接続される。
【0048】
図2は、本発明の実施例1に係るマイクロ流路チップ9の模式図である。前記マイクロ流路チップ9は、複数層の円形シート状構造をボンディング接続してなる。前記マイクロ流路チップ9は、通路層902と、通路層902の上方に設けられる蓋板層901とを含む。
【0049】
図2-1に示すように、実施例2において、前記通路層902の下方には、通路層の構造を補強するために、1層の底板層919がさらに設けられてもよい。加工を容易にするために、通路層902は、上層が第1通路層9021、下層が第2通路層9022である2層構造に設計することができる。
【0050】
図4、
図4-1、
図5及び
図6に示すように、前記通路層902は、通路層本体と、通路層本体上に設けられる複数の通路分岐903とを含む。遠心力の制御によって、土壌試料溶液及び浸出溶媒を、マイクロ流路チップ9の内部で正確に制御及び転送することができ、土壌試料溶液と浸出溶媒との混合、反応、分離及び発色を実現することができる。
【0051】
図4は、本発明の実施例1に係る通路層902(実施例2の第2通路層9022)の構造模式図である。
図4-1は、本発明の実施例2に係る第1通路層9021の構造模式図である。
【0052】
図2、
図3、
図4、
図4-1、
図5及び
図6から分かるように、実施例1では、通路層902は1層構造である一方、実施例2では、通路層902は、上層の第1通路層9021と下層の第2通路層9022を含む2層構造に設計されてもよい。
【0053】
前記通路分岐903の上半部分は、第1通路層9021に位置し、通路分岐の下半部分は、第2通路層9022に位置する。通路分岐903の上半部分は、第1通路層において貫通し、第2通路層における通路分岐に連通する。前記通路分岐903は、第2溶媒注入口908と、試料導入口907と、抽出セル910と、マイクロ通路911と、濾過セル915と、検出セル916と、廃液セル917と、第2通気孔918とを含む。前記抽出セル910の入口は、それぞれ第2溶媒注入口908、試料導入口907に接続され、抽出セル910の出口は、マイクロ通路911の入口に接続され、マイクロ通路911の出口は、濾過セル915の入口に接続され、濾過セル915の出口は、検出セル916の入口に接続され、検出セル916の出口は、廃液セル917の入口に接続され、廃液セル917は、第2通気孔918に連通する。遠心力の制御によって、土壌試料溶液及び浸出溶媒を、マイクロ流路チップの内部で正確に制御及び転送することができ、土壌試料溶液と浸出溶媒との混合、反応、分離及び発色を実現することができる。
【0054】
前記抽出セル910には、複数の加熱カラム909が設けられる。加熱カラム909は、抽出セル910における試料と浸出溶媒との混合物を加熱する。試料と溶媒は、加熱の条件下で抽出セル内でより十分に反応することができる。加熱板は、マイクロ流路チップ全体及びその内部の液体を加熱することにより、プロセス全体における混合液の十分な反応が確保される。
【0055】
前記濾過セル915には、マイクロアレイ912及びサイズが異なる複数のマイクロスフェア913が設けられる。前記マイクロスフェア913は、マイクロアレイ912の上方に位置する。前記マイクロアレイ912は、濾過セル915内で四角形マイクロピラーアレイに直接加工することができる。濾過セル915にマイクロアレイ又は複数のマイクロスフェアを単独して設けてもよく、両者の構造を組み合わせてもよい。また、濾過セル915の出口には、濾過パッド914が設けられる。前記濾過パッド914は、金属濾網、非金属の濾布、濾膜又はそれらの任意の組み合わせであってもよく、必要に応じて任意に組み合わせることができ、1層又は複数層であってもよい。マイクロスフェア913の数は、複数である。複数のマイクロスフェア913は、ランダムに濾過セル915に配列される。各マイクロスフェア913のサイズは異なる。前記マイクロスフェア913は、インサイチュで合成した有機重合体、PSマイクロスフェア(ポリスチレン)、シリカマイクロスフェアのうちのいずれか1種である。マイクロアレイ912、マイクロスフェア913及び濾過パッド914の相互連携により、被検液体中の微粒子を効果的に除去することができる。前記濾過セル915は、マイクロアレイ912、マイクロスフェア913の濾過構造及び濾過パッド914構造により被検浸出溶液を二次濾過することによって、浸出溶液中の異なるサイズの微粒子を効果的に除去し、検出結果の正確性を向上させることができる。
【0056】
検出する際に、試料溶液は、試料導入口905から導入され、浸出溶媒は、第1溶媒注入口906及び第2溶媒注入口908から導入され、マイクロ通路911に沿って順に出セル910、濾過セル915及び検出セル916を通過して溶液の発色反応を完成させる。溶媒は、液体状態又は固体状態であってもよい。液体状態として、前処理モジュール3内で加圧導入又は液嚢の形態によりマイクロ流路チップ9の内部に封入することができる。固体状態として、粉末状又は塊状の溶媒をマイクロ流路チップ9内に封入することができる。
【0057】
図3に示すように、前記蓋板層901には、第1取付孔、複数の試料導入孔905、複数の第1溶媒注入口906、及び複数の第1通気孔904が開設される。前記通路層本体の中央には、第1取付孔の位置に対応する第2取付孔が開設される。前記底板層の中央には、第3取付孔が開設される。前記第1取付孔、第2取付孔及び第3取付孔は、互いに対応して設けられ、遠心検出器へのマイクロ流路チップの取り付けに使用される。
【0058】
前記試料導入孔905、第1溶媒注入口906、第1通気孔904及び通路分岐903の数は、同じであり、かつ一対一で対応して設けられる。前記試料導入孔905は、試料導入口907に対応して設けられ、両者は連通する。試料導入孔905から土壌試料溶液を加え、土壌試料溶液は、試料導入孔905に沿って試料導入口907に流れる。前記第1通気孔904は、第2通気孔918に対応して設けられ、通路分岐903の内部と外部大気との連通及び圧力平衡の保持に使用される。前記第1溶媒注入口906は、第2溶媒注入口908に対応して設けられ、両者は連通する。第1溶媒注入口906から溶媒を加え、溶媒は、第1溶媒注入口906に沿って第2溶媒注入口908に流れる。
【0059】
さらに、前記蓋板層901には、可視窓が設けられる。前記可視窓は、蓋板層に開設される貫通孔と、貫通孔に取り付けられる光透過性膜とを含む。前記光学検出モジュール4からの検出光は、可視窓を透過して検出セル中の反応結果を光学検出する。
【0060】
上述遠心式マイクロ流路チップの製造及びその使用方法
(1)コンピューター支援設計ソフトウェアにより遠心式マイクロ流路チップにおける各層のチップの微細構造を設計して描画する。前記微細構造は、通気孔、取付孔、試料導入口、マイクロ通路、抽出セル、濾過セル、検出セル、及び廃液セルなどの構造を含む。
【0061】
(2)微細加工技術により蓋板層、通路層、底板層などの各層のマイクロ流路チップの基材表面に必要な微細構造を加工して製造する。
【0062】
(3)浸出剤を反応セルに入れるか、又は検出する際に溶媒注入口より浸出剤を注入する。
【0063】
(4)接着技術により、蓋板層、通路層、底板層などの各層の遠心式マイクロ流路チップを位置合わせ、接着、加圧シールして遠心式マイクロ流路チップとなるように組み立てる。
【0064】
(5)チップをシールした後、試料導入孔に被検試料溶液を加える。
【0065】
(6)遠心式マイクロ流路チップを取付孔により遠心機に取り付け、遠心機を起動し、被検試料溶液及び浸出剤は遠心力の作用下で抽出セル内を混合、反応及び分離する。
【0066】
(7)遠心機の遠心速度を変更し、浸出液はマイクロバルブを通して抽出セルから濾過セルに入り、この濾過セルにおいて固液分離する。前記マイクロバルブは、抽出セルと濾過セルとの間に取り付けられる。
【0067】
(8)遠心機の遠心速度を再度変更し、濾過した澄んだ液体は、マイクロバルブを通して検出セルに入る。このマイクロバルブは、濾過セルと検出セルとの間に設けられる。
【0068】
(9)試料を処理した後、光電検出器により抽出溶液を検出し、有機質の含有量を得る。
【0069】
本発明のマイクロ流路チップの動作過程は、以下の通りである。
マイクロ流路チップ9により土壌有機質を検出する際に、土壌試料溶液は、試料導入孔905からマイクロ流路チップ9に注入され、試料導入孔905から試料導入口907に流動し、溶媒は、第1溶媒注入口906から第1溶媒注入口906及び第2溶媒注入口908に注入又は埋め込まれる。
【0070】
この遠心式マイクロ流路チップは、土壌有機質を検出するために使用される。この遠心式マイクロ流路チップは、複数層のチップからなる円形シート状チップである。回転による遠心力の駆動によって、被検試料と反応試薬との混合、反応、分離及び発色過程が実現される。最後に、紫外可視分光光度計により土壌試料中の有機質の含有量を定量的に検出する。このような土壌有機質を検出する遠心式マイクロ流路チップは、必要な試料と試薬の量が少なく、複数の試料を同時に処理及び検出することができ、迅速で便利な利点を有する。
【0071】
遠心システムによる遠心力の作用下で、試料導入口907中の土壌試料溶液は、抽出セル910内に流動し、土壌試料溶液と浸出溶媒とは混合する。抽出セル910中の加熱カラム909は、抽出セル910内に流入した土壌試料溶液と浸出溶媒との混合を加熱することにより、土壌試料溶液と溶媒の浸出速度が速くなる。土壌試料溶液と溶媒は、抽出セルにおいて浸出し、遠心システム2の遠心力の作用下で引き続き前へ移動し、螺旋状又は往復折曲状のマイクロ通路911において流動して引き続き浸出する。マイクロ通路911を螺旋状又は往復折曲状に設計することにより、土壌試料溶液及び溶媒は十分に浸出することができる。
【0072】
遠心力を試料マイクロ流体の駆動力とし、マイクロ流体を正確に制御及び転送することにより、チップにおいて試料と反応試薬との混合、反応、分離及び発色過程を実現し、最後に、光電検出器によりチップ上の試料中の有機質の含有量を定性的及び定量的に検出し、土壌有機質の現場での迅速検出を実現することができ、検出周期が短く、検出効率が高く、操作が簡単で便利であるなどの利点を有する。
【0073】
土壌試料溶液と溶媒の混合液が濾過セルまで流れた場合、混合液は、水平方向において前へ移動し、マイクロスフェア913及びマイクロアレイ912により混合液中の余分な粒子物を濾過する。一方、混合液は、上から下へ移動する。上から下へ移動する過程において、まずマイクロスフェア913により余分な粒子を濾過し、さらにマイクロアレイ912によりその中の粒子物を濾過する。混合液が濾過セル915の出口での濾過パッド914まで流れた場合、濾過パッド914は、混合液をさらに濾過し、その中の余分な粒子物を濾過して除去する。マイクロアレイ912、マイクロスフェア913及び濾過パッド914による複数回の濾過により、混合液中の余分な粒子物はできるだけ除去され、検出結果の正確性は確保される。
【0074】
複数回の濾過処理後の混合液は、検出セル916に流入し、光電検出モジュール4により浸出液を検出し、土壌中の有機質の含有量を確定する。検出した後の液体は、廃液セルに流れ込む。混合液の流動過程において、土壌試料溶液及び溶媒は、常に浸出が発生する。
【0075】
本発明は、上記迅速検出装置を用いる検出方法にも関する。この方法は、以下のステップを含む。
(1)前処理モジュール3により土壌試料を処理し、土壌試料溶液を得る。
【0076】
(2)土壌試料溶液及び浸出溶媒をマイクロ流路チップ9に注入する。
【0077】
(3)加熱板10によりマイクロ流路チップ9を加熱する。
【0078】
(4)遠心システム2が動作し、遠心システム2による遠心力の駆動によって、マイクロ流路チップ9中の土壌試料溶液及び浸出溶媒は、通路分岐903に沿って流動し、流動過程において、両者が混合して浸出し、浸出液を得る。遠心システムを起動し、被検試料溶液及び浸出剤は、遠心力の作用下で抽出セルにおいて混合、反応及び分離する。遠心システムの遠心速度を変更し、浸出液は、マイクロバルブを通して抽出セルから濾過セルに入り、この濾過セルにおいて固液分離する。このマイクロバルブは、抽出セルと濾過セルとの間に取り付けられる。遠心システムの遠心速度を再度変更し、濾過した澄んだ液体は、マイクロバルブを通して検出セルに入る。このマイクロバルブは、濾過セルと検出セルとの間に設けられる。
【0079】
(5)光電検出モジュール4により浸出液を検出して、土壌試料溶液中の有機質の含有量を測定する。
【0080】
本発明は、以下の利点をさらに有する。
【0081】
(1)本発明では、マイクロ流路チップと、自動化携帯型機器とを組み合わせることにより、土壌有機質の化学反応及び検出の完全集積及び自動化を実現し、操作が簡単で、小型化が容易で、専門家でなくても大量試料の土壌有機質を現場で迅速に検出できる要求を満たすことができる。
【0082】
(2)本発明では、マイクロ流路チップの内部において土壌有機質の浸出、反応、分離、発色過程を行い、必要な試料及び溶媒の量が少なく、コストが低く、検出効率が高い。遠心式マイクロ流路チップにより、複数の試料を同時に分析することができ、特に大量試料の検出に適している。異なる通路分岐は、異なる試料の検出分析に適用できる。
【0083】
(3)アルカリ性溶液での土壌有機質の浸出過程は、加熱を必要とする。本発明では、マイクロ流路チップの下部に加熱板が設けられ、マイクロ流路チップの抽出セル内に金属材質の加熱カラム構造を設けられることにより、溶液を所定温度に迅速に加熱することができ、これによって、浸出効果及び検出の正確性が向上する。
【0084】
(4)本発明では、遠心式マイクロ流路チップの構造を採用し、遠心力を試料マイクロ流体の駆動力とし、被検試料と浸出剤の混合、抽出、検出過程を行う。従来技術と比較して、このマイクロ流路チップ及び方法により、複数の試料を同時に処理及び検出することができ、必要な試料及び試薬の量が少なく、化学反応と検出の完全集積、自動化を実現し、経済的、迅速、携帯可能、効率的であるなどの利点を有し、土壌有機質の検出のために新しい分析技術プラットフォームを提供し、土壌有機質を現場で迅速に検出する要求を満たすことができる。
【0085】
(5)本発明では、マイクロ流路チップの内部で土壌有機質の浸出、反応、分離、発色過程を行い、必要な試料及び溶媒の量が少なく、コストが低く、検出効率が高い。遠心式マイクロ流路チップにより、複数の試料を同時に分析することができ、特に大量試料の検出に適している。異なる通路分岐は、異なる試料の検出分析に適用できる。
【0086】
(6)アルカリ性溶液での土壌有機質の浸出過程は、加熱を必要とする。本発明では、マイクロ流路チップの下部に加熱板が設けられ、マイクロ流路チップの抽出セル内に金属材質の加熱カラム構造を設けられることにより、溶液を所定温度に迅速に加熱することができ、これによって、浸出効果及び検出の正確性が向上する。
【0087】
(7)マイクロ流路チップ構造の設計について、本発明では、抽出セルと検出セルとの間に濾過セルの構造を追加し、濾過セルにマイクロアレイ及びサイズが異なる複数のマイクロスフェアを設け、濾過セルの出口に濾過パッドを設け、マイクロスフェア、マイクロアレイ、濾過パッドの相互連携により、被検液体中の微粒子が効果的に除去され、その後の検出に対する不純物の干渉が回避され、検出結果の正確性及び信頼性が効果的に向上する。
【0088】
以上の実施例は、本発明の好ましい実施形態に対する説明に過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。本発明の設計思想から逸脱しない限り、当業者は本発明の技術的手段に種々の変形及び改良を加えることができ、これらはいずれも本発明の特許請求の範囲によって特定された保護範囲に含まれるべきである。
【国際調査報告】