(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】土壌養分の現場検出装置及びその検出方法、マイクロ流路チップ
(51)【国際特許分類】
G01N 33/24 20060101AFI20240730BHJP
G01N 35/00 20060101ALI20240730BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
G01N33/24 B
G01N35/00 D
G01N37/00 101
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580343
(86)(22)【出願日】2022-11-23
(85)【翻訳文提出日】2023-12-27
(86)【国際出願番号】 CN2022133847
(87)【国際公開番号】W WO2023240930
(87)【国際公開日】2023-12-21
(31)【優先権主張番号】202210659309.6
(32)【優先日】2022-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202210659264.2
(32)【優先日】2022-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523485331
【氏名又は名称】中科合肥智慧農業協同創新研究院
(74)【代理人】
【識別番号】100207561
【氏名又は名称】柳元 八大
(72)【発明者】
【氏名】王 儒敬
(72)【発明者】
【氏名】常 永嘉
(72)【発明者】
【氏名】陳 翔宇
(72)【発明者】
【氏名】張 俊卿
(72)【発明者】
【氏名】陳 江寧
(72)【発明者】
【氏名】劉 洋
(72)【発明者】
【氏名】肖 家浩
(72)【発明者】
【氏名】郭 紅燕
(72)【発明者】
【氏名】王 大朋
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058AA02
2G058CC09
2G058DA07
2G058DA09
2G058EA14
(57)【要約】
本発明は、土壌養分の現場検出装置その検出方法、マイクロ流路チップに関する。土壌養分の現場検出装置は、前処理浸出セルと、現場リアルタイム検出アッセンブリと、新鮮土壌前処理転送アッセンブリとを含む。新鮮土壌前処理転送アッセンブリは、前処理浸出セル内の新鮮土壌浸出試料液を現場リアルタイム検出アッセンブリ内に転送する。本発明のマイクロ流路チップは、蓋板層と、チップ基板とを含む。チップ基板は、土壌浸出液導入凹溝、定量導入凹溝、試薬貯蔵凹溝、及び蛇型混合領域凹溝などを含み、遠心力により反応を駆動及び制御することにより、複数種類の土壌イオンの同時検出が達成され、効率的、簡単、正確、迅速な利点を有する。本発明の土壌養分の現場検出装置及びその検出方法は、複数の元素を同時に連続して検出することにより、土壌の窒素・リン酸・カリウムの有効態の迅速検出を実現し、さらに、マイクロフルイディクスと蛍光検出分析との組み合わせにより、マイクロフルイディクスと特異的蛍光量子ドットの分析に基づいて新鮮土壌養分に対する現場での直接で迅速な検出を達成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌養分の現場検出装置であって、
前処理浸出セル(3)と、現場リアルタイム検出アッセンブリ(1)と、新鮮土壌前処理転送アッセンブリ(2)とを含み、前記新鮮土壌前処理転送アッセンブリ(2)は、前処理浸出セル(3)内の新鮮土壌浸出試料液を現場リアルタイム検出アッセンブリ(1)内に転送するものであり、
前記現場リアルタイム検出アッセンブリ(1)は、駆動モータアッセンブリ(9)と、検出分析アッセンブリとを含み、駆動モータアッセンブリ(9)の出力軸には、土壌試薬マイクロ流路チップ(10)が取り付けられ、前記土壌試薬マイクロ流路チップ(10)は、チップ基板(101)を含み、チップ基板(101)の底部には、チップ位置合わせ係止溝(13)が設けられ、土壌試薬マイクロ流路チップ(10)は、チップ位置合わせ係止溝(13)により駆動モータアッセンブリ(9)の出力軸に取り付けられ、チップ基板(101)の上面は、ケース内に封入され、チップ基板(101)の上面の中央には、土壌浸出液導入凹溝(12)がエッチングされ、第1流路領域、第2流路領域、第3流路領域及び第4流路領域が土壌浸出液導入凹溝(12)から外へ延在してエッチングされ、前記第1流路領域、第2流路領域、第3流路領域及び第4流路領域は、構造が同じであることを特徴とする、土壌養分の現場検出装置。
【請求項2】
前記第1流路領域は、マイクロ通路(19)を介して土壌浸出液導入凹溝(12)に連通する定量導入凹溝(18)を含み、試薬貯蔵凹溝(20)と定量導入凹溝(18)との出口は、マイクロ通路(19)を介して接続され、T型混合凹溝(16)を介して混合領域凹溝(15)に接続され、混合領域凹溝(15)の出口は、蛇型混合領域凹溝(14)を介して検出領域凹溝(11)に接続され、前記蛍光励起器(7)及び蛍光受光器(6)は、検出領域凹溝(11)の回転運動軌跡上に位置し、
前記T型混合凹溝(16)と、試薬貯蔵凹溝(20)、定量導入凹溝(18)とを接続した箇所でのマイクロ通路(19)の幅は、試薬貯蔵凹溝(20)、定量導入凹溝(18)の出口でのマイクロ通路(19)の幅よりも小さく、前記蛇型混合領域凹溝(14)と検出領域凹溝(11)とを接続した箇所でのマイクロ通路(19)の幅は、定量導入凹溝(18)の出口でのマイクロ通路(19)の幅よりも小さいことを特徴とする、請求項1に記載の土壌養分現場検出装置。
【請求項3】
前記検出分析アッセンブリは、制御プロセッサ(8)と、キャプチャカード(5)と、蛍光励起器(7)と、蛍光受光器(6)と、土壌水熱塩センサ(4)を含み、蛍光励起器(7)は、制御プロセッサ(8)の第1制御信号出力端に接続され、蛍光受光器(6)は、キャプチャカード(5)を介して制御プロセッサ(8)の第1データ入力端に接続され、土壌水熱塩センサ(4)のデータ出力端は、制御プロセッサ(8)の第2データ入力端に接続され、駆動モータアッセンブリ(9)は、制御プロセッサ(8)の第2制御信号出力端に接続されることを特徴とする、請求項1に記載の土壌養分現場検出装置。
【請求項4】
前記前処理浸出セル(3)の上面には、密封膜が貼り付けられ、前処理浸出セル(3)内には、浸出剤が収容され、前記前処理浸出セル(3)の数は、n個であり、隣接する前処理浸出セル(3)は、ほぞ継ぎ構造を介して取り付けて接続されることを特徴とする、請求項1に記載の土壌養分現場検出装置。
【請求項5】
前記新鮮土壌前処理転送アッセンブリ(2)は、負圧吸引嚢(22)を含み、負圧吸引嚢(22)の後端には、クイックリリースヘッド(21)が設けられ、負圧吸引嚢(22)の前端には、定量液体貯蔵リング(23)が取り付けられ、定量液体貯蔵リング(23)の前端には、吸引ヘッドが取り付けられ、吸引ヘッド内には、濾過ブロック(24)が差し込まれることを特徴とする、請求項1に記載の土壌養分現場検出装置。
【請求項6】
前記第1流路領域の試薬貯蔵凹溝(20)内には、特異的カリウム検出試薬が貯蔵され、前記第2流路領域の試薬貯蔵凹溝(20)には、特異的アンモニア態窒素検出試薬が貯蔵され、前記第3流路領域の試薬貯蔵凹溝(20)内には、特異的硝酸根検出試薬が貯蔵され、前記第4流路領域の試薬貯蔵凹溝(20)内には、特異的リン検出試薬が貯蔵されることを特徴とする、請求項1に記載の土壌養分現場検出装置。
【請求項7】
前記チップ基板(101)は、円形であり、前記土壌浸出液導入凹溝(12)、定量導入凹溝(18)、試薬貯蔵凹溝(20)、混合領域凹溝(15)は、いずれも円形であり、前記第1流路領域、第2流路領域、第3流路領域及び第4流路領域は、チップ基板(101)の横軸、縦軸に位置することを特徴とする、請求項1に記載の土壌養分現場検出装置。
【請求項8】
前記負圧吸引嚢(22)及びクイックリリースヘッド(21)は、軟質プラスチック材質であり、前記定量液体貯蔵リング(23)及び吸引ヘッドは、硬質プラスチック材質であり、前記濾過ブロック(24)は、濾過綿又は濾過石英砂であることを特徴とする、請求項5に記載の土壌養分現場検出装置。
【請求項9】
前記土壌試薬マイクロ流路チップ(10)は、前記チップ基板(101)の上に位置する蓋板層(102)をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の土壌養分現場検出装置。
【請求項10】
前記蓋板層(102)は、蓋板層本体と、蓋板層本体の中央に開設される被検液定量導入孔(1021)を含み、前記被検液定量導入孔(1021)は、土壌浸出液導入凹溝(12)に連通し、
前記蓋板層本体には、被検液ガイド溝(1022)、検出液導入孔(1023)及び可視窓(1025)がさらに開設され、前記被検液ガイド溝(1022)、検出液導入孔(1023)、可視窓(1025)及び流路領域の数は、同じであり、前記検出液導入孔(1023)と混合領域凹溝(15)とは、一対一で対応して設けられ、検出液導入孔(1023)は、対応する混合領域凹溝(15)に連通し、前記可視窓(1025)と検出領域凹溝(11)とは、一対一で対応して設けられ、可視窓(1025)は、対応する検出領域凹溝(11)の真上に位置し、前記被検液ガイド溝(1022)の一端は、被検液定量導入孔(1021)に連通し、他端には、溜り部(1026)が設けられ、溜り部(1026)の一方側は、溜り部に連通する通気孔(1024)が設けられることを特徴とする、請求項9に記載の土壌養分現場検出装置。
【請求項11】
下記のステップ91から97を含む請求項1に記載の土壌養分現場検出装置による検出方法であって、
蛍光強度の濃度曲線図の取得(ステップ91):実験室で分析された的土壌濃度値と蛍光強度の一次線形関係曲線を取得し、
水熱塩情報の取得(ステップ92):土壌水熱塩センサ(4)を被検田圃に挿入し、制御プロセッサ(8)により水熱塩情報を取得し、ここで、水熱塩情報は、含水量tであり、単位が%であり、
新鮮土壌試料の採取と浸出処理(ステップ93):新鮮土壌試料を採取し、前処理浸出セル(3)内に入れ、前処理浸出セル(3)内の新鮮土壌試料と浸出剤との比が1:5であり、3-5分間揺動して浸出処理を行い、浸出試料液を取得し、
浸出試料液の転送(ステップ94):新鮮土壌前処理転送アッセンブリ(2)により、前処理浸出セル(3)内で浸出した浸出試料液を土壌試薬マイクロ流路チップ(10)の土壌浸出液導入凹溝(12)内に移し、
土壌試薬マイクロ流路チップ(10)による遠心分解(ステップ95):制御プロセッサ(8)により駆動モータアッセンブリ(9)を起動し、駆動モータアッセンブリ(9)により土壌試薬マイクロ流路チップ(10)を回転させて遠心分解を行い、駆動モータアッセンブリ(9)は回転して遠心分解を行い、浸出試料液は、土壌試薬マイクロ流路チップ(10)内で遠心して分解し、
蛍光データの取得(ステップ96):制御プロセッサ(8)により蛍光励起器(7)、蛍光受光器(6)を起動し、土壌試薬マイクロ流路チップ(10)上の検出領域凹溝(11)内の浸出試料液の蛍光データを取得し、得られた蛍光データに応じて土壌濃度値と蛍光強度の一次曲線関係データ表から対応する土壌濃度値cを探し、
土壌養分検出結果の取得(ステップ97):制御プロセッサ(8)により水熱塩情報及び土壌濃度値cに基づいて土壌養分検出結果を算出し、即ち、土壌含有量Xi(単位mg/kg)を算出し、
Xi=5*c/(1-t)
式中、Xiは、窒素・リン酸・カリウムの含有量であり、常数5は系数であり、即ち、前処理浸出セル(3)内に1gの土ごとに5倍の水を加え、cは土壌濃度値であり、tは含水量%であることを特徴とする、検出方法。
【請求項12】
前記駆動モータアッセンブリが回転して遠心分解を行うステップは、下記のステップ101から104を含み、
ステップ101:低回転速度で遠心し、浸出試料液は、土壌浸出液導入凹溝(12)から第1流路領域、第2流路領域、第3流路領域及び第4流路領域に均一に入り、
ステップ102:二次回転速度で遠心し、その遠心速度は、低回転速度の遠心速度よりも高く、浸出試料液及び試薬は、遠心力の駆動下でT型混合凹溝(16)の狭い通路を通過して混合領域凹溝(15)に入ってさらに混合し、均一に混合して反応し、
ステップ103:静止状態にすることにより十分に混合して反応し、徐々に蛇型混合領域凹溝(14)に流入し、蛇行管路中でさらに混合して反応し、
ステップ104:三次回転速度で遠心し、その遠心速度は最も高く、浸出試料液は、細長い蛇型混合領域凹溝(14)の最後の狭いマイクロ通路を通過して検出領域凹溝(11)に入ることを特徴とする、請求項11に記載の検出方法。
【請求項13】
順に設けられる蓋板層(102)及びチップ基板(101)を含むマイクロ流路チップ(10)であって、
前記チップ基板(101)は、チップ基板(101)本体と、チップ基板(101)本体の頂部の中央に設けられる土壌浸出液導入凹溝(12)と、チップ基板(101)本体の頂部に設けられるとともに土壌浸出液導入凹溝(12)の外周に沿って均一に分布する複数の通路分岐とを含み、前記通路分岐は、定量導入凹溝(18)と、試薬貯蔵凹溝(20)と、混合領域凹溝(15)と、蛇型混合領域凹溝(14)と、検出領域凹溝(11)とを含み、前記定量導入凹溝(18)は、土壌浸出液導入凹溝(12)に連通し、前記定量導入凹溝(18)と試薬貯蔵凹溝(20)との間にT型混合凹溝(16)が設けられ、定量導入凹溝(18)と試薬貯蔵凹溝(20)はT型混合凹溝(16)により接続されて混合領域凹溝(15)の一端に接続され、混合領域凹溝(15)の他端は、蛇型混合領域凹溝(14)の一端に連通し、蛇型混合領域凹溝(14)の他端は、第2キャピラリーバルブ(29)を介して検出領域凹溝(11)に接続されることを特徴とする、マイクロ流路チップ。
【請求項14】
前記蓋板層(102)は、蓋板層本体と、蓋板層本体の中央に開設される被検液定量導入孔(1021)とを含み、前記被検液定量導入孔(1021)は、土壌浸出液導入凹溝(12)に連通し、
前記蓋板層本体には、被検液ガイド溝(1022)、検出液導入孔(1023)及び可視窓(1025)がさらに開設され、前記被検液ガイド溝(1022)、検出液導入孔(1023)、可視窓(1025)及び通路分岐は、数が同じであり、前記検出液導入孔(1023)と混合領域凹溝(15)は、一対一で対応して設けられ、検出液導入孔(1023)は、対応する混合領域凹溝(15)に連通し、前記可視窓(1025)と検出領域凹溝(11)は、一対一で対応して設けられ、可視窓(1025)は、対応する検出領域凹溝(11)の真上に位置し、前記被検液ガイド溝(1022)の一端は、被検液定量導入孔(1021)に連通し、他端には、溜り部(1026)が設けられ、溜り部(1026)の一方側には、溜り部に連通する通気孔(1024)が設けられることを特徴とする、請求項13に記載のマイクロ流路チップ。
【請求項15】
前記蛇型混合領域凹溝(14)は、螺旋状又は蛇行状であり、前記蛇行状は、連続した複数の折り返し形状からなることを特徴とする、請求項13に記載のマイクロ流路チップ。
【請求項16】
前記チップ基板(101)本体の背部の中央には、チップ固定孔が開設されることを特徴とする、請求項13に記載のマイクロ流路チップ。
【請求項17】
前記検出領域凹溝(11)の一方側には、検出領域凹溝(11)に連通する第2通気孔(17)が設けられ、前記第2通気孔(17)と通気孔(1024)は、一対一で対応して設けられ、第2通気孔(17)は、対応する通気孔(1024)に連通することを特徴とする、請求項14に記載のマイクロ流路チップ。
【請求項18】
前記可視窓(1025)は、蓋板層(102)本体に開設される貫通孔と、貫通孔に取り付けられる光透過性膜とを含むことを特徴とする、請求項14に記載のマイクロ流路チップ。
【請求項19】
以下のステップ1から5を含む請求項14、17又は18のいずれか1項に記載のマイクロ流路チップによる検出方法であって、
マイクロ流路チップの取り付け(ステップ1):遠心式マイクロ流路チップを遠心検出器に取り付け、
被検液の注入及び流動(ステップ2):被検液定量導入孔(1021)中に被検液を加え、遠心検出器を起動し、遠心検出器は、マイクロ流路チップを回転速度A1でT1秒回転させ、マイクロ流路チップの回転過程において、被検液は、被検液定量導入孔(1021)から土壌浸出液導入凹溝(12)内に流動してから、土壌浸出液導入凹溝(12)から各定量導入凹溝(18)内に流動し、被検液定量導入孔(1021)中の過剰な被検液は、各被検液ガイド溝(1022)に沿って各被検液ガイド溝(1022)の末端の溜り部(1026)内に流動し、
一次混合と反応(ステップ3):遠心検出器の回転速度を増加させ、遠心検出器は、マイクロ流路チップを回転速度A2でT2秒回転させ、マイクロ流路チップの回転過程において、被検液及び検出溶液は、それぞれ定量導入凹溝(18)及び試薬貯蔵凹溝(20)からT型混合凹溝(16)を通して混合領域凹溝(15)内に流動し、混合領域凹溝(15)において被検液と検出溶液は混合して混合液が得られ、被検液中の被検イオンと検出溶液とが反応し、
二次混合と反応(ステップ4):遠心検出器の動作を停止させ、混合領域凹溝(15)中の混合液は、蛇型混合領域凹溝(14)に流入し、蛇型混合領域凹溝(14)において混合液中の被検液と検出溶液はさらに混合して反応し、蛇型混合領域凹溝(14)と検出領域凹溝(11)との間の第2キャピラリーバルブ(29)に流動し、
混合と反応の完成(ステップ5):遠心検出器を再度起動し、遠心検出器は、マイクロ流路チップを回転速度A3でT3秒回転させ、マイクロ流路チップの回転過程において、蛇型混合領域凹溝(14)と検出領域凹溝(11)との間に位置する混合液は、第2キャピラリーバルブ(29)を通過して検出領域凹溝(11)に流入することを特徴とする、検出方法。
【請求項20】
異なる試薬貯蔵凹溝(20)には、異なるイオンを検出するための検出溶液が予め貯蔵されることを特徴とする、請求項19に記載の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌養分検出の技術分野に属し、具体的には、土壌養分の現場検出装置及びその検出方法、マイクロ流路チップに関する。
【背景技術】
【0002】
農業生産者は、収量を追求するためにやみくもに多量の肥料を施用しており、現在の我が国の農業生産は、生産量が増えずに肥料が増え、栄養利用効率が低いという問題に直面している。一方で、土壌や水質の汚染も無視できない問題となっている。そのため、正確な土壌養分管理と合理的な施肥を実現し、農業生産における養分利用効率を向上させることは、新たな状況下で食料生産を増加させ、環境汚染を軽減する効果的な方法であり、我が国の食料安全保障と持続可能な農業の発展を確保するための急務でもある。正確な土壌養分管理は、我が国の農業利用削減と環境保護にとって非常に重要であり、土壌窒素・リン酸・カリウムの有効態含有量の測定は、正確な土壌養分管理を実現するための基礎である。
【0003】
従来技術において、土壌窒素・リン酸・カリウムの有効態含有量の従来の方法は、主に野外で採取して調査し、土壌試料を採取して実験室で乾燥させて粉砕し、実験室分析(火炎分光光度法、流動分析インジェクター法、全窒素消化法など)により土壌試料の養分イオン含有量を測定することである。これらの方法は、土壌養分イオン含有量の測定精度が比較的高いが、プロセスが複雑で、多くの人的資源、物的資源、財政的資源を消費する必要があり、遅れが生じることもよくある。
【0004】
現在、土壌窒素・リン酸・カリウムの有効態の迅速検出では、異なる元素に対して異なる検出方法及び検出設備を使用しており、時間がかかり、操作が煩雑で、化学試薬の使用量と種類が多いなどの問題がある。従来の方法で土壌試料を検出する周期が長く、即時の可変施肥を実現するのは困難である。そのため、土壌の窒素・リン酸・カリウムの有効態含有量の迅速で正確な検出は、精密農業の実現と農業の発展に対して極めて重要である。
【0005】
迅速な検出の目的を達成するためには、多元素同時連続検出技術の研究開発は、土壌窒素・リン酸・カリウムの有効態の迅速な検出を実現する有効な方法である。蛍光検出分析技術と組み合わせたマイクロフルイディクスの開発により、この問題を解決することが可能になる。
【0006】
マイクロフルイディクス技術とは、ミクロンオーダのマイクロ通路を構築することにより微量液体の制御供給を達成することをいい、試料需要が少なく、物質移動速度が速く、サイズが小さく持ち運びが簡単で、複数の通路と複数の試料を同時に検出可能で、光学とその他の検出方法とを簡単に組み合わせるという利点を有する。マイクロフルイディクスにより製造されるマイクロチップは、材料コストが極めて低く、事前に微量の反応試薬を封入可能であり、材料及び微量の試薬が環境に対して二次汚染を引き起こさない。
【0007】
しかしながら、如何にマイクロフルイディクスと蛍光技術により現場で土壌養分を迅速に測定するかは、まだ不明である。そのため、農地現場で土壌の窒素・リン酸・カリウムの有効態含有量情報を迅速で正確に取得するとともに、使用が簡単で、農家にとって操作が容易で、詳細な指導を必要とせず、推進が容易で、可変施肥を指導できる新しい方法を開発する必要がある。また、土壌イオン現場検出研究における解決しようとする問題を解決するために、自動化レベルが高く、効率的かつ簡単で、正確かつ迅速な土壌の様々なイオンの同時検出を達成できる遠心式マイクロ流路チップも必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
本発明の目的は、土壌養分の現場検出装置及びその検出方法、マイクロ流路チップを提供することにより、農地現場で土壌窒素・リン酸・カリウムの有効態含有量情報を迅速で正確に取得することが困難である従来技術の問題を解決することである。
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の技術的手段は以下の通りである。
土壌養分の現場検出装置であって、
前処理浸出セルと、現場リアルタイム検出アッセンブリと、新鮮土壌前処理転送アッセンブリとを含み、前記新鮮土壌前処理転送アッセンブリは、前処理浸出セル内の新鮮土壌浸出試料液を現場リアルタイム検出アッセンブリ内に転送するものであり、
前記現場リアルタイム検出アッセンブリは、駆動モータアッセンブリと、検出分析アッセンブリとを含み、駆動モータアッセンブリの出力軸には、土壌試薬マイクロ流路チップが取り付けられ、前記土壌試薬マイクロ流路チップは、チップ基板を含み、チップ基板の底部には、チップ位置合わせ係止溝が設けられ、土壌試薬マイクロ流路チップは、チップ位置合わせ係止溝により駆動モータアッセンブリの出力軸に取り付けられ、チップ基板の上面は、ケース内に封入され、チップ基板の上面の中央には、土壌浸出液導入凹溝がエッチングされ、第1流路領域、第2流路領域、第3流路領域及び第4流路領域が土壌浸出液導入凹溝から外へ延在してエッチングされ、前記第1流路領域、第2流路領域、第3流路領域及び第4流路領域は、構造が同じである、土壌養分の現場検出装置。
【0010】
前記第1流路領域は、マイクロ通路を介して土壌浸出液導入凹溝に連通する定量導入凹溝を含み、試薬貯蔵凹溝と定量導入凹溝との出口は、マイクロ通路を介して接続され、T型混合凹溝を介して混合領域凹溝に接続され、混合領域凹溝の出口は、蛇型混合領域凹溝を介して検出領域凹溝に接続され、前記蛍光励起器及び蛍光受光器は、検出領域凹溝の回転運動軌跡上に位置し、
前記T型混合凹溝と、試薬貯蔵凹溝、定量導入凹溝とを接続した箇所でのマイクロ通路の幅は、試薬貯蔵凹溝、定量導入凹溝の出口でのマイクロ通路の幅よりも小さく、前記蛇型混合領域凹溝と検出領域凹溝とを接続した箇所でのマイクロ通路の幅は、定量導入凹溝の出口でのマイクロ通路の幅よりも小さい。
【0011】
前記検出分析アッセンブリは、制御プロセッサと、キャプチャカードと、蛍光励起器と、蛍光受光器と、土壌水熱塩センサを含み、蛍光励起器は、制御プロセッサの第1制御信号出力端に接続され、蛍光受光器は、キャプチャカードを介して制御プロセッサの第1データ入力端に接続され、土壌水熱塩センサのデータ出力端は、制御プロセッサの第2データ入力端に接続され、駆動モータアッセンブリは、制御プロセッサの第2制御信号出力端に接続される。
【0012】
前記前処理浸出セルの上面には、密封膜が貼り付けられ、前処理浸出セル内には、浸出剤が収容され、前記前処理浸出セルの数は、n個であり、隣接する前処理浸出セルは、ほぞ継ぎ構造を介して取り付けて接続される。
【0013】
前記新鮮土壌前処理転送アッセンブリは、負圧吸引嚢を含み、負圧吸引嚢の後端には、クイックリリースヘッドが設けられ、負圧吸引嚢の前端には、定量液体貯蔵リングが取り付けられ、定量液体貯蔵リングの前端には、吸引ヘッドが取り付けられ、吸引ヘッド内には、濾過ブロックが差し込まれる。
【0014】
前記第1流路領域の試薬貯蔵凹溝内には、特異的カリウム検出試薬が貯蔵され、前記第2流路領域の試薬貯蔵凹溝には、特異的アンモニア態窒素検出試薬が貯蔵され、前記第3流路領域の試薬貯蔵凹溝内には、特異的硝酸根検出試薬が貯蔵され、前記第4流路領域の試薬貯蔵凹溝内には、特異的リン検出試薬が貯蔵される。
【0015】
前記チップ基板は、円形であり、前記土壌浸出液導入凹溝、定量導入凹溝、試薬貯蔵凹溝、混合領域凹溝は、いずれも円形であり、前記第1流路領域、第2流路領域、第3流路領域及び第4流路領域は、チップ基板の横軸、縦軸に位置する。
【0016】
前記負圧吸引嚢及びクイックリリースヘッドは、軟質プラスチック材質であり、前記定量液体貯蔵リング及び吸引ヘッドは、硬質プラスチック材質であり、前記濾過ブロックは、濾過綿又は濾過石英砂である。
【0017】
前記土壌試薬マイクロ流路チップは、前記チップ基板の上に位置する蓋板層をさらに含む。
【0018】
前記蓋板層は、蓋板層本体と、蓋板層本体の中央に開設される被検液定量導入孔を含み、前記被検液定量導入孔は、土壌浸出液導入凹溝に連通し、
前記蓋板層本体には、被検液ガイド溝、検出液導入孔及び可視窓がさらに開設され、前記被検液ガイド溝、検出液導入孔、可視窓及び流路領域の数は、同じであり、前記検出液導入孔と混合領域凹溝とは、一対一で対応して設けられ、検出液導入孔は、対応する混合領域凹溝に連通し、前記可視窓と検出領域凹溝とは、一対一で対応して設けられ、可視窓は、対応する検出領域凹溝の真上に位置し、前記被検液ガイド溝の一端は、被検液定量導入孔に連通し、他端には、溜り部が設けられ、溜り部の一方側は、溜り部に連通する通気孔が設けられる。
【0019】
本発明によれば、下記のステップ91から97を含む請求項1に記載の土壌養分現場検出装置による検出方法であって、
蛍光強度の濃度曲線図の取得(ステップ91):実験室で分析された的土壌濃度値と蛍光強度の一次線形関係曲線を取得し、
水熱塩情報の取得(ステップ92):土壌水熱塩センサを被検田圃に挿入し、制御プロセッサにより水熱塩情報を取得し、ここで、水熱塩情報は、含水量tであり、単位が%であり、
新鮮土壌試料の採取と浸出処理(ステップ93):新鮮土壌試料を採取し、前処理浸出セル内に入れ、前処理浸出セル内の新鮮土壌試料と浸出剤との比が1:5であり、3-5分間揺動して浸出処理を行い、浸出試料液を取得し、
浸出試料液の転送(ステップ94):新鮮土壌前処理転送アッセンブリにより、前処理浸出セル内で浸出した浸出試料液を土壌試薬マイクロ流路チップの土壌浸出液導入凹溝内に移し、
土壌試薬マイクロ流路チップによる遠心分解(ステップ95):制御プロセッサにより駆動モータアッセンブリを起動し、駆動モータアッセンブリにより土壌試薬マイクロ流路チップを回転させて遠心分解を行い、駆動モータアッセンブリは回転して遠心分解を行い、浸出試料液は、土壌試薬マイクロ流路チップ内で遠心して分解し、
蛍光データの取得(ステップ96):制御プロセッサにより蛍光励起器、蛍光受光器を起動し、土壌試薬マイクロ流路チップ上の検出領域凹溝内の浸出試料液の蛍光データを取得し、得られた蛍光データに応じて土壌濃度値と蛍光強度の一次曲線関係データ表から対応する土壌濃度値cを探し、
土壌養分検出結果の取得(ステップ97):制御プロセッサにより水熱塩情報及び土壌濃度値cに基づいて土壌養分検出結果を算出し、即ち、土壌含有量Xi(単位mg/kg)を算出し、
Xi=5*c/(1-t)
式中、Xiは、窒素・リン酸・カリウムの含有量であり、常数5は系数であり、即ち、前処理浸出セル内に1gの土ごとに5倍の水を加え、cは土壌濃度値であり、tは含水量%である検出方法がさらに提供される。
【0020】
前記駆動モータアッセンブリが回転して遠心分解を行うステップは、下記のステップ101から104を含み、
ステップ101:低回転速度で遠心し、浸出試料液は、土壌浸出液導入凹溝から第1流路領域、第2流路領域、第3流路領域及び第4流路領域に均一に入り、
ステップ102:二次回転速度で遠心し、その遠心速度は、低回転速度の遠心速度よりも高く、浸出試料液及び試薬は、遠心力の駆動下でT型混合凹溝の狭い通路を通過して混合領域凹溝に入ってさらに混合し、均一に混合して反応し、
ステップ103:静止状態にすることにより十分に混合して反応し、徐々に蛇型混合領域凹溝に流入し、蛇行管路中でさらに混合して反応し、
ステップ104:三次回転速度で遠心し、その遠心速度は最も高く、浸出試料液は、細長い蛇型混合領域凹溝の最後の狭いマイクロ通路を通過して検出領域凹溝に入る。
【0021】
本発明によれば、順に設けられる蓋板層及びチップ基板を含むマイクロ流路チップであって、
前記チップ基板は、チップ基板本体と、チップ基板本体の頂部の中央に設けられる土壌浸出液導入凹溝と、チップ基板本体の頂部に設けられるとともに土壌浸出液導入凹溝の外周に沿って均一に分布する複数の通路分岐とを含み、前記通路分岐は、定量導入凹溝と、試薬貯蔵凹溝と、混合領域凹溝と、蛇型混合領域凹溝と、検出領域凹溝とを含み、前記定量導入凹溝は、土壌浸出液導入凹溝に連通し、前記定量導入凹溝と試薬貯蔵凹溝との間にT型混合凹溝が設けられ、定量導入凹溝と試薬貯蔵凹溝はT型混合凹溝により接続されて混合領域凹溝の一端に接続され、混合領域凹溝の他端は、蛇型混合領域凹溝の一端に連通し、蛇型混合領域凹溝の他端は、第2キャピラリーバルブを介して検出領域凹溝に接続されるマイクロ流路チップがさらに提供される。
【0022】
前記蓋板層は、蓋板層本体と、蓋板層本体の中央に開設される被検液定量導入孔とを含み、前記被検液定量導入孔は、土壌浸出液導入凹溝に連通し、
前記蓋板層本体には、被検液ガイド溝、検出液導入孔及び可視窓がさらに開設され、前記被検液ガイド溝、検出液導入孔、可視窓及び通路分岐は、数が同じであり、前記検出液導入孔と混合領域凹溝は、一対一で対応して設けられ、検出液導入孔は、対応する混合領域凹溝に連通し、前記可視窓と検出領域凹溝は、一対一で対応して設けられ、可視窓は、対応する検出領域凹溝の真上に位置し、前記被検液ガイド溝の一端は、被検液定量導入孔に連通し、他端には、溜り部が設けられ、溜り部の一方側には、溜り部に連通する通気孔が設けられる。
【0023】
前記蛇型混合領域凹溝は、螺旋状又は蛇行状であり、前記蛇行状は、連続した複数の折り返し形状からなる。
【0024】
前記チップ基板本体の背部の中央には、チップ固定孔が開設される。
【0025】
前記検出領域凹溝の一方側には、検出領域凹溝に連通する第2通気孔が設けられ、前記第2通気孔と通気孔は、一対一で対応して設けられ、第2通気孔は、対応する通気孔に連通する。
【0026】
前記可視窓は、蓋板層本体に開設される貫通孔と、貫通孔に取り付けられる光透過性膜とを含む。
【0027】
前記マイクロ流路チップの検出方法は、以下のステップ1から5を含み、
マイクロ流路チップの取り付け(ステップ1):遠心式マイクロ流路チップを遠心検出器に取り付け、
被検液の注入及び流動(ステップ2):被検液定量導入孔中に被検液を加え、遠心検出器を起動し、遠心検出器は、マイクロ流路チップを回転速度A1でT1秒回転させ、マイクロ流路チップの回転過程において、被検液は、被検液定量導入孔から土壌浸出液導入凹溝内に流動してから、土壌浸出液導入凹溝から各定量導入凹溝内に流動し、被検液定量導入孔中の過剰な被検液は、各被検液ガイド溝に沿って各被検液ガイド溝の末端の溜り部内に流動し、
一次混合と反応(ステップ3):遠心検出器の回転速度を増加させ、遠心検出器は、マイクロ流路チップを回転速度A2でT2秒回転させ、マイクロ流路チップの回転過程において、被検液及び検出溶液は、それぞれ定量導入凹溝及び試薬貯蔵凹溝からT型混合凹溝を通して混合領域凹溝内に流動し、混合領域凹溝において被検液と検出溶液は混合して混合液が得られ、被検液中の被検イオンと検出溶液とが反応し、
二次混合と反応(ステップ4):遠心検出器の動作を停止させ、混合領域凹溝中の混合液は、蛇型混合領域凹溝に流入し、蛇型混合領域凹溝において混合液中の被検液と検出溶液はさらに混合して反応し、蛇型混合領域凹溝と検出領域凹溝との間の第2キャピラリーバルブに流動し、
混合と反応の完成(ステップ5):遠心検出器を再度起動し、遠心検出器は、マイクロ流路チップを回転速度A3でT3秒回転させ、マイクロ流路チップの回転過程において、蛇型混合領域凹溝と検出領域凹溝との間に位置する混合液は、第2キャピラリーバルブを通過して検出領域凹溝に流入する。
【0028】
異なる試薬貯蔵凹溝には、異なるイオンを検出するための検出溶液が予め貯蔵される。
【発明の効果】
【0029】
本発明の土壌養分の現場検出装置及びその検出方法は、従来技術と比較して、複数の元素を同時に連続して検出することにより、土壌の窒素・リン酸・カリウムの有効態の迅速検出を実現し、さらに、マイクロフルイディクスと蛍光検出分析との組み合わせにより、マイクロフルイディクスと特異的蛍光量子ドットの分析に基づいて新鮮土壌養分に対する現場での直接で迅速な検出を達成する。
【0030】
本発明のマイクロ流路チップは、遠心力により反応を駆動、制御することにより、複数種類の土壌イオンの同時検出が実現され、人工の過程が減少し、効率、簡単、正確、迅速な利点を有する。
【0031】
本発明によれば、高精度の土壌養分の現場迅速検出を達成でき、集積度が高く、窒素・リン酸・カリウムの複数の指標を同時に検出することができ、人工の過程が減少し、自動化レベルが高く、操作が簡単で、正確で迅速な利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本発明の土壌養分現場の検出装置の構造模式図である。
【
図2】本発明の
図1における前処理浸出セルの構造模式図である。
【
図3】本発明の
図1における新鮮土壌前処理転送アッセンブリの構造模式図である。
【
図4】本発明の
図1における現場リアルタイム検出アッセンブリの構造模式図である。
【
図5】本発明の
図1における土壌試薬マイクロ流路チップのチップ基板101の構造斜視図である。
【
図5-1】
図5におけるチップ基板に適した蓋板層102の構造図(4つの流路領域)である。
【
図6】本発明に係る検出方法の手順フローチャートである。
【
図7】本発明の実施例2におけるマイクロ流路チップの立体図(5つの通路分岐)である。
【
図8】
図7のマイクロ流路チップの蓋板層102の構造図(5つの通路分岐)である。
【
図9】
図7のマイクロ流路チップのチップ基板101の構造図(5つの通路分岐)である。
【0033】
1現場リアルタイム検出アッセンブリ、2新鮮土壌前処理転送アッセンブリ、3前処理浸出セル、4土壌水熱塩センサ、5キャプチャカード、6蛍光受光器、7蛍光励起器、8制御プロセッサ、9駆動モータアッセンブリ;
10マイクロ流路チップ、101チップ基板、102蓋板層、1021被検液定量導入孔、1022被検液ガイド溝、1023検出液導入孔、1024通気孔、1025可視窓、1026溜り部;
11検出領域凹溝、12土壌浸出液導入凹溝、13チップ位置合わせ係止溝、14蛇型混合領域凹溝、15蛇型混合領域凹溝、16T型混合凹溝、17第2通気孔、18定量導入凹溝、19マイクロ通路、20試薬貯蔵凹溝;
21クイックリリースヘッド、22負圧吸引嚢、23定量液体貯蔵リング、24濾過ブロック;
29第2キャピラリーバルブ。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の構造特徴及び達成する効果をさらに明確にするために、以下、好ましい実施例及び図面を参照しながら詳しく説明する。
【0035】
図1に示すように、本発明の土壌養分現場検出装置は、前処理浸出セル3と、現場リアルタイム検出アッセンブリ1と、新鮮土壌前処理転送アッセンブリ2とを含む。新鮮土壌前処理転送アッセンブリ2は、前処理浸出セル3内の新鮮土壌試料を現場リアルタイム検出アッセンブリ1内に転送する。
【0036】
図2に示すように、前処理浸出セル3の設計により、農業現場での土壌採取処理が実現される。前処理浸出セル3の上面には、密封膜が貼り付けられ、前処理浸出セル3内には、浸出剤が収容されている。実際の使用において、田圃表面の新鮮土壌を採取し、砕石などを除去した後、そのまま前処理浸出セル3内に入れることができる。前処理浸出セル3の数は複数であり、隣接する前処理浸出セル3の間は、ほぞ継ぎ構造により取り付けて接続され、これによって、使用と持ち運びに便利んである。つまり、4つのセルは横並みの一列となり、一列では、各セルはぞ継ぎ構造により簡単に拡張する。各浸出セルには、事前に土壌浸出剤が収容されており、pvc膜により被覆されて密封処理されている。現場で使用する際に、農家は測定される土壌試料の数に応じて浸出セルの数を選択して組み立て、pvc膜(密封膜)を剥がし、土壌試料を秤量して順に前処理浸出セル3に入れ、最後にppなどの硬質プラスチックの蓋をする。一緒に揺動することで浸出効率を向上させることができる。これによって、土壌の現場浸出処理が達成され、土壌試料を実験室に連れ戻して浸出処理を行う必要がないとともに、新鮮土壌を用いて測定するため、得られる土壌養分のデータはより正確である。
【0037】
図4に示すように、現場リアルタイム検出アッセンブリ1は、駆動モータアッセンブリ9と、検出分析アッセンブリとを含む。駆動モータアッセンブリ9の出力軸には、土壌試薬マイクロ流路チップ10が取り付けられる。即ち、土壌試薬マイクロ流路チップ10は、従来の方式で駆動モータアッセンブリ9の出力軸に取り付けられる。駆動モータアッセンブリ9は、土壌試薬マイクロ流路チップ10を遠心回転させる。
【0038】
検出分析アッセンブリは、制御プロセッサ8と、キャプチャカード5と、蛍光励起器7と、蛍光受光器6と、土壌水熱塩センサ4とを含む。蛍光励起器7は、制御プロセッサ8の第1制御信号出力端に接続され、制御プロセッサ8は、蛍光励起器7が蛍光信号を送信するように蛍光励起器7を制御する。蛍光受光器6は、キャプチャカード5を介して制御プロセッサ8の第1データ入力端に接続され、蛍光受光器6は、土壌試薬マイクロ流路チップ10の検出領域凹溝11を通過した蛍光励起器7の蛍光信号の蛍光データを取得する。土壌水熱塩センサ4のデータ出力端は、制御プロセッサ8の第2データ入力端に接続され、駆動モータアッセンブリ9は、制御プロセッサ8の第2制御信号出力端に接続される。ここで、土壌水熱塩センサ4の設計により、使用時に土壌水熱塩センサ4を被検田圃に挿入し、土壌の温度、含水率及び導電率などのデータを測定することにより土壌水分データの取得を実現することができる。ここで行うのは水分を有する新鮮土壌試料の実際検出であり、従来のように実験室で土壌試料の水分を蒸発させる段階がないため、水分を有する新鮮土壌の検出を達成するために、土壌の水分を測定した後、分析する際に水分要素の除去を考慮する必要がある。
【0039】
図3に示すように、新鮮土壌前処理転送アッセンブリ2は、土壌浸出液の転送に使用される。負圧吸引嚢22は、土壌浸出液を吸い取るために使用される。負圧吸引嚢22の後端には、クイックリリースヘッド21が取り付けられる。クイックリリースヘッド21により、吸い取った土壌浸出液を容易に排出することができる。負圧吸引嚢22の前端には、定量液体貯蔵リング23が取り付けられる。定量液体貯蔵リング23の前端には、吸引ヘッドが取り付けられる。吸引ヘッド内に濾過ブロック24が差し込まれる。吸引ヘッドにより吸い込まれた土壌浸出液は、濾過された後に定量液体貯蔵リング23に貯蔵される。定量液体貯蔵リング23の容量は、実際の使用必要に応じて設計すればよい。ここで、負圧吸引嚢22及びクイックリリースヘッド21は、軟質プラスチック材質であってもよく、定量液体貯蔵リング23及び吸引ヘッドは、硬質プラスチック材質であってもよく、濾過ブロック24は、濾過綿又は濾過石英砂であってもよい。
【0040】
図5に示すように、土壌試薬マイクロ流路チップ10は、チップ基板101を含む。チップ基板101の底部には、チップ位置合わせ係止溝13が設けられる。チップ位置合わせ係止溝13は、駆動モータアッセンブリ9の取付と使用に使用される。土壌試薬マイクロ流路チップ10は、チップ位置合わせ係止溝13を介して駆動モータアッセンブリ9の出力軸に取り付けられる。
【0041】
チップ基板101の上面は、ケース内に封入される。チップ基板101の上には、蓋板層102がさらに設けられる。チップ基板101の上面の中央には、土壌浸出液導入凹溝12がエッチングされる。従来の設計により、ケースにおける土壌浸出液導入凹溝12の部位を、薄いプラスチック又は開閉しやすい構造に設計することができる。これによって、クイックリリースヘッド21による土壌浸出液の土壌浸出液導入凹溝12への導入は容易になる。第1流路領域、第2流路領域、第3流路領域及び第4流路領域は、土壌浸出液導入凹溝12から外へ延在してエッチングされる。前記第1流路領域、第2流路領域、第3流路領域及び第4流路領域は、構造が同じである。
【0042】
前記土壌試薬マイクロ流路チップ10は、前記チップ基板101の上に位置する蓋板層102をさらに含む。前記蓋板層102とチップ基板101は接続される。
図4には蓋板層が示されない。
図5-1に示されるのは、
図5のチップ基板101に対応する蓋板層102であり、4つの流路領域を含む。
【0043】
前記蓋板層102は、蓋板層本体と、蓋板層本体の中央に開設される被検液定量導入孔1021とを含む。前記被検液定量導入孔1021は、土壌浸出液導入凹溝12に連通する。前記蓋板層本体には、被検液ガイド溝1022、検出液導入孔1023及び可視窓1025がさらに開設される。前記被検液ガイド溝1022、検出液導入孔1023、可視窓1025及び流路領域は、数が同じである。前記検出液導入孔1023と混合領域凹溝15は、一対一で対応して設けられる。検出液導入孔1023は、対応する混合領域凹溝15に連通する。前記可視窓1025と検出領域凹溝11は、一対一で対応して設けられる。可視窓1025は、対応する検出領域凹溝11の真上に位置する。前記被検液ガイド溝1022の一端は、被検液定量導入孔1021に連通し、他端には、溜り部1026が設けられる。溜り部1026の一方側には、溜り部に連通する通気孔1024が設け荒れる。前記可視窓1025は、蓋板層本体に開設される貫通孔及び貫通孔に取り付けられる光透過性膜を含む。
【0044】
土壌試薬マイクロ流路チップ10の第1流路領域、第2流路領域、第3流路領域及び第4流路領域は、4つの通路であり、それぞれカリウム、アンモニア態窒素、硝酸根及びリンの4つの指標を測定するものである。第1流路領域の試薬貯蔵凹溝20内には、特異的カリウム検出試薬が貯蔵される。第2流路領域の試薬貯蔵凹溝20内には、特異的アンモニア態窒素検出試薬が貯蔵される。第3流路領域の試薬貯蔵凹溝20内には、特異的硝酸根検出試薬が貯蔵される。第4流路領域の試薬貯蔵凹溝20内には、特異的リン検出試薬が貯蔵される。ここで、測定される4つの指標は、試薬貯蔵領域に貯蔵される試薬によって決定される。4つの試薬貯蔵領域には、チップ加工の過程において事前に所定量の試薬が添加されている。これらの試薬は、チップに封入される。チップは、真空包装で農地まで運送される。各通路の構造及び機能は、同じであり、いずれもマイクロ通路を介して接続される。マイクロ通路は、通常高さが100umである。
【0045】
遠心効果をさらに向上させるために、第1流路領域、第2流路領域、第3流路領域及び第4流路領域は、チップ基板101の横軸、縦軸に位置する。第1流路を例とすると、第1流路領域は、土壌浸出液導入凹溝12にマイクロ通路19を介して接続される定量導入凹溝18を含む。試薬貯蔵凹溝20と定量導入凹溝18の出口は、マイクロ通路19を介して接続され、T型混合凹溝16を介して混合領域凹溝15に接続される。混合領域凹溝15の出口は、蛇型混合領域凹溝14を介して検出領域凹溝11に接続される。前記蛍光励起器7及び蛍光受光器6は、検出領域凹溝11の回転軌跡に位置する。即ち、土壌浸出液は、土壌浸出液導入凹溝12から定量導入凹溝18まで流動し、さらに試薬貯蔵凹溝20と混合した後、T型混合凹溝16、蛇型混合領域凹溝14を経て検出領域凹溝11に流れ込む。蛍光励起器7及び蛍光受光器6は、4つの検出領域凹溝11の回転軌跡に位置し、従来のセンサ技術により位置規制される。また、より高い遠心効果を得るために、チップ基板101は、円形であり、土壌浸出液導入凹溝12、定量導入凹溝18、試薬貯蔵凹溝20、混合領域凹溝15は、いずれも円形である。液体伝導性を向上させるために、検出領域凹溝11に通気孔17を設計することができる。通気孔17は、オープンスタイルの通孔である。
【0046】
遠心混合の効果を得るために、土壌試薬マイクロ流路チップ10に三次混合技術を採用する。即ち、T型混合領域では、一次混合であり、2つの通路が会合する部位は、徐々に狭くなり、バルブとして作用することにより、土壌溶液が添加時に最後の検出領域に入ることを回避する。遠心力でT型混合領域を通過した後、円形混合領域内でさらに混合する。マイクロ流体は層流状態であるため、土壌被検液と試薬は、十分に混合して反応する必要がある。さらに、蛇型混合領域に入り、繰り返して蛇行したマイクロ通路によりさらに混合する。蛇型混合領域の末端となる細長いマイクロ通路もマイクロバルブとして作用することができる。
【0047】
したがって、T型混合凹溝16と、試薬貯蔵凹溝20、定量導入凹溝18とを接続する箇所でのマイクロ通路19の幅は、試薬貯蔵凹溝20、定量導入凹溝18の出口でのマイクロ通路19の幅よりも小さい。前記蛇型混合領域凹溝14と検出領域凹溝11とを接続する箇所でのマイクロ通路19の幅は、定量導入凹溝18の出口でのマイクロ通路19の幅より小さい。
【0048】
また、蛍光データ取得の容易さ及び正確さのために、検出領域の下蓋板を100ミクロンオーダの厚さにする。これによって、蛍光がマイクロ流路壁を通過する際の損失が減少するとともに、従来の蛍光検出の光強度利用率よりも大幅に向上する。検出器位置合わせ領域では、横方向に溝入れ加工されたため、検出器の位置合わせが容易になり、肉厚が減少する。
【0049】
図6に示すように、本発明は、土壌養分の現場検出装置による検出方法をさらに提供する。この方法は、以下のステップを含む。
蛍光強度の濃度曲線図の取得(ステップ91):実験室で分析された土壌濃度値と蛍光強度の一次線形関係曲線を取得する。土壌の4つの指標の濃度値(カリウム、アンモニア態窒素、硝酸態窒素、リン)と蛍光強度の一次線形関係曲線は、実験室で確定された関係曲線であり、即ち、特定比率の土壌濃度値を取り、対応する蛍光強度を測定し、土壌濃度値と蛍光強度の一次線形関係曲線を形成する。これに基づいて、蛍光強度に応じて土壌濃度値の大体の含有量を得ることができる。実際の使用において、製品を田圃で使用する際に、一次線形関係曲線は既に制御プロセッサ8に入力されている。
【0050】
水熱塩情報の取得(ステップ92):土壌水熱塩センサ4を被検田圃に挿入し、制御プロセッサ8により水熱塩情報を取得し、ここで、水熱塩情報は、含水量t(単位%)である。即ち、ここで、水含有量情報を得る。
【0051】
新鮮土壌試料の採取と浸出処理(ステップ93):新鮮土壌試料を採取し、前処理浸出セル3内に入れ、前処理浸出セル3内の新鮮土壌試料と浸出剤との比が1:5であり、3-5分間揺動して浸出処理を行い、浸出試料液(土壌浸出液)を取得する。
【0052】
浸出試料液の転送(ステップ94):新鮮土壌前処理転送アッセンブリ2により、前処理浸出セル3内で浸出した浸出試料液を土壌試薬マイクロ流路チップ10の土壌浸出液導入凹溝12内に移す。
【0053】
土壌試薬マイクロ流路チップ10による遠心分解(ステップ95):制御プロセッサ8により駆動モータアッセンブリ9を起動し、駆動モータアッセンブリ9により土壌試薬マイクロ流路チップ10を回転させて遠心分解を行い、駆動モータアッセンブリ9は回転して遠心分解を行い、浸出試料液は、土壌試薬マイクロ流路チップ10内で遠心して分解する。
【0054】
ステップ101:低回転速度で遠心し、浸出試料液は、土壌浸出液導入凹溝12から第1流路領域、第2流路領域、第3流路領域及び第4流路領域に均一に入る。
【0055】
ステップ102:二次回転速度で遠心し、その遠心速度は、低回転速度の遠心速度よりも高く、浸出試料液及び試薬は、遠心力の駆動下でT型混合凹溝16の狭い通路を通過して混合領域凹溝15に入ってさらに混合し、均一に混合して反応する。
【0056】
ステップ103:静止状態にすることにより十分に混合して反応し、徐々に蛇型混合領域凹溝14に流入し、蛇行管路中でさらに混合して反応する。
【0057】
ステップ104:三次回転速度で遠心し、その遠心速度は最も高く、浸出試料液は、細長い蛇型混合領域凹溝14の最後の狭いマイクロ通路を通過して検出領域凹溝11に入る。
【0058】
実際の使用において、以上の過程は、全て駆動モータアッセンブリ9の自動化処理過程に設計され、人工操作の必要がなく、動的に遠心回転を完成させる。
【0059】
蛍光データの取得(ステップ96):制御プロセッサ8により蛍光励起器7、蛍光受光器6を起動し、土壌試薬マイクロ流路チップ10上の検出領域凹溝11内の浸出試料液の蛍光データを取得し、得られた蛍光データに応じて土壌濃度値と蛍光強度の一次曲線関係データ表から対応する土壌濃度値cを探す。
【0060】
土壌養分検出結果の取得(ステップ97):制御プロセッサ8により水熱塩情報及び土壌濃度値cに基づいて土壌養分検出結果を算出し、即ち、土壌含有量Xi(単位mg/kg)を算出する。
Xi=5*c/(1-t)
式中、Xiは、窒素・リン酸・カリウムの含有量であり、常数5は系数であり、即ち、前処理浸出セル3内に1gの土ごとに5倍の水を加え、cは土壌濃度値であり、tは含水量%である。
【0061】
本発明は、順に設けられる蓋板層102及びチップ基板101を含むマイクロ流路チップ10をさらに提供する。
前記チップ基板101は、チップ基板101本体と、チップ基板101本体の頂部の中央に設けられる土壌浸出液導入凹溝12と、チップ基板101本体の頂部に設けられるとともに土壌浸出液導入凹溝12の外周に沿って均一に分布する複数の通路分岐とを含み、前記通路分岐は、定量導入凹溝18と、試薬貯蔵凹溝20と、混合領域凹溝15と、蛇型混合領域凹溝14と、検出領域凹溝11とを含み、前記定量導入凹溝18は、土壌浸出液導入凹溝12に連通し、前記定量導入凹溝18と試薬貯蔵凹溝20との間にT型混合凹溝16が設けられ、定量導入凹溝18と試薬貯蔵凹溝20はT型混合凹溝16により接続されて混合領域凹溝15の一端に接続され、混合領域凹溝15の他端は、蛇型混合領域凹溝14の一端に連通し、蛇型混合領域凹溝14の他端は、第2キャピラリーバルブ29を介して検出領域凹溝11に接続される。
【0062】
図7に示すように、蓋板層102とチップ基板101はボンディング接続される。
図9に示すように、前記試薬貯蔵凹溝20には、予め検出溶液が貯蔵される。チップ基板101本体の構造は、土壌浸出液導入凹溝12と、定量導入凹溝18と、試薬貯蔵凹溝20と、蛇型混合領域凹溝14と、T型混合凹溝16と、第2キャピラリーバルブ29と、混合領域凹溝15と、検出領域凹溝11と、第2通気孔17とを含む。チップ基板101の本体構造は、厚さが一致し、チップ基板101の一方側に分布し、他方側には、マイクロ流路チップと遠心検出器を接続するためのチップ固定孔構造が設けられる。チップ固定孔は、遠心検出器固定構造に対応し、厚さがチップ基板101を貫通せず、チップ基板101のお他方側の本体構造を破壊しない。
【0063】
土壌浸出液導入凹溝12は、チップ基板101における被検液の収容及び周囲の通路分岐への均等な分配に使用される。定量導入凹溝18は、固定体積被検液を収容するために使用され、土壌浸出液導入凹溝12に沿って対称的に分布し、遠心駆動の作用下で反応に関与する被検液の高精度制御を実現することができる。試薬貯蔵凹溝20は、一定体積の検出液を収容するために使用される。検出溶液は、ナノプローブ材料を含む溶液であり、予めここに貯蔵される。試薬貯蔵凹溝20及び定量導入凹溝18と混合領域凹溝15との間にT型混合凹溝16の構造が設計され、両種類の溶液は、混合前にT型混合凹溝16の前端に保持される。T型混合凹溝16の中部は、キャピラリー構造であり、全体として第1キャピラリーバルブを構成する。蛇型混合領域凹溝14は、被検液と検出溶液との混合及び反応をさらに向上させるために使用され、一端が混合領域凹溝15に接続され、混合領域凹溝15で反応した混合液が毛細管力の作用下でそのまま蛇型混合領域凹溝14に入り、他端が検出領域凹溝11に第2キャピラリーバルブ29構造を介して接続され、蛇型混合領域凹溝14で十分に混合して反応した混合液は第2キャピラリーバルブ9の前端に保持されるる。T型混合凹溝16と第2キャピラリーバルブ29は、2つの受動型マイクロバルブであり、マイクロ流路チップにおいてこの構造により液体の流動制御を完成する。遠心力の駆動により、液体の内圧はキャピラリーバルブを突破し、次の領域に入り、これによって、遠心力により駆動されるマイクロ流路チップの動作モードが実現される。T型混合凹溝16と第2キャピラリーバルブ29は、構造寸法が異なり、異なる遠心回転速度で駆動されて初めてキャピラリーバルブの液体保持性能を突破することができる。被検液及び検出溶液は、遠心力の駆動によってT型混合凹溝16の構造を通過して混合領域凹溝15に入り、マイクロ流路の環境下で液体の流速が遅くなり、混合領域凹溝15を充填する過程において、この2つの溶液は混合して反応する。反応した混合溶液は、遠心力の駆動によって蛇型混合領域凹溝14と検出領域凹溝11との間の第2キャピラリーバルブ29を通過し、検出領域凹溝11領域にゆっくりと充填して貯蔵されて蛍光検出を待つ。第2通気孔17は、蓋板層102における対応する通気孔1024に上下連通し、オープンスタイルの設計であり、マイクロ流路チップの各領域の気圧平衡を保持する。
【0064】
前記蓋板層102は、蓋板層本体と、蓋板層本体の中央に開設される被検液定量導入孔1021とを含み、前記被検液定量導入孔1021は、土壌浸出液導入凹溝12に連通し、
前記蓋板層本体には、被検液ガイド溝1022、検出液導入孔1023及び可視窓1025がさらに開設され、前記被検液ガイド溝1022、検出液導入孔1023、可視窓1025及び通路分岐は、数が同じであり、前記検出液導入孔1023と混合領域凹溝15は、一対一で対応して設けられ、検出液導入孔1023は、対応する混合領域凹溝15に連通し、前記可視窓1025と検出領域凹溝11は、一対一で対応して設けられ、可視窓1025は、対応する検出領域凹溝11の真上に位置し、前記被検液ガイド溝1022の一端は、被検液定量導入孔1021に連通し、他端には、溜り部1026が設けられ、溜り部1026の一方側には、溜り部に連通する通気孔1024が設けられる。
【0065】
図8に示すように、被検液定量導入孔1021は、マイクロ流路チップの被検液の導入位置であり、円柱体構造に設計されているが、これに限定されず、一定量の被検液を収容することができ、チップ基板101における土壌浸出液導入凹溝12に上下連通し、被検液をチップ基板101に導入する目的を実現する。各被検液ガイド溝1022は、被検液定量導入孔1021に沿って均等に放射状に配置される。被検液ガイド溝1022は、マイクロ管路構造であり、被検液定量導入孔1021から逸出した過剰な被検液を収容し、被検液を末端の溜り部1026に導入し、被検液の定量導入を実現することができる。検出液導入孔1023とチップ基板101の試薬貯蔵凹溝20は、一対一で対応して設けられ、かつ上下連通する。マイクロ流路チップの蓋板層102とチップ基板101が密封してボンディング接続された後、この検出液導入孔1023を介してチップ基板101の試薬貯蔵凹溝20内にナノプローブ材料を含む検出溶液を導入する。通気孔1024と、チップ基板101の第2通気孔17とは、上下連通し、マイクロ流路チップの各領域内の気圧平衡を保持するために使用される。可視窓1025とチップ基板101の検出領域凹溝11は、一対一で対応して設けられ、蛍光送受信装置の検出チャネルであり、1層の光透過性膜を貼り付けることにより、検出領域の密封を実現するとともに、蛍光検出性能を向上させることができる。
【0066】
前記蛇型混合領域凹溝14は、螺旋状又は蛇行状であり、前記蛇行状は、連続した複数の折り返し形状からなる。
【0067】
前記チップ基板101本体の背部の中央には、チップ固定孔が開設される。
【0068】
チップ固定孔は、チップ基板101本体の背部に位置し、チップ基板101本体における土壌浸出液導入凹溝12などが開設される表面との反対面であり、
図5及び
図9から見ると、チップ基板101本体の背面であり、
図7から見ると、チップ基板101本体の下面である。
【0069】
前記検出領域凹溝(11)の一方側には、検出領域凹溝(11)に連通する第2通気孔(17)が設けられ、前記第2通気孔(17)と通気孔(1024)は、一対一で対応して設けられ、第2通気孔(17)は、対応する通気孔(1024)に連通する。
【0070】
前記可視窓(1025)は、蓋板層(102)本体に開設される貫通孔と、貫通孔に取り付けられる光透過性膜とを含む。
【0071】
本発明によれば、以下のステップ1から5を含む前記マイクロ流路チップによる検出方法がさらに提供される。
マイクロ流路チップの取り付け(ステップ1):遠心式マイクロ流路チップを遠心検出器に取り付ける。
被検液の注入及び流動(ステップ2):被検液定量導入孔1021中に被検液を加え、遠心検出器を起動し、遠心検出器は、マイクロ流路チップを回転速度A1でT1秒回転させ、マイクロ流路チップの回転過程において、被検液は、被検液定量導入孔1021から土壌浸出液導入凹溝12内に流動してから、土壌浸出液導入凹溝12から各定量導入凹溝18内に流動し、被検液定量導入孔1021中の過剰な被検液は、各被検液ガイド溝1022に沿って各被検液ガイド溝1022の末端の溜り部1026内に流動する。一実施例において、A1の値は200rpm/分間、T1の値は30秒である。
一次混合と反応(ステップ3):遠心検出器の回転速度を増加させ、遠心検出器は、マイクロ流路チップを回転速度A2でT2秒回転させ、マイクロ流路チップの回転過程において、被検液及び検出溶液は、それぞれ定量導入凹溝18及び試薬貯蔵凹溝20からT型混合凹溝16を通して混合領域凹溝15内に流動し、混合領域凹溝15において被検液と検出溶液は混合して混合液が得られ、被検液中の被検イオンと検出溶液とが反応する。一実施例において、A2の値は800rmp/分間、T2の値は10秒である。
二次混合と反応(ステップ4):遠心検出器の動作を停止させ、混合領域凹溝15中の混合液は、蛇型混合領域凹溝14に流入し、蛇型混合領域凹溝14において混合液中の被検液と検出溶液はさらに混合して反応し、蛇型混合領域凹溝14と検出領域凹溝11との間の第2キャピラリーバルブ29に流動する。
混合と反応の完成(ステップ5):遠心検出器を再度起動し、遠心検出器は、マイクロ流路チップを回転速度A3でT3秒回転させ、マイクロ流路チップの回転過程において、蛇型混合領域凹溝14と検出領域凹溝11との間に位置する混合液は、第2キャピラリーバルブ29を通過して検出領域凹溝11に流入する。一実施例において、A3の値は1500rpm/分間、T3の値は20秒である。
【0072】
異なる試薬貯蔵凹溝20には、異なるイオンを検出するための検出溶液が予め貯蔵される。
【0073】
各通路分岐には、いずれも試薬貯蔵凹溝20が設けられる。このなる試薬貯蔵凹溝20内に異なるイオンを検出する検出溶液が収容されることで異なるイオンを検出する。検出溶液は、特異的識別能力を有する蛍光ナノ材料のプローブ及び対応する溶媒を含む。蛍光ナノ材料のプローブは、溶媒に均一に分散し、特定の蛍光励起波長と発光波長を有する。検出溶液と被検液とが混合した後、検出溶液中のナノ材料のプローブは、被検イオンを識別して蛍光波長の迅速かつ顕著な変化を引き起こすことができ、検出部品を使用すれば現場での定量検出を実現することができる。ナノ材料のプローブは、化学有機合成方法を採用し、異なるイオンに対して構造が異なりかつ特異的識別能力を有するナノプローブを合成する。このプローブは、高選択性、高感度、可視化定量検出などの利点を有する。特定のイオンを検出しようとする場合、このイオンに対応する通路分岐を使用すればよい。これによって、複数種類のイオンを1回で同時に検出できるため、検出効率が向上する。
【0074】
本発明のマイクロ流路チップ及びその検出方法では、多段階キャピラリーバルブ構造により被検液と検出液の流動制御の問題を解決し、遠心力駆動により反応と検出過程の正確な制御を解決し、自動的、簡単、正確、迅速な現場検出が実現されにくいとの問題を解決し、これによって、試料をシステムに注入した後に検出データを即時に得る現場迅速検出の技術的効果が得られる。
【0075】
本発明のプローブは、ナノ材料で作製される。このプローブとマイクロ流路とを組み合わせて土壌中の様々なイオンを同時に検出し、ナノ材料のイオンに対する特異的反応及び反応前後の蛍光変化により、土壌中のイオンの種類及び濃度情報を即時に得ることができる。このような技術は、イオン特異的識別能力を有し、土壌中の様々なイオンの同時検出の問題を効果的に解決するとともに、蛍光検出方法は、可視光の干渉を除去できるため、イオン検出の感度と信頼性が向上する。本発明の遠心式マイクロ流路チップは、土壌中の様々なイオンの同時検出を実現し、土壌中のイオンの種類及び濃度情報を効率、簡単、正確、迅速に得ることができ、現代農業センサの自動的取得及び検知技術の強化及び発展に有利である。
【0076】
以上、本発明の基本的原理、主な特徴及び本発明の利点を説明した。当業者に理解できるように、本発明は、上記の実施例に制限されず、上記の実施例及び明細書における説明は、本発明の原理だけであり、本発明の思想及び範囲から逸脱しない限り、本発明をさらに変化及び改良することができ、これらの変化及び改良は、いずれも本発明の保護範囲に含まれる。本発明の保護範囲は、添付する特許請求の範囲及びその同等物によって定められる。
【国際調査報告】