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特表2024-529289プロピレンターポリマー及びそれから作製されるヒートシールフィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-08-06
(54)【発明の名称】プロピレンターポリマー及びそれから作製されるヒートシールフィルム
(51)【国際特許分類】
   C08F 210/06 20060101AFI20240730BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20240730BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20240730BHJP
   C08L 23/16 20060101ALI20240730BHJP
   C08F 4/654 20060101ALI20240730BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20240730BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240730BHJP
   C08L 23/14 20060101ALI20240730BHJP
【FI】
C08F210/06
B32B27/32 Z
B32B7/027
C08L23/16
C08F4/654
C08J5/18 CES
B65D65/40 D
C08L23/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024500028
(86)(22)【出願日】2022-06-30
(85)【翻訳文提出日】2024-02-07
(86)【国際出願番号】 US2022035826
(87)【国際公開番号】W WO2023278772
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】63/218,156
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590001706
【氏名又は名称】ダブリュー・アール・グレース・アンド・カンパニー-コーン
【氏名又は名称原語表記】W R GRACE & CO-CONN
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100120754
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 豊治
(72)【発明者】
【氏名】マ,ジル
(72)【発明者】
【氏名】レゴ,ホセ・マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】リーズ,ジョナサン
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ,ピン
【テーマコード(参考)】
3E086
4F071
4F100
4J002
4J100
4J128
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AB01
3E086AC15
3E086AD01
3E086BA15
3E086BA24
3E086BA25
3E086BA33
3E086BB51
3E086CA01
3E086CA07
3E086CA13
3E086CA35
3E086CA40
4F071AA20
4F071AA81
4F071AA84
4F071AA85
4F071AA88
4F071AF11Y
4F071AF30Y
4F071AH04
4F100AK01B
4F100AK64A
4F100AK65A
4F100AK67A
4F100BA01
4F100BA02
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100EH20
4F100EJ38
4F100GB15
4F100JA04A
4F100JA06A
4F100JA11
4F100JB16B
4F100JL12A
4F100JN01
4F100YY00A
4J002BB151
4J002DE070
4J002DE100
4J002DJ010
4J002EG030
4J002EG040
4J002EJ020
4J002EW040
4J002FD070
4J002GG02
4J100AA02R
4J100AA03P
4J100AA04Q
4J100CA05
4J100DA24
4J100DA40
4J100DA42
4J100FA09
4J100JA58
4J128AC06
4J128CB35A
4J128CB45A
4J128EB02
4J128EB04
4J128EB05
4J128EC04
4J128GA05
4J128GA06
4J128GA19
4J128GA21
(57)【要約】
特にヒートシール用途で使用するのに非常に適したプロピレンターポリマーが構築される。プロピレンターポリマーを使用して、例えば、多層フィルム上にヒートシール層を形成することができる。ヒートシール層を使用して、包装材料及び他の物品を形成するためにフィルムの2つの対向する層を互いに結合することができる。ランダムエチレン分布が増加し、その結果、ポリマー結晶化度が低下し、溶融温度が低下し、ヒートシール温度がより低いプロピレンターポリマーが形成される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロピレンターポリマーであって、
主モノマーとしてのプロピレンと、
約1重量%~約5重量%のエチレン含有量と、
約1重量%~約8重量%未満のブテン含有量と、
を含み、
約1g/10分~約30g/10分のメルトフローレートを有し、140℃未満の溶融温度を有し、以下のように定義されるエチレンの連鎖長分布を有する、プロピレンターポリマー:
nE<0.0353Et+1.08
(式中、Etは、重量によるエチレン含有量である)。
【請求項2】
前記ブテン含有量が、約3重量%~約7重量%、例えば約5重量%~約6.5重量%である、請求項1に記載のプロピレンターポリマー。
【請求項3】
約115℃未満、例えば約110℃未満のヒートシール開始温度を有する、請求項1又は2に記載のプロピレンターポリマー。
【請求項4】
約110℃~約135℃、例えば約110℃~130℃未満の溶融温度を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロピレンターポリマー。
【請求項5】
キシレン可溶分が、約2重量%~約10重量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロピレンターポリマー。
【請求項6】
約2g/10分~約20g/10分のメルトフローレートを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロピレンターポリマー。
【請求項7】
約1.5重量%~約3.5重量%のエチレン含有量を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロピレンターポリマー。
【請求項8】
非フタレート触媒を用いてチーグラー・ナッタ触媒されている、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロピレンターポリマー。
【請求項9】
約87重量%~約98重量%のプロピレン含有量を有する、請求項1に記載のプロピレンターポリマー。
【請求項10】
約1.00~約1.20のエチレンの連鎖長分布を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロピレンターポリマー。
【請求項11】
ビスブレーキングされた又は反応器内グレードのプロピレンターポリマーである、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロピレンターポリマー。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のプロピレンターポリマーを生成するプロセスであって、チーグラー・ナッタ触媒の存在下でプロピレンモノマー、エチレンモノマー、及びブテンモノマーを重合させることを含み、前記チーグラー・ナッタ触媒が、触媒成分及び活性制限剤を含み、前記固体触媒成分が、マグネシウム部分、チタン部分、及び内部電子供与体を含むプロセス。
【請求項13】
スラリーループ反応器において前記固体触媒成分及び前記活性制限剤の存在下で前記モノマーを重合させる、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
気相反応器において前記固体触媒成分及び前記活性制限剤の存在下で前記モノマーを重合させる、請求項12に記載のプロセス。
【請求項15】
前記内部電子供与体が、置換フェニレンジエステルを含む、請求項12、13、又は14のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項16】
請求項1~11のいずれか一項に記載のプロピレンターポリマーを含むポリマー組成物であって、前記プロピレンターポリマーが、約70重量%を超える量で、例えば約80重量%を超える量で、例えば約90重量%を超える量で、例えば約95重量%を超える量で、前記ポリマー組成物中に存在する、ポリマー組成物。
【請求項17】
請求項1~11のいずれか一項に記載のプロピレンターポリマーを含むポリマーフィルム層であって、前記プロピレンターポリマーが、約70重量%を超える量で、例えば約80重量%を超える量で、例えば約90重量%を超える量で、例えば約95重量%を超える量で、前記ポリマーフィルム層中に存在する、ポリマーフィルム層。
【請求項18】
多層フィルム構造体であって、
熱可塑性ポリマーを含む基層と、
プロピレンターポリマーを含むヒートシール層であって、前記プロピレンターポリマーが、主モノマーとしてプロピレンを含み、エチレン含有量が約1重量%~約5重量%であり、ブテン含有量が約1重量%超であり、前記プロピレンターポリマーが、約1g/10分~約20g/10分のメルトフローレート、約110℃未満のヒートシール開始温度、及び以下のように定義されるエチレンの連鎖長分布を有する、ヒートシール層と、を含む、多層フィルム構造体:
nE<0.0353Et+1.08
(式中、Etは、重量によるエチレン含有量である)。
【請求項19】
包装フィルムを含む、請求項18に記載の多層フィルム構造体。
【請求項20】
前記ターポリマーの前記ブテン含有量が、約3重量%~約10重量%、例えば約5重量%~約8重量%である、請求項18に記載の多層フィルム構造体。
【請求項21】
前記ターポリマーが、約110℃~約129℃の溶融温度を有する、請求項18に記載の多層フィルム構造体。
【請求項22】
前記プロピレンターポリマーの前記キシレン可溶分が、約2重量%~約10重量%である、請求項18に記載の多層フィルム構造体。
【請求項23】
前記ターポリマーのエチレンの連鎖長分布が、約1.00~約1.20である、請求項18に記載の多層フィルム構造体。
【請求項24】
前記フィルム構造体が、共押出、二軸延伸、又は一方向延伸、又は流延フィルム加工される、請求項18に記載の多層フィルム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年7月2日に出願された米国仮特許出願第63/218,156号に対する優先権の利益を主張するものであり、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィンポリマーは、多数の多様な用途及び分野で使用される。ポリオレフィンポリマーは、例えば、容易に加工することができる熱可塑性ポリマーである。ポリオレフィンポリマーはまた、リサイクル及び再利用することができる。ポリオレフィンポリマーは、石油化学物質から得られ、豊富に利用可能であるプロピレン及びアルファ-オレフィンなどの炭化水素から形成される。
【0003】
一用途において、ポリオレフィンポリマーは、ヒートシールフィルム及び包装材料の生産において使用するために処方及び設計される。包装に使用するためのヒートシールフィルムは、典型的には、複数のポリマー層を含有する。少なくとも1つの表面層は、ヒートシール層と呼ばれ、包装材料を封着するときに隣接する層にヒートシール又は熱接合するために、より低い溶融温度を有するように処方されている。これまでは、ヒートシール層を構築するためにポリプロピレンターポリマーが使用されてきた。ポリプロピレンターポリマーは、典型的には、プロピレン、エチレン、及び1-ブテン又は別の高級α-オレフィンモノマーを含むモノマーの組み合わせから生成される。エチレンモノマーを組み込むと、得られるポリマーの溶融温度を低下させることができる。1-ブテン等の第3のモノマーを組み込むことにより、ポリマー及びポリマーから作製されるヒートシール層の全体的な特性を改善することができる。例えば、ブテンは、より高い溶融温度でヒートシール開始温度を低下させることができる。
【0004】
例えば、ポリプロピレンターポリマーは、引張強度、引裂耐性、耐引掻性、及び低濁度に関して、包装用途において望ましい物理的特性を示している。例えば、米国特許第4,256,784号、同第6,365,682号、米国特許公開第2006/0029824号、及び同第2004/0081842号に、様々な異なるヒートシール可能なフィルムが開示されており、これらは全て参照により本明細書に組み込まれる。
【0005】
様々なヒートシール可能なフィルムが過去に生産されているが、更なる改良が依然として必要とされている。特に、コモノマー含有量を増加させることなく、あるいはポリマー又はポリマーから作製されるフィルム層の他の特性を劣化させることなく、より低い溶融温度及び低下したヒートシール開始温度を示す、ヒートシール用途のために処方されたポリマーが依然として必要とされている。例えば、ヒートシール開始温度を低下させると、フィルム包装用途における封着時間を大幅に短縮することができるが、これはサイクル時間の短縮及び生産性の向上につながり得る。より低いエチレン含有量を有し、反応器の汚損の問題なしに生産することができる、ヒートシール用途のために処方されたポリマーも必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
一般に、本開示は、包装フィルムにおけるヒートシール層としての使用に非常に適したプロピレンターポリマーに関する。本開示のプロピレンターポリマーは、一実施形態では、主モノマーとしてプロピレンを含有し、約1重量%~約5重量%のエチレン含有量を有し、約1重量%~8重量%未満のブテン含有量を有する。プロピレンターポリマーは、約1g/10分~約30g/10分のメルトフローレートを有し、140℃未満の溶融温度を有し、以下のように定義されるエチレンの連鎖長分布を有する:
nE<0.0353Et+1.08
(式中、Etは、重量によるエチレン含有量である)。特に有利なことに、本開示のプロピレンターポリマーは、フタレートを含まないように処方することができる。
【0007】
一態様では、プロピレンターポリマーのブテン含有量は、約3重量%~約6.9重量%、例えば約5重量%~約6.9重量%である。一態様では、プロピレンターポリマーのエチレン含有量は、約1.5重量%~約3.5重量%であり得る。プロピレンターポリマーは、フタレート内部電子供与体を使用せずにチーグラー・ナッタ触媒され得る。プロピレンターポリマーのプロピレン含有量は、一般に約87重量%超、例えば約90重量%超、例えば約92重量%超、例えば約94重量%超かつ一般に約98重量%未満である。
【0008】
上記で処方された本開示のプロピレンターポリマーは、約115℃未満、例えば約110℃未満のヒートシール開始温度を有し得る。プロピレンターポリマーは、一態様では、約110℃~約129℃の溶融温度を有し得る。メルトフローレートは、約2g/10分~約10g/10分であってよい。一態様では、ターポリマーのエチレンの連鎖長分布は、約1.0~約1.2であり得る。任意選択で、プロピレンターポリマーは、ビスブレーキングされたプロピレンターポリマーであってもよい。
【0009】
本開示はまた、上記のプロピレンターポリマーを含有するポリマー組成物に関する。プロピレンターポリマーは、約70重量%超の量、例えば約80重量%超の量、例えば約90重量%超の量、例えば約95重量%超の量でポリマー組成物中に存在し得る。ポリマー組成物はまた、1つ以上の酸化防止剤、1つ以上の酸捕捉剤、1つ以上のUV安定剤、1つ以上の熱安定剤、スリップ剤、粘着防止剤等を含む種々の他の添加剤を含有していてもよい。
【0010】
本開示はまた、上記のプロピレンターポリマーを含有するポリマーフィルム層に関する。ポリマーフィルム層は、ポリマー組成物から形成することができる。
【0011】
更に別の態様では、本開示は、多層フィルム構造体に関する。多層フィルム構造体は、熱可塑性ポリマーを含む基層と、プロピレンターポリマーを含むヒートシール層とを含む。プロピレンターポリマーは、上記の特徴を有することができる。一態様では、多層フィルム構造体は包装フィルムを含み得る。フィルム構造体は、共押出しすることによって形成することができる。所望であれば、フィルム構造はまた、一方向に延伸されてもよく、又は二軸方向に延伸されてもよい。
【0012】
本開示の他の特徴及び態様は、以下でより詳細に考察される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本開示の完全かつ有効な開示は、添付の図面を参照することを含む、本明細書の残りの部分においてより具体的に記載される。
【0014】
図1】本開示に従って作製された多層フィルムの一実施形態の断面図である。
図2】本開示に従って作製された多層フィルムの別の実施形態の断面図である。
図3】本開示に従って作製され得るヒートシール包装材料の斜視図である。
図4】以下の実施例で提示される結果の一部のグラフ表示である。
【0015】
本明細書及び図面における参照文字の繰り返しの使用は、本発明の同じ又は類似の特色又は要素を表すことを意図している。
【0016】
定義及び試験手順
本明細書で使用するとき、用語「プロピレンターポリマー」は、少なくとも2つのコモノマー、例えばエチレン及び別のα-オレフィンモノマー、例えば1-ブテンと組み合わされた過半重量パーセントのプロピレンモノマーを含有するターポリマーである。プロピレンターポリマーは、ポリマー鎖中にランダムに又は統計的分布で存在する他のコモノマーの個々の繰り返し単位を有し得る。
【0017】
メルトフローレート(MFR)は、本明細書で使用される場合、プロピレン系ポリマーについて2.16kgの重量で230℃でASTM D1238試験法に従って測定される。
【0018】
キシレン可溶分(XS)は、ポリプロピレンランダムコポリマー樹脂の試料を高温キシレンに溶解し、溶液を25℃に冷却した後に溶液中に残る樹脂の重量パーセントとして画定される。これは、60分の沈殿時間を使用するASTM D5492-06による重量XS法とも呼ばれ、本明細書では「湿式法」とも呼ばれる。XSはまた、以下のようなViscotek法に従って測定することができる。0.4gのポリマーを、130℃で60分間撹拌しながら20mLのキシレンに溶解する。次いで、溶液を25℃に冷却し、60分後、不溶性ポリマー画分を濾別する。得られた濾液を、THF移動相を1.0mL/分で流すViscotek ViscoGEL H-100-3078カラムを使用するフローインジェクションポリマー分析によって分析する。カラムを、45℃で動作する光散乱の粘度計及び屈折計検出器を備えたViscotek Model 302 Triple Detector Arrayに結合する。機器較正を、Viscotek PolyCAL(商標)ポリスチレン標準で維持する。方法性能をチェックするための対照としてL5D98を使用することによってViscotek機器及び試料調製手順が一貫した結果を提供することを保証するために、様々な商業的供給元から入手可能な二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)グレードL5D98等のポリプロピレン(PP)ホモポリマーを参照材料として使用する。まず、上記のASTM法を用いた試験からL5D98の値を導き出す。
【0019】
上述のASTM D5492-06法は、キシレン可溶性部分を決定するために適合され得る。一般に、手順は、2gの試料を秤量すること、及び24/40の継手を備えた400mLフラスコ中で200mLのo-キシレンに試料を溶解することからなる。フラスコを水冷冷却器に接続し、内容物を撹拌し、窒素(N)下で加熱還流し、次いで、追加で30分間還流を維持する。次いで、溶液を25℃の温度制御された水浴中で60分間冷却して、キシレン不溶性画分の結晶化を可能にする。溶液が冷却され、不溶性画分が溶液から沈殿すると、キシレン不溶部分(XI)からのキシレン可溶性部分(XS)の分離は、25マイクロメートル濾紙を通して濾過することによって達成される。100mLの濾液を予め秤量したアルミニウムパンに収集し、o-キシレンをこの100mLの濾液から窒素流下で蒸発させる。溶媒が蒸発したら、パン及び内容物を100℃の真空オーブンに30分間又は乾燥するまで入れる。次いで、パンを室温まで冷却し、秤量する。キシレン可溶性部分は、XS(重量%)=[(m-m2/m100として計算され、式中、mは使用される試料の元の重量であり、mは空のアルミニウムパンの重量であり、mはパン及び残留物の重量である(本明細書及び本開示の他の箇所のアスタリスクは、識別された用語又は値が乗算されることを示す)。
【0020】
ポリマー中のモノマーの配列分布は、13C-NMRによって決定することができ、これにより、隣接するプロピレン残基に関連してブテン残基を位置特定することもできる。13C NMRを使用して、エチレン含有量、ブテン含有量、三連子分布、及び三連子タクチシティを測定することができ、以下のように実行される。0.025MのCr(AcAc)3を含有するテトラクロロエタン-d2/オルトジクロロベンゼンの50/50混合物約2.7gをNorell 1001-7 10mm NMR管内の試料0.20gに添加することによって試料を調製した。加熱ブロックを使用して管及びその内容物を150℃に加熱することによって、試料は、溶解及び均質化される。各試料は、均質性を確実にするために目視検査される。Bruker Dual DUL高温CryoProbeを備えたBruker 400MHz分光計を使用してデータを収集した。データは、データファイルごとに512のトランジェント、6秒のパルス反復遅延、90度のフリップ角、及び120℃の試料温度での逆ゲート減結合を使用して取得される。全ての測定は、ロックモードで非スピン試料に対して行われる。試料を、データ取得の前に10分間熱平衡化させる。mmタクチシティのパーセント及びブテンの重量%は、当該技術分野で一般的に使用される方法に従って計算するが、これは、以下のように簡潔に要約される。
【0021】
連鎖長分布は以下の式によって定義される:
nE<0.0353Et+1.08
(式中、Etは、重量によるエチレン含有量であり、連鎖長は以下の式によって定義される:
【0022】
【数1】
【0023】
連鎖長は、13C NMR分光法によって測定される。ピーク割り当て、コモノマー含有量、及びモノマー連鎖長(nE)は、Zhang et al.Polymer Journal,Vol35,No.7,pp551-559(2003)に記載の方法に従って計算される。
【0024】
便宜上、ブテン含有量はまた、フーリエ変換赤外法(FTIR)を使用して測定されるが、これは、最初の方法として、上記の13C NMRを使用して決定されたブテン値に相関される。2つの方法を使用して実施された測定間の関係及び一致は、例えば、J.R.Paxson,J.C.Randall,「Quantitative Measurement of Ethylene Incorporation into Propylene Copolymers by Carbon-13 Nuclear Magnetic Resonance and Infrared Spectroscopy」,Analytical Chemistry,Vol.50,No.13,Nov.1978,1777-1780に記載されている。
【0025】
Mw/Mn(「MWD」とも呼ばれる)及びMz/Mwは、ポリプロピレンのゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)分析方法に従ってGPCによって測定される。ポリマーは、IR5 MCT(テルル化カドミウム水銀高感度、熱電冷却IR検出器)、Polymer Charの四細管粘度計、Wyattの8角MALLS、及び3つのAgilent Plgel Olexis(13um)を備えた、Polymer Char High Temperature GPCで分析する。オーブン温度を150℃に設定する。溶媒は、約200ppmの2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)を含有する窒素パージされた1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB)である。流速は1.0mL/分であり、注入量は200μLである。穏やかに撹拌しながら160℃で2時間、試料をN2パージ及び予熱したTCB(200ppmのBHTを含有)に溶解させることによって、2mg/mLの試料濃度を調製する。本開示に従って作製されたターポリマーは、約3超、例えば約4超、例えば約4.8超かつ約8未満、例えば約7未満のMWDを有し得る。
【0026】
GPCカラムセットは、20種の狭い分子量分布のポリスチレン標準を実行することによって較正される。標準の分子量(MW)は266~12,000,000g/molの範囲であり、標準は6つの「カクテル」混合物に含有されていた。各標準混合物は、個々の分子量間に少なくとも1ディケードの分離を有する。ポリスチレン標準は、1,000,000g/mol以上の分子量については20mLの溶媒中0.005gで、1,000,000g/mol未満の分子量については20mLの溶媒中0.001gで調製される。ポリスチレン標準を撹拌しながら160℃で60分間溶解する。狭い標準混合物が最初に実行され、分解の影響を最小限に抑えるために、分子量が最も高い成分の順で実行する。対数分子量較正は、溶出体積の関数として4次多項式フィットを使用して生成される。ポリプロピレン等価分子量は、ポリプロピレン及びポリスチレンについて報告されているマーク-フウィンク係数を用いる以下の式を使用することによって計算される(ポリプロピレン:Scholte et.al.J.Appl.Polym.Sci.,29,3763-3782(1984))及び(ポリスチレン:Otocka et.al.Macromolecules,4,507(1971)):
【0027】
【数2】
(式中、MppはPP等価MWであり、MPSはPS等価MWであり、logK並びにPP及びPSのマーク-フウィンク係数の値は、以下の表中に以下に列挙する)。
【0028】
【表1】
【0029】
融点又は溶融温度及び結晶化温度は、示差走査熱量測定(DSC)を使用して決定される。融点は、試験中に形成される一次ピークであり、典型的には、形成する二次ピークである。「結晶性」という用語は、結晶構造を形成する原子又は分子の配列の規則性を指す。ポリマー結晶性は、DSCを使用して調べることができる。Tmeは、溶融が終了する温度を意味し、Tmaxは、ピーク溶融温度を意味し、両方とも、最終加熱ステップからのデータを使用してDSC分析から当業者によって決定される。DSC分析のための1つの好適な方法は、TA Instruments,IncからのモデルQ1000(商標)DSCを使用する。DSCの較正は、以下の様態で実行される。最初に、アルミニウムDSCパン内で、いずれの試料もない状態でセルを-90℃から290℃まで加熱することによってベースラインを得る。次いで、7ミリグラムの新鮮なインジウム試料を、試料を180℃まで加熱し、試料を10℃/分の冷却速度で140℃まで冷却し、続いて試料を140℃で1分間等温的に保ち、続いて試料を10℃/分の加熱速度で140℃から180℃まで加熱することによって分析する。インジウム試料の融解熱及び溶融の開始を決定し、溶融の開始については156.6℃から0.5℃以内であり、融解熱については28.71J/gから0.5J/g以内であることを確認する。次いで、脱イオン水を、DSCパン中の新鮮な試料の小滴を10℃/分の冷却速度で25℃から-30℃まで冷却することによって分析する。試料を-30℃で2分間等温的に保ち、10℃/分の加熱速度で30℃まで加熱する。溶融の開始を決定し、0℃から0.5℃以内であることを確認する。
【0030】
高結晶性ポリプロピレンポリマーにおける結晶化度を決定する1つの方法は、示差走査熱量測定(DSC)によるものである。プロピレンポリマーの小さい試料(ミリグラムサイズ)をアルミニウム製DSCパン中に密封する。試料を25センチメートル/分の窒素パージを用いてDSCセルに入れ、約-80℃に冷却する。10℃/分で225℃まで加熱することによって、試料について標準的な熱履歴を確立する。次いで、試料を約-80℃に冷却し、10℃/分で225℃まで再加熱する。2回目の走査で観察された融解熱(ΔHobserved)を記録する。観察された融解熱は、以下の式によって、ポリプロピレン試料の重量に基づく重量パーセントで結晶化度に関連付けられる。
【0031】
【数3】
(式中、Macromolecular Physics,Volume 3,Crystal Melting,Academic Press,New Your,1980,p48に報告されているように、アイソタクチックポリプロピレンの融解熱(ΔHisotactic PP)は、ポリマー1グラム当たり164.92ジュール(J/g)である)。本開示のターポリマーは、約60%未満、例えば約55%未満、例えば約50%未満、例えば約45%未満かつ約25%超、例えば約35%超の結晶化度を有し得る。
【0032】
あるいは、結晶化度はまた、加熱結晶化熱(HCH)法を使用して決定され得る。HCH法では、試料を200℃で平衡化し、その温度で3分間保持する。等温工程の後、データ保存をオンにし、試料を10℃/分で-80℃まで傾斜を設ける。-80℃に到達したら、データサンプリングを停止し、試料をその温度で3分間保持する。第2の等温工程の後、データ保存をオンにし、試料を10℃/分で200℃まで傾斜を設ける。
【0033】
「ヒートシール開始温度」(HSIT)という用語は、封着されたフィルムを用いたヒートシール曲線においてヒートシール強度がヒートシール強度ゼロから最初に上昇し始めたときのシール温度として定義される。HSIT測定は、BMS TT03法を使用してブリュックナーのフィルム試験民間試験所で行うことができる。ブリュガーHSG-CCヒートシール機を用いて、選択された温度、1バールの圧力下、及び1秒の滞留時間でフィルムを封着する。封着されたフィルムを15mm幅のストリップに切断する。封着強度は、ズウィック引張強度試験機で、フィルムを引張試験機のクランプで把持し、180°のグリップ間角度で引き離すことによって試験する。ヒートシール開始温度(HSIT)は、1.0N/15mmの封着強度が達成されるシール温度として求められる。
【0034】
フィルムのヘイズは、ASTM D1003法に従って測定した。ホモポリマーポリプロピレンをコア層(B)として使用し、ターポリマーをスキン層(A)として使用した。フィルム構造は、ABA3層構造である。全フィルム厚さは約20μmであり、コア層及びスキン層の比は90:10である。本開示に従って作製されたフィルムは、約1%未満、例えば約0.8%未満、例えば約0.6%未満かつ約0.1%超のヘイズを示し得る。
【発明を実施するための形態】
【0035】
様々な実施形態が以下に記載される。特定の実施形態は、網羅的な記載として、又は本明細書で論じられるより広い態様への限定として意図されていないことに留意されたい。特定の実施形態と併せて記載される一態様は、必ずしもその実施形態に限定されるものではなく、任意の他の実施形態で実践することができる。
【0036】
数値範囲に関して本明細書で利用される場合、「およそ(approximately)」、「約(about)」、「実質的に(substantially)」という用語、及び類似の用語は、当業者に理解され、それが使用される文脈に応じてある程度変化するであろう。当業者には明らかでない用語の使用が存在する場合、それが使用される文脈を考慮すると、用語は、開示された値のプラスマイナス10%であろう。「およそ(approximately)」、「約(about)」、「実質的に(substantially)」、及び類似の用語が、構造的特徴に適用される場合(例えば、その形状、サイズ、向き、方向などを説明するために)、これらの用語は、例えば、製造又は組み立てプロセスに起因し得る構造の軽微な変形を包含することを意味し、この開示の主題が関係する当業者によって一般的かつ許容される使用法と調和する広い意味を有することが意図される。したがって、これらの用語は、記載され特許請求される主題の非実質的な又は重要でない修正又は変更が、添付の特許請求の範囲に記載されるような本開示の範囲内にあるとみなされることを示すものとして解釈されるべきである。
【0037】
要素を記載する文脈における(特に、以下の特許請求の範囲の文脈における)「a」及び「an」及び「the」、並びに同様の指示対象は、本明細書において別途指示がない限り、又は内容が明らかに矛盾していない限り、単数形及び複数形の両方を網羅すると解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書において別途指示がない限り、この範囲内に属する各別個の値を個々に指す簡略な方法の役目を果たすことを意図しているに過ぎず、各別個の値は、それが本明細書に個々に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書において別途指示がない限り、又は別様に内容が明らかに矛盾していない限り、任意の好適な順序で行われ得る。本明細書に提供されるあらゆる及び全ての例、又は例示的な文言(例えば、「など」)の使用は、実施形態をよりよく説明することを意図しているに過ぎず、別途指示がない限り、特許請求の範囲に制限を課すものではない。本明細書における文言は、任意の請求されない要素を不可欠なものとして示していると解釈されるべきではない。
【0038】
一般に、本開示は、優れた機械的及び物理的特性を依然として保持しながら、より低い溶融温度を示すプロピレンターポリマーに関する。プロピレンターポリマーは、特に、包装フィルム等の種々の異なる物品上にヒートシール層を形成するのに非常に適している。例えば、プロピレンターポリマーは、低下したヒートシール開始温度を示すことができる。この点に関して、包装材料を生産するために使用される場合、プロピレンターポリマーから作製されるヒートシール層は、過去に作製されたヒートシール層と比較して封着時間の短縮、サイクル時間の短縮、及び生産速度の増大を可能にする。一態様では、プロピレンターポリマーは、過去に作製された類似のターポリマーと比較してコモノマーレベルを実質的に増加させる必要なく形成される。更に、プロピレンターポリマーは、比較的低いエチレン含有量で形成することができる。
【0039】
少なくとも1つの外部ヒートシール層を含む多層フィルムは、全ての異なる種類の包装材料を形成するために使用される。包装材料は、可撓性であってもよく、剛性であってもよい。包装材料を使用して、例えば、スナック食品、キャンディ、ハードウェア、全ての他の種類の食料品、消費者製品等を含む、無限の様々な品目を保持及び保管することができる。ヒートシール層は、包装材料にその内容物が充填される前後に、熱及び圧力を使用して2枚の対向するフィルム層を互いに封着するために使用される。
【0040】
包装材料及び他の容器を封着するために使用されるヒートシール層は、理想的には、比較的低い溶融温度及び/又はヒートシール開始温度を有する。例えば、ヒートシールプロセス中、ヒートシール層の使用を通じて包装材料の封着を開始するのに必要な温度は、封着プロセス中に包装材料が劣化したり、しわが寄ったり、縮んだりしないように、一次フィルム層の軟化点よりも低くなければならない。
【0041】
図1及び図2を参照すると、本開示に従って作製された多層フィルムの様々な実施形態が例示目的のみのために示されている。図1に示されるように、多層フィルム10は、この実施形態において、本開示に従って作製されたヒートシール層20に隣接する一次フィルム層15を含む。具体的には、ヒートシール層20はプロピレンターポリマーから作製される。ヒートシール層20は、多層フィルム10の外面を形成し、フィルムを隣接するフィルム層に熱的に接合するために使用することができる。一実施形態では、包装材料は、ヒートシール層20が対向するヒートシール層に面するように多層フィルム10を折り畳むことによって形成することができる。次いで、包装材料を形成するために、2枚のヒートシール層を互いに熱的に接合することができる。
【0042】
図1に示す実施形態では、一次フィルム層15は単一層として示されている。しかしながら、一次フィルム層15は、異なる熱可塑性ポリマーの複数の層から作製されてもよいことが理解されるべきである。1つ以上の一次フィルム層15を生成するために使用することができる熱可塑性ポリマーとしては、ポリオレフィン、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、エチレン含有コポリマー、プロピレン含有コポリマー、及びこれらのブレンドが挙げられる。一次フィルム層中に金属化層が存在していてもよく、所望であればそれが外層を形成してもよい。フィルム層を生成するために使用することができる他の好適な熱可塑性ポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートグリコール、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド等の様々なポリエステルが挙げられる。
【0043】
図2を参照すると、多層フィルム10の別の実施形態が示されている。類似の要素を示すために同様の参照番号が使用されている。図2の実施形態では、多層フィルム10は、一次フィルム層15、第1のヒートシール層20、及び第2のヒートシール層30を含む。図示されているように、ヒートシール層20及び30がフィルム10の外面を形成する。ヒートシール層20及び30は、本開示のプロピレンターポリマーから形成することができる。
【0044】
図1及び図2に表されているように、ヒートシール層20及び30は、フィルム10全体の厚さに対して比較的薄い。例えば、ヒートシール層20及び30は、約20マイクロメートル未満、例えば約10マイクロメートル未満、例えば約5マイクロメートル未満、例えば約4マイクロメートル未満、例えば約3マイクロメートル未満、例えば約2マイクロメートル未満かつ一般に約0.1マイクロメートル超、例えば約0.5マイクロメートル超、例えば約1マイクロメートル超の厚さを有し得る。他方、多層フィルム10は、最大約250マイクロメートル、例えば約225マイクロメートル未満、例えば約200マイクロメートル未満、例えば約175マイクロメートル未満、例えば約150マイクロメートル未満、例えば約125マイクロメートル未満、例えば約100マイクロメートル未満、例えば約75マイクロメートル未満、例えば約50マイクロメートル未満かつ一般に約10マイクロメートル超、例えば約20マイクロメートル超、例えば約25マイクロメートル超、例えば約35マイクロメートル超、例えば約45マイクロメートル超、例えば約55マイクロメートル超、例えば約65マイクロメートル超、例えば約75マイクロメートル超、例えば約100マイクロメートル超の厚さを有し得る。
【0045】
例示として、図3を参照すると、本開示に従って形成され得る包装材料50が示されている。包装材料50は、図1又は図2のいずれかに示された多層フィルム10から作製することができる。包装材料50は、底部52、側部54、及び上部56を含む。包装材料50は、この実施形態では、2枚の対向する可撓性フィルムから形成される。包装材料の各側部は、個々のフィルム片から作製されてもよく、又は重なり合う関係にフィルムを折り畳むことによって形成されてもよい。本開示のヒートシール層20及び30を使用して、包装材料の縁部を封着することができる。例えば、図3に示すように、包装材料は、ヒートシール層に熱及び圧力を印加することによって形成される封着された縁部60を含む。
【0046】
図示のように、包装材料50には、食品等の物品70が収容されている。本開示に従って作製された包装材料を使用して、スナック食品、ハードウェア、消費者製品等の様々な異なる製品を収容し、封着することができる。更に、包装材料50を使用して、流動性材料、例えば水、フルーツジュース等を含む液体を収容することができる。包装材料50を使用して、シャンプー、コンディショナー、他のヘア製品、練り歯磨き等の流動性ゲルを収容することもできる。
【0047】
図3に示されているように包装材料を充填する場合、典型的には、2層のフィルムを合わせ、縁部を封着して、容積を有する中空内部を生成する。次いで、製品(複数可)を中空内部に装填し、包装材料の残りの辺をヒートシールする。包装材料をヒートシールするために、包装材料の開放端は、典型的には、ヒートシール層が活性化して熱接合を形成するのに十分な量の熱及び圧力を印加する封着装置と係合する。包装材料が充填及び封着プロセスを経てより速く送られるほど、包装プロセスはより経済的になる。この点に関して、本開示は、概して、より低い溶融温度及び低下したヒートシール開始温度を有するプロピレンターポリマーからヒートシール層を生成することに関する。本開示のプロピレンターポリマーは、封着時間及び/又は封着温度を劇的に低減することができ、これにより生産性を実質的に増大させることができることが見出された。
【0048】
本開示によれば、よりランダムな及び/又はより均一に分布したエチレン含有量を有するポリマーを構築することによって、より低い溶融温度及び/又は低下したヒートシール開始温度を有するプロピレンターポリマーが生成される。エチレン分布がよりランダムであると、ポリマーの結晶化度が低下し、その結果、溶融温度が低下し、ヒートシール温度がより低くなると考えられる。
【0049】
プロピレンターポリマーは、チーグラー・ナッタ触媒を用いて作製することができる。チーグラー・ナッタ触媒は、内部電子供与体と組み合わせて塩基触媒成分を含み得る。内部電子供与体は、例えば、置換フェニルジエステルであり得る。重合中、上記のような塩基触媒成分は、助触媒及び1つ以上の外部電子供与体と組み合わされる。外部電子供与体は、例えば、1つ以上の活性制限剤であり得る。上記のチーグラー・ナッタ触媒の使用を通して、プロピレンターポリマーは、プロセス条件並びにモノマー及びコモノマーの添加速度を制御することによって構築することができる。知られてはいないが、上記のような触媒系は、よりランダムなエチレン含有量に寄与し、他の触媒系、例えばフタレート系成分、ジエーテル系成分、及びスクシネート系成分を使用する触媒系を使用して生成することができないポリマーを生成することができると考えられる。実際、本開示に従って作製されるポリマーの1つの利点は、ポリマーがフタレートフリーであり得ることである。
【0050】
本開示のプロピレンターポリマーは、少なくとも2つの他のモノマーと組み合わされた過半重量パーセントのプロピレンモノマーを含み得る。コモノマーは、2つ以上のα-オレフィンであり得る。コモノマーは、例えば、エチレン及びブテン(1-ブテン)であり得る。
【0051】
プロピレンターポリマーのプロピレン含有量は、例えば、一般に、約87重量%超、例えば約89重量%超、例えば約91重量%超、例えば約93重量%超、例えば約95重量%超である。プロピレンターポリマーの総プロピレン含有量は、一般に約98重量%未満、例えば約96重量%未満、例えば約94重量%未満、例えば約92重量%未満である。プロピレンターポリマーの総コモノマー含有量は、約2重量%~約15重量%であり得る。例えば、プロピレンターポリマーの総コモノマー含有量は、約13重量%未満、例えば約11重量%未満、例えば約9重量%未満かつ一般に約3重量%超、例えば約5重量%超であり得る。
【0052】
上記のように、一実施形態において、プロピレンターポリマーは、エチレン/ブテン/プロピレンターポリマーである。ターポリマーのエチレン含有量は、一般に約1重量%超、例えば約1.5重量%超、例えば約2重量%超、例えば約2.5重量%超、例えば約3重量%超であり得る。ターポリマーのエチレン含有量は、一般に約5重量%未満、例えば約4.5重量%未満、例えば約4重量%未満、例えば約3.5重量%未満、例えば約3.3重量%未満、例えば約3重量%未満である。
【0053】
本開示のプロピレンターポリマーの1つの利点は、比較的低いエチレンモノマー含有量を有するポリマーを生成する能力である。より低いエチレンモノマー含有量を維持することにより、粒子凝集がより少なく、取り扱いがより容易な樹脂を有するポリマーを生成することができる。
【0054】
プロピレンターポリマーのブテン含有量は、一般に、約1重量%~約15重量%であり得、一実施形態では、8重量%未満であり得る。例えば、ブテン含有量は、約7.5重量%未満、例えば約7.3重量%未満、例えば約6.9重量%未満であり得る。ブテン含有量は、一般に、約2重量%超、例えば約3重量%超、例えば約5重量%超である。
【0055】
本開示のプロピレンターポリマーは、一般に、約2重量%~約45重量%のキシレン可溶(XS)分を有する。例えば、キシレン可溶分は、約40重量%未満、例えば約30重量%未満、例えば約20重量%未満かつ一般に約2重量%超、例えば約4重量%超、例えば約5重量%超であってよい。一態様では、プロピレンターポリマーは、比較的低いキシレン可溶分を有し得る。例えば、プロピレンターポリマーは、約10重量%未満、例えば約9重量%未満、例えば約8重量%未満のキシレン可溶分を有し得る。
【0056】
組成物中に存在するプロピレンターポリマーは、一般に、約1~約30g/10分の範囲のメルトフローインデックス(MFI)を有し得るが、より高い又はより低いメルトフローインデックスを有するポリプロピレンも本明細書に包含される。例えば、プロピレンターポリマーは、約2g/10分超、例えば約3g/10分超、例えば約4g/10分超のメルトフローインデックスを有し得る。プロピレンターポリマーのメルトフローインデックスは、約18g/10分未満、例えば約16g/10分未満、例えば約14g/10分未満、又は約10g/10分未満であってよい。
【0057】
本開示に従って作製されるヒートシール層は、プロピレンターポリマーを単独で又は様々な他の成分と組み合わせて含有するポリプロピレンポリマー組成物から形成することができる。プロピレンターポリマーは、プロピレンターポリマー組成物中に、少なくとも50重量%、例えば少なくとも60重量%、例えば少なくとも70重量%、例えば少なくとも80重量%、例えば少なくとも90重量%、例えば少なくとも95重量%、例えば少なくとも96重量%の量で存在し得る。一実施形態では、プロピレンターポリマー組成物は、ほぼプロピレンターポリマーのみを含有していてもよい。例えば、プロピレンターポリマーは、約96重量%超の量、例えば約97重量%超の量、例えば約98重量%超の量、例えば約99重量%超の量で存在し得る。
【0058】
一実施形態では、本開示のプロピレンターポリマーは、過酸化物クラッキングすることができ、これにより、メルトフローレートを増加させ、分子量分布を減少させることができる。
【0059】
過酸化物クラッキングはまた、ビスブレーキングプロセスとも称される。ビスブレーキング中、プロピレンターポリマーのより高いモル質量鎖は、より低いモル質量鎖との関連で切断される。ビスブレーキングは、ポリマーの平均分子量の全体的な減少及びメルトフローレートの上昇をもたらす。ビスブレーキングによって、より低い分子量分布又は多分散指数を有するポリマーを製造することができる。ポリマー内で起こるビスブレーキングの量は、クラッキング比を用いて定量化することができる。クラッキング比は、ポリマーの最終メルトフローレートをポリマーの初期メルトフローレートで割ることによって計算される。
【0060】
プロピレンターポリマーは、ビスブレーキング剤として過酸化物を使用して、本開示によるビスブレーキングに供することができる。典型的な過酸化物ビスブレーキング剤は、3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリペルオキソナン、2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチル-ペルオキシ)ヘキサン(DHBP)、2,5-ジメチル-2,5-ビス(tert-ブチル-ペルオキシ)ヘキシン-3(DYBP)、ジクミル-ペルオキシド(DCUP)、ジ-tert-ブチル-ペルオキシド(DTBP)、tert-ブチル-クミル-ペルオキシド(BCUP)、及びビス(tert-ブチルペルオキシ-イソプロピル)ベンゼン(DIPP)である。上記の過酸化物は、単独で又はブレンドで使用することができる。
【0061】
プロピレンターポリマーのビスブレーキングは、第1の押出機での溶融加工中に実施され得る。例えば、プロピレンターポリマーを押出機を通して供給してよく、ポリマーが溶融状態になったら、ビスブレーキング剤を押出機に添加してよい。あるいは、ビスブレーキング剤をプロピレンターポリマーと予めブレンドしておいてもよい。一態様では、例えば、ビスブレーキング剤を最初にプロピレンターポリマー等のポリマーと配合して、マスターバッチを形成してよい。次いで、ビスブレーキング剤を含有するマスターバッチをプロピレンターポリマーとブレンドし、押出機を通して供給してよい。更に別の態様では、ビスブレーキング剤を、ポリマー粉末に吸収させる等して、プロピレンターポリマーと物理的にブレンドしてもよい。一般に、任意の好適な押出機をビスブレーキング中に使用することができる。例えば、押出機は、単軸押出機、逆回転二軸押出機、同方向回転二軸押出機、遊星歯車押出機、リング押出機、又は任意の好適な混練装置であってよい。
【0062】
プロピレンターポリマーに添加されるビスブレーキング剤の量は、所望のクラッキング比を含む様々な要因に依存し得る。一般に、ビスブレーキング剤又は過酸化物は、約0.001重量%超、例えば約0.005重量%超、例えば約0.01重量%超、例えば約0.015重量%超、例えば約0.02重量%超、例えば約0.04重量%超、例えば約0.05重量%超、例えば約0.08重量%超の量でプロピレンターポリマーに添加され得る。一般に、ビスブレーキング剤は、約0.2重量%未満の量、例えば約0.15重量%未満の量、例えば約0.1重量%未満の量でプロピレンターポリマーに添加される。
【0063】
一般に、プロピレンターポリマーは、約1.1超、例えば約1.3超、例えば約1.5超、例えば約1.7超、例えば約2超かつ一般に約10未満、例えば約5未満、例えば約3未満、例えば約2.5未満のクラッキング比を有するようにビスブレーキングに供され得る。クラッキング比は、ポリマーの最終メルトフローレートをポリマーの初期メルトフローレートで割ることによって計算される。
【0064】
上述したように、プロピレンターポリマーは、よりランダムなエチレン分布を有するように、本開示に従って構築される。ターポリマー内のエチレン分布は、以下の式によって定義される連鎖長に関連付けることができる:
【0065】
【数4】
【0066】
上で定義した連鎖長に基づいて、本開示に従って作製されたプロピレンターポリマーは、一実施形態において、以下の式によって定義されるエチレンについての特定の連鎖長分布を有する:
nE<0.0353Et+1.08
(式中、Etは、重量によるエチレン含有量である)。特定の実施形態では、ポリプロピレンターポリマーは、1.26未満、例えば1.24未満、例えば約1.22未満、例えば1.2未満、例えば約1.18未満、例えば約1.15未満のエチレンの連鎖長分布を有し得る。ターポリマー内に含有されるエチレンの連鎖長分布は、一般に1超、例えば約1.05超である。
【0067】
ターポリマー中のエチレン分布がよりランダムになると、ポリマー結晶化度が低下し、このことは、次に、溶融温度を低下させ、ヒートシール温度を低くすると考えられる。プロピレンターポリマーの溶融温度は、例えば、約140℃未満、例えば約135℃未満、例えば約132℃未満、例えば約130℃未満、例えば約129℃未満、例えば約127℃未満、例えば約125℃未満であり得る。溶融温度は、一般に110℃超、例えば約115℃超、例えば約120℃超である。プロピレンターポリマーのヒートシール開始温度は、110℃未満、例えば約109℃未満、例えば約108℃未満かつ一般に約80℃超、例えば約90℃超、例えば100℃超である。
【0068】
本開示のプロピレンターポリマーは、様々な方法で形成することができる。一実施形態では、ポリマーはチーグラー・ナッタ触媒される。触媒は、例えば、具体的な用途に応じて変化し得る固体触媒成分を含み得る。
【0069】
固体触媒成分は、(i)マグネシウム、(ii)周期表IV~VIII族の元素の遷移金属化合物、(iii)ハロゲン化物、オキシハロゲン化物、並びに/又は(i)及び/若しくは(ii)のアルコキシド、並びに(iv)(i)、(ii)、及び(iii)の組み合わせを含み得る。好適な触媒成分の非限定的な例としては、ハロゲン化物、オキシハロゲン化物、及びマグネシウム、マンガン、チタン、バナジウム、クロム、モリブデン、ジルコニウム、ハフニウム、及びこれらの組み合わせのアルコキシドが挙げられる。
【0070】
一実施形態では、触媒成分の調製は、混合マグネシウム及びチタンアルコキシドのハロゲン化を含む。
【0071】
様々な実施形態では、触媒成分は、マグネシウム部分化合物(MagMo)、混合マグネシウムチタン化合物(MagTi)、又は安息香酸含有塩化マグネシウム化合物(BenMag)である。一実施形態では、触媒前駆体は、マグネシウム部分(「MagMo」)前駆体である。MagMo前駆体は、マグネシウム部分を含む。好適なマグネシウム部分の非限定的な例としては、無水塩化マグネシウム及び/又はそのアルコール付加物、マグネシウムアルコキシド若しくはアリールオキシド、混合マグネシウムアルコキシハライド、及び/又はカルボキシル化マグネシウムジアルコキシド又はアリールオキシドが挙げられる。一実施形態では、MagMo前駆体は、マグネシウムジ(C1~4)アルコキシドである。更なる実施形態では、MagMo前駆体は、ジエトキシマグネシウムである。
【0072】
別の実施形態では、触媒成分は、混合マグネシウム/チタン化合物(「MagTi」)である。「MagTi前駆体」は、式MgTi(OR)fXを有し、式中、Rは、1~14個の炭素原子又はCOR’を有する脂肪族又は芳香族炭化水素ラジカルであり、又はR’が、1~14個の炭素原子を有する脂肪族又は芳香族炭化水素ラジカルであり、各OR基は、同じであるか、又は異なり、Xは、独立して、塩素、臭素、又はヨウ素、好ましくは塩素であり、dは、0.5~56、又は2~4であり、fは、2~116、又は5~15であり、gは、0.5~116、又は1~3である。前駆体は、その調製に使用される反応混合物からアルコールを除去する制御された沈殿によって調製される。一実施形態では、反応媒体は、芳香族液体、特に塩素化芳香族化合物、最も特にクロロベンゼンと、アルカノール、特にエタノールとの混合物を含む。好適なハロゲン化剤としては、四臭化チタン、四塩化チタン又は三塩化チタン、特に四塩化チタンが挙げられる。ハロゲン化に使用される溶液からアルカノールを除去すると固体の前駆体が沈殿するが、これは特に望ましい形状及び表面積を有する。更に、得られた前駆体は、粒子サイズが特に均一である。
【0073】
別の実施形態では、触媒前駆体は、安息香酸含有塩化マグネシウム材料(「BenMag」)である。本明細書で使用される場合、「安息香酸含有塩化マグネシウム」(「BenMag」)は、安息香酸内部電子供与体を含有する触媒(すなわち、ハロゲン化触媒成分)であり得る。BenMag材料は、ハロゲン化チタンなどのチタン部分も含み得る。安息香酸内部供与体は不安定であり、触媒及び/又は触媒合成中に他の電子供与体によって置き換えられ得る。好適な安息香酸基の非限定的な例としては、安息香酸エチル、安息香酸メチル、p-メトキシ安息香酸エチル、p-エトキシ安息香酸メチル、p-エトキシ安息香酸エチル、p-クロロベンゾエートが挙げられる。一実施形態では、ベンゾエート基はエチルベンゾエートである。一実施形態では、BenMag触媒成分は、安息香酸化合物の存在下で、任意の触媒成分(すなわち、MagMo前駆体又はMagTi前駆体)のハロゲン化の生成物であり得る。
【0074】
別の実施形態では、固体触媒成分は、マグネシウム部分、チタン部分、エポキシ化合物、有機ケイ素化合物、及び内部電子供与体から形成することができる。一実施形態では、有機リン化合物を固体触媒成分に組み込むこともできる。例えば、一実施形態では、ハロゲン化物含有マグネシウム化合物は、エポキシ化合物、有機リン化合物、及び炭化水素溶媒を含む混合物中に溶解することができる。得られた溶液を、有機ケイ素化合物の存在下でチタン化合物で処理し、任意選択的に内部電子供与体で処理して、固体沈殿物を形成することができる。次いで、固体沈殿物を更なる量のチタン化合物で処理することができる。触媒を形成するために使用されるチタン化合物は、以下の化学式を有することができる:
Ti(OR)4-g
式中、各Rは、独立して、C~Cアルキルであり、Xは、Br、Cl、又はIであり、gは、0、1、2、3、又は4である。
【0075】
いくつかの実施形態では、有機ケイ素は、モノマー化合物又はポリマー化合物である。有機ケイ素化合物は、-Si-O-Si-基を1分子中又は他の分子間に含んでいてもよい。有機ケイ素化合物の他の例示的な例としては、ポリジアルキルシロキサン及び/又はテトラアルコキシシランが挙げられる。そのような化合物は、単独で使用してもよいし、組み合わせて使用してもよい。有機ケイ素化合物は、アルミニウムアルコキシド及び内部電子供与体と組み合わせて使用することができる。
【0076】
上記で言及したアルミニウムアルコキシドは、式Al(OR’)を有するものであってもよく、式中、各R’は、個々に、20個までの炭素原子を有する炭化水素である。これは、各R’が個々にメチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソ-ペンチル、ネオ-ペンチルなどである場合を含み得る。
【0077】
ハロゲン化物含有マグネシウム化合物の例としては、例えば、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、及びフッ化マグネシウムが挙げられる。一実施形態では、ハロゲン化物含有マグネシウム化合物は塩化マグネシウムである。
【0078】
エポキシ化合物の例としては、以下の式のグリシジル含有化合物が挙げられるが、これらに限定されない:
【0079】
【化1】
式中、「a」は1、2、3、4、又は5であり、XはF、Cl、Br、I、又はメチルであり、Rは、H、アルキル、アリール、又はシクリルである。一実施形態では、アルキルエポキシドはエピクロロヒドリンである。いくつかの実施形態では、エポキシ化合物は、ハロアルキルエポキシド又は非ハロアルキルエポキシドである。
【0080】
更に別の実施形態では、実質的に球状のMgCl-nEtOH付加物は、噴霧結晶化プロセスによって形成されてもよい。このプロセスでは、MgCl-nROH溶融物(nが1~6である)は、20~80℃の温度で容器の上部に不活性ガスを導入しながら容器内に噴霧される。溶融液滴を、-50~20℃の温度で不活性ガスが導入される結晶化領域に移し、溶融液滴を、球形の非凝集固体粒子に結晶化させる。球状のMgCl粒子は、次いで、所望のサイズに分類される。望ましくないサイズの粒子は、リサイクルすることができる。触媒合成のための好ましい実施形態では、球状のMgCl前駆体は、約15~150マイクロメートル、好ましくは20~100マイクロメートル、最も好ましくは35~85マイクロメートルの間の平均粒径(Malvern d50)である。
【0081】
触媒成分は、ハロゲン化によって固体触媒に変換することができる。ハロゲン化は、内部電子供与体の存在下で触媒成分をハロゲン化剤と接触させることを含む。ハロゲン化は、触媒成分中に存在するマグネシウム部分を、チタン部分(チタンハロゲン化物など)が堆積されているハロゲン化マグネシウム担体へと変換する。いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、ハロゲン化中、内部電子供与体は、(1)マグネシウム系担体上のチタンの位置を調節し、(2)マグネシウム及びチタン部分の、それぞれのハロゲン化物への変換を促進し、(3)変換中にハロゲン化マグネシウム担体の微結晶サイズを調節すると考えられる。したがって、内部電子供与体の提供は、立体選択性が向上した触媒組成物をもたらす。
【0082】
一実施形態では、ハロゲン化剤は、式Ti(ORを有するハロゲン化チタンであり、式中、R及びXが、上記のように定義され、fは、0~3の整数であり、hは、1~4の整数であり、f+hは、4である。一実施形態では、ハロゲン化剤は、TiClである。更なる実施形態では、ハロゲン化は、塩素化又は非塩素化芳香族液体、例えばジクロロベンゼン、o-クロロトルエン、クロロベンゼン、ベンゼン、トルエン、又はキシレンの存在下で行われる。更に別の実施形態では、ハロゲン化は、ハロゲン化剤と塩素化芳香族液体との混合物であって、40~60体積パーセントのハロゲン化剤、例えばTiClを含む混合物の使用によって行われる。
【0083】
一実施形態では、得られる固体触媒組成物は、総固形分重量に基づいて約1.0重量パーセント~約6.0重量パーセント、又は約1.5重量パーセント~約4.5重量パーセント、又は約2.0重量パーセント~約3.5重量パーセントのチタン含有量を有する。固体触媒組成物中のチタン対マグネシウムの重量比は、好適には約1:3~約1:160、又は約1:4~約1:50、又は約1:6~1:30である。一実施形態では、内部電子供与体は、約0.005:1~約1:1、又は約0.01:1~約0.4:1の内部電子供与体対マグネシウムのモル比で触媒組成物中に存在し得る。重量パーセントは、触媒組成物の総重量に基づく。
【0084】
上記のように、触媒組成物は、マグネシウム部分、チタン部分、及び内部電子供与体の組み合わせを含み得る。触媒組成物は、触媒成分及び内部電子供与体を内部電子供与体が組み込まれたマグネシウム部分とチタン部分との組み合わせに変換する前述のハロゲン化手順によって、生成される。触媒組成物が形成される触媒成分は、マグネシウム部分前駆体、混合マグネシウム/チタン前駆体、ベンゾエート含有塩化マグネシウム前駆体、マグネシウム、チタン、エポキシ、及びリン前駆体、又は球状前駆体を含む、上述の触媒前駆体のいずれかであり得る。
【0085】
様々な異なる種類の内部電子供与体が固体触媒成分に組み込まれてもよい。一実施形態では、内部電子供与体は、フェニレン置換ジエステルなどのアリールジエステルである。一実施形態では、内部電子供与体は、以下の化学構造を有し得、
【0086】
【化2】
(式中、R、R、R、及びRは、各々1~20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基であり、当該ヒドロカルビル基は、分岐若しくは直鎖構造を有するか又は7~15個の炭素原子を有するシクロアルキル基を含み、E及びEは、同じであっても異なっていてもよく、1~20個の炭素原子を有するアルキル、1~20個の炭素を有する置換アルキル、1~20個の炭素原子を有するアリール、1~20個の炭素原子を有する置換アリール、又は1~20個の炭素原子を有し、任意選択でヘテロ原子を含む不活性官能基からなる群から選択され、X及びXは、各々O、S、アルキル基、又はNR(式中、Rは、1~20個の炭素原子を有するヒドロカルビル基又は水素である)である)。
【0087】
本明細書で使用される場合、「ヒドロカルビル」及び「炭化水素」という用語は、分岐鎖若しくは非分岐鎖の飽和若しくは不飽和の、環式、多環式、縮合、又は非環式種、並びにこれらの組み合わせを含む、水素及び炭素原子のみを含有する置換基を指す。ヒドロカルビル基の非限定的な例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルカジエニル基、シクロアルケニル基、シクロアルカジエニル基、アリール基、アラルキル基、アルキルアリール基、及びアルキニル基が挙げられる。
【0088】
本明細書で使用される場合、「置換ヒドロカルビル」及び「置換炭化水素」という用語は、1つ以上の非ヒドロカルビル置換基により置換されたヒドロカルビル基を指す。非ヒドロカルビル置換基の非限定的な例は、ヘテロ原子である。本明細書で使用される場合、「ヘテロ原子」とは、炭素又は水素以外の原子を指す。ヘテロ原子は、周期表のIV、V、VI、及びVII族からの非炭素原子であり得る。ヘテロ原子の非限定的な例としては、ハロゲン(F、Cl、Br、I)、N、O、P、B、S、及びSiが挙げられる。置換ヒドロカルビル基はまた、ハロヒドロカルビル基及びケイ素含有ヒドロカルビル基を含む。本明細書で使用される場合、「ハロヒドロカルビル」基という用語は、1つ以上のハロゲン原子により置換されたヒドロカルビル基を指す。本明細書で使用される場合、「ケイ素含有ヒドロカルビル基」という用語は、1つ以上のケイ素原子により置換されたヒドロカルビル基である。ケイ素原子は、炭素鎖中にあってもよく、又はなくてもよい。
【0089】
一態様では、置換フェニレンジエステルは以下の構造(I)を有する:
【0090】
【化3】
【0091】
一実施形態では、構造(I)は、イソプロピル基であるR及びRを含む。R、R、及びR~R14のそれぞれは、水素である。
【0092】
一実施形態では、構造(I)は、R及びRの各々をメチル基として含み、Rは、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基である。R及びR~R14のそれぞれは、水素である。
【0093】
一実施形態では、構造(I)は、R、R、及びR10の各々をメチル基として含み、Rは、t-ブチル基である。R、R、R~R、及びR11~R14のそれぞれは、水素である。
【0094】
一実施形態では、構造(I)は、R、R、及びR12のそれぞれをメチル基として含み、Rはt-ブチル基である。R、R、R、R、R、R、R10、R11、R13、及びR14のそれぞれは水素である。
【0095】
一実施形態では、構造(I)は、Rをメチル基として含み、Rは、t-ブチル基である。R及びR12のそれぞれはエチル基である。R、R、R、R、R、R、R10、R11、R13、及びR14のそれぞれは水素である。
【0096】
一実施形態では、構造(I)は、R、R、R、R、R10、R12、及びR14の各々をメチル基として含み、Rは、t-ブチル基である。R、R、R、R、R11、及びR13のそれぞれは水素である。
【0097】
一実施形態では、構造(I)は、Rをメチル基として含み、Rは、t-ブチル基である。R、R、R、R10、R12、及びR14のそれぞれはi-プロピル基である。R、R、R、R、R11、及びR13のそれぞれは水素である。
【0098】
一実施形態では、置換フェニレン芳香族ジエステルは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,536,372号に詳細に記載されているR~R14の各々の代替物を含む、構造(II)~(V)からなる群から選択される構造を有する。
【0099】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるRを含み、Rは、t-ブチル基である。R及びR12のそれぞれは、エトキシ基である。R、R、R、R、R、R、R10、R11、R13、及びR14のそれぞれは水素である。
【0100】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるRを含み、Rは、t-ブチル基である。R及びR12のそれぞれは、フッ素原子である。R、R、R、R、R、R、R10、R11、R13、及びR14のそれぞれは水素である。
【0101】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるRを含み、Rは、t-ブチル基である。R及びR12のそれぞれは、塩素原子である。R、R、R、R、R、R、R10、R11、R13、及びR14のそれぞれは水素である。
【0102】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるRを含み、Rは、t-ブチル基である。R及びR12のそれぞれは、臭素原子である。R、R、R、R、R、R、R10、R11、R13、及びR14のそれぞれは水素である。
【0103】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるRを含み、Rは、t-ブチル基である。R及びR12のそれぞれは、ヨウ素原子である。R、R、R、R、R、R、R10、R11、R13、及びR14のそれぞれは水素である。
【0104】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるRを含み、Rは、t-ブチル基である。R、R、R11、及びR12のそれぞれは、塩素原子である。R、R、R、R、R、R、R10、R11、R13、及びR14のそれぞれは水素である。
【0105】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるRを含み、Rは、t-ブチル基である。R、R、R11、及びR12のそれぞれは、塩素原子である。R、R、R、R、R、R10、R12、及びR14のそれぞれは水素である。
【0106】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるRを含み、Rは、t-ブチル基である。R、R、及びR~R14のそれぞれは、フッ素原子である。
【0107】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるRを含み、Rは、t-ブチル基である。R及びR12のそれぞれは、トリフルオロメチル基である。R、R、R、R、R、R、R10、R11、R13、及びR14のそれぞれは水素である。
【0108】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるRを含み、Rは、t-ブチル基である。R及びR12のそれぞれは、エトキシカルボニル基である。R、R、R、R、R、R、R10、R11、R13、及びR14のそれぞれは水素である。
【0109】
一実施形態では、Rは、メチル基であり、Rは、t-ブチル基である。R及びR12の各々は、エトキシ基である。R、R、R、R、R、R、R10、R11、R13、及びR14のそれぞれは水素である。
【0110】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるRを含み、Rは、t-ブチル基である。R及びR12のそれぞれは、ジエチルアミノ基である。R、R、R、R、R、R、R10、R11、R13、及びR14のそれぞれは水素である。
【0111】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるRを含み、Rは、2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル基である。R、R、及びR~R14のそれぞれは、水素である。
【0112】
一実施形態では、構造(I)は、R及びRを含み、これらのそれぞれは、sec-ブチル基である。R、R、及びR~R14のそれぞれは、水素である。
【0113】
一実施形態では、構造(I)は、各々メチル基であるR及びRを含む。R、R、R~R、及びR10~R14のそれぞれは、水素である。
【0114】
一実施形態では、構造(I)は、メチル基であるRを含む。Rは、i-プロピル基である。R、R、R~R、及びR10~R14のそれぞれは、水素である。
【0115】
一実施形態では、構造(I)は、R、R、及びRを含み、これらの各々は、i-プロピル基である。R、R~R、及びR10~R14のそれぞれは、水素である。
【0116】
上記の固体触媒成分に加えて、本開示の触媒系はまた、共触媒を含むことができる。助触媒は、アルミニウム、リチウム、亜鉛、スズ、カドミウム、ベリリウム、マグネシウムの水素化物、アルキル、又はアリール、及びこれらの組み合わせを含み得る。一実施形態では、助触媒は、式RAlで表されるヒドロカルビルアルミニウム助触媒であり、式中、各Rは、アルキル、シクロアルキル、アリール、又はヒドリドラジカルであり、少なくとも1つのRは、ヒドロカルビルラジカルであり、2つ又は3つのRラジカルは、環式ラジカルに接合され、ヘテロ環式構造を形成することができ、各Rは、同じであっても異なっていてもよく、ヒドロカルビルラジカルである各Rは、1~20個の炭素原子、好ましくは1~10個の炭素原子を有する。更なる実施形態では、各アルキルラジカルは、直鎖又は分岐鎖であり得、そのようなヒドロカルビルラジカルは、混合ラジカルであり得、すなわち、ラジカルは、アルキル、アリール、及び/又はシクロアルキル基を含有し得る。好適なラジカルの非限定的な例は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、2-メチルペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、イソオクチル、2-エチルヘキシル、5,5-ジメチルヘキシル、n-ノニル、n-デシル、イソデシル、n-ウンデシル、及びn-ドデシルである。
【0117】
好適なヒドロカルビルアルミニウム化合物の非限定的な例は、次のとおりである:トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、水素化ジ-n-ヘキシルアルミニウム、二水素化イソブチルアルミニウム、二水素化n-ヘキシルアルミニウム、ジイソブチルヘキシルアルミニウム、イソブチルジヘキシルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ-n-プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウム、トリ-n-デシルアルミニウム、トリ-n-ドデシルアルミニウム。一実施形態では、助触媒は、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム、及び水素化ジ-n-ヘキシルアルミニウムから選択される。
【0118】
一実施形態では、助触媒は、トリエチルアルミニウムである。アルミニウム対チタンのモル比は、約5:1~約500:1、又は約10:1~約200:1、又は約15:1~約150:1、又は約20:1~約100:1である。別の実施形態では、アルミニウム対チタンのモル比は、約45:1である。
【0119】
例えば、好適な触媒組成物としては、固体触媒成分、共触媒、及び2つ以上の異なる成分の混合外部電子供与体(M-EED)であり得る外部電子供与体を挙げることができる。好適な外部電子供与体又は「外部供与体」としては、1つ以上の活性制限剤(ALA)及び/又は1つ以上の選択性制御剤(SCA)が挙げられる。本明細書で使用される場合、「外部供与体」は、触媒性能を改変するプロ触媒形成とは関係なく添加される成分、又は成分の混合物を含む組成物である。本明細書で使用される場合、「活性制限剤」は、触媒の存在下で重合温度が閾値温度(例えば、約95℃超の温度)を上回って上昇するにつれて触媒活性を低下させる組成物である。「選択性制御剤」は、ポリマーのタクチシティを改善する組成物であり、改善されたタクチシティは、一般に、増加したタクチシティ若しくは減少したキシレン可溶分、又はこれらの両方を意味すると理解される。上記定義は相互に排他的ではなく、単一の化合物が、例えば、活性制限剤及び選択性制御剤の両方として分類され得ることが理解されるべきである。
【0120】
本開示に従った選択性制御剤は、一般に有機ケイ素化合物である。例えば、一態様では、選択性制御剤はアルコキシシランであり得る。
【0121】
一実施形態では、アルコキシシランは、一般式:SiR20 (OR214-m(I)(式中、R20は、独立して、出現ごとに、水素、又は任意選択で1つ以上の14、15、16、若しくは17族のヘテロ原子を含有する1つ以上の置換基で置換されてもよいヒドロカルルビル若しくはアミノ基であり、当該R20は、水素及びハロゲンを除いて最大20個の原子を含有し、R21は、C1~4アルキル基であり、mは、0、1、2又は3である)を有し得る。一実施形態では、R20は、C6~12アリール、アルキル、若しくはアラルキル、C3~12シクロアルキル、C3~12分岐アルキル、又はC3~12環式若しくは非環式アミノ基であり、R21はC1~4アルキルであり、mは、1又は2である。一実施形態では、例えば、第2の選択性制御剤はn-プロピルトリエトキシシランを含むことができる。使用可能な他の選択性制御剤としては、プロピルトリエトキシシラン又はジイソブチルジメトキシシランを挙げることができる。
【0122】
一実施形態では、触媒系は、活性制限剤(ALA)を含むことができる。ALAは、重合反応器の不具合を抑制又はそうでなければ防止し、重合プロセスの継続を確実にする。典型的には、チーグラー・ナッタ触媒の活性は、反応器温度が上昇するにつれて増加する。チーグラー・ナッタ触媒はまた、典型的には、生成されたポリマーの融点温度近くで高い活性を維持する。発熱重合反応によって発生した熱は、凝集物を形成するポリマー粒子を生じさせる可能性があり、最終的にポリマー生成プロセスの継続を中断することにつながる場合がある。ALAは、高温で触媒活性を低下させ、それによって、反応器の不具合を防止し、粒子の凝集を低減(又は防止)し、重合プロセスの継続を確実にする。
【0123】
活性制限剤はカルボン酸エステルであってもよい。脂肪族カルボン酸エステルは、C~C30脂肪族酸エステルであり得、モノ又はポリ(2つ以上)のエステルであり得、直鎖又は分岐状であり得、飽和又は不飽和であり得、及びこれらの任意の組み合わせであり得る。C~C30脂肪族酸エステルはまた、1つ以上の14、15、又は16族のヘテロ原子を含有する置換基により置換され得る。好適なC~C30脂肪族酸エステルの非限定的な例としては、脂肪族C4~30モノカルボン酸のC1~20アルキルエステル、脂肪族C8~20モノカルボン酸のC1~20アルキルエステル、脂肪族C4~20モノカルボン酸及びジカルボン酸のC1~4アリルモノ及びジエステル、脂肪族C8~20モノカルボン酸及びジカルボン酸のC1~4アルキルエステル、並びにC2~100(ポリ)グリコール又はC2~100(ポリ)グリコールエーテルのC4~20モノ又はポリカルボキシレート誘導体が挙げられる。更なる実施形態では、C~C30脂肪族酸エステルは、ラウレート、ミリステート、パルミテート、ステアレート、オレエート、セバケート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノ又はジアセテート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノ又はジミリステート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノ又はジラウレート、(ポリ)(アルキレングリコール)モノ又はジオレエート、グリセリルトリ(アセテート)、C2~40脂肪族カルボン酸のグリセリルトリ-エステル、及びこれらの混合物であり得る。更なる実施形態では、C~C30脂肪族エステルは、イソプロピルミリステート又はジ-n-ブチルセバケートである。
【0124】
上記のような本開示の触媒系を使用して、オレフィン系ポリマーを製造することができる。本プロセスは、重合条件下でオレフィンを触媒系と接触させることを含む。
【0125】
一実施形態では、重合は、気相重合によって生じる。本明細書で使用される場合、「気相重合」は、流動媒体によって流動化状態に維持されたポリマー粒子の流動床を介した触媒の存在下で、上昇流動媒体、1つ以上のモノマーを含有する流動媒体の通過である。「流動化」、「流動化された」、又は「流動化する」とは、微細ポリマー粒子の床がガスの上昇流によって持ち上げられ、かき混ぜられるガス-固体接触プロセスである。流動化は、粒子の床の細隙を通る流体の上向きの流れが、粒子状物質の重量を上回る圧力差及び摩擦抵抗の増大を獲得した場合に粒子状物質の床で生じる。したがって、「流動床」とは、流動媒体の流れによって流動化された状態で懸濁された複数のポリマー粒子である。「流動媒体」とは、1つ以上のオレフィンガス、任意選択的に、キャリアガス(例えば、H又はN)、及び任意選択的に気相反応器を通って上昇する液体(例えば、炭化水素)である。
【0126】
典型的な気相重合反応器(又は気相反応器)は、容器(すなわち、反応器)、流動床、分配板、入口及び出口配管、圧縮機、循環ガス冷却器又は熱交換器、並びに生成物排出システムを含む。容器は、反応ゾーン及び速度低下ゾーンを含み、これらのそれぞれは分配板上に位置する。床は、反応ゾーンに位置する。一実施形態では、流動媒体は、プロピレンガスと、オレフィンなどの少なくとも1つの他のガス及び/又は水素若しくは窒素などのキャリアガスと、を含む。
【0127】
一実施形態では、接触は、触媒組成物を重合反応器に供給し、オレフィンを重合反応器に導入することによって生じる。
【0128】
しかしながら、気相重合プロセスに加えて、本開示の触媒系は、ループ反応器を備えるスラリー系を含む全ての異なる種類のバルク相重合プロセスにおいても使用できることも理解されるべきである。
【0129】
次いで、本開示に従って作製されたプロピレンターポリマーを、フィルム層及び/又はヒートシール層等の物品を生産するための様々なポリマー組成物に組み込むことができる。ポリマー組成物は、プロピレンターポリマーを様々な他の成分と組み合わせて含有し得る。
【0130】
一態様では、ポリマー組成物は、一次酸化防止剤、二次酸化防止剤(例えば、ホスファイト)、及び制酸剤(例えば、CaSt又はZnO)を含有し得る。一態様では、酸化防止剤は、Irganox 3114、Cyanox 1790、又はIrganox 1425WLなどのガス退色防止特性を有する。あるいは、酸化防止剤系は、非ガス退色、すなわち、フェノール系酸化防止剤を含み得ず、HALS(ヒンダードアミン光安定剤)と、ヒドロキシルアミン安定剤(例えば、Irganox FS042)及びホスファイト二次酸化防止剤のいずれか/両方との組み合わせに基づき得る。酸化防止剤は、ポリマーブレンド中のポリマー成分及び有機添加剤の酸化を最小限に抑え得る。ポリマー組成物は、例えば、ホスファイト及び/又はホスホネート酸化防止剤を単独で、又は他の酸化防止剤と組み合わせて含有し得る。好適な酸化防止剤の非限定的な例としては、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノールなどのフェノール、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3’5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス[(メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン、アクリロイル変性フェノール、オクタデシル-3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシシンナメート、1,3,5-トリス(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン(例えば、BASFによって供給されているIrganox 3114)、カルシウム-ビス(((3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル)メチル)-エチルホスホネート)(例えば、BASFによって供給されているIrganox 1425WL)が挙げられる。使用され得る別の酸化防止剤は、1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス[[4-(1,1-ジメチルエチル)-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル]メチル](例えば、Sovay製のCyanox 1790)である。別の態様では、酸化防止剤は、N,N-ジオクタデシルヒドロキシルアミン(例えば、FS042)であり得る。ホスファイト及びホスホナイトは、一般に、上記ヒンダードフェノールと組み合わせて使用され得る。ヒドロキシルアミンは、一般に、ヒンダードアミン光安定剤又はホスファイトと組み合わせて使用され得る。他の酸化防止剤としては、ベンゾフラノン誘導体、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0131】
ポリマー組成物はまた、酸捕捉剤として作用する制酸剤を含有していてもよい。制酸剤は、ステアレート、金属酸化物、ヒドロタルサイト、水酸化炭酸マグネシウムアルミニウム、又はこれらの混合物であり得る。特定の制酸剤の例としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0132】
ポリマー組成物はまた、加工助剤を含有していてもよい。加工助剤の一例は、フルオロカーボンポリマーである。例えば、組成物は、ポリテトラフルオロエチレン粒子を含有し得る。加工助剤は、約0重量%~約5重量%、例えば約0.01重量%~約1.5重量%の量で存在し得る。
【0133】
ポリマー組成物はまた、スリップ剤及びブロッキング防止剤を含有していてもよい。スリップ剤としては、脂肪酸アミド等のアミドが挙げられる。用語「ブロッキング防止剤」は、本明細書では、ポリマーフィルムのフィルム又はシートが互いに又は他の表面に固着又は接着する傾向を、そのような接着が望ましくない場合に低下させる物質を説明するために使用される。典型的なブロッキング防止剤としては、コロイド状シリカ、微粉化シリカ、粘土、ケイ素、並びに特定のアミド及びアミンが挙げられる。これらの上記剤は、典型的には、外層中約500ppm~約20,000ppmの濃度でフィルム中に存在する。
【0134】
いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、任意選択で、ポリマーブレンドのUV放射による分解を防止又は低減し得る安定剤を含んでいてもよい。好適なUV安定剤の非限定的な例としては、ベンゾフェノン、ヒンダードアミン、ベンゾトリアゾール、アリールエステル、オキサニリド、アクリル酸エステル、ホルムアミジン、カーボンブラック、ニッケルクエンチャー、フェノール系酸化防止剤、金属塩、亜鉛化合物、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0135】
一態様では、ポリマー組成物はまた、1つ以上の着色剤を含有していてもよい。着色剤は、染料又は顔料であり得る。一実施形態では、特定の色を有するフィラメントを生成するために、着色剤のブレンドを使用することができる。
【0136】
一実施形態では、ポリマー組成物は、核形成剤を含有することができる。利用される場合、核形成剤は特に限定されない。一実施形態では、核形成剤は、以下の構造(VIII)によって表されるリン酸エステル金属塩のようなリン系核形成剤の群から選択されてもよい。
【0137】
【化4】
(式中、R30は、酸素、硫黄、又は1~10個の炭素原子の炭化水素基であり、R31及びR32のそれぞれは、水素、又は1~10個の炭素原子の炭化水素若しくは炭化水素基であり、R31及びR32は、互いに同じであっても異なっていてもよく、R31のうちの2つ、R32のうちの2つ、又はR31及びR32が互いに結合して環を形成していてもよく、Mは、一価から三価の金属原子であり、nは1から3の整数であり、mは0又は1のいずれかであり、但し、n>mである。
【0138】
上記式で表されるα成核剤の例としては、ナトリウム-2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチル-フェニル)ホスフェート、ナトリウム-2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)-ホスフェート、リチウム-2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフェート、リチウム-2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフェート、ナトリウム-2,2’-エチリデン-ビス(4-i-プロピル-6-t-ブチルフェニル)ホスフェート、リチウム-2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェニル)ホスフェート、リチウム-2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェニル)ホスフェート、カルシウム-ビス[2,2’-チオビス(4-メチル-6-t-ブチル-フェニル)-ホスフェート]、カルシウム-ビス[2,2’-チオビス(4-エチル-6-t-ブチルフェニル)-ホスフェート]、カルシウム-ビス[2,2’-チオビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフェート]、マグネシウム-ビス[2,2’-チオビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)ホスフェート]、マグネシウム-ビス[2,2’-チオビス(4-t-オクチルフェニル)ホスフェート]、ナトリウム-2,2’-ブチリデン-ビス(4,6-ジメチルフェニル)ホスフェート、ナトリウム-2,2’-ブチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチル-フェニル)-ホスフェート、ナトリウム-2,2’-t-オクチルメチレン-ビス(4,6-ジメチル-フェニル)-ホスフェート、ナトリウム-2,2’-t-オクチルメチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)-ホスフェート、カルシウム-ビス[2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)-ホスフェート]、マグネシウム-ビス[2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)-ホスフェート]、バリウム-ビス[2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)-ホスフェート]、ナトリウム-2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェニル)-ホスフェート、ナトリウム-2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェニル)ホスフェート、ナトリウム(4,4’-ジメチル-5,6’-ジ-t-ブチル-2,2’-ビフェニル)ホスフェート、カルシウム-ビス-[(4,4’-ジメチル-6,6’-ジ-t-ブチル-2,2’-ビフェニル)ホスフェート]、ナトリウム-2,2’-エチリデン-ビス(4-m-ブチル-6-t-ブチル-フェニル)ホスフェート、ナトリウム-2,2’-メチレン-ビス-(4,6-ジ-メチルフェニル)-ホスフェート、ナトリウム-2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-エチル-フェニル)ホスフェート、カリウム-2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)-ホスフェート、カルシウム-ビス[2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)-ホスフェート]、マグネシウム-ビス[2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)-ホスフェート]、バリウム-ビス[2,2’-エチリデン-ビス-(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)-ホスフェート]、アルミニウム-ヒドロキシ-ビス[2,2’-メチレン-ビス(4,6-ジ-t-ブチル-フェニル)ホスフェート]、アルミニウム-トリス[2,2’-エチリデン-ビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)-ホスフェート]が挙げられる。
【0139】
リン系核形成剤の第2の群としては、例えば、アルミニウム-ヒドロキシ-ビス[2,4,8,10-テトラキス(1,1-ジメチルエチル)-6-ヒドロキシ-12H-ジベンゾ-[d,g]-ジオキサ-ホスホシン-6-オキシダト]及びこれらとミリスチン酸リチウム又はステアリン酸リチウムとのブレンドが挙げられる。
【0140】
核形成剤の他の例としては、ソルビトール系核形成剤(例えば、1,3:2,4ジベンジリデンソルビトール、1,3:2,4ジ(メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4ジ(エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4ビス(3,4-ジメチルベンジリデン)ソルビトールなど)、パインロジン、ポリマー核形成剤(例えば、ビニルシクロアルカンポリマー、ビニルアルカンポリマー、ロジン酸の部分金属塩など)、タルク、安息香酸ナトリウムなどを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0141】
核形成剤の市販の例としては、Asahi Denka Kokaiから入手可能なADK NA-11、ADK NA-21、ADK NA-21E、ADK NA-21F、及びADK NA-27;Milliken&Companyから入手可能なMillad NX8000、Millad 3988、Millad3905、Millad3940、Hyperform HPN-68L、Hyperform HPN-715、及びHyperform HPN-20E;並びにCiba Specialty Chemicals製のIrgaclear XT386を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0142】
ポリマー組成物中に存在する場合、1つ以上の成核剤は、一般に約100ppm超の量、例えば約1,800ppm超の量、例えば約2,000ppm超の量、例えば約2,200ppm超の量で添加される。1つ以上の成核剤は、一般に約20,000ppm未満、例えば約15,000ppm未満、例えば約10,000ppm未満、例えば約8,000ppm未満、例えば約5,000ppm未満の量で存在する。
【0143】
プロピレンターポリマーを含有するポリマー組成物が配合された後、一実施形態では、組成物をヒートシール層等のフィルム層に成形することができる。
【0144】
フィルム形成プロセスは、以下の手順のうちの1つ以上を含んでもよい:押出、共押出、キャスト押出、インフレーションフィルム形成、ダブルバブルフィルム形成、テンターフレーム技術、カレンダー加工、コーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、積層、二軸延伸、射出成形、熱成形、圧縮成形、及びこれらの任意の組み合わせ。
【0145】
一実施形態では、このプロセスは、多層フィルムを形成することを含む。「多層フィルム」という用語は、2つ以上の層を有するフィルムである。多層フィルムの層は、以下の非限定的なプロセスのうちの1つ以上によって一緒に結合される:共押出、押出コーティング、蒸着コーティング、溶媒コーティング、エマルジョンコーティング、又は懸濁コーティング。
【0146】
一実施形態では、このプロセスは、押出フィルムを形成することを含む。「押出」という用語及び同様の用語は、溶融プラスチック材料をダイに通し、任意選択的に冷却又は化学的硬化を続けることによって、連続形状を形成するためのプロセスである。ダイを通して押出す直前に、比較的高粘度のポリマー材料を回転スクリューに供給し、それをダイに通す。押出機は、一軸スクリュー押出機、多軸スクリュー押出機、ディスク押出機、又はラム押出機であり得る。ダイは、フィルムダイ、ブローフィルムダイ、シートダイ、パイプダイ、チュービングダイ又は異形押出ダイであり得る。押出物品の非限定的な例としては、パイプ、フィルム、及び/又は繊維が挙げられる。
【0147】
一実施形態では、このプロセスは、共押出フィルムを形成することを含む。「共押出」という用語及び同様の用語は、2つ以上の材料を、2つ以上のオリフィスが配置された単一のダイを通して押出すためのプロセスであり、その結果、押出物は合体するか、又はそうでなければ共に溶着して層状構造になる。共押出層の少なくとも1つは、本プロピレン系ポリマーを含有する。共押出は、他のプロセスの態様として、例えば、フィルムブローイング、キャスティングフィルム、及び押出コーティングプロセスにおいて使用することができる。
【0148】
一実施形態では、このプロセスは、インフレーションフィルムを形成することを含む。「インフレーションフィルム」という用語及び同様の用語は、ポリマーフィルムを延伸するために、ポリマー又はコポリマーが押出されて空気又は別のガスで満たされた気泡を形成するプロセスによって作製されるフィルムである。次いで、気泡を潰してフラットなフィルム状に回収する。
【0149】
多層フィルムの形成後、多層フィルムを使用して、本開示による全ての異なる種類の包装材料を形成することができる。例えば、図3は、本開示に従って作製され得る包装材料の例示的な実施形態である。
【0150】
したがって、一般に記載される本発明は、以下の実施例を参照して、より容易に理解され、これは例示として提供され、本発明を限定することを意図するものではない。
【実施例
【0151】
6つの異なるプロピレンターポリマーを処方し、溶融温度及びヒートシール開始温度(HSIT)について試験した。各ターポリマーは、エチレン及びブテンと組み合わされた主モノマーとしてプロピレンを含有していた。試料1~3及び6についてエチレンの連鎖長分布を計算した。
【0152】
プロピレンターポリマーは全て、チーグラー・ナッタ触媒系を用いて作製した。試料番号1~4において、固体触媒成分は、内部電子供与体としてフェニレン置換ジエステルを含有していた。試料番号5は、市販のプロピレンターポリマーであった。試料番号6は、W.R.Graceから市販されているフタレート系触媒であるLYNX1010の存在下で形成した。試料番号1、2及び6を除く以下の全ての試料をビスブレーキングした。以下の結果を得た。
【0153】
【表2】
【0154】
各プロピレンターポリマーの連鎖長とエチレン含有量との比較を図4に示す。図4に示すように、試料番号1及び2は、非常にランダムなエチレン分布を示した。これらの試料はまた、8重量%未満、特に7重量%未満の量のブテンを含有しながら、非常に低い溶融温度及びヒートシール開始温度を示した。
【0155】
特定の実施形態を例示及び記載してきたが、以下の特許請求の範囲において定義されるようなそのより広い態様における技術から逸脱することなく、当業者によって、その中で変更及び改変が行われ得ることが理解されるべきである。
【0156】
本明細書に例示的に記載される実施形態は、本明細書に具体的に開示されない任意の要素(element)又は要素(elements)、限定(limitation)又は限定(limitations)の不存在下で好適に実践され得る。したがって、例えば、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含有する(containing)」などの用語は、広範囲に、かつ限定せずに読み取られるべきである。加えて、本明細書で用いられる用語及び表現は、限定的なものではなく説明の用語として使用されており、そのような用語及び表現の使用において、示され、記載される特徴又はそれらの一部分のいずれの等価物も除外することを意図していないが、様々な修正が特許請求される技術の範囲内で可能であることが認識される。加えて、「から本質的になる(consisting essentially of)」という語句は、具体的に列挙されたこれらの要素、並びに特許請求される技術の基本的な特徴及び新規の特徴に物質的に影響しないこれらの追加の要素を含むことが理解されよう。「からなる(consisting of)」という語句は、指定されていないあらゆる要素を除外する。
【0157】
本開示は、この出願に記載される特定の実施形態に関して限定されるものではない。当業者には明らかなように、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、多くの修正及び変形が行われ得る。本明細書に列挙されたものに加えて、本開示の範囲内の機能的に等価な方法及び組成物は、前述の記載から当業者には明らかであろう。そのような修正及び変形は、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図される。本開示は、そのような特許請求の範囲が権利を有する等価物の全範囲とともに、添付の特許請求の範囲の条件によってのみ限定されるものである。この開示は、特定の方法、試薬、化合物、組成物、又は生物学的系に限定されず、これらは当然変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を記載するためのものに過ぎず、限定するものとしては意図されていないことも理解されたい。
【0158】
加えて、本開示の特徴又は態様がマーカッシュ群に関して記載される場合、当業者は、本開示が、それによって、マーカッシュ群の任意の個々のメンバー又はメンバーのサブグループに関しても記載されることを認識するであろう。
【0159】
当業者によって理解されるように、あらゆる及び全ての目的で、特に書面による説明を提供するという観点で、本明細書に開示される全ての範囲は、あらゆる及び全ての可能性のある部分範囲及びその部分範囲の組み合わせも包含する。いずれの列挙された範囲も、同じ範囲が、少なくとも二等分、三等分、四等分、五等分、十等分などに細分されることを十分に記載し、それを可能にすることが簡単に認識され得る。非限定的な例として、本明細書で論じられる各範囲は、下部3分の1、中部3分の1、及び上部3分の1などに容易に細分され得る。また、当業者によって理解されるように、「最大」、「少なくとも」、「~超の(~を超える)」、「未満」などの全ての文言は、列挙される数を含み、かつその後、上で論じた部分範囲に細分され得る範囲を指す。最後に、当業者には理解されるように、範囲は、各個々のメンバーを含む。
【0160】
本明細書において参照される全ての刊行物、特許出願、発行済み特許、及び他の文献は、各個々の刊行物、特許出願、発行済み特許、又は他の文献が、参照によりその全体が組み込まれることが具体的かつ個々に示されているかのように、参照によって本明細書に組み込まれる。参照によって組み込まれる記載内容に含まれる定義は、それらが本開示における定義に矛盾する限りにおいて除外される。
【0161】
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲に記載される。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】