(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】ラクトバチルス属の菌株3種を含む組成物、およびその用途
(51)【国際特許分類】
C12N 1/20 20060101AFI20240730BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20240730BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240730BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240730BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240730BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20240730BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240730BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20240730BHJP
A61K 35/747 20150101ALI20240730BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20240730BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20240730BHJP
A23K 10/16 20160101ALI20240730BHJP
【FI】
C12N1/20 A ZNA
A23L33/135
A61P21/00
A61P25/00
A61P17/00
A61P1/00
A61P19/02
A61P3/04
A61K35/747
A61K35/74 A
A61P3/00
A23K10/16
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023580362
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(85)【翻訳文提出日】2024-02-22
(86)【国際出願番号】 KR2022009479
(87)【国際公開番号】W WO2023277638
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】10-2021-0086148
(32)【優先日】2021-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0080568
(32)【優先日】2022-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523486291
【氏名又は名称】ジーアイ バイオーム インク.
【氏名又は名称原語表記】GI BIOME INC.
【住所又は居所原語表記】B-1567, 14 Galmachi-ro 288beon-gil, Jungwon-gu Seongnam-si Gyeonggi-do 13201 (KR)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ヤン、ボギ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ミョンホ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ハンソン
【テーマコード(参考)】
2B150
4B018
4B065
4C087
【Fターム(参考)】
2B150AA01
2B150AA06
2B150AB10
2B150AC06
2B150DD12
2B150DD13
2B150DD21
2B150DD26
4B018MD86
4B018ME08
4B065AA30X
4B065AC20
4B065CA41
4B065CA43
4B065CA44
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC56
4C087CA09
4C087MA52
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZA66
4C087ZA70
4C087ZA89
4C087ZA94
4C087ZA96
4C087ZC21
(57)【要約】
ラクトバチルス・ファーメンタム菌株およびラクトバチルス・プラタルム菌株の3種の混合物及およびその用途に関するものであり、一態様によるラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)GB102、GB103菌株およびラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)GB104菌株の混合物と、それらの溶解物、培養液または培養液の抽出物を有効成分として含む組成物は、老化によって引き起こされる筋力低下症状を軽減させるか、または老化によって引き起こされる腸内微生物環境の変化を減少させるなど、筋肉関連疾患または肥満の予防または治療用として有用に使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
寄託番号KCTC 14105BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)GB102菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれか、
寄託番号KCTC 14106BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)GB103菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれか、および
寄託番号KCTC 14107BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)GB104菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれかからなる群から選択された少なくとも1つ、2つ、または3つ以上を含む、組成物。
【請求項2】
前記菌株は、生菌または死菌である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物に含まれる混合菌株は、10
3~10
16CFU/gの量で含まれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物は、経口投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は、抗老化用である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記抗老化は、筋肉細胞の抗老化、神経細胞の抗老化、皮膚細胞の抗老化、および腸内微生物環境の抗老化からなる群から1つ以上選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
有効量の請求項1に記載の組成物をそれを必要とする個体に投与するステップを含む、老化を抑制する方法。
【請求項8】
抗老化組成物の製造のための請求項1に記載の組成物の用途。
【請求項9】
請求項1に記載の組成物を有効成分として含む、筋肉関連疾患の予防または改善用の健康機能食品。
【請求項10】
前記組成物は、関節硬直、筋肉喪失、力喪失、速度喪失、均衡喪失、持久力喪失および敏捷性喪失からなる群の少なくとも1つ以上を減少させる、請求項9に記載の健康機能食品。
【請求項11】
前記組成物は、運動遂行能力を向上させるもの、筋肉調整力、移動性および歩行を回復させるもの、筋肉量および握力を増加させるものからなる群から少なくとも1つ以上選択される、請求項9に記載の健康機能食品。
【請求項12】
前記筋肉関連疾患は、サルコペニア(sarcopenia)、加齢性サルコペニア、アトニー(atony)、筋萎縮症(muscular atrophy)、筋ジストロフィー(muscular dystrophy)、廃用性筋萎縮(disuse muscle atrophy)、連動ニューロン疾患(motor neuron disease)、炎症性筋疾患、神経筋接合部疾患、内分泌性筋疾患、筋肉退化、筋強直症、筋萎縮性軸索硬化症、筋無力症、筋炎、筋肉石灰化、筋肉骨化、筋肉弱化関連疾患および悪液質(cachexia)からなる群から一つ以上選択される、請求項9に記載の健康機能食品。
【請求項13】
有効量の請求項1に記載の組成物をそれを必要とする個体に投与するステップを含む、筋肉関連疾患を予防または治療する方法。
【請求項14】
筋肉関連疾患の予防または改善用の健康機能食品の製造のための請求項1に記載の組成物の用途。
【請求項15】
請求項1に記載の組成物を有効成分として含む、肥満の予防または改善用の健康機能食品。
【請求項16】
有効量の請求項1に記載の組成物をそれを必要とする個体に投与するステップを含む、肥満を予防または治療する方法。
【請求項17】
肥満の予防または改善用の健康機能食品の製造のための請求項1に記載の組成物の用途。
【請求項18】
請求項1に記載の組成物を有効成分として含む、筋肉関連疾患の予防または治療用の医薬組成物。
【請求項19】
前記組成物が、関節硬直、筋肉喪失、力喪失、速度喪失、均衡喪失、持久力喪失および敏捷性喪失からなる群の少なくとも1つを減少させる、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記組成物は、運動遂行能力を向上させるもの、筋肉調整力、移動性および歩行を回復させるもの、筋肉量および握力を増加させるものからなる群から少なくとも1つ以上選択される、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項21】
前記筋肉関連疾患は、サルコペニア(sarcopenia)、加齢性サルコペニア、アトニー(atony)、筋萎縮症(muscular atrophy)、筋ジストロフィー(muscular dystrophy)、廃用性筋萎縮(disuse muscle atrophy)、連動ニューロン疾患(motor neuron disease)、炎症性筋疾患、神経筋接合部疾患、内分泌性筋疾患、筋肉退化、筋強直症、筋萎縮性軸索硬化症、筋無力症、筋炎、筋肉石灰化、筋肉骨化、筋肉弱化関連疾患および悪液質(cachexia)からなる群から1つ以上選択される、請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項22】
筋肉関連疾患の予防または治療用の医薬製剤の製造のための請求項1に記載の組成物の用途。
【請求項23】
請求項1に記載の組成物を有効成分として含む、肥満の予防または治療用の医薬組成物。
【請求項24】
肥満の予防または治療用の医薬製剤の製造のための請求項1に記載の組成物の用途。
【請求項25】
請求項1に記載の組成物を有効成分として含む、飼料組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ラクトバチルス属の菌株3種を含む組成物、およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロバイオーム(microbiome)は、特定の環境に存在している微生物とそれらのバイオ情報全体を意味するものであり、当該環境内の微生物叢(microbiota)の遺伝情報およびそれに由来する産物全体の集合体(genome、transcriptome、proteome、metabolome)を意味する。したがって、ヒトマイクロバイオーム(human microbiome)は、人間の体内外に生息している微生物とそれらのバイオ情報全体を意味する。
【0003】
人間の体は、多くの微生物と共生関係を持ちながら生きていき、特に腸内には、微生物が栄養分を摂取し、体系的な群集を形成するのに最適な環境が整っており、最も多い微生物が存在する。腸内微生物は、宿主が持つ酵素だけでは生成できない栄養分を供給し、宿主の代謝および免疫システムと深い関連を持つ一方、過敏性大腸症候群、肥満、アトピー、うつ病、関節リウマチ、自閉症スペクトラム障害、認知症など、様々な病気の発生に関連していると報告されている。
【0004】
近年、欧米的な食習慣と無分別な抗生物質の使用によって腸内微生物叢の不均衡が起こり腸の健康が悪化しており、腸内微生物や様々な病気に対する研究により腸内微生物の重要性が浮き彫りになり関心が高まっている。
【0005】
さらに、人類の平均寿命の延長により高齢化社会が出現し、人類はこれまで経験したことのない様々な宿題に直面している。社会・経済的には、老年人口の増加および生産年齢層の減少による一人当たりの老年人口への扶養費増加が予想され、さらに高齢者の生活の質の向上に対する関心も増加する傾向にある。このように、健康で幸せな老年の生活に対する社会的ニーズが高まるにつれて、老年化に伴う病態の変化や老化関連疾患の予防に関する研究が盛んに行われている。
【0006】
このように近年、乳酸菌に対する関心が高まるにつれて、老化関連疾患の予防および治療効果に対する乳酸菌の利用価値を確認する研究結果が報告されている。韓国登録特許第10-2049700号は、ラクトバチルス・ルテリ(Lactobacillus reuteri)ATG-F4菌株の筋肉疾患の予防または治療活性を開示した特許だが、各単一菌株を有効成分とする発明であり、混合菌株を有効成分とする発明は、まだ開示されていないのが実情である。したがって、本発明者らは、食品および医薬品として応用可能な組成物の用途として菌株を発掘しようとした。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一態様は、寄託番号KCTC 14105BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)GB102菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれか、寄託番号KCTC 14106BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)GB103菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれか、および寄託番号KCTC 14107BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)GB104菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれかからなる群から選択された少なくとも1つ、2つまたは3つ以上を含む組成物を提供するものである。
【0008】
他の態様は、寄託番号KCTC 14105BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)GB102菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれか、寄託番号KCTC 14106BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)GB103菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれか、および寄託番号KCTC 14107BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)GB104菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれかからなる群から選択された少なくとも1つ、2つまたは3つ以上を含む組成物を有効成分として含む抗老化または抗酸化組成物を提供することである。
【0009】
他の態様は、寄託番号KCTC 14105BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)GB102菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれか、寄託番号KCTC 14106BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)GB103菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれか、および寄託番号KCTC 14107BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)GB104菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれかからなる群から選択された少なくとも1つ、2つまたは3つ以上を含む組成物を有効成分として含む老化関連疾患の予防、改善、または治療用の組成物を提供することである。
【0010】
他の態様は、有効量の前記組成物をそれを必要とする個体に投与するステップを含む、老化を抑制する方法を提供することである。
【0011】
他の態様は、抗老化組成物の製造のための前記組成物の用途を提供することである。
【0012】
他の態様は、寄託番号KCTC 14105BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)GB102菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれか、寄託番号KCTC 14106BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)GB103菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれか、および寄託番号KCTC 14107BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)GB104菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれかからなる群から選択された少なくとも1つ、2つまたは3つ以上を含む組成物を有効成分として含む筋肉関連疾患または肥満の予防または改善用の健康機能食品を提供することである。
【0013】
他の態様は、寄託番号KCTC 14105BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)GB102菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれか、寄託番号KCTC 14106BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)GB103菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれか、および寄託番号KCTC 14107BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)GB104菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれかからなる群から選択された少なくとも1つ、2つまたは3つ以上を含む組成物を有効成分として含む筋肉関連疾患または肥満の予防または治療用の医薬組成物を提供することである。
【0014】
他の態様は、有効量の前記組成物をそれを必要とする個体に投与するステップを含む、筋肉関連疾患を予防または治療する方法を提供することである。
【0015】
他の態様は、筋肉関連疾患の予防または改善用の健康機能食品の製造のための前記組成物の用途を提供することである。
【0016】
他の態様は、有効量の前記組成物をそれを必要とする個体に投与するステップを含む、肥満を予防または治療する方法を提供することである。
【0017】
他の態様は、肥満の予防または改善用の健康機能食品の製造のための前記組成物の用途を提供することである。
【0018】
他の態様は、筋肉関連疾患の予防または治療用の医薬製剤の製造のための前記組成物の用途を提供することである。
【0019】
他の態様は、肥満の予防または治療用の医薬製剤の製造のための前記組成物の用途を提供することである。
【0020】
他の態様は、寄託番号KCTC 14105BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)GB102菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれか、寄託番号KCTC 14106BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)GB103菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれか、および寄託番号KCTC 14107BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)GB104菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれかからなる群から選択された少なくとも1つ、2つまたは3つ以上を含む組成物を有効成分として含む飼料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
一態様は、寄託番号KCTC 14105BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)GB102菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれか、寄託番号KCTC 14106BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)GB103菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれか、および寄託番号KCTC 14107BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)GB104菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれかからなる群から選択された少なくとも1つ、2つまたは3つ以上を含む組成物を提供する。
【0022】
一具体例において、前記菌株は、生菌または死菌の組成物であり得る。
【0023】
一具体例において、前記組成物に含まれる混合菌株は、103~1016CFU/gの量で含まれることができる。
【0024】
一具体例において、前記組成物は、経口投与されても良い。
【0025】
他の態様は、寄託番号KCTC 14105BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)GB102菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれか、寄託番号KCTC 14106BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)GB103菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれか、および寄託番号KCTC 14107BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)GB104菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれかからなる群から選択された少なくとも1つ、2つまたは3つ以上を含む組成物を有効成分として含む抗老化組成物、抗酸化組成物または老化関連疾患の予防、改善または治療用の組成物を提供する。
【0026】
一具体例において、前記抗老化は、筋肉細胞の抗老化、神経細胞の抗老化、皮膚細胞の抗老化、および腸内微生物環境の抗老化からなる群から1つ以上選択されるものであり得る。
【0027】
他の態様は、寄託番号KCTC 14105BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)GB102菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれか、寄託番号KCTC 14106BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)GB103菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれか、および寄託番号KCTC 14107BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)GB104菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれかからなる群から選択された少なくとも1つ、2つまたは3つ以上を含む組成物を有効成分として含む筋肉関連疾患または肥満の予防または改善用の健康機能食品を提供する。
【0028】
一具体例において、前記組成物は、関節硬直、筋肉喪失、力喪失、速度喪失、均衡喪失、持久力喪失および敏捷性喪失からなる群の少なくとも1つ以上を減少させることができる。
【0029】
一具体例において、前記組成物は、運動遂行能力を向上させるもの、筋肉調整力、移動性および歩行を回復させるもの、筋肉量および握力を増加させるものからなる群から少なくとも1つ以上選択されるものであり得る。
【0030】
一具体例において、前記筋肉関連疾患の予防または治療用の医薬組成物は、運動遂行能力を向上させるもの、筋肉調整力、移動性および歩行を回復させるもの、筋肉量および握力を増加させるもの、または高齢者の筋力喪失を抑制するものであり得る。
【0031】
一具体例において、前記筋肉関連疾患は、サルコペニア(sarcopenia)、加齢性サルコペニア、筋萎縮症(muscular atrophy)、筋ジストロフィー(muscular dystrophy)、廃用性筋萎縮(disuse muscle atrophy)、運動ニューロン疾患(motor neuron disease)、炎症性筋疾患、神経筋接合部疾患、内分泌性筋疾患、筋肉退化、筋強直症、筋萎縮性軸索硬化症、筋無力症、筋炎、筋肉石灰化、筋肉骨化、筋肉弱化関連疾患および悪液質(cachexia)からなる群から1つ以上選択されても良い。
【0032】
他の態様は、寄託番号KCTC 14105BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)GB102菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれか、寄託番号KCTC 14106BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)GB103菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれか、および寄託番号KCTC 14107BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)GB104菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれかからなる群から選択された少なくとも1つ、2つまたは3つ以上を含む組成物を有効成分として含む筋肉関連疾患または肥満の予防または治療用の医薬組成物を提供する。
【0033】
一具体例において、前記組成物は、関節硬直、筋肉喪失、力喪失、速度喪失、均衡喪失、持久力喪失および敏捷性喪失からなる群の少なくとも1つ以上を減少させることができる。
【0034】
一具体例において、前記組成物は、運動遂行能力を向上させるもの、筋肉調整力、移動性および歩行を回復させるもの、筋肉量および握力を増加させるものからなる群から少なくとも1つ以上選択されても良い。
【0035】
一具体例において、前記筋肉関連疾患は、サルコペニア(sarcopenia)、加齢性サルコペニア、筋萎縮症(muscular atrophy)、筋ジストロフィー(muscular dystrophy)、廃用性筋萎縮(disuse muscle atrophy)、運動ニューロン疾患(motor neuron disease)、炎症性筋疾患、神経筋接合部疾患、内分泌性筋疾患、筋肉退化、筋強直症、筋萎縮性軸索硬化症、筋無力症、筋炎、筋肉石灰化、筋肉骨化、筋肉弱化関連疾患および悪液質(cachexia)からなる群から1つ以上選択されても良い。
【発明の効果】
【0036】
一態様によるラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)GB102、GB103菌株およびラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)GB104菌株の混合物と、それらの溶解物、培養液または培養液の抽出物を有効成分として含む組成物は、老化によって引き起こされる筋力低下症状を軽減させるか、または老化によって引き起こされる腸内微生物環境の変化を減少させるなど、筋肉関連疾患または肥満の予防または治療用として有用に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】一具体例による混合菌株および漢方薬の併用投与による菌叢の均等度(evenness)の変化を示すグラフである。
【
図2】一具体例による混合菌株および漢方薬の併用投与による腸内菌叢の主座標分析(PCoA)の結果を示すグラフである。
【
図3】一具体例による混合菌株および漢方薬の併用投与によるファーミキューテス門(Firmicutes)の中の主要系統におけるグループ間の頻度差を示すグラフである。
【
図4】一具体例による混合菌株および漢方薬の併用投与によるバクテロイデーテス門(Bacteroidetes)の中の主要系統におけるグループ間の頻度差を示すグラフである。
【
図5】一具体例による混合菌株の組成物の投与によるファーミキューテス門/バクテロイデーテス門(Firmicutes/Bacteroidetes)の比率変化を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
一態様は、寄託番号KCTC 14105BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)GB102菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれか、寄託番号KCTC 14106BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)GB103菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれか、および寄託番号KCTC 14107BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)GB104菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれかからなる群から選択された少なくとも1つ、2つまたは3つ以上を含む組成物を提供するものである。
【0039】
一具体例において、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)GB102菌株、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)GB103菌株、およびラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)GB104菌株は、生菌(生きた菌)であるか、死菌(死んだ菌)であり得る。より詳細には、前記死菌は、熱処理による死菌であり得る。
【0040】
本明細書において、ラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)は、ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)とリモシラクトバチルス・ファーメンタム(Limosilactobacillus fermentum)を含む名称の変更以前の旧ラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)を意味する。
【0041】
前記ラクトバチルス(Lactobacillus)は、リモシラクトバチルス(Limosilacto bacillus)またはラクチプランチバチルス(Lactiplantibacillus)に名称が変更され、変更された菌株名を本明細書で相互互換的に使用することができる。例えば、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)は、リモシラクトバチルス・ファーメンタム(Limosilactobacillus fermentum)に菌株名が変更され、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)は、ラクチプランチバチルス・プランタルムに菌株名が変更された。
【0042】
本明細書における「培養物」という用語は、「培養上清液」、「条件培養液」または「調整培地」と互換的に使用することができ、ラクトバチルス属の菌株がインビトロで成長および生存できるように栄養分を供給することができる培地に前記菌株を一定期間培養して得られる前記菌株、その代謝物、余分の栄養分などを含む全培地を意味することができる。なお、前記培養液は、菌株を培養して得られた菌体培養液から菌体を除去した培養液を意味するものであり得る。前記培地は、公知の液体培地または固体培地から選択することができ、例えば、MRS液体培地、GAM液体培地、MRS寒天培地、GAM寒天培地、BL寒天培地であり得るが、これらに限定されるものではない。
【0043】
本明細書における「溶解物」という用語は、壊れたラクトバチルス・ファーメンタムまたはラクトバチルス・プランタルムなどの微生物の細胞の水性培地中の溶液または懸濁液を意味する。細胞溶解物は、例えば、DNA、RNA、タンパク質、ペプチド、炭水化物、脂質などの巨大分子、および/または、アミノ酸、糖、脂肪酸などの微小分子、またはその分画を含む。さらに、前記溶解物は、滑らかであるか、顆粒構造であり得る細胞破片を含む。
【0044】
前記微生物の細胞溶解を達成できる方法は、公知の様々な方法を用いることができ、微生物の細胞溶解を達成できる任意の方法を用いることができる。例えば、細胞の開放/破壊は、酵素によって、化学的にまたは物理的に実施することができる。酵素および酵素混合物の非限定的な例は、プロテイナーゼKなどのプロテアーゼ、リパーゼまたはグリコシダーゼであり、化学物質の非限定的な例は、イオン透過担体、硫酸ドデシルナトリウムなどの洗剤、酸または塩基であり、物理的手段の非限定的な例は、フレンチプレスなどの高圧、浸透圧、熱または寒さなどの温度である。さらに、タンパク質分解酵素以外の酵素、酸、塩基などの適切な組み合わせを用いる方法も使用することができる。
【0045】
前記培養液は、菌株を培養して得られた培養液そのもの、その濃縮物、または凍結乾燥物または培養液から菌株を除去して得られた培養上清液、その濃縮物または凍結乾燥物を含むことができる。
【0046】
他の態様は、寄託番号KCTC 14105BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)GB102菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれか、寄託番号KCTC 14106BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)GB103菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれか、および寄託番号KCTC 14107BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)GB104菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれかからなる群から選択された少なくとも1つ、2つまたは3つ以上を含む組成物を有効成分として含む抗老化または抗酸化組成物を提供することである。
【0047】
本明細書における「有効成分として含む」という用語は、ラクトバチルス属菌株、前記菌株由来の小胞体、前記菌株の破砕液、培養液、またはその培養液の抽出物が添加されることを意味し、薬物伝達および安定化などのために種々な成分を副成分として添加して様々な形態にフォーミュレーション(formulation)されることを含む意味である。
【0048】
本明細書における「治療的有効量」という用語は、研究者、医師または他の臨床医が得ようとする患者の生物学的または医学的反応または所望の治療効果を導出する本発明の方法および用途のための混合菌株組成物、または本発明の方法および用途のための混合菌株を含む医薬組成物の量を意味する。混合菌株の組成物の治療的有効量は、個体の病態、年齢、性および体重などの要因に応じて可変的であり得る。治療的有効量は、治療的に有益な効果が、いかなる毒性または有害な効果を上回る量でもある。
【0049】
他の態様は、寄託番号KCTC 14105BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)GB102菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれか、寄託番号KCTC 14106BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)GB103菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれか、および寄託番号KCTC 14107BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)GB104菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれかからなる群から選択された少なくとも1つ、2つまたは3つ以上を含む組成物を有効成分として含む老化関連疾患の予防、改善、または治療用の組成物を提供することである。
【0050】
一具体例において、ラクトバチルス属混合菌株または混合菌株の組成物は、抗酸化活性を有するものであり得る。特定の理論に限定されることなく、老化の自然な過程は、体が酸化的損傷により脆弱にする。アンチエイジング効果は、主に抗酸化特性とフリーラジカル消去能力に関連している。さらに、特定の理論に限定されることなく、酸化的損傷は、老化と共に発生する骨格筋減少の主な原因の1つとして提案されている。老化過程の促進剤としてフリーラジカルの識別は、それらの抑制が有機体(特に骨格筋)に与える有害な変形を制限できることを意味するものであり得る。すなわち、抗酸化能力を有する分子が酸化的損傷に対応できるならば、これは無力化過程を含む老化関連状態の発症を予防するのに重要な役割を果たすことができる。酸化的損傷がサルコペニア(およびその他の老人性疾患)を引き起こす病態生理学的機序の基礎であり、内因性抗酸化防御を強化するための介入(例えば、抗酸化剤の投与)が老化を抑制する。例えば、赤ワインに含まれるポリフェノール化合物であるレスベラトロールは、ミトコンドリア呼吸の減少によりカエノラブディティス・エレガンスの老化を遅らせることができると報告されている。(Wood et al.、2004)。さらに、酸化ストレスは、骨形成と吸収を担う細胞間の不均衡を引き起こし、骨回転率を増加させることが示された。したがって、抗酸化剤は酸化ストレスの影響を抑制および/または改善すると知られているので、抗酸化活性を示す一具体例によるラクトバチルス属混合菌株は、抗老化または老化関連疾患の予防、改善または治療に有用に使用できる効果がある。
【0051】
一具体例において、ラクトバチルス属混合菌株の組成物の投与は、老化によって減少した筋力を改善することができる。具体的には、本発明の一実施形態において、老化マウスに前記ラクトバチルス属混合菌株の組成物を投与した群で筋力(grip strength)が増加する結果を確認した。
【0052】
一具体例において、ラクトバチルス属混合菌株の組成物の投与は、老化による腸内微生物環境の変化を軽減させることができる。一具体例において、ラクトバチルス属混合菌株の組成物の投与は、老化マウスの腸内菌叢を若いマウスの菌叢と類似にし、老化マウスの腸内菌叢によって引き起こされる肥満などの老化関連疾患を予防または治療するに役立つことが確認された。最近の論文では、老化マウスの腸内菌叢は肥満を引き起こす可能性があり、老化マウスでファーミキューテス/バクテロイデーテスの割合が増加すると報告された(Binyamin et al.、Genome Medicine、2020)。これは、一具体例による乳酸菌混合菌株の組成物の投与が老化マウスで起こる肥満などの疾患の予防および治療にプラスの影響を及ぼし得ることを示唆する。
【0053】
本明細書における「抗老化」という用語は、細胞または個体の老化を遅延または防止するか、老化した細胞(senescent cell)をより若い細胞(young cell)に転換させることを含む。
【0054】
一具体例において、前記抗老化は、骨格筋細胞の抗老化、神経細胞の抗老化、皮膚細胞の抗老化、免疫細胞の抗老化、および腸内微生物環境の抗老化からなる群から1つ以上選択されるものであり得る。
【0055】
本明細書における老化関連疾患は、筋肉老化関連疾患(例えば、サルコペニア)または肥満であり得る。
【0056】
老化は、体内細胞の1つから体のすべての組織と器官を変化させる。老化によって皮膚のしわが増え、腰が曲がるだけでなく、身体の構成比率が変化する。体内の水分、筋肉をなすタンパク質、脂肪、骨格をなすミネラルの構成比率が変化する。25歳の青年と70歳の高齢者を比較すると、水分、筋肉量、ミネラルはすべて減少するが、脂肪は2倍以上増加した。年齢による体脂肪の変化は、成人病と直接関連している。脂肪は割合が増えるだけでなく分布が変わり、皮下脂肪は減り腹部内臓脂肪が増える。まだ理由は明確に解明されていないが、内臓脂肪は糖尿病、高血圧などの成人病を引き起こすTNF-α、IL-6といった有害なサイトカイン(cytokine)をより多く分泌して多くの生理的機能を減退させる。
【0057】
また、筋肉量は30代以降減少し、成長ホルモンや男性ホルモンの減少が影響を及ぼす。一般に、50歳を過ぎると筋肉量は毎年1~2%減少することが分かっており、筋力は1.5~3%までも減少する。
【0058】
本明細書における「予防」という用語は、一態様による医薬組成物の投与によって個体の病態を抑制するか、または発症を遅らせるあらゆる行為を意味することができる。
【0059】
本明細書における「治療」という用語は、一態様による医薬組成物の投与によって個体の病態に対する症状が改善されるか、または有益に変化するあらゆる行為を意味することができる。
【0060】
本発明で使用する「筋肉老化」という用語は、老化によって筋繊維内のミトコンドリアがその活性を失うか、またはミトコンドリアの数が減少するにつれて筋肉の密度および機能が徐々に弱まることを意味するものであり、サルコペニア(sarcopenia)を含む意味である。
【0061】
本発明で使用する「筋肉老化」という用語は、老化に伴って生じる筋肉の衰退、例えば、筋機能(筋力、筋持久力、筋瞬発力など)の低下や筋萎縮などを包含する意味であり、前記筋萎縮とは、筋細胞の減少や縮小によって筋量が低下することを意味する。筋肉老化により、30歳以降、筋肉の密度と機能が徐々に弱まる現象が現れることがあり、転倒および骨折が起こりやすい。筋肉老化の原因は、成長ホルモンおよび男性ホルモンの減少、体内タンパク質合成能力の低下、筋密度の維持に関連するタンパク質またはカロリー吸収能力の低下などであり得る。
【0062】
本発明で使用する「サルコペニア」という用語は、栄養不足、運動量の減少、老化などにより正常な筋肉量と筋力および筋機能が減少する疾患であり、大体30代から筋肉が減少し始め、60代以上は30%、80代程度になると筋肉が半分まで減少することになる。
【0063】
サルコペニアは、糖尿病、高脂血症、肥満などの合併症を引き起こし、身体全体の機能を落とし、骨を弱めることとも関連があり、特に高齢層ほどサルコペニアに背骨の老化までかみ合い、腰椎椎間板ヘルニアの発生確率が非常に高い。
【0064】
本明細書における「筋肉老化関連疾患」という用語は、老化による前記のような筋肉の状態変化および異常により引き起こされる疾患を意味するが、特に老化による筋肉減少を加齢性サルコペニア(age-related sarcopenia)と言う。
【0065】
一具体例において、前記筋肉関連疾患は、サルコペニア(sarcopenia)、加齢性サルコペニア、アトニー(atony)、筋萎縮症(muscular atrophy)、筋ジストロフィー(muscular dystrophy)、廃用性筋萎縮(disuse muscle atrophy)、連動ニューロン疾患(motor neuron disease)、炎症性筋疾患、神経筋接合部疾患、内分泌性筋疾患、筋肉退化、筋強直症、筋萎縮性軸索硬化症、筋無力症、筋炎、筋肉石灰化、筋肉骨化、筋肉弱化関連疾患および悪液質(cachexia)であり得るが、これに限定されない。
【0066】
前記筋肉老化関連疾患は、外傷による筋肉炎症を伴う可能性があり、本発明の組成物は、筋肉炎症を軽減または改善する効果を有する。
【0067】
本明細書において「肥満」という用語は、体脂肪が過剰である状態を指す。前記肥満は、臨床的にボディマス指数(BMI)が韓国の場合25、世界保健機構(WHO)によると30以上の場合であっても良い。一般に、肥満は体重が正常値より高い場合を意味するが、体重が高くなくても、体の構成成分のうち体脂肪率が高い場合、肥満であり得る。前記肥満は、大人と子供いずれも発症する可能性がある。前記肥満は、体重の増加だけでなく、過食、過飲および過食症、高血圧、糖尿病、血漿インスリン濃度の上昇、インスリン抵抗性、高脂血症、代謝症候群、インスリン抵抗性症候群、肥満関連胃食道逆流、動脈硬化症、過コレステロール血症、尿酸過剰血症、心臓肥大および左心室肥大、脂肪異栄養症、非アルコール性脂肪肝炎、心血管疾患、または多嚢胞性卵巣症候群といった肥満関連疾患を引き起こす可能性がある。したがって、前記組成物は肥満だけでなく、前記肥満関連疾患の予防または治療にも使用することができる。さらに、前記組成物は、肥満でなくても体重を減らしたい個体に使用することができる。
【0068】
前記肥満は、様々な原因によるものであり得る。例えば、前記原因は、高脂肪食、運動量減少、遺伝、心理的要因、内分泌系異常、代謝異常、社会的および環境的要因であり得る。特に、前記肥満は、高脂肪食で誘導されたものであり得る。
【0069】
一具体例による前記組成物は、組成物の総重量に対して0.001重量%~80重量%のラクトバチルス属混合菌株を含み得る。また、ラクトバチルス属混合菌株の投与量は、0.01mg~10、000mg、0.1mg~1000mg、1mg~100mg、0.01mg~1000mg、0.01mg~100mg、0.01mg~10mg、または0.01mg~1mgであり得る。前記菌株は、治療的有効量または栄養的に有効な濃度で組成物に含まれるが、例えば、1種の菌株、2種の混合菌株、3種の混合菌株が103~1016CFU/g、103~1015CFU/g、103~1014CFU/g、103~1013CFU/g、103~1012CFU/g、104~1016CFU/g、104~1015CFU/g、104~1014CFU/g、104~1013CFU/g、104~1012CFU/g、105~1016CFU/g、105~1015CFU/g、105~1014CFU/g、105~1013CFU/g、105~1012CFU/g、106~1013CFU/g、106~1012CFU/g、107~1013CFU/g、107~1012CFU/g、108~1013CFU/g、または108~1012CFU/gの含量で含まれるか、または同等数の生菌または死菌の培養物として組成物に含まれる。具体的には、成人患者の場合、1×103~1×1016CFU/gの生菌または死菌を1回または数回に分けて投与することができる。ただし、投与量は製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病的状態、食べ物、投与時間、投与経路、排泄速度および反応感応性などの要因によって多様に処方することができ、当業者であればこれらの要因を考慮して投与量を適切に制御することができる。投与回数は、1回または臨床的に許容可能な副作用の範囲内で2回以上可能であり、投与部位に対しても1箇所または2箇所以上に投与することができる。ヒト以外の動物についても、kg(体重)当たりのヒトと同じ投与量とするか、または例えば、目的の動物とヒトとの器官(心臓など)の容積比(例えば、平均値)などで前記投与量に基づいて換算した量を投与することができる。可能な投与経路には、経口、舌下、非経口(例えば、皮下、筋肉内、動脈内、腹腔内、硬膜内、または静脈内)、直腸、局所(経皮を含む)、吸入、および注射、または移植型装置あるいは物質の挿入を含み得る。一具体例による治療の対象動物としては、ヒトおよびその他の標的哺乳動物を例に挙げることができ、具体的には、ヒト、サル、マウス、ラット、ウサギ、羊、牛、犬、馬、豚などが含まれる。一実施形態によれば、前記組成物は、死滅した乾燥菌株を含み、1回1g~10g、0.5g~1.5g、2.5g~3.5g、または4.5g~5.5g投与可能であり、1日1回~3回投与することができる。
【0070】
一具体例による医薬組成物は、医薬的に許容される担体および/または添加物を含み得る。例えば、医薬組成物は、滅菌水、生理食塩水、慣用の緩衝剤(リン酸、クエン酸、その他の有機酸など)、安定剤、塩、酸化防止剤(アスコルビン酸など)、界面活性剤、懸濁剤、等張化剤、または保存剤などを含むことができる。局所投与のためには、生物高分子(biopolymer)などの有機物、ヒドロキシアパタイトなどの無機物、具体的にはコラーゲンマトリックス、ポリ乳酸ポリマーまたはコーポリマー、ポリエチレングリコールポリマーまたはコーポリマーおよびその化学的誘導体などと組み合わせることも含むことができる。一具体例による医薬組成物が注射に適した剤型で調製される場合、ラクトバチルス属菌体が医薬的に許容される担体中に溶解または分散しているか、または溶解または分散している溶液のまま凍結したものであり得る。
【0071】
一具体例による医薬組成物は、その投与方法や剤型によって必要な時に応じて、懸濁剤、溶解補助剤、安定化剤、等張化剤、保存剤、吸着防止剤、界面活性化剤、希釈剤、賦形剤、pH調整剤、無痛化剤、緩衝剤、還元剤、酸化防止剤などを適宜含むことができる。前記例示したものをはじめとし、本発明に適する医薬的に許容される担体および製剤は、文献「Remington's Pharmaceutical Sciences、19th ed.、1995」に詳細に記載されている。一具体例による医薬組成物は、当該発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できる方法に従って、医薬的に許容される担体および/または賦形剤を用いて製剤化することにより単位用量形態として製造されるか、または多用量容器内に内入させて製造することができる。この際の剤型は、オイルまたは水性媒体中の溶液、懸濁液または乳化液の形態であってもよく、粉末、顆粒、錠剤またはカプセルの形態であってもよい。
【0072】
前記医薬組成物は、医薬的に有効な量で投与する。本明細書における「医薬的に有効な量」という用語は、医学的治療に適用可能な合理的な受益/リスク比で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量の水準は、患者の疾患の種類、重症度、薬物の活性、薬物に対する感度、投与時間、投与経路および排出率、治療期間、同時に使用される薬物を含む要素および他の医学分野における周知の要素に応じて決定することができる。本発明の組成物は、個々の治療剤として投与するか、他の治療剤と組み合わせて投与することができ、従来の治療剤と順次または同時に投与することができ、単一または複数投与することができる。上記要素のすべてを考慮して、副作用なしに最小限の量で最大の効果を得ることができる量を投与することが重要であり、これは当業者によって容易に決定され得る。
【0073】
他の態様は、寄託番号KCTC 14105BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)GB102菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれか、寄託番号KCTC 14106BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)GB103菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれか、および寄託番号KCTC 14107BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)GB104菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれかからなる群から選択された少なくとも1つ、2つまたは3つ以上を含む組成物を有効成分として含む筋肉関連疾患または肥満の予防または改善用の健康機能食品を提供することである。
【0074】
一具体例において、前記健康機能食品は、食品学的に許容される担体をさらに含むことができる。
【0075】
本明細書において「食品学的に許容される」という用語は、前記化合物に露出される細胞またはヒトに毒性のない特性を示すことを意味する。
【0076】
本明細書において「改善」という用語は、治療状態に関連するパラメータ、例えば、症状の程度を少なくとも減少させるすべての行為を意味することができる。このとき、前記健康機能食品は、癌の予防または改善のために当該疾患の発症前または発症後、治療のための薬剤と同時にまたは別々に使用することができる。
【0077】
前記健康機能食品において、有効成分は食品にそのまま添加するか、他の食品または食品成分と併用してもよく、通常の方法に従って適宜使用することができる。有効成分の混合量は、その使用目的(予防または改善用)に応じて適宜決定することができる。一般に、食品または飲料の製造の際、前記健康機能食品は、原料に対して具体的に約15重量%以下、より具体的には約10重量%以下の量で添加することができる。だが、健康および衛生を目的とするか、または健康調節を目的とする長期間の摂取の場合には、前記量は前記範囲以下であってもよい。
【0078】
前記健康機能食品は、担体、希釈剤、賦形剤および添加剤の1つ以上をさらに含む、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、粉末剤、カプセル剤および液剤の剤型からなる群から選択された1つに製剤され得る。一態様による化合物を添加することができる食品としては、各種食品類、粉末、顆粒、錠剤、カプセル、シロップ剤、飲料、ガム、茶、ビタミン複合剤、健康機能性食品類などがある。
【0079】
前記担体、賦形剤、希釈剤及び添加剤の具体例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、エリトリトール、デンプン、アラビアガム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、カルシウムフォスフェイト、カルシウムシリケート、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、水、砂糖シロップ、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウムおよびミネラルオイルからなる群から選択された少なくとも1つであり得る。
【0080】
前記健康機能食品は、前記有効成分を含有することに加えて、特に制限されることなく他の成分を必須成分として含有することができる。例えば、通常の飲料と同時に様々な香味剤または天然炭水化物などを追加の成分として含有することができる。上記の天然炭水化物の例は、単糖類、例えば、ブドウ糖、果糖と、二糖類、例えばマルトース、スクロースなどと、および多糖類、例えばデキストリン、シクロデキストリンなどの通常の糖、およびキシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールであっても良い。上記以外の香味剤として、天然香味剤(タウマチン、ステビア抽出物(例えばレバウジオシドA、グリシルヒジンなど))および合成香味剤(サッカリン、アスパルテームなど)を有利に使用することができる。前記天然炭水化物の割合は、当業者の選択によって適切に決定され得る。
【0081】
上記に加えて、一態様による健康機能食品は、種々の栄養剤、ビタミン、鉱物(電解質)、合成風味剤及び天然風味剤などの風味剤、着色剤及び増進剤(チーズ、チョコレートなど)、ペクチン酸及びその塩、アルギン酸およびその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調整剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使用される炭酸化剤などを含有することができる。このような成分は、独立してまたは組み合わせて使用することができ、このような添加剤の割合も当業者によって適切に選択され得る。
【0082】
前記健康機能食品は、従来知られている筋肉関連疾患または代謝疾患の予防または改善用の健康機能食品または既存の他の健康機能食品と混合して提供することができ、前記他の筋肉関連疾患または代謝疾患の予防または改善用の健康機能食品は、従来知られている代謝疾患の予防または改善用の健康機能食品、既存の健康機能食品、または新しく開発される健康機能食品であり得る。
【0083】
前記健康機能食品が筋肉関連疾患または代謝疾患の予防または改善効果を有する他の健康機能食品を含む場合、副作用なしに最小限の量で最大効果を得ることができる量で混合されることが重要であり、これは当業者によって容易に決定され得る。
【0084】
前記筋肉関連疾患及び肥満の予防または改善用の食品組成物は、機能性食品(functional food)、栄養サプリメント(nutritional supplement)、健康食品(health food)および食品添加剤(food additives)などの全ての形態を含み、前記タイプの食品組成物は、当業界で公知の通常の方法に従って様々な形態で製造することができる。
【0085】
本明細書の組成物は、食品サプリメント(food supplements)と見なすことができる。ダイエタリーサプリメント(dietary supplement)または栄養サプリメント(nutritional supplement)としても知られている食品サプリメントは、その他の特定の医薬品(pharmaceutical product)と見なすことができる。これは、食事を補充するための用途として準備されたものであり、通常の食事で摂取できないか、または十分な量で摂取できない栄養素(nutrients)または有益な成分(beneficial ingredients)を提供するためのものである。ほとんどの食品サプリメントは食品と見なされるが、時には薬物(drugs)、天然健康製品(natural health products)または健康機能食品(nutraceutical products)と見なされる。本発明の意味において、食品サプリメントは健康機能食品を含む。一般に、食品サプリメントは、処方箋なしに(without prescription)カウンターで販売される。食品サプリメントがピル(pill)またはカプセル(capsule)の形態を採択する場合、医薬品に使用される添加剤(excipients)と同じものを含む。だが、食品サプリメントは、いくつかの栄養素で強化された食品形態(例えば、乳児用調製粉乳)を採択することもできる。したがって、特定の実施形態において、本発明の組成物は食品サプリメント(food supplement)である。
【0086】
本発明による組成物は、そのまま投与されるか、または適切な食用液体または固体と混合して投与されるか、または錠剤(tablets)、ピル(pills)、カプセル(capsules)、ロゼンジ(lozenges)、顆粒(granules)、粉末(powders)、懸濁液(suspensions)、サチェット(sachets)、シロップ(syrups)の形態、または単位用量(unit dose)の形態で凍結乾燥(freeze-dried)することができる。また、投与前に一緒に提供される別の液体容器(separate liquid container)に混合される、凍結乾燥した組成物の単回用量(monodoses)の形態であり得る。
【0087】
本発明の組成物は、乳児の場合、牛乳製品といった様々な食用食品および食品に含まれてもよい。本明細書で使用する「食用食品(edible product)」という用語は、広い範囲の意味としてどんな形態であれ、動物により摂取される任意の形態の製品を含む(例えば、感覚器官によって受けとられる製品)。「食品(food product)」という用語は、体内に栄養支援(nutritional support)を供給する食用製品として理解される。特に、興味深い食品は、食品サプリメント(food supplements)と乳児用調製粉乳(infant formulas)である。好ましい食品は、オートミール粥、乳酸発酵食品(lactic acid fermented foods)、レジスタントスターチ(resistant starch)、食物繊維(dietary fibers)、炭水化物(carbohydrates)、タンパク質(proteins)および糖化タンパク質(glycosylated proteins)といった担体物質(carrier material)を含む。特定の実施形態において、本発明のバクテリア細胞は、乳児用製造粉乳を構成するために穀物(cereals)または粉乳(powdered milk)などの他の成分と均質化される。
【0088】
他の態様は、寄託番号KCTC 14105BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)GB102菌株、その溶解物、培養液および培養液の抽出物からなる群から選択されたいずれかと、寄託番号KCTC 14106BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)GB103菌株、その溶解物、培養液および培養液の抽出物からなる群から選択されたいずれか、および寄託番号KCTC 14107BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)GB104菌株、その溶解物、培養液および培養液の抽出物からなる群から選択されたいずれかからなる群から選択された少なくとも1つ、2つ、または3つ以上を含む組成物を有効成分として含む筋肉関連疾患の予防または改善用の飼料組成物を提供する。
【0089】
前記老化関連疾患の予防または改善用の飼料組成物は、当業界で公知の様々な飼料製造方法に応じて適切な有効濃度の範囲内で前記混合菌株組成物を添加して製造することができ、老化関連疾患の予防または改善を目的とする飼料添加剤組成物として使用することができる。
【0090】
前記「飼料」は、動物が食べ、摂取し、消化するための、またはこれに適当な任意の天然または人工規定食、一片食など、または前記一片食の成分を意味することができる。飼料の種類は特に限定されず、当技術分野で通常使われている飼料を使用することができる。前記飼料の非限定的な例としては、穀物類、根果類、食品加工副産物類、藻類、繊維質類、医薬副産物類、油脂類、澱粉類、フクベ類または穀物副産物類などのような植物性飼料:タンパク質類、無脂質類、油脂類、鉱物性類、油脂類、単細胞タンパク質類、動物性プランクトン類、または食品などの動物性飼料が挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0091】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施形態を提示する。しかし、以下の実施形態は、本発明をより容易に理解するために提供されるものであり、以下の実施形態によって本発明の内容が限定されるものではない。実施形態は、様々な変換を加えることができるが、実施形態は以下に開示される実施形態に限定されず、様々な形態で実施することができる。
【0092】
実施形態1 ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)およびラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)菌株の分離および同定
【0093】
1.1 菌株の分離
【0094】
本発明のラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)菌株およびラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)菌株は、健康診断を目的として病院に訪れた健康な女性の膣サンプルから分離した。具体的には、膣内サンプルを綿棒で採取し、Rogosa SL(MRS)平板培地に線条接種し、37℃の嫌気性チャンバーで48時間培養した。バクテリアの集落が成長したら、純粋分離のために単一の集落を新しいMRS平板培地に継代培養した。純粋分離した後、MRS培地を用いて菌株培養を行った。
【0095】
1.2 脂肪蓄積抑制活性菌株の選別
【0096】
脂肪蓄積抑制活性を有する菌株を選別するために、膵臓脂肪分解酵素(lipase)の活性抑制および3T3-L1脂肪前駆細胞の脂肪細胞分化抑制能を確認した。
【0097】
具体的には、膵臓脂肪分解酵素の活性抑制能は、前記1-1の菌株を0.1mg/mlの濃度に希釈した後、0.167mMp-nitrophenylpalmitate(PNP;Sigma、USA)溶液、0.061M Tris-HCl buffer(pH8.5)、0.3mg/mllipase溶液と共にplateに入れて25℃で10分間反応させた後、405nmで吸光度測定により確認した。
【0098】
また、3T3-L1脂肪前駆細胞の脂肪細胞分化抑制能の確認は、細胞内で生成された脂肪球と特異的に反応するOil Red O(Sigma、USA)を用いて測定した。脂肪分化が終わったら培地を除去した後、PBSで2回洗浄し、10%のformalinを用いて40℃で1時間固定し、60%のisopropanolで2回洗浄し、0.5%のOil Red O溶液で30分間、室温で染色した。染色後、染色液を除去し、蒸留水を用いて2回洗浄した。そして蒸留水が完全に乾燥したらisopropyl alcoholを添加した後、520nmで吸光度を測定した。
【0099】
最後に、前記1-1で得られた菌株について3T3-L1細胞生存率をMTT(3-(4、5-dimethylthiazol-2-yl)-2、5-diphenyltetrazolium bromide)方法を用いて測定した。3T3-L1細胞は、16×104cells/wellの濃度で96-well plateに分注し、24時間培養後、培地を除去した。ここに新しいDMEM培地100μlに濃度別に希釈した乳酸菌試料(100、1、000μg/ml)をそれぞれ添加して24時間培養した。その後、5mg/mlで調製したMTT(Sigma、USA)溶液20μlを添加し、37℃で4時間培養した。培養後、上清液を除去し、200μlのdimethyl sulfoxide(DMSO)を添加した後、546nmで吸光度を測定した。
【0100】
前記結果から、各菌株の脂肪蓄積抑制効果が確認でき、準備した菌株の中で脂肪細胞蓄積抑制効果および細胞毒性の低いラクトバチルス・ファーメンタムGB102(以下「GB102」という)、ラクトバチルス・ファーメンタムGB103(以下「GB103」という)およびラクトバチルス・プランタルムGB104(以下「GB104」という)菌株を最終選別した。また、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)は、リモシラクトバチルス・ファーメンタム(Limosilactobacillus fermentum)に菌株名が変更され、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)は、ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)に菌株名が変更された。以下の実施形態では、既存の菌株から変更された菌株名を相互互換的に記載した。
【0101】
1.3 選別した菌株の分子生物学的同定
【0102】
前記最終選別したラクトバチルス・ファーメンタムGB102、GB103およびラクトバチルス・プランタルムGB104菌株の同定のために、16S rRNA遺伝子配列を用いて分析した。バクテリアの16S rRNA遺伝子を標的とする27Fおよび1492R Primerを用いたPCRで得られた16S rRNA遺伝子配列をSanger配列分析法により分析し、ラクトバチルス・ファーメンタムGB102、GB103およびラクトバチルス・プランタルムGB104の16S rRNA配列をそれぞれ配列リスト1、2および3で示した。
【0103】
また、これについて相同性分析を行い、その結果、下記表1に示すように、GB102及びGB103菌株はリモシラクトバチルス・ファーメンタム(Limosilactobacillus fermentum)の標準菌株(type strain)と、最も高い配列類似度を示し、その次にリモシラクトバチルス・ゴリラ(Limosilactobacillus gorilla)との高い配列類似度を示した。GB104は、16S rRNA配列としては、ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)の標準菌株を含め18種のリモシラクトバチルス(Limosilactobacillus)属の種と98%以上の配列類似度を示すため、16S rRNA遺伝子配列では種の区別ができない。GB104は、ゲノム解析後のゲノム塩基配列の平均類似度(Average Nucleotide Indentity、ANI)値の比較を通じて、ラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)に属する菌株であることを確認した。結論として、前記2つの菌株がリモシラクトバチルス・ファーメンタム(Limosilactobacillus fermentum)に該当する菌株であることを確認し、1つの菌株はラクチプランチバチルス・プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum)に該当する菌株であることを確認した。
【0104】
【0105】
実施形態2 ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)菌株のゲノムおよび比較ゲノム分析
【0106】
GB102およびGB103菌株のゲノムベースの種(species)同定および特性を調べるために、次世代の塩基配列分析技術(Next-generation sequencing technology、 NGS)および生物情報学技術を活用して菌株のゲノム配列を完全に解析し、ゲノムに含まれた遺伝子の機能を推定した。さらに、同種の完全に解析されたゲノム配列と比較分析を通じて、菌株の特異性を確認した。本菌株は、MRS液体培地37℃の嫌気条件で4時間培養し、培養体からMG Genomic DNA purificationキット(MGMED、 Inc.、 Korea)を用いてgenomic DNAを抽出した。平均長さ10kb以上の長いリードデータ(long read data)を得るために、PacBio RS II装置を用いて配列分析を行い、精度が低下する長いリードデータを補完するための精度が高い500bp未満の配列長さを有する断片配列データ(short read data)を生成するために、NovaSeq 6000装置を用いて配列分析を行った。長いリードデータは、SMRT Analysis serverのHGAP2パイプラインを活用して完成度の高いGB102、GB103ドラフトゲノムに組み立てられた。組み立てられたドラフトゲノムの配列内に存在し得るSNPおよびInDel errorは、長いリードデータおよび断片配列データを用いて補正した。完成したゲノム配列からProdigalプログラムを使用してCDS(coding sequences)を予測し、RFAM toolを活用してrRNA、tRNAを予測した。予測されたCDSは、公開されたUniProt database、GenBank nr database、Subsystem database、PFAM database、およびCOG databaseに基づいて相同性検索(BLASTアルゴリズム適用)を実行して機能を予測した。GenBankに公開されているラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)種の標準菌株B1 28T(=ATCC 14931T)およびラクトバチルス・ゴリラ(Lactobacillus gorillae)標準菌株KZ01T、ラクトバチルス・ガストリカス(Lactobacillus gastricus)標準菌株DSM 16045Tゲノム配列とGB102およびGB103菌株のゲノム配列からJspeciesプログラムを活用して、ゲノム平均ヌクレオチド同一性(Average Nucleotide Identity)を計算した。分析の結果、GB102およびGB103の両方の菌株は、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)標準菌株と95%以上のANI値を示し、ラクトバチルス・ファーメンタム種(species)に属することが証明された(表2)。さらに、GB102およびGB103菌株が標準菌株と100%一致しないため、これまでに分離および報告されていない新規種であることがわかる。さらに、GB102およびGB103菌株もゲノム距離が遠く、互いに異なる菌株であることが確認された。本発明者らは、GB102およびGB103菌株を「ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)GB102」(寄託番号:KCTC 14105BP)および「ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)GB103」(寄託番号:KCTC 14106BP)と命名し、これを韓国生命工学研究院所在の韓国細胞株銀行(Korean collection for type cultures、 KCTC)に2020年1月14日付でそれぞれ寄託した。
【0107】
【0108】
実施形態3 ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)菌株のゲノムおよび比較ゲノム分析
【0109】
GB104菌株のゲノムベースの種(species)同定および特性を調べるために、次世代の塩基配列分析技術(Next-generation sequencing technology、 NGS)および生物情報学技術を活用して菌株のゲノム配列を完全に解析し、ゲノムに含まれる遺伝子の機能を推定した。さらに、同種の完全に解析されたゲノム配列と比較分析を通じて、菌株の特異性を確認した。本菌株は、MRS液体培地37℃の嫌気条件で4時間培養し、培養体からMG Genomic DNA purificationキット(MGMED、 Inc.、 Korea)を用いてgenomic DNAを抽出した。平均長さ10kb以上の長いリードデータを得るために、PacBio RS II装置を用いて配列分析を行い、精度が低下する長いリードデータを補完するための精度が高い500bp未満の配列長さを有する断片配列データを生成するために、NovaSeq 6000装置を用いて配列分析を行った。長いリードデータは、SMRT Analysis serverのHGAP2パイプラインを活用して完成度の高いGB104ドラフトゲノムに組み立てられた。組み立てられたドラフトゲノムの配列内に存在し得るSNPおよびInDel errorは、長いリードデータおよび断片配列データを用いて補正した。完成したゲノム配列からProdigalプログラムを使用してCDSを予測し、RFAM toolを活用してrRNA、tRNAを予測した。予測されたCDSは、公開されたUniProt database、GenBank nr database、Subsystem database、PFAM database、およびCOG databaseに基づいて相同性検索(BLASTアルゴリズム適用)を実行して機能を予測した。GB104のゲノムをまとめて表3に示す。
【0110】
【0111】
ゲノム分析の結果、本菌株は、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)で見られる抗菌能関連のバクテリオシン生合成遺伝子群であるプランタリシン(Plantaricin)遺伝子群を保有していた。しかし、標準菌株および参照菌株と100%一致しないため、これまでに分離および報告されていない新規種であることがわかる。
【0112】
本発明者らは、GB104菌を「ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)GB104」(寄託番号:KCTC 14107BP)と命名し、これを韓国生命工学研究院所在の韓国細胞株銀行(Korean collection for type cultures、KCTC)に2020年1月14日付で寄託した。
【0113】
実験例1 ラクトバチルス属の菌株からなる混合菌株(GB102+GB103+GB104)に対する抗酸化効果の検証
【0114】
GB102、GB103およびGB104菌株を有効成分として含む、または菌株および副原料(ビタミンB2および紅参)を含む物質に対する抗酸化能を確認するために、DPPHフリーラジカル消去能評価を行った。
【0115】
具体的には、DPPH溶液は、100%methanolに0.2mM溶液になるように準備した。また、GB102、GB103、GB104菌株とラクチカゼイバチルス・ラムノーサスGG(Lacticaseibacillus rhamnosus GG、旧Lactobacillus rhamnosus GG、陽性対照群)菌株をMRS液体培地に接種して37℃で16時間置きに培養した。その後、菌株培養液を遠心分離(3600rpm、15分)して培養した乳酸菌を得た後、1×PBSで2回洗浄し、GB102、GB103、GB104の3つの乳酸菌混合5×109CFU/ml濃度の試料を準備した。これと同様に、ラクチカゼイバチルス・ラムノーサスGG(Lacticaseibacillus rhamnosus GG)比較菌株も5×109CFU/ml濃度で準備した。
【0116】
副原料は、ビタミンB2および紅参カプセルの内容物を625ug/ml濃度で試料を準備し、L-アスコルビン酸(L-ascorbic acid、陽性対照群)は12.5ug/ml濃度で試料を準備した。
【0117】
副原料125ug(200ul)、GB102、GB103、GB104の3つの乳酸菌混合1x109CFU(200ul)、GB102、GB103、GB104の3つの乳酸菌混合1x109CFU+副原料125ug(200ul)のそれぞれに対して、0.2mM DPPH溶液200ulと混合した後、30分間常温の暗室で反応させた。その後、遠心分離(12700rpm、5分)して上清液200ulを得た後、96immunoflat plateに入れ、Spectramax iD3(Molecular devices)を使用して515nm吸光度を測定した。陽性対照としてL-アスコルビン酸(L-ascorbic acid)2.5ug(200uL)、ラクチカセイバシラスラムノサスGG(Lacticaseibacillus rhamnosus GG)1x109 CFU(200uL)を使用した。を使用した。結果を表4に示す。
【0118】
以下の方法でDPPH radical消去活性能力について計算した。
【0119】
DPPH radical scavenging activity (%) = (ODcontrol-ODsample)/(ODcontrol)x100
【0120】
ODcontrol:Absorbance of PBS、ODsample:Absorbance of sample
【0121】
【0122】
表4に示すように、ラクチカゼイバチルス・ラムノーサスGG(Lacticaseibacillus rhamnosus GG)1×109CFUは約26.2%、L-アスコルビン酸(L-ascorbic acid)2.5ugは約53%のDPPH radical消去活性効果を確認することができた。これと比較して、副原料125ugは約14%、GB102、GB103、GB104の3つの乳酸菌混合1x109CFUは約44.4%、GB102、GB103、GB104の3つの乳酸菌混合1x109CFU+副原料125ugは約56.2%の効果を確認することができた。これにより、GB102、GB103、GB104の3つの乳酸菌混合は、陽性対照乳酸菌であるラクチカゼイバチルス・ラムノーサスGG(Lacticaseibacillus rhamnosus GG)に比べて優れた抗酸化効果を確認することができた。
【0123】
老化の自然な過程は、体が酸化的損傷により脆弱にする。さらに、アンチエイジング効果は、主に抗酸化特性とフリーラジカル消去能力に関連している。さらに、酸化的損傷は、老化と共に発生する骨格筋減少の主な原因の1つとして提案されている。老化過程の促進剤としてフリーラジカルの識別は、それらの抑制が有機体(特に骨格筋)に与える有害な変形を制限できることを意味するものであり得る。すなわち、抗酸化能力を有する分子が酸化的損傷に対応できるならば、これは無力化過程を含む老化関連状態の発症を予防するのに重要な役割を果たすことができる。酸化的損傷がサルコペニア(およびその他の老人性疾患)を引き起こす病態生理学的機序の基礎であり、内因性抗酸化防御を強化するための介入(例えば、抗酸化剤の投与)が老化を抑制する。例えば、赤ワインに含まれるポリフェノール化合物であるレスベラトロールは、ミトコンドリア呼吸の減少によりカエノラブディティス・エレガンスの老化を遅らせることができると報告されている。(Wood et al.、2004)。さらに、酸化ストレスは、骨形成と吸収を担う細胞間の不均衡を引き起こし、骨回転率を増加させることが示された。したがって、抗酸化剤は酸化ストレスの影響を抑制および/または改善すると知られているので、抗酸化活性を示す一具体例によるラクトバチルス属混合菌株は、抗老化または老化関連疾患の予防、改善または治療に有用に使用できる効果がある。
【0124】
実験例2 ラクトバチルス属の菌株GB102、GB103およびGB104の個別抗酸化効果の確認
【0125】
GB102、GB103及びGB104の各菌株に対する抗酸化能を確認するために、DPPHフリーラジカル消去能評価を行った。
【0126】
具体的には、100%methanolにDPPH(Alfa Aesar)試薬を用いてDPPH0.2mM溶液を準備した。GB102、GB103、GB104菌株とラクチカゼイバチルス・ラムノーサスGG(Lacticaseibacillus rhamnosus GG、陽性対照群)菌株をMRS液体培地に接種し、37℃で16時間培養した。その後、菌株培養液を遠心分離(3600rpm、15分)して培養した乳酸菌を得た後、1×PBSで2回洗浄し、GB102、GB103、GB104の3つの乳酸菌混合5×109CFU/ml濃度の試料を準備した。これと同様に、ラクチカゼイバチルス・ラムノーサスGG(Lacticaseibacillus rhamnosus GG)比較菌株も5×109CFU/ml濃度で準備した。GB102、GB103、GB104の3つの乳酸菌それぞれ1×109CFU(200ul)、3つの乳酸菌混合1×109CFU(200ul)に対して0.2mM DPPH溶液200ulと混合した後、30分間常温の暗室で反応させた。その後、遠心分離(12700rpm、5分)して上清液200ulを得た後、96 well immuno plateに入れ、Spectramax iD3(Molecular devices)を使用して515nm吸光度を測定した。前記実験例1と同様の方法でDPPH radical消去活性能力について計算した。
【0127】
【0128】
表5に示すように、GB102 64.1%、GB103 41.0%、GB104 34.5%、ラクチカゼイバチルス・ラムノーサスGG(Lacticaseibacillus rhamnosus GG)38.1%、およびGB102+103+104約53%のDPPH radical消去活性効果を確認することができた。これにより、GB102、GB103、GB104菌株それぞれに抗酸化効果があることが確認できた。
【0129】
実験例3 筋力改善に対する混合菌株および/または漢方薬の併用投与療法の効果検証
【0130】
ラクトバチルス属の菌株からなる混合菌株及び/又は漢方薬の併用投与時、老化によって低下した筋力の改善効果を確認するために、高週齢マウスを用いてGB102、GB103、及びGB104の3種の乳酸菌を混合した混合菌株(以下、「#7乳酸菌」または「混合菌株」と呼ぶ)と4種の漢方薬混合物にイヌリンおよびビタミンB2をさらに含有する副原料をそれぞれ単独投与するか、または併用投与して老化マウスの筋力改善の変化を確認した。
【0131】
混合菌株と併用投与される副原料には、漢方薬とイヌリン、ビタミンB2が含まれ、漢方薬は安東ヤマイモ、ハトムギ、紅参パウダー、霊芝を使用した。漢方薬(安東ヤマイモ、ハトムギ、紅参パウダー、霊芝)とイヌリン、ビタミンB2の総含有量は70.20mgであり、凍結保存剤30.30mgを含め、マウスごとに副原料が合計100.5mgの用量で投与された。
【0132】
【0133】
具体的に、実験群は16ヶ月齢のC57BL/6マウスを合計4群に分けた。実験群1(G1)は、ラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)GB102、GB103菌株(寄託番号KTCT 14105BP、KCTC 14106BP)、ラクトバチルスプランタルム(Lactobacillus plantarum)GB104菌株(寄託番号KCTC 14107BP)菌株からなる混合菌株(#7乳酸菌)を経口投与した。混合菌株(#7乳酸菌)は、マウス当たり5×108CFUの用量で投与され、保障菌数の維持のために(株)メディオジェンから入手したビフィドバクテリウム・アニマリス・ラクティス(Bifidobacterium animalis sub sp. Lactis)菌株とラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)と一緒に投与した。実験群2(G2)は、安東ヤマイモ、ハトムギ、紅参パウダー、霊芝からなる漢方薬混合物とイヌリン及びビタミンB2を含む副原料を経口投与した。副原料は、前記の表6に示すように、マウス当たり100.5mgの用量で投与した。実験群3(G3)は、混合菌株と副原料を経口で併用投与した。一般食(normal chow diet、NCD)を摂取したマウスを対照群(control)に設定した。各対照群および実験群は、15匹のマウスを使用した。上記実験群と対照群の実験条件を下表7にまとめた。
【0134】
【0135】
各実験群は、13週間投与した後、筋力改善を確認するためにGrip Strength機器を用いて、マウスの両前足でGrip Strength機器のwire部分を掴むようにして引く力(Grip Strength)を測定し、その結果を表8に示した。
【0136】
【0137】
表8に示すように、対照群、実験群1(G1)、実験群2(G2)に比べて、混合菌株及び副原料を併用投与した実験群3(G3)で有意にGrip Strengthが増加する傾向性を確認した。
【0138】
以上の結果により、ラクトバチルス属混合菌株(#7乳酸菌)および漢方薬混合物の併用投与時、老化によって低下した筋力が改善される効果を確認した。
【0139】
実験例4 血清中のMyostatin測定の効果検証
【0140】
老化マウス対照群(PBS)、混合菌株、副原料、混合菌株+副原料を摂取した老化マウス実験の剖検終了後に得られた血清サンプルについて、Myostatin ELISA分析を行った。
【0141】
血清分析は、DGF-8/Myostatin DuoSet(R&D systems)ELISAを使用し、詳細な実験方法は製造元から提供されたプロトコルに基づいて行った。一般的な分析方法について簡単に説明すると、製品のCapture antibodyを96 Well flat immunoplate(SPL)に前日に4℃ overnight incubationした後、翌日に0.05%Tween 20 in PBS wash bufferを使用して3回のwashingを行った。その後、1%BSA in PBS sample diluentを用いて常温で1時間blockingし、wash bufferを用いて3回のwashingを行う。myostatin standard range内に入る希釈倍数に合わせてサンプルを希釈し、100ulずつsample loadingした後、常温で2時間incubationしたらwash bufferを用いて3回のwashingを行う。Detection antibodyをroom temperatureで1時間incubationした後、wash bufferを用いて3回のwashingをし、続いてstreptavidin-HRPをroom temperatureで20分間incubationした後、wash bufferを用いて3回のwashingをする。最後に、TMB-substrate solutionを入れた後、room temperatureで20分間incubationしたら2N H2SO4溶液を入れて反応を停止させた後、SpectraMax iD3(Molecular devices)装置を用いて450nm吸光度を測定した。
【0142】
【0143】
表9に示すように、老化マウスから得た血清中の血中myostatin分析の結果、対照群(PBS)は、4689.8±364.7ng/ml、混合菌株単独投与時4439.7±251.2ng/ml、副原料単独投与時4363.2±200.6ng/mlと測定された。混合菌株と副原料を併用して摂取したグループは、3721.8±173.2ng/mlと測定され、単独で摂取したグループに比べて、混合菌株と副原料を併用で摂取したグループで統計的に有意なmyostatinの減少を確認することができた。
【0144】
実験例5 乳酸菌混合菌株および/または漢方薬の併用投与による動物モデルにおける腸内菌叢の変化、抗老化および抗肥満活性の検証
【0145】
老化マウスにおける乳酸菌混合菌株および/または漢方薬の併用投与が誘導する腸内菌叢の変化、抗老化および抗肥満活性を分析するために、合計3つの群を構成して行った。16ヶ月齢のC57BL/6老化マウスに32週間リン酸緩衝生食塩水(phosphate-buffered saline、PBS)を経口投与した群(15匹)と10週齢のC57BL/6若いマウス群(10匹)を対照群に設定した。そして、16ヶ月齢のC57BL/6老化マウスに、32週間実験例2で使用した混合菌株と副原料を一緒に経口投与したマウス群(15匹)を実験群として設定した。実験終了後、各マウスを剖検し、盲腸試料(cecum)を切除して-80℃に冷凍保存した。凍結保存された試料からFastDNA(登録商標)SPIN Kit for soil(MP Bio)を用いてgenomic DNAを抽出した。抽出された各DNA試料からバーコード配列が融合された341F及び805Rプライマー(表10、配列番号4及び5)を用いたPCR方法により、微生物菌叢の16S rRNA遺伝子のV3/V4領域を増幅した。
【0146】
【0147】
増幅産物をAMPure XP beads(Beckman)を用いて精製した。その後、MiSeq(Illumina)プラットフォームを使用して精製産物から大容量塩基配列データを生成した。DADA2プログラムを活用して生成された大容量塩基配列のdenoisingおよびpaired配列の組み立てを行った。公開されたMothurパイプライン(Schloss PD et al.2009.Introducing mothur:Open-source、platform-independent、community-supported software for describing and comparing microbial communities. Applied and Environmental Microbiology 75:7537-7541)を活用して、組み立てられた配列データのOTUsクラスタリングおよび菌叢多様性の分析を行った。前記結果は、
図1~5に示す。
【0148】
図1に示すように、16S rRNA遺伝子配列に基づく菌叢アルファ多様性分析の結果、老化マウス群の場合、菌叢の均等度(evenness、Shannon evenness index)が若いマウス群に比べて有意に低いことを確認した。一具体例による乳酸菌混合菌株と漢方薬の併用投与を行った老化マウス群の場合、若いマウス群との有意な差は見られず、むしろ老化マウス群より菌叢の均一度が有意に高いと評価された。これは、一具体例による乳酸菌混合菌株および漢方薬の併用投与が、老化した動物の腸内菌叢の均一度を回復させるか、または低下させることを防止することにより腸の健康にプラスの影響を及ぼし得ることを意味する。
【0149】
図2に示すように、Weighted-UniFrac distanceに基づく腸内菌叢の群集構造の主座標分析(Principal coordinate analysis、PCoA)の結果、老化マウスの腸内菌叢群集は、若いマウスの菌叢群集構造と相違することを確認した。これに対し、乳酸菌混合菌株および漢方薬併用投与老化マウスの腸内菌叢の群集構造は、一般老化マウスの腸内菌叢群集よりむしろ若いマウスの腸内菌叢群集の構造と類似していることが確認された。これは、一具体例による乳酸菌混合菌株および漢方薬の併用投与が、老化した動物の腸内菌叢群集構造を若い動物の腸内菌叢群集構造と類似に調節していることを意味する。
【0150】
図3および
図4に示すように、一具体例による混合菌株と漢方薬の併用投与は、老化マウスの腸内に生息する主要な系統であるファーミキューテス(Firmicutes)門のラクノスピラ(Lachnospiraceae)、ルミノコッカス(Ruminococcaceae)およびバクテロイデーテス(Bacteroidetes)門のムリバキュラ(Muribaculaceae)、リケネラ(Rikenellaceae)、プレボテラ(Prevotellaceae)の頻度に有意な差を引き起こすことが確認された。
【0151】
続いて、
図5に示すように、これにより腸内菌叢の肥満関連指標として知られているファーミキューテス/バクテロイデーテス(Firmicutes/Bacteroidetes)比率が老化マウスと若いマウスとの有意な差を示した。これは、一具体例による乳酸菌混合菌株および漢方薬の併用投与が老化マウスの腸内菌叢を若いマウスの菌叢と類似にし、老化マウスの腸内菌叢によって引き起こされる肥満などの老化関連疾患を予防または治療するに役立つことを意味する。さらに、老化マウスに乳酸菌混合菌株および漢方薬が併用投与された場合、老化マウス対照群から見られる割合より低くなる傾向があることが示された。最近の論文では、老化マウスの腸内菌叢は肥満を引き起こす可能性があり、老化マウスでファーミキューテス/バクテロイデーテスの割合が増加することが報告された(Binyamin et al.、Genome medicine、2020)。これは、一具体例による乳酸菌混合菌株および漢方薬の併用投与が、老化マウスで起こる肥満などの疾患の予防および治療にプラスの影響を及ぼし得ることを示唆する。
【0152】
上述した本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明が属する技術分野の通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更せず、他の具体的な形態に容易に変形できることを理解するであろう。したがって、上記で説明した実施形態は、すべての面で例示的なものであり、限定的なものではないと理解すべきである。
【受託番号】
【0153】
寄託機関名:韓国生命工学研究院
受託番号:KTCT14105BP
受託日:2020114
寄託機関名:韓国生命工学研究院
受託番号:KTCT14106BP
受託日:2020114
寄託機関名:韓国生命工学研究院
受託番号:KTCT14107BP
受託日:2020114
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2024-02-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
寄託番号KCTC 14105BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)GB102菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれか、
寄託番号KCTC 14106BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・ファーメンタム(Lactobacillus fermentum)GB103菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれか、および
寄託番号KCTC 14107BPで寄託されたラクトバチルス属(Lactobacillus sp.)に属するラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)GB104菌株、その溶解物、および培養液からなる群から選択されたいずれかからなる群から選択された少なくとも1つ、2つ、または3つ以上を含む、組成物。
【請求項2】
前記菌株は、生菌または死菌である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物に含まれる混合菌株は、103~1016CFU/gの量で含まれる、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物は、経口投与される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物は、抗老化用である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記抗老化は、筋肉細胞の抗老化、神経細胞の抗老化、皮膚細胞の抗老化、および腸内微生物環境の抗老化からなる群から1つ以上選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1に記載の組成物を有効成分として含む、筋肉関連疾患の予防または改善用の健康機能食品。
【請求項8】
前記組成物は、関節硬直、筋肉喪失、力喪失、速度喪失、均衡喪失、持久力喪失および敏捷性喪失からなる群の少なくとも1つ以上を減少させる、請求項
7に記載の健康機能食品。
【請求項9】
前記組成物は、運動遂行能力を向上させるもの、筋肉調整力、移動性および歩行を回復させるもの、筋肉量および握力を増加させるものからなる群から少なくとも1つ以上選択される、請求項
7に記載の健康機能食品。
【請求項10】
前記筋肉関連疾患は、サルコペニア(sarcopenia)、加齢性サルコペニア、アトニー(atony)、筋萎縮症(muscular atrophy)、筋ジストロフィー(muscular dystrophy)、廃用性筋萎縮(disuse muscle atrophy)、連動ニューロン疾患(motor neuron disease)、炎症性筋疾患、神経筋接合部疾患、内分泌性筋疾患、筋肉退化、筋強直症、筋萎縮性軸索硬化症、筋無力症、筋炎、筋肉石灰化、筋肉骨化、筋肉弱化関連疾患および悪液質(cachexia)からなる群から一つ以上選択される、請求項
7に記載の健康機能食品。
【請求項11】
請求項1に記載の組成物を有効成分として含む、肥満の予防または改善用の健康機能食品。
【請求項12】
請求項1に記載の組成物を有効成分として含む、筋肉関連疾患の予防または治療用の医薬組成物。
【請求項13】
前記組成物が、関節硬直、筋肉喪失、力喪失、速度喪失、均衡喪失、持久力喪失および敏捷性喪失からなる群の少なくとも1つを減少させる、請求項
12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記組成物は、運動遂行能力を向上させるもの、筋肉調整力、移動性および歩行を回復させるもの、筋肉量および握力を増加させるものからなる群から少なくとも1つ以上選択される、請求項
12に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記筋肉関連疾患は、サルコペニア(sarcopenia)、加齢性サルコペニア、アトニー(atony)、筋萎縮症(muscular atrophy)、筋ジストロフィー(muscular dystrophy)、廃用性筋萎縮(disuse muscle atrophy)、連動ニューロン疾患(motor neuron disease)、炎症性筋疾患、神経筋接合部疾患、内分泌性筋疾患、筋肉退化、筋強直症、筋萎縮性軸索硬化症、筋無力症、筋炎、筋肉石灰化、筋肉骨化、筋肉弱化関連疾患および悪液質(cachexia)からなる群から1つ以上選択される、請求項
12に記載の 医薬組成物。
【請求項16】
請求項1に記載の組成物を有効成分として含む、肥満の予防または治療用の医薬組成物。
【請求項17】
請求項1に記載の組成物を有効成分として含む、飼料組成物。
【国際調査報告】